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杉田参考人 御紹介いただきました日経の
杉田でございます。
私、きょうは、この問題については非常に素人ではございますが、考えを述べさせていただきたいと思います。三点ほどにわたって私の
考え方を申し上げたいと思うのでありますが、まず
最初に、この
首都移転といいますか、
国会等の
移転、今や
経済合理性にかなってきているのではないかというのが第一点であります。
この問題は、実は私も
新聞記者になりまして三十二年になるわけでございますけれども、
駆け出しのころから問題になっておりまして、私が
建設省担当のころも、
河野一郎建設大臣が
富士山ろくに
首都を
移転したらどうだ、こういう構想も飛び出したりしまして、本当に
相当の
期間議論をやっている。しかし、結局
議論だけに終わってきているわけなのですね。この
原因は、
先生方も
皆さんもう御承知のように、結局、
集中の
メリットといいますか、
集積の
メリットが非常に大きい。ですから、これを逆に
移転させるということはその
メリットを打ち消すことになるということで、なかなか
経済的に
合理性が得られなかったという点が非常に大きかったのではないかというふうに思うわけであります。結局、
情報、技術あるいは
文化、それからビジネスチャンス、それから
消費が非常に
高度化が進んでいる、こういうふうなところの
メリットがありますから、なかなかこれを消すことができない、こういうことであります。しかも、
行政にいたしましても、あるいは
政府の
公共事業などにいたしましても、結局
東京を
中心に
放射線状の
行政をやるということになりますので、非常に効率的になってくるわけですね。ですから、そういう点でも
集中それから
集積の
メリットというものが非常にあって、それを否定することがなかなかできなかったというのがこれまでの経緯じゃないかと思うのであります。
しかしながら、現在におきましては
集中の
弊害というのが非常に
拡大してまいっておりまして、むしろそれが表面化してきている。したがって、
東京及びその
周辺に住む
人たちの
生活環境、これは
交通、
住宅をとってみるまでもなく、
生活環境が非常に悪くなってきている。その第一の
原因はやはり
地価の
高騰ということでありますが、
住宅だけではなくて、
企業にとりましても非常に大きな問題でありまして、なかなか今のような
地価の
状態では、
採算をとるということが非常に難しくなってくる。
採算をとるということになりますと、
消費者に対して非常に高い
価格を押しつけなければいかぬ。高い
価格を押しつけるということになりますと、これは世界で一番
経済の強い国と言われながら、海外に比べて非常に高い
消費物資を
消費者に押しつける、こういうような結果になっているのではないかというふうに思うわけであります。
それから、
大都市圏に住む、特にこの
東京周辺に住む
人たちの若い世代、
若者たちから将来の夢を
かなりもう奪ってしまっているのではないか。今回、
バブルというようなことで、
バブル崩壊過程で
地価は若干下がっていると言われますけれども、しかしそれはもう大幅に上がってなかなか
もとには戻り切れない、
もとに戻すと
経済的に大
混乱が起こる、こういうような
状態になっているわけでありますから、今回の
バブルの
過程を通じまして、特にそういう夢を奪う
度合いというものが大きくなってしまっておるということだと思います。
また同時に、この
地価の
高騰によりまして社会的な不公平というものが非常に
拡大してしまっている。
土地の
所有者、これを資産として持っている
人たちと持ってない
人たちの間の
格差が非常に広がってきている。しかしまた、それじゃ持っている
人たちも幸せかというと必ずしもそうではありませんで、必ずしも売る目的ではなくて、単に住んでいるだけで
地価が
高騰して
相続税が払えない、したがって
自分の住んでいる家、
土地を
子供たちに譲れない、こういう
状態も生まれてきている。ですから、これは単に社会的不公平が
拡大しているというだけではなくて、
土地を持っている
人たちにとっても非常に不幸な事態になっているのではないかということであります。
それからまた、国際的に見ましても、
東京に象徴されますいろんな
ゆがみ、これはやはりもう有名になってきておりまして、
東京というのはすばらしい町である反面、各国の
町づくりにとっては絶対にまねてはいけない、つまり反面教師になってきているということでございまして、
経済の
拡大過程でできた一種の
化け物的存在ではないかと、いうようなことで、
日本の
ゆがみというのとダブってきているというような
国際的イメージを形成しているように思います。したがいまして、そういうことでありますので、
集中を
緩和してバランスのとれた
国土建設に
相当なエネルギーを傾注する時期に来ているというふうに思っております。
今回、この
先生方を
中心とする
特別委員会とか、それからまた
政府の方でも
調査会がスタートいたしましたので、今度は
国会の
先生方も、また
政府の方も本気になって取り組んでいただけるのかなという
期待を
国民に与えていると思いますが、先ほどから申し上げております
弊害を
国民も
かなりの
人たちが認識してきていると思うのです。ですから、これは
国土庁からいただきました
資料などを見ましても、
国民の九割以上が
集中是正というものを望んでいる、こういう
状態になっていると思います。また、
国会等の
移転に関しましても、七割以上の
人たちが
賛成をしているというような状況だと思います。
国会、
行政機関の
移転で
集中を抑制しつつ、同時に
地方の
魅力を高める
努力というものが今後展開されることを、私もジャーナリストとしてだけじゃなくて一
国民としても強く
期待をしているわけであります。
後でまた申し上げますけれども、
国会や
行政機関を移すというだけでは、なかなかこの問題を全体に解決することは難しいと思います。やはり、
国会、
行政機関を移すと同時に、
地方の
魅力度を増していくという
行政があわせて展開されることが必要なのではないかというふうに思います。先ほど申し上げましたように、すべての
計画が
東京に向かってなされておりますので、
道路も鉄道も全部
放射線形になっているわけですね。ですから今度は
放射線ではなくて
横軸といいますか、これは大分県の
平松知事は第二
国土軸という呼び方をされておりますけれども、
地方都市と
地方都市との間のアクセスといいますか、
交通機関を含むそういう
整備をしていかなければいけない。それからまた、
地方の
文化水準を引き上げていくというような
努力も必要でありますし、また
地方の
下水道整備を
中心とします
生活環境の
拡大にも
予算を割いていかなければいけない。そういうようなことで、
公共事業といいましてもやはりその
予算配分のやり方というものを、これまでの
放射線形の
予算配分からそういうふうに
地方都市の
魅力を増すための
配分というようなことに変えていく必要があるのではないだろうかというふうに思っているわけであります。
二番目に、この
移転の対象が問題になってくると思うのでありますけれども、これは役所の
皆さんの中には、私がいろいろ聞きますと、いやもう
国会の
先生方だけ行っていただいて、静かなところで
議論をしていただいたらいいのじゃないかなんというような無責任なことを言う人も中にはいるのですけれども、しかし
国土庁の
資料を見てみますと、
中央官庁の課長さん方も
かなりの
人たちがその
移転の
必要性を
感じているということでありますので、その点では安心をいたしておりますけれども、やはり
政治・
行政機能を
移転させるということが必要だと思います。
政治・
行政機能と
経済機能をやはり分離するという
考え方を私は支持したいというふうに思っているわけであります。
現在
東京にいろいろな
集中が起こるといいますのは、もちろんいろいろな
理由があります。
経済的な
集積が進んでいるということもありますし、それから
文化の
水準がやはり
東京が非常に高いというようなこともありますのですけれども、それだけじゃありませんで、やはり
情報の
メリットといいますか、ここに
国会があり、
政治の
中心であるということ、それから
行政機関が存在すること、したがってその
行政機関にまつわるいろいろな
情報が
東京にいるのと
大阪にいるのとではまるっきり違う。
経済界の
人たちの話を聞きますと、やはり二対一だということを言っておりますね。これだけ
情報ネットワークが発達しているにもかかわらず、
東京に住んでいるのと
大阪に住んでいるのとでは
情報の質と量を含めて考えますと二対一ぐらいの
格差があるんだというようなことを言っておりまして、やはりどうしても
東京に行かなくてはならぬということで、本来
大阪にあるいは
関西に本拠地を持っていた銀行なり大
企業も、
関西本社と並ぶ
東京本店あるいは
東京本部というものを持ちまして両方が本社化しつつある、こういう
状態になっているのだと思います。ですから、やはりそういうような
行政、
国会がここに
集中しているということをある
程度分離するということが必要なのじゃないかというふうに私は思っております。したがいまして、
国会とあわせまして
主要官庁を
移転するということが必要なのではないかと思います。
それから第三番目に、それではそういう
国会、
行政機能の
移転というだけで問題が解決するのだろうかということであります。これはいろいろな
考え方があろうかと思いますけれども、
国会と
行政機関の
移転というだけでは
集中の
場所を
東京から他の
場所に移す結果になる
可能性が強いというふうに思うわけであります。
企業の
経営者たちが今
首都機能の
移転を過半数が支持しているような
状態になっていると思いますが、その支持している
理由の中には、やはりそれが
地方分権への契機になるとか、あるいは
地方都市の
活性化が進むだろうとか、そういうような
期待をした上で支持しているのだと思われるわけでありますが、やはり
集中の
場所を変えるだけではなくて、この
機会に権限の分散といいますか、
地方への
分権というものをあわせてやっていく必要があるのじゃないか。また同時に、
政府各省と民間との間の
規制、
許認可事項が一万件以上にも上っているというような
状態をなくしていくということがこの
機会に必要なのではないか。また、こういう
機会でないと、こういう
地方分権とか
規制緩和というのは、なかなか
議論しているだけでは是正できないのではないかというふうな
感じもしているわけであります。
それで、この
地方分権と
規制緩和というのは、これまた古くて新しい問題でありまして、私の
駆け出しのころからこの問題をずっと書いたり、解説を書いたりしてきたわけなんでありますが、しかし、なかなかそこへは進まないという
状態であります。しかしながら、この
首都機能の
移転には、
国土庁の試算では十四兆円とかいう数字が公表されておりますけれども、これはその他の、
輸送機関とか
道路とか、そういうものが入ってないようでありますので、そういうものを入れると恐らく二十兆あるいは二十兆を超える規模の大
事業になってくるのだろうと思います。そうしますと、それだけの大
事業をやるには、これは
相当の
国民の
負担をお願いせざるを得ないわけでありまして、そのためには、
首都機能の
移転先とかかわりのない、全
国民の
国民的支持がどうしても必要であるというふうに思います。そうしませんと、これは、おれ
たちの
負担で他の箇所が繁栄する、こういうような受けとめ方しかできなくなりますので、これではこの大
プロジェクトは実現しないのではないか、こういう
感じに私は思っているわけであります。したがって、この
国会を含む
首都機能の
移転というものが全
国民にとって何らかのプラスになるのだというふうな受けとめ方、
自分たちにかかわりのある問題なんだということをぜひプレゼンテーションする、そういう形でやっていただかなければ、なかなかこの
コンセンサスづくりが難しいのではないかというふうに思います。
それで、この
地方分権と
規制緩和によりまして、先ほど申し上げました
地方都市の
魅力度づくりというものが実現できる
環境が
地方分権ということでより一層高まってくる、それからまた
規制の
緩和ということで、今いろいろ言われております、
官庁と一部の
政治家の
方たちと
業界の
人たちのつながりといいますか癒着といいますか、こういうものをある
程度断ち切っていく、そういうことにもなります。それからまた、この
規制緩和ということに対しては国際的な関心も寄せられておりまして、
日本の
市場が非常に閉鎖的だという批判を浴びているわけでありますが、私どもから見るとそれほど閉鎖的ではないのではないかというふうに
日本人自身は
感じているわけでありますが、その
原因はどこから来るかといいますと、やはり
許認可事項にまつわる問題、つまり、
法律だけ見ているのではわからない、政令とか省令によって
行政が動かされている部分が非常に多い。ですから、そういうことで、
外国の
人たちは
法律を勉強するだけでは足りないわけでありまして、そこでいろいろな
規制を受けるということで
日本の
市場が非常に不透明だという誤解が生まれているわけでありまして、やはりこの
機会に
地方分権とあわせて
規制を
緩和していくという姿勢が必要なのではないか。
また、現実に
規制を残したままで
移転をいたしますと、今度は
国民個人あるいは
関係業界の
人たちが、どれくらい離れるかわかりませんが、新しい
首都に
陳情に行かなきゃいけない、
許認可をもらいに行かなきゃいけないということで、
東京に来るよりももっと煩雑になるというふうな不満が非常に強く起こるわけであります。ですから、そういう
許認可事項をこの際思い切って減らしていくというふうにして、そこに足を運ぶ回数、
度合いというものを最小限に抑えていくということが必要になってくるのじゃないかというふうに思っているわけであります。
しかし、この
地方分権と
規制緩和というのは、率直に言いまして、これを取りまとめしようとしておられる
国土庁は別といたしまして、諸
官庁の
本音は、
許認可を持っておられる
官庁の
本音は多分
反対だと思いますね。ですから、
本音のそういう
反対をどういうふうに説得あるいはしむけていくかというのが
政治の問題でありまして、これはやはり
相当の
政治決断なり、また行革審の新しい展開みたいなものがこの
首都移転の
議論とあわせて進められないと、なかなか本当の
意味での
首都移転というのは難しいのではないかというふうに思っているわけであります。しかし同時に、それには
相当時間がかかるかなという
感じもいたします。しかしながら同時に、一方では、私は
経済記者の一人として、この大
プロジェクトは実は時間との競争だなという気もしているわけなんですね。
それはどういうことかといいますと、
日本の今後の
成長力を考えてみますと、今不況ですけれども、恐らく来年から三%台の
成長コースに戻ると思いますけれども、二十一
世紀に入りますと、
日本の
潜在成長力というのはだんだん低下してくると思いますね。
国民の年齢が
高齢化してくるということ、
若者の数が減ってくるということ、それから
環境に対する
国民の意識が非常に強くなってくる。ですから三%台の
成長もだんだん難しくなってくる、やがて二%、そして一%台ということで、やはり
ヨーロッパ先進諸国がたどっているような
コースに
日本も向かっていくことが避けられなくなってくる、そういう
可能性が非常に強いわけであります。そうしますと、非常に大きな
資金、巨額の
資金が要るこの大
プロジェクトをある
程度早い
機会に、
日本の
成長力がある
程度ある間にやっていかないと、
国民に大変な
税負担を背負わせてしまう、大増税をやらなければこの大
プロジェクトが実現できないということになってくるのではないかという気がするわけであります。
その
期間がどれくらいあるかなということで多少無責任にいろいろ考えてみますと、
高齢化の
テンポなどから見まして、
日本の
成長力が今
世紀は三%台が仮に確保できるとして、二十一
世紀に入りますとそれが二%台に落ちて、さらに二%台も難しくなる時期というのはいつごろだろうか、恐らく二〇一〇年から二〇二〇年あたりの時期が考えられるわけであります。そうしますと、この
事業は今後二十年ぐらいで実現をするということが必要になってくる。そうしますと、
計画立案に五年間、そして実際の着手、着工から完了までに十年間ということで、できれば十五年間ぐらいで完了しないとなかなか、
財源面での制約が出てくるのではないかという気がするわけであります。その点、
外国の例などを
国土庁の
資料なんかで見ますと、キャンベラの
首都建設などは非常に時間がかかっておりますね。数十年、時間がかかっておりますのですけれども、
日本にそれだけの時間的余裕はちょっとないのではないかなというのが私の率直な印象でございます。
ですから、
分権と
規制緩和というこの各省庁が
相当反対されるであろう問題と、この大
プロジェクトを本当に実現するには時間が限られておるということとどういうふうに両立するかという、この辺が
先生方にもぜひ
議論していただきたい非常に大きな問題なのではないかなという気がしているわけでございます。
私の論点は以上でございますが、その他の問題としましては、実際に
移転するということになりますと、
移転先の
候補地の名前が出るたびに
地価が
高騰していくということになりますので、具体的な
候補地が公表されるときにはもう直ちに
地価対策が用意されているというふうなことにいかないと、多分、地元では大
混乱が生じるのではないだろうか、こういうふうにも考えております。
私の
最初のコメントは以上にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。