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五味説明員 退職年金の
平均月額という
資料が今手元にございますので、それで……(
川俣委員「この
資料で」と呼ぶ)
失礼いたしました。ちょっと
資料を今持ってまいりました。
昭和五十九年三月以前
裁定者のこの表でございますけれ
ども、これはいわゆる一〇%
スライド停止と言われるものでございます。
御
説明を申し上げますと、御承知のように
昭和五十年代、
鉄道共済、当時の
国鉄共済の
財政状況が急速に悪化をいたしました。そのままでは
年金の
支給に
支障が出るということが明らかになりましたので、
昭和五十八年、
国会に
法律をお諮りしまして、
国鉄等の
公共企業体職員の
共済組合と
国家公務員の
共済組合、この統合を図るということになりました。その結果、
昭和五十九年にこの
法律が施行されまして、それに伴い、
昭和六十年以降
国鉄共済組合に対しまして、
国家公務員、
日本電電公社、当時もう既にNTTになっておりました、それとJT、この三つの
共済組合から
財政支援を行う、こういう仕組みができ上がったわけでございます。第一次長期
財政調整事業と言われておりまして、
昭和六十年から
平成元年まで五年間続いたわけでございます。
これを行います際に、公共企業体の共済の
年金額の算定方式と
国家公務員の共済の
年金額の算定方式が異なっておりまして、これをより不利な方でございます
国家公務員の
計算方式、これはそれでもその当時民間の
厚生年金よりは有利な手法であったわけでございますが、そちらに合わせるということをいたしました。この
国鉄共済の
年金額の算定方法を
国家公務員の算定方法に合わせますと、
年金水準は低下をするということになります。これは幾つか違いがございます。例えば
国鉄共済の場合には、算定の基礎になる給与が
退職時の給与であるということでしたが、
国家公務員共済の場合には
退職前一年の平均給与であるということでございますから、それだけでも国共済の方が低目に出るわけでございます。
そこで、この図でございますけれ
ども、横にすっと図が延びております、二百万円というところでございますが、これは
国鉄共済年金、その当時もらっておられた方の
年金水準を仮に二百万円といたします。これをその方の持っておられる
年金の算定の基礎になりました諸データで
国家公務員共済と同じ手法で裁定がえをした場合にはどうなるかということをいたしますと、これは一例でございまして、モデル化しておりますから必ずしもこのとおりではございませんが、百九十万円、
年金額が十万円ほど下がるということになる。この場合、もちろんさかのぼってこれをはがすということはいたしませんので、
従前額保障という形でこの二百万円の水準は維持をいたしますが、ただし物価
スライド等の
スライドは停止をするということでございます。
一〇%
スライド停止と申しますのは、通常の
従前額保障は、この百九十万円、仮定の裁定がえされました水準が物価
スライドによってだんだん右上がりに上がってまいりまして、この二百万円の水準に追いついたところで
スライドが
開始をする。ですから、百九十万でスタートいたしました右上がりの矢印そのまま真っすぐ行く、こういうのが普通の
従前額保障でございます。
ところが、五十九年の三月以前
裁定者、この表によります者は、一〇%
スライド停止と申しまして、裁定がえをした水準が
従前額保障に追いつきましても、なお
スライドは
開始をせずにそのままの水準を維持をする。そして、仮定の水準でございます
国家公務員共済による裁定が
スライドを続けたとすれば、どれだけのものになっているかということとのその差が一〇%に達したところ、つまり、累積の
スライドが一〇%になったところで初めてこの
スライドを
開始をする、こういう仕組みでございます。
ちょっと手元に正確なデータはないのでございますが、この表だけを見ますと要するに
国家公務員より安くする、こういうことのように思えますが、そうではございませんで、この当時
国家公務員共済から毎年三百五十億円という
財政支援を受けることになっておったわけでございます。受けるについては、算定手法についてこれを統一するのは当然でございますが、それに加えて
国鉄共済の場合には、当時もう既に
支給を
開始されております
年金額自体が
国家公務員の
年金に比べても有利、民間に比べればもちろん非常に有利という高い水準にございましたので、こういう高い水準は同じくらいの水準まで
調整をしていただいた上で
財政支援を行いたい、こういうことから、多少時間はかかりますが、一〇%累積をするまで
スライドを停止をして、ある程度ほかの組織と同じような
年金水準まで既
裁定者の
年金を抑制をしたところで助け合いをいたしましょう、こういう
趣旨で導入をされたものでございます。
なお、この一〇%
スライド停止と申しますのは、その後、
昭和六十一年から
国家公務員共済含めまして、すべて設計が
厚生年金と全く同じものにそろえられました。かつ
国鉄の
共済組合につきましては、いわゆる三階職域
部分というものは設計をしないということになりましたので、
昭和六十一
年度の改正から後に
退職をなさる方については適用をされていない、そういうことになっております。