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1993-04-26 第126回国会 衆議院 決算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十六日(月曜日)     午前十一時開議 出席委員   委員長 貝沼 次郎君    理事 北川 石松君 理事 熊谷  弘君    理事 前田 武志君 理事 森  英介君    理事 志賀 一夫君 理事 時崎 雄司君    理事 倉田 栄喜君       藤尾 正行君    渡辺 栄一君       小森 龍邦君    斉藤 一雄君       長谷百合子君    日野 市朗君       薮仲 義彦君    寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 丹羽 雄哉君  出席政府委員         厚生大臣官房審 市川 和孝君         議官         厚生大臣官房会 高木 俊明君         計課長         厚生省健康政策 寺松  尚君         局長         厚生省保健医療 谷  修一君         局長         厚生省生活衛生 藤原 正弘君         局水道環境部長         厚生省社会・援 土井  豊君         護局長         厚生省老人保健 横尾 和子君         福祉局長          厚生省児童家庭 清水 康之君         局長         厚生省保険局長 古川貞二郎君         厚生省年金局長 山口 剛彦君  委員外出席者         内閣官房内閣内         政審議室内閣審 小島比登志君         議官         総務庁行政監察 丸岡 淳助君         局監察官         科学技術庁研究         開発局ライフサ 大森 昭彦君         イエンス課長         沖縄開発庁総務 鈴木 佑治君         局参事官         外務省条約局法 伊藤 哲雄君         規課長         大蔵省主計局  野田 政昭君         計課長         労働省労働基準         局安全衛生部計 岩崎 伸夫君         画課長         会計検査院事務 小川 幸作君         総局第二局長         会計検査院事務 中島 孝夫君         総局第二局長         環境衛生金融公 坂本 龍彦君         庫理事長         決算委員会調査 山本  正君         室長     ————————————— 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   新村 勝雄君     斉藤 一雄君   倉田 栄喜君     薮仲 義彦君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 一雄君     新村 勝雄君   薮仲 義彦君     倉田 栄喜君 同日  理事倉田栄喜君同日委員辞任につき、その補欠  として倉田栄喜君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件 理事補欠選任  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  (厚生省所管環境衛生金融公庫)      ————◇—————
  2. 貝沼次郎

    貝沼委員長 これより会議を開きます。  平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、厚生省所管環境衛生金融公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  厚生大臣及び環境衛生金融公庫当局概要説明並び会計検査院検査概要説明につきましては、これを省略し、本日の委員会議録に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 貝沼次郎

    貝沼委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     —————————————    平成年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算に関する説明  平成年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算額につきましては、当初予算額十兆八千三百七十一億九千四百四万円余でありましたが、その後予算補正追加額一兆六千七百七十五億九千八百三十四万円余、予算補正修正減少額九百八十二億千三百七万円余、予算移替増加額三百九十四億九百八十六万円余、前年度繰越額六百三十五億四千四百三十六万円余、予備費使用額百九十四億三千二百五十五万円余、差引一兆七千十七億七千二百五万円余を増加し歳出予算現額は十二兆五千三百八十九億六千六百九万円余となりました。  この歳出予算現額に対し支出済歳出額は十二兆四千百七十億八千五百七十九万円余、翌年度繰越額は五百六十六億千四百五十三万円余、不用額は六百五十二億六千五百七十六万円余で決算を結了いたしました。  次に、その主な事項につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活保護法による生活扶助基準につきましては、国民生活動向等に対応して改善を行ったほか、教育扶助改善等を図り、総額一兆五百三十三億七千九百二十八万円余を支出しております。  第二は、社会福祉費であります。  社会福祉施設運営費につきましては、入所者一般生活費等の増額をはじめとして、職員の給与の改善などを行い、所要の経費を支出しております。  また、施設整備費につきましては、特別養護老人ホーム心身障害者福祉施設等各種社会福祉施設及び地方改善施設整備に対して八百五十六億千百六十五万円余を支出しております。  老人福祉費につきましては、老人保健法に基づく老人医療の給付に必要な経費のほか、ねたきり老人等に対する福祉対策として家庭奉仕員派遣事業デイ・サービス事業日帰り介護サービスを受ける事業)、ショートステイ事業特別養護老人ホーム等に短期滞在する事業)等の拡充強化を図るとともに、都道府県高齢者総合相談センター運営事業の推進を図り、一兆三千三十四億五千百六十二万円余を支出しております。  児童保護費につきましては、児童保護措置費内容改善を図るとともに、心身障害児(者)対策母子保健衛生対策などの推進を図り、四千二百六十四億千三百八十五万円余を支出しております。  さらに、児童扶養手当及び特別児童扶養手当につきましては、これらの支給に要する経費として、二千七百八十七億五千八百三十九万円余を支出し、母子福祉対策につきましては、母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付原資として、二十九億三百九十五万円余を支出しております。  このほか、身体障害者福祉対策として、障害者社会参加促進事業、「障害者の住みよいまち」づくり推進事業及び在宅障害者デイ・サービス事業日帰り創作的活動機能訓練等を行う事業)の拡充を図るほか、障害者のための小規模作業所に対する助成を実施するとともに、在宅の重度障害者に対する特別障害者手当等支給のための経費身体障害者更生援護施設運営のための経費を支出しております。  以上、社会福祉費として、総額二兆三千四億九千五百四十六万円余を支出しております。  第三は、社会保険費であります。  国民健康保険事業につきましては、平成元年度末における保険者数は、三千四百二十八であり、その被保険者数は、四千三百七十八万余人となっております。  平成元年度におきましては、国民健康保険医療費及び事務費等に要する経費として、二兆五千三百四十四億千八十八万円余を支出しております。  また、社会保険国庫負担厚生年金保険国庫負担及び国民年金国庫負担に要する経費として、五兆五千二百六十一億二千八百六十四万円余を支出しております。  このほか、児童手当給付費及び事務費に要する経費として、三百四十八億三十万円余を支出しております。  以上、社会保険費として、総額八兆千九十五億九千五百五十一万円余を支出しております。  第四は、保健衛生対策費であります。  原爆障害対策費につきましては、各種手当の額の引上げ等改善を行うなど施策の充実を図り、千百六十七億三千七百二十五万円余を支出しております。  精神保健費につきましてぽ、精神保健法に基づく措置入院費及び通院医療費公費負担に要する経費として、四百五十八億三千五百六十一万円余を支出しております。  このほか、結核医療費として、二百九十二億四百九十四万円、疾病予防及び健康づくり推進費保健所費らい予防対策費老人保健法による保健事業に要する経費等保健衛生諸費として、千四十三億四千百三十四万円余を、それぞれ支出しております。  以上、保健衛生対策費として、総額五千百四十五億五千四百五十九万円余を支出しております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等援護対策につきましては、遺族年金等について恩給の改善に準じて額を引き上げるとともに、昭和六十年四月一日から平成元年三月三十一日までの新規対象者に対し交付国債による特別弔慰金支給を行ったほか、遺骨収集及び慰霊巡拝を実施いたしました。  また、中国残留日本人孤児対策につきましては、中国帰国孤児等落ち着き先における自立支援体制整備を図るため、自立支援通訳派遣事業の実施、巡回健康相談医配置等定着自立促進施策の充実・強化を図ったところであり、遺族及び留守家族等援護費として、総額千四百六十五億千五百四十五万円余を支出しております。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  環境衛生施設整備を推進するため、平成元年度は、廃棄物処理施設九百五十二か所、簡易水道等施設五百三十五か所、水道水源開発等施設三百二十か所の整備について、それぞれ補助を行い、環境衛生施設整備関係費として、総額千八百九十三億四千八百五十九万円余を支出しております。  次に、特別会計決算概要につきまして御説明申し上げます。  第一は、厚生保険特別会計決算であります。  厚生保険特別会計につきましては、一般会計から四兆二百四十八億四千五百五万円余を繰り入れました。  まず、健康勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額六兆二千五百三十六億二千八十二万円余、支出済歳出額六兆三百八十九億九百七十九万円余でありまして、差引二千百四十七億千百二万円余については、この勘定積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年度末の事業所数は、百十八万余か所、年度平均保険者数は、千七百二十五万余人に達しております。  次に、年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額十七兆九千四百四十一億二千八百五十三万円余、支出済歳出額十三兆三千三百九十四億八千二百八十八万円余でありまして、差引四兆六千四十六億四千五百六十四万円余については、この勘定積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年度末の事業所数は、百三十一万余か所、年度平均保険者数は、二千九百七十三万余人に達しております。  次に、児童手当勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額千五百四十二億三千三百九十二万円余、支出済歳出額千二百十五億二千四百十三万円余、翌年度繰越額二億五千六百九十万円余でありまして、差引三百二十四億五千二百八十八万円余については、このうち五十五億九千四百八十五万円余をこの勘定積立金として積み立て、二百六十八億五千八百二万円余については、翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均支給対象児童数は、三百十二万余人であります。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額一兆八千七百三十二億三千九百七十五万円余、支出済歳出額一兆八千六百九十六億七千九百七十四万円余でありまして、差引三十五億六千一万円余については、このうち、四億六千四百七十八万円余を健康及び年金の各勘定積立金に組み入れ、三十億九千五百二十二万円余については、翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  第二は、船員保険特別会計決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計から九十二億二千五百六十九万円余を繰り入れました。  その決算額は、収納済歳入額千八十三億四千七百二十七万円余、支出済歳出額千七十七億九千九百二十九万円余、超過受入額十三億二千八百八十二万円余でありまして、差引七億八千八十四万円余については、この会計積立金から補足することとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均の被保険者数は、十三万余人であります。  第三は、国立病院特別会計決算であります。  国立病院特別会計につきましては、一般会計から千六百八十五億千七百四十四万円余を繰り入れました。  まず、病院勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額四千四百九十三億六千百九十六万円余、支出済歳出額四千四百二億六千十三万円余、翌年度繰越額三十九億五千七百二十万円でありまして、差引五十一億四千四百六十二万円余については、この勘定積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万千余人外来患者数は、一日平均四万三千余人であります。  次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額三千七百九十九億二千二十二万円余、支出済歳出額三千七百十一億六千六百七万円余、翌年度繰越額十四億三千九百六万円余でありまして、差引七十二億千五百七万円余については、この勘定積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均四万千余人外来患者数は、一日平均一万三千余人であります。  第四は、国民年金特別会計決算であります。  国民年金特別会計につきましては、一般会計から一兆五千二百六十八億五千八百十九万円余を繰り入れました。  まず、基礎年金勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額六兆九千九百十億九百八十八万円余、支出済歳出額六兆三千百十一億二千五百六十六万円余でありまして、差引六千七百九十八億八千四百二十二万円余については、翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、国民年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額五兆六千三百七十四億八千九百七十二万円余、支出済歳出額五兆千二百十七億九千六百三十七万円余、超過受入額二千三百五十億四千六百八十一万円余でありまして、差引二千八百六億四千六百五十四万円余については、この勘定積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年度末の被保険者数は、二千九百九十四万余人で、そのうち、保険料免除該当者は、二百二十二万余人であります。  次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額五千三百五十四億七千五百四十一万円余、支出済歳出額四千四十九億九千四百六十一万円余でありまして、差引千三百四億八千七十九万円余については、翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額一兆三千七百四十七億五千八百三十四万円余、支出済歳出額一兆三千七百三十七億七千六百二十六万円余でありまして、差引九億八千二百七万円余については、このうち、五千五百六十九万円余を国民年金勘定積立金に組み入れ、九億二千六百三十七万円余については、翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に堪えないところであります。  今回不当事項として指摘を受けましたものは、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険保険料徴収額が不足していたもの二件、健康保険傷病手当金及び厚生年金保険老齢厚生年金等並びに国民年金母子年金支給が適正でなかったもの三件、国民健康保険財政調整交付金交付が不当と認められるもの六件、老人福祉施設保護費負担金及び生活保護費負担金並びに児童保護費等負担金補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの二十二件及び医療費に係る国の負担が不当と認められるもの五十七件であります。  意見を表示され又は処置を要求された事項は、母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付事業の適切な運営及び医師看護婦等標準人員に対して著しく不足している病院等の適切な把握であります。  不当事項として指摘を受けたもののうち、保険料徴収不足については、既に徴収決定を完了し、これに基づき目下その収納に鋭意努力しているところでありますが、今後とも、適用事業主及び船舶所有者に対し、報酬に関する適正な届出のための指導啓もうの徹底を図るとともに、実地調査等のなお一層の強化を図り、保険料徴収不足の解消に努力いたす所存であります。  健康保険傷病手当金及び厚生年金保険老齢厚生年金等並びに国民年金母子年金支給が適正でなかったとして指摘をうけたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、被保険者及び適用事業主等に対し、適正な届出のための指導啓もうの徹底を図るとともに、関係書類調査等のなお一層の強化を図り、その支給適正化に努力いたす所存であります。  国民健康保険財政調整交付金交付が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、保険者に対し、適正な交付申請等のための指導の徹底を図るとともに、国及び都道府県においても交付申請書審査等のなお一層の強化を図り、財政調整交付金の適正な交付に努力いたす所存であります。  老人福祉施設保護費負担金及び生活保護費負担金並びに児童保護費等負担金過大精算のため不当であるとの指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後は、このようなことのないよう事業主体に対する指導を一層徹底し、補助事業の適正な執行に万全を期する所存であります。  医療費に係る国の負担が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも診療報酬明細書の点検、調査の充実・強化及び保険医療機関等に対する指導の積極的な実施について、都道府県に対し、指導・徹底を図り、適正な保険診療が確保されるよう努力いたす所存であります。  意見を表示され又は処置を要求された母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付事業の適切な運営及び医師看護婦等標準人員に対して著しく不足している病院等の適切な把握については、御指摘の趣旨を踏まえ、所要の措置を講じているところであります。  以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    平成年度決算厚生省についての検査の概要に関する主管局長説明            会計検査院  平成年度厚生省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項九十一件及び意見を表示し又は処置を要求した事項二件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号二四号及び二五号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもので、いずれも事業主又は船舶所有者が制度を十分理解していなかったりなどして、保険料算定の基礎となる被保険者資格取得年月日報酬月額などの被保険者資格取得届等による届出が事実と相違していたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、保険料徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号二六号は、健康保険傷病手当金支給が適正でなかったもので、被保険者及び事業主が制度を十分理解していなかったりなどして、傷病手当金支給の基礎となる傷病手当金請求書記載内容が事実と相違していたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、傷病手当金支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号二七号は、厚生年金保険老齢厚生年金等支給が適正でなかったもので、受給権者又は事業主が誠実でなかったりなどして、年金受給権者が被保険者資格を取得した際の資格取得届の提出を事業主が怠っていたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、老齢厚生年金等支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号二八号は、国民年金母子年金支給が適正でなかったもので、母子年金受給権者が制度の理解が十分でなく、夫の死亡を支給事由として他の公的年金の受給ができることを母子年金裁定請求書に表示をしていなかったり、支給停止の事由が生じたときの届出を怠ったりしていたものがあったのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、母子年金支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号二九号から三四号までの六件は、国民健康保険財政調整交付金交付が不当と認められるもので、大阪市ほか五市において、国民健康保険保険料(税)の調定額を実際に賦課した額を下回る額としたり、収納額を過大にしたりして、財政調整交付金の額を算定するときの基礎となっている保険料収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、及び大阪府はか三県において、これに対する審査が十分でなかったことなどのため、普通調整交付金が減額の全部又は一部を免れて過大に交付されたり、交付すべきでない特別調整交付金交付されたりしていたものであります。  検査報告番号三五号から五七号までの二十三件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるものであります。  これを補助金種類別に区分いたしますと、検査報告番号三五号から四〇号までの六件は、生活保護費負担金であります。  この負担金は、資産及び能力等あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する者に生活保護費支給した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その実施に要する費用を負担するものでありますが、被保護世帯において就労収入を相当額得ていたり、年金を受給していたりしているのに、被保護世帯から事実と相違した届出がなされ、これにより収入を過小に認定するなどして保護費の額を決定していたため、保護費が不適正に支給されていた結果、負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号四一号から五〇号までの十件は、老人福祉施設保護費負担金であります。  この負担金は、介護等を要する老人特別養護老人ホーム等に入所させ養護した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その実施に要する費用を負担するものでありますが、国庫負担対象事業費の精算に当たり、入所者やその扶養義務者から徴収する徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号五一号から五七号までの七件は、児童保護費等負担金保育所分一であります。  この負担金は、保育に欠ける児童保育所に入所させ保育した市町村(特別区を含む。)に対して、その実施に要する費用を負担するものでありますが、国庫負担対象事業費の精算に当たり、児童扶養義務者から徴収する徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号五八号から一一四までの五十七件は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。  これを診療報酬別に区分いたしますと、医療機関医療費の請求に当たり、 (1)看護料については、正看護婦の数が特一類看護一類看護又は二類看護の要件を満たさなくなっているのに、変更の申請を行わないまま従前の高い看護料を算定したり、看護職員一人当たりの入院患者数特一類看護又は一類看護の要件を満たさなくなっているのに、変更の申請を行わないまま従前の高い看護料を算定したり、基本看護料一類看護料の点数を誤って算定したりしていたものが十二件、 (2)診察料については、診療日が月に二回ないし週に三回と限られている医療機関において、診療日以外で医師が不在の日に来所した患者に対して行った処置について、医師の診療行為が伴わないのに初診料や再診料を算定したり、特別養護老人ホームの嘱託医が特別養護老人ホーム入所者に行った診療について、保初診料、再診料等を算定したりなどしていたものが十四件、 (3)注射料等については、注射の薬剤を標準とされる用法、用量によることなく画一的に使用し、これにより注射料を算定したり、特例許可外老人病院の入院期間が一年を超える患者に対する注射等に係る薬剤料を、上限の点数を超える点数により算定したり、人工腎臓の回路を通して行った点滴注射について人工透析の処置料のほかに注射に係る技術料を別途算定したりなどしていたものが五件、 (4)入院時医学管理料等については、同一疾病で同一病院に再入院した患者について入院の起算日を誤って算定したり、特例許可病棟に入院している患者について一般病棟に入院している場合の高い点数で算定したりしていたものが九件、 (5)検査料等については、入院患者について検体検査や生体検査を毎月画一的に多数の項目にわたって繰り返し実施し、これに係る検査料を算定したり、ほとんどの患者について毎月二十項目以上の血液検査を実施するに当たり、上限として定められた点数によらずに、検査を二回に分けて実施してその都度血液化学検査料を算定したりなどしていたものが七件、 (6)運動療法料等については、複雑な訓練でないものについて、複雑な訓練を行った場合に用いることになっている高い点数で算定したり、常勤の理学療法士が退職していなくなって施設基準に適合していないのに、変更の申請を行わないまま従来どおり高い点数で算定したりなどしていたものが六件、 (7)処置料等については、救急的処置として行う高気圧酸素治療に係る処置料は、著効が認められる急性疾患の患者に対して発症後一週間以内に行った場合に算定することとされているのに、発症後二カ月を経過した患者について算定したり、特別食の加算の対象となる疾病がない者も含めて入院患者のほとんどの者について特別食の点数を加算して算定したりなどしていたものが四件ありました。  これらはいづれも審査等が十分でなかったことなどのため、市町村等における医療費の支払が適切でなく、国の負担が適正を欠いたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付事業運営に関するものであります。  厚生省では、母子及び寡婦福祉法の規定に基づき、母子家庭及び寡婦に対して母子福祉資金貸付事業及び寡婦福祉資金貸付事業を行う都道府県(地方自治法第二百五十二条の十九に基づく指定都市を含む。一に対し、都道府県一般会計から当該貸付事業の貸付金の財源として繰り入れた額の二倍に相当する額を無利子で貸し付けております。(ただし、寡婦福祉資金については東京都に対する国の貸付けはない。)  しかし、今回、北海道ほか十六府県及び札幌市ほか四市におきまして、六十二年度から平成元年度までの三箇年度母子福祉資金及び寡婦福祉資金の両貸付事業運営状況について国の資金の効率的使用が図られているかどうかという観点等から調査しましたところ、(1)母子福祉資金の既存の貸付財源が相当あるのに国庫貸付金の交付を受けて余剰資金が生じていたり、(2)寡婦福祉資金では、毎年、多額の繰越金等の余剰資金が滞留しているのに、母子福祉資金では、貸付財源が不足していて国庫貸付金の交付を受けていたり、(3)母子福祉資金及び寡婦福祉資金の各特別会計で保有する余裕金の運用益は、それぞれの特別会計に計上して貸付財源に充当することとなっているのに、当該特別会計に計上されていなかったり、計上不足となっていたりしている事態が見受けられました。  したがいまして、このような事態の発生に対処するために、厚生省におきまして、(1)について、母子福祉資金貸付事業計画等を十分に審査するようにし、また、都道府県に対して実態に即した適切な貸付事業計画等を作成させる、(2)について、寡婦福祉資金の活用を図るとともに、寡婦特別会計と母子特別会計との間での資金の融通が図られるようにする、(3)について、都道府県に対して、運用益を適正に計上させるなど、国庫貸付事業の適切な運用を図るよう(1)及び(3)については是正改善の処置を要求し、(2)については改善の意見を表示いたしたものであります。  その二は、医師看護婦等標準人員に対して著しく不足している病院等の把握に関するものであります。  診療報酬のうち入院時医学管理科、室料及び給食料については、医師及び看護婦が厚生省令で定める標準の人員に対して著しく不足している場合には、減額を行い、又は加算に係る承認を行わないことになっております。また、調剤技術基本料については、薬剤師が常時勤務している場合に算定することになっております。  しかし、今回、医師等の配置状況とそれに関わる診療報酬の請求について調査いたしましたところ、医師、看護婦が標準の人員に対して著しく不足しているのに、入院時医学管理料について所定の減額を行わないで請求していた病院が多数あり、このうち室料及び給食料について加算に係る承認を得ていた病院では承認辞退の申請を行わないまま加算して請求しておりました。また、薬剤師が常時勤務していないのに調剤技術基本料を請求していた病院が多数ありました。  したがいまして、このような事態の発生を解消するため、厚生省におきまして、都道府県に対し、その保有している医師等の配置に関する資料を活用して、医師及び看護婦が標準の人員に対して著しく不足している病院及び薬剤師が常時勤務していない病院を的確に把握させるよう指示するなどして、診療報酬の支払の適正化を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  なお、以上のほか、昭和五十九年度決算検査報告に掲記いたしましたように、資産保有者に対する生活保護について、及び昭和六十三年度決算検査報告に掲記いたしましたように、医療用の酸素に係る診療報酬請求及び定数を超過して入院させている保険医療機関の把握について、それぞれ処置を要求し又は意見を表示いたしましたが、これらに対する厚生省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要説明を終わります。     —————————————    平成元年環境衛生金融公庫の業務の概況  一、環境衛生金融公庫平成元年度の概況につきまして御説明申し上げます。  平成元年度の貸付計画額は、二千二十億円を予定いたしました。  その原資としては資金運用部資金の借入金一千九百七十六億円、貸付回収金等四十四億円、計二千二十億円を充てることといたしました。  これに対しまして、貸付実績は、一千九百九十一億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、四・五パーセントの増となっております。  二、次に貸付残高について、御説明申し上げます。  昭和六十三年度末における貸付残高は、五千七百八十一億四千万円余でありましたが、平成元年度中に一千九百九十一億四千万円余の貸付を行い、一千五百七十四億一千万円余を回収いたしましたので、平成元年度末においては、六千百九十六億二千万円余となっております。  三、次に貸付金の延滞状況について御説明申し上げます。  平成元年度末におきまして延滞後六ケ月以上経過したものが百六十億八千万円余でありまして、このうち一年以上のものは、百五十三億七千万円余で総貸付金残高の二・五パーセントとなっております。  四、次に平成元年度の収入支出決算について御説明いたします。  平成元年度における収入済額は三百九十二億六千万円余、支出済額は三百六十七億五千万円余となりました。  まず、収入の部におきましては、本年度の収入済額は三百九十二億六千万円余でありまして、これを収入予算額三百八十四億七千万円余に比較いたしますと、七億八千万円余の増加となっております。この増加いたしました主な理由は、貸付金利息収入等が予定より多かったためであります。  次に、支出の部におきましては、本年度の支出予算現額三百九十九億二千万円余に対し、支出済額は三百六十七億五千万円余でありまして、差引き三十一億七千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。  五、最後に平成元年度における損益について申し述べますと、本年度の貸付金利息収入等の総利益は四百二十三億円余、借入金利息、業務委託費、事務費、貸倒引当金繰入等の総損失は四百二十三億円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。  以上が平成元年度における環境衛生金融公庫の業務の概況であります。  なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    平成元年決算環境衛生金融公庫についての検査の概要に関する主管局長説明             会 計 検 査 院  平成元年環境衛生金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     —————————————
  4. 貝沼次郎

    貝沼委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊谷弘君。
  5. 熊谷弘

    ○熊谷委員 私は、平成元年度の決算検査報告をもとにいたしまして、厚生省関係につきまして御質問を申し上げたいわけであります。  つくづくこれを検討してみまして、委員長にお願いでございますが、委員長はこの決算委員会の審議につきまして非常に意欲的に取り組んでいただきまして、私どもも月曜日もいとわず審議にいそしんでいるわけでございますけれども、やはり理想といたしましては、平成年度決算まで出ているわけでございまして、できるだけ早く審議を促進をいたしまして、正常な形態に戻すということが大事だということを、この決算検査報告をもとに勉強しながら私は痛切に感じたわけでございます。委員長の御努力を多としながらも、今後とも一層、ひとつ決算委員会の審議促進に適切な指導力を発揮していただきますようお願いをしたいわけでございます。  質問に移ります。  この平成元年度の決算検査報告を検討いたしますと、指摘事項の中に、看護料、診察料、注射料等の診察報酬の支払いに当たり、請求に対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費の支払いが適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるものが五十七件、三億四千七百四十九万円余、こうなっておるわけでございます。これは、審査点検が十分でなかったというようなことが指摘されているわけですけれども、会計検査院、この辺の状況を説明をしていただけますか。
  6. 小川幸作

    ○小川会計検査院説明員 お答えいたします。  平成元年度の医療費指摘でございますが、社会保険庁それから北海道ほか二十二都府県につきまして検査いたしております。保険者の数で申しますと、四百五十二保険者につきまして検査いたしました。指摘の金額でございますが、ただいま先生から御指摘がございましたように、国の負担額が三億四千七百四十九万余円多くなっていたということでございます。  医療費は、看護料とか診察料など九項目につきまして指摘しておりますが、そのうち看護料処置料につきまして簡単に御説明申し上げます。  看護料は看護の種類によりまして金額が変わっておりますが、ある医療機関におきましては、二類の看護の承認を得ておりましたが、看護職員のうちの正看護婦の数が二類看護の要件を満たさず、点数の低い三類看護に該当することになっておりました。しかるに変更の申請を行わないまま従前の高い二類看護を算定していた、そういう事例がございました。  それからもう一つ、処置料の問題につきまして御説明申し上げますと、ある医療機関では、救急的な処置として行う高気圧酸素治療に係る処置料を、その病気が発症いたしました二カ月を経過した患者につきまして算定していたものがございました。そういう状況でございます。
  7. 熊谷弘

    ○熊谷委員 これは実は、この項目で整理されているものを平成年度平成年度と、決算書を私は試みにちょっと検討いたしましたら、平成年度決算検査報告によりますと、同種のものが七十二件、三億三千五十八万円余、それから平成年度におきましても、八十五件、二億六千百六十万円、毎年度同種のものが繰り返されているという感じを受けるわけであります。  そこで、検査院に伺いたいのですが、このくくりで検査されている対象というのは大体どれくらいあるのですか。
  8. 小川幸作

    ○小川会計検査院説明員 お答えいたします。  実は、その点が御理解いただけないかも存じませんが、私どもは、これからの課題としまして、どの程度のものについて検査しているのかという把握をこれからしていきたい、研究するところでございます。
  9. 熊谷弘

    ○熊谷委員 これは私の感想ですけれども、どちらかというと、検査をすると不当事項が摘出される。それで結局、それほどのペナルティーがないために、ばれてもともとだというような感じが若干あるのではないのか。そういうことについて、厚生省としては従来からいろいろ意を払っているとは思いますけれども、どういうふうな対策を講じておられるか、厚生省の方からお答えを願いたいと思います。
  10. 古川貞二郎

    ○古川政府委員 お答えいたします。  医療費というもの、限りある医療資源を有効に活用していく、あるいは公平の確保を図るという趣旨から、先生御指摘のように、いわゆる医療費適正化、不正請求に対する厳正な態度ということは非常に大事なことである、こういうふうに考えておるわけでございまして、私ども、従来から、一つは監査指導強化ということでやってございますし、また、レセプト点検とか医療費の通知とか、あるいは審査支払いの適正というような形で、支払基金の適正というようなこと等で厳正に対応しているところでございます。  なおまた、医療費の不正請求があった場合に、やはり加算といいましょうか、返還金に対して加算するというようなことも大変重要なことでありまして、私ども、そういった点も含めてこの制度強化も図ってきているということでございます。
  11. 熊谷弘

    ○熊谷委員 ただいまのお答えのように、それなりの努力はしていると思います。思いますけれども、現実に、私はきょうたまたま平成元年度の決算、大分昔の話でございますけれども、ちなみに平成年度平成年度決算についても見ますと、実は一貫して大きな項目としてこの種のことがずっと指摘されているわけですね。  したがって、私は、これは行政当局あるいは会計検査院が努力をしていくということだけではどうやっても限度があると思うのですね。やはり、やれば損をする、そういうことをすると損をするという気持ちを持ってもらうことが大変大事なのであって、これは具体的にどうするかということにつきましては非常に難しい、どういうペナルティーがいいのか。税制につきましては重加算税みたいなものがありますけれども、これだって、最終的にはそれこそ懲役刑も科せられるような仕組みになっているわけでございます。  いろいろ努力をしてきたと言うけれども、結果として毎年非常に不当事項の中では大きな分野で、しかも毎年続いているということを踏まえて、今後厚生省としてこの問題にどういう取り組みをされるか、この辺のお考えをひとつ伺いたいと思います。
  12. 古川貞二郎

    ○古川政府委員 お答えいたします。  医療費の不正請求が生じる原因といたしまして、私は、いろいろあろうかと思うわけでございますが、基本的には、保険医療機関あるいは保険薬局として国民に適正な保険医療を提供するといった重要な使命を有するんだ、こういうふうな認識が不足しているということが第一であろうと思います。  御案内のように、日本の医療保険制度というのは世界にも冠たるものだと私ども思っておりますし、自由開業医制あるいは出来高払い制、こういう医療を提供するという点ではすばらしい制度を持っているわけでございますが、その反面で、今先生御指摘のような問題が出てくる。したがいまして、私どもは、こういった不正請求というものは保険医療に対する国民の信頼を揺るがしかねないゆゆしき問題である、こういうふうな認識でございまして、先ほど申し上げましたように、指導監査の適切な実行というようなこと、それから不正請求の事例に対して厳正に対応していくというような姿勢で取り組んでまいりたい。  特に、私ども、先ほどちょっと申し上げましたが、昭和五十八年、これは老人保健法制度立案の際に法律改正をいたしまして、健康保険法等々の医療保険各法についても法律改正をいたしまして、保険医療機関等が詐欺その他不正の行為によりまして診療報酬の支払いを受けたときには、保険者保険医療機関等に対してその額を返還させる、これは当然でございますが、返還させるほかに、その額の一〇%を加算して支払わせることができることとしている。  こういった点も含めて、先ほども申し上げた公平の見地、あるいは限りある医療資源を効率的に活用して国民に対して将来にわたってよい医療を提供していく、こういうことから、これは非常に大事なことである、毎年こういったことで御指摘をいただき、また返還させているというのは大変遺憾なことだと思っておりますし、厳正に臨んでまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  13. 熊谷弘

    ○熊谷委員 次に、いろいろの項目を検討いたしますと、例えば平成元年度の決算検査報告の中に、「国民年金母子年金支給に当たり、受給権者からの年金の裁定請求等に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの」というものが一件、これは実際は六人だそうですが、千二百九万円あるんだ。六人で割りますから大体二百万ぐらいということになるわけですね。よくよく聞いてみると、母子家庭で何かほかの給付をもらう経過があって、それが見つかっちゃったということですが、これだけ厳しく一方でやっておきながら、他方で、私はこの不当事項を見ながらちょっと感じたのですけれども、例えば老人福祉施設保護事業というのがございます。  これの負担金費用徴収につきまして、要するに所得基準というのがございまして、これ以上の所得の場合はこれだけの負担をするというふうになっているわけですが、その人がどれぐらい財産を持っているかということについての基準が考慮に入れられてないんじゃないか。一方で、母子年金なんかについてはフローベースで非常に厳しくやっておきながら、しかも母子家庭ですね、ところが、うんとお金のある人も、資産がある人も、そうでない人も、とにかくフローベースで負担が一律に決められていくというのは何となく割り切れなさが残るわけでございますけれども、この辺の事情につきまして、厚生省はどういうふうにお考えになっておられるのでしょうか。
  14. 横尾和子

    ○横尾政府委員 特別養護老人ホーム及び養護老人ホームの入所者費用徴収は、入所者負担能力に応じて行うということを原則としております。この負担能力を評価する基準といたしまして、現在は収入に着目して行っておりまして、入所者本人の収入、またそれで足りない場合には扶養義務者からの徴収を行うということでございます。  資産の問題でございますが、特に土地や家屋については、これまで関係者の間からそれに着目をして行う方がいいのではないかという御指摘をいただいておりますが、具体的にはなかなかその取り扱いが困難でもございまして、そういったことに着目した費用徴収を行うに至っていない状況でございます。
  15. 熊谷弘

    ○熊谷委員 実務的にはなかなか難しいというのはよくわかるのですけれども、例えば一九八九年の全国消費実態調査というので見ますと、これはもう四年前ですから、その後さらにこの傾向は強まっていると私は思うのですが、高齢夫婦世帯の場合、貯蓄残高は六百万円未満の世帯が四世帯に一世帯だ、一千五百万円以上の貯蓄残高が五世帯に二世帯だ、三千万円以上が六世帯に一世帯なんだ、さらに一億円超の金融資産を保有している世帯も八十世帯に一世帯の割合であった。これは全国の消費実態調査でございます。また、土地と住宅の方に着目をいたしますと、一千万円未満が一六%、五千万円以上が三一%、一億円以上が一六%、二億五千万円以上が五%強、こういうふうになっておりまして、資産保有という点では、間違いなく高齢者の中には資産保有、非常にリッチな人たちがいるということは事実だと思うのですね。  ところが、技術的に難しいということはわかるのですけれども、やはり入所費用に多額の税金を使用しながら、その老人のストックが全く費用徴収の対象外になっているというのは不合理感が免れないわけであります。  しかも、私どもの同僚議員、市町村長をやっておられた方々が多いのですけれども、特別養護老人ホームを傘下に置いて見ているわけですね。そうすると、この方々がお亡くなりになりますと、あさましいというか何というか、家族が来て、要するにストックをどこに隠したか、その帳簿、書類をあさりまくって、阿鼻叫喚という姿をみんな見ているわけです。  ですから、私は、これはいろいろ技術的に難しいということはよくわかるのですけれども、やはりストックに着目していく、あるいはそういうものを考慮に、配慮に入れていくという努力を、研究でも結構ですけれども、ぜひやっていただきたいな、こういうふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  16. 横尾和子

    ○横尾政府委員 ただいま特別養護老人ホームで申しますと約二十万人近い方が御利用をいただいているわけでございます。今既に入所されている方々等の資産状況は、ただいま議員がおっしゃいました状況とはやや異なる状況があるのではないかというふうには思いますが、その中でも金融資産、不動産をお持ちの方はいらっしゃるわけでございます。  先ほど実務的にもなかなか難しいというふうにおっしゃっていただきましたが、まず、金融資産については、その所在を行政の側で把握することはこの福祉制度の運用上はなかなか難しゅうございます。  それから、固定資産につきましては、これまで勉強しております過程では、確かに畑を持っておられる、家屋を持っておられるということはわかっておりますけれども、それをもとに徴収金の賦課をしても、具体的に金の出どころがないような不動産であるというようなことも含めまして、実務的になかなか困難であると思っておりますが、御指摘のありました、亡くなってみればたくさんのものが残っていたということもやはり国民感情としていかがかというふうな点もございますので、また勉強をさせていただきたいと存じます。
  17. 熊谷弘

    ○熊谷委員 そこで、実は平成元年度の厚生省所管の中でいわゆる不用額が発生をしているものを見ますと、元年、二年、三年度と続くのですが、予算現額との比率を見ますと、年によって、当然特殊な事情によって不用額が大きく発生する場合もありますが、特徴的なのは、全体で見ますと、公共事業なんかのいわゆる建設省関係の不用額と比べると比較的不用額の発生が高いのですね。私は、この辺を会計検査院がこういう経済分析をしているかどうかわかりませんが、どのように把握しているか、ちょっとお答えを願いたいと思います。
  18. 小川幸作

    ○小川会計検査院説明員 社会福祉諸費、社会福祉施設整備費につきましてここ数年多額の不用額が生じております。私どもとしましてもその不用額の発生原因につきまして詳細な調査ができているわけではございませんが、一般的に申し上げまして、事業実施に必要な用地取得が難航していること、あるいはマンパワーの不足などが原因であろうかなというふうに考えております。
  19. 熊谷弘

    ○熊谷委員 そこで、これは後ほど厚生省もどれぐらい把握しているか伺うことといたしまして、厚生大臣お越してございますから大臣に伺いたいのですが、我が国の今最も重要な政策の一つ、宮澤内閣としても生活大国という言葉を使っておられるわけですが、内閣を超えていわゆるゴールドプランというのですか、社会福祉の充実を目指した政策が掲げられているわけでありますけれども、この十年間の計画がきっちりできるかどうかというのが非常に大事なところだと思うのですね。  厚生省に今の状況、今検査院の監察によれば、土地の問題だとかマンパワーの問題というのはあるのではないかというふうに指摘されているわけですけれども、もう一度それに入る前に、厚生大臣としてこのゴールドプランについての考え方、そして、これをどういうふうに実現していくかについての決意、意思というものをお伺いしたいと思います。
  20. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先生御案内のように、今我が国では寝たきりのお年寄りが七十万人おります。それからお気の毒なことに、痴呆性にかかったお年寄りが百万人いらっしゃる。合わせて百七十万人くらいこういう立場の方がいらっしゃるわけでございます。しかも、年間六万人か七万人くらいふえておる。  こういう中において、私どもは、お年寄りの皆さん方が老後安心して生活できるような環境づくり、こういうものを実現していかなければならない、こういう観点から、平成年度から高齢者保健福祉推進十か年戦略、いわゆるゴールドプラン、こういう方針を打ち立てました。いろいろな分野において、例えば在宅三本柱、ホームヘルパー、ショートステイ、デイサービス、さらに、特別養護老人ホームを二十四万床つくるとか、あるいは老人保健施設を二十八万床つくるとか、いろいろな計画を打ち立てておるわけでございます。  おおむね地方自治体の御理解、御協力を賜りまして、順調に推移をしておるわけでございますけれども、やはり一番この問題におきまして大きな問題は、先ほどから先生が御指摘いただいております、まさにマンパワーの確保ではないか、私どもはこのように考えておるわけでございます。  そこで、マンパワーの問題につきましては、さきの国会におきましても、寮母さんであるとかホームヘルパーさんであるとか、こういったような社会福祉事業の従事者や、あるいは、最近は看護婦さんの確保ということが大変大きな社会問題となっておるわけでございますので、こういった問題につきましていろいろな法的な整備を行ってまいりました。  また、昨年は、例えばホームヘルパーさんというのはこの十年間で十万人確保したい、こういう方針でございますが、処遇改善ということで年間百万円ほど給与アップをいたしました。それから、昨年の診療報酬では初めて介護面に着目いたしまして、介護面におきまして二〇%ほどの待遇改善を行ってまいりました。  こういうような待遇の改善とともに、やはり社会的な評価の確立、こういうものをさまざまな面から、角度から改善をいたしまして、いずれにいたしましても、これからの高齢化社会におきましてもマンパワーの確保という大変重要な問題でございます、何よりも国民の皆さん方が、社会福祉やあるいは医療に携わるとうとさ、こういうものに対して御理解を賜りたい、このように考えているような次第でございます。
  21. 熊谷弘

    ○熊谷委員 ただいまの大臣の決意というものを我々は非常に大きな期待を持ってこれから臨みたいと思うわけであります。  そこで、大臣、志は高いけれども、現実にさまざまな制約があって不用が発生する。不用が発生すること自体をああだこうだあげつらうという意味ではなくて、好きで不用を出しているわけではなくて、やりたいと思ってやったんだけれども、いろいろな状況が出てきたということですね。  実は、我が党で昨年八月に発表した新たな景気対策の非公共事業につきまして、私はフォローアップの作業を命ぜられましてやってみたのですが、やはり土地問題というのが大きな制約になって、そう大きな額ではありませんけれども、あれだけ練りに練った案を出してもうまく進まないというケースがございました。これは恐らく、先ほど会計検査院指摘されたように、厚生省関係の不用が出てきた一つの大きな理由でもあると思いますし、これだけの社会福祉事業についての土地の提供というのは、やはり地域住民が本当は率先して協力してもらわなければいけないわけでありますけれども、現実にはいろいろな人がおりましてなかなか難しい。今後ともひとつ御努力をいただきたいと思うのです。  もう一つ、今大臣がおっしゃられたこのマンパワーの問題というのは、私はもっと深刻な問題だと思います。ぜひひとつ、今の決意を大事にしていただきまして、厚生省挙げて取り組んでいただきたい、強く念願をしておきます。  最後に、これは会計検査院へのコメントといいますか要請をしておきたいわけでありますけれども、個々の細かい個別のいわゆる不当事項指摘事項といいますか、こういうものと、それから検査書の数字の羅列したものとが今出されているわけですけれども、この不用額の分析一つとりましても、こういうものが提示されているわけじゃないのですね。これは厚生省だけではなくて、特にこの社会福祉関係というのは年金、医療それから直接の社会保障その他ございまして、しかも、この費用の使い方というのは、同時にこれから非常に大きな負担を国民に要求しなきゃならないわけでありますから、私は、ある種の経済分析的なものに耐え得るデータの整備というものが会計検査院に求められているんじゃないか、こういう感じがいたします。これは要望でございますから返事は必要ありませんけれども、ひとつ今後の検査の進め方について念頭に置いて進めていただくことをお願いしておきます。  以上で終わります。
  22. 貝沼次郎

  23. 長谷百合子

    ○長谷委員 まず、委員長にちょっと、冒頭ぜひお願いがございます。  それは、今、払いつもかぶっているベレー帽でございますけれども、こちらでとるようにという御指示をいただきました。それは、必ずしもどの規定ということがよくわかりませんけれども、恐らく国会規則二百十三条によるものだろうと理解しているのですが、そうしますと、二百十三条というのは帽子、傘、つえ、こういう項目で、二百十四条がたばこ、「喫煙の禁止」、こうなっておるので、どうもこのあたりがもう一つ納得がいかない。きょうのところはそういった意味で、委員長に敬意を表させていただきましてとらせていただきましたが、次回までにはそこのところを整理していただいて、たばことの関係はどのようになっておるのかということで、次回はぜひおとがめのないようにということでお願いを申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  24. 貝沼次郎

    貝沼委員長 ただいまの長谷委員の発言につきましてですが、これは、本会議と、それから委員会の場合は準ずるということになっておりますが、基本的には委員会の各理事の相談においていろいろなされることであると思います。したがって、しゃくし定規にやっていいのかどうかというのは各党間の協議でございますので、またそういうことは話題にしていただければと思います。
  25. 長谷百合子

    ○長谷委員 どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず最初にごみの問題、特にごみの減量化の問題についてお伺いをいたします。  大量生産、大量消費を基調とする経済規模の拡大、それから便利さを求める消費者要求の高まり、産業構造の高度化を背景としてなどなどで、我が国は非常に廃棄物の排出量がたくさんふえておるところです。また、質もいろいろ多様化してきておるわけですが、そういったこととあわせて、最終処分場、この施設の確保が非常に難しくなってきておるということでございます。  不法投棄が社会問題化したり、廃棄物の減量化、再利用化が大きな問題となっているわけですけれども、こういった再利用、減量化を図っていくためには、市民、事業者、行政のそれぞれの取り組みが重要であるとともに、社会経済システムそのものを、ごみを減らすというインセンティブが働く仕組みとすることが必要だろう、こう思っておるわけでございます。  それで、排出者のレベルでの減量化ということにつきまして、ここのところごみの収集の有料化ということが極めて有効な手段ではないか、こういうふうに思っておるわけですが、まず、現在ごみの収集の有料化が実施されている市町村がどのくらいあるのか、これについてお伺いしたいと思います。
  26. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 厚生省が行いました平成四年十月時点の調査結果によりますと、全市町村の三五%に当たる千百三十四市町村におきまして家庭ごみの収集について有料化が実施されておるところでございます。
  27. 長谷百合子

    ○長谷委員 一口に有料化と言っても、一律に幾ら、こう決めてしまっている方法もあれば、ごみを出す量にに応じて、つまりごみが多くなれば高く取るというような方法もあるかと思うのですね。  そこで、具体的に料金徴収体系別の内訳がどのようになっているのか、お伺いしたいと思います。
  28. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 有料化の実施方法につきましては、ごみの排出量に応じて負担額がふえる仕組みとなるいわゆる従量制というものもございますが、また、ごみ排出量に関係なく世帯当たりまたは世帯員一人当たりにつき一定額を徴収する定額制というものもございます。またそれに、あらかじめ定められた一定量を超えるとその量に応じて料金を徴収する、多量の場合のみ有料というようなものがございます。こういうふうに大きく分けて三つの有料化があるのじゃないか、このように考えております。  それから、この実施割合でございますが、従量制をとっているものが有料化を実施している市町村の五六・一%に当たる六百三十六市町村と一番多いわけであります。次いで、定額制が二四・一%の二百八十市町村。多量の場合のみ有料としている市町村が一七・○%の百九十三市町村となっております。
  29. 長谷百合子

    ○長谷委員 今のお答えですと、かなり多くの市町村で有料化がもう既に実施されているわけですけれども、そういった有料化に踏み切った市町村において、導入前と導入後でごみの量にどのくらい差が出てきたのか。同じ有料でも、最初から一律にどれだけということでは、やはり抑制効果ということは働きにくいのじゃないかと私は思うのですね。  ですから、どっちかというと、やはりごみの量をたくさん出した人に対してはそれを抑えるというような従量制を採用する方が減量化にははるかに効果が大きいのじゃないか、こういうふうに思っておるのですが、実情ということでいきますと、この辺ではいかがでしょうか。幾つかの例がございましたら説明してください。
  30. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 有料化の実施方法と減量化効果との関係におきましては、委員指摘のとおり、定額制よりも従量制の方が、ごみの量に応じて支払う料金が増加していくことになりますので減量化の観点から効果がある、このように考えております。  例で申しますと、平成元年より従量制による有料化を実施しております、北海道に伊達市というのがございますが、その例を見てみますと、家庭ごみの排出量は、実施前の昭和六十二年度に対しまして、平成元年度では二三・六%、平成年度では三七・〇%、平成年度では三四・〇%減と、大幅な減量が報告されております。  また、島根県の出雲市におきましても、平成四年より一定量を超えるとその量に応じて料金を徴収する有料化というのを実施しておるわけでありますが、実施前の平成三年に比べまして二七・七%の減量効果があった、こういうふうに聞いております。  なお、これらの市につきましては、単に有料化を実施したということだけではなくて、資源ごみの回収や住民の啓発事業を集中的に行うなど、総合的な対策をあわせて講じておるということでございます。
  31. 長谷百合子

    ○長谷委員 今出雲市の例もちょっと出てまいりましたけれども、ごみの有料化ということがごみを少なくすることに非常に効果がある、これはそのとおりだろうというふうに伺っておりました。しかし一方では、ごみを出すということは人間の活動にとって基本的なことですから、出すこと自体すべて出す人間の負担というのもどうだろうかというふうに思うのですね。  出雲市の例ですと、例えば普通のごみの場合、年間一世帯百枚のごみ袋を無料で配る。無料で配って、それを超えた分については一枚四十円を払って買う。それから逆に、少なかった場合は四十円でその袋を買い取るというようなきめの細かいやり方がされておるというふうに聞いておるのですけれども、こういうような形で、生活自体を否定するとか、あるいは市町村の責任をあいまいにするというようなことがあってはならないというふうに思うわけです。抑制効果、それから行政の責任あわせて、いろいろな例があるかと思うのですけれども、そこのところはやはりきめの細かい指導ということをぜひやっていただきたいというふうに思っております。  続きまして、そうした有料化をすることによって、例えばお金がかかるのだったらどこかにこっそり捨ててしまおうというような不法投棄の増加という問題は発生しなかったのでしょうか。
  32. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 さきに御説明いたしました伊達市の例について申しますと、有料化実施年度に二十件程度の不法投棄があったということであります。その大半は捨てやすい場所に捨てたというようなものでありまして、有料化が直接の原因となったと思われるものは年間で八件程度にすぎなかったというふうに聞いております。そして、これらに対しましては清掃当局が一件ずつ注意を呼びかけるなどの対処をした結果、翌年度以降におきましては適正に基準が守られておるということでございます。  有料化の採用によりまして不法投棄の懸念が全くないとは言えないわけでありますが、住民啓発また不法投棄の取り締まりの強化など、適切な措置を講じていくことによりまして対応していくことが可能である、このように考えております。
  33. 長谷百合子

    ○長谷委員 今の結果を伺っておりますと、有料化に踏み切った市町村ではそれなりの減量効果を上げておる、そして不法投棄の問題もおおむねクリアされておるというふうなことであります。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、その有料化が、住民に対する市町村のサービスの低下ということにならないように、あるいは低所得層の方に負担がかかるというようなことのないように、そういう配慮ということをきっちりとされた上で、これからも有料化ということについて厚生省が指導をされるよう要請をいたしまして、次の質問に移りたいと思います。  今の排出抑制と並んで、出てきたごみの回収、再生利用、こういったことがやはり非常に重要なかぎになるかと思うのです。減量化に資するとともに地球環境保全というために資源ごみを回収するということ、この資源ごみの回収状況というのは今どのように推移してきておるのでしょうか。
  34. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 市町村が回収した資源ごみ及び市町村が関与した集団回収による資源ごみの回収量は、ともに毎年増加を続けております。そのうち市町村の回収した資源ごみの量は、平成年度におきましては約六十三万トンで、前年度より一二%増加いたしております。また市町村が関与した集団回収による資源ごみの回収量は、関与した市町村の増加もございまして、平成年度で約九十九万トンと、前年度より四五%の大幅な増になっております。
  35. 長谷百合子

    ○長谷委員 実際に地域の方で集団回収ということが進んでおるのですね。そのときに、いつもこれはちょっとどうかと思うのが、分別収集が余り盛んでないような市町村もあるわけですけれども、地域の人たちがボランティアといいますか善意でもって分別収集に当たるわけですが、そういう場合は、男性というよりは基本的に女性がやっていらっしゃる例が大体において多いのですね。そうなりますと、本来は市町村がきちっと分別収集をやるべきなのに、それが逆に住民、しかも主に女性のところに負担がかかってしまっておるというふうな実態。やはり働く女性がふえて、そう言ってはなんですが、今ただでさえ家事負担という点では男性に比べて女性は非常に厳しい思いをしておるわけでございますから、その辺のところは、これはもちろん住民みんなで協力することは当たり前ですけれども、やはり市町村がきっちりと責任を持って集団回収、分別収集を指導していく、あるいは進めていくということが必要だと思うのです。いかがでしょうか。
  36. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 集団回収というのは再生資源の回収を図るために有用な手段の一つでありまして、特に地域住民における廃棄物の減量化、再生の促進に関する意識の啓発という観点からいたしましても重要なものというふうに考えております。  集団回収は、住民一人一人の自主的な協力によって運営されているものでありまして、強制されるような筋合いのものではございません。委員指摘のような問題につきましては、市町村が地域の実情に応じて実施の方法を考えることも必要であろうというふうに考えております。  市町村による分別収集、これをもっと強化したらどうかという御指摘でございますが、この市町村による分別収集につきましては、廃棄物の減量化、再生利用を促進する上で大変重要でありまして、厚生省といたしましてもその促進を図るように市町村指導してまいりたい、このように考えております。
  37. 長谷百合子

    ○長谷委員 市町村における分別収集あるいは集団回収の取り組みが普及しているという状況は非常に心強いわけでございますが、しかしながら、最近の景気の低迷によって古紙や鉄くず等の価格が落ち込んで、集団回収などによってせっかく回収してきても、回収業者が引き取りを拒否する、あるいは回収された資源が再生利用されないで、そのまままた廃棄物として廃棄されるという実情があるということも聞いております。  こういうことですと、せっかく取り組みをしても効果が上がってこないというふうに思うわけですけれども、厚生省は、このような現状についてどのような認識をされているのか、また、このようなリサイクル市場の確立、価格の安定を図るためにどのように対処されているのか、お伺いいたします。
  38. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 瓶、缶、古紙などの再生資源の市況が低迷し、逆有償化というような事態が生じておることにつきましては、大変憂慮しておるところでございます。  このような状況の中で、リサイクル市場の確立や再生資源の価格の安定化などを図るため、厚生省では、市町村が行う関連の事業に関しまして国庫補助制度を設けまして支援をしておるところでございます。すなわち、再生ごみの回収容器の貸し出しとか、リサイクル推進のための協議会の設置だとか、再生資源を利用した製品の消費拡大のための啓発普及対策、こういうふうな事業に対しまして、そういう事業市町村が行う場合に厚生省が国庫補助で支援をしておる、こういうふうなことでやっておるわけでございます。
  39. 長谷百合子

    ○長谷委員 そういった形で努力されておるということで、資源ごみの回収率、今も伺った瓶、缶、古紙など非常に上がってきておるというふうに思うのです。しかしながら、全体のごみの排出量がふえておるわけですけれども、こういう中で実際に減った量といいますと三、四%ということです。これは京都市が調べた例だったかと思うのですけれども、ごみの中の四九%は再生利用可能なごみじゃないか、こういうふうに言われておるわけですね。そうしますと、今進められておる瓶や缶や古紙というものに合わせて、プラスチックとかそのほかいろいろなものがあると思うのですけれども、やはりそういった対象をこれからももっと広げていって、もっともっと再生利用ということの全体の率を上げていただくよう、ぜひお願いしたいと思っておるところです。  ところで、欧米の幾つかの国や州では、ごみの減量化、再生利用の推進、散乱ごみの防止の観点から、商品価格に容器代を上乗せして販売し、容器を返却したら容器代を返すということにょって容器回収の促進を図る、いわゆるデポジット制度が導入されているというふうに聞いております。  私の選挙区にあります東京の町田市でも一部分こういうことをやっておるのですけれども、欧米の現状とか、日本においてもデポジットが導入されている例がありましたら、その状況についてぜひちょっと御説明願いたいと思います。
  40. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 欧州におきましては、ドイツ、オーストリア、デンマーク、オランダ、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンなどの国におきまして、主にリターナブル容器の回収を目的としまして、ビールやソフトドリンクなどの容器を対象にデポジット制度実施されておると承知いたしております。  一方、アメリカにおきましては、主にごみの散乱防止を目的に、広い範囲の飲料容器を対象として、現在十州においてデポジット制度が導入されております。  我が国におけるデポジット制度実施状況につきましては、平成年度に東京都が人口三万以上の市を対象として調査した結果によりますと、市町村全域で実施しているのは六カ所、観光地、公園等の限定された区域で実施しているものは三十二カ所というふうになっております。
  41. 長谷百合子

    ○長谷委員 容器を回収するということについては、事業者によるデポジット制度が非常に有効だというふうに思うのですけれども、日本に導入するとした場合、どのような問題点があるのでしょうか。
  42. 藤原正弘

    ○藤原(正)政府委員 デポジット制度につきましては、廃棄物対策に関し経済的インセンティブが働くということになりますので、廃棄物の散乱防止のほか、廃棄物の減量化や再生利用のための回収の促進に有効に働く、そういうことになるというふうに認識いたしております。  しかし、それを実施するに当たりましては幾つかの問題がございます。例えば、どういう製品を対象範囲とすべきか、どういう地域を対象とし、または全国一律に実施すべきか、それから市町村によるごみの収集、運搬との関係をどのように考えるか、また、デポジットにより収集されたものの再生利用体制をどう整備するかというような問題がございます。厚生省としても、幅広い見地から検討が必要だ、このように考えております。
  43. 長谷百合子

    ○長谷委員 生産者や販売者のごみの減量化や再生利用の実効を上げるために、今のデポジット制度の導入とか、社会経済システムにそういった抑制効果を盛り込む、こういった何らかの抜本的な解決策を講じていかなければならないというふうに考えておりますが、この点につきまして、厚生大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  44. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、ごみの量でありますけれども、一人の人間が一日に排出するごみの量は一キログラムである、こう言われております。それで、今最終処分場が七、八年で全部埋め尽くされるのではないか、先生から先ほど来御指摘を賜っておりますように、実は大変深刻な問題でございますので、まず、ごみ問題の解決のためには、ごみを多量に排出するという我が国の社会の仕組みそのものを変えていかなければならない。そして、できるだけごみの排出を抑制をいたしまして、再生利用を促進する方向に変えていかなければならない、こう考えているような次第でございます。  先生、デポジット制度の導入について御指摘を賜っておるわけでございますけれども、実はこの制度がそもそも導入されましたのは、私の地元で開かれましたつくばの国際科学博覧会、このとき大変効果的であった。会場が限られたところでありますので、そういうところで、つくば方式と言われておりますけれども、有効であった。最近、私の地元なども見ておりますると、例えばスーパーなどがそういうようなことを実際に実施をいたしておりますが、対象範囲が広くなっていくと必ずしも有効的でないという話も、私も仄聞はいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、昨年の五月にまとめられました生活環境審議会の中の廃棄物減量化・再利用専門委員会、この報告の中でも、廃棄物の減量化、再生利用を推進するためには、ごみ処理の有料化やデポジット制度の導入、こういうことがうたわれておるわけでございますので、こういった面を含めまして、多角的にこれからの問題について考えていくわけでございますが、何と申し上げましても、やはり国民の皆さん方、市民の皆さん方、お一人お一人のこういう問題に対する理解と協力を賜らなければならない、このように考えているような次第でございます。
  45. 長谷百合子

    ○長谷委員 一層のごみの減量化をやっていただくようお願いいたしまして、次の質問に移らせていただきます。  予防接種のことについてでございますけれども、昨年の十二月に東京高裁で判決が出ました。それを機運といたしまして、現行の予防接種行政の見直しが始まっているというふうに認識しております。それに関連いたしまして、二、三の質問をさせていただきます。  まず最初に、係属中の東京高裁以外の裁判所での和解交渉に厚生大臣としてどのように今後対応されるのか、お伺いしたいと思います。
  46. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 この東京高裁の判決は、私が厚生大臣に就任をいたしました直後に判決が下されました。いずれにいたしましても、東京高裁の判決は、国の責任を認めました大変厳しいものでございました。  私といたしましては、被害者の方々あるいは家族の方々が二十年にわたる苦しみ、痛み、こういうものを引きずってこられておるわけでございますし、これからさらにこういった苦しみ、痛みというものを引きずっていくことは、これは大変耐えがたいものである、こういうことから上告を断念したわけでございます。
  47. 長谷百合子

    ○長谷委員 東京高裁の判決に続いて東海予防接種禍集団訴訟も和解へと前進しておるというふうに聞いておりますけれども、厚生省の積極的な姿勢ということについては大いに評価をいたしておるところでございます。  しかしながら、十八年、二十年、こういうふうに経過してきておりますと、実際に介護する親御さんが亡くなっておるというような場合も出てきておるわけでございまして、そういった親亡き後の不安ということについても大きくなっておりますので、この点につきましても国の適切な措置ということをお願いしておきたいと思います。  それから、東京高裁を受けて、国は賠償額を幾ら支払ったのでしょうか。
  48. 谷修一

    ○谷政府委員 暮れの東京高裁の判決におきましては、国に対しましては利息を含めて五十四億円を支払えという命令がございました。一方、原告側に対しまして一審判決段階で仮執行が行われておりましたので、その仮執行に基づく給付返還額並びにこれについても利息を計算いたしまして、十九億円の支払いを命ずるということになっておりまして、この両者を相殺をいたしますと、国としては総額三十五億円を支払ったということでございます。
  49. 長谷百合子

    ○長谷委員 その訴訟を起こしていない方、一緒に集団訴訟に乗らなかった方、そういった方とのバランスはどのように図っていかれるのでしょうか。
  50. 谷修一

    ○谷政府委員 先ほど大臣からもお話ございましたように、現在、各地の高裁段階での和解について裁判所の御意見を伺いながら対応しているところでございますが、訴訟を起こしておられない方については現在特段何をするということは考えておりません。ただ現在、この東京高裁の判決を受けて、予防接種の体系といいますか、義務づけの問題ですとか対象疾病の問題、予防接種制度全体の見直しについて検討、議論をしていただいておりますので、救済制度そのものについてもこの議論の中に含まれていろいろ議論をしていただくというようなことになろうというふうに思っております。
  51. 長谷百合子

    ○長谷委員 訴訟を起こしていらっしゃらない方ということを伺ってみますと、やはり訴訟をやるということはとても大変なことで、長い年月にわたって経済的にもあるいは実際の時間的にも大変きついということでやられていない方が多いと伺っておりますので、ぜひとも訴訟を起こしていない方についてもいろいろなバランスを図って対応されることを心よりお願い申し上げます。  それから、今のお話の中でも、予防接種制度の見直しに関する委員会をつくられて、これからいろいろな検討をされると思うのですけれども、こういったところに被害者サイドの声といいますか、こういったものを聞く場を設けるつもりはないでしょうか。
  52. 谷修一

    ○谷政府委員 ただいま申しましたように、予防接種制度の全体について見直しのための委員会を開いて御検討いただいているわけでございます。被害者の方々とはこれまでも何度か事務的にはお話を伺ったりしているわけでございますが、委員会での議論におきまして被害者の方々の意見をどのように今後反映させていくかということについては、私どもとして検討してまいりたいというふうに考えております。
  53. 長谷百合子

    ○長谷委員 次に、今度は二十一世紀に向けての子供の問題でございますけれども、二十一世紀になりますと四人に一人が六十五歳以上の老人という超高齢化社会というふうな状況を迎えるわけでございますけれども、一方では出生率の低下が続いておるという状況でございます。  なぜ出生率が低くなってくるかというと、やはりきっちり子供を育てていくというような制度が不十分ではないかというふうにも思うわけでございますけれども、次の世代を担う子供を健全に育成していくためにいろいろな環境を整備していかなければいけませんけれども、どのようにこれを取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
  54. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 出生率の低下につきましては、将来の働く世代の減少による経済社会への影響、あるいは子供自身の成長への影響などさまざまな問題が懸念されておりますので、大変な問題だという認識を持っております。実は、平成四年の出生数も前年に比べて一万人程度は減るんではないかというふうに見込まれておりますし、いわゆる合計特殊出生率も、今までの史上最低であった一・五三をさらに割り込むということが憂慮されているわけでございます。  したがいまして、私ども厚生省はもちろんのこと、政府全体としてこの問題、特に将来を担う子供たちが健やかに生まれ育つための環境づくりをどうして進めていくかということを政府全体の重要な施策と考えているわけでございます。関係十八省庁から成る連絡会議などをつくりまして、家庭を築き、子供を産み育てていくことに喜びとか楽しみを感じるような社会をつくるということに向かって総合的に取り組んでまいるつもりでございます。  現在、厚生省といたしましては、官民挙げての啓発の推進であるとか、いわゆる就業と育児の両立のために不可欠である保育サービスの拡充強化であるとか、あるいは各種の相談体制の強化とか、そういうものを念頭に置きながら、これまでも努力してまいりましたけれども、今後とも一層総合的な対策推進に各省庁お互いに協力しながら進めてまいりたい、そう考えております。
  55. 長谷百合子

    ○長谷委員 出生率の低下の原因というのが、若い世代の子育てに対する負担感にあるということが大きいかと思うのですけれども、子育てというのは実は非常に楽しいことであると同時に、実際苦労が大変多い仕事である。そうなりますと、昔のように地域とか、あるいは家族もおじいさん、おばおさんがいらっしゃるとか、そういう状況ではなくて、今一人で若いお母さんが子供を見なければいけないというようなことになりますと、なれない親の悩みということについてきちっと地域がそれこそフォローするような、援助できるようなシステムをぜひつくっていかなければいけないと思うのですけれども、今のお話の中にもちょっと相談体制ということがありましたけれども、援助相談体制を整備するという具体的な例では例えばどんなことがあるのですか。
  56. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 御指摘のとおり、特に都市部で若いお母さん方が非常に孤独な中で子育てに苦労しておられるという実情については、私どもも理解しているつもりでございます。したがって、児童相談所とか福祉事務所における家庭児童相談室とか、あるいは市町村の窓口あるいは民間の各種団体等がそれぞれ協力、努力していただいているわけでございますが、新しい政策といたしましては、実は今年度の予算において主任児童委員という制度を設けることをお願いしておりまして、これは全国に現在十九万人ほどの民生・児童委員さんがおられるわけでございますが、民生委員児童委員を兼務しているという関係もありまして、なかなか専門的に児童の問題に取り組んでいただけないということもございまして、一九九四年がちょうど国際家族年という年であるということも考えまして、来年の一月に約一万四千人の方々を厚生大臣から主任児童委員として委嘱をしていただく、そういう準備を現在進めております。  これらの方々の活動に期待するとともに、また、全国にたくさんあります保育所において、保育所保育所に通ってくる子供のお世話をするというだけではなくて、保育所にもあるいは幼稚園にも行ってない子供さんあるいはお母さん方がたくさんおられますから、そういう方々に対してむしろ積極的に地域における子育て支援センターというふうな役割を果たしていただけるように、今年度予算において地域子育てモデル事業というものを開始するというふうなことになっております。
  57. 長谷百合子

    ○長谷委員 子供たちが健やかに成長するためには遊びということが非常に大切だというふうに考えております。しかし、私も東京なんですけれども、都市化が進むに従って遊び場が年々少なくなっている。また、塾通いというのはどんどんふえておるというふうに認識しておりますけれども、子供たちが子供たち同士で遊ぶ時間や機会も失われつつあるというふうに思うのですけれども、こういった実情に対して、厚生省として、子供の遊び場の確保と創造的な遊びに触れる機会の提供などにぜひ努めていただきたいと思うのですが、その取り組みはどのようにされておるのでしょうか。
  58. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 御指摘のとおり、子供がさまざまな遊びの体験を通じまして健康で個性的な形で育っていくことは大変重要なことだと思っております。  したがって、私ども厚生省としましては、いわゆる児童館とか児童センターの整備に努めていますし、ほかに地方団体がこどもの町推進会議というふうなものを設置して遊びの場の確保を進めていくというふうなことも支援をしておりますし、また、母親クラブの活動等を通じまして、地域で子供が健やかに育っていくための環境づくりということを進めてきたわけでございます。  今年度新たな事業といたしましては、いわゆる児童館が休日に閉館をしている例が多うございますが、できれば父親と子供などが休日に児童館において親子の触れ合いを体験できるというふうなことが望ましいというようなことから、児童館地域活動促進事業といったようなものも新たに計上しているところでございます。  いずれにしましても、子供を取り巻く環境が大変厳しくなってきておりますので、私どもは、できるだけ次代を担う子供が健全に育っていくような環境づくりについて、関係各省あるいは市町村とも協力しながら、これまで以上に一生懸命努力をしてまいりたい、そう思っております。
  59. 長谷百合子

    ○長谷委員 近年、女性の社会進出に伴い、女性も男性同様夜遅くまで働くというような状況があるかと思います。このこと自体がもう少しゆとりという点では解決されなければいけないということはあると思いますけれども、そうはいっても現実的にはやはり核家族化の中でだれも見ていただく方がいない、こういう状況についてはきちっと対応していかなければいけないだろうと思うのです。あるいはまた、専業の主婦の方でも、一人ぼっちという中で育児ノイローゼなんかがあるというふうにも聞いておりますけれども、こういった家族とか児童を取り巻く環境の変化というものが非常にあるのですね。  保育所も今までのように一律という形ではなくて、こういった多様なニーズにこたえられるような子育て援助ということを行えるようなシステムにすべきだと思うのですけれども、厚生省としては、このような状況の変化を踏まえて保育対策充実にどのように取り組んでいかれるつもりでしょうか。
  60. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 保育対策は女性の方々が就労と出産、育児を両立する上では非常に重要な施策でございます。特に女性の方々の就労率が非常に高まってきておりますし、また就労形態も多用化してきておりますので、一般的な保育のほかにいわゆる延長保育であるとか一時保育、夜間保育あるいは乳児保育であるとか、そういった特別保育対策と言っておりますが、そういう部分の推進に努めなければいけないと思っているわけでございます。  実は今月七日に、これからの保育サービスの目指すべき方向ということを念頭に置いて、これからの保育所のあり方を検討する懇談会というところからいわば提言が行われております。その提言の中でも、例えば仕事と子育ての両立を支援する機能の強化、あるいは地域社会における子育て支援サービスのあり方、それから柔軟な保育所運営のあり方、あるいは経済的負担の軽減等々、さまざまな提言がなされております。  私どもは現在、保育問題検討会というのを厚生省に設置しておりまして、ここに市長会、町村会の方々、保育関係者の方々、学識経験者の方々、いろいろ入って非常に広い立場から御議論をいただいておりますので、この保育問題検討会の検討状況を見ながら一つ一つ、例えば来年度の予算で具体化できるものがあればそれは取り組んでいくというふうなことを考えているわけでございます。  子育てに対するいろいろな身体的、心理的負担を若いお母さん方が感じていらっしゃる今日でございますから、ぜひ、保育所が全国に二万数千カ所ございます、この二万数千カ所の保育所が一番身近なところにあるわけでございますので、地域子育ての支援センターとなることができるようさまざまな努力をしてまいりたい、そう考えております。
  61. 長谷百合子

    ○長谷委員 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  62. 貝沼次郎

    貝沼委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後一時会議
  63. 貝沼次郎

    貝沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。斉藤一雄君。
  64. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 私は、被爆者援護法に関連をして質問をいたします。  最初に、原爆被害の性格についてお尋ねいたします。  これまでの三回にわたる厚生省の調査や日本被団協の調査、二回に及ぶ国連事務総長報告を踏まえ、厚生省は原爆被害の特徴をどのようにとらえていますか。
  65. 谷修一

    ○谷政府委員 広島、長崎の原爆被害につきましては、原爆の熱線あるいは爆風また放射線によりまして、非常に広範な地域で多数の人命を奪い、かつ健康上の被害をもたらすなど、非常に悲惨きわまりないものであったというふうに認識をしております。  健康上の障害につきましては、直後に起きましたいわゆる急性原爆症に加えまして、白血病あるいは甲状腺がん等の晩発障害があるというようなことで、一般の戦災による被害に比べまして際立った特殊性を持っているというふうに認識をしております。
  66. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 晩発障害だけに原爆被害の特徴を限定するような認識というのは間違いじゃないですか。
  67. 谷修一

    ○谷政府委員 ただいま申しましたように、原爆による被害というのは、熱線あるいは爆風、放射線によりまして非常に多数の人命を奪ったということだけではなくて、健康上の障害ももたらしているという意味において、非常に他の戦災による被害というものとは違った特殊性を持った被害であるということを基本的に認識をしております。
  68. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 日本被団協の調査によると、原爆による死没者の三分の二は婦人、子供、老人であり、その多くが非戦闘員であった事実を認めますか。
  69. 谷修一

    ○谷政府委員 厚生省が実施をいたしました昭和六十年度の原爆被爆者実態調査の死没者調査におきましても、直爆死をした者のうち九歳以下の子供並びに婦人及び六十歳以上の老人が約六五%を占めているという事実がございまして、今お話がございました被団協がやられました、一九八八年でございましたか、原爆死没者に関する中間報告でも、やはり六五%というような数字が出ているというふうに認識しています。
  70. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 原爆投下時での一家全滅や大半の家族の死亡、また戦後も家族の病気、死亡などで家族が崩壊してきた事実を認めますか。
  71. 谷修一

    ○谷政府委員 原爆によります家族構成員あるいは世帯員の死亡につきましては、広島、長崎両市において進められましたいわゆる復元調査等の対象となって調査をされているわけでございますが、これらの調査によりますと、例えば広島市におきましては、爆心地から〇・五キロ、五百メートル以内の特定の地区におきまして世帯員の一部を失った世帯、これが八四%、世帯主が被爆をして亡くなられた世帯が約五八%といったような結果が出ております。  今お話がございましたように、このような事実に示されますとおり、原爆によりまして家族の構成員が死亡したりあるいは生計の維持が困難になったといった世帯が多数存在したというふうに考えております。
  72. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 次に、原爆投下の国際法違反についてお尋ねいたします。  原爆の投下は、戦時国際法や世界人権宣言に照らしてみても、また昭和三十八年の原爆裁判でも明らかに、国際法に違反していることが明らかだと思いますが、どうでしょうか。
  73. 伊藤哲雄

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  これまで国会の場で政府よりこの問題について一貫して申し上げてきておりますとおり、広島、長崎の原爆投下につきましては、国際法の根底を流れる一つの基本思想である人道主義の精神に照らせば、かかる思想に合致しないものであり、人道上大変遺憾な問題であったということでございますが、他方、厳密な法律論として、実定国際法上の問題といたしましては、遺憾ながら国際法上の通念として国際法違反であるという断言はできない、これが政府が従来より申し上げてきているところでございます。
  74. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 原爆投下直後、四五年、昭和二十年八月十日、日本政府はスイス政府を通じてアメリカ政府に、原爆の残虐性、非人道性を抗議いたしまして、その後政府はこの見解を改めたということを発表していないと思いますが、いかがでしょうか。また、この点について現在どのように考えていますか。
  75. 伊藤哲雄

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、政府は、昭和二十年八月六日の広島に対する原爆投下に関しまして、その直後に米国政府に対して抗議文を送り、この原爆による攻撃が無差別性、残酷性を有し、人類文化に対する罪悪である旨強く抗議しております。この政府の措置につきましては、これまでも政府より答弁しておりますとおり、原爆投下が極めて広い範囲にその害を及ぼし、人道上極めて遺憾な事態を生ぜしめたということから、国際法上の観点からも問題となり得るということで抗議を行ったものでありまして、当時交戦状態にあったことからしても、これは当然の措置であったと考えております。  しかしながら、現在冷静に純法律的に見た場合、実定国際法上の問題といたしましては、先ほど答弁申し上げましたように、当時の原爆投下は、国際法の基本に流れる人道主義の精神に合致しておらず、そういう意味で問題ではございましたが、ぎりぎり国際法違反の行為であったということは言い切れないというのが従来より答弁しておりますところでございます。
  76. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 御承知のとおり、米国の原爆投下について日本政府は、「帝国政府は自らの名において、かつまた全人類及び文明の名において米国政府を糾弾すると共に、即時かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す」というのが抗議の内容です。この抗議の内容についていささかの変更はないと思いますけれども、現在の政府はこれを変更したというお考えなんでしょうか。
  77. 伊藤哲雄

    ○伊藤説明員 近代におきます戦時国際法、これは国際人道法という名で呼ばれる場合もございますが、その中で、人道主義の要請というものは中心的な原則になっておりまして、戦時国際法の根底に流れるところから出てきておる基本原則でございます。この基本原則に照らしまして、原爆の投下というものが非人道的であったということを強く強調して当時抗議したものでございますが、その精神という点からは現在もそういう見解を持つものでございますが、繰り返しになって恐縮ですが、実定国際法上の問題としては国際法違反であるということは言い切れないというのが政府の見解でございます。
  78. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 今の質問は、国際法違反かどうかをただしているのではないのです。このときの日本政府の抗議の声明に対する見解を聞いているわけです。したがって、質問に答えていただかないと、おたくの都合のいいことだけをただ一方的に言われても、これは論議になりませんので、注意をしておきたいと思います。  それでは、昭和五十二年三月三十日の最高裁判決において、「かかる障害が逃れば戦争という国の行為によってもたらされたものであり、しかも、被爆者の多くが今なお生活上一般の戦争被害者よりも不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。」としておりますが、この点についてはどうお思いですか。
  79. 谷修一

    ○谷政府委員 五十三年でございますか、その今おっしゃったような判決が出ているということは承知をしております。
  80. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 この点についてどうお考えでしょうか。
  81. 谷修一

    ○谷政府委員 原爆被爆者対策につきましては、現在私どもは、いわゆる原爆二法に基づきます保健、医療、福祉の対策充実に努めているところでございまして、その対策を行うに当たりましては、昭和五十五年でございましたか、いわゆる基本問題懇談会の御意見をもとにして対策を進めているところでございます。
  82. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 戦争という国の行為によってもたらされたものであるという点についてどう考えていますか。
  83. 谷修一

    ○谷政府委員 現行のこの原子爆弾被爆者の対策について……(斉藤(一)委員対策を聞いているのじゃないんだよ、質問に答えてください」と呼ぶ)はい。いわゆる戦争という政治行為による国の不法行為責任は成立をしないというふうに私どもは認識をしておりますが、原爆被爆者の対策ということにつきましては、原爆被害の特殊性ということに着目をした対策実施をしているということでございます。
  84. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 いま一度質問に答えていただきたいと思います。最高裁判決の中で、「戦争という国の行為によってもたらされたもの」であると言っておりますが、これについてどうお考えでしょうかと質問しているわけです。ほかのことは質問しておりません。
  85. 谷修一

    ○谷政府委員 原子爆弾による被爆というものが、事実上国が行っておりました戦争という行為の中で起きたということはそのとおりだと思いますが、法律上、そのことについての責任という問題は、また別の問題だろうというふうに考えております。
  86. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 法律上の責任を聞いてないのですよ。これからも質問続くわけですが、ぜひ質問に的確に答えていただくように再度注意をしておきます。  次に、基本懇の意見についてですけれども、ただいまもございましたように、最近の政府の答弁、それは昭和五十五年、原爆被爆者基本問題懇談会の意見書に依拠して、そこから一歩も出ないという枠の中でいろいろな答弁をされているのだろうと思いますけれども、この基本懇というのは大臣の諮問機関にすぎないのじゃないですか。
  87. 谷修一

    ○谷政府委員 今お話のございました原爆被爆者対策基本問題懇談会は厚生大臣の私的諮問機関として設置をし、被爆者対策の基本理念というようなことについて各分野の有識者の方々の御意見を伺ったものでございます。
  88. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 そのような私的諮問機関が政府を拘束できるのでしょうか。政府を拘束しているとすれば、どのような法的根拠によっているのか、明らかにしていただきたい。
  89. 谷修一

    ○谷政府委員 今申しましたように、あるいは先生お話ございましたように、この基本懇というものは厚生大臣の私的諮問機関として設置をし御意見を伺ったものでございます。ただ、先ほども申しましたように、この問題についての各分野の権威というか、有識者の方に御検討をいただいたものでございまして、この内容については、私どもは十分にこれを尊重し、原爆被爆者対策の基本として考えているものでございます。
  90. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 原爆被害が国の戦争行為の中で生じたことについて、国の結果責任はどのようにお考えでしょうか。
  91. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 さきの大戦では、国民のすべてが戦争による何らかの犠牲を強いられておるわけであります。  法律論として申し上げさせていただきますならば、戦争などいわゆる高度的な政治判断に要する行為につきましては、法律上は国の責任は成り立たない、こういうことでございますが、政府といたしましては、原爆二法によりまして、被爆者が受けた放射能による健康障害という一般戦災者とは異なる特別の犠牲に着目して、保健、医療、福祉の各般にわたって対策を講じておるわけであります。  いずれにいたしましても、終戦後半世紀近くを迎えておるわけでございますが、私たちは再び過ちを犯さず、永遠の平和の誓いを新たにするものでございます。
  92. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 結果責任については基本懇も認めていらっしゃるのじゃないですか。違うのですか。
  93. 谷修一

    ○谷政府委員 基本懇におきます意見というのは、原爆被爆者の受けた原爆放射線による健康障害というものが特別の犠牲であるということから、広い意味における国家補償の見地に立って対策を講ずるべき、しかし、広い意味における国家補償の見地に考えると言っても、国の不法行為責任を是認するという意味ではなくて、結果責任として相当の補償を認めるべきだという趣旨であるということと同時に、原爆被爆者に対する対策は、他の戦争犠牲者に対する対策に比べて著しい不均衡が生ずるようであってはならないというふうに述べられているところでございます。
  94. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 政府は、これまでいわゆる原爆被害受忍論と申しますか、我慢論を主張してきたと思います。その法的あるいは科学的な根拠は何ですか。
  95. 谷修一

    ○谷政府委員 先ほども申しましたように、戦争という政治行為におきます国の不法行為責任は成立しないというのが基本的な考え方でございます。
  96. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 受忍論についての法的、科学的根拠を聞いているのです。
  97. 谷修一

    ○谷政府委員 さきの大戦というのは、我が国にとりまして大変未曾有な事態でありまして、国民のすべてが何らかの犠牲を余儀なくされたというふうに考えております。このような一般的な戦争損害につきまして完全にこれを償うというのは不可能でありまして、結局は、私ども一人一人がそれぞれの立場で受けとめていくというようなことかと考えております。以上でございます。
  98. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 先ほども最高裁判決のときに申し上げましたけれども、「一般の戦争被害者よりも不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。」と最高裁判決は述べています。その趣旨と違うようなことを今おっしゃったわけですが、それでよろしいですか。
  99. 谷修一

    ○谷政府委員 私どもは、原爆被爆による健康障害というのは特別な犠牲であるという観点から、先ほど来申し上げているようなことを基本的な考え方として各般の対策を講じているということでございます。
  100. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 原爆の被害については受忍すべきだ、地獄の苦しみも、死没者もすべて我慢すべきだ、こうおっしゃっているわけです。原爆死の残虐性とか非人道性、そういうものまでも我慢しなさい、こういうふうに聞こえるわけですが、そういうことですか。
  101. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどから御答弁申し上げておるわけでございますが、私ども原爆の残酷性というようなものを決して是認をしておるわけではございません。あくまでも私どもは一般論としていわゆる戦争におけるさまざまの犠牲、このことに着目して申し上げておるわけでございます。ただ、原爆につきましては、被爆者が受けた放射能による健康障害、こういったものにつきましては、もろもろの医療手当であるとかさまざまな施策を援護措置によって講じておるところでございます。
  102. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 今お話しになったような受忍論というような、到底許しがたい主張をしておるからこそ被爆者援護法の制定が必要になってくるわけです。そうした受忍をさせない制度をつくるという意味でも、どうしても援護法の制定が重要になるわけでありますし、また同時に、再び被爆者をつくらない、核戦争を起こさない、そういう被爆国である日本国民としての誓いを内外に宣明するという意味からも、援護法の制定がどうしても必要なわけです。この点については、ぜひ御努力を賜りたいということをお願いしておきます。  次に、一般国民への補償問題についてお尋ねをいたします。  原爆問題を初め戦争犠牲者の戦後処理は、日本国憲法にのっとってやられているのですか。もしそうであるとすれば、軍人軍属に補償し一般国民の被害を放置するのは、憲法の精神にもとるのではないでしょうか。
  103. 小島比登志

    ○小島説明員 いわゆる戦後処理問題のお尋ねでございますが、この問題につきましては、総理府の戦後処理問題懇談会におきまして五十七年から約二年半にわたりまして御討議をいただきました。五十九年に出ましたこの懇談会の報告を受けまして、政府といたしましては、戦争損害を国民の納得の得られる程度において公平化するという観点から一連の措置を講じてきたところでございます。また、こうした考え方は、日本国憲法の趣旨に反するものではないというふうに考えておるわけでございます。  さらに、戦後処理問題懇談会におきましては、恩給欠格者問題、あるいは戦後強制抑留者問題、さらに在外財産問題を中心に、さまざまな観点から慎重かつ公平に検討を行ってこられたわけですが、結論につきましては、もはやこれ以上国において措置すべきものはないというふうな御報告を受けているところでございます。
  104. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 私も兵役の経験を持っているのですが、一般国民といえども、国家総動員法のもとで勝手な移動もできない、結局行動を拘束されておりました。その結果として、原爆の被害に遭い、死没者も出たわけであります。そうではないでしょうか。
  105. 谷修一

    ○谷政府委員 先ほども申しましたように、さきの大戦においてはすべての国民が何らかの形で犠牲を余儀なくされたということでございますので、今おっしゃったいわゆる国家総動員法に基づく徴用というようなことについて私どもお答えする立場にございませんけれども、原爆投下によりその犠牲になったということとは直接の関係はないのではないかというふうに思っております。
  106. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 おたくの方は、この戦争によって国民はひとしくすべて同じように戦争の被害を受けたのだ、こうおっしゃっているわけですが、そのとおりですか、そういう認識ですか。
  107. 谷修一

    ○谷政府委員 被害を受けた状況なりあるいはその内容というのは、それぞれの一人一人によって違うと思いますけれども、いずれにしましても、何らかの形で国民すべてがこの戦争による犠牲を余儀なくされた、被害を受けたというふうに認識をしております。
  108. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 すべてが被害を受けたということではないでしょう。そして、すべてがひとしく同じように被害を受けたということではないでしょう。現に原爆の被爆者が、そして戦争の犠牲者がおられるわけでしょう。どうなんですか。そんなばかなことはないではないですか。すべてがひとしくでもって片づく問題ですか。
  109. 谷修一

    ○谷政府委員 先ほど来申し上げておりますように、何らかの形で国民の一人一人が犠牲を余儀なくされたということを申し上げております。
  110. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 おたくはどういう被害を受けましたか。ひとしくというなら言ってください。
  111. 谷修一

    ○谷政府委員 私的なことでございますので、しかしお尋ねでございますからあえて申し上げますが、私の家は戦災で焼けました。
  112. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 それぞれ違うのですよ。原爆に遣った人、戦地で戦闘によって亡くなった人、家を焼かれた人、疎開をして学校もろくに行けなかった人、戦争の被害はいろいろあるのです。ただし、この広島、長崎に投下された原爆の被害、核戦争の被害ということについては、国民一般論としてひとしくというようなことで、すべてが何らかの犠牲をこうむり、被害を受けたのだからという範疇に入らない問題じゃないですか。その点をどう思うかと聞いているのです。それでもひとしくだとおっしゃるのですか。
  113. 谷修一

    ○谷政府委員 私は、ひとしくというか、何らかの形で一人一人が犠牲を受けたということを申し上げているつもりでございます。  それから、先ほど来お答えしておりますように、原爆による被害というものは特別の犠牲であるということから各般の対策を講じているということでございますが、ただ、先ほども触れさせていただきましたが、基本問題懇談会の意見にもございますように、他の戦争被害者に対する対策との均衡の問題が述べられているわけでございます。
  114. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 それでは、沖縄戦については、後にある程度の一般国民に対する補償もなされていると思います。その根拠を明らかにしていただきたい。かつ、本土における原爆、一般戦災とどのように異なるのかということを明白にしていただきたい。
  115. 鈴木佑治

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  私ども沖縄開発庁が担当しておりますところでは、対馬丸の遭難学童の遺族に対する特別支出金というのがございます。  この特別支出金は、昭和十九年八月に沖縄から九州方面に航行中に潜水艦の攻撃によりまして沈没いたしました学童疎開船対馬丸の遭難学童の遺族に対して支給しているものでございまして、政府の政策に協力して学童疎開の途中で遭難した学童に対し弔意をあらわす措置といたしまして、遺族に対して支給しております。その支給額につきましては、平成四年十月以降は、戦傷病者戦没者遺族等援護法による前年度遺族給与金の十分の七に相当する額としているところでございます。
  116. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 次に、原爆死没者問題についてお尋ねいたします。  原爆死没者、そして一般戦災死没者の数を、政府はどのくらいと推定しておられますか。
  117. 谷修一

    ○谷政府委員 原爆による死没者についてお答えいたします。  被爆によります死没者の数につきましては、いろいろな調査がございますが、正確な数はわかっておりません。広島、長崎の両市が行っております調査が最も包括的に把握しているというふうに考えておりますけれども、平成年度末で、広島が約二十三万人、長崎が約十万人というふうになっております。
  118. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 一般戦災死没者の数は。
  119. 谷修一

    ○谷政府委員 原爆による死没者も含んで、軍人軍属等、あるいは外地死亡一般邦人、それから戦災死没者、合わせて約三百十万人というふうに承知しています。
  120. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 今お答えになったようなことだろうと思います。そして、この戦争では、アジア諸国の国民に与えた被害が二千万人以上と言われておるわけであります。  原爆死没者については、六九年、すなわち昭和四十四年以降、葬祭料が支払われております。それは原爆死没者への措置を国が認めたわけで、それ以前の死没者についても何らかの配慮があってしかるべきではないかと思いますが、どのようにお考えですか。
  121. 谷修一

    ○谷政府委員 今お尋ねの原爆死没者に対する葬祭料の件でございますが、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律が昭和四十三年に制定されまして、翌四十四年度からこの葬祭料が支払われるということになっております。  この葬祭料についての考え方といたしましては、被爆者の方々のお気持ちにも配慮しつつ、死亡者の葬祭に必要な費用に充てていただくということで、葬祭を行う方に対して支給をするものでありまして、いわゆる遺族に対する弔慰金としての性格を有するものではございません。したがいまして、今お話のございました、制度化される以前の死没者の方に対してさかのぼって葬祭料を支払うということは考えておりません。
  122. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 昭和四十四年以前の死没者に対する措置は、どうして行えないのですか。
  123. 谷修一

    ○谷政府委員 先ほども申しましたように、この葬祭料につきましては、亡くなられた方に対する葬祭に必要な費用に充てていただくということで、そういう事態が起きた後にお支払いをするということでございます。したがいまして、昭和四十四年度からこれを制度化したものでございますので、それ以前の方に対する支払いということは考えていないということでございます。
  124. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 これは全く納得できません。不合理きわまるものだと思います。ぜひこの点については誠意を持って見直しを行ってもらいたいということを強く要求しておきます。  次に、基本懇においても被爆者の体への放射線被害を認め、それに対する施策を行っておるわけでありますけれども、その身体的被害の最極致というのは死没だと思うのです。それならば、その死没者に対して何らかの措置を講ずるのが当然であり、講じないというのはいかにも矛盾ではないでしょうか。その点、どうお考えですか。
  125. 谷修一

    ○谷政府委員 先ほど来申しておりますように、現行の原爆被爆者対策は、被爆者が受けた放射線による健康障害という一般の被災者とは異なる特別の犠牲ということに着目をいたしまして、原爆二法に基づきます保健、医療、福祉に関する対策を講じているものでございます。  今お話しのような死没者に対して何かの措置ということは、結果的には遺族に対する弔慰金の支給というようなことになろうかと思いますが、これは、先ほど来申しておるような一般戦災者との均衡ということから困難であるというふうに考えております。
  126. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 一般戦災者との均衡については先ほど申し上げましたから繰り返しませんけれども、そんなことでは、原爆投下に対する認識、被爆者の苦しみ、死没された方々の気持ちをあらわすことにはならない。しかも、今後の核戦争や核兵器を廃絶していかなければいけないというそういう日本国民として、被爆国としてそれは絶対に許されないことだというふうに思います。  そこで、慰霊施設をつくって核兵器廃絶への国民の誓いの場とするということは結構なんですが、それだけではだめなんですね。個別補償を行ってこそ国が死没者に対して「安らかに眠って下さい」と言えるんじゃないでしょうか。その点どうお考えですか。
  127. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 原爆死没者に対する個別補償でございますが、戦争による国の不法行為は責任が成り立たない、先ほど申し上げたわけでございますけれども、こういった問題であるとか、さらに、ほかの戦争犠牲者の均衡、こういった基本的な問題を抱えておるわけであります。そういうことから、ただ、原爆被爆者に対しましては、原爆二法に基づきまして、被爆者が受けた放射能による健康障害という一般の戦災者とは異なる特別の犠牲に着目して、保健、医療、福祉、各般にわたって対策を講じておるわけでございますので、御理解を賜りたいと思っております。  なお、先ほど先生から御指摘がございました原爆死没者の慰霊等の施設でございますけれども、学識経験者によって構成されております懇談会においてただいま御検討をいただいておるわけでございます。昨年の十二月には中間報告をいただいたところでございまして、今後この報告を踏まえまして施設の建設を進めてまいりたい、このように考えているような次第でございます。
  128. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 これは絶対に納得できない御答弁であります。今後、党を挙げてこの点は追及もし要求もしていきたいというふうに考えております。  ところで、平成七年の国勢調査の時点で四回目の被爆者調査実施する計画でしょうか。
  129. 谷修一

    ○谷政府委員 原爆被爆者の実態調査につきましては、昭和四十年度、五十年度、六十年度というふうに実施をしてきております。平成年度がちょうど十年目、六十年度から数えて十年目というようなことになるわけでございますが、七年度にこれを実施をするかどうか、これは今後の課題として検討してまいりたいというふうに考えております。
  130. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 ぜひ実施をしていただきたいということをお願いしておきます。  次に、先ほども御答弁がございました、国民の納得が得られるかどうか、あるいは一般の戦災死没者との均衡、さらには受忍論まで飛び出しているわけですけれども、こうした点についてお尋ねをしたいと思うわけです。  実は、援護法の促進決議を行った地方議会、どのくらいあるというふうに把握されてますか。
  131. 谷修一

    ○谷政府委員 援護法についての議決を行った地方議会の数、私どもの調査ではございませんが、被団協の資料では約二千三百議会というふうに聞いております。
  132. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 そのとおりですね。四月二十日現在、二千三百六十一議会、住民人口一億五百万ということです。これははっきり言って国民の合意が成り立っているというふうに思いませんか。
  133. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 ただいま局長から御答弁を申し上げましたように、多くの議会においてこういう制定決議が行われておることは事実として承知いたしておりますけれども、国民の合意がこれによってなされているかどうかということにつきましては、大変主観的な判断もあるわけでございますので、一概に、これによっていわゆる援護法そのものが直ちに促進すべきだというように判断を下すことはできないのではないか、このように考えております。
  134. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 先ほども申し上げたとおり、二千三百六十一議会、住民人口で一億五百万、こういう自治体の決議、住民の総意についてどうお考えですか。
  135. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 それはそれとして大変重いものと受けとめております。
  136. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 大臣言われたとおり大変重いものなんですね。そういう立場で改めて検討をしていただきたいというふうに思います。  そして、実を言いますと、衆議院議員で賛同署名をされた方が三百四十七名、六九・七%に達しております。また、参議院議員では百六十四名、六五%に及んでおります。これだけの過半数を超える国会議員が、衆参議員が賛同署名をしておるわけですよ、援護法制定について。この点についてはどうお考えですか。
  137. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 この援護法につきまして賛同の署名を受けている方々に私自身からいろいろ援護法の内容等について御説明を申し上げましたら、中身をよく十分に御理解をいただかないで賛同している方もいらっしゃる、これも紛れもない事実でございまして、その辺のところは大変難しい問題ではないかな、このように考えている次第であります。
  138. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 今の、国会議員に内容がわからないで署名した人もいるといったような答えは取り消してくれませんか。これは国会議員に対する侮辱になりますよ。
  139. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 私は、あくまでも一般論として申し上げたわけでございまして、例えば援護法でうたわれております原爆死没者の遺族に対しても補償を行うこととか、あるいは被爆者全員に障害の有無にかかわらず年金支給することとか、こういうことを私自身が御説明を申し上げたとき、そういうことは私は気がつかなかったというケースが幾多あったかという事実を私は申し上げただけでございます。
  140. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 そういう方も一、二いたかもしれませんけれども、先ほど申し上げた衆参国会議員は十分承知をした上でこの賛同署名をしているのだということを改めて認識をしておいていただきたい、こういうふうに思います。  地方議会の一つでありますけれども、私が長年東京都の職員をやり、都議会議員をやっていた立場で関連してお尋ねするのですけれども、先ほど来一般戦災者との不均衡論というのが出ていました。東京都民は東京大空襲という大変な被害を受けているわけです。その東京都民を代表する東京都議会が全会派一致して援護法の促進決議を行っているわけですね。東京都民すべての賛同を得ていると言っても過言ではありません。東京大空襲を受けた東京都民の合意が既に得られている、これだけでも一般戦災者との不均衡論というものは通用しないのじゃないでしょうか。その点どうお考えでしょうか。
  141. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 都議会においてもそのような決議をなさっていらっしゃる、こういうことから御質問いただいたと思っておりますけれども、東京大空襲で私の関係者も多数亡くなっておりますけれども、それが軽くて、そして広島においてあの残酷な、残虐ないわゆる原子爆弾によって犠牲者になった方が重い、こういうことを一概に決めつけるということはまさに不均衡なことではないか。やはり何事にもかえがたい一度限りの人生において生を失ったという重さにおいては全く同じことではないか、このように私は認識をいたしておるような次第であります。
  142. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 東京都民や都議会の気持ちといいますか、決議の趣旨というものを曲解されていると思うのですね。東京大空襲だけじゃありませんけれども、たび重なるこうした空襲で被害を受けた東京都民が、東京都議会が、まずは援護法の制定をやりなさい、こう国に要求しているわけですよ。今の御答弁じゃちょっと納得できません。もう一度ひとつお答えいただきたいと思います。
  143. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先生の御主張、御意見、それは十分に私ども承っておりますけれども、私どもも、先ほどから先生から御指摘がございましたように、東京大空襲において被害を受けた方々、それによる死とそれから広島の原爆による死、それによって死の重い軽い、こういうことを論ずること自身が大変難しい問題ではないか、このような認識に立つものであります。
  144. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 論じているのはおたくたちの方なんですよ。私たちは、どちらが重いとかどちらが軽いなんていうことを一言も言っていないです。そんな考えは毛頭持っていないです。一般戦災の戦没者も平等な扱いをしなさい、国の戦争責任の結果生じた被害ですから同じようにやりなさいと言っているのですよ。  そして、そういう中でも、今申し上げたように、地方のほとんどの議会あるいは衆参の両国会議員、たび重なる大空襲を受けた東京都民、この人たちが、とにもかくにも被爆者援護法を早急に制定しなさいと言っているのですよ。大臣の言っている感覚とは全く違うのです。正しく認識をしてもらわなければ困るのです。そういうことについてどうお考えですかと言っているのですから、一般戦災者と原爆の被害者とを無理に区別をしたり、どっちが重いか軽いかをやっているのはおたくたちなんですよ。私たちはそんなこと一回も言っていませんよ。そういう不均衡論とかいうことが誤っているからそういう矛盾した御答弁が出てくるのです。いま一度言ってください。私の言っていることに対して答えてください。
  145. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどから私が御答弁、さらに局長が申し上げておるわけでございますけれども、戦争というものは、これはもう大変、だれがいいとか悪いとか、そういう問題ではない状態でありまして、先ほど、すべてがひとしくと局長が御答弁を申し上げたらおしかりを受けたわけでございますけれども、いろいろな形でそれぞれの方が、言葉には言い尽くせない痛み、苦しみ、悲しみ、こういうものを強いられておるわけでございます。  ですから、問題は、私は、戦争そのもの、再びあのような過ちを犯してはならない、平和への永遠の誓い、これが何よりも、後世に残された私どもの政治家としての責任ではないか。この原則に立って——実際問題、今から半世紀前に戦争が行われて、数多くの皆さん方、みんなさまざまな犠牲を受けたわけでございますので、この問題については、先ほど申し上げましたように、高度な政治判断、誤った政治判断からこのようなことが起こったわけでございますけれども、この法律上の責任は成り立たない、こういうことであります。  くどいようでございますが、原爆による被害者に対しましては、私どもは、これはもう原爆という大変残虐性があって、いろいろな意味で、放射能という大変特殊な被害を受けた方々でございますので、こういう方々に対しましては、医療手当であるとかあるいは保健、福祉全般にわたってさまざまな手厚い看護を行ってきておる、こういうことでございます。
  146. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 今の御答弁、先ほど来の御答弁は全く納得できません。地方議会から、衆参両国会議員から、そして東京大空襲を受けた東京都民から、一億五百万の人口を代表する人たちから要望している件について、いつまでも今までのような冷たい、被爆者の本当の願いを聞き入れない、大多数の国民の要求にも反する考えということについては納得できません。どうか大臣も、被爆者援護法制定に向けてぜひ御努力をいただきたいということをお願いをしておきます。いずれこの問題は連休明けにでも国会、衆議院で論議される機会があると思いますので、我が党挙げて全力でその制定に向けて協力もいたしますし、また審議に加わっていきたいと考えておりますので、その節はよろしくお願いしたいと思います。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  147. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、志賀一夫君。
  148. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 去る四月の二十三日でありますが、秋田地裁で、生活保護費受給者が保護費や障害年金を切り詰めて蓄えた預貯金を資産と認定して保護費を削った福祉事務所長の処分の是非が問われた行政訴訟の判決が、二十三日午前秋田地裁で言い渡され、山本博裁判長は、こうした預貯金について、最低限度の生活を下回る生活をすることよって蓄えたもので、その分の保護費を減額することは本来的になじまず、被保護世帯が一定の預貯金によって将来の出費に備えることもある程度是認せざるを得ないとの判断を示したのでありますが、この判決について、新聞報道によりますと、厚生省保護課の話では、「判決文を読んでからコメントするが、報告を受けた限りでは遺憾としかいいようがない。」こういうふうな記事が載っかっておったわけでありますが、まあこの判決といい、この内容といい、全く普通の国民の皆さんが涙なしては聞けないような実態でありますけれども、この判決について厚生省はどのように今後対応する考えなのか、お聞きをしたいと思います。
  149. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 私も実はまだ正確な判決文は読んでおらないわけでございますけれども、これは、被告は秋田県の福祉事務所でございます。御案内のように、生活保護世帯のいろいろな指導につきましては、ケースワーカーの方々がそれぞれ実情に応じて個別的に指導をして適正化を図っておる、こういうことでございます。今回のケースは、その対象者の置かれた立場や、まあ新聞報道等によりますと将来の不安のために生活を切り詰めて蓄えていった、こういうような状況でございまして、先生が御指摘のように大変お気の毒であり、私自身も個人的には胸が痛む思いがいたしておりますので、これまで生活保護のあり方といたしましては、この預貯金の問題でございますが、半世紀近い生活保護の基本的な原則の問題として、この預貯金は認められない、こういうような基本的な考え方に立って行政指導をしてきたことは紛れもない事実でございますけれども、生活保護費を切り詰めたことを一概にけしからぬと言えるのかどうか。今後の対応につきましては十分に考慮しながら、率直に申し上げまして現在大変苦慮いたしておるところでございます。
  150. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 この新聞報道によりますと、本当にわずかな保護費生活大国と言いながら、いただいているわずかな保護費をあすへの心配のために本当にサバ一匹を二人で三日かけて食べだというような状態で、本当に切り詰めた生活をしながら将来の生活への不安からこういう貯金をしたということ、これで、この記事によりますともう何回も裁判を続けているわけでありますが、この事実を見まして、もし我が国が生活大国と言って胸を張っているなら、外国から見たらば、北欧諸国の福祉大国から見たらば全く恥ずかしい限りのような事実だと思いますし、これが、そういう保護費の一定の規制措置があったとしても、むしろ国の施策が不十分なためにそういうことまでしなければならない生活保護者の心情に触れるならば、私は、これはもうここで争うことをやめて、その実態を裁判の決定どおり認めてやるべきだ、そんなふうに思っているところであります。  また同時に、テレビがあると見れないというときもかつてはあったんですが、今どうなっているかちょっと定かでありませんが、ちょっとした資産があってもこれまた生活保護の対象にならないというようなことがあります。山が五アールあっても三アールあっても、資産があるからその対象にならないというそういう法律では、やっぱり私はこういった実態、もう今までの生活のレベルが丸々変わってきているわけでありますから、そういう中で当然生活保護世帯もそれに応じて、いろいろな規制等についてもやはり見直してやるのが当然なことでありますから、そういう見直しの方にこれから厚生省としての努力をしていただいて、この事実は率直に、もうこれ以上この老夫婦をいじめないようにしてほしいものだな、それがやはり日本の生活大国としての、胸の張れるほどのことでもありませんけれども、しかしそれに値する当然の処置ではなかろうかと思いますので、このことについて改めてもう一度御答弁のほどをお願いしたいと思います。
  151. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず御理解を賜りたいのは、この生活の保護者が指摘をしておりました医療の問題であるとかこういった問題については、医療費補助という制度がございます。それから、我が国の医療体制については十分満たされておる、これに対する問題につきましては、十分に環境は整っておるということでございますので、その点については、私どもはちょっと事実と異なるのではないかということであえて申し上げさせていただきたいと思っております。  ただ、今回の問題は、御案内のように生活保護費の中から切り詰めて要するに蓄えていた、こういうことでございますけれども、これまでの生活保護費のいわゆる指導といたしましては、基本的にはあくまでも足りなくなった分を補っていく、こういう立場で行ってきたこと、これも事実であります。しかし、先生が先ほどから御指摘賜っておりますことも私どもといたしましては十分に理解ができる部分もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、あくまでもこの問題の被告は秋田県でございますけれども、相談をいたしまして結論を出すよう事務当局に指示いたしておるようなところでございます。
  152. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 大臣も十分御理解をいただいておるようでありますから、このことについては、もう本当に議論の余地はないのではなかろうかと私は思いますので、十分検討されて、しかるべく、今後とも係争をやる必要がないという事態にしていただきますように、特段のお願いをしたいと思います。さらにまた、やはりこういう思いをしてまでやらなければいけないような欠陥、そういうものがあるとすれば、今の福祉政策の欠陥とも言える部分があるのやもしれませんので、そういう点についてはやはりもう一度見直しをしていただきたい、そういうことを強調いたしまして、次の課題に移りたいと思います。  会計検査院から平成元年決算についての説明の中に不当事項として九十一件の御指摘がありましたが、実は私も相談を受けた件があります。全く身の不自由な方が障害年金をもらっておったのですが、国の方で過って、たしか、定かではないのでありますけれども、もう五年先まで過払いをした。過誤の行為だと思いますが、その金額が二百万円、その人はそれで過払いされてわからないから使ってしまった。ところが国の方から、あれは過誤でありますから返してください、こういう通知がありまして、その方が気をもんで親戚からお金を集めたり、あるいはサラ金までも金をお借りして、そして二百万円余という大金を国の方に払ったわけであります。  周囲の心配する方々が、サラ金問題等でもしものことが起きたら大変だということで、私の知人を通じて紹介があり、そしてお話を申し上げて善処をしていただいた経過もありますが、まあ厚生省の方でも件数が大変多いのでいろいろ過誤を起こす場合もあろうかと思いますけれども、こういうことがないようにやはり十分な検査をされて指摘をし、さらに厚生省自体としてもそのような過誤を犯さないような行政をきちっとやっていくべきだろうというふうに考えますが、それぞれお伺いをしたいと思います。
  153. 小川幸作

    ○小川会計検査院説明員 お答え申し上げます。  会計検査院指摘に対しまして、指摘の対象となりました、例えば年金受給者の方が指摘金額を返還するかどうかという問題につきましては、私どもから直接そういうような問題を指摘するわけではございません。私どもの指摘は関係部局に対して申し上げまして、そして関係部局が本人の負担能力を考慮しながらそれに適した方法で、もし返す必要がある場合は返していただくというような方法を採用しているものと考えております。
  154. 土井豊

    ○土井政府委員 直接私の所管ではございませんが、担当者が参っておりませんので、お答え申し上げたいと思います。  年金の誤払いの問題だと思いますけれども、社会保険庁の業務センターにおきまして法の規定に照らして適切な対応がなされるものと考えておるところでございます。
  155. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 私は、相談を受けて、そういう通知をちゃんと見て、そしてこういう例もありますから今後注意をしていただきたい、こういうふうにお話を申し上げているのに、そういう鼻でくくったような答弁は、ちょっとおかしいのじゃないですか。
  156. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 これは個々の個人個人のケースの問題でございまして、そういった問題、いわゆるプライベートの問題につきまして私どもがとやかく申し上げることは適当でないと思っております。
  157. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 個々の問題ではなくて、一つの例を挙げて、具体的な私が直接あずかって相談を受けた事実について一つの例として申し上げたので、その例でそういう過誤がないようにきちっと行政をやってほしい、こう申し上げているわけですから、また大臣の答弁もおかしいのじゃないですか、そういう答弁の仕方は。
  158. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 いずれにいたしましても、そのような過ちがないよう今後十分に注意していきたいと思っています。
  159. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 次に、平成四年六月、行政監察結果報告についてお聞きをしたいと思います。  運営費の運用の適正化についてであります。一つ、措置費は、原則として施設種別、定員規模別に一律に支払われるという性格上、過不足が生じがちであることから、給与の公私間格差是正を図るという観点から、昭和四十七年に創設した民間施設給与改善費を施設職員の平均勤務年数に比例して交付することにより運営費の不足に対処してきたとあるが、公私間あるいはまた自治体間の格差は現実にあるようでありまして、その内容について、指摘した内容についてお伺いをいたしたいと思います。
  160. 丸岡淳助

    ○丸岡説明員 先生御指摘の行政監察、社会福祉法人に関して運営費の運用についての勧告でございますが、これは御承知のように現在、措置費の支弁につきましては、施設職員の勤続年数等を一律にしてやっておる。それではなくて、例えば施設職員の勤続年数をできるだけ考慮したものになるように支弁方法の改善について検討するよう、それからもう一点は、措置費が大半を占める施設運営費の繰越金の発生というのが監察の結果多々見られたということでございまして、これが今申しました、原則として施設種別、定員規模別に一律になっている措置費の支弁方法が一因でなっているのではないか。これについては、施設職員と施設運営の実態に応じてきめ細かな支弁方法を検討するようにというような勧告を行ったわけでございます。  この勧告につきまして、繰越金が発生しておる法人等が多々見られたわけでございますが、その原因といたしましては、経営努力、それぞれの施設法人の経営努力の要因というものがあるとともに、今先生が御指摘した現行の措置費の支弁方法が施設種別ごと、定員規模等で一律に行われているということが一因ではないか。それで、この施設措置費の大半を占める人件費については、各施設の職員の実態に即応した、例えば職員の平均の勤続年数、これが低い場合には、一律に決められておるものより非常に給与費が助かりますので多額の繰越金が累積するというようなことになる。また、高い場合には欠損金が出るということでございまして、この現行の措置費の支弁方式をよりきめ細かに、例えば三段階に分けるというような方法で改善をするように勧告したというものでございます。
  161. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 運営費の弾力的運用を図るため、五十六年以降、運営費の一部を本部会計に繰り入れて、法人負担が原則である施設の整備に係る経費に充当することを認めるというふうに書かれてありますが、その場合はどのようなことを言っているのか、お聞きをしたいのであります。  また、普通の場合、給与費を考えただけでも運営費の不足を来しているというふうに聞いておるわけでありますが、その場合、処遇の低下を招くのではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  162. 丸岡淳助

    ○丸岡説明員 運営費の弾力に伴う施設会計ということでございまして、これは一応施設会計措置費とかそのようなものが適正に行われた場合、余った場合については本部会計運営費を繰り入れるというようなことになっておるわけでございますが、監察した結果、適正な運営が確保されているかどうかというのが明らかでないにもかかわらず本部会計に繰り入れを行っておるというような不適切なものが見られた。これによりまして都道府県で適正な施設運営が確保されているかどうか、法人から報告書に基づいて厳正に審査、確認の上やるわけでございますが、それがどうも適正に行われていないということで指導をした。  これによって処遇の低下をもたらすのではないかという先生の御指摘でございますが、適切な運営が確保されていないのにかかわらず本部会計に繰り入れるというようなことでなくて、より職員の処遇とかそのようなあれにきめ細かにきちんとした処遇をすれば、このような本部会計に繰り入れるというようなことがなくて、それだけ施設職員の給与の適正な支給改善が行われるというような観点からの報告でございます。
  163. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 どうも余り理解のできないような御説明ですが、時間がありませんので、先に進みたいと思います。  処遇は人なりと言われる社会福祉施設において、平成二年繰越金が、三十都道府県において多くの施設で高額の繰越金を出しており、その原因は、入所者の処遇が不十分と見られるもの、職員処遇が不十分と見られるものとして指摘しているようでありますが、この辺の事情についてお聞きをしたいと思います。
  164. 丸岡淳助

    ○丸岡説明員 先生御指摘の高額の繰り越しで処遇が不十分などのようなものがあるかということでございますが、一応三十都道府県調査した結果、例えば平成元年度の繰越金が、これは老人福祉施設でございますが、一千七百十二万円あった。これは収入決算額の一二%を占めるわけでございますが、累積でも六千八百六十二万円でございますか、同じく収入決算額の四八%に達するということでございますが、それの例えは入所者の処遇が、措置費、事業費の執行率で見ると八二・五%にしかすぎなかった。また、職員の処遇を見ると、これが例えば五十九年度以降給与費を据え置いたままで支払っておるというような例が見られた。  それからもう一件、これは同じく老人福祉施設の例でございますが、これは平成元年度の同じく繰越金が四千百六十万ということで、これは大きい施設でございますので、収入決算額の八・八%ということでございますが、これは累積額は一一三%と非常に多額に上るわけでございますが、これも同じく執行率が、六十二年度が八〇・八%、六十三年度が八五・六%、また平成元年度も八八・二%と常に低いというような状況。また職員の処遇等も非常に低い給与で据え置いていた、本俸、そのような例、大体このような感じで、人件費及び措置費、それの執行率が非常に悪いというような形でこのような高額の繰越金が出たというような事例でございます。
  165. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今日の社会福祉施設入所者の処遇が不十分だ、職員の処遇が不十分だというような指摘を受けていることは、やはりこれは厚生省自体がこういうことがないように、ひとつ十分留意して今後の指導をぜひ強めていただきたいということを強調しておきたいと思います。  次に、今日社会福祉の公的負担の増加は、福祉先進国の例を見るまでもなく、当然の使命として一般的に認識され推進されているところでありますが、そのような視点からいえば、基本財産の取得、維持及び経営活動に係る経費についても、善意の寄附に依存する法人の役割を肯定しながらも公的部分の負担を今後増していくというのは、今日の当然の社会的、国家的要請ではないのか、そんなふうに私は思っているところであります。  ところで、民間法人施設が老朽化したために改築する場合、事業団等でやっているものは全額国、地方団体で改築されるが、民間法人の場合は仮設費でも、あるいは取り壊し費についてもみんな自己負担だ。こういうようなことでは大変だな、私はそういうふうに思っているわけでありますけれども、年数がたって、こういう老朽化した民間施設をやる場合に、仮設は、子供さん方を移動して一時仮家をつくるとか、あるいはその取り壊し費用とか、こういうことについてやはり国あるいは地方団体で応分の負担をして協力をするというのは当然ではなかろうかというふうに思うんでありますが、いかがでしょうか。
  166. 土井豊

    ○土井政府委員 民間の社会福祉法人における老朽化した施設の改築の場合の取り扱いの問題でございますけれども、先生御指摘のとおり、国庫補助の対象として現在までのところ、仮設費は認めないという取り扱いに相なっているところでございます。国庫補助二分の一、都道府県補助が四分の一、残りの四分の一が法人の自己負担という仕組みで運営をいたしておりますが、この自己負担につきましては、社会福祉・医療事業団体の低利融資の対象にしているところでございます。  なお、老朽改築の場合は、一定の条件のもとで元本も一部免除する、あるいは無利子融資をするというような有利な条件も適用するということにいたしております。それからもう一つ、一定の国庫補助基準額の割り増しという形で、融資対象事業も若干大きくするというような仕組みもとっておりますが、今後御指摘の点は検討してまいりたいと考えます。
  167. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 前段で私が申し上げたように、いわゆる社会福祉の公的な負担は年々増大している。福祉国家を我が国も志向する方向で、ゴールドプラン十カ年戦略もつくっているわけでありますから、そういう中で徐々に、そういった民間の福祉施設が全員の御協力をいただくのは結構だけれども、より以上に、国、県、地方団体が負担をしてやはり負担の軽減を図る、こういうのは当然のことでありますから、特に取り壊し費用とか、子供たちが、ある家ができるまで一定期間、かなり長い期間施設がなくなるわけですから、そこに仮設の宿舎なり、あるいは遊ぶ場所、そういうものをつくってやるというのは当然のことだし、相当な金がかかると思いますので、今後ともいろいろな角度から十分検討して、可能な限り援助をすべきだ、こういうふうに思いますので、そういう点について大臣はどのようにお考えになっていますか、ひとつ参考までに。
  168. 土井豊

    ○土井政府委員 ただいまも申し上げましたとおり、いろいろな事情につきましては私どもも理解できるところでございますが、例えば国庫補助基準額を上回りまして低利な、有利な融資を借りられるようにするとか、いろいろな可能な手だては講じているところでございまして、なかなか難しい問題でございますので、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。
  169. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 そういう答弁では、検討すると言うのなら検討を待つほかないわけですけれども、やはり先ほど申し上げたような意味では可能な限り財政負担をして軽減をしてやる、こういうことで今後とも努力をしていただきたい、そういうふうにお願いしておきたいと思います。  次に、福祉支出は、年々重度化、高齢化が進んでおりますのに、それに対応した職員の配置がない。重度加算をしているといっても、果たして十分な加算がされているのか、そういう点ではやはり私は疑問だと思いますので、この辺について明らかにしていただきたいと思います。
  170. 土井豊

    ○土井政府委員 福祉施設によりまして高齢化、重度化という傾向が出ていると私どもも考えております。そして、そういったものに対応いたしまして、特に重度化の場合には介護需要といったようなものが通常の場合に比べまして大きくなる関係上、その施設の職員の配置基準に加えまして、一定の条件に該当する場合には重度加算等の加算を行うという形で個々の施設に対応をお願いしてきているところでございます。
  171. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 重度加算をしているという言い方が私にとってはなかなかくせ者だと思っているんですね。それぞれの施設では、重度加算というのは算定根拠が極めてあいまいだし、不安定な措置だ、こういうふうに受けとめておるわけですよ。ですから、あるときにはある程度需要を満たす程度来るかもしれないけれども、あるときには極めて少ないものしか来ないという事態にある。それから、今重度加算をいただいてパートや臨時雇用でやっても、十分施設での正規の職員と同じような対応はできない。そういう能力もないわけですから。そういうことになってきていますし、こういう極めて厳しい仕事には最近はだんだんと寄りつかなくなってきている、希望者が少なくなっているという現実もあるわけであります。  さらに、重度加算というと、IQの三〇以下という知能指数だけでは、やはり加算は本当にそれに応じた、実態に即した対応ではないと私は思うのである。ある私の知っている施設では、五十人の程度の精薄施設の中で、実は精神衛生法によってやるべき子供が三十人もいるわけである。こういうものはIQだけの算定ではできない。それに算入しないわけでありますから。そういう要素も多分に施設にはあるということを考えれば、重度加算というだけで処理をするというのは適当ではない、こういうふうに私は思うわけです。いかがでしょう。
  172. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 重度加算についてのいろいろなお尋ねでございますが、私ども、一つの例として精神薄弱者の更生施設を例にとって御説明させていただきますと、平成年度の場合に在籍六万名のうち約三万九千名の方について重度加算を欲しいという協議がございまして、そのうち三万二千八百七十名ほどについてこれを承認しております。したがいまして、承認率といいますのは八三、四%ぐらいになっているわけでございますが、この重度加算につきましては、先ほど御指摘がありましたとおり、知能指数がおおむね三五以下と判定された方々を対象にしまして、現在のところ二五%加算ないしは三〇%加算といったようなことをやっているわけでございまして、この加算も、実は制度ができました昭和四十年代の初めごろには二〇%加算であったものを逐次引き上げまして、二五、三〇となってきたという経過もございまして、私どもは、重度化の進展という傾向を十分踏まえながらも、可能な限り施設の方々がその重度化に対応して、職員の確保あるいは処遇ができますように努力してきたつもりでございますけれども、これからも引き続き努力をしてまいりたいと思います。
  173. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今私が申し上げたように、重度加算をIQということでのみ考えているわけですね、対応しているわけですね。それに該当しない子供がいる施設がたくさんふえているということです。だから、それだけではなくて、もっと別な角度から考えなければいけないのではないか。  要するに、この前、施設に対する職員の基準定数というものを、五十一年度では一日九時間の拘束時間であったものを八時間にした、それが、五人に一人から四・三人に一人というふうに変えたわけですね。現実に今、四十八時間から四十二時間になって、五十一年以降現在まで十七、八年になりますか、その間、最低基準を変えていくということをなぜやらないのだろうか、私は不思議に思っているのですよ。重度加算はあってもいい。しかしやはり原則は原則ですから、最低基準を変えてやっていくというのが施設の適切なる管理のあり方ではないのかということを考えれば、この前も私御質問申し上げたけれども、なぜ基準定数を改定しないのか、こういうふうに言わざるを得ないのですが、いかがですか。
  174. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 先ほど申し上げましたとおり、重度の判定は原則的には知能指数三五以下ということで行われておりますけれども、例外でございますが、例えば強度の弱視を含む盲の方、あるいは聾の方、あるいは肢体不自由の児童の場合にはおおむね五九以下でも対象にできるという弾力規定もございますので、私どもは、確かにIQだけでいいのかどうかということについてはいろいろさまざまな御議論があろうかと思いますが、関係者の方々の御意見も聞きながら、現在弾力化している知能指数おおむね五九以下の者で例外的に認められる者、これだけで十分かどうか、よく検討してみたいと思います。  それから、お話のように、最低基準については昭和五十一年に直して以来、基本的な改正はやっていないわけでございますけれども、ただそのかわりに、年休代替要員の改善を図るとか、いわゆる四十八時間体制から今日では四十二時間体制になっておりますが、業務省力化等勤務条件改善費といったようなものをお願いして、少しずつ予算をふやすという努力をして施設の希望にこたえてきているというふうに考えております。  しかしお話のように、もう数十年たったんだから、省令によるいわゆる施設基準、最低基準を直してそこに反映した方がいいのではないか、こういう御意見があることは十分知っておりますけれども、施設側とのいろいろなお話し合いをしてみますと、最低基準というものは御案内のとおり一律に適用される性質のものでございますので、施設においては、その個別具体的な施設の事情に応じて、経営者が最も効果的と思われる使途に柔軟に充てた方がいい、そういう希望も実はあるわけでございます。  私どもは、常勤職員の増員というところに限定するだけではなくて、非常勤職員の雇い上げや省力化のための機械の購入、あるいは施設経営者の方々が適当と思う方法で、この重度加算で配分されるいわばプラスアルファの資金を使いまして、施設の職員の方々の処遇改善あるいは入所者の処遇改善につながるようにやっていただくという考え方で今日まで実は、省令への反映といいますか、最低基準の改定というのはやってこなかったわけでございますが、せっかくの御指摘もありますので、施設経営者の方々の団体である経営協などとも今後よく意見交換をしてみたい、こう思います。     〔委員長退席、前田(武)委員長代理着席〕
  175. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 法律では最低基準の制度がありまして、その中でこういった基準を決めておるわけでありますから、それがある以上、先ほども指摘いたしましたように、重度加算ということは極めて不安定な要因があるという私の指摘、そのとおりだと思うのでありますが、そういうことからいえば、法律にあって、その差が大分できているわけでありますから、当然変えるというのが、法律を執行する立場にある厚生省としては当然のことではないかというふうに私は思うので、この件については改定しますということは、どうです、大臣、あなた言えないのですか、当事者として。
  176. 土井豊

    ○土井政府委員 現行の社会福祉施設における職員の配置基準でございますが、先生御指摘のとおり、かなり以前に設定されたものであるというのはそのとおりでございます。その後、職員の勤務時間を短くするとか、あるいは、先ほど来御指摘がございました重度加算等々の、現実に対応した手当てを講じて今日に至っているところでございまして、現在のところ、そういった運営を私ども続けていきたいというふうに考えているところでございます。したがいまして、お話がありました最低基準自体の見直しということについては、今日のところ、私どもとしては考えておらないところでございます。     〔前田(武)委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 あなたは全く、そういう言い方ばかりしているんですね。ちゃんと最低基準というのを法律にのっとって決めているわけでしょう。それなのにそういう言い方というのはない。重度加算にしろ、それから、名前を忘れましたけれども、給与の暫定的な金を出しているよというような説明もありましたが、そういうのはあくまでも暫定的な措置で対応しているというにすぎないわけですね。だから、最低基準というものが法律的に決まっている以上は、それをやはり実情に即して変えていくというのが当然じゃないですか。だからこそ、五十一年度では九時間であったものを八時間に変更したというのは、そのために変更したのでしょう。同じように、一週四十八時間から四十二時間に変えたというのも、同じレベルで六時間減にしたんですね。  そういうことですから、当然にしてそれはその後の措置として最低基準を変えていく、これは原則じゃないですか。これは後でよく検討してください。そういう答弁では納得できませんね。  それから、時間短縮で、これは各施設が行政、地方自治体から、職員の時間短縮をやりなさい、あるいは安全を守る立場から夜間の職員を手厚くしなさい、こういうふうな行政機関からの要求が、指導があるというふうに聞いているわけでありますが、そういう中でやはり、予算はつけない、職員はふやさない、処遇は落とさないという、こういう三無主義の中に工夫してやれといってもどだい無理な話だと私は思うのでありますが、隔週ごとに五日制になった結果として、それだけ施設に子供がいる時間が多くなっている。これは精薄児童施設についてでありますが、そうすると、施設の職員にとっては過重な労働になるわけですけれども、この面についてはどんな対応を考えてやっていますか。お聞きしたいと思います。
  178. 土井豊

    ○土井政府委員 お話がございましたとおり、福祉施設に働く職員の時短の問題、あるいは、業務の困難性に基づく特別の手当の問題というような御指摘がございました。  私どもも、時短の問題につきましてはこれまでも努力してまいってきたつもりでございますが、さらに当面の目標であります週四十時間問題というものに取り組んでまいりたいと考えておりますけれども、今日の段階では、週四十二時間ということで平成年度予算を組み立てているところでございます。  なお、その場合に、実際の内容といたしましてはへ週四十八時間と週四十二時間の差の六時間分につきまして、非常勤職員の賃金分、この分を措置費という形で各施設にお金が行くようにする。それで、そのお金を使って、業務省力化等勤務条件改善費という呼び方でございますので、そういう趣旨で施設において適切な使い方をしていただくというような形で、必要な措置を講じてまいっているところでございます。地方団体における問題等もございますけれども、私ども、こういう形で今後とも努力をしてまいりたいと思います。
  179. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今の説明ではちょっとわかりませんね。既に月二回くらいはやはり普通の学校と同じように土曜日はお休みだということになっているわけでしょう、実施しているわけでしょう。そうすると、養護学校もそうなっているわけですね。今はそういうふうになっていないのですか。じゃないと、なってないとすればいいんですけれども、なっておるというふうに私は聞いているわけです。そうすると、その分、施設の職員は余計、時短というよりも、逆に長時間子供たちを見なければならないという状況に追いやられるわけですね。それをどう受けとめているのですか。
  180. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 ちょっと御質問の趣旨と違ってしまっているかもしれませんが、従来から、四十二時間勤務体制というものの中では、土曜日、日曜日を含めた週の勤務時間ということでございますので、養護学校の方が土曜日に休むような状態になってきたということによって、特にその分を反映した何らかの具体的な措置ということは、現在やっていないわけでございます。
  181. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 まあ、現実には私はそういうようになっているというふうに聞いているわけですね。ですから、今の答弁では受けとめることはできないというふうに思います。よくこれから検討してください。  それから職員配置数では、養護学校の施設も民間の福祉施設も同じですね。それで、養護学校では、教育、文部省の管轄ですけれども、しかし、一日子供たちが行って学んでくる時間は五時間、福祉施設の方は十九時間、子供たちの相手になっているわけですね。そうしますと、その上で給与は低く、土日もない、祝日もない、夏休み、冬休みもないというふうに、非常に多忙な中に暮らしている。あるいはまた、児童指導員はやはりちゃんと小学校、中学校、高校の教員の免許を持っていなければならないということにもなっている。そういう条件下にありながら、なぜに教育サイドと厚生省のサイドではもう極端な差があるのだろうか。それではやはり、待遇が余りよくない民間に今後福祉職員が、優秀な職員がふえるということはあり得ないというふうに思うわけですが、こういう格差を是正するためにどんな考えをお持ちですか。お聞きをしたいと思います。
  182. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 お答えいたします。  まず、養護学校が義務教育化された時点において、非常に細かく詰めていけば、養護学校へ通う間、養護施設の方の職員保のいわば勤務状態はある意味で楽になるわけですから、そのようなときにも措置費について、例えばそれを軽減するといったような措置をしていなかったわけでして、今回義務教育の養護学校が土曜日休むような状態がふえてきたということに伴って逆に今度またふやすということもやってないというのが、これまでの姿勢といいますか、対応でございます。  しかし、御指摘のとおり、ともかくも同じ子供を対象にしているのに、養護学校の教職員の待遇と精神薄弱者施設の職員の待遇とにいろいろな格差があるではないか、そこを何とかしなければすぐれた人材の確保は難しいぞという御指摘についてはごもっともな点があろうかと思いますが、現在私どもがいわゆる福祉職給料表というふうなものがつくれないのだろうかということで、それを数年前から人事院の方に申し入れをやっておりまして、人事院の方で現在いろいろ研究をしていただいている、そういう状態でございます。
  183. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 それでは、もっとこの問題についてお聞きをしたい項目が幾つかあるわけですが、時間がもうなくなってまいりましたので、別な課題に移りたいと思いますが、とにかく民間施設は、国家公務員並みの待遇をしているといいながら、実際には、経験豊かな、もう十数年やってきた主任指導員が十九万七千七百円ということでは、非常に低い貸金だ、こういうふうに思わざるを得ないわけであります。それからまた、過重な労働とか夜勤、交代勤務、こういう三K職場というよりも六K職場くらいのような民間施設で働いている方々に対して、もっと温かい施策がないものか。福祉国家を目指すならば、これらの処遇をやはり抜本的に見直す必要があると私は思いますので、その点、強調しておきたいと思います。  最後の質問点は保育料の問題でありますが、保育所に行きまして、いろいろ皆さんから言われますのは、ベンツに乗って子供を送ってくる方々が保育料はゼロであったり、あるいは最低の千円か二千円であったりというような、ことで、そして、私たち十四、五万しかもらわないけれどもそれで目いっぱい五万何千円と取られて保育料を出していますよ、こういう方が多いわけですね。やはりこの疑問と矛盾を感じている状況をどう改善すべきなのかということを考えていただかなければならないというふうに私は思うわけであります。  サラリーマンは、もうそのままストレートに賃金が、所得がどれだけあるかということがわかるわけでありますが、しかし自営業者の皆さんは、青申あるいは白色申告もやっている方もあるだろうし、そういう中から結局赤字であるような場合にはおのずから所得も低いわけでありますから、保育料がベンツに乗ってもゼロだ、こういう事態もあるわけであります。そういう事例が非常に多いわけであります。  ですから、やはりこれは制度保育料の、保育に欠ける子供、その所得との関連で厚生省自体が一つの制度をどう改革すべきなのか、そういう不満、不平が出ないようにするためにどういう制度にすべきなのか。また、そういう角度から慎重に検討をさらに一層強めていただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  184. 清水康之

    ○清水(康)政府委員 保育料の問題につきましては御指摘のとおり、保育の現場から御指摘のような指摘なり疑問が投げかけられているということはよく承知しております。現在保護者の所得に応じた額を負担していただくという原則のもとに、いわゆる税制転用方式といいますか、所得税にリンクした費用徴収ということをお願いしているわけでございますが、いわゆるサラリーマンと自営業者の所得把握の、所得の捕捉率の差などの問題等もありまして、なかなか一般の方々の御理解が得にくい点があるということも事実かと思います。  かつてこの費用徴収につきましては、保育料を十その段階に分けて徴収しておったわけでございますが、現在ではそれを簡素化して十区分にしておりますけれども、この十区分でもなお御指摘のような問題にはなかなか対応できないということで、これからの保育所のあり方懇談会というところから先般いろいろな御指摘を受けたわけでございますが、その中にも、この刻みをもう少し少なくしていわば応益原則といったようなものを加味していくことも一つの方法ではなかろうかといったような御指摘も受けておりますので、私どもはこれから、現在、保育問題検討会というのを設置して、保育料を含めて職員配置の問題、保育時間のあり方などなど幅広い検討をしておりますので、この保育問題検討会における御審議の結果を踏まえてできるだけ速やかに何らかの改革をしていきたい、このように考えております。
  185. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 ぜひこの矛盾を解決するように御努力をお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  186. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、薮仲義彦君。
  187. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、厚生大臣に医療行政の各般にわたって質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  きょう質問するに当たりまして、ちょっと今まで厚生省にどんな質問をしたかなと思って資料を調べてみました。一番最初に質問したのが昭和五十六年、亡くなられた園田厚生大臣のときからずっと今日まで歴代の大臣に質問をしてまいりました。その主な内容は、歯科の不採算、それから歯科材料の安全性、有用性についてです。今、国民の多くの方は恐らく厚生省、丹羽厚生大臣のもとで行われる歯科行政、国民の口の中に入ってくる金属材料がまさか危険な材料は入ってこないでしょうねと期待していると思うのです。私も初めて質問したときそう思いました。当時の行政側の答弁、今読んでみまして、よくもと、こういう思いがあるわけでございますが、私はそのときはまだ余り専門的な知識がございませんでした。それから半分疑問もございまして、愛知県の愛知学院大学歯学部長の平沼先生の教室を訪ねました。東京医科歯科も訪問しました。補綴の田端教授、毒性学の専門の佐藤温重教授の教室も訪ねました。今歯科医学会長をやっておられます関根先生の東京歯科にもお伺いさせていただきました。諸先生から、行政の言ったことが正しいのか、果たしてそこに問題がなかったかどうかつぶさに勉強をし、それから十年間立て続けに質問をさせていただきました。今私はその十年の思いを込めて大臣にきちんとした結論をいただきたいと思ってきょうは質問させていただくわけでございます。  その間に思い出に残る幾つかの事柄がございました。五十四年当時、まだ厚生省の根幹となす薬事法には安全性という言葉がございませんでした。私は地元の方から、キノホルムによる、いわゆる整腸剤ですが、スモンの問題を提起されておりました。当時の厚生大臣橋本大臣に薬事法に安全性を入れるべきなどの我々の主張に橋本大臣は同意しました。改正された薬事法には、大臣先刻御承知のように、第一条にその目的が書いてございます。今問題になっております医療用具はもちろんのこと、薬剤、化粧品に至るまで有効性、安全性がきちんと第一条の目的にうたわれておりまして、国民に提供するその材料については安全性と有効性が最も重要であるとうたわれた経緯がございます。  それ以来私は歯科材料の安全性の問題とずっとかかわってきたわけでございます。が、特に納得いかないのは、昭和五十七年大分県で、後ほど大臣に資料をお渡ししますけれども、大分県でニッケルクロムの不正請求がございました。ニッケルを使用しながら金パラで請求したという不正であります。この事件が起きたとき厚生省はどういう態度をとったか、私は今でも無念の思いがございます。歯科材料を保険に導入するということはどういうことか。すべての国民の口の中に、専門家が使わないでくれという材料が全部入ってしまいます。これは非常に危険なことであります。そこできょうはその問題を集中的にやりますけれども、その前に、一昨日地元へ帰りましたら、テレビや新聞がぱあっと大臣御承知の秋田県の生活保護の訴訟を放映しておりましたし、新聞記事もございました。私は余り生活保護については専門ではございませんので新聞各紙を全部読んでみました。きょうはこのことを冒頭に、質問を変えてお伺いしたい。  ここに「切り詰め、蓄え、闘った生活保護訴訟 サバ一匹三日かけて食べ 六年で買った下着は二枚 病弱の老夫婦 入院に備え」こういう見出しで社会面に出ておりますが、各紙の論説も全部読んでみました。そこで最初に聞いておきたいのですが、質問の要点だけきちんとお答えください、時間がありませんから。不正受給ということはどういう概念ですか。生活保護の不正受給というのはどういう概念が、きちんとお答えください。
  188. 土井豊

    ○土井政府委員 生活保護の不正受給でございますけれども、生活保護法に照らして、事実関係がきちっとわかると受給できないのに不正に受給するというようなケースを指していると思います。
  189. 薮仲義彦

    薮仲委員 この加藤さんの場合は不正受給ですか。
  190. 土井豊

    ○土井政府委員 これは生活保護を既に受給をしておられる方につきまして預貯金の取り扱いの問題でございまして、不正受給という概念ではございません。
  191. 薮仲義彦

    薮仲委員 注意していただきたい。質問にきちんと答えて。このことは不正受給か適正受給がと聞いたのです。どちらなんですか。二つに一つです。
  192. 土井豊

    ○土井政府委員 不正受給ではございません。
  193. 薮仲義彦

    薮仲委員 きちんと答えなさい。不正受給でないということは、適正に受給されているのです。  そこで大臣、私はこの問題で各紙の論説をちょっと読んでみたい。ただ、ここで大臣、私は、これを控訴するな、あるいは控訴やめろということでこの論議を展開するのではないのです。この問題が提起している本質は、現在の厚生行政がこれでいいのかという問題提起なんです。だから、控訴しようとしなかろうと厚生大臣の責任は免れるものではない。ここで指摘されている多くのことは、私は社労の委員ではございませんが、私は必ず社労の先生がこの問題を解決してくれると思って問題提起だけしておきます。  ここで新聞、これは朝日の論説でございますけれども、「第一は、「役所仕事」を絵にかいたような福祉事務所の振る舞いだ。加藤さんを担当するケースワーカーは、八十万円余の預貯金を発見し、「生活保護廃止」を申し渡した。抗議すると「四十五万七千円は葬式用に凍結、残りは生活保護費から取り上げる」方針を決めた。加藤さん夫妻は医学生の解剖用に献体する手続きをしており、葬式料はいらない。墓もある。「貯金がいけないのなら、電動車いすを購入し、家を直したい。」この人の家は湿気が多くてひどいものですよ。テレビで見てみて、テーブルを重ねたところをベッドにしているのですね。なるほどひどいと思いました。「家を直したい。」そうしたら福祉事務所は、葬式以外に使うことは認めないと言った。「福祉の教科書にはこう書いてある。「ケースワークとは、様々な人のために、かれら自身の福祉と社会の改善とを同時に達成するよう、かれらと協力して様々なことを行う技術である」、これが教科書に書いてある。  きょう、厚生省から、ケースワーカーに対する指導はどうなっているのだ、私も初めて読んでみた。厚生省社会・援護局長、どなたが援護局長か知らないけれども、各県に通達が出る。ここの中の要点は、ケースワーカーの一番大事なのは、懇切丁寧に対応すること、相談内容を十分引き出して不安を取り除く。懇切丁寧な対応を行いなさい、この通達内容からいったらばどうしてこんな答えが出てくるのかなと私は不思議に思った。  また、「第二は、生活保護受給者の、あまりにみじめな生活だ。」これは書いてあることですから、非常に申しわけないけど、このとおり読みます。「八十万円の預貯金、と聞けば、最近の生活保護費の水準は高いのだな、とだれしも思うが、夫妻が受けていた生活保護費は月額七万円にも満たない。障害年金をあわせて十一万五千円ほどである。冷蔵庫も衣類も家主からのもらいもの。ポータブルトイレの代わりにバケツ。すぐ故障する電気ごたつ。ガス、水道代を節約するために入浴は週一度。食事も極度に切りつめた。」これは塩サバ問題で有名だそうですね。  これが憲法の保障する最低で文化的な生活であるかどうか、私は大臣に聞きたい。「これほどまでにして預貯金をしなければならない日本の医療行政の貧しさ」が問題である。最近、どこかの政治家が私財を蓄えて問題になっている。情けない。わずか八十万で目をとんがらかして怒っている。ああいうことを考えたら国民は許さないと思うのです。  これももっともですね、秋田地裁は、「基準看護病院でも付添婦が必要な実情の中で、この程度の預貯金は多いとはいえない。」この老夫妻は、御主人は障害ニ級ですよ。奥さんも七十歳を超えているのですよ。二人とも体が弱くなって基準看護の病院へ行っても、私もよく相談を受けますけれども、付き添いをつけてくれと言われるケースがあるのです。大臣、よく知っているでしょう。今、看護婦が足りなくて、予算委員会でうちの書記長が厚生大臣に言って、看護婦をもっとふやせ、看護婦をふやそうと厚生省は真剣になっているけれども、この基準看護すらできないのが現状じゃないですか。しかも「生活保護を断わられた札幌市の母子家庭の母親が栄養失調で衰弱死するという事件が起きたのは加藤さんの事件の二年後。」何だ、これは。  これは毎日新聞。「生活保護は「下着のような存在」」「まるで下着まではき取るような行為ではないか。秋田地裁は、加藤さんの訴えに「不健全な目的や違和感を覚えるほどの高額でない限り、生活保護費からの預貯金は許される」と、保護費カットの取り消しを命じた。」私は納得できます、この秋田地裁の判決に。「秋田県側は「特定目的のため一定限度額だけ」と、墓石購入料や葬儀代などに四十五万七千円の貯金は認めた。「生」より、むしろ「死」に重点を置くような行政の姿勢に強い違和感を覚える。基準看護の病院でも、看護・介護のスタッフは十分でない。配偶者や子に頼れない患者には付添婦を勧める病院も少なくない。」「塩サバを一切れずつ食べて三日もしのぐ」「むしろ気丈な生活姿勢ではないか。」褒めたたえていますよ。この裁判を見る限り、これは明らかにちょっとむごいのじゃないか。  まだあるのですよ。「限られた支給金さえ節約して不時の出費に備えることは、自立精神の表れとしてほめられこそすれ、非難される筋合いはない。」「本人の生活を最低限度の水準にまで回復」させなさい。これは、私は、裁判所の判決は説得力があると思うのですね。回復させなさい。そうですよ。「だいいち、老後のことを考えると、わずかな生活保護費さえ使い切る気になれない福祉のお寒い現状こそ、行政当局は反省」しなさい。  「加藤さんは六十七歳の重度身体障害者であり、介護する妻は病弱なうえ七十一歳。貯蓄の動機は「将来、第三者の介護を受けなければならないかもしれない」との不安である。わが国の福祉制度や医療体制は、これに対して「ご心配なく」と言えるほど充実しているだろうか。」全くもっともな指摘ですね。ここで総理のことが出ているのですよ。「宮沢首相は、国民が生活の場で豊かさを実感できる大国を目指すという。スローガンは魅力的だが、豊かさには程遠い人々がたくさんいる現実に、もっと目を向けてほしい。」  私の部屋に説明に来た大臣の部下の方が言いました、懸念があると。では、懸念がある実態は何なのか。不正受給のだれだれさんがどうでござい、こうでございということだと思うのでございますが、いざ私が具体的な資料を出せと言うと、出さない。委員会までに持っていらっしゃいと言っても、持ってこない。不正受給しているその中身、この新聞記事にも出ています。「八一年には、暴力団組員が不正に生活保護費を受けるケースを排除するために、資産のチェックの厳格化を通知した。これが結果的に本当の生活困窮者まで締めつけた形となっている。」新聞に出ているのです。  私は、金額の問題ではないと思う。まず、不正に受給する人が働きもしないで何だ、その方は八十万と二百万のケースを出しました。私は、八十万がよくて二百万、そんなことじゃない。本当にここにある生活保護法の精神に言うならば、まずこの生活保護法の第四条のところ、「扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われる」。いわゆる生活保護を受ける前にだれかが助けられるのだったら全部助けなさい、すべての手を尽くしても助けられなくなったら生活保護を受けなさい。先ほどの答弁のように適正にやられているのですから、これはもう生活保護はぎりりぎりの最後の支えだと思うのです。なら、私は、こういうようなケースをよく調べて、裁判なんかしなくても済むようにもっと温かく、どういう事情なのかきちんと見届けていただきいたい。  私は建設委員でございますから建設の立場から言わせていただきますと、厚生省は建設省とシルバーハウジング計画といって、高齢者のための住宅をつくろうということで一生懸命なはずです。しかも、それにはライフサポート・アドバイザーといって、ワーデンさんが東京なんかはシルバーピアと言いますけれども、高齢者の生活を介護するためにきちんとライフサポート・アドバイザーがついていて、そういうことに不安のないような住宅政策をやろう、こういうことだって、今秋田にはまだないのかもしれませんけれども、むしろ厚生省は建設省ともつと話し合って、こういうお年寄りの住宅ぐらいしっかり提供すべきであります。公営住宅というのは家賃はただから入れるのですから、公営住宅法によって。これは生活保護を受けていても入れるのです。一人でも入れるのです。  私はそういう意味で、この問題を控訴しろとか控訴するなどは言いませんけれども、私は大臣も一人の政治家として、本当に厚生行政は大臣の姿勢によって決まると思いますので、きょうここでどうのこうのということは、結論を出すということは申し上げませんが、どうかこういう問題については、具体的にケース・バイ・ケースということもあるかもしれませんが、お年をとられた方が不安のない時代こそが国民の望む時代であり、大臣が目指さなければならない厚生行政であってほしいと私は心から念願しますので、大臣の決意を伺いたい。
  194. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 秋田県におきます生活保護世帯の問題が大変大きな社会的な問題として取り上げられて、先生も御指摘のように、いろいろな報道機関において取り上げられておりますことを私ども十分に承知いたしております。  先ほどもお話を申し上げたわけでございますけれども、体が不自由な方で生活保護を受けている老夫婦の置かれた立場であるとか、また将来への不安というものから生活を切り詰めてきた、こういうようなことをお聞きいたしておりますると、まことにお気の毒で胸が詰まる思いがいたしております。憲法第二十五条におきましては、健康で文化的な生活を営む権利を保障いたしております。そして、まさにこの生活保護費で最低限度の生活保障を行っていく、こういうことでございます。  この判決の中では、いろいろなことについても御指摘を賜っておるようでございますけれども、例えば医療の問題につきましては、医療費の扶助というものがございまして、私どもは今いろいろな問題点はまだまだあると思いますけれども、我が国の医療制度というものは何人もひとしく受けられる国民皆保険あるいは自由寛容、こういう中で世界に冠たる保障を持っておる、こういうものに対する認識は異なるものでございます。  ただ問題は、いわゆる生活保護費としていただいたものを切り詰めた、そしてそれを貯金したということの議論でございますけれども、これまで私どもの指導におきましては、原則として、いわゆる生活保護の預貯金についての取り扱いは基本的な問題に関する、こういうことでございました。  そういう中でこのような今度の判決が出たわけでございまして、率直に申し上げまして、今私は対応に苦慮いたしておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、私ども厚生行政を預かる者は、国民にとってぬくもりのある厚生行政でなければならないということを常に考える、そしてまた、とうとい国民の皆さん方の税金によってこれも賄われておるわけでございますので、税の適正化というものを考える、いずれにいたしましても、国民の皆様方から御理解を賜れるような厚生行政に心がけていかなければならない、このような心境でございます。
  195. 薮仲義彦

    薮仲委員 最近、国民の多くの方々は政治に対する厳しい眼を持っています、特に金銭感覚について。昨日払、ある婦人団体の会合に行ったのです。しかし多くの方が言ったことは、このことに対して、ノンとは言いませんでした、ひどいですね。大臣、聞いておいてください。多くの婦人の方は、これを許容範囲として認めていらっしゃる。恐らく大臣の地元の御婦人の方もそうだと私は理解できる。政治家がいいかげんなことをやって不正に蓄財することは許さなくても、こうやって将来のためにやることはやむを得ないな。いろいろな評論家の方の御意見も出ていましたけれども、私は許容範囲に入っているのではないかなと思うわけでございます。  そこで、ちょっとこれで時間をとり過ぎたので問題を少し割愛させていただきたいのですけれども、一つだけ聞いておきましょう。  最近、がんの死亡率が脳卒中を抜いて死亡原因の第一位になっております。国民の多くは、厚生省、厚生大臣に対して、がん対策は万全であってほしい、こう願っていると思うのです。がんの撲滅に対する大臣の御決意を一言伺っておきたいと思います。
  196. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 私のところも大勢の肉親ががんで亡くなっておりますし、私も人一倍この問題については関心を持っております。  政府といたしましても、これまでがん十カ年戦略、こういう中で着実に実効を上げつつあるわけでございますけれども、国民にとって最も関心のある、そして今先生から御指摘を賜りましたように、大変がんの患者がふえてきておるわけでございますので、私どもといたしましては、治療の研究、さらにこれを受け入れる体制、例えば最近はいわゆるホスピス病棟というようなことで、がん患者に対して告知をして、そしてその中において残された人生を有意義に送っていただこうじゃないかといういろいろな施策が講じられておるわけでございますけれども、私どもはこのがんの問題につきましては、これからも政府挙げて全力で取り組んでいく決意でございます。
  197. 薮仲義彦

    薮仲委員 きょうは労働省並びに科学技術庁からもお伺いしたいのですが、後ほどお伺いすることとして、ちょっと次へ進めさせていただきますけれども、ここで先ほども申し上げましたけれども、私は歯科の問題に入りたいと思うのでございます。  歯科の問題に入る前に、厚生省の安全性に関する御認識をきちっと確認をしておきたい。先ほど薬事法のことを申し上げました。この薬事法の第一条は「この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、もってこれらの品質、有効性及び安全性を確保することを目的とする。」これが第一条でございます。  我々の身の回りにあります医薬品とか医療用具、これは安全性について十分この法律の適用を受けてくるのだなと私は信じておる一人でございますが、確認の意味で伺っておきますけれども、医薬品、医療用具、これの安全性については特に厳格でなければならないと思いますけれども、厚生省のこの安全性に対する認識について確認をしておきたいと思います。いかがでしょうか。
  198. 市川和孝

    ○市川(和)政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、昭和五十四年の薬事法の改正によりまして、薬事法の中に、品質、有効性と並びまして安全性の確保ということが入ったわけでございます。私どもといたしましては、もちろん品質、有効性と並びまして安全性の確保ということが非常に大事なことであると考えております。
  199. 薮仲義彦

    薮仲委員 済みません。これをちょっと質問の前に渡したいのです。これを委員長と大臣に一部ずつ渡してください。  大臣、ちょっとこれは古い記事なものですから、まあ局長はもう御承知のことでございますからお渡ししませんでしたけれども、これは見出しをごらんになっておわかりのとおり、「歯科医が”集団不正受給” 百人で五億円以上 大分県で発覚安い材料で差額取る 組織ぐるみで?」。  二枚目、「反省ゼロ開き直る」、これは毛利という方が大分県の歯科医師会長、この方は当時の日本歯科医師会の専務理事です。「みんなやっている事」安心して請求せよ」。  三枚目、「歯科医不正二百億円にも 材料すり替え全国で 生産量の三倍”使った” 金銀パラジウム合金 保険差額稼ぎ裏付け」、最後のところには「厚生省も監査急ぐ」、これが先ほど申し上げました大分県のニッケルクロムの不正請求でございます。これは明らかに不正請求なんです。ニッケルクロムはまだ当時保険に導入されていなかったのです。ですから、ニッケルクロムを保険材料として使うことはあり得ない。ところが、この大分県の場合は、歯科医師会長がむしろ開き直って、使えというような発言であります。  これが私が先ほど申し上げた歯科材料の安全性について、また発がん性について、がんについてなぜ伺ったかというと、このニッケルクロムは専門の先生方にお伺いすると、薬事法に言う安全性、有効性に最ももとる材料じゃないかな、こう思うわけでございます。  これが導入されたとき、臨床の先生も本当に心を痛められた。私の周りにも数多くの歯科の先生がいらっしゃいますけれども、本当に心を痛められました。私は、この問題がどうしてこんなになったのか、先ほど申し上げた各大学へ参りました。特に、この鋳造用ニッケルクロムというのは、大臣、御承知のように、歯にかぶせるものですね、総義歯であるとか歯にかぶせるもの、これが欠損補綴歯冠修復といって、欠損したところへ義歯を補ったり金属冠をかぶせたりします。こういうものが補綴の材料ですが、今の歯科治療の大宗を占める大きな治療方法でございます。この鋳造用ニッケルクロム合金が保険に導入されたことで専門学会の先生方は非常に心を痛めました。  しかも、保険に導入されるということは、先ほど申し上げましたように、全国の臨床の先生が全部使っていいわけです。そうしますと、全国民の口腔、口の中に入るわけです。  このことについて、この補綴学会、いわゆる先ほど申し上げた、今歯科医学会がございますけれども、会長は関根先生ですが、そこの中に幾つかの専門部会がございますが、その中に補綴歯科学会というグループがございます。そこには有名な先生方が数多くいらっしゃいます。先日、後ほど大臣に聞きますけれども、NHKのテレビに放映された愛知学院大学の歯学部長平沼先生もこの当時の補綴学会会長でした。  それで、この問題、私は平沼先生にはきょうのために数日前もお会いしていろいろと懇談をさせていただきました。それを踏まえてきょう質問するわけでございますけれども、この補綴学会の学術大会を開きました。歯科材料というのがどういう基準で導入されるのだろう。ある日突然保険に導入されたわけです。それじゃ、歯科材料について一体どういう安全の基準があるのだろう、一体だれが審査するのだろう、ここが重大な問題なんです。  これは大臣、きょう委員会では意を尽くせませんが、どうか私の意のあるところをお酌み取りいただいて、帰られたらいろいろな関係の方の御意見を聴取していただきたい。  今厚生省が歯科材料を承認するときにJISの規格というのがあります。ジャパニーズ・インダストリアル・スタンダードです。これは御案内のように、日本の工業標準化法によってできた法律です。これは私もJISの工場を承認を取った経験がございます。その工場で同じ品質の製品がつくれるということが基本にあります。例えば合金ならば、何が何%、何が何%、一つのロットの製品は均一の製品ができてくる。そうしますと、JIS認定工場になる。今歯科で採用しているのにJISがあるのです。  JISは、大臣、御承知のように当然通産あるいは厚生省も共管の大臣です。それじゃ、JISの規格というのは、今申し上げましたように、これは工業標準化法ですから安全については一切関係ないのです。安全というのは別の次元なんです。ですから補綴の先生が心配なさったわけです。安全については別のきちんとした基準が必要です。しかも、口腔内に入れる義歯にせよ鋳造冠にしましても、長時間装着します。そうしますと口腔内の酸によって溶けできます。これが内臓に蓄積されます。こういうことを踏まえて、加工中の粉じんであるとか溶出であるとか厳格な安全審査をやって、本当に安全だということが証明された材料を入れなければならないのです。  しかも、大臣、後ほどもこれを聞こうと思うのですけれども、歯科材料の中で本当に前臨床試験、いわゆる動物実験あるいは臨床試験として試験を経た材料であるかどうか。ちょっと聞いてみましょうか。ニッケルクロムは前臨床試験をやりましたか。やったかやらないかだけ答えてください。
  200. 市川和孝

    ○市川(和)政府委員 ニッケルクロムが我が国で
  201. 薮仲義彦

    薮仲委員 やったかやらないかだけ答えてください。
  202. 市川和孝

    ○市川(和)政府委員 失礼しました。  JISが制定されました当時は前臨床試験というものは行われておりません。
  203. 薮仲義彦

    薮仲委員 今もやってないのですよ。  問題になったときも、平沼先生はこう言っているのです。大臣、これは私が当時の業務局長に、ニッケルクロムには何ら基準がないじゃないか、基準をつくれ。業務局は慌てて当時の補綴学会会長平沼先生に検討依頼の書面を出したのです。正式には厚生省薬務局審査課が出したのです。その件に関する答弁に書いてあるのです。「専門学界に於いて金属学的および生物学的にみた前臨床試験に因って先ず基礎的な安全基準を設定すべきである。」ニッケルクロムについてどうですかというときに、これは昭和五十九年一月三十一日に導入されたが、厚生省は、私が委員会でやるものですから慌てて基準をつくったのです、たった一つだけ。あとはできていないのです。鋳造用ニッケルクロム冠たった一つできただけですよ。このとき補綴学会は、まず前臨床の安全基準を設定してからおやりなさい、それからですよと言われているのです。臨床試験もやらないで入ってくるのですよ。  それで、大臣、きょうはちょっと長くなりますけれども、ここで平沼先生初め歴代の補綴学会の会長さんが無念の思いで書いた本があるのです、国民のために。これは日本補綴学会の昭和五十九年十二月、二十八巻特集号です。歯科材料はどうあるべきか。今の歯科診療、そして国民の健全な医療のためにこうあってほしいという悲願にも似た研究論文ですよ。先ほど申し上げた佐藤温重先生も入っています。田端先生も平沼先生も関根先生もみんな入っています。そこで、こういう安全基準をつくり、また導入についてはこうやってほしいというところが書いてあるのです。この中をちょっと読ませてください。「日本補綴歯科学会会長平沼謙二 はじめに」という論文です。   この”補綴用材料”は歯科独特の材料として、技工作業を経て口腔内に装着され、適切な形態と機能回復をはかる補綴物となる歯学の分野で最も特色のあるものである。そこで、長期にわたり口腔の健康を保持する安定した材料が要求されることになる。口の中に入りますと、これは完全に人工臓器になるのです。心臓やペースメーカーなどと同じように、これは完全に人工臓器として口腔の中に入れられて機能を果たしていかなければならない。  そこの研究の中でこういうことがあるのです。「ニッケル・クロム合金の臨床的評価」。ニッケルクロム合金を果たして歯科医師が使っていいかどうか。この研究をなさったのは東京医科歯科の田端先生、井上先生、東京歯科の羽賀先生、日本歯科大学の横塚先生。これは先生方の名誉のために名前を挙げたのです。ちょっとここを読みますから。   昭和五十七年十二月末、全く突然にニッケル・クロム合金を鋳造歯冠修復用材料として保険診療に採用することが中央社会保険医療協議会において決定された、後に述べるごとく、鋳造修復用合金としては種々問題が指摘されていた金属であるだけに、高度に専門的な判断を要するニッケル・クロム合金の採用については、専門学会である補綴学会に事前に諮問があって然るべきだと考えるが、実際には中医協での決定の直前に保険導入に同意して欲しい旨の電話が日本歯科医師会から学会長宛にあったとのことである。 これは許可したのが十二月二十九日ですよ。これで、しかも即答を求められるという慌しさであったので、三谷学会長は取敢えず常務理事の範囲内で意見をとりまとめ、「ニッケル・クロム合金の保険採用には同意できない」との回答を行った。庶務担当の横塚教授を通じて学会長から意見を求められたのは、たしか歳末も押詰った十二月二十六日  二十六日に問い合わせて二十九日、三日間で中央薬事審議会でやったんです。この直前に今言った大分のニッケルクロムの不正導入があったのです。ここに書いてあります。  後に聞いたところでは、同様趣旨の電話が理工学会長にもあったとのことである。そして急遽二十九日に保険導入が決定されたのである。ここではこのような全く唐突な保険導入を巡って巷間種々伝えられている真の動機などについては立入らないが これは、今言った大分の不正請求があって、ばたばたばたと導入されたのです。ですから、巷間言われているというのは、我々政治家ですからはっきり言いますと、これで刑事事件になりそうだ、全国に広がりそうだ、抑えるためにこれは保険に入れちゃえ、そうすれば犯罪人が出なくて済むということです。  この本には、   ニッケル・クロム合金の保険導入について学会の意見は、適合性、硬さ、生体反応、高温鋳造、口腔内操作性、その他の問題があるので、なお検討を要する。したがって金銀パラジウム合金に準ずるものとしての保険導入の時期に至っていない しかも、   ニッケル・クロム合金の保険導入に対する学会の意見は、いささかの疑念を挾む余地なくきわめて明快である。保険導入の時点において、学会がこれに賛成であったことなど全くなかった  これに対して、私に対して、後ほどやりますけれども厚生省の局長は、学会が専門学会の意見を聞いて賛成したと会議録で答弁しているんですよ。私は当時わからなかった。今になってわかった。そんなことはない。学会は賛成してない。しかも、この先生方の結びとしてこう書いてあるのです。  私たちが臨床的視点からクラウン・ブリッジ用合金としての必要条件(鋳造体の適合性、鋳造性および研磨・研削性)を検討した結果、ニッケル・クロム合金は、会合金はもとより金パラジウム銀合金にも臨床的に必要な性能において劣ると判定され、この結論はニッケル・クロム合金の保険導入に際して表明した学会見解と一致する。すなわち現状においては、ニッケル・クロム合金は、適正なクラウン・ブリッジ用材料とは認められないという結論である。   以下に結論の要点をまとめておく。  一、ニッケル・クロム合金では、適合のよい鋳造体を得にくい。  二、鋳造性が悪いので辺縁の適合が難しい。  三、咬合、接触点の調整に時間を要し、鋳造冠の除去はきわめて困難である。  四、ニッケル・クロム合金は、金合金、金パラジウム銀合金と比較してきわめて使いにくい材料である。 しかも、これは恐らく大臣にも行っておると思いますけれども「ニッケル・クロム合金の毒性」、それで東京医科歯科大学の佐藤温重先生が、   ニッケル・クロム合金は他の歯科材料と同様に前臨床段階で体系的安全性試験が行われておらず、 と言うんですよ。  その毒性に関する知見はきわめて少ない。しかし、この合金に原因するアレルギー、よくテレビなんかでやりますね。  アレルギー、歯肉刺激症状などの為害作用が報合され、また、この合金の成分金属が貴金属合金のそれらに比較して明らかに毒性が強いので安全性について論議 しなければならないというのがこの佐藤温重先生の見解でしょう。  結論だけ読みます。「むすび」、「ニッケル・クロム合金は、」「耐蝕性の不良な合金では安全性に問題がある。」これは発がん性について書いてあるのですが、   ニッケル・クロム合金の成分金属のうち動物実験で発癌性が証明されている金属は、Be、Co、Cr、Cu、Mn、Mo、Ni、Znなどであり、また疫学的にヒトでの発癌性が明らかになっているものに、Be、Ni、Crなどがある。これらの金属は、細胸の腫瘍化を開始する作用と、腫瘍を増強化する作用とがある。 そして、   溶出金属量は微量であり体内に吸収される金属量は少ないので、ニッケル・クロム合金は安全であるという考えがある。しかし、毒性は濃度の関数であるばかりでなく時間の関数であり、濃度が薄くても長い時間使えば毒性はふえできますよということです。  ニッケル・クロム合金の慢性毒性試験を実施し、微量長期摂取の安全性を確認 しなければならないというのが先生の結論なんです。しかも、  ニッケル・クロム合金のみならず、歯科材料は前臨床試験により安全性が保証されたものについて、小規模の臨床試験を行い、既存の歯科材料と比較し優れた材料を選別し、一般臨床に使用することが、医の倫理からして必要であろう。既存の補綴材料と比較しニッケル・クロム合金は安全性の優れた材料とはいえない。 しかも佐藤先生が何を言われたかというと、いわゆる毒性陽性の限界を論議するけれども、そうじゃない。口腔内に入れるような金属材料は、この材料は毒性がありません、毒性陰性を証明しなさい、これが毒性学の専門家の佐藤先生の結論なんです。  しかも当時、昭和六十三年九月に、今度は補綴学会長はかわりまして津留会長さんですが、厚生大臣の藤本厚生大臣にこう言っておるのです。     鋳造冠用ニッケル・クロム合金の健康保険診療導入について   現在、健康保険診療に導入・使用されている鋳造冠用ニッケル・クロム合金について、本学会はその導入に際して、国民歯科医療の向上をはかる上から、また種々な臨床適応の面から極めて適切さを欠き問題のあることを関係機関に指摘した。 以下ずっと書いてあるのですが、  国民への歯科医療については、国家の保証する医療体制に則して良質な可及的に高度な歯科医療を実施するよう努力すべきことは云うまでもない。 国民のために良質な医療を施したい。   その一環として、良質の歯科医療に対して、また正しい歯科医療の方向づけに対して鋳造冠用ニッケル・クロム合金の導入、使用は適切さを欠くものである。現在 いいですか、大臣。  全国二十九の歯科大学、大学歯学部の臨床教育には鋳造用ニッケルクロム合金は理工学的性質や操作性、適合性、安全性などに疑義があるので全く使用されていないのが実態であり、使ってないんですよ、大学でニッケルクロムを。こんな悪い材料を使うか。仮に大臣の口腔にニッケルクロム合金が入っていれば、それを取り外そうとする臨床医が苦労するのです。ダイヤモンドバー二、三本使わないと取れない鋳造冠でもあるのです。それほど材料としては悪いんですよ。しかもその粉じんば非常に危険なんです。   鋳造冠として咬合、下顎位を保持し、咀嚼などの機能を回復するためには金パラジウム銀合金以上の金属を使用することが、わが国の良質な歯科医療としては望ましいことである。   なお、アメリカ、欧州など先進国においても鋳造冠用としては使用されていない事実をみても、先進国では使ってないんですよ。なぜ日本が使うのですか。こんなのはもう材料のない三十年代で終わりだ、この論文の中に書いてあります。それをあの大分県の不正請求から厚生省は、それを糊塗しようとして保険に入れたのです。しかも臨床試験なしです。人体実験じゃないですか。  このような経過で学会の意見は何ら取り上げられることなく今日を迎えた現状は極めて遺憾である。   以上、学会としてはかねて別紙資料の見解を公表し、問題を指摘して来たが、ここで再度鋳造冠用ニッケル・クロム合金の保険医療への使用を中止すると共に削除方を強く要望する。  ここまでまじめな先生が言って、今言ったように薬事法は安全性と有効性なんです。しかも歯科の先生方も、安全であり使いやすい、操作性がよくて患者のためになるいい材料を使いたい。毒性学の専門の先生は、何であれニッケルクロムについては、いい材料ではない、発がん性も証明されておる。これをなぜ保険から抜かないのですか。しかも、入れたときには加算点数ですよ。百六十点も加算して、私の追及で加算点数は現在ゼロになっていますのでも入っているんです、保険に。これはきょうでもまた使おうと思えば合法的に使えるのです。これだけまじめな先生方が、臨床の先生方が国民のために悪い材料を使わないでくれ、国会で私が追及するものですから、臨床の先生は今はとんと使わなくなってきた。  この間、私はこのようなことを発言するのは非常に不本意であるけれども、はっきりしておきたい。私の部屋にある方がお見えになった。もうからないから歯科材料は使わないというのを大臣の部下の方が言ったのですよ。私は烈火のごとく怒りました。何を言うか。もうからないから製造をやめたのではない。悪い材料をつくらせないのが厚生省じゃないか。保険からも外しなさい。業務局の承認を取り消しなさい。  きょうは十年間の思いを込めて大臣に言っておきますけれども、これほどまじめな臨床の先生が使わない材料を、どうして国民の口の中に入札るのですか。発がん性の危険があるとまじめな先生方が指摘して、削除してほしい、大学でも使っていない、製造もやめた、こんな悪い材料を承認したことはむしろ私は恥ずかしいと思うのです。これについて、きちんとした結論を大臣に私はお願いしたい。大臣ならば、こういう悪い材料はやめるべきだ、製造していない材料は保険から取り外すべきだ。国民に安全な材料を提供してほしいというのがまじめな先生方の期待なんです。それにこたえるのが大臣であると信じて、大臣の御決意を伺いたい。
  204. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 長年にわたってこの問題について大変問題提起をなさっていらっしゃいます先生のお話をお聞きいたしておりまして、私もちょっと不勉強でまことに恐縮でございますけれども、一般論として申し上げさせていただきますならば、新たな歯科材料の保険導入に当たりましては、当然のことながら、専門家の御意見も伺いまして、その有効性、普及性などを総合的に勘案した上で、中央社会保険医療審議会の方の御議論を踏まえて判断をしているところでございます。当然のことながら、国民保険体制のもとで広く国民に良質な医療を提供していくためには、有効な新素材開発、医療技術の観点という点からも、先生が再三御指摘いただいておりますような安全性、有効性が認められた歯科材料については、保険制度上これを使用できる道を広く開くということでございます。  ニッケルクロム合金の問題でございますけれども、耐食性の低いものについては安全性に問題があるという御指摘も十分承っておるわけでございます。いろいろな問題がございますけれども、ニッケルクロム合金を装着された患者の口腔内で溶けて出るニッケルの量は、一方で細胞毒性を示すニッケル量よりも最も量が少ないという報告も出されておる、このように聞いておるわけでございますが、先生からの御指摘を踏まえまして、厚生省といたしましては、歯科材料の安全性、評価方法などにつきまして新たに研究班を設置いたしまして、検討を今続けているところでございます。これらの研究結果をもとにいたしまして、試験方法のあり方であるとか、評価方法のあり方だとか、歯科材料の安全性、こういうものに努めていきたい、このように考えているような次第でございます。
  205. 薮仲義彦

    薮仲委員 今大臣が中央薬事審議会とおっしゃいましたけれども、歯科材料で中央薬事審議会の正式の議を経た材料はございますか。歯科用調査会の云々というのはだめですよ、私は関根先生に会ってきちんと聞いておるのですから。中央薬事審議会という言葉が今出ましたけれども、歯科材料で中央薬事審議会に正式にかけた材料があったら言ってください。
  206. 市川和孝

    ○市川(和)政府委員 歯科材料につきましては中央薬事審議会の歯科用調査会というところでお諮りしておりまして、中央薬事審議会の常任部会等にお諮りしたものはございません。
  207. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣、念のために御記憶いただきたいのですけれども、歯科材料で中央薬事審議会に正式にかけた材料はないのです。今歯科用調査会というのがありましたけれども、歯科用調査会にかけた数、ちょっと言ってください、そのほかにかけないで承認した数と。わかるでしょう。
  208. 市川和孝

    ○市川(和)政府委員 昭和五十五年以降の分でございますけれども、歯科材料に係る承認品目数は三千九百二十品目ございまして、調査会にお諮りした上で承認いたしました品目数が七十四品目でございます。
  209. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣、これも大事なことです。七十四品目というのは関根教授が会長の歯科用調査会なんです。ここでは基準も何もなくて非常に困っていらっしゃる段階なんです。私は関根先生にもお話を伺っておるのです。今言ったように三千数百、これは薬事法が改正されて初めて記録したのです。これは何かというと、事務方さんが承認しているのです。基準も何にもないのですよ。きょうはもう時間がありませんからやりませんけれども、私はもっとやりたいんだ。  事ほどさように、大臣がペーパーをお読みになったけれども、中央薬事審議会の議を経た材料が一つもない。歯科用調査会でやったのが今言ったように七十四品目だけ、あとは事務方さんがオーケーと言ってぱあっと承認されるのです。これが歯科材料の基準でございますから、私が申し上げるのは、日本歯科医師会の中でも、今では会長もかわりまして非常にまじめな体制になってきていますから、材料の検討委員会もつくっていらっしゃいます。平沼先生も副委員長です。でも、平沼先生が言いました、これはあくまでも我々歯科医師会の調査結果で検討結果です。しかし、このような歯科材料とか医薬品、医療用具というのは国がきちんと判断すべきだ。国が責任をもって基準を決めて判断していただきたい。そのときに、先ほど大臣がおっしゃったことは全く正しいと思うのですが、専門家、専門学会の意見を聞いて、それをもとにしてきちんとした導入の基準を国がお決めいただきたい、こう思いますが、いかがでございますか。
  210. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、これは歯科材料を含む医療用具の承認でございますけれども、当然のことながら、先生に再三御指摘いただいております安全性、さらに品質、有効性、こういうものをきちんと確保しなければならない。そのために、必要な資料というものをそろえまして、個別品目ごとに厳正な審査をこれまでも行ってきておりますけれども、さらに一層徹底していきたい。そして、いずれにいたしましても、必要な基準を策定しながら、国民の医療のためにも安全性の一層の確保を図っていく決意でございます。
  211. 薮仲義彦

    薮仲委員 ここはちょっと事務的になりますから事務的な御答弁で結構ですが、厚生省が歯科材料を導入するときに絶えず類似という言葉を使うのです。ニッケルクロムのときも、サンコリウム軟質と一番最初に承認したのが板と線ですが、これに類似ということで鋳造用の歯科材料を入れてきたのです。あるいはポリザルボン、ポリカーボネート、こういう材料を入れるときも類似という言葉を使ったのです。きょうはそこまでできなくて残念ですけれども、ポリザルボンもポリカーボネートも、臨床試験なしで入っているのです。そうでしょう。  しかも、類似という言葉を使うとどういうことになるか。大臣も御理解いただきたいのでございますけれども、薬事法上添付すべき資料並びに検査結果というのがあるわけです。ところが、類似という言葉を使いますと、物理的な性質、物性だけで、あとの安全性、全身毒性、先ほども申し上げた催奇性、発がん姓とか、そういう検査は一切要らないのです。それで全部通すのです。鋳造用ニッケルクロム合金も類似という言葉で通したのです。今後類似という言葉でごまかさないで、類似という言葉で通すことは一切やめていただきたい。そうではなくて、類似という表現があってもきちんと必要な審査基準をつくって、必要な検査をした上で入れていただきたい。  それから、JISということであっては、先ほども申し上げましたけれども、JISもこれは安全ではない。JISの承認材料だからということでお入れにならないで、今も大臣がおっしゃったように、別にきちんとした安全基準をつくってお入れになっていただきたい。  いかがですか、専門的に答えてください。
  212. 市川和孝

    ○市川(和)政府委員 以前から類似品についてということでの取り扱いが一つあるわけでございますけれども、類似という場合には、従前はどちらかといいますと先生御指摘のとおり、物性面に重点を置いて判断をしてまいりました。しかしながら現在では、類似という場合には、やはりその化学組成と申しますか、そういった点も含めて判断をいたすことにいたしておりまして、新たな歯科材料が出てまいりました場合には、そういう意味で類似の既存品がある場合におきましても、現在では各種の毒性あるいは口腔粘膜に対します刺激性等に関するデータをまとめまして、個別品目ごとに審査を行っております。
  213. 薮仲義彦

    薮仲委員 時間が参りましたので、最後に大臣にお願いをしつつ、総まとめします。もうお願いしたいことは数多くあるのですが、ほんの一部分で終わることが残念ですけれども。  まず大臣、これは日本補綴学会の次の会長の田端会長が、平成二年四月十七日に、当時の津島厚生大臣に「口腔内に用いる歯科材料の許認可ならびに保険制度への導入に対する意見書」、これは安全性の方はたびたび申し上げましたけれども、保険導入に関しては今非常に問題があるのです。  ニッケルクロムももちろん大学では使ってませんけれども、ポリザルボン、ポリカーボネート、いわゆる保険の表の方にはスルホン樹脂と入っているのですが、ピンク色のレジン、アクリリックレジンですけれども、あれと似たような合成樹脂の材料も保険に入っているのです。しかし、ポリサルホンあるいはポリカーボネート、これは二十九の大学の歯学部で臨床医学として講義をしていない。その材料について教えていないのです。ですから、大学で教えていないような材料を使うということ——先日も私、歯科の先生の会合に行って話をしたのです。この中で、ポリカーボネート、ポリザルボン樹脂を大学で教授に教えてもらった方、講座で聞いた先生は。そこに百人近い先生がいましたけれども、だれも手を挙げませんでした。今の臨床医が知らないのです。それが保険の中に入ってくる。入ってくると、倍の点数で入ってきますから、それを使えば総義歯の不採算という問題が解決する。こういうやり方は私は適切ではないと思うのです。  きょうはこの辺でやめておきますけれども、やはり大学の講座でも教える、臨床の先生も、どこの歯科医院へ行っても同じ治療を受けられる、これは通法といいますけれども、そういう図式が確立しないような状態で保険にお入れになることはやめていただきたいと思うのです。  特に歯科の問題については、総義歯の不採算あるいは——大臣、これは非常に大事なんですけれども、今卒業実技がないのです。だから大学の歯学部でも人工歯を並べるという卒業実技試験をやらない大学が多くあり、臨床実技は見学だけが多い現状なのです。これは本当はきょう指摘したかったのですけれども、見学だけでは本当のいい医者が育たないのです。ですから、大学においては、これは文部省のことでございますけれども、やはり立派な歯科医師を出すために臨床実技それから卒業実技ということが大学に要求されているのです。  それから、現在国家試験には実技試験がないのです。ですから、全く実技なしでぺーパーテストだけで合格なさるのです。しかも、医師法は、大学で国家試験に合格してから二年間は研修医制度があるのです。ところが歯科医師は、研修医制度に法の定めがないのです。ですから、国家試験に受かればそのまま開業できるのです。最近は約八万人の歯科の先生がいるのですが、そのうちの三万人の先生は実技試験がなくなってから歯科医師として免許を持っている先生方です。臨床の先生や大学の先生が、今後入れ歯をつくれない医者が出てくるのではないか。  国民医療のために、これは文部省の調査で大臣には直接云々できませんが、歯科大学の学長さんの、将来の歯科のことを考えて、今言った実技のことも非常に懸念して、もっともっと歯科医療の充実を図っていかないと大変なことになるという指摘があります。どうか大臣、歯科診療について一段と心をとどめていただきたいと思いますが、大臣の決意を聞いて、終わります。
  214. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 薮仲先生から多方面にわたっての歯科医療のあり方について御指摘を賜ったわけでございます。いずれも大変大きな問題であり、真摯に受けとめまして、いずれにいたしましても、国民にとって安全で安心できるような歯科医療の充実のためにさらに頑張っていく決意でございます。
  215. 薮仲義彦

    薮仲委員 よろしくお願いします。終わります。
  216. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、寺前巖君。
  217. 寺前巖

    ○寺前委員 先日、日本分栄協会の問題について建設省の決算のときにお聞きをいたしましたが、どうもよくわからぬのですね。ここに私、日本分栄協会の「業務内容」というのを持ってますが、ここには、一九六七年の二月に、全日本金属鉱山労働組合、それの中央執行委員会で、総評、東京労働金庫の協力を得て、勤労者のための豊かな生活環境づくり、良質で廉価な住宅の供給を目標にして、東京近郊の通勤圏に住宅を供給していくことは大変困難な状況にあるだけに課題は重大だ、勤労者が安心して暮らせる住宅の確保とよりよい環境づくりを目指して活動するんだということが書かれています。私は本当にいいことだと思うんです。だけれども、運営をする人がこのいいことの精神を踏みにじるようなことをされると、これは労働者にとってはとんでもないこと、わしらを利用するだけ利用してという話になるから、そういう意味では監督官庁の責任は重大だというふうに私は思うんです。  そこで、きょう聞きたいのは、この労労協会が、調べてみると、一九八四年当時に国会の衆議院の決算委員会あるいは建設委員会で問題になっているんですね。八四年四月二十五日の決算委員会、五月十八日の建設委員会です。内容を読んでみますと、常識外れの交際費の使用だ、一カ月のうち二十五日間のクラブ通いなどというのが出てくるんですね。それから、厚生省の担当部課や年金福祉事業団への贈り物だとか、台湾旅行の空出張だとか、千葉県の小中台事業で国際企画に一億数千万円の不当な支払をやっている。まあ随分話題性の多いことが出ています。  ところで、この協会に対して、ことしの一月十九日、厚生省と年金福祉事業団ですかが監査に入ったという話を聞いているんです。監査の結果、サンライフ東川口の事業で協会と地権者の間で土地売買をめぐる契約の不備があったんだということを聞いているんですが、そのとおりでしょうか。
  218. 山口剛彦

    ○山口(剛)政府委員 御指摘のように、ことしの一月十九日に厚生省と年金福祉事業団がその所管をする民法法人の通常監査といたしまして日本分栄協会の監査をいたしました。幾つか監査において指摘すべき点が出てまいりましたが、とりわけ私どもも重視をしておりますのは、今御指摘をいただきましたように、サンライフ東川口という分譲住宅ですが、これの用地の土地取引につきまして、地権者が三人おられるわけですけれども、土地の売買契約を結びまして現金でその代金を支払ったという報告のもとに資金の交付を受けていたわけでございます。このうち二人の地権者につきまして、売った土地代金の一部を、現金ではなく、サンライフ東川口が完成後にその分譲住宅の一部を譲渡し、その代金と土地売買代金を相殺することができる旨の契約を結んでいた、二重の契約を結んでいたということが監査で判明をいたしました。  これは、事業団が報告を受けた契約とは異なる契約でもございますし、またこの契約の内容が、本来個々の厚生年金の被保険者に分譲すべき住宅をまとめて地権者に譲渡をするといった、融資の目的の趣旨にも反しますので、これは直ちに是正をするように指導したところでございます。
  219. 寺前巖

    ○寺前委員 どういうふうに是正されたのか、私も気になってちょっと調べてみたのですが、九一年七月二十六日年金福祉事業団は、サンライフ東川口事業について三十二億二千五百三十万円の貸し付け決定をやっておられます。内訳を見ると、新築資金として二十四億一千六百二十万円、それから土地取得資金として今話題の九億九百十万円というのが出てきます。  当然のことですが、地権者との土地売買契約書などで、資料を見た上でこういう貸し付け決定をしておられると思うんですが、こういうのは、資料を見ないんですか、見るんですか。どういうことになっているんです。通常の監査に入ってわかった。入らなかったらわからぬままですっと素通りしてしまうのか。それとも、貸し付けのときにきちんとそういう添付資料が出されて、ちゃんと見て渡すということになるのか。そこはどうなっていたんですか。
  220. 山口剛彦

    ○山口(剛)政府委員 御指摘をいただきましたように、平成三年の七月二十六日に土地取得費として九億九百十万円の融資を決定いたしました。そして、十月二十五日に日本分栄協会から、土地代金はすべて現金で支払ったという報告を受け、そして契約書、領収書等も確認をした上、土地取得費分として決定をいたしておりましたとおりの九億九百十万円の資金交付をしたところでございます。
  221. 寺前巖

    ○寺前委員 私は理解できないのは、私ここに土地売買の契約書を持っているんです。判こもちゃんと同じような場所に押してあるんですが、この二通の売買契約書があるんです。これを見ると、今さっき話があったように、一通の、原本ともいうんでしょうか、それは第一条から第七条までずっと書いてある。ところが、もう一通の方を見ると、第五条までしかない。そうすると、調べてみると、この契約書の原本の方と表紙は全く一緒だし、判この押してあるところも同じだし、これは一体どういうことをしていたんだろうか。改ざんをしていたのかいな。要するに、借金をする方に対しての見せるための契約書と、本人との間に交わすところの本契約書。裏の話は別やで、表はこうしとこうか。こうしとこうかということを見せつけられて、そのまま通してきたんだということになるんですかね。そういうふうに見ざるを得ないと思うんです。  九月二十六日に労労協会のB地権者、C地権者との間に結んだこの売買契約書を見ておると、そういうふうにでも考えなければ仕方がない。B地権者との間では、今お話があったように十四戸分を売買代金として相殺しょう、C地権者との間で六戸分で売買代金を相殺しよう、こんなことを事業団は金を貸す場合に許せるんだろうか。  大体そういうようにして、その人、地権者がその土地代でもって十四戸分とか六戸分を握って、それを売買するということが許せる、そういうことで金を貸してやりましょうということは許せることなんですか。金さえ貸してしまえばもう中身はわしら知らぬのだ、そっちの協会のことなんだということで済んでしまうのかどうか。この問題について責任はないんですか、あるんですか。どうなっているんです。不可解だよ。
  222. 山口剛彦

    ○山口(剛)政府委員 御指摘をいただきましたように、事業団に対しましては、この二人の地権者と土地売買契約を結びまして、申し出のあったとおりの価格を現金で支払ったという報告がございましたので、先ほど申し上げましたように予定どおりの資金交付をいたしたわけですが、裏でと申しますか、これも御指摘がございましたように、分譲住宅完成後に譲渡をして、一部は既に土地代金として支払っておるわけですけれども、残りの分についてはその分譲の住宅と相殺をするという契約を二重に結んでいるということがわかったわけでございます。監査で私どもそれを発見いたしまして、御指摘のように大変遺憾なことでございますので、直ちに是正をするように指導いたしまして、私どもに報告がありましたような契約に結び直して売買代金を支払うということにいたしたわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、現時点で是正はされてはおりますけれども、報告と異なる、融資目的に反する契約を結んでいたということはまことに遺憾なことでございます。この経緯、当時の専務理事が既にやめておられるというようなこともございまして、まだ若干事実関係でよく調べる必要があることもございますので、十分調べました上、厳正に対処をしていかなければならないと考えております。
  223. 寺前巖

    ○寺前委員 厚生省の方も不可解なことだなということでこの問題に対処しておられるようですので、それではきちっとこれからやってほしいのですが、この労労協会がつくっている事業というのはほかにもあるわけです。ほかのところでも同じような懸念がやはり生まれている。サンライフ春日居というところの問題です。  山梨県の東山梨郡春日居町に建設している、現在住宅を販売中ですな、これは事業団が九一年三月二十七日に貸付決定をやっています。借入申込書を見ると、地上七階建てで分譲九十六戸と書かれている。これは借入申込書です。ところが、ことしの二月から販売していますが、その募集パンフレットを見ると、借金をするときの届け出とは違うんです。地上七階、地下一階、分譲戸数は九十七戸とふえてしまう。地下一階というのは新しい問題が出てくる。事業の変更は事前に事業団の承認を得て事業を進めるのは私は当然だろうと思うんですが、この事業変更は直ちにされてこうなったのか、ほったらかしていたのか、どんなことになっていたんです。事実を御説明いただきたいと思う。
  224. 山口剛彦

    ○山口(剛)政府委員 御指摘のサンライフ春日居につきましては、協会から事業団には、平成三年の三月時点の借り入れ申し込みあるいは貸付決定時には、御指摘のとおり九十六戸分譲という事業計画で提出をいたしております。その後、御指摘をいただきましたように、最終的には分譲戸数を一戸ふやしまして九十七戸として分譲を行っておるということでございます。これは、七階部分につきまして容積率との関係で一部屋減らさなければならないという事態になったということ、それから、住み込みの管理人の居室に充てるというようなことも考慮をして一階部分を二部屋ふやすということを考えたようでございまして、当初一階につくるということを予定しておりましたトレーニングルーム、浴室等を主要の部分から外へ出しまして、結果的には二部屋を増築し、管理人も通い制になったということで、当初予定をしておりました九十六戸分の分譲を九十七戸すべてを分譲するということになったような経緯でございます。  これも先生御指摘をいただきましたように、分譲戸数の変更というのは大変大きな計画変更でもございますので、遅滞なく変更の承認申請を行うべきところでございますが、サンライフ春日居につきましてはこれらの手続がおくれまして、三月の四日に変更承認申請の提出があったということでございます。この手続がおくれましたことについてはまことに遺憾なことでございます。先ほどの問題とあわせまして厳しく指導をしてまいりたいと考えております。
  225. 寺前巖

    ○寺前委員 今おっしゃったとおりに、それは本当にずさんなことをやっているなというふうに思うんです。サンライフ春日居の建築基準法に基づく春日居町への申請は九一年三月十五日に出されて、トレーニングルームなどの変更による建築確認は同年九月二十日に行われているんです。本来だったらこれ以前に事業団の承認を得なければならぬ話なのに、全然、何と一年半も経過してから事業計画変更承認申請書なるものを出してくるんですから、ずうずうしいというのか無責任というのか、本当に倒しがたいという感じを私は受けました。  また、分譲の戸数の問題についても、昨年の十月二十二日に国土法に基づく分譲マンションの所有権の移転に伴う確認申請書が山梨県の知事さんに出されています。この確認書を見ると九十七戸となっているんだから、当然受託金融機関を通じて承認をちゃんと受けておかなかったならば、事業団に対する手続をやっておかなかったならば、これまた無責任だと言わなければならぬと思うんです。こういうふうに考えてくると、事業団をなめてかかっているというのか、本当にどんな気持ちでこういう問題の対処をやってきたのかということを、頭をかしげざるを得ない運営になっているなということを私はつくづく思うんです。  そこで、分譲価格は一体どういうことになっているんだろうかということについて聞きたいのです。  これは公益法人ですから営利を目的としない事業です。したがって、分譲価格についても十分納得のいく分譲価格にしてもらわなければいかぬと思うんです。承認事項にもなっておりますので、よく研究しておられると思うんです。当然でありますけれども、総事業費を分譲戸数で割って一戸当たりの平均分譲価格を出されると思うんです。そうすると、総事業費の中には建築工事費や土地取得費等の直接経費があるでしょう。公租公課、開発負担金、近隣対策費等々の間接費があるでしょう。協会の人件費などの事務費があるでしょう。だから、事業団はこういう分譲価格を決定するに当たってこのような内容を見た上で決定されると思うんですが、そういうことと理解してよろしいでしょうか。
  226. 山口剛彦

    ○山口(剛)政府委員 先ほど、この法人の設立の趣旨等につきましても先生から御指摘がございました。良質で安価な被保険者向け住宅を提供するということでございますので、その趣旨に沿っているかどうかという点につきましては、よく審査をいたしまして分譲価格を決定しているところでございます。具体的には、周辺の同じようなレベルの分譲住宅の価格と比較調査をいたしまして審査の上、承認をしているところでございます。
  227. 寺前巖

    ○寺前委員 周辺の価格との関連だけじゃないと思うんですよ。公益法人としてやるんだから、そこでどれだけお金がかかったかというのを、直接経費、間接経費、協会の運営費というものを見ながら出していくんだろうと思うんです。私は提出された書類を見ておって、それがずっと全部書いてあるから、それじゃ、先ほどのようなずさんな運営をやっているんだから、この金についてうまいこと適切に分譲価格の中に見ることができるんだろうかということで、細かくちょっと調べてみたんです。  特に、間接経費の分野をずっと見ると、例えば開発負担金というのがここの中に書かれています。そうすると三千万円という数字が出てくるんです。こういうものをつくるときには町役場などがいろいろかんでいますから、そういうところの諸君たちに三千万円も開発負担金というのはかかっているのかと聞いてみた。みんな頭をかしげます、三千万円も要りますかと。これは御存じですか。開発負担金というのは一体どれだけ本当にかかっているんだろうか。三千万円とみなすだけの根拠はありますか。
  228. 山口剛彦

    ○山口(剛)政府委員 このサンライフ春日居の事業につきましては、総事業費が約三十一億、建築費に二十億、土地取得費に二億五千万、そして、先生今御指摘のございましたいわゆる間接費といったものが八億三千六百万ほど計上をされております。その中で、具体的に開発負担金というものに、つきましても三千万円という申請がございます。この中身について手元に詳しいものがございませんが、一般的に申し上げまして、公共分担金その他がこの開発負担金の内容になろうかと思います。
  229. 寺前巖

    ○寺前委員 役場の人に言わせたら、周辺の道路整備をお願いしました、まあ百万もかかりませんやろ、何で三千万が出てくるんだろうと頭がしげるんですよ。  それから、これ見てますと、環境整備費というのが一億三千万円出てくる。この点について詳細にこう書いてあります。日陰の迷惑料が千七百八十万円、工事に伴う影響補償が千百万円、合わせて近隣対策費というのが二千八百八十万円という数字がそこには出てくるんですね。そうすると、環境整備費一億三千万円といってもこれは一体何だろうな、あるいは近隣対策費として二千八百八十万円出るけれども何だろうな、マンションの裏手の日陰の問題だろうか、そうすると対象世帯は五軒ぐらいや、あの五軒の迷惑料を払ったというのはせいぜい五十万円くらい違いますやろか、百万以下でしょうな、何でそんな大きな金が出てくるんだろう、これは実際にずっと聞いて歩いたらそうなるんや。べらぼうな金が出てくるのね。  電波障害対策費というのが二千六百七十万円というのが出てくる。電波障害といって、一体不思議だな、マンション内のテレビ受信装置は建築費の中にちゃんと入っていますから。そうすると、電波障害を受ける家というのはIさんという家だけです。すると、ケーブルテレビに加入して、工事費及び加入料、年間使用料含めてもまあ十万円足らずやろうか、せいぜいいろいろな調査費を入れても百万もかからぬわな、何でそんなべらぼうな数字が出てくるんだろうか。  あるいはまた、温泉取得・補償費等の名目で一億四千百五十五万円というのが出てくる。これは一体何だろうか。ここに書かれていますよ、敷地内の温泉源として八千四百五十五万円、敷地外の一本、山梨県温泉組合分湯権として一千万円、駐車場用地借地権譲受として三千万円、駐車場整備工事費として千四百万円、旅館家屋の補償料として三百万円、ずっとこういうふうに書いてある。ところが調べてみたら、山梨県温泉組合名称の組合はないんですよ。あるとすれば県営の温泉しかない。県営の温泉に聞いてみたら、地権者のY氏は二口二本を持っているということであって、一番遠くに離れたところで、温泉の温度も保証できないため、所有権の移転をお断りしておりますんや。  そうすると、ここに書いてあることはみんなべらぼうな数字ばかり出てきて、地元で歩いて見せてごらんなさいな、こんなおかしな話ないでと言うんだ。それが分譲価格にはね返ってきて、良質で安価な、働く皆さんのためにやってますんやということを言われた日には、いいかげんにしてくれよと私思わず言いました。そこまで知った上で対処しておられるんですか。手続の上においてもややこしければ、内容的にもこんなことで、これでまともな——被害を受けるのは労働者の方ですからね。分譲価格を受ける方ですから。これは二月に売り出してますんや、全部入ってませんけれども。これは見直してもらわないかぬのと違いますか。  先ほど何か、周辺のところと見計らって分譲価格を決めてますんやとか、そんな気安うに言われて、だから適当な数字をだっと並べて出してますんやと言われたら、冗談じゃないよと言わなければならぬ。周辺の問題よりも、良質で低廉なその公益法人としての目的を果たしてもらう、これこそ年金福祉事業団が金を出す以上はやらなければならない仕事であろうと私は思うんです。いかがですか、見直してくれますか。
  230. 山口剛彦

    ○山口(剛)政府委員 年金福祉事業団が融資をいたします場合の審査につきましては、率直に申し上げまして、融資の対象となっている土地、建物等については、その他の間接的な経費に比べて詳細な審査をいたしております。それに比べまして、先生御指摘のございましたような間接経費の中の例えは広告費ですとか環境整備費、それから、このケースの場合は温泉を引いているということで特別な経費がほかのところよりもかかっているというような、それぞれ先ほど御指摘のございましたような開発負担経費、それから近隣の対策費につきましても、個々のケースによって大分様子が違うと思いますし、また、融資の対象になっておりませんので、どちらかといえば、融資対象になっている経費に比べまして審査の面でちょっと甘い点があることは否めないことかと思いますけれども、そういうものも含めまして、全体として分譲価格が、その建物、あるいは周辺の同様の建物等と比べてどうかということは総合的に判断をいたしておりますので、その判断の中で今御指摘をいただきましたような点につきましても考慮をしていくという体制になっているわけでございます。  その体制が十分だったかという点につきましては、先ほど来御指摘を受けておりますこの法人のやり方等を見ておりますと、今後私どもとしても、適切な価格で住宅を供給をしていくというこの制度の本旨に返って、実際の審査手続等のあり方につきましても反省をしなければならない点はこのケースを通じまして大いにあるということで、私どもも反省はいたして保おります。
  231. 寺前巖

    ○寺前委員 お約束の時間が来ましたのでやめますが、せっかく大臣にお話を聞いていただいておったんですから、良質で廉価な住宅供給の目的をやるんだと労働者の皆さんと決意をされたその出発点を見たときに、今日のここの今やっておられる姿を見たときに、私は改善をしてもらわないかぬ、もう一度見直して、分譲価格についても考え直せよと大臣自身が御指示をいただくように私は期待をしたいと思うんですが、いかがなものでしょうか。最後にしたいと思います。
  232. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 年福事業団の融資を受けて住宅を設置あるいは整備する民法法人でございますので、当然のことながら良質で割安な住宅を年金の被保険者に提供する、こういう基本的な公益目的を持っておるわけでございますけれども、日本分栄協会につきましては、先ほど来寺前委員から御指摘がありましたように、事業運営上またいろいろと問題のあるところもあるようでございますので、いずれにいたしましても、適切な運営が行われますよう指導監督を徹底していく決意でございます。
  233. 寺前巖

    ○寺前委員 終わります。      ————◇—————
  234. 貝沼次郎

    貝沼委員長 この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員の異動に伴いまして、現在理事一名が欠員となっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  235. 貝沼次郎

    貝沼委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事倉田栄喜君を指名いたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十一分散会