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1993-04-16 第126回国会 衆議院 決算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月十六日(金曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 貝沼 次郎君    理事 北川 石松君 理事 熊谷  弘君    理事 前田 武志君 理事 森  英介君    理事 山崎  拓君 理事 志賀 一夫君    理事 時崎 雄司君 理事 倉田 栄喜君       伊藤宗一郎君    加藤 六月君       渡辺 栄一君    小森 龍邦君       新村 勝雄君    長谷百合子君       松浦 利尚君    寺前  巖君       藤波 孝生君  出席国務大臣         通商産業大臣  森  喜朗君  出席政府委員         法務省人権擁護 筧  康生君         局長         通商産業政務次 逢沢 一郎君         官         通商産業大臣官 江崎  格君         房総務審議官         通商産業大臣官         房商務流通審議 細川  恒君         官         通商産業大臣官 一柳 良雄君         房会計課長         通商産業省貿易 渡辺  修君         局長         通商産業省産業 熊野 英昭君         政策局長         通商産業省立地 堤  富男君         公害局長         通商産業省基礎 牧野  力君         産業局長         通商産業省機械 坂本 吉弘君         情報産業局長         工業技術院総務 松藤 哲夫君         部長         資源エネルギー 黒田 直樹君         庁長官         中小企業庁長官 関   收君         中小企業庁次長 土居 征夫君  委員外出席者         総務庁長官官房         地域改善対策室 荒賀 泰太君         長         環境庁企画調整         局環境保健部保 清水  博君         健業務課特殊疾         病対策室長         環境庁水質保全 小澤 三宜君         局企画課長         大蔵省主計局主 東垣外洋三君         計企画課長         会計検査事務  中島 孝夫君         総局第五局長         中小企業金融公 井川  博君         庫総裁         中小企業信用保 大永 勇作君         険公庫総裁         決算委員会調査 山本  正君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   新村 勝雄君     土肥 隆一君 同日  辞任         補欠選任   土肥 隆一君     新村 勝雄君 同月十六日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     松浦 利尚君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     日野 市朗君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  (通商産業省所管中小企業金融公庫中小企  業信用保険公庫)      ――――◇―――――
  2. 貝沼次郎

    貝沼委員長 これより会議を開きます。  平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  通商産業大臣中小企業金融公庫当局及び中小企業信用保険公庫当局概要説明並び会計検査院検査概要説明につきましては、これを省略し、本日の委員会議録に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 貝沼次郎

    貝沼委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     ―――――――――――――    平成元年度歳入歳出決算概要説明書            通 商 産 業 省  平成元年度通商産業省所管歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。  通商産業省主管の歳入につきましては、当初予算額は九十四億四千三百九十万円余でありますが、予算補正追加額四千八百四十九万円余の増加がありましたので、歳入予算額は九十四億九千二百三十九万円余となっております。  これに対しまして、収納済歳入額は百五十三億三千九百六十八万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと五十八億四千七百二十八万円余の増加となっております。  これは、補助事業に係る収益納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、通商産業省所管の歳出につきましては、当初予算額は六千九百五十二億八千四百三十二万円余でありますが、予算補正追加額七百六十七億六千四百十六万円余、予算補正修正減少額六十億一千三百七十五万円余、総理府及び文部省所管から移し替えを受けた額百億一千百十一万円余、前年度からの繰越額三十一億八百七万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は七千七百九十一億五千三百九十二万円余となっております。  これに対しまして、支出済歳出額は七千六百六億三千百七十八万円余でありまして、これと歳出予算現額との差額は百八十五億二千二百十三万円余となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は、九十五億一千三百四十二万円余でありまして、不用となりました額は九十億八百七十一万円余となっております。  元年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  第一に、エネルギー対策費であります。その支出済歳出額は三千八百八十五億七千九百八十一万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、石油税財源石油及石油代替エネルギー対策費であります。  この経費は、エネルギー対策の緊要性にかんがみ、石油の安定供給確保の観点から、石油資源の開発及び石油備蓄増強等の事業並びに石油代替エネルギーの開発及び利用を促進するための施策の財源に充てるため、一般会計から石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計石油及び石油代替エネルギー勘定へ繰り入れるためのものでありまして、三千八百六十億円を支出いたしました。  次に、エネルギー技術研究開発費であります。この経費は、太陽エネルギー等の新エネルギー技術及び新型電池電力貯蔵システム等省エネルギー技術研究開発を行うためのものでありまして、十六億八千四百四十七万円余を支出いたしました。  第二に、中小企業対策費であります。その支出済歳出額は一千七百二十八億一千九百六十六万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、中小企業事業団運営費であります。この経費は、中小企業構造高度化を促進するために必要な指導、資金の貸付け及び共済等の事業を行うための出資金及び補助金でありまして、百四十五億三千百八十六万円余を支出いたしました。  なお、同事業団が行った貸付事業の実績は、一般高度化事業資金二百四十七件、特定高度化事業資金百四十九件、繊維工業構造改善事業資金十一件等であります。  次に、小規模事業対策費であります。その支出済額は四百四十億二千十八万円余でありまして、この経費により商工会、商工会議所等小規模事業者に対して、五百九十六万件余の経営指導、相談を行いました。  次に、小企業等経営改善資金融資制度であります。この経費は、小企業者等に対する経営指導を金融面から補完し、実効性を確保するため、商工会、商工会議所及び都道府県商工会連合会の長の推薦に基づき、国民金融公庫が、無担保、無保証人、低利による融資を行うためのものでありまして、貸付金として六十五億円を支出いたしました。  なお、同公庫が行った融資実績は十万件余、二千八百四十八億円余に達しております。  次に、中小企業近代化促進費であります。その支出済額は七十七億七千七十九万円余でありまして、設備近代化補助金五億五千七百万円、中小企業機械類貸与補助金十四億二千万円等を支出いたしました。  次に、中小企業指導事業費であります。その支出済額は百三億一千八百九十八万円余でありまして、診断指導技術指導及び研究促進等の事業の一層の強化を図っております。  このほか、組織化対策費五十一億一千九百三十三万円余、信用保証協会基金補助金二十五億円、中小企業金融公庫補給金二百五十七億七千万円等を支出いたしました。  第三に、科学技術振興費であります。その支出済歳出額は五百八十四億七千五十七万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、大型工業技術研究開発費であります。この経費は、将来の技術開発の核心となり、技術的波及効果の大きい大規模な産業技術研究開発を行うためのものでありまして、九億六千百九十六万円余を支出いたしました。  次に、電子計算機産業振興対策費であります。この経費は、我が国電子計算機産業技術力の向上並びに振興を図るため、新しい理論・技術に基づいた第五世代コンピュータ研究開発を行うためのものでありまして、三十六億四千五百五十八万円余を支出いたしました。  次に、次世代産業基盤技術研究開発費であります。この経費は、我が国が今後、技術立国を実現していくため、基礎的段階産業技術研究開発を行うためのものでありまして、十一億二千百五十七万円余を支出いたしました。  このほか、通商産業省試験研究機関特別研究費二十七億二千九十四万円余、試験研究設備及び施設の整備費三億五千五十六万円余等を支出いたしました。  第四に、公共事業関係費であります。その支出済歳出額は百五十六億七千五百六十三万円余でありまして、その主なものは、工業用水道事業費補助であります。その支出済額は百五十五億一千五百七十六万円余でありまして、この経費により、地方公共団体において継続事業五十九箇所、新規事業八箇所の工事を、水資源開発公団において継続事業七箇所の工事を実施いたしました。  第五に、経済協力費であります。その支出済歳出額は百九十六億四千二百三十一万円余でありまして、その主なものにつきまして御説明いたします。  まず、海外経済協力費補助金であります。この経費は、発展途上国に対する経済協力を推進するため、経済協力関係団体が行う海外技術者受入等研修事業等に対する補助金でありまして、六十七億二千八百十六万円余を支出いたしました。  次に、海外開発計画調査委託費であります。この経費は、発展途上国における鉱工業、資源等の分野における開発計画を策定するための調査等技術協力関係団体に委託して行うためのものでありまして、七十億四百五万円余を支出いたしました。  次に、繰り越し及び不用について御説明いたします。  翌年度へ繰り越しました経費のうち主なものは、通商産業本省六十六億八千四百二十万円でありまして、日本貿易振興会事業費補助金等につきまして、計画に関する諸条件等により、年度内に支出を完了することができなかったため、経費を翌年度に繰り越したものであります。  また、不用額を生じました経費のうち主なものは、中小企業対策費四十四億四千八百二十七万円余でありまして、商工会議所等における経営指導員等設置月数が予定を下回ったこと等のため、小規模事業指導費補助金を要することが少なかったこと等により不用となったものであります。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  次に、通商産業省所管の各特別会計平成元年度の決算につきまして御説明いたします。  第一に、電源開発促進対策特別会計であります。  電源立地勘定につきましては、収納済歳入額は二千七百三十八億一千五百二十五万円余、支出済歳出額は八百五億四千百十一万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は一千九百三十二億七千四百十四万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は六百四十四億一千六百九十五万円余、剰余金は一千二百八十八億五千七百十八万円余となっております。  元年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源立地対策費でありますが、この経費は、電源立地地域における公共用施設の整備、電源立地促進のための特別対策事業電源立地地域における安全対策等推進等に必要な事業費に充てるため、地方公共団体等に対して交付するためのものでありまして、七百九十八億二千三百万円余を支出いたしました。  電源多様化勘定につきましては、収納済歳入額は二千三百五十二億三千三百四十九万円余、支出済歳出額は一千八百十三億三千六十八万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は五百三十九億二百八十万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百四十一億六千六百五十四万円余、剰余金は三百九十七億三千六百二十六万円余となっております。  元年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  電源多様化対策費でありますが、この経費は、水力・地熱資源の開発、石炭火力発電所公害防止技術の実証、太陽光発電などの新エネルギー技術開発原子力発電推進のための技術開発等の施策を行うためのものでありまして、一千七百九十四億九千九百九十三万円余を支出いたしました。  第二に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計であります。  石炭勘定につきましては、収納済歳入額は一千三百六億五千二百三十四万円余、支出済歳出額は一千六十一億九千九百六十九万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は二百四十四億五千二百六十四万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百五十億三千五百二十二万円余、剰余金は九十四億一千七百四十二万円余となっております。  元年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石炭鉱業合理化安定対策費であります。この経費は、新エネルギー産業技術総合開発機構が行う炭鉱の整理事業に対する補助及び同機構が行う経営改善資金の貸付け、貯炭管理制度のための補給並びに石炭鉱業生産体制の改善、経理の改善、保安の確保等の施策を実施するためのものでありまして、二百六十二億七千七百十一万円余を支出いたしました。  次に、鉱害対策費であります。この経費は、石炭鉱害事業団に対する鉱害復旧事業資金の補助及び同事業団が行う鉱害復旧事業のための事務費等交付金交付等を行うためのものでありまして、四百七十一億三千二十三万円余を支出いたしました。  次に、産炭地域振興対策費であります。この経費は、産炭地域において鉱工業等の振興に必要な業務を行う地域振興整備公団に対する出資、石炭鉱業の終閉山により財政状況が悪化している産炭地域市町村に対する交付金の交付及び産炭地域小水系用水開発事業等の施策を行うためのものでありまして、七十五億七千六百七十九万円余を支出いたしました。  石油及び石油代替エネルギー勘定につきましては、収納済歳入額は六千二百三億六千九百五十三万円余、支出済歳出額は三千七百二十一億四千五百七十二万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は二千四百八十二億二千三百八十一万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は一千二百十四億一千六十三万円余、剰余金は一千二百六十八億一千三百十八万円余となっております。  元年度における経費の執行につきまして、その主な事項の大要を御説明いたします。  まず、石油安定供給対策費であります。この経費は、石油公団が行う石油及び可燃性天然ガス探鉱等に対する投融資及び公団備蓄事業等に充てるための同公団への出資、同公団に対する交付金の交付、石油備蓄増強等の施策を行うためのものでありまして、三千二百四十一億九千五百七十二万円余を支出いたしました。  次に、石油生産流適合理化対策費であります。この経費は、石油の生産の合理化を図るための石油精製合理化対策事業及び石油の流適合理化を図るための石油製品需給適正化調査等の施策を行うためのものでありまして、百八十九億四千六十二万円余を支出いたしました。  次に、石油代替エネルギー対策費であります。この経費は、新エネルギー産業技術総合開発機構が行う海外炭の開発可能性調査ソーラーシステム普及促進天然ガス導入促進石炭液化等石油代替エネルギー技術開発等の施策を行うためのものでありまして、二百八十一億六千七百四十万円余を支出いたしました。  第三に、アルコール専売事業特別会計であります。収納済歳入額は三百六十三億六千三百九十二万円余、支出済歳出額は二百六十億二千九百九十八万円余であります。  この会計の損益計算上の利益は百億七千四百九十六万円余でありまして、期末資産増加相当額五億七千八十九万円余を控除した残額九十五億四百六万円余を一般会計に納付いたしました。  第四に、貿易保険特別会計であります。収納済歳入額は四千六百八十八億二千五百五十万円余、支出済歳出額は四千四百五十六億六千百六十一万円余であります。  元年度における保険引受件数は六十二万件余、その保険金額は一八兆二千九百五十一億円余でありまして、前年度に対し九兆六千四百七十七億円余の増加となっております。  第五に、特許特別会計であります。収納済歳入額は五百八十四億八千三百十一万円余、支出済歳出額は五百四十一億三千三百九十一万円余であります。収納済歳入額支出済歳出額との差額は四十三億四千九百十九万円余でありまして、全額剰余金となっております。  以上をもちまして、平成元年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計の決算に関する御説明を終わります。  最後に、会計検査院から、平成元年度通商産業省所管の決算につきまして、不当事項として八件の指摘がありました。  これらの指摘された事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後は、この種の事態の発生を未然に防止するため、より一層の指導、監督を行う所存でございます。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    平成元年度決算通商産業省についての検査の概要に関する主管局長の説明             会 計 検 査 院  平成元年度通商産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項八件であります。  これらは、中小企業設備近代化資金の貸付けが不当と認められるものであります。  この資金の貸付事業は、都道府県が、国の補助金自己資金等によって資金を造成し、設備の近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対して、設備の設置に必要な資金の額の二分の一以内の額を、五年以内(貸付対象設備公害防止設備の場合は十二年以内)の償還期間で、無利子で貸し付けるものであります。  平成二年の検査におきまして、その貸付けの適否について調査いたしましたところ、 (1) 中小企業者が貸付けの対象となった事業費より低額で設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものが四件、 (2) 貸付けの対象となる設備は、貸付年度中に設直するものであること、設備の代金を翌年度の九月三十日までに支払うことが条件となっているのに、前年度に設置したり、支払期限までに支払が完了していないものに貸し付けていたものが二件、 (3) 貸付対象事業費より低額で設置しているだけではなく、同一設備を対象に中小企業金融公庫から貸付けを受けていた中小企業者に重複して貸し付けていたものが一件、 (4) 貸付けの対象となった設備二台のうち一台は、設置後三箇月余で県に無断で売却しており、貸付けの目的を達成しておらず、また、他の一台は、貸付けの対象となった事業費より低額で設備を設置しているのに、貸付対象事業費どおりの価格で設置したとして貸し付けていたものが一件 ありました。  これらはいずれも本資金の貸付けとして適切を欠いており、ひいては補助の目的に沿わない結果になっていると認められたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ―――――――――――――    平成元年度の業務の概況について              中小企業金融公庫  平成元年度における中小企業金融公庫の業務について御説明申し上げます。  一、当公庫の平成元年度当初貸付計画は、二兆 三千八百四十八億円と定められました。  これに対し、中小企業者に対しては、二兆三千十一億二千五百五十五万円の貸付を行ったほか、設備貸与機関に対しては、二百五十九億五千九百八十万円、また、中小企業投資育成株式会社に対しては、十億円の貸付を行い、総額では、二兆三千二百八十億八千五百三十五万円の貸付実績となりました。  中小企業者に対する貸付契約額のうち、設備資金は五十一・一パーセントに相当する一兆二千八百三十一億六千五百八十四万円余、運転資金は四十八・九パーセントに相当する一兆二千二百九十七億六千五百十四万円余となっており、また、直接貸付は七十五・五パーセントに相当する一兆八千九百八十三億七千五百三十万円(四万三千四百五十一件)、代理貸付は二十四・五パーセントに相当する六千百四十五億五千五百六十八万円余(三万四千六百三十五件)となっております。  なお、平成元年度末における総貸付残高は、六兆六千二百五十三億九千九百七十一万円余となっております。  貸付金延滞状況につきましては、平成元年度末におきまして弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は、九百十二億五千八百三十六万円余でありまして、このうち一年以上のものは、八百九十五億千三十五万円余、総貸付残高の一・四パーセントとなっております。  二、平成元年度の融資に当たりましては、国際化消費者ニーズ多様化等に伴い産業構造の転換が進展するといった変化の激しい経営環境の中におかれている中小企業者に対し、その事業基盤の強化に資する資金について積極的に対処してまいりました。特に、中小企業経営基盤の強化を図るための貸付制度を新設したほか、地域経済活性化を図るための地域産業振興貸付制度等を拡充するなど中小企業者の新たな事業展開を図ろうとするための資金についてもきめ細かい配慮を払ってまいりました。  また、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に必要な資金、流通機構近代化合理化のために必要な資金及び産業公害の防止、産業安全の確保等のために必要な資金についても配慮してまいりました。  なお、平成元年度におきましては、中小企業者の一層の利便に資するため、旭川出張所を支店に昇格させました。  三、次に、当公庫の平成元年度の収入、支出の決算及び損益計算について申し上げます。  収入、支出の決算について申し上げますと、貸付金等収入済額は、三千四百四十八億四千六百九十万円余、支払利息等支出済額は、三千二百七十一億九千四百五十万円余となりました。  損益計算について申し上げますと、貸付金利息等の総益金は、三千六百三十七億六千二百九十四万円余、借入金利息事務費業務委託費等の総損金は、三千六百三十七億六千二百九十四万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上をもちまして、平成元年度における中小企業金融公庫の業務の概況について、御説明を終わります。                     以上     …………………………………    平成元年度決算中小企業金融公庫についての検査の概要に関する主管局長の説明             会 計 検 査 院  平成元年中小企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ―――――――――――――    平成元年度の業務概況について            中小企業信用保険公庫  中小企業信用保険公庫平成元年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げます。  平成元年度におきましては、国の一般会計及び産業投資特別会計から中小企業信用保険事業の円滑な運営を図るための原資として、中小企業信用保険準備基金百九十五億円、信用保証協会の保証活動の円滑化を図るための原資として、融資基金二百十五億円、合計四百十億円の出資が行われました。  まず、中小企業信用保険事業についてみますと、公庫が全国五十二の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で百万六千件余、金額で八兆九千七百七十四億二千八百六十八万円余になっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で十一パーセントの増加となっております。  この結果、平成元年度末の保険引受残高は、件数で二百二十六万一千件余、金額で十八兆九百七十九億二千百二十五万円余となっております。  なお、中小企業信用保険保険金の支払いは七百六十一億三千三百三十三万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、三十五パーセントの減少となっております。  信用保証協会に対する融資事業につきましては、平成元年度に国の一般会計及び産業投資特別会計から新たに出資されました二百十五億円及び既往の貸付に係る回収金等三千四百七十九億六千五百万円、合計三千六百九十四億六千五百万円をもちまして、三千二百二十六億四千八百万円の貸付けを行いました。  この結果、平成元年度末における貸付残高は三千八百八十億八千三百万円となっております。  機械類信用保険事業につきましては、公庫が機械類のリース業者等との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引受は、件数で二十八万三千件余、金額で一兆四千四百九十二億六千二十八万円余となっております。  この結果、平成元年度末の保険引受残高は、件数で百三十四万五千件余、金額で七兆四百九十五億四千二百八十三万円余となっております。  なお、機械類信用保険保険金の支払いは四十五億六千七百二十八万円余となっております。  次に収入支出及び損益の概況について申し上げます。  まず、収入、支出について申し上げますと、収入済額は二千百十六億六百九十七万円余、支出済額は八百五十億九千六百九十三万円余でありまして、差し引き一千二百六十五億一千三万円余の収入超過となっております。  損益計算につきましては、さらに支払備金等の整理を行いました結果、総利益は三千三百七十九億三千二百七十七万円余、総損失は三千三百三十四億二千六百九十七万円余となり、差し引き四十五億五百八十万円余の利益金を生じましたが、これは機械類信用保険特別勘定の利益金によるものであります。  この利益金は、機械類信用保険法の規定に基づき、繰越損失金の補てんに充てております。  最後に、会計検査院から、平成元年度決算検査に際し、処置要求事項として指摘がありました。  御指摘の事項につきましては、直ちに是正、改善の措置を講じたところであり、今後、なお一層業務の運営の適正化に努めてまいる所存であります。  以上、簡単ではございますが、平成元年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げた次第でございます。     …………………………………    平成元年度決算中小企業信用保険公庫についての検査の概要に関する主管局長の説明            会 計 検 査 院  平成元年中小企業信用保険公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。  これは、機械類信用保険の回収金の公庫納付に関するものであります。  中小企業信用保険公庫では、公庫を保険者、リース業等を営む会社を被保険者とする機械類信用保険事業を実施しております。この制度では、 リース料の不払等の事態、すなわち、保険事故が発生したことにより公庫から保険金の支払を受けた被保険者は、その後、保険金支払の対象となった損害額の回収に努めることとなっております。そして、保険金の請求後に、リース物件の使用者等から回収した金額があるときは、被保険者は、所定の期日までにその旨を公庫に書面で報告し、回収金からこの回収に要した費用等を控除した額の二分の一の金額を公庫納付金として公庫に納付しなければならないこととなっております。  今回、本院で、公庫が昭和六十年度から平成元年度までに保険金を支払った二台九十三会社のうち二十五会社を対象とし、回収金の回収状況等を実地に調査いたしました。その結果、十二会社において、回収報告漏れとなっているものが百四十八件あり、これらに係る公庫納付金合計千六百九十四万一千円が未納となっている事態が見受けられました。一方、公庫でも、会社に対する実地調査を行っていて、回収報告漏れが毎年多数生じている事実を把握しておりましたが、積極的にこうした事態が生ずる原因を分析し、回収報告漏れに対する抜本的な対策を講じていない状況でありました。  そこで、本院でその発生原因等を調査いたしました。その結果、第一に、会社において、回収金に係る一連の処理状況を適切に把握するために必要な事故債権管理台帳等が整備されていないのに、公庫ではこれを整備させるための措置を執っていないこと、第二に、公庫の実地調査を補完するため、回収金の回収状況を会社から定期的に書面で報告させる制度を導入する必要があるのに、これを実施していないこと、第三に、保険金の支払後、公庫で回収の見込みのあるものを重点的に管理できるような体制を執っていなかったことなどにより、回収報告漏れの事態が発生するものと認められました。  このため、今回、公庫に対して所要の措置を講じて回収報告漏れの防止を図り、もって回収金に係る公庫納付金の確保に努めるよう是正改善の処置を要求いたしたものでございます。  以上簡単でございますが説明を終わります。     ―――――――――――――
  4. 貝沼次郎

    貝沼委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森英介君。
  5. 森英介

    ○森(英)委員 森でございます。  私は、景気対策と研究開発基盤の整備、この二つに絞りまして質問をさせていただきたいと思います。  まず、景気対策でございます。  最近の我が国経済は、乗用車販売の伸びや、長期間低迷しておりましたマネーサプライが二月になって久方ぶりにプラスに転ずるなど、明るい材料も出てきております。しかし、GNPの四分の三を占める個人消費や設備投資は低迷したままで、また、これからいよいよ企業がリストラを進める中で雇用調整が本格化するという見方も出ております。このため、私は、我が国経済の先行きに依然強い懸念を抱いているものでありますけれども、来年度の成長率は政府見通しの三%に果たして到達することができるのだろうかという心配を持っております。  今回決定いたしました新総合経済対策により、景気が回復して三・三%の見通しが達成できるのかどうか、この点について通産省の御所見を伺いたいと思います。
  6. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 我が国の経済は、ただいま先生御指摘のとおり、一部に回復の兆しを示す動きが徐々にはあらわれてきておりますけれども、個人消費とか設備投資といったいわゆる民間需要を中心に依然として低迷した状態を続けております。一言で申し上げますと、いまだ予断を許さない状況にございます。このため、景気の足取りを確実なものとするべく、総規模で十三兆円を上回る総合的な経済対策を政府としては決定したところでございます。今回の対策によりまして、年度を通じて高水準の公共投資が行われ、景気を下支えするとともに、住宅投資の回復が着実なものとなるのではないかというふうに考えております。さらには、個人消費とか設備投資も緩やかな回復に向かうものと考えております。  特に二点申し上げたいと思うのでありますけれども、社会資本整備の新たな展開によりまして、さまざまな分野に幅広く投資が行われ、その需要拡大効果がいろいろな産業に広範に、そして直接、即効的に及ぶことを期待しております。それから第二に、設備投資減税、住宅減税が今回の施策の柱の一つとなっているわけでありますけれども、これによりまして、設備投資あるいは住宅投資という直接の効果もさることながら、それによります間接的な誘発効果も期待されるのではないかというふうに思っております。  以上、総合いたしまして、我が国経済は今後次第に景気回復過程に入っていくことが期待されておりまして、平成年度政府経済見通しの三・三%成長の達成は可能なものというふうに考えておるところでございます。
  7. 森英介

    ○森(英)委員 ひとつ通産省としても、あらゆる適切な措置をまた講じていただきまして、目標を達成すべく御努力いただきたいとお願い申し上げておきます。  続きまして、今回の経済対策の検討に際しまして、通産省は、当初の段階から新社会資本整備の考え方を提言されまして、一貫して議論をリードしてきた、この点については敬意を表します。この考え方は「社会資本整備の新たな展開」という形で今回の対策に盛り込まれ、今回の対策の大きな特色となっております。この施策の意義、目的に関する通産省の基本的な考え方を伺いたいと思います。
  8. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 今回の総合経済対策におきまして、第三項に「社会資本整備の新たな展開」という項が立っております。これは、情報化、高齢化等社会経済情勢の変化、さらに「生活大国五か年計画」に示されました将来への中長期的な展望を踏まえつつ、他方、景気の現状に的確に対応していくという観点からさまざまな分野に幅広く投資を行うことにより、その効果がより広範に、かつ直接的、そして速やかに即効的に及ぶということを目指しているわけであります。こういう意味で「社会資本整備の新たな展開」という項を起こしまして、一つの大きな柱としているところでございます。これによりまして需要の拡大効果が経済の各分野に広く、そして速やかに及ぶということで、景気の一日も早い回復に寄与することを期待しておりますし、また、その効果がいろいろな面に浸透するということで、国民の各層に景気の回復を実感していただく、そしてマインドを明るくしていくという意味でも意義があるのではないかと考えているところでございます。  こういった社会資本整備の新たな展開というのは、同時に、情報化とか高齢化といったふうな経済社会の変化に見合った多様で高度な国民のニーズにもこたえるものでありますし、教育とか研究開発といったものも日本の中長期的な将来の経済社会の発展基盤の形成に役立つものでありますし、また、社会福祉の増進といった格好で国民生活の充実にも大きく寄与することが期待されているところでございます。
  9. 森英介

    ○森(英)委員 現在、いろいろな施策にもかかわらず企業の設備投資意欲は依然として冷え込んでおりまして、民間調査機関の予測でも、五年度はさらに減少するということが予想されております。一方で、この設備投資は景気の先導役と言っても過言ではありませんし、それが立ち上がりませんと景気の回復は望めないということになると思います。今回の経済対策には設備投資減税が盛り込まれておりますけれども、その具体的な内容についてお伺いいたします。
  10. 熊野英昭

    ○熊野政府委員 ただいま森委員御指摘のとおり、設備投資減税につきましては、今回の総合経済対策の第五項「民間設備投資の促進」の第一に、「設備投資を促進するための税制上の措置」ということで掲げてございます。以下、御説明申しますような大型の設備投資減税を本年の七月一日から、これは法律をつくっていただく必要があるわけでありますけれども、その暁には七月一日から一年間の臨時、時限の措置として実施するということにしたわけであります。  中身でございますけれども、第一は、中小企業活性化に資するという観点から、中小企業の行います創意にあふれた、また自主的な設備投資を広範に支援するために、中小企業者等の機械の特別償却制度というのが現在あるのでありますけれども、これを抜本的に拡充することによりまして、新たに中小企業機械投資促進税制を創設したいということでございます。  具体的に申し上げますと、現在特別償却率が一四%となっておるわけでありますけれども、この一四%を三〇%に引き上げるというのが第一点でございます。それから、現在は税額控除制度はないわけでありますけれども、七%の税額控除を新たに設けるというのが第二の点でございます。それから第三の点は、現行の制度におきましては対象を機械装置に限っております。これに加えまして、電子計算機とか複写機とかファクシミリといったふうないわゆる新しいもので、かつ中小企業の経営体質の改善に資するような一定の器具製品を対象として追加をしたところでございます。その結果として、中小企業の方にとっては大変使いやすい制度になるのではないかというふうに思っております。  それから、第二の設備投資減税でございますけれども、これは、時短、就業環境の改善、あるいは環境問題に対する対応、あるいは輸入促進といったいろいろ現下の経済情勢にかんがみまして政策的な課題があるわけでありますけれども、これらの課題に配慮した省力化、合理化投資を促進するために、高度省力化投資促進税制を創設することとしております。  具体的な中身を申し上げますと、ただいま申し上げましたような企業の省力化、合理化に資する設備を企業が取得した場合に、七%の税額控除または三〇%の特別償却、これは選択的に適用できるわけでありますけれども、認めるということでございます。なお、これは大企業、中小企業を通じての制度でございますので、中小企業者につきましては、この七%、三〇%の特償のところをそれぞれ二割アップいたしまして、八・四%の税額控除、それから三六%の特別償却制度ということでさらに探掘りをしているところでございます。それから、従来対象になっておりませんでしたリースによる投資も対象とするということを考えております。対象設備の数は、現在大蔵省と細かい調整を進めているところでありますけれども、約百十五設備ぐらいを対象としたいというふうに考えております。なお、設備投資減税でございますけれども、これも精査を要しますけれども、初年度で五百四十億円、平年度ベースで七百二十億円程度というふうに考えております。  いずれにいたしましても、これらの設備投資減税が民間において積極的に活用されまして、中長期的に必要な設備投資をぜひ進めていっていただいて、景気浮揚が図られることを期待しているわけであります。
  11. 森英介

    ○森(英)委員 景気低迷が続いておりますけれども、その当然の帰結として記録的な貿易黒字が続いているわけでございます。クリントン政権が米国で誕生いたしましたし、また、ことし七月の東京サミットで我が国は議長国を務めるということを踏まえますと、単に内需拡大のみならず、目に見える形で対外配慮の姿勢を示すことが必要ではないかというふうに考えます。その意味で、輸入促進策を経済対策の中に含めたことはまことに妥当な措置であると考えますが、その具体的内容についてここで伺いたいと思います。また、諸外国にこのような我が国の努力をPRするという必要があると考えますが、そのためにどのような措置を講じておられるか、この点についてもあわせてお伺いいたします。
  12. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘ありましたように、対外不均衡、景気低迷の当然の帰結として大変大きな黒字を現在抱えておるわけでございまして、従来から各種の輸入促進対策を講じてきておったわけでございますが、今回も輸入促進に配慮した各種の施策を講じたわけでございます。  まず第一は、今回の十三兆二千億という景気対策そのものが、ある意味で内需振興による輸入促進でございますので、そういう意味では今回の対策そのものが輸入促進のためである、こういうことをます第一に諸外国に対してはPRをしておるところでございますが、それに加えまして、もう少しきめ細かな輸入促進という柱を立てまして幾つか整理をさせていただきました。  中身を御紹介申し上げますと、第一は、外貿ターミナル等輸入インフラの整備を推進するとともに、フォーリン・アクセス・ゾーンという、これは昨年通りました法律に基づきまして、港湾、空港等の近辺に輸入促進地域を指定いたしましてそこにインフラ整備を図ろう、こういう施策を講じておりますが、これをさらに思い切って推進していこう、こういうのが第一点でございます。  それから第二点目は、輸入品及び輸入関連ビジネスの各地方における浸透を図るために、ジェトロの地域輸入促進センターというのをブロックの中枢都市等に設けようということを今回対策に盛り込んだわけでございます。  それから、第三点目は金融の関係でございまして、対日輸出を行おうとする外国企業に対しまして、今まで直貸しと言いまして、そういう外国企業に直接お金を貸すというのを輸出入銀行でやっておったわけでございますが、この融資制度の運用改善をいたしまして、これがよりスムーズに貸し付けができるような制度にしよう。さらには中小企業の輸入、流通業者でございますが、これに今まで金融措置がございますが、その金利を思い切って引き下げようといったような措置を講じたわけでございます。  さらにそれに加えまして、先ほど来答弁申し上げておりますが、政府調達の際、今回は新社会資本整備ということで、医療機器とか診断機器、あるいは各種情報機器、研究施設、そういった新社会資本整備をいたしましたが、当然これらは輸入誘発効果の大きいものでございまして、これらにつきましても、その過程で外国製品を積極的に購入する上で大きく貢献するのではないか、かように考えておるわけでございます。  さらに第五点目は、先ほど申し上げました投資減税、高度省力化投資促進税制というのを今回新たに新設いたしましたが、それの対象品目に輸入比率の非常に高い各種機器を入れることによりましてさらに輸入促進に効果あらしめよう、こういったような非常にきめ細かな各種施策を講じたわけでございます。  これらにつきましては、十三日に発表いたしましたその日のうちに、在外公館、さらにはジェトロ等を通じまして一斉に海外にPRを展開したわけでございますし、あわせて外人プレスを招集いたしまして、しかるべく内容の説明をした、こういうことでございます。御指摘のように外にPRすることが非常に重要でございますので、これからも引き続きPRを続けていきたい、こういうように考えております。
  13. 森英介

    ○森(英)委員 ひとつぜひよろしくお願いいたします。  続きまして、研究開発基盤の整備に移らせていただきますが、科学技術研究開発活動というのは、産業の新分野の拡大や既存市場の活性化を通じて社会経済に新しい活力を創造するもので、我が国の発展基盤の根幹をなすものと言っても過言ではないと思います。特に大学、国立試験研究機関等は、特定の利害にとらわれない基礎的、基盤的な研究を行う機関としてまことに重要でありまして、その研究開発基盤は新社会資本として重点的に整備しなければならないものであると考えております。  しかしながら、政府部門における研究開発投資は、大学、国立試験研究機関等がその課せられた役割を十分に果たしていく上でまだまだ不十分ではないかというふうに思われまして、例えば、狭い研究室で大変時代おくれの研究機器を修理しながら使用するということが今実態でございますけれども、こうした環境で世界に通じる高度な研究が行われるということは大変至難のことではないかというふうに思います。  そういうことで、今般の経済対策において、通産省は新社会資本の旗振り役として、省庁の枠を超えた研究開発基盤の整備の重要性を訴えてこられたということに対して大変敬意を表するものでありますが、通産省自身も実は筑波地区を初め全国に多くの研究機関を保有しているわけであります。こういう全政府的な立場からの旗振りというのも大変重要であると思いますが、通産省自身の研究基盤整備につきましてどのような取り組みをなさっているかということについてお伺いしたいと思います。
  14. 松藤哲夫

    ○松藤政府委員 通産省は筑波に八つの研究所、それから北海道から九州まで七つの地方試験所を持っておるわけでございますけれども、先生御指摘のように、施設設備が大変老朽化しておるという現実がございます。特に、設備は九割以上が法定耐用年数を過ぎているようなありさまでございまして、この施設設備の老朽化、陳腐化に対応するということは、研究開発を推進していく上で極めて緊急の課題でございます。また、この試験研究所の施設設備整備というのは、長期的には我が国技術水準の向上につながるものでございまして、先生おっしゃられましたように、新たな社会資本の整備として極めて重要な位置づけを有しているものというふうに認識をしております。  このために、通産省といたしましては、従来から施設設備計画的な整備に努めてきたところでございますけれども、こうした補正予算その他あらゆる機会をとらえまして、今後とも一層その整備に努めてまいる所存でございます。
  15. 森英介

    ○森(英)委員 私も、私ごとでありますけれども、ついこの間まで研究者の端くれだった者でありますけれども、やはり現状を改善するためには、相当な気合いを入れた施策を講じていただきませんとなかなか改善できないというふうに実感として感じておりますので、くれぐれもよろしくお願い申し上げたいと思います。  また、先日来、米国の再活性化策の一環といたしまして、新政権のゴア副大統領が、米国の科学技術活性化の目玉として情報スーパーハイウエーという構想を打ち出しておりまして、強力にこれを推進しようとしているという報道がなされております。研究開発基盤として、個々の研究者の情報交流の重要性はどこから見ても明らかなわけでありますが、果たして、我が国においてこうした研究にかかわる情報インフラという意味で十分な対応がなされておりますでしょうか。
  16. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 ただいま御指摘のように、クリントン新政権におきましては、情報化基盤を整備するということを最重要政策の一つと考えておりまして、今御指摘の情報スーパーハイウエーも、いわばアメリカのリーダーシップを回復するということを目的として、いわゆるHPCC計画ということで、この研究基盤の整備を抜本的に強化しよう、こういうものでございます。  翻って、我が国におきましては、全般的に情報化基盤の整備というものがおくれているのは残念ながら事実でございます。そういう意味におきまして、今回の総合経済対策におきまして、私どもといたしましても、例えば通産省、科学技術庁並びに文部省所管の大学の研究室にスーパーコンピューターの導入を図り、それらをいわゆる高速ネットワーク、高速LANで結ぶことによりまして情報の交換ないしは共同研究開発の基礎を築きたい、こういうことで財政当局の理解を得たところでございます。  ただ、御指摘のように、スーパーコンピューターの導入と相互の研究施設のネットワークの形成という点については、アメリカに比べてまだまだ足りないところがございまして、今回の対策はいわばその第一歩というべきものと考えております。今後、各省庁の研究所並びに大学の研究室などの研究開発の現状を踏まえつつ、各省と協力してこういった研究開発のネットワークづくりというものに努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  17. 森英介

    ○森(英)委員 それでは、最後の質問でございますけれども、これはぜひ逢沢政務次官にお答えをお願いしたいと思います。  今お話にもありましたように、大学や国立試験研究機関等の研究開発基盤の整備は、先般閣議決定されました総合経済対策においても、重点的な整備を行うことというふうにうたわれております。私は、我が国の将来を考えたときに、新社会資本の一環としても進められている研究開発基盤の整備については大きな第一歩であるというふうに高く評価するものでございます。しかしながら、換言すれば、これはあくまでもその第一歩にすぎないわけでありまして、むしろ今後の取り組みが重要ではないかと考えておりますが、この点につきまして、次官から通産省のお考えをお伺いしたいと思います。
  18. 逢沢一郎

    ○逢沢政府委員 委員御指摘のように、全国に展開をされております大学あるいは国立試験研究機関等におきますところの研究開発基盤の整備につきましては、御承知のように、科学技術庁を中心といたしまして、関係各省庁と協調して推進をしてきたところでございます。  通産省といたしましても、去年の八月から産業技術審議会におきまして、中期的なそしてまた計画的な研究施設整備等のあり方について、改めて勉強を行ってきているところでございます。こうした中におきまして、昨年八月におまとめをいただきました総合経済対策におきまして、研究施設等の整備が進められることとなりました。そして、さらに今回の総合経済対策におきましても、研究施設そしてまた研究情報基盤等の研究開発基盤の充実が図られ、全体の規模も前回を上回るものになっているところでございます。これら合計二回の対策は、研究施設等を前倒し的に整備するものでございまして、大変大きな第一歩である、私どもそのように認識をいたしているところでございます。  去年、ことしの計二回の対策においてとられましたところの研究開発基盤の整備を基礎といたしまして、関係各省庁と協調しながら、今後さらに研究開発基盤の整備に努めてまいる所存でございます。そしてまた同時に、我が国開発基盤の強化に貢献する整備につなげていかなくてはならない、私どもそのように存じておるところでございます。
  19. 森英介

    ○森(英)委員 ありがとうございました。終わります。
  20. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、小森龍邦君。
  21. 小森龍邦

    ○小森委員 本日は、お昼を挟んで午前中、午後という形で質問をすることになっておりますので、主として午前中の質問は、当面する我が国の経済を少しばかり長期的な視野に立って分析をして、そのことが単に経済の問題だけでなくて深く思想とか文化とかというものと関係する、そういう観点について私の思うところを申し上げ、かつ通産省の考え方を聞かしていただきたい、かように思っておるわけであります。  そこでまず冒頭に、一九五七年の我が国の経済白書、これは経済企画庁が出したものでございますが、この中に、経済の二重構造ということをうたっております。この点についてはどういうことを書いておるか、つまり簡単に、どういう表現となっておるかということをまず確認の意味でお尋ねをしておきたいと思います。
  22. 土居征夫

    ○土居政府委員 今先生御質問の五七年の経済白書、戦後経済のその時期までの動向を分析いたしまして、経済の二重構造問題を指摘しているわけでございますけれども、労働生産性と賃金の悪循環で日本経済が超近代的な大企業と零細中小企業の二重構造から成っているという点を分析していると承知をしております。
  23. 小森龍邦

    ○小森委員 したがって、その経済白書なるものは経済の二重構造というものを我が国経済の特徴としてとらまえておるわけですが、つまり肯定的に分析したのか、あるいは、非常に危険信号だという否定的な意味をもって分析しておるのか、その点はいかがでしょうか。
  24. 土居征夫

    ○土居政府委員 今ちょっと手元に経済白書を持ってきておりませんけれども、基本的には、今先生おっしゃいました後段の、今後解決を要する問題としてその時点での経済の二重構造を分析しておると承知しております。
  25. 小森龍邦

    ○小森委員 その経済白書というものを受けてというか、あるいはそういう分析に基づいて出されたものと思いますが、一九六五年の同和対策審議会答申の中にも二重構造という言葉が出てきております。したがって、その経済の二重構造というものと我が国の国民の持つ人権感覚、あるいは国民の持つ人権感覚にとどまらず、ポイントは、政府の行政施策の中にどのように人権感覚というものが盛り込まれるかということが大きな問題だと私は思いますが、その二重構造と、政府、国民とを問わず人権というものとのかかわりが、続く同和対策審議会答申でどういうふうに分析をされておるか、これは総務庁の方からひとつお答えいただきたいと思います。
  26. 荒賀泰太

    荒賀説明員 昭和四十年に出されました同和対策審議会答申でございますが、この答申につきましては、同和問題解決に向けての基本的な考え方を示しますとともに、総合的な方策を初めて示したものでございます。  この中で、「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。」というふうにしておるわけでございます。  ただいまお尋ねの我が国産業経済の二重構造につきましては、次のように触れられております。   わが国の産業経済は、「二重構造」といわれる構造的特質をもっている。すなわち、一方には先進国なみの発展した近代的大企業があり、他方には後進国なみの遅れた中小企業や零細経宮の農業がある。この二つの領域のあいだには質的な断層があり、頂点の大企業と底辺の零細企業とには大きな格差がある。   なかでも、同和地区の産業経済はその最底辺を形成し、わが国経済の発展からとり残された非近代的部門を形成している。   このような経済構造の特質は、そっくりそのまま社会構造に反映している。すなわち、わが国の社会は、一面では近代的な市民社会の性格をもっているが、他面では、前近代的な身分社会の性格をもっている。今日なお古い伝統的な共同体関係が生き残っており、人々は個人として完全に独立しておらず、伝統や慣習に束縛されて、自由な意志で行動することを妨げられている。   また、封建的な身分階層秩序が残存しており、家父長制的な家族関係、家柄や格式が尊重される村落の風習、各種団体の派閥における親分子分の結合など、社会のいたるところに身分の上下と支配服従の関係がみられる。   さらに、また、精神、文化の分野でも昔ながらの迷信、非合理的な偏見、前時代的な意識なとが根づよく生き残っており、特異の精神風土と民族的性格を形成している。   このようなわが国の社会、経済、文化体制こそ、同和問題を存続させ、部落差別を支えている歴史的社会的根拠である。 との認識を示しているところでございます。
  27. 小森龍邦

    ○小森委員 今日我が国の同和行政、特に総務庁とか法務省、法務省は人権擁護行政ということでかかわるわけですが、こういうふうな分析からすると、もともと差別を支えておる根っこである経済の仕組みの中がどろどろともつれていれば、いわばその反映として人間の思想、文化あるいはそれに基づく社会の習慣、そういうようなものも勢い解決しないまま時間がたっておる、こういうふうに見るべきものなのでありまして、その点では、同和対策事業特別措置法十年と延長の三年分、地域改善対策特別措置法の五年、地対財特法五年とさらに今度の五年の延長という形で、政府はある程度力を尽くしておるということにはなりますけれども、その根本の問題にさかのぼって常にそれを照射しなければ問題の根本的解決にはならない。要するにここが、政府と民間運動団体との意見の大いに異なるところであります。理は、つまり運動側が言っておることは、相当苦心してつくった同和対策審議会答申の精神に立脚して言っておるのであって、政府側はここのところを無視していこうというところに現在の問題がある。これは指摘をするにとどめます。  次いで、法務省の筧人権擁護局長の方にお尋ねします。  二重構造と先ほど地域改善対策室長からお読みをいただいたこの条文との関係で、「精神、文化の分野でも昔ながらの迷信、非合理的な偏見、前時代的な意識などが根づよく生き残っており、特異の精神風土と民族的性格を形成している。」そういう観点から「このようなわが国の社会、経済、文化体制こそ、同和問題を存続させ、部落差別を支えている歴史的社会的根拠である。」  ここのところについて、今日の我が国の人権擁護行政で特に差別事件の処理――処理という言葉は、何かじんかい処理みたいで、物事をがらがらと片づければいいというような感じにとられますので、私は人間本位の言葉ではないと思うが、人権擁護委員会のあの規程というか規則みたいなものの中に処理という言葉が使われておるのでここではそれを使いますけれども、人権擁護の諸施策を行っていく上で、ここの考え方を一体しっかり踏まえておられるかどうか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  28. 筧康生

    ○筧政府委員 先ほど総務庁の方からもお答えいたしましたように、いわゆる解放令によって制度的な身分制度が解消されたにかかわらず、その後も部落差別という遺憾な状況が存続してきたその原因の中に、先ほど、同対審の指摘したいわゆる二重構造というものが存在する、その二重構造は経済構造の二重構造と同時に、ただいま御指摘の社会構造における二重構造的なものもその原因としてあるということは、私どももそのとおりであると認識しているところでございます。この同和問題の解決、特に心理的差別の解消というのが私どもの職務としておるところでございまして、こうしたいわば精神、文化の面におけるおくれた意識の解消ということは極めて重要なことであると考えているわけでございます。  私ども人権擁護行政の職務範囲というのは二つあるわけでございますが、一つは、一つずつの人権侵犯事件というものを調査してそれを適切に処置するということ、それと同時に、いわば自由人権思想の啓発と申しておりますけれども、一般啓発、国民の人権意識の高揚ということももう一つ重要な柱として考えておるわけでございます。  私どもは、一つずつの人権侵犯事件の解決、これももちろん極めて重要なことであると考えておりますけれども、部落差別あるいは部落差別以外の女性差別、障害者差別、いろいろな差別を解消していくためには、国民の人権意識というものが高められていくということが必要ではないかと思っておりまして、ただいまの御指摘いただいたような同対審答申をも踏まえて、国民の意識の啓発に努めてまいりたい、このように存じております。
  29. 小森龍邦

    ○小森委員 一昨年から昨年にかけて、地対財特法の延長をめぐる時期でもございましたので、国会の論議というものがかなり集中的に各委員会、本会議でも議論をされたところでありますが、その際に、同和対策審議会の答申というものを尊重するとかその精神を踏まえるとかということは、しばしば閣僚の答弁からもあるいは事務当局の答弁からも聞かせてもらったわけであります。しかし、私はこれは、かなり国会の議論というものが詰まってきたからこの時点でまた、同和対策審議会の答申を尊重するかのごとき答弁をもらうような雰囲気となったのでありますが、ひところは、ああ同対審答申は古くなった、こんな言い方で全面的に否定しようというような態度が総務庁あたりで見られたし、法務省の中にも人権担当の官僚の方が、そういう言動に走られる人もいたわけであります。  相当これは苦労して、ちょうど憲法がうたっておりますように、この憲法が国民に保障する基本的人権というものは、人類のというか国民不断の努力によってこれを維持しなければならないというあの精神がぴったり当たると思いますが、勘定してみると、一年余りの間に同和問題及び人権に絡む議論というのは、通算すると実に百四十回も行われておるのであります。そういうことで、私は、やっと同対審答申というものはもう一度腰を据えた、こういう評価をしておるわけであります。  そこで、もう一度法務省の人権擁護局長にお尋ねをしたいと思いますが、つまり社会啓発というものは、先ほど荒賀室長が読まれました同和対策審議会の答申の中の一番終わりごろのところの「このようなわが国の社会、経済、文化体制こそ、同和問題を存続させ、部落差別を支えている歴史的社会的根拠である。」ここのところをしっかり踏まえて人権擁護行政を行うということになれば、あなた方が行う啓発あるいは事件の解決に向けての取り組みというものは、そういう同和問題を存続させる社会の基盤というものに対して人間が能動的に働きかけていくというような解決の方向に向かわなければ、ただ事件が起きた、ちょっと注意したというようなことでは問題は解決つかないのであります。  広島県の尾道市で起きた差別事件で、これは確信犯的なところがあるのですけれども、要するに部落の者と結婚するなということを私は子供に堂々と言うということを、家庭内で話をしただけでなくて、あちこちへ電話をかけまくるというような、そういう事件が起きたことがありますが、七年か八年たって法務省人権擁護行政はどういうことをやったかというと、七年も八年もかけて、あれはちょっと注意をしておきましたからと。正式には事件処理の規程でどういう言葉を使うのか、ここではっきり覚えておりませんけれども、民間的に言ったら、ちょっと注意しておきましたというようなことで、意識を変えることはもちろんできないが、その意識が次第に社会の習慣を改革していく、あるいはその時代の差別的思想とか差別的文化、そういう差別に対して――文化という言葉を使うのはもったいないですけれども、広義な意味においてそれは私は一つの文化の形態だと思いますが、そういうものに働きかけなかったら意味ないでしょう。  その点やや救われるのは、つまり人権思想とかあるいは近代における自由の思想とかというものを定着させるということが人権擁護行政の、いろいろある中の一つの重要なポイントだということを先ほど局長は言われましたので、それは多少救われますけれども、しかし一番インパクトがあるのは、事件と取り組むときに、法務省人権擁護行政の中で、その考え方が間違っておると言うことと同時に、逆にそれは間違っておるということがわかったら、古い前近代的な社会の習慣その他を改革していくような、そういう方向に人間の姿勢が向かうような啓発でなければ私はいかぬと思いますけれども、その点はどうですか。
  30. 筧康生

    ○筧政府委員 基本的にはただいま委員の御指摘のとおりであると思っております。  ただ、若干弁解めいて申し上げさせていただきますと、私どもが人権擁護行政として行います、啓発と言っておりますけれども、その啓発のやり方といいますのは強制力を使わない、あくまで任意調査、そして相手方に対して任意の形で働きかけるということを行うことでありまして、また私どもが、先ほど来御指摘のように、国民の心のいわば奥深い、ひだと言ってもいいと思うのでございますけれども、そういう奥深いところに存在しておるおくれた意識というものを解消していくためには、粘り強く教育あるいは社会的な啓発という作用を通じてその対象者あるいは国民一般に働きかけていくというやり方が最も適切な作用であると考えております。  先ほど、非常に長く時間がかかった事件のことを御紹介を受けまして、まことに事件処理というのは迅速になすということも一つの大事なことでございますので、私どもとしては時間がかかっているということに対しては申しわけないことであると思っております。ただ、先ほど、その事件の処理は説示というわけでございますが、これは私どもの処理規程の中で、勧告及び説示というのは処置としては極めて重いという形のものでございます。  ただ、それは重いとか軽いとかということではなしに、私どもの作用というものは、部落差別なら部落差別を起こした人たちに対して働きかけて、何とかしてその人の心の奥深いところの差別意識を解消していくということに対して努力をいたす作用でございます。そうしたことをする間に極めて長時間がかかるということも間々あることでございまして、そして、まことに遺憾なことながら、それでも反省の言葉が聞かれないというような遺憾な事態も生ずるということも、これもまた私どもの調査及び処理の限界としてあり得るということもひとつお許しをいただかなければならないのではないかと思っておるわけでございます。
  31. 小森龍邦

    ○小森委員 七年も八年もかかって説示という結論になった、しかもそれは、法務省の人権擁護局、出先ですから局ではなくて人権擁護の担当者ということになるでしょうが、そういう者との間において説示があったということがまた相当時間を経過しなければ、そういうことの差別を何とかひとつ解決をしなければならぬということで提示した地方自治体とか地方自治体の教育委員会とか差別を受けた関係者とか、そういう者のところに響いてこない、これが一つ問題ですよ。  それはきょうは通産省のことを聞きたいからこの問題を長くいかれないのですけれども、当初、これは私自身の経験を言いますと、私は尾道の法務局の支局長に会って、今説示という言葉は忘れておったが、早く、もうわかり決まったことなんだから、三カ月とか半年とか尾道の市長が提起をした直後に説示というようなことをして、そして国の、つまり行政機関とすれば、そういう物の考え方はだめなんだという意思表示をしただけでも相当社会啓発的な意味がある、それを言いましたけれども、ついに七年か八年かたたなければやらないということなので、非常に私は残念だと思いますよ。今私が言っておることに対しての答弁は、また後ほどちょっと関係したことが出てきますから要りませんけれども、これはよくひとつ考えて取り組んでいただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。  そこで、通産省の方に質問は返りますが、そういう我が国の経済の二重構造というもののいわば二階建ての上の部分、思想とか文化とか生活習慣とかいうようなところを今少しばかり指摘を交えながら私は関係行政庁にお尋ねをしたわけでありますが、じゃ、その二重構造の一階部分のところへもう一度返ってみます。したがって、その一階部分のことというのは経済の動きでありますから、かなり数字的に検討してみる必要があるわけであります。  そこで、少し数字的に突っ込んだことになるのでありますが、自動車産業なら自動車産業に例をとって、二重構造の数字的バロメーターともいえる、私はそう思っておりますが、自動車会社の従業員の中の本工と言われる部分ですね、これは就職をしておる側からいえば非常に身分が安定しておる。ところが、それに加えて社外工というのがありますね。私は、社外工ということの厳密な経済学的な定義をまだ十分頭に入れておりませんが、要するに、本工以外の関連産業、あるいは同じ本社工場に働いておっても臨時雇いとかパートとかというようなものを含めるものだと思いますが、本工と社外工との人数的割合、それがどうなっておるか、この点をひとつ答えてみていただきたいと思います。
  32. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 ただいまお尋ねの、いわゆる本工と社外工と言われる者の人数、比率の件でございますが、実は統計上は、社外工と言われる方の場合でも、六カ月以上ということになります といわば本社の従業員ということになるわけでございます。したがいまして、私どもで把握をしております実態に即して申し上げさせていただきますと、具体的には、代表的な自動車会社でございますトヨタ自動車の場合でございますと、技能工と言われるいわゆる工員という方々の数は大体四万くらいではないか、そのうち、いわゆる期間工と呼んでおりますけれども、そういった社外工に匹敵する方の数は二千五百人くらいというふうに把握をいたしております。  実は、全自動車産業につきまして手元に数字を持っていないのでございますけれども、トヨタ自動車のケースを大体四割くらいと見ますと、それの二ないし二・五倍くらいの状況になっているというふうに申して差し支えないのではないかと思います。
  33. 小森龍邦

    ○小森委員 トヨタの場合は、技能工と呼ばれる本社の工員だというような解釈でお話しになったと思いますが、それが四万人ぐらいで社外工が二千五百人、こういうふうなことを言われております。しかし、その中には、つまり二千五百人と言われておる数字の出し方というものは、例えばトヨタという自動車会社があって、それには一次下請があり、二次下請があり、三次下請があり、下請、孫請、ひ孫請と言いますね。ひひ孫請なんていうのもあると思いますが、そういうところで働いておる人の人数というものはもちろんこの二千五百人には含まれてないのでしょう。だから、そうなると確定数字は出ないと思いますけれども、一つの自動車を、トヨペットクラウンならトヨペットクラウンをつくるについて、本社は主として組み立てをやっておると思いますけれども、相当程度のいわゆる外注率によってやっておると思いますが、その外注先の人も本社からいえば本社以外の工員なのであります。そこらの人数をおおよそつかんでおられれば、述べていただきたいと思います。
  34. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 ただいま委員御指摘の、アセンブリーをやっております自動車製造業と、それから一次、二次、場合によっては三次となります下請製造業を従業員につきまして工業統計表で見ますと、これは八九年当時の数字でございますけれども、自動車製造業の従業員が約十九万人でございます。これに対しまして、自動車部品あるいは車体製造業、いわゆるサプライヤーと言われる業種に属する者は約五十七万人でございまして、両者の比率は約一対三ということになっておるわけでございます。
  35. 小森龍邦

    ○小森委員 これは後ほどまた、二重構造に関係して私なりの考え方を申し上げて、一定の通産省の、経済が今日どう動いておるか、我が国生産構造がどう動いておるかということのコメントをいただきたいと思います。  さらに、物事を考えていく上で大事な指標になると私は思いますが、自動車産業において第一次下請、私は学問的にはこれは下請だと思うんですが、通常は協力会社という言葉が使われております。そういう下請、孫請、ひ孫請などの会社の数、それが、例えばトヨタが代表的でありますからトヨタがわかれば一番よろしいですけれども、私はピラミッド型になっておると思うんですね。ここにまた我が国とアメリカとの経済摩擦の原因があるわけでありまして、日米構造協議と深くかかわるのでありますが、要するに、そのピラミッド型になっている一次、二次、三次の会社というか企業の数、それがわかればひとつお知らせいただきたいと思います。
  36. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 御指摘のように自動車産業は、完成車メーカー、またそれを支える一次サプライヤーないし二次以下のサプライヤーという構造ででき上がっているものでございまして、現在、完成車メーカー数は二輪メーカーを含めまして十三社でございます。そして、自動車部品製造業と呼んでおりますいわゆる一次サプライヤーの数は、約三百五十社でございます。この一次サプライヤーに部品を供給したりサービスを提供する二次以降のサプライヤーの数は、事業所統計でございますけれども、九〇年で約一万一千社に上っております。二次以降のサプライヤーに関しましては、企業数は事業所数にほぼ匹敵するものというふうに考えられますので、大体以上のような企業数の配分になっているという事実を申し述べたいと存じます。
  37. 小森龍邦

    ○小森委員 細かいことを尋ねるようですが、三次の関係がわかればお知らせをいただきたいと思います。
  38. 坂本吉弘

    ○坂本(吉)政府委員 大変恐縮でございますが、三次以降につきましては手元に数字がないのでございます。
  39. 小森龍邦

    ○小森委員 それでは、それはまた省略するといたします。  次にもう一つ、私は、数字的なものを出しておく必要があると思いますので、一つの論理を構成する上で大事だと思いますからお尋ねをいたしたいと思いますが、大体この協力会社というのは、本社に比べたら問題にならぬほど規模が小さい。そこで、例えば五百人ぐらいの企業規模のところの賃金を、その指数を一〇〇とすると、これは千人規模を一〇〇としてもよろしいですけれども、通産省の方でお持ちになっておられます、あるいはお調べになっております数字であればよろしいわけでありますが、四百九十九人から百人のところと、九十九人から三十人のところと、二十九人から五人程度のところというふうに、通常よくこういう問題を分析する場合にランクづけがされておりますけれども、そういう規模別の企業で働いております労働者の賃金の格差というものを知りたいわけであります。それはどういうパーセンテージになっているか。例えば千人のところが一〇〇という数字であらわせるとすれば、五百人のところはどれくらい、あるいは四百九十九人以下百人規模のところまではどれくらいという数字をひとつお知らせいただきたいと思います。
  40. 土居征夫

    ○土居政府委員 先生お尋ねの賃金格差の統計でございますけれども、労働省の勤労統計調査によりまして一九八九年の一人当たりの賃金格差、これは事業所ベースでございますが、対象は非一次産業ということでかつサービス業を除く、サービス業を入れますとちょっと賃金格差が縮まりますが、サービス業を除いて非一次産業ということでとりますと、従業員五百人以上の規模の事業所を一〇〇とした場合に、百人以上五百人未満で八〇・六、それから三十人以上百人未満、その下のクラスでございますけれども六七・二、五人以上三十人未満というところで五七・九というふうになっております。
  41. 小森龍邦

    ○小森委員 これで一つのものを立論するということで完全であるわけではないわけですけれども、大体の傾向を知ることができました。  そこで、例えばこの賃金の問題をとってみましても、どういうことが言えるかというと、毎月勤労統計調査の月間現金給与総額という、これは政府の関係から出ておる資料でありますが、中小企業白書か何かに出ておる資料でありますが、五百人以上のところを一九八九年で見て、それを一〇〇とすれば八〇・六、つまり賃金が二割ぐらい低いわけなんです。それが一九八二年で見るとどういうことが言えるかというと、政府の統計資料を見ると七八・九、これはもうほとんど変わっていないのであります。それから百人以下、つまり九十九人以下三十人のところのランクを見ると、一九八二年が六四・二、今御回答になりました数字は六七・二、これもほとんど変わっていないのであります。そして、三十人未満のところは一九八二年が五六・七、今お答えになりました数字は五七・九で、これもほとんど変わっていないのであります。つまり、こういうふうな勤労者に対する賃金の格差というものが、我が国経済の二重構造を示す非常に明白な一つの資料であるということが言えると思うのであります。  そして、先ほどお話がございました自動車産業の場合の一次、二次の問題でありますが、一九七八年というから今からもう十五年も前のことなんでありますけれども、その数字を見ると、私の手元にある数字は、これも中小企業白書だったと思いますけれども、二次下請は四千七百社なんであります。ところが、先ほどのお答えによりますと一万一千社になっておる。これは果たしてちょうど同じものを同じように対照して出した数字がどうかわかりませんから、一概に四千七百社が一万一千社にふえたとは言い切れないものがあると思いますが、少なくともこれはかなり下請企業というものが系列化され、そういう体制ががっちりとしてきたということが言えると思います。  そういうふうなことから考えると、先ほど来の本工と社外工の関係につきましても、広く本社工場以外で部品なんかをつくっておるものをもし社外工という概念で規定することができるとすれば、八九年の資料、お答えになった数字からいえば、本社工場で十九万人、外注先などで働いておる者が五十七万人、こういう数字になりますが、大体、一九八一年ごろの数字を私はここに持っておるのでありますけれども、本社工場と社外工の割合というのはそんな大きな開きを持っていなかったのであります。そういうことがだんだん厳密な関係になっておるわけでありまして、経済の二重構造というものは、改革されるということよりはむしろかなりがっちりしてきておる、こういうことが言えると思うのであります。  つい数日前のテレビを見ておりましたら、東京都内の自動車産業で三十人ぐらいの従業員を持っておるところでありますが、過去十年間、外注の単価というものが一切変わっていない。それだけでもう大いに驚くところなんでありますが、事ここに至って、ここから先は三〇%コストダウンを本社から申し入れられたというニュースが、ドキュメンタリーでありますけれどもニュースがございました。  私は、これは大臣が午後参りましてからの議論に主としてそこへ時間を割り当てたいと思っておるのでありますが、経済の二重構造というのを、それは否定的な意味で経済白書は指摘をし、同対審答申の文書を読んでみたら、我が国のいわゆる身分制度とかあるいは前近代的な社会の基盤となっている、こういう意味のことが言われておるわけでありますから、これを政府は改める方向へ持っていかなければならなかったと思いますけれども、依然として状況は悪い方向に向かっておる、こういうことになっておると思いますが、これは午後から私ちょっと大臣にも聞こうと思っていますけれども、とりあえず政務次官の方から、今そういうことに対しては一体どういう感覚でおられるのかということをお尋ねしておきたいと思います。
  42. 土居征夫

    ○土居政府委員 政務次官のお答えの前に、経済の二重構造を踏まえたこれまでの産業政策ということで、中小企業対策を担当しております立場から御説明申し上げます。  今先生お話しになりましたように、経済白書において指摘された経済の二重構造をなしている大企業と中小企業の格差を是正するという観点から中小企業対策が講じられてきているわけでございますけれども、この格差につきましては高度成長期にある程度の改善が見られた。先ほど先生が御指摘になりましたような数字で賃金格差も相当程度の改善を見ておるというふうに考えておるわけでございますが、その後、安定成長期に入りまして、厳然としてこの格差がなお存在しておるというのは事実でございます。  ただし、この賃金格差につきましては、これは現金給与総額についての比較でございますので、例えば、中小企業と大企業で、中小企業の場合には勤務年限が短い人が多いとか、あるいは男女労働の比率が違うとか、そういう従業員の構成比の大企業と中小企業の違いといったこともありますので、単純にこの格差自体が同一条件での大企業、中小企業の格差であるということではないというふうに考える次第でございます。  一方、下請関係につきまして、先生御指摘ありましたように、どうなっているかということでございますが、これは高度成長期には、おっしゃいましたように、日本型の分業構造ということでピラミッド型の下請構造が構築されてぎたわけでございますが、石油ショック以降の安定成長期に入りまして、かなり下請関係というのは変わってきつつある。具体的に申しますと、特定の親企業との取引に特化している、いわゆるピラミッド型のきちっとした下請企業というところから、技術をつけたところはかなり親企業の数をふやす、あるいはほかの産業とも取引するということで、下請構造もネットワーク型にだんだん変わってきている、そういう状況がございます。  いずれにしても、大企業と中小企業との格差というのは、そういうふうに変わってきてはいますけれども、厳然として存在していることは事実でございますし、特に最近の不況というということで中小企業は厳しい状況にあるということは事実でございます。こういった観点からさらに気を引き締めて中小企業対策を推進していかなければいけないというふうに考えておるところでございます。
  43. 逢沢一郎

    ○逢沢政府委員 先生から御指摘をいただきましたように、昭和四十年の同和対策審議会答申におきまして経済の二重構造について指摘がなされたわけでありますが、同和地区の中小企業を初め、中小企業我が国の経済の重要な担い手であるにもかかわりませず、先ほど政府委員からも答弁をさせていただきましたが、ある程度の改善は見られるとはいいますものの、確かに大企業との間には、生産性におきましてもあるいはまた賃金の面におきましても、格差が存在をしているということにつきましては、そのことを事実として私ども認識をさせていただいているところでございます。  特に同和地区の中小企業につきましては、平成三年十二月に取りまとめられました地対協意見具申において述べられているとおりでございまして、一般地域に比べまして小規模かつ零細な企業が多い、そして人手不足や貿易の自由化の進展によって大変厳しい状況に置かれているというふうに認識をいたしておるところでございます。  以上のような基本的な認識に立ちまして、私ども通産省といたしましては、同和地区の中小企業振興のため、例えば経営の合理化でありますとか、あるいはまた設備近代化等を目途にいたしました指導や研修、さらには高度化融資、また需要開拓を目指したところの展示会等々の開催、種々の施策を講じてきているところでございます。  また、当然のことでございますが、当省といたしましては、今後ともこうした施策を積極的に活用することによりまして、大企業と中小企業の格差の是正に努め、同和地区の中小企業振興を通じまして部落差別が解消されるよう取り組んでまいる所存でございます。
  44. 小森龍邦

    ○小森委員 政務次官の方から、部落の、いわゆる同和地区の中小零細企業が深刻な状況にあるということは過般の地域改善対策協議会の意見具申によって明らかにされておる、こういう答弁をいただきまして、非常に大事なところをしっかりと読んでいただいておるということで非常に心強く思っておるところであります。  問題は、先ほど政府委員の方からも答弁がございまして、ピラミッド型になっておるところが、下請の会社からいうと元請会社一社オンリーでそこに隷属関係でなくて、二つか三つか四つぐらいの企業と関係を持って、ある程度融通のきく、よいところを食うて逃げるというか、よいところから受注をしていく、取捨選択ができるというふうな体制の方向に向かっておることも事実だ、こういうお話がございました。それが幾らかの変化としてあることを私は承知しております。  それは歴史は決してむだに流れていないわけですね。いつまでも抑えつけられたままでおるということはないわけなんでありまして、そういう知恵をめぐらしつつあるということは一つの傾向としてあるとは思いますが、しかしなおマクロに見ると、非常に重要な問題があって、あるいは部分的なところをとって言えば深刻になっておるではないかという数字さえ私は出すことができると思うのであります。  そういう観点に立ちまして、総務庁及び人権擁護局の方に再度お尋ねをしたいと思いますが、大まかに言いまして、どうも総務庁と法務省は、同和行政に関してはもう大方のものは済んだのだ、時代は新しい社会的な中身を加味しながら、徳川封建幕府以来の差別というものが最大限に使われながら社会経済は動いておるわけでありますが、もう大方済んだのだ、こういうふうな感覚のようでありまして、しばしばそこは意見の対立するところなのであります。  そこで、一つ具体的な事実を提示いたしたいと思います。  これは、過般の地方行政委員会で我が党の谷村議員が、彼が直接その現地に入って見たり聞いたりしたことでありますから地方行政委員会でも取り上げておる問題でありますが、山口県の、一番小さい地名までは申し上げませんが、郡までは申し上げますが、山口県の阿武郡というところのある地区。ここでは、つまり――部落の中のある家庭に不幸にして死人が出た、こういうときに、すぐ近くの隣接するところの一般地区と、要するに講というか隣保班というか、普通ならばそういうもので段取りをして葬式を出すというのが当たり前ですね。ところがここは、現地の言い方をすると死講立ち会いと言うんだそうでありますが、死講立ち会いというものができていなくて、要するに八分に遭うておるわけですね。ひどいのはたった二軒なんであります。一軒に死んだら残りの一軒が葬式の段取りをすべて万端整えねばいかない。恐らく、二軒だから親兄弟がそこに二軒つながって生活をしておるんだろうと思うが、これは私はこの二十五日にまた調査に入りますけれども、恐らくは親兄弟、おじ、おいぐらいの程度の者だろうと思いますが、まことに残念なことに、おじが死んでも、兄弟が死んでも、弟やおいぼうが棺おけを担がなきゃならぬというような状況が現実に差別として存在しておる。  このことは、その一カ所だけではありませんよ。小字名を言うと部落地名総鑑的な意味を持ちますから申し上げませんけれども、同じ郡内にもまだありますよ。ここはかつて七世帯あったところでありますが、今現在は四世帯しかない。それが死講立ち会いがない。死講立ち会いから除外されておる。四軒で葬式をしなきゃいけません。  かつて、広島県の三原市におきましてこれに似たことがあった。これは、もう二十年ぐらい前の話でありまして、私が運動の先頭に立ち始めたころのことなんであります。これ、やっと解決しましたよ。やっと解決したけれども、そういうところでどういう問題が生まれてくるかというと、葬式の済んだ、葬式の昼にせよあるいは葬式が済んだ後に、私らの方ではときのぜんを据えると言います、つまり葬式を手伝ってくれた人に食事を提供して労をねぎらうという習慣があります。これは世間一般にあることだと思います。ところが、部落と一緒になって葬式を出して、ときのぜんに招待、案内をしても、生活改善でいこうじゃないか、パンと牛乳でいこうじゃないか。部落の者とのつき合いで、一つなべかまのものを食べない。そういう状況があったんですよ。  これは、えらい失礼な言い方になるかもしれませんけれども、我が国の同和行政の総務庁がてこ入れをして直したものでもなく、人権擁護行政が直したものでもなく、民間運動団体の汗を流した、辛苦した結果それは直しているんですよ。もちろん、地方自治体の協力があったということは、これはつけ加えておきましょう。  だから、そういう状況が今もなお運動の希薄なところでは存在をしておるということについて、同対審答申のこの思想、文化に影響するとか社会のいろいろな仕組みに影響するとか、経済構造というものががっちりしておるわけですからね。  私は、きょうは余り部落の企業のことについて申し上げなかったけれども、政務次官が特に部落の中小企業のところが非常に苦しい状況にあるということを言われたことによって、我が国産業構造の、どういいますか、最も典型的な厳しい縮図が部落の中小企業にある。その部落の中小企業は、また部落の中でも上位にランクされる、経済的には上位にランクされておるところですよ。そうすると、非常に悲惨な状態が今日存在をしておる。こういうところへ行ったら、ここの自治体とは言いませんけれども、東北の方へ行ったら、市町村長などが先頭を切って、あるいは県も、いや、うちには一切部落はありません、こう言いますよ。だから、私は、社会啓発というならそういう自治体の啓発をやってもらいたいと思う。そうして、この問題はみんな打って一丸となって、一日も早くその前近代的な仕組みなり習慣なりというものを改革しなければ、日本社会が民主主義の国家とは言えないのです。  そういう点について、ひとつ総務庁と人権擁護局、今私が言ったことに対して、この具体的な事実に対して、どういう感覚で部落問題を見直されるか、お答えをいただきたいと思うのです。
  45. 荒賀泰太

    荒賀説明員 同和問題につきましては、憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題であるとの認識のもとに、政府は、昭和四十四年以来三たびにわたる特別措置法によりまして、二十年余にわたって関係諸施策の総合的な推進に努めてきたところでございます。その結果、平成三年十二月の地域改善対策協議会の意見具申におきましては、同対審の答申で指摘されました同和地区の保生活環境等の劣悪な実態は大きく改善を見まして、「同和地区と一般地域との格差は、全般的には相当程度是正され、また、心理的差別についてもその解消が進み、その成果は全体的には着実に進展をみている。」との評価をいただいておるところでございます。  今後におきます施策の重点課題といたしましては、就労対策とか産業の振興、教育、啓発等の非物的な事業に重点を置いた施策の積極的な推進が重要な課題であるというふうに考えておるわけでございますが、特に総務庁に関係いたします部分といたしましては、この地対協の意見具申でも触れておりますように、「心理的差別の解消は、同和関係者と一般住民との婚姻の増加がみられるなど改善の方向にあるものの、結婚や就職などに関連した差別事象が依然としてみられ、十分な状況とはいい難い。」としておるわけでございまして、その心理的差別の解消に向けて今後とも努力を続けていかなければならないというふうに認識をいたしております。  総務庁といたしましては、啓発活動につきまして、県、市町村と連携を図りながら改めて創意工夫を凝らしまして、より積極的に粘り強く推進してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  46. 筧康生

    ○筧政府委員 私どもが関係しております心理的差別の解消という点に関しまして、先ほど総務庁の方からも御紹介いただきました地域改善対策協議会の意見具申において、「心理的差別についてもその解消が進み、その成果は全体的には着実に進展をみている。」とされながら、他方、「心理的差別の解消は、」「結婚や就職などに関連した差別事象が依然としてみられ、十分な状況とはいい難い。」との指摘もなされているところでございます。  私どもが具体的な人権侵犯事案として提起されている事案、あるいは情報収集事案として把握しております事案を見ましても、なお、結婚とか就職などに関する部落差別の事案が存在しておる、しかも深刻な事案が存在しておるということを認めざるを得ない状況になっております。私どもは、この心理的差別の解消に対しまして、この協議会の御指摘のように、創意工夫を重ねた啓発活動を一層強力に推進していかなければならない、このように思っております。
  47. 小森龍邦

    ○小森委員 言葉とすれば、初めて聞いたらうれしいようなことを言ってもらっておるわけです。しかし実際やっていることというのは、先ほど申しましたような、同じ説示をするにしても間に合うようにしなければいけない。市民が物すごい関心を持ったときに間に合うようにしなければいかぬよ。人権擁護局のやっておることは間に合わないのであります。  そして、例えばもう一例を挙げますと、一昨年十月、秋の十月に女子高校生が部落差別を苦にして自殺した事件が起きておりまして、これはこの間、広島県と広島市と広島県教育委員会と広島市教育委員会、それからその差別者側の方の親の住所地である広島県の美土里町というところの長と、この五者で記者会見をして、その差別の状況というものをマスコミに発表いたしましたが、そんなことが行われておっても、広島法務局は何もやっていないんじゃないですか。これは調べてみてください、どんなことをやっておるのか。私らには全然響いてこないですよ。  それから、県行政にしたって市行政にしたって、第一、相手にしないですよ。人権擁護局なんかというものを、残念ながら相手にしていないですよ。しかし、では末端の人権擁護にかかわる人が全くずぼらを決め込んでおるのかといったら、私はそうじゃないと思うよ。つまり、本省の姿勢によって、行き過ぎたことをしたら怒られはしないか、こんな感覚でたじろいでおるんじゃないかと私は思いますから、人権擁護局長、新しくこのポストに就任された機会に、もう一遍よく見てください。  そういうことが一つと、それから総務庁の方へは、申し上げますが、要するに、一面解決したものがあるということは私らも認めますよ。それは何のために金を、相当程度政府の予算や地方自治体の予算を使ったかということについて、それは成果が上がっていることは認めますよ。  しかし、我が国にはおおよそ六千という数を数えるところの同和地区が存在しておる。今政府のところに同和対策事業をしてもらいたいという意思を表示しておるのは、手を挙げておるのは四千六百三でしょう。そうすると、多少物事が、社会の変化があって、一つの部落が全く道路改修や公園などでなくなってしまったというようなところもあろうから、私は、全く手を挙げていないところがおおよそ千地区だと思っていますが、手を挙げていないことをよいことにして、こういう歴史的に大事な時期にそれを放置しようという態度があるでしょう、総務庁には。そういう点を総務庁は、言葉の先だけでその場を逃れるのではなくて、私が先ほど申しました死講立ち会いの地域だって、恐らくは四千六百三の中に加わっていない部落でしょう。そういうところの実態調査も今回やらないでしょう。  そういう点が非常にルーズなわけでありまして、一方、経済の二重構造は遅々として解決しない、それとの精神的ないわゆる照応関係にある部落差別を初めとする我が国のもろもろの不合理な、前近代的な社会の仕組み、それとが相互因果関係をなしておるわけでしょう。  午前中はその程度の指摘にとどめておきたいと思います。
  48. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、倉田栄喜君。
  49. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。  私は、まず最初に、公害の根絶、地球環境の保全、そういった視点から、通産省の産業政策とも絡みながら、水俣病事件、水俣病を二度と起こさない、ノーモア保ミナマタ、この視点からお伺いをいたしたいと思います。  三月二十五日に熊本地裁の判決がございました。昭和六十二年のやはり同じ熊本地裁での判決に引き続いて、水俣という現地を抱えた現地の裁判所が、二度にわたって水俣病について国の責任を認めた、そういう判決でございます。  判決の中身を少し読ませていただきますが、国の責任を認めた部分でございます。水俣湾周辺住民との関係において、  経済企画庁長官には、水俣湾内について、指定水域の指定及び総水銀による水質基準の設定をなすべき作為義務が、内閣にも、水俣工場のアセトアルデヒド製造施設及び塩化ビニールモノマー製造施設を「特定施設」として指定するとともに、通産大臣を「主務大臣」と定めるべき作為義務が発生していたと認めるのが相当である。 ところが、経済企画庁長官及び内閣は、右各権限を行使しなかったのであるから、その不行使は違法であると認められる。 このようなことから国の責任を認めた判決になったわけでございますが、通産省としていわゆる特定施設に指定するかどうか、これは通産省所管のことでもあろうと思いますし、また、昨年には東京地裁が、国の法的責任はともかくとしても政治的責任がある、このような判決も出されておるわけでございます。  そこで、通産省は水質二法という関係もあるわけでございますので、まず通産省に、三月二十五日の熊本地裁判決、そして東京地裁の、いわゆる政治的責任もあるんですよ、こういう判決をどのようにおとらえになっておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  50. 堤富男

    ○堤(富)政府委員 水俣病の訴訟に関しましては、先生御指摘のとおり、昨年の二月七日には東京地裁の判決があって、法的責任ということは否定されたわけでございますけれども、政治的責任があるというお話も承知しております。また、本年三月二十五日、熊本地方裁判所の判決におきまして、国の損害賠償責任が認められたというところも十分承知をしております。  ただ、今回の判決につきまして我々の今考えておりますことは、国のかねての主張が認められず、国の賠償責任があるということになったことにつきましては、一言で申しまして大変厳しい判決であると考えておる次第であります。
  51. 倉田栄喜

    ○倉田委員 もう少し中身にも触れた御答弁が欲しかったわけです。  環境庁にも、この判決を受けてどのようにお考えになっておられるのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  52. 小澤三宜

    ○小澤説明員 お答えいたします。  三月二十五日に熊本地裁で判決があったわけでございますけれども、そこで国の賠償責任が認められているなど、我々の主張が理解されなかったということで極めて厳しい判決であるというぐあいに受けとめているわけでございます。  環境庁の関係で申しますと、当時の状況におきましては、旧水質保全法に基づきます水質基準の設定等はできなかったということなどにつきまして主張していたわけでございますけれども、これらの点につきまして理解が得られなかったということでございます。
  53. 倉田栄喜

    ○倉田委員 極めて厳しい判決であった、国の主張が認められなかった、理解されなかった。それは、裁判は双方の主張を争うわけでございますから、判決に対してそのように考えられても、そういうこともあるのだろうと思いますけれども、私が今時にお尋ねしたい、こう思ったのは、水俣病が起こった、これは、国の、国というよりもいわば通産省の産業政策の結果引き起こされたものではないのだろうか、さまざまな公害が日本では発生をしてきた、それは国の産業政策と本当に無関係と言えるのであろうか、厳しい判決というのではなくて、そういう国がとってきた産業政策そのものに対する厳しい反省、あるいはこれでよかったのだろうかという反省があるのかな、そういうことを実はお尋ねしたかったわけでございます。  判決の中で、今私が引用させていただいた、アセトアルデヒド製造施設及び塩化ビニールモノマー製造施設を特定施設としてあのとき指定していればこんな事件は起こらなかったのではないのだろうか、そういう反省はないのだろうかということであります。  通産省が産業政策としてやってこられたことはいっぱいございます。昭和二十四年からいけば、第一次合成樹脂五カ年計画を発表されておられる、それからずっと、この二十年代から三十年代にかけて合成樹脂育成対策、あるいは合成樹脂工業育成対策、あるいはカーバイド工業及びタール工業育成対策、あるいは輸入水銀のコントロールであるとか、それぞれどういう有害と言われる化学物質を使っていくか、それをどういうふうに規制あるいは処理をしていくのかというのは、通産省の基本的な産業政策にかかわるものである、こういうふうに思うわけです。  ところが、今お答えいただきましたように、今回の判決が国にとっては厳しい判決であった、こういうふうにお答えになるわけです。そして同時にまた、当時において国の責任が認められるということは行政の根幹にかかわることであって到底承服はできないみたいな考え方をお聞きをすることがあるわけですが、要するに行政の根幹にかかわるからこの水俣病の判決においては負けるわけにはいかないんだ。この姿勢もちょっと私は理解できないところがある。もう少しわかるように説明をしていただきたい。行政の根幹にかかわるからこの水俣病訴訟、どうしても負けるわけにはいかないんだ、これはどういうことに基づいているわけでしょうか。
  54. 小澤三宜

    ○小澤説明員 お答えいたします。  今先生お尋ねの、国の行政のあり方の根幹にかかわる問題ということの意味でございますけれども、国は国民の活動にどの段階であるいはどこまで介入すべきかという問題でございまして、本件のような場合に、国が規制権限を発動しなかったということが国家賠償法上責任があるということになりますと、国が責任を持つべき分野というものを過大に広く認めることとなりまして、この場合には、国民の活動に対して過剰な規制を行わざるを得なくなるおそれがあり、問題であるという意味でございます。  それから加えまして、この問題は、究極的には、何らかの損失が生じた場合にどこまで国民全体の負担によってそれを補てんすべきかという問題でもございまして、行政としてゆるがせにできない重要な問題であるというぐあいに考えているところであります。
  55. 倉田栄喜

    ○倉田委員 産業政策あるいは行政のあり方として、そういう意味で言われたのであるならばお答えいただいたことも理解できなくもないわけですけれども、しかし、行政の根本的な仕事は国民の生命財産を守っていく、あるいは新たに未来に向けて、今地球環境の問題盛んに言われておるわけですけれども、環境保全をしていく、公害はもう二度と出してはならないのだ、これも私はやはり行政の目的として存在をするものであろう、こういうふうに思います。そこのところから考えるならば、やはり、行政の根幹にかかわるからだめだということではなくて、行政のもともとの目的とは何なんだということからお考えをいただければ、こういうふうに思うわけでございます。  ところで一方、今、水俣病と認定をされた方々、国からあるいはチッソとして対策が行われているわけですけれども、この不況の中でチッソの経営状態も非常に厳しくなっているというふうに聞いているわけでございます。この状況の中で、チッソに対する支援ということもまた考えていかなければならないのではないのかと思うわけですが、この点については今政府としてどのような考え方を持っておられるわけでしょうか。
  56. 牧野力

    ○牧野政府委員 御指摘のように現在非常な不況の中でチッソの経営状況も決して楽ではない、そういう状況の中で補償金の支払い等に支障が生じないようにしていくということが非常に大事なことは御指摘のとおりでございます。  委員御案内のように、現在のチッソ金融支援システムは、あくまでもこの原因者でありますチッソが企業として健全に経営をし、そこで上げた利益の中で返していく。ただ、それに対して、不足する場合に、熊本県債、それを資金運用部あるいは民間銀行が消化するということでこれを助成するという格好でございまして、これまでのところ、とにかくこういうことで支援をやってきたわけでございます。  ただ、この不況下で今後非常に問題になるではないかという御指摘、私どもも非常に深刻に受けとめております。ただ、チッソは営業努力あるいは金融につきましても、支払いの引き延ばしでありますとか前受け金を早くもらうとかいうような金融努力をぎりぎり行っておりますし、また、確かに不況下でチッソの経営も非常に苦しいわけでございますけれども、今般の総合経済対策を実行いたしましたそういう状況の中で、明るさも一部見えてきております。そういう状況の中で、私どもとしてはぎりぎりチッソの努力に期待するとともに、今後の状況を注意深く見守ってまいりたいというのが現在の基本的な考え方でございます。
  57. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それからもう一点、三月二十五日の熊本地裁判決については国も控訴をされたわけでございます。一方で福岡高裁、もう何回もの強い強い和解勧告の所見が出されておるわけでございます。被害者と言われる方々の平均年齢は既にもう七十近いという高齢であり、この水俣病が解決をされないという中で本当に無念の思いで亡くなっている被害者も後を絶たない。そういう現状からすれば、これは国も、それぞれの通産省の方々も環境庁の方々も、何とか早く解決をしたいという思いは同じであろう、私はこういうふうに考えております。どうしたら早く解決できるのか、そしてノーモア・ミナマタ、いわゆる日本から産業政策とかかわって公害が発生するような事態はなくなるのだろうか、これもやっていかなければいけないんだろう、こういうふうに思うんです。  そういう意味からすれば、この裁判については原告の方々、国に早く和解のテーブルに着いてほしいというのが本当に切実な願いなんだ、こういうふうに思うわけですが、控訴をされたということと和解のテーブルに着くということは私は矛盾しないであろうというふうに思うわけです。この点に関して、水俣病訴訟について熊本地裁の判決がおりた、控訴をされた、一方で和解に対する強い強い要請がある、このことを踏まえて、環境庁に現時点でのお考えをお伺いしたいと思います。
  58. 清水博

    ○清水説明員 和解の問題につきましては、訴訟の争点が、究極的には、何らかの損失が生じた場合にどこまで国民全体の負担によりましてそれを補てんすべきか、先ほどお話がございましたように、行政としてゆるがせにできない重要な問題を含んでおりまして、交渉等によりまして打開を図るような性質のものではないというふうに考えているのは先ほどのお話のとおりでございます。したがいまして、和解に関します考え方は、平成二年十月にまとめられました水俣病に関する国の見解に述べられているとおりでございまして、「和解勧告に応じることは困難である。」ということが従来からの私どもの考え方でございます。  環境庁といたしましては、これまで公健法に基づきまして二千九百四十五名の患者の方々を認定しまして、医学を基礎として公正な救済を推進してまいったところでございますし、また、水俣病とは認定されない方々に対する対策も含めまして水俣病総合対策事業を実施いたしておりまして、既に三千名に上る方々が医療費や医療手当の支給を受けておられるわけでございます。環境庁といたしましては、これらの行政施策の推進によりまして、水俣病問題の早期解決が図られますように最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
  59. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ともかく早期に解決をしなければ、本当に無念の思いで亡くなっている方々が一日一日後を絶たないという状況を思っていただきたいというふうに私は申し上げたいのであります。そういう意味からすれば、控訴をされた高裁の中でも結構でございますので、何とか和解の方向で解決できる道がないのだろうか。それは、かたくなな姿勢ではなくて、どうか検討していただきたい、そして、和解の席に着いていただいて、早く解決をしていただきたいというふうに思うわけでございます。  時間が参りましたので、この問題に関連して、現在の、通産省として、排水、廃液、排ガス、バーゼル条約による規制対象となっていることもございます。それらのものは本来企業の中で処理すべきではないのか、こういう御質問もいたしたいと思いますので、恐縮ですが、二点だけ午後からまた引き続いて質問させていただくことにして、終わらせていただきたいと思います。
  60. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、寺前厳君。
  61. 寺前巖

    ○寺前委員 私、ここに読売新聞と毎日新聞を持ってきておるんですが、世論を二分しているところのプルトニウムの問題について、「プルトニウム 専門家座談会」というのが三月二十七日土曜日の読売新聞に「原子燃料 再利用の時代」「資源節約に効果」「技術生かす機会」ということで、プルトニウムを持ち込むことは非常に大事な話なんだということが報道されています。毎日新聞を見ると、「企画特集 プルトニウムの今後」「二十一世紀へ エネルギーは」ということで、やはり「座談会 原子力行政を問う」というのが出ています。  私も好きな分野ですから何げなしに読んでいたんですが、後日、この問題についでこれが広告だということが出てきたわけです。意見広告ではなく記事形式で掲載をするように全国紙に依頼をしたんだということが報道されていたわけです。事実なんでしょうか、何でこんなことをしたんでしょうか、御説明をいただきたいと思います。
  62. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 お答えを申し上げます。  資源エネルギー庁といたしましては、従来から、国の原子力政策につきまして、できるだけわかりやすい広報ということで積極的に行ってきているところでございます。プルトニウムの利用政策あるいはその問題の所在といった点につきましても、国民の理解を得るべく、多様な広報活動を実施しているわけではございますけれども、そういう一環といたしまして、新聞紙面を用いた広報事業というものを実施いたしたわけでございます。  ただ、この広報事業は、私どもから財団法人の原子力発電技術機構というところに委託をいたしたものでございますけれども、その際、私どもからは、プルトニウムにつきまして一つの考えを言うのではなくて、できるだけわかりやすい議論の掘り下げをしたようなものができないであろうか、例えば座談会形式のような形でできないであろうかといったようなことで依頼をいたしたものでございますが、この委託を受けました財団法人の原子力発電機構は、広告代理店を通じまして幾つかの新聞社に依頼をいたしましたところ、今先生御指摘の読売新聞あるいは毎日新聞、そのほかに産経新聞がございますけれども、この三紙がその趣旨を受けまして、新聞社の独自の御判断のもとにそういった紙面の体裁の広報を行うこととなったものでございます。
  63. 寺前巖

    ○寺前委員 これは三紙だけですか、テレビなどには持ち込んでないのですか。それと同時に、この問題をめぐって一体どれだけの費用を使っているのか、御説明いただきたいと思います。
  64. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 今申し上げましたように、こういった趣旨に御賛同いただきました新聞は三紙でございます。また、広告代理店が話をしたのも新聞紙であるというふうに承知をいたしております。テレビ等はなかったと承知いたしております。  それから、金額でございますけれども、大体五千五百万円でございます。
  65. 寺前巖

    ○寺前委員 日本新聞協会には新聞広告掲載基準というのがあります。これを見ると、一番に「責任の所在が不明確なもの。」こういう広告は掲載しないということになっておる。これは広告なんでしょう、先ほどからの話を聞いていたら。お金を出して新聞に載せる、何で広告として提示をしないんだろうか。それはやめてくれ。一般紙の中に入ると、報道に対して金でもってゆがめるという役割を担ってくることになるじゃないですか。報道の自由を制約させるということになってくるじゃありませんか。私は、そういう意味では、こんな形で広告を一般報道の中に全部金で買収されるようになってしまったら、言論報道機関が買収されてしまうことになる、恐ろしいことを考えるな、これはまことに遺憾な話だと言わざるを得ないと思うのです。  日本経済新聞社の広報担当部長さんはこういうことを言っておられます。「記事スタイルの広告の場合には「広告」を明示し、広告主を明示するのが本社の決まりとして断った」。朝日新聞の広告局の担当者も、エネ庁を訪ねて「広告で出したほうが、いいのではないか」と話したが、「エネルギー庁が表に出ない編集の形を取ってほしい」と言われ、「記事を装った形で広告を出すことはできない」と言って断った。だから、持ち込まれた五つの新聞社の中で、二つのところはこういう態度を明確にしておられるわけでしょう。そして、エネ庁の担当の方は、座談会特集は広告を使った広報と考えていると、広告であることを明確に述べておられるし、今もそうおっしゃった。  だから、どのようにおっしゃろうと、これは結局のところ、プルトニウムを持ち込んでくることに対して国民が心配するんだから広告主を明示しない方がいいんじゃないだろうかということが魂胆にあるからこういうことになってくるんではないだろうか。だから、この問題に対して、東大の社会情報研究所の桂教授は「プルトニウム利用の計画はいま、国内外で重大な政治問題と化しつつある。こういう「政治広報」を大々的にやり、世論誘導するのは問題だ。」あるいは「広告批評」発行人の天野さんは、「スポンサーが官公庁だと、どうして名前を伏せることが許されるのか。」みんなそういうことを言い出している。  私は、これは言論報道機関に対する、金で買収する、それを政府がやるということで、重大な問題に直面しているように思うので、政務次官に、こういうことはやってはならない問題だと思うけれども、どういう御見解にお立ちになりますか。今後、検討、見直しますか。見解を求めたいと思うのです。――ちょっと待ってください。もうこれで時間がしまいなんだから、政務次官にお願いします。
  66. 逢沢一郎

    ○逢沢政府委員 当通産省といたしましては、従来から、原子力政策について広く国民の皆様方の理解と協力を得られるよう、わかりやすい広報に努めてきたところでございます。  今回の企画はそのような広報の一環として実施したものであることは政府委員の方からも御答弁を申し上げたところでありますが、原子力広報を行うに当たりましては、先生からいただきました貴重な御指摘も念頭に置きながら適切な推進に努めてまいる所存でございます。
  67. 寺前巖

    ○寺前委員 時間がないからやめますけれども、検討し直してくれますね。私は、こんなもの、金で情報を操作させるという、言論出版機関は広告でないと言う形のものを、こんなふうにして左右されていったらえらいことだと思う。政務次官に、率直に一言、今後見直してくれますね。
  68. 逢沢一郎

    ○逢沢政府委員 先ほど答弁させていただきましたとおりでございますけれども、先生からいただきました貴重な御指摘も念頭に置きながら広報のあり方について検討させていただきたい、そのように思います。
  69. 寺前巖

    ○寺前委員 終わります。
  70. 貝沼次郎

    貝沼委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  71. 貝沼次郎

    貝沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小森龍邦君。
  72. 小森龍邦

    ○小森委員 それでは、午前中に引き続きまして、午後は大臣も出席をされるわけでありますから、午前中の質問の中身を受けて、特に、先般経済対策閣僚会議で決定をされました新総合経済対策、その中の一、二私の気にかかるところをお尋ねをしたいと思います。  もちろん、それは午前中の質問と深くかかわるわけでございまして、我が国産業構造、経済の体質というものと国際的な関係においてクリアしなければならない問題が、すなわちまた我が国社会の非常に重要な社会的な問題とかかわっておる、こういう観点を持っておりますので、そういう角度からお尋ねをしてみたいと思います。  まず、一九九二年度の貿易統計によりますと、つまり前年対比二六・二%の幅で黒字が出ている。その黒字額は実に驚くなかれ一千億ドルを超えまして一千百十三億ドルだと新聞は報じております。かかる状況を政府も、国際的な関係におけるいろいろな問題の整理を考慮に入れて、今回の新総合経済対策の骨子の中に輸入インフラの整備など、輸入の促進ということを一つ柱として掲げておられるようであります。  そこで、これは言うはやすくして行うほかたしでありまして、これまでも幾たびかそういうことはアメリカとの関係における構造協議の中で話題になったところでありますが、この際さらにそのことを、今回の十三兆二千億の補正予算を組むに当たってそういうふうなことが打ち出されておるわけでありますが、この際しっかりした考え方があって打ち出されておるのか、あるいは項目だけ挙げておるのかということが私にとっては心配でございますので、具体的には輸入インフラの整備など輸入の促進ということについて、これまでとは違った、貿易の黒字を解消できる、そういう方策に向かっていかなる具体策があるのか、この点をお尋ねしたいと思います。
  73. 森喜朗

    ○森国務大臣 基本的には、我が国のこの輸出と輸入とのバランス、御指摘のとおり大変貿易黒字のアンバランスな形になっておるわけでありまして、その点につきましては委員からの御指摘のとおりでございます。ただ、これを数量的にいろいろ見てみますと、数量ベースで見ましてもあるいは金額ベースにいたしましても、微増でございますが、やはり基本的には、我が国の景気が悪い、そのために従来のように高級品が輸入されなくなってきている、そうしたことが今回のやはり貿易黒字が非常に増大をしたということでございますので、今度の景気対策といたしましては、やはり基本的には内需拡大をして、そしてやはり輸入が促進されるような施策をとるということが基本的には大事だと私どもは考えております。  ただ、そうはいいながらも、やはりできる限り景気対策を、予算措置の中で輸入が促進できるようにどうしたらいいのか、これは今日までも通産省としてもいろいろな形で対策は講じでございますが、相手国に対して、どの程度こういうふうに買いますよとか、この程度のものを入れますよということを、これは申し上げるべきものではございませんし、前回私がアメリカに行きましたときもそれぞれ関係閣僚の皆さんにも、今回我が国が追加的な景気対策を講ずる際に、従来と違って公共事業に少し新しい形を取り入れてみたい。施設整備に少しいろいろな意味で新しい社会資本というような形で対策を整えることによって、それに付随した施設、機械設備などの輸入を必要とするものが出てくるというような考え方を基本的に立てたわけでございます。しかし、それも政府ベースでどれだけのものを輸入するとか、どの国からどう買い上げる、これは言うべきことではございませんので、そういう営業のチャンス、ビジネスチャンス、こういうふうに申し上げておきましたが、そういうビジネスチャンスをつくることが大事なので、どうぞひとつその中で、我が国はどの国に対しても内外無差別、そして透明、公正で輸入を促進をしたい、こう考えておるので大いにひとつ営業活動を行っていただきたい、こう申し上げているわけであります。  だから、重ねて申し上げますが、基本的には内需を拡大をして、そして景気を回復することによって貿易、輸入の促進を図っていくということが基本的には大事でございますし、そのためには近々政府といたしましても、民間に対してできる限り外国製品を輸入するようにということは何らかの形で呼びかけていかなければならぬと思っておりますし、もう一つは、政府が対応でき得ることとしての公共事業の一つの範囲の中に新しい施策を講じて、それに対する設備、例えば情報処理でありますとか、あるいは医療機械でございますとか、そうしたどちらかといえば世界のそれぞれの国が対応しやすいようなもの、そういうようなものがそれに伴って輸入が促進できるように、向こうからいえば輸出が促進できるように、そういうことを今回の景気対策の中にいろいろと講じてあるわけでございます。
  74. 小森龍邦

    ○小森委員 政府の手の届くところでそういう配慮をされるということも一つの方策ではあると思いますが、要は我が国の経済の構造というか、特に中心は生産のシステムでありますが、そういうところの体質というものが、輸出に比べて輸入というものがバランスがとれない、こういう状況になっておると思うのでありますが、少々内需を拡大したとしても、昨年の実績である三千四百四十四億九百万ドルの輸出に対して二千三百三十億六千八百万ドル、一千百十三万ドルも輸出が超過をするというこの数字を私はクリアすることはできないと思います。  そこで、これは今日の不況を迎えて内需が少ししぼんでおるとかいうようなことではなくて、好景気のときから、幾らか数字は違うとしても、その傾向というものは好景気のときから続いておるわけでありまして、基本的には我が国の体質というものが輸出超過で、輸入というものがそれに見合わないというような、アメリカからいえば日本の経済構造上の問題だ、こう言っておるわけでありまして、もし輸出と輸入というもののバランスがとれるということが国際関係というものの上からもまた自由貿易のあるべき姿だと思われるならば、こういう状況がずっと続いておる我が国社会の問題点、矛盾といいますか、アメリカ側から見れば我が国社会の経済構造の欠点というふうな気持ちで見ておられるのじゃないかと思いますが、一体決め手は何でしょうか。大臣、どう思われますか。
  75. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 先生の特に我が国の経済構造を踏まえた輸入輸出の数字の格差、さらには黒字の問題についてのお答えでございます。若干私の方から事務的なお答えをさせていただきたいと思いますが、御指摘のように、ただいま、九二暦年でございますけれども、千三百二十六億ドルという黒字を抱えておるのは今先生御指摘あったとおりでございます。  それで、ちなみに昭和六十一年、一九八六年でございますけれども、これが前回の黒字のピークでございまして、このときの数字よりも大きい黒字になっておるわけでございます。ただ、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、輸出と輸入のアンバランスが特に顕著になってまいりますのは、やはり国内のマクロ経済といいますか、景気循環の問題が大変大きく影響いたしてきております。例えば、一九八六年に一千億ドルを上回る黒字があったものが、一九八七年、八八年、八九年というところの数字で申し上げますと、輸入の対前年増加だけで見まして、昭和六十三年度は対前年度比三百七十億ドルの輸入増、それから平成元年は二百三十億ドルの輸入増、さらに平成年度は二百四十億ドルの輸入増というとてつもない輸入の増が現に起こっておったわけでございます。  八六年のピークに比べまして、当時の黒字の幅というものはGNPに対して約四・六%ぐらいあったわけでございますが、それが急速に減ってまいりまして、一九九〇年で言いますと、GNPに対して二%を割るぐらいになっておる、こういう姿になっておったわけでございます。その後、御承知のような不況が襲ってまいりまして、それで日本の経済成長そのものが一%台に落ちる、こういったような結果、再び今申し上げたような輸入の増のトレンドがなくなってきておるということでございまして、現在、GNPに対します比率というのが三%を超えるような状況になっておる、こういうのが今の姿でございます。  したがいまして、申し上げたいことは、もちろん我が国の構造面で各種の要因があることは否定いたしませんけれども、何と申しましても、マクロ経済のすれ違い、つまりアメリカの景気がよくなっていくのに対して日本の景気が著しく停滞しておる、それによる輸入の停滞、かつて見たようなああいう大幅な輸入増がない、これが圧倒的にきいておるわけでございます。したがいまして、繰り返しになって恐縮でございますが、私は、基本的には国内の景気対策がこれからしっかり浸透していって、それで景気が上がって、潜在成長力が達成されるだけの経済成長というものの速度になったときには、私は、先ほども申し上げましたような一連の輸入の増という形で、今のインバランスというのは、なだらかな形ではございますけれども、いい方向に向かっていく、明らかにそこは、GNPに対しても黒字比率というのはどこか適当なところの数字にとどまるんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  逆に、今回の不況中の一つの特色は輸出についての動きでございまして、輸出につきましては、もう先生御承知のとおり、かつては不況期には物すごい押し出し輸出が出まして、安い値段で数量もどんどん出ていく、こういうことで黒字を稼ぐという姿があったわけでございますけれども、今回の数字を統計を見てみますと、昨年の四月からことしの二月までの数字を見てみますと、輸出は、数量統計で約一%弱の減になっております。それに対して金額ベースで六・六%増ということでございますので、ほとんどが付加価値の増による高級品化により価格が上がったことによる輸出増、そういう姿で出ておるということで、そういう意味では、今までの不況期における輸出ビヘービアとは全く違っておる形になっておるんじゃないか、こんなふうに理解しておるところでございます。
  76. 小森龍邦

    ○小森委員 そうしますと、貿易のアンバランスというものは、これはかねてからアメリカが随分神経をとがらしておるところでありますが、つまり、日本政府とすれば、経済のマクロなうねりの中でそうなっておるのであって、何も日本側が、日本政府が手を打たなければならぬことはさほど決め手ではないんだ、それはつき合い程度にアメリカのいろいろなものを買うということはあるけれども、大きなうねりはもういかんともしがたいんだ、こういう考え方に立たれておるわけですか。
  77. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 貿易黒字に関します要因というのを定量的に言うことは非常に難しいと私思うのでございますが、例えば、先ほどの例で申し上げますと、八六年にあれほど巨大な、前の大変な貿易黒字で日米貿易摩擦が最も激しくて、半導体問題とかいろいろな問題が出たときでございますが、当時のアメリカの政府及び議会、特に政府でございますが、それが日本に対して強く言っておりましたのは、現在の日本の持っておる世界に対する貿易黒字の七割から八割ぐらいはやはりマクロ経済、つまり景気のすれ違いの持つ要因であろう、したがって、そこは内需喚起を思い切りやってインバランスの解消を図ってくれ、さはされど、残り幾つかはやはり市場開放、さらに輸入手続の簡素化、その他もろもろの日本がやるべきことはあるんじゃないかというのが、前回の日米摩擦のピークのときのアメリカ側の言い分でございました。  現在、金額的にはそれよりも大きくなっておるわけでございますが、今の要因については定量的に、今アメリカは何も言っておりませんけれども、私は、やはり基本的にはそういったような考えがベースにあるのであろうと思うわけでございます。したがいまして、先ほどの例で言いますと、七、八割に相当するマクロ経済対策を今回また手を打ったわけでございます。昨年も打ちましたし、今回も打ったわけでございますが、我々として、できるだけきめ細かい輸入促進策をあわせてやっていかなければいかぬというのが我々の考え方でございます。  例えば、今国会でもお認めいただきましたけれども、輸入促進税制、これは一定比率以上の輸入をしたときには税制上のインセンティブを受けるということでございますが、そういう対策も講じました。あるいは、ジェトロのビジネス・サポーティング・センターというのを、これは三月に設けましたけれども、アメリカを初めとする諸外国の人が日本に売り込みに来るときに、どうしてもまだ日本の市場になれておらないとか、あるいは流通機構の複雑さとか、いろいろな問題がございます。そういうものを、ジェトロにそういうセンターを設けまして、アドバイス制をしきまして、無料でオフィスに入ってもらって、一連のサポートをするとか、あるいはもう一つは、より中期的にでございますが、我が国の港湾とか空港というのは非常に一極集中の形になっておるものでございますから、輸入促進地域、つまりフォーリン・アクセス・ゾーンという地域を指定して、そこに流通施設とか荷さばき施設とか、あるいは一連のインフラを整備して、そこで輸入品がスムーズに入ってくるようにやろうということで、既に、これも昨年法律を通していただきまして、今年度六地域を指定いたしております。  今回の景気対策の輸入促進のところにもそのことをさらに強調して、さらにこれを推進していくということが書いてございますけれども、そういった問題とか、その他もろもろの手続の簡素化あるいは透明性の拡大、そういったもの、あらゆることできることをやっていきたい、今までもやってきましたし、これからもやっていくということでございます。  私の先ほどの答弁、舌足らずでございましたが、基本はマクロ対策で、内需拡大によって大幅な数字というのは改善の余地はある、しかし、あわせて市場開放、手続の簡素化その他を行って、バランスある形に持っていきたい、こういうのが我々の基本的な考え方でございます。
  78. 小森龍邦

    ○小森委員 この貿易のアンバランスな問題というのは、日本とアメリカとの関係においては、特に、国際的な貿易の競争力といいますか国際競争力といいますか、それが我が国の場合はすぐれておる、そのすぐれ方というものにはいろいろ注釈を加えなければならぬ問題点はあろうと思いますけれども、要するにすぐれておるからこういう格好になっておると私は思うんですね。そのすぐれておることが、実は内需の関係で、その角度からだけ見たのでは国際関係は調整されないのではないか。  そこで、広い意味では、我が国の国内で生産財として使用されるような、次の新たな付加価値をつけて外国へ出すようなものも、こっちが買い取るものは輸入の総額の中に入るわけですが、内需拡大というと、一番大きな問題というのは国民の生活の水準を豊かにすることだと思うんですね。国民の生活を豊かにするという、つまり個人消費に回る輸入の額というものはおおよそどれくらいの比重を占めておるわけでしょうか。その比重がどれだけ大きいかということによって、今お話しになっているような内需拡大ということが確かにこたえておるんだなとか、あるいはそれは取ってつけた理屈だなということに判断するかという分かれ目になると思うんですね。  私は、主たる問題は、日本はなかなか転げても石でもつかんで起きるようなしたたかなたくましさというものを持っておって、いわゆる国際競争力の問題だ、こう思っておるんですが、内需の中の個人消費に回るもの、内需を拡大しなければならぬというこの概念から見て、輸入品がどの程度の比重を占めるのか、この点はいかがでしょうか。
  79. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来、内需対策がインバランスを解消する極めて大きな柱だということを申し上げましたが、もちろんその前提といたしまして、今先生御指摘ありましたように、自由市場経済でございますから、競争力の問題が背後にあることは間違いございません。特に製造業の関係では、日本の競争力というのは、八〇年代を通じて、ニーズに合うように多品種少量生産というものにしっかりと追いつく生産体制を確立いたしまして、それが消費者のニーズに合うような製品を、きめ細かく安くかつ効率よくつくり出していったという点があったことは事実でございまして、したがって、今アメリカを初めとする外国製品が日本に入るときに苦労しておるのは、今言ったように、基本的には競争力の問題があることは事実でございますが、それに加えまして、消費者の需要のきめ細かさという点もまた一つございまして、それに合うような品物をつくらなければいかぬという点が、今彼らが市場参入するときに苦労をしておる点であろうと思います。  それで、今先生御指摘の日本の輸入について、特に消費者が関連する部分がどれだけのウエートかという御質問でございます。  これは、いろいろな計算の仕方があるのだろうと思いますけれども、今ちょっと手元に持っておりませんし、定量的に言うのが非常に難しいと思いますが、一言で申し上げますと、八〇年代の前半ぐらいまでは、我が国の輸入で圧倒的ウエートを占めておりましたのはやはり油と原材料、資源関係でございます。そのウエートが非常に高こうございました。しかしながら、八六年の最も大きいインバランスを解消して、先ほど申し上げましたように、輸入が拡大する過程で製品輸入比率というのが非常にふえてまいりました。これが、現在日本の総輸入の中の五〇%、一番多いときで五二、三%まで上がったことがございます。そのくらいのウエートで製品がふえてきております。この製品というのは、いわゆる耐久消費財等の輸入がふえておるという面が非常に大きくなってきておりまして、これが全部ではございませんけれども、その製品のウエートというのは、消費者の好みででき上がった品物が入ってきておるという面がふえてきておることが大きな一つの要因になっておると思います。  さらに もう一つ言えば、最近非常に話題を呼んでおりますのが個人輸入でございまして、例えばあるセブンイレブンとかいったようなところのスーパーが、特別に個人の注文に応じて外国の品物をどんどん日本につなぐというサービスをやり始めておりますが、この伸びが物すごく強くなっておりまして、そういう意味で、今はまだウエートが小そうございますが、これから生活大国ができ上がっていく過程において、個人の外国からの製品輸入という比率がますます大きくなっていくのではないか、かように考えておるわけでございます。
  80. 小森龍邦

    ○小森委員 概略のことはわかりましたが、その内需を拡大していくということとやはり差が出てくるのは、いわゆる国際競争力と言われる、つまり先方へ物を輸出したときの価格の安さですね。これはニーズにこたえる、こたえないのというような問題はもちろん国際競争力の重要な問題だと私は思いますが、向こうに届いたときのこの商品の価格の安さと性能の問題ですね。自動車なんかは非常に燃費が安く済む。それから故障が少ない。これなんかは大変なニーズに合ったものだと思いますね。その製品の価格が日本の場合は諸外国から受け入れられる。特に東南アジアなんかに行ってみたらもうほとんど日本の製品の広告ばかりですね。道路を走っておる自動車はほとんど日本の自動車で、日本の風景、東京の風景と変わらない、バンコクなんかに行っても。あるいは相当おくれておると思われるジャカルタに行ってもそうですね。クアラルンプールに行ってもそうですね。  そういうことは、私はここでずばり申し上げてみたいと思いますが、国際競争力の中に占める経済の我が国の体質の中に、労働賃金の問題と、その労働賃金の問題というのは、国際比較をしてみると日本の労働時間が非常に長い。だから、単位時間当たりは、世界でGNP国民一人当たり第一位だと言われておるような国においてよその国と比べて見劣りがするという問題と、それからもう一つは、よい言葉で言えば能率、悪く言うと下へ下へしわ寄せをする。午前中も申し上げましたが、要するに円高で困って苦しいんだからひとつ下請の値段を下げてくれと元請、親会社から言われると、十年間コスト掘え置きで、そしてこの時点になって三割ダウンと言われても、泣き泣きみんなそれをやらなければならぬ、非常に露骨な言葉で言えば搾り方のうまさという問題だと私は思うんですね。そういう点についてはどう思われますか。  つまり、アメリカがいろいろなことを言っていますけれども、私は、せんじ詰めれば、後ほど問題として触れたいと思いますけれども、公的規制の見直しとかいう問題も、露骨な言い方になりますけれども、これはつまり我が国の政治権力の非常に恣意の働くところで、これを認可するとかしないとか、一定の基準があるとはいうけれども、特に大店法の問題なんかもそうであったんですね。それから、国内の問題でいえば、運輸行政の貨物の認可なんかもそうであったんですね。書類を出して、一体いつ認可してもらえるかわからぬということも現にあったわけですね。そういう権力行使の恣意的な働きが介在する余地があるから、公的規制の問題もアメリカは構造協議で我が国に指摘をしておるわけですね。  そういうことからして、要するに、まずは今問題にしておりますのは、日本の経済の構造の中で、国際競争力に胸を張って勝てる要因ばかりではない。むしろ、相手から文句を言われたら後ずさりをして、それは必ずきっと近い将来に是正しますから、こう言わなければならないような問題があってこの輸出入のバランスが崩れておる点があると私は思うんですよ。そういう点については、どう思われますか。
  81. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 非常に本質的な我が国の輸出輸入、しかも市場に対する御洞察に基づく御意見でございまして、お答えが大変難しくなり、また、あるいは先生の求めておられるものとややかけ離れてくるかもわかりませんが、私の考え方、先ほどの競争力について触れさせていただきますと、確かに、特に我が国の製造業、二次産業の部門の競争力というのは非常に強くて、しかもそれは生産工程において、かつてはアメリカが大変得意だった大量生産システムではなくて、消費者の細かい需要に応じた多品種少量生産にスムーズについていけるような体制を確立したという点が非常に大きいと思いますし、そういう日本からの機械類その他の輸出をもとにしまして、アメリカの重要産業はまたそれに花を開いて、各種の輸出品を使って、諸外国に輸出しておる、こういう構造が今でき上がっておるわけでございます。  ただ、数年前でございましたか、私は中小企業の労働力確保法という法律をつくったことがございます。これは、中小企業が労働力を確保しやすいように、設備投資をもっと思い切ってやっていかなきゃいかぬとか、あるいは大企業の下請企業に対する週末発注、週明け納入といったような問題、そういうものを少し下請振興基準を改めて緩やかにして、社会全体がゆとりを持ち、かつまた時間短縮に向かうようにしなきゃいかぬ、こういったような法律構成をつくったことがございます。これも今先生おっしゃったようなことからいえば、極めて最効率にできた、効率、精度を追求した競争力というものを、ある意味で、要するにそれが少しずつコストを高めていく要因にもなるんだろうと思われますし、また逆にこれからの課題でございますけれども、例えばリサイクルその他をやっていく場合に、ある製品をつくる場合にはリサイクルしやすい形で製品をつくらなきゃいかぬ。ドイツなんか既にこういう考え方を導入しておりますけれども。  そういう考え方が入っていけば、今までのコストででき上がった製造業の製品というものが当然のことながらコストが高くなっていくという形になってくるわけでございまして、そういった社会的な各種の要因というのをある程度考えながら製造業というのはこれから企業行動を考えていかなきゃいかぬ。そういう分野が徐々に出てきておるんだろうと私は思います。そういうことを考えながら今後の我々の行政も進めていかなきゃいけない、かように考えておるわけでございます。
  82. 小森龍邦

    ○小森委員 いつか私の部屋に、ある自民党の、現役ではございませんけれども非常に著名な政治家から、米の輸入の問題について、要らないものを買わなくてもいいじゃないか、日本にあるんだから買わなくてもいいじゃないか、これは自由競争経済の原理ではないか、まことにすぱっとしたペーパーが届いたことがあります。  そういう意味では、これはもう純粋のアダム・スミスの国富論で展開しておるような自由競争経済というか自由放任経済というか、そういうものからいったら、日本が幾ら黒字をたくさん持とうがそんなことはアメリカからぐずぐず言ってもらう必要はないわけです。しかし、世界的な規模でお互いに繁栄をしていこうと思うと、ある種の管理を行い、ある種の規制を行い、ある種の自粛もやらなきゃいかぬ、これはケインズ経済学的方法だと思うんですね。  それで、あれこれ言うけれども今はケインズ経済学的な手法によって世界のいわゆる自由主義国というか、この間から社会主義だ資本主義だというようなことが盛んに出てきますが、何だか資本主義というのも口幅ったいような雰囲気だし、社会主義というのも少ししり込みするような雰囲気になっていますけれども、現実にそれは資本主義であることには間違いないんで、その資本主義がある程度拡大再生産を続けつつ、恐慌とか混乱をもたらせまいとすればケインズ的手法で世界はやっておる。そうすると、アメリカからいろいろ言われることについても、日本は自粛をしたり改めたりしなければならぬことがある。  そういうことで結局、経済の二重構造の中に労働力とか下請、孫請に対してしわ寄せをしておるところとか、これを解決しなければ根本的なことにならぬと思いますよ。それは幾ら内需の拡大といったところで、先ほどお話がありました内需というか完成された製品の輸入総額は五〇%になっておるということでありますから、それは影響を持つことは事実ですけれども、国際間の問題というのは私はそれだけでは解決つかない、こう思っておるわけです。  それで、時間も大分迫ってきましたので、午前中大臣に私の質問を聞いてもらえば一番よかったわけですが、大臣が政調会長をなさっておるときに私どもの党の当時の田邊委員長と地域改善対策の問題について最終的にいろいろ話もしていただいたということも私は聞いております。結局今私が申し上げたいと思うことは、こういう国際的な問題、きょう宮澤首相が行っておられますけれども、スーパー三〇一条がどうなるかというような問題もけさほどのラジオでは大変大きく報道をされておるわけですね。したがって、つまりそういう国際問題を解決する、安定的にお互いに手を握っていけるという状況と国内の問題を、つまり人が人を差別しない、人がお互いに尊重し合うていける、労働時間の問題だって国際比較に負けないというような経済の仕組みをつくることが大事だと私は思うんですが、通産大臣に一言その点を聞かせていただきたいと思います。
  83. 森喜朗

    ○森国務大臣 まさに今委員が御指摘をなさいましたことが、我が国の産業政策を進めていく上において最も重要なことだと考えております。  もとより我が国は資源のない国でございますから、資源を輸入してそれに付加価値をつけて海外に輸出をする、それによって外貨を稼いでいくということ、そして国の繁栄を続けていく。ただ、そのことが余りにも過剰になっていくことによってバランスがとれなくなってきている。したがって輸入を促進するということも、先ほど申し上げたように、民需あるいは公的なものも含めて努力はしなきゃなりませんが、同時にまた、その資金を世界に還流していく仕組みも考えていくということがやはりバランスのとれた世界全体への繁栄、貢献策であろうというふうに考えております。  もう一つ、委員から御指摘ございましたように、我が国は確かにかつては、そうした産業形態の中にも下請に対する圧迫とかいろいろあったことは、やはり歴史的には否定はでき得ないと私は思います。しかし今、我が国の自動車を含め、あるいは電気製品等、コンピューター、こうして世界に対して冠たるものをつくり上げたということの一つは、やはり優秀な部品産業があったと思うのです。いわゆるすそ野産業とよく言われるわけでありますが、そうしたところの協力があったればこそだろう、こう考えます。  先生の選挙区広島県なども、例えばマツダを初めそうした世界に冠たる技術を持つ耐久消費財をつくる企業は多いわけでありますし、そうした中に協力しておられる協力工場もたくさんあるわけでありますから、そういう中で下請との関係あるいは協力工場との関係は、時短にいたしましても、これは労働力の面、労働政策の面からでもございましょうが、あるいは先ほど貿易局長から申し上げましたように、下請企業との関係が円滑に進めるように、そういう点についてはかなり改善が進んできております。そういう面ではほとんど先進諸国とそう大きな変わりはないと私どもは考えておりますけれども、さらに、今回労働基本法も国会へ出させていただき、そうした点についての改善を進めていきたい。  もちろん、中小企業につきましてはいろいろ問題点もございますが、そのことも全般的に含みながらそうした方途も求めているわけでございまして、委員から御指摘をいただきました面は、過去には私は日本にはあったということは事実だと思いますが、そうした点を大いに改善をして、そして本当に日本の国のいわゆる付加価値を高めていく産業というものが理想的な形に整えられていくというふうに、私ども通産省としても十分そのことに意を用いて努力をしていかなければならぬ、このように考えておるところであります。
  84. 小森龍邦

    ○小森委員 大臣の前向きな発言に対して、私は評価するところも大いにございます。しかしながら事はもっと深刻でありまして、例えば、円がドルで換算をして二百六十円という時代も自動車会社はもうけを出し、百十五円、百二十円、つまり半分以下になってもなおもうけを出す。一体それだけの、俗に言う能率ですね、その能率というものはどこから出てきておるか。私はこれは本社工場じゃないと思いますよ。先ほども下請が非常に優秀な技術を持って対処されておるという大臣の発言、そのとおりでありまして、それは要するに、大変立派な製品を下請がつくるということになったと同時に、下請は、先ほど午前中に私は規模別に労賃を聞いたのは、下請に八割ぐらいの労賃をもらえるところもあれば六割しかもらえないところもあるというような、規模によって、つまり第二次下請、第三次下請、下に行くほど製品は優秀なものをつくるけれども経済的には報われていない。そのトータルが国際競争力じゃと私は思うのです。  先ほど来申し上げておりますように、要するにそのことが、日本社会の全体の経済構造というものが国民の意識構造に作用して、部落差別だけだとは私は言いませんよ、いろいろな、女性に対する問題だって、外国人に対する問題だって、アイヌ民族に対する問題だって、差別をやや肯定するような雰囲気に経済が国民を引っ張っていく、こういう問題になります。  時間が来ましたから、公的規制の問題に触れてさらにそれを補強したいと思いましたけれども、また別の機会に譲らせていただきたいと思いますが、その点をぜひ大臣にお考えをいただきたいと思います。  ありがとうございました。
  85. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、松浦利尚君。
  86. 松浦利尚

    松浦(利)委員 委員長には大変御迷惑をおかけいたします。予算委員会で積み残しがありましたので、この前外務省、そしてきょう通産省の関係で質問させていただきます。  ただこの際、有力通産大臣ですからぜひお願いをしておきます。私たち、ややもすると予算案にのみ重点を置きまして、予算委員会の審議は非常に熱がこもるのですけれども、執行された結果について議論をします決算委員会については極めて寂しい。これはやはりどう考えてみても、国民の税金を預かるという意味からいえば、アンバラン、スだと私は思います。ですから、我が党もこうした決算委員会のあり方については十分検討を加えたいと思いますが、政府におかれましても、もっと決算について重要視をしていただくように、ぜひ御配慮いただきたいということを冒頭お願いをしておきたいと思います。  まず冒頭、電力関係についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、昨年の六月十一日に電気事業審議会需給部会電力基本問題検討小委員会から報告書が出されておるわけであります。この問題について御質問させていただきます前に、実はこの答申が出る前から、各八電力会社におきまして、供給の余剰のある部分については需給調整といいますか融通調整を図ってきたわけです。ですから、昭和六十三年度から今年度平成五年まで、一応エネ庁の方から資料はいただきましたけれども、どういう計画だったのか、その中で九州から融通した電力はどれくらいだったのか、簡潔に御報告いただきたいというように思います。
  87. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 お答え申し上げます。  昭和六十三年以降というお話でございましたが、全国では、夏の一番ピークのときでございますけれども、昭和六十三年には二百九十三万キロワット、その後、元年度二百三十二万キロワット、二年度は二百九十四万キロワット、それから三年度は四百八万キロワット、四年度は四百三十二万キロワットと、このところ若干ふえてきているわけでございます。今年度計画でございますが、大体四年度実績並みの四百三十二万キロワットを各電力会社では全体としては見込んでいるところでございます。  今お尋ねの九州からということでございますが、六十三年から二年までは実績がないようでございますが、平成年度に九州から他社に対しまして二十二万キロワット、四年度については三十万キロワット、そして今年度については二十万キロワットを見込んでいるところでございます。
  88. 松浦利尚

    松浦(利)委員 従来こうした余力について融通し合ってきておるわけですが、この答申の内容を見ますと、七ページに「広域運営の推進」という答申がなされまして、融通型電源開発ということが具体的なプランとして提出されてきております。重要なものを読み上げてみますと、従来は卸電気事業者というものがありました。発電をして卸すだけという事業体、それから、私どもの九州電力のように加入者に供給する一般電気事業者、こういう二つを行政というのは指導されてきたはずですけれども、これからは一般電気事業者各社においても融通型電源開発整備等についての格段の努力が必要であるということで、実は行政の中心に据えてきたわけですね。  ですから、九州電力あるいは東北電力が卵もやる、電力業者間の融通を卸がやっておるような形で融通し合う、卸してやる、そういうことが格段の努力をするという方向づけがなされたということですが、この点については、通産省としては将来はそういう展望を持っておられるのか。そういう方向で進むのだろうと思うんですが、そのことについての御回答をいただきたい、これが第一点。  第二点は、これの完成年次を二〇一〇年、「二〇一〇年頃における広域系統整備の方向性」ですから、二〇一〇年ということになってきたときには、今言った広域運営というものの一つの整備を終わって、何と書いてあるかというと、新たな五十万ボルト系統を整備せよということで、東地区、中地区、西地区と三つに区分をして大体五十万ボルト系統を整備しておけ、そうすればおおむね対応できるのではないか。ですから、二〇一〇年に向かってそういった広域供給も構想したところの電源開発が進められていくんだ、こういうふうに理解されると思うのでありますが、申し上げた二点についてお答えをいただきたいと思います。
  89. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 基本的には今先生がおっしゃったとおりでございますが、若干敷衍させていただきますと、現在の電気事業法におきましても、一般電気事業者の電力会社の広域運営の重要性というのはもともとうたわれているわけでございます。先ほどちょっと融通の数字を申し上げたわけでございますけれども、最近特に夏のピーク時の電力が逼迫ぎみに推移しているわけでございまして、例えば平成年度、非常に暑かったせいもありますけれども、一年間で千五百万キロワット前年に比べてふえたというような実態もございました。その後は数百万キロワットというオーダーでございますけれども、この千五百万キロワットというのは非常に大きな数字でございまして、例えばヨーロッパの小さい国でありますスイスなどの例をとりますと、一国の供給力に見合うぐらいの分が一年間にあったということでございます。  そういうことから、国民生活あるいは経済活動に占める現在の電力の重要性から申し上げますと、やはりこれを安定的に供給していかなければならないわけでございます。一方で、電源開発を推進しなければいかぬということでございますけれども、同時に、先生御指摘のように、電力各社間におきまして需給の状況というのはいろいろ違いもあるわけでございますし、また電源開発の進捗状況等におきましてもいろいろな違いがあるわけでございますので、広域運営が一層重要になってきている。特に、先生今御指摘の電気事業審議会の基本問題検討小委員会の報告でも指摘されておりますように、今後は、ある意味でその場その場の融通ということだけではなくて、あらかじめ融通型の電源であるとか電力会社の共同の開発が必要であるということもありましょうし、それから大規模なこれを送電することも当然必要になってくるわけでございまして、まさに御指摘のような方向でやはり我々も努力していかなければならないと考えているところでございます。
  90. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大体、従来から供給予備率として九%から一〇%程度のものは全部持つように指導してこられたことは理解できるんですが、しかし、そのことと今度のこれで言っていることは違っておると思うんですよね。今度は広域的に供給できる体制をつくる。  ですから、電気というのは、東京、関西、中部、ここが最大の需要地でありまして、東京から東北とか北海道、あるいは関西から九州という逆方向というのはないんですよね。九州からいえば、必ず西から東の方に供給するという体制を整備する以外に私はないと思う。その理由というのは、東京なら東京に発電所なりあるいは原発等を立地する地域はありません。あるいは中部にもない。関西にもない。そういう状況下になってくると、電源開発が立地できる場所を中心にして広域供給体制をつくらざるを得ない、そういう方向に当然の形として進んでいくのではないかというふうに私は思います。特に小倉原子炉あるいは日置川原子炉、これは重要電源初期地点でありますけれども、これについては原発反対の町長さんが当選をなさいましたので非常に立地が難しくなりまして、関西電九では大変にお困りになっている。  そういった状況から見て、早急にそういった地点に対応するためには、ほかのところで例えば原発なら原発を開発するときには、そういった供給余力を持たした需給計画設置をしていくということに、広域的に判断をすれば当然なっていくだろうと私は思うんですね。ですから、もう少し端的に申し上げますと、私の選挙区ではありませんけれども、宮崎の串間というところに原発の立地を求めて、今建設するかどうかということで、住民も、不安な人、賛成の人、いろいろまだ議論のあるところでありますけれども、いずれにいたしましても、串間につくろうとするこの原発が、九州でいえば玄海三号、四号の工事が終わりますから、二〇一〇年ということを目標にするなら、どこか原発立地の場所を模索をしておるという状況が生まれてきておるんですね。  ですから、そうした場合には当然広域的に需要供給の関係を想定した計画で原発というものがつくられていく、あるいは原発でなくてもいい、火力、水力等がつくられていくというふうに私は理解をするのが当然だと思うのでありますが、そういう点についてエネ庁長官、どう思われますか、そういう方向づけをしておられると思うんですが。
  91. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 先ほど数字を申し上げたわけですけれども、今の融通の最大の電力というのは、平成年度でございますけれども四百三十二万キロワット、そういう実績でございます。電力会社全体の設備容量というのは一億六、七千万キロワットございますので、そういう点からいいますとパーセンテージは低いわけでございます。したがって、基本的にもちろん一般電力会社各社において電源を調達していくということでございましょうけれども、先ほど申し上げましたように、ピークの状況の違いがあったり電源開発の進捗の違いがあったりといういろいろな事情もございますので、そういう観点から広域運営の重要性が非常に増しているというのは先ほどお答え申し上げたとおりでございます。
  92. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、もっと単刀直入にお尋ねいたしますが、九州電力が計画をしておる二〇一〇年に向かっての原発立地地点というのは、今名前が挙がっているのが串間、それから鹿児島の川内原発の三号、四号炉の敷地があいておりますから、その川内と串間という二点に絞られておるわけですが、ほかに候補地があるのかどうかをお聞かせいただきたいと思うのです。
  93. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 一般的に言って、先ほどの先生のおっしゃったようなことで電源開発は重要なわけでございますが、特に近年電源立地が長期化しているという傾向にあることにかんがみまして、やはり長期的展望に立ってこの原子力を初めとする電源開発を進めることが必要でございます。  御指摘の九州電力におきましても、長期的な供給力の確保あるいは電源構成のベストミックスを図っていく上で、今先生御指摘の現在建設中の玄海原子力発電所の三、四号に次ぎます原子力開発が必要と考えていると承知いたしておりまして、現在、今先生御指摘の串間あるいは川内での増設といった点も含めまして、いろいろ社内で検討をするなり必要な調査を行っていると承知をいたしているところでございます。  ほかにあるかということでございますけれども、いずれにいたしましても、これはまだ正式の計画ということで国に上がってきているわけでもございませんので、社内での検討の段階でございますけれども、私どもとしては今の二地点以外の具体的な検討地点については聞いておりません。
  94. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それで、私どもが非常に心配をしますのは、先ほど言った報告書によりますと、二〇一〇年には五十万ボルト系列を整備しなければいけませんね。そうすると、新聞報道によりますと、九州電力と関西電力と百万キロワットの契約を既に終わったというんですよ、そういうことが九州地区の各新聞に報道されておるんですよ。現実にそういう契約があったのか、なかったのか。そして、それは九七年度から供給するというんです、九州電力が百万キロワット。それで、この電力施設計画概要を見ますと、九七年度は九州電力は大体一千四百五十二万キロワットの最大需要電力というふうになっておりますから、その供給予備率が一二・二になっていますから、そういう計算から百万キロワットアワーという数字が予測されて恐らく記事になったのかとも思うんですが、この数字は正確かどうか、長官でなくても結構ですから、詳しい方、ひとつ教えてください。
  95. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 今おっしゃったような具体的なことについては、私どもはまだ聞いておりません。
  96. 松浦利尚

    松浦(利)委員 事務局の方のお話を聞きましたら、それは五十万キロワットアワーの間違いじゃないですかというお話でしたが、そういう数字がもう出ておるんじゃないですか。
  97. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 先ほど申し上げましたように、電源開発であるとか大規模送電線の敷設にしても非常に長い時間がかかる話でございますし、また長期的な展望に立ってやらなければいけない話でございますので、恐らくいろいろ議論は行われているかもしれませんけれども、私ども、そういう契約になっているということは承知をいたしておりません。
  98. 松浦利尚

    松浦(利)委員 先ほど申し上げましたように、要するに関西、中部、東京というのはもう限界に来ておるわけですね。ですから、どこからか供給を受けなければならぬという状況に来ておるわけです。  私は、工場を分散させるとか一極集中を排除する一番簡単な方法は、水と電気だと思いますね。東京に進出するものについては、水がない、電気がない、ですから電気や水のあるところに行けという形にするのが、一極集中を排除するのに一番簡単な方法だと思うんですが、そういうことはできないので、結局、膨張するだけ膨張する、供給が不足する、供給が不足する分については立地しやすいところに電源開発をしてそれを供給する、それが今度のこの需給部会の答申の最大のポイントになっておるんですね、広域運営という方法は。  ですから、逆に言うと、二〇一〇年に向かって完成をするわけですから、二〇一〇年に稼働し始める、串間か川内かわかりませんけれども、九州電力が開発しようとする原発そのものは当然関西電力等に供給する、その供給も含めた計画で立地されるということになっていくと私は思うんです。そうしなければ、この答申と全く食い違ったことになるわけですね。ですから、九州電力としては余り好ましいことではないと思いますよ。本当なら福島原発のように、東京電力が福島県に行って頭を下げて土地を買収して、自分の金であそこにつくる。ところが今度は、関西電力のために九州電力が頭を下げて、頼みますよ、頼みますよと言って原発をつくってやる。関西電力はコストが少し高くなるかもしれませんけれども、九州電力から卸を受ける方がそれはずっと楽ですからね。  ですから、九州電力としても余り気持ちのいいやり方ではないと思うんですが、いずれにしてもそういう方向に行かざるを得ない、そういう需給関係が二〇一〇年には成り立ってしまう、そういうことを私は非常に危惧をするんです。でき上がってしまったらそれは問題ないかもしれませんが、現実に原発をつくるときに、いや、私のところの原発は関西の方にも送るためにここにつくるんですよ、そんなふうに言われたのではやはり地元住民はたまったものじ。やないと思うんですね。  御承知のように、私のところは、就職列車が出まして、中学校、高校の若い卒業生がみんな関西、東京に出ていったんです。今その人たちがこちらの方で指導者になっていますね、中堅幹部以上になっているんです。ところが今度は、原子力発電所をつくって、そして大都会の方に電気だけ供給をする。恐らく大臣のところも、そういうふうになるのかならぬのかわかりませんけれども、そういう方向に進むということは心理的に非常に問題があると私は思うんですね。  こういう問題について、大臣、どうお考えになりますか。私は、このことは確かにいいことだと思いますけれども、そのいいことをするためにリスクを背負わなければならぬところがこの中から出てくる。こういう点について、大臣、どうお考えになりますか。
  99. 森喜朗

    ○森国務大臣 今松浦委員、九州を中心にしまして一つのそこだけをちょっと特徴づけておっしゃった。確かに昔は、若い青年たちといいましょうか卒業した人たちが、就職列車で大阪なりに出かけた。今度はまた電力がそれを後追いしていく、ますます過疎化が進むし一極集中が進むじゃないか、矛盾だらけではないか、こういう御指摘だというふうに伺います。  私の選挙区はどうですかとお尋ねをいただいたわけですが、私の隣に福井県というのがございます。この福井県は御承知のように原子力発電の設置が非常に進んでおりますが、いろいろと福井県の皆さんのお話を伺うと、福井県でつくりましたエネルギーというのはほとんど大阪、京都へ送るわけですね。そうしますと、やはり福井県の皆さんは、関西のために、大阪や京都、神戸、大都市のために我々は犠牲になっておるんですかという意見があるようでございます。ですから、そうしたことは、やはり過度になりますとそういう印象というのは強まってくるだろうと思いますから、やはり適切な配置が必要になってくるのだろうと思います。  いずれにいたしましても、やはりクリーンで安全度というものを一番確実にさせるということは大前提でございますが、いろいろな面から見て原子力によるエネルギーの供給というのが、今の我が国にとっては欠くことのできない電力供給でございますから、これはやはり適切なバランスのある配置ということが大事だろうと思います。  もう一つ、こうした大都会におきますエネルギーを消費する企業、産業というのも、さらにある意味ではこういうリストラという時代でございますから、地方に移っていくということも適宜適切に、もちろん企業が主体性を持ってやっていただかなければならぬことでありますが、そういう面においては通産省なども十分そのことに対しての支援態勢をとっていくということも、要はバランスのある組み立てというか、そうしたことが大事だろうというふうに、私は今お話を伺いながらそんな感じを持ちました。
  100. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これ以上は、黒田さんにお願いしておきますけれども、冒頭には、情報を国民に的確に送れ、これはこういうことでつくるんだ、確かに関西電力なら関西電力にこれだけ供給するんだ、そういった情報をはっきり公開して、そしてその上で国民の理解を得る、ですから積極的に公開していくべきだ、情報を的確に知らせるべきだということもこの中に書いてあるんですよ。  ですから、そういう面について、いや、あれは関西の方に供給するのではありませんよ、これは九州だけで使うんですよと言って、つくってしまったら向こうの方に行ったというようなことになれば不信感が増幅するわけですから、そういう点についてはぜひ各電力会社を御指導いただきたい。やはり情報を隠そうとするから、だからそういった情報は的確に国民に知らしめるように、長官のところで電力会社の皆さん方を御指導いただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。  そこで、これも実は予算委員会で質問しようと思っておったんですけれども、できなかったんですが、予算は通ってしまいました。  御承知のように、こうした立地をする地域に対して、福祉等の安定のためにあるいは向上のために、あるいは施設設置の円滑化を図るために、電源開発促進対策特別会計というのができたわけですね。それをもって住民の御期待におこたえをするように、それぞれ福祉施設やらいろいろな設備あるいは道路といったものをつくるように、政府の方で関係自治体にあるいは関係者に交付金等を出すようになっているんですね。  ところが、この電源特会の中から今回、原子力発電運転技術センター整備のために二十億四千万円を拠出する。ですから、当初特会を設立したときはたしか中曽根通産大臣だったと思うんですが、そのときの電源三法と全く違う形の、ロシアの運転技術センター整備のために二十億四千万円、あるいは東欧の人たちに支出をするということになっているんですが、これはどういう理由でこんなになさったんでしょうか。
  101. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣からも御答弁ございましたように、原子力立地を推進していく上で原子力の安全性というのはこれは大前提でございまして、安全性につきましてやはり国民の皆様方の理解を得ていくというのが非常に重要なことだというふうに思っております。  一九八六年に発生いたしました例のチェルノブイルの事故は、原子力発電の安全性に対する不安感を世界的に増大させたわけでございまして、原子力発電施設の立地を阻害する要因というふうになっているわけでございます。また近くは、これは発電所ではございませんけれども、放射性廃棄物の海洋投棄の問題であるとか、あるいは軍事用の再処理施設での爆発事故といったようなものもあるわけでございまして、これは原子力は原子力でも別のものでございますけれども、こうした不安感を払拭する施策というのがやはり必要であろうかというふうに考えているわけでございます。特に、昨年来ミュンヘン・サミットなどでも先進諸国間で議論があったわけでございますけれども、旧ソ連型の発電所については、安全性あるいは安全運転についての意識とかソフト面でもいろいろな点が指摘されているわけでございまして、そういった意味から、先ほど申し上げましたように、原子力の場合には世界的な波及というのもございますし、そういった不安感についての払拭というのが重要なことだというふうに考えている次第でございます。  先生御指摘の運転管理センターの予算は今年度の予算として計上されているわけでございますけれども、私どもといたしましては実は平成年度から、昨年度から、いわば千人研修と称しておりますけれども、研修事業を実施いたしているところでございます。これはロシアだけに限るわけではございませんけれども、旧ソ連型の発電所を使っている国々、具体的には旧ソ連邦を形成していた諸国あるいは東欧でこうした旧ソ連型の発電所があるわけでございまして、そういったところからの運転員などの研修の事業というのも実はこの電源開発特別会計で実施いたしているところでございます。  この趣旨は、そういった背景のもとに、一つは、研修の実施などを通じまして相手国における運転管理技術の現状であるとか問題点について把握することが可能となるわけでございまして、これを我が国の運転管理面における安全性の確保に役立てることができるという面もあるわけでございますし、また、先ほどからるる申し上げておりますように、研修を実施いたしますとやはり我が国の原子力安全技術の高さを国民の皆様に理解していただく、そういう効果もあろうかと思うわけでございまして、チェルノブイル事故などに起因いたします原子力発電の安全性に対する不安感の低減につながるのではないかというふうに考えているところでございます。  したがいまして、原子力発電の運転管理に関します研修、今先生おっしゃいました今年度の予算での運転管理センターというのも、いわば研修をこちらで今、平成年度から開始したわけでございますけれども、実は裏返しで向こう側でやるための延長線上のような事業でございまして、そういったことからいずれも原子力発電所の設置の円滑化に資するものであるというふうに考えているところでございます。電源開発促進対策特別会計法の第一条の第二項では、発電用施設設置の円滑化に資する財政上の措置にこれを支出することができるということになっているわけでございまして、そういうことからこの電源開発促進対策特別会計電源立地勘定におきまして予算を支出することといたしている次第でございます。
  102. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大臣、これは当然国民が負担をして、本来電源立地勘定として原発を立地するところに支給されておる性格のものなんですね。それが確かにたくさん余っていることは事実です。余っているとは言葉が悪いですが、たくさん積み立てられることは事実ですね。しかし、だからといって法の趣旨に反して、これはロシアだけではなくて東欧諸国も入るわけですから、そういったところの技術者養成のための資金に流れていくというのは、本来の法律の趣旨に反しておると思うんです。私は当然法改正の提案を今国会でなさるべきではなかったかと思うんですが、なぜ政令等にゆだねた形で支出をなさるようにしたのか。  こうしますと際限なく広がるわけですよね。一遍窓口を開きますと、恐らくこれからクリーンエネルギーだということで原子力をエネルギーに使う国というのは、将来展望すればふえてくる可能性があるんですね。ですから、そういった国々にまで広げていくということになると、やはり国民との間のコンセンサスが必要だ。なぜ法改正という手段をとられなかったのか、あるいは、もし金が余っておるからということであるならなぜ税率を下げるようになさらないのか、そういう点についてひとつお聞かせをいただきたいと思うんです。
  103. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 先ほど申し上げましたように電源開発促進対策特別会計法の発電用施設設置の円滑化に資するための財政上の措置ということで、これは具体的には政令で定められるわけでございますけれども、先ほど私がるる申し上げましたような背景を有する予算でございまして、そういうことで具体的には、電源開発促進対策特別会計法の施行令の第一条の六号におきまして、「本邦外に設置された原子力発電施設の安全の確保に関する業務に従事する者との原子力発電施設の安全性の向上に関する技術の交流に要する費用」ということで、私ども、発電用の施設設置の円滑化に資するための財政上の措置ということで解釈できるものということで、こういう予算を要求したわけでございます。  したがいまして、際限なく広がると今先生御指摘があったわけでございますけれども、おのずからこの発電用施設設置の円滑化に資する措置というのもその範囲でということで御理解を賜れればというふうに思う次第でございます。
  104. 松浦利尚

    松浦(利)委員 やはり国民はちょっと理解しないと思うんですよ。やはり当初の立法趣旨と違う支出ですよ。拡大解釈をすれば限りなく広がっていくんですよ。ですから、これはもう既に予算も通ってしまいましたのでこれから執行段階に行くわけですけれども、政令にゆだねた形で執行をなさるということですけれども、やはり一定の歯どめというものをぴしっとかけておかないと将来禍根を残すという気がしてなりません。  この際、大臣から御返事をいただいて、次に進みたいと思います。
  105. 森喜朗

    ○森国務大臣 松浦委員の角度からごらんになると、なるほどそういうお考え方も当然なさるというのは私もよく理解はできます。  しかし、今我が国が電源立地を進めております中で、いろいろな国民に理解を得るための努力をしなければなりませんが、今阻害をされている大きな原因の一つは、チェルノブイルの事故というのがやはり大きいと思います。したがって、ここの事故というものの原因を調査したり、その施設をいろいろな形で解明をしていく、そして我が国の原子力開発というものはそうした不安がないんだ、そうしたことを払拭できるんだということが、やはり大きく電源開発を推進していくためにはここが大変大きなポイントだろう、私はそう思います。そういう意味で、このチェルノブイル事故についての対策を行うということについては、一つの考え方として私は妥当なものであろうというふうに思料いたすわけであります。  しかし、今委員がおっしゃいますように、それは際限ないじゃないかということになるかもしれません。今後また、そうした事業というのは拡大をしてくる要素もあるわけでございますから、そういう時点でまた考えていくべきことではないだろうか、このように考えるところでございます。
  106. 松浦利尚

    松浦(利)委員 結局、予算委員会の審議の中で捕捉できなかったから、もう通ってしまって執行される段階に来ておるわけですけれども、払う側も非常に抵抗を感ずると思いますね、こんな行き方をすると。そうすると国民の側も、何だそんな金があるならもっとおれたち立地した地方自治体に金くれということに、ざっくばらんな話を言えばなることですから、やはりそういう点についてははっきりした歯どめをおかけになることをぜひ希望として申し上げておきたいと思うのです。  そこで、御承知のように、ソ連が核廃棄物、原子力潜水艦の原子炉とかいろいろなものを日本海あるいは北極海に海底投棄していますね。これについても全く手がつかない。研究開発等についても遅々として進まない。こうした問題についても原発の恐ろしさというものを我が国国民に教えておるわけですから、原発立地に非常に大きな影響を与えるという解釈が成り立ては、この対策費も特会から出ていく可能性が出てくるんですが、まさかこれも特会から出すということにはならないでしょうね。その点はどうですか。
  107. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 今の海洋投棄の実態、もう少し調べる必要があると思います、それに沿ってまた何をするかというのも出てくるのでしょうけれども、今のところそういう考えはございません。
  108. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、もうまさかと思いますけれども、要するに、原発立地に不安を与える、国民を安心させるためには、こうだという理論が成り立ては何でも特会から金を出せる、政令をつくれば出るというふうになりかねませんので、そういうことには出さないようにぜひお願いをしておきたいと思うんです。  そこで、G7が行われてG7で議論されましたから、これは恐らく後刻政府の方から正式に発表になると思うんですが、ロシア政府は、固形廃棄物の海上投棄は停止をした、しかし液体廃棄物については今後も続けるというふうに発言をしておるわけですが、この点は御確認をなさっておられますでしょうか。
  109. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 ちょっと今手元に持っておりませんけれども、ロシア政府が四月二日に発表しました白書でもたしかそういうふうな記述があったように記憶をいたしておりますし、また、白書を発表したときの記者会見での発言でそういう発言があったのではなかったかと記憶をいたしております。
  110. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大臣、これは外務大臣の所管事項でもありますけれども、やはりこうした海洋投棄は即刻中止させるように、今度エリツィン大統領が来られたら我が国政府から厳しく物を言うべきだと思いますし、また、ロンドン条約の締約国あるいは国際原子力機関IAEAといったところに働きかけて、海洋投棄はやめさせるように、特に環日本海である我が国は極めて不安感が伴うものですから、そういう点について通産大臣としても御配慮いただきたいというふうに思うんですが、その点についての御返事をいただきたいと思います。
  111. 森喜朗

    ○森国務大臣 ロシアによります放射性の廃棄物海洋投棄は、我が国の国民に対しまして多大な不安を与えているわけでございまして、極めて遺憾なことでございます。  ロシアに対しましては、今般、一昨日でございますが、ロシア政府から副総理、外務大臣がお見えになりました。この際、日本とロシアの外相会談におきましても外務大臣から、投棄の即時停止とともに、情報の交換、協力に関し協議するための日ロ間合同の作業部会の設置、共同の海洋調査の実施の申し入れを行いました。合同作業部会については合意がなされた、このように承知をいたしております。  一昨日、私的な食事の会もございました。私も招かれてそこに出席をいたしましたが、正式な食事の会合ではない個々の会でも、それぞれの皆さんからロシアの関係者に対してそういう声が確かに強うございましたし、私どももそうしたことを強くロシア側にも申し入れて、特に日本海を擁します我が国にとりましては、国民のそうした不安感を払拭させるということは極めて大事なことでございまして、海上保安庁あるいは環境庁その他関係省庁とも十分協議をしながら、これから対応してまいりたい、このように考えております。
  112. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これもやはりロシアに関したことですが、秘密都市と呼ばれておる核秘密都市のトムスク7、放射性化学工場で、ウラン溶液の入ったタンクが爆発した事故が起こったわけですけれども、報ずるところによりますと、何かプルトニウムすらも飛散をしたという報道もなされておるわけですが、これはロシア政府のことをこんなに非難するのは当たらぬかとも思いますけれども、どうも発表が正確でないんですね。大したことない、大したことないと言いながら、でっかいんですね。チェルノブイルでもでっかかったですね。ですから、そういったことからいえば、このトムスク7についても相当大きな事故だったというふうに思うんですけれども、しかし、ロシアの発表を聞いておると、情報操作があるのかどうかはわかりませんが、非常に大したことがないという報道に終わっているわけです。  これについては、通産としてはどういう報告を把握しておられるのか、放射能汚染状況等についてはどういうふうになっておるのか、その点について、わかっておる範囲内で御説明いただきたいと思います。
  113. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 御指摘のとおり、このトムスクの再処理施設、これは私どもの関連いたします発電施設ではございませんけれども、軍事施設でございますが、やはり重大な関心を持っているところでございまして、いろいろと情報収集に努めているところでございます。正式の情報といたしましては、IAEAを通じまして、IAEAにロシアの原子力省から入ったものが私どもなりIAEAに加盟する諸国に流されてくるわけでございますが、この情報では、国際事故評価尺度でレベル三という事象に位置づけられているものでございますけれども、詳細な爆発の原因等につきましては、なおロシア側で調査が行われているというふうに承知いたしております。  それで、今先生がおっしゃいましたような、汚染の規模であるとかそういったものを含めまして、いろいろな報道があることは事実でございますし、また、ロシア側の方も、原子力省だけではなく、ほかの国家緊急事態委員会のようなところではまた別の発言なりをしているようでございまして、私どもも正確な情報を今一生懸命努力をいたしているところでございます。それで、現在放射能の影響に関するところにつきましては、IAEAがロシアの原子力省の要請に基づきまして専門家のチームを現地に送って調査をしているというふうに承知いたしております。いずれその辺も明らかになってくるのではないかと思うわけでございます。  そういうことで、軍事施設であることもございましてなかなか情報が得にくいわけでございますけれども、私どももできるだけこの情報収集に各方面から努力をいたしてまいりたいと考えているところでございます。
  114. 松浦利尚

    松浦(利)委員 その海洋投棄といい、今度のこの事故といい、どうも感覚が違うんですよ。ロシアの人と私たちと感覚がずれておるわけですよ。そういう国なんでしょうけれども。  いずれにしても、事放射能にかかわる、人体にかかわる重要な部分ですから、ぜひ的確に情報を把握をして、措置を講じていただきたい。そしてまた、ロシア政府に対して我が国としても必要な援助等は当然なされるべきだ。特会の方ではない。方で、ODAとかそういった方でしていただくようにぜひお願いをしておきたいというふうに思します。  もう時間があとわずかになりましたので簡単にお尋ねをいたしますが、これは予算委員会のときにも若干御質問いたしましたが、安全保障輸出管理についてお尋ねをしたいと思うんです。  これもロシアそのものが、どういうわけか知らないですが核兵器まで売ろうというような動きを示しておるんですが、要するに大量破壊兵器等の不拡散体制の強化というのが今日ほど必要な時期はない、そういうふうに思うんですけれども、ただ、大量破壊兵器の製造用資機材、これが輸出管理の対象になるのは当然ですけれども、汎用品まで輸出管理の対象になってくるということになってまいりますと、輸出関連の中小企業というのは非常に犠牲をこうむるわけですね。こういったものについてどう対応をしようとしておられるのか。それから、懸念のある国というのは、規制対象にする地域というのはどれくらいの国を現在想定しておられるのか、その点について、簡単で結構ですからお答えいただきたいというふうに思います。
  115. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  去る三月二十五日、私どもの産業構造審議会安全保障貿易管理部会という部会がございますが、そこで、今先生御指摘のような最近の情勢にかんがみまして大量破壊兵器についての拡散を防止するために規制を強化すべきだ、こういう答申をいただいたわけでございます。御承知のように大量破壊兵器につきましては、現在の地域紛争にかんがみて、非常に今その危険性が強く指摘されております。特に、先般のイラクに対するIAEAの査察等で、汎用品を積み重ねる形で原子兵器がつくられつつあるのではないか、こういったことから一段と国際的にこの問題意識が強まってきておる、こういうのが背景でございます。  それで、今先生の御指摘のありました大量破壊兵器をつくる専用物品、これについては既にもう規制が行われておりますし、実は九一年の秋から、極めてそれに関連性の強い汎用品につきましても、例えば一定性能以上の工作機械だとか、あるいは一定性能以上の微細加工機械とか、そういったようなものにつきましては、汎用的ではございますけれども、これらについても既に今国際レジームの中で規制が行われておるわけでございます。  今回の答申は、それに加えまして先般のイラクの問題が指摘されまして以降、アメリカ、それからイギリス、ドイツ、こういったようなところが、現在あります。そういった規制リストに加えまして、もっと汎用的なものにつきましてもこれを規制対象に入れようということで規制を強化し始めておるわけでございまして、我が国もこれに応じて規制を強化していく必要がある、先進国の一国であり、かつまたハイテク国でございますから、十分世界と歩調を合わせる必要がある、これが先般の答申の趣旨でございます。  今お尋ねのどういう国を対象にするのかということでございますけれども、これにつきましては、大量破壊兵器というのは核兵器、化学兵器、生物兵器及びその運搬手段でありますミサイルでございまして、これらの兵器を製造するために今汎用品を集めてそういうものをつくっておるおそれのある国というのが対象になるわけでございまして、そのときそのときで相手国をよく情報を集めてチェックしていく必要がございますが、現在アメリカの規制では、一例を挙げますと三十カ国程度が対象になっておりまして、我々といたしましてはこれから答申を受けまして準備を進めていくつもりでございますが、この間イギリスそれからドイツ、そういったようなものの考え方、さらには、これは刻々と変化いたしますけれども、中近東を初めといたします一連の世界情勢を慎重に見きわめていきたい、かように考えておるところでございます。
  116. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これは大臣にお願いをしておきたいのですが、今あちらこちらに紛争が起こってきております。しかし、その紛争をしておる背景を見ますと、結局国連の常任理事国を占めるような大国が完成品である武器を輸出しておるんですよ。そしてそれが紛争が起こってきて、その自分たちが売った武器でぱんぱんやっておるところに今度はまた、湾岸戦争のときのようにこちらから出ていく。ですから、我が国がイニシアチブをとって、通常兵器についても輸出禁止をする、兵器を売ってもうかるというようなことはもうやめる、そういうことをこの際東京サミット等では我が国が中心になって方向づけをしていただきたい。そうしなければ、臆面もなく兵器ショーなどをやってどんどんと売りまくるという状況がございますので、すぐ直るとは思いませんが、そういったイニシアチブを我が国でとっていただきたい。  それからもう一つは、この安全保障輸出管理というものが、ガイドラインができて世界共通的にしてまいりますと、我が国は、先ほどお話がありましたように、武器そのものの輸出は当然いたしておりません。それから製造用の資機材等についても輸出は一定のブレーキがかかっています。そんなことになってくると、結局結果として我が国が得意とするハイテク製品の規制というものが残る。そうなってくると我が国の輸出企業については大変な打撃を受けることになってしまう、こういうふうに思うのです。ですから、通すべき筋はきちんと通してもらわなければなりませんけれども、こうした問題を含めた、簡単にという言葉では表現できないかもしれませんが、大臣、こうした問題についての基本的な通産行政の姿勢についてお答えをいただければ、そして私の質問を終わりたいと思います。
  117. 森喜朗

    ○森国務大臣 規制を実施するに当たりましては諸外国と十分連携をとるということは重要なことだと思いますが、我が国のみが国際的な厳しい管理を行うこととならないようにするということが重要であろうと思います。これは一つには、いかなる品目についても我が国のみが厳しい輸出管理を行った場合には我が国産業に対し不公平である、のみならず二つ目には、諸外国からの調達可能性が残ってまいりまして、規制の実効性が確保されないということになるためでございます。このような観点から、規制を実施している諸外国と安全保障にかかわる情報を共有するとともに、共通の運用ガイドラインの設定等を行うことによりまして、規制のあり方について国際協調を図っていくということが大事かと思います。  なお、前半に松浦委員から御指摘ございました点、十二分に理解もできますし、サミットの議論はどういうふうになるかということはまだ決まっておりませんけれども、当然私ども、これからいろいろな角度で、国際的な会合あるいは会議等を通じて、今委員が御指摘になりました点について十分にそのような考え方を述べてまいりたい、こう思っております。
  118. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ありがとうございました。終わります。
  119. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、倉田栄喜君。
  120. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。  午前中、私は水俣病に関連して質問をさせていただきました。いわゆる水俣病そのものが国の産業政策の結果として引き起こされた病気なのではないかという指摘があることをも引用させていただきながら質問させていただいたわけでございます。  そこで、廃液、排水あるいは排煙、産業あるいは物を生産するに伴っていろいろなものが排出されていく。御承知のように、バーゼル条約でさまざまな有害物質の規制対象が定められております。有害廃棄物としてどのようなものが例えば廃油、廃液、廃アルカリにはあるかということをちょっと調べてみましたら、廃油には液体と固溶体あるいは結晶状のものがあり、どういうものがそこに含まれているかというと、アルキル水銀、有機燐化合物、有機塩素化合物、有機弗素化合物、有機臭素化合物あるいはPCB、廃液には、水銀化合物、カドミ化合物、塩化化合物、砒素化合物、さらには六価クロム化合物、こういうものが廃油、廃液に含まれている。  そうしますと、企業あるいはその工場で今いろいろな化学製品を使われておる中で、そういう廃液、排水、排煙というものを、ああいう水俣病みたいなことも起こってしまった、公害は二度と起こしてはならないといいますか、そういう反省、あるいはいろいろな指摘があるかと思うのですが、今私が申し上げました点について、通産省はどのような基本的な対策あるいは施策を講じておられるのか、まずこの点をお伺いしておきたいと思います。
  121. 堤富男

    ○堤(富)政府委員 お答え申し上げます。  昭和三十年代、日本の成長過程において大変な公害問題が水俣病を含めまして起きだということを反省いたしました結果、昭和四十二年に公害対策基本法が制定されて以来、そういう意味では大気汚染防止法とか水質汚濁防止法等、典型七公害にわたります個別の規制法が制定され、今御指摘のございましたような有害物質の排出については非常に厳しい抑制が行われてきたわけでございます。そういう意味では、四十年代におきまして、ある意味で科学的知見が進んだこと、それから制度等の整備が行われたこと、そういうことを背景といたしまして、日本の公害問題といいますのは、大気におきましても水質におきましても、その後、世界の実績に比較しても大変すぐれた改善実績を示しているというふうに思っているわけでございます。したがって、必ずしも満足しているというわけではございませんで、年々、これらについての対策の実施状況あるいはそれをまた改善するということを考えながら万全を期すという形に今なっておると思っている次第であります。
  122. 倉田栄喜

    ○倉田委員 法律として大気汚染防止法があり、あるいは水質汚濁防止法があり、それらの法規制の中で排水、廃液が今なされておるのだろうと思います。それは、ある意味では、現行で定められておる法の規制以下、あるいはそれぞれ地方自治体ごとにさらに厳しい規制が実施されているところもあるかと思いますが、具体的にはどういうものについて許容量以下であれば廃液として、排水として自然界の中に放出されておるのが許されているか、個々には指摘は申しませんけれども、その許容量以下であれば自然の中に放出されておるであろう、それはやはり今の現実なんだろうと思うのです。  そこで、これは水俣病のときも、水俣病が起こった後のときも御指摘があったことだとは思うのですけれども、有害化学品といいますか有害物質は基本的には外に出さないで処理してしまう、少しのものであっても自然界の中に少しずつ出してしまえば全体としては許容量をあるいは超えるかもしれない。個々の工場の一つ一つの排出口から出されるものは少量であったとしても、それがトータルとしたときには実はどうなんだろう。そうだとすれば、基本的には有害物質というのはその工場の中で、企業の中で処理してしまうのが本来のあり方なんではなかろうか、そういうふうにもまた思うわけでございますが、このあり方としていわゆる閉鎖循環方式ということも言われておるわけでございますが、この点について通産省は基本的に今どのようなお考えに立っておられるのか、これをお尋ねしたいと思います。
  123. 堤富男

    ○堤(富)政府委員 お答え申し上げます。  まず、環境基準という形で、世界の、WHOとかの国際機関あるいは各国の規制等を十分勘案しながら、遜色のない環境基準を定めておるわけでございます。これは当然のことながら、人の健康あるいは生活環境を破壊しないという観点から、大変厳しい、あるいは国際的に遜色のない環境基準が定められておるわけでございまして、例えば昨年十一月に環境庁長官が閣議で御報告された件でございますが、「人の健康の保護に関する水銀等の健康項目につきましては、測定の結果、九九・九八%の適合率であり、ほぼ完全に環境基準を満足している状況にあります。」という御報告があります。  それから、もちろん環境基準というのは自然界における基準でございますが、排出基準も環境基準をベースにいたしまして、現在、水銀についても定めてあるわけでございます。その状況につきましては、御存じのように、常時監視を続けながらやっておるものもございますけれども、例えば、これは事例として排水だけを申し上げますと、全国で五万ぐらいの排出をしている企業がございますが、そのうち水銀等の有害物質を取り扱っておる企業が一万八千ぐらいございまして、これに対しまして平成年度においては延べ八万六千回の立入検査を実施しております。そういう形で排水検査をしておるわけでございますが、その結果、排水基準を守っていなかったものというのは三十四件、八万六千分の三十四件ありました。そのうち、有害物質に関係するものが三件ございましたが、幸い水銀の関係の違反はなかったと聞いております。  そういうように、健康を考え、世界的なスタンダードで環境基準を定め、その中で工場排水の基準も定め、このように一生懸命立入検査等をやっているわけでございます。  御存じのように、これがもし違反した場合には直罰規定でございますとか、改善命令がなされるとか、あるいは民法上の無過失責任があるとかという形で大変厳しい規制をしているわけでございまして、その結果、先ほどの環境庁長官の御発言にありますような、適合率がほぼ一〇〇%に近い状況になっているというところまで来ておるわけでございます。
  124. 倉田栄喜

    ○倉田委員 お答えを聞きますと、もう日本にはこれから公害は絶対に起こらない、こういうふうにも聞こえるわけでございます。ぜひそういうことでありますように、引き続きしっかりと施策を講じてほしい、こういうふうに要望いたしたいと思います。  続いて、中小企業、いわゆる景気不況が叫ばれる中で、中小企業を経営される方々、あるいはそこにお勤めになっておられる方が今大変な状況にあるということで、当面する中小企業の課題について何点がお尋ねをいたしたいと思います。  昨日、国民金融公庫は、いわゆる小企業については下げどまり感が出てきたのではないのか、底入れしたとは断定できないが下げどまりは確実である、こういうふうな発表をしているみたいでございます。ただしかし、総じて見れば、やはり中小企業の業績は非常に引き続き悪い状態でありまして、業種別に見ますと、製造業の悪化が著しい、これは御承知であろうと思います。特に、機械、金属等の生産の落ち込みが著しく、対前年比で考えるならば一割を超える減産となっている業種もあります。それで、このような状況から見たときに、速やかに、機能的に対策を講じなければならない、こう思うわけでございますが、まず第一の問題として、いわゆる金融関係についてお尋ねをしたいと思います。  このような景気、いわゆる不況、景気後退の中で、多くの中小企業の方々が非常に資金繰りに苦しんでおられます。例えば、代位弁済額は前年同期比の二倍程度まで推移をしている。そして、中小企業資金繰り状況、いわゆる資金繰りDI、資金繰りに余裕があるのか、あるいは窮屈なのか、この状況を見てみますと、八八年から八九年ごろ、これは余裕があるということでプラスの方になっているわけでございますが、八九年の十二月からだんだん下がってまいりまして、九〇年、九一年、九二年、そして九三年の一月、二月、非常に資金繰りが窮屈になってきている。この比率でいくと、九二年の八月ごろからはいわゆるマイナス二二%を超える。そして今年の二月にはマイナス二六・八という数字が出ている。中小企業のいわゆる資金繰りの厳しい状況をあらわしているのだろう、こういうふうに思います。また同時に、いわゆる民間金融機関の方は、中小企業に対して非常に選別をして融資をされておられる、また貸出金利を下げ渋っておられる、そういう話も聞くわけでございます。  そういう中で、例えば国民金融公庫にしてもなかなか資金融資が得られない、こういう話はよく聞くわけでございますが、資金調達が困難な状況に直面をしておられる、このような状況に対して、いわゆる政府系の中小企業金融機関におけるまず資金貸付制度枠、これは十分に確保されておられるのかどうか、そして、この不況感の中においてその機動的対応の措置が十分とられているのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  125. 関收

    ○関政府委員 今先生、中小企業をめぐる景気の状況について御指摘がございました。  現在の中小企業の景気の状況、あるいは代位弁済の状況、あるいは資金繰りの状況は御指摘のとおりだと思っております。私ども、こういうときにこそ政府系金融機関から必要に応じて弾力的に融資を申し上げることが非常に大事だと考えておるわけでございます。特に最近は、生産高も売り上げも減少している、一方固定費の支出は変わらないということでございますので、特に運転資金の確保という点、それからまた担保物件等の価格も評価が下がってきているというようなことで、信用補完面の対応、こういうことが今非常に大事ではないかなと考えているわけでございます。  そこで、先生お尋ねの資金が十分確保されておるかという点でございますが、平成年度の予算におきましては、中小企業金融公庫が二兆六千六十四億円、国民金融公庫は二兆九千五百十億円ということで、それぞれ平成年度の当初予算に比較いたしまして六%増の貸し付けをすることができる計画が立てられているわけでございます。この六%と申しますのは、これまで数年間は大体貸付規模が前の年に比べて一%増くらいにとどまっておりましたのを、平成年度におきましては、最近における状況にかんがみ六%増ということにいたしたわけでございます。さらに、去る十三日に決定されました総合的な経済対策におきましては、これにさらに一兆九千億円の貸し付けをつけ加えるということを御決定いただいているわけでございます。  私どもとしては、現下の非常に厳しい状況でございますが、これらをあわせ、また先生御指摘ございますように、運用面での弾力化、担保徴求の弾力化、あるいは非常に苦しい場合におきます返済猶予等の扱いの弾力化といったようなことによりまして、現下の中小企業の皆様方の極めて厳しい状況に十分対応できるものと考えている次第でございます。
  126. 倉田栄喜

    ○倉田委員 お答えいただいて多少安心した面もございますけれども、その施策が十分に生かされるように、その運用にも十分な対策を図っていただきたい、こういうふうに思います。  そこで二点目でございますが、いわゆる下請企業と親企業、下請企業というよりも協力業者と私は呼びたいのですが、言葉として下請企業として使われているみたいでございますのでそういうふうに使いますが、この関係、いわゆる不況下に親企業から下請企業に無理なしわ寄せが来ていないのかどうか、この視点からお尋ねをしたいと思います。  下請中小企業振興法の規定に基づく振興基準、これは平成三年二月八日に通商産業省告示第三十八号、こういう告示がなされております。非常に細かく通知をされているみたいでございます。ちょっと必要なところだけ抜いてみますが、「下請中小企業には、事業活動が親企業に左右されやすい面がある」そういう「下請中小企業が体質改善経営基盤強化及び時短等を図っていくためには、発注方式等の面における親企業の協力が必要である。」あるいは「親事業者の発注分野の明確化及び発注方法の改善に関する事項」として、発注分野、何を発注し、親事業者みずからが何を製造するかの区分をはっきり定めて、「下請事業者に明示するとともに、その変更については、相当期間前に下請事業者に明示し、経営に著しい影響のないよう配慮するものとする。」等々さまざまな細かな告示がなされておるわけでございます。  これはしかし、現実にこの告示のとおりきちっとなっているのかどうか。こういう点から考えてみますと、実際には中小企業の方から悲鳴のような叫び声、うめき声が聞こえてくることがあるわけです。一部の声かもしれませんけれども、現実にそういう声があることも事実であります。そうだとすれば、こういう告示が出されたにもかかわらず、いわゆる親企業の発注方法であるとかあるいは単価設定の方法、これは果たして進んでいるのだろうか、いわゆる下請取引の実態というのは景気後退に伴って従来より悪化する兆しがあるのではないのか、こういうふうに実は思うところもあるわけでございますが、政府、通産省は、この関係企業に対し、下請取引の適正化の実効性、これを確保するように告示はされて、いろいろな指導はされておられると思いますが、それがきちっと守られているのかどうか、指導強化を図るべきであると思うのですが、これに対する見解及び今後の指導方針についてお伺いをしたい。
  127. 関收

    ○関政府委員 法律用語として下請企業という言葉が使われておりますので使用をお許しいただきたいと思います。  下請企業につきましては、今先生御指摘のとおり、いろいろ困難な状況にあることは事実でございます。私ども行政サイドからこの問題について考えるべき点が二つあろうかと思うわけでございます。一つは、下請企業の皆様方に十分な仕事量が確保されること、第二は、親企業との取引条件が適正なものであること、この二つを確保することが非常に大事だと考えておるわけでございます。  第一の発注量の確保につきましては、これは基本的には市場経済の中でのことでございますのでなかなか直接的な対応は困難でございますけれども、一例として申し上げますれば、私ども昨年の十二月に、親企業及び親企業団体に対しまして、下請企業の方々の発注量の確保について御協力をいただくように通達を出させていただいたところでございます。  それからまた、下請企業振興協会というのが各都道府県にございますが、これを昨年度は全部オンラインネットワークで結んだ結果といたしまして、県をまたがる発注、例えば大阪の企業の発注を長崎の企業が受注する、あるいは東京の企業の発注を熊本の企業が受注するというようなことを、コンピューターテクノロジーを使いまして可能になるシステムも出てまいりまして、広域的に仕事が受注できるような体制、これを整備いたしましたので、今後ともこの仕組みも活用しながら仕事量の確保に我々も努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。  それから、取引条件につきましては、先生御指摘ございました下請中小企業振興法に基づきます振興基準、それからまた下請代金支払遅延等防止法ということで、これは特に親企業として遵守すべき支払条件等についての運用を決めます法律がございます。この法律の運用を中心に実施をいたしておるわけでございます。  下請企業振興法につきましては、先生御指摘のような数々の項目が決められておりますし、平成三年二月には下請企業が時間短縮を可能となるような事項につきましても追加をいたしたところでございます。  この下請振興基準を遵守していただく上で私どもまず大事だと思っておりますのは、この基準というものを、発注者の方も受注者の方も担当者に至るまでよく御理解をいただくということがまず先決でございます。そして、その上でこれを守っていただくということが必要でございまして、さまざまな形で今PRの事業を行っておるわけでございます。例えば、それぞれの親企業の担当者の方に集まっていただきまして講習会を開催するというふうなことを従来もやっておりますし、これからも実施をしてまいりたいと思っております。また、時間とか場所の関係でなかなか講習会に出られない方もいらっしゃいますので、そういうケースにつきましては、ことしから社内教育用のビデオも作製いたしまして、場合によってはそれを使っていただくということにいたしておるわけでございます。  それから、同時に、この振興基準が守られているかどうかにつきまして毎年一回実態調査をいたしております。実態調査の結果を踏まえまして、必要に応じて中小企業庁長官名、それから、業を所管いたします例えば機械情報産業局長でありますとか生活産業局長でありますとか、その連名で親企業に対し、その調査の結果に基づいて、改善していただくべき点について通達を出しているというような形でやらしていただいているわけでございます。  最後になりますけれども、下請代金支払遅延等防止法につきましては、これは公正取引委員会と私どもが協力をいたしまして毎年調査をし、その法律に違反するのではないかと見られるようなケースにつきましては立入検査、書面調査等をいたしまして、改善をしていただくように努力をしておりますし、これからも努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。  最後になりますが、平成年度におきまして新たに下請取引相談員制度というのを設けることといたしておりまして、これは下請企業の経営者の方の中から、個々の企業の方からいろいろ御相談をいただいたり、あるいはいろいろ問題を指摘していただいたりということをやっていただきまして、それを私どもが受けとめて必要な対策を考えていくという制度でございまして、これにつきましては、本年度なるべく早い時期にスタートをさせていただいて実効あるものにしていきたいと考えているところでございます。
  128. 倉田栄喜

    ○倉田委員 いわゆる不況のしわ寄せというものが中小企業の下請のところに来て、下請の方でさらにあえいでしまう。それは、単価の決定、もっと安くしてくれ、あるいはもっと納期をスピードアップしてくれ、こういう要望がある一方で、代金についてはもっと手形を延ばしてみたいな、そういうことも現実には起こっていると思うんですね。もちろんこれらについても、先ほど告示の中できちんと指導されておられることも十分承知しております。あとはこれらが本当にきちっと守られているのかどうか、これが非常に大切だと思いますので、引き続きなお十分な監督指導をしていただくようお願いを申し上げたいと思います。  そこで、今お答えの中にありましたけれども、要するに仕事の量をふやす、このことが一つ大切である、こういうお話がございました。そういう視点から見れば、いわゆる官公需の増大、中小企業に対して官公需の仕事というのをもっとふやしていくべきではなかろうか。今私は手元に「中小企業者向け官公需発注額の推移」というのを持っておりますが、平成年度で見ると、中小企業目標総額の三九・八%、実績として三七・三%、大体四〇%弱の目標と総額がなされているみたいでございます。ただ、実際の問題は、果たしてこういうものが中小企業の方々に周知徹底をされておられるのかどうかということが一点。そして、この官公需割合の拡大をもっと図れないのかどうか。あるいは、発注するにしてももっときちっと確保して、それぞれの中小企業に対して直接、分離分割発注することはできないのだろうか。あるいは、地元の中小企業に対して優先的にこの活用を図ることもまた必要だと思うわけでございます。また、各発注機関の窓口に対して、この官公需適格組合制度、こういうものの周知徹底も図られなければならない。  こういうふうに考えるわけでございますが、この点についての御見解を承りたいと思います。
  129. 関收

    ○関政府委員 先生御指摘のとおり官公需につきましては、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律に基づきまして、毎年中小企業者向けに発注をすることが望ましい目標額を閣議で決定をしていただいて、その実現に向けていろいろな角度で努力をいたしているところでございます。  平成年度におきましては、閣議におきまして四兆四千三百四十億円、全体の発注の三九・九%を目標に各機関の協力をお願いしてきたわけでございます。同時に、こういう発注がある、あるいはこういう工事計画があるということについての情報、あるいは、官公需適格組合等々のいろいろな制度について中小企業の方に御理解いただくことも非常に大事だと思っております。私どももさまざまなレベル一例えば中小企業庁の主催、あるいは通産局の主催、あるいは中小企業団体中央会に主催をしていただくというようないろいろな形で、中小企業の方々にこの制度なり発注の計画なりについていろいろ御理解いただくための機会を設けているわけでございます。  去る四月十三日の総合経済対策におきましても、「中小規模工事の早期発注や分割発注の推進等に特段の配慮を払うことにより、官公需における中小企業の受注機会の増大を図るとともに、地方公共団体に対しても同様の配慮を要請する。」という部分がございます。これに基づきまして、私どもとしては、早速四月十四日付で各関係機関及び各都道府県に対しまして、今回の補正予算も含めまして中小企業向けの発注をふやす努力をしていただくようにお願いをいたし、また具体的には、先生御指摘のような中小規模工事の早期発注でありますとか、分割発注の推進でありますとか、共同請負制度の活用でありますとか、発注標準の見直し、官公需適格組合の活用といった項目も具体的に明示をしながらお願いをしたところでございます。  あわせて、今まさに平成年度の発注目標を策定する作業に着手をいたしておりますので、五年度の目標もできるだけふやしていただくように今関係機関と折衝を続けているところでございます。
  130. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今、ともかく景気の底入れから上昇していこうという、希望的に見ればそういう状況も見えないわけでもないわけですから、今御答弁いただきましたようにその官公需の割合をもっとふやしていただければ、これは特にお願いしたいと思います。  それから、いわゆる時短と労働力確保、この問題についてお伺いをしたいと思います。  先ほど私が申し上げました振興基準、平成三年二月八日に告示第三十八号として出されたものの中に、「納期及び納入頻度の適正化等」ということについて非常に細かく規定をされております。「納期及び納入頻度は、下請事業者にとって無理がなく、かつ、下請中小企業の労働時間短縮が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が協議して決定するものとする。」例えば、下請中小企業の時短の妨げとなる週末の発注、そして週初の納入及び発注内容変更、いろいろしわ寄せをしてしまうような現実がやはりあるんだと思うんですが、中小企業の時間短縮あるいはゆとり、そして同時に労働力の確保、これはやはり中小企業の一層の職場の魅力づくりになくてはならないものであろうというふうに思うわけです。ただ、これはやはり中小企業だけの力ではなかなか難しいものがある。これを支援しなければならない。労働力の問題でいけば、その規模、業種、地域に即してきめ細かな労働力確保対策をやらなければいけないし、省力化設備の導入、あるいは福利厚生施設、そういうものも考えていかなければいけないし、さらには、ある意味では金融、税制上の措置も必要になってくると思うわけです。  同時に、先ほどの告示の件を申し上げましたけれども、親企業の都合によって中小企業がなかなか自分たちの思うように仕事の作業日程が組めないということでは問題だと思いますので、時短導入のための支援措置もまた必要であろう、こういうふうに思うわけですが、この点についてもお伺いしたいと思います。
  131. 関收

    ○関政府委員 中小企業におきましても時間短縮を図り、これからの若年労働力の不足にも対応するということは非常に大事であるという先生の御指摘、全くそのとおりだと私思っております。  具体的に、この時間短縮を促進する場合に私どもがお手伝いできる側面は五つぐらいあると考えているわけでございます。  一つは、平成三年八月に中小企業労働力確保法というものが制定されまして、これによりまして、労働時間の短縮、職場環境の改善、福利厚生の充実、募集方法の改善といったようなことにつきまして、中小企業の方がいろいろ計画を立てられたり調査をなさる場合にお手伝いをするという法律ができておるわけでございまして、この法律の適切な施行ということが一つございます。  第二に、今のような状態で時間短縮をいたします上で非常に有効なものは、省力化機械等々の導入によりますいわば生産システム、社内体制の改善とでも申すべき点でございます。この点については、低利の金融制度あるいは投資減税等々によって対応させていただいております。  三番目には、今先生御指摘ございましたように、取引先との関係でどうしても時間短縮が進められないというケースも少なくないと思うわけでございますが、これは繰り返しになりますので詳しくは御説明申し上げませんが、下請企業振興基準の確実な実行ということで対応していきたいと思っておるところでございます。  それから四番目には、さらに時間短縮を進めるための各種の技術開発もこれからやっていく必要があるわけでございまして、技術開発についてもさらに拡充をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  最後になりますけれども、実は中小企業の方々にとりまして、時間短縮の努力をしてうまくいっている例、成功した例というのも非常に参考になるわけでございますので、中小企業白書でありますとか中小企業事業団のデータベース等を活用して、うまくいった例などにつきましてもいろいろ参考にしていただくために御提供申し上げるというようなこともあわせて時間短縮にさらに努力を続けてまいりたいと思っております。
  132. 倉田栄喜

    ○倉田委員 時間がなくなってまいりましたので、大臣にお伺いをいたしたいと思います。  いわゆる中小企業の問題の中で、中小企業事業承継の円滑化を図るために、個人事業用資産の後継者への贈与について、生前相続特例制度を創設する必要があるのではないのか、こういう御意見があるわけでございます。後継者の育成、経営意欲の高揚という観点から見ればこれもなるほど一つの御意見かなというふうにも思えるわけでございますが、この点について大臣はどのようなお考えをお持ちでございましょう。
  133. 森喜朗

    ○森国務大臣 中小企業各般にわたります倉田委員のお考えをいろいろ拝聴いたしまして、敬意を表する次第でございます。  地価高騰等によります相続税の負担の高まりによりまして、中小企業事業継承が困難になっております。この改善を求める声も極めて多いわけでございまして、こうした認識のもとに、通産省といたしましても、相続税の基礎控除額の引き上げ、小規模宅地の減税率の引き上げ等の負担軽減措置を要求をいたし、平成年度及び五年度におきまして事業承継の円滑化に資する所要の措置がとられてきたところでございます。  今後とも、中小企業の実態等を踏まえ、中小企業事業継承の一層の円滑化に資する税制上の措置について検討してまいりたいと考えております。
  134. 倉田栄喜

    ○倉田委員 最後に、いわゆる製造物責任についてお伺いをしておきたいと思います。  一点は、いわゆる製造物の欠陥に伴う補償に関して、通産省として今どんな取り組みをなさっておられるのか、これを確認しておきたい。  それから大臣に、我が党から公明党製造物責任法、いわゆる製造物責任法を提出をさせていただいておるわけでございますが、大臣御自身はこの製造物責任法についてどのようなお考えをお持ちなのか、御所見をお伺いしたいと思います。
  135. 細川恒

    ○細川政府委員 御質問の製品事故から消費者を守るということにつきまして、これは極めて重要な問題だと私ども当然思っておりますが、当省といたしまして、製品事故に関して、消費者の実質的な利益を保護するということのためには総合的な対策が必要だというふうに考えております。その総合的な対策といいますのは、そもそも製品事故が起こらないようにするという意味での未然防止、そしてまた、万一起こった場合でも再発を防ぐという意味での再発防止、さらに、不幸にして起こった被害というものにつきましての迅速かつ確実な被害救済、こういう幅広い観点の総合的な対策が必要だというふうに考えております。  このために、産業構造審議会におきまして、昨年の一月に新たに総合製品安全部会を設けまして、総合製品安全対策について幅広く審議を行っておるところでございます。御指摘の製造物責任制度につきましても、その一環として検討が行われておるところでございまして、昨年十二月には、その最終的な判断に必要な法的な論点整理を行うために、小委員会のもとに、法学者さらに法曹関係者から成ります紛争解決ルール専門委員会を設けて、現在鋭意検討を進めていただいておるところでございます。昨年十一月にまとめられました経済企画庁の国民生活審議会の答申では、製品に係る総合的な消費者被害防止・救済につきまして、私どもも含めます関係各省での検討を期待する、それを踏まえて年内には結論を取りまとめたいというふうにしておるわけでございますが、当省といたしましても、この点を念頭に置きまして、産業構造審議会におきまして精力的な検討を、先ほど申し上げたようなところでいただいておるところでございます。
  136. 森喜朗

    ○森国務大臣 製造物責任制度につきましては、消費者保護の充実に資するものであると認識をいたしておりますが、他方、またその影響する範囲も極めて大きいと考えるわけでございまして、我が国の実情を踏まえた十分な検討が必要であろうかと考えております。  今政府委員からもお答え申し上げましたように、現在産構審におきまして、二十一世紀を展望した総合製品安全対策につきまして精力的に検討を行っているところでございます。また、公明党さん、社会党さんからも法案が出ておることも十分承知をいたしております。本問題につきましては、産構審におきます検討の結果を踏まえまして適切に対処したい、このように考えております。
  137. 倉田栄喜

    ○倉田委員 以上で終わります。
  138. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次に、寺前巖君。
  139. 寺前巖

    ○寺前委員 四月二日にロシア政府が発表した原子炉等の放射性廃棄物の海洋投棄に関する報告をこの間読みました。全容がわかってくると、単に日本海だけではなくして太平洋各地にロシアが極東全域にわたって重大な影響を及ぼす海洋投棄ということがますます身近に感ずるようになってきたものです。東京の築地でもそうだし、日本海側の漁港でもそうです。これが魚を好んでいる日本人にとっては大きな影響を与えてくるという問題で、非常に関心が深いわけです。  そこで、通産省としてもこれについて関心を持っていろいろ対処しておられると思うのですが、私は、この投棄した廃棄物を通産省としてはどうさせたいと思っているのか、ロシア当局に回収をさせようとでもいうのか、そこはどういうふうに考えているのですか、御説明いただきたいと思います。
  140. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 お答えを申し上げます。  今先生御指摘のとおり、四月二日にロシア政府が放射性廃棄物の海洋投棄についての白書を発表いたしたわけでございますけれども、この海洋投棄、極めて遺憾なことだというふうに思っているわけでございます。  政府といたしましては、昨年の十二月ごろからそうした検討が行われておるというようなロシア側の発言もございまして、繰り返し詳細な情報提供と投棄の停止を申し入れてきたところでございます。白書が発表されたときにも、在日大使からコズイレフ外相に対しまして、そうした即刻の停止ということを申し入れたわけでございますが、今般の日ロ外相会談におきましても、外務大臣から投棄の即刻停止を求めると同時に、今先生おっしゃいました白書だけでは必ずしもわからない情報がいろいろあるわけでございます。そういったことから、情報の交換、協力に関し協議するための日ロ間の合同の作業部会を設置することなどを申し入れを行いまして、合同作業部会については合意がなされたというふうに聞いているところでございます。  現在、関係の各省庁の間で本件に関するロシアへの対応など国際的対応の検討を行っているところでございまして、私どもも、今申し上げましたように、この廃棄物がどういう地点で投棄されたかといったような付表は確かに白書にあるわけでございますが、どういった形態でとか、なかなか実態がまだはっきりいたしていないところもございますので、国内では関係各省庁と協力しながら、また、ロシア側とは今申し上げました日ロの作業部会、こういうところを通じてよく実態を収集いたしまして、具体的に何ができるのかということを関係省庁ともよく相談してまいりたいと思っているところでございます。
  141. 寺前巖

    ○寺前委員 あれは、報告を読んでおると、あるいは会見でも言っている話ですが、引き続き当分続けるということを言っているんですね。続けるということを言われて、それに対して日本として、情報収集もくそもあらへん、それに対してはやめと言うのかどうか、これが一つ。  それから、ほうったものについては――ほうったと言っておるのだから、あの白書を見るとちゃんと場所も書いてある、細部は別としても。そうすると、そのほうったものを回収する気があるのかないのか、そんなもの回収せぬかてよろしいというのかどうか、この問題もあるんだ。  それから、報告を求めているだけではあかんので、日本の港に、潜水艦が横須賀に入ってきて、それで大問題になったでしょう。潜水艦が入ってくるだけでも大問題になってきている、その放射能漏れの問題というのが。そうすると、この問題について、日本として直接調査をするということは必要ないのか。日本海などというのは直接的に、回遊魚で、あそこで魚中心になっているだけに生活にかかわってくるわけだ。これは森さんの地域も関係しますな。だから、そういうことを考えて、もっときっちりした、具体的にこれについてはこうしたい、ちゃんと方針を持たなあかんと思うんだけれども、それは気持ちは全然ないのですか。
  142. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 今三点ばかり御質問があったかと思いますが、一つは、直ちに停止を求めろということにつきましてはおっしゃるとおりでございまして、先ほどから申し上げておりますように、繰り返しいろいろなルートを通じて即刻停止を求めているところでございます。つい最近では、昨日ロ日外相会談で、武藤外務大臣からコズイレフ外相に対しまして、即時停止を求めております。今後とも引き続き努力をしていきたいと考えております。  それから、第二番目の回収するのかどうか、あるいはどういうふうに対応していくのかということでございますが、今申し上げましたように、例えば液体廃棄物というようなものでも、どういう形態で廃棄しているのか。そのまま流しているのか、それとも何かに入れて流しているのか、どういうようなものであるとかということは必ずしもはっきりしないところがありますので、もちろんいろいろさらなる情報の提供について申し入れを行っていくわけでございますけれども、今申し上げましたきのうの外相会談で決まりました日ロの共同作業部会、こういった場を通じて事態の解明に努めると同時に、何ができるか、何をなさなければならないのかということにつきましても、関係省庁とよく相談をして対応していきたいということでございます。  それから、今日本にその影響が出ているのかどうか、あるいは今後出てくるかどうかという調査につきましては、科学技術庁が中心となった放射能対策本部というのがございまして、今御指摘のような、例えば食べ物とか魚とか、いろんな影響があるかどうかという点につきましては、関係の各省庁が多数入った今の本部でできるだけ早く海上でのいろいろな調査をしていこうという方向でございます。  私ども自身はそれについてはございませんけれども、例えば私どもにおきましても、各原子力発電所のサイトにおきましては放射能についてのモニタリングなんかも行っておりまして、そういう協力もし、政府全体としてそういった放射能の影響があるかどうかについても調査していくことになろうかというふうに考えているところでございます。
  143. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣はそれで、総括的に言って、今までたくさんほうり込まれている問題に対しては、いろいろ調査し、いろいろやるにしたって、やはり回収させるという方向が基本になけりゃいかぬのやないかと思うんだけれども、大臣としてはその気持ちはどういうふうに思っておられますか。
  144. 森喜朗

    ○森国務大臣 今エネルギー庁長官から申し上げたとおりでございまして、先ほど御指摘ございましたように、やはり日本の国民にとって一番心配なのは魚の問題でございます。水産庁なども調査をいたしました。現段階では問題は出ていないということでございますが、これはあくまでも日本領海の話でございまして、これから作業部会でいろいろなことを合同して進めていくにしても、まずはその公海上の調査もぜひさせてほしいということもございますし、あるいは固めて沈めたとはいうものの、何十年かたってそれが腐食しないものであるのかどうか、そうしたことも調べてみなきゃなりませんし、やはりさまざまな角度から解明をしていかなければならぬ、こう思っております。  いずれにいたしましても、政府同士でそうした合意もでき上がったことでございますので、私なりにいろいろな問題で、やはり通産省としましても、ロシア支援の一環としましては、原子力の安全、あるいはまた軍民転換、中小企業育成等いろいろな角度で協力いたしておるわけでありますが、特に原子力安全につきましては極めて私どもは、日本の言葉で言えばしつこいぐらいにきちんと解明をしていかなきゃならぬ、このように考えております。
  145. 寺前巖

    ○寺前委員 要するに、ほうり込まれたものを回収するのかどうかという問題がやはり一番大きい問題になるのよ。これからのものはもうやめておけ、これはこれでええわ。それから、いろいろな調査をやる、これはええ。ほうり込んだものが必ずそれは問題になってくるんだから、だから回収させるということがやはり次の焦点になってくるだろう。それを率直に僕は大臣に、その立場から一回整理してもらう必要があるんと違うかなということをあえて希望申し上げておきます。  それで、私ちょっとこの際に電力会社のことについて聞きたいんですが、電気事業法第三条第一項では、電気事業を営もうとする者は通産大臣の許可を受けなければならない。なかなかあなた、直接これは通産大臣の許可なしには電気事業起こせない。そんなにたくさん簡単にできない、普通の事業じゃありませんから。  一体、電力会社に対してどのような補助金を国としては出していますのや。御説明いただきたいと思います。
  146. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 お答えを申し上げます。  電力会社に対します通産省からの補助金といたしましては、直近の平成年度で申し上げますと、一つは、遠隔地に立地される電源からの長距離大電力輸送を安定的に行うための技術開発に対する補助制度がございます。これで九電力会社に対しましては約一億三千万円が補助されているわけでございます。それからもう一つは、地熱開発を促進いたしますために地熱発電所の建設費に対する補助といたしまして約六億円。大きく分けましてこの二つがあるわけでございます。
  147. 寺前巖

    ○寺前委員 それで、それだけの補助金も出しているところだけれども、電力会社と政党、政治家、政治団体との関係の問題について、実は新聞に載っておった記事で気になったので、せっかく通産大臣におなりになったんだからこの際に聞かせてもらいたいのです。  一九七四年八月十三日の取締役会で東京電力は、今後団体へも一切の政治資金支出しない、また定期的に行っている政治関係の寄附行為も九月末までに整理するというようなことがきちっと決められたようです。それで、他の電力会社も東電の決定に追随する方向で社長談話がずっと出されるようになってくる。これは消費者の批判が厳しいから。それはそうだろう。電力の値段をどうするのかという問題なんかは今や全部政府の手に握られてきているし、それから補助金を出すというような問題になってきているんだし、また電力会社が少数に絞られているという事態から考えても、そういう公共的な性格を持っているものが政治献金をするというのは、それは僕は問題だろう。世間の人はそう見ている。それを受けてそういうふうになったんだろうと思うんです。関西電力の当時の吉村社長は「企業としての政治献金はできるだけ早くやめたい」、また北海道電力の社長は「東電の決定を十分に考慮して前向きに検討したい」などなど、ずっと一連の諸君たちがそういうことを言い出した。  ところが、昨年の四月、通産大臣がまだ政調会長をおやりになっている当時に、関西電力の小林庄一郎氏ら三人が発起人になって喜林会という勉強会なるものをつくるということが新聞で報道された。これは一体何物なんだろうか、喜林会というのはということで、私も見てみました。  案内状の末尾には、本件についてのお問い合わせは関西電力秘書部A氏またはS氏まで御連絡くださいますようにお願いします、こう実名入りで書いてある。ところが、関西電力秘書部のA氏は、調べてみると関西電力の秘書部長だ。なかなかの人が中心だ。一方、喜林会の会則を見ると、第一条から第十条になっておって、第七条では「本会の会費は一口年額三十万円」と書いてある。十条には「本会の会計年度は一月一日に始まり、十二月三十一日に終わる」こう明記してあるんだけれども、その喜林会の連絡事務所、東京連絡事務所というのはどこだ。永田町のTBR内のあなたの事務所。担当者はだれだ。現在あなたの秘書官をやっている人ということが、あれを見るとずっと出てくるわけや。  そうすると、一方で、こういうような性格の電力会社が政治献金をやるのはやめようじゃないかと言ってきている。そういう決意をしている。これは非常に大事なこと。ところが今度は通産大臣がこういうようなことをやっていたら、この決意をほごにするという役割を担うことになるんじゃないだろうか。私はこれは気になる。気になるからあえてお聞きをしたいと思う。どうなんです、これ。
  148. 森喜朗

    ○森国務大臣 お気にとめていただいて大変恐縮でございます。  関西の財界人の皆さんで、平成四年四月、今御指摘ございましたように、私を囲んで勉強会を開催する、こういう企画がされたことは事実でございまして、準備はいたしましたものの、私の都合がたまたまつかなかったために開催は中止されまして、その後もこの勉強会は開催されておりませんし、もちろん設立もされておりません。
  149. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、私は、設立されなかったというんだから会費も結局出さずじまいになったんだろうと想像しますが、そういうことなんでしょうね。  それからもう一つは、大臣自身が、こういうような関係、こういうことについてどういうふうに見ておられるのか。反省をされたというんだったら、どの点を反省されたのか。いや、もう自然と切れたんだということなのか。そこの関係を、本当に政治家として反省をされるということになったとするならば、私は喜ばしいことで、その反省点は何なんだろうかということをお聞きしたいと思います。
  150. 森喜朗

    ○森国務大臣 私は、この点を問題ありと見て大阪へ行くのをやめたわけでございませんで、この日は本当に都合がつかなくなったわけでございます。  しかし、私は、寺前先生と大体同じようなころから国会におりますから、御存じのとおり年に三、四度は関西に参ります。寺前先生は京都ですからよく御存じでしょうが、私どもの郷里石川県というのは京都や関西といろいろな関係が深うございますので、時折参りましては財界人の方とか文化人の方とかいろいろな懇談会を持っております。したがって、こうした財界の皆さんとお話し合いをすることもたびたびありますので、それでは決まった形にしましょうかというお話が恐らくあったのだろう、私はそう思っております。しかし、物理的に日程がつかなかったので、もちろん中止をいたしました。  その後、こうしたことが新聞にも出ましたので、善意に考えてくださっている皆さんに対して、今寺前委員からもお話がございましたように、公益の企業が入っておられることによって御迷惑をかけるということであれば、これは私の本旨ではございませんので、そうした形で会をつくることは取りやめた方がいいと私も考えまして、その後はその会をつくることも、また伺うこともやめたということでございます。反省するとかしないということよりも、善意の皆さんでおやりになったことが逆に御迷惑かけるようなことになってはいけないと私は考えて、自主的にそういう考え方で今日に至っておる、こういうことでございます。
  151. 寺前巖

    ○寺前委員 お約束の時間が来たようですのでやめますが、今佐川事件をめぐって国会でもいろいろ論議になっていますけれども、世間の人は、企業と政治家との関係、問題というのは本当に真剣に考えてくれ、企業献金や団体献金というものを通じて結局政治がゆがめられるというようなことにならないようにしてほしいというのが強い気持ちですし、大臣である以上は、また所管の分野についてはこの点を十分にメスを入れて、そしてこの国民の期待にこたえるような態度をとっていただくことを私は希望して、終わります。
  152. 貝沼次郎

    貝沼委員長 次回は、来る十九日月曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十四分散会