○山田國廣君 私も資料を
もとに説明をしたいと思いますので、御用意をお願いしたいと思います。
原田座長のお勧めに従って、忌憚なき
意見を述べたいと思います。
まず、私の資料ですけれ
ども、四章から成っていまして、一章目では、まず「
環境基本法制定の目的と意義は何か」ということを三点にわたって述べます。最初、
基本理念と原則が明示されているかということでございます。それから二番目は、
環境管理システムとして今回の
環境基本法は完成度が高いかという視点です。三番目は、公害、
環境破壊、自然保護、地球汚染などそれぞれの汚染、そういうことに対する目配りが行き届いているか。この三点です。
第二章、次の二ページですが、ここでは、
基本理念及び原則について、
政府案、社会党案、それから
一つ環境基本法のモデル的な
条例ということで川崎市
環境基本
条例があるのですけれ
ども、それからもう
一つ地球レベルではリオ宣言を理念法的な
一つのモデルと考えまして、この四つを比較しております。二章は、各理念、この六つの理念について四つの比較をした中で、
政府案にどういう問題点があるかということを示す資料としています。
三章ですけれ
ども、三章は、
環境管理システムです。五ページの下の方ですけれ
ども、
環境管理システムとしての完成度が高いかということで、同じくこれについても
政府案、社会党案、川崎市
環境基本
条例、リオ宣言の四つを比較して、
政府案のどこに問題があるかということを比較する中で資料としていきたいと思います。
四章は、最後の八ページですけれ
ども、
政府案の問題点をまとめております。
こういう順に従って述べていきたいと思います。
一ページに戻ります。
まず最初に、
環境基本法の制定の目的と意義です。
環境基本法というのは理念法ですから、理念それから原則が明確に明示されているということが必要だと思うのですね。それで、その原則、理念ですけれ
ども、六点あります。
環境権が明示されているか。生態系の重視が明示されているか。
地球環境保全と国際協調が述べられているか。持続的発展の
意味の認識がきちんと行われているか、それから
環境を優先的に配慮されるような項目があるか。五番目が
住民と
地方公共団体の主体性を重視しているか。六番目が軍備縮小、武器の縮小あるいは平和の擁護という項目が入っているか。これがまず第一番です。
それから二番目は「
環境管理システムとして完成度が高いか」という中で、資料では1から10まで十点述べていますけれ
ども、この中で特に
政府案に問題があるところというのは、2の
環境基本計画、それから4の
環境アセスメント制度の制定、それから5の情報
公開制度の制定、6の
経済的な仕組みづくり、それから10の総合
調整機能の
推進、この辺について特に述べます。
最後、三ですけれ
ども、「目配りが行き届いているか」ということについては、特に水源保護、森林保護、持続可能なエネルギーへの移行、快適
環境の創造というところについて述べさせていただきます。
二ページに入ります。
環境理念と原則を、四つの
法案、
条例、宣言を比較した中で、一、「
環境権の明示」ということで、
政府案には
環境権は明示されていないわけですけれ
ども、それに対して社会党案あるいは川崎市の
環境基本
条例、リオ宣言には、それぞれいわばある種の権利があるということを明示されている。こういう面からすると、相対的比較として
政府案は
環境権の明示について随分憶病な姿勢になっているのではないかと思います。
それから、二の「生態系重視」ですけれ
ども、これにつきましても、
政府案では「生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており」という記述程度にとどめているわけですね。地球
環境時代ですから、やはり生態系重視ということをきちんと入れるべきではないだろうかというふうに思っております。
それから、三番目は「
地球環境保全及び国際協調」ですけれ
ども、これにつきましては
政府案も随分たくさんの条文で述べています。述べていますけれ
ども、ただ、実態として、後で述べます
環境アセスメントあるいは情報公開等が、制定ということで明確になっていない、後ろ向きであるということから考えると、例えば情報公開というのが国際的に比べて後ろ向きであると、さきのあかつき丸のプルトニウムの問題でもありましたように、情報が公開されないために各国から不信を招くということがあるわけですね。あるいは
環境アセスメントにつきましては、先進国は相当進んだ
法案を既に持っているわけですから、そういう中で国際的につき合っていこうと思いますと、どうしてもこの
環境基本法の中で
アセスメントとかあるいは情報公開について
制度が明確になっていないと、幾ら他の条文で希望的観測で国際協調を進めるといっても、結果的にそれはできないのではないかというふうに思います。
それから、「持続的発展に対する認識と
開発や施策への
環境配慮」ですけれ
ども、これにつきましてはブルントラント
委員会の明確な定義があるのです。いわゆる未来の子孫に対して資源や
環境をいわば先食いしない、迷惑を与えないということがこの定義なんですね。そういう明確な定義に基づいてこの持続的発展ということを展開しないと、何か
経済発展との調和というかそういう微妙な言い回しということからすると、やはり本来の定義をゆがめていくのではないかというふうに思っております。
四ページの五番目ですけれ
ども、「
住民と
地方公共団体重視」。
環境問題につきましては、リオ宣言等にもうたわれておりますように、
住民の参加、そういうことなしになかなか進まないということは明らかなのですけれ
ども、
政府案では、
地方公共団体の
責務、責任ですね、それから国民の
責務、こういうものはあるのですが、
地方公共団体やそれから国民が主体的に、積極的に参加していくような仕組みづくりというのはほとんど条文には見当たらないということで、この部分については、やはりもう少し国民あるいは
地方自治体を重視するような条文を設けるべきではないかと思っています。
六番の「軍備縮小と平和の構築」です。
今、PKOが問題になっていますけれ
ども、日本が国際的に貢献するのは平和と
環境であるということは、これはいわば世論の合意になっていると思うのですね。そういうことであれば、この
環境基本法の中に、平和、戦争、そういうものと
環境問題は切って離せないというのがリオ宣言にもあるわけですけれ
ども、そういう条文を基本的に入れるべきではないか、これこそが理念法ではないかというふうに思っています。
それから、
環境管理システムの完成度の問題に入ります。
「
環境基本計画」ということですけれ
ども、
政府案十四条で「
環境基本計画を定めなければならない。」というのは、これは私も高く
評価します。ただし、社会党案でいくと、十六条の六項に「
環境基本計画以外の国の計画は、
環境の保全に関しては、
環境基本計画を基本とするものとする。」というふうに、他の一般的
開発計画に関しても
環境基本計画を基本にするという条文が入っていますね。ですから、この条文を入れるというのは非常に重要な
意味を持っていると思うのです。すなわち
環境配慮を優先するということだと思います。
それから、六ページの2の「
環境アセスメント」ですけれ
ども、残念ながら
政府案では、
環境アセスメントを
制度化するということをうたっておりません。それに対して、各国、先進国では既に
制度化されておりますし、社会党案等ではこの
制度化を要求しているということで、これについても、国際協調を進めるためにも、あるいは企業の活動を健全にするためにも、むしろいい
アセスメント法をきちんと制定すべきではないかと思っています。
「情報公開」ですけれ
ども、情報公開についても、今回の
政府案では、教育、学習という問題、あるいは民間団体等が自発的に行う
環境の保全ということに情報公開の
範囲を限定しております。それから、そもそも情報公開法そのものを制定するというふうにはうたっておりません。まず基本としては情報公開法を制定するということが求められると思いますし、それから、
基本法の中におきましても、公開する
範囲をもっと
環境一般に広げて行うべきではないかと思います。
次に、4の「
経済的な仕組みづくり」ですけれ
ども、新たな
経済指標、GNP、くたばれGNPとありますけれ
ども、これにかわって
環境庁等も
グリーンGNPなどいろいろ研究しております。そういうものをもっと大胆に取り入れていったらどうかというふうに思います。
それから、5の「総合
調整機能」ですけれ
ども、
環境基本法というのは
基本理念が明確に入っているというのが
一つ大事ですけれ
ども、もう
一つ、総合
調整機能がきちんと入っているかどうかということがやはり重要になると思うのですね。それにつきまして、
政府案ではこの総合
調整機能は「該当なし」というふうに私書いておりますけれ
ども、社会党案では、五十一条等で総合
調整機能を出しています。この
機能につきましては川崎市の
環境基本
条例が非常に進んでおりまして、いろいろ総合的な
調整を行うということを明記しております。そういう
意味で、
政府案の中にもこの総合
調整機能を取り入れられるべきではないかと思います。
最後、第四章で、もう一度
政府案の問題点をまとめて述べます。
まず、今回の
環境基本法ということですけれ
ども、二十一世紀へ向けて今後二十年間ぐらい国の
環境の基本になる、そういう
法律なのですが、残念ながら条文等は、「わかりにくい言い回しと妥協」というふうにここでかぎ括弧で書いていますけれ
ども、そういうものに終始しているという印象があります。
政府案は、通産省、建設省、国土庁など
開発官庁あるいは企業との
調整については随分行ったみたいですけれ
ども、しかしながら、国際的な
調整あるいは
地方公共団体や国民との
調整については失敗しているのではないかと思います。それで、憶病な
法律、あるいは
現状を追認するだけの理念なき
法律というふうに述べさせていただきます。
「
環境権の明示」ですけれ
ども、先ほど述べましたように、これはそもそも自然権として存在しているのではないだろうか。憲法に
環境権が明示されていないことを理由に、今回の
環境基本法にも
環境権が明示されないような論理の言い回しというのはおかしいのではないか。本来、自然権というのは国家以前に自然的に与えられていた、そういうものとしてとらえて、むしろこの
環境基本法に
環境権を入れ込むことは、今回チャンスではないかというふうに思います。それ以後、この
環境基本法に入ってから憲法の中にもう一度
環境権を盛り込めばいいという手順だと思います。
「生態系の重視」というのは、入れるべきだというのは当然だと思います。
次に、先ほど述べましたように「
地球環境保全と国際協調」ですが、情報公開、
アセスメント、こういうものをきちんと
制度化せずに国際協調というのは、別の条文で幾らうたっても、それは空念仏に終わるのではないだろうかと思います。
それから、「持続可能な
開発の
意味の認識と
環境配慮」ということで、ここにもブルントラント
委員会等の定義、それから世界銀行の
経済学者ハーマン・デイリー氏が行った持続可能な
開発の
意味をかぎ括弧で示しております。こういうふうに持続可能な
開発、発展というのは明確な定義があるわけですけれ
ども、この定義を勝手にいろいろ変えて、そしていわば
経済との調和等に向けていくことについては、やはりそれ自身が理念法としては非常に危ういというふうに思っております。
それから、持続可能なということにつきましては、先ほ
ども佐和さんの方から循環代謝型という
言葉が述べられましたけれ
ども、私は「
循環型社会」というのをこの理念法では明確に入れればどうだろう。これは
環境白書等にも使われております。ですから、持続可能なというのはある種の制約条件ではあるのですけれ
ども、その中身を与えていないわけですから、その中身は何かというと「
循環型社会」という
言葉になるのではないだろうかと思います。
「
住民と
地方公共団体の主体性重視」ということにつきましては、特に川崎市の
環境基本
条例が相当進んだ
内容になっていますね。それに比べて
政府案は、はっきり言いまして相当おくれていると私は思います。そうすると、例えば上位法として
環境基本法ができた場合に、この川崎市の
環境基本
条例のような進んだ
条例がかえってできにくくなる、そういうようないわばマイナスの作用をこの
環境基本法が働いてしまうのではないかというおそれを抱いております。
それから、「軍備や武器の縮小・解体と平和の構築」ですけれ
ども、これも先ほど述べましたように、世界に貢献すべき道として、今
環境基本法にこういう条文を入れるのはチャンスではないかと思っております。
それから「
環境管理システムとしての完成度」ですけれ
ども、最近企業につきましては、特にイギリス等EC諸国で、エコ監査というのが義務づけの方向で動いております。国際標準化機構、ISOの方でもこのエコ監査の作業を始めている、そういう動きがあります。このエコ監査につきましては、
環境管理システムとして非常にすぐれている。
それで、こういう
環境管理システムとして、今この
環境基本法の
あり方あるいは
地方自治体が行っている
環境行政、国が行っている
環境行政を見ると、まだまだ随分欠点があるということで、今回やはり完成された
環境管理システム、
一つのモデルはEC流のエコ監査だと思いますけれ
ども、このEC流のエコ監査の中で
環境管理システムとしての
環境基本法を
見直してみればどうかなというふうに思っております。
「
環境基本計画」ですけれ
ども、この
環境基本計画につきましては、中身についてもう少し具体的に今回の
基本法で述べるべきではないか。例えば、川崎市の
環境基本
条例の場合ですと、基本計画のモデルみたいなものをきちんと
条例の中に別資料で載せておりますけれ
ども、そういう今回の基本計画を制定するというのは非常に私は
評価するのですが、もう少し中身について突っ込んで触れるべきではないかと思っています。
続きまして、「
環境アセスメント」は、例えば本四架橋それから
大阪湾フェニックス計画等で私は
意見書を出した経験があるのですけれ
ども、本四架橋でいうと、鉄道の騒音で後からいろいろ
住民から
異議が出てきた。あるいは
大阪湾のフェニックス計画ですと、着工年度がおくれる、搬入量が予測と大分違って減っている、あるいは財政破綻など、既にこれまでの国家的な
事業の中で
アセスメントが随分問題点が出てきているということがありますから、この中では、まず
アセスメントの総合的な計画化、それから
住民参加、それから事後
評価、それから
アセスメントの監査、
アセスメントをだれが最終的にこれはいいというふうに
判断するかという監査を行うことが必要になると思います。
それから、「
経済的な仕組みづくり」ですが、例えば先ほど
宮澤総理は税は取らないにこしたことはないというような発言を国会でなさっているということを
新聞で見ましたけれ
ども、そういう認識というのは非常におくれているのではないかと思います。持続的
開発、持続的発展、先ほどのブルントラント
委員会とかハーマン・デイリー氏のあの定義に従って
環境問題を考えるならば、何らかの
経済的な仕組みというのをつくらなければ、これはおさまらない。
環境はただではないということで、ですからそういう
意味で、野党の皆さん方も含めて、税金は取らないにこしたことはないというような認識で
環境問題を考えるというのは、やはりおくれているのではないかというふうに思っております。
最後に、「総合
調整機能」ですけれ
ども、縦割り行政という
言葉があります。その中でどこがリードするかといえば、これは
政府レベルでいうと
環境庁しかないと思います。ですから、
環境庁を省に昇格して、そして
環境庁が全体的に目配りをするということなしにこの総合
調整は行えないというふうに思っております。
以上で終わります。