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1993-05-14 第126回国会 衆議院 環境委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年五月十四日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 原田昇左右君    理事 塩谷  立君 理事 高橋 一郎君    理事 細田 博之君 理事 持永 和見君    理事 斉藤 一雄君 理事 大野由利子君       愛知 和男君    前田 武志君       増岡 博之君    谷津 義男君       柳本 卓治君    岩垂寿喜男君       岡崎トミ子君    時崎 雄司君       草野  威君    寺前  巖君       塚本 三郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 林  大幹君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         環境庁自然保護         局長      大西 孝夫君         環境庁大気保全         局長      入山 文郎君         環境庁水質保全         局長      赤木  壯君         通商産業大臣官         房審議官    清川 佑二君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局中学校課         長       河上 恭雄君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課産業廃         棄物対策室長  飯島  孝君         運輸省運輸政策         局環境海洋課         長       柴田 耕介君         運輸省航空局飛         行場部計画課長 坂井 利充君         建設省建設経済         局調整課長   澤井 英一君         建設省道路局企         画課道路環境対         策室長     奥野 晴彦君         建設省住宅局市         街地建築課長  浅野  宏君         自治省行政局行         政課長     中川 浩明君         環境委員会調査         室長      西川 義昌君     ————————————— 本日の会議に付した案件  環境基本法案内閣提出第六二号)  環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案内閣提出第六三号)  環境基本法案馬場昇君外二名提出衆法第四号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出環境基本法案内閣提出環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び馬場昇君外二名提出環境基本法案の各案を一括して議題といたします。  この際、各案審査のため大阪府へ委員を派遣いたしましたので、派遣委員からの報告は、便宜私からいたします。  派遣委員は、団長として私、原田昇左右と、塩谷立君、斉藤一雄君、馬場昇君、前田武志君、増岡博之君、谷津義男君、岩垂寿喜男君、岡崎トミ子君、東順治君、寺前巖君の十一名でありました。  現地における会議は、ホテルニューオータニ大阪において開催し、まず、私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事順序等を含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し各委員より熱心な質疑が行われました。  意見陳述者は、京都大学経済研究所長佐和隆光君、循環科学研究室代表山田國廣君、社団法人大阪工業会専務理事皆川茂実君、弁護士・市民環境基金設立準備会運営委員・元琵琶湖環境権訴訟弁護団代表折田泰宏君の四名でありました。  以下、その陳述内容につきまして簡単に御報告申し上げますと、環境への負荷の少ない循環型社会の形成を目指す環境を組み込んだ社会経済システムの構築、環境政策における経済手法の導入の必要性環境基本計画位置づけ及び策定のあり方環境影響評価法制化必要性ないし現行環境影響評価制度の定着による妥当性グリーンGNPなどの新たな経済指標の模索、いわゆる環境権基本理念との関係、情報の公開制度位置づけ地球環境保全のための国際協力あり方等について、それぞれの立場から、意見、要望が述べられました。  次いで、各委員から陳述者に対し、持続可能な発展における経済環境関係環境政策における効果的な経済手法あり方環境基本法趣旨に即した個別法見直し、いわゆる環境権位置づけ必要性環境影響評価現行制度妥当性法制化必要性、国民のライフスタイル及び環境教育あり方環境配慮が十分に行われる海外援助あり方等の諸問題について質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了いたしました。  以上が会議の概要でありますが、議事内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。  なお、今回の会議開催につきましては、地元の関係者を初め多数の方々に多大の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表し、報告を終わります。  お諮りいたします。  現地における会議記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔会議記録は本号(その二)に掲載〕     —————————————
  4. 原田昇左右

    原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。時崎雄司君。
  5. 時崎雄司

    時崎委員 政府提案環境基本法案の第十九条、環境影響評価、すなわちアセスメントについて、まず冒頭お尋ねをいたしたいと思います。  去る四月二十日の本会議で、私の質問に対し宮澤総理は、答申を踏まえ「現行措置の適正な推進に努めるとともに、経済社会情勢変化等を勘案しながら必要に応じて見直しを行っていく」と答弁をされました。現段階でこのような答弁をいただいて、私、大変不満に思っているところでございます。  ある本を読んでおりましたら、このアセスメントについての現在の閣議決定やり方とそれから法律にした場合、どういう相違、違いがあるのかというのを簡単にまとめられたものがございまして、それをコピーしてまいったので、それを中心お尋ねをいたしたいと思います。  これまでの審議の中で、閣議決定もとにして行われてきたこれまでのアセスについては、一定の評価環境庁としてはされている。したがって、今後十分これまでの経過を見ながら、先ほどの総理答弁にあったように、経済社会情勢変化等に対応して考えていく、こういうことから一歩も出ていないわけでございますが、この本によれば、もともと法律閣議決定とは制度的にみれば本質的に違う」ものである、こういうことをはっきり言っているのです。  その第一は「事業者に対する拘束力の差である。」すなわち、法律であれば、法律の義務づけとして事業者に対し直接それを適用させることはできるけれども閣議決定というのは、あくまでもこれは政府内の意思統一のものでありますから、事業者に対する拘束力がない。そういうことで、現に公共事業中心政府が行うものについてだけ、実は閣議決定で行ってきたということであります。この点について、法律によらなければ事業者に対して拘束力がない、この点について局長はどう思いますか。
  6. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生の御質問でございますが、今回私どもの御提案申し上げております環境基本法案におきまして、アセスメントを法制的に位置づけるという措置をやっていただくということを御提案申し上げておるわけでございます。そういう意味におきましては、これから行われます閣議決定アセスというものは、一応法律上の根拠に基づく行政決定ということになるわけでして、従前の閣議決定ということでは、そういう意味では私どもは従来とは違った意味合いを持ってくるというぐあいに理解しているわけでございますが、先生の御質問はもっと端的に、行政決定によるアセスと、それから法律に基づいて義務づけをしたアセスというものとの法律上の効果ということはどうか、こういう御質問であったわけでございます。  そういうことで端的にお答え申し上げますならば、国以外の事業者に対して義務づけをするということは、やはり法律上でなければそれは困難だろうというぐあいにどもは考えております。政府部内でありますれば、行政決定によるものであれ、当然政府部内を拘束するわけでございますが、閣議決定ということになりますと、結局法律上の根拠は仮にあったとしても、手続面に関する細かい規定等は置かれておらないということになりますので、事業者に対してはやはり指導通達といったような形の行政措置にならざるを得ないというところで、おっしゃるように私どもは限界がある。そこで、やるためには事業者理解協力を得ていかなければならないということになるわけでございます。
  7. 時崎雄司

    時崎委員 それでは、もう一点聞いておきたいことは、あくまでも今の閣議決定でのアセスというのは、これは行政指導の域を出ない、こういうことであると思うのですが、その場合でも、例えばそれぞれの省庁判断にゆだねられてしまう分野が実は広いのではないか、こういうふうに考えられるのですね。したがって、閣議決定アセスを行うという場合であっても、政府としての統一したルールというものは必ずしも担保されていない、このように考えるのですが、いかがですか。
  8. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生の御指摘する点は、形式的に見れば、私はそのとおりだと思います。おっしゃるように、行政指導ということになりますと、例えば環境庁が直接行政指導権限を持っておらないというような場合に、主務省庁事業者を指導する立場からそういう行政指導が行われるということになりますから、法律に基づきまして統一的にやりますということよりは主務大臣判断にゆだねられる部分が大きくなるということは、私、形式的にはそのとおりだと思います。  ただ、この点につきましては、各省庁間及び環境庁間等における意見調整を通じまして、実際には細部を除きますと主務省庁間の相違はなく実施しているというのが現状でございます。したがって、実質と形式とでそこはちょっと違いがあるということでございます。
  9. 時崎雄司

    時崎委員 それからもう一点は、拘束力としてさらに地方自治体に直接義務づけをすることも今の閣議決定では不可能ではないか、さらに住民との関係も同様に考えられるわけですね。したがって、政府部外者、すなわち地方自治体なり住民なりを直接拘束するということはほとんど不可能ではないか、こう思いますが、いかがですか。
  10. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 おっしゃるように、法律ということになりませんと、閣議決定政府部内のものであるということから、国と地方とは別法人でございますから、地方公共団体を直接、閣議決定であるがゆえにということで拘束することはできないという点は御指摘のとおりでございます。したがいまして、準備書公告縦覧等環境影響評価の諸手続事業者が行うことに閣議決定アセスではならざるを得ないということになるわけでございます。  ただ、この点につきましても、現状を申し上げさせていただきますならば、知事や市町村長理解協力を現在十分得られている、また、地方におきましても条例要綱等をもって、アセスが重要であるというようなことから十分協力は得られておりますので、現実の問題として、先ほど申し上げましたような準備書公告縦覧等の諸手続事業者にゆだねられても、それほどの支障があったという事例は私ども聞いておらないところでございます。
  11. 時崎雄司

    時崎委員 四点目として、法律でないがゆえにあくまでも現在の閣議決定というのは現行の幾つかある法律範囲内でしか、適用というのか、運用できないのではないか。これは以前一度政府が提案して廃案になったアセスに関する法律案の第二十条にも「当該免許等に係る法律規定にかかわらず、当該規定に定めるところによるほか、」云々、こうなっておりまして、法律によれば、法律アセス規定すれば、他にそういう法律にぶつかり合うようなことがあればアセス法が優先して適用になる、こう理解できるのですが、現状では法律によらない場合にはもうその他の現行諸法令範囲内でしか適用にならない、運用ができない、こういうことになると思うのですが、いかがですか。
  12. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 これは先生指摘のとおりでございまして、閣議決定要綱によりますと、環境配慮は関連する免許法等に基づく行政処分というものに認められた範囲内、裁量の範囲内でしか行われないということになろうかと思います。そこで、環境配慮位置づけの問題としては、先ほどお答えしたように、事業者理解協力を得てやるということになるわけでございまして、現状においてはそういうことでは具体的対策については個別に対応できているということになるわけでございます。  なお、今回、この環境基本法を成立させていただきますれば、この点に関しましては事業者責務として八条に基づく責務がそれにかぶさってくるということで、従来とはまた違った要素になってくるというふうに私ども理解しております。
  13. 時崎雄司

    時崎委員 各都道府県なり、さらには市町村でも条例によってアセス制度をつくっているところが多々出ておるわけでございますが、しかし、今のままでいきますと、地方条例をつくっているものについて、それを整理するというのか調整するという能力は全くないと思うのですね。したがって、法律によって行えばそれらの条例の間の調整なり整理というものも可能なんですけれども閣議決定というやり方ではそれらもおぼつかない。逆に言えば、通達を出して、閣議決定趣旨を尊重し、さらにはまた実施に反映をさせてほしいという、要請というようなことでおしまいになってしまうのではないか、このように私は思うのですが、いかがですか。
  14. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 これも法律形式的に言えば先生のおっしゃるとおりでございます。地方条例等との関係につきまして、法律であれば条例との関係法形式的にきちっと整理できるわけでございますが、閣議決定ですとそのような法形式的な整理はできないということになるわけでございます。したがって、現状におきましては、地方条例等におきましては、一般的に国等の行う事業については特例を設けるということで地方の側で調整をとっていただいているとか、また国の要綱との整合性に配慮するというような規定を置いておったり、また九年間にわたる運用を積み重ねてきましたことによってそういうものを事実上整理してきているというところでございます。
  15. 時崎雄司

    時崎委員 五点ほど今申し上げたのですが、ほとんどが局長がそのとおりだ、こういうことで、閣議決定現行アセスというのと、それから法律によって行えばこういうことがきちっとできるんだという差を今明らかにしたかったわけでございます。  そこで、先ほどちょっと新聞をそちらに貸してございますけれども、きょうの新聞報道では、ラムサール条約事務局湿地帯開発については環境アセスメントを義務づける勧告案をつくった、こういうことでございます。そうなりますと、来月、六月にラムサール条約締約国会議というのが我が国で行われますね。これは釧路で、始まるのは六月九日ですか、おそらくそこで議論になると思うのですが、環境アセスを義務づけるということですから、今私が五点ほど申し上げた点からいえば、どうもこの勧告が行われた際に今の閣議決定だけでは対応し切れないのじゃないか、こういうふうに考えざるを得ないのですね。それは勧告というのは拘束力はないとは思いますけれども開催国ですから、そのときに我が国は、いや、閣議決定アセスをやっているので義務づけはできませんというふうにはならぬと思うのです、これは国際的な問題として。  そういう点では、そろそろどうですか、大臣、きょうあたりもう審議も山に差しかかっているわけですから、積極的に法制化をする、そういう気持ちを固めてもいい時期ではないかと思うのですが、いかがですか。
  16. 大西孝夫

    大西政府委員 大臣がお答えする前に、事務的な観点でちょっとコメントをさせていただきますが、まだきょうの新聞に載ったラムサール条約事務局勧告案なるものの内容をよく存じておりませんが、まず二点、十分検討する必要があろうと思っている点がございます。  一つは、その湿地というものの範囲勧告案の中でどういうことになっているかということですね。湿地というのは人工的なものからあらゆる、水のあるところすべて含んでおりますので、その湿地利用に関するアセスということになりますと、ある程度対象なり行為を制限せざるを得ないだろうと思っております。例えば田んぼでも湿地ですから、減反で普通の畑に変えるのも湿地利用アセスが必要かみたいな議論になりますので、当然ある程度の規模のものについてアセスを義務づけるというような話になろうと思いますが、その対象湿地範囲事業範囲一つあります。  それからもう一つは、アセスというものが一体どういうことを想定してアセスであるかという点がまだつまびらかでございませんが、それをもちろんよく検討してみる必要があろうと思っておりますし、それから、今先生もお触れになりましたように、それがいわゆる拘束力がない勧告ということになりますが、開催主催国として、仮に勧告が出され、採択になったときにどう対応するかというのは、そういったもろもろの点を勘案した上で十分検討いたすべき問題かと考えております。
  17. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 時崎先生の御質問にお答えします。  ラムサール条約事務局考え方が一部報道されておることは私も承知いたしております。しかし、これにつきましては、ただいま自然局長が御答弁申し上げた内容に尽きるわけでございますし、また、正式に勧告も受けているわけでもございませんし、したがって、それに基づいて直ちに今回の基本法案の中の第十九条に関連するような形の動きということは早過ぎるのじゃないかと私は思っております。  基本法におきましては、先生も御承知でございますが、環境影響評価重要性あるいはその考え方、それをどう位置づけるかということにつきましては、十九条の中におきまして非常にこれを重視しておりまして、それには必要な措置を講ずるというふうに明確に規定しておることも先生御案内のとおりでございます。  もちろん、必要な措置の中には、必要な場合には法制化することも含まれ得るものと私は理解しておるものでありまして、法制化そのものを決めたものではありませんけれども、必要に応じてはそういう措置がとり得るという範囲を示されたものと理解しております。  いずれにいたしましても、環境影響評価の具体的な実施に関しましては、どのような個別の措置が適当であるかということにつきましても、昨年の十月の中公審などの答申における「経済社会情勢変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置見直していくことが適当」とされている、その答申意味するところ、答申の示すところに対して今回十分忠実に法案に盛り込んでおるということを申し上げたいと思っております。
  18. 時崎雄司

    時崎委員 ラムサール条約関係は、対象田んぼまでということは、常識的に湿地という場合に考える必要はないと思うのです。しかし、対象がどうであれ、例えば釧路湿原のようなものが対象になる、こう仮定すれば、アセスを義務づけるか否かという場合に、やはり義務づけるとなればこれは法律によらなければならない。先ほど、私五点に絞って政府決定閣議決定アセスと、それから法律によった場合の差というものを制度的に局長にただして、局長もそのとおりだ。これはそのとおりだと言わざるを得ないのですね。  なぜかといったら、私がコピーをとってきた本というのは、これは環境庁が出した本をずっと読んだだけなんです。これは環境庁が出しているものですよ。八木橋さんの推薦の言葉だか発行の言葉がちゃんと前面に載って、環境庁企画調整局監修となっている本を読んでいるだけなんですから。みずから、法律閣議決定はこんなに差があるよということを文章にして出しているわけでしょう。そして今言われるように、ラムサール条約加盟国等会議我が国で行われて、そのときにそういう湿地帯での開発等について環境アセスを義務づけるような勧告が出たときに、我が国はもう準備しておかねばならぬという気がしてならないのですね。  そういう状況の中で、去る四月二十日の本会議での総理大臣答弁、これは答申書そのまま書いたのですかね、「現行措置の適正な推進に努めるとともに、経済社会情勢変化等を勘案しながら必要に応じて見直しを行っていく」。大臣、どうです。こういう状況ですから、もうそろそろ法律に踏み込んでいく、その方がせいせいするのじゃないですか、国としても。先ほど言った五点の違いというのはどうにもならないでしょう。これは経済社会情勢が変化する、そういうこととは全く関係ないのです。今私が言ったのは、閣議決定法律との差は制度的にこうありますと言っているのですから、だとすれば、もうこの辺で、第十九条の必要な措置とは具体的には法律アセスを行う、腹を固めた、こう言ってください。
  19. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 大臣からお答え申し上げたところでございますが、私から閣議決定要綱法制化との相違につきまして、法形式上における違いは確かにあるというぐあいにお答え申したところでございます。  この閣議決定要綱は、先生承知のように、環境影響評価法案が国会で廃案になって再提出を見送るということになったことに伴いまして、あの法案もとにいたしまして、その法案と同様の内容政府として最も権威のある閣議決定という方式で決定し、行政ベースではありますものの、環境に対する影響未然に防止するために適切な措置を講じようということで、私どもそういう措置をとってきたわけでございます。その結果、要綱に基づきまして、私ども二百十二件のアセスメントというものを実施してきたわけでございますが、これによりまして、環境影響評価本来の目的であります環境汚染自然破壊未然防止という観点からはそれなりに機能を果たしてきたというぐあいにどもは考えておるわけでございます。  そういうことを、今回この基本法案におきましては、法制的にアセスメント位置づけるということをやっていただいたわけでございます。したがって、閣議決定におけるアセスということではありますけれども、今度は法制的に位置づけられた閣議決定アセスということになるわけで、そういう意味では私ども法制的に一応の位置づけができたということで考えておるわけでございます。  その後に、今度はそれを個別具体的にどういう措置でやるのかということにつきましては、これは先生答申文章そのままじゃないかというようなことをおっしゃったわけですけれども中公審答申におきましても、直ちに法制化すべきであるという御意見、また現行法十分機能を達しているのでそれで十分であるという御意見、その他現行措置を充実させながら改善を図っていくべきであるというようないろいろな御意見がございまして、全体としては先ほど申し上げたような格好の御答申になっている。  そこで、私どもとしては、あの答申を踏まえまして、適正に処理をしていかなければならぬということは、現行措置についての適正な措置を図りつつ、それについて問題があるかどうかということを調査し、また検討をしながら、必要があるならばやはり法制化ということも含めて検討していかなければならぬ、こういうスタンスに立っているわけでございます。
  20. 時崎雄司

    時崎委員 今、閣議決定権威のある意思決定なのだ、こういうことを言われているわけです。この文章の中にも出ているのです。「閣議決定は行政府としての最も権威ある意思決定の方式であり、実際上の効果はかなり期待できるものと考えられるが、」ここからが重要なのですが、「制度的な意味からすれば、この拘束力の差は重要な問題である。この点は、地方公共団体住民との関係においてもいえることである。」あなたは文章の先だけをとっているのです。確かに、行政府での閣議決定というのは最高の権威ある意思決定やり方だ、これはわかるのです。しかし、そうであっても法律にはかなわぬと言っているのです、これは。  それと、この法律ができれば、今度は第十九条で位置づけられたアセスだという、再三局長の言う意味がよくわからないのです。閣議決定の従来のやり方をそのまま続けていけば、たとえこの法律が通ったってどこが違うのですか。十九条で位置づけられたというだけであって、閣議決定アセスを続ける上では何ら変わりがない。もちろん、こういう法律がなくたって、内容を変えようと思えば変えられたはずでしょう。例えば開発は百ヘクタールというのをやめて五十ヘクタールとかやればいいことであって、今の閣議決定アセスというのは、この法律に基づいてどう変わるのですか。  それともう一つは、今から調査検討なんということはないでしょう。もう十年近くたっているのです。そして、どれだけアセスが行われたかという件数もわかっているし、現に新聞報道されて、新聞報道とは若干違いますよという、環境影響評価技術検討会の報道について文書が回りました。これは見ました。「信頼性・精度欠く」、こういう見出しで大分大きく報道されていますから、今から調査検討なんかしなくたって。余りにもこういうことを言うと、今度はもう一つ新聞報道、これも二十日の本会議質問しましたが、各省庁の権限縮小の問題で密室で覚書が取り交わされておったのではないか、幾ら否定されてもだんだんそういう気になってくるのです。これはもう事実なのでしょう。ただ、事実だと言えないから否定しているのだろうと思うのです。  一つだけ、今のお話の中で、法的に位置づけられたアセス、すなわち十九条に基づいて法的に位置づけられたアセスになる、どこがどう違うのですか。
  21. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 今回、アセスメント重要性というものを法的に位置づけたということによりまして、各事業者また政府の各部門に与える法意識というものがかなり変わってくるということがまず前提にあるわけでございます。そういたしまして、同時に、この基本法によりますと、事業者責務として、環境に配慮をする責務というのは同時に裏打ちされるということから、アセスメントに対する協力理解の度合いというものが従来と変わってくるということは当然あるわけでございまして、そういう意味におきまして、閣議決定アセスによるものの、事業者による理解協力は従来とは変わってくるだろうということを期待しているわけでございます。ただ、先生がおっしゃるように、法的に違うということはそれは当然のことでございます。
  22. 時崎雄司

    時崎委員 局長と二人でこのアセス問題をやり合っていてもしようがないけれども、金丸問題を含めて、建設業界または建設業者、談合だ何だかんだで、昨日も山梨のそういう団体に公取が調査に入っていますね。法律があって、これはそういうことをしてはいかぬというものだって、ずっとそんなことをやっているのですよ。事業者というのは、皆さんがそう信用していい、それほど善意に解釈していい人ばかりじゃないでしょう。だから、法律をつくってきちっとやろうじゃないかというのが必要なのですよ。環境に配慮しなければならない規定をつくったから、皆さんが配慮をしていただいて、アセスなどを法制化しなくたって環境破壊なんかは起こらぬ、今はそういうような甘い状況じゃないでしょう。そういうことを考えると、ぜひ法制化していただくように、重ねてお願いをいたしておきたいと思います。  さて次は、環境基本計画の策定について、これは十四条で計画をつくるということは規定をされているのです。これは計画が計画倒れになって何ら実施されないという危険性もあるのですが、実施計画についての規定をなぜ除いてしまったのですか。なぜ実施計画の部分の条文をつくらなかったのか。公害の方は十七条できちっと出ているのです。十六条で計画を立て、十七条でその達成の推進についてうたっているのです。これとの関係で、なぜ実施推進について、計画だけではなくて実施もこういうふうにやれよということを規定しなかったのか、その辺の説明をいただきたいと思います。
  23. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答え申し上げます。  環境基本計画は、政府全体の環境の保全に関する基本的な計画といたしまして閣議の決定により定めるということを予定しているものでございまして、環境の保全に関する各種の施策は、この環境基本計画の示す基本的な方向に沿って実施されることが担保されるということになるわけでございます。  そこで、環境基本計画の示す基本的な方向に沿って施策を実施する上で、その施策の遂行上必要があると認められる場合には、大気汚染防止法に基づく総量削減計画とか、地球環境保全関係閣僚会議の決定による地球温暖化防止行動計画などのように、今度は個別法の枠組みにより適切な内容の計画策定の措置等がとられることになり、または行政措置としてそういうものを行っていくというようなことになるわけでございます。  そこで私どもは、一つは、そういった基本計画としてはやはり国の環境保全に関する基本となる事項というものを定める、そのもとにおいて、環境庁を初めとする関係法律、その他の省庁における法律における個別の計画なり行政措置によって実効あるものを図っていくという仕組みを考えているわけでございます。今までは環境基本計画のような政府全体を通ずる一覧性のある計画そのものがなかったということから、環境政策が総合的、計画的に推進されなかったというところにむしろ問題があるということで、それを用意したいということでございまして、そのもとにおける個別の計画なりなんなりは、今度は大気汚染防止法、水質汚濁防止法その他の関係法律に基づいて行われていく、こういう関係になるわけでございます。  それから、もう一つ質問がございまして、公害防止計画について達成の推進規定があるのに、なぜ環境基本計画には達成の推進規定がないのかという御質問でございました。  御指摘のような計画達成の推進規定は、公害防止計画のほかに、環境関連法律の中では水質保全に関する総量削減の対策の計画等、個別の施策や事業実施のための計画、言ってみればこれはアクションプランと言っていいかと思いますが、そういった計画に対して規定されているところでございます。環境基本計画は、先ほど御答弁申し上げましたように、公害防止計画などのような個別の施策や事業実施のための計画ではなくて、むしろ環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱を定める、政府としてのマスタープランとしての役割を持つものとして策定されるものでございますので、そういったような性格からこのような規定は設けなかったところでございます。  いずれにしましても、先生は実効性のあるようなことをやれという御指摘だろうと思います。私どもはその方向に向かって、ぜひこのマスタープランが、環境庁のみならず政府全体を通ずる環境政策のマスタープランとして実効性を持つように、大いに努力してまいりたいというぐあいに考えております。
  24. 時崎雄司

    時崎委員 まだ釈然としませんな。公害防止計画の作成は第十六条で明記をし、これは相当細かく一号、二号と書いて、さらに二、三、四、五、と相当細かく明記をしているわけですね。そして、十七条で達成の推進という項を設けて、「公害防止計画の達成に必要な措置を講ずるように努める」と明記して、十四条の環境基本計画の方にはそういう十七条に相当する部分がない。どうも御答弁聞いていると、個別だからあるので、全体的だからないというふうに聞こえてしまうのですが、もう少しわかるように、釈然とするように、なぜ置かなかったのか、そこをきちっとしていただきたい。  それと長官、四月二十日の私の質問に対して、この項ではこういうふうに言われているのですね。「環境政策の総合的、計画的な推進のためのマスタープランとしての十分な効果を発揮できるものとなるよう、十分検討いたしたいと考えております。」十分効果を発揮できるようなものにする、これは何か頭の中に想定を描いているのですか。計画ができた、これが十分に効果を発揮するためにこういうことを考えるというものを描いてこのような答弁になったのですか。これは大臣お尋ねいたします。
  25. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 この環境基本計画につきまして、二十日のときの答弁について、私は具体的に何か描いているということではありませんでして、むしろ基本計画でございますので、これは環境庁のみの単独案として定めるということ以上に、環境の保全に関する政府全体の基本的な計画という意味を含めて閣議決定を経て定められるものでありますから、策定後に、政府における環境の保全に関する施策あるいは計画それから環境基本計画の示す基本的な方向、そういうものに沿って実施されなければならないということでございますものですから、そういう意味において、今先生が具体性が少し欠けているのではないかという御指摘もありますけれども、それはそれとして、政府全体の計画ということからスタートしたいということを含めてのことであります。  したがって、先ほど局長答弁しましたように、例えば水に対してはどうするかとか大気に対してはどうするかという個別に対応するということよりも、まず基本計画としての政府の取り組む姿というものを打ち出したいということでありましたものですから、ある意味においてはもう少し具体的な実効性があってもいいではないかという先生の御質問もうなずけるところではございますけれども、全体としてはそういう枠組みで取り組んだ次第でございます。
  26. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 若干御説明不足で申しわけないのでございますが、同じ基本法にあって、十六条における公害防止計画については達成措置を十七条で書いておきながら、環境基本計画についてはそういう条項を置かない、おかしいじゃないかということで端的に問題を御指摘になったわけでございます。  それは私、先ほどの説明が若干抽象的過ぎてあるいは御理解いただけなかったということで反省しておるわけでございますが、環境基本計画は、政府環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱等を定める、政府としてのいわゆるマスタープランとしての役割を持っている。そのマスタープランのもとにおける個別の施策、個別の事業実施のための計画としての一つに公害防止計画があるというぐあいに理解をいただいてよろしいというように私は考えておるわけでございます。  一番最初に、公害対策基本法というものでは現在の環境問題に対処し切れない、また公害対策基本法というのはどちらかといえば問題対処型の基本法であるということを申し上げたわけでございますが、そういう性格が実はここにもあらわれておるわけでございまして、この関係を端的に示すものといたしましては、例えば十六条をごらんになっていただきたいと思うのでございますが、十六条の第二項に、公害防止計画についての規定がありますその後に、公害防止計画を定めるに当たっての基本方針というものが書かれるべきであるということが十六条に書いてあるわけでございますが、その二項におきまして、「前項の基本方針は、環境基本計画を基本として策定するものとする。」という規定がございまして、言ってみますれば、この公害防止計画というのは環境基本計画を上位とする一種の個別アクションプランなわけでございます。  そういう意味におきまして、他の水質汚濁防止計画と同じように、公害防止計画についてはアクションプランとしての性格上、その「達成に必要な措置を講ずるように努めるものとする。」というぐあいに書かせていただいたわけでございます。こういった個別措置、個別の計画の上にまたがって傘となる計画が環境基本計画であるというぐあいに理解をいただきたいと存じます。
  27. 時崎雄司

    時崎委員 どうも聞けば聞くほど頭が混乱してくるのですが、そうすると第十六条の公害防止計画なるものは環境基本計画の下にあるアクションプランなんだ、そういうことですね。アクションというのは、横文字使うとごちゃごちゃするからあれだけれども、行動計画とか実質的な計画なんでしょう。そうすると、十七条は何計画になるのですか。環境基本計画があって、その下にまた公害防止計画をつくるということは、なぜわざわざ十六条にそういう項を置いて、もともと十四条に全体の計画があるわけですから、これは法のつくり方としてちょっと違うんじゃないですか。  少なくともこれは都道府県がつくることだから、ここへ十六条が来ているのですよ。違いますか。確かに内閣総理大臣は承認を与えるけれども、つくるのは都道府県でしょう。そういうふうになってくると、条文を同じところに置けないので分けたと解釈する方が素直なので、あなたのおっしゃることからいえば、十四条の基本計画があり、十六条の公害防止計画があり、十七条は何だ、こうなるからますます聞いていてややっこしくなってしまうのですよ。  私が聞いたのは、そんなことじゃなくて、公害防止計画には十七条でもって達成の推進の項を置いているじゃないか、十四条の基本計画の方にはそういうもの、すなわち十七条に対応するようなものはなぜ置かないんだ、こう聞いているのですよ。もっと端的に答えてください。横に行ってしまって、どうも意味がよくわからなくなってしまうのですよ。もう一度。
  28. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 十四条の環境基本計画は、環境の保全に関する総合的な施策を一覧性のあるものとして定める、その下にいろいろな公害防止計画とか水質汚濁防止計画とか大気汚染防止計画というのは国の基本計画に基づくそれぞれの個別分野における計画として位置される、その計画におきましては、その計画を達成するために必要な事項というものを定めるように書く、だからその段階におきましてその推進に定める事項を書けばそれで目的を達するということから、マスタープランとしての十四条につきましてはそれを書かなかったというだけの話でございます。ただ、書いていないから実効性が上がらないようになっているのじゃないかということには私ども考えておりませんで、十四条の基本計画のもとにおける個別計画、個別行政措置等により、そういう基本計画の実効性は十分担保されるように、私どもは内閣一体としてやっていかなければならぬ、そのために内閣における閣議決定という段階を経るということにしているわけでございます。  なお、十七条の規定は、公害防止計画の達成に必要な、例えば財政上の特例措置でございますとか起債の措置でございますとか、それを交付税に算入した場合の元利償還費を単位費用の中に織り込んでいくとか、そういう措置のことを十七条では書いておるわけでございます。
  29. 時崎雄司

    時崎委員 局長の言われるその環境基本計画一つの基本として、そのもとにこの十六条の公害防止計画の作成等々がある。そのほかにもあるとすれば、大気保全の問題とか水質とか、いろいろなものがまたその下に計画としてある、こういうことを一言われるようなんだけれども、この公害防止計画だけをこの基本法の中にわざわざ持ち込んだというのは、法律を廃止をするということもあってここへこれだけが入ってきたというふうに理解してよろしいのですか。
  30. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 これは一つは、我が国環境行政は公害行政、また自然破壊を原因とする自然環境保全法から出発したという歴史的な経緯も踏まえまして、しかも私ども現状からすれば公害というものを無視し得ない、したがってそこのところは、新たに環境問題が広がったにせよ、また後世代に対する影響があるにせよ、公害という原点はしっかり踏まえる必要があるというようなことから、私どもといたしましては、環境基本法の中に公害に関する規定というものはやはりしっかり位置づけておかなければならぬ。私どもは、厳しい教訓と、それから歴史的なそういう経緯を追ったというようなことから、公害に関する事項というものはきちっと位置づけ、きちっと対策をとっていかなければならぬというような趣旨で、公害に関する規定はすべて環境基本法の中に置かせていただいたということでございます。
  31. 時崎雄司

    時崎委員 それでは次に、第二十一条の経済措置についてお尋ねをいたします。  きのうも公述人に対する質問でも若干触れたのですが、どうもこの二十一条の二項、全体の文章を読んでみて、ここの条文だけはどうも日本語になっておるのかどうかという、法律でもこういうようなことを書くのかと思うぐらい、これは意味がわからないのですね。  局長はこれを自分で読んでみてどう思います。まずこの感想、これは何を言っているのですか、この文章は。これは国語上、まあ学校の先生でも連れてきてやったら、これは何を言わんとしているのか。「環境の保全上の支障を防止するための有効性を期待され、国際的にも推奨されていることにかんがみ、」ここまではまだいいよ、「その施策に関し、これに係る措置を講じた場合における環境の保全上の支障の防止に係る効果、我が国経済に与える影響等を適切に調査し及び研究するとともに、その措置を講ずる必要がある場合には、」と、こうきてしまうのですね。講ずる必要がない場合もあるわけだね。その措置にかかわる云々くんぬんがといって、「国民の理解協力を得るように努めるものとする。」この二項は、主語は国なんですね。「国は、」とくるのです。最後の丸のところを読むと、「国民の理解協力を得るように努めるものとする。」これだけですか、この文章は。よく教えてください。
  32. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 おっしゃるお気持ちは正直いってわからないわけでもございませんが、この条文をつくるに当たりましては、私どもとしていろいろ思いを込めて書きましたものですから、若干こういうふうになっておりますが、こういった施策というのは実は従来の環境政策には導入されておらなかったということがございまして、こういう措置環境政策に導入するに当たっては政府部内においてもいろいろな考え方、いろいろな配慮をしていかなければならぬというようなこともございまして、こういう条項になっているわけでございます。  具体的には、この条項は四つの点を言っているというぐあいにども理解するわけでございます。  第一に、一つは、環境に対する負荷を低減するために経済的な負担を課して行う施策というものが、一般的な認識といたしましては、まずそれが役に立つ施策である、有効性が期待される、それから国際的にも推奨されているという事実があるわけでございます。そういう事実をまずここできっちり踏まえたことを一つ書かせていただいた。現に先進七カ国サミットや昨年の地球サミット、またさらにOECD等で示されている認識を踏まえて書かせていただいたわけでございます。そこが何々にかんがみというところまでの条項でございます。そういう一般的な認識があるということをまず一つ書かせていただいたわけでございます。  そういたしまして、次に、そういった施策に係る措置というもの、それは税とか課徴金とかデポジット、また排出権の売買とか、そういったものがあるわけでございますが、そういった措置というものは第一項の措置とは違って国民に負担を求めながら行う措置であるということになるわけでございます。そういう視点から、そういう措置をやることについては、やはりその措置の効果また経済に与える影響、結局、経済措置としてやるわけですから、国民経済にどういう影響を与えるかということを適切に調査し研究しなければならぬ、そういう必要性があるということにつきまして第二点に書かせていただいたわけでございます。  そこで、現実にそういう調査研究を行いましたことによりましてそういう措置をとる必要がないということになる場合もあるいはあるかもしれませんが、一般的な認識からいたしますと、そういう有効性があり、国際的にも推奨されておりますという状況がありますれば、そういう措置を講ずる必要があるということは可能性としては高いのではないかというぐあいに思われるわけでございますが、そういった場合は、その調査研究を踏まえまして、個別の措置が必要がある場合にそういう措置を活用することについて、やはり負担に関する問題ですから、国民の理解協力を得る必要がある、そういうことをやらなければそういう措置が採択できないというようなことを次に書いているわけでございます。  そこまでが一つ文章になっているわけでございますが、第四に、今度はその問題が地球環境保全の施策ということになりますと、地球環境保全はどこの国でそういう負荷行為をやってもそれは全地球ということに影響を及ぼすものですから、それは国際的な連携を保ちながらやっていかなければならぬ、こういう措置を書かせていただいているわけでございます。  いずれにしましても、こういう措置につきまして、従来環境政策にそういうことが適用されておらなかった、それを我が国において初めて適用するという場面になるわけでございます。それと国民負担に関する問題ですから、実際の措置をとる場合にはやはり個別法が必要である。こういう二つの問題点を踏まえ、そういう措置を講ずるに当たっての国としてやらなければならぬということを書かせていただいたということでございます。
  33. 時崎雄司

    時崎委員 私の聞いていることと局長の言うことは大分隔たりがあって、私は、二十一条の二項は日本語になってないよと言っているだけなのです。こういう措置に向かって何とかこの法律案の中に盛り込んだという御苦労は多とするのですよ。  だってそうでしょう、二十一条の前にある括弧つきの「(環境の保全上の支障を防止するための経済措置)」と書いてあるでしょう。一項は文句なしにそれで当たる。ところが、二項になったら、経済措置をどうしろと言っているのだかわからないのです、これは。入れろと言っているのだか入れないと言っているのだかわからないでしょう。入れる場合にはこうだと言っているだけなのですよ。これは日本語として成り立たないのですよ。  最後にあなたが説明した国際的連携に配慮する話は、ここをこのようにつけるならば、まずこの真ん中の「国際的にも推奨されていることにかんがみ、」この施策を導入するとか、実施をするということになるのです。そこで次、導入するに当たってはこういうことを考えなさいと書けばいいのですよ。それはこの国際的な問題のところではちゃんとそうしているのですよ。それを真ん中に入れちゃったから何のことやらわからないですよ、やるのだかやらないのだか。  これは、経済措置をやるという意味ですか。この内容はやる場合もあればやらない場合もあるというのでしょう。違いますか。やるのですか、やらない場合もあるのですか。
  34. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 日本語として意味が的確にあらわれているかどうか、実は、先ほど申し上げましたように、この条文を作成するに当たってはいろいろな考え方がございまして、そういうことの調整の上、できた規定でございますので、おっしゃるように、なかなかこれは注意深く読まないとわかりづらくなっているということは否めない。ただ、法制局におきましてこれを通していただきましたものですから、悪文かもしれませんが、日本語にはなっているというぐあいに、申しわけないが御理解を賜りたいというぐあいに思います。  そこで、要するにやるというのか、やらないのかということでございます。私どもとしては、そういうことが有効性が期待されているということでございますから、有効性が期待されれば、それに沿ってそれなりの手段を踏んでいくということをやっていくべきだということに考えます。  ただ、そういう措置をやるかどうかについては、ここで調査研究が必要だというようなことが書かれておりますし、また、ここで対象とした措置というものに、先ほども申し上げましたように、デポジット制度、排出権の取引、課徴金、また課税といったようなものがございます。これは、ちょうどこの条文が議論されておりますときに環境議論というものが一方でありましたことから、それに対するいろいろな議論というものがまた同時並行的に起こってしまったというようなことから、そういうことも含めて、いろいろそういう措置を講ずるに当たっては慎重な配慮が必要であるという規定になっているところでございます。
  35. 時崎雄司

    時崎委員 時間が参りましたので終わりにしますが、法制局も認めた文章だというけれども、少なくとも、環境基本法をつくって、あの文章がぐあい悪いからすぐ直そうということにもならないと思うのですね。どうですか、大胆にこの文章をもう一度法制局と相談して日本語にしたら。これは日本語じゃないよ、本当に。大学の先生に点数つけてもらったら何点つきますか。経済措置として二十一条の前に入れてなければ別ですよ。一項はちゃんと経済措置なんですよ、助成については。ところが二項にいったら、やるのかやらないのか、どうなのかといったら、さっぱりわからぬということです。それなら初めから調査研究だけにしてしまえばいいじゃないですか。これはもう全然文章おかしいですよ。もう一度これは、出してしまったというあれにこだわらずに、意をきちっと表へ出せるような文章に直してはいかがですか。それだけ申し上げて、時間ですので終わります。ありがとうございました。
  36. 原田昇左右

  37. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 環境基本法が制定されることになりまして、期待してきたことがたくさんございました。開発優先で自然の保護が十分されてこなかった、大きな公害を巻き起こすという劇的な経過があって、それを行政側やあるいは市民の力で変えてきたという歴史がございます。すべての人たちが公平な役割を担うためには一人一人がどんな力を持たされているのか、市民の参加ができる仕組みが何としても大切だというふうに私は考えます。  ことしの一月、アメリカを訪ねることができましたが、そのときに、環境派のゴア副大統領の部屋も訪ねることができました。その中で、副大統領が書かれた本なのですが、草の根の現場の声を聞くような民主的な強い政府をつくっていくことを世界じゅうに提唱したい、こんなふうに著書に書かれてございまして、まさに私たちの目指すものではないかというふうに感じたわけです。そして、欧米の環境法制の発展の歴史を見てみましても、国民の権利をどうやって認めるかが大切である、各自治体や各州条例ができて、そして確かに長い期間がかかりましたけれども環境権を認めて環境の保全がなされてきたということを私たちはしっかりと学びたいというふうに思っております。  それでは、初めに環境アセスメントについてお伺いします。  さきの環境委員会でアセスメントについて、環境庁は、現行制度見直し法制化を含めて検討していく趣旨のお答えをなさっております。私どもはこの基本法の中にアセス制度化が盛り込まれていなかったことが非常に残念に思いますし、また失望している国民も非常に多いと思います。そこで、現行制度についての問題点をお話しして、現実にこの問題をどうするのか、見直しに入って結論が出るまでの間、基本法があっても環境の保全が図られないのではないかという心配についてどうお考えになるのか、質問していきたいと思います。  まず建設省の方にお伺いしたいと思います。  先日の委員会で、圏央道のアセスメントの中で逆転層についての配慮がなされていないという指摘をいたしました。それによって評価がまるで違ってくるわけなのですが、この点についてはどうお考えになられますでしょうか。
  38. 奥野晴彦

    ○奥野説明員 お答えいたします。  御指摘の逆転層は放射冷却や風速などの気象条件によりまして発生し、逆転層が発生すると、汚染物質が拡散しにくくなるなどの現象が生ずるというふうにされておりますが、その具体的な発生あるいはその影響ということについて予測することは現状では困難な状況にあると認識しております。  私ども大気汚染の評価に際しましては、当該道路を走行いたします自動車からの影響に加えまして、当該地域全体からの影響もあわせて評価する、年平均値で評価するという手法をとっておりますが、このうち、当該道路からの影響を予測する場合に用いる予測式に係る係数につきましては、実測値や資料の解析の結果に基づき定められたものでありまして、気象条件による影響も反映されておる、逆転層の影響もその係数に反映されており、予測値に反映されているというふうに考えているところでございます。  また、当該地域全体からの影響については、当該地域で実測されましたデータまたはそれに基づく将来予測値を基本として行っておりまして、この値にも逆転層の影響を反映されているというふうに考えております。  このように、大気汚染の予測評価に際しては、当該地域の実態を極力反映するように努めているところでありますが、今後、逆転層の影響について科学的知見や各種のデータがさらに蓄積されてまいりますれば、地域の気象条件等についても一層的確に反映できるよう予測評価を行っていくこととしたいと考えております。
  39. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 それでは次に、どんどんと進めていきたいと思いますが、先日、私が公聴会のシステムがとられていないというふうに指摘しました点で、説明会をやっている、中には延べ一万人もの人に聞いたものがある、現状は十分であるかのようにお答えをなさっているわけなんですが、事業によって説明会をやる時点が異なっていたり、あるいは一方的な説明で終わったりしていることがたびたびあるわけなんです。  一万人以上の人たちを対象にしたということは、いわば回数を重ねた、つまりコンセンサスが十分とれなかったということも考えられるわけなんですが、先ほどの圏央道の場合にしましても、横浜で無人の説明会が開かれたということがありましたね。このように、公平さあるいは十分なコンセンサスという点で、私は肯定的に考えられないと思いますが、これについてはどういうふうに思われますでしょうか。
  40. 澤井英一

    ○澤井説明員 御説明いたします。  ただいま例えば回数が多いことはコンセンサスがとりにくいことの逆のあらわれではないかというような御指摘もございましたが、大規模な事業になりますと大変多くの会場で延べ多くの方々に説明申し上げる、こういうことと私ども理解しております。  いずれにいたしましても、現在のアセスメント手続の中では、住民意見を反映するという観点から、公告とか縦覧、説明会の開催住民意見提出、さらにその住民意見を知事あるいは市町村長にも送付申し上げまして、そういったことも踏まえてまた知事から御意見をいただく、こういう対応をとっております。この結果、必要があれば環境保全対策を講じていくということで、こうした一連の手続によりまして、住民意見の反映の観点から現行制度は所要の機能を果たしているというふうに考えているところでございます。  今後とも、この知事との連携ということが非常に大事だと考えておりますが、そういった連携のもと住民意見の反映を図りながら的確にアセスメントを行っていきたいと考えております。
  41. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 今ので十分なコンセンサスがとられたというふうにお考えですか。
  42. 澤井英一

    ○澤井説明員 事業によりまして地域住民の方々との関係も具体的にはいろいろなケースがあろうかと思いますが、私ども、いずれにいたしましても、十分に地元の方々あるいは関係公共団体と調整をして事業をやっていくということを基本姿勢としているつもりでございます。
  43. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 それでは次に、きのうの公聴会でも何人かの方から指摘をされておりましたが、アセス準備書の段階と実際の実施の段階では事業内容が変わっている場合が多い、準備書と違う工法がとられていることがあって後追いができないということについては、どういうふうに思われますでしょうか。
  44. 澤井英一

    ○澤井説明員 ただいまの御質問は、アセスメントの過程でさまざまな意見が出された場合に、それに応じていろいろな対策を講じた後どうするかという御質問理解いたしますが、アセスメント実施に際しましては、私どもこれまで幾つかやってきておることもございまして、そういった経験や知見も活用いたしまして、環境保全上必要と考えられる対策をあらかじめ含めてまず準備書を作成いたします。この準備書について、知事、関係住民等の意見を聞きまして、その意見を踏まえまして評価書を作成する、こういう手続をとっております。過日も申し上げましたとおり、こういった手続のために通常一年近くの期間が必要となっております。  なお、直接の事柄ではないかもしれませんが、アセスメントにつきましては、例えば項目によっては経験の積み重ねによって次第に明らかにしていく、そうせざるを得ないようなものもかなりございますので、一たん行ったアセスメントを事後的にフォローアップするということはアセスメント一般の精度を高めていくという意味でも非常に重要だと考えております。こうしたことから、建設省といたしましては、公共団体の協力も得まして、事業実施後の環境状況の把握についてもさらに努力してまいりたい、こう考えております。
  45. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 その内容についてですが、予測項目にも不備が問題になっておりまして、その一つに、ぜんそくや気管支炎の健康被害の原因として浮遊粒子状物質が心配されておりますが、アセスメントの予測評価にこの浮遊粒子状物質が項目に入っていないことは、健康にかかわる影響を論ずることができないと思いますが、いかがでしょうか。
  46. 奥野晴彦

    ○奥野説明員 浮遊粒子状物質につきましては、工場、事業場等の固定発生源、自動車等の移動発生源から排出されるもの、また巻き上げによるもののほか、海塩粒子や土壌等の自然起源のものなど発生源が多様でございまして、科学的、定量的に発生源別の寄与率などを予測評価することは現状では困難な状態にございます。一方、一部の自治体では、当該道路を走行する自動車からの浮遊粒子状物質の濃度について予測するとかの努力、あるいはその前段の寄与率などに関する調査研究というものがなされているというふうに聞いております。  この浮遊粒子状物質につきましては、このような研究も含めて科学的知見の積み重ねを行っていくことが現段階では重要なのではないかというふうに認識をしておりまして、建設省といたしましても、今後そのような科学的な知見を積み重ねていくというふうに考えているところでございます。  なお、環境影響評価の調査項目を定めました建設省所管道路事業環境影響評価技術指針は、「今後の科学的知見の進展に応じて適切な判断を加え、所要の改定を行うこと」としておりまして、この浮遊粒子状物質につきましても、今後そのメカニズムが、発生機構が明らかにされ、具体的に予測評価が可能となれば、アセスメントにおける調査対象として設定していくということも検討していく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
  47. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 次に、数々の意見書の中にもあらわれていると思いますが、アセスの前提となります資料の情報が公開されていない。以前私ども、高速道路の予測交通量の根拠について資料提出いただくのに大変苦労した記憶がございます。建設省は私にもなかなか資料を出さなかったのです。それで、その説明にいらした方が、説明すると大変長くなる、コンピューターで何回も計算する、その数字おわかりになりますかというような表現でもって、それでもよかったら説明しますというような言い方をなさったわけなんですが、実際にそういうふうに詳しく説明していただかないとわからない、つまり住民に大変理解しにくいものでは意味がないというふうに私は思うのですね。  計画の公表にしましても、突然住民に知らされて、短期間で意見を述べなければならないシステムになっている。アメリカの場合でしたら、もう二年も三年もかけて、何十回、何百回と話し合いを重ねてコンセンサスをとる努力、これは住民もするし事業者もするという。その点、現行アセスは非常に不十分だと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  48. 澤井英一

    ○澤井説明員 御指摘のとおり、アセスメント内容につきましてはかなり専門的な分野にわたるものが多いと思います。そういった意味で、アセスメント実施につきましていろいろと専門家の意見を聞くということを私どもやっておりますし、また、住民の方々にも、ただいまの御指摘も踏まえましてさらに御理解を容易にするように、いろいろと説明の工夫なども凝らしてまいりたいと思っております。よく事業のパンフレットのようなものをつくりまして、専門的な内容をできるだけかみ砕いて、おわかりいただけるような情報をお示しするというような努力もしておるところでございまして、今後ともそういった方向で一層対応の充実を図ってまいりたいと考えております。
  49. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 時間を省略してまとめて質問しますが、先ほどの逆転層の評価では、将来予測ということも含めて、データの蓄積をしながらやっていきたいということ。それから公聴会のシステムについては、公告・縦覧をして住民意見に反映させていく、知事にも知らせる、またそれを住民にも知らせるということで努力をしていきたい。また、アセスの後追いができないという点についても、これはあらかじめ準備書に時間が大変かかっている、しかし事後のフォローアップとしてはそういう努力をしていきたい。それから情報の公開を含めた住民のコンセンサスについては、調整をして事業を進めていきたいという説明をなさっておりますけれども、これまでの蓄積が蓄積でありますだけに、どう正当化いたしましても現実にやはり住民から建設省は余り信用されてこなかったというふうに私自身は思うのです。先日のお答えの中でも、計画を中止した例がないのは極力確度の高い案を選ぶ、作成するという努力をしているからだというふうに言っておりますが、これが国民にはなかなか見えてこないわけなのです。わかりやすい情報の公開を含めて住民のコンセンサスを得る努力が必要ではないかというふうに思いますので、そこのところをもう一度確認をしたいというふうに思います。
  50. 澤井英一

    ○澤井説明員 先ほども申し上げましたとおり、できるだけわかりやすく御説明を申し上げ、理解を深めていただくということは、御指摘のとおり非常に重要なことだと思っておりますので、今後とも努力してまいりたいと考えます。
  51. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 きのうの公聴会でも何人もの方から、アセスの質の向上の必要性、保全策でごまかすのではなく、そのときのモニタリングとコンセンサスの必要、生態系に踏み込んだ評価の必要、こういった幾つもの問題点が指摘されました。現行十分機能している、そう言った方は経団連の代表の方だけだったのです。建設省がやることが正しいという発想ではなく、できるだけ早く必要であれば見直していくということが必要だと思いますけれども、そういう場合の対応として、もう一度建設省の方のお答えをお願いしたいと思います。
  52. 澤井英一

    ○澤井説明員 アセスメントにつきましては、その内容の性格からいたしましても、不断に改善を重ねていく、先ほど来科学的知見の積み重ね等のお話を申し上げておりますけれども、そういった性格のものだろうと本来思っております。  これまでも我々なりに努力をいたしまして、例えば河川について水辺の動植物がどういう生息状況にあるか、これは私ども河川水辺の国勢調査と申しておりますけれども、こういった調査を開始したり、あるいは考えられる影響に対していかに効果的な対策を講ずるかということはやはり決定的に重要なことだと思いまして、例えば騒音軽減効果がより高い遮音壁を技術的に開発していくということ、また、生態系との関係でいいますと、道路の構造あるいは河川の護岸の構造、そういったものが生息状況と調和するように工夫をする、こういった改善をこれまでも行ってきているところでございます。  地域の環境の現況を、非常に個性的な面もございますので、そういったことも踏まえまして、さらに今後ともきめ細かな調査や対策を講じていくということで、内容の一層の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  53. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 現行では事業範囲が大変限られておりまして、ここに、昨年十二月八日に菅直人議員が提出された質問主意書とその答弁があります。「超高層住宅の建設においては外的な景観上のストレスや、風害を含めた物理的影響も無視できない問題となっている。とりわけ物理的影響については、可能な限りの事前アセスメントが必要であると考えるがどうか。」こういう質問です。それに対しまして、「法令に基づく手続に加えて御指摘の事前アセスメント実施を義務付けることは必要ないと考えている。」こういうふうにお答えになっておりますが、これによりますと、高層建築物についてアセスは必要ないとあるのですが、この点についての御説明をお願いします。
  54. 浅野宏

    ○浅野説明員 ただいま御指摘ございました超高層建築物等についてでございますけれども、超高層建築物等が建設されますのは、主に、高容積の建設が可能ということで、都市計画の方で例えば商業地域というような形で土地利用計画上位置づけをされているところが多いかと思いますけれども、その問題に対します対策といたしましては、建築基準法に基づきましていわゆる集団規定という諸規制を設けてございます。その中で、用途制限でありますとか建ぺい率あるいは容積率、斜線制限あるいは日影規制ということで、主として周辺の環境に対しますことを考えて諸規制を定めておるわけでございますが、そういう制度の的確な運用によりまして良好な市街地環境の確保ということが可能であるというふうに考えてございます。  これに加えましてさらにアセスメントを行うべきではないかという点でございますけれども中公審等の答申にございます、経済社会情勢の変化ということも勘案しながら必要に応じまして現行措置見直していくことが適当との意見が大勢であったという御指摘がございます。そういう点も踏まえまして、建築物の環境に与える影響というものについての知見の蓄積でありますとかあるいは建築動向というようなものを勘案いたしまして、慎重に検討してまいりたいと思っております。
  55. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 ただいまのお答えの中では、建築基準法では周囲の環境問題にも触れていくということを確認してよろしいわけでしょうか。これは建築家からも数多くの指摘がございます。町づくりという点からいいますと、このことが大変大きな問題だというふうになっておりますので、お願いします。
  56. 浅野宏

    ○浅野説明員 ただいま私どもで集団規定という形で周辺環境等も含めましたものに対します規制をいろいろな形で設けて既に運用してきておるということで、基本的には現在のこの制度でもって適切な市街地環境の確保ができるというふうに考えているところでございます。
  57. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 市民の側からのこれまでの環境問題について十分触れているならば、先ほどの、アセスの必要はない、こういう一刀両断のようなことはないだろうと私は思っておりまして、これよりは一歩進んだようなお答えというふうに思ってよろしいのでしょうか。
  58. 浅野宏

    ○浅野説明員 繰り返しになって申しわけありませんけれども中公審答申等においても、状況変化等を勘案しながら当然見直していくということの意見が大勢であったということがございますので、そういう点も踏まえまして、知見の蓄積と建築動向をあわせまして慎重に検討してまいりたいと思っております。
  59. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 周囲の環境が明らかに変化していく場合の対象事業見直しが今すぐにでも必要と考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  今までのことをお聞きになって、環境庁の方はどのようにお考えになりますでしょうか。
  60. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 今、建設省との間で議論のやりとりがあったわけでございます。私ども環境庁といたしましても、五十九年以来、閣議決定要綱等に基づきまして環境影響評価推進を図ってきたところでございまして、環境庁といたしましては、まず環境影響評価の定着というものを重要と考えまして、閣議決定要綱に基づく環境影響評価の適切かつ円滑な実施というものに常に努力を傾けてきたところでございます。  そういう意味で、アセスメントが信頼性を上げ、なおかつ精度を高めるために私どもはいろいろ努力をしていかなければならぬというようなことから、環境影響評価に係る技術的事項につきましては、専門家、これは学術的な専門家に、地方で実際にアセスをおやりになっている方々にお集まりいただきまして、そういった方々の知見を活用しながら検討を進める勉強会といたしまして、平成三年の十二月に技術検討会というものを設けまして、環境影響評価に係ります技術的事項につきまして幅広い観点から検討をしてもらっているところでございます。  私どもといたしましては、アセスメントというものが先ほど申し上げたような視点から適正に実施されるということが重要であると考えておるわけでございまして、現在やっておりますものにどういう問題があるのか、また、改善すべきところとしてどういうものがあるのかということについて、常にその辺を検討していき、アセスメントが適正に行われるということを期して努力していくべきだというぐあいに考えております。
  61. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 先ほどの御答弁で、建設省も前向きに考えているというふうに、環境保全の視点も持っていこうということを私も感じ取ったわけなんですけれども環境庁、建設省と連絡をとりながら、連携をとりながら、できるだけ早く見直しをしなければならないというものについて進めてほしいというふうに思うのですね。  それで、見直しに着手して何らかの結論が出る見通しはどのくらいなんでしょうか。今のお答えの中でも、アセスを適正に実施をしていきたい、そして、問題があるのかないのか、改善を常に検討していきたいということなのですけれども、その点についていかがでしょうか。
  62. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 建設省の方からもお答えがあったところでございますが、環境影響評価の具体的な実施に関しまして、個別的な措置の動向につきましては、経済社会情勢変化等を勘案しながら見直すというようなことが言われ、そういうことを、今回関係各省がこの法案を作成するに当たって、この答申を熟読玩味したわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、環境庁といたしまして技術検討会というものを開いて勉強しているということは事実でございますが、さらに、このことは環境庁だけではなしに、事業官庁、それから、私どもの役所というものが協力しながら、やはり政府一体となって見直しをしていく必要がある、そういう場を設けながら、私どもは今後、総合的かつ専門的な検討を行う必要があろうというぐあいに考えています。そういう場を形成することをまず手始めにやりながら、それぞれの経済情勢、また社会情勢、また国会審議、またいろいろなところであらわされている意見というものを加味しながら、できるだけ早期に検討しながら適正なものにしてまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  63. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 私は、ずばっと、この結論の出る見通しはどのぐらいあるかということについてお伺いしたかったわけで、その努力の過程というのは今お話しくださいましたけれども、そういう見通しというのは当然あるということですね。
  64. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 あらかじめ何年間と年限を切ってやるというようなことは、お約束することはなかなか困難だと思いますが、私どもとしては、従来から相当勉強を重ねてきた、また検討会も、先ほど申し上げましたように、平成三年の十二月から一応の検討を始めてもらっているわけでございます。そういう検討会の一応の結論が出ましたならば、それをもとに共通の議論を行っていくということも可能になろうというぐあいに考えております。検討会の結論も、早急にはまだ出ないようでございますが、そういう結論を見ながら、私どもとしては、やはりできるだけ早く結論を見てみたいということは考えておるわけでございます。
  65. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 次に、基本計画について伺います。  さきの委員会の中で、閣議決定されたこの計画は、すべての環境政策の上位にあるというお話でした。また、その実際の手続として、中央環境審議会の意見を聞いて全体の合意の上で定められるということでしたが、他の省庁の合意をとる段階でその内容が実効性がなくなったり、骨抜きになってしまったのでは意味がなくなります。きのうの公聴会でも、その担保がないという指摘もなされたと思いますけれども、その点についてはどのような姿勢をお持ちでしょうか。
  66. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私、この問題につきましては、先ほど時崎委員の御質問にもお答えしたところでございますが、この環境基本計画の策定をするということに当たりましては、実は審議会の答申におきましてはそれほど明確な御提言というのは得られなかったわけでございます。私どもは、今後の環境政策政府全体として計画的、総合的に進めるためにはぜひこのような手段が必要であるということを政府部内で議論いたしまして、二十一省庁に上る関係省庁と協議をした上で、政府全体の合意を得て今回法案位置づけ、御提案申し上げているところでございます。  そういう経過から見ましても、この基本計画というものは、政府全体としてそういうことをやるということに合意を見たわけでございますから、今後その策定、実施する施策に関しまして環境に配慮すべきと明確に規定したということで、私どもは、環境政策を進める上に当たっての重要な手段の一つとして位置づけられるということになる、したがって、これから関係省庁におかれましても、ほかに十八条でございましたか、政府は各般の施策を行うに当たっては環境に対する配慮というものをしなければならぬという規定と相まちまして、この基本計画の策定を通じまして政府全体を通じて整合性のある、また計画的、前向きの、実効性ある計画ができるというぐあいに考えておりますし、環境庁といたしましては、そのために全力を挙げて取り組まなければならぬというぐあいに考えているところでございます。  また、その後の実効性に関することにつきましては、この基本計画のもとに各個別分野の施策における計画また行政措置を通じてその確保を図ってまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  67. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 大変力強いお答えだったというふうに思いますが、他の省庁の圧力に負けない断固たる姿勢というか、限りある地球を守るという決意を持って頑張っていただきたいと思いますので、このところを再度長官にお伺いします。
  68. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 岡崎先生の御質問にお答えします。  御質問環境基本計画の実効性を確保するためにどうあるのかということでございますけれども、これはやはり、先ほどの時崎先生の御質問にもございましたけれども政府としましては、今局長答弁されましたように、二十一の省庁にまたがってこれは閣議で調整していかなければなりませんので、その意味においてはそれなりに私は、策定が後退するということはあり得ない、つまり、基本計画を、各省庁意見があるから後退するということではなくて、各省庁に納得できるような形で基本計画をまとめるということが大事でありますので、まとまった基本計画は後退するということはあり得ないという信念を持って全力を尽くす考えでございます。
  69. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 それでは、実際に現実の公害問題についてこの環境計画がどのように機能していくのか、具体的に説明していただきたいと思います。  きのうの公聴会で、篠原先生が、大気汚染ワーストテンのデータを出されておりました。国の基準は〇・〇六ppmですけれども、排ガスワーストテン、四年連続トップが川崎でありまして、〇・一〇二ppm、大変な数字ですね。そして、東京の豊島区池袋、東京江東区辰巳、東京大田区大森、東京江東区亀戸、東京品川区北品川、東京の板橋、神奈川横浜の西区と鶴見区、そして東京世田谷というふうな、これがワーストテンになっているわけなんですが、具体的にはこの地域はどのように改善されていくことになりますでしょうか。
  70. 入山文郎

    ○入山政府委員 大都市の大気汚染の問題につきましては、私ども大変厳しい受けとめ方をしているわけでございます。今先生指摘になりましたような、そういった汚染の特に厳しいところにつきましては、私どもこれからも従来の施策を一層推進していくということで対処してまいりたいと思っております。  一つは、車の一台一台についての規制を強化していくこと、それからもう一つは、電気自動車等の低公害車をこれからも一層普及していくということ、それからもう一つは、いわゆる自動車NOx法の施行につきまして十分に対策を講じていきたいという、この三つを基本にいたしまして進めてまいりたいと思っているわけでございます。
  71. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 わかりました。ぜひ実現をしていただきたい、そのように考えております。  次に、環境教育についてお伺いいたします。  きのうも他の委員の方々が環境教育必要性について何度か質問しておられましたが、だれもがその必要性については疑いのないところだというふうに思います。きょうは文部省の方においでいただいておりますので、まず、環境教育必要性についてどう認識していらっしゃるのかについてお伺いします。
  72. 河上恭雄

    ○河上説明員 環境教育必要性ということでございますが、環境の問題は、そもそも人類の将来の生存と繁栄にとって大変重要な課題である。そこで、児童生徒はこれからの二十一世紀を生きていくわけでございますので、そういった子供たちにこれらの問題について正しい理解を深める、そして単に理解だけではなくて、責任のある行動がとれるようにするということを大きな目標にしてやっていかなければならないというふうに思っております。
  73. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 文部省から教科書のコピーをいただいたのです。これは小学校五年生から六年生、中学生まで、高校生はまだないということなのですが、この環境教育というのはやはり日常の生活そのものに根差したものでなければ意味がないというふうに私も考えているのですけれども、これを見ましたら琵琶湖の洗剤のことについてちょっと触れていました。これは六年生ですね。「びわ湖をきれいにする運動 びわ湖の近くの町では、水のよごれのもとになるせんざいを、できるだけ使わないように、みんなで努力しているそうです。」ということが書いてありますけれども、例えばこういう点についてもどのような実践教育をなさっているのか、御説明していただきたいと思います。
  74. 河上恭雄

    ○河上説明員 学校のカリキュラムというものは学習指導要領というものに基づいて編成されているわけでございます。また、教科書も指導要領に基づいて編集されているわけでございます。この指導要領が平成元年の三月に改訂されまして、昨年から小学校、ことしから中学校、来年から高等学校というふうに、順次今実施に移されているわけでございます。  先生がごらんになりました教科書も昨年から使われている教科書でございますが、指導要領では、例えば小学校でいいますと、環境教育について十分内容の充実を図っているわけなのですが、「国土の保全や水資源の涵養などのために森林資源が大切であることに気付くようにする。」あるいは「環境保全のための国民一人一人の協力必要性に気付かせるよう配慮する必要がある。」というふうに言っております。また、中学校で「自然環境の保全に関する態度が育成されるようにする」というふうな記述がございます。また、高等学校では「環境と人間生活とのかかわりについて理解させるとともに、環境にどうかかわって生きるかについて考えさせる。」こういうふうに書いてあるわけでございまして、要するに、単に知識としてではなくて、子供の態度として、能力として、実践力として身につくような教育をやってほしいということが書かれているわけでございます。  そういう考え方に基づきまして、各学校でも理科とか社会科の中で、例えば子供たちに空き缶とか家庭の牛乳パックとか古紙とか布とか、そういうものを学校に持ち寄らせて、それがどんなふうな量になっているかとか、それがどういうふうに処理されていくのかというふうなことを考えさせ、あるいはまた調べさせ、議論させ、先生の方で教えるというような活動とか、あるいはまた学校の中で、例えば学校の中にある小川などで水中生物を探して、採集したものを飼育させるとか、あるいは中学校ぐらいになりますともう少し程度が高くなりまして、例えば酸性雨について観測をさせまして、クリーンエネルギーについて考えさせる、資料をもとにして調べさせるとか、そういったふうにいろいろな実践的なといいますか、身につくような学習の仕方を工夫してやっておるというのが現状でございます。
  75. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 きのうの公聴会でも、小沢先生がスウェーデンと比較されて、環境教育は目的的であっては意味がない、本来生きていくためには何が必要かということ、また梶山先生は、住民自治こそが環境教育の基本であるというお話をなさっております。  私も、学校の環境教育は、単に授業にウエートを置くだけでなく、今お答えくださいましたように、人間の生活に重点を置いた、そういうことが重要だというふうに考えております。授業のウエートと自然科学中心ではなく、本当の生活の上で実践していくことが一番子供たちの中にも入り込みやすいのではないかというふうに思うのです。こういう点について、教科書だけでなく、環境庁と連携をとった取り組みを模索するお考えがありますか、どうでしょうか。
  76. 河上恭雄

    ○河上説明員 環境庁の方でもいろいろ環境教育に関する予算措置を講じていただいておりまして、例えば研修会でありますとかシンポジウムでありますとか、あるいは各自治体で地域環境保全基金というものが設けられまして、それに基づいて学校教育における指導資料の作成とかシンポジウムとか、いろいろなことをやっていただいております。私どももそういった事業に、例えば教員が参加をするというようなこと、あるいは環境庁サイドでつくられる資料の作成に学校の教員が参画するとかいうふうな形でもって連携を図っております。  こういうことにつきましては、既に平成元年に環境庁と文部省の担当課長レベルで、今後いろいろな事業推進に当たって協力していこう、連携を図っていこうという申し合わせを行っておりまして、それに基づいて緊密な連絡を図りながら進めているところでございます。
  77. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 それでは環境庁に伺います。  現在、環境教育を実践する戦力として、環境教育の能力とノウハウを持った人材の育成が必要と考えられますが、現状はどうでしょうか、予算を含めて十分でしょうか、お答えいただきたいと思います。
  78. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、環境教育推進していくためには、学校、地域、企業といったそれぞれのさまざまな場におきまして環境教育に携わる人材の育成を図っていくことが重要であるというぐあいにどもも認識しているわけでございます。  このため、環境庁といたしましては、ただいま文部省の方からお話もございましたように、地方公共団体環境教育担当職員等を対象にいたしました環境教育研修の実施でございますとか、自治体、学校、民間団体等の環境教育関係者対象とした環境教育シンポジウムといったものを開催したり、さらにはパークボランティア、自然公園指導員などの自然と触れ合う活動を推進する人材の育成等に努めてきたところでございます。また本年度からは、さらに環境教育に関する有識者等の人材バンクとしての機能を有する環境教育データベースの供用開始、近年一部の地方公共団体で取り組みが始まっております環境保全アドバイザー等の人材育成のあり方に関する調査研究といったような、人材育成に関する新たな取り組みを行うというようなことを考えているところでございます。  環境庁における環境教育関係予算といたしましては十四億円、そのうちどれだけが人材育成関係に該当するかということは分類の仕方がいろいろ困難ではございますが、私どもは、人材育成に関する重要性というのは十分認識しております。  また、今年度御可決いただきました地球環境基金におきましても、NGOの人材養成、研修等に関する事業もその対象として取り組んでまいりたいということも考えておるところでございまして、環境に携わる人々の人材育成、育成と申しますとちょっと口幅ったいようなところもあるわけでございますが、そういうことに関しましては十分意を尽くしてまいりたいというぐあいに考えております。
  79. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 基本法にもきちんと明記されておりますので、その裏づけもなければならないということで、実際にその戦力となる人材育成は早急に必要ではないかというふうに思います。  そして、今取り組まれていらっしゃるということなんですが、ドイツの例をついこの間お聞きしたばかりですので申し上げて、質問をしたいと思います。  ドイツのデュッセルドルフで、これは人口規模でやっているわけなんですけれども、化学と生物を必須科目として勉強した四年の大学を卒業した人たちを公務員として行政に雇いまして、そして各地に派遣をする、あるいはミュンヘンなどではごみ相談員として対処しているということで、公務員の配置ということを実際に行っているわけなんですね。そして、すべての清掃局をごみ経済課、つまり経済問題を含めて解決しなければいけないということで、製造物から廃棄までを含めてそういう人材をきっちり育てている。デュッセルドルフでは男性二人、女性二人のそういう公務員を実際に育てているということなんです。  ドイツでは、やはりすべての環境の問題の基本、これは二つあって、教育の見直し環境を守るための規制の強化、ここに重点を置いているようなんですけれども、このように環境行政側から自治体にもNGOにも学校にも、あらゆるところに派遣するシステムをお考えになることはありますでしょうか。
  80. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 人材を派遣するシステムを考えたらどうか、こういう御提言でございます。  私ども環境庁におきまして、現在九百五十名程度の定員しか持っておらないわけでございますが、やはり人員というものは層を厚くしていくということがむしろ私どもは大事じゃなかろうかというぐあいに考えまして、そういう視点から研修でございますとかシンポジウムでございますとかいろいろなことをやってきているわけでございます。手持ちといたしましては、私どもは教育専門官という担当官も置いておりまして、方々に行きましてシンポジウム、また研修等に派遣しているところでございます。  人員の余力というものはそれほどございませんですけれども、御指摘になったようなことはやはり環境教育に関する施策の視野の一つとして私どもは考えておくべきことだというふうには認識しております。
  81. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 文部省はこのような計画をどのように思われますでしょうか。
  82. 河上恭雄

    ○河上説明員 文部省は、学校教育の充実という観点に立ちますと、教員の環境教育に関する指導力を高めるということがまず基本であろうと思います。そういう意味で、教員の研修に力を入れてまいりたいというふうに思っております。
  83. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 ぜひ新しい発想に立っていただいて、予算をきちんと確保して、両者で連携をとりながら取り組みをしていただきたいと思います。  大臣大臣がお書きになられました「永遠の心を求めて」という御本を拝見させていただきました。「孔子とその学問」と題するこの中で、一本の草木に触れて、全体的な生命力が種や根に含まれて、それが陰と陽のエネルギーによって、陰は根の生命力となり、陽は発動して芽から幹となり、さらに枝葉へと分化して花開いていくことがうなずける。また、万物を創造し育てる働きは天命によるものであり、万物の中で代表できるものは、山でもなく川でもなければ草木でもない、一番自然らしくない人間が実は天命に従って最も自然を代表するものであるというふうにお書きになっておりまして、人間も生態系の一部であるとする認識がこの中には明確にされております。  私たちも、本当に自然の子として他の自然も侵すことなく営みを続けていきたいというふうに思いますけれども大臣のこの教育に関することに関して、意気込みを短くお願いします。
  84. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生から御質問をちょうだいしまして、特に先生環境教育が非常に重要であるというお考えに基づいて数々の御質問に取り組まれたことは、大変私は、むしろ私の方で改めて感謝しなければいけないのかなという気持ちでおります。  教育の推進につきましては、文部省を初め関係方面の協力を得ながら進めていくということは先ほど局長答弁したとおりでありまして、環境基本法にもその点を盛り込んでございます。  ただ、環境あり方、取り組み方が、かつての産業型公害、それに取り組む環境ということになりますと、これは一方的な教育で済むわけであります。つまり、あの会社が悪いことをしているということに目がきけば済むわけでありますが、今は都市型であり、一人一人の生活から公害を取り除くことができないという、つまり一人一人の国民、人間が加害者でもあるけれども被害者にもなっているという、このような複雑化した様相の環境事情でございますので、私は教育はその意味からも一層大事になってきていると認識いたしております。  特に、教育の姿というものは、一人一人が相手に対してその効果を求めるということではなくて、まず自分自身に対して私は何がやれるのかという、自分自身の環境に対する責任を自覚するということから教育が進んでいかなければならないという新しい環境時代に入りました。このことを踏まえましても、教育のより一層の重大さというものを認識いたしておりまして、一生懸命取り組みたいと思っております。
  85. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 次に、二十六条の「情報の提供」について伺います。  さきの委員会でも、長官のお答えとして、開かれた環境庁として国民のニーズにこたえていくという大変頼もしい発言がございました。また、八木橋局長の御答弁の中でも、環境の情報というのは環境保全上重要な事柄なので適切に提供してまいりたいとおっしゃっておりますが、具体的にどのような情報を想定しておられますでしょうか。
  86. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境保全に関して情報を提供することの重要性につきましては、前回お答えしたとおりでございます。  そこで、それでは具体的にどういう情報を提供するということを考えているのかという御質問でございますが、環境に関する情報というものはいろいろな局面において考えられるわけでございまして、具体的な情報のすべてを挙げるということは困難でございますが、例として挙げますならば、地域の環境基準の達成状況、これが一つのものになろうかと思います。また、各地の自然環境状況、こういったことも環境に関する重要な情報であろう。環境状況に関する情報ということで、こういった地域また各地の環境基準、自然環境に関する情報というものが一つ挙げ得るであろう。  それから二番目に、これからの社会を循環型の社会にしていく、また持続可能性のある社会を築いていくということからするならば、廃棄物を少なくし、自然から収奪することをなるべく少なくしていかなければならぬというようなことになりますと、リサイクル等の取り組みの事例と、よそでどういうことをやっているか、どういうことをやればそういうことが役立つのかといったような情報、あるいは自然との触れ合いということで自然観察活動の事例といったようなこと、その他環境保全活動の活動状況に関する情報ということもかなり重要な情報のカテゴリーではなかろうかと思います。  そのほか、自然公園等の利用に関する情報とか各種調査研究の成果に関する情報とか、また各種人材に関する情報とか、いろいろなものが考えられるというぐあいにどもは想定しているところでございます。
  87. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 私も、やはり情報は川崎の公開条例のように市民に開かれたものでなければならないというふうに思っております。仮に環境庁の、公開でなくても積極的に提供するということを信じましても、やはりその判断に何らかの客観性が必要だというふうに思っております。その判断に不満があった場合、情報を確かめてみることができないわけですから、オンブズマン的な何らかのシステムが必要ではないかというふうに思いますけれども、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  88. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生の御指摘になりました問題は、提供すべき情報そのものについてどう考えるかという一般的な議論と関連する問題だというぐあいにどもは考えております。  提供すべき情報を客観的に判断するシステムはどうするかということにつきましては、これは行政情報全般にかかわる問題として検討すべきものではなかろうか。こうした問題を含めまして、行政情報全般にかかわる情報公開の問題につきましては、実は昨年十二月に閣議決定された行革大綱において、「これまでに整理された検討課題を踏まえつつ、引き続き所要の調査研究等を進める。」というぐあいにされたところでございまして、まだ結論が出されておらない状況にあるわけでございます。そこで、その調査研究の動向も見守りながら、私どもは慎重に処理すべき問題だというぐあいに認識しているわけでございます。  具体的にどのような情報を提供するかということにつきましては、平成三年に政府が申し合わせました行政情報公開基準というものがございますので、これに基づきまして私どもは適切かつ積極的に行っていくということを考えておるところでございます。
  89. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 アメリカの情報公開というのが大変簡単にできるという情報を入手いたしましたので、ぜひこれからも参考にしていただきたいなというふうに思うのです。  アメリカの情報公開は、だれでもがこれを利用できると定めておりまして、日本人でも公開請求を行うことができる。しかも、公開請求の手続は簡単で、所定の請求用紙に知りたい情報の内容を記載して、アメリカに行かなくても、それを請求先の行政機関に郵送するだけでいいというわけなんですね。しかも、結構時間はかかるけれども費用は安いということで、例えば公開された文書の中で、二百七十ページのものが大体五千三円、ですから大体一枚当たり二十円もかかっていない。もし同じ分量の文書を東京都で入手しましたら、コピー代だけでも一枚四十円もするので、この倍以上はかかる、こういう計算になるんです。国内よりも地球の裏側に回った方が、はるかに有用な情報をはるかに安く入手できるということになりますと、情報公開についても内外価格差があるようだというふうになっておりまして、私たちは情報が本当に簡単に入手できるような仕組みも環境庁にお考えいただきたいというふうに思います。  ところで、私たちは、二十一世紀に向けまして、先ほど局長がおっしゃいましたように、環境保全型の社会へ変革していきたいというふうに思っております。これまで男性主導型の社会で、経済最優先で、効率優先でやってまいりましたのを考えますと、この変革はぜひ女性が主体的に確立していくべきであろうというふうに思っております。  そこで、中央環境審議会、三十九条以下についてのお尋ねなんですが、昨年答申の出ました中央公害対策審議会、自然環境保全審議会の中に、経済界にかかわる方が多数入っております。それは、経済界、利益団体の代表が十二人、約一五%、それに対して女性が八名、一割でございます。さらに言いますと、NGOの代表は一人もおりません。リオ宣言の中にも、女性の役割、若者の役割、創造力の重要性をうたっております。  そこで、この審議会の中に、これからの地球環境を担う若者、女性、NGOの代表を入れていくべきというふうに私は考えております。また、国連の中でも、指導的地位につく女性の割合を三〇%までふやすことが約束事になっておりますが、日本の場合には、女性が活躍できる環境づくりを行うこと、当面国の審議会等へ委員の女性の登用をしていきたいということで、国内行動計画の中で、女性の割合はおよそ平成七年度までに一五%までが目標というふうに書かれておりますが、ぜひこの目標に従ってやっていただきたいと思いますので、前向きの御答弁をお願いいたします。
  90. 森本仁美

    ○森政府委員 ただいまお話しの法案の三十九条以下、中央環境審議会でございますが、審議会の役割はその三十九条に書いてあるとおりでございます。この審議会の役割を十分に果たしていただけるように、これからその審議会の委員をお願いするということになるわけでございます。もちろん内閣総理大臣が任命をされますので、私ども、それを補佐する立場から、適切な人選が行われるように十分やってまいりたいと思いますが、その中で、ただいま先生お話しの女性についての目標値でございます。これはもちろん政府全体としてそういうふうにしようということを定めておるものでございますから、当審議会につきましても、もちろんそれを達成できるように最大の努力をしてまいりたいと考えております。
  91. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 よろしくお願いしたいと思います。  この環境基本法をつくるに当たりまして、まず世界の人々と、また自然と一緒に共生していく視点で考えていきたいというふうに思っております。できました場合には、市民が関心を持ち、声を上げていくこと、市民が監視して具体化していくことが大切であろうというふうに考えておりまして、そのために私どもも努力をしてまいりたいというふうに思います。  以上で質問を終わります。
  92. 原田昇左右

    原田委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  93. 塩谷立

    塩谷委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
  94. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 社会党の各議員がそれぞれの角度から質問をいたしてまいりました。私は締めくくりみたいな立場で十八日の議論を迎えたいというふうに思っていますが、どうしても環境アセスメントのところがもう一息という感じがいたします。私も長いこと環境委員をやってきたものですから、多くの中公審委員やあるいは自環審の委員先生方とも面識がございます。  これらの基本法をめぐっての議論の経過を伺ってみると、アセスメントというのは法制化を主張する人たちが圧倒的だった。あえて申し上げるとすれば、業界の代表とか一部の官庁のOBの皆さんを除けばもう圧倒的多数の人たちが法制化すべきだという意見を述べられた。私は、きょうここで八木橋さんに審議会の中身を全部お話をお伺いするつもりはありません。しかし、そういうものであったということを否定はできないのではないかというふうにお尋ねしておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  95. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 審議会の審議の過程におきまして、環境アセスメントにかかわる個別の制度あり方につきまして法制化をめぐって熱心な議論があったということは事実でございます。しかしながら、環境基本法制の位置づけといたしましては、この答申にございますように、「環境影響評価重要性考え方を盛り込むことが重要」ということが審議会としての御意見でございましたし、また基本法を踏まえて「どのような個別の措置が適当であるかについては様々な議論が」あり、とそのまま書かれておりますが、「経済社会情勢変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置見直していくことが適当」ということになっているわけでございます。
  96. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは確かにまとめの文章ですからそういうふうになっているのかもしれませんけれども、企画調整局長として委員会の審議にかかわってきたという経過からいえば、私が今申し上げたように審議会では法制化をすべきだという意見が圧倒的であったということは、私は肯定しろと言っているのじゃないのです、否定はしませんねと聞いているのです。その点はいかがですか。
  97. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 これは私、重ねて同一のお答えをせざるを得ないわけでございますが、法制化をめぐっての熱心な御議論がございましたことは事実でございます。
  98. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 議事録を持ってくればいいのですけれども、そういうわけにいきませんから、私、しませんけれども、しかし、いきさつはだれが考えたってそういう意見が多かったというのは、幾人かの先生方に聞いてそういう結論でございますので、否定はなさらなかったというふうに私は受けとめておきたいと思います。  それで、審議会にはいろいろな要望書あるいは意見が寄せられたというふうに言われていますが、自治体なんかの意見、もちろん市民も含めてですが、どんな意見が寄せられたかということの中で、特に環境アセスメントに対する意見がどんなものがあったかということをお尋ねしたいと思います。
  99. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、この審議会におきましては、基本法をめぐりましていろいろな団体からいろいろな御意見が寄せられておるところでございます。  私ども役所が承知しております環境アセスメントに関する各界の御意見のうちで主なものを挙げますと、まず環境アセスメント法制化すべきであるというぐあいに意見をいただきましたものといたしまして、例えば連合、日弁連、全国公害患者の会、環境基本法制市民検討委員会等がございますし、もう一つの範疇としましては、基本法環境アセスメント制度の法的根拠を明確に位置づけるとともに、法制化を行う場合には地方公共団体の自主性と実績を尊重すべきである、こういう御議論が知事会から寄せられているところでございます。また、現行制度で十分成果を上げており、現行制度見直しを通じて対処すべきであるとする経団連等の経済界の意見がございまして、この三つの範疇に大体御意見は分けられるのじゃなかろうかというぐあいに考えております。
  100. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 世界各国の環境アセスメントの動向を少し御説明いただきたいのです。私なりに資料をいただいておりますけれども、ちょっとその点について御答弁をいただきたいと思います。
  101. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境影響評価は、環境汚染自然破壊未然防止のために極めて重要な役割を果たすものであるという認識が世界各国ございまして、そこで、多くの国におきましては、やはりそれぞれの国の社会状況経済状況等に応じましてその推進が図られているというぐあいにども見ております。  先生既に御承知のところでございますが、環境影響評価考え方法律上明らかにされましたのは、一九六九年に制定されました米国の国家環境政策法が最初ではないかというぐあいに承知しているわけでございます。その後、環境影響評価はほとんどの先進国及び多くの途上国において制度化されてきております。現在、環境影響評価法を持つ国といたしましてはカナダ、ドイツ等がございます。また、環境の保全に係る一般的な法律において環境影響評価手続等を定めている国として米国、フランス等がございます。そのほか、イギリスにおいては都市計画関係の法体系の中で環境影響評価が行われているなど、環境影響評価制度化については国によってさまざまなアプローチがとられているというぐあいにども承知しております。
  102. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今八木橋さんが各国の政治経済状況に応じてというふうに言うのですが、今御指摘をいただきましたように、アメリカは言うまでもありませんが、カナダ、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、それぞれ日本で言う閣議決定などということではなくて、明らかに法律上裏づけを持った、つまり制度としてあるということも私なりに勉強させてもらいました。  その上に、例えばOECDの環境担当閣僚会議、重要な公共及び民間事業環境への影響の分析に関する理事勧告もございます。また、その後のOECDの環境に重要な影響を与える事業評価についてのいわば決定というものもございます。その上にさらにEC、ヨーロッパ共同体の環境影響評価指令というものがございます。これは御案内のとおりでございまして、かなり詳細に各国に対して一つの指令という形で行われ、しかも対象事業がきちんと定められているという状況にありまして、世界の各国、特にサミットの参加国はほとんど環境アセスメント法制化しているということだけはお認めいただけるだろうというふうに思うのです。  そこで私は、もし日本だけが閣議決定というふうな形でいますと、それは環境に対する公平なあるいは公正なコストというものを支払っていない日本という批判を免れないというふうに思いますので、そういう点でどんなふうに受けとめておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  103. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 開発事業等の実施に際しまして事前に環境影響評価を行うことは、環境汚染未然防止を図る上で極めて重要であることは言うまでもないところでございます。そこで、政府におきましては、五十九年に閣議決定によりまして、国の関与する大規模な事業につきまして統一的に環境影響評価実施することとしたところでございます。この閣議決定要綱に基づく環境影響評価は、環境汚染未然防止を図るという観点からその役割を果たしてきていると私ども理解しておりまして、そういった意味で、対象事業に関して他国と同様に適切な環境保全対策を実施するためのコストは事業者が負担しているというぐあいに私は認識できるのではないか。ただ、やり方が、法制化によるかよらないかというところの違いはあるわけでございますが、実際には、環境アセスメント実施しているということにつきましては、コストは支払っているというぐあいに考えるわけでございます。  今回、環境基本法案においてこういった環境影響評価重要性考え方を法制的に位置づけたということでございます。そこで必要な措置を講ずると明確に規定しましたことによりまして、今後さらにアセスメントの充実強化に私どもは真摯に取り組んでいくということになりますので、そういう意味におきましても、諸外国からコストを支払っていないのではないかということに対する御批判ということは私どもはないというぐあいに考えているところでございます。
  104. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 じゃ、伺いますが、閣議決定アセスメントは幾つあり、そのうちの環境庁長官意見を聞かれた、つまり合議を求められた件数というのは何件ですか。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 平成四年度末現在までに閣議決定要綱に基づいて環境影響評価手続が終了した件数で申し上げますならば、二百十二件でございます。  平成四年度末現在、このうち環境庁長官意見を述べた事業といたしましては、十一件、例えば、東京湾横断道路、都市高速道路中央環状新宿線、川崎縦貫道路、第二東名・名神高速道路七区間、京都高速道路ということになっております。
  106. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 二百十二、その件数が長い間の閣議決定アセスの数。それ自身ももうめためた少ないのですけれども、そのうちの十一件だけしか環境庁長官が合議にあずかっていないというようなことになれば、このアセスって一体何だろうか。これが、今八木橋さんがおっしゃったように、国際的にも通用するアセスメントでございますといって胸張って通れるだろうかということは、世の中の人がわかってくれば、だんだん一体どういうことなんだと言われますよ。率直に言って、ブラジルのサミットでも、日本はアセスをやっています、ちゃんと制度を導入いたしましてやってますといって胸張ってレポートを出していました。私もまあそう思いました。だけれども、中身は、実態はこういうことなんです。  これは、国際的にこの日本の制度というものが明らかになったら、それはちょっと通用しませんよ。その点はぜひ皆さんももうちょっと謙虚に、あるいはもっと誠実に受けとめてほしいなというふうに思うのです。そうでないと、何か、今までやっておりますから結構でございますという議論になってしまって、これではやはりいかがなものかと思います。だから、環境庁長官がかかわるということが当たり前のこととして位置づけられる、そういう制度化というのはどうしても必要だと私は思います。  そのことはその後からまたお答えをいただくことにして、この前の環境影響評価法案が、地方自治体の段階での環境影響評価書をつくる仕組みであったわけですが、これは、環境アセスメント運用というのを地方自治体に大幅にゆだねるという考えによるものであろう、私どもそう承っておりましたが、そのように理解していいですか。
  107. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 かつての環境影響評価法案におきましては、関係地域の決定や準備書評価書の公告縦覧等手続の進行管理の事務を都道府県知事に機関委任し、知事中心手続としてその適切、円滑な実施を期するということとしておったわけでございます。一方、現行閣議決定要綱では、その性格上これらの手続を知事に義務づけることができないということから、環境影響評価事業者みずから行うものという原則に立って事業者中心手続として仕組んでおったわけでございます。  知事中心手続にするか、事業者中心手続にするかは、一つの政策判断であるわけですが、現行閣議決定要綱についても、知事や市町村長理解協力は十分得られておりまして、手続の進行が円滑に行われているところでございます。住民関与や関係地方公共団体や許認可行政庁の審査等と相まって、環境汚染未然防止観点からは適切に実施されてきているのではないかというぐあいに考えております。
  108. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 聞いていることと違ったことを答えられては困るのですよ。この前の法律というのは、地方自治体にいわばアセスメント運用というものを大幅にゆだねていくというところに精神があったのでしょうと聞いているわけです。それについてお答えいただきたいと思います。
  109. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 御指摘のとおりでございまして、環境影響評価法案では、住民に近いところにございます都道府県知事に機関委任するという趣旨で、知事中心手続を進めるという趣旨でそれは行われておりました。
  110. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それと閣議決定方式を結びつけるような答弁をなさらなくて結構だと私は思うのです。  ただ、問題は、きょう恐らく時崎さんが午前中に質問なさったと思います。私もこの前質問をしたとおりの環境庁の企画調整局の監修によるところの法律閣議決定アセスとの問題点というのは依然として残っているわけでありまして、これは企画調整局長もお認めになったところであります。だから、閣議決定の問題点は残っているなということを指摘しておきたいと思うのです。  せっかくですから、自治省にお越しをいただきました。今企画調整局長から御答弁がありましたように、この前国会に提案された環境影響評価法案というのは、規模の大きい事業法律対象にする、法律対象になってないものについては自治体が条例を制定してそれで対応するという考え方に立っていたというふうに思いますが、その後、条例がかなりふえているわけですけれども、そういう理解をしておられるのかどうか、自治省の御見解をお伺いしたいと思います。
  111. 中川浩明

    ○中川説明員 お答えを申し上げます。  環境影響評価いわゆる環境アセスメントにつきましては、ただいまも先生指摘のようにかなりの地方公共団体で現在実施をされておりまして、条例につきましては四つの都道県及び政令指定都市で条例が制定されている実態にございます。各種の事業実施する前に環境アセスメント実施することは、公害の防止、自然環境の保全といった観点から重要であると考えられますので、地方公共団体が独自の判断によりまして積極的に対応していくことが基本的には望ましいと考えております。  ところで、環境影響評価につきまして、環境影響評価法案の際に議論がございました。仮に法律手続規定された場合についてのお尋ねでございました。法の趣旨環境影響評価を統一した手法により行うことにあり、またその手続については、一般的に地域的な特性が認められないことが多いことから、その対象事業につきましては手続を付加すること等を条例で制定することは原則として困難であると考えられますが、御指摘のように、法律対象事業以外の事業対象とする条例を制定することは、環境アセスメントについての必要性等を勘案した上で地方公共団体において適切に判断されるべきものと考えているところでございます。
  112. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、アセスの一番身近な地方自治団体がその状況に応じてアセス運用というものをしていくという、かなり幅広い権限が与えられるということは、基本的に大事なことだろうというふうに思います。その点で、この前の法案がそういう精神にのっとって提案をされたというふうに受けとめたいと思うのであります。  それで、建設省と運輸省にそれぞれお尋ねをしたいのですが、アセスというのは手続面と技術面があるわけです。技術面について閣議決定要綱に基づいて行っている、これは建設省ですが道路、それから運輸省は飛行場などについて、これは特定できない、もうちょっと広がるかもしれませんが、国が環境アセスメントを行うに当たって、地域の自然的、社会的特性に応じた調査、予測、評価をどんなふうに行っているのかという点についてお答えをいただきたいと思います。
  113. 奥野晴彦

    ○奥野説明員 道路の関係についてお答えいたします。  閣議要綱に基づいて実施しております建設省の所管道路事業に係る環境影響評価につきましては、建設省所管道路事業環境影響評価技術指針に基づきまして調査、予測、評価を行っているところでございます。この技術指針では、調査及び予測に際しては、地域の特性に応じ必要な範囲及び内容の調査、予測が行われるよう配慮することとしているところでございまして、例えば調査予測項目の設定に当たりましては、地域の住居等の状況や自然環境状況等を勘案するとともに、さらに地方公共団体とも調整を行い、必要な事項については、技術指針に定めのない項目も含め調査を行うなど、地域特性に応じた項目を設定しているところでございます。  また、調査、予測、評価実施に際しましては、地域の自然条件等に通じた専門家の御指導を仰ぐなどして行っているところでございます。さらに、予測に用いる条件、例えば大気汚染の予測に当たっては当該地域の気象条件を踏まえた予測を行うなど、地域特性に配慮しているところでございます。  今後とも、環境影響評価実施に当たりましては、地方公共団体とも調整を図りながら、地域の状況を適切に反映しつつアセスメント実施してまいる所存でございます。
  114. 坂井利充

    ○坂井説明員 お答え申し上げます。  飛行場の関係でございますが、昭和五十九年に閣議決定されました「環境影響評価実施について」に基づきまして、昭和六十一年に飛行場に係る環境影響評価指針というものを定めているところでございます。この中で調査、予測、評価について定めておりまして、例えば調査につきましては各種資料、文献等によるほか、必要に応じ現地調査を行うことにより地域特性を把握する、また評価に当たりましても、例えば公害の防止に係る項目等につきましては、環境基準と地域類型の指定など考慮して評価するというようなことをしております。  なお、これらの調査、予測、評価作業、これを行うに当たりましては、必要に応じ地域の実情に通じました地方公共団体とか学識経験者等の協力を得て行うこととしているところでございます。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう一遍建設省、運輸省を煩わしたいと思うのですが、今も御答弁いただきましたように、地方自治体が地域の自然的な条件あるいは社会的な条件というものを考慮してアセスメント条例を持っている場合、閣議決定という方式には法規範がないというふうに申し上げても差し支えないと思うのですが、地方条例手続閣議決定よりも優先させるというふうにすべきだと思いますが、その点についてのお考えはどうでしょうか。
  116. 澤井英一

    ○澤井説明員 閣議決定要綱条例との関係でございますが、現在の閣議決定要綱では、公共団体の環境アセスメント施策について「要綱との整合性に配慮するよう要請する」という旨が記述されております。一方、条例によってアセスメント実施しております公共団体の例を見ますと、国の事業アセスメント手続につきましては、国と公共団体との協議によるなどの定めがあるところでございます。  いずれにしましても、国と公共団体のアセスメント運用につきましては、こうした格好で両者間の整合あるいは調整が図られるように措置されているというふうに理解しておりますので、今後とも御指摘の地域の特性も十分踏まえまして、公共団体との連携を十分に図り、的確にアセスメント実施してまいりたいと考えている次第でございます。
  117. 柴田範幸

    ○柴田説明員 お答え申し上げます。  先ほど建設省からお話がございましたように、閣議決定の中で、「この要綱との整合性に配慮するよう要請するものとする。」というふうにされております。現在、要綱に基づく環境影響評価条例によるそれとは、言ってみれば、併合しまたは融合した形で実施されているところであるというふうに考えてございます。したがって、今後ともこうした閣議決定趣旨に沿い、地方公共団体との連携を図りつつ、的確なアセスメント実施に努力してまいりたいというふうに考えております。
  118. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この点は、建設省に申し上げますが、川崎の場合、御案内のように縦貫道の一期工事が今着手をされております。これは環境庁に合議を求められて、環境庁の方は、沿道の要するに何というのですか、特にNOxに対する排気装置というか、そういう防除設備をちゃんとつけるように、脱硝装置をちゃんとするようにということで注文をつけている。では、脱硝装置が本当にこれから対応できるようなものができるかというと、技術的にも非常にまだ問題があるところだろうと思うのです。  そこで、私は、これは八木橋企画調整局長に前にお答えをいただいたことがあるが、例えば川崎の縦貫の場合に、事前のアセス、それから工事中のアセス、あるいは事後のアセス、こういうものを総合的に考えなければ本当のアセスの役割は果たせないとお尋ねをして、そのとおりに考えているというふうに八木橋さん、お答えになりましたけれども、その点はそのとおりに受けとめてよろしいですか。
  119. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生、この前そういう趣旨の御質問がございまして、私は、アセスというのは環境影響評価未然に防止し、その効果を達成するという趣旨から見れば、そのように行われることが適正であり、また望ましいというぐあいにお答えしたことは事実でございます。
  120. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、今の論理で言うと、実は建設省でも運輸省でもそうなんですが、事前のアセス、それから最中、それから事後というところまでカバーしてないのですよ。文字どおり事前なんですね。だから、そういう点で非常に大きな不備がある。このことはもう各委員指摘をされていることだし、私自身も何回か質問をしてきたところです。  さっき運輸省も建設省も、実施要綱との整合性に配慮することを要請しているというふうに言うのだけれども、この環境庁の解説によっても明らかなように、法的に整理できないがゆえに要請をしているのです。そこで何とかして合議を得たいということで、整合性を得たいということで国と地方公共団体、話をするというのだが、そういうときは、国は閣議決定要綱では法的裏づけというのは持ってないのですから、やはり条例が優先だということを知っていただかないと、これは川崎の縦貫一つとってみても、それでは川崎がいろいろ求めている課題について、国はそんなこと知らぬよという話になったときにはどうなるのですか。住民はその道路を閉鎖してくれ、そんな厳しい場面ということだって想定できないことはないわけですから。今の閣議決定の方式で建設省さんが今縦貫をやるにしても、まあやっているよ、今、私どもも決してそれを妨害しようとは思っていない。しかし、意見が合わなくなったときやなんかのときにどうするのですかという議論になると、条例が優先だということをまず確認しておいていただきたいということです。  同時に、今環境庁からもお話があったように、事前、最中、事後ということになれば、今の閣議決定の方式では不十分だよ。調子よくいかれていますよというわけにはいかぬだろう、あなたが答弁なさるように。という具体例を申し上げて、御答弁をいただきたいと私は思うのです。
  121. 澤井英一

    ○澤井説明員 条例要綱との関係、それから、事前、事業中、事後、この二点のお尋ねと思いますが、前者の条例要綱関係につきましては、私ども、基本的に国と地方関係でございますので、要綱対象事業であれば、その要綱の中でも、国と関係知事が十分にいろいろと調整をして進めるということになっております。御指摘のような優先劣後という関係、そういう場合があるかどうかわかりませんが、そういう関係よりは、むしろ、よく協議をして、調整を図って進めるということでぜひ事業推進したいというふうに考えていることが一つでございます。  もう一点御指摘の、事業中あるいは事業実施してからということにつきましては、まさに私どもも御指摘のとおりと考えておりまして、特に五十九年の要綱によってアセスメントを行った、そうした施設が、これから完成していくものがほとんどでございまして、いわば本格的な供用段階にこれから入っていくということで、そうした供用段階におきますいろいろ環境状況を把握していく、場合によったら必要な対策を講じていくというフォローアップはこれからますます重要になるという前提のもとに、そういった対応を充実してまいりたいということをあわせて考えております。
  122. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 では、ちょっと端的に建設省と運輸省にお尋ねしてみますが、社会経済情勢変化等を勘案した検討を開始するというふうに、現行制度見直しということを含めて指摘をされているわけですが、その社会経済状況の変化というのは何ですか、皆さん方にとっては。
  123. 澤井英一

    ○澤井説明員 社会経済情勢変化等を勘案していろいろと今後対応していくということにつきまして、現時点で、どういうものが社会経済情勢の変化に当たるかということは、具体的になかなか申し上げにくいわけでございますけれども、これまでも、私どもといたしましては、アセスメントを、いわばこれでいいんだ、これでもう未来永劫いいんだというふうに考えていたわけではございませんで、特に経験的に対応しなければいけない面も多いものですから、幾つかのアセスメント実施例も積み重ねまして、そうした経験なり知見を蓄積していく中で、アセスメント実施内容、例えば予測の精度を向上するとか対策の効果を上げるとか、そういった方面での努力をしてまいったつもりでございます。  今後とも、基本法趣旨を踏まえまして、基本法環境影響評価規定が入ったということを私ども建設省といたしましても大変重く受けとめております。そういったことを踏まえまして、また、アセスに関する技術の向上あるいは実施により得られました知見などを勘案しまして、いわば不断に見直しをしていくということを基本的に考えているところでございます。
  124. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 では、端的に伺います。  社会経済情勢変化等を勘案して現行制度見直しを図るということの中には、アセスメント法制化ということも含まれているというふうに認識を持っておられるかどうか、それをお尋ねしておきたいと思います。
  125. 澤井英一

    ○澤井説明員 建設省の立場といたしましては、ただいまも申し上げましたとおり、アセスメント実施する立場から、これまでの経験や知見を踏まえまして、閣議要綱アセス内容の一層の充実を図ってまいりたい、この的確な実施を進めていくということで対応してまいる所存でございますが、政府部内で法制化議論が出ますれば、建設省としても十分に議論を尽くしてまいりたいと考えております。
  126. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 建設省にだけ申し上げて恐縮なんですが、社会経済情勢の変化ということを簡単に申し上げることはできない、いろいろ要素がある、こうおっしゃる。どういう認識を持っておられるのだろうかなと正直なところをお尋ねしなければならぬ気持ちでいっぱいです。つまり、この委員会の審議を通しても、あるいはこの基本法がつくられていく過程でも、まさにアセスメント法制化というのは最大の課題、テーマだったわけですね。やはり国民から信頼をされるということが大事だということを皆さんも口を酸っぱくして言っていらっしゃる。  しかし、現実には何かそこのところが国民から責められている。ある人に言わせれば、今度の基本法というのはいろいろな意味で立派な、前向きな要素を持っているけれどもアセスのことがあいまいであるがゆえに画竜点睛を欠くものだという言葉がある。それは非常に強い意見だ。それだけ建設省にしても運輸省にしても、通産省というふうに言っていいのかどうかは別にして、事業官庁がやっていらっしゃること、それに対する国民の信頼が非常に厚くないということを考えてみると、これは申しわけないけれども、今のようなネガティブな、政府全体の方が法制化をお考えになるときには建設省としても対応していきたいというような形ではなくて、やはり道路をつくり、そしていろいろな、国民にかかわりのあるインフラストラクチャーをつくっていくという状況のときには、環境問題をもうちょっと建設省が前に出て頑張ってもらいたいものだな、こう思うのです。  この点は、今建設省から御答弁をいただきましたが、通産あるいは運輸も、現行制度見直しということの中には環境アセスメントの法制が入っているというふうに受けとめていらっしゃるのかどうか、その端的な答弁だけいただきたいと思います。
  127. 柴田範幸

    ○柴田説明員 お答え申し上げます。  経済社会情勢の中には、環境の全体的な動き、そういうものに対する国民の感情それから認識、そういったいろいろな要素が含まれていると思います。見直しの中身につきましては、その結果としてさまざまな要素が含まれ得るというふうに考えておりますが、法制化必要性についてもそれは含まれ得るというふうに考えております。
  128. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  「環境基本法制のあり方について」の答申、これは直接的には環境庁長官に出されたものと考えるわけでございます。しかしながら、その中で「経済社会情勢変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置見直していくことが適当との意見が大勢であった。」こういう中で、先生は、法律も入っておるかというお尋ねかと存ずるわけでございます。  この文章の文字面に法律ということは入っておりませんけれども、「必要に応じて」ということでございますから、小は技術的な指針の改善から最後は、最後はといいますか、先生の御指摘法制化の問題まで含めて入っているものと私ども理解をしながら承っているわけでございます。
  129. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 清川さん、恐縮ですが、せっかく立っていただいたので、閣議決定要綱見直しだけではなくて、発電所に対する通産省の省議決定だとかその他の環境アセスメントを含めての見直しの検討を行われるという可能性というのはないのですか。
  130. 清川佑二

    ○清川政府委員 発電所につきまして、これは御案内のとおりでございますが、昭和五十二年に「発電所の立地に関する環境影響調査及び環境審査の強化について」という省議決定をいたしまして、そのもとアセス実施のための要綱とか指針を定めまして審査をし、さらに電調審におきまして環境庁長官等のチェックを受けるという万全の体制と仕組みで、十五年間の運用を通して完全に定着してきているものと理解をいたしております。しかしながら、常に不断の努力ということは大変必要かと思っているわけでございます。  したがいまして、先般来環境庁の方からも、閣議決定要綱あるいは個別法案等に基づいて行われているアセスメントは、現状では相応の機能を果たしてきているものと評価されているという点はございますし、私どももそのように自負をいたしておりますけれども、必要に応じまして不断の見直しということは心がけていくべきことというふうに心得ております。
  131. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実は、きょうはCO2の安定化、紀元二〇〇〇年を目指すプログラムのことを実現可能かどうかということをお尋ねしたかったのですが、余り時間がありませんし、これは論争になりますからやめておきますけれども、率直に言って、今度の法律を機会にして、法制化の方向へ各省庁とも一歩前へ足を踏み出す気持ちを持ちつつあるというふうに私は承りました。  実は、皆さん方が一番大事な役割でございますので、私はきょう、私ども議論だけでなくて、ずっとこの委員会の審議を皆さんにお聞きいただきたかったのです。ほとんどアセス法制化議論というものがいろいろな角度から要求されている。このことは単に環境庁にぶつけているだけじゃなくて、実は皆さんにも率直に訴えていることなんだということをぜひ受けとめていただきたかったなというふうに思うわけでございます。  各省庁とも、長い時間でございますからあれしますが、最後に皆さんのいらっしゃるところで環境庁長官お尋ねしておきたいと思うけれども、もうここまで来たんですよ。私ども、及ばずながら、役に立たないかもしらぬが、環境庁がもうぼつぼつ政府一体になって現行アセス見直し作業に手をつけるべきである、それは言うまでもない法制化のことを含めたそういう何かアクションを環境庁がおとりになるという時期ではないかというふうに思いますが、その点についての御判断と御決断を承りたいと思います。
  132. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 環境アセスについての岩垂先生の御質問にお答えいたします。  この委員会に、それぞれの党を代表なさる先生方から、このアセスの問題に大変活発な御議論また御意見を賜りまして、これは重大な参考にしたいと思っております。その御意見の中には、岩垂先生のような御意見もございますし、また日本のようなこういう南北に長い地形のところにおきましては、必ずしも法によって規律するということだけではなくて、現行アセスに対応するやり方に対しても、利点があるのではないかという御意見もございますことも踏まえまして、実は政府としては対応しなければならないと思っております。  しかしながら、今度の基本法の中には、環境影響評価の具体的な実施に関して、将来どのような個別の措置が適当であるかということについては、昨年十月の中公審などの答申における経済社会情勢変化等を勘案しながら必要に応じて見直すことが適当という、そのような中公審の主張を尊重しておる点も一つございます。それからまた、社会情勢の変化とは何ぞやという岩垂先生の御質問にも、それぞれの官庁も答えておりますけれども現行環境影響評価を適正に実施することがまず第一でありますので、それを通じて、どこにどういう問題があるのか、またどういうところに改善すべき点があるのかということも検討しなければなりませんので、これも十分な検討課題にする必要があるとも考えております。  そして、さらに関係省庁協力を得ながら、政府一体となってできるだけ早く経済社会情勢の変化などについての総合的かつ専門的な検討を行って、ただいま岩垂先生の御質問にありました社会情勢の変化とは何ぞやという点も含めまして、総合的かつ専門的な検討を行って、その必要に応じた環境影響評価見直しを行っていくこととなると私は理解いたしております。
  133. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その専門的な検討の場所というのは新しくつくられるのですか、今まで環境庁にある委員会の延長で考えるのですか、それとも中央環境審議会などで考えるべきですか、その点を特定させてください。
  134. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 現段階におきまして、どういう仕組みでやるかということにつきまして、関係者間でまだ話し合ったという段階ではないわけでございます。ただ、私、午前中にお答え申し上げましたように、技術検討会ということを環境庁では持って、今までのアセスメントについて技術的な検討をいろいろ重ねてきているところでございます。これにつきましてある程度の結論というものが見えてきましたら、これは環境庁における検討会ということでやりましたけれども、やはりアセスメントにつきましては政府一体となって共通の認識を持って、問題点についても、こういうことが問題点だということを関係省庁ともども理解する必要があるということでございますので、まずはそういう検討会の結論を得ましたら、そういうことをたたき台にしまして、関係省庁における勉強会を持つということから始めていくことが大事ではなかろうかというぐあいに現時点では考えております。
  135. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境影響評価技術検討会の問題で、ある新聞が取り上げたことについて、担当部局から具体的な御説明をいただきました。しかし、率直に申しますと、討論は、あるいは研究というのはその御説明よりもかなり進んでいるという感じを私は持っています。このメンバーの方々からもお話をお伺いする機会があった。私もそれはきょう言いません。しかし、環境庁がかなりそういう問題について、閣議決定方式の枠内で、その技術の改善についてという二つのフレームはかかっているけれども、二つのフレームだけには済まされないような問題で頭がつかえているということも承知しています。  だから願わくは、今、三月の時点でその後ストップしているわけですけれども、できるだけ早い機会に検討委員会がそれらのことについて方向性を見出すと同時に、やはり各省庁を交えて政府一体となってこの問題の検討を始めていただきたい、そういうある種の予算的な背景も持った機構を発足させていただきたいというふうにお願いをしたいと思いますが、よろしゅうございますか、そう理解して。
  136. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほどもお答えしたところでございますが、環境庁においてだけ勉強しているのでは、やはり私どもは限界があると思っております。やはり事業者また環境サイドからそれをどう見るかということをあわせて両面から、この問題については検討していく必要があるということでございますので、ぜひ私どもは、これがある程度の結論が出ましたら、関係省庁の方々ともども勉強会を持ちたい、そういうふうに各省に提案したいというぐあいにどもは考えております。
  137. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 何年たったらというような話でないように、その点は私どもも期待をしておきたいというふうに思います。  そこで、もう時間がありませんから、温暖化の経済システム検討会の中間報告についての質問をしようと思ったのですが、時間がなくなってしまいましたので、恐縮ですが、加藤さん、御理解をいただきたいと思います。  実は、野党の間でいろいろ今まで、修正項目をどうするとか、あるいはどういう形でそれを附帯決議の中に入れるとかというようなことを含めて相談をしてまいりまして、自民党さんにもそれを呼びかけて、そして本委員会における修正というようなことが可能かどうか、そんな検討を続けてまいりました。今のアセスの問題を除いて、野党間ではおおむね問題点が整理されてきているように思います。  もう時間がありませんから、一つ一つお尋ねをする機会がなくなっちゃったので、まとめて。  一つは、環境の日に関する規定を置くべきではないかということ。一つは、情報の提供の規定があるわけですが、単に環境教育、学習の振興策に限定しないで、広い、開かれた行政としての情報公開を規定すべきではないかということ。三番目は、環境行政の機能の強化を条文で規定すべきではないか。これは、少し立ち入った項目もお手元にお届けしてございますから、もう言いません。四番目、ODAなどの国の経済協力実施に当たって、地球環境保全などに十分に配慮するための適切な措置をとるべきだ。事業者の海外活動に対しても環境保全に努めるようにする、そういう手だてを講ずべきではないか。その次に、グリーンGNPの活用について規定すべきではないか。また、環境基本計画の達成の推進に関する規定を置くべきではないか。最後に、環境基本法の制定に伴う関連法律見直し規定する条文を置くべきではないかという七つの項目が列挙されております。これについて、まとめて御答弁をいただければ大変ありがたいというふうに思います。
  138. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 まとめてということでございますが、それではお答え申し上げます。  まず、環境の日に関する規定のことでございますが、この議論は確かにございました。私ども、法案審査を自民党において受けますときにもそういった議論が提起されたことは事実でございます。  このことに関しましては、私どもの気持ちといたしましては、こういう規定の置き方が、どちらかというと基本法というよりは個別法の段階でそういうものを規定している。例えば、敬老の日が老人福祉法に、体育の日がスポーツ振興法にというぐあいに、いわゆる振興法、福祉法というレベルで置かれているということから、基本法というよりも個別法に置くことが適当かなという議論と、もう一つは、中公審、自環審の答申もと政府案をまとめようというスタンスで今回法案をまとめましたものですから、そういう御提言を中公審から得ていなかったという問題もございまして、こういう規定については置いておらないところでございます。  私どもとしては、そのこと自体においてはそういうことをやるということは意味がありますし、また六月五日というのは国連環境の日ということで定められておりますので、現に環境庁はその日を中心にしまして環境週間ということをやっているわけでございますから、そういう意義につきましては私ども理解しているつもりでございます。  次に、情報提供の規定につきましてでございます。  これは、この委員会におきまして、情報公開として書くべきではないかという御議論、いろいろございました。しかし、私どもといたしましては、法令の用語として定着しておらない、また知る権利との関係からいろいろ難しい問題があって、この問題については今の政府においても、行政改革推進審議会でまだ検討中の段階であって答えが出てないという状況から、そういう表現はとれなかったということでございます。  しかし、環境保全を図る上におきまして、情報を適切に提供するということは非常に重要なことである。御質問趣旨は、二十六条におきまして、教育学習のところに、それから民間活動をやる上におきましてという頭書きが書いてあることによって制約的、制限的に書いているんじゃないかという御疑問だと思いますが、私どもは、そういう意味で書いたのではございません。ほかに例えば、環境白書をやりますということが前の方にございますし、ここの規定は特に教育学習の点におきまして、また民間活動をこれから振興していく上において特にそういったようなことが重要であるという趣旨から、強調する意味におきまして情報の提供を適切にやっていくべきであるという趣旨で書いたわけでございまして、別に制約的にという発想から書いたものではございません。  次に、環境行政の機能強化についての議論でございます。  これにつきましては、行革審からも環境行政について機能強化をすべきであるという検討に関する条項もいただいたわけでございます。今回、この法案に盛らなかったということにつきましては、そちらの方の関係もございますから盛り込みませんでしたが、環境庁といたしましては、私どもはやはり政府全体の環境行政のかなめとしての役割を持っているという自負心と責任感を持っているつもりでございます。そういう意味で、今回環境基本法におきまして環境基本計画というものを中心に据える、また関係各省に対しまして、環境影響のある施策を行うに当たっては環境に配慮するということを十八条に盛り込んだところでございまして、こういう規定もとにして私ども環境行政のかなめの役所としての役割は果たしていくつもりでございます。  それから、国際環境協力推進規定でございます。  これにつきましても何度か御質問いただきました。私どもは、これにつきまして消極的になっている意識は毛頭ございません。ただ、法令上の書き方としましては、相手国との関係もありますことから、配慮または努むべきというような表現をとっているところでございますが、私どもとしては、こういった規定を踏まえ、地球環境保全推進には積極的に努めてまいるということでやってまいりたいというぐあいに考えております。  それから、グリーンGNPの活用についての規定がないということでございます。  これにつきましては、法案第二十九条「科学技術の振興」に私ども規定いたしたつもりでございます。それが活用のところまでなぜ書けなかったかということでございますが、これは、先日参考人の質疑のときにもございましたように、このいわゆるグリーンGNP、また環境指標をどういうぐあいにどう設定するか、それを国民所得統計なりGNPなりにどういう勘定でそれをやったら成功するのかどうかというのは、まだ実は開発段階なわけでございます。私どもは、そういう手法が成功すべく鋭意努力すると同時に、そういう手法ができましたら、それはこれからの持続可能性のある社会、環境経済意思決定の中に同時に持ち込んでいかなければならぬということを関係省庁にもお願いする意味におきまして、これはぜひとも力を入れてやってまいりたいというぐあいに考えております。  環境基本計画の達成につきましては、これは午前中時崎先生の御質問にございました。  推進に関する規定につきましては、個別施策の段階でそういう規定があるということ、マスタープランの段階からそういう個別計画の段階におろしていく必要があるというようなことから、そういう直接の規定は置いておりませんけれども、まさにしかし環境基本計画というものは実効ある政府のマスタープランとしての役割を果たさなければその責務を果たし得ないというぐあいにどもも考えておりますので、これが実効性のあるような計画をつくるべく私どもとしては最大限の努力を払ってまいりたい。世界的に見ましても、余りこういう計画をこういうことでやった例というのはございませんし、私どもとしましても、いろいろとこれから勉強しなければならぬと思いますが、ぜひ先生方の今までの御発言、また御質疑の中で表現されましたようなことを具体化し、また具現化し得るような格好で私どもは勉強してまいりたいというぐあいに考えております。  それから、環境基本法の制定に伴って関係法律見直しをやっていくべきではないかということでございます。  御指摘趣旨につきましては、環境基本法十条の中に、「政府は、環境の保全に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。」というぐあいに規定したところでございまして、これを受けてそれぞれの法律の改正をこれから対処すべきであるし、私どもは、必要に応じてこれから環境基本計画の策定作業を行い、また実行するに当たっていろいろ問題が生じてきたときには注文もつけてまいりたいし、御趣旨の線に沿ってこれからそのための積極的な施策展開については図ってまいりたいというぐあいに考えております。
  139. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう時間がなくなりましたからこれでやめますが、今八木橋さんから御答弁をいただきましたけれども、政党間で今後ともこの法案審議される過程を通して修正なりあるいはさまざまな要望をまとめ上げていきたいというふうに思いますので、環境庁もかたくなにならないで柔軟にひとつ対応をいただきたいということを、これを大臣にもお願いをしておきたいというふうに思います。  で、私は、実は一番最新号なんですが、エコノミストというのが出ておりまして、私の尊敬をする、また長いこと御指導をいただいている鈴木武夫先生が言っている言葉がございます。「ともあれ、環境基本法を「環境憲法」としたいという思いがあるならば、せめて環境権の確立とか、地方自治体の権限の拡大、環境市民団体の活動の尊重——にふれ、関連(下位)法となるべき環境影響評価法、有害化学物質規制法、総合的環境対策補償責任法、製造物責任法などの制定の法的根拠も明らかにしてもらいたかった。」というふうに言っておられる言葉を大変重たい言葉として受けとめておきたいと思います。願わくば、基本法でございますので、その基本法をさらに肉づけする上でそうした個々の法律、子法について積極的な環境庁の努力を期待をしたいものだというふうに思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  140. 原田昇左右

    原田委員長 塚本三郎君。
  141. 塚本三郎

    ○塚本委員 環境基本法審議されるとき、マスコミを通じて国民の中に一番初めに我らに問いかけられるのは、環境税を取ることになるんですか、こういうことが素朴な、これは庶民の中でもあるいはまた事業者の中からも必ず聞かれるんです。  この二十一条には負荷活動という意味で、「適正かつ公平な経済的な負担を課すことによりその者が自らその負荷活動に係る環境への負荷の低減に努めることとなるように誘導することを目的とする施策が、」こういうふうに、このこと自身が広い環境税を意味するのか。何らかの形で負担をすることは、これは当たり前のことですが、その点が実は国民の中によくわからない。私は不勉強ですから今こうせよという主張は持っておりませんが、とりあえずこの基本法を提案された立場から環境税に対してどんな見解を持っておいでになるか、まず最初に伺いたい。
  142. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生承知のように、産業公害とはちょっと趣を異にしました今日の都市・生活型公害、また地球環境問題に見られるような現象というものは、通常やっております事業活動そのもの、または生活そのものから地球に対する環境への負荷が出てくるといったような、その事業活動をやめればいいとか生活そのものをやめればいいということでは片のつかない問題があるわけでございます。そういたしますと、いわゆる規制措置一本やりで環境対策をやっていくわけにはいかぬというようなことから、市場メカニズムを通じて、すなわち環境に悪いような行動につきましては、市場価値を高くすることによってそのような活動をとらないようにするということによって環境に対する負荷を少なくしようという動きが世界的に議論されてきまして、そういうことがあちこちで提唱され、また地球サミットそれからG7等のサミットにおきましても提唱されてきたわけでございます。  そういう一般的情勢の中でこれから環境政策をやっていきます際に、やはりこれからは規制措置のほかに環境教育環境学習、それから民間の実質的な活動の助成ということにあわせて、やはり経済的な手法を用いた手法というものも環境政策の視野の中に入れてくるべきではないかという基本的な認識は持っておるわけでございます。  ただそのときに、それではどういう措置があるかということになりますと、おっしゃられるように地球サミットを中心にしまして環境税という議論が前面に出てしまいましたことから、経済措置ということになりますと即環境税ということにどうも結びついてしまうわけでございますが、経済措置一般としましては、税のほかに課徴金、それからリサイクルのためのデポジットシステムとか、それから排出権を取引するとか、いろいろあるわけでございます。そういったものについて一般的な規定を置いておく必要があるということから、この条文につきましては、非常にわかりづらい、何を対象にして書いているのかということでなかなかわかりづらいという御議論もいただいたわけでございますが、考え方としては、そういった負担を与えることによって環境に寄与していく政策というもの一般を対象にして書いたところでございます。  そこで、先生の御質問は、環境税についてどう考えるのかということでございます。環境税という範疇の中にも、例えばプラスチックの廃棄物を少なくするためにそこに税をかけるというようなものもございますれば、またCO2を減らすために炭素税をかけるというようなものもございます。また、今回アメリカで議論されておりますようなエネルギー税といったようなものもあろうかと思います。私どもとしては、現段階でそういうものについてこれをやるべきだという予断を持って申し上げるわけではないわけですけれども、やはりこれからの世の中、CO2を抑制するために本当にそれが有用であるとするならば、やはりそれについては真剣にこれから調査研究を進めていくべきだというぐあいには考えております。調査研究を進めた上でそれではどうするかということになりますと、そのときには今度は国民の理解協力を得るという、まさにこの条文のとおりになるわけでございますが、現段階においてはまだ調査研究を進める段階であるというぐあいに申し上げてよろしいかと存じます。
  143. 塚本三郎

    ○塚本委員 それで、一般的な問題ではなくして原因者負担ということに重点的に焦点を合わせておるだけで、これからの進展の成り行きによってどうなるかわからないというふうな理解でいいですか。時間が少ないから結論だけ出してください。
  144. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 端的にお答えしますと、これからの調査研究の結果と、それからそれが国民に理解が得られるか得られないか、この二つだろうと思います。
  145. 塚本三郎

    ○塚本委員 次に、よく言われることですが、環境アセスメント制度についてその法制定を一部で主張せられる向きがあります。しかし、日本列島は、先ほど御指摘のごとく非常に長いし、地域によって違う。だから、自治体中心にいろんなことが起きてくることは当たり前ですけれども、国が一律的にいわゆる格好をつけることには無理がありはしないかという意味で、アセスメント法については自治体中心、その地域別に余りにも大きな差があるということですから、これは極めて慎重であり、そしてその場その場における対処が必要ではないかというふうに思いますので、アセスメント法制定とそれに取り組む姿勢について伺いたい。
  146. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 この問題につきましては、先ほど来いろいろ議論が行われているところでございます。これは、法制面というものは早急に取り組むべきであるという御議論と、それからまた先生が御指摘になったように、いろいろ地域の特性なりなんなりがあるので、それを生かしたような制度づくりというものを考えていくべきであるというような議論もございます。実は中公審におきましてもそういうようなことで、現段階においては現行措置を適正に推進するということをまず前提にして、とにかくアセスが大事だということを法制的に位置づけろということで今回の基本法はできているわけでございます。  したがいまして、現行制度、やっております制度について問題があるかないかということを研究することがまず先決であるというぐあいにどもは認識しております。そして、現在やっております制度で問題があるならば、次にそういう方向に進むべきかどうかということを関係者間で一致した認識を持つということがまず先決であるというぐあいにどもは考えております。その際に議論されておりますのは、手続面における統一性ということと、それから基準になるべきことがどうかということの二つの議論があるということはあろうかと思います。
  147. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は、これからの人間生活の中で最も大きな問題は、エネルギーの問題であろうと思います。ここで政府の見解をはっきり伺っておきたいのは、環境の中におけるエネルギーの占める役割は大きいと思うし、これからもさらに拡大せざるを得ない。きょうのようなときは別ですけれども、天気がよくても太陽の光を入れることなしに、窓もなくして真っ昼間からわざわざ電気をつけておる。これが文明社会であるかどうかは別にいたしまして、また、人間の歩くものが飛行機になったり自動車になったり列車になったりということで、すべてエネルギーだと思います。  そこで、当委員会でも過日学者先生に聞いたのですけれども、将来的には例えば太陽の光、ソーラーなどが、二十年くらい前から通産省が御苦労なさって、私も記憶するのですが、二十何年前でしたか、商工の理事をやっておるとき、今マスコミで活躍しておる堺屋太一君が通産省の職員で、たしか当時、通産省から八十億ばかり予算をとってほしいということで大蔵省とかけ合って、ソーラーハウスなどの前進に協力をさせていただいたことを覚えております。  やがてエネルギーは、太陽の光とかあるいはオランダの風車のような風の力だとか、あるいは今でも田舎へ行きますとまだ若干水車等で米をつくとか、あるいはまた地熱、さらにまた波の干満の差によって電力を起こす、こういう自然の力を活用してそうしてエネルギーを生かしていくということが、人間はやがてここへ行き着かざるを得ない。学者さんの意見を聞いてみると、二〇二〇年ころから緒につくのではないかと当委員会で、先週でしたか、そんな回答を受けたことを私は記憶しておりますが、そこに到達するまでの間のエネルギーをどうするのか。  それで、御承知のとおり今は油が中心になっております。あるいは天然ガスが中心になっております。でも、私は誤解を受けることを承知の上で率直に申し上げるが、油や天然ガスは、あってもやがてなくなって、コストが高くなってクリーンエネルギーへ移るというのが学者さんの当日の答えでありましたけれども、それよりも先に早く自然のクリーンエネルギーを活用すべきだ。  そこに至るまでの暫定的措置として、今電力において原子力の発電がどんどんと進められております。日本においては、どうしてか原子力発電が悪のように発言をする向きもなくはございません。もちろん、ソ連のチェルノブイリのような事故が起きたらこれは大変ですから、事故に対しては万全の上にも万全を期さなければならぬことは当然です。  しかし、だからといって、もう自動車でさえも電気自動車にという時代になってきたから、炭素エネルギーと言われておる油だとかあるいは天然ガス等を、あっても、安くても、利用できても、できるだけそれをせずに、できるだけ原子力の安全を確保しつつすべてこれを中心に、原子力船、失敗してしまったからだめになってしまったのですけれども、原子力も事故さえなければクリーンエネルギーなんだ。だから、これを万全の措置を講ずることによって、いわゆる自然のクリーンエネルギーとの中継ぎは原子力なんだ。政府は堂々とそのことを、世界の趨勢もそうであり、そこに踏み切って全力を尽くして、もし油や天然ガスなど、特に油などは原材料として地球上に残しておくべきであって、エネルギーとして燃やしてしまってはもったいない。そういう意味からも、あるいはオゾン層破壊の元凶であることも既に証明されておるとするならば、やはり政府あるいは国会がそういう音頭でもって中継ぎの原子力に対する活用について大胆に踏み切ることが環境にとって最も大きな一つの方法ではないかと思いますが、大臣いかがですか。
  148. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 塚本先生の御高説に私も個人的には同感でございますが、ただいまの先生の御質問に対しては、地球部長からお答えさせていただきます。
  149. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 先生指摘のとおり、エネルギーと環境、大きな関係がございます。地球環境問題の中でも特に心配されております地球温暖化問題、これは端的に申し上げまして炭酸ガス問題がいわば中心問題でございますが、炭酸ガスの排出を抑制するということが大きな課題になってございます。  政府といたしましては、今から三年ちょっと前でございますが、一九九〇年の十月に地球温暖化防止行動計画というものを定めまして、その中で、CO2の排出抑制のためにはエネルギーの効率的利用を図り、エネルギー使用量を抑制するとともに、CO2排出の少ない、または排出のないエネルギー源の導入、普及を図ることが重要であると考えておるわけでございます。  それで、原子力につきましても、先ほど申しました温暖化防止行動計画の中に真っ先に触れてございまして、「二酸化炭素を排出しないエネルギーとして、安全性の確保を前提に原子力の開発利用を推進する。」とまず明確に記してございます。同時に、それとあわせまして、先生御自身もお触れになりましたけれども、例えば水力、地熱利用の問題でありますとかあるいは太陽光、風力の利用、そういったようなことも触れてございますが、原子力について先ほど申し上げましたように真っ先に触れているわけでございます。したがいまして、環境庁といたしましても、あくまで十分な安全性の確保というのを前提として原子力の利用の推進が図られるべきものというふうに考えてございます。
  150. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は、わかっておりながら、一部の反対があるからといって、科学的根拠がしっかりしておるならば、これはやがて誤解は解くことができると思うのです。  それで、ついこの間でしたか、三重県で初めて漁協の中で原子力推進派が勝ったなんて、しかもその裏には、ある電力会社がその漁協が貧しくなってきたから預金をして漁協を助けた。こんなことを業界にやらしてはいけないと思うのです。僕は汚いやり方だと国民に受けとめられてしまうというふうに思うのですね。私も二十年前にその視察に行っているのですよ。それで二十年かかっていまだにそんなことをやっておる。  あるいは、十年ほど前でしたか、かつて敦賀の原子力発電でもっていわゆる故障して、そして警報が鳴ったの何だのということで大騒ぎになりました。日本海の魚が東京や大阪で一匹も売れなかった。私はちょうど、その当時夏でしたから原子力発電所のすぐ下のきれいな海岸で泳いでいたのですけれども、漁師ががんがん怒るのです。それでもって放射能エネルギーの入った液が外に一滴も漏れたわけじゃないのですよ、にもかかわらず日本海の魚は一匹も売れなかったというようなことです。  私はやはりそういうときに、それは事故が起きたから警報が鳴った、あるいは漏れた。漏れてもサークルできちっと囲っておる、それが出ても次にと、日本の場合は幸い三段階、四段階と安全装置をして外の海に一滴も漏れたことがない。にもかかわらず、事故が起きたというと大騒動、マスコミの第一弾で報道されてしまうといって漁師が悲鳴を上げる。だから、被害じゃないのですよ。被害じゃないけれども、報道によって国民に魚が売れなくなるから漁協が反対する、こんな形なんです。その典型的な例が原子力船の「むつ」ですね。  私はある文献で読んでみたら、御承知のとおり、漏れた。漏れた量は、当時ですよ、当時漏れた量は、病院でがん患者に対するレントゲンのときに発する放射能の五百分の一が漏れている。とすると、漏れた五百倍までは、世界じゅうで使っているレントゲンの基準までは大丈夫じゃないか。にもかかわらず、その原子力船「むつ」が青森県の港に戻ってくるために、そこから漏れて海の底のホタテガイのために、これは悪いけれども、自民党の議員さんたち、何百億という補償を取ったはずなんです。そんなものが海の底のホタテガイにまで到達するには何億倍のいわゆる放射能のあれを流さなければ到達はしないはずなのです、計算からいきますと。  当時外国は、そのレントゲンで漏れた五百分の一の放射能の漏れたことを日本が測定する器械があることに脅威を感じておる。にもかかわらず、一部政治家がこれ幸いと、港に帰港するために漁協につかみ金をばらまいておる。こんなことをするものだから、実は原子力の船はもはや日本では絶望視させられてしまっておる。  こういうことを考えると、業者は、頼っておっていけないからといって、裏からいわゆる道でないことをさせられておる。やはり、学問的にきちっとするならば、安全はこういたします、しかし地球汚染の元凶はこういうものであるということがわかったら、堂々と、やはりクリーンエネルギーの一つとして原子力がある。しかし、クリーンでないと言われる原因は事故にあるんだ。それを徹底的に対策を講じつつ地球を守っていくことがこれからの人類のエネルギーにとって最も大切だと私は思いますから、一言でいいから大臣の御見解を伺いたい。
  151. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ただいま塚本先生のお説でございまして、私も率直に言いまして、これは大臣の職責を離れても先生と同意見でございます。ただ、先生の御指摘になりましたようなことで、非常にゆがめられた考え方が国民の中に駆けめぐってしまうというところに問題もありますけれども、しかし、これからの人類の前途を見たときには、先生の御意見に私は賛成しております。
  152. 塚本三郎

    ○塚本委員 それから二十一条の中にも、恐らく最初の問題だと思いますけれども、負荷活動に対する問題として負担の問題が出てきます。  いわゆる産業廃棄物を、今度処理業者が実はお金をいただいて処理するわけです。ところが、これはほかの第二次産業と根本的に違っているのは、お金をかけて研究をしていい仕事をすればするほど、お金はかかるけれども、最後には、利用者、消費者は賢明ですから、いい仕事をした方が実は利益になってくるという結論が人間の発展の歴史の中で証明されておる。ところが産業廃棄物は、いい仕事をすればするほど商売にはならない。  私は、日本一の業者を自分で二十年前に実は協力をして、通産省立ち会いのもとに処理業者をお手伝いしたことがあります。ところが、そこへ持っていくとそれだけに処理の費用がかかるのです。一番もうけておる業者は何かといいますると、処理業者として、いわゆる工場からいただいてきます、雨降る日に水をどんどん流してそれを何百倍にも薄めて水道にじゃんじゃん流す。ただなんですよ。この業者がもうかって仕方がない。  だから、まじめな処理業者は、いわゆるよほどしっかりしたところの企業以外は、高いお金を出して一人前に処理業者に産業廃棄物を持ってこない。浄水場なんかに量をたくさん流してみたって、薄くなればそれで基準をもうクリアしてしまう。これを何とかしなければ、一番もうかっているのは一番悪い業者とは言いませんよ、基準をクリアしているんだから。ですけれども、考えてみたら、まともに処理をせずにどんどんと浄水場へ量を流す、あるいは雨降りなんかというのを見込んでだあっと流してしまう。これじゃまともな設備をしてきちっとした処理業者、そこへ採算に合うような高い値段でもって生産会社は持ってこないという、この二律背反の姿が今一番産業廃棄物で問題になっている。あるいは、つつっと来て山の中へ埋めてしまっておく。十年か二十年たって、車を置いてたらぶくぶくと出てきてタイヤが腐ってしまった。どうもおかしいと思ったら、中に埋めてあった。こんなことが出てくる。  だからこの問題は、許可した業者、最近はもちろんそういう下水道に入れるということがなくて、実は直接川へつなぎ、その出口にきちっとした処理の施設をつくらなければ許可しないという形になっていることは私も信じております。だが、以前に許可した業者が、垂れ流しとは言わないけれども、そういうものの蛇口をとめないと、実はまともな業者が育ちませんよ、こういう意見が、本当にまじめな業者の中から強く声が聞こえてきますが、いかがでしょう。
  153. 飯島孝

    ○飯島説明員 御指摘の悪質な業者の取り締まり、これは非常に重要な問題だと厚生省でも認識しております。このため、先生も御指摘になりましたが、昨年七月に施行されました廃棄物処理法の改正法におきまして、産業廃棄物の処理業の許可の基準を格段に厳しくしております。また、五年ごとに許可の更新制をとらなければいけないということにしておりまして、さらに加えまして、不法投棄についても罰則を厳しくしております。こうして全般的に規制が強化されておりますので、これらの規制を私ども徹底していくことによりまして、悪質な業者を排除していきたいと考えております。  同時に、優良な業者につきましても、処理業者による講習会等を通じましてその資質の向上というのを図って、優良業者の育成を図ってまいりたいと考えております。
  154. 塚本三郎

    ○塚本委員 規制強化について努力しておられることは私も認めて、さらにこのことについては努力をしていただかなければなりません。  しかし、規制を強化するといっても、監視体制が問題なんです。率直に言いまして、日本は世界一海洋投棄をやっているんです。まあソ連も最近ひどいことをやっていることがわかりましたけれども、しかし、産業廃棄物という意味ではアメリカをはるかに追い越して、調べてみると、ほとんど東京湾から出ておるのです。私は愛知県ですけれども、愛知県や静岡県が出ていないのですよ。なぜならば、いわゆる漁師、魚をとる諸君が夜中でも全部、いわゆる魚をとっているから、そこへ不法投棄に来れば、監視体制が強化されておるからすぐに通報があるのです。だからやばいのです、愛知県だってあるいは静岡県だって。  ところが東京は、御承知のオリンピックに全部漁業権を東京都が買い占めてしまったから、監視体制の漁師自身が実はまあ言ってみるならば密漁でしょう。わかってみたって通報する権利がないのですよ。だから、東京までわざわざ東名で持ってきておいて、東京湾からわざわざ外へ出るのです。だから、東京湾の近辺が一番汚れており、世界一の不法投棄の都になっておる。監視体制がないからじゃありませんか。漁師自身は知っているけれども、自分たちが密漁だから通報はできない、こういうことを業者から聞かれたことはありますか。  だから、日本の国は基準を強化するとともに監視体制を強化しなかったならば、まじめにこれもお金をかけて、そしてきちっと二次公害の出ないような設備をしておる優良企業がたくさん今出てきております。でも、これは育っておりません。豊田さんを初めとして自分たちの名誉のためにやっているだけで、それがいわゆる世界的に問題を起こすといけないからおやりになっておるだけのことです。  しかし、考えてみたら、そういう処理業者自身もまじめに取り組むことによって採算が実際合うはずですけれども、監視体制が実はルーズなために、そういう連中の方が実はまともな金の半分か三分の一で受け取ってきて、そして夜な夜な船で東京湾に積み込んでだあっと外へ持っていってやってしまう。これが実態なんですよ、大臣。  これでは、先ほどのお金をかけた諸君がまともな企業にならずに、お金をかけなくて、違法とは私は申し上げないけれども、こういうルーズな状態は法の整備以上に監視体制を強化することが、これがいわゆる地上におけるところの土地を保全するとともに、特に、世界に向かって、海洋投棄等を、世界一の不法投棄の東京湾、この姿を、汚名を返上することが最も大切だと御提言申し上げますが、いかがでしょう。
  155. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生指摘のように、産業廃棄物の処理の問題はまことに深刻でありまして、私も痛感いたしております。  詳細につきましては、水質の担当局長から答弁させます。
  156. 赤木壯

    ○赤木政府委員 陸上で発生した廃棄物海洋投棄問題については、国内では廃掃法とそれから海洋汚染防止法で規制してございます。  この産業廃棄物の海洋投棄につきましては、一九九〇年に開かれました十三回のロンドン条約の締約国会議で決議がなされてございます。この決議の内容は、安定なものと汚染されてない自然起源の有機物を除いた産業廃棄物は一九九五年末までに禁止するというような内容の決議が採択されてございまして、この海洋汚染問題というのは地球環境規模での問題として取り組んでいかなければいけないというふうに我々は考えてございまして、海洋環境の保全を図るために廃棄物の海洋投棄を規制強化しようという決議の趣旨を十分尊重していかなければいけないというふうに考えてございます。  一九九五年の末ということになってございますので、この決議に対応するためのいろいろな検討を我々今やっておるところでございます。その結果を踏まえて、基準の強化を図ったり、あるいは陸上での受け入れ体制の整備とか処理の適正化が必要であるので、関係省庁とも十分連携をとりながらそういう問題への対応をしっかりとやっていって、環境の汚染が生じないように努めていきたいというふうに考えてございます。
  157. 塚本三郎

    ○塚本委員 ちょうど時間が参りました。  基準を強化するよりも、まず現在の基準が守られるような監視体制の強化が第一だということを御提言申し上げて、終わります。
  158. 原田昇左右

    原田委員長 草野威君。
  159. 草野威

    ○草野委員 質問を申し上げる前に、二、三日前にテレビで拝見したんですけれども、この本を大臣もごらんになったと思うんですけれども、坪田愛華ちゃんという十二歳のお嬢さんがこの漫画をおかきになって亡くなられた。今回、国連の方から何とかという賞をいただいた、こういうことが紹介されておりました。  私も実はこの本を読むのは初めてでございまして、先ほど読んでおりました。なかなか、十二歳のお嬢さんがここまで環境の問題のことについて熱心に取り組んでおられたということに頭の下がるような思いでこの本を読んだわけでございますが、この一番最後のところにこういう感想が書いてあるのですね。環境問題について、「私一人ぐらいという考えはやめようと思います。それを世界じゅうの人がすれば、一発で地球はだめになると思います。みんなで協力しあって、美しい地球ができればいいんです。」こういう言葉を最後に書いていますけれども、本当にすばらしい言葉だと思うと同時に、今環境問題についていろいろ議論をしているわけでございますけれども、本当に熱心な議論を通して我々も、環境にとって何が一番大事なことなんだ、このことを見失わないようにしながら議論をしていかなければならないということを痛切に感じたわけでございます。  今聞きましたら、今度の環境基本法をめぐる質疑も、参考人質疑、また公聴会等を含めましてきょうで二十八時間になるそうでございますけれども、あとどのくらい続くかわかりませんけれども、ともかく最後まで私どもまじめな議論を展開していきたい、このように思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。  それで、初めに、きょうまでの委員会の中におきまして余り触れられなかった点でございますけれども、小さいといえば小さい、しかし私も非常に大事な問題だと思いますので、御提案を申し上げさせていただきたいと思います。  それは、自然との触れ合いということでございまして、理念にうたわれている環境の恵沢の享受を進めるためにも自然との触れ合いが重要であると考えております。この点につきまして、基本法の第十三条に、環境の保全施策は自然との豊かな触れ合いの確保を旨として行わなければならないと想定されているわけでございますけれども、具体的にどのような施策が講ぜられるのか、条文を読みましても、余りぴんとわからないわけでございます。具体的に自然との触れ合いを確保するためにどのような施策を講じていこうとされているのか、これが第一点です。  それからもう一点は、やはり自然との触れ合いでございますけれども、だれでも自然を大切にしなければならないということは理解しているわけでございますけれども、自然を理解し、自然を大切にする態度を身につける上で自然との触れ合いというものは非常に大切であろうと思います。また、これは環境教育としても極めて重要であると考えております。しかしながら、自然とのつき合い方を正しく伝えることのできる人材の育成、そのための場の確保、こういうものがおくれているんではないか、こういう気がするわけでございますけれども、この二点につきまして環境庁の御見解を承りたいと思います。
  160. 大西孝夫

    大西政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の、自然との豊かな触れ合いについて具体的にどのような施策を講ずるか、こういう点でございますが、国民と自然との触れ合いを確保していくということのためには、やはり利用しやすい、かつ、自然と豊かに触れ合える場を整備して、先生おっしゃったような自然解説などの自然の理解を深めるための活動を推進していく、まずそういう環境整備が必要かと思っております。  従来から私どもも、自然と触れ合う場としまして、国立公園あるいは国定公園の利用のための施設を初め、自然と触れ合うための各種の施設の整備の推進に努めてきております。特に近年は、都市化の進展でありますとか余暇時間の増大等を背景に自然との触れ合いに対する国民のニーズというのが非常に高まってきていると私ども認識しておりまして、こういう観点に立ちまして、そういういろいろなニーズに対応するために、一つには自然公園において利用の快適性を高めるように、例えば、汚いと言われている公衆トイレを今緊急整備中でございますが、そういうトイレの改修などの形で、まず快適な利用ができるようにするという観点での施設整備を大急ぎで進めたいと思っておりますし、それから、今後は自然との触れ合いを、長期滞在ができるような形での、まあキャンプ場の整備というような形で整備する必要があろうというふうに考えておりまして、そういう形の整備も進めたい。また、それから特に都会に住む人々が自然との触れ合いが少ないということで、小動物とも触れ合えるような場を都市近郊に整備するというような形の整備も進めてまいりたい。各般にわたっていろいろきめ細かくニーズに対応した積極的な施設の整備を図りたいというのが一点でございます。  それからもう一つは、そういうハードの整備と相まちまして、自然に親しむ運動といったようないろいろな行事を実施し、それから自然解説の指導者でありますとか、パークボランティアと呼んでおりますが、公園の利用についていろいろ協力いただけるボランティアの方々の養成といったソフト面での基盤整備も必要と思いまして、そういうハード、ソフト、両面にわたって今後整備を進めてまいりたいと考えております。  それで、今、後段で触れられた点でございますが、人材の問題でございます。  先生まさに御指摘のように、自然とのつき合い方を正しく伝えていくということは、私ども環境庁としましても、自然教育を推進する観点から非常に重要なことであろうと思っております。このため、私どもがこれまでやっております事業といたしましては、国立公園、国定公園におきましてビジターセンターを整備しております。これは、現在六十七カ所になっておりますが、そういうビジターセンターでいろいろ御理解いただけるような工夫をいたしておりますし、それから、身近な自然地域におきましては、まだ全国十カ所でございますが、自然観察の森というものを整備しまして、自然との触れ合いを通じた自然教育のための場の整備をしているところでございます。それから、全国の国立公園におきましては、約千三百人のパークボランティアを養成しておりまして、そのためのマニュアルを作成しております。それから、ビジターセンターの職員についても研修をするなど、人材育成という面でもいろいろ努力いたしております。  ただ、このように、教育の場の整備であるとか人材の育成について、私どもそれなりにこれまでやってきておるところでございますが、先生指摘のように、おくれているという御指摘を受ける面もあるいはあろうかと思いますので、今後一層その充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  161. 草野威

    ○草野委員 次に、エコマークの問題でございます。  これは環境保全に役に立つ商品、こういうものについているわけなんですけれども、この間もテレビで放映しておりましたが、エコマークというのがむやみやたらにいろいろな商品につけられておる、こういうことが報道されておりました。注意して見ておりますと、確かにそのとおりでございまして、ゴキブリを捕まえる紙の箱、ああいうものにまでエコマークがついている、こういうことでございまして、エコマークをつける基準というのですか、こういうものをもう少し見直したらいいのじゃないか、このように思ったのでお聞きするわけでございます。  今度の基本法の第二十三条にも「環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進」、こういうところがございましたけれども環境庁は、何が環境への負荷の低減に資するのか、こういうものにつきまして客観的に判断ができるように早急に体制を整えたらどうか、このように思いますが、いかがでしょう。
  162. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のとおり、環境への負荷の低減に資する製品等の利用を促進するために、科学的な知見に基づきながら、何が環境への負荷の低減に資するかということが客観的に判断されるようにするということ、それにあわせまして、何が環境への負荷の低減に資するのかということにつきまして、国民に適切な情報が提供されるようになっているということは極めて大切であるというぐあいにども考えているわけでございます。  そこで、どのような製品等が環境への負荷の低減に資するかにつきまして客観的な判断ができるように、内外における知見を収集いたしまして調査研究を進めながら、エコマーク制度が的確に運用されるように指導を強化することなど、国民に関連情報を適切に提供するための施策を強化するということを通じまして、環境への負荷の低減に資する製品等の利用が促進されるよう私どもは考えているわけでございます。  そこで、先生指摘になりましたように、エコマーク制度というのはうまく機能しているかどうかという問題でございますけれども、おっしゃるように、私ども従来のエコマーク制度運用に当たっては、その製品が与える局面においてだけしか考えていなかった嫌いがどうもあるのではないか、そういう製品がつくられ、それが使われ、捨てられた、その全過程を通じて環境に対してどのような影響があるかという視点をこれからはもうちょっと重視して考えていかなければならないというぐあいに考えております。  先生の御指摘趣旨に沿いまして、この制度の適切な運用について、私ども今後とも研究を続けてまいりたいと考えております。
  163. 草野威

    ○草野委員 ぜひよろしくお願い申し上げます。  関連いたしまして、再生資源、また地球の温暖化、こういう問題について続いてお尋ねをしたいと思います。  この基本法におきまして、再生資源という文字はあちらこちらにあるわけですけれども、リサイクル問題はどの条文できちんと扱われているのでしょうか。また、それぞれの条文で具体的にどのような措置が講じられるのか、まずお伺いいたします。
  164. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生がただいま御指摘になりましたように、現在の環境に対する負荷を低減していき、持続可能性のある社会を構築するためには、まさにおっしゃるように、大量消費、大量廃棄型の経済社会を、リサイクルを組み込んだ格好での、言ってみれば循環型の経済社会に変えていくということが極めて大事であるというぐあいになるわけでございます。  そこで、これからの環境政策の基本的な理念のあり方といたしまして、第四条の基本理念に、環境への負荷の少ない社会づくりということで、まず理念にそういうものを一つ掲げたということでございます。リサイクルだけということには表現的にはなっておりませんけれども、ここに書きました表現は、まさにそういったリサイクルが組み込まれた社会というものが重要であるということを、まず理念においてうたったということが言えるかと思います。  そういった理念のもとに、今度はリサイクルの促進を公平な役割分担のもとに行っていくということが重要でありますことから、まず、第八条の「事業者責務」におきまして、製品等が廃棄された後に、それが環境への負荷が少なくなるといったようなものを提供する務めとか、また、再生資源の利用に努める必要があるといったような事業者責務を第八条に書いておるわけでございます。それから第九条におきまして、そういった製品を使い、また捨てていくということが国民の日常生活に伴ってあらわれておりますことから、日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めるという責務を「国民の責務」として掲げさせていただいたところでございます。  以上が理念と責務規定でございますが、さらに、リサイクルを社会に組み込んでいくために具体的な措置といたしましては、第二章の五節に規定する各種の施策に基づいてなされることになると考えているわけでございます。  例えば製品等の製造、加工、販売、それぞれの各段階でリサイクルしやすい生産等が行われますようにということで、製品の環境負荷評価の促進のための措置ということで、製品が環境に対してどういったロードを与えるかということを評価していく、それを促進するための措置を第二十三条第一項に定めたところでございますし、次に第二十四条におきまして、やはり消費生活において物を大切に使う、またはリユースする、ごみの量を少なくするといったようなことをやっていくために、国民教育等の措置ということを掲げさせていただいたところでございます。さらに第二十五条の自発的な活動を促進するための措置として、民間団体等による再生可能な資源の回収を促進するための運動等について、それを助成するための措置、さらに第二十三条第二項におきまして、回収された再生資源等の利用を促進するための措置ということを掲げております。  また、こういった活動を行うためには、その基盤整備を図るためといたしまして、施設の整備に係る推進措置ということで二十二条第二項、それから科学技術の振興、二十九条、さらに必要に応じまして二十一条の経済措置、また二十条の規制措置といったような措置が活用されることになるというぐあいに考えているわけでございます。  私どもは、現在、再生資源の利用の促進に関する法律等の法律による措置、それから各種の税制優遇措置、予算措置等が講じられているところではありますけれども、これからの社会を展望いたしますときに、やはりそういったリサイクルが組み込まれた経済社会活動が極めて重要であるというようなことから、先ほど申し上げましたそれぞれの条項が相互に機能を発揮することによって環境への負荷の少ない社会が実現していくようにということで努力してまいりたいというぐあいに考えているわけでございます。
  165. 草野威

    ○草野委員 このリサイクル問題、非常に重要だ、そういうことで幾つもの条項に分かれて述べられているわけでございます。リサイクルの推進ということにつきまして、いろいろなハードルがたくさんあると思います。現在のような不況、また円高、こういうことによりまして、採算面においてもなかなか厳しい問題があるわけでございますけれども、こういういろいろな問題を含めて、この条文を読んでいきますと、「必要な措置を講ずるものとする。」と各所に出ているわけでございますけれども、どのような措置を講じていくおつもりなのか、考え方を聞かせていただきたいと思います。
  166. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘になりましたように、最近、経済不況を反映いたしましてリサイクルがうまく進まない。片方で、企業や市民の努力が進展する一方で、回収された資源が引き取ってもらえないといったような、また、費用を払わなければ引き取ってもらえないといったような現象が生じてきているところでございます。こういった事柄の根底には、再生資源を再利用する体制が日本の経済社会システムの中にビルトインされていないというところに最大の問題があろうかというぐあいに考えられるわけでございます。  そういうことから考えますと、私どもといたしましては、最近国会において制定させていただきましたいわゆるリサイクル法、また廃掃法の改正法という法律に従って適切な運用を図っていくということと同時に、環境教育などを通じたモラルに訴えかける努力、さらには、リサイクルそのものが経済性が高まり、社会にビルトインされていくようなことが重要ではないかというぐあいに考えます。これは、この三つの措置が相まっていく必要があるというぐあいに考えるわけでございますが、やはりしかし、社会にビルトインされるためには、モラルに訴えるだけではビルトインされるということには必ずしもならないのではないかということからすると、第三番目に申し上げましたリサイクルの経済性を高めるための努力というものが、今後の重要な課題の一つとして私どもは真剣に検討していかなければならない課題であるというぐあいに考えております。
  167. 草野威

    ○草野委員 確かに、リサイクル法、廃掃法、それから省エネ法とかいろいろございますけれども、今の局長のお話にもございましたように、リサイクルの社会システム、こういうものを確立していくことも必要だ、こういう意味のお話もございました。  実際には、もう少し具体的な話で御意見をいただきたいと思うのですけれども、例えば、一昨日の新聞に出ておった記事ですけれども、これは神奈川県の記事でございます。これは、神奈川のある生活協同組合、生協です、これが、昨年の四月からことしの三月まで一年間かかって、牛乳パックを約二千万本、それから空き缶を二百三十万本、そのほかに、スチロールトレー、これを千三百二十四万枚、その他ありますけれども、こういうものを一年間かかって回収をした。そして、それを再利用させるようにやったわけなんですけれども、何とこの経費が、再利用の経費が一億三千万円かかった。もしこれを通常のごみとして処理すれば、その処理費用というのはわずか二千五百万円で済むのだそうです。ごみとして出せば二千五百万円、これを再利用のための経費が実際には一億三千万円かかった。約一億円も差が出る。だから、回収すれば、集めれば集めるだけ再利用経費がかかっている、これが実態なんです。こういう実態を踏まえてやはりリサイクルということを考えていかなければ、幾らこの基本法の中でこういうことを書かれてもだめなんですね。  確かに逆有償という問題も起きております。この中では、空き缶が一キロ当たり業者に五円払っているとか、牛乳パックも一本当たり四円強のコストがかかっているとか、これが実態なんですね。こういう問題がある以上は、どうやってこれを解決するか。先ほどのお話のように、リサイクルの社会システムの確立が必要だというお話もございましたけれども、何らかのシステムをつくっていかなければ、幾ら立派なことを基本法の中でうたっていてもリサイクルは国民の中で定着はしない、こういう心配があるのですが、いかがでしょうか。
  168. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生まさに的確に問題点を御指摘なさったわけでございますが、ごみとしてそれを処理する場合には、今度は市町村がそのごみに関する費用を負担し、それが最終処分場ということでまた海をなくしてしまうといったようなことで、回り回って地球に影響を与えている、コストを与えているということになっているんだと思います。そのコストを一体だれが負担していくのかという問題が先生が御指摘した問題の背景に潜んでいるのではないかというぐあいに私は理解するわけでございますが、そういったような、だれもが負担しない、しかし回り回って人類全体そのものがどこかで結局費用を負担し合う、それを少なくするために、そういった市民運動の方々に一億数千万円のコストというものを負担させていいのかどうかという問題になってくるというぐあいにどもは考えるわけでございます。  そういうことで、私どもといたしましては、昨年来学識経験者などから成ります検討会を設置しまして、いろいろなこういった問題に対応するための調査検討を進めているところでございます。これは問題点が非常に広うございます。製品製造の段階から、消費後の不用物の発生を抑制するためにどうすればいいのか。また、消費後の廃棄物としての排出を抑制する方策としてどういうことを考えていけばいいのか。また、消費後の再生可能な不用物の回収の促進としてどういうことを考えていけばいいのか。またさらに、回収された再生資源の利用を促進するために、例えばそのものの需要拡大策としてどういうことを考えていかなければならないかとかということで、まさに天然資源を産出するのかということで、それとも再生資源を投入する方で経済的にどっちが有利なのかどうなのかという問題から、それが廃棄されるところまでの各段階にわたっての複雑な問題がここには関係しているわけでございます。  私どもは、この問題を解きほぐしまして、これを的確に図っていくためには、やはり基本的にはごみを少なくする、そのために製品課徴金、またデポジット制度などについて研究していく必要があるというぐあいに考えている次第でございます。     〔委員長退席、高橋委員長代理着席〕
  169. 草野威

    ○草野委員 いろいろお話がございましたけれども、やはり先ほども冒頭に申し上げましたように、採算ベース、こういう問題がありますね。そうすると、今の状況だと、例えば古紙を例に挙げますと、最近はまた需要が落ち込んできている。したがって、国でも、地方公共団体その他においても、古紙というものについてもう一回見直して、そしてまたこういうものを利用する、こういうものにもぜひもっと力を入れて取り組んでいかなければならない、こういうように思うのですね。古紙の問題についても、単なる市況の問題だけじゃなくて、古紙の価格を安定させる社会システム、こういうものもぜひとも重要なことだと思うのです。きょうは時間がないから、もうこれ以上申し上げませんけれども、ともかく学校の教科書においても余り使われてないのじゃないか、このように思います。  それから、ぜひこういう方面でもう少し利用したらどうかなと思うのは、郵便はがきですね。郵便はがきというのは、ことしは、平成五年度は全部で五十七億万枚発行される予定になっているのです、五十七億万枚。そのうち古紙がどのくらい使われているかというと、古紙が四〇%含まれているはがき、これが六億六千七百万枚だそうです。そうすると、パーセントにしますと、古紙の使用率というのは四・八%だそうでございます。これは郵政省から伺った数字です。初めのうちは確かにインクがにじむとかなんとかいうことではがきにすることはなかなか難しかったのですけれども、今は技術的にそれを克服して立派に使っているわけですね。だったらこれは一〇〇%、全部古紙を利用したはがきにしてもいいのじゃないか、こう思うのです。  そうすると、やはり問題があるというのです。一つは古紙の価格だというのです。それからもう一つは、安定して供給を受けることがちょっと厳しい状況だ。この二つの点を挙げているのです。我々思うには、古紙の価格といっても古紙は売れれば売れるほど生産原価も下がってくる、当然のことであります。それから安定供給にしても、もしこれだけ買うということであれば幾らでも供給はできるのじゃないかな、なぜだろうという気がしてしようがないのです。  こういうことについて、環境庁はどのようにごらんになっておりますか。はがきの問題、具体的で恐縮ですけれども
  170. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 非常に具体的な問題につきまして、私は詳しく勉強しておらないということから、こういう公式の席でお答えするにはちょっと自信がないわけでございます。  おっしゃるように、古紙をめぐっては、色が若干黒いというようなことから、それを消費者が好むか好まないかという問題を含めまして、それが安定的に供給されるシステムが備わっているのかどうかという問題、それがしかも量と価格において安定的に供給し得るかし得ないかという問題があろうかと思います。そのために、今度は全国でストックヤードをどうこうするとかというような問題、それから生産者におけるバージンパルプと古紙との間の生産コストがどうかといったような問題から、どっちを好んじゃうかというような問題、両方あろうかと思います。  私どもは基本的にはこういった問題に関与していくのは、やはり経済的にそれがペイするような格好での仕組みというものに持っていく必要があるということが一点。それから、それが経済システムに乗っかるような格好に我々の考え方なり意識というものを変えていく必要がある。そうしないと経済システムには乗っていきにくい。この両面から私どもは詰めていかなければならないというぐあいに考えております。
  171. 草野威

    ○草野委員 やはり国民の意識ということも今お話しになりましたけれども、だからこそ国が率先してこういうはがき、古紙を混入してもはがきには全然支障がないということなのですから、こういうものを五十七億万枚全部使ったら大変ですよ。だから、率先してそういうものを使うように環境庁としてもまたいろいろ努力をしていただきたい、こういうことなのです。  もう時間がないから、ほかに移ります。  次に、地球温暖化の問題を関連して伺いたいと思いますが、その前にもう一つ、やはりこれは言っておかなければならぬですね、リサイクルの問題で。鉄くずの問題、鉄くずというよりも空き缶の問題です。  空き缶というのは、量にすればわずかです。鉄の量は約一億トンくらい生産されているのじゃないでしょうか。そのうち空き缶というのはわずか百五十万トンぐらい、一・五%ぐらい、本当に少ないわけです。その少ない空き缶が、リサイクルになると必ずこの話が出てくるわけです。だから意外とこういう問題というのはおろそかにできないことなのです。  鉄くずの問題につきまして、何が問題か。それは確かに逆有償なんかということで、空き缶を引き取られるときに逆にお金をつけてやらなければならない、こういう話もさっき生協のところで出てきましたけれども、それではそういうものの価格を安定化するためにはどうしたらいいか。  これは局長も御存じだと思いますけれども、そういうスチール缶をつくっているのは一体どこなのか。私は個々のメーカーの名前もわかりませんけれども、高炉メーカーだと思います。通常の電炉メーカーじゃないと思います。そうすると、つくった高炉メーカーの方は、そういうものを今度スクラップになったときに使っているかどうか。恐らく余り使っていないのじゃないかと思うのです。自分のところで出した製品、それをスクラップとして回収したときには、そういうものは、高炉でつくるどちらかというと品質の高い製品、そういうものにはできるだけ使いたくないということで余りお使いになっていないんじゃないか。電炉メーカーの方はどうかというと、丸棒だとか形鋼だとか市況に非常に影響されやすいそういう製品をたくさんつくっている。それによって鉄くずの方の価格も、余って道路に積み重ねられたりとかいろいろな状況が起きておるようですね。そういう電炉で使う鉄くずの価格を安定させるための一つとして、こういうスチール缶などについては高炉メーカーでつくった以上はそのうちの何%かは自分のところで使うことを研究してみる。こういうことをやっていけば逆有償なんという問題は出てこないんじゃないかな、こういうふうに思います。  これは本当は通産省に言わなければならない問題かもしれませんけれども、価格の安定化だとかリサイクルを順調に円滑に進めていくためにも、こういうことも環境庁としてもぜひ勉強してもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  172. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 確かに空き缶の問題というのは、資源のリサイクル化のほかに、私ども環境行政をやっている立場からすると、美観の問題、環境に対する空き缶の散乱問題という両面からもこれは真剣に取り組まなければならぬ課題であるというふうに考えております。  先生今御指摘になりました高炉メーカーが空き缶等を使用するに当たっての指導というのは、たしか通産省において高炉メーカーに、これは行政指導でございますが、何割か使えということで行政指導をやったかに私どもは記憶しているわけでございますが、環境庁といたしましても、今後の循環型社会環境保全型社会ということを考えますと、先生指摘するように、十分勉強しろという御指摘に関しましては、私どもはそのとおり受けとめさせていただきます。
  173. 草野威

    ○草野委員 地球温暖化の問題でございますけれども、四月の二十八日にIEAは二〇一〇年までの世界エネルギーの需給見通しというのを発表しております。これによりますと、世界のエネルギーの消費量は九〇年と比べて四八%増の百十五億トンに達するであろう、CO2も最低でも四六%はふえるであろう、こういうような見通しをIEAで発表したということが報道されております。まず、このことについて御見解を伺いたいと思います。
  174. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 先生お触れになられましたIEAのレポート、私も拝見をいたしてございます。IEAのレポート、世界全体ということでございますので、先進国も途上国も含めての予測値ということで、特にこれから途上国において人口もふえ、生活水準も上がり、そういったところでこのままの見通しでいくとCO2の増大が見込まれるというレポートで、私ども厳しく受けとめております。
  175. 草野威

    ○草野委員 厳しく受けとめておるということは、二〇一〇年までに今よりも約五割近くふえることについてやはりこういう心配がある、このように受けとめておられると。  そこで、我が国の場合は、先ほどからお話も出ておりますように、国際公約、二〇〇〇年時点でCO2の排出目標、九〇年レベルに抑える、こういう目標で今取り組んでおるわけでございますけれども、こういう状況から見てくると、我が国の場合もかなりこれは厳しいのかな、こういう感じをせざるを得ないのですけれども、これはどうでしょう。
  176. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 我が国につきましては、実は先ほどの、前の委員先生の方の御質問にお答え申し上げたわけですが、また草野先生よく御存じのとおり、九〇年十月に温暖化防止行動計画をつくりまして、二〇〇〇年までにおおむね一九九〇年レベルで安定化させるという目標を立てております。そして、単にそういった数字を掲げるだけでなくて、先生も御高承かと存じますが、その行動計画の中で、実際にどのくらい排出されたか、また、総排出量及び一人当たりの排出量はどうなっているかという状況を毎年毎年チェックしながら達成を図るということにしておりまして、先進国たる、しかもその中で最もこの問題に関心を持ち、またいろいろな技術を開発し、実施している国として、関係省庁ともども達成をしなければならない、達成されるよう最大限の努力をするということでございます。  温暖化防止行動計画をつくって以来、関係する省庁、これはエネルギー分野あるいは都市、地域構造、交通体系等々いろいろとございますけれども、それぞれ各省とも極めて積極的に施策をいろいろと展開してくださっておりまして、先ほど申し上げましたようにこれら省庁と一緒になって、国際公約でもあります目標を達成すべく最大限の努力をしたいというふうに思っております。
  177. 草野威

    ○草野委員 どうも余りいま一つ歯切れがよくないのですけれども、今言われていることは、一つは原発の大幅なおくれ、それから省エネ対策のおくれ、こういうことが指摘されているわけですね。エネルギーの需要が政府の想定よりも高い水準で伸び続けているのであろう、こういう指摘もあるわけなんですね。実際に、例えば気象庁等の発表によりましても、CO2の濃度の伸び率といいますか、これが毎年最近では〇・五%ずつ伸びている、この〇・五%ずつ伸びているということは、これはかなり異常な高い伸び方じゃないかな、こういう危惧も実は私は持っているわけでございます。  IEAからこういう発表があった、それで今御説明がございましたけれども環境庁としても毎年この状況は把握をしているのだと。現在まで把握している状況からいって、どうなんですか、全然心配ないのですか、予定どおりこれは大体目標を達成することができる、こういうふうに見ておられますか。
  178. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 温暖化防止行動計画を九〇年につくりまして、九一年度がいわば初年度でございます。九〇年度がいわばベース年になるわけでございます。ベースの年といたしましては、これは数値として既に発表してございまして、昨年の五月に政府として確定をいたしまして発表いたしておりますが、先生これまた御高承かと思いますけれども、炭素にいたしまして総排出量が三億一千八百万トン、そして一人当たりの排出量は二・五七トンでございます。その後、実はまだ短時日でございまして、傾向が必ずしもはっきりいたしておりません。その次の九一年度の数字も最終的にまだエネルギー統計その他の最終的な精査が終わっておりませんですが、私どもといたしまして、対九〇年度で若干の増加があった、しかし、それは二%以下であったというふうに今のところ試算をいたしてございます。
  179. 草野威

    ○草野委員 一つは、〇・五%の伸び率、これが異常な数字であるかないか、この御答弁を後でお願いしたいと思うのです。  大臣にお伺いしたいと思いますけれども、今いろいろお話ありましたけれども、いろいろな方の話を聞きますと、二〇〇〇年時点ではこの目標よりも恐らく一〇%ないし二〇%は上回るのではないか、こういう見方があるのですね。だから、こうやって申し上げたのです。  ところで、九四年、来年ですけれども、地球温暖化防止条約の第一回締約国の会議が開かれる予定になっておる。こういう席上で各国はそれぞれの対策を約束するわけですね。我が国の場合、もう既に決められた目標があるのですけれども、CO2の抑制目標をこの会議で今、従来どおりの目標をきちっと約束できるのか、それともどうもこれは心配だということでそれまでに目標の修正というのもあり得るのか、この点について大臣お尋ねしたいと思います。
  180. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 まず先生がお触れになられました〇・五%の炭酸ガスの世界的な平均濃度の増、これは一九五八年ぐらいからマウナロアでずっと測定を開始して以来、これまた先生御高承のとおり、一貫して増大をいたしておりまして、最近少しその速度が早まって〇・五%程度の増ということになってございます。  これは、我が国を含む先進国におけるいろいろな工業活動の活発化、そして途上国におきます、これまた人口の増加及び生活水準の増大あるいは熱帯林の消失、そういったようなさまざまな要因が重なって濃度がふえておりまして、これを何とかできるだけとめなければならない、早い時期にとめなければならないというのが気候変動枠組み条約の最終的な目標でございます。そういう意味からいきますと、〇・五%の増というのをどう考えるかということに関しまして、私どもは深刻な問題だというふうに考えます。  それから、第二点の気候変動枠組み条約締約国会議が将来開かれた場合に、我が国が政策や措置を通報することになるわけでございますけれども、そのときに行動計画の目標を修正するということはあるのかという趣旨のお問いかけだったと思いますが、これに関して端的に申し上げますれば、先ほど来申し上げましたように、これは、我が国は行動計画を定めてそこに明確に目標を書いてあるわけでございます。そして、地球サミットその他の場で公約をいたしているわけでございますので、私どもとしては条約に基づく通報に当たっても、その目標は行動計画のその目標のとおりとすべきというふうに考えております。
  181. 草野威

    ○草野委員 話をかえますが、大気保全局長さん、あなたは今、新型の電気乗用車にお乗りになっているそうですが、その価格は二千四百万円だそうですね。乗ってみてぐあいはどうですか。
  182. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘の電気自動車に私、乗らしていただいておりますが、概して乗り心地といった面におきましては良好でございます。
  183. 草野威

    ○草野委員 電気自動車を二〇〇〇年までに二十万台つくる、こういう目標で進んでいるそうでございますけれども、現在の状況は、いただいた資料によりますと、電気自動車は約千三百台、メタノールが二百十台、ハイブリッド自動車が約四十台、CNGが約百台、こういう状況だそうでございます。要らぬ心配をするなといえばそれまででございますけれども、こういう状況の中で果たして電気自動車が予定どおり二十万台、二〇〇〇年までに目標達成することができるのか、やはり非常に心配しております。  先ほどちょっと申し上げましたけれども、CO2、地球温暖化の問題にしても、例えば低公害車の問題にしても、やはり中間目標というものを設定すべきじゃないかと私は思うのですね。現在のところはこういう目標はないようでございますけれども、例えば九六年なら九六年あたりに、中間目標としてこういうものはどのくらいまで進んでいっているか、その時点でまた計画を見直しするのかどうか。それをやっていかないと、こういう非常なおくれを見ておりますと、二〇〇〇年になってから、できませんでした。CO2、炭酸ガスの問題にしましても、〇・五%の上昇率というのは非常に深刻なものだというお話もございました。そういう状況下で、中間の目標をきちっと決めて、その時点でさらに見直すか、新しい対策を検討するか、こういうことはやはりあってしかるべきものではないか、このように考えますけれども、いかがでしょう。
  184. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘の電気自動車等の目標、二〇〇〇年に二十万台という数値でございますが、これは通産省での委員会で策定した数値でございます。  私ども、この数値をできるだけ実現するように努力したいと思っておりますけれども、御指摘のように、中間的な目標と申しますか、ステップごとにどのぐらいというような目安をつくりながら計画を実施していくということは重要なことであると存じております。
  185. 草野威

    ○草野委員 あなたのおっしゃることはわからないわけではないのですけれども、例えば環境庁も車に対して助成していますね。だけれども、予算がないということで、ことしはわずか三十台分か何かに削ってしまった、こういうことでしょう。だから、幾ら通産省で決めた計画だからといって、環境庁は黙って手放しで見ているわけにはいかぬわけですよ。こういうものが全部、一つ一つの対策がうまく進まなかったら二〇〇〇年には目標を達成することができないわけです。だから僕は言っているわけですよ。  例えば低公害車に対して、これもなかなかうまく進んでいないようなんですけれども一つはやはり価格の面がありますね。今局長さんが乗っていらっしゃる二千四百万円の電気自動車、一般庶民が買えますか。買えないでしょう。普通だったらそれの何分の一かですよ。それに対してたしか環境庁も何がしかの助成をやっていることは知っておりますけれども、一番大きいのは税制面の助成ではないかと思うのですよ。大臣、これはぜひお願いしたいと思うのです。  今こういう低公害車に対する国税の、租税の特別措置を見ますと、特別償却、初年度三〇%、それから税額の控除が七%、これだけです。これだけで果たして国民の皆さんが、少し無理してもおれも低公害車を買ってみよう、こういう気は起きますか。聞くところによりますと、板橋区あたりではディーゼルトラック並みの価格にするように区の方でいろいろと援助をしているということなんだそうですけれども、そこまでいかなくても、やはり税制の面でもう少し思い切った対策を講じなければ、国民は電気自動車に乗りたいと思ってもなかなか手が出ない。こういう面は大臣のお力で、ぜひとも来年からこの税制については改革に努力をしていただきたいとお願いしたいと思います。  ということは、今までいろいろな税制の制度が出ておりますけれども——時間がないからやめます。大臣、御答弁お願いします。
  186. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 特に草野先生の低公害車に対する御熱心な取り組み、心から敬意を表します。  ただ、私も実は電気自動車に十分ほど乗りました。必ずしも快適とは言い切れませんけれども、しかし少なくとも、これから開発して、先生おっしゃるように、これをもっと安く一般に手に入るような形にしないとなかなか手が出ないということと、それから、まだ改善すべき点が多々あるということ、例えばスピードの問題とか故障したときのそれに対する対応とか、たくさんあろうと思いますが、そういう問題が逐次解決していきませんと、一般的に庶民の手に渡るというところにはまだ時間がかかるかなという感じを持ちながら実は十分ほど乗ったわけであります。  特に、これを購入するについての税制の問題もこれから非常に大事になってまいりますが、しかし、この問題だけで税の問題に取り組めるということではありませんので、全体的な枠組みを考えながら、できるだけそのような低公害車が普及できるように努力していきたいと思っております。
  187. 草野威

    ○草野委員 次の問題に移ります。  環境行政機能見直しの問題でございます。  前回の委員会でも長官に、環境行政の機能強化についてどのような青写真を描いているのでしょうか、こういう御質問を申し上げましたけれども、要約してみますと、現在の国家行政組織法の機構の中で最大限の努力をしてその調整機能を十分に発揮したいと思っております、こういう趣旨の御答弁をちょうだいいたしました。  現実の問題として、現在行われている閣議アセス、これについてさえ長官が御意見を言えない状況にあるわけですね。こういうことでは環境行政について各省庁との調整機能を本当に果たしていけるかどうか、非常に失礼な言葉になるかもしれませんけれども、心もとない感じがしてならないわけです。  そういう中で御質問を申し上げたいと思いますけれども環境基本法で定義している内外の環境問題に的確に対応するためには政府が一体となった取り組みが必要であろうと思います。行政組織の整備並びに行政運営の改善を行って各省庁間の調整を図るとともに、環境行政の推進に努めなければならないと思います。  しかし、この行政組織の整備並びに行政運営の改善については、他の基本法と呼ばれるものについてはおおむね条文が置かれているにもかかわらず、環境基本法にはこのような条文がないのは私は不思議でならないわけでございます。例えば農業基本法には、「農業行政に関する組織の整備及び運営の改善」、そのほか中小企業基本法、林業基本法、観光基本法、いろいろありますけれども、こういう条文が置かれておるわけでございます。やはり環境基本法に行政組織の整備並びに行政運営の改善について条文を入れるべきではないか、このように思いますが、御見解を承りたいと思います。     〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕
  188. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  かつてやはり草野先生から同様の趣旨の御質問をいただいたこともございますが、私どもは特に今この環境基本法案を国会に御審議をお願いしておりますのは、あくまでも環境行政がその目的が果たせるように各省庁とともに進めていけるための大きな枠組みを今お願いしておるわけでございますが、環境基本計画におきましても、環境庁を初めとする関係行政官庁、機関に対しまして環境保全に関する施策の基本的な方向を示すということを中心にいたしておりますし、環境の保全に関する施策を総合的に、また計画的に推進するための枠組みを設けているところでもありますので、これらにつきましては政府一体となった取り組みがどうしても必要になってくることは先生の御指摘のとおりでもございます。  そこで、これを、もう少し行政政策を推進するだけの力を持つべきではないかという大変な御激励でございますけれども、国の行政組織のあり方につきましては、先生も御案内のように、現在臨時行政改革推進審議会でいろいろ審議が行われているところでもありますし、また、先生指摘のような条文をこの基本法に置かなかったというのも、環境庁としましては政府全体の環境行政の中枢としてその機能を十分に発揮するよう対応したいということで、そのために政府一体となった環境行政の推進に努めるためにあえて先生指摘のような条文を今回は基本法に置かなかったということでございますけれども、しかし、あくまでも取り組みにおきましては、環境行政の中枢に立っておるという自覚と認識を十分に持ちながら進めていきたいと思っております。
  189. 草野威

    ○草野委員 必要がないものだったら、あえて入れるようにしたらどうか、こういうことは申し上げないつもりです。やはりこれはぜひ条文を入れるべきではないか、このように思いますので、改めて御検討していただきたいと思います。また、長官には、やはりこの問題につきまして、総合的見地に立った行政組織の整備と行政運営の改善にぜひとも努力していただきたいと御要望を申し上げたいと思います。  それから最後に、環境の日の問題につきまして申し上げたいと思います。  これも前回、環境の日の設置につきまして御質問申し上げたところでございますが、そのときの御答弁では、例えば敬老の日は老人福祉法、それからスポーツの日がスポーツ振興法というように個別の法律に置かれているのが通例である、こういうような御答弁をちょうだいしたわけでございます。  しかし、この環境というものについては、地球的規模の問題ですね。七二年に開かれた第二十七回の国連総会の国連決議によって世界環境デーとして定められたのが六月五日、これが環境の日として定まっているわけですね。こういう地球規模の問題でございますので、単なる日本一国の問題じゃないと思うんですね。したがって、やはり個別法というよりも、環境の基本となる環境基本法の中に環境の日の条文というものを置くことが極めて私は大事ではないだろうか、このように思うわけでございます。それはいろいろと法律上の問題があると思いますけれども、これが法律上可能なのかどうか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  190. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 結論的に申し上げますならば、先ほどのような経緯があるわけではありますが、法律的に基本法にそういう規定を置いてはならないということにはならないかというぐあいに存じます。この問題につきましては、経緯があることで置いておらなかったということでございます。
  191. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答えを申し上げますが、ただいま企画調整局長答弁したとおりと申し上げたいわけでございます。特に、基本法のレベルは法律で記念日を設けた例がないということもあるし、また昨年十月の中公審あるいは自環審の答申の中にも環境の日について触れられていなかったこともありましたので、今回、環境基本法には環境の日の条文を置かなかったところでございます。
  192. 草野威

    ○草野委員 長官の御答弁でございますけれども法律上不可能でないということであれば、環境基本法に条文を置くようにぜひとも努力していただきたいと要望申し上げます。  あとまだ三、四分ありますので、もう一問伺います。  環境アセスメントの問題でございますけれども、きょうまで二十八時間の間、この環境基本法議論の中で環境アセスメント法制化ということについてさまざまな角度からの議論があったと思います。私はいろいろな方の御意見を聞いておりまして、やはりこのアセスメント法制化というものは非常に大事である、ぜひともこれはやるべきである、このように私は現在思っております。過日の本会議におきまして宮澤総理の御答弁は、経済社会情勢変化等を勘案しながら、必要に応じて見直しを行っていきたい、こういうような御答弁もございました。  で、一つは、きょうの新聞報道におきまして、湿地の利用につきましてアセスの義務づけを行ったらどうかということがラムサール条約事務局から勧告案として出されているわけでございますけれども、これに対する御見解をひとついただきたいと思います。  もう一点は、やはりこの環境アセス法制化という問題につきましていろいろ御答弁ございましたけれども、必要な措置を講ずるというお話が中心で、それにこういろいろとちょっと味つけをしたような答弁が各党にずっと出されておるんですね。本質については何も変わってないわけなんですけれども、この必要な措置を講ずるということは、例えばその見直しをするときに法制化というものを念頭に置いて、また法制化というものを含めてこれを見直すということなのかどうか、この点をひとつ確認をさせていただきたいと思います。
  193. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 まず最初に、けさの新聞において出ておりますラムサール条約締約国会議勧告の件でございますが、これにつきましては、まだまとまった話ということであるとは私ども承知しておらないわけでございます。ラムサール条約締約国会議勧告は一般に拘束力がないと考えられること、また御指摘勧告はまだ案であって、その具体的内容が固まっていないということから、現段階では締約国会議における議論の動向を見守っていくということが必要だというふうに考えております。しかし、これが仮に行われるとなれば、それに応じて適切な措置を講じるということは当然のことでございます。  それから第二の問題でございます。いろいろこのアセスメントについては、この委員会における御審議、それから公述人の公述、その他参考人の意見等を通じまして、私どもこの二十八時間に及ぶ審議の中でいろいろ御議論があったということは承知しております。  私どもといたしましては、今回御提案申し上げました法律に基づいて、必要な措置を講ずるものとするということで、これは関係省庁間におきまして調整をいたしましたときに、法制化ということも視野に含めて基本法を成立させたいということで頑張って、政府内においてああいう調整案をつくりまして御提案申し上げたところでございます。  ただ、この問題については、経緯もるる御説明申し上げたところでございますが、審議会の中におきまして直ちに法制化に進むべきであるという御意見までは意見の統一を見なかったという経緯があること、また法制化においても、その審議会における答申というものが当然反映された法案云々として私ども政府としては御答弁しなきゃならないということもあるわけでございます。しかし、ここで御議論されましたことも両様の意見があったことも承知しておるわけでございますが、法制化に対する強い要望があるということも、これも事実であると思います。私どもは、まず最初に政府部内における認識を統一しなきゃならぬというような任務は当然あるわけでございまして、そのために努力しなければならぬということを考えておりますが、見直しに当たっては当然法制化も含めてそれは検討していくべきだというぐあいにどもは考えております。
  194. 草野威

    ○草野委員 時間が来ましたので終わりますけれども、長官にお願いしたいと思います。ぜひこの環境アセス法制化につきましては、政府部内の意見を一日も早く統一されてしていただきたい、このことを強く申し上げまして、終わりにいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  195. 原田昇左右

  196. 寺前巖

    寺前委員 きょうは、先ほどから論議になっておりました法案の第十八条、第十九条を中心に見解をお聞きしたいと思います。  環境庁は七一年ごろから計画段階における環境アセス必要性を認め、七六年には、むつ小川原総合開発計画第二次基本計画に係る環境影響評価実施についての指針を公表して、七八年には計画段階における環境影響評価技法の体系化に関する調査研究を行い、計画アセスメントという言葉を定着させてきたという経過がある。最近では、九一年十二月に環境影響評価技術検討会を設置して、代替案の位置づけ、計画、構想段階での検討、代償措置考え方環境影響評価のフォローアップのあり方を検討しておられる。  こうやって見てくると、計画段階の環境アセス実施についても、計画アセスメントの文面も、この法案の中に見当たらないのだけれども、港湾計画など行政計画策定時に既に実質的に環境アセスが導入されているのではないでしょうか。そうしたら、そのことをあえて、これほどまでに研究をしてこられた経過があるだけに、計画アセスメントという問題について導入を明確にされたらいかがなのだろうか、何で導入を明確にされないのか、御意見を聞きたいと思います。
  197. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 法案第十九条におきましては、「国は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、」その事業実施に際しということではなしに、「事業実施に当たり」ということでタイムスパンを広くとって規定したところでございます。そういうことによりましてどういう段階で環境影響評価実施すべきかということは事業の特性に応じて判断されるべきものであるというぐあいに考えるわけでございますが、この法案第十九条の規定は、個別事業の計画段階におけるアセスを行うことを考慮に入れた規定として私どもは御提案申し上げているところでございます。  なお、ついでに申し上げますならば、計画段階における環境配慮に対しては、この十九条に加えまして、第八条第一項における事業者環境保全に関する責務、それから第十八条の国の施策の策定等に当たっての環境保全についての配慮規定を置いたところでございます。こういった規定に従いまして、今後計画段階での実質的な環境配慮というものはこの基本法もとにおいてさらに充実したものになるというぐあいには私ども考えておるわけでございます。
  198. 寺前巖

    寺前委員 私、最近アメリカのNEPAの文書を少し読んでみました。規制制定に当たって大統領の諮問機関であるCEQの責任者がこういうことを書いておりました。代替案分析こそが環境アセスの核心である。なるほどうがったことを言うなと思った。環境アセスでは有効な代替案の検討が環境影響を最小限に食いとめるためには不可欠な措置だということをあえて強調しておられるし、またCEQのガイドラインを見ると、工事の延期や代替案、補償措置などについて、調査完了まで開発行為の中止または延期ができること、環境影響が異なる別の開発構想または細部の代替案の提示、土地、水及びその権利の取得を含む魚類及び野生生物の損失に対する補償の付与の代替案などまで、具体的に例を示してまでやっておられるわけです。  日本の現行アセスでは、自然環境や歴史的遺産の保護は極めて限定的に認めてはおりますけれども環境の保全についての配慮をしなければならないというのであるならば、環境影響を最小限に食いとめるための代替案の検討を明確に打ち出すということを検討しなければいかぬのじゃないだろうか。この間、アメリカのNEPAの文書を読んでおってちょっと感じましたのですが、そんな感じは間違っているとおっしゃるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  199. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、環境アセスメントをやるプロセスの中でそういったことを考えることは極めて重要であるというふうに私どもは考えております。現に環境保全対策の代替案検討におきましては、現行やっております環境影響評価におきましても、予測評価を繰り返しながら環境保全対策の検討を行っているところでありまして、現行制度においてもそういうことは位置づけられているというぐあいにどもは考えております。  それでは、なぜ法案第十九条にそういうことを書かなかったのかということでございますが、この法律はやはり基本法でございますので、環境影響評価重要性法律的に位置づけるということでございまして、先生の御指摘環境影響評価はどういうぐあいにやるかという段階での問題でありますことから、この基本法においては書いておらないということでございます。
  200. 寺前巖

    寺前委員 経団連などは、環境アセス法制化について、訴訟や紛争の続発によって開発事業が大幅におくれるのだ、適正な住民参加が期待できないなどの従来の意見を繰り広げて、結局法制化を見送らそう、そういう動きがあります。昨日も中央公聴会で各公述人の意見を聞いておったら、ほとんどの皆さんがこのアセスの問題についてそういう考え方は間違っていると、ある人のごときは、初めから住民を参加させて、そして情報を公開しておくことによって安心して早い段階から、計画の段階から将来にわたっての方向を打ち出していくことができるのだ、体験的にもそういうことが言えるということをおっしゃっておられた公述人もおられます。  それで、私は、そういう意味から情報の公開、住民の参加、そういう問題をなぜこの立法の中に明確に位置づけられないのだろうか、この点について不思議でかなわないので、もしも環境庁までが経団連などの言うように訴訟や紛争の続発を心配しておられるとするならば、事実の経過から考えて逆ではないかと思うのですが、いかがですか。
  201. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境影響評価につきまして、事業等の特性、熟度に応じまして、一定の手法により評価した結果を公表し、住民意見を聞くというものから、行政機関や事業所の内部において行われるという段階に至るもの、いろいろございます。法案第十九条はこういったものの環境影響評価を広く位置づけているわけでございますが、こういった措置のうち、現在、閣議決定環境影響評価実施要綱については、評価書等の公表、また関係住民の関与に関して手続をやっているところでございまして、評価書の公開につきましては、環境影響評価準備書、それから環境影響評価書の公告・縦覧、それから準備書については説明会またはこれにかわる周知措置というものをやることになっており、必要な情報は公開されるということになっているわけでございます。  また、住民の関与につきましても、事業者準備書に関する関係住民意見の把握に努めるということにされているわけでございまして、この意見書に対しては事業者評価書において見解を述べるということにされているところでございます。これが閣議決定アセスにおける手続等でございますが、また、公有水面埋立法や発電所の立地に関する通産省省議決定に基づく環境影響評価におきましても、やはり評価書等の公開、住民の関与について同様の手続を定めているところでございます。こういった手続については、私どもは今後とも適切な運用に努めてまいる必要があるというぐあいに考えておるわけでございますが、なおこの問題につきましては、関係者間の意見を統一した上でなお充実した制度にする必要はあろうということは考えております。
  202. 寺前巖

    寺前委員 時間の都合があるから繰り返して言いませんが、水俣の場合だったら、猫の実験でもう既にわかっておったのに、早い段階にそのことに対する公開をしていないために被害が極端に広がっていったという経験を私たちは見ているわけです。  また、現に、ゴルフ場の建設をする、そうすると、そこでどんな農薬を使っているのか、それがどういう影響を及ぼすのか、住民が公開せよと言ったってその中身は聞くことができない。あるいは、電気製品をつくっているところでトリクロロエチレンの問題について、使っている会社があるのにもかかわらず、あるいはその結果が地下水にどういう影響を及ぼしているのかというのが数値として見えていながら、どの工場からそれが出ているのかということが公表されない。そういうために不安がつくられているという実情。  私は、この不安の実情というのが、情報の公開と住民参加というあのリオ宣言の十の中でも示されている内容をやはり大胆に提起をしていくということが、今日の、法をつくり上げていく上において非常に大事な考え方だと思うのですが、残念ながらその点が貫かれていないと思うのです。  ここで一つ聞きたいのですが、東京都の自然環境保全条例では、審議委員として、自然保護団体の互選によって都民代表委員を選出するという仕組みをとっておるわけです。私は、これは住民参加の一つの形態としておもしろい提起であろうなというふうに思うのですが、これから審議委員の選任に当たっては、こういう問題はお考えになりますか。
  203. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生、都の例を引きました。今回この環境基本法における中央環境審議会の委員につきましては、学識経験者の中から選定するということになっているわけでございます。私どもといたしましては、環境に関して学識を、また経験を有する者、それが広く国民各界各層の声が公平に代表、またそこで開陳されるように、委員の構成に当たっては慎重に私どもはやっていくべきであるというふうに考えております。
  204. 寺前巖

    寺前委員 リオの会議を見たって、NGOの代表が全世界的に参加してきてあそこで大きな論議を巻き起こしています。日本でも、現に例えば長良川という問題、環境庁長官現地にまでお行きになりましたけれども、建設省が進めている、それに対して物を申すとおっしゃってまでおられましたけれども、さて、ああいう問題一つ見たって、長良川に関係するところのいろいろな分野の代表が集まって、いかにこれはあるべきかという論を出しておられるじゃないですか。住民参加というのは、ああいう声を出していく代表が参加してこそ、このリオで言うところの値打ちが出てくるのじゃないだろうか。  私は、審議会が新しく選ばれる段階に大胆にそういうことを、例えば地方自治体だって審議会の選び方としてそういう問題を研究しているんだということは参考にして、例えば自然保護団体が積極的に果たしている役割を考えて、そこから互選をして出してくるというのも一つ考え方として現にあるならば、十分に検討されてしかるべきであろうというふうに強く感ずるのですが、大臣、いかがなものでございましょうか。
  205. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 審議会の意向が、国民各界の意見が反映され、今後の環境政策が適切に運営されるように適切な、または適正な意見がいただけるということを私どもは念願するわけでございます。したがって、国民各界各層の意見が的確に反映されるよう私どもは念願しているわけでございまして、そういう見地から、内閣総理大臣が選定なさる際にも、私どもはお役所として御援助なり御助力しながらそういうことに努めてまいりたいというぐあいに考えます。
  206. 寺前巖

    寺前委員 私は具体的に問題を提起しているのだから、なるほどそれが一つ考え方だなとおっしゃるんだったらなるほどであっても結構だし、率直にこういう問題というのは受けとめていただきたいと思うので、大臣に一番最後にお答えをいただきたいということにして、先へ話をさせてもらいます。  それでは、十八条、十九条を具体的に進める上において、具体例でちょっと聞いてみたいと思うのです。  首都高速道路、玉川通り、環状六号、山手通りですね、既に縦横に走っている大橋地区というのが東京にあります。新たにそこに都市高速道路中央環状新宿線が通って、巨大なジャンクションを建設する計画が進んでいます。いわゆる大橋インターチェンジという問題です。この大橋地区というのを調べてみると、一番近いところの自動車排ガス設置局の目黒区の大坂橋というところの状況を調べてみると、何と〇・〇六ppmを超える日数が年のうち七十七日あるというのですから、四分の一です。これは平均値でやるのですから、一日年間平均〇・〇九一ppmだという。大変な汚染の地域じゃありませんか。  この大橋地区では、現状でも二酸化窒素や浮遊粒子状の物質など大気汚染の環境基準を満たしておらない。二〇〇〇年になったからといって満たすというような見通しも立っていない。こういうところにジャンクションをつくっていこうという計画でいいんだろうか。東京都の衛生局の疫学調査を見ても、都内の東大和市の清浄地域の学校と、明らかに学童の呼吸器系疾患等健康の影響が著しい差がそこの小学校で見られます。こういう地域に何でジャンクションをつくるようなことを考えなければならぬだろうか。これで果たしてよくなってうまくいくのだろうか。私は心配なんですが、心配ありませんか。いかがです、環境庁
  207. 入山文郎

    ○入山政府委員 一般論としてお答え申し上げるわけでございますが、環境庁といたしましては、環境基準の達成というものが最重要課題であるというふうに認識をいたしております。新たな道路計画などにつきましても、環境基準の達成維持に十分な配慮がなされるべきものであろうと存じております。
  208. 寺前巖

    寺前委員 私は、これはちょっと一般論で済まぬと思うのですよ。建設省が環境庁長官に、環境庁にここのアセスについてという意見を求めてくるのでしょう。それは全国にそんなにないですよ。一年間に何本あります。一本あるかなしでしょうな。その一つですよ、これは。そんなことは一般論で済まぬですよ。  東京都が条例に基づいた環境アセスの結果についてこう言っている。環境影響は少ない。何を言っておるのです。影響少ないというのは、悪いところにこれ以上影響が、まあちょっとはあるか知りませんけれども、少ないですよ。もともとが悪いのですよ。悪いところに影響が少ないと言ったって、悪いのは悪いんだから、そんなもの影響少ないで済む話かと、私は、東京都の条例に基づくこの見解にちょっと腹が立ってきたんだ。ばかにするな。そうすると、現行環境アセスというのは極めて非有効的じゃないか。現実的ではないということを私は強く感ずるのですよ。  そこで、環境庁長官がこれに対する意見は一体どういうふうにつけているんだろうか、よく読んでみたのです。そうしたら、こう書いてある、「本事業計画地域における大気汚染の現状にかんがみ、脱硝装置に関する調査研究を進め、その成果を踏まえて換気塔における脱硝装置等汚染物質の除去装置の導入を図るほか、必要に応じトンネル坑口部において覆蓋を設置する等環境保全目標の達成が図られるよう最善をつくす必要がある」。なるほど、私、考えたと思うんです。ちゃんとふたをして脱硝装置をぴっとつけていかなんだらここはあかんな。これは環境庁いい役割しているな、私はむしろ褒めてやろうと思ったけど、一般論言うから腹立ってきたんであって、ちゃんとこういう意見がついておるのや、これ。  そこで、私は聞きたいんだけれども、さて、それだけの意見をつけたんだったらその意見が実行されない限りは建設省にやらさぬぞということになるんでしょうな。意見意見であって、建設省が無視しよったら、無視されてしゃあないと言うのですか。そこのところは、せっかく意見を求められた以上は、とことんの責任をお持ちになるのか持たないのか、いかがなものですか、そこを聞きたいと思うんです。
  209. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、この首都高速中央環状新宿線の環境影響評価につきまして、環境庁長官は、ただいま先生がお述べになりました意見のほかにあと二点意見を付したところでございます。  私どもは当地域における大気汚染の現状にかんがみまして、そこにおける脱硝装置の調査研究を進め、その成果を踏まえて換気塔における脱硝装置等大気汚染物質の除去装置の導入を図る等の対策を実施することが必要であるということを求めたわけでございます。  そこで、トンネル構造道路の換気施設における脱硝装置につきましては、環境庁におきまして六十三年から調査研究を行ってきたところでございます。建設省におきましても、環境庁長官意見を受けて、現在、実際の道路トンネルにおける実験を進めているところでございまして、今着実に開発が進んでいるという感触を得ているところでございます。  私どもといたしましては、建設省の実験の成果に期待するとともに、今後ともこの脱硝装置の実用化に向けての努力を重ねることによりまして、この環境庁意見というものが実効を期すように、私どもは今後とも見守っていくということでございます。
  210. 寺前巖

    寺前委員 見守って見ているだけじゃ、これ、わざわざつけた意見の値打ちが出てこないと思うんですね。今、過去五年間の、環境アセスメント実施要綱環境庁意見が求められているのを見よると、今の都市高速道路中央環状新宿線、川崎縦貫道路、東京湾横断道路など五年間で五件やね。それで、意見を見よると、みんなちゃんといいこと書いてあるんだね。「環境保全目標の達成が図られるよう最善をつくす必要がある」で、見守る。  どこでも見守っているだけであって、やっとらへんなといって見守っておったってあかんので、私は、こういう意見を求められたのはもう限られているということ自身がぐあい悪いと思うておるんだけれども、見守るという以上は、そのことが実施されなかったらそれは大臣権威を傷つけられたことになる。私は、基本法をつくる以上は、責任ある実行を建設省がとことんまでやらないことには、大臣としては引き下がれないという決意を明らかにしてほしいと思うんです。そうでなかったら、何だ、アセスはやってますのや、閣議決定でありますのや言うたって、見守っている程度では話にならぬなということを私は強く感じますので、この点について大臣の決意をひとつお伺いをしたい。さきの件とあわせてお願いをいたします。
  211. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 寺前先生から大変御激励を賜りまして、感謝いたしております。  まず、問題が二つございまして、一つは、今度の基本法案先生方の御審議によりまして成立した暁には、当然その中の一環として中央環境審議会がスタートすることになります。その審議会のメンバーはもっとそれぞれのところで働く、環境問題に一生懸命働いておる方の中からも選べるようにすべきではないかという御意見と承ってよろしゅうございますね。  実は、この審議会は、先生も御案内のように、学識経験者をもって総理が任命するということであります。午前の質問であったかと思いますけれども、その中で、定員の一五%に当たる方々は女性から選んでいただければという御意見もたしかあったように承りましたのですが、そういうことも踏まえまして、これは国民の広い層の声が反映できるように広い角度から選ぶということを総理は考えておりますので、私はそれを、総理の見識を信頼いたしております。  それから、ただいま、先生の次の質問でございますけれども、特に固有の名前を挙げていただきまして、新宿線でありますとか、川崎縦貫道路でありますとか、東京湾横断道でありますとか、お名前を挙げていただきまして、この中でアセスメントにつきまして環境庁長官意見が求められて、それに対して意見を述べている、その意見が通らなければおまえどうするのか、このような大変厳しい御質問でございますが、今度の基本法が通りました暁には、これは今までもそうであったと思いますけれども環境庁長官意見というものは当然大変重みを持ってくるものと私は信じております。特に、重みが持てるか持てないかということと、それからさらに今後そのような場合にアセスメントに対してどう取り扱うのかという問題と裏腹になってくると思います。したがいまして、この問題については、環境庁長官としての意見は従来にも増した重みを持つものと私は確信いたしております。
  212. 寺前巖

    寺前委員 重みを持ってやるとおっしゃるんですから、重みを持って、ぜひとも権威を持ってやっていただきたいというふうに思います。  そこで、もう時間が参りましたのであれですが、もう一つだけお聞きをしたいと思うのは、環境庁自身も先ほど計画段階からのアセスについてずっと年次的によく研究をしておられるからぜひともという問題を提起しておきましたが、それにとどまりません。八一年に公表された環境庁の計画段階における環境影響評価技法の体系化に関する調査研究報告書では、「計画アセスメントは、可能な限り計画の早期かつ上位の段階から環境影響評価を行うことにより、個別に実施される行為を総合的に関連づけて調整し、累積的、重合的な環境影響を把握し、代替案の選択を多様にする等、各種計画に環境的配慮をより総合的、積極的に導入することを可能とするものである」と積極的な意義づけをおやりになっています。  実施段階での個別事業環境アセスでは環境の保全について適正に配慮することはできないわけです。現に、例えば今東京で問題になっております圏央道というんですか、高尾山の自然保護とか江戸崎のヒシクイを保護するために問題になっているところの問題があります。あるいは臨海部の再開発で道路、住宅、再開発ビルの問題とか水面埋め立て等の複合的事業などの問題があります。全部どういうことになるかというと、アセスをやっていくことになってくると、実施時期が別なんだということで個別アセスになっていくわけなんです。ところが、環境庁の研究の成果から考えても、こういうものは、複合累積的影響をもたらす事業群を含む広域計画や計画段階の基本計画を全体として対象にするようにやらないかぬのだという研究調査の到達点も一方であるんです。  だから、研究到達点と現に執行するところのアセスとの間に違いが生まれている。こういう問題は、やはり総合的に検討を加えていくというやり方をやるべきだ。せっかくの研究がそこまで、これは八一年の報告書を読んでおったら出ておったので、あれからことしまでもう十数年たってきておる。そこまでもう十年前に来ているのだから、胸を張って基本法制定のこの段階に、明確に十八条、十九条で、この内容というのはそういう性格を持つものとしてやっていくんだという立場に立っておられるのかどうか、あえて聞きたいと思います。
  213. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のような問題意識を私どもは当然持っているわけでございます。そういったことは、第十八条において私どもは実現していきたいというぐあいに考えております。個別事業が出てきた場合は十九条で対応する。十八条、十九条を両面適切に運用することによりまして、私どもはそういう事態に適切に対応していきたいというぐあいに考えております。
  214. 寺前巖

    寺前委員 もう時間が来たから終わりますけれども、現実には東京都の条例にも、相互に関連する複数の事業はあわせて調査及び評価するよう規定されているのです、東京都の都条例。それでも実際になってくると、実施時期のずれを理由にしてやらないんだから、私は、現実はそういうものが存在しているんだということを知った上で国民の期待にこたえていただきたいということを要望して、質問を終わります。ありがとうございました。
  215. 原田昇左右

    原田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十二分散会      ————◇—————   〔本号(その一)参照〕     —————————————    派遣委員大阪府における意見聴取に関す    る記録 一、期日    平成五年五月十二日(水) 二、場所    ホテルニューオータニ大阪 三、意見を聴取した問題    環境基本法案内閣提出)、環境基本法の    施行に伴う関係法律整備等に関する法律    案(内閣提出)及び環境基本法案馬場昇    君外二名提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 原田昇左右君       塩谷  立君    前田 武志君       増岡 博之君    谷津 義男君       岩垂寿喜男君    岡崎トミ子君       斉藤 一雄君    馬場  昇君       東  順治君    寺前  巖君  (2) 政府出席者         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         環境庁長官官房         総務課長    米澤 隆志君         環境庁企画調整         局環境影響審査         課長      小島 敏郎君         環境庁自然保護         局企画調整課長 石田 祐幸君  (3) 意見陳述者         京都大学経済研         究所長     佐和 隆光君         循環科学研究         室・代表    山田 國廣君         社団法人大阪工         業会専務理事  皆川 茂実君         弁  護  士         市民環境基金設         立準備会運営委         員         元琵琶湖環境権         訴訟弁護団代表 折田 泰宏君  (4) その他の出席者         環境委員会調査         室長      西川 義昌君      ————◇—————     午後一時開議
  216. 原田昇左右

    ○原田座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院環境委員長原田昇左右であります。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いいたします。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、内閣提出に係る環境基本法案外一案並びに馬場昇君外二名提出に係る環境基本法案の審査を行っているところでございます。  当委員会といたしましては、法案の審査に当たり、国民各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。  会議議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  次に、議事の順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者の皆様から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。  出席委員は、自由民主党の塩谷立君、前田武志君、増岡博之君、谷津義男君、日本社会党・護憲民主連合の斉藤一雄君、馬場昇君、岩垂寿喜男君、岡崎トミ子君、公明党・国民会議東順治君、日本共産党の寺前巖君、以上でございます。  次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  京都大学経済研究所長佐和隆光君、循環科学研究室代表山田國廣君、社団法人大阪工業会専務理事皆川茂実君、弁護士・市民環境基金設立準備会運営委員・元琵琶湖環境権訴訟弁護団代表折田泰宏君、以上の方々でございます。  それでは、佐和隆光君から御意見をお願いいたします。
  217. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 それでは、意見を述べさせていただきます。お手元の資料を読ませていただきます。  一、環境基本法に対する評価  地球環境問題への関心がやにわに高まりを見せ始めたのは、今から五年前の一九八八年夏のことであります。この年の六月、カナダのトロントで先進七カ国サミットが開催され、地球環境問題が議題の一つに掲げられました。そして、サミットが終了して一週間後に、同じトロントで地球環境問題をめぐる国際会議開催され、地球温暖化による海面上昇に関するショッキングなシミュレーション結果が公表されたことなども手伝って、地球環境問題はマスコミの取り上げる格好のテーマの一つとなったわけであります。実際、翌年八九年のパリ・アルシュ・サミットにおきましては、経済宣言の三分の一を地球環境問題が占めるほどまでに、この問題に対する国際世論の関心は空前の高まりを見せて今日に至っておる次第であります。  なぜこの時期、八〇年代の終わりになって、地球環境問題への関心が突如としての高まりを見せたのでしょうか。その理由を二つばかり挙げさせていただきます。  一つは、一九八七年十二月にゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が米国ワシントンを訪れ、レーガン大統領との間でINF、中距離核戦力全廃交渉を成立させたことに始まる新デタントの時代の到来、すなわちポスト冷戦期が到来したことであります。冷戦が終わりを告げたからには、これまでのようにサミットでソ連脅威論を論じるわけにはいかない。そこで、ポスト冷戦期における人類共通の課題として浮かび上がってきたのが、地球環境問題にほかなりません。  もう一つの理由は、八〇年代末に起きた価値規範の一大転換であります。八〇年代の半ば過ぎまでは市場万能論が幅をきかせ、国際経済であれ国内経済であれ、効率という価値規範が何にも増して優先されていました。裏を返しますと、公正という価値規範は二の次、三の次に回されていました。そのためもあってか、南の国々と北の国々との間の経済的格差は、八〇年代を通じて途方もなく拡大いたしました。  こうした国内、国際経済にかかわる効率優先の政策運営のあり方に対する反省の機運が八〇年代後半になって醸成されてきたこと、言いかえれば効率重視から公正重視へと政策運営の基調が転換したことも、また、地球環境問題への関心の高まりの理由の一つとして見逃せません。なぜなら、地球環境問題は、地球的規模での公正とは何か、世代間の公正とは何かという問題と深くかかわってくるからであります。  さて、地球環境問題は私たちに何を問うているのでしょうか。この設問に対する私自身の答えは次のとおりであります。すなわち、それは大量生産、大量消費、大量廃棄を旨とする二十世紀型工業文明の見直しなのであります。  さて、それでは、二十世紀型工業文明にかわる二十一世紀型文明とは一体何なのでしょうか。恐らくそれは適正消費、極少廃棄、リサイクル、省エネルギー、製品寿命の長期化などを旨とするメタボリズム、すなわち循環代謝型文明なのではないでしょうか。  途上諸国が環境制約に留意しつつ持続可能な発展をかなえるために必要な資金と技術を供与することのみならず、経済大国日本に住む私たちが私たちの手で二十一世紀型メタボリズム文明を創造し、それを世界に向けて率先垂範することこそが最も価値ある国際貢献ではないかと私自身は考えております。  以上、前置きが随分と長くなりましたが、二十一世紀型文明を構築するための礎とも言うべき環境基本法が今国会に上程の運びとなりましたことは、環境経済環境と文明とのかかわりについて日ごろ考究にいそしむ者の一人として、大いに喜ばしい限りであります。  二、環境を組み込んだ社会経済システムの構築を目指して  今からおよそ二十年前、一九七〇年前後にも深刻な産業公害の問題が問われ、環境問題への関心が空前の高まりを見せました。産業公害の及ぶ範囲は地域的かつ局所的であり、だれが加害者でありだれが被害者であるのかがはっきりしていたため、直接規制と技術的な対処によってその大方は克服されてまいりました。  さて、地球環境問題は、在来型の産業公害と一体どこがどう違うのでしょうか。  まず第一に、二酸化炭素を初めとする温室効果ガスによる地球温暖化にせよ、フロンガスによるオゾン層の破壊にせよ、その影響の及ぶ範囲が地球的な規模に及ぶという点。第二に、すべての人間が被害者であると同時に加害者であるという点。第三に、地球環境問題、特に地球温暖化の問題は、技術的な手段のみに頼っては解決が不可能だという点。第四に、地球環境問題の所在とその深刻さは、時間的な視野を五十年ないし百年ぐらいに長期化し、空間的な視野をグローバル化して初めて見えてくる、言いかえれば、十年二十年という時間的視野、日本一国という空間的視野のもとでは地球環境問題の深刻さは見えてこないという点。第五に、特に二酸化炭素は、人間の生活、経済活動に伴い多かれ少なかれ排出されるという意味において、地球環境経済との間には緊にして密なるかかわりがあるという点であります。  さて、省エネルギー、エネルギー効率の向上にはおのずから限界がありましょうし、原子力発電が二酸化炭素を排出しないからといって、電源構成に占める原子力の比率を限りなく一に近づけるというのは、決して電源構成のベストミックスとは言えません。また、二酸化炭素の分離・固定化という技術にせよ、そのプロセスにおいて相当量の電力を消費するからには、目下のところ、二酸化炭素収支という観点からして有意味な技術と言えるかどうか疑問とせざるを得ません。また、技術開発にすべてをゆだねて、十年いや二十年寝て待てというのは、もともと技術開発には巨額の経費を要し、多大の不確実性を伴うことからしても、決して賢明な対処の仕方だとは言えません。  その意味で、地球環境問題への取り組みの一環として、社会経済システムの改編が不可欠だと言わざるを得ません。  さて、それでは、社会経済システムのどこをどう変えねばならないのでしょうか。  まず第一に、産業の省エネルギー、環境保全のための技術開発を誘発するような仕掛けを経済システムにビルトイン、装てんすることであります。第二に、個人のライフスタイルの変更を促すような仕掛けを経済システムにビルトインすることが必要なのです。そうした仕掛けは、直接的な規制ないしそれに類するものと、企業や消費者の選択の自由にゆだねるものとに大別されます。環境基本法二十一条の言う経済手法あるいは経済措置とは、後者の仕掛けを指すものと私自身は理解いたしております。  資源と環境の有限性という制約のもとで、南と北との調和のとれた経済発展を持続的に達成することを、持続可能な発展といいます。持続可能な発展のためには、まず何よりも南北の協調が前提とされなければなりません。途上諸国が一層の経済発展を希求する、あるいは発展権を主張するのは、当然のこととして認めざるを得ません。同じ経済成長率を達成するに当たっても、そのために必要なエネルギー消費、二酸化炭素排出量の伸び率の振り幅は極めて広いのです。また、経済学のABCによれば、もう一単位の二酸化炭素を削減するのに必要なコスト、すなわち限界費用の安いところから順々に二酸化炭素排出を削減するのが、費用対効果の観点から望ましいということになります。  したがいまして、省エネルギー技術の途上諸国への供与、有毒物質排出防除装置を装備するための技術と資金の供与などは、単に途上諸国のためになるだけではなく、みずからにかかる資源制約、環境制約を和らげ、地球環境の破壊を防ぐという意味で、先進諸国にとっても有利なことだという点をここで強調しておかなければなりません。  三、求められる多様な政策展開  環境基本法案は、二十一世紀型メタボリズム文明と持続可能な発展へ向けてのガイドラインであると同時に、多様な政策手法のメニューを示すという役割をも担っています。基本法に掲げられた各種政策手法の間には、その重要性において甲乙つけがたいと言わざるを得ませんが、時間の制約もございますので、経済手法に的を絞って私見を披露させていただきます。  経済手法の活用は、先進七カ国サミットやOECDの勧告にも前向きに取り上げられており、つい先ごろも、OECDの環境政策委員会と租税委員会合同の作業部会が、経済手法評価とそれらを導入する際の留意点をまとめた報告書を公表いたしました。  経済手法一つである炭素税につきましては、スウェーデンなどの北欧三国、オランダ、デンマークの五カ国が既に導入済みでありますし、またECにおきましてもその導入が検討されております。念のためにつけ足せば、既に導入済みの五カ国に共通するのは、一人当たりGNPが高いこと、教育水準が高いこと、人口が一千万人以下であることであります。一方、ブッシュ政権のもとで地球環境問題について一貫して消極姿勢を示していた米国も、クリントン政権のもとで見るべき政策転換がなされ、環境負荷の削減をも念頭に置いたエネルギー税の導入がクリントン大統領により提案されています。  さて、炭素税を初めとする経済手法の導入なり検討なりは、ほぼすべての先進諸国において既に始まっております。その意味では、日本も他の先進諸国の後塵を拝することなく、経済手法の検討を速やかに開始すべきだと考えております。一言に経済手法と申しましても、その内容は多岐多様にわたります。また、炭素税に限ってみても、税額、課税対象、徴税方法など、これまた多岐多様でございます。炭素税が導入されれば、経済成長、産業構造、国民生活、エネルギー多消費型産業の国際競争力などに対していかなる影響が及ぶのかについて、体系的な検討と議論があらかじめ積み重ねられなければなりません。  経済手法の導入は大衆課税になりかねないとの批判がございます。いかなる間接税であれ、最終消費者に転嫁されるのは無論のことであります。であるからこそ、炭素税を導入済みの諸国におきましては、所得減税などによる増減税同額の措置が講じられたりもするわけであります。もし仮に、炭素税導入に伴い応分の個人所得税減税が施されるとすれば、消費者は、炭素税に起因する相対価格の変化に適応して、所得減税により増加した可処分所得、言いかえれば緩やかになった所得制約のもとで最適な消費者選択を行うわけですから、こうした税制改革により消費者のウエルフェアが低下するわけでは必ずしもございません。  結果として予想されることは何なのかと言えば、二酸化炭素原単位の大きい、したがって炭素税の導入により価格上昇率の高い製品が、二酸化炭素原単位の小さい、したがって価格上昇率の低い製品により代替されることであります。そもそも炭素税導入のねらいは、こうした代替、すなわち消費者選択を通じて、二酸化炭素の総排出量を削減ないし抑制することであります。また、いかなる技術革新であれ、相対価格の変化により駆動されるものであることをも強調しておかねばなりません。  以上を要するに、多少とも長い目で見れば、炭素税が消費者のウエルフェアを低下させるどころか、きれいな環境が消費者のウエルフェアを構成する一つの要素にカウントされる限り、むしろウエルフェアの向上につながると言うべきであります。また、相対価格の人為的な変化という手段を通じて、企業と消費者の努力と適応を促す、すなわち選択の自由にゆだねることにより、所定の目的を達成するというのが市場経済の常道と言うべきであります。  炭素税の導入が化石燃料多消費型産業の国際競争力を低下させるとの懸念もあるようでございますが、もし十分な検討と議論を経た上でそのとおりであることが確認されれば、そうした産業に対し免税措置を講じる、輸出に際して税の払い戻しをする、炭素税を実施していない国からの輸入製品に対して水際で炭素税を課するなどの措置を講じれば、こうした懸念はぬぐえるのではないでしょうか。  四、国際貢献としての地球環境保全  昨年六月に閣議決定されました新経済五カ年計画には、生活大国化と並んで、国際貢献が今後の日本の課題の一つに数えられています。いかなる国際貢献が望ましいかについては、人によって意見はまちまちでありましょう。国際貢献とは、国際公共財の提供であるというふうに言いかえることができます。ここで言う国際公共財とは、国際機関、技術開発、ODA、防衛などの総称であります。  そこで問題となってくるのは、いかなる国際公共財の提供役が日本にふさわしいのかであります。この設問に対する私自身の答えは、地球環境の保全のための技術移転、資金援助、国際的な枠組みの構築、メタボリズム文明の率先垂範などであります。  その意味で、基本法案において国際協力に関する政策の基本が明らかにされていることは、刮目と称賛に値いたします。こうした基本政策が単なるかけ声にとどまることなく、今後、速やかに具体化され、実行に移され、我が国の国際貢献の主柱の一つとなり、世界の高い評価を獲得することを心から御期待申し上げる次第であります。  以上でございます。
  218. 原田昇左右

    ○原田座長 ありがとうございました。  次に、山田國廣君にお願いいたします。
  219. 山田國廣

    ○山田國廣君 私も資料をもとに説明をしたいと思いますので、御用意をお願いしたいと思います。  原田座長のお勧めに従って、忌憚なき意見を述べたいと思います。  まず、私の資料ですけれども、四章から成っていまして、一章目では、まず「環境基本法制定の目的と意義は何か」ということを三点にわたって述べます。最初、基本理念と原則が明示されているかということでございます。それから二番目は、環境管理システムとして今回の環境基本法は完成度が高いかという視点です。三番目は、公害、環境破壊、自然保護、地球汚染などそれぞれの汚染、そういうことに対する目配りが行き届いているか。この三点です。  第二章、次の二ページですが、ここでは、基本理念及び原則について、政府案、社会党案、それから一つ環境基本法のモデル的な条例ということで川崎市環境基本条例があるのですけれども、それからもう一つ地球レベルではリオ宣言を理念法的な一つのモデルと考えまして、この四つを比較しております。二章は、各理念、この六つの理念について四つの比較をした中で、政府案にどういう問題点があるかということを示す資料としています。  三章ですけれども、三章は、環境管理システムです。五ページの下の方ですけれども環境管理システムとしての完成度が高いかということで、同じくこれについても政府案、社会党案、川崎市環境基本条例、リオ宣言の四つを比較して、政府案のどこに問題があるかということを比較する中で資料としていきたいと思います。  四章は、最後の八ページですけれども政府案の問題点をまとめております。  こういう順に従って述べていきたいと思います。  一ページに戻ります。  まず最初に、環境基本法の制定の目的と意義です。  環境基本法というのは理念法ですから、理念それから原則が明確に明示されているということが必要だと思うのですね。それで、その原則、理念ですけれども、六点あります。環境権が明示されているか。生態系の重視が明示されているか。地球環境保全と国際協調が述べられているか。持続的発展の意味の認識がきちんと行われているか、それから環境を優先的に配慮されるような項目があるか。五番目が住民地方公共団体の主体性を重視しているか。六番目が軍備縮小、武器の縮小あるいは平和の擁護という項目が入っているか。これがまず第一番です。  それから二番目は「環境管理システムとして完成度が高いか」という中で、資料では1から10まで十点述べていますけれども、この中で特に政府案に問題があるところというのは、2の環境基本計画、それから4の環境アセスメント制度の制定、それから5の情報公開制度の制定、6の経済的な仕組みづくり、それから10の総合調整機能推進、この辺について特に述べます。  最後、三ですけれども、「目配りが行き届いているか」ということについては、特に水源保護、森林保護、持続可能なエネルギーへの移行、快適環境の創造というところについて述べさせていただきます。  二ページに入ります。  環境理念と原則を、四つの法案条例、宣言を比較した中で、一、「環境権の明示」ということで、政府案には環境権は明示されていないわけですけれども、それに対して社会党案あるいは川崎市の環境基本条例、リオ宣言には、それぞれいわばある種の権利があるということを明示されている。こういう面からすると、相対的比較として政府案は環境権の明示について随分憶病な姿勢になっているのではないかと思います。  それから、二の「生態系重視」ですけれども、これにつきましても、政府案では「生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており」という記述程度にとどめているわけですね。地球環境時代ですから、やはり生態系重視ということをきちんと入れるべきではないだろうかというふうに思っております。  それから、三番目は「地球環境保全及び国際協調」ですけれども、これにつきましては政府案も随分たくさんの条文で述べています。述べていますけれども、ただ、実態として、後で述べます環境アセスメントあるいは情報公開等が、制定ということで明確になっていない、後ろ向きであるということから考えると、例えば情報公開というのが国際的に比べて後ろ向きであると、さきのあかつき丸のプルトニウムの問題でもありましたように、情報が公開されないために各国から不信を招くということがあるわけですね。あるいは環境アセスメントにつきましては、先進国は相当進んだ法案を既に持っているわけですから、そういう中で国際的につき合っていこうと思いますと、どうしてもこの環境基本法の中でアセスメントとかあるいは情報公開について制度が明確になっていないと、幾ら他の条文で希望的観測で国際協調を進めるといっても、結果的にそれはできないのではないかというふうに思います。  それから、「持続的発展に対する認識と開発や施策への環境配慮」ですけれども、これにつきましてはブルントラント委員会の明確な定義があるのです。いわゆる未来の子孫に対して資源や環境をいわば先食いしない、迷惑を与えないということがこの定義なんですね。そういう明確な定義に基づいてこの持続的発展ということを展開しないと、何か経済発展との調和というかそういう微妙な言い回しということからすると、やはり本来の定義をゆがめていくのではないかというふうに思っております。  四ページの五番目ですけれども、「住民地方公共団体重視」。  環境問題につきましては、リオ宣言等にもうたわれておりますように、住民の参加、そういうことなしになかなか進まないということは明らかなのですけれども政府案では、地方公共団体責務、責任ですね、それから国民の責務、こういうものはあるのですが、地方公共団体やそれから国民が主体的に、積極的に参加していくような仕組みづくりというのはほとんど条文には見当たらないということで、この部分については、やはりもう少し国民あるいは地方自治体を重視するような条文を設けるべきではないかと思っています。  六番の「軍備縮小と平和の構築」です。  今、PKOが問題になっていますけれども、日本が国際的に貢献するのは平和と環境であるということは、これはいわば世論の合意になっていると思うのですね。そういうことであれば、この環境基本法の中に、平和、戦争、そういうものと環境問題は切って離せないというのがリオ宣言にもあるわけですけれども、そういう条文を基本的に入れるべきではないか、これこそが理念法ではないかというふうに思っています。  それから、環境管理システムの完成度の問題に入ります。  「環境基本計画」ということですけれども政府案十四条で「環境基本計画を定めなければならない。」というのは、これは私も高く評価します。ただし、社会党案でいくと、十六条の六項に「環境基本計画以外の国の計画は、環境の保全に関しては、環境基本計画を基本とするものとする。」というふうに、他の一般的開発計画に関しても環境基本計画を基本にするという条文が入っていますね。ですから、この条文を入れるというのは非常に重要な意味を持っていると思うのです。すなわち環境配慮を優先するということだと思います。  それから、六ページの2の「環境アセスメント」ですけれども、残念ながら政府案では、環境アセスメント制度化するということをうたっておりません。それに対して、各国、先進国では既に制度化されておりますし、社会党案等ではこの制度化を要求しているということで、これについても、国際協調を進めるためにも、あるいは企業の活動を健全にするためにも、むしろいいアセスメント法をきちんと制定すべきではないかと思っています。  「情報公開」ですけれども、情報公開についても、今回の政府案では、教育、学習という問題、あるいは民間団体等が自発的に行う環境の保全ということに情報公開の範囲を限定しております。それから、そもそも情報公開法そのものを制定するというふうにはうたっておりません。まず基本としては情報公開法を制定するということが求められると思いますし、それから、基本法の中におきましても、公開する範囲をもっと環境一般に広げて行うべきではないかと思います。  次に、4の「経済的な仕組みづくり」ですけれども、新たな経済指標、GNP、くたばれGNPとありますけれども、これにかわって環境庁等もグリーンGNPなどいろいろ研究しております。そういうものをもっと大胆に取り入れていったらどうかというふうに思います。  それから、5の「総合調整機能」ですけれども環境基本法というのは基本理念が明確に入っているというのが一つ大事ですけれども、もう一つ、総合調整機能がきちんと入っているかどうかということがやはり重要になると思うのですね。それにつきまして、政府案ではこの総合調整機能は「該当なし」というふうに私書いておりますけれども、社会党案では、五十一条等で総合調整機能を出しています。この機能につきましては川崎市の環境基本条例が非常に進んでおりまして、いろいろ総合的な調整を行うということを明記しております。そういう意味で、政府案の中にもこの総合調整機能を取り入れられるべきではないかと思います。  最後、第四章で、もう一度政府案の問題点をまとめて述べます。  まず、今回の環境基本法ということですけれども、二十一世紀へ向けて今後二十年間ぐらい国の環境の基本になる、そういう法律なのですが、残念ながら条文等は、「わかりにくい言い回しと妥協」というふうにここでかぎ括弧で書いていますけれども、そういうものに終始しているという印象があります。政府案は、通産省、建設省、国土庁など開発官庁あるいは企業との調整については随分行ったみたいですけれども、しかしながら、国際的な調整あるいは地方公共団体や国民との調整については失敗しているのではないかと思います。それで、憶病な法律、あるいは現状を追認するだけの理念なき法律というふうに述べさせていただきます。  「環境権の明示」ですけれども、先ほど述べましたように、これはそもそも自然権として存在しているのではないだろうか。憲法に環境権が明示されていないことを理由に、今回の環境基本法にも環境権が明示されないような論理の言い回しというのはおかしいのではないか。本来、自然権というのは国家以前に自然的に与えられていた、そういうものとしてとらえて、むしろこの環境基本法環境権を入れ込むことは、今回チャンスではないかというふうに思います。それ以後、この環境基本法に入ってから憲法の中にもう一度環境権を盛り込めばいいという手順だと思います。  「生態系の重視」というのは、入れるべきだというのは当然だと思います。  次に、先ほど述べましたように「地球環境保全と国際協調」ですが、情報公開、アセスメント、こういうものをきちんと制度化せずに国際協調というのは、別の条文で幾らうたっても、それは空念仏に終わるのではないだろうかと思います。  それから、「持続可能な開発意味の認識と環境配慮」ということで、ここにもブルントラント委員会等の定義、それから世界銀行の経済学者ハーマン・デイリー氏が行った持続可能な開発意味をかぎ括弧で示しております。こういうふうに持続可能な開発、発展というのは明確な定義があるわけですけれども、この定義を勝手にいろいろ変えて、そしていわば経済との調和等に向けていくことについては、やはりそれ自身が理念法としては非常に危ういというふうに思っております。  それから、持続可能なということにつきましては、先ほども佐和さんの方から循環代謝型という言葉が述べられましたけれども、私は「循環型社会」というのをこの理念法では明確に入れればどうだろう。これは環境白書等にも使われております。ですから、持続可能なというのはある種の制約条件ではあるのですけれども、その中身を与えていないわけですから、その中身は何かというと「循環型社会」という言葉になるのではないだろうかと思います。  「住民地方公共団体の主体性重視」ということにつきましては、特に川崎市の環境基本条例が相当進んだ内容になっていますね。それに比べて政府案は、はっきり言いまして相当おくれていると私は思います。そうすると、例えば上位法として環境基本法ができた場合に、この川崎市の環境基本条例のような進んだ条例がかえってできにくくなる、そういうようないわばマイナスの作用をこの環境基本法が働いてしまうのではないかというおそれを抱いております。  それから、「軍備や武器の縮小・解体と平和の構築」ですけれども、これも先ほど述べましたように、世界に貢献すべき道として、今環境基本法にこういう条文を入れるのはチャンスではないかと思っております。  それから「環境管理システムとしての完成度」ですけれども、最近企業につきましては、特にイギリス等EC諸国で、エコ監査というのが義務づけの方向で動いております。国際標準化機構、ISOの方でもこのエコ監査の作業を始めている、そういう動きがあります。このエコ監査につきましては、環境管理システムとして非常にすぐれている。  それで、こういう環境管理システムとして、今この環境基本法あり方あるいは地方自治体が行っている環境行政、国が行っている環境行政を見ると、まだまだ随分欠点があるということで、今回やはり完成された環境管理システム、一つのモデルはEC流のエコ監査だと思いますけれども、このEC流のエコ監査の中で環境管理システムとしての環境基本法見直してみればどうかなというふうに思っております。  「環境基本計画」ですけれども、この環境基本計画につきましては、中身についてもう少し具体的に今回の基本法で述べるべきではないか。例えば、川崎市の環境基本条例の場合ですと、基本計画のモデルみたいなものをきちんと条例の中に別資料で載せておりますけれども、そういう今回の基本計画を制定するというのは非常に私は評価するのですが、もう少し中身について突っ込んで触れるべきではないかと思っています。  続きまして、「環境アセスメント」は、例えば本四架橋それから大阪湾フェニックス計画等で私は意見書を出した経験があるのですけれども、本四架橋でいうと、鉄道の騒音で後からいろいろ住民から異議が出てきた。あるいは大阪湾のフェニックス計画ですと、着工年度がおくれる、搬入量が予測と大分違って減っている、あるいは財政破綻など、既にこれまでの国家的な事業の中でアセスメントが随分問題点が出てきているということがありますから、この中では、まずアセスメントの総合的な計画化、それから住民参加、それから事後評価、それからアセスメントの監査、アセスメントをだれが最終的にこれはいいというふうに判断するかという監査を行うことが必要になると思います。  それから、「経済的な仕組みづくり」ですが、例えば先ほど宮澤総理は税は取らないにこしたことはないというような発言を国会でなさっているということを新聞で見ましたけれども、そういう認識というのは非常におくれているのではないかと思います。持続的開発、持続的発展、先ほどのブルントラント委員会とかハーマン・デイリー氏のあの定義に従って環境問題を考えるならば、何らかの経済的な仕組みというのをつくらなければ、これはおさまらない。環境はただではないということで、ですからそういう意味で、野党の皆さん方も含めて、税金は取らないにこしたことはないというような認識で環境問題を考えるというのは、やはりおくれているのではないかというふうに思っております。  最後に、「総合調整機能」ですけれども、縦割り行政という言葉があります。その中でどこがリードするかといえば、これは政府レベルでいうと環境庁しかないと思います。ですから、環境庁を省に昇格して、そして環境庁が全体的に目配りをするということなしにこの総合調整は行えないというふうに思っております。  以上で終わります。
  220. 原田昇左右

    ○原田座長 ありがとうございました。  次に、皆川茂実君にお願いいたします。
  221. 皆川茂実

    ○皆川茂実君 社団法人大阪工業会専務理事の皆川でございます。  本日、この会合で環境基本法案に対する意見を述べさせていただく機会を賜り、厚く御礼申し上げます。  私の陳述は、初めに環境問題に関する基本的認識について、次に環境基本法案に対する意見について、終わりに環境経済の両立に向けての事業推進についてという構成となっております。  まず、基本的認識について申し述べます。  今日の環境問題は、都市型、生活型に関する問題が顕著になってきており、さらには地球規模に及ぶ環境問題がクローズアップされております。これら地球環境問題を初めとした昨今の環境問題は、国民の各層がみずから取り組みを要求される課題であり、その解決には、国民一人一人の意識改革が必要不可欠であるという基本的認識を持っております。それには、国、地方自治体事業者、国民、すべてがそれぞれの役割に応じて個別に、あるいは連携して、自主的、積極的に対応していく必要があると存じます。今日の世界情勢からも明らかなとおり、我が国のとるべき環境施策や環境対策は、環境調和型経済社会の形成に向けて一歩ずつ着実に進めていくことが重要であると考えます。  私ども産業界におきましては、こうした観点に立ち、かねてより、公害対策を初め、都市型、生活型環境問題への対応、開発途上国への環境協力、さらには地球環境問題への取り組みなど、より快適な環境創造に対応した企業行動について自主的に取り組んでおります。  さて、この機会に、社団法人大阪工業会が関西産業界の立場を踏まえて、関係経済団体と協力もとに取り組んでまいりました内容を簡単に御紹介申し上げたいと存じます。  御承知のとおり、我が国環境問題が大きな社会問題として注目され出したのは、昭和四十年前後でございます。大阪工業会では、こういった経済社会情勢にかんがみ、いち早く昭和四十三年、産業界として環境問題に前向きに取り組むべく、研究会の設置、経営者シンポジウムの開催などあらゆる企業が業種を超えて結集して取り組んでまいり、昭和四十五年には常設委員会を設置したのであります。加えて、従来の環境問題から地球規模の環境問題に変容してきた今日におきましては、地球環境問題を研究するための委員会を設置し、企業みずからの行動の指針となるメッセージを取りまとめたのであります。さらに、国際交流を通じて、国内外の環境対策に取り組んでおります。  一方、関西における特記的な事項といたしまして、平成二年に、地球環境を保全または改善するために広く英知を結集する場として、産業界の呼びかけにより、官産学が一致して地球環境関西フォーラムを設置し、行動憲章をまとめたのであります。この行動憲章の基本行動指針には、みんなが連携して取り組んでいこうとうたわれております。  このように、多様化してきた環境問題に対応して、地域の特性を生かしつつ努力してまいりましたし、今後とも一層推進してまいりたいと考えております。  ところで、このたびの政府環境基本法案は、我が国における今後の環境保全施策の進め方を定めるだけにとどまらず、内容が広範な分野にわたるものであり、とりわけ経済運営のあり方にも踏み込んだ性格を有している重要な法案と認識いたしております。こういった点を踏まえまして、産業界の立場から幾つかの意見を申し述べさせていただきます。  それでは、第二に環境基本法案に対する意見を申し述べます。  まず第一に、国民各層の責務について申し述べたいと存じます。  本法案では、国、地方自治体事業者、国民の責務がそれぞれ示されておりますが、これに基づく具体的施策の策定に当たりましては、広く国民各層が相応の役割を果たせるような考え方が必要であると存じます。そして、今日の環境問題の要因は広範かつ複雑多岐にわたり、その対応には、国民各層の果たすべき役割を明確にすることが重要であり、その責務を認識し、それぞれの役割を果たすべきであると考えます。  もとより、この中で事業者の果たすべき役割は少なくないことは十分認識しており、この認識に基づいて従来から環境問題への対応を推進してまいりました。今後とも、長期的、広域的観点に立って環境保全活動に自主的かつ積極的に取り組むことが責務の基本と考えております。そして国は、これら事業者や国民が行う自主的、積極的活動を支援する立場をとることが重要でないかと考えております。  第二に、環境影響評価について申し述べます。  申すまでもなく、産業界といたしましても、環境影響評価重要性につきましては十分に認識いたしております。現在実施しております環境影響評価は、閣議等や地方自治体条例要綱に基づいて適切に実施されているとともに、多くの実績を積み重ね、実質的に有効なシステムとして定着していると考えております。したがいまして、本法案の中で「必要な措置を講ずるものとする。」とありますけれども現行制度で十分な成果を上げており、また経済社会の変化には、必要であれば現行制度見直しにより対応し得ることから、新たに個別法の制定の措置をとる必要はないのではないかと考えております。  第三に、環境保全上の支障を防止するための経済措置について申し述べます。  経済措置考え方の基本は、適正かつ公平な負担であるということであります。このため、最終的にそのコストを負担すべき国民各層の合意を得ることが不可欠であるということは申すまでもなく、その必要性及び効果さらには経済社会への影響について、各界各層の十分な議論を望むものであります。中でも経済への影響につきましては、国内のみならず国際的な整合を図る必要があります。特に、中小企業のウエートの高い関西産業界の立場で申し上げましても、経済手法に関する議論が尽くされないままに安易に具体的な施策が制定されないように要望いたします。  第四に、環境基本計画について申し述べます。  環境基本計画の基本的策定に当たりましては、我が国環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的推進を図るための具体的な方向を示し、国民各層の自主的、主体的な取り組みに対する国の支援のあるべき姿を盛り込んだものとすべきであり、これによって、管理的な性格を帯びないように留意されることを望みます。  また、地球温暖化の問題につきましては、経済社会、国民生活に深くかかわり、事業者だけでなく、社会システム、ライフスタイルの見直し等、国民各層の幅広い対応が求められるものであります。したがいまして、エネルギー政策とのバランス、施策の効果、経済に与える影響について十分配慮し、従来の環境問題とは異なった視点から論ずべきではないかと考えております。  以上、このたびの環境基本法案に対しましての意見を四点述べさせていただきました。  最後に、この機会に、我々産業界といたしまして、今後の環境経済の両立に向けての事業活動を推進するための基本的な考え方を申し述べさせていただきたいと思います。  第一に、環境の保全と経済の発展が一体となった環境調和型経済社会の構築を推進するということであります。  これには、国、地方自治体事業者、国民の各層が一体となって継続的に取り組んでいくことが必要であること、また、中長期の視点からの技術開発などによる対応が必要であること等、総合的に推進しなければならないと認識しております。そのために私ども産業界は、これらの認識を踏まえて、エネルギー使用の合理化、リサイクルの推進を初め、廃棄物の減量化等さらに努力することが重要であると認識しております。  次に、国際的取り組みの積極的な推進でございます。  本基本法答申にありますとおり、地球環境の保全は、国際社会が共同で取り組むべき全人類の課題であります。また、地球環境の保全が、国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること及び我が国経済社会が国際社会と密接な依存関係にあることを踏まえ、我が国の経験と技術、経済力を生かしつつ、地球環境の保全のため、国、地方自治体事業者、国民の各層が国際的な取り組みを推進していくことが重要な課題と考えます。  以上、私ども産業界におきましては、国内、国際的観点から、より快適な環境創造に向けて努力してまいりたいことを申し述べ、私の意見陳述を終わらせていただきます。
  222. 原田昇左右

    ○原田座長 ありがとうございました。  次に、折田泰宏君にお願いいたします。
  223. 折田泰宏

    ○折田泰宏君 私は弁護士でありますが、日本弁護士連合会の会員でございまして、過去に、日弁連の公害対策環境保護委員会というのがございまして、そこの一員として全国の環境破壊状況を調査した経験を持っておりますが、最初に日弁連のこれまでのこの環境基本法に対する意見について説明させていただきまして、後半は、私自身が環境訴訟に幾つか携わってまいりました経験から、この環境基本法に対する私の意見を述べさせていただくという形にさせていただきたいと思います。  日弁連の要望あるいは意見というものは既に提出されていると思いますけれども、戦後我が国の自然というものが開発によって非常に大きな破壊がされてきた。それは、これまでの開発法制というものが開発優先ということで、自然の保護というものを考えていなかった、そして大きな公害をあちこちで巻き起こして、国民の生命、身体、健康をむしばんできたという歴史的な経過があったわけです。  それに対して、公害防止法制というものが、公害関係法規というものがある程度整備されてきながら、環境保護全般についての法規というものが整備されていなかったという経過がありまして、日弁連としては約二十年前、一九七三年から環境保全基本法試案あるいはアセスメント法の試案、そういうものを幾つか立法案をつくりまして、提案をしてまいったわけであります。今回やっと国の方で環境基本法を制定するという動きになったことにつきましては、おくればせながら評価すべきことであろうかと思います。  ただ、内容につきましていろいろ問題があるわけでございまして、日弁連としては、たくさん問題があると思いますけれども、五点に絞りまして既に声明を出しているところであります。  第一に、環境権を認める規定がないというところであります。  環境権という権利につきましては、既に日弁連でもかなり前から提唱しているわけですけれども、結局は、環境というものは一体だれのものなのか、国のものなのか、国民のものなのかという考え方の違いから出てくるのかもしれませんけれども、しかし、リオ宣言の原則の第一にありますように、そういう環境を享受する権利というものが国民にある、人民にあるということは、もう既に国際的な潮流として明らかになっていることでありまして、これを環境基本法で宣言するということについては非常に大きな意味があるでしょうし、まさにそうしなければならない国際的な義務があるのではないかというふうに思います。  それから二番目に、環境基本計画に関する規定が盛り込まれたという点については評価されるべきでありますが、先ほどの陳述者の話にもありましたように、ほかの開発計画との優先関係はどうであるかということが問題になります。この点について、その優先関係を明確にすべきでないか。  それから三番目に、環境アセスメントの点について触れてはいるわけですけれどもアセスメント制度化、立法化というものは明記されていないという問題がある。  それから四番目に、住民参加の規定が明確ではないというか、ほとんどないわけですね。そして、情報公開の規定もございますけれども、これも権利として位置づけられていないという問題があります。  それから五番目に、ODAについては環境への配慮規定が盛り込まれました。しかし、熱帯林の乱伐とか公害輸出、海外でさまざまな公害問題を生んでおりますけれども、これに対する実効性のある規制の規定が考慮されていないという問題があります。  今回社会党から出されております修正案を見ますと、これらの日弁連の要望につきましては、幾つかの点は解決されているように思います。  まず第一に、先ほどの環境基本計画を優先せよという点につきましては、「環境基本計画を基本とする」という表現の中で、その実現が可能ではないか。  それから、環境アセスメントにつきましても「制度を確立するため、必要な措置を講ずる」という表現の中で、法制化というものが将来整備される可能性が出てくるということがあろうかと思います。  それから三番目に、情報公開につきましても、これは政府案では非常に限定的な情報公開の制度になっておりますが、修正案では、これを単なる国の努力義務ではなくて、公開義務ということを明記しているということで、大きな進展があろうかと思います。  それから、日弁連の要求としては出ておりませんけれども、自治体の独自性、具体的には条例で上乗せ、横出しができるということについても、この修正案については非常に評価できる内容になっているかと思います。  日弁連としましては、これまでのそういう歴史的な流れの中で、環境権等あるいは住民参加ということを非常に強調しているわけですけれども、これは先ほど言いましたように、環境というものが一体だれのものなのかというところの発想から大きな違いが出てくるわけでありまして、これから私の方の意見を述べさせていただきますけれども、まさにその問題をどっちをとるかということの中で、この基本法の概念、思想というものが大きく違ってくるのではないかというふうに考えているわけです。  例えば、環境基本法の第三条を見ますと、第三条の「環境の保全は、」というところで、「現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。」というような表現で終わっておりまして、これが一体だれの権利なのかということは明示されていない。  一方、九条では「国民の責務」というのがございまして、国民の方は「国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。」という義務がある。二項では「国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。」ということで、国民の方は義務しかないわけですね。権利は全く認められていない。結局、この環境基本法の基本的な思想というものは、環境は国のものであるということが背景にあると考えざるを得ないわけであります。  基本法の随所に、国が、国がという表現が出てまいります。しかし、それは今の世界的な潮流からいえば、あるいはもともと環境というものはどういうものかということを考えますと、これはやはり国民、我々人間のものでありまして、国のものではない。環境の管理について、国に対して、あるいは政府に対して信託をしているかもしれませんが、基本的に環境を享受する権利は我々にある、この理念は非常に重要であろうかと思います。  それは、どういう場面でそういう問題が出てくるかといいますと、現実に戦後日本の環境を大きく破壊してきたのは、事業者というよりも、むしろ国や地方自治体であるという現実があるわけです。例えば、湖沼、河川、海岸はコンクリートづけになっております。日本のほとんどの河川はダムによって荒廃しております。海は埋め立てによってどんどんなくなっていっております。山はこの埋め立ての土をとるために崩され、そして観光道路が走り回って、山の自然も荒れ果てているわけです。これをやっているのは一体だれかといいますと、国であり、地方自治体であるわけです。この国や地方自治体公共事業が日本の自然を破壊し、公害を生んできたのが現実であるわけです。そうすると、そういう国や自治体に自然保護、環境保護というものを託せるのかどうかということが問題にならざるを得ない。  現実には、これまでそういう環境破壊に対して幾つかの裁判というものが起こされてきたわけですが、国や自治体がみずからやる公共事業に対しては、我々国民が裁判でその環境破壊を差しとめすることは、今の法律の手段でほとんど残されていない。非常に限定的に民法という私法的な権利でその手段を講ずることは可能でありますけれども、ほとんどそれは難しい。  じゃ、そういうことを救済するのに、一体だれが救済できるのかという問題があります。本来、環境を保護すべき責務が国にあるとすれば、国みずからが環境破壊をするときにだれがそれをできるのかということは、結局はもともと環境に対する権利を有する国民に、その救済すべき武器、手段を持たせざるを得ないのではないかということであろうかと思うわけです。  アメリカの環境法制の発展の歴史を見ていただいたらわかると思いますけれども、まさに欧米では、環境は国民のものであるという発想の原点に立っております。国民がそういう公共事業に対して何らかの法的な措置、差しとめ等を起こしていくことについて、どうやってその権利を認めるかということがアメリカの各州の判例あるいは最高裁の判例で長い期間をかかって認められていったわけです。裁判上、当事者適格というふうに呼びますが、その当事者適格の拡大をすることによって、そして裁判所が国民に対して国民の環境権を認めていくということによって、アメリカの環境法制というものは発展していったわけであります。  では、制度的な展開として具体的にはどういうものが考えられるかということになりますと、まず第一に、やはり環境権環境を享受する権利というものが国民にあるということを宣言する。これは、リオデジャネイロの原則の第一にあるとおりのものを今回の環境基本法でやはり宣言するということが一番重要なことであろうかと思います。  ただ、権利として認めるということだけでは不十分です。その権利は執行できる権利でなければならない。この執行できる権利をどうするかということが非常に重要なことでありますけれども、この場合に、裁判としてそれを執行できる権利であるかどうかということは一つ考えられます。それからもう一つは、裁判でなくて、行政委員会のようなものを設けて、行政委員会に申し立てをする、環境破壊に対してその差しとめをするのは、行政委員会が差しとめをする、国民はその行政委員会に対して申し立てをする権利を持つという制度も考えられると思います。  この前者の、裁判をもって環境破壊に対して差しとめをするという場合につきまして、例えばアメリカでは市民訴訟という制度を設けております。アメリカの自然保護の法制の中に、シチズンスートという規定がございます。これはエニーパーソン、つまり市民はだれでも環境破壊行為、法律違反行為に対しては訴訟を提起して、その行為を差しとめすることができるという規定がございます。つまり、環境権という権利を宣言するだけではなくて、そこまでの権利を認めている。  それから、ほかに重要な点は、環境アセスメント制度であり、そしてそれを実効あらしめるための情報公開の制度であります。つまり、行政の手続をガラス張りにしてそして国民に情報を与える、国民がその一つの行政の決定をなす過程の中で参加をする、そういう制度も今の国民に環境権を保障する制度の一環として重要であるかと思います。今回の基本法では、環境アセス制度、情報公開の制度は一応うたわれました。先ほど言いましたように、非常に不十分な面があります。これをさらにもっと修正するとともに、今言ったような環境権の宣言をするとともに、それを実行する、執行する制度というものを整備するということが重要であるというふうに考えているわけです。  それから、最後にもう一点は、NGOの育成支援について、環境基本法の中にございます。これも国民に対して環境権を保障する制度として非常に重要な制度であろうかと思います。ただし、基本法の二十五条ではまだ非常に抽象的な内容になっておりまして、これをもっと具体的な内容——修正案ではかなり具体的な内容になっておりますけれども、どういう点、どういう内容についてNGOを支援するかということについて、基本法の方でもっと考慮すべきではないかというふうに考えております。  以上で終わります。
  224. 原田昇左右

    ○原田座長 ありがとうございました。  以上で意見陳述者からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  225. 原田昇左右

    ○原田座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩谷立君。
  226. 塩谷立

    塩谷委員 現在の人類の存続あるいは地球の存続にかかわる環境基本法が上程され、その公聴会が本日ここで行われていることは、大変意義のあることだと思っております。そして、本日は四名の陳述者からそれぞれ貴重な御意見をいただいたことに心から感謝申し上げるものでございます。  日本の環境問題につきましても、今日大変な問題になり、さらには昨年リオにおきまして環境サミットが初めて行われたという点でも、ここ数年来、環境問題は大変な地球規模の大きな問題として取り上げられてきているわけであります。日本におきましても、古くは公害から、さらには自然破壊、そして我々の実際の生活の身の回りのところにおいても大変広範囲環境問題が取りざたされ、そして今日世界的な問題になっているわけであります。そういう中で、現在日本が、今取り組んでいるこの基本法というものは大変に画期的なものであり、また将来の長期的なスパンにおいてもぜひ必要だと思って、我々も審議を続けているわけであります。  そんな中で、環境問題というものがいかに幅が広いかということも改めて認識をしているわけでございますが、国、地方自治体事業者、さらには国民の役割、そして国際社会においての日本の役割、さらには国際的な問題の中での南北問題等さまざまな課題があり、大変重要な問題であるわけでございますが、そういう中でそれぞれ先生方お話しいただいたことは、大変意義ある御意見だと思っております。  時間もありませんので、幾つか質問をさせていただきたいと思います。  まず、佐和先生に御質問をしたいと思いますが、人類の生存基盤である環境問題、これから現在への対応あるいは将来的に存続させるために、やはり基本法の理念でもある持続可能な発展ということ、これが必要であるということがうたわれておるわけでございます。政府案の第四条にあります環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築ということで、これも明示しているわけでございます。しかし、一方では経済環境の調和ということで、経済環境との調和状況を復活させるものでありますが、一方で環境保全を優先するべきだという規定を入れるべきだという意見もあるわけでございますが、その点について、先生どうお考えでしょうか。
  227. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 簡単にお答えさせていただきます。  経済環境というのは、いわゆるトレードオフの関係、つまり孝ならんと欲すれば忠ならず、忠ならんと欲すれば孝ならずという平重盛の心境のような関係にあるかのようにしばしば言われるわけですが、私は必ずしもそうではないというふうに思います。例えば、先ほどちょっと話題に出しました、何らかの経済措置を講ずればそれによって経済成長が低下するという懸念が当然のように言われるわけですが、私は決してそんなことはあり得ないというふうに思っております。つまり、先ほどもちょっと触れましたように、消費者が賢明にといいますか、与えられた環境もとで合理的に振る舞えば、決して消費者のウエルフェアは低下するわけではない。あるいは、企業の生産活動のレベルも、言われるほど低下するわけでもないというふうに思っております。  それから、一つ関連して申し上げたいのは、たとえ何らかの措置を講ずることによって、あるいは環境保全に配慮することによって、国民総生産、GNPの成長率が仮に低下するにせよ、GNPというのは経済活動の水準をはかる一つの物差しである、ワン・オブ・ゼムであるという意識を持つことによって、問題なのは結局国民生活の質というのでしょうか、質的なレベルというものが低下することがあっては困るわけですけれども、GNPの成長ということは国民生活の質の維持ないし向上にとっての必要条件でも十分条件でもないということを申し添えたいと思います。
  228. 塩谷立

    塩谷委員 先生の御意見の中で、現在の今まで積み上げてきた文明というものがまさに転換点にあるということがうたわれているわけでございまして、メタボリズム、循環代謝型、この文明の創造が必要だというふうに言われておりますが、今まで我々が築いてきた文明と、そのメタボリズムという文明を、ぜひ具体的にわかりやすく説明をお願いしたいと思います。
  229. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 戦後日本の文明というのは、一言で申し上げれば、それはフロー文明だったと思うのです。つまり、GNPにせよ消費にせよ、あるいは所得にせよ投資にせよ、そういったフローの量を大きくすること、あるいはその成長率を大きくするということに関心が注がれてまいったと思うのです。特に、私が先ほど地球環境問題が我々に何を問うているのか、それは大量生産、大量消費、大量廃棄の二十世紀型工業文明の見直しだというふうに申し上げましたが、実はこの二十世紀型工業文明は、大量生産、大量消費というのは、今世紀の初めごろにアメリカにおいてつくられた文明だと思うのです。しかし、その後ろに大量廃棄をくっつけたのは我々日本人ではないか、戦後の日本ではないかというふうに思うわけです。  実際、例えば東京の建物、オフィスビルというものの過去四十数年間の歴史をたどってみても、戦後焼け野原になって、そこにビルが建ちました。しかし、その当時は資材も乏しかったから余りいいビルは建たなかった。しかし、その二十年後の昭和三十九年前後、つまり東京オリンピックの前後に、ビルの建てかえラッシュがあった。それからまた二十年たった一九八〇年代の半ばに、またインテリジェントビルというようなことでビルの建て直しがあったということで、コンクリートビルの寿命ですらが二十年というふうに見積もられている。これはまさに大量廃棄の文明だというふうに思うわけであります。ヨーロッパの国々に行けば、百年前、二百年前に建てた石づくりのアパートに依然として人が住んでいるというようなことで、日本がフロー文明だとすれば、ヨーロッパはまさにストック文明だと思うのです。  しかし、ストック文明はいいことばかりなのかというと、決してそうではなくて、言いかえれば、フロー文明は悪いところばかりなのかと言ったら必ずしもそうではなくて、例えば技術革新の活力とかそういうものは、フロー文明に備わっている長所だと思うわけです。ですから、メタボリズム文明というのは、フロー文明とストック文明の、これは欲が深い言い方になりますけれども、いいところ取りをした文明というふうに御理解いただければいいのではないかと思います。それは同時にまた、いわゆる持続可能な発展というもののためには不可欠な文明であるというふうに思っております。
  230. 塩谷立

    塩谷委員 そのフロー文明、ストック文明のいいところをとったということで、考え方としては十分理解できると思うのですが、新たな文明を築くために、行政あるいは事業者、特に国民一人一人がどういった行動をしていく、そこら辺が具体的に我々の生活の中で見えてこない。今まで大量生産、大量消費、そして大量廃棄ということに全くなれている我々なものですから、事業者にとってもそうだと思いますし、その点の具体的な我々の行動といいますか、そういうところの御説明がありましたら、よろしくお願いいたします。
  231. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 まず、政府ないし行政は、そういった新しい文明の方向へ事業者及び国民を誘導するような、そういう措置なり施策なりを講じることを期待申し上げたい。と同時に、事業者、国民、そしてまた地方公共団体は、最近政治学の文脈の中で百花繚乱ということがよく言われるのです。英語で言えばレット・ア・サウザンド・フラワーズ・ブルームというわけです。百花繚乱。これはどういう意味で使われるかといいますと、要するに、やるべきことにプライオリティー、優先順位をつけたりはせずに、皆だれもが自分のできることから一つ一つやっていこう、そうしたらいつの間にか百花が咲き乱れるがごとく風景は鮮やかに変わるという意味だそうであります。  そういう意味では、まさに国民あるいは事業者の一人一人が百花繚乱の態度で新しい文明の創造に取り組んでいくということが必要である。つまり、個々人あるいは個々の事業者ができることから順々にやっていく、何も優先順位を設けたりせずに、何でもいいからできることはどんどんやっていくということで、いつの間にか百花が咲き乱れるのではないかということを期待いたしております。
  232. 塩谷立

    塩谷委員 ありがとうございました。  次に、皆川専務理事にお伺いをしたいと思います。  産業界、事業者の代表ということでお越しいただいたわけでございます。特に、この基本法の理念として持続可能な発展ということが基本的な考え方になっているわけでございますが、環境保全と経済発展という関係について、これは両立というか、むしろその融和、統合という方向になると思うのですが、そこら辺のお考え方を、産業界として改めてもう一度御説明をお願いしたいと思います。
  233. 皆川茂実

    ○皆川茂実君 お答えを申し上げます。  基本理念にございますように、まさに経済の成長と環境保全が一体となって両立するということが持続可能な発展を支えるものである、こういう基本的な認識を持っております。その認識のために、国も産業界も、環境保全と経済成長が一体となったような計画あるいは目標を立てるべきだと思います。  例えば、産業界におきましても、一つの会社の年度計画あるいは目標あるいは予算というものと、環境のための計画、予算というものが完全に整合しておるということが大切ではないかと思います。そうすることによって、企業はまず環境の負荷にならないような産業活動をする、それから、もし環境の負荷になるようなものが排出された場合には、これを適正に処理するということが重要ではないかと思います。こういうようなものは、いろいろな意味で技術を開発し、それから社会構造の様式までも考えながら取り組むべきである、こう考えております。そして、そうすることによって、環境保全と経済成長のいずれが先、いずれが後ということは考えずに取り組むということが大切ではないかと考えております。
  234. 塩谷立

    塩谷委員 ありがとうございます。以上で質問を終わります。
  235. 原田昇左右

    ○原田座長 それでは、前田武志君。
  236. 前田武志

    前田(武)委員 まず、佐和先生に御質問を申し上げます。  佐和先生の、地球環境問題に取り組むためには何といっても社会経済システムの改編が不可欠だ、まことに示唆に富んだ御指摘でありますし、特に具体的には仕掛けをつくれ、こういうお話でありますね。ここに御指摘の、環境保全、省エネ等のための仕掛けを経済システムにビルトインする、あるいは個人のライフスタイルの変更を促すような仕掛けを経済システムの中にビルトインする、御指摘のとおりだと思うわけであります。  ところで、社会主義の崩壊の結果明らかになったのは、結局は計画経済的な社会においては環境というのは守れないということが明らかになったと思います。東欧を初め、あるいはソ連のあの原発の事故を含めて、そういった意味では私は、やはり見えざる神の手というものをうまく生かして仕掛けをつくっていく、そういうことの重要性をつくづく感ずるわけでございますが、特に個人あるいは企業の選択の自由に任せるような仕掛けをつくっていく、その辺もう少し具体的にお述べをいただきたいと思うわけです。  さらにもう一つ言えば、先ほどの塩谷先生との御議論の中でもあったかと思うのですが、環境経済に関する総合的な評価として、GNPに対するグリーンGNPなどという概念もあるようでございますが、そんなことも含めて御意見を賜りたいと思います。
  237. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 まず最初の御質問ですが、少なくとも私どもは市場経済の世界に生きているわけですから、市場経済もとでは、おっしゃるとおり見えざる手というものを頼りにせざるを得ないわけですね。その場合に、しかし、全く市場経済に任せておけば環境が保全されるかといったら、決してそうではないわけです。やはり何らかの人為的な手段を講じなければいけない。  そのときに、例えば環境税を課するということは何を意味するのかというと、結局その相対価格に人為的に変更を加えるというわけですね。つまり、仮に炭素税を課するとすれば、二酸化炭素原単位の高い製品の値段を高くすることによって、その消費を抑制し、そして二酸化炭素の排出総量を抑制する、そういうことがまさに市場経済もとでの経済的な措置の持つ意味ではないか。つまり、相対価格を変えるということがその意味ではないか。同時にまた、いかなる技術革新であれ、過去に起きた技術革新というものを振り返ってみると、やはり相対価格の変化ということに促されて技術は開発されてきた。そういう意味で、新しい環境保全のための技術革新を促すためにも、相対価格の変更ということは、これは不可欠ではないかというふうに思います。  それから、環境経済の総合的な評価ということに関してでございますが、確かにアメリカのアル・ゴア副大統領も、お書きになった「地球の掟」という本の中で、そういう新しい経済指標、マクロ経済指標をつくることが経済学者の義務である、責務であるというようなことを書かれているわけですけれども、実は、言うはたやすくなかなか行うはかたしという面がございます。一九七〇年前後にもネット・ナショナル・ウエルフェアという指標を、純国民福祉指標でしょうか、環境とか福祉とかとGNPを、経済と福祉と環境を総合的に評価するような指標をつくろうじゃないかということで、経済審議会の中にそういう委員会が設けられて検討がなされたわけですが、そのネット・ナショナル・ウエルフェアの頭文字をとりますとNNWとなるわけですけれども、「何が何だかわからない」ということで、結局その委員会はあるところで打ち切りになったというようなこともございます。  結局、環境というものは本来市場で取引されていないわけですね。GNPというのは、これは言うまでもなく市場価格によって評価しているわけでございます。ですから、そういう意味では、市場の外側にある環境に値段をつける、価格をつけるということが非常に難しい。したがって、そういう新しい指標をつくるということはなかなか一筋縄では片づかないと思います。  それで、一言つけ加えれば、であるからこそ、GNPというのはさっきもちょっと申しましたように一つの指標、幾つもある指標のうちの一つである、それを絶対視しない、GNPを相対化するということが何よりもまず必要ではないかと私は思っております。
  238. 前田武志

    前田(武)委員 実は先ほど来お水をいただいておるわけですが、これは、六甲の水かどこか知りませんが、瓶詰の水であります。大阪の水道というのは大体淀川水系だと思いますが、大阪の水がまずいというのは、私も関西が地元でございますから残念なことではあります。  しかし、これは閉鎖性の水域であって、この流域の方々が本当に御努力をされて、何とか水質の浄化というようなことも取り組んでいただいているわけでございますが、私、この関西というのは、歴史も古いだけに、環境問題については最新地域だろうと思うのですね。例えば大和川も、これは多分角倉了以だったと思うのですが、これをバイパスさせて堺の方に流し、そして大阪平野のポテンシャルを引き出した、そういった歴史の繰り返しがずっとあるわけです。たしか仁徳天皇ぐらいのときに茨田堤をつくって、そしてこの沖積平野をどんどん住めるように開拓をしていったというようなことがあります。  私の言いたいのは、日本の自然というもののあり方について、どうも専門の先生方のお話を聞くと、何かヨーロッパ風の、ああいう自然収奪型の産業でずっとやってきた国々と同じような感じのとらえ方もあるのじゃないかな。日本の国はまさしく、わずかな沖積平野というものを広げて、稲作で、結局はこれは水管理をやってここまでやってきたと思うのですね。それにはやはり国土の七〇%近くを占める山村というものがあって、それとちゃんと有機的に、それこそエコロジカルに連携し合ってメタボリズムを実現して日本の発展というものがあったと思います。近代産業までは。そういうものが近代産業社会になってから断ち切られたために、それこそかつての日本の社会というのはそういうものがビルトインされていたからこそうまくいっていたわけで、断ち切られた途端に環境に対するそういう一種のとめ金が外れたというところがあるのじゃないかなと思います。  そして、私が申し上げたいのは、戦後のことについても、確かにああいう痛ましい環境破壊等もあったわけですが、知恵と努力でここまで何とか回復してまいりました。しかし、一貫して言えることは、この六七%の山村というのは、いわば都市に収奪されながらも一生懸命その国土を守ってきたわけですね。どうも先ほど来お話をお伺いしていると、どの先生方も都市の論理ではないかな、こういう感じがするのです。実際には人口も減り、息子は町場へ出て、大学へ出て戻ってこない、そういう中でもどれだけ日本の緑を守ってきたか。  例えば、ついこの間私は地元の村に帰ったときに、ある人が、昔は、子供のときはこだまが響いた、今はこだまが戻ってこない。というのは、戦中戦後のあの大乱伐で大体山も裸になっていて、こだまが返ってきたのですね。今はもう木が本当に植林されて、こだまは、声は吸収されて返ってこない。そういった例は全国各地にあるわけです。あの原爆の年に大きな犠牲があったわけですが、あの一カ月後に呉市で大水害があって、二千数百人死んだのです。黒瀬川の流域がやられた。しかし、そのときは丸裸になっていたから物すごい被害が出たわけでありまして、以後、広島県、地元の方が営々として山を、土壌をつけて、肥草から植えて、そして山を回復された。十数年後に、あの伊勢湾台風ごろにそれを上回る洪水が来たのですが、被害はほとんどなかった。  そういうふうに、日本の我々の先輩たち、そして山を守ってきた人たちの、そういったすごい、営々と築き上げた努力というものがあるわけでありますから、言ってみればそういうかつてのエコロジカルなシステムというものを現代的に評価していけば、何かやりようがあるのではないか。  そこで、一つ私が申し上げるのは、日本のそういう小さな流域ごとの、何か環境容量みたいなものが考えられるのではないかなというふうに常日ごろ考えております。そういったものを一つのメルクマールにしていけば、ある程度のそういう環境計画みたいなものが立てられるのではないかという気がするわけでございますが、その点、佐和先生あるいは山田先生に御意見をお伺いしたいと思います。
  239. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 大変難しい質問なのですが、難しいから簡単に答えさせていただくというのは変な言い方ですけれども、手短に答えさせていただきます。  確かに、伝統的な日本の文化というものがメタボリズム的であるということはおっしゃるとおりだと思うのです。しかし、先ほど先生がおっしゃいましたとおり、近代産業社会に入ってからといいますか、とりわけて戦後四十数年間の過去を振り返ってみますと、むしろ我々日本人はそういう文化的な伝統をどこかに置き忘れて、それとは全く対極に位置するような、そういう文明を謳歌してきたのではないかというふうに私は思っています。  ですから、今例えばヨーロッパの国々あるいはアメリカに住む人々と比べて、日本人が本当に環境に優しいのか、地球に優しいのかどうかというふうに問われれば、私は、ヨーロッパあるいは欧米諸国との比較において、日本人はむしろ環境に対してより優しくないというふうに言わざるを得ないのではないかと思います。そういう意味では、新しい文明を創造するというように私先ほど申しましたが、今先生がおっしゃったことに関連づけて言えば、むしろかつてあった文明を取り戻す、もう一遍呼び覚ますということかもしれません。  以上でございます。
  240. 山田國廣

    ○山田國廣君 日本の文明の中で、例えば江戸時代までですと、熊沢蕃山に代表されるように治山治水の思想というのが明確にあったと思うのですね。それが明治以後、近代文明の中で山、川というのが荒れていく、そういう歴史があったかと思います。  それで、今言われた流域を保全する、その環境容量のことですけれども、私も実は流域保全ということが非常に重要になるというふうにかねがね思っていまして、流域単位で、いわば上流、下流をつながりを考えていく、その中で森林とそれから水源になる河川あるいは湖、そういうものが一体となって保全されるような考え方をぜひ今回の環境基本法の中へ入れていただきたいと思います、これは最初の意見陳述で言い忘れたのですけれども。  ただ、その中で一方、例えばゴルフ場による乱開発等が行われておりまして、私は一九八九年に「ゴルフ場亡国論」という本を書いて、何とかゴルフ場をとめたいということで今走り回っているのですけれども、その中で、住民は里山トラストということで今運動を始めています。このときに、住民の側の一つの合い言葉は、お金を出して、そして顔を出して、知恵を出して、口を出すというか、そうまでして今住民は何とか、都市住民が上流の森林を守ろうという運動が広がりつつあるのです。  そういう機運もありますので、ぜひ政府の方でも流域保全ということを入れていただいて、例えば、上流の市について都市住民が森林交付税等も出してもいいというようなことも検討されるように私はお願いしたいと思っています。
  241. 前田武志

    前田(武)委員 それでは、皆川先生に御質問いたします。  関西は今、関西空港であったり学研都市であったり、非常に活発に取り組みをされておられるわけであります。ベイエリアの構想というのが去年の暮れに議員立法で、ベイエリア整備法ですか、通りまして、いよいよ取り組みが具体的になってきたと思います。これはやはり、大阪湾という閉鎖的な海域における世界都市づくりでありますから、当然環境問題が非常に重要になってくる。既にこの面に関しては、たしか防災研究所において大型の模型実験等でシミュレーションをやって、非常に先見的に取り組みをやっておられるということ、私もその実験の現場を見学させていただいたりしながら、さすが関西の取り組みだなというふうに感じたわけでありますが、そういった意味で申し上げれば、これからひとつ大いに関西の、私も実は関西が地元でございますから、環境面も含めて積極的に取り組みをしていただきたいと思うわけでごさいます。  余り時間がありませんので申し上げますと、ぜひそういった意味で関西の心意気を示して、こういった新しい時代の取り組みに対する皆川先生のお考え方をお聞きしたい、こういうふうに思います。
  242. 皆川茂実

    ○皆川茂実君 先ほど申し上げましたように、経済の成長と環境の保全を一体にして両立して持続的な発展可能な社会が構築される、こういうことについて私どもは基本的な認識、理念を持っておりますということは、申し上げたとおりでございます。  今先生がおっしゃったように、ベイエリア計画というのは、大阪湾に対しまして、住民も、あるいはすべてが快適な環境をつくるという中で、しかしながらそれとマッチした快適な環境、あるいは産業がそれに伴いますエリアで両立した考え方をとらなくてはならないということについては、先生のおっしゃるとおりでございます。  それで、産業界といたしましてそれではどういうふうな立場でこれに取り組むかということになりますが、やや具体的な例で申しわけございませんが、まず環境の負担の少ない原材料を使用する、それから省エネルギーを中心としたエネルギーの有効な利用に努めること、それから資源が使用済みになり、あるいは不用品になった場合には、これが有効に活用されるよう、あるいはリサイクルされるような製品を開発していくこと、それからライフサイクルの長い製品を開発すること、このような現実的な、産業界として実際に取り組むことを着実にやっていかなくてはならないと思います。さらに、最近は物流関係でも非常に大きな問題があると思いますので、この物流形態の改善をするようなこと、あるいは、ユーザーに届きますときには包装という問題もございます。こういうような包装の適正化ということも十分に考える必要がございます。  非常に具体的な例を申し上げましたが、これらを着実にやることがとりもなおさず環境保全に役立つのではないか、こう考えております。
  243. 前田武志

    前田(武)委員 終わります。
  244. 原田昇左右

    ○原田座長 次に、岩垂寿喜男君。
  245. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先生方お忙しいところを本当にありがとうございます。  私は所属は社会党ですが、実は出身が川崎でございまして、環境委員会に二十年近く属して今日まで頑張ってきたつもりです。という立場からいうと、西淀の公害問題やあるいは尼崎の公害問題など含めて、公害の被害者が深刻な悩みを国会に持ってこられて、訴えられて、そしてそれを解決するために及ばずながら努力をしてきたことから考えますと、環境基本法の制定などということになったことを大変深い感慨で受けとめたいと思っています。画期的なことだろうというふうにも考えています。  私は、党の立場ということだけでなくて、今度の基本法について、それ自身が画期的な意味を持つにしても、そうであればあるほど、私どもの経験から考えて、例えばアセスメント法の制定の問題あるいは住民参加を保障する手だて、それを担保するための情報公開制度あり方、またできれば情報公開法の制定、それから、今までの歴史的な経過から考えると、地方自治体の権限を強めて、今までの歴史の中では横出しとか上乗せとかという言葉で言われてきましたけれども、公害被害のひどいところについて、環境を守っていく上で特別に必要な措置というものを自治体の権限によって保障していくというふうなこと、また、日本の企業が外国へ出かけていっていろいろな意味環境問題を引き起こしているという考えに立てば、ODAのあり方というふうなことも真剣に考える必要があるのではないだろうか。  あるいは、実は基本法はあくまでも基本法でございまして、そのほかにたくさんの個別法がございます。この個別法あり方が正されないと、基本法の建前が制定をされたとしても、政治の中でそれが具体的にどういうように生かされていくかということになると、さまざまな問題があるのではないか。それらのあり方を含めていろいろ勉強してまいりまして、基本法を一歩でも二歩でも改善をしていくということを考えて社会党としての案をまとめてきたわけでございます。  きょうはそのことについて細かく触れたいとは思いませんけれども、社会党の案に対して諸先生方の前向きな、あるいは評価をいただいていることについてお礼を申し上げたいと思います。  そんな前置きはさておきまして、最初に佐和先生お尋ねをしたいと思うのですが、先生環境庁の地球温暖化経済システム検討会の座長をお務めになられました。私も実はちょっと想像もつかなかったのですが、年間当たりGNPの〇・六五%ですか、毎年三兆円、CO2対策の予算だけでも三兆円という計算をつくられました。これは、国民生活にとっては大変な問題になると思うのです。今先生がおっしゃったように、本当に環境対策として成果が上がるならば、それはそれとして国民の納得を得ることができるかもしれませんけれども、それが極めて不十分の場合には、やはり最終負担は消費者が背負うわけでありまして、大衆課税のそしりを免れないと私は思うのです。  それはそれとして、先生が中間報告の中でおまとめになった概略を、できればお話しをいただければというふうに思います。そして、そういうことに立ち至った、いわば結論といいましょうか、それは私はこれから環境行政を進める上で非常に大きなテーマだと思いますので、ちょっとお教えをいただきたいというふうに思います。
  246. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 環境庁の地球環境に関する経済システム検討委員会の座長を務めておるわけでございますが、そこで出しました中間報告におきましては、今お触れになりましたように、CO2対策に一体どれだけの費用が必要なのかということ、そしてまた、その資金をどういう形で調達すべきかということについては必ずしも触れておりませんが、例えば仮に環境税の導入というようなことで対処しようとするならば、それが一体経済成長率に対してどの程度の成長率の削減効果が見積もられるのかといったようなことを数量的に明らかにいたしております。  そういう意味では、結局そういう費用がかかるということは、それはとりもなおさず国民が負担するということじゃないか、そういう御趣旨のことを今おっしゃったかと思います。しかし、三兆円というお金は別にどこかのどぶに捨てるわけではなくて、それは例えば民間企業の設備投資なりに対する補助金という形で結局経済の中を還流するわけですから、それがとてつもない数字であり、しかもそれが国民生活あるいは経済成長に対して大変な災禍をもたらすのではないかという御懸念をお持ちいただく必要は必ずしもないのではないかと思います。  実際、今回の総合経済対策でも十三兆二千億という公共事業費が見積もられているわけでございますから、それとの相対的な関係においても、三兆円という金額はそんなに途方もない数字ではないというふうに私は思っております。
  247. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 佐和先生に引き続いてお尋ねをしたいと思います。  私は、実は三兆円が大きいとか小さいとかと申し上げているのではないのです。ただ、大事なことは、今先生がおっしゃったような意味のことを国民が本当に理解するためには、ある程度の時間とか、あるいはPRの努力とか国民の納得とかということがどうしても必要だろうと私は思います。そして、必ずしもそれが大衆課税だとも言えない、つまりPPPの原則を含めて、検討に値する一つ考え方だと私は思います。だから、一概にいけないとかなんとかと言っているのじゃなくて、いわば環境税だとすればどういうような手法が、先生個人のお考えで結構ですが、OECDの動きなどもお話の中で述べておられましたけれども、それは日本に対する非常に大きな影響力を持ってくるだろうと思います。そういうことを含めて、もうちょっと細かく御説明いただければと思います。
  248. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 炭素税なり環境税なりの一つの難しい点というのは、今PPPとおっしゃいましたけれども、例えば二酸化炭素を排出する企業なりあるいは排出してつくられたものを消費する消費者というのが、みずからがポルーターである、汚染者であるという意識を持っていただくことが大変難しいということだと思うのですね。例えば、SOxやNOxを出すということになれば、おまえはポルーターだと言われれば、そのとおりですということになるわけですけれども、二酸化炭素を出しているからおまえはポルーターだと言われても、みずからがポルーターであるという意識を自覚するのが非常に難しい。そこに例えば炭素税なんかを導入するに当たって国民的合意を得ることの難しい点があるということを、最初にお断りしておきたいというふうに思います。  また、そういう環境税なり炭素税といったもの、あるいは課徴金といったような手段だけで、例えば二酸化炭素を二〇〇〇年以降一九九〇年レベルに安定化させようとするならば、それは大変に高い税金を取らなければならないというわけですね。それはある意味で途方もない数値になろうかと思います。ですから、そういう意味では、炭素税も一つの構ずべき手段であって、その他幾つかの政策的な措置と兼ね合わさないといけないというふうに思っております。  それから、もう二点、申し上げます。  一つは、国際的な動向という点からしてもやはりおくれをとってはならない、これはさっきも申し上げました。そのことが一つ。  それからもう一つは、こういう課税のアナウンスメント効果ということも無視できないと思うのですね。例えば、オランダでは炭素税というのは導入されておりますが、それはガソリン一リットル当たりで一・六円という、本当にごくわずかの税金なわけですね。何のためにそんな税金をかけるのか。そんな税金をかけたってちっともCO2の抑制効果はないじゃないか。つまりガソリンの消費を抑制する効果はないじゃないかというふうに言う人も多いわけです。しかし、とにかくガソリンを買うたびに一リットルにつき一・六円の税金を払っているということで、人々の頭の中の意識に環境問題というのがガソリンを買うたびに想起されるということも非常に重要なわけです。したがいまして、一リットルにつきわずか一・六円の安い、ごくわずかの税金であっても、十分なアナウンスメント効果を持っているというふうにオランダの方々はおっしゃっています。ですから、そういう効果も無視できないというふうに思います。  そういう意味で、炭素税一つを取り上げましても、その導入の仕方をどういうふうに段階的に導入するかとか、どのぐらいの率の税を課するのかとか、あるいは課税対象をどうするのか。例えばどういう産業を免税措置にするのかとか、そういう手法といいますか、実際の課税方式ということに関しましては、まだまだ議論の余地が残されているというふうに思いますし、同時にまた、そういった問題に対する十分な検討というものが急がれなければならないというふうに思っております。
  249. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう一言だけ佐和先生お尋ねします。  私は、環境税というのは財源調達のための措置ではなくて、まあ措置ではなくてというふうに言い切れるかどうかは別として、それよりも環境保全上、あるいは環境負荷の削減という効果を生じさせるために考える措置だというふうに考えるわけですが、その場合には当然、基金、ファンドだとかあるいは特別会計とか、そういうものとして位置づけるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  250. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 それは二通りの考え方があると思うのですね。環境税あるいは炭素税というものを徴収して、それで環境特別会計なるものをつくるということ、そしてその特別会計を財源にして、例えば技術開発の促進のための補助金に使うとか、例えば個人が住宅投資をする、家を建てるときに断熱材を装てんするということに対する補助金を支給するとか、あるいはその一部はまた途上諸国への環境ODAとして使うとか、そういう特別会計にするというのも一つ考え方です。この場合には、ある意味では環境税を課することによって、二酸化炭素の原単位の高い製品の消費を抑制するという効果プラス、今度はその財源で技術革新を促す、あるいは省エネルギーを進めるという二重の効果が期待できるというわけですが、それが一つ。  しかし、もう一点は、こういう新しい税金を導入するときには、やはり増減税同額にするということが一つの原則である。したがって、所得減税を伴うものでなければならないという考え方に立てば、今度は今言ったような特別会計論というのは必ずしも成り立たなくなるというふうに思います。
  251. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。  先生のおっしゃるメタボリズムというのは、私は文明論として、本当に国民が共有し得る、またしなければいけない考え方だというふうに思います。したがって、これからも文明論の構築に向かってぜひいろいろな意味で御教示を願いたいというふうに思います。  引き続いて山田先生お尋ねをしますが、社会党案について、あるいは私は川崎なものですから、川崎市の条例まで御引用いただいたことにお礼を申し上げたいと思います、多少のかかわりを持っているものですから。  基本法個別法との関係お尋ねしておきたいのですが、社会党案は十六条の6で「基本計画以外の国の計画は、環境の保全に関しては、環境基本計画を基本とする」という項目を加えました。これは、何千という法律がある中で、私も大ざっぱに調べてみますと、古い法律ほど環境という文字なんというのは一つも入っていません。いわんや環境庁のかかわりなどというのはございません。最近の法律はやや、環境庁と協議をしなければいけない、あるいは環境に配慮しなければならぬとかいう項目がございますが、そういう意味では、古い法律と言われるものを含めて、個別法を根本的に見直さなければいけないというふうに思いますけれども、その点についてどんなことをお考えでございましょうかということをお尋ねをしたいと思うのです。  先生がゴルフ場問題などにお取り組みをいただいたということ、あるいは水の問題などにも大変御研究をなすってこられたということも伺っておりますが、偶然ですが、さっきこの会場で配られた資料の中に「環境に良くない法律ワースト3」というのがありまして、環境保護にかかわっている市民グループの世論調査の結果です。一番悪いのがリゾート法、十九名、まあ人数は別にしましょう。それから電気事業法、これは電気事業の独占を許している電気事業法というふうに言っています。それから三番目が都市計画法、同じく廃棄物の処理及び清掃に関する法律、廃掃法ですね、実はこんなふうに挙げられています。  したがって、これは参考まででございますけれども、今私が申し上げた基本法個別法との関係をどう調整されるべきかということについて、先生のお考えをお尋ねしておきたいというふうに思います。
  252. 山田國廣

    ○山田國廣君 私は水問題を長くやってきたのですけれども、その中で今評判が悪いと言われたリゾート法ですけれども、これ自身については、ことしになって国土庁が少し見直しを行いましたけれども、それが基本的な見直しになっていなくて、要するに少し手直しをするぐらいで、まあ小さな規模でもやってもいいとか、あるいは体験型の農山村の、いわばそこを振興するような形で少し見直そうじゃないかという程度で、もともとの基本構造を変えないということになっています。やはり私はリゾート法については、そういういわば小手先の見直し程度ではなくて、基本そのものをもう一度変えなければ、あの法律はどうにもならないというふうに思っております。  それで水問題、少し言いますと、水道法等については、基準の大幅な見直しというのが昨年行われました。しかしながら、基準だけではなかなか守れない、やはり水源そのものを、汚染をもとから断つといいますか、それについては厚生省は有識者懇談会で新しく何か意見書を出されましたが、あの内容はかなり進んでいる内容だと思います。いわゆる汚染源をできるだけもとで規制していくという内容が含まれていますね。ああいう内容についてできるだけ各省庁調整をされて、ぜひ有識者懇談会の案を法案としていわば達成されるように私なんかは望みます。  それ以外に、下水道法ですけれども、これは非常に問題が大きいと思いますね。下水道政策というのが非常に硬直化している。一人当たり百万円かかって非常に建設費が高い。それで自治体の持ち出し、いわゆる起債についての利子が赤字になっている。それで一般会計を圧迫している。完成までの年限が百年以上かかるようなところもある。余り水質もよくないというか、そういうことに関して、もうちょっと個別の、地域の特性に合ったような、例えば合併浄化槽とかそういうものを含めた体系に変えていかなければいけないことで、実質厚生省と建設省の綱の引き合いという形になっていますけれども、こういう中でやはり下水道そのものも基本的に見直しの時期に来ているだろうというふうに思いますね。  電気事業法については、できるだけ地域分散型の、住民がそれぞれ地域でつくれるような、あるいは地方自治体も独自にエネルギーをつくれるような、これを持続可能なエネルギー体系に移行するためには、ぜひこの電気事業法をもっと抜本的に改正しなければいけないというふうに思っています。  それから都市計画法につきましては、快適環境推進ということがこのごろうたわれておりますけれども、これについてより積極的に、いわば水と緑をふやすような、そういうことをより推進できるような体系に変えていくというようなことを含めて必要になるのじゃないかというふうに思っております。
  253. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。  それじゃ、皆川さんにお尋ねをいたします。  アセスについて、現行制度でいいと、制度というか閣議決定方式でよろしいというふうにお話しをいただいたのですが、民間などの開発についての網がかからない条件を含めて、いろいろ問題が出ていることはもういろいろなところで指摘をされているわけですが、やはり制度化には反対ですか。
  254. 皆川茂実

    ○皆川茂実君 現行制度が相当な実績と、実質的な効果があるように定着しているということは考えられますが、これからいろいろな経済状況の変化があろうかと思います。先生がおっしゃるように、そういうような変化がある場合には現行制度を見直すことによって対処できるのではないか、そういうふうな考えでございます。
  255. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 法制化というのは、やはり経済界としては賛成できないという理由をはっきり申し述べていただけませんか。
  256. 皆川茂実

    ○皆川茂実君 先ほど陳述のときにも申し上げましたし、今も申し上げたとおりでございますが、今の制度で十分な効果を発揮し、それによってその制度が有効であるというように定着をしているのではないかと思われますし、ある意味で、いろいろな問題が起き、あるいは経済的な変化がありました場合には、そのときどきによっていち早く対処できるというのも現行の方法の一つの特徴ではないかと思います。そういう意味現行の方法を見直すのがいいのではないか、こういう意見でございます。
  257. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 社会経済情勢の変化に伴って制度あり方を検討していくということですから、別に閣議決定方式に固執してやっていくということではなくて、法制化を含めて検討をしていくというのが基本法をめぐる議論の大方の流れであり、それからこの間も宮澤総理も本会議でその種の御答弁をいただいているところでございますので、どうかその点について、十分だと思うということと、相対的には必ずしも十分でないから、それは国際的な状況にも合わせて法制化を求めたいという気持ちをもひとつそんたくを願いたい、このように思います。  最後になりましたけれども、折田先生お尋ねをいたします。  環境権のことに関連して、私ども社会党の案は、環境の恵沢をひとしく分かち合うことということで、それを基本的人権というふうに位置づけたわけですけれども、こういう形の環境権に対する位置づけというのは、先生はどんなふうにお考えになりましょうか。  それからもう一点、実はODAの問題について、外国の環境規制の制度と日本の規制の制度が、アセスなどを含めて、あるいは環境基準などを含めて食い違う場合に、日本の企業が海外に出かけていって活動するときに、やはり相手方の法律に合っていればいいではないかということになりますね。それ以上のものを求めるのは内政干渉ではないかという議論も一方にはあるわけです。この辺の調和に私ども大変苦労しました。その点でいいお知恵があったら、ぜひお教えをいただきたい。
  258. 折田泰宏

    ○折田泰宏君 最初の問題ですが、環境権という言葉は、いろいろな意味でいろいろな表現の仕方がされているわけでして、各国も、あるいはアメリカの各州でもいろいろな表現があるわけです。ですから、表現がどうかということはそうこだわらなくていいのかな。  ただ、むしろ問題は、先ほど言いましたように基本的人権である。これは例えば現行の日本国憲法の生存権、これも環境権が含まれているといえば含まれるという解釈もできるわけでして、問題は、基本的人権という飾り棚に飾ってあるものだけではなくて、それが実体性があるかどうかということだろうと思います。それをどこでどう国民が使えるのか。とすれば、それを実行できる仕組みというものをどうつくるのかということが重要ではないかというふうに思っております。  それから、二番目のODA問題については、私の方もフィリピンの関係でいろいろと調査に行ったりしているのですが、確かに内政干渉の問題は絶えず出てくるわけです。しかし、お金を出す、つまり国民の税金を支出するという段階においては、それは出すか出さないかというのは日本の国民がチェックすべきことである。つまり、そこではやはり日本の国民の環境に対する判断でもってそれを出すか出さないかということは判断していいのではないか。  ただし、例えばフィリピンなどを見ていますと、法制度としては日本よりも結構進んでいます。例えば環境アセスメントもあるわけです。フィリピンの人に聞きますと、法律はあるのだけれども実行されないということだそうです。そういうところではむしろ、ではその実行をどうするかという問題があって、例えば、フィリピンでそういう制度があるから、ODAでお金を出したらそれが有効に使われるのかといったら実は大間違いでありまして、問題は、フィリピンならフィリピンでそういう制度できちっと公害対策が実行されるかどうかということについてどう監視をするのか、そうなると内政干渉の問題が出てくるわけです。そこをどういう条件にするのか。つまり、お金を出す場合に、ではフィリピン側に制度がある、その公害防止の制度をどう条件づけるか、もし守らない場合にはお金を引き揚げるというような、その辺までの条件をつけられるかどうかというところが実は問題ではないかというふうに思っております。
  259. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先生方、ありがとうございました。時間でございますので、終わります。
  260. 原田昇左右

    ○原田座長 東順治君。
  261. 東順治

    ○東(順)委員 諸先生方、大変お忙しい中を本日は御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。私、公明党の東順治と申します。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  私も、実は北九州市に在住しておりまして、かつては公害のメッカ、それが星空が戻ってきた、そしてまた洞海湾にクルマエビが帰ってきたというようなことに、そこに住む住民の一人として大変な感激を覚えたという経験を持っておるわけでございます。それだけにまた、法律というものの持つ強さ、重さということも痛切に実感をしております。そういうことから考えますと、公害基本法というものを超えた大きな大きなスケールで、地球的な次元から、そしてまた身近な問題から環境問題というものをとらえようとする今回の環境基本法というものは、大変に重大な、歴史的な意味合いを持つ法律である、このように認識をいたしておる次第でございます。そういうことを前提といたしまして、二、三質問をさせていただきたいと思います。  最初に、折田先生の方によろしくお願いを申し上げます。  政府案は、総論的には現行法よりも一歩前進、だけれども各論に入ると具体性が非常に乏しい、あるいは骨格が非常にひ弱であるというような実感を持つわけでございます。日本は先進国の中で唯一アセス法という法律を持たないというようなこともございまして、日本という国が、先ほどから先生方おっしゃっていました国際的潮流にもう一つ乗り切れない、あるいは先進国と言いつつアセス法という法そのものまでもまだ制定できない、なぜこうなるのだろう。それは法治国家的体質というものが弱いのか、あるいはこれまで産業優先という国策で来た、そういったことからどうしてもこういったところに弱さというものがあるのか。その辺まずどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  262. 折田泰宏

    ○折田泰宏君 難しい問題ですが、歴史的な由来もいろいろあると思うのですけれども、私どもが直観的に感じていますのは、最初に私の意見にもありましたように、環境という、例えば水、空気、そういうものを享受する権利というものを、日本の国民がそれを当然のごとく受けながら、しかし実はそれを権利として受けとめていない。それが侵害されてきたときに、自分たちの権利が侵害されたという認識を持てない。一方では、国側はそれは自分たちのものであるという形で行政を進めてきた。その辺が実は欧米の環境に対する国民の意識との違いがあるのかな。例えば、森とか自然とかというものに対して、自然にそれを楽しむところが非常にあるわけです。しかも、それを権利として受けとめている。  しかし、日本の国民は、例えば公害がどんどん進行している状況を見ていますと、川が汚れた、空気が汚れた、その状態では何も感じない。しかし、実際にぜんそくとかそういう健康被害が生じたときに初めて問題になってきた。水俣病でもそうです。それが健康被害、公害被害ということで各地で患者、被害者がたくさん出てきて、そして裁判になり、企業側あるいは国側の責任が認められた。そういう経過の中で、公害ということは大きな問題になってきたけれども、では環境というものはどうなのかというと、なかなか環境というものに対する価値意識というものが認識されてこなかったという経過があります。  今回、環境基本法というものが出てきた経過も、どうも私が感ずるに、地球環境というものが先にあった。つまり、外圧によってこの環境基本法の制定というものがやっと具体化したのかなというのが実は実感としてあるわけです。  つまり、絶えずこの議論の中で地球環境、地球環境と出てくるわけです。しかし、実は問題は、国内の環境問題がどうであるのか。公害問題は、公害法規が整備されたことで確かにかなり軽減されたとしても、環境問題全般についてはかなりそれは軽視されてきた。現実に、先ほど私が言いましたように、山村も含めて川も汚れ、荒廃し、山も荒廃してきている。そういうのが実は無視されて、自分たちの周りを見ないで、地球環境というグローバルなことだけが非常に知的レベルの中で議論されている。これは非常に異常な現象であろうかと思います。しかし、今回こういう法律ができるということで、逆にまた国内の環境というものも見直されてくるのではないかなという期待をしているわけです。その辺が、ではどうしてなのかというところが実は私もよくわからないところですけれども、非常に重要なところではないかと思っております。
  263. 東順治

    ○東(順)委員 それから二つ目に、これまで先生が琵琶湖の環境権訴訟の問題に取り組んでこられたということで、ぜひこれまでの御経験を通しまして、今おっしゃった環境権の問題、それから環境アセスの立法化という問題あるいは住民参加、情報公開の必要性というところを実態的な面からお話しいただければというように思いますが、いかがでしょうか。     〔座長退席、塩谷座長代理着席〕
  264. 折田泰宏

    ○折田泰宏君 環境問題を考えるときに、今これまでの幾つかの自然環境あるいは環境保護法制というものが日本にもあるわけです。ただ、例えば自然公園法にしましても、極めて特殊な、珍しい、貴重な自然というものは守るという形でゾーン指定などもされているわけですけれども、ごく普通の自然というものを守るような法制は全く存在しない。例えば、都市の中の里山については、守るべき法制は何もないわけです。あえて言えば、各地方自治体の中で条例によってそれを守るかどうかという問題になってくるわけですけれども、なかなかそこまでの価値意識が進行していない状況にあります。  例えば、私の方で琵琶湖という問題を取り上げて、琵琶湖は総合開発計画というものがございまして、それが始まったときに琵琶湖をどうするかということの議論があって、総合開発計画がかえって琵琶湖というものを汚す、破壊するのではないかということで近畿の住民が不安を持ちまして、その開発工事に伴う工事の差しとめ訴訟を起こしたというのが琵琶湖訴訟であるわけです。  しかし、ではそういう場合に何をもってそういう住民たちが武器にできるかということを考えますと、結局は今裁判所で認められるのは健康被害、つまり将来自分の健康に障害が生ずるということを証明していかないことには守っていけない、自分たちの権利は守れない。しかし現実には、将来そういう汚い琵琶湖の水を、例えば大阪でも琵琶湖の水が流れてきているわけです。それを飲んで何十年先にどういう健康被害が生ずるかということは予測が非常に難しいし、それを裁判所で証明することはまず不可能な話であります。そういうことを証明しないと自分たちの権利の予防を図れないというのが今の裁判制度の現実であるわけです。  そうしますと、健康被害ということの理由では環境被害というものは防止できない。では、直接環境を侵害するということだけでもって、つまり環境を享受する権利を侵害されないという権利を設定することによって、環境被害を未然に防止することができないかということが環境権が提唱されてきた由来であるわけです。しかし、現実には環境権というものがこれまでの幾つかの裁判で提唱され、我々の裁判でも、おいしい、まともな水を飲む権利という浄水享受権というものを主張しましたけれども、やはり裁判所は認めてくれなかったという経過があります。  そういう中で、では一体どうしたらいいのかということをあれこれ考えてきたわけでありますけれども、今私は、例えば情報公開ということに非常に関心を持っています。結局、今そういう権利というものを主張して裁判所で救済を求めるよりは、まず情報公開ということで行政のいろいろな情報を入手し、そして環境アセスメントがもし実施されれば、その事業がなされる前に環境に対する悪影響を事前に認識して、それに対してその事業の修正を申し立てていくということが一つの有効な手段ではないか。  さらに、もし法案の修正が可能であれば、そういう環境権ということでなくても、環境権という権利が認められなくても、先ほどのアメリカの市民訴訟のように、ある自然保護法があって、それに違反するような行為があればだれでも直ちにその差しとめの訴訟ができる、あるいは差しとめをするような権限を持った行政委員会が設置されるというふうなことが将来的に必要ではなかろうかというふうに考えているわけです。そうでなければ、多分先ほどの国とか地方自治体がやるような環境破壊について、だれも防止ができないことになろうと思っております。     〔塩谷座長代理退席、座長着席〕
  265. 東順治

    ○東(順)委員 それでは三点目に、環境アセスメント法というものの具体的なイメージですね、今あります閣議アセスあるいは地方アセス個別法アセス、こうあるわけですが、そういったものに対する優先権をきちっとつけていく、あるいはそういったもの全体を束ねていくもっと大きな立場の法として存在していくもの、どのようなイメージを持っておられるのか、その辺いかがでしょうか。
  266. 折田泰宏

    ○折田泰宏君 環境アセスについてはいろいろな考え方があるわけでして、例えばアメリカ型の環境アセスで言えば、事業をやる前にその環境アセスをした結果を住民に公表する、そして住民意見を聞いた上で最終報告書を作成するということで、それに対して、NEPA、国家環境政策法という法律がそれを決めているわけですけれども、そのアセスメント手続あるいはその内容について異議があれば裁判を起こせるという形で救済措置が講じられているわけです。これは住民の力、能力を信頼して、後はもう裁判所にゆだねるという考え方です。  もう一つは、行政の方に環境アセスメント評価をする委員会を設けて、そこに評価をさせる。だから、住民側もその評価する委員会の方にいろいろな意見申し立てをしていくという考え方があろうかと思います。  日本型の環境アセスは、各地の条例を見ていますと、むしろその後者の方の部類に属すると思うのですけれども、どちらがいいかということは難しいわけですが、えてして後者の方は、その評価する委員会がよほどきちっとしっかりした委員会でない限り、いいかげんな環境アセスになってしまうという嫌いがあります。やはりその背景として、評価委員会が仮にあったとしても、評価委員会の措置に対して住民が裁判所に対して異議の申し立てができるぐらいの仕組みがないと、しっかりした環境アセスにはならないだろうと思います。  では、そういう形でもし仕組みをつくつていくとすれば、やはりこれは法律としてつくるしかないだろう。それは、国の事業あるいは国に認可を求めなくてはいけない事業に対して、すべてについて一本化した法律でつくるべきではないかな。それは各地方条例でもちろん、地方はまた地方であろうかと思いますけれども、国としてのレベルでの環境アセスについては一本化したアセスメント法をつくるべきであろうかと思います。
  267. 東順治

    ○東(順)委員 ありがとうございました。  続いて、佐和先生にお願いしたいと思います。  お話の中で、今後個人のライフスタイルの変更を促す仕掛けが大切である、こういうお話でございましたけれども、これは、言うべくして大変に難しいことだろうというふうに思うわけでございます。というのは、大量生産、大量消費、大量廃棄、こういうこれまで私たちがなれ親しんできた文明というものから循環型に変えていく、いわば価値観の転換にも匹敵するすごく難しい問題だろうと思うのです。これは、経済システムを何か導入するというようなことだけでは決してなし得ないぐらいに大きな課題だろうというふうに思うわけです。例えば、今の豊かな生活の中になれ親しんでいる子供たちにどうやって例えば節約だとか循環型だというようなことを教えていくのかとか、これは環境教育とかいうような問題にもなってくるのだろうし、大変難しいのだろうけれども、実はこれが私は最大のこれからの決め手だろうというふうに思っておるわけでございます。いかにすればこの辺のところが実現可能と思われるか、より具体的にお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  268. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 私は、結論から申しますと、ある意味で楽観しておるわけですね。  どういう意味かといいますと、要するに、このライフスタイルというのは、ちょっと話が違うと思いますが、よく真善美という言い方をしますね。日本人というのは、真か偽か、あるいは善か悪かということよりも、美か醜かということを非常に気にするわけです。ですから、特にライフスタイルというのは、何が格好いいかということなんですね。  もともとこの国におきましては、質素倹約とか質実剛健とかいう言葉が大変たっとばれた時代がずっとあったわけです。ところが、私が見るところ、八〇年代の後半のいわゆるマネーの時代というのでしょうか、あるいはバブルの時代に、あの時期に非常に日本人はぜいたく志向になったわけですね。同じ車を買うにしても必要もないのに三ナンバーの高級車を買うとか、あるいは各部屋にエアコンをつけて、それもつけっ放しにする、そういうぜいたくなライフスタイル、非常にエネルギー多消費型のライフスタイルが格好よく見えたわけですね。  それが、目下景気低迷、不況というふうに言われておりますが、不況下において、今度は消費者がなぜか、去年の六月の新経済五カ年計画の中で環境と調和した簡素なライフスタイルを心がけるべきであるというような文言があるわけですけれども、別に政府に強制されたわけではないのですが、あるいは国民はそんなことほとんどの人は知らない、簡素なライフスタイルが提唱されているなんということは知らないわけですけれども、簡素なライフスタイルの方が格好いいというふうに変わってきていると思うのですね。  この背景には、去年のリオデジャネイロでの地球環境開発サミット等をピークにして、マスコミで毎日のように地球環境問題が報道される。そうするとやはり、こんなぜいたくをしていて、あるいはこんなエネルギー多消費型のライフスタイルをやっていていいのだろうかということを、みんながだれいうともなく考え始めた。そして、それが格好よさの基準を大きく変えたのではないかと思うのです。ですから、今はむしろ、まさに経済計画の言うとおりの簡素なライフスタイルというのが格好いいというふうに変わってきた。ついでに余計なことを言いますと、中野孝次さんという文芸評論家のお書きになった「清貧の思想」なんという本が大変なベストセラーになったりするというのも、私が今申し上げたことを裏書きしているのではないかというふうに思います。  ですから、そういう意味では、倫理、倫理といって、環境倫理だ、環境倫理だといっても、三日たったらみんな忘れると思うのですね。それよりは、つまり美意識に訴えるということの方が重要だし、そういったことを通じて、ライフスタイルの変更というのが案外たやすくなし得ることではないかというふうに私は楽観いたしております。
  269. 東順治

    ○東(順)委員 では、おっしゃる今のその清貧とかあるいは簡素というものが格好いいという、それも時代の一つの流れにするということと、子供たちに対する環境教育、子供の時代からの教育の問題、要するに簡素だとか清貧、あるいは循環型の社会構築に対して寄与する、こういう今おっしゃった格好いいというようなことと子供たちに対して教育をしていくということ、この関連から考えたらいかがですか。どう思われますか。
  270. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 教育というものも大変重要だということについては、全くおっしゃるとおりだと思います。それは単に学校教育だけではなくて、やはり家庭教育というのですか、少なくとも私が子供のころだと、さっき申し上げましたように、質素倹約なんということが大変とうといことであるというふうに学校でも家庭でも教えられましたし、そういうライフスタイルというものが、少なくともぜいたくは慎むというようなことが当然のようにして育ってきたわけでございますが、今の子供はそういった面での教育というものがおざなりにされているということは否定できないと思います。そういう意味では、学校教育、家庭教育の双方において、さっき倫理、倫理といっても三日間でと申しましたけれども、やはり地球市民として何を心がけるべきかということを十分に教育する必要があると思います。
  271. 東順治

    ○東(順)委員 それではもう一つ、炭素税、CO2税を初めとする経済的手法ということなんですが、確かに安易な大衆課税になってはいけないと野党などはよく言うけれども、そういったことではなくてこれは大事なことなんだ、私もそう思うのです。  ただ、こういう炭素税等の経済的手法を導入するに当たって、やはり国民的な議論、それからその先にある国民的理解というものはしっかり広げていかないと、なかなかまた難しい問題であろうというふうに思うわけでございます。したがって、こういう国民的議論、国民的理解というものを広げていくために、具体的にどのようにすればこれが大きく広がっていって、そして国民的理解にしっかり支えられた上での経済的手法、こういう形になるのか。その辺はどのようにお考えでございますでしょうか。
  272. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 大変難しい質問で、なかなかうまくお答えできる自信がございませんが、何というのでしょうか、やや唐突な言い方になりますが、アメリカなんかは、私はアメリカで四年ほど生活した経験があるわけですが、その経験から推しはかることでございますけれども経済学のABCのようなことが本当に日常的な常識になっているわけですね。  ですから、例えばそういう税金を課する、何のために課するのか、こういうためだ、ではそれに対してはどういう効果が期待されるのかというようなことについては割と国民の理解が得やすいということと、同時にまた、自分の既得権益を死守するといいますか、命をかけて守るというようなことは決して市民としては褒められた行為でないというような考え方がかなり徹底している、普遍化していると思うのですね。そういう意味では、今回クリントンがエネルギー税ということを提案して今議会で審議中だというふうに思いますが、ああいったことについても、とにかく税金はすべて反対だというような、そういう短絡的な発想はしない。  そういう意味では、我が国におきましては、国民に経済学のABCというのをもっと理解していただくということが必要ですし、マスコミもちゃんと、経済学というほど大げさなものではないですけれども、ちゃんと筋道立った報道をしていただきたいというふうにマスコミの方にも期待申し上げたいと思います。
  273. 東順治

    ○東(順)委員 終わります。
  274. 原田昇左右

    ○原田座長 次に、寺前巖君。
  275. 寺前巖

    寺前委員 きょうは意見陳述者の皆さん、遅くまでありがとうございます。最後の質疑者になりますけれども、私、日本共産党の寺前巖です。よろしくお願いします。  先ほど皆川さんの方から、環境問題についてはもう現在非常に有効な措置がとられているし、また定着もしている、これ以上の個別のことなど考えることもないのじゃないだろうか、大体大要そのようなお話があったと思うのです。また、関経連の方が三月三日に「環境基本法に関する意見」という提言を出しておられます。それにはこういうことが書いてあります。「環境問題」云々とこう書いて、「全ての人々が程度の差こそあれ被害者であるとともに加害者である」。私、これは気になって仕方がないわけです。  一九七〇年でしたか、公害国会と言われた当時、私もメンバーでやっておりましたけれども、あの当時最大の話題になったのは、経済の発展なくして福祉なし、経済の発展があればこそ福祉があるんだから我慢せい、その結果が物すごく公害をばらまいた、だから、公害基本法のその条項が非常に悪い役割をしたからそれを削ろうではないか、これが最大の問題となり、そして、公害を抑えるのには発生源で抑えなければならないということが問題の中心点となって国会の論議は進みました。  そういう歴史的な経過から考えてみたときに、関経連が提起しておられる、住民みんなが加害者なんだという発想でもしも基本法をつくっていくということになるならば、歴史的な経過から考えてもおかしいのじゃないだろうか。環境というのはすべての人の共有財産だ、国民はその良好な環境もとで、健康で安全、文化的な生活を営むことができる、そういう権利があるんだ、国や自治体というのはそういうものをしっかり守っていく、そして子孫にそれを受け継いでいくという責務を持っているんだということを、基本的にきちっと押さえておく必要があるだろう。  それで、先ほどお話を聞いておりましたら、折田先生は、国の義務が少しも載っていないじゃないか、実際には国や自治体が山を削って破壊しているじゃないかというお話もございました。私、そこが原点として非常に大切な問題だと思うのです。佐和先生にお聞きをしたいのですが、その原点は守っていくべき原点ではないかというふうにお考えになるのか、そこはもう関経連が言うように変えなければいかぬのじゃないかとおっしゃるのか、ちょっと原点の問題についてお聞きをしたいと思うのです。
  276. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 ちょっと私、質問意味がよくわからなかったのですが、要するに関経連の言うようにというのは、すべての人間が程度の差こそあれ被害者であると同時に加害者である、そういうことを原点に据えるべきなのかどうかということでございますね。  私もさっき申し述べました意見陳述の中で同じようなせりふを使ったのですが、その意味するところは、例えば二酸化炭素とかフロンという地球環境を汚染する物質の場合は、例えば今ここで電気を使っていますね、そうすると、この電気を使うということで間接的にせよ二酸化炭素の排出に我々は責任があるという意味です。ですから、ここで電気を使うということがある意味で害を及ぼしているということで、そういう意味で被害者であると同時に加害者であるということです。それからフロンガスの場合でも、我々が少なくともフロンの含まれているものをついこの間までは平気で使っていた、ですから実は加害者であったということですね。ですから、スプレーをつくっている薬品メーカーだけを非難しても仕方がない、我々が使うということが問題だということです。  それから同時にまた、そういう意味で国民一人一人がみずからも大なり小なり環境に対する加害者である、環境破壊の責任があるということを自覚してもらわないと、先ほど私が申し上げましたように、皆が自分のできることから一つ一つやっていくという、そういう百花繚乱というものも期待できないのではないかというふうに思います。  七〇年代前後の産業公害というのは、あのときのは、犯人はだれだ、環境をこんなに汚したのは何者だ、それは重化学工業だということで、犯人捜しが非常にたやすかったわけです。そして、その犯人にちゃんとしかるべき措置を講じてもらおうじゃないかということで、あるいは責任をとってもらおうじゃないかということで話がついたわけですけれども、地球環境問題というのは、そういう産業公害の問題とは性質が異なるというふうに私は強く思っています。そういう意味では、原点が変わるということも私は決して、それは必要だからこそその原点が変わっているのだというふうに思います。
  277. 寺前巖

    寺前委員 製品を使うのは消費者、国民には違いありませんが、製品が有害であったり廃棄困難なために環境影響を与える、消費者はそういうことを意識して平気でやっておるというのはいいことではありません。だけれども、そういうものをだれがつくっているのか、つくっている人自身が責任を負うというような問題を明確にしなかったならば、私は、個々の消費者、国民にそれを転嫁したって環境を守っていくということにはならないと思うのですね。そういう意味では、七〇年のあの国会で、経済の発展なくして福祉なしということを削ったということが非常に重要な問題であって、この原点を基本法の中に貫かなければならないのじゃないかというふうに私は思うのですが、折田さんはこの問題についてどういうふうにお考えになりますか。
  278. 折田泰宏

    ○折田泰宏君 先ほどの佐和先生に対する御質問との関連でいいますと、そういう、だれもが被害者であり加害者であるという話と環境が国民の共有財産であるという話は、必ずしも別に矛盾する話ではなくて、共有財産であればこそ、だれか一人がそういう環境破壊行為をすれば、それはほかの皆さん全部に対して、自分に対してもその被害ははね返ってくるわけなんですね。ですから、ごみなんかでも、神経質に言えば、ごみ一つ出すことについても、それは環境破壊という問題になってくるわけです。ですから、そういう被害者、加害者意識という認識も当然持たなくちゃいけない。  ただ、とにかく原点は、何回も私が言っていますように、環境というものは国民のものである、それは我々の今の世代の共有財産であるということだけではなくて、将来の、次の世代、さらにその次の世代の共有財産である、そういう認識を持つことが、例えば今身近な環境を思っているということだけではなくて、つまり自分たちの身の回りの環境、あるいは町、村、市あるいは日本、その環境を共有しているという意識からさらに発展して、それが地球環境というものを共有しているのだという意識に発展することが自然な流れだと思うのですね。  ところが、現実に我々は環境を共有しているということを教育されていない。しかし、いきなり地球環境というものは我々が守らなくちゃいけないということを、そういう形でむしろ何か政府のPRによって押し込まれようとしている部分もあるわけでして、重要なことは、環境というものは国民の共有財産だということを我々が認識し、政府もそれを認識して、国民にそれを植えつけるということから出発しなくては、すべて何事も始まらないのじゃないかという認識を持っています。
  279. 寺前巖

    寺前委員 重ねて佐和先生にお聞きしたいのですが、七〇年の段階と今日では、公害の被害者というのはふえているのでしょうか、減っているのでしょうか。
  280. 佐和隆光

    ○佐和隆光君 例えば七〇年前後というのは、水俣病のようなああいう公害病が放置されていたりというようなことで、あの当時の方が公害の被害者というのは多かったと思います。そういう意味では、多いか少ないかという点に関しては七〇年前後の方が多かった。大気の汚染にせよ水質の汚濁にせよ、今よりは圧倒的にひどかったというふうに私も記憶しております。実際そういったものによってこうむる被害も大きかったし、そして被害をこうむる人の数も多かったと思います。
  281. 寺前巖

    寺前委員 山田先生にお伺いをいたします。  私の知っている範囲では、七〇年のあの段階から、その後明確にしていって規制を強化していったということは事実ですが、今度は被害者に対する対策で法の改正がありましたですね。そのために、国として面倒を見る人は減りました。しかし、地方自治体では放置するわけにはいかないということで医療費を出すようになっています。私の知っているところでは、東京でも大阪でももらう人は逆にふえていっている、総量はふえていっている。だから、大気汚染に関して言うならば、決して私は前進している方向にあるというふうには思わないのです。これは、大気汚染にかかわらず、その後リゾートの法律などがつくられて、被害は全面的にもっとより広がってきているように思うのです。  ですから、現状からいうならば、七〇年段階とは違う、地球段階だと、こう言うけれども内容的には足元はもっとひどい状況になってきているという認識に立つべきではないかというのがお聞きしたい一つです。まずそれからいきます。
  282. 山田國廣

    ○山田國廣君 公害の被害の質が変わってきているというふうに私は思うのですね。七〇年代というのは、水俣病に代表されるように、かなり被害の程度が大きいといいますか、そういう問題については九〇年代、最近になってやはり減ってきているんじゃないか。  ただし、公害の質については、対策困難な公害というのが残ってきたわけですね。代表的には窒素酸化物、あるいは水域ですと富栄養化、窒素、燐の対策、あるいは騒音対策、こういうものについては現代の科学技術をもってしても対策困難である、そういう質の公害というのはむしろ深刻化しているというふうに私も思っております。そういう激甚的な公害ないしは日常的に被害を受けて何らかの訴えをするという人については、結構これは深層化してふえているんじゃないかというふうにも思っておりまして、そういうふうにいわば公害の質が少し変化してきている。  だから、単なる量の問題ということではなくて、質の変化と、そしていわば日常的な今言った騒音、大気汚染というような、そういうような被害者については、寺前議員言われるように、結構数としてはむしろふえてきているというところがあるんじゃないか。それを今回の基本法においても、公害対策について、OECDが言うように、日本は公害対策はもう既にかなり終わって次は快適環境だというような、そういう認識ではないと思うのですね。やはりまだ公害の部分について残っている。そこを基本法でもクリアしなければいけないというふうに思っております。
  283. 寺前巖

    寺前委員 先ほどから話も出ましたけれどもアセスメントの問題ですね。これは、私は法制化すべきだと思う。法律によって規制をしていくということは非常に大事なことですから。だけれども、現在閣議でアセスの仕事をやっていますけれども、このアセスあり方についてどういうふうな対処をしたらいいんだろうか。事前の計画段階におけるアセスとかあるいは実行段階におけるアセスとか、いろいろな段階におけるアセスとか、それから対象などについても、自然環境とか景観とか、そういう問題のアセスもいろいろ話題になっていますから、生活環境への影響だけではなくして多面的にそういうことをやる必要があるのではないだろうか、私もそういうふうに思っているのですが、山田先生の今までの研究された結果から、世界の状況ども考えて、どういうふうにアセスは取り扱っていったらいいか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  284. 山田國廣

    ○山田國廣君 現行アセスで、私意見陳述のときにも少し述べましたけれども、例えば本四架橋であったり、大阪湾のフェニックス計画であったり、関西新空港であったり、私自身も意見書を出して、現行制度の中でいろいろ実験をしてみたのですけれども意見書を書いて出しても、何の返答もないし、それがどういうふうに反映されるかほとんどわからないということで、非常にむなしい作業という経験をしているのですよね。  それから、実際にアセスメントが行われた事業の中で、先ほど私はフェニックス計画と本四架橋を挙げましたけれども、事後に問題点が出てきている、こういう実例があるわけですね。そういうことを踏まえると、現行閣議決定アセス制度範囲ではまだ不備であるというように思っております。  まず、計画そのものが非常に総合的でないといけないというふうに私言いましたけれども、単に今決められている公害があるかないかだけじゃなくて、もう少し広い意味で、快適環境も含めて総合的にまずアセスは検討されるべきだということで、事前に、これはいろいろ調査するようなことも含めて、できるだけ住民の参加を問うような制度がまず保障されなければいけないということ。  もう一つは、ぜひ事後評価をしていただきたいと思うのですね。現状これまで随分アセスが行われたわけで、アセスの段階で報告書にきちんと書いたことと、結果、その後出てきたことと整合性があるのかどうかというのは、これはやろうと思えばできるわけですね。そういう事後評価をきちんとする。  それから、通常アセスメントというのは、あるコンサルタントに委託して、そして適当に鉛筆なめなめ報告書が出てくるというのが常識ですけれども、こういうことに関しましては、私はEC流のエコ監査のことをいろいろと紹介しましたけれども、ああいうエコ監査士というのがECでは義務化されるということがあります。同じように、アセスメントの監査士といいますか、そういうような権威ある監査をしていく。これは内部監査、外部監査、いろいろあるのですけれども、そういう監査制度というのを導入しないと、今のように、とにかく開発側がいわば自分で自分の監査をするみたいな、そういう制度そのものが信用できないというように市民は思っているというようなところがあります。  そういうことを含めて、今回折田さんからも紹介があったように、アメリカの進んだ制度というのがいろいろあるわけですけれども、日本が国際協調をしていくためにも、再度言いますけれども、やはり企業はきちんとしたアセスをクリアして、そして外国でもきちんとしたアセスをクリアしている、その企業同士がつき合うというようなことをしないと、国際協調もできないのじゃないかというように思っております。
  285. 寺前巖

    寺前委員 折田先生にお伺いしますが、日弁連の文章によると「ODAについては環境への配慮規定が盛り込まれたものの、熱帯林の乱伐、公害輸出等、海外での事業活動の規制に関する実効性ある規定がない。」。随分国際的にも話題になっていますが、実効性のある規定というのは、具体的に言うたらどういうことをやるべきだということになるのでしょうか、お伺いしたいと思います。
  286. 折田泰宏

    ○折田泰宏君 基本的にはODAの基本法を制定するということだろうと思います。ODA法をきちっとつくる中で、ODAの資金を出す場合の条件というものをきちっと法制度化する、その中に環境条項を具体的にどう盛り込むのか、内政干渉の問題、いろいろ問題はあろうかと思います。しかし、それはその法制度の中できちっと取り決めする中で、ODA資金が有効に生かされるということを法制度化することによって明確にすることが必要であろうかと思うのですね。  その中で、現在の基本法に触れるとすれば、そのODAの基本法の重要な点、つまりこの点を規制すべきであるということを今の基本法の中にある程度盛り込んでおく。そうすることによって、今現在言われていることは、これだけ日本が海外援助、有償無償を問わず、あるいは技術移転をしながら、しかし外国では悪口を言われている、そう評価されない、そういう状況が、やはり法制度化することによって、その基準が非常に明確になることによって、外国のODAに対する評価というものも変わってくるのではないかと考えております。
  287. 寺前巖

    寺前委員 リオ宣言で、住民参加とかあるいは市民参加の保障とかいろいろな情報の公開とか、いろいろな問題が出ました。私も、例えば水俣の事態を見ておりますと、あの経過から見たって、事前に、もっと早い段階に事実の公開が得られておったらどんなにああいう被害者が少なくて済んだものだろうか、つくづく事実の経過から考えても、情報の公開とかあるいは住民が参加するという問題の持っている役割が、公害対策にとっては非常に重要な位置を占めるというふうに思います。  山田先生にお伺いしたいと思うのですが、日本の現状ではここをこういうふうに具体的に改善をする必要があるんじゃないかという、何か御提言ありますか。
  288. 山田國廣

    ○山田國廣君 情報公開については、本当にこれはある種の民主主義の厚みの問題だというふうに基本的に思っております。アメリカの法律なんかと比べて、随分開きが出てしまったと思います。  それで、情報については、むしろどこにどういう情報があるかということさえ、今市民にはわからないということですね。そして、今例えば情報公開条例なんかを地方条例で若干上乗せしているようなところですと、それを利用して市民が頑張ってとりに行ったりするのです。しかしながら、それ自身も随分エネルギーをかけて、働いているのを休んででもとりに行くみたいな、そういうかなりハンディーを負いながら、エネルギーを使いながら何とかとりに行っている、これが現状なんですね。  その中で、やはり国の方で制度として情報公開法を制定するということをまず基本に据えておく、その中でいわば情報のありかを含めて、積極的にむしろ国の方が市民に、ある開発をする場合に説得に回るというか、そういう姿勢に変わらないと、今市民側が一生懸命、とにかく休んで国会に押しかけてというようなことをやっているというのは、全く話が逆なんじゃないかというふうに思っております。  そういうことからすると、情報を公開する基本の姿勢のところで、例えば図書館一つとりましても、その利用のされ方とか、そこに情報がどういうふうなものがあるかということを含めて、もっともっと市民が生活の場で利用できるような形態を含めた情報公開の制度化、これなしに、今のように一部の地方公共団体条例化で頑張っているだけではどうしても限界があるというふうに思っております。情報公開を法として制定するのは時代の流れであるということについて、ぜひ環境基本法の中でそのことをうたっていただきたいというふうに思っています。
  289. 寺前巖

    寺前委員 どうもありがとうございました。
  290. 原田昇左右

    ○原田座長 これにて委員からの質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、法案の審査に資するところ極めて大なるものがあり、厚く御礼申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝を申し上げ、御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会