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1993-05-11 第126回国会 衆議院 環境委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年五月十一日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 原田昇左右君    理事 塩谷  立君 理事 高橋 一郎君    理事 細田 博之君 理事 持永 和見君    理事 斉藤 一雄君 理事 馬場  昇君    理事 大野由利子君       愛知 和男君    住  博司君       武村 正義君    前田 武志君       増岡 博之君    谷津 義男君       柳本 卓治君    岩垂寿喜男君       岡崎トミ子君    田中 昭一君       時崎 雄司君    草野  威君       寺前  巖君    伊藤 英成君       塚本 三郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 林  大幹君         (環境庁長官)  出席政府委員         公害等調整委員 麻植  貢君         会事務局長         環境庁長官官房 森  仁美君         庁         環境庁企画調整 八木橋惇夫君         局長         環境庁企画調整 加藤 三郎君         地球環境部長         環境庁企画調整 松田  朗君         局環境保健部長         環境庁自然保護 大西 孝夫君         局長         環境庁大気保全 入山 文郎君         局長         環境庁水質保全 赤木  壯君         局長  委員外出席者         議     員 馬場  昇君         科学技術庁原子 坂田 東一君         力局核燃料課長         国土庁地方振興 滝沢 忠徳君         局総務課長         厚生省生活衛生         局水道環境部環 飯島  孝君         境整備課産業廃         棄物対策室長         建設省建設経済 澤井 英一君         局調整課長         建設省都市局都 板倉 英則君         市計画課長         建設省道路局路 吉井 一弥君         政課長         自治省行政局行 中川 浩明君         政課長         参  考  人         (名古屋大学法 森嶌 昭夫君         学部教授)         参  考  人         (神戸大学経営 天野 明弘君         学部教授)         環境委員会調査 西川 義昌君         室長     ————————————— 委員の異動 五月十一日  辞任         補欠選任   東  順治君     草野  威君   塚本 三郎君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   草野  威君     東  順治君   伊藤 英成君     塚本 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  環境基本法案内閣提出第六二号)  環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第六三号)  環境基本法案馬場昇君外二名提出衆法第四  号)      ————◇—————
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出環境基本法案内閣提出環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び馬場昇君外二名提出環境基本法案の各案を一括して議題といたします。  本日は、各案審査のため、参考人として名古屋大学法学部教授森嶌昭夫君、神戸大学経営学部教授天野明弘君、以上二名の方に御出席をいただいております。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。両参考人には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。  なお、議事の順序についてでございますが、まず、両参考人にそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、森嶌参考人からお願いいたします。
  3. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 おはようございます。参考人森嶌でございます。  私は、昨年の十月に出ました中公審それから自環審の「環境基本法制あり方について」という答申審議中公審委員としてかかわりましたので、一つにはその立場から、それからもう一つには、昭和三十年代から公害問題を通じてさまざまな公害訴訟であるとかあるいは公害法体系をつくっていくのに直接、間接に研究者としてかかわってきたという、その二つ立場から御意見を述べさせていただきたいというふうに思います。  時間がそれほどございませんので、最初環境基本法必要性、二番目に政府案でとられている理念につきまして、三番目には施策環境政策における施策特殊性という問題、それから四番目に国際協力地方公共団体位置づけ等について、簡単に申し述べたいと思います。  まず最初に、環境基本法必要性でございますが、申し上げるまでもなく、我が国においては、昭和三十年代の後半から始まりましたいわゆる高度経済成長の中で深刻な公害問題、しかも、それは人身被害を含む公害問題が発生いたしまして、我が国における環境法というのは諸外国と違いまして、産業公害被害者に対する救済あるいは産業公害規制というのが我が国環境法の始まりでございました。  それで、昭和四十二年に公害対策基本法という法律ができておりますけれども、これはまさにそうした産業公害をどのようにしてコントロールしていくかということを考え、また、極端に申しますと、それのみを対象とした法律でございました。自然環境につきましては、昭和四十七年に自然環境保全法という法律ができておりますけれども、これは産業公害そのものではございませんが、ここで考えられておりました自然環境というのは、今日のような身近な自然あるいは生態系ということではございませんで、理念のところにはそういうことが書いてございますけれども、実際には、手つかずの自然をどのようにして保存していくかという観点からのものでございました。  しかし、昭和五十年代になってまいりまして、産業公害に対するコントロールがようやく効果を見せ始めてきたわけでありますが、と同時に、他面では、従来の産業公害とは違ったいわゆる都市型あるいは生活型の公害、例えばごみの問題、し尿の問題あるいは交通公害のような問題が発生してまいりました。また、自然環境の問題にいたしましても、周りを見渡してみるといつの間にかトンボがいなくなるというような、身近な自然が失われてきつつあるということが認識され、それに対する対策一般国民から求められたわけであります。  そして、この当時、既に世界国際社会においては地球環境問題というものが問題になっておりましたけれども、我が国におきましては、昭和六十年代になりまして、例えばオゾン層破壊というような問題を通じて、あるいは比較的最近ですと地球温暖化の問題、熱帯雨林の喪失というような観点から地球環境問題が認識され、そして御承知のように、昨年にブラジルのリオデジャネイロで開かれましたUNCED会議で、地球環境問題に国際社会が取り組むというような事態になってまいりました。このように、環境問題の質が変わり、そしてまた環境問題の対象となるべきものが広がってきたわけであります。  そこで、数年前から、あるいは政党によってはもう昭和五十年代の初めごろから、先ほど申し上げましたような公害に対する規制手つかずの自然の保存というようなことを対象とする環境政策あるいは公害政策というものではもはや十分ではないのではないかというような声が上がっておりましたし、それから、私ども研究者の方でも数年前から、公害対策基本法体系ではもはや今日の問題は解決できないということを申し述べてきたわけであります。  政府におかれましても、昨年のリオデジャネイロ会議日本政府として対応していくという過程で、国内の環境法体系を従来のものと変えていく必要があるということを認識され、昨年は、中央公害対策審議会自然環境保全審議会において、その合同という形で、政府環境政策環境法体系のこれからの改革に対してどういう態度で臨まなければならないかということを議論したわけでございます。その結果、先ほど申しました「環境基本法制あり方について」という答申が出ましたけれども、それに基づきまして政府環境基本法案をつくったわけでございます。  端的に申しますと、片一方は答申ということでございますので、通常の、いろいろ理由もつけた文章で書いてございますし、他方政府のものは、環境基本法案という形で法律の形になっておりますので、文章文言等においてはいろいろな点で違いがございます。審議会で考えていたものと政府案とで違うところもないわけではございませんけれども、基本的には、答申で述べられていることをほぼ忠実に政府基本法案は立案、起案されているというふうに言ってよいかと思います。言いかえれば、答申法律という形で具体化したものというふうに私は評価しております。  そこで、二番目でございますが、理念という点について申しますと、先ほど申しましたように、環境問題が地球環境をも含む広がりを見せてきたというところから、環境問題が人類の生存にとって、存続にとって非常に重大な問題である、それは現世の世代だけではなくて将来の世代にわたっても維持保存しなければならないものであるという認識で、政府案ですと、三条の「環境恵沢の享受」という条文ができております。  さらに、その環境恵沢を享受していくためには我々はどういうふうにしていかなければならないかという方法あるいはゴールの点につきましては、環境への負荷の少ない社会循環型社会などというふうに申しますけれども、そのような社会、また別の言葉で申しますと、持続可能な経済構造を持った社会と言ってよいかと思いますけれども、そのようなゴールに向けて環境政策環境法というものはなければならないというふうに、これは四条でございますが述べております。  五条では国際協力の点が書いてございますけれども、これも、地球的な規模での問題に対応するということはもちろんですけれども、単にそれだけではなくて、我が国経済活動そのものが輸入とかその他の、あるいは我が国企業が海外に進出するなどということを通じて我が国存立そのものが国際的な環境問題につながっているという点から、国益という点からも、あるいは国際社会一員としての面からも国際協調をしていかなければならないというのが第三番目の理念として挙げられているところであります。このことは、申すまでもなく、今日の環境問題の質と広がりに対応したものでございまして、現時点におけるさまざまな環境問題の認識前提とし、その上に立って条文ができていると申し上げて過言でないと思います。  ここで、理念あるいは考え方のポイントとして申し上げておきたいのは、一つは、環境というものを広くとらえておりまして、定義をしておりません。これは審議会におきましても、一体ここで対応しようとしている環境は何なのか、定義をするのがいいのではないかという議論もございましたけれども、現在の環境問題は非常に広いというのみならず、将来環境問題のウエートが移っていくかもしれない、それに柔軟に対応できるようにむしろ環境そのもの定義はここではしていないわけであります。  それから、その方法と申しますか、環境政策あり方につきましても、公害に対する対策がいわば問題対処型と申しますか、要するに起きたマイナスを抑えていくという考え方であるのに対し、むしろ今後の国民全体の経済活動あるいは国民生活というものを変えていく、先ほど申しました環境への負荷の少ない社会へ変えていくという、方法としても極めて独特と申しますか、ユニークなものであろうと思われます。  その点から申しますと、このような認識と視野とを持った環境基本法というものは、私の知る限り、幾つか宣言的なものはほかの国にもございますけれども、手前みそになるかもしれませんけれども、恐らく世界に先駆けたものであろうというふうに思われます。もっとも、これが本当に内容的にも世界に先駆けていくことになるかどうかというのは、基本法の問題と申しますよりか、今後基本法に基づいて展開されていくであろう個別の法律をどういうふうにつくっていくかということにかかるかというふうに思っております。  三番目に、施策の問題でございますが、これも端的に申しますと計画的、総合的というものでありまして、その点では、伝統的な規制を中心とする法律手法とは異なるものも取り入れていこうというものであります。  まず一つは、国の政策全体につきましてそれを統合的に調整をしていくということから、環境基本計画というものを策定することになっております。これは、審議会の中では具体的に環境基本計画ということでありませんで、環境基本方針等政府の基本的なポリシーを決めていくということにしていたわけでございますけれども、この政府案では基本計画という形で具体化されております。これも私の知る限りでは、環境政策あり方としては画期的な考え方であろうと思いますけれども、これも先ほど申しましたように、それでは今後環境基本計画というのはどういうものがつくられていくかということによっては、絵にかいたもちになるのか、本当に生きて日本政策全体をリードしていくものになるかということが決まってくるであろうと思います。  それから二番目には、環境影響評価あるいはアセスメントでございますが、これは従来からも閣議決定という形で行われていたわけでございますが、諸外国ではアセスメント法というような法律によって行っているところが少なくございません。少なくとも計画的、総合的な政策を展開しようとするならば、事前に環境への影響はアセスしておくということが不可欠でありまして、事実上我が国では行われているにせよ、環境政策の根本を決める基本法として環境アセスメントというものが重要であるということはきっちり法律に書いておく必要があるという観点から、必要な措置を講ずるというような形でございますけれども、基本法の中に入ったわけでございます。  それから、施策の三番目でありますが、もちろん従来の伝統的な意味での規制、つまり一つ一つ行為を抑えていくという規制は重要であります。そしてまた、そのような規定も入ってございますけれども、基本法の中のユニークな考え方としましては、国民全体あるいは企業活動産業活動全体を環境への負荷の少ないものにしていこうということにいたしますと、これは個々の行為法律によって抑えていくということでは十分でございません。そこで、いわゆる経済的な手法を用いて、経済的なインセンティブを与えることによってみずから自分の行動を変えていく、そういう行動をそれぞれのイニシアチブによって変えていく、そのための動機づけになるような考え方を導入しているわけでございます。  それから四番目には、時間がもう参りましたので簡単に申し上げますと、環境教育とかあるいはNGOの活動を支援するとかあるいは情報を提供するというような形で従来もやっていたわけでございますけれども、むしろ国民全体あるいは企業活動全体を理念に合ったような活動に変えていってもらうためのいわば間接的な施策を強調しているわけであります。  四番目の国際協力につきましては、もう申し上げるまでもないわけですが、これは相手のあることであり、また国際社会の中での問題でありますから、日本としていわばグローバルパートナー一員として協力することは非常に重要であるということをうたっておりますけれども、具体的にそれではどこまでできるかという問題につきましては、むしろ今後日本国際社会の中で国際社会の動向に忠実に、あるいは場合によってはそれをリードしていくというような態度を示すということを期待しているわけであります。  それから五番目の地方公共団体につきましては、従来から環境行政におきましては地方公共団体の役割というのは非常に重要でございまして、従来の公害対策基本法にも地方公共団体位置づけはしてございますけれども、これをより明らかにしていく、地方公共団体自身が独自に総合的かつ計画的な施策を展開できる手がかりを環境基本法の中に入れたと同時に、国際協力の面においても地方公共団体が貢献できるということを期待しているわけであります。  与えられた時間を少しオーバーしてしまいましたけれども、以上をもちまして私の最初の陳述を終わらせていただきます。また後ほど御質問にお答えするという形で、もう少し詳しく申し上げたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  次に、天野参考人にお願いいたします。
  5. 天野明弘

    天野参考人 参考人天野でございます。  私も昨年十月の環境基本法に関する答申審議に参加いたしまして、この審議過程で、持続可能な発展というのはどういうことであるか、経済的手法効果はどうか、あるいは環境基本計画策定の是非、こういった重要なテーマについて大きな議論がございました。これらの点は環境基本法の制定に関しましても重要な問題になるというふうに思料いたしますので、本日は、この三つの点につきまして私の意見を述べさせていただきます。  まず、持続可能な発展、開発とも言われますが、についてでございます。  近年、地球環境問題あるいは都市型、生活型の公害、こういった問題が国の内外で大きな話題となってきております。その根底には、人々環境に対して十分な配慮をせずに行動してきた、こういう事実があるように思います。つまり、たくさんの人々行動を支えている社会経済的な意思決定というものが、環境という非常に重要な問題を実質的にはほとんど考慮に入れないで行動してきた、こういった社会経済システムあり方自体に根本的な原因があるということがだんだんと明らかになってまいりました。  環境に対して過重な負担をかけないような経済社会をどういうふうに構築すればよいかということが問題でありますけれども、私は、環境経済というものを切り離して別々に考えるというのではなくて、いろいろな意思決定を行う際に両者を同時に考慮に入れまして、一貫性整合性のある決定を行うべきであるというふうに考えますが、こういった考え方世界的に広まりつつあるというふうに申せます。昨年の地球サミットにおきましても、環境発展過程と一体化されたものであって孤立させて考えることはできない、こういうことが強調されましたけれども、つまり経済環境の統合と申しますか、両者は統合されるべきものであって、そういうふうにして初めて地球規模環境破壊、こういうふうな地球に大きな負荷をかけるようなことが防げる、そういうふうに考えております。  経済環境というのはトレードオフの関係にあるというふうによく言われるのですけれども、こういった考え方が出てまいりますのは、現在の社会経済システムというものを前提にして考えている。つまり、経済環境というのは二つの切り離されたものであって、どちらかを立てるというふうな対立させた考え方原因にあると思いますが、環境を利用したりあるいはそれを劣化させたり、あるいは極端な場合には破壊してしまう、そういう際にコストを全く負担しないで、その結果、環境を利用して利益を上げるとかあるいは便益を得る、そういったタイプ経済活動というのは我々の日常茶飯事、枚挙にいとまがないというふうに考えるわけであります。  こういったタイプ行動を起こさせないようにしようとしますと、現在のシステムのままで環境を保全しようといたしますと、必ず経済との衝突というのは起こってまいります。ですから、経済環境というのを対立的に考える考え方というのは、現在のシステム前提にしてそれを変えないということから起こってきているというふうに言えると思います。  しかし、環境経済意思決定が統合された社会経済システムでは、もともと経済活動そのもの環境考慮に入れた上で決定をしておりますので、そういった対立関係が生じないような経済活動というのが選択されていくということになります。ですから、環境経済二者択一というふうな考え方は、こういった経済環境が統合された社会経済では起こらないということが言えるわけであります。  こういうふうに申しましても、そういった社会へどういうふうに移行していくか、そういう移行の過程でやはり同じような二者択一の問題が起こるのではないかということが考えられます。これはそのとおりだと思いますけれども、しかし、経済から環境を少し切り離して、できるだけ経済の方を優先して環境を後回しにする、こういう選択をいたしますと、これは将来の世代をもっと厳しい二者択一状態選択を迫られるような状態に追い込んでしまうということになりますので、これは国際的には認められないような考え方であるというふうに考えられております。  国際的に共通の課題といたしまして持続可能な発展という考え方が出てまいりましたのも、こういった世代間の公平さということを重視して出てまいったわけでありまして、いわゆるブルントラント委員会が一九八七年にこの考え方を広めたわけでありますが、ここでは、「将来の世代がそのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在の世代ニーズを満たすような発展」、こういうふうに定義しております。  この定義そのものの中では、現在の世代と将来の世代をどちらも公平に考えるという見方が強く出ておりますけれども、その委員会の報告をよく読みますと、南北問題とかあるいは人口爆発、こういった国際的な規模で見ての現在の世代の所得の不平等ということを非常に重視しておりまして、南北問題の解決あるいは人口爆発の防止という点を考える上では、なお一層の発展が不可欠な部分もあるということを重視しております。したがいまして、持続可能な発展といいますのは、現在の世代と将来の世代、あるいは同じ世代の間でも南と北あるいは市場経済計画経済、こういったいろいろなところの人々の間の公平性というものを考えて発展を進めるべきである、こういう考え方であります。  したがいまして、この審議会の討論の中でも、かつての公害対策基本法の中で議論されました、経済環境を調和させるべきであるという議論と同じものだというふうな理解が出てまいりまして、私は驚いたのでありますが、決してそういうものではないということをこの際強調しておきたいと思います。  第二点の経済的手法につきましては、これは非常にたくさんの経済的な手法というのがございまして、例えば課税とか課徴金あるいは手数料、それから補助金その他の財政的な支援措置、あるいは売買可能な排出許可証市場を創設する、あるいは資源のリサイクルとか廃棄物の減少というものを促すデポジット・リファンド・システム日本語で言いますと預託返戻制度といいますか、そういったさまざまな政策手段がこの経済的手法の中に含まれます。  答申におきましては、「有効性が期待される経済的手法考え方環境基本法制位置づけることが重要である。」というふうに書かれておりますけれども、他方では「国民的合意が形成されていない分野がある以上、経済的手法を一括して環境基本法制位置づけることは不適当」という少数意見も書かれております。  しかし、OECDとかIPCCあるいはUNCED、こういった国際的な場におきましては、環境政策としての経済的手法の活用ということが非常に強く奨励されております。これは、一定の環境目標を達成するためには経済的な費用というものをできるだけ小さくする必要があるというふうな考え方、それから将来の環境に優しい技術を開発させるための誘因を与える非常にすぐれた制度であるという点から奨励されているわけでありますが、こういうふうに人々環境に負担をかけない、あるいは負担をかけるコストを考慮に入れて行動するということから、費用を最小限度に抑える誘因というのが生まれてくるわけでありまして、こういうやり方が経済環境を統合する一つ方法であろうというふうに考えられるわけであります。  OECDが米国に関する国別審査を行いまして、その報告書の中で、米国の環境対策のための費用が非常に大きくなってきている、一九七〇年代の初めには国民総生産の一%を切っておりましたけれども、一九九〇年にはそれが二%、恐らくあと十年で三%になって、このスピードはどんどん上がるだろうということを言っております。国民総生産の三%というのは非常に大きな数字でありまして、そういったコストをできるだけ小さくして、しかも環境をよくするという考え方がこの経済的手法をとろうという判断を導いたというふうに考えてもいいかと思うのです。  例えばスウェーデンの政府は、二酸化炭素税を導入する際に、環境目標を達成するための国民的な負担を軽減するためにこの手法をとるのだということを非常にはっきりと申しております。こういった認識は、環境を守るために我々が費用を負担しなければいけない、しかし、できるだけその費用の負担は小さい方がいいというふうな考え方から出てきているというふうに思います。こういった政策手段というものを、具体的にどういうふうな形でその役割を担わせるかということを考える段階に我々は至っているというふうに思います。  個別の手法をどういうふうに扱うかということはこれからいろいろ議論されてまいりますし、国際的にもさまざまな調査研究が進んでおります。しかし、この基本法の中で経済的手法位置づけが明確にされることを契機にしまして、いろいろの政策手段に対する調査研究がさらに進められまして、国民的な理解が得られるような政策手段というものが実際に採用されることを私は大いに期待したいと思います。  最後に、環境基本計画についてでございますけれども、持続可能な発展というものを実現するために、地球規模環境政策の課題を解決する、そういう政策我が国でも求められておりますけれども、これはほかの問題でもしばしば指摘されておりますように、現在の省庁の縦割り型の問題意識、あるいはそれに条件づけられた意思決定政策決定では、こういった大きな問題の解決がなかなか進まないのではないかという懸念が強いわけであります。新しい観点に立った我が国環境政策を長期的、総合的に確立していく、そういう枠組みが必要でありますけれども、環境基本法政府案には環境基本計画というものがそういった政策立案のメカニズムとして位置づけられております。私はこれは非常に大きな前進であると思いますし、もしこれが実現しますと国際的にも非常に高い評価が与えられるのではないかと考えております。  地球温暖化というような問題につきましては、長期にわたる政府政策の方向づけというものが国民に明らかにされて初めて合理的な選択がなされるわけでありまして、長期的な方針が決まらないままに短期的な対応を繰り返すというのは、国内的にも国際的にも非常にまずい政策であります。要するに、必要な決定を次々と先延ばしにしていって、最後の段階で非常にトラスチックな対応をしなければいけない。これは非常にまずい選択ではないかと思います。  そういうふうな点から考えますと、たくさんの政策分野にまたがりまして環境政策のグランドデザインをつくる、そしてそれを内外に明らかにする、より長い時間的な視野の政策をつくる、こういうことをやりますと、例えば長期経済計画でありますとかあるいは国土の開発に関する計画でありますとか、もう少し時間的な視野の短い計画もたくさんあるわけでありますが、こういった視野の長いグランドデザインをまず据えて、それに基づいてさまざまな他の計画をつくるということで整合的な、環境経済を統合した我が国政策が実行できるのではないか、経済環境の統合をより効果的に実現する一つの重要な施策ではないかと私は考えております。  時間が参りましたので、以上をもちまして私の意見陳述を終わります。(拍手)
  6. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  7. 原田昇左右

    原田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。持永和見君。
  8. 持永和見

    ○持永委員 参考人の先生方には、かねてからの中公審委員として、環境政策の推進、発展に大変御貢献をいただいていることを厚く感謝を申し上げますし、またきょうは、先ほど来、今回の環境基本法について大変貴重な御意見をいただきましたことを心から感謝申し上げたいと思います。  大変短い時間でございますが、一、二、先生方にそれぞれ質問をさせていただきたいと思います。  森嶌先生が先でございましたので、森嶌先生に先にお伺い申し上げますが、今回の環境基本法の性格、これは基本法でございますからおのずからの限界というものがあるかと思います。ただ、今回の環境基本法については、国民の関心も非常に高くて、各界各層からいろいろな意見が寄せられているところでございますが、先生のお立場から見て今回の環境基本法基本法としての政策の範囲とか内容とか理念とかそういったものについて、必要なものは十分に盛り込まれているとお考えいただけますかどうか。そしてまた、これからの個々具体的な環境政策を誘導していくのに十分なものとお考えなのか。あわせて、先生の先ほどのお話で地球環境の問題というのがございましたが、そういった地球環境の問題にも対応できるような国際的な視野を入れた法案としてもこれでたえ得るものかどうか。その辺について先生の御恩揮のない意見をまずお伺いいたしたいと思います。
  9. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のように今回のものは基本法でございますので、この後に基本法に基づいて具体的な法律ができるものが多いと思いますけれども、そういうことが予想されております。その意味では、基本法は重要な考え方あるいは施策をどれだけ盛り込んでいるかということによってその価値が決まると思いますが、私は、先ほど申し上げましたけれども、少なくとも現在の認識で必要な理念及び施策については盛り込まれていると思います。これは国際協力の点でも同じでございまして、ただ、これを将来どのようにして具体化していくかという問題が残っているという意味では、今後さまざまな施策を展開していく上の手がかりに十分になるであろうと思っております。
  10. 持永和見

    ○持永委員 もう一点、森嶌先生に御質問申し上げたいと思いますが、日本では、かつて産業公害社会問題化いたしましたときに環境権というものが一部主張されました。この環境権を根拠にしてと申しますか、そういうことで裁判上の訴訟だとか行政上の救済だとかいった具体的な政策なり措置が強く求められた時代がありましたけれども、そういった今日までの訴訟なりあるいは救済の中では、環境権そのものを独立して認定するというようなところまではいってなかったのじゃないかと思います。  今のところ、環境権を明確に法律上規定して訴訟の場において環境政策を訴求することができるようにといった御意見をお持ちの方もあるかと思いますけれども、こういった環境権の設定の問題について先生はどういうふうにお考えか、お伺いいたしたいと思います。
  11. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  今先生御指摘の環境権の考え方というのは、昭和四十五年でしたか、出てきた考え方でございますけれども、当時は環境そのものの価値、あるいはそれに対する認識が薄うございましたので、環境権という概念を提唱することによって人々認識をかき立てようとしたのだろうと思います。  しかしながら、法律概念としてはどこまで環境権の環境が及ぶのか、内容はどういう権利が主張できるのかということについて、必ずしも十分な検討がなされていなかったことから、裁判上も主張されたことはございますけれども、今申しました外延、内包ともにあいまいであってこのような権利は認められないということで、幾つかの裁判所においていずれも否定されております。  現時点で考えました場合に、先ほど申しましたように、環境という概念を広くとらえているとしますと、もしも環境権ということを法律上規定していくとするならば、それは何を指すのかということをもう一度定義をし直さなければなりませんし、具体的に訴訟上主張するとしても、それは例えば国の政策を改めさせるのか、それともある行為を具体的に抑えるのかというさまざまな点でかなり細かい詰めもしなくてはなりませんけれども、私は法律家として考えてみた場合に、一つのイデオロギー的な主張といいますか、イデオロギーと申しますとあれですが、要するに物の考え方として、一般論として環境の権利ということを言うことは、今もって意味はあると思いますけれども、法律概念としては、今日の環境に対応するような環境権を構成するのは非常に難しいんじゃないかというふうに思っております。
  12. 持永和見

    ○持永委員 ありがとうございました。  それでは、天野先生の方にお伺いを申し上げたいと思います。  天野先生、先ほど来持続可能な開発ということでいろいろと御意見をいただきました。先生のお言葉の中に、環境経済とのトレードオフの考え方、そういう対立的な考え方から、むしろ統合的な、環境経済を統合させるんだというような考えが世界的にも広がりつつあるしというようなお話がございましたが、経済環境の統合、これはもっと平たく言った場合に、いわば経済環境を両立させるというような理解の仕方をしてよろしいのかどうか、お伺いを申し上げたいと思います。  また、この経済環境の統合なり両立、あるいはトレードオフの関係、そういったものについて、日本のように先進国といいますか、経済活動が非常に高度化している国と、これから発展をしなければならないという発展途上国とでは、その具体的な内容といいますか、政策が異なってくるものかどうか、その辺をお伺い申し上げたいと思います。
  13. 天野明弘

    天野参考人 お答え申し上げます。  ただいまの御質問にございました統合と両立がどういうふうに違うかということでありますが、両立というのはある二つのものが並び立つかどうかというふうな、あるいは並び立てるべきであるという考え方かと思いますが、統合というのは両方が一緒になって一つのものである。ですから、そういう意味では、私はかなりの違いがあるかと思います。  実際の政策を行う際に、要するに全部を含めた形の意思決定なり行動なりを促進すべきであるという点から申しますと、いつまでも両者が別のものであって、両立するかしないかという議論をしないで、両者を全部含めた上での政策なりあるいは民間の行動なりを誘導していくという考え方が重要ではないかと私は思います。  これは一般的な話でありますけれども、ただいまの御指摘にもございましたように、先進国と途上国、いずれも環境に対して責任はあるわけですけれども、過去からの発展の経緯等を考えますと、現在の所得格差というものは歴然としてあるわけでありまして、発展途上国、特に貧しい国々では、経済発展させることがかえって環境に支援をするという面もございますので、先進国と途上国では当然その政策あり方に違いがある。できるだけ先進国の方が発展途上国の環境政策を援助できるような形で、両者が全体としての地球環境の改善というものに努力すべきだというふうに考えておりますので、先ほど申しましたような統合という考え方を、一色で塗りつぶしてしまうというわけではありませんで、世界のいろいろな部分がそれぞれの役割を担って、特に先進国は大きな責任を持ってこの問題に取り組むべきだというふうに考えております。
  14. 持永和見

    ○持永委員 もう一問だけ天野先生にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほど先生のお話の中で、経済的手法のお話がございました。経済的手法で、最小の費用で最大の効果を上げるということ、これは必要なことだと思いますけれども、この経済的手法を今後具体化といいますか、具体的な措置にする場合には、やはりそれなりの調査研究、それから国民の理解、協力を得ていくということが大変大事なことだと思いますけれども、現在の段階で、日本におきます研究の状況だとかこれから期待されること、あるいは国際的な動向との連携が必要だと思いますが、そういった点について先生のお考えをお伺いを申し上げたいと思います。
  15. 天野明弘

    天野参考人 お答え申し上げます。  環境問題に対する政策手法経済的手法がどういうものであるべきであり、どんな効果をもたらすかという研究は国際的には非常に進められております。一時期、例えば経済的手法をとれば経済に対して非常に大きな負担が起こるのではないかということが懸念されたこともございましたけれども、さまざまな研究の進展によりまして、長期的に見ればそんなに大きなマイナスの影響は出ないであろう、しかし、そういうふうにするためには、具体的にこうこうこういうふうな政策手段を実施すべきであるというふうなところまで研究が進んできております。ただ、短期的にはやはり負担の起こるセクターであるとか国が起こってまいりますので、それに対しても適切な政策が必要であるという研究も進んでおります。  翻りまして、日本の研究でありますけれども、自然科学的な研究では日本は国際的に伍して十分やっておりますけれども、経済的、社会システムに関する研究では、残念ながら日本の場合がなり立ちおくれが目立ちまして、このあたりで今後研究を進める体制をつくっていかなければいけないというふうに考えております。  国際的な動向につきましては、こういった研究が進み、それをそれぞれの国の国民が理解をし、あるいは国のグループの中で検討するということが進んでおります。御承知のとおり、北欧諸国では既に環境税とか二酸化炭素税、はっきりと地球環境の汚染を防止するということを銘打った経済的手法がかなりの規模で導入されておりますが、これは国民がきちっとそれを理解して政府の提案を受け入れているということから実現しているわけであります。ECでもかなり以前から提案がされておりますし、米国、英国、こういった国々で具体的な提案が既に審議あるいは検討の過程に入っております。  私は、こういった国際的な動向に我が国がおくれをとらないためにも、環境基本法が成立をして、それを基礎にして地球環境を救うような政策立案をしていただきたいというふうに思います。
  16. 持永和見

    ○持永委員 ありがとうございました。  以上で私の質問を終わります。
  17. 原田昇左右

    原田委員長 斉藤一雄君。
  18. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それでは、最初森嶌先生にお尋ねをしたいと思います。  一番目の問題は、これまでの環境行政を見ておりますと、例えばNO2の環境基準を大幅に緩和したり、あるいは環境基準の達成という公約が破られたり、公健法の事実上の改悪によって大気汚染の公害病認定患者が切り捨てられたりという経験をしているわけですが、一言で言って、私は、これまでの環境行政というものがかなり後退をしてきているというふうに認識をするわけであります。そういう点では、水俣病の問題もいまだに解決をされていないという点等々、反省すべき点、教訓を生かさなければならないという点が非常に重要ではないかというふうに思うわけです。  したがって、単にこれまでの産業公害規制であるとか、単なる自然の保全というようなことだけでは不十分であって、都市公害とか生活公害とか地球環境とかということが今度の基本法には盛られる必要があることは当然でありますけれども、前段の点で先生の御認識を、簡単で結構ですけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  19. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  私は、御指摘の幾つかの事例につきまして、自然科学者でないところから、必ずしもそれがそうであるかどうかつまびらかにしないところはございますが、例えばNO2の環境基準につきましては、世界的な医学的検討からそのような措置がとられたというふうに聞いております。  それから、公健法の問題につきましては、やはり公健法の仕組みそのものがSO2を基準にして賦課金を課していくというようなことになっておりまして、そうだといたしますと、SO2が全体に燃料規制等によって少なくなりますと、あるいは、従来非常に出していた会社がほかのものに、例えば天然ガスなどに燃料を転換してみますと、そこはそれから払わなくてもよいということになります。そして全体的に汚染が、少なくともSO2を見た場合の汚染が下がってきておりまして、つまり賦課をする対象と大気汚染の質が変わってきているというときに、同じ仕組みを維持するということについては問題があるのではないかと思います。  水俣病につきましては先生御指摘のとおりでありまして、私も中公審委員として水俣病の患者の救済をどうするかという審議に携わったことがございますけれども、やはりこの問題は政府としても十分取り組んでいただきたい問題だと思っておりますが、現在、産業公害の問題がなくなったということではございません。質が変わっておりますけれども、これは十分警戒をしておかなければならない問題でありまして、私先ほど申しませんでしたけれども、公害対策については今度の環境基本法も従前と同じような仕組みを維持しております。  私は、現在までの公害行政が理想的に行われたというふうには思っておりませんけれども、まずまずの成果は上げたであろう。そして先生が御指摘の点につきましては、私は異なった見解を持っております。
  20. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 二番目にお尋ねしたいのは、現在の閣議アセスですが、極めて不十分きわまりない内容だと思うのです。したがって、地方公共団体においても十分なアセスが行われていないために関係住民の強い不信を買っている。先生も十分御承知のとおりだと思います。  そういう面から、どうしてもアセス法をつくらなければならないのではないか。基本法ではその点の明文化がされておりませんので非常に心配なわけでありますが、この辺のことについて先生の御見解をお伺いしたいというふうに思います。
  21. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  現在の閣議アセスにつきましてはいろいろな評価がございまして、相当程度行われている、あるいは十分行われているというふうに評価される方と、必ずしもそういうふうには評価をしない場合もございます。  私自身は、現在の閣議アセスそのものに問題があるということよりも、物の考え方として、アセスが公害対策というところから出ておりまして、例えばアセスをする時期であるとかアセスの評価をする対象とかにおいて、個人的には十分でないものになっているのではないか。これは現在の環境問題が変質してきているからであります。  それでは法律でやった方がいいかどうかということについては、私は研究者といたしましては、アセスをきっちりやるということは、アセスをしなければならない企業あるいは事業者にとってはそれは一つの不利益、不利益と申しますか負担を課することになるわけですから、そこで、国民に負担を課する場合にはどういうことをやるべきかということをきっちりと法律で定めておくということが、これは税金ではありませんけれども必要なことだというふうに思いますので、その点で、アセスメント法というようなものができるとすればきちんとしたものをつくっていくべきだというふうに私は考えております。  ただ、基本法の中に盛り込むかどうかということにつきましては、アセスメントに対する評価がいろいろ違っているということから、そしてまた、現在の条文の書き方自身が法律を排除しておりません。むしろほかの規制のところなんかと比べてみますと、「措置を講ずるものとする。」ということは法律が十分に入っている。従来は法律でやっているものが多いわけですから、これは別途国会において御審議なさってお決めいただくものであろうというふうに考えております。
  22. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 三点目に、環境権の問題なんですが、私は東京の世田谷というところに住んでおる関係で、いまだにマンション紛争が絶えない。数十年にわたって私も取り組んできておるわけですが、例えば日照権ということがあります。私は、広い意味の環境権の一種だろうというふうに認識をしておりますが、この日照権という、権利ということは別といたしましても、日照と環境との関係について先生の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  23. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 日照権と言われるものにつきましては、裁判所がかなり努力をいたしましていろいろなルールをつくっております。それが十分であるかどうかという問題はございますけれども、建築基準法の改正等によっても、日照権と申しますか、日照の利益を守るような規定が導入されたりしております。その意味では、私は、住民の環境に関連をするという意味では日照権も環境の中に位置づけられるべきだと思いますけれども、それではそれを環境権ということで一括するのかどうかということになりますと、ほかのさまざまな利益との区別、そして恐らく日照には日照独自の問題がございますので、法律的な概念として日照権が環境権の一種であるということはそれほど意味のないことではないだろうか、法律的にはそう思います。
  24. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 どうも先生ありがとうございました。  それでは次に、天野先生にお尋ねさせていただきたいと思うのです。  先生からもお話がありましたけれども、環境経済との統合、お話はよく理解できるわけでございます。ただ、言葉の問題でもあろうと思うのですけれども、従来経済との調和ということがいろいろ問題になっておりまして、今度の基本法でも持続可能な社会とかいろいろなことが言われておりますけれども、それでは、従来言われていた概念とこの環境経済との統合ということが基本的にどこが違うんだろうか、あるいは同じなんだろうかという疑問がいまだにございますので、いま一度その辺の違いについてといいますか、先生の御見解をお伺いしたいと思います。
  25. 天野明弘

    天野参考人 お答え申し上げます。  経済との調和という表現は、これは例えば環境問題の対処を少し穏やかなものにして、それで経済的なマイナスの影響を少なくしたいという発想であろうかと思いますが、こういうふうに経済の方にウエートがかかって、ほとんどの決定経済的な意思決定で進んでしまうということであれば環境破壊が進むというのは、これは今まで我々が経験してきたとおりであります。  その両者を統合するというのはもう少し具体的に言うとどういうことかと申しますと、環境破壊しているということはだれかがその環境のコストを負担しているわけでありますが、その負担をしている人の決定と負担させている人の決定がばらばらであるということから、ただ乗りと申しますか、コストを払わないで利益だけを得る人と利益を受けないでコストだけを負担する人が出てしまう。ですから、こういうことを防ぐためには、意思決定の際に費用の負担と利益の享受というのを一緒にしてしまおう。そうすると、自分が費用を負担するわけですから、こういう費用を負担するならこういうことをしないという考え方決定が下されるはずであります。ですから統合と申しますのは、もっとはっきり申しますと、実際に社会が負担している環境保全のための費用というものをみんなで負担しよう、そういう社会をつくろうということであります。ですから、利益の享受と費用の負担というのが現在のようにばらばらになっている状態を統合してしまうということであります。  具体的にどういう形で今まで人に押しつけていた負担を取り込んでいくようにするかというのは、さまざまなやり方がありまして、規制を使うとか経済的手法を使うとか、あるいは国民全体がそういう認識を持つような啓発をするとか、いろいろなことができますけれども、要はそういった費用の負担と利益の享受を統合するというふうに申せるかと思います。
  26. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 二点目に、いろいろ言われております環境税という問題について、先生の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  27. 天野明弘

    天野参考人 お答えいたします。  環境税は経済的手法一つの典型的な例でございます。環境税とか、あるいは温暖化の場合には二酸化炭素税というふうに言われますが、これも細かく申しますと、税である場合あるいは課徴金、そういうふうな言い方をすることもございます。  どういう違いがあるかというと、欧米では、税という場合には、入ってきた税収というのは一般的な使途に向けられる、それから課徴金と申しますと、入ってきた税収を本来課徴金を支払った人たちに直接関係するような目的に使う、こういうふうな区別をしておりますが、そういった収入という点を別にいたしますと、その両者が似通っておりますのは、要するに経済主体の行動に対して働きかける、ですから、環境破壊を非常にするような行為に対しては高いコストを負担して、その負担をしてもいいというのであれば行動してもらうという、その点では両者全く同じであります。ですから、むしろ環境税という表現をするよりも、そういった環境破壊をできるだけ防止するインセンティブを与えるような手段であるという理解をしていただきまして、税収とかあるいは課徴金収入というものをどう使うかということは別の問題というふうに切り離して考えるのが重要ではないか。  と申しますのは、環境を守るために経済的手法を使うということを主眼にいたします際には、課税あるいは税を国民から取るという点はほとんど大きな問題ではございません。したがって、環境税というのが、すぐに大衆課税とかあるいは国際貢献のための説とかいうふうなところに話がいってしまうのは、環境税そのものの本質とは非常に違ったところで議論が進んでいく危険があるというふうに理解しております。
  28. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 どうも大変ありがとうございました。  質問を終わります。
  29. 原田昇左右

  30. 大野由利子

    ○大野(由)委員 初めに、森嶌先生に伺いたいと思います。  環境アセスメントの法制化というのは世界の趨勢になっているのではないかと思うのですが、世界の先進国それから開発途上国における環境アセスメントが現状どうなっているかについて伺いたいと思います。
  31. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 今手元に資料は持ち合わせておりませんけれども、アメリカでいわゆるNEPA、国家環境政策法というのがございまして、それは政策をうたったものでありますけれども、そこから始まりまして、最近ではカナダも閣議了解から法律に変えております。主要国、例えばドイツとかフランス、それぞれ多少形は違いますけれども法律を持っておりまして、少なくとも先進諸国においては、アセスメントを法制化するというのは一般的な傾向ではないかと私は認識しております。
  32. 大野由利子

    ○大野(由)委員 先ほどもちょっと質問が出たかと思うのですが、環境アセスの非常な重要性というものが今回の基本法案の中にうたわれたわけです。やはりある面では法制化というか、法律できちっとしていかなければ、持続可能な開発、持続可能な発展が担保できるのかどうか、現状のアセスで果たして十分と認識していらっしゃるかどうか。  先ほど、今後の課題だとおっしゃったと思うのですが、もう二十年前から行われているわけですから、重要性そのものはずっと前から言われているわけで、この環境基本法ができた後、ではこの重要性を具体的にどう認識して、どういう形で一歩踏み出していけばいいのか。現状は、産業界の反対とかいろいろ非常に厳しい。今回の基本法の中でも大変いろいろな論議が行われたということを伺っているわけですけれども、せっかく基本法ができて、環境アセスについても一歩前進、前向きに踏み出すためにはどんなプロセスみたいなものが有効であると思っていらっしゃるかについて伺いたいと思うのです。
  33. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  アセスメントにつきましては、国によってもやり方が随分違っておりますし、それからどういう対象、どういうものをアセスするかということもかなり違っております。日本は、閣議アセスというもので大きなところはやっておりますし、地方公共団体においてアセスの条例とか指針とか要綱を持っているところがございます。  先ほど申し上げましたけれども、私は法律家としては、アセスをしなければならない側から見た場合に、どこまでやればいいのか、それからまた情報の問題等もございまして、そのアセスで出てきた資料あるいは情報と申しますか、それをだれが審査をするのかというようなことについてもきちっとしたルールがあるべきである。そして、そのアセスをしなければならない事業者の方からいいますとそれは負担になるわけですので、本来的には法律で決めておくものであろう。これは一般論としてもそうであろう。ただ、従来、アセスというものがどういうことをやるのか、あるいは、アメリカなどがそうでございましたけれども、そもそも最初考えていたことと実際に裁判所等によってやらされてきたこととはかなり違っておりますので、いろいろ物が動いているときに法律というような形で固定するのがよかったかどうかという問題がございます。  先ほどのお答えにも申しましたけれども、環境の質が変わってまいりましたし、人々認識も変わってきているわけですから、法律にするかどうかという問題よりも以前に、日本のアセスというものを一体どう考えていくのがいいのかということをできれば国会でぜひ検討していただいて、その結果、法律家は法律がいいと申しますけれども、法律でない方法でやるとすれば、それはなぜそういうふうになるのかということも含めて御議論いただきたいと私は思っております。
  34. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今回の基本法の中で、特定の、教育とか非常に限定された形での情報の提供というのが出ております。情報の公開という形になっていないわけですが、水俣病のいろいろな反省において、情報の公開は我が国においてまだまだ非常に厳しい状況ではあるかと思うのですが、人間の生命にかかわるような問題、命にかかわるような問題、環境に関するような問題についてはやはり情報の公開がないと、先ほどの持続可能な発展というのもそれこそ保障もできないし、公害対策、予防という観点からもこれはそれこそ不十分なのではないかなと思うのです。この点についてちょっと伺いたいと思います。
  35. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  情報の提供と情報の公開とはどこが違うかということでございますが、多分地方公共団体の情報公開条例とか要綱では公開ということを使っていると思うのですが、我が国では、従来から法律では余り公開という言葉が使われておりません。  例えば、今、私チェックしようと思ったのですが、時間がなかったのでできませんでしたけれども、消費者保護基本法というのがございまして、そこでも、アメリカなどでは知る権利というので、情報をとる権利という形で言われておりますけれども、日本では情報提供という形になっております。もしも公開というのが、情報を欲しいという側からの権利性、つまり出せと言って出すということだといたしますと、これはきちっとした枠をつくっておかないと、例えば環境ということになりますと、先ほども申し上げましたように、環境という概念を広くとった場合には、何でもかんでも環境になるのかならないのかということで、かえって紛争が起きるというようなことになります。先生御指摘のように、人の生命、身体にかかわる問題については請求できるようにせよということであるとすれば、私は、そういう枠組みを、ルールをきっちりつくらなければならないというふうに思っております。  一般的に申しますと、提供ということはほとんど人々が情報を得られないのかと申しますと、少なくともこの法律の中に情報提供を書くことによって、それを担当する役所がどれくらい真剣にやるかということによると私は思いますけれども、かなり状況は好転するのではないか。公開ということであるならば、それに応じた要件、効果と申しますか、それをきっちりしておかないとかえって紛争が起きるであろうというふうに私は思っております。
  36. 大野由利子

    ○大野(由)委員 天野先生にお伺いしたいと思います。  経済的手法ということで、マイナスのインセンティブであります課徴金とか税という問題が今回の法案の中で位置づけられているわけですけれども、課徴金には炭素税以外に、例えば具体的にどういうものが想定されるか、伺いたいと思います。
  37. 天野明弘

    天野参考人 お答え申し上げます。  これは基本法の中にあるというわけではございませんけれども、課徴金として環境に関連するような使い方にどういうものがあるかというふうなことで考えますと、例えば利用者課金といいますか、廃棄物なんかの処理をして、その処理をするためのコストを利用者に負担させる、こういった形、あるいは生産物課金といいまして、例えば石油なら石油あるいは石炭なら石炭という生産物に対して課金をする。炭素税というのは、一般的に申しますと、二酸化炭素を排出する、その排出という行為に対して税を取るのが普通なんですけれども、排出ではなくて、炭素を含んでいる石炭であるとか石油であるとか、そういう生産物に対して税を取ったり課金を課したりというのもこの生産物課金の中に入ります。あるいは、例えば環境浄化のためのいろいろな行政的な費用を利用者に負担させるというものもございます。  非常にたくさんのタイプがありまして、OECDが実は一九八九年に加盟国のそういった税も含めて課金の調査をしております。日本もその中に入っているのですけれども、日本の使い方が余りにも少ない、大気に関するものが一つと騒音に関するものが一つ、それ以外にこういった環境に関連した課徴金というのはほとんど皆無に近い状態だというのが出ておりまして、これはヨーロッパとか北米あるいはオーストラリアというところではかなりよく利用されているのに比べれば、少し寂しいという感じがいたします。この基本法というのは、必ずしも税ということだけに力点を置いておるのではありませんで、こういった経済的な手法をこれからどんどん環境のために使っていって、先ほど申しました統合というものを実現していただきたいというふうに思います。
  38. 大野由利子

    ○大野(由)委員 これが環境破壊の抑制につながる、ある程度効果をもたらすというためには、これはまだ研究課題かもしれませんが、ヨーロッパ等を参考例にしながら、効果あるにはどの程度なのか。これが、ある面では余り薄いと単なる消費税のかわりというような感じで、一時的には痛手を感じても、しばらくすると何にも環境破壊の抑制というものにはつながらないというふうな面もあるかと思うのですが、そういう意味では、簡単には言えないかもしれないのですが、これが抑制につながるためには大体どういうことを、ある程度基準なりなんなり、その点について伺いたいと思います。
  39. 天野明弘

    天野参考人 今の御質問に簡単にお答えするのは大変難しゅうございますが、一つは、先ほど申しましたようなさまざまな課徴金でございますが、これは、実際に導入されて環境に対する影響が非常によくなったということはよく報告されております。ですから、対象を非常にはっきりとさせて、それに対して課金をするということであればその効果がよくあらわれるということは、いろいろな報告がございます。  それで、多分御質問の趣旨は、炭素税のような余り目的のはっきりしないような税の場合には幾らぐらいをかける必要があるかということだと思いますが、これもいろいろな研究によりまして、例えば炭素一トンに対して百ドルというふうなレベルでかけなければ効果が出ないという調査もございますけれども、最近は、いきなりそういった高い税をかけるというのではなくて、例えばECのように、石油に換算しますと、一バレル当たり三ドルぐらいから始めて徐々に上げていくというふうなやり方をするのがもっと効果的である。つまり、初めから高い税を取るということが必要ではなくて、人々に対して、二酸化炭素の排出にこれから将来規制がかかりますよということがはっきりすれば、人々はそれを念頭に置いて行動するであろう。ですから、余り高い税をかける必要はないけれども、低い水準から始めて、将来に向けて規制を強めていくという姿勢が必要であるというふうな研究が出ております。
  40. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ありがとうございました。
  41. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 大野先生に先ほどの追加をいたします。  消費者保護基本法の十二条でございますが、ここに「情報の提供」というふうになっております。
  42. 原田昇左右

    原田委員長 寺前巖君。
  43. 寺前巖

    ○寺前委員 森嶌参考人にまず最初にお伺いしたいと思います。  先生がお書きになっているものも読んだし、きょうもお話を聞いておって、地球環境保全等に関する国際協力等に関連しての御意見、私も同感するものがあります。  そこで、CO2などの増加による地球温暖化とか、フロンガスなどによるオゾン層破壊とか、熱帯林の破壊など地球環境問題の主要な原因が、先進国の大企業の側の責任が多い。そういう意味では、今度の法案では、「地球環境保全等について配慮するように努めなければならない。」こういう原則が書かれていると思います。しかし、「努めなければならない。」というようなことで果たして、公害の輸出など横暴なことが平然と行われてきた今日までの実情を考えるときに、そんなことで規制することはできるのだろうか、率直に、実効性のある立場から見るならば疑問に思わざるを得ないわけです。  そこで、森嶌先生に、この公害の輸出について、実効性のある措置というのはこういうふうにあるべきだという御意見を率直にお聞きしたい、こういうように思います。
  44. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 その前に、努めなければならないということでございますが、この法律では、努めなければならないというのと何々とするというのとございますが、私は、法律に努めなければならないと書いてあるものを見てみますと、これは、やってみてできなければよいというような趣旨ではなくて、例えば相手がいるとか、あるいは国の予算によって問題が必ずしもその場で解決できないというようなものについて努めるものとするという書き方をしているわけであります。この法律だけではなくてほかでもそうでございまして、その意味では、ここで書かれている「努めなければならない。」というのは、適当にやりますよという趣旨ではないということを私は信じております。ぜひ国としてはおやりになっていただきたいと思います。  そこで、どういう方法公害輸出等をチェックすることになるのかということでございますけれども、これはアメリカなどでは、例えば公害規制の少ない国から輸入をするようなときには、その輸入を拒否するというようなことを最近では言っておりますが、しかし、これはガットとの関係でかなり問題がございます。つまり、一方では、ほかの国の公害規制に対して口を差し挟むということは、ガットの建前に反すると同時に、内政干渉になるという考え方が強いわけでございます。  最近では国際協調という形でどんどんと変わってきてはおりますけれども、私は国際法学者ではございませんが、伝統的な国際法ではなかなか難しいということがございます。その点では、特にコングロマリットと言われるような企業については、やはり企業自身がそこで認識を改め、そしてよその国で活動するに当たってその国の環境を汚さないようにするということが必要であって、国際法上のあるいは国内法上の何らかの手段を現在の法律、制度でとるということはなかなか難しいのではないかと私は考えております。  その点、私は非常に残念に思いますけれども、そういう状態でございますので、どれぐらい実際にやってくれるかわかりませんが、経済団体等で現在環境憲章などというのをあちこちで出しておりまして、その中で海外の活動についても自分たちでコントロールするということ宣言っております。そして、この環境基本法の中でも、三十四条の二項になりますけれども、そのような配慮について情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとするということになっておりますので、私としては、国の方で法律的にコントロールするというのはなかなか難しいわけですが、日本お得意の行政指導なりなんなり、あるいは何らかのインセンティブを与えるという形でぜひやっていただきたいというふうに思っております。  結論としましては、現在の国際法、国内法のルールのもとでは、外国にあるものを直接コントロールするというのは、そういう試みはあるけれども難しいということを申し上げざるを得ないと思います。
  45. 寺前巖

    ○寺前委員 アセスメントの問題が先ほどからも問題になっておりました。先生のお話を聞いておりますと、事実上既に行われているというふうにおっしゃっておったのですが、アセスメントにもいろいろな段階のアセスがあると思うのですね。計画段階に、こういう計画をした場合にアセスがどうだとかというふうに、いろいろな段階のアセスがあると思うのですが、今閣議決定などで行われているアセスというのは、実行を前提とするアセスになっているというふうに私は見るわけです。  だから、そういう意味では、持続可能な開発を続けていくという諸関係との関係を考えてみた場合に、計画段階からのアセスという問題を真剣に考えなければならないときが来ているのではないだろうか。そういう意味では、単に閣議決定とかそういうような性格のものではなくして、やはり法的な規制をすることによって実効性のあるものをつくり上げていくことになる、未来にわたって責任を負っていくことになるのではないだろうかというふうに強く感ずるものですが、アセスメント法についてどういうふうにあるべきだ、あるいは法を必要としないというふうにおっしゃるのか、そこはどういうことになるのでしょうか、お聞きしたいと思います。
  46. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 お答え申し上げます。  私は、先ほどから申し上げておりますように、法律家としては法律によってきちっとしたルールをつくるべきである、それから、最近の環境問題の広がりとその質の変化にかんがみるならば、単に事業の直前にアセスメントをするということは、従来はそれでよかったかもしれないけれども、今日ではまだ十分でないのではないかというふうに思っております。  しかしながら、それでは私が研究者としてあるいは法律家として考えていることはそのまま今の国政レベルで通用する議論なのかどうかということになりますと、私は十分存じません。むしろ委員会などでの議論などを聞いておりますと、やはり先生おっしゃるように、この際きっちりとした議論をすべきではないか、そしてどういう方向に進むべきかをお考えになるべきではないか。私自身は先ほどから申し上げているとおりの考え方をしております。
  47. 寺前巖

    ○寺前委員 私は京都の出身ですが、最近京都で話題になりましたことの一つに、阪神高速道路を町の中に通そう。この間の建設委員会でその法律の改正が認められました。  ここで問題になってくるのは、今のアセスの話ではございませんけれども、京都市自身が〇・〇二ppmという基準を設けてそれを保全しよう、こういうようになっておる。ところが、国の方は〇・〇六という基準をつくっている。さて環境庁として、自治体がせっかく自分の環境を保全していくためにという告示まで明らかにしてやっているのに、国の基準は全国統一だといって〇・〇六でいこうという問題が提起されてくる。それで実行してしまう。  この種の問題というのは、私は住民との関係で自治体の発言というのがいろいろな角度で積極性を増してくると思う。何もNOxの問題だけではありません。だから、こういうことを考えたときに、本当にあり方の問題として、やはり地方自治体の総合的に判断している内容というのをもっと尊重するという立場をとるべきではないかと思うのですが、森嶌先生はいかにお考えになるでしょうか。
  48. 森嶌昭夫

    森嶌参考人 憲法及び地方自治法では、地方自治体ができることというのは法律の範囲内あるいは法令の範囲内ということになっております。私は、これは国の施策を統一するために必要な考え方であったとは思いますけれども、冒頭に申し上げましたように、今日地方自治体が環境の行政に果たしている役割というのは非常に重要であります。そこで私は、現在の法律のもとで、地方自治体が自分の思うようにおやりなさいということではありませんけれども、地方自治体に環境行政を通じてより広い権限を与えていくのが望ましいのではないかというふうに思っております。これは環境問題だけではなくて、まさに地方の時代というふうにこれから考えていくならば、私は全般的にそういう問題をお考えいただきたいというふうに思っております。
  49. 寺前巖

    ○寺前委員 ありがとうございました。  次に、天野参考人にお聞きしたいと思うのです。  法案の基本理念に、持続的発展が可能なという考え方が示されております。これは歴史的にも、公害国会などが開かれて、経済発展なくして福祉なしなどと言われたことに対して、それの結果が公害が野放しのごとくになって被害を受けてきた、だからそこのところの条項をきちんとしようじゃないかという経過が国会の中にもありました。  それで、これは非常に重要な問題なので、持続的発展が可能なということを、先ほどからいろいろお話がございましたが、経済環境の調和と読みかえて、現在の経済に負担をかけ過ぎないように環境保全の厳しさに若干の手心を加えようというお考えとしてこれを見るならば、これは私はちょっと困った考えだなというような感じを率直に申し上げたいと思うわけです。  私は、環境はすべての人の共有財産だと思うのです。国民が良好な環境のもとで、健康で安全、文化的な生活を営むという権利はあるんだ、したがって、国や自治体が良好な環境を保全して、自分の世代から次の世代へ受け継がせていく責務というのか義務というのか、そういうものを持つべきなんだというふうにこれを考えるべきだと私は思うのですが、ちょっと環境に対する原則上の問題だと私は思うので、あえて先生の御意見をもう一度確かめておきたい。  時間の都合がありますので、もう一つ同時にお聞きしたいと思いますが、そういう立場から考えて、先ほどからお話のありました環境税の問題、これも私ちょっと気になるわけです。  法案第二十一条の「環境の保全上の支障を防止するための経済措置」の一つとして、環境税の問題が云々されているわけですけれども、やはり原因者負担の原則というのを堅持する必要があるのだろう。事業者が負うべき負担を国民に転嫁するようなことをやってはならないのではないだろうか。したがって、事業者自身の責任というところから消費者の側に責任を転嫁しないという立場があってこそ初めでいろいろな研究が進んでいくと思うのです。それを地域住民の側の責任に転嫁をしてしまうと、結局、公害が野放しになっていくという過去の経験がそこにまたよみがえってくるんだ。そういう意味では、企業が汚染原因者の問題として負担することこそ、私は環境に対する社会的責務だというふうに見ていく必要があるだろう。そういう意味からいうと、環境税についての先生の提起しておられる問題についてはちょっと疑問を感ずるので、あえてもう一度お聞かせをお願いしたいと思います。
  50. 天野明弘

    天野参考人 お二つの御質問にお答えを申し上げます。  まず第一の経済環境の調和という問題でありますが、これは私も何度も申し上げておりますように、経済を優先するために環境に手心を加えるというふうな考え方は、この持続可能な発展という考え方と全く対立する、矛盾する思考方法であるというふうに思います。ですから、基本法でも取り上げられておりますし、国際的にも一般的な理念として受け入れられている持続可能な発展という概念は、かつての経済環境の調和と混同されてはならないというふうに考えます。  ただ、環境は共有財産でありますが、共有財産であって、しかもだれも所有をしていない、そういう共有財産であるからこそみんながむだ遣いをするということがございますので、もちろん国や地方自治体がそれを守る責務もありますけれども、一般の国民全員が環境を守る責務を負っている。そういった責務があるということを今までは認識してこなかったことが社会経済システムの問題であるというふうに私は考えております。ですから、当然国や自治体も強い責務を負っておりますが、それと同時に、国民全体が地球を守る責務を負っているという認識を持つことが非常に重要であろうかと思います。  第二に、原因者負担との関係で、環境税に疑問があるという御質問でございます。  OECDがずっと以前から申しております汚染者負担の原則、PPPというのがございますけれども、これは環境問題を考える際に無視できない、あるいは世界的な世論になっているというふうに考えます。したがって、もちろん生産者は当然そういう汚染者負担の原則に服する必要があるというふうに考えておりますが、先ほどの共有財産を守るという視点と同じでありまして、生産者も消費者も、すべての経済行為を行っている主体が汚染に対して直接の支払いをする必要があるというふうに考えております。
  51. 寺前巖

    ○寺前委員 ありがとうございました。
  52. 原田昇左右

  53. 塚本三郎

    塚本委員 御苦労さまです。  森嶌先生にお伺いしますが、気楽に答えていただきたいと思います。  自然を残したい、しかし経済発展することによって環境と衝突せざるを得ない、したがって、できるだけ環境に負担をかけないようにやっていくべきだ、両先生から御説明いただきました。全くそのとおりです。時間が少のうございますから、私はエネルギーの一点に絞って所見を述べて、先生の御見解を伺いたいと思います。  昔は御承知のとおり、今でもオランダヘ行きますると、風車でもってエネルギーへの代替に使っておった歴史的経過があります。今でもたまには、優雅でということになってしまったのですが、水車でもって米をつき、あるいは粉にするというようなことがまだ若干残っておるわけです。自然の力をエネルギーにかえることによって人間の行動範囲を広げ、生活の近代化を図ってきた、それがいつの間にやら今日のエネルギーにかわってしまったのですが、もう一度原点に戻って、やがてはクリーンエネルギーというものをつくることが自然との調和の最大の目標にならざるを得ないと思います。  私は、二十年ほど前だと思いますが、もっと前かもしれませんが、商工委員会で、ときどき思い出すのですけれども、今有名で、テレビに出ていっております堺屋太一さん、彼が通産省の一職員であるとき、何度も私の部屋を訪れられて、ソーラーハウスを初めとするいわゆるクリーンエネルギーというものを、国会議員の理事の部屋に飛び込んできて熱心に説いておったことを記憶しております。  やがて我々も、エネルギーというもの、今油だとか天然ガスで、これが公害とか地球温暖化の元凶と指摘されておりますが、やはりこの太陽の光をいつ我々がエネルギーにかえることができるか。あるいは風車のごとく風の力、あるいはかつては瀬戸内海をシャットアウトして満潮、干潮の波の力によって大きなエネルギーを得ることができる。あるいは島原の今日の、指くわえて見ておるだけですけれども、あの地熱というものを早く我々人類のエネルギーに転換することが必要だ。やがてクリーンエネルギーの時代を迎えなければならないことは当然だと思います。最近はそういうことがちょっと軽視されてしまって、そしてやれ環境だ、公害だというようなことを言っておりますが、早くその道に到達しなければならぬと思います。今からどれぐらい先になったらそれができるのか、あるいはそういうことを先にやるべきではないかという感じがして仕方がありませんが、先生の御所見を伺いたいと思います。大ざっぱで結構です。
  54. 天野明弘

    天野参考人 特に地球環境の問題に関しましては、ただいまの御指摘のとおり、化石燃料が非常に大きな原因になっておりまして、その化石燃料以外のクリーンなエネルギーによって人類の活動を支えるということが求められているわけであります。  私の研究の範囲内で、知っております限りで申し上げますと、世界でいろいろな地球モデルをつくって研究をしております際には、大体西暦二〇二〇年から三〇年あたりからこういったクリーンエネルギーが少しずつ実用化されるであろう、しかし、依然として化石燃料、現状では特に石炭の埋蔵量が非常に多うございますので、石炭の利用がどうしても進んでしまうのではないか、こういうことが心配されているわけであります。  こういった研究では、同時に、御指摘のような太陽光あるいは地熱、風力といったエネルギーのウエートを高めるために、仮に化石燃料に対して高い税金をかけてみよう。そうしますと、特に石炭の利用が減って、その分クリーンエネルギーの割合がふえるように促進されるような効果が出てくる。ですから、エネルギー全体の使用がもちろん減りますが、それと同時にエネルギー構成が非常にクリーンの方向へ変わっていくという研究も行われております。大体そういう技術が実用化される時点というのが、大方の意見では二〇二〇年から三〇年あたりというふうに伺っております。これはあくまでも将来の話でありますから、どのくらい精度があるかと言われるとちょっと困りますけれども、大体そういった意見が多いということを申し上げておきます。
  55. 塚本三郎

    塚本委員 きょうでも、こんないい天気ですけれども、わざわざこうしてみんな壁にしてしまって、そして電気をつけて、私は自宅に帰りますと電気は絶対つけない、窓際で、こうなって、またその方が気分がいいのですよね。電力会社はさすがですね、もうクーラーはつけない。少し暖かくなるとみんな上着を脱ごうといって事務をとっておる。そして窓をあげよう、こういう形になっておるのですが、人間わがままなんですよね。  だから、今のように化石燃料に税金をかけて抑えよう、一つ方法ですけれども、それよりもっと進んで、これはいわゆる公害防止じゃなくて、クリーンエネルギー開発のために必要な環境税というような発想は出てきませんか。どちらかにお伺いいたします。
  56. 天野明弘

    天野参考人 先ほども申しましたように、仮に環境税のようなものをかけますと相当の税収が上がってまいります。その税収をどういうふうな目的に使うかということは全般的な政策体系の中で考えることでありますが、仮に環境問題、特に地球環境問題に対して大きな重点を置いた施策を講じるという必要がある場合には、一種の目的税のような形でクリーンエネルギーの開発にその税収を使うということは当然考えられるわけであります。ですから、その税収をどういうふうに使うかということは、地球環境に対する施策のウエートがどのくらい強く置かれているかということで決まってくることではないかというふうに考えております。
  57. 塚本三郎

    塚本委員 時間がないから、最後に。  私は、石炭とか油とか天然ガスが枯渇をしたら仕方なしにクリーンに行くというような基本ではなくして、これはこれでもっと、いわゆるエネルギー以外のところでまた必要になるかもしれない。だから手をつけずに、クリーンエネルギーができるまでの間は、早くこれに到達するように環境税はそこに重点を置くということと、私はだれが何と言おうともやはりいわゆる原子力のエネルギーを、これはあのソ連のようなむちゃくちゃなことをやれば別ですけれども、安全対策に万全を期するならば、化石燃料はあっても、高い安いは別にして、いわゆるリサイクルのできる原子力を中心とするエネルギーの開発。  私は、十年ほど前ですけれども、敦賀の海水浴場に行ったときに、ちょうどあれは敦賀原発が事故が起きたといって、事故が起きたといっても、警報が鳴り、ほんのわずか放射能を含んだ水が漏れただけですが、漏れてもちゃんと囲ってある。漏れたらまた次と三段階ぐらいですから絶対心配がない。もちろん魚一匹死んだわけではない。ところが、我ら東京、名古屋、大阪の人は、もう日本海の魚は一切食べないというマスコミの大騒ぎの中で、そのとき漁師の諸君が、魚一匹死んでない、外へ放射能の水が漏れたわけじゃないのに、おれたち漁師はマスコミによって殺された、政府は何をやってんだ。ちょうど海水浴の時期に私は行っておって、そんなことを思い出すのです。  私は、化石燃料を使う前に、クリーンエネルギーの中間として、安全のためならばあらゆる金を使ってもいい、しかし、そうしてこの地球に優しいということを勇気を出して、一部の諸君が騒ぐからといって逃げ惑いせずに、やはりクリーンエネルギーができるまでの中継ぎとして原子力というものを、文明国は世界でやっているのですから、その点を堂々と進めなければ環境はよくならないし、環境を守ることができない。今や自動車でさえももう電気自動車でということが進んできている時代だと思います。そういう意味で、専門家の学者の先生方が堂々と政治的配慮をせずに発言をして推し進めることが本当の環境問題だと思いますが、いかがでしょうか。
  58. 天野明弘

    天野参考人 お答え申し上げます。  環境税の税収をクリーンエネルギーの開発に重点的に使うというのも一つのお考えであろうというふうに思います。クリーンエネルギーと申しますのは、地球環境の場合には二酸化炭素を出さないという、あるいはそれ以外の大気汚染もございますけれども、主として二酸化炭素を出さないということでありますから、原子力もそういう観点からいえばクリーンなエネルギーでありますが、ただ、水力にしましても風力にしましても地熱にしましても原子力にしましても、エネルギーというのは全く環境に対して負荷を加えないエネルギーというのはあり得ないわけでありまして、何らかの負荷を課しているわけであります。そういう点からいいますと、環境というのは、単に地球の大気をどうするかという環境だけではございませんので、いろいろな観点環境に対する負荷というものを考えた上でバランスのとれたエネルギー政策というものが要請されているというふうに考えております。  以上でございます。
  59. 塚本三郎

    塚本委員 そんなことはわかっているの、先生。だから我ら政治家としては、我々政治家が言いますと政治的発言でもって行動するように誤解を受けるし、マスコミさんもそういうような、またそういう政治家ももちろんおると思うのです。だからそういうときに、いわゆるクリーンエネルギーと同じなんだということを学者の先生方が自信を持っておっしゃっていただくことが、我ら政治家も住民に対する不安というものをなくして、本当の環境を守ることはこういうことですよというようなことをやるべきではないかというふうに思って、同じクリーンでございますだけではなくして、今のところいわゆる二〇二〇年かそこらからぼつぼつ始まるでしょう。それならばその間、地球破壊されないように、あるいはまた汚染されないために、安全対策のためには全力を尽くしましょう。そうして今既に原子力が発電の方には利用されました。あるいは発電だけではなく、この原子力ももっと別の方向にも向けるようなことを安全をすべて中心に置きながら進めるのがいわゆる自然のクリーンエネルギーへの一つなんだというふうにおっしゃっていただくことが政治家を勇気づけることだと思いますが、いかがでしょう。最後に御答弁を求めて、終わります。
  60. 天野明弘

    天野参考人 おっしゃられますように、原子力に関しましては我が国は、基本法でもうたっておりますけれども、現在まで非常に安全重視の政策を続けてきております。今回の環境基本法制の中ではその路線が踏襲されるものというふうに我々は理解しております。  ただし、私はこういう環境経済関係を研究しておりますので、研究者といたしましては、原子力もやはり環境に対して負荷を与えておりますので、その安全に対して万全の配慮をするということがそういった環境負荷に対する負担を我々がするということだというふうに理解して、原子力は大気に対してはクリーンですけれども、それ以外の面ではやはり問題があるということは研究者としては申し上げておく必要があろうかというふうに思います。
  61. 塚本三郎

    塚本委員 終わります。
  62. 原田昇左右

    原田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時二十九分開議
  63. 原田昇左右

    原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出環境基本法案内閣提出環境基本法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び馬場昇君外二名提出環境基本法案の各案を一括議題とし、質疑を続行いたします。田中昭一君。
  64. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 前回に引き続きまして、今次提案されておる環境基本法の問題について質問させていただきたいと思います。  前回、かなりの部分について、私の考え方を述べまして御見解をいただいたわけですが、イエスなのかノーなのか、肯定なのか否定なのかわからない点もございます。したがいまして、ポイントになる点について、重複する点がたくさんあると思いますけれども、幾つかの点について、改めて環境庁としての御見解をいただきたいと思っております。  午前中も参考人の先生方からいろいろと御意見がございました。今回のこの基本法ですが、中公審やあるいは自然環境審議会答申が、重要だ、こういう指摘をした問題については、私はかなりの部分織り込まれていると思っております。そういう点では、環境庁の努力については評価をいたしたい、こう思っております。  しかし、具体的内容とか、これが決定された以降実効性あるものとなるのか、こういうことになりますと、ポイントの点について私は、反対意見を配慮する余り、法案は留保条件的なものがかなりあいまいになっておる、こういうふうに思う点がたくさんございます。規範性を持たせるにはやはり原則となるルールを明快に示さなければ基本法にはならない、つくっただけだ、こういうことになってしまうと思います。  この基本法についてマスコミの報道などを見てみますと、例えばある新聞の見出しては、「具体性欠く環境基本法案 通産や産業界反発で後退」、これは大きい見出しでこういうふうにこの環境基本法の内容をうたっているわけです。そして、中身になりますと、格調高い文章で、しかし意味不明が多くて、基本法国民意識との間に大きなギャップが出てくるのではないかな、そういう論調で書かれておるわけです。  前回の質疑で、私は、せっかく環境基本法を制定するわけですから、見かけがどんなに立派であっても絵にかいたもちでは意味がない、やはり実効性が必要だ、このことを明確にしなければ議論する余地がないのじゃないかということを申し上げたつもりです。  今回の基本法ほど、多くの市民団体あるいはボランティア団体あるいは法曹界などから意見の提起があったのはほかにないのじゃないかというぐらい、たくさんの意見が私のところにも寄せられておりまして、その中で問題点として指摘をされておる焦点というのは大体同じように絞られておるのじゃないかな、こう思っています。  ちなみに、どういうことかといいますと、例えば基本理念の中で基本的人権にかかわる問題についてはもっと明確にする必要があるとか、あるいは環境保全を優先する社会への転換について基本法の中では明確にすべきであろう。それから、経済手法の活用についてももっと議論を詰めておく必要があるのじゃないか。それから、環境アセスメントの実施については、これはもうこの環境基本法の基本になるものだ、きちんと議論をしてほしいという問題。それから、環境基本計画の策定、環境基準の問題、これについても強い指摘がございます。それから、住民参加、情報公開、こういう問題についても、私は国民の皆さん方の関心は非常に高いと思います。それから、過去の公害行政の反省、公害にかかわる紛争処理と救済の問題、これもやはり基本法の中ではきちんとすべきではないかな、こういう意見が、大体出されてくる意見の中では焦点として絞られているのではないかな、こう思っております。  しかし、今申し上げましたような点について、これは非常に肝心なところですけれども、この肝心なところがあいまいな点が非常に多いのじゃないかな、私はこういう気がしてなりません。したがって、あいまいでなければあいまいでないようにきちんと整理をしておくことが必要ではないかな、こういうふうに思っております。  今回提案されている環境の憲法としての基本法については、やはり環境庁として本気で実効性のあるものをつくり上げるのだ、この確信が極めて必要ではないかな、私はこういうふうに思います。  率直に申し上げますと、本当は環境庁としてはもう少しきちんとしたものにしたいという考え方があるけれども、しかし、いろいろな環境の問題が周囲にあってやはりあいまいにせざるを得ない点があるんじゃないかな、こういう気持ちもするのですけれども、ひとつこの点について、私は再三、前回も申し上げましたように、実効性がないような基本法をつくっても意味がない、こういう立場に立ちますから、この辺の気合いといいますか、基本的な考え方につきまして、冒頭、長官の方からもう少し決意のほどをお聞かせをいただきたい、こう思います。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
  65. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 田中先生にお答え申し上げますが、田中先生の御質問の内容は一々、この法案作成につきましての環境庁としての気持ちを先生が相当代弁してくださっているというように受けとめてもいいのではないかと思います。  ただ、私は逆に、先生御案内のように、環境行政は現在の内閣の中で十七省庁がこれに携わって、それぞれ予算をいただいて進めております。したがいまして、仮に個別法的に法律をつくって進めることができるならば、十七省庁それぞれの持っている、自分の省庁の抱いている環境問題はこれだということで意見があるはずでございますし、御意見もあります。それを一つ基本法にまとめ上げるということについては、環境庁が考えていることを十七省庁の前で妥協したという意味ではありませんでして、むしろ十七省庁がそれぞれ抱えている環境問題に対する取り組みの姿勢といいますか、その責任を環境基本法に一本にまとめていただいたということで御理解いただければ私は大変ありがたいと思っております。  そして、特にこの環境基本法案、先生御指摘のように理念とそれから新しい施策の枠組みというものを一応決めた一つの、環境憲法という名前を先生お使いになりましたけれども、そういうような解釈も成り立つ基本法でもございますので、やはりこれの実効性が一番大事でありますが、その実効性につきましても、これから国や地方公共団体あるいは事業者、国民、それぞれがこの法律の中で理念と責任を与えられて環境問題に取り組むということになっておりますので、そういう意味におきましても、国、地方公共団体、事業者あるいは国民、それがそれぞれの責任において取り組めるようにできておりますので、願いますならば基本法案を一日も早く成立させていただきまして、そして、これからのそれぞれの立場立場における取り組みにおいて実効性を深めていきたいと考えております。
  66. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 私が基本的に申し上げたことについて、環境庁を代弁しているという発言もございまして、そういう意味では基本的には大きな認識のずれはない、こういうふうに長官の今の御答弁は私としては受けとめておきたいと思います。したがって、私たちもこの環境基本法については一日も早く成立をさせる、こういう立場ですから、今後これに基づきましてきちんとした指導性、指導力を発揮してもらって、現実的に実効が上がる、こういう法律としてこの基本法が生きていくように、特段の環境庁の今後の御努力、指導性を強く要求しておきたい、こういうふうに思います。  それでは、具体的に参りたいと思いますが、まず第三条などに関連をする基本理念の問題につきまして、これも前回の私の質疑の中ではそんなに大きな意見の食い違いは、たしか八木橋局長の答弁としての確認をさせていただいたと実は思っておるわけですけれども、この点について再度御質問をさせていただきたい、こう思っております。  憲法の精神は、ここで私がいろいろと言う必要はございませんけれども、国民が健康で豊かな環境の中で生活をするということ、そして良好なる環境、自然の恵沢を享受するということ、このことは当然実現されるべき目標である。そして国、地方自治体はこの目標を達成する任務と責任がある。このことを明確に確認をしたい、こう思っております。同時に、国民がこれを要求し主張する、このことを基本的人権として、国民の権利であるということについても基本理念として明確にすべきではないかな、こう実は思っておりまして、このことについて私は先般も水俣病患者の皆さんの例をとって、公害の防止とか環境破壊根絶を怠った場合に、この被害者というのは、まさに今申し上げましたような権利の享受ができずに基本的人権が生涯を通じてじゅうりんされる、こういうことになるということを率直に申し上げたわけです。  そういう意味では、今申し上げましたように、今回の基本法の基本理念として、この基本的人権は当然のこととして確認されるというふうに受けとめておきたいと思うのですが、この点はいかがですか。
  67. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘のように、人間が健康で文化的な生活を送るために恵み豊かな環境というものは欠くことのできない、不可欠のものであるという認識に立っているわけでございます。そういう認識の上に立ちまして、この環境基本法案におきましては基本理念において、健全で恵み豊かな環境が人間の健康で文化的な生活に欠くことができないことということ、それから、現在及び将来の世代が健全で恵み豊かな環境恵沢を享受できるようにすべきことということをはっきり規定したところでございます。  この趣旨を法律上の権利として位置づけるということに関しましては、前回もお答えしたところでございますが、いろいろ難しいことがあって困難なわけですけれども、この理念を実現していくことによりまして国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するということになるわけでございまして、そういう意味で憲法二十五条で保障される基本的人権が確保されていることになる、その基本的人権を確保する上において恵み豊かな環境を維持していくことが大事だ、そういう関係でこの規定を置いているわけでございます。そうしてこの理念のもとに国、地方公共団体国民、事業者がそれぞれの責務を持って、この基本法のもとにそれぞれの責務を果たしていく、こういう関係になっているわけでございます。
  68. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 食い違っておるのか合っておるのかよくわからないのですけれども、そんなに大きな食い違いはないんじゃないか、こういうふうに受けとめたいわけです。  率直に申し上げまして、例えば今水俣病患者の例を私は取り上げたわけです。なぜかと言いますと、あすも七十歳ぐらいの患者の方がたくさん来られるそうですけれども、本来ですと元気な漁師さんばかりなんですけれども、本当に三十八年間病気で仕事にもつけない、病院通いをしておる。そういう状況というのは、人間として、国民としての基本的な人権がじゅうりんされておる、こういうふうに見なければいけないと私は思うんですね。そういうことはあってはならないんだ、今回の環境基本法というのは。そういうことで、環境基本法をつくることによって水俣病患者のように一生基本的人権がじゅうりんされておるようなそういう状況というものをなくしていくんだ、こういう気合いがあれば強いて言葉の上できちんと整理する必要はないと私は思うのですが、そこのところは気合いがあるのですか。
  69. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生がおっしゃるように、生命なり身体を保全されるということはまさに基本的人権でございます。そういうことを守る上におきまして環境問題が非常に大事だということで書いているということでございます。
  70. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 それじゃ局長、私が言っておることとそんなに大きな食い違いはないということは言っていいんですか、それは。
  71. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 私と先生のおっしゃっていることは、趣旨としては私同じだと思っております。ただ、言葉の使い方として、環境そのものを権利だというぐあいに表現しなかったということでございます。
  72. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 私が後段に申し上げましたように、環境破壊公害に基づいて一生を台なしにしている方が現実に本当におられるわけで、この人たちは、これはやはり明らかに基本的人権をじゅうりんされていますよ。そういう問題をなくすために環境基本法の制定をするんだということをはっきりしてもらえればそれでいいんですよ。
  73. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。そういう問題を起こさないように、今回環境基本法提出し、事前的に手を打っていこうということで基本法を御提案申し上げているわけでございます。
  74. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 それじゃ、この点はそこのところで確認をさせていただきたいと思います。  じゃ、三つ目でございますが、これは第四条に関連をすると思いますが、「環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築」という問題について、改めて少し御見解をいただきたいと思います。  この持続可能な開発という考え方、言葉は、地球サミットにおいて、経済大国と多国籍企業活動が現実に引き起こしている地球環境破壊の進行というものに対して、これらの活動規制をし、そして新たな経済社会活動の概念としてでき上がった、こういうふうに思っております。このことは、持続不可能な経済開発を行う活動が批判をされた、利潤と効率のみを追い求める経済体制のシステムの見直しが求められた、こういうふうに正しく理解をすることが必要じゃないか、私はこう思っております。提案されている法律というのは、この基本法に盛られておる考え方というのは、今私が申し上げましたように、持続不可能な経済開発という活動がある意味では地球サミットで批判をされた、そして利潤を上げる、効率を追う、これだけで今まで公害なり環境破壊を起こしてきた、そういう経済体制のシステムの見直しが求められた、こういうことをやはりきちんとすることが必要だろう、こう思うのです。  そこでこの法案の文章ですが、例えば「環境への負荷をできる限り低減すること」とかあるいは「環境への負荷の少ない健全な経済発展を図りながら」とか、こういう言葉が実は使われておるわけですけれども、持続可能な開発という言葉を今申し上げましたような考え方と違って少し適当に解釈をして、経済発展環境の調和という考え方が先行してこの法案の基調となっているんじゃないかなというふうに私は思うのですけれども、ここのところは私が前段に申し上げましたような考え方で、はっきり申し上げますと、国の環境の保全に関する施策というのは、経済社会の構造について環境の保全を優先させるものへの転換を図ることを目標として実施をする、いわゆる環境の保全を優先させる経済社会への転換を明確にすべきだ、こういうふうにきちんとしたいと私は思うのですけれども、この点については、私の言っておることは違うのですか、正しいのですか。
  75. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 大略先生のおっしゃっているとおりだと思います。御指摘のように、環境経済関係につきましては、昨年六月の地球サミットを受けた環境と開発に関するリオ宣言におきまして、環境経済の統合または持続可能な開発の達成という考え方として示されたところでございます。  そこで、私どもの審議会答申におきましても、  先進国にとっては、これまでの生産と消費のパターンを見直し、持続可能で環境負荷の少ない経済発展を目指すことが必要である。我が国としては、資源、エネルギー等の面においてより一層の効率化を進め、物の再使用や再生利用を更に組み込み、また、浪費的な使い捨ての生活慣習を見直すなど、その内容の変化を伴う健全な経済発展を図り、環境負荷の少ない経済社会を構築していくことが重要である。 というぐあいに述べたところでございまして、これはまさに今先生がおっしゃったことを指摘しているわけでございます。  そこで、この環境基本法におきましては、環境経済をまさに対立概念ではない、対立するから調和するということではなしに、経済環境というのは同時に意思決定の中において解決される、そうすることによって健全で恵み豊かな環境が維持される一方、経済発展あり方も、環境に対する負荷をできるだけ少ないような格好での経済発展をしなさいということが言われて、それが後世代人々にとってもそういう環境を伝えることができるようにという趣旨でこの規定は書かれている。まさに先生のおっしゃっているとおりでございます。
  76. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 私が言っているとおりならば、もうこれ以上言う必要はないと思います。  四番目に、第十四条の環境基本計画あるいは十五条の環境基準について申し上げたいと思うのです。  第十六条で提起されている公害防止計画については、公害対策基本法を受けまして、その達成に必要な措置を講じるということになっております。第十四条の環境基本計画については、その実施の方法があいまいではないか、実はこう私は思っております。環境の保全を優先させる経済社会への転換に努力する立場からは、環境基本計画以外の国の計画、例えば経済計画であるとか総合開発計画であるとかあるいは公共投資基本計画などですが、これらの国の計画というのは環境の保全に関しては環境基本法を基本とする、このことを私はきちんと明確にしておきたいと思うのですが、この点についてお伺いをしたいと思います。  また、政府環境基本計画に基づいて環境の保全に関する施策を効率的に実施するための実施計画を定めなければならないということについても、この際明確にさせていただきたいと思うのですが、この点についていかがですか。  さらに、これらの計画の中心的目標となる環境基準、十五条については、この決定と改定について、私どもとしては中央環境審議会意見を聞くということが極めて必要ではないかな、こういうふうに思っておるのですが、この点を含めまして、環境庁としての見解をこの際お聞きをしておきたいと思います。
  77. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 まず、私から環境基本計画につきましてお答えを申し上げます。  先生御指摘になりましたように、今日の環境問題は、従来の産業型公害だけにとどまらず、都市生活公害地球温暖化問題といったように、国民生活や事業活動一般に起因している部分が多い。そういう意味で、国が行っております政策の各分野にわたって今後は環境保全に関する視点を導入していかなければならぬということになるわけでございます。そういうことによりまして、経済社会システムあり方、また行動様式そのものを変えていかなければならぬという役割をこの基本計画に持たせているわけでございます。そういうことから、この環境基本計画には、政府全体としての環境保全施策の全体像を長期的な観点から総合的、また計画的に推進する必要があることから、国、地方公共団体、事業者、国民といったすべての主体が期待する基本的な取り組みを同時に盛り込んでいこうということを考えているわけでございます。  そういう計画でございますことから、この計画そのものは中央環境審議会の議を経て、そこで国民各層の意見を吸収しながら、政府全体の計画として閣議決定ベースでこれをやっていこうということになるわけでございまして、そういう意味におきまして、この環境基本計画政府全体、国全体の環境の保全に関する基本的な方向を示すものとして、環境の保全に関しては、風の各種計画は環境基本計画の基本的な方向に沿って作成されることになるわけでございます。その手続を閣議決定というベースで担保しようということを考えているわけでございます。  そこで、先生のもう一つの御提言として、個別施策を実施する際に環境基本計画のもとに実施計画を定めるべきではないかという御議論があったわけでございます。  環境の保全に関する施策の実施レベルの計画といたしましては、例えば大気汚染や水質汚濁にかかわる総量削減計画でございますとか国立公園の公園計画などといった個別法に基づく計画もございますし、また、地球温暖化防止行動計画というような、特に必要性が認められる特定の分野について定められた計画もあるわけでございます。こういった個別分野の施策にかかわる計画につきましては、それぞれの問題の特質、性格を踏まえて、個別分野ごとに法律またはそれぞれの行政措置といったような適切な枠組みのもとで計画を定め実施していくことが効果的であり、有効であろうというようなことから、この基本法そのものに一般的な実施計画を定めることはむしろ適当ではないというふうに考えた次第でございます。  ただ、先生のおっしゃるように、個別分野ごとに計画的に事を進めるために実効あるような格好で施策を進めていくべきだという御指摘に関しましては、私ども、そういう方向に沿って政府全体の中でそういうことをこれから工夫してまいりたいと考えております。
  78. 入山文郎

    ○入山政府委員 環境基準についてのお尋ねもございましたので、私からお答えをさせていただきます。  環境基準は、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準でございまして、環境施策を総合的に実施していく上での行政上の目標として位置づけられているものでございます。  そういったことでございまして、環境基準の設定に関する最終的な判断は政府の責任において行うべきものと考えておりますが、環境基準の設定あるいはまたその改定に際しましては、専門家による科学的な判断等を踏まえることが重要であるということも、これまた言うまでもないことと存じております。従来から審議会意見を聞かせていただいているところでございまして、今後もそのようにしてまいりたいと思っております。
  79. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 今の点はわかりました。  次に、第十九条の環境影響評価、いわゆるアセスメントの問題について、改めてまた御意見をいただきたいと思っております。  今回の基本法の制定に当たって、環境影響評価制度の確立、アセスメントは極めて重要な柱である、私はこう思っております。これは、冒頭申し上げましたように、多くの団体からの意見提起の中でもこのことがかなり大きなポイントを占めておる、こういうふうに理解をいたしております。  我が国は、御承知のようにいまだにアセスメント法を持たない例外的な先進国だ、こう言われておるわけです。環境庁は一九八一年にアセスについて法案を国会に提出をしたわけですが廃案となって、それ以来は、一部の個別法律と国が関係する大規模な事業については閣議決定の要綱に基づいてアセスメントが行われてきた、こういうふうに理解をいたしております。  しかし、基本法制定の中でこのアセスメントの法制化を明確にしなければ極めて問題があるんではないか、このことがたくさん指摘をされておる。このことをやはり重視をしなければいけないんじゃないか。このアセスの問題について、不明確で、しり抜けでそのまま終わったということでは、冒頭から言っているように、この実効性というのが薄らいでくるのではないかな、私はこういう気持ちを実は持っておるわけであります。法案では、「適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずる」、こういう言葉になっているわけですが、これでは極めて抽象的であいまいになっているんではないかな、こういうふうに思うのですが、この点について、この言葉の意味についてもぜひもう一度お聞かせをいただきたい、こう思っております。  先ほどから言うように、基本法環境の憲法として位置づけるとき、環境保護の基本であるアセスメントの義務づけを、やはり閣議決定要綱などにゆだねずに、個別の法律の目的と条文基本法整合性を保つように改正するとか、それからアセスメント法の法制化を行うとか、こういうことについて、やはり態度として明確にしていただくことが極めて必要ではないかな、こう思っております。特に、制度をつくる場合、事業が実施される地域の住民の意見が極めて重要でありまして、地域住民の意見アセスメント制度に反映される、こういうシステムについてもやはり考えるべきではないかな、こういうふうに実は思っておりまして、そういう意味では、このアセスメントの問題についてはもう少しきちんとすることが必要ではないかな、こういうふうに思っております。  審議会答申では、アセスメントの重要性それから考え方基本法に盛り込むことが必要である、こういうことを前提としている、こういうふうに私は理解をいたしておるわけです。具体的実施については、経済社会情勢の変化を見つつ、必要に応じて現行の措置を見直すことが適当だ、こういうふうに答申は言っておるわけで、このことは、アセスメント必要性を肯定をして、やや消極的になっている、こういう答申になっているんじゃないかな、こういうふうに思うわけです。  したがって、やはり前段のところを強調する、こういう意味でも、この際環境庁として、今後のアセスメント法の制定などの将来の問題などについての考え方をもう少しきちんとしておくことが必要ではないかな、こういうふうに私は思います。その点について、もう少し環境庁としての見解をお聞きをしたい、こういうふうに思います。
  80. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生ただいま御指摘になりましたような答申を実はいただいておるわけでございます。私どもといたしましては、環境に対する影響を未然に防止する、環境汚染を未然に防止する上におきまして、事前にやはり環境に対する影響評価を行うということは極めて大事であるという基本的な認識を持っているわけでございます。  そういう基本的な認識を持っているわけでございますが、昨年十月にいただきました中公審、自環審答申におきましては、環境基本法制環境影響評価の重要性、考え方を盛り込むことが重要である、そこをまず出発点にしなさいというような答申を受けたわけでございますので、私どもといたしましては、やはり環境影響評価というものを法制的にきちっと位置づけることが重要である。従来ですと、行政措置として行われてきた。これに対する立法的な位置づけというものは行われていない状況にあるわけでございます。  そこで、環境影響評価というものを法制的にきちっと位置づけることがまず出発点であるということから、国は環境影響評価を推進するため「必要な措置を講ずる」という極めて一般的な書き方にさせていただいたということでございます。こういうことによって基本法制上、我が国においても環境影響評価というものを法制的に一応位置づけが行われたということになったわけでございます。この法律を成立させていただければ、そういうことになるわけでございます。  そこで、その次に、それでは具体的な実施のあり方としてどういうあり方が適当であるかということにつきましては、これは実は中公審の中でもいろいろな意見が出まして、それで最終的に集約されたところが、先生御指摘になりましたような「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行の措置を見直していくことが適当」である、こういう意見になったわけでございます。  これは、もちろん基本法ではなしに個別の措置の問題でございますから、行政措置なり立法措置なり、個別法の問題としてどう処理すべきかということになるわけでございますが、こういう答申を踏まえたことによりますと、私どもとしては、現行の措置をいかに適正に信頼度を高め、精度を高めていくかということをやっていくとともに、社会経済情勢の変化ということで、社会認識また経済情勢の推移、そういうものを見ながら、やはりどういう措置が必要かということを真剣に見直していく必要があるというぐあいに考えているわけでございます。
  81. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 五月四日の朝日新聞で、いわゆる環境影響評価技術検討会の記事がございました。これについては環境庁から一定のメモが来ております。この点についてはよくわかっておりますが、この記事によりますと、「現行制度のアセスは信頼性や精度に欠ける」、こういうふうに書かれておるわけですね。これは、検討会がそう言っているというふうに記事には書いてあるわけです。その上に立って、例えば、環境庁長官閣議決定で必要とされているすべてのアセスについて意見が言えるようにすることが必要である、あるいは、事業の完成後、予測どおりなのかを確認をして、アセス後に事業計画が変更された場合はアセスを見直すというようなこととか、三つ目に、事業の立地、計画段階で貴重な動植物などがいないか調査をして、保全に配慮するとか、それからアセスを行う業者に資格試験制度を導入するなどというように、かなり具体的な記事になっているわけであります。  これはもう単なる憶測記事ではないんじゃないかな、この検討委員会ではこういうものが検討されているんじゃないかな、こういうふうに考えなければいけないんじゃないでしょうか。私はこう思っているのですけれども、この点についてもう少しお聞かせをいただきたい、こう思います。
  82. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 五月四日の新聞は、私も朝見ましてちょっとびっくりして、もうそういう段階に来ているのかというぐあいに聞いてみたのですが、事実はそういうことではございませんで、環境庁といたしましては、アセスメント制度というものを主管している役所といたしまして、当然、アセスメントにおける信頼性、精度を高めるためにどういうことをやるべきかということから、技術的な検討を加えなければならぬということで、平成三年十二月にそういう技術的事項に関する専門家の御検討をいただくということから勉強会を開いていただいたことは事実でございます。  そのときに、どういう問題点があるか、アセスメントの精度なり信頼性を高めるために技術的にどういうことを改善すべきなのか、また、アセスメントをやってしまう、その間で事情の変更があった場合はどういうことを織り込んでいくべきか、今たまたま先生が申されましたようなことが論点というふうになることは、当然私どもとしては予想しておるわけでございます。ただ、現時点でそれがどういうことになっているかということにつきましては、委員の先生方でまだ検討し、いろいろ討論を重ねている段階にあるというふうに承知しておりまして、新聞の報道にございますように、報告書の最終案をまとめる段階にはないということでございます。  いずれにしましても、アセスに関する十分な識見を持った先生方にお集まりいただきまして検討していただいているわけでございますから、私どもといたしましては、十分御議論をした上、ぜひ御意見をお取りまとめいただきたい、そういたしまして、それを今後の私どもの行政に反映させていきたいというぐあいに考えているところでございます。
  83. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 メモもいただいておりますから、この検討会の性格などについてはそれなりに理解はいたします。ただ、今申し上げましたように、中身がかなりまとまっておりまして、そういう意味では、中間的な集約だとしても、かなり貴重な意見だというふうに私は思っているわけです。ですから、検討会の議論とかそういうものに全然関係なくてこういうものがぽっと新聞に出てくるということではないのではないか。最終的な取りまとめでないにしても、中間的には、こういう議論と中間的な取りまとめがあるのではないかというふうに、これだけの記事ですから、やはり一般の人は受けとめるというのが正しいと私は思います。  そういう意味では、先ほども今回の環境基本法議論の中では、いろいろな団体の意見からしても環境アセスメントについてはかなり注目をしておる、こういう立場を申し上げまして、局長がいろいろ言われたことについて、今日時点では、答申の内容からしてそれなりに理解をするところは理解をしたいと思いますけれども、しかし、今申し上げましたような、先ほど四点申し上げたのですけれども、これは新聞に載っておったのをそのまま申し上げたわけですけれども、中間的な検討の内容にしても、やはり環境庁としては、環境基本法議論するこの段階では貴重な意見として受けとめることが必要ではないかなということを申し上げておきたいと思います。
  84. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 実は先ほども申し上げましたように、検討会の委員の先生方で議論をやりとりするために、まだたたき台としてやったというような段階であると聞いておりまして、私自体、まだそれについては目を通していないというのが現段階でございます。  しかし、いずれにいたしましても、一流の先生方にお願いして真剣に検討していただいているわけでございますから、その検討結果が出ますれば、それを真剣に行政に反映させるべく、私どもは貴重な意見としてそれをお受けしたいというぐあいに考えているところでございます。
  85. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 いずれにいたしましても、このアセスメントの問題は、今回の環境基本法制定に当たっては重要な問題だという認識できちんと受けとめていただいて、先ほど局長が答弁されたような立場を踏まえつつ、今後に向けてぜひ御検討いただきたいということを申し上げたいと思います。  次に、第二十条です。「環境の保全上の支障を防止するための規制」の問題について少し御意見を申し上げたいというふうに思っております。  この項についてですが、国及び地方自治体は、重大な人体被害の発生または環境の重大な異変などを認識した場合、その被害発生を防止するため、あらゆる規制権限を行使をして未然に被害の発生、拡大を防止する権限と義務がある、このことを「環境の保全上の支障を防止するための規制」の中ではもう少し明確にしておくことが必要ではないかなというふうに私は思っておるわけです。これも前回の質問の際に申し上げましたように、水俣病の拡大、これだけ問題を生じたというのは、やはり規制権限をきちんと行使しなかったところに最大の原因があると私は思っております。これは御承知のように、三月二十五日の熊本地裁の判決でもそのことが明確に言われているわけで、そういう意味では、この際、規制権限を行使するという立場について、この権限と義務の問題についてはもう少し明確な態度環境庁として打ち出しておいてほしいということを申し上げたいわけです。  それから、国及び地方自治体がその持っている規制権限を積極的に行使をしようとしない場合、何人も国や地方自治体に対してその規制権限の行使を求めることができる、そういうシステムを明確にしておくことが必要ではないかな、こういう気持ちを実は持っております。ですから、そういう意味でこの二十条をもう少し補強すべきではないかなと思うのですが、この点についていかがですか。
  86. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘のように、我が国公害の歴史といたしましては、環境汚染が人の健康及び生命に危害を及ぼすという非常に激甚なところから出発をした、そのことに関しましては、私どもはこれからの環境行政上これを十分手痛い教訓として、それに携わる者として胸にしょっちゅうとどめておくべきであるという気持ちを持っているわけでございます。  そういうことにおきまして、先生がおっしゃいましたように、環境の保全につきまして、保全上の支障を未然に防止するということがやはり大事でございまして、そういう意味から、法律規制の権限が与えられておりながらその運用に的確さを欠くというようなことのないように、また人の健康への被害など環境保全上の支障を生じさせてしまうことがあってはならないということから、この二十条における規制措置というものを的確に私どもは運用していかなければならぬというぐあいに考えているわけでございます。これは基本法でございますので、このもとにこれから水質汚濁防止法、大気汚染防止法その他、各個別法によって実際の権限は行使されることになるわけでございますが、少なくとも、先生のおっしゃった趣旨で私どもは運用していかなければならぬというぐあいに考えております。  それと同時に、もう一つ先生御指摘になりました、国や自治体が的確に規制権限を行使しない場合に、住民がその行使を求めることができる仕組みというものを考えてもいいのじゃないかという御提言がございました。  そういうお考えもあろうかと思いますが、現在、行政事件訴訟法におきましてそのような訴えは一般的にまだ認めておらないというところでございます。したがって、これにつきましては、行政事件に関する争訟一般の中でどういう解決を図っていくべきかということで処理すべき問題だというぐあいに考えますが、しかし、いずれにいたしましても、環境庁といたしましては、規制措置を的確に講じていく、環境を未然に防止するという意味から、やはり規制というものを的確に講ずることにつきまして私どもは今後鋭意努力していかなければならぬというぐあいに考えておるところでございます。
  87. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 私ごとで恐縮なのですが、三十数年前、私も二十代でしたけれども、水俣に初めて赴任をいたしました。ちょうど水俣病問題が出て、大変いろいろ問題が生じておった時期でして、そのとき、私どもも水俣湾でとれる魚、あの近海でとれる魚、とるべきじゃないのじゃないか、それから、そのとった魚を魚屋で売ることはもうストップさせなければいけないのじゃないか、実はこういうビラを一生懸命まいた記憶があるのです。これは経験から言っておるわけです。あのとき、食品衛生法などに基づいて魚をとることをやめさせるとか、あるいはとった魚を一般に売るということを規制をしていけば、これは今日のように水俣病が拡大をするということを防げたんじゃないかという実感を実は私は持っております。食品衛生法による規制権限をもうちょっときちんと行使しておったならば、これだけ水俣病というのは拡大をしなかったのではないかというのを私は実感として持っています。  そういう意味では、前段、これはもうたくさんの法律があるわけですから、今回の基本法に基づいて今後その規制権限というものを適切に行使をしていく、こういう立場については、きょうのこの議論を通じて明確に確認をさせていただきたいと思います。  それから、後の部分ですが、ここで一挙に法的なシステムをつくるということも私は非常に無理がある、こう思いますけれども、しかし、そういう公害の実態、魚がぷかぷか浮いておる、これが工場の排水だということはそこの住民はみんな知っていたわけですよ。一番よく知っているのは住民ですから、そういう意味では、やはり規制をすべきじゃないかというようなことを行政、国やら地方自治体に求めた場合には、そのことについて真剣に考えるということは極めて必要だ、私はこういうふうに思っております。ですから、そういう場合に、住民のそういう意見などをきちんと行政は受けとめていくんだ、そういう意思表示ぐらいは、今回基本法制定に当たってやはりきちんとしていただきたい、こう思うのです。いかがでしょうか。
  88. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生の御指摘ごもっともでございまして、先ほどは行政争訟としての問題提起であったものですからそういうお答えをしたわけでございますが、住民の意向なり要望なりを行政が的確に反映していくということ、これは私ども当然のことであろうというぐあいに考えております。
  89. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 じゃ、次に第二十一条「環境の保全上の支障を防止するための経済措置」について、特に第二項、いわゆる経済的手法の活用について、少し御意見をお聞きをしたいと思います。  当初、これは私の記憶ですけれども、環境庁からこの環境基本法についての素案などが出された際、汚染物質の排出者などに必要かつ適正な経済的負担を課す措置が必要だということが示されておったのではないかと思います。具体的には、例えば二酸化炭素の排出者に課税する炭素税など環境税の導入や賦課金などの問題についてかなり前向きであったのじゃないかな、こういうふうに私は理解をしておったわけです。  この問題について審議会答申では、「二十一世紀を展望し、都市生活公害、不用物の排出量の増大の問題、地球環境問題等への対策を進めていくためには、有効性が期待される経済的手法考え方環境基本法制位置づけることが重要である。」というふうに、このことを肯定をしておる、こう思っております。肯定をした上で、その上でまだまだ国民的合意形成がなされていない分野がある以上、経済的手法を一括して基本法制に位置づけることは不適当との意見があったということで、一部この否定の意見があった、実は答申はこういうふうになっているわけです。  したがって、私は、第二十一条第二項の文章というのは、文章も非常に難しいのですけれども、極めてあいまいでよくわからない点がございます。確かに間接的には、国民の負担増の可能性があるわけですから、理解と納得が必要である、こういうふうに思うのですけれども、そういうことよりむしろ私は生産者の論理あるいは財界の意見、圧力、こういうことから環境庁は後ろ向きになってしまったのではないかな、これはマスコミでもそう言われておるわけで、私もそういう懸念を実は持ちます。したがって、将来に向けまして、この経済的手法あり方などについて、今後環境庁としてはどういう検討スケジュールをお持ちなのか、この点について二十一条との関係でお聞きをしたいと思います。
  90. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 この問題に関しまして、今先生中公審、自環審答申を引用していただいたわけでございますが、そのとおりでございまして、今日私どもが当面している問題の中に、都市生活公害または地球環境問題といったような今日の環境問題を解決するに当たりましては、その行為をやめさせるというだけでは済まない問題が起こっております。ということは、通常の事業活動また日常の生活を含めた幅広い社会経済活動そのもの環境への負荷を与えるという形になっておるわけでございまして、それをいかに環境に対する負荷の少ない形で営んでいくかということに私どもはこれから努力していかなければならぬわけでございます。  そういうことになりますと、従来とってまいりました、産業公害型に対してやりました規制措置といったような手法のみでは解決しない、やはり市場メカニズムを通ずる経済的な手法を用いてそれにディスインセンティブを与えて、そういう経済活動をできるだけ少なくしていくというような手法をとらないといかぬということでございまして、そういう手法位置づけるために法案第二十一条の第二項というものを置かせていただいたわけでございます。  この条文は確かに長くなっておりますが、負荷活動を行う者に対しまして経済的な負担を課す施策、これは説とか課徴金とかデポジットとかということがあるわけでございますが、そういう施策をとる際にはそれぞれの措置効果影響等を適切に調査研究して、実際にそういう措置をとる場合にはそれを活用しながら、環境に対する支障を少なくしていくためにそういう措置をとるんだということを国民の理解と協力を得ながらやりなさいということになっているわけでございます。  そういう意味におきまして、経済措置が有効であり国際的に推奨されているという基本的な認識を踏まえて、ただそういう措置ということになりますと、やはりそれは国民の負担というものに関係してくるものですから、その措置というものは効果を持たなければならない、また経済そのものに与える影響というものを考えていかなければならない、そういうことを勉強しながら、同時に負担に関するものであるから国民の理解と協力を得るようにしなさいというような格好での基本法における位置づけをさせていただいたわけでございます。  もちろん、国民の負担に関するものですから、実際の措置を講ずる場合にはやはり何といっても個別法の制定によりましてこれはお願いし、またそういう措置を講じていかなければならぬわけですが、少なくとも基本法におきましては、そういう措置を研究し、そういう措置というものがこれからの環境政策上の一つの手段としてやはり必要である、またそういうことを考えておく必要があるということをこの二十一条第二項で位置づけさせていただいたということでございます。
  91. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 わかりました。  じゃ、ちょっと時間が余りないので少しはしょっていきたいと思いますが、次に第二十五条「民間団体等の自発的な活動を促進するための措置」についてでございます。  これはもう御承知のとおり、今日環境問題に取り組むに当たって、献身的に努力をしている民間団体の役割というのは極めて重要だと私は思っておりますし、今後も大変大切にしなければいけないだろう、こう思っております。これは環境庁も同じだと思うのです。したがって、先般環境事業団法の改正によってこれらの活動に対して助成など支援を行うということも決めた、こういうふうに思います。  そこで、これもつい最近の新聞記事なんですが、四月二十七日の新聞、ごらんになったと思うのですけれども、この表題が「お寒い「NGO支援」」、こういう見出しを大きく書いて、「職員の年収平均二百五十五万円」「四年未満で大半が退職」という記事がございまして、この、中身を見てみますと、NGOなど民間団体で大変献身的に頑張っておられる方々の待遇が極めて厳しいということを訴えておるわけで、やはり生きていくためには献身性だけではいけないわけで、したがって、早くやめていかれる方も多い、長続きしない、こういう記事になっているわけです。  そこで、例えば国際ボランティア貯金あるいは外務省の事業補助金とかいう制度がございますが、こういうのは、仕組み上プロジェクトには使えるけれども、活動を支える人の人件費とか事務所の家賃とかいうものには使えない、こういうことを強く訴えておるわけです。外国などでは、こういう団体に対しては民間の寄附というのが極めて大きいわけです。したがって、この民間の寄附に政府がもっと上乗せをするとか、課税の優遇措置などについてもっと考えるとか、そういうことを積極的にすべきじゃないかなと私は思います。  それで、この環境問題について、民間団体との連携強化ということについては環境庁としても再三にわたって理解を示されて、この間の環境事業団法の提案などになっているわけで、ここで、今申し上げましたような実態に応じまして、そういう団体に対する手当てというものをもっと真剣に、積極的にやる、せっかくの環境基本法の制定ですから、そういう態度をひとつ示していただきたいということを申し上げたいわけです。
  92. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 四月二十七日の、先生の御指摘になるような記事は私も読んでおります。また、環境庁自体が環境NGOの実態につきまして昨年調査をしたわけでございますが、そのうち、約三分の二の団体が資金不足を訴えておりますし、約六割の団体が人材不足、約半数弱の団体が環境に対する情報不足というものを訴えている状況にあるわけでございます。  そういう状況をもとにいたしまして、私ども、先般、本国会におきまして御議論、御審議いただきました地球環境基金というものを設置させていただいたわけでございます。法律を通させていただいたわけでございますが、確かに先生が御指摘になるような問題もあるわけでございますけれども、一方、NGOとしての本質を失わせるような助成の仕方というのは問題があるのではなかろうかというようなことから、私ども、この地球環境基金につきましては、やはり人件費等といった管理的経費そのものに直接公的助成を行うことは問題があるだろうというぐあいに考えているわけでございます。  それではどういう手段があり得るかということに関しては、民間からの寄附につきましては税の優遇措置を受けられる方法がございますので、私どもといたしましては、そういった方法によってその辺は処理していただきたいというぐあいに考えているわけでございます。ただ、環境NGOがそういう状況にありますことから、私どもといたしましても、運営費そのもの、管理費そのものに対する助成ということはやはり問題があるにしても、できるだけお手伝いをする必要があるという日本の現況から見まして、環境NGO等の関係者から寄せられました多様なニーズに対応いたしまして、例えば現地住民等に対する知識の提供とかNGO活動の向上に資する調査研究、また、国際会議を開きたいといった場合のソフト事業に対する助成というものを対象に取り込んでいく必要があるというぐあいに考えているところでございますし、また、NGOが活動をする際に、その活動基盤を支える上での必要な情報提供、人材養成等に対する支援はやっていく必要があるかなというふうに考えまして、そういったものを私どもは対象には取り込んでまいりたいというぐあいに考えております。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 もうちょっと議論したい点もございますけれども、いずれにしても、環境を守っていく立場から、そういう民間団体との連携といいますか、そういうものが極めて重要であるという認識については一致すると思います。したがって、そういう団体に対する積極的な支援といいますか、そういうものについても、いろいろ問題点はありますけれども、理念としてはその立場については否定をしないということだけは確認させていただきたいと思います。  あと、私はお聞きしたいことがたくさんございますけれども、時間もございませんので最後になると思います。  三十条との関連、「公害に係る紛争の処理及び被害の救済」という関連から、私は最後に長官に、私が質問に立ちますと水俣病問題ばかり追及するとお思いになるかもわかりませんけれども、私は、環境先進国を日本はうたっているわけで、そのリード役を務めようとしているわけですね。こういう我が国が、少しおくればせながら、今回、環境基本法を成立しよう、そしてそれが実効あるものになるために環境庁としても今後努力していこう。これはすぐれて今後の国の姿勢と指導性にかかっていると思いますけれども、前段、その決意は確認させていただいたわけです。  そこで、そういう時期に、世界公害の原点と言われて、国際的にもノーモア・ミナマタというのが叫ばれながら、この水俣病問題が未解決で紛争状態が継続し、悲劇の闘いがいまだ展開されておる。またあしたから環境庁前に座り込みが始まるそうですけれども、そういう状態が続いておるということについては、環境基本法制定に当たって乗り越える必要があるのではないかという気持ちを私は持っています。  そういう意味から何点かについて申し上げたいわけですが、その第一は、公害の原点と言われる水俣病、発生してから三十八年、いまだ紛争状態社会的解決がなされていない。こういう問題については放置することはできないという立場をこの際明確にしていただきたい。  第二は、しかもこの問題の中心というのは、被害者の救済という人道上の性格を持っている。そして、救済を求めている患者はもう平均年齢七十歳を超しまして、相次いで死亡している、こういう人道的観点からも看過できないという立場、これはやはりきちんと確認していただきたいと思うのです。  三つ目は、水俣病は確かにチッソとか昭和電工という特定企業、個別企業原因企業であることは間違いないと私は思うのです。しかし、当時の高度経済成長政策、国の産業政策が背景にあるということも事実であると私は思うのです。そのことから汚染の拡大、問題の混迷化を来した、このことは否定できないと私は思うのです。そういう意味では、産業政策との関連から国とか県が解決責任を放棄する態度はおかしいのではないかという点が三つ目です。  四つ目は、国家賠償法の存在をめぐる判決が幾つかありまして、これは御承知のように肯定と否定が二対二になっているわけです。しかし、国、県の法的責任を肯定する判決が現実に存在することは事実でありまして、そのことは否定していけないのではないかと思います。  五つ目は、国諸法上の判決というのは、今申し上げましたとおり、肯定と否定が二対二になっています。しかし、高等裁判所を含めてすべての司法が、国賠法の責任はおいたとしても解決責任を指摘している、そして解決のために和解によって解決しなさいということはみんな主張しているわけですね。これはもう長官御承知のとおり。三権分立の立場から司法のそういう判断というのは無視してはいけないのではないか、私はこういう観点についてもこの際きちんとしていただきたい。  六点目は、歴代の環境庁長官はこの解決についての努力というものを約束している点が幾つかあります。もう時間がありませんから具体的には申し上げませんけれども、しかし私は、やはり政治的な責任の問題としてそういう歴代の環境庁長官が言われたことについては守る、こういう立場を明確にすべきだろう、こういうふうに思います。  それから七つ目ですが、私は、先ほど申し上げましたように、PPPの原則に基づく解決を否定するつもりはありません。しかし、国は、特定の企業を支援するということでなくて、そういう観点でなくて、広範な被害住民を救済する、国内における環境問題をめぐるこの大きな紛争状態の収拾を図る、そういう立場にウエートをかけるべきではないかな、こういうことを七つ目として申し上げたい、こう思います。  そして八つ目ですが、これは環境庁長官がよく言われるのですけれども、やはり一般国民の皆さん方の支持が要る、国民の皆さん方の税金を使うということも含めましてそういうことを言われるわけですが、私は、今申し上げましたようなことについて、世論は、有力なマスコミの主張欄でも取り上げまして、早期解決、和解による解決ということを主張しておる、国の姿勢を批判している、そういう意味では世論の形成は十分に固まっている、こういうふうに思っております。  そういう意味から、今八つにわたって簡単に申し上げましたけれども、以上の観点から、環境基本法を制定するわけです。そして、三十条では、「公害に係る紛争の処理及び被害の救済」という項目までつける。こういう時期ですから、特定企業の支援という観点でなくて、やはり広範な、悲惨な、基本的人権をじゅうりんされておる住民を救済する、そしてこの公害問題についての長期にわたる紛争を収拾する、こういう立場から環境基本法制定に当たってこの水俣病問題について一歩踏み出す、こういうことについて、私は長官としての決意をぜひお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。  このことを放置をしておいて、基本法が成立したとしても、私はやはり絵にかいたもちになってしまう可能性があるのではないかということを危惧するわけであります。この点について最後に長官の御見解を少しいただきたいと思います。
  94. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 田中先生にお答えいたします。  ただいま先生から八項目にわたる御質問をいただきました。その中で、六項目目の今までの各環境大臣のことにつきまして一項目別にいたしまして、七項目をまとめてお答えさせていただきます。と申しますのは、一項目一項目取り上げますと、相関連する問題から矛盾が生ずるといけませんので、六項目目を除いた七項目をまとめて答弁させていただきまして、その後、今までの各大臣の決意について触れさせていただきたいと思います。  まず、環境行政にとりましても、いまだかつてないと言われる基本法案を今先生方に御審議をちょうだいいたしております。これは環境庁としても大変な重みあるいは重要性を感じておりますし、しかも国際的に見ましても環境基本法と言われるような法律案は恐らく日本政府が初めてになろうかと思います、現時点におきましては。それだけに先生御指摘のように大変大事なときでございます。そして先生方に御審議を願いまして、ぜひ早期成立をお願いしたいということで、政府側は今そのような気持ちでおりますけれども、それとともに、私は先生御指摘の水俣病の問題、これはもちろん公害問題としてはという意味も含めまして、環境行政というものにとりましても、日本環境行政にとっては最大の、そして最も根深いところにある大事な問題であろうと思っております。その認識におきましては先生と私は違わないと思っております。  そして、もう一つ申し上げたいのは、寝ても覚めてもという言葉がありますけれども、それこそ私は環境庁長官に就任いたしましてから、寝ても覚めてもこの問題は頭から離れません。これは先生方のお力添え、お知恵をいただきながら、必ず納得していただける方法をなるべく早く見出したいと私は思っております。そして、環境基本法の成立といずれが早いかということは、これは申すことはできません。しかし、いずれにしましても、環境基本法案は今国会で成立をお願いしているわけでございますので、それを追うようにして、水俣問題については、私は一つのそれなりの答えをどうしても出さなければならないという決意でおります。それが七項目をまとめた私の答弁ということでお許しを願いたいと思います。  それから、今までの環境大臣がそれぞれお約束してくださいました。いずれの大臣もこの問題に対しては真剣に取り組んでこられたわけでございますけれども、この三十何年間、環境庁が生まれてから二十一年でありますけれども、その間の各大臣の努力というものはやはり並み並みならぬものがあったことは私は痛感いたしております。その各大臣の努力に劣らない努力の姿を私はどうしても、環境基本法をお願いした以上は出さなければならぬ、そう思って取り組んでおります。
  95. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 最後に長官から大変誠意のある御回答をいただきまして感激をいたしております。  時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  96. 原田昇左右

    原田委員長 斉藤一雄君。
  97. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 今回の環境基本法の実効性を確保するためには、環境基本法の制定に伴い、関連する法律の見直しを早急に進める必要があるというふうに私は思いますので、きょうはその辺のところを中心に質問を申し上げたいというふうに思います。  最初に、環境と開発に関するリオ宣言では、「戦争は、本来、維持可能な開発に対し破壊的である。」「平和、開発及び環境保護は、相互依存的かつ不可分なものである。」としております。環境基本法案にこうした精神が生かされていないのはなぜでしょうか。
  98. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 御指摘のリオ宣言にそういう条項があることも事実でございますし、また私どもがこの地球サミット日本として貢献しようということから、環境庁におきまして地球環境問題懇談会というものを開きまして、そこにおきましてリオ宣言に関する提言ということで、日本から申し込みをした提言の中にそのような条項を含めて提言したこともございます。そういう意味で、私ども、武力を行使した戦争等によって環境破壊が起こるということは御指摘のとおりだというぐあいに考えているわけでございます。  しかしながら、一方で軍備の縮小とか世界平和の実現という問題は、環境保全の問題である以前に人の生命や財産の問題でございまして、一義的にはそのこと自体を目標として進められるべきであって、環境問題にいいから、環境問題に悪いからという次元の問題ではないというぐあいに私ども考えているわけでございます。  そういうことで、我が国環境政策あり方について規律をいたします環境基本法においては、環境保全の観点から特別の規定を設けるということは適当でないというぐあいに考えた次第でございます。
  99. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それでは、社会党案の提案者はいかがお考えですか。
  100. 馬場昇

    馬場議員 斉藤委員にお答えをいたしたいと思います。  戦争が最大の環境破壊であるということは、これはもうだれも異論はないことだろうと私は思います。そして、近くは湾岸戦争によって環境破壊された、あの姿を世界人々は目の当たりに見ておるわけでございますが、つい先ごろそれがあった、こういうこともございます。また、ベトナム戦争なんかによる環境破壊というのは、その後遺症を含めて現在まで非常に生々しいものがあるわけでございますし、第二次大戦で生命と環境破壊されたということはもう言をまたないわけでございます。  そういうことの上に立って、地球サミットのリオ宣言は、先生がさきに言われましたように、「戦争は、本来、持続可能な開発に対し破壊的である。」はっきりリオ宣言はそれを宣言しておるわけでございますし、また、それも先ほど言われましたように、「平和、開発及び環境保護は、相互依存的かつ不可分なものである。」こういうぐあいにリオ宣言は言っておるわけでございまして、このリオ宣言を忠実に政府環境基本法に生かすとすれば、当然その戦争、軍備縮小というようなことも入れなければならぬ。このリオ宣言が政府案の中に生かされていないということを私どもは非常に遺憾に思っておるわけでございます。  今政府側からいろいろ答弁もあったわけでございますけれども、やはりこの政府の原案を見てみますと、縦割り行政がいろいろあるわけですね。その縦割り行政の中で、環境行政というものも縦割りの中にある。その環境行政に合わせて環境というものを非常に小さくとってこの法律ができ上がった。縦割り行政の弊害といいますか、縦割り行政の中で、逆に言うと環境行政という縦割りの中にこの環境基本法を持ってきた。だからその戦争条項なんかが入らなかった。こういう欠陥が政府並びにこの環境行政、そしてこの基本法にあるのではないか、こういうぐあいに思います。  比べまして、我が党の案は、提案理由をここで私も説明したように、全くリオ宣言に社会党の案は忠実でございます。  そして、私もここで提案理由のとき言いましたように、一九九二年の地球サミットの宣言の趣旨に忠実な、言うならば、日本社会党の環境基本法というのはリオ宣言に忠実に国際貢献を宣言する、こういうような基本法になっておりますということも申し上げたわけでございますし、そしてみずからの経済社会を改革するとともに、地球市民とともに協力して、地球の豊かな生命保存機能を未来に引き継ぐための環境憲法というべき性質でこの環境基本法を提案したのである、こういうぐあいに説明を申し上げたわけでございます。  我が党の案の基本というのは、内外に、あらゆる戦争ということも含めて、あるいは原発等も含めてですけれども、環境にとって大きい負担となっておるこの世の中にありますこういう事実に対しては、すべて政策的に対応しなければならないんだ、対応するんだ、こういうことが我が党の基本法の骨格になっておるわけでございまして、ここが我が党の基本法政府案よりも基本的に数段すぐれておるんだということを私は申し上げましたけれども、この点もその中の一つでございます。  そういう意味合いにおきまして、我が党の案には、第二章の「環境の安全に関する基本的施策」の中の第五節に「地球環境保全等に関する国際協力等」という項目を設け、基本法の第四十七条に「軍備縮小等」ということを設けておるわけでございます。ちなみに、紹介いたしますと、「国は、戦争による環境破壊を防止するため、国際的な軍備縮小及び軍備規制を推進するとともに、核兵器、生物兵器、毒素兵器、化学兵器等の解体等に協力するように努めるものとする。」我が基本法にはこういうぐあいになっておるわけでございます。  政府も、考えてみると、湾岸戦争のときにペルシャ湾のあの流出原油の取り除きのために、一九九一年三月、これはこの環境庁を中心にした政府調査団を派遣した、そして非常に国際協力の成果を上げた経験も環境庁も持っているわけでございます。もちろん政府も持っておるわけでございますけれども、やはりこのように戦争の結果については環境汚染に取り組んでおるわけですね。だから、今度は戦争が起こらないように、戦争を未然に防止するんだという立場も当然とってしかるべきであるし、とらなければならぬ、こういうぐあいに考えておるわけでございます。  以上です。
  101. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 宣言はまた、「各国は、国境を越えた深刻な環境影響を及ぼしうる活動に関し、影響を受ける可能性のある国に対し、事前かつ適時の通告及び適切な情報を提供しなければならず、」「これらの国と協議しなければならない。」としております。  御承知のあかつき丸によるプルトニウム輸送では、こうしたことが守られたでしょうか。
  102. 坂田東一

    ○坂田説明員 お答えをいたします。  今回のあかつき丸によるプルトニウムの海上輸送、この安全性につきましては、いろいろな総合的安全措置を講じたところでございまして、先生が今触れられましたリオ宣言の第十九原則に言う、環境に対し深刻な影響を与える、そういう可能性はほとんどなかったものと私どもは考えております。  具体的には、いろいろな安全措置を多重防護という考え方にのっとりまして講じたところでございます。  第一には、この輸送船あかつき丸のルートでございますけれども、これは注意深い選定をいたしまして、いやしくも海難事故に遭遇するようなことがないように措置をいたしました。また、そのような安全航行を確保するために、輸送船等には高度の周辺監視能力を持つ機器等を搭載したところでございます。  第二には、輸送船あかつき丸そのものが二重船殻の強固な構造となっておりまして、衝突、座礁などに対して極めて沈没しにくいものになっておりました。また、船における火災対策につきましても、いろいろな措置を組み合わせたところでございます。  第三には、プルトニウムを運びます輸送容器そのものでございますけれども、これも国際的な安全基準を上回ります密封能力を持つものでございまして、既に長年にわたってプルトニウムを運んだ安全実績、これが国際的にあるものでございます。  しかしながら、今回のあかつき丸の輸送に際しましては、各国から大変高い関心をいただきましたので、事前に在外公館を通じてプルトニウムの輸送の目的、安全対策あるいは核物質防護対策、いわゆる核ジャック対策でございますけれども、そういうものにつきまして関係資料を提供し、説明を行ったところでございます。  それでもなお追加的にいろいろな疑問や懸念を示された国々に対しましては、すべて誠実に対応したところでございまして、その一環として、輸送の前に、必要に応じ当庁及び輸送主体の動燃事業団の専門家、これらの方々を現地に派遣しまして、この輸送の目的あるいは日本のプルトニウムの政策、安全性、ルート選定の考え方等々につきまして、技術的事項を中心に詳しく説明を行ったところでございます。その結果といたしまして、今回の輸送につきましては、各国政府レベルではおおむね理解を得られたものと考えております。
  103. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それでは、社会党案の提案者は、この問題についてどのようにお考えですか。
  104. 馬場昇

    馬場議員 プルトニウムの海上輸送という問題につきましては、多くの人々が国内外を問わず、非常に危険があるのだ、こういうことで反対の意見というのも非常にあるわけでございますし、あったわけでございます。  まず、こういうことをするときには、そういう反対の意見というものに対してどう対応するかということが非常に重要でございますけれども、輸送に反対するという意見に対して、十分国は対応をしていないという欠陥がございました。そして、今説明がありましたように、我が国のとった対応というのは、相手の国が照会してくる、あるいは危ないんだといって懸念を示してくる、そういうものを表明した国に対して、一方的に日本の国の資料を、今言ったような安全だ、安全だというような資料を説明しただけです。リオ宣言に言う適切な情報を提供、及び協議ということにあらわれておりますこの趣旨は、一方的な資料説明だけでは十分果たしていないと私は考えておるわけで、リオ宣言とはほど遠い対応であった、こう考えておるわけでございます。  我が党のこの基本法は、例えば情報公開の問題につきましても、情報公開をはっきり強く打ち出しておるわけでございまして、これはもう情報を知りたいという人が公開を求めたら公開するんだという、知りたい人が求めたら公開するという基本姿勢をとっておりますが、政府の情報の提供というのは、提供しますよ、提供する資料というのは提供者、国が選んで、これは提供します、これは提供しません、こういうことで、本当の意味の情報の提供にはなっていない、こういう欠陥があって非常に不十分だ、こういうぐあいに考えておるわけでございまして、このプルトニウムの輸送に当たって、あるいはリオ宣言も宣言しておるわけですが、それが今度の環境基本法には十分生かされていない、欠陥を持っておる、こういうぐあいに考えております。
  105. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 次に、我が国初の本格的な使用済み核燃料再処理工場が青森県六ケ所村で着工されたわけであります。この再処理は、ロシアでの爆発事故を挙げるまでもなく極めて危険なものであります。  ところで、この問題は、単に原子力基本法で対処すればいいという次元を超えている、環境基本法案こそが基本的に扱う課題ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  106. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 斉藤先生の御質問にお答えします。  先生の御心配のように、原子力基本法だけで対処し得るものかどうかという点につきましては、確かにこれからいろいろ議論されるところだろうと思っております。使用済みの核燃料の再処理などによる原子力の利用というのは、それによって生ずる放射性物質の環境への放出をそのまま放任しておけば公害原因となるおそれがありますので、その取り扱いにつきましては、これは今までの段階では原子力基本法を初めとした関連の諸法令の整備によって環境の保全に支障が生じないように厳重な規制が行われていることは先生御案内のとおりでございます。  ただ、放射性物質による大気の汚染等の防止措置につきましては、公害対策基本法と同様に、既に整備されております関係法律によって規定したものでありますけれども、なお、環境基本法案におきまして「原子力基本法その他の関係法律で定めるところによる。」と定めておりますのは、大気の汚染等の防止のための措置についてのことでありまして、本法案に規定する基本理念、責務などは放射性物質による環境汚染問題についても適用されるものでございます。
  107. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 次に、環境影響評価についてお尋ねをいたします。  閣議決定による環境影響評価実施要綱では、主務大臣が対象事業を環境庁長官に協議して定めるとか評価書について環境庁長官意見を求めることになっております。これは、主務大臣が意見を求めない限り、環境庁長官意見を言えないということでしょうか。
  108. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 御指摘のように、閣議決定によります環境影響評価実施要綱では、主務大臣が意見を求める、その求めに応じまして環境庁長官意見を申し述べるというふうになっております。  そこで、私ども環境庁といたしましては、直接的に意見を求められたものに対して意見を述べるということは当然するわけでございますが、そのほかにおきましても、例えば環境影響評価の手続におきまして、知事が意見を述べるに当たりまして環境庁に対し指導助言の求めがある場合に、これに積極的に応ずることによりまして実質上は環境庁の意見が反映されるよう、そして政府一体となって環境保全が図られるようにということで私どもも努力しているところでございます。
  109. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 少なくとも、アセスに関する限り、主務大臣との協議や環境庁長官意見を義務づけるということでなければこの基本法制定の意味が薄れてしまうように思うわけですが、この点どうお考えでしょうか。
  110. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 形式的に見ました場合、先生御指摘のような点があることはそのとおりでございます。  そこで、私どもといたしましては、先ほど申し上げました実際上の運用におきまして、環境庁長官また環境庁の意見が反映されたような格好で行われるようにということで工夫しているところでございますし、また、技術的指針をつくるに当たりまして、主務大臣が環境庁長官と協議をして技術的指針を定めることになっているところでございますので、そういったところで環境庁長官意見が十分反映されるようにいたしておりまして、実質的には私ども工夫してまいっているところでございます。
  111. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 そうしますと、環境基本法案が成立した場合、各アセス事業に係る例えば環境庁長官意見等、少しは変わるというふうに期待できるのでしょうか。
  112. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 私どもは、環境影響評価というものが非常に重要であるということで法制上位置づけたということが一つあるわけでございます。そういうことにおきまして、関係各省の考え方認識というものほかなり変わってくるというぐあいに私どもは考え、これからアセスメントを実施する際におきましても、その適正な運用ということで関係各省と十分話し合っていく必要がある、またその素地はできたというぐあいに考えております。  そこで、そういうことを、この環境基本法が基本的なフレームワークをつくってくれたというぐあいに私どもは考えているわけでございますが、それにいたしましても、やはり問題があったとするならば、中公審答申にございましたように、必要に応じて私どもは見直しをするということも常に考えていかなければならぬというぐあいに考えております。
  113. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 基本法が成立しても各省庁との関係が従来どおり変わりないということでは、これは全く意味がないわけですから、基本法が成立してよかった、環境庁の、大臣の権限も意見の重みも従来とは変わった、期待できるというふうにぜひひとつしていただきたい、これはお願いをしておきます。  現行の環境影響評価ですが、一つ環境基準、二つ目には環境基準に準ずるもの、三つ目には、これがない場合、既存の知見、事例等を参考に判断することになっております。ここで言う既存の知見とか事例というのは公表されているのでしょうか。
  114. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 御指摘のように、閣議決定要綱に基づく環境影響評価につきましては、環境庁長官は「環境影響評価に係る調査、予測及び評価のための基本的事項」というものを定めておりまして、先生が御指摘になったようなことがそこで定められているわけでございます。  ここでは、公害の防止に係る項目についての評価は、環境基準が定められている項目は当該環境基準に、それから、人の健康または生活環境への影響に関する判定条件等を利用し得る項目にあってはそれらに照らすことといたしまして、自然環境の保全に係る項目についての評価は、科学的知見に基づいて、自然環境の重要性に応じた適切な保全に支障を及ぼすものかどうかを検討することにより行うということになっているわけでございます。  そこで、先生御指摘の御質問でございますが、公害項目につきましては、環境基準のほかに規制基準等を判断基準として用いることになっておりますし、また自然環境項目についても、レッドデータブック等の公表資料を判断基準として用いているわけでございます。したがって、そういったものは公表されているものを用いてやっているということでございます。
  115. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 公表の資料といってもいろいろな資料があるわけで、その場合に、どれが基準なのか、知見なのかということはわからぬわけですよ。行政の側でも、今のお答えだけでは非常に幅の広いもので、一定の定めがないように思うのですが、その点どうお考えになっているのでしょうか。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
  116. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先ほどもお答えしたわけでございますが、公害項目につきましては、環境基準のほかに規制基準というようなものを用いるわけでございますので、これは当然公表されているということでございますし、また自然環境項目につきましても、レッドデータブックを用いるということでございますので、これも公表資料が判断基準になっているというぐあいに私ども考えております。
  117. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それでは、知見だとか判定条件だとか、一体だれが何を根拠に判断しているのですか。
  118. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 これは先ほど申し上げましたように、関係主務大臣と環境庁長官が協議して定めます技術指針によって定めているところでございます。
  119. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 次に、各種公共事業については、あらかじめ必要に応じ、代替案の比較検討などを含む調査研究を行わしめる、昭和四十七年六月六日の閣議了解となっておりますが、代替案を必要に応じて関係住民に公表しているということは、事実やられていますか。
  120. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘の、昭和四十七年に閣議了解をいたしました「各種公共事業に係る環境保全対策について」におきましては、代替案の比較検討等を含む調査研究を事業主体に行わせることになっているところでございます。代替案の検討には、環境保全対策の代替案検討というものと、それから事業位置等の事業計画の代替案検討との二つの局面があるわけでございます。  環境保全対策の代替案検討については、現行の環境影響評価におきましても予測、評価を繰り返して環境保全対策の検討を行っているところでございまして、現行制度においても基本的に位置づけられているわけでございます。  事業計画の代替案が検討される際に、その環境配慮につきましては、環境基本法第八条に環境保全対策に係る事業者の責務が定められているところでございまして、この規定に従って今後事業者の自主的な努力がさらに充実されることになるというぐあいに考えているわけでございます。  なお、昭和四十七年のこの閣議了解では、代替案の公表につきましては特段の規定は設けておらないところでございます。
  121. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 今御答弁がありましたように、代替案の比較検討等を含む調査研究というのは、もちろん事業者の責務であることはよくわかります。しかし、問題は、事業者だけが代替案の検討をして、そして関係住民に説明するときには、いろいろ代替案についても検討いたしましたが、我が方としてはこの案が最良であると考えましたのでといって、住民説明会などをやっているわけですね。住民に対してはっきり代替案を示さなければならない、あるいは検討結果を公表しなければならない、こういうふうになってないのですよ。ここに住民参加が無視されているという問題があるわけです。この点についていま一度お伺いいたします。
  122. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 環境影響評価制度におきまして、事業者が調査等を行って準備書を作成し、住民等の意見を聞きまして評価書を作成するということが基本的な仕組みなわけでございますが、閣議決定要綱では、こういった基本に沿って適切な手続等を定めているところでございます。要綱では具体的に住民関与を定めているわけでございますが、事業者が知事の協力を得て手続を進行することといたしまして、その適切、円滑な実施を期しているところでございます。  まず最初に、準備書の周知につきましては、事業者は、知事等の協力を得て公告・縦覧を行うということのほかに、説明会またはこれにかわる周知措置を講ずることとしておるところでございますし、二番目に、準備書に関する意見につきましては、事業者による関係住民の意見の把握ということが定められておるわけでございます。第三に、意見書に対しましては、事業者は評価書におきまして見解を述べるということとしているところでございまして、これを記載した評価書は知事等の協力を得て、事業者により公告・縦覧されるということになっております。  環境庁といたしましては、国、地方団体、事業者及び住民がこういった役割をそれぞれ果たしていただくということと同時に、準備書の記載内容を充実させる、また説明会の開催方法の工夫というものを行うことによりまして、こういった要綱、住民参加の質が保たれるようにというぐあいに考えてまいりたいということでございます。
  123. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 ですから、ここにある代替案の説明がないから関係住民がなかなか納得しないのですよ。事業者の方から、こういう事業計画をやりたいという提案があったときに、住民側からあるいはそれぞれの専門家から、こういう案でいった方がいいではないか、こういう意見が必ず出されているんです。ところが、それを取り上げられない仕組みになっている。代替案を住民に説明しないでいいということに今なっているんですね。ここにインチキがあるのですよ。なぜ役所なり事業者なりが代替案をあわせて示して、そしてこの計画と代替案と検討した結果この計画が適当であると判断しましたといって住民に説明できないのですか。  同じ答弁だったら、時間ばかりたちますので、この点は基本法との関連で、ぜひ是正していただきたいということを強く要求をしておきたいと思います。  次は、環境影響評価制度の実効性を担保するため、環境影響評価が終わるまで工事着手を制限する、これは当然のことなんですが、その途中で追加アセスが必要になった場合はどう対応しますか。
  124. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 閣議決定要綱におきましては、環境影響評価の手続といたしまして、事業実施前のもののみを定めていることは御指摘のとおりでございます。これは、事業実施中あるいは実施後における事後調査の手続を設けなくても、こういった理由でその目的を果たし得るのではないかというぐあいに考えているからではないかと思うことでございます。  一つは、要綱では、環境影響評価の結果を免許等の審査に当たって配慮することとされているところでございまして、免許等の適正執行の観点からのチェックは、これら免許等を行う行政庁において適切に行われるというぐあいに期待されるというのが第一点。第二点には、地域環境の保全上の見地からの環境汚染の監視などは、大気汚染防止法等の規制法の体系によりまして別途行われているということがございます。さらに、公害防止協定や環境保全協定等に基づき事後的な調査が行われる場合も多いということもあるわけでございます。  しかしながら、事業者等が、工事中または事後の監視のための調査が必要であると判断した場合におきまして、評価書で環境保全上の措置としてその旨を明記いたしまして、必要に応じて事業実施中及び工事完了後適切な調査等を行うということは望ましいことであるというぐあいに私どもも考えているわけでございます。環境庁長官や知事の意見におきまして、環境モニタリング等事業着手後に何らかの対応が必要な場合には、その旨を指摘いたしまして、必要な措置を講じさせているところでございます。
  125. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 これはたびたび私も申し上げていることなんですが、長良川の問題。環境庁と建設省との間で追加的な調査検討についての了解事項ができました。にもかかわらず、工事の一時中止もなく建設省の判断だけで進められたわけです。これは、先ほど質問いたしました環境影響評価が終わるまで工事着手を制限するという精神からいってもおかしいんじゃないですか。
  126. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 長良川に関する御指摘があったわけでございますが、建設省、水資源開発公団におきましては、調査検討結果を関係自治体、地元住民に説明いたしまして、その意見を十分反映させた環境保全上の措置を講ずるということになっているわけでございまして、環境庁といたしましては、それに応じまして、必要に応じ建設省と連絡をとりながら長良川の良好な環境が保全されるように努力してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。  しかし、この問題、こうした対応とあわせまして、今後どうするかということでございますが、こういう経緯があったことにもかんがみまして、今後計画される河口ぜきの建設事業については、環境アセスメントをやはり実施するということが必要なのではないか。あの事業そのものが環境アセスメントが行われる前に着手された事業というようなことから、いろいろ反省すべき点があるというぐあいに考えているところでございます。
  127. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 この種の問題について途中でいろいろな欠陥なりかわかった、しかしもう事業は既に進めている、始めちゃったんだからしょうがない、工事が始まっちゃっているんだから環境破壊されてもしょうがないんだ、建設省さんの事業だから、環境庁は意見は言うけれども、工事の一時中止をしてまでもアセスをきちんとやらせるというような権限がないからしょうがないんだというのが現状だと思うのですが、ぜひこの基本法成立後はそういうことのないようにしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  次は、建設省の方になると思いますけれども、都市計画法についてお尋ねをいたします。  申し上げるまでもなく都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的にいたしております。環境保全というようなことが全く位置づけられていないわけです。私の認識によりますと、環境に最も影響が大きい、それは都市計画法だと思っています。その都市計画法の「目的」、第一条に、都市の健全な発展を図るということでいいのでしょうか、まずお伺いをいたします。
  128. 板倉英則

    ○板倉説明員 都市計画法の第一条におきましては、都市計画の目的といたしまして、先生今御指摘のとおり都市の健全な発展及び秩序ある整備を掲げておりまして、また第二条におきましては、都市計画の基本理念として、健康で文化的な都市生活の確保、及びこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを定めているところでございますが、これらの目的あるいは基本理念というのは、先生御指摘の良好な都市環境の形成と表裏一体の関係にあるものと考えているところでございます。  これを受けまして、具体の都市計画の策定基準といたしましても、例えば土地利用の基本となります地域地区につきましては、「適正な都市環境を保持するように定める」ということを都市計画法上明示している等、逐一申し上げませんが、良好な都市環境の形成につきましては、都市計画法上重要な位置づけがなされていると考えているところでございます。  昨年成立いたしました都市計画法の改正におきまして、適切な住環境の保護を図るための用途地域につきまして、入用途から十二用途に……
  129. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それはいいのです。わかっているのです。  第二条に今のことが入っているのは私も十分承知して質問しているわけです。なぜ第一条の「目的」の中に環境保全というものが位置づけられていないのですかと質問しているのです。余計なことを答えないでいいのですよ。その質問に答えてください。
  130. 板倉英則

    ○板倉説明員 良好な都市環境の形成ということを少し敷衍して申し上げますと、良好な都市環境を形成、維持し、都市生活の質といいますか、都市のアメニティーを高めるということは、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保するという都市計画の本来の目的と表裏一体のものであるということと考えておるわけでございます。
  131. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 都市計画法の目的を聞いているのですよ。本来の都市計画の目的と同じということは全くわけのわからない答弁ですよ。  要するに、これまでの都市計画法の目的というのは、第一条にあるとおり、都市の建設、整備、それにまっしぐらに進んでいくのだ、こういう法律なのです。だから環境保全が位置づけられていないのです。環境基本法ができても、このような都市計画法がそのまま実施されていくということでは全く意味がないということを私は指摘をしておきます。  第三条は、国及び地方公共団体の責務として「国及び地方公共団体は、都市の整備、開発その他都市計画の適切な遂行に努めなければならない。」と規定しております。つまり、国及び地方公共団体には環境の保全という責務がないわけです。明記されていないわけです。その点について簡単にお答えいただきたいと思います。
  132. 板倉英則

    ○板倉説明員 御指摘の都市計画法三条でございますが、三条一項におきまして、国及び地方公共団体の責務として「都市計画の適切な遂行」という表現を使っているわけでございます。  これにつきまして、私ども、良好な都市環境の形成を当然その中に内包しているというふうに考えているわけでございまして、それ自体で当然国及び地方公共団体の良好な都市環境の形成に責務を有するということを第一項で明確にしまして、さらにこれを受けまして、この国及び地方公共団体の責務とあわせまして、都市計画の対象となります都市活動の大半が民間の都市活動であること、それから都市計画が都市住民の良好な都市生活の実現の手段であるということから、その効果都市住民全体に及ぶものであることというようなことを考えまして、都市住民についても都市計画に積極的に協力する責務を定めたものであるというふうに考えておりまして、都市計画の担い手である地方公共団体都市住民が相協力しまして、良好な都市環境の形成を含む都市計画の推進に当たるべきであるということを定めていると理解しているわけでございます。
  133. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 第三条にわざわざ国及び地方公共団体の責務はということで明文化されているわけですよ。これはどういう意味がということを質問すると、人によっていろいろお答えが違ってくるわけですね。解釈も違ってくる。どうでもいいわけです。要するに、第三条に規定されていないのだから。私が言いたいのは、国及び地方公共団体の責務として環境保全を位置づけるべきだということです。そうでなければこの基本法ができても意味はないですよ。その点を指摘しておきます。  次に、第十三条において「都市計画は、当該公害防止計画に適合したものでなければならない。」との基準を定めております。都市計画が公害防止計画に適合したものということはもちろん大賛成でありますけれども、実際そうやられているというお答えができますか。
  134. 板倉英則

    ○板倉説明員 都市の健全な発展を図る都市計画の目的は、元来公害の防止という公害防止計画の目的と軌を一にするものでございまして、公害防止の観点からすれば、都市計画が公害防止計画に適合することは当然であるというふうに私ども考えております。  公害防止計画におきましては、公害の防止に関し都市計画に関連する施策といたしまして、土地利用の適正化、下水道、緩衝緑地等の施設整備等が掲げられていると承知しているわけでございます。  現実の都市計画におきましても、公害を防止する等、適正な都市環境を保持するよう適切な用途地域の指定、都市施設の決定等を行うこととしておりまして、公害防止計画への適合性に十分配慮しているところでございます。
  135. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 この点は後ほどさらに具体的に質問させてもらいます。  ここで、地域地区は、「美観風致を維持し、公害を防止する等適正な都市環境を保持するように定めること。」とあります。ここで言う公害の防止というのはどういうものでしょうか。
  136. 板倉英則

    ○板倉説明員 都市計画法におきます公害でございますが、この概念は、公害対策基本法における公害を想定していると考えられるわけでございます。  都市計画法においては、具体的には例えば今御指摘の地域地区の指定に当たりましてどういうことを考慮しているかということを申し上げますと、一つには、都市生活の安全性及び快適性等の増進を目的とし、自然環境の保全、調和に配慮して適正な機能及び環境を維持できるような都市構造への誘導、二つには、住宅の環境を良好に維持するために適切な密度の実現、三つには、公害のおそれの著しい住宅地における土地利用の転換の実現、公害の発生を防止するための立地が行われるような工業用地の適切な配分、四つには、自然的環境の保全、回復の実現等、適正な都市環境を保持するように定めているところでございます。  この基準によりまして、住居専用地域や工業専用地域等の用途地域を適切に指定することによりまして、公害の防止等適正な都市環境が保持されるものと考えております。
  137. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 地域地区はそのように定められておりません、実態は。  それでは次に、第二十三条、「建設大臣は、市街化区域に関する都市計画を定め、又は認可しようとするときは、あらかじめ、環境庁長官」「の意見をきかなければならない。」とありますが、環境庁長官に一体どんなことを聞くのですか。
  138. 板倉英則

    ○板倉説明員 都市計画法の二十三条第二項、御指摘の条文でございますが、市街化区域に関する都市計画の認可等を行う場合に環境庁の意見を聞くこととされているところでございます。  この市街化区域というのは、もう御説明するまでもないと思いますが、無秩序な市街地の拡大を防止し、計画的な市街地形成を図るため、優先的かつ計画的に市街地として積極的に整備する区域でございまして、都市計画区域を市街化区域と市街化を抑制する調整区域に大きく二分する制度でございます。このような市街化区域の性格から、市街化区域の設定等に当たりまして環境庁長官から、自然環境の保全や公害防止の見地から御意見をいただいているわけでございます。  具体的には、例えば新たに市街化区域へ編入しようとする区域につきまして、すぐれた自然環境を有する区域等が存する場合に、自然環境の保全上の施策との調整が図られているかどうか、あるいは自動車専用道路等を含む場合に、騒音防止上の施策整合性がとれているかどうか等について御意見をいただいているところでございます。
  139. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 今の点は、環境庁の方が何か意見を述べたとか一緒に仕事をしたという印象をお持ちじゃないでしょう。ただ建設省の方から回ってきた文書に判こを押すということだろうと思うのですが、何か特段、市街化区域の問題で、これはまずい、認めないといったようなことはありましたか。ないと思うのです。
  140. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 環境庁長官意見を求められることの詳細につきましては、建設省の方から御答弁があったわけでございますが、どのくらいの協議がありましてそのうちどのくらいの意見を申し述べたかということにつきましてここ数年の数字を申し上げますと、平成元年は六十八件協議がございまして、そのうち意見提出しましたのは十二件、平成二年では百五件協議がありまして二十一件につきまして意見を申し述べております。平成三年、九十六件協議がございまして、そのうち十三件意見を申し述べております。平成四年では百十八件協議がございまして、うち二十五件意見を申し述べるということでございます。  意見を申し述べる態様につきましては、大気汚染、騒音、水質汚濁の防止等、また自然環境の保全に関することで都市計画上配慮すべき事項について意見を申し述べているところでございまして、例えば最近の例で申し上げますと、何々線、何々線沿道の何々地区の都市計画の具体化に際しては、騒音に係る環境基準の維持達成に支障が生じないよう、沿道においては非住居系の土地利用を図る等の措置を講ずる必要があるというような意見、また、そういうことにつきまして関係地方公共団体を指導するとともに、当該地方公共団体において都市計画部局と環境部局の間で所要の調整を図るようにというような意見を申し述べた例が、最近の事例としてはございます。     〔塩谷委員長代理退席、持永委員長代理     着席〕
  141. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 ですから、具体的な地域地区とか用途地域の変更について、それはまずいですよと言うことはないわけですよね。一般論として公害の発生に十分配慮するようにと、後でつつかれても弁解が立つというような程度のことを役所間でやられているということだろうと思います。  次は第三条二項、「都市の住民は、国及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するため行なう措置に協力し、良好な都市環境の形成に努めなければならない。」住民に協力の責務を負わせているわけです。こんな一方的な法律は私はほかには余り知らないのですが、こういう強圧的といいますか、住民に協力の責務だけを押しつけている。住民の意見をどうのこうのということは一つも書いてないのですよね。非常に古い、明治時代の法律でもいいわけです、これは。通用するわけです。こんなことを改正するというようなつもりはないのですか。
  142. 板倉英則

    ○板倉説明員 先ほど御答弁申し上げましたことと関連いたしますので簡単に申し上げますが、三条一項におきまして国と地方公共団体の責務を規定しまして、それから先ほど申しましたが、都市活動の大半が民間活動である、それから都市計画が都市住民の良好な都市環境を実現するための重要な手段であるというようなこと、さらにはその効果都市住民全体に及ぶということがございますので、都市住民の方々にも良好な都市環境の形成にぜひ御協力いただきたいということで、公共団体と都市住民が相協力いたしまして、良好な都市環境を備えた町づくりに向けて邁進していこう、こういう趣旨でございます。
  143. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 片っ方では大変立派な環境基本法がつくられようとしている。片っ方では住民に都市計画について協力のための努力をしなければならない。これはもう命令調の条文ですよね。文句を言わせない、こういう法律です。ぜひ改めていただきたいと思います。  七十七条に「都市計画地方審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める基準に従い、都道府県の条例で定める。」とありますが、この政令と条例、国の通達と条例との関係において、どちらが優位性を持つのですか。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  144. 板倉英則

    ○板倉説明員 都市計画法の枠組みでございますが、政令または通達というのは当然都市計画法の委任を受け、あるいは都市計画法に基づき発出されるものでございまして、都市計画法と一体という考え方でございまして、それと条例との関係でのお尋ねでございますが、我が国の法体系前提とした条例であるとすれば、それぞれが両々相まって適切に運用されるべきものであると考えているわけでございます。
  145. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 質問に答えてもらわないと困るのですよね。両々相まってということでは答えにならないのですよ。  例えば昭和五十七年十一月に出された建設省都市局長通達、これは環境影響評価書と都市計画案とをあわせて都計審で審議し、都市計画を決定するということになっているわけです。その法的な根拠はといいますと、昭和五十九年八月の環境影響評価実施要綱に基づく、こう答弁されるのですが、どこにもそんなことが書いてないのですね。法的根拠、どこかに書いてありますか、そんなことが。
  146. 板倉英則

    ○板倉説明員 都市計画につきましては、良好な都市環境を整備するために定められるものでございまして、その決定に当たりまして、当該都市計画に関連して将来生ずることが予想される環境等への影響等を踏まえることが適当であることから、都市計画法全体の趣旨を踏まえまして、一定の事項を都市計画の図書のうち計画書に付記するものとし、都市計画地方審議会の議を経ることとしているところでございます。したがいまして、環境影響評価都市計画案は通常同時に提出され審議されるということでございます。  ただし、通達が、御指摘の通達でございますが、あくまで環境影響評価の結果を踏まえた都市計画の案であるかどうかを御審議いただくという趣旨でございまして、都市計画地方審議会における審議を円滑にしていただくために都市計画の案や環境影響評価の評価書の結果のあらましなどを事前に配付し、十分な御検討をいただくための措置をとっていただくということは公共団体等でも行われているところでございまして、それぞれの実情に応じて適宜運用されるべきであると考えているところでございます。
  147. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 おたくの方はそうやってもらえば都合がいいからということで通達を出しているわけですが、地方公共団体はそれぞれ条例を持っているわけです。条例があっても局長通達に従わなきゃならない。つまり、条例よりも通達の方が優位に立つんだ、優先するんだ、こういうふうに理解すべきなんですか。
  148. 板倉英則

    ○板倉説明員 都市計画と環境影響評価の手続のすり合わせを行うために、私どもは、都市計画の手続の中において環境影響評価の手続をしていただく。その際に、別途条例等がございまして我々の要綱で定めております手続と異なる場合はその条例によることといたしまして、両者整合性を図るように努めているところでございます。
  149. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 これは全く法的にも根拠のない、つまり条例よりも局長通達の方が優先するんだ、こういうことをおっしゃっているんだろうと思います。これは私は大問題だと思いますね。したがって、この辺についても、この基本法ができるという状況ですので、ぜひ改正をしてもらいたい、こういうふうに思います。  私は、今指摘しましたけれども、都市計画法の最大の欠陥は、第一条の「目的」と第三条の「国、地方公共団体及び住民の責務」が環境基本法案の趣旨と全く相反しているという点にあると思います。環境保全を目的としない都市計画、住民参加を否定した計画の一方的押しつけ、これでは開発がすべてに優先し、東京一極集中などによる環境破壊が進むのも当然だと思います。  この機会に、ぜひ環境基本法案の目的と基本理念に沿って現行の都市計画法を改正するよう提案いたしたいと思います。この点について検討する気持ちがあるのかないのかということを再度お伺いいたします。
  150. 板倉英則

    ○板倉説明員 良好な都市環境の形成につきまして、現行の都市計画法におきましても先ほど御答弁申し上げましたように重要な位置づけが与えられていると認識しております。したがいまして、同法に基づきまして種々の施策を講じてきたところでございます。  現在建設省全体におきまして、有識者の意見も踏まえまして、所管の法令や計画を初め都市行政を含む建設行政分野全体にわたりまして今後の環境対策あり方について検討を進めているところでございます。今後とも、その検討結果等を十分踏まえながら、計画、事業はもとより法制面も含めまして幅広い見地から検討を進めてまいりたいと思っております。
  151. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 ところで、こうした問題は総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法にも当てはまるのです。リゾート開発、例えばゴルフ場の造成等によって自然破壊環境汚染が各地で問題になっている、これは御承知のとおりです。しかし、リゾート法の目的、理念には環境保全の記述、位置づけはありません。  また同時に、道路法もどういうふうになっているかというと、道路網の整備を図り、交通の発達に寄与する、これが目的です。道路をつくるのに環境保全は考えなくてよろしいという法律、目的です。これで高速自動車道、幹線道路、いろいろな大気汚染、騒音問題が出てくるわけですが、こんなことでいいんでしょうか。道路をどんどんつくれ、つくっていけばいいんだ、環境保全なんか考えてなくていいんだ、これが道路法の目的です。リゾート法の目的も同様です。どうですか。
  152. 滝沢忠徳

    ○滝沢説明員 お答えをさせていただきます。  リゾート整備につきましては、ただいま御指摘がございましたように、自然環境の保全、調和の問題等、種々の御指摘がありますことから、私ども国土庁といたしましては、有識者から成ります総合保養地域整備研究会を設置し検討をお願いいたしまして、ことしの二月、「今後のリゾート整備のあり方について」、御報告をいただいたところでございます。  この研究会の報告では、リゾート整備を進めるに当たりまして自然環境の保全との調和を図り、国民の多様なニーズにこたえるリゾート整備を長期的な視点に立って着実に推進することが重要である、そしてそのためリゾート整備の政策理念を確立いたしますとともに、計画の策定、事業化などの各過程における管理の仕組み、情報提供の体制の強化を図ること、そしてまた総合保養地域整備法の適切な運用を図っていくことなどが提言されておるわけでございます。  そういたしまして、現在の総合保養地域整備法でございますが、自然環境の保全との……
  153. 原田昇左右

    原田委員長 簡潔にやってください。
  154. 滝沢忠徳

    ○滝沢説明員 はい。保全との調和のための具体的な措置といたしまして、まず法律の四条におきましては、主務大臣が定める基本方針につきまして、配慮すべき重要な事項の一つといたしまして自然環境の保全との調和について規定をいたしておりますし、それからまたこれを受けました基本方針では、総合保養地域の整備に当たっては自然環境に与える影響を調査検討することなどの配慮を義務づけておるわけでございます。また、具体的な基本構想の審査あるいは承認に当たりましては、自然環境の保全について十分調和が図られますようきめ細かな指導を行いまして、その上で環境庁とも御協議し承認等を行っておるわけでございます。  ただいま申し上げましたようなことでございまして、私どもといたしましては、研究会の報告の趣旨を踏まえまして、これまでの取り組みを一層徹底していくことなど総合保養地域整備法の適切な運用を図ることによりまして、今後とも関係省庁と緊密な連携を図りながら自然環境の保全、調和の確保に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  155. 吉井一弥

    ○吉井説明員 道路法についてお答えいたします。  先生御指摘のとおり、道路法は、道路網の整備を図るため、道路に関しまして管理、保全等に関する事項を定めているものでございまして、交通の発展に寄与し、公共の福祉を増進することをその目的としております。ただ、実際の道路整備に当たりましては、道路整備五カ年計画に従って行われているわけでございますが、この五カ年計画の根拠法でございます道路整備緊急措置法におきましては、生活環境の改善等を目的の一つとして掲げているところでございます。現実にも、道路整備に当たりましては、環境施設帯の設置でございますとか道路の緑化の推進等、環境の保全に十分配慮してきたところでございます。  ちなみに、先般、道路整備緊急措置法を改正していただきまして、平成五年度からの新しい第十一次道路整備五カ年計画を策定することとしておるところでございますが、その第十一次道路整備五カ年計画におきましては、良好な環境創造ということを三つの主要な目標のうちの一つとして掲げることとしております。また、道路法とは別でございますが、幹線道路の沿道の整備に関する法律というふうな別の法律で、良好な沿道環境の形成等のため、その運用を図っているところでございます。  今後とも、道路整備に当たりましては、環境基本法の趣旨を踏まえ、環境保全に十分配慮していくとともに、環境問題の取り組みにつきまして、十分充実強化等を図ってまいりたいと考えております。
  156. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 今言われたようなことを目的の中に入れなさいと言っているんだよ。リゾート法、道路法、目的の中に明文化しなさいと言っているんだよ。いろいろな人がいろいろな角度から言いわけを言われても、国民法律の目的を見て判断しているわけだから。説明書きがないでしょう、目的の中には。環境基本法案ができるのに際して目的の中に入れるべきだ。そうしなければ環境基本法案が宙に浮いちゃいますよ。環境基本法の方は、環境をよくするんだ、国民の責務、事業者の責務、国、地方公共団体の責務ということを定めているけれども、都市計画法が、道路法が、リゾート法が全くそれにマッチしない法律になっている、だから、改正しない限りはこの基本法が生きてこないということを言っているんです。  時間がありませんので、最後に意見を申し上げます。  都市計画は、当該公害防止計画に適合したものでなければならないということを先ほど申し上げました。環境庁、最後に大臣に質問したいのですが、「公害防止計画策定の基本方針の概要」を出しておるわけです。この中で私が一番重視しているのは、公害防止で一番重要な環境基準がそれぞれ項目ごとに定められています。こうした未達成の目標を達成することを重点とする、そして、目標が全体として平成八年度末を目途に達成維持するように努めるということになっておるわけです。  ところが、私がもう何回も何回も言っているように、NO2の環境基準は未達成のまま終わっている。そうした環境基準を達成するための都市計画なんということ、一度でもありましたか。そんなことお考えじゃないでしょう。NO2の環境基準を達成する目標を防止計画で定めております。国も地方も定めております。それに合った道路をつくっていますか。水質の汚濁も同様です。騒音も同様です。何一つ環境基準を達成するための都市計画になっていないじゃないですか。  地域地区で言うならば、中曽根さんじゃありませんけれども、環七以内を全部第一種地域を廃止するんだ。余計に過密化が進んでいること明らかじゃないですか。そういう地域地区の改正を環境庁長官に協議なり意見として出して、環境庁長官は、結構です。ただ結構ですと言ったのでは公害が出たときにぐあいが悪いから、環境に十分配慮されるようにという意見書を形式的に出しているだけなのです。  ですから、私が言いたいのは、都市計画は公害防止計画によるというようなことがなされていない、時間がありませんので、インチキだということを最後に申し上げて、私の意見とさしてもらいます。終わります。
  157. 原田昇左右

  158. 大野由利子

    ○大野(由)委員 前回に引き続いての質問をさせていただきます。  初めに、環境行政の機能の強化について伺いますが、環境基本法の第十三条に、環境保全施策の策定及び実施は、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない、このように出ているわけでございますが、総合的かつ計画的な施策の推進を実際行っていくには、環境政策を一元的に実施する分野と、また各省庁で実施をする施策を総合調整をしていく分野と両方あるかと思います。今、環境基本法の中にさまざまな施策が出ているわけでございますが、計画的、総合的推進というのはどのように確保されるのか、また環境庁はどのような役割を果たされるのかについて伺いたいと思うのです。  二十二条に出ています環境の保全に関する施設の整備その他の事業の推進というように、積極的に環境保全を図ろう、そういう施策。それから十八条には環境配慮が出ております。また、十九条には環境アセスメントが出ているわけでございますが、開発に対して環境面からチェックしていこう、そういう施策。いろいろ両面あるかと思いますが、どのようにして計画的、総合的な推進を図られるのか、環境庁の果たされる役割について伺いたいと思います。
  159. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘のように、環境基本法案におきましては、環境の保全に関する施策に関しまして基本的な方針を示し、施策の方向づけを行うという観点から、環境の保全に関する施策全般にわたって、その基本となる事項を定めているところでございます。こういった施策の策定及び実施につきましては、御指摘のように、環境基本法第十三条によりまして、「施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。」というぐあいにされているところでございまして、この考え方は、具体的には環境基本計画において示される施策の基本的な方向に沿って、環境庁を初めとする関係省庁におきまして施策が推進されること等により確保されることになるわけでございます。  そこで、環境庁といたしましては、環境基本計画の策定に当たり、その内容につきまして十分検討を行い、実効ある計画の策定を図ることによりまして環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図ることとしているところでございますが、さらに先生御指摘の問題に対しましてお答え申し上げてまいりますと、まず第一点、御指摘の環境の保全に関する施設の整備その他の事業の推進、これは二十二条の関係でございますが、これにつきましては、関係行政機関の公害の防止並びに自然環境の保護及び整備に関する経費の見積もり方針の調整という権限を、私ども環境庁設置法の四条三号によって与えられているところでございます。これを通じてやってまいりたいというふうに考えております。  次に、開発等に関する環境面のチェックに関する問題でございますが、これにつきましては、環境影響評価の推進、個別の法律に基づく排出等の規制の適切な実施のほかに、関係行政機関の長に対する資料の提出及び説明の請求という権限、これは環境庁設置法の第五条第二項に定められておる権限でございます。これに基づき実施してまいりたいということと、場合によりまして環境の保全に関する重要事項に関する勧告権というものを、同じく第五条の三項によって与えられております。この規定が最終的には担保する規定となっているということでございます。  それから、調査研究等に関する問題で、二十七条から二十九条までの条項に関する御質問があったわけでございますが、この調査研究等に関しましては、関係行政機関の試験研究機関における公害防止等試験研究費の一括計上ということで環境庁に一括計上されておるところでございます。これは四条三号によって与えられている権限でございます。そのほか、地球環境研究総合推進費というものを環境庁に一括計上しているところでございます。  こういった環境の保全に関する施策の総合的な推進を図るための環境庁の権限、所掌事務を今後とも適切に活用しながら、基本法において定められた所期の目的というものを適切に実現してまいりたいというぐあいに考えております。
  160. 大野由利子

    ○大野(由)委員 基本法案におきまして環境政策の領域が非常に拡大をしてくるのではないか。いろんな新しい手段、政策等も規定されているわけでございまして、こうした新しい政策を総合的かつ計画的に実施していくために、一元的かつまた総合調整していく分野、それぞれ検討をいたしまして再編強化していくことが非常に必要ではないか。環境庁はもとより、政府全体といたしまして新しい環境行政組織の整備が必要になってくるのではないか。現状の環境庁の人員とか予算とか、そういった体制で果たして適応できるのかどうか。そういった予算の面、人員の面の拡大も必要かと思いますが、こういった点についてどのように考えていらっしゃるか、また環境庁はどのように努力をしていかれるおつもりか、伺いたいと思います。
  161. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘のように、環境行政がこれから関与しなければならない分野というものは政府の各省にわたってくるわけでございます。私ども九百数十名の人員をもって現在この衝に当たっているわけでございますが、そういう意味から行政面におきましては、行政改革ということを推進していかなければならない一方の要請があるわけではございますが、環境行政というものは、ほかの行政に比べてやはり新しく出てきて今後充実を図っていかなければならぬ行政分野だというぐあいに私ども認識しているわけでございます。そういう意味におきまして、ぜひ先生方の応援と御支援を賜りながら、今後とも人員及び予算の充実に努めて環境行政を充実させていくよう、私どもは十分の努力を行ってまいりたいというぐあいに考えております。
  162. 大野由利子

    ○大野(由)委員 この環境基本法を実効あるものにするためにも、ぜひ頑張っていただきたい、そのように思います。  環境破壊の未然防止について伺いたいわけですが、環境保全の基本は、環境破壊を未然に防止することでございます。しかし、科学的知見が明らかでないという理由のために、それが口実となって被害者の救済や公害防止政策がおくれてきた、これは水俣病の過去の経験から明らかなわけでございます。  環境基本法の第四条の中に、「科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、」このように環境の保全を行うというようなことが出ているわけでございますが、環境の知見の充実というものを強調して、かつて環境の知見が十分じゃないということでおくれてきた、それと同じようなことを踏襲しようとしているのか、果たしてこれは一体どういう趣旨なのか、未然防止をしっかりやろうという趣旨なのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  163. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生まさに御指摘のとおりでございまして、この条文は科学的知見が充実していないことをもって対策をおくれさせてはならないということでありますと、これは非常に大きい問題である。私どもは、科学的知見を充実させることはやっていかなければならぬけれども、私どもの公害対策をやってまいりました痛い経験からいたしまして、やはり事後的に手を打つということではだめなんで、事前的に私どもは対策をとっていかなければならない、そういう趣旨のことでございまして、特に地球環境問題等不可逆的な事象に対してはある程度の不確実性があったとしても事前的に手を打っていかなければならない、そういう趣旨、理念のもとにこの第四条はできているところでございます。
  164. 大野由利子

    ○大野(由)委員 水俣病の教訓から、環境破壊を未然に防止するためには、調査研究というものを公正に行うこと、それから規制措置が速やかに行われなければいけない、そういうことが教訓として残っているわけでございますが、現在、水道水源を汚染をしております、人々の健康を非常に損なっているというふうなこととか、また野生生物を殺傷して非常に生態系を脅かしている問題等々、農薬とか化学物質の汚染が非常に深刻なものがあるわけです。  このことについて伺いたいのですが、農薬や化学物質を使用した場合の人間の健康また生態系に関する調査研究といったものを国内はもちろん地球環境という大きな規模で行う必要があるのじゃないか、これらについてどのように現在行われているのか、今後どのように行おうとされているのか、また環境基本法ではこれはどのように規定されているのかについて伺いたいと思います。
  165. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 御指摘のように、科学物質や農薬による健康や生態系への影響の問題は、国際的にも非常に重要な問題になっておるところでございます。OECD、WHO等の国際機関においても国際協力のもとに今鋭意調査研究が行われているところでございます。環境庁におきましても、国内における一般環境調査等を実施いたしますと同時に、国際協力に基づく生態影響試験の実施等、国際機関における化学物質関連の調査研究活動に参画しているところでございます。  環境庁としたしましては、今後ともこれらの国際的な調査研究活動への参加を通じまして、国際的な化学物質対策等の推進に貢献していく必要があるというぐあいに考えております。  また、もう一つの御質問でございますが、化学物質や農薬等に係る基準の設定のための調査など環境を保全するための施策の策定の基礎となりますものは、やはり何といっても調査でございます。そういう調査の実施につきましては、第二十七条に位置づけたところでございます。第二十七条の「環境の変化による影響の予測に関する調査その他」というところはそれを指しているわけでございますが、同時にまた化学物質や農薬等が環境中においてどういう変化をしているのか、どういうメカニズムでそれが変化しているのかといった解明のための手法開発や、また無公害化の処理・利用技術の開発等の問題があるわけでございますが、そういった監視の問題につきましては第二十八条に、「環境の状況を把握し、及び環境の保全に関する施策を適正に実施するために必要な監視、」というところで触れているところでございますし、また最後に、環境の変化のメカニズムの解明ということでは、第二十九条に「科学技術の振興」として位置づけているところでございます。いずれにいたしましても、環境に対する影響というものを未然に防止する上での基礎的な活動として二十七条、二十八条、二十九条というのは重要な条文だというぐあいに私ども理解しているわけでございます。
  166. 大野由利子

    ○大野(由)委員 実は昨年、私厚生委員会におきましてたびたびちょっと採り上げた問題がございます。PCB使用の電気機器の保管の実態についてでございますが、厚生省は現在、保管実態の全国調査を行われているわけですが、今、都道府県から八割ぐらい回答が戻ってきている、そういうことのようです。東京都では、四七・五%の事業所がPCB使用の電気機器を紛失していることが明らかになっております。大阪府でもかなりそのものが紛失しているというデータが出ております。  これらの実態を重視して、大阪府では昭和六十三年から何度も国に対して、回収とか処理体制を早急に整備するように要望書を出してきたわけですが、国はこれに対して何らの対応をしてきませんで、そして、このPCBが問題になったこの二十年間、財団法人電気絶縁物処理協会にこの処理というか対策を押しつけてきた、そういう状況がございます。結果的には、この財団法人も何らの手を打つことができないで、結局、PCBの使用電気機器はそれぞれの事業所で持っていなさい、捨てちゃいけませんよというだけの指示になっておりまして、結果的には、事業所が倒産をしたり移転をしたりということで、どんどんそのPCBの電気機器がなくなっている、不法に投棄されているという疑いが非常に強い、そういう状況がございます。  この環境基本法案において、環境破壊を未然に防止する事業を行う、そのようにされているわけですが、このPCB問題に対する対応は今後どのようになるのか、基本法の中ではどのように基本法に則して行われるのかについて伺いたいと思います。
  167. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 PCBの問題も、化学物質対策として環境に与える影響、これは無視し得ない問題でありまして、環境基本法においても当然その対象として私ども考えているところでございます。  なお、このPCBの保管、処分の問題につきまして、先生いろいろ御指摘になりました。この問題につきましては、産業所管の立場から通商産業省が、また廃棄物法律所管の立場から厚生省が従来取り組んでまいってきたところでございますが、環境庁といたしましても、PCBの環境汚染防止の視点からはこれは非常に重要な課題であるというぐあいに考えているわけでございます。そこで、水質汚濁防止法等関係法令に基づく排出規制廃棄物処理法に基づく最終処分基準の設定等を通じましてPCBの環境汚染防止に努めると同時に、環境調査等を通じましてPCBの環境汚染状況の把握、監視等に努めてきたところでございます。  この問題につきましては、先生御指摘になりましたようないろいろな調査もございまして、例えばPCBが混入した機器が使用後二十年を経た今日でも適切な処理ができないで保管されているとか、長期の保管によりまして漏えい事故等が後を絶たない。したがって、PCBが混入したコンデンサー、トランス、ノーカーボン紙等の処理を何とかして適正に処理をする必要があるということから、環境庁としましてもこの問題につきましては真剣に取り組むというようなことで、本年度からPCBの混入機器等の処理調査というものをやることにしているところでございます。  私どもといたしましては、今後とも、この問題につきまして、環境汚染状況の把握、監視等を続けるとともに、通産省、厚生省等、関係省庁と連携しながらこの対策の推進に努力してまいるということで、鋭意私どもやっているところでございます。
  168. 大野由利子

    ○大野(由)委員 環境庁は有害物質の排出規制は行っていらっしゃると思うのですけれども、農薬とか化学物質等々につきましても、その製造や使用の規制というものも非常に大事になってくるのではないかと思いますが、これは環境基本法の中でどのように規定されているか、伺いたいと思います。
  169. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 御指摘の、化学物質や農薬の製造や使用の規制に関してでございますが、これにつきましては、法案の第二十条第一項第一号におきまして大気の汚染、水質の汚濁等々いろいろ並べておりますが、この最後の「その他の行為」に含んでいるということで関係各省で合意を見ているところでございまして、したがって、この二十条第一項第一号に位置づけているということでございます。  化学物質の製造等の規制につきましては、公害対策基本法におきましても、第十条の「物質の排出等」の「等」で読んでいるという経緯がございまして、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の新規化学物質、また第一種特定化学物質等の製造規制等、また、オゾン層保護法の特定フロンの製造、輸入に関する規制、それに農薬取締法の農薬の販売の制限または禁止、使用の規制等を行ってきたところでございます。  そういうことで、公害対策基本法において「等」ということでそれらをやってきたわけでございますが、環境基本法におきましては、先ほど申し上げましたように「地下水の採取その他の行為に関し、事業者等の遵守すべき基準を定めること等により行う公害を防止するために必要な規制措置」という、ここで読んでいるわけでございます。
  170. 大野由利子

    ○大野(由)委員 「その他の行為」なんというところにあるのかなんということは、非常に何というかあいまいというか見落とすというか、そんなことでいいのかなと、しっかりこの辺は主張をしていかなければいけないのではないか、そのように思います。  それから、農薬や化学物質、国内はもちろんですが、国際的にもやはり規制措置というものが必要ではないか、そのように思います。昨年、例の有害物質の越境移動について規制をいたしました。バーゼル条約を我が国も批准をしたわけですけれども、こういう農薬や化学物質についての規制というものを世界に対しても訴えていかなければいけないんじゃないか。また、訴えるだけじゃなくて、条約を我が国が率先をして提案していく必要があるんじゃないか。  実は、前回、私、この環境委員会で質問をさせていただいたときに、我が国でやっている規制を、公害輸出にならないようにと言ったら、その国の主権があるからなかなかうまくいかないんだという御答弁がございました。私も納得がいかないところがあったわけですが、そういった意味で主権云々という心配がないようにしていくためには、やはり我が国世界にリーダーシップをとって条約をつくっていくということが必要ではないかと思いますが、この点について御見解を伺いたいと思います。
  171. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 御指摘のように、化学物質や農薬による影響に対しまして、健康や生態影響を保護するということが国際的にも非常に重要な問題でございます。  先ほど御答弁申し上げましたように、UNEP、OECD、WHO等の国際機関において現在国際的な取り組みが検討されているところでございます。そこで、私どもとしては、これらの国際機関における検討等に積極的に参加をいたしまして、国際的な化学物質対策等の推進に寄与していかなければならないのではなかろうかというぐあいに考えているわけでございます。そこで、国際的な取り組みがどういうふうになっているか、その動向とあわせて、先生の御指摘する問題を含めてそれは解決を図っていかなければならぬ問題だというぐあいに考えております。
  172. 大野由利子

    ○大野(由)委員 環境アセスメントについて伺いたいと思います。  我が党はかねてから環境アセスメントの法制化の必要性について強く主張をしてまいりました。当委員会におきましても、現行制度の問題点、またアセスの法制化が必要であるということを種々指摘をしてきたわけでございます。我が党といたしまして、このアセスメントの問題は本法案の成否のかぎを握っている最重要項目の第一位というふうに位置づけているわけでございます。前回もいろいろ環境アセスについては質問をさせていただきましたが、このことについて今回もう一度質問させていただきたいと思います。  私や同僚議員のいろいろな質問に対しまして総理並びに大臣の御答弁等々、中公審答申にありますように、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行の措置を見直していく」というような御答弁が何度か繰り返し行われていたように思います。経済社会情勢の変化というのは具体的に一体何を基準にして変化の有無を判断していくのかについて伺いたいと思います。
  173. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 この問題に関しましては、先生からも御質問を受けましたし、私も何度がこの席で御答弁申し上げているわけでございますが、環境アセスメントの重要性につきましては、私ども、これは極めて重要だというぐあいに認識しているわけでございまして、その認識のもとに、今回、この基本法案におきましては、「必要な措置を講ずるものとする。」という一般的な書き方で御提案申し上げているところでございます。  ただ、実際にどういう措置をとるかにつきましては、これはまた先生の御指摘がございましたように、中公審等の答申におきまして、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行の措置を見直していくことが適当」というぐあいに言われておりまして、その個別具体的な措置法律でやるかどうかということにつきましては、現在直ちに何らかのアクションを起こすということにつきまして、中公審の一致したお答えというのはいただけなかったわけでございます。  そこで、個別具体措置をとるに当たって、それではどういうことを基準にどう判断しておるのかということが先生の御質問になるわけでございますが、具体的には、政府におきまして、一つは、現行制度の実施状況というものを綿密にフォローしていかなければならぬ、また、地方公共団体や民間における取り組み状況やその進展の状況をも見ていく必要がある、もう一つは、環境影響評価に関する技術の動向というものも私どもは見ていかなければならぬ、それから国土利用の動向、諸外国における制度の運用と効果の状況といったような事柄、こういった経済社会情勢の変化等に関連する事項を総合的に勘案していかなければならぬということになるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、とにかくこの基本法におきまして、法制的にアセスメントというものを位置づけていただくことになるわけでございます。そういうわけで、その位置づけてもらったアセスメントというものを、今度は適正に実施していかなければならぬという任務を私どもは持っているわけでございますので、現在の制度の適正な運用を図ると同時に、それを充実するためにはどういう措置が必要かということを、今申し上げましたような事柄を検討しながら、私どもはこれから積極的に取り組んでまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  174. 大野由利子

    ○大野(由)委員 午前中に行われました参考人質疑におきましても、中公審のメンバーでいらっしゃる森嶌昭夫先生が、私は法律家として、やはり環境アセスは法律によってきちっとやるべきだ、だが、現実にはいろいろ難しいこともあるので、ぜひきちっとした議論をしてもらいたい、国会の中でそういう場を持ってほしいというような発言がございました。私は、法制化も含めて検討すると言うだけでありますと、九年前、例の閣議アセスの決定以来、これは続いているわけでございまして、そのままだけだと、要するに一歩も前に進んでいないという状況になるので、何らかの形で一歩踏み出す必要があるのじゃないか、そのように思うわけです。  それで、先ほど御答弁の中にも少しあったかと思うのですが、今行われている環境アセス、閣議アセス、個別法アセス、地方自治体で条例、要綱によって行っているアセス、これらのアセスがどのように行われていて、ばらばらに行われているわけですが、どういう基準で行われていて、その実態がどうなのか、その辺の調査とかいうものは現在環境庁は全国的にやっていらっしゃるのでしょうか。
  175. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 この問題につきましては、先ほど私はほかの議員の御質問にお答えしたところでございますが、環境庁といたしましては、アセスメントを所管している役所といたしまして、アセスメントの信頼性、精度の向上といったことについては絶えず勉強していかなければならぬというようなことから、技術検討会といったような勉強会を設けまして、地方公共団体で現に従事している方々、また学問的にそういうことを研究している方々に御参画いただきまして、技術面に関する検討をやっているところでございます。そういうことで、私どもは常に適切かつ円滑な環境影響評価の実施の推進に努めているところでございますが、先ほど申し上げました中公審等の答申におきまして、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて見直すことが適当」という答申をいただいたところでございますので、それを基本として対処していく必要があるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、現行の環境影響評価を適正に実施することを通じまして、どういう問題があるのか、またどういうところに改善すべき点があるのかということを十分検討するとともに、それを踏まえて新たな方向性を見出していくべきだというふうに考えるわけでございます。  その場合に、問題点は、環境庁だけがそういう認識を持っているということも、私どもとしては今回の環境基本法の策定経過を見ましてかなり感じているところでございまして、やはり関係省庁の協力を得ながら政府一体となって、そういった経済社会情勢の変化等についての総合的な、専門的な検討を行う必要があるということを考えているところでございます。そこで、そういった場を設けながら、現行アセスメントについての実施状況、問題点等を十分勉強していく必要がある、そういう場を設ける必要があるのではないかということも考えまして、基本法が成立を見た暁には、そういう勉強を早速始めたいというぐあいに考えております。
  176. 大野由利子

    ○大野(由)委員 例えばPL法、例の製造物責任法も今、国民生活審議会で、それぞれ産業界の代表、住民の代表、いろいろな方が集まられて検討がされているわけでございますが、この環境アセスにつきましても、内外のアセスの運用実態というものをまず調査し、その上で環境アセスはどういうふうに行われるべきかということが、それぞれの代表が参加したそういう検討会の発足を政府一体になって、環境庁だけでなくて政府一体になってぜひスタートさせていただきたい、そのように私は思いますので、この辺は強く要求させていただきたいと思います。  それから、二十四条にあります「環境の保全に関する教育、学習等」について伺いたいと思います。  「環境の保全に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講ずる」と、これも努力規定になっているわけですが、どのような内容を想定していらっしゃるかについて伺いたいと思います。
  177. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 前段の先生の御指摘のところに、内外の環境アセスメントに対する動向というものを十分勉強する必要があるよという御議論がございました。  これにつきましては、私どもはもとより当然そうすべきだというぐあいに考えております。きょう午前中の参考人質疑の際にもございましたが、環境影響評価の法制度としては、アメリカを最初に、近年では、ECによる指令の問題、それからEC加盟国で順次法制化が進められているという問題がございますし、カナダには、それまでのガイドラインにかえましてアセスメント法を制定したという動きもあるわけでございます。当然こういうことも視野の中に含めて、私どもはこれから関係省庁にも呼びかけて勉強してまいるということをやっていきたいというぐあいに考えております。  なお、ここでちょっとお許しを得まして追加させていただきたいのですが、去る四月二十三日の本委員会におきまして、私、諸外国環境影響評価の実施主体に関連しまして、すべての国で事業者が環境影響評価を実施しているというぐあいにお答えしたのですが、というように速記の方になっているようでございますが、ほとんどすべての国ということでございまして、詳細に見ますと一部許認可権者がやっているところもございますので、その点はちょっと正確に、この際訂正をさせていただきます。  それと、後段の御質問の二十四条の関係でございますが、環境教育環境学習の振興の内容でございますが、先生御指摘になりましたように、今日の環境問題は国民生活社会経済活動一般に起因する部分が多うございまして、その解決のために国民一人一人がその取り組みを行っていく、しかも自主的かつ積極的にやっていただくということが必要不可欠になってきているわけでございます。  そこで、国民一人一人が人と環境とのかかわりなど環境保全の重要性について理解を深め、環境保全のために望ましい活動を行うということが必要であるわけでございますので、環境基本法二十四条では、そういった観点から、国民各界各層の積極的な行動が定着していくようにということで、単なる知識としてだけではなしに行動に結びつくような格好で定着していくようにという趣旨を含めまして、国が環境保全に関する教育や学習を振興することを位置づけたところでございます。  環境教育等の推進のために、環境庁といたしましては従来から、一つ環境教育のための基本的な教材の提供ということで、例えば「環境にやさしい暮らしの工夫」といったようなパンフレットを刊行いたしましたり、毎年、環境白書、これは大部なものでございますので、「図で見る環境白書」というものを全国の小、中、高等学校等に配付しておるところでございます。二番目に、地方公共団体の取り組みの支援といたしまして、地方団体職員の研修、また環境教育データベースの作成、提供などを行っているところでございます。さらには、自然との触れ合いの中での環境教育の推進ということで、自然体験滞在拠点の整備や自然に親しむ運動などの事業をやっているところでございますし、やはり何といっても児童の場合、学校教育というものほかなり重要な地位を占めておりますことから、環境教育推進のための文部省との連携ということもやっているところでございます。  今回、環境基本法案におきまして、こういう措置というものを法律的に位置づけをさせていただくわけでございます。そこで、私どもといたしましては、環境学習の一層の振興を図りまして、各界各層の積極的な行動が定着していくように施策を充実させてまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  178. 大野由利子

    ○大野(由)委員 私は、環境アドバイザーのような人を育てて地域で出前の講習を行うとか、環境保全のための実践活動に一緒に参加をしていくとか、相談の窓口になるようなものを地方自治体の中につくっていく必要があるのではないか。今ちょっと一つの参考例として消費者センターというのがございまして、いろいろ消費者教育とか消費生活でのトラブル等があれば相談の窓口になっているところがございます。全国の消費者センターから全部コンピューターでデータが国民生活センターに集まるようなシステムになっているわけですが、もちろん若干違うとは思うのですが、環境問題、国民のすべての皆さんがこういうことについて関心を持っていく、また何らか地元の足元のところで具体的な実践活動にかかわっていくという意味からも、こういう環境アドバイザーみたいなものを育てていくというのはどうかなと思うのですが、この点について御見解を伺いたいと思います。
  179. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘のように、環境問題に対する国民的な関心の高まりの中で、地方公共団体におきましては住民等に対する環境教育の推進にいろいろ工夫をしておるところでございまして、その一環としましては、今先生が御指摘になりましたような国民と行政のパイプとなります環境保全アドバイザーを育成するというようなことを宮城県や群馬県等でやっているところでございますし、また、国民に対する情報提供の拠点といたしまして、環境教育センター等の整備を神奈川県や大阪府等がやっているという非常に新しい取り組みが開始されているところが見られるわけでございます。  そこで、環境庁におきましても、こういった地方公共団体における取り組みをさらに推進いたしまして全国的な展開を図るために、今年度から環境保全アドバイザー等の人材育成や情報提供等の拠点のあり方について調査検討を行うこととしているところでございます。こういった検討作業を通じまして、地方公共団体の理解と協力を得ながら国民的な環境保全活動の推進のために私どもも努力してまいりたい。先生の御提言でございますので、私どももその方向に沿って鋭意努力させていただきたいと思っております。
  180. 大野由利子

    ○大野(由)委員 二十六条の情報の提供について伺いたいと思います。  教育及び学習の振興云々のために情報の提供が出ていますが、これは、環境について状況がどうなっているか、その他の開発とか環境保全に関する情報について、国民の側から教えてほしいという要求があったら国はこたえてくれる、情報を提供してくれるのだと受け取っていいのでしょうか。
  181. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 二十六条につきまして、環境の情報についての規定を置いているわけでございます。今日の環境問題を解決していくためには、やはり環境保全に関する情報を積極的に提供していくことが必要であるというぐあいに私ども認識しているわけでございます。このため、基本法案におきまして、特に国が環境の保全に関する必要な情報を適切に提供するよう努める旨の規定を置いたところでございます。  そこで、先生御指摘になりました、国が情報をそもそも保有していなかったような場合、あるいは個人または法人の権利利益の保護に配慮した結果提供することが適切でないと判断される場合といったような問題のある場合には、平成三年十二月に政府において申し合わせました行政情報公開基準というのがございまして、開示することが適当でない場合があるわけでございます。そこで、御要求がございました場合に、できるだけ要望にこたえるべく努力することはもちろんでございますが、先ほど申し上げましたその基準に照らし合わせまして適切でない場合もございますので、そういう場合には御勘弁をいただくということになろうかと存じます。
  182. 大野由利子

    ○大野(由)委員 この二十六条の中に「個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ」とあるわけですが、これは環境保全と法人の利益とどちらが優先するのでしょうか。
  183. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 具体的にどういった情報が提供できるかということにつきまして、先ほど申し上げましたように、政府において平成三年に申し合わせをいたしました行政情報公開基準というものを踏まえまして、個々のケースごとに判断する必要があるわけでございます。  そこで、行政情報公開基準では、例えば次のようなものは非公開とすることができると言っていまして、例えば法人その他の団体に関する情報でございまして、公開することにより法人等の競争上の地位とか財産権その他正当な利益を害するおそれがある場合というようなものがその例として挙がっているわけでございます。ただし、事業活動によって生ずる国民の生命や身体もしくは健康への危害または財産、生活の侵害から保護するため公開することが特に必要と認められる場合は、また除かれることになっております。  いずれにいたしましても、この基準に基づいてケースごとに判断する必要がある問題だというぐあいに私ども考えております。
  184. 大野由利子

    ○大野(由)委員 もう時間がなくなってきましたので、済みませんが、最後に一問だけ質問させていただきたいのです。  この二十六条の情報の提供は国の規定だけでございまして、地方公共団体のこと、または事業者についての規定が何らないわけでございます。水俣病の教訓におきましても、もっと早くいろいろ情報の公開がなされていて、本当にもっと情報の提供が行われて、また何らかの対策が講じられていれば、もっと被害が未然に防止できた、小さくて済んだであろうに、そういう悔やまれるような状況が本当に多々あるわけでございます。  そういった意味で、国、地方公共団体はもちろん、事業者におきましても、人の生命とか身体とか健康に危害を生じ、また生じるおそれがあるものは、最低限それぐらいは公開する必要があるという、そういうものをこの基本法の中にやはり盛り込んでいかないと、基本法の三条の中に「現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である」と出ているわけですが、この辺がちゃんとしていなければ、この基本理念にうたわれているのが果たして可能なのかどうか、そのように思うわけでございますが、この点について伺いたいと思います。
  185. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘になりました、環境に関する情報が適切に提供されなかったがゆえに被害が大きくなるということは、私どもとして非常に心しなければならぬ問題だというぐあいに考えるわけでございます。  事業者が保有する情報につきまして、人の生命、身体または健康に危害を生じ、または生ずるおそれがあるために公開することが必要であるというふうに認められる場合には、やはり当該情報の公表を義務づけるということも、規制措置一つとして基本法案第二十条の措置位置づけることができるというぐあいに私どもは考えているわけでございます。  ただ、午前中参考人の質疑にもございましたように、このような義務づけを行うにつきましては、公表すべき情報の範囲等を個別に明らかにしながら、個別の法律においてそれは適切に対応していくことが必要であるというぐあいに考えるわけでございます。一応道具立てはそろえたわけでございますが、現実の問題として、そういったような個別具体の検討を行いながらそこはやっていく必要があるというぐあいに考えます。  また、国が保有する情報でありまして、人の生命、身体または健康に危害を生じ、または生ずるおそれがあるために公開することが必要であると認められるものにつきましては、これは健康被害等予期しない影響が起こらないように、公表の方法等を適切に選択しながら、私どもは情報の提供というものを適時適切にやっていく必要があるというぐあいに考えております。
  186. 大野由利子

    ○大野(由)委員 以上です。
  187. 原田昇左右

    原田委員長 寺前巖君。
  188. 寺前巖

    ○寺前委員 二十分間の質疑時間でございますので、要領よく御答弁をいただきたいと思います。  法案の第八条「事業者の責務」では、事業者は、廃棄物の適正処理の責務を有する、製品が廃棄されることによる環境への負荷の低減に努める、環境への負荷の低減に資する原材料を利用するよう努めなければならない、こういう規定があります。きょうは、この規定をめぐって、現実的にこの基本法ができたことによってどういう前進を図ることができるのだろうかな、具体例を通じて聞きたいと思います。  厚生省、おいでいただいているでしょうか。ありがとうございます。  去る九一年十二月に大分県の三光村というところで廃タイヤが大規模火災を起こしています。三カ月間燃え続ける。こういうことはアメリカでは比較的頻繁に起こっているようで、パージニア州で千五百万本が九カ月にわたって燃えておったということがあります。こういう問題をめぐって、それこそ環境への負荷の低減を図るためにどういう対策がこれから具体的にされていくのだろうかということをめぐって聞きたいと思うのです。  そこで、この大分県の三光村で起こった問題というのは、廃タイヤチップが約三万立米のうち一万二千立米が燃焼し、それから、タイヤが燃えたものですから、重油状のオイルが農業用水路に流れ出る。したがって、急遽慌てて火災現場周辺に掘ったため升からバキューム車を持っていって回収をする。回収した量は五百九十八トンという大変な量になっているし、いまだに井戸水や地下水の心配もあるし、バキュームカーでオイルを取っているという状況が続いていると思うのです。  そこで私は、この問題をめぐって二つの面で聞きたいと思うのです。一つは、現実的にこの対処がどういう進行になっているのかという問題です。それからもう一つは、こういうような事態をこれから全国的に想定してどういう対処が要るのだろうか。これを八条をめぐって具体的に聞きたいと思うのです。  まず、厚生省にお聞きをいたしますが、ここのシンコーという株式会社がこのタイヤを持っていたわけですが、昨年の二月に知事に提出されたところの内容を見ますと、ことしの十月にはこの廃タイヤは全部搬出するようになっているのですが、現状可能性はあるのですか、ないのですか。いかがでしょう。
  189. 飯島孝

    ○飯島説明員 先生お話しの、大分県の株式会社シンコーで保管しておりました約六十万本の廃タイヤでございますが、昨年の二月シンコーが県に提出した改善計画書に基づきまして、これまで、この三月まででございますが、約二十三万本の撤去が完了しているところでございまして、順次撤去を実施しているところでございます。  なお、この改善計画書では、本年十月までにその撤去が完了する予定となっておりまして、予定どおり進めているところでございますが、一部のタイヤにつきまして、処理先の受け入れ基準に適合させるためにタイヤを破砕するといった措置が必要な場合がございます。そのタイヤの破砕につきまして現在関係者間で協議しているところでございますので、十月の予定が若干ずれ込むかもしれないということは私どもも伺っているところでございます。  いずれにいたしましても、この改善計画書を基本といたしまして、私ども引き続き大分県を通じて指導してまいりたいと思っております。
  190. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで、一部若干不安の要素があるという問題ですが、それはセメント工場の側に持っていくにしても、炉の投入規格外のタイヤは引き取らないという問題が出ているわけですね。これは私は、これからの高速自動車道路時代にこういうタイヤの問題というのは出てくる話だと思うのです。現地を調査してみるとこれが五〇%も占めているというのですから、ちょっと計画どおりにはいかない要素というのは、受け取ってくれないという問題が起こってくるから生まれてくると思うのです。  これからの問題、関連するのですが、私はこういう規格外のものをちゃんと責任を持って処理することを考えていかなきゃいかぬじゃないかと思うのですが、これは厚生省としては何か手を打っているのですか。
  191. 飯島孝

    ○飯島説明員 廃タイヤの処理につきましては、先生御指摘のように、セメント工場の協力を得まして燃料として利用する形で処理されているところでございます。  先生も御指摘ございましたが、セメント工場における受け入れに当たりまして、破砕されているということが前提とされる場合もございます。その場合には何らかの形で破砕施設が必要になってくるわけであります。厚生省としては、タイヤを保管しているシンコー、受け入れのセメント工場、あるいは自動車タイヤ協会とも連絡をとりまして、破砕施設の整備も含めまして、廃タイヤの適正処理体制の整備が推進されるよう、大分県を通じまして指導してまいりたいと考えております。
  192. 寺前巖

    ○寺前委員 それと同時に、オイルが出ているものですから、地下浸透が起こる。そうすると、井戸水がちょっと問題になってくるわけですが、保健所等が行っている井戸水のモニタリング調査結果を適時公表するということが、これは日常生活、不安な姿でございますので、その点はどうなっているのでしょうか。
  193. 飯島孝

    ○飯島説明員 先生初めにお話ございましたように、火災の発生に伴いまして油分が発生して、それが付近の河川へ流出するおそれがあったということから、オイルフェンスを設置したりしまして流出油の回収対策を講じました。また、地下水につきましては、現場周辺の井戸水の水質検査を実施しておりまして、私どもが報告を受けているところではいずれも油分の検出はなく、また、鉄分とか亜鉛等につきましても水道法の水質基準を下回るなど、特に問題となる数値は検出されていないと聞いております。  県では、この火災残渣の撤去が完了して油分の流出する発生源が終わった後におきましても、引き続き周辺の井戸水などの地下水の監視を継続することとしておりまして、必要に応じまして検査結果の公表も含めまして、付近住民に対する不安解消に向け必要な方策を講ずるよう、県を指導してまいりたいと考えております。
  194. 寺前巖

    ○寺前委員 大分県の事態がそういうことになっているわけですけれども、そこで、こういうような事態というのは、この自動車時代ですから、全国各地に事が起こったら大変なことになるなと心配する要素が出てくる。この問題についてその次に聞きたいと思うのです。  私の聞いているところでは、昨年の四月ですか、厚生省の方で全国的な調査をおやりになったようです。廃タイヤの保管量が、二十万以上が十七カ所で六百九十九万本、約十万本以上のところが十カ所で百十二万本、約五万本以上のところが十八カ所で百二十万本、約一万本以上のところが七十六カ所百四十八万本、合計百二十一カ所千七十九万本が廃タイヤのままで保管されているように報告を聞いているのですが、それは間違いございませんか。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  195. 飯島孝

    ○飯島説明員 平成四年に厚生省が実施した産業廃棄物処理業者が保管している廃タイヤの調査の結果は、先生御指摘のとおりでございます。
  196. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで、昨年廃棄物処理法の改正をやりました。さて、あの廃棄物処理法の改正に伴って、施行規則の第七条の二に保管期間という問題が出てきていますし、あるいは保管基準というのが八条に出てきております。こういう問題を考えてみたときに、長期にわたってタイヤが積まれたら、そこでは衛生上も蚊が発生するとかいろいろな問題も出てくるし、またこれだけの大量のものが長期にわたって保管をされているという事態では、いつ何とき何が起こるかわからぬという不安が地域住民には生まれてくるというふうに言わざるを得ないわけです。  そこで、廃棄物処理法の改正で、保管期間を制限することとしたと私は聞いているのですが、この保管状況の改善がその後なされているのでしょうか、どうなっているのでしょうか。
  197. 飯島孝

    ○飯島説明員 先ほどの廃タイヤの保管状況調査の結果をまとめまして、昨年の九月に都道府県に対しまして適正処理の指導をしたところでございます。  先生御指摘のとおり、廃棄物処理法の改正法が昨年七月から施行されておりまして、その中で、収集、運搬、処分等の保管の基準及び排出事業者の保管基準も強化しております。さらには、特に廃タイヤの保管につきまして、保管期間の規制、すなわち適正な処分などを行うためにやむを得ないと認められる期間を超えて行ってはならないということを定めておりまして、この改正廃棄物処理法に基づきまして廃タイヤの適正処理を指示したところでございます。  現在保管状況がどうなっているかにつきましてのフォローアップの調査結果はまとめておりませんが、この指導を今後とも徹底してまいりたいと考えているところでございます。
  198. 寺前巖

    ○寺前委員 大分県でこれだけの大事件が起こっているのです。もうそれから一年近くにもなる。法改正が七月ですから、それから考えても半年以上は優に過ぎている、一年近くになろうとしてきている、こういう事態なのですが、現地大分県の実情を見ると、三光村以外に一万本以上の保管箇所が三カ所あったが、そのうち大分市内にある約八万本の野積みは現在もそのまま放置されている状況であります。こういう事件を起こしているところでさえもこういう事態ですから、保管期間の制限を徹底するように引き続き厚生省にお願いをするとともに、また、これだけの大事故が起こったときに、そのタイヤが焼けて流れ出るオイルの量を見たときに、堰堤とかあるいはため弁とかいうものを、これらのものの万一のことを考えて設置を義務づけるようなことをお考えになる必要があるのではないだろうか。御検討なさっているのかどうか、お聞きしたいと思います。
  199. 飯島孝

    ○飯島説明員 先ほど申し上げました、昨年七月から施行された廃棄物処理法に基づきまして、囲いの設置、飛散、流出、地下浸透、悪臭防止などの措置を保管業者に求めているところでございます。また先ほど申し上げましたように保管期間についても規制しているところでございまして、こうした措置が適切に実施されるならば今回の事件のような火災は防止できる、このように考えているわけでございます。  御指摘のオイル対策の堰堤やため升の設置につきましては、廃タイヤを保管すれば火災が発生するということを前提としたようなお話でございまして、廃棄物の適正処理の観点から一般的にその設置を指導することは必ずしも適切でないと考えておりますが、こういった問題も起きたことでございますので、廃タイヤ対策を推進していく中で一つの検討課題としてまいりたいと考えております。
  200. 寺前巖

    ○寺前委員 それから、先ほど申し上げましたけれども、廃タイヤ問題をめぐってリサイクル率が八六%ということになっているのですが、さらに引き上げるだけではなくして、タイヤメーカーや大手販売業者へ回収とか処理の責任を負わせるようにしていかないと、結局それが未処理のままに、行方不明のままにまた何らかの問題を残していくということになるのではないだろうか。大手販売業者なりタイヤメーカーなりに対して何らかの責任を負わせることを検討する必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  201. 飯島孝

    ○飯島説明員 廃タイヤの問題を含めまして産業廃棄物の処理につきましては、第一義的には廃棄物処理法にも規定されておりますとおり、排出事業者及びその委託を受けた処理業者が責任を持って実施すべきものでございます。  しかしながら、この廃タイヤの問題につきましては、この発生が大量で、かつ全国に及んでいるということから、厚生省といたしましては、廃棄物処理法の第三条「事業者の責務」の規定がございますが、これは環境基本法案の第八条の規定につながるわけでございますが、この趣旨を踏まえまして、タイヤメーカーあるいは販売業者の協力も得て、先ほど申し上げましたセメント工場における受け入れを推進するということも含めて、回収処理体制の整備について検討を進めているところでございます。
  202. 寺前巖

    ○寺前委員 先ほどから、厚生省に具体的な問題を通じてるるお聞きをいたしましたが、次に、環境庁にお聞きをしたいと思います。  ラジアルタイヤ時代になってきております。そうすると、高速走行性能優先のタイヤ製品生産に走っていきます。そうすると、リサイクル可能な、環境汚染を引き起こさないタイヤというものを考えないと、これが新しい公害源になってくるという問題を私たちは考えなければならぬと思うのです。その点について、環境庁として、この八条に言うように環境への負荷の低減に努めるということを具体化させるために、こういう問題について何らかの問題提起を関係方面にしておられるのかどうか、みずから検討しておられるのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  203. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生は先ほどから厚生省との間のやりとりをやっておられたわけでございますが、今回環境基本法案におきまして、私ども、事業者の責務といたしまして第八条に、一項では事業活動に伴って生ずる廃棄物の処理、第二項におきましては、適正な処理が困難とならないような製品開発等を行うための、事業活動に係る製品等が廃棄物となった場合の適正な処理が図られるように必要な措置、さらに第三項におきまして、例えばリサイクル可能な製品の開発や再生資源の利用等を含めて廃棄物の減量を図る等の観点から必要な措置に努めることを規定させていただいたところでございます。  これらの問題につきましては、現在廃棄物処理やリサイクルの推進について、先生御指摘になったような廃棄物処理法、また再生資源の利用の促進に関する法律のほかに、環境庁といたしましても、直接エコマーク事業等によりまして、環境に優しい商品の奨励というような観点から私どもは行政をやってきておるわけでございますが、今回こういう規定を置かせていただいたという趣旨を踏まえまして、先生御指摘になるようなリサイクルに資するタイヤ製品の開発等の面を含めまして、今後関係省庁ともども諸制度の適切な運用を図りまして、関係事業者の自主的、積極的な取り組みが促進されるよう、私どもとしては努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  204. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が参りましたので、最後にもう一つお聞きをしたいと思いますが、先ほどから言いますように、タイヤの構造で、タイヤにトレッド部とかショルダー部とかサイドウォール部とかビード部とかいろいろな構造上の部門がありますが、そこで、単にタイヤという一般論で、ゴムとしての処理だけではなくして、そこにいろいろなものが入り込み出す。これが燃えた場合に、土壌汚染という問題がそこから波及をしてくるわけです。したがって、このタイヤが燃えた場合にどういう不安が起こるのか、その構造のそういう部分についてどういう内容になっているのか、オイルの性状、成分の分析などをやはり明らかに公表させるということは、後の対策上非常に重要な位置を占めると私は思うのです。  そういう点で、こういう環境汚染防止対策としてタイヤメーカーにタイヤの成分について公表させるという措置をおとりになるということは考えておられないのかどうか、それをお聞きし、そして環境庁長官に、負荷の低減に資するために努力するというだけではなくして、私は、積極的に義務規定にして、こういう製造業者とか管理業者にきちんとした責任をとらすような方向についてはどういうふうにお考えになるのか、最後にお聞きしたいと思います。
  205. 赤木壯

    ○赤木政府委員 お答えいたします。  一般的に製品の成分を事前に全部明らかにするということでどのものにも対応するというのは大変な制度になるわけで、そういう考え方一つあるかとは思いますけれども、こういうふうないろいろな問題が生じないようにということで廃棄物処理法で処理基準等も決めてございますし、また、先ほどお話があったように、それに基づく適正処理体制の整備等も進めておるわけでございまして、こういうふうなことを的確にやることによって環境保全上支障がないような体制を整備していくということが、現在の時点では重要ではないかというふうに考えておるところでございます。
  206. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 寺前先生にお答えいたします。  今日の環境問題の解決で、廃棄物問題ということは大変重要な課題であることは先生の御指摘のとおりでございます。今回、国会で御審議をいただいております環境基本法案におきましては、廃棄物の適正な処理が図られ、そしてまたリサイクルが推進されることとなるよう、事業者の責務も規定しております。これらの規定の趣旨を踏まえまして、関係省庁における各種の制度の適切な運用、また関係事業者の自主的、積極的な取り組みの促進など、さらに一層の対策が進められるよう努めてまいりたいと思います。
  207. 細田博之

    ○細田委員長代理 伊藤英成君。
  208. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 環境基本法案について質問をいたしますけれども、まず最初に、環境基本計画について伺います。  理念的なこの環境基本法案を実効あらしめるためには、環境基本法案に明記されております環境基本計画の内容それから定義が非常に重要な意味を持つわけであります。  環境基本法案第十四条に記されております環境基本計画のくだりはこういうふうにあるのですね。「環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱」と「環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項」について環境基本計画を定める、こういうふうになっているわけでありますが、具体的にどういう中身のことを述べているのか、そしてまた、今後の策定の段取りについてお伺いをいたします。
  209. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘の法第十四条に関する規定の中身でございますが、環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱というものといたしましては、望ましい環境あり方環境影響評価、各種の規制措置、施設の整備、環境教育及び学習、環境保全に関し講ずべき施策の全体像というものを記載することを考えておりますほかに、地方公共団体、事業者、国民に期待される取り組みを記載することを考えております。その他の環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項といたしましては、すべての主体による積極的な取り組みの重要性、計画のフォローアップ等について記載することを考えているところでございます。  本計画の具体的内容につきましては、私ども、環境政策をこれから政府全体として総合的、計画的に推進していかなければならぬという趣旨から、そのために十分な効果が発揮できるものになるように十分検討してまいりたいというぐあいに考えております。  次に、第二番目の御質問の策定の段取りについてでございますが、この計画につきましては、中央環境審議会意見を聞いて内閣総理大臣が案を作成して閣議で決定するということを手順として考えているところでございます。  そこで、環境基本法成立後、速やかに私どもといたしましては準備に取りかかり、中央環境審議会に諮ることとしたいというぐあいに考えております。このため、私ども本年度予算におきましては、環境保全のための長期計画策定費というものを計上させていただいたところでございます。環境基本計画策定に向けての調査を早速開始いたしまして、平成五年の一年間でこの準備を進めるのは若干無理かと思いますが、平成六年度ぐらいにかけましてこの段取りを鋭意進めてまいりたいというふうに考えております。
  210. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 この環境基本計画を実効性あるものにするためには、環境状態決定する要因ごとに環境保全と回復目標、いわば具体的な環境保全と回復のタイムスケジュールを設定することが重要だと考えますが、そうしたイメージを持っておられるのか、伺います。
  211. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 環境基本計画におきましては、望ましい環境あり方と講ずるべき施策の大綱を一覧的に定めるということを考えているものでございまして、国が環境保全に関する施策を講ずる際に、全体が一覧性を持って、しかもなおかつその基本的な方向が示されるものになる必要があるというぐあいに考えているところでございます。  それで、先生が御指摘になりました計画における目標設定のあり方、それから環境保全と回復目標といったような、どういう計画設定の仕方をするかということにつきまして、私どもいろいろ考えているところでございますが、先生の問題指摘も含めまして中央環境審議会の御審議をいただいて計画案を策定することといたしたいというぐあいに考えております。これからいろいろな人の御意見を聞きながら、政府が全体としてそちらの方向に向かって進み得るという実効性を持った計画になるよう、私どもとしてはこれから十分検討してまいりたいというぐあいに考えておりまして、現段階でこれといったような一つの方向がまだ定められているわけではございません。
  212. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 実際に実効あるものにしなきゃいけないわけでございますから、そういう意味で御検討をお願いしたいと思います。  次に、環境アセスメントの問題について伺うわけでありますが、一部の政党団体あるいは有識者等が国による一律のアセスメント法の制定を主張もしております。しかしながら、地域により環境状態が異なるのが現実であります。全国画一的な環境アセスメントを実施すると、現在のアセスメント基準が緩くなる地域もあったり、全く開発に着手できない地域というものも出るということも予想されるんですね。  東京圏の開発と例えば北海道圏の開発について全く同じアセスメント基準を適用することが、果たして自然保護と開発の調和というようなことを考えたときに本当にいいかどうかということもあるでしょうし、また、国の権限をいかに地方に移譲するかということが今非常に大きな課題になっているわけでありますが、国が地方の独自性を縛る内容の法律を制定していいかどうかということもあると思うんですね。地方の独自性を尊重して持続可能な開発を推進する、こういうためにも、全国一律のやり方ではなくて、地域のことはその地域自身の住民にゆだねるという考え方もある、こう思うのですが、大臣は環境アセスメント法制定についてどのような見解を持たれるか、伺います。
  213. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 伊藤先生にお答えします。  今さら私が申し上げるまでもございませんが、環境影響評価ということがいかに環境問題の推進で重要な柱であるかということは諸先生のお説のとおりでございます。したがいまして、環境影響評価につきましては、現在国においては、国が関与する大規模な事業について閣議決定要綱などによって統一的に実施しており、また一方、地方公共団体におきましては、地域の実情に応じて条例または要綱等によりその推進を図っておりますことは先生の御案内のとおりでございます。政府といたしましては、国及び地方におけるそれぞれの環境影響評価への取り組みは、双方相まって我が国における環境保全の総合的な推進に寄与しているものと評価しておりますので、その評価につきましては別の評価も出てくるかもしれませんけれども、一応現在はそのような形の影響評価を進めて、それなりの評価をしております。  環境影響評価の具体的な実施に関してこれからどのように個別的な措置が適当であるかということにつきましては、昨年十月の中公審などの答申におきまして、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行の措置を見直していくことが適当」という答申を得ております。今回の基本法案はその答申を踏まえまして環境アセスメントに取り組んでおるところでございますが、ただ、これを踏まえた現行の措置の適正な推進に努めることは当然でありますけれども、その時点において必要に応じて見直しを行うこともするということも今回の基本法の中にうたっておるところでございます。
  214. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私ども民社党としても、今大臣がお話をされたその文脈で、昭和五十九年に閣議決定をされました「環境影響評価の実施について」の内容を再検討して、そして地方公共団体の作成する環境アセスメント条例のガイドラインとして、必要に応じてそれをもとにして地方公共団体が条例をつくるというような形にすることがいいんではないか、こういうふうに思っているんですね。そういう意味で、もう一度環境庁それから自治省にも、どのような見解を持たれるか伺います。
  215. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 大臣の方から大略御答弁申し上げたところでございますが、私どもは、国が関与する、国が実施する事業につきましては、やはり政府におきまして統一的に実施することが望ましいのではなかろうかと考えております。他方、地方がその実情を加味したアセスメントを、条例、要綱等によりまして環境影響評価を推進していくということは非常に重要なことだというぐあいに考えております。そういう意味で、私どもは、技術的方面、技術的事項等につきまして地方公共団体から意見を求められれば積極的に応援してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。  私どもは、国、地方、それぞれ現在アセスメントを実施しているわけでございますが、それぞれが特色を発揮しつつ、環境汚染の未然防止の観点から適切な役割を果たしていくということを期待しているところでございまして、そういう措置において問題があるかないかということは、もろもろの条件等を見ながら今後検討していくべき問題であるというぐあいに考えております。
  216. 中川浩明

    ○中川説明員 お答えを申し上げます。  環境影響評価につきましては、既に広く地方公共団体でも実施をされておりまして、現在までに都道府県、政令指定都市について見ますと、三つの都道府県及び一つの政令指定都市で条例によって実施をされておりますし、二十八の府県及び三つの政令指定都市におきましては要綱または指針が制定されているところでございます。  各種の事業を実施する前に環境アセスメントを実施することは、公害の防止及び自然環境の保全といった観点から極めて重要であると考えておりますので、地方公共団体が独自の判断によりまして積極的にこれに対応していくことは望ましいものと考えております。その際、地域によって自然条件や環境汚染等の状況が異なっておりますことから、環境アセスメントの具体的な実施方法につきましては、地方公共団体の独自の条例の制定も含め、それぞれの地方公共団体において判断した上で実施されることが、地方自治の尊重といった観点からも望ましいものと考えているところでございます。
  217. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 閣議決定要綱に基づくアセスメントについては、その相当部分が建設省が実施しておると理解しておるのです。環境状況は地域によってさまざまであるわけですが、建設省がこれまで実施してきましたアセスメントの中でこのような地域の実情にどう対処してきたのか、また今後どのように環境アセスメントに取り組んでいかれるのか、その考え方を伺います。
  218. 澤井英一

    ○澤井説明員 アセスメントをかなりたくさん実施いたしております建設省といたしましては、地域の実情に精通しております都道府県知事との連携が非常に重要かと考えております。また、関係住民の御意見も聞くということで、動植物への配慮など地域の環境の状況に即したアセスメントの実施にこれまでも努めてきたところでございます。  今後とも、地域の特性に応じましていろいろと対策手法などを工夫していくといったようなことを初めといたしまして、予測あるいは対策手法の充実を図り、さらに的確なアセスメントの実施に努力してまいりたいと考えております。
  219. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 次に、環境保全と経済的手法の問題について伺います。  環境基本法案第二十一条第二項において、負荷活動を行う者に対し適正かつ公平な経済的負担を課すことにより、その者がみずから環境への負荷の低減に努めることとなり、環境の保全上の支障を防止するための有効性を期待される場合は、その施策を検討、調査し、必要とあればその措置を講ずるという内客の記述があるわけであります。  この条文は、将来における環境税の導入を意図しているものかどうか、環境庁に伺います。
  220. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 この条文につきましては、今日の環境問題が、通常の事業活動や日常の生活を含めまして幅広い社会経済活動そのもの環境への負荷を与えているということから、環境問題を解決していかなければならぬ、そういう局面に今我々は遭遇している。その場合に、従来とっておりました規制手法だけでその活動そのものをやめさせてしまう、抑えるというわけにはいかないる面があるわけでございます。  そういう局面におきましては、従来の手法に加えまして、市場メカニズムを通ずる経済的手法を活用することの有効性というものは国際的にも奨励されておりますし、また有効性そのものは、効率的であること、またそれによって技術開発を促進することに有効であるというようなことから、その有効性世界的に一般的に認められているという状況にあるわけでございます。  そういった中で、経済的手法中公審等の答申に基づきましてこの基本法位置づけたわけでございます。その場合に考えております経済的手法といたしましては、税のほかに課徴金とかデポジット制度、さらには排出権を取引するといったようなことも経済措置の中に入ってこようかと思いますが、いろいろあるわけでございます。しかし、いずれにしましても、これらの措置につきましては負担というものを伴う措置でありますことから、そういった措置については、その措置効果、また国民経済に与える影響等について十分研究をしなければならぬ、しかも、負担の問題ですから、なおかつそれは国民の理解と協力を得なければならぬというような趣旨で、したがって、これにつきまして国民の理解と協力を得る必要があるということを極めて慎重に書いているわけでございます。  したがって、この規定に基づきましてどういう措置が必要かということになりますと、本条文の趣旨にのっとりましてこれから調査研究を進める必要があるわけでございます。私どもはもう一部研究は始めておるわけでございますが、そういったような問題につきまして、前段階として適切な調査研究、それからもう一方では国民の理解と協力を得る、それが基本法立場でございまして、そういったような状況が整った場合には、個別法においてそういうことを措置するというような段取りになろうかというぐあいに考えておるわけでございます。
  221. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間も参りましたから、最後に、今のお話に関連して伺いたいと思うのです。  したがって、今のお話によりますと、直接関係があると言った方がいいのか、やや離れますがと言った方がいいのかもしれませんが、よく環境税云々ということが言われたりしますね。最近はちょっと静かになっているかもしれませんが、そういうことが言われたりいたしました。去年の地球サミットのときにもあるいはその前段階でもいろいろなことが言われたりしたのですが、例えば環境税、こういったときに、だからこれはやや一般論の議論と考えていただきたいのですが、それはどういう取り方をするのだろうか、どこに使おうとするのかという話になるわけですね。  もしもこういう議論のときに、いわゆる地球環境問題を考えるとしたときに、基本的にはこういうことを考えなければいけない、私はこう思っているのです。地球環境問題、こういったときには、あくまでその本質は南北問題というふうに考えなければなりません。だから、もちろんいわゆる先進国がどういうふうに努力をするかという側面と、そして途上国あるいは発展途上国は人口問題とかその他いろいろな問題について環境ということを配慮しながらどういうふうにうまく発展をさせていこうか、そのためにどういうふうに援助をし、支援をしていくかというふうに考えるべき話ですね。  したがって、いわば途上国あるいは発展途上国に対してどういう援助の仕方をするかという話に基本的にはなる。だから、そういう部分が非常に大きいと考えなければなりませんし、そこを考えようとしたときには、例えば財源というようなことを考えれば、これはいろいろな考え方がありますが、いわゆる一般財源からそこに充てるというような考え方を本来すべきものである、こういうふうに私は思っておりますが、御意見があればお伺いして、質問を終わります。
  222. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 私、先生がおっしゃったことと同じことをお答えすることになろうかと思いますが、私どもは、基本法におきまして想定しており、またその場合、経済措置といたしまして環境税みたいなものを考えます場合におきましては、やはり環境への負荷を低減するための措置としてそういった措置が必要かどうかということを中心にして考えるべきだというぐあいに考えております。財源問題と結びつけて考えますことはこの環境基本法の二十一条の趣旨とは若干異なってくるということになろうかと思います。  ただ、環境税みたいなものを仮に導入したとするならば、その場合は、付随的に、また結果として収入が上がってくることは事実でしょうけれども、それは環境対策経済措置としての観点からだけではなしに、その使途のあり方としては別途議論すべき問題であろうというぐあいに考えております。例えばこの三月にOECDで環境税に関する一つのリポートが出たわけでございますが、そこにおきましても、収入の使途といたしましては、一般財源への充当、また他の税の減税、それから環境政策への充当、いろいろな考え方が示されているところでございます。  私どもとしては、経済措置そのものとは別の議論、やはり財政論としての意味を持ってきていると思いますので、先生御指摘のように、ODAの財源としてどういうものを充てるべきか、地球環境問題に対する財源としてはどういうふうに考えるべきかということは、一種の財源論、財政論としてそれはアプローチすべき問題であるというぐあいに考えております。
  223. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 終わります。ありがとうございました。
  224. 細田博之

    ○細田委員長代理 次回は、来る十三日木曜日午前十時公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会