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1993-02-26 第126回国会 衆議院 環境委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月二十六日(金曜日)     午前九時三十一分開議 出席委員   委員長 原田昇左右君    理事 青木 正久君 理事 塩谷  立君    理事 高橋 一郎君 理事 細田 博之君    理事 持永 和見君 理事 斉藤 一雄君    理事 馬場  昇君 理事 大野由利子君       住  博司君    武村 正義君       戸井田三郎君    前田 武志君       増岡 博之君    谷津 義男君       柳本 卓治君    山下 徳夫君       岩垂寿喜男君    小川 国彦君       岡崎トミ子君    田中 昭一君       時崎 雄司君    草野  威君       寺前  巖君    中井  洽君  出席国務大臣         国 務 大 臣 林  大幹君         (環境庁長官)  出席政府委員         環境庁長官官房 森  仁美君         長         環境庁企画調整 八木橋惇夫君         局長         環境庁企画調整 加藤 三郎君         局地球環境部長         環境庁企画調査 松田  朗君         局環境保健部長         環境庁自然保護 大西 孝夫君         局長         環境庁大気保全 入山 文郎君         局長         環境庁水質保全 赤木  壯君         局長  委員外出席者         厚生省保健医療 澤  宏紀君         局疾病対策課長         厚生省生活衛生         局水道環境部水 浜田 康敬君         道整備課長         運輸省自動車交 洞   駿君         通局企画課長         建設省都市局公 山田 勝己君         園緑地課長         建設省都市局下         水道部公共下水 安中 徳二君         道課長         環境委員会調査 西川 義昌君         室長     ————————————— 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   住  博司君     越智 通雄君   戸井田三郎君     今井  勇君   前田 武志君     石原慎太郎君   増岡 博之君     中山 太郎君   谷津 義男君     浜田 幸一君   柳本 卓治君     松永  光君   寺前  巖君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     前田 武志君   今井  勇君     戸井田三郎君   越智 通雄君     住  博司君   中山 太郎君     増岡 博之君   浜田 幸一君     谷津 義男君   松永  光君     柳本 卓治君   不破 哲三君     寺前  巖君 同月二十六日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     中井  洽君 同日  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚本 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害健康被害補償等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第二〇号)  環境保全基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 原田昇左右

    ○原田委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡崎トミ子君。
  3. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 日本社会党岡崎トミ子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  地球環境問題は、生命の生存基盤にかかわる緊急で重大な問題と大臣所信表明の中で述べておられますように、環境問題に今すぐ取り組まなければならないという認識は私たち共通のものであることは言うまでもありません。このような時期にこそ、環境庁の存在と手腕が問われると思います。私もまた国政に携わる者の一人として、大臣と意を同じくしまして、一生懸命に働いていきたいというふうに思っております。  ところで大臣は、就任されますときに、長官には私のような者ではなくて副総理級の人がなるべきだとおっしゃったことを、環境問題を高く位置づけていらっしゃるというふうに私も思いまして、そのお考えを支持したいというふうに思っております。大臣環境を守って改善し、あるいは良好な環境を維持するという共通認識を持った者同士として、きょうは誠実にいろいろとお答えをいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。  まず、緊急の課題として、冒頭水俣病問題について質問をさせていただきたいと思います。  公式発見から既に三十七年が経過して、被害者高齢化が進み、死亡者が続出している現在の状況の中で、被害者早期救済早期解決は一刻も早く望まれるところだろうと思いますが、その点について大臣のお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。
  4. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 岡崎先生の御質問お答えします。  水俣病の問題は、御案内のように我が国の公害問題の原点と考えてもよい出来事でございますし、現在でも環境行政の中の最も重い課題一つであると私自身認識いたしております。
  5. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 ところで、二十三日の環境委員会におきまして、八木橋企画調整局長が、あくまでも自助努力としながらも、チッソからの支援要請があった場合には何が必要なのか真摯な態度で構えているというふうにお答えになられました。  もう少し具体的に、どのような支援をイメージしておられるのか、また、環境庁としてリーダーシップをとって関係省庁に働きかけていくお考えがあるか、これをまた長官の方にお聞かせいただきたいというふうに思います、
  6. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私の答弁に関する御質問でざいますので、まず私からお答え申し上げまして、その後で大臣にお願いしたいと思うわけでございます。  おっしゃるように、先日の環境委員会におきまして、私は、チッソが現在不況の影響を受けまして極めて厳しい経営状況の中にあるというような認識のもとに、チッソがその補償責任を全うするために今鋭意努力をしている最中である、経営努力をしている最中であるので、それを慎重にかつ注意深く見守っていきたいというぐあいにお答えいたしました上で、さらに、チッソ支援を求め てきた場合にはどうするのかということがございましたので、その場合には私どもも真摯に考えてまいるというぐあいにお答え申し上げたわけでございます。  それでは具体的にどういう意味で真摯な態度でということなのかという御質問でございますが、それにつきまして、もしチッソから支援要請があれば十分にその話を伺い、また適切に対応したいというぐあいに考えているところでございまして、先生今お触れになりましたことでもございますが、私どもはよく事態推移を慎重に見守り、事態推移に応じて、必要があれば関係省庁ともども所要の検討をしてまいりたいというぐあいに考えているわけでございます。
  7. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  先生案内のように、この問題につきましては、実は国際的な通念といたしましても、原因者といいますかあるいは汚染者といいますか、その原則がございまして、つまりPPP原則でありますけれども、この原則があります。もちろんこれは今はもう国際的な通念になっておりますけれども日本でもやはりPPP原則はずっと貫かれて今日まできました。これはやはり、企業活動それなり企業活動の構造の中で行われておりますので、みずからの努力というものが最大の貴重な姿であろうと私は思っております。  したがって、今先生の御質問の中で、先生のお考えの中には、長官は口では言うけれども随分冷たい男じゃないか、まさか氷のようにとはおっしゃらないかもしれませんけれども、それに近い冷たい男じゃないのかというお考えがあるかもしれませんが、私の体にもやはり熱い血が通っております。しかし、それはそれなりに、やはりチッソ努力なさっているときには最大限努力をしていただきたいという祈りを込めた気持ちで私はこれを見守っております。したがって、現在の段階ではチッソ努力最大限に祈っているというのが私の心境でございます。
  8. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 私は、三十七年間も経過して、そしてこんなに長引いて、しかも皆さん年をとられていて、実は昨日も国会についての請願もございまして、私の議員会館の部屋も訪ねてこられて、そういう様子から見ましても、まだ、支援要請があった場合という待ちの姿勢であるということがとても残念でならないと思います。リーダーシップをとってほしいという意味を込めて、具体的な支援のイメージを、持っているものについて示していただきたく思いましたけれども宮澤内閣の言っております生活大国の中には、高齢化対策あるいは福祉対策も重要な施策一つになっているというふうに思っております。まさに、水俣病に苦しむ患者さんにとっては、病状の問題とともに高齢化に直面するという二重、三重の苦渋があって、そして将来の不安にもつながっているだろうというふうに思いまして、本当に今国が手を差し伸べずして早期解決はないというふうに思っております。  ただ自助努力を見守るのではなくて、一刻も早く救済対策に乗り出すべきではないかというふうに思っておりますことを、ここで冒頭に強く要望しておきたいというふうに思います。  ところで、一昨日、二十四日の中日新聞によりますと、長良川河口堰について中部弁護士会連合会報告書をまとめたというふうに出ておりました。これが新聞見出しでありまして、「治水マイナス」というような見解が大見出しになっております。せき建設推進する側、反対する側どちらでもない第三者機関による調査報告は初めてということで、非常に注目すべきことだというふうに思っております。  内容的には、治水利水水質災害発生など八項目、これは愛知、三重、名古屋にまたがるデータをおよそ二年半もかけて分析したものでございます。それで、この報告の最終的なところでは、治水マイナスと忠告して工事の一時中止を求めているというものなのですけれども、どんなふうにそれを思われるか。大臣は就任なさったときに、建設省環境保全に取り組んでおり、別の問題が起こらない限りは姿勢を変えないというふうに記者のインタビューに答えておっしゃっているわけなのですけれども、この治水マイナスというふうに中部弁護士会連合会環境委員会が出されたものというのは、非常にこの問題について大きな問題だというふうに考えております。  まず大臣の所感をお伺いしたいというふうに思います。
  9. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生の御質問お答えするのには答えの内容が大変乏しくて恐縮でありますけれども、実は中部弁護士会云々という資料をちょっと私もまだ全く見ておりませんし、今先生の御質問でそういうことがあったんだなということを知っただけでございますので、御答弁にはならないかもしれませんが、まだ全く見ておりませんものでしたから、それだけ申し上げます。
  10. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 それでは余りにも環境庁長官としては認識不足ではないかなというふうに私は思うのですね。なぜかといいますと、これまでにこの長良川河口堰について非常に心配して、反対をしている側の人たちあるいは学者、そしてまた、こちらにもございますこの自然保護協会で出しておりますこれまでの中間報告書、第二次の報告書、この問題点を見ましても、非常に治水にはマイナスである、これは人の命を守るという意味では、一度災害が起こったら大変なことになってしまう、そのことについての指摘が十分になされてきているわけなのです。その認識の上に立って、ここで第三者機関治水マイナスということが出てきたということは非常に大きな問題であるというふうに、まずとらえていただきたいというふうに思うのです。  ですから、内容を十分に把握しているということはもうこれまでの間にもあって、そしてその上でこういう大きな結果が発表されている、しかも第三者機関で、推進する側でもなく反対する側でもないというところから出されてきているということについて、これは大きくとらえていただきたいというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  11. 赤木壯

    赤木政府委員 治水上や利水上の問題があるという指摘がその報告に出ているというようなことのお話があったわけでございますが、治水利水のあり方についてはそれぞれ所管の省庁責任を持って判断するということだと我々は考えでございます。
  12. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 ところで、北川環境庁長官が、この長良川河口堰の問題に関して、非常に問題があるとして長官時代視察をなさいました。そして、視察後の正式見解では、種々の環境項目について指摘と同時に、河口ぜきができると災害になると不安を持つ住民がいる、このことを取り上げまして、記者会見でも、災害が起これは最大環境破壊であるとまで発言をしておられますけれども、そのことは、長官、覚えていらっしゃいますでしょうか。
  13. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 新しい、そのような環境破壊事態が生まれるということになった場合には、これは当然その問題に対して検討しなければならないと思います。
  14. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 新しい問題ではなくて、今不安を抱いて生活をしていらっしゃるというその現状なのですけれども、それでは、長官には地元方たちがどんなふうに思っているかも含めて少しお話をして、また長官お答えをお伺いしたいというふうに思います。  これは、現地の、三重桑名部長島町に住みます加藤良雄さんという方でございます。「長良川河口堰建設現地工事現場のすぐ近くに住んでいる、三重長島町の加藤良雄です。」というふうに文章を書いておられます。  現地長島町なのに、推進意見を言う人のほとんどが、長島町民ではなく、関係のない岐阜県海津町の人であることに注目して下さい。   海津町は「治水」のため河口堰が必要といいますが、昭和三十四年の伊勢湾台風では、死者は一人もなく、昭和五十一年の安八水害では、水入りもなかったのです。   では、なぜ推進といっているのか。   海津町には、河口堰事業で、一町に五百五十億円ものお金が使われ、農業排水施設完備スーパー堤防完備、そしてこの木曽三川公園も造ってもらったからです。   一方、私達の町長島では、伊勢湾台風の時、一瞬にしてやってきた高潮によって堤防が十八カ所切れ、町民八千七百人のうち、三百八十三人が死にました。その中でも、堰建設現地にある私の村、南松ヶ島は、全戸が流され、二百人の住民の内、四十八人が死に、一家全滅の家もありました。   河口堰上流三百メートルにある伊勢大橋が、海から襲ってきた高潮を跳ね返し、高潮反射波堤防を切ったからです。闇夜の中で、怒濤のように襲ってきた高潮と土砂に流され、私も八人の親戚を亡くしています。  実際に台風も経験され、親戚も命をなくされ、そして、現在のこのせきができたときに大変に不安に思っているというこの方は、現在の堤防を非常に貧弱な堤防だというふうに言っています。しかも、海面下、一番低いところではマイナス二・六メートル、そういうところで生活をするということになっておりますし、町の下には幾つもの活断層があるということで大変不安な状態で生活をしておりまして、一万六千人の長島町民の命を危険にさらす河口ぜきを治水のためとはおっしゃってほしくないということを、この加藤さんはおっしゃっていて、長島町民は七四%が反対、そういうことを言っている。その住民の声に耳を傾けて、そして、この治水マイナスと出たということを重く受けとめるべきではないかというふうに思います。  そのほかに、この流域でもって漁業を営んでいる人たちも、まだ補償もされていない人たちもいる。あるいはまた、最も豊かな自然の恵みのある川と言われ、そして八十八種類ものたくさんの種類の魚が生きている。自然を最も大切にしなければならない最後の川だというふうにも言われているそのことについて、今度の河口ぜきでの中部弁護士会報告書というものは、第三者機関の行ったものとして非常に重要なものだと私は思っております。  ところで、現行の閣議決定されましたアセスメント制度では事業者影響評価を義務づけておりますけれども、その費用負担は別の問題として、事業者だけでなく、信頼性客観性の見地から第三者機関が行うべきと考えておりますけれども、その点についてはいかがでしょうか。今回の環境基本法にはそのような考えがどのように反映されているのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  15. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 現在の閣議決定要綱によります環境影響評価では、調査予測評価を一体的に事業者に行わせることとしているところでございますが、その理由といたしまして考えられる点を申し上げますと、環境を汚染させるおそれのある大規模事業を行おうとするその者が事業実施に伴う環境への影響についてみずから責任を持って、また、みずからの負担でそういった環境配慮をするということは当然であるというぐあいに考えられること、また、評価に関する手続等関係大臣環境庁長官に協議して定める指針に従って行われるという一定の手続を踏んでいるというようなこと、またさらに、こういったアセスメント事業者に行わせた方が、その結果を踏まえて事業者事業計画公害防止等措置を手直ししたり、またそういった事業をよりよくする方途となると考えられる等々の理由があることから、事業者アセスメントを一体としてやるという制度をとっているところでございます。ただ、こういったことをする際に、関係都道府県知事がみずから意見を取りまとめる際に審議会等第三者機関意見を聞くことはとり得るということも当然あるわけでございます。  そういう理由で、現在の閣議決定アセスでは事業者がみずからやるということが制度として仕組まれているところでございまして、この制度は、これからますますそれぞれの事業の中に環境配慮を織り込んでいくということが大事になってまいりますので、そういう傾向は一層強めていかなければならぬ情勢にあると同時に、世界のどこの国におきましても、事業者にみずからそういう責任を課すということが一般的でございます。  なお、同時に環境基本法制についてこれをどう取り扱うかという御質問でございますが、その点について申し述べますと、今回いただきました答申におきましては、事業を行うに当たって環境に対する悪影響を未然に防止するためにはやはりアセスメントが大事だということを十分意義づける必要があるというようなことが一点言われておりますので、これにつきましては基本法に盛り込むべき事項であるということに私ども考えております。  なお、アセスメントやり方そのものにつきましてどう考えるかということに関しましては、この答申では、その具体的な実施に関しては「経済社会情勢変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置を見直していくことが適当」であるというぐあいにされておりますことから、これは、言ってみれば個別法なり個別のアセスメントをどういうふうに実施していくかということに関する意見でございまして、これは基本法ではなしに個別法または実施の問題でございます。これにつきましては、この答申の趣旨を踏まえて今後の課題として検討していくということになるものと私ども考えております。
  16. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 ただいまお考えを伺わせていただきましたけれども、現在行われておりますアセスメント制度に関して、日弁連の方が意見書というものを出しております。  現在、国や地方自治体がこれまで処理してきた環境アセスメントの事例は数千と数えておりますけれども、その実施例については建設、開発を前提としている。また、環境アセスメントにかかるころには既に調査費もついており、中止の選択肢がない。また、住民への形を整えるだけにすぎない。地元住民の本当に知りたいことにこたえていない。予測安全側になるようにはなっていない。大半の準備書評価書が、最後には必ず影響はないというふうに終わる安全宣言になっている。こういう批判や指摘が少なからず出されてきております。  そして、今度のこの、環境庁自身が行っていない、建設省水資源公団が行ったこの内容につきましても、実は四十年代に行われました木曽三川資源調査、この中でも非常に改ざんがなされたのではないかということが言われておりまして、知りたいことが住民に示されていないということが問題になりました。そのことが問題になったのを受けて、北川環境庁長官がもう一度追加調査というものを指示いたしまして、それを受けてまた建設省がなされたわけなのですけれども、その建設省が頼んだところ、これは朝日の九二年四月三日の新聞なのですが、建設省が公表した長良川河口堰環境影響調査を請け負った財団法人ダム水源地環境整備センター理事長建設省OBである。職員半数建設会社コンサルタント会社出向社員が占めている。この同センターから発注されたコンサルタント会社にも建設省から天下りしている。建設省は、自然環境などについて追加調査を行ったけれども、一体どこの会社に発注したのかというのは、当時、知らない、水資源公団に任せっ放しになっているというようなことを言い続けてきましたけれども、その内部資料によりますと、建設省はやはり認可した環境整備センターに依頼して、さらに、日水コン、新日本気象海洋、建設環境研究所など五社のコンサルタント会社に発注しているということで、こちらがすべて建設省OB理事長になったり職員半数建設業界や大手のコンサルタント会社からの派遣社員であるというようなことから、やはりこの事業推進するための、そういう面からであって、第三者からの意見というものについてはここに加えられていないというふうに、この長良川河口堰のことに関して日本自然保護協会が行った二つ の報告書でも指摘がされているところございます。  ところで、環境庁は今度のこの追加調査に関して大体どのようなかかわり方をなさったのか、お伺いしたいというふうに思います。
  17. 赤木壯

    赤木政府委員 先ほどお話のあったとおり、平成二年の十二月に環境に関する追加調査実施することを環境庁長官見解で明らかにして、この見解に沿って平成三年度に調査建設省水資源公団において行われたわけでございますが、そのやり方も、学識経験者指導を得て、環境庁とも調整を図りながら水質魚類生息等への影響に関する追加調査実施したということでございまして、それが平成四年に結果が公表されたというものでございます。  学識経験者指導を得ながらやったということでございまして、この学識経験者につきましては非常に幅広い形での方々が加わってございます。環境庁サイドの推薦した人もこの中にはちゃんと入って、どういうやり方をするかとかそういうことについては相談を受けながら、この調査実施してございます。
  18. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 そうしますと、この建設省水資源公団が出しております追加調査というものについては、環境庁も同じような責任を持たれるということになるのでしょうか。
  19. 赤木壯

    赤木政府委員 この調査結果で、河口ぜきによる水質魚類生息等への影響予測したりしているわけです。その結果を踏まえて環境保全上の対策を明らかにするというようなことになっているわけでございまして、環境庁もそのやり方等については十分相談を受けながらやっておるわけでございまして、今回出された結果につきましても、それ相当のことがやられている、そして、こういう調査結果に即して対策の適切な実施が行われるならば、環境保全上の著しい影響も避けられるものというふうに我々考えでございます。  この調査結果につきましては、先ほどちょっとお話があったわけでございますが、地元にも十分説明するようにという環境庁長官見解調査実施に当たって出しておるわけでございまして、そういう見解に即して、建設省及び水資源開発公団も、地元住民に何回もこの調査結果について説明もしているというふうに聞いてございます。
  20. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 住民の不安はまだ消えていないというふうに伺っておりますし、そういう陳情もございますが、それでは、この調査のときに長良川のシジミが、ことしの一月二十三日の新聞にも、三百年以上の歴史を誇る三重県桑名市のシジミが突然の大量死に見舞われたということなんですけれども、この大量死したという事件について、大臣はどのように思われますでしょうか。シジミの大量死について、大臣考えをお聞かせください。
  21. 原田昇左右

    ○原田委員長 まず事実関係を。赤木水質保全局長
  22. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 いいです。シジミの大量死ということについてだけ、大臣にお伺いしたいと思います。
  23. 原田昇左右

    ○原田委員長 まずその事実を。赤木局長
  24. 赤木壯

    赤木政府委員 シジミが大量死したということについては、我々も新聞報道等によって承知しています。これがどういう原因がということについては、三重県の水産担当部局がいろいろ調査してございます。その結果も公表されてございます。  いろいろ大量死しているという実態は認められておるわけでございますが、これはこの調査によりますと、長良川とか揖斐川、木曽川の下流部での塩分が比較的高い濃度であったということで、三重県は、シジミの死滅の原因は河川流量の減少による高塩分化と推察される、したがって、河口ぜき建設工事が原因とは考えがたいというような見解をこの公表の中で明らかにしてございます。
  25. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 大量死の原因、状況などにつきましては、今政府委員答弁のとおりでありますけれども、私自身は、実は利根川の河口の方に住んでおります。利根川は大変シジミの生産地でございます。一時、利根川の上流の水量が減ったために海水が逆流しまして、その塩分で大量死いたしました。これは利根川でございますよ、長良川ではありませんけれども。そのとき、実は利根川の河口河口ぜきをつくりまして、今はシジミは大変な産業になっております。
  26. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 それは長官、勘違いじゃないでしょうか。利根大堰がつくられた際に、二年後に利根川のシジミは全滅をしておりまして、例えば長良川でとれておりましたシジミを利根川に持っていっている、こういうふうな話が聞かれるくらい、利根川では今シジミがとれないんですよ。そういうのが現状なんです。それはやはり利根大堰がつくられた際にシジミが死んでしまったという現状があるわけなんです。  私は、シジミが死んだということについて大臣にお伺いしたかったのは、環境が激変しているのではないかということを、環境庁は本当にそれをとらえてほしい。そういう立場におありになるのではないか。何が原因がということについて、私は今伺っておりません。大量死ということは事件です。なくなるということについては、何かが原因だというふうに思いますけれども環境が変わったということだけは間違いがないことだというふうに思うのです。これについて、環境庁建設省もこのような大量死を予測できなかった、いわば環境庁責任があると思われるんですけれども、それについてはいかがでしょうか。
  27. 赤木壯

    赤木政府委員 先ほどちょっとお話し申し上げたわけでございますが、今回のシジミの大量死というのは、せき関係のない、木曽三川、三つとも下流部について生じておるわけでございまして、したがって、せきの直接の影響というようなことは言えないんだろうということで、調査した結果は、先ほど申し上げたとおり、塩分の濃度が上がったということが原因だということになっておるわけでございます。  今先生お話しのとおり、せきによる環境上の影響等については、今回の長良川河口堰では、環境庁追加調査実施するようにという見解を出して、それに即して環境面でどういう影響があるかというようなことをやり、それをできるだけ最小限にとどめるためにはどういう形で対応策をやったらいいかということも含めて調査がなされたわけでございます。したがって、この調査に即した対策が適切に実施されれば、環境保全土著しい影響は避けられるんじゃないかというのが我々の見解でございます。
  28. 原田昇左右

    ○原田委員長 岡崎さん、ちょっと待ってください。林長官が先ほどのあなたの質問に対して補足答弁を求めています。
  29. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ちょっと先ほどの答弁の補足をさせていただきます。  これは何年何月ということは私は記憶しておりませんけれども、利根の下流において海水が逆流した事件があったのは御存じだと思います。実はそのころは、漁業組合も解散しようというくらいシジミの漁がなくなってしまったのです。しかし、今は漁業組合復活しまして、漁業組合が中心で、シジミを大都市にも消費していただいております。
  30. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 大臣、この長良川でのさまざまな地元住民の不安や、自然環境破壊ということが間違いなく起こっているわけなんですけれども大臣は先日の環境委員会の中で、経済優先の社会を見直して真理をとうとぶ民族になりたいというふうにおっしゃっておりました。また、所信表明の中でも、生きとし生けるものを慈しみ、とうとぶことが現在の行政の基本と考えているというふうにおっしゃいましたけれども、この大臣の最も基本的な考え方に、私は賛成なんです。  そういう点からいいますと、これだけ大量のシジミが死んだという状態は、河口ぜきの影響があるかないかは別にしておいても、なぜ死んだかという真理を突きとめるという点で、ぜひ現地視察をして、ともに経済優先と環境保全のバランスについて考えてみたいというふうに私は思っております。  大臣、実は長島町の人たちは、大臣が一刻も早く現地においでいただいて、私たちの声を聞いて ほしいというようなことを言っております。そして、これからの環境は、世界中がやはり住民の声を入れていく、住民の参加なくして環境はよくならない、その問題に対処していくことが一番環境の勉強であるというようなことについても、今地元住民もそういうことを言っているわけなんですけれども大臣がこの長良川の河口堰視察をなさるということでしたら、どんなにか歓迎されるだろうというふうに思います。私もそのときには一緒について視察をしたいというふうに思っているのですけれども大臣、ぜひ長良川河口堰視察をしていただけませんでしょうか。  今の状況、やはり環境が悪化しています。そして、このままでいきますと、五月までの間にせき柱が全部完成してしまいます。そうなって災害が起きてからでは、住民の不安がますます高まるだけでございます。建設省も、このままでいきましたらとてもとてもとめることができない。ここに歯どめをかけることができるのは、本当に副総理クラスの、その地位にある人がなるべきだというふうにおっしゃった林大臣のそのお考えがこの環境の中に生かされてほしい、そういう願いも含めまして、ぜひ、この自然を守るという視点から一歩足を踏み入れていただきたい。開発ではなく、建設ではなく、本当に自然環境を守るという観点から大臣に一歩足を踏み入れていただきたい、そのお供もしたいというふうに思いますけれども大臣、いかがでしょうか。
  31. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生が今申されましたように、環境と経済の統合という問題とちょうど一致すると思います。これは国際的にも、これからの環境問題は常に経済との統合がなければ本当の環境の解決にはならない、したがって、持続的な開発ということもリオ宣言ではうたっておるわけであります。申し上げるまでもありません、持続的でありまするから、これは子々孫々までその開発が環境とともに生きていくんだということでないと、単なる今必要だという環境開発だけではこれはいけないんじゃないのかなという人類の反省が、そういう言葉を生んだと思うのであります。ですから、その意味におきまして、私は今先生のお尋ねも十分理解できるわけであります。  ただ、長良川の問題について、先生から非常に熱烈な御意見も出ております。先生の御意見を私も自分で胸に問うていきたいと思っております。
  32. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 御一緒に長良川に視察には行っていただけませんか。
  33. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 大変大事なことでございまするけれども、今ここで先生とお約束するということはなかなか難しいことでございますので、先生からそういう強い御希望があったということを心にとめておきたいと思います。
  34. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 いえ、環境庁長官長官になられたという意気込みと、副総理クラスの人が環境庁長官になるべきであるというお考えから、私は長官がやはり現実にごらんになるということが一番大切で、では、このことについて視察を検討してはいただけませんか。
  35. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生の重ね重ねの強い御要望でございますけれども、長良川に限らず、私は、やはり環境と我々の経済のあり方の統合という面から考えましても、大事な地域は全国、時間の許す限り勉強して回りたいという気持ちは持っております。したがいまして、今の先生のお気持ちにつきましても、十分心にとめたいと思っております。
  36. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 それだけ心にとめようと思って、なぜ行けないのか、行けない理由をお知らせください。
  37. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 行けないということは申しておりませんけれども、十分に心にとめておきたいということを申し上げたのは、実は先生も御案内のように、これから環境問題を通しまして国際会議も幾つかございます。これは、海外に出なければならぬ国際会議もあれば、日本で迎える国際会議もございます。それからまた、環境庁といたしましては、いずれこれはなるべく時期におくれないように環境基本法を制定しまして、基本法案そのものを国会に提出させていただきまして、国会の御審議もお願いしなければならないという、大変いろいろな問題が山積いたしておりますので、今ここで先生の御要望に具体的におこたえする余裕がございませんので、御理解いただきたいと思います。
  38. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 大臣所信表明のときに、本当に直摯な態度で向き合いたいということをおっしゃっていて、そしてこの長良川河口堰というのは、世界じゅうが注目をしている問題で、現地人たちが大変不安を抱いて生活をしていて、大臣がどんな姿勢であるかということをみんなで見ているというときに、今の御答弁というのは、一般的な市民感覚からいったら非常に遠ざかっているお考えだなと思います。  私は、先週やはり寺前委員要請にこたえて、大臣が渡良瀬遊水池を訪問するとお約束なさった、その大臣の意欲と前向きの姿勢に非常に感銘を受けまして、渡良瀬には行って長良川には行かないというのは地域に序列をつけることになって、環境行政に後ろ向きになってしまうと思うのですけれども、やはり環境行政はどうあるべきかを一緒に考えるために、問題が起こっている、しかも中部の弁護士会の皆さんたちが、この治水マイナスであるという非常に大きな問題を投げかけている。第三者機関がこういう問題について四、五十ページも、二年半もかけた調査を今出してきている。そういうときに、そのことを全身で受けとめることができない、しかも行くことができないというふうにお考えになっていることについては、私は大変疑問に感じてしまいます。やはりこれを再度検討していただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。
  39. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 渡良瀬川のことにつきましても、必ず何月何日に行きますということではございませんでして、いずれ、先ほど申し上げましたように、日本の各地において我々が現にこの目で見、肌で触れて勉強しなければならない場所も何カ所もあろうと思いますので、そういうところに行って直接勉強したいというものの一つに、この間寺前先生の御質問のこともあったのでございまして、また、今の長良川につきましても、そういう意味で御理解を願いたいと思っております。
  40. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 長官、今長良川で生活をしている人たちの、大変不安に思っている人たちの声を最後にお聞かせしたいと思います。そして質問を終わらせていただきたいと思います。  確かに、せき反対人たちが言っておりますように、本当のところ完成して水をためてみなければわからない、また、水をためた後に大きな台風とか大きな地震が起こってみなければわからないことかもしれない。それは杞憂に終わればこれにこしたことはないと思います。しかし、大災害が起きて、多くの命が失われた後で初めてわかっても、取り返しのつかないことであろうと思います。  そういう意味で、災害発生の危険性にとどまらず、頭の上三メートルから四メートルもの大量の水がためられて、それをいつも見上げながら、もし何かあったらどうなるかという恐怖感を抱きながら生活をしていることになるかもしれないその地域住民の心情を思いやるときに、やはり河口ぜきが完成すると長島町は常に災害に脅かされる町になる、環境影響調査だけでなく災害影響調査もしてほしい、住民がいろいろな要望をしています。そして、環境が破壊されるということだけは間違いないという結果も出ています。そのことを最後に私は強く要望いたしまして、再度の私の誘いも、検討と、胸にとめるということでしたけれども、さらにこの質問の後でいつでも、行きたいというときには応じてまいりたいというふうに思っておりますので、大臣がどの省庁からも影響を受けずに、殊に私は、三木環境庁長官が、唯一いろいろな権力に屈することのない一つの庁が環境庁だというふうにかつておっしゃっておりましたが、そういうことで、どの省からも影響を受けない誇りのある環境庁として、長官はこれから任務に当たっていただきたいということを心からお願いしたい というふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
  41. 原田昇左右

    ○原田委員長 次に、時崎雄司君。
  42. 時崎雄司

    ○時崎委員 質問の前に長官にお願いをいたしておきたいと思いますが、どうも国会の委員会審議等を見ても、答弁はほとんど行政側、政府委員がかわって答弁する機会が実は多々多いわけでございまして、このことも是正していかなければならない一つの国会改革だろう、こう思います。きょうは余り細かい数字的なものを聞くつもりはございませんので、さきの環境庁長官所信表明に対して主に質問させていただきますが、できればきょうは行政側ではなくて長官みずからにすべてを答えていただきたい。どうしても答えられないときは、そのときはまた政府委員の方に答弁させていただくこともよしとしても、大臣の方から積極的に御発言をしていただきたい、こう思う次第でございます。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕  実は、平成三年度の公害の状況に関する年次報告、いわゆる環境白書というのを、大変分厚いものでして、ページ数にしますと六百五十ページという膨大なもの、私も環境委員会に所属してこの環境白書を隅から隅まで読んだのは初めてでございました。ことしの白書は大変勉強になりました。よくぞこれほど私ども国民の気持ちを的確にあらわしていただいた白書というのは、ここ数年なかったのではないか。特にこの中でもこの第一部というところはすばらしい白書になっている。ただ、このことがどれだけ国民の皆さんに知られるかというのが問題です。  そこで、そういう平成三年度の環境白書、そしてまた、さきの所信表明の文章を読ませていただいたり、また所信表明演説を聞かせていただいた中で幾つかお尋ねいたしますが、まず第一に、長官は幾つかの課題を挙げて、「地球環境問題は、まさしく生命の生存基盤にかかわる緊急かつ重大な課題」だ、こう位置づけておりますね。これは大変なことだろうと思うのです。生命の生存基盤にかかわる緊急で重大な課題だ、こう言っているのですね。ただ残念なことに、紙面の関係もあると思いますが、その例示として地球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少、主に三つのことが挙げられておりますが、どうも具体的でございませんので、この生命の生存基盤の緊急かつ重大な事態だという認識についてもう少し詳しくお聞かせをいただきたい、こう思います。
  43. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 時崎先生お答え申し上げます。  私が端的に受けとめたことは、これはまず第一に、生命の生存を許しておる星というのは地球以外に今のところないということでありますね。今の新しい天体物理学などからいけば、あるいは遠い将来にはもっと別の恒星なり、惑星にはもうないですが、恒星の中でこれはあるかもしれません。しかし、現時点ではまだそこまで行っておりませんね。特にそのことが最も切実に認識されるようになりましたのは、御案内のように、人工衛星なりあるいはまた宇宙船なり、つまり、宇宙空間から地球を見て、初めてそこに地球が生命を抱えているんだということを改めて強く認識されたということでもあるわけであります。  我々は、漠然と今まで自分が生かされている、あるいは生きておるということは考えておりましたけれども、それが地球以外にはないんだということを認識したということは、私は大変な人間の考えの進歩ではなかろうかと思っております。そういう意味で、この生存の基盤にかかわる緊急かつ重大な課題一つ環境問題であるということに帰着したわけであります。  このことは、もう既に日本ばかりではありませんでして、世界各国の識者なりそれぞれのところでそのことを認識されまして、そして地球環境問題ということが大きく今我々の前に課題となって出てきておりますので、先ほど言いました熱帯林の減少とかオゾン層の破壊とか、あるいはまた温暖化の問題とかいろいろございますのは一つの現象的なことでありまして、それだけで地球生命の問題が解決するということではございませんので、そういう意味で私は生命ということを申し上げたわけでございます。
  44. 時崎雄司

    ○時崎委員 それじゃ、少し詳しい内容に立ち入ったお話をさせていただきたいのですが、所信表明の中で大都市地域における問題等も触れられておるわけですが、私は何回か環境委員会で、私どもの経済活動なりまた生活活動、これが過度に集中してしまうことが自然環境の回復力を超えてしまっている、したがって、そういうところに特に問題が多い環境破壊というのか、環境汚染が発生するのではないかと常々考えておりました。  今回、所信表明の中でも、大都市地域では大気汚染とか水質の汚濁、廃棄物の増大、また新たな環境汚染の増大などが指摘をされているわけで、環境面から見て都市集中、一般的に言えば一極集中、このことについて長官はどのように考えるのか、少し詳しくお話しい。ただきたいと思います。
  45. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 自然と人間の交流といいますか、かかわり合いにつきましては、時崎先生と私の考え方に開きはないという感じを持って、大変敬意を持って先生の御質問を伺っておりました。  大都市地域に特に注目されるということも大事なことでありまして、我々が通常目の前でいろいろ心配されることは、大都市地域の窒素酸化物による大気汚染とかあるいはまた生活排水による水質汚濁とか、また都市・生活型から起こってくる公害あるいは廃棄物の増大とかそういう問題が山積しておるので、これをどうしなきゃならないのかということが当面の環境政策に直接にぶち当たってまいります。  しかし、それはそれなりに、これは第四次の全国総合開発計画の基本目標にもございますように、一極集中というよりはむしろ多極にこれを分けていかなければ国土の本当の意味における幸せを求める生活設計は成り立たないのではないかという考え方について私も同意を持っております、同感でもありますが。ただ、由来するところは一体何なのかということになりますと、これは私はやはり人間の利已的な欲望がそうさせていると思わざるを得ないわけですね。  例えば、例を挙げて恐縮でございまするけれども、私は今千葉県の成田の方面に住んでおります。成田には国際空港ができまして、それから成田から東京に至るまで、この沿線はまさにほとんど全都市になってしまいました。我々が子供のころは村であったのですね。自然がもっと豊かであったのです。しかし、今はもう自然が壊されてほとんど都市に変わっておりますね。つまり、連続都市になっております。この都市化現象というものは、もちろん日本では大変な問題になっておりますが、欧米でも当然これは問題になっております。つまり、都市化になるほど自然から離れていく、人間が自然から離れるほど生活にうそがつきまとう、だから、自然の中でうそのない生活をするためにはもっと自然と人間とが調和しなければならない、こういうことがこれからの環境行政あるいは環境問題の中に大事な要素になってくるのではないかと思います。  そういう意味で、都市化そのものをこれからどうするのかということも大きな政治のテーマになるはずでございますけれども、現実はどんどん都市化されていっているということでございまして、先ほどの例でありますが、成田から東京に至るまでもはや村は一つもありません。そのような状態を私は寂しく見ながら、毎日東京へ通っているという現実でございます。
  46. 時崎雄司

    ○時崎委員 私も毎日水戸から常磐線で、恐らく我孫子で長官と一緒になるのだろうと思います。東京都内に入る、千葉県をゼロとすれば、東京の方がマイナスで、茨城県の方はプラスかなと、自然環境でいうならばそんな感じがいたしておるのです。  数年前に一極集中、都市型の集中を緩和するために国の機関を東京周辺から外へ出そうということで、各省庁幾つか機関を決めて行われました。今現在進行しているのだろうと思います。それから、私は山手線で来て有楽町でおりて地下鉄に乗 るのですが、ちょうど有楽町に立ちますと、駅からすぐ目の前が旧東京都庁舎跡で、今猛然と工事をやっていますね。何か聞くところによると、国際会議場をつくっているというようなことでございます。国の機関なりを表に出そうというのは、東京集中を少しでも緩和しようということだろうと思うのですね。それで問題は、国の機関が表へ出たその跡地がどういうふうになるのか、ここが一番問題だろうと思う。それをまた民間に売却して、そこヘアパートをつくるとか業務用のビルでもつくれば、またそこに集中するわけですから、本来の目的とは違うわけですね。だとすれば、そこに緑をふやすということでやるのがしかるべきであろう、こう思っているのです。  大臣、国の機関の分散について、今どういう跡地になっておるか、具体的なことはわからぬだろうと思いますけれども、基本的な考え方として、私が言うように、もう一度そこにビルを建ててしまうのではどうにもならぬわけで、それはやはり緑地として残す、緑をふやす、こういう考えで進むのが至当なのかどうか。  私は、大変腹が立つのは、東京都庁が新宿へ行って、その跡地は東京都のものだろうと思うのです。なぜそこに緑をふやすような気にならないで、また立派なビルを建ててしまうのかな。東京にはたくさん人口が集中し、酸素を吸って炭酸ガスを吐き出して、それをまた浄化してくれるのが森林だ、こう言われているわけでしょう。だとすれば、やはり緑を東京にたくさんつくるというのを率先して自治体なり国なりがやるべきじゃないか、私はこう思うのですが、いかがですか。
  47. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 基本的な考えとしては、私も同感であります。  ただ、一つは、そこまで環境庁長官として踏み込めないこともございますので、それについては、考え方としては先生と同感するところが非常に多いし、また人間と自然とが調和していくためにも、やはり自然にどんどん返ってもらう場所をつくらないといけない。  そういう意味におきましては、環境庁としましては、都市公園あるいは国定公園、国立公園、都市公園は所管は別でありますけれども、そのような公園を非常に重視いたしまして、できるだけ人間が自然と呼吸していくということについては環境庁としても努力を続けておりますけれども、今のような具体的な、例えば一極集中の問題について、その跡地をどうするかということになりますと、これはまた別の関係省庁のことでもございますので、そこまでは踏み込む御意見は申せないと思っております。
  48. 時崎雄司

    ○時崎委員 先ほど、冒頭環境白書のことを申し上げたのですが、この中でも、もう今までのような環境行政ではだめだと書いてあるのです。大きく転換しなければならないと言っている。  新任早々、もっと大物が環境庁長官になるべきだというようなことも発言されたやに報道されておりますが、今のことでは、ぜひ一長官ということよりも、もう生命の生存基盤が緊急かつ重大だ、こう言っているわけですから、いや、それはうちの所管云々くんぬんということを超えてこの環境行政に携わっていただかないと、またこの白書もそう言っているわけですよ。従来の環境行政ではもうだめだよと言っているわけですから。  後でもう少し詳しく聞かせていただきたいと思うのですが、ぜひ総理大臣に次ぐという気持ちで、長官これからも、いやこれはよその防衛庁の問題だとか、これは東京都の問題だと言うのじゃなくて、確かに現象、現象はそうでしょう。しかし、こうあるべきだと。例えば、面積に対してこれだけ都市化されたところでも緑地を残そうじゃないか、人口の比較ならこのくらい一人当たりの面積を公園としてとろうじゃないかとか、そういうことを私は堂々と主張していいことだろうと思うのですね。そして、国の所有する土地だってあちらこちらにたくさんあるわけでしょう。ましてや分散しようというのですから、跡地があるわけで、それは積極的に閣議等で、やはり住環境をよくしていくという立場から、もっとやはり積極的に対応していただきたいということをまず要望しておきます。  次に、所信表明で持続可能な開発とか経済体制という言葉が実は五カ所に出てくるのですね。持続可能な開発というような言葉が、長官または環境庁考えているように一般国民に受け取られているんだろうか。これは、実は大変危惧するところなのです。  私、ある会社の重役ともお話ししたならば、環境基本法の一番上にこういう言葉が出てくるよと。それは大いに結構なことだ、うちの会社が持続するならばそんないいことはない、こう言っているのですね。うちの会社は従前どおりもうけがこうなってきた、これもこの先ずっと続いていく、持続するんだからいいことじゃないかと言うのですね。こう受け取っている人も実はいるのです。  だから、この持続可能な開発という言葉が、私、辞書を調べてみてもなかなかよくわからないのです。白書の中にも持続可能なということがたくさん出てきます。その歴史についても若干触れておるのですね。だから私、しっかりとはわかりませんが、概要こんなものかというのは私なりに描いてはおりますけれども、ぜひこの持続可能な開発とはいかなるものなのか、ここを長官、国民に向かってしっかりと説明していただきたい、こう思うのです。
  49. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 時崎先生のおっしゃることを私も同感しておりました、率直に言いまして。  ただ、この持続可能な開発ということになりますと、実は、これはもう一種の国際語でもないでしょうけれども、国際的にこの言葉が使われておるということでもありますので、これを後、国民にいかにわかりやすく理解していただくためにはどうすればいいのかということも、また環境庁努力しなければなりませんけれども、要するに今までの開発で、特に地球を破壊してきたということは持続可能な開発でなかったからだということが言えると思いますね。  つまり、ある人間の欲望が、それが企業の形でとられる場合もあるでしょう。すると、ある部分だけ、企業なら企業の必要に応じてその部分だけ開発してしまう、そういうのがやみくもに、ただ企業のエゴでもって開発されていきますと、企業はいいかもしれぬけれども、その開発された周辺とかあるいはそれに関連する人々の生存とか、そういう面から見ると必ずしもよくない面が出てくる。それが地球をだんだん破壊していくということになっては大変だということに今早々と、早々だかどうか知りませんけれども、人間が気づきまして、したがって、これからの開発は自分だけのときに必要だからということじゃなくて、むしろ次の世代までのニーズも含めてその開発したことが役立つんだという意味におけるものであるならば、これは持続可能になりますけれども、その部分だけ、今私がここ必要だからということだけの開発では、持続可能ではなくて、単発になってしまうわけであります。  そういう意味で、私はそういう意味に持続可能をとっておりまするし、それからそうしない限り環境との統合あるいは共存といいますか、共生といいますか、両立といいますか、そういうことはなかなか難しくなってくる。だから、あくまでも開発は持続可能でなければならない。そして、経済と環境とのやはり共生といいますか、両立といいますか、あるいは統合といいますか、そういう時代でなければいけないじゃないのかな、そう考えております。
  50. 時崎雄司

    ○時崎委員 実は私、持続可能な開発ということをある専門家の先生に聞いたらうまいことを言っておりまして、これから春になるとタラの芽が、料亭なんかでは今でもあるようですけれども、あれは栽培しているのでしょうが、自然のものはこれから出てくるのですが、私の住んでいるところのすぐわきにもたくさんあります。それをとるときに、全部とってしまわないのですね。これは農家の人なんかはずっと長いこと、タラの芽をとるのに、経験値からそうなんでしょうが、次の年のために芽を一つでも二つでも残しておくというこ となのです。あれは全部とっちゃうと本当に枯れちゃうのです。例えば、とりやすく自分の背丈ぐらいのをひとつ想定した場合に、上から全部摘んでとってしまうと、芽そのものは完全に枯れるのではないのですが、翌年は下からしか出てこないのです。そうすると、下から出るということは数が少ない。一個しか出てこないですからね。それを上の方を一個でも残しておくと来年もまたたくさんのタラの芽をつけて、だからそういうことが持続可能な資源の利用だということをその学者が言っていたのですね。なるほどいいことを言うなと思った。  したがって、今長官が言われるように、自分たちの今の生活を満足させるために、資源であれまた社会活動であれ、やりほうだいのことをやってしまうことが次の代に資源を枯渇させたり、また環境を悪化させ、その復元のためには長時間多額の金がかかる。そういうことをさせないために、この持続可能なという言葉が出たのだろうと私も思います。ぜひそういう考え方でこれからも環境行政に取り組んでいただきたい、こう思うわけです。  さて、この所信表明の中で、「これらの問題を根本的」、すなわち、これらというのは環境問題を「根本的に解決するためには、これまでの社会経済活動を幅広く見直し、持続可能で環境への負荷の少ない社会経済を構築していくことが不可欠であり、」こういうことを言われているのですね。そこで、これからの社会経済を構築していくことが不可欠だというなら、具体的に企業活動なり我々の国民生活なり、どういうふうな生活に今と変えていってほしいと何かイメージしなければならないと思うのです。ただ言葉で、そして環境に負荷の少ないというぐらいのことで経済活動なり国民生活を変えろ、変えろといったって、なかなかこう変えますというわけにはいきませんから、長官としてこんなことをイメージしているんだというものがあればお話しをいただきたいと思うのです。
  51. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 私は大変大切な御質問だと思いますけれども、しかし非常に難しい御質問でもあります。  持続可能なということを考えれば、自然が一番持続可能であります。例えば農業。農業は先生のさっきのタラの芽じゃありませんけれども、米をつくりますと、春種を植えまして秋に刈り取りますね。その米は来年の種に続いていくわけですね。これは持続可能であります。しかし、その農業が今どんどん衰退している。これは他の経済行為に太刀打ちできないからです、経済行為としましては。  ですから、我々が持続可能な、そういうことを今度企業活動の中でどうするかということになりますと、やはり企業と自然との調和ということを図れるようにしていかなきゃなりませんし、その意味におきましてはむしろ一番環境を破壊するのは人間でありますから、その人間も企業ということになってきますと、この数年の間に企業のイメージは相当変わってきていると私は思いますね。つまり、環境を破壊するにつながるような企業活動はだんだんできなくなってきている。  例えば新しい工場をつくるならば、工場に対しては、その工場から廃棄されるいろいろな大気を汚染するものがあればそれも取り除かなければいけない。水を汚すものがあればそれも取り除かなければいけない。土壌を汚すものがあるならそれも取り除かなければいけない。そうしなければそこに工場はつくれないといったような意味考えまして、ある意味では規制しながら、理解してもらいながら企業活動をやっていかなければなりませんけれども、基本としてはやはりそういう形で、そのかわり今一つの工場をつくるについては緑地を何%持ちなさいとか、このようにしなさいということもどんどん企業の中で考えてもきておりますので、非常にその意味においては我々の思考といいますか、考えといいますか、発想といいますか、私はそういうものが大変変わってきているとは思っております。  しかし、今の時点だけではまだそれで満足でありませんし、また人間の欲望というのは限りなく要求していくものですから、その欲望を、常に自然との協調とか共生とかあるいは環境との問題とか、そういうことが考えられるような欲望の中で企業活動も行われるということでなければいけませんので、そうなりますとこれはなかなか大変な事業であります。しかし、これは人類の究極の目標としてそこまで進んでいくだけの努力は絶えず努めなければいけないのじゃないかという考えております。
  52. 時崎雄司

    ○時崎委員 抽象論はいいとして、今この段階で社会経済活動というものをこう変えていくという一つの具体性の持てる、イメージできるものというのはなかなか提示できないとしても、環境基本法を提案されるようですから、その時点までにぜひ、環境に負荷の少ない社会活動、また個人的な生活活動というものはこういうものであってほしいというようなイメージをぜひ国民の皆さんに示していただきたい、こう思います。  というのは、この環境白書の中では最後の結びで、今がチャンスだ、こう言っているのですね。この環境問題に立ち向かう、三行ぐらいですからちょっと読んでみますが、「人間活動に起因する環境への負荷も二十年前とは比較にならないほど大きく、環境の汚染や破壊が進んでいる。我々の今回の挑戦は失敗の許されない挑戦と言えよう。」大変な意気込みですよ。そして、その後に十七世紀から十九世紀にかけて、ちょうど我が国では江戸時代、鎖国の問題まで取り上げているのですね。一部の貿易はあったけれども、ほとんどが我が国民というのはこの鎖国時代、みずからの国で生産されたもので生きてきたんだということなんです。  もっと極端に言えば、この裏から読み取れるのは、余りにも今、日本は世界各国から資源を輸入し、そして大量生産、大量消費、大量廃棄ということについての警告をしているのではないか、私はこう受け取っているのです。であるとすれば、単に我々が国会で、また法律の中で、そしてほとんど読まれることもないであろうこんな重要な白書が出されているだけの議論ではなくて、広く一億二千万人の国民にこうしなければならぬのだということをやはり堂々と訴えていくための具体的なイメージしたものを、そして国民一人一人がわかるような平易な言葉でぜひ訴えていただきたいな、私はこう思う次第でございます。いつになりますか、次の基本法の議論のときにはそういうものをイメージしたものをぜひ長官の方で出していただきたい、今から要望いたしておきます。  次に環境基本法について、これまでの何回かの委員会で他の委員の皆さんの発言を聞いておってもなかなか具体的な答弁が出てこないのですが、これから出されるであろうこの環境基本法の中に、次から申し上げる幾つかのことが盛り込まれるのかどうか、率直にお尋ねをしたいと思うのです。  実は、この白書の中では湾岸戦争のことが大きく取り上げられています。この間の中東の、ペルシャ湾に原油が流出したとか油田が燃え上がってしまったとか、いろいろなことが書かれてある。東西の冷戦構造が崩壊したとはいえ、今でもまだいろいろなところで紛争が起きているわけですね。戦争というのが環境に与える影響が実は大だという観点から、この白書の中でも、その代表として湾岸戦争が取り上げられたのだろうと思います。そこで、環境基本法に戦争問題、触れるのかどうか、これを第一にお聞かせをいただきたい。
  53. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、戦争は環境に対する最大の破壊要因であるという認識を私どもは持っております。そういう認識がございますので、環境庁は、先ごろ亡くなりました大来先生委員長とする地球的規模の環境問題に関する懇談会というものをつくりまして、昨年開かれましたリオ宣言の中にぜひこういうものを取り上げてほしいということで、ただいま申し上げましたすべての戦争は環境を破壊するんだということで世界平和の実現が大事だということが、リオ宣 言にはそういうことで入っております。  そこで次は基本法の問題でございますが、基本法といえども憲法のもとにある法体系でございます。我が国は、戦争の放棄、また世界平和を願うということを憲法上も既に盛り込んでおりますから、そのもとにおける国内法としてはさらにそれを敷衍する必要はないということで、基本法では直接触れない。ただ、そのこと自体は非常に大事なことであるということで、地球環境保全の問題として、国際協力の問題としてそれは一般的に取り上げるべきことだというぐあいの観念でおるわけでございます。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 時崎雄司

    ○時崎委員 そうしますと、今回国会に提案しようということで準備を進めている中には、具体的にこの戦争がいかに地球環境を破壊するかというようなこと、それは触れないということでございますか。
  55. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答えします。  我が国の憲法体制上それは当然のことであるという前提でございます。
  56. 時崎雄司

    ○時崎委員 私の聞いているのとどうも答弁が違うようで、まあ、局長とやり合うつもりはございませんが、環境基本法すなわち基本法と名をつけるには、通常の法律とは若干ニュアンスを異にして基本法的なことを記載をするのだろう、こう思いますが、我が国の憲法に戦争の放棄なり平和の希求なりというのが書かれてあれば、それがあるからというなら憲法に書かれてあることは法律で全然触れる必要はないということになってしまうのですね、今の論理だと。そうではなくて、特に環境という問題から考え基本法をつくるわけですから、戦争がいかに地球環境を破壊する要因なのかということ、そういう現状認識を明記することは私は必要なのじゃないかと思うのです。これはこの問題だけお話できませんので、私の考え方だけそういうふうに申し述べておきます。  次に、白書の中で実は「地球環境の未来についての予測」という項がありまして、二〇〇〇年の将来予測とかその他いろいろな資料も入っているのですが、人口急増の問題を取り上げているのですね。いかに人口急増するかという予測としては、発展途上国に人口がふえる、九六%が集中するだろう、こういうことを記載されていますし、そのことがまた食糧とかいろいろな問題を引き起こす。さらには発展途上国であるだけに衛生面その他が記載をされているのですね。人口問題は触れる考えありますか。
  57. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 おっしゃるところの先生の御議論、非常にごもっともでございます。  現在の地球環境問題を考えますときに、地球環境問題が開発途上国における人口の増大、また貧困というものとの連鎖関係で地球環境問題になっている、また、先進国におきましては、大量生産、大量消費というライフスタイルのあり方が問題になっているということでございまして、我が国が地球環境保全に寄与するという面において、人口問題を背景にして地球環境問題を考えるという局面において、私ども考えております。  ただ、国内的な面におきましては、先生御承知のように、今特殊出生率が一・五を割るというような時代でございますので、国内問題としての人口問題というのは特に触れる予定はございません。
  58. 時崎雄司

    ○時崎委員 それから、環境費用負担の問題についてお尋ねをしておきたいのですが、この場合、わざわざ水俣病問題を例に実は相当のページを割いて、環境を破壊してしまった後、これを回復するためには大変な長い期間と労力と金がかかるのだ、そういう現象と、そしてそういうことを起こさないための前段の予防が必要なのだということを恐らく言わんとしていると思うのですね。そして、今の生きている人が負担しなければ後の代の人に負担させてしまうということも随分るる書いてあるわけでございます。  そこで、環境税等を含めて、この負担についてどういうふうな考え方をお持ちなのか、これは大臣にお聞きしたいのですが、実は、私の選挙区にも霞ケ浦という、先生成田の方に住んでいますからよく御存じだと思うのですが、実はきのうですか、那珂川から霞ケ浦に導水をするための水戸トンネルというのが起工されました。工事開始でございます。全長四十二キロくらいの間を直径六メートルのパイプで霞ヶ浦に水を導水するのですね。  これは何が目的かというと、二つあるそうです。一つは、余りにも汚れてしまったので、きれいな水で薄めてやろうというのが一つだそうです。二つ目は、霞ケ浦を、今工事中ですが、堤防をかさ上げして水位を高くするということで、それだけ貯蔵する水量を多くするというこの二つです。それは結果としてどうなるかというと、千葉や東京の飲料水に使うというのです。茨城県でも霞ヶ浦周辺はその霞ケ浦の水を飲料水に使っています。富栄養化のためにアオコが発生してとても飲み水にたえられないような状態であることは今事実なのですね。それを周辺部は飲んでいる。将来は東京の皆さんも飲むことになるでしょう。成田の方に住んでいる方も飲むでしょう。これをきれいにする、浄化するために、ことしから膨大な金をかけて堆積物、ヘドロのくみ上げを始めようとしているのですね。水俣と同じように汚染した後の回復というのか、改善というのはいかに大変な時間と人手と金がかかるということですね。  だとすれば、これらを汚染する前に予防するという手だてをもっと抜本的に行う必要がある。例えば、家庭雑排水がその主要な原因だとしたら、なぜ家庭での雑排水の処理をするための処理槽を義務づけないのか、私はこれは不思議でならないのです。それは合併処理に少しばかりの補助金を出すというのではなくて、これからうちをつくる人、既にうちのある人は何年か以内に処理施設をつけなければならぬというような、そこまで積極的なことをやらない限りは水俣病と同じだろうと私は思うのです。そういう点でぜひ、発生してからの問題ではなくて、発生の前に相当の費用をかけてやるという思想、考え方、そしてまた汚染された後の負担をどうするのか、この辺についてこの基本法の中でどう触れるつもりなのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  59. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生のおっしゃることは非常にごもっともなことでございまして、私ども先般いただきました中央公害対策審議会の答申におきましても、その理念におきまして、予見的なアプローチを用いて、すなわち事後的な対策をとるということではなしに事前的な対策をとるということは非常に重要であるということが、我が国の公害経験から見て貴重な、また手痛い教訓であったということでございますので、それはぜひ理念にうたい込みたいと考えております。同時に、そういった公害防止のために要する費用、または一たん公害で起こったものを救済するための費用等については、従来から確立しておりますPPP原則というものは堅持するということで、これも基本法にうたい込むべきだというぐあいに考えておりまして、今案文を作成中でございます。
  60. 時崎雄司

    ○時崎委員 時間もございませんので、最後に、環境基本法を今国会に出すということは所信表明ではっきりしておりますが、いつ提案されるのかという時期、それからアジェンダ21の我が国の具体的行動計画策定というのも所信表明で言われておりますが、これはいつまでにつくるつもりなのか、時期を明示していただきたいと思います。
  61. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 まず最初に、環境基本法の国会提出時期のことでございますが、私ども政府におきましては、ことしの場合ですと予算非関連法は三月十二日までに国会に提出するということを内閣の方針として持っているわけでございます。私どもといたしましては、ぜひともこの時期までには何とか提出したいということで、現在政府部内の調整に鋭意努めている最中でございます。  それから第二に、アジェンダ21の我が国の具体的行動計画の策定時期の問題についてでございます。これにつきましても、昨年のミュンヘン・サミットにおきまして、一九九三年末までにそれぞれの国がこれを策定し公表しようではないかとい う申し合わせをいたしました。そこで、これを受けまして現在作業を進めているわけでございまして、ぜひこういう申し合わせに沿ってやりたいというぐあいに考えております。
  62. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 時崎先生、今の法案の提出時期は、それからアジェンダ21の行動計画につきましては、ただいま政府委員から答弁したとおりでございます。
  63. 時崎雄司

    ○時崎委員 時間が参りましたので終わりますが、就任冒頭で役不足というのか役者不足とかということを言われているようですけれども、今短い時間ではございましたが長官考え方を聞いて、ぜひその方向でこれから環境行政に大いに腕を振るっていただきたいと思うし、また去年の白書を読ませていただいて、忙しくて見る機会もないと思いますが、一部の方だけでもぜひ長官も読んでいただいて、これからの環境大臣という気持ちでひとつ御活躍いただくようお願いしまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  64. 原田昇左右

    ○原田委員長 次に、田中昭一君。
  65. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 私は、臨時的には環境委員会質問をしたことはございましたけれども、正式に環境委員になったのは今回が初めてでございまして、今後よろしくお願いを申し上げたいと思います。時間がもう極めて少ないわけで、そういう意味で私もなるべく演説をしないようにしたいと思いますが、答弁も端的にひとつお願いをしたい、こう思います。  今時崎委員との間で環境基本法制定についてのやりとりがございまして、大変次元の高い議論であったと思います。今回の国会の環境委員会ないしは環境庁最大の任務は、きちんとした環境基本法をつくることである、私もこういうふうに思っておりまして、そういう意味では環境基本法制定についての長官としての基本的な考え方について、もう少しお考えをお聞きしたいと思っているのです。  私は、一つは国民の基本的人権としての環境権を明確にすべきである。産業優先から人間尊重、そして環境権、これがやはり一つはっきりしなければいけないだろうと思います。それから二つ目には、リオの宣言でも、あるいは中央公害対策審議会と自然環境保全審議会から出されている答申でも言っているように、環境アセスメント制度の法制化という問題がやはり明確になることが必要である、こう思います。三つ目は、環境問題への住民参加、情報公開、これを無視してはいけない、このことを尊重することが必要であろう、こう思います。それから、環境基本計画の策定が必要である、環境庁、そう言われておりましたけれども、少し不明確になっております。ここのところをきちんとしなければならないだろう、こういうふうに思っております。それから、有効性が期待される経済的手法ということに触れられている点がございますが、ここのところももう少し明確にしなければいけないだろう、こう思います。  環境基本法制定に当たっては、高い次元の話ではなくて、今申し上げましたような具体的なことをぜひ明確にしてお出しいただきたいということを私は冒頭に申し上げたいと思います。  それからもう一つ、私が今から質問をする問題と関係があるのですが、環境基本法に関連して、環境庁は今、我が国の最大の公害、世界最大の公害という水俣病を抱えているわけです。この問題は、国全体として極めて重要な問題だと私は思っているのです。それで、環境基本法考える原点というのは、今申し上げましたように、三十数年たっていまだ解決できない、下手をすれば歴史的な大変な悲劇のまま終わりかねない、こういう水俣病を体験した公害環境行政の総括から出発することが必要だと私は思うのです。  これまで水俣病のいろいろな取り組みがございました。歴史がございます。したがって、水俣病の歴史を振り返って、この中で公害環境行政のどこがどう欠落していたのか、なぜこんなに多くの人が苦しんで死んでいかなければならなかったのか、この根本的な問題が一体どこにあったのかを明らかにして、こういうことが二度と繰り返されないように環境基本法の中に盛り込ませる、このことがなければ、幾ら美辞麗句で形式的に、どんなに文章がきれいでも、理想的なことを並べても、環境基本法をつくった意味がないと私は思っております。  したがって、そういう意味で、今までの我が国の公害環境行政を現実的に総括する。特に、この悲惨な水俣病の問題がなぜ三十数年たってもこういう状況で、国際的にも指弾されなければならないのか、こういうところをきちんと総括をして、その上でそういうことが二度と繰り返されない環境基本法をつくる、こういう基本的な立場を踏まえて、ぜひ冒頭申し上げましたような問題を含めましてお出しをいただきたいということをまず冒頭に申し上げたいと思います。  この点について、簡単に環境庁長官としての決意をお聞かせをいただきたいと思います。
  66. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 田中先生お答え申し上げます。  御案内のように、環境基本法案の案文を今鋭意作成しておりますが、これをできるだけ早期に今国会に提出をさせていただきたい、そういう気持ちで今事務を急いでおりますが、御案内のような環境基本法のあり方につきましては、先生も触れました中央公害対策審議会と自然環境保全審議会の答申を踏まえまして、その中で特に大きな柱で分けますと、一つ環境基本法の理念、それからまた、国や事業者やあるいはまた地方自治体、国民、それらの負うべき責務、それからまたそのものの果たすべき政策手段をどうするか、そういうことを大きな柱にして組み立てていくという考え方で、今鋭意準備を急いでおります。  細部につきましては政府委員から説明させます。
  67. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 環境基本法の具体的な問題は、改めて環境基本法が出された段階で十分にやらせていただきたいと思いますが、今私が提言をしたことは、答申でもあるいはリオの宣言でも明確になっておることだと私は思うのです。したがって、そのことを具現化できるような、今の長官の発言も含めまして、ぜひ環境基本法を重視をするという立場を貫いていただきたいということを冒頭に申し上げておきたいと思います。  そこで、具体的な問題について私は幾つかお尋ねをしたいと思っております。  所信表明の中で、水俣病というのは今申し上げました最大の公害ですが、二行しか書いてない。しかし、水俣病の問題はもうぎりぎりまで来ておる、今何とかしなければこれは歴史的にも最大の悲劇で終わる、私はこう思っておりますし、国際的に見ても、世界的にも、これは私は先進国日本として恥ずかしいだろうと思っておるわけです。  長官も御承知のように、水俣病公式発見以来三十数年が経過をいたしております。被害者高齢化が進んでおります。皆さんもう七十歳です。救済されないまま次から次に死亡されているわけです。ですから、患者の皆さんは生きているうちに救済をという要求を掲げて、一生懸命頑張っておられるわけですが、私は、政治的にも、人道的にも、この際やはりこの水俣病問題の救済に、与党であるとか野党であるとか政府であるとか、そういうことでなくて人間として救済を図る、こういう時期を迎えている、このことをひとつ申し上げたいと思うのです。  いろいろ政府の皆さん方ともコミュニケーションを図りますと、国はやはり判決待ちの姿勢のような気がするわけです。御承知のように熊本地裁の判決は三月二十五日です。しかし、この判決は、どちらの側も満足するような判決は絶対に出てこない。どちらかがやはり不満足のまま上級審に持っていかれる。上級審では、控訴をされますと何年たつかわからない。これは先ほど言ったように年齢の関係ども含めますと、これはもう解決はできない、悲劇のまま終わってしまう、こういうぎりぎりのところまで今来ていると私は思っているわけです。ですから、今集っているわけです、私どもは。  病像論とか責任論については確かに私ども環境庁との間には対立点がございます。私は環境委員会でも厚生委員会でも予算分科会でも何回もこの病像論や責任論について議論を交わしました。たくさん判決も出ております。しかし、病像論とか責任論についてどんなに議論をしても、これは永久に一致をしないということがわかったから、最終的には和解の解決しかないだろう、高等裁判所も多くの地方裁判所もそう判断をして和解の勧告をしたと思っておるわけです。そして、和解の最終案が福岡高裁から今日出されておる。この最終案について、原告も、それから被告であって国と同じ立場にある熊本県も、それから加害企業であるチッソも大筋においてこの和解案を受け入れるという態度を示されておるわけです。今まさに、世界公害の原点と言われながら三十数年紛争状態がずっと続いてきたこの水俣病の問題について、解決への光明が、和解案が出されてきたというところでうっすらとともってきたんじゃないか。  今残されておるのはただ一つ、国の決断だと思うのですね。和解案に基づいて本問題の解決を図ろう、知事を初めとして県もそう言っておるわけです。県も一生懸命、これで解決をしなければ水俣病はもう解決しない、こう言っているわけです。原告も不満であるけれどもチッソも熊本県もこれで片づけたいと言っているわけですから、残された国がどう決断をするか。そしてぎりぎりその期限は、先ほど言ったように三月二十五日、こうなっているわけですから、長官がここで、この問題についてやはり何とかしなければならない、こういう決断をする時期に来ている、私はこういうことを申し上げたいわけで、ぜひ長官のお考え方を、お考え方というより決断をしてほしい、私はこういうことを申し上げたいと思います。
  68. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 田中先生の大変この問題を御心痛なさる御意見を拝聴いたしております。田中先生お話は別の機会でもちょうだいしておりまして、一貫したそのお気持ちは私も深く心に受けとめてはおります。  ただ、今和解が進んでおって、福岡高裁の一つ考え方も示されている時期に、国が和解に入ってないというので解決にならないじゃないかというお考えでもあろうと思いますけれども、したがって、国は早く決断すべきだということでありますが、いろいろ状況なり事情を申し上げることはもう先生に対しては必要ないんじゃないかと思うのですね、先生自身は深く、例えば関係閣僚会議がどうなるのかとかいろいろな問題を含めて御存じのはずでございますから。  それで、私がいかに決断すればいいかということについては、これはやはり国の立場、全国民的立場も踏まえて、私の決断がいかにあるべきかということについては、私も今真剣に自分の胸に問うております。ただ、今このような形で決断しますよということは、申し上げるまでまだ私の考えが固まっておりません。いや、固まっておりませんというよりは、考えは固まっておりますけれども、その考え方をどんな形に表現することが国や国民に対して行政府として忠実であるかということを踏まえておりますので、大変先生の御質問にとりましては不満足な私の回答であるかもしれませんけれども、とにかくこのことで私も一国民として非常な心痛を重ねておりますことは御理解賜りたいと思っております。
  69. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 長官が心痛をされながら一生懸命お考えになっておられるということについては、私は素直にきちんと受けとめておきたい、こういうふうに思います。  そこで、今長官も言われたのですけれども、これはできれば私は関係閣僚会議をこの際開催をしてほしいということを申し上げたいわけです。環境庁がそのリーダーシップを発揮して、ぜひこの関係閣僚会議を開催をして、この際水俣病問題について国として、和解に参加するかしないかは別にして、方法は別にして、何とか考えざるを得ないんじゃないか、こういう議論を私はぜひしてほしい、そういう時期に来ているということを申し上げたいわけです。  なぜかといいますと、平成二年の十月二十九日に関係閣僚会議が開かれまして、訴訟における国の責任論、病像論、その時点ではまだ対立の状態がずっと続いておった時期ですが一その中で環境庁は、「当事者双方の主張には大きな隔たりがあって、」「当事者双方が容認し得る和解の合意が得られるとは到底考えられない」。もう私も何回も予算分科会でもやりました。何人かの環境庁長官とやってきたわけであります。こう言われるように、「双方が容認し得る和解の合意が得られるとは到底考えられない」「したがって、現時点において和解勧告に応じることは困難である。」こういう環境庁見解が当時出されて、関係閣僚会議がこれを了解をした、こういう経過になっておる。  確かに病像論、責任論についての対立は鋭かったわけです。これは私はよく知っておる。しかし長官、今日、国と同じような被告としての立場にあった熊本県を含めて、熊本県の知事はかつての自民党の水俣病対策委員会の委員長です。福島さんです。この熊本県を含めてチッソも原告も、三十数回の和解協議の中で、お互い不満はあったでしょう、しかし、何とかこの問題を解決しなくてはいけないと、三十数回のお互いの誠意ある協議の中で、まず病像論の対立についてはクリアをした、責任論の対立もクリアをして、個別救済手続、問題であった一時金の金額、こういうものがきちんと合意されておるわけです。  さっき言っておられるように、県も原告も、受け入れられる、そこまで来ているわけです。それはお互いの、この問題を悲劇のまま終わらせてはいけない、生きているうちに何とか救済、この気持ちが、いろいろ問題点、障害があったけれども、それを乗り越えて一つになったと思うわけです。  したがって、先ほど申し上げましたように、関係閣僚会議で当事者双方の主張に大きな隔たりがあって、当事者双方で容認し得る和解の合意が得られるとは到底考えられない、だから和解の勧告には応じられない、そう主張したこの主張というのは現時点ではもう大きく変化をしている。先ほど言ったように、病像論、責任論についてもクリアをし、問題であった一時金についても合意をした。国と同じ立場にあった熊本県も、これで解決したい、こう言っているわけで、そういう意味では社会的な根拠はなくなってきているのではないか。  したがって、私は、今ここで正式に国が三者の中に割り込んで和解協議に参加をするということができないとしても、何らかの形でこの問題について、この三者の長い間の努力を何とか結実させる、そういう気持ちで関係閣僚会議の中で、私はどうしろとは言いませんけれども、ぜひ議論をしてほしい、このことを長官にお願いをしたいわけですが、いかがですか。
  70. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  今の先生の御指摘の和解に関しての御意見でございます。たしかことしに入りまして、より具体的な和解案が示されたと聞いております。私どもは、直接和解に参加しておりませんので詳しいことは承知しておりませんけれども、しかし、当事者のすべてがその高裁のお示ししました和解案について満場一致であるというふうには私どもは承知していないし、その行方はまだ定まっていないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  71. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 今のは、あなた、環境保健部長さんでしょう。よく承知をしていないということはどういうことなんですか、これだけの問題で。これは、日本新聞でも、主張欄でも全部取り上げられておる問題ですよ。あれだけのマスコミ報道がなされて、いろいろな資料がいっぱい出て、その歴史をずっと見た場合、その環境庁における当該の部長さんが、和解案についてよく承知をしていない、参加をしていないからという言い方は、私は極めて無責任だと思う。その無責任姿勢が、この問題についてここまで無責任に放置をされた結果になっているということを私はきちんと申し上げたいと思うのです。  それで申し上げたいのですけれども、確かにこ れは、長い歴史の中で被害者の団体というのは幾つかございます。ですから、訴訟に基づいて和解で解決をするという立場に立っていない、自主交渉で会社や国と直接交渉をやって解決しようとするグループもおられることも私はよく知っているのです。こんなことはもう百も承知の上。しかし、自主交渉で、訴訟抜きで幾ら国と直接交渉しても、チッソと交渉しても、解決つきませんよ。だから、幾つかの解決の方法を、三十数年模索をしてきた結果として、今先ほど言ったように、病像論とか責任論とかその他金額などについてクリアをして一致したというのは、これは権威ある三権分立の中での司法の側が、多くの地裁なり高裁が最終的にまとめ上げた、これを突破口にして解決をしなければ、この問題は解決しないのです。  三月二十五日に判決が出てしまえば、どちらかが不満足で控訴してしまう。これは、みんな死んでしまうのです。だから私は、公害史上最大の悲劇というよりも、日本の歴史上まれに見る悲劇で終わるということをさっきから言っているわけです。そういう意味では、今部長が答えられたような紋切り型の答弁だけでは解決は絶対つかないということを改めて申し上げておきたいというふうに思うのです。  そこで、時間がありませんから申し上げたいと思うのですが、先ほども言ったように、和解で解決をしないとすれば結局は国は判決待ちの姿勢だ、こう私は思うのです。これも御承知のように、高裁から最高裁までいけばどれくらいかかるかもおわかりだと思っておるのです。おわかりの上で発言をされておると思っておるのですが、今まで、御承知のように熊本地裁の判決がございました。これは原告勝訴になっておるわけです。その後東京地裁で判決が出されました。これはもう御承知のように原告敗訴。私は、この東京地裁の判決によってそれまでの取り組みが後退をし、極めて残念なことになったと思うのです。  環境庁もまた、それまでは、環境庁がない時代から、園田直厚生大臣から三木武夫環境庁長官、大石武一環境庁長官石原慎太郎環境庁長官北川さん、ずっと皆さん水俣に行かれて、何とかしなければいけないと、いろいろな意味で、今環境庁長官が悩んでおるように悩んでこられた。そして、何とかしなければいけないなという気心が合うと大臣かわられていくわけですが、東京地裁というのはそうい意味では非常に残念だったと私は思っているのです。環境庁はこの東京地裁の判決を契機にして、水俣病に対する姿勢が大きく変わってしまった。原告とも、患者とも、陳情に行っても要請に行っても会おうともしない、門前払い。環境庁の前で会いたいと言っても会わしてくれない。ピケを張って入れさせない。あのお年寄りが寒空に座って、トイレに行きたいと言ってもトイレにも行かせない。環境庁のまさにこの問題に対する差別的な攻撃が、東京地裁判決を契機にして変わってしまった、私どもはそう思っておるのです。  そこで、部長もよく聞いておいてください。皆さん方が依拠をしている東京地裁の判決は、確かに原告敗訴で終わりました。残念な判決だと思っております。しかし、この判決文の中で、これはもう読み上げる必要はないと思いますけれども、「現在、被告チッソの経営状態からみて、被告国・県の関与なしに水俣病紛争の解決を図ることは事実上不可能な事態となっている。」これはこのとおりですよ。「水俣病は、被告チッソの不法行為によって生じた疾患ではあるが、人間の生命、健康を何よりも尊重するという精神を欠いたまま高度経済成長を志向した国家、社会が生み出したという側面があることは否定し難く、被害の拡大を防止し得なかったことについて被告国・県にも政治的責任があるということができるから、国家、社会全体の責任において解決が図られるべき問題であると思われる。したがって、被告国・県に国家賠償法上の責任がないとしても、」ここが大切なんです、責任論の中では。「国家賠償法上の責任がないとしても」というこれは国の立場に立っているわけですから。「被告国には、本件から分離した事件の和解手続において行政上の解決責任を認めている被告熊本県とともに、本件の解決のために尽力すべき責務があるといえよう。」こう言っているわけです。  これは、皆さん方がよりどころにしている国家賠償法上の責任はない、責任論においても、ある種の病像論においても、皆さん方の立場に立って出された東京地裁判決においても、今言っているように、「被告熊本県とともに、」行政上の解決責任を認めて「本件の解決のために尽力すべき責務がある」ということを言っているわけです。ということは、裁判所が出してきたこの和解案をやはり謙虚に受けとめて、政治的な解決を図るという立場に立つことが極めて必要であるということは明々白々なんですよ。  ですから、なぜ責任論とか病像論に依拠して、そして国がこの問題の解決について、行政の基本にかかわる問題であるということだけでいつまでも放置をしておるのかということについては私はどうしても納得ができないわけで、この点について、どうですか長官、国が依拠している判決ですら、それは国家賠償法上の責任はありませんよと言っているんだけれども、今読み上げましたような立場で、やはり解決責任があるのではないかということを言っているわけです。  それで、先ほども言ったように、病像論についても責任論についても一応クリアされている、一時金についても、手続についても。確かに幅とか厚みとかという問題になると、ミクロに詰めていきますといろいろあると思うのです。しかし、私は、福岡高裁のあの最終案に基づいて今まで三十数回も和解協議をやって、あれだけ懸隔のあった被告熊本県と原告が意見の一致を見ようとしているということですから、話し合いをすれば解決はおのずからできる、こういう判断に実は立っているわけです。ですから、そういう意味で、先ほども申し上げましたように、ぜひ関係閣僚会議の中でこういう問題をもう一度総括をしていただいて、何とかこの議論のまないたにのせていただきたい、このことを申し上げたいのですが、長官、いかがですか。
  72. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えする前に、先ほど言葉足らずがありまして、ちょっと補足させていただきますが、私は和解のことを承知してないと申したのではなくて、和解の勧告案については情報を得ておりますし、内容も十分承知しておりますが、国を除く和解に参加している三者が、その協議がどういうふうに進行しているのか、それから三者が意見が一致しておるのか、その辺の状況については承知していないということでございます。和解勧告の内容については十分承知しております。  それから、先生が今申しました、東京地裁におきまして政治的責任というものが触れられたということについてでございますが、たしか平成二年の一連の和解勧告、各裁判所から出て、その中で、そのほかにも解決責任とかそういう、国家賠償責任とは別の形で責任論の言葉が出ておりました。そういうものも含めまして勘案しまして、環境庁といたしましては、今年度から水俣病総合対策事業というものを進めておるわけでございます。  そういうことで、その総合対策をより一層推進していくということで、そのような御指摘にこたえていきたいと思っておるところでございます。
  73. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 あのね、部長さん、県の、一生懸命和解をやっている公害部長、しょっちゅう私のところに来ますよ。皆さんのところにも行っていると思う。環境庁から派遣されている県の課長さんもおられるじゃないですか。いろいろな和解協議をやったり、裁判所からいろいろ和解勧告がいっぱい出ているわけですから、福岡高裁だけじゃなくて、福団地裁でも熊本地裁でも京都でも、みんな出ているわけです。そういうものを全部、私は環境庁と県との関係などについて十分なコミュニケーションできると思いますよ。知らないって、環境庁が知らないって、環境庁でこの問題解決の事務的な、具体的な問題に取り組む部長さんがそんな無責任な発言を国会の中で堂々とされるということについて、私は本当に我慢ができ ませんよ、これは。  いろいろ申し上げたいことがございます。後ほど長官にも御意見いただきたいと思います。  時間がございませんので、少し具体的な問題に入らせていただきたいと思います。  一昨日環境委員会がございまして、私たちの馬場委員を初めとして、水俣病問題について議論がされたと聞いている。私はほかの用件で参加をいたしておりませんが、この中で、これは議事録などもまだできておりませんのでよく詳細に見ておりませんから間違いがあれば御勘弁をいただきたいと思いますが、チッソに対する金融支援などの関係についての御答弁があったというふうにお聞きをいたしております。  ちょっと資料を取り寄せたのですが、いわゆる「チッソ努力を慎重に見守っていきたい。」という答弁、「チッソ経営状況の悪化等により、新たな金融支援策について相談があった場合、国としては、真摯な態度で対応したい。」こういう言葉がある。これは新聞四紙ぐらい全部同じように、「金融支援について相談があった場合、国としては、真摯な態度で対応したい。」ちょっと議事録抜粋を見せてもらいましたけれども、大体間違いないんじゃないか、実はこう思っているわけであります。  私もチッソの経営状態についてはよく理解をしているつもりです。平成四年度の上期の当期未処理損失だけでも一千三百十億ございまして、そういう意味ではかなり厳しい現状になっておるんじゃないかな。PPP原則がございますから、今日のこのチッソの経営状態でいきますと、公健法上の認定患者の補償金の支払いとかそれから公害防止事業費の支払いなどについて問題が出てくるんではないかな。今の県債方式でそれが可能なのかどうなのか、こういうふうに実は疑問を持っております。それはもう公健法上で認定された患者さんに対する支払いであるとか、あるいは今現にやっておる公害防止事業費の支払いですから、これはチッソがポシャってしまって支払いができないで終わりということになりませんから、そういう意味では、そういう状況になった場合に金融支援ということは、相談があれば真摯な態度で対応したいという環境庁考え方については全くそのとおりだろうと思います。  それまで否定されるのであればこれは大変だな、こう思いますが、その言葉の意味はそこにとどまっておるのか、それとも私先ほどから言っておりますように、やはり大詰めに来ている水俣病総体の解決、言うなれば、部長もさっき言おうとされました、総合対策以外に対立になっている一時金の問題、今議論になっている、訴訟になっているこの問題についても、金融支援などについて今日の県債方式を踏み出して金融支援に踏み込んでいくという考え方を我々としては受けとめていいのかどうなのか、ここのところはきちんとしておかないといいかげんに終わると思いますから、そこのところをきちんとお聞かせをいただきたい、こう思います。
  74. 原田昇左右

    ○原田委員長 政府委員に申し上げたいんだけれども、先ほど田中委員質問に対して、事実関係において食い違っているような答弁しているんだけれども、それは明らかにしてもらいたい、この席で。
  75. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答え申し上げます。  先日の環境委員会におきまして、現在チッソが現下の不況の状況で非常に経営的に困難な状態にあるということに関して種々御質問がございまして、経営努力でいろいろ御苦労なさっているというようなことから、今企業が懸命の企業努力を行っている、それを慎重かつ注意深く今見守っているところであるということに、さらにつけ加えまして、チッソから金融支援要請があれば、チッソの経営ということが補償責任を全うするためにもやはり大切なことでございますので、私どもは真摯な態度考えているということを申し上げたわけでございます。  ということで、チッソの現在の経営状態から今の三月期または今決算期ということをいろいろお話しし、患者補償費が年間三十億に上がる、また既往の県債、ヘドロ県債、患者県債の償還分がいろいろあるというようなこと等を踏まえましてお答えしたわけでございます。  したがって、私の発言はそういうことを申し上げたわけでございまして、今先生が御質問になりました、和解に対する支援という問題意識も踏まえてそういう発言をしたのかということでございますが、その点に関して申し上げますならば、現在国は和解協議に参加していない状況もございますし、チッソから和解が調う見込みであるという話も聞いておらないわけで、そういった段階で環境庁考え方を申し上げることは極めて困難な状況であることから、そういうことも含めて、また念頭に置いて発言したということではございません。
  76. 原田昇左右

    ○原田委員長 先ほど委員長から要望したのを追加答弁してください。松田部長。
  77. 松田朗

    ○松田政府委員 現在和解協議が進められている当事者のすべてがこの和解案によりまして解決をしたいということは承知していないということを申し上げたわけでございます。(田中(昭)委員「何と言ったのですか」と呼ぶ)現在和解協議に参加している三者が示された和解案に対して、すべてが、三者のすべてがこの案でもって解決をしたいというふうには承知していないということを申し上げたわけでございます。
  78. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 三者のすべてがという意味ですけれども、国は参加していないわけです。熊本県、これは受け入れる準備がある、こう言っておるわけです。それから原告の方も、これはもうこれで受け入れてもいいという態度をはっきりしているわけです。チッソも、それは金融支援関係などがいろいろありまして、これはPPP原則からいきますと、チッソの経営の問題からいくといろいろありますけれども、基本的にはこれでもう解決したいという気持ちはあるわけです。したがって、三者ともおおむねこの和解案で収拾を図ろうとすれば、国が金融支援などについてある程度態度をはっきりすればこれはまとまる、こういう状況になっているわけです。  ですから、残されておるのは、先ほど何回も言うように、今さら、国が和解に正式に出てきて和解協議に今から参加する、これは何年も私言ってきてできなかったわけで、しかし今三者で、国抜きでやったのが、先ほど言ったように病像論、責任論その他を含めてクリアしてきた、まとまる。しかし、これはもう国が一定の見解を示してもらわなければ、それは新たな、例えば手法についてはいろいろなやり方があるかもわかりませんけれども、それは私はここで今やらなければならないということでなくて、例えば三者で合意をした結論について、これをPPP原則に伴ってやろうとした場合に、国が何らかの、和解に参加じゃないけれども、例えば金融支援などについて、局長が言われるように相談があれば相談に乗るよということで、仮に、仮定ですが新々県債方式などができればそれはできるのじゃないかという考え方もあるわけで、したがって、これは非常に微妙なところですからお聞きをしたわけで、部長が言われるように三者が必ずしもそうでないというふうには私どもは受け取っていない。どういう意味で言われておるのか。
  79. 松田朗

    ○松田政府委員 今先生の方から、チッソあるいは県についての考え方というような感じてお承りしたわけでございますが、私のところに、直接県の方から正式にそのようなことは承っておりませんし、チッソの方からもこの和解案についてどう考えているかというような最終的な考え方も受けたこともないということを踏まえて申し上げたわけでございます。
  80. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 それでは早速承ってくださいよ。
  81. 原田昇左右

    ○原田委員長 松田部長。
  82. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 いや、いいですよ、もう時間がございませんから。  それで、最後長官にもお願いをしたいのですが、和解について、やはりこれをよりどころにして、方法、手法は別にしても何らかの形で政治的 な決断、決着を、そうしなければこの問題は本当に悲劇のまま終わる、そういうせっぱ詰まった時期にあるわけです。せめて私はこの場で、先ほど何回も言うように、和解参加とは言いませんけれども、仮に三者で、長い間かかって三十数回も協議を続けておおむねまとまりかけて幅についても厚さについても詰めていかれる、こういう状況まで来ているわけですから、何らかの形で国が力添えをしていただくということでこの問題の解決に向けての展望を見出すことができないか、こう思っておりまして、ぜひそういう立場で、先ほどから何回も言うように関係閣僚会議を早急に開催をしていただきたい。  この問題をこのまま看過するということになれば、私は、名前は申し上げませんけれども、ある自民党のこの問題の幹部の方とお話し合いをいたしております。この方を言われたのは、なかなか難しい問題だ、しかし後世、この水俣病問題が悲劇のまま終わった、そして後いろいろ言われたときに、あのときの与党の何とか委員長はだれだったか、こう言われたときにおれの名前が出てきたら恥ずかしい、やはり何とか考えないといかぬな、こういう発言をある幹部の人がされたわけです。  私は、代々の環境庁長官もそうだと思っているわけです。皆さんそう言われてきたわけです。しかし、残念ながら今この問題が未決着のままになっているわけで、先ほど言ったようにもうせっぱ詰まった時期まで来ている、こういうことを考えた場合に、ぜひ、環境基本法冒頭申し上げたのは、環境基本法というのはそういう悲劇が二度と繰り返されないような、そういう環境基本法をつくり上げなければいけない、そうしなければ絵にかいた果物で、どんなに立派であっても食べられないのではこれはしょうがない、こういうつもりで、冒頭あの環境基本法の基本的な考え方について実は申し上げたわけであります。  きょうはもう時間がございませんので、ここで結論をいただくというのはできないと思います。改めましてまた議論をする機会なり、また、私は長官にも具体的にお願いにも参りたいと思います。  最後長官の気持ちをお聞かせをいただきたいと思います。
  83. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先刻来より田中先生のお気持ちを私も素直に拝聴いたしております。その中で関係閣僚会議の言葉も出てまいりますけれども、率直に申しまして、関係閣僚会議をお開きいただくとなるときにはまず環境庁長官の決断が決まっていないといけないのです。私には残念ながらまだ、それまでに、私の心を固めるについてはもう少し私自身が取り組まなければならないと思っております。  それから、この問題につきまして、特にもう間もなく四十年の歳月を数えるほどにこの問題がずっとかぶさってきておるわけでありますので、その問題の重要性も私なりに受けとめております。そしてまた、この問題をどう解決するか、その解決の方法と解決の仕方によって、日本環境行政の価値が問われるということであると私自身は自分の胸に言い聞かせております。  したがいまして、今先生のお気持ちは十分に私も胸にこたえておりますが、そういうことで、もうしばらくの余裕をいただきたいと思っております。
  84. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 長官からそういうお言葉をいただきまして、本当に期待をいたしたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  85. 原田昇左右

    ○原田委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十九分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  86. 原田昇左右

    ○原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、NOx法に関連をして質問をしてまいりたいと思っていますが、その後、水道水源に関する法律問題点をちょっとお伺いをしていきたいと思いますから、できるだけ手短に質問をさせていただきたいと思います。  NOx法の具体化について、環境庁が今大変熱心にお取り組みをいただいていることに対して敬意を表したいと思います。また、地方自治体もそれなりに一生懸命やっているわけですが、正直なところ、どのくらい二〇〇〇年までの間に達成できるのかという数字をお示しをいただきたいというふうに思うのです。これは局長で結構です。
  88. 入山文郎

    ○入山政府委員 自動車NOx法につきましては、私ども法律を施行いたしまして、二〇〇〇年までにその他のいろいろな施策実施することによって環境基準のおおむねの達成が可能であるというように、従来から申し上げてきたわけでございます。  どの程度かという御質問かと思いますが、数字を挙げてということでございますので、ざっと申し上げますと、指定地域全体としては九割程度の達成が可能であろうかと存じております。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 九〇%という場合に、結果的に残る一〇%、つまり環境基準をクリアできない一〇%というのは、どっちかと言えば高濃度といいましょうか、例えば東京とかあるいは川崎とか神奈川とか、関西もございますけれども、そういう地域に限られてしまうと思うのですね。そういう場合に、それらの地方自治体が、九〇%でございますよ、したがってと、こうなるわけですから、それには集中的な取り組みが必要だな、こんなふうに思うのです。その点についていかがお考えですか。
  90. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘のように、非常に高濃度な地点がどうしても残るわけでございます。ただ、全体の計画を実施いたしますと、そういった高濃度の地点でございましても相当の改善は見られるだろうと思っております。環境基準達成とまではいかないまでも、それに近づけるというようなことは可能であろうかと存じます。  それからさらに局地対策と申しますか、そういった局地地点に対しまして特別の対策を講ずることによりまして、全体としても、そういう局地としても環境基準達成に向けて努力をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今、大気保全局長から局地的な対応というふうにおっしゃった。確かに全国的なレベルで全部基準を合わせて、レベルの高いところもクリアするというのはなかなか難しいわけですから、集中的な、局地的な対応が必要であることは言うまでもありません。  その場合に、例えば東京とか神奈川、川崎を含めてですが、あるいは埼玉、千葉を含めて、そういう地域を指定したのは六つですね。関東で言えば四つですよ、地域で言えば。そういう地域の対策をきめ細かく対応していかなければいかぬ。そういう地方自治体に対する国の施策環境庁施策もどういう形かで援助していかなければいかぬ、協力していかなければいかぬ、こういうことは当然だと思いますけれども、そのように考えてよろしいですか。
  92. 入山文郎

    ○入山政府委員 具体的な計画につきましてはそれぞれ都府県が計画を作成することになっているわけでございますが、基本的には国の方針というものがあるわけでございまして、その方針に基づいてそれぞれ計画をつくっていただくということになるわけでございます。  もちろん、各地域ごとに、あるいは県、市ごとに独自のと申しますか、いろいろな工夫を加えていただくということは何ら妨げることはないわけでございまして、そういった施策につきましても、有効なものにつきましては国としても支援をしてまいりたい、このように考えております。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 二〇〇〇年に車の増加率というのは二二%というふうに踏んでいるのですが、この統計の根拠は何ですか。
  94. 入山文郎

    ○入山政府委員 特定地域の将来の自動車走行量の伸びにつきましては、建設省の道路整備の長期構想のフレームといったものがございますが、そういったものも参考にしながら、環境庁におきまして推計をしたものでございます。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 率直なところ、二二%という数字に かなり確信が持てますか。
  96. 入山文郎

    ○入山政府委員 建設省が専門的な経験、知識に基づいて算出した数字を根拠といたしておりますので、妥当なものではないかと思っております。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 きょう私は通産省の自動車の国内販売の見通しなどについての資料を持っていますが、ここでやりとりをするつもりはありません。ただ、二二%という数字が基礎になるわけですから、ベースになるわけですから、そこからどういうふうになっていくかということは、非常にベースが大事だと思うのです。だから、建設省の道路整備の見通しとして二二%でございます、したがって、そこからさまざまな政策を合わせましょうと言うのでは、ベースが崩れたら全体がなくなってしまう、崩れてしまうということがありますので、ここのところは、別に意地悪を申し上げるつもりはありませんけれども、そういうことについてきちんと環境庁としても注意を喚起しておくべきだ、こんなふうに思いますが、いかがですか。
  98. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘のような点も踏まえまして、今後ともさらに私ども精密な調査をしてまいりたいと思っております。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私、きのう資料をいただきまして、要するに削減をしていくシェアとでもいいましょうか、割合とでもいいましょうか、そういうものを資料としていただきました。そうしますと、率直に言って、NOx排出量の少ないハイブリッド車に転換をする、例えば電気自動車などを導入する場合の施策、補助金その他税制上の諸措置があるわけですが、これはどの程度見込んでいるのですか。  そういうふうに一々やってみますと、一々答弁をしろと言ってもこれは無理でしょう。例えばもっとはっきり言うと、低公害車が四ないし五%ということになっている。そうすると、何台くらい、どのくらいの補助金で、何年かかってやっていくんだという数字が出ていなければいかぬ。出ていますか。
  100. 入山文郎

    ○入山政府委員 低公害車、特に電気自動車等が主になるかと思いますが、将来そういった車がどれだけの数見込まれるかということにつきましては、東京都の計画あるいは通産省の計画等を踏まえまして、私どもは二十万台から三十万台程度ではないかというように考えているわけでございます。
  101. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それの予算措置が今から担保されなければならないわけですけれども、正直なところ、それらもまだ不確定ですね。とりあえずは電気自動車ということを言うんだけれども、ほかの低公害車に対する諸措置も決して十分ではない。それから、鉄道輸送への転換ということも言ってございますけれども、一遍陸上輸送になってしまったそういう貨物が、事実上撤退をするという条件のもとで、一体どうやって鉄道輸送にシフトできるのだろうかということになると、これまた言葉としてはありますよ。だから政策としてもあるかもしれない。しかし、そこへどうつなげていくかということが明確でなければなりません。  これらについて、例えばJRとか運輸省とかという関係はきちんと詰めてあるのですか。
  102. 入山文郎

    ○入山政府委員 運輸省におきまして、現在、物流事業者でございますとか荷主企業等の関係事業者が鉄道を利用しやすいような環境の整備、あるいは鉄道の輸送力増強のためのいろいろな施策が行われていると私どもは承知しております。この施策によりまして、モーダルシフトが円滑に進められるものと考えております。  具体的に申し上げますと、物流事業者、荷主企業等の関係事業者が鉄道を利用しやすいような環境の整備ということが一つあろうかと思います。その中には、通運事業等についてのいろいろな事業規制があるわけでございますが、そういったものを緩和するといったようなこと、それから鉄道輸送用私有コンテナに対する固定資産税の軽減措置というようなこと、それから鉄道輸送の利用促進に資する機器等の整備に対する財政投融資制度の創設といったようなこと等々があるわけでございます。  さらに、もう一つの柱といたしましては、鉄道の輸送力増強ということがあろうかと思います。これは、ダイヤの増強あるいはコンテナ列車の長大編成化といったようなこと、それから必要な大型機関車の導入といったようなこと、それについての税制上の支援措置といったようなことが挙げられるかと思います。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 鉄道輸送へのシフトというのは結構な話ですよ。だけれども、事実上一遍スクラップにしてしまった形のものを、もう一遍荷主をどうやって集めるのかということになると、これは容易なことじゃないと思うのです。今おっしゃったのも一つの手だてでしょう。だから、非常に容易でないことを前提にして紀元二〇〇〇年は九割ですよと言われても、なかなか大変だなということを、御同情申し上げる気持ちを含めて私は指摘しておきたいのです。  例えば八五年のときも九〇年のときも、この委員会で、クリアしますと時の大臣はおっしゃった。そのたびに実はおわびの言葉ばかりいただいて今日まで来ているわけだが、二〇〇〇年というところも、いや、実は九割だったけれども、何となくどうもそこまで行きませんでということになりやすい。だって、現実問題として自動車はふえているのだから。そういうことを考えてみると、よほどきっちりと締めていかなければいけないなという感じがするのです。  そこで、これは一つの問題意識だと思うのですが、東京の自動車交通量対策検討委員会で、「二〇〇〇年に二酸化窒素の環境基準を総体として達成するためには、自動車窒素酸化物削減法の規制では不十分」、「自動車の走行量を抑える都独自の規制が必要」、こういうことを指摘しております。私は、NOx法の議論のときにいろいろやりとりしたから、ここでそんな議論を繰り返すつもりはないけれども、こういう指摘というのは傾聴に値すると私は思う。つまり、そういうことを考えていかなければできない。  幸いにして、環境庁はそれについて決して否定的なことをおっしゃらないで、これは斎藤君ですけれども新聞の記事、正確かどうかわかりませんが、「事業所ごとの総量規制などは環境庁でも検討したが、具体化は非常に困難なので見送った。だが都から具体的相談があれば、支援を検討したい」というふうにおっしゃっている。  あわせて、実は私どもの方の川崎では、二〇〇〇年の基準達成は事実上不可能だというデータがシミュレーションで出ています。これは御存じだと思う。それについて何とかしなければいかぬ。「自動車NOx対策事業は、一自治体だけでは限界がある。都が報告通りの施策を行えば、削減効果の高い広域交通対策が実現するきっかけになる」こう言っている。  これは大臣にお願いしたいのですが、関東でいえば東京、千葉、埼玉、神奈川、こういうことなんですよ、関西は大阪と兵庫がありますけれども。今まで自治体の長が中心になったサミットがあって、時には環境庁長官がお招きをいただくこともある。しかし、こういうことをやっていくときに、やはり環境庁長官が首都圏なら首都圏の首長、今言った県知事、それから川崎、横浜でいいでしょう、その首長を寄せて、いろいろ困難があろうけれども、ここのところはひとつ御協力をいただけないかと。ついては、環境庁だけでやれる分野だけでなくて、運輸省にも御協力いただかなければいかぬ、警察にも御協力いただかなければいかぬ、場合によったら通産省などにも御協力いただかなければいかぬ。そういう関連の省庁の、これは大臣と言わなくてもいい、担当局長のあなたもそこに出席していただいて、常時チェックし、そしてフィードバック、点検していくということが大事だと思うのです。  大臣、御案内かどうか知りませんけれども、実は私、多摩川の浄化のことで、小沢さんが環境庁長官のときにそのことを提起しまして、私はお手伝いをして、神奈川の県知事や東京の知事、それから川崎というような首長に多摩川のところまで 集まってもらって、環境庁長官がイニシアチブをとって、多摩川は日本じゅうの川の一つの見本みたいなものだという意味で少し議論をしようと、かなり長いこと対策を講じて、会議を開いて、方針を出して、実情を調査して、そしてそれなりの取り組みをしてくれたのですよ。  私は、今の行政というのは、縦割りの問題はありますけれども、やはり縦割りともう一つは横割りの問題も、力を合わせてみんなでやっていくという仕組みが必要だと思うのです。  大臣にこの際お願いをしたいのは、今申し上げたような手だてがどうしても必要なんです。私がここで大気保全局長に、自動車の走行量を抑える都独自の規制が必要だと言ったことに対して、あなたイエスと答えなさいと言っても、まずなかなかしんどいでしょう。だけれどもそのことは、まず第一にあなたにお尋ねしたいのは、そういうことを含めて首都圏が相談を始めるということは大事だという意識をお持ちかどうか、まずお尋ねしておきたいと思います。
  104. 入山文郎

    ○入山政府委員 私ども関係の自治体と豊から十分に連絡をとりながらこういった事業を進めているつもりでございますが、さらに一層意思疎通を図るということで、いろいろな方法は検討してまいりたいと思っております。  先ほど、環境庁が前に考えていたのと同じようなことを仮に都がやるならば、それは国としても支援するというようなことを私が申したというようなお話もございましたが、十分に相談をさせていただきますけれども、今までのいろいろな法体系の中でできないこともあるわけでございますので、ケース・バイ・ケースでよく話を聞いて、その結論に従ってやってまいりたいと思っております。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣お答えいただく前に、今のような答弁でいきますと、結果的に、NOx法の限界というものを自治体に押しつけることになるのですよ。僕は、やれることとやれないことははっきりしていると思う。それは話し合えばいいのです。話し合わないでおいて、いや、それはだめですよ、こんな議論をしていたのでは、横割りとか縦割りの両方の弊害を乗り切ることはできない。したがって、この点はやはり、東京都の今の最終レポートというものも念頭に置いていただきたいなということをひとつ指摘した上で、大臣、その点はどうですか。あなたは千葉県だから、川崎の向こう側だから、東京湾の向こう側だから、東京湾全体のことを考えながら首都圏サミットをお考えいただきたいと思いますが、いかがですか。
  106. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 岩垂先生から今、首都圏サミットという名前のこういう懇談の会といいますか、ある意味においては積極的に取り組む意思を含めた会が必要じゃないかという御提案でございますが、私は全く賛成でございます。  特に、NOx法から見ましても、国の方で総量削減の基本方針を定めたものを関係の都道府県がこれを受けるという形になったままにしておきますと、これはその結果をどう見ていくかということを含めて非常に問題がいろいろございますね。ですから、せめて首都圏あるいは関西圏、大阪圏もあるのでしょうけれども、首都圏におきましては、関係の都道府県知事あるいは特別市の市長を含めたそういう場をつくるということは大変賛成でありますし、また、今国会で実はぜひ先生方に御審議をいただきたいと思いまして今政府で準備しておりますのが基本法案でありますけれども、この基本法案においても、これは答申を受けておりますから、やはり自治体なり国なり国民なり事業者なりの責任論が盛り込まれることになると思うのですよ。そうしますと、なおさら東京を中心にした関係都道府県においてはそういうサミットのような場が必要になろうかと思います。大賛成でございます。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 環境庁長官のそういう前向きな御答弁をいただいたことにお礼を申し上げたいと思います。  それで私は、東京でうまくいけば今度は大臣が向こうへ行って関西でも、大阪と兵庫でそういう御理解をいただくための努力をするということがあれば、環境庁がNOx法に対してやはり前へ出てやるぞと、そのときに委員長も、それからもし必要があれば理事も含めていろいろな意味で御協力をお願いをするという場所というのはあるべきだと思うし、またやれると思うのです。だから、ぜひひとつその点は、NOx法のいわばフォローということを含めて御理解をいただきたいというふうに思います。よろしくどうぞお願いをいたします。  実は、大臣にちょっと褒めてほしいことがあるのですが、川崎が今度は自動車公害課というのをつくることにしました。対策室だったのです。率直に言えば、中に議論はありますよ。行政改革の時期に課を一つふやすというのは何だというような議論が出てくるわけだから、こういうことはやはり必要なこととして大変いいことだと私は思うのですが、大臣、どうお考えですか。そうすると、やはり全国でも考えざるを得なくなるから。
  108. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 国を挙げて、ことしばかりでなくてもう何年か前から行政改革に取り組んでおる時期に、川崎市が今までの対策室を今度は課に昇格させたいという情熱をお持ちだというのは、これはやはり市の行政レベルの中で考えていることでありますから、私としては大変結構なことじゃないかと思います。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私たちの生命や健康というものがむしばまれている、そしてそれは自動車排ガスというものに関連することが非常に多い。しかも厄介なのは、被害者が時にイコール加害者であったりするという関係にあるわけでございます。したがって、市民全体も、つまり国民全体も加害者という自覚を持って考えていかなきゃいかぬだろうということになると、僕は、普通の乗用車にディーゼルなんというようなものを、四WDだとかいろいろなものがあるけれども、そこらのところから少し考え直していかなきゃいかぬなというふうに思います。しかし、それはメーカーの仕事ですから、私たちが立ち入っていろいろ言うわけではないけれども、やはり国民の側、つまりユーザーの側がそういう問題に自覚を深めていくということが大事だと思うのです。  その意味で、実は貨物自動車なんかの使用の管理のマニュアルみたいなものを実際につくって一生懸命にリードしているんだけれども、なかなかどうも、二〇〇〇年にどこまでというのが、入山さんのところで理屈は立ててくれましたよ、それなりに数字合わせもできます。数字合わせはできるが、実態をもう一歩追及してみると、その根拠は非常に何かファジーとでもいいましょうか、あいまいな面が、本当のことを言ってそうならざるを得ないのです。それは、今そこでこちんとしたものを求めるたって無理な話なんです。だけれども、目標を立てた以上はそれに向かってどう進んでいくか、あらゆる努力を集中しなきゃいかぬという意味で、NOx関係のサミットということを含めて、自治体がそれだけ積極的にやっていますので、それを激励しながら国全体がそれをフォローしてバックアップしていくということについて積極的な御協力をいただきたいと思いますので、これは大臣最後にその一つだけお願いをしたいと思います。
  110. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 岩垂先生の御発言に対しましては、私も衷心賛成の気分でございます。
  111. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それで実は、新聞の切り抜きで大変申しわけないのですが、ここのところ大気汚染が花粉症の共犯であるということなどが新聞で報道されていますし、それからディーゼルのDEP、つまり排気微粒子が都市型ぜんそくを誘発しているという記事が立て続けに出ています。これは何と国立環境研究所の動物実験によるところが大きいわけでございます。  これは率直に言って、花粉症が物すごくふえていますよね。それで、私たちの身の回りでも大変苦しんでいる人が多い。これはここまで来ると、そのままお医者さんにかかって治す以外に手はないというのではしょうがないと僕は思うのです。だから、積極的な手だてが必要だな。顧みれば、御 案内のように、戦争中もそうだけれども、山を切って、そして炭を生産をしてというようなこともあったし、戦後は今度は雑木林や広葉樹林を片っ端から切って杉に植えかえてきた。これは、林野庁なり農林省の方針として、国策でやってきたわけです。だから、杉が非常に多くなったというのはやはり国の政策と無関係ではない。杉だけではないけれども、杉と花粉症の因果関係というのが非常にあるとすると、国もある程度この問題について責任をお互いに感じなければいかぬなというふうに僕は思うのですが、この花粉症と特に大気汚染との関係、DEPとの関係などについて、環境庁資料をお持ちでしょうか。
  112. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  ディーゼル車の排ガス中の粒子状物質が花粉症に関係があるという研究成果が幾つか発表されていることは承知しております。最近の新聞でもそれに関するものが出ておったわけでございますが、環境庁といたしましては、そのディーゼル車の排ガスと花粉症の関係、これを解明するために、平成三年度から実は検討会を設置して実験的な手法を用いた調査実施しております。まだ、結果を出すまでに至っておりませんが、今後とも成果を上げていきたいと思っております。  また、先生指摘のように、この花粉症に絡んではいろいろな省庁がございまして、関係省庁との間で担当者の連絡会議を定期的に開いておりますので、そこでもお互いの知る分野を分かち合いながらやっていきたいと思っております。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 一つだけ注文しておきたいのですけれども、ディーゼルの排気微粒子、つまりDEPのいわゆる環境対策というものは今は十分でありませんね。だから、やや専門的な注文で悪いのですが、やはりこれは疫学調査に取り組まれるべきではないかと思いますが……。
  114. 松田朗

    ○松田政府委員 ディーゼル排ガスの粒子の中で、今おっしゃった先生の御質問について、特に疫学調査をということでございました。  現在、その粒子状物質につきましては、環境庁では局地的な大気汚染の健康影響調査手法に関する調査、こういうような調査の中で、粒子状物質の特定物質にねらいを定めているのではなくて、まず粒子状物質全体がその沿道地域住民にどう影響を与えているかというような、その局地の調査研究をどうするかという手法の研究を進めておるわけでございます。そこのところがはっきり成果が出ましたら、またその手法を受けまして先生のおっしゃるような研究の方へ進んでいけるのだと思うわけでございますが、現実の問題は、今先生のおっしゃった物質に着目した実態調査をするまでの手法はまだございませんので、しばし時間が必要かと思います。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 厚生省、いらっしゃいますか。お忙しいところ、恐縮です。  花粉症対策について、余り国会で取り上げている人もいないようですので、初めてみたいな感じになっているわけですが、実態調査、例えば患者数がどのぐらいいるかなどについてはどこもつかんでいないのですね。またつかみようがないのでしょう。医者にかかった人をトータルすればそれで患者の数が出るなというような感じなんです。だから、私は厚生省もそれなりに頑張っていらっしゃると思うので、これらの経過についてどうしていくかということについて、ここではっきりお述べいただきたいと思うのです。
  116. 澤宏紀

    ○澤説明員 花粉症患者につきましては全国規模での調査がなく、その数は不明でございます。  東京都の調査によれば、先生おっしゃられますように、患者数の増加傾向が認められているところでございます。このため厚生省といたしましては、平成四年度から花粉症も含めましたアレルギー総合研究を推進することといたしまして、総額一億円の予算で疫学研究を含めた調査研究を総合的に実施し出したところでございます。  今後とも、関係省庁と十分な連携を図りながら、必要な調査研究並びに対策を検討していきたいというふうに思っております。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 平成四年に始めたんですが、五年もやってくれますね。そして、そのやる中身などポイントを絞って、人数、患者と言われる人たちをきちんと掌握して、疫学調査をやってくださいよ。その点はいかがですか。やっていただけますか。
  118. 澤宏紀

    ○澤説明員 平成五年度もやることとしております。  疫学の研究でございますけれども、全国の二十地域、一地域約一千名程度になろうかと思いますけれども、二十地域におきまして問診と血液検査を行い、アレルギー疾患の有病率を明らかにするとともに、有病率に影響を与える生活要因や環境要因についても検討していくというふうに予定しております。(岩垂委員「何人ぐらい」と呼ぶ)二十地域、一地域約千名。
  119. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 千名。わかりました。  環境委員長も花粉症だそうでございまして、やはり早く治さなければいかぬから、そういう意味で激励もいただきたいと思うのですが、ちょっと本当にここまで広がってきますと、何か特異な病気だという程度では済まない。私の田舎の、知っている人じゃなかったのですが花粉症で、車を運転していてくしゃみしまして、車で突っ込んじゃって、そして人のうちの高い塀を壊してしまった人がいるのですよ。つまり、そういうさまざまな社会的な問題がある。  一方で、花粉症というものが、呼吸器疾患などとのかかわりというのは本当にあるのかないのか私はわかりません、専門家でないから、素人ですからわかりませんが、そういう解明もどうもはっきりしていない、そういうようなことを含めて疫学調査をぜひやっていただいて、できるだけ早い機会に国民の中にその結果などについて報告をいただきたいな、発表をいただきたいなというふうに思います。  実はこんなのが出ていまして、これは役所で配っているのですよ。厚生省保健医療局国立療養所課というところが監修して、民間の会社が印刷をして売っているのですけれども、「正しい知識と予防」と書いてあるのだけれども、果たして正しいかどうかそれは知りませんけれども、つまり、国民の側から見ると、何をやっているんだという不安があるわけですので、解明できるところはその限りにおいて解明するための努力をしていかなければいかぬなというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。  厚生省さん、ありがとうございました。何か御答弁あったら、ぜひこの際。
  120. 澤宏紀

    ○澤説明員 これまで疫病対策と申しますと、どちらかと申しますと、がんとか心臓病あるいは脳卒中、いわゆる死因の高い疾病対策を中心に行ってきたわけでございます。  しかし、先生おっしゃられますように、花粉症でございますけれども、花粉症初めアレルギー疾患が非常にふえているということで、これはいわゆる直接死亡というのでなくても非常に患者さんも多い、いわゆる国民のクオリティー・オブ・ライフと私どもよく言うのですけれども、QOLを非常に損傷しているのではないかということで、こういうアレルギー対策も力を入れてやっていきたい、そういうふうに思っております。
  121. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。では、厚生省さん、結構です。  では、もう時間もだんだん迫ってきましたので、最後水質の問題。あれは一月の幾日だったか「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の項目追加等についての報告」というのが出されました。私は前にこれをお届けをいただいたのですが、今度改めて勉強させていただいて、大変立派な文章がございます。それは一番最後の八ページのところに、   今回はあくまで人の健康の保護に関する環境  基準を設定するという観点から検討を行った  が、化学物質による水環境の汚染への対応を検  試する場合、人の健康の保護の観点のみならず、  水生生物や生態系への影響についての考慮も重要である。   我が国においても、例えば、有機スズ化合物  等の水生生物への影響が懸念され、調査が進め  られている。化学物質による水生生物等への影  響の防止といった新たな観点からの環境基準の  設定の考え方は、既に米国等においても取り入  れられており、我が国においても早急に検討し  ていく必要がある。という答申が出されました。私は大変すばらしいことだと思っています。その意味で、願わくはこの実現のために全力を挙げていただきたいと思います。  そこで伺いますけれども、早急に検討する必要があるというのは、どんな手順でどんなスケジュールをお考えになっていらっしゃるか、御答弁をいただきいと思います。
  122. 赤木壯

    赤木政府委員 今お話があったのは、一月十八日付の水質環境基準の項目追加等にかかわる中央公害対策審議会の答申でございます。  これでは、お話があったように「今後の課題」として、最後に「化学物質による水環境の汚染への対応を検討する場合、人の健康の保護の観点のみならず、水生生物や生態系への影響についての考慮も重要である。」ということで、化学物質による水生生物等への影響の防止といった新たな観点からの環境基準の設定についても検討せよという旨の御指摘はいただいておるわけでございまして、我々といたしましても、具体的な検討手順というものはまだ定まってございませんけれども、非常に重要な課題であるというふうに考えてございまして、これまでに集積してきました知見等を踏まえると同時に、専門家の方々の御意見も伺いながら早急に取り組んでいきたいというふうに考えてございます。  ただ、中身がなかなか難しい問題も含んでございますので、結論を得るまでに若干時間はかかるかと思いますが、いずれにしても早急に取り組んではいきたいというふうに考えてございます。  この関連ではございますけれども、農薬については、従来から生態系を評価する手法について、これももう内外の知見を集積するとか、あるいは試験方法の検討を行ってきたところで、平成五年度からは、主な野生生物への農薬の影響試験を行ったりして、農薬影響分類基準や農薬の使用上の留意点というようなものを作成する計画で調査していきたいというふうに思っておるところでございます。
  123. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 結論をそう急ぐわけにはいかないと思いますが、その検討を急ぐべきだという点はぜひここで強調をしておきたいと思います。今年度内にといってもなかなか大変でしょうが、来年度、年度というのは四月以降ですね、できるだけ早急にそういう取り組みをお願いしたいと思うのです。  それで、念のために伺っておきますが、今農薬の話が出ましたけれども、そういうことになれば水生生物などへの影響の防止という観点になれば、合成洗剤や農薬というような問題も当然含まれる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  124. 赤木壯

    赤木政府委員 合成洗剤の水生生物への影響が懸念されるという指摘もあることは我々も承知してございます。したがって、知見の集積だとかあるいは整理という面でも、そういう面も含めた形で幅広く検討をしていきたい、このように思います。
  125. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう時間がなくなっちゃったものですから、実は厚生省からお越しをいただいておりまして、水道水源の水質保全に関する法律をこの国会に出したいという新聞の発表がございました。  ちょっとこれは私もびっくりしたのですが、各省庁調整というのはどうなっているのか、今国会に間に合うかどうか、間に合うかどうかという質問は余り正確じゃないな、どんな手順になっているかということをお尋ねしておきたいと思うのです。
  126. 浜田康敬

    浜田説明員 お答えいたします。  厚生省といたしましては、先ほど環境基準のお話もございましたけれども、それに関連する話といたしまして、昨年の十二月に水道法に基づきます水道水の水質基準の大幅な改定を既に行いまして、ことしの十二月からそれを施行しようということでございます。  この内容は、二十六項目を四十六項目にするというような大幅なものであったわけでございますが、そうしたための水道水源の水質保全対策が非常に重要であろうということから、去る二月四日に、省内に設けました有識者懇談会からの御報告をいただいたところでございます。  現在、この報告書に盛り込まれました対策推進するために、関係の各省庁にこの内容の御理解と対策推進のための御協力を得るべく、鋭意お話を進めております。そうした上で、厚生省といたしましては、水道水源のための実効ある総合的な対策が確立できますように、所要の法案を今国会に提出てきますように関係省庁に働きかけてまいりたいという考え方でございます。
  127. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私お願いしたいのは、実は湖沼法の議論をしたとき、昭和五十九年だと思いましたけれども、そのときに湖沼法というものが、最初そうでなかったのですが、湖の水質保全というところに絞られちゃったわけです。中公審答申はもうちょっと幅広い意味で、周辺の開発に対しても規制を加えなければいかぬぞということがあった。そこで、社会党案をつくりまして、私が提案理由の説明をしたことを今でも覚えているのです。  つまり湖沼法で、地域の開発の規制をする、つまり水道原水を含めた水質保全をするということはある程度できるじゃないか、一〇〇%全部というわけにはいかないにしても、そういうことをやりなさいということに対して、当時の上田環境庁長官から、これからこの湖沼法を施行していく過程で見直しながら、しかるべき修正を加えていきたいという御答弁をいただいている。私ここに議事録を持っている。  それから、水質汚濁防止法でも、有害物質その他の問題の環境基準の問題まで、排出規制まで含めてあるわけです。そういうものをフォローして、つまり既成の法律でやれるものをきちんと積み上げた上で、それは確かにどうしてもできないものがある、そのできないものについてどうしていくかというような積み上げをぜひ私は厚生省にお願いしたいと思うのです。その意味は、私は、環境庁もハッスルしろというんです。  こういう事のいきさつがあったわけですから、環境庁自身が旗を振っておかしくないのですよ。その点は、どっちがやったからいいとか悪いとかいうつもりはありません。だけれども、非常に必要な課題だから、この際厚生省が一応その方向を打ち上げたとしたら、厚生省は厚生省でおれのところでやるんだという縄張り争いじゃなくて、やはり環境庁一つ一つ積み上げてきた実績や、環境庁だけでなくて各省庁も積み上げてきたわけですから、その実績をやはりきちんと物にしてほしい、このことを注文したいと思いますが、いかがですか。
  128. 浜田康敬

    浜田説明員 先生今御指摘ございましたように、水質保全対策については、今までもいろいろな経緯の中でここまでの対策の仕組みができ上がってきたということは、私どもも十分踏まえておるわけでございます。  先ほど申し上げました水道水源の水質保全対策につきましては、従来の仕組みで取り組んでいただく上に、さらに水道水の安全性を確実にするために、取水口近辺におきまして少し充実した対策推進が必要ではないかということでございます。したがいまして、こうした対策は非常に、関係各省、特に環境庁には積極的な役割をお願いできればというふうにも思っております。  いずれにいたしましても、厚生省のみでできることではございませんので、精力的に関係省庁意見交換をしながら、従来の制度の上に立ちまして、さらにどうした対策が必要かということで私どもなりの努力をさせていただきたいということでございます。
  129. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もうやめますが、建設省の安中公共下水道課長、運輸省の洞企画課長にお越しをいただいていて、本当に済みません。  ただ、建設省に一言だけ。私ども神奈川県の水道原水というのは津久井湖とそれから相模湖でございます。その上流が山梨県でございまして、山梨の下水道が整備されぬことにはどうにもなりませんものですから、きょうは実はそのことを具体的にお尋ねをしようと思ったのですが、時間がございません。いずれにしても、そういう流域の中で水道水を使っている県民のためにも、県は違うけれども、やはり下水道の整備について積極的な、傾斜配分というのも変かもしれませんが、御努力を願いたいと思いますがいかがですかということだけ、一言お答えをいただきたいと思います。
  130. 安中徳二

    ○安中説明員 先生のおっしゃる趣旨を踏まえまして、私ども、公共団体を指導してまいる所存でございますので、よろしくお願いいたします
  131. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうも長い時間済みませんでした。それから、運輸省さん済みませんでした。申しわけないです。  それでは以上で終わります。ありがとうございました。
  132. 原田昇左右

    ○原田委員長 次に、大野由利子君。
  133. 大野由利子

    ○大野(由)委員 先日に引き続きまして、一般質問をさせていただきます。  初めに、昨日の新聞で掲載をされていたわけでございますが、ディーゼルエンジンの排気中に含まれ、環境汚染の原因とされますディーゼル排気微粒子、DEPでございます。先ほどちょっと岩垂先生の御質問の中にもあったようでございますが、このDEPと呼ばれる微細物質が気管内で腕組織を壊して、そしてぜんそくと同じような症状を引き起こす本体であるということが判明をした、そのような報道がなされておりました。  これは国立環境研究所のマウスを使った研究で裏づけられたようでございます。DEPは、都市部の沿道などNOx濃度の高い地域で大変高い濃度を示し、呼吸器障害を引き起こす真の原因物質ではないか、そのように思われてきたわけでございます。今回の国立環境研究所の研究の結果そのことが明らかになった、そのような報道がなされておりましたが、環境庁見解、そして今後の対策について伺いたいと思います。
  134. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘の研究でございますが、これはマウスに一定量のディーゼル排ガス中の微粒子を与えるわけでございます。そうしたら、産出した活性酸素によりまして細胞の中に炎症が起きる、そしてまた、気管支の上皮細胞が傷つくといったような事例が認められたということでございます。  この実験では、現状の環境濃度によって暴露をされる量よりも著しく高濃度の、十倍程度かと思いますが、ディーゼル粒子を吸入させるというのではなくて、直接気管内に注入するという方法で実験しているわけでございます。実際の環境条件下での影響が解明されたということにはならないわけでございます。当の研究者も、今後は吸入暴露実験というようなものも実施していきたい、そういう予定であるというようなことも言っているわけでございます。  今回の報告は、ディーゼル排ガス中の微粒子についての健康影響を解明する上で新たな知見であると考えておりますが、環境庁といたしましても、これからさらにいろいろな継続的な実験研究の結果について注目をしてまいりたい、このように思っております。
  135. 大野由利子

    ○大野(由)委員 昭和六十二年の第百九回国会におきまして、公害健康被害補償法が改定をされました際に、大気汚染がぜんそく等の疾病の主たる原因とは考えられないというようなことで、第一種地域のすべてが解除をされまして、新規のぜんそく患者の認定が行われないようになった、そういう現状がございます。しかし、その後の東京都の調査におきましても、交通量の多いところ、沿道ではぜんそく患者が非常に多いという実態調査の結果も出ております。  こうした観点、それから先ほどのこのDEPのマウスによります実験結果、こうした問題等々考えましたときに、やはりDEPとぜんそくとの関連が非常に深いんじゃないか。先ほど御答弁いただきましたように、直接吸入じゃなくて何とおっしゃいましたか、まだまだ今後の研究を待たなければいけないという状況はあるようでございますが、非常に深い関連があるということが推察をされるということは確かである、そのように思います。  そういう意味で、この昭和六十二年の公害健康被害補償法が改定されました前提条件そのものもある面では危うくなってきたのではないか、これも考え直す、検討し直す必要があるのではないか、そのように思いますが、この点についていかがでございましょうか。
  136. 入山文郎

    ○入山政府委員 この問題につきましては所管の部があるわけでございますが、私から申し上げますことは、今回の結果によって、ぜんそくというのはもともと非特異的な疾患、と申しますのは、原因がはっきりしないと申しますか、いろいろなことが原因で起こる、そういった疾患でございますので、今回の結果だけで、ディーゼルの排ガスあるいはその黒煙、粒子状物質といったものがぜんそくの主たる原因であるということがはっきりしたわけではございませんので、そういった原因になり得るということを示唆するような面があると私どもは思っておりますが、そういったことでございますので、先ほども申し上げましたように、これからさらに研究を進めていくということが必要であろうかと思っております。
  137. 大野由利子

    ○大野(由)委員 砂場の問題について伺いたいと思うのですが、日本獣医畜産大学公衆衛生学教室の林助教授等々が一年間にわたって、公園の砂場を対象に大腸菌群数を調べた細菌学的な調査をいたしました結果、公園の砂場の砂一グラムの中に二万から三万個の大腸菌が検出されたという大変ショッキングな報告が出ております。  建設省の担当でいらっしゃるのか、所轄かと思いますが、都市公園の衛生管理について、これまでどのような対応をされてこられたのかについて伺いたいと思います。
  138. 山田勝己

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  都市公園法に基づきまして都市公園の管理がなされておりますが、政令第六条で、都市公園にありますいろいろな公園施設がありますが、そういった公園の施設の構造につきましては、安全上、衛生上必要な構造としなければならないというような施設面の観点からの規定があります。  さらに今御指摘の点は、公園の管理上の問題かと思いますが、衛生上の観点から、子供の遊び場につきましては各地方公共団体でいろいろな方法をとりまして、衛生の確保に努めているところでございます。
  139. 大野由利子

    ○大野(由)委員 大腸菌の群数によって水質管理の基準が定められているわけですが、水道水の場合は厚生省の省令で、大腸菌は「検出されないこと。」そのようになっております。学校のプールは大腸菌の未検出が大前提である、一般のプールでも百ミリリッター中五個以上出ないこと、そのような基準が設けられております。海水浴場の遊泳基準、これは環境庁水質保全局の管轄のようでございますが、百ミリリッター中百個以下がAランク、百から千個がBランク、千以上は適さない、そのような基準が設けられているわけです。  砂場は水とまた違うわけでありますけれども、非常に病気に対する抵抗力の弱い幼児や低学年の児童が遊ぶ、そういう場所でございます。遊びながら口の中に砂が入るということは日常茶飯あるわけでございますが、それだけに十分な衛生管理が必要かと思います。子供の口から菌が入って食中毒を引き起こしたり、傷口から入って化膿する原因になる、そのようなことが十分あり得るわけでございますが、砂場には大腸菌の基準値がないということは果たしてこれでいいのかどうか、基準値をやはり必要とするのではないかと思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  140. 山田勝己

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  児童公園の中に砂場が設けられている例が多いわけでございますが、犬、猫の排せつ物によります大腸菌が検出されるなど、不衛生な状態にあることは承知いたしております。  汚染された砂場を改善する方法といたしましては、砂の入れかえ等の対策考えられるわけでございます。この対策につきましては、公園管理者であります地方公共団体が汚染の状態やあるいは公園利用の実態、さらには公園に要する費用などを勘案しながら、また地域の住民の方々の協力も得ながら、個々の公園ごとにそれぞれの判断に基づきまして対策を講じております。  そういったことから、今御指摘のように国の方が地方公共団体の公園管理の実情を踏まえまして、例えば一定の基準を定めるということも一つの方法でございましょうし、さらに、具体的な基準は特に定めないで一般的なことを国が定めまして、地域の実情に応じまして公共団体の各管理者が個別に地域の実情を配慮して適切な管理をしていくということも方法でございまして、両方の面から、今後こういった点について取り組んでまいりたいと考えております。
  141. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今御答弁の中にもありましたように、地方公共団体も最近この問題に大変着目をいたしまして、定期的に砂を入れかえるとか必ず砂場に水道の施設をするとか、また、夜子供が遊び終わった後はシートをかけて犬や猫が入ってこないようにするとか、さまざまな努力をしつつあるようでございます。  その現場の方の切実な声といたしまして、どれぐらいで砂を入れかえたらいいものか、判断の参考にするためにもぜひ基準が欲しい。ある程度、大腸菌がこれぐらいになったら入れかえなければいけない、そういうものが現にプールの水等々にはあるわけですね。また海水浴場にもある。そうした観点からいきまして、砂場にもやはりそうした基準が欲しいということと、それから基準だけじゃございませんで、砂場の衛生管理をどのようにしていけばいいものかというその対策を、いろいろぜひ参考意見を聞きたい、そういう要望も非常に高いわけでございます。  こうした対策についても、今後、先ほどの地方公共団体任せではなくて、建設省としてはこの点についてどのように取り組まれる御予定なのか伺いたいと思います。
  142. 山田勝己

    ○山田説明員 お答え申し上げます。  私ども、地方公共団体がどんな対策を講じているか、二、三調べた例がございます。例えば札幌市におきましては犬猫の排せつ物による汚れがあった場合には砂の入れかえを行っておりますが、さらに特異な例といたしまして、町内会による猫の捕獲、地元のお母さんグループによります夜間のシートがけといったいろいろな対策を講じておられるところでございます。  そういったことから、今後各公園管理者であります地方公共団体と連絡を密にいたしまして、より適切な方法が講じられるよう研究してまいりたいと考えております。
  143. 大野由利子

    ○大野(由)委員 もう一回確認をさせていただきますが、基準値は検討してつくっていただく方向で前向きに取り組んでいただけるのでしょうか、いかがでしょうか。もう一回重ねて伺いたいと思います。
  144. 山田勝己

    ○山田説明員 この砂場の衛生問題が取り上げられましてまだ日が浅い面もございますので、実際に公共団体でとっておられるいろいろな対策方法を十分踏まえながら、基準値が必要な場合には基準値の作成に取り組みますし、それよりも各地方ごとに独自の対策方法に任せた方がいいというような場合もございますので、各地方の実態を踏まえながら取り組ませていただきたいと思っております。
  145. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今、大腸菌だけじゃありませんで、公園の砂場には犬や猫の回虫の卵による汚染状況も非常に大変なものがある、そういう研究といいますか、調査結果も出ております。市街地の公園の砂場の六八・六%にトキソカラ属線虫卵という回虫卵でございますが、そういうものを検出したという報道もなされております。  こういった意味で、今の御答弁を伺っておりまして、本当にまだまだ小さな抵抗力の弱い子供たちが安心して遊べる場、今ただでさえ車が多くなって、危険も多くなって、遊ぶ場が少なくなってきて、砂場、公園が唯一の遊び場であったにもかかわらず公園が安心して遊べる場でなくなってきたということで、小さな子供を持っているお母さん方にとっては非常に不安な材料を与えているわけでございます。そういった意味で、建設省さんの今のような消極的な姿勢ではなくて、ぜひ公園を安心して子供たちが遊べる場にできるためにもっと積極的にぜひ取り組んでいただきたいと御要望をさせていただきたいと思います。  それから次、水道水源のお話について、先ほどもちょっと質問がございましたので、私も少しダブるところを省いて質問をさせていただきたいと思うわけですが、非常にこの水道水源というものが問題になっておりまして、厚生省さんがこれについての法案を準備している等々の話が今報道をされているわけでございます。  水質汚濁防止法に基づく工場などの排水基準は水質環境基準の十倍くらいの非常に緩やかな値になっておりまして、排水口と取水口が近い場合は水道に適さないなどというふうなことが指摘をされております。また、有機溶媒などの化学物質などによる水源汚染や農薬の散布などによって、水道事業の運営に支障を来しているというふうなこともございます。これは今、公共用の水域への排出水の規制というものをもっと強化する必要があるのじゃないかな。今工業排水とか農業排水等によって全部所轄の官庁が違う、そういう限界があるわけでございますが、水質総量規制の導入といいますか、いろいろな官庁をまとめて公共用水域への排出水の規制というものを強化していく必要があるのじゃないか、そのように思っておりますが、これについてはいかがでございましょうか。
  146. 赤木壯

    赤木政府委員 工場、事業場からの排水につきましては、水質汚濁防止法において、総理府令によって排水基準を定めて排水の規制を行っているということで、排水規制を行っている施設対象も、これは大変いろいろ幅広く細々と規定してございまして、たくさん水を排出する施設はほとんど網羅しているということでございます。だから、この規制は、業種にかかわらず、ある程度の施設を持っていればそういうものについては排水基準に則した形での排出をしなければいけないというふうな法律制度になっておるところでございます。  先ほど、総理府令で定める有害物質の排水基準が今カドミウム等十一項目になっておるわけでございますが、環境基準の十倍値を基本としていて問題ではないかということもお話あったわけでございますが、この考え方は、排出水の水質というのは、河川に排出されるとそこを流れる河川水などによって通常少なくとも十倍程度には速やかに希釈されるという想定の中でこういうふうに定めているわけでございます。  この基準というのは、すべての規制対象事業場というものがあるわけですけれども、これからの排水に適用される最低限の基準ということになって、その地域の実態に合わせて、特に地域の自然的、社会的条件、例えば今のような取水口、自然的な条件からいろいろ水量がどうなっているかとかいう問題あるいは利水がどういう形になっているかというような状況も踏まえて、必要があれば都道府県が上乗せ規制をできるというふうな水質汚濁防止法の制度になってございまして、現実もこういう規定によってより厳しい排水基準を定めているところもあるわけで、環境基準と全く等しい排水基準を定めている流域等も現にございます。  現在のこういう排水基準の運用状況で、有害物質などではどういうふうな状況になっているかということでございますが、公共用水域における人の健康にかかわる環境基準というものはほぼ満足していると有害物質については言えるというふうに考えてございます。したがって、こういうふうな制度の中である程度運用を充足していけば対応できるのではないかというふうに思っております。
  147. 大野由利子

    ○大野(由)委員 先ほどちょっとお話も出たわけですけれども、水道の水というものに対する今国民の皆さんの不安が非常に高まっているわけでご ざいます。ここは厚生省だ、ここは環境庁だ、ここは建設省だというのじゃなくて、本当に安心してそしておいしい水を確保できるために、これは協力をして力を合わせてやっていかなければいけない問題ではないか、そのように思うわけですね。厚生省さんで言えば、最終処分場による環境汚染の問題だとか産業廃棄物の不法投棄の問題等、こうした問題も水の問題に大きなかかわりを持ってくるわけでございますし、ぜひこれは関係省庁が力を合わせて頑張っていただきたい。厚生省さんも今いろいろ計画をされている面もありますけれども、先ほどの答弁の中にもありましたように、今までの環境庁のいろいろな積み上げてこられたものと一緒にやっていかなければいけないものもあると思いますし、私はこの際、各省庁が一体になって水問題に取り組んでいただきたいな、そのように思うわけですけれども、これについてぜひ閣僚会議でも設置をしていただいて、省庁を超えたそういうものをやっていただいたらどうかな、環境庁長官にこれはぜひリーダーシップを発揮していただいて、そしてこういう場を設定していただいたらどうかなと思いますが、いかがでしょうか。
  148. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 水問題は、全く大野先生のおっしゃるとおり、大変大事な問題でありますので、先生の御意見を十分に承ります。
  149. 大野由利子

    ○大野(由)委員 厚生省さん、いかがでしょうか。
  150. 浜田康敬

    浜田説明員 水道水の状況につきましては、先生指摘のとおり、水道水中にいろいろな化学物質等が検出されたり、あるいは異臭味被害が生じたりということで、国民の不安が大変増幅してきているという状況でございます。  そうした中で、先般二月四日に有識者懇談会から水道水源の保全対策のあり方につきまして御提言をいただいておりまして、これの推進、特に従来の対策に加えまして、水道水源近辺におきましてさらに各種の問題が総合的に解決できるような仕組みを設けるべきだという提言を踏まえまして、私ども関係省庁にいろいろ御理解と御協力をお願いしているところでございます。  そうした取り組みの中では、おっしゃいますように関係省庁一体となった取り組みを、ぜひ厚生省としてもお願いしていかなければならないということでございますので、御趣旨も踏まえまして、厚生省としても精いっぱい努力してまいりたいと考えております。
  151. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ぜひこれは力を合わせてお願いをしたい、そのように思っております。  最後質問でございますが、三年前、平成二年の四月二十六日の予算委員会の分科会でございましたが、私、沖縄県石垣島のサンゴ礁の自然保護について質問させていただきました。新石垣空港建設の予定地に関する質問であったわけですが、その後もこの空港については二転三転をして、最後の陸上宮良案に決定したのも今また暗礁に乗り上げている等々の報道がなされておりますが、きょうは私は、空港の問題ではありませんで、白保のサンゴ礁についてその予算の分科会で、当時の北川環境庁長官から「白保のサンゴ礁を守るということについては、地元沖縄県また石垣市等とも協議しつつ、国立公園、海中公園地区として指定をし、その保全に万全を期していきたい、」そのような答弁をいただいたわけでございます。  その後三年たちまして、いつ指定されるか楽しみに待っているわけでございますが、このその後の経過はどのようになっているかについてお尋ねをしたいと思います。
  152. 大西孝夫

    ○大西政府委員 お答えを申し上げます。  まず第一に、私ども、その先生が今おっしゃった平成二年の長官答弁以来、白保のアオサンゴを中心とした海域を海中公園に指定するという方向については、依然として方針として堅持しております。  この三年間の間に、私ども、とりあえず当該海域のサンゴの種類でありますとか、生育地の把握にまず努めましたほか、特に海中公園地区の中心となるのがアオサンゴ、ハマサンゴでございますが、その大群生地の範囲をまず確認すること、それから魚類、藻類等、当該海域に生息、生育しております動植物種の把握、それから漁業権とかその隣接陸域地権者等の権利制限関係の確認というようないろいろな現地調査資料収集を進めておりまして、現在でいつでも地元との協議に入れるところまで我々としては体制が整っておりますが、先生もお触れになりましたように、現地でも、その地域指定に関連しましては空港問題等の絡みもございまして、その空港の選定作業を待って地元との調整に入りたいというのが地元の意向でもございますので、私ども地元のそういう意向が固まるのを待ちまして、具体的な協議に入りたいと考えております。
  153. 大野由利子

    ○大野(由)委員 最後大臣に伺いたいのですが、所信表明の中で、「国立・国定公園における自然触れ合い拠点を初め、自然教育の拠点、長距離自然歩道、国民保養温泉地等の整備を通じ、自然との触れ合いの場の整備を推進するとともに、自然と触れ合う活動を推進してまいります。」このように述べておられます。  「また、原生的自然から身近な自然までを体系的に保全するため、」云々というふうなことも環境庁長官は述べていらっしゃるわけでございますが、この沖縄の白保のサンゴは、北半球におきまして今まで発見された中で最大かつ最も古いアオサンゴや豊かなサンゴの群落の地でもあります。サンゴの原始園の地とも言われております。空港のことでいろいろあったかと思いますが、白保の地については、ここはもう飛行場をつくらない、そのようになっているわけでございますし、いっときも早く国立公園なりまた海中公園なりに認定ができるように、ぜひ積極的に推進を図っていただきたいと思いますが、最後環境庁長官の御決意を伺わせていただいて終わりたいと思います。
  154. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ただいまの沖縄のサンゴ礁の問題につきましては、これは海中公園という形で進めていきたいということで、今努力しております。
  155. 大野由利子

    ○大野(由)委員 以上です。      ————◇—————
  156. 原田昇左右

    ○原田委員長 次に、内閣提出公害健康被害補償等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府より趣旨の説明を聴取いたします。林環境庁長官。 —————————————————————  公害健康被害補償等に関する法律の一部を改   正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  157. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ただいま議題となりました公害健康被害補償等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  公害健康被害補償等に関する法律は、公害の影響による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図るため、補償給付の支給等を行うものであります。  今回の改正は、このうち、既に認定したぜんそく等の大気汚染系疾病の患者に係る補償費用の財源を確保するために、所要の改正を行うものであります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  今回の法律案は、大気の汚染の影響による健康被害に対する補償給付の支給等に要する費用の一部に充てるため、平成五年度から平成九年度までの五年間、政府は、引き続き、大気汚染の原因である物質を排除する自動車に係る費用負担分として自動車重量税の収入見込み額の一部に相当する金額を公害健康被害補償予防協会に対して交付することとするものであります。  以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  158. 原田昇左右

    ○原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  159. 原田昇左右

    ○原田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  160. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣と初めてこの国会で法律の審議をするわけでございますが、今も公健法の提案理由の説明の中で言われましたように、この公健法の目的というのは、「健康被害に係る被害者等の迅速かつ公正な保護及び健康の確保を図ることを目的とする。」とあるわけですね。「迅速かつ公正」となっているわけです。公健法を水俣病の患者にも適用するわけですけれども、これはもう大臣御承知と思いますが、水俣湾で魚介類がおかしい、あるいは水鳥が落ちる、猫が猫踊りをする、人間が奇病と言われる、そういうときから数えますと、公式発見から三十八年目ですけれども、もう半世紀たっているのです。公健法はその後できましたけれども水俣病に関して迅速かつ公正にこの法律が適用されておるとお考えになっておられるのかどうかという、原則的なその辺から聞かなければ、法律を審議したって何もないというような感じさえするのですが、いかがですか。
  161. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  公害健康被害に対する補償法、これが施行されましてから、水俣病患者に対しましても、先生案内のように、現在まで二千九百四十五名という患者の方を認定してきたところでありますけれども、もちろんこれにつきましてはできるだけ、それこそ迅速という言葉に恥じないように、大変速やかに認定業務にも、また認定作業にも入りまして、現在までそれだけの方を認定してきたところでありますが、しかし、なお相当数の未処分者が残っているということは、今後とも国、県が一体となって被害者の救済に当たらなければならない。それこそまたさらに迅速かつ公正にその保護に当たらなければならないということは、私ども十分に心して取り組んでおります。
  162. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、私とは認識全然違うのですよ。従来の大臣とも認識違いますよ。水俣病については迅速かつ公正にきたんですよ、そういう認識を持っておられたのでは水俣病行政できませんよ。歴代の大臣も、これだけ長引いたのはまことに申しわけなかった、法律における迅速かつ公正にというのに当たっていない、そういう間違いを犯したという反省を持っているわけですよ。裁判所も、不作為違法だ、やるべきことをやらなかったから違法だという裁判所の判決も出ているのですよ。そういうときに、迅速にやりましたなどということでは今後の行政はもうできないのではないかと私は思うのですよ。もともと行政が法律を目的どおり守らなかったというところに今日の水俣病があるのですよ。遵法精神というのがない、そう私は思うのです。その反省を原点にしてあなたが取り組まなれば全然取り組みにならぬ、私はこう思うのですが、さっきの迅速にやったなどというのは、認識不足だったということで取り消してもらいたいですね。
  163. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 私の答弁が舌足らずであったと思いますけれども、迅速かつ公正にという意味は、一つの認定作業に入ることにちゅうちょしなかったという意味で、ただ、その解決が長引いていることについては、これは私ども十分に、長引いていることについての努力についてはこれからもしなければならないと思っておりますが、ただ、認定作業に入るのをちゅうちょしておったとか、あるいはそこで迅速を欠いておったとかということではなくて、それは法律の示すところに従って認定作業そのものに対しては取り組んだということを申し上げたのでありまして、解決そのものがおくれていることにつきましては、私もこれは十分こたえております。
  164. 馬場昇

    ○馬場委員 ここで議論しようと思いませんけれども、作業に入るのもおくれたのですよ。そのこともまた再び過ちを犯したような感じでしょう。それはもうこの三十八年の歴史を今から言えばずっとわかっていただけると思うのですよ。作業に入るのもどれだけおくれましたか。そのことも認識してもらわなければ困る。このことを今日は議論するわけではありませんから、大臣、その点は十分考えて、やはり法律があるのだから、本当に国民から見て、法律を守っておる、行政は守っておる、環境庁長官は守っておると言われるような姿勢で、国民にわかるように一生懸命頑張っていただきたいということを私は申し上げておきたいと思います。  そこで、今水俣病を言いましたから、ちょっとかかわりがありますが、この公健法の第二種の指定地域で被害者が出ておる、水俣病もそれですけれども、この第二種地域における救済というのにはPPP原則を貫かれるつもりですか、貫いてずっとやるつもりですか。
  165. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  公害健康被害補償制度は、公害による健康被害者に対しまして汚染原因者負担により補償を行うことを基本としております。健康被害と原因物質との因果関係が一般的に明らかである特異的な疾患に係る第二種の地域におきましては、原因物質を排出した事業者が健康被害者補償に要する費用を特定賦課金として負担することになっております。したがいまして、今先生指摘のようにその原則は貫かれる、すなわち、第二種地域につきましても汚染者負担原則に則した制度であるということでございます。
  166. 馬場昇

    ○馬場委員 これは大臣に聞いてもらいたいのですが、この前もちょっと申し上げましたけれども昭和五十三年に閣議で、閣議了解事項として県債による金融支援を決定しておるわけです。そのときにどういう判断でやったかということは、また繰り返しますけれどもチッソの累積損失が三百六十四億円だったんです。閣議は、これはチッソの経営が危機状態になっておるという判断をしたわけです。このままでは患者に対する補償金支払いに支障を生ずるおそれがある、こう判断をしたわけです。だから、国はこれに対処するために水俣病対策という閣議了解事項を決定して、いわゆるチッソ補償金支払いに支障を来さないように、県債を発行してチッソに貸し付けて、そして補償金を支払わせるという金融支援を決定したわけでございます。  これはまさにPPP原則を貫くために県債で金融支援する、こういうことで実は決められた措置であるわけですけれども、この閣議了解に基づく、各省庁間の覚書に基づく県債発行による金融支援というのは、まさにPPP原則を貫くためにこういう措置が行われたんだというぐあいに認識しておられますか。
  167. 松田朗

    ○松田政府委員 今の先生の御指摘は、この公健法が第二種地域におきましてもPPP原則を貫いているというのであれば、もし公健法のこの制度のもとで、その汚染原因者が何らかの理由で倒産等になった場合に、その場合の救済はどうなるのかというような趣旨に私は解釈させていただきますが、本制度が、民事責任を踏まえまして、その健康被害の補償制度であり、その原因者被害者の間の損害の補てんの問題を制度的に調整しようとするものでありまして、その原因者被害者が同時に存在しているということが前提となってこの法律がつくられておるわけでございます。したがいまして、この法制定……
  168. 馬場昇

    ○馬場委員 法律の説明は聞いていないのですよ。大臣に聞いたのは、五十三年に、チッソに県債によって金融支援をすることによって、チッソの経営基盤の維持強化を通じて患者に対して補償金支払いに支障を生じないように配慮するとともに地域経済社会の安定に資する、そういう閣議了解事項で、県債で救援したわけです。このことは、チッソの経営基盤を安定させて補償金が支払えるように金融支援をするわけですから、結局PPP原則チッソに貫かせる、そういうことを閣議として応援してやってやらせるんだ、こういうことでこの閣議了解事項は決まったのですね。大臣が決めたのですから、大臣がそれをどう理解しておられるかということをお聞きしたいと思います。
  169. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 五十三年に閣議了解事項で取り決めたことはよく存じておりますし、またそれについて、三年ごとに関係閣僚会議を開きながら、 さらにその実行を積み上げていったということも聞いております。
  170. 馬場昇

    ○馬場委員 私が質問していることに端的に答えてください。PPP原則を貫くためにそういう金融支援をしたのですねと聞いているのです。
  171. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 それはもう先生のおっしゃるとおりでございます。
  172. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、これは関係閣僚会議の了解事項と関係省庁の具体的な覚書というのがあって、官房副長官関係省庁の事務次官が覚書に判こを押しているわけですね。それで県債を発行するようになったわけですね。それで今言われたように三年ごとに御更改してきているわけですから、もうそろそろまたこの関係閣僚会議をやる時期も来ておるわけですけれども、今後もこの閣議の了解事項でこの金融支援を続けていく、これは生きておるかどうかはこの前質問しましたけれども、そう理解していいですね。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  173. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 結構でございます。
  174. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、今度は大臣認識と政府の認識も、担当の認識も聞きたいのですが、この前も質問いたしましたけれども、現在チッソの累積損失は千三百十億円です。先ほども申し上げましたように、五十三年で、これを金融支援をしますときの累積損失は三百六十四億円でございました。そういうことで現在千三百十億、物すごくふえております。そうして、この間も質問しましたように、平成四年度の経常利益見込みは二十億円、平成四年度に県債を償還しなければならないのは六十億円、既認定者に対する補償の支払いが三十四億円、そういたしますと、九十四億円払わなければならないのに二十億しか利益が上がっていない、こういうことですから、五十二年度にこういう状況だったから五十三年に閣僚了解事項があったんですが、この五十二年度の経営危機と閣議が判断したときよりも今日が非常に危機だ、私はこういうぐあいに判断するわけですけれども、これに対する認識をお聞かせいただきたいと思います。
  175. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 計数的には先生ただいま御指摘になったとおりでございます。現在の状況は極めて経営的には苦しい状況にあるということでございます。
  176. 馬場昇

    ○馬場委員 苦しい状況はよく認識されておりますが、局長、前へ座っていたらどうかな。あなたはいないのじゃないかと思って、部長があそこだったから。  では、あなたが見えたからついでに質問しますが、先ほど私の方の田中委員質問に対して、これは私がこの前質問したのが新聞に載った、それに基づいて質問をされたわけですけれども、私は局長答弁を聞いておりまして、この三月期に今言ったような危機があるというのと、もう一つは遅かれ早かれ裁判の判決も出るだろう、あるいは和解も成就するかもしれない、そういうときにはあるいは百億から二百億の金が要る、こういうことが言われておって、熊本県知事もそう言っているというようなことも言いながら、そういうときに金融支援を、三月期の金融支援、あるいは次の和解とか裁判が出たときの金融支援、そういうのをひっくるめて質問したときに、局長はそういうことの申し出があれば誠意を持ってこたえる、私はそう受け取っているのですよ。ところが、さっきは三月期だけの話みたいな答弁をなさったのですが、これは食い違っていませんか。
  177. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私がお答えいたしましたのは、このような苦しい状況にあって今チッソは必死の経営努力をやっている、その経営努力というのを注意深く、かつ慎重に見守っていく、さらにチッソから支援の申し出があれば、それは真摯な態度考えていく。その真摯な態度考えていくということは、チッソからの申し出が行政として受け入れられるものなのかどうか、また必要によっては関係省庁間でその要請をもとにして協議を進めていかなければならぬ、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。  そこで、今先生が御指摘になって、早晩チッソが判決を受けたりまた和解ということになると、それも一つの資金需要じゃないかということをおっしゃったわけですが、私といたしましては、先ほど田中議員の質問お答えしましたように、和解の問題についてはまだ私ども、国が関与していることでもございませんし、またチッソからそういったような話、具体的に和解が調う段階に至っているという状況も聞いておりませんので、私の念頭にはそれは入れないでお答えしているというぐあいに申し上げたわけでございます。
  178. 馬場昇

    ○馬場委員 そうしたら、あなた、何かえらいこだわっているようだけれどもPPP原則を貫かないのですか。とにかくチッソが支払い能力がない、今の三月期であっても。では、どういう原因でこうなったのか。この原因はいい、この原因は悪い、だからこの原因の部分は真摯に考えないんだ、この部分は真摯に考えるんだ、分けてないでトータルで今言ったような危機になっているわけですからね。それから、私がこの間言いましたのは、もちろん和解ということもある、ところがあなた方は今度は裁判を好んでいるわけで、裁判の判決を待ちたい、待ちたいと言っているのだから。裁判の判決でも金が要るわけですよ。  では、裁判の判決で金が要ると出たときには、申し出があったときには真摯にこたえますか。
  179. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、チッソ補償責任を完遂するためにチッソの経営状態がうまくいかなければならぬということは、まさに御指摘のとおりでございます。そういうことで、例えば三月二十五日にある裁判所の判決が出そうだというようなことはあるわけで、そういたしますと、それについての資金繰りの必要性というのは出てくるでしょう。その資金繰りはどこかでどうつけなければならぬ、そういうようなことは当然視野の中に入れて考えなければならぬ、これは当然でございましょう。しかし、和解がそういったような状況に今なっているかどうかということについては、チッソからそのような判断はまだ聞いておりません。
  180. 馬場昇

    ○馬場委員 チッソの判断は、チッソから申し出があればと、あなたはさっきから言っているでしょう。だから、チッソが例えば和解をした、だからこういうことだから足らないと申し出があれば−−まだチッソが和解もしていないのに申し出があるはずがないじゃないか。そういうことで、私が言ったのは、裁判であれ和解であれ、支払い能力がこうしてありませんと言って申し出てくるわけですよね。それであれば、中身がどうであれ支払い能力がないと言って申し出てきたときには真摯に考える。いつだって、そのことはPPP原則を貫くのだったら、何といつ言ってきても、三月に言おうが、五月に言おうが、八月に言おうが、支払い能力がないと来たときに、PPP原則を貫くのならば真摯に考えるというのが環境庁のとるべき態度じゃないですか。
  181. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私が先ほど来お答えしましたのは、二十三日の私の答弁に対して御質問があって、どういう意味で真摯な態度でというふうに答えたのかということで、そうお答えしたわけでございます。  それで、チッソが仮に和解をしたいとかなんとかという話を、まだこの場で私、チッソが申し出をしない段階に私の方からそれを先取りして、引き取ってお答えするわけにはまいらないわけですけれども、いずれにいたしましても、チッソには補償責任は完遂してもらうようにいろいろ考えていかなきゃならぬということは、それは当然のことだろうと思います。
  182. 馬場昇

    ○馬場委員 時間がないから、あなたが言うのは、その辺は、今のはちょっとわかる気がするのですよね。ところが、三月期の問題は、三月期の問題もまだ申し出てきていないのですよね。はっきり言った話が。三月末に困りますから、これだけ足りませんから支援してくださいということを、三月期のことも言ってきていない。ましてや判決が出たときのことも言ってきていない、ましてや和解したときのことも言ってきていないのです。しかし、それでも一般的に支払い能力がないといって言っ てきたときには、真摯に考える。だから、総論としてそういう答えをしておけばいいわけです。区別する必要は全然ない。  そこで、今もちょっと局長が言ったので、これは大臣今のを聞いてください。今言ったように、それは原因がどうあれ、支払い能力がないといって助けてくださいと言ってきたときには、お受けするかどうか知らぬが、あなた方の判断ですけれども、真摯に考えるというのは局長も言っているのですから、大臣もそういうときには真摯に考えられると言っていただけますね。
  183. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 午前中の田中先生の御質問にも私答えましたのは、この事態を私は非常に深刻に受けとめています。  それで、特に田中先生お答えしたのと同じ意味でありますけれども、この問題の解決については、御案内のように、今当事者であるチッソそのものが懸命の努力中であるということであれば、その懸命の努力を私はじっと見ていきたいというのは、それはチッソに対する私の愛情であると思っていただいていいのですよ。というのは、この時期にチッソそのものが、株主も経営者も社員も一丸となってこの事態を乗り切るために努力しているということは、これはやはり一つの大事な姿でありますので、これに対して私はよく見守っていきたい。  しかし、この水俣病の解決がどんなに困難なものであるかも私も理解しておりますし、その困難を解決しなければならないということにおいては同じでありますので、その解決なくして水俣病がどうなってもいいということで冷たく見放しているという意味ではございません。
  184. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣は非常に愛情のある方でございますから、チッソを見守って殺さないというような意味答弁をされて、本当に殺しちゃいけないわけですから、それはもうこの前の閣議でも、殺したら補償は払えない、あるいは地域の社会経済に大問題を起こす、こういうことになってああいうことになったわけですから。  そこで、もう一つの側面があるのですよ。例えばこの県債を発行しますときに、実は閣僚の了解事項の中に、熊本県が発行した地方債の償還財源の確保が困難となった場合においては、国において所要の措置を講ずるものとする。関係省庁の覚書によりますと、これは次官クラスで決めたのですが、万一チッソから返済が履行されない事態が生じた場合には、熊本県の当該地方債にかかわる元利償還財源については、国において十分の措置を講ずるよう配慮するものとする。熊本県知事が熊本県議会の決議によって、実は環境庁に要望書を出している。  これに対しまして、チッソ県債の金融支援措置に関する協議会というのがありますが、これは局長クラスでつくっている。この座長は、環境庁の企画調整局長が座長なのです。だから、その熊本県の質問に対して、当時の環境庁の企画調整局長の上村さんが次のような回答をしています。万一チッソに不測の事態が生じた場合は、閣議了解の線に沿って関係省庁協力して十分な措置を講ずるよう配慮すること。こういうようなあいまいだったものだから、私はこの国会で、支障を来さないようにするとか万全の措置を講ずるというのは、熊本が出した県債をもしチッソが払えなくなったら国が一〇〇%見るのかどうか。なかなか、迷惑はかけませんと言うのです。九〇%かと言っても、迷惑はかけません。だんだんやっていきましたら、いささかも迷惑かけませんと言うのですよ。そして、九〇%か一〇〇%かということはそのままになって今日に来たわけです。  だから、私はこれを今どうという気持ちはございませんが、こういう状況の中で、熊本県民がどう考えておるかというと、今はもう五十二年度よりも危機、ですから皆さんも危機です。こういう状況で、例えば倒産でもしたら、そして本当に国が全部見てくれるのだろうか。補償県債だけでも五百五十八億でしょう。ヘドロ県債が二百九十七億ですから、八百五十五億円もう熊本は県債を出しているわけです。だから、こいつは返ってくるのだろうかという心配が今あります。  それから、この補償県債を引き受けているところは、もちろん大蔵省の資金運用部資金で四百十三億円を現在引き受けておるのですが、民間が百四十五億円引き受けているのです。一番多いのは日本興業銀行の八十三億円、三和銀行の三十五億円。だだっと八つぐらいありまして、熊本県の肥後銀行も二億八千万円ぐらいこれを引き受けている。こういうところも、このままいったらこんなの返ってくるのだろうか、こういう心配が今地元にはあるわけです。  そういう中で、熊本県議会が、このままの状態では県債を出さないというように決める可能性だってあるのです。そうしたら、もうこれこそ、チッソも倒産するわ、補償金も支払えないわ、地域の経済も社会も大混乱するわ、こういう状態になってきて、まさに世界の公害の原点と言われた水俣病がそういう状態になったら、もう世界に向かって環境なんか言う資格が環境庁にはなくなる、日本の政府にはなくなる。それをなくさないためには、やはりここで金融支援に向かって政府が動き出すということが、全体に安心感を持たせるただ一つの手段なんですよ。  そこで、この前も言いましたけれども、さっき局長も言いましたけれども、まだ私は腹を決めていないから関係閣僚会議はなかなか今言えない、さっき大臣言われましたが、私はこの前も大分大臣に言いました。ところが、やはりこれにはさっき言った協議会というのがあって、局長たちがやっているのです。そこでどうするかということをずっと積み上げて、やはり県債による支援がいいだろうなということをその協議会、局長クラス、その次に次官クラスが決めて、そして関係閣僚会議に県債でしか方法はありませんと言われて、関係閣僚会議が、ああそう、それでいこうということで閣議で決まった。  だから今回、今すぐ大臣関係閣僚会議を開くことができなければ、やはり協議会なんかで十分検討をさせて、それも急いで検討をさせて、そして、例えばチッソが申し込んできたという段階には機敏に対応できるようにしておいて、こういう動きがあるということを熊本県民が見たら、それなら安心して、さっき言うようなパニックは起こらないということで、ぜひ協議会なんかを開きながら十分万一に備える検討をする、そういうものを持ち上げた後には関係閣僚会議も開いて、申し出があったら的確に対応しなければならぬ、こういうことをすべきだと私は思うのですが、どうですか大臣
  185. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 今の不況期ということもあって、チッソが今経営的に非常に苦しい状況にあるというようなことから、先生おっしゃるように、我々協議会といたしましては、事態推移を慎重に見て、必要に応じて協議をするということをもあり得べしというようなことを申し合わせしているところでありますし、一昨日お答えしましたように、私どもといたしましては、今チッソ経営状況なりなんなりを慎重に見守っているというところでございますし、先日は通産省もお答えしておりましたが、他省庁におきましても同じような態度であろうかと存じます。
  186. 馬場昇

    ○馬場委員 これは他省庁もあります。大蔵省もあるし、通産省もあるし、関係閣僚会議には総理大臣もおるわけですから。しかし主体はやはり環境庁なんです。環境庁が動かなければ、ほかのところもなかなか動きにくいと言うし、そして協議会の座長は企画調整局長の八木橋さんですから、閣僚会議の主宰が環境庁長官だから、ぜひみんなに理解できるように精いっぱい頑張っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  まだたくさん申し上げたいのですけれども法律の審議でございますので、次に法律に移りたいと思います。  汚染負荷量の賦課金の問題で、工場等の固定発生源と自動車の費用負担割合が八対二になっていますね。これは現時点でも妥当ですか。これを、例えば第一種地域等々いろいろあるわけですが、五 対五くらいにやってはどうかと思うのですが、今度も八対二ですけれども、これは変える気はありませんか。
  187. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えします。  御指摘の八対二についてでございますが、これは、工場等の固定発生源と自動車等の大気汚染の寄与度に基づく補償のための費用負担の割合として決められたものであります。昭和六十三年三月の第一種地域の指定解除後におきましては、補償対象が指定解除前の大気汚染の影響による認定者でございます。したがいまして、指定解除時点までの負担割合が大気汚染に対してどういう寄与度か、その寄与度に基づいて八対二とされておるわけでございます。簡単に申しますと、要するに、現在対象となっている患者さん、その人たちは指定解除以前の患者さんでございますから、指定解除以前のその自動車による大気汚染の寄与度をそのまま今も適用しておるということで、この比率につきましては、現時点においても八対二が適当であるということになっておりまして、これはさきの中公審においてもそういう結論をいただいたところであります。
  188. 馬場昇

    ○馬場委員 これは、状況の変化というのも大分きて、ここでまた延長するわけですが、そういうときには、この八対二というのはやはり検討をして対応をすべきで、これはこのままにしておいてまた延長するんだということではちょっとずさん過ぎるのではないかなと思いますが、一応検討課題として問題を提起しておきたいと思います。  次の問題は、先ほど出ましたディーゼル排気微粒子のDEPの問題ですけれども、これは先ほどからたくさんの人が質問しておるわけでございますが、「ディーゼル排気微粒子 都市型ゼンソク誘発 環境研実証 汚染防止策の焦点に」というようにきのうの新聞にも出ているわけでございますから、国民はこれを見て非常に心配しておる、こういうぐあいに思います。NOxも本当に余り減らない、それにこういう形のDEPが加わってくるといったら、大変国民は心配するんじゃないかと思うのです。NOxの陰に隠れておったと言えば言葉が適切ではないかもしれませんけれども、NOxにプラスDEP、これが大気汚染対策の新たな焦点にならなければならぬ、私はこう思うのです。  これについては、この法律にもありますように、健康被害予防事業というのがこの前から始まっているわけですから、このDEPなんかについて研究して対応を立てる、これがまさに予防事業の非常に大切な問題じゃないかと思うものですから、やはりこのDEPに対する取り組み、調査とか、実態とか、そういうものに十分取り組んで、これは害が出るという実証も出ているわけですから、国民が安心するように、また健康被害を起こさないように、対策を、健康被害予防事業として一日も早く取り組むべきであると思うのですが、どうですか。
  189. 松田朗

    ○松田政府委員 先生指摘の、新聞報道にありましたディーゼルのDEP排気微粒子についてでございます。それで、大気汚染の健康影響に関します調査につきまして、昭和六十一年の中公審の答申でもその必要性を指摘されておりまして、今後とも一層の推進が重要であると考えております。  現在、この粒子状の物質、実は、浮遊粒子状物質の中に先生のおっしゃったDEPも含まれていると思うわけでございますが、この粒子状物質につきまして、局地的大気汚染の健康影響調査手法、要するに、こういう粒子状の物質が特に汚染の激しいる地をどのように汚染し健康に影響しているかというようなことを調査する手法の開発の研究を今進めておるわけでございます。したがいまして、その研究を進めながら、さらに先生のおっしゃったようなDEPの研究にも発展していくように考えていきたいと思っております。
  190. 馬場昇

    ○馬場委員 時間も余りありませんので、もう一つ言いますが、地域指定が解除されたわけですね。我々はこれは反対ですけれども、しかし既に認定されている患者に対しては補償は継続しておるわけでございますけれども、この解除されたという行政の実態を見て、何か非常に軽く取り扱われておる、その後なったのじゃないかという心配もあるのですが、認定の更新とか等級審査に当たっては従来と同様、本当に丁寧に、慎重に、指定を外されたけれども、継続する者については十分配慮しておられるのですか、どうですか。ちょっと心配だから聞いておきます。
  191. 松田朗

    ○松田政府委員 地域指定を解除しました以降、新しい患者さんは認定しておりませんが、ピーク時の十一万人からだんだん減ってきまして、現在八万五千人でしょうか、八万人台の者がまだいらっしゃいます。その間、地域指定解除後もそれらの人たちには従来どおりの補償を継続しておるわけでございまして、さらに、その認定の更新あるいは等級の見直し、そういうものを適宜適正に医学的な判断に基づいてやっておりまして、今後ともその公正な保護に努めてまいりたいと思っております。
  192. 馬場昇

    ○馬場委員 これは大臣にお聞きしたいと思うのですが、第一種地域の解除を昭和六十二年に、この国会で議論いたしましたときに、これは解除はしない方がいいのじゃないかと我々も主張したのですが、今度は今言いましたNOxが相変わらず改善されていない、危険な状態にあります。さらに、今言いましたDEPの問題も出てきたわけですから、昭和六十二年、この公健法の改正の審議のときに、当時の中曽根総理大臣は、今後著しい大気汚染が認められれば地域指定をさらに、解除したのですけれども、また行うことがあるということを約束されているのですよ。これは大臣、今もその気持ちは変わりませんか。
  193. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 当時の中曽根総理が今先生おっしゃったようなことを申し述べたことは、私も記憶しております。私の気持ちはいかがかということでありますけれども、地域指定そのものについての内容につきましては、果たして地域という形で指定して患者が救済できるのかどうかという点もございますから、それはまた政府委員に説明させますけれども、私自身としては、そういう事態が特定地域の中から特に多発の患者が出てくれば、それはまたそれなりに対応をしなければならぬと思っておりますけれども、そうでない限りは患者の認定が非常に難しいのではないかと思っております。
  194. 馬場昇

    ○馬場委員 私の質問は、総理大臣が六十二年の審議のときに、今後著しい大気汚染が認められれば地域指定を行うということを言っておられるわけですから、これはその方針で今の政府も対応するのか。いや、それは中曽根さんが勝手に言ったんだから、我々はそれは知らぬよ、まさかこういうことではないだろうと思いますから、一国の総理大臣が国会で約束したことですから、これを破棄しますとまだ言わぬわけですから。どうですか。
  195. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答えしますが、今先生のおっしゃったような事態が生まれれば、当然検討すべきものと思います。
  196. 馬場昇

    ○馬場委員 今ちょうどここに当時の質問者がおりますが、彼がそのときにもう一つ質問しているのです。六十二年のときに、健康被害予防事業の一環として大都市における気管支ぜんそく等に関する調査をやれということで、やると約束なさっているのですが、これはどう進捗しているか、いつ完成するのですか。
  197. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  今先生指摘の大都市におきます気管支ぜんそく等に関する調査でございますが、これは大都市地域におきまして新たに発症します慢性閉塞性の肺疾患患者を対象としまして、臨床的あるいは生活環境的、さまざまなデータを収集、解析しまして、そしてその病気の原因究明あるいは健康回復のために資するということを目的にしております。  これは、昭和六十三年から開始しております。京阪神の二十六市区の医師会あるいは大学病院、いろいろな関係自治体等の協力を得まして、既に今までにいろいろなデータ、個人のデータあるい は集団のデータを集積しているところでございます。現時点、今申しましたさまざまなデータをちょうど集め終わったという感じでございまして、願わくは平成五年度においてこれらのデータの解析を行うということで、その結果の公表についてはまださらに時間を要すると思いますが、平成五年度にこのデータの取りまとめに取りかかるところでございます。
  198. 馬場昇

    ○馬場委員 健康被害予防事業で、実施のために五百億円の基金を設けることになっておるのですが、今幾ら積んでおられるかということと、五百億にはいつなるかという見通しを教えてください。
  199. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  六十三年度より先生指摘の基金を積み上げておりまして、目標は五百億でございます。  その状況は、昨年度、平成三年度末におきまして約百五十六億、本年度末になりますと約二百七十億ということで、順調に積み上がっております。このままの推移でいきますと、平成六年度中には目標の五百億に達するものと思われます。
  200. 馬場昇

    ○馬場委員 最後大臣に聞きたいのですが、この前、おとといからきょうにかけましてずっと、チッソが倒産したら、倒産したらというようなことで、余り景気のいい話じゃないのですが、させないようにしなさいということですからね、僕の言いたいのは。PPP原則補償金を支払わせるのだから、倒産させないように国が支援しなさいという原則で言っているのです。  あそこも一生懸命努力しているのですよ。私は水俣で、よく知っていますが、あの水俣工場で液晶をつくっている。液晶というのは、あそこのチッソの水俣工場が世界一なんです。だから、そういうところを国が助けてやって、開発銀行とかいろいろな融資なんかが助けてやって、液晶なんか世界一ですから、それをやって業績がどんどん上がっていけば、金融支援せぬでも補償金なんか支払いができるわけです。そういう得意なところを助けてやって、ますますその業績が上がるようにすることもできるわけですから、ひとつその辺にも気を使っていただきたい、こう思います。それが一つです。  あと一つは、PPP原則を貫くと言うけれども、原因企業が倒産したらどうするかという規定が今の公健法にはないのです。だから、これはやはり底抜けではないか。PPP原則は貫くと言うけれども、不可抗力か何か知りませんけれども、自分の実力が足らぬのか知らぬけれども、倒産した後、そのPPP原則は貫かれないわけですから、それについて公健法はどう救うかという条文がないのです。それが予定されていない。  今の公害予防事業に五百億を積み立てたでしょう。私はこの前も言いましたように、あれと同じように、水俣についても水俣病健康管理基金というぐあいのものをやはり五百億ぐらい積み立てておいて、水俣と言わなくても、このPPP原則を貫くための基金というものを例えば五百億ぐらい積み立てておいて、もし万一のことがあったらそこから出してやる。PPP原則を貫くために、残念ながら万一倒産したときにはそれをこの公健法の中でカバーしていく、そういう基金というようなものもやはり考える必要があるのじゃないか。  今の二点について最後答弁してください。
  201. 松田朗

    ○松田政府委員 先生のまず最初の、原因者が倒産した場合、公健法では規定していないというか、想定していないということでございます。まさにそのとおりでございます。したがいまして、そうならないことを切望しておるわけでございますけれども、仮にそうなった場合には、法的には何らかの所要の措置をする必要が出てくるわけでございます。それは、現在私どもは想定しておりませんが、そういうことにならないことをとにかく熱望しておるということでございます。  後段の先生指摘の基金でございます。  これは、先生がかつてもたしかそういう基金構想を申しておられたと存じておりますが、患者さんの補償に当たりましては、汚染者負担原則のもとでどのような財源の負担をとるべきかが非常に重要でございまして、現行の公健法の第二種地域に係ります患者の補償というのは、汚染者負担原則に基づいておりますから、原因企業から特定賦課金を徴収するというのが原則でございます。したがいまして、先生今おっしゃった基金構想は一つ考え方であろうと思われますが、その基金を汚染者負担原則に照らしましてどのように拠出していくのか、いろいろ難しい問題があるのではないかと考えております。
  202. 馬場昇

    ○馬場委員 私の言う基金というのは、それをそのままあなたに与えますよというならPPP原則に、例えば、今返済の利子なんか物すごく高いのです。今、利子が元金よりも支払いが多いわけです。だから、例えばそういう利子を安くしたり無利子で貸し付けるとか、いろいろなことがあって、与えるのじゃなしに貸し付けるとか、これで支援するとかということだって基金なんかで考えられるのじゃないかとまず思います。  そこで、いかに経文のようにPPP原則と言っても、現実にいろいろの、例えば倒産なんかあるのですから、そのときに患者が補償に困らぬような手当てをやはり法的には何か考えておく必要があるということ。大臣、これはどうする、こうするでなしに、倒れた場合、患者を路頭に迷わすとか社会不安を起こさせないということを何か考える必要があるのだということと、さっき言いましたように、チッソは液晶なんか一番いいのだから、そういう業績をどんどん上げるようにも、こちらの方は通産省なんかと相談して努力をいたします、そういう気があるかどうか。
  203. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生指摘のように、PPP原則というのは、Pがいなくなった場合にはそこで貫徹し得ない原則になるわけでございまして、そういう意味で、先生の御指摘はまことにごもっともなところでございます。  ただ一方、企業社会でございますから、Pが簡単に倒産、偽装倒産という言葉は必ずしも適当かどうかということもございますが、汚染者責任最後まで追及するような姿勢なり法制度というような仕組み、私どもは、簡単に逃げられないような構えをしておくということも同時に必要であろうかと思います。  そういう意味で、先生の御指摘は、私どもとしては、やはり将来の検討課題として頭に入れておくべきことというぐあいに拝聴しておるわけでございます。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  204. 馬場昇

    ○馬場委員 終わりますが、最後大臣チッソを、つぶれそうなときの世話だけじゃなしに、どんどん栄えさせるような世話もやりますかということ。
  205. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 精神論としましては、気持ちの上では先生と同じ気持ちであります。ただ、今の段階でチッソが栄えるような手段をまずということは、ちょっと次元としてもあれですが、とにかく今は、チッソ責任を持ってもらって乗り切ってもらうということで全力を挙げて進んでいただきたいと思っています。
  206. 馬場昇

    ○馬場委員 終わります。
  207. 原田昇左右

    ○原田委員長 次に、斉藤一雄君。
  208. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 公害健康被害補償法の一部改正案は、今日の実情を踏まえるならば、決して事務的な改正で済む話ではないし、済ませてはならないというのが私の考えでございます。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  そこで、何点か具体的な質問をいたします。質問は具体的にいたしますので、答弁の方も具体的なお答えをいただきたいということを最初にお願いしておきたいと思います。  この法律昭和六十二年九月に改悪され、昭和六十三年三月一日に第一種地域指定がすべて解除され、以降新規の患者は完全に切り捨てられたわけであります。そのときの主な理由は、大気汚染はぜんそく等の病気の主たる原因とは言えなくなってきているということでした。果たして、それは正しかったでしょうか。東京都に例をとりますと、法及び条例分を合わせた認定患者数が、こ こをよく聞いておいてください、昭和五十七年度四万三千人、五十九年度四万九千人、六十一年度五万五千人、六十三年度六万二千人、年平均にいたしますと、三千人ずつ今日なお認定患者がふえ続けております。  このように認定患者が増加している事実について、大臣はどのようにお考えでしょうか。まず、それをお伺いいたします。
  209. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えします。  先生指摘のように、ぜんそく等の患者がふえているという実態はございます。ただ、そのぜんそく等の疾病は、大気汚染のみならずダニやカビあるいは喫煙等さまざまな原因によりまして発症するという、いわゆる非特異的な疾病でございまして、その患者が地域指定解除後もふえ続けているからといって、その大気汚染を主たる原因とするぜんそく等の患者がふえていると即断はできないということでございます。  厚生省が患者調査をやっておりますが、それによりますと、ぜんそくの患者の増加は全国的な傾向である、昭和五十九年から平成二年の間では年平均約二%の割合で患者数がふえているというふうに推計されております。このような全国的なぜんそく等の患者がふえている傾向の中で、幾つかの地方公共団体で行われておりますぜんそく患者に対する自己負担分の助成等の制度、こういうのはございますけれども、それに対しましては、この公健法の適用というのではなく、それぞれの自治体が福祉等の対策、そういうもので行われているのだろうと思います。  いずれにしても、この患者の増加に対しましては、いろいろな面からその原因究明あるいは予防対策を続けていくことが必要であろうと思っております。
  210. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 東京都で認定患者が毎年三千人ずつふえ続けているということについてどう考えるかという質問をしたわけですが、今のお答ですと、ダニやカビなどが原因で患者がふえてきているというお答えであります。そんな答えでいいのですか。
  211. 松田朗

    ○松田政府委員 今の東京都の例につきまして、ダニやカビだけが原因だということではございません。その増加している原因が、大気汚染が主たる原因ではない、ダニやカビあるいは喫煙習慣その他いろいろな要素が関与をしている、こういうことでございます。
  212. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 もし大気汚染が主たる原因ではないとあくまでおっしゃるならば、今もお答えがありましたが、何ですか、ダニやカビ、喫煙等、それが理由ですか、原因ですか。
  213. 松田朗

    ○松田政府委員 地域指定解除以前におきまして、ずっとそれにさかのぼった時点におきまして、ぜんそく等の疾患の中では大気汚染が非常に主要な要因を占めていたということだったろうと思います。この公健法を見直しまして地域指定を解除した以降におきましては、その今のような疾患の主たる原因は、かつてのように大気汚染を主たるものとするだけでなくて、ダニとかカビだとかいろいろな要因がまざり合っているというようなことでありまして、大気汚染だけが突出して主たる原因に至ったということは言えなくなったということを申しているわけでございます。
  214. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 いかにでたらめなお答えをしているかということを逐次重ねて質問していきますので、しっかりしていただきたいというふうに思います。  一つは、大気汚染の状況はその後全般的には改善の傾向にある、これが公健法改悪の理由にされているわけでありますけれども、果たしてそうでしょうか。本当にそう思っているのでしょうか。たびたびで恐縮ですけれども、東京都のNO2環境基準達成率を御説明してみたいと思うのです。  まず、自排局の関係で見ますと、昭和六十年達成率が三〇%、昭和六十一年度二六・七%、昭和六十二年度一〇%、昭和六十三年度六・七%、平成元年一〇%、平成二年度一三・三%、平成三年度一〇%。これを一般局で見たといたしましても、昭和六十年度は八八・六%でした。ところが、三年後の昭和六十三年度は約その半分の四八・六%、最近の平成三年度では四六・二%。これでどうして大気汚染が改善の傾向にあると言えるのでしょうか。そうおっしゃるのでしたら、具体的にひとつ科学的に御回答いただきたいと思う。
  215. 松田朗

    ○松田政府委員 制度発足当時、昭和四十九年でございますが、それ以来の大気汚染状況推移につきまして、地域指定解除の時点で、六十一年四月に大気汚染と健康被害との関係評価等に関する専門委員会、こういうものが報告にまとめておりますが、例えばその中の一例をとりますと、四十九年当時二酸化硫黄は〇・〇二四ppmだったものが五十九年には〇・〇一一ppm、約半減。二酸化窒素は〇・〇二七ppmから〇・〇二五ppm、これはもう横ばい。それから浮遊粒子状物質は〇・〇六七ミリグラム・パー・立方から〇・〇四八ミリグラム・バー・立方ということで、これは若干減っている。  私どもが改善してきたと申しておりますのはSO2、二酸化硫黄について申しておるわけでございまして、特に二酸化窒素につきましては地域によっては横ばいあるいはふえているというのが全国の傾向であるというように認識しておるわけでございます。
  216. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 だから、私が聞いているのは、NO2の環境基準の達成率から見て、NOxによる大気汚染が著しく増大の傾向にあるというのが事実ではないのかということで、わざわざ数字を示しているわけですよ。それについて答えてもらいたい。私の言っていることがうそだというならばうそだということを言ってもらって結構なんですよ。
  217. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えします。  先生指摘のように、近年、大都市地域におきまして二酸化炭素等の環境基準の達成率は低いということは認識しておりまして、この面から見ますと、大気汚染の状況は非常に厳しい状況にあるということは言えると思います。
  218. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 大臣、簡単な質問をしますけれども、今申し上げたように、昭和六十年度の自排局における達成率が三〇%、平成三年度が一〇%。達成率が一〇%なんですよ。この現実からどのようなお考えを持たれますか。
  219. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えします。  先生指摘のように、特に窒素酸化物につきましては、特に都会につきましてその基準の達成率が低いということは事実でございます。したがいまして、この点につきましては、やはりいろいろな施策によりましてその改善を図るように努力すべきだと思っております。
  220. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 そうしますと、公健法の改悪当時と現在とで認識の違いはありますか。全く同じですか。公害病認定患者の数がこれだけふえてきているということ、NOxを中心とした大気汚染が年々悪化してきているということ、公健法改悪のときもそのように認識をされていたのか、今日とでは状況が大きく変わったと見られているのか、どちらなんですか。
  221. 松田朗

    ○松田政府委員 公健法を改正するに先立ちまして、昭和六十一年の中公審の答申があったわけでございますが、そのときにおける考え方といいますか状態と、今日におきまして第一種地域を指定するという観点から考えますと、基本的には当時の状況と変わりないという認識でございます。
  222. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 そういう考えだからどうにもしょうがないわけですよね。年々、移動発生源による大気汚染が増大してきている。特にディーゼルトラックやバス等によるNOxの寄与率が高まってきている。だから政府は自動車NOx削減法を提出をして、この国会でも審議したわけでしょう。これまでの対応ではどうにもならない、思い切った対策が必要である、手法が必要であるというところからNOx法が成立したんじゃないでしょうか。公健法を改悪した当時と今と全く同じならば、NOx法なんか提案する必要なかったんですよ。環境基準が達成できない、どうにもならない、二〇〇〇年までには達成しなければいけないということで、不十分ながら政府はNOx法を提出した んじゃないんですか。だから、当時の実情と今の実態と全く変わってきているわけですよ、大気汚染状況が。それを同じだなんというような答弁しているようで環境行政が勤まりますか。
  223. 松田朗

    ○松田政府委員 NOx法といいますのは、環境基準、これをいかにクリアするというような観点からのものだと思います。公健法と申しますのは、公害によって被害を生じた患者さんのためのものであるということでございまして、環境基準で定められております大気汚染の各要因になっている物質のレベル、基準値というもの、これと公健法に基づいて地域指定をするというレベルとは全く次元が違うものであると考えておるわけでございます。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  224. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 全くこれは言いようがないので、困ったものだということしか言えないんですよ。  環境基準の達成ということと健康被害をなくすということと一体のものなんですよ。次元の違うものじゃないんです。別々のものじゃないんですよ。そんなことで環境行政が勤まるんですか。いま一度答えてください。
  225. 松田朗

    ○松田政府委員 公健法に基づきまして被害者を認定するという面におきましては、そのレベルは環境基準とは異なるということを申したわけでございます。
  226. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それではちょっと角度を変えてお聞きしますが、昭和五十年、おたくはさっきから四十九年当時ということをおっしゃいますので申し上げるのですが、当時の東京都の美濃部知事は三木総理に対して、都の大気汚染の実態は硫黄酸化物、窒素酸化物等による都市型複合汚染であり、窒素酸化物に係る地域指定要件について検討の上、第一種地域として早急に指定するよう要望しているわけです。また、当時私は東京都議会議員でしたから、私も提出者の一人でありますけれども、超党派で昭和五十一年三月二十九日に意見書を国に対して提出をいたしております。その内容は、「地域指定の要件に硫黄酸化物だけでなく、窒素酸化物と浮遊粒子状物質を加えること」というふうに申し上げたはずであります。  この件について環境庁は検討したことがあるのですか。また、検討したとすればどういう検討をしたのか、その結果はどうだったのか、教えてください。
  227. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えします。  当時、中公審の中に検討委員会を設けまして、その検討委員会の中で今先生のおっしゃった窒素酸化物あるいは浮遊粒子状物質についても検討されたように聞いておりまして、その検討の中身でございますけれども、窒素酸化物あるいは粒子状物質が人体に及ぼす影響等につきましてまだ十分な知見が得られていない、そういうようなこともありまして、当時は今後の研究課題として指摘されていることでございます。
  228. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 今、当時の状況の中ではそういう知見が得られなかった、こう言いましたが、NOxの影響ではないという知見は得たのですか。
  229. 松田朗

    ○松田政府委員 昭和五十年代におきます我が国の大気汚染の推移を硫黄酸化物に見た場合には改善されているということだったので、今先生おっしゃった窒素酸化物、これについての影響でございますが、これについては否定し得ないということであったろうと思います。しかし、それによって地域指定の、その時点における知見によってはそれを指定の要件としてカウントするにはまだ至らなかったというふうに考えております。
  230. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それから、昭和六十二年一月三十日に、現在の東京都の鈴木知事が当時の中曽根総理に対して回答をいたしております。その内容は「昭和六十年度の東京都区部におけるNO2環境基準の達成率は、一般測定局で八〇%、自動車測定局で二〇%にとどまっており、」その次が大事なんです。「硫黄酸化物から窒素酸化物を中心としたものへと変化している。」そしてさらに、「第一種地域のあり方については、費用負担などの問題を含めて検討する必要があり、NOxを中心とする都市型の複合大気汚染の実態に適合する制度とするよう、」要望しているのです。  美濃部知事から鈴木知事に至る間、東京都議会もこの間何回となく内閣総理大臣環境庁長官に対して同趣旨の要望をしてきております。しかも、都議会全会派一致して意見書を提出しているのです。こうした美濃部知事なり、鈴木知事なり、東京都議会が提出した意見書が間違いなら間違いだと言ってくださいよ。そうしないと私は納得できない。
  231. 松田朗

    ○松田政府委員 先生指摘のように、この地域指定を解除するに先立ちまして、昭和六十二年の二月までに東京都初めいろいろな自治体から広範な意見が寄せられました。これにつきましては今御指摘のように、まだ時期尚早ではないかとか段階的にすべきだとか、いろいろな貴重な御意見をいただいたのも事実でございます。したがいまして、そういう関係地方団体の御意見を参考にして地域指定解除に当たったわけでございます。  地域指定を解除した以降におきましても、窒素酸化物等の汚染につきましては、これは確かに先生のおっしゃるように環境基準を達せないという側面が各地にございますが、しかし、公健法に基づく一種地域の制度の対象とする、そこまでの健康被害を及ぼす主犯とは断定できないということで、現在の窒素酸化物の汚染状況のもとではまだ地域指定をしていないということでございます。  しかしながら、東京都初め関係自治体からそのときに寄せられた貴重な御意見というのはやはり尊重しながら、予防事業等あるいはその汚染対策等に努めてきているところでございます。
  232. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 それでは、公健法第二条第四項に基づく地方公共団体の意見聴取は何のために行うのですか。
  233. 松田朗

    ○松田政府委員 地方公共団体から意見聴取を行うその趣旨でございますが、これは単純に意見を聞いて賛否をとり多数決により物を決するということではなくて、関係地方公共団体の意見を参考にして制度運営の適正を期することにあるということでございます。
  234. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 何か参考にしたことがありますか。
  235. 松田朗

    ○松田政府委員 そういう御意見を受けまして、それぞれの中身を検討いたしまして、例えば、読み上げさせていただきますが、  窒素酸化物及び浮遊粒子状物質の環境基準が未達成で、なお改善を要する状況にある。環境基準が達成されるのを待って解除を行うべきではないか。そういう御意見に対しましては、環境庁考え方としまして、環境基準を達成すべきことは当然であり、大気汚染防止対策を一層強化していく。ただし、環境基準は維持達成されることが望ましい基準として、十分な安全性を見込んで設定されており、それを超えたからといって直ちに疾病が発生すると判断できるような基準ではない。従って、環境基準の未達成をもって公健法の指定相当と考えることには無理がある。 というような答えをしているとか、もう一つ読ませていただきますと、  中公審は、NOxの健康影響を十分解明しないまま、指定解除の結論を急いたように見受けられる。 というような御指摘がございました。それにつきましては、  中公審は、専門委員会でNOx等の現状の大気汚染の健康影響につき、二年半にわたり内外のあらゆる知見を集大成した結果を踏まえ、現在の大気汚染はNOxを含め総体としてぜん息等の主たる原因とは言えなくなっていることが明らかにされたことから解除相当としたものである。 というふうに、この疑問に対しても答えておるわけでございます。  その他、まだたくさんの御意見等についても、このような形でそれぞれ意見考え方をお伝えしてきたところでございます。
  236. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 この意見聴取、地方公共団体か らおとりになったわけですけれども、国のこの公健法改悪に賛成だとかあるいは理解を示したという公共団体というのは何%ぐらいあったのですか。
  237. 松田朗

    ○松田政府委員 今手元に詳しい資料がないので正確な数字は申し上げられませんが、大体六つとか七つとかの自治体でなかったかと思います。
  238. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 何%ぐらいですかと言っているのです。
  239. 松田朗

    ○松田政府委員 一割強でございます。
  240. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 東京、神奈川、大阪などの三大都市、ここの知事さんの意見は簡単に言ってどういうことだったのでしょう。
  241. 松田朗

    ○松田政府委員 東京、神奈川、大阪等の大都市圏の地方公共団体の御意見でございますが、それをまとめて申し上げますと、幹線道路沿道等において二酸化窒素に係る環境基準が達成されておらず、なお改善を要する状況にあること等を理由として慎重な対応を求めるというような御意見共通の大都市の御意見でございました。
  242. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 つまり、公健法の改悪に当たって、全国の地方公共団体が賛成するとかあるいは理解を示すというのは一割程度で、九割方の自治体が全部反対をしている。しかも、東京、神奈川、大阪など、NOxによる大気汚染で悩まされている、苦しんでいる、多数の患者を抱えている、資金的にも大変な支出をしている、そういうところでは全部反対である、あるいは時期尚早であるというようなことになっているわけです。  そうしますと、この公健法第二条第四項というのは、つまり、地方公共団体の大多数、九割方が反対しているとするならば、公健法の改悪はもう少し延期しよう、あるいは環境基準の達成の展望がない間はしばらく延期しようというのが参考意見として聞いたということになるのじゃないでしょうか。地方公共団体の九〇%が反対しようと何しようと、とにかく政府が考えたことだ、環境庁考えたことだということでやってしまったというのがこの公健法の改悪の実態だったと思うのですね。これでは第二条第四項の意味がないのじゃないですか。
  243. 松田朗

    ○松田政府委員 第二条第四項の規定でございますが、これは、地域の実情を十分理解している関係地方自治体の長の意見を聞くことによりまして制度運営に適正を期すということで、先ほど簡単に申し上げたものをもう一度詳しく申し上げたわけですが、これに基づいてやったわりでございます。しかし、この趣旨は、地方自治体の長の同意がなければ地域指定の解除はできないという趣旨でもなかったわけでございます。  しかしながら、その意見は大変貴重なものでございます。また、その御意見も、賛成したのが一〇%台ということでございまして、大多数が反対したということでございますが、その反対している多くの自治体の声もさまざまでございまして、絶対反対から、段階的にやれとか、あるいは慎重にやれ、あるいはNOx対策をどうするのか、反対あるいは疑問、いろいろな意見があったわけでございます。  したがいまして、地域指定の解除に当たりましては、公健法に基づきまして、民事損害賠償責任において、やはり汚染者に患者の負担をさせるという観点から、科学的な根拠に基づいてこれは改正したのでありますが、しかし、このときに自治体から示されたいろいろな貴重な御意見につきましては、総合的な環境保健施策を積極的にするという観点から、予防事業等いろいろな新しい事業をその後展開してきているところでございます。
  244. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 先ほども馬場委員から質問があったわけですけれども、公健法改悪の際に中曽根総理が、もし万一被害が相当出てくるという科学的なデータのぐあいによりましては、再認定ということも考えてしかるべきであると確約されたわけであります。  そこで、環境庁の説明によりますと、認定患者は昭和六十三年をピークに減少しているとか言われたので、私も先ほど東京都の例でそれは事実に反するということを申し上げたわけでありますが、つまり、総体としては認定患者が年々増加をしている、あるいはNOxの環境基準の達成率が年々低下してきている、NOxを中心とした大気汚染が年々悪化をしてきている。これは非常に憂慮すべきだというふうに私は思うのです。おたくはどう考えますか。
  245. 松田朗

    ○松田政府委員 最初の先生の御指摘の、東京都では患者さんがふえているということについてでございますが、私が先ほど申しましたのは、公健法に基づいて認定された患者さんは指定解除後はふえていないわけで、いろいろな事情で亡くなったり、あるいは回復されたりして数が減っているという実情を申したわけでございます。  今先生指摘の、しかし東京都ではふえているじゃないかというその数につきましては、これは、東京都のほかにも幾つかの自治体がございますが、それぞれの自治体が独自の制度をもちまして患者さんを認定しているということによりふえているのだろうと思うわけでございます。
  246. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 そこでお伺いしますが、法による認定患者、それから各都道府県でやっている条例による認定患者、認定患者で救済しているわけですけれども、差異がありますか、違いがあるのでしょうか。教えてください。
  247. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  ぜんそく患者さんという診断をつけられました場合に、その患者さんが先生のおっしゃいました公健法に基づいて認定した患者さんと違いがあるかといいますと、非常に区別は難しいということになろうかと思います。と申しますのは、症状自体はぜんそくの症状で顕在化するからであります。ただ、それの主たる原因というのが、地域指定以前に発症した患者さんと最近発生している患者さんでは、恐らく原因が違うのではないか、主たる原因が変わってきているのではないかというふうに考えるわけでございます。
  248. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 指定前の患者と指定後の患者とは違うと。翌日から違っているのですか。
  249. 松田朗

    ○松田政府委員 これは、公健法という制度、その制度的な割り切りによりましてある期日以降そういう線を引いたわけでございまして、ある日突然変わったということにはならないと思います。
  250. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 おたくの話を聞いていますと、東京都の認定患者の場合はその原因がダニだとかカビだとか喫煙であって、法による認定患者は硫黄酸化物なんだ、こういうふうに聞こえてくるのですけれども、そんなことでいいのですか。
  251. 松田朗

    ○松田政府委員 公健法に基づいて認定した患者さんと、そうでないぜんそくの患者さんとは、患者さんとしては変わりないわけでございます。ただ、私が先ほど申しましたのは、そのぜんそくをもたらした原因というものにつきましては、地域指定をしていた以前と最近とは変わっているであろうということが中公審でも指摘されてきたわけでございます。
  252. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 時間が余りないので余り具体的なデータは示したくなかったのですけれども、おたくがそういう答えならば若干補強したいと思うのです。  東京都の場合、法による新規患者の切り捨てが行われました。もし公健法を改悪していなければ、年々三千人ずつふえている。打ち切ったために、わかりやすく言いますよ。打ち切ったために、その毎年三千人を東京都が条例分で救済している。環境庁が公健法を改悪して患者を打ち切ろうと打ち切るまいと、この年々三千人ずつふえていく患者は変わりがなかったはずなんですよ。現在も変わりがないんですよ。それを、打ち切り前の患者と打ち切り後の患者とではいわゆる疾病の原因が違いますというような、そんなことを環境庁自体も言ったことがあるのでしょうか。余りでたらめなことを言われては困るんですよね。
  253. 松田朗

    ○松田政府委員 地域指定を解除する以前の患者さんとそうでないそれ以後の患者さんとは、これは制度的に、制度的に割り切って区別をしているわけでございまして、その患者さん自体には差があると言っておるわけではございません。
  254. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 いろいろお尋ねしたのですけれ ども、要するに政府なり環境庁がおっしゃりたいのは、大気汚染、大都市においては特にNOxを中心とした大気汚染によって公害病患者がふえ続けてきている、しかしそれは、NOxを中心とした複合大気汚染の影響ではないということをただ言いたいだけ、公健法を改悪した以上はその論理と理屈を通したいというだけの話のように聞こえるのですがね。  しかし残念ながら、先ほど来申し上げているように、東京都の場合をこれは例として挙げているわけです。美濃部知事もおっしゃった。現在の鈴木知事もおっしゃった。東京都議会はすべての会派が認識を一致して意見書を提出をした。その根本にあるのは、今やこのNOxを中心とした複合大気汚染が東京都の現状なんだというそういう認識に立っているんですよ。おたくたちはそれをすべて否定しているんですね。各会派の都議会議員はみんな無知か誤った知見を持って言っている、美濃部知事も鈴木知事も誤っているんだ、こういうことでしょうか。
  255. 松田朗

    ○松田政府委員 先ほど申しましたように、指定を解除するに先立ちまして関係自治体の御意見を聞きまして、その意見に対しましてはそれぞれ環境庁考え方を示すなり、あるいは指摘された特にNOxの問題につきましては、その改善のために取り組むというようなことで施策推進するということでやっておるわけでございます。
  256. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 先ほどもお答えになりましたけれども、科学的なデータとやらはいつごろ最終的な報告が提出できるのですか。
  257. 松田朗

    ○松田政府委員 ちょうど地域指定を解除し公健法を改正するに当たりまして、衆議院、参議院の両院におきまして附帯決議がございまして、そのときにやはり問題になるのは、特に局地の幹線道路沿道の汚染の問題、それからもう一つは、全般的な大気汚染等の状況を早期に発見して早期に手を打つ、そのためのサーベイランスシステムの構築、こういうものが指摘されまして、その両方の研究を今解除後直ちに開始しておるわけでございますが、ただ、大変難しい問題でございまして手間取っておりましたが、昨日、中公審の検討会におきましてどうやら中間報告の素案をまとめられるまでに至りました。まだ最終的な成文に至っておりませんが、そこまで参りまして、近くそれが公表できるのではないか。  ただ、今申しましたように中間報告でございまして、その中には幾つかの新しい知見も得られましたが、例えば局地沿道の汚染状況をはっきりと把握するためには、今までにも東京都の報告もありますが、それだけではやはり不十分ではないか、さらに新しい技術、新しい方法が必要ではないかという指摘もございますし、サーベイランスシステムにも同じように従来のやり方に加えていろいろな新しい手法を取り入れないと、大気汚染を全国的なネットワークで事前チェックするのは難しい、いろいろな指摘等も出てきておりますが、いずれにしても、最終結論にはまだ数年を要するものと思っております。(斉藤(一)委員「いつごろを目標にしているのかと聞いているのです」と呼ぶ)四、五年後を目標に考えております。
  258. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 目標があるでしょう。あれやこれやで大変だと思いますよ。中間報告は出ると思いますけれども、その後また最終報告、総合解析までには時間がかかりますよということを言いたいのだろうと思うのですけれども、目標があるでしょう、いつごろまでにこの結論を出すという。それを示してくださいよ。
  259. 松田朗

    ○松田政府委員 先ほど私の申しました五年というのを訂正させていただきます。  今年度中にその中間報告が完成いたしますので、平成五年度からなるべく早く取りまとめをしたいというふうに考えております。
  260. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 東京都でも御承知のとおり衛生局がやっているが、十数年かかってその科学的なデータなるものが出てこないのですよ。そうすると、環境庁の中間報告は出るかもしれないけれども、最終報告というのは永遠に出ないのではないですか、これは。永遠につまり、NOxが主たる原因であるということを証明してはまずいわけだから、そのためには永遠に結論を出さないという算段でしょう、率直に言って。だから目標がないわけでしょう。違うのですか。
  261. 松田朗

    ○松田政府委員 きのうの環境庁がお願いしている検討会におきましても、非常にこれは重要な研究である、本来ならばこの中間報告がもっと早く出てしかるべきものであるというようなことをお願いしつつ、とにかくその結論を早くいただくように強くお願いしているところでございます。
  262. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)委員 以上で質問を終わります。
  263. 原田昇左右

    ○原田委員長 次に、草野威君。
  264. 草野威

    ○草野委員 公健法の一部改正案につきまして質問をいたします。  ただいままで同僚議員からいろいろな角度から質問がございまして、一部重複する点もあろうかと思いますけれども、お許しをいただぎたいと思います。  昭和六十二年、第一種地域の指定を解除するなど公健法の見直しが行われたわけでございますが、その理由としては、大気汚染の状況はその後全般的には改善の傾向にあり、現在の状況のもとでは大気汚染はぜんそく等の病気の主たる原因とは言えなくなってきており、ぜんそく等の患者をすべて大気汚染による被害者とみなして補償を行うことは合理的ではなくなっている、このように先ほどから御説明がございました。  確かにSOxについては改善されましたけれども、NOxについては依然として改善の傾向が見られず厳しい状況にある、このように環境庁でもおっしゃっているわけでございますけれども、重ねてお伺いいたしますけれども、このNOxと、それからNOxが人体に与える影響、気管支ぜんそくとの因果関係、現在はどのようになっているのか、どのように考えておられるのか、もう一回お伺いをしたいと思います。
  265. 入山文郎

    ○入山政府委員 初めに、大気汚染物質の全国的な状況について説明をさせていただきたいと思います。  まず、SOxでございますが、二酸化硫黄でございます、につきましては、これはかつては我が国の工業地帯における濃度が著しく高かったわけでございまして、国民の健康を保護する上で達成、維持することが望ましいとされております環境濃度としての環境基準が定められました。そして、これを目標に工場、事業場に対する排出規制でございますとかあるいは総量規制等の厳しい対策実施されてきたわけでございます。その結果といたしまして、昭和五十五年度にはほぼ全国的に環境基準を達成することができたわけでございます。以来、引き続き良好な状況を保っているわけでございまして、平成三年度における環境基準の達成率は一般環境大気測定局において九九・七%、それから自動車排出ガス測定局において九八・六%といったように、ほぼすべての測定局において環境基準を達成しているわけでございます。  それから窒素酸化物についてでございますが、これらは主として物が燃えるときに生ずるガスでございまして、発生源といたしましてはボイラー等の固定発生源、それから自動車等の移動発生源といった二つに分けられるわけでございまして、それぞれに対して環境基準の達成に向けていろいろな規制が現在も行われているわけでございます。  二酸化窒素による大気汚染の状況でございますけれども、これは昭和五十四年度以降六十年度までは、わずかずつではございましたけれども、改善が見られております。その後六十年度を底に悪化いたしまして、ほぼ現在まで横ばいといったような状況が続いているわけでございます。  平成三年度における環境基準の達成状況を見ますと、いわゆるこの基準のゾーンの上限でございます〇・〇六ppmを超える測定局の割合がどれぐらいあるかということで見ますと、(草野委員質問をしたことだけに答えてください」と呼ぶ)一般環境大気測定局では五・九%、それから自動車排出ガス測定局では三七・二%でございます。 特に大都市地域の沿道においては、達成状況がはかばかしくないという状況は続いているわけでございます。  以上でございます。
  266. 草野威

    ○草野委員 委員長からひとつ御注意をしていただきたいと思うのですが、質問をしたことに答えてないんですよ。今までの経緯をずっと述べておいて、私の方から初め質問するときに、SOxの状況については改善をされた、NOxについては今こういう状況だと、だから人体に対してどういう影響があるか、その因果関係はどうなんだと、こういう質問を私はしたのですよ。それを繰り返し同じようなことはかり答弁している。時間のむだです、こんなことは。やめてください。質問をしたことに答えてくださいと、こう言っているんです。
  267. 松田朗

    ○松田政府委員 御質問の後半の健康影響についてでございます。これはNO2の健康影響につきましては、短期高濃度暴露と長期の低濃度暴露に分けて考える必要がありまして、一般環境の大気において問題になりますのは長期の低濃度暴露の健康影響であります。この場合には、呼吸器に影響を及ぼすことは周知の事実となっているわけでございます。  環境庁におきまして、このNO2の健康影響についての行政的な判断でございますが、まず第一に、人の健康を十分保護できる濃度としては年平均値で〇・〇三から〇・〇二ppm以下であるということにしておりまして、この値をもとに行政上の目標である環境基準値ができておるわけでございます。
  268. 草野威

    ○草野委員 今おっしゃった基準値ですね、〇・〇六、こういう数字でございますけれども、私は横浜に住んでおりますけれども、横浜の測定局のうちのほとんどがこの基準をオーバーしている。この事実をどう思いますか。
  269. 原田昇左右

    ○原田委員長 答弁は簡明にやってください。
  270. 入山文郎

    ○入山政府委員 大都市地域におきまして環境基準を超えている測定局が多いということは、事実でございます。
  271. 草野威

    ○草野委員 事実だからどうするんですか。
  272. 入山文郎

    ○入山政府委員 そういう状況を改善しなければいけないということでございまして、私どもはいわゆる自動車NOx法を昨年六月に制定していただいたわけでございます。現在はその法律の施行に向けまして鋭意準備を進めているところでございます。さらに関係省庁あるいは自治体等とも連携を密にいたしまして、交通流の問題でございますとか、物流の問題でございますとか、人流の問題でございますとか、そういったところにも目を配りまして、二〇〇〇年にはおおむねの環境基準達成を目標としているということでございます。
  273. 草野威

    ○草野委員 林長官にお伺いしたいと思います。  きょうの新聞に出ておりましたけれども、川崎市では今回自動車公害課というものを新設することになったんだそうです。その理由は何かといいますと、今御答弁がございましたように、NOxの環境基準、これを二〇〇〇年までにおおむね達成できる、このようにおっしゃいました。今までもそういう御説明を聞いております。しかし、川崎市の昨年行ったシミュレーションにおきましては、環境庁が言われたNOxの二〇%削減の目標に対しまして、これは到底できそうもない。川崎市の独自の調査によりますと恐らく五%程度だろうと。国の数字の四分の一しか達成できない、こういうことになるわけなんですね。こういう報道に対しまして、長官はどのように思われますか。
  274. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 川崎市が今までの室を課に改めるということは、それなりの事情を十分に深刻に川崎市が受けとめてのことであろうと私は考えております。したがいまして、行政改革ということは、一口にすべてを減らせばいいということではありませんで、最も能率の上がる、そして住民に奉仕できる仕組みにしなければならないのでありますから、川崎市が公害課をつくるということについては、私は大変結構なことだろうと思っております。
  275. 草野威

    ○草野委員 長官評価されているそうでございます。  どなたか関係局長にお尋ねいたしますけれども、国の四分の一しか達成できない、端的にそういう数字を川崎市では言っているのですけれども、このことについてはどのように受け取られますか。
  276. 入山文郎

    ○入山政府委員 私ども聞いております川崎の数字でございますが、これは、いわゆる車種規制による削減のパーセンテージであるということでございます。この車種規制によってどれほどの効果があるかというようなことにつきましては、環境庁といたしましては、この指定地域全体について試算をしているところでございます。それと単体規制というものを合わせまして、私どもは、一二%ぐらいの効果があるのではないかというように思っているわけでございますが、指定地域と申しましても、いろいろと申しますか、非常に広い地域でございますので、地域によりまして濃淡の差があろうかと思いますし、それから、各自治体が試算をしております試算の仕方と申しますか、要素の入れ方と申しますか、そういったものにも若干の違いはあろうかと思います。  これからさらに、自治体とも連絡しながら精査をしていきたいと思っているわけでございます。
  277. 草野威

    ○草野委員 ただ単に、その精査の仕方が違うんではないか、そういうことで済ませずに、これは十分に話し合っていただきたい、このように思います。  それから、次に移りますけれども、前回の公健法の改正のときに附帯決議がされたわけでございますが、その中で、「健康影響に関する科学的知見が十分でない現状にかんがみ、調査研究を早急に推進するとともに、その結果に基づいて、必要に応じ、被害救済の方途を検討すること。」このようになっているわけですね。そこで、この調査研究というのを昭和六十三年から現在まで早急にやってきた。その結果、今どうなっているのですか。先ほども同僚委員質問に対して、中間発表を来年度じゅうに行うという御説明でございましたけれども、この中間発表の時期と、それから最終報告はいつ発表できる予定になっているのか。
  278. 松田朗

    ○松田政府委員 先生指摘の附帯決議につきました調査研究でございますが、そのうちの一つは、主要幹線道路沿道における大気汚染の健康影響、それからもう一つが、環境保健サーベイランスシステムの構築ということでございまして、これを両方あわせた総合の検討会が実はきのう開かれまして、中間報告の取りまとめをほぼ終えつつあるということで、その公表は近々ということで、今年度中にできようかと思っております。来年度に入り次第、その中間報告を踏まえまして、そこで指摘されました新たな手法の開発等を開始する予定でございまして、少しでも早くその成果、結論が出るように先生方にお願いしてまいりたいと思っております。
  279. 草野威

    ○草野委員 これ以上繰り返して質問いたしません。  次に、地方自治体では、指定地域解除がなされまして、その後、新規の患者を認定しなくなってから、その後でも独自の認定事業、独自の事業として患者を認定しておる、こういうふうになっておりますけれども、その全国の実態について、環境庁はどのように把握をしておりますか。
  280. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  私どもが聞き及んでおります限りでは、旧指定地域の関連の地方公共団体、十二の自治体で、一定の要件を満たしたぜんそく等の患者に新たに認定をしておる、そして、それらの人たちに医療費の自己負担分の助成等、独自の措置を講じるというふうに聞いております。  簡単に申しますと、その主な内容でございますが、独自制度といいましても大体共通しておりまして、医療費の自己負担分を助成する、それからその対象疾患は、その指定解除前の対象疾患、四疾病である、それから対象となるのは旧指定地域における者たちである、年齢制限はある程度行う、このようなことが大体共通の取り決めのようでご ざいます。  現在までに約五万人近くの者がこの恩恵にあずかっているというふうに承知しております。
  281. 草野威

    ○草野委員 地方自治体は、極めて貴重な財源を使いながらこのような事業に取り組んでいるわけですね。先ほど来お話を伺っておりまして、これは単なる福祉政策の一環じゃないか、こんなような説明と私は聞いておりましたけれども、そのような環境庁姿勢というのは、何となく、地方自治体が余計なことをやっているんじゃないか、勝手なことをやっているんじゃないか、このようにも受け取られるわけでございますけれども、こういう批判につきましてはどのように思いますか。
  282. 松田朗

    ○松田政府委員 今申しました、各自治体が行っております。その措置でございますが、それぞれの自治体がそれぞれの趣旨でやっておるわけでございますが、共通しているのは、財源を公費に求めているということだと思います。いずれにしても、公健法に基づきます第一種地域の制度とは性格が違うものと受けとめておりますが、しかし、この自治体が独自にやっておられることに対しまして、私どもそれなり評価をしているつもりでございます。
  283. 草野威

    ○草野委員 どのように評価されているかわかりませんけれども、これも先ほど来質問に出ておりましたが、東京都の例でございますけれども、東京都の単独事業といたしまして、昭和六十三年に認定制度が打ち切られてから東京都独自の事業としてやっているわけですが、これを見ますと、私はちょっと驚いたんですけれども、こんなに大変なのかな、こういう気がしてしょうがないんですね。  例えば、東京都の特別区のうち、十九の区につきましては、昭和六十二年度は二千三人が対象になっている。これが、平成三年度におきましては九千八百四十九人、何と四・九倍にもふえているんですね。それから、東京都全体で見た場合でも、昭和六十三年度は一万八千八百二十二人、平成三年度と比較しますと、プラス九千七百九十一人ということで、一・五倍にもふえているんです。  これを東京都が単独事業として今までやってきているわけでございますけれども、こういうことについて、環境庁はどういうふうに受け取っているんでしょうね。これは何も東京都、今たまたま東京都の例だけを申しましたけれども、ほかの地方自治体におきましても、科らく似たり寄ったりの事業を行っておるのではないか。先ほどの御説明によりますと、評価をしております、そんな簡単に片づけていいものなんでしょうか。  これは長官にも御答弁いただきたいと思いますけれども、これは大変なことなんです、地方自治体にとっては。そういうことを、地方自治体は一生懸命こうやって取り組んでやってこられている。先ほどの御説明を聞いても実に冷たい。どこまで国は真剣になってこの公害病患者の救済というものに取り組んでいるのか、お答えいただきたいと思います。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
  284. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えします。  地方公共団体がぜんそく等の患者に対しまして医療費の自己負担の助成等の独自制度を行っていることにつきまして、これはあくまでもその地方自治体の判断の問題だと考えているわけでございますけれども、しかし、環境庁といたしましては、現在の大気汚染がぜんそく等の疾病に何らかの影響を及ぼしていることは、影響を及ぼしているという可能性は否定できない、こういう現状認識でございますので、この状態に対応するために健康被害予防事業等の総合的な環境保健施策推進していきたいと思うわけでございます。  なお、その前に先生指摘の患者の増加についてでございますが、先ほども若干触れましたが、全国的に見ますとこのぜんそく患者の増加は平均二%ぐらいの割合でふえている、これは都会も地方も押しなべての数でございますが、こういう実態がございますので、御指摘のぜんそく患者等がふえている傾向は全国的であるという認識を持って私どもはいろいろ対応を考えたいと思っているわけでございます。
  285. 草野威

    ○草野委員 全国的には二%程度平均して伸びておるということでございますけれども、大都市におきますこの傾向というものは非常に大変な状況になっている。したがって、大都市におけるこのような公害病患者の認定につきまして、ぜひともこれはやはり復活をすべきではないか、こういう観点からお尋ねをしたわけでございます。  それから、次に移りますけれども、私どもの神奈川県でございますが、神奈川県で、浮遊粒子状物質、いわゆるSPMと言われるものでございますけれども、この濃度が国の環境基準、環境基準というのは一立方メートル当たり〇・一ミリグラム以下というふうになっているわけでございますが、これをかなり上回っている。これはもう放置できない、このように神奈川県では判断をしているわけでございまして、横浜、川崎両市で合同の調査を行うことになっております。  御存じだと思いますけれども、この神奈川における調査によりますと、SPMの濃度が国の環境基準を一・二倍から二倍以上上回っている。そこで、神奈川県としては緊急に合同で調査を行うようになったわけなんですが、こういう例は神奈川県だけでございますか。それとも、ほかの都府県におきましてこういうような調査を行うという計画はございますか。まずこの点について伺いたいと思います。
  286. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘のような高濃度を検出しておるということは私どもも把握しております。  そういったことで、ほかの地域でもそういう調査をやるということがあるかという御質問でございますが、今のところは私どもはそういった話は伺っておりません。
  287. 草野威

    ○草野委員 このSPMの問題でございますけれども一つは発がん性物質が含まれているということ、それからSPMの全体の量の二割から四割はディーゼル車が排出源、このように言われているわけなんですね。  国の調査を見ますと、平成五年度の予算の中にもこれの調査費が計上されているわけでございます。今ちょっと手元に予算書がないのではっきりした項目はわかりませんけれども、これを見ますと、たしか全体で四千数百万円の調査費が計上されているのですね、この浮遊粒子状物質の。その中の項目を見ますと三つありまして、その三つのテーマのうち一つはスパイクタイヤなんです。スパイクタイヤがたしか二千八百万か何かの金額であったと思うのですけれども、残りのディーゼルの黒煙だとかそれから排ガス問題については、両方合わせてそれより少ないわけなんです。  私、その数字を見ておりまして、こういう重大なディーゼルの排ガス問題に比べて、何しろスパイクタイヤに対する、調査費か検討費か何か載っておりますけれども、それよりも少ないというのですね。こういうところに国のこの問題に対する取り組みの姿勢というものが何となく感じられるような気がしたのですけれども、そういうことはありませんか。  済みません、数字がここにありましたので、申し上げます。  この予算書を見ますと、浮遊粒子状物質対策推進とありますね、今年度の予算額五千五百二十万ほどでございますが、これを見ますと三つに分かれておりまして、ディーゼルの黒煙等の削減に対する調査費が九百六十万、それから浮遊粒子状物質の検討費というのが九百三十六万、それに対してスパイクタイヤの対策推進費が二千七百万、こういう状況になっているわけです。それで今伺ったわけです。
  288. 入山文郎

    ○入山政府委員 予算の金額の配分についてのアンバランスを説明せよという御質問かと思いますけれども、おっしゃるように確かにそういう金額の配分になっているわけでございます。  スパイクタイヤにつきましては、これは各県への委託費が主でございまして、かなりの数の県がスパイクタイヤの問題で悩んでおったという経緯からいたしまして、そのような金額になっているわけでございます。  SPMにつきましては、従来からいろいろな調査でございますとかあるいは研究でございますとか、そういったものを続けてきているわけでございますが、これからもさらに取り組みを強化してまいりたいと思っているわけでございます。
  289. 草野威

    ○草野委員 そういうことなんですね、大臣。こういう問題についてはやはりもっと環境庁が力を入れて取り組んでもらいたいと思うのです。  最後質問になりますけれども、これも先ほど来いろいろと御質問がございました。  きょうの新聞によりますと、国立環境研究所がNOxの陰に隠れて目立たなかったディーゼル排気微粒子、DEP、これがぜんそくの原因となっていると指摘した、このようにありますね。この新聞報道による限り、これは環境研究所がDEPとぜんそくの因果関係をはっきりと裏づけた、証明した、このように受け取ってもよろしいのでしょうか。
  290. 入山文郎

    ○入山政府委員 ぜんそくというのはいろいろな原因で起こる、つまり非特異性の疾患と言われているわけでございます。そういうことからいたしまして、今回の研究の結果が直ちに解明をしたということにつながるかどうかということにつきましては、私どもまだここでは明言できないのではないかと思っております。といいますのは、量的な関係を申しましても通常の環境濃度の十倍程度のものでございますし、さらにそれを一気に、吸入させるということではなくて、気管へ注入するというような実験をしているわけでございますので、その結果ぜんそく様の症状が発生したといたしましても、それが直ちに環境濃度においてそういう影響が同じようにあるということにはつながらないわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても新しい知見であるということは事実でございますので、私ども、これからも十分にそういった今後の研究の継続につきましても注目をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  291. 草野威

    ○草野委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、この新聞なんか見てみますと、環境庁が、やはりそうだったのか、ようやく真打ちがあらわれた、このように印象を漏らす職員が多かった。今の局長さんはその多かったじゃなくて少なかった部類のお人のようでございますけれども、時間がないからこれはやめます。  いずれにしても、ここまでもう来ているわけでございますので、この問題についてはぜひとも真剣にお取り組みいただきたい、要望を申し上げまして、終わります。
  292. 塩谷立

    ○塩谷委員長代理 次に、寺前巖君。
  293. 寺前巖

    寺前委員 同僚委員からいろいろお聞きになっておりましたから、私はもう一つ原点に戻ってお聞きをしたいと思うのです。  まず第一に、五年前の公害補償法の変わったきに、国会で附帯決議をつけていたことが先ほどから話題になっています。昭和六十二年三月二十五日、衆議院環境委員会の附帯決議です。その附帯決議が六項目ございますが、その四番目に「主要幹線道路沿道等の局地的汚染については、その健康影響に関する科学的知見が十分でない現状にかんがみ、調査研究を早急に推進するとともに、その結果に基づいて、必要に応じ、被害救済の方途を検討すること。」  何でこんなものがついてきたのだろう。国会がお決めになったことだから私は知りませんとおっしゃるのか、それは当然ですのやとおっしゃるのか。何でこんな附帯決議がつきましたか、御説明をいただきたいと思います。
  294. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  当時公健法を改正し地域指定を解除するに当たり、ちょうどそのときの大気汚染の状況を見ましたときに、御指摘の主要幹線道路等における大気汚染、これは非常に局地的ととらえているわけですが、ここに非常に問題がある、これがぜんそく等の患者の発生とかかわりがあるということは否定できない、こういう認識のもとに、やはり重要であるというようなことで、そういう附帯決議でその調査を命ぜられたものだと考えております。
  295. 寺前巖

    寺前委員 それにもかかわらず何で認定制度をつぶしてしまったのでしょうかな。だから、説明がつかなかったから、結局、ともかく説明がつかないままに押し切るから、そのかわりもう一回調べてみまっさ、そのときに問題が出てきたらもう一度見直しまっさというのがまた総理大臣答弁にもなったということが先ほどから問題になっておった。ところが、その結果について、さあいよいよ時限の五年が来たのに、結論を持ってきて、あれは間違いでしたとおっしゃるのか、それともあれは正しかったですとおっしゃるのか、ちゃんと今度の継続までに、この機会までに持ってこなかったらいかぬかったのと違いますか。そんなことかまへんのや、こうおっしゃるのですか。どうですのや。
  296. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  まず最初の御質問でございますが、当時中公審が大変な御審議をして地域指定解除に至る御答申をいただいたわけでございますが、その中の「地域指定の今後の在り方」というところで、局地汚染について論じております。その中で論じておりますのは、専門委員報告に基づいているわけでございますが、その局地汚染の内容につきまして、「一般環境より明らかに汚染レベルの高い所としては、例えば一部の幹線道路沿道が挙げられる。しかしながら、局地的汚染の健康影響について評価を行うには、科学的知見が十分ではなく、留意事項とされている」こういうことがありまして、宿題として残ったわけでございます。  しかしながら、このときの判断でございますが、公健法の制度との関係につきましては、これらの地域を指定するに当たりましては、民事損害賠償に基づく補償給付を行うということが合理的でなければならない。そのためには、まず、人口集団に対しましてその大気汚染の影響の程度を定量的に判断できること、そしてその上で、その影響が、個々の地域におきまして、地域の患者をすべて大気汚染によるとみなすことに合理性があると考えられる程度にあるということが必要であるとされております。したがいまして、そういう観点からしますと、NOxにつきましては、地域指定をする要件には当たらないという判断が下されたのだろうと思います。  しかしながら、ここで指摘しておりますように、重要な問題でありますので研究課題になった。それを受けて法改正後、局地汚染の研究というのを進めてまいったわけでありますが、確かに、望むらくは五年後の今日までに結論、成果を得るべきであったと私も思っておりますが、結果的には中間報告がやっと間に合うにとどまったということで、今後少しでも早く、その中間報告を受けまして最終報告がまとまるように努力していきたいと思います。
  297. 寺前巖

    寺前委員 間に合わすのが望ましかった、それはそうやと思うわ、ちゃんと間に合わさなかったら責任果たせてないんだから。したがって、中間報告をちゃんと整理して緊急に報告をするというのは当たり前のことだから、きちっとそれは、約束は守ってもらいたいと思う。  二番目に、これも先ほどから出ておったところです。ところで、指定されておった地域、大都市中心でしょう、その地域では従来のやり方で従来の患者さんに対して面倒は見ますけれども、新しいものは見ませんで、こういったところが、自治体で面倒を見ざるを得なかったわけでしょう。もう先ほどからの話に出ておったとおりです。  それで、従来から指定地域で見ておったうちの何割を後引き続き自治体で面倒を見てきたのか。それは患者の数で言うと、認定している数はどれだけになったのですか、減ったのですか。
  298. 松田朗

    ○松田政府委員 先ほど申しましたように、自治体が独自に認めて助成している患者さんの数は、私どものつかんでいるのでは五万人相当ではないかというふうにつかんでおるわけでございます。(寺前委員「いや、指定地域は何割がやっているのですか」と呼ぶ)指定地域でございますか。数にしまして十一でございますから、四分の一ぐらいの自治体でございます。
  299. 寺前巖

    寺前委員 間違いないね。
  300. 松田朗

    ○松田政府委員 訂正いたします。十二の自治体でございます。
  301. 寺前巖

    寺前委員 いやいや、指定地域の何割−−もういいよ。そこが真剣に考えてくれないという証拠と違うか。こういうふうに新聞にはっと簡単に見出しで書いてあるさかい、ああこんなことになっておるんやなと私は思うたさかい言っておるんだ。「ぜんそく患者ら対象 二年前の二・九倍に 大気汚染指定地域だった自治体」、いろいろな新聞に出ていますわな、これ。要するに、指定されておった地域の圧倒的部分で面倒を見ておって、その面倒の見方がいろいろあるか知らないけれども、大体子供を中心にして見ている。少し変わっている。それでいて、全体として大都市中心に二年前の二・九倍にふえていますよ。これあなた、何も環境庁から聞かなくたって新聞ではあっと書いてあるんだから、みんな知っているんだ。  そうすると、大臣に聞いた方がいい話やろうと思うのや。従来よりも子供たちの中に、大都市中心に二年間に二・九倍になってきている。ほっておくわけにはいかないという事態が事実で起こっておったら、これはちょっと考え直さないかぬな、あれを廃止したときに大騒ぎになっただけのことはあったな、新しく大臣におつきになったからお感じになられているんじゃないだろうかと私は思うのですが、いかがですか、大臣
  302. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  先生指摘の地方公共団体独自の制度で患者がふえ続けている点についてでございますが、ぜんそく等の疾病、先ほど申しましたように厚生省の行っている患者調査では二%ぐらいの割合で年平均ふえているということでございます。これにつきまして、その原因については先ほども申しましたように、大気汚染はもちろんのことでございますが、のみならず、ダニとかカビとか喫煙とかいろいろな原因がかかわり合っているということでございます。  それで、このような全国的な傾向があるわけでございますが、この中で、このようなものに対しまして地方公共団体が独自の制度で医療費の自己負担分を助成している等の施策をやっているわけでございますが、この制度適用者がふえているということだけをもって、この公健法の制度に基づきまして、民事賠償責任にのっとりまして汚染者を特定し負担させるような、そういう地域指定をするには至らないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  303. 寺前巖

    寺前委員 繰り返しを、ほかの同僚委員がおやりになったことをやる気はありませんよ。ないけれども、大気汚染が改善されたという証拠がないんでしょう。それでいてぜんそくがふえていくんでしょう。従来どおりのあれが起こっていくんでしょう。さっきもあった、あの制度がなくなった瞬間から原因が変わりましたんやと、そんなばかなことあり得ないんだから、その分野がとっとことっとこふえていったら、客観的にあるのは、従来の状況と違うでというレッテルを張る内容がなけりゃ従来どおりになるのが当たり前なんです。だから、これは皆あのときに切ったけれどもえらいことやったなというのが客観的常識でしょうが。  これは私、だから大臣に聞いたのですよ。いつの間にやら大臣かわられたのかしりませんけれども、そんなばかな話はないと思いますよ。私は、やはり大臣が法案を提案される以上は、お感じになった問題だろうから、この問題についてやはり検討する必要があるというふうに思われなかったのだろうか。ちょっとお聞きしたいと思うのです。  いやいや、大臣でない人に、ほかの提案者に聞いたって始まらぬのや。大臣はどう思われます。
  304. 松田朗

    ○松田政府委員 私の方から、どのような根拠をもちまして……
  305. 寺前巖

    寺前委員 私、そんなこと聞いてへんのや。どう思われましたかと聞いているのや、大臣に。あなた、大臣がそれをどう思われましたかという話の報告をするの、そこで。もう打ち合わせ済みか。どう思われましたかといって私は聞いているのやで。違うのや。事実を聞いているんじゃないんだから。
  306. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 寺前先生の御質問お答えします。  今いろいろ御議論を伺っておりまして、大気汚染の防止、これにもっと真剣に取り組まなくてはいかぬなということをしみじみ感じております。
  307. 寺前巖

    寺前委員 しみじみ感じてもらうのはいいけれども、あの制度をつぶしてよかったんかいなということを、自治体が手を打たにゃならぬ事態が生まれているのだから、私はそこのところを考えてほしいな、こう思ってちょっと聞いてみただけなんです。  その次、聞きます。三番目。五年前の公害補償法を変えるときに、二〇〇〇年までに環境基準を達成すると表明してこられたはずです。そうですな。ところが、最近の、例えば昨年法律ができて、総量削減基本方針を見ると、特定地域において二酸化窒素に係る大気汚染環境基準を二〇〇〇年までにおおむね達成するというふうに変わってくる。このおおむねの意味するところは、特定地域全体で現況から三割強の自動車NOxを削減することによって六都府県の特定地域全体の一般環境大気測定局及び自動車排気ガス測定局のうち九割程度の測定局で環境基準が達成されるというものだそうです。いわばおおむねとは九割程度ということになるんだけれども、これは前からそう言ってましたのやとおっしゃるのか、いややはりちょっと変えましたのやとおっしゃるのか。これは局長さんでいいです。御説明いただきたい。     〔塩谷委員長代理退席、持永委員長代理着     席〕
  308. 入山文郎

    ○入山政府委員 昨年の自動車NOx法の審議のときに私申し上げましたのは、先生指摘のように、二〇〇〇年には環境基準をおおむね達成したい、そしてそれはできるだろうということを申し上げたわけでございます。それは今でも変わっていないわけでございます。  その後、いろいろな数値をシミュレーションいたしまして試算をしたわけでございますが、その結果どうしても達成できないるが残る、その程度は一割程度であるというようなことがわかったわけでございます。したがいまして、考え方そのものは少しも変わっていないわけでございますが、おおむねという意味がやや明確になったと申しますか、そういったことでございます。
  309. 寺前巖

    寺前委員 私、昨年のことを言ってない。これは補償法をつくるときに言っておったのとは違うよと。二〇〇〇年に達成される、特定のところは別にして、こう言っておったのや、あのときは。ところが、去年から変わってきているのや。おおむねという言葉が入り出した。そして、そのおおむねの今度は理屈づけがいろいろふえ出してきたんや。だからこれ、一体言葉というのは、そのときそのときで都合よう勝手に変えていくのかいな。やはり二〇〇〇年やると言ったら、やるらしくやらなんだらあかんのと違うか。  次に行きます。  そこで、自治体の諸君は、去年法律つくったけれどもこれは任じておけぬなと、法律をつくる前後から不安がっていた。その特徴点が、さっきも話出ておったように、幾つかの自治体で不安が出てきた。それで、去年の秋から冬にかけて新聞見ておったら、こういうのが出ておる。「自動車排ガスに悩む川崎市、横浜市、大阪府などが、工場や事業所に、車から出る窒素酸化物(NOx)の削減を義務づける「総量規制方式」を検討していたが、今秋までに相次いで断念した。」なぜや。「環境庁が「六月に公布した「自動車NOx削減法」の上乗せ規制になり、法律違反」との見解を自治体側に示したことが大きな理由だ。削減法だけでは環境基準の達成は困難で、自治体から「国は自治体が積極的に取り組めるように支援すべきなのに」と不満の声が出ている。」というのがいろいろな新聞に出てくるわけなんです。  さて、環境庁は、要らぬことをするなといって指導してまんのか。
  310. 入山文郎

    ○入山政府委員 環境庁といたしましては、いつ も申し上げているわけでございますが、各自治体がそれぞれの地域の実情に応じた工夫をしていただくということについては大賛成でございます。ただ、いわゆる全体としての法体系との整合性ということも考えなければなりませんので、どんなことをしてでもいいというわけにはまいらない場合があるわけでございまして、そんな場合には、具体的な案について環境庁相談してください、こういうことを申し上げているわけでございます。決して一方的に、自治体がやろうとしていることを環境庁がとめるといったようなことを考えているわけではございません。
  311. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、いわゆる上乗せというのは許さないという態度はとりません、指定地域などで患者さんが倍からになってくるようなところは、それはおっしゃるのは無理もございませんなというふうに、相談受けて立ちますよと、できますな。
  312. 入山文郎

    ○入山政府委員 個々のケースについて、具体的に相談を受けてから判断してまいりたいと思っております。
  313. 寺前巖

    寺前委員 できるという立場やったらいいと思います。  私、ここに、患者団体の人にこんなものもろうたんやわ。環境庁大気保全局長さんというのですか、橋本さんという人の時代がありましたよな。その「覚書」というのが四点書いてある。これはなかなかいいこと書いてあるから、この大気保全局長さんの言っておられることをちょっと紹介しておきますよ。  これは、「全国公害患者連絡会殿」というあて名で書いておられますが、それを読んでみますと、「東京、大阪など大都市部の高濃度汚染地域の大気の規制にあたっては、地方自治体がこれまで実施してきた対策を尊重し、総量規制の早期導入などを中心に規制強化を行なう」との覚書に署名しておられる。よろしおすな、これ。あなたも引き継ぎますな、局長さん。御説明いただきたいと思います。
  314. 入山文郎

    ○入山政府委員 相当前のお話でございますので、必ずしも正確な記録あるいは記憶が残っていないわけでございますけれども、おおむねそこで元局長が言っているようなことにつきましては、私どももできるだけ前向きに取り組んできていると思っているわけでございます。
  315. 寺前巖

    寺前委員 前向きにとかなんとか言わぬと、あなた、局長さんがそう言うた、その局長の言われたことについては、これは約束事なんだから、国民に対する約束事をほごにするのやったら、ほごにすることをはっきりしないといかぬからね、その団体との間に。これは信頼関係、大事な問題ですよ、関係する患者さんとの間に。これははっきりしておかないかぬですよ。  その次に、同じようにこういうのがある。七八年にNO2の環境基準の緩和をやった。これが大気汚染を深刻にしたと言われている。その七八年の十月に、当時の環境庁大気保全局長さん、山本宜正というのですか、山本さんというのがおったのね。それが、「大阪公害患者の会連合会御中」というのと「全国公害患者の会連絡会御中」、二つともちゃんと署名入りの「確認書」というのを出しておられる。その「確認書」を見ますとこう書いてある。「私は不勉強でありますので、現在の時点ではNO2濃度年平均値〇・〇三PPMの科学的根拠については患者の皆様に対し説明できません。」と言っているほか、七九年七月には「持続性せき・たんの有症率が増加をはじめるNO2濃度は年平均値〇・〇二PPMであること、」「東京都NOx検討委員会がカイ二乗検定した結果は右と同数値であることを認めます。」こういう確認書に署名しておられますよ。  当時の大気保全局長が認めている、有症率が増加する年平均〇・〇二ppmを大幅に緩和して、何ら科学的根拠のない現行年平均値〇・〇三ppmにしたことが、これはNOx規制対策をおくらせ、NOxの汚染を深刻化させてきたということの根拠になると私は思うのですが、環境庁として、こういうことを従来言っておきながら変更させたということについて、遺憾やというふうに思われるのか、その局長が勝手なことを言っておるのや、こうおっしゃるのか、どっちです。
  316. 入山文郎

    ○入山政府委員 環境基準についてのお尋ねでございますが、これは御承知かと思いますけれども、公害対策基本法に基づきまして、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準であるというように規定してあるわけでございます。常に適切な科学的な判断が加えられまして、必要な改定がなされるべきものともされているわけでございます。  五十三年に行われました改定でございますが、これはこうした考え方に即しまして、その時点までのと申しますかその時点でのと申しますか、最新の科学的な知見を検討、評価いたしました中央公害対策審議会の答申に基づいて行われたものでございます。この環境基準の改定以降、環境庁は、全国五十一の地域で約三十万人を対象とした疫学調査をやっておりますし、さらに、全国八つの地域で約五千人を五年間継続的に観察した疫学調査実施するといったようなこともしております。  しかし、いずれにいたしましても、この基準を再度改定すべきであるとするような知見は得られていないわけでございます。私どもは、現行の基準は国民の健康を保護する上で適切なものであると考えております。
  317. 寺前巖

    寺前委員 私の質問にはお答えになっていない。  要するに、当時の局長さんは、「科学的根拠については患者の皆様に対し説明できません。」これは昭和五十三年十月十九日にそう言うた。「説明できません。」とちゃんと覚書まで書いてはるのに、そして片方ではばあっと強引に〇・〇三だといってやってはる。それが現実に生きておるのや。それで患者さんがだあっとできてくるわけや。それで今度は、面倒を見ておった制度は、これはもう関係あるかどうかわかりませんといってはあっとやめるものやから、自治体は自分自身で面倒を見なければならぬようになって、それでまたばあっと広まっていく。考えてみたら、歴史的に無責任なことをやっておったなということを言わざるを得ぬわけや。  私は、もう時間が来ましたので、詳細はよく検討してほしい。歴史的に検討していただいて、中曽根さんがこの法律を改正するときに、もう一度見直すことがあったら見直すという話までされた経過があるのだから、大臣は、謙虚にその立場に立ってよく検討させてもらうということをおっしゃるのかどうかというのが一つ。  せっかくの機会ですから、もう一つだけ聞いておきたいと思うのです。  「水俣病問題については、その早期解決を図るための総合的な対策」云々ということをこの間おっしゃった。早期解決というのは、原告団の皆さんがおっしゃっているのは、もう三十七年たって今日こう来ているのだ、早期の解決をやってほしい、テーブルに着いてほしい、そして面倒を見てほしいということをおっしゃっているのだけれども、あれは患者が悪いのやさかいにわしは知らぬという立場をおとりになるのか、この早期の解決というのは何を意味しておられるのか、大臣から御説明を聞きたいと思うのです。  この二つ、大臣お答えいただいて、終わりたいと思います。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  318. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 寺前先生の御質問お答えいたします。  まず、水俣病患者の早期解決というのはどういうことかということでありますけれども、本来、解決ということになりますと、一切がすべて片づくということを考えますと、これはやはり十年、二十年という歳月を要する問題も含まれております。つまり、患者さんが命のある限りは国は責任を持たなければならないということがございますので、それは医療費とか補償費とかいろいろございますけれども、ですから、そういう意味においては、早期というのはもう近々に解決できる、単純にそういう問題ではございません。  しかし、患者さんなり原告団なりの、そして チッソなり熊本県なり、国も入りますけれども、そういうところで、この問題で一つのレールが敷かれて、そのレールの上を走ることによって、ある人は何年か、今七十歳の人だったら、その方が八十歳まで生きておれば十年間かかる。それはそれとして、解決の道は既に敷かれておるということのレールだけは何とか敷けないものかという意味における早期という言葉であると私は考えております。  ただし、これは先ほどから何遍も繰り返しておりますように、言うべくしてなかなか大変な問題でございますので、これについては、水俣病の解決、水俣病のあることそのものが、日本環境行政を占う、あるいは日本環境行政がいかなるものであるかということを中外に判断してもらう大事な問題でもありますので、これはこのままに放置できないということでありますから、寺前先生の中で、これ以上見ないのかということは、一切ございません。  それからもう一つ、例の大気保全局長の文書のことでございます。  これは、一局長さんがそういう文書を出されたというのは、やはりそれなり局長さんの悩みもあったろうと思います。それからまた、責任感もあったろうと思います。ただしかし、私どもの方は、国会に提案しまして、国会の御審議を得た上で国の法律に定めていただいたものでございまするから、その示すところに従って鋭意努力していくということを申し上げるしかございません。
  319. 入山文郎

    ○入山政府委員 先ほど御指摘のございました五十三年十月の、当時の大気保全局長の全国公害患者の会あての文書でございますが、これにつきまして、先ほど勉強が不足のために云々というような御指摘があったわけでございますが、これは、その数日後に正式なものとして書きかえまして、改めて患者の会あてに出しているわけでございます。その中で、「直ちに解析の内容についてわかりやすく十分な説明を与え得なかったことは遺憾でありますが、」云々、こうあるわけでありまして、私どもは、出し直したと申しますか、その正式なものについてこれからも考えてまいりたいと思っております。
  320. 寺前巖

    寺前委員 時間が来ましたのでこれでやめますけれども、なかなか深刻な課題をお抱えになっているのですから、もう一度見直していただきたいということを申し上げて、終わります。
  321. 原田昇左右

    ○原田委員長 次に、中井洽君。
  322. 中井洽

    中井委員 法案の質疑に入らせていただきますが、実は、先ほどから議論を大変思い出深く聞いておりました。私は、昭和五十一年に国会へ出まして以来、四日市が地元でございますから、公健法の問題、何度も何度も質疑を繰り返してまいりました。そして、六十一年に落選したものですから、地域指定をなくしてしまうという大改正のときに実は質疑ができませんでした。このことは、自分自身大変残念な思いを今日まで持ってまいりました。そういう意味で、その当時のことを含めて少し議論していきたい。したがいまして、少し議論の中身が古いことがあって、御訂正いただかなければならないことがあるようなら、遠慮なしに御訂正を賜りたいな、こういう感じであります。  同時に、その当時と環境委員会はちっとも変わらぬなと。最後の方になるとだれもおらぬで、定数が全然足らぬのもいつも変わらないなという思いもございますが、まあ、そんなことを言っておったら委員会が成立しませんので、あえて協力して、質疑に入らせていただきます。  従来の、地域指定をやっておりました当時の私の一番の議論は、四日市やら水島だけ解除すればいいじゃないか、解除条項をつくればいいじゃないか、こう言い続けてまいりました。ところが、そういう汚染をなくしている地区、あるいはなくならない地区、一緒くたにどんとやってしまったというところであろうかと思います。  もともとこの制度自体も割り切りの多い制度であった。割り切りの多い制度をなくして、矛盾が出てきたからそれをなくして新しい制度にするのだというのに、さらにまた新しい割り切りの制度にしてしまった。そして、それから五年たって、この五年の間に、例えば、主なる原因というものを疫学上あるいは科学知見を集積して突きとめてしまうということでもあればいいけれども、それができていない。そして同時に、地域指定をやめた旧の指定地区の中で、十二の地区が認定をさらに進めて、五万人の患者さんがいる、そういう矛盾がさらに出てきたんじゃないか、私はこのように考えておりますが、環境庁いかがですか。
  323. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  公健法の第一種地域の制度でございますが、これは本来、加害者と被害者との間の民事損害賠償の問題として解決される公害健康被害補償について、著しい大気汚染の影響によりまして疾病が多発するという状況を前提に、一定要件を満たすぜんそく等の患者を大気汚染による被害者とみなす、先生先ほどおっしゃいました一種の割り切りでございますが、被害者とみなしてその迅速かつ公正な保護を図ろうとする、こういうものでございます。したがいまして、昭和六十一年の十月の中公審の答申におきましては、現在の我が国の大気汚染の状況はぜんそく等の疾病の主たる原因をなすものとは考えられず、したがって、一定要件を満たすぜんそく等の患者をすべて被害者とみなして補償を行う合理性は認められないということで、第一種地域の指定をすべて解除したわけでございます。これに基づいて環境庁は法改正を行って、地域指定は現在していないということでございます。
  324. 中井洽

    中井委員 質問意味わかります、私の。答弁がちょっと違う。
  325. 原田昇左右

    ○原田委員長 お説のとおりだ。ちょっと答弁がずれている。
  326. 中井洽

    中井委員 聞いてくれた方がいいと思うのですがね、質問を。どこかに書いてある文章で、言葉が二つか三つ合うたらそれで答弁してしまえなんというのは、さっきからみんなそうじゃないですか。皆さんそれぞれに独特のニュアンスでこういう質問をおやりになっている。そのニュアンスを全然無視して、言葉が幾つか合ったら、それで書いてあるので答弁しちゃうというのは、答弁じゃないよ。僕らはこれは議論したいからやっておるんでね。
  327. 原田昇左右

    ○原田委員長 中井委員に申し上げます。  もう一度、済みませんが御質問いただいて、もう一回やらせましょう。
  328. 中井洽

    中井委員 もう少し具体的に言いますと、一種指定のやつはいろいろ割り切ってやった。その中でいっぱい矛盾出てきたわけですね。例えば、四日市や水島のように大気汚染、もう本当にクリアしちゃった、こういう地域も出てきた。それなのに解除という項目はなかった。解除の条件というのは書いてなかった。これは書けばよかったんですね、こんな全部指定解除せずに。そして、それぞれの地区が努力して解除するようにしていけばよかった。今回もまた割り切りをしているじゃないか、この法案改正で、五年前も。このことが一つ。  前回でもいっぱいあったんですね。例えば一〇〇%認定してしまうところもある。四日市のように認定率が八〇%のところもある。あるいは小児ぜんそく、どうなんだ。これに対する扱いが全然違うところもある。いろいろ中にこの矛盾点を含んできてやった。ところが、前回の法改正も割り切った。そして五年たってまた見直した。その割り切りの中で、それじゃどうなんだというと、この五年間で主たる原因、こういうものを疫学的に、医学的に突きとめられておれば、割り切りについてももう少し理屈のつくことができるだろう。それなのに、それがどうしてこの五年間で突きとめられていないんだ。これが一つ。  それからもう一つは、十二の地区で認定患者がいて、五万人の方が新たに認定されている。これ、どうしてほっておくんだ。やめさすのか続けさすのか。環境庁はさっきから知らぬ顔しておるじゃないか。それじゃますますこの制度が矛盾していく。前の制度よりももっと割り切りと矛盾が拡大しておるんじゃないですか。こんなことを聞いておるんです。
  329. 松田朗

    ○松田政府委員 どうも失礼いたしました、  まず最初のお答えでございますが、地域指定を五年前に解除いたしまして、今回公健法を改正するわけでございますが、今回改正するに当たりまして御審議いただいておりますのは、自動車重量税の引き当てについてでございます。  しかし、そうは言いながらも、今御指摘のありました大気汚染の面から見まして地域指定についてどう考えるかという観点に立ちますと、五年前に地域指定を解除するときにいろいろ議論をした結果、SOxは改善されている、NOxはまだ問題があるけれども、しかしそれが主たる原因というふうにいけないから、それをもって汚染者負担の民事賠償責任制度に乗っかって一定の要件のもとで患者を認定して、それを民事賠償責任負担させる制度とするには合理性がないということで解除になったわけで、そのときの条件が今どうかということでございますが、今日におきましても、先ほどからいろいろ御議論がありますように、NOxにつきましては横ばい、あるいはさらに汚染の状況がひどくなっているという現状があるものの、しかし、基本的に五年前の解除したときと同じように今日のNOxのレベルをもってして地域指定をするには当たらないということで、今回の改正におきましては、その地域指定ということには触れずに、自動車重量税の引き当てということについて御審議をお願いすることになったわけでございます。  それから、五万人の件についてでございますが、御指摘のように、これは十二の市町村で地域指定解除後、患者を認定し、独自の制度として補償を続けてきて、それが五万人にふえてきているということでございます。  これにつきましては、私どもとしましては、自治体が独自の制度で公費をもってやっている制度ということで認識しておるわけでございます。先ほど申しましたように、現在の汚染レベルにおきましては新たに日本のどこかを再地域指定するというような状態にございませんものですから、そういう患者さんたちに第一種地域の今の公健法を適用して、そして公健法のもとで補償等の手当てをするということがとれないのが現状でございます。
  330. 中井洽

    中井委員 この法案も、これまた割り切りで、八対二というのも科学的根拠は何もないのです。はっきり申し上げたら、割り切りです。割り切りで今日まで続けてきておるだけです。大体こんなところだろうという割り切りで来ておる。どうしてこれは二十年近く騒ぎ続けてきておるのに主たる原因が突きとめられないのか。例えば、今回のこの法案で補償予防協会のやることの中に調査が入っておるんでしょう。これは五年間ぐらいで百五十億ぐらいの事業やら、いろいろなお金を使っておるんです。どうしてお金を集中して原因追求、これが進まないんですか。これが一つてあります。  それから、五万人にふえられた十二の地区の認定患者さんというのは、認定の基準というのはどういうふうになっておるのか。従来、一種指定地域で認定というのをやってきたと同じ基準でおやりになっておるのか。あるいはこの五年間で認定された患者さんにお使いになったお金はトータルでどのくらいになるのか。お聞かせをください。
  331. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  まず最初に、ぜんそく等の患者さんの主たる原因をなぜ突きとめられないかということについてでございます。  もともとぜんそく等のこういう疾患は非特異的な疾患ということで、特定の、唯一の、単一の原因だけで起きている疾患でないということもありまして、非常にたくさんの要因が絡んでおります。先ほどダニだとかカビだとか喫煙習慣等申しましたが、それ以外にもまだたくさんの要因が関連しているということで、なかなかその主犯格あるいは主たる原因というものがつかめないのが現状でございます。  しかし、研究につきましては、先生指摘されたように、それぞれの研究者に研究費をつぎ込んで、そして私ども懸命にその成果を得るようお願いしているところでございますが、結果的にはまだその主たる原因を突きとめるには至っていない。(中井委員「どのぐらいお金をつぎ込んだのですか。さっきそれを聞いたと思う」と呼ぶ)今申しましたように、大変難しい問題でございますから、今の結論がいつまでに出るかということについては、お答えできないと思います。(中井委員「五年間でどのぐらいお金をつぎ込んだのか」と呼ぶ)
  332. 原田昇左右

    ○原田委員長 不規則発言ですね。
  333. 中井洽

    中井委員 いや、違うんだ。聞いているのです。それは委員長、五年間でどのぐらいお金をつぎ込んだんだと聞いておるんだから、答えてくれないと何にもならぬじゃないか。
  334. 原田昇左右

    ○原田委員長 今、松田君が答えるつもりなんですよ。
  335. 松田朗

    ○松田政府委員 ちょっと資料が手元に来るまでに、もう一つの御質問でございます。  現在、どういう基準で自治体がぜんそく等の患者さんを認定しているかという基準でございますが、地域指定を解除する以前、六十三年までは、これは指定された地域におきまして、そのしかるべき医療機関でぜんそくだとか間質性肺炎とか、そういう四疾患ですね、これが診断されれば、そしてそれが審査機関で認知されれば、これは患者になったわけでございます。今度は、その指定解除後は、これはそれぞれが独自の制度でやっておりますから、疾患を特定したりあるいは四疾患を全部対象にしたりあるいは年齢を区切ったり、いろいろなバラエティーで認定をしているわけでございまして、一律にやっているわけではございませんので、今正確にはちょっとお答えできないわけでございます。  それから、先ほども一つの御質問の、どれくらいの研究費をつぎ込んでいるかということでございますが、これは、大体毎年同額に近いものをずっとつぎ込んできております。  研究は大きく二つありまして、先ほどから申しております中で、気管支ぜんそく等に関する調査研究、これは特に大都市におけるものでございますが、これにつきましては大体三億円ずつをつぎ込んできておる。それから、全般的に大気汚染が健康にどういう影響を及ぼすかという、これは、都会地に限らず全国的なそういう取り組みでやっている総合研究につきましては約二億近く、正確に言うと一億九千二百万ぐらいのものを大体毎年つぎ込んできておるわけでございます。
  336. 中井洽

    中井委員 患者さんにお払いする費用を含めて、あるいは事業費を含めて、膨大な金額でございます。  問題は、こういう矛盾の多い制度でいかざるを得ないのは、主たる原因、三つでも四つでも突きとめていけない、あるいは治す方法というのをなかなか解明できない、そこで矛盾のある制度を続けていかなきゃいけないのですね。だから、もっとお金をつぎ込んで、やれるかどうかわかりませんが、本当に解明するんだということをおやりになるべきだ、このことを私は特に注文していきたいと思います。これは、大臣に後でそのことについてのお考えを承りたい。  それからもう一つは、たばこをお吸いになる患者さんが、当時は認定患者さんの中で二割以上いらっしゃった。たばこは、私は素人考えから言っても、責任の一端、負うべきだと思います。自動車にあれだけ割り切りで金を負担させて、どうして今回の改正でも、たばこのことについて何ら触れられないのか、何ら内部で議論をなされないのか。いかがですか。
  337. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  今の自動車重量税を引き当てるということで御審議をお願いしているわけですが、それは認定患者にお払いする医療費等に充てるためでございます。この患者さん方は、先ほどから問題になっておりましたが、地域指定解除をする以前に認定された患者さんで、その方々に払う金でございますから、今の八対二というのは、その解除時点以前におけるSOx、NOxの汚染寄与度、煙突を持っているものと自動車との、これの割合で決まっておりますものですから、その割合を現在も そのまま適用するのが適当であろうということで、さきの中公審の答申でもそれでよろしいという御結論をいただいたわけであります。  たばこがぜんそく等につきまして影響があるということについては、いろいろな学説、御意見もあろうと思いますが、これが定量的にどのくらいぜんそくに対して影響しているのか、非常に難しゅうございます。たばこが関係しているというだけで患者さん方のための費用を払うという、負担をかけるまでのそういう理論的な検討は非常に難しかろうということで、現在補償すべき患者さんが、その地域指定解除前の患者さんのための費用ということで、同じような方式を適用させていただいているということでございます。
  338. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 中井先生の御質問ですけれども、三億と二億というこの額では少な過ぎるのではないか、もっと本格的にやるためにはもっとそれに資金を投入したらどうか、それにはたばこなどの財源で運用できないか、こういうことにつながることでございますか。それとは違うでしょう。これは、あくまでも国家予算としての問題でしょう。ですから、予算編成のときに、あるいは予算を環境庁が大蔵省に要求するときに、その三億、二億というのをもっと増額して調査研究を充実させたらどうか、こういうことでございますね。
  339. 中井洽

    中井委員 私も不勉強でありますが、ちょっと、まともに質問しているつもりなんですがね。  大臣、ずっと環境庁おやりになってきて、いまだに主たる原因が突きとめられない、そこで割り切っていろいろな制度をやっておるのです。今の科学知見でわかっておる範囲で割り切ってやっておる。ぜんそくを治すというのは、それは環境庁の担当ではないかもしれぬけれども、患者さんの健康回復というのが一番なんです。そのためにお金も集めておるのですから。根幹は研究じゃないですか。どうして予算だとかなんとか言うのですか。この集めている金から出せばいいじゃないですか。どこでやっておるんだ、こう言っておるのです。ちっとも進まない。この委員会だけでもこんな質問を十回はやっていますよ。ちっとも進まない。  たばこだって、かつて私は、公害患者さんの中でたばこをお吸いになる人の数を出せと言ったら、絶対出せないと言ったのです。二年けんかしたのですよ、出す出さぬで。お医者さんはみんなデータを持っておった。しかし、それは何かがあって出せないで、ようやく出して、認定された患者さんが当時二八%ぐらいお吸いになっておった。認定されてからやめた人、そういう人を入れたらもっとお吸いになっておったのです。たばこだって原因じゃないかと言ってお調べになるのは当たり前だ、そして認定患者さんの中でたばこと大気汚染と二つが重なってぜんそくになったんだという人があったら、たばこから取ればいいじゃないか、こう言っているけれども、一回もやってないじゃないですか。そのときだけ適当なことを答弁して、一回も今日まで研究していない。ただこの制度をずるずるとやって、五年に一遍適当な答弁をしておるだけじゃないかと私は言いたくなります。そういう意味でお尋ねをしておるのです。お答えください。
  340. 松田朗

    ○松田政府委員 今研究のお話が出たわけでございますが、先ほど御説明しました二つの大きな研究費でございますが、これの財源は拠出金の中からやっているわけでございます。たばこの研究だからそれ以外の財源とか、いろいろおっしゃることにつきましては、これは他の環境庁の予算等もあわせていろいろ検討していくべきかと思っております。
  341. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 非常に遅々として進まないのが何年もかかっておって、そういうことを今先生から御指摘をいただいたわけでありますが、これにつきましては、先生の御指摘を踏まえまして内部で研究させます。
  342. 中井洽

    中井委員 同時に、この予防協会の方で基金をお集めになっておやりになる事業を見せていただきますと、電気自動車あるいはメタノール車の導入等のことに補助金を出して研究をするとか、あるいはこの地域地域では道路の立体交差を進めるために金を使うのだとか、書いてあります。しかし現実には、事業としておやりになっているのは、もう圧倒的に公園をつくるというのが多いんじゃないですか。そうじゃないですか。こういう電気自動車の導入等についてかなりお金をお使いになっていらっしゃるのですか、あるいは立体交差なんかお進めになっていらっしゃるのですか、お尋ねをします。
  343. 松田朗

    ○松田政府委員 二十五億の予算の基金の予防事業における使い道といいますか活用でございますが、これは調査研究あるいは知識の普及、研修、いろいろやっておりますが、確かに先生指摘のように、調査研究というソフト物よりも、ハードの、そういう施設を援助する方にお金がやはり比重が高いのは事実でございます。今先生指摘の低公害車の関係の普及、これは電気自動車等が入っているわけでございますが、これにつきましては毎年一億以上の予算をつけておるわけでございます。そういう意味からしまして、それ以外にも、大気の浄化をするための植樹の事業だとか、あるいは患者さん方のために供するプールを整備するとかいろいろ、やはり先生指摘のように施設整備等の事業費に相当な額がつぎ込まれているということでございます。
  344. 中井洽

    中井委員 例えば自動車だって、あれは旧指定であったのは四十幾つの市町村だったと思うのですが、そこへ自動車を買わすといったって、トータルでそれでは五億円も行ってない。例えば市長さんの車を電気自動車にしてくれといったって、そんな金にもならない。飾りでつくってあるだけだ。もっと、本当にその地域地域で役立つことにお金を集中されたらどうだと私は思います。  同時に、この問題が起こって認定制度ができたときに、私は患者さんのことを思って、一番わからなかったのは転地療養なんですね、あるいは住居を移してしまう。それは患者さんにとっては、生活の場であり、移るということは大変ですが、健康ということに関してかえられないものがある。そういう転地療養やらあるいは住居を移すということについて、思い切って補助金、援助を差し上げる、それの方がよほど私はお金がプラスに生かされるんじゃないか、こんなふうに考えておりますが、そういう方向にはこの金が使われないと聞いております。その点はいかがですか。
  345. 松田朗

    ○松田政府委員 今の御説明した協会の予防事業の中で、ぜんそくの児童につきましてはキャンプなんかをするような事業はやっておりますが、この基金の二十五億という制限がありまして、財源も煙突を持っているところと自動車というところからいただいているということで、これはもうずっと固定した額で推移しております。したがいまして、この二十五億をいかに有効に生かすかということにつきましては、先生の御指摘のとおり慎重に考えてやっていきたいと思います。  ただ、今まではそれぞれの助成をしている自治体の要望を毎年いろいろな機会で聞いておりまして、幾つかのメニューが毎年少しはこうやって異動してやっているわけでございます。
  346. 中井洽

    中井委員 自治体のメニューも結構だけれども、私はやはり患者さんの要望だと思います。今日まで五年間で毎年五千人ぐらいずつ患者さんの数が減っていらっしゃる。僕が、治った人はとお尋ねしたら、三分の一ぐらいお治りになった方がいらっしゃる。これは大変結構なことで、お治りになる人をふやしていくというのが一番大事なことだと思うのですね。そういう意味で、もう少し発想を変えたやり方をしないと、矛盾を膨らましたままでまた五年後にこんな議論をしなければならない、その間に何人もの方がぜんそくで苦しんで亡くなられる、こういうことが続くと思います。  そういう意味で、こういう制度だから順番に、五年ごとに自動車の重量税の暫定税率が変わるたびに変えていけばいいわ、そういうことじゃなしに、本当に有効な制度にしてもらうように努力をしていただきたい。このことを最後大臣に要望して、お考えを聞いて、質問を終わります。
  347. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 中井先生お答え申し上げま す。  先生から数々の示唆をいただきましたし、また、実情に即した御質疑もございまして、これにつきましては十分事務局を督励しまして検討をさせますし、また、先生のお考えをそういう政治の面に反映するように努めたいと思っております。
  348. 中井洽

    中井委員 ありがとうございました。
  349. 原田昇左右

    ○原田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会      ————◇—————