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1993-02-23 第126回国会 衆議院 環境委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月二十三日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 原田昇左右君    理事 青木 正久君 理事 塩谷  立君    理事 高橋 一郎君 理事 細田 博之君    理事 持永 和見君 理事 斉藤 一雄君    理事 馬場  昇君 理事 大野由利子君       住  博司君    武村 正義君       戸井田三郎君    前田 武志君       谷津 義男君    柳本 卓治君       山下 徳夫君    小川 国彦君       時崎 雄司君    草野  威君       寺前  巖君    中井  洽君  出席国務大臣         国 務 大 臣 林  大幹君         (環境庁長官)  出席政府委員         公害等調整委員 麻植  貢君         会事務局長         環境庁長官官房 森  仁美君         局長         環境庁企画調整 八木橋惇夫君         局長         環境庁企画調整 加藤 三郎君         局地球環境部長         環境庁企画調整 松田  朗君         局環境保健部長         環境庁自然保護 大西 孝夫君         局長         環境庁大気保全 入山 文郎君         局長         環境庁水質保全 赤木  壯君         局長         通商産業大臣官 清川 佑二君         房審議官  委員外出席者         国土庁地方振興 斉藤 恒孝君         局総務課長          国税庁課税部酒 二宮 茂明君         税課長         厚生省生活衛生         局水道環境部環 三本木 徹君         境整備課長         農林水産省食品         流通局食品油脂 三宅 輝夫君         課長         通商産業省基礎         産業局化学品安 西出 徹雄君         全課オゾン層保         護対策室長         通商産業省基礎         産業局基礎化学 古田  肇君         品課長         通商産業省基礎         産業局化学製品 田中 正躬君         課長         通商産業省生活         産業局日用品課 高松  明君         長         環境委員会調査 西川 義昌君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   住  博司君     石原慎太郎君   戸井田三郎君     綿貫 民輔君   前田 武志君     松永  光君   小川 国彦君     日野 市朗君   田中 昭一君     田並 胤明君   寺前  巖君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     住  博司君   松永  光君     前田 武志君   綿貫 民輔君     戸井田二郎君   田並 胤明君     田中 昭一君   日野 市朗君     小川 国彦君   不破 哲三君     寺前  巖君 同月二十三日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     中井  洽君 同日  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚本 三郎君     ――――――――――――― 二月十九日  地球環境保全への取り組み等に関する陳情書外  十二件  (第一〇〇号)  中海・宍道湖の水質浄化対策充実強化に関す  る陳情書  (第一〇一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷津義男君。
  3. 谷津義男

    谷津委員 さきの林環境庁長官所信表明につきまして、順次質問をさせていただきたいと思いますので、明快な御答弁をお願い申し上げます。  所信表明の中で、長官環境基本法について触れておられました。今国会提出をなさって、そしてその成立を期しておられるということでございますが、これは中央公害対策審議会並び自然環境保全審議会答申を踏まえて策定作業に入っておるということでございます。  そこで、この件についてお伺いするわけでありますが、まず長官は、環境基本法案必要性について、また政府準備状況について、お答えをいただきたいと思います、
  4. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 谷津先生の御質問お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、中央公害対策審議会それからまた自然環境保全審議会、その答申を踏まえまして、環境基本法法案作成政府は取り組んでおります。もちろんこれは総理の指示も受けておりますが、現在の段階では法案化作業を今鋭意進めているというお答えにとどまるわけでありますが、御案内のように、環境基本法、この法案がなぜ今の時期にということになろうかと思いますけれども、実は、先生も御承知のように、環境に対する取り組み方が、環境庁が設立されましたときは御案内のように産業公害に対してどう対応するかということが中心課題でありましたけれども、今はむしろ地球環境時代と言われるだけに、それにふさわしい環境政策を総合的に立てていかなきゃなりませんので、その意味からもやはり、環境行政は他省庁にも広範にわたっておる問題もありまして、ここで基本法のような基本性格を持ったものが必要ではなかろうかということで、今、今通常国会提出を目指しまして鋭意取り組んでおるところでございます。
  5. 谷津義男

    谷津委員 長官おっしゃるように、この問題については経済界も非常に注目をしておりますし、各省庁においてもこの環境基本法環境政策根拠法にもなるんじゃなかろうかなというふうに考えているわけであります。各省庁平成年度予算案を見ましても、一兆七千億を超える予算が組まれておりますし、そういう面からいいますと、これは非常に大事な法案であります。  そこで、長官のこの法案を通すに当たりましての決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  6. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  この法案が、実は昭和四十五年の法改正公害対策基本法からいわゆる経済調和条項というものが削除されましたのは先生案内のとおりでございますけれども、この点を見ますと、経済優先というそしり、国民各界各層からそういうそしりがあってはならない、あくまでも環境保全基盤である、基本であるという考え方に徹しなければならないということで、この法案作成に踏み込んだわけでございますけれども、こういう考え方は、我が国環境対策強化してきて、実際の問題では環境対策経済成長を阻害したことがあったということではなく、一時的な産業公害に基づくものはありましたけれども、それに対してはむしろ産業界経済界が率先して取り組んでそれを取り払う努力もしてきてくれたことも事実でありまして、むしろ、現在の環境を悪化させている原因は国民のそれぞれの生活の中から生まれてきているという点も無視できませんので、そういうものを踏まえまして、かえって公害対策技術開発とか国際競争力強化とか、そういうものを促進しながら、長期的に見れば経済発展環境政策そのものが寄与しているんだという時代を一日も早くつくりたい、そういうことでこの基本法に取り組んでおります。
  7. 谷津義男

    谷津委員 長官のおっしゃるとおりだろうと思うのです。しかし、この件については経済界産業界も、私なりに見るにかなり抵抗もあろうやに思うわけでありますし、特に経済環境調和というのは非常に大事だろうというふうに考えているわけであります。直接この法案づくりに当たっている八木橋企画調整局長にお聞きするのですけれども経済環境調和、この問題については大変な御苦労をいただいていると思うのですが、その辺のポイントはどこにあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  8. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ただいま長官からもお答えしたところでございますが、実は本年度環境白書において、私ども一つの重要な分析をやったというぐあいに考えておるわけでございます。それは、我が国が四十年代以降公害対策を進めるに当たって、実は我が国公害対策経験というのは、実際に公害を起こしてしまった、起こしてしまったことによって激甚なる被害が生じたわけでございますが、そういった被害を生じたということで大変なマイナスを負った、それをまず事前に対策を講じていたとするならばどういったことになっただろうか、その場合の人々に与える影響、また経済的な効果というものを考えますと、やはり環境というものを大事にしていかなければならないし、また、そうすることによってかえって経済的なコストも少なくて済むという分析を行ったわけでございます。  また、その後の経験を見ますと、我が国がいろいろと環境基準を厳しくいたしまして経済界にいろいろなことをやっていただいたわけでございますが、そうすることによって我が国経済はどうだったのかと申しますと、それは経済的には結局マイナスにはなっておらない、またそこで新たな需要を生み出すことによりまして新たなタイプの経済発展をすることが可能だったという貴重な経験を持ったわけでございます。これはUNCEDの事務局長ストロング氏に言わせますと、日本の第二のミラクルというような表現をして、また今度のクリントン政権におきましても、日本経験というものを紹介していただいているわけでございます。  そういったような経過があるということも踏まえまして、これからの環境政策のあり方は、やはり私ども経済活動社会活動を包み込むその土台となるものは環境であるというようなことから、環境を大事にした中で長期的に見た健全な経済活動が図られていく、環境はその基盤であるというようなことが今度の地球サミットにおける持続可能な開発という概念にもあらわれているわけでございまして、そういった理念というものを、先ほどいただきまして、また議題になっております中央公害対策審議会等答申に基づきまして、ぜひ新しい理念というものを新たな環境基本法制の中に盛り込んでいきたいということで、現在我々は法案策定作業を進めている最中でございます。
  9. 谷津義男

    谷津委員 局長お話事務方としてよくわかりました。  そこで、長官にもお聞きするのですが、同じような質問になるかもしれませんけれども基本的な理念、いわゆる哲学というのが非常に大事だろうと思うのです。長官としてのお考えをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  10. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  基本法に盛り込むべき哲学ということでございますけれども、実はその辺が非常に苦慮するところでもあります。つまり、法律用語でどうあらわしていくか、哲学をあらわすということは非常に難しい表現の仕方でございますが、しかし、それなりに基本的理念というものについては、今企調局長が御説明申し上げたような形で取り組んでおります。  ただ、環境と一口に言いましても、突き詰めて考えれば、これはやはり経済と、それから環境といいますか精神といいますか、それの調和であろうと思っております。したがって、経済的発展あるいは経済的繁栄というものを、現実的には哲学あることによって大いに伸ばしていけるということでないと意味がございませんので、その点を十分に留意しながら基本理念を盛り込むように今考えております。
  11. 谷津義男

    谷津委員 今、長官理念といいますか、哲学というのはよくわかりました。  そこで、環境政策基本的な理念との関係で、民間との関連というのが非常に大事であろうというふうに考えるわけであります。環境保全活動支援策というのもあろうかと思いますが、その位置づけ、そして意義、こういうものをきちっとさせなければいかぬと思うのですが、その辺のところはどういうふうにお考えでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  12. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど長官から御説明申し上げましたように、今日の環境問題というのは、かつての公害問題のように産業公害とその被害を受ける住民という関係よりは、むしろ国民それぞれが加害者にもなり被害者にもなり得るという、極めて一般的な社会活動経済活動そのものに伴って今日の地球環境問題、また都市環境問題というのは発生してきているというようなことが見られるかと存じます。そういたしますと、環境と人とのかかわり合いについて国民理解が得られ、国民一人一人が環境に対して健全な活動ということを知らず知らずのうちにやっていけるような格好になっていくことがやはり大事ではなかろうかと思います。  そのためには、そういった基本的な考え方、仕組みというものをぜひ国会における法律として提出していただき、そして、それをもとに私ども政策プログラムを組んでいくということがやはり非常に大事だろう。そういう考え方もと基本法というものをぜひつくらせていただき、国会の御審議をしていただき、それで国会もとにそういう法律提出させていただきたいというのが私どもの願いでございます。それをもとにして、今度は政策プログラムをつくり、また国民理解を求めていくという方向に行くことがよろしいのではなかろうか、こう考えている次第でございます。
  13. 谷津義男

    谷津委員 それでは、重ねて局長にお尋ねするのですけれども、要するに、民間団体環境活動についていろいろな考え方があります。そして、既に今国会にも提出されております環境事業団法の一部を改正する法律案におきまして十億の基金ということもありますが、私どもが漏れ承るところによりますと、これは最初は二千億ぐらい要るのじゃなかろうかというようなことで、いろいろな動きもあったやに聞いておるわけでありまして、十億というのはそれから見ると大変少のうございますけれども、緒についたということで私は評価するわけであります。そういう面も含めまして、具体的な方策はどういうふうにやっていくのか、この辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほどのお答えといたしましては、理念との関係でちょっとお答え申しまして、実際それではどういうことをやるのかということについての答弁をということでございます。  先ほど申し上げましたような理念を受けまして、この中央公害対策審議会それから自然環境保全審議会答申では、国民の自主的、積極的な役割が発揮されるためには、環境教育が大事であるということと同時に、環境に対するNGO等への支援を含めて民間活動への支援を行っていくことが必要であるというぐあいに述べられているところでございます。したがって、私どもといたしましては、基本法におきまして、そういった理念とともに、そういったような活動支援充実強化していくことが大事だということを織り込んでいく必要があるというぐあいに考えるわけでございます。  その一つの実際的な活動といたしまして、今国会には、地球環境基金というものを環境事業団に設置する、そして草の根の国際環境協力、また幅広い国民の参加による足元からの行動に対して、国が、また民間とあわせて支援していくというようなことを考えているわけでございます。おっしゃるように本年度は十五億円ということで、出資金十億円、活動事業費助成五億円ということでございますが、こういったことにつきましてことし芽を出させていただいているわけでございます。今後これを大きく育てていく方向に向かっていくべきであると考えております。
  15. 谷津義男

    谷津委員 答申によりますれば、責務の問題というのが答申の中にあるわけです。国の責務地方公共団体責務事業者責務、あわせて国民責務ということが取り上げられているわけでありまして、この必要性がそこに説かれているわけです。  大臣は、この国民責務ということについてどのようにお考えか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  16. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま先生から、基本法の制定によりまして、国民責務といいますか義務といいますか、それがどんな形で生ずるのかという御質問でございます。  この答申の中において、「国、地方公共団体事業者及び国民すべての主体が共通の認識の下に、より自主的、積極的に行動、協力して取り組むことが必要」であり、国民責務としては、「日常生活において環境への負荷をできるだけ少なくするように努め、さらに環境の汚染の防止、自然環境の適正な保全等環境保全のための活動を自主的、積極的に行うように努める」ことが適切であるという答申精神に沿いまして、それを基本法の中にいかに表現するかという作業にも入るわけでございますけれども国民が自主的に、そして積極的にみずから自然環境の適正な保全に努めるという考え方は、先ほど局長からも話されましたように教育との裏腹にもなることであります。したがって、特定の事項に対する義務づけという意味のものではありませんで、大きく精神的、理念的な考えを含めた責務という形で幅広くとらえているということでございます。
  17. 谷津義男

    谷津委員 この国民責務ということについては今長官のおっしゃるとおりだろうと思うのですが、これはやはり国民理解といいましょうか認識といいましょうか、そういうものが必要であろうというふうに思うのですね。そうなってまいりますと、先ほどの局長お話のように、教育ということが非常に大事な要素になってくるわけでありますが、これは文部省との兼ね合いもあるわけでありますけれども義務教育の教科書の中にこういったものを低学年のうちから入れていただいて広く認識をしていただくということ、あるいはまた生涯教育という立場で老人学級、いろいろなものがありまするから、そういう中で積極的に対応していく必要があると思うのです。  その辺のところを長官のお考えとして、文部省を初め各省庁との関連もございますけれども、どういうふうにお考えになっておりますか。その教育問題を含めてちょっとお話をいただきたいと思うのです。
  18. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどの局長答弁と若干ダブるところがあるかもしれませんが、その場合は御容赦を願います。  人と環境のかかわりということが実は一番大事な点じゃないかと私は思っております。したがいまして、いかに自分が環境の中で人間としての歩みをするかということを自覚するということは、やはり教育にまつことが非常に大きいことは、委員のおっしゃるとおりでございます。  そこで、環境保全のために望ましい行動をどうとるかということを国民の一人一人がみずから胸に問うて、みずかも自覚していくということまで徹底させることが私は大事な教育の目標じゃないかと思いますが、そういう環境教育を推進するについて、環境庁といたしましても、これは教育そのものに対していかに国民理解を深めるかというPRももちろん当然でありますし、それから、委員のおっしゃいますような子供のころから自覚を深めていくという学校教育、これも大事でございますので、いろいろな公共団体地方公共団体も持ちまして、さらに環境教育への支援地方公共団体にも努めていただくことが大事でありますし、学校教育においても、環境教育充実ということでこれからも文部省と連携を深めていきたいと思っております。  ただ、今既に県によっては環境憲章のようなものも県独自の姿勢で定めながら、県民全体に環境の重要さというものを認識させるという動きもありますので、そういういろいろなものと有無相通しましてこの教育充実を図りたいと思っております。
  19. 谷津義男

    谷津委員 答申の中にこういう言葉があります。「二十一世紀を展望し、都市生活型公害不用物排出量の増大の問題、地球環境問題等への対策を進めていくためには、有効性が期待される経済的手法考え方環境基本法制に位置づけることが重要」というふうに答申の中に書いてあるわけでありますが、この辺、長官はどういうふうにお考えでしょうか。
  20. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 これも大変重要な御質問でございます。特に、先生案内のように、現在の環境問題は、都市型あるいは生活型公害あるいは地球環境問題等への対策の進め方、こういうことを度外視してはできないわけでございますが、そのためにも、科学技術活用あるいは経済的手法等によるいろいろな誘導策、それからまた環境影響評価活用あるいは社会資本整備などのいろいろな手法がございますので、この手法を適切に活用できるような基本法内容にする必要があるのではないかなという考えが生まれてまいります。  特に、血御指摘の経済的手法につきましても、その有効性が期待されるためには、その考え方環境基本法にどう位置づけるかということが大変大事なことでありますので、このような観点を踏まえまして、政府部内で一層の調整を図りたいと考えております。
  21. 谷津義男

    谷津委員 その政府部内の調整ということでお尋ねするのですが、答申の中でもこの件については反対意見もあるやに書いてあるわけですね。また一方では、OECD等のいわゆる勧告によればということで、「参考」ということで書いてあるのですけれども、いろいろと課徴金の問題あるいは排出課徴金それから製品課徴金、こういうやり方もある、デポジットもあるというふうにいろいろあるわけでありますが、一つ環境税といいますか、こういうものも想定できるのではなかろうかと思うのです。  いろいろな各省との調整もあろうかと思いますが、長官長官なりに、環境庁としての考えというのもあるはずでありますが、その辺のところはどういうふうにお考えでありますか。課税考えに入れる、そういう案文を入れるのかどうか、この辺のところをお聞かせいただきたい。
  22. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  恐らく谷津先生の頭の中にはクリントン政権エネルギー新税というものがありまして、それが引き金となって今のような御質問にも発展したのではあるまいかということも考えられるのでありますけれども、私としては、現時点一つ税体系にまで踏み込むという考えは、私は現時点ではまだそこまで考えておりません。  特に、クリントンさんの税の中には、つまり赤字財政に対してどう寄与するかということとともに、またそれが今度熱量を基準にした形で新税が組み込まれるものですから、それは当然環境対策には非常にいい結果をもたらす、そういうことも踏まえて、つまり両方に意味があるように組まれているように伝え聞いておりますけれども我が国の場合には、税体系という形にすぐ表現しますと、一種の増税的な考え方国民が誤解しやすいという点もございます。そういうこともございますので、これは慎重にやはり取り組まなければならぬ、表現しなければなりませんが、ですから、今すぐ環境税のような形で環境基本法の中にあからさまに盛り込めるという時期ではないという考えを持っております。  ただし、環境基本法内容も、まだ法案内容が固まっているわけではございませんので、したがいまして、それに法案内容をどうするかということはこれからの政府部内の調整でもありますが、恐らく原則としては、今度の基本法環境税という姿が生まれてくるという、一つの形を整えるということまでは無理ではないのかなという考えを持っております。
  23. 谷津義男

    谷津委員 確かに私の頭の中にはクリントンの新エネルギー税のことがあります。また一方では、ECにおきましても、他のOECD加盟国が同様の税を実施することを条件に二酸化炭素質量及びエネルギー量に応じた課税を協調してつくっていきたいというようなことがあって、他のOECDというのは多分アメリカと日本を主に指しているんだろうというふうに私なりに解釈をしているわけであります。  そういうことで、アメリカがこういう新税を打ち出してきた、あるいはECがそういう動きをしてくるということになりますと、日本もそれに準じていかないと、何か日本が立ちおくれといいますか、何か世界の潮流から外されてくるのではなかろうかというふうな感じを私は持つのです。  その件については、実は局長にお伺いするわけですが、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  24. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、従来のような特定の産業だけにかかわって生ずる公害問題ではなしに、生活活動社会活動一般に伴ってそういう環境問題が出てくるという場合においては、経済的手法というのはかなり有効であるという議論が世界的でございまして、この議論はOECDでも議論されておりますし、また過去数回、先進七カ国におけるサミットにおいても、そういったような政策というものを推奨しているという世界的な傾向もございます。そういったようなことも踏まえまして、今回の中央公害対策審議会等答申におきましては、経済的な手法についての活用を図るために、有効性等は期待されているのだから、そういった考え方を位置づけておくということは重要である、ただ同時に、大臣お答えいたしましたように、この問題というのは経済負担を果すということもございますので、こういった問題を取り扱うに当たっては、その施策の必要性とか効果とか経済に与える影響とか、そういったものを十分慎重に考えた上で、国民的な合意を求めながらやっていく必要があるんだ、こういう言い方をしておるわけでございます。  私どもといたしましては、そういった問題であるということを十分踏まえつつ、しかし、やはり地球環境問題というところが世界的問題になっております状況からは、こういう問題を真剣に調査研究を進めていくべき問題であろうというぐあいに考えておるところでございます。
  25. 谷津義男

    谷津委員 ある新聞の報道によりますと、今の条項のものが何か二十二条にあって、それが空欄になっておるというふうな新聞記事を私は読んだことがあるわけであります。これは、いろいろな役所附の協議の中でそういうような問題には大変な激論が行われているのだろうと思うのです。ですから、そういう激論のポイントですね、どこがどういうふうに起きておるのか、その辺のところを、話ができる範囲で結構でございますけれども、お聞かせいただければありがたいと思います。
  26. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 おっしゃられるように、御指摘のような新聞報道があったことは私も承知しておるわけでございますが、政府部内の作業をするに当たって、環境庁関係各省に環境庁の法文案をお示ししながら協議をするというのが政府部内における仕事の段取りでございます。そのときに環境庁における検討がこの件に関しましては若干おくれまして、たしかあの時点では案文を示さないで、ただ全体といたしましてはこの国会にぜひ御提案申し上げたいということから、でき上がったところから条文を各省に協議に回したという経緯がございまして、その時点で間に合わなかったという経緯があることは事実でございます。  それでは、なぜそういうことになったのかということでございますが、実はこの経済措置につきましては、一つは、環境上好ましい行為を何らかの助成を与えながら経済的に助長するという手法、これは実は従来からとっておったわけでございます。これにつきましては、割合すんなりと条文化作業もできるわけでございますが、一方、環境保全上好ましくない方に何らかの負担を課して経済的に不利なような効果を与えて、そしてそういう行為をとらないようにというための施策につきましては、それが国民の負担に関する問題でもございますし、そういたしますと、先ほど申し上げましたように、いろいろ国民経済的なことを考え、また国民の合意を得ながらやっていくということを同時に考えながら法制上位置づけていく必要があるのではないか。そういうことを考えながら位置づけするとなるとどういう条文になるのかなということで、中でいろいろ議論しておりまして、そういうことからあの時点においてはまだ各省にお示しすることができなかったという経緯があることがああいう記事になったものだというぐあいに私どもは推察しておるわけでございます。
  27. 谷津義男

    谷津委員 局長、それじゃちょっとお伺いしますが、本国会法案提出するということになりますれば、三月五日、遅くとも十二日には提出しなければなりませんね。これはタイムリミットがあります。今その詰めに入っているだろうと思うのですが、この問題についてはかなり詰まっていなければとても法案提出は間に合わないということになると思うのですが、今の状況はどんなふうになっていますか。
  28. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どものところではほぼ原案をつくったというところでございますので、関係各省に早急に提示いたしまして、政府間の調整に入りたいと思っております。経済的手法に関する措置も含めまして、できるだけ答申に盛り込まれた内容を最大限私どもは踏まえながら、国会に御提案したいというぐあいに考えております。
  29. 谷津義男

    谷津委員 そうしますと、答申を踏まえながらということになれば、経済的手法はちゃんとそこへ入れるということなんですね。それがあいまいのままでいきますと、また後に、これは大蔵省も含め、あるいは税調等もいろいろありまして議論になってくるのですけれども、もしそういうふうな形になってきて動く場合は、法案そのものを、その条文を変えなければならぬ事態も起こってくるのじゃないでしょうか。ですから、その辺のところは最初からきちっと書いておく必要がある。ただ、課税するとか何かはいずれにしましても、その辺のところは間違いなくきちっとやっておかないと後々問題が起ころうかと思いますのですが、その辺はどうでしょうか。
  30. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 この答申によりますと、今日の環境問題に対応するためには、科学技術活用でございますとか、環境影響評価活用でございますとか、社会資本整備、それから先ほど先生が御指摘になりました環境教育民間活動に対する支援の問題と並びまして、経済的手法等による誘導策がその手法として有効性が期待されるので、その考え方を位置づけるという答申になっております。この答申に基づきまして私どもは最大限の努力をし、法文化の作業に当たりたいというふうに考えております。
  31. 谷津義男

    谷津委員 それから、やはり答申の中にあるわけでありますが、私は非常にこれは難しいなと思いながら質問するわけでありますが、「環境の範囲について」ということがあるのですね。この環境の範囲というのは、私は非常に漠然としたものだろうと思いますし、また、きちっとしておかなければならぬような要素もあるだろうと思うのです。  局長、この辺のところは大変御苦心なされているのじゃないかと思うのですが、これはどのようにお考えでしょうか。
  32. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、環境の範囲の議論でございますが、この答申におきましては、「今日の内外の環境問題の国民認識を基礎とし、社会的ニーズに配慮しつつ、施策の対象として取り上げるべきものとすることが適当である。そもそも、環境は包括的な概念であって、また、環境施策の範囲は、その時代の社会的ニーズ、国民認識の変化に伴い変遷していくものである。したがって、環境基本法制の立法に当たっては、その下で、これらの社会的ニーズ、国民認識の変化に的確に対応し、健康で文化的な生活に不可欠な環境保全のために必要な施策が講じられるようにすべきであること。」というふうに言われているところでございます。  そこで、この答申の趣旨を踏まえますと、政府部内で今現に作業をやっているわけでございますが、こういう考え方を踏まえますと、私ども環境問題というものの社会的ニーズ、また国民認識からいたしますと、従来とらえられておりました公害でございますとか自然環境保全、そういったものだけではなしに、やはり環境そのものを総合的にとらえる。また、都市生活型公害、地球環境問題というものもその視野にとらえまして、健全で恵み豊かな環境というものを保全するという趣旨に沿って私ども考えていく必要があるのではなかろうか。ただ、定義そのものにつきましては時代によって変わってくるという認識でございますから、そういうことで御理解賜りたいと思います。
  33. 谷津義男

    谷津委員 長官にお聞きしますが、先ほども局長に申し上げたのですが、これは提出期限というのは歴然としておると思うのです。ですから、三月五日あるいは十二日、この間にこれを提出しなければ、今国会においてはなかなか審議、成立は難しいというふうに私は思うのですけれども、これは五日までに提出できるのですか。その決意のほどをちょっとお伺いしたいのですが。
  34. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  先生御指摘のように提出期限が三月十二日ということは十分に承知しておりますが、ただ、内容的にも、それからまた法案をまとめるにつきましても、非常に苦心の要るところもございますのと、それからまた審議会に一応諮らなきゃならぬという点も出てくることも考えられますので、とにかくその期日に出せるように最大限の努力を続けるということで今お答えするしかない状態でございます。とにかく努力を申し上げます。
  35. 谷津義男

    谷津委員 これはまあ確かにおくれますと今国会中に成立は非常に厳しくなってきますから、間違いなく提出をしていただいて、そしてこれを成立させるように私どもも努力しますから、ひとつ長官の方も頑張っていただきたいというように考えます。  質問は変わりますが、ことしの七月に先進国の首脳会議が東京で開催されることになっております。環境問題に対する取り組みにつきまして我が国としての具体的な提案を行うべきだというふうに私は思うのです。そして、合意形成をすべきというふうに考えるのですが、長官はどのようにお考えでしょうか。
  36. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ただいまの御質問については、地球部長に答弁させます。
  37. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 先生おっしゃられましたように、この七月に東京で東京サミットが開かれます。現時点ではその議題は明らかになってないわけでございますが、しかし、先生もお触れになりましたような地球環境問題を、昨今のいろいろな国際的な動向を見てみますと、まず昨年六月にブラジルで地球サミットが開催されまして、そこで非常に重要な合意がいろいろとなされております。ことしはそういった合意を実行する年ということになってございまして、現に、例えば条約の批准をするための努力でありますとか、あるいはアジェンダ21の各国版を作成する努力であるとか、こういったものが着々と始まっているわけでございます。さらに、昨年秋から暮れにかけまして開催されました国連総会におきましてもいろいろな重要な事項が決めてございますが、例えば、持続可能な開発委員会というものを設立して、アジェンダ21の実施状況などを監視する役割をそこに担わせることでありますとか、あるいは砂漠化防止条約交渉を開始させるだとか、そういったようなことがございます。また一方、先ほども先生お触れになりましたように、米国でも新しい政権ができまして、環境問題に非常に熱心だ、そういう状況でございます。その一方で、もちろん昨今世界的な経済不況ということもあるわけではございますけれども地球環境保全に向けた活発な取り組みは、今申し上げましたように続いているわけでございますし、また続けなければいけないという状況だと思います。  このようなことから、東京サミットにおきましても環境問題が引き続き重要な議題の一つになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。環境庁といたしましては、我が国地球サミットの成功に向けて積極的なリーダーシップを発揮してきたこと、それから、地球サミットを機に高まった地球環境保全に向けての国際的な機運を継続させる必要があるということから、私どもとしてもこの環境問題を我が国が国際的なイニシアチブを発揮していくことが重要というふうに考えておりまして、外務省など関係省庁との密接な連携のもとに、東京サミットにおきましても環境分野においても実り豊かな成果が出るように、最大限努力してまいりたいというふうに考えております。
  38. 谷津義男

    谷津委員 まあ行動時代に入ってきたというようなお話でございます。まさにそのとおりだろうと思うのですね。そうなってくると、我が国においてもサミット前にそういう意味では積極的に環境問題に対処して取り組む必要があるだろうというふうに思うのです。ですから、こういったいろいろな作成事業とか何かをきちっとやって、これを内外に示す大事な時期が来たというふうに私は思うのです。その辺のところにつきまして、長官の決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  39. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 特に地球環境ということで、この二、三年の間に急速にこれはもう全世界にこの問題が広げられております。その中で、日本の持っておる環境対策への取り組み方、その技術力、それからまた経済力、そしてまたそれに取り組む熱意、そういうものは世界のそれぞれの国から大変な注目を浴びておることも事実でございますので、そういうことを踏まえまして、日本の世界に果たす、あるいは地球に果たす責任というものをどうするかということを常に胸に持ちながら取り組むべきだと思っております。
  40. 谷津義男

    谷津委員 それでは、基本法につきましてはこれで終わらせていただきます。  次に、水俣病につきましてお聞かせをいただきたいと思います。  国は和解に応ずべきというふうな意見が最近強くなってまいりまして、我が党の中でもそういう意見を持つ人が多くなってきたわけでありますが、政府考え方をまずお聞かせいただきたいと思います。
  41. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 水俣病につきましてのことは、実は政府としても、また環境庁としても大変憂慮しておる問題の一つでございます。ただ、和解という言葉から感じられるニュアンスは、いかにも話し合いできれいに解決できる道が和解ではないかというような感じを持ちやすいことも事実でございます。  ただ、私ども政府としましては、解決に対して逡巡しているということはありませんで、一日も早く解決したいという気持ちはだれにも負けず持っておるつもりでございます。環境庁が現在まで進めてきた公害健康被害の補償等に関する法律に基づきまして、二千九百四十五名という患者の方々を医学的に、医学を基礎として認定いたしまして、それに対する救済も推進してきておることは、谷津先生も御案内のとおりでございます。特に平成三年十一月の中央公害対策審議会答申に基づく水俣病の総合対策事業を実施して以来、およそ三千名に上る方々がこの対策に基づく医療費や医療手当の支給を受けておるという現実も、これもまたそのとおりでございます。  ただ、和解そのものについては、率直に言いまして、訴訟の争点が究極的に、その争点によって何らかの損失が生じた場合、この生じた損失を国民全体の負担によってどこまで補てんできるのかということについては、これは行政の立場からしますと非常にゆるがせにすることのできない重要な問題でもございます。また一方においては、今訴訟によってその争点を明らかにしていただくという現実でもございますので、その中で話し合いという、和解という場での交渉を図るということについては、果たしてそれが国民全体の利益に合致するかどうかということも考えながらやっておることでございますので、その考え方平成二年十月にまとめられました水俣病訴訟に関する国の見解に述べられておることで、現時点においてはなかなか和解に応ずることが困難である、これはあくまでも国民に責任を持つという行政の立場から申し上げたわけでございます。
  42. 谷津義男

    谷津委員 国民への責任において和解が困難であるということでございますけれども、一方、この当事者でありますチッソでございますが、最近非常に経済状況が、こういうふうな国内の状況もそうでありますし、会社そのものも非常に厳しい状況にあるやに聞いておるわけであります。そういったことから補償問題等に支障を来すのではないかという話も私どもは聞くわけでありますけれども、この辺のところについては、長官はどのように認識しておられますか。そこのところをお聞かせをいただきたいと思います。
  43. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 一方の当事者がチッソであるわけでございます。PPPの原則もございますけれども、現在私が承知しておることは、確かに不況の影響もありましてチッソが厳しい経営状態にあるということも承っておりますが、しかし、そうではありましても、そのPPPの原則によりまして、チッソそのものが、認定患者の方々への補償金の支払いなどに対してどんなふうにするかということで大変な経営努力を払っておられるということも聞いておりますので、この点が非常に重要であるということを現時点では申し上げまして、チッソのそのような打開策に努力している努力の姿を今冷静に見守っておるというのが私の立場でございます。
  44. 谷津義男

    谷津委員 確かに私どもが聞いている話もそういう状況にあるわけでありますが、もしも経営状況が、不測の事態が起きたというようなことがあって補償金が支払えないような状況が出てきた場合に、国は金融支援策を考えているのかどうか、長官考え方をお聞かせ願いたいと思うのですが。
  45. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ただいま長官からお答え申し上げましたように、現在の一般的な不況の中でチッソの経営状態も、石油化学業界でございますから、基本的に今経営状況が困難であるということは事実でございます。  しかし、チッソが補償責任を全うしたいということでいろいろ経営努力をやっているわけでございますので、そういった経営努力が十分行われるということを私どもは慎重に、しかも注意深く見守っていく必要がある。せいぜいその状況を私どもは見守りながら、チッソから話があったり何かしました場合に、チッソの補償責任を全うするために何か必要があるかどうかということで、今見守っているところでございます。
  46. 谷津義男

    谷津委員 八木橋局長にお聞きしますが、それでは、もしそういう相談があった場合は、それに対応する姿勢は国は持っているのですね。
  47. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもは、絶えずそういうことに対しては真摯な態度で今構えているということだけは申し上げておきます。
  48. 谷津義男

    谷津委員 わかりました。それ以上私は聞きません。長い時間もたっていることでありますし、また非常に不安の中にもあるわけでありますから、その辺のところは間違いのない方向でひとつ対処していただきたいということをお願いしておきます。  次に、やはりこれは新聞報道によってのことなのでありますけれども環境庁は有害化学物質による土壌汚染を防ぐために、水銀などの十項目の環境基準がありますが、それを改正して、洗浄剤等に使われている化学物質等を大幅に追加し、項目を倍加するやに報道されておるのですが、この辺のところはどういうふうになっておるのでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  49. 赤木壯

    ○赤木政府委員 土壌の汚染に係る環境基準でございますが、これは水質の環境基準と密接に関係しておりますし、また、平成年度の土壌環境基準を設定する際の中央公害対策審議会答申の中でも、今後、知見の整ったものについては、早期にできるだけ環境基準を追加する方向で検討するようにというようなことも付言していただいたわけでございます。  現在、水質環境基準の見直しをやってございまして、これで新たに十五項目の水質環境基準の項目追加を行うというふうな作業をやっておるわけでございますが、こういうものの水質環境基準が設定されますと、今度土壌環境基準の項目見直しもこれに合わせた形で検討していかなければいけないというふうに考えてございまして、今後、中央公害対策審議会にその具体的内容について御審議いただくということで、現在準備作業をいたしておるところでございます。
  50. 谷津義男

    谷津委員 準備作業ということですけれども、もう新聞には今年度いっぱいには指定するようなことが書いてあるわけでありますけれども、その辺のところは間違いないのですか。
  51. 赤木壯

    ○赤木政府委員 水質環境基準は間もなく、三月の初めぐらいには告示する予定にしてございますので、それとの関連で、できるだけ早く中央公害対策審議会に諮問して、いろいろ御検討いただいて、平成年度内にはそういう答申をいただきながら環境基準を決定していくということで考えでございます。また、項目につきましても、一つは水質汚濁に係る環境基準の項目追加、もう十五項目を追加するというふうに決まってございますので、そういうものを中心にしながら広げていくというようなことを考えでございます。
  52. 谷津義男

    谷津委員 時間がなくなってきたので端的にお答えいただきたいのですが、水質の場合は対象が河川とか公共水域とかで測定が容易にできますよね。ところが土壌の場合、環境基準の項目をふやしても、国や自治体がどのように調査や測定をするのか、あるいは汚染者が特定できない場合もあるわけでありまして、こういう場合に、事後処理を行うなど大変難しい問題を今までも起こしているわけですね。そして費用もかかる。だれが責任者であるということも特定できない場合が多々あるわけでありますけれども、この辺は、項目をふやしてもまたその問題が起こりやしないかというふうなことを私は心配するのです。  ですから、その辺のところをどういうふうにやられるのか。これはきちっとしなければならないのですが、その辺についてお聞かせをいただきたい。
  53. 赤木壯

    ○赤木政府委員 環境基準の達成に向けていろいろ努力しなければいけないわけでございますが、環境庁といたしましては、環境基準の適合状況の調査が適切に行われるように、地方公共団体等を通じて指導していきたいというふうに考えてございます。昨年七月にも環境庁は国有地に係る土壌汚染対策指針というものを定めて、調査あるいは対策に係る技術的手法を示して、これに則していろいろ民有地についても参考として活用していただくように指導しておるわけでございます。ただ、おっしゃったとおり、土壌汚染の実態はどうなっているかということを把握していくことがもちろん必要でございますが、土壌汚染がわかった場合に一層効果的な対策をやっていかなければいけないということで、こういう状況を見ながらその進展を図っていかなければいけないと思っております。  土壌汚染の場合は土地所有者等の問題もございますし、原因が過去にさかのぼる、現在その原因者もいない場合もいろいろあったりするわけで、非常に多くの難しい問題を抱えてございまして、現行の制度のみでは環境基準の達成というものはなかなか難しいということも考えられるわけです。こういう場合にどういうふうに対応したらいいかということで、いろいろな対策も必要ですし、また、そういう場合の責任者をだれとして考えて事業をやるかというようなこともいろいろ考えていかなければいけないということで、今、関連の諸施策やあるいは諸外国の例も調べたり、あるいは学識経験者に集まっていただいてそういう面についての議論もいろいろいたしておるわけでございまして、こういう議論を踏まえながらさらに検討を深めていきたいというふうに考えてございます。
  54. 谷津義男

    谷津委員 時間がありませんので、最後に一つだけちょっとお聞きしたいのです。  実は、自動車の排ガスに含まれるNOxの規制の問題でありますけれども、この辺について、国が二〇〇〇年に環境基準を達成できるというようなことに対して、東京都は、この法律の枠内では達成できないというふうな結論に対して、自動車等の進入の総量規制をやるのだというような方向に動くようであります。この件についてはいろいろな議論もあろうかと思いますが、こういう面で国といわゆる自治体との意見も食い違いがあるわけです。  そこで、自治体が積極的にそういうような行動に出てきた場合に、環境庁はこれを支援する体制があるのかどうか。これは長官にお聞きしたいのでありますが、長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  55. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 せっかくの谷津先生の御質問に直接お答えできないで恐縮でありますが、その内容につきましては大気保全局長に報告させますけれども、一言、先ほどの谷津先生基本法提出時期の問題の御質問に対しまして、審議会という名前が私の口から出ておりますけれども、実は、審議会の手順をまだ決めたわけではございません。そういうことがあるいはあるかもしれぬなという思いがそういう言葉になったのでありまして、今のところ審議会のことは関係なく、あくまでも政府部内で鋭意期日に間に合うように最善の努力を重ねておる、そういうことで御理解賜りたいと思います。
  56. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘の東京都の件でございますが、まだ正式な報告書を私ども受け取っておりません。そういう段階でございますけれども、新聞によりますと、自動車の一台一台の規制、いわゆる単体規制、それから低公害車の普及促進、それからもう一つ、この法律に基づきます車種規制、この三つの施策だけを対象といたしますと、まだ三千九百トンが削減効果が足りないというような試算をしているようでございます。  しかし、いわゆるこのNOx法の基本方針におきましては、これらの三つの施策に加えまして、物流対策でございますとか交通流対策でございますとかあるいはまた人流対策といったような、いろいろな施策を総合的に講じていくということにしているわけでございます。環境庁としては、こういった施策の全体の効果によりまして環境基準は達成できると思っているわけでございます。  しかし各自治体が、それぞれ独自のと申しますか、その地域の実情に合致するような施策を講じていただくということにつきましては大変結構なことだと思っているわけでございまして、具体的な計画案等につきましてはさらにそれぞれの自治体とこれからまた相談をしながらやっていきたいと思っておりますが、有効な施策につきましては私どもといたしましてもできるだけ支援をしてまいりたい、このように思っているわけでございます。
  57. 谷津義男

    谷津委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  58. 原田昇左右

    原田委員長 馬場昇君。
  59. 馬場昇

    ○馬場委員 まず、環境基本法について質問を申し上げたいと思います。  大臣は、所信表明で次のように言っておられます。「地球環境問題は、まさしく生命の生存基盤にかかわる緊急かつ重大な課題となっております。」「二十一世紀を見据えた、新たな地球環境時代にふさわしい環境基本法制整備を図ります。」こうおっしゃっておられまして、私もまさに賛成でございます。我が国の新しい時代環境政策の潮流をつくるというこの環境基本法というのは、いわば環境憲法と位置づけなければならないのではないか、こういうぐあいに私も考えて、その立場でこの法律を策定すべきだと考えておりますが、まず、現在この環境基本法案の策定の作業状況は事務的にどうなっているのか、いってき上がって国会にいつごろ出せるのかということを明確に答えてください。
  60. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 政府における基本法制の策定状況についての御質問でございます。  これにつきましては、ただいま政府部内において法文の作成作業をやっている最中でございます。今国会で御審議、御成立をさせていただくべく現在鋭意作業中でございます。できるだけ早く成案を得まして提出したいと、今鋭意作業している最中でございます。いましばらく。
  61. 馬場昇

    ○馬場委員 大体いつごろまでにつくり上げて、いつの閣議にかけて、そして提案するんだという目標を持ってやらなければだめでしょう。鋭意、鋭意と言ったって、どこまで鋭意かわからぬでしょう。ちゃんといつごろまでに成案を得て、いつごろの閣議にかけて、いつごろに提案するという目標の設定はないのですか。
  62. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 もちろん、作業を進めていく上には目標を私どもは持っているわけでございます。それについて申すならば、非予算関連法案でございますから、提出期限に間に合うようにということで私どもは最大限の努力をしている最中でございます。
  63. 馬場昇

    ○馬場委員 国民に答えるときに、提出期限なんて国民はわからないんだ。何月何日と言わなければだめじゃないですか。それは後でいいから。  そこで、大臣質問したいのですが、私は、環境保全基本理念ということについて、たくさんありますけれども、その中で二点についてまず質問いたしたいと思います。  まず第一点は、環境保全型の農業、林業、こういう問題について質問をしたいわけですけれども大臣も御承知のとおりに農村地域というのは我が国の総面積の九七%を占めておるわけでございますし、人口の約四割が農村地域に居住しております。その農村地域の中で中山間地域が国土の七割を占めておりますし、人口は過疎がありますから一五%が居住しておるわけでございます。そして、この農業、林業とか農山村地域というのは、環境と最も調和した地域であるし産業であるわけでございまして、そこを非常に重視しなければならぬと思います。  例えば農業、林業の機能、農山村地域の機能というのを幾つか挙げますと、まずはっきりしておることは、農産物、林産物の生産の場でありますし、国民がさっき言った数が住んで生活をし、就業をしておる場所でございます。さらに、土地の浸食だとか洪水防止だとか、国土保全の場でもあるわけですし、水資源の涵養の場でもあるし、酸素をつくる場でもあるわけです。そしてまた自然環境全体を形成する場所でもございますし、さらに言うならば、自然の生態系あるいは生物の多様性、そういうものの保存の場所でもあるし、米文化とも言われております日本の民族、文化の生きる場所でもあるわけです。  そこで、こういう大切な場所、機能を持っている農業、林業というものは、環境基本法環境保護の基本理念の中にやはり位置づける必要があるのじゃないかと僕は思います。そして、公益機能がこんなにたくさんあるわけですから、この公益機能を尊重してという立場で国や地方公共団体国民の農業、林業、農山村地域に対する責務を明らかにして、環境に配慮した自然密着型産業として、あるいは環境保全型農業、林業として、持続的に農業、林業の確立を推進する必要がある、これを環境基本法の中に位置づける必要があるのじゃないかと僕は思うのですが、大臣の所見をまず聞かしていただきたい。
  64. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 馬場先生の御質問お答え申し上げます。  先ほど先生が申されました農業、林業の国土や社会に及ぼす非常に大事な点につきましては、全く同感でございます。  先ほど先生は私の所信表明の中の一節にお触れになりましたけれども、今日ほど人間の生命というものが大事にされなければならないという時代は、まさに今までの歴史の中でも私は突出しているのではないかと思うくらいでありますが、その生命と直結している職業は、やはり私は農業、林業でもあるという信念を持っておりまして、一粒の米あるいは一株の大根あるいは一羽の鶏、一本の松の木、これみんな生命です。  ですから、生命を大事にするということがやはり政治の基本でもなければならないというときに、たまたま環境庁がその任を背負いながら環境基本法の制定に今鋭意努力しているということでありまして、したがいまして、基本法制の中に農業、林業を踏まえた問題点が取り入れられていいではないかという先生の御指摘でございます。観念的には私はまさにそのとおりであろうと思います。観念的と言っては大変恐縮でありますが、精神的にはそうであろうと思います。  ただ、農林水産業の営まれる地域におきましては、適切な農林水産業活動を通じての農地あるいは森林、干潟あるいはまた川藻や海の藻、そういうものが環境保全能力を持っておるという研究の結果も出てきておりますので、そういう中でそういう能力を適正に評価しながら健全な育成を図っていくということなども大事なことでありますので、自然環境保全に資するための諸施策というものは当然講じられなければならないと思うのです。ただ、農業という一つの形あるいは林業という形そのものを法文の中に取り入れるかどうかということにつきましては、今私の口から申し上げることもできませんけれども、気持ちの上においては当然、生命尊重という面から見ますと、一番それに近くいるのが農業、林業でもありますので、大いにこれは注目しなければならぬ点であろうと思っております。  ただ、一つ、同じ農業でも、過剰な肥料の投下とかあるいは農薬の散布とか、あるいはまた森林伐採などもありまして、そういうことによりましてはむしろ水質を汚すとか土壌を汚染するとか、いろいろなことも副産物で出てきますものですから、そういう点も十分慎重に注意しなければならない時代ではないかと思っております。
  65. 馬場昇

    ○馬場委員 農業といえば農林水産省だ、林業といえば農林水産省林野庁だ、そういう縄張り的な考え方でこの法律をつくったって私は立派なものはできないと思うのです。そういうすべての政府省庁だとかすべての産業、それを上の方から見て、地球環境とか環境保全とかから見て、そういう意味環境基本法というものをつくらなければだめだ、私はそういうぐあいに思いますし、繰り返しますけれども環境保全型農業とか林業とか自然環境に適合した農業、林業、そういうものを推進して確立していく、そういう基本理念というのをぜひひとつ踏まえて検討を続けていただきたいと思います。  次に、環境アセスメントについて申し上げますけれども環境庁環境基本法の原案を見てみますと、これは正しいかどうか、報道されておる原案ですが、第十九条に「環境影響評価の推進」として、「国は、」「あらかじめ、当該事業に係る環境への影響について自ら適正に評価等を行い、これに基づき当該事業に関し、環境保全について適正に配慮することを推進するために必要な措置を講ずるものとする。」「環境影響評価の推進」といって、その文章を見てみると、なかなかはっきりしないような文章を書いてあるのです。  端的に質問をいたしますけれども、この「環境影響評価の推進」という十九条というのは、現在行われておる閣議決定要綱に基づく環境アセスメント、その他地方公共団体の条例とか要綱とか、こういうものを基本法の中に位置づけるという意味ですか、それとも環境アセスメントを法制化するという意味ですか、このどちらなんですか。
  66. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 法文の問題については現在検討中でございますので、それにつきまして直接お答えを申し上げる段階にはまだ至っておらないわけでございますが、中央公害対策審議会答申におきましては、現行措置の実態や事業者の自主的取り組みを踏まえて環境影響評価の重要性、考え方を盛り込むことが重要であるということが環境基本法制における位置づけの問題として提言されているわけでございます。一方、環境影響評価の法制化の問題につきましては、中でいろいろ議論がございまして、答申の文章では「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行の措置を見直していくことが適当との意見が大勢であった。」ということになっているわけでございます。  私どもといたしましては、こういった答申の趣旨を踏まえて法文の策定作業に当たらなければならない、こういうことでございます。
  67. 馬場昇

    ○馬場委員 わかったような気もするし、はっきりしないところもあるのですが、今局長が言った中公審とそれから自然環境保全審議会答申、「必要に応じて現行の措置を見直していくことが適当との意見が大勢であった。」これは法制化をせよということだと私は思うのです。  そこで、今世界各国を見てみますと、欧米の国はほとんど環境アセスに関する法律を持っているのですよね。また、東京で七月、大臣、サミットが開かれますけれども、そこに来る首脳の国はほとんど皆アセスメントの法制、法律を持っているわけでございまして、日本だけが持たぬというのは非常に後進的であるし、逆に言うと環境に積極的でない、こういうぐあいに受けとめられる可能性もあると思うのです。  そこで、これは法律がかかったときに議論いたしますけれども、その前に必要なのは、私たち日本社会党は環境アセスメントの法律を議員立法として今度の国会に出すように今準備をしておるわけでございますが、皆さん方の基本法基本理念の中にも、環境保全国民責務だ、こういうことを言っている以上、やはりこの環境基本法を練り上げる過程において野党とかあるいは国民の意見を十分聞く必要があるのじゃないか、私はこういうぐあいに思います。  というのは、私は厳しい反省を、一つ経験を持っておるわけです。昭和五十六年に環境アセスメント法が国会にかかったわけですよね。これは、中公審が答申して六年間、おたくや自民党の中とか経済界等の話の中ですったもんだやりまして、五十六年に環境アセスメントの法律国会に出された。私は環境委員会理事でしたから、担当をしましたからよく知っているのです。ところが、そのアセスメントの中に発電所が除外してあるのです、事業対象として。だから私は質問等の中でも、これは環境アセスメント法じゃなしに環境破壊法じゃないかとか公害免罪法じゃないかとか、こういうことでここで質問して批判したことも思い起こすわけでございますが、いずれにしてもその法律は流れてしまったのです。それから十年たっているわけです、環境アセスメント法がないのが。  そこで、今回は、この基本法に絡まってアセスメント法についてもぜひ、野党も今つくっているわけですから、野党と話し合いをしたり意見を聞いたり、国民といろいろ話し合いをする、そういう機会を、これはぜひ持っていただきたいということを大臣質問いたしたいと思います。御意見をどうぞ。
  68. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  馬場先生がアセスメント法の問題で大変御努力、御苦心を、既に十年以上の歳月を費やしてなさっておるということは私も承っておりまして、その御努力には敬意を表します。ただ、今度の環境基本法は、いずれ今国会提出いたしまして、議会の御審議をお願いするということになりますので、その御審議の過程でひとつ十分に先生の御高見も賜りたいと思っております。
  69. 馬場昇

    ○馬場委員 国会提出したら、なかなかあなた方は原案変えないのだよ。修正案を出したら、いいと思って、いいとは思わないのかもしれませんが、否決してしまうのだよね。だから、今局長は、まだその最中だ、日付も言わぬのだから、いってき上がるというのを、一生懸命やっていると言うのだから、その過程に野党の意見を聞いたり国民の意見を聞いたりすればいいのじゃないか。そして、そこで一致すれば法案なんかすっと通っちゃうのだから、この前のアセスメントみたいに流産とか廃案にならないのだから、そういうぐあいだから意見を聞きなさいと私は今言っているのですが、これは要望として申し上げておきたいと思います。  次に、水俣病の問題について御質問を申し上げたいと思います。  まず、通産省にお聞きいたしますけれども、チッソのこの五年間の経営状況について資料の提出を求めました。私の手元に資料が参っておるわけでございますが、この五年間見てみますと、昭和六十二年の経常利益が六十五億、六十三年の経常利益が八十八億、平成元年が七十二億、平成二年が五十六億、平成三年が六十二億の経常利益を出しているのですね。ところが平成四年の上期を見ますと、急激に減って十一億です。それから、その損失は六十二年が五十七億、六十三年が二十二億、平成元年が三十八億、平成二年が五十四億、平成三年が四十五億、そういう損失を出しておるわけで、これは、しかし損失が経常利益を下回っております。ところが、平成四年は上期だけで純損失が四十五億あります。そして累積の赤字が、何と平成四年の上期においても千三百九億円の累積赤字があるのです。  このことで数字はそのとおりでいいですか、通産省。
  70. 古田肇

    ○古田説明員 先生御指摘の数字はそのとおりでございます。
  71. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、通産省と環境庁にも聞くのですが、平成年度の今もう期末に来つつあるわけですけれども、上期十一億の納経常利益があったのです。平成四年通期でどのくらいの経常利益が出ると予想しておられるのか。それから、平成四年の上期で純損失が四十五億三千万ですが、平成四年通期でどのくらいの損失が出ると予想されておるのか。経営状況の見通しについて通産省に聞きます。
  72. 古田肇

    ○古田説明員 先生御指摘のとおり、平成年度までは比較的順調に売り上げあるいは経常利益も伸びてきておるわけでございますが、最近の不況全体の影響の中で我が国の化学業界の経営状況も大変厳しいものになってきておりまして、平成四年の上期は今御指摘のようなことでございますが、下期につきましても、私どもの見ますところ、需要業界でありますところの自動車業界でありますとか、あるいは家電業界でありますとか、さらには包装材とかそういった面がなお景気後退の影響で厳しい状況にございます。したがって、まだ具体的に確たる数字は私ども持ち合わせておりませんが、恐らく下期は上期よりもさらに厳しい状況になっているのではないかというふうに推測いたしております。
  73. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、ちょっと頭の中に入れておいていただきたいのですが、今通産の答弁で、下期は上期よりもさらに厳しいということになりますと、上期の利益が十一億ですから、それよりも厳しいというとそれ以上の利益が出るという可能性は余りない。そうすると、通期で利益は二十億ぐらいじゃないかと私どもはいろいろな人から聞いておるわけです。それから、当期の損失が平成四年では上期で四十五億三千万の損失が出ているわけですが、厳しいとなりますと、さらにこれがふえるということになりますと、通期で約九十億ぐらいの損失が出るのじゃないかというぐあいに想像されるわけでございます。そうすると、利益が二十億で損失が九十億ですから、物すごい赤字になってくるわけで、その背景に純累積赤字が千三百九億あるわけです。これが大体今のチッソの経営状況だ、こういうぐあいにひとつ頭に入れておいていただきたいと思うのです。  次に、環境庁にお尋ねいたしますけれども環境庁から過去五年間の県債の借り入れ状況の一覧表を求めましたところ、患者を補償する県債というのが、平成元年はございませんでしたが、平成二年が三十一億四千七百万、平成三年が二十九億四千五百万、平成四年が三十一億五千七百万、これが患者の補償を支払うために熊本県が県債を起こしてそれをチッソが借り入れたものですが、過去五年間こうなっている。通算ずっとどれだけ県債を借りておるかといいますと、現在五百五十八億円借りておるわけです。それから、いわゆる公害防止事業、ヘドロ県債と私たち言っておりますが、ヘドロ県債は平成元年に二十三億九千四百万、平成二年に七億二千九百万、これはもう事業が終わりましたから平成三年からありませんが、この公害防止事業の県債、ヘドロ県債が二百九十七億二千三百万、県債を実は借りているわけです。だから、チッソは熊本県からこの両県債を合わせまして八百五十五億七千九百万の県債を借り入れておる、こういう状況になっておるという資料をいただいたのですが、このとおりでいいですか。
  74. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答え申し上げます。  私ども調査によれば、そのようになっております。
  75. 馬場昇

    ○馬場委員 それから、今言いました県債の償還計画を出してくれということでお願いいたしました。これは今後十年間、まだずっと続くのですけれども、十年間だけ出してくれと言ったら、十年間のいわゆる県債の償還計画の資料が出ました。平成五年から出ておりますけれども、五年が六十七億七千四百万、ずっと六年、七年、八年、九年、これは六十八億、六十八億、六十九億、六十九億、これだけチッソは毎年返していかなければならない、県債を。そして平成年度にはここから七十億にふえます。平成十年は七十億千三百万。それからずっと十一、十二、十三、十四、十五と全部七十億円以上超える金額を毎年県債を償還していかなければならぬ。こういうことにいただいた資料はなっておりますが、そのとおりですか。
  76. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生ただいま御指摘になりましたように、県債の発行額が、今までピークですと四十九億とか五十億近いものが患者補償費の県債として出されている、また公害防止事業のいわゆるヘドロ県債でございますが、それが六十一年度の四十九億八千三百万をピークといたしまして出されてきたということがございまして、これをこれから返済していかなきゃならぬということに相なるわけでございますので、その支出額がこれから七十億近いものを毎年返していかなきゃならぬ、ピークになりますとそれが七十億を超えた額で返済していかなきゃならぬという状況に相なることになっております。
  77. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、もう一つあるんですよ、チッソが支払わなければならぬものは。これは、既に水俣病と裁定され、認定された人たちに対して補償金を払っているのです。一時金はもう払いましたが、毎年毎年払っている。それは、患者が病院に行ったとき治療費を払っている。それから介護費を払っている。それから、これは三木長官と私も一生懸命頑張って、前の亡くなられた総理大臣三木さんとやって、これは終身特別調整手当ということで年金みたいなものをつくり上げております。こういうものを毎年既認定者にも払っているのですが、この払っている額が、また資料を求めましたところ、六十二年度に四十一億円、六十三年度に四十億円、平成年度に三十四億円、これはその下を省略いたしております、二年度に三十三億二千二百万、三年度に三十四億八千六百万、大体毎年、既に認定されておる患者にもこういう補償金を支払って、三十四億円ぐらい三年度は支払って、ことしも多分そのくらい支払うのじゃないか。だから、この補償協定に基づく補償金の支払い状況、これは環境庁からいただいたのですが、大体そのとおりでいいですか。
  78. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生ただいま御指摘になりましたように、補償協定に基づきましては、認定された患者さんたちに対しまして医療費等の給付を行っていると同時に、年々年金的な現金給付を行っているわけでございます。これが毎年毎年積み重なってくるということでございますので、そういった数字が毎年支払われている。これが一方で県債の発行額の基礎になってくるわけでございますが、先生御指摘になりましたそういう三十数億円の金額を毎年払っている、それが累積して債務への基礎になってくることは、これは事実でございます。
  79. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、例えば平成四年を言いますと、多分通期で利益は二十億円ぐらい、損失は九十億円ぐらい。それにその県債の償還は六十億円ぐらいの償還をせにゃならぬ。そして補償協定に基づく支払いも三十億円余りしなきゃならぬ。これがチッソの現在の経営状況になっているわけですね。そうなりますと、大体今のをざっと合計いたしますと、年に百億円ぐらいやはり払っていかなければならぬことになるわけですね。百億円以上になるかもしれません。  そこで、これは通産省にもお尋ねいたしますが、このような状況で、まず第一点、現在の既裁定者の水俣病患者に対して補償金を三十億円ぐらい毎年払うのですが、これは今の状況で支払う能力がありますか。
  80. 古田肇

    ○古田説明員 お答え申し上げます。  先ほど来御指摘のありましたように、大変厳しい状況の中で、チッソ株式会社におかれましては、そういった支払いに支障が生ずることのないようにいろいろな形で経営努力をしておられるというふうに承知しておりまして、私どもその御努力を現在見守っておるところでございます。
  81. 馬場昇

    ○馬場委員 県債の七十億の償還というのも滞ることがないのかということの質問、それに対して今通産省は、環境庁でそういう支払いが滞らないようにいろいろなことを支援を検討されておるというような話がありましたけれども、二つに分けて質問いたしますけれども、当面ことしの三月期にまず既に認定された人に対する三十億の支払いができるのか、県債償還の大体六十何億、七十億近くができるのか、この三月期。それはどう分析しておられますか。
  82. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど来通産省の方から御説明申し上げておりますように、現在のような不況期になりますと、チッソの資金繰り状況は極めて難しい状況になってくるということは事実でございます。このような状況のもとに、チッソといたしましては、患者の補償金支払いに支障が生ずることのないようにということで金融上のいろいろな手当てを努力している、従来も努力してきておるわけでございます。  先ほど先生が五年間の数字をお述べになったわけでございますが、これが特に景気の低迷状況になりますと厳しくなる、それに応じて資金繰りというものを考えていかなければならぬということでございまして、そのため、今チッソでは懸命の努力をしている最中であるということでございますので、私どもといたしましては、今事態の推移を慎重によく見守っている段階でございます。
  83. 馬場昇

    ○馬場委員 チッソが努力しているのは私も知っています。ところが、この状態で努力をして、本当に三月期滞りなく百億円ぐらいのお金を支払い切るのか。千三百億の累積赤字があるわけです。もう銀行なんかにも、大分棚上げしてもらったり、保利子を払わなかったり、支払いを猶予してもらっているのがまだこの中でいっぱいあるわけですよ。そういう中で、では例えば、既裁定者に対して三十億要るわけですよ。この金がないわけですから、今度は。そういうときに、その三十億、どこから借りてくるのか。返済は七十億返さなければいかぬ、これはどこから借りてくるのか。そういう努力をチッソはやっているのはわかるけれども、その努力が果たしてできるか、可能かどうかという分析をあなた方は、特に通産も監督官庁として考えておかなければいかぬと思う。やれ、やれ、やれと、あら、できなかった、チッソ倒産だ、パアだ、こうなってはいけないわけでしょう。だから、その三月期の見通しについて、通産はどういうぐあいに指導していますか。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
  84. 古田肇

    ○古田説明員 御説明申し上げます。  御指摘のように、この三月期のもろもろの支払いに向けまして、現在の当面の厳しい経営状況の中で、特に融資、資金繰りのところで懸命の努力をしておられるというふうに承知しておりまして、私ども、しばしばチッソ株式会社からその動向をお聞きしておるところでございますが、引き続き、この二月、三月、刻々とそういった資金繰りの動向について克明にお話を伺いながら、その努力を見守っていきたいということでございます。
  85. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、もうこれはチッソがパンクしますとここで答弁したら大変なことになるから、そういうことは言えないから、一生懸命努力しておる、努力しておると。努力しているのは私もわかるわけですが、その見通しなんかを持たずに努力したってこれはだめだな。そのときは何かほかに対応してやらなければいかぬな。そういうことは、今度あなたたちが懸命な努力をしておかなければいかぬわけです。支払いが滞らないように監督官庁としても、通産省としても環境庁としても懸命の努力をしておるのか、するか、どちらですか。
  86. 古田肇

    ○古田説明員 お答え申し上げます。  そういった懸命の努力を伺いながら、私ども環境庁初め関係省庁ともよく御相談をして、事態の推移を的確に把握した上でいろいろな対応を必要に応じて検討していきたいというふうに考えております。
  87. 馬場昇

    ○馬場委員 環境庁
  88. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど私は、事態の推移を慎重に見守っているということは、そういう意味において申し上げたわけでございまして、チッソが補償責任を完遂していただくということは、当然私どもとしては考えていかなければならぬ。しかし、そのために、まずもって当事者であるチッソがいかなることをやっておるかということを十分見守っていき、さらに事態の推移に応じてどういうことが必要かということを見ていく必要がある。そういう意味において慎重に見守っているわけでございます。
  89. 馬場昇

    ○馬場委員 私には慎重とは余り思えないのですけれども、慎重に一生懸命やっておられるなら頑張ってもらいたいと思うのですが、大臣、またこれはあなたに後で質問するのだから、ここは聞いておいてもらいたいのです。  現在は今までの経過を言ったのです。現状を言ったのです。この後の見通しがあるわけです。見通しというのは、出てくる可能性のあるものが、まず現在裁判で和解の話が行われているでしょう。それから、裁判所で判決が一番早いのは、次に出るのは熊本地方裁判所の判決が三月二十五日に出ます。和解が行われておる。それは、福岡高裁がこういうランクづけをして、こういうぐあいに払ったらどうかという内容まで示しておって、大体どのくらいの患者にランクづけをして、どのくらいの金が要るだろうかということを熊本県も患者団体も計算をしております。そういう和解による金が将来出る可能性がある。それから、裁判の判決によりまして賠償金を払う可能性もある。それからもう一つ、自主交渉というのを、裁判に訴えていないけれども、我々は水俣患者だから、チッソ、おまえのところで補償金を払えという、チッソに対する自主交渉を現地でやっておるグループもある。その他、そういうものが補償金が支払われると、私も同じだ、私も黙っておったけれども同じだという人もたくさん出てくる可能性がある。  そういうことを見まして、今熊本県でも、私も地元ですからよく知っているのですけれども、そうして福岡高裁の和解案を見てみますと、例えば平均四百万にするとします。そうすると、人数としては多く、大体五千人くらい出るのじゃないか。そうすると、二百億円ぐらいの一時金の補償金の支払いというのが次に出てくる可能性があるわけです。  これについては熊本県知事なんかが、皆さん方のところに要請に来るときに、今私が言った数字というのを皆さん方に言っているのではないか。それは熊本県なんかが報道機関等に発表しておる数字なのです、見通しなのです。これについて、こういうことを熊本県知事から聞いておられますか。
  90. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私ども、熊本県知事から抽象的なお話は伺っておりますが、具体的な数字等については伺っておりません。
  91. 馬場昇

    ○馬場委員 きちっとまとまっていないのですけれども、概算いたしますと、この後の一時金というのが二百億程度要るのではないか、チッソが支払わなければならぬ金がこれくらい要るのではないか、こういうぐあいに言われておるわけでございます。  そこで、長官質問するのですが、実はこういう状態は今だけではなかったのです。昭和五十三年にこういう状況があったのです。チッソが補償金を支払うことができないというような事態に立ち至ったわけです。そのときに閣議で一水俣病対策について」という閣議了解事項というものを決められました。これは、関係省庁事務方がいろいろなことを練り上げて、そして関係閣僚会議で話をして、それでまとまって、そのことが閣議了解事項として昭和五十三年六月二十日に決定いたしました。  これは、支払い能力がもうないのだから、熊本県が県債を発行するという金融支援措置を講じよう、こういうことが五十三年に決まって、これが四年間やりまして、そして四年ごとに関係閣僚の懇談会、会議を開いて更新してきて、現在まだ閣議了解事項の県債による金融支援が行われておるというのは、長官十分御承知のとおりでございます。  その閣議で了解しますときに決定している事項があるのですよ。何でこういうことをするのかという基盤というか理由が言われておりましたが、私もこれをやれやれと言った方だからよく覚えております。これは、まず原因者負担の原則を貫く、PPPの原則を貫くというのが閣議了解事項の基本でございました。そして、そのためにはチッソが支払いの責任があるんだ、だから支払いできなければチッソを金融支援をする、そしてチッソから支払わせる、こういう措置をやった。そして、金融支援措置をすることによってまずチッソの経営基盤強化させよう。そういうチッソの経営基盤強化を通じて患者に対する補償金支払いに支障を来さないようにする。あわせてそのときに、地域の経済、水俣地域、熊本県の地域経済社会の安定に資する。そこで、私の生まれたところの芦北ですが、水俣・芦北地域振興計画というものも閣議了解事項になっているのです。だから、チッソの経営を安定させて支払い能力に支障を来さないようにして、あわせて地域の経済社会の安定に資する、そういうためにこの県債が実は閣議了解になったわけでございます。  そのときのチッソの累積赤字というのは、五十三年に決まって、五十二年度のチッソの累積赤字というのは三百六十四億だった。それで、政府はそのことを、チッソ経営は危機的状況にあるというぐあいに判断したのです。補償金支払いに支障を起こす可能性がある、こういうぐあいに政府は判断して、実はこういうことをやったわけでございます。  だから、私は大臣に聞きたいのですが、今の状況というのはその当時よりもまだ悪い。チッソの三月期決算を見ると、さっき覚えておいてくださいと言ったのはそれですけれども、五十三年閣議了解事項の金融支援を決定した、それ以上の経営危機に今瀕しておるという状況だと私は思うので、やはりここで金融支援というものを、この五十三年の閣議了解事項の原則に立って、さらに必要な支援が要るわけですから、その延長線、それを発展させる格好で金融支援をする必要があろう、それを大臣はもう判断しなければならぬ、そういう時期に来ておると私は思うのですが、どうですか。
  92. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 大臣お答えする前に一言申し上げたいと思います。  馬場先生がおっしゃいましたように、五十三年の閣議、まずその前に水俣病に関する関係閣僚会議で申し合わせをいたしまして、その後閣議了解という線まで持ち上げて決定を見ていただいた問題は、おっしゃるように、チッソに原因者としての同社の負担においてさせるということから、それとあわせて地域社会の振興を図るために地方債の引き受けを行うということになったところでございます。  それでは、現在どういうことかということは、先ほど先生いろいろ数字を挙げて御議論なさったわけでございますが、おっしゃるように、景気の悪いときにはこういう問題が起こってくるわけでございます。現在、チッソにおきまして種々経営努力をいただいている、また企業間信用、金融機関支援というものもいろいろ御努力いただいているということでございますので、まずそれが重要だ、そこを今当面見守っているという状況にございます。
  93. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答えになるかどうかわかりませんけれども、申し上げます。  先生のおっしゃる中で、チッソの金融支援をどう考えているかということでございますけれども、それにつきましては、経営としまして、県債に対応するために、昭和五十二年から関係閣僚会議あるいは閣議了解事項というものに基づいて金融支援体制をまずスタートさせた、その時点でたしかチッソは三百数十億の赤字を持っておった。しかし、今はそれよりもはるかに大きい。累積を加えれば千億を突破しているわけでございますけれども、そのようなときにあるので、当然この時期に来てはもう金融支援について長官としても腹を決めなきゃいけないじゃないかという、そういう御質問の趣旨だと思っておりますが、それにつきましては、もちろんこれは先生も十分御承知のように、原因者負担の原則はずっとチッソも努力しながら守ってきている点もあるわけであります。  それで今回も、ですから、三月ということを今先生のお口から出ておりますけれども、私の方としましては、当然チッソそのものがこれを乗り切るために最大の努力をしておるということも聞いておりまして、その努力は私も十分認めておるわけでありますけれども、ただ、その努力だけではとても足りないから金融支援考えるべき時期だということでございますが、それにつきましては、いずれ、いかなる判断をしてどうしなきゃならないかということになりますと、当然関係閣僚会議の開催の問題とかいろいろ出てくると思います。私の今の立場では、というより現時点においては、関係閣僚会議を開催するというところまでまだ腹は固めてはおりません。もうしばらくチッソの自助努力というものを十分に見た上で決断したいと思っておりますので、今関係閣僚会議をいつ開けるかということも御答弁できる私の気持ちではございませんので、答弁としては先生には大変不満足な答弁であろうかと思いますけれども、気持ちの上においては、十分チッソの努力を考えているし、それから患者の苦しみというもの、痛みというものも、これはもう忘れてはならないことでありますので、それも十分環境庁としては考えておるということを御理解賜りたいと思います。
  94. 馬場昇

    ○馬場委員 いろいろの大臣の気持ちはよくわかるんですが、歯切れは余りよくないんです。  そこで、じゃ別な角度、言葉で質問をいたしますけれども、今言われたとおりなんですよ。この金融支援という閣議了解事項というのは、先ほども言いました、繰り返しますけれども、原因者負担、PPPの原則を貫くためにこういうことをするわけですから、そういう意味一つ聞いておきたいのは、五十三年の閣議了解事項が四年ごとに更新されて現在続いておるんですから、この五十三年の閣議了解事項の背景とかそのとき申し合わせをしたとか、この閣議了解事項は生きておるという認識に立ってすべてやるということですか。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  95. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答え申し上げます。  閣議了解の申し合わせ事項の精神は生きて、それを三年ごとに見直ししながら今日に至っている。したがって、その精神は現在も生きておるわけであります。
  96. 馬場昇

    ○馬場委員 その見直しがことしの十一月なんですよ、三年ごとのやつが。ところが、三月期が今ここに来ておるわけです。それを私は強調しておるわけでありますけれども、生きておるということは当然と思いますが、生きておる中に、繰り返しますが、PPPの原則を貫くためにということは原因者のチッソに支払わせるということですから、原因者のチッソはつぶしてはならないという基本理念があるわけです。だから、今もいかなる事態になろうとも、原因者であるチッソは、PPPの原則を貫いて支払いをさせるためにつぶすことはできない、つぶしてはならない、この精神もきちんと押さえておられるかどうか。
  97. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  この事態でチッソをつぶすということは、国としては全く考えておりません。チッソが自助努力を鋭意続けておる、その姿に対しては十分にこれを見守っておるつもりでございます。  それから、関係閣僚会議、実は先ほど企調局長答弁のとおりでありますけれども、それがまた秋にはその時期が来る、三年ごとの。これは県債に対してのことでありますから、来るということもわかっておりますので、恐らく馬場先生としては秋を待たずになぜやれないのかというお気持ちがあろうかと思いますけれども、それにつきましては、先ほど答弁いたしましたように、事態の状況をもう少し慎重に、そしてまた厳しく判断したいと思っております。
  98. 馬場昇

    ○馬場委員 局長関係閣僚会議を開きなさい、そのとおり私は言っているのです。ところが、関係閣僚会議の下に関係省庁の協議会というのがある。その下に幹事会というのもある。これは、各省庁の次官が集まってやるとか局長が集まってやるとかという、関係閣僚会議の下に協議会とか幹事会というのがある。少なくともそれは開いて、そこで結論を出したのを閣僚会議に持ち上げるわけだから、その下の段階というのは鋭意検討を続けなければならぬと私は思うのだが、それはもう現在やっておるのか、また、やらなきゃいかぬと思うが、どうです。
  99. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 お答え申し上げます。  おっしゃるような組織の仕組みになっておりまして、実はこの十二月、今から申しますと前年になりますが、十二月の時点で私は、その協議会において、チッソの状況を慎重に注意深く見守る必要がある、そして必要があるならばまた随時御協議をしたいという発言をしておるところでございます。
  100. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、次官クラスとか局長クラスでいろいろやっておるわけだから、それをなるべく早く三月期で、これで倒産でもしたら全然話にならないわけでありますから、そういうことでぜひ努力をしていただきたい。  そこで、伝えられるところによりますと、金融支援の方法について熊本県知事は、新県債方式というので、今までの県債に続けておるわけです。これは続いていくと思いますけれども、こんなひどくなった、二百億も考えられるというときに、もう一つの新県債方式の金融支援をやってください、こういうことを要請しているというぐあいに聞くわけです。  それも一つの方法だろうと思いますが、私は一つの私案、たくさんありますけれども一つの私案として、実は私はこういうことも予測をしながら、昭和六十三年に水俣病発生地域の住民の健康管理法案、馬場私案というのをつくりまして、こういう心配は地元にあるわけですから、ずっとその支払いに影響のないような、安心した体制を法律でつくり上げよう、こういうことでその法律をつくってひとつ法律制定の請願署名運動をやろうということで、水俣・芦北地域、熊本県全体でそれを昭和六十三年に提案をいたしました。そして平成二年に、ここへ持ってきておりますが、法律をつくりまして、馬場私案から社会党案にその法律をつくり上げまして国会提出するということに決議が終わったんですが、患者さんたちが、何か補償の和解交渉にちょっとかかわってくるからしばらく提出をやめてくれ、見合わせてくれということで、今見合わせておるわけでございます。  実はその私のつくりました法律、この前半を今、第一章は「目的」ですけれども、第二章に「健康管理サービス」、第三章に「医療費の支給等」、第四章に「保健福祉事業」、こういうものを書いておるわけです。こういうことを健康管理すべきだ、これは全部そのままと言っていいほどこの前の環境庁の総合対策に取り上げられておる。全くほとんど変わらぬから、おれの著作権を侵害したんじゃないか、まえいいことだからいいけれどもといって、大分環境庁に冗談も言ったんですけれども、前半は、これは実際、総合対策として行われておる。これが行われたところが、患者さんたちは、これは評価できるといって、環境庁は余り褒められたことは、いや、あるかもしれませんけれども、これは褒めた。  その後半に、私は第五章に「費用」というところをこの法律に書いている。それは水俣病発生地域住民健康管理基金、水俣病基金というものをつくろうじゃないか。そして、具体的に言うと、この基金は、政府が二百億円出資する、それから熊本県と関係自治体、それからチッソ、これが資金を拠出する、その他からも資金を寄附でも仰ぐ。それで五百億円ぐらいの水俣病基金をつくって、その基金公害健康被害補償予防協会に出資して、そこで、この基金の運用で、さっき言ったような総合対策でも、例えば五百億ありますと、チッソが支払い能力がなくなった場合には、これで無利子のものを融資してやるとか、いろいろなことも考えられるわけですから。そして、今後どんどんまたいろいろなことが起こってくるわけです。先ほど言ったように、年間ずっと年金みたいなものもあるわけですから、これも払わなければいかぬというようなときに、チッソが支払い能力がなくなった場合にはこういうところを利用するとか、こういうものをつくるべきだといってこの法律に載せておるわけです。  だから、私は、新県債方式というのもできればいいでしょう。ところが、直接金を政府は出せないわけだから、そういうときにはこういう基金というのをつくって、第三者に拠出して、そこで救済していくとか、こういうことをやるべきだということを提案しておるわけですから、ぜひ、とにかく何とかして金融支援の、どういうことができるのかということを、いろいろあると思いますが、私が今言いましたようなことを含めながら、もう今検討しておかぬと、バンザイしたら遅い。そういうことについて、いろいろなことはあるでしょうけれども、やはり検討はしなければならぬと思うのですが、大臣、どうですか。
  101. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 私は今初めて先生のうんちくのある、法律にしようとした、その内容を伺いまして、大変感銘いたしております。そのこと自体が現在どのような動きになっているか存じませんけれども、いずれにしましても、この問題はもう大変長い時間をかけた問題でもありますし、この際、やはり英知を集めて解決への道をつくっていかなければならない、開いていかなければならない、そういう気持ちでおります。
  102. 馬場昇

    ○馬場委員 最後になりますけれども、また最後に大臣所信表明の一節を言わせていただきたい、読ませていただきたいのですが、大臣はこう言っておられますね。「私は、生きとし生けるものを慈しみ、とうとぶことが環境行政基本であると考えております。」と最後に結んでおられるわけですね。私も全くそれに同感でございますけれども、水俣病が発生してから、これは公式発見されたのが三十一年です。その前十年以上、魚に異常、海に異常、鳥に異常、生態系に異常を来していることから考えますと、半世紀以上たっているのです。それでもう患者は七十歳を超しておるのです。こういうときに、早期全面解決というのは必要ですが、ややもすると幕引きというような解決の仕方だって、間違うこともあるわけですから、早期に全面に完全に解決するということに最大の努力をしていただきたいと思います。また、水俣病を解決せずにおいて環境基本法をやったって、地球環境を言ったって、本当に国民はぴんとこない。そういう意味で、これが一日も早く早期全面解決するように大臣頑張っていただきたい。決意のほどをお聞きして終わりたいと思います。
  103. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 環境行政そのものはやはり人間の生命を尊重することが基底でございますので、その意味におきましては、一つ一つ環境政策そのものがそれに直結できるように努力していきたいと思います。
  104. 馬場昇

    ○馬場委員 終わります。
  105. 原田昇左右

    原田委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩     —————————————     午後一時開議
  106. 原田昇左右

    原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川国彦君。
  107. 小川国彦

    小川(国)委員 私は最初に、環境庁長官所信表明を中心としまして、ことしの環境庁の方針の主要な柱というものは理解できたわけであります。しかしこの中で、端的に申し上げるならばごみ問題に対する対策、取り組みというものが環境庁行政の最大の課題ではないか、こういうふうに思いまして、この点について環境庁長官に、また環境庁の皆さんに順次御質問させていただきたいと思います。  最初に、環境庁長官も私と同じ千葉県二区でございまして、先般長官に御就任され、私もまた同じ選挙区でこの国会から環境委員ということになりまして、党派は違いますが、環境行政というものの重要性を認識しながら、日本環境行政の大きな飛躍なり発展のためにともに努力してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いしたいと思います。  それで、長官の所信の中では、ごみ問題につきまして「環境保全のための経済的手法の導入の検討及びリサイクルを推進してまいります。」二行書かれてあるわけでありますが、私ども、ごみ問題というのは、かたい言葉で言うならば廃棄物問題、廃棄物問題は環境問題、環境問題はまた廃棄物問題というふうにイコールして考えられる大きな問題だというふうに思うわけでございます。  廃棄物は、言うならば気体の廃棄物、液体の廃棄物、固体の廃棄物と分かれるわけでありまして、気体の廃棄物で言えば炭酸ガスがありフロンガスがありメタンガスがありNOx、がある、液体の廃棄物で言えば工業排水があり生活排水があり湖沼の問題があり、あるいは東京湾といったような湾の問題がある、また、固形の廃棄物と言えばいわゆるごみの廃棄物の問題、こういうふうになると思うわけであります。日本では、この中の気体の廃棄物と液体の廃棄物については環境庁の役割となっているわけですが、第三のごみの廃棄物の問題は厚生省の所管となっているわけです。  そういう点で私は、環境庁の役割というものが、ごみ、廃棄物イコール環境行政、こういうふうに考えていくならば、やはり環境庁がこの三つの役割を、いわゆる三つの廃棄物を一体としてとらえて行政をやっていくのでなければだめではないか。そういう意味では第三の固形廃棄物、いわゆるごみの廃棄物が厚生省所管となっているのはどうも世界の行政のあり方とは違っているのではないかというふうに思うのですが、この点、最初に大臣なり環境庁の方の所見を伺いたい。
  108. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生ただいま環境問題をとらえるに当たりまして、自然科学的な手法から、まさに明確に液体の廃棄物の問題、固体の廃棄物の問題、気体の廃棄物の問題という、とらえ方として環境問題をトータルにとらえる見方をなさったわけです。  まさに先生把握なさいましたように、今後の環境問題を考えるに当たりまして、固形廃棄物問題も環境問題として正面からとらえていくことは極めて重要であるというぐあいに私ども考えております。今回、私ども中央公害対策審議会等の御答申を得まして環境基本法を策定する作業の段階に入っているわけでございますけれども、今日見られるような大量生産、大量消費、大量廃棄といったような経済社会活動そのものは、今後の有限な地球の資源問題また環境問題を考えるときに、やはり環境負荷の少ない社会をつくり、リサイクルを進めていくということが重要だ、そういうようなことから環境問題の重要な施策の一環として把握する必要があるのではなかろうかというぐあいに考えている次第でございます。  ただ、具体的な個々の施策になりますと、先生が御指摘になりましたようにそれぞれの省庁がございます。しかし、私ども環境庁といたしましては、やはりこれを環境問題の重要なテーマの一つとして把握し、そのための施策を推進するということで、関係各省と一致協力してやっていく必要があるという認識に立っておるわけでございます。
  109. 小川国彦

    小川(国)委員 アメリカとかドイツとかヨーロッパでは、いわゆる気体の廃棄物、液体の廃棄物、固形の廃棄物、この三点ともやはり環境庁が所管しているというのですね、こういう実態は環境庁の皆さんも把握しておられるのかどうか。この廃棄物行政というものも環境行政と一体化して考えていくならば、やはりこの三点を環境庁に一本化して、そして環境庁環境省にして充実した行政が行える体制を目指すべきではないか、こういうふうに思うのでありますが、この点いかがでございましょうか。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
  110. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ただいまの小川先生の御質問お答えいたします。  確かに現在は大変な廃棄物が出まして、それはもう先生おっしゃるように、大気中あるいは水の中、土壌の中、そしてまた固形物としてはごみ処理の問題とか、たくさんございます。そういう中で今、環境庁はそういう行政を進めるについて省への昇格を考えるべきじゃないかという先生からの、励ましと言っていいのか御質問と言っていいのかわかりませんけれども、お言葉をいただいたわけであります。  確かに環境行政をめぐるいろいろな課題が時とともに大変変化してまいりまして、そして時代の要請を踏まえた環境庁のあり方、それはまた国全体の制度にもかかわるわけでありますけれども、そういうことが大変重要になってきておるということは私ども認識いたしておるところであります。したがいまして、環境庁の省への昇格という問題もいろいろ起こってくる可能性はあるわけでありますけれども、ただ、環境庁が省へ昇格という問題になりますと、やはり国全体の行政機構、行政組織のあり方にかかわる問題でもございますので、いずれにいたしましても現在の環境庁としては、現組織体制の中でこれを充実強化して環境行政に積極的な取り組みをしていくということに尽きているというふうに考えております。
  111. 小川国彦

    小川(国)委員 現在政府関係する、二十一省庁から構成されているわけでありますが、このうち環境行政を行っていく上にいろいろな所掌が各省にまたがっていて、それが拾っていくと十七省庁あるというのですね。その十七省庁にまたがっている行政というものは、日本のように、この一つをやろうとすればこの省、この一つをやろうとすればこの省と話をしていたのでは、世界の環境行政から日本はどんどんおくれていくだろうと私は思うのです。だから、その十七省庁にわたる問題を一つ一つ整理していかなければならないと思うのです。  それで一番問題は、アメリカでもあるいはドイツでもヨーロッパでも、環境庁の中にこみ行政は入っているわけですから、これはやはり一遍長官、世界の大勢はこうなっている、日本はおくれているじゃないかというようなことを、ぜひ長官のときに閣議の中の一つの議題として御検討いただく、こういうようなことをひとつ御注文したいのですが。
  112. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生の御意見は承りました。
  113. 小川国彦

    小川(国)委員 ともかく今私はごみ問題に一生懸命取り組んでいるのですが、この三つ、気体、液体、固体の廃棄物を一本化した総合行政、こういうことを考えでいろいろなことを政府に提案していきたいと思っているのですが、政府の廃棄物行政をやる所管省庁が厚生省と通産省と環境庁、この三省庁に分かれていまして、率直に申し上げると環境庁の役割がやはり私は小さいように思うのですよ。だから、やはりこの三省庁の分野を統一的にやるということが大事なのではないか。だから、アメリカやドイツのように統一させるためには、やはり環境基本法をつくっていく中でこういうことを具体化した国もあるわけですから、日本もひとつ環境基本法をつくる際にこういうことをお考えになっていただけないかということなのですが。
  114. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先生の御指摘、よく私ども理解できるわけでございます。ただ、別の観点からいたしますと、これからの私どもの行政は、それぞれの行政の中に環境保全的な考え方を組み込んでやっていただく必要がある。別の言葉をかりるならば、経済環境の統合ということで、あらゆる政策を立案し実行する際に、環境保全をその中に組み込んで政策というものを立案し実行していく必要があるのではなかろうかということを考えているわけでございます。  そういう意味におきまして、私ども環境基本法というものをつくりまして、環境に対する理念から環境に関する施策をどう政府として総合的、体系的にやっていくかというようなことを立案し、そのプログラムにしたがってそれぞれ各省に環境保全に対する御努力も同時にお願いする。一つは、環境庁自体に統合して仕事をやる必要があるという分野もありますでしょうし、同時にもう一つは、それぞれの施策の中にそういうことを織り込んでおいて、環境庁からもそういう目で企画調整を行っていくという観点の強化も必要であろうかと思っております。両々相まって環境行政の進展に万全を期してまいりたいというのが私どもの立場でございます。
  115. 小川国彦

    小川(国)委員 今企画調整局長さんの現状からいえばごもっともな発言というふうにうかがえるわけなのですが、私どもごみ問題なり環境問題、そしてその改善のための循環型社会、そういうものをどう構築していかなければならないか、こういうようなものを考えでまいりましたときに、廃棄物処理法の改正が行われ、そしてリサイクル法の制定が行われたわけですね。それに伴って各市町村でも清掃に関する条例が改正され、東京都などではもう一種のリサイクル条例が制定をされている。資源をリサイクルし、環境を守っていこうということで、国民活動が非常に大きく広がっている。そのような国民の地道なリサイクル活動の中で、空き缶、空き瓶、古紙などの資源の回収量が大きく増加をしてきているわけです。  しかしながら、資源が大量に集まる一方で、いわゆる豊作貧乏という表現が適切かどうかわかりませんけれども、そういう資源が集まってきている状況が集まり過ぎてしまったという状況が逆に発生をしているわけですね。資源の需要と供給のバランスが崩れる、それから不況の影響もあって今資源価格が非常に暴落し切って、資源の流通が大変に停滞している。そのために、今スチール缶などは、以前に比して多少価格は持ち直したというものの、資源として流通させるために市町村で回収業者に逆に処理費を支払うという逆有償、こういう状態になってしまっているわけです。結果として、各市町村は分別収集費用も含め莫大な処理費を今支出しなければならない状態になっている。これは、果たして廃掃法とリサイクル法の制定によってこういう事態を予想したのだろうかというふうに考えられるわけですね。  それからもう一つ我が国では各種の資源というのは資源業界によって回収され再使用、再利用のルートにそれぞれ分類、分別されて流通している。物資が不足して人件費や地価が安い時代には、資源が経済的価値を持ち、市場のメカニズムの中で流通していた。今のように物資が豊富で、人件費をかけるより使い捨てる方が有利な時代では、貴重な資源も経済価値もないために、これをリサイクルあるいは処理、処分するためにはどうしてもコストが必要になってしまう。現在では、市町村の処理のために必要なコストは国民が住民税という形で負担しており、使い捨て容器を製造、販売する事業者及びこの使い捨て容器に中身を詰めて売る事業者というのは、多大な便益を受けているにもかかわらずほとんどそのコストを負担してない、こういう現状にあるわけであります。これは、先ほど局長さんおっしゃったように、それぞれの行政の中にお任せしてやっているということも一つの現状の建前としてはあると思うのですが、しかしその結果というものは、今申し上げたように、地方自治体でも資源業界の中でも大変な問題を引き起こしている、こういう実態があるわけであります。そこで、私は、これを具体的な問題から伺ってみたいと思うのであります。  まず大蔵省でありますけれども、大蔵省の方、おいでになっていると思いますが、大蔵省のリサイクル指導というのは五百ミリリットル瓶の普及、ここにきょうちょっと参考に持ってこさせていただきました。私はお酒を飲まないので、長官、これをごらんになったことはございますか。(林(大)国務大臣 「私も飲めませんから」と呼ぶ)そうですか。お酒を飲みません方、飲む方にもまだなじみの薄い瓶だと思うのでありますが、大蔵省なりあるいは酒造組合中央会が一生懸命この瓶を指導していらっしゃるわけです。かつて日本は一升瓶というのがビール瓶と同じようにリサイクルの優等生で、お酒でもしょうちゅうでもおしょうゆでも、十回でも二十回でも一升瓶というのは使われた。本当に一つのつくられたものが何回もリサイクルされて資源として大事に生かされてきた。ところが、一升瓶は冷蔵庫の中に入らないというようないろいろな問題があって、そういう中から大蔵省指導のもとに酒造業界の中でこの五百ミリリットル瓶が考えられたと思うのですね。 私はこれは一つの努力として評価をさせていただきたいと思うのですが、この瓶どうも、今長官もお酒飲まない、私もお酒飲まないけれども、どこかで見かけていいはずのこの五百ミリリットル瓶が珍しい瓶という印象を持たれるというのは、まだ大変残念なことで、その点国税庁の方では、これについてどのくらいの普及をされて、今後またどういうふうにそれを徹底されるお考えを持っているか、お伺いします。
  116. 二宮茂明

    ○二宮説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の方から御指摘ございましたように、日本酒造組合中央会におきまして酒類容器のリサイクリングの促進を図るということで、私どもの指導に基づきまして清酒用の五百ミリリットルの規格統一瓶の導入を平成三年の九月に決定をいたしました。清酒業界ではこれを受けまして、昨年の二月からこの五百ミリリットル瓶の使用を開始いたしました。昨年末で延べ約二百万本に達したと見込まれるという報告を現在受けておるところでございます。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 小川国彦

    小川(国)委員 実は私が平成三年にお伺いしたときにおたくの酒税課長さんの答弁では、一升瓶は約十億本あって八五%回収されている、ビール瓶は九九%回収されている、こういう大変すばらしい実績が報告されてきているのですが、それは現在どうなっておりましょうか。
  118. 二宮茂明

    ○二宮説明員 清酒一・八リットル瓶、これは非常に伝統的なものでございますが、昨年の実績で申しまして約四億本でございます。それからビール瓶大瓶でございますが、これが約四十億本になっております。それで、かなりの回収率になっております。
  119. 小川国彦

    小川(国)委員 しかし、私がお伺いしたときは十億本で八五%の回収というときから見ると、四億本ということになりますと、まさに優等生も何か大分点が落ちてきてしまって半分以下の点になってきてしまっているのじゃないか。そこでこういうものが出てきたわけですが、しかしこれの普及が、伺うとまだまさにこれからという感じがしますので、これは私、環境庁にもちょっと申し上げたいのですが、これについて酒造組合の中央会は、「日本酒の新しい容器、その名もアールびん。地球に優しいリサイタルビン」というので、この瓶のことをこういうポスターをつくって宣伝しているわけですよ。  ですから、環境庁環境に優しい商品というのはどんどん推奨なすっているので、この瓶、大蔵省がやったことだけれども環境庁として、いいことならこれはエコマークというか何マークというか、おありになるのだからどんどん推奨して、これはメーカーが特定しているのじゃなくて酒造組合として取り組んでいらっしゃるので、やはり環境庁もこれを推奨して、こういうリサイクル瓶、リサイクルシステムということに一番力を入れる環境庁の立場で、そういうことはお考えになれませんか。
  120. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもといたしましては、環境に優しい製品、それを廃棄されるまでのプロセスを通じてそういうものが普及されるというのは望ましいことでございます。そういう見地から、そういうお申し出があればぜひ私どもは検討させていただく。たしかエコマークにもリターナブル瓶という分類項目があったかと思います。ちょっと正確には確定した御答弁をこの場で即座に申し上げられないわけでございますが、そういうリサイクルに向くような商品というのは、エコマークが推奨する商品とは性格が同じ方向を向いているものだというぐあいに私ども考えます。
  121. 小川国彦

    小川(国)委員 御同調いただいたので、中央会からぜひ申し入れさせたいと思いますので、これはぜひ御推奨願いたいと思います。  今度は農水省の方に伺いたいのですが、農水省では、しょうゆから清涼飲料、サイダーとかコーラ、ジュース、いろいろなそういう関係の飲み物、牛乳、こういったものを中身を所管しでいらっしゃるわけですね。ところが、これがリターナブル瓶から使い捨て容器に変わった比率が最も高いのですね。環境負荷も最も高い。こういう業界に対して一体農林省はどういう指導をされてきているか、お伺いしたいと思います。
  122. 三宅輝夫

    ○三宅説明員 お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘のとおりに、私ども所管をさせていただいております清涼飲料等、そういう世界では、現在りところやはりリターナブル瓶ではなくてワンウエーの容器ということが非常に進んでおるわけでございます。その理由といたしましては、やはり瓶なんかですと重量があってなかなか消費者の方々から不便の声が出るとか、あるいはリターナブル瓶を回収するルートと申しますのは、例えばお酒の世界のような酒屋さんのルートを通じていくというような形のものがなかなかできにくい、そういうような状況がその背景にあるものと思われます。  私どもといたしましては、過去数年にわたりまして清涼飲料業界の方々に対して、リターナブル瓶の普及ということで何度も指導させていただいてきておるわけでございますけれども、現状ではやはりワンウエー化ということが進捗をしておりまして、逆に私どもとしましては、そのワンウエー化したものを再度再資源に利用する、そういう立場で別途の指導をやらせていただいております。
  123. 小川国彦

    小川(国)委員 ワンウエー化された容器というのは、もう世界の大勢からおくれているわけです。もうヨーロッパではワンウエーの容器は製造を禁止している国が次々と出ているわけですね。そして必ずデポジットをかけてリターナブルさせるという方向に向いているわけです。ところが農水省さんは、清涼飲料業界あるいはしょうゆ業界、そういうところば自分の行政の範囲だと言いながら、現実には環境に対してどんどんごみをふやさせていく、そういう状況に対してこれを指導できる立場にないのですね。  なければ皆さんの行政は環境庁にお任せをしたらいいのじゃないですか。その方が一元化してすっきりやれるわけですよ。清涼飲料業界の中身は我々の行政の中身だと言いながら、ワンウエー容器をどんどんつくって、環境庁のやっている仕事の量をふやしているのが農水省になっちゃっているのです。さっき環境庁局長さんがおっしゃったように、各省庁に協力していただくというなら、そういうワンウエー容器を禁止させる方向とかリターナブルさせる方向というのが農水省で出てこなければならないはずですよ。そういうお考えはないですか。
  124. 三宅輝夫

    ○三宅説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のリターナブル瓶の効用ということにつきましては、私どもも地球に優しい、資源を有効に利用するという世界でその重要性は十分に認識をしておるつもりでございます。しかしながら、実際の清涼飲料等の消費の実態を見ますと、近年の傾向では、例えばかつて一升瓶とか二リットル瓶とかそういう大きな世界で流れておりましたものが、消費生活の変化によって小型の五百ミリリットルとか三百五十ミリリットルとかそういう世界に大変に大きくシフトしたという点がございます。  したがいまして、私どもとしましては、現在リターナブルで動いている世界については、これをぜひ維持するということが一点、二点目は、ワンウエー化するものについてこれをどう再資源化していくか、例えば瓶ですとカレットにしてこれをもう一度瓶をつくる形に持っていくとか、そういう形の二つの側面で努力をいたしておるところでございます。
  125. 小川国彦

    小川(国)委員 そのカレットがまただめなんですよね。これは通産省に伺いたいのですけれども、通産省は瓶は今日までリサイクルされていると言われてきたのですが、もう昨年あたりからリターナブル瓶類が極めて減って、カレットでも大量に滞貨する状態が起こっているのですね。この原因は、瓶からほかの容器、紙パック、PET容器、こういうところへ移行していった、リターナブル瓶であった瓶が缶になっていった、瓶以外の使い捨て容器は缶類を除いてリサイクルルートが今言われたようにない、こういうことでリサイクルシステムが確立されているものが衰退していった、こういう状況があるわけです。  その中の極端な状況がガラス瓶リサイクルの問題に出ているのです。ガラス瓶リサイクルで現在最も厳しい状況になっているのはカレットですね。カレットというのは、瓶をつくりますときに、こういうふうに何回も使えるような瓶をつくっていくのならいいのですが、ウイスキーの弧とか一回しか使えない瓶、回収してリサイクルされない瓶、一回しか使えない瓶は、結局砕いてカレットにして、粉にして再生していくわけなんです。  ところが、現在カレットの業者十社でもう六万トンの滞貨が、山ができちゃって、このカレット業者のストックヤードはもう満杯なんですね。各市町村が一生懸命瓶を分別収集して、全国の市町村が集めているわけです。ところが、カレット業者のところで六万トンもの滞貨ができてしまったので、この処理がおぼつかない。東北の市町村などでは分別して色分けした段階までなったものを捨てざるを得ない、廃棄せざるを得ない状況になっている。再利用どころじゃないのですね。  通産省は一体、このような事態が発生するまでどういう指導を製版業界に対して行ってきたのか。通産省の方、いらっしゃいますか。
  126. 高松明

    ○高松説明員 お答え申し上げます。  通産省といたしましては、カレットの再資源化を促進するため、平成三年十月に施行されました再生資源の利用の促進に関する法律におきまして、ガラス容器製造業をいわゆる特定業種に指定いたしまして、ガラス瓶製造業者のカレット利用率を平成年度までに五五%に向上させるとの目標を設定しております。こうした中で、カレット全体の利用率は、平成元年に四七・六%、二年に四七・九%、平成三年には五一・六%と着実に向上しつつある状況でございます。通産省といたしましては、今後ともカレット全体の利用率の向上に努めるべく、ガラス瓶製造業者に対しまして引き続き強力に指導を行ってまいりたいと考えております。
  127. 小川国彦

    小川(国)委員 皆さんのつくったリサイクル法では、再資源の回収率の目標というものは出した。それで、おっしゃるように、平成年度には五五%ですか、カレット使用比率をしようというところまで目標を高めて、今のお話では平成三年を五一%にした。それまではわかるのです。けれども、滞貨の山になった現状はどうなさるのですかということなんです。再資源として利用せよという目標をあなた方は与えた。与えたけれども、今度は業界に対して、その集めたものを何十%使用しなさい、何割は必ず再利用しなさいということを法律的に決めてないのですよ。そういう施策がないのです。だから、回収だけ進めて再利用されるものがない。  だから、根本は、こういう、どんどんつくり捨ての、一回使った瓶を粉にしてそれをまた瓶にするには、それこそまた石油エネルギーを使い、環境を悪化させ、物をつくりかえていくわけです。だから、通産省は、まず業界に対して、瓶をつくらせたりしている、あなた方が指導しているその業界に対して、こういうものをつくるときには十回も二十回も使えるものをつくりなさい、こういう指導がなきゃならぬでしょう。その次に今度は、それが特定なもので、もしどうしてもカレットとして、再資源として利用しなきゃならないという場合には、今度瓶をつくるときにはその再資源のものを何十%は使用しなさいということを義務づける、法制化するぐらいのことがなければ、ただ資源として集めると言うだけでは、結局竜頭蛇尾に終わってしまっているのじゃないですか。その辺の施策はどうなっているのですか。
  128. 高松明

    ○高松説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、私どもは、カレット利用率の向上とともに、リターナブル瓶の普及同上もリサイクル推進の非常に重要な柱であると考えております。ただし、非常に残念ながら、現実の問題といたしましては、リターナブル瓶の普及の問題につきましては、ガラス瓶製造業者というよりは、むしろ瓶を再使用するボトラーの問題である部分が非常に大きいということが言えるかと思います。私どもとしましては、カレットの利用の推進とともに、リターナブルシステムの普及につきましても関係省庁と今後とも協議しつつ、これを積極的に推進していきたいというふうに考えております。  また、カレットの使用の問題につきまして、先ほど先生御指摘の点でございますけれども、いろいろな色のカレットがあるわけでございます。その中でも、緑色や黒色等のカレットにつきましては、白色、茶色等のカレットに比べて瓶自体の生産量がそもそも少ないという理由がございまして、ガラス瓶製造業者にとりましては、その分別回収、再資源化に非常に費用がかかるというふうに承知しております。このため、これを製造者に供給するガラス原料問屋の中には過剰在庫を抱えている者も存在するというふうに私どもも聞いております。  こうした事態の改善を図るため、私ども通産省といたしましては、今後ともカレット全体の利用率の向上のために、ガラス瓶製造業者が行うカレット処理設備の導入等につきまして、税制、財投等の支援を行うとともに、特に緑色、黒色等のカレットにつきましては、ガラス瓶以外の再資源化の可能性も含めまして、その利用の促進に努めてまいりたいと考えております。
  129. 小川国彦

    小川(国)委員 平成二年、三年、四年における白カレット、茶カレット、青緑カレット、黒カレットの回収に要する費用を見ますと、平成年度で、白カレットはキロ当たり四円、茶カレットで二円、青緑のカレットや黒のカレットはゼロ円ということです。この回収の費用が出ないということです。そういうものをつくらせていいのかということですよ。そういう回収費用も出ないようなものをつくらせていいのか。そういうことは結局、それこそ野山へ散逸されて、ごみとして回収されて、そちらでまた厚生省の予算を食うか、あるいはまた環境庁予算を食うかしているわけですよ。通産省の行政のしり抜けが環境行政の方に回っていっているわけです。  だから皆さんは、こういう業者の製造の指導は我々のところだと言うなら、そういう業者に環境負荷に対する責任をちゃんと持たせるべきなんですよ。そういうものを解消するなら、デポジットならデポジットをちゃんとかけて、自分のところでちゃんとデポジットで、百円のものを百十円で売ったら、持ってきたら十円返します、五百円のものを五百二十円で売ったら、回収してきたら二十円払います、そういう欧米のようなデポジット制度を導入すれば、こういうゼロ円じゃなくて、ちゃんと回収できるのです。経済システムに乗せれば回収できるのです。そういうものをあなた方はやらないで、どうしてこういうものの回収ができるのですか。そういうところまで考えなければならぬ。  けれども、私は通産省でこういうことを考えていてももうだめだと思うのですよ。産業奨励でやってきた通産省が、今度は業界に対して一定の負担、環境負担を求める、時代の要求でそういうものを求めるということができないところにきているのじゃないですか。そこのところ、やれますか。
  130. 高松明

    ○高松説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、ガラス瓶製造業者だけでこの問題を解決するのは非常に難しいという感じを私どもは持っておりまして、先ほど申し上げましたように、ガラス瓶製造業者以外に、これをむしろ再使用いたします飲料メーカー、いわゆるボトラーの皆様あるいは消費者の方々、その他の関係者全体が一体となっていろいろ考えていく必要があるのではないかと思っております。通産省といたしましては、そういった姿勢で、今後ともこの問題の解決のために、非常に真剣にこの問題に対して取り組んでいきたいというふうに考えております。
  131. 小川国彦

    小川(国)委員 厚生省の方、お見えになっていますか。このカレットの山があって、市町村の自治体の皆さんが、いろいろな種類の瓶がたくさんつくられてしまっている、それを一生懸命分別収集している、ところが引き取り手がない、それでまた廃棄物になる、こういう状況が全国的に起こっているわけですね。市町村が悲鳴を上げているわけです。それに対して、今の通産省の施策では、これを解消する手段はないと思います。そうすると、厚生大臣は、廃棄物処理法の第六条の三第三項というもので、こういう場合には関係大臣に対し善処方の意見を述べることができる、こういう規定がございますね。これを適用して厳重に通産大臣に意見を申し述べるお考えはございますか。
  132. 三本木徹

    ○三本木説明員 ただいま先生から御指摘いただきました廃棄物処理法第六条の三第三項というのは、前回の通常国会におきまして御審議いただいて改正された法律の中に規定されているものでございますが、この法律の中では十九条の二というところがございまして、ここでは「厚生大臣は、廃棄物の適正な処理を確保するため、物の製造、加工、販売等を行う事業を所管する大臣に対しこその「製品、容器等の材質又はその処理方法を表示させることその他必要な措置を講ずるよう求めることができる。」というようなことに相なっているわけであります。  確かに先生案内のように、市町村におきましては、この廃棄物処理法の改正に伴いまして、今、分別収集の徹底に一生懸命努力しております。問題は、最終的にその製品、原材料がごみから出てくるわけでありますが、製品の使用が拡大するということが大変重要であるわけであります。いわばつくる側からいたしましても、その再生品が使用してもらえるというような形が整わなければなかなか回収が最後まで行き着かない、こういう問題があるわけでございます。  私どもといたしましては、このカレットの滞貨の問題について、既に再生資源利用促進法という法律の中で事業者における取り組みというものが積極的に行われるというふうに理解しているところでありますが、廃棄物処理法の改正の中で再生品の利用の拡大を図る、いわば国民全体、国民と申し上げましても事業者も含んでいるわけでございますが、その利用の拡大を図るというこの責務規定を活用いたしまして、再生品の使用を促進するための国民一般に対する理解と協力を求めてまいる、そのための各般の施策というものを現在講じているところでございます。
  133. 小川国彦

    小川(国)委員 どうも通産省や厚生省にしても、今の地方自治体やそのカレットの山の実態に対して適切な対策が講じられないのですが、私はやはり根本は、通産省もそうだし、厚生省もそうなんですが、従来の省庁の縄張りの中で、これは我々の行政だということでおやりになっていらっしゃるけれども環境行政そのものの対応としては、従来の行政とのバランスをとりながらおやりになるから本来的な環境行政にはならないのですよ。だから、私は、そういう部分についてはもう環境庁にお任せするというような考え方がないといけないんじゃないか。  ここに、委員長に御了解を得て、私の友人が急遽持ってきてくださったものなんですが、これはどういうものかおわかりになる方、環境庁政府省庁の方でいらっしゃったらちょっと御答弁願いたいのですが。この瓶がどういう瓶であるかということです。こういう瓶でございます。
  134. 田中正躬

    田中説明員 PETボトルと理解しております。
  135. 小川国彦

    小川(国)委員 何省の方ですか、今の方は。
  136. 原田昇左右

    原田委員長 通産省です。
  137. 小川国彦

    小川(国)委員 通産省の何課長ですか。
  138. 原田昇左右

    原田委員長 通産省田中化学製品課長
  139. 小川国彦

    小川(国)委員 田中化学製品課長さん、PETボトル、これはちょっと落第でございますね。まあPETボトルではありますけれども、どういうものかということなんです。もう一遍、PETボトルだけでは答弁にならないのですよ。
  140. 田中正躬

    田中説明員 清涼飲料水を入れる容器で、つくられたものはポリエチレンテレフタレートという高分子からつくった容器と理解しております。
  141. 小川国彦

    小川(国)委員 やはり通産省の方だから、製造のことについては大変お詳しくて、その点では確かにリターナブル瓶ではあるのです。だけれども、このPETボトルはリターナブルボトルとして五十回使用されているわけです、このちょうどプラスチックのようなものが。それで、ここには〇・七マルクと書いてあるのです。〇・七マルクという表示があって、これは〇・七マルクというのは、いわばこのデポジットの金額なんですね。従来〇・五マルクだったものが、○・五マルクでは回収率が悪いということで〇・七マルクのデポジットをかけたのです。しかも、ここに刻み込みがございまして、ここに一回使用するごとにマークがしるされていきまして、五十回使用されるということになっているというのです。  こういうふうに、こうしたスプライトライトという清涼飲料の器が、確かにPETボトルではあるけれども、五十回使用される。しかも、これを回収したときには〇・七マルクのお金をデポジットしている。こういう経済効果を持たせ、しかもリサイクル性を持たせたものをやっているわけですね。こういうものについて、それこそ通産省の方、どういうふうに評価されますか。
  142. 田中正躬

    田中説明員 先生御指摘のPETボトルの回収は、ドイツでそういうデポジット制度を導入してやっていると理解しておりますけれども我が国におきましても、このPETボトルというのは清涼飲料水の容器として今現在非常に広く利用されておりまして、その使用済みのPETボトルをいかに再資源化していくかということは非常に重要な課題でございます。  具体的に、我々通産省といたしまして、PETボトルの再資源化に向けて各種の業界の指導とか支援をやっているところでございますけれども、まず、原料メーカーそれからPETボトルの加工メーカーといったところ、それから清涼飲料水業界から構成されますPETボトル協議会という組織がございまして、今この組織を中心に全国十数カ所でPETボトルの分別とか回収を中心にモデルリサイクルをやっているところでございまして、回収ルートの整備でありますとか回収効率を上げるというようなことを今現在やっているところでございます。  こうした事業が進展していきますと、今現在ほとんど日本ではPETボトルの回収というのは、リサイクルはなされていないわけでございますけれども、こういうモデル的な事業、そういったものが全国に浸透していくことによりましてPETボトルの回収が進むということを我々は期待しているわけですが、もう少し具体的にリサイクルを進めるということで、ことしの春、もうすぐ春でございますけれども、栃木県に年間五千トンのPETボトルの再生をやれる処理工場を完成する予定でございます。  また一方、政府といたしましても、再資源化法に基づきまして、先ほど先生御指摘ありましたマーク、PETボトルをほかのプラスチックスと区別するための表示を再資源化法の第二種の指定品目に指定することによりまして分別を易しくするということを今現在検討中でございます。  今後とも、こういう回収ルートとか再生拠点の整備の拡大、それから何といいましても重要なのは、再生用途を拡大しておくということがリサイクルを容易にするわけでございますので、そういう再生用途の拡大といったようなことを含めて、PETボトルの再資源化を促進するよう、我々今後とも積極的に業界を指導、支援していくつもりでございます。
  143. 小川国彦

    小川(国)委員 PETボトルは今平成三年で十二億本生産されているということですが、その中で、これを今言うように、これは五十回使っているのですが、そういうデポジットを用いているもの、リサイクル使用されているものはございますか。
  144. 田中正躬

    田中説明員 今現在、我が国ではPETボトルのリサイクルというのは緒についたばかりでございまして、ボトルとしてのリサイクルというのはないと承知しております。また、デポジットという制度的なものによってリサイクルを強制させるというようなことはやっていないと承知しております。
  145. 小川国彦

    小川(国)委員 今やはり通産省のお考えは、物をつくる側で物を考えてきた省だから、これはやむを得ないと思うのですが、ここで環境庁に御質問したいのです。  現在検討中の環境基本法では、経済的手法というものが追加協議になっている、こういうふうに伝えられているわけです。先ほど、経済的手法というのは環境保全のための循環型社会をつくる上で極めて有効な手段である、ぜひとも環境基本法の中に経済的手法に関するあり方を明記すべきだ、こういうことが言われておりますが、この点に対する状況はどのようになっておりますか。
  146. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもがいただきました中公審の答申におきましては、経済的手法というものが国際的にも推奨され、その有効性が期待されるということから、その考え方基本法に位置づけるという提言がございます。同時に、個々の手法については十分国民の合意を取りつける必要があるということも言われるわけであります。  先ほどもお答え申し上げましたように、現在私どもが当面しております環境政策の課題から申しますと、規制的手法のみではやはり限界があるということから、科学技術の振興でございますとか社会資本整備、それから環境教育民間活動支援、そういったものと並んで経済的手法についてきちっと位置づけておくということが重要であると考えており、現在、その方向に向かって法案を策定している最中でございます。
  147. 小川国彦

    小川(国)委員 そこに私どもも大きな期待を寄せているわけであります。  繰り返しということになりますけれども、空き缶、空き瓶、それから古紙、こういうさまざまなリサイクルの営みが、市民の中であるいは自治体の中で熱心に取り組まれておるわけであります。これはある意味では役所よりも市民社会の方が先行して、本当に日本の算境の将来を考え、世界の環境考えて取り組んでいらっしゃる。そういう人々は、デポジット制度とかあるいは使い捨て製品に対する製品課徴金の導入、こういうことが有効であるということは明白だと大多数の方が、全体の方が考えていらっしゃると思うのです。 昨年十月の中央公害対策審議会、それから自然環境保全審議会答申の中では、経済的手法にデポジットシステム、製品課徴金というものが含まれておったわけです。現在の段階でも、環境基本法の条文の中にこの趣旨を明確に生かす、こういう考え方環境庁のお考えとしてしっかり持っていただけているかどうか、この点を伺いたいと思います。
  148. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 私どもは、先生がただいまお読みになったような趣旨の御答申をいただいたわけでございますので、この答申の趣旨を最大限生かすような格好でぜひ基本法法案作成に当たりたいというぐあいに考えて、今努力中でございます。
  149. 小川国彦

    小川(国)委員 あわせて通産省の方に、平成四年十一月の通産省の産業構造審議会等の合同審議答申の中で「今後のエネルギー環境対策のあり方について」において、「廃棄物問題については、リサイクル推進の一つの方策としてデポジット制度等について検討がなされている。」と記述されております。  私が先ほど指摘したような問題点を踏まえて、通産省としても経済的手法が有効であると考えておられるように思うのでありますが、このような答申について、通産省としてこの経済的手法をどのように検討されているのか、お伺いしたいと思います。
  150. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  デポジットの問題、これは経済的手法一つの大きな問題かと思います。先ほどお話がありましたように、中央公害対策審議会答申におきましても、広く国民各層の合意を得てと記されているわけでございます。  デポジットの検討につきましてどのような形で考えていくのか、私ども、まだこのデポジットについてこれから研究を進めるということで考えているわけでございます。デポジット制度そのものにつきましては、廃棄物の減量化、資源の有効利用に寄与するであろうという側面は、これはもちろんあるわけでございます。他方で、コストの問題あるいは保管場所、特に中小零細の商店のような場合のスペースの問題、あるいはそういったコストをだれが負担するかというような大きな問題も随分ございます。このような問題を含めて検討をしていくということで考えておるわけでございます。
  151. 小川国彦

    小川(国)委員 本年一月二十六日の時事通信社の環境基本法に関する「官庁速報」というのがあるわけなんです。この中で「環境税などを想定した「経済的措置」に対しては、通産省や建設省が「新たな政策の導入を予定することになる」と条文化に難色を示しているため原案では空白となっており、具体的な表現は今後の折衝にゆだねられた。」と述べられているわけです。  環境基本法の中で経済的手法についてしっかりした位置づけを行うことは、今後のリサイクル推進のための制度を検討する上で極めて重要なことだと考えるわけでありますが、通産省として、「官庁速報」に報道されたような事実はあるのかどうか、こういうことがあるとお認めになるのかどうか、それから環境基本法の中での経済的手法についてどのようなお考えを持っているのか、伺いたい。
  152. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ただいまの御質問は、私ども基本法法案づくりの過程におきまして、まだ原案ができておらなかったということに対する新聞報道であったと思いますので、私どもの方から先にお答え申し上げます。  経済的手法活用につきましては、それが有効であり、国際的にも推奨されているというような認識においては、当然とれるわけでございます。ただ、経済的手法ということになりますと、それはデポジット制度、課徴金、税といったようなたぐいの、国民に負担をお願いするような政策手段になるわけでございます。  そういうことから、同時にこの答申におきましては、個別政策の採用について予断を与えるものでもないし、国民的な合意を十分得る必要があるというような御答申内容をいただいておりますものですから、そういうことも含めまして、どういう条文にしたらいいのかということで、私ども鋭意今知恵を練っているところでございまして、一月の段階においては、その段階までにまだ成案を得るに至らなかった、したがって、まだ各省に御協議に回す段階に至っておらなかったというようなことから、そのような新聞報道がなされたものではないかと推察しているところでございます。
  153. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  ただいま八木橋局長お話しなさったとおりの状態でございます。通産省としても、政府の一員として環境庁と、答申に則し、答申を踏まえ、いろいろ御相談をしていく立場でございますので、そのような形で今後とも対応してまいりたいと考えております。
  154. 小川国彦

    小川(国)委員 その経済的手法の導入の問題については、国民の期待するような方向環境庁が勇断を持ってぜひ対処してもらいたいと思います。  最後に、これは環境庁長官環境庁の方にも伺いたいのですが、今のような大量消費、大量廃棄型の社会というものを環境保全のために循環型社会に変えていく、こういうためには、欧米の実情を見ましても、デポジット制度を初めとする経済的手法の導入ということを私どもは前向きに検討していかなければならないときに来ているのじゃないか、そうしないと国民のリサイクルのための地道な努力も報われないのではないか、こういう思いがするわけです。この問題の根本的解決のために、こうしたデポジット制度を初めとする経済的手法の導入ということに対して、最後に長官なり環境庁の方の御所見を伺って、質問を終わりたいと思います。
  155. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほども答弁申し上げたところでございます。これからの環境保全型社会をつくっていくためには、リサイクルまたはリターナブルな循環型の社会の形成ということがかなり重要になってくる。そういう場合におきましては、規制的手法のみではなく、経済的手法活用ということもかなり重要な地位を占めてくると私ども考えております。  ただ、経済的手法を採用するに当たっていろいろな問題もございます。そのための条件整備をしなきゃならぬというようなこともございます。しかし私どもは、基本はきちっと踏まえて、ということは、そういう経済的手法活用していくという考え方をきちっとこれからの環境政策一つプログラムとして位置づけることが必要であるというぐあいに考え、そういう方向に向かって努力し、また国会の御審議をいただきたいというぐあいに考えております。
  156. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま局長からの答弁のとおりでありますけれども、やはり時代が非常に物すごいスピードで変化しているということを私どもは痛切に感じます。したがいまして、今のようなリサイクル、これは非常に大事なことでありますので、経済的手法を生かして、循環型でしかも物質をむだにしないという、大切にするという、こういう気持ちを踏まえてこれからの環境行政もあるべきだなということを感じております。
  157. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  158. 原田昇左右

    原田委員長 次に、斉藤一雄君。
  159. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 今度新しくなられた林環境庁長官所信表明に対して質問いたします。最初ですから、環境行政全般についてお聞きいたします。  長官は、これまでの環境行政について、一体どのような感想を持っておられましたか、また、このたび新しく長官になられて、どのような責任を感じておられますか。
  160. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答えいたします。  ただいまの御質問は、これまでの環境行政についての感想と、それからまた環境庁長官としてどのような考えを持っておるかという御質問でございますが、まず、我が国は、先生案内のように、かつては大変激甚な公害経験いたしてきております。その深い反省から環境庁が設置されたところでございますけれども環境庁は、我が国環境行政の中枢として、政府を挙げての公害問題に対する積極的な取り組みを行って、国民経済界などと一体になってその克服に努めてきたところでありまして、それなりに相応の成果を上げてきたと私は認識いたしております。  しかしながら、それはそうといたしまして、大都市における自動車の排気ガスによる大気汚染、あるいはまた生活排水等による水質汚濁、そのような都市生活型公害環境行政、これはなお多くの課題に直面しておりますけれども、特に近年では、さらに地球温暖化やオゾン層破壊などといった地球環境問題の解決がますます重要となってきておるところでありますので、このように環境行政の対象領域が大きく広がっていく現状の中におきましては、あらゆる生命の生存基盤としての有限な環境を守り、これを次の世代に引き継いでいくという、我々に課せられた使命というものを強く認識いたしまして、生けるものの生命をとうとびこれを慈しむ、その気持ちを環境行政基本に据えて、これからの新たな展開に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。  以上の二点を申し上げまして、私の答弁にかえます。
  161. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 これまでの環境行政が、ややもすると開発優先、開発追従というような批判を多くの国民から受けてまいりました。また、環境庁自体が非常に権限が弱い、各省庁開発行為等に対して環境保全を要請する、あるいは意見を述べるというようなことがどうも形式的に終わっているんではないか、こういう批判もよくこれまで私自身もしてきたところでありますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。これは大臣にしてください。
  162. 森仁美

    ○森政府委員 大臣にかわりまして、ちょっと概要をお話し申し上げたいと思います。  環境庁がよってきている立場は、政府部内におきます大きな環境保全についての調整、企画立案というところにございます。それを全うするために、いろいろな方法を駆使し私どもこれまでやってきているわけでございまして、そういう中で、ただいまお尋ねにありましたような、ややもすれば不足ではないかという御批判もございましたが、私どもは持てる力を注いで全力でやってきたつもりでございます。なお今後とも努力をしてまいるということでございます。
  163. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 平成年度における環境保全経費の総額は一兆七千三百四億円、大変多いように見えますが、その八二%を占めているのが公害防止関係公共事業の一兆四千二百六十億円です。環境庁予算はわずか六百三十六億七千二百六十九万円にすぎません。そのうち二百三十七億円は公害健康被害者の救済費です。肝心の、民間による地球環境保全活動支援する地球環境基金関係経費はわずか十五億円しか組まれておりません。わずか十五億円でどれほどの支援ができるでしょうか。その内容を具体的に説明してください。
  164. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 今回、地球環境基金の制度を設けることといたしまして、環境事業団法の一部改正法案の御審議をお願いしているところでございますが、御指摘のように、本年度予算案では、基金に対する国の出資金十億円と基金事業に対する補助金五億円というものを計上しているところでございます。  この地球環境基金の制度は、国と民間が資金を拠出し合いまして基金を造成することにより、その運用益等をもって民間団体による地球環境保全活動への助成その他の支援を行おうというものでございまして、今年度におきまして、現下の財政事情にかんがみまして、この利率の低い時代におきまして、運用益だけをもって事業活動を行うということはかなり非効率的であるというようなことから、予算当局といろいろ協議をした上で、出資金十億円ということと直接の事業費に対する補助金五億円をいただくこととして、国会の御承認を得べく今提案しているところでございます。したがって、事業費といたしましては、この十億円の運用益と直接の事業費五億円を合わせました五億数千万円の資金が助成その他の事業費に充てられるということになろうかと思います。  この資金を元にしまして、我が国民間団体における開発途土地域の環境保全活動、また我が国民間団体における本邦内における地球環境保全活動、その他場合によっては本邦以外の民間団体による開発途土地域の環境保全活動に対する助成を行ってまいりたいというぐあいに考えているわけでございます。
  165. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 アジア・太平洋地域における国際環境協力と研究ネットワークの具体的事業内容について説明してください。
  166. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 今先生のお尋ねのネットワークでございますが、これは特にアジア・太平洋地域を主体にいたしてございます。と申しますのも、このアジア・太平洋地域に多数存します開発途上国、この国々の持続可能な開発の実現を目指すということで、先生御高承のとおり、環境分野の協力をいろいろと実施をいたしてございます。  一、二具体的にちょっと申し上げますと、例えばタイ、中国、インドネシアといった開発途上国におきます環境研究研修センターづくりあるいはその運営といったものに対しまして、国際協力事業団、JICAと御一緒に私ども環境庁支援を続けてきておるわけでございます。  こういったアジア・太平洋地域の環境対策を進めることが非常に重要と考えておりますが、特にお尋ねのネットワークと申しますのは、研究面での能力を向上させようということをねらいにいたしてございます。現在、地球環境上いろいろな異変といいますか、変動があらわれてございます。アジア・太平洋地域におきましてもしかりでございます。ここでのどういう状況が、どういう変動が実際に起こっているかというものを正確に把握していく、そして将来の施策につなげていくという意味で、国際協力をしっかりやっていこうということ、それをねらいにいたしておりまして、特に先進国と途上国が一緒になって研究を進める上での能力向上というものをねらいにいたしてございます。  もうちょっと具体的に申し上げますと、このアジア・太平洋地域として取り組むべき研究の課題、それから観測測定項目の選択、そういったものをどうやって実施していくかの計画などの作成、さらに、そういった観測、監視を近隣諸国間で協力して実施していくための計画、さらに情報の整備、そういったようなことにつきましてネットワークを構築して、先ほど申しましたように研究を効率的に推進していこう、そういうねらいでございます。それに環境庁としても他省庁と同様協力いたしまして、しっかりとリーダーシップをとって貢献してまいりたいと思っております。
  167. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 時間が余りありませんので、ひとつできるだけ簡潔にお答えいただきたいと思います。  次に、地方自治体におけるローカルアジェンダ21の策定指針はどのようなものを考えているのか。
  168. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 このローカルアジェンダの策定指針は、これまた先生御存じのとおりの昨年六月の地球サミットでアジェンダ21というのが合意をされまして、その中で、地方公共団体は一九九六年までに市民、地方団体及び民間企業と対話を行いまして、いわばアジェンダ21の地方版たるローカルアジェンダ21というものを採択すべきということになっているわけでございます。  しかしながら、アジェンダ21自体が内容が非常に広範多岐にわたっております。そこで、地方公共団体がローカルアジェンダ21をつくろうといっても少し途方に暮れる面もございます。もちろん、幾つかの先進的な自治体の中に、例えば東京都、神奈川県など、もう既にこういったものをつくったりあるいはつくろうとしているところはいろいろとございますけれども、私ども国として、ローカルアジェンダの作成を容易にするために、手引となる指針をつくって地方公共団体にお示ししようということでございます。
  169. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 どういう指針をつくるのかということについて質問しているわけなので、指針をつくろうとしているということはもうわかっているわけですから。時間がありませんので、後ほどにしたいと思います。  次に、酸性雨と原因物質の関係については、これまでにどの程度解明されているか。
  170. 入山文郎

    ○入山政府委員 酸性雨と原因物質の関係でございますが、この酸性雨の発生機構につきましては、人の活動、いわゆる人為活動によるものと、火山活動など自然に由来するものとがあるわけでございます。物質といたしましては、硫黄酸化物でございますとかあるいは窒素酸化物といったようなものが考えられるわけでございまして、これらの物質が大気の中を移流、流れていく、あるいは拡散する、そういった過程で太陽の光の影響等を受けまして酸化される、そして硫酸イオンあるいは硝酸イオンの粒子などに変化したものが降水中に取り込まれまして、そして酸性度の強い雨、一般にPH五・六以下を酸性雨と言っておりますが、そういった酸性度の強い雨が降ってくるということになるわけでございます。  この酸性雨と原因物質との関係につきましては、今申し上げましたように、定性的な面では解明されておりますが、量的な面と申しますか、定量的な解明についてはまだ十分になされていないという現状でございます。
  171. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 次は、自然との触れ合いの推進で温泉地の選定と温泉保養施設の整備を挙げているが、それはかえって自然や景観を破壊することにならないか。
  172. 大西孝夫

    ○大西政府委員 お答えを申し上げます。  先生御承知のとおり、温泉は我が国におきましては、古くから国民の保健とか休養に非常に重要な役割を果たしてまいっておるわけでありますし、ある意味では日本生活文化の一つだろうと思いますが、この温泉地というものが商業主義で整備が進んでまいります場合に、ややもすると行き過ぎがあったりして、例えば歓楽街地的になったりする傾向もあることにかんがみまして、温泉法十四条の規定で、公共的利用を増進しようという観点で国民の保健、休養に適した温泉地を指定し整備する規定がございます。  私ども環境庁は、そういう規定を踏まえながら、従来からその保健的利用に適した温泉地を国民保健温泉地として選んで、その温泉地地域の周辺の施設整備を進めてきたわけでございますが、特にここ近年は国民の自然との触れ合いといいますか自然志向というものがだんだん強まってまいっておりまして、自然と触れ合う機会をふやす一環といたしまして、この温泉地をふれあい・やすらぎ温泉地という形で選定をし整備をしていこうという考え方でございます。  もちろん、これら施設の整備を行います場合には、温泉が多くの場合、景観の大変いい山岳地帯でありますとか海岸とかそういうところにあるわけでございますので、そういう温泉地の幾つかを周辺整備をするということであれば、どうしても自然環境に悪い影響を与えるのではないかという御懸念が生じることは御指摘のとおりでございますが、私どももその辺は大変重要なポイントだと考えておりますので、今後ともこういう形で施設の整備を進める場合には、自然や環境への影響を最小限にとどめられるような設計内容や工法を用いて、御懸念いただく心配がないように細心の注意を払ってまいりたいと考えております。
  173. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 次に、重金属、有害化学物質による土壌汚染の環境基準とその達成状況を説明してください。
  174. 赤木壯

    ○赤木政府委員 環境庁は、平成三年八月に公害対策基本法に基づきまして、人の健康を保護し、生活環境保全する上で維持されることが望ましい基準として、カドミウム、PCB等十物質について土壌の汚染に係る環境基準を設定いたしました。この環境基準は、土壌が汚染されているかどうかという判断をする基準として、また汚染土壌に係る改善対策を講ずる際の目標となる基準として運用されておるところでございます。  土壌汚染は、大気汚染、水質汚濁というものとは異なって局所的な汚染であることから、その実態の把握につきましても、網羅的あるいは悉皆的な調査や定点調査、そういうことをやることは必ずしも効率的ではないと考えております。このため、土壌の汚染が明らかになっている場合とかあるいはそのおそれがあるような場合やあるいは土地改変等の機会をとらまえまして土壌汚染に係る調査が行われるよう、地方公共団体等を通じて汚染原因者等を指導しているという状況でございます。  環境庁といたしましても、地方公共団体等を通じて土壌汚染及びその対策の実態の把握に努めているところでございます。なかなか今までもわからない面もないわけではございませんけれども、昭和五十年から報告を受けているものを見ますと、百七十四件が土壌汚染対策に係るものとして報告を受けてございます。今後ともこういう土壌汚染の特徴を踏まえながら、環境基準の適合状況が十分調査されるように、また汚染土壌についても速やかに対策が実施されるよう、努めていきたいと思っております。
  175. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 次に、拡声機等の生活騒音について、実態調査や防止対策手法の検討を行うと言っておりますけれども、その理由と目的は何か。
  176. 入山文郎

    ○入山政府委員 拡声機による騒音につきましては、これは騒音規制法によりまして地方公共団体が必要な措置を講ずることとされているわけでございますが、近年、この問題に関する社会的な関心が高まってきております。  そこで、環境庁といたしましても、商店街で流される商業宣伝、ちり紙交換あるいはまた物売りその他の拡声機騒音に関する対策のあり方を検討してきたところでございます。この検討の結果につきましては、平成二年に地方公共団体における指導あるいは規制に関する指針といたしまして、また適正使用のためのマニュアルといたしまして取りまとめたところでございます。  また、拡声機騒音を含む近隣騒音につきましても、モデル的な地域において、地域住民の自主的な取り組みによる近隣騒音防止のための活動を推進する騒音対策モデル事業というものを昭和六十三年度から実施してきているわけでございます。さらに、平成年度からはこの事業を発展させまして、生活騒音対策モデル都市推進事業としてこれから取り組んでまいりたい、このように思っているわけでございます。
  177. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 この拡声機騒音について実態調査を行うというふうに言われているわけですけれども、どこをどういう方法でやるつもりなのですか。
  178. 入山文郎

    ○入山政府委員 実態調査といった言い方が適当かどうか、若干疑問もございますが、先ほど申し上げましたモデル都市推進事業の一環といたしまして、市民を対象としたアンケート調査でございますとか、あるいは子供を対象とした騒音実態調査といったようなものを実施していきたいと思っているわけでございます。幾つかのモデル事業でございますので、地域、市町村を対象といたしまして逐次実施しでまいりたい、このように考えております。
  179. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 現在、拡声機騒音について規制するという法制度が確立していると思うですが、どういう内容ですか。
  180. 入山文郎

    ○入山政府委員 騒音規制法で規定がございます。この二十八条でございますけれども、飲食店営業等に係る深夜における騒音、あるいは拡声機を使用する放送に係る騒音といったような規制については、地方公共団体が必要があると認めるときに、自然的、社会的な条件に応じて、例えば営業時間を制限するといったようなことによって必要な措置を講ずるというようにしてございます。  そのほか、拡声機によるものといたしましては、いわゆる暴騒音と申しますか、意図的にと申しますか意識的にと申しますか、そういう非常に異常な大音量によるというようなものもあるわけでございまして、これはまた公害規制とは異なった観点から公安委員会所管の条例といたしまして暴騒音条例といったようなものが制定されているわけでございます。
  181. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 これは、各地方自治体がそれぞれの立場でいろいろな条例などをつくっているということは承知しておりますけれども環境庁が拡声機騒音の防止について実態調査をしたりいろいろやられていくということはどういうことなのかな。つまり、今日の騒音規制法なり公害対策基本法でも十分取り締まるところは取り締まれる、規制するところは規制できるはずじゃないかという気がしているのですが、既存の法律では不十分だ、だからこれからは新しい法律なり条例を積極的につくっていくのだ、こういう意味合いを持っているわけですか。
  182. 入山文郎

    ○入山政府委員 こういった問題を調査検討することによりまして、今先生御指摘のようなそういった法規制をさらに考えていくのかという御質問かと思いますが、そういうことは今のところ考えておりません。例えば拡声機による騒音苦情と申しますか、そういったものを調べてみますと、平成年度の数字でございますけれども、騒音全体の苦情が一万六千余ある中で四百六十数件でございますから、二・八%ほどになるわけでございます。この数字が大きいか小さいか、評価はいろいろあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、大都市におきましては先ほど申し上げましたような生活騒音その他近隣騒音というものが問題になってきておりますので、住民の自発的なと申しますか自覚に基づいた対策を推進していきたい、こういった考え方でいるわけでございます。
  183. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 質問に的確に答えてもらわないと困るわけですよ。拡声機騒音については現行法では取り締まれない、規制ができないのか、不十分だということなのかということを聞いているわけです。
  184. 入山文郎

    ○入山政府委員 先ほど申し上げましたが、自治体がこの問題については処理をするということになっております。ということは、現在の法律で十分に対処できるのではないか、私どもはこのように考えております。
  185. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 次に、農薬生体影響調査研究でこれまでにどの程度明らかになっておりますか。
  186. 赤木壯

    ○赤木政府委員 農薬を散布した場合に、農作物の病害虫だけではなくて他のさまざまな生物に対して影響を与えることは懸念されております。このため、これまでもOECD等によって主要な生物への農薬の影響評価を中心とした調査研究が行われているということでございますが、環境庁におきましても、昭和五十九年から農薬の生体影響を評価する手法について内外の知見を集積すると同時に、実際に植物プランクトン、動物プランクトン及び鳥類を用いた試験を実施して、試験方法の検討を行ってきたというところでございます。  平成年度からは、これまで確立いたしました手法等によって主な野生生物への農薬の影響試験を行って、その結果をもとに主な野生生物に対する農薬影響分類基準というようなものを作成していきたいというように考えてございますし、この分類基準ごとにまた使用場所や使用時期等に関する農薬の使用上の留意点というようなものを作成していきたいというふうに考えてございます。若干まだ時間がかかるわけでございますが、今後こういうふうな形で影響調査を進めていきたいというふうに考えてございます。
  187. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 厚生省所管の水道水源の水質保全に関する法律案について、環境庁はどのようなかかわりをしてきたか、また環境行政の面からは何を最も重視したか。
  188. 赤木壯

    ○赤木政府委員 御指摘の法律案については何らまだ聞いてございません。なお、厚生省の水道水源の水質保全に関する有識者懇談会報告書が今月の四日に公表されたところでございますが、環境庁といたしましても、厚生省から報告の内容については説明を受けているところでございます。  環境庁といたしましても、水道水源の水質保全という問題は環境行政の重要な課題であるというふうに認識してございまして、これまでも、水道水源を含みますすべての公共用水域等につきまして水質の環境基準を設定したり、あるいは水質汚濁防止法に基づきまして工場等の排水規制を実施したり、さらに各種事業の計画的な推進等によって水質保全施策を講じてきておるところでございます。  厚生省の報告書で提言されている事項のうち、環境行政面から見ますと、一つは有害物質による水質汚濁の問題があると思うわけでございます。有害物質による水質汚濁の防止に関しましては、現在、中央公害対策審議会答申を受けて水質の環境基準の拡充について作業をしておるわけでございます。間もなく水質汚濁に係る環境基準を大幅に拡充を図り、これができますれば、これを受けた形で排水基準等についても、あるいは廃棄物の処分基準強化等についても検討してこれを実施していくということで、広範な水質保全対策を強力に展開していきたいというふうに考えてございます。  それからまたもう一点は、水道の異臭味等に関係ある富栄養化の問題でございます。こういう問題に関しては、やはり何をおいても生活排水対策を一層推進していくことが重要であるというふうに考えてございます。水質汚濁防止法の中でも、生活排水対策にはいろいろ規定がございます。この法律に基づく生活排水対策推進計画に沿った形で下水道等の生活排水処理施設の整備等が一層進んでいくように、我々としても努めていきたいというふうに考えてございます。
  189. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 次に、公害等調整委員会にお尋ねいたしたいと思いますが、小田急線の騒音被害等責任裁定事件にかかわる審理は現在どこまで進んでいるのか、また解決の見通しについて説明してください。
  190. 麻植貢

    ○麻植政府委員 お答えいたします。  本事件は、昨年の五月七日、世田谷区在住の住民ら三百二十五名から、小田急電鉄を相手方といたしまして責任裁定を求めて申請した事件でございます。申請の内容でございますが、小田急小田原線におきまして、車両のスピードアップあるいは増発、さらには営業時間の延長などが図られたため、騒音、振動及び鉄粉じんによる被害が生じ、このため申請人らは静穏な日常生活を侵害され、その健康に対しても被害を受けているとして、申請人らに対して損害賠償金の支払いを求めるというものでございます。  公害等調整委員会は、本件裁定申請を受け付けた後、裁定委員会を設置し、その後同様の被害を訴えておる参加人二十四名を加えましてこれまでに四回の審問期日を開催し、当事者双方の主張を聞くなどして鋭意手続を進めているところでございます。当委員会といたしましては、同事件の適正な解決を目指しまして今後とも鋭意努力してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  191. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 次は、自動車NOx削減法の基本方針をもとに今後東京など六都府県で総量削減計画をつくることになっておりますが、環境庁はこれによって二〇〇〇年までに環境基準を一〇〇%達成できると思っていますか。
  192. 入山文郎

    ○入山政府委員 この法律に基づいていろいろな施策を実施していくことによりまして、私ども二○〇〇年にはおおむね環境基準を達成できるというように従来から申してきたわけでございます。現在もそれに変わりはございません。
  193. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 この地域内の観測点は何カ所ありますか。
  194. 入山文郎

    ○入山政府委員 約四百三十カ所ほどございます。
  195. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 今のおおむね達成できるというおおむねというのは、ちょっと私にはよくわからないのですが、具体的に、四百二十カ所のうちの何カ所が達成できるという見通しですか。
  196. 入山文郎

    ○入山政府委員 現在いろいろなデータ等に基づきまして試算と申しますかシミュレーションのようなことを行っている段階でございますが、ざっと私どもの今までのデータによりますと、九割ぐらいの局において達成ができるのではないかと思っております。
  197. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 九割達成ということならば初めから九割達成というふうに言ってもらいたいのですよ。おおむねとかそういうあいまいな表現は使うべきではないというふうに思います。  それでは、幹線道路沿いの百四十二カ所に限った場合はどの程度の達成見込みですか。
  198. 入山文郎

    ○入山政府委員 今御指摘のような測定局に限ってということでございますと、先ほど申し上げました九割という数字よりは低くなるわけでございます。今の段階では大体七割ぐらいになるのではないだろうかというような感じでおります。
  199. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 幹線道路沿いでは三割程度が基準を達成できないということになるわけであります。  それでは、東京都区部の場合は一番達成が難しいと思うのです。というのは、平成年度基準達成率はわずかに三五・五%です。大変なことですね。この点は今お話があったよりももっと低い達成率にならざるを得ない、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  200. 入山文郎

    ○入山政府委員 私どものシミュレーション、試算につきましては、この指定地域全体について計算をしているところでございまして、地域的な面では多少の濃淡はもちろん生ずるわけでございます。ごく限った地域等で申し上げますならば、当然達成率が低いところは出てくるであろうと思っております。そういった場合でございましても、環境基準が達成できないまでも、より接近させるというような効果は見込まれるものと考えているわけでございます。
  201. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 N〇x削減法の審議のときに、私は再三再四にわたって、この法律案内容では二〇〇〇年の環境基準達成は困難である、絶対にできないということを指摘しました。その上で、私ども社会党は独自の法案提出させていただいたわけであります。その際、環境庁は、二〇〇〇年までの達成については何としても実現できるのだということを断言してきたわけでありますが、数カ月もたつかたたないうちにおおむね達成になり、九〇%になり、幹線道路沿いでは七〇%になり、東京都区部ではもっと減るだろうということについても反論ができない状態。この法案審議の際の環境庁答弁というものは、全く国民なり我々を欺瞞したものだ。また同時に、我々が指摘したことが正しかったということを明らかに証明したことにもなるだろうと思うのですね。  その点について、大臣は当時おられませんでしたけれども、今のやりとりを聞いて責任者としてどうお考えですか。
  202. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 斉藤先生お答え申し上げます。  二〇〇〇年までの達成を予想する状況、いろいろ今承っているわけでありますけれども、全体的に申し上げますと、確かに大都市地域のNOx、それによる大気汚染は、自動車の交通量の増大、また自動車そのもののディーゼル化の進展が非常に進んでおりますので、なかなか改善がはかばかしくないという状況は認めざるを得ないわけでございます。そしてまた、はかばかしくないからといって放置はできないので、これに対しては最大限の努力をして、NOx法に基づく二〇〇〇年までの達成を図るということにつきましては環境行政の重要な課題であると認識を深めております。  特に、自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法、これに基づく自動車排出窒素酸化物の総量削減に関する基本方針を閣議決定はいたしましたが、さらにこれに基づいて現在、車種規制とか基本方針に基づく自動車単体規制の強化とか低公害車の普及促進とか、いろいろ物流、人流、交通流対策などの各種の対策関係省庁と、また地方自治体との連携も図って推進していくことがどうしても必要でありますので、そういう総合的な対策を強く推進することによって二〇〇〇年の達成を目指したいという決意を強くいたしております。
  203. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 せっかくの大臣の御答弁ですけれども、二〇〇〇年に達成できないということははっきりしたわけですよ。ですから、そういう答弁では困るわけですね。  そこで問題は、自動車の走行量を減らす、これ以外にないのですよ。このことはもうさんざん私も指摘をしてきましたから今さら繰り返しませんけれども、走行量を減らすためにはこのNOx法では不十分である、基本方針でも不十分である。自治体としては、これに基づいて計画を立てれば二〇〇〇年の達成が不可能である、明らかに達成できない、そういう立場に立ちますと、地方自治体は地方自治体の責任からいって何としても二〇〇〇年には達成をしなければならない、こういう責任と任務が負わされるわけです。そこで、自治体が自動車の走行量を減らすための具体的な施策をいろいろ提案もし、また検討もしているわけです。その点について基本的にどうお考えですか。
  204. 入山文郎

    ○入山政府委員 お答えする前に、先ほどの御指摘につきまして少し補足をさせていただきたいと思います。  決して私ども、一〇〇%達成できるというようなことを申し上げていたわけではございませんで、おおむねという言葉もいろいろな程度をあらわす言葉になるかもしれませんが、どうしても局地的に残るところも出てくるだろうというようなことは前の国会でも申し上げたつもりでございます。そういった残ったところにつきましても、私どもは、局地的な対策を十分に講じていくことによりましてより一層改善していきたいというようなことを考えているわけでございます。  それから今の御質問、東京都の関係でございますが、走行量を規制していくというような考え方につきましては、私どもも当初考えたところでございます。ただ、その具体的なことを検討いたしましたところ、これはなかなか難しい面があるということで、実効を上げるためには、かなりと申しますか相当な人手も要する、それからまた全国に関係してくることでもあるというようなことで、いわばそういう方策よりも、それぞれ専門の役所が所管の事業等に対して指導をしていく方がベターであるという結論に達して、このような形になったわけでございます。  そこで、自治体がそれぞれ独自の判断、あるいはその地域の実情に応じたと申しますか、適正なそういった施策をさらにプラスして考えていくことにつきましては、私どもは決してとめるとかというようなことは考えておりませんで、むしろそういった場合には支援をしてまいりたい、このように考えております。具体的に、私どもが一回断念したようなそういう乗り入れ規制のようなものをそのまま持ってくるのであれば、これは私どもとしては了承しかねるところでございますが、いろいろな形でべターな方法を考えるとすれば、それは結構なことであると思っておりますので、具体的な中身につきましてこれからも十分に関係の自治体と協議をいたしまして、その結果で判断してまいりたいと思っております。
  205. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 環境庁の姿勢というのは非常に無責任きわまりないですね。自分たちが法案提出して、この法律を通してもらえば二〇〇〇年達成はできます、基本方針は国でつくります、地方自治体は計画をつくってください。しかし、先ほども明らかになったように、二〇〇〇年達成ができなくなった。自治体がそれぞれの地域の住民に対する責任を遂行するために、一般に言われる上乗せ規制といいますか横出しといいますか、そういうことを積極的にやろう。それはやってはいけない、あるいは難しいということは、国が一〇〇%達成できるという確信ある提案をしているのならいいですよ。国ができないから自治体がやるんだ。自治体がやろうとすると、それは難しいとかなんとかいってけちをつけようとする。こんな無責任なことはないじゃないですか。自治体に任せなさい、自治体に。環境庁ができないこと、国ができないことは自治体に任せなさい。自治体は知恵も能力も力も持っています。このことを強く指摘をしておきたいと思います。  NOxと関連して、最後に、公健法の審議もありますから多くを触れませんけれども、ここで若干お聞きをしておきたい点がございます。  公健法が改悪をされて、新規の公害病患者が切り捨てられたわけですけれども、地域指定を行う場合あるいは解除する場合には、関係地方自治体の長の意見を聞くことになっております。前回指定地域を解除するに当たって、東京都あるいは神奈川県、そのほかもあるのですけれども、意見を聞きましたか。聞いたとすれば、どういう意見だったのでしょうか。お聞かせいただきたい。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  206. 松田朗

    ○松田政府委員 六十三年の三月に行いました第一種地域の指定解除に当たりまして、当時、公害健康被害補償法第二条の第四項によりまして関係地方団体の長の意見を聞くこととなっておりますが、先生御指摘のように、東京都の知事、神奈川県の知事さんを含む五十一の地方公共団体の長に対しまして意見を聴取いたしました。これに対しまして、六十二年の二月までに広範な意見が寄せられました。東京、神奈川あるいは大阪等の大都市圏の地方公共団体からは、幹線道路沿道等において二酸化窒素に係る環境基準が達成されていない、なお改善を要する状況にあるなどを理由としまして、慎重な対応を求める意見が多く寄せられたところであります。特に、先生御指摘の東京都、神奈川県の御意見について、結論部分だけ申し上げますと、東京都は、東京都関係の地域指定を一律に解除することは適切でないと考えるというような回答でございますし、神奈川県の方では、段階的、地域的な制度見直しをするなど慎重な対応が望まれる、このような御意見でございました。  環境庁といたしましては、このようなさまざまな内容を有します地方公共団体の意見につきまして、さきの法改正に当たりましては、その結論のみならず、背景あるいはその理由等も含めまして検討してまいりました。その結果、窒素酸化物の汚染につきましては、昭和六十一年の中公審の答申にありますとおり、民事責任を踏まえた第一種地域の制度の対象とするほどの健康被害を及ぼしているとは判断できず、指定地域をすべて解除する方針は妥当であると考え、また、幹線道路沿道等の大気汚染が改善されていないとの懸念につきましては、極めて重要な指摘だと受けとめまして、健康被害の予防事業の実施等総合的な環境保健施策を推進することとしたところでございます。
  207. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 今も報告がありましたけれども、ほとんどの自治体が慎重に扱え、あるいは反対である、疑問であるといったような意見を述べているわけです。公健法で言う関係地方自治体の長の意見を聞くというのはどういう位置づけになっているのですか。意見は聞くだけということなんですか。
  208. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  今地方団体の意見を聞くと申しましたが、その場合にはただ単純に賛否を聞くだけでなくて、その意見を尊重して政策に生かすということと受けとめております。
  209. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 意見を聞いたけれども全く取り上げなかった、尊重しなかったということだったわけですね。  同時に、六十二年の九月に改悪されたわけですが、そのときの主な理由としては、大気汚染の状況はその後全般的には改善の傾向にあり、大気汚染はぜんそく等の病気の主たる原因とは言えなくなってきている、これが改悪の主たる理由なんですよ。全くうそっぱちじゃないですか。どうしてその後全般的には改善の傾向にあるなんて言えるのですか。大気汚染がぜんそく等の病気の主たる原因とは言えなくなったなんということを言えるのですか。ますます環境は悪化しているじゃないか、大気汚染は。しかも、NOxによる大気汚染が年々悪化しているじゃないですか。だから環境基準の二〇〇〇年達成も不可能になったのですよ。この点について、今どのような反省をしておりますか。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  210. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘の六十二年に改正いたしましたとき、それ以前の十数年前の状況と比べましてSOx等改善が見られたということが一つございます。それからまた、その後の知見におきまして、現在の我が国の大気汚染の状況がぜんそくの主たる原因をなすとは考えない、したがいまして、一定要件を満たすぜんそく等の患者をすべて患者とみなして補償等を行う合理性は認めない、こういう理由で指定地域を解除したわけでございます。  しかし、先ほど自治体の長等の御意見を拝聴した中で、慎重な対応を望む、特に幹線道路沿道等のNOx等の汚染については慎重な対応をするということでございまして、それに対する調査研究を行う等、いろいろな対策をとっているところでございます。
  211. 斉藤一雄

    斉藤(一)委員 まあNOx法にしてもそうですし、この公健法の改悪にしてもそうなのですが、すべからく住民の気持ちあるいは住民の意見、住民の声を直接代弁している全国の自治体の意見を全く無視して、そして産業界や財界などの圧力に屈して環境行政を後退させてきている。理屈になっていないのですよ。公健法を改悪するときの理由は先ほど申し上げましたから繰り返しませんけれども、NOxを中心とした大気汚染が年々悪化してきている、そういうことについては今もどういう反省をしているかと言ったのですが、反省の弁がないわけです。  今後、十分これらの問題について私も追及していきたいというふうに思いますが、新しい大臣、ひとついろいろな矛盾が環境行政の中にありますので、長官みずからそういう矛盾を克服して、国民から信頼される環境庁長官としてぜひ御活躍いただきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。
  212. 原田昇左右

    原田委員長 次に、大野由利子君。
  213. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今回初めて環境委員になりました公明党の大野でございます。まだまだ不勉強でございますが、一生懸命頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  初めに、大臣にちょっとお伺いをしたいと思うのですが、環境基本法案が間もなく今国会提出をされるということで、大変期待をしているわけでございます。今現在鋭意検討中であるということが先ほどの質疑の中にも出てまいりましたけれども、今回のこの基本法案の中で、環境アセスが、関係官庁、関係行政所管省庁のいろいろな圧力と申しますか、こぞって反対しているために大変骨抜きにされているというような報道が一部にございます。この法案の中に、環境アセスメント法をつくるんだという一文をきちっと入れるなり、また何らかの形で環境アセスというものを確保するというか、担保するということが非常に大事ではないか、そのように思っているわけでございますが、この点についての御見解を伺いたいと思います。
  214. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  環境アセスのことにつきましては、アセスメント法の制定がないということの御心配だと思いますけれども、実はこのたびの基本法案の作成に当たりましても、これは中公審あるいはまたそれぞれのところから基本法制に関する答申が出されておりまして、その基本法制の答申に従いましてできるだけそのアセスに対してもこれを盛り込んでいきたいということで、今鋭意作業に入っております。  アセスメント法という単独法をつくるということも、もちろん一つのすばらしい御意見でもあろうかと思いますけれども、その前に、やはり環境影響評価の重要性とかそういう考え方を今度の基本法制の中に十分に盛り込んでいく作業をまずするということで、今取り組んでおるところでございまして、環境アセスメント法を軽視しておるという意味ではございません。環境影響評価というものは非常に大事なものでありますので、それを重視いたしておりますけれども、とりあえず基本法には、答申に基づきまして、答申精神を十分にここに取り入れることからまず始めていくということでも取り組んでおる次第でございます。
  215. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今国際社会におきまして、多くの先進国、また発展途上国におきましても、この環境アセスは法制化されているわけでございまして、今日本で行われている環境アセスは大変不十分なものでございます。そういった意味で、きちっとした法制化をしていく、きちっと環境アセスの担保が図られるようにしていくということがこの環境基本法案にあって非常に大切なことではないかと思います。どうか長官には頑張っていただきまして、環境基本法案ができても、できる前と余り変わらないような環境基本法案をつくっても意味がないのではないか、そのように思っておりますので、環境基本法案の一日も早い成立とともに、つくった以上、本当に実りある、価値のある、実効のある基本法案にしていかなければ意味がないと思いますので、どうぞ頑張っていただきたい、そのように思っております。また、期待もしておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。  それから、フロンについて質問をさせていただきたいと思いますが、去る二月二十日の新聞報道によりますと、上空オゾンの量が国内四観測地点のすべてで過去最少の値を記録した、そのような報道がありました。フロンガスの影響があらわれつつあるのではないかという見方があるわけでございますが、昨年の十一月のモントリオール議定書第四回締約国会議で、CFC、特定フロンですね、これの全廃が前倒しとなって一九九六年までに全廃されるようになったわけですが、いろいろ今代替フロンとか第二世代のフロン、HFCを使ったものにどんどん切りかえが進められているわけですが、今後少なくとも十年くらいはフロンの補充を必要とする機器が残ると見られております。また、オゾン層保護のために現在流通をしておりますフロンの回収システムの整備が大変急務ではないか、そのように思うわけでございますが、現在のフロンの年間の消費量、また二〇二〇年に原則廃止されると言われております代替フロン、HCFCでございますが、それの消費量について伺いたいと思います。
  216. 西出徹雄

    ○西出説明員 CFC、特定フロンと代替フロンの中でHCFCと呼ばれているものにつきましての現在の消費量のお問い合わせでございますけれども我が国の中で特定フロンの消費量は、御承知のように今各事業分野ごとの代替フロンヘの転換あるいは使わない技術の導入ということによりまして、規制が行われましてから段階的に減ってきているところでございますけれども、一九八九年に約二十六万トンほどございましたCFCの消費量が、九一年には約十万トンまで減少しているということでございます。それから、HCFCの消費量につきましては、これは逆にCFCからの代替が進んで年々増加しておりますけれども、原料用を除きますと大体約三万トン程度というふうに考えられております。
  217. 大野由利子

    ○大野(由)委員 念のために伺いますが、九六年以降も補充用としてのフロンを若干でも生産もしくは輸入することがあるかどうかについて伺いたいと思います。
  218. 西出徹雄

    ○西出説明員 モントリオール議定書の中では、九六年以降につきまして原則的に生産、消費をゼロにするということでございます。  ただし、議論としてまだ残っておりますのは、特定の、非常に必要不可欠であり、ほかのもので代替できないものについては、エッセンシャルユースとして例外的に認めるという項目が設けてございます。ただし、これにつきましてはモントリオール議定書の改正の議論がまだ結論を出しておりませんで、来年になってからこれについての結論を出すというスケジュールに今なっております。それによりまして九六年以降特定フロンについての生産あるいは輸入というものが決まってくるというふうに考えております。
  219. 大野由利子

    ○大野(由)委員 日本はどう結論を出していらっしゃるのでしょうか。
  220. 西出徹雄

    ○西出説明員 この点につきましては、まだ我が国でも個別の用途ごとに内容の検討を進めている段階でございまして、まだ結論というものは出ておりません。
  221. 大野由利子

    ○大野(由)委員 現在、冷媒用として使われておりますカーエアコンや冷蔵庫のフロンの回収とか再生状況はどうなっているか、伺いたいと思います。どれぐらい回収をされていらっしゃるか、再生をされているかについて伺いたいと思います。
  222. 西出徹雄

    ○西出説明員 冷媒として使われておりますカーエアコンあるいは冷蔵庫等でのフロンの回収状況ということでございますけれども、カーエアコンにつきましては、各自動車メーカーが現在、全国のディーラーに対しまして一万四千台のフロンの回収装置を配置いたしまして、その回収装置を使ってフロンの回収、再利用というものを進めているところでございます。それとあわせまして、エアコンにつきましては、代替フロンがさらに使用できるように簡単な改造をする技術の開発、いわゆるレトロフィットと言っておりますけれども、このレトロフィットのキットの開発というのが進んでおりまして、これによりますと、従来のフロン12を使っていたエアコンを新しい代替フロンであります134aを使用するエアコンに転換できるということでございますので、これによりまして、今後の補充用につきましても、従来の12の補充用の需要が大幅に減るということが可能になりますし、逆にこれまで使っておりました12の不要になりましたフロンというのは回収して、さらにエアコンの補充用に再利用できるというような形になります。  それからあわせまして、このフロンの補充用のものにつきましても、現在生産されております車の中で、エアコンにつきましては低漏れ対策というのが非常に進んできております。現在つくられております車につきましては、使用期間中事実上補充が必要ないというような非常に低漏れ化が進んできているということでございまして、これもエアコンの補充用の需要を減らすということでございますので、車につきましてはこの回収機の導入、さらにこれを拡大していくということによりまして、補充用の需要を円滑に減らしていく、あるいは効率的に利用していくという方向が出てまいるかと思います。  それから、電気冷蔵庫につきましては、これも同じフロンの12というものを冷媒用に使っているわけでございますけれども、冷蔵庫のメーカー団体でございます社団法人日本電機工業会というところがございまして、ここが中心となりまして効率的な回収システムについて現在検討中でございます。  当面、回収といたしましては、修理を行うときに、その修理を行う冷蔵庫の中から残っているフロンを回収し、さらにそれを使って再充てんするというような形で進めていくということの実施を図る計画になっております。さらに、廃棄される冷蔵庫につきましては、フロンの回収については、今後電機工業会で引き続き、この修理時の回収、再利用に続けて具体的な回収、再利用の方策を検討してまいるということでございますので、通産省といたしましても適切な指導をしてまいりたいと考えております。
  223. 大野由利子

    ○大野(由)委員 私がお尋ねしたいのは、先ほどおっしゃった、フロンが消費量十万トン、それから代替フロン、HCFCが三万トン消費をされている。これの中のどれくらいの割合が回収をされているのか、また、されるのかという具体的な目安、数字というものをお伺いしたい、それがねらいでございます。
  224. 西出徹雄

    ○西出説明員 具体的な回収の状況ということでございますけれども、これにつきましては、各ディーラーの中で今行われております回収というのが中心でございまして、これをさらにそれ以外の中古車センターあるいは整備工場にも広めていくということで進めておりまして、現段階の具体的な数字というのは私のところではまだつかんでおりませんけれども、九六年をめどに全体の廃車の中でできるだけ高い回収率を目指していくということで、今、自動車メーカーそれから関係の業者が連携を進め、具体的な計画を立てている段階でございます。
  225. 大野由利子

    ○大野(由)委員 現在日本で走っていますエアコンつきの車四千五百万台のうち、そのほとんどが現在まだフロン12を使用しているわけでございまして、五年に一回、乗用車で二百五十グラム入りぐらいのフロンのサービス缶一、二本を補充しなければいけない、バスですと十本ぐらい入れかえなければいけない、そういう状況等々があるわけですね。  今御説明を聞いていると、何か非常に漠然としたお答えでしかなくて、全然皆目見当がつかないわけですが、私はもっと具体的に、要するに九六年になるとフロンの生産が終わる、全廃をする、そのようにモントリオールで議決しているわけでございますね。実際にフロンを使わなければいけない状況がその後も残るわけです。九六年以降に補充用フロンとしてどれぐらい需要があるというように通産省は見ていらっしゃるのか、それに対してどれぐらい供給できると見ていらっしゃるのか、その具体的な数字についてお尋ねをしているわけでございます。
  226. 西出徹雄

    ○西出説明員 特定フロンの生産が中止になります九六年以降につきまして、この段階での補充用の需要ということでございますけれども、先ほどお話しいたしましたように、補充用のフロンというもの、それからカークーラーの場合にはレトロフィットというような代替フロンに切りかえていくという形での対応もございます。ここら辺のところを両方あわせまして、特定フロンの九六年廃止後の供給に合わせて対応が進んでいくということでございます。ここはそれぞれ不確定要素が現在まだ残っておりますので、具体的な数字として何万トンということにはなっておりませんけれども、その代替技術あるいは代替フロン、両方あわせて対応が進んでいくというように考えております。
  227. 大野由利子

    ○大野(由)委員 代替フロンに切りかえるとおっしゃいましたが、これも車一台でやはり数万円のお金がかかるわけですね。そういったことを考えますと、ユーザーにとってもいろいろな負担があるわけです。そういう意味で、今あるフロンを本当に最大限回収して、そしてそれを有効に活用しよう、それが大事ではないか、そのように思うわけですけれども、今フロンの値段がどうなっているかについて伺いたいと思います。現在のフロン、大体二百五十グラム入りのサービス缶の現在の値段と二年前の値段について伺いたいと思います。
  228. 西出徹雄

    ○西出説明員 フロンのサービス缶の末端での値段ということでございますけれども、二年前、これは末端での価格でございますので多少のばらつきがございますけれども、大体一缶三百五十円ぐらいというように考えております。これが現在の時点ですと、これも今の時点で地域ごとにばらつきがございますけれども、大体ならして言いますと、一缶二千円くらいというふうに見ております。
  229. 大野由利子

    ○大野(由)委員 これはもちろん地域差があるかと思いますが、現在フロンは、高いところでは二千円から五千円、場合によっては七千円くらいの値段がついている、そういう状況でございます。そういった意味で、現実にはフロン泥棒があったりフロンの密輸が行われたり、またフロンの買い占め等によって大変フロンが急騰している、そういう現状があるわけですね。  そういった意味で、もっと通産省さんが定期的にフロンの値段の実態調査を行って対策を講じるべきだと私は思いますし、もっと根本的にいかにフロンの不足というものを少なくするかというその辺の対応が必要なのではないか、そのように思うわけです。  九六年以降におきましては、回収率を相当上げても特別な対策をとらない限り生産全廃後はフロンは不足する、そういう意見がございますが、通産省さんはどういう見解を持っていらっしゃいますでしょうか。
  230. 西出徹雄

    ○西出説明員 先生御指摘のように、九六年以降廃止の時期に合わせまして一番大事なことは、やはりこの問題を広く理解していただく、各需要分野ごとに円滑にその消費を少なくしていただくということが非常に大事なことであろうかと思っております。さらにそれに加えて、先生御指摘のように、回収、再利用というのが、残された従来からの特定フロンを使った機器をうまく使っていく上で非常に大事だと思っております。そういう意味では、各ユーザーあるいは関係者に対しての回収、再利用の促進というのを私ども関係業界に対して指導を強化していきたいと考えております。
  231. 大野由利子

    ○大野(由)委員 車からの回収も行われているわけですが、車が現在年間大体廃車五百万台あるようでございますが、メーカー系列に入るのはそのうちの大体四分の一ということで、四分の一はフロンが回収されているわけですが、現在、残りの直接中古車ディーラーだとか解体業者に回るフロンについては、とても数十万円以上するようなフロンの回収機を購入できない、そういう実情があるわけですね。そういった意味で、この込もっと積極的な対策を講じる必要があるんじゃないか、そう思います。フロンの回収機につきましても通産省さんは融資をしているわけですが、最高、購入の値段の二分の一までしか融資をしないというやり方でございますので、本当に非常に小さな零細企業にとってこうしたことについて多額のお金を払っていくということもとても負担が大きくてできない、そういう状況ではないか、そのように思っております。  環境庁では、平成年度にカーエアコンとか冷蔵庫に使用される冷媒用フロンの回収、再利用を進めるモデル事業を進められるというように伺っておりますが、このことについて伺いたいと思います。
  232. 入山文郎

    ○入山政府委員 環境庁といたしましても、CFC等の回収、再利用を行うということは、オゾン層保護のために大変重要なことであると思っております。そこで、平成年度予算案におきまして、廃棄等の過程で現在大部分が大気中に放出されております冷媒用フロンの回収等を行うオゾン層保護対策地域実践モデル事業を盛り込ませていただいたものでございます。環境庁といたしましても、この事業の実施によりまして、業界における取り組みも踏まえながら、フロン等の回収、再利用を行う社会システムの構築に向けて検討を進めていきたいと思っているわけでございます。
  233. 大野由利子

    ○大野(由)委員 このモデル事業は大体いつごろまでに結論が出て、そしてその後どのような形で活用されるのか、全国の自治体に向かっていろいろなガイドラインなりいろいろな指導とかというのがその後行われるようになるのかどうか、その後のことについて伺いたいと思います。何年計画で行われますか。
  234. 入山文郎

    ○入山政府委員 大体三年ぐらいを考えているわけでございます。  内容につきましては、地方自治体に委託して実施していただくということになるわけでございまして、推進検討委員会といったようなものを設置していただく、あるいは使用機器の廃棄処理ルートの把握をするといったようなこと、それから回収装置を用いての実践、それからこの事業の評価と今後の課題の抽出整理といったようなことで成果を取りまとめて、その結果で対処してまいりたい、こう思っているわけでございます。
  235. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今、三年ぐらいでこのモデル事業を行うというお話を伺いましたが、私は、三年もかかっていたのでは間に合わないのではないか、そのように思うのですね。九六年にはフロンの生産を全廃するわけですし、今も目の前に緊急の課題としてあるわけでございますので、環境庁さん、三年とおっしゃらないで、このモデル事業は、ぜひ前倒しをして、一年ぐらいで結果をまとめて、そしてその後地方の自治体が全国的な規模でできるようにということをぜひやっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  236. 原田昇左右

    原田委員長 入山局長、しっかり答弁してください。
  237. 入山文郎

    ○入山政府委員 三年と申し上げたわけでございますが、三年たたなければ何もできないということではございませんで、途中経過を見ながら、できるところから実施をしていきたいというふうに考えております。
  238. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ぜひ前倒しを、少しでも早くお願いをしたいと思います。  それから、車の廃車手続のときに、例えばフロンを回収した証明書があって初めて廃車手続ができるとか完了するとか、その辺のシステム等も考える必要があるんじゃないか。冷蔵庫とかもきちっとフロンが回収されたということを確認してシュレッダーにかけられる、そのような粗大ごみで扱われているものに関してですが、その辺も必要なんじゃないかと思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  239. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘のようなことにつきましても、検討の中で十分に参考にさせていただきたいと思っております。
  240. 大野由利子

    ○大野(由)委員 それから、今ちょっとモデル事業のお話があったわけでございますが、地方自治体だけじゃございませんで、メーカーとか業界、また地方自治体も含めまして、フロンの回収とかフロンの回収機器をいつごろ、どのように購入するかという導入目標とか、それから回収後、フロンを処理をしてどのように再生するかとか、いわゆるフロンのリサイクルを推進するシステムというものをどのようにするかということを、大きな企業とか業界とか地方自治体、そういうところから出してもらう、そういうことが必要ではないか、そういった行政指導をしていく必要があるのではないか、そのように思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  241. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘のようなことは私どもも大変重要なことであると思っておりまして、これは環境庁だけではなくて、関係省庁とも十分に連絡をとらせていただいて進めてまいりたいと思っております。
  242. 大野由利子

    ○大野(由)委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、設備の近代化資金貸付制度、この回収、再利用の設備は必要な資金の二分の一までが貸し付けされる、そういう限度額が二分の一というふうになっているわけですね。それからフロンだけじゃございませんで、電子部品洗浄に使われておりますトリクロロエタンの削減も、ユーザーが大体七〇%が中小企業ということで、これを乾燥したり排水処理設備に、この機械の転換に大変な投資が必要なわけですね。これは、融資の制度とかいろんなことをもちろん考えられておるわけですけれども、まだまだ金利が高かったり、いろいろ今言いましたような制限が非常に強いものですから、中小企業の人たちにとってこの機械の転換には非常に大変な苦労があるわけでございますので、私はこの辺についてはもっと大胆に本当に大きくできるようにしてあげるべきではないか、もう一回金融政策を見直す必要があるのではないか、そのように思います。このことについて最後にお答えいただきまして、終わりたいと思います。
  243. 西出徹雄

    ○西出説明員 先生御指摘の特定フロンに加えましてトリクロロエタン、これは二〇〇五年から九六年までということでフロン以上に対応の非常に難しいものでございます。中小企業の使っていらっしゃる方の比率が高いということでございますので、技術の面、それから資金の面でできるだけの支援をしてまいりたいと思っております。具体的な対応をまとめましたマニュアルを作成し、セミナーという形で技術情報を流すとともに、それによって必要になってまいります設備を導入するのが容易になりますように、金融面あるいは税制面での措置を、これまでも充実させるように努力してまいっておりますけれども、今後ともこの点での対策をできるだけ中小企業に対して厚くできるように検討を続けていきたいと思っております。
  244. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ちょっと、ほか二種類質問を用意していて、お答えに来ていただいていると思うのですが、時間がなくなっちゃったもので、済みません、次回に回したいと思います。
  245. 原田昇左右

    原田委員長 草野威君。
  246. 草野威

    ○草野委員 今回の林環境庁長官所信表明に対しましてお尋ねをさせていただきます。大変短い時間でございますので、質問を一点か二点に絞って行いたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  長官環境問題につきまして非常に御熱心な方である、このように日ごろから伺っております。質問通告からちょっと外れる場合もありますし、また細かい問題にわたる場合もございますけれども、できるだけ長官から御答弁をちょうだいしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  ただいまも同僚議員の大野さんの方から、地球の温暖化といいますか、温室効果の非常に大きいフロンガスのことについて質問がございました。私もこの地球温暖化の問題に対してまずお尋ねをしたいと思いますけれども、主としてCO2の方の影響、このような観点からお尋ねをしたいと思っております。  我が国におきましては、三年ほど前から既に行動計画等をつくりまして出発をしておりますし、また昨年の地球サミットにおきましても非常に重要なテーマの一つになっておりました地球温暖化の問題でございます。長官はこの所信表明の中におきましても、「今日、地球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少等の地球環境問題は、まさしく生命の生存基盤にかかわる緊急かつ重大な課題となっております。」このように冒頭にお述べになっていらっしゃるわけでございます。「生命の生存基盤にかかわる緊急かつ重大」、このように認識を示されておるわけでございます。  そこでまずお尋ねしたいことは、地球温暖化防止行動計画についてでございますけれども平成二年にスタートいたしまして現在三年目に入ったわけでございますけれども、これの取り組み状況、そして五年度の重点目標、こんなものについてまず長官のお考えを伺いたいと思うわけでございますが、これは予算書や決算書を見ますと大体主な項目は全部書いております。そういうことではなくて、このような困難な課題に対して環境庁として今まで一歩前進をさせてきた、また五年度はこういうテーマを目玉にして頑張っていくんだ、取り組んでいくんだ、こういうものがございましたら御答弁をちょうだいしたいと思います。
  247. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 まず私の方から御答弁をさせていただきたいと思います。  先生おっしゃいましたように、平成二年に地球温暖化防止行動計画を政府として決めまして、環境庁もとよりでございますけれども関係省庁ともどもこの実現に向けて努力をしているところでございます。特に昨年、平成四年五月におきましては、この温暖化防止行動計画のいわば初年度に当たります平成年度の実施状況を取りまとめるとともに、いわばこの目標のスターティングポイントになります一九九〇年のCO2などの排出の状況を確定をしたわけでございます。  平成五年に向けましては、政府全体といたしまして対前年度化石・九%の予算を計上いたしております。金額にしますと約四千二百億円を温暖化対策、温暖化関連対策として計上しておりまして、その中の特に重点としておりますのは、再生エネルギーあるいは新エネルギーの開発導入等々のいわば省エネといいますかエネルギー関係、あるいは都市環境基盤整備促進でありますとか、あるいは交通面におきます温暖化対策、例えばモーダルシフトなど、そういった施策を盛り込んでおります。加えまして、この温暖化につきましてまだまだ調査研究すべき点はもちろんございますので、各種調査研究も先ほど申し上げました四千二百億の中に各省とも取り入れているわけでございます。  環境庁自身といたしましては、平成年度に向けましては、地方公共団体におきます温暖化対策推進のための地域計画の策定に対する補助事業をしたい。それから、この温暖化対策国民各界各層の方にやってもらうためにはいろいろな普及啓蒙も必要でございますし、そういった普及啓蒙に加えまして技術などの普及促進のためのマニュアルをつくっていく事業、さらに、まさにグローバルな問題でございますので、アジア・太平洋地域諸国におきます温暖化対策推進を支援するための事業、具体的に申し上げますと、これまでも私どもインドネシアなどを対象に支援をしてまいりましたが、島嶼国などに向けましても支援をしていきたいというようにも考えております。さらに、先ほども先生お触れになりました地球サミットで気候変動枠組み条約がサインをされまして、百五十を超す国がサインをし、早ければ年内にも発効しようという勢いでございますけれども、これに向けまして諸準備を重ねているところでございます。
  248. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ただいま草野先生から、地球温暖化問題が人類の生存基盤に非常に深刻な影響をもたらす重要な課題であるという御質問でございまして、私も全く同感でございます。詳細につきましては、ただいま地球部長から御報告がありましたとおりでありますが、地球環境保全に関する関係閣僚会議平成二年十月に地球温暖化防止行動計画を決定したところは草野先生の御案内のとおりでございます。特に、昨年のリオにおける地球サミットにおきまして、我が国も気候変動枠組み条約に署名いたしたところでございますので、今後はこの条約の早期批准に向けて一層の努力を重ねなければならないという気持ちでおります。この条約のもとにおいて、行動計画に基づく温暖化防止のための各般の施策の着実な実施、促進が図られるよう、一層努力をしてまいるという所存でございます。
  249. 草野威

    ○草野委員 長官、先日ニュースを見ておりましたら、こんなことを言っておりました。ことしは七年続きの暖冬なんだ、そして日本全国の気温をはかってみると平均で一度上昇している、また地域によっては二度上がっておるところもある、また新潟なんかの降雪地帯におきましては、平年に比べると一八%も降雪量が少なくなっておる、こんなことをニュースで言っておりました。  私もそれを見ておりまして、これは一体どういうことなんだろうか、七年間も暖冬が続くということは何か異常気象なのかどうかな、そんなことを思って見ておったのですけれども、よくわかりません。気象庁も何かよくわからないらしいのですけれども長官はこのことについてどのように思われますか。
  250. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 実は私も気にしているところでございました。特に、地球全体の温度が上がりますと、それなりの悪影響が各地に出てくるということも伺っておりますので、七年続きということに対しては私も非常に驚いております。さればといいまして、私自身にはまだ対策がございませんけれども、いずれにしても、地球保温暖化という事態が、単なる二酸化炭素、炭酸ガスの影響だけであるものかどうか、そういうことについても大いに検討しなければならない問題でありますけれども、地球温暖化という問題に対しては、地球全体で取り組まなければならない大きな問題でありますので、日本としても各国と歩調を合わせて取り組むつもりでおります。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
  251. 草野威

    ○草野委員 この地球の温暖化防止対策で、大気中の温室効果ガス、これの濃度を正確に測定する、これは非常に重要なことだと思うのですね。そこで、この温暖化予測の我が国の研究体制、これはどのように今なっているでしょうか。
  252. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 まさに地球の温暖化問題につきましても、科学的にまだ幾つかわからない点もございます。温暖化していること自体は、これは国連の専門家から成るパネルの数年にわたる研究によって非常にはっきりしていると思うわけでございますが、その範囲でありますとか、あるいは地域的な予測とか、そういったものはなかなか難しゅうございます。しかし、私ども、この温暖化問題が極めて重要な問題でございますので、できるだけ不確実性を少なくするための努力は、我が国もそれから他の国もやっているわけでございますが、しなくちゃいかぬというふうに思っております。  私どもといたしましては、まず環境庁のことを申し上げますと、環境庁の国立環境研究所の中に地球環境研究センターというのができまして、ここでこのモデルを含めまして研究を重ねているわけでございます。また、私どもといたしまして、地球環境研究総合推進費というのをもちまして、気象研究所あるいは国立の大学、そういったものを含むこの方面の我が国の第一級の試験研究機関の研究を御支援するということをさせていただいておるわけでございます。  私どもとしては、環境庁あるいは気象庁を中心に、そしてまた科学技術庁の予算ども適宜使いながら、この問題に総力を挙げて取り組んでいるというふうに思っております。
  253. 草野威

    ○草野委員 CO2の濃度の問題でございますけれども、これは長官もよく御存じのとおりの数字でございますが、ここのところ毎年一・五ppmくらいでずっとふえていっている。それから、これは産業革命前と比べますと、約七五ppmも増加をしておる、現在では三五五ppmに達している、こういうふうに言われているわけですね。日本ではたしか唯一のCO2を正確に観測するところが綾里にできているわけでございますけれども、この綾里の観測所におきますデータを見ますと、一九八七年から九一年までの五年間、この五年間で〇・五%上昇している、こういうデータが発表されております。CO2が五年間で〇・五%上昇している、この数字について、この現象についてどのように受けとめておられますか。
  254. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 CO2の濃度につきましては、先生のお触れになられました日本におきましては綾里、それから国際的にはハワイのマウナロアというところで長年にわたってはかってまいっております。そして、CO2の濃度が地球平均的にどの程度であるか、先ほど先生お触れになりました三五五ppm程度というのは、かなり科学者内のコンセンサスがあるというふうに思っております。  それで、お尋ねの〇・五%の増加でございますけれども、これはやはりCO2が温暖化物質の最たるものの一つでございますので、この増加というものはやはり地球温暖化に大きな影響を与える要因になり得るというふうに考えております。
  255. 草野威

    ○草野委員 それは、当然要因になるのは当たり前のことなんですね。だから、○・五%という数字をどのように受けとめていらっしゃるか、そのことをお聞きしたわけなんですが、後で結構ですから答えてください。  それから、二〇〇〇年以降八日本政府はCO2の排出量を九〇年水準で安定化させるという目標を立てているわけですね。そこで、二〇五〇年、また二十一世紀末までにはこのCO2の排出量というのは炭素換算でどのくらいの量になるのだろうか、これをわかったらぜひ教えていただきたいと思うのです。また、気温上昇は現在と比較してどの程度上昇すると予測をされているのか、伺いたいわけでいございます。  現在の状況を見ますと、これは気象庁のデータでございますけれども我が国のCO2の排出量につきましては、一九九〇年度で約三億一千八百万トン、これは世界におけるシェアは四・七%、このようになっております。これが全世界で見ますと、現在約五十五億トン、このようにも言われているわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、二〇五〇年、また二十一世紀末までにはこの排出量というのはどの程度までになっていくのか、もしわかったらお答えいただきたいと思います。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  256. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 私ども、温暖化防止行動計画によりますと、二〇〇〇年以降九〇年レベルで安定化するということで、そのために努力をし続けていきたいというふうに思っております。  先生のお尋ねの二〇五〇年では炭酸ガスの量はどのくらいになると思うかということにつきましては、私どもまあ形式的に、おしかりを受けるかもしれませんが、二〇〇〇年以降少なくとも九〇年レベルで安定化させるべく努力をしたいというふうに思っております。  それから、その時点での温度がどんな感じかというお尋ねでございますけれども、これは先生御高承のとおり、国連のパネルで百年で大体二度から五度ぐらい、現時点でのベストエスティメードとして百年で三度ぐらい上がる、別の言葉で言えば十年間で約○・三度Cぐらい平均として上昇するのではないかと言われでございます。したがって、二〇五〇年、今から約六十年ぐらい後ということになりますと、一度から二度ぐらいの範囲で上昇する可能性が高いというふうに感じます。  それから、日本の一九九〇年におきます炭酸ガスの化石燃料からの排出量は、先生お触れになりましたように三億一千八百万トンでございます。炭素量として三億一千八百万トンで、これが世界におけるシェアは四・七%程度でございます。私ども、世界におきます経済活動のGNPが大体一四、五%ということを考えますと、経済活動としては一四、五%の経済活動を世界でしている、炭酸ガスの量としてはそのうち五%足らずということでございますので、かなり省エネ型といいますか、環境保全型の社会をこれまで築いてきたというふうに考えておりますが、一層こういった状況を維持したいというふうに思っております。
  257. 草野威

    ○草野委員 今お話がございましたけれども、今から一万八千年前、いわゆる氷河時代、このときと現在と比べてみますと、地球の温度というのは今より五度しか低くなっていない。今の御説明、お話によりますと、百年間で二度から五度ぐらいふえるのではないか、こういうお話でございました。この百年間で例えば三度としても、これはもう大変な気温の上昇になると思うのですね。一万八千年前の氷河時代と比べて五度の違いです。これから百年間で三度も上昇するであろう、今こういうお話だったのですね。こういうことを考えてみますと、これはもう本当に、文明が起こって以来、こういう前例というものはただの一回もないことである、これは大変な事態だと思うのです。  そこで、長官にお伺いしたいと思いますけれども、一度の気温上昇というのはどういうような意味があるのだろうか。私も実感としてよくわからない。このことにつきまして、長官どのようにお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。
  258. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 科学的あるいは技術的にこうだと言い切る自信が私にはございませんけれども、ただ、通俗言われるところでは、例えば海水がもっと高くなってくるとか、それからまたそれに伴って今度農作物が大きく変動してくるとか、自然環境の変化が大きいものですから、それに伴って当然我々の生活に非常に重要な影響を与えてくるというように感じております。
  259. 草野威

    ○草野委員 この温暖化を正確に予測するということは非常に難しい面がたくさんあろうかと思いますね。例えば、きのうの天気予報を見ておりますと、あしたは晴れマークということだったのです。けさ、雨が降っているわけです。ことしの夏の温度はどういうふうになるだろうか、気象庁からそのうち発表になると思いますけれども、これ一つとっても非常に困難だ。まして二十一世紀のことについて予測をするということは、私は大変難しい面がたくさんあろうかと思います。  そこでお尋ねしたいのですけれども、そういう幾つかの原因があると思いますけれども、気候予測モデルについて、日本の研究者が世界と比べると極端に少ない、このように言われているのです。この日本の研究者の現状というのは今どういうふうになっているか、おわかりでしょうか。
  260. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 確かに、気候モデルをつくりまして、例えば将来どのくらいの温度上昇ができるか、それから地域的にどういう分布をするかということを予測しますためには、例えばスーパーコンピューターと言われますような大規模なコンピューターよって相当程度演算をしなければならないというふうに考えております。そういう面で、我が国予算面で過去において立ちおくれがあったということは確かだと思いますが、現在、気象研究におきましても、また私ども環境研におきましても、スーパーコンピューターを取りつけまして、それぞれ適性に応じました演算などをいたしております。先ほど申し上げましたように、この地球環境、特に温暖化問題の科学的な不確実性をできるだけ狭める努力を続けたいと思っております。今のところ、スーパーコンピューターなどの装備もできましたので、私ども、国際的に見てそう遜色のない仕事ができるのではないかというふうに期待をいたしております。
  261. 草野威

    ○草野委員 国際的に比べて遜色ない、それは非常に結構なことだと思いますけれども、実はそうでもないのですね。確かにスーパーコンピューターの面においては、日本の資金力に物を言わせて、これはかなりいい線までいっているのではないかと私は思います。しかし、研究者の体制はどうなっているかといいますと、これは世界と比べてかなり立ちおくれている、このように言われております。アメリカのある研究所の資料によりますと、米国では三百人、それからイギリス、ドイツ、オーストラリア等では六十人以上、それに比べて日本の場合は、専門の研究者二十人弱だ。これが現状なんですね。そんなことで私もお伺いしたわけでございますけれども、まあ遜色のない体制で取り組んでおられるということで、それは結構だとは思いますけれども、少なくとも研究者の数の面からいけば、二十人もいない、これがどうも現状らしいのですね。そういう面で、気象科学の面というところで大きな立ちおくれを示しているのではないか、このように思います。  それから、この温暖化予測の不確実性、こういうものを払拭するためには大変長い多くの時間が必要だろうと思います。現在、我が国を初めアメリカ、フランス、イタリー、オランダ、そういうところで国際共同研究しておりますけれども、成果が出るまでには三年くらいの歳月と二千二百二十万ドルの資金が必要である、このように言われているわけでございます。しかし、この研究者というのは一朝一夕には育つものではないと思います。  そこで、長官にお尋ねしたいと思いますけれども、先ほどからるる申し上げましたように、この地球温暖化対策というものは緊急かつ重大な問題だろう、これは長官の御認識も私もそのように思っているところでございます。いずれにいたしましても、不確実性というものを一日も早く払拭していかなければならない、そして正確な予測のもとに総合的な対策というものを立てていかなければならない、このように思います。今の研究者の問題、この問題につきまして長官の御所見を承りたいと思います。
  262. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 果たして草野先生の御質問に答える答弁になるかどうかわかりませんけれども、私は、基本的には日本の現在の価値観が非常に変わってきているということが言えると思うのです。つまり、物に対する執着といいますか重さといいますか、そういう形で、人間がいかに個々の持っている心を大事にするかということよりも、むしろ物に対する重みという方が、これを大事にしてしまう価値観の転倒が根本にあって、そのために一つのことを研究していくということがなかなかしにくくなってきている。つまり、研究しておったって生活は楽ではない、それよりはお金もうけした方がいいといったような形の価値観が、つまり経済活動優先の価値観がすべてのそういう科学技術の研究を低下さしていると私は思っております。  しかし、こういうことは今言っても解決の道にはなりませんけれども、やはりそのような人間の生活のあり方から変えていきませんと、そしてもっと真理というものをとうとぶ民族になりたい。ですから、研究の成果を大事にするという民族精神というものを大きく高揚していく必要があろうかと思います。そういうことから逆に考えていけば教育の問題にぶつかるわけでありますけれども、そういうことを克服しないと、やはり経済的に優位に立つ、物の面で、物質的に優位に立つ、それがいい価値だということになっていくとなかなか研究は進まない。ですから、この辺で日本も、世界的に国際的に物事を考え行動しなきゃならぬ時期に入ってきたものですから、それなりにやはり価値観を改めて、そして研究活動にも誇りを持てるような、そういう形に持っていけたらと思っております。
  263. 草野威

    ○草野委員 大変貴重な長官の。御意見をありがとうございました。  時間も来ましたので、最後に一言だけ申し上げたいと思いますが、地球の温暖化という問題は生態系にも非常に大きな影響を持っているわけでございまして、温室効果気体の動向を正確に把握することが極めて重要である、このように私は思っております。  先ほどもちょっと触れましたけれども、岩手県の綾里の気象庁の観測所におけるCO2濃度の観測、これも一九八七年から始まったということで、わずか六年しかたっていないわけでございます。昭和三十年代、四十年代からこのCO2の問題が我が国でも大きく取り上げられてきたわけでございますけれども、しかし、正確な観測所ができたのはわずか六年前、しかも世界で二十番目である、アジアでただ一つである、こういう状況でございます。  こういうことを踏まえて、これから地球温暖化問題に対して我が国が国際貢献という面からもやはりリードしなければならない。そういう面におきまして、先ほど研究体制の問題を一つだけ取り上げましたけれども、こういう問題を含めて環境庁としても大いに努力をしていただきたい、このことを要望いたしまして、質問を終わらしていただきます。
  264. 原田昇左右

    原田委員長 次に、寺前巖君。
  265. 寺前巖

    寺前委員 大臣所信にもございましたが、ことしの六月に北海道釧路でラムサール条約の第五回の締約国会議が開催されますので、三十分という時間でございますので、絞ってお聞きをしたいというように思います。  私も改めてラムサール条約を読んでみたんです。前文にこう書いてあります。    湿地が経済上、文化上、科学上及びレクリエーション上大きな価値を有する資源であること及び湿地を喪失することが取返しのつかないことであることを確信し、    湿地の進行性の侵食及び湿地の喪失を現在及び将来とも阻止することを希望し、 ということが書かれておる。一九八七年のレジャイナ会議や一九九〇年のモントルー会議での勧告や指針でも、湿地の果たす役割や湿地の賢明な利用について決められているわけです。  そこで、モントルー会議を見ますと、湿地の果たしている役割や湿地の賢明な利用に基づいて、具体的に湿地基本政策を策定せよ、特定の湿地を賢明に利用することの両方が必要である、こうされているわけです。九〇年のモントルー会議の勧告に基づいて日本としては湿地基本政策に相当するものを策定しているのだろうか。策定していなかったならばいつまでに策定しようというのか。大臣の所信にわざわざ書いてありましたから、大臣、どういうふうにお考えになっているのだろうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  266. 大西孝夫

    ○大西政府委員 大臣のお立ちの前に、私の方から行政官の立場でまずお答え申し上げたいと思います。  先生御指摘のとおり、モントルー会議において、そういう施策といいますか、言うならば国内での設定という課題が出されているわけでありますけれども先生ももう御承知のとおり、実は、湿地という言葉が、その定義にもありますように、極めて広い概念でございまして、どちらかといえば、日本語で言う湿地という概念よりも、潜水域とでも言った方がいいでしょうか、海から湖から川から水田から一緒に含む概念でございますので、そういうものを総称した形での湿地対策というのを特に従来意識したことは正直言ってございませんし、また、今後そういう形での政策一つにまとめるということの持つ意味というものは、まだ十分検討してみる必要があると思います。  ただ、具体的にはむしろ、そういう全部総称した形の湿地に対する対策をポリシーとしてまとめ上げるということの前に、環境保全でありますとか自然環境でありますとか、あるいは農業政策もそうでございましょうし、いろいろな分野め法律がそういう湿地を含む形をとりながら総体として一つの湿地政策というのができているというふうには考えております。ただ、今その湿地政策がラムサール条約という目から見たときの政策体系として十分かどうかという問題は、まだ今後検討してみる必要があろうかと思っております。
  267. 寺前巖

    寺前委員 私は、現実的に、日本には自然環境保全基本方針というのがあるけれども、大量の湿地が消滅をしているというのは客観的事実だろうと思うのです。  そういうことを考えてみると、今せっかくこのような国際会議方向づけを出しておられるのだから、積極的に検討してもらう必要があると思うのですが、モントルー会議の勧告附属書にはこういうのがあるのですね。「ラムサール条約の賢明な利用という概念を実行するための指針」というのがあって、そのa項では、湿地に影響を及ぼすおそれのある事業計画に、その立案時点から環境上の評価が組み込まれること、d項には、国際的に重要であるとされた湿地をラムサール条約リストに登録指定すること、そのほかe項では、ラムサール条約リストの指定地であるか否かにかかわらず、湿地に自然保護区を設定することなどなど、なかなか細かくその保全方法の問題としての提起をしているわけです。  六月に締約国会議を開こうということに日本がなってきているのですから、そこで私は、日本としてこの際に、干潟などについては今まで全然なかったのだから、重要な干潟を含めて新たに何カ所の湿地を登録しよう、新たに何カ所自然保護区を設定しよう、何かプランをもう既に検討に入っておられることだろうし、どういうふうにしようとしておられるのか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  268. 大西孝夫

    ○大西政府委員 お答えを申し上げます。  まず、私どもが現在、ラムサール条約に基づきまして湿地を登録する際の考え方として持っております基本的な方針を申し上げますと、一つは、水鳥類の生息する国際的に重要な湿地をもちろんまず対象にいたすわけでありますし、国設の鳥獣保護区特別保護地区でありますとかあるいは国立公園の特別保護地区というような地域指定で将来にわたって自然環境保全が既に図られている場所というのを一応まず候補として選びまして、そういう場所であって地元の自治体等が明確に登録する意向を表明したところから逐次登録をしていきたいというふうに考えておるわけであります。  今回、六月に釧路で会議が開かれる機会に、ラムサール条約の考え方の重要性ということを改めて私ども自身も国民の各層各界の方々に御理解いただくようにいたしてまいりたいと思いますし、その会議そのものがそういう意味で大きなインパクトを与えてくれるものと期待はしておるわけでありますが、その会議が開かれるわけでありますので、それを一つの機会として、この際湿地登録地をできるだけ多く追加をいたしたいという考え方をまず持っております。  ただし、先ほど申しましたように、やはりそういう条件の備わった場所ということがそう幾つもあるというわけではありませんので、とりあえず私ども客観的に見て国際的に重要な湿地と見られるところ、それで候補になり得る場所をまず選びまして、そこの地元に対して登録する意向がないかどうか、登録したらどうかという働きかけをしながら、少しずつその可能性のあるところについて今最後の調整を図りつつあるところでございます。この最終的な回答がまだ得られておりませんけれども、少なくともこの会議を前に数カ所については登録まで持っていけるのではないかど今期待をいたしておるところでございます。  しかし、今後私どもとしてこの湿地を追加登録してまいります場合に、やはり一つは地元の積極的は理解と協力ということが不可欠でございますので、まずラムサール条約の考え方、湿地の重要性ということを改めてよく周知徹底をした上で、理解を得ながら逐次その登録地がふやせるように努力をいたしてまいりたいと考えております。
  269. 寺前巖

    寺前委員 私は気になって仕方がないのが、この前長官にもお話をした干潟なのですよ。一つもないのですね。これは干潟の問題というのは軽く考えておられるのだろうか。これは私、自治体任せや、それこそ建設省やら何やら、産業界などのいろいろなことからすぐに埋め立ててしまうという風潮が現実にはずっと歴史的に起こってきているので、これは積極的に掘り出していかなかったらできない話だと思う。  干潟の分野で、新しく環境庁の方から登録を提起しようというふうに思っているのは何カ所あるのでしょうか。御説明いただきたいと思います。
  270. 大西孝夫

    ○大西政府委員 お答え申し上げます。  今、国内で干潟として非常に重要な役割を果たしているものがやはりたくさんありますけれども、私どもの立場といたしまして、先ほども申しましたように、まず国際的に重要な地域であって、例えば国設の鳥獣保護区に指定する等、そういう措置が講じられるところがまず候補なのでありますが、これまで私どもがいろいろ部内で検討いたしておる中で、そういう条件を満たしておる干潟というのは非常に少ないことは事実でございます。  確かに従来、干潟の持つ自然環境上のみならず大きな価値というものを、あるいは日本国民はやや低く見過ぎてきたのかもしれませんし、このラムサール条約の締約国会議を開くことが、もしそういう点についての反省があるなら反省をする大きないい機会になろうかと期待もするわけでございますが、当面の湿地登録という観点で申し上げますと、先ほど申し上げましたような要件が整っておりますところは、現時点では谷津干潟一カ所でございまして、その谷津干潟は何とか登録をするようにしてまいりたいと思っております。また、そのほかの地域については、今後引き続き、よく地域の状況を見定めながら、関係者の合意も得つつ、何とかさらに追加登録できるような方向でいろいろPR、働きかけ等はしてまいりたいと思います。
  271. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 ラムサール条約に基づく湿地の登録に当たりましては、寺前先生案内のとおりでございまして、大きく分類しまして三つの条件ということに相なろうかと思います。その一つは、水鳥類の生息する国際的に重要な湿地であること、将来的に考えてもそういうふうになる可能性のあるところでいいと思いますが。それから、国設の鳥獣保護区あるいは特別保護地区等の地域指定によって将来にわたって自然環境保全が図られる場所であるということ、それから三番目は、地元の自治体が明確に登録する意向を表明するということ、三つであります。  そこで、今時に先生は干潟の件につきまして非常に心を砕かれておるわけでありまして、大変ありがたいと思います。今局長の方から谷津干潟という名前が出ておりますが、これは千葉県でございます。千葉県の場合ですと、千葉県もそれから地元の習志野市もそれについては異存がなさそうでございますので、唯一の干潟かなという感じがいたしますが、あとは局長答弁したとおりでございます。
  272. 寺前巖

    寺前委員 去年十月に大津市や釧路市で開催された湿地の保全と賢明な利用を目指してのアジア湿地シンポジウムというのがございました。国際水禽湿地調査局事務局長のマイケル・モーザー氏が基調報告をやっていますが、彼が、  保護区に指定することは基本的に重要なことではあるが、すべての湿地に賢明な利用の原則が適用されなければ、湿地保全が前進したとは言えないだろう。湿地における自然植物の刈り取りや、魚類、鳥類の採取という営みは、持続可能な形で継続しうる。しかし、湿地の消失を含む大規模開発や、湿地における水文学的崩壊、または栄養塩循環の破壊は、一般に湿地機能を下落させ、持続不可能な状態を引き起こす。これが、賢明な利用とそうでないものとの違いであるということを言っています。  私は、これはなかなか意味のある話だと思うのです。大規模開発というものが本当に自然のそういう循環をつぶしていっている。だから、私は先ほどから干潟の分野でどうなっているということを聞きましたら、一カ所だけお名前を挙げられたけれども、私は幾つか回りました。名古屋のところの藤前干潟、それから三番瀬の問題、幾つか九州の方も行ってみました。みんな結局埋め立てをやって、産業的な計画のもとにそれがつぶされていっている。マイケル・モーザー氏が基調報告で言っているように、保護区に指定するということの持っている意味というのは、つぶされていっている、大開発のためにいかれていっている。だから、そういうことに対してメスを入れていかなければいかぬのじゃないだろうか。  例えば名古屋の場合で言うならば、環境庁自身もあそこに埋め立てをやるに当たっての意見をちゃんと言っておられますよ。私、現地へ行ってみましたら、IWRBが湿地生態系の保全を図るためラムサール条約の指定対象候補地のトップに挙げられているのですね。日本国内有数の干潟である。シギや千鳥など年間最高九十種以上、約六万羽の渡り鳥の日本最大級の渡来地の一つである。名古屋市は、環境保全必要性を認め、ごみ埋立処分場計画を縮小するという。それでも依然五十二ヘクタールの埋め立ては、大型シギなど干潟の全面をえさ場としている渡り鳥や干潟の生態系にとって決定的なダメージを与える。たとえここを埋め立てしたところで六年余りで埋め立ては終わってしまう。伊勢湾最後の生息地を永久に失うことになる。  私、あそこへ行ってみたら、名古屋市自身がちゃんと観察地なんかを設けて、なるほど考えさせられるなど、自分自身行ってみて思いますよ。 そうすると、国の方から積極的に、埋立計画を変更させてまで我々がやらなあかんでということを言い出さなかったら、これ以上進まぬのじゃないだろうか。同じことを、三番瀬へ行ったときにもやはりそんなことを感じました。  三番瀬の場合だったら、千二百ヘクタールの広がりを持つ浅瀬で、東京湾全体の自然形態を支える役割をして、東京湾の水質浄化と首都圏域の環境保全にも大きな影響を及ぼしている。世界的な渡り鳥の中継基地として、あるいはまた、私わざわざあそこのみそ汁をよばれましたけれども、本当に貝の分野から考えてもなかなか貴重なところやなということを、直接行ってみると強く感ずるわけです。  ところが、港湾審議会では、千葉県から事業認可申請されていた京葉港二期埋立計画承認だ。建設省認可による市川二期計画も含めると、三番瀬の三分の二に当たる約七百四十ヘクタールもの貴重な浅瀬が消滅することになっている。こんなことになったらえらいことだなと、つくづくこういう問題を私現地へ行ってみると思うわけです。  干潟というのは、日本にそんなにたくさんあるわけじゃないのに、その限られた分野で、しかも東京湾全体でいえば非常に重要なところなのに、あるいは伊勢湾全体でいえば非常に重要なところなのに、せっかく残ってきているものを、これでラムサール会議に出る気になれるな、正直に言って私そう思いますよ。  大臣が所信でこう言われた。「あらゆる生命の生存基盤としての有限な環境を守り、これを次の世代に引き継いでいくことは、現在に生きる我々に課せられた使命」である。私、そうだと思うのです。そうとすると、諸現象でもっていろいろ言われるから、意見だけは言っておきますけれども後はよろしくではあかん。胸を張って、大臣は副総理格がこの大臣の仕事をせないかぬとおっしゃったけれども大臣のそういう気迫でもって、先ほど局長の話を聞いていったら、しかしこれからもほかすんじゃないというお話もございましたから、この際、ラムサール条約をてこにしてこの干潟についていろいろな建設計画を再検討してもらう、大臣自身が打って出られるということがやれぬものだろうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  273. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 ただいま先生、三番瀬についての例をお引きになって御質問なさいましたので、この関係について若干御答弁申し上げたいと思います。  私ども、昨年の三月二十五日に開かれました港湾審議会におきまして、東京湾が限られた貴重な公共の空間であって、内湾としてかけがえのない自然環境であるという見地から、環境庁意見というものを出したわけでございます。この環境庁意見に基づきまして、港湾管理者としての千葉県からは、環境上の価値について港湾管理者として十二分にこれを認識しているという回答をいただきまして、県におきましては、今後環境会議ということで、林雄二郎先生を会長として組織している環境会議、またそのもとに設立されている環境調整検討委員会で十分調査検討を行うということになっているようでございますので、私どもといたしましては、その推移を見守っていくということとしているわけでございます。  なお、この土地につきましては、五十ヘクタールを超える埋め立てということでございますので、公有水面埋立法に基づく主務大臣認可の際の環境庁長官の意見を求められるという機会もさらにあるわけでございます。そこで、この意見を求められる場合には、千葉県における先ほど申し上げましたことによってなされます調査検討結果が計画に一体どのように反映され、また三番瀬の保全にどのような配慮が行われているかということを十分審査いたしまして、また必要に応じて意見を述べるということをいたしまして、環境保全上の観点から適切に対処してまいるということを考えているところでございます。
  274. 寺前巖

    寺前委員 私は、そのほかいろいろ回ってみたんです。渡良瀬というのは、これまた大きな東京、関東一円の水がめの集中点にもなりますわな。あそこへ行ってみたら、アグリメーション振興財団というのが建設省と一緒になってゴルフ場をつくるとか、いろいろ計画が出ていますわ、書いたのが置いてある。これはまたこういうことを考えるのかな。首都圏の水不足解消と称した貯水池があそこにありましたわ。  三千三百ヘクタールの渡良瀬遊水池は、日本最大級の内陸湿地として、二百種類近くの野鳥、絶滅しそうな生物がおりましたわ。特別に建設省の人が案内してくれましたら、水ための真ん中の道を走ると、だあっと水鳥が道路に出ておりましたわ。なかなかいいな、このまま保存できぬものだろうかと思っておったんですが、計画としてはゴルフ場やその他のものがずっと考えられるし、千ヘクタールの空港の建設もそこには考えている。待てよと私は正直に思うのですよ。  こういうような計画を、日本最大級の内陸湿地である渡良瀬をこんな大規模開発に持っていったらどうなるんだろうか。これは不安でかなわない。大臣は千葉県選出で、先ほどの三番瀬の話じゃございませんけれども、胸を張って、東京湾内の浄化の面から考えても、私はぜひとも筋を貫いてほしいと思うし、この渡良瀬の問題だって、気安くそういう開発方向に持っていったらあかんよ。その目で、一回体でもって見てほしいと私は思うんですが、いかがですか。
  275. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 同じ千葉県でも選挙区が違っておるものですから、行ったことがないのですけれども、今寺前先生からそのようにおっしゃられましたので、国会審議が一段落した後で時間をゆっくりとりたいと思っております。
  276. 寺前巖

    寺前委員 ラムサール条約は六月ですから、国会が終わってしまう。やはり出ていくときに気迫を持ってもらわないかぬから、ぜひそれまでに見てほしいものだと身をもってお願いしたいと思います。
  277. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 私の舌足らずで大変恐縮でございました。国会が終わるというのは、これから環境庁、御案内のように、最大の法案を議会の場で御審議をお願いする時期が間もなく訪れようと思いますので、そういう大事業が済んだ後で、国会の開会中でもそれが済めばまた時間がとれると思います。
  278. 寺前巖

    寺前委員 それで、こんなこと言っておるともう時間が延び延びになってしまいましたけれども、この間も読んでおりましたら、こういうことを釧路湿原国立公園管理事務所にお勤めの方が言っておる。しかしながら、わが国の登録湿地は、加入後十二年を経過し、アジアで初の締約国会議を来年釧路に迎えようとする現在においてもわずか四箇所を登録するに留まっている。わが国において湿地登録がこのような低いレベルに留まっているのは、登録のプロセスが鳥獣保護区をベースとした地元要請主義で行われて来たためであることを指摘しなければならない。地元要請主義から脱却して登録湿地のネットワークを拡大し云々、こうこの人は言っておられる。  私、本当にそう思うわ。地元中心主義から物を見ていったら、本当につぶされていく。現実につぶされてきたんだよ。だから、私は、環境庁の占める位置は非常に大きい。ぜひとも早急に湿地基本政策保全計画や登録湿地の指定などガイドラインをつくって、大規模開発計画があっても、日本有数の貴重な湿地は保全する、積極的な態度で臨んでいただきたいということを最後に要望しておきます。  私の京都のすぐ横、近畿では水がめと言われるのは琵琶湖になるわけですが、ここは知事さんを先頭にして守ろうと言っておられる。かつては、あそこへ家庭排水を流すのも、燐が入っているものを流さないようにしようと、それぞれの排水まであの水がめをめぐっていろいろ言われてきたものですよ。ああいう知事さん先頭になってきたせっかくの気持ちを生かしてもらって、こういうものこそ登録して、積極的に胸を張ってラムサール条約に参加できるようにやってほしいものだと思いますが、それはどうなっているんでしょうか。
  279. 大西孝夫

    ○大西政府委員 お答えを申し上げます。  琵琶湖につきましては、今先生も既にお述べになりましたように、地元知事さん先頭に大変これを大事に守っていこうという姿勢でございまして、北部のヨシがたくさん生えているところについてはヨシ群落保全条例などもつくって水質保全に努めてまいろう、こういうことであります。  それで、そのラムサール条約の登録につきましては、まだ現在、地元の関係者との調整に入るという意味の声明を出されたばかりでございまして、今その調整が進んでいると思いますが、その調整を待って、正式に私どもの方にその意向が上がってくれば直ちに適切に対応いたしたいと思っておるわけでございます。
  280. 寺前巖

    寺前委員 ありがとうございました。
  281. 原田昇左右

    原田委員長 次に、中井洽君。
  282. 中井洽

    中井委員 まず最初に、おくればせでありますが、大臣の御就任を心からお喜び申し上げます。  また、環境基本法という本当にここ十数年で一番重要な法案一つが準備をされている時期の環境庁長官であります。一層御精進をいただきますよう、冒頭お祈りを申し上げます。  私も、もう十数年この委員会に所属をさせていただいておるのですが、一昨年ぐらいから、自民党内あるいはいろいろな団体、私ども政党も含めてでありますが、環境行政のあり方、特に現在の環境庁という存在をもっともっと幅広く力のあるものにしていく、それが地球環境あるいはこれからの日本環境行政の推進に大変なプラスだ、こういうことで議論が始まり、環境省への昇格、大運動、大合唱が起こったのが去年でございます。私どもは、行政改革ばかり言ってきた政党でありますが、これについては積極的に賛成しようじゃないか、こういう旗を上げてまいりましたが、何かいつの間にかうやむやと消えてしまった、議論が起こってこない、こんな感じがいたします。  同時にまた、政府・与党内ではひそかに環境税の勉強もされておると聞かしていただき、私も一、二度委員会で質疑をさせていただきました。これがいつの間にか、財政難ということ、不景気ということもあるのかもしれませんが、どこへ行ったかわからない状況であります。  一方、アメリカではクリントン政権下で、過日から予算教書的な発表の中でエネルギー税というものが出され、そしてそれらが環境対策に使われる。ゴアさんという環境で有名な副大統領もおられますが、アメリカも本格的に取り組むのか、こんな思いを抱いております。  そういう意味で、まず大臣に、環境省への昇格、あるいは環境税ということを含めた財源等のあり方、これを大臣はどのようにお考えであるのか、お聞かせをいただきます。
  283. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 環境税というお話が出ておりましたことから、その辺について私から若干御説明申し上げます。  私ども、今環境基本法の検討作業をやっている最中でございます。その場合におきまして、私どもは、これからの環境保全型社会をつくっていくためにはどういった政策手段が必要なのであろうかというようなことから、今までの規制的手法のみではどうもうまくいかないのではないか、あらゆる手法を使っていく、そのためには、例えば環境に悪いものが市場、マーケットの中で相対的に高くなるような政策手段を使っていくということも必要ではなかろうかということを調査研究してまいったわけでございます。中公審の答申におきましても、そういったような考え方ということが有効であるということから、基本法に的確に位置づける必要があるというような御答申をいただいたところでございまして、そういった方向考えてこれからの環境政策を進めていく必要があるのではないかというぐあいに考えているところでございます。
  284. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 中井先生お答え申し上げます。  環境庁を省に格上げしてはどうか、こういう御意見だと拝聴いたしますが、御案内のように、環境行政、今非常に大きく転換期に入っております。最初環境庁が生まれたころは、ちょうど今から二十一年前、このときにはやはり産業公害、これが大変な激増をしておりましたときだけに、これに対してどうするかということから環境庁が誕生したわけでありますけれども、そのときには、環境庁という字が示すように、いろいろな条件、いろいろな状況、いろいろな事情を極めて謙虚に耳に入れて、そしてこれを大事にしていくという意味で庁という字があるわけでありますけれども、それを今中井先生は、この時期に省にすべきではないかという御意見でございます。  ただ、私どもとしましては、省への昇格という問題につきまして、今度は国全体の行政組織のあり方にかかわる問題ということになりますものですから、現状におきましては、現在与えられている庁の保中でその使命を一生懸命果たしていくということで、庁の組織体制の充実強化ということに積極的に取り組むということでその使命を果たそうということでおるわけでございまして、私ども、今直ちに省への昇格ということに動くということは、国全体の行政組織の中から非常に無理があろうかと思いますけれども、お言葉としては十分に受けとめたいと思っております。
  285. 中井洽

    中井委員 次に行きます。  水俣病問題について聞きます。  三月に、私どもも注目をいたしております判決が出るわけでありますが、現在この和解協議のところもございます。これらの中で、国が実質的に和解に関与しない、拒否をされておる、この理由を端的に言ってください。
  286. 松田朗

    ○松田政府委員 お答えいたします。  今先生御指摘の和解協議でございますが、これは平成……
  287. 中井洽

    中井委員 済みません、出ない理由だけ言ってください。お出にならない、和解協議に応じない理由だけ言ってください。
  288. 松田朗

    ○松田政府委員 これは、さきの国会あるいは今国会にしても、大臣その他の方々から、和解には平成二年の国の見解に基づいて応じることができないというふうに申し上げているところでございます。
  289. 中井洽

    中井委員 現在までチッソが患者さんの補償やらあるいは県債の償還やら漁業補償やらで払ったお金は幾らになりますか。
  290. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 まず最初に、チッソが患者に対する補償金を熊本県を通ずる県債として転貸債を受けて資金融通を受けた、熊本県が発行したチッソ県債は、平成年度までで五百五十八億五千六百万、もう一つ、あそこで埋立事業をやっておりますが、いわゆるヘドロ県債と申しておりますが、熊本県が一括して公共事業を行い、それを割賦弁済でチッソが支払うべき金額、その和が、年々ございますが、その分が同じく平成年度までで二百九十七億二千三百万、合計いたしますと八百五十五億七千九百万というぐあいに相はっております。
  291. 中井洽

    中井委員 それは補償金入っているのですか、患者さんに対する補償金。
  292. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど申し上げました患者県債というものの対象額でございますが、これは、年々患者さんに支払います医療給付費それから年金相当額、さらに新たに認定された場合の一時金というものが対象となっております。
  293. 中井洽

    中井委員 今まで払った金額が一千八億、それから県債で償還をしたのが三十八億、それから公害防止事業団の償還で二十三億、これらのこの二つの県債と負担金の利子が二百九十五億と百六十二億、これだけチッソが払っていること、間違いないですね、ちょっと数字と話が違うような気がしますが。
  294. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 失礼しました。今私が申し上げましたのは、患者に対して支払った金額ということではございませんで……
  295. 中井洽

    中井委員 さっき聞いたんだから、二回も三回も同じこと言わないでやってよ。患者に対して幾 らで、県債幾らでと聞いたんだから。
  296. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 先ほど申し上げました数字は、患者に支払う県債として発行した額についての数字でございます。患者に支払いました金額については、ちょっと資料探しますからお待ちください。
  297. 中井洽

    中井委員 いいですよ、私が言うた数字で間違いない。質問聞いてくださいね、時間ないですから。  大臣、チッソは、これは当たり前なんですよ、払って当たり前。しかし、一千八億、患者さんの補償で払っている、漁業補償も含めて軌そして県債の借り入れが五百五十九億、既に金利だけで三百億近く払っている。そして、公害防止事業団の方でも三百四億借り入れて二十三億返して百六十二億利子払っている、こうなっています。  ただ、現実のチッソ、企業としてどうなんだろう。随分頑張っていただいて、今もう従業員の九五%はチッソが責任あった当時以降から会社へお働きになった方、賃上げもベースアップもボーナスも我慢をしながら必死で労使でやっておる、それでも大体百億も利益上がらない、六十億前後だ、こういうことであります。この負担だけでも大変なことでありますが、全部の判決が和解ということになれば膨大な金額が要る。これに国が乗り出さないということになったらやれるはずありません。  私どもは、かつて十数年前、松尾鉱山視察に行きました。去年もこの委員会、松尾鉱山見に行きました。何でだ。廃業しちゃった、後の鉱害垂れ流しっ放しだ、それは国で金出しましょう。それは、理屈はPPPで責任者が払う。しかし、現実に払えるのかどうか、こういうことを考えたら、私は、もうそろそろ国も腰を上げるタイミングだと思います。  この話を聞くたびに私はいつも思うのですが、かつて私、郷里で、新興住宅街でお子さんが野良犬にかみ殺されたという事件があり、親御さんが弁護士さんと来られて、本当に涙ながらに、県を訴えるつもりはない、しかし何といっても気持ちがおさまらない、県にも責任があると思うから知事さんに言ってくれ、もうとにかく何でもいい、形だけで、補償金欲しい、それによって気持ちが慰む、こういうことでしたので、知事さんに頼みました。こんな簡単なことはない、こう言いましたら、返ってきた返事が、裁判してくれ、こう言うのですね。どうして、こう言うたら、いや、今までに事例がないから、判決で金額決めてくれたら出す、こう言うのです。これがお役所の考えること。  そろそろ役所のペースで、わかります。国が責任あるとかないとか、もういろいろなことは私も経過わかります。しかし、もう役所のそういう理屈で考えるんじゃなしに、お互い、各党あるいは大臣もそろって、政治家として決断をして、和解をして、患者さんの中にも不満が残るでしょう。しかし、何の補償もなしに亡くなった方の悔しさ、そういうことも考えて、あるいは裁判全体の動向も考えて、私はそろそろ政治的に決断をする時期である、このように考えますが、大臣、率直にいかがですか。
  298. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 実は、水俣病のこの問題については、本当に心を痛めている最大の問題であります。したがいまして、本当にこれは国として乗り出さなければならないというお気持ちも、これは私自身持っておりますし、先生方のお気持ちもよくわかります。  ただ、現時点におきましては、和解勧告についても、訴訟の争点が国の行政のあり方の根幹にかかわる問題ということもありまして、それからまたこの内容が、問題点が交渉によって妥結が図れるという性質でもない。またもう一つは、医学的な判定に基づいた形で処理できる問題とそうでないものとも踏まえてのこともありますから、国民全体に理解をしていただけるだけの内容を整えないと、国が乗り出す場合にこれは乗り出し切れないものがありますので、そういう点を実は慎重に今検討しておるところでございまして、先生のお気持ちは十分に私も一人間としては理解できることでございます。  先生と同じようなお気持ちでこの質問席に立たれた諸先生も何人もおられます。みんな同じ気持ちであろうと思いますけれども、その一人一人の先生方のお気持ちは私も日本人の一人としては十分に理解できることではありますが、ただ、国の行政の中でこれをどう取り上げるかということになりますと、整えなければならぬ問題が余りにも多過ぎるということで、今すぐ先生のお気に入るようなお答えができないのが残念であります。
  299. 中井洽

    中井委員 答える方は残念かもしれませんが、聞く方はもっと残念でありまして、理屈はみんな承知いたしております。私自身ももうたびたび水俣病の質問でやりました。馬場先生と立場が違うときもたびたびございました。特に私は、認定業務なんかについてはかなりきついことを言ってまいりました。しかし、今政治家としてこの裁判の動向を見て、今医学的なことは何だと言われましたが、裁判所が決められないのでしょう。裁判所が決められないから和解だとおっしゃっている。ここも考えるべきだ。そろそろ私ども政治家が、大臣含めて決断する時期である、このことをあえて繰り返し申し上げて、次の質問に移ります。  先ほど申しましたように、今国会でも最大の法案であります環境基本法政府内部で今調整が進められていると聞かしていただいておりますが、間違いなく提出をいただける、このように考えておりますが、いかがですか。
  300. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 現在、政府部内において鋭憲法文の策定作業が進んでおるところでございます。なるべく速やかに成案を得て、今国会で御審議をいただき成立させてもらうべく、大いに努力をしている最中でございます。
  301. 中井洽

    中井委員 通産省にお越しいただいております。何も通産省が悪いとかいいとかいう話ではありませんが、環境問題になりますと、常に通産省と環境庁調整ということで私ども心配をいたしております。通産省はこの法案策定作業にどういう対応をなさっておるのか、また同時に、かなり進んでいるやに聞いておりますが、問題の環境の範囲等について通産と環境庁との間では話し合いが既にでき上がったのか、そんな点を含めてお答えをいただきます。
  302. 清川佑二

    ○清川政府委員 お答え申し上げます。  環境基本法もとになります中央公害対策審議会及び自然環境保全審議会答申が昨年十月出されたわけでございまして、現在、政府の中でこの答申を踏まえて政府部内の検討中ということでございます。通産省におきましても、当然のことでありますが、地球というものがかけがえのないものでございます、地球環境ということを大切に考えていくことが必要というふうに考えておりまして、政府の一員として検討にきちんと対応してまいるということで考えているわけでございます。  なお、環境の範囲という話でございますけれども、この環境の範囲というものも、よく考えてみますと結局法体系全体の問題にかかわってくる、当然そういう話でございます。こういう話でございますので、法案を実際に検討し策定しておられます環境庁からのお話がまずございますものですから、その辺を拝見した上で答申を踏まえましてきちっと対応してまいりたい。このように考えておるわけでございます。
  303. 中井洽

    中井委員 大臣にぜひ御理解をいただきたいことは、私ども環境基本法に対して、どういうものであるべきか数年前から議論し、骨子を持っております。社会党さんも公明党さんも他の政党さんもお持ちであり、法案をつくろうと思ったらいつでもつくれる状況であろうかと考えております。  今回この答申が出ました前後から、社会党さん、公明党さんあるいは社民連さん、前の連合参議院、この民社党含めて基本法、野党案をつくろうじゃないかというお話がございました。私どもも賛成しようかなと思ったのですが、参議院ではこれだけおったら過半数なんです。かつて私どもはこの委員会でアセスメント法というのを、実は 二年間たなざらしにして審議すらしなかったという大変情けない経験をいたしたわけでございます。政府の案と私どもの実とが真っ正面から対決して、衆議院では皆さんの案、参議院では野党の案、こういうことになったのでは国民の期待を裏切る、そういう意味で私どもは、この答申に沿った、大方の方が納得のいける、まだこれからの環境行政の骨格はこれでいいのだ、そういう基本法ができるのを応援しようじゃないか、こういうスタンスで今外野席からいろいろと注文をつけているわけであります。もしこれがずたずたにされたり答申がゆがめられたりするというなら、私ども考えなきゃならない、そういう立場でこの法案政府内の調整を見守っておる、このことをぜひ御理解をいただいて、御決意を承りたいと思います。
  304. 八木橋惇夫

    八木橋政府委員 大臣からお話し申し上げる前に私から一言申し上げますが、おっしゃられるとおりに、私ども環境基本法制のあり方につきまして、総理の実質的な御指示のもとに、中央公害対策審議会及び自然環境保全審議会審議をお願い七まして、両審議会合同で二十三回の会合を開きまして十分に意見を徴したところでございます。また、その過程におきましては、いろいろな団体、労働界、経済界、学者団体、自然保護団体、地方公共団体等からの意見を直接お聞きする、また、その時点でございました各方面の案もすべて出しまして、広く御意見を徴したところでございます。  私どもは、こうしていただいた貴重な審議会の答申もとにいたしまして、その答申内容を最大限盛り込むべく今政府部内において調整中でございます。先生方の御賛同を得られますような案をつくるべく、私どもが今必死に努力をしている最中でございます。
  305. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 環境基本法のこれからの取り組み方でございますけれども内容につきましてはただいま企調局長が御説明したとおりでございますが、私といたしましても、基本法の求める姿というものを、基本法がなぜ必要かということから始まって、現在我々がぶつかっている環境そのものに対する対応を踏まえて、今国会でぜひ御審議をいただけるように今鋭意準備をさせておりますが、国会提出することができましたら、その節は先生方の環境に対する御熱意を法案に対しての御質疑であらわしていただければと思っております。
  306. 中井洽

    中井委員 それでは、国土庁に来ていただいていますので、リゾートの問題について、基本的なことだけお尋ねをいたします。  リゾート法ができて、私の選挙区の隣の三重県でも第一号の指定を受けて華々しい計画が出されました。しかし、バブルがはじけるとともにこれもぽしゃりまして、地方財政を直撃をし、夢もつぶれる、こういう悲惨な状況でございます。日本じゅうこういうことがたくさん見られて、大変残念なところであります。  このリゾートの基本構想をベースにした形では、平成二年末、まだバブルがはじける前では、ゴルフ場の計画がこのリゾートで二百カ所、面積二万ヘクタール、スキー場百カ所、面積一・五万ヘクタール、既存のゴルフ場と合わせますと大阪府ぐらいの、全国ゴルフ場とスキー場だらけ、どこを見ても同じようなリゾートの構想でありまして、日本人というのは情報が速いですし、均一的なことをしたがりますから、どこでも金太郎あめみたいになるのは仕方がないといたしましても、やはりお互い反省もしていかなければならない。同時にまた、自然破壊という面からもこの法案がつくられましたときにもいろいろと議論があり、環境庁もチェックをしていくということでありましたけれども、ちょうどこういう時期であります、国土庁としてもこのリゾート法、従来の発想というものを変えていく、あるいは法案そのものも見直していく、こういったことが必要だと思いますが、考えはいかがですか。
  307. 斉藤恒孝

    斉藤説明員 ただいま御指摘いただきましたように、昭和六十二年に総合保養地域整備法ができまして五年たちまして、この間いろいろ問題も出ておるわけでございます。経済情勢の変化もあるわけでございます。  そこで、昨年の四月から、地方振興局長の私的諮問機関としまして総合保養地域整備研究会を設けまして、そこで各方面からのいろいろな角度からの御検討をいただきました。そこで、国民のためのリゾートあるいは地域のためのリゾートあるいは環境調和したリゾートという多様なリゾートを今後地道に整備していくというような方向づけをいただきましたので、このような方向づけに基づきまして、国民のために将来にわたって必要とされるような我が国のリゾート整備に寄与するということで、この法律の適切な運用に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  308. 中井洽

    中井委員 大臣、尾瀬沼というのは多かれたことがありますか。
  309. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 残念ながら、私、まだ尾瀬へ行ったことはございません。
  310. 中井洽

    中井委員 私も、昨年初めて泊まって、歩いてきたのであります。所信の中に、国立・国定公園における自然との触れ合い、あるいは自然との触れ合いの場の整備、あるいはこれから多様化する国民のレジャーに対して自然と親しんでもらう環境づくり、こういったことがいろいろと書かれております。私は、そういう意味では大賛成であります。  しかし、例えばこの尾瀬沼のあの広いところと、それから裏側の日光の国立公園、この二つを管轄するレジャーの方は二人なんですよ。尾瀬沼の場合には、六割を東京電力がそもそも電信柱の林野として確保していましたから、あそこは大企業ですから、こういう自然環境整備のために幾らでもお金を出せる。しかし、各地の自然公園等は、いろいろといいことは書いてありますが、レンジャーさんなんかが本当に少ない人数で大変御苦労なさっておる。本当に予算的にそういう人たちを永続的に育てていくようなことをなさっておるのか、こういったことがあります。  もう一つは、そういう残された自然、貴重な自然の中に国民がどんどんと見学に来る。これは大変結構なことでありますが、しかし、見学に行く、あるいは泊まる、食事をする、そのことが逆に自然破壊につながってしまう。そうすると、トイレをどうするのだ、あるいは宿泊所をどうするのだ、そこの排水をどうするのだ。かなり体系をお整えいただき、補助金等も出して整備が始まっておりますが、零細な業者さんがたくさんお入りになっていらっしゃる、そうした人たちにとっては、トイレ一つ、完全な内部の排水処理場をつくろうと思ったら大変なお金がかかる。やっていけない。国民が自然と触れ合う機会がふえればふえるほど自然が壊される。こういったところに対する対応が本当に着々と進んでおるのか、心配をいたします。  そういった意味で、きれいごとだけじゃなしにこれをやっていく、こういうことをぜひお答えいただいて、質問を終わりたいと思います。
  311. 森仁美

    ○森政府委員 大臣からお答えいただく前に、ちょっと計数的なところだけ御説明申し上げます。  現在、職員は管理事務所で百四十名、徐々にふやしてきております。それから施設整備に要する費用も、ここ数年、伸び率で見れば大変大きな額、絶対額ではまだ不十分でございます。私ども、人、予算の面で必要なものを確保するとともに、それを最大限生かすべく、職員の士気を鼓舞し、努力いたしておるところでございます。
  312. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 お答え申し上げます。  特に自然との触れ合いということは人間にとって一番大事な生き方でございますので、私どももそれに向かって、いろいろな条件を克服して一つ一つ積み上げていきたい、そういう熱意でおりますので、よろしくお願いします。
  313. 中井洽

    中井委員 終わります。
  314. 原田昇左右

    原田委員長 次回は、来る二十六日金曜日午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四分散会
  315. 中井洽

    中井委員 終わります。
  316. 原田昇左右

    原田委員長 次回は、来る二十六日金曜日午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四分散会