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寺前委員 去年十月に大津市や釧路市で開催された湿地の
保全と賢明な利用を目指してのアジア湿地シンポジウムというのがございました。国際水禽湿地
調査局事務
局長のマイケル・モーザー氏が基調報告をやっていますが、彼が、
保護区に指定することは
基本的に重要なことではあるが、すべての湿地に賢明な利用の原則が適用されなければ、湿地
保全が前進したとは言えないだろう。湿地における自然植物の刈り取りや、魚類、鳥類の採取という営みは、持続可能な形で継続しうる。しかし、湿地の消失を含む大規模
開発や、湿地における水文学的崩壊、または栄養塩循環の破壊は、一般に湿地機能を下落させ、持続不可能な状態を引き起こす。これが、賢明な利用とそうでないものとの違いであるということを言っています。
私は、これはなかなか
意味のある話だと思うのです。大規模
開発というものが本当に自然のそういう循環をつぶしていっている。だから、私は先ほどから干潟の分野でどうなっているということを聞きましたら、一カ所だけお名前を挙げられたけれ
ども、私は幾つか回りました。名古屋のところの藤前干潟、それから三番瀬の問題、幾つか九州の方も行ってみました。みんな結局埋め立てをやって、産業的な計画の
もとにそれがつぶされていっている。マイケル・モーザー氏が基調報告で言っているように、保護区に指定するということの持っている
意味というのは、つぶされていっている、大
開発のためにいかれていっている。だから、そういうことに対してメスを入れていかなければいかぬのじゃないだろうか。
例えば名古屋の場合で言うならば、
環境庁自身もあそこに埋め立てをやるに当たっての意見をちゃんと言っておられますよ。私、現地へ行ってみましたら、IWRBが湿地生態系の
保全を図るためラムサール条約の指定対象候補地のトップに挙げられているのですね。
日本国内有数の干潟である。シギや千鳥など年間最高九十種以上、約六万羽の渡り鳥の
日本最大級の渡来地の
一つである。名古屋市は、
環境保全の
必要性を認め、ごみ埋立処分場計画を縮小するという。それでも依然五十二ヘクタールの埋め立ては、大型シギなど干潟の全面をえさ場としている渡り鳥や干潟の生態系にとって決定的なダメージを与える。たとえここを埋め立てしたところで六年余りで埋め立ては終わってしまう。伊勢湾最後の生息地を永久に失うことになる。
私、あそこへ行ってみたら、名古屋市自身がちゃんと観察地なんかを設けて、なるほど
考えさせられるなど、自分自身行ってみて思いますよ。
そうすると、国の方から積極的に、埋立計画を変更させてまで我々がやらなあかんでということを言い出さなかったら、これ以上進まぬのじゃないだろうか。同じことを、三番瀬へ行ったときにもやはりそんなことを感じました。
三番瀬の場合だったら、千二百ヘクタールの広がりを持つ浅瀬で、東京湾全体の自然形態を支える役割をして、東京湾の水質浄化と首都圏域の
環境保全にも大きな
影響を及ぼしている。世界的な渡り鳥の中継基地として、あるいはまた、私わざわざあそこのみそ汁をよばれましたけれ
ども、本当に貝の分野から
考えてもなかなか貴重なところやなということを、直接行ってみると強く感ずるわけです。
ところが、港湾
審議会では、千葉県から事業認可申請されていた京葉港二期埋立計画承認だ。建設省認可による市川二期計画も含めると、三番瀬の三分の二に当たる約七百四十ヘクタールもの貴重な浅瀬が消滅することになっている。こんなことになったらえらいことだなと、つくづくこういう問題を私現地へ行ってみると思うわけです。
干潟というのは、
日本にそんなにたくさんあるわけじゃないのに、その限られた分野で、しかも東京湾全体でいえば非常に重要なところなのに、あるいは伊勢湾全体でいえば非常に重要なところなのに、せっかく残ってきているものを、これでラムサール
会議に出る気になれるな、正直に言って私そう思いますよ。
大臣が所信でこう言われた。「あらゆる生命の生存
基盤としての有限な
環境を守り、これを次の世代に引き継いでいくことは、現在に生きる我々に課せられた使命」である。私、そうだと思うのです。そうとすると、諸現象でもっていろいろ言われるから、意見だけは言っておきますけれ
ども後はよろしくではあかん。胸を張って、
大臣は副総理格がこの
大臣の仕事をせないかぬとおっしゃったけれ
ども、
大臣のそういう気迫でもって、先ほど
局長の話を聞いていったら、しかしこれからもほかすんじゃないという
お話もございましたから、この際、ラムサール条約をてこにしてこの干潟についていろいろな建設計画を再検討してもらう、
大臣自身が打って出られるということがやれぬものだろうか、ちょっとお聞きしたいと思います。