○古堅
委員 先ほど最初に、ユニセフの駐日代表事務所所長、そのパンフレットの序文を引用しましたけれ
ども、これは、この国会で
承認が得られていわゆる批准ということが完了していく、
手続的なそういうものを済ましたことによって終わりとすることにならないものですよ。
むしろこれが出発点となり、それを
関係者に徹底して周知させていくなどを通じて、この
子どもの
権利条約の
趣旨を踏まえた実践によって
子供がこの
条約の精神に沿ったしかるべき取り扱いを受けるようになりていくか、そこが求められる一番大事な点だと思うのです。
今のような立場で、新たな立法の必要もない、改廃の必要もない、予算を計上する必要もないというふうな形でこの
条約の実践を考えるということになりますというと、文字どおり、ここで言われているように、国の誇りとする立場ではなしに、国の恥とされる、そういうふうなことをさらけ出すということにならざるを得ないと思うのです。入りますというと、
子供権利委員会に、
我が国がとった
措置、前進させたいろいろな
内容についての報告を遠からず求められますよ。そこらを通じていろいろ検証もされます。
ですから、今おっしゃるような姿勢でこの
子どもの
権利条約についての
態度を貫こうというふうな形では越えられない大事さをこの
子どもの
権利条約は持っているということだけは厳しく
指摘しておきたいと思います。
具体的な事例をもって
政府の
見解を伺っておきたいというふうに思います。
一九八八年の十月に、山形県寒河江市の陵東中
学校の文化祭で、
生徒会が「ブナの森に生きる」と題する、自然
保護を
内容とした演劇を計画をしておりました。ところが、外部からの不当な介入など圧力があってそれは中止されたという
事件にかかわる問題です。いろいろ新聞ざたにもなりましたから御存じだと思います。
その演劇上演計画の記事が現地の新聞で報道されました。文化祭前日の十月二十一日であります。そうしますというと、その報道がなされてすぐに山形営林署が、台本を見たいというふうに
学校に電話で申し込んできました。
学校がそれを断りますというと、営林署の次長が直接
学校に乗り込んできて、
内容によっては問題にしなければならないというふうな
態度をとって台本の提示を執拗に迫ったのであります。しかし、それでも
学校はそれを断ったそうです。
ところが、今度は寒河江警察署防犯係主任婦人補導官が電話で、台本を見たい、きょうは残業なので遅くなっても構わないという
趣旨の申し入れが来たそうであります。そこで、
学校の
指導主事が出かけていってその台本を手渡した。それと同時に、
学校側は
生徒の
意見も聞かずに一方的にその演劇を中止する
決定をして、取りやめたという
事件なのであります。
それについて地元で大問題になりました。山形弁護士会にもこの問題が持ち込まれました。そして山形弁護士会は、営林署に対しては警告書を出しました。警察に対しては勧告書、そして
学校に対しても勧告書を出したのであります。そのそれぞれを全部読み上げる時間もございませんから、
学校にあてられた勧告書、最後の結論部分を大急ぎで読みますと、こうなっています。
第三、当弁護士会の勧告
一、
子どもも、
憲法で
保障される自由や人格権の
主体であり、
教育を受け、よりよき
環境を享受し、人間としての
成長発達を全うする
権利を有する存在である。
学校教育の過程にあるということは、
子どもの
人権を制限する根拠にはなり得ないものである。本件テーマ劇の上演は、
生徒たちの
基本的人権の一つである「学習権」及び「表現の自由」の具体的な表われである。
二、陵東中
学校が、本件テーマ劇の上演を中止する前記
措置を取ったことは、
生徒達の表現の自由を侵害するものであり、その
制約の理由及び手段においても、
教育上の正当性を見出すことはできない。
三、従って、当弁護士会は、陵東中
学校が今後二度と前記のような事態を惹起しないよう、
子どもの
人権を
尊重するとともに、
生徒だちに対し、本テーマ劇「ブナの村に生きる」を上演する
機会を与えるなど、適切な
措置を講じるよう勧告するものである。という勧告書を出したのであります。
読み上げた勧告書によって、この問題のいろいろな面からの重大な
指摘される
問題点が御理解願えたと思いますが、ここには、営林署と警察による
教育活動への不当な介入、支配があり、
学校側が
子供の
意見も聞かずに一方的に中止
決定をなし、それを
生徒に押しつけたという、
子供の
思想、
良心の自由あるいは表現の自由の侵害という重大な問題があったと思われます。
そして、この
条約に照らして考えてみますと、さらに
子供の
意見は
尊重されなければならないという点からしても、
意見を表明する
子供の
権利の侵害にも当たるというふうに考えます。この
子どもの
権利条約の実践を迫られている、こういう立場でいいますと、このようなことは
条約に違反する許されない事例だというふうに思うのですが、どのように考えられますか。