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1993-04-16 第126回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月十六日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 伊藤 公介君    理事 小里 貞利君 理事 狩野  勝君    理事 鈴木 宗男君 理事 長勢 甚遠君    理事 上原 康助君 理事 土井たか子君    理事 東  祥三君       新井 将敬君    小渕 恵三君       奥田 敬和君    鴻池 祥肇君       中山 正暉君    細田 博之君       松浦  昭君    宮里 松正君       秋葉 忠利君    井上 一成君       川島  實君    新村 勝雄君       藤田 高敏君    元信  堯君       遠藤 乙彦君    神崎 武法君       古堅 実吉君    和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 武藤 嘉文君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      秋山  收君         国際平和協力本         部事務局長   柳井 俊二君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         警察庁刑事局保         安部長     中田 恒夫君         外務政務次官  柿澤 弘治君         外務大臣官房外         務参事官    小池 寛治君         外務大臣官房文         化交流部長   木村 崇之君         外務大臣官房領         事移住部長   荒  義尚君         外務省アジア局         長       池田  維君         外務省北米局長         事務代理    加藤 良三君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省中近東ア         フリカ局長   小原  武君         外務省経済局次         長       林   暘君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合         局長      澁谷 治彦君         外務省情報調査         局長      鈴木 勝也君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛政策課長   伊藤 康成君         外務大臣官房審         議官      小西 正樹君         外務大臣官房外         務参事官    河合 正男君         運輸省航空局技         術部運航課長  松本 武徳君         海上保安庁警備         救難部航行安全         課長      谷口 克己君         海上保安庁警備         救難部救難課長 桑原 康記君         郵政省電気通信         局電波部航空海         上課長     山口 睿樹君         外務委員会調査         室長      黒河内久美君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     鴻池 祥肇君   高沢 寅男君     元信  堯君 同日  辞任         補欠選任   鴻池 祥肇君     坂本三十次君   元信  堯君     高沢 寅男君     ――――――――――――― 四月十三日  子ども権利条約批准に関する請願網岡雄君  紹介)(第一四八五号)  同(金子満広紹介)(第一四八六号) 同月十六日  子ども権利条約批准に関する請願児玉健次  君紹介)(第一五八二号)  同(岩田順介紹介)(第一七〇九号)  同(長谷百合子紹介)(第一七一〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十三日  山陰・北陸沖漁場における韓国漁船問題に関す  る陳情書  (第一二二  号)  海外在留邦人安全確保対策に関する陳情書  (第一二三号)  日朝国交正常化早期実現に関する陳情書  (第一二四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際的なコスパス・サーサット計画との地上部  分提供国としての提携に関する通告書簡の締  結について承認を求めるの件(条約第一号)  国際移住機関憲章締結について承認を求める  の件(条約第二号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国トルコ共和国との  間の協定の締結について承認を求めるの件(条  約第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国イスラエル国との  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第七号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 伊藤公介

    伊藤委員長 これより会議を開きます。  国際的なコスパス・サーサット計画との地上部分提供国としての提携に関する通告書簡締結について承認を求めるの件及び国際移住機関憲章締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。秋葉忠利君。
  3. 秋葉忠利

    秋葉委員 社会党秋葉でございます。  政治改革と言われる論議の方で、ようやっと与党野党との間でいわば対等な関係議論が始まりました。一方的に答えるだけではなく、一方的に質問するだけではなくて、両方で議論をするという形で、非常によい政治の形が始まったような気がいたしますが、けさの与党席を見ますと、質問を聞いてもいただけないということで、こちらはやはり、もちろん政府に対する質問もあるわけですけれども、日本外交についてあるいは政治について非常に重要な問題提起をするつもりでおります。一つ一つのことについてやはり私たちも真剣に取り組んでいるわけですから、与党がもし外交問題について議論をする余地がないという態度を出席者の数でお示しになっているおつもりであれば、これは外交の担当をぜひ野党に任せていただきたい。外務大臣社会党から出して、例えば我が党には、ここにもいらっしゃいますように多士済々でございますから、連立政権をつくって我々で外交は担当する、その準備はいつでもございますから。ただし、政務次官にはぜひ残っていただきたいと思いますが。とりあえず一言苦言を呈して、問題提起をさせていただきたいと思います。  順序に従って、コスパス・サーサット計画と呼ばれておりますことに関連して、私の質問をしたいと思います。  私の理解では、このコスパス・サーサット計画は、SOLAS条約と呼ばれている非常に大きな枠組みの一部だというふうに認識をいたしております。外務省の方からも何度か御説明をいただきましたし、この計画全体については、電波法改正あるいは船舶安全法改正といったようなところでも議論をされてまいりました。その趣旨そのもの、あるいはその細部についても一応の理解をしたつもりでおります。こういった方向で安全が確保されるということ、そのために技術を使っていく、さらには我が国が積極的に参加をして貢献をするということ、.大賛成でございます。  ただ、私は外務委員会質問するのは初めてなんですけれども、条約とそれから国内法整備といった点に関していささか理解できない点がございますので、そのことについて、基本的な枠組みについて法制局のお考えを、特に条約とそれから国内法あるいは省令といったものの関係理解する上で法制局見解をお聞きしたいと思いますし、こういった関係をぜひ整理していただきたいと思います。  私がここで考えておりますのは、電波法改正、これが百二十国会で行われましたけれども、その際に私が理解いたしました条約とそれから国内法整備との関係、この点について問題があるのではないか、そういう疑問を提出いたしましたけれども、当時の郵政省考え方では、法制局とも相談をした上で、全く問題はないというものでありました。しかしながら、論理的に、再度考えてみましたけれども、どうも納得がいかない。  そこで、この点について法制局考え方を改めて伺いたいと思いますし、必要があれば外務省条約国内法との関係についても伺いたいと思っているわけであります。この問題は抽象的に議論していても始まりませんので、具体的な点を申し上げたいと思います。  この点は、最終的には、実質的な部分では恐らくそれほど影響がない点だろうというふうに思います。しかしながら、内容技術的な面がありますので、事実関係についての解釈の差が出ない。したがって、法体系の方に問題があるのかどうかといった点について、そちらに焦点を合わせて議論ができるという利点がございますので、重箱の隅をつつくようなつもりで言っているのではなくて、事実関係についての確認がしやすいという意味でこの例を取り上げているというふうに御理解いただければと思います。  簡単にその事実関係を申し上げておきますと、SOLAS条約の中で、新たに新しい受信機送信機といったようなものによって、通信施設によって遭難信号を受けたり、あるいはそれを発したり、そういうことをする必要があるということを決めております。その際に、当然、遭難信号あるいは危険信号緊急信号、いろいろなものがあるわけですが、それを発信する装置が必要です。そうすると、それを当然どこか地上局あるいは船の中で受ける必要が生じるわけですけれども、ですから受信機が必要になる。受信機も備えていなくてはいけないというのがこのSOLAS条約内容なんですが、SOLAS条約の中にはもう一点大事な要件が含まれております。  それは、ただ単に機械があるというだけではなくて、その機械によって受信されたメッセージ船長まで届くということを担保してある。実はその点が問題です。つまり、機械から船長に届く。  その手段としては大きく二つに分けることができると思いますけれども、人間がその義務を負うというやり方が一つあると思います。  しかしながら、ここのところは別問題ですから一応捨象しておいて、もう一つの担保の仕方は、機械のあるところとそれから船長との間に何らかのハードウエア、つまり通信伝達の用を果たすハードウエアがあるということです。ハードウエアの中に、例えば設置場所船長が常にいる場所に置くというふうに解釈をしてもいいと思いますけれども、それはハード整備をできるという面だと思います。SOLAS条約においては、この面をブリッジにおいて操作できるという形で表現をしております。すなわち、メッセージが最終的に船長に届くということが担保されております。  百二十国会改正をされました電波法ですが、旧法改正される以前の法律においては、電波法の三十三条ですけれども、その中にハードウエア規定がございます。伝送管あるいは電話またはその他の手段によって通信室とそれからブリッジとの間の連絡を行わなくてはいけないといった意味条項がございます。ですから、旧法でもそれはあった。  ところが、このSOLAS条約締結したということによって法律改正を行った新法、その新しい電波法では、通信機から船長あるいはブリッジへの伝達手段、これが必要だという条項が抜けてしまっている。すなわち、通信機まではメッセージが来るけれども、機械から船長に対するメッセージ伝達ということが法律においては担保されない。実質的には、しかしながら通信機がほとんどブリッジ設置されるケースが多いというようなことがありますので、問題になる場合は少ないとは思いますけれども、法の体系としてはやはり問題があるのではないか。  変なことを考えますと、万一通信機ブリッジに装置しないような船があった場合に、道義的にそれはおかしいのじゃないかと言うことはできる。経済的な面からペイしないよと言うこともできる。しかしながら、あなたは法律違反をしているからその通信機設置場所をほかのところに移しなさいと言うことはできない、そういうことになるわけでございます。  私が今一応簡単に要約をいたしましたけれども、この電波法、それからSOLAS条約解釈について問題があれば、外務省あるいは郵政省運輸省の方に一言追加なり訂正をしていただいた上で、法制局のこの点についての見解をぜひ伺いたいと思うのですけれども、法律として旧法にもあった。新しい条約によって改定される新法においては当然こういった点は法律によって規定されるべき事柄であろうというふうに私は思いますけれども、法制局見解をこの点について伺いたいと思います。  郵政、外務、運輸の方で、それ以前にもし私の解釈あるいは要約に問題があったら御指摘いただければと思います。
  4. 山口睿樹

    山口説明員 ただいま先生、省令で定めております設置場所違反について法律違反にはならないというお話がございましたけれども、実は電波法の七十六条で、法律というより法令違反法律または法律に基づく命令に対する違反ということで、省令でありましても法律に基づく命令でございますので、これによりまして行政処分の対象になっております。その部分、ちょっと説明させていただきます。
  5. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。その点についてはまたこの後で問題提起をしたいと思うのですが、省令設置場所その他については決めているけれども、それを省令に委託する事項法律案件として書かれていない。つまり、法律によって委託されていない事項省令によって定めているという問題がもう一点ございます。その点についてはこの後に伺うつもりでしたけれども、今そういう異議が出てまいりましたので、この点あわせて法制局に伺いたいと思います。
  6. 秋山收

    秋山(收)政府委員 御指摘電波法に基づきます海上安全システム設備機器の問題でございますけれども、御指摘のとおり、旧法三十三条で定められておりました通信室あるいは通信室といわゆるブリッジとの間の送話管規定は、このたびの新SOLAS条約の採用に伴いまして廃止いたしまして、それにつきましては省令技術基準にゆだねるということにしたわけでございます。  これは、船舶安全に関します無線機器が最近小型化、自動化されてきておりまして、それで従来の無線設備無線電信を置くための電信室というものが必要なくなってきたということ、それに伴う条約改正でございます。したがいまして、新条約では、無線設備制御機要件といたしまして、操舵を指揮する場所に近い航海船橋、いわゆるブリッジでございますが、ここで直ちに使用することができるものでなければならないという規定に置きかわったわけでございます。  これを受けまして、御指摘平成三年の電波法改正でございますけれども、通信室に関します規定を削りまして、無線設備制御機要件に関しましては、それに対応する国内規定として、電波法三十八条に基づきます無線設備技術基準として定めることとしたわけでございます。  政府は、当然のことながら条約を忠実に遵守していく義務を負っていくわけでございますけれども、そのために必要な国内法令整備していく義務を負っているということでございます。ただ、その際に、条約中の基幹的な事項につきましては法律において制定いたしまして、技術的、細目的な事項につきましては命令に委任した上で、その命令の中で法的整備を行っていくことは許されているというふうに考えております。  このたびの電波法改正におきまして、無線設備制御機要件に関する規定は、無線設備技術基準として電波法三十八条の委任に基づく郵政省令により制定し得るというふうに考えたわけでございまして、これによりまして、条約義務我が国としても十分に遵守しているものと考えております。  なお、このようなことが技術基準という省令規定できるのかどうかという問題の御提起がございましたけれども、現在、電波法の第三章で法律上の無線設備技術基準を定めているわけでございますけれども、これにつきましても、無線設備の性能に関する基準だけではございませんで、無線設備設置する場所などにつきましての条件法律で決めておりますし、それから、先ほど申し上げました電波法三十八条に基づきます郵政省令におきましても、このような無線設備設置する場所の一般的な条件を決めるということは従前から行われているところでございまして、何ら法律上の問題はないというふうに考えております。
  7. 秋葉忠利

    秋葉委員 論理的に話をごちゃごちゃにしないでください。  確かに新しい電波法の中では、三十四条に場所についての規定がきちんとございます。一つは、その場所機械設置基準技術的なスペックその他がどのようなものであろうとも、それが三十八条ですけれども、どのような機械であろうと、それをどこに置くかということとはまるっきり関係がありません。ハイビジョンスペックを決めたからといって、ハイビジョンが茶の間に置かれるのか台所に置かれるのかというのとはまるっきり関係がないのと同じです。そこをごちゃごちゃにしないでください。三十八条関係ありません。  ですから、ブリッジから操作できるような機器でなくてはいけないというのは、それは確かに設備基準です。しかしながら、仮にリモコンがそれについていたにしろ、あるいは携帯電話機がそれに附属していてそれを持ち歩くことができるにしろ、携帯電話機をどこで使うかという問題とはまるっきり話が違います。そのことがわかっているからこそ三十四条に別に場所という条項を設けてあるわけじゃないですか。  だから、そういう基本的なところを論理的に整理して、それで話をしないと全然おかしくなるわけでしょう。ですから、そこの論理性というところをきちんと考えてください。つじつまを合わせようと思えば幾らでも合わすことはできます。しかしながら、法律というのはただつじつまを合わせればいい問題じゃないわけでしょう。そこのところを問題にしているのです。おっしゃるように、つじつまは合っているのです。  しかしながら、SOLAS条約そのもの体系を見ても、これは場所を最終的に論理的に、これが閉じたループになるように通信機からブリッジまでというところは非常に大事なところなのです。だからこそブリッジで操作できるとか、あるいはブリッジブリッジ通信とか、そういう形で条約がきちんとした明示化された形でこのことを書いている。  それを電波法改正においては、三十三条に今まであった場所、そしてブリッジへのハードウエア設置しなくてはいけないという規則を取り払って、三十四条に任せたとおっしゃいましたけれども、三十四条も、これも明示的に一、二、三ということがございます。そして、何が本質的か本質的でないかということをいえば、この三十四条の一とか三にあるような、例えば水をかぶらないとかいろいろな妨害を受けないとか、これはどっちかというと本当に末梢の問題です。  メッセージがだれに届くかというのは、安全確保の上で一番大事な問題じゃないですか。それをないがしろにしておいて、こういった末梢的な問題は明示的にあらわすけれども、一番大事なところは省令に落とすというところがそもそも判断として間違っているということを申し上げているのです。  それからもう一つ申し上げますと、第三十四条の規定は、これは場所についての規定ですけれども、第一号、第三号においては、今申し上げたような末梢的な条件がついている、場所に関して。そして、「ただし、郵政省令で定める無線設備については、この限りでない。」というふうに、例外規定をここで設けてあるわけじゃないですか。例外規定だけですよ。だから、積極的にどこに設けるということは、すべて三十四条でカバーしている、あるいはほかのところでカバーしている、それは明示的にあらわしている。それの例外規定を三十四条で定めているということですから、今おっしゃったことは、そういった点から考えてもまるっきり論理的に納得がいきませんし、法体系重みSOLAS条約でどこに重みを置いているかというところからも納得ができない点だと思います。  実はこの点についてもう少し続けたいのですけれども、私の持ち時間は三十分で、この点については、非常に大きな、条約とそれから国内法整備の問題だと思いますので続けたいと思いますけれども、今の点について簡単に、一言で結構ですから、その点を言っていただきたい。  それから、省令について。省令によって決めているというふうにおっしゃいましたけれども、設備通信機器そのものについてのスペックですね、通信設備としてどのような機能を備えていなくてはいけないという三十八条の規定が、なぜその規定によって場所まで縛ることができるのですか。その点をぜひ一言だけお答えいただきたい。
  8. 山口睿樹

    山口説明員 一言だけ。  まず最初の点でございますけれども、電波法規定といたしまして、まず三十三条で、もともとは船舶安全法でその無線設備設置義務づけられておりまして、それを受けまして電波法の三十三条で、どういう設備を設けるかということが規定をされることになっております。それを踏まえた上で、そういう設備がどこに設置場所として置かれるかという形になるものですから、いわば設置義務を前提としました設備をどこに置くか、まあ次の段階の規定であるというふうに思っておるところでございます。  また、実態面からちょっと申し上げますと、実態面で考えましたときに、モールス時代、昔の時代は、船内通信設備というものが非常に乏しい状況がございまして、船長室通信室等重要な箇所に送話管設置をされて重要な役割を果たしていたということがございますけれども、GMDSSの導入されました最近の船舶を見てみます と、実態的には、例えば一斉通報が行えますような放送設備設置をされておったり、あるいは船内各所に有線の電話設備が設けられたり、こういうふうに二重、三重に船内通信設備が非常に発達をして配備をされております。そういう状況にかんがみますと、無線設備設置場所という意味合いがモールス時代に比べますと少し変わってきているというようなこともございまして、省令で定めることが適当であるというふうに考えておったところでございます。  それから、三十八条の関係でございますけれども、三十八条につきましては、電波法は第三章が無線設備技術基準を定めるというような扱いになってございまして、その第三章で定められているものが基本的に技術基準という考え方をとっております。そうしますと、先ほどの三十四条も含めまして、電波法でいえば技術基準という概念に入ってくる。言ってみますと、無線局機能を十分に発揮させるためにその無線設備に備わる条件を定めたものが技術基準というふうに考えられておりまして、したがいまして、三十八条で技術基準と申しておりますけれども、その三十八条で省令にゆだねております技術基準もまたこういう少し広い概念のものと考えておりまして、設置場所を定めることは可能であるというふうに考えておる次第でございます。
  9. 秋葉忠利

    秋葉委員 法制局に今のことについてもう一つ追加して伺いますけれども、今の郵政省お答えでは、要するに、実態的に何かちゃんと行われているというふうに認定すればそれでいいんだということですね。となれば、電波法改正する必要なかったじゃないですか。  要するに、最近の設備ではこれこれこういうふうになっているから、だからそれについての規則は設けなくてもいいというのが、簡単に言うと前半のお答えでした。それだったら法律必要ないじゃないですか、ほとんどの場合について。  それから、三十八条のそれは明らかに拡張解釈ですね。  それと、旧法での考え方を申し上げますと、三十三条では確かに施設についてのことも言っているけれども、それは場所をはっきり特定しているわけですよ。論理的なループがそこで閉じている。その上で、施設については後の方で持ってきている。ですから、その順序から考えても、必ずしも物についての技術基準を先にして、その後で場所ということは、論理的には必然性がありません。どちらが先でも独立しているのですから、それは問題がないところです。  法制局に、今の点と先ほどの点について簡単に、まだIOMの方について聞きたいことがありますので。
  10. 秋山收

    秋山(收)政府委員 平成三年の法律改正が必要なかったかどうかでございますけれども、例えば一例を申し上げますと、通信室あるいは伝送管に関する規定が不要になったというようなことからも、法律改正は必要であったというふうに考えております。  それから、技術基準につきましてどこまで書けるかでございますけれども、いわゆるスペックのような狭義の技術基準だけではなくて、無線機器が十分な機能を発揮できるような各種の環境、設置場所も含めてでございますが、そういうものも書けるということが従来からの電波法技術基準解釈であり、運用であるというふうに理解しております。  なお、一般論といたしましては、先生冒頭に御指摘いただきましたように、基幹的な重要的なことは極力法定し、場合によって命令に委任する必要がある場合でも極力要件を絞って、なるべく裸委任的なものはしないようにしていくということは御指摘のとおりでございまして、そのような態度で今後とも法令審査に臨みたいと考えております。
  11. 秋葉忠利

    秋葉委員 今、郵政とそれから法制局お答えは明らかに違っていますね。要するに、実態と法律との間の乖離があってはいけないというのが法制のお答えでしたけれども、郵政のお答えは、実態と法律との間は直接関係ない、実態があれば法律はどうでもいいんだというお答えでしたから、それについて見解は伺いましたけれども、整理をするとそういうことになると思います。論理的にはそういうことになると思いますので、もしその解釈が違うのであれば、また次の機会にきちんと整理をしたいと思います。もりと時間をとって、詳しく一点ずつ論理的に話を進めたいと思います。  ただし、今の私の印象では、ともかくつじつまが合えばそれでいいんだ、つじつまを合わせるためには拡張解釈も当然やってよろしい、技術というところで、例えば旧法においては明らかに別項を立てておいた事項についても、ともかく法律によるその委任がなくても省令に落としてしまっていいんだという態度のようにうかがえます。  それは私は法体系として非常に大きな問題だと思いますので、その点について改めて問題提起をすることにいたしまして、次の問題、もう時間がありませんので、IOM、国際移住機構について一つ二つ問題を伺いたいのです。  一点は、このIOMというのは、湾岸戦争の際に避難民を輸送するということで非常に大きな関心事になりました。その際、私はこれは新しい外交の方法として日本が世界的に誇っていいことではないかと思うのですけれども、市民団体や、あるいは社会党もやりました、労働組合あるいは個人、そういった人たちが寄附を集めてIOMに対して直接働きかけることによって民間機をチャーターして避難民を送ることになった。そのために、私たちは憲法違反だというふうに今でも解釈しておりますけれども、自衛隊機を飛ばして避難民を輸送するというその憲法違反の行為を未然に防ぐことができたし、市民参加、国際的な政治の場に市民が参加するという意味でも非常に大きな意義があったというふうに思います。  今回、日本がこのIOMに参加するに当たって、こういった市民参加型の外交、市民参加型の国際政治をもっともっと盛んにしていくという意味で、外務省がこういう市民レベルでの国際的な関心をいわば非常に奨励するような形で積極的に活用をしていく、そういった態度をお持ちだと思いますけれども、その点を一点、改めて確認しておきたいと思います。  それともう一点、もし、このような事態、湾岸戦争のときのような事態が起こった際に、避難民輸送というようなことが起こった場合には、所管をするのは外務省なのか、あるいは、一応PKO法が通ったわけですから、PKO協力本部というのですか、そちらになるのか、そのあたりの分掌はどうなっているのか、事務的なことですが、その二点について、できれば次官にお願いしたいと思います。
  12. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 湾岸危機の際に、民間におきまして自発的に被災民、難民等についての支援をしたいという活動が盛り上がりましたことは、そうした問題に関する国民の関心の高まりとして、外務省としても、もちろん政府としても大変高く評価をしているところであります。  その証拠に、九一年の二月には、IOMに対しましてジュネーブの代表部から、民間の方々の募金をもとにした救援活動のどのようなことができるか、IOMにも接触をいたしまして、その方途等を探るということで御協力をしてきたところでございます。その後、クルド難民の大量発生に際しましても、民間の皆様方の募金をUNHCRにかなりの額寄せていただきましたことにつきましても、私どもとしては大変結構なことだと思っております。  今後ともそうした問題につきまして、一時的な現象としてでなく、引き続き国際支援に日本人の善意を、民間の善意を示すという意味で御活動を続けられることを心から期待をいたしておりますし、外務省としてもできるだけ積極的にお手伝いをしていきたい、こう思っております。
  13. 小西正樹

    ○小西説明員 秋葉先生より第二番目の御質問がありましたので、その点についてお答え申し上げます。  湾岸危機と同じような事態が起こって、IOMから要請があった場合に、どこが役所として所管をするのかという御趣旨だったと思います。  現時点におきましては、将来どういった事態になるか、この辺がはっきりしておりませんので、具体的な要請を待って検討せざるを得ないと思いますが、御承知のとおり、湾岸危機の際には国際平和協力法はまだ成立しておりませんでした。  国際平和協力法におきましては、国際連合平和維持活動及び人道的な国際救援活動、これを迅速かつ適切に行うということが想定されております。したがいまして、仮に国際平和協力法に基づいて我が国が人的な面においての協力を行うという場合には、国際平和協力本部を中心として、関係省庁間で協議しながら実施体制を整えていくということになるのではないかというふうに考えております。
  14. 秋葉忠利

    秋葉委員 柿澤外務政務次官からは非常に前向きなお答えをいただきまして大変ありがたいのですが、さらにもう一歩踏み込んで、湾岸戦争当時のように、外務省が自衛隊機を飛ばすことに一生懸命になってしまって、民間の努力とはまるっきり接触がなかったというような形にならないように、積極的に、自衛隊の飛行機を飛ばす前に、日本の市民のやろうとしている、それと一体になった形での外務省の努力をぜひお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  15. 伊藤公介

    伊藤委員長 川島實君。
  16. 川島實

    ○川島委員 私は、今議題になっておりますコスパス・サーサット計画並びに国際移住機関憲章の二点についてお伺いをいたしたいと思います。時間がございませんので、大体前半を十五分、後の問題について十五分お伺いをいたしたいと思います。  国際的なコスパス・サーサット計画との地上部分提供国としての提携に関する通告書簡締結についてお尋ねをいたします。  モールス信号が今日まで用いられておりましたけれども、一九八八年の七月にアメリカ、フランス、カナダそれからソ連が、極軌道衛星、こういうものを用いて遭難信号伝達するためにこの制度をつくった、こういうことでございます。今回締結に当たりまして、我が国はこれまで非常におくれてこの分野における締結になったわけでございますが、先進国の一員としてもっと早くこういう条約については締結をしなければならない、こういう気持ちが非常に強いわけでございますが、これまでに至らなかった、早くできなかった問題点というのはどういうところにあったのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  17. 河合正男

    ○河合説明員 川島先生がただいまおっしゃられましたように、国際的な遭難救助のために非常に重要な取り決めであるので、先進国の一員としてもっと早く締結すべきではなかったかという御認識は、つまりこの取り決めの重要性についての認識は、政府も同じでございます。  この計画が八八年に発足いたしましてから、政府といたしましては、その目的、意義については日本にとっても非常に適当なものであるということで準備を進めてまいりました。  その間、時間がかかったということにつきましては、二つの理由がございまして、一つは、船舶安全法等の国内法整備をまずやってまいったということでございます。国内法整備によりまして、これを誠実に実行する体制をまずつくったということでございます。  それから、コスパス・サーサット理事会との関係で、この取り決めに参加後、日本設置した設備がその理事会との関係で問題がないということを昨年の十二月に確認をいたしまして、これで今般、国内法制上も、それからコスパス・サーサット理事会との関係でも問題がないということになりまして、締結の御承認をいただくことになったわけでございます。
  18. 川島實

    ○川島委員 この通告書簡締結によって我が国義務として、対応策が問題になっておりますが、五項目挙げられているわけでございますが、このうちの地域利用設備設置、お話を聞きますと、七億で海上保安庁がこの設備を現在建設中だ、こういうことをお聞きいたしております。  それから二つ目は、国際電気通信連合の定めるコスパス・サーサット用の特別な無線標識の整備、このことについてもまだ十分な対応策がなされていないわけでございますが、これらの現状。  それから、財政負担として、今回この締結によって、運営に対して一万ドルと事業に対しておのおのの負担がなされる、こういうように聞いているわけでございますが、この三点について、ひとつ具体的にお伺いをいたしておきたいと思います。
  19. 河合正男

    ○河合説明員 ただいま川島先生から御指摘がございました三点でございますが、いずれもこの取り決めに入るための準備が整っていると考えております。  まず最初の、地上部分の設備設置でございますが、川島先生からもお話がございましたように、平成元年度と二年度におきまして約七億円の政府予算をもちまして設備設置、これは横浜に設置されておりますが、その設置が完了いたしております。  それから、無線標識の登録簿の作成等につきましては準備が進んでおりまして、今後この取り決めを締結しました後に、さらにその整備を進めるということになっております。  それから、この計画運営のための共通経費への拠出金でございますが、これは一九九四年まで日本といたしましては毎年一万ドルの拠出金を払うということになっておりまして、今年度の、平成五年度の予算におきましても先般御承認をいただいたところでございます。
  20. 川島實

    ○川島委員 我が国は、この通告書簡締結するに当たりまして、海上保安庁法、電波法それから船舶安全法というものについての改正は必要ない、こういうふうにここに明記されておるわけでございますけれども、いろいろ中を見てみますると、法律整備はさておいても、まだ実態として、我々の受けとめ方として、具体的な世の中の動きの中で改革をしなきゃならない問題点が非常に多い。  そこでお伺いをするわけでございますが、国際海事機関(IMO)の第三十七回の無線通信委員会において、コスパス・サーサットの四百六メガヘルツの登録台数が一万台を超えた、だから非常時以外はこれを使用することを差し控えたい、こういう通告がなされているわけですが、これらのことについて、事業活動に障害がないのかどうか、これらが改善されておるのかどうか、まずお伺いしておきたいと思います。
  21. 山口睿樹

    山口説明員 御承知のように、コスパス・サーサットシステムというのは、四百六メガヘルツとか百二十一・五メガヘルツといった遭難周波数を使いまして遭難の際の捜索救助に当たる、そういうシステムでございます。そういうふうに私ども認識しておりまして、四百六メガヘルツなり百二十一・五メガヘルツというのはそういう非常時の場合の通信に使われるものですから、そういうシステムだというふうに認識しておりまして、ただいま先生から御指摘のありましたようなことにつきまして、私どもとしましては、ちょっとまだそういう状況については情報を得ていない状況がございまして、そういう問題についてはまだ把握してないということでございます。
  22. 川島實

    ○川島委員 次に、我が国の捜索救助区域を示す地図の作成について、まだ区域が画定していない、そういう区域が多いので地図作成は時期が未定である、委員会で再度検討する、そういうことがここで討議がなされているわけですが、その後、こういう地図の作成は行われておるのかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  23. 河合正男

    ○河合説明員 国際海事機関が行っておりますのは、関係国の間で合意された捜索救助区域についてその情報を収集し提供するという業務でございまして、まずいろいろな二国間の話し合いが行われる必要があるわけでございますが、七九年のSAR条約におきましては、関係締約国間の合意により捜索救助区域の設定を行うか、またはそれにかわる適当な措置をとるよう最善の努力を払うということについて規定しております。そのために、現在関係国の間でいろいろな検討がなされているものと承知しております。
  24. 川島實

    ○川島委員 私は他国のことを聞いているわけじゃないのです。これは、我が国がこの条約を結ぶについて、GMDSSマスタープランの関連で我が国がそろえなければならない問題点として、救助調整本部の地球局の一覧表、海上安全情報放送予定表及び同放送局の一覧表、こういうものを作成した、しかしできていないのは、この地図の作成についてまだ課題として我が国は残っているときちっと指摘されて、委員会を再度開いて検討していかなきゃならないということがちゃんと出ているわけですよ。そのことについてお伺いしているわけでございます。
  25. 河合正男

    ○河合説明員 川島先生御指摘のように、我が国につきまして二国間の協定が十分できているという状況ではないと存じます。ただ、今までのところ、米国との間で、これは昭和六十一年でございますが、海上捜索救助協定というものを締結しております。また、これ以外、先生御指摘の地図作成につきましては、必ずしも進展していないという状況でございます。
  26. 川島實

    ○川島委員 ちょっと話がかみ合わないのですが、我が国の捜索救助区域を示す地図の作成がまだできてない、だから我が国がつくらなきゃいかぬ、それを他国に示さなきゃいかぬ、だから、できてないのであれば、まず今後ひとつ十分このことについて対応をしていただきたい。  さらに、先ほどの四百六メガヘルツの登録台数が一万件を超えて、これらについて非遭難時に使用を差し控えたいというようなこと、これらの対応策もどうなっているのかということについてひとつ勉強をしておいていただきたいと思います。  次に、IMOは、現在の海上における人民の安全に関する制度の抜本的な改善を図るため、一九九二年から新たな技術を取り入れた全世界的な海上における遭難安全制度、GMDSSを決定し、国際電気通信連合(ITU)においても改正が行われ、我が国もそれを受けて関係法が既に改正されている、こう承っているわけでございますが、今回のコスパス・サーサットを利用した我が国の海難及び航空事故の実績があるのかどうか。  さらに、国内における小型の航空機はまだこれらの無線が整備されてないということを聞いているわけでございますが、大韓航空のああいう事故を見ると、どこに落ちて事故がなされているかどうかわからない。このサーサットを利用すれば、どういうところで事故が起きてというふうに、場所も全部わかるようになるわけでございますから、我が国のそういう航空機の装置の整備についてあわせてお伺いをしておきたいと思います。
  27. 桑原康記

    ○桑原説明員 昨年一年間にコスパス・サーサットを利用して救助を求めて救助されました我が国船舶は一隻でありました。また、昨年の二月からことしの三月までに我が国のコスパス・サーサット施設を利用して取り扱った海難は、いずれも外国船で六件ありました。
  28. 松本武徳

    ○松本説明員 お答えいたします。  先生御質問の、小型航空機についての航空機用救命無線機の装備義務のお話だと理解しておりますが、我が国におきましては、航空法及び施行規則に基づきまして、航空機用救命無線機は、緊急着陸に適した陸岸から一定の距離を離れて飛行するすべての航空機に装備することが義務づけられております。ただ、陸上におきましてはそのような義務化がなされてはおりませんが、近年のヘリコプターの事故等にかんがみまして、ヘリコプター等の小型機が山岳地帯を飛行する場合には、そのような救命無線機を装備することを通達によりまして指導して、救命無線機の装備について促進を図っているところでございます。
  29. 川島實

    ○川島委員 ぜひひとつ、小型飛行機についてもそういう装備を義務づけをしていただきたいと思います。  時間がございませんので、あと要望しておきますが、今回のGMDSSにおけるこういう無線設備をそろえるに当たりまして、四種類の資格証明等が無線技士に定められているわけでございますが、技術者の確保となりますと、これがなかなか大変な御努力が要ると思います。このことについてまず十分対応をしていただきたい。  それから二つ目は、そういう設備を整えてからの事前の実証実験というものがどうしても必要だというふうに学者の皆さんが言ってみえますので、これらに対しても対応を考えておいていただきたい。  さらに、これらの無線機の整備について、中小企業の皆さん方が税制上それから財政上の援助策を考慮してもらいたい、こういう話も来ておりますので、この辺のことも考えていただきたいと思います。  それから、電気通信事業者と捜索救助機関との連絡体制の整備が非常にまだ不備だ、こう言われているわけでございますので、この辺のところもひとつ整備についてのお考えをいただきたい。  次官から一言、コスパス・サーサットの事柄について、今のお話を聞いて所感をいただきたいと思います。
  30. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 コスパス・サーサット条約に基づきます救難の仕組みを整備することは、我が国の海上交通または航空等の安全を確保する上で大変大事なことだと存じております。  今川島先生から御指摘がありましたさまざまな問題点、今後整備すべき事項等をできるだけ積極的に整備を図りまして、その有効な活用を図っていきたいと思っております。
  31. 川島實

    ○川島委員 次に、国際移住機関憲章についてお伺いをいたします。  政府は、昭和三十六年からオブザーバーとしてこの機関に参加をしております。昨年も、平成四年度として約一億七千四百万円をこの事業にも任意拠出をして参加をしておる。これはすばらしいことだと思いますけれども、これからこの条約締結するについて、いろいろ国際移住機関(10M)と国連難民高等弁務官事務所との関係が非常に重要になってくると思いますし、我が国にも弁務官事務所の在日駐在所ができておりまして、そこで十六名ほど働いております。これらについての関係についてまずお伺いをしたいと思います。
  32. 小西正樹

    ○小西説明員 お答えいたします。  まず、国連難民高等弁務官事務所でございますが、これは一九五〇年の国連総会決議によりまして設立されました機関でございます。国際移住機関は、国際移住機関憲章を設立根拠といたしておりまして、性格は異なっておりますが、従来より難民の分野におきまして緊密に協力して相互補完的な活動を行ってきております。  もう少し具体的に申し上げれば、難民高等弁務官事務所におきましては、難民に対する保護の提供のために、関係国における難民の受け入れの促進等を行っておる一方、国際移住機関におきましては、難民等に対して、既に受け入れについて関係国の合意が成立しているということを前提といたしまして、輸送その他の移住サービスを提供しております。  この二つの機関の活動は相互補完的でございます。国際移住機関憲章におきましても、機関が関係の国際機関と協力するに当たっては、「関係機関の権限を相互に尊重して実施する。」という趣旨が規定されております。
  33. 川島實

    ○川島委員 国連難民高等弁務官に緒方貞子さんが責任者として、我が国の顔として頑張っていただいている。PKOでは明石さんが頑張っておりますけれども、そういう中で現在、世界各地の主要な難民状況、非常に多いわけでございますが、我が国の役割はどういうふうに果たしているのか、このことについてお伺いをしておきたいと思います。  まず一つは、アフリカの角と言われておりますソマリアで百万人、エチオピアで五十万人、ケニアで三十万、イエメンで五万、ジブチで一万四千。それから、旧ユーゴスラビアにおけるボスニア・ヘルツェゴビナ共和国では三百十万。それからアルメニア、アゼルバイジャンの国内避難民は七十五万人。  さらにまた、自発的に本国へ帰還を希望している難民が、カンボジアで既に二十二万人。アフガニスタンの関係では、パキスタン百二十万、イラン二十五万、それから国内では約五十万人。それから、タジク難民が内戦を逃れて約五千人。リベリア・シエラレオネ関係では、リベリア難民が十万人、ギニア四十万四千人、コートジボワール十九万五千人、ほかに一万九千三百人がシエラレオネ、ガーナ、ナイジェリア等から帰還を希望している。さらに、バングラデシュでは、ミャンマーから逃れてきた難民が二十八万三千七百六十七人。  こういう国連難民高等弁務官事務所のデータがあるわけでございますが、これらのことについて我が国としてどういう国際貢献をお考えになっておるのか。これは一応責任者として次官に所感をお伺いしておきたいと思います。
  34. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 我が国が難民問題につきまして、人道上の大変重要な問題であるということとあわせて、難民の大量発生がその周辺国における政治的な不安定をもたらす政治的な問題でもあるということにかんがみまして、難民問題を担当するUNHCRに対して積極的に貢献をしてきていることは御承知のとおりでございます。  そのトップは緒方貞子さんでいらっしゃいまして、緒方さんの活動ぶりは国際的にも大変高く評価されております。私も、先般、ソマリア、モザンビーク等へ行ってまいりましたが、どこでも緒方さんの活動を評価する声が高かったのを大変うれしく感じました。  また、財政的にも、日本は現在、一九九二年をとりますと一・二億ドルの拠出を行っておりまして、これは米国、EC諸国のトータルに次いで第三位、国としては米国に次いで第二位ということになっております。  また、緒方高等難民弁務官のもとで三十八人の邦人が活動いたしておりまして、そういう意味ではUNHCRに対する日本人の人的な貢献も進んでいるものと考えております。  また、最近では、これも緒方さんの主唱で環境問題に配慮した難民援助ということが取り上げられておりますが、環境調整官を日本から出してほしいという要望がありまして、環境庁の職員を本年三月からUNHCRに派遣をしたところでございます。  そうした意味で、難民問題は地球的規模の問題として大変大きな課題になってきておりますので、我が国としても積極的にこの問題に貢献をしていきたいということで逐次努力をしているところでございます。
  35. 川島實

    ○川島委員 まだ努力の成果が上がってないようでございますので、ひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  最後に、ドミニカ移住の問題についてお伺いをしたいと思います。  昨年の百二十三国会において、我が党の参議院の久保田真苗さんの二月二十七日、五月十二日の質疑で大臣答弁もいただいているわけでございますが、その後、これらの対応策がどのようになっているのか。  それから、平成三年の十月に三重大学教授の今野敏彦さんが、現地調査団の団長として戦後の移民の問題について現地へ行って調査をし、現地の人たちにお話を聞いている。百の家族、現在は二百の家族がいろいろ要望しておるようでございます。ブラジルだとかアルゼンチン、ペルー、そういうところに愛知県の人たちが移住しておりまして、例えばブラジルですと、約三億くらい愛知県が出して会館をつくってあげたり日常の援助をしておりますし、アルゼンチンについても、愛知県人会というところに経常費用も毎年援助している。ペルーもそうでございます。  そのようなことを考えますと、移民を希望した人たちに当初の土地を無償で提供していただけるという話が全部間違っておって、日本を出るときに土地も家も売って、なけなしの金をはたいて向こうへ行った。ところが、所有権は全部相手の国のものであって、どうやっても一向に生活がよくならない。今でも借金を抱えている。戦後処理が終わっていないのではないか、こういう声も上がっているわけであります。  大臣答弁も、これらについて調査をして対応策をきちっと考える、こういうふうになってはや一年たつわけでございますけれども、その後の対応策の改善策といいますか、外務省はどのようになされておるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  36. 荒義尚

    ○荒政府委員 昨年の参議院の外務委員会でございまして以来の政府としてのドミニカ移住者に対する援護状況、措置状況というお尋ねでございますけれども、順次申し上げます。  まず、従来から続けております通常型と申しますか、通常の援護施策でございます。これはいろいろございまして、営農指導それから子女教育対策、医療衛生関係の施策もございます。それから生活基盤の整備、これは公民館建設に対する助成等でございます。さらに、移住者に対する移住融資の制度がございます。これらの施策については、従来からということで、もちろん昨年以降も続けておるということでございます。  なお、移住融資について一点だけ補足いたしますけれども、これにつきましては、移住者の方々の負担が非常に大きいということで現地の要望がいろいろございましたものですから、昨年ではなく一昨年でございますが、現地の要望を踏まえまして、私どもとしては貸付利子を五%から四%に下げる、それから、貸付枠をおおむね二倍程度に拡大する、それから、貸付期間は従来九年間とか短かったのですけれども、それを十五年程度まで延ばした、それから、貸付対象職種が従来は小型の工業関係それから農業方面でございましたけれども、商業関係にも拡大してほしいという要望がございましたので、そちらにも対象職種を拡大いたしました。これが従来から引き続き現在に至るまでやっている措置でございます。  それから、昨年以降、それに加えまして若干の措置を今進めておるところでございます。  まず一つは、先ほど言いました移住融資でございます。これにつきまして何とかさらなる措置をとれないかということで、我々鋭意検討いたしまして、昨年の十二月の末に延滞損害金、つまり延滞しておる元本及び利子を一律に免除するということに踏み切りまして、現在実施しております。それから、それとあわせまして、従来返済いただいたお金は利子それから元本という順序で返済に充当しておったわけでございますけれども、今後の利子発生を軽減するという観点から、返済金をいただいた場合は優先的にまず元本に元入れするという措置もあわせてとった次第でございます。  それから、先ほど実態調査について御指摘ございましたけれども、私どもも、ぜひ現地の方々の要望あるいはニーズをしっかり把握しなければならぬということで、昨年の四月−五月にかけまして二百世帯について一応アンケートを実施いたしました。これはアンケート用紙をお送りして回収したわけでありますけれども、はっきり申し上げますと、回収率が残念ながら三〇%程度にとどまったということです。それはそれなりに参考になりましたけれども、私どもとしては現地のニーズをより広範に把握したいということで、実は現在JICAとあわせて本格的な調査団を派遣しております。来週には戻ってまいりますけれども、それを踏まえてさらに施策を検討していきたいというように考えております。  それから、地権問題も従来からございましたけれども、これにつきましても昨年以来先方政府にいろいろ働きかけております。ことしに入りましてからもバラゲル大統領にも直接お話ししましたし、先ほどお話ししました調査団が現地に行きました際にも、農務大臣であるとか農務庁長官にも重ねてお話ししまして、一応何とか進展するように鋭意努力しておるところでございます。  最後に、従来移住者の方々からは、私ども外務省あるいは現地の在外大使館との意思の疎通、対話ということが非常に少ない、大使館の方はもつと努力すべきだという御指摘をいただいております。その点は私どもも留意しまして、現在、最近赴任されました石垣大使、赴任された翌日に日系人の方の集まりに出席していただく、それから着いたばかりの二、三日後には主要な移住地を訪問していただくというようなことで、いろいろ努力をしておるということでございまして、今後ともその線で、親身になって現地の方々の具体的なニーズに対応していきたいというふうに考えております。
  37. 川島實

    ○川島委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、この条約締結を機会に、戦後我が国から他国へ行かれた、海外移住した人は非常に御苦労いただいておるわけでございますから、きちっと調査をしていただいて、そういう不平不満、国にだまされた、こういう声が聞かれないようにひとつ十分な対応をお願いして終わりたいと思います。ありがとうございました。
  38. 伊藤公介

    伊藤委員長 東祥三君。
  39. 東祥三

    ○東(祥)委員 公明党の東でございます。  案件二件について御質問させていただきます。もう既に二人の議員が質問している内容ともかかわってまいりますので、重複は避けたいと思います。  二番目のIOM、国際移住機関について始めさせていただきますが、この前進を調べてみますと、昭和二十六年に前進の機関の設立が決議されて、昭和二十六年といいますと私がちょうど生まれたときでございました。第二次世界大戦が終わった欧州における混乱、そしてまた北米及び中南米への移住というところに最大の関心があった。その限りにおいては、ほとんど日本とのかかわり合いというのは、ある意味でないと言っても過言ではない機関、その機関が、戦後のこの数十年における間に国際的な問題として難民あるいは避難民問題という各問題が登場してきた、移民のみならず難民及び避難民等の輸送その他のサービスとのかかわり合いの中で極めて重要な役割を果たしていると思っております。  かつて、この国際移住機関の方々とも中南米あるいは中東、アフリカで仕事をさせていただいた経験もございます。その上で質問させていただきますが、まず政府として、この国際移住機関憲章締結に際して、特に難民問題とのかかわり合いの中で、先ほど政務次官の方から既に御説明がありましたが、難民問題というのを極めて重要な問題として位置づけられている、そういう御指摘もあったわけでございますが、改めて、日本政府、これからの世界の中における日本のあるべき像を探っていくという意味で、この難民問題というのはどのように位置づけられるのか。  国際貢献という言葉は決して好きではありません。日本が国際社会の本当に一員なのかというこの問題に関しても種々疑問があるわけでございまして、多分一般的に言われている国際貢献という意味は、日本の国際社会における一員としての責任と義務、そういう視点で解釈させていただければ、その枠組みの中でこの難民問題というのは一体どのように位置づけられているのか。  さらにまた、日本の対外的な問題、国際社会に惹起している問題の中で、その優先順位というのは高いのか中ぐらいなのか低いのか、まずその辺のことについて政務次官からお話をいただきたいと思います。
  40. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 東祥三先生御自身がUNHCRにおいて御活躍をされた経験をお持ちでございまして、その意味では、難民問題に対して積極的にお取り組みになり、関心を持っておられることを心から敬意を表するものであります。  今先生御自身からお話がありましたように、冷戦構造の崩壊の後、平和な社会が来ることを私ども期待してきたわけでございますが、引き続き、地域的な武力紛争、民族的な理由による紛争、また宗教上の紛争等によりまして大量の難民が各地で発生していることは大変残念なことでございます。  それぞれの国民がその生まれた国で、また生まれた地域で生活をできるという社会を保障することこそ、世界、国際社会の秩序を維持する上でも大変大事なことであると思っておりますので、先ほど申しましたように、人道的な見地からも、また国際政治的な見地からもこの問題には日本は積極的に取り組まなければと考えているところでございます。  その意味で、難民高等弁務官として緒方貞子さんを日本として送っていることもそのシンボルでございますし、先ほど申しましたように、財政的にも米国に次ぐ第二の貢献国になっているということも我々の努力のあらわれと感じております。  まだまだ解決すべき問題は多々ございますが、G7、サミット等でも日本は積極的に難民問題を取り上げておりますし、その意味ではグローバルパートナーシップという名での日米関係の中でも取り上げられることもございます。ぜひとも難民問題を我が国の国際的な貢献の重要な柱として今後とも取り組んでいきたい、こう考えていることを申し上げたいと思います。
  41. 東祥三

    ○東(祥)委員 政務次官から極めて未来を示唆する重要な発言があった、このように私は思います。ソマリアあるいはモザンビーク等においても、今アフリカでどういうことが起こっているのかということ、自分自身の足と目と口で体験されてこられておりますので、それに対しては極めて敬意を表したい、このように思います。  その上で、今のお言葉の中にありました問題とのかかわり合いの中で、緒方貞子高等弁務官は既に指摘しておりますが、この難民問題というのは私たちの想像を超える規模に達してきている。そういう意味におきましては、既に御指摘ありました、例えば難民が出る、流出している国における難民のリーガルステータス、法的な地位を国際的に保護してあげる、そういう機関、あるいはまた法的な保護だけ与えたとしても生きていくことができませんから物質的な支援をしなければならない。例えばWFPあるいはまたUNDP、あるいは衛生の側面からWHOもかかわってくる。その流出された国において定住することができず第三国へ行かれる場合、あるいはまた出てきたその本国の状況が安定し、そして本国に戻れるといった場合、そのときにはさにこのIOMの活動する場面が出てくるんだろうというふうに思います。  ただ、問題は、そのように個々別れた業務活動、またその業務活動における詳細な技術あるいは経験、こういうものを踏まえた人がますます望まれる一方、細目の問題に入ってきておりますから、一つの難民問題というのが生じたときに、それぞれの機関が扱う担当分野というのは異なってくる。これを調整する機能の強化というのが今まさに国際的に望まれている最大の問題なんだろう、このように思われてなりません。  そういう意味におきましては、既に緒方高等弁務官もこの一つのサイクル全体をどのように統合していったらいいのか、このような視点から種々の提言もなされておられますが、政務次官のお話にありましたとおり、この難民問題に深く日本がかかわっていくという御決意があるとするならば、何らかの提案、あるいはまた何らかの提案するための作業なりそういうものを日本政府がイニシアチブをとってやっていくべき段階に入ったのではないのか、このように思えてならないのですが、この点についていかがお考えですか。
  42. 小西正樹

    ○小西説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、難民問題という問題は種々さまざまな分野にわたる活動を含むものでございます。このIOM、国際移住機関と協力関係にございます主たる政府間の機関といたしましても、先生が御指摘の機関、UNHCRあるいは国際連合災害救済調整官事務所(UNDRO)、国際連合開発計画、国際労働機関、国際連合食糧農業機関、世界保健機関(WHO)等々、いろいろな機関がございます。また、非政府機関といたしましても、赤十字国際委員会、国際赤十字、国際自由労働組合連盟等々、いろいろな機関がございます。したがいまして、こうした機関がそれぞれの分野でばらばらに活動を行っておっては効果的な難民に対する保護が実現できないということが生じるわけでございます。  このような事情を踏まえまして、国連におきましては、一昨年、九一年十二月に国連総会におきまして関係の決議ができております。  その概要を御紹介いたしますと、一つは緊急援助調整官の指名をする。この調整官がこういった数々の国際機関の行う難民の保護のための活動を調整するということでございまして、この部分の決議を受けまして、既にエリアソンというスウェーデンの国連駐在大使がこの調整官に任命されて実際に調整活動を行っております。また、緊急時の国連の諸機関の立ち上がりの活動に使用するための中央緊急回転基金という基金が五千万ドルの規模でできておりまして、我が国も拠出いたしております。  こういうことで、国連におきましては、先生の御指摘になられました難民に対する保護のための活動をもっと効果的に調整すべきであるという声が非常に強うございまして、私どもといたしましても、それに対して、特にこの分野で活動、活躍されておられます緒方先生の御示唆等もいただいて、ぜひとも知恵、人的支援、物的支援ということで協力したいというふうに考えております。
  43. 東祥三

    ○東(祥)委員 よろしくお願いいたします。  ところで、この国際移住機関憲章締結していなかったために、非加盟国ということで、間違いがあったら訂正していただきたいのですが、現在このIOMに約九百五十名の職員がいらっしゃるというふうに伺っておりますが、そこには日本人が一人も入っていない。加盟国になれば入れる資格は日本人に与えられると推察いたしますが、このIOM憲章を締結した後、政府外務省関係当事者の方々は、IOMに積極的に人的貢献をしてくださる、人を送り込もうとされておられるのかどうなのか、お願いいたします。
  44. 小西正樹

    ○小西説明員 IOMの職員の数でございますが、先生御指摘のとおり、現在九百五十二名でございます。緒方先生のいらっしゃる難民高等弁務官事務所は約二千七百人という数の職員を持っている機関でございますから、比較的小規模ではございますが、効率的に事業を行っているというふうに承知しております。  この機関に邦人を送り込んで貢献をすべきではないかという御指摘でございますけれども、お話にありましたとおり、憲章二十条三項は「職員は、能率、能力及び誠実性を考慮して採用し及び雇用しなければならず、特別な場合を除くほか、機関の加盟国の国民の中から、衡平な地理的配分の原則を考慮して採用する。」とございます。したがいまして、日本国会で御承認を得ましてこの国際移住機関の加盟国となった場合には、そういう資格が生じるわけでございます。私どもの国際移住機関への加盟によりまして、日本としては、政策決定、企画立案等に今後積極的に関与をいたしまして、我が国としての意向をそういった面で十分反映した貢献が可能となるように努力いたしたいと考えております。  その際、特に先生が今御指摘になられましたように、政府及び民間からIOMの事業に関心のある優秀な人材をぜひとも発掘いたしまして、このような方々を機関に送り込むことを積極的に検討いたしたいというふうに考えております。
  45. 東祥三

    ○東(祥)委員 積極的に人材発掘していただいて送り込んでいただきたい、このように思います。  財政的な側面で質問させていただきますが、IOM憲章の締結国として加盟する以上、予算分担が要求されると思います。一方においては具体的な案件が生じたときにおける事業予算、これは一般の拠出金に相当するのだろうと思いますが、それとは別に定期的な形での予算分担が要求されるのではないのか。一たび加盟国になる以上、IOMの運営あるいはまた活動の計画、そういうところにも当然参画されていくのだろうというふうに思います。そういう視点から考えますと、事業予算はちょっとおいておきまして、予算分担においてしかるべき発言をするためにはそれなりの分担を行っていった方がよりいいのではないのか、このように私は推察いたします。  多分、種々のたががはめられておって、この管理費の予算分担に関しては、日本の経済能力、応分の負担というのが要求されるのだろうと思いますが、特に財政の負担のやり方という側面から考えますと、いかなる参加の仕方がより日本人の、また政府考え方を反映すると日本政府はお考えになっているのか。ただ単に加盟国になる、予算分担率というのは決まっている、ただそれを出す。それとはまた別に、それ以上出すという構えをすることによって、このIOMにおける運営あるいは企画、こういうところにより参画していくことができるのではないのか。もしそうであるとするならば、先ほど政務次官が言われたとおり、この国際社会における難民問題に対しての日本の発言権というのはより増していくんじゃないのか、そこにイニシアチブを発揮できる一つのものがあるんじゃないのか、このように考える次第ですが、いかがでしょうか。
  46. 小西正樹

    ○小西説明員 お答えいたします。  憲章二十五条におきましては、機関の経費の財源として、先生御指摘のとおり、管理予算と事業予算の二つの予算が組まれております。管理予算は、加盟国の分担金をもって充てる、事業予算は、加盟国等が現金、現物または役務の拠出をもって充てる、こういうことが想定されておるわけでございます。この分担金につきましては、先生御承知のとおり、機関の活動とのかかわり合いの程度、加盟国の支払い能力、国連の分担率等を勘案いたしまして理事会が決定することになっております。  この分担金については義務的な経費でございます。先生が御指摘になられましたように、我が国としてその事業により積極的、効果的に取り組んでいくために分担金を超えて拠出するという可能性も理論的な一つの可能性ではあるというふうに私は考えておりますが、この点につきましては、他方において事業予算という道も開かれております。  したがいまして、私どもはこの国会で御承認を得まして、加盟国になった際には、いかなる貢献が日本として最も効果的であるか、よく他の加盟国とも相談いたしまして、日本としての考え方をぜひとも積極的に取りまとめていきたいというふうに考えております。
  47. 東祥三

    ○東(祥)委員 今の御発言に基づきまして、今後ともフォローアップさせていただきたい、このように思います。  ところで、他の加盟国は、日本がこのIOMに加盟するということに関して何を期待されていると思われますか。
  48. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 お答えいたします。  私もIOMのパーセル事務局長日本を訪問したときに何度かお会いしておりますが、IOMそのものが欧州移住機構からスタートしてきておりますので、その意味で、その後アジア、中南米等における活動を広げておりますけれども、アジアの主要国としての日本が参加することによって本当のワールドワイドな組織になるということを期待をしておりますし、日本としては、その意味ではアジアにおける活動、またグローバルな視点からの各地域での活動に資金的に、また人的に、それから今東先生おっしゃいましたように、アイデアの面でも新しいアイデアを出していくということを心から期待しているというふうに思っておりますので、それにこたえていきたいと思っております。
  49. 東祥三

    ○東(祥)委員 それに期待します。  次に、コスパス・サーサット計画、残り三分になってしまいまして申しわけありませんが、さっさとやらせていただきます。  もう既に質問がありましたのでその部分は避けさせていただきますが、このコスパス・サーサット計画に参加することによって、当然海洋における災難、事故、これを迅速にかつ適切に把握することができる、さらに広範囲にわたって的確な情報が入ってくるのだろう、このように推察いたしますが、今日まで日本周辺で発生した海難事故の数、あるいはまたコスパス・サーサット計画を通 じて海上保安庁が得ている情報に基づくと、世界で起こっている海難事故の数、さらにまた、それらを踏まえた上で今後どのように海難事故が推移していくと思われるのか。当然海上保安庁としては限りなくゼロに近づける、このように決意されていることだと思いますが、現実には、そのように努力されたとしても起こっているという実態がありますから、その辺についてどのようにお考えになっているのか。  さらにまた、ソフト面でございますが、事故の件数を減らすために海難防止策をとっていると推察いたしますが、海上保安庁として具体的にやられていることは一体何なのか。  欲張って申しわけないのですが、さらに、この計画に参加することによって海難事故に対処するための救助体制の変更は来さないのかどうなのか。嫌な見方をいたしますと、今までは災難、事故現場はある意味で面でとらえざるを得なかった、この辺で起こったんじゃないのかと。それが、このコスパス・サーサット計画に参加することによって限定的に事故を発見することができる、なおかつ迅速に把握することができるのじゃないのか。今まで対象が面だったわけですから、それが一点になるわけですから迅速に把握することができる。嫌な見方をすると、逆に不必要な整備をどんどん消却していくことができるのじゃないのか、そういうことも考えられるのじゃないのか。したがって、このコスパス・サーサット計画に参加することによって救助体制の変更がないのかどうなのか。  以上三点にわたりまして、細目にわたりますと六点になると思いますが、一気によろしくお願いいたします。
  50. 谷口克己

    ○谷口説明員 お答えいたします。  まず先生から御質問の二点につきまして、私どもの方からお答えさせていただきます。  平成四年に我が国の周辺海域において救助を必要とする海難に遭遇した船舶は千八百十隻となっております。また、世界全体での海難の発生件数につきましては、非常に把握が困難でございますが、一九八二年九月から一九九一年六月までの間に世界全体で海難によりコスパス・サーサットが利用された件数は二百八十一件、救助人員が九百十一名というふうになっております。  我が国周辺において発生いたしました海難を過去にさかのぼって見てみますと、台風や異常気象の影響を除きますと、おおむね漸減傾向にありまして、平成四年の海難隻数はこの二十年来最低の数値になっております。  将来の予測につきましては、これは非常に難しいわけでございますが、私どもとしては、今後も海難を減少させることができるよう海難防止に取り組んでおるところでございます。  具体的に海上保安庁における海難防止についての取り組みでございますが、海上保安庁では海上における交通ルールを定めております。さらに、交通標識の整備とか海上交通センターの整備あるいは船舶航行のための情報提供などを行うことにより船舶航行の安全を図っておるところでございます。  このほかに、海難の防止のためには船舶の構造設備の面やあるいは船舶の乗組員の面についての対策も必要となるわけでございますが、それらにつきましては、それぞれの担当の行政機関と協力をいたしながら、いろいろな機会を通じまして、海上保安庁としても安全確保のためのいろいろな海事関係法令の遵守ということについて指導しておるところでございます。今後とも、こういった海難防止の対策について積極的に取り組んでいくことにいたしております。
  51. 桑原康記

    ○桑原説明員 救難体制の関係についてお答えいたします。  我が国が加入しております千九百七十九年の海上における捜索及び救助に関する国際条約、いわゆるSAR条約でございますが、これによりまして、我が国周辺と太平洋側の千二百海里に及ぶ海域が日本の捜索救助の責務を持っている海域となっております。このために、巡視船艇、航空機の増強を図って海難救助体制の整備をしてきているところでありますが、現在、三百五十四隻の巡視船艇と七十機の航空機により海難救助の即応体制を確保しております。  さらに、今回のコスパス・サーサット制度に加入することによりまして、先ほど先生御指摘のように、遭難位置を迅速正確に把握することができまして、これによりまして的確に捜索救助勢力を現場に急行させることができるようになりまして、一層効率的な海難救助活動が可能となると考えております。
  52. 東祥三

    ○東(祥)委員 どうもありがとうございました。
  53. 伊藤公介

    伊藤委員長 古堅実吉君。
  54. 古堅実吉

    ○古堅委員 国際移住機関憲章について、時間もございませんので、ずばり伺わせていただきます。  この憲章の第一条第一項(b)ですが、難民、避難民の組織的な輸送に関することが規定されています。これは役務提供、人的貢献について含んでいるというふうに理解してよろしいですか。
  55. 小西正樹

    ○小西説明員 お答えいたします。  御指摘の箇所は、人的貢献も含まれていると思いますが、それのみには限られないのではないかというふうに考えます。
  56. 古堅実吉

    ○古堅委員 済みません。ちょっと聞き漏らしました。
  57. 小西正樹

    ○小西説明員 人的貢献がもちろん含まれますが、それのみに限られないのではないかというふうに考えております。(古堅委員「役務提供も」と呼ぶ)役務提供、はい、含まれております。
  58. 古堅実吉

    ○古堅委員 これまで批准された、各国がやってきた役務提供、特に軍事要員の役務提供がどうであったのか、その実績などについてお聞かせください。
  59. 小西正樹

    ○小西説明員 過去における軍事的役務の提供でございますが、湾岸危機の際に、民間航空機が利用可能でないという状況のもとで、この機関からの要請を受けまして軍用機が提供された経緯があるというふうに承知しております。
  60. 古堅実吉

    ○古堅委員 これは具体的にどの国がということも、その資料がございますか。ありましたら説明してください。
  61. 小西正樹

    ○小西説明員 米国、シンガポール、ブルネイよりそれぞれ役務の提供があったという資料がございます。
  62. 古堅実吉

    ○古堅委員 PKO法は、国際機関の要請があれば人道的な国際救援活動に自衛隊を派遣するようにしています。自衛隊を派遣しやすくするためにこの国際移住機関憲章提起するということがあってはならぬのじゃないかというふうに考えます跡、そこらあたり、どうですか。
  63. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 先ほど御答弁いたしましたとおり、このIOM、国際移住機構への日本の加盟は長年の課題でございました。日本としてもその重要性を認識して今まで任意拠出を続けると同時に、先ほどお話がありましたように、民間のボランティアの方々の御協力も得てきたところでございます。その意味で、IOMからの、また国際社会からの強い要望もあって今回日本としても参加に踏み切ることにしたわけでございまして、PKO法に基づく役務の提供等を目的として加盟を目指すということでないことは御理解をいただきたいと思います。  ただ、先方から要請があり、またそうした必然的な事情がある場合には、PKO法に基づく派遣を検討することはあるということは言うまでもありません。
  64. 古堅実吉

    ○古堅委員 PKO法に基づく国際的、人道的な国際救援という名のもとに派遣することを目的として批准するものではないということがわかりましたから、PKOとの関係ではいろいろと意見もあるところですから、それについて、この問題がそういうところに走ることがないように厳しく指摘をしておきたいというふうに思います。  関連して質問させていただきますが、発展途上国で深刻な問題となっている食糧問題、この食糧問題については、我が国憲法の平和原則に基づく国際貢献としても積極的に進めようとしているかどうか問われている問題の大事な一つだというふうに考えます。この五年間の予算計上の推移と食糧援助費とその量及び実績について説明してください。
  65. 川上隆朗

    ○川上政府委員 食糧援助予算の額等についての御質問でございますが、過去五年間の計上額についてまず申し上げますと、平成元年度が百十二億四千百万円一二年度が百二十六億六百万円、三年度が百二十一億二千五百万円、四年度が百四十二億九千七百万円、五年度が百十六億九千四百万円となってございます。  支出の実績につきましては、平成元年度が、繰り越しがございますのでちょっと数字が多くなりますけれども、百三十五億四千七百万円、二年度が百三十五億二百万円、三年度が百二十六億九千三百万円となってございます。四年度の実績については現在集計中の段階でございます。  食糧援助につきましては、先生御案内のとおり、ケネディ・ラウンドの食糧援助規約というのがございまして、今は一九八六年にできた規約に基づいて食糧援助を我が国も国際的な義務としてやっているということになっておりますが、その我が国に関する最小拠出義務量というのは、小麦換算で三十万トンという数字になってございます。  我が国といたしましては、米、小麦、メーズといったようなものを買い付けて、食糧の必要な途上国に供与するという形をとってございますが、小麦の換算で数量を申し上げますと、これは八七年−八八年の年度で、ちょっと丸い数字で恐縮でございますが、五十五万トン、八八−八九が四十七万トン、八九−九〇が五十二万トン、九〇−九一が三十八万トン、九一−九二が四十一万トンといった小麦換算の援助を行っている次第でございます。  そのときそのときの食糧のニーズにつきましては、FAOが発行します食糧不足の状況を取りまとめたレポート等が毎年出ますので、そういうものを参考にしながら、各国からの要請額等に基づきまして、我が方として予算の範囲内で処理をするといったような体制をとってございます。
  66. 古堅実吉

    ○古堅委員 発展途上国における飢餓、栄養不足人口及び求められている必要食糧の量、それについて数字的に説明してください。
  67. 河合正男

    ○河合説明員 最近のFAOの報告によりますと、栄養不足人口は、一九八八年から九〇年までの三年の年平均で約七億九千万人であるという報告になっております。この飢餓の人々に求められる食糧の量は、八三年から八五年までの三カ年平均で六千百万トンでございました。今後の見通しとしては、紀元二〇〇〇年にはこの不足量が九千五百万トンまでになるのではないかというふうに見られております。
  68. 古堅実吉

    ○古堅委員 必要食糧量に対して、日本外務省ODA白書に基づく数字でいいますというと約四十万トン、これはその必要量に対して〇・六%に相当するものにすぎません。余りにも少ない。一%にも満たないのがこの白書に基づく数字となっております。  日本、アメリカ、ドイツのODAに占める食糧援助費の割合、どうなっていますか、比較して数字で説明してください。
  69. 川上隆朗

    ○川上政府委員 各国の食糧援助のそれぞれのODAに占める比率というのは、ちょっと今手元に数字がございません。突然の御質問でございますので、また別途その点についての御説明をさしていただきたいと思います。  他方、我が国の食糧援助の関係につきましては、先生御案内のとおり、実は日本は食糧輸出国ではございませんものですから、もともと食糧援助規約ができたケネディ・ラウンドのときの議論というのは、基本的には食糧余剰国、アメリカでありますとかヨーロッパ共同体といったようなところが中心となって食糧を供与する、他方、食糧余剰国ではない日本みたいな国は資金でもってこれに参加するといったような体制をとりまして、いろいろな交渉を行った結果、日本の拠出のパーセンテージというのは条約上は三・九九%ということに定められて、それに基づいて食糧援助を行っておるわけでございます。  他方、日本は食糧という形では援助はその程度しかできないにしても、食糧増産援助ということで、我々これは2KRと呼んでおりますけれども、肥料、農機具、農薬といったような農業資機材を途上国に供与するということで予算上の措置もとらせていただいて行っております。  例えば平成五年度の予算を見ますと、先ほど申しましたように予算ベースでは食糧援助は百十六億でございますが、食糧増産援助は三百億という予算を計上いたしておりまして、食糧に困っている国の増産体制にお手伝いをさせていただいているという形でございます。
  70. 古堅実吉

    ○古堅委員 いろいろな面で必要な援助を我が国が積極的に展開するということは大事なことです。しかし、今の世界情勢で、発展途上国における危機、飢餓、栄養不良、栄養失調、それに伴う死者、そういうものが余りにも残酷と言っていいほどの状況が続いておるときだけに、ただ、いろいろなところをやっていますから、それだけ必要とされている食糧援助、その程度でいいんですよということにはならない問題を含んでおるんじゃないかと思うのです。  九〇年度の発表された資料に基づきますと、これも外務省のODA白書に基づくのですが、日本が〇・四%、アメリカが一三・二%、ドイツが二・四%。援助国の平均が五・九%でありますから、日本の低さというものは、今の説明にかかわらず、これはもう大変な、ひどいものです。  今発展途上諸国では、飢餓、栄養失調などで毎年一千二百九十万人、これを平均しますと毎日約三万五千人が死んでいます。経済大国を云々しながら、その力を食糧援助など真に人道的な支援に思い切ったことができないということは、今の説明にかかわらず、私はこの国際環境のもとにおいては恥ずべきことの一つだというふうに言わざるを得ません。  そこで、真に我が国の国際貢献を発揮すべき道をどこに求めるかということが問われる、その一つの問題でもあると私は思うので、食糧援助費を思い切ってふやして、ODA割合の面でもそれを大きく高めることが大事じゃないかと考えますが、次官、お答えください。
  71. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 世界の多くの地域で人々が飢餓に悩んでいる実情があることは先生御指摘のとおりでございます。その意味で、日本としても食糧援助の機構の枠組みの中で努力をしております。  ただ、日本の援助哲学というのは、先生御承知のとおり、魚を与えるのではなくて魚の釣り方を教えることが大事だというのが基本的な考え方でございます。その意味で、食糧を供与するよりも食糧増産のための援助をする、また食糧増産のためのノウハウ、技術協力をするということで、長期的に見て食糧難の解決を図っていくということに今後とも重点を置いていきたいと思っております。  当面飢餓で死んでいく人たちがいることについては、私たちも心を痛めておりますし、日本の米等は国際価格に比べて非常に高いものですから、国内の農産物を出すわけにいかないということで、タイ米等を購入して提供しているわけでありまして、その意味で、今後とも続けていくつもりでございますが、その足らないところは、今回私もソマリアを見てまいりまして、ソマリアに米を送る運動というのを民間で組織していただくということで、政府も側面的にお手伝いをしていくことにしております。そうした官民を挙げての努力でこの飢餓問題にも対応することが必要ではないかと思っております。
  72. 古堅実吉

    ○古堅委員 もう時間が過ぎましたが、今の次官の御説明にかかわらず、これはもっと真剣に検討してほしいと思うんだ。  現実にこういう飢餓、栄養失調などでどんどん、一日平均三万五千人の子供たちが死んでいるというふうな状況のもとで、いや、物を与えるなとか言うよりはつくり方を教えるような方に援助した方がいいなどという形で見過ごすということは、これはまさに人道上も許されない冷たい言い方と言わざるを得ないんですよ。  食糧をどのようにつくっていくかということでの先々を見越しながら必要な援助をするということは大いに結構なことだ。これもしながら、目の前で、世界がいろいろな意味でそのことを受けとめて援助を思い切って強めなくてはいかぬという切実な問題があるというのに、それについてはそういうふうにして冷淡な説明で終わろうなどということは納得いきません。ぜひそこも含めてもっと真剣に考えて根本的に考え直してほしい、そのことを厳しく指摘して終わらせていただきます。
  73. 伊藤公介

    伊藤委員長 和田一仁君。
  74. 和田一仁

    ○和田(一)委員 きょう二つの条約が提案されておりますけれども、初めに、コスパス・サーサットの通告書簡について二、三、基本的なことですけれども質問させていただき、時間もありませんので、もう両条約とも二、三問ずつで終わると思いますが、お願いいたします。  日本は海洋国家でございますし、全世界で持っている商船、船舶量のうちの六%強を占めるぐらいの海洋国家であり、加えて、その数字に入らない漁業の面でも大変な船を所有しておる国でございます。それからまた、我々は経済大国になりましたけれども、貿易によって経済を反映させてまいりました。その貿易にとりましても船舶は欠かすことができません。資源小国の日本が資源を国外に仰ぐその輸送は船であり、つくった製品を輸出するその輸出手段も大半が船である。こういうことを考えますと、海洋上における安全の確保というものは大変大事な問題である、こう思うわけでございます。  そこで、今回、世界的な海上安全システムが構築されて、我が国もそういった中でその恩恵を受けなければいけないのですが、コスパス・サーサット衛星制度というのは飛躍的にその安全度が高まるのではないか、こう理解しておりますけれども、従来とも政府は海上の安全対策について十分な留意を払っておりますけれども、今度このコスパス・サーサットに加わることによってこの安全面における政策がどう変化するのでしょうか。その点をまず初めにお伺いしたいと思います。
  75. 河合正男

    ○河合説明員 手短にお答えいたします。  これまでの遭難救助の制度では、通信方法とか、さらには信号の発信の仕方が範囲が非常に狭いとか、技術的に訓練を要するという問題がございましたが、このコスパス・サーサット制度を利用した遭難救助システムでは、送信が非常に簡単になるということと、送受信の範囲も極めて広範囲になる、事故の位置の特定も非常に的確なものになるということで、遭難救助体制の飛躍的な強化につながるものと考えております。
  76. 和田一仁

    ○和田(一)委員 この締約国の中にはいろいろな形で参加している形式があるようですが、我が国がその利用国として提携するのではなくて、地上部分の施設を提供するというそこの意味合いはどういう意味合いでしょう。  冒頭お聞きした中にも、そういう海難情報は非常に濃くなってタイムリーに活動できる、そういうことはわかるのですけれども、新しくそれに対応していく救助の方の政策も充実していくのかどうか、それもちょっと気になるわけですけれども、まず、地上部分の提供という意味合いは、ただ利用するのと違った意味合いがあるのかどうか、それに対してどういうきちっとした義務を果たしていけるか、この点についてお伺いします。
  77. 河合正男

    ○河合説明員 この制度を利用するということだけでしたら利用国にとどまればよろしいわけですが、それを超えて地上部分の提供国になるというのは、日本の、先ほど先生から海洋国家というお話がありましたが、大国としての国際的な責任を果たしていくということでございます。このシステムを通じて日本が遭難の情報をキャッチし、それを広く国際的に情報を伝達していくということで世界的な遭難救助体制に日本としても大きな役割を果たしていける、そういう体制になります。
  78. 和田一仁

    ○和田(一)委員 海に関していろいろな機関、機構があると思うのですけれども、国際海事機構という大きな機構がございます。それにインマルサット体制、それからコスパス・サーサット制度、SAR制度、こういったそれぞれ独立した組織があるわけですが、こういったのを見ておりますと、国際海事機構(IMO)が、それぞれの仕事を持っているインマルサットであるとかあるいはコスパス・サーサットであるとかSARであるとか、こういうものを一つにまとめ上げて、そしてそれぞれの体制が有機的に、効率的に作動してもらえるようなそういうシステムの一体化というか、そういうものをつくる方がいいような気がするのですけれども、こういった点についての働きかけを日本はするつもりがあるか、あるいはそういうことはとても現実的には無理なのかどうか、この点について御意見を伺いたいと思います。
  79. 河合正男

    ○河合説明員 先生御指摘の諸条約は、いずれも海上の遭難救助に関係する条約でございますが、SAR条約については海上の捜索救助を目的としている、それから、SOLAS条約については海上における人命の安全確保を目的としている、それからもう一つトレモリノス条約というのがございますが、これは漁船の安全を目的とした条約だということで、それぞれ目的が違っておりますし、その規定内容も非常に異なっております。それぞれの適用の中から混乱が生まれてきたということもこれまでございませんし、これを一本化しようという意見もIMOの中で出たことはございません。さらに、トレモリノス条約につきましては、これはまだ発効していないというふうな条約状況の違い等もございまして、これを一本化するという必要はないのではないかというふうに考えております。
  80. 和田一仁

    ○和田(一)委員 国際移住機関の方についてちょっと御質問いたしますけれども、このIOMの活動につきまして、実態をちょっと御説明いただきたい。特にユーゴ難民であるとかインドシナ難民について、今どういう活動をしているのかを簡単に御説明いただきたい。
  81. 小西正樹

    ○小西説明員 お答えいたします。  IOMの活動は、主として移民、難民等の輸送その他移住サービス、それから先進国に流出いたしました開発途上国出身の優秀な専門家等の帰国移住の促進のためのサービス、こういった点が主要な活動でございますが、今先生がお尋ねになられました、ユーゴスラビア、インドシナ、こういった国におけるIOMの活動についてお答えいたします。  旧ユーゴスラビア難民、避難民の問題に関連いたしましては、緒方先生のおられます国際連合難民高等弁務官事務所、国際連合児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、赤十字国際委員会(ICRC)、このような国際機関と協力をしながら、まず第一に難民、避難民の輸送計画、それから第二に救援医療計画、この二つを実施いたしております。  また、インドシナの難民の支援の関連業務でございますけれども、これにつきましては、インドシナ難民の、特に我が国に対する輸送関連業務を実施しておるほか、合法出国計画、ODPと呼んでおりますけれども、この計画に基づきまして、ベトナム人が人道的な理由によりまして家族の再会を実現したいという際に、定住国への輸送関連業務を実施しているところでございます。
  82. 和田一仁

    ○和田(一)委員 もう時間もありませんけれども、このIOMに加盟することによっていろいろな貢献もできるし、同時に義務も生じてくるのではないかと思うのですね。  私、先ほど政務次官のお話も聞いておりまして、難民発生のケースというのは必ずしも減っていない、むしろいろいろな環境の中でふえるように御理解しているようで、私もそのとおりではないかと思います。  現状において、ユーゴについてもインドシナについても、どちらかといえば比較的我が国としての対応はしやすいと思うのですが、しかし、これから難民発生のいろいろなケースを考えると、世界で一番巨大な人口を擁している国が我が国の隣にはございます。そして、その国は、人口が爆発的に増大していくのを抑えることが国策、政策として非常に大事だというくらいに人口が過密というか大きい、多い。一方、急速に経済発展をやっていこう、今こういう過程にある。発展している都市部と農村の間の格差が出てきている。やがてはこういったことの不満で豊かなところへの人口の移動が始まるのではないか、こんな感じもいたします。  それからいま一つ、世界でも例を見ないような非常に独裁体制の国家がやはり近くにある。そしてその神格化された独裁者の中で今やっておりますけれども、そういったものが崩れたときの混乱、これは当然あるのではないかと思います。  そういうときを考えていきますと、そういう状態の中から非常に近間で、近いところで人の大きな移動が始まったというようなときに、この条約の中でなすべきことと、そういった発生の事態に対する義務、この関連はどう考えたらいいのか。受け入れなければならない部分あるいは断れる部分、そういうものがあるのかどうか。私は、この条約の中で、加盟国それぞれが持っている一番、非常に重要なポイントではないかと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  83. 小西正樹

    ○小西説明員 大量の難民が我が国近辺で発生するような事態が仮にあった場合に、我が国としてなすべきこと、あるいはこの機関の憲章上どういう義務があるのかというお尋ねでございますけれども、機関の憲章は一条三項におきまして「機関は、入国許可基準及び入国を許可される者の数が各国の国内管轄権内にある事項であることを認識するものとし、自己の任務の遂行に当たっては、関係国の法令及び政策に従う。」というふうに明記してございます。すなわち、各国がいかなる者の入国を認めるかということにつきましては、各国の出入国管理政策の基本でございまして、本来各国が独自に決定し得る問題だということがこの国際移住機関の憲章においても前提となっているわけでございます。  したがいまして、日本の近辺で仮に、おっしゃられましたような大量の難民が発生した場合、日本としてどうするか、これについては、具体的にどういった事態であるかということを具体的な状況に即しまして総合的に、政策的に判断いたしまして、我が国として、人道的な観点から、あるいはその国との友好関係から、日本としてどういうふうに対処すべきかということを考慮すべきことは当然でございますけれども、機関の憲章との関係におきましては、これは一義的に日本の自主的な判断にゆだねられている問題だというふうに理解しております。
  84. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間が過ぎましたが、政務次官、どうぞ。
  85. 柿澤弘治

    柿澤政府委員 日本の近隣における大量難民発生の場合のIOMとの関係は今政府委員から答弁したとおりでございますが、和田委員御懸念のようなことがないように、中国については、その経済発展を日本は支援をしていく、また朝鮮半島の情勢については、注意深くその変化を見守り、安定的な移行ができるように周辺国と相談をして外交的な努力をしていきたい、こう思っております。
  86. 和田一仁

    ○和田(一)委員 終わります。
  87. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  88. 伊藤公介

    伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際的なコスパス・サーサット計画との地上部分提供国としての提携に関する通告書簡締結について承認を求めるの件及び国際移住機関憲章締結について承認を求めるの件の両件について議事を進めます。  両件に対する質疑は、先刻終了いたしております。  これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  まず、国際的なコスパス・サーサット計画との地上部分提供国としての提携に関する通告書簡締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  89. 伊藤公介

    伊藤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、国際移住機関憲章締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  90. 伊藤公介

    伊藤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 伊藤公介

    伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  92. 伊藤公介

    伊藤委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  93. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 武藤大臣、対ロシア支援会議、大変御苦労さまでありました。国際社会の一員として、また今の日本の立場等を考えるときに、この対ロシア支援はやらなくてはいけないものだ、私はかように認識をしております。  ただ、今回のこの支援で、きのう私は根室の大矢市長と話をしたのですけれども、北方領土を抱える地元ではこんな声が多いというのですね。支援に重点が置かれてしまって領土問題は取り残されたのではないか、棚上げされたのではないか、人道上の支援だとか国際協調の中での日本の立場は理解するけれども、政府としては本気になって領土問題を取り組んでくれるのだろうか、こういった心配の声が多いということをきのう私は根室の大矢市長から言われました。こういった意見に対しまして大臣はいかがお答えするのか、伺いたいと思います。
  94. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 きのうまでのG7合同閣僚会議は、今ロシアにおいて、いわゆる政治的な面では民主化、経済面では市場経済原理の導入、こういう形での改革が行われておるわけでございまして、言ってみれば我々自由主義社会と同じ体制になろう、こういうことで一生懸命努力をされておられるわけでございます。それを支援をしていかないとなかなかそれが達成されない、場合によればこれが後戻りしてしまうのではないかという心配がなされているという国際的な認識のもとに、私はおとといときのうの会議が持たれたと認識をいたしております。  一方、日本は北方領土の問題いわゆる領土の問題という、そしてそのために平和条約もまだ締結されていないという特殊な関係にあることは、これまた二国間の問題としては当然あるわけでございます。  そこで、私どもとしては、そういう世界的な観点での国際協調の中でできる限りの協力はしていく、しかし一方、この領土問題を解決し、そして平和条約締結し、そして国交が完全な形で正常化するということは当然必要なことでありまして、その両方を同じように、このごろいわゆる拡大均衡という言葉を使っておりますが、要は、両方を均衡を保ちながら、経済面でも協力はするけれども、領土問題を含めて政治的に一日も早く平和条約が結ばれるようにやっていこうというのが、かみ合わせながらやっていこうというのが私どもの考え方でございます。決して領土問題を全く頭から棚上げしようというようなことは考えておりません。
  95. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、今大臣から領土問題は棚上げをしないという話がありましたが、大臣がこの七日に、就任後初めての会見では、領土問題は棚上げしない、日ロ外相会談には議題にしますと明確に言っているんです。ところが、十三日の閣議後の記者会見では、大臣は、北方領土問題と対ロ支援は分離いたしますという重大な発言をしているんです。このとき内閣官房長官は、政経不可分の基本方針に変わりはないと、官房長官の記者会見で否定はしているんです、大臣の言い方を。こういった話があっての今回の対ロ支援なものですから、地元は極めて神経質になっているし、やはりそうかという受けとめ方なんです。  ですから、今回のこの流れを見ると、領土問題については一つの政策変更があったのじゃないだろうか、あるいは政府の方針が変わってきたのではないかという懸念があるわけなんです。この点、しっかりと言っていただきたいと私は思います。
  96. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 これは正直、あのときのそれぞれの報道が必ずしも的確でないと私は自分では不満を持っておるわけでございます。  あのときには、いわゆる全部の中で報道をされたところもあるわけですけれども、あくまでもマルチの、いわゆる全体、今申し上げたように国際協調の中でできる限りの協力はしていこうということを申し上げたわけでありまして、全く分離しているとか、分離していないとか、そういう表現は私は使っていないわけです。私は非常に遺憾に思っておるわけであります。
  97. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、私は大臣の会見の要旨も伺っていますけれども、私は報道の方が正確だと思っています、この流れから見ますと。基本的には、大臣が質問に答えて、やはり分離という話になっているわけですよ。  しからば、大臣、ああいう報道があったとき、なぜすぐさま抗議するなり否定するなりしなかったのでしょうか。この点、はっきりしてほしいと思います。
  98. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 今言ったように、ある新聞はマルチの中でと書いてくれるところもあったわけですね。だから、私がそんなことに一々、毎日毎日やっていたら、それこそいつもマスコミとやり合わなきゃなりませんから、私は、自分の考え方は、ある一部の報道は正しく報道されておりましたから、そのままにしておいたわけであります。
  99. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、私は念のために各紙のここの報道を持ってきております。そこで、大方の報道というのは、例えば対ロシアについては、「すべてを越え支援」あるいは「すべてを超越」だとか、あと大臣が言っている「切り離し明言」なんというのは、私はこの産経新聞の話は比較的大臣のことも伝わっているのかなとも思いますけれども、あるいは朝日新聞なんかも明確に「すべてを越え支援」ということで記されているのですね。ですから、あのときの会見というのは、領土問題は置いておいて、対ロシア支援だけにシフトしたという感じを受けているのです。そこに誤解が来ていると思うのですね。  同時に、大臣、大臣の前の渡辺大臣にしても、私はこの国会の中でも聞いておりますのは、政経不可分の姿勢は堅持していきます、変わりありませんよ、同時に拡大均衡も大事でありますと。これは八九年五月に宇野外務大臣が構想して、初めて拡大均衡という表現を使ってきた。しかし、その拡大均衡というのは政経不可分を補完するんだというのが政府外務省の今までの答弁でした。私は、これを逸脱したというならば、大変な政策の変更ではないかと思っているし、大臣の記者会見等を見ますと、逆に私なんかもそうかなという受けとめ方をせざるを得ない。この点は、やはり明確に政策変更があるのならある、ないのならない、きちっと私はやってもらいたい。  同時に、その背景として、きのう大臣はコズイレフ外務大臣と会談した。領土問題が出ていないじゃないですか。たった一言、領土問題の解決をしなくちゃいけない、これは、言ってみれ、ばとってつけたような会談の中身ですよ。日本ではこの問題があるんだ、この問題を解決して日本の立場というものをきちっと主張しなくてはいけないんだということで、なぜ言ってくれないのですか。この点、私ははっきりさせてもらわぬと困ると思います。
  100. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私は、国際協調の中でということを申し上げておりましたし、分離という問題は申し上げておりませんが、思い切ったというか、何かそんなような表現をしたことは適切ではなかった、それは反省をしております。誤解を招くような点は反省をしております。  それから、きのうのコズイレフ外務大臣と私との関係の中で、領土問題を解決をして平和条約締結していくプロセスを進めなければいけないということは、必ず言っておるわけであります。
  101. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣も政治家ですから、私はこう思うのですよ。選挙で一票が欲しいとき、ただお願いしますと言って頭を下げたってなかなか実感として一票来ませんよ。本当に頼みますと言って、両手を握って頭を下げて相手の心を打つことにありますが、きのうの大臣とコズイレフさんのやりとりの中でも、領土問題を解決して平和条約締結するプロセスを進展させ、両分野がよい影響を与え合いながら前進することだ、こういう一般的な表現にしかなっていない。  果たして、そこで相手はどういった認識を持つでしょうか。やはりもう一歩突っ込んで、二国間の会議なんでありますから、日本の主権の確認というのは言って当然でないかと私は思うのですけれども、その点はどうでしょうか。
  102. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 鈴木さんもよくおわかりだと思うのですけれども、外交交渉というのはなかなかいろいろのことがございます。やはり微妙な点もございますので、きのうの会見のいろいろ細かいところまで申し上げられる段階には今ございません。  特に、北方領土に近い北海道から出ておられる鈴木代議士としては、当然北海道の皆さんのお気持ちをよく理解をされてそのような御発言をなさっておられると私は承知をいたしておりますので、その辺の気持ちは十分私も理解をしながら、これから努力をしてまいりますので、きのうの会談の中でどんなことがいろいろと話し合われたか、大変恐縮でございますけれども、今の段階で申し上げられないことをお許しをいただきたいと思います。
  103. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、北方領土問題が日ロ間にある、これは共通の認識であります。同時に、G7の国々がいつでもそれは評価してくれているし、また理解もしてくれている。しからば、G7のあの会議で、私は領土問題は出す問題じゃないと思うけれども、二国間の外相会談では当然日本の立場というのは明確に、鮮明に主張してしかるべきではないかと私は思っているのです。  そして、今その中身については言えません、私が聞きたいのは、日本の主権の確認というものがあったかどうかということを大臣にお尋ねしているのです。これは、何も外交交渉の裏の話を暴露して云々なんという次元の問題じゃない。日本の基本的な立場ですから、このことだけは言ったかどうかということが大事なことと、これからもこの領土問題というのはやはり一番大事な問題だという認識で取り組むのかどうかという、その大臣の考え方を私はお尋ねしたいのであります。
  104. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 領土問題も含めてきのう話をいたしました。
  105. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今のその大臣の答弁等にも関係して私はまた質問するのですけれども、官房長官が十五日の会見で、政経不可分は放棄だ、あるいは政経不可分は緩和だ、もっと具体的に言うならば、政経不可分という消極的な考え方は今はとらない、拡大均衡という積極的な考え方をとっていると。言ってみれば政経不可分の原則について否定をしたわけですね。  しからば、さっきの大臣の話とはこれは一貫性がないのです。整合性がないのです。私は、そこら辺の閣内不統一とも言えるようなこの閣僚同士の発言は、これはいかがなものかと思うのですね。私はあえて冒頭に大臣に聞いたのはこの点なんです。官房長官の会見とは大きなずれがある。  しかも官房長官は、外務大臣が就任後初めての会見で、政経不可分は堅持だと、外務大臣の言っていることを否定されておって、今度立場が逆になったのですよ、三日か四日してから。私はこんなばかな話はないと思っているのですね。この点、どう考えていますか。
  106. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほど申し上げたように、先日、いつでしたか、私の答弁で、思い切ったとかいろいろな表現をしたものですから誤解を招いたと思いますけれども、私どもの姿勢としては、政経不可分の原則を今放棄はしておりません。その延長線上に拡大均衡がある、こういうふうに御理解をいただけたらありがたいと思います。
  107. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 しからば、私は、この官房長官の発言というのは少し踏み込み過ぎだと思いますよ。外交の責任者は外務大臣であると思いますよ。きょうは局長も来ておるから、官房長官が何を言ったかわかっていると思いますけれども、これはちょっと閣内不統一も甚だしいし、日本外交政策の根幹にかかわる話ですから、この点はきちっと私は官房長官と外務大臣の発言、趣旨というのは一緒にしていただきたい、こう思います。
  108. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 ちょうど私は国際会議の真っ最中でございましたので、官房長官の記者会見、実は私もまだよく承知をいたしておりません。  事実関係について局長から答弁をさせます。
  109. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 今申し上げましたとおり、官房長官の記者会見におったわけじゃないのでございますけれども、基本的な考え方としまして、政経不可分、この言葉は、当時、いわゆるグロムイコ外交時代で、領土問題について、領土問題は存在しない、したがって、交渉の席にも着かない、そういう極端にかたくなな態度をとっていたときに、経済はこれでいいのか、そういう時代に政経不可分という原則を言ったわけでございます。  その点、領土の問題につきましては、現在のロシアの態度は、領土問題の存在は認めます、しかも帰属の対象は四つであるということで、そういう意味で、非常に大きく質的な変化をその意味においてはなされておる。したがいまして、今はむしろ昔のグロムイコ時代のときに使っていた言葉よりも、領土の方も、そういうことであればどんどん交渉して進めていきましょう、また経済の方もあわせて進めていきましょう、そういう両方のバランスと申しますか、拡大的な志向でいった方がいいということで拡大均衡と使っておるわけでございます。  その意味におきまして、基本的には、二国間関係政治と経済がこれはもうどちらかに偏るということではございません。これは両方発展していくという、関係づけられておるわけでございますが、その意味におきましては、政経不可分の原則も拡大均衡の原則も根は同じでございます。  ただ、そのときの時代的な背景からいたしましての違いがございます……
  110. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ちょっと局長、答弁、時間がないから。  局長、これは答弁になっていないのです、はっきり言って。官房長官は、政経不可分の原則についてそういう後ろ向き、否定的な考え方はとらないというふうに明確に言っているのですよ。いいですか、言ってみれば政経不可分はとらない。  我々が一貫して外務省から聞いてきているのは、政経不可分と拡大均衡は一貫のものなんですよ。内閣官房長官がじゃあこういうことを言うというのは、何を背景にして言っているか。外務省を抜きにして言っているとは私は思えないし、この点について経過の説明は要らないから、言ったか言わぬかぐらい、事実と、外務省としてはどう考えているかということと、それだけをきちっと言ってくれればいいのです。
  111. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 領土問題についてのロシアの考え方が大きく変わっているそういう状況のもとで、拡大均衡という言葉を使うのが適切である、そういう趣旨を述べたものと私は理解しております。
  112. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 私は野村局長さんとやりとりしてこの話をしても、私は野村さんを尊敬している方ですからこれ以上はやりませんけれども。  外務大臣、私はいま一度、この領土問題は日本にとって大事な民族の悲願であるんだという考え方のもとで、この問題については一歩も引かないという強い姿勢と、将来に向けての大臣としての具体的な戦略、戦術、さらには方法等をここに明確にやはり日本国民にお知らせをいただきたい、こう私は思います。
  113. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 ロシアと日本との間は完全な形での国交がないわけですね。一応正常化をしておりますけれども、平和条約締結されてない形でできている国交でございますから、やはり一日も早く平和条約締結をして、本当に完全な形での正常化が私は望ましいと思っております。それがやはり世界の平和にもつながることだと思っておりますので、その問題を、平和条約締結するには領土問題を解決していかなければならないのは当然でありますから、その決意はしっかり持って頑張ってまいりたいと思います。
  114. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、ですから従来どおりの方針で日本としては行くんだということは間違いないですね。
  115. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 従来と変わらない方針で参ります。
  116. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 ところで大臣、エリツィン大統領の訪日問題が出てまいりました。そこで、エリツィン大統領はモスクワのクレムリンでの記者会見で、領土分離条件にそういった雰囲気が出てきたものだから私は日本に行くことを考えているんだ、希望しているんだというような話になってもおりますけれども、正確にはどういう話なのかお知らせをいただきたい、こう思います。
  117. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 先生、エリツィンが記者会見での発言というふうに御質問でございます。今私の手元にトランスクリプトと申しますか、何も持っておりませんけれども、私の理解するところでは、宮澤総理の発言を引用されて、経済とか経済協力と北方支援の問題とを正面から衝突させない、そういう趣旨の発言を宮澤総理がされたということをその場で、記者会見で言ったというふうに理解しております。  他方、先生これはもう御案内のとおりだと思います。総理はそういう発言を、私全部調べましたけれども、されている記録はございません。この領土問題との関連につきましては、東京サミットですね、一時期エリツィン大統領を東京サミットに呼ぶか呼ばないかということが問題になりました。その招待の問題、そういうものと領土問題とは関係しない、そういう趣旨のことは述べたことはございますけれども、そんな経済とか経済協力と領土問題とは衝突させない、そういう趣旨のことを発言したことは全くございません。
  118. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 これは大臣、向こうが間違ったシグナルを受けて、間違った考えで日本に来てもらっても、これまた逆に冷え込むだけの話であって、いい話ではないと思うのですね。私は、これはもうやはり正確なシグナルを送って、それに対するまた返事をもらうということが大事ではないかと思うのです。そういった意味では、局長の今の話なんかも私はちょっとあいまいではないかと思っているのですけれども。  コズイレフさんが日本に来て、例えばきのうの記者会見でも、コズイレフはエリツィンがクレムリンで言ったようなことを言っているわけですから、この点、大臣どうお考えになっていますか。
  119. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 大臣の御答弁の前に私の方から。  昨日の日ロ外相会談における、領土についてのコズイレフ外務大臣の発言を引用させていただきたいと思います。  要するにロシア側も、法と正義の原則に基づいて、領土問題の解決を含め、平和条約締結により日ロ両国関係正常化のため努力いたしたい、そういうことをはっきり述べておるわけでございまして、したがいまして、領土問題の解決ということについての必要性というのは十分認識しているというふうに理解いたしておるわけでございます。
  120. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 それは外務大臣はそう言っても、エリツィンさんが、宮澤首相が最近ロシアと日本との経済協力関係と領土問題を分離することを表明したため訪日が可能になったと説明した、こうなっているのですね。この点なんかも私は極めて危険な話ではないかと思っているのです。  ですから、この点大臣、これは去年エリツィンさんが日本に来なかったいきさつがある。これだって、私がロシアへ行ってロシアの関係者に聞いてみると、日本の立場というものが正確に伝わっていない。何かしら話が歪曲されたり、変わった形で伝わっている。そのことがやはり来なくなった一つの理由でもありますから、私は、これは間違ったシグナルを送るべきでないし、また受けさせるべきでない。この点私は、大臣からきちっとした話をすべきだ、こう思っております。どうですか、その点は。
  121. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 きのう、コズイレフ外務大臣との会談においても、エリツィンの昨年九月の突如の訪日中止については、非常に日本国民は不快な念を持っておるということもきちんと言ってあります。  領土問題については、先ほど私申し上げましたように、従来と変わらないスタンスで今後も努力をしてまいります。
  122. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 しからば大臣、大臣が訪ロするのではないかという話が流れておりますけれども、この連休中に大臣はロシアに行く予定があるのかどうか。同時に、行く場合、そこでエリツィン大統領訪日の日程を詰めてくるのかどうか。お知らせをいただきたいと思います。
  123. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 この点は、とりあえずエリツィン大統領の訪日につきましては、外交ルートを通じて詰めることになっております。
  124. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 私は、大臣が行くか行かないかを今聞いているのですよ、この連休中に。ですから、大臣はこの日本とロシア問題を進めていく上でどんなタイムスケジュールを持っておるか、あるいは大臣自身としては、おれはもう積極的に行くんだ、だからそれで今日程を詰めているんだとか、そういうことを私はお聞きしたいのです。
  125. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私の判断では、きのうのコズイレフ外務大臣と私の会談で、この領土問題も含めて外交ルートを通じて話をし、エリツィン大統領の日本訪問についても外交ルートを通じてできるという判断をいたしておりますので、現時点では私がロシアを訪問する予定はございません。
  126. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 エリツィン大統領が訪日可能になったというクレムリンでの記者会見の話が日本に来たとき、大臣も総理も歓迎の意思表示をされましたね。コズイレフさんが宮澤総理とお会いしたときも、私の聞くところによると、サミット前でもあるいはサミット後でも来る用意はあるという話に対して、総理は、それならばサミット前がよろしいなというような話もあったというのですけれども、この点の正確さはどうなんでしょうか。
  127. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 宮澤総理とコズイレフ外務大臣との間で、サミット前の方がいいんじゃないかというようなお話があったということは聞いております。大体その方向でこれから外交ルートを通じて詰めていくことになると思います。
  128. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 来るなら国賓で来るわけですから、日本のいろいろな関係者、それぞれの立場の人との会談等もセットしなければいけませんから、私は日程は限られてくると思うのですが、例えば七月にはサミットがある、六月には皇太子様の御成婚もあれば饗宴の儀もある、あるいは政治的な日程も入っておられるということで、外務省として、もしサミット前に来てほしいというならば、いつの時期が適当だと思っているのでしょうか。
  129. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 昨日、エリツィン大統領の訪日についての日程調整について両国の外務大臣の間で話し合いが行われたわけですが、何分この点について、それはただ日程調整だけじゃなくて、具体的にその訪日のための準備ということについてどういう段取りでということが話されました。その結果、先ほど外務大臣が答弁申し上げましたように、外交ルートできちんとそれを詰めていきましょうということでございまして、まだその辺、今の段階で明らかにどうだということを申し上げる段階ではございません。
  130. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 せっかく、例えば日ロ関係を進展したいというならば、エリツィンさんの方で五月にも訪日可能だと言ってきた場合、私は、外務省が信頼されないのは今の答弁だと思うのですよ。日本として顔の見えた外交、形の見える外交をするには、しからば向こうからボールが打たれたならば、こっちが打ち返す場合は、こうだということを言うのが私は外交でないかと思っているのです。旧態依然として、こういう国会の場でも日本としての考えを明確に言わない。私は、そこに何かしら、外交が内政を忘れているのが今の状態なのではないかと思っているのです。大臣どうお考えですか、その点。私は、これは大事なことだと思っているのですよ。
  131. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、従来の考え方を変えないで私どもはまいるということを申し上げました。日時その他についてまで今ここで、やはりまだ決まっているわけでもございませんし、きのうの会談では、とにかく外交ルートで早急に詰めよう、こういうことになっておりますので、とにかく早急に詰めて、場合によって必要があれば、私はすぐ飛んでいけるわけでございますから、いつでもロシアを訪問して話し合うことはいいのでございますが、とりあえず外交ルートで詰めよう、こういうことに今、現時点ではなっているということを申し上げたわけであります。
  132. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 すべてにはタイミングというものがありますから、大臣、私はやはり大臣みずからが政治決断をしながら動かしていくことも必要でないかと思っているのです。外交ルート外交ルートと言うけれども、それがタイミングを失ったらどうするのでしょうか。向こうがせっかく打ってきたならば、こっちも速やかに打ち返すというのが、私は当然のことでないかと思うのですね。そういった意味では、せっかく武藤大臣、若くて、もうばりばりやる気のある大臣なわけでありますから、やはり新しい武藤カラーといいますか、そういった姿というものをつくっていただきたいな、私はこう思っております。  同時に、大臣、私は今回の支援なんかも見ながらも、支援は必要だ、同時に、本当に喜んでもらえる支援、将来的にも生きてくる支援、こういったものが必要でないかと思っているのです。さらに、あのロシアという国は非常に大きい国でありますから、全部に総花的に支援というよりも、例えばサハリン州を重点的にやるだとか、あるいは北方四島については今緊急援助の要請も来ているから速やかに対応するだとか、私は、やはりその地域の人に理解をしてもらったり、日本の国民もなるほどなとわかってもらえるような支援の仕方があるのではないかと思うのです。  特に、今度のサハリンの新知事は前のフョードロフさんと違って、前の知事さんは、もう領土返還は絶対だめという強硬論者で、日本流に言えばはしにも棒にもかからぬ人でした。しかし、今度の人は実務者で、非常に現実的な対応をするというふうにも言われておりますので、私は、やはりそういった、知事がかわった、しからばその知事に対して理解をしてもらえるような日本の速やかな行動というものがあるかと思うのですけれども、そういった考えというのはどうでしょうか。
  133. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 きのう、おとといの会議でも、前の二百四十億ドルの問題についていろいろ議論がありまして、やはり目に見える形で、しかも本当にロシア国民のために役立つという形でやっていこうということに、もうみんなの意見もそうでございました。  日本の今回の問題も、やはりそういう面で、食糧医療の無償援助、そしてまた有償のものは、中小企業の育成、あるいはエネルギーの関係のそれぞれ老朽施設を思い切って改善をするというようなことに重点を置いてやっていこうということになっておるわけでありまして、今度の援助というものは目に見える形でやっていきたい、私はこう考えております。
  134. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、私が言っているのは、その目に見える援助も結構ですし、大事なことなんですよ。  サハリン州がまさに知事がかわった。あの地域住民の理解を得ずしてまたこの北方領土の問題も私は解決できないと思う。そのためにわざわざビザなし渡航もやっているわけなんです。そのビザなし渡航だって、昨年に比べたら約倍近い数をことしは行おうという前向きの姿勢を日本側も向こう側も示している。しからば、私は前の知事よりは今度の知事がいい知事だという理解で、問題も動きやすいと思っていますから、そういった地区に対する、四島を抱える州に対する重点的な支援というものは、まさにわかりやすいし、向こうも理解をしてくれる姿でないのかということを私は聞いているんですよ。
  135. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 鈴木さんのお気持ちは、心情的には非常に私も同じ気持ちを持ちますけれども、やはりロシアと日本という関係でいくと、この地域だけというわけにはなかなか日本からは言い出せないのでございますが、現実に、しかし実際そのお金が使われる場合には、いわゆる目に見える形となりますと、サハリンの地域は非常にいろいろのエネルギー関係のものが既にあるわけでございますから、そういうところへ相当の部分のものが行くということは、私は御理解いただいて結構かと思います。
  136. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 時間ですから終わりますけれども、どうぞ大臣、この領土問題は私は本当に一億二千三百万日本人の悲願であるということ、あの沖縄の返還なくして日本の戦後は終わらぬと佐藤さんが言ったけれども、私はあのとき、なぜ北方領土とつけてくれぬかったかなと今でも、当時私はまだ若い者でしたけれども、悔やんだものなんです。  私は、ある程度時期は醸成されてきているし、成熟してきている、やはり一歩一歩確実に前進されるようお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  137. 伊藤公介

    伊藤委員長 上原康助君。
  138. 上原康助

    ○上原委員 武藤外務大臣、御就任以来いろいろ重要外交案件が続いて、大変大役御苦労さんです。  そこで、今も与党鈴木先生から、一昨日、昨日と続いたG7プラス1、特に対日支援の問題でいろいろ、これからのロシアの社会体制というか社会構造全般を見直していくという中長期の展望に立った一定の方向性を、ある面では日本外交が、全面的にとは言えないと思うのですが、あれだけの役割を果たしつつやったということは私どもも評価をしたいと思うのです。だが、今もありましたように、日ロ間においてはやはり長い懸案である領土問題というのが依然として横たわっている。しかも、これは一時期進展するかのようにありましたけれども、だんだんだんだん行き詰まり、凍結されてきた格好になっている。  逐一、限られた範囲でお尋ねいたしますが、忙しい上に不勉強なので余り十分できないとは思うのですが、やってみたいのですが、問題は、エリツィン大統領が、昨年九月に、あれだけの外交ルートを一応通して訪日するというものを直前になってやめた、これは外交儀礼というか、外交的にはもうあってはならない、ある意味ではあるまじき外交行為、姿勢だと言っていいと思うのですね。  国民のソ連に対する気持ちというものは、御承知のように領土問題含めていろいろ持っている。それに拍車をかけるような状況が続いた。その後、エリツィン政権は本当に、大海の小舟と言うと言い過ぎかもしれませんが、そういう不安定な状況に置かれている。  アメリカのクリントン大統領とこの間カナダでお会いをして、日本でG7をさせて、西側陣営の相当の対ロ支援方針が出るであろうという時期になると、さすがにしたたかな面もあるなという感じを受けるわけですが、今度またにわかに、外交ルートを通さないで、おれは五月に日本に行きたいんだと言ってきた。これも通常の外交ルートあるいは外交常識からすると、いかがなものかと思うのですね。国民はそういう面はいろいろ見ていらっしゃると思う。  そこで、第一にお尋ねしたいことは、一連のそういうエリツィン政権の対日政策について、我が外務省なり宮澤内閣はどういうふうな政治分析をしているのか。いろいろなことを想定をして二国間の多額の対ロ支援を決めた、あるいは全体的なものも、私はそのものは結構だと思うのですよ。だが、日本の国益という面、国民感情という面からすると、いろいろマスコミや専門家が指摘をしているように、相当疑問を持っている向きもあるということを考えた場合には、外務大臣外務省あるいは宮澤内閣の対ロ方針というものは一体どういうスタンスでやろうとしているのか。相当ぶれがあって動揺しているんじゃないかという印象を持ちますので、今変わらないとおっしゃったんだが、具体的にどう変わらないのか、従来どおりというとその中身は何なのか、まず大臣のきちっとした御所見をお聞かせください。
  139. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 変わらないと申し上げましたのは、いわゆる二国間には北方領土の問題があるわけでございまして、この問題を解決をし、そして平和条約締結をするという方針を持って、そのためには、かつては政経不可分、そして今その延長線上に拡大均衡という言葉もあるわけでございます。政経不可分及び拡大均衡というのが一番正しい表現かと思います。そうでないと先ほどみたいに誤解も招きますので、政経不可分プラス拡大均衡という表現が正しいかと思いますが、いずれにしても、その方向で今後とも努力をしていこうということで来ておる、このスタンスは変わりません。  たまたま、今回のエリツィンの訪日が実現するかしないか、まだ決まってはおりませんけれども、そのときにこれにどう対処していくかということも、私どもとしては領土問題を解決をし、平和条約締結をしていく、このプロセスというものはやはり当然主張していくという姿勢であるわけであります。
  140. 上原康助

    ○上原委員 政経不可分あるいは拡大均衡、よく聞いてきました。今与党の方からも非常にきつい御指摘があるように、かつて社会党が、二島返還論とかあるいは五六年の日ソ共同宣言に基づいた返還交渉をもっと積極的に進めたらということを言っても、外務省初め与党、総理も含めて、固有の領土だ、四島一括返還、不動にして微動だにしない、こういう表現で、社会党は国土を売るつもりかなんという指摘さえあったのですね。  私は、外交であり、これだけ冷戦構造が崩壊をして、社会情勢、社会構造が変化してきているから外交にも変化があっていい、だが、守るべき哲学というか、スタンスという原則は、それは守らなければいかぬのですね。あなたは政経不可分でやっている、あるいは拡大均衡を堅持をすると言うけれども、エリツィンやロシア側はそう見ていないと思うのですね。  これは幾らあなたがマスコミは正確に報道していないということをおっしゃるかもしらぬけれども、大体共通していますよ。「計算ずく対日戦略」、エリツィンの態度とか、来月、来日を提案したのは、領土分離と判断をしたからだ、日本の総理を初め日本の首脳がそういうことを言ったから行きたいということを言っているのですよ。そうなると、国民の受ける印象というものは、政経不可分と言いながらも、あるいは拡大均衡というのが援助だけ拡大されて領土は置き去りにされる、後残りにされるんじゃないか、こういう印象を持っていると思うのですね。  それじゃ、改めて、今度エリツィン大統領は本当に来ると思うのですが、御承知のように、四月の二十五日には向こうでもロシアの総選挙がありますね。そういういろいろな今の状況を考えてみると、どうもまた援助獲得とか日本側に対する揺さぶりという面でやっているんじゃないかという印象さえ受ける。私はそれは成功してもらいたいけれども、前例があるだけに、外務省なり宮澤内閣はしっかりしてこの問題には対処していかないと、国民にあらぬ誤解と波紋を、政府自体が従来言ってきたこととやろうとしていることが非常に矛盾だらけ、ちぐはぐな状況になりはしないか。そのことがこれからの日ロ関係あるいはG7プラス1というものにどう影響を与えるのかということは、大きな外交案件だと思うのですよ。その点いかがですか。
  141. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもは歓迎すると申し上げたわけでありまして、やはり日本へ来られる以上は、私どもが先ほど申し上げましたような、領土問題を解決をし、平和条約締結していくというプロセスを前進させていくものに役立つと思っているから、私どもは歓迎をすると申し上げているわけでございます。その辺は、私は今までと全く姿勢は変えていないということが言えると思います。
  142. 上原康助

    ○上原委員 そこで、外交政府の専権事項なんで皆さんしか、また、来日なさった場合のやりとりはやらないわけなんだが、しかし、国民の側から見て、果たして領土問題はどうなっていくのかなということに相当懸念を与えたことは事実ですね。  もう一つは、西側の支援ムードに流されていはしないかという懸念があるわけですよ。確かにアメリカにしてもいろいろロシアとの、こんなに社会も変わったかなと思うほど、クリントンとエリツィンのみつ月ムードというか、そういう面が出てきている。一方、ドイツは経済援助しようとしたって、国内事情があるからなかなか難しい。イギリスしかり。フランスも。カナダだってそうだと思う。ECも。そうすると、やはり日本の黒字なり日本の経済力というものを目当てにG7で包囲をされて、いつの間にか日本外交の主体というものが影が薄くなっている、こういう印象を与えていることは間違いないですよ。  じゃ、改めてお尋ねしますが、これからエリツィン大統領が来日なさるというそのことは、経済問題ももちろんあるでしょうが、北方領土返還ということも日ロ間の外交交渉というか外交の話し合いの議題にする、そういう前提でエリツィン大統領の来日準備をする、受け入れを歓迎する、そういう立場であるというふうに理解をしていいですか。  これは外務大臣、宮澤内閣というか、宮澤首相を含めてそういうお立場でやるということを外相としてここで国民に明らかにできるかどうか、その真意をしかと聞いておきたいと思います。
  143. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 答弁の繰り返しになるかと思いますけれども、領土問題を解決をして両国の平和条約を結ぶ、そして完全な国交の正常化をしていくということが世界の平和のためにこれは大いにプラスになることである、こういう考え方で私どもはいるわけでございまして、その方針があるからこそエリツィンが日本へ来られることは歓迎する、こういうことを申し上げているわけでございます。
  144. 上原康助

    ○上原委員 大変難しい面もあろうとは思うのですが、やはりG7の中でも、日本以外となるとG6ですか、その立場と日本の立場というのは違いますから、ぜひそこはしっかり踏まえてやっていただかないと困る。先ほども言いましたように、事北方領土の問題はいろいろ政治的な与野党の重要な対決点でもあったのです、我々は今そういうふうには理解していませんが。どうも、都合のいいときだけはみんな政権党である与党の都合のいいようにやって、本当を言うと、対ソ課題にしても我々が言ってきたことが正しいんです。だから、もうそっちの席とこっちを交代したらいい。  そこでもう一つは、今後、来月に来られると仮定して、またG7がありますよね、七月のサミットが。これからは、きのう、おとといのようなG7プラス1のテーブルというか、そういうタイプのいわゆるサミットは定着していくんでしょうか、日本はどういうお考えですか。
  145. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 お答えいたします。  このいわゆるG7プラス1というのは、今回の東京サミット、それから去年、一昨年も行われたわけでございます。定着していくのかという見通してございますけれども、基本的には、そういった過去の経緯を踏まえて、G7の国の間で協議して決めていくということに相なろうかと思います。
  146. 上原康助

    ○上原委員 プラスワンに限らない。この種のことは、またプラスワンにしたら、いやプラスツーにせい、スリーにせいといろいろ要望が出る可能性はありますね。これは国連の常任理事会と同じようなものだ。  大臣は、この件についてはどうお考えですか。当面はやはりG7プラス1という方向でいろいろやった方がこれだけの、IMFも含めると各国のトータルで四百二十三億でしたか、相当中長期の経済援助であるので、だから私は、ロシア向きのG7、サミットというのはこれからはあり得ないんじゃないかという感じもするわけです。これは事務当局よりは、やはり政治課題ですから大臣の所見も聞いておきましょう。
  147. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 従来の経緯は、私の承知しておるのは、サミットというのはG7で構成されておると思います。しかしながら、ロシアがいわゆる東西対立から、非常に仲よくやっていこうという、同じ自由主義陣営へ入っていこうという形で努力をしておられる、そういうものは大いに支援をしていこう、やはり同じ考え方に立ってこれから国際協調をやっていこう、こういう中でプラスワンが今入っていると私は思うのでございます。ですから、これはいつまでもそういう姿でいくかどうかというのは、ロシアが本当にこれから立ち直って、そして、あれだけ大きな国土でございますから、そこで自由主義陣営の一員としていかれるというときにはプラスワンになるだろうと思いますし、その辺はそのときそのときの情勢で違ってくることもあり得るだろうと私は思うのでございます。  いずれにいたしましても、現時点ではそれが恒久化していくというものではなくて、その都度サミット、いわゆる先進国首脳が集まるときにプラスワンにするかどうかということを決めていくもの、私はこういうふうに判断をいたしております。
  148. 上原康助

    ○上原委員 参考までに聞いておきましょう、我々がそうこだわれる課題でもなさそうなので。しかし、関心がありますね。ASEANとか、今度インドネシアでしたか、希望を持っているというか、それももし来られるのか来られないのか、何かあったら答弁してください。  そこで、もう一点ですが、今、領土問題は不可分で、エリツィンさんが来ようがこれからも対日外交でやっていく。また、経済援助ももちろんやらなければいかぬでしょう。人的交流もいろいろある。そのほかに何がありますか、ロシアとの関係で。
  149. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 あとほかにと言われましたけれども、今回の閣僚合同会議の結果としての議長声明をごらんになっていただくとわかるのでございますが、核の解体、それから最近発表になりました海洋投棄、そういった問題につきましては、我が国は大きな関心を持っておるわけでございます。その問題を指摘したいと思います。
  150. 上原康助

    ○上原委員 そこで、軍事大国というのは、つくって要らなくなれば簡単に海洋投棄をするなんというのはもってのほかだ。  そこで、放射性廃棄物の海洋投棄の実態については、一体日本側として、これは科技庁もあるいは関連すると思うのだが、どのくらい事実関係は掌握しておられるの。また、この件で、今それは、コズイレフさんとの両外相の話を聞いても、そういう面も含まれているね、いろいろ共同作業班をつくるとか。実態はどうつかんでいるのですか。これはゆゆしき問題ですよ。絶対これは日本側にとって簡単に見逃すわけにはいかぬ、緊急な問題だ。
  151. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 お答え申し上げます。  今月の二日にロシアの政府委員会が海洋投棄の実態について調査を公表いたしたわけでございます。その内容として私どもは理解しているところでございます。  それは、五九年から九二年までの間、バレンツ海といった北部海域のほか、オホーツク海、日本海、太平洋公海において、総放射線量一万二千三百キュリーの液体及び六千二百キュリーの固体放射性廃棄物の投棄を行ってきたというのが一点。  それから、核燃料抜きではございますが、三つの原子炉が極東海域に投棄された、沈められた原子炉の放射線レベルは現在正確に把握されておらない、この白書に掲げられたデータは将来再確認する必要がある、そういうふうに指摘しているのが第二点。  それから、ソ連時代から存在し、現在もロシア連邦内で有効な海洋投棄に関します国内法規というのは、ロンドン条約と申しますか、海洋投棄を規制した条約等の国際条約に矛盾しているということ。  それから、この放射性廃棄物の海洋投棄は、沿岸それから陸上ですね、沿岸の貯蔵所及び処理の企業が存在しない現状下では即時に停止はできない、そういう内容の白書を発表いたしました。  その中には、投棄の海域とかあるいは投棄の態様あるいはその放射能の量とかというのを一般的に記載しております。ただ、例えば海域の点につきましても、経緯度できちんと書いてあるのもあれば、そうでないのもありまして、これは白書という形で発表されておりますけれども、さらにこの実態についてはきちんと向こう、ロシア側とすり合わせをしまして、どういうものかということを把握しないことには事実関係として実態の把握が完全ではない、十分ではないというものでございます。  このたび、先ほど先生の方から御指摘がございました、昨日の両国の外務大臣の会談におきまして、両国の間で作業部会を設置するということはまさにそういったことで、まずもって事実関係の実態を把握するということ、これは我が国だけではできない話でございますので、両方協力して、相まって実態を解明していく、そういうことでございます。
  152. 上原康助

    ○上原委員 どうもまだマスコミで報道されている程度の、程度と言ったらあるいはよくないかもしれませんが、範囲の実態把握のようで、ますますこれは懸念を持ちますね。また、ロシア側が言っていることが果たして全体なのかどうかという疑問も持つ。  そこで、科技庁来ていると思うのだが、科学技術庁だれか来ていらっしゃる。—来ない。じゃ、いいや。いや、どういう危険性、汚染のあれがあるか、ちょっと専門的に聞いてみたかったのです。  我が党も、山花委員長名でエリツィン大統領にその件については四月九日付で書簡を出しました。さらに、シャドーの外交委員長や環境委員長、科学技術委員長の名前でも出してある、科学技術庁長官にも、実態の把握ということをやれと。  そこで、私もこの面は非常に苦手な分野なので余りたくさんは申し上げませんが、これは、日本海に放射性廃棄物を詰めたコンテナ七千個、あるいは廃棄物を積載した船舶三十八隻を海に沈めている、その中には高レベルの廃棄物の投棄も含まれているのじゃないか、こういう指摘さえあるわけですね。さらに、相当の老朽原子炉等々も今保存をしている。今後も海洋投棄をやると言っているわけでしょう、エリツィン政府は。これについてはどういうふうに今度の日ロ会談で外務大臣はコズイレフさんに申し入れたのですか。
  153. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 もう既に、あの問題を私ども承知いたしましたときに枝村大使を通じて即時中止を申し入れたわけでありますが、きのうコズイレフ外務大臣との会談においても、中止をしてもらいたいということは強く申し入れております。
  154. 上原康助

    ○上原委員 それに対する反応はどういう態度でしたか。
  155. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 よく承りました、とにかく先ほど報告がありましたように、できるだけ両方で調査をしようということでございまして、私は、中止をするという方向で努力をしてくれ。ただ、問題は、中止をさせるのはいいのですけれども、やはり我々、結局——日本もかつて一遍試験的に海洋投棄をしたことが昔ございますけれども、(「本当」と呼ぶ者あり)あるんです。試験的にやったことがあります。しかし、それはやはりいけないということで現在はずっと陸上に貯蔵しているわけでございますね。  ですから、私は、対ロシア支援の中でこういう問題も一つの支援策として考えていかなければいけないのじゃないだろうか。技術的にも十分危険のないような貯蔵をさせなければいけませんので、技術指導をし、そしてそのために必要な経費というものも応分の応援をしてあげるということで、やはり海洋投棄をさせないためには、陸上で貯蔵することに対して日本は積極的にこういう面などは協力していくべきではないか、これは人道的にもあるいは地球環境を保全するという意味からも私は大変大切なことだと思って、そのようなことをロシアに申し上げておるわけであります。
  156. 上原康助

    ○上原委員 エリツィン大統領のカードは、領土を日本側が少し外に置くという方針に変わったので、この放射性物質の廃棄を日本海やオホーツク海、いろいろやったということを言うと、核には日本国民は非常に神経質だから、これはカードになるのじゃないか、こういううがった見方さえあるわけですね。あるいは、そういう手を使うかもしらない。  そこで、今外務大臣がおっしゃるように、まず何といってもこれは実態を把握して、ロシアが持っているそういった資料の全貌を外交ルートを通して明らかにさせることですよ。日本側に提出せよと、どこに捨てどうしたのか。それが一つ。  それから、陸での処理が技術的にいろいろあるのはわかる、私もその程度は。あるからといって、放射性廃棄物の海洋投棄はロンドン条約違反ですよ、何といっても。ロシアも入っているんだよ。承認しているのでしょう。こんな、軍事大国の後処理だといってさせられたら、それはいかないですよ。それを即時中止させること。そういう点で、ぜひこの件については、きのうも武藤大臣が日ロの共同作業部会の設置等共同海洋調査を実施する提案をなさったというわけですが、こういうことにロシアが余り言葉を濁して積極的でないとするなら、これは問題ですよ。援助とかそういうことはいろいろ注文をつけてやって、みずからのしりぬぐいについては、日本側とかほかの国にさせるということはあってはいかぬ。  私は、何もソ連にどうという特別な感情はない。それは本当です。それはないのだが、外交ルートの問題、今これだけ地球環境問題とか核の廃棄物処理というのが大変国際的問題になっているときに、海に捨てるとは何事ですか。だからこういうことは、日本側は、むしろ非核三原則とか核被爆国という立場からも積極的に声を大にして言うべきじゃないですか。そこら辺がないから実際困るのです。  これがもっと大きな、仮に何かの被害とか汚染とかそういうものが出てきた場合には、私は援助問題とかそういう領土問題とも絡んで大変な世論になると思いますよ。その意味で、改めてこのことについて外務大臣として、これは日ロ間だけでないですね、G7とかそういうところでぜひやってください。
  157. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 今御指摘のとおりで、ロンドン条約にも違反しているわけでありますし、かつてロシアの代表はロンドン条約を遵守すると声明しているわけでございますから。この問題は、実はG7の閣僚合同会議でも私から強く主張いたしまして、即刻ロシアのこのようなロンドン条約に反する行為は中止すべきである、中止させるべきであると主張いたしまして、最終的に、私どもコミュニケはつくらなかったのでございますが、議長声明という中にはこの問題を含めさせたわけでございます。  そういう面で、我々としては、地球環境の保全という意味からいっても、またロンドン条約の精神からいっても、これは何が何でも中止をさせなければならないという本当に強い決意で臨んでおるわけでございまして、ぜひロシア側が私どものきのうの厳重な中止の要請に対して善処してくれることを心から願っておる次第であります。     〔委員長退席、狩野委員長代理着席〕
  158. 上原康助

    ○上原委員 これは日本側が厳しい態度でひとつ対処するように、私は強く要望申し上げておきます。こんなのをないがしろにされたのではたまったものじゃない。これはどこの国だってそうですよ。ほかの国、アメリカだっていろいろ捨てておるかもしらぬ。そのうち調べてみたらいい。  そこで、PKO問題と従軍慰安婦問題をぜひきょうは少し議論しようと、官房長官にも来てもらいたかったのだが来れないようですが、その前に沖縄の基地問題でどうしても聞いておかなければいかぬことがありますので、後で残ったら困るので先にお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、武藤大臣も沖縄には何度か行かれて、一度何か中小企業大会のときに一緒に沖縄市の体育館で、見事な演説をなさる方だなと思ってそばで聞いておったのですが、一緒したこともありますし、そう沖縄の実態についておわかりにならない方ではないと私は理解している。これからの沖縄の基地問題を含めて、沖縄問題には大臣はどういうふうにお骨折りをいただけるのか、まず所見をお聞かせください。
  159. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 長い間沖縄の皆さんは戦争が終わりましてからも外国の軍隊の占領下にあったわけでございまして、その沖縄の皆さんの気持ちを考えれば、そのために復興もおくれたと私は思っております。沖縄の振興のために私ども日本政府ができる限りのお手伝いをするというのは当然のことであろう、そして一日も早く本土と変わらないような状況になっていただけることを心から願っております。
  160. 上原康助

    ○上原委員 極めて一般論的な気持ちを吐露した、御披露なさったような、それはそれでいいわけですが、問題は基地問題ですよ。  去る十一日、沖縄県の金武町でまた大変不幸な事件が起きているのです。三十三歳になる金武の男性の方が在沖米海兵隊、キャンプ・ハンセン所属の十八歳の軍人に殴り殺されたという大変痛ましい事件。これまでもしばしば米軍人によるこの種の殺人あるいはその他不祥事というものは絶えない。今ごろ基地周辺の町で、米軍が出入りをする繁華街の一角であるとはいえ、こういう人命が失われる、しかも殴り殺すというようなことはちょっと考えられないですね、普通の社会常識、環境では。この事件について、一体大臣はどう思うのかというのが一つ。  それと、警察庁も来ておられると思うので、殺人事件と言っていいでしょう、まだ被疑者が拘束されているということを聞いておりますが、この捜査状況はどうなのか、この二点、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  161. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 上原先生御指摘の事件につきましては、大変痛ましい事件だというふうに考えております。また、既に沖縄県知事からの要請、または沖縄金武町の町議会の皆様からの意見書というのを私たちちょうだいいたしております。  我々といたしましては、現在当局による捜査が継続中でございますので断定的なことを申し上げることは差し控えさせていただかざるを得ないのでございますが、米兵が先生御指摘のとおり被疑者とされていることを踏まえまして、アメリカ側に対しましては、本件についての遺憾の意を既に伝達して、こういう事件の再発の防止のため一層の米軍の綱紀粛正を求めたという経緯がございます。これに対して、米側は遺憾の意を表明いたしまして、我が方の申し入れを了といたしました。  なお、同日、在日米軍のガードナー沖縄地域調整官が沖縄県の大田知事を往訪いたしまして、本件に対し遺憾の意を表明するとともに、再発防止を約束したという経緯もあると承知いたしております。
  162. 國松孝次

    國松政府委員 お尋ねの事件につきましては、沖縄県警察におきまして特別捜査本部を設置し、現在捜査をいたしておるところでございます。  なお、被疑者につきましては、米軍捜査当局の協力もございまして被疑者の米軍兵を特定いたしまして、既に逮捕状の発付を得ておるところではございますが、当該被疑者につきましては、四月十二日、米軍の捜査当局において既に身柄が拘束されておるということでございますので、沖縄県警察といたしましては、当該被疑者を所轄の石川警察署に護送を求めまして、被疑者の取り調べを今やっておるところでございます。  今後捜査を遂げました上、犯罪通報を行うなど、事件の立件に努めてまいりたいという方針であるという報告を受けておるところでございます。
  163. 上原康助

    ○上原委員 この種の事件が起きるごとに捜査権、逮捕権が問題になるわけです。何で被疑者の——今逮捕状は請求していると言いましたね、そこもはっきりさせてくださいね。日本側が逮捕状を請求してあるならば、身柄を日本側に渡せという要求はしてないのですか。そのことについては外務省はどうしているの。  それともう一つは、これは公務外の事件でしょう。公務外でしょう。
  164. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 技術的、事実的側面について私からお答え申し上げます。  先生も御案内のとおり、米軍人軍属などに対する裁判権について地位協定の第十七条五項の(c)におきまして、日本国が裁判権を行使すべき米軍構成員等の拘禁は、「その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」というふうに規定されているわけでございます。同時に、地位協定十七条の五項の(a)及び第六項の(a)は、犯罪についての捜査の実施、被疑者の引き渡しといったことにつきましては、日米両当局が相互に援助するということを定めております。  この具体的な件につきまして、被疑者である米軍人は現在米側によって拘禁されておりますことは先ほど申し上げましたとおりでございますが、日本側の捜査当局は、米側の十分な援助と協力を得て現在被疑者の取り調べを行っているというふうに承知いたしておりまして、その意味で特段の問題が生じているとは考えておりません。  なお、本件について日本側が裁判権を行使することが確定いたしました場合には、地位協定に基づて被疑者の身柄は当然日本側に引き渡されることになるわけでございます。
  165. 國松孝次

    國松政府委員 逮捕状の発付は四月十二日に受けております。この事件、地位協定上の身柄の取り扱いということにつきましては、ただいま外務省の答弁のあったとおりでございまして、そのことは私どもよく了解をしておるところでございます。  ただ、この事件は日本人が被害に遭い、しかも施設外の一般の場所における殺人事件という重大な事件でございますので、犯罪の捜査を遂げるという実務的な上からは、身柄を私どもが持ちまして捜査をした方がよりよい捜査ができるのではないかということは考えておるところでございますものですから、地位協定上の取り扱いというのは十分わかりますけれども、もし差し支えがなければ私どもの方に身柄をちょうだいをして捜査した方がいいのではないかという趣旨のことは米軍当局に申し入れをしておるところでございます。
  166. 上原康助

    ○上原委員 それは今警察庁が言うのが正解だよ、あなた。加藤さん、あなた、捜査に特別な支障は来していないなんて何をとぼけたことを言うんだ、外務省は。これは明らかに捜査に支障を来しているんだよ、あなた。一事が万事そういうことなんです。  もうほかにも聞きたいことたくさんきょうはあるから、要点だけこの件は言いますが、前例だってあるんです、それは。しかも相手は、米側が身柄を拘束しているって、基地内だからこれは幾らでも入れ知恵しますよ、向こうの米軍同士が。正当防衛であったとか、あるいはこの亡くなった男性の方が口論を吹っかけたとか、偽証とも思われるような証言をしているということがマスコミ等で報道されている。こんなことではいかぬですよ。  大臣、これは人間一人を殺したんですよ。被疑者とはいえ、間違いない、それは。即刻日本側に身柄を渡して、きちっとした沖縄県警なり日本警察の事実関係を明らかにした手続をとらないと困る、これは。  だから私は、きょう地位協定というものを持ってきてみた。もう年がら年じゅう安保条約、地位協定とあなた方言うけれども、こんなのはあなたいつできたと思う。これはたくさんあるんだ。この地位協定に対する特別云々かんぬんの、もういっぱいある。これは昭和二十七、八年から安保条約が改定される六〇年以降全部そのままなんです。まさに冷戦の申し子、こんなものは。こんなものに基づいて人権問題までやるというのは絶対に我々は納得いかない。だから、アメリカのこういう悪質な殺人事件や暴行事件、いろいろな凶悪事件というのは後を絶たないんだよ、あなた。  それと、地位協定云々かんぬん言いますけれども、たしかこの種のあれに合意事項というのがあって、日本側が請求できるようになっているんじゃないんですか。「日本国の当局が当該被疑者の身柄を確保する必要があると認めて要請した場合には、その者の身柄は日本国の当局に引き渡される。」これは昭和四十七年九月の沖縄の、これもキャンプ・ハンセンで起こった日本人従業員殺害事件のときの日米間の取り決めの中であるはずなんだよ。なぜそういうものを盾にして皆さん積極的にアメリカに対して、日本側の捜査があるいは身柄拘束が支障ないようにやらないんですか、外交案件として。これは大臣、やってください。早速やってください、そういうのは。
  167. 丹波實

    ○丹波政府委員 大臣からあるいは御答弁があるかもしれませんけれども、その前に。  先生が引用になられました合同委員会の合意、確かにございますけれども、これはいろいろな条件がかかっておりまして、一つは、「日本法律執行員とアメリカの法律執行員の双方が法律違反の起きました現場にある場合」云々ということで始まっておりまして、いろいろな状況が前提条件になっているということでございます。  それから、基本的に私たちも今回の事件は大変けしからぬ、まさに遺憾な事件だとは思いますけれども、この地位協定の立て方は、アメリカ側の拘束にゆだねても逃走のおそれはなく、アメリカ側による身柄の拘束は、いずれにしても、先ほどからの御説明にもございますけれども、日本側によります公訴が提起されるまでの間という暫定的なものであるということ、それからもう一つは、日本は確かに第一次裁判権を持っておりますけれども、アメリカ側は実は第二次裁判権を持っておりまして、この地位協定はそういう第一次裁判権と第二次裁判権のいわば調整といいますか、均衡の上に立っておるということはぜひ御理解いただきたいと思うのです。  それから、こういう考え方は、日米の地位協定のみならず、NATOの地位協定でも、公訴までは米側が例えば身柄を拘束できるということになっておりまして、国際社会全般から見ましても、決して日本の地位協定だけが一方的に譲っているということではないということも御理解いただきたいというふうに思います。
  168. 上原康助

    ○上原委員 そんなあなた、もうNATOも軍事同盟としてはなくなっているんだよ。もういつまでそういうごまかし、ごまかしというか、条約とかあれをいいところだけ適用しないで、何で皆さんは、日本人のくせに、日本人に不利になるような協定解釈や地位協定をやるんですか。もう少し政治的、人権的感覚というものもあるんだろう。それを聞いているんだ、私は大臣に。  そこで、いつ公訴なさるの、起訴は。見通しはどうですか。
  169. 國松孝次

    國松政府委員 現在まだ捜査をしておるところでございますし、被疑者につきましても取り調べを続行中でございます。したがいまして、今後どのくらいかかれば犯罪の通報ができ、私どもとして事件を送致できるのか、その後どのくらいの期間がたてば公訴が提起できるのかということをちょっと今まだお答えする段階ではないというように思います。
  170. 上原康助

    ○上原委員 お聞きのとおり、十一日に事件が起きてきょう十六日でしょう。もうやがて一週間になろうとしている。普通の民間地域でやっているもし事件なら、そんなに手間暇かかるんかね、これ。かつては基地内拘束をしてアメリカにこっそり帰したことだってあるんだよ、米軍は、復帰前は。  大臣、今の外務省のこの説明とか、警察庁は、どなたから聞いても、相当捜査には支障を来している、できるだけ我々が身柄を拘束して捜査したいという気持ちがありありなんだ、さっきの答弁を見てもわかるように。そうであるなら、問題は外務省だ。人の命を奪っておいて、殺した被疑者が基地内に隠れておって、我が方が恐る恐る、遠慮しいしいしか捜査できないなんて、こんな主権国家ってあるかい。日本は独立国でしょう。だったら早速この地位協定を直して、これは冷戦構造下の残物なんだよ、残滓なんだよ、こういうのは。そこはもう、あとほかのことも聞かなきゃいかぬので、ぜひ大臣の御見解を聞きたい。
  171. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 委員長の御指名を得て私からお答えをさせていただきたいと思います。  私どもも、今回の事案につきましては、日本国の当局が裁判権を行使する第一次の権利を有する件であろうと考えております。そういうわけで、日米間で最終的な確認が行われて、公訴が提起され次第、地位協定に基づいて被疑者の身柄は日本側に引き渡されることになるというふうに私は考えます。  上原先生も御指摘のとおり、復帰以後これまで、今回の痛ましい事件が起こります前に九件の殺人事件というのが生じているわけでございますけれども、この九件、いずれの場合につきましても、日本が裁判権を行使して我が国の裁判所において裁判が確定いたしまして、犯罪者である米軍人というのは日本の刑務所に服役している、こういう事情もあるわけでございます。  以上、地位協定を踏まえましてきちんとした対応を行ってまいりたいと考えております。
  172. 上原康助

    ○上原委員 きちんとした対応がされてないから次から次というか、こういう問題が起きるんだ。かつては、復帰前は、横断歩道が青信号のとき渡っていてトラックにひき殺されて、これ無罪になってしまった。だからあのコザ騒動事件なんて起こっているんだ。全く虫けらのように人権を無視されたんだ。いまだにその延長線にしかないんだ、外務省のこの地位協定とかそういうのは。だから私は、これは全部洗い直していい。  それで大臣、ぜひ徹底した捜査をやるということを——警察当局もこんなのをうやむや、うやむやというか、遺族の皆さんや金武町民、沖縄県民が納得しないような形で処理されるとしたら、事ですよ、これ。日本警察のこけんにかかわる。徹底した捜査をやるということ。  それと、米軍の綱紀粛正。きょうもう時間があれだけれども、民間人が基地内で実弾射撃行為をやった。しかも、それは暴力団であったかもしらぬということである。弾を買って基地内でピストルや小銃の練習をして、たくさん買い込んで持ち帰っている。そういうことさえ起きているんですね。一体どうなっているんだ、アメリカの軍隊の綱紀というのは。それだけじゃない。夜になると海浜にのそのそ出てきて、大きな騒音をまき散らしてテープレコーダーとかそういうのでわいわいわいわい騒ぐ。北谷町とかそういう海浜、これから夏になればますますそういう事件は起きる。だから基地問題というのは絶えず、環境問題、いろいろな面で告発をされる。徹底した捜査、米軍の綱紀粛正の徹底、それと遺族に対する完全補償、基地管理の徹底、基地の外、いわゆる米軍や米軍パトロール、そういうものを徹底をするということは喫緊の課題なんです。  もう一点は、大体こういう事件を起こすのは十八歳から二十二歳、一番年齢の高いのは二十三歳かな、二十五歳以下です。だから、アメリカの海兵隊、海外に派遣する軍隊の教育というものももう少しきちっとやるように。人殺しのために沖縄や日本に駐留させているんじゃないでしょう。平和を守るというのがあなた方の建前でしょうが。こういうことについて、大臣はどうなさるのか。これはもう、事務当局、こんな地位協定の解釈とか法律の問題じゃない、人権の問題だ。人の生命の問題、今の問題なんだ。お答えください。
  173. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 とにかく、今のお話を聞いておりまして、捜査に協力をし、警察庁も言っておりますことでもございますから、一日も早く身柄が引き渡されるように、私の方からも申し入れをいたします。  今後につきましては、できる限りこのようなことが起きないように、これもまた申し入れをしておきたいと思います。
  174. 上原康助

    ○上原委員 ですから、私が今幾つか挙げましたね。事務当局聞いているでしょう。そういうものについて具体的に、きょう金武町からも皆さんは、そういう議会の決議を受けて、いただいたでしょう、文書を。その項目に従って申し入れしますね。その点、約束してください。
  175. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 冒頭申し上げましたように、私ども、四月十五日に金武町の議会の方々、それから沖縄県知事からも、要請、意見書をちょうだいいたしております。それを体しまして、米軍との間できちんとした対応をしてまいりたい、こういうふうに存じております。
  176. 上原康助

    ○上原委員 さっき外務大臣の方からも、私の方からも申し入れをするという御発言、お答えがあったのですが、これはやはり相当ハイレベルの問題として米側に言わないと、失礼だが安保課長とか安保課の審議官とか、そういうレベルではアメリカは聞かないですよ。もう一度、念を押すようで恐縮ですが、きちっとやりますね。早急にこれはやりますね、大臣。
  177. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 とにかく事務当局に指示をいたしまして、私からということで、先ほど申し上げたようなことを申し入れをさせます。
  178. 上原康助

    ○上原委員 何か少し渋々のような感じがしますが、こうここで私が取り上げた以上、県民もこれは関心を持ってしょうし、また、一人の中年というか成年の県民の命が失われた、殺害されたということを考えると、極めて重大視をしているということを、非常に重要視をしているということをお含みをいただいて対処してもらいたいと思います。  ほかにもありますが、次、カンボジア情勢、PKO問題についてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  まず、前回、四月九日の本委員会でも、武藤外相にこのPKO協力のあり方等についてお尋ねがあって、武藤外相からお答えがあったわけです、我が党の藤田高敏先生その他の御質問に対して。それはどうお答えしたかは御自分がよくおわかりだと思うのであえて触れませんが、一体政府は現在のカンボジア情勢はどう御認識しておられるのか、まずその点から入りましょうか。
  179. 池田維

    ○池田政府委員 お答えを申し上げます。  カンボジアにおきましては、最近治安の悪化であるとか、あるいはポル・ポト派が選挙に参加しない、ないしはポル・ポト派のプノンペン事務所を閉鎖したというようなことがありまして、不安定要因というものは少し表面化しつつあるという感じはいたします。  しかしながら、それではカンボジアにおいて全面的な戦闘が行われているかということになりますと、私どもとしましては、まだ戦闘が全面的に行われているというようには見ておりませんし、パリ和平協定の基本的な枠組みは依然として維持されているというように認識いたしております。これは、プノンペンを閉鎖したときも、キュー・サムファン代表からシアヌーク殿下あての手紙の中でも、パリ和平協定は遵守するということを言っているわけでございます。  日本を含めまして、国際社会全体として、ポル・ポト派が選挙に参加するということを希望してきたわけでございます。しかしながら、ポル・ポト派は選挙に参加しないという道を選んだわけでございますが、このポル・ポト派の参加かあるいは不参加かということにかかわりませず、とにかく選挙を実施する、それも決められた五月二十三日からという日取りで予定どおり安全裏にこの選挙を実施するということが重要であるというように考えております。そのためには、カンボジア各派に自制を引き続き求めていくということと、治安維持についてはUNTACの努力を全面的に今後とも支持していきたいというように考えているわけでございます。     〔狩野委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 上原康助

    ○上原委員 私は、今の御答弁、ようそういうことが今の段階でも言えるなと思って、非常に不思議でならないのですが、政府のこういう委員会で言う答弁というのは、もう少し私は重みがあって責任を伴わなければいかぬと思うのですね。  では、安全で自由な選挙できるの。その保証があるのですか、あなた今そんなことを答弁なさるが。日本政府は、安全で自由な選挙ができるという確信を持っているの。その証拠、その具体的内容、証拠というか背景を説明してください。私だって国連平和協力法からPKO法から相当やってきた。パリ協定も持っている。後で議論しますよ、時間の範囲で。冗談じゃないよ、そんな答弁で。
  181. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 もちろん現状で選挙が一〇〇%成功するという保証はございません。しかしながら、UNTAC及びシアヌーク殿下その他の関係者は、選挙を成功裏に導くよう最大限の努力をいたしております。したがって、私どもとしては、こういった努力を今後とも支持して選挙の実現に努めたいと思っております。
  182. 上原康助

    ○上原委員 大臣はどういう御認識ですか。現在のカンボジア情勢というのは本当に安全で自由な選挙が保証されているという、そういう御認識なのか、ぜひ聞かせてください。
  183. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 確かに治安が悪くなっているということは私は一つの事実だと思っております。
  184. 上原康助

    ○上原委員 今の認識ならまだ、一応抑えてはあるでしょうが、少しはわかりますね。  そこで、防衛庁来ていると思うのですが、自衛隊の一中隊か何か、タケオの方に撤収していますね。その理由は何ですか。
  185. 伊藤康成

    伊藤説明員 御説明申し上げます。  ただいま御指摘の件は、カンボジアに派遣しております施設部隊が、トティエ山というところに、石とり場、採石場と申しておりますが、そこの方に二十名ほどの隊員を、分派と申しますか、派遣しておったわけでございます。これは第一次の施設大隊のときからずっと派遣しておったわけでございますが、第二次施設大隊がただいま参りまして、今後の作業日程あるいはこれから雨季に入るというようなことを考えますと、必ずしもあの土地に分派をしておくことは必要がないということの判断をしたわけでございます。非常に生活環境も悪いところでございます。そういうことで、二つの理由、仕事上の便宜それから生活環境改善、こういうことでタケオの本隊の方に合流させることにいたしたわけでございます。
  186. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁もまだとぼけるの。あなた方、幾ら答弁する権利があるからといって、本当にそんな答弁で納得できると思うのですか。仕事の量が云々かんぬん、生活改善のためにタケオに引き揚げたの、本当に。冗談じゃない。余りにもごまかし。その周辺にポル・ポト派の軍隊が六百から、相当の数が集結したという情報が事実としてなったから、そういうふうにきのう、おとといから撤退しているのじゃないですか。いや、それははっきりさせなさいよ。その理由をはっきりさせないと困る。  あなたの今のような一あなた、何ですか、失礼、審議官課長、何ですか。防衛政策課長ごときの者が政治家並みの答弁するな。あなた方は本当は政府委員でもないのに、だから私は局長を要求したんだ。だから国会論議は空洞化していくんですよ。なぜ事実を言わないのですか。あなた、首をひねっているけれども、もう一遍防衛庁長官に聞いてきなさい。何で政府委員の皆さんはそういう答弁で皆ごまかそうとするんだ。  引き揚げた理由は本当にあなたが言うとおりか。もう一遍答えてごらんなさい。
  187. 伊藤康成

    伊藤説明員 繰り返してございますが、現地はこれから雨季を迎えるというようなこともございまして、食事を、実は食事はタケオの本隊の方から毎日運んでおったわけでございますが、そういったようなことにも支障が出るというのが理由でございます。  ただ、私ども、先生がただいま御指摘のような六百あるいは七百といったような数字の何がしかの動きがあるということをつかんでおるわけではございません。タケオに引き揚げたことによりまして結果として安全度が高まるということは、これはもちろん申し上げられるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、主たる理由は先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  188. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、これは僕はあなたの今の答弁には納得しませんけれども、治安維持とか、あるいはポル・ポト派の動きというものが非常に緊張状態をつくり出しているからそういった一時タケオに撤収したという認識でないということか。あなた、これは責任持って言えるの、本当に。冗談じゃない。今の答弁は絶対、そういうふうには我々は理解していない。それはさっき大臣が答弁したのとも違う。防衛庁、あなたそんなことでごまかそうとしたってそれはだめだよ。  そこで、具体的にこれからお尋ねしますが、参加五原則、いわゆる合意、同意、中立、それから独自の判断による撤収、正当防衛の場合に必要最小限度というか、小銃、けん銃程度、ピストル、小銃程度使える、いわゆる自己防衛ですね、この五原則は守られているの、守られないの。今は守られていると思うのですが。  そして、もし治安状態、あるいはこれからやがて選挙に来月入る状況になった場合にもっと武力衝突のおそれが出てきた場合の、自衛隊を含めての、NGOもですよ、文民警察、選挙監視団を含めて撤収の判断はどこがやるのですか。UNTACですか、日本政府ですか。その点はっきりさせてください。
  189. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 御指摘のごとく、最近選挙に向かいまして現地におきましては緊張が高まっているというのは事実でございます。また、一部の地域におきまして、武装集団による襲撃でございますとかあるいは停戦違反事件というものが発生しているわけでございますけれども、先ほどアジア局長からもお答え申し上げましたとおり、現在全面的に戦闘が再開されているというわけではございません。  また、四月十三日にポル・ポト派のキュー・サムファン議長が、彼らの目から見まして治安が悪化したということでプノンペンの事務所を閉鎖するという内容書簡をSNCの議長でございますシアヌーク殿下に届けたということは承知しておりますけれども、キュー・サムファン議長は、この書簡の中におきましても、今回の退去は暫定的なものであってパリ協定は今後とも堅持するということを言っております。  以上のようなことから申しまして、パリ協定に基づく和平プロセスの基本的な枠組みは依然維持されているというふうに考えておりまして、合意、同意等の国際平和協力法上のいわゆる五原則は現在満たされているというふうに認識しております。  ただ、ここで申し上げておきたいと思いますのは、確かに現実の問題といたしまして治安状況が悪化しているということにつきましては、私ども、我が国から人員を派遣している立場から非常に憂慮しているところでございまして、いろいろな事件が起こるたびに、一義的にはこの安全確保という問題はUNTACの責任でございますので、今川大使を通じましてこの安全措置の強化ということをお願いし、また政府としてもできる限りのことをするということで努力をしていることでございます。これが一つの点でございます。  それから、先ほど御指摘になりました撤収の判断はどこでするかという点でございますが、これは二つあると思います。  一つは、UNTAC、すなわち国連の平和維持活動そのものを終了する、その前提が崩れたということで終了するということになりますれば、これは当然国連の方で判断するということでございます。  ただ、恐らく御指摘のポイントは、我が国の国際平和協力法上、いわゆる参加五原則のいずれかが崩れた場合に撤収することができる、その意味は、はっきり申し上げれば国連の平和維持活動そのものとしては、すなわちUNTACそのものとしては継続するけれども、我が国の判断として五原則の一部が崩れたということで終了するということがこの法律上は定められているわけでございます。その場合はもとよりこれは日本政府が判断するということでございまして、その判断の手続につきましては、長くなりますから簡単にいたしますけれども、これは手続といたしましては参加を決定する手続と同じでございます。すなわち、閣議決定をもって日本政府の最高レベルで判断し、決定するということでございます。  なお、このPKOの基礎になっております条件が崩れるというようなことにつきましては、これは法案の審議の際にもいろいろな機会に申し上げたところでございますけれども、国連の判断と我が国政府の判断とは恐らく一致するであろうということは、これまで何度か申し上げた点でございます。
  190. 上原康助

    ○上原委員 恐らく一致するであろうと、そんな答弁があるかい。あなた、今いいこと言っているのよ、本当は。いずれか一方が崩れた場合には撤収の対象になるんだよ。  あなた、中立は保たれているんですか。ポル・ポト派を入れているのがパリ協定でしょう。皆さんは、全面的な戦闘行為とかあるいは組織的、パリ和平協定をどちらかが破棄したということを言った場合と言うが、これはポル・ポト派は言わぬですよ。なぜなら、彼らの長期政治戦略、軍事戦略からすると、パリ協定まで破棄すると言ったら、そこでカンボジアにおける政治支配や軍事行動が難しくなるから言わないまでのことなんだ。私たちが指摘しているのは、実質的にパリ協定は実効を伴っていないということを指摘しているんですよ。  もう一点聞かせていただきたいのですが、しかも、選挙が非常に難しくなっている。何が自由で公正な選挙の履行ができますか、あなた。コンポントム州はもう完全にポル・ポト派の支配下にあるわけでしょう。この間の中田さんの大変不幸な事件が起きた。本当にもうこれは何とお悔やみを言っていいかわからない。シエムレアプ州にしても、もうポル・ポト派の支配下にあるわけでしょう。そのほかの州にも波及しているんですよ。  きょう一々は言わないでも、このパリ協定の「選挙」という項では、全土において各州ごとに公正で自由な選挙が行われなければならないというんですよ。だから中立も既に破られている。皆さんは、引くに引けないからそういう詭弁で泥沼にはまろうとしている。それを私は問題にしたいんですよ。これだけ国論を二分化して派遣した自衛隊あるいはカンボジアの戦後復興ということに、UNTACの情勢の読みの甘さ、これは日本側はどうなさるの。  改めて聞きますが、中立の原則は守られているの。これは外務大臣から答えてもらいたいね。これは何もきょうこれで事が済むわけじゃないですよ、本当は。これからの重大な問題なんだ。どれだけPKO法のときに、合意、同意、中立、独自判断による撤収、正当防衛に限る武器使用、しかもそれは小銃程度のもの。さっきの防衛庁の何とか課長の答弁なんていうのは、全く子供だましの、あなた、ふざけたことを言うな。お答えください。
  191. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 中立の点につきましては、御承知のとおり、UNTACは昨年の三月十五日から活動を開始してまいったわけでございます。UNTACとしては、SNCにおいて代表される各派とも協議しながら、ポル・ポト派に対してもこの選挙への参加を呼びかけてまいったわけでございますし、また国際社会といたしましても、このUNTACの外のほかの場、いろいろな場を使ってポル・ポト派への選挙への参加を呼びかけてまいったわけでございますが、残念ながらポル・ポト派はこれに応じない、選挙に参加しないという現状でございます。  私は、今なおポル・ポト派が選挙に参加するというふうに方針を変えれば、これが受け入れられる、門戸は開かれていると思います。UNTACがポル・ポト派を排除したということならともかく、これだけパリ協定、そしてUNTACのよって立つ安保理決議等に従いまして正当な手続でポル・ポト派に選挙参加を呼びかけてまいって、しかし、ポル・ポト派が自己の意思においてこれに参加しないということをもってUNTACが中立的でないということは、私は言えないと思います。
  192. 上原康助

    ○上原委員 あなた、今に至るまで、ポル・ポト派が選挙に参加する、まだ門戸が開かれている、どういう感覚なんだ、あなた方外務官僚というのは。  外務大臣、その可能性は、あなた、二〇〇%ないじゃありませんか。あるの、本当に五月までに。不思議でたまらぬね、本当に。私が聞いているのは、中立性は守られているのかどうかを聞いているんだよ。それだけは答えなさいよ、重要なことだから。
  193. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 UNTACは中立性を守ってこれまで活動してきたと考えております。
  194. 上原康助

    ○上原委員 冗談じゃないよ、あなた。  そこで、外務大臣に答えてもらう前に、これは私は何もこれが不成功に終わることを願ってこういう質問をしているわけじゃないですよ。自衛隊の派遣に対する是非の問題は別としても、本当にカンボジアの戦後復興というものは立派にやってもらいたかった、UNTACも。しかし、UNTACができたがゆえにどれだけ治安も乱れ、恐らくこの選挙後にか、UNTACが九月ないし十月に撤退後はまた内戦状態に戻る可能性が私はあると見ている、残念ながら。だから申し上げるんですよね。そういう状態にしてはいかぬ。そのためにどうするか日本政府は考えなければいかぬと思うんですよ。今のようなあんなとぼけた、まだUNTACが、自由な選挙に参加してくれるならいつでもあなた方投票しなさい、門戸は開いていますよ、こんなもう……。どうしてこう優秀な外務省局長が、あなたは外務省か国連のPKO担当か知らぬけれども。  それで、もう一点確認しておきたいことは、五月下旬に実施される総選挙の安全確保のために、いわゆるUNTACとプノンペン政権の軍あるいは警察との協力を得る何か合意ができたのですか。総選挙の安全確保合意書というのがあるのかどうか。それは資料としてぜひ出してもらいたい。それがあるかどうか。  もう一点は、選挙管理員が、治安の維持で一遍プノンペンに帰ってきたらもう現地に帰任しないと言っている。それでUNTACは、各国のUNTAC派遣の軍隊に対しても、選挙管理のための業務まで要望したということになっているようですが、その点、その是非についてどうなっているのか。
  195. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 選挙をめぐる安全措置につきましては、とりあえずはUNTACがカンボジアの各派、これはもちろんポル・ポト派を除きますけれども、各派との間で安全の措置の調整につき合意が成立したというぐあいに発表いたしております。  その内容につきましては、例えば、現存の行政機構が自派の支配地域内において一般的な安全確保を行う、それぞれ各派がその支配地域において安全の確保を行う、各投票所の警備はUNTAC軍事部門または同文民警察が責任を負う、いかなるとき、いかなる形においてもUNTAC軍事部門が三派の軍に合流することはない、選挙プロセスの実施にかかわる安全措置はUNTACのみが責任を負う、こういった点が主たる内容になっております。
  196. 上原康助

    ○上原委員 それをなぜ私が問題にするかというと、あなた方が中立云々言うから。要するに、これはポル・ポト派抜きでしょう。そうすると、パリ協定の枠組み云々と言っても、自由で公正な選挙にはなっていないのですよ。その選挙の結果、選ばれるのは合法政府でないということがおのずと出てくるのですよ。  だから、国連ボランティアの皆さんが選挙管理員としてのあれができないとなると、それをポト派抜きの各国の軍隊、自衛隊にもさせるというのでしょう。それはあなた、UNTAC自体が結果的には中立を投げ捨てているんじゃないですか。だから、合意、同意、中立、独自の判断による撤収、武器使用の規制、この派遣の五原則が守られていない。これは、これからいろいろ問題になってくると思うので、我々はそういう解釈には立てません。それは理解に苦しむ。あと二、三分あるので。  僕はさっきの防衛庁の何とかさんという者の答弁は絶対容赦できないよ、あなた。それは、現地司令官自体が、確かにあなたが言う面も一面は言っているけれども、治安の問題がある、だから武装携帯させろということまで現地で言っているんだ。それを何か生活改善とか、そんなとぼけたことを言いなさんなよ。今のあなたの答弁は撤回しなさい。  そこで大臣、最後に、これだけカンボジア問題は深刻な状況になってきた。ポト派は日本を新たな敵だと規定している、こういう報道もありますね。残念ながらそういう見方を政治的にこれからやるかもしれない。  そこで、やはりこれは、日本がイニシアチブをとれるのかわからぬけれども、私はもう一遍国連安保理事会で日本側から提起をして、ASEANを含めて、この今のカンボジアの状況というものを、どういう打開策があるのかを、やはり国際会議を持つべきだと思う。あるいは、日本、中国、タイ、マレーシア、ASEANでもいいですよ。その話し合いを早急に日本側の提起によってやって、安保理事会というものも起こして対処しないと、これは不測の事態に発展しかねないと思うのですね。  それこそやはり武藤外務大臣の新たなASEAN外交というか、アジアの中で起きている問題だから、そのぐらいの力は日本政府にあるはずなんだよ。これまでもやってきた。やってきたが、結果としては余り、一時は成功成功と言ったんだが、現外務大臣も。私はそういう判断を外務大臣なり総理大臣がやらないと、大変な不測の事態が起きて、この点はいろいろな問題に発展する危険性がある。いかがお考えですか。
  197. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほども私からも申し上げましたとおり、治安も悪くなってきておるわけでございます。ポル・ポト派だけが何となくあとの三派と別の形になっていることも、先ほど局長の答弁の中にもございました。私は大変残念なことに正直思っております。やはり長い間カンボジアが内戦で苦しんできた、せっかくその国民が平和な国を建て直そうという形で今度の選挙が行われようとしているわけでございまして、私の今の率直な気持ちとしては、何とかこの選挙が、治安は大変悪くなりつつありますけれども、できるだけひとつ民主的な選挙が行われるということがやはりカンボジアの再建の一歩だろうと私は思っております。しかし、今御指摘のように、ではポル・ポト派が全くボイコットしてしまったというときに、それでは本当に国民全体の民主国家が一体成るのかどうかという御指摘だろうと思うのでございます。  私も一度、ひとつこういう問題について国際会議を開く必要が今いろいろと聞いておって何かあるような感じもいたしますが、いずれにしても、日本だけというわけにはまいりません。きょうのいろいろな今のやりとりを私は私なりに十分しんしゃくをいたしまして対処したいと思っております。
  198. 上原康助

    ○上原委員 もう終わりますが、私の指摘についてしんしゃくなさると言うから、それを評価します。  かつてUNTACをどうするかという面において東京会議をやったのですよね。今それをやらないと取り返しがつきませんよ。これだけ金もかけて、国民の犠牲も強いて、本当に今まで落とした方もいらっしゃるじゃないですか。こういうときに見え透いて、諸情勢が悪くなろうなろうとするのに、いまだに窓口はオープンドアだから投票してくれと言って、そんな状況でないでしょう。それを判断するのは、やはり政治家じゃないですか。これはあなたの立派な初仕事になりますよ。我々バックアップします。そういうことこそ日本の主体的な外交努力によって、ポル・ポト派を入れての体制を整えるということをやらないと、もう一度あの緊迫した状況を生むことになる。このまま突っ走ると、明石さんもこれは御苦労はなさっているけれども、結果としてはうまくいかないで困ると私は思うのですね。  改めて、東京会議を早目に、中国なりタイなりインドネシアなり、いろいろなASEANとの関係を生かして、もちろん国連のガリさんともこれは、国連にも日本の代表がいらっしゃるのだから、やらなければいけない課題だと思いますが、もう一言、ひとつ決意を。
  199. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私も外務大臣になりまして、国際問題というのはいかに難しいかということを実は痛切に感じておるわけでございまして、日本だけでどうにもならないことがよくあるということを私は痛切に感じております。  先ほど申し上げたようなことで、きょうのやりとりを私は十分頭に描きながら、真にそれをしんしゃくしながら対処してまいります。
  200. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつしっかり頑張ってください。  終わります。
  201. 伊藤公介

    伊藤委員長 東祥三君。
  202. 東祥三

    ○東(祥)委員 公明党の東でございます。  時期がちょっと遅くなりましたけれども、武藤外務大臣の御就任、まことにおめでとうございます。また、かつてないほど日本に対しての注目度が極めて高くなりつつあるこの現時点におきまして、外務大臣という大変な要職を務められ、大成功することを祈っております。お体に十分お気をつけになっていただきたいと思います。  きょうは二点質問させていただきますが、三十分しか時間がありませんので、まず初めに、カンボジア情勢に関して質問させていただきます。  結論から申しますと、私、大変憂慮いたしている次第です。何をすることができるのかな、やはりそれを模索していかなければならない段階に今まさに入ったのではないのか、そういう問題意識を持って質問させていただきたいと思います。  UNTACが活動を開始する前、そしてその後、特に和平プロセスとのかかわりと申しますか、特にカンボジアにおける治安、カンボジアという視点から見れば、治安状況がどのように変化してきたのか、まずその辺から御説明願いたいと思います。
  203. 池田維

    ○池田政府委員 お答えを申し上げます。  最近のカンボジアにおきましては、テロ活動であるとかあるいは集団武装兵による暴力事件であるとか、そういった面での治安が悪化しつつあるということは事実でございます。  それから、ポル・ポト派が選挙に参加しない。先ほども議論がございましたように、国際社会としては、ポル・ポト派が希望するならばいつでも選挙に入ってくることを受け入れるという姿勢でございますが、残念ながらポル・ポト派は選挙に参加しないということを鮮明にいたしておりまして、最近もプノンペンの事務所を暫定的に閉鎖するということがあったわけでございます。そういう面から見ますと、明らかにカンボジアの和平の過程におきまして大きな不安材料が出てきているということは言えると思います。  しかしながら、他方、それでは全面的な戦闘が行われているのかということになりますと、必ずしもそういうことではございません。それから、ポル・ポト派も含めまして、今もUNTACの主導のもとにパリの和平協定というものが基本的に維持されているということはございます。  また、この点も重要かと思いますけれども、総人口の九〇%以上の有権者の登録というものが既に終わりました。これはポル・ポト派の支配地域は入っておりませんけれども、それ以外の地域の九割以上が終わっているということでありまして、大多数のカンボジアの国民が和平を望んでいるということも事実でございます。  したがいまして、現在のところでは、やはりUNTACの主導のもとに、各関係国、それからカンボジアの各派も合意をいたしました五月二十三日からの選挙というものを予定どおり安全に行うということが一番重要なことではないかという感じがいたします。  そのためにも、日本といたしましてもカンボジア各派に対して自制を求めていくということ、あるいは治安維持についてUNTACの努力をできるだけ支援していく、あるいは関係主要国と今後とも緊密に協議していくということは重要だろうというように考えているわけでございます。
  204. 東祥三

    ○東(祥)委員 パリ和平協定が合意されて、そして五月に控えております議会制定選挙を終えるまで暫定期間という形でもってとらえられ、その間、UNTACがこの議会制定選挙を目指してずっと活動してきている。そういう中で、選挙を控えて、先ほどのお話にもありましたように、治安の状況が極めて悪化してきている。そういう中で選挙が行われたとする。その後の見通しについてはどのように御推察されておられますか。
  205. 池田維

    ○池田政府委員 もし選挙が予定どおり行われたといたしますと、その選挙の結果に基づきまして制憲議会というものが招集され、そこで新しい憲法をつくり、そして新しい政権ができるということだろうと思います。そのときに例えば大統領制にするのかどうかといったような議論が出てくるかと思いますけれども、いずれにしましても、選挙においてそういう基本的な新しいカンボジア政権の骨格ができ上がるというように理解しております。
  206. 東祥三

    ○東(祥)委員 理想的にいけば、和平協定が合意されたその状況下がそのまま推移していって、そして議会制定選挙が行われるとするならば、今御説明になられた方向に行くんだろう、このように絵を描くことができるわけですが、先ほど御説明がありましたとおり、特に最近、また選挙運動が始まってからUNTAC要員が、私の知る限りでは、バングラデシュの人あるいはブルガリアのUNTACの兵士が殺害されている。さらにまた、日本のUNVの方がまさに殉職されるという状況になった。状況が変化しているわけですね。和平協定が合意された状況と、またそれを構成している人々、さらにまた、和平協定に基づいて議会制定選挙をつくり上げていきたい、この動き、このスケジュールの内容が狂ってきているんだろうというふうに私は見ております。  この一連の事件を起こした原因というのは一体どこにあるのか、これをまず政府はどのように分析されているのか、お願いします。
  207. 池田維

    ○池田政府委員 いわゆるカンボジア紛争は十三年間の長きにわたったわけでございますが、基本的に、プノンペン政権とポル・ポト派との政治的、軍事的対立というものが存在しておりました。そして、そこに中間派とも呼ぶべきあとの二つの派が存在してきたわけでございまして、パリ協定が結ばれた後、大きな基本的な枠組みができまして四派は中に入ったわけでございますけれども、しかしながら、やはり長年の相互不信感というものが依然として残っているということが現在の不安定要因の最大の理由かと思います。  しかしながら、このまま放置しておくことがこの地域の平和と安定にとって大きな障害になるということ、それは近隣諸国のみならず世界的に認識され、しかもより重要なことは、カンボジアの国民が何とか早く平和を求めたいという気持ちがあったために、各関係国、世界がそれに協力するという形で現在のようなUNTACを中心とする和平推進のプロセスができ上がったということでございますが、ただ、その中でポル・ポト派が依然として、枠の外に飛び出すということは言っておりませんけれども、その基本的な枠の中で選挙の妨害活動を行っているというのが現状でありますし、これが大きな障害要因になっているということだと思います。
  208. 東祥三

    ○東(祥)委員 より具体的なことで聞きますけれども、最近の事件で言えば、ポル・ポト派がプノンペンにおける事務所を閉鎖した、このことについては日本政府はどのようにとらえられておりますか。
  209. 池田維

    ○池田政府委員 ポル・ポト派が事務所を閉鎖したということは大変遺憾なことでございます。やはりパリ和平協定に協力してもらいたい、そういう国際的な要望というものを無視した感じでございます。しかしながら、現在のところポル・ポト派が言っておりますのは暫定的に事務所を閉鎖するということであり、パリ和平協定は遵守するということを言っておりまして、暫定的な閉鎖であるというように文字どおり我々としては受けとめております。
  210. 東祥三

    ○東(祥)委員 シアヌーク殿下にキュー・サムファン大統領が書簡を出したと聞いております。その事務所閉鎖等に関してだと思うのですが、そのときにはSNCから脱退するということは表明しているのですか。事務所閉鎖ということによってSNCから脱退したというふうにはとらえておらないのですか。
  211. 池田維

    ○池田政府委員 ただいまの書簡の中では、SNCから脱退するということは何ら言っておりません。
  212. 東祥三

    ○東(祥)委員 先ほどの御説明の中にありましたけれども、明快な言葉で言われ得ない、多分我々の知らない重要な、いろいろな情報があるのだろうと思うのですが、その一連の最近起こっている治安状況の悪化、さらにまたポル・ポト派のプノンペンにおける事務所閉鎖、なぜこういうことが起こってきているのかといえば、多分最大の原因は、パリ和平協定が合意された後今日まで、まさに五月中旬に展開される議会制定選挙までにポル・ポト派の武装解除、これを達成することができなかったところに最大の原因があるのじゃないのか、このように私は見ているのですが、この点についてはどのようにお考えですか。
  213. 池田維

    ○池田政府委員 ただいま先生御指摘になられましたように、ポル・ポト派が武装解除に応じなかったということが現在の大きな不安定要因をつくり出しているということはそのとおりだと思います。ただ、国際社会も全力を挙げて対話によってポル・ポト派に対し武装解除を行うように努めてきたわけでございまして、日本もそのためにいろいろ努力をしたわけでございますが、結局、そういう国際的な和平努力に対して積極的に協力することはなかった。  もしこのまま武装解除が進まないからといって選挙も決めないということになりますと、ますます和平は遠のいてしまう、そして一派が抵抗することによって、その一派が拒否権を使うような結果になってしまうということはございました。したがいまして、選挙の日取りというものをある段階で決めざるを得なかったわけでございます。  しかし同時に、選挙は決めるけれども、その選挙に対しては常にポル・ポト派に対しても開かれているということを言ってきたわけでございまして、したがいまして、今の緊張というのも、ある意味では選挙を控えてまさに政治的にあるいは若干の軍事的な要因を含めまして緊張関係が高まっている、それだけ選挙というものの重要性というものを意味しているのだと思います。
  214. 東祥三

    ○東(祥)委員 これは多分そこに判断の問題が出てくるのだろうと僕は思うのですが、議会制定選挙を日程どおり行わないとするならば、和平プロセスが崩れていってしまうのではないのか、こういう判断と、逆に、ポル・ポト派の武装解除、議会制定選挙をおくらせても何らかの努力をして、時間がずれるかわかりませんけれども、おくれるかわかりませんけれども、そういうことを努力していった方がより、一番最初の方におっしゃってくださった本来予定されているまさに理想的な絵柄の方向に持っていけるのじゃないのか。  これは判断しなければならない問題だと思うのですが、政府として、あるいは政府からUNTACに対して、ポル・ポト派の武装解除、あるいはまたポル・ポト派の和平協定合意にのっとった形での積極的な参加を促すような努力をもっとすべきではないのか、このように思うのですけれども、この点については政府はどのようにお考えですか。
  215. 池田維

    ○池田政府委員 ただいま先生が御指摘になられました二つの選択の道というのは、カンボジア和平におきましてまさに根幹的な問題でございまして、特にパリ協定が結ばれましてからこの二つ、どちらを選ぶかということをカンボジア各派それから主要関係国が考えに考え抜いた。それから、特にポル・ポト派との関係におきましては、何とか話し合いによってこの問題を解決するということで対話の努力を長い間続けてきたわけでございまして、これはパリ和平協定が結ばれてから最近までずっとその努力は続けられてきたということを申し上げてよろしいかと思います。  しかしながら、結局その対話の道というものが現在成功していないということでございまして、そうなりました場合には、ある段階で和平を進めるためには選挙の日程を決め、若干の無理はあっても、無理難題を言っている派があっても、それは多数の国民が望むことであればそのためにやっていくべきだ、そういう判断をしたわけでございます。
  216. 東祥三

    ○東(祥)委員 ある意味で見切り発車をしてしまったわけですね。一たび動き出しますと、それを戻すというのは本当に難しいことだ、経験則からいっても私はそのように思います。ただ、先ほど御説明にもありましたとおり、総選挙、議会制定選挙を控えて、状況としては悪化してきている、政府もお認めになっているところでございます。  そうしますと、選挙後の見通しというのは、どうしても人間、悲観的な方向に考えますから、まさに説明してくださったとおり、理想的な方向にいけばこれは取り越し苦労だったということで喜べることができるのですけれども、その辺においてUNTACはそうかもしれない。しかし、日本政府として状況を見定めて判断していくという余地はまだあるのじゃないのか、このように思えるのですが、いかがですか。
  217. 池田維

    ○池田政府委員 その点につきましては、先ほど外務大臣から御答弁がございましたけれども、現在の状況を踏まえて日本としてさらに何ができるのか、あるいは関係諸国としてさらに何とか平和裏にこの問題を解決する方法があるのかどうかということを十分検討していくべき余地があろうかというように考えておりまして、私どもも決してすべての努力が終わったというように考えているわけではございません。
  218. 東祥三

    ○東(祥)委員 UNTACは、パリ和平協定は崩れていないと言っています。また、停戦合意も崩れていないと言っている。日本政府もそれに基本的に同調している。日本政府が言うのですから、はるかに情報量の多い日本政府が言うのですから、私も信じています。しかし、総選挙を控えて、私が想像する以上に多分事態が悪化してきているんじゃないのか。大げさな表現なのかどうかわかりませんが、まさに薄氷を踏む思いに最近なってきております。  そのPKO法案を議論させていただいているときに、まさに慎重の上にも慎重を期してきたんじゃないのか。そして、日本独自の参加五原則というものも編み出した。そして、PKOに参加する決定をしたんじゃないのか。この経緯を極めて重く私は受けとめておりますし、またその経緯を日本全国の国民の方々がまさに注視しているんじゃないのか、日本政府にとってみれば、国民との約束がまさにそこにあるんじゃないのか、このように思っております。  したがって、何らかの状況次第によって、たとえUNTACが、和平協定は破れていない、また崩れていない、停戦合意も崩れていないと言ったとしても、日本政府としては独自の判断をするということがこの法案自体の中に盛り込まれているんじゃないのか。事態が変化し、また事態が悪化したときに、日本政府としては当然このことを頭に入れてくれている、つまり考慮をしている、このように私は判断してまろしいのでしょうか。明言をお願いしたいのですけれども。
  219. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 法案の審議、それから国際平和協力法成立後我が国がこれを初めて実施したときの経緯につきましては、ただいま先生御指摘のとおりであったと思いますし、我が国の国連平和維持活動への参加がこの五原則に基づく国際平和協力法によってなされることは当然でございます。  現在の状況につきましては、政府としては、最近の治安の悪化ということを憂慮はしておりますし、またそのための対策もとりつつございますけれども、この五原則が崩れ去ったというふうに考えていないということはいろいろな機会に申し上げた次第でございます。  ただ、これも御指摘のとおり、我が国の参加がこの法律のもとで行われております以上、またその中には、五原則が崩れた場合には、極限的な場合には我が国独自の判断においても終了することができるということになっておるわけでございます。現在そのような状況にございませんけれども、仮にそのような状況になれば、当然それは我が国としては、政府としてはこの法律に基づいて対処するということになることは、これは明らかでございます。
  220. 東祥三

    ○東(祥)委員 別の言葉で言いますと、今後の状況次第では、たとえUNTACが和平協定及び停戦合意が崩れていないと判断しても、日本は必ずしもそれに同調することなくて、日本独自の判断で日本のPKOの一時休止、中断あるいはまた撤収ということも十分頭の中に入れているというふうに理解しておいてよろしいのですね。
  221. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま申し上げましたとおり、政府はこの法律のもとで国連平和維持活動に参加しているわけでございますので、この法律規定に縛られることはもとよりでございますし、また、参加に当たりましては、カンボジアの場合も、またほぼ同時に参加いたしましたアンゴラの場合におきましても、実施計画をつくり、またそのもとで実施要領というものをつくったわけでございますが、その中にも中断という規定も設けております。  その意味におきまして、この基本原則が崩れたような場合、あるいは非常に危険が差し迫ったような場合にどう対処するかということも念頭に置きつつ参加しているということでございます。
  222. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは、UNTACのそのスケジュールに従いますと、議会制定選挙を間近に控えておりまして、また、その選挙要員の方々、特にUNVは今一時撤退して着任地まで戻っていないという状況下にあるわけですが、そういう方々から切実な思いとして、自分たちの職務遂行における身の安全を守ってもらいたい、こういう声が日増しに高まってきているわけです。  そこで出てきている一つ考え方が選挙防衛という考え方なんだろうというふうに思いますが、この選挙防衛の目的と、それからその条約上の根拠、さらにまた具体的に一体何をするのか、この点について説明していただけますか。
  223. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 まず、条約の根拠でございますけれども、これにつきましては、私どもは協定の当事者ではございませんので確定的なことは申し上げられませんけれども、この協定を読みました限りでは、UNTACは、このパリ協定の第十三条に基づき選挙の組織及び管理につき責任を負っております。附属書一のD節の3に従いますれば、UNTACは、カンボジア人の選挙参加を促進し、実際の投票を確保することを含め、公正、自由な選挙の実施を確保するため必要な権限が委任されているということになっております。これはパリ協定の第六条でございますけれども、こういった条項を考えますと、今回のUNTACが具体的に各派と相談しまして決めました措置というのは、こういった規定に基づいているのではなかろうかというぐあいに推定されます。  それから、措置の内容でございますけれども、発表されたものは抽象的に書かれておりますので、具体的に何をやるのかということはわかりませんけれども、例えば、現在の行政機構は自派の支配地域内において一般的な安全確保を行うという点とか、あるいは各投票所の警備はUNTAC軍事部門または同文民警察が責任を負うという、こういった点につきましては、現在UNTACの部隊が常時パトロールをやっておりますけれども、若干そのパトロールの範囲を通常の範囲よりも拡大するというような措置を考えているというぐあいに言われております。  そのほかの項目については、先ほど申し上げましたけれども、いかなるとき、形においてもUNTAC軍事部門が三派の軍に合流することはないということでございますので、投票所をUNTACの軍と各派の軍が共同して守るということにはならないというぐあいに理解いたしております。
  224. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間になりましたので最後にさせていただきますが、外務大臣、今いろいろ説明していただきましたし、またこちらの方から憂慮、懸念の一端を示させていただきました。これからますます緊張感がある意味で高まってくるのだろうと推測されます。そういう中で、日本の独自の判断をすることができるわけですから、これを過たずやるということがある意味で極めて重要なことになってくるのだろうというふうに推察いたします。  UNTACの活動日程とのかかわり合いでいえば、これからの大きな問題として選挙監視員の派遣の問題というのが出てくると思います。この選挙要員の派遣を正式に決定する前に、やはり情勢をもう一度分析し直して、その検討、判断をすべきなのではないのか、このように私は思うのですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  225. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 日本といたしましては、少しでもUNTACが、あのような、特に日本人の犠牲者も出たわけでございますので、先ほど来いろいろ議論がなされておりますけれども、派遣された監視要員が安全な形で業務に従事できるように、できるだけの努力をしていただきたいということはUNTACにも申し入れをいたしておるわけでございます。  そういう状況もまた不可能になってきた、大変な困難な状況になってきたというようなときがもしあるとするならば、そのときは日本独自で判断するということは、これは必ずやらなきゃならないことだろうと思います。しかし、そのような事態が起きないということを願っておるわけでございます。
  226. 東祥三

    ○東(祥)委員 どうもありがとうございました。
  227. 伊藤公介

    伊藤委員長 古堅実吉君。
  228. 古堅実吉

    ○古堅委員 最初に、沖縄・金武町で起きた米兵による日本人殺害事件についてお尋ねします。先ほど上原議員から質問がございましたし、それなりの御答弁もございました。そのことを前提にして重ねて聞かせていただきたい。  四月十一日午前四時ごろ、沖縄・金武町において、同町に住む大工、与古田清祐さん(三十三歳)が、キャンプ・ハンセン所属の米軍一等兵、十八歳だそうであります、によってブロック片や植木鉢で顔や頭を殴られて殺されました。私は、改めてここでこの残虐な殺人事件の米兵と米軍に対して、心からの怒りを込めて抗議を表明するものであります。  殺人現場は、あの県道百四号線を封鎖しての実弾射撃演習を繰り返し展開している海兵隊、その海兵隊のキャンプ・ハンセン第一ゲートのすぐ近くであります。金武町では米軍基地からの演習事故なども後を絶ちませんが、同町内での米兵による殺人事件だけでも復帰後これで五件であります。この事件について、基地を提供している政府政治的責任も問われる問題であります。その責任を重く受けとめておられるかどうか、大臣の態度を最初にお聞かせください。
  229. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 私どもも今回の事件は大変痛ましい事件であると受けとめております。もちろん、日米安保体制というものがアジア・太平洋の平和と安定に寄与している最重要の柱であるという現実がございますから、急激に基地の削減というようなことが行われる状況には遺憾ながらないと存じます。  他方、今回の事件の発生にかんがみまして、政府といたしましては、早速米側に対して遺憾の意を申し入れ、再発防止を強く訴えた経緯がございます。これに対して米側からも、同じく遺憾の意の表明があり、今後再発防止に最大限努力するとして、日本側の立場を了解する旨の反応があったことは前にも申し上げたとおりでございます。  このような事件の性格にかんがみまして、先ほど大臣からの御答弁もございましたが、大臣から事務当局、私どもを含む事務当局に対して、米側に対してきちんとした対応をするよう申し入れよということでございました。それを踏まえて私どもとしては対処いたしたいと考えておる次第でございます。
  230. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣、大臣にお尋ねしておるのです。基地提供している政府として、もう復帰後既に五件にも及ぶ殺人事件がある、そういうことにかかわって政府政治的な責任というのはそれなりの重さを持って受けとめなくてはいかぬ、そういう立場で大臣としてはあられるかどうか、そのことをお聞きしておるのです。もう他の答弁はいいんです。
  231. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、今回の問題に関しては、できるだけ早く事件の解決に向けてアメリカに対して私の名前でもう一回申し入れるということをお約束をいたしました。  全体の問題といたしましては、私どもは、日米安保条約というものが、冷戦構造が崩壊いたしました今日でも、今の現状を見ますとやはり必要であるという判断をいたしておるわけでございまして、その日米安保条約に基づく米軍基地の提供ということは日本政府としてはやむを得ないことであると思っております。ただ、だんだん世界的な軍縮の方向にあるわけでございますから、できるだけそれは必要最小限のものにしてもらうということは当然のことだとは思っております。
  232. 古堅実吉

    ○古堅委員 物の言いようもあれば聞きようもありますよ。人の命が、地球よりも重いと言われるこの命が残虐な行為によって殺されたということにかかわって、基地の提供者としてどうなんだということを聞いておるのですよ。あなた方にはそれへの怒りが少しもないのですか。沖縄の地元新聞の社説は、冷戦後でもなお沖縄基地が入れかわり少年兵の格好の訓練基地として頻繁に使われている現状からすると、この事件は、偶然発生した米兵の個人的な不祥事と見逃すことはできない、このように指摘しています。  殺された与古田さんのお母さんは、七人兄弟の末っ子でとてもやさしい子でした、このような話。兄の清吉さんと清正さんは、清祐が亡くなったのはまだ信じられない、米兵に対しては怒りしかない、やるせない気持ちでいっぱいだと、悲しみをこらえながら話しているというふうに報道されています。  外相、このようなことにかかわることなんです。冷戦云々して基地云々、そういうことについてかかわって尋ねているものではありません。政治的な責任、それにかかわってその重さを受けとめる立場があなたにはありますか。もう一度大臣からお聞かせください。——その説明は要りません。大臣でよろしいのです。何の説明をするのですか。要らないと言っているのです。
  233. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 委員長の御指名をいただきましたので、私から答弁をさせていただきたいと存じます。  もちろん私たちは、このような痛ましい事件というものがないがしろに処理されていいというようなことは全く申しておりません。ただ、そういう事件に対処するに当たってはそれなりに定められた手続がございます。私たちは地位協定を踏まえまして、本件についてきちんとした対応をとるということを累次申し上げている次第でございます。
  234. 古堅実吉

    ○古堅委員 政府はこの事件についてどのような対処をするか、進めるか、そういうことについても問われる問題です。  一つには、米軍に対して厳重に抗議の申し入れをすべきです。それをするつもりがありますか。二つには、証人の身柄を速やかに日本側に引き渡すよう強く申し入れをすべきです。それについては一定の答弁がございました。賠償その他、アメリカ側に対して求めなくてはいかぬ厳しいものがいろいろあろうかと思います。それらを含めて、誠実にやるつもりがありますか。大臣からお聞きしたい。
  235. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 日米安保条約に基づく仕組みについての説明が若干ございますので、私から重ねて御答弁させていただきたいと存じます。
  236. 古堅実吉

    ○古堅委員 説明の途中ですが、そういう詳しい説明は要りませんから。
  237. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 既に政府は、先ほども申し上げましたとおり、この事件発生の直後、在京米大使館に対しまして、強い遺憾の意を表明し、再発防止を申し入れたという経緯がございます。これに対して米側の方も、それはまことに遺憾なことであった、今後は再発防止に努力するということで我が方の申し入れを了解した経緯がございます。また、同じ日に、在日米軍のガードナー沖縄地域調整官が大田知事を往訪いたしまして、本件に対し、同じく遺憾の意を表明するとともに、再発防止を約束したというふうに承知いたしております。  この被疑者の取り扱いということについては、先ほど私が申し上げましたように、地位協定の手続に従って粛々と進めているところでございます。私たちとしては、本件は被害者が一般の日本人でございますし、公務執行中の作為または不作為から生ずる罪には当たらないと考えられますので……(古堅委員「そういう説明は要らないと言っているのです。先ほどもやった同じことを繰り返すな。時間の浪費じゃないか」と呼ぶ)はい。この点について、日米間で最終的な確認が行われ次第、身柄は日本側に移されることになる。そうして、そのようなものとして案件が確立いたしますれば、公務外の米軍人による事件の補償ということは、米側が全額負担するという仕組みになっております。
  238. 古堅実吉

    ○古堅委員 委員長、大臣から答弁させてください。
  239. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 大変不幸な出来事であるということは承知を十分しております。しかし、安保条約に基づく地位協定というものが現実にあるわけでございまして、手続上はそれに従ってやられなければならないということだと思います。
  240. 古堅実吉

    ○古堅委員 抗議の申し入れもできないですか。大臣、もう一度お聞かせください。
  241. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほど審議官が御説明したとおりでありまして、既に抗議は申し入れてあるわけでございます。私から捜査により一層協力をするようにという、先ほども私は申し上げましたけれども、そのようなことを私の名前で改めてアメリカ側に申し入れをいたしますということを申し上げておるわけであります。
  242. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間がないので、それ以上繰り返しません。今申し上げた趣旨に基づいて、本当に外務省日本国民を代表する立場があると考えるのであれば、殺された人々、遺族、その立場に立って怒りを込めた対処を誠実に展開するよう強く指摘すると同時に要求しておきます。  次に、カンボジア問題です。  カンボジアの選挙に向けて今進行しつつあるこの危険な方向というのは、パリ和平協定が描いた構想とは全くかけ離れた事態というふうに申さねばならぬと思いますが、政府としてこのように受けとめておられますか。
  243. 池田維

    ○池田政府委員 最近の事態はまことに遺憾でございまして、確かに治安情勢が悪化しているということは先ほど来の御議論のあったとおりでございます。しかしながら、さればといってこれでパリの和平協定の枠組みが完全に崩壊したのかということになりますと、そういうことはないというように私どもは考えております。  その理由は幾つかございます。一つは、やはりUNTACが主導権を持って現在定められた選挙のプロセスを進めているということでございますし、これは国際的支持がございます。  それから、例えば国民の大多数の有権者、もう九〇%以上が有権者登録を済ませておりまして、この人たちは何とか早く平和を取り戻すために選挙を行いたいということを考えているわけでして、こういう人たちの熱意には全然変わりはないということでございます。  それから、ポル・ポト派の最近の行動につきましては非常に遺憾な点が多いわけでございますが、プノンペンの事務所を暫定的に閉鎖したということを言っておりますけれども、まだパリ和平協定は遵守するということを言っております。そういった意味におきまして、パリ和平協定の基本的な枠組みというものはいまだに維持されているというように考えております。
  244. 古堅実吉

    ○古堅委員 まあ、この期に及んでパリ和平協定の基本的枠組み云々と言って、質問にもまともに答えられない、これはもう話にならぬですね。こういう論議を聞いている国民は、あのPKO協力法、それに賛成したそういう立場の人を含めて、国民が一人として納得できるような答弁じゃないのじゃないですか。国民はそれほど世界の情勢について知らされない立場に置かれている人たちじゃないのですよ。  カンボジアの国連ボランティア、選挙監視員が各地からプノンペンに引き揚げるという事態になりました。UNTACとしては、危険からこれら要員を守ることができないという判断に立ったからではありませんか。どうですか。
  245. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 UNVの要員がプノンペンに戻されているのは確かでございます。しかしながら、UNTACの代表のブリーフィングによりますれば、このUNVの要員は一週間のプノンペンにおけるブリーフィングを受けるためにプノンペンに戻ってきたのだ、その間により一層の安全措置を講ずるための情報交換及び勉強会を行うということを言っております。したがって、こういった措置がなされた後で、この要員を戻すかどうかをUNTACは再検討することになるのじゃないかと思われます。
  246. 古堅実吉

    ○古堅委員 UNTACがこれら要員についての安全を確保できるということを示せる何か根拠でもあるのですか。説明してください。ないのですか、あるのですか。
  247. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 もちろん完全な安全保障ができるかどうか、そこはわかりませんけれども、UNTACといたしましては、まず、カンボジアの各派との間で安全確保についての合意を結んでおります。この合意のもとにさらに具体的な措置がとられることになると思っております。私どもといたしましては、こういった措置が効果を発揮することを期待いたしております。
  248. 古堅実吉

    ○古堅委員 先ほどもありましたが、ポル・ポト派はプノンペン市内に置いていた事務所を引き払い、キュー・サムファン議長も既に引き揚げる事態となりました。これまで政府は繰り返し、ポル・ポト派もSNCに参加しておるのでパリ和平協定の基本的枠組みが維持されているのだ、その基本はそこにあるのだというふうなことを言ってきました。しかし、SNCに参加しない、そういう実態になってきた。会議にも参加しない、そういうことになりますと、パリ和平協定の枠組みは崩壊した、そのようにつながるというふうに見ざるを得ないのですけれども、そう理解してよろしいですか。
  249. 池田維

    ○池田政府委員 ただいまの先生の御指摘にございましたポル・ポト派の事務所の閉鎖の件でございますが、これはキュー・サムファン代表からシアヌーク殿下にあてました書簡によりますと、とりあえず閉鎖するということを言っております。そして、その後のSNCの会合に出るかどうかということについては、もちろん全然言及をしておりません。それから、SNCから脱退するとかどうとか、そういう面についても全く言及はございませんけれども、それらの点につきましては、今後細心の注意を払ってよくフォローしていく必要があるかと思っております。  いずれにしましても、パリ和平協定の枠組みが存続しているかどうかにつきましては、それぞれの事態におきまして総合的に判断すべきものだというように考えております。  今のポル・ポト派との関係で申しますと、その書簡の中でもまだパリ和平協定を遵守するということも言っているわけでございます。そういった点も踏まえまして、全体的に、総合的に現在の状況を判断しましたときに、パリ和平協定というものはいまだ維持されているというように見ているわけでございます。
  250. 古堅実吉

    ○古堅委員 パリ和平協定の議長国であったフランスの外務省スポークスマンが、今のポル・ポト派の事務所引き揚げに関して、ポル・ポト派の撤収は、和平プロセスから撤退し、総選挙をボイコットするとの同派の意思を確認するものだ、このように対外的に表明しています。そういうことに見られるように、まともにその事態を見るというのであれば、そのように見ざるを得ない。曲げて見るから、今のように国会に対する全く答弁にならぬような答弁で逃れる、そういうことになってくるのです。全くけしからぬ話です。  暫定的で、SNCに戻ってくるなどとかいうふうなことが期待できるような何かがありますか。
  251. 池田維

    ○池田政府委員 現在のところもポル・ポト派がSNCから離脱するということを明言したことはないというように私どもは承知いたしておりまして、いろいろな推測は行われておりますけれども、まだポル・ポト派としては、明言しておりますように、パリ和平協定を遵守しているということでございます。
  252. 古堅実吉

    ○古堅委員 ポル・ポト派の代表がそういうことを言うからということを唯一の手がかりにそのように説明するなどということは、もう物笑いにしかならないのですよ。パリ和平協定を守ると言いながら、合意した停戦にも反してあのような残虐きわまりないことをカンボジア全域で描く。そして武器の解除にも応じない、選挙にも応じない、選挙で選ばれる政府も認めない、そこまではっきり言っておるのです。今度引き揚げていったのです。ですから、ポル・ポト派の代表が単に言っているからなどとかいうものは何の意味も持たないのです。だましの手口としてそういう言葉が使われているにすぎないのです。  ポル・ポト派を除く三派とUNTACは、ポル・ポト派の選挙妨害と武器による攻撃から選挙の治安維持を協力して確保するということが同意されています。これは、必要な場合には武器の使用、武力の行使が前提となっています。これはまた、ポル・ポト派との武器使用をも含む対立の構図がつくられたものだというふうに考えざるを得ないと思うのですが、そのように受けとめていますか。
  253. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 UNTACとポル・ポト派を除く各派との間には安全確保のための合意ができ上がっておりますけれども、これも、例えばUNTACの軍と各派の軍が合同して対処するということはないというぐあいに明記されておりますし、これはあくまでも選挙をめぐる情勢の安定確保を目指した合意でございまして、ポル・ポト派との対決を目的としたものではないというぐあいに私どもは考えております。
  254. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間ですから終わります。  自衛隊の海外派兵というのは、もちろんのことながら憲法に反して許されるものではなかった。しかし、多数をもってつくったPKO法、その内容となった五原則、それに照らしても派遣できなかったし、派遣した後に起きた現在進行しつつあるこの事態というのは、直ちに派遣した自衛隊を撤収しなくちゃいかぬ重大な事態なんだということを厳しく指摘し、自衛隊の撤収を直ちに検討するよう強く要求して、終わります。
  255. 伊藤公介

    伊藤委員長 和田一仁君。
  256. 和田一仁

    ○和田(一)委員 武藤大臣、大臣就任早々G7のホスト役として大変御苦労さまでございました。これからますます非常に大事であり、お忙しい大臣職務でございますが、ひとつ頑張っていただきますように、冒頭御就任のお祝いを申し上げながら、期待申し上げる次第でございます。  きょう、私時間が非常に少ないので、ロシア問題とカンボジア問題、二点について御質問させていただきますけれども、ずっと質疑の中で答弁していただきましたその答弁を踏まえて確認していきたい、こんなふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  ロシアに対する支援が決められたわけでございますけれども、それをめぐっていろいろな思いを国民は持っておると思います。  一つは、コズイレフ外務大臣が参りまして、いよいよエリツィン大統領の来日、訪日の具体的な詰めが始まったというふうに報道されておりまして、これに対して国民はなかなか素直な感情では受けとめていられない。というのは、先ほど来もいろいろ御質問がございましたけれども、もしおいでになるとすれば、我々としては、当然この日ロ両国間の中に大きく存在している領土問題が解決されることを何よりも大きく望んでいるわけでございます。その北方領土問題に対して、どうも大臣就任以来政府の言動が国民にはすかっとしてこない、何やら揺れ動いているような印象が強い。そして、それに伴ってロシアの方の受けとめ方が、どうも我々が今まで理解していた日本外交方針と変わったんだ、変わったから行くんだ、行けるんだ、こういう理解のもとに来日するよと一方的に通告してきたのではないか、私はこういう感じがしてなりません。  先ほど来の御質問の中で、そうではない、政策変更ではないんだ、対ロシア外交方針はいささかも変化していない、こういうような御答弁でございましたが、もう一回確認させていただきたいと思います。
  257. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 きのうコズイレフ外務大臣と話し合いをいたしましたけれども、そのときに、先ほど御答弁をいたしましたとおり、領土問題を解決をして平和条約締結をし、完全な国交の正常化を図ることが両国のためにはもちろん、世界平和のためにもなることだから、そのような点については、日本としてはそういう方向でやっていきたいということについてははっきり申し上げております。
  258. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣、これから具体的な詰めに入られると思うのですけれども、来日の時期は、先ほど来いろいろ言われておりましたが、可能性として、実現するのでしょうか。それともやはり無理という判断がされる可能性もあるのか。  私は、来るとすれば、まず第一に伺いたいのは、これは昨年、両方の間で合意できていた来日がキャンセルになった、一方的にキャンセルになった。それの再現と受けとめてよろしいのか。あるいは、断るあるいは無理だ、しばらくは来日の日程は組めないという場合には、その理由を、日本の日程の理由というような理由でそれはだめだというのか。はっきり、二国間の大統領同士のそういう会談をする以上、この北方領土の問題をきちっとしましょう、その合意がない限りはお断りするんです、こういう形での延期を、延期というか実現しない理由づけをするのか。実現する場合は、先年のあの来日予定の再現と受けとめていいのか。どちらかを、両方についてお答えいただきたい。
  259. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもといたしましては、昨年九月の突然の訪日中止というのに対しては大変遺憾に存じておるわけでございまして、これは先ほども答弁したかと思いますが、コズイレフ外務大臣にも日本国民は非常に不愉快に思っているんだということをはっきり申し上げております。  今度向こうが日本へ来ようというのは、私どもとしては、昨年の中止をしたのを、改めてその延長線上で日本へ来るという向こうの希望だと受けとめております。
  260. 和田一仁

    ○和田(一)委員 わかりました。  それでは、スケジュールにのっております七月の東京サミット、このサミットでの北方領土問題の扱いはどんなふうにお考えになっていますか。  私は、従来サミットのたびに、我が国にとって最大関心事であるこの北方問題をサミットの俎上にのせたい、こういう思いでサミットに取り組んできました。そして、昨年のサミットでそれがはっきりと共同宣言の中でうたわれたわけでございます。これは非常に大事なことだと思っております。  解決は二国間の問題かもしれませんけれども、法と正義の上で我々が主張してきたことが国際関係の中できちっと取り上げられてきたということを非常に評価しておるのですが、この七月サミット、東京サミットでは北方領土問題はどのようにお扱いいただくのか、お伺いしたいと思います。
  261. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 今のところ、議長国として日本側が東京サミットについて大体他の先進諸国と議題として合意に達しつつありますのは、ロシア問題、世界のマクロ的な経済問題、途上国の問題、今のところ大体この三つは合意が得られつつあると承知をいたしております。  それ以外については、今後も引き続いてシェルパレベルでいろいろ、どういう議題を提起をするかということが今後詰められていくと思うのでございますが、今、たまたまミュンヘンの昨年のサミットでああいう形になりましたので、今度はどうかということでございますが、一般論として言えば、私はこういう二国間の懸案問題というのはなかなか議題には難しいというふうに判断をいたしております。そういうことでございます。
  262. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣は今、たまたま昨年のミュンヘン・サミットではこれが議題になったとおっしゃいましたけれども、我々としては、この大事な二国間問題を、法と正義というのは、これは国際法規、国際正義の上で我々は主張しているのであって、この立場をきちっと国際間に理解してもらいたいという強い思いを持って世界に向かって働きかけてきたので、たまたまではなく、大変大事な努力の成果として私は国際場裏できちっと取り上げられた、こういうふうに理解し、評価してきたのですが、たまたまであって、ことしはそういうことには触れるつもりもないということになると、私はこれは非常に大事な点ではないかと思うのですね。  ちょっと伺いますけれども、栗山駐米大使、この間の発言、何やら北方領土については、これは二国間の問題だからアメリカが余計なことを言うなというような発言をされたと報道されておりますね。私は、これは今までのサミットでの成果や外国が理解してもらったことを結構ですと断っているようなもので非常に不可解なんですが、外務省としてはこれはどう受けとめているのですか。
  263. 野村一成

    ○野村(一)政府委員 今、栗山大使の発言ということで引用がございましたけれども、私は今のような発言を栗山大使がしたということを承知しておりません。  ただ、基本的にはこの領土問題の解決というのは日ロ二国間の問題ではございますけれども、ただいま先生引用ございましたけれども、去年のミュンヘン・サミットの政治宣言におきまして、法と正義の原則に基づいて外交を遂行するというロシアの公約を歓迎する、我々はこのロシアの公約が領土問題の解決を通じた日ロ関係の完全な正常化の基礎となるものと信じる、そういう点についてG7の諸国の一致した認識が得られたわけでございます。また、これが私どもは非常に重要であるということを認識しております。  その認識は、このミュンヘン・サミットの宣言においてきちんと確立いたしておるわけでございますから、それを受けて、あと具体的な領土交渉、これは日ロ間で行っていく。他方、それについて、先ほど申しました政治宣言に書いてあるようなことについては、やはり一致したG7の間の認識というのが私どもにとって領土交渉を行っていく上において大きな力になる、そういう認識でございます。
  264. 和田一仁

    ○和田(一)委員 大臣、やはり外交交渉は、私は最近非常にいろいろなことを感じるのですけれども、言うべきことをきちっと言う。イエスとノーがはっきりしているつもりでもなおかつ我々は誤解されやすい。どうも最近も総理大臣の発言が、何か外圧によって我々はいろいろな政策遂行した方がいいととられそうな妙な発言があったり、あるいはこの間の米ロの首脳会議の後に、日本のイエスはノーだよというようなメモが出てきたとか、要するに日本の言動は信用できない、そういう意味のとらえられ方をしている。これは非常にまずいことであると思うのですね。私は、そういう意味で、やはり言うべきことをきちっと言っていただくことが大事ではないか。  特にこの北方領土問題に対しては、沖縄の後は北方領土だと言って全国的な国民の運動をやって今日まで来たこと、これは一北海道の代議士の発言じゃありません、さっきのは。これはまさに国民の悲願として私どもは受けとめているので、ぜひその辺をきちっとした対応でこれから対ロ交渉の中で御発言、御活躍をいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  265. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 ロシア側も法と正義に基づく外交を今後展開していくと言っているわけでございますから、御指摘のとおり、このような不法な占拠が行われた形で現在まで残っておる北方領土問題について、法と正義に基づいて外交上解決されることが望ましいと私は考えており、努力をしてまいります。
  266. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間がございませんので、どうしても伺っておきたいのは、一つはカンボジアの問題でございます。  先ほど来いろいろお話ございましたように、今、和平プロセスが予定どおりは大変難しいような雰囲気になってまいりました。先般は、国連ボランティア、UNVとして中田厚仁さんが犠牲になってしまった。私どもにしましては、このおじさんが、ちょうど民社党の大阪の衆議院議員候補として戦った仲間のおいごさんに当たるだけに非常に残念でならないわけでございます。  先ほどもいろいろ御質問がございましたように、このUNTACは、かつて国連が活動してきたPKO活動の中では最大規模であり、そして非常に特異なケースとして注目されているPKO活動だと私は理解しております。日本が非常に骨を折ってパリ和平会議が成立して、それに基づいて国連の合意のもとにUNAMICが派遣された。そして、その準備の上に今UNTACが和平プロセスに従って仕事をしていただいております。  我々もいろいろ議論しましたけれども、PKO法によって初めてここにPKO活動として要員を要請によって派遣をしておる。こういう環境の中で、どうもさっきのお話からずっと答弁もいただいておりますけれども、当初の予定どおりはなかなかいかなかった。そして、最大難関事であった武装解除がやはり予定どおりいかなくなった。この時点から、私はこの段取りは若干予定と外れたなと思います。  私、予定どおり五月の選挙ができるかどうかということをあの武装解除打ち切りの間際に現地へ行って伺いましたら、武装解除は全力を挙げるけれども難しいかもしれない、しかし、選挙は予定どおりやりたい、そのことをやらなければUNTACの使命は果たせない、こういう思いで準備に入って今日まで来たのだと思いますが、私は、この段取りで選挙ができて、そして制憲議会が開かれて新しい国づくりが始まる、大変それを望んでおりますけれども、今の状態から見ると、そのスケジュールどおりいくかいかないか非常に厳しいような気がいたします。  それで、先ほど来協力本部の方の御答弁にもございましたが、UNTACの和平プロセスの枠組みが崩れていないという理解と、我々派遣をしている日本の五原則の立場と、この理解が一致しているうちはいいのですけれども、この理解が違ってきたときに非常に大事な決断をしないといけないと私は思うのです。私は、今の状態まで来ると、そういうことが起こり得るような気がしてなりません。  だとすれば、先ほど上原委員から御質問があったときに、こういう事態になって日本が非常に難しい判断をする前に、国連が合意を求めたそこの原点にもう一回戻って、そして参加している国々を集めて相談すべきときがあるのではないか。それについて大臣は、なるほどそれは大事だ、前向きに考えたいというような御答弁を私は聞いたわけですが、大臣、これはどういう姿をお描きになっていますか。  私はここが非常に大事だと思うのですが、そういう御努力をいただくような場面がなければいいですが、来るときのためにぜひお心づもりを聞かせていただきたい。
  267. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 御承知のとおり、議長国がフランスとインドネシアでございますから、やるとすれば、まず議長国とよく話をし、何らかの形のものを考えていかなければいけないと思っております。
  268. 和田一仁

    ○和田(一)委員 先ほどは、安保理で決議をしてこういう事態になっている、その安保理に働きかけるというふうに理解したのですが、そうではないわけですか。
  269. 池田維

    ○池田政府委員 ただいま大臣から御答弁ございましたように、特にこの和平問題はパリ和平協定の二つの議長国の意向が大変重要だと思います。したがいまして、議長国と十分計らっていく必要がございます。  それから、安保理につきましても、その一つの中核的な組織でございますから、この安保理においても同じような議論が行われる必要があると考えております。
  270. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういうことが必要な時期はいつになるのかがなかなか難しいと思いますが、最後にちょっと御質問したいのは、国連がこういうふうにPKO活動を決めてやっている。そして、参加している日本が国連の一員として何かやれないかという中で、今度はやれるようになって要員を派遣した。しかし、事態が考えていたのと違う。法律から言えば、これは日本の判断で撤退、中断するという実施計画があるという御答弁がございました。  しかし、私としては、国連の一員であり、そしてPKO活動の要請を受けて参加した国として、やはり行動は一緒にしてほしい。これは日本だけ独自の行動をとるということは、決して私は絶対あってはならぬというわけではありませんけれども、そういうことを避けるためにも、事前に参加した国々と事情の変化によってどう対応すべきかという相談を十分していただきたいと思うのですね。それなしに、手続上必要だからということで内閣で決めて中断するというような事態をいきなり持ってもらいたくない、こういう思いが強いのですが、大臣、いかがですか。
  271. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 国際社会における日本の立場を考えれば、そのようなことはよく理解できますので、先ほども申し上げましたように、議長国とも相談し、私は先ほど安保理と申し上げたつもりはなかったのでございますが、国連の場なりいろいろなところで何らかの形のものを考えられないか、真剣に私は考えてみたいということを先ほど答弁したつもりでございますが、いずれにしても、今、いろいろの国際的なそのような立場で他の諸国とも相談をするような機会をなるべくつくった方がいいのじゃないかという考え方でいるわけでございます。
  272. 和田一仁

    ○和田(一)委員 時間が過ぎてしまいました。どうぞ大臣、ひとつせっかくの御努力をお願いいたしまして、終わらせていただきます。      ————◇—————
  273. 伊藤公介

    伊藤委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国トルコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国イスラエル国との間の条約締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより両件について政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣武藤嘉文君。     —————————————  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国トルコ共和国との間の条約締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国イスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件    〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  274. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国トルコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、トルコとの間で租税協定を締結するため、トルコ政府と交渉を行いました結果、平成五年三月八日にアンカラにおいて、我が方山口特命全権大使と先方オラル大蔵関税大臣との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、これまでに我が国が諸外国との間で締結してきた租税条約と同様に、経済的交流、人的交流等に伴って発生する国際約二重課税回避を目的として、トルコとの間で課税権を調整するものであり、協定全般にわたり、OECDモデル条約案に基本的に沿ったものとなっております。  この協定の主な内容としまして、まず、事業所得につきましては、企業が相手国内に支店等の恒久的施設を有する場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国で課税できるものとしております。また、国際運輸業所得に関しましては、船舶及び航空機のいずれの運用による所得に対する租税につきましても国際運輸業を営む企業の居住地国においてのみ課税し得ることを定めております。また、投資所得につきましては、配当、利子及び使用料についてそれぞれ源泉地国における限度税率を定めております。  この協定の締結によって我が国とトルコとの間での各種所得に対する課税権の調整が図られることになり、両国間の経済及び文化の面での交流が一層促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国イスラエル国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、イスラエルとの間で租税条約締結するため、イスラエル政府と交渉を行いました結果、平成五年三月八日に東京において、我が方小和田外務事務次官と先方アミハイ駐日イスラエル臨時代理大使との間でこの条約に署名を行った次第であります。  この条約は、これまでに我が国が諸外国との間で締結してきた租税条約と同様に、経済的交流、人的交流等に伴って発生する国際約二重課税回避を目的として、イスラエルとの間で課税権を調整するものであり、条約全般にわたり、OECDモデル条約案に基本的に沿ったものとなっております。  この条約の主な内容としまして、まず、事業所得につきましては、企業が相手国内に支店等の恒久的施設を有する場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国で課税できるものとしております。また、国際運輸業所得に関しましては、船舶及び航空機のいずれの運用による所得に対する租税につきましても国際運輸業を営む企業の居住地国においてのみ課税し得ることを定めております。また、投資所得につきましては、配当、利子及び使用料についてそれぞれ源泉地国における限度税率を定めております。  この条約締結によって我が国とイスラエルとの間での各種所得に対する課税権の調整が図られることになり、両国間の経済及び文化の面での交流が一層促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  275. 伊藤公介

    伊藤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る二十一日水曜日午後二時二十分理事会、午後二時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会      ————◇—————