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武田邦太郎君 日本新党を代表いたしまして、ウルグアイ・ラウンドについて明確な展望と羅針盤を持って取り組んでいただきますように、農業者の立場から若干の見解を述べます。前半では大局的な問題でございますから
総理大臣にお話をお伺いし、後半では先ほど発表されました農業の新政策を中心に農水大臣の御意見を伺いたいと、こういうふうに思います。
お手元に届けましたペーパーの左の方の表をごらんいただきますと、農業
構造の現状が一覧するようにできております。
全国で申しますと、農家戸数、耕地面積、一戸当たりの耕地面積、後継者の数が出ておりますが、後継者が農家七十八・七軒に一人しかおらない。したがって、現在の状態では日本の農業
構造は一戸当たり百八・三ヘクタールに拡大する方向に急傾斜している。これはまあ統計上の話でありまして、こうなるというわけではありませんし、また統計というものはこの数字にとらわれる必要はありませんが、大局的な趨勢はこれによって想像することができるわけであります。
特に、後継者がいないで、一戸当たり耕地面積が拡大する傾向と申しますのは、稲作県において甚だしい。新潟県では驚くべきことに三百四十九・三ヘクタールに拡大する方向に傾いております。秋田県がごらんのとおり、宮城県がごらんのとおりであります。言いかえてみれば、日本の農業
構造は根本から崩壊中であるということは到底否定することはできません。
なぜそういうことが起こったかと申しますと、昨年度のお米で申しますと、農水省の統計ではお米づくりの農家全国平均家族労働報酬、日当は七千円であります。東南アジアの人が日本に来て建設工事に従事すると一万円以上もらうんです。しかるに、日本で米をつくれば七千円、こういうことは到底若い人はやれる仕事ではありません。
一般の二次、三次産業の従事者で賞与を入れて年間所得五百万ということは決して多い方ではありませんですね。ところが、年間二千時間働く、日数にすれば二百五十日です。日当なら二万円です。都会に行けば少なくとも二万円、これから先の経済成長はなかなか困難かもわかりませんが、二%半の年率、あるいは三%の年率でいけば十年後には三万円近くなるでしょう。したがって、若い人に米をつくらそうと思うならば、当面二万円になる稲作、十年後には三万円の日当になる稲作でなければ若い人に農業やって米をつくれと言うわけにはいかない道理であります。
こういうことが非常に絶望的に聞こえますけれども、世の中というものはよくしたもので、その中に非常に大きな洋々たる可能性が秘められている。つまり、今まで規模拡大というのは言うべくして非常に難しかった。ところが、こういうように物すごい規模拡大への可能性があらわれている。
これから先農業は、国際競争というと非常に人気の悪い話になりますけれども、仮に国際競争をやるとして、一軒の家でどれだけの面積をやればできるのか。これは、アメリカは一望千里の耕地を持っている、とてもかなわないというものは素人考えてあります。農業者一人が何十ヘクタールやって、単収をどれぐらい上げて、付加価値をどれぐらいとるかというのが農業の競争でありまして、カリフォルニア随一の稲作農場である国府田さんのところでも、従事者一人当たりの作付面積は四十ヘクであります。
ごらんのように、四十ヘクなんか平気でやれるほど若い人間はいないんですね。おまえさん、カリフォルニアの国府田さんと四つになって相撲とれと、そのかわり一人当たり四十ヘクの田んぼは
構造改善の結果活用できますぜと言えば、これは洋々たる前途が開けるわけです。
世界最大の規模を誇るオーストラリアでも一人当たりは五十ヘクから七十ヘクです。大した面積ではありません。こういうことが、つまり、零細企業とか下請の問題がありますけれども、
世界第一をもって誇る二次、三次産業と肩を並べる農業でなければ若い人は農業をやらないのです。農業というものは、
世界第一級にならなければ日本ではだれも農業なんかやりはしません。
ですから、一粒も米を入れなければお米は自給できると考えるのは大間違いでありまして、どんどん米はつくろうと思ってもつくれない。この実情を全
国民的認識にしていただきたいと思います。米は自給できません、今のままでは。だから、農水省が減反政策を緩和しても農家は応じないでしょう。もうからないからです。これがもうかれば、米はもちろんです。小麦だって十分国内で自給できます。六百万トン輸入しておりますけれども、これは百万ヘクつくればいいんです。昔は百八十万ヘクの麦をつくっておったんです。それは麦はもうからないから、出稼ぎした方がもうかるから麦はやめちゃっただけの話です。
土地はあるんです。しかも日本の耕地の七割弱は平野部なんです。田んぼでも二百万ヘクは平らですよ。決して傾斜ではありません。緩傾斜が一七%、急傾斜が一三%です。あとは平野部なんです。それだけあれば一億三千万の
国民の食べ物は少なくとも七割、うまくやれば七割五分は自給できます。今、穀物で三割でしょう。しかも百二十万トンの肉を輸入しておりますから、これを穀物計算すれば二五%しか自給していないんですよ。それは土地が狭いからか。そうでありません。土地は十分にあります。なぜ自給できないのか。もうからないからです。レベルが低いからです。
それで、その次の表をごらんください。表をごらんくださればわかります。お米をつくっても外国に勝てるという数字がここにあります。決してここの独特の条件でありません。二百万町歩の田んぼは全部アメリカと相撲をとって勝てる。
そこで、
総理大臣も外務大臣も大蔵大臣も、これはまたあいつあんなこと言っていると、ちゃんと知っておられるんですね。しかし、この政策は人気がありません。世論が熟しておりませんから、これをやるといったら選挙に負けます。だから今言うことは私は勧めませんよ。しかし、世論を少しでも早く成熟させてこの方向に方向転換しなければ、クリントンが食べ物をやらないよと言ったら、もうアメリカに頭上がりませんよ。
ちょっとお願いできますか。