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田沢智治君 去る九月八日から十日までの三日間、北海道に派遣されました第二班の
調査の
概要を御
報告申し上げます。
派遣委員は、
肥田美代子委員、山本正和
委員、
刈田貞子委員、
江本孟紀委員と私、
田沢智治でございます。
第一日目は、まず寺山北海道
教育長から道の
教育概況と国に対する要望事項について説明を受けました。
北海道では、明治初期より、開拓を担う人材の養成を重視するという
開発政策がとられてまいりました。札幌農
学校では英語による授業が行われ、函館にはロシア語
学校が設置されておりました。また女子
教育の面でも、いち早く宣教師により女
学校が開設されております。
北海道が国土の二割以上を占める広大で豊かな自然に恵まれていることは御存じのとおりであります。自然と人間が触れ合う伸びやかな
教育環境を求めて、毎年金国各地から多くの児童が山村留学のために来道しております。ただその一方、人口密度が希薄なため、僻地校や小規模校の比率が極めて高く、
学校の適正規模を
維持することが大きな課題となっております。
生涯学習に関しては、現在、振興基本構想の策定作業を進めており、年内にも公表できる段階にあるとのことであります。また、潤いのある
生活をもたらす地域
文化の創造発展を図るため、札幌交響楽団への活動支援やアイヌ民族
文化の伝承保存対策を行っております。
なお、北海道の
教育の振興に大きな役割を果たしてきた私学に対しては、長期的な生徒減少期を迎え、厳しい
学校経営が予測されることから、
学校経営の健全化、父母負担の軽減を図るために各種助成を進める等、特色ある私学づくりの支援に努めているとのことでありました。
次に、北海道大学を視察いたしました。
廣重学長の説明によりますと、大学院
教育が基幹大学としての責務であるとの自覚から大学院に重点を置いた改革を行っており、また広大なキャンパスを有効
活用すべく大学全体の総合的見直しも
検討しているとのことでありました。さらに、
外国の大学等との国際交流についてもより一層活発に進めながら、百十六年の歴史に培われた開拓精神を
維持していきたいとのことでありました。
なお、去る八月十日の工学部における酸欠事故につきましては、学内に
委員会を設けて事故原因を
調査中とのことでありますが、通常では起こり得ない事故であり、今後このようなことのないよう再度気を引き締めて総点検を行っていくとのことでありました。
次に理学部を訪れ、堀理学部長から説明を受けました。
当学部では、専門分野間にまたがる境界領域もカバーできるよう講座を再編制して、より近代的な体制を整えつつあるとのことでありました。地質学鉱物学科においては、鉱物や化石等の貴重な標本を拝見した後、生物学科においては、ザリガニの脳神経を観察することによってその働きを探るという興味深い実験を拝見いたしました。
続いて農学部を訪れ、七戸農学部長から説明を受けました。
最古の歴史を誇る当学部も学部改革を行い、ことしは入学科を七学科に再編制いたしました。農学は余りに専門分化し過ぎて本来の役割を果たし得なくなっているとのことであり、札幌農
学校以来の伝統である実物を使った実験を通じて総合的な応用性を取り戻す試みを行っているとのことでありました。しかし、実物
教育に必要不可欠な農場等の施設の老朽化、狭隘化には著しいものがあります。さらに、最近は
世界各国からの留学生が増加しているため、留学生の受け入れ体制という
観点からも施設を早急に整備する必要があるように見受けられました。
北海道大学を後にして、昨年四月開校した札幌市立高等専門
学校を訪れました。
同校は、全国初のデザイン系高等専門
学校であります。地形をそのまま生かした校舎は自然に溶け込み、それ自体が教材であり教科書でありました。五年間を通じて積極的な美術
教育が行われることになっており、今後、創造性に富み、幅広い実践活動に役立つ人材の育成が期待されております。
次に、同校に隣接する「札幌芸術の森」に参りました。
四十ヘクタールという広大な丘陵地に、美術、工芸、音楽など幅広い分野にわたる芸術の工房や広場を配した総合芸術村であります。芸術家や市民が滞在しながら創作活動を行うことができ、内外の異なるジャンルの芸術家や市民の交流の場となっております。
二日目は八雲市を訪れ、道立八雲養護
学校を視察しました。
同校は、進行性筋ジストロフィー症児、重症心身
障害児などの病弱児童生徒を対象に
教育を行っております。
橋本校長は、子供たちは病気と闘いながら、残された少ない時間を後悔しないよう一生懸命勉強するんだと言って頑張っておりますとおっしゃっておられました。私たち一行の訪問を歓迎してくれた児童の屈託のない笑顔に、
教育の役割とは何か、子供に希望を与えるために何をすべきか改めて
考えさせられた次第であります。
八雲市を後にして函館市に参り、木戸浦函館市長と市の
教育概況等について懇談をいたしました。
同市では、北海道
教育大学函館分校を母体とした国立函館大学を新設するよう強い要望がありました。
三日目は、まず重要
文化財であるハリストス正教会及び旧函館区公会堂を訪れました。、
両所とも行き届いた修復がなされ、保存状態もよく、同市の
文化財
保護にかける熱意が感じられました。
次に、函館市立中部小
学校において、給食を試食いたしました。
同校では、学年の異なる二学級ずつが交代でランチルームを
利用する交流給食を行っております。下級生は上級生と一緒に食事をすることにより食事のマナーを見習い、上級生は下級生の世話をしながら自分の態度にも注意を払うようになったということであります。現在、給食のあり方についてはいろいろ論議を呼んでいるところでありますが、同校の給食指導は非常に行き届いており、児童も毎日の給食をとても楽しみにしているとのことでありました。
次に、特別史跡五稜郭を訪れました。
同所は、北辺防備と蝦夷地開拓を
目的としてつくられた
我が国最初の洋式城郭であり、後に函館戦争の舞台となりました。
昭和二十七年に特別史跡に指定され、現在、堀の内側は公園として市民や観光客の憩いの場となっております。
続いて、道立函館美術館を視察いたしました。
当美術館は、地域の特性に沿った特色あるコレクションづくりを目指して、道南ゆかりの芸術家の作品の収集、展示に力を入れております。また、研修や講演会等も活発に行われ、地域の芸術
文化の発信拠点としての役割を果たしております。
以上が今回の派遣の
概要でありますが、この
報告で子細に触れることのできなかった北海道からの要望につきましては、本日の会議録の末尾に掲載させていただくようお願い申し上げます。
最後に、この場をかりまして北海道並びに視察先の
関係者の方々に厚く御礼を申し上げ、第二班の
報告を終わらせていただきたいと思います。