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1992-12-08 第125回国会 参議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年十二月八日(火曜日)    午前十時開会     —————————————   委員氏名     委員長         野末 陳平君     理 事         竹山  裕君     理 事         藤田 雄山君     理 事         鈴木 和美君     理 事         前畑 幸子君     理 事         及川 順郎君                大河原太一郎君                 北澤 俊美君                 沓掛 哲男君                 佐藤 泰三君                 清水 達雄君                 楢崎 泰昌君                 藤井 孝男君                 久保  亘君                 志苫  裕君                 本岡 昭次君                 山田 健一君                 牛嶋  正君                 寺崎 昭久君                 吉岡 吉典君                 池田  治君                 島袋 宗康君     —————————————    委員異動  十一月十日     辞任         補欠選任      楢崎 泰昌君     西田 吉宏君  十一月十一日     辞任         補欠選任      西田 吉宏君     楢崎 泰昌君  十二月七日     辞任         補欠選任      及川 順郎君     白浜 一良君  十二月八日     辞任         補欠選任      白浜 一良君     及川 順郎君     —————————————  出席者は左のとおり。    委員長          野末 陳平君    理 事                 竹山  裕君                 藤田 雄山君                 鈴木 和美君                 前畑 幸子君                 及川 順郎君    委 員                 北澤 俊美君                 沓掛 哲男君                 佐藤 泰三君                 清水 達雄君                 楢崎 泰昌君                 藤井 孝男君                 久保  亘君                 志苫  裕君                 本岡 昭次君                 山田 健一君                 牛嶋  正君                 吉岡 吉典君                 池田  治君                 島袋 宗康君    国務大臣        大 蔵 大 臣  羽田  孜君    政府委員        大蔵政務次官   青木 幹雄君        大蔵大臣官房総  日高 壮平君        務審議官        大蔵省主計局次  涌井 洋治君        長        大蔵省主計局次  竹島 一彦君        長        大蔵省主税局長  濱本 英輔君        大蔵省理財局長  藤井  威君        大蔵省証券局長  小川  是君        大蔵省銀行局長  寺村 信行君        国税庁課税部長  松川 隆志君    事務局側        常任委員会専門  下村 純典君        員    説明員        公正取引委員会  平林 英勝君        経済部調整課長    参考人        国民金融公庫副  塚越 則男君        総裁     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国政調査に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成年度歳入歳出決算上の剰余金処理の  特例等に関する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融施策に関する件)  (派遣委員の報告)     —————————————
  2. 野末陳平

    委員長野末陳平君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事及川順郎君を指名いたします。     —————————————
  4. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、租税及び金融等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成年度歳入歳出決算上の剰余金処理特例等に関する法律案及び日本開発銀行法の一部を改正する法律案の両案審査のため、本日、参考人として国民金融公庫総裁塚越則男君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 平成年度歳入歳出決算上の剰余金処理特例等に関する法律案及び日本開発銀行法の一部を改正する法律案、以上両案を一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。羽田大蔵大臣
  9. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) ただいま議題となりました二法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、平成年度歳入歳出決算上の剰余金処理特例等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  平成年度におきましては、租税及び印紙収入が最近までの収入実績等を勘案すると、当初予算に対し大幅な減収となることが避けられない見通しである一方、総合経済対策に関連する経費を計上するとともに、給与改善費など特に緊要となった事項について措置を講ずる必要が生じております。このため、政府は、補正予算編成に当たり、既定経費節減等に最大限の努力を払うとともに、追加財政需要につきましても極力圧縮し、さらに、やむを得ざる措置として、公共事業関係費追加対応するものなどについて建設公債追加発行を行うこととしております。  しかしながら、これらをもってしてもなお財源が不足することから、本法律案は、臨時異例措置として、平成年度歳入歳出決算上の剰余金の全額を補正予算不足財源に充当することができるよう財政法特例を定めるとともに、一般会計において承継した債務等償還延期について所要法的措置を講ずるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、剰余金処理特例についてであります。  財政法第六条第一項においては、各年度歳入歳出決算上の剰余金の二分の一を下らない金額翌々年度までに公債または借入金償還財源に充てなければならないこととされておりますが、平成年度剰余金については、この規定は適用しないことといたしております。  第二は、一般会計において承継した債務等償還特例についてであります。  交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金のうち一般会計に帰属したもの並びに日本国有鉄道及び日本国有鉄道清算事業団の債務のうち一般会計において承継したもののうち、平成年度において償還すべき金額については、それぞれその資金運用部に対する償還延期することができることとし、当該延期に係る金額については、五年以内の据置期間を含め十年以内に償還しなければならないことといたしております。  次に、日本開発銀行法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  総合経済対策を踏まえて日本開発銀行貸付規模の拡大を図るため、補正予算において所要財政投融資追加が予定されておりますが、これにより同行貸し付け等の額が現行の貸し付け等限度額を超えることとなります。日本開発銀行に対する資金需要は引き続き旺盛なものと見込まれますので、本法律案は、これに適切かつ機動的に対処し、長期安定的な資金供給により景気対策の効果を着実なものとするため、同行貸し付け等限度額引き上げを行おうとするものであります。  また、同じく総合経済対策を踏まえて行われる日本開発銀行輸入体制整備貸し付け金利の引き下げのため、補正予算において同行に対する追加出資が予定されておりますが、これに伴い、本法律案は、日本開発銀行法資本金に関する規定について所要整備を行うことといたしております。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、貸し付け等限度額引き上げについてであります。  日本開発銀行法第十八条の二においては、日本開発銀行借り入れ等限度額自己資本の額の十二倍とされ、また、貸し付け等限度額自己資本の額及び借り入れ等限度額合計額、すなわち自己資本の額の十三倍と定められておりますが、借り入れ等限度額を従来の自己資本の額の十二倍から十四倍に引き上げることによって、貸し付け等限度額自己資本の額の十五倍とすることといたしております。  第二は、資本金に関する規定整備についてであります。  日本開発銀行法第四条に、予算で定める金額の範囲において政府による追加出資を可能にする規定を設けることといたしております。  以上が二法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。  以上であります。
  10. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次発言願います。
  11. 山田健一

    山田健一君 ただいま提案理由の御説明をいただきました日本開発銀行法改正にかかわる点について私の方からお尋ねをいたしたいと思います。  今御提案がありましたように、ちょうど夏の総合経済対策を踏まえて今回この開発銀行法改正ということになっておりまして、ポイント二つ実はあると思っております。一つは、今回いろんな資金需要等々を踏まえて、今回の総合経済対策の中にも触れられておりますけれども、いわゆる貸付規模を七千億ふやしていく、こういうことになっておりまして、それに伴って十八条の二、いわゆる受信限度倍率を十二倍から十四倍にして、そして与信限度倍率が十五倍、こういう一つ改正、これが一点。それからもう一つは四条にかかわる部分で、いわゆる政府追加出資を可能にしていく。こういう二つ大きなポイントがあろうと思います。  まず最初の民間設備投資を促進していく、こういう観点から七千億枠を追加していく。この七千億の使われていく行き方なんでありますけれども、これは一体どういったところを想定をされておられるのか。融資対象分野といいますか、そういったところをぜひ私は、今回そちらからこの「日本開発銀行の現況」という本をいただきました。一つ政策融資ということになっておりますために、いろんなそのときどきの経済状況社会状況を踏まえていろんな形で融資をしていくという立場、そのときどきのニーズによっては状況が大分異なってきておる。昭和、戦後の時代からずっと見ましてもかなり変わってきておりまして、平成年代は、いわゆる「重点分野」として「生活都市基盤整備地球環境対策国際化地域活性化」、こういうことが立派に掲げてあるわけであります。現実にはこの中身どういうふうに使われていっているのか見ますと、大体ほとんど変わっていないのであります。資源エネルギー関係、これが中心にかなり運用がなされている。  こういう状況でありまして、今回この七千億円が追加をされる。どういうところにこれが想定をされていくのか。今までと同じような形でそれ相応に配分をされていくのかな、配分というよりか運用されていくのかなという気もしないでもないのでありますが、今回は特に景気対策という一つの大きな柱、これが一本あり、しかもこういった二十一世紀に向けて、今申し上げましたように都市基盤整備等々含めて社会資本充実をしていこう、こういう大きなねらいも込められているというふうに思っておりまして、従来と同じようにただ単にこの枠を七千億広げるということだけで果たしていいのか、こういった気持ちがあるものでありますから、この七千億追加をされるということでありますが、そのいわゆる運用対象分野、どういったところを想定されているのか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  12. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 今回は、当初でございませんで追加という性格もございますが、当初で 予定された分野の中でさらにその後資金需要が強いと思われるところに重点的な配分をしているところでございます。  具体的に申し上げますと、まずエネルギーでございますが、電力発電所設備、それから送配電線地中化環境対策等のための工事、それからガスにつきましては効率的、安定的供給に資する設備LNG設備等分野がまずございます。それから生活都市基盤整備につきましては、首都圏関西圏臨海部中心としました大規模都市開発プロジェクト、それから三大都市圏におきます私鉄輸送力増強工事等、こういったものでございます。  具体的には、電力発電所では東京電力、中部電力、九州電力のそれぞれの個別の発電所送配電線地中化につきましては、東京電力等都市部における配電線地中化工事。それから都市開発につきましては、首都圏につきましてはみなとみらいの都市開発関西圏大阪ワールドトレードセンターとか、アジア・太平洋トレードセンター。それから私鉄につきましては、輸送力では小田急電鉄等通勤路線複々線化工事、そういったものが主として予定されている分野でございます。
  13. 山田健一

    山田健一君 今お示しをいただきましたが、見ますと、貸付残高一位から七位、十二番目ぐらいまでは大体電力会社が皆集中をしておるということで、今も御説明ありましたように、資源エネルギー関係、あるいは地下の設備、そういったところに振り向けられていくということになっているようであります。これから次代の要請等々踏まえてそれぞれ必要な分野あるだろうと思っておりますが、もう少しその意味では今回の景気対策等々含めた形で言えば、分野についてもめり張りをきかしていくといいますか、そういった形で運用がされていくということをまず私は要望しておきたいというふうに思っております。  確かにこういった景気状況でありますから、資金需要については大変落ち込んでおるというふうに言われておりながら、報道によりますと、政府系金融機関、これは大変資金需要が多い。こういうふうに言われておりまして、この九月で見ますと、融資残高日本開発銀行は前年同月末比で、九月末で一三・六%増、こういうことで、中小公庫、国金等も含めて非常に需要が高まってきておる。一方で民間の方は、都市銀行等が一・九%の増、極めて対象的な今状況になっておる。いろんなデータを見ましても、設備投資等々含めて非常に意欲が減退をしておる。製造業等々を見ましても大変厳しいという報道等がなされているわけであります。  こういう状況の中で、片っ方では確かに政府系金融機関ということで、金利問題等々あると思いますが、政府系金融機関に対しては非常に資金需要伸びてきておる。こういう状況大蔵省として一体どういうふうに認識をされているのか、きょう時間が余りありませんので、簡潔にひとつよろしくお願いいたします。
  14. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) ただいま先生御指摘のとおり、政府関係機関貸し付けが非常に伸びている状況でございまして、そういう状況を踏まえまして、今回総合経済対策におきまして追加措置を講じたわけでございますが、これは全体に政府関係機関金利というのは、固定長期貸しというのが特色でございます。  それで、今の金利水準基準金利で五・五%でございますが、これは戦後の歴史でいわゆるバブルと言われた時期の六十二年四月から六十二年十月を除きましてこれほど低かった金利というのは戦後の歴史でない、そこまで実は長期固定金利が下がっております。これは短期もそれ以上に下がっているんですけれども、変動金利でございますと、今後景気情勢で上がっていくわけでございますが、今ここまで下がっていれば、この長期固定融資を受けたら非常に有利であるという状況で、そういう長期固定有利性ということで、極めて資金需要が旺盛になっているんだという理解をしているわけでございます。
  15. 山田健一

    山田健一君 確かに長期固定金利で、そういった金利面での有利性というものに着目をして非常に需要伸びておるという面も一方であるだろうと思いますが、もう一方で、じゃ民間の方の金融機関貸し出しあり方というのは一体どうなんだろうかということも、やっぱり同時に問われるだろうというふうに思っておるわけであります。  いろいろ聞いてみますと、大変審査が厳しい、慎重である。貸し渋りとは言わない、貸し出しに慎重である。こういう表現が実は行われているわけでありますけれども、確かに銀行も株式の評価損あるいは不良債権等々を抱えて、言ってみればバブルの重荷を抱えておる。こういう状況の中で、大変厳しい状況にあることは事実でありますが、先般出された九月中間決算、これを見ても、本業は、いわゆる業務純益、これはもう大変かつてないほど好況という状況になっておりまして、産業界からも貸出金利をもうちょっと下げたらどうか。この金利低下する局面で、言ってみれば業務純益が過去最高の黒字を出しておるというのは、まさに金利低下局面の恩恵をしっかり受けているというのが今日の現状だというふうに思うわけでありまして、その意味では、貸出金利低下に向けてもっと銀行要請をしたい、こういう産業界の声が実は先般の産業構造審議会あたりからも通産大臣意見書が出される、こういうようなことになっておるわけであります。  こういう状況を踏まえて、今の民間金融機関融資姿勢あり方、これについて問題はないのか。場合によっては、こういう状況が続いていけば、やがて景気が立ち上がっていこうとするときの逆に一つこういう状況が、ブレーキにということが適当かどうかわかりませんが、さらに景気回復の足かせになっていきかねない、こういうふうにも思っているわけでありまして、この辺の状況についての認識をお伺いいたしたいと思います。
  16. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) ただいまお話がございましたように、金融機関におきまして、融資政府関係金融機関との対比におきまして、金融機関貸し出し伸び低下していることで貸し渋りが生じているのではないかという御指摘がございます。基本的には、今銀行貸し出し伸び低下している背景は、やはり企業の設備資金需要、総体としての資金需要の低迷があると考えているわけでございますが、実は八月十八日に大蔵大臣より「金融行政の当面の運営方針」を公表いたしました。その中におきまして、そういった事情があるけれども、金融機関バブル期におきます過剰融資等の反省から過度に消極的な姿勢に陥っていることが全くないわけでもないということもございますので、健全な経済活動に必要とされる資金が円滑に供給されるように金融機関に適切な対応を求めるとしたわけでございます。  さらに十月三十日に、この「金融行政の当面の運営方針」のフォローアップで不良債権等を発表いたしましたけれども、そのときも、大蔵大臣から金融機関に、融資姿勢あり方について、健全な経済活動に必要な資金の円滑な供給のためにはさらに配慮をされたいという要請をしたところでございます。  それから問題は、その一方で、金融機関不良債権の償却をしていかなければいけない、また不良債権対応に非常に苦慮している中で、積極的に貸し出しをしていくということがいろいろ問題になっているのではないかという御指摘もございますので、実は八月十八日に、金融機関自己資本充実を図る、それによって融資対応力を一方で図っていくという措置で、新たな自己資本充実手段等措置も講じているところでございます。
  17. 山田健一

    山田健一君 八月以降の今日に至る時点で私はお話を申し上げておるわけでありますけれども、そういった形でぜひ必要な資金が十分回っていくようにという指導はきちっと続けていただきたい、こういうふうに思っているわけであります。  特に、今回、先ほど申し上げましたこの十八条の二の関係についてお尋ねをいたしますけれど も、先ほども言いましたように、今度は与信限度倍率が十五倍まで、こういうことに実はなっていくわけであります。今、民間の話をいたしましたが、民間も来年度からもう既に言われておりますようなBIS規制八%、こういうことになっていくわけでありまして、逆に言えば、民間の方の貸し出しというのは、八%ということになりますと、百分の八で十二・五倍ぐらいまで貸し出しの一応の目安を置いておるという状況であろうというふうに思うのであります。  だから、民間がそうだからといって政府系金融機関を同一に論じることはできないかもしれませんが、今回、民間は十二。五倍、これで一定目安、そして政府系金融機関、とりわけ開銀の場合は、今回は十五倍、こういうことに与信限度倍率がなっていくわけでありまして、この辺が果たしてどうなのか。  ずっと見ますと、昭和四十七年には、一遍に二十倍まで引き上げようと原案でなっていたようでありまして、参議院で修正をされて十倍ということになったようでありますが、今十二倍から今度十四倍、上げて十五倍、こういうことなんであります。ここら辺の一定目安といいますか、節度といいますか、言ってみれば開銀政府系金融機関として民間金融機関補完をする立場、こういう立場も一方であろうかというふうに思うわけでありまして、幾らでもこの限度倍率引き上げていけばいいということにはならぬだろうと思っているんでして、この辺についてお考えをお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
  18. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) ただいま委員から御指摘がございましたように、かつて開銀融資限度倍率を二十倍に引き上げる御提案をいたしまして、本院におきましてそれはいささか問題ではないかということで現在のような仕組みになっております。  それは、当時二十倍という政府の御提案を申しました趣旨は、当時長信銀の債券発行限度額自己資本に対して二十倍でありましたので、それを踏まえまして御提案を申し上げたわけでございますが、一方で受信限度だけじゃなくて与信限度も、本来開発銀行民間補完であると、そうするとそれについてはやはり一定限度はあるだろう。しかし、その限度は一義的に決まるんではなくて、そのときどきの情勢におきましてやっぱり国会できちんとそこを審議するのが適当ではないか。そういうような本院の御指摘ではなかったかと私どもは受けとめておりまして、アプリオリに一義的に何倍ということは言えませんが、やはり置かれたそのときどきの状況に応じまして、政策金融機関に対するニーズ問題等をも加味いたしまして御提案をし国会で御審議をいただいてお決めいただく、こういうような考えでいるところでございます。
  19. 山田健一

    山田健一君 倍率の関係についてはそのときどきの状況に応じて国会でと、こういうことになるんで、それはそれとして理解をしたいんですが、問題はこの四条の関係ですね。  言ってみれば、今回は輸入体制整備の貸付金が金利を下げる、したがってその利ざや分だけ五十三億いわゆる産投会計から出資をする。こういうことで、出資をするのはそれはそれでわかるわけでありますが、そういうことになれば資本金がずっと膨らんでいくわけでありますから、今お話がありましたように、この十八条の二、これで国会のいわゆる審議にかけられるということになっているわけでありますが、今度は四条の特に三項、四項、こういうことになれば、言ってみればこれは国会審議を抜きということにはならぬ、予算措置でありますから当然そういうことになるんでしょうけれども、いわゆるチェックなしで、チェックなしというよりか法改正をしなくて結局自己資本を膨らましていける、こういうことに実はなってくるわけであります。  ただ、これだけ見れば、他の輸銀等含めてこういう規定を置いておるから今度は開発銀行もこれを置くんですよと、こういう御説明をいただいておるわけでありますが、一見横並びということになるわけでありますけれども、こういうことになってくるとむしろ私はこっちの方が問題ではないか。十八条の二の関係国会にいわゆる判断を求められる場合が今後とも出てくるのか。それとも、場合によってはこういう形で資本金を膨らましていけば、自動的にその分の、今のままでいけば十五倍ということになっていくわけですから、そうなれば法改正をしなくてよろしい、こういうことになって膨らんでいくということになるわけでありますから、この辺についてのお考え方をお示しをいただきたいと思います。
  20. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 政府追加出資をする場合には、当然でございますが、予算で、今回やはり輸入体制整備というようなことでその政策の是非について国会で御審議をいただきまして御了承をいただいているという形になるわけでございまして、その限りで国会の議決を得たものと考えているわけでございます。  問題は、実は開銀につきましては今までその種の出資が昭和三十年以降全くなかったわけでございます。ほかの機関につきましては、まさに予算におきまして出資がございまして、実はそのたびごとに、同じ国会の議決でも法形式の問題でございまして、予算と法律と両方いじるかということで、これは出資について国会がそれは妥当だと認めるならばそれでよろしいということでの規定整備が行われたという経過をたどっておりまして、ほかの政府関係機関はそのような規定整備が行われていたわけでございますが、開銀は実は昭和三十年以降その種の出資が全くなかったためにこういうような規定になっていたということでございます。  それから、融資限度との関係で申し上げますと、出資のほかに自己資本が、これは準備金が貸付残高の千分の三ずつ毎年ふえてまいりまして、全体の規定としては自己資本資本金のほかに準備金がございますから、その分で毎年貸付残高の千分の三ふえた分だけは十五倍の分がふえていくということにはなるわけでございます。
  21. 山田健一

    山田健一君 そういうことになってまいりますと、今回このことによって法改正をしなくてよろしい、実際の追加出資ができる。準備金を合わせて資本金が膨らんでいく、こういうことになりますので、この辺の運用をどうされるのかなということを私はお伺いしたいわけであります。  今回こういう形でやられれば、確かに今法定で資本金は二千三百三十九億七千百万円、こういうことで規定をされているわけでありますが、同じように輸銀等々を見れば、いわゆる法律上の資本金と実際の資本金と額が開いていくわけですね。輸銀等は、これ見ますと法律上の資本金が一千百八十三億、実際にはどうかといいますと九千六百七十三億、これは私の資料でありますけれども約八・二倍、これだけ開いてくる。あるいは東北開発公庫あたりにしても十五・二倍というふうに実は開いておる。実際上の資本金と法律で決められている資本金、これがこれだけ乖離をしてくる。  こういう状況が果たして望ましいのか。定款で示せばいいんだというお話でありましたけれども、やはりここは一定の節度といいますか、こういう形でどの程度ならじゃ法律を改定をするのか、そのまま幾らでも膨らましていって実際との乖離が非常に出てくるという状況のままでいいということには恐らくならぬだろうというふうに思うのでありますが、この辺についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  22. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 国会との関係で申し上げますと、実は資本金額につきましては開銀は半期ごとに作成公告する財務諸表の中でこれを公表いたしまして、これらの財務諸表は各事業年度決算とともに国会提出しているところでございます。資本金額は定款の法定記載事項とされておりまして、今回の改正後はその金額は法律上表示されないこととなりますが、その変更は予算事項でありますこと及び公示方法が法定されているということで、国会にはまさに毎年の予算でお示しをしている。先ほど申し上げましたように、資本金額だけじゃなくて準備金も毎年千分の三ずつ増 加しておりますので、自己資本がどういう推移になっているかというのは国会で御報告をして、全体として開銀予算の御審議でごらんをいただく、こういう形になっているわけでございます。
  23. 山田健一

    山田健一君 時間がもうありませんので、最後に、ちょうど大臣お見えでありますので一言。  今回、金融制度調査金融機関のディスクロージャー作業部会、これで中間報告ということでその概要を今いただいているわけでありますが、大臣としての見解と今後の対応方針についてお伺いをしておきたいと思っております。  今回出されたこの中間報告でありますが、「開示の意義」というところで、一番最初に金融機関内容の透明性を確保する必要がある。これはもう大変立派に書かれているわけであります。全くそのとおりなんでありますが、どうも中身をずっと見ていきますと、開示の基準が言ってみれば二本、三本立て、経営破綻債権、さらには六カ月以上延滞の債権、都銀等はこの両方でいく、開示をしていく。地銀、第二地銀あるいはまた信金、信用組合等々業態によってこの開示の基準を異にさせていくということになっております。  問題はその開示をする中身なんでありますが、今の状況でかなり不良資産についていろんな見方がされている状況の中で、実際の、本当の実態はどうなっているんだろうかというのがやはり一番大きな問題だろうというふうに思います。特にノンバンク等について大変大きな問題点も指摘をされておる状況の中で、ここら辺のいわゆる金利の減免、棚上げ、こういったもの、さらには延滞債権の内訳等々、これもう全く今回は外されるということに実はなっているわけであります。不良債権の実態というものは一体どうなっておるのかということが本当にこの状況では、まあ来年から開示をされていくということになるわけでありますけれども、いろんな見方が今されておりますけれども、何といっても今回は本当に、この「開示の意義」のところに書いてありますように、金融機関の経営内容の透明性を確保するというよりは、むしろ金融システムの安定性をどう図っていくのか、こういったところをどうしても優先をさせた結果ではないのかというふうに実は思っているわけであります。  やはり今日までの経過を考えれば、できるだけ積極的に開示をしていく。そのことによって利用者の利便に資することはもちろんでありますが、いろんな不良債権について、何十兆あるのではないか、外国の方でもいろんな新聞報道がなされたり大学の先生が講演したり、いろんなことが言われておりますが、ある意味では無用なそういった混乱をなくして、本当の開示をきちっと積極的に進めることによって、あるべき本来のそういった姿を取り戻していく、透明性を取り戻していく、こういうことに資するのが本当のあり方ではないか。  そういった意味では、まだまだ問題点のある今回の中間報告というふうに私は受けとめているのでありますが、今後こうしたディスクロージャーに対する基本的な考え方、対応、この辺についてぜひ大臣の方からの見解をひとついただきたい、こういうふうに思っております。
  24. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) ディスクロージャーにつきましては、もう御指摘がございましたように、金融機関が企業内容、これをみずから開示いたしまして、株主ですとかあるいは利用者の、国民の皆さん方の支持と理解を得ることを通じまして、その行動ですとかあるいは財務内容などを規制する効果を有しておるというふうに考えます。金融機関の経営の健全性に関する自己努力、これを促進するための一つの方策としてこれを活用していくことが適当であろうと思います。  去る十二月二日に、金融制度調査金融機関のディスクロージャーに関する作業部会におきまして中間報告をいただきました。これは金融機関の資産の健全性に関する情報開示についてを取りまとめをいただいたということでございます。  この中間報告に沿いましたディスクロージャーが平成五年の三月期から行われることによりまして、国民の関心の高い金融機関の資産の健全性に関するディスクロージャーが整備拡充されまして、金融機関の経営内容についての透明性が一層高まるであろうというふうに考えますし、金融機関に対する信頼性と金融システムの安定性の向上が図られる。これを期待しておるわけでありますけれども、今御指摘がありましたように、やっぱり地銀ですとかその他のものにつきましての御要請というものもありますし、また、開示の仕方というものは中小とあるいは都銀等とやっぱり差があるというところにも問題があるよということでございますけれども、いずれにいたしましても、順次こういったものの透明性というものを高めていくことが一つ重要であろうということで、この段階におきましては私どもとしては調査会の方から御報告いただいたもの、これをスムーズに行っていくことがまず第一の段階であろうというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいということを申し上げたいと存じます。
  25. 山田健一

    山田健一君 終わります。
  26. 前畑幸子

    前畑幸子君 私は、昨年と同様、剰余金処理法案についてお聞きしたいと思いますが、その前に、きょうの日経新聞の一面に、「買い替え特例復活」という記事が載っておりますけれども、大蔵、建設両省は、居住用財産の買いかえ特例を条件つきで今後認める、短期的に認めるということのようでございます。資産的な税に対してこうした減税がうたわれたわけでございますけれども、今財界を初めサラリーマンすべてから所得税減税の訴えが、請願が大変出ていると思います。先日、私ども社会党、公明、民社さん、三党そろいまして自由民主党の政務調査会会長あてに所得税減税実施に関する要望書を提出させていただきました。  今回の補正予算案において十兆七千億円の総合経済対策の実施を目的に公共事業費等が追加されているということでございますけれども、今のこの不況の現状を眺めますときに、景気浮揚をしなければいけない、個人消費の停滞が大変明らかであるわけですから、そうした意味景気浮揚、景気対策として所得税減税の必要があるのではないかと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  27. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 前段にお話をいただきました買いかえ特例の問題がきょう何か報道されておって、大蔵省と建設省の間で合意されたというようなことが報道されたという話、先ほど会見のときにも実は私お聞きしたわけでございますけれども、しかしこの問題につきましては、今税制調査会の方で御審議をいただいておるということでございます。  そして、私どもの基本的なスタンスといたしましては、やはり買いかえ特例というもの、これはもともと、廃止しましたときに、やはり土地の高騰というものが地方にも伝播しておるということ、こういった中でこの特例制度というものを変えまして、御案内のとおり特別な控除をする、三千万の控除をする、あるいは税率についても、それ以上のものについても低く対応するということを実はやってまいりまして、これで私たちは、八七%ぐらいですか、対応できるであろうということを考えましたときに、この買いかえ特例というものを実際にまたもとへ戻すということになりますと、一部の高い取引、こういった一部の人たちに対して対応することになってしまうんじゃなかろうかということ。あるいは現在の土地の状況というのはまだ五十八、九年に比べましても相当高いところにあるという現状でありまして、さらに引き下げというものが必要であろうということを考えましたときに、買いかえ特例の復活ということについてはやっぱり慎重にならざるを得ないということを実は申し上げておるところでございまして、いずれにしましても、これは今税調の方で御審議をいただいておるということでありますので、私どもはその報告をちょうだいしながら検討をするべき問題であろうということを申し上げたいと存じます。  それから、ただいまお話がございました所得税減税を行うべきじゃないか。これは衆議院の方で も、また参議院の予算の総括の折にも、実は各党の皆様から御指摘をいただき、また私どもに各界の皆様からもこれについての御要請というのはあることでありますし、また三党から私どもの政調会長に対しましてお話があり、また私どももそちらの方から御連絡をいただいたことでございまして、各党がこの問題について関心をお持ちになっておることにつきましても、よく承知をいたしております。  特に、今前畑委員の方から御指摘がございましたのは、個人消費というものが非常に冷え込んでおるということで、個人消費を刺激するために所得税減税をというお話であるわけでありますけれども、確かにいろんなものの調査というものをいたしましたときに、個人の消費というのは相当減退しておるという状況であるということ、これは私は率直に申し上げて間違いないことであろうと思っております。  ただ、やっぱり一番大きな問題というのは、耐久消費財、これが大きく景気にも関与してくると思いますけれども、この分野におきましては、バブル期と言われたときに相当各家庭が耐久消費財を積み上げた。自動車を初めとして、新車を買うとかいうようにしてそれを積み上げておるという現状があります。そういうことを考えたときに、刺激をしたら直ちに戻るものなのかなということになりますと、私どもはその効果というものは期待できないということを申し上げざるを得ないわけであります。  そして、全体的に一体どうなのかということを見ますと、耐久消費財が非常に極めて好調であったということの反動と、もう一つは国民のいわゆる消費性向といいますか、そういったものが非常に堅実になっているというものがあろうと思っております。ですから、百貨店なんかの衣料は相当落ち込んでおりますけれども、例えば都市型で新しい店舗を展開しているところなんかの場合には前年対比でも四〇%以上超えるものですとか、あるいは自動車なんかにしましても、新しい時代のいわゆるレジャー用の車、RV車というんですか、こういったものも相当高い率で実は伸びておるというようなことでございます。  必要なものについては買っていく、あるいは買うものについても非常に堅実な買い方をするという現象はありましょうけれども、これを今、少し所得税減税等によりまして刺激したら、本当にこれが買いに出るかとなると、私どもはその効果というものは非常に薄いということを申し上げざるを得ないということでありますし、これをやるために例えば特例公債を発行する、そしてこれに対応するということになったときには、そのツケというものを後世代に残していってしまうということが本当にいいんだろうかということを考えたときに、私たちはやっぱりこの減税に対しては慎重にならざるを得ないということを申し上げることをお許しをいただきたいと思うわけであります。
  28. 前畑幸子

    前畑幸子君 大臣のおっしゃることはわかりますけれども、もう少し下の層ということも考えていただきますと、今の収入でほとんどが消費に回っている家庭というものが大変多いわけです。赤字国債を発行してでもという気持ちはありませんけれども、この際、これだけいろんなトリプル的な不況の中で、一番最初に浮揚につなげるものはやはり個人消費の拡大ではないかなと思います。相当規模の思い切った減税によって、個人消費の拡大によって景気を上向ける、そうすることによってまた税収が上がってくるわけですから、償還できるのではないかなと思うわけです。  そうしますと、今年度の減税をすることによって二、三年その効果をということになりますと、短期国債といいましてもやっぱり三年から五年かかって返済していかなきゃならないだろうと思います。六十三年の十二月の消費税を導入したときの税制改革以来ずっと減税がされていないわけですので、あのときの大幅減税のときのことを考えますと、翌年の平成元年など当初予算額が約五十一兆円に対しまして決算額が五十五兆円になっている。それから、平成年度の当初予算額約五十八兆円に対しましては決算額が約六十兆円になっているという形で、このように各年が四兆円、二兆円の自然増収につながっているわけですので、私は今の景気浮揚の一番底を支えていくのは、すべてを消費に回す層に対する、低中所得者層に手厚い減税というものが一つ考えられるのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。
  29. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 確かに、短期国債の特例公債という実はお話もございます。ただ、これは通常の特例公債と同じでございまして、やっぱり一たび発行しますと歳出増加圧力などに対する歯どめがなくなってしまうことなどから、財政の節度を失わせるきっかけになろうと思っております。  また、短期に償還を行うという場合には、短期間に償還負担というものが生ずるために、その財源をどのように確保するのかという大きな問題があろうかと思っておるわけでございます。そういうことで、私どもはこれを財源とするということは非常に難しいということを申し上げざるを得ないんです。  それから、今御指摘のございました年度は相当大きな税収の伸びがあったわけでありますけれども、確かに五兆五千億という相当大きな減税があったということ、これは影響がなかったということを私は申し上げるわけではありませんけれども、当時はちょうどバブル等、これが非常に一番の最盛期といいますか、そういったことで、不動産の取引ですとかあるいは印紙税ですとか、そういったものの税収というものが非常に高く伸びたときではなかろうかと思っております。そういったことのために税収というのが大きく伸びたんだろうと思っております。  なお、中低所得者層、これに対してというお話があったわけでありますけれども、この前のいわゆる改革、消費税を導入したときに対応いたしましたことによりまして、負担率も、ちょうど税制改革前が一〇・六%でありました。平成元年は六・七%と相当下がったわけですけれども、平成年度もまだ七・六%ぐらいであろうということでございまして、こういうことの現実を見ましたときには、中低所得者層、これを中心といたしました重税感あるいは負担累増感というものは大幅に緩和されたというふうに思っておりますし、また各国との比較におきましても、課税最低限というのはもう日本が圧倒的に高いということでありますし、また最低税率は日本が一〇%、英国、ドイツあるいはアメリカに比べましても相当低いところにあるんだというこの現実は、やっぱりぜひ御理解をいただきたいというふうに思っておるところであります。
  30. 前畑幸子

    前畑幸子君 大臣は税率が、税金が安いとおっしゃいますけれども、物価も高いわけですので。  やはり所得者の層を見ますとき、民間給与の実態調査における給与所得者数等の給与階級別の構成比などを見ますと、六百万円以下の給与階級の方たちが約七八・一%を占めているということなんですね。七百十万円で四人家族で課税所得が大体三百万ぐらいになると思います。そうしますと、所得税率は一〇%ですけれども、この方たちがほとんどの給与所得者の九〇%を占めているということなんです。今七百十万円で家族四人といいますと、中学生、高校生を抱えておりますと、貯蓄に回るような余裕はほとんどない。ほとんどが消費に回らなければいけないという階層であると思います。  六十三年のときの税制改正のときに私は大変不満であったのは、税率がフラット化して、要するに最高税率を引き下げたことによる高額所得者を中心とした資産所得者というか、高額所得者層に手厚くて、そして可処分所得をふやしてそれを消費に回すような層に対しましては余りメリットがなかったような気がいたします。ですから、今回も最高税率を下げるのではなくて、要するに人的な給与控除、最低を六十五万を引き上げるとか、人的控除、基礎控除、そうしたものを上げていただくことによって低中所得者層の課税が楽になるという体系を私はお願いしたいと思うのです。  そうしますと、減税をすると財源がないと必ずおっしゃると思います。所得税の減税の必要性を認めながらも、一方では、ちらちらと新聞にも載っておりますのは、財源不足とか、もう少し直間比率を見直さなきゃいけないところに来ているのではないかなというような理由を挙げて消費税の税率の引き上げの必要性もちらつかせていらっしゃるわけですけれども、今消費が大変落ち込んでいるこの個人消費を眺めるときには、ますます消費抑制になるような消費税アップに関してだけは何としても抑えていただきたい。このことに関しましては総理もお約束をされておりますし、やはり個人消費拡大につなげた景気回復でなければ、私は今回は難しいのではないかなと考えておりますが、その辺はいかがでしょうか。
  31. 濱本英輔

    政府委員(濱本英輔君) 幾つが御指摘がございました点につきまして、数字等によりましてお答えを申し上げた方がいいかなと思われるところもございますものですから、お許しをいただきたいと存じます。  まず、前回の抜本改革におきまして、確かに所得税の最高税率の見直しも行われたわけであるけれども、中低所得者と高所得者とを比べた場合に、高所得者に有利ないわば改正であったのではないか、そういう印象を持ったがというようなお話であったかと思います。  しかし、この点につきましては、実際に税負担額がまかったといいますか、軽減されたその割合というものでごらんいただくのが一番いいかと存じますけれども、六十三年の十二月改正後の軽減率というものをもう一度想起してみますと、例えば給与収入三百万円の階層でございますと、当時め所得税、住民税の八八・八%が軽減された。あるいは四百万円の層でございますと五三・一%、五百万円の層でも四一・四%と半減した。上の方の階級にまいりますと、額はそれはもちろん大きくなりますけれども、率といたしましては十数%というような率にだんだんなだらかに軽減率が低下していく。そういう形の改正であったということを想起するわけでございます。  その結果といたしまして、これはしばしば言われることでございますけれども、現在の日本の所得税構造というのはかなり特徴的でありまして、最低税率、最高税率、課税最低限という三つのポイントで比較してみますと、アメリカやイギリス、ドイツ等に比べまして、最低税率は日本が住民税を加えますと一五%、アメリカが一五、イギリスが二五、ドイツが一九。最高税率が今日本は所得税五〇、住民税一五でございますから足し合わせますと六五、アメリカは最高税率が三一%とされておりますけれども、それに地方税が七・五%あるいは七・五%強かかっております。それからイギリスが四〇%、そういった率になっておるわけでございます。課税最低限も日本の現行では三百十九万八千円、アメリカが二百五万円、イギリスは百十五万円ということでございまして、かなり低所得者層に対しては諸外国と比べますと十分に配慮された体系になっているのではないかという感じがいたします。  それから、御指摘の重要な点でございますが、こういう景気局面であるから、そういったいわば消費性向の高い中低所得者層をヒットするような所得税減税こそが景気対策として好ましいのではないかというようなお話であったかと存じますが、確かに景気対策と税の構造というものを直に並べてごらんいただきます場合、そういったお考えを承ることにもなるほどと思われる点はあるわけでございますけれども、何と申しましても、税の構造と申しますのはいろいろな要素を重ね合わせましてつくり上げているものでございまして、そのときどきの景気順応的に構造を見直すということにはやはり限界があるという感じがいたします。税には公平でございますとか中立性でございますとか、そういった非常に大事な税の生命がございまして、そういったものの上に成り立っているものとして機能する、そういう役割をゆるがせにできないものでございますから、その点につきましても御理解を賜れないかと存ずる次第でございます。
  32. 前畑幸子

    前畑幸子君 よくわかっておりますけれども、建設国債の発行対象というのは、その経費は公共事業になるわけですね。これは地方優先的になるわけですけれども、今回の不況感を考えるときには、これは都市型の消費不況というものではないかなと思いますので、従来のような公共投資ばかり出せばいいというものではなくて、下で働いている多くの層に対してもやはりそういうメリットを与えていただくということをお願いしたいと思います。  日経の十二月四日にも、「仮に所得減税をするなら同時に同額の赤字国債を発行する。小細工して財源をかき集めることはしない」と大蔵省も言い切っているという部分もあると書いてありますので、期待をしたいと思っております。  減税につきましてはその辺にさせていただきまして、もう一つ剰余金処理法案の方でございますけれども、剰余金の全額を一般財源化するということ、昨年と同様だと思います。そして、長期債務平成年度分の償還延期をするということなんですけれども、予算委員会提出されている資料によりますと、延期されるということは、赤字国債と実態というものは変わらないのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。
  33. 竹島一彦

    政府委員(竹島一彦君) 今回の承継債務の取り扱いにつきまして、赤字国債と同じではないかという御指摘でございますけれども、赤字国債、いわゆる特例国債の場合には金額について確たるめどがないということでございますけれども、それに引きかえまして、これは胸を張って言えることではないかもしれませんけれども、承継債務の繰り延べというのは、今回の場合は四年度償還することになっておった金額ということで、金額面での歯どめがあるという点が一つ異なりますし、それから、特例公債の場合はこれは市中から資金調達をするわけでございますけれども、今回の措置一般会計資金運用部といういずれも国庫の内部のやりとりという、そういう点で性格が異なるということでございまして、特例公債の発行と全く同じだというふうには私どもは考えておらないわけでございます。その点について御理解をいただきたいと存じます。
  34. 前畑幸子

    前畑幸子君 しかし、九〇年度赤字国債ゼロ達成には、こうした借金先送り、いわゆる隠れ国債が大きく貢献しているわけでして、歳出を削減して借入金という形でキャッチボールのように負担を先送りしていくものではないかなというような気がいたします。  ですから、そういうことはある程度理解はしておりますけれども、一番不思議なのは、一体全部返済するためにはどのぐらい償還する必要があるのかなということが私どもには全然全額の数字というものがなかなかつかめないんです。今では一般会計予算というのは、資金運用部ですか、そこのお金を借りなければ編成できないというような現状のようでございますけれども、どのくらい償還する必要があるのでしょうか、わかりますでしょうか。
  35. 竹島一彦

    政府委員(竹島一彦君) その対象範囲でございますけれども、いろいろ御指摘がございまして、きちんとこれだということで世の中で特定されているということではないと思いますけれども、私どもが「今後処理を要する措置」ということで参議院の予算委員会の方にも資料として提出申し上げておりますけれども、全体で三十六兆円ぐらい。ただし、そのうち二十六兆円は御案内の日本国有鉄道清算事業団の長期債務というもので、含めまして三十六兆円ぐらい。ですから清算事業団の長期債務を別にいたしますと十兆円ぐらいというものが今後措置をしていかなきゃならないものとして残っている金額でございます。
  36. 前畑幸子

    前畑幸子君 それは、日本国有鉄道の分はわかりますけれども、もう一つ、政管健保の国庫補助の繰り入れ特例というものも、五年間における歳出削減額が四千六百三十九億円ということですけれども、こうしたものも、要するに政管健保は大変赤字ではないわけですので、いつまでもこれ歳 出削減をしていって返す当てはないんではないかなというような気がいたします。  時間も余りありませんのであれですけれども、こうした隠れ借金という形で乗り切っていかれるわけですけれども、一度国民の前にきちっとその隠れ国債の存在を明確にされて、そして国民の同意を得るということも必要な時期に来ているのではないかなと思います。羽田大臣は政治改革、国会改革に政治生命をかけていただいているわけですけれども、もう一つ財政改革と税制改革にもお力をかけていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  37. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 私どもは、今度補正予算を編成するに当たりましても、また従来の予算の中でも、確かに国の中の例えば償還等についての繰り延べですとか、いわゆる会計の中でのキャッチボールという御指摘があったわけでございますけれども、こういった問題についても、私どもが御説明申し上げますときに万やむを得ない措置としてということを申し上げておるわけでありますけれども、やむを得ない措置が余りたび重なるということはこれは私どもも慎まなければならないことでございまして、その意味でのやっぱり財政の改革というものを、厳しい中にあっても不断の努力をしていかなければいけないものであろうというふうに私ども心得ながらこれからも対応していきたいというふうに考えますので、よろしくまた御協力のほどもお願いを申し上げたいと存じます。
  38. 前畑幸子

    前畑幸子君 終わります。
  39. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は、最初に、剰余金処理特例等に関する法案について、剰余金処理とそれから法人税の税収の変動性との関連を中心に二、三御質問をさせていただきたいと思います。  最初にちょっとお断りいたしますが、私、昨年まで三十年ほど学界で税の勉強をしてまいりました。どうしても質問も学会での討論というふうな形をまだまだとるんじゃないかと思います。失礼な点がありましたらお許しいただきたい、こういうふうに思います。  いただきました参考資料の六ページに、「財政法第六条剰余金処理状況」ということで昭和五十年以降の処理状況が一表に示されております。その次の次のページ、八ページには、「一般会計税収の予算額と決算額、税収弾性値の推移」がありますが、私は、この中から法人税だけを取り上げて、先ほど申し上げました処理状況とあわせて昭和五十年以降の法人税の税収の推移を決算額で書き出してみました。そしてさらにその伸び率もあわせて計算をしたわけでございます。  この計算いたしました法人税の伸び率と処理状況とを比較いたしますと、ここにもありますように、財政法六条適用除外の年度、これは補正予算で申しますと、最初五十二年度、五十六年度、五十八年度、六十年度、六十一年度、さらに平成年度、そしてことしの平成年度ということになるわけですが、この年度の法人税の伸び率を見てまいりますと、昭和五十二年は例外といたしまして、あとの年度はそれぞれ非常に低い伸び率あるいはマイナスということになっております。  申し上げますと、昭和五十六年がマイナス一・一二%、そして五十八年が四・二七、六十年が六%、そして六十一年、これはちょっと高いんです八%、それから平成三年はマイナス一二・二、平成四年は補正予算後の数字で申しますと九・七のマイナスであります。今度は、逆に剰余金がかなりの額計上されている年度を見ますと、そのときの法人税の伸び率は非常に高いわけであります。  こういうことから見ますと、私、法人税の税収の変動性と剰余金処理の問題、非常に密接に関連している、こういうふうに今申し上げましたような数字から判断をしているわけですが、これについてどのようにお考えですか。
  40. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) ただいま過去のデータ、御指摘をいただきながらお話があったわけでございますけれども、おおむねまさに先生から御指摘のあったとおりの流れになっておると思っております。  歳入構造というものを景気の変動などによりまして大きく左右されることのない安定的なものにするということは大変重要な課題であるというふうに認識をいたしております。その意味で、消費税の導入を含む先般の税制改革は望ましいものであったというふうに考えるわけであります。  また、平成二年三月に提出されました財政審議会の報告におきましては、来るべき高齢化社会に多大な負担を残さず、特例公債の再発行という事態に陥ることなく対応できるような弾力的な財政構造の確立を目指して、中期的財政運営の新目標として、公債依存度の引き下げなどにまって公債残高が累増しないよう財政体質をつくり上げることを目指すべきであるという実は御指摘があったわけでございまして、我々も二度と特例公債というものを発行しないことを基本としながら、今財政体質というものを健全化しようという努力をいたしておるところでございます。  今後とも、制度ですとかあるいは施策、こういったものを見直すことを中心にしながら、財政改革あるいは財政体質というものの改善をしていく必要があろうということを認識いたしております。
  41. 牛嶋正

    牛嶋正君 私、さらにこんな計算もしてみたわけでございます。この計算の根拠は余りございませんけれども、一つの結果が出ておりますので申し上げたいと思います。  やはり先ほどの処理状況を示しております表に基づきまして、一般財源充当分につきましてはその年度の法人税収に加算をしてみる、これは計算の試みですからそういうことをやってみた。それからもう一つ公債償還財源に充当した分についてはその年度の法人税収からそれを控除する。こういうことで、先ほど申し上げました五十年以降の法人税の税収をもう一度計算をしてみまして伸び率を計算いたしますと、かなり平準化されるわけでございます。  例えば昭和五十二年度について申しますと、四十五億が公債償還金充当でございますので、これはその年の法人税収からそれを差し引く。そして一般財源充当が三千億でございますが、これを加える。こういう計算をいたしまして、もう一度五十年以降の法人税の伸び率を計算いたしますと、かなり平準化いたします。これはどういうことかと申しますと、私なりに解釈いたしますと、結果的にはこういうふうに今まで行われてきた剰余金処理の方法というものは、法人税の税収を平準化してきたのではないかということでございます。  このことを私は別な見方をいたしますと、剰余金公債償還財源充当によって進めていかなければならない財政の健全化が、法人税収の変動性によっておくらされている、こういうふうに考えることができるのではないかと思います。恐らくこのままでいきますと、法人税収というのは今後も景気の諸側面で大きく変動すると思いますけれども、そうなりますと財政運営は非常に今後も難しくなっていくわけでございますし、また財政の健全化もそれによっておくらされていくのではないか、こういうふうに考えますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  42. 濱本英輔

    政府委員(濱本英輔君) 確かに牛嶋先生の御指摘のように、法人税収というのは非常に大きな変動税目でございまして、それが結局は剰余金処理に影響を与えておるではないかという御指摘は、結果的に見ましてそのような形に見えるわけでございまして、その因果関係と申しますか、両者の結びつきというものはそれだけで結果が生じておるというものではもちろんないにいたしましても、相当に大きな因果関係があるという感じがいたすわけでございます。  その結果、こういった不安定な税目を抱えている以上、財政体質として非常に問題ではないかという点にお話が及ぶわけでございますけれども、財政構造として安定した税収を持つということは非常に大事なことであるし、このことはこれまでも何度も御議論いただいてきたことでございます けれども、財政構造の安定性というものは、財政構造を決めますときの唯一の決め手ということでは必ずしもあり得ないわけでございまして、非常に重要な要素ではあるが、財政構造を決めます他の諸要因、そういったものが組み合わさったベストチョイスというものが行われます結果、場合によってなお不安定な税目がその中にとどまるということがあり得ることであろうと思います。  今日の日本の財政構造というものを諸外国と比較いたしました場合に、確かに法人税のウエートが高いということは御指摘のとおりでございますから、そういう意味においてこの税構造をどういうふうに今後考えていくかというときに、税収の安定性というものは忘れてはならないポイントだと思いますけれども、ほかのいろいろな諸要因の中でそういうものをどの程度のウエートで位置づけていけるか、これは今後の国民の税論議というものの中にその問題を投じまして御論議をいただいていくべき問題かなという気がいたします。
  43. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、もう一度五十年以降の財政運営を振り返ってみますと、財政構造に非常に大きな変化を与えたり、あるいは財政運営上大きな出来事のときには必ず法人税の税収の変動性というものが私は絡んできているんじゃないかというふうに思っております。  五十年に補正予算で大量の赤字国債が発行されました。そのときも法人税の税収は前年に比べまして二九・〇%の落ち込みをしたわけでございまして、ほとんどこれによって今の赤字構造は出発したんじゃないかというふうに私は思っております。さらに、昭和五十六年に第二臨調で増税なき財政再建という財政運営の基本方向を打ち立てられました。そのとき、昭和五十九年には赤字国債ゼロということが目標であったと思います。ところがその年、そしてその次の年も数%の法人税の伸びであったわけでありまして、結局この増税なき財政再建というのは目的達成せずに私は終わってしまったんではないかというふうに思っております。  しかも、皮肉にも消費税を導入された後景気が持ち直しまして、法人税の税収が二けたの伸びを示しまして、これでようやく赤字公債の解消を見たわけであります。これから財政の健全化を進めていかなければならない、こういう時期にまたまた剰余金のこういった特例によってつまずきを見ているわけです。これもやはり法人税の税収の変動性によるのではないかというふうに思っております。  私は、今回この剰余金の取り扱いについては、いろいろ分析させていただきまして、従来望ましい税制をつくっていく場合の租税原則といたしまして、前回の租税原則のときもそうでしたけれども、公平、中立、簡素というのを挙げてこられました。私は、これにやはり税収の安定性という原則が必要ではないか。これは何も取る側の原則じゃなくて、大蔵省も議論されておりますように、それによって世代間の公平というものが私は守られていくんではないか、こういうふうに思っております。  したがって、先ほどもお答えの中でお話ありましたけれども、私は、この税収の安定性という原則は、これは課税当局の側の原則じゃなくて、納税者の側の原則であるというふうにお考えいただき、これからの税制改革にはこれをぜひつけ加えていただきたい、こんなふうに思っておりますが、これについていかがでございましょうか。
  44. 濱本英輔

    政府委員(濱本英輔君) ただいまの御指摘、まず、我々財政当局におります者としまして非常に貴重な御指摘と承りました。また、世代間の公平というものを考えていく上においても非常に重要な要素であるという御指摘もそのとおりに存じます。  課税の原則、租税原則と申しますか、を今後議論していただきますときに、今の牛嶋先生の御指摘のようなものも何らかの形であわせ、先ほど申し上げましたように議論の中に投じまして、より幅の広いと申しますか、奥行きのあると申しますか、御議論をお願いできればという感じがいたします。
  45. 牛嶋正

    牛嶋正君 最後の質問になりますが、そうなりますと、税収の三〇%前後のシェアを占めております法人税をすぐにでも見直していかなければならないわけですが、これはしかし大変な抜本的な見直し、改正になってまいります。ですから、さしあたっては、私は二つのことが必要ではないかと思っております。  一つは法人税の税収の予測といいますか、見込み、これをできるだけ正確なものにするよう努力するということでございます。  それに関連いたしまして、今おとりになっております翌年度五月の税収分を取り込むような形で予想されておりますが、これもやはり予測を難しくしている一つの原因というふうに思いますので、これについてもできるだけ早く見直しをしていただきたいということであります。  もう一つ提案は、これは全く私の素人の考え方でありますが、法人税収を平準化する基金みたいなものはつくれないだろうかということでございます。  私は、昭和五十年から平成四年まで、これは補正後の予測値でありますが、税収の伸び率、先ほど申しましたように各年度はいろいろ変動ありましたけれども、この平均伸び率を計算してみました。そうしますと、八・四%というふうな数字が出ております。これらを基準にいたしまして、毎年これでもって法人税の税収を予算化する。そして、それを超える分については基金に繰り込み、これを下回る分についてはその基金から埋めていく、こういうふうな制度といいますか措置というものをとりますと、かなり財政の運営というのは全体のほかの税目の税収を考えましても安定化いたしますので、非常に財政運営が財政の健全化に向かって進めることができるのではないかというふうに思っておりますが、もしこれについての何かコメントがございましたらいただきたいと思います。
  46. 竹島一彦

    政府委員(竹島一彦君) 最初の御指摘の五月分税収の点でございますが、昭和五十三年度、発生主義という考え方でもって五月分税収を取り込むという改正をさせていただいて、自後ずっと一貫して同じ取り扱いでまいっておるわけでございます。御指摘のとおり、そのために大変法人税収の見積もりが難しくなっているということも事実でございまして、財政当局といたしましては、でき得れば年度所属区分の変更ということができればということはかねがね思っているわけでございますけれども、ただ現実問題といたしましてこういう財源事情でございますので、それをやるとすれば赤字公債にならざるを得ないという財政状況にございますので、今すぐというわけにはまいりませんが、今後ともそういう問題意識を持って取り組んでまいりたいというふうに考えております。  それから、二つ目の法人税収の年度間調整という観点からの御提案でございますけれども、都道府県には景気調整基金的なものを持ってその変動をアブソーブしているわけでございますけれども、国には確かにそれがございません。これもプラス・マイナス両方ある構想だと思いますけれども、現実問題といたしまして予算編成過程、いろいろな情勢なり要素が入ってくる編成過程でございまして、そういう基金というものが本当にそのとおりワークするのかどうか。逆にそれゆえに歳出が膨張するというようなことにならないのかという現実の問題が一つございます。  それからもう一つは、先ほどと同じようなことで、現在の厳しい財政事情からいってそういう基金をつくるお金が現実にはないという問題もございますので、すぐには具体化ということにはならない。いろんな意味で難しい点もあるというようなことに思っております。たまたま今先生は、過去平均で八・四%という数字をおっしゃいましたけれども、仮につくるといたしましてもどういうふうに仕組むかということについていろいろ技術的にも難しい問題があろうかと思います。  以上でございます。
  47. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 まず、緊急不況対策の問題、特に 不況で危機に瀕している中小企業への緊急融資の問題についてお伺いしたいと思います。  私どもは、政府の中小企業への融資対策というのは、今もう中小企業家が求めているものとはうんとかけ離れた不十分なものだと思っております。  それはそれとしまして、ここでも私ども、災害貸し付け並みの審査が簡便で低金利、また保証料免除などを内容とする緊急の融資を要望しておきたいと思います。  きょうは特にこの問題でなく、大蔵省が打ち出しておられる方針も必ずしも内部にも徹底しないでおるために業者から強い批判が出ているという問題についてお伺いしたいと思います。  まず大蔵省にお伺いしますけれども、三月三十一日、十一月二十日に、「当面の貸国運用について」の銀行局長通達が出されておりますが、この内容を簡潔に報告してください。
  48. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 平成四年三月三十一日の通達におきましては、緊急経済対策を受け、中小企業が置かれている厳しい経済情勢を踏まえ、政府関係金融機関、信用保証協会に対しまして、既存貸付金の返済猶予等中小企業者の実情に応じたきめ細かい貸し付け及び保証等の運営を行うよう指導いたしますとともに、民間金融機関につきましても中小企業金融の円滑化に配慮するよう要請をしたところでございます。  それからまた、十一月二十日の通達では、景気低迷のもとで年末の金融繁忙期を迎えるに当たり、同じく政府関係金融機関、信用保証協会に対しまして、先般策定いたしました総合経済対策による諸措置を踏まえ、貸出手続の迅速化等の適切な年末の貸し付け及び保証の運営を行うこと等について指導いたしますとともに、民間金融機関についても適切な対応要請したところでございます。
  49. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 要するに、貸し出しの迅速化、また既往債務の返済猶予、それから担保徴求の弾力化ということを内容とするものですが、今の通達は、私は、貸付枠の拡大や金利の引き下げが伴えば中小企業にとっても大いに歓迎される通達だと思います。  それは別の問題としましても、実はその通達が国民金融公庫などの内部に必ずしも徹底していない。そのために内部にも通達を知らない人がいるということも私どもは確認しております。それから同時に、徹底していないために窓口でいろいろな通達に反すると思われる出来事が起こっております。  その一例を挙げますと、これは福岡でのことですが、ある業者さん、六千万円の負債を大変な経営努力で三千万円にまで半減された、しかし年末に運転資金が必要だというところで二百万円の申し込みを公庫にやられた。そうしたらこれが拒否された。この業者さんは都市銀行から融資を受けるということになったわけです。私は、これは国民金融公庫法に照らしてみても逆さまのことだと思いますね。こういうことが起こるのも、私は徹底していないから起こることだと思うわけです。  そういう点で、私はこの運用に当たられる国民金融公庫の、きょう副総裁お見えいただいていますので、やはり内部のまず徹底なしにはせっかく出た通達も実行されない。これも、私は文書を回覧するというふうなことにとどめないで、本当に窓口でそれが生きたものとして運用されるような徹底方を要望したいんですが、いかがでしょうか。
  50. 塚越則男

    参考人塚越則男君) 御承知のように、国民金融公庫は中小企業者の中でも比較的小規模な事業者を融資対象としておりまして、一般にこうした方は経営基盤が脆弱であることが多いものですから、従来から貸し出し運用、既往債務の返済猶予あるいは担保の徴求などに当たりましては、個々の利用者の実情に応じてケース・バイ・ケースできめ細かく対応するということでやってきております。  それから、先ほど先生からお話のございました通達でございますが、大蔵省、中小企業庁から通達をいただきました後、直ちに全国百五十一の支店、それから代理店に私どもとしての内部通達を出しまして、窓口業務に携わる職員に対しましても通達の趣旨を踏まえた貸し出し運用に努めるように周知徹底を図っているところでございます。  御参考までに当公庫の貸し出し状況について申し上げますと、平成年度の四月から十月までの貸し出し累計でございますが、二兆一千八百四億円ということになっておりまして、前年に比べて一四%の増加となっております。この増加額は、円高不況のときの昭和六十一年度の七%増というよりも高いものになってございまして、現下の中小企業の資金ニーズにこたえているものというふうに考えておるところでございます。
  51. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 そういうふうにおっしゃいますと、何も問題がないという態度表明だと思いますね。そうじゃありませんよ。今福岡の例も挙げました。そういう例もっと挙げろというのなら、時間がないからまた直接お会いしてもいいんですが、本店だって、団体の申し込みに、こういう通達にも沿って適正に運用してくれという申し入れに対して、国民金融公庫生活資金貸し出し機関でないぞなどという応対をなさっているんですよ。だれも生活資金を貸してくれと言ったわけじゃないのに。そういう態度は、やっぱり徹底していないから起こっているわけですよ。  ですから私は、これをまず徹底なしには実行が貫かれない、徹底するかどうかということをお伺いしたわけですよ。それについて言わなくて、かくも実効が上がっていて問題がないようにおっしゃると、私はそれは納得できない。もう一度。
  52. 塚越則男

    参考人塚越則男君) 先ほど申しましたように、国民公庫は本来そういう小規模の事業者をやっておりますので、職員の間にはそういう意識は徹底していると私は考えておりますし、またその通達に関しましても、内部通達を出しました後、一層の配慮を行うように指示をいたしまして、支店の中でも会議やミーティング等で周知徹底を囲っているところでございます。貸し出しが増加している中で、処理日数の短縮とか既往債務の条件変更の増加という形で既にそういう効果が上がってきていると私は思っております。  なお、今後の中小企業の経営環境には一層厳しいものがあるというふうに考えておりますので、政府関係機関としてさらに中小企業者のお役に立てるように通達の趣旨をさらに周知徹底をいたしまして、中小企業の資金ニーズに適時適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  53. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私は、徹底の努力をやるならやると言ってもらえばいいんですよ、そんな長々といろんなこと。まずそこから出発するわけですから。徹底するとおっしゃった。回覧程度でなしに、内容が実行に移されるまでの徹底を再度要望します。  さて、今の銀行局長通達が徹底して運用される場合に、私が思うに、これは平時でない、不況下の緊急対策としての通達ですね。そうなると、これの運用に当たっては、例えば審査の方法、返済の条件変更あるいは担保徴求など三点に沿った不況時の緊急対策としての新しい基準、何らかのものを設けて、あるいは従来の内規の手直しその他新しい基準の設定等によってこれが円滑に運用されるようになさる必要があると思いますが、何かこういう通達を受けて不況の緊急対策ということでの具体化が図られたかどうか、これをお伺いします。
  54. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 時間が超過していますから、答弁は簡単に。
  55. 塚越則男

    参考人塚越則男君) 貸し出し運用等に一定の基準を設けるというようなお話でございますけれども、そういったような処理の仕方をした場合には結果的に弾力的な取り扱いができなくなるのではないかというふうに懸念されます。  当公庫を利用される中小企業者は、比較的小規模で経営基盤の脆弱な方が多いわけですので、審査方法、条件変更、あるいは担保供給等につきましては、お客様の実情に即してケース・バイ・ ケースできめ細かく対応していくということの方がより実効の上がる方法であるというふうに考えまして、通達の趣旨をさらに一層徹底し、御要望にこたえていくという考え方でございます。
  56. 池田治

    池田治君 日本開発銀行法の一部を改正する法律案並びに剰余金処理特例に関する法律案、この二つ法律案につきましては、既に質疑がなされましたので、私は省略をさせていただきます。しかし、時間がありますので、ちょっと大蔵大臣と、質問通告はしておりませんが、世間話をして、御感想を伺いたいと思います。  まず第一に、私の友人のことでございますが、これは弁護士をしております。ちょっと事業欲のある男でして、それでビルを十年前に建てました。そこで、ビルを建てる前からテナントがどんどん入って、順調なビルの経営ができていた。そうすると、今度、二つ目を建てへんかと銀行に進められて、二つ目を建てました。これも立派な収益が上がって喜んでいたところへ、また銀行が来て、いい土地があるからもう一つ建てへんかと言われて、もう一つ建てた。これも成功した。そういうことで、ここ十年間の間にビルを八つか九つ建てました。これは東京都内でございます。  ところが、最近建てたビルにはもうテナントが入らなくなった。古いころ建てた居住者がいたのも、家賃が払えないでどんどん出ていかなくちゃいけない、こういうことになって、気がついてみたら一千億近い借入金ができていた。もう今は金利も払えない状態になってきた。こういう男がおります。  そして、その男は、もともと自民党の支持者だったんですが、最近は自民党の悪口ばかり言いまして、政府、日銀の批判ばかりしております。こういうことではどうにもならないんだ、これは大蔵省、日銀の大きな金融政策の誤りがあったんじゃないか、もう少し先の見えた金融政策がとれなかったものか、こう盛んに申しておりますが、大臣はこれを聞いてどういう御感想でございますか。
  57. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) この点につきましては、まさにバブル期のやっぱり異常な過剰融資といいますか、そういったものが、むしろ銀行さんの方が仕事を探してきていろんな方にやらせたというような話を私どももお聞きしております。また、あの時期におきましては、北海道ですとかあるいは九州の方にワンルームマンション、こういったものが次から次へと建てられる。そして、それを買いに行くのは、大阪とか東京の商店の皆さん方がバスツアーみたいので買いに出たなんという話がありまして、やっぱりこれは単に金融政策というだけでなくて、バブルの時期の、何というのですか、異常なあれがあったんじゃなかろうかなということ。それに対してもっと早くそれを規制みたいなものをかけることができなかったのかという指摘があるところは私どもも承知いたしております。  いずれにしましても、そういったものを今反省し、再びそういったことがないようにお互いに気をつけなけりゃいけないというふうに思っております。
  58. 池田治

    池田治君 これに類するようなことが、最近、銀行から借り入れて金利が払えなくなったというような人たちが集まって経済再建協議会という団体をつくっておるようでございます。彼らの主張するところによりますと、まずバブル経済を招いたのは政府、日銀の責任なんだから、金利を全部棚上げせよ、そして債権債務は何年間か凍結して、経済が回復基調に乗るまで棚上げをしてもらいたい、こういう要求をしているようでございます。  この代表者は桃源社ビルの社長で、この社長は五千億近いやっぱり借財があって、これもまた金利が払えない、こう言っておるようでございます。全国にもかなり、何百億、何千億という借入金金利が払えない人たちがこの協議会に入って、今、月に何回か集まってはそういう対策を練っているようでございますが、この金利棚上げ、債権債務の凍結ということは可能性があるのでございましょうか。
  59. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 我が国の経済体制は自由経済体制をとっております。市場経済メカニズムで運用されているわけでございまして、それには当然いろいろなリスクが伴うものでございます。そのリスクの処理は、基本的には自己責任原則で処理をしていただくというのが今の経済体制の原則ではないかと考えております。
  60. 池田治

    池田治君 そこで、自己責任の原則は午後やりますから、よく覚えておいてください、今の言葉を。  不良債権の問題でございますが、大蔵大臣はこの前、何日だったか、十二兆何千億、そのうち回収不能なものは四兆円ぐらいだと、こう御発表になりましたが、再建協議会の人たちに言わせると、金融機関全体では百兆円を超えるんじゃなかろうか、それだけのものが今不良債権になっておる。そういうものを処理するのに、ちっぽけな債権買い取り会社をつくったってこれは焼け石に水じゃないか、しかも銀行が直接関与したものだけを買い取って、一般の担保つき債権にはとても及ばないんじゃないか、こういうことも心配しておりますが、これについてはどうお考えになりますか。
  61. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 具体的に今、いわゆる債権債務関係、いろいろなケースが出ておりますけれども、私どもが金融機関から聴取して確認している六カ月以上の延滞債権は、前回公表いたしました、ただいま御指摘の十二兆三千億円でございまして、その公表に際しまして、これらの処理につきましては、今後時間はかかるけれども金融機関の基礎体力から必要な対応が図られるものと、こういう見解を示しております。  それから、民間レベルでの債権債務ということになりますと、企業間信用とかそうところへいきますと、これはもっともっと金額が違う世界でございますので、その辺の問題につきましては、ちょっと私どもの方では、いろいろ過去の景気の変動期におきましても企業間信用が大きく成長しておりますし、そこは基本的には市場経済の中でそれぞれの自己責任原則に基づいて処理される問題ではないかと考えております。
  62. 池田治

    池田治君 そこで、不良債権とノーマルな債権の区別は、六カ月間金利を払えぬかどうかということだけに限って計算をされておるんですか。
  63. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) これは先ほど大蔵大臣から御答弁を申し上げましたけれども、金融制度調査会におきまして、この不良債権の開示についていろいろな御議論がございました。そもそも不良債権の定義が、これは非常に確定した定義はございません。それから、そもそも不良債権について公示をしているという国は世界でもアメリカ一国でございまして、金融機関不良債権でございますが、ヨーロッパ諸国ではそのような公示が行われてない。  ただ、日本として今の状況で、先ほど来御議論ございましたように、金融の自由化等の進展に対応してやはり金融機関の透明性、経営の透明性を高めていくということから、ディスクロージャー、不良債権について一定の開示が必要ではないか、そういう御議論でありまして、当面、御議論の中で破綻先債権と六カ月以上延滞債権をまず公示をすべきでないか、こういうような結論になりまして、行政当局としてもそういった方向で漸進的に段階的に公示が進められるのが望ましい保のではないかと考えております。
  64. 池田治

    池田治君 私はディスクロージャーの話をしているわけじゃございません。経済の実体をどう大蔵が把握されておるかということを聞きたいわけです。  そこで、六カ月以上金利を払えないのは不良債権にするということにしますと、会社の資産を全部売ったり全部担保に入れたりしてほかから借りて何とか金利を払っておる。企業者は死に値するような苦労をしながら金利を稼いで払っておる。こういう状況でも、金利さえ払っておけば正常な債権であるというようなことを前提にお考えになるから今不況になって、もう少し不況対策をとら にゃいけませんよと我々は前国会でも申しました。それでも大蔵大臣は、いやまだ経済は減速しているけれども日本の経済はファンダメンタルはしっかりしているから大丈夫だと、羽田さんおっしゃったじゃないですか。それがその後だめになってしまったので、その計算の仕方が問題だと思います。  以上です。
  65. 島袋宗康

    島袋宗康君 まず、羽田大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  第百二十五回国会の冒頭、大臣は財政演説を行いましたが、それを拝聴してみますと、おおむね政府の経済対策は楽観的な観測によった見通しになっているのではないかというふうに思われます。例えば、大臣は最近の経済情勢についての見解において、「住宅投資には回復の動きが見られ、また公共投資も順調に伸びております。」と演説なさいました。また、総合経済対策に関するくだりは、「公共事業等の施行につきましては、その促進に努め、既に所期の成果を上げているところであります」云々というふうになっています。  ところが、さきに経済企画庁が発表した国民所得統計速報、GNP速報によると、本年七−九月期の国民総生産の伸び率は実質本年四−六月期に比べてマイナス〇・四%、一年間の成長率に換算するとマイナス一・六%になり、これは実質的には円高不況時の八六年一−三月期のマイナス〇・九%以来六年半ぶりのようであります。設備投資は依然として低迷し、年平均三・五%の成長は絶望的だというのが一般的な見方であります。政府の当初予算見通しによれば、景気はこの秋ごろから上向きに転ずるだろうというようなことが話されておりましたけれども、どうも政府の経済政策はうまくいっていないのではないかというふうに私は感じております。  政府の経済政策のおくれによって国民はこのいわゆるなべ底不況に直面し、まさに生活小国の実感を味わっているのではないかと思います。早急なる対策を講じていただきますことを切望し、ここで今国会の冒頭に述べられた大蔵大臣の所見と最近の経済情勢の実態、今後の経済見通しなどについてひとつ御説明をお願いしたいというふうに思っております。よろしくお願いします。
  66. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 確かに今度のバブル崩壊、これに伴いますところの景気低迷というのは、金融機関に対してもその不安なんということが言われるようになりましたり、あるいは産業の場合にも相当この時期にまさに二けた台の設備投資をやっておったという現実があります。それから個人消費につきましても、先ほど申し上げましたように、バブル期におきまして耐久消費財等相当買われたということがございます。  こういったことから、なかなかいろんな手当てをいたしましても直ちに、例えば設備投資等につきましても誘導的な税制ですとかあるいは金融、こういったものをやりましても、なかなかすぐそれに対して飛びついてくるというものでもない。また、これからやる設備投資というのは、生産増強とかコストを下げるということよりは、むしろ省力化ですとか、あるいは環境問題ですとか、どちらかというとコストが上がるというものであろうと思います。そういうことの中で、なかなか打ては響くようなあれというのはない、少し時間がやっぱりかかるであろう。  特に、資産デフレ効果なんということが言われておりますけれども、金融機関等が担保にとりました土地等の償却といいますか、そういった問題について、やっぱりある程度時間がかかるということも言えるんじゃなかろうかと思っています。  ただ、私どもはそういった中で、昨年の暮れに通りました補正予算あるいは平成年度景気に配慮した予算、そしてしかもこれを前倒しを緊急対策によってやったということ、また、今度の総合経済対策が今進められつつあるということ、そしてこの間の五次にわたるところの公定歩合の引き下げ、こういったものというものがやっぱりある程度効果を見せてきているんじゃなかろうかと思っております。  いずれにしましても、まだ現在調整過程というものにあるわけでありますけれども、今お話がありましたけれども、住宅投資につきましても十月には前年対比で一〇・三%ということで、およそ年間百四十万台に乗せるんじゃないかということが言われております。また、機械受注にいたしましても、民需は三カ月連続で前月比のプラスということでありまして、設備投資にも明るい一つの兆しというものが見えているというふうに思っております。  公共投資、これも順調に伸びておりまして、九月の公共工事総着工工事費は前年対比で四一・五%ということであります。また在庫調整も、建設材では七−九期ではおおむね完了しておりまして、鉱工業の生産についても回復をしつつあるということでございまして、私は、景気の回復に向けて、今一つの展望というものが見えてきたんじゃなかろうかというふうに思っておりまして、この補正予算を通していただきながら、すき間のない対策を続けていくことによって私どもは持続可能な成長というものを確保できると思っております。  ただし、産業におきましても、各家庭におきましても、やっぱり相当大きく膨らんだものを相当今真剣にリストラクチャリングをやっておるというところでございます。そういったことで、急激なその回復というのはなかなか望めないと思いますけれども、私はこれを皆さんが避けて通れない今日の調整局面というものを乗り切ったならば、堅実な成長というものを私どもは確保することができるであろうというふうに考えております。
  67. 島袋宗康

    島袋宗康君 時間がないので前に進めたいと思います。  財政投融資部門について、沖縄振興開発金融公庫について若干お尋ねしたいと思います。  さきに大蔵省主計局から配付された資料によりますと、政府は厳しい経営環境下にある中で、中小企業者の資金調達の円滑化を図るため、一般会計資金六億円と五百十一億円、合計五百十七億円の資金追加を行っておられます。ただ、沖縄の最近の経済の事情は、バブル経済の崩壊の余波も及ぶようになっておりまして、観光産業なども入域者がなかなかふえず苦境に陥っているなど、不況対策が急務であります。  そこでお尋ねいたしますが、今回の措置がなされた場合、沖縄振興開発金融公庫の貸出枠はどれだけふえることになりますか、御説明をお願いしたいと思います。
  68. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 貸付規模は四百八十億円の追加を予定いたしております。
  69. 島袋宗康

    島袋宗康君 そこで、そこの資金配分の問題に移りますけれども、契約ベースでの貸し付け状況を見てみますと、この表をちょっといただいたんですけれども、住宅資金を唯一の例外として、産業開発資金と農林漁業資金などが前年に比べて大きく伸びております。資金需要に対する資金配分はこの体制によって十分賄うことができるのかどうか、その辺についてひとつ詳しく御説明をお願いしたいと思います。
  70. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 当初の貸付規模が全体で千七百六十一億でございます。追加の合計が四百八十でございます。産業開発資金につきましては、当初六百十六億の計画に対しまして追加が二百八十億でございます。それから中小企業等資金は、当初四百五十億に対しまして八十億の追加でございます。それから住宅資金につきましては五百四十五億円の当初計画に対しまして百二十億円の追加を予定いたしております。  残りの農林漁業資金、医療資金、環境衛生資金については追加を行っておりませんが、農林漁業資金につきましては九十億、医療資金につきましては三十億、環境衛生資金につきましては三十億と、当初計画で当面の資金需要対応できるものと考えているところでございます。
  71. 島袋宗康

    島袋宗康君 終わります。
  72. 野末陳平

    委員長野末陳平君) これにて両案に対する質疑は終局したものと認めます。  午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ————◇—————    午後一時一分開会
  73. 野末陳平

    委員長野末陳平君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  租税及び金融等に関する調査議題とし、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  74. 鈴木和美

    鈴木和美君 大臣にお願い申し上げたいんですが、先ほど同僚議員からもこれからの経済、景気問題の御質問がございまして、大臣からは、効果を見せつつあるとか設備投資も大体順調だとかこの調整局面を乗り切れば何とか明るい見通しがあるのじゃないかというような先ほど御答弁がございました。私はいろんな新聞報道などを見ながら、大変な景気状況になっていると認識しておるんですよ。  そこで、大臣ですから役所の皆さんのペーパーも見ながら読み上げなきゃならぬ立場にあることも重々承知しています。けれども、これから羽田さんも、時間が来れば党首になるような報道もございますし、そういう意味ではこれからの日本の景気対策について、単なる大蔵大臣羽田というだけじゃなくて、日本の国を動かすようなそういう大所高所に立った景気の動向について、また対策について端的に私はお答えいただきたいと思うんです。質問取りのときに私が述べるいろんな状況につきましてはそれぞれ述べてありますから、その内容について、一時間しか持ち時間がございませんからそれに御答弁をいただこうという気持ちは私はございません。結論としてどうかということをお尋ね申し上げたいと思いますので、そういう意味で聞いていただきたいと思います。  まず最初は、私が指摘したのは、十二月四日の日経新聞のことでございました。つまり、実質成長率が年率一・六%のマイナスだと、こういう報じ方がございました。十一月十七日の日経では、百貨店の売上額は東京では四・九%減っちゃった、大阪地区では四・三%減少となって、九二年三月以降八カ月連続で同月比の実績が下回っちゃったと、こういう報じ方です。設備投資の面では前年度に比較して三・九%城となっている。特に製造業は二・九%城となって大幅に落ち込んでいると報じています。  下方修正を見てまいりますと、同じ日経新聞ですが、設備投資計画の緊急調査によれば、百二十社調査の結果、全体で九一年度実績五・七%減っている。さて、九三年を展望したときに、九二年より設備投資というものをふやしますか減らしますかという問いに対して、百二十社の全体の三六・四%は、これはとってもふやすことはできない、一六・一%はふやすと答えている。けれども全体から見れば、九三年度も九二年度の冷え込みが回復しない限り設備投資の下方修正はずっと伸びていくと、こう報じているのであります。  企業倒産の方を見ればどうだろう、ということになりますと、これは十一月十四日の読売新聞です。九一年度は一万七百二十三件であったものが、九二年一月から十月までで一万一千三百八十五件が倒産です。ですから、既に十月でもう倒産件数が九一年度よりも上回っている、こういう報じ方です。  もう一つは、個人消費、個人所得の面を見ると、冬のボーナス、これは伸び率がゼロです。冬のボーナスの伸び率が一%を割ったというのは、八六年の〇・二%以来、七五年からこの調査を始めてきた期間の中では最低です。特にこの冬のボーナスについては、もう大臣も御承知だと思いますが、ゼロではあるけれども支給の中身を見ると現物支給です。三分の一が自分の会社の物を金にかえてボーナスを払っているというのが実情です。  さて、決定的なものを見ると、これは日経の十二月一日の夕刊です。求人倍率を見てみますと、とうとう雇用の面では一倍を割っちゃった。〇・九六倍と報じています。これは明らかに人余りの現象をあらわしているんだと思うんです。そこへ外人労働者の問題も出てくるわけです。一番極端な話をすれば、暴動が起きるんじゃないかとさえ心配されているような私は今日の経済の状況だと見ているんです。  そういう経済の状況について、先ほどの同僚委員へのお答えではございませんが、相も変わらず日銀や大蔵省は、この前の経済対策を議論するときですらまだまだまだまだと言って今日を迎えちゃったという反省点から見ると、今日の経済の状況というものを、一口でいいですから、大臣の方は本当に冷え込んでいるというように思うか思わないか、それだけ答えていただけりゃいいんです。いかがですか。
  75. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 冷え込んでいること、これは事実であろうということはこれは申し上げざるを得ない。  この一言だけだったら困りますのは、今御指摘がありましたように、それぞれの数字が確かに落ち込んでいるということが言えようかと思っております。今お話がありました中における百貨店の売り上げ、確かにこれは落ち込んでおります。特に衣料なんかも落ち込んでおります。そして特に高級、高額商品といいますか、こういったものはやっぱりバブルの反動というようなものがあって、これを買いに出ないということがありましょう。しかし、衣料等につきましては、そのかわりほかの郊外型のお店なんかでは相当伸びておるということ。それから、百貨店の売り上げは全体で小売店の一〇%ぐらいということでありますから、いわゆる個人消費全体を眺めるというのは私はむしろ危険なんじゃないのかなというふうに思っております。ですから、工夫されたところあるいは比較的価格の安いものをうまく取りそろえた店、こういったところは順調に伸びておるということを言ったときに、個人消費そのものはやっぱり堅調にあるんだろうというふうに思っております。  設備投資につきましては、先ほども申し上げましたように、確かにバブルのときの過剰な、過剰といいますか大きな設備投資、これのストック調整をやっておるということでありますし、これからやらなければならないのは省力化あるいは環境対策ということでありますから、これはコストが上がる要因になるわけですから、今はやっぱり少し手控えておるということが言えようかと思っております。  それから個人所得につきまして、確かに伸びがゼロということですけれども、今まで割合と順調に伸びておったということで、ボーナスというのが今お話しのように物によって支払われている部分も一部あるよということでありますけれども、比較的高いものがあったということでありまして、そこにゼロということがあろうと思います。  有効求人倍率については、確かに今各企業がリストラ等をやっておるということでありますので、この点で、〇・九となったことは事実でありますけれども、しかし過去のいわゆるドルショックのときあるいは石油ショック、そういったときの有効求人倍率はたしか〇・五幾つとか〇・六ぐらいでございましたから、それから比較すれば割合といいんじゃないかと思います。  それで、今こういった中で暴動が起こるような状況じゃないかという御指摘があったわけでありますけれども、ほかの面でやっぱり政治不信なんというものも起こっておるということがあります。そこへもってきて今ガットの問題なんかもあります。そして全体的に景気が低迷しておるということ。こういうものの相乗効果というものを考えたときに、非常に難しい状態にあると私は認識しておりますけれども、単に景気だけでどうこうという、これは私は過去に比べれば今の状況というのは決して悪いものじゃないということが言えると思っておりますし、いずれにしてもここの時期というのは乗り越えないと本当のものにならぬだろうと思っております。  私も、中小企業ですとかあるいは大企業の方々、いろんな方とお話ししておりますけれど も、何でもすぐにあれもやれこれもやれという方もありますし、そうじゃなくて案外堅実にこの事態というものを眺めている人は、やっぱりきちんとこの時期にリストラをやりながらその次の時代に備えること、これが一番大事なことであって、この状態というのは避けて通っちゃいけないんだということを強く言っていらっしゃる経営者の方もあるということであろうと思っております。
  76. 鈴木和美

    鈴木和美君 後ほど経営姿勢とか金融面ではまた指摘しますけれども、総合経済対策十兆七千億ということが、大変鳴り物入りで景気刺激の対策をとったように言われているんですが、ないよりはあった方がいいとは私も思います。しかし、万全かといったら、私はそうじゃないと思うんですね。十兆七千億の中で、大蔵省は経済成長率、GNPを押し上げる効果を二・三%だと言っておりますけれども、真水の部分がどのぐらいあるのか、GNPに直接関係のない部分を全部差っ引いてみたりすると、私はそんな二・三%の効果があるとは思い切れません。だから、そういう意味ではこの総合経済対策は必ずしも現在の冷え切った状態に対してすべてがオールマイティーでいいかというと、まだまだ足りないというような私は認識を持っているんです。  さて、そういう状況だとすると、いろんな指標の分析なり意見なりはありますけれども、今大臣の答えをお聞きする限りにおいては、前がよかったから今はそう苦しくないじゃないかということに聞こえるんですよ。だけれども、生活というのはそんなものじゃないと思うんです。生活というのはそんなものじゃないんだから、比較論で物をしゃべられたのでは私は実態と合わないと思うんですよ。それで、何といっても総合経済対策をやったとしても、来年の春ぐらいまではまだまだ冷え込みがずっと続いてくるんじゃないのかなというのが私の経済分析です。  そこでどうするんだということだとすると、個々個々の答えが、細かいことは言いませんけれども、やっぱりもう一回この総合経済対策やっても冷え込みが回復しないというときには何かをやらなければいかぬですね。ただじっと待っているというのであれば政府要らないんじゃないですか。  そう考えてくると、金融面では公定歩合の引き下げしかありませんね、財政面の出動だというと減税しかないんじゃないですか。私はそう思うんですよ。その減税がどういう方法でどうだこうだとか、財源があるとかないとか、そういう議論はさておいて、相乗効果を持たせようというのであれば、アナウンス効果というのもあるんですよ。今これみんな冷え切っている冷え切っていると言うから、じっと買い控えているのもあるんですよ。だから、たまにはばっと目を引くような減税やるぜと言ってごらんなさいよ。そうしたらぱっと広がるというようなことのアナウンス効果だって私はあると思うんですね。  だから、そういう意味でこの総合経済対策、やることはやっているんだけれども、ちょっと時期は見てみましょうと。それもいいです。けれども、どうにもならないときには第二、第三の手を打たなきゃならぬなという認識はぜひ、我々野党であるかもしれませんけれども、一致させてもらいたいんです。そのときに私は、金融面では公定歩合と財政面では減税しかないと思うんですが、そのくらいのところはきょうの段階では九分あたりでもいいから、一致できるような見解にはならぬのでございましょうか。財源は別ですよ。
  77. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) まさに景気の判断とかあるいはこれからの日本の経済、あるいは社会がどういうふうに行くべきなのかという、その見通しの問題とあれすると思うんですけれども、ただ昔と比較しているということではなくて、日本はいろんな意味で家庭の場合にも企業の場合にもきちんとしたストックというものを持つようになったというこの現状を踏まえるということと、やはりバブル期において少し膨張し過ぎたものがあるということ。企業の場合にも家庭の場合にもきちんとした今リストラといいますか調整というものを、これは避けて通っちゃいけないんだというふうに私は実は強く認識をしておるわけでございます。  ですから、そういう中で堅実な行き方というものを、あるいは企業の場合にも堅実と同時に新しい時代の国民のニーズというものをとらまえたいわゆる産業活動といいますか、そういったものに展開していくことが次への持続可能な、しかも安定した成長というものを確保できるだろうと思います。  そういうときに、今ここで公定歩合を引き下げるということを、これは先ほど申し上げたように、五次にわたる公定歩合の引き下げ、こういったものの浸透が、長短市場金利におきましてもこれが下がってきておるということでございますし、企業の皆さん方と話しましても、決してこれは使いにくいものじゃないんだということを皆さん相当の方がおっしゃっている。もちろん一部には公定歩合を引き下げるという声があることも私は承知しておりますけれども、しかし大宗の方々は今使いやすいものにあるということを言われておるというふうに思っております。  それから減税というものを、相乗効果がある、これは私は全然ないということを申しませんけれども、しかし、財源をともかくとしてという話でしたけれども、財源を例えば特例公債に求めるということになると、後のツケというものを考えたときに、今ここでそこまで刺激する必要があるのかということでありますし、むしろそういうだけの費用があるとするならば、今必要な生活関連のインフラというものをきちんと整備することの方が、もしその余裕があるとしたらその方が私は効果があるんじゃないのかな、次の世代にもきちんとしたものを残していくことができるというふうに考えております。
  78. 鈴木和美

    鈴木和美君 別に今ここで赤字国債出した方がいいなどと言っていませんから。財源は別としても、そういうことはやっぱり必要があればやらなきゃいかぬと。ただ、そのときはそのときで財源をどうするかということは、またそれなりの相談をしたら私はいいと思うんです。いずれにしても、決して総合経済対策十兆七千億で事足れりというような状況ではないんじゃないんですかということの認識をやっぱり一致させておきたいと思っています。  その次は、時間が時間ですから、金融問題について入らせていただきます。  私は、この金融問題を論ずるのに、総合経済対策の中で金融機関の経営不安を解消することを掲げておるわけですね。この基本的な認識についてどうも納得がいかないんです。結論から言うと、金融機関の経営危機を金融システム全体の危機にすりかえているようにしか思えないんですよ。  なぜかというと、一つには、現状の認識でございます。銀行、金融が非常に不良債権を抱えて大変な状態にあるということはだれでも知っています。冗談言うなと、おまえたちがバブルを見込んで勝手にじゃんじゃかじゃんじゃかもうけて、おかしくなってさあ大変だというような状況の中で、自業自得じゃないか、ちょっとおまえら自己責任を感じろよという意見が一つあるんです。  二つ目には、この委員会でも先般大議論した金融改革法というのがあります。あの金融改革法、金融自由化というのは何かといったら、これは護送船団方式をやめて、少なくとも銀行はつぶれないとかつぶさないとかというような神話が吹っ飛んじゃって銀行もつぶれるよと。競争に入るんですから。そのかわり自己責任をしっかりとりなさいよというのが金融自由化の私は骨格であったと思うんです。そうすると今度は預金者の方です。預金者も銀行はつぶれないものだというように考えて預金をするということよりも、一歩進んで、自由化の中では銀行もつぶれるよ、預けるところを十分考えて預けなさいよと。それがディスクロージャーというものにつながっていったんでしょう。  だから、金融業は金融業で自前体制を確立しなければならないという哲学を金融自由化改革法で 認めているのに、今回の総合経済対策を見たらどうでしょう。証券の方は証券の方で、それこそ郵便貯金から簡保から、政府が株に手を出すというんですよ。何で手を出すのかというと、株価の多少の値上がりを期待するというのがあるわけでしょう。銀行の方には買い取り会社というのが今度でき上がる。買い取り会社ができ上がったのはいいけれども、税金まけるという話ですよ。買い取り会社は有力な銀行しか参入できないんじゃないですか。なぜならば、買い上げてもらう土地があったときに、自分で金を用意してそれを買ってもらうんです。小さな中小金融機関とか第二地銀とか地銀は参加できますか。  そういうようなことを考えてみると、今回の総合経済対策に関する金融の面では、どうも今まで議論してきた哲学があやふやにされちゃって、何かバブルが消えちゃって大変だから大変だからというような、そういう心境の中で、金融機関だけを救済するような、そういう方向になっていると思うのでございますが、一般的に大臣、それはどうお考えでしょう。
  79. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 今度の「金融行政の当面の運営方針」、八月十八日にこれを発したわけでございますけれども、確かに金融システムの安定性の確保と金融システムの効率化推進のための最大限の努力を払っていくということを申し上げたわけでございますけれども、特にこの中で「金融制度改革の実施」ということ、これは私ども強く打ち出していること。それから「金融機関の経営の一層の合理化」ということで、やっぱり金融機関みずからが合理化しなきゃいけませんよということを実は訴えておるということであります。  また、今買い取り機関についての税務処理の問題につきまして御指摘があったわけでありますけれども、このやり方というのは、従来からの一般事業法人、こういったものも金融機関も同様に取り扱うということでありますし、また買い取り機関の利用できる機関というのも、これはこの構想につきまして全国レベルの連合会を通じまして中小の金融機関も動きが具体化しつつあるというふうに私ども聞いておりまして、これは単に大手ということだけではないということを申し上げておきたいと思っております。  もちろん、指定単等の運用に簡保あるいは年金、こういったものを導入したことは事実であり、またこれが証券市場というものを活性化する、これを私ども期待しておることはこれは間違いないわけでありますけれども、しかしそういった機関等も、こういった証券市場等を通じながら全体の資金運用というものがやりやすい環境というものをつくったことについてもぜひ御理解をいただきたいと存ずる次第であります。
  80. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一回基本的なことで、銀行はつぶれないもの、つぶさないものというような、今日まで護送船団方式でずっと来たものが、金融の自由化ということを境にして、銀行はつぶれるかもしらぬよ、吸収合併があるかもしらぬよ、自助努力をしっかりやりなさいよ、預金者もそのことをよく考えてやってくれよという時代に入っているんだということの認識大蔵省はどれほど金融機関、国民に対してPRがされていますか。  預金者はまだ銀行がつぶれるものなんか思ってないですよ。だから、金融自由化の時代に入ったという、そういう厳しい競争の条件にさらされるというPRをしっかりとやった上でいろんな対策をとらないと、結局ごちゃまぜになって、昔恋しい銀座の柳じゃないけれども、昔に戻っちゃうというようなことになりゃせぬかということが私の一番基本的な認識の問題点なんですよ。そこのところをはっきりしてください。
  81. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) ただいま大臣から御答弁を申し上げましたけれども、基本的な認識としては、委員の御指摘どおりの認識をしているところでございまして、先ほど大臣が御答弁を申し上げました八月の運営方針では、「金融システムの安定性確保」というのが一つの柱でございますが、そのほかにもう一つ大きな柱として「金融システム効率化の推進」をうたっているわけでございます。  その趣旨は、まさに金融システムの安定性だけを考えているんではなくて、先般国会で御議論いただきました金融制度の改革を着実に進めていく。その過程で金融機関の経営は非常に厳しい状況になるので、たまたまバブルの調整過程という時期にございますが、そういうことなく大きな流れとして制度の改革を進め、経営の合理化を図っていく必要がある、こういうことを八月にうたっているところでございます。  それから、さらに十月三十日に、大蔵大臣から「金融行政の当面の運営方針」のフォローアップをさらに発表いたしましたけれども、そのときにも、「経営の合理化」につきましては、「金融機関経営の一層の合理化が求められて」おるけれども、八月以降の段階で「既に、合併や経費節減等による経営体質強化を含め、種々の具体的措置が進められてきている。」が、「今後とも、各金融機関においては、自主的な経営判断に基づいて、より一層の合理化努力を行うことを期待する。」、このようにうたっているところでございまして、基本的な認識におきましては委員の御指摘と私どもは変わらないと考えているところでございます。
  82. 鈴木和美

    鈴木和美君 それはそういうふうに答えるでしょうな。それ以上答えようがないんですわ、省は。  だけど、文字面を見てみると、そう答えているけれども、うそをついているということを私は指摘したいと思うんですよ。なぜかというと、この前、益出しの運用通達が出たですな。あの益出しのところの文章見てくださいよ。ここのところにこういうことが書いてあるでしょう。「安易な益出しの抑制」と書いてある。安易ということはどういうことかよくわからないんですが、「株式市場への悪影響と体力の消耗とを回避すべく、」安易な益出しはしないでくれと。  そうすると、これはどういう意味を指すかというと、例えば益出しも、買い戻しの益出しというんであれば、これは私は問題ないと思うよ。だけど、益出しという、含み資産というのは、BISの問題じゃないけれども、株式の四五%持つわけでしょう。株というものの含み資産というものは、銀行が一たん緩急あるときに、不良債権があったらそこのところを償却するために持っているんでしょう。だから、健全経営をするためには、そのために今まで持っておった含み資産をもって益出したって何が悪いんですか。  ところが、この文章を読む限りにおいては、そういうことをやると体力の消耗を来すと書いてある。逆じゃないですか。もちろん銀行の健全性を考える場合には、益出しで不良債権を償却をして、それでもどうにもならないというのであれば、どうにもならないことを考えなきゃいかぬけれども、そういうことをやらせないうちに買い上げ機関をつくってみたり、それを出しちゃいかぬよというような指導をすることは、今銀行局長が言った金融自由化の哲学の面から見たときに、ちょっとちょっと安易な方法じゃないのかと私は思うんですが、いかがでございますか。
  83. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 八月十八日の運営方針趣旨につきまして御説明をさせていただきたいと存じます。  ここで書いておりますのは、実はこれを発表いたしましたときも政府として説明をしたのでございますが、金融機関の自由な投資判断に基づく株式の売却を規制しようとするものでは全くございませんという御説明をいたしました。その趣旨は、ここに書いてありますように、「決算対策のための安易な益出し」ということでございます。  これはどういうことかと申しますと、金融機関が横並び意識である程度の決算の数字を出さなければいけない、そのために、経営の実態に即した決算が行われるのが本来の趣旨でございますが、今までの慣行から横並び意識を考えたような決算対策が行われる。そのときに株式の含み益を益出し、この場合に一般的に行われておりますのは、日本の株式の持ち合いという制度、慣行のもとで は、クロス取引が行われるというのがかなり多いわけでございます。そのことは、実は含み益を顕在化させるというだけでございまして、そのこと自体、結果として資産の運用利回りが低下をするということになるわけでございます。  基本的には、本来含み益というのはそういった不良資産の償却に向けられるべきであるというのは全く委員指摘のとおりでございますが、決算対策のための益出しということが、かえってそれをやることによって、通常の場合ならそれでもよろしいんですが、今のように多額の不良資産を抱えている、将来の不良資産を処理するときに含み益を小さくするだけでございますので、かえって体力の消耗を招くという意味決算対策のための安易な益出しは好ましくないという判断をしたところでございます。
  84. 鈴木和美

    鈴木和美君 こういうふうに理解していいですか。益出しをするときに、何々銀行というものの経営状態は不良資産も抱えながら大変なんだけれども、うちは経営能力としてとんとんであるよということを決算のときに見せるために含み資産の益出しをするということは、結果として体力の消耗につながる、そういうことを注意したんだと。したがって、あなたがおっしゃることは、そういうことはいけないけれども、不良債権を償却するというために含み資産を持っているんだから、それは大いに出して不良資産を償却すべきであるという私の見解には同感だというふうに理解していいですか。
  85. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 基本的には、含み資産というのはそういった不良資産の償却に充てられる内部蓄積の一つとして考えられるべきものだと考えております。  ただ、あの状況でございますと、まさに決算対策のための益出しがかえって株価下落を招くという可能性がございまして、株価下落と益出しの悪循環が起きる。そのことによってまた含みが落ちていくということで、かえって両面から銀行の体力を消耗させることになるのではないか、そういうことが懸念されたということでございます。
  86. 鈴木和美

    鈴木和美君 それはそれでわかりましたが、今回の問題というのは、私は先ほどから金融自由化の問題に関して、金融機関も預金者の方も、銀行はもうつぶれるかもしらぬよ、よく見て預金しなさいというように哲学的に変わってきているんだよという時代に入ったということをしきりに強調しているんですが、けれどもやっぱり預金者というものが一番大切なわけですね。だから、預金者保護ということを中心に考えにゃいかぬと思うんです。  そうすると、現在の預金者保護の立場から考えたときに、保険機構というのがありますな。あれ、六千億ぐらいだったかな、今持っているのは。日銀とかそれから有力会社でお互いに出し合う。だから、ある意味ではその保険機構というものを充実させるべきであるという見解が一つありますね。片や、保険機構を充実させるということは、金融機関も預金者も銀行がつぶれても倒れても保険で戻ってくるからというような安易な考え方にまた走るんじゃないかという説もあるわけだ。両方矛盾を抱えているわけですよ。  さて、大蔵省は、こういうような状況の中で、金融自由化の競争の激しくなっていく時代の中で、この保険機構という問題に対してどういう見解をお持ちですか。
  87. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 預金保険制度のあり方をめぐる論議はまさに委員指摘のとおりの問題がございまして、諸外国におきましてもいろいろな対応が行われているところでございます。我が国におきましては、やはり金融の自由化、国際化の進展に伴いまして、預金者保護あるいは信用秩序維持の観点から制度の充実を図る必要があるということで、これまでも制度の充実を図ってきております。  具体的に申し上げますと、昭和六十一年の預金保険法の改正によりまして保険金限度額を三百万から一千万に引き上げたところでございます。それから保険料率も引き上げました。さらに資金援助方式の導入など、制度の拡充を図ってきているところでございます。この結果、責任準備金の残高は平成四年三月末で、先ほど委員指摘のとおり六千九百六十三億円になっております。これに日銀からの借り入れ限度が五千億ございますので、一兆二千億円程度の資金を用意することが可能な状況になっております。  ただ、金融機関の経営困難の問題に際しましては、預金保険制度だけではなくて、基本的にはまず当該金融機関の自助努力がございます。それから各業態ごとにございます相互援助制度を初めといたします関係金融機関の支援等、そういうものとの、他の手段との組み合わせによって対応を図っていくことが望ましい、現在のこういった仕組みの中で対応していくのが適当ではないかと考えております。  今委員指摘のとおり、預金保険制度の運用につきましては、これはまさに金融機関の経営規律の弛緩、モラルハザードの問題という弊害が現に米国においても起きている、これが大変な問題になっているということでございますので、その利害得失を考えながら全体の制度の運用を考えなければいけません。現在のところ、今のこういったいろいろな手段の組み合わせにより対応していくことが適当ではないかと考えているところでございます。
  88. 鈴木和美

    鈴木和美君 ぜひその点はこれから先、十年先、二十年先を展望したときに、そういう問題は大変大きな問題が私は発生すると思うんですわ。ぜひその点の充実した検討をなお続けていただきたいと思います。  さて、その次は、国税庁と公取の皆さん来ていらっしゃると思いますが、ちょっとお尋ねします。  買い取り会社の問題についてですが、不良債権の定義であるとかノンバンクをどうするかとかいうようないろんな問題があるのでございますが、今回、いずれにしても買い取り会社というのができ上がる。この買い取り会社ができ上がるときに、土地が流動化するわけじゃないでしょう、買い取り会社がとにかく債権だけを買うというわけですから。その買い上げ全額と債権の額面の差額について、ここが国税庁が支援損とか雑損失として全額損金に算入することを今度認めるということになったようですね。これはほかの業種と比較して金融機関だけに過保護じゃないかという意見が方々から寄せられているんですが、これに対する見解はいかがですか。  同時に、不動産業界がそういう買い取り会社を、買い取り機関を設立すれば、こういう趣旨のものは同じように認めますか、いかがですか。
  89. 松川隆志

    政府委員(松川隆志君) 先生の御指摘のあった買い取り会社構想でございますけれども、今おっしゃったのはノンバンクの再建支援のための構想一だと思います。  これにつきましては、金融機関はノンバンクから債権を額面で買い取ることとされております。そして実際には買い上げ機関に時価で売るということでございますので、その額面と時価との差額が発生するわけでございます。これにつきましては、金融機関がノンバンクにある意味で経済的な利益を供与しているということになるわけでございます。そして、こうした場合には原則として法人税法上は寄附金となるということでございます。  ただし、その経済的利益の供与が合理的な再建計画に基づくものである場合には、いわゆる支援損として損金の額に算入される。これは昭和五十五年ごろに法人税の基本通達の改正がございまして、当時非常に企業がオイルショックの後でいろいろと経営困難に陥って、それを再建するという一連の動きがあったわけでございますが、そうしたものに対応してこうした通達を定めたわけでございます。したがいまして、一般事業法人も金融機関も、同様にこれが適用されるということでございます。
  90. 鈴木和美

    鈴木和美君 一番最初は、買い取り会社か買い上げ会社がわからぬけれども、こういう構想が出 たときの当初は、今日のこの経済の冷え切ったときに土地の流動化が行われないと景気が回復しないという発想のもとで、塩漬けになっちゃいかぬから、お互い土地を流動化しようというようなところから始まったわけだ、話はね。ところが、それが金額、土地の値段を幾らに決めるかということになると、結局下支えになっちゃって、土地はもうこれで下がらないよというようなことになる。  そういう問題点が一つあるのと、売り買いをやるから税金の問題が出てくる、そういう問題等の絡みにおいて、他人様が言っておるのは、そういう税の問題が大きくかかるから、今度は債権だけで、有力者の、つまり何億の土地を買ってもらうためには銀行も何億の金用意せにゃいかぬのだから、そういうようなことで額面のつまり動かし方をやるようなことをするから税金はまけてくれやというところからこの発想が出たんじゃないですか。
  91. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 当初の意図との御質問でございますので、当初は、これは八月十八日の「金融行政の当面の運営方針」で述べたところでございますので、ちょっとそこを御説明いたしますと、実はこれは金融機関の不良資産の処理の問題として位置づけているわけでございます。  それで、これが実は大変不良資産が増大している。それが解決のめどがつかないことが金融システムに外する国民の不安感を醸成して、それが景気回復の足を引っ張るんじゃないかと。そういうことの対応策としての位置づけでございます。  大変大きな不良資産が発生しましたので、それをすぐには処理することはできない、時間をかけて処理していかなきゃいかぬ。しかし、まずはその処理をするめどを立てることによって、国民の金融システムに対する不安感を払拭する必要がある。そういう考えをうたっておりまして、担保不動産の流動化はあくまでも不良資産の処理方針の早期確定と計画的、段階的処理を図る観点からということで、結果として「併せて不動産の流動化に資するため」と書いております。  まずは金融機関の不良資産の処理のめどを立て、それを計画的に処理するために、それからさらに言っておりますのは、これは若干言葉が不適切であったのでございますが、「民間金融機関の協調による」、これは公取が御心配されるようなカルテル的な行為じゃなくて、自己責任原則に基づいてという意味でうたっております。  ただ、その後の報道におきましていろいろな報道がございましたけれども、私どもの、当初公表しまして、かつ説明はそういう説明をしたことでございまして、あくまでも金融機関の不良資産を処理していくめどを立て、そしてそれを時間をかけて処理していくための方策として打ち出した施策でございます。
  92. 鈴木和美

    鈴木和美君 どうも納得できないんですけれども。  だから、今度そういうような税のおまけをつくるのであれば、不動産会社がこういう買い取り会社をつくったら、その場合でも認めるかと私さっき聞いたんです。何か金融機関だけの特典というか、そういうふうに私は思えるんですよ。だから、この総合経済対策は金融業界の救済のためじゃないかというように私は結論づけているんです。  もう一つ、公取に聞きますけれども、今の問題をずっとお聞きになっておりまして、御案内だと思いますが、価格判定委員会というのが今度でき上がるわけですな。この価格判定委員会というのは、私に言わせれば、口が悪いんだけれども、これは同じ穴のムジナが集まってやることなんです。別な表現で言うんであれば、証券で言えばこれは八条委員会だ、どっちかと言えばね。むしろ証券とかこういう問題については、三条じゃないけれども、外部にそういう公正な機関を設けた方がいいというのが私は一番いいことだと思うんですよ。しかし、ここに鑑定士とか税理士とかいろいろ入ってつくるわけでしょう。だから第三者機関だといえば言えないことではないんだけれども、この人たちはどうやって選ぶのかという問題もあるんです。  そして、同時にそういう委員会はでき上がるんだけれども、一義的には金融機関と買い取り会社の相対の交渉で決まっちゃうんですよ。実態は私はそうだと思うんですな。そうすると、全国の有力な銀行が集まって債権の買い取り価格を相談するように私はなるんじゃないかと思うんです。実態はそういうふうに私、運んでいくと思うんですよ。これは一種の価格協定ということになりはせぬですか。だから、私はそこから見ると、このやり方は独禁法にどうも抵触するんじゃないのかなと思えてならぬのですが、公取の見解を聞かせてください。
  93. 平林英勝

    説明員(平林英勝君) 御説明申し上げます。  御承知のように独占禁止法におきましては、事業者が共同して価格を決定して、それによりまして一定の取引分野において競争を実質的に制限するということになりますと、不当な取引制限として禁止しているわけでございます。  現在検討されております債権買い取り会社構想によりますと、買い取り会社が買い取る債権の価格というのは、利害関係のない不動産鑑定士による担保不動産の評価価格に基づいて、第三者であります専門家、先ほど先生おっしゃいましたように、弁護士とか公認会計士とか税理士等々から成る価格判定委員会で決定するというふうに聞いております。そこで価格交渉等が行われるというふうには伺っておりません。  価格判定委員会による価格の決定につきましては、出資者である金融機関からの独立性が確保され、したがいまして出資者である金融機関が当該価格の決定に影響力を行使できない、そしてまた買い取り対象規模が貸付債権全体に比して十分小さいというものでございますれば、直ちに独占禁止法上の問題が生じることはないんではないかというふうに私どもは考えております。  いずれにしましても、公正取引委員会としましては、今後買い取り会社の設立に当たって仮に問題点等がありましたら、指摘させていただいて改善を求めていくということで、独占禁止法上の問題が生じないよう適切に対処してまいりたいと考えております。
  94. 鈴木和美

    鈴木和美君 ぜひ、私は大変これから問題が起きるんじゃないかと心配しているものですから、今のお答えどおり十分なる監視をお願い申し上げたいと思うんです。  それから金融の問題では最後ですが、貸し渋り問題というのは現在も出ておりますが、これから大きい問題、ここ質問を長々とやっておるわけにいきませんので結論だけ聞かせていただきたいんですが、株式の含み益、つまり四五%に依存しているBIS規制ですね、これがあるために大変に問題になっているんです。このBIS規制というものを見直しするつもりはございますか。  それから同時に、アメリカのフリーデン氏がリスクアセット方式について指摘していますね。こういうような指摘がされるほど現在のBIS規制という問題と分母の方の問題とが国際的に問題になっているというようなときに、これから我が国の行政としてはどういう対応をなさるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  95. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) BIS規制につきましては、いろいろ国内的にも御議論ございますし、国際的にもそれぞれの各国の実情によりまして、各国の銀行監督当局からいろんな議論が出ているところでございます。  ただ、委員が御指摘のように、リスクアセットの見直しにつきまして、今国際的に新たな合意が成立するような状況にはなっていないわけでございます。  それでは、我が国においてこれをどのように受けとめるべきかということでございますが、これは既に国際的に海外拠点で活動する金融機関に対する規制でございまして、仮に我が国の行政当局がどのように考えあるいはそれを諸外国に提案をしたとしても、海外の市場の評価というのはそれによって変わってこないという問題がございまし て、基本的には海外で活動する金融機関がやはり海外のマーケットで評価される、市場の評価に合わせるような対応をしていくことが望ましいのではないかと考えております。  そういう意味から、八月十八日の運営方針におきましては、株式の含み益四五%、これが株価下落でその分自己資本が減少いたしますので、それにかわるべき自己資本調達手段を考えるべきだ。本来ならば株式市場での増資が望ましいわけでございますが、今のような、御承知のような状況でございますので、劣後ローン等の取り入れということを積極的に進め、それによって融資対応力を高めていく必要がある、こういう方針を打ち出しまして、新たな調達手段も開発をしたところでございます。  結果といたしまして、九月末ではこのBIS対象金融機関の有価証券含み益は三月末に比較しまして約一兆三千億減少したわけでございますが、一方、劣後ローン等の取り入れが行われまして、それが三月末に対しまして九月末は二兆七千億円の増加となりまして、全体といたしましては自己資本が一兆五千億増加をいたしております。  今後とも、御指摘のとおり株価の変動によりまして八%の達成が左右されるということのなるべく影響を受けないような体質を構築して、金融機関融資対応力を確保していく必要があるということで、なお当面劣後ローン等の取り入れの努力を進めていく必要があるのではないかと考えているところでございます。
  96. 鈴木和美

    鈴木和美君 とにかく年末を控えて中小企業大変でございますから、貸し渋りのないような対応をぜひお願いを申し上げたいと思います。  残された時間、証券問題について二つばかり御質問を申し上げたいと思います。  その一つは、総合経済対策の中に「自己株式の取得及び保有に関する規制の見直し」というのがございますね。私は、前の大蔵委員会でこの自己株式取得の問題については証取法上から考えてちょっと問題がありはせぬかと言って大変強く指摘したところでございます。  つまり、そういう問題が解禁されると、株価操作のための保有をしようというような動きが出るとか、インサイダー取引に使われるとか、株を買い占めた集団が高値で売りつけるというような仕手戦に参加できるとか、そういう弊害がどうしても起きるから、これは慎重に扱ってもらいたいということを申し上げたつもりです。それが今度の対策にまた入っているのは一体どういうわけか、その経過を聞かせていただきたい。  それから二つ目は、先ほど申し上げましたが、株式市場に投入される公的資金の問題です。  郵便貯金、年金、簡易保険、つまり長期安定的な運用要請される資金ですね。ところが、今回株に手を出すというわけでしょう。株に手を出すというところは、私は三つ問題があると思うんです。  一つは、そういう公的資金というものの運用目的というのははっきりしているわけなんですから、それが短期的な株に手を出すということは、基本的なこの制度の持っている意義に反するんじゃないかという点が一つです。  二つ目の問題点は、国が株価の操作に介入するということです。例えばJRにしてもJTにしてもNTTにしても、株を放出するときに、今安値だからあれは見送っちゃったんですよ。ところが高値のとき出すというときには、やっぱり国が株価に介入しているという結果論を生むわけです。  三つ目の問題は、郵便貯金というのは財投の資金です。けれども、一番ここに持っているのは、民間金融機関はあの定額貯金に対抗できるような商品ができないんですよ。郵便貯金の持っている定額貯金制度というのは固定金利制なんだから、固定金利制で、貸すときには変動金利制になっているわけでしょう。こういう制度がある限り、民間金融機関はこれと太刀打ちすることはできないですよ。そうすると、郵貯だけにざっと集まっちゃう。これは私は大変大きな問題を生ずると思うんです。  これは、大蔵省と郵政省といろいろ議論されているんだと思うんですが、つまり郵貯のそういうものを株式に投入するとか、そういう問題まで含んでいますよと。制度の問題の認識と、国が株価に介入したという問題と、郵貯の性格をどう変えるんだというような問題点を感ずるときに、こういうことに手を出すということは、まさに証券とか銀行とかに対して金融機関を救済する方法のためにこれをやるということではないのかというように思うんですが、いかがですか。
  97. 小川是

    政府委員(小川是君) 第一点の自社株の取得の問題でございます。  本年の春に委員から御指摘がございましたように、自社株の取得につきましては、これが証券の流通市場、株式市場に対して好影響を与え得るというポイント一つございますが、これが証券取引を伴うといたしますと、株価操作等の問題もあるのではないかという御指摘をいただいたわけでございます。  その後、法務省法制審議会におきまして、本年の六月に商法の観点から、つまり株式会社制度のあり方という観点からこの問題の審議が始まっているわけでございます。  そこで、本年八月の総合経済対策の取りまとめに当たりましては、そうした具体的な審議が始まっているということを踏まえまして、「自己株式の取得及び保有に関する規制の見直しについて、商法をはじめ幅広い観点からの検討を促進する。」というふうにうたうことにしたわけでございます。まずもって、商法の株式会社制度のあり方について検討をし、そうした「取得シ又ハ」という点がございますが、保有、つまり株式の消却のための取得であるのか、あるいはそれを会社が保有しておいてまた処分をするということもあり得る取得であるのか、そういった幅広い観点について商法の検討をまず始めているわけでございます。  そこで、商法の議論の結果出てきました状況によりまして、証券取引法上の御指摘のような問題について新たな対応を要するかどうか、それに即して考えてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  98. 藤井威

    政府委員藤井威君) 公的資金による今回の指定単への運用についてお話がございました。  委員も御指摘のとおり、公的資金運用というものの本来のあり方が安全確実ということを旨としてこれを行わなきゃいかぬという、その基本的な考え方はそのとおりであろうというふうに思います。  そういう観点から、株式の運用につきまして国みずからが行うというようなことは従来からも行ってきておりませんで、従来から指定単という方法を使いまして、まず簡保事業団等を経由するということが第一。それから第二に、実際に簡保事業団は資金運用の専門家である信託銀行に指定単という形で金銭信託を設けまして、それで信託銀行の責任と判断で運用してもらうという、こういうスキームで従来から運用してきたわけでございます。  今回の総合経済対策の中で、一兆円余りの指定単の運用追加を行いまして株式市場の活性化に資するということを措置したわけでございますが、基本的には従来から行っておりました指定単の枠組みの中で行うという形で、本来の公的資金の安全確実という運用目的とそごを来さないという範囲内で行った措置であるわけでございます。  第二に、御指摘にございました国がこれをもって株価操作に介入するのではないかという御指摘がございました。その点につきましても、実はこの指定単の中でどういう株を具体的にどれだけをどのようなタイミングで買い付けていくか、あるいは場合によっては売ることもあり得るわけなんですけれども、そういう売買をどういうふうにやるかということについて、国は介入しないで信託銀行の責任と判断で行うというのがこの指定単の基本的な仕組みでございまして、それをベースにして行っておりますので、これをもって国が介入をするということにはならないという、ここもそこのところを担保した形で措置したつもりでござ います。  それから三番目に、定額貯金の問題が御指摘がございました。現在、金融の自由化を進めておるわけでございますが、金融の自由化の進捗の中で郵便貯金まで含めた郵便貯金と民間金融機関のトータルのバランスを図っていくということは当然考えていかなきゃならぬ問題でございまして、その点をこれからも十分検討していきたいというふうに考えております。
  99. 鈴木和美

    鈴木和美君 私の質問の締めくくりですが、大蔵大臣、ぜひ検討してもらいたいんですが、恐らく今郵政省との間で大蔵といつもこれ議論になるわけですね。この前、十一月何日かだったと思いますが、郵貯に関しての固定金利問題をどう考えるか。あれをどんどんどんどん進めていけば逆ざや問題というのが当然出てきて、国庫負担の方もまた問題になるわけです。市中銀行との競争の問題も出てくるというような問題があって、非常にこの問題の扱いというのは私は大変だと思うんですよ。  それから、安易に財投というものをあそこに、つまり公共投資を財投に頼るということになると、何もただで貸すわけじゃないんですから、やっぱり金利はとらにゃいかぬ。そうすると、その運用というのは全部すべてが事業が有料化になっちゃうんです。そういう有料化みたいなものを進行するというふうな私は弱点を持っていると思うんですよ。  したがって、今お話のように事業団をつくって、そしてすぐ株にやるというんじゃなくて、チェック機関をちゃんとつくってありますよというお話なんです。このチェック機関だって、この前の株式の補てんのときには厚生省の共済の問題だっていろんな問題が出たわけでしょう。だから、チェック機関とは言うけれども、有効に働くか働かないかということになると非常に私は問題だと思うんです。それでなくとも郵政省は全部自主運用でやらしてくれというような今状況でしょう。だから、そのところはやっぱり大蔵省としても郵政省との間の取り決めというか、話し合いか、そこだけはきちっとしておいていただきたいということを思うんですが、見解を聞いて私の質問を終わります。
  100. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 今御指摘がございましたように、この資金といいますか、これはまさに広く大衆から集めたお金であるということでございまして、もちろん安定してこれを運用していかなきゃならないということがあるわけでございますけれども、やはり基本は安全なものでなければならないということであろうと思いまして、よく御趣旨の点を私ども踏まえながら十分話し合いをしてまいりたい、かように存じております。
  101. 志苫裕

    志苫裕君 今国会初めての大蔵委員会でもあるし、大臣の所信も財政哲学もじっくり聞きたいところですけれども、どうも時間もないようだし内閣改造も近いようだからいずれの機会に譲ることにしまして、質問通告しなかったが、国税いましたか。——では、大臣、答えられたら答えてください。  今国会、佐川国会と言われているんですけれども、この間、佐川事件についての法務省の中間報告が出まして、政界捜査の関係で三つのお金が行方不明になっていますね。一つは金丸さんの五億円の行方がわからない。それも含まれているんですが、平和堂の松澤から東京佐川の渡邉にキックバックされた十七億円がわからない。新潟の知事選挙に提供された三億円のうちの二億円がわからない。  こういうので、膨大なお金が地に潜ったか天にかけたかということになっているんですが、この三つのルートのお金について法務省の中間報告では政治資金規正法違反等の嫌疑ありとして訴追するに足る事実は確認されなかったと、こういうのですが、国税当局はどういう対応をなさいました。
  102. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 今国税当局ちょっとこちらの方にあれしておらないようでございます。  個別の事柄につきましては、これはもういつもあれでございますけれども、具体的に御答弁させることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、国税当局といたしましては、常に納税者の適正な課税、これを実現するという観点から、あらゆる機会を通じながら有効な資料、情報の収集に努めまして、課税上問題があると認められる場合には実地調査を行うなどにより適正な税務を努めておるということでございまして、今後ともこういった基本的な考え方に基づきまして適時適切に対処していくということでございます。  個別の問題についてはひとつお許しをいただきたいと思います。
  103. 志苫裕

    志苫裕君 ロッキードのときも、リクルートのときも、今羽田さんと同じようなことを言ってたんだわ、大蔵省というのは。ですが、適正におやりになったと言いましても、政治資金規正法では訴追に足る事実は確認されなかったというのですから、しかし、お金が提供されたこと、お金がキックバックされたこと、それが政界筋に流されたことはちゃんと確認されているというのですね、中間報告では。  そうすると、もう一口は僕らは税金の方を見る以外にないですね、率直に言って。政治資金規正法の方には何もなかったということですから。しかしお金はこちらへ行きましたというのですから。適正におやりになったのならどこかでわかってきそうなものじゃないの。その点どうです。
  104. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 先ほども申し上げましたように、あらゆる機会を通じながら有効な資料、情報の収集、これに努めまして、これが必要であるということであるときにはそれに対して適切なる対応をするということでございます。
  105. 志苫裕

    志苫裕君 それじゃ、逆に聞きましょう。  九一年の二月、佐川グループ三十数社の税務調査を行って三十五億円の申告漏れがあったから十八億円を追徴したというのがいつぞや報道されておりましたが、これはそうすると八九年から九〇年にかけて調査をされたということがすぐわかるわけです。八九年ごろというとこの佐川のお金が、例えば新潟ルートで言えば動いておったわけです。  もっと具体的なことを言いましょうか。例えば新潟ルートで三億円提供された。これは北陸佐川が一億円、東京佐川が一億円、中京と大阪が二千万ずつ、その他の四社が千五百万ずつです。そのうちの北陸佐川なら北陸佐川を例にとりましょう。北陸佐川は北陸銀行からお金を借りてこの一億円を会社が社長への貸し出しにしまして、それを長い期間かかって使途不明金を出すことによって穴埋めします。こういうやり方で北陸佐川は一億円をたがいて渡邉廣康のところへ持参しています。  こういうことが恐らく端緒になったりして国税当局は佐川グループの一斉調査を行ったとされているんです。それで税務調査が三十数社に行われてこういうという報告なんですね。  私がお聞きしますのは、このころ佐川マネーが動いていたんですが、例えばこのころの佐川グループの調査というのは、政界筋にお金が動いておるということを端緒にしたものであったんですかどうですか、わかりませんか。
  106. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) まさに一般論としてまた申し上げさせていただくわけでございますけれども、大法人につきましては他の一般法人に比べまして相当密度の高い調査をやっている事実がございます。  今御指摘のございました政治献金と申しますか、上納金と申しますか、こういったものにつきましても、法人の帳簿あるいは証拠書類等に基づきましてその支出先あるいはその支出目的、こういったものを十分確認しながら適正な処理が行われているかどうか調査をいたしておるということでございまして、具体的な案件については私も率直に申し上げてこれは承知しておらないということを申し上げざるを得ないのでございます。
  107. 志苫裕

    志苫裕君 この問題で私、大臣に要望だけしておきますが、大変な日本の政治がその信任を問わ れておるときでありますが、やっぱりこういうことが起きますと、国税当局の税務調査は大丈夫かな、あるいはそちらの方から入っていくと真相にも迫れるがなということがしばしばございます。そのときに、国税は公務員の守秘義務でいつでも真相解明の前に立ちはだかる。何遍もこの繰り返しでした。  その場合には公務員の守秘義務という公益と真相解明という公益との衝突の問題ですから、どこでどう裁くかというややこしい問題になるわけでありますが、私はこれは、ましてやもう立件されなくなっているような問題はできる限り明らかにしてしかるべしというふうに思って、そちらの方からもこの真相解明、政治改革にアプローチをすべきだ、あなた、政治改革の旗手なんだが、そういう点で見解を求めておきましょう。
  108. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 確かに今までも、あるいは私どもが今度予算委員会等でも、皆様の御質問に対しまして守秘義務というものの壁があるということ、これは私どもも何回か承知しております。ただ問題は、個々の取引ですとかあるいは人権の問題ですとか、そういった問題等がありまして、判断されながら守秘義務があるときにはお答えができないという問題、あるいは捜査上の、あるいは裁判等で係争されている問題等についてできない場合があること、これはぜひ御理解をいただきたいと思います。  ただ、私どもといたしましても、許される範囲におきます国政調査権に基づく調査、これに対してはでき得る限りのお答えはしていきたいと存じておりますけれども、そういった問題があることはもうよく御理解の上での御指摘であろうと思いますので、お許しをいただきたいと存じます。
  109. 志苫裕

    志苫裕君 それじゃ、次の質問に入りますが、先ほど鈴木さんを初め同僚委員ずっと出ましたから通告したものは大分省きますが、私もちょっと不良債権の問題に一つ触れます。  バブルがはじけた途端に金融機関等には不良債権の山ができたわけでありますが、これが金融秩序全体を揺るがすものだということで、それぞれの対応をされ、また総合経済対策の中でも項を設けてさまざまな手を打っておられるんですが、この不良債権という言葉が随分漠然としておりまして、ある者は八兆だ十兆だと言うし、ある者は二十兆だ三十兆だと言うし、ある者は融資残高の半分ぐらいがみんな不良債権になるので、そうすると土地や株が半値になっているんだから大体その半分ぐらい不良債権になるだろうとか、途方もない話まで出ていくわけでありますが、不良債権の範囲を広くとるか狭くとるかということとかかわりがあると思うんですね。  途方もない不良債権の話が出回るということもこれまたいい話でもないのでありまして、そんなわけでちょっと不良債権とは何か。広義に言うたらどうなる、狭く言ったらどうなる、大蔵省が直接対応したいなと思っているのはどういうたぐいのものか、ちょっとその辺整理してもらえませんか。
  110. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) まさに御指摘のとおり不良債権についての定義というのは特に明確な定義がございませんで、先ほどもちょっと御説明しましたけれども、各国によっても全く違う。それから、制度的にディスクロージャーを義務づけている国はアメリカ一国でございまして、ほかの国にはないという事情がございますので、それぞれ明確な定義という確定したものがないわけでございます。  ただ、十二月二日に、金融制度調査会で前々から金融機関のディスクロージャーについて御議論をいただいておりまして、その中間報告が出ましたので、それの御議論を御紹介させていただきますと、金融制度調査会では、まず経営破綻先に対する債権額、不良債権というのは大変定義が不明確でございますので、これを破綻先債権額と定義をいたしまして、いわゆる元本の回収可能性に着目いたしまして近い将来において償却するに至る可能性の高い債権、この破綻先債権については金融制度調査会では銀行がすべて公表すべきではないかという報告になっております。  それから、次の段階といたしまして、将来において償却すべき債権に転換する可能性のある債権、これが未収利息不計上債権、調査会の中間報告では延滞債権と言っております。これにつきましても、やはり基本的には開示することが望ましい。つまり、破綻先債権額はかなり償却の可能性が高い債権でありますから、銀行はこれを公表した方が望ましい。それから延滞債権につきましては、近い将来償却すべき債権に転換する可能性が高いものにつきましては、できるだけ公表することが望ましいということでございます。  それから、さらに御議論がございましたのは、金利減免・棚上げ先の債権につきまして御議論がございまして、これにつきましては、こういったものもやはり開示をすべきであるという御意見もございましたが、この中間報告では、やはり不良債権の開示につきましては世界におきましても米国しかやってないということで、基本的に信用秩序に与える影響に配慮し、漸進的、段階的に進めていく必要があり、そういうことを考えるならば、この金利減免・棚上げ債権というのは、債務者の再建、支援を図ることをもって元本の回収が前提となっている債権であるということで、破綻先債権、延滞債権とは基本的にその性格を異にしているということで、これは開示とは区別して考えることが適当ではないか。また、こういった金利減免・棚上げ先債権を開示することによりまして、将来再建の可能性の高い企業に対する金融機関の適切な支援が抑制される等の可能性もあるということで、当面は金利減免・棚上げ先に対する債権額の開示を求めない、こういうことにされたわけでございます。したがいまして、今この金融制度調査会の中間報告に基づきまして開示が考えられておりますのは経営破綻先債権と延滞債権ということでございます。
  111. 志苫裕

    志苫裕君 簡単でいいです。  幾つかの類型がある。あなたたちはややこしい言葉を使うからあれなんで、倒産しちゃった、半年以上も利子を返さないとか、そういう幾つかの類型があるんですが、類型別におよそ幾らだと。例えば延滞利子を長々払わぬやつは、皆さんの方は十二兆円くらいかなという話が先ほど出ていましたね。今お話のあった、類型別に分けるとこういう類型のは幾ら、こういう類型のは幾らというのはわかっているんですか。
  112. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) この御答申は十二月二日に出た答申でございまして、実はこの基準に基づきまして来年三月金融機関が公表することになっております。ただ、ことしの三月から六カ月以上延滞債権と経営破綻先債権を含めまして大蔵省でヒアリングを行っておりまして、それでその合計額を公表しているわけでございまして、しかもその対象が都銀と長期信用銀行と信託銀行の三業態でございます。その合計の数字が御承知の九月末現在で十二兆三千億円、こういうことになっております。
  113. 志苫裕

    志苫裕君 次に行きます。  とにかく金融界大変なんですが、この金融クライシスを象徴的に体現しておるのは日債銀だという話が専らでありまして、ここに絞って一つ二つ聞きます。  日債銀といえば、佐川スキャンダルの渡邉廣康と並ぶもう一人の主役、小針暦二の福島交通に絡んだ融資事件を初めとしまして、自民党の派閥の領袖クラスとの接触など悪いうわさには事欠きませんな。国民政治協会への献金もトップです。不動産融資の軌跡を見ましても、新興仕手集団への融資や、暴力団稲川会のゴルフ場や、あるいはアメリカヘの過大投資で問題になった企業への、そういう問題会社への資金の垂れ流しとでもいうんですかな、それはまさに圧巻だと指摘しておきましょう。  ところで、この日債銀に関しまして、読売新聞の十二月一日の記事は、これはなかなかショッキングな記事です。ちなみに見出しだけ紹介しておきますと、「日債銀  「不良債権飛ばし」二百億円」、関連記事では「ダミーに「底なし融資」五百 七十億」、こうあります。大変ショックな記事で、この記事についてまずコメントをいただきたい。
  114. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 本件は銀行の取引先でございます第三者の取引にかかわる事柄でございますので、大蔵省といたしましては、事実関係についてコメントを差し控えさせていただきたいと存じます。
  115. 志苫裕

    志苫裕君 だから事前に通告しておいたんで、わかりやすく言うとこういうことなんじゃないですか。  日債銀なら日債銀、あるいはノンバンクでも、その系列でもいいんですが、融資をしておる企業がありまして、それがいわば不良債権になる。今度、個別金融機関のディスクロージャーを来年の三月期で進めていきますから、そこにえらく不良債権がたまっておりますと経営の当然健全性を疑われることになる。それで考えられますのが、証券会社が株飛ばしをやったように、その不良債権を持っておる会社を、別にペーパーカンパニーをつくりまして、幽霊会社をつくりまして、それに買ってもらう。そこへその金融機関は新しい融資をつけるということですから、ツケ回しになります。そうなりますと今まで焦げついておったところは消えますね。新しいところは、買ったばかりですからまだ六カ月の延滞になっていません。こうやって表向きは大変健全性に見えるけれども、そうやってダミーを次々につくってツケ回しをしているだけの話。つけかえをしているだけです。これを株飛ばしになぞらえて、まあ土地飛ばしというか、「不良債権飛ばし」、こういう見出しをつけているようです。  これはせっかく皆さんの方が、個別金融機関の健全性を確保する、あるいは安定性を確保する、そのためにディスクロージャーをする、こういう方向とは全くあべこべのことであって、これらの点について何かコメントはありますか。
  116. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 個別の取引の具体的な事柄についてのコメントは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として申し上げますと、不動産会社が所有不動産の流動化を図るために時価で売却するという行為は通常の取引でございまして、そのような取引先の事情を踏まえまして銀行が債権保全の観点からそのような取引に協力するということは通常の場合あり得ることではないかと考えているところでございます。  問題は、ただいまの御指摘のとおり、不良資産隠しの意図があるかどうかということでございますが、個別の問題ではございませんが、今後の問題になるわけでございますが、これは具体的なケースになると思いますが、当然当該企業の設立の目的あるいは事業の見通し、当該債権の債権回収可能性等を検討してそのような処理が仮に行われたとしているならば、それは不適正な処理として考えていかなければいけないと考えているところでございます。
  117. 志苫裕

    志苫裕君 あなた、前段の答弁のように、通常の土地の売買なら問題にならぬ、当たり前のことですよ。焦げついちゃっているからこういう数学のマジックを使ってトリックをやっているんですよ。そのことを指摘しているのに、時価で取引するのは問題にならぬなんというのは当たり前のことじゃないですか。時価で取引ができないから焦げつくんでしょう。それじゃ、みばが悪いし、評判も悪くなるから、さっき言ったようにダミーをつくってそちらへ飛ばすんでしょう。こういうことが行われておるということを私は日債銀を例に指摘したんだ。  日債銀の場合には、不動産業者のハイ・トリオというところがもとの融資先だったんだけれども、それが焦げついちゃったから、その債権をプレビアというところに飛ばしたんだ、疎開きしたんだ。  ついでに言っておきましょう。日債銀だけじゃありません。三井信託も、長銀系の第一住宅金融も、エヌ・イー・ディーも、山一ファイナンスも、住友グループも。この債権のつけかえ先はペーパーカンパニーです。中には電話もない、看板もない、登記もない、金融業の免許もない。たまに電話に出てくれば本社の者が出てくる。こういう実態だということを指摘をしておきますから、またしても、この間証券問題で大騒ぎをしたのに、今度は金融機関で似たような行為が行われる。これ見逃しできません。時間になりますからやめますが、この次の機会までに今指摘した点についてきちっと調べるものは調べてください。正すものは正してください。
  118. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 一般論で、個別のケースにつきましては、銀行の取引先のさらにその先の話でございますので、大蔵省としてそれをコメントすることはできないわけでございますが、一般的に、ある企業で回収困難な債権あるいは担保不動産があるという場合には、その不動産を第三者に売却するということはこの種の場合よく行われている行為でございますので、問題はそれがいかなる意図その他によって、銀行行政上不適切なものであるならば正していくということでございますが、この種の取引はかなり一般的に行われているというふうに私どもは認識しておるわけでございます。
  119. 志苫裕

    志苫裕君 だから私は、事柄は皆さんがこれからおやりになろうとする、またいろいろ今日まで議論されてきました金融機関のディスクロージャーにかかわっているから指摘をしているんです。通常の商取引で一般的にそんなものあるなんていうことを聞いているんじゃないんです。そのことをひとつよく心得てください。  終わります。
  120. 牛嶋正

    牛嶋正君 私、最初に、日本開発銀行法の一部を改正する法律案と関連いたしまして、公的金融のあり方について私の意見を述べ、そしてまた国側の考え方をお尋ねしてまいりたいと思います。  日本開発銀行法の一部を改正する法律案の参考資料をいただいておりますが、その三ページに、注2「開銀受信限度倍率改正経過」というものが載っております。  これを見ますと、三十三年四月から平成三年十二月までの改正経過が書かれているわけですが、ちょうど高度成長の三十三年から四十七年まで見ますと、大体二、三年に一倍ずつ引き上げていく、こういうふうな速度ではなかったかと思います。これからしますと、公的金融の民間金融に対する補完的な役割というのはこの間ずっと守られてきたのではないかというふうに思うわけであります。  ところが、昨年、平成三年十二月に十二倍に引き上げられて、そして一年の間に今度は十四倍になるわけでございます。これまでの改正経過から見ますと、これはかなり大幅な受信限度額の引き上げというふうに思います。午前中の議論にもありましたように、民間金融の貸出残高の伸び率に比較いたしまして、公的金融のそれは非常に伸びているわけであります。このことから、私は、公的金融がこれまでの民間金融の補完的役割を一歩踏み出したのではないかというふうに思っているわけであります。  そして、それでは公的金融の新しい役割とは何かということですが、一方で銀行の貸し渋りが言われておりますが、もしこの貸し渋りの間、銀行が自助努力をいたしまして例えば不良債権処理をする、あるいは合理化を進めるというふうなことで、今の金融システムの不安定化というものが少しでも解消されるならば、私はこの公的金融の一歩踏み出した新しい役割というのは、こういった金融の危機のときに金融システムが守らなければならない最低の安定性といいますか信頼性といいますか、それを支えていく、こういう役割ではないかというふうに思っておりますが、これについてどういうふうにお考えですか、お答え願います。
  121. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) ただいま委員の御指摘は、自己資本との相対的な関係において非常に上がっているんではないかということでございますが、これは実は何との比較という問題があろうかと思います。全体のトータル、これを何でつかまえるかという問題はあるのでございますが、全体の例えば設備資金需要の中におきます開銀のウ エートでつかまえるということになりますと、何を基準にとるかによって変わってまいりますが、必ずしも開銀のウエートは上がってないという問題が一つございます。  それから、自己資本との関係では、先ほども御説明しましたけれども、開銀の増資というのは、実は昭和三十年以来初めて今回行われたという問題もございます。一方で資本準備金は若干、千分の三ずつ増加をいたしておりますけれども、相対的にそこの増資のテンポがおくれているという関係でこの倍率が上がったという面もございます。  問題は、開銀補完的な機能を果たしているかどうか、あるいはそれ以上に踏み込んでいるのかどうかというところだと思いますが、これは先ほども委員指摘になりましたように、例えば四十七年から元年まで改正がなかったわけでございます。この当時、つまり昭和五十年代金融が非常に緩和をいたしまして、民間の金融がかなり伸長いたしました。その間、開銀融資あり方につきましてはいろいろな御議論ございまして、そういうこともございまして、開銀融資が余り伸びなかったという経緯がございます。まさにその意味では当時の経済情勢あるいは金融情勢からして開銀の出動が求められなかった。一方で自己資本は余りふえませんで、限度倍率がそのまま据え置かれておりますと、総体として余り伸びられなかった。  ただ御承知のように、ただいま委員指摘のありましたような状況になりますと、やはりこれの必要性が出てきたということで、そのときどきの情勢開銀あり方限度倍率改正ということで国会で御議論いただいてお決めいただくということになるのではないかと思います。
  122. 牛嶋正

    牛嶋正君 今私が申しましたこういった金融の危機のときに、公的金融がシステム全体の安定性を下支えするというようなことになりますと、公的金融の一機関であります日本開発銀行もやはりそれに沿った形で融資をしていかなければならないというふうに思います。  その場合に問題になりますのは、やはり受信限度倍率ではないかというふうに私は思うわけですけれども、これまでこのように上げてまいりましたけれども、民間金融の方の貸し渋りで公的金融が融資をしなければならないということであっても、今申しました金融システムが最低守らなければならない安定性を考えますと、この倍率もやはり限度というものがあるのではないかというふうに思います。  ここでは受信限度倍率で計算されておりますが、いわゆる自己資本比率に直しますと、これは逆数になるわけでございます。そういたしますと、十二倍というときにはこれは八・三%ぐらいですが、これが十四倍ということになりますと、逆数では七・一%というふうになります。  適正な自己資本比率がどういうものであるかということは、非常に設定が難しいと思いますけれども、一方ではBIS規制など八%というふうな数字が出ているわけでありますが、それと関連して、公的金融ではありますけれども、どのあたりが一つの限界であるのか、もしそういった限界についてお考えであればその考えを述べていただきたいというふうに思います。
  123. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) BISの自己資本比率が八%という規制がございます。これとの関連での御質問でございます。  実はBIS規制というのは、委員御案内のとおり金融の自由化、国際化の進展に対応いたしまして、やはり受信面、与信面におきましてかなり規制緩和が行われていく。その過程で銀行のリスクに対応した健全性を確保するためという目的と、同時に国際的に活動する銀行間の競争条件の公平性を確保するという観点から八%という基準が定められたわけでございます。これは海外で活動する銀行に課せられる条件でございまして、国内の自己資本比率規制は現在のところ四%ということになっております。  そういった海外と国内の問題もございますが、開銀の場合は基本的には民間金融機関のように自由な活動が許されているわけではございませんで、特に与信面におきましては財投計画で各省庁の予算要求、予算決定というそういうプロセス、かつ国会にお諮りするという過程で決められるものでございまして、民間金融機関のリスクと必ずしも同列には論議できない。  それから政府関係金融機関の中でございますと、国民公庫とか中小公庫にはこういった限度が設けられておりません。一方、この開発銀行と輸出入銀行はやはり公庫とは違って収支相償機関だという原則で一定限度が設けられておりますので、その関係でどう考えるかという問題ではないかと思います。  当然、今後開銀に対する融資のリスクがどう変わるか、どういったものを政策的なニーズとして対応していかなければいけないかということによってその考え方も変わっていくかと存じますが、現在のところ特にこの点につきまして問題が生ずるというふうには私ども考えておりませんが、今後の問題として、今後の開銀に対するニーズの変化に対応してその辺をどう考えていくかというのはこれからの問題ではないかと思っております。
  124. 牛嶋正

    牛嶋正君 金融システムの中での公的金融の変化、位置づけの変化でありますが、これは預金市場にも見られるところでございます。  最近、郵便貯金への資金シフトが非常に起こっているわけでありますが、これまで五十年以降で考えますと、今回の場合を含めまして三回ぐらい資金シフトがあったのではないかと思っております。  一つは五十年の初頭でございまして、恐らくこの場合は高度成長を通じまして個人の資産蓄積が進んできて、だれもが金利選好を非常に強く持つようになってきた。そのときに定額貯金の有利性、これがシフトを引き起こしたのではないかというふうに解釈できるかと思います。二番目は、少額貯蓄の優遇措置と関連いたしまして、五十年のちょうど中ごろにもう一回の郵便貯金に対するシフトが起こっているように思います。これに対しまして今回のシフトというのは、これまでと違って金融システム、特に銀行の信頼性が低下したというところにシフトの原因があったのではないかというふうに思っております。  こういうふうに考えますと、貸出市場それから預金市場を通じまして公的金融というものがその新しい役割を、こういったバブルの崩壊という金融システムの危機のときに、その安全性の下支えというふうな形で担うようになってきていると思うんです。そういたしますと、今後の金融の自由化を進めていく中で、公的金融をどういうふうに位置づけていくのか、従来どおりいくのか、あるいは今私が申しましたような新たな役割を考慮して、もう一度金融システム全体の中での公的金融のあり方というものを見直そうとされているのか、そのあたりお尋ねしたいと思います。
  125. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 昨年の郵便貯金への資金シフトの問題につきましての御指摘がございましたが、実は昨年の郵便貯金への資金シフトの原因につきましては、私どもとしては、金利自由化の過渡期におきまして市場金利と規制金利が併存している状況がございます。たまたま平成二年は市場金利が非常に規制金利よりも有利な状況がございまして、その結果、郵貯はたまたま集中満期という問題もございますが、かなりいわゆる市場金利の方が高とまりでございましたので、民間のそういった自由な市場金利商品へ資金シフトが起きた。それから郵貯の中でも自由化関連の郵貯MMCに郵貯の中からシフトが起きた。  ちょうど平成三年はその逆の現象が起きまして、結果としてより有利な規制金利商品である郵貯に資金シフトが起きたと考えております。たまたま金融自由化の過程におきまして、自由金利と規制金利が併存した結果、そういった現象が起きたと考えておりまして、特に民間金融に対する信頼が低下した、その原因によるものではない。現時点におきましては金利の相対的な有利性というのはほぼイコールになりましたので、まだ余韻は 残っておりますけれども、シフトは今のところはほぼとまっているというふうに認識をしているわけでございます。  それから、今後のあり方でございますが、やはりこれは公的金融システム全体として市場金利メカニズムに即応した体制にいかざるを得ない。そういうことで、郵貯の運用面の金利は財投金利でございますが、これは既に国債金利連動という市場金利連動のシステムができております。郵便貯金につきましては、これから金利自由化の過程でやはり市場金利連動というシステムで位置づけていく、そういうことで今後の公的金融システム全体が市場金利全体の中で整合性を持ったものになるようにしていくことが必要ではないかと考えております。
  126. 牛嶋正

    牛嶋正君 次は金利の自由化について二、三お尋ね申し上げたいと思います。  私は、今回のバブル崩壊後の金融システムの不安定化、これは金融の自由化と非常に関連しているのではないかというふうに思っているわけでございます。と申しますのは、金融の自由化というのは、一方で東京に対する一極集中を加速させてきたのではないか、こういうふうに私考えたいからであります。  もしそうだといたしますと、今回のバブル経済の発生というのは、私は人、物、金、情報が東京一極集中する、それが金余り現象と結びついて、実質的な価値以上に資産の名目価値を上昇させてしまった、こういった現象ではないかというふうに思っているわけであります。  それじゃ、なぜこの金融の自由化と東京一極集中とは関連するのかということですが、高度成長のときにも東京への一極集中が起こりました。私は、このときの大都市の人口吸引力というのは雇用機会の創出にあったんではないかというふうに思っております。すなわち、東京、名古屋、大阪といった大都市の臨海工業地帯というものが形成されて、そこで大量の雇用機会が発生いたしました。それを求めて地方から大都市に向かって人口が集中する。その集中した人口がさらに新たな需要を生み出して、そして雇用機会をつくっていく。すなわち、雇用機会を媒体にして大都市への集中のメカニズムというものが進んでいったというふうに思います。  今回の東京一極集中は、それに対して私は情報が媒体になっているのではないかと思っております。すなわち、経済のサービス化あるいは国際化、こういったことで経済活動を展開していく場合に、これは家庭での消費活動も同じですけれども、情報というのが非常に重要な要素になってきております。当然、その情報が集積しているところに情報を求めて企業なりあるいは人口が集中をしていくわけであります。  その場合に、情報の集積ですけれども、これは私はやっぱり人口の規模と関連しているように思います。すなわち、情報というのは結局は人と人とのコミュニケーションでありますから、したがって人口の集中しているところで情報の集積がある。我が国では当然東京が最も大きな情報集積を抱えているわけでありまして、これに向かって人口なりあるいは企業なりが集中していった過程が今の東京一極集中のプロセスではないかと思います。  そういった中で、金融情報というのは非常に重要であります。むしろ私は、金融情報が他の都市中枢機能の東京への集中を促していったのではないか、こういうふうな見方をしているわけであります。そして、この東京への金融機能の集積、集中、これがもし金融の自由化と関連すると、自由化によりましていろいろな規制が外されていく。そういたしますと、経済原則に基づきまして東京という情報の集積しているところに金融機能も集中するのは当然ではないかというふうに思っております。  その東京一極集中によって生み出された今回のバブル経済、そしてそれが崩壊していく。この過程で金融システム全体の不安定化が進んでいったとするならば、私は今回の金融システムの不安定化と金融の自由化というのは非常に密接に関連しているのではないかというふうに思います。  金融の自由化は、午前中の議論にもありましたように、競争原理を導入して資本市場全体の調整機能を高めていく、そして資金の流通をよくしていくということでありますが、今の金融システムの不安定化がもし資金の停滞をもたらしているとするならば、私は金融自由化というのはパラドックスを含んでいる、自己矛盾を含んでいるのではないかというふうに思うわけです。  そういたしますと、なぜ金融の自由化がそういったパラドックスを生み出しているのかということですが、私は、その場合考えなければならないのは、金融の自由化の速度ではないかというふうに思います。私が考える適正な速度というのは、やはり金融システムの前提であります安定性あるいは信頼性、そういったものを十分に確保する中で自由化を進めていく、そのときに金融自由化の適正な速度というものが考えられるのではないか。今回の自由化は、そういう意味ではその適正と考えられる速度を超えたのではないかというふうに思います。  そういうふうに考えますと、これからの金融自由化ですが、これまでに立ててこられた自由化のスケジュールをそのまま実行されていくのか、あるいは自由化の行動計画を見直そうとされているのか、そのあたりお聞きしたいと思います。もし見直そうとされている場合、どういう点で見直しを行おうとされているのか、お聞きしたいと思います。
  127. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) いわゆるバブル期におきます資産価格の上昇というのは、経済の情報化あるいは国際化等の経済実態を反映した面もございますが、同時に金融緩和局面におきまして潤沢な資金供給が図られましたことや、投機的な取引が活発化したこと等による面もあるものと思われます。  問題は金融自由化進展との関係でこれをどう考えるかということでございますが、委員先ほどの御質問にもございましたように、金融の自由化が進む過程におきまして、例えば郵貯と民間預金との関係を見ますと、規制金利と自由金利が併存することによる弊害もまた出てきているという問題もございますので、まさに御指摘のとおり、金融システムの安定性、信頼性を維持しつつ適切なテンポでそれを進めていく必要があるということでございますので、今後とも引き続きそういうことを十分念頭に置きつつ対応していきたいと考えております。  繰り返しになりますが、先ほどのような問題もございまして、金利自由化が一たん進み出しますと、規制金利が残ることによる不合理な面もございますので、そういうことを加味しながら、今のところ例えば金利の自由化につきましては来年定期預金金利、さらに再来年流動性預金金利と、これは既に何年もかけて進めてきたことでございますが、そういった方向で進めてまいりたいと考えているところでございます。
  128. 牛嶋正

    牛嶋正君 最後はお願いでございますが、これまでの金融自由化を見ておりますと、どうも民間金融が中心でございまして、しかし資本市場と申しますか金融市場と申しますか、全体を見る場合に、やはり公的金融も一緒に考えていかなければならないかと思います。ですから、今後の金融の自由化に関しましては、できれば公的金融それから民間金融の整合性、さらには先ほど指摘いたしました公的金融のあり方についても十分検討しながら全体としての自由化の方向、資本市場全体が調整機能をできるだけ高めていくように努力をしていただきたい、こういうふうに思います。
  129. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 当初に委員指摘のとおり、公的金融はやはり民間金融機関補完的な役割を果たすものとしての位置づけがなされているわけでございます。ただ、補完的な役割と申しましても、その時々の状況に応じましてその役割の性質が変わってくる。それから公的金融に対するまさに政策的なニーズがやはりその時々の情勢によって変わっていくということでございますの で、金利のシステム全体としては先ほど申し上げましたような位置づけでございますが、逆に公的金融の果たすべき役割、またこたえなければいけない政策ニーズというのは不断の見直しが必要だと考えておりまして、今後とも引き続きそういった観点から見直しを図ってまいりたいと考えているところでございます。
  130. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、メモをいただきまして、あと二分しかございませんので、二分では私が用意いたしました御質問全部お聞きするわけにはまいりません。最後に個人貯蓄率の低下傾向についてちょっとお伺いをしたいと思います。  今、私の手元に「図説 日本の財政」、大蔵省から出しておるもので、平成年度版がございます。そこに「家計貯蓄率の国際比較」という表がございまして、これを見ますと各国とも貯蓄率は低下しているわけです。恐らくこれは、その経済が成熟化していけばいくほど、社会保障制度なども充実してまいりますから、低下するのは一般的な傾向ではないかと思います。しかし日本の場合、それでもまだ諸外国に比べまして高い個人貯蓄率を示しておりますが、どうもその低下傾向、その低下の速度が諸外国に比べて速いわけでございます。これからも、二十一世紀まである程度安定成長を持続する、政府がおっしゃっておられる三・五%を維持していくためには、やはり個人貯蓄率、これをある程度の水準で維持することが私は必須条件ではないかというふうに思います。  これまでの我が国の経済の健全性というのは、幾つかの要因があると思いますけれども、その中でもし私が挙げるとするならば、個人貯蓄率が高い水準で維持されてきたということではなかったかと思います。私、最近の貯蓄率の動向の数字がございませんので、その動向の数字がありましたら教えていただきたいということと、こういった低下傾向についてどういうふうにお考えになっているのか、これを最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  131. 日高壮平

    政府委員(日高壮平君) まず初めに、現在の我が国の貯蓄率についてでございますが、貯蓄率という場合に、我が国の場合ですと実は統計が二つございます。  先生が御指摘になられました貯蓄率が低下しているという状況は、実は国民経済計算による貯蓄率は確かに年々低下してきておりますが、この統計につきましては平成二年までの数字でございまして、平成三年につきましてはまだ統計がございません。  もう一つの貯蓄率といいますのは、いわゆる家計調査によります貯蓄率でございますが、この場合ですと、昭和五十七年をボトムにいたしまして実は年々上昇してきております。したがって、例えば平成二年二四・七%から平成三年にはこれが二五・五ということで、さらに上昇しているという状況にございます。  したがいまして、この両者の統計は傾向としても水準としても随分違うわけでございますけれども、これは恐らくその貯蓄の裏になります消費の範囲のとり方、あるいは対象となります世帯の範囲のとり方、そういったものの違いがあるんだろうと思っております。  ただ、委員指摘になりましたように、そのどちらの統計をとりましても、例えば低い方の、一四、五%台でございます国民経済計算の貯蓄率で諸外国と比較をいたしましても、やはり水準としては非常に高いということは事実でございます。今まで、我が国の場合ですと、こうした家計における高い貯蓄率、それが裏打ちとなって、民間なりあるいは公的部門のいわゆる設備投資といいますか固定資本形成が順調に進められてきたということは事実であろうと思います。  御指摘がございましたように、いわゆる働き手の若年あるいは中年層が比較的豊富な現在において、これから本格的な高齢化社会の到来に備えるということを考えますと、やはり今回私ども政府でも策定をいたしました生活大国五カ年計画のそういった実現をさらに目指していくという意味での長期的な取り組みは必要であろうと思っております。  そういう意味で、貯蓄率につきましてはほどほどの水準が確保されねばならないだろうという委員の御指摘は非常にわかるわけでございますけれども、他方で、今までの、戦中あるいは戦後の経済復興期と異なりまして、現在では我が国は資本輸出国という状況になっております。そういう現在から考えますと、ある程度の貯蓄率というものの必要性というものは私ども認めてはおりますけれども、他方でそれを何らかの形、つまり政策的な形で一定の水準に貯蓄率を維持しなければならない、そういうような見方というものは、過去の、戦後の経済復興期等に比べれば薄れてきているんではないだろうか。  そういうような観点から、あるいは税制上の不公平感の是正ということももちろんございましたけれども、先般いわゆるマル優制度が廃止になりましたのも、そのような考え方からによるものではないだろうかというふうに考えております。
  132. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 午前取り上げました銀行局長通達、大蔵省に意見を求める時間がとれませんでしたので、最初にこの問題もう一度取り上げたいと思います。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  局長通達では、「十分周知徹底されるよう配慮されたい。」、こういうふうにきちっとなっておりますので、私もそれを求めたわけです。  午前も言いましたけれども、実際徹底してないんですよ。例えば課長さんでそういうのを念頭にないと言う人がいる。後からファイル見たらちゃんとあったと。こういう反応を示す人もいるぐらい徹底していませんので、そういう事実があるかないかを確かめろということじゃなくて、だから徹底してくださいということを私言ったわけです。  つい最近も、国民金融公庫にも関係のある団体が総裁国民金融公庫の全職員に周知するよう要望書を出したんです、これについて。そういう現状があるから私は公庫に午前提起したようなことを申し上げたわけですが、これは大臣、こういう「十分に周知徹底されるよう」という通達を出した以上、周知徹底に大蔵省としても当然当たられると思いますけれども、この点最初に一言だけお返事をいただきたいと思います。
  133. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 政府といたしまして、これらの通達が十分に実効性が上げられるように関係金融機関に対しまして指導してまいりたいというふうに考えております。
  134. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 次に、税制の問題に入りたいと思います。  といいますのは、私ども今の不況緊急対策、第一に業者の要望しているところの緊急融資ということと、同時にやはり国民購買力を向上させる真の内需拡大策として、午前も論議になりましたけれども、減税ということが必要だと思います。私ども消費税の廃止を目指して、食料品非課税、所得税減税などについての緊急減税も政府に申し入れもしてきました。  ところで、私どもがそういうことを要望しているときに、新聞報道によりますと、政府税調は小委員会を設けて消費税の税率アップを中心とする税制抜本改革の検討を開始するという報道がありました。これは大臣、こういうのは、年内にも小委員会が設置されてそういう検討を開始するという報道、そのとおり大体運んでいるんですか。
  135. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 税制調査会におきましては、平成年度の税制改正につきまして大変精力的に御審議をいただいておるというふうに私ども承知しております。  ただ、進め方につきましては、基本的にこれ税制調査会御自身がお決めになる事柄でございまして、現時点において御指摘のような審議の日程が決められたということはないというふうに私どもは承知しております。また、政府として報道のような検討作業を予定している事実というものはないことをこの機会に改めて申し上げておきたいと存じます。
  136. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 いずれにせよ、税調の審議が引き 続いて行われることは当然ですが、その際、報道にあるような税率引き上げ中心とするということ、これは税調自身の問題だとおっしゃいますけれども、この問題についての大臣の考え方はいかがでしょうか。
  137. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) この点につきましては、私どもは中長期的な観点の中で議論をするということはあると思うんです。そして私どもは、消費税というのは、今委員からの御指摘と反対で、定着されておるなというふうに考えておりまして、今後どうするかということについては中長期的な中で議論すべき問題であって、そのときには所得税とかいろんなものを合わせながら考えていくべき問題であろうと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、こういった問題についてはやっぱり国民の理解というものがなければならないということでございまして、昨年の十月ですか、国会の方でお決めいただきました。これをより定着を図っていくということに努めるのが今日の私たちの考えであるということであります。
  138. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 中長期的には税率アップの検討も行われるということ、これは私ら廃止を求めている立場から、強くそういうあれには反対ですが、経団連が九月に発表した見解、「平成年度税制改正に関する見解」というのによりますと、「消費税を基幹的な税制としていくことが、不可欠」だ、こういうふうに言っております。  今の中長期的には税率アップも検討するという答弁とこれと重なるのかどうかわかりませんが、大臣は消費税を基幹的な税制にするというこの経団連の見解について同意見ですか、あるいはそれとも異なる意見をお持ちなのか。
  139. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) この点について申し上げますと、税負担は担税者の負担能力、これをしんしゃくして割り当てられるべきものであろうと考えておりますし、また負担能力をはかる基本的な尺度としては、所得のほか、消費や資産もその尺度となるものというふうに考えております。  一方、いかなる税目もそれぞれの長所を有する反面、何らかの問題点を伴うものでございまして、税収が特定の税目に依存し過ぎる場合には、その税目の抱える問題点が増幅され、あるいは税負担の公平な配分を妨げ、国民経済に悪影響を及ぼしかねないというふうに思っております。そういう意味で、税体系につきましては、所得、消費、資産等に対する課税を適切に組み合わせていくことが必要であるというふうに考えております。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  先般の税制改革が行われる前におきましては、税体系の中で負担が給与所得を初めとする個人の勤労所得に偏る一方で、その裏腹として特定の嗜好品やあるいは奢侈品などを主な課税品目とする個別の消費税制度に依存する消費税課税のウエートが著しく低下していたということがありました。また、このような税制を放置した場合には、勤労所得への負担の偏りというものが一層進んでしまって、不公平感ですとかあるいは重税感、これが増幅されようと考えたこと、こういったことを配慮いたしましたときに、こういう事態を避けて税体系というものをより公平なものに改める見地から、先般の税制改革では所得税の大幅な減税、そして消費税の導入、資産課税の適正化によりまして均衡のとれた税体系の構築を図ったものであろうというふうに考えております。  いずれにいたしましても、税負担の公平を確保しまして、税制の経済に対する中立性というものを保持して、税制の簡素化を図ることを基本原則として、私どもは適宜必要な見直しを行っていきたいということでございまして、やっぱりバランスのとれたものでなければいけないという考え方であります。
  140. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 消費税については参議院は本会議で廃止の議決を行っているということも念頭に置いて税制の問題は私は常に考えていただきたいと思います。今の答弁は、消費税を基幹的な税制とすることについての端的な答弁にはなっていないと思います。  それはおきまして、税制を考える場合にひとつ大臣にお伺いしておきたいんですが、私はかってここの大蔵委員会にいたときに、当時の宮澤大蔵大臣に、税制の基本的な考え方として、戦後の民主主義税制の根本原則についての見解を求めました。そのときに宮澤さんはこうおっしゃいました。「総合性、累進性、生計費非課税といったような考え方は今日でも私は有効であると思います。」と。  このごろ国民が広く薄く負担するという議論はあるけれども、累進性というふうなことはもう全然論議の対象になっていないんですね。僕は大蔵大臣にお伺いしたいんですが、総合性、それから累進性、生計費非課税、今も有効だと宮澤さんはおっしゃったんですが、これはもう有効でなくなったとお考えですか、やはり有効だとお考えですか。
  141. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) この点端的に申し上げますと、現宮澤総理がお答えいたしました総合性、累進性、生計費非課税といったような考え方、これは今日でも私は今の税制の中にやっぱり生きているんであろうというふうに思っております。
  142. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 今のが生きているということになると、私は消費税というのはこれに反するものだというふうに言わざるを得ないと思います。私ども消費税については廃止を要求している。これは私どもだけじゃなく野党各党は今日もなお各党とも消費税廃止を主張しております。  それはさておいて、私は、当面の要求として飲食料品非課税ということは検討もなさらないかどうか。これは自民党もこの前の総選挙で公約に掲げられたものでありますし、私も参加していました両院合同の税制協議会専門者会議ではさんざん論議になった。その際、自民党も飲食料品については小売段階非課税という提案をなさって、各党最後にはそれじゃその自民党の提案どおりで実現しようじゃないかということになったら自民党に逃げられたという経過がございますけれども、逃げられた経過は別としまして、飲食料品非課税ということについては検討もしないのか、何らかの考えをお持ちになっているのか、大臣にお伺いします。
  143. 濱本英輔

    政府委員(濱本英輔君) ただいま御指摘がございました二つの点、主に後の点についてのお尋ねがあったわけでございますけれども、最初の点につきまして一言だけ補足的に申させていただきますと、確かに吉岡先生御指摘のように、総合性とか累進性とか生計費非課税といったような考え方が今の所得税の考え方の中に生きているというのは、私どももそう思っておるわけでございますけれども、たびたび政府の側でも御答弁申し上げておりますように、税制体系全体として考えましたときには、そこに所得税あり消費税あり資産税あり、幾つかの種類のそれぞれねらいを少しずつ異にした道具を組み合わせてすることによりまして、一番いい税体系がつくられるんだという考え方のもとに進んでおります。したがって、すべての税につきまして、今おっしゃったようなものがどういうふうな形で生かされるかというのは、それぞれの税によって考え方が変わってくるということは当然あろうかと存じます。  それから、今御指摘がございましたように、食料品非課税の問題、この問題は大きな問題であったわけでございますけれども、平成二年三月に出ました法案の中に盛り込まれておったということは事実でございますけれども、この法案はこの国会の場におきまして廃案となったわけでございます。法案処理の結果を踏まえまして、与野党がその責任を果たすとのお立場から、国会に税制問題等に関します両院合同協議会が設置されました。これは平成二年六月のことでございました。この協議会の結論として、昨年五月、議員立法が行われ消費税法の一部改正が行われたわけでございますけれども、そのときにこの食料品の非課税の問題だけ残りまして、十月二十三日に、結論として各党会派の意見の一致が見られなかったという御報告があり、私どもはこの御報告を踏まえて対応 させていただいているということでございます。
  144. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私は消費税の問題で大臣に一言だけ要望的に述べたいんですが、私、中公新書で「ネロ」という本を読みました。これはローマの暴君とも言われるし、一部には名君という評価もあるそうですけれども、これを読んでみますと、こう書いてあります。  「民衆の動向を深く気にしているネロは思い悩んで「いっそのこと、すべての間接税を廃止したらどうだろう。それこそ人類に与えられる最もすばらしい賜物ではあるまいか」」、こう考えたけれども、これは全面的に実行はできなかったということも書いてあります。私どもも間接税はすべてなくせとは言っておりませんけれども、やはり消費税、とりわけ飲食料品非課税ぐらいは実現していただきたい。でないと、ネロ以下になってしまうということを申し上げて終わりたいと思います。
  145. 池田治

    池田治君 午前中の質問に関連いたしまして、不良債権の買い取り会社についてお尋ねします。  不良債権を買い取るといいましても、内容は担保となっている不動産を買い取るのと実質的に変わりませんので、担保処分ができなくては新会社設立の目的は達成されないと思います。  それなのに、十月三十日発表されました買い取り会社設立の骨子案では、会社の存続期間十年、不良債権買い取り期間五年、初めから限定されておりますが、この期間内に不良債権処理ができるのかどうか、期間内に処理するまた確信はあるのか、期間を限定されました理由を述べてくれませんか。
  146. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) この会社を設立いたしましたねらいは、民間金融機関の自助努力によります不良債権処理方針の早期確定と計画的、段階的な処理ということでございます。そのことによりまして、金融機関の信頼性を強化し、かつ融資対応力を向上させる。それによって経済に必要とされる資金の円滑な供給を図ろうということがねらいでございますので、債権の処理がいたずらに遅延するということは、またこの会社設立のねらいとも反するものでございまして、できるだけ早期の処理が望ましいということで、買い取り期間五年、全体として十年と、こういったスキームになったものと承知をいたしております。
  147. 池田治

    池田治君 そうしますと、買い取り期間が過ぎればこの会社は解散するのでございますか。その場合、債権がまだ残っていた場合、どうしますか。
  148. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) これはできるだけ不良資産の処理方針の早期確定と計画的、段階的処理を図るということでございまして、本来この会社は恒久的に存続させるべきものではなくて、その目的が達した場合には解散されるというのが本来の目的でございます。  それで、債権を買い取って、基本的には先ほど委員指摘のとおり、その担保となっている不動産がいわゆる市場に売却されてそれで回収されるということをねらいとしてつくったものでございますけれども、仮に最終的にどうしても何か残るといった場合には、もう一度それは当初の金融機関にさらに戻すという仕組みになっているわけでございます。
  149. 池田治

    池田治君 新会社の資本金は六十億ということで、十二兆もの不良債権があるのに対してちょっと少な過ぎるのではないかと懸念をしておりましたが、よく調べてみますと、資金調達のところで、買い取り会社が債権の買い取りに関し必要とする資金は、買い取りにかかる諸費用を含め債権を持ち込む金融機関融資すると、こうなっております。そしてまた、そのときの担保は当該債権、不動産を担保とする、こうなっておりますね。これは間違いございませんね。
  150. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) そのとおりでございます。
  151. 池田治

    池田治君 そうしますと、銀行が持つ不良債権つき担保を買い取り会社へ買い取らせる、その際には銀行からまた別の融資、買い取ってもらう銀行融資をして買い取らせると、こういうことになりますね。そうしますと、結局またその担保も買い取ってもらうところが第三者に売却できるまではもとの銀行が担保を所有している。  こうなってまいりますと、先ほどのだれか議員がおっしゃったように、これは銀行を救済するだけで、何ら経済の活性化には役立たぬじゃないか、銀行の不良資産を経理上処理するための機関ではないかと言われることがぴたっと当たるような気がするんですが、その点いかがでしょうか。
  152. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) 八月十八日の運営方針にも述べておりますように、あくまでもこれは金融機関の不良資産の処理方針の早期確定と計画的、段階的な処理を図るために設けられたものでございますので、まさにこのような仕組みをつくることによりまして、金融機関の損失処理が進められるという当初の目的はまず達成されるわけでございます。  しかしながら、担保となっております不動産が買い取り機関の担保となって持ち込まれる過程におきまして、実はいろいろ錯綜している権利関係がある程度整理をされないと持ち込まれなくなるということがございますのと、さらに第三者によります価格判定委員会によりまして、買い取り会社にとりまして不動産価格につきまして一定の評価が行われます。それによりまして、担保となっております不動産が、そうでない場合に比べて売却がしやすい状況になっているという効果があるわけでございまして、それを不動産市場に売却して債権を回収するというスキームになりますから、そうでない場合に比べましても、これは不動産流動化には資するということになると考えております。
  153. 池田治

    池田治君 何もないよりかは不動産流動化には役立つと思いますが、ちょっとそのところ、余り銀行救済という点が出るんじゃなかろうかと私は考えます。
  154. 寺村信行

    政府委員寺村信行君) これは損失を処理するに当たりまして、金融機関がみずからの内部蓄積で処理をしなければいけない。あくまでも金融機関の自己責任原則で処理をするという仕組みになっているところでございます。
  155. 池田治

    池田治君 それにつきまして、今回の総合経済対策では、金融機関の抱える不良債権処理のためには税務上の取り扱いを弾力化することも盛り込まれております。これを受けて、国税庁が九月十八日、債権償却特別勘定への無税繰り入れ条件緩和を内容とする通達をお出しになりました。  これによると、債務の超過期間は従来の二年以上から一年以上とする。そしてまた回収見込みのない債権額の割合は、貸出金の従来五割以上であったのが今回は四割以上とする。こういうことで条件を緩和されましたが、この債権買い取り会社への債権売却損の無税処理というのと、従来行われてきました株式や債権の無税繰り入れとは異なるものか同じなのか。つまり無税繰り入れ条件の緩和は一般的なものでしょうか、それとも買い取り会社特有のものでしょうか、お答え願えませんか。
  156. 松川隆志

    政府委員(松川隆志君) 今御指摘のありました債権償却特別勘定の問題でございますが、これは法人の有する債権につきまして、貸し倒れ、例えば非常に債務超過が長期間続き、回収が困難であるというような一定の事由がある場合に、貸し倒れに準ずる事実があったということで、その回収不能な部分についての繰り入れ損の損金算入を認めるということでございまして、これ債権自体はまだ存在しているわけでございます。この要件を九月の時点で若干緩めたわけでございます。  そして、今回の買い取り会社の構想におきます問題でございますが、これは金融機関がその持っている債権を売るという形で実現損が生ずるということでございまして、これはまさに債権の譲渡の際の実現損であるということでございます。したがいまして、これは法人税法上ももともと損金に算入されるものでございますので、債権償却特別勘定といういわゆる無税償却の問題とこの実現損の問題とは別の問題でございます。
  157. 池田治

    池田治君 そうしますと、債権償却特別勘定へ の条件というのは、部長がおっしゃるには簡単なように受けとれますけれども、なかなか現実には、一般の会社や個人が無税償却をしてくれと言っても償却されないのが現実のようでございます。ところが、今回の買い取り会社に対する売却の損は、いわば無条件のように売却損が算入できるということになって、これは税の公平上ちょっと問題ではないか、こう思いますが、いかがですか。
  158. 松川隆志

    政府委員(松川隆志君) 今委員の御指摘になりました債権償却特別勘定の問題でございますが、これは実質基準と形式基準、二つございまして、存在する債権についてまだ貸し倒れも生じていないのに損金を認めるということでございますので、やはり比較的慎重にこれは判定するという基準になると思います。  そして、今回の買い取り会社の問題でございますが、これは例えば債権を譲渡するというのは我が国では比較的例が少ないわけでございますが、株式等の有価証券を売却した場合には、実現損として、益が出れば実現益、損が出れば実現損として税務上益金に算入したり損金に算入するということでございますので、これはまさに金融機関に限らず一般的に適用される原則であるということでございます。
  159. 池田治

    池田治君 ですから、私は、一般的なものは条件緩和されたということはよく通達でわかるわけですが、買い取り会社特有のものは実現損としてすぐ評価できるということで、特別扱いをされているんじゃないかという懸念でお尋ねしているんですが、いかがですか。
  160. 松川隆志

    政府委員(松川隆志君) したがいまして、ただいま御説明いたしましたように、他の一般の法人が、今回と同様のスキームを考えまして債権の譲渡損をいわゆる損金経理したいということでございますと、同様の条件で認めるということになると思います。
  161. 池田治

    池田治君 それでは、債権売却損の計上についてでございますが、金融機関の持っている不良債権を買い取り会社に売却をしたときにも、これ損金決算ができるということのようでございます。そしてさらに、今度買い取り会社が第三者に売却をしたとき、そのときにもまた欠損があれば損金計上ができる、こういう二重の構造になっているようでございますが、これは何か税法上の問題がございませんでしょうか。
  162. 松川隆志

    政府委員(松川隆志君) このたび明らかにされました買い取り会社構想におきましては、金融機関が債権売却時におきまして、いわゆる価格判定委員会が決定した価格で売却するわけでございます。それで、いわば仮価格として売却損が発生するわけでございますが、さらに実際に第三者に売却して損益が確定した場合に、その当初の売却価格と確定価格の差額、これは利益が出たり損失が出たり、両方あり得ると思いますけれども、それはその段階において、その差額につきましては利益を計上したりあるいは損失を計上するという形で法人税法上は取り扱うということでございます。これにつきましては、いわゆる不良債権の取引をするマーケットが我が国にはないというような実情から、いわゆる合理的な価格であれば仮価格での取引を認めるというふうにせざるを得ないということでございます。  それから、今回の買い取り会社につきましては、いわば相応の範囲でキャピタルゲインやキャピタルロスを買い取り会社に帰属させるということにしておりますので、そういうことを総合勘案して、税務上は今申しました仮価格での損金経理と、それから最終的な確定価格における損金益金経理という二段階で経理することを認めているわけでございます。
  163. 池田治

    池田治君 だから、私が申すのは、仮売買で損金を落とすということは一般には認められないことなんですね、仮の売買ですから。それを三年も四年もたった後に、買い取り会社が第三者に売却した、このときに初めて欠損があれば欠損繰り入れができるんじゃないか、私はこう考えるんですが、今回の構想では、仮のときに認めて、また最後に売ったときに認める。それは何年かかってもいい。こういうことなので、僕は税務上問題がある、こう思っておるんですが。
  164. 松川隆志

    政府委員(松川隆志君) このような取引は他の業態においても発生しておりまして、例えばそのために、法人税基本通達二−一−四ということで、こうしたいわゆる仮価格における経理をして、最終的に確定した時点でまた再度損益を確定するということで認めております。したがいまして、金融機関に対してだけ認めているということではございません。
  165. 池田治

    池田治君 もう時間でございますから終わりますが、ちょっと尋ね足りないところもありますので、また暇なときお伺いに行きますのでよろしく。  終わります。
  166. 島袋宗康

    島袋宗康君 今、公共事業の暫定補助率見直しが問題になっているようでありますが、この公共事業補助率、負担率の取り扱いについてお尋ねいたします。  大蔵省は、公共事業の補助率見直しを一年前倒しをして、九三年度平成年度予算編成で抜本的に見直す方向で検討に着手したということですが、見直しをする上での大蔵省の基本的な考え方、また関係省庁との協議の状況について御説明をお願いしたいと思います。
  167. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 現在の公共事業の補助率につきましては、これは平成年度までの暫定措置とされているわけでございますが、実は大蔵省、自治省を初め建設省等の各事業官庁間におきまして、この補助率につきましては、行革審答申等を踏まえ、体系化、簡素化等の観点から総合的検討を進め、暫定期間内に結論を得るよう最大限努力をし、その上で経済、財政事情、各公共施設の整備状況等を踏まえつつ可能なものから逐次実施に移すことということになっておるわけでございます。  臨時行政改革推進審議会の平成元年の答申におきましては、基本的には国と地方とが等しく分かち合う性格の事業につきましては補助率を二分の一、それから諸要素を勘案の上に、これより高いものは三分の二、低いものは三分の一とするように簡素化しなさいという答申を実はいただいているわけでございます。またあわせて、著しく高率な補助率あるいは特例的な補助率のかさ上げにつきましても見直しを行いなさいという答申をいただいておるわけでございます。  こういう答申等を踏まえながら、現在各関係省庁間で補助率の見直しにつきまして検討作業を行っているところでございまして、現段階で確たることはまだ申し上げられる状況ではございません。
  168. 島袋宗康

    島袋宗康君 これから検討するということでありますけれども、このような考え方に対して、自治省、それから沖縄開発庁など関係省庁はこの問題についてどういう見解をお持ちなのか、もしおわかりでしたらちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  169. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 関係省庁間で現在作業を進めているわけでございますが、政府部内の、またしかも本当の作業段階でございますので、その内容について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  170. 島袋宗康

    島袋宗康君 伝えられるところによりますと、大蔵、自治両省は、公共事業への国の補助率が事業内容によってばらばらで地方自治体の事務負担を重くしているため、先ほど説明がありましたように、補助率を原則として三分の二、二分の一の二段階に集約、簡素化する方針を明らかにしている。自治省としては、国と地方の役割分担が明確になり、国から地方への権限移譲を進めることになるので必要だというような見解を述べておられるようであります。  私は、公共事業への国の補助率が事業内容によって分けられている現状を二段階に整理することがストレートに国から地方への権限の移譲を進めることになるのかどうか、この見解をいささか疑問に思っております。むしろその中身を吟味し てみると、両省の方針は地方の実態と大きくかけ離れているのではないかというふうに思っております。この辺について大蔵省はどのようにお考えになっているか、御質問いたします。
  171. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 公共事業の中で、毎年度予算編成におきまして、できるだけ国の補助事業から地方が自主的に事業を行う単独事業へ持っていくとか、そういう努力は毎年行ってきております。  今回の補助率の見直しにつきましては、先ほど申し上げましたように、体系化、簡素化という観点からできるだけ簡素化しなさいという行革審の答申を踏まえて行っているわけでございます。
  172. 島袋宗康

    島袋宗康君 いわゆる行革審の答申に基づいて検討されているというふうな御指摘でありますけれども、もしこの補助率引き下げによって、一般論ではなく、地域特例、特に沖縄の関係から申しますと非常にこれは大変な問題になると私は思っております。  御存じのように、全国の離島やあるいはまた地域特例によって基盤整備などが行われております地域にとって、公共事業の持つ意味合いや公共工事への依存度は、他の地域とおのずと地域特例に関しては非常に異なりますし、現実的にも国庫補助負担率の特例措置は特定地域対策の根幹をなすものであるというふうに思っております。  したがって、沖縄においては、今年度は戦後処理の総仕上げとして第三次沖縄振興開発計画が策定され、本年は向こう十年間の初年度、すなわちスタートの年であるわけです。この振興計画は、周知のとおり、沖縄の特殊事情への配慮によって特に国が強くかかわってきている、あるいは策定されております。一時的に財政難が予想されるとか、あるいは他の長期計画などの兼ね合いを理由に計画途中で高率補助をやめることは、これは我々からするとあってはならないというふうに思っているわけです。沖縄の特殊事情、そういったものを踏まえて、我々の第三次振興計画の意味するものを踏まえて、これからぜひひとつ対処していただきたいと思います。  ちなみに、沖縄開発庁の渡辺羽振興局長は、今回検討されている高率補助の引き下げが行われた場合の沖縄県への影響というものは九二年度ベースで総額百七億円、大変な試算額になっております。また、沖縄開発庁長官の伊江長官は、三次振計の推進に高率補助は欠くべからざるものだというふうな認識もされているようでありますが、そのことが結局この三次振計をあるいは国においてなおざりにしていくんではないかというような危機感を県民としては持っております。  したがって、この高率補助については我々としては絶対というふうな言葉を使いたいぐらい非常に危機感を抱いておりますので、ぜひこのことを踏まえて、検討はそれでいいんですけれども、それをいわゆる我々の意の反するようなことがないようにひとつ御努力をお願いしたい。特に、この間、地方公共六団体のいろいろな要請あるいは決議の実態もありますから、そういったのを踏まえて、ぜひ地方のそういった公共団体の意に反するようなことがないようにひとつ御努力いただきたいというふうに要望して終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  173. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  174. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 次に、先般本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。竹山裕君。
  175. 竹山裕

    竹山裕君 北海道への委員派遣について、その概要を御報告申し上げます。  去る九月九日から十一日までの三日間にわたり、野末委員長藤田理事鈴木理事前畑理事及川理事北澤委員楢崎委員山田委員吉岡委員島袋委員及び私、竹山裕の十一名は、北海道財務局、札幌国税局、札幌国税不服審判所、函館税関及び日本たばこ産業株式会社札幌支店から、それぞれ管内の概況説明を聴取するとともに、金融機関との意見交換を行ったほか、ニッカウヰスキー北海道工場等を視察いたしました。  以下、調査の概要について申し上げます。  北海道は、全国土の約二二%を占める広大な面積に対し、人口は全国の約五%で人口密度が低く、その中にあって全道の人口の約三割が札幌市に一極集中しております。また、総生産額は全国の三・九%と人口のシェアを下回っており、一人当たりの道民所得も全国水準の約九割にとどまっております。  産業構造の特色としては、全国に比べて、第一次、第三次産業の割合が高いのに対し、第二次産業の割合は低く、特に製造業は全国水準の二分の一以下となっております。さらに、総固定資本形成のうち、公的固定資本形成の割合は全国水準の約二倍と、公共事業への依存度がかなり高いほか、貿易面では輸入額が輸出額の約六倍と大幅な輸入超過となっております。  最近の経済動向を見ますと、公共投資の前倒し執行は順調であり、住宅建設にも回復の兆しが見られますが、個人消費や設備投資に慎重さが見られ、こうした状況を背景に企業の生産活動は停滞傾向にあるなど、道内景気は減速感を強めている状況にあります。また、景気の先行きにつきましては、各種アンケート調査の結果、経済のリード役である個人消費に力強さが見られないこともあり、回復は来年の春以降になるとの見方が強くなっております。  次に、金融面についてであります。  広大な地域をくまなくカバーする上で、信用金庫、漁協など中小金融機関及び郵便局の店舗数が多く、これら機関の預貯金のウエートも高くなっております。一方、貸し出し政府系金融機関など公的資金のウエートが高く、全国水準の約二倍となっております。金融自由化の流れの中で、道内金融において重要な地位を占める信用金庫も収益環境の変化に対応すべく体質強化を図っており、その一環として、昨年九月に道内の金融機関としては実に三十五年ぶりに、北海信用金庫と長万部信用金庫の合併が実現しております。  金融機関との意見交換におきましては、資産デフレに伴う不良債権問題の解決は金融機関自身の自助努力が大前提であること、金利の自由化による資金調達コストの上昇については経営の合理化に努力を傾注していること、金利低下局面での郵貯への資金シフトについては定額貯金の商品性見直しが必要であることなどの意見、要望が出されました。このほか、最近特に問題となっております企業の資金需要金融機関の信用供与の実態については、派遣委員の関心も高く、活発な質疑が行われましたが、北海道においては資金需要が停滞しており、いわゆる貸し渋りはないとのことでありました。  次に、税務行政についてであります。  管内の平成年度の徴収決定済額は、一兆五千六百四十一億円と全国に占める割合は二・四%であり、対前年比で一七・一%の伸び率となっております。これを税目別に見ますと、源泉所得税、申告所得税及び消費税の増加が大きく寄与しております。また、税目別構成比では、道内に納税地を有する大規模法人が少ないことから、全国に比べて源泉所得税の割合が高く、法人税の割合が低いのが特色となっております。  一方、平成年度の国税不服審査請求の発生件数は百十八件、前年度からの繰り越しが五十七件あり、このうち百十件を処理し、その約九割が所得税に関するものでありました。とりわけ、給与所得事案につきましては、逐年発生件数は減少傾向にあり、最近三カ年の平均発生件数は四十七件となっております。  次に、税関行政についてであります。  函館税関は、北海道、青森県、秋田県及び岩手県の一道三県を管轄しており、管轄面積では全国の約三〇%、海岸線距離でも全国の約二五%と広大な地域に及んでおります。管内は石油精製、製紙など素材加工産業が多いこともあり、原材料の輸入を主とする輸入主導型の貿易構造となっております。また、平成年度の犯則摘発件数は二百 六件であり、対前年比で約二倍となっておりますが、これは近年、対ロシア貿易が増加しており、これら乗組員等による密輸入事犯が多発したためであります。  以上、各行政分野について申し上げましたが、共通して言えますことは、それぞれの機関ともに行政需要が多様化、高度化する中で、業務量が増大する一方、定員は横ばいないし減少傾向にあり、これに対応するため効率的な業務運営に努めているところであります。なお、全財務労働組合北海道地区本部から定員の確保に関する陳情書が手交されております。  次に、たばこ事業についてでありますが、平成年度の販売数量は百三十九億本、販売代金は千五百十四億円と、全国に占める割合はいずれも約五%となっております。また、特色としては喫煙率が全国のトップであるほか、外国たばことの競争が北海道では激化しております。  一方、平成年度の塩の販売数量は、かずのこの生産調整などが影響し、対前年比三・七%減の十三万トンとなっております。  最後に、視察先について簡単に紹介いたしますと、まずサッポロビールは、明治九年に開拓使麦酒醸造所として創業以来、百十五年の歴史を誇る我が国最古のビール会社であり、最近では東京恵比寿工場跡地に大規模再開発計画を進めるなど、業務の多様化に努めております。  雪印乳業は、大正十四年に乳製品の生産、販売の一貫化を目指し北海道製酪販売組合として出発したもので、近年、市場の成熟化や食生活ニーズの多様化に加えて、世界の自由貿易確立の流れの中で、食生活と健康に関する分野中心に事業展開をしております。  さらに、ニッカウヰスキーは、昭和九年に大日本果汁株式会社として発足したもので、先般の酒税法改正による旧二級酒の価格高騰や輸入ウイスキーとの価格競争によって経営環境が悪化している中で、水割りウイスキーの商品化など新たな顧客の開拓を目指しております。  以上、概略を申し述べましたが、今回の派遣におきまして調査に御協力いただきました関係行政機関、団体及び事業所の方々に対し、この席をかりまして厚く御礼を申し上げ、派遣報告を終わります。
  176. 野末陳平

    委員長野末陳平君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会      ————◇—————