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1992-11-25 第125回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年十一月二十五日(水曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 高鳥  修君    理事 中山 正暉君 理事 原田昇左右君    理事 町村 信孝君 理事 村岡 兼造君    理事 村上誠一郎君 理事 串原 義直君    理事 野坂 浩賢君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    池田 行彦君       内海 英男君    越智 伊平君       越智 通雄君    鹿野 道彦君       唐沢俊二郎君    倉成  正君       後藤田正晴君    志賀  節君       戸井田三郎君    萩山 教嚴君       浜田 幸一君    原田  憲君       原田 義昭君    松永  光君       松本 十郎君    村田敬次郎君       村田 吉隆君    村山 達雄君       柳沢 伯夫君    山口 俊一君       井上 普方君    伊東 秀子君       加藤 万吉君    小岩井 清君       沢藤礼次郎君    新盛 辰雄君       関  晴正君    筒井 信隆君       戸田 菊雄君    楢崎弥之助君       日野 市朗君    水田  稔君       和田 静夫君    石田 祝稔君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       児玉 健次君    正森 成二君       中野 寛成君    米沢  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         法 務 大 臣 田原  隆君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         大 蔵 大 臣 羽田  孜君         文 部 大 臣 鳩山 邦夫君         厚 生 大 臣 山下 徳夫君         農林水産大臣  田名部匡省君         通商産業大臣  渡部 恒三君         運 輸 大 臣 奥田 敬和君         郵 政 大 臣 渡辺 秀央君         労 働 大 臣 近藤 鉄雄君         建 設 大 臣 山崎  拓君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     塩川正十郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官         )       加藤 紘一君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 岩崎 純三君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)             (沖縄開発庁長         官)      伊江 朝雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 宮下 創平君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      野田  毅君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷川 寛三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 中村正三郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 東家 嘉幸君  出席政府委員         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         国際平和協力本         部事務局長   柳井 俊二君         警察庁長官官房         長       垣見  隆君         警察庁刑事局保         安部長     津和 孝亮君         警察庁刑事局暴         力団対策部長  廣瀬  權君         警察庁交通局長 関根 謙一君         警察庁警備局長 菅沼 清高君         総務庁長官官房         長       八木 俊道君         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁人事局長 秋山 昌廣君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 中田 哲雄君         防衛施設庁施設         部長      江間 清二君         防衛施設庁建設         部長      黒岩 博保君         経済企画庁調整         局長      長瀬 要石君         経済企画庁国民         生活局長    加藤  雅君         経済企画庁物価         局長      小林  惇君         経済企画庁調査         局長      土志田征一君         科学技術庁原子         力局長     石田 寛人君         科学技術庁原子         力安全局長   佐竹 宏文君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         環境庁水質保全         局長      赤木  壮君         国土庁長官官房         長       藤原 和人君         法務大臣官房長 則定  衛君         法務省刑事局長 濱  邦久君         外務大臣官房長 林  貞行君         外務大臣官房審         議官      須藤 隆也君         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合         局長      澁谷 治彦君         外務省情報調査         局長      鈴木 勝也君         大蔵大臣官房総         務審議官    日高 壮平君         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省銀行局長 寺村 信行君         国税庁次長   瀧川 哲男君         文部大臣官房長 吉田  茂君         文部省初等中等         教育局長    野崎  弘君         厚生省生活衛生         局長      柳沢健一郎君         農林水産大臣官         房長      上野 博史君         農林水産省経済         局長      眞鍋 武紀君         農林水産省農蚕         園芸局長    高橋 政行君         農林水産省畜産         局長      赤保谷明正君         食糧庁長官   鶴岡 俊彦君         林野庁長官   馬場久萬男君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       細川  恒君        通商産業大臣官        房審議官    石黒 正大君        中小企業庁長官 関   收君        運輸省運輸政策        局次長            兼内閣審議官  和田 義文君        運輸省鉄道局長 秦野  裕君        運輸省自動車交        通局長     土坂 泰敏君        運輸省海上技術         安全局長    戸田 邦司君        海上保安庁次長 後出  豊君        郵政大臣官房財         務部長     新井 忠之君        労働大臣官房長 七瀬 時雄君        建設省建設経済         局長      伴   襄君        建設省道路局長 藤井 治芳君        建設省住宅局長 三井 康壽君        自治大臣官房長 森  繁一君        自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君        自治大臣官房審         議官      佐野 徹治君        自治省行政局選        挙部長     吉田 弘正君        自治省税務局長 杉原 正純君  委員外出席者        最高裁判所事務 島田 仁郎君        総局刑事局長        予算委員会調査 堀口 一郎君        室長     ————————————— 委員の異動 十一月二十五日  辞任        補欠選任   小澤  潔君    萩山 教嚴君   越智 伊平君    山口 俊一君   倉成  正君    原田 義昭君   井上 普方君    沢藤礼次郎君   市川 雄一君    石田 祝稔君   中野 寛成君    米沢  隆君 同日  辞任        補欠選任   萩山 教嚴君    村田 吉隆君   原田 義昭君    倉成  正君   山口 俊一君    越智 伊平君   沢藤礼次郎君    井上 普方君   米沢  隆君    中野 寛成君 同日  辞任        補欠選任   村田 吉隆君    小澤  潔君     ————————————— 本日の会議に付した案件  証人証言要求に関する件  平成四年度一般会計補正予算(第1号)  平成四年度特別会計補正予算(特第1号)  平成四年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  平成四年度一般会計補正予算(第1号)、平成四年度特別会計補正予算(特第1号)、平成四年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、委員長より申し上げます。  来る二十七日出頭を求めておりました金丸信君から、昨二十四日、櫻内議長あてに、医師診断書を添えて一書面をもって病気のため出頭できない旨の申し出があり、議長から当委員長に通知がございました。  この際、診断書を朗読いたします。     診 断 書              氏名 金丸  信             大正三年九月十七日生  一、病名 両眼 血管新生緑内障          糖尿病性網膜症    両眼視力低下眼痛、頭痛、の出現にて平成四年十一月十六日緊急入院、翌日右眼に対し冷凍凝固手術硝子体手術施行眼圧の下降、硝子体の透明度良好になるも視力改善はいまだみられない。    二十四日、左眼に対し同様の手術をする予定にて、手術後暫くの間就床、安静は絶対に必要と思われる。   右診断する    平成四年十一月二十三日       神奈川県小田原市久野四六番地         小田原市立病院             医師 佐伯 宏三(印) 以上のとおりであります。  この際、お諮りいたします。  ただいまの金丸証人からの不出頭届について、昨日の理事会で御協議願いましたところ、これをやむを得ないものと認めるに至りましたが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、証人としてその現在場所において証言を求めるの件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております平成四年度補正予算三案の審査に関し、東京佐川問題について、来る二十七日金曜日午後三時に、金丸信君を証人として、その現在場所委員を派遣し、同所において証言を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、委員長において、二十七日証言を求めることにつきましては、金丸信君より同意を得ておりますので、御報告いたします。  お諮りいたします。  派遣委員の指名並びに諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 高鳥修

    高鳥委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所島田刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  9. 高鳥修

    高鳥委員長 これより質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。水田稔君。
  10. 水田稔

    水田委員 質問に入ります前に、高鳥委員長にお伺いしたいと思います。  それは、きのう我が党の山花書記長から、さきの総選挙の際高鳥委員長佐川清佐川グループの前会長に出されたこの手紙を示して確かめたところ、御自分の筆跡であることを認められました。また、理事会では佐川邸を訪問したということもお認めになっておられるようでございます。  私は、この佐川問題というのは佐川だけじゃなくて、これに象徴される日本政治の汚れなり、最高権力者である総理を選ぶことに暴力団なり右翼が絡むというような問題について、国民の中に大変な怒りが充満しておる。そして、長い政治経験を持っておられる金丸前副総裁も、従来のやはり永田町の物の考え方で事を処理されようとして、結局は辞任されなきゃならぬというふうになったわけであります。  高鳥委員長は、手紙を出して要請したけれども支援を受けてない、こういうことで問題はないとお考えのようでありますが、国民はそうは見てないと私は思うわけであります。この佐川事件がこの委員会を通じて明確に解明される、そして再び日本政治の社会でこういったことが起こらない、そういう徹底的な論議がされると期待をしておるわけであります。  ですから、支援をしてもらった、もらわぬじゃなくて、中心になる佐川清会長に対して要請をしたというその行為そのものが、国民から見たらこの委員会委員長として適格性を疑われる、国民からそういうぐあいに見られておるとお考えになるのが当然だと思うわけでございます。委員長はそう思われないんだろうか、私は非常に不思議に思うわけであります。あなた御自身が身の処し方というのはお決めになるべきことでありますけれども、その点についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  11. 高鳥修

    高鳥委員長 この席から失礼でありますが、お答えいたします。  諸般の事情につきましては、理事会において御説明を申し上げたところでございます。ただいまの御指摘につきましては、十分しっかりと受けとめまして、厳正、公平、公正に委員会運営に当たってまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
  12. 水田稔

    水田委員 委員長がそういうお考えであろうとも、事実佐川さんのところへ要請をされた、支援要請をされたということが国民から見て適格性を疑われるというのは、これは永田町のこれまでの感覚で物を考えてはならぬ、いわゆる国民の目で私どもはこの佐川問題というのを徹底的に解明する必要がある、そういう意味で私どもはその点が一番大事なことではないかということを申し上げて、この点は終わりたいと思います。
  13. 高鳥修

    高鳥委員長 よろしゅうございますか。それでは水田君、質問をお続けください。
  14. 水田稔

    水田委員 次に、佐川問題で私ども調査団を出しまして、全国佐川急便が大きく事業を広げておるときに、各地でいわゆるトラックターミナルが建設されておるわけであります。各地を調査して一貫して同じ状況であります。  どういうことかといいますと、今までの、いわゆる流通三法ができる前の名前で言いますと、路線免許を持ってない業者、いわゆる区域業者区域免許を持っておる業者というのは、市街化調整区域ターミナルをつくることがきなかった。しかし路線免許を持っておる業者はできる。そこを利用して、実際には二台とか五台とか小さな路線免許を持ったものに市街化調整区域ターミナルをつくらす、後そこへそれを借りるという形ですか、そして五十台とか百台とかいう佐川トラックが入っている。既成事実をつくった上でいわゆる事業計画の変更の認可申請をして、そこをトラックターミナルとして使う、こういうことで行われておるわけであります。  そこで、調べてみますと、全部こう言うんです。県とか市の人たちは、よく道路交通法を知らなかったという言い方がある。あるいはまた、今でいう運輸局、当時の陸運局の方へ行って聞いてみますと、都市計画法をよく知らなかった、反省しておる、こういう言い方をするわけです。  そこで私は、自治大臣なり運輸大臣にお伺いしたいのですが、今でいう運輸局職員というのは、そういう法律に、たまたま十カ所あってその中の一カ所の人が都市計画法を十分知らなかったというのならあるかもしれないと思うのですが、全部そういう答弁をしておるわけですが、そういう職員なんでしょうか。私は、優秀な人たち運輸省には、現地の職場へ皆さん入られておる、こういうぐあいに思うのです。  それからまた自治大臣には、私は地方公務員というのはなかなか難しい試験を受けて入られる、全くそういう点がうかつでという人が、これまたたまたま一カ所か二カ所ならともかくも、全地域同じようにあるというのは信じられぬわけですが、地方公務員というのはそういうことが、法律を十分知らない者がたくさん配置されておるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思うのです。
  15. 奥田敬和

    奥田国務大臣 委員の御指摘のように、私もこの案件を担当いたしましてから、大変複雑な問題点があるということを知りました。  今、佐川問題でこれだけいろいろな違反件数全国的に発生しておったその原点を調べてみますと、今先生も御指摘ございましたけれども自動車運送路線業者区域業者によって、市街化調整区域内でも路線業者ならすぐオーケー、区域業者の場合には非常に厳しい制約があるし、ほとんどだめだ。したがって、日通とかヤマトというような路線全国展開している業者と、佐川のような急成長を遂げてきていわゆる区域の固まりが路線業者と同じような営業形態を持ってきたというところに、今日指摘されるようないろいろな建築法上なり開発許可の問題をめぐっての問題点全国で、私が大臣になって佐川点検ということを徹底的にやらせた結果十件ほど出てきた中に、今御指摘松山の問題、ターミナル問題等も出てきておるわけでございます。  したがって、これらの反省の上に立って、運輸省側としては路線業者区域業者の区別をきちっとわかりますから、それはだめだとかいいとかという判断はできるわけですが、建設省あるいは地方自治体との連絡、こういったことが必ずしもうまくいっていない、そういうケースの中からこれらの問題が出ているということを反省していく。今後とも運輸省建設省は両者本当によく打ち合わせて、ですから、調整許可をもらっておりながら、建築許可ももらっておりながら業法上は大変な違反だというような、そういう手違いが今回のケースのように発見されましたので、今後の連絡を密にしてまいりたいということで厳重に通告しております。特に、松山の問題に関しては、今年度内この問題の改善がなかった場合には、営業停止も含める厳しい措置をとるということをはっきり通告してあるという次第でございます。
  16. 水田稔

    水田委員 法律が難しいとか入り組んでおるとか、そういうことをお聞きしておるんじゃないのです。運輸省のお役人というのは、そういうことを、法律を一人か二人がたまたまうかつでということは私はわかる。全部が同じような、それで同じ答弁をするのです、行った先で皆。口裏を合わせておるわけですね。ですから、そういう法律に余り精通してない人を採用されて配置しておるのですか、そんなことはないでしょうと聞いておるのです。いかがですか。
  17. 土坂泰敏

    土坂政府委員 貨物自動車運送事業者がいわゆるターミナルをつくります場合には貨物事業法に基づく認可が必要でございまして、これは運輸省責任を持って判断をすべき立場にございます。一方、そのターミナル調整区域にある場合には、場合によっては都市計画法上の許可が必要であるということがございます。これについては、私どもの方で責任を持って判断できる立場にはございません。したがいまして、一件ずつそれを御所管なさっているところにお尋ねをして、確認をした上で誤りのなきを期していくということをしていくよりないというわけでございます。  ところが、今申し上げましたように、一件ずつ確認をしてやっていくという仕組みがその当時はまだ確立しておりませんでした。そのために都市計画法十分精通をしていない陸運支局職員が十分な判断をできずにその点を見過ごして認可をしてしまった、こういう経緯でございます。  ただ、先ほど大臣申し上げましたように、これからは運輸建設両省十分相談をいたしまして、一件ずつ必ず文書で確認をして、運輸省貨物事業法見地から、建設省都市計画法上の見地からそれぞれ責任のある判断をして、今後は誤りなきを期していきたいというふうに考えておるところでございます。
  18. 水田稔

    水田委員 質問に答えていただきたいのですが、私は、そういう法律十分精通した職員を配置しておる、たまたま一人か二人命言われたようなことでミスがある、それはあり得ることはあるよ。全部が同じ。行った先で全部自動車部長が同じ答弁をするのですよ。おかしいと思われませんか。そんな能力のない職員採用してないでしょう。たまたま人間ですからミスがないと私は言いませんけれども、そこをおかしいと思わぬかと、こう言うのです。  自治省の方は地方公務員の監督について、地方公務員採用についてどういうあれか、お答えいただけるのだったらお答えいただいた上で、さらに大臣にお伺いをしたいと思います。
  19. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 おっしゃるような建設関係の問題、都市計画、特に市街化区域調整区域等利用計画、これは都市計画に属することでございますが、そういうような案件につきましては、全部自治省としては機関委任事務の範囲内においてやっておるわけでございまして、したがいまして、職員採用につきましても、いわば一般公務執行能力があるということを重点と、それと人格とを見ました上の採用でございますので、そういう特殊業務についての教育を一々しておらないで、公務に従事しております間においてそういう行政事務の慣行を習熟していく、そういう手法をとって教育いたしておりますので、たまたま同じような答弁になるということは何かそこらで打ち合わせをしてやっておるのかわかりませんが、しかし、そういう画一的な状況教育しておるわけじゃございませんで、その地域についての実情というものを十分わきまえてやっております。  しかし、法令運用につきましては、あるいは解釈につきましては統一したものでなければこれはまた法治国家としての用をなしませんしいたしますので、そこらはあろうと思っておりますが、今後とも十分教育いたしてまいります。
  20. 水田稔

    水田委員 大臣、さっき運輸大臣にお伺いしましたように、たまたまどこかで、それは地方自治体ですからそれぞれ違いますから、若干の職員のレベルの違いはあるのかもしれませんけれども、全部が同じことが起こっておるのですね。ですから、大臣、そういうことは普通はないだろうなとお考えになりませんですか。
  21. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 要するに、地域性をいかに生かしていくかということについての問題だろう、先生おっしゃるのはそうだろうと思うのです。しかし、答弁が同じであるといいますのは、やはり行政一貫性を持っていくということから見てそういうことになってきておると思うのでございますが、私はそういう点において、地方性というものは実は地方公務員として生かすべきであるという、その意見につきましてはわかりますけれども行政一貫性ということもまた私は大事なことだろうと思っております。
  22. 水田稔

    水田委員 この書類、ちょっと運輸大臣に目を通していただきたいのですが、よろしいですか
  23. 高鳥修

    高鳥委員長 はい、どうぞ。
  24. 水田稔

    水田委員 大臣、これは松山佐川ターミナルの計画変更についた文書なんです。これは、都市計画法上どういう意味を持つ文書かおわかりでしょうか。何でしたら局長も一緒に確認していただいて結構です。
  25. 奥田敬和

    奥田国務大臣 大変難しい内容でございます。法的にも相当の知識がないとお答えできませんので、政府委員からお答えさせます。
  26. 土坂泰敏

    土坂政府委員 貨物自動車運送事業法につきましては、運輸省陸運支局職員責任を持って判断すべき立場にございますが、いわゆる都市計画法につきましては、これは他省の御所管の法律でございますので必ずしも精通をしていなかった、そのために見過ごしをしてしまったわけでございまして、結果として先生御指摘のような、同じような答え方をしたということになったものと思います。  今いただきました書類は、私もかつて拝見したことがございますが、松山の場合だけは少し違っておりまして、松山の場合は、申請があった時点で、これは市街化調整区域の中にあるからおかしいのではないかというふうに陸運支局判断をいたしました。したがいまして、申請がございましたのは五十四年でございますけれども、申請どおり認可をしなかったわけでございます。  ところが、しばらくいたしましたら、これは五十六年でございますが、その施設をいわゆる区域業者松山佐川急便が使用することに支障はないという証明を市長の方からいただいて、申請者が持ってまいったということでございます。そこで、私どもは、いわゆる都市計画法について責任を持って判断をできる立場にございませんので、こういう市の証明があったことをもってそのままいいのであろうと考え認可をした、こういう経緯でございます。  それじゃ、どうしてこういうものが出たのかということでございますけれども、この証明が出ましたのは五十六年のことでございまして、今から十年以上前になるものですから、どうもその辺のいきさつを今の時点でつまびらかにすることはできません。  ただ、先ほど申し上げましたように、これからは、こういうことではなくて、運輸建設両省できちんと相談をして、それぞれの現場に一件ずつお互いに確認し合いをしましょうということで通達を出したということでございますので、これからはこの制度によってきちんと運用してまいりますから、間違いがないようにやっていけるものと思います。
  27. 水田稔

    水田委員 答弁者、全部私の質問したことに今も答えていないのです。それは返してください。これは、都市計画法上どういう意味を持つ文書ですかと聞いておる、それだけなんです。それを、要らぬことをたくさん言って、答えていないのです。答えてください。
  28. 土坂泰敏

    土坂政府委員 大変失礼いたしました。  都市計画法上どういう意味を持つのかということについては、私ども正確に御説明ができません。ただ、先ほど申し上げましたように、そこを使用することについて支障がないという御証明があったものというふうに理解をいたしました。
  29. 水田稔

    水田委員 これは全く都市計画法上意味のない文書なんです。市長名で出ています。ですから、この松山の問題については、当時の四国陸運局、今の運輸局では、これは法的に調整区域で変更はできない、ちゃんと職員判断しておるのです。そして、だれが工作したのか、この文書を出せばできるという、そういうことを教えた者がおるんですよね。市長が公印を押して出すのです。しかし、都市計画法上は全く意味のないものです。四十三条で変更すべき何もないのですね。ですから、いわば違法なことをやっておる、これはその文書なんです。  それで、行った先が全部そう言うのです。私は、高松へ行ってきました。混乱を招いたらいかぬから全部シャットアウトして、一人だけで答える、食い違ったら困る、そういうことばかりやっておるわけですね。ですから、これは明らかに昭和五十四年の段階では、運輸局は、当時の陸運局は適正な判断をしておる。法的にもちゃんと判断できる能力の人がおったわけです。さっきからの答弁は、大臣局長も、そういう点が、法律が入り組んで十分なあれができてなかったというのはうそなんです。高松ではちゃんとその判断をしておるのです。しておるからこれは断ったのです。断ったら、法的に全く意味のない文書を地方公共団体の長である市長に書かせて、そして持っていっで、その後すぐ許可をしておるのです。  何の力が働いたのですか。全国の十カ所すべてが、全く同じとは言いませんが、同じような、似たようなケースで脱法行為でやられてきたのです。そして、いいですか、全国でたくさん合法的な形での政治資金がばらまかれたと言われておるのですね。だから、これとの関係が、私はこれからも調べますけれども、こういうことが運輸行政の中でやられておったということなんです。佐川が急成長する中でこういう無理なことが至るところで行われるときに、政治なり行政とのかかわりは全くなかったと思う方がおかしいと思うのですね。国民が疑惑を持つのは当然だと思うのです。  この問題について、これはまさに都市計画法四十三条違反です。罰則もありますが、警察庁——警察庁はまだおいでになっていないですか。これはそういう問題として、だれが考えても、全国同じようなことが起こるというのは、どこかが上手に指導するのか、圧力をかけたのか、そういうことによって適法でない事業計画の変更というのを認めておる事実があるわけです。これはまさに都市計画法四十三条違反でありますから、調査してしかるべきだったと思うのです、これまでに。それはやっておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  30. 関根謙一

    ○関根政府委員 佐川関係につきましては、私ども、その使用する車両について道路交通法違反ということで検挙したことはございますが、都市計画法関係で企業自体の違法性について検挙したという事例はまだございません。
  31. 水田稔

    水田委員 やらぬでもいい問題ですか。これは、私はこの間、香川県警へ行きまして、四十三条違反だから一遍調べたらどうですかという話もしてきたのですが、その必要はないとお考えですか。
  32. 高鳥修

    高鳥委員長 これは交通局の所管の質問じゃないんじゃないか。  警察庁垣見官房長
  33. 垣見隆

    ○垣見政府委員 お答えいたします。  突然の御質問なので、つまびらかな資料を持ち合わせておりませんけれども一般論で申し上げれば、違法行為がある場合には、警察としては、必要な情報収集を行い、証拠等がそろった場合には適切に検挙等の対応をするものと考えております。
  34. 水田稔

    水田委員 実は、私の方からはきのう夜、この質問をするということで連絡したつもりですが、それがそごがあるのでしょうが、私はまだこれから十一時まで質問しますから、その間に担当のところで調べて、途中でもいいから正式の御答弁をいただきたいと思います。  もう一つ、法務省の方、いわゆる金丸元副総裁の問題は、いわゆる政治資金規正法の量の問題で処理されたわけですが、佐川問題というのは、やはり全国的に見て、まあほかの問題もあります、新潟の問題もありますけれども、こういった、普通ならたまたまあるということでなくて、同じような形で違法なことがずっと続けられる、そして大量のいわゆる政治献金がされておるというようなことからいえば、当然問題意識でこれを見るし、あるいは場合によったら調査するということが本来の仕事じゃないかと思うのですが、法務省の方は、この点についてはどういうぐあいに今まで取り組んでこられたか、お聞かせいただきたいと思います。
  35. 田原隆

    ○田原国務大臣 お答えします。  実は、質問の御通告をいただいておりませんので、政府委員もだれも来ておりませんので、後ほどお答えできるようにいたします。
  36. 高鳥修

    高鳥委員長 ただいまの答弁につきましては、用意が十分にできていないようでありますので、順序を変えていただきまして御質問を続けていただき、その間に必要な準備をさせたいと思いますので、お願いいたします。  質疑を続行してください。
  37. 水田稔

    水田委員 じゃ、その点については保留して、先へ進みたいと思います。  今、世界は大きく変わってきたし、経済的にもどこも大変な状況、そういう中で、実はアメリカでは大統領がかわる、共和党から民主党に政権がかわる、こういう変化もあったわけであります。  また、日本とロシアの関係でいえば、エリツィン大統領が日本へ来て、そして少し前進するかと期待をかけておったのですが、これは突然の中止をされた、こういう状況にあるわけです。  時間の関係がありますから、日本とアメリカ、日本とロシアの関係について絞って国際問題についてはお伺いしたいと思うのですが、アメリカの大統領選挙が十一月の三日に行われて、湾岸戦争では実に驚異的な支持を受けたブッシュ大統領、あるいはまた、長い間続いた冷戦を終結させたその立て役者であった、非常に支持があると思われたブッシュ大統領が、四十六歳という若い新人のクリントン氏に大敗したわけでございます。この結果というのは、一体総理はどういうぐあいに見ておられるのか、まず伺いたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 他国の選挙のことでございますので、正確には申しかねますけれども一般的には、ただいま御指摘のような国際情勢もあり、また自身の経済の問題もあって、アメリカ国民が変化を望んだというふうに一般に言われておると存じます。
  39. 水田稔

    水田委員 総理は、このアメリカ大統領選挙が終わった後の記者会見で、人が一人かわったくらいで大きな変化はない、こういうぐあいに言われておる、こう報道されておるわけであります。また、外務省も、政治経済の分野でアメリカとの緊密な関係は大きく変わるものではない、変わらぬということをおっしゃっておるわけでありますが、そういう認識でこれからの日米の関係というのはいいのだろうかどうなのか、総理と外務大臣にお伺いしたいと思います。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 クリントンさんも選挙のときはいろいろ言っておりますが、どこの国でも選挙のときは多少派手なんです、これは。しかし、外交関係というのは、何かが変わったからといってそう急激に変えるということは、いろいろな国際信義上問題がございます。まして、ブッシュ政権がクリントン政権になったからといって、社会主義やそれに類するような政権ができるわけではないし、やはり自由主義経済を基調とした、我々と同じような価値観を持った政府ができたわけですから、細かい点を言えばそれはもちろん違った点もございましょうけれども、やはり今までの外交の継続性というものは尊重をされる。  かつてのアメリカのときも大体そうだった、政権交代がありましたから、民主党から共和党にね。ですから、全回も日米関係というものは、世界の中で非常に大きな経済大国であって、これがやはり今までのように相連携をしていくことが、世界の新しい秩序をつくる上においても非常に重要だということはお互いに認めておるわけですから、私は、大きく変わるということはないと思います。しかし、多少の変革があることは、これはやむを得ないだろうと存じます。
  41. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ただいま外務大臣の言われたとおりでございますが、日米両国の間にこれだけ、もうあらゆる面でたくさんの接触が行われているという事実、それから、両国合わせて世界のGNPの四割を占めているために、共通に世界の問題に対処しなければならないという事実、それから、両国が今外務大臣の言われましたように価値観を同じくしているという事実、これらの事実が基本的な日米関係というものを規定しておるということは、だれが大統領になられようとも変わらないということを説明しようとしたのでありますけれども、それは人がかわれば確かにいろいろ変わってまいります。これはもうそのことに間違いはないのですけれども、しかし基本的にはそういう動かしがたい関係があるということを我が国の国民がよくわかっておいてほしい、こういう意味で申したのでありまして、それは、人がかわられればおのずからそういうニュアンスが出て変わってくるということは、もとよりのことでございます。
  42. 水田稔

    水田委員 先ほど総理は、アメリカの国民が変化を求めた、こういう言われ方をされたわけです。確かにクリントン氏のキーワードは変化にあるわけですね。そして、アメリカの国民がその変化で成功するか失敗するか、それはわからないけれども、この停滞した状況の中に変化を求めた、それがあの結果を招いたのだろうと思います。  共和党政権十二年、そして議会と大統領が違う政党、民主党が議会で多数を占め、共和党の大統領、それが今度は民主党が多数を占め民主党の大統領になる、こういうことであります。  そして、その政策からいえば、例えばクリントン大統領が一番重点を置いておるのは、四年間で財政赤字を半減するということを公約しておる、これは大変な日本との関係でも影響はあるだろうと思います。あるいはまた経済基盤の強化をするという、貿易関係ではまた大きな影響があるだろうと思うのですね。そこで予想されることは当然、米軍の駐留経費の問題なり、あるいは国連の平和維持活動への日本の負担の問題や、あるいは旧ソ連や東欧への支援の問題、地球環境保全のための金など、アメリカ政府が今まで負担している分の肩がわりというのは強く日本に求められる、そういうこともあるのではないか、そういうことも予想されるわけであります。  貿易でいえば、当然包括通商法の三〇一条の導入ということも予想されないことはないわけです。それほど、人が一人かわったから変わりがないということではないほど変わってくるだろうと思います。  もう一つ、まあ総理が言われたように、変化は求めているけれども外交の継続性ということで大きな変化はない、こう言われるわけですが、そういう従来の感覚での日米関係ということ、あるいはそれを基軸にしたような形での国際的な社会での日本の外交の基本的なスタンスでいいのかどうか、そういうことが問われておるんではないだろうかと思うのですが、総理並びに外務大臣の御見解を聞きたいと思います。
  43. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは選挙のときはいろいろ言っていますよ。だけれども、そのとおりすぐにそれじゃ実行されるかということになると、なかなか現実はそう簡単ではない。それは、ブッシュさんとクリントンさんがあれだけ激しい個人攻撃、日本人は考えられないわね、あれは。ああいう攻撃をやっておったが、選挙が終わればお互いに握手をして、それでまあ円満な政権の移譲がここに行われようとしているわけですから、選挙のときの意見の食い違いがそっくりそのまま現実の政策となって全部出てくるというようには我々は考えてはいないんです。  三〇一条の話も今お話がございましたが、言ったからといって直ちにそれは軽々に三〇一条を発動するとか、あるいは人権問題で対中国問題でもブッシュさんのやっていることは生ぬるいということで、えらい批判をしていましたよ、選挙のときは。だからといって、それじゃ政権をとったから、ブッシュさんが拒否権発動をしておる最恵国待遇を、それを取り消しちゃう、そんなことはそう軽々にできるものじゃないんですね、これは。その与える影響というのは非常に各方面に大きいですから。  だから、それは私としては、例えば内政問題等について、非常に財政赤字を減らすというための方法をいろいろそれはやるでしょうが、だからといって、じゃ大増税をやるとか、大変な歳出カットを極端にやるとかいったって、これも現実問題はそう簡単ではないんじゃないか。しかしながら、変える、変革を期待した国民が傍らあるわけですから、なるべくそれに近いことをやっていかなきゃならぬというために、対外的に多少強い姿勢に出る。あるいは負担の問題等についても私はそういうふうな兆候はあるだろうと思います。だからといって、それに過剰反応する必要は我々は全くないのであって、やはりそれはよく理解し、話し合った中で今後も解決をしていきたい、かように考えております。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ただいま言われましたように、財政赤字の削減であるとか、あるいは海外負担を肩がわりしてほしいとか、あるいは三〇一条とかいうような問題、確かにそれらが問題でございますが、これらは前政権と申しますか、ブッシュ政権のときにもやはり問題であったわけでございますので、そういう基本的な問題が変わったとは思わないわけでございますけれども、ただ、水田委員の言われますように、過去政権の交代をずっと見ておりますと、新政権になりますと何か新しいやり方があるんだろう、前の政権が十分にやってなかったんではないかという、これは当然のことでございますけれども、いつもそういう試みがなされて、結果として、やってみたらまあ大体同じだったということもありますし、いや、なるほどそういうやり方もあったかというような場合も時としてございますので、そういう意味での新しいアプローチというものは必ず試みられるであろう、それに対して我々も十分対処していく必要があるとは思っております。
  45. 水田稔

    水田委員 外務大臣は、どこの国のことか知りませんけれども、公約は破られるためにある、そういうような選挙をやっておる国もあるかもしれませんけれども、アメリカは私はそうじゃないと思うのですね。それは、今総理からお答えいただきましたように、少なくとも赤字半減という公約は守ろうとするでしょうね。あるいはまた、経済基盤の強化ということは、今のアメリカの競争力の低下から当然、私が向こうでやらせていただいてもやるだろうと言わざるを得ぬだろう、そう思うのですね。ですから、そういう点では変わってくることは間違いない。  そして大事なことは、私はここで、一月の二十日に大統領がかわるわけですが、どうも見ておると、日本の外交というのは待ちの外交なんですね。あるいは外圧を利用するとか、そういうことになっておるのです。そのことが国民に対して、いわゆるアメリカに対する不満とか、そういう形ではね返ってくるわけですね。ですから私は、待ちの外交じゃなくて、これからは、アメリカの大統領もかわる、新しいスタンスでやるだろう、そういう中で日本がどうするのか、アメリカに対して、ECに対して。待ちじゃなくて、そういう積極的な外交をやるべきじゃないか。それは、一体そういうことについて総理なり外務大臣はどういう、これからアメリカに対してあるいはECに対して、そういうイニシアチブをとるようなスタンスでやはり外交をやるべきじゃないか。  いわば、これまで見ておると、日本の外交というのは顔が見えぬですね、どこかの国の陰に隠れたような形で。やはり日本の顔が世界に見える、これだけの経済力を持って、たくさんの国々とのつき合いがあるわけですから、そこに対してやはり顔の見える外交にするべきだろうと思うのですが、その点について、アメリカに対してこれからどういうスタンスで臨んでいくのか、あるいは国際社会の中で日本の顔が見えるような外交に変えていくためにどうするのか、その点について総理と外務大臣のお答えをいただきたいと思います。
  46. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは確かに待ちの外交だと言われても仕方のないようなところも私はあると思いますよ。どの方が国益になるか、ただ何でも積極的にこっちが旗を振ればいいというものじゃないし、そうすればそれだけの責任は負わなければならない、負担も余計しなければならぬという問題もありますから、待ちの外交の場合もある。  だからといって、それだけじゃなくて、日本は顔の見えた外交もたくさんやっています。例えば環境の問題にしても、日本はかなりアメリカなどよりは進んだことを提案をしておりますし、それから国際間の武器の売買というようなこと等についても、御承知のとおり日本は武器の輸出は行わないという大原則を政府の方針として持っているわけですよ。したがって、国連に対しても通常兵器の移転の場合の登録制を旗を振って、そして国連であれだけ、百何十カ国という大多数の圧倒的な、私もあんなに支持が得られると思ってなかった、正直な話が。しかし、旗を振った結果は非常に大変な支持を得られたとか、それは日本としても顔の見える外交もかなりやっているのですよ。  だから、一概に全部について旗振れとか言われたって、それはできない場合もありますし、国際紛争の解決なんというときに、日本がPKOも出せるか出せないかと騒いでいるときに、武力によって閉鎖をしろとかどうとかなんて、旗の振りようがない、これは。したがって、後からくっついていく、ぎりぎり必要最小限度のおつき合いはするという場合もありますよ。  だから、一概に積極的に何でもやれるかといったら、必ずしもそうばかりもいかない。その場面場面、ケース・バイ・ケース、それによって政府は対応を決めていく。その仕方は、やはり日本国憲法というものがあって、それから日本の歴代政府の国是的なものがありますから、それにのっとってケース・バイ・ケースで決めていくほかない、そう思っております。
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私は今外務大臣が言われたとおりだと思いますので、冷戦後の時代になりますと、いわゆる平和の増進であるとかあるいは対外援助であるとか環境とか、みんな比較的地味な課題でございますけれども、我が国はその辺のところは随分のことを実はしていまして、だんだんそれは計数的にもあらわれてまいりました。  御主張の点はよくわかりますので、実績を上げることによって我々の努力を世界に知ってもらわなきゃならないと思っております。
  48. 水田稔

    水田委員 ぜひそういう点では、アメリカとの関係ではやはり対等な立場の中でお互いいい関係をつくっていく、そういう我が国が何をするかということをまず明確に決めて臨んでいただきたいと思います。  それでは、ロシアとの関係でございますが、九月の十三日から十六日までエリツィン大統領が日本へ来る、まあ、直前の中止。外務大臣は延期ですなと、こう念を押したそうですが、いつ来るという返事がなかったからこれは中止だろうと思うのですね。それがどっちが責任とかなんとかいったところで始まらぬ話であります。そして十一月には目と鼻の先の韓国を訪問する、こういう状況であります。  ですから、大統領がもし来られれば、いろいろ事務レベルなり次官級で積み重ねてきた日ロの関係が、一歩までは行かぬにしても半歩でも前進するか、そういう期待がもう膨らんでおったわけですが、すぼんだ。国民から見たら、若干日ロ関係というのは白けた、そういう感じだろうと思う。いわゆる外交面で言えば一とんざを来した、こう見ざるを得ぬと思うのですね。改めてこれをどう、嫌だと言ったところで、ロシア、東欧の経済がこのままでは世界の経済がどうなるか。あるいは特に日本は関係ないのか、やはり来るのかもしれませんが、ヨーロッパでは、ロシアの経済が破滅すれば大量の難民がなだれ込んでくる、そういう問題も心配しておるようであります。ただ日本は、違うところは、やはり北方領土という問題の解決がついてないというところに問題がある。  そこで、新しくどういう組み立てで日ロ関係をこれから積み重ねて、領土問題の解決を含めて、国際社会の中で恐らく領土問題を持ってない国々は、アメリカも財政赤字が二千九百億ドル、貿易収支の赤が一千億ドル、ドイツもそれに匹敵するような財政赤字を、今東ドイツを抱え込んできた中で、恐らく日本に対して金を出せ、支援しろという要求が国際社会で強くなってくる。しかし、それに乗れば、領土問題の解決はどうなるのかという国民の中からの不満が出るだろう。また、外国からそういう要求が出た場合、それにこたえなければ、国際社会の中で日本は何だと、こういう話になるだろうと思うのですね。  そういう難しい選択というのをしなきゃならぬと思うのですが、そこらで日ロ関係をどういうぐあいに改めて組み立て直してやっていくのか、これは外務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  49. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 水田先生よくおわかりですから、くどいことは申し上げません。  御承知のとおり、戦後約五十年近くなって日ロ間に平和条約がないというのは、それはそれだけの理由があってできなかったということでございます。日本はロシアと戦争を始めた覚えはありませんから、しかし、中立条約が破られて一方的に攻め込んできて、六十万人も日本人が拉致されて、五万数千人が飢えまたは強制労働によって死んでいった。それについて、ごめんなさいという話は一言ももちろんないわけでございますしね。そういうような背景の中で、ただ友好関係促進だ、平和条約だと言われても、けじめをつけてもらわないことには、何か国民感情としてそれはなかなか許されない。だから、長い時間かかってきたわけですよ。  我々は一貫して北方領土の即時一括返還要求というものは掲げてきだ。しかし、らちが明かない。たまたまゴルバチョフ、エリツィン、政権がかわって、それで共産主義が捨てられて、特にエリツィン政権になってからは、敗者と勝者、戦争に負けた人と勝った人の差別はしません、法と正義の外交を展開するんですと、こうなってきましたから、それならば我々の方も額面どおり受け取って、これからは約束事は守られるであろうということに考えまして、そして日本は何も譲らない譲らないと言われていますが、大幅に譲っているわけですよ、即時四島一括返還なんて言わないんだから、今。それは、四島における日本の主権を認めてくださいよ、しかし返還の時期、様態、その他については御相談に応じますよと、かなり大幅にそれは譲ってきておる。  ところが、そういうような中にあって、エリツィンさんは来ることになっておった。九月の二日、私は会っているわけですから、そこでいろいろ議論しているんですよ、日本は何もやってくれないとかなんとか言っておったからね。それは激しく論判するのは当たり前ですよ、日本はやっているんだから、たくさんのことをね。だけれども、それがロシア国内の事情によって今回は行けなくなった、延期だ、中止じゃないということで、両大臣でこれはつないでくれというお話ですから、これも私は総理とロシア大統領が話したそのことが一番本当だとしか思っていませんからね。選挙で言ったりなんかする話じゃなくて、大統領と元首がお互いに話した、元首というか総理大臣が話したことが一番信頼するものということで、そのとおり私は信頼をしておるわけです。  したがって、この間の九月の末の国連総会でも、向こうの外務大臣も会いたい、私の方も会ってもいいよということで、話を継続しようじゃないか。いろいろおもしろくないこと、失礼千万だから本当はあるんだ、私の方は。あるけれども、そこはじっとこらえて、外務大臣は一つも顔には出さないし言葉にも出さない。それで、今までと同じような態度で、なるべく環境の醸成、うまくつくって、一日も早く日本に、サミット前に来れるようなことがいいんじゃないかということで、それはこちらから話してはいるんですが、こちらから来なさい、来なさい、来なさいと言うのもおかしな話なんです、断ってきたのは向こうなんだからね。  だから、そこのところは、まあしかしお互いにとがめてみてもしようがないから、あうんの呼吸で、いろいろな事情もあるんだろうから、来れるような雰囲気をつくっていこうということで、いろいろな、あの手この手と言ってはちょっと語弊があるが、いろいろな手だてをもって、今静かに、潜行的に話をしているということでございます。
  50. 水田稔

    水田委員 いろいろうっぷんもあるようなことを言外にほのめかしながらのお話ですが、私は、太陽と北風の話があるけれども、そういうことで簡単にいく問題じゃないと思っているんですが、少なくとも領土問題についてはやはりきちっとした解決の方向を見出すということと、もう一つは、全面的な経済支援はできないにしても、例えば大変向こうは困っている、国民生活に関係のあるインフラの整備であるとか、いわゆる市場経済というけれども、本当はそれをわかっておる人はほとんどおらないわけですから、そういう点での技術的な支援であるとか、人の養成とか、そういう点はこういう関係の中であろうともやはりやっていきながらやるべきじゃないか、そのことを申し上げておきたいのです。  そこで、大臣、これはごらんになりましたか。ごらんになったことありませんか。いいですか、ちょっと。
  51. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 はい、見ました。
  52. 水田稔

    水田委員 ごらんになりましたか。これは大臣、第一次に何冊刷ったか御存じですか。
  53. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 最初七千を刷って、大変評判がいいので、あと一万幾ら増刷をしているそうです。
  54. 水田稔

    水田委員 私が聞いたのは、これは最初二千冊なんです、予算がないから。あと増刷したのも何千か、こう聞いておったわけですね。  私は、五月にロシアの最高会議のメンバー四人が参りまして、これは外務大臣のところもお伺いいたしました。そこで、中にはルミャンツェフ、ひげの生えた、いわゆる憲法調査会の事務局長という、彼がエリツィンの日本へ来るのを反対と、こう言っていた男なんですが、彼らと領土問題をやり合いました。その中の団長で来たイスプラブニコフというのが今度、そのときに私どもに約束したのです。実はロシア最高会議の中で北方領土問題というのはほとんど話が出ておりません、ほとんど知らないのです、私たちはこれから帰って、議員のメンバーにできるだけその話をします、こう言って帰って、最近またおいでになったようでありますが、この人がソ日セクションの会長になったわけですね。  ですから、そのときに彼らは、だれが大統領として日本へ行こうと、今直ちに領土問題で譲った場合、これはロシアでは教えてないわけですから、八月十五日が終わってから南のサハリン、千島列島を占領したとかいうことは言ってない。ただ、ヘルシンキ宣言で、第二次世界大戦のいわゆるその国境線は変えないんだ、そういう宣言なり、あるいは二千万のロシアの国民が、いわゆる当時のソ連の国民が戦争で死んだ、そういう代償としてそういう領土は持っている、そういう感覚でしかおらないわけです。  私は、日本とロシアの外務省が共同で作業した領土問題の「日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集」これは大変いいと思います。ただ、けちっていますね。ロシアでは、それだけ知らないのです。最高会議の連中は知らぬ。あそこでも、人民代議員なら三千人ぐらいおると思うのですね。全部やったらいいと思いますね。それから地方、これは大体そういうところとマスコミとそれから研究機関しか出されていない。半分は日本語で半分がロシア語ですから、これは少なくとも何十万刷ってもいいと思うんじゃないですかね。予算の問題じゃないと思うのです。僕は、外交というのは、そういう点で単に国内だけで声を大にするとか外務大臣同士が会ってやるとかじゃなくて、本当に国民に真実こうだということが、ただ向こうへ勝手にこっちが配るわけにはいきませんけれども、予算をつけたらどうですかという。  もう一つは、私は、日本が軍事力で生きていくのじゃなくて、国際的な信頼関係の中で生きていこうという中で大事なことは、外務省の職員、外国に出てみて本当にその国との関係をよくするための人たちが十分おるのだろうか、あるいは必要な情報が十分日本政府へ入るのだろうか、そういうことを心配するわけです。  ちょっと人数を調べてみたら、アメリカは格段ですが一万七千二百五十七人、イギリスが八千三百九十人、フランスが八千百三十四人、ドイツが七千四百三十九人、イタリアが四千八百九十三人で、日本が四千五百二十二人ですね。そこらあたり、外交をやる人の問題と、それからこういう問題の金の問題。  ですから、ロシアとの関係、やはりさっきの御答弁はちょっと待ちの外交のような感じがしましたけれども、やるべきことはやる、しかし我々が主張すべきことは実際効果があるような金を使ってやるということを私はぜひ考えていただきたいと思うのですが、これは総理大臣にも御答弁いただきたいと思います。
  55. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 総理答弁する前に一言申し上げますが、それは足りないと言えば足りないのですね。しかし、大量にそれじゃどうして配るかという問題になって、日本の国内に配ってもしようがないのですから、向こうへ持っていって、余り日本が積極的に人を頼んで配り出すというようなことになると、また別な政治問題を起こして物すごい反発をされる。これを出したこと自体について文句を言っているのがいっぱいいるわけですから。それは客観的に書いてありますからね。だから、何のために今こんなものを出すんだと。  今先ほど先生おっしゃったように、国境問題というものは戦争の対価として二千万人の犠牲の上でつくられたものだから動かすべからずだというように思い込んでいる人は、自分の不利になるような話をロシアの外務省と日本の外務省が共同で出してきた、しかも大量に配ったということになれば、物すごい反発を招く。そういうこともあって、こんなのは何十万冊もつくってばらまいたらいいじゃないかと私も言ったんですよ、実は。ところが、そうなると余計な反発も受けると言われてみると、それもそうかなと思って、それで、まあそろそろっとやってみて、少し確かに様子を見ているということは事実です。しかし、もう少しこれが効果があって、御希望があればどんどんもっと交付することも考えてまいります。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 外交の陣容を人的にも予算の面からももっと充実しなければいけないという御指摘と伺いました。  行政改革の時代ですが、何年かにわたって定員は一生懸命ふやそうと努力をしてまいりましたが、まだまだあれこれ十分でございませんので、ただいまのことは御激励と承りまして、十分注意をしてやってまいります。
  57. 水田稔

    水田委員 次は、きのう山花書記長質問したわけですが、米の問題についてアメリカとECの間で妥結したということで非常に情勢は緊迫したという、そういう感じを受けるわけでございます。  そこで、従来と違って、本当に従来のような本音と建前のようなことでいけるのかどうか。きのうの農林水産大臣答弁と外務大臣答弁を聞いていると、ちょっとやはりニュアンスが違うわけですね。私たちは、やはり三回の国会決議というのは非常に重いものだ。そういう点でこれは大事なときですから、これからどう対応していくのかということは。  私は、もう時間がありませんからまとめて全部言いますが、単に私は、食糧というものを普通の工業生産品と同じような自由な形で扱うのがいいのかどうか。  人類の発展を見てみますと、地球環境と食糧というのは関係があるわけですね。というのは、人間が豊かな生活を目指して、例えば燃料に使う山を切る、あるいは牧草地帯をつくる、そして鉄をつくるために山の木をたくさん切って炭をつくって鉄をつくる。そういう中で山が荒れ、砂漠がどんどんふえていって、今でも一年間に九州と四国の半分ぐらいが砂漠化していっておる。そういう中で、しかも人口は爆発的なふえようで、特にアジアが多いわけでありますが、今五十億ぐらいですが、二〇二五年ですか、これは八十三億になるわけですね。調べてみますと、日本をのけたアジアの国々がその時代になれば、一人当たりの摂取する食糧というのはどんどん減ってくるわけです。ということは、全体的に食糧タイトになれば、これは値段が上がる。それでなくとも開発途上国なり、あるいはアフリカやアジアの最貧国と言われる国々は食糧を手に入れることができないようなそういう状況になる。  そうすると、一方では人口がどんどんふえて、いわゆるアメリカのような形がいいのかどうか。畑地の栽培をやっておるところでは砂漠化が進んでいくということもあるわけでありますから、そういう問題を考えたら、食糧問題というのは単にガットの自由貿易というような形で考えていいのかどうか、そういうことを考えるときに来ておるんじゃないか。  それからもう一つは、アメリカとECというのは輸出国同士の話ですから、輸入国というのは、したがって反対しておる国はあるわけですから、そういうところと、私は単に従来の貿易ということだけじゃなくて、地球環境も考え、人類の将来というのを考えて、食糧はどうなるかというふうな点から、次元の違った点からも、やはり国際的な、協力できるところとガット・ウルグアイ・ラウンドの中で、あすからですか、ジュネーブで貿易交渉委員会が開かれるようでありますが、そういう中で私どもは頑張るべきじゃないかというのが我々の主張でありますが、きのうの答弁を聞いてちょっと心配で、内閣の中で違うのかな、正式に御答弁いただいたのは農水大臣と外務大臣。院内でない院外の発言か何かでは、テレビで見たのは通産大臣、もう少しちょっと違う発言をしておる。ですから、これはひとつまとめて、国民が一番今、特に農家の人々は心配しておるわけですから、それぞれの答弁をいただいて、最後、総理大臣がどう対応するかということをお聞かせいただきたいと思います。
  58. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答え申し上げますが、今、水田委員お話しになったように、私も申し上げております。  もう既に各国の農林大臣と随分会合いたしました。また、マディガン、マクシャリー、ヒルズ、カナダのマクナイト農業大臣と会談いたしまして、おっしゃるように食糧は工場でつくるように計画的に生産できるものでもないし、土地の条件、気象条件、違います、あるいはこれからの人口の増加、開発途上国が多いとこう言われておるのですが、そこは食糧難の国が非常に多いということも申し上げまして、それで食糧というものはどうあるべきなのか、日本のように飽食の時代、大変ぜいたくな食生活をしている国もあれば、全然食べられない、テレビで時々見るわけですけれども骨と皮だけの子供たちを見れば、食糧というのは世界、国際の中で公平にやはり食べることができるようにしていかなきゃならぬということを、もう何回も申し上げました。  しかし、過剰になっている農産物を売りたいという輸出国と、これが入ることによって大変な影響が出るという国とございまして、なかなか話ができない。昨年の十二月にダンケル合意案、これは合意をしておるわけではないんですが、合意案とこう言われるものが出た。これももっと議論を深めて、各国の抱えている問題というものをその中で十分話を聞いて、そしてダンケルの案を出すべきであったのではないですかということを申し上げましたが、いずれにしてもダンケルさんは、私は案を出しましたので、あとは問題があるならばその当事者間でお話をしてくださいということの中で、アメリカとECが今回の合意が成立をした、こういうことなんですね。  おっしゃるように、私もずっとそういう日本立場というものを主張してまいりましたが、ただ、米に関する限りは、世界の中で私の方と韓国ぐらいで、ないんです。あとは乳製品は若干あります。そういう中で確かに自由化をしたいという国がもう圧倒的に多いわけですから、厳しい環境にある、こういうことは言えると思うのでありますが、まあいずれにしても私は、従来から申し上げたように、二国間でやっておっては一年たってもこれはもう解決はできない、マルチの場で多国間の交渉でやるべきだと、こういうことを主張してまいりまして、ようやく今度二十六日にこのスケジュールが決まります。  この決まったのを見て私どもが今度はそこに出ていけるわけですから、今までは、まあお互い二国間でのやりとりを随分私や、農林省の幹部の諸君がやってきてくれました。確かに閣内不一致だとこう言われることはありますが、自由貿易の恩恵を受けておることも間違いないわけであります。しかしその中にあっても、今申し上げたような事情でこの農業問題、特に米に関する問題、乳製品等は受け入れられないということを主張してまいりました。  ただ、アメリカとECがどういうことをやったのかということがわかりませんので、これを十分説明をやっぱり聞かなきゃならぬ。これは公式の場で聞かなきゃだめですから、そういうことでこの説明を受けて対応を検討していかなきゃいかぬということになりますが、まだこのやられた内容を見ると、どうもダンケル合意案の修正につながる問題が含んでいるのではないか、こういう部分もありますので——正確を期さなきゃなりませんから、この種のものは。そういうことで、我が国としても年来の主張というものが交渉結果に反映されるように、これからも最大の努力をしてまいりますと、こういうことを申し上げておるわけであります。
  59. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これはもう水田先生はもちろんのことでありますけれども、先生方に御理解いただけるものと思いますが、戦後四十七年、世界が平和で、世界のすべての国々とできる限り可能な自由貿易を行うことによって、あの戦争に敗れて廃墟の中から今日世界の奇跡と言われるような繁栄を我が国の経済は遂げておるのでありますから、自由主義経済の枠組みをしっかりとしてこれからも進めていくためのウルグアイ・ラウンドを早期にまとめることによって、最も恩恵を受ける国は日本であるし、また世界の、この前、先般、私はASEAN六カ国の経済閣僚会議に招かれて出席してまいりましたが、これから躍進するアジアの国々のこのウルグアイ・ラウンドに対する大変な大きな期待、これを考えれば、これは党派のいかんにかかわらず、我が国がやはり自由主義経済を今後進め、市場経済をさらに発展させていくためにウルグアイ・ラウンドをまとめなければならないということについては御理解を賜るものと思っております。  そこで、先般、カナダのトロントで四極通商会議が行われました。それまで農業交渉についてアメリカとECで大変難航をしておったわけでありますけれども、どうやら米・EC間の話し合いがつきそうだ、何とかウルグアイ・ラウンドを早期にまとめようという話になりました。  私はその際、百を超す国々が蚊帳の外に待たされている中で、あなた方は六カ月以上この農業問題ということで我々を待たせてやってきた、そして我々待っておった。日本の場合はどの国よりも早く、通産省所管で言いますと、譲許表については六千五百品目の関税引き下げのオファー、一千品目の関税撤廃、この譲許表を提出して、世界に対して我々はこのウルグアイ・ラウンドを締結するための努力を率先してやってきておる。しかし、その中で、農業という問題に関しては米・ECでも大変な難航をしておるように、我が日本にも譲り得ない難しい困難な問題を抱えておる、これもぜひ皆さん方に理解をしていただかなければならない。したがって、米・ECの農業交渉がまとまった場合は、我が国は我が国としてこれはジュネーブに行ってガットの場で農業の抱えておる我が国の困難な問題を強く主張をしていかなければならない。あなた方も修正して、我々にただ無条件で押しつけるというようなことはこれは難しいという、我が国の困難な抱えておる問題についても申し上げておるのであって、今後米・EC間の農業問題が決まれば、当然我が国は、これは農林大臣が大変汗をかいていただかなければなりませんけれども、ガットの場で我が国の立場を強く主張してまいると思いますが、農林大臣の所管の部門に入りますけれども、これは我が内閣として全員同じ考えであると思いますけれども、我が国は二千万トンを超す農業の輸入国でもありますし、また我々の長い歴史と今日の中に米という非常に困難な問題があるのでありますから、現在の日本の米作生産農家の皆さん方が少なくとも今より不利になるようなことはない、むしろ有利になるようなための努力を農林大臣は必死になってしてくださっておるのであって、決してこの問題に対して閣内で考え方が違うなどということはありません。  皆さんも恐らくそうだと思う。米作農家を守るための農業問題についての我々の立場は強く主張をしていかなければならない。同時に、日本は自由主義経済によって今日の豊かさが保たれ、そしてさらに発展していくのでありますから、ウルグアイ・ラウンドはできるだけ早くまとめるための努力をしなければならない。全く私は、総理のリーダーシップのもとに閣僚全員一致しておるもの、こう考えております。
  60. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今や外交問題というのは、すなわち内政問題です。  今のお話を聞いてみればわかるように、ウルグアイ・ラウンドを成功させようということでは閣内も一致していますし、外国も皆そうなんですよ。ヨーロッパなどでも、いろいろ不満があってもこの不況を乗り切っていくためにはどうしてもウルグアイ・ラウンドで妥結をして弾みをつけなきゃならぬ、これがもし失敗すればはかり知れない大被害を我々人類はこうむる、こう言うんですね。はかり知れないってどれぐらいのそれでは被害になるかというのだけれども、それははかり知れないんだからわからない。だれも数字で言った人はいませんから、だれも。しかしながら、自由貿易に暗い影が差して、お互いに輸入制限をし合って、そして報復措置をとってということになれば、貿易はうんと縮小することは間違いないでしょう。  日本のように、それは三千数百億ドルの輸出があるわけでしょう、二千億ドルを超す輸入と。一千三百億ドルか幾らになるかことしはわかりませんが、それぐらいの要するに貿易差額、差益があって、ことしは経常収支でも一千億ドル軽く超すのではないか、こう言われているんですね。そうすると、ともかく大きいんですね、これは、GNPにしたって。住宅投資が全部で去年のやつが二十兆円とか言っているわけですから。政府の公共投資が二十三兆円とかなんとか言っているわけでしょう。だから、貿易の三千億ドルというのは百二十倍掛けてみたって三十何兆円、GNPに引き直しても三十兆円強でしょう。そういうものに大きな影響が出てくるということになれば、それは国の経済に打撃を与えることは明らかですよ、これは数字からいっても。  だから、国の経済がだめになって農家が豊かになるはずもないし、今農家の九割は兼業農家ですから、しかも七割は要するに第二種兼業で農外収入の方が農業収入よりも多いという状況ですね。だから、農家といえども不景気は困るのです。だから、どうしても景気は持続させなければならない。しかしながら、米作農家が困るようなことは困るわけですから、困らないようなことで何かうまいことはないのかということをみんなが勉強するというのは私は当たり前のことじゃないのか、そう思っておるのですね。  ですから、どういうふうにしていったらいいのか、今非常な模索中であるということをきのうも申し上げましたが、いずれにいたしましても、これはマルチの場に出ると、今度はアメリカと日本の一対一という交渉じゃありませんから、世界相手の交渉ということになれば、多勢に無勢みたいな話ですよ、これは。先が見えた話だ。数カ国でどういうふうなことをやるのか、それともウルグアイ・ラウンドを本当に命がけで抵抗していくというようなことをやるのか。これは非常に私は厳しい選択を迫られる、別だということでしょう。ですから、そのときに日本が農家にとっても一番いい、国民経済の上からも一番いいという道を、これは与野党一緒になって考えなきゃならぬことじゃないか、私はそう思っておるのです。  ですから、これは本当に虚心坦懐に、どういうやり方がいいのか、どこまでも突っ張っちゃうというだけがいいのか。それが通ればそれで一番いいのですが、そういう現実の問題も踏まえまして、私は本当に国の将来と当面の問題とよく考えながらひとつやっていきたい、そう思っておるのです。野党の皆さんの賛成がなければ、これは言うべくしてこれも実現できないことでございます。それは、食管法の改正とか何か言ったって、困らないようにするにしたって手続は必要ですから。しかしながら、これは野党が反対ではできないし、与党が反対でももちろんできませんし、しかしできないことを約束してきちゃえば、それは外務大臣、首幾つあっても足りませんわね、これは。  だから、やはりできないことの約束はできない。ですから、そこらのところはできるようにして約束するのならできるが、できるようになるかどうか……(発言する者あり)いやいや、本当ですよ。これは難しいところで、これ以上ちょっと私も言えない、実際のところ。だから、これは一緒になってひとつよく考えてください。お願いします。
  61. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 御指摘のように、最近アメリカとECとの間で農業問題の一部について妥結が報ぜられておりまして、その結果、間もなくジュネーブにおいてTNCが開かれるということでございます。これからの推移は必ずしも明らかではありませんけれども、十カ月余りにわたって続いておりましたアメリカとECのこの部分についての問題が一つ前進したということは、ウルグアイ・ラウンド交渉が最終段階に入りつつあるということを意味すると思います。  そこで、このウルグアイ・ラウンドを早期にかつ成功裏に妥結させることは、先ほども各閣僚が言われましたように、自由貿易体制の維持発展のためには非常に大事なことである、我が国の国益にも沿うものであるというふうに考えております。  それから次に、これからいわば貿易交渉委員会、TNCが始まりまして、多国間の接触あるいは二国間の接触、いろいろな交渉の場が開けるわけであると思います。我が国としては、その中にあって、他の主要国に対しても我が国の立場説明し、この交渉が最終的に妥結するように努力をしなければならない、これからそういう舞台にいよいよ入るものというふうに考えております。  これは、ウルグアイ・ラウンド全体にわたりましてのことでございますが、農業につきまして米・EC間の長い間の交渉が示すように、各国ともそれぞれ困難な問題を抱えておりますが、我が国としても、我が国農業の将来を安定させるという、そのためにどうすればいいかということを頭に置きつつ、各国相互の協力による解決を求めてこれから最大限の努力をしてまいらなければならない、そういう段階であるというふうに考えております。
  62. 水田稔

    水田委員 やはりきのうの答弁と同じように、農水大臣が直接日本の農家を守る立場で頑張っておられる。若干国際的な立場で見ておられる大臣とは発言違うようでありますが、本当にもうぎりぎりの大事なところですから、私が申し上げましたように、外務大臣も内政と外政とは同じだと言う。まさにそういう点では、内政に責任を持っておる農水大臣を支えて、宮澤内閣が一丸になって、やはり日本の農業をどうやって守るのか、そういう立場で取り組んでもらいたいということを要望して、これは終わりたいと思います。  それから、これは直接はこれと関係ないわけでありますが、地球環境を守るという点で山の問題がありますので、農水大臣にちょっとお伺いしたいのですが、ことし、まあ日本の農地とか森林保護というのは、これは「環境基本法制のあり方について」の答申の中にも出ておりますように、非常に大事だということが載っておるわけであります。平成四年から森林整備事業計画がスタートしたわけですけれども、費用負担の点でなかなか個人なり地方の方がしんどいわけでありますが、そういう費用負担ですね。それからもう一つは、それぞれの地域における担い手の対策などができなければ、例えば農村でいえば中山間地をどうやって守るかという問題もありますが、山について言えば、今のことしスタートしたこの計画をぜひ成功さすべきだと思うのですが、特にお考えがあれば聞かしていただきたい。  それからもう一つは、国有林野事業の健全経営化のための財政措置、まあここでじゃないですが、来年度予算を考える中で、やはり自然環境を守るという点で山を大事にするための格段の努力を願いたい、こういうことでありますが、農水大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  63. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 森林の有することは私が申し上げるまでもないことでありますが、特に環境保全あるいは水資源の涵養、非常に公益的な機能を持っているわけでありまして、まあそういうことを考えてみますと、この平成五年度予算においても、委員お話しのように森林整備事業計画、これに基づいた造林計画でありますとかあるいはこの進め方、あるいは林道の整備、こうしたものを要求しておるところであります。また、現在、関係省庁と検討会を設けまして、まあ林野庁だけでやれる範囲というのはなかなか財政的にも問題ありますので、他省庁と一緒になりましてどういうことがお願いできるか、そういうことも今進めております。  いずれにしても、今後ともこの必要な予算というものを確保して、特に環境問題がこれだけ国際的に問題になっているときでありますから、そのための森林整備の推進に努めていきたい、こう考えております。
  64. 水田稔

    水田委員 ぜひそういうような御努力をいただきたいと思います。  それでは経済問題について。  宮澤総理総理になられて約一年たつわけです。そのときからの経済の状況を見てみますと、悪いままでさらに悪化したというのが数字の上では出ておるわけであります。いろいろ対策を講じられた、こう言われるだろうと思うのですが、効果のある対策ができてないからさらに悪くなってきたということですね。  そういう点で言えば、私は経済企画庁の見方が、例えば昨年の四月にはもう悪くなりかけ、実際の実体経済が、数字の上で出るのが遅くなっておるから変なことになっていますが、それにもかかわらず、ことしになるまで悪くなった状態を認められなかった、そういう言葉が随所に報告の中で使われておるわけですね。  私は、これはやはり宮澤総理なり経済企画庁長官の責任ではないだろうか。国民から見れば、いろいろやったと言われるけれども、実際には今から、例えば人の問題でいえば雇用調整が始まる、景気がますます低下していく、新卒はなかなか就職できない、そういう状況にあるわけですから、まずその点について、私は総理大臣あるいは経済企画庁長官にこういうかじ取りについての責任があるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  65. 野田毅

    ○野田国務大臣 端的に、昨年の今ごろにおける経済の現状認識というものが、今日、今から振り返ってみて甘かったということは、率直に私は認めなければならぬと思っております。  しかし、少なくとも誤解があるといけないのですけれども、経済企画庁なり政府がどういう基準で経済の状況認識をするか。それは、過去の統計数字をいろいろ分析をするということももちろん大事なポイントでありますけれども、同時に経済の流れ、先行きについてかなり重視しておる一つにいわゆる日銀短観というものがあります。これは、企業経営者自身、一線でみずからの企業をやっておられるいろいろな多くの方々の、設備投資を今後どのようにしていくのか、ふやすのか減らすのか、あるいはみずからの企業なりあるいは業界の先行きの景況判断がどうなのか、そういった先行きの短期観測というものをアンケート調査によって見ておるわけですね。したがって、先行き具体的にどういう動きを示すかということは、まさにそういったものを見ておる。さまざまな角度から見ておるわけです。  そういう点からいきますと、昨年の秋ごろにおける経営者の経営行動というものは、少なくともかなり高いレベルにあったということは当然であります。実体経済の中身を見ても、いわゆる需給ギャップという点からいっても、昨年の秋の段階では全然発生はしていない。むしろその段階で何らかの景気対策をやるとするならば、さなきだに人手不足という環境の中で、中小企業の世界はもっとひどいことになりかねないという、こういう状態にあったことは確かであります。  しかし、年明けましてからその状況が急変をしてきた。さまざまな理由があろうかと思っております。そういった点で、年明けましてからマネーサプライが急速に減少していく、あるいは設備投資の意欲が急速になえていく、消費の動向も春以降急速に悪化をするというさまざまな急変要因がありました。  これには、いわゆる資産価格の下落ということがかなりいろいろな影響を及ぼしておるのではないか。いわゆる設備投資あるいは住宅あるいは消費、そういった世界におけるストック調整という要因だけではなくて、さらにそういう資産価格の下落ということが、製造業のみならず非製造業を含めて幅広い分野において急速に影響を与えておる、深刻な影響を与えておる。特に、いわゆるバブル経済と言われた時代に各企業の損益分岐点が非常に高くなってしまっておるということ、そのことが実際の経済活動のレベルに比べて、ミクロの企業の収益力が急速に悪くなってきた、こういったことが現実に出てきておるわけであります。  そういったことを冷静に見ていきますと、やはり我々としてはそのときどきにおいてやるだけのことはやってきたつもりでございます。金融の側面においても五次にわたる公定歩合の引き下げが行われ、あるいは三月末には緊急経済対策、いわゆる公共事業の前倒しを中心とする対策をやり、これはやはり予算審議の最中という環境を考えれば、当時の私どもとしてはできるだけのことをやったつもりであります。そして今回、八月末に総合経済対策を決定して、できるだけ予算に関係のしないものは、補正予算の審議に先立って極力前倒しでそれを実施に既に移させていただいております。  したがって、いよいよこれから日本の経済が具体的にどういうような展開を示していくのか。ただ、この点は率直に申し上げて、いわゆる政府セクターだけでやれるものの限界があると思います。先ほど申し上げましたように、かなり幅広い分野で損益分岐点が高くなってしまっておるという、したがって、これをみずからの企業努力において、いわゆるみずからのリストラの今汗をかいておられる真っ最中であります、この点は。  きのうも実はそういうお話がありました。自動車、家電製品という耐久消費財の部門がかなり対前年で消費がへこんでおる。しかし、これは単に今日の所得環境が悪いからそうなのか。もちろんそういう側面もあると思います。しかし同時に、これはかなり消費を先食いしておるという、言うなら耐久消費財そのもののストック調整という局面もあるのではないか、あるいは消費者自身の生活態度なり消費態度そのものの見直しが現在行われておるのではないか、あるいは家計における財務内容そのものの見直しも進んでおるのではないか、さまざまな要因が合わさっておるわけであります。  したがって、それらのことをただ単に経済の景気をよくすることに政府部門がどうせよとかいうことだけで乗り切れる話ではない。私は、やはり市場経済においてはあくまで経済の担い手は民間部門である。したがって、今非常に厳しい中ではあるけれども、歯を食いしばってそれぞれの分野で懸命なリストラをやっておられるわけですから、そういういい汗をかいておられることは必ずやその成果が出るわけです。  ただ私どもは、不必要なそれ以上の汗をかいてもらうようなことはよくない、できるだけそういった意味で経済全体の下支えをしていかなければならぬ。そういったことから今回持にこの補正予算でお願いをして、そういう最終需要をどうやっててこ入れをするか、そういったことでこの補正予算審議をお願いいたしておるわけであります。  多少長くなりましたけれども、そういった点で、戦後私は恐らく初めてだと思いますが、これだけ大幅な地価の値下がり、同時に、株価の値下がりという資産インフレの調整局面といいますか資産デフレといいますか、こういう局面の中に、私どもはもう少し冷静に事柄を見て、そして対処していかなければならぬと思っております。     〔委員長退席、町村委員長代理着席〕
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ただいま野田経済企画庁長官が説明をされたとおりでございますが、それをお聞き取りいただきました後で、しかし端的に申して、今度の不況の深さ、それから従来なかった新しい幾つかの要素を持っているということについて、政府としての分析、観察が十分でなかったことは事実であると申し上げなければなりません。  幸いにしてこの平成四年度予算ではかなりの公共事業を積み増してまいりまして、その前倒しをいたしました。それから、先般総合経済対策を、これは投資乗数効果としては一年間にGNPの一・四%ぐらいと言われておりますが、非常に大きなものをいたしまして、その補正予算の御審議を今願っておるところでございますが、政府としていわば政府がなし得る最大限の努力を中央、地方いたしておりますし、また民間の金融、中小企業金融等々についても配慮をいたしておりますが、それによりまして、我が国は市場経済でございますから、やはり国民消費、民間の設備投資というものが経済を担ってまいらなければなりません。それにつなげてまいりたい、そういう努力をただいまいたしておるところでございます。
  67. 水田稔

    水田委員 時間がもう余りありませんので、質問答弁ということじゃなくて、私の方から意見を交えて申し上げたいと思うのです。  今、従来の景気循環型でいいますと、在庫率が九五%ぐらいまで落ちると民間設備投資が起きるということでありますが、実はなかなか在庫調整がつかない。在庫が一〇七%というようなところでずっといっておるわけですね。なぜならば、景気がいいときに過剰設備投資をしておる。非常に安い金利で、二%ぐらいの金利でどんどんやった。それを抱え込んでおるから、生産をがたっと落とせばコストが物すごく高くなって収益が非常に悪化する、そういうことが続いておるわけですね。ですから、公定歩合を五回にわたって下げたけれども民間設備投資が起こっていない、そういう問題。  もう一つは、資産デフレの問題が複合で起こっておるわけですね。今、一番は、もうだんだんだんだんみんなに浸透していくのは、やはり消費抑制の形になっておるんですね、不況だから。それがもう普通以上に拡大されていっておる状況にあるんです。ですから大事なことは、これを立て直すために、一つは、単なる従来の景気循環型の民間設備投資を起こすというんじゃなくて、二十一世紀へ向かってどういう形で我が国が生きていくのかという、そういう形での投資をどうするのか。  あるいはまたもう一つは、やはり所得の問題なんです。私は、近藤労働大臣、大変勇気があると思う。一般の労働組合の組合員が、景気のいいときには、いや悪いときもあるから辛抱してくれとこう抑えられる。で、悪くなったら、悪いから出さぬ。まさに言われるとおりだと思うんですよ。ですから一つは、時間外手当がどんどん減っていった。そこで、例えばローンの払いが時間外でやっても払えぬような状態になったから、それは消費が落ちるという問題がありますね。  それで、減税の問題を言うと、総理大臣はちょっとまあ考えてもいいような御答弁ですが、金の問題やけどね、それは大事なことなんですね。私は、十兆七千億、八兆六千億の公共投資というのは、これはすぐには動かぬわけですね。ことし幾らかといったら、〇・六という計算もあれば、もっと下がるんじゃないか、用地代なんか引けばですね。しかし減税も、大蔵省が計算して、よく減税効果は少ないとこう言って数字を挙げて言うんですが、やはりそうでないシンクタンクの計算もあるわけですね。これは、ある程度年数たてば全部一緒という、政府の計算でも同じ効果が出ておるわけですね。そういうことを棚に上げて、やりたくないから理屈をつけて言っておるわけですね。今、本当の不況は何か。それは、消費をやはりある程度起こしていく。そういう波及効果を起こすためには、減税というのは大変大事なことなんですね。そのことをやはり十分わきまえた経済対策を講ずるべきじゃないか。  これはもう、一々聞いて質問に答えていただくのですが、時間がありませんからまとめて言いましたから、これは経済企画庁長官になりますか。それで、あとやりたいものですから、時間がありませんからできるだけ簡潔に、経済企画庁長官よくおわかりですから、ひとつまとめてお答えいただきたいと思います。     〔町村委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 野田毅

    ○野田国務大臣 確かに御指摘ございましたように、今回の調整局面は過去の幾つかの調整局面とはかなり違っております。したがって、そのことをも念頭に置きまして今度の対策の中では、例えば設備投資につきましても、単なる能力増強ではなくてこれから迫りくる人手不足の時代に対応して、御承知のとおり省力化あるいは環境問題などを念頭に置いた投資減税をいわゆる年度途中で組み入れたのは初めてであります。あるいは金融の側面、これもそういったことを念頭にも置いておるわけであります。  ただ、最後に御指摘のありました所得減税につきましては、昨日総理からも御答弁がございましたように、もちろん効果は私はあると思います。しかし、それにかわる代替財源をどうするか。予算を減らしてそっちに回すのか、あるいは国債を発行するのか、いろいろな代替措置をいろいろ比較検討すると、確かに誘惑はあるんだけれども、現実問題できるんだろうかというところのぎりぎりのところだと実は思っております。特に、これは経済効果のみならず、やはり税体系全体をどうするかという問題を避けて通れない課題ではないかというふうに考えております。  そういった点で、税制の問題についても、でき得るならば与野党対決型でなくて与野党が一緒になってそれらの問題に取り組んでいくということが、先ほどの農政のお話じゃありませんが、非常に大事なときに来ておるのではないかというふうに思っております。
  69. 水田稔

    水田委員 財源の問題は、例えば建設国債もいわゆる赤字国債もどっちも赤字国債であることは間違いないのです。ですから、例えば前年度の繰り越しの一般財源を減税に回して、いわゆる公共事業分を建設国債で賄う、そういう知恵も出せばできぬことはないだろう。だから、今の経済をどう見て、それを本当にどこから動かすのかということを考えた対策がやはり必要ではないかということを申し上げておきます。  それから委員長、法務省と警察庁おいでになったので、ちょっと答弁いただきたいと思います。
  70. 高鳥修

    高鳥委員長 法務省濱刑事局長質問の内容わかっておりますか。——では答弁願います。
  71. 濱邦久

    ○濱政府委員 どうも先ほどは大変失礼いたしました。  この佐川関係で、いわゆる違法ターミナル建設問題に絡んで都市計画法あるいは道路運送車両法関係で受理した事件があるかどうかというお尋ねであったかと思うわけでございます。  いわゆる元東京佐川急便株式会社をめぐりまして、いろいろの報道あるいは国会での御議論のあるところは検察当局も十分承知していることと考、えておるわけでございます。また、検察の職責からいたしまして、刑事罰則に触れるものがありますれば、これはもう厳正に捜査を進めるものと理解しているわけでございます。  なお、念のために一般的に申し上げますと、東京佐川急便関係というわけではございませんけれども委員が御指摘になっておられます道路運送車両法あるいは都市計画法の罰則に触れる罪ということで相当数の事件を受理し、また起訴している事例もございます。そういう意味では、都市計画法あるいは道路運送車両法は、いずれも現実に運用されている罰則であるということだけつけ加えさせていただきます。
  72. 津和孝亮

    ○津和政府委員 お答えいたします。  先ほど先生御指摘の件は、愛媛県松山市に所在しております有限会社松山佐川急便の件であろうかと思いますけれども、本件につきましては、所管の行政庁の方で種々の行政指導が行われておるところでございます。また、法の目的からいたしましても、そうした行政指導に基づきまして是正措置がとられるならば、あえて捜査、罰則を科すべきものであるかどうか、いろいろ検討すべきこともあろうかと思うわけでございまして、警察といたしましては、問題意識を持って見守っておる、そういう状況でございます。
  73. 水田稔

    水田委員 PKO法案に絡むいわゆるカンボジア自衛隊派遣の問題について、これも時間の関係でまとめて御質問しますから御答弁を。これは官房長官になりますかね。  十月に、いわゆるPKO協力法の参加五原則が満たされている、こういうことで陸上自衛隊の施設部隊を中心にする部隊をカンボジアに派遣したわけであります。この中には、紛争当事者の停戦の合意ということがあるわけでありますが、実態を見ると、大体国土の一五%ぐらいいまだにポル・ポト派が軍事的支配をしておる。そして、これはずっと停戦といいますか第二段階の武装解除に応じない、そういうことが続いておりますし、日本とタイが中に入ってあっせんをしたけれども成功しない。そういう形の中で政府は、シアヌーク殿下が議長をやっておる最高国民評議会ヘポル・ポトも入っておるから紛争はない、こういう言い方をされるのだろうと思いますが、実態からいえば現にそういう状況があるし、大分抑えておるようでありますけれども発砲事件等があるわけであります。私どもは、これはやはり五原則に反するのではないかということを一つお伺いしたいと思うわけです。  それからもう一つは、いわゆるUNTACは来年の八月、それから日本の自衛隊は実施計画で来年十月に撤退を予定しておるけれども、今の状況を見るととてもじゃないがそんなことでは済まないのではないかというのが国際的な大方の見方だろうと思うのですね。ですから、これを続けていけば、紛争状態が実際にあるのにもかかわらず条件を満たしておるというような言い方をしながら泥沼へ入っていく。かつての日本がいろんな国際紛争の中で長年にわたって紛争に巻き込まれたのは、もちろん日本がやったということもあるわけです、当時は。あるわけでありますけれども、そういう心配があるのではないか。  やはりこの際は、二年先の見直しということじゃなくて、あのときに急激にやったものですから、例えばこういうこともあるようですね。この間、自衛隊員が事故を起こして向こうの国民を殺した。それは法的に処分のしようがないというような形になっておるわけです。改めて参議院の方で御質問する人がおられるので詳しくは言いませんが、そういういわゆるガラス細工のような問題がいっぱいあるわけですから、二年後の見直しじゃなくて直ちに、やはり我々が主張しておったような国際的にみんなから歓迎されるような文民の国際協力隊というような形でつくるような論議をすべきじゃないか。まあ政府に対しては二年後の見直しを、もっと早い時期の見直しをやるべきではないか、こういうぐあいに申し上げたいと思うのですが、まとめて御答弁をいただきたいと思います。
  74. 加藤紘一

    加藤国務大臣 一番最初に、法案の五原則というものが今守られているか。特に今水田先生の御指摘は、第一項目の停戦の合意の部分についての言及とポル・ポト派の動向だと思いますけれども、ポル・ポト派は御承知のようにSNCの中のメンバーでございまして、そしてパリ協定の大枠を守るということは今やられていると思っております。もちろん幾つかのちょっとした小競り合いがありまして、それはプノンペン政府の方が起きたと主張している場合もありますし、ポル・ポト派が主張している場合もありまして、それでUNTACが調べてみますと、本当に事実があったのかどうか、若干お互いに政治的なプロパガンダのところもありまして実態が明確でないところがございますけれども、しかし、双方とも全面的な戦闘開始になっているというような状況では少しもないと思っておりまして、五原則の条件は今守られていると思っております。  それから第二の御質問は、来年の八月までがuNTACの期限だけれども、それの延長の可能性は、そのとき日本はどうするのかねということでございますが、現在のところそういうことが、延長ということが確かに選挙が順調にいくかどうかとの関係で議論されているところはございますけれども、その時点になって考えてみたいと思っております。まず第一にその時点でUNTACが延長するのか、また国連の方が日本のPKO活動にその後も要請してくるのか、その二つを見てから判断したいと思っております。  それから三番目に、もう文民PKOにしたらどうかということでございますが、これは大分御議論いただいて、ことしその法案を通していただいたわけでございますので、法案の運用には慎重には慎重を期したいと思っておりますけれども国民の支持も得ていると私たち思っておりまして、その意味では、水田先生と意見は違いますけれども、このままの形でやらせていただきたい、こう思っております。
  75. 水田稔

    水田委員 国民の意見は、世論調査を見る限りやはりまだ二分されておるのですね。ですから、本当に喜んでもらえる形での国際協力というのを考えるべきじゃないか。それから、今の形のままで、法的にも恐らくガラス細工のようになっていることはお認めになるのじゃないかと思うのですが、アメリカの政権がかわる、これからそういう形での協力要請というのは強く出てくる。そういう中で問題が起きないようにするためにも、早い時期にやはり見直しをやった方がいいんじゃないかということを意見として申し上げておきたいと思います。  もうあと時間がありませんから、最後にプルトニウムの輸送の問題について御質問いたしたいと思います。  三十トン処理すべき使用済みの燃料があって、これはフランスのラアーグへ送って再生をしてもらっておる、これを日本へ持って帰る、こういうことについて周辺各国から物すごい懸念の声、中には反対の声が上がっておるわけでございます。これは一回、三十トンのうちの一トンを運ぶだけでこれだけの声が出てくるわけでありますから、これを三十回もやると大変なことだろうと思うのですね。そういう国際的な、私たち日本が国際関係でいい関係をつくろうと思って一生懸命努力しても、このことで国際的な信用を失うというような、不信を醸成するという問題も起こるんじゃないか。  それから、既にプルトニウムについてはアメリカやドイツは使用済み燃料の再処理はしないまま保管をしております。我々は今三十トンもあるわけですけれども、これは現地でIAEAを中心にした国際的な管理に移しておいた方がむしろいいのではないか。それから、フランスでいわゆる再生されたもの、実際には日本から送ったものがそのまま日本へ帰るのじゃなくて、ほかの国のものが日本へ入ってくる、そういうおそれはないのかどうか、心配であります。ですから、組成について日本政府はどういうぐあいにチェックをするのか伺いたいと思います。       、  それから、今申し上げました国際的な関係なり、実際にプルトニウムが国際的にほかの国ではもはや直ちに燃料として使うことはしないという状況の中で、日本のプルトニウム政策についても、無限に再生できるというようなそういう思いだけで、コストの点でいってもべらぼうに金のかかるものです。安全性の上でも、国内だけじゃなくて国際的にもこれだけ非難を買っておるわけでありますから、政策の転換をすべきじゃないか、そういうぐあいに思うのですが、科学技術庁長官ですか御答弁をいただきたいと思います。
  76. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 お答えいたします。  使用済みの燃料を再処理いたしまして回収されますプルトニウムを利用しますことは、これは、日本は御案内のとおりウランがございません、世界のウランの資源の二割までを日本が使用しておりますような状況でございますので、長期的視点からいたしまして、今のプルトニウムを燃料として使用する、これは原子力の平和利用を進めていく上におきましても、我が国の基本的な方針でございます。(発言する者あり)まあお聞きください。基本的な方針でございまして、ただ、ただいまの当面日本で回収されますプルトニウムでは不足いたしますものですから、御案内のとおり、今度フランスから輸送してくるわけでございます。  輸送に当たりましてはもちろんのこと安全性、それから核防護につきましてもあらゆる措置を講じておりまして心配はないのでございますが、国によりまして御心配の向きがございます。そういう国々に対しましては、誠意を持ちましてあらゆる方法を講じまして御理解を得るようにやってきておるところでございます。  私も、実は九月に国際原子力機関の総会がございまして、その際にいろいろ御説明申しましたが、その席ではどちらからも異議とか御意見は出てまいりませんでした。今後とも誠意を持ちまして御説明申し上げ、御理解を得るようにしたいと思っております。  それから、今お話がありました各国がプルトニウムの利用をやめておるときに日本だけ、こういうことでございますが、フランスが当面問題であろうと思いますが、この間関係の大臣とお話し合いをしましたが、決して新聞で報道されておるようにやめたわけではないと御理解……(発言する者あり)いやいや、やめたわけではありません。イギリスの事情を聞きましたが、イギリスはエネルギー事情が日本と違うからそんなものは考えなくてもようございますという話でございました。アメリカも一時やめましたが、また再開をするような機運にございます。日本は、今申しましたようにエネルギー事情、資源の状況が全く違いますから、今後とも各国の理解を得ながらやっていきたい、こういうふうに考えております。  それから、今のIAEAの問題でございますが、ただいまもIAEAの厳重な査察のもとにございまして、動燃の工場を御視察いただきますとわかりますが、カメラで常時視察をしておる、監視をしておる。それからまた、毎日数人のIAEAの職員が査察に来ておるという状況でございまして、決していいかげんな措置ができないようになっておる次第でございまして、IAEAの管理下にあるようなものでございます。そういうことでございますから、御理解を賜りたいと思っております。
  77. 水田稔

    水田委員 時間がありませんから終わりますが、燃料がないからといって、人類に対する危険の影響というのは全部一緒なのです。間違わぬでいただきたいです。  時間がありませんから、私は、あとこの委員会になるか、また科学技術の委員会になるか、我が党の専門の方々がなおこの問題については質問するということを申し上げまして、質問を終わります。
  78. 高鳥修

    高鳥委員長 この際、筒井信隆君から関連質疑申し出があります。水田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。筒井君。
  79. 筒井信隆

    ○筒井委員 最初に、質問に入る前に、先ほどウルグアイ・ラウンドのことについてお聞きしていますと、通産大臣、外務大臣初め、自由貿易ということを物すごく強調されておりました。しかし、自由貿易という原則、これを例えば農業に他の産業と同じようにそのまま適用してしまえば、中山間地農業を初めとして成り立たなくなってくることがはっきりしている。自由貿易原則というのは、もちろん原則として市場経済ですから言っていいと思うのですが、食糧、農業とか医療とか教育とか、自由貿易の原則はそのままの形では適用されない分野というのがやはりあるのじゃないか。  大体自由貿易という原則は、アダム・スミス以来、第二次産業革命以来、製造業を中心にしてでき上がってきた原則でございまして、そこでお聞きをしたいのですが、農業に関しても他の製造業と同じように自由貿易原則がそのまま適用されると考えておられるのかどうか。全く同じように考えておられるような感じの答弁が先ほどありましたので、農林大臣と通産大臣と外務大臣にまずその点、結論だけでよろしいですがお聞きをしたいと思います。
  80. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答え申し上げますが、なじむかどうかというと、その国々によって私は違うと思うのですね。例えば日本の場合ですと、水田以外に何かやるかということになると、雨量が多いということが一つあります。それから、何といっても国土を守るということからすると、これだけの雨量を一体どこで受けとめるかということを考えるとやはり米作というものが適しておる。しかし国土は非常に狭いということがありまして、ただ一方では、アメリカ、カナダのように広大な土地で大量生産をやる国、あるいはまた食糧が不足している国、そういうところはやはり自由に貿易というものは成り立っていく。だから、国々によって私は事情は全然違うと思うのですね。  ただ、工業製品のようにいくかということになると、それは同様にはいかないというふうに考えます。ですから、需要と供給ですから、その辺のバランスによっては必要量を輸入に依存するということはあると思う。現に私の方も四兆五百億ぐらいの食料品を輸入しております。これを農地に置きかえると一千二百万ヘクタールですから、大変な食糧を輸入しているのですね。日本の農地というものは五百二十万ヘクタールしかありませんから、いかに食糧を自由に貿易によって得ておるか。それは品目によっても違うということは言える、こう思います。
  81. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 通商産業大臣の渡部恒三であります。  これは先生も御案内のように、昨年、七十年の社会主義の歴史を持ったソビエトが、日本よりもはるかに広大な面積、世界で一番大きな天然資源と、いわゆるエネルギー、天然ガス、ああいうものを持ちながら崩壊してしまった。もうやはり国民がそれぞれの国で豊かになっていくのは、開放市場の中で自由主義経済で進んでいかなければならない。これはもう世界の共通のこととなっておると思いますけれども、これは御理解いただけると思います。  ただ、その方向に進んでいくプロセスの中で、これは通産省所管のものでもかつてはいろいろ保護政策をしておった産業等もありますし、また今でも皮革とか、あるいは非鉄金属とか、関税率の高いものもあるわけですから、一遍に何もかも全部自由というものではありません。それぞれの国の国益がある。だからウルグアイ・ラウンド交渉をしており、ガットの場で折衝しておるわけで、その中で日本は農業、これは土地が狭い、いろいろの理由があって競争力が弱い、そういう現状の認識は、皆さんも私どもも同じだろうと思います。  ですから、先ほども、私は四極の場でも、我が国には農業の抱えておる非常に困難な問題があるということを申し上げたわけでありますけれども、そういう中で全部の国がそれぞれの国益を一〇〇%主張して譲らないということになれば、これは世界の自由主義経済なぞ成り立つはずがないわけでありますから、その中でやはり将来目標は、みんなが、世界じゅうの国々が自由に貿易できるようにすることが人類の発展のためであるという、その理想に向かってそれぞれの国益を主張しながら一歩一歩前進していく。農業についての我が国が特殊の事情があることは、私もあらゆる国際会議の場で申し上げてきております。
  82. 筒井信隆

    ○筒井委員 私がお聞きしているのは、市場経済にみんな立っている、これを前提にしている、それはよろしいんです。その上で、自由貿易原則というのが、製造業に対してと全く同じように農業に対しても適用されると考えられているのかどうか。国益とかなんかじゃないんです。その点だけをお聞きしたいんです。
  83. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これはいずれば我が国も、農林省で一生懸命やっておるわけでありますけれども、国際競争力を持てるような農業になる努力はしていかなければならないものと思いますけれども、しかし、今我が国の農業が非常に難しい問題を抱えておるということは、国際会議の場で常に私も言っておるのでありますから、その点の理解はそれぞれあるものと思っております。
  84. 筒井信隆

    ○筒井委員 先ほど農水大臣は明確に、それは違うところがあるというふうに答えられた。そういう答えを欲しいんです。そういう違うというふうに考えているのか、全く同じであると考えているのか、その点のお答えをいただきたいということなんです。
  85. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今申し上げて、私が国際会議のあらゆる場で、農業というものについては我が国にも各国と同じように非常に難しい困難な問題があると言っておることは、つまり今後ウルグアイ・ラウンドの場でも、これは農林大臣が農業を守るためのいろいろな主張をしていく、農業というのは他のものと違うという立場で頑張ってくださるものと思っております。御理解いただいたでしょうか。御理解いただきます。
  86. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは工業製品と全く同じとは考えられません。まあ似たようなものもありますけれどもね。例えば鶏ですね。卵の生産というのは完全自由化しておりますが、ああいうふうに土地を余り必要としない、二階建て、三階建ての鶏舎があるわけですから、五階建てとか。そういうようなことで、鶏飼いは確かになくなったが、卵製造所はできたんですね。世界で一番安くていい卵をつくっているのは日本ですから、自由化しても入ってこないとか。  こういうように工業製品と似たようなことができるものと、それから、米麦のようにたくさんの土地を必要とするというようなものは到底、それは生産性を上げろといってもそう簡単にいかない。田んぼや畑の二階建て、三階建てというのはできませんから。だから私は、どこの国でも農業に対してはそれなりの保護を与えているということは事実であって、我々も農業に対する保護はある程度必要であることはもうかねがね申しておることであるし、実行をしておるし、今後も実行をしていきたい、そう思っております。
  87. 筒井信隆

    ○筒井委員 本来の質問の方に入りたいと思いますが、最初に、今度の総合経済対策の問題についてお聞きいたします。  政府は、経済企画庁も大蔵省も今度の総合経済対策でGNP二・四%増が実現できる、こういうふうに言っておられます。しかし、これはちょっと誇大表示じゃないかというふうに思うわけでございまして、要するに二・四%プラス本来の一・一%を足して経済成長率が三・五%になる。この三・五%という経済成長率は政府の公約なものですから、その数字のつじつま合わせをしているだけにすぎないんじゃないかという疑いが強くあるわけでございまして、そこで、大蔵大臣と企画庁長官お二人にお聞きしたいのですが、今度の総合経済対策でGNP二・四%増になると言われるその根拠はどういう根拠から言われているのでしょうか。その点を説明願いたいと思います。
  88. 野田毅

    ○野田国務大臣 今回の総合経済対策、御承知のとおり財政資金で十兆七千億、そのほかにいわゆる設備投資減税、あるいは民間の電力などの公益事業部門において国に準じて前倒しなどを一緒に行ってもらう、そういったものが十兆七千億のほかにあります。  そこでその中で、十兆七千億という中には用地費とかそういったGNPのカウント外のものがあるわけです。そういったものを除外をして、その除外をしたところに、いわゆる公共投資などについては一定の乗数を掛けるということです。そしてそれを、二・四%というのは本年度の二・四ということではなくて、本年のこの効果が具体的に実際に実動に入る、本年の十月以降一年間にわたって二・四%程度押し上げるであろう、こういう計算でありますから、それは必ずしも四年度の成長率そのものと直接リンクをしておるということではないということであります。
  89. 筒井信隆

    ○筒井委員 もちろん一年間の成長率の問題としてお聞きしているわけでございまして、今長官言われました公共用地の先行取得、この一兆五千五百億円、これは直接最終需要には結びつかないということから、この点では除外をしている。その除外をしている点、さらには中小企業等の設備投資、中小企業を含めた設備投資二兆一千億円、これも運転資金等々で直接最終需要には結びつかないというふうに経済企画庁も説明しているのですが、これは全額結びつかないというふうに除外をして計算されているのか、それともその一部なのか、一部としたらどこまでのものを含めているのかという点が一つ。  それから、今乗数と言われましたが、これは世界経済モデルの乗数一・三三、これを掛けているということでございますね。そっちの方はよろしいのですが、今のその除外する中身、直接最終需要に結びつかないものとして考えている、その中身を説明いただきたいと思うのですが。
  90. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘がございました後段の一・三三と申しますのは、これは実質の公共投資の乗数効果でございまして、今回用いております一・三九、これは名目の乗数効果ということでございまして、こちらを用いて試算をして、その結果、向こう一年間につきましてその効果が二・四%程度、こういうことでございます。  それから、何を除外しているかという点でございますけれども、ただいま御指摘がございましたように、公共用地等の取得に関します一兆五千五百億といったような、こういう用地取得費のほかに中小企業金融公庫等の融資の中で運転資金にかかわるようなもの、こういったところにつきましても所要の調整をいたしまして、いわば最終需要を構成する、そういうGNPベースのものを基礎としながら、それに先ほど申しました乗数を乗じて試算をしている、こういうものでございます。
  91. 筒井信隆

    ○筒井委員 だから、それはわかっています。先ほど言ったように、その二兆一千億円のうちのどの部分を除外して、どの部分を最終需要に結びつくものとして考えているのか、それを出していただきたいのです。
  92. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 全体として試算をしているということでございまして、どの部分について幾らという細部につきましては、これはあくまでも部内的な一定の仮定というようなことがございますので、その点につきましてはお許しを賜りたいと思いますけれども、その二兆一千億、これはただいま御指摘がございましたように、中小企業及び民間設備投資につきまして、中小企業対策一兆二千億、それから民間設備投資の促進九千億、これを合計したものでございますが、民間設備投資の促進につきましては、これは全体として、いわば民間設備投資を最終需要としてふやしていく、そういう効果があるものと考えられるわけでありまして、中小企業対策にかかわるものの中の=疋部分が、これは運転資金的なものが入っているのではないか、こういう趣旨でございます。
  93. 筒井信隆

    ○筒井委員 その点お聞きしたのは、シンクタンクによってはこの二兆一千億全体が直接最終需要に結びつかない、こういう判断をして計算しているところもあるものですから。具体的な数字二・四%を出しているわけですからね。大体の形でもって言っているなら別ですけれども、明確に、二・五とかなんかじゃなくて二・四%という成長率を出しているわけだから、その数字の根拠は明確にあるわけでしょう。それを国民に示して考えなきゃいかぬので、それで明確な根拠も言わないで、これだけ景気対策効果があるから、こういう大本営的な、ここでやっていたって今までどおりまた経済企画庁とか政府に対する経済的な信頼がなくなるわけでして、やっぱり具体的に出していただきたいと思うのですよね。  そして、さらには今の運転資金等はこれは除外しているというふうに言われましたが、要するにこれは融資なわけですよね。その融資として考えてみた場合に、住宅金融公庫等の融資増加八千億円、これも同じ趣旨で除外すべきではないか、まあそういうふうに主張しているシンクタンクもいっぱいあるわけですが。だから、融資だから基本的に融資に応ずるかどうかはそれは不透明なわけですよ、相手方次第で。たとえ融資に応じたとしても、既に民間の市中金融機関から借りようとしているやつのそのシフト分であるならば全然応じないわけですよ、純増にならないわけ。だから、これはまさに不透明部分が多過ぎるのだから、多くのシンクタンクが言うように、住宅金融公庫等の融資増加八千億、これもやっぱりこの計算から除外すべきじゃないでしょうかね。
  94. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 お答えいたします。  民間のシンクタンクでさまざまな推計がなされていることは承知をいたしておりますけれども、概して申しますと、これは公共投資に限定をし、さまざまな除外をして行っているわけであります。  今回の総合経済対策におきます眼目は、公的資金が投入された結果としてそれが経済全体にどのような浮揚効果をもたらすか、こういう観点からの試算だと私ども理解をいたしております。  そういう観点から申しますと、ただいま御指摘がございました住宅金融公庫によります貸し付け、これにつきましても、実は民間住宅建設をこれによって促進する、そういう効果があるわけでございまして、これはまさに効果の中に入れるべきものだと私ども考えている次第でございます。  同時にまた、民間の資金のシフト、こういう御指摘もございましたけれども、全くそういう面がないということはないと思いますけれども、しかしながら、今回の対策によりまして相当有利な条件による公的融資がなされるわけでありまして、その結果新たな需要の喚起、そういったものが相当期待できるわけでありまして、そのことによって民間住宅建設の促進がなされる、こういうことがあるわけでございますし、さらには、先ほど大臣から御答弁申しましたような、今回の試算の中には含んでおりませんような民間設備投資のための減税でありますとか、あるいはまた公益事業におきます設備投資の増額、こういった措置があるわけでありますし、さらにはまた金融面での措置、こういうものも実体経済に好ましい影響を与えていくということがあるわけでありまして、こういった点については二・四%の試算の中には入れてない、あくまで公的資金ということに着目をしているという点につきまして御理解を賜りたいと思います。
  95. 筒井信隆

    ○筒井委員 もちろん公的資金に限定してお聞きしているわけですが、もう一つ、災害復旧とか地方単独事業、これに関しても、こういうのは大体追加されるのが恒常化している部分が非常に多いので、需要が純粋に増加するものとは言えないという意見もあるわけでございまして、これも全額を少なくとも入れるべきじゃない、一部は低めて考えるのが正しい考え方じゃないかというふうに思うわけですが、しかし、当然それは反論されるでしょうが、それに対して答えはいいのですが、もう一点、公共事業に占める用地費とか補償費を全然考慮に入れておられないのじゃないか。公共用地の先行取得部分は、これは先ほど除外されておったということはお聞きしたのですが、それとはまた別に公共事業に占める用地費とか補償費、大体一〇%から二〇%かかるわけで、こっちの方にもこの公共事業費は投入されるわけですが、これはやはり最終需要に結びつかないものとして除外してこれからの景気見通しを立てるべきじゃないか、この点はどうでしょうか。
  96. 野田毅

    ○野田国務大臣 御指摘のとおり、決してこれは公共用地先行取得だけではなくて、通常の一般公共事業においてもあるいは地方単独事業、それらにおいても用地相当分はいわゆるIGベースからは除外をいたしております、基本的に。したがって、十兆七千億という総額の数字でありますけれども、先ほど住宅の話もありましたが、民間資金分を除いたり、あるいは用地にも住宅公庫は貸し付けをするわけですからその用地は除くとか、そういったさまざまな事業の中でも用地は除いております。そういうIGベースの根っこになるのがおおむね十兆七千億に対応して八兆円程度になるのではないかということであります。
  97. 筒井信隆

    ○筒井委員 用地を除いて計算しているとは思えないのですが、細かい数字になるのでそれはやめますが、どの程度、一〇%、二〇%と言われておりますが、二〇%程度除外しているのでしょうか、その点はどうですか。
  98. 野田毅

    ○野田国務大臣 そうですね、例えば地方単独などでは二割程度は用地費、こう見ておりますね。
  99. 筒井信隆

    ○筒井委員 地方単独事業に限定された、要するに全体として二割程度というふうにお聞きしてよろしいですね。
  100. 野田毅

    ○野田国務大臣 まあ十兆七千億に対して八兆ですから、そのほかにもちろん民間資金分だとかあるいはさっき……
  101. 筒井信隆

    ○筒井委員 それは用地費の関係で、二割程度。
  102. 野田毅

    ○野田国務大臣 用地費だけでいくとまあそんなところでしょうね。二割程度でしょうね。
  103. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうしますと、ちょっと計算が合わなくなるのですが、それはいいとして、この二・四%に関する政府の意味なんですけれども、どうも今までこういう問題に関して、前もっていろんなことは打ち上げるけれども、その後の検討とかチェックとか余りなされていないように見られるわけでございまして、これは政府の国民に対する、あるいは外国に対しても含めて公約であるというふうにも言われているわけですが、総理大臣、これはそういうふうな重みのあるものとして受けとめておられるのかどうか。そして、これがもし達成できなかった場合に、どういうふうな責任のものとして考えておられるのか、その点お聞きをしたいと思います。
  104. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 総合経済対策をつくりまして実行を始めましてから、御承知のように、フォローアップが必要だと考えましたので、政府の経済対策閣僚会議においてフォローアップをいたしております。もう二度ほどいたしたかと思いますが、それで乗数効果の二・四というのは、ただいま企画庁長官、政府委員からも申しましたような計算上の数値で私は大体間違っていないであろうと思いますので、その乗数効果そのもの、一年間の二・四というのはまず達成できるであろう。全体の経済成長というものが事の性質上非常に厳密な意味で約束できるものでないということはこれは御理解をいただけると思いますけれども、我が国の政策努力としては、国際的に説明をいたしておりますものでございますから、やはり全力を尽くして達成をしなければならないものだというふうに思います。
  105. 筒井信隆

    ○筒井委員 まあ抽象的な言葉で余り意味がないのですが、いずれにしても、これがどうも達成されない可能性が強いという意見が非常に多いことは御承知だと思うのです。  それで、今の政府だと、来年の春ごろ、一から三月期あたりまでには何とか景気も回復するというふうな趣旨に近いことを言っておられるようですが、どうもさっきの計算の根拠もおかしいし、来年いっぱい不況状態が続くのじゃないかという、こういうシンクタンク等の意見もあるわけでございまして、それほど長く続く可能性があるとしたらやはり所得税減税が必要ではないかということを今社会党の方も強調しているわけでございまして、その所得税減税と言いますと、財源は何だ、赤字国債出すのが大変だというふうなことを言われるので、その赤字国債の方について、総理大臣、大蔵大臣の方に考え方をお聞きしたいと思います。  財政はもちろん均衡させることがいいわけですが、しかし均衡させることが財政の目的でないことははっきりしているわけでございまして、赤字国債は絶対だめというふうに総理大臣、大蔵大臣考えておられるのでしょうか。この不況はたとえどんなに、来年度いっぱい続いても、赤字国債というのは一切だめなんだ、いかなる場合でも赤字国債はだめと考えておられるのか。それとも、景気が大体来年の一から三月に回復ずるという見通しを前提にして、赤字国債出す必要ないというふうに考えておられるのか。その点、お二人にお聞きをしたいと思います。
  106. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 赤字国債につきましてのお話でございますけれども、私どもといたしましては、これをまた再現といいますか、今ようやくやめたところですね、これを始めるということになりますと、いわゆる何というのですか、歳出圧力というもの、これに対する歯どめというものがなくなってしまうということ。それと国債費というのがもう二〇%を超えてしまっておるという状況で、いわゆる高齢化社会というものを私ども考えましたときに、やはり今ここでやってしまうということは大変なことになろうと思います。  そしてもう一つは、やはり社会資本という形で後世に資産を残さないということで、他方では利払いというのがどんどんどんどん負担が大きくなっていくということ、こういうものを考えたときに、私どもはここで今赤字国債を発行するということはやるべきではないということを申し上げざるを得ないと思うわけであります。そして、確かに景気のいろいろな刺激というものはありますけれども、私どもといたしましても、やり得ることについては各国からも評価されるほどのものを今度は対応しておるということ、この点をひとつぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。
  107. 筒井信隆

    ○筒井委員 端的にお聞きしたいので、赤字国債がだめだと言われているのは、これは来年一−三月に景気が回復するという見通しを前提にして言っておられるのか、それともそういうのは全くもう関係なく、来年いっぱいたとえこの景気が続いたとしても赤字国債は一切だめだ、絶対だめだというふうな趣旨で言っていられるのか、そのどちらかをお聞きしたいわけです。
  108. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 特例公債から脱出するまでにやはり十五年かかっているわけですね。ですから、私たちは、これはもう何としても出さないという覚悟で対応したいと思います。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 景気が回復した云々ということをおっしゃいますときに、企業家あるいは家計の方で大分景気がよくなったなと感じる、普通それは後を統計的にたどりますと、大体二・四半期ぐらい統計よりおくれてそういう実感が出てくるという経験がございますので、そういうこともひとつ考えておかなければならないと思います。  それから、仮に一−三とおっしゃいますからそれをどう考えますか、そういう景況感というものが仮にそれから何カ月かの間に出てこないとしたらどうするかということは、その前段にまず平成五年度の予算を、昨日も申し上げましたけれども、十分に総合経済対策の延長線にあるようなものにしていかなければならないと思いますが、それでもさらに足りないということが仮にございましたときには、やはりそのときに選択をしなければなりません。私は、恐らくそれはことしゃりましたような総合経済対策のような形で、公共投資あるいは中小企業金融を中心にやることの方がいいのではないか。ということは、それは建設国債をもって、あるいは財投をもって賄える部分が多い、展望としては、万一のときはそう考えております。
  110. 筒井信隆

    ○筒井委員 大蔵大臣が特にはっきりと、極端に言えば不況がどんなに長引いても赤字国債を出さない、こういう決意を表明されたというふうに先ほど聞いたのですが、ちょっと余りにも硬直的過ぎるという感じがするわけでございまして、確かに、歳出を可能な限り切った上で建設国債を出す。建設国債を発行してそれでも足りないときに、さらに無理に歳出を削り込むよりは赤字国債を出した方がいい場合があるのではないか。それはその場合によって違うので、景気状況がどんなに変わろうが絶対出さないなんということは、やはりちょっと硬直的過ぎるのじゃないかというふうに思うわけです。もし絶対だめだとするならば、そうしたら、そういう建設国債のように裏づけのある借金以外は絶対だめだとするならば、隠れ借金とか裏国債とかこう言われているのも絶対だめだということになるだろうと思うのですよね、景気がどういう状況でも一切裏づけのない借金がだめだとするならば。  そこで、大蔵大臣にお聞きしたいのですが、今度の補正予算においても「臨時異例の措置として、」というまくら言葉は入っているのですが、一般会計の資金運用部への借金、これをさらにまた繰り延べをした措置をとったり、あるいは前年度の純剰余金、これを法律の本来の原則に反して一般会計の方に入れたり、あるいは、今までだって特別会計から借金した例がいっぱいあるわけでございまして、もし裏づけのない借金が絶対だめとすれば、景気がどういう状況になろうともだめだとすれば、今度補正予算でとったそういう隠れ借金といいますか、裏国債自体がおかしいのじゃないかというふうになると思うのですが、その点どうですか。
  111. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今、後ろの方で、痛いところだと言われましたけれども、確かに今度、今御指摘がございましたようなことで、いろんな知恵を使いながらこの総合経済対策、補正予算をつくり上げたということは事実でございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、赤字国債というのは、実際に何か欲しい、これをやりたいなということになりますと経常経費に何でもこれが使えるということになってしまいますね。ですから私どもとしては、絶対という言葉は、これは絶対に使えるものじゃないだろうというふうには思っておりますけれども、しかし、そのぐらいの覚悟でやはり臨まなければならないんだということをぜひ御理解いただきたいと思うのです。  今度も私もG7なんかの会議で、あるいはIMFの総会等に出ましても、やはり各国が、日本が財政出動できたこと、これはやはり相当長い期間における財政再建、この苦労というものがあったんだなということを評価されて、そのあたりが非常に各国とも改めてそのことを見直しておるということ、いわゆるポリシーミックスをとったということに対する大変な評価があったということ、そしてそれは今度裏返せば、逆に今財政出動したくてもできない国があるんだということ、こういうことを考えたときに、高齢化社会がすぐそこにやってくる、いろんな負担がふえてくる、こういうものを考えたときに、今この赤字国債というものを発行することについて我々は厳に慎まなきゃいけないんだということを重ねて申し上げることをお許しをいただきたいと思います。
  112. 筒井信隆

    ○筒井委員 ちょっと、隠れ借金との関係に関しては余り今お答えにはなっていないと思うのですけれども。  それと、絶対ということは断言はできないと今も言っておられたのですが、しかし羽田大蔵大臣、断言しているのですよ。これは文春の九二年の十一月に出たところで、絶対に発行してはならないということに腹を決めて対応しなくちゃならない、発行するつもりは全然ないし、やるべきではない、こういう発言と先ほどの方の答弁で、ちょっと硬直的過ぎないかと。その態度と、隠れ借金をこういうふうに認めて、そして来年度の本予算でもこういう裏国債を物すごくいっぱい認めているわけで、この二つの態度は矛盾するんじゃないかということについてもう一度。
  113. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今度の予算編成をするに当たりましてとりました措置につきましては、これはもうそれぞれ、何というのですか限界のあるものであるわけですよね。ところが、赤字国債ということになりますと、これはもう限界のないものになってしまうということ、この点が違うんだというふうに御理解をいただきたいと思います。  絶対という言葉を何かどこかで使ってあったとしたら、いわゆるかたい決意というものであるということをひとつ御理解をいただきたいと思うのです。済みません。
  114. 筒井信隆

    ○筒井委員 今の限界がないという答弁があったのですが、これに関して宮澤総理にお聞きしたいのですが、限界がなく、国債、借金がこれだけ増大した原因の一つに、行政の実績主義といいますか前年度プラス主義といいますか、要するに予算を初めからゼロベースから考えない、こういう対応がその原因になっていると思うのですが、その点どうですか。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そういうことはしばしば指摘をされるところでございますから、そこに真理は私はあると思います。
  116. 筒井信隆

    ○筒井委員 ほかの場所でも宮澤総理、その点を認めておられるわけで、赤字国債、借金がふえた理由として、要するに予算をするときに前年度プラス主義、ゼロベースから考えない、こういう今までの行政の対応といいますか各省庁の対応といいますか、それがやはり借金をこれだけふやしたんだと言われているわけで、まあ総理になる前にそう言われて指摘されるのはいいですが、総理になったらそれが改革できる立場に立ったわけでございまして、それをどういうふうに改革されているのか。もう既に一年以上たちましたから、総理になってから。これからいつごろまでにそれを実現しようとされているのか、この点についてお聞きをしたいと思います。
  117. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それが行財政改革というものだと思いますので、例えば国鉄の赤字の問題につきましては、よく御存じの過去の経験がございます。それからただいまでも、中央の官庁がこれだけ肥大化をしていることについてどういうふうに改めたらいいかということを今行革で御検討願っておるわけですが、そういうことの中からやはりいわゆる実績主義というものを改めていかなければならない、こういうことだというふうに思っております。
  118. 筒井信隆

    ○筒井委員 予算の際にも各省庁のシェアが毎年ほとんど一緒だというふうにも言われておりまして、要するに前年度の実績というのが既得権、要するに各官僚の既得権というのがそのまま守られている体制、これが借金をこれだけふやした一つの理由であるとすれば、そして今こんな不景気なのに、そういう理由も一つになって赤字国債を出せないとしたら、もっと早急にこの点改革すべきだと思うのですが、単にいろいろなところで討議、審議してもらっているということじゃ済まない、もっと首相のリーダーシップを発揮すべき問題だと思うのですが、その点どうですか。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 もう一つ現実に加えて申し上げられることは、シーリングというものがございます。これはいろいろ弊害もあることは確かでございますけれども、大変に今おっしゃいました意味での大きなメリットがあって、やはりこれでどうしても優先度の低いものは当該官庁として落としていかなきゃならない。そういうことをこのシーリングというものは現実に強いていっている、現実に実行していっている一つの方法だというふうに思っています。
  120. 筒井信隆

    ○筒井委員 この総合経済対策の中でも出てきております不良債権、銀行の不良債権の買い取り会社構想について大蔵大臣にお聞きをしたいと思います。  今、銀行協会の方で発表された構想によりますと、銀行が持っている担保つき債権を買い取り会社に売却をする。その売却をした時点で、例えば百億円の債権を六十億円で売却した。すると、四十億円の損失になるわけですが、その売却した時点でその四十億円の損失を損金として落とせる、こういう対応に国税庁といいますか大蔵省はなるんでしょうか。その点どうですか。
  121. 寺村信行

    ○寺村政府委員 金融機関が不良債権を譲渡することによりまして生ずる損失は、譲渡損として従来からも法人税法上そのような取り扱いがなされているところでございます。
  122. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうしますと、この売却した時点で、担保つき債権を売却した時点で損金に算入することを認める、こういう対応だということですか、今の答えは。
  123. 寺村信行

    ○寺村政府委員 そのとおりでございます。
  124. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうすると、この場合だけ、他の今までの、例えば債権償却特別勘定とかいろいろなものが今までも一般の場合ありましたが、それらとは違った形で今度は損金算入を認める、こういうことですか。
  125. 寺村信行

    ○寺村政府委員 債権を売却する場合は、不良債権だけでなくて、例えば国債を売却した場合でも、譲渡損が発生すればそのように損失として処理をする。で、それは不良債権であっても同じだという取り扱いでございます。  それから、債権償却特別勘定の場合は、不良債権を売却しないで手元に保有している場合に、それは、その債権が貸し倒れになったとか、あるいは貸し倒れに近い状態としてある一定の要件を備えた場合には債権償却勘定に積み立てることができる、繰り入れることができる、そういうような取り扱いになっております。
  126. 筒井信隆

    ○筒井委員 通常、不良債権が損失算入が認められるのは、形式的には、倒産した場合とかあるいは全く回収の見込みがない場合とか、非常に厳しい条件があって初めて税務署に認められるわけですが、今度の場合、今の答えによりますと、百億円の債権を六十億円で売ったら、もうその時点で四十億円の売却損を認める。これは通常の場合は認めてないでしょう。ほかの人の場合も、ただ売却して本来の額面より低ければみんな損失算入認めますか。
  127. 寺村信行

    ○寺村政府委員 通常の場合も、譲渡をして譲渡損が発生すれば、税務上は損金として処理されております。
  128. 筒井信隆

    ○筒井委員 それは、譲渡すれば直ちに損金算入認めるんじゃなくて、譲渡代金が本当に適正であったかどうか、その審理をちゃんとやってからでしょう。まずその点だけ。
  129. 瀧川哲男

    ○瀧川政府委員 まさにそのとおりでございまして、今回も、正しいと評価をされまして、それを私ども見せていただきまして、もちろん私どもがそれで結構だということになれば落ちる、こういうことでございます。
  130. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうしますと、ただ売っただけではなくて、その売った価額が適正であるかどうか、それを審査した上で損金算入を認めると。その売った価額が、百億円の名目のものを六十億円で売るのが正しいかどうかという判断というのは、まさにあとの四十億円回収の見込みがないかどうか、結局こういう判断になるわけでしょう。
  131. 瀧川哲男

    ○瀧川政府委員 そのとおりでございますが、今回はその客観的な委員会というものができて、そこできちっと評価をするということを承った上で、それをさらに私の方でももちろん見せていただくということですから、問題はないだろうと思っております。
  132. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうしますと、今の答弁のニュアンスですと、さっきの答弁はもうめちゃくちゃだったんですが、今の答弁のニュアンスですと、客観的な機関ができた、だから基本的にはその判断というのを尊重して、そして基本的にはその価額でもって認める、こういう方向だということですか。
  133. 瀧川哲男

    ○瀧川政府委員 これは事実の認定の問題ですから、必ず例えば認めるとか必ず認めないとかいうことではなくて、客観的な数字が出てきて、それを私ども見て、それが正しいということであれば当然認める、こういうことであります。  ただ、先ほどからちっょっと誤解があるようなのでつけ加えさせていただきます。先ほど銀行局長からお話ししたとおりでございまして、売却、つまり譲渡という場合にキャピタルゲインやキャピタルロスが出る、これが益金あるいは損金になるわけです。手元に持ちながら、それが言えば腐ったリンゴになっているということを評価するのが債権特別勘定で、この二つは全く別のものでございます。
  134. 筒井信隆

    ○筒井委員 例えば六十億円で売却して四十億円の売却損が出たということで損金算入をする。これはどうも不動産の流動化といいながら不動産を売るのじゃなくて債権を売るという形で話をつけたようでございますが、後でその不動産が六十億円じゃなくて七十億円で売れた場合、その差額の十億円はまた銀行の方に戻されるというふうに決まったようでございますが、一たん四十億円で損金処理した後十億円がまた入ってくる、この扱いは税務上どうなるのですか。
  135. 寺村信行

    ○寺村政府委員 まず、金融機関が買い取り会社に不良債権を譲渡することによって生ずる損失は損金になるということでございます。  御質問は、それが当初その譲渡価額を見積価額として、回収時におっしゃったように七十億というような確定をさせるということについてのお尋ねだと存じます。  これは、現在不良債権についての売買が、市場が存在しませんので、当初の価額がはっきりとしたマーケットで時価として確定できない、現段階ではそれが検証できないという問題と、それから、もともとその債権が不良債権、債務不履行によって不良債権になっておりますので、回収時期の予想が非常に立てにくいという状況がございます。その回収するまでの費用や金利を確定することができないということでございますので、当初の見積価額は、具体的な手順で申しますと、まずその担保不動産につきまして不動産鑑定士に鑑定をしてもらいます。その後で価格判定委員会に諮りまして、その債権の回収に要する費用とか、いろいろコストを勘案しまして一定の見積価額をその価格判定委員会で算定しましてそれによって処理しますが、お話しのように、今のような状況でございますから、必ずしもその債権価額は確定しませんから、確定した段階においてこれを修正するということにしております。  これは、法人税法上も当初仮価額として扱って、確定時にそれを確定価額として取り扱うという現行の基本通達ございますので、それに沿った処理だということでございます。
  136. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうしますと、今度の買い取り会社構想で銀行を特別に優遇する措置は一切、一つもとらないというふうに今、お約束といいますかそういう答弁だったというふうにお聞きしたいと思うんですが、それでよろしいですね。——税務上。
  137. 寺村信行

    ○寺村政府委員 税務上は現行の基本通達をいささかも変更いたしておりません。
  138. 筒井信隆

    ○筒井委員 それで、今も協議されている面があるようですが、はっきり貫徹をしてほしいと思うんです。例えば財政投融資の資金を貸し付けるとすれば金利が取れるわけですが、税金の方でもって無税償却を今までの一般よりももっと大きく認めてしまうということは、これは結局減収になるわけでございまして、財政投融資の資金とか公的資金を融資した場合よりもっと罪が重いというふうに思うわけでして、決して優遇措置をとらない、今の約束を実行していただきたいというふうに思います。  それから次に、土地対策等の関係で、バブル対策いろいろな形でしたわけでございまして、居住用財産の買いかえ特例とか地価税の創設とかいろいろな形でしたわけですが、このバブル対策、どうも急ぎ過ぎた、行き過ぎたというふうな意見もあるようですが、そう考えておられるのか、それとも、そうじゃない、まだまだ土地は高過ぎる、もっと下げなきゃいかぬというふうに考えておられるのか。総理と副総理と大蔵大臣にその点をお聞きをしたいと思います。
  139. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 バブルのときに大変高騰いたしましたこの土地、これはやっぱりあのときに対応しておかなければいけなかったというふうに考えております。  全国の地価、これは総合的な土地政策の効果、こういったものによりまして鎮静化ないし下落の傾向にあるということは申し上げることができると思います。しかし、東京圏ですとかあるいは大阪圏の地価につきましては、商業地におきまして高騰前の二・五倍以上ということでありますし、住宅地では高騰前の約二倍ということでございます。依然としてやっぱり高い水準にあろうと思っておりまして、こういう実情を踏まえましたときに、私どもといたしましてとっております総合土地政策の中のいわゆる地価対応につきましては、今後ともやっぱり私どもはこれを引き続き進めていく必要があろうというふうに考えております。
  140. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 遅過ぎたか早過ぎたかわかりませんが、いずれにいたしましても、数年かけて、飲めよ食えよと言って、六十キロの中学生を百二十キロに膨らまして肥満体にしちゃった。ところが、医者に聞いたら、このままだとこれ心臓麻痺で死ぬよと。じゃ大変だ。今度は絶食だ、粗食だ。半年、一年でやせさせることは可能なんだが、その結果、目方は百二十キロが七十キロに減ったが、結局肝臓を悪くしたり心臓を悪くして死んじゃったということが時々ありますから、やはりバブル退治というものも急にやれば、それに相応したメリット、デメリットというのは両方くっついてくるのですよ。そんなことは最初からわかっているんだから、だからそれに対応する準備をきちっとやらなければなるまいとどこかで私が言ったものだから、あなたが覚えておって質問したんだろうと思って同じことを言ったんです。
  141. 高鳥修

    高鳥委員長 外務大臣からただいま解説がありました。  宮澤総理大臣
  142. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 まだやっぱり私は高過ぎると思いますですね。それで、今筒井委員が御質問になっておられました一連の措置をやったときに、筒井委員も言われますように、損したらどうする、損の場合と言われましたから、私もそうだと思うのでございますね。こういう措置をしたら土地の値段を買い支えることになるかというと、そうじゃないだろう。やはり売れないものを売れるようにするんでしょうが、それはやはり安くしか売れないということになっていくんじゃないかと思いますから、これで買い支えるというようなことを考えているわけじゃありませんし、やはりまだ高過ぎると思います。
  143. 筒井信隆

    ○筒井委員 渡辺総理が先ほどおっしゃいましたように、渡辺総理、前にバブル対策を急ぎ過ぎたというふうな主張を大分強調しておられまして、バブルがはじけてざまを見ろと思っているかもしれないが、天につばだとか、ちょっとこれは表現があれですけれども、以前年金運用は補てんで助かったなんて、これはちょっといただけない言葉だと思うのですが、マスコミと一緒になってバブルという悪者退治をしてこのざまだ。要するに、バブル対策に対する評価が極めて否定的である。そして、先ほど大蔵大臣総理はそれとは違った対応、判断をされている。これは今後もやはり政府の方針に物すごく大きな影響を与える問題だと思うわけでして、また再び土地を高騰させるとかそういうことがないようにしなければならないと思うわけですが、その点、もう一度渡辺総理から、外務大臣にお願いします。
  144. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 恐らくあなたの言っているのは、私が総裁選挙のころに言ったやつをどこかで拾ってきて追及をされているわけですが、事実、それは申し上げました。  やはり、急いで体をやせさせるためには薬も準備しておかないといかぬのですよ、薬も。だから、私は公定歩合の……(筒井委員「八月の二日ですよ、八月」と呼ぶ)八月、だから、薬も準備しておいて、公定歩合もことしの春、花の咲くころから下げなさいということを言ってきたわけですから、それは、おくれたことは事実なんですよ。しかし、終わっちゃったことを言ったって仕方のないことであって、我々としては、もう過ぎたことをいつまでも悔やんでも始まらない話ですから、やはり前を向いて最善の方策をやろうということで党と政府と一緒になって取り決めたのが今度の補正予算及びそれに関連する一連のものですから、それでやるほかないです。
  145. 筒井信隆

    ○筒井委員 その関係で、今居住用財産の買いかえ特例の復活というのが大きな問題、争点になっているわけですけれども、これを復活したら直ちにバブルが再燃するというふうには言えないだろうと思いますけれども、ただ、現行の枠で十分じゃないか。現行、居住用資産に関しては、もちろん三千万非課税がそもそもありますし、三千万超えたところでは、九千万までは住民税含めても一〇・四%という低税率、九千万超に関してだって住民税を含めて二〇%という低税率。実際の住宅譲渡の八割、九割は大体非課税になっている。こういう状態の中でこれを復活する意味自体が余りないんじゃないかというふうに思うのですが、建設大臣、ちょっとその点と、もう一点は、大体バブル対策のためについ最近これを廃止したのにまた再びこれを直ちにやるというのは朝令暮改過ぎて、土地の税制に関してはそういうことをやるとまたおかしくなってしまうんじゃないかというこの二点について、ちょっと建設大臣、お願いしたいと思います。
  146. 山崎拓

    ○山崎国務大臣 居住用財産の買いかえ、住みかえによりまして居住水準を上げたい、そのためにインセンティブとなるべき買いかえ特例を復活させたい、そのように考えておるわけでございます。  先生のお話によりますと、現在でも三千万円の譲渡益控除の特別措置があるじゃないか、それでほとんど含まれるんじゃないかというお話でございましたが、いろいろ調査結果を見ておりますと、首都圏の場合でも、戸建てのケースで三千万円を超えるものが約四割あるわけでございます。マンションのケースでも一、二割あるのでございます。したがいまして、もちろん先生のお話にありました軽減税率もございますが、それがございましても、やはり住みかえを断念するケースがかなり多くあるということでございます。  最近の話に戻りますが、余り意味がないというお話でございましたが、今日の我が国の住宅政策は二つばかり方向があると思うのですけれども、一つは、できるだけ持ち家比率をふやすということでございます。例えば、年収の五倍程度でみずからの居宅を持てるということを一つの目標にいたしておるわけでございます。それからもう一つは、今、その点に関しましては余りバブルの問題は影響しないというお話でございましたので、先生も、買いかえ特例を導入することによってその点に関する問題が生じないという御認識だと承りましたのでございますが、大変正しい御認識だと思いますけれども。  それからもう一点は、居住水準を上げるという住宅政策の大事なところがございまして、例えば住都公団の建てかえの時期に参っておりますが、その点十分考慮いたしまして、三十年前とは違いました公団のあり方にいたしておる、住宅のあり方にいたしておるわけでございます。同時に、住みかえによりましてより広い住宅、あるいは二世代、三世代が住めるような住宅をぜひつくっていただきたい、これが住宅政策の基本的な方向でございますから、そのインセンティブといたしまして買いかえ特例は非常に有効に働くと判断いたしまして、最近見直したとおっしゃいましたが、六十三年度でございますので既に四年を経過いたしまして、その四年間の状況の変化を踏まえまして、改めて提案をさせていただきました次第でございます。
  147. 筒井信隆

    ○筒井委員 先ほど大蔵大臣それから総理が言われましたように、まだまだ土地は高過ぎるという状況で、だからその点を考えると状況の変化はそんなにないわけでして、つい最近やったものをまた再びやるというのはどうしても税制の朝令暮改である。こういうことをやると税制自体がおかしくなるし、土地神話がまた復活する可能性があるというふうに思うわけですが、その朝令暮改の点に関して、大蔵大臣どう考えるか、お答えをいただきたいと思います。
  148. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 確かに、この買いかえ特例につきましては、我が党の中にも大変これを復活すべきだという御意見があることを私どもよく承知しております。  しかし、今委員の方から御指摘がございましたように、やはり、確かに年数はある程度たっておりますけれども、しかし今地価に対しての、我々としては、再び土地神話を起こしてはならないという意気込みの中で対応を今次から次へと打ってきたばかりのところでございまして、今ここでやることについては、やはり朝令暮改のそしりというものは私たちは免れないだろうというふうに私は感じております。
  149. 筒井信隆

    ○筒井委員 この問題に関して、まさに大蔵省の結論は私は正しいと思うのですが、その大蔵省がまた地価税の問題に関して朝令暮改をしたんじゃないかという点をお聞きをしたいと思うんですが、地価税は九二年度からの実施ですけれども、これに関して去年の十二月に通達を出して、評価に関して奥行き補正率を掛けて調整するのをやめる、つまり地価税の増額になる、こういう通達を出したわけですが、ことしの八月になって、これこそまだ一年もたってないときに全く逆の、すぐやめることをやめて五年かけて三段階でやることにする、今度は完全な減税といいますか物すごく減るという形をやったわけですが、この通達の変更というのも、これは業界、不動産業界とか百貨店業界からの要請に応じてやった大蔵省の朝令暮改じゃないかと思うんですが、その点どうでしょうか。
  150. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 この点につきまして、十二月の評価通達により改正した奥行き価格補正率は、土地利用の実態に適合した理論的に私どもはやはり適正なものであろうというふうに思っております。ただ、これを実施してまいりますのに、やはり激変緩和というようなことを念頭に置きながらこういった対応をしたことを御理解をいただきたいと思います。
  151. 筒井信隆

    ○筒井委員 今度のこの通達の変更によって、どのぐらい税金が減ることになるんでしょうか。
  152. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 若干細かな御説明になって恐縮でございますけれども、ただいまのお尋ねは、去年の十二月に出ました通達、それからことしの八月に出ました通達、この間におきまして税収の違いがどれぐらいになるかというお尋ねかと存じます。  結論的に申し上げますと、現在まだ地価税の第一回目の申告が始まったかどうかという段階でございますし、どういう土地に地価税がかかるのか、あるいは今のような特例対象になるのかというようなことも判然といたしませんので明確にお答えすることは難しい問題でございますけれども、私どもの感じを申し上げますと、例えば今回その奥行き逓減の変更の効果を最も大きく受けますような地域、ビル街区あるいは高度の商業地区、そういったもののウエートを考えてみますと、一番変更率が高いのはビル街区でございます。これは一五%ぐらいの逓減率になろうかと思いますが、このビル街区の面積というのは全体の対象地域の中で〇・一%以下、もっと小さなものであろうと思います。その次の高度商業地区以下何種類かの地区がございますが、それらの地区の逓減率というのはもう少し小さくなっておりますので、それらの全体を加重平均いたしまして計算してみましても、税収額の落ち込み額としては僅少なものであろうというふうにお考えいただいていいかと存じます。
  153. 筒井信隆

    ○筒井委員 大体の額も言われないのですが、場合によっては一五%ぐらいというふうな今答えですが、こういうふうに通達によって税額が、税金が上がったり下がったりする、この事態そのものについてどう考えているか大蔵大臣にお聞きをしたいわけですが、もちろん租税法律主義があって、税金というのは課税標準を含めて全部法律で決めるというのが明確に憲法以下で定まっているわけでございまして、この評価の問題は課税標準の中の一部になるかと思いますけれども、こういう形でしかも朝令暮改的に税金が上がったり下がったりする、こういう状態はやはり是正する必要性があるというふうに思うのですが、大蔵大臣どうでしょうか。
  154. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 お答え申し上げます前に、先ほどのお尋ねに対しますお答えで、私が税収がそれだけ減収になるというふうに申し上げたかと思いますけれども、十二月通達が出されました——失礼いたしました、それはそれでいいわけであります。ただいまの分は私の誤解でございました。  後のお尋ねでございますけれども、こういった一連の措置というものが租税法律主義に反するのではないかという御趣旨のお尋ねかと存じます。  もちろん、租税の課税要件でございますとか徴取手続というものは行政庁の自由に任せられるものではございませんで、法定されるべきことであると存じておりますけれども、土地等の価額につきましては、通常、課税時期におきます時価によることと定められておりまして、これは地価税法でもしかりでございますけれども、同様の例は相続税法などにもございます。この相続税法につきましては、かつて最高裁でその点が議論されたことがございましたけれども、こういった法律に時価によるという形の規定を置くことにつきましては、これは別に租税法定主義に反するものではない。  ただ、その場合、時価の算定方法がそれでは細かく法律に書き込めるかと申しますと、ここに難しい問題がございまして、土地等の価額算定の諸要素というのが、社会事情の変化に伴いまして、時、場所によって全く一定でない、そういったことを考慮しますと、その評価方法を法令で定めることは実際には困難だ、逆に画一的に定めることによって実質的な公平を阻害することがあるという判断がございます。したがいまして、現在の実際の取り扱いにおきましては、この時価の解釈としまして、通達によりまして時価の算定基準を明らかにするという取り扱いにせざるを得ない。その取り扱いを統一的にして課税の公平を期するということにしておるわけでございます。  しかし、この通達というものを考えていただきますときに、これは、上級の行政庁が法令の解釈について下級の行政庁に対して行います指令とか命令とか、そういった種類のものでございまして、国民を拘束するものではございません。したがいまして、算定された時価が適正を欠くと認められるときには不服申し立てとか訴訟によってその是正を認める道も開かれておるわけでございまして、この種のものに対しては、このような対応がやむを得ないというふうに私ども考えております。
  155. 筒井信隆

    ○筒井委員 最高裁でそういう判例が出ていることも知っておりますが、どうも最高裁は現状追認の方に傾きがちでございまして、やっぱりもっと最高裁が独自に考えていくべきだというふうに思います。  その次の質問ですが、今度の景気対策の問題、景気対策をやると同時に生活大国志向を重視せよという意見がいっぱいあるし、これは羽田大蔵大臣も宮澤総理もそういう点を強調されているだろうというふうに思います。しかし、実際、一般的にはそう強調されているんですが、最近の動きを見ますと、どうもすべて経済、産業の方の優先がまずされていて、生活とか地方自治とか環境とか、こういうものは具体、各論になるとみんな軽視されているという実態だろうと思うんです。  例えば環境アセスメントの法制化も、これも先送りされてしまったし、窒素酸化物の削減の問題に関してもまた先延ばしにされてしまったし、パイロット自治体構想というのも、これも関係省庁の反対等で事実上の骨抜きになってしまった。総論として生活大国化とは言うんですが、具体的な問題になるとみんな経済、産業の方を優先している、こういう実態が現在あるだろうと思うんです。  その一つの典型が、経済、貿易のために生活を犠牲にした最も一つの典型が厚生省の最近のポストハーベストの許可だろうというふうに思いますので、時間が余りありませんのではしょりますが、お聞きをしたいと思います。  大体、ポスト八一ベスト自体が本来全面禁止すべきであるという声が世界的にも大分あるわけですが、今厚生省はポストハーベストをどんどん許可する方向に来ている。しかも、この前は三十四種類の農薬、その中にポストハーベスト農薬九種類を含むわけですが、これを農薬の残留基準という形でもって事実上の許可を与えてしまった。しかし、もし許可をするとしたら、ポストハーベストですから、これは収穫後の農産物に添加するんですから、食品添加物としてちゃんと毒性や何かを調査した上で、許可することが正しいと言っているんじゃないですが、もしやるとしても食品添加物としてやるべきであるのに、それを残留農薬基準の設定という形でもって事実上許可してしまった。これはちょっと法律違反じゃないか。これはもう実際訴訟も起こされたのか、起こす準備しているようですが、この点、厚生省お答えいただきたいと思います。
  156. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 農薬の収穫後、いわゆるポストハーベスト使用につきましては、これは日本だけではなくて、国際的に広く現在認められている方法でございます。したがって、直ちにそれが安全性に問題が生じるというようなことでは全くございません。したがって、これを一律に禁止するということは私ども考えていないわけでございます。
  157. 筒井信隆

    ○筒井委員 そういうことを聞いているんじゃなくて、ポストハーベスト農薬を許可するとすれば、許可するのは多分間違いだと私は思っているんですが、しかしたとえ許可するとしてもそれは食品添加物として許可すべきである、これが法律要請じゃないかという点をお聞きしているんです。その点をお答えいただきたいと思います。
  158. 柳沢健一郎

    柳沢(健)政府委員 ある化学物質が食品添加物に該当するかどうか、これは個別物質ごとにその使用目的等を踏まえまして判断すべきものでございまして、農薬が収穫後に使用されているということをもって直ちに食品添加物に該当するというふうには言えないかと存じます。
  159. 筒井信隆

    ○筒井委員 そういう答え方をされるとあれなんだけれども、食品衛生法の方で、食品の保存の目的で、食品に添加したり、混和したり、浸潤等の方法によって使用するもの、これは食品添加物であるというふうに明確に規定されているでしょう。使い方によって食品添加物かどうか決まってくるわけでしょう。同じ農薬でも栽培最中にまくものは、これは農薬として許可するかどうか決めればいい。しかし、収穫後に食品に添加したり、それからそこに食品を浸したりあるいは混ぜたり、これは食品添加物であるというふうに明確に食品衛生法で書いてあるじゃないですか。実際に今までは政府、厚生省自体が、ポストハーベストは原則的に禁止だけれども、しかし許可する場合にはTBZとかOPPみたいに食品添加物で今まで許可している部分も一部ある。それを今度は食品添加物としての手続を一切とらないで許可してしまった。これを問題にしているのです。もう一度。
  160. 柳沢健一郎

    柳沢(健)政府委員 食品添加物の場合に保存というのが問題になるわけでございますけれども、腐敗、変敗、こういったようなものに該当するかどうか、この辺の使用目的、使用実態等を十分に考慮して判断すべきものだというふうに考えておるわけであります。
  161. 筒井信隆

    ○筒井委員 全然答えになってないので私の方で言いますけれども、厚生省はどうも農薬が残留している輸入農産物が日本に来た場合に、それが食品添加物つまりポストハーベストとしてアメリカで使われたのか栽培最中にまかれた農薬なのか、その区別がつかないから、実態がわからないからこれでいいのだというふうに言っておられる。今その主張が変わっているとすれば、今言った答えは全然わからないので、要するに収穫後に使われる農薬に関してはこれは食品添加物ではないかという質問なんです。そうじゃないというならそうじゃないという理由を挙げてください。
  162. 柳沢健一郎

    柳沢(健)政府委員 農薬の収穫後、いわゆる先生おっしゃるポストハーベストの使用、これは国際的にも広く認められた方法でございますけれども、厚生省としてはその農薬の使用が収穫前であるか収穫後であるか、そういうことを問わずに残留農薬基準の整備を早急に進めていることでございまして、それから、それが食品添加物に該当するか残留農薬に該当するか、それは先ほど申し上げましたように、その使用目的等を踏まえて判断しているところでございます。
  163. 筒井信隆

    ○筒井委員 栽培最中に使われたか終わってから使われたか問わずに認めているというのが問題なんですよ。それを問うべきじゃないですか。ポストハーベストとして使った場合には、まさにそこに農産物を、食料品を浸したりなんかする。残留が物すごく大きい。一番物すごく危険なのがポストハーベストだから聞いているので、前に使われたのか後に使われたのか明確に問うべきじゃないですか。その点どうですか。
  164. 柳沢健一郎

    柳沢(健)政府委員 ポストハーベストにも使われるし、それから食品添加物としても使われるというような物質につきましては、例えば先生御案内のとおりOPPとかTBZといったような物質につきましては、これは食品添加物としても指定しているというところでございます。
  165. 筒井信隆

    ○筒井委員 全然答えになっていないのです。しかし、時間がもうあれで……。  大体答えが一切、先ほどから厚生省の官僚の人は全く答えになってないことを続けている。しかも、今言った手続自体がもう既に問題なんですけれども、その結果、内容に関しても物すごい問題で、例えばクロルプロファムという農薬に関しては、これは残留基準を五〇ppmと決めたわけです。そういう基準をした。しかし、環境庁の方で決めている基準によりますと、〇・〇五ppm、すると厚生省は環境庁の基準の千倍のものを許容した。これはちょっと環境庁の基準自体がばかにされたというふうに思うわけです。  それからもう一つは、農水省の方で家畜の飼料の、えさの残留基準として決めているフェニトロチオン、スミチオンというやつのようですが、これは五ppmで、人間に対しては今度厚生省が一〇ppmを決めた。えさよりも人間の方がもっと倍の基準緩和をされている。これもちょっとばかにした話じゃないかと思うのですが、環境庁と農水省の方でちょっとその点、意見がありましたら……。
  166. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 環境庁が定めます農薬登録保留基準というやつは、農作物への残留、土壌への残留、水産動植物への毒性及び水質の汚濁という観点から決められています。目的は御案内のとおり、そういうものが人体なり家畜なりに害を与えないように、また水産動植物にも害を与えないようにということでありますが、やはり厚生省のポストハーベストの農薬と使われ方が違いますから、これは農薬として農地で使用するものでありまして、厚生省の、今先生御質問の分は、これは食品に直接使うものですから、おのずとその基準が変わってくるというのは当然のことだと御理解をいただきたいと思います。
  167. 筒井信隆

    ○筒井委員 厚生省の回答とも今矛盾するのですが、厚生省は、後で使うのかそれともその前に、栽培中に使うのか、それを全部ごっちゃにしてこの基準をつけているわけなんです。だから、栽培最中に使う農薬として決めた環境庁の基準とまさに重複しているわけでして、全然違うということはない。
  168. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 そうではございませんで、食品に残っているものを厚生省では調べている、こちらは畑で実際に使われるものについて基準を定めているわけですから、おのずとその出てくる数字は違ったものになると思います。
  169. 筒井信隆

    ○筒井委員 厚生省の方に聞きたいのですが、この残留基準値を決めた際に、つまり今のやつでいえば環境庁が決めたものの千倍に決めた。そして、もう一つの方のやつについてはえさの二倍に決めた。これは、農水省や環境庁のそういう基準値、どういう理由でつけたか、その点を検討して考慮した上で今度の新基準を決めたのでしょうか、全くそういうのは無視してやったのでしょうか。
  170. 柳沢健一郎

    柳沢(健)政府委員 御指摘のクロルプロファム等の例でございますけれども、例えばこのクロルプロファムは、外国におきましてはバレイショの収穫後に発芽防止剤としてこれを使用されているわけでございますけれども、これを考慮して今回五〇ppmというふうに厚生省として数値を設定したわけでございます。  この数値は、厚生大臣の諮問機関でございます食品衛生調査会にお諮りいたしまして、ここでの十分の検討期間を経て、この基準値までクロルプロファムが残留したと仮定いたしましても、その摂取量は一日摂取許容量、これは通称ADIと称しているわけでございますけれども、これは超えることなく、安全性には全く問題がないといういわばお墨つきをいただいた上での数値でございます。
  171. 筒井信隆

    ○筒井委員 体重五十キロの成人男子を基準に考えている。体重五十キロ以下の子供とか何かについては、そうすると全然基準として考えていなかった。体重五十キロ以下の子供、老人、病者といいますか病人、これらの場合はその摂取許容量を上回る可能性がある。その点では、体重五十キロ以下の人に関しては、たとえ厚生省の言っていることが正しいとしても、危険性がやっぱりあるというふうに判断できるんじゃないですか。その点どうですか。
  172. 柳沢健一郎

    柳沢(健)政府委員 先ほど申し上げましたADIを決める際には、個体差でありますとか、あるいはそういったような体重差、そういうことも考慮しての安全を見ての数値ということになるわけでございます。
  173. 筒井信隆

    ○筒井委員 いやいや、体重五十キロ以下、体重五十キロ以下について。
  174. 柳沢健一郎

    柳沢(健)政府委員 そのような体重差も考慮した上での数値でございます。
  175. 筒井信隆

    ○筒井委員 全然答えになっていないのですが、もう時間がないので、この問題について最後お聞きしたいのですが、臭素、つまり殺虫、殺菌剤の臭化メチルに関して、厚生省は一度基準値を記者会見してまで発表した。しかし、その後農水省から文句が来たものですから、すぐそれを訂正して、最高では三・六倍ぐらいに’今度は訂正をしてしまった。そして、訂正した場合には、それは今度全然記者会見してなんて発表しないで、隠している。こういう状態が今回あったわけですが、最初に決めた基準に対して農水省の方から言ってきたのは、それじゃ輸入ができなくなる、現実問題として経済的に困るという、こういう趣旨であって、決して健康とか何かの関係から、安全とか何かの関係から言ってこなかった。  農水省の方にまずお聞きしたいのですが、厚生省の方に文句を言った理由がそういう経済的な輸入の問題であったということは事実ですね。
  176. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答え申し上げますが、厚生省の提案した基準値案で薫蒸した場合、これを超える残留例があるということでございました。この実態を考慮してもらいまして、問題は、人に対して健康上安全かどうかというのが第一でありますから、安全であるかどうかということとこの超える部分のものと十分検討してもらいました。その結果、一日の許容摂取量の範囲内で十分できるということで変更していただいたということであります。  先ほどのお尋ねの件も私の方に関係ありますが、いずれにしてもえさの場合は、こういうものは人が直接摂取した場合、基準にしているわけです、えさの場合は、畜産物がそれを摂取して、それを食べるというときには全く問題ないということが示されておりますので、だからその一つ一つによってやはり違うと思うのですね。私は専門家でないからわかりませんが、しかし専門家が、そうだ、こういうことでありますので、それを信じて私どもはやっておる、こういうことであります。
  177. 筒井信隆

    ○筒井委員 今言われたように、厚生省の最初の基準だとそれを超える実態があるから、だから健康の問題も考えながら実態に合わせた、まさに基準を実態に合わせているわけで、こういうやり方ということ自体が問題だと思うのですが、時間がもうなくなりましたので、最後、これだけはちょっとお聞きしておかなければいかぬので、JR問題に関して一言お聞きをいたします。  今国会に、一九九一年度の国鉄改革に関する施策の実施状況ついての報告書、これが法律で義務づけられた最後の報告であって、国鉄改革の総決算的な意味を持っているわけです。運輸省自身が、過去五年間を振り返って国鉄改革とは一体何だったのかということをこの報告書から読み取っていただきたいと述べているように、国会においても国鉄改革五年間の総括、検証をすべきであるというふうに考えます。  JR各社の経営状況は、好景気というフォローの風もありましたが、根本的には社員の努力と国民各位の理解によるもので、大いに評価してよいと思います。しかし、長期債務の解消、共済年金、各社間の対立、安全問題、労使関係等について克服すべき多くの課題があることも事実でございます。特に、鉄道事業にとって最大の使命である安全について、四十二名の死者と六百余名の負傷者を出した信楽高原鉄道事故など、非常に残念なことがありました。さらに最近は、JR東海とJR西日本で、事もあろうに無資格者に二百二十キロで営業運転している新幹線を操縦させ、運輸省の指導を受けた事態は言語道断であり、厳しく指弾されなければならないと思います。この事態、運輸大臣はどのように受けとめ、どう考えておられるのか、答弁をお願いいたしたいと思います。
  178. 奥田敬和

    奥田国務大臣 総論的なお答えになりますけれども、国鉄民営化という五年の節目を迎えまして、私は、営業の実行面だけじゃなくて、あらゆるサービス面を含めて立派な成果が上がったものと確信をいたしております。  ただ、今御指摘のように、営業主義第一と申しますか、サービス主義第一と申しますか、そういった形の中でいろいろな批判される事故もございました。また、無資格運転等の人命、安全の基本的なモラルに反するようなケースも出てまいりました。ここでひとつ厳粛に、反省の上に立って原点に返れと、運輸行政の基本は人命第一、安全、この基本に返るべきであるということを強く指示いたしております。  確かに、サービスの面、営業効率を上げる、いろいろな意味において、スピード化の面、いろいろな駅舎等々の交通弱者にも優しいサービス改善の面等々、見るべきもの、成果を上げたという事実評価は的確にいたしますけれども、今ここで一番大事な原点の問題を忘れているのじゃなかろうか。はっきり言って安全教育の徹底、指導、これが今の民営化成果のいわゆる影の部分として、私は厳しく国民の皆さんの御批判にこたえていかなきゃならぬと思っております。いろいろな面での反省の上に立って、今後ともこの成果のいい面を伸ばしていくように指導してまいりたいと思っております。
  179. 筒井信隆

    ○筒井委員 終わります。ありがとうございました。
  180. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて水田君、筒井君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  181. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  182. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表して、質問させていただきます。  今、深刻化する不況の中で、中小企業初め国民のために本当に役立つ不況対策の実施が求められております。ところが、政府提出の補正予算、そのもとになっている総合経済対策の主要な内容は、公的資金を大量に株購入に充てることに典型的に象徴されているように、大企業、大銀行対策等その優遇になっており、国民の願いから大きくかけ離れております。また、自衛隊が派遣されているカンボジアでは、さきの国連平和維持活動協力法実施の五条件に反し、パリ協定に反するポル・ポト派の武装攻撃が続くなど重要な問題が山積しております。  しかしながら、本日は時間が制約されておりますので、佐川問題に絞ってこれからしばらくの間質問をさしていただきたいと思います。  佐川急便事件は、国民の間に大きな関心と同時に憤激を呼んでおります。  それは第一に、金丸前自民党副総裁の上申書による罰金二十万円決着に示されるように、法のもとの平等という憲法上の大原則が破壊されている疑いがあることであります。  第二に、自民党政府の中枢が暴力団と癒着し、総理・総裁の決定、国会の運営、人事、外交問題に至るまでその汚染が広がっているという前代未聞の民主主義破壊が明らかになっているからであります。  そこで、法務省に伺いたいと思います。  東京地検特捜部は、九月二十三日、特捜部長金丸氏の弁護人、安部昌博弁護士を呼び出し、最終決定が出ました、上申書を書いてもらいたい、そうすれば事情聴取はしないと告げ、さらに五億円は政治団体あてでなく、金丸氏が私がもらいましたという個人献金だったことを認める上申書にしてくれとその内容まで指定した、こういうことが明らかになっております。これは十月二十二日号の週刊文春に詳しく出ておりますが、私どもは念のために、木島弁護士がこの安部弁護人に直接お会いしまして、その内容について詳細に確かめ、正確なものであると認められた部分についてのみこれから質問をさせていただくわけであります。  そこで、それまで佐川急便から五億円を受け取った金丸氏の生原第一秘書は、取り調べに対して終始、献金は政治団体あてで、新国土開発研究会に入金したと供述していたはずであります。なぜ証拠に基づかず、また金丸氏を取り調べずにそのような上申書の内容の指定、指図をしたわけでありますか。また、同弁護人によりますと、生原秘書は、金丸氏の上申書提出が決まると、九月二十五日調書をとり直して金丸氏個人あてと変更させられております。これでは、検察は証拠によらず予断と一方的処理方針に基づき証拠をつくり上げたと言われても仕方がないではないですか。
  183. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  まず、今委員金丸前議員の弁護人である安部弁護士から事実を確認されたというお話ございましたけれども、東京地検が金丸前議員に対する政治資金規正法違反事件の捜査を進めました経緯等につきましては、まあこれは当然のことでございますけれども、安部弁護人の方におわかりにならない点も多々あるわけでございます。したがいまして、安部弁護人が委員にお話しになられましたことについて法務当局から御論評を申し上げる立場にはないわけでございますけれども、法務当局からお答えできる範囲でお答えを申し上げたいと思うわけでございます。  まず一つは、被疑者の弁護人との交渉のいきさつ等につきましては、これはもう委員も十分御承知のとおり、捜査の過程で弁護人との間で捜査の方法等について、もちろん被疑者に弁護人がついております場合には弁護人を通じていろいろ交渉するわけでございますけれども、その経緯についてはこれは公にしないという信義則のもとで交渉が行われるのが普通であろうと思うわけでございます。したがいまして、法務当局からその子細についてお答えすることはもちろんできないわけでございます。  先ほどお触れになられました金丸前議員の上申書が提出された経緯について、検察当局の方からその上申書の提出あるいはその内容について指示をしたのではないかというお尋ねがあったかと思うわけでございますが、もちろんそのようなことはあり得べきはずがないわけでございまして、上申書は、これは本件の場合は被疑者でございますけれども、被疑者また参考人がみずからの意思で任意に作成するものでございます。もちろん、その被疑者に弁護人がついております場合には弁護人の助言を受けながら作成するものである。したがいまして、検察官がその上申書の内容について指示をするというようなことは毛頭あり得るはずがないわけでございます。
  184. 正森成二

    ○正森委員 刑事局長が言ったことは、あり得るはずのないことでありますという、そういうはずがないということであります。ところが、実際にあったんじゃないですか。  しかも、生原弁護士という元特捜の検事で検事正までやった人が……
  185. 高鳥修

    高鳥委員長 今、生原弁護士というふうに言った……
  186. 正森成二

    ○正森委員 生原じゃない、安部さんですね、間違えました。  安部弁護士はそういう人で、金丸さんの弁護人だ。それが、金丸さんも読み、すべての人が読むことをちゃんと意識して週刊文春にこのインタビューを書いた。余り重大なことなので、我々はよもやと思ったけれども、念のために木島弁護士が安部弁護士に面会をして詳細に聞いた結果、間違いがないと。だから、安部弁護人も余りに異例だと。二十三日に呼び出されて、特捜部長が、最終結論が出たと。しかも、それまでは、生原秘書は十数日にわたって調べを受けておりまして、新国土開発研究会に政治献金を入れた、こういうように主張していたにもかかわらず、それと違う、個人が受領したというのを書いてくれと。そして二十五日に提出することになると、その提出する日に生原秘書は呼ばれて、今そういうぐあいに直してくれと言われているがそれでよろしいか、こう言って書き直しをしたということが明らかになっておるのです。  あなた方は、交渉の途中のことは信義則で明らかにしないことになっているなんて言いますが、弁護人は、そういう供述は今までの証拠から見て書けないとけつたにもかかわらず、最終結論が出た、こう言って、実際上そうするように特捜部長が弁護人に強く言ってそういうぐあいに出さした、こういうことで弁護人が非常な不満を持っているんです。それを、信義則で出ないことになっている、そういうことがあるはずがない、こう言ったって、あるはずのないことをやったんじゃないですか。あるはずのないことをやったから弁護人がこういうことを言っているんじゃないですか。  あなた方があくまで否認するなら、私たちは今までに既に緊急に証人喚問すべきだという五人のほかに計十七名証人喚問を申請しておりますが、安部昌博弁護士をここへ証人として来ていただいてその経緯を聞く必要が出てくる。それが真相解明のためにどうしても必要だというように言わざるを得ないんです。  そこで、もう少し先に進みますが、当初東京の佐川急便社長の渡邉廣康氏は、五億円献金を一九八九年六月九日、金丸氏の事務所、パレロワイヤル永田町に自分で自動車で運んだ、参議院選挙の直前だったと終始一貫供述していたはずであります。なぜ一九九〇年一月中旬、総選挙の直前の授受と認定をしたんですか。金丸氏は一たん一九九〇年一月受領を認めたが、安部弁護人によりますと、上申書提出の最後の最後まで、どうも前の年の参議院選挙のときのような感じもするんだが、まあ平成二年でいいですよ、こういうあやふやだったと、そういうように言っております。これは我が党の木島議員にも確認しております。五億円もの大金の授受の時期があいまいなのにどうして、その出所や趣旨や関係者の捜査を尽くさず、金丸氏本人の事情聴取すらせず、上申書で済ませ、その上内容まで一方的に否定する、こういう異例なことをやったんですか。通常事件でこんなことがありますか。
  187. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  この金丸前議員の上申書が提出されるに至りました経緯については、その全部を私から、法務当局の立場からお答えすることができないのは残念でございますけれども、ここで許される範囲で申し上げるわけでございますが、この金丸前議員の刑事責任政治資金規正法上の量的制限違反、これは金丸前議員が生原秘書と共謀して政治資金規正法上の量的制限違反の寄附受領の罪を犯したという嫌疑が極めて濃厚になった時点で、刑事訴訟法百九十八条一項に基づきまして金丸前議員の出頭を求めて取り調べを行う必要があると判断し、金丸前議員の弁護人を通じまして金丸前議員に対して出頭の上取り調べに応ずるよう求めたわけでございますが、弁護人からは、金丸前議員においては略式命令により罰金を支払う方向で本件違反事実を認める内容の上申書を提出する意向が示されまして、その旨の上申書が提出されるに至ったという経緯になるわけでございます。  委員がお尋ねになっておられますこの五億円の授受の時期について、金丸議員あるいは生原秘書の供述がどういう経過をたどったかということにつきましては、これは確定事件の捜査の内容そのものに係るわけでございます。したがいまして、法務当局としてこの国会の場でお答え申し上げるには限度があるわけでございます。
  188. 正森成二

    ○正森委員 言うことが全く支離滅裂ですね。私は金丸さんの事件の確定記録を検察庁へ行って閲覧してきているんですよ。確定記録は、閲覧申請出したら、残念ながら新たに告発が出ているので捜査の必要上全部は開示できないということで全部は見せてもらえなかったんです。しかし、今言っている上申書を提出する経緯の事実については全部開示されているんですよ。それを見れば、上申書を出すためにいろいろ交渉したり話したのは二十四日のことですよ。  今私が言っているのは、その前の二十三日ですよ。きのうも出ましたが、二十四日いよいよ略式というときには、二十四日に安部弁護人が行きましていろいろ説明しましたけれども、最後には受話器をとって金丸さんであることを確認して、そして金丸さんと話をして、略式でもよろしいかという手続をとって、それを捜査報告書に出しているんですよ。きのうなかなかその答弁が出てこなかった、いつ出てくるかと思っていたんだけれども。我々だってちゃんと調べているんです。しかし、それより前の、上申書を出すかどうかの二十三日のときに、最終結論が出ましたと、上申書を出してくれと言っているから、それが問題じゃないか、こう聞いているんです。  そして、確定した判決だから何も言えないって、おかしいじゃないですか。当たり前なら、確定した判決は、刑事訴訟法の五十三条によれば、何人でも記録を見ることができるようになっているんですよ。ところが、自分の不手際でまだ捜査の足りないところがあるといって、告発が出たからそれをよいことに上申書を含めて全部抱え込んで国民にも国会にも見せないということをやっているんじゃないか。それで、国会で質問をされれば、確定判決の内容だからお答えするその立場にないと。当たり前の刑事訴訟法の手続と全然違うことをやってきているんです。あるいは私がこう言うと、それについては準抗告が出て、裁判所も決定が出ました、こう言おうと思って待ち構えているだろうと思いますが、それを言うと立法府と司法当局とのいろいろの問題になりますから、私は司法当局については御見解を求めようとは思いません。また、司法当局の見解についてとやかく言おうとは思いません。  しかし、少なくも行政当局である検察官としての態度としては、こういう問題のときに記録を全部見せる、見せられないんなら、ここで私が質問したらその経緯について答えるというのが当然じゃないですか。それをやらないのは、やれない後ろ暗いことがあるに違いありません。それを次に言います。  この五億円提供の時期は一九八九年六月九日と渡邉廣康は供述しておりました。しかも、この金は六月四日投票の新潟知事選挙において金子清知事候補のほか、当時自民党代議士でありました高鳥修氏、現予算委員会委員長であります、岩村卯一郎県連幹事長、現衆議院議員、有磯邦男元県教育長の四人が自民党、保守系から名のりを上げ、一本化調整が難航し、当選が危ぶまれていたわけであります。これは渡邉も供述しております。そこで、金丸氏に依頼して金子氏への一本化に成功した謝礼の趣旨が含まれていた、こういうように渡邉は言っているし、周りの人に、皆に言っているのです。それは、当時の新聞のほとんどすべての各紙に載っております。そして、金子前知事は黒埼インターチェンジ問題を初めとして、文字どおり佐川急便による新潟県政総買収の中心人物であります。  金丸氏は四月二十八日から五月五日まで台湾に旅行いたしましたが、連絡を受けてこの旅先から高鳥氏らに電話し、これが決め手になって四月三十日一本化が成功した、こういうように広く報道されており、その供述もあるはずであります。現に四月二十八日ごろ、金丸さんが台湾にいるからここから調整の天の声を出してもらう、渡邉は社長室で語った、それを聞いた人がおります。また、電話の後、これが最後のとどめだ、これで金子氏一本化はお決まりだ、こう言ったとも言われております。  そうしますと、この金は単なる政治献金ではなく、候補者一本化成功の謝礼、すなわち公職選挙法第二百二十一条に真っ向から違反する選挙買収の資金ではありませんか。そういうものを本人を調べないで、時期も決めないで、それで処理する。初めから政治資金規正法の量的違反だけだ、そういう前提で調べるなんということはもってのほかじゃないか。だから、国民が検察に対して怒っているわけであります。これについて答弁してください。
  189. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  まず、今委員がるる渡邉供述にあるとかいうような御指摘で、新聞に報道されているというようなことも含めておっしゃられた点につきましては、これは法務・検察当局としてその点について、論評を申し上げる立場にはないわけでございます。  それから、金丸前議員に対する政治資金規正法上の量的制限違反事件を東京地方検察庁において処理いたしました時点におきましては、この五億円の収支に関して想定される犯罪、その成立可能性等につきましてそれまでに収集した証拠を吟味検討いたしました結果、それまでの捜査の結果では、その時点においては、起訴いたしました金丸前議員に対する量的制限違反の事実及び金子前知事に対する政治資金規正法上の虚偽記入の罪を起訴いたしまして、そのほかには訴追するに足りる犯罪を確認することはできなかったという結論だったわけでございます。
  190. 正森成二

    ○正森委員 そんなええかげんなことを、何遍も何遍も同じことを言って何ですか。それじゃ、どうして金丸氏を調べなかったのですか。金丸氏を調べて、それでそう言うならいいけれども金丸氏調べていないじゃないか。しかも、上申書の内容の指図までしているじゃないか。そして、生原第一秘書の供述調書を書き直しさせているじゃないか。渡邉氏についても、八九年六月と言っている供述書を九〇年の一月だといって書き直しさせているじゃないか。そういうように今までのすべての証拠と違うことを自分らが予断でつくって、それに合うように証拠をつくっているじゃないか。だから国民が検察に対して非常な不信感を抱いているのですよ。頭から政治資金規正法の量的違反だけだということを決めてそれから演繹的になるのじゃなしに、どうして地道に一つ一つの証拠から事態の真相に迫らないのですか。だから安部弁護人もそういうことを異例のことだが言わざるを得ない気持ちになったに違いないというように考えるわけであります。  そして、この資金というのは金子知事に対する選挙のときのいろいろな資金と同じ中から出されているんですよ。時期も同じ時期であります。金丸氏は十億円持ってきてくれと言って、それが五億円になったという報道もあります。あるいは渡邉がそう供述しているという事実もあるようです。  金丸氏はなぜこんな巨額な金を要求したんですか。政治資金規正法上では、年間に政治献金できる額は資本金一千億円を超えている大企業でも年間一億円が限度であります。それを十億円出せ、そういう非常識、異例のことを言うには、おれはこれだけのことをしてやったから、あるいはしてやるから佐川急便は五億でも十億でも出すに違いない、出さなければならぬ因縁関係があるんだ、そういうぐあいに思ったからじゃないんですか。そう思うのが当たり前であります。だれだってそれほどでもない資本金のところに、あっちに十億円、こっちに十億円要求して回りますか。要求するには要求するだけのわけがある。それがこの新潟知事選挙での一本化工作だというようなことは、これは検察当局なら調べるのが当たり前じゃないですか。  私はここに、時間がありませんから言いませんが、判例を持ってきましたが、候補者一本化のために努力するということは明白な選挙運動だ、それに対し資金が提供されたらそれは買収になる、こういう判例があります。また、刑事局長の通達で、それは明白な選挙運動になる、こういう判例があって、十分に立件の可能性があったはずであります。  そこで、さらに聞きますが、金丸氏への献金は九〇年一月中旬と検察は認定しておりますが、それなら八九年六月と九〇年一月の二回、金丸氏に提供されたんではありませんか。もしそうでないとするなら、証拠上、資金の調達と支出の明白な八九年六月の五億円はどこに行ったんですか。行方不明のままですか。そんなばかなことはないでしょうが。六月の九日にパレロワイヤルに行って運んだ。そのときには佐川急便には出金の事実がある、そのための資金手当てもあるということはずっとあなた方は証拠で調べてきたでしょうが。この金はどこへ行ったんですか。しかも、こういう点について十分に調べないなんて、そんなばかなことがありますか。  ロッキード事件の全日空ルートの橋本登美三郎被告は、請託を受けたのが四十六年一月、金を受けたのが四十七年十一月で、その間一年十カ月たっていました。しかも、金を受領したのは秘書であります。それでも裁判所は、贈収賄の因果関係あり、秘書がもらったのでも本人がもらったのと一緒だ、こういうことで有罪を認定しているじゃないですか。この五億円あるいは十億円でも、一本化を頼んでその謝礼の趣旨が含まれておれば、たとえそれが政治献金であっても、政治資金名下でも贈収賄や買収が成立するというのは確立された判例であります。なぜ調べない。なぜ金丸さんを調べない。生原秘書や渡邉社長の供述と違った、そういう認定を頭からしてそれを指図する、そんなばかなことがあるか。そういうことをやっているから確定記録もよう出さない、あらゆる方法で逃げ回ろうとしておる。それでは国民が納得しないのは当然であると言わなければなりません。何か言うことがあったら言ってみなさい。
  191. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  委員がるる今お述べになられました事実関係の中で、例えば渡邉の供述にはこうあるというふうに報道されているというようなことを、そういうことを前提にしてお尋ねを受けましても、それはお答えはいたしかねるわけでございます。  それから、新潟県知事選挙における一本化工作にかかわる金の流れについての公選法の適用の問題についてもお尋ねがあったかと思うわけでございますが、平成元年六月施行の新潟県知事選挙に関しまして種々の報道がなされていることは、これはもちろん承知いたしておるわけでございますが、検察当局におきましては、前新潟県知事らを政治資金規正法の収支報告書虚偽記入の罪で公判請求した段階におきましては、そのほかには同知事選挙に関して犯罪の嫌疑ありとして訴追すべきものは確認できなかったというふうに聞いておるわけでございます。  しかしながら、その後同知事選におけるいわゆる一本化調整に関しましては、公職選挙法二百二十三条一項四号の罪により告発がなされていることは委員も御存じのとおりでございます。現在、検察当局としては、これまでの捜査結果をも踏まえつつ適切に対応するものというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一点、先ほどのお尋ねの中で……(正森委員「簡単にしてください」と呼ぶ)短くお答えいたします。この確定記録を国会に提出しないことについての御指摘がございました。簡単に申し上げますと、要するに司法権との関係で一つ問題がある。と申しますのは、刑事被告事件に関する、その訴訟に関する書類……(正森委員委員長、私は時間が短いんですわ。そんなこと聞いていないじゃないか」と呼ぶ)先ほど御指摘がございましたから申し上げるわけでございます。  刑事裁判の資料とする目的で作成、収集されたもの、これが確定記録とされているわけでございまして、これは裁判以外の目的で使用するということは許されない。もしそれを認めることになりますと、裁判で確定されたその裁判の公正に影響が出てくるということでございます。もう一つは、先ほど申し上げました確定記録の閲覧制度の趣旨、そういう制約から提出することはいたしかねる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  192. 正森成二

    ○正森委員 時間がありませんけれども、刑事訴訟法五十三条は、何人でも閲覧できる、国会議員は除くなんて書いてない。  それで、いろいろ言いましたが、結局、二百二十三条違反と言いましたね。私が言っているのは二百二十三条じゃないのですよ。二百二十三条というのは、選挙の候補者がおりるとかおりないとかいうことで金をもらう、それが候補者買収です。私が言っているのは二百二十一条で、候補者がもらう、もらわないにかかわらず、一本化をするという運動をやって、その運動をした人がもらえばもろに二百二十一条違反になるという主張をしているのですよ。それを、二百二十三条違反についてどうこうしたのは委員御存じと思いますというようなこと言って時間を稼いで、そんなことは聞いていないのです。  それでまた、あなた、念のために言っておくが、規正法違反で量的違反以外には犯罪となる事実がなかったと盛んにそこへ持っていこうとしますが、仮に規正法についても、どうして政治資金規正法二十五条一項と、十二条一項違反という金子清やその共犯と同じ扱いをしなかったのですか。同じ扱いができたはずじゃないですか。  あるいはまた、一九八九年六月受領なら時効になるといううわさが広くあります。これは巷間言われているところですが、事実は違います。私たちが記録を見てくると、金子氏の政治団体の報告書は、規正法上の期限内である一九九〇年三月二十三日に提出されております。それから三年で時効になるのです。だから、まだ時効までに三カ月以上あるのですよ。  だから、八九年六月の受領であれ九〇年の一月の受領であれ、金子前知事と同様、政治資金規正法による政治報告、そういうものにうその記載をした、こういう構成でいくならば禁錮五年以下、こういう犯罪だというので捜査もできるしあるいは逮捕もできる、そういうことじゃないですか。それをなぜやらないんですか。  しかも、それを取り調べもしないで、生原秘書はわざわざ新国土開発研究会に入れたと言っているのに、また渡邉の調書については答える立場にないとか言っているが、渡邉氏もそれに符合するようなことを言っていたのに、それをひっくり返して最終結論が出ました、金丸個人が受け取ったことにしてください、完全な証拠の捏造、事実に基づかない事件のでっち上げ、これそのものではないですか。そんなことをやって検察の威信が保てるのですか。  しかも、個人がもらったということを言うためには、少なくとも処分決定当時に五億円がどういうように使われたかが解明されていなきゃなりません。そうでなければ全額政治資金に使ったというようなことを言えないはずじゃないですか。だから五億円の使途を含め、上申書決着不満として次々と告発が提起された。そのときに特捜部は異例の再捜査に踏み切っただけでなく、東京地検高橋次席検事は記者会見で、「五億円の使途の部分については国民から批判される余地があったかもしれない」、十月十九日会見で、これはすべての新聞に載っております。そういう不手際をみずから認めているではないですか。批判される余地があったかもしれないところの話じゃない。  そもそも使途の態様を解明しなければ金丸個人が政治資金として受領したなどという上申書決着は、捜査の常道からいっても当然できないはずじゃないですか。そんなことで司法修習生の指導ができるか。本当ですよ。私は法曹の一員として司法を憂えるから、あんまり恥ずかしいことをしてくれたから聞いているのです。法治国家じゃないじゃないですか。予断に基づく事件の決着じゃないですか。それに答えてください。
  193. 濱邦久

    ○濱政府委員 まず、委員が先ほどから再々仰せになっておられます、検察官調書をつくりかえたとかあるいは捏造とかいうことを仰せになっておられるわけでございますけれども、そのようなことはできるわけがない、そのことは委員自身が御存じではないかと思うわけでございます。ただ、捜査の過程におきまして、同じ被疑者または参考人の供述が変遷するということは、これはあり得るわけでございます。ですから、例えば委員が先ほど生原秘書の供述調書について、あるいは渡邉被告人の供述について提造があるとかいう意味のことをおっしゃいましたので、そのようなことはあり得ないということを申し上げているわけでございます。
  194. 正森成二

    ○正森委員 国税庁に伺いたいと思います。  国税庁は、金丸氏の五億円についてどうするつもりですか。当然所得税法違反で対処すべきだと思います。もし金丸氏側がその政治活動として費消したという全容を明らかにしないときは、直ちに雑所得である、個人所得の使途不明金だ、所得税法違反として課税に踏み切るべきではありませんか。そうでなければ国民は皆、税務署の自分に対する調査からしてそれが当然のことであり、それがなされないなら我々も同じようにしてほしい、こう言って、税金なんて取れないんじゃないですか。国税庁。
  195. 瀧川哲男

    ○瀧川政府委員 お尋ねの件は個別にわたる事柄でございます。具体的に答弁することは差し控えさせていただきたいと思います。  そこで、一般論として申し上げますと、政治家個人が収受しました政治資金というのは、所得税の課税上は雑所得の収入ということになります。それが政治活動に使われた分を控除しまして、その残額が課税対象になる、こういうことになっておるわけでございます。私ども、常に納税者の適正な課税を実現するという観点から、あらゆる機会を通じまして課税上の有効資料というものを収集しまして、これらの資料と、それから出されました、提出されました申告書等というものを総合勘案しまして、それで課税上問題があると思料される場合には実地調査を行うなどして、そして適正な課税の実現に努めていく、今後ともこういう考え方でいきたいと思っています。
  196. 正森成二

    ○正森委員 そんな抽象的な答弁国民が納得すると思いますか。あなた方が課税をしっかりやるということでなければ国民の納税意識というのは非常に大きな影響を受けざるを得ないだろう、そういうことを指摘しておきたいと思います。  ところで、佐藤礼幌高検検事長は九月二十九日の朝日新聞「論壇」に投稿いたしました。その趣旨は、   歴代の検事総長は、検察官の心構えの基本として「厳正公平」「真相の徹底究明」 を言ってきた。   仮に暴力団との癒着が取りざたされている者から政治献金があった場合、献金を受けたのが団体か個人かあいまいで、個人なら罰金刑、団体なら禁固刑という場合、授受された金の使い道が不明な場合、個人の所得とみられれば脱税の疑いがある場合、それらの追及を怠る検察官がこの世に存在するとは思えない。もし、怠っているとすれば、検事総長の訓示が全く無視されていることになる。 と言っています。全くそのとおりではないですか。ところが、本件では、この世に存在するとは思えないことをやったのが検察ではありませんか。一体どう責任をとるんですか。  法務大臣に伺いたいと思います。  特捜部というのは大阪と東京にだけあるようですが、どうして特捜部という名前がついているんですか。
  197. 濱邦久

    ○濱政府委員 検察体制の問題についてのお尋ねだと思いますので、私からお答え申し上げます。  特捜部というのはどうして特捜部というのだという御趣旨のお尋ねだと思いますが、これはもちろん、東京、大阪各地方検察庁におきましては、一般刑事事件の捜査処理を取り扱います刑事部とは別に、特に財政経済事犯あるいは直告事件等の特別の事件を捜査するために設けられた特別捜査部というのを通常特捜部というふうに言っておるわけでございます。
  198. 正森成二

    ○正森委員 それは一般的な建前ですね。私はそれはよく存じております。けれども、巷間どう言われているか知っていますか。特捜部というのは、実力ある政治家に対して特別に配慮をした捜査をするから特捜部というんだ。心ある国民は全部そう言っているし、心の中ではそう思っているのです。まさに検察の危機だと言わなければなりません。  かつて、ロッキード事件において、小佐野賢治被告についての嘱託尋問調書証拠採用決定に際しまして、担当の裁判長は、  人は病気に罹ることを虞れるべきではなく、その治療手段の無いことを虞れるべきである。権力の腐敗は民主主義的法治国家にとって忌むべきことではあるが、事前にこれを根絶する有効策によし欠けるとしても、これを剔抉し、糺弾する司直の機能に誤りなくんば、なお国家の基盤は安泰を保ち得るのである。もしそうでないとすれば、国民の間に著しい政治不信を招来し、ひいては現行国家体制そのものに対する疑念すら生じかねないのである。 こう判示しました。  今まさに、司法の一翼を担う検察が国民の憤激の的になっているわけであります。だからこそ、この間現職の自衛官がクーデター論文を書き、そして懲戒免職という処分を受けたんではありませんか。これはまさに国家の安泰と一国の民主主義にとっての重大な問題であると言わなければなりません。行政の一部である検察の姿勢を正すのが当然であると思いますが、総理はどう思われますか。
  199. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先ほどから政府委員がお答えをいたしておりますとおり、検察は適正公平に与えられた職務を遂行しておるものと思います。
  200. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ事実を挙げて言ってもなおかつ総理がそういうことを言うようでは、これらの審議を見ておられるであろう国民の皆さんは、本当に宮澤内閣に対して大きな失望を抱くに違いない。そして、こういう内閣はかわらなければ日本の民主主義は守ることができない、こういう結論に達するであろうと私は思います。  あと時間を少し委員長理事の御配慮でいただけるようでございますので、許される限り暴力団関係について伺いたいと思います。  五月九日付の渡邉調書に詳細に書いてありますが、   八七年十月六日、当時自民党幹事長の竹下登氏は、早朝八時ごろ目白の田中角栄氏宅を訪れ、門から入ることができずそのまま帰りましたが、これは自民党総裁選で、当時竹下氏は日本一金もうけのうまい政治家だなどと、自民党という右翼から褒め殺しというキャンペーンを受けて困り、これをやめさせるため、渡邉廣康を通じ、暴力団稲川会石井進会長に相談し、その力をかり、そのときの自民党の条件を履行するためだった。 と言われております。この関係の供述調書は既に開示され、裁判長の指示によって朗読されておりますから、詳しくは申しません。  宮澤総理、あなたは所信表明でも、あってはならないことと言っておりますが、副総理と自民党の幹事長が暴力団の力をかり、結局、竹下当時幹事長が総裁・総理になるという、あってはならないことがあったわけであります。日本の民主主義を守るためにも、徹底的に真相を解明して、その責任の所在を明らかにするべきではありませんか。
  201. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 九月二十二日のいわゆる東京佐川事件の冒頭陳述は、御承知のようなとおりのことでもございます。ただいま言われましたようなことを述べてはおらないと思います。
  202. 正森成二

    ○正森委員 これはきのうからの一貫した、冒頭陳述にはあるが事実かどうかわからないというのが一貫した総理答弁であり、そして検察官にも一部そういう趣旨の答弁がきのうありましたが、それなら伺いたいと思います。  冒頭陳述にはこう書いてあります。「石井によるトラブル処理」のところで、   ところで、被告人渡邉は、昭和六二年九月末ころ、かねて交際のあった政治家がいわゆる右翼団体の活動に苦慮していることを知り、直ちにこの件の解決を石井に依頼したところ、同人の尽力により、同年一〇月上旬ころ、同団体はその活動を中止した。(中略)   このような経緯で、被告人渡邉は、暴力団最高幹部である石井を自分や東京佐川急便のトラブルの解決ないし予防に利用したほか、石井本人や、親交を結ぶようになった政治家らを、佐川清に対抗する自分の後ろ盾として活用しうる関係を形成していった。そして、これらトラブルの解決に関する石井の尽力に報いるため、被告人渡邉は、石井や被告人庄司の側に求められるまま、被告人早乙女に指示して北東開発等の借入に対する債務保証を重ね、東京佐川急便の石井側に対する債務保証の額は、増大の一途をたどった。 こう書いてあります。これはもちろん検察官の冒頭陳述であります。  しかし、冒頭陳述というのは、あなたがきのう同僚委員質問に対しても答弁されましたが、証拠によって証明しようとする検察官の主張でしょうが。だから、もちろんそれは最終的には裁判官にあって訴訟法上認定されなければなりません。しかしながら、あなた方は、冒頭陳述で主張したことは証拠によって証明できる、そう思っているんじゃないですか。だからこそ冒頭陳述でしょうが。
  203. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  証拠により証明すべき事実を陳述する冒頭陳述の趣旨は、委員仰せのとおりでございます。
  204. 正森成二

    ○正森委員 やむなく初めて濱刑事局長が認めました。これを否定したら法曹の間で物笑いになるから、冒頭陳述に書いてあることは証拠によって証明しようということだ、つまり証拠を検察が持っておるということを言いました。  そこで、証明するためにあなた方は渡邉検事調書を裁判所に取り調べ請求したのでしょう。その渡邉調書で、既に朗読されて皆に知られていることにこう書いてあります。あらかじめ言ってあります。平成四年六月二十日付の渡邉調書ではこう言っています。   竹下内閣成立問題は、私の人生で一番大きな出来事です。私の力を日本の将来に示すことができた大きな出来事だった。確かにこの問題が解決されなくても竹下内閣は成立したかもしれないが、昭和六二年十月五日−六日にかけて竹下先生の困り切った様子や、金丸先生の説得の態度や、小沢先生の狼狽ぶりをみると自民党問題が解決しなければ成立はあり得ないという雰囲気だった。このような大問題を私の力で解決できたのだから竹下内閣成立について、民間人での第一の功労者は私だという自負心を持っていました。 こう六月二十日調書では言っているはずであります。  さらに、平成四年五月九日付渡邉調書にはこう言っています。   私はこの問題で石井会長に借りができました。人にものを頼むということは、それ相応の対価を払う覚悟が必要とされます。相手が暴力団の時には尋常以上の対価を支払う覚悟が必要。その対価は石井会長事業に対する東京佐川の無茶な融資や債務保証だった。 こう言っているはずです。あなた方はこれを証拠によって証明するまさにその証拠として裁判所に提出しているではありませんか。そうでしょうが。そうすると、検察は法務大臣の指揮下にあり、法務大臣は内閣一体の原則で総理の指揮下にあるじゃないですか。その総理がそんなこと知らぬなんて、人ごとのような顔で言っていいんですか。それじゃ第一線の検察官は立場がないんじゃないですか。
  205. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今委員のお尋ねの中には、若干その前提において私ども必ずしも左袒できない点があるわけでございます。  まず、冒頭陳述と申しますのは、先ほど来委員も御指摘になっておられますように、証拠調べの冒頭において検察官が証拠により証明しようとする事実の陳述でございます。したがいまして、この冒頭陳述に記載されておりますことは、検察官が証拠により証明しようとする事実であるということはそのとおりでございます。しかし、今委員がそれに付随していろいろ仰せになりました渡邉被告人の検察官調書の内容等につきましては、これは裁判において裁判所が判断する事柄でございます。したがいまして、検察官が証明しようとしている事実は、この冒頭陳述に記載されている事実であるということを申し上げているわけでございます。
  206. 正森成二

    ○正森委員 そういう詭弁を言ったらいけませんよ。冒頭陳述の内容を証明するために渡邉調書などを申請して、そして争っているのでしょうが。それに対して法務省当局がそういうことを言ったら、第一線の検事は立つ瀬がないと言わなければなりません。  時間がございませんので、私は、金丸氏などが三和銀行やあるいは住友銀行に依頼をした、それに対して渡辺郵政相が関与されたという問題についても伺おうと思っておりましたが、時間が来たようでありますから、残念ながら次の機会にさせていただきます。  そこで、総理に、先ほどお答えいただくのをお答えいただきませんでしたので、最後に一言だけ伺って、私の質問を終わらせていただきます。  総理、今ずっと伺いました中で、御理解できた分もおありでしょうし、御理解できにくい点もおありだったと思いますが、しかし企業から金を引き出して、その企業が暴力団と癒着する。そうすると、暴力団に頼んでおれば、余計それを種にして、さらにつき込まなければならないという状況が起こったことは大体おわかりと思います。  国政の責任者として、あなたは検察庁と国税庁が法規を厳正に適用して、今日の法的な手段で可能な限り佐川資金の流れを追及して、政治資金規正法や公選法の違反、脱税などの違法行為について世論の納得を得られるだけの厳正な処置をとるようにしていただきたいと思います。  第二番目には、徹底的な真相解明のために、証人喚問や国会への資料提出に積極的に応じていただきたいと思います。  第三には、腐敗の根源である企業・団体献金の禁止に踏み切っていただきたいと思います。  ロッキード事件のときに、国会は衆参で真相解明の決議を行いました。それらを受けて、当時の三木総理はフォード大統領に書簡を送られました。これは資料提供のためであります。この書簡は、この事件がうやむやに葬られることはかえって日本の民主主義の致命傷になりかねない、私は、日本の民主主義が本件解明の試練に耐え得る力を有していることを確信している、我々は、真実を究明する勇気と、そしてその結果に直面していく自信を持っていると述べております。  総理、私の記憶に誤りがなければ、あなたは当時、外務大臣としてその書簡の多くにも関与された方であります。今こそあなたも最小限この態度を見習うべきではないでしょうか。このことを私は切にお願いしたいと思います。そして要求したいと思います。  今、渡邉調書等について、さきに同僚委員も申請されたときに、いろいろ理由を述べて提出できないように言われましたが、それならば国会法百四条で、渡邉廣康、庄司、大島などの供述調書を国会のしかるべき委員会で朗読によって明らかにしていただきたいと思います。調書そのものは出されなくても、公開の法廷で朗読することができたものであります、国会の委員会で朗読できないわけがありません。それならば、国会の速記録に書いて、我々はそれを詳細に検討することができます。真相解明のためにそれをお願いしたいと思いますし、また、検察があくまで争うならば、安部昌博弁護士の証人としての追加も理事を通じて申請いたしたいと思います。よろしくお取り計らいをお願いし、総理答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先ほどからのお話を伺っておりまして、これはテレビをごらんの方もいらっしゃると思いますので申し上げますが、冒頭陳述のお話をしておられたのですが、途中から実は渡邉調書というものについてのお話に移られました。これは性格の違うものでございます。  渡邉調書というものは、この内容そのものが真実であるとおっしゃいませんでしたけれども、それは真偽は裁判の過程においてやはり決められるべきものであって、こういう陳述をされる方は、また陳述をされるための私は理由があると思いますね、当然のことでございますが、取り調べを受ける人ですから。そういうことも考えておかなければなりませんので、さっきお読みになりましたことが全部あたかも真実であるがごとくお聞きになられる方がありましたら、私は、そうでない、そうは言えないということを申し上げておきます。  それから、検察並びに国税当局は、与えられました職務を忠実に、誠実に実行いたしておると思います。  それから、法人からの寄附金につきましては、しばしば申し上げるところでございますが、法人もやはり社会的な存在でございますので、節度のある限度内においてこの寄附金というものは私はあってもいいのではないだろうか。いろいろ御議論のあることは存じておりますから、御議論を各党の間でしていただくことは結構だと思います。  それから最後に、ロッキード事件につきましての三木首相のとられました態度についてお話がございまして、私は外務大臣でございました。言われますように、米国からたくさんの資料を必要といたしまして、それにつきまして米国政府の協力を得るために三木さんは非常な努力をせられましたことはそのとおりでございます。  ただ、事件そのものにつきましては、三木首相は検察当局を真実信頼をしておられました。やるなともおっしゃいません、やれともおっしゃいません、真実信頼をして、中立の立場をとられたということを申し上げておきます。
  208. 高鳥修

    高鳥委員長 ちょっと正森さんにお願いしていいですか。  先ほど委員長の名前も、これは前の立場で出てきておりまして、私がここで黙っておりますとそのニュースだけがひとり歩きしますので、正森さんにこれはお願いですけれども、実は私、新潟県の例の知事選挙、金丸調整があったとされる知事選挙の当事者の一人なわけです。どこからその金丸調整という話が出てくるのか、私には全く理解ができないのです。ぜひひとつこれは真実を解明していただきたい。私にとっては全くわからない話なので、しっかり真実解明のために、むしろ私の方から正森先生の御努力をお願いしておきます。
  209. 正森成二

    ○正森委員 委員長のお言葉でございますので、一言申し上げたいと思います。  そういうことでしたら、私どもはもとより望むところで、渡邉廣康被告を初めとして、関係者に十分時間をとって証人喚問をしていただきたいと思います。安部昌博弁護人は当然です。  以上です。
  210. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  211. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、目下最大の懸案であります東京佐川急便事件の真相究明、景気の動向と所得税減税の必要性等について、政府の見解をただしてみたいと思います。  御案内のとおり、目下厳しい不況のさなか、補正予算が一日でも早く成立が待たれているにもかかわりませず、予算委員会は二週間にわたり空転し、やっと始まった予算委員会におきましても、冒頭から政治と金のスキャンダル事件、政治と暴力団の癒着問題等から取り上げねばならない我が国の政治の実態はまことに遺憾なことであり、まさに憤激さえ感ずる一人であります。  政治スキャンダルといいますと、今国会もそうでありますように、さきの国会もそのさきの国会も、昨年も一昨年も、昨今はいつの国会も同じようなことでありました。リクルート事件のときは、宮澤総理そのものも追及された一人でありました。そして、かかる不祥事件が起こるたびごとに考えさせられますことは、ロッキード事件のときもしかり、リクルート、共和のときもしかり、いつもそのたびごとに政治の危機が語られ、反省がなされ、政治改革が云々されましても、一向に何も変わらない、何も前進しない。新しい反省をしているうちに今回の佐川事件のような金権腐敗の不祥事がまた始まっている。今もまたやみの中で新たな不正が始まっているのかもしれない。この繰り返しが今日までの我が国の政治の実態だったと言わなければなりません。今や国民政治不信を通り越して、政治絶望の一歩手前に来ているのではないかと憂慮されます。  一体なぜこのように、かかる繰り返ししかできなかったのか、一体我が国の政治はどこが狂っているのか、私は今こそ根源的なところにメスを入れて改革を図らなければ日本政治は蘇生しないのではないかと考えます。特に、一体日本政治はどこが狂っているのか。いろいろな言い方がありましょうけれども、長期政権ゆえに政官財の癒着が構造化しているところに問題があるのか。その表裏の関係とも言えますが、我が国に政権交代の政治土壌が育っていないところに問題があるのか、あるいは政治家自身の問題なのか、政治を取り巻く制度の問題なのか。また、政治も選挙も少なからずエコノミックアニマル的に堕しつつある社会的風潮のゆえなのか。そのすべてなのか。今こそ根源的なところにメスを入れて日本政治を蘇生をさせなければならぬと思いますが、総理の率直な見解をまず伺いたいと思います。
  212. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 御指摘の御趣旨にはもとより同感でございますが、やはり一人一人政治に携わります者のモラルの問題である、倫理の問題であることはまず第一に申し上げなければなりませんが、それと同時に、いろいろ改革を要する政治制度といったようなもの、これもこの際緊急に根本的な改革を必要とする一つの要素であろうというふうに思います。それはぜひ国会におかれましても、まず緊急改革、次に抜本改革につきまして関係法案の成立をお認め願いたいというふうに考えるところでございます。  なお、それに関しまして一つの政党が長い間政権を掌握していたことから生じている問題はないのかという御指摘に対しましては、長く政権にあります私どもとしておのずから反省をいたさなければならない点が少なからずあると思います。私どもの党内改革につきましても、これは党内の問題としてただいま真剣に取り組んでいるところでございます。
  213. 米沢隆

    米沢委員 同時に、指摘をしなければならぬ問題は、リクルートにいたしましても、共和、また今回の佐川事件にいたしましても、たまたま見つかったという側面があるのではないか。リクルートは、御案内のとおり川崎市におけるリクルートビルの建設に関して市役所の方にわいろが贈られた。そこが発覚の起爆剤になって、それが永田町に波及した。たまたま永田町関係者がばれただけの話。共和問題にいたしましても、もし共和が倒産しなかったらわかっていただろうか。倒産したために会社清算人が会社に入り、帳簿を調べたら阿部さんにぶち当たった。これもたまたま発覚した事件ではなかったのか。佐川急便事件にいたしましても、もし佐川の会社、佐川グループの中で会長と東京の渡邉元社長がけんかしなかったならば、これはばれていなかったかもしれない。結果として、会社法における特別背任罪の訴訟によって事実がばれて、金丸さん以下政治家の名前が出てきたにすぎない。そう考えますと、このような事件はまさに氷山の一角にしかすぎないのではないかという疑念が払拭できません。  うまくやったやつは黙って陰に隠れて、巨悪は眠り続けている、これが今、日本政治の実態ではないか。いわば政治資金規正法の支配する表の社会とは別の金が水面下でいつもやみからやみに流される社会、流れる社会、膨大なやみ資金の流れが長年にわたる保守政権のもとで恒常化し、そして権力中枢を支える役目を果たしているのではないかという疑念を我々は払拭できない。ばれたら政治資金として届け出を忘れたことにして、秘書が、秘書がで逃げまくる。うまくやった巨悪は、眠り、ぶきっちょの人だけはばれてしまう。何かそのような疑念が国民の間にも、我々の頭の中にも、深く疑念を払拭できないという、その壁に我々はいつもぶつかっておる。  保守本流に乗ってきたと自負される総理大臣、また派閥のボスであった総理大臣、このことを一番知っているはずだと思いますが、この疑念にこたえることこそ真相究明、政治の抜本改革への出発点ではないかと思いますが、総理の見解をただしたい。
  214. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私の経験をお尋ねでございますので申し上げますが、若い有為な代議士諸君が選挙をやっていく、そのためにたくさんの秘書も置かなければならないし、いろいろな出費がある。それは有志による家計簿の公開によりましても、これは二年ほど前でございましたが、月に千万円最低かかるというようなことは、これは決して若い代議士さんが自分で苦労なく調達できる金ではありません。いつまでもとてもやっていけるような体制ではないということを痛感いたしますし、また私どもお互い先輩が若い人を何とか助けてやろうと思いましても、それも限度のあることでありますので、しょせん現在のようなやり方というものはもう一つの限界に来ておるということを正直強く感じておりまして、そういう意味でやはり抜本的な政治改革をしなければ、国民の信頼にも背きますし、また、将来有為な若い政治家が育たないということも考えます。そういう意味で、今こそこの抜本的な政治改革をいたさなければならないというのが自分の、自身の体験に基づく私の思いでございます。
  215. 米沢隆

    米沢委員 私は、やみ資金までかき集めてでないと政治が行われにくい、そのやはり一番大きな問題点は、やはり派閥問題に直面するんではないかと思います。自民党の内政干渉にわたるかもしれませんが、しかし自民党が政権政党である限り、これは日本政治の問題として考えなければならぬ問題だと思います。  福田元総理の言をかりれば、今日派閥というものは盤踞して動くことなし、自民党初代総裁の鳩山一郎さんも、派閥解消は天の声と言われた。二代目の石橋湛山さんも三代目の岸信介さんも派閥の弊害を訴えていた。しかし、今日のこの現状はどうだ、派閥というものは政治のあり方をゆがめる大きな障害だ、今回の国民政治不信の根本にはやはり派閥の問題があるだろうとおっしゃった。また、坂田道太元衆議院議長の言をかりれば、まさに派閥あって党なく、党あって国家なき姿であると慨嘆されておるわけでございます。  確かに人間がたくさん集まると、好きな人もおれば嫌いな人もおる、一緒に勉強したい人もおれば関心のある政策課題が違う人もいる。それはそれで派閥の一定の有用性みたいなものはあるかもしれませんけれども、今日の自民党の派閥というものは、まさにその派の人事ポストあるいは選挙の面倒まで見る。そして時来れば総裁選挙、総裁予備選挙で権力闘争のまさにグループに化す。そこに余りにも大きな、派閥の運営にはお金が要る。そのお金を調達するために政治資金規正法とは関係ないところでかなりの金を集めなければ、実際派閥のボスはやっていけない。  論より証拠、二、三の例外はありますが、総理大臣をされた皆さんはいつも塀の上を歩いてきた、いつもこの疑惑の事件の対象者になってきたということを考えますと、まさに派閥の解消こそ日本政治を変えていくまず出発点ではないか、そのように考えるわけでございます。  総理の見解はどうですか。
  216. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私どもの党では、ただいま政治改革本部でいわゆる抜本改革につきましての党内の意見の取りまとめをしておるわけでございますが、その中に党改革という部会を設けております。ただいまの御指摘の問題は、私も強く感じておりまして、先般自身出席をいたしまして、この十一月末が一応の期限でございますが、ただいまの問題について部会としての答申を出してほしいということを申しました。  申しました趣旨は、派閥解消ということは幾たびが御指摘のように言われました。幾たびか試みられましたが、しかしその都度成功していない。それは一つの、まあ政策研究等々のメリットもあるからでございましょうが、しかしここまで来ますと、どうしても以下に述べるようなことが解決できないのであれば、これはやむを得ない、派閥というものをやめるしかしようがないであろう。  したがって、以下の問題についてひとつ答申を出してほしいと申しました第一は、今御指摘の人事の問題であります。派閥がございますので党内の人事がどうしても派閥的考慮に左右されやすい。その結果として有能な人材の簡抜というものが妨げられることがありやすい。第二は、金の問題でございますが、先ほど申しましたような意味で、すぐれた若い人の何とか力になってやりたいという気持ちがございますけれども、外から見ておりますと、それは金によって派閥の内部の人々の意見が制約されるのではないかというような印象を与えやすい、そのことは極めて遺憾なことでございます。第三に、政治上の応援をするあるいは支援態勢をとるというときに派閥というものの考慮が優先しやすい、あるいは党として公認候補を決定するといったような場合にも派閥的な考慮がどうしても入りやすい。まだいろいろございますが、その三つぐらいの問題が党の正常な運営を妨げる大きな要因ではないか。  したがって、これらについていかにすべきかを、この際党の意思として決定をいたしたい。党の意思として決定をすれば、これはほかにしりの持っていきどころはございませんから、そのとおりしなければならないということでございますが、そういう答申をただいま求めておりまして、間もなくそういうことにつきましての党内の意思決定ができましたならば、ただいま御指摘の問題にもこたえることができるのではないかと考えております。
  217. 米沢隆

    米沢委員 御案内のとおり、平成元年の五月十九日、リクルート事件の反省から、もう既に自民党の政治改革大綱というのが答申され、その中にはもう既に御案内のとおり「党改革の断行」として「派閥の弊害除去と解消への決意」というものがこの答申の中に書かれ、「近代的国民政党への脱皮」として「族議員の反省」、「当選回数主義の改善と信賞必罰の徹底」、「候補者決定のあたらしいルール」づくり等々が既に答申されている。  今また答申を願っておるというお話でございますが、一体これ以上に何かつけ加えるものがあるのか。結局、このような政治改革大綱を決めながらも、守られていないというところに問題がある。どうしたら守れるかを議論することであって、今さら新しい答申をまたつくってくださいなんと言ったって、何回出されたって同じことではないでしょうか。その点について総理は一体どういうふうな物の考え方をなさっておるのか。今回出される答申は、必ず実行されるようなものに本当になるのかならないのか。今日までの政治改革大綱がなぜ守られなかったかというところにメスを入れなければ、何回答申を出しても何百回答申を出しても同じことじゃありませんか。
  218. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私どもの党内におきましては、まさにそういう議論を非常に熱心に連日実はやっておりまして、基本は確かに今おっしゃいました政治改革の大綱にあるわけです。ここに大体重立ったことは書いてある。しかし、それがそのとおりに実行できなかったのはなぜであるのか、今日的な課題としてどうすればいいのかということを、実は日限を決めて答申を求め、実行をしようとしているのがただいまの私どもの努力であります。
  219. 米沢隆

    米沢委員 実はこの政治大綱以来、宮澤総理になってからは、いわゆるこの政治改革大綱が公然と破られておる。平成元年五月十九日、竹下内閣のときでございますが、政治改革大綱が決定されて、その際、最高顧問は派閥を離脱、総裁、副総裁、幹事長、総務会長、政調会長、参院議員会長、閣僚は、在任中は派閥を離脱、そして、平成三年十一月一日、綿貫幹事長はインタビューに答えて、政治改革大綱で決めた派閥活動の取り決めは形骸化している、今後、形にこだわらず派閥活動は自粛していくとまでおっしゃっておりますが、残念ながら、あなたが内閣総理大臣になられてから、そこにお座りの渡辺外務大臣、大蔵大臣、公然とやっておられる。こういうものを宮澤さんはどう思われますか。
  220. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 閣僚はよく閣僚としての務めを果たしてもらっておると思いますが、御承知でもございましょうが、最近私どもの党内にかなりの出来事がございまして、それにつきまして関心を持つのは、お互い政治家としてそれは関心を持つなと言えるものではない。ただし、決して、閣僚としての本務を放てきされた、あるいは十分でないことがあったようなことは、私は決してそうは思っておりませんけれども、そういうこともございました。  この際、政治改革におきまして、今までそういう多少の問題がございましたから、もう一度きちんと党内のコンセンサスを得ていたしたいとただいま考えているところです。
  221. 米沢隆

    米沢委員 総理におかれては不退転の決意で党改革の断行に全力を挙げていただくことを心から期待いたします。  さて、各論に入りたいと思いますが、かつて今回の東京佐川急便事件ほど国民の間で検察批判が渦巻いたことはありませんでした。また今回の事件ほど法務・検察当局と永田町との関係がさまざまな形で取りざたされ、問題視されたことはありませんでした。水面下での暗闘というべきか取引というべきかが繰り広げられたということは、いろんなマスコミ等を通じて伝えられたところでございます。  その原因は、今までの御質問と重複するかもしれませんが、まず第一に、今回の事情聴取なしの上申書、略式起訴での決着に不透明な取引はなかったのか。法のもとの平等を踏みにじられていると国民は怒っておるわけであります。  第二は、金丸氏に渡った金を政治献金と認定しながら、なぜその金の使途や行方については告発を受けないと捜査しないのか。所得税法違反や流れた側の方の政治資金規正法はなぜ問題にならなかったのか、なぜ関心を示さなかったのか。  第三に、献金疑惑については捜査段階から十数人に二十数億円に及ぶ資金提供があったとされていましたが、一部には具体的な供述も得られておると言われながらも、どこかで捜査が打ち切られ、なぜ金丸氏だけ立件されて、他の献金疑惑については捜査終了ということになったのか。  第四に、今回の一連の佐川急便事件に関し、贈収賄罪にかかわる事件はいろいろ取りざたされた経緯はありますが、捜査の結果、本当に何もなかったのか。それと、時効の壁等があって断念せざるを得なかったのかなとなど、まだたくさんの疑念はありますが、不信は高まるばかりであります。余りにもマスコミ報道が先行し、検察に対する過大な期待を持った傾向はあるかもしれませんが、このような疑問につき、法務当局は明快な答えを出すべきだと考えます。国民の前にわかりやすく再度説明する必要があると思いますが、御答弁をいただきたい。
  222. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  まず最初のお尋ねは、金丸前議員を取り調べずに上申書で処理したことについてのお尋ねかと思うわけでございます。  この金丸前議員に対しまする事件につきましては、検察当局におきましては、この違反事実に適用される量的制限違反の寄附受領罪の法定刑が罰金二十万円以下でありまして、元来任意捜査が原則であることに加えまして、このような法定刑の罪では、逮捕というような手段をとるにいたしましても、刑事訴訟法百九十九条一項ただし書きの趣旨に照らしまして厳しい制約があることなど、強制捜査を実施する上で慎重な配慮を要することがあったわけでございます。その上、起訴処分するにいたしましても、被疑者たる金丸前議員本人に異議がない以上、正式な裁判を開かずに略式手続という簡易迅速な手続によることができる制度になっていることを考慮に入れながら検討したわけでございます。  一つは、提出された上申書と、それまでに収録された、収集されました証拠とをあわせ勘案いたしますると、この違反事実を認めるに十分であって、実質的には金丸前議員から供述を得ることを含めまして捜査の目的を達したというふうに判断されたこと、また、本件は起訴いたしましても最高二十万円の罰金でしか処罰できないわけでございまして、しかもその場合、金丸前議員が希望する以上、略式手続によることが相当と認められる事案であること、これらの点など諸点を考慮いたしまして、上申書の提出を受け、金丸前議員の取り調べをしないで起訴するとともに、略式命令の請求を行うのが相当であるとの判断に達したものというふうに承知しているわけでございます。  二番目のお尋ねは、五億円の献金について、使途、行方について、告発を受けて初めて捜査をするのか、告発を受けないと捜査をしないのはどうしてかという趣旨のお尋ねかと思うわけでございます。  東京地検におきましては、金丸氏の五億円受領に係る政治資金規正法違反の捜査の過程におきまして、その収支に関しまして、それまでに収集された証拠関係を踏まえて、想定される犯罪とその成立可能性につき必要な検討を加えましたが、本件処理の段階におきましては、起訴したもの以外には金丸議員の余罪として犯罪の嫌疑が認められるものは確認できなかったと判断したと聞いているわけでございます。  ただ、これは御指摘のような捜査の打ち切りを意味したものではないわけでございまして、その後の政治資金規正法違反や所得税法違反に係る告発を受けまして、それまでの捜査結果を踏まえながら引き続き捜査を行い、適正に処理するものと考えているわけでございます。  それから、次のお尋ねは、献金疑惑、言い伝えられている献金疑惑について一部具体的供述が得られていると言われているけれども、なぜ金丸前議員だけの事件の捜査処理となったのか、こういう趣旨のお尋ねだったかと思うわけでございます。  東京佐川急便におきまして、お尋ねのようないろいろな献金疑惑というものが報道等により取りざたされていることは検察当局も十分承知しているわけでございますが、そのような報道との関係はともかく、検察当局におきましては、平成元年四月ころから同二年十二月ころまでの間、渡邉元社長が松沢から受領した約十七億五千万円の裏金の使途先につきまして必要な捜査及び検討を尽くしたわけでございますが、金丸議員に供与された五億円に係るもの以外には、犯罪の嫌疑ありとして訴追するに足りるものは、事実は確認できなかったというふうに聞いているわけでございます。  それから、一番最後のお尋ねでございますが、検察当局といたしましては、平成元年四月ころから同二年十二月ころまでの間、今申し上げましたように、渡邉元社長が松沢から受領した約十七億五千万円の裏金の使途先につきまして、贈収賄罪をも念頭に置いて必要な捜査及び検討を尽くしたわけでございますが、金丸前議員に供与された五億円に係るもの以外には、犯罪の嫌疑ありとして訴追するに足る事実は確認できなかったというふうに聞いているわけでございます。
  223. 米沢隆

    米沢委員 もし金丸氏が、おれがもらったと言わなかったら、この事件はやみの中だと言われておりますが、実際そうですが。金丸さんのこの政治資金規正法違反の件は、彼の供述がなくても、自分自身がもらったという言葉がなくても、証拠書類すべでそろって立件できた事件ですか。
  224. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  この金丸前議員に対する政治資金規正法違反事件の捜査の経過につきましては、検察当局がその事実を把握して、五億円の献金問題につきましてその事実を把握して所要の捜査を行った結果、金丸前議員が生原秘書と共謀して政治資金規正法上の量的制限違反の寄附受領の罪を犯したとの嫌疑が濃厚になりましたのでその後の捜査を行っていた、金丸前議員の刑事責任は免れないとの判断のもとでそれ以後の捜査を行っていった、進めていったということでございまして、先ほどの前段のお尋ねにはそういう経過をお答え申し上げれば御理解いただけると思うわけでございます。  また、金丸前議員の上申書の提出がなければこの事件は処理できなかったのかというお尋ねでございますけれども、そのお尋ねは仮定の事実を前提にしてお尋ねになっておられますので、この段階でお答え申し上げることはいたしかねるわけでございます。
  225. 米沢隆

    米沢委員 私は、この事件は金丸さんの供述がなかったならば事件になっていなかったのではないか。初めに金丸さんの供述ありき。そこで、金丸さんを政治資金規正法違反の罪に問うために、先ほどから同僚議員が指摘されておりますように、生原秘書の調書が改ざんされ、渡邉調書の内容が改ざんされて、一見政治家に手が入ったということで検察のメンツだけは立てた。そのためには何でもかんでもしたというのが事件の真相ではないですか。
  226. 濱邦久

    ○濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、この金丸前議員に対する政治資金規正法違反事件の捜査につきましては、その容疑の端緒を得てから関係者、生原秘書等関係者多数の取り調べあるいは証拠物の検討を進めまして、事件の捜査処理を終えたということでございます。
  227. 米沢隆

    米沢委員 先ほども議論になっておりましたように、金丸氏の弁護士である安部さんの話ったところを読んでみますと、もうまさに真相をかいま見るような詳細な話がしてありまして、その話を読む限り、だれ人とも言わず、私は、それが本当だったんだろうな。思うことは、大体あなたが読んでもそんな気がするんじゃないんでしょうか。今、金丸氏がこのお金を受けたという日付についても、渡邉さんの供述と金丸さんの供述とは実際は違っていた。しかし、金丸さんを立件するためには、渡邉調書を因果を含めて改ざんさせねばならなかった。生原秘書は、これは政治団体で受けたと一貫して主張しておられたそうでございますが、結果としては、そのことも改ざんされて金丸さんを立件するような調書をそろえた。後から証拠が備わったのであって、最初に証拠があった事件ではないと私は思うのです。  特に、この安部弁護士は昭和六十三年まで宇都宮地検の検事正で退官された方でございますから、よもや週刊誌等にうそをついて、また、うそをつく益がない。私は、まさに真相は安部さんの言うとおりであって、法務当局はうそをついておるという気がしてなりません。今、そんなことはなかったと御答弁いただいておりますが、それは詳細に地検の取り調べた連中と事実を確認した上でそんな答弁をなさっておられるのですか。
  228. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  もちろん、法務当局において詳細な報告を受けた上で承知しているところを申し上げているわけでございます。  重ねて申し上げるわけでございますが、東京地方検察庁におきましては、この金丸前議員の弁護人を通じまして金丸前議員に対して、出頭の上取り調べに応ずるよう求めたということがございます。それから、弁護人からは、金丸前議員においては取り調べのための出頭に応じがたいということ、本件違反事実を認める上申書を提出する用意があること、略式命令の請求手続による起訴処分及び書面による略式手続の告知を望んでいることの申し出があったということ、最終的には、提出された上申書とそれまでに収集された証拠をあわせ検討した結果、本件違反事実を認定するに十分であり、またその犯情に照らせば、政治資金規正法の量的制限違反の寄附の受領罪の法定刑の上限である二十万円の罰金刑を科すべきであるというふうに判断されたことから、金丸前議員から、略式手続の告知を経て作成された略式手続によることに異議がない旨の請書を徴した上で、東京簡易裁判所に公訴提起するとともに、略式命令の請求を行ったという経緯になるわけでございます。  委員がおっしゃっておられますように、この捜査処理、今申したような経過で捜査処理がなされたものでございまして、証拠のつじつま合わせ等をしたというような、委員が今仰せになられましたような事実はないというふうに承知しておるわけでございます。
  229. 米沢隆

    米沢委員 余りくどくは申しませんが、安部さんの話によると、金丸氏の事情聴取に協力してもらいたいと地検から依頼があったけれども、おれがもらったと認める金丸氏だけを捜査してそれ以外には捜査をやっていない、公平でない、公正でない、公平であれば事情聴取に協力したいと検察の方には申し上げたと言われている。しかし、十日ぐらいして一挙にすべて結論が出た。一挙に落着しておることから見ましても、あなたの答弁にはかなり曲がったところがある。  また、今度の事件もかなり永田町との関係が云々されました。それで、彼が最後に言っておりますのは、   私が今回の事件の渦中の当事者の一人として言えるのは、わずか一カ月の間のことですが、その間痛感したのは、今回ほど不透明な事件はなかったということです。   特に検察側の対応の不透明さです。検察庁は、竹下派サイドとの腹の探り合いばかりに日時を費やしていたことが目立ちました。   地道な捜査が蔑ろにされ、水面下でゴチャゴチャするばかりだったのが目につきました。いわば特捜部の地道な“地上戦”よりも、検察と派閥幹部との空中戦ばかりが重要視され、右往左往していたのです。   私自身も、その暗闘の渦中に放りこまれ、多くの意味でまったく後味の悪さだけが残る事件でした。   そして、金丸氏以外の疑惑の人々はその疑惑が本当なのか、本当でなかったのかを調べられることもなく、闇に消えてゆく結果は誠に残念だと思います。 と述べられております。  この真偽についてもう御質問しようとは思いません。結果として果たして公正で十分な捜査が行われたのか、政界からの圧力や取引はなかったのか、それが捜査方針をゆがめたことはなかったのか、私はまだ大きなる疑問を持ってこの際質問を閉じたいと思います。  さて次は、時間もありませんので、景気と減税の問題について伺ってみたいと思います。  昨年来の政府の甘い景況感と、後手後手に回った景気対策が原因いたしまして、我が国は目下深刻な不況に直面いたしております。暗い不況のトンネルからいまだ抜け切っていないという現状であります。三月に少々金利の引き下げや公共事業の前倒し等が行われました。八月末に十兆七千億に及ぶ総合経済対策が打ち出されたにもかかわらず、一向に景気回復の兆しが見えてこないのは一体どういうことなのか。ここに来て企業の業況判断が急速に悪化している直接的な要因は、在庫調整の予想外のおくれとこれに伴う業績悪化でありましょうが、この在庫調整が予想外に難航している最大の要因は、特に今年度に入ってからの個人消費の落ち込みではないかと思われます。  百貨店の売り上げしかり、スーパーを含む小売業の売上高しかり、家計調査も三月以降不振が続き、乗用車も家電の売り上げも不振、このごろは外食産業や海外旅行やサービス消費も低下傾向など、消費の指標はすべてマイナスの方向に向かっているわけでありまして、個人消費関連業界は塗炭の苦しみにあえいでおられるのが偽りない事実でございます。いわば消費の景気下支えの対策はもう全くなくなっていると言っても過言ではありません。これからまた所定外労働時間が減少する、残業手当が減少する、冬のボーナスも大変だ、賃金の賃上げの方も大変厳しい環境になるだろう、そして雇用調整も始まっている、そういう状況の中で勤労者の消費性向が上がるはずはない。個人消費は来年夏までもう一段冷え込む懸念があると言う人もいる。  政府は公共投資等によって今後一年間で実質一・四%程度のGNPを押し上げる効果があるとおっしゃっておりますが、大体GNPの六割ぐらいを占める個人消費がこれほどまでに不振をきわめて、これが民間設備投資の不振とともに景気の足を引っ張った場合、一体政府目標の三・五%なんというのは達成できるのか、来年の経済指標は一体どうなっていくのだということを考えますと、単に公共事業だけに依存することではなくて、総合的とおっしゃるならば、所得税減税等も含めて、まさに総合的な対策を打ってもらうのが政府の私は責任だと思うのでございます。  公共事業をやってもらうことは結構でございますが、関連業界には直接効果が及ぶでありましょう、しかし、現在最も需要不振が深刻な個人消費に直結した産業に実際乗数効果としてその影響が及んでいくのは早くても来年の夏以降だろう、こう言われる。一体その間どうするんだ。北海道や東北は公共事業はもう冬になったらできません。彼らの地域の景気対策は一体何でなされていくのか。  私は、北海道から沖縄まで即効性があり、津々浦々に恩恵が出てくるであろう所得税減税を実施することこそ総合経済対策と言われるゆえんの政策だろうと思うのです。大体、総合経済対策だと言いながら公共事業は八割でしょう。大体、景気をよくするためには公共事業等で需要をつくるとか、民間設備投資を刺激するとか、六割に及ぶ個人消費を刺激するとか、大体三つの柱がバランスとれて初めて総合経済対策と言えるのではないでしょうか。いかに公共事業が建設国債で裏づけできるからといって、じゃんじゃん公共事業だけをやって、それがいわゆる総合経済対策だと言われても、我々はわからぬ。もっと総合的に物は考えてもらいたい。  その上、いわゆる税制の問題は、サラリーマンにかなり重税感が強くなってきておる。大体ことしは、連合の調査によると、ことしの賃上げは四・九二%だったというのですが、しかしながら所得税が上がり、社会保険料が上がり、実質可処分所得はわずか二・二%にすぎない。六割はみんな大蔵省か厚生省に持っていかれておる。このように実質可処分所得が全然伸びないところに消費が伸びるわけはない。私は再度、いろいろと質問の中にはノーという答えが濃厚でありますが、もう一回、総合経済対策と言われるならば、いわゆる所得税減税、地方税減税を断行してもらいたい、強く要望したいと思います。答弁を願います。総理大臣
  230. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 よくもう御承知の上での御質問だと思うのですけれども、確かに家計におきましてはこの数年間耐久消費財、この需要が極めて好調であった。先ほど野田長官の方からも御説明がありましたけれども、それらの反動といったやはり現象が見られるというふうに思っております。それともう一つ、個人あるいは家庭消費、これがバブルのときにはやはり相当膨らみましたけれども、これがやはり堅実化しているということも言えるんじゃないかというふうに思っております。  こうした消費の現状を見ますと、なかなか、巷間で言われますように、また今御指摘がございましたように、消費を刺激するための所得減税をやったその効果というものは、私はそんな大きなものはやはり期待することはできないというふうに思います。  そこへもってきて、これも御案内のことでございますけれども、今度の場合にはこの補正を組むにもやはり大変な苦労をいたしながら組んでおるという現状でございまして、もし減税をするために赤字公債というものを発行しなければならないということになりますと、これは本当に、まさに高齢化社会をそこに控えながら大変なことをしてしまうということになろうというふうに思っております。  確かに全体の景気というのは今厳しい状況にあることを私どもも承知しておりますけれども、しかし今度、私どもが今お願いをいたしましておりますことが実際にこれは動いていくことによりまして、今底を相当長くはっておるということが言えると思いますけれども、回復の兆しというものを私たちはつかむことができるであろうというふうに考えておることを申し上げさせていただきたいと思います。
  231. 米沢隆

    米沢委員 もう時間が来ましたが、最後に私は、五億円授受に関し、金丸氏が東京地検に提出した上申書の写し、そして略式命令に至る経過報告、それから渡邉、生原両氏の検事調書全文、委員会に御提出いただくように委員長にお取り計らいいただきたいと存じます。
  232. 高鳥修

    高鳥委員長 資料要求等については理事会において協議いたします。  これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十六日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十九分散会