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1992-11-26 第125回国会 衆議院 農林水産委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成四年十月三十日)(金曜日) (午前零時現在)における本委員は、次のとおり である。   委員長 高村 正彦君    理事 岩村卯一郎君 理事 金子徳之介君    理事 杉浦 正健君 理事 東   力君    理事 簗瀬  進君 理事 石橋 大吉君    理事 前島 秀行君 理事 藤原 房雄君       赤城 徳彦君    石破  茂君       上草 義輝君    内海 英男君       大原 一三君    金子原二郎君       亀井 久興君    鈴木 俊一君       西岡 武夫君    鳩山由紀夫君       保利 耕輔君    星野 行男君       松岡 利勝君   三ッ林弥太郎君       御法川英文君    宮里 松正君       柳沢 伯夫君    阿部 昭吾君       有川 清次君    佐々木秀典君       志賀 一夫君    田中 恒利君       竹内  猛君    辻  一彦君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       目黒吉之助君    倉田 栄喜君       西中  清君    藤田 スミ君       小平 忠正君 ————————————————————— 平成四年十一月二十六日(木曜日)     午後一時開議 出席委員   委員長 高村 正彦君    理事 岩村卯一郎君 理事 金子徳之介君    理事 杉浦 正健君 理事 東   力君    理事 簗瀬  進君 理事 石橋 大吉君    理事 前島 秀行君 理事 藤原 房雄君       赤城 徳彦君    石破  茂君       岩屋  毅君    上草 義輝君       内海 英男君    大原 一三君       亀井 久興君    鳩山由紀夫君       保利 耕輔君    星野 行男君       松岡 利勝君   三ッ林弥太郎君       御法川英文君    柳沢 伯夫君       阿部 昭吾君    有川 清次君       佐々木秀典君    志賀 一夫君       田中 恒利君    竹内  猛君       辻  一彦君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    目黒吉之助君       西中  清君    藤田 スミ君       小平 忠正君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君  出席政府委員         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       谷野作太郎君         農林水産大臣官         房長      上野 博史君         農林水産省経済         局長      眞鍋 武紀君         農林水産省農蚕         園芸局長    高橋 政行君         農林水産省畜産         局長      赤保谷明正君         食糧庁長官   鶴岡 俊彦君         水産庁長官   川合 淳二君  委員外出席者         外務省経済局次         長       林   暘君         外務省経済局国         際機関第一課長 北島 信一君         農林水産省経済         局統計情報部長 嶌田 道夫君         通商産業省通商         政策局国際経済         部国際経済課長 日下 一正君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ————————————— 委員の異動 十一月二十六日  辞任         補欠選任   鈴木 俊一君     岩屋  毅君 同日  辞任         補欠選任   岩屋  毅君     鈴木 俊一君     ————————————— 十一月二十四日  農業農村整備事業の推進に関する請願(岩村卯  一郎君紹介)(第一三二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 高村正彦

    高村委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業の実情を調査し、その振興を図るため  農林水産業振興に関する事項  農林水産物に関する事項  農林水産業団体に関する事項  農林水産金融に関する事項及び  農林漁業災害補償制度に関する事項について、本会期調査をいたしたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高村正彦

    高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
  4. 高村正彦

    高村委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東力君。
  5. 東力

    ○東(力)委員 本日は、ウルグアイ・ラウンドの問題について、特に日本の米の問題につきましてお伺いいたしたいと思います。  アメリカECの間でなかなか合意に達しないだろうというふうに思っていた節もあると思うのですが、先週末から合意に達して急遽新ラウンドが終結する見込みが出てきた。年内にもというような話があるわけであります。また、マスコミでも一斉に報道されておりまして、農業団体日本の隅々まで一生懸命に必死の抗議をしようというような態勢、状況でありますけれども農林水産大臣、ことしの一月十日、それから去年の十一月二十二日だったと思いますが、いずれも従来の基本的方針を堅持するんだという御発言をいただいております。今でも変わらないのか、また大慌てで慌てているのかどうか、一つも慌てていないのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  6. 田名部匡省

    田名部国務大臣 基本的には従来から一貫して変わっておりません。たびたびこの御質問をいただくわけでありますけれども、私ども日本立場というものが、相当私も説明してまいりましたが、そのことをどう今回の米・ECの大筋の合意 という中で、詳しい部分はまだわかりませんが、いずれにしても修正につながっているのではないかということがありますので、従来の基本方針にのっとって日本立場というものを主張し、これを認めてもらうという方向最後まで努力をしていきたい、こう思っております。
  7. 東力

    ○東(力)委員 詳しい合意内容はまだよくわからないということでございましたけれども、さらに、新聞等報道によりますと、塩飽審議官を二十八日にも派遣をして、三十日からの委員会等に、その前に状況把握をさせるというようなことを読みましたけれども、今じゃわからないので、どういうことが合意されたのか。しかも、もう六年もやっているわけですから、いろんなオプションとか選択肢については知り尽くされているのではないかという気がするのですが、ちゃんとフォローしてきていてそういうこともあり得べしというふうに考えていたのか、急に思いがけないという感じで何かが決まったのかどうか。この点につきまして、新聞等報道では、骨抜きにしながら両方とも立つような形で、形や数字だけ合意しているような感じがするのです。  それにもう一つドンケルペーパーというか包括的合意修正を必要としないんじゃないかということも、政府首脳、あちらこちらで発言をしているわけでありますが、その場合には米の例外的な取引ということを織り込んでもらえるようなチャンスとかきっかけが失われるおそれがあるんじゃないかというようなことも聞いているのですが、この点いかがでしょうか。
  8. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 お答えいたします。  アメリカEC交渉でございますが、これは約一年間にわたりまして、首脳級でございますとか閣僚級を含めまして続けられてきたわけでございます。我が国としましても、この交渉につきましては、交渉者を両国に派遣するとか、あるいは現地の大使館等を通じましていろいろと状況把握に努めてきたところでございます。  今回の合意につきましては、それまで何回かの交渉におきまして両者間の意見の相違が狭まってきておったというふうな情報も得ておったわけでございますが、さらにはアメリカ側の業界といいますか、大豆協会等との関係、あるいはECというのは加盟各国があるわけでございますので、加盟国の中、特にフランス等につきましてはこの合意にいまだに反対をしておるというふうな状況もございまして、非常に予測しがたい面はあったわけでございますが、そういうふうなことも含めまして情報を収集し、その合意が成立するというふうな可能性把握しておったわけでございます。そういう中でこの合意が成立したということでございます。今後は、この交渉結果がジュネーブの方に、ガットの方に報告されまして、ガットの場でマルチプロセスに入っていく、こういうことになるわけでございます。  今御指摘我が国の問題につきましても、このマルチの場におきまして我が国の問題あるいはほかの国の問題も含めまして交渉に入っていく、こういうことでございます。この両者間の合意におきましては、例えばダンケル・ペーパー輸出補助削減割合が二四%というふうになっておったものを二一%というふうなことで合意をしたというふうなことがございますので、この点だけでも修正につながるというふうなことでございます。  合意内容につきまして簡単に申し上げますれば、ただ、これは委員も御指摘がございましたように、両者共同記者会見をした際に記者等からの質疑応答という格好で漏れてまいりました情報を合わせて推定をしたというふうなことでございますが、その概要は、一つ油糧種子の問題でございます。これは生産量、量で制限をするかどうかというふうな争点があったわけでございますが、これにつきましては、EC油糧種子作付面積ベースで五百十二万八千ヘクタールというものから一定の削減を行うというふうなことになったわけでございます。その見返りといいますか、そういうことで米国は制裁を解除する、こういうことになったわけでございます。  さらに、国内支持につきましては、EC共通農業政策の改革に伴います直接所得補償方式削減対象にするかしないかということについて交渉しておったわけでございますが、これは対象外とするというふうになったわけでございます。  それから、先ほど申し上げました輸出補助金数量ベースでの削減につきましては、六年間で品目別に一律二一%とする、こういうふうなことになったわけでございます。  それからさらに、リバランシングの問題につきましては、ECへの輸入共通農業政策に悪影響を及ぼす状態になった場合には再協議する、概略こういうふうなことで合意を見たわけでございます。  そういうことで、先ほども申し上げましたが、ダンケル・テキスト修正につながるものであるというふうな認識を持っておるわけでございます。そういうことで、我が国の問題につきましても、マルチの場で主張をしていくというふうなことで対処をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  9. 東力

    ○東(力)委員 ドンケルペーパーで二四%の削減率ということがうたわれていたわけでありますが、それが今度の合意では二一。それから、フランス拒否権を発動してでも、農民の大変な怒りを反映して、また、来年三月に選挙があるということもあるかもしれませんが、一八%を主張して反対しているということも聞くのですが、一つは、このことがどのようにこれから推移していくのか、今の政府委員の答弁でマルチに移っていくんだという話があったのですが、EC内での合意と、そしてそれからマルチに移ってどういうスケジュールでやっていくのかという点、わかっている範囲でひとつ教えていただきたいのと、もう一つは、マルチに入っていったときに、日本アメリカとの間に二国間交渉をしながら、いろいろなことを妥協点を探りながらということも聞くのですが、そういうことも含めてどういう形で対処していってどういう訴えをするのかどうか、内容的に新しいものはないと思うのですけれども、今度の合意スケジュール的に促進される、年内にもという話があると同時に、いわゆる中身の上でも相当のプレッシャーやインパクトが加わったことになるのかどうか、この点につきましてお答え願いたいと思います。
  10. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 今後どうなるかというふうなことでございますが、今申し上げましたように、これが多国間に移っていくというふうなことでございますが、実は、本日二十六日に貿易交渉委員会というふうな、TNCと言っておりますが、ガット貿易交渉委員会が開催をされまして、今後どのように交渉を進めていくかというスケジュールについて議論が行われるわけでございます。その議論の中でそういうスケジュールが決まりますと、そのスケジュールに沿っていろいろな交渉が行われていくというふうなことでございます。  先ほども申し上げましたように、今後の多国間交渉の中で我が国といたしましては、今回の合意内容につきまして直接アメリカなりECからいろいろな内容を十分に聴取をして対応を検討していくということになろうかと思います。それからさらに、今回の米・EC合意は、先ほど来申し上げておりますように、ダンケル合意案修正につながる問題も含んでおるというふうに思いますので、我が国としても、年来の主張交渉結果に反映されるように引き続き努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、今後の交渉がどういうふうになるかということは、本日のTNC議論によるところが大きいわけでございますが、委員も御指摘のとおり、ヨーロッパにおきましては、フランスにおきましてかなり農民反対運動が激化をしておるというふうな状況もございます。それから、フランス政府反対であるというふうなことを言っておるような状況でございます。一方、このガットウルグアイ・ラウンド交渉につきましては、ミュンヘン・サミットにおきまして今年内合意を目指すというふうなことで各国合意ができて おりますので、やはり年内合意に向けて各国努力をする、こういうスタンスは変わらないわけでございますが、なおEC内部あるいはアメリカにおきましても農民団体が若干の不満を表明をしておるというふうなことで、いろいろな要素、あるいは各国にもいろいろな困難な問題があるわけでございますので、今後どう展開するかは、本日のTNCの会合の結果あるいは各国動向等を十分に把握しながら適切に対応してまいりたいと思っておるわけでございます。
  11. 東力

    ○東(力)委員 米の例外化の確保ということを大臣にお伺いしたいのですが、ずばり自信があるのかどうか、見通しがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  12. 田名部匡省

    田名部国務大臣 予断をもってお答えするわけにはまいりません。一体このウルグアイ・ラウンドというのはどういう方向に進んでいくかという自体、今までもいろいろ判断いたしましてもなかなか容易ではないわけです。それは、もうこれだけの国が相手にあるわけでありますから、私も随分今まで相当の国の農業大臣と会いました。ヒルズ通商代表とは三回もお会いしましたし、マディガン、マクシャリー、アンドリーセン、そのほかニュージーランド、オーストラリア、オーストリア、随分会いましていろいろな話をするのですけれども、みんなやはり考え方が少しずつ違うのですね。これだけやはり農業というものは困難な問題を抱えているんだなということを感じます。それだけに、一体どういう方向に進むかというのはわかりませんが、いずれにしてもこの困難な問題はもう随分の国に申し上げておりますので、そのことをどう踏まえながらウルグアイ・ラウンドというものをやっていくかということでしょうから、今局長からお話があったように、正確なところをまずECアメリカから聞く、説明を求めるというところから展開していくのだろう、こう思います。  しかし、最後までこれは全力を尽くして、やはり日本主張というものは間違いではないわけでありますから、ただ、多数決で物を決めるということになると、米の問題については、これはもう日本と韓国、まあまあ幾つもないという状況からすればそれは厳しいのだろうと思いますが、厳しいからといって、多数決で物が決まらぬ限りは日本主張するべきことはやはりきちっと主張する。私は、公平でなければならぬということでありますから、その公平でないというところにはやはり十分意見を申し上げていきたい、頑張りますと言うだけしか今申し上げられませんが、御支援をいただきたい、こう思います。
  13. 東力

    ○東(力)委員 先ほどマルチ多国間で決めていくというときに、最終的に結論を採択するかどうか、合意するかどうか、これは多数決で決めるのですか。それともコンセンサスで決めるのか、または賛成した者だけに拘束力があるというふうなのか、それともほかにあるのか、そのプロセスについてもう一度確認しておきたいのですが。
  14. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 このガットウルグアイ・ラウンド合意についてどういう方式で決めていくかということでございますが、これはやはり賛成をした国のみが新しい協定といいますか、そういう合意に加入をするというふうなことになるわけでございます。
  15. 東力

    ○東(力)委員 そうなると、日本が絶対嫌だと言ったら別にウルグアイ・ラウンドのメンバーの国にはならないですね。米も守れると、そこだけ考えたらそう思うのですが、しかし一方で、サービス関係とかその他入っておりますからそうもいかないのかなあと、私が思っているわけではないですよ、そういうことを言っている人がたくさんいるのです。しかも、ウルグアイ・ラウンド成功裏における終結ということにつきましては、これは農水大臣もそれが望ましいと思われているのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  16. 田名部匡省

    田名部国務大臣 政府としてもウルグアイ・ラウンドそのものは成功させなきゃならぬということで、これは一致しているわけですね。いろいろその間には、きのうの予算委員会等でも外務大臣発言通産大臣発言、それぞれございます。ありますけれども、基本的には、米に関する限りはこれは困難な問題があるということを何としてもやはり理解してもらわなきゃいかぬということでは一致しているわけでありまして、ラウンド全体とそれとは、聞きようによってはどうもおかしいという感じを受けられることもあるだろうと思いますが、しかし私どもは、日本の置かれているこの農業立場というものを、きのうも私は予算委員会で申し上げましたが、自然の条件、地形、いろいろ国によってみんな違うので、工業生産のように工場でつくるもののようにはいかない、そういう部分というものはお互いに認め合いながらやはり自由貿易というものは守る、お互い立場というものを尊重し合いながらやるということは最も大事なことだというふうに私は感じております。
  17. 東力

    ○東(力)委員 今大臣のお言葉によりますと、ウルグアイ・ラウンド成功裏合意に達した方がいいというか、そうしなければいけない、それが国益にもなる、一方でまた困難な問題があるということも、ここまではみんなそう思っていると思うのですが、さらにお互いに譲り合わなければということを言われたわけでありますけれどもアメリカECも、九カ月も交渉しながらその中で、二四%が二一%になったとはいえ、譲りながら合意してきた。日本は何を譲る用意があるのか、あるいは農水大臣は何を一体譲ったらいいとお思いか、その譲歩につきまして、アイデアがあったらお聞かせ願いたいと思います。
  18. 田名部匡省

    田名部国務大臣 何を譲ったらいいかという、今までも緑にするための交渉事、随分やってまいりましたし、もう既に日本の案というものは出しておりますね。ただ、米のところは包括関税化というのは受け入れられぬという一点が引っかかっているわけでありまして、これについての交渉というものは今度は相当激しくやるだろうと私は思います。  基本的には、私の考え方の中には、農産物はもう既に四兆五百億も輸入しておるという状況というものは大変なものなんですね。ですから、全体で議論していくと、これはヒルズマディガンさんにも言ったことですが、世界食糧が一体安定的に供給できる体制になっておるのかどうかということからも議論すべきであって、ただ売りたい、買いたくないというだけの議論ではなくて、日本のように飽食の時代と言われて、言っちゃ失礼ですが、大変食べ物を粗末にしている国もあれば、骨と皮だけでかわいそうに食べ物のない子供たちもあるということから見て、一体食糧というものはどういうふうにあるべきかという議論等をするということは大事だ。しかも、日本の場合は三割、山が七割ですから、この狭い国土の中で、雨量が多くて水田に適している土地という条件があって、しかも水田というものは洪水からこの国土を守っておる、そういう条件等をよく見ていただかぬと、世界がみんな違うのですから、そういうことを何回も訴えてきましたので、これからもみんなにその国々の立場というのをわかってもらうという努力をしながら、この解決のために努力をしていかなきゃいかぬ、こう私は考えております。
  19. 東力

    ○東(力)委員 その結果、何にも譲らないというのではうまくいかないのだから、結果、何を譲るのかなと思うのですが、往年のホッケーの名監督で、試合中は作戦を明らかにできないといつも今までは逃げられてきているのですが、それをだんだん詰めていかなきゃいけない。しかも、ほかのことで譲れるかというと、やっぱり農業内で譲っていかなきゃいけないのじゃないかと思うのですが、この辺、どういう苦労をしているのか。事務当局からも、何か譲るというような感じのものを勉強しているのかどうか、腹づもりをちょっと教えていただきたいと思うのです。
  20. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 農業交渉につきましては、三つの分野国内支持国境措置輸出補助金、こういう分野がございます。それで、既に日本としても国別表というものを、オファーを出しておるわ けでございます。その中で、例えば関税の引き下げでございますとか、できるものは出しておるわけでございます。今大臣から申し上げましたように、米とかあるいは輸入制限品目、十一条二項(c)に関連をいたします輸入制限品目につきましては例外なしの関税化ということについては受け入れられない、こういう主張をしてきておるわけでございます。  そういうふうなことで、輸出補助金につきましては、世界貿易を見てみますと、世界貿易を撹乱しておるという問題につきましては、輸出補助による競争ということが非常に撹乱要因になっておる、まずこれを退治するべきであるというふうなことでこの交渉がスタートした、そういうことを背景にスタートした、こういうこともございましてこの撤廃というふうなことをやるべきであるということを日本主張してきておるわけでございますが、これと比べまして、輸入といいますか、国境措置につきましては全く例外を認めない、こういうふうなことについては非常にダンケル・テキストは偏っているのではないかというふうなことで、我が国輸入国でございますので、輸入国立場を強く主張してきておるわけでございます。そういうふうなことで、今後ともそういう主張が認められますように努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  21. 東力

    ○東(力)委員 繰り返しになりますが、そういう結果、局長関税化例外的取り扱いが確保できると、本当にそう信じておりますか。
  22. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 例外なき関税化につきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますように、米・EC間で大変困難な問題を抱えておったわけでございます。そういう中で、委員も御指摘のとおり、相当な時間をかけてぎりぎりの激しい交渉をし、まだヨーロッパECでは必ずしも域内の各国の同意がとられていない、こういうふうなところまで来ておるわけでございます。そういう中でぎりぎりの交渉をしてきた。そういうことで先ほど申し上げましたような合意が成立してマルチプロセスに移ってくる、こういうことでございまして、その中で我々の主張も、今までもいろいろな場を通じて、例外なき関税化は受け入れられない、こういうふうな主張はしてきたわけでございますが、いよいよこの交渉、そういう主張をする場所が設けられるわけでございますので、この場において強く主張してまいりたいと思っておるわけでございます。
  23. 東力

    ○東(力)委員 今までのお答えの中で、ウルグアイ・ラウンドは成立させたい、譲らなければならない、しかし関税化はのめない、そしてあくまで反対すれば入らなくていい、逆の言い方をすれば孤立化する、こうなったら大分大変なことがあるのかどうか。外務省や通産省、最終的には総理大臣の責任であって、出てきてもらいたいのですが、事情をもっとよく承知しているという人に来ていただいていますから、後でまたお答えしていただきたいのですが、外務省とか通産省は、この点でとにかくどういう立場にあって、農林水産省、もういいかげんにしてくれと思っているのかどうか、その辺の基本的方針を正直にお答え願いたい。
  24. 林暘

    ○林説明員 ウルグアイ・ラウンド交渉につきましては、先ほど農水大臣眞鍋局長からお答え申し上げておるとおりでございます。政府として一体として交渉をしておりますので、外務省がどう、通産省がどうということはないと思います。我々といたしましても、包括関税化には問題ありということで、先ほど眞鍋局長からも御答弁ありましたように、多数国間の場で交渉する機会が今後出てまいりますので、その場で我々の立場主張し、できる限り早期に成立するということと我が国立場が貫徹されるということの両方を追求していきたいというふうに思っております。  また、これがだめになったら影響が非常に大きいだろうということに先ほど御質問がございましたけれども、それはそのとおりでございまして、ウルグアイ・ラウンドがうまくいかないということになりますと、いろいろな試算がございますが、ウルグアイ・ラウンドができた場合に世界貿易が一千億ドル拡大するという試算もございますし、ダンケル・ペーパー内容が実現された場合には年間千九百五十億ドルの所得増大につながるというOECDの試算もございます。言いかえますと、ウルグアイ・ラウンドの成立というのが世界経済の発展に多大な貢献をするということは事実でございますので、そういう点で最大限の努力をしていきたいというふうに思っております。
  25. 東力

    ○東(力)委員 通産省には後で同じ質問で答えてもらいますけれども、今の外務省の方に関連で聞きたいのですけれども世界貿易量が成立した場合よりは少なくなるだろうという点はよくわかるのですが、孤立化した場合に日本にどういう致命的な打撃というか、そういうものがあるか、決して数量的な話ではなくて結構ですから、どういうところがやはり困ってくるかということを明確に示していただけませんか。
  26. 林暘

    ○林説明員 ウルグアイ・ラウンド交渉につきましては、これを始めます際のプンタデルエステでやった会議において全部を一括して取り扱う、言いかえますと、十五分野交渉を今行っておるわけでございますが、それの一部分についてだけ参加してほかは参加しないという選択は許されておりません。したがいまして、今委員御質問のように、もし日本がそのらち外になるということになりますと、ウルグアイ・ラウンドでらち外になった場合に合意が成立するかどうかという問題は、仮定の問題でございますのでわかりませんが、できた場合に日本がらち外に置かれるということはあらゆる合意の外に置かれるということでございまして、これは工業品の貿易につきましても、今MTOという機構をつくるものにつきましても、サービスにつきましても、知的所有権についても、すべてそういうことの外になるということでございます。したがいまして、それに伴いまして、数量化はちょっと難しゅうございますけれどもウルグアイ・ラウンド関税を引き下げるなり、その他サービス、知的所有権についてそれぞれの国が約束したことについて、日本がそれに均てんできないという結果になります。
  27. 東力

    ○東(力)委員 通産省。
  28. 日下一正

    ○日下説明員 お答え申し上げます。  ウルグアイ・ラウンド交渉についての私ども立場は、先ほどから田名部大臣眞鍋局長あるいは外務省の林経済局次長からるる御説明があったとおりでございまして、私ども立場も全く変わりはございません。  通産省といたしましても、先ほど眞鍋局長からも御紹介ありましたように、本日開催の予定されておりますジュネーブでの貿易交渉委員会で今後の交渉の段取りが決まると見ておりますが、来週後半からも再開されるであろう多国間のプロセスの中で、従来よりの基本方針のもとで我が国立場が反映されるよう最大限の努力をしていきたいという考え方でございます。  また、通産大臣からも、国際会議の場におきましても、ダンケル・テキストに関しましては、我が国として特定の農産品につきまして困難な問題を抱えており、今後の全体のプロセスの中で日本の声を聞く耳を持ってもらいたいということを強く主張してきているところでございます。  ラウンドがうまくいかなかった場合の経済的な影響につきましても、外務省の方から御説明があったとおりでございます。
  29. 東力

    ○東(力)委員 うまくいかなかったら大変な問題があるということはよくわかりましたが、外務省の方、今度は余り譲り過ぎると、農業にどれだけ困難、農村、農家にどれだけ困った問題があるのか知っているのかなとは思いますが、これはいいです。  いろいろと、新聞その他伝わってくるところによりますと、きのうの予算委員会でもそうですが、官房長官の説明にもありましたように、田名部農水相の答弁とそれから外務、通産大臣の答弁、ややニュアンスが違うが、国際寄りとかあるいは農業寄りという話がございました。しかしながら、政府は一体でやっているのだという話がご ざいましたが、総括するのは総理大臣だと思うのです。三、四年前ですか、牛肉・ミカンの自由化問題がありましたときに、和歌山県はミカンの産地でもありますので、一生懸命に農林水産の部会で反対をし、またアメリカにも出かけていって反対をしましたが、結局竹下内閣のときに自由化に踏み切った、三年後には自由化するということになったのですが、それと同じような経路をたどらないのかどうかということを私は心配するわけです。  つまり、多くの農民やあるいは経済界の人たちは、米につきまして完全に自給するのだ、あるいは例外的に扱うのだということについて、本当にやれるのかな、あるいはやった方が本当に総合的な国策としていいのかなという考え方を持っておると思うのですね。私は農家の方の出身でもありますし、それから立場上も、やはり水田というのは、日本の隅々までコミュニティーの基本になっておりますし、また水資源の涵養とか国土保全という点につきましても非常に大きな役割を占めておって、単に経済を自由化して世界じゅうの各国や人類が潤う、こういうセオリーはわかり切っているわけでありますが、極めて違う問題があると思うのです。この点につきまして、総理大臣を信用しろと言ってもどうも信用するわけにいかないという感じがするのです。したがいまして、きょうは政府委員が来てくれて、どこまで総理と一致しておるかどうかわかりませんが、よもやそういうことはないのだろうなという点につきまして御答弁を願いたいと思います。
  30. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 先ほど農水大臣あるいは関係省庁の事務当局から御説明のとおりでございまして、ガットウルグアイ・ラウンドにつきましては政府は一体となって対応してきておりますし、その方針には変わりはないと思います。しかしながら、確かに先般来お話しのように、米欧の新しい合意を受けまして、交渉自体一つの重大な局面に来ておることは事実でございますので、官房長官がお願いをいたしまして、恐らく明日になると思いますが、改めて関係閣僚にお願いいたしまして、今後のことにつきまして意見交換をしていただく関係閣僚の方々の間の懇談の場を持ちたいと思います。  いずれにいたしましても、そういうことを通じまして今後とも政府として一体となってこの問題に対応していくということでございます。
  31. 東力

    ○東(力)委員 何かあした閣議の前に関係閣僚懇談会をやるというようなことも聞いておりますが、今の答弁で総理大臣とちゃんと話をしてきているのかどうか。この話は日本にとって最も大切な根幹的、基本的な問題であって、しかも最終的には、農水大臣は立派であって、しかもしっかりした考え方や基本的ポジションというものを持っておりますから明確なのです。しかし、やがては総理が決めていくという要素があると思うのですね。この点が一番の基本で、これを聞かなければ満足、安心というわけにはいかないのですが、その点、ちゃんと話し合ってきたのかどうか、あるいはあなたが幾ら言ってくれても、本当に総理大臣の気持ちというものを代表しているのかどうか、ちょっと確かめたいのです。
  32. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 もとより官房長官は、累次総理と御相談の上でございまして、この米の問題一つにつきましても累次の国会決議があることは承知いたしておりまして、その趣旨を体しまして今後とも対応していく、このような基本方針にはいささかの変更もないということだろうと思います。
  33. 東力

    ○東(力)委員 総理は、そうすると、関税化させないということで頑張るのですか。
  34. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいまのところ、そのような方針というふうに伺っております。
  35. 東力

    ○東(力)委員 方針があってもなかなか実行しないことが多いのですが、これは大丈夫ですか。
  36. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 予算委員会でも総理は仰せられておったと思うのでございますけれども、最終段階を迎えている状況で、先ほども御説明ございましたように、各国、それはそれで農業問題でいろいろな困難な問題を抱えておるということでございます。そして、ウルグアイ・ラウンドを成功させなければならないということは農水大臣も仰せのとおりでございまして、相互の協力による解決に向けて最大の努力をしていくというのが政府の方針だろうと思いますけれども、米の問題につきましては、農水大臣等が仰せの従来の基本方針のもとで対応していく、対処していくということでございます。
  37. 東力

    ○東(力)委員 あなたに首をかけてやってくれと言わないけれども、総理の政治生命をかけて言ったことはちゃんとやってくれということは、きちっとこの場で強い要求をしておきたいと思うのです。  それから、あしたの閣僚懇談会に臨むに当たりまして、大臣の、どういう決意でちゃんと説得していただけるのかどうか、その決意のほどを聞かしていただきたいと思います。
  38. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、三回の国会決議もいただいておりますので、そういうことを体してあしたの懇談会にもきちっとした態度で臨みます。
  39. 東力

    ○東(力)委員 十一月二十六日の日経新聞の記事でありますが、外務省首脳は、「いろんなオプションについて、長所、短所はつねに検討している」、こう引用されているわけでありますが、関税化例外的取り扱いをとか、そういうところで頑張っているときに、条件闘争というのはしていかないんだという建前はあると思うんですが、それの検討をしてはいけないと私は言いませんが、こういうことを言っておる外務省首脳というのはだれなのか、ちょっと、外務省。
  40. 林暘

    ○林説明員 私、その場に居合わせませんでしたので、その外務首脳が、通常、外務首脳という場合には大臣ないしは次官ということになっているように承知しておりますが、具体的にどなたかは承知しておりません。
  41. 東力

    ○東(力)委員 大臣の場合ははっきり言っているし、これは大臣の言葉じゃない。首脳というときに、大体政府の役人が言っていることが多いわけです。しかも、こういうことをべらべらしゃべっていいのかどうか。いいのかもしれないよ。だけれども、責任を持って、しっかりした根性を持ってやってもらいたい。だれかきちっと調べて、これはちゃんと日経の十一月二十六日に載っているから、私どものところにももっと詳細にレポートをしていただいて、そのときにどういう立場でそういうことをやっておるのかどうかということを明らかにしてもらいたいと思うのです。きょうは、知らないという人に幾ら追及してもだめなんで、次に移ります。  今の首脳の言っていることがどこまで適切かどうかということは別として、実際に米を守ろう、そして完璧に守れたら一番いいかもしれませんけれども各国も譲り合って、そういう中でどうしてもウルグアイ・ラウンドを成功させていかなきゃいけないということになると、やはり条件闘争のことも考えていかなきゃいけないんじゃないかと思うのですが、建前上、実際のところは建前と本音が違って、なかなかそんなこと今真剣にすると言いにくいところもあるかもしれませんが、しかし、敗れたら全滅という形で何もしていないというのもそれはおかしいし、非現実的でありますし、農水省としてはどういうような準備をして、どういうような条件闘争をこれからしていこうとしているのか、この点の基本的なことについてお伺いいたしたいと思います。
  42. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 委員指摘のとおり、いろいろな報道がなされておるわけでございます。政府としてこの条件闘争の方針を決めたとかあるいはいろいろな問題を検討しておるとかいうふうな報道がなされておるわけでございますが、これにつきましては、事実に反しまして何ら根拠がないわけでございます。  また、このような報道がなされますことは、諸外国に対しまして我が国の方針について誤った認識を与える。こういう報道につきましては、非常に情報化社会でございますので、すぐ英文にな って各国に行く、こういうことでございますので、今後のラウンド交渉における我が国立場に悪い影響を与えるというふうに心配をしておるわけでございまして、決して好ましいことではないと思っておるわけでございます。私どもとしましては、適切な報道がなされますように、正確な情報報道機関に提供して、このようなことのないように今後とも努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  43. 東力

    ○東(力)委員 条件闘争の話につきましては、首脳というか大臣レベルの人たちとも私は直接話をしましても、やはりその条件、つまり期間をもう少し長くできないかとか、あるいは関税化といっても、計算の仕方とか、さらには着地点というか、そういうところで基本的にここまでだったら守れるというようなことをいろいろ考えて言っている証拠があるように思うのですけれども、農水省では、そういうようなことの報道をされて、もたらすマイナス面ということを考えて言いにくい立場にあると思うのですが、さっき首脳が発言しているところ、つまり外務省ですね、外務省ではどういう勉強をしておられますか。つまり、ほかのところでも書いてあるよ。メリット、デメリットをずっと研究している。つまり、交渉していったときにあくまで突っぱねたときのメリット、デメリットは勉強している。これは知らぬと言わないでくださいよ。あなたも知っていると思いますが、どういう勉強をしておられますか。
  44. 林暘

    ○林説明員 先ほども申し上げましたように、私、新聞記事の内容については詳細を承知していないわけでございますが、我々といたしましては、先ほど眞鍋局長からも御答弁がありますように、包括関税化についてはこれを認めることができないという前提で交渉をしておりますので、その条件闘争とかいうようなことについての研究をしているわけではございません。
  45. 東力

    ○東(力)委員 そんな答弁では納得できないので、では、何も勉強していないのか。
  46. 林暘

    ○林説明員 非常に一般的なこととして、ダンケル・ペーパーが出て、昨年の十二月に出たわけでございまして、ダンケル・ペーパーに基づきますいろいろな対応についてどういうことになるかという一般的な勉強はしております。
  47. 東力

    ○東(力)委員 それでは、その一般的な勉強の内容について、簡単にちょっと要旨を述べてください。
  48. 林暘

    ○林説明員 御承知のように、ダンケル・ペーパーに書かれておりますことは、先ほど眞鍋局長からございましたように、例えば農業分野につきましては、国境措置輸出補助金、国内補助金という三分野について詳細なことが書かれておるわけでございますし、それ以外の分野についてもいろいろなことが書かれておるわけでございますし、これからの交渉でそれぞれがどうなるかはまだわかりませんけれども、今書かれておるようなことがどういうことになるかという一般的な勉強はしております。
  49. 東力

    ○東(力)委員 その中身を言いなさいよ。そんな程度で交渉などしておれるわけないじゃないか。
  50. 林暘

    ○林説明員 すべてについていろいろ申し上げる用意を今してございませんが、例えばということで申し上げれば、包括関税化の対応ということはあそこに書かれているわけでございます。内外価格差はこうやってとるとかいうことは書かれているわけでございますので、その場合に、日本の場合にどういう数値になるかというような勉強はしております。
  51. 東力

    ○東(力)委員 勉強しているのなら、具体的にどういう可能性があるのか、具体的な数字を言ってくれと言っているんだよ。それは、あなたがそういう資格があってそれでいくとか、そんなことを言っているのではない。勉強しているとかといって、だんだん首脳やいろいろな人がいろいろな発言をしている中で、こういうところで聞いたら何もやっていないような、そんなふざけた答弁を聞いて承知できない。うそを言っているとしか思えない。もっと正直に答えなさい。
  52. 林暘

    ○林説明員 ただいま申し上げましたとおり、ダンケル・ペーパーに書かれて、いろいろなことがございますけれども包括関税化について言えば、輸入価格との内外価格差を、TEと言っておりますけれども関税のエクイパレントに置きかえるとかいうことが書かれてございますので、それが日本の場合にはどういう数値になるかというようなことは研究しておりますし、一般に、世上にアメリカで出されました研究に、TEといいますか、その差が七〇〇%であるというような数値もございますけれども、そういう勉強はしております。
  53. 東力

    ○東(力)委員 その七〇〇%というのは全然内外価格差がないときの話だから、こんなところではのめないとかいう話はしているのだろう。だから、交渉しているんだったら事務局ともやっているはずだし、アメリカやその他ともやってきている、そういう経緯はないのか。
  54. 林暘

    ○林説明員 今申し上げましたのは、我々がアメリカの研究で出しているのはどういう数値を出しているかということを勉強しているということを申し上げたのでございまして、アメリカ交渉しているということは一切ございません。
  55. 東力

    ○東(力)委員 それ、本当に言っていいんだな。アメリカと一切交渉していないというのは本当だな。
  56. 林暘

    ○林説明員 今申し上げましたような内容について、一切交渉はいたしておりません。
  57. 東力

    ○東(力)委員 うそを言え。おれが政務次官のときだってやっているよ。ちゃんと外務省もついてきている。
  58. 林暘

    ○林説明員 私が申し上げましたとおり、包括関税化をとった場合に、どういう関税になって、それが何%でそれを認めるか認めないかとかいうような交渉アメリカとやっていることはございません。
  59. 東力

    ○東(力)委員 私の質問は、条件闘争で、とにかくオール・オア・ナッシングでオールをとれれば一番いいけれども、少しずつ譲歩しなければ国際的な合意というのはできないということをみんな言っているから、何を譲ってどういう交渉をしていくのか、その点を本当は農水省に聞いたっていいのだよ。あなたが白々しいうそ答弁みたいな誠意のない答弁をするからつかまっているのだよ。そんなアメリカと一切交渉していないということ、話し合いをしていないということは本当にあるんだな。首をかけてもやるのか。
  60. 林暘

    ○林説明員 米の関税化の問題について交渉しているということはございません。
  61. 東力

    ○東(力)委員 条件闘争の話をしておる。それを言い直しなさい、条件闘争と。
  62. 林暘

    ○林説明員 条件闘争という意味を、私としては米の関税化を前提にした話というふうに承知しておりましたので、そういう話はしてないということを申し上げたわけでございます。
  63. 東力

    ○東(力)委員 条件闘争の勉強をしているのかというのが最初の私の質問なんだよ。それに対して答えなさい。
  64. 林暘

    ○林説明員 先ほど申し上げましたように、ダンケル・パーパーに書かれておることについての勉強はいたしておりますけれども条件闘争の勉強という意味でございますが、いろいろな状況になった場合にどうかということは、政府といいますか、外務省としてそれぞれの対応、状況というものを勉強することはございますけれども条件闘争というものをどういうふうにしていくかという勉強をしていることはございません。
  65. 東力

    ○東(力)委員 また後で議事録を見るけれども、いろいろな新聞にも報道されて、大体私自身もうかがい知れることを、平気でしゃあしゃあとそういうことは一切ないと言う。委員会で言っていることがもし本当にそうじゃなかったときの問題というのは重大だと思うのだよ。やはり、みんな委員会で実際に政府にただして、そしてそれを国民に対して忠実に言ってもらって努力していくということで真剣に聞いているのであって、そう簡単に一切ないという話、農水省ちょっと、本当にそうなのか、それを教えてくださいよ。
  66. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この交渉につきましては現在進行中でございます。アメリカEC合意が成立し、いよいよ日本主張についてマルチの場で主張を展開していく、こういう大切な時期でございます。そういう時期におきまして、各省とも連携を図りながら政府一体といたしまして交渉をやっていきたいということで、あくまでこの政府の従来からの基本方針にのっとりましてやっていきたいということでございますので、そういう方針でございます。
  67. 東力

    ○東(力)委員 委員長先ほどからの、外務省ではちゃんと勉強している、備えている、ましてや何にも交渉していない。交渉といったって、話し合いぐらいは絶対していると思うのですよ。そういうこともしていないようじゃ、外務省の機能を果たしていないということにもなってしまう。ここは、徹底的に明らかにするために、委員会に書面ででもちゃんと回答をしてもらいたいと思うのです、またもう一回委員会を開いたっていいですから。そんな、外務当局から何もやっていないよと言われて、そして大変な問題に直面しているときに、我々はどうやって将来の展望とか着地点を審議していけるのか。大体、やっていると一〇〇%思われることも絶対やっていないと言っているのだから、それはちゃんと公式な答弁を僕は求めてほしいのですよ。  時間がもうありませんので、最終的に大臣にお伺いしたいと思うのですが、そんなに慌てていない、立場も変わっていないということでありますが、アメリカEC合意に達して、非常に急展開をして、成功裏における合意ということに達する可能性がいよいよ出てきたわけですね。そして、その中で日本がどういう態度で臨むかということが非常に大きな要素に今なっていると思うのです。その中で、当然条件闘争に入らなければいけないような事態が起きた場合の備え、だれも戦争したくなくてもその備え、あるいはだれも借りというものを望んでいなくても備えをしなければいけない、そういう備えの勉強は当然やっているべきだと思うし、また、それが無責任じゃない態度につながると思うのですよ。幾ら頑張る頑張ると言われたって、では、牛肉やオレンジの場合だってあるじゃないですか。しかし、そのとききちっと守った、だからミカン農家で困っている人は一つもないわけですよ、国内的措置をとって。だから、国内的措置も含めながら、国際交渉において、特に多国間の国際交渉において決まっていくこと、そういういかなる事態になっても農業や農村あるいは農民がしっかり守られる。渡部通産相、どこまで真剣に言っておられるか。真剣に言っておられたら非常にありがたいのですが、今より不利にならないような環境をつくりながら頑張ろうということを通産相も答弁されていますね。だから、大臣、それをさらに明確にしていただきたい。  特にことしの六月に二十一世紀の農業を志向した新政策ということを出されておりますし、その中でウルグアイ・ラウンドについては、まだ不確定要因があるからやや弾力的にフレクションを残している点があると思うのですよ。だから、私が申し上げたいのは、頑張るということはぜひ頑張っていただきたい。同時に、いかなる場においても農業や農村や農民の生活がちゃんとしっかり守られて、宮澤総理の言うゆとりのある生活大国を本当に日本の隅々に、そして農業の隅々まで至らしめるという政策をシナリオとしてきちっと考えることが大切じゃないかと思うのです。国際的な要請があり、しかも日本の国益総合を考えると、農業ばかりとにかく一〇〇%頑張って、そして後、日本が全く苦労していいかどうかということは、ごまかしでなくて真剣に考えなければいけない。しかし、その中で、農業は今より絶対に不利にしないという決意とそういった方向のシナリオというものを示していただきたいと思うのです。
  68. 田名部匡省

    田名部国務大臣 国会決議をされるときにそういう議論を本当は大いにしてほしかった、こう思います。  しかし、私どもは国会決議を体してやるわけでありますから、今もいろいろ質問はありましたように、条件闘争、こういうことも一切出しておりません。出しておりませんというのは、交渉事ですから、あれもこれも準備しているという話をやりながら交渉というのは交渉にならぬわけですから、そういうことで、私はそういうことを一切してはいかぬということで今日まで参りましたし、また、アメリカECで本当にどういう話がされたかというのが確認されませんと、次なる話し合いで日本が一体どういう主張をしていくかということも、これまたわからぬわけであります。  いずれにしても、きょう、二十六日のTNCで日程が決まり、そこでどういうことがあったかという説明を私たちがきちっと求めて、それから今度はどういう交渉事をしていくのかという新たな段階になってきている。今までは、私は個々に何十人とも会ったのですけれども、公式の場で日本主張というものをやる場というのは一遍もなかった。ですから、困難な問題を抱えている国がみんな集まって、まずその国がどこに問題があるかというのを言う場をつくってください、これはやってくださいということをみんなにお願いしてきた。ようやく日本の出番が来た、今までは個々にやりなさいという話でしたから。これからいよいよ正式の場で私たちの年来の主張というのをやるわけですから、その結果としてまたいろいろな判断というのは出てくると思います。しかし、米や十一条二項(c)、このことは日本の置かれている立場というものは明確にしていきたい。  いずれにしても、これから交渉をどんどんやりますので、いま少し私たちの行動を御支援いただければ大変幸いだ、こう思っております。
  69. 東力

    ○東(力)委員 しっかり頑張ってください。  どうもありがとうございました。
  70. 高村正彦

    高村委員長 辻一彦君。
  71. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も同様に、ウルグアイ・ラウンドをめぐる状況と米問題等について若干質問したいと思います。  まず第一に、アメリカEC農業問題の合意の上に立って、いよいよウルグアイ・ラウンド多国間協議に臨むということになります。これについて、今もお話がありましたが、政府の情勢の認識とその基本的な態度というものについて、念のためにもう一度聞いておきたいと思います。
  72. 田名部匡省

    田名部国務大臣 もう御案内のように、昨年の十二月にダンケル合意案が出されて、アメリカECが話し合いをしてきました。もう一年になるわけですね。やはりそれほど困難な問題があって、なかなかこの合意に達しなかったわけであります。しかし、サミットでも年内合意を目指す、こういうこともあって、いよいよぎりぎりの段階に来たということで、大体主要な問題に関する対応について二国間の合意が成立をした。  この合意内容は今度は多国間交渉の場に移されて、ウルグアイ・ラウンドの進展をどうやって図っていくかということになっていくわけでして、私はダンケル氏と会ったときにも、もっと各国の事情というものを把握して積極的に調整に当たるのがあなたの仕事じゃないですか、我々の出番もつくってください、アメリカECだけやってこれでいいというものではないではないですか、こう申し上げたのですが、いや、私は案を出したので、あとは問題があればその当事国でやってくれ、こういうお話でありまして、それではまとまるものもまとまらぬのではないですかと随分やりました。やりましたが、そんな経緯があって今日に来たわけであります。  我が国としてはこの多国間交渉の中で、まず何といっても、先ほど来申し上げておりますように合意内容の説明をアメリカECから受けなければいかぬ。一体何を話したのか、語られているようなことだけで終わっているのか、もっと細部にわたるものなのか、この辺が把握できませんので、その説明を受けて対応を検討していかなければならぬわけでありますから、そういうことをやっていこう。しかし、言われている内容を見るときに、どうもダンケル合意案修正につながる 問題を含んでいるのではないか、数字を変えたり。そういうことがありますので、我が国としても年来主張しておることが交渉結果に反映されて当たり前だということでおりますので、そういうことで引き続き努力を、これからマルチの場でもあるいは二国間もあるでしょう、そういう場で主張していきたい、こう考えております。
  73. 辻一彦

    ○辻(一)委員 外務省、見えていますね。念のために外務省の考え方も一言聞きたい。
  74. 林暘

    ○林説明員 ただいま農水大臣からお答え申し上げたとおりでございまして、先ほどもございましたように、現地時間の本日二十六日に開かれます貿易交渉委員会で今後のスケジュールが決まるわけでございますが、恐らく来週ないしは再来週ぐらいからそれぞれのところで交渉が再開されることになろうと思います。したがいまして、農業分野におきましてもそこの場で改めて多数国間の協議というのがこれから開かれるわけでございますので、外務省といたしましても、従来の方針にのっとって我が国立場を最大限主張して、かつできるだけ早く合意に達したいというふうに考えております。
  75. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きのう、おとつい、予算委員会におけるウルグアイ・ラウンド並びに米問題の論議を一通り聞いたのでありますが、首相と外相のウルグアイ・ラウンドに対する発言を見ると、従来方針に変わりはないとは言いながら、やや後退したような感じを私は受けたのです。  例えば外相の発言で、多国間協議の場になれば多勢に無勢で先が見えている、こういうことを発言されたわけですね。それからまた、農家にも国民経済にも一番よい道を考えなければいかぬ。これは一般論でわかりますが、その後が、農家の所得は農外所得が非常に大きくなっている、農業所得の割合は少ない、それは実態ですが、だから農業を取り巻くほかの経済の状況がよくならねばならないんだ。これは当然であるといえば言えますが、一つの伏線と私は理解したのです。もう一つは、食管法改正も野党の賛成がなければできない、できるかは一緒に考えてみたい。こういうような発言をずっとつないでみると、関税化やむなしあるいは容認論のように受けとめられる懸念が非常にあった、こういうふうに私は感じました。  今、多国間協議に政府がいよいよ臨もうとする、そしてその中に例外なき関税化修正を強く要求し、何としてもこれを貫徹しなくてはならないという時期に、そういう強い意欲も見当たらないし気迫も見当たらない、こういう感じがしたのですが、ここらは一体外務省としてどうなのか。本当は外務大臣に来てもらって聞けば一番いいのでありますが、外務省を代表してひとつ伺いたい。
  76. 林暘

    ○林説明員 二十五日の予算委員会におきます渡辺外務大臣の答弁は、今後のウルグアイ・ラウンドの進展が非常に厳しい見通しになるということを踏まえまして、その場で厳しい選択を迫られる可能性がある、そのときに日本にとって、さらには日本の農家にとって一番よい道は何かについて与野党一緒になって考える必要があるという点に力点があって、従来の基本方針から後退しているものではないというふうに我々としては理解しております。また、食管法、言葉としては食糧管理法という言葉を大臣使われたようでございますが、それの改正について直接的に言及したものではないというふうにも我々は理解しております。  政府といたしましては、先ほど来申し上げておりますとおり、今後のウルグアイ・ラウンド交渉においては、これまでの基本方針のもとで、相互の協力による解決に向けて最大限の努力を引き続き傾注してまいりたいというふうに考えております。
  77. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いよいよ多国間協議の状況に入ろうとする、それを前にして、どうもきのうのような消極的ともとれるような発言は、非常に私は問題がある。まあ、こういう態度だとアメリカEC関税化に押しまくられてしまう懸念があるが、内閣一体化という観点から立って、農林省、一体そこらをどう考えておりますか。
  78. 田名部匡省

    田名部国務大臣 まあ渡辺外部大臣が何を考えて答弁されておるのかというのは、私ども想像しかできないわけでありまして、ただ基本的には、米の問題等は包括関税化はできない、これで終わってくれればわかりやすいわけでありますが、そこにはいろいろと解説を入れられるものですから、例えば食管法改正をしようと思ったって通らなきゃできないことを約束はできぬしとか、それはもうそのとおりのことを言っているわけでありまして、それはそれとして私は伺っておったのですが、だめですというところはきちっとしているのですね。ただその間に、経済が悪くなれば農業だけよくなるというのは難しい、これも当然のことですし、特に出稼ぎに依存している人たちは働く場所がなければ大変だというのも、これも当たり前のことであって、まあ、そういうことをいろいろお話しされて、包括的な関税化政府一体となってやるんだ、ここだけを私は、これは政府一体として取り組んでいることだというふうに受けとめておるのですが、いろいろ考えておることの全般、問題とか、こういうのがある、ああいうのがあるということを言われていることは、それはそうなればそのとおり大変なことになるわけでして、農業だけ栄えて日本がおかしくなるということは、これはできないわけですから、そういうことを、わかっていることを申し上げておるなというふうに感じております。  いずれにしても、通産大臣にしても、米の、あるいは乳製品等は受け入れがたいということは公式にアメリカへ行ってもお話しされておるようでありますから、そういうふうに私は受けとめております。
  79. 辻一彦

    ○辻(一)委員 公に集まって話をすれば、それは従来方針というのは変わりがないというのは確認されるのでしょうが、本音がちらちらちらちら、いろんなときに出てくるのですね。さっきも論議がありましたが、もう今日のテレビの状況では、きのうの予算委員会のものなんていうのは、すぐアメリカECにそのまま伝わっているはずですね。そうすると、最も強い態度で臨まなければならない段階で、何かそういうものを関税化等やむを得ない、認めざるを得ぬような弱気の発言があると、私は非常にこれから日本立場を貫こうとするときに大きな障害になるのじゃないかと思うのですね。  さっきもお話がありましたが、ここ二、三日の新聞にも、例えばある新聞では「条件闘争」という言葉が大きく表題で躍っている。「コメ開放“条件闘争”で」。あるいは適用税率、関税をもっと高くするという、こういうことを考えているとか、こんな考え方がマスコミの上にどんどん載って流れていけば、当然アメリカECの方は、やはり日本は内々はそういうことを考えているのか、こういうことに私はなりかねないと思うのです。先ほど指摘がありましたが、こういうような情報が流れていくというのは、一つ情報操作とも感じられる点があるのですが、そういうことについてどうお考えか、お伺いしたい。
  80. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私もびっくりしてこの報道内容を見ておるわけでありまして、もう一切ございません。条件闘争をやると言ってみても、相手が何を話をしたかわからぬのに、この条件というものは一体どういう条件を出すかということも、これはできないわけでありますから、一切ないですし、これは官房長からだったと思いますが、厳重に申し入れもいたしておりますし、まあ、いずれにしてもそういうことはございません。  ただ、こうであろうという先々を想像していろいろ書かれるということ自体が、これから交渉に当たる私どもとしては非常に困る、やりにくいということはもうはっきり言えるわけでありますから、真実を報道していただくように再三私からもお願いしておるのですが、就任以来もうずっと、春ごろはもうあしたにも自由化なるかというような、三カ月ほど毎日報道されましてね。そのときも随分困りました。しかし、全然今日までそういうことがないという状態で来ておるわけでありまして、本当に真実を伝えていただかぬと、やはり 交渉に当たる者としては非常に困難をきわめるであろうというふうに考えております。
  81. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大臣の懸念されていること、心配は共通するものを持っておりますが、これだけの大きな見出しで流されれば、これは国際的にもどうかなという受けとめがあるでしょうし、国内でも、やはりこういうことを考えているのかということに、国内の農民や皆さんもそういう懸念を非常に持つと私は思うのです。しかし、火のないところからは煙が立たぬと言うので、これはやはりこういうものを、資料があるか、あるいは何かの情報があるか、何かが漏れてくる場所がなければ、全然何もないところからこういうものは出てこない。農林省にこういう情報源が全然ないとすれば、外務とか通産ということになるのですが、外務省はこれについてどう思いますか。
  82. 林暘

    ○林説明員 今農水大臣の方からもお答えがございましたように、我々としてはこれから交渉を始めようとしている時期でございますし、交渉を始める前に条件闘争とかなんとかということを考えているわけでは毛頭ございませんし、我々のところからああいう情報が出たというふうには考えておりません。
  83. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これはしっかり、まあ情報を統制しろとかそういう意味ではないのですが、誤った情報が流れないように、これだけはやってもらわぬと非常に影響を与えると私は思うので、農林省も各省も十分気をつけていただきたいと思うのです。  そこで、外務省にもう一つ私は申し上げたいのですが、これは昭和六十三年ですか、九月に私もジュネーブへ行って、随分と米の問題をガットの本部で論議をしたことがあるのです。このときはダンケルさんは海外へ行っていましたので、カーライル次長とデュック農業部長と午前と午後と米を中心に随分論議をしましたが、そのときに出先の外務省の大使が私に、いろいろな懇談の中に、三%、三十万トンぐらいの部分輸入はどうでしょうか、こういうことを言っておるのですね。だから、とんでもない、私はその前の年にアメリカのアーカンソーも見てきたけれども、これは後で申し上げますが、あそこは日本向けに品種改良をやって、市場が開放されたら大いに送り込もうとして手ぐすね引いている、そういう状況で一部の米の開放というものは、牛肉やオレンジのように完全自由化への道につながるものだ、こういうことを言って、アメリカで見た実態等も話しながら強く反論しておいたのですね。ところが、ことしの九月の十日に同様に衆議院の政経五班がスイスに入って、そしてそこでやはり現地の大使といろいろ話をしている。その中で、ガットの中ではもうアメリカECの話し合いはついている、日本は三十万トンぐらいは米の輸入はやむを得ない、でなかったら三〇一でたたかれる、粗っぽく言うとこういうような趣旨の発言があって、各議員団の中で随分問題になったのですね。  私はこれを見ると、東京では頑張っておるというふうに思うけれども、出先では極めて弱腰になっているのじゃないか。それは、現地に接触すれば確かに事情はよくわかるからなかなか大変だということはわかりますが、やはり第一線の大使等がそういうような弱腰の姿勢では、私は、日本主張はいざというときに貫くことはできない。その点で、そういう話を聞いてちょっと残念な感じがして帰りましたが、また同じような状況が現地等にある。出先の外務省の皆さんは、その点についてしっかりした日本の方針を踏まえた考え方で米について取り組んでいらっしゃるとは思うが、念のためにその点をひとつお伺いしたい。
  84. 林暘

    ○林説明員 委員指摘調査団の件については、私ちょっと承知しておりませんが、ジュネーブ等現地で交渉に当たっています者が、日本政府の方針を踏まえて最大限の交渉をしているということは、これはそのとおりでございまして、今御指摘のような趣旨に基づいた交渉をしているということは一切ございません。
  85. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一切ございませんと言ったって、現に私も聞いてきたのだし、ここの竹内議員もこの間行って、それを聞いて論議をしてきたのですから、それはあなた絶対ないとは言えぬ。
  86. 林暘

    ○林説明員 今申し上げましたとおり、大使が皆様にどういうことを申し上げたかは、それは私は承知しておりませんが、大使初め、例えばジュネーブの代表部の館員が実際の交渉でそういうようなことを言っていることは一切ございません。
  87. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、それは我々が現に行って、一日もおっていろいろ話をする中でそういう話が出てきているのですよ。これは行って聞いてきた話だから。だから、これは現場におって難しさを実際抱えていらっしゃるからなかなか容易ではないと思うけれども、ここはしっかりしてもらわないと、もう東京の方で幾ら頑張っておっても、出先でそういう弱い姿勢がちらりと出たり、あるいは新聞やマスコミを通してこういうような報道がどんどん流されているのでは、これは交渉を実際にやるときに本腰を入れてやれなくなる心配があるのではないか、その点を私は非常に懸念をしている。だから、これはひとつ外務省へ帰られたら、外務大臣にもよく伝えていただいて、ぜひそういうことがないようにしていただきたい、このことをもう一度お尋ねしたい。
  88. 林暘

    ○林説明員 今御指摘の点につきましては、外務大臣その他に十分伝えます。
  89. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それから、これに関連してですが、関税を高くすれば外国の米は入らないというように、それは一般的に言えばそうなのですが、ごく短い目盛りなら別として、長期にわたって高関税が本当に米を抑えることになるのかどうか、これについてどう考えていらっしゃるのか、ちょっとお伺いしたい。
  90. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 先ほど来申し上げておりますように、我々としましては従来方針を堅持して今回マルチ交渉に臨んでいく考えでございますので、そういう検討はいたしていませんけれども、これは全然米の話を離れて物の話でいきますと、えらい禁止的な関税をすれば入らないのは、これは事実だと思いますし、程度によるので、今簡単にお答えすることはできないような質問じゃないかと思います。
  91. 辻一彦

    ○辻(一)委員 去年の八月に私は予算委員会で当時の海部さんと、関税化は自由化につながるかどうかということである時間論議をしたことがありますが、どうも当時の海部総理は関税化と自由化は別だというこういう見解を持っておられて、後でかなり解釈、理解を変えていらっしゃいましたが、やはり関税化、後になれば高関税をかければ何とか、こういう気持ちがその際にあるような感じが私はしたのですね。  この間、ダンケル事務局長が来ました。私たちもうちの田邊委員長と一緒にダンケルさんと九月一日に、長い時間ではなかったのですが、会って論議をした。そのときにダンケルさんは、関税化は保護の形態を変えたものだ、自由化ではないんだ、高い関税をかければ日本へはそう米は入らないんだから、こういう原案、ダンケル合意案に賛成してくれ、こういうような趣旨を聞いたのですね。それは十分そこで論議をするだけの時間的余裕はなかったのですが、私たちは、国会論議のこの関税化の問題の議事録をよく読んでもらいたい、こう言って渡しておきました。  私は、内々にいろいろな研究があるいはなされているのかも知らないが、高関税によっては米の輸入はごく短い期間では抑えられても、長期に見ればこれは抑えることはできない。なぜなら、七〇〇%の関税ということを初期にやるのならアメリカは認めておるようでありますが、これはそんな七〇〇%の関税をいつまでもかけておるわけには絶対いかない。今度、アメリカECの報復関税、話がまとまらぬので、十二月五日までにまとまらなければ報復関税をかける。それは二〇〇%。日本では非常に高い皮革製品にしても六〇%。そんな七〇〇%というような関税が続くはずがない。世界じゅうから非難の的にされて、その関税を下げれば下げるだけこれは米の輸入はどんどんふえていくということにならざるを得ない。そういう意味で、関税化によって、そしてそれを 高関税で米の輸入を抑えられるということは現実的にできない、私はこう思いますが、今、論議の発展の経緯でありますから、ちょっとこれについての農林省それから外務省の見解をお伺いしたい。
  92. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 今申し上げましたように、高関税といっても高関税の水準がどの程度か、それによって論議は分かれると思います。先ほど言いましたように、私ども今、米についてそういうつもりはございませんので、今幾らであれば入らない、入るということは申し上げられませんけれども、本当に入らないような禁止的な関税であればこれは入らない、それが続く限り入らないと思いますけれども、それ以上ちょっと私が今ここで先生がおっしゃるようなことに適切に答えるような準備はいたしておりません。私どもは、やはりあくまで従来の方針にのっとって近く行われる交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  93. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ダンケル合意案というのは、例外なき関税化をやって、そして一部は非常に安い関税、しかしその九十数%、大部分は高い関税を、七〇〇%を相当年間かけるということを認めておるのですよ。そういう関税のかけ方で米が入らないということを守り切れないと私は先ほど申し上げたような点で思っておりますが、それについてどう考えていらっしゃるか、ちょっと伺いたい。
  94. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 先ほどと同じ答えになって恐縮でございますけれども、私もそういうあれに立っておりませんので申し上げることはありませんけれども、高関税とか低い関税とかいっても、これは余り抽象的な話でございまして、高いというのはそれじゃ幾らか、低いというのは幾らかと、具体的な話がない限り姿としては見えないのじゃないかと思います。しかし私どもは、あくまで今そういうふうな、先ほど来論議になっておりますように、条件闘争とかするつもりはございませんので、従来の方針に沿ってやるつもりでございますので、今適切にお答えできる用意はございません。
  95. 辻一彦

    ○辻(一)委員 全然そういう研究もやっていないからあり得ない、そういう関税のかけ方もあり得ない、こういうことですから。  外務省の方、念のために一言伺います。
  96. 林暘

    ○林説明員 私ども、具体的にどういうことになるかというような研究はしておりません。ただ、先ほども御説明申し上げましたように、ダンケルが提案しておりますものは、内外の価格差を関税相当量として関税という形で輸入国が課すという形の提案をダンケルはいたしております。
  97. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いずれも、それに深く入れば、そういう研究をしているのじゃないかという論議の発展を懸念されていると思うのですが、とにかくこのダンケル案の関税を受け入れれば、当初は高関税を定められても、結局はそれをどんどんと非難をされて下げていけば多くの米が入ってくる道につながる、したがって、この例外なき関税化は完全自由化につながる道だ、こういうことをはっきり申し上げて、この問題はひとつおきたいと思います。  そこで、アメリカの大統領がかわって、いよいよ来年からクリントン新政権になるのですが、私が一つ気になるのは、クリントンさんはアーカンソーの州知事であったということ、だから、これから米をめぐる状況は今までよりも厳しくなる可能性があるのじゃないか、こういう感じがします。  実は、昭和六十二年の九月に私はカリフォルニアの米を見に行きました。そして、このカリフォルニアはアメリカの二〇%の生産であるが、アーカンソーが四〇%生産をしている、こういうことを聞いて、これはどうしてもそこを一遍見ないことにはアメリカの国を見たことにはならない、こう思って、単身でありますが、アーカンソーに行きました。珍しい時期だったと思います。  そこで見たのは、アーカンソーの州立大学に、広いところで品種改良をやっている。どういう稲の品種改良をやっているのかと聞くと、中粒種の品種改良を大量にやっておるのですね。長粒種もやっておりましたが、中粒種の品種改良を大量にやっている。それから、アーカンソーの中にライスランドという米の買い付けや輸出をしている、貯蔵したり精米をしたりする大きな会社がありますが、これはアメリカの米の全量の二〇%を押さえているというのですから、相当大きな会社なんですね。ここの理事長や副理事長と会って、これも一日ほどおっていろいろ話をしてみたのですが、彼らは、日本に米を送ることができるならば送りたい、その場合に、まず第一にカリフォルニアの加州米が日本へ行くだろう、そして加州米が占めておったアメリカの米の市場は、今度はアーカンソー初め南部の米がそれに出すことになる、しかし、日本が本格的に米を入れるということになれば、市場開放すれば、我々は二年間でアーカンソーの米を中粒種に切りかえる自信がある、こう言っておるのです。では中粒種をつくった経験があるかと聞けば、中粒種の方が長粒種よりもかつての経験からいえばつくったらつくりやすいと言っているのです。水はあるのかと聞きますと、確かにカリフォルニアの方は山の水を持ってきてためて使っているから十分でないだろう、しかし、アーカンソー等はミシシッピの大河があり、その伏流水がある、水が足りなければ水を引けばいいのだ、こういうことで中粒種を大量につくり得る可能性があるということを強く言っておったのですね。  そういう意味で、アーカンソーの知事がクリントンさんですから、だから米には特別な関心を持っておると私は思うし、こういう中で、一部でも米を日本へ入れるという状況になると、アーカンソー州の、ああいう南部地域の米の生産構造は日本向けに切りかえてくる可能性がある。そのときに、加州、カリフォルニア等とは比較にならない大きな圧力が出てくるのではないか。それは米の完全自由化への道を求める強い圧力になる可能性がある。こういう点で、アメリカの政権交代の中でこれからの米の状況をどういうように考えていらっしゃるか、これをひとつお伺いしたい。
  98. 田名部匡省

    田名部国務大臣 クリントン次期政権の対日政策というものは、現段階ではどういうものになるのかというのは私どもはわかりません、選挙ではいろいろなことをおっしゃっておりましたが。いずれにしても、今後の実際の政策、動向を見てみないと、一体どういうことになるかというのはわかりません。ただ、仮定の話ですからこれまたお答えしにくいのですけれども、私どもは、いずれにしても、この国会決議というものを体して今国内産で自給するのだという基本的な方針で対処しているわけですから、ここから先はこうだああだと言うことは、私から申し上げるのもちょっとおかしな話でありますので、もうちょっと政権について、どういうスタッフを配置するか、その辺で大体こういうことになるであろうということはわかってくると思います。ただ、国内経済問題をとにかく重視するということですから、そのためのありとあらゆる手段はとるであろうなという感じはいたします。日米の貿易黒字も一体そのころはどの程度になっているかとか、いろいろな角度から判断していかなければならぬ、こう考えております。
  99. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私の言いたいことは、米は、アメリカの方から一部道を開くと、ああいう地域の長粒種が中粒種に切りかえられてくる、そのときの圧力は非常に大きなものになってくる、したがって、まず一部の自由化といえども認めるべきではない、ここをしっかりやらないと後に大きな禍根を残すことになる、このことを申し上げたいわけでありますので、それはひとつはっきりと伝えておきたいと思います。  それから、アメリカEC農業関係合意をした、それはダンケル案の修正我が国はみなして、第四トラックにおいて日本関税化例外を求めて修正を要求するというのが基本的な立場のようでありますが、この修正を要求する論理的な根拠をちょっと整理して聞かせていただきたい。
  100. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ダンケル合意案におきましては、最も貿易歪曲的である輸出補助金が撤廃され ないにもかかわらず数量制限を撤廃するというふうなことになっておりまして、食糧安全保障や生産調整の配慮がなされていないというふうなことで、そういう状態の中ですべての非関税措置を関税化するという考え方が示されておるわけでございます。  それで、我が国といたしましては、米のような基礎的な食糧とか国内で生産調整をしておる農産物につきましては、安定供給や生産制限の実効性を確保するという観点からいずれも量的な管理が必要であるというふうなことで、こういうことから包括的な関税化は受け入れられないというふうな主張を行っておるところでございます。このような考えに立ちまして、国別約束表の提出に当たりましても、ダンケル合意案の包括的関税化部分についての修正考え方を踏まえて書類を提出しているところでございます。
  101. 辻一彦

    ○辻(一)委員 アメリカECの妥協というか合意は、数字の歩み寄りというか、数字の二四%、一八%を二一%にした、こういう合意ですね。ところが、我が方が要求する修正というのは関税化のかなり基本的な問題になるのです。大体、向こうの方も修正だからこちらも修正しろという立場ですが、次元として大体それはどういうふうに理解をされるのか、同じように理解できるのかどうか。そこらはしっかりした論理的根拠がないとなかなかこれからの交渉は容易でないと思うのですが、それをちょっと聞かせてください。
  102. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 交渉でございますので、いろいろな主張を行うわけでございます。合意案についての修正は、よその国が出してなくても要求していいのはもちろんでございます。そういうことで、米・EC交渉がまとまったということで、先ほど来御答弁申し上げておりますように、その詳しい内容についてはまだはっきりしない面があるというふうなことで、これから細部について、あるいはいろいろな問題について確かめていく。それで、その結果どこをどう修正する必要があるかということを確定していかなければいかぬ、こういうふうに思っておるわけでございますが、非常に明らかな部分だけ取り出しても、先ほど申し上げましたように二四が二一になっておるというふうなことでございます。  そういうふうなことでございまして、確かにアメリカとかECはそれは微調整であるとかいろいろなことを言っておるようでございますが、私どもとしましては、ダンケル・テキストの全体のコンテクストの中で、やはり世界の農産物貿易から見て何が阻害要因かというふうなことの中で、輸出国の主張輸入国主張、それぞれあるわけでございます。我々の主張は、やはり輸出補助金というようなものは当然撤廃すべきものであるというふうなことでございます。  それから、輸入国立場からいいますと、やはり農業はいろいろな面があるわけでございますので、単なる自由貿易にゆだねるというふうなことについては無理があるというふうなことでございます。やはり輸入国、特に我が国のように自給率の低い国につきましては、いろいろとそういう点も考慮して、食糧安全保障でございますとかそういう主張をしておるところでございますので、そういう全体のコンテクストの中でやはり輸入国立場としてそういうふうな主張を行っておるところでございますので、マルチの場、あるいはこれからいろいろな場におきましてこの主張を十分に説明をして、我が国輸入国としての立場が十分に反映されるように努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  103. 辻一彦

    ○辻(一)委員 交渉に当たっては、一つは、国内の意思統一が一番大事だと思いますから、その点では農林省、外務省、通産、もちろん内閣として一体になってやってもらうということが第一。と同時に、足元は余り見透かされることのないように十分気をつけてやってほしい。と同時に、三つ目には、何といっても理論的な、論理的根拠をさらに強化していく必要があろうと思います。修正を求める我が国の論理的な根拠をさらに拡充強化して当たってもらうように希望いたしたいと思います。  幾つかの問題がありますが、時間的にもうしばらくであります。このガットの中で、山村なんかに対する、中山間地等に対する我が国の助成等が必ずしも緑のボックスに入っているとも言えないと思うのですね。この点、これから削減対象から外すようにガットの場でぜひ確認をやってもらいたいと思っております。  ちょっと前ですが、去年、北海道とか新潟、福井あたりの土地改良を調査に行きまして、その中で幾つかの山村地域を見ました。それからまた最近、北陸の方で森林・林業の調査等の中で山間地域を見、さらについこの間、二十日、二十一日は山口県の中国の方に行きまして、山間地の取り組んでいらっしゃる実態をいろいろと勉強したのです。  その中で感じたことは、一つは、例えば新潟県の入広瀬村のように、すぐれた行政力で、これは農林省のあらゆる補助事業を全部まとめてやっているようなところでありますが、行政力のすぐれたところにはそういう山村の経営のやり方があるということも感じました。また、この間、山口県の中国の山間地で船方農場というのがありましたが、これは非常にすぐれたリーダーがおって、その周辺に若い人を五十人ほど結集して、山村でもこういう経営がやれるのかというような農業生産法人をやっているのを見ました。  行政の力で、あるいはすぐれたリーダーがあればこういうようないき方があろうとは思いますが、大多数の山村というのはなかなかそうはいかない。このままでいくと耕作放棄、そして山村、集落の崩壊、こういうことが起こりかねない。どうしても公共の手を、助成を伸べて、国土保全、環境保全、水資源の確保という観点からこの山間地の維持等を図ることはぜひ必要である、こう思うのです。これから恐らく我が国の新しい政策の中でも、そういう面に中山間地対策というものが一つの大きな柱として強化をされていくだろうと思いますが、そういうような国内の助成対策等々がガットの場で緑のボックスに入ることが確認をされるように、言うならば削減対象から外さす確認をする、こういうことが大変大事だと思いますが、これらについてぜひひとつそういう努力を願いたい。これについてのお考えを伺って、私の質問を終わりにいたしたいと思います。
  104. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 今先生お話しのとおり、中山間地域、特に山村地域というのは、最近、老齢化の影響等によりまして活性を失ってきているという、大変心配される状況にあるというふうに考えております。これらの地域は、今お話がございましたように、環境の保全であるとか水資源の滋養というような意味で非常に大事な役割を持っておるわけでございまして、現在検討中の新政策の具体的な検討の中におきましても非常に大事な柱として鋭意詰めているところでございます。また、できるものから順に施策を具体化するという意味で、予算的な面でも、平成五年度の予算要求の中に所要のものを組み込んで、今獲得に努力をしているという状況でございます。  そういう中にありまして、このウルグアイ・ラウンドの国内補助金の規制の問題があるわけでございますが、私どもとしては、今委員指摘のような点を十分踏まえながら、我が国のこういう地域に対する施策が悪影響を受けないようにできるだけの努力をいたし、我が国としての提案も行っている、こういう状況でございます。
  105. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が来たので終わりますが、どうかひとつ、内閣一体となってこのウルグアイ・ラウンド交渉修正を求めて全力を尽くされることを心から期待をして、質問を終わります。ありがとうございました。
  106. 高村正彦

  107. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 先ほど委員からも、昨日の予算委員会で渡辺外務大臣が我が党の水田委員の質問にお答えになっている、その中で田名部農林大臣のお答えとややニュアンスが違うのじゃないかという御指摘がありました。私もそれを大変懸念するのですけれども、速記録を見せていただいて検 討させていただいたのですが、とにかく渡辺外務大臣、このガットウルグアイ・ラウンドの問題に対してよくしゃべっているんですね。農水大臣がお話しになっておるよりも三倍ぐらい、いるいろいろいろしゃべっておられる。     〔委員長退席、簗瀬委員長代理着席〕  この間の予算委員会のときには、これは我が党の山花書記長の質問に対してですけれども、これは閣内一致して事に当たるんだというようなお答えがあったんだけれども、それにしてはきのうの渡辺外務大臣の答弁では、どうも閣内統一というか、田名部農林水産大臣のお答えになっている閣内統一という範囲から飛び出しているような、初めにウルグアイ・ラウンドありき、どうしてもこれの決着が何よりも日本の経済にとっては大事なんだ、こういうニュアンスの発言が非常に強いものですから、だから皆心配するわけですよ。  例えば、ウルグアイ・ラウンドを早期にまとめることによって最も恩恵を受けている国は日本である、こういうような発言もあるのですね。こういうような論調というのは、これはいろいろなところで最近あるわけですね。何しろ、アメリカECとの間の合意ができたということをめぐって、新聞論調なんかも百家争鳴の感があって、いろいろな主張がにわかに出てきている。  例えば、十一月二十二日の読売新聞の社説、これは、もう「「コメ」開放へ決断する時だ」ということをはっきり言っている。しかも、その中で私は大変問題だと思うのは、「日本関税化の受け入れを表明し、関税貿易一般協定(ガット)の新ラウンド成功に貢献しなければならない。ガット体制の受益者として当然の国際的義務」であるというだけではなくて、その後が問題だと思うのですが、「稲作の体質を強化し、生き残りを図っていくうえでも必要だ。」というような論調があるのですね。この論調はさらに続いて、もしも「日本反対が原因で新ラウンド合意が遅れたり、失敗したら、どうなるか。国際的に孤立するのは無論、稲作も深刻な打撃を受けるに違いない。」つまり、ガットがまとまらなければ日本の稲作がだめになるという、僕はこれは大変短絡だと思うのです。そして三段論法としてもどこか間違っているように思えてならない。  それからまた、同じ日の日経新聞の社説でもそうなんですね。「工業製品の輸出でさんざんかせいでいる国が農産物についてだけこう言っても、味方が少ないのは当然だろう。」なんということを言っている。これもおかしな話で、これは私も前にこの委員会で質問したときに言ったのだけれども、米の市場開放を求められている、これが貿易などでもうけている日本、この日本としては当然だというような言い方というのは、言ってみれば、承知もしていないのに隣のうちのサインを、おまえ、隣に住んでいるからというだけで保証しろと言われるようなものだ。保証するからには、保証人になる者の同意がなければならない。同意の上での捺印がなければならない。それもないのに、隣に住んでいるからだけで押しつけるような理論ではないか。これを大新聞、日経ともあろうものが堂々と書いているわけですね。  工業製品の輸出でさんざん稼いでいるということで非難をされるんだとすれば、これは工業製品の貿易分野で何とか対策を考えていけばいい。もちろん、このことについては渡辺外務大臣も、日本はこの工業製品の分野でも今度の国別表、リストを出した中で大変大きな譲歩をしているというようなことも言っておられるわけだけれども、しかし、先ほど委員も御指摘のように、全体的な経済、自由経済の恩恵なくして農業の発展ということもあり得ないんだというような言い方をされたり、それからまた、マルチの場に出ると、今度はアメリカ日本の一対一という交渉ではないから、世界相手の交渉ということになればこれは多勢に無勢みたいな話ですよ、先が見えた話だ、そんな中で本当に命がけで抵抗していくということをやるのか、非常に厳しい選択を迫られるという御指摘があるのですね。  これは、農林水産大臣が閣内統一、一致しているということで外務大臣の御見解をかばうというか、それからまた、さっき外務省の林次長も、それは我が親分の話ですから一生懸命かばう気持ちはわかるんだけれども、しかし、次長や事務次官あたりが言っても、ああいう大臣のことだから、なかなかこうと思い込んだらそうは簡単に、事務方の話なんというのはそっちのけにしてというような心配があるわけですよ。だからこそ、この所管はしかし農林水産大臣なので、農林水産大臣が頑張っているということは渡辺外務大臣も言っておられるわけだから、田名部農林大臣にここのところはひとつ本当に頑張ってもらいたいし、大いに自信を持ってやっていただかなければならない。このことは私どもとしても、これは与野党を超えて応援団のつもりですから、そんなつもりで自信を持って、ああいう発言力が大きいというか、声の大きい外務大臣に負けないようにひとつやってもらいたいと思うので、改めてその辺の決意を示してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  108. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いろいろ言われることで、どういうお考えかというのは、これは私ども、はかり知れないわけでして、なかなか人の考えていることというのは的確に読めない。まあしかし、主語のところはきちっと言っておられるなとは思っておりますが、前々からもいろいろな経験や知識があっておっしゃっていることだろうと思いますので、しかし、私は所管大臣でありますから、従来から申し上げていることは今日まで自分で変えたつもりもありませんし、終始一貫就任以来同じことの繰り返しで、むしろ答弁するのがどうも同じことで申しわけない、こう思うぐらい申し上げてきたつもりでありますから、責任持ってこの交渉に当たる任にあるというふうに考えて、これからも努力したい、こう考えております。
  109. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 本当に田名部大臣、頑張ってくださいよ。私どもも大いに応援しますから、バックアップしますから、自信を持ってやっていただきたいものだ、こう思うのです。  ひとつ経済局長にもう一回確認をさせていただきたいと思うのですが、さっき、これも辻委員から、米国とEC合意内容というか性格ですね、これについてのお尋ねがあったわけですけれども、例えばきょうの毎日新聞などによりますと、大臣もおっしゃるように、今度のこの両者間の合意というのは、ドンケル事務局長が示した包括合意案の修正につながると考えられている。だから、我が国としても、米あるいは十一条二項(c)関連品目など、あわせてこの修正を求めていくという態度、それの一つは理論的な根拠になっているのではなかろうかと思われるわけですけれども、しかし、さっき辻委員指摘のように、果たしてそうなるのだろうか。これは微調整というようなことにすぎない、このドンケルペーパー修正にはつながらないのじゃないかという見方が政府内で広がっているなどという報道がきょう毎日新聞に出ているわけであります。そうだとすると、さらにまたガットラウンドの場でも例外なき関税化の原則というのがもう一回持ち出されてくるのじゃないかというようなこと、そしてその場合に、日本のこの修正を求める理論的な根拠というのが非常に揺らぐのじゃないかという心配、これが指摘されたわけですが、この両者間の合意というのは、一体ダンケルの示した包括的な関税化、この範疇内のものなのか、範疇外のものと見るのか、この辺の見方というか評価、これについてはどうなのですか。
  110. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ダンケル合意案修正の問題でございますが、先ほど来御答弁申し上げておりますように、米・EC間の合意内容というものにつきましては、新聞報道といいますか、そういう記者会見の場で明らかになったものを継ぎ合わせて判断をしておるという状況でございます。これからマルチの場へ持ち込まれて、その場におきまして我が国も含めまして各国からいろいろと内容を確かめる、あるいは二国間、バイの協議においてそれぞれ中身を確かめるということでございますので、どこがどう修正につながるかということは、今後の作業にまつところが大きいわけでござ います。ただ、明らかに言えることは、ダンケル・テキストでははっきりと二四という数字が出ておるわけでございますので、それが二一になるということは、その点だけをとらえても修正になるではないかということを申し上げておるわけでございます。  いずれにいたしましても、包括的関税化例外なき関税化は受け入れられないというふうな私ども主張は、いろいろとこれまでいろいろな場で申し述べてきておるわけでございます。これにつきましては、根拠があるとかないとかという議論が行われておるわけではなくて、二国間なんかで言われておりますのは、例外を設けると、ドミノ現象といいますか限りがなくなる、こういうふうな反論が行われておるというふうな状況でもございます。いずれにいたしましても、食糧安全保障でございますとか、農業国土保全なり環境保全に果たすいろいろな役割、いろいろなことから我が国の米等の農作物の重要性を訴えながら理論武装をしてきておるわけでございますが、今後とも、御指摘のようにその点も補強しながら各国の理解を求めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  111. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 今の私の質問は、包括的関税化例外なき関税化というダンケル・ペーパーの示している線、これの範疇に入るかどうかということをお聞きをしております。  それとの関連で、今のお話によりますと、これも一つその範疇外のものだとすると、これは当然修正を求めていくことになるだろうから、我が方としても修正を求めることがそのバランスとしてやりやすくなる、こういうことになるのだろうと思うのです。しかし、仮にそうでないとしても、今の局長の答えというのは、我が方の従来の立場は変わっておらない、これを主張していく理論的な根拠というのはそれだけが理由なのではない、あるいはそれも一つではあるけれども、もっと抜本的な、根本的な主張の論理的な根拠というのはあるのだ、こういうように伺っていいわけですね。  念のために、最初の、その範疇に入るかどうかという点をもう一回。
  112. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ダンケル合意案と申しますのは、包括的関税化も一項目でございますが、これは国境措置についてのものでございます。それから、輸出補助金につきましては、数量ベース削減をしようというふうなことで二四%削減、こういうふうなことがあるわけでございますので、それぞれ項目が違いまして、二四、二一というのは国境措置の話ということではなくて、輸出補助金の話ということでございます。そういう意味では、包括的関税化とは別の項目であると御理解をいただきたいと思います。しかしながら、ダンケル・テキストといいますかダンケル合意案修正という意味では修正である、こういうことを申し上げておるところでございます。
  113. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 したがって、その修正を求める根拠としては、ECアメリカ合意ダンケル・テキスト修正を求めているからこっちもやるのだというだけではないんだぞ、その点はこういうように確認させていただいていいですね。
  114. 東力

    簗瀬委員長代理 答弁はよろしいですか。
  115. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 それでよければいいのです。そういうことですね。——それなら結構です。  それで、例えばアメリカヒルズ、これは、すべての国が政治的な問題を国内に抱えている、しかし新ラウンド合意から得られる利益はそうした政治的な困難をはるかに上回るものになるだろうということで、日本に対しても米の市場開放について譲歩を求めていく姿勢を明らかに示している。日本の米市場開放についての議論はいつから始まるかの質問に対して、即座に始まる、市場参入分野交渉は直ちに前進しなくてはならないということを言ったというのですね。  それからまた、これは十一月二十二日の日経新聞ですけれども、クリントンの通商スタッフ、具体的な名前は出ておりませんけれども、そのスタッフの談話によると、「日本はコメ市場の開放をのむか、それとも新ラウンド合意から出ていくかのどちらかしかない」と言い切った。アメリカEC交渉が決着したら次は日本の米だとヒルズ代表らも口をそろえていたというので、今のところに合っているわけです。  いずれにしても、こういう状況の中で我が国に対してこういう問題を含めて早急に合意を求めてくる、そういうおそれが顕著になってくると思われるわけですね。これからの動き、TNCでどういうようなスケジュールが決まったかまだ確認されておりませんけれども、伝え聞くところでは、ドンケルとしては十二月二十四日のクリスマス前、二十三日ぐらいまでには大枠、このマルチの場での合意を得るということを言っている。それで、当事国間の積極的な努力を促しているように聞いておりますけれども、そうすると、日本に対していろいろな各方面からの働きかけというのが非常にはっきりしてくる、強くなってくるのじゃないかと思われるわけですが、年内に譲歩を求めてこられた場合に、我が国としては一体どういうように対応していくのか、対処していくのか、その辺の見通しと心構え、今のところいろいろ御検討はあろうかと思いますけれども、今の段階でお示しいただける点をお示しいただきたいと思います。
  116. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 今回の米・EC間の合意が得られたことを受けまして、先ほど来御答弁申し上げておりますように、今後は交渉はジュネーブでの多国間交渉に移ってくる、こういうことでございます。それで、ミュンヘン・サミットの合意もございまして、年内合意を目指すというふうなことで努力が行われていくと認識をしておるわけでございますが、この点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、EC内におきましてもフランスの問題でございますとか、あるいは米、EC以外の諸国の問題、あるいはガットウルグアイ・ラウンドといいますのは、農業だけではなくて、サービスでございますとかいろいろな分野の非常に多方面にわたる交渉でございます。これらがどのようなテンポでどのように進んでいくかということにつきましては、現在的確に見通しが立たないところでございます。本日行われておりますTNCにおきまして、大体こういう方向で作業を進めようではないかというふうなことが決まってくるのではないかと思っておるわけでございますので、そういうスケジュールを踏まえまして我が国主張をしていきたい、こう思っておるわけでございます。  ただ、米・EC間で一年近くにわたりまして交渉が行われてきたというふうなことでございます。ほかの国もそれぞれ難しい問題を抱えておるわけでございますので、各国の難しい問題についても十分議論するための必要な時間が確保されることが必要だ、こういうふうに思っております。いずれにいたしましても、我が国食糧輸入国としての立場交渉結果に反映されますように、今後とも努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  117. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 どうも今度の合意にしても、お互いに輸出国同士でありますし、大体今度のラウンドのやり方というのが傾向として輸出国本位、輸入国の方の立場というのを必ずしも十分に考慮したものになっていないではないかという批判がかねてからあるわけですね。そもそもこの農産物などが、工業製品その他、今度の場合には金融だとかサービスの部門もあるわけですけれどもガット対象として他のものと同じようなルールに従わせられることについてどうかという根本的な問題もあろうかと思うのです。  そんな中で、例えば、実はガット対象になっているものとしては、私も弁護士なんですけれども、弁護士の問題もあったりして、外国人弁護士の問題、市場開放が強く求められております。一部、これも部分開放しているのですけれども、例えば、アメリカの弁護士が入ってきて日本の弁護士と共同事務所を開けるようにしろなどというような、およそ全然法制も違う、司法制度のあり方としても違う、資格の取得なども違うところであ るにもかかわらず、なおかつそういうように弁護士問題も言われておるというあたりも私は大変問題だなと思って、予算の分科会でも質問したりしているのです。  しかし、そういうようなことを考えると、もっと輸入国としての立場、かねてから農水大臣も言われるように、日本は本当に世界最大の農産物、食糧輸入大国になっているわけで、そういうことというのは遠慮なくもっとどんどん主張していって他国の理解を求めなければならないと思うのですね。残念ながら今、例外なき関税化というガットに出されている方針、これに真っ向から反対しているというのは、日本のほかには韓国だとかカナダ、今度の合意あるいはウルグアイ・ラウンドの進み方についてはもちろんフランスも今のところ大変反対しているということは聞いておるのですが、できるだけ日本立場というものを理解していただいて、そして協力国をふやすということが今度はマルチの場になるに従って大事になると思いますので、外務省いらっしゃらなくなったかもしれないけれども、そういう点でこそ外務省にも頑張ってもらわなければいけない、こんなふうに思うわけですね。  そして一方、アメリカにしてもECにしても、日本農業についていろいろ言っておるわけだけれども、実は自国の農業に対する補助というのは一向に減ってないわけですね。かなり厚くなっている。日本の場合には、今度新農政で十年後を見据えて農業が発展する方向をということでいろいろな政策をまた考えられておる。これについては私どもとしてはいろいろな意見を持っております。必ずしも全面的に賛成というわけにいかない面がありますから、これは機会を改めてまた論議をさせていただきたいと思っております。しかし、何にしてもこのガットがまとまれば、先ほど御紹介しましたような読売だとか日経新聞の論調のように、これからの日本農業、特に稲作農業が発展していくんだ、ガットがまとまることによって発展の兆しができるんだなどということには直ちにはならない。ただ、その成否のいかんにかかわらず、新農政の中でも明らかにされておられるように、日本の農産物、食糧の自給体制というものはきっちりと守っていかなければならない、そのために農業をしっかり育てていかなければならないという方向は打ち出されていると思うのです。  しかし、いろいろな条件考えてみますと、日本の場合にはアメリカECとはまた異なった条件、特に有利とは言えない条件もたくさんあるわけです。そして今、そう言ってはなんですけれども、減反政策その他で稲作農家というものもだんだん減ってきているのは事実ですし、そこで担い手も少ない、先行き見えないということで、非常に稲作農業の実態が危惧されている。そんな中で、どうしても私は、相当なというか十分な国境措置というものがなければ日本農業というものは大変心配な状況になってくるのではないかと思われるわけです。そういうようなことについては、このガットとの絡みのこともあると思いますけれども、どんな御認識を持っておられるか、どう対処されるおつもりなのか。いろいろ細かいこと、具体的なことについては新農政の議論またしたいと思いますけれども、概括的にお答えをいただきたいと思います。
  118. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 委員今お話しございましたように、我が国農業、特に土地利用型の農業につきましては、非常に急峻な国土条件がある、あるいは高地価であるといったような問題があるわけでございまして、必ずしも農業の内部の努力だけではこれは解決できない、新農政というようなことで、二十一世紀を見通しまして努力をすることをいたしておりますけれども、それだけで解決できるものではないということはおっしゃられるとおりだというふうに考えております。  したがいまして、与えられた条件の中でできるだけ事態の改善を図っていくという努力はいたすことにしておりますけれども、やはり食糧のできるだけの供給を図る、あるいは環境的な問題もございます、そういう農業の果たすべき役割というものを確保してまいるために、一定の国内農業の保護というのはしていかなければならないというふうに考えているわけでございまして、そういう立場に立ちまして、るる大臣や経済局長がお答えをいたしておりますような対応をとってまいっておりますし、これからもその努力をしてまいるということを申し上げているわけでございます。
  119. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 国際的な関係、もちろん考えなければならないことはいろいろあろうかと思います。しかし、少なくとも自国民の命の糧である食糧、そしてその重要な部分を占める農産物、これはやはり自給体制をつくっていく。今もう極端に落ちているわけで、このまま推移しますと、何にしてもますます自給体制というのは減退する心配があるわけです。ここで自給体制を見据えて、そして農業をしっかり築いていく、そのことがまた自然環境あるいは国土を守るということにもつながっていくわけですから、私は大方の理解を十分得られることだと思いますので、いろいろなおもんぱかりもあろうかと思いますけれども、ひとつしっかりとその点の農業政策というものをみんなでつくり上げていきたいものだと考えております。特に、主管の農林水産省には頑張っていただきたいということをお願いしたいと思います。  そこで、この問題についての最後ですけれども、二十一日に大臣がコメントを出しておられます。コメントの中で、一番最後に「我が国としても、年来の主張が盛り込まれるよう、引き続き努力していく」、そういう決意があらわされておりますけれども、ただ、一、二、三とありますが、二の最後のところで「今後、多国間交渉の場で、関係国から説明を受け、十分検討した上で、」その次ですが、「適切な段階で我が国の対応を示したいと考えております。」という表現がございます。  それで、ここで言われている適切な段階になればというのはどういう状況を想定しておられるのか、それからまた、そのときに示されようとする我が国の対応というのは、その状況との関係で、先ほど来お答えになっているようなことに変化が出てくるということが想定されるのかどうなのか、その辺大臣からお聞きしたいと思います。
  120. 田名部匡省

    田名部国務大臣 ECアメリカ交渉内容というのは、いまだに新聞程度の情報が私どものところに来ておるわけでありまして、それが定かでないわけでありまして、その時点ですぐと言われましても、内容把握しなければならぬ。それは今後マルチの場で関係国から説明を受けるわけでありますから、それまでは何とも対応の仕方がない。そこで、これから、いつやるかわかりませんが、その説明を受け、それを十分検討して、その時点で適切な対応をするということを申し上げたのであって、別に他意もなければ何にもない。わからないのに対応しろと言われてもできない。したがって、説明を聞いた上で、その内容によっては対応の仕方というのは変わってくるかもしれぬ。その辺わかりませんので、こういうコメントを出したわけであります。
  121. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 そのように承っておきます。  先ほど申し上げましたように、本当に大切な時期を迎えていると思います。農林水産大臣を先頭に、農林水産省一丸となって対処していただきたいし、とりわけ私どもが危惧しております、外務大臣を中心に外務省、それからまた通産省も、他産業の関係にちょろちょろしないようにして、本当に農業は大事なんですから、しっかり農水と打ち合わせをしていただいて、それで、足並みが乱れないようにこれからマルチの場に臨んでいただきたいということを強くお願いをしておきたいと思います。  ガットの方は一応この程度にいたしまして、それにいたしましても、やはり国内政策としての農業問題、これをしかと考えていかなければなりません。特に稲作については、御案内のように政府在庫米も大変少なくなった。これはやはり私は減反政策のやり過ぎだったのじゃないかと思うわけですけれども、何にしてもことしは在庫米が大変 少ない。加えて、今やお米についても主要な生産地になっております北海道では、ことしはもう大変な冷害でございました。昨年までは八年間にわたってずっと豊作が続いていたのですけれども、ことしはもう大変な冷害で、ほかの作物もそうなのですけれども、特に米のできは悪かったわけです。農水省が発表しております十月二十九日付の予想収穫量がございます。これは十月十五日現在ということになっているわけですけれども、これによりますと、北海道全体の作況指数は九〇で著しい不良というのですね。  ところが、私も出来秋、ずっと各水田地域を見て歩きましたし、集荷時期に検査所もずっと行ったのですけれども、昨年に比べて、私ども素人が見ても見るからに質も悪いし、また、お聞きをすると収量も大変悪くて、上川百万石と言われる私の地元の上川でも作況指数が八五、大変悪いわけですが、実際に話を聞いた感じではこれよりむしろ下回っているのではないだろうか。北に行くほど悪くなっておりまして、留萌管内などに行きますと、これはずっと北の方はモチ米の団地が多いのですけれども、ここでも本当に悪いですね。実情として、今まだあるいは最終的な結果は掌握されておられるのかどうかはわかりませんが、大体のところはもう出ているのじゃないかと思いますけれども、この十月二十九日の発表より北海道の場合もっと悪いのじゃないかと思ったりするのですが、この北海道の稲作の冷害被害状況をどのぐらい掌握されておりますか。
  122. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 本年の北海道におきます水稲の状況でございますが、今先生言われましたように、八月前半の穂ばらみ期から出穂期にかけましての低温によります不稔もみの発生、それから九月上旬以降の登熟期の低温、日照不足というようなことがございまして、作況指数は九〇の著しい不良ということが、これは十月十五日現在でございますが、見込まれております。  本年産の水稲についてこのように作柄が低下した主な要因は、専ら冷害によるものでございますが、水稲の最終的な収穫量それから被害状況につきましては、現在調査、分析している最中でございます。また、全国の統計の出張所が行っています刈り取り調査の結果も全部見まして、最終的には十二月下旬に確定しまして公表をする予定でございます。
  123. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 そうすると、まだ最終的な結果は掌握しておらない、来月の中旬ごろになるのですか、中旬以下になるのですか。(嶌田説明員「下旬」と呼ぶ)下旬ぐらいになっちゃう。ただ、共済との絡みもあるものですからね。去年までは共済適用なかったのだけれども、ことしはそんなことで久しぶりに共済適用もある。共済の関係は、お尋ねするので後でまた御報告いだだいてもいいと思うのですけれども、これはぜひ早く掌握していただきたいと思いますね。  それで、北海道は御案内のように他用途米が随分多いのですけれども、ことしは他用途米も非常に少ないということが言われているようですね。原料米ですね。これは十一月二十五日の朝日新聞ですけれども、「みそ造れぬ米よこせ」、みその業者から悲鳴が上がっているというようなことなのですけれども、いろんなところで加工用米、その原料である他用途米が不足だ。聞くところによると、昨年も政府在庫米から三万トンぐらい加工原料用に回したというような話も聞いたりしているのです。それから、モチ米も大変に不足していることを言われているのですけれども、これは、現在の集荷の状況とか今後の需給の見通しは大丈夫なのですか。どういうような状況になっていますか。
  124. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 他用途米につきましては、昨米穀年度、去年の十一月一日からことしの十月末までの米穀年度でございますけれども、ウルチ米の作柄は九五というような不作であった。それからまた、モチ米につきましても主産地の佐賀が災害に遭ったというようなことで、需給関係、持ち越し米を持っていたわけですけれども相当厳しい操作をして、今お話がありましたように、他用途米については三万トン、モチ米については二万トン弱の新米を充てて対応したわけでございます。それから、本年産につきましても、転作面積を緩和しました中で、従来他用途米をつくっていたものを主食用に回すというような、県によってはそういう動きもあったようでございます。作況自身は一〇一ということで平年作であったわけでございますけれども、そういう点で他用途米の集荷は、現在県、集荷団体、食糧事務所一体となって全力を挙げているわけでございますけれども、昨年の同期に比べまして集荷は少ないというのが実態でございます。  モチ米につきましても、昨年の佐賀の災害に加えまして、本年産、もう一つの主産地であります北海道、特に北海道の中でも生産地は北の方に集まっているというようなことで、一般の作況よりさらに悪いというようなことを伺っているわけでございますけれども、モチ米についての集荷自身も昨年同期に比べまして少ないというような実態がございます。今後の需給自身、相当厳しい操作が必要になるのではないかと思いますけれども、なお今現在、集荷を強力にやっていく。  それからまた、ポスト後期対策の中で、来年産のモチ米とかあるいは他用途米につきまして今後の需給に見合った作付というのを先日決定して、今各県を通じまして末端までおろし、それに沿った生産をやってもらうよう、系統団体、行政あわせまして、何とかそういうものについての対応に全力を挙げていきたいというふうに考えておるところでございます。
  125. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 この辺の米が少ないから、足りないから、必要に迫られて緊急輸入などということが出てきやせぬのかということを私どもとしても心配するのですけれども、現在のところそういうようなことを考えるような状況にはありませんか。
  126. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 モチ米、他用途米とも、私どもとしましては国会決議もございますし、全力を挙げて国内で対応したいと思っていますけれども、そのためにはやはり農家の方々が十分理解して協力してもらう必要があろうかと思います。そういう点、行政、系統一体となって全力投球をしたいと思っております。
  127. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 そこで、農家の方の御協力をいただくためにも米を出してもらわなければならないわけですけれども、実は北海道は他用途米の割り当てが随分多いのですよ。例えば本年度ですけれども、全国のお米、政府米の限度数量七百二十八万トン、それから他用途米については四十九万八千トン、これに対して北海道の場合は六十七万一千三百トンが限度数量で、他用途米については七万九千五百二十トン、これは全体の一五・九%なんですね。今度の新しい割り当て、これはこの間ポスト後期対策で決まりましたけれども、今度は他用途米の比率は若干減りましたけれども、それにしてもふえている。全国では五十三万三千トン、北海道の場合には七万九千九百八十トンで全体の一五%ということで、かなりの率を占めているのですね。  ところが、御案内のように、他用途米の場合には何といっても価格が安い、そういうことでなかなか皆さんがつくろうとしないというか、出そうとしないというか、そういうこともあるのですけれども、そういうこととあわせて、例えば生産者の方から、この他用途利用米の検査の規格、ふるいの網目、これを少し緩和したらどうなのか、例えば一・七ミリから一・九ミリの間とするというようなことにすることによって大分またそれが多く出たり、生産農家の方も助かるというような相乗効果があるんじゃないかというような要求があるのですけれども、この辺について御意向はどうですか。
  128. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 今回のポスト後期対策におきます転作面積ですか、それの配分につきましては、従来の実情、現在の生産の実力、それからまた他用途米をつくった実績等々を勘案いたしまして、また農業団体からの意向も徴しまして、これは全体としての量は決まっておるわけですから、片っ 方に相対的に減らせば片っ方は相対的にふえるというような話でございますけれども、そういう中で担当しております農蚕園芸局の方でいろいろ工夫をしてもらって配分をしたわけでございまして、ぜひああいう目標に従った対応をこれからやってもらいたいというように考えております。  それから、今御指摘がありましたふるい目の話でございますけれども、例えば北海道におきましては産米の主食用の品質を高めるというようなことで、ふるい目につきましては一・九五ミリあるいは二・〇ミリですか、というような比較的大きいふるい目を用いているというようなことは事実でございます。そういう中で他用途米の話も我々としても伺っておりまして、より小さいふるい目で調製すればさらに利用ができるというようなこともございまして、今回のポスト後期対策、水田営農活性化対策の発足とあわせまして、そういう点で何とか検討したいというようなことで今協議を進めておるところでございます。
  129. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 そういう要求にこたえていただけるように前向きな御検討をぜひ期待したいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。  それから、先ほど冷害被害、北海道の場合にいろいろお聞きしたのですが、共済が久しぶりに使われるということになるわけですけれども、水稲の損害評価の特例措置が出されているやに聞いておるのですけれども、この内容についてお示しをいただけますか。
  130. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 現行の農業共済におきましては、共済事故によりまして減収が生じた場合に共済金を支払う、こういう仕組みをとっておりまして、いわゆる収量保険方式、こう我々呼んでおりますが、また耕地ごとの損害評価は、主として立毛検見というふうな、要するに稲が植わったままの状態で評価を行う、こういうことによって行っておるわけでございます。しかしながら、異常な災害によりまして広範囲の地域にわたって政府買い入れ対象にならないような低品質米が発生した場合には特例措置を実施する、こういうことになっておるわけでございます。  具体的には、政府買い入れ基準に達しますまで一定のふるい目でふるいまして、それで政府買い入れ基準に達しないような場合には、青未熟粒でございますとか腐敗粒というふうな被害粒を取り除きます。そういうふうなことによりまして取り除いたものを減収量というふうに扱うという特例措置を実施しておるわけでございます。そういうものを取り除いても基準に達しないというふうな場合には、さらにふるい目を少し大きくしてやる、こういうふうなことをやっておるわけでございます。それからさらには、これでもだめな場合には搗精試験を実施をするというふうなこと、大体その三段階ぐらいの特例措置を実施をしておるところでございます。
  131. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 北海道の稲作農家の方々、ことしは先ほど申し上げましたように冷害で大変に苦しんでおられますので、この共済適用についても弾力的な運用をしていただいて救済をしていただき、そして来年の営農にまた備えていただくというようにぜひ御配慮をお願いしたい、こんなふうに思っております。  最後ですけれども、今の共済に絡んで、水稲の共済基準、これはまたふるい目の問題で恐縮なんですが、一・七ミリになっているわけですね。これを、少し厳しいのではないか、もうちょっと緩めてもらったらどうなんだろうかという声があるのですけれども、これがどうなのか。これを緩めることによる利害得失といいますか、その辺の問題などについてお伺いしたいと思います。これを最後にいたします。
  132. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 農作物共済におきます基準収穫量の設定でございますとか損害評価の収量基準につきましては、農業共済につきましては農林水産統計の収量基準、こういうものに基づいて行っておるわけでございまして、一・七ミリメートルのふるい目を使っておるということでございます。一方、先ほどもお話がございましたが、農家等では、最近、より大きい目幅のふるいを用いるケースがふえてきておるというふうなことはわかっておるわけでございますが、ただ、その場合でも、目幅については年産とか地域によりましていろいろなケースがあるようでございます。そういうことで、いろいろな場合があるわけでございます。  しかしながら、農業共済につきましては、農業共済の玄米の収量基準を、基準収穫量の基準と異なるような特定の目幅のふるいを用いるというふうにいたしますと、共済の引き受けでございますとか損害評価に支障を来すというふうなことでございまして、やはり共済制度というのは一定の約束事、過去の被害率なり、そういうものに基づいて掛金を算定してやっていくというふうなことでございますので、現段階でこのふるい目を変えるということは非常に難しい状況でございます。  それから、北海道の共済金のことでございますが、損害評価についての特例措置を、ことしにつきまして、北海道について特例措置を実施しております。それから、共済金につきましても、年内に支払いを実施したいというふうなことで努力をしておるところでございます。
  133. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 鋭意努力をしていただきたいということをお願いをいたしまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  134. 東力

    簗瀬委員長代理 鉢呂吉雄君。
  135. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、最初にサケ・マス小型漁船の違反操業事件につきましてお伺いいたします。  この事件は、本年の五月二十一日に、米国沿岸警備隊の航空機が、日本の操業許可水域から七百キロの公海上で違反操業を行う二十二隻の日本漁船を発見し、その後、海上保安庁等が捜査を行い、出漁した十九トン型サケ・マス小型漁船八十八隻のうち、北海道庁の二隻の取り締まりを含め、二十四隻が漁業法等の違反で摘発をされておる事件でございます。まず、この事件の概要について、水産庁の方にお伺いをいたしたいと思います。
  136. 川合淳二

    ○川合政府委員 ただいまお話がございました小型サケ・マスでございますが、先生御承知のように、北洋のサケ・マス漁業につきましては、私どもは従来から操業秩序の維持に努めてきたところでございます。特に、本年はサケ・マスの公海の沖取りが禁止された初年度であるということもございまして、関係業界には事前に指導の徹底を図るとともに、国際的にも国内的にも取り締まり体制を強化して対処してきたところでございます。  しかしながら、残念なことに、今お話がございましたように、私ども、五月二十二日でございましたが、米国のコーストガードからアンカレジの総領事館を通じて情報の提供がございました。アメリカから、二十二隻の我が国の漁船が公海で操業している疑いがあるという通報を受けたわけでございます。その後、米国から写真の提供がございまして、これをもとに、海上保安庁が中心となりまして捜査が続けられたわけでございますが、九月二十七日及び二十九日に太平洋小型サケ・マス漁船六隻、これは北海道知事の許可に係る十九トン型でございますけれども、この船にかかわります操業責任者六名が逮捕されました。これを初めといたしまして、現在までに二十四隻、やや詳細にわたりますけれども、海上保安部の送致に係るものが二十二隻、道庁の送致に係るものが二隻でございますが、その操業責任者が区域外の操業などの容疑で送致されるに至っております。このほかに、道庁におきまして二隻について行政処分を行っております。  経過は、とりあえず以上のようなことになっております。     〔簗瀬委員長代理退席、岩村委員長代理     着席〕
  137. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 時間がございませんのでこちらの方から申しますけれども先ほど言いましたように、アメリカ、ロシア、カナダ、そして日本で新しい条約が、私ども四月の外務委員会でもこれを審議し、承認したところでございますが、それに基づきまして、日本とロシアの漁業合同委員会が三月十六日に行われ、その中でこの北太平洋を含めまして日本の二百海里内の漁獲量についても合意を 見たところでございまして、この関係で言いますと、今年の太平洋上の小型サケ・マス流し網漁漁船の漁獲割り当て量は、二百六十隻全船で千五百四十四トンと承知しておるところでございます。  そこで、本年の操業後、水産庁は北海道庁からこの漁獲実績についてどのような報告をいただいておるか、御報告を願いたいと思います。
  138. 川合淳二

    ○川合政府委員 この太平洋小型サケ・マス漁業につきましては、いわゆる法定の知事許可漁業でございまして、かつ、全船が道の許可船でございます。したがいまして、先生御承知のように、その漁獲量管理は道庁が行っているということでございます。  これにつきまして、我々は道庁からは、この太平洋小型サケ・マス漁船の本年の漁獲量として千四百十一トンという報告を受けているわけでございます。
  139. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 千四百十一トンという報告を受けておるということであります。  そこで、海上保安部はこの関係の捜査を一応終了いたしまして、先日の摘発をした。先ほど言いました二十二隻だけでもサケ、マス合わせて三百六十トン、この全体の二百六十隻に相当する千四百十一トンに比べても、約三割以上の三百六十トンに上る漁獲があったというふうに海上保安庁では言っております。しかも、先ほどの割り当ての千五百四十四トンのうち、シロザケについては九十トンであります。しかし、この二十二隻、違反した二十二隻だけでもシロザケを二百八十三トン漁獲しておる。全体の九十トンに比べても三倍のオーバーをしておるのであります。  そこで、実際の小型漁船全体の漁獲実績について水産庁はどのように把握しておるか。千四百十一トン、それが実の数字ではないことは確かであります。今度の二十二隻の漁獲実態から見てもこれは実際の数字ではないということははっきりしておるのでありますけれども、これについてどのようにとらえておるか、御報告を願いたいと思います。
  140. 川合淳二

    ○川合政府委員 私どもは、この件につきましては、先ほど御報告申しました千四百十一トンという報告を受けているわけでございます。  その後、今お話がございましたように、第一管区海上保安本部の発表によりますと、二十二隻につきまして、今先生が御指摘のような数字について公表されたものでございます。これはこれでそのとおりだというふうに受けとめております。しかしながら、我々の受けている数字は千四百十一トンという数字のみでございますので、このほかの数字については、私どもは承知しておりません。
  141. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 このほかに、先ほど言いました十九トン型は八十八隻出漁しておるのであります。これについても五千百トンの漁獲実績量があったというふうに報告が明らかにされておりますけれども、五千百トンということになりますと、千四百十一トンをはるかに超えるわけであります。同時に、先ほど言いましたシロザケ九十トンだけを見ましても、二百八十三トンと大幅に飛び越えておるわけでありまして、その意味からいっても千四百十一トン、このことに問題はないかどうか、その辺の水産庁の見解はどうであったのか、その辺をお知らせ願いたいと思います。
  142. 川合淳二

    ○川合政府委員 私どもは、この件につきまして、道庁からの報告といたしまして、水産庁への報告数字はさまざまな情報を総合的に判断して行ったものであるが、その後の調査により実態に合わないことが明らかであったというような報告を受けております。  したがいまして、非常に残念なことでございますが、この点については漁獲管理に適正を欠いていたということは言わざるを得ないと思っております。
  143. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 道庁の方から実績と相違をするという報告を受けておったということでありますけれども、実際の数字について道から上がってきておるのか、あるいはまた公表できない何かがあるのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  144. 川合淳二

    ○川合政府委員 先ほどから申し上げておりますように、私どもが受けている数字、本年の漁獲量として報告を受けている数字は、千四百十一トンという数字でございます。
  145. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 実は、私も四月に外務委員会での審議に、新条約についての審議に加わらせていただきました。この条約の、いわゆる北太平洋における潮河性魚類の系群の保存のための条約、いわゆるサケ・マスの条約でありますけれども、その第六条の二項には、この条約に違反して採捕された潮河性魚類、湖河性魚類というのはサケ・マスのことを言うんだそうですけれども、それに関する取り締まり行為及び事件の処理に関する情報の交換については締約国は互いに協力をする。あるいはまた、第九条でありますけれども、これは国際機関としてここに委員会を設けることになっておるのですけれども、その委員会の権限として、三条の、先ほどの三条ですね、違反する活動があった場合には、これについても情報交換を促進するという項目があります。  私は、そういった意味では、北海道庁からもそれは相違を知っていたのだということでありますから、水産庁としては積極的に実際の数字について把握する義務があるというふうに思いますけれども、これについてはそういうことをやっておらないということでありますか。
  146. 川合淳二

    ○川合政府委員 この数字につきまして、道庁におきまして鋭意調査していたようでございますけれども、具体的な漁獲量につきましては、総漁獲量、それから区域内外、当然のことながら区域の外で操業しているというような事態もございまして、私ども把握しているところでは、この漁獲量について確定し得なかったというふうに聞いております。  現在わかっておりますのは、先ほど先生の御指摘にありました十八日に第一管区海上保安本部が発表しました二十二隻の違反漁船にかかわる数字でございまして、私ども鋭意把握に努めましたが、今のところそういう状況でございます。
  147. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、北海道議会では、十一月十日、先般、その関係で北海道庁からの報告と、そして質疑が行われております。そこで現地から、現地というのはこれは漁協さん等の現地ということでありますけれども、北海道庁に入った段階で実数の数字は水産庁も知っていたのかという質問に対して、国は知っていたというふうに明快に答弁をされております。そういうことからいけば、今の答弁は甚だ矛盾をしていますし、どうなんですか。
  148. 川合淳二

    ○川合政府委員 私ども、道の水産部におきまして道議会で答弁した点について道庁からお聞きしておりますが、私どもは、今先生がおっしゃられたような形では承知しておりません。  いずれにいたしましても、この件につきまして、私どもが報告を受けた数字は、先ほど来申しておりますように、繰り返して恐縮でございますが、千四百十一トンという数字でございます。
  149. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 北海道庁からどのように報告を受けているのでしょうか、この点に関して。
  150. 川合淳二

    ○川合政府委員 私ども先ほど申しましたように、水産庁への報告数字はさまざまな情報等を総合的に判断して行ったものであるが、その後の調査等により実態に合わないことが明らかになったということを伺っているところでございます。
  151. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 北海道庁も認めておるのです、数字は言っておりませんけれども。言っておるのは、長官の言ったこととは違いまして、こういうふうに言っている、正確に言えば。「水産庁とは担当の段階で種々情報交換をしており、」これはですから、報告後に違った数字がありましたよというようなことでないわけであります。「水産庁とは担当の段階で種々情報交換をしており、現地からの実数の数字を水産庁は知っていたと思います。」というふうに、これは北海道庁の会議録から私抜粋しておるわけでありますから、これに対して、それではそういうことはないというふうにはっきり言っていいのですか。
  152. 川合淳二

    ○川合政府委員 担当者間の情報交換というようなことについて触れられているということは、私どももそのことについてはお聞きしておりますけれども、いずれにいたしましても、私どもが報告として受けている本年の漁獲量は千四百十一トンということでございます。このほかの数字は受けておりません。
  153. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 先ほど言いましたように、捜査段階でももう既に数字を上回っているものがある。しかも、道庁はこれについては千四百十一トン以外の数字は言っていませんけれども、これは実質上改ざんしたものであるということを言っておるわけであります。  ですから、この数字は非常にゆがめた数字であるということは水産庁もおわかりのことであろう。同時にやはり、その都度の過程で水産庁と実質お話をしてきた。水産庁は余りにもこの実際の数字が大きいので、例えばこういう数字もあるのですよ、二百六十隻全船で、割り当ての十倍近い、一万四千トンの実績数量、こういうものがもう具体的に上がっておるのですから、これについてきちんと把握に努めるわけですか。先ほど言いましたように、四カ国の条約においてもさまざまな罰則規定、あるいはまたそういう違反操業に対する報告義務、そういうものがあるのでありますから、その点についてどうですか。
  154. 川合淳二

    ○川合政府委員 道庁からの報告の中にも、水産庁への報告は千四百十一トンということで、さまざまな情報等を総合的に判断して行ったけれども、その後の調査等により実態に合わないことが明らかになったというふうに報告を受けております。これはまことに遺憾なことでございます。  私ども、やはりこの北洋サケ・マス漁業は長い歴史があり、日ロあるいは日ソの間の取り決めに基づきまして漁獲を続けてきたところでございますので、そういう意味では、操業秩序の維持あるいは漁獲管理の徹底ということは非常に大事なことだと思っております。今後の両国のあり方からいっても非常に大事なことだと思っております。したがいまして、今回このような形で実際に実態に合わないという数字だったということが言われているということは、私どもも非常に遺憾なことであり、今後これに対して適切な対応を図っていかなければいけないというふうに考えております。
  155. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 同時に、こういうことも言われておるのですけれども、「このような改ざんは従来から行われていたのか。しかも、国はこれを承知をしておったのか。」という質問に対して北海道庁は「このことについては相当以前から行われていたようであり、国においても情報交換などから知っていたと考えられています。」というふうに答弁をしております。  ことしは公海から完全に締め出されましたから、水産庁の直接の許可であります中型あるいは母船式のものはなくなったわけでありますけれども、これらも含めて以前にそういう事実があったのかなかったのか、水産庁としてどういうふうに掌握をしているのか御答弁を願いたい。
  156. 川合淳二

    ○川合政府委員 今回のこの事件にかかわりまして、いろいろな情報あるいは御意見がいろいろな形で出されていることは私どもも承知しております。  先ほども申し上げましたように、長い歴史のあるこの漁業につきまして、当然のことながら日ソあるいは日ロの取り決めに基づいて行われてきた漁業でございます。私どもの先輩を含め、この秩序の維持、漁獲管理の徹底ということは、両国間の信頼確保の上でも非常に大事なことであったわけでございますので、私どもはそういう考え方に基づいて対応してきたものと考えております。
  157. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 先ほど言いました北太平洋の湖河性魚類の条約第三条三項では、この条約に規定された禁止事項、これに違反をして採捕されたサケ・マスについてこれを取引してはならない、あるいはまた取引に関与した者を処罰しなければならないという条項があるわけであります。  したがって、先ほどお話しありましたように、アメリカの警備隊が発見をしたのは五月二十一日でありました。先ほど二百海里内のものもあるようだ、したがってその数量についてはなかなか把握できないかのような話もありましたけれども、五月二十一日の早い時点で、公海上では一切ならないというこの条約の規定でありますから、そういう段階で、既に日本で掌握をすることが可能であった段階で、こういう取引についてこのような違反した漁獲物についてどのような処理をされたか、どのような対応をされたか、これについてお聞きしたいと思います。
  158. 川合淳二

    ○川合政府委員 今お話しの条約につきましては、本年二月十一日に四カ国により署名されまして、お話しのように我が国は国会の承認を得まして、六月八日に批准をしております。ただ、各国の批准手続がおくれておりまして、いまだ正式に発効しておりません。現在のところ、発効は明年二月後半ということに見込まれております。したがいまして、今回の事件は本条約の違反ということには当たらない状況にあります。  しかしながら、この法律の趣旨というものは、私どもが従来対応してまいりました考え方に沿うものでございますので、そういう意味ではやはり遺憾な事態であったということは言える問題であるというふうに考えております。
  159. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 いずれにいたしましても、このことはもうマスコミに流れておりますから、当然この年末あるいは来年度に向けてのロシアとの漁業交渉もあるというふうに思いますけれども、国際信義の上からいっても大変遺憾な出来事でありますから、対ロシア漁業交渉に対する理解を求めていくということは必要である。せっかく新しい条約ができたわけで、しかも多国間の条約であります。しかも、先ほど言ったようなことが明記されておるわけでありますから、大変厳しい日ロの漁業交渉になるかもわかりませんけれども、漁業交渉上このオーバーした漁獲量を隠して漁業交渉はできないことはさっきの条文のとおりであります。すべて明らかにして、そういう違反を少なくしていくということがこの条約の精神でもあります。  そういう意味で、ことしはその元年でありましたけれども、その数字をきちんと把握して、また世間にも公表してその事件の対処の仕方をきちんとすべきである。したがって、ロシアとの交渉に対してどういうふうに対応されるのか。それからまた、今回の漁業管理上で、水産庁は、北海道庁に対する指導監督等も含めてどのような責任、あるいはまたどういうこれからの改善策を考えていくのか。あるいはまた、二百六十隻という小型のサケ・マス漁業者がいるわけでありますから、このこと自体も、漁獲割り当て量が去年とことし同じという中で、同じ船が残って操業した。長年の慣行で漁獲割り当てオーバーが、行政あるいは漁業者がもうすべて慣行のような形で認め合ってきた節が非常に強いのでありまして、そういう意味でも、このことはきちんと漁業者に指導性を発揮すると同時に、漁業者の生活あるいは経営がまだ残っているわけでありますから、減船補償等の問題がこれから出てくるかもわかりませんけれども、それらに対する水産庁の対応の方法についてお伺いいたしたいと思います。
  160. 川合淳二

    ○川合政府委員 先ほどから申し上げておりますように、非常に遺憾な事態でございますが、ロシアとの関係はこれからも当然のことながら続いていくわけでございます。私どもといたしましては、道庁の調査結果あるいは第一管区海上保安本部の捜査結果などを踏まえまして、現在なお係争中の点もございますので、その全容とか全貌がわかり次第、今後の措置をロシア側にも通告し、今後の対応策とともに話し合いに入ってまいりたいと思っております。  なお、お触れになりました今後のあり方等につきましては、道庁とも協議の上、具体的な措置を検討してまいらなければならないと思っております。  また、漁獲量の管理体制についても、道庁と今後の対策について検討していきたいというふうに 考えております。
  161. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 この関係の最高責任者は農水大臣だというふうに思います。これは国際的な信義にかかわる問題でありますから、外交上大変大きな問題にもなりかねないことだというふうに私は思います。そういう意味で、大幅に、漁獲量の十倍にも当たる実績がとられたというふうなことは大変大きな問題であることはわかります。そういうふうに一面では言われておりますから、そういう意味で、行政の責任者としてこれからどういうふうに対応していくのか、その考え方を聞きたいというふうに思います。
  162. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今いろいろと御意見を伺っておって感じますことは、私も前々から漁業にかかわってまいりまして、韓国の違反操業がけしからぬと言っていろいろやりました、一方では違反操業をやる。どうも漁業というのは、違反操業というのはなかなか守られないというところに問題がある。やはり決めたことはきちっと守っていただく。これを守らぬために日本の漁業がこの北方からだんだん制約を受けて、漁民みずからが自分で首を絞めてきたと言っても過言ではないんです。そういうことがどうしてわかってもらえないのかと私はいつも思います。  確かに、水域を狭くされると大変だというのはわかりますけれども、しかしそれは取り決めですから、その中で漁業をやっていただく以外にないのと、それから今数字の話がいろいろ出ていますが、出てきた数字を私どもが信頼する以外にない。直接行って調査するという力もない、人もいない、結局北海道庁にこれは全部やってもらっている。それを、出てきたのが一々これ信頼できないということになると、ですから、そこのところは道庁もしっかりしてもらわぬと困るわけでして、それをいいかげんにやられるとまあ本当に我々もどうしていいか、これからいろいろやりますが、極めて今回の事件というのは遺憾だと私は思います。  いずれにしても司法当局で適切な処分がされる、こう思いますし、また行政処分も、道庁においてどうするかというのは検討してもらわなければいかぬ。しかし、明年以降このような事態を招かないということが大事なことであって、いずれにしても道庁と協議をして、違反の再発防止はどういうことができるのか、これは十分やっていきたいし、本当に場合によっては相当厳しい対応もしなきゃならぬ。また、私が、各国の漁業大臣に漁獲量の適正管理、資源管理をこれから十分話し合って、ルールに基づいて資源を適切に保存して、末永く漁業というものをやっていくことをしましょうよと言っている傍ら、そういうことがやられないということにもなりますので、そういう必要な措置というものを考えていかなきゃならぬというふうに考えております。  いずれにしても、直接的にやっていただくのは道庁でありますので、明年以降の操業のあり方についても道庁と十分協議をして検討したい、こう考えております。
  163. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣、短い時間でしたから私質問時間がなくて申し尽くせませんでしたけれども、その内容は、単に漁業者の漁獲オーバーの密漁ということ、それを取り締まれなかったということじゃなくて、長年行政と漁業者のなれ合いといいますか、これはもちろん日ソの漁業交渉でその枠、きちんとこれを国際的に見きわめることが難しいということにかこつけて、長年オーバーしてきた実態がさまざまなところで明らかになっておる。しかし、現下の情勢はそういう事態じゃないです、四カ国の条約を踏まえて。ですからそういう点で、水産庁のこの関係に対する行政としてのあり方もきちんと姿勢を正していただきたいというふうに考えております。  そこで、ガット関係に移りますけれども先ほど来、きのうの予算委員会の渡辺副総理・外務大臣の答弁が私ども委員からも問題になっております。私も何回も速記録を見せていただきましたけれども、端的に言って、やはり閣内不統一に映るようなことは避けるべき責任が農水省にもあると私は思います。  そこで、大臣先ほど外務大臣は何を考えているのか、想像の域を出ないということで苦笑されておりましたけれども、私はそういう場でない、そういうときでない、今は相手がもう大詰めに来ていると言ってもいい段階でありますから、やはり日本政府の責任ある人々の発言がきちんとされておらなければならない。そういう意味で、農水大臣にもう一度、特に外務大臣に、きちんと国会の決議も踏まえて統一した考えで当たるということをやはり直接副総理に言うぐらいの、言ってもらわなければならない。このまま野放しにしておけば何を言い出すかわからないという状況じゃありませんか。その点についてどうですか。
  164. 田名部匡省

    田名部国務大臣 よく外務大臣にきちっと私から申し上げたい、こう思います。
  165. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 ぜひそのことはきちんとした、統一的な考えでやっていただきたいというふうに考えます。  そこで、先ほど委員の方からもお話があったのですけれども関税化即自由化ということについてどうなのだ。そこで食糧庁長官、今いないですけれども、いや、それは率によってはわからない。もちろん日本政府はこれを前提とするわけじゃありませんけれども、しかし先ほど外務省の経済局次長が言ったように、ダンケル・ペーパーにおいては関税相当量というのは国内卸売価格と輸入価格の差ということを明記をしておるわけでありますから、そういう意味では関税化というのはまさに自由化であろうと私は思いますけれども、いかがでありましょうか。
  166. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 関税化というのは、委員の御指摘のとおり、今ある国境保護措置を関税に置きかえるということでございまして、ダンケル・テキストにおきまして、算定方法としてはそういうふうな方式をとるということになっておるわけでございます。そういうことで、我々としましてはこの例外なき関税化は問題があるということで、この修正を求めているところでございます。今後ともこの修正が実現されますように努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  167. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこでもう一つなのですけれども、あの際の最終合意文書で、その前の字句に、関税相当量は原則として内外価格差、内外価格差というよりも卸売価格と輸入価格の差だというふうに、「原則として」という文章がついておるのですけれども、これはどういうことを意味しておるのか。ガットの段階でこの面も明らかにされておるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  168. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 このダンケル・テキストなる合意案につきましては、その細部についてはまだ交渉中でございまして、いろいろまだ固まってないところでございますが、そういうところに、算定の方法なり、どういうデータをとるかとか、あるいはいろいろまだ詰めなきゃいかぬ、交渉しなきゃいかぬ部分があるわけでございます。そういうことで、今後の交渉によってどう決めていくかという余地があるものでございます。
  169. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そうすると、この「原則として」の中身は詰めておらないということだと思います。このことが先ほど話にあるような、条件闘争におけるいわゆる内外価格差以上の高率関税というものをかければ輸入が禁止をされるのではないのかという余地を生むようなことになりかねない。私はそういう意味では、このことについてはそういうような交渉をすべきでないと思います。  そこで、先ほど自民党の東委員から、当時私が政務次官のとき、というのは農水省の政務次官のことだと思いますけれども、そういう条件闘争がアメリカ日本との間で逐次行われておったかのような発言がありましたけれども、これについては農水省はどういう考えですか。そういうことはあり得るのですか、ないのですか。これは大臣、きちんと発言しておいてもらわなければならぬというふうに思います。
  170. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 先ほどの東委員発言でございますが、当時のことはちょっと私その衝になかったものでございますので、お答えできないわけで ございます。  いずれにいたしましても、現在本件について交渉中でございます。したがいまして、我々の主張は、ダンケル合意案にございます例外なき関税化ということについては受け入れられないというふうな方針のもとに、先ほど来申し上げておりますように、その修正につきまして、アメリカEC交渉におきましてもバイタルなといいますか、非常に両国農業にとっていろいろ難しい問題があったものを、ぎりぎりの交渉をしたわけでございます。我が国立場から見ても、このような問題があるものについて修正を求めていくということで、現在真剣に取り組んでおるという状況でございます。
  171. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 先ほど大臣は、まさにこれからマルチの、多国間の交渉が始まる、いよいよ私ども日本の考えが述べられるということを言ったわけでありますけれども、なかなかそういう時間的な、あるいは多国間の状況というのは非常に難しいところにもある、そういうふうに私ども思います。  そこで、交渉の手法ですけれども、今回アメリカECが長い間かかって二国間の協議を経て合意に達したから、これをガットの場でという手法を使っておるんですけれども、そういう意味では、ドンケルさんも利害関係国間で合意すれば修正をしていきますよというようなことを言っておるときもあったわけでありまして、そういう意味では、日本がこの多国間の場で述べることが日本立場を完全に相手に受け入れさせて合意できるということは、大変客観情勢として難しいという面もあろうかと思います。  そういった意味で、例えば、一つアメリカとかECの二国間協議を踏まえて、それを多国間の方に持ち寄っていくというような手法が考えられるのかどうか、あるいはまた、そういう考えが大臣にあるのかどうか、その考え方をお聞きしたいと思います。
  172. 田名部匡省

    田名部国務大臣 多国間でどういう交渉経過だったかということをまず報告してもらわぬといかぬわけですね。ダンケル案というものは変えない、しかしどうしても問題あるところはそれぞれやりなさいということで、まあ長いこと、委員おっしゃったようにやってきた。私どもも、聞いた結果によっては二国間の話し合いもあるだろうし、また多国間でやることもあるだろうし、自分たちは長いことかけて、こっちは急いでやれといったって、それはできるかどうかというのはやってみなければわからぬ話ですから。ですから、いろいろなことを考えてみて、これはどう進んでいくかというのは相手があることであって、私どもは予測をつけられないことはあるんですね。しかし、やはり問題であるということだけはきちっとやらなければいかぬし、二国間でもぎりぎり詰めることは詰めていかなきゃいかぬということだけは間違いなくやろうと思っているわけでありますから、まあその先ほどうなっていくかということはだれもわからぬ話でありますから、こっちがいいと言うとおり一〇〇%いくものなのか、あるいは何十%か引っ込むのかというのはやってみなければわからぬ話ですから。  いずれにしても、向こうがやったことでありますから、今度はこっちも正式に、今までは個々に私が行っていろいろと話し合いはしましたが、これは正式なものではなかったわけですから、向こうもまたECアメリカ間でも決まっていないものですから、これは前へ全然進まなかったという話は、ただお互いに言いっ放し、聞きっ放しという、そういうことはやってきましたから、今度はもう本当にテーブルに着いて、腰を据えて交渉をできるわけでありますから、それをまとめ、全力を挙げてやりたい、こう考えております。
  173. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これまで日本政府は、例えば日米の首脳会議でも、米等の問題についてはラウンドの中で話すということで、実質の話は避け続けてきたと言っては皆さんに失礼かもわかりませんけれども、そういう嫌いがあったわけであります。ここに至って、多国間、マルチの段階でというふうにいっても、その見きわめは大変まだ定かではありませんけれども、やはり相当の危機的な段階に来ているということからいけば、私は、積極的に大臣があるいは閣僚級のレベルの人が、アメリカなりECなりあるいはこのガットの場で、やはり政治家が出ていって日本立場を説明して納得させる、日本立場について合意を得る、そういう段階に来ておるのではないかというふうに考えておりまして、そういう大臣みずから交渉の場に臨む、その決意があるかどうか、お聞きをしておきたいと思います。
  174. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ちょっとその前にもう一度申し上げておきますが、二国間といいますか米・EC間が合意ができまして、これからマルチプロセスに入っていくということになったわけでございまして、二十六日、本日でございますが、現地時間の二十六日にTNCが行われておるということでございまして、そこで今後のスケジュールといいますか、そういうものが決まってくるわけでございます。そういうものを見定めて、どういう場でどういう交渉をやっていけば一番効果的か、また有効かというふうなことを考えながら、マルチの場でも主張いたしますが、二国間においても適切なレベルで今後交渉をやっていくべきである、こういうふうな状況であるということを申し上げさせていただきたいと思います。
  175. 田名部匡省

    田名部国務大臣 既に農業に関する限りは、国別の約束表というものは私ども出しておるわけでして、米と乳製品、十一条二項(c)にかかわるものは包括関税化は受け入れられません、こう伝えてあるわけです。  ECアメリカは何をどのくらいにするかということを一生懸命やってきたわけでして、しかし、フランスはこれは拒否権を発動するとかなんとか言っておりますが、私の方は、受け入れられませんよ、これ一本でずっときたわけですから、交渉するも何も、私の方が、私がヒルズ通商代表と三回会いましたし、あるいはカナダのウィルソンあるいはマディガン、マクナイト農業大臣ですね、カナダのウィルソンとマクナイト、それからマクシャリー農業担当委員とも会いました。あるいは、オーストラリアのクリーン第一次産業大臣あるいはニュージのファルーン農業林業大臣、こういう人たちとずっと会いまして、日本立場というのは明確に言ってあるわけです。  ただ、だめですよと言うものですから、向こうもだめとどうやって交渉するかというのと、ECアメリカ交渉事とは若干違うのかなと私は考えていまして、それで日本とはなかなか自由化しろ、しないというだけのことなものですから、これはテーブルに着いて何をやるかといっても、やり方が向こうもなかったと思うのです。先にそういうことでECアメリカ交渉がずっと長いことかかった。ですから、今度は日本と、これは大変だなとは思っているだろうと思います。  まあいずれにしても、私の方も話し合いに乗らぬというわけではありませんから、乗るからには私の方は今までの言ってきた主張を言う以外にないわけですから、それをどの程度相手が受けとめてくれるか。日本ばかりでなく、カナダもありますし、フランスもある、そういう中でがちゃがちゃ議論し合うということからまず始めていかなければならぬというふうに考えておりますので、場合によっては私みずから、国会が、あるいはこの間になるか終わってからになるかわかりません、その辺は十分見きわめて、これは腹を据えた交渉事というものはしなければいかぬ事態がもう間もなく来るであろう、こう思ってはおりますが、よろしくお願いいたします。
  176. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣、場合によってはではなくて、もうそういう大変な段階にあるということの御認識はされておると思いますけれども、もっと積極的に、これは本当に背水の陣で命がけでやる段階に来ておるというふうに私ども思います。  特に日本は、よくこの三項目のバランスがとれないんだという中で、今回ECアメリカ輸出補助金については二四%から二一%、これはまた減ったのですね。これについては、大臣、どういうふうに評価するのですか。これについては、日 本は認められない、日本輸入国としての立場は全然変わっておらないのに、二国で、単に二一%にまたさらに輸出補助金を緩和するというような状況は認められないということを世界に宣言するつもりはありますか。
  177. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 先ほどどなたかの御質問に大臣からお答えがありましたが、米・EC合意についてはこれから多国間の場で説明を受けたり、あるいは二国間で内容を聞きまして、しかるべき段階でこちらの対応をしていくというふうなコメントを発表したわけでございますが、そういうことで、その内容を確かめて、それに応じましてこちらの態度、これは認められるとか認められないとか、ここはバランスが悪いとかそういう意見日本国として言っていくというふうなことになるということでございます。
  178. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それはもちろんそのとおりで、内容はきちんと把握されておりませんから、もし仮にこういうことであれば私は大きな問題がある。譲歩譲歩ということを盛んに外務大臣等も言うんですけれども、相手の譲歩は何かということ、やっぱり攻めの外交もすべきである。それは輸出補助金等についても、余りにも輸入国のことを考えない、ただ輸出補助金を幾らか減額すればいいというようなことの問題ではないという中で日本立場というものをきっちり主張して、問題は、やはり最終的に入れさせなければならないわけですから、日本立場というものを。  そういうことで、農水大臣の決意とそして交渉に臨む具体的な行動をお願い申し上げまして、答弁は要りません、お願いしたいと思います。ありがとうございました。     〔岩村委員長代理退席、杉浦委員長代理     着席〕
  179. 東力

    杉浦委員長代理 藤原房雄君。
  180. 藤原房雄

    藤原委員 私も、今問題になっておりますこのガットのことにつきまして、また国際諸問題についての若干の質問をしたいと思います。  一つは、同僚委員からもいろいろお話がございましたが、まずアメリカECとの長年にわたりますこの問題が解決をして合意ができた、こういうことでございまして、そこから、今まで鎮静化といいますか、ほっておいたわけでは決してないかもしれませんけれども余り大きな問題として意識をしなかったことがにわかに浮上してまいりまして、きょうもまた緊急にこのような委員会を開くことになったわけでありますし、また予算委員会におきましても、いろいろ質疑がなされたわけであります。  私どももこの交渉に当たりまして、やはりかつての牛肉・オレンジのときも断固として輸入はできない、関税化はできないということで言い張っておったわけでありますが、しかしいろいろな、この交渉が進展いたしますと、あるところで政治決断をしなければならないということになった。それが当初としましては諸対策を講じたということで、それほどの大きな影響はないだろうということでありましたが、この数年、酪農に非常に大きな影響が及んでおることはもう御存じのとおりであります。  今年の乳価決定のときにもいろいろな問題につきまして御提起を申し上げましたが、関税率が年々下がるということとともに子牛価格が非常に下落をいたしまして、酪農業界が、農民の方々が今大変な苦境の中にある。要するに牛乳を搾る以外にないということでありますが、これはもう生き物ですからそう簡単に頭数がふえるわけじゃありませんけれども、しかしいい牛をたくさん搾るようにという努力をする以外にない。みんながそういう意識でやりますとまた量的な過剰が出てくるという、こんなことで、いつどういうことが言い出されるか不安におびえながら、今まではぬれ子がそれなりの価格をしておりましたからそういうものでいろいろな経済的な、農業経営の中で勘案をしながらやってまいりましたが、ぬれ子でそれを補うことができないということになりますと、もう乳を搾る以外にない、こんなことになりました。その影響の大きさ、これも春の乳価の決定時期にもるる申し上げましたし、また皆さん方もいろいろな状況については統計数字やいろいろなもので御存じのことだと思いますが、あれほど農家の方々に万全の体制を施すということでありましたけれども、現実はやはりいろいろな問題が出てきておる、そういう過去のことがございました。  サクランボにつきましては、この国際化の中で時期をずらしてということでございまして、これは品種やいろいろな面で違いということもございまして、それなりの、摩擦もなく、当初の危惧もそれほどでもなかったかもしれません。一つ二つそういうことはあるかもしれませんけれども、営々として今日まで営んでまいりました農業が大きくかじ取りをするということはそうできるわけじゃございませんし、非常に厳しい問題だと私は思うわけであります。  こういう中で今ガットの、特に日本の基幹的食糧としての米の問題であります。同僚委員からもいろいろな角度からお話がございましたが、私も予算委員会を聞いておりましても、総理の発言外務大臣発言農水大臣は一貫してきちっとした態度での御発言でありますけれども外務大臣という立場にありますと交渉の矢面に立つということもあり、しかしかつて農林大臣の経験のある方でありますから農業の実態がわからないわけじゃ決してないだろうと思うのでありますが、説明が長かったり、その中に非常に危惧を抱かせるような発言があることは、私も聞いておりまして、そしてまたいろいろな報道を聞くにつきましても本当に真意はどこにあるのかという危惧を抱かざるを得ない。過去に牛肉・オレンジのときに手痛いそういう問題があっただけに、土壇場にまいりますと政治決断ということで何かを考えているのか、そのための布石かという、こんな思いが頭をよぎるわけでありますが、先ほど同僚委員からもお話がございましたが、農林大臣外務大臣に閣内統一ということの中で、この大事な時期の発言については慎重であるべきだということについてぜひひとつ御提起をいただきたい、こう私も思うのでありますが、大臣いかがですか。
  181. 田名部匡省

    田名部国務大臣 交渉をずっとやっているわけでありますから、余りいろいろなことのないように、直接交渉に当たる場合に余りいろいろなことを発言したりそれが記事になったりということではそれはとても戦いにならぬわけでありますから、私からもそのことは、不統一という、まあ米に関しては、こういうことできちんと言っている部分もあるものですから、いろいろな全体のことも言うものですからだんだんわからなくなる、こういう御質問が出るわけでありますが、米については私が一生懸命やっておりますから、農林大臣が頑張っておるから閣内はそれでいくんだ、こういうことをはっきりおっしゃっていますから、その他の部分については私の方からも真意を十分ただしながら、一緒になって交渉をしていくように申し入れをしたい、こう思っております。
  182. 藤原房雄

    藤原委員 より理解が深まるような御説明をしていただくのならいいのですけれども、疑問がわくような話がだんだん広がっていくということになりますと、その中には何かあるのか、こんな思いに駆られるような御発言、これは立場上ひとつよくお考えいただいて御発言いただかなければならぬと思うのであります。  きょう外務省の方も来ていただいておりますので、最初に外務省に関係のあることだけお伺いしておきます。先ほど同僚委員からもお話があったかもしれませんが、確認ということでお話をいただきたいと思うのであります。  一つは、今後の日程ということになるわけでありますが、本日TNCの日程協議がなされていることになっているわけであります。引き続きまして、閣僚級の会合もあるというふうに言われておるわけでございますけれども、今後のガット全体の動きについてはどのようになりますか、外務省の方でおわかりになる範囲内でひとつ御答弁いただきたいと思います。
  183. 北島信一

    ○北島説明員 今後の交渉日程でございますが、先ほど農水省の経済局長から御披露がございましたとおり、きょうジュネーブで貿易交渉委員会TNCというのが開催されまして、東京時間で六時開催の予定ですが、その場において、ダンケル事務局長より先般の米・EC合意を踏まえて、今後ジュネーブでの多数国間交渉プロセスが再開し得るという認識を示した上で、今後の日程についてのダンケル事務局長考え方の披露があろうかと思います。恐らく、その上で第一トラック、第二トラック、これは市場アクセス、農業、サービスといった分野ですが、そうした分野での多数国間の交渉プロセスが来週以降活性化される。その上で、推測ですが、恐らくダンケル事務局長としては年内の政治的な合意の実現、そこまで持っていきたいという期待の表明をされるのではないかと思います。  いずれにしましても、ジュネーブでの多数国間交渉プロセスにおきましては、関係省庁の幹部が御出張されるわけですが、最終的にはアメリカのファストトラック、これは来年の三月二日に一つの期限が来るわけですが、これがぎりぎりのリミットということを踏まえての交渉が展開されると考えております。
  184. 藤原房雄

    藤原委員 それともう一つ外務省にお聞きしておきますのは、今度ECアメリカとの合意がなされた、こう言われておりますけれども、しかしながら、EC内部が全部合意しておるのではございませんで、フランス、一部ドイツなんかでも反対の運動があるというようなことも報じられております。特にフランス農民の大きな動きというのは報じられているところでありますけれども、外務省としては、これらのことについてもいろいろ情報収集なさっていると思うのでありますが、フランスの動き等についてはどのように受け取っていらっしゃるか、ちょっとお伺いしておきます。
  185. 北島信一

    ○北島説明員 EC諸国の中でフランスは最大の農産物生産国であるということで非常な力を持っているわけですが、従来からアメリカECの間のいかなる合意もCAP、共通農業政策の改革の範囲を超えるものであってはならないということを終始一貫して主張してきているわけです。今回の米・EC合意につきましても、これはCAPの改革の範囲を超えるものではないかという考えをとっているわけです。  最近の進展としましては、きょう既に本委員会で御説明があったかもしれませんけれども、けさほど外務省の方にもフランスの大使館から公電が入っておりますが、昨日フランスの国民議会において、このウルグアイ・ラウンドについての米・EC合意が取り上げられたわけです。議会の審議におきまして、ベレゴボワという首相が今後の基本的な考え方を説明したわけですが、その中で、一つは、今回の合意EC委員会のマンデートを超えるものだという主張を行っておりまして、将来ECで外相理事会、農相理事会の合同会合が開かれる場合に、もしこの合意フランスの基本的な利益に反するものであるということであれば拒否権を発動するべしと考えているという立場を明らかにしているわけです。他方、同時にフランスとしては、ウルグアイ・ラウンド合意につきましては、農業だけではなくて、工業、サービス、さらに知的所有権といった広範な分野を含むものであるという認識を踏まえまして、全体の姿を見る必要もあろうという認識をしているようでございます。  したがいまして、今後のフランスの動向につきましては、いろいろ紆余曲折があろうかと思いますが、一つの有力な見方としては、今後ウルグアイ・ラウンド交渉農業のみならずサービス等の分野で広範に展開していく中で、最終的な合意、パッケージの中身を見た上でフランスとして判断していく、そういう可能性が強い、こういう見方があることをひとつ御紹介しておきたいと思います。
  186. 藤原房雄

    藤原委員 あといろいろお聞きしたいこともございますが、外務省の方、もう結構です。終わりました。  第一義的に交渉に当たるのは外務省ですから、外務省の理解とかいろいろなものが大事なのだろうと思いますけれども、今は農林水産委員会農林水産大臣を中心としていろいろ討議をしているわけでございますので、大臣を中心にして御質疑をしたいと思います。  今外務省からお話がありましたが、フランスも国内的にいろいろな、農業問題だけじゃなくてほかのトラックにつきましても意見があるようで、議会でも大変議論をしているようであります。これが今後の交渉や何かにどういう影響を及ぼすかということ等については当然考えなければならないかもしれませんけれども、この一年、去年の十二月二十日にドンケルペーパーが出てからの日本の対応が適切な対応であったのか。先ほど来の同僚委員との質疑応答を聞いておりますと、アメリカと、諸国との交渉に精いっぱい当たるように、また多国間の場でも大いに議論するように主張してきたけれども、今日までできなかったのだ、こういうことであったわけであります。     〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕  今度の場合は、フランスは国内的なことでありますから、日本が他国とのいろいろな交渉発言の場、こういうこととはまた別なことだろうと思いますし、これはいろいろな機会をとらえて大いに進めていかなければならぬ、こういうことの中で、今までの一年間とはちょっと違うことになるのかもしれませんけれども、この一年間の反省といいますか、一年間のことを見まして、この一年の歩みというのは本当に適切だったかどうかと非常に疑問に思う。もっとなすべき手だてがあったのではないか、こんな思いがしてならないのであります。  農林大臣農業交渉に臨むに当たっての政府基本方針、従来の方針を堅持する、こういうことをよく言われるわけでありますけれども、まず最初に、この従来の方針というのは、米については完全自給ということを貫く、こういうことだというふうに認識してよろしいのでしょうか。この辺のことについて大臣の御見解、改めて確認しておきます。
  187. 田名部匡省

    田名部国務大臣 もう何回も申し上げてまいりましたが、包括的な関税化は受け入れがたい、米は国内で自給をしていく、この方針はもう全然変わっておりません。との運動が、行動が適切であったかどうか、私たちのできる範囲のことを、特に塩飽審議官、東部長、何回外国へ出しましたでしょうか、国内にいるのと同じくらい恐らくアメリカ、カナダ、ECに行っていただきました。また、ニュージーランド、オーストラリア、この国にも、ケアンズ・グループと言われるところも随分行っていただきまして、やれるだけのことは、日本立場というものを世界に訴えてきた、また世界情報もいろいろ収集してきた、こういうふうに私は考えております。
  188. 藤原房雄

    藤原委員 農林大臣の談話にもございますけれどもドンケル合意案で、修正のための会合で一応米国とECの基本合意がなされた、ここで初めて多国間の交渉の場が開けたということでありますけれども、なぜ我が国が今日まで要求していながら多国間の交渉の場が今日まで持てなかったのか、これはどうでしょう。
  189. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 先ほど大臣が御答弁申し上げておりますように、この間におきましても我が国関係各国に行きまして我が国主張主張するとともに、あるいはダンケル事務局長に対しましても、早く米・EC以外の諸国が抱えている問題についてマルチの場で討議をする場を設けるべきである、こういう主張をしてきたところでございます。  しかしながら、やはり米・EC間の農業に関する意見の相違といいますか争いといいますか、大変ぎりぎりの深刻な交渉が行われておったという状況の中でそれに大変時間がとられたというふうなこと、また、それがマルチを開始するための一つの障害になっておった、こういうことでございます。  そういう状況の中で、マルチの場で各国が抱える問題について十分な議論をする機会がなかった、こういうことでございます。
  190. 藤原房雄

    藤原委員 まあこれはガットの運営とかなんとかいろいろなことがあるのだろうと思いますけれども、しかし八月三十一日から九月の二日、ダンケル・ガット事務局長日本に参りまして各関係者の方々とお会いした。田名部農林大臣も八月三十一日ですか、八月三十一日にお会いしましたときに四項目ほどいろいろ提起をし、ダンケルからいろいろなお話があったようでありますけれども、詳しいことを一々お尋ねするのもどうかと思いますが、半年前のことですから。その中でも田名部大臣、最終合意案について、問題を抱えている国が集まって話し合い、現実的な解決を見出し得るようにすべきである、こういうことと、それから輸入国と輸出国の事情を踏まえて、双方の立場に精通しているダンケル事務局長が調整の労をとってほしい、こういうお話や、その際に我が国修正案が反映されることを望む、こういうこと等、大臣がダンケルにお話し申し上げた。確かに機会をとらえてそれなりのお話はなさっている。これは農林省から御説明をいただいた中にございます。  これに対してダンケルのお話もありますけれども大臣からひとつ、この主張したことに対してダンケルがどういう、八月ですから非常に大事な時点でもあったろうと思いますし、誠心誠意お話しなさったと思うのでありますけれども、そのときのお話とダンケルの話をちょっとお伺いしておきたいと思うのです。
  191. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今お話しになったような内容でありまして、何といってもダンケルさんが自分で合意案というものを出したのですから、本当は各国意見というものをもっといろいろ聞いて、そうしてこの案を出すべきであったものが、それが全然なされないで出されたということが今日この交渉が全部難航していることではないですか、各国にそれぞれ問題があるのです、特に日本においでになったのですから日本の事情というものをよくごらんになってくださいという話をしました。それで結局そういうことをなされないで、まあしかし、これは当初言われたアメリカやケアンズ・グループが出した案から見れば随分いい案だと私は思う、こう言っていました。  いずれにしても、とにかく問題のある国が集まってそれぞれの意見を申し上げて、そうして話を進めるという場がない、その仲介の労というのはあなたが、相撲ならば行司なのですからと言ったら、いや、私はレフェリーだ、後は、問題があるのならそれぞれの国が話し合いをして、それでいいということになればそれはいいでしょう、こういうような話で、話はかみ合いませんでした。  しかし、いろいろなことを申し上げましたので、ここで全部申し上げられるという——時間的にもそう長い時間でありません、三十分というのが一時間になりましたけれども。そういう内容のことを、日本立場というものを私は、輸出する方は船に積んで持ってくればそれで済むが、輸入する方はそう簡単にいかぬのです、そのためにどれだけの努力というものを国内でしなければならぬか、あるいは牛肉のときの例も申し上げて、今私は当時やったことの後始末をいろいろやっておるのですということから、土地の条件から気象条件、それがみんな違うものを一つの型にはめてやろうということだってこれはもう困難が伴うことは当たり前です、ですから、いずれにしても日本がそういう主張をする場というものを、第四トラックというともうこれは直されぬとかなんとか言うものですから、それは別として、問題を持っている国がみんな集まって議論するということがまず大事なことであって、それをやってくださいということを申し上げましたが、どうもなかなか、出したのは出した、後は余り知らない、かかわらないという態度が非常に強かったのです。まあしかし、アメリカEC合意したということで、いよいよ今度はそういうことになっていくようでありますから、私の方は、もっと早くに時間的な余裕がある中で本当はやってほしかった、こう思っております。  いずれにしても、主張は、従来も委員の皆さん方に申し上げてきたこと全部をお話し申し上げて、そうして日本立場というものだけはダンケル氏に、日本立場というものはわかったと思っております。それがどういう形でこれから取り運びの中でやるかというのは、私もそれは明確でありません。私どもは私ども立場というものを、従来の主張というものを今度はマルチの場で、あるいは場合によっては二国間の場でさらに交渉していかなければならぬということであります。
  192. 藤原房雄

    藤原委員 それぞれの立場できょう質疑がありましたけれども、確かに何もしなかったとは言いませんけれども主張したとか意見を述べたとかいろいろな機会をとらえてとかということは、それは役割としてしなければならないことでありまして当然のことでありますが、しかし、今ここで私ども最も危惧することは、その主張したことが通らなければならない、通さなければならないということです。この大前提があるわけでありますから、せっかく一生懸命やってきたのですけれども、何がありましてかにがありまして、頑張りましたけれどもだめでしたではだめなのです。  そういうことからいいますと、八月時点で、今大臣一生懸命、三十分の約束の時間を一時間しゃべったようでありますけれども、その中から次の打つ手が何か出てこなかったのか。この一年間、ただ過去のことだけ言っておるわけじゃ決してないのですけれども、七年にわたりますウルグアイ・ラウンド交渉、そう先々があるわけではない。いろいろな制約もある。もちろん、そういう中でどう運営していくか、どう主張を通していくかということはあるわけであります。しかし、押しなべて考えてみまするところ、そう長い時間があるわけではないだろうと思うのであります。そういう中で、非常に難しい日本立場を訴えるということはそう容易なことではないだろう。そういうことからしまして、ガットの会の運営ということや何かいろいろな約束事の上に立ってやっておるのだろうと思いますけれども日本の今までの態度というのは少し専守防衛といいますか、守りに徹する、ECアメリカなどの中に隠れておるようなそういう感じがしてならない。そういう印象を与えるようなことではなくて、もっと主張の通るような立場で大いにひとつ積極的な姿勢でやっていただきたい。塩飽審議官が半年以上、日本にいるよりも長かったというのは、その衝に当たる方は非常に御苦労だと思いますけれども、今非常に大事な時点にある。  しかも、私が長々申し上げるまでもなく、何といってもガット農業交渉例外なき関税化反対している国というのは、そう数が多いわけではないわけです。少数派であります。日本にはそれなりの主張があり、それなりの論理構成があるのだとは言ってみても、国際舞台の中で少数派の日本がわずかの時間の中で主張を通すということは非常に難しいことだと思いますし、そういうこと等も念頭に置きまして積極的なこれからの交渉の場づくり、そしてまた、そこの場におきます我が国主張、こういうものをひとつ積極的にやっていただきたい。これはやっていただかなければなりませんし、大臣も本当に一肌も二肌も脱いでいただきたい。内閣改造なんてゆめゆめ考えてはならぬ。この問題については、最近各大臣もいろいろ言われておりますように、命を賭すぐらいの気持ちで頑張っていただきたいと思うのです。いかがですか。
  193. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いつまで私どもの任期があるのかわかりませが、それは総理の権限であります。しかし、与えられている時間というものは全力を挙げて取り組む覚悟であります。
  194. 藤原房雄

    藤原委員 こんな大事な交渉に当たっている大臣をかえるような総理大臣じゃいかぬと思いますし、いい人はしっかり頑張ってもらわなければいかぬと思いますし、頑張りましたけれどもだめでしたなんというのじゃだめだし、とにかく本当に日本農業、これは農業だけじゃなくて日本の農村 社会の崩壊または日本の環境破壊、こういう大きな次元で今論じられておるわけであります。そしてまた国際的にも、ウルグアイ・ラウンドの話がありました当時とは違って、最近は飢餓民族が非常に多いということ等も叫ばれておりまして、食糧というものが世界全人類の中で決して満ち足りている状況ではないということ等もあわせますと、日本でつくれるところでつくらない、価格差のためにという、そんなことが許されるかどうか非常に難しい状況の中にあると思いますが、ぜひひとつ日本農業を守るために、また世界の公平な食糧の確保のために、大臣大いに御奮聞いただきたい。  時間もございませんから、次に移らせていただきます。  とかくに米のことが中心になって陰に隠れておるのですけれども、乳製品やでん粉、この問題もぜひ、これはもちろんその前提条件としてのガットがどういうふうに進むかということにも関連するのだろうと思いますけれども、地域農業におきましても非常に重要な位置にあります乳製品やでん粉が自由化にならないことのためにも、関税化にならないためにも、ぜひひとつ配慮といいますか十分な留意をしながら今後の交渉等にしっかり当たっていただきたいと思うのですが、一言。
  195. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 我が国は、乳製品でございますとかでん粉等につきましては国内で生産調整を行っておるわけでございます。こういう生産調整を行っている農産物につきましては、生産制限の実効性を確保するというふうな観点から輸入の量的な管理が必要であるというふうな考え方のもとに、ガット十一条二項(c)の見直し、明確化を提案するとともに、包括関税化は受け入れられないというふうな主張を行っておるわけでございます。  今後とも、今御指摘のようなことを踏まえまして、我が国主張交渉結果に反映されますように努力をしてまいりたいと思います。
  196. 藤原房雄

    藤原委員 それと、最近のIQ品目であります近海魚ですね。イカとかサバとか、これは市場アクセスグループに入っておるわけでありますけれども、この近海魚につきましても当然この影響があるわけで、今後の推移については注意深く見守っていかなければならぬと思います。特に近海魚につきましては魚場が隣接区、韓国や何かと非常に関係する、同じであるという魚場の関係等もありまして、重要な課題として見落としてはならないと思うのでありますけれども、この近海魚等のことにつきましても、水産庁の関係の方がいらっしゃったらぜひひとつしっかり見守っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  197. 川合淳二

    ○川合政府委員 水産物につきましては、今お話がございましたように、市場アクセスグループで交渉が行われるということになっております。市場アクセス交渉につきますいわゆるダンケル・テキストでは、関税の引き下げの開始時期とか最終引き下げ時期というような形式的事項が盛り込まれておりまして、具体的な交渉はこれから各分野についてやっていくということになっております。  御承知のように、我が国周辺の水域におきます漁獲は、資源状況ども必ずしも楽観を許さない状況にありますし、国際的にいろいろな形で制約を受けてきております我が国の水産業界にとりまして、近海魚に関します市場アクセスの問題は非常に大事な問題でございます。私どもも、今後の交渉におきまして、その点については注意深く対応していかなければならないというふうに現在考えております。
  198. 藤原房雄

    藤原委員 漁業の話が出ましたので、それにつけ加えてお話ししたいと思うのです。  漁業に関係することでお話ししたいと思いますが、過日、北海道の水産試験場、それからことしですか東北の水産試験場に参りましたけれども農業についても漁業につきましても、試験研究というのは非常に大事なことだろうと思いますし、それなりに努力をなさっておることはよくわかりますが、最近文部省所管の大学の工学部、理学部におきます施設、試験研究等におきます研究費の足りなさとかいろいろなことが問題になっておりますが、私ども参りまして、農林省関係の試験研究の機関で人員が足りないとか予算が足りないとかという、そういうことは声には出しませんけれども、我々が見ましてやはりもっと、統合したりいろんなことはしておるのですけれども、時代の波に沿ってそうしなければならぬということは私どももわかりますが、本当に基礎的な研究ということに力を入れませんと、今水産庁長官お話がありましたが、やはり近海魚、公海上はもう締め出されてまいりまして、近海を大事にしなければならぬ、こういう中でもっともっと農林省所管の試験研究、基礎的な研究というものに予算、人員、こんなこと等をひとつ大いに力を入れていただきたい。特に田名部農林水産大臣は水産業についても明るい方でございますから、今までも外国の庭先まで行ってもとってきた、そういう時代ではもうなくなったわけでございますので、本当にこの試験研究ということに大いに力を入れて、そういう基礎的なことをひとつしっかり今度の予算なんかで配慮していただきたい、このことを要望いたしておきます。  それから、過日北海道で発表になったのを見まして、さもありなんと思ったのですが、特に日本海沿岸に多いのですけれども、トドの被害、これも機会あるごとにお話ししておるのですけれども、ことし一年間、去年の七月からことしの六月まで一年間見まして総額三億二千万からの被害があって、前年に比べて六・四%の増加だ、こういうことが言われておるわけでありますが、有効な対策がないために銃で駆除するという、それも動物愛護という声が高まらないかということで、非常におっかなびっくりやっておるというような現状でございまして、刺し網とか底建て網とか、こういうものに対する被害、こういうことから、ある期間については余市漁業なんかも被害が多過ぎて、最近冬場は刺し網ができないという、こういう漁業者が非常に多くなっているわけでありますが、これはもう季節の状況にもよるわけでありますけれども、近海を大事にしなければならないという一方でこういう問題もございまして、この対応策、すぐに何がどうすればできるということじゃないかもしれませんし、今まで予算もつけていろいろどうしたらいいかということについての駆除対策の研究もしているようでありますけれども、こういう現実もあるということで、ぜひひとつこれらについても御配慮いただきたいと思いますが、水産庁長官いかがですか。
  199. 川合淳二

    ○川合政府委員 北海道におきますトド被害は、私ども承知している範囲でも、平成三年度で直接被害だけでも三億二千六百万というような数字があります。北海道にはトド岩というような岩もあるように、かなりトドが来ております。  今先生も御指摘がございましたように、海産哺乳動物に属しますものですから、なかなかその取り扱いが難しい面もちろんありますが、そうはいいましても被害がこういう状況でございますので、北海道庁はかなり対策をとっているわけでございます。そうした対策につきまして、国といたしましても一定の補助などを行っておりますし、漁具被害などについての対応もやっているわけでございます。一方で生態の調査ども行う必要がありますし、また防止対策もやらなければいかぬということでありますので、非常に微妙な点があってやりにくいことは先生御指摘の点があるわけでございますが、やはり地域によっては網の中の魚までとられるというようなこともございますので、よく道庁とも連絡をとりながら対策を講じていかなければいけないと思っております。
  200. 藤原房雄

    藤原委員 話があちこち飛んで申しわけないのでありますが、今度減反緩和が行われたのでありますが、これは前にも私申し上げたから、ちょっとこの機会にお話しさせていただくのでありますけれども、公共壊廃を初めとします壊廃部分をどう見るかということであります。  これは、ある地域で減反面積が決まりますと、その中でカウントをどうするかということになるわけでありますが、私は、二、三年前になりますか、申し上げたのは、札幌のようなどんどん壊廃 の進んでいるところ、そしてまた耕作している水田面積の少ないところ、それから隣接する町村、石狩支庁、こういうところにおきましては、公共壊廃でどんどんつぶれますと、その分を今度は近隣の農村で減反面積を受けなければならぬということで、減反面積八十三万ヘクタールはもう何があろうとカウントをしなきゃならぬというところから来ておるものですから、これは現場的に言いますと非常に無理がある。今度新しい制度のもとに出発するわけでありますけれども、この問題につきましても農業団体からも陳情があったと思いますし、これはぜひお考えいただいて、水田の壊廃が実質的に水田稲作が不能になることから、全面積を転作実施面積として実績に算入する、こういうことにしてもらいたいという農業団体の要望がありますけれども、これはそうしなければいかぬと私は思うのですが、いかがですか。
  201. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 ただいま御質問の、いわゆる公共壊廃についてどういう取り扱いをするかということでございますが、今先生がお話しございましたように、これまでは壊廃面積のうち全部カウントするのじゃありませんで、当該市町村の転作率を乗じた分だけ転作面積として実績算入する、こういう措置をとっておったのでございますが、今回の水田営農活性化対策に当たりましては、地元でも、どうもそういうことじゃ困る、何とか全面カウントをしていただきたいという御要望もございましたので、来年度からの新対策におきましては壊廃を転作面積として全面積算入するということにいたしましたので、この対策がより円滑に実施されるものと思っております。
  202. 藤原房雄

    藤原委員 時間もなくなりましたので、要望だけいたしておきます。  昨日ですか、報道によりますと、米議会の会計検査院の報告ということで、日本の競走馬市場の障壁は最も厳しい、こういうことが報じられております。これはもう過日来いろいろ御提起を申し上げ、また一番これに携わっていらっしゃいます小平先生からもいろいろ御指摘があったわけでありますが、外国産馬の出走制限緩和計画ということでお話し合いがあったようでございます。これは厳しいと言われますけれども日本の国のいろいろな体制がございまして、これは生産者とそれから中央競馬会とどういうところでお話し合いをするかという、これはずっと膠着状態が続いておりましたけれども、今申し上げた緩和計画である程度お話が成ったようであります。日本もそういう方向に行かざるを得ないということでありますが、生産者は非常にいろんな急激な社会情勢の変化の中で苦悩いたしておりますが、この生産者の中にも大きいところ、または小さいところ、それぞれの階層によっていろんな受ける悩みも違うのだろうと思います。  過日は、農林大臣にぜひ日高へ行って競走馬の生産地を見てきていただきたいという、帯広の方にはいらっしゃったようでありますが、ちょっと時間がなくて日高までは行けなかったと思うのです。大臣は非常に馬に関心を持っていらっしゃるようですからあれですけれども、この生産者の実態に即した形でぜひまた調整を図りながら、外国の圧力もあるわけでありますけれども、それらのこと等もひとつ念頭に置きながら御配慮を賜りたい。このことを要望して、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  203. 高村正彦

  204. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 米の輸入自由化問題についてお伺いをいたします。  余り時間がありませんので端的にお伺いをしていきますが、アメリカEC合意を受けまして、米もいよいよ正念場を迎えた、米の自由化だ、こういう全く短絡的な報道がなされております。まだ多国間協議も始まっておりませんのに、日本交渉責任者である渡辺外相は二十四日の記者会見で、「世界的な不況を乗り切るには、ウルグアイ・ラウンドの成功が突破口にならなければならないというのが、世界共通の認識だ。お互いに譲歩し合ってまとめていかなければならない」と、早速譲歩を口にしているわけであります。一方、経済界の方も、速水経済同友会の代表は、「日本はコメの関税化による保護削減を決断する時期にきた」、こういうふうに発言をしていらっしゃいます。さらに、先ほども問題になりましたが、十一月二十二日付の日経新聞は、関税受け入れを前提とする関税化制度の手直し提案が詳細に報道されているありさまであります。  そこで、まず最初に、宮澤内閣は、お互いに譲歩し合ってまとめていかなければならない、それが考え方なのでしょうか。米については譲歩しないときっぱり言い切れるのでしょうか。
  205. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ウルグアイ・ラウンド農業交渉につきましては、農業を含めて全体的な交渉でございまして、担当の大臣が何人かいるわけでございます。それぞれの所管に応じましていろいろ強調されている面があろうかと思いますが、ウルグアイ・ラウンド農業交渉に関しましては、我が政府の従来からの基本方針に立ちまして年来の主張交渉結果に反映をされるようにというのが我々の方針でございます。この政府の方針に変わりはないわけでございます。
  206. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 あなた方は政府基本方針に基づいてと、こういうふうにおっしゃるわけですが、きのうの衆議院の予算委員会質疑における渡辺外務大臣ウルグアイ・ラウンドに関する答弁というのは本当にひどい、関税化受け入れのための譲歩の姿勢を極めて明確に打ち出しているというふうに言わざるを得ないわけです。私、議事録を速記で取ったわけですけれども、三つの特徴があるというふうに思うのです。大臣はどういうふうにお聞きになったでしょうか。  一つの特徴は、おどしたと私は思うのです。「この不況を乗り切っていくためには、どうしてもウルグアイ・ラウンドで妥結して弾みをつけなきゃならぬ、ウルグアイ・ラウンドが失敗すれば、はかり知れない大被害を我々人類はこうむる」、これはもう全くウルグアイ・ラウンドが妥結しなければまるで全面的な核戦争でも始まるような、そういう言い方であります。  二つ目の特徴は、もう早速白旗を上げて、「世界相手の交渉ということになれば、多勢に無勢みたいな話ですよ。先が見えた話だ。」と、多国間交渉ではもうだめだということで交渉放棄の姿勢を示していらっしゃる。  三つ目の特徴は、野党に球を投げる、そういう姿勢を示されて、食管法の改正や国内対策まで言及をしていらっしゃる。  私がことしの二月の予算委員会で米の輸入自由化問題をただしたときには、こんな政府の答弁は全くありませんでした。大臣、あなたはこの三点についてどのようにお考えか、聞かせてください。
  207. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私に聞かれましてもどうも何とお答えしていいかわかりませんが、今局長言うように、どうも聞いておっても、ウルグアイ・ラウンド全体の話からこう入っていくものですから、米の部分ウルグアイ・ラウンド全体の成功させなきゃならぬというのとごちゃごちゃになっているものですから、聞きようによってはそういうように聞こえているのかなと思います。しかし、米のところについては農林水産大臣しっかり頑張っておるしということで、ここはだめだ、こう言ってくれておりますから、そこだけを聞いておると、米のところは政府一体となって取り組んでいるということを言っておられるのだな、しかしウルグアイ・ラウンドそのものは失敗すれば大変なことになるという部分は、ウルグアイ・ラウンド全体の話をしておるのだというふうに私は受けとめておるのです。  まあ受けとめ方ですから、ウルグアイ・ラウンドというのはそういう一面もあるのだ、決しておどしているわけでもなくて、壊せば大変なことになるということを訴えているのだろうと思うし、あるいは確かに米については何カ国もありませんから、乳製品等はカナダとか何カ国か、こっちの方は少し多いのですけれども、そういうことから見れば大変だという、この大変だということを 言っておられるのだろう、こう思いますし、またできないものを引き受けてみてもということは、食管法の改正が伴う場合があるわけですから、法案が通らないものを簡単に受けてきてもそれはだめですよということを言っておるのだろう、こう思いまして、決して進めるために発言をしているというふうに私は受けとめていないわけであります。  閣内は、米に関する限り、あるいは乳製品、でん粉等、そうしたものは今までの方針を変えないで対処していくということは、これは通産大臣もきのうはっきり、外国へ行ってもそう申し上げておるということを言っておられましたから、額面どおり受けとめていただいて結構だと私は思います。
  208. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 いろいろと大臣をかばっていらっしゃるわけですけれどもウルグアイ・ラウンドを成功させるということでは閣内は一致している、しかし三度にわたる国会決議に基づく政府の基本的立場という、そこのところになると非常に言葉としては読み取れない。そして、さっき私が言いましたようにおどしをかけ、白旗を上げ、野党に球を投げるというような態度は本当に許せぬというふうに思うわけです。  報道でも明らかなように、ドンケル事務局長は、「当事者間で合意した米・ECのケースと、調整がつかない日本のコメ問題は別」というふうに言いまして、関税化の適用除外を受け入れないと表明しているわけであります。これではこの調整は極めて困難であると言わざるを得ないわけですけれども、きょうの夕刊では、第四トラックの開催については当面見送られるという報道がされております。外務省に来ていただいておりますので、この報道の真意を聞かせてください。もしそうであれば、日本主張を通す場がなくなるのではないかというふうに考えますが、どうでしょうか。  私たちは、いずれにしても、こういう調整が困難になっても、その先の政府がとる態度を知りたいわけです。調整ができなかったら米の輸入自由化は断固拒否するというのが国会決議に基づいた毅然たる態度ということになるわけでありますが、そういう態度を貫くということなのかどうか、もう一度大臣から聞かせてください。
  209. 北島信一

    ○北島説明員 第四トラックの件でございますけれども、御承知のとおり、ことし一月に貿易交渉委員会におきましてウルグアイ・ラウンド交渉が再開された時点で、第一トラック、これは市場アクセス、農業を含むわけですが、第二トラック、サービス、第三トラック、法的整理、それで先生今御指摘のあった第四トラックについての説明があったわけですが、これは貿易交渉委員会においてダンケル・テキストの調整を図るかどうかということを検討する場ということでございます。これにつきましては、ダンケルさんが一月に言明している以上、しかるべき時点で当然第四トラックは開かれると考えております。  きょうの夕刊の報道自身は、私自身は拝見していませんけれども、他方、ダンケルさんが第四トラックを開くタイミングについて終始説明されてこられていますのは、要するに第四トラックを開くのは交渉の最終局面である、つまりそれまでの時点で主要国間で調整のついたものをその場で取り上げるという趣旨のことを言ってきているわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、当然第四トラックはしかるべき時点で開かれるという前提で、来週以降再開される、農業につきましては第一トラックの多国間交渉を通じて、従来の日本立場を改めて主張を展開して、各国の理解を得て、それを最終的な第四トラックの作業につなげたいというふうに考えているわけです。
  210. 田名部匡省

    田名部国務大臣 交渉するわけでありますから、いろいろとおっしゃりたいこともわかりますし、私も言いたいことをここで全部言ったのでは交渉になりませんので、誠心誠意、いつも申し上げているとおり頑張りますから、どうぞ御支援をいただきたい、こう思います。
  211. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、誠心誠意頑張られることに、今少なくともそのことに疑いを挟んでこう質問しているのじゃないのです。だけれども、誠心誠意頑張る、調整のために頑張ると言っても、調整が困難になれば、その先の政府の姿勢はどうなんだ。私は、調整が困難であってもその先の政府の姿勢というのはきちんとしたものだというふうに思いますけれども、しかし、努力するよと、努力すると言ってその先が聞かされない限り非常に心配です。さっきから応援とかいろいろな話がありましたが、その先ほどうなんだということを聞きたいわけです。
  212. 田名部匡省

    田名部国務大臣 そういうことも含めて、まずECアメリカが一体どういうことになったのか、これがわかりません。それを聞いて、そうしてどういう対応をしていかなければならぬか。ぎりぎりやるでしょう。恐らく、最後はどうなるか、これはやってみないとわからぬ話ですから、あとは仮定の話になるわけです。  ですから、いずれにしてもそれは大変な重要な時期になったときに一体どういう判断をするかという場面もあろうと思います。そのときはまたいろいろどういうふうにするかという判断を求めなければならぬときもあるかもしれぬし、あるいはそうでないかもしれぬ。それを今ここで全部こうです、ああですと言って交渉に行ったのでは、これは全部相手にわかるわけですから、交渉にも何にもならぬということで、とにかく交渉に当たる私たちにお任せをいただきたい、こう思います。
  213. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 アメリカや財界は、渡辺外相じゃありませんが、例外なき関税化を受け入れなければラウンド全体がつぶれるような宣伝をしています。しかし、今回のアメリカEC合意によっても、世界の農産物貿易をゆがめている最大の障害がある輸出補助金は厳然として残されておりますし、クリントン新大統領はウエーバー条項の支持を表明しておられるわけでありまして、アメリカのこうした一方的な主張は極めて不当だというふうに私は思いますけれどもガットは、各国の経済主権を前提にして参加国が合意できる範囲で貿易交渉や紛争処理を行う国際組織であって、輸出大国の論理を一方的に輸入国に押しつけることがまかり通るというようなことになれば、ガットそのものが成り立たない。そういうことは言うまでもないことだと思うのです。  だから私は、それじゃ大臣に聞きますが、そのガットの基本的原則は、不一致を保留して全会一致でこれまで進められてきました。当然、その国の成り立ちである農業が崩壊するような状況に追い込まれるなら、その合意案を留保する権利が認められていることは言うまでもありません。この基本的な権利行使によって日本農業を守る、それが三度にわたる国会決議の意思ではありませんか。その認識はいかがでしょうか。
  214. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今いろいろ御説明いただきましたが、私もその考え方で今日までずっと相手国と話し合いをしてまいりました。そういう考え方で進めるつもりであります。
  215. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、この九月から十月にかけて全国六つの道県、北海道その他の県と十八市町村を回る全国農業調査を行いました。テーマは新政策の問題でしたけれども、全国のトップクラスと言われる大規模農家、北海道や秋田県の大潟村や滋賀県の大規模農家の実態を調べてまいりました。詳しくはもうここで述べませんけれども、一番明確なことは、これらの日本でトップクラスの規模拡大農家が、米輸入自由化をされたらひとたまりもないと共通して訴えられたことであります。まさに新政策を地でいっているような、一戸平均十五ヘクタールの規模の大潟村でも、米価が六十キロ一万七千円を切ると経営は厳しいと訴えておりました。大規模農家ほど過酷な労働環境に置かれているわけであります。大臣、米の関税化を受け入れたら、日本農業はこれらの大規模農家を含めてまさに崩壊することは明らかであります。大臣はこのような危機感をお持ちなのかどうか、私はこの際にもう一度聞いておきたいわけであります。
  216. 田名部匡省

    田名部国務大臣 そういう危機感もありますし、今の農業問題に関する限りは、公平でないということで主張してまいりました。当然、日本の米作農家というものは大変厳しい環境に立つということは、規模が大きかろうが小さかろうが受けるということで、私もそういう主張をしてまいっておるわけであります。
  217. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 牛肉・オレンジの自由化の轍を二度と踏んではならないと私は繰り返しここでも主張してきましたが、本当に今そのことを言いたいわけです。今回の全国調査でも、牛肉の輸入自由化による酪農家の実態というのは本当に言語に絶するものでした。自由化のとき、政府の対応はどうだったか。酪農家は牛肉複合経営で何とかなっていくのだというふうな御説明でありましたけれども、そんなものじゃない。それこそ本当に、北海道の別海町なんて、大変な状態であります。例外なき関税化では、米はもとより乳製品、でん粉の完全自由化が成るのであって、日本農業は崩壊になり、そういう事態を招くような合意案はどんなことがあっても認めてはならないわけであります。先ほど大臣は、不一致点を保留して、全会一致であるこの基本原則の上に立って、合意案を留保する権利を行使してでも国会の決議を守り、その立場で当たっていく、そういう御答弁をいただいておりますけれども、断固たる決意のほどをもう一度大臣から聞かせていただいて、私の質問を終わります。
  218. 田名部匡省

    田名部国務大臣 三度の国会決議をいただいておりますので、それを忠実に守って今まで行動してきたつもりであります。基礎的な食糧あるいは国内で生産調整を行っている農産物、そういうものは安定的に供給しなきゃいかぬし、あるいは生産制限の実効性を確保するという観点から、いずれも量的な管理が必要であり、そういうためにこの包括的関税化は受け入れられないということも、各国の責任者に申し上げてまいりました。そのための、今度の米・ECの案については、我々はどうもダンケルの案の修正という部分もあると思っているわけですから、そういうことも主張をして、修正も求めていかなきゃならぬ。  ウルグアイ・ラウンド農業交渉はいずれにしても、さっき申し上げたように、マルチの場で、いよいよ我々も公式の場で主張できるということになるわけでありますから、我が国としても今までの主張がこの交渉結果に反映されるように努力をしていかなきゃいかぬ、こういうふうに考えております。
  219. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 質問を終わります。
  220. 高村正彦

  221. 小平忠正

    小平委員 ちょうど、このポスト後期対策の中で、営農活性化対策、さらにはことしの六月ですかに出ました新政策、こういう大きな課題の中で、たまたまこのラウンドがああいう形で、アメリカEC間で合意に達しました。  私は、今までの質疑の中でいろいろと拝聴いたしましたけれども、特に残念に思いますことは、今回のこのアメリカEC間の合意は、油糧種子問題を中心にして、輸出あるいは輸入、この保護の削減の問題、これらが当事者間で合意に達した。具体的に米ということを言及しておりませんよね。そうでしょう、大臣。しかし、それが出るや否やすく、あれは十一月二十二日ですか、中央紙、三大紙を中心にして、各社は社説でもって、この際、我が国は決断をすべきである、いわゆる自由化に踏み切れ、そんな論調で各紙、マスコミがそういう見解を展開しました。何か世論誘導というか、そういう意図が感じられます。もちろんマスコミは自由であって、世論に対する啓蒙も必要でありますけれども、しかし、私は、この点に関して今一番大事なことは、国会であのように決議をして、しかも、今一丸となって我が国の国益のために頑張らなければならないときに、これはまことに残念であると思うのであります。  そこで、最初からされるのだというかバンザイをして降伏をするというような感じでは、私は外交交渉としては下の下であると思うのです。そんな意味で、これらの事態に対して大臣はどう思われているか。そして、今後あたかも内から崩れていくという感がするのです。そんなことについて、大臣はこれをどう思われているか、これからどう対処していくのかということを、まず冒頭にお伺いしたいと思います。
  222. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今までもテレビの出演の要請を受けたり、いろいろやりましたが、最初から自由化の方向に向けた質問ばかりで、その反対意見を言うととめられたり、あるいはいろいろなことを、私どもも適切な情報を提供しているわけですけれども、それは取材の中には一向にない。言ってないことも、あたかも政府がそういうことを決めたというような……(小平委員「簡潔に願います」と呼ぶ)ということであって、そういうことは諸外国に対して日本の方針というものが誤った認識を与える。行って交渉してみると、そういうことを言っているが、日本全体を見ればそうではないのではないかという印象を持ちながら話し合いをしますから、非常にやりにくいということは確かでありまして、これからもなるべく本当の情報を流してそれを取り上げてもらえるように努力したい、こう思っております。
  223. 小平忠正

    小平委員 私は、過去何度か海外視察もした経緯があるのですけれども先ほども外務省等に対してのいろいろな質問がございました。私は、その国に行ってその国の状況をよく理解すると、どうしても心情的に理解し過ぎる面があることはわかるのですけれども、私も何度か直接自分の耳に外務省高官が、この際、米を自由化すべきである、そんな発言も耳にいたしました。こういうことでは本当にいかぬと思うのです。したがって、大臣には、要するに所管の長なんですから、ぜひほかの省庁に対して大いに指導力を発揮してもらいたいと強く要求する次第でございます。  次に、国内に目を転じまして、過般大綱が決まりました水田営農活性化対策について少し聞きたいと思うのです。  御承知のように、今農民はまさしく農業に夢を見失っております。そして、我が国農業は依然として危機的状況にあり、それから脱却できないでいる、こう言えるのではないかと思います。そこに、政府が今年公表しました新政策でも、そういった農業に展望ある将来をもたらすためにさまざまな施策を展開しようと、そのように見受けられます。しかし、まず農民が意欲を持って安心して農業をやっていける、そんな農業、農政にしていかなければ、せっかくバラ色の絵を描いても、バラ色の絵であっても、それは単に絵にかいたもちといいますか、そんなことで肝心の実がついてこないと私は思うのであります。  今申し上げましたように、この活性化対策の中で大幅な減反緩和の方向であります。これは米づくりに積極的な多くの農民にとっては歓迎すべきことではあります。しかし、問題はその中身である。ことしまでの後期対策の中で、いろいろと施策がございました。本当に三年ごとに名称が変わってきて、そういう、言うならば政府の先見性のない農政によって、結果的には昨年お米が逼迫して、ことしは減反緩和でしょう、十三万ヘクタール。転作体系が進む中でどだい無理な話で、いわゆる実績は約半分強ですか、そんな状況でございました。依然としてその逼迫する在庫状況には変わりがない。  そういうことで、だから足りないから減反緩和をさらにする。確かに減反緩和という問題、減反を緩和するしないということは、いわゆるこういうボリュームが需給調整の役割を担っていることはこれは事実であります。しかし、足りないから復田する、余ったからまた減反する、こんなことでは現場の農民はたまったものではありません。その点を私は非常に危惧するわけであります。  またあわせて、今回のこの減反緩和の中でも、自主流通米は御承知のようにいいですけれども政府米は相変わらず少ないでしょう。そして、他用途米もこんな状況ですよね。つい最近の報道でも、みそやそういうせんべい等の加工業者が悲鳴を上げている。何とかしてくれという、そういう声も聞かれております。そういう中で、私は、今 ウルグアイ・ラウンドでもって米の自由化反対、賛成、そんなことの前に、いわゆる業者から、言うならば世論じゃなくて、それについて生計を得ているそういう人たちから悲鳴が出てきて、輸入してくれ、そうじゃないとおれたちゃっていけない。これは大変な、いわゆる自由化に向けての大きな原因になってくると思うのです。したがって、これらのことは非常に真剣にとらえていかなければならないと私は思います。  したがって、この点に関して、ひとつこれらの問題等々どのようにとらえておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  224. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 米の生産調整のあり方とも関係してのお話であったわけでございますが、我々今回の対策をどんな形にするか、特にどんなような対策期間としてやるかということも、やはり農家の経営の安定ということを考えまして、できるだけ長期な対策ということで考えるべきではないかという意見もあったことは承知しております。  そういう中で、やはり米の生産調整といいますのは、需要に合った生産をどういうふうにしていくかということになるわけでございますので、今後の需給動向をどんなふうに見通せるかということが重要なわけでございまして、そういった需給動向がどのくらいの期間、できるだけ正確に見通せるかというような点、それから最近、水田農業自体の生産構造といいますかそういったものが、高齢化とかあるいは不作付地とかそういうものが見られる中で非常に流動的であるというような点であるとか、あるいは我々新政策に基づいて今回の対策も考えたわけでございますが、これからいろいろな各種施策が逐次具体化されるような状況の中で、我々としては三年間が適当ではないかというようなことで今回対策を組ませていただいたということでございます。  それで、中身といたしましても、できるだけやはり新政策の方向に沿った形で水稲作、転作を通ずる望ましい経営が育成されるように、そしてそこで生産性の高い水田営農の確立などができるようにというようなことを配慮してやったつもりでございます。
  225. 小平忠正

    小平委員 高橋さん、おっしゃることはわかります。しかし、三年間が妥当ではないかと、私は問題は四年後だと思うのですね、そのときになってどうなるかという。壊廃田が進み、さらに高齢化等々でますます農民の離農というか、そんなお米が余るなんてことはもうあり得ないというそういう考えもおありでしょう。しかし、先行きは非常にわかりません。そういうところで、私の地元の北海道の例をとると、今回のこの減反緩和にしても本当に血がにじむ思いをしてこの減反緩和に、政府の要請に協力いたしました。そして、本当に安い価格の他用途米すらきちんと協力しております。それはこの機会に一生懸命米をつくっていこうという、そういう願いとつながっているからなんですよ。  そこで、三年間はこういうことで保証されましたよ。しかし、四年後どうでしょうか。そのことが気になります。そして、これはどうしてもまたラウンドの方に話が戻っていってしまうのですが、今お話がありましたように、新政策で将来の展望をきちんと見据えて、そしていわゆるこの水田営農活性化対策でしっかりと米の生産体制を強化しても、一方ウルグアイ・ラウンドでもって自由化という方向に進んでいってしまえば、ではその調整をどうされるのですか。農民に向かって未来ある農業というものを訴え続けていけるのですか。私はそこのところが、今回このラウンドの問題が、今本当にこれから大変緊急な問題として進んでいくでしょう。しかし同時に、国内の対策についても有形、無形の関連性があると思うのです。  したがって、将来に向けて、高橋さんもう一回、農民は不安を持つな、安心していろ、そういうことを言い切れますか。大臣でも結構ですけれども、そこのところの農水省の、こういう場であります、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  226. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 米の生産調整というものをどういうふうに考えるかということでございますが、我々は米の潜在生産力がいずれにせよ需要を上回っているという状況の中で、いわゆる政府が生産調整という配分をしながら需要と供給をバランスさせていくというような方法をとるのか、それとも自由な価格を、市場価格に任せておいてそれによって生産をコントロールして需要に合わせていくのかというような方法があるかと思いますが、我々としては、やはり自由な市場に任せるとかそういうことではなくて、現下の制度のもとでは生産調整という現在の手法ですね、面積を割り当てていくというような方法でやるのが、生産者の立場に立っても一番いいのじゃないかというようなことでとっておるわけでございます。  そうしますと、やはりどうしても需要に見合った生産をどうするかという形での施策ということになっていくわけですから……(小平委員「簡潔に頼みます」と呼ぶ)我々としては、今後とも需要をどう見通してどういう生産をやっていくかということを常に考えていかなければいけないというわけでございまして、そこは、あるときは需要が減少していけばそれに従って生産が少なくなっていく、あるいはその逆もあり得るということであろうと思います。しかし、その変化がやはり生産者の経営の安定に非常にマイナスになるというようなことはあってはだめでございますから、そういった点についてもよく配慮しながら見通していくということではないかというふうに思っております。
  227. 小平忠正

    小平委員 立場上、それ以上踏み込んでは言えないのでしょうけれども、要は先行きは不安だということで、これが解消されれば、農民は三Kなんて言っておりません、若い人も競って農村に定着すると思います。  私の選挙区の中でこういう一つの事例があります。私、休会中にあるところに行きました。もう山奥の農村です。そこの高齢者の農業従事者に会いました。そうすると、いろいろな畑の問題、それは別にして、実はというこんな話がありました。  それは、来年三月におらが村の中学三年生が卒業するのだ。そうしたら、もう生徒がいないのだ。要するに、小中一緒の学校です。小学校の新入生もいない。要するに、小学校六年間、それから中学校三年間、児童生徒が一人もいない。したがって、村役場は学校閉鎖というものを今打ち出してきている、閉鎖されたら終わりだということで地元住民が陳情している、そういうところに遭遇しました。いわゆる今の農村をいみじくもあらわしていることではないかと思います。そんなことも申し上げておきたいと思いますが、将来性があれば若い人は必ず定住するということを重ねて申し上げておきたいと思います。  時間も迫りましたので、最後我が国の競走馬、競馬の問題でちょっとお聞きいたします。  昨日の中央競馬会の運営審議会でどうやら結論が出たようでありますけれども、私もこの問題については、昨年JRAのいわゆる外国産馬の出走枠緩和策の案が出ましてから何度か質問いたしましたし、また現地でもいろいろな声をお聞きいたしました。一時期は日高を中心に、生産者はこの案に対して白紙撤回を迫ってまいりました。しかし、その後両者間のいろいろな討議、話し合いの中で、過般JRAもパーセンテージを下げ、そして出走レースにしても縮小して生産者側も一応の理解を示して、反対する方もおられますけれども、一応決着した。したがって、それにのっとって来年以降の番組、レースができる、こういうふうに聞いております。  しかし、そういう中で、米と同様にこの問題についても、今後アメリカを中心に我が国に大きくいわゆる枠拡大を迫ってくると私は思います。したがって、今後は我が国の軽種馬産業を守るために政府の適切な庇護、そしてまた、アメリカを初め海外に向かっては、我が国のこの業界の苦しい実情をしっかと訴えながら、我が国のこの競馬産 業の発展のために努力を続けてもらいたい、こう思うのでありますけれども、畜産局長、ひとつそこのところの御見解を賜りたいと思います。
  228. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 外国産馬の出走制限の緩和の問題につきましては、この委員会でも春先以来何度か取り上げられてきたわけでございますが、今先生お話がございましたように、関係者の間でようやく何とかお互いに歩み寄っていただきまして、ぎりぎりのところで調整というか合意に達した。日高地方、南九州もございますけれども、その地域にとっては非常に重要な産業であると思っておりますので、今度の出走制限緩和の計画を実施するに当たりましても、産地の生産対策、今地元といろいろ調整をして検討しております。そういうことについても、今までも国とか中央競馬会等で産地対策をやっておりますが、今回計画を決めたということとの関連で、地元対策につき、さらに強化をしてまいりたいというふうに考えております。
  229. 小平忠正

    小平委員 どうもありがとうございました。
  230. 高村正彦

    高村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会