○福井参考人 お答えを申し上げます。
日本銀行から拝見しておりまして、足元の国内の景気でございますが、やはり現在、ただいまの
状況では、製造業を中心といたしまして設備投資が引き続き減少傾向にある、それから、個人消費の方も足取りが鈍化しているというふうなことがございまして、全体として最終需要が停滞傾向を続けているという
状況でございます。一言で言えば、景気は引き続き厳しい調整局面を経過中であるということでございます。
最近、個々の企業について九月の中間
決算が発表されておりますけれ
ども、このペースで見ましても、かなり多くの企業でこの上半期の収益が大幅減益になっているというふうな
状況が出ておりまして、企業マインドも引き続き慎重という
状況でございます。
しかし、そうした一方で住宅投資の持ち直し傾向というものが明確でございますし、
政府の施策の効果もありまして、公共事業の増大、これも明確でございます。そういう面からは景気の回復を促す力も働き始めている、その点も見逃せない側面かなというふうに思っております。
設備投資の減少ということを申し上げましたけれ
ども、設備投資の減少が続いているということは、一たび非常に高い水準になりました資本ストックの伸び率が下がってきているということでありますし、一方で企業が生産の抑制を続けている中で、在庫調整は多少おくれ気味でございますけれ
ども、調整それ自身は着実に進んでいる面もあるということでございまして、さらには企業の収益が悪いと申し上げましたが、企業自身は先行き、収益をしっかり上げていくために、今収益基盤の再構築、いわゆるリストラクチャリングと言われている困難な
経営基盤の見直しを進めているという
状況でございまして、これらをあわせて考えますと、今景気は調整局面を引き続き経過中ではございますが、その中で同時に将来、回復の基盤が徐々ながら
整備されてきているということだろうと思います。
そういう上に先般打ち出されました
政府の
総合経済対策の効果が加わってくるということになるわけでございまして、今回の
政府の対策、
日本銀行から拝見いたしましても、公共事業投資の
追加を主体として絶対額が非常に大きい、それから、経済規模、すなわちGNPとの対比で見ても、過去最大級のものとなっているということでありますので、これから
補正予算の成立がなされまして、これらの施策がフルに実施されていくという段階に移ってまいりますれば、その効果は必ずや実体経済に相当強く及んでいくものだというふうに見ております。
さらに、
日本銀行のサイドからは、これまで五次にわたる公定歩合の引き下げなどによりまして金利全般が着実かつ大幅に低下を見てきている
現状でございまして、これらの累積的な効果というものも先行きの景気回復に大いに資するであろうというふうに見ております。
したがいまして、我が国経済はいましばらく調整局面が続くことは避けられないと思いますが、いずれ回復の方向へ向かう、その筋道は引き続き失われていないと判断しております。
お尋ねのございました中央と地方との格差の問題でございますが、御指摘のとおり、大都市地域と申しますか、東京、名古屋、大阪等東海道地帯といいますか、太平洋ベルト地域といいますか、その辺で不況感がより強く、これに比べて地方では不況感が相対的に言えば薄いということは、私
どもの支店長
会議で各地の支店長の報告などを聞いておりましても、つとにうかがえるところでございます。
思うに、今回の景気調整というのは、基本的には、八七年以降四年間も続いたいわば早過ぎた成長の後に生じている自律的調整という性格の強いものでございますけれ
ども、同時にそれが地価あるいは株価の高騰とその後の反落ということによってある程度増幅されている面があることは否めないわけでございます。この点では大都市地域ではそうしたバブルの形成、崩壊の影響が相対的に大きく出て、それに対してその他の地方ではその影響が比較的少ないということが、今御
説明申し上げました中央と地方との格差の
背景にあるというふうに思っているわけでございます。
ただ、ごく最近のところでは、地方にも調整色が徐々に広がってきているということもまた事実でございまして、地域間の格差、依然として残っておりますが、全体としてその格差は今のところ縮小傾向にあるようにうかがわれます。私
どもとしましては、中央だけでなくて
日本全体にわたって今後とも
金融、経済の動きをしっかりフォローしていきたいと思っております