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上原議員 私は、
日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民
会議及び
日本共産党を代表し、ただいま議題となりました
沖縄県における
駐留軍用地等の返還及び
駐留軍用地跡地等の利用の促進に関する
特別措置法案、略称、軍転特措法案について、
提案理由とその概要を御説明いたします。
かつて「基地の中に
沖縄がある」と形容された
沖縄県の現状は、復帰二十周年を迎えた今日においてもその実態は基本的に変わりがなく、今なお広大な
駐留軍用地等の存在によって
沖縄の土地の有効利用と振興開発は阻害され、絶え間のない軍事演習で県民の生存権は侵害され、生命財産もはかり知れない犠牲を強いられるという実情にあります。
沖縄の復帰に先立つ一九七一年十一月、衆議院本
会議において「
沖縄の米軍基地の縮小に関する決議」、すなわち「政府は、
沖縄米軍基地についてすみやかな将来の縮小整理の措置をとるべきである。」旨が採択されましたが、この間の政府の対応は、決議の趣旨がほとんど実行されないまま推移してきているのであります。
その証拠に、復帰時点の基地の総面積が二万八千七百ヘクタールで、復帰後二十年間に返還された基地面積はわずかに三千七百ヘクタールと一三%程度でしかなく、現在も全国の米軍専用基地の実に七五%が小さい狭い
沖縄に集中している状況にあります。
このことは、政府の
沖縄施策が産業経済の振興発展、県民生活の安定向上よりも、米軍基地の維持、安定使用に重きを置いてきた証左と言わざるを得ません。
加えて、返還軍用地の大半が有効利用されないまま長期間放置され、社会的、経済的に多大の損失を与えてきていることをより重要視する必要があります。
社団法人
沖縄県軍用地等地主会連合会の資料でも明らかなとおり、五、六年間から二十年前後にわたって、跡利用がなされないまま遊休化している土地が多いのであります。この長期の間、地権者に対する損失補償が全くなされていないことはゆゆしき問題だと言わなければなりません。
現在の広大な基地は、米軍の
沖縄占領後、銃剣とブルドーザーで先祖伝来の土地を強制的に収用したものであります。政府は、この米軍基地を、
沖縄の復帰に際して
沖縄公用地等の暫定使用法を強行立法するなど、継続使用の方途を講じて今日に及んでいるのであります。
しかるに政府は、米軍基地の整理縮小の推進を怠ってきたばかりでなく、時折返還される土地についても、地主や
関係市町村等の意見を無視した部分的細切れ返還であることもさることながら、跡地利用が
効果的にはかどらないことに県民は強い不満と不信を抱き続けてきているのであります。
したがって、政府は
沖縄における広大な
駐留軍用地等の存在を十分に踏まえ、その整理縮小に関する基本方針を策定し、返還される跡地利用を促進していくための特別措置を積極的に講ずるべきであります。
これが本法案を
提案する主な理由でありますが、次に、法案の概要について御説明いたします。
第一に、国の責務及び地方公共団体の任務についてであります。国は、
駐留軍用地等の整理縮小に関する基本方針を明確にするとともに、
駐留軍用地等及びその跡地等の総合的かつ
計画的な有効利用が促進されるよう必要な措置を講じなければならないこととし、地方公共団体は、この法律に基づく施策を適切かつ円滑に実施するものとすることとしております。なお、土地所有者等の
協力義務についても定めることとしております。
第二に、基本方針についてであります。国は、
駐留軍用地等の整理縮小に関する基本的な方針及びこれに関する目標について閣議の決定を経て定めることとしております。その策定に当たっては
沖縄県及び
関係市町村の意見を聞くとともに、これを公表することとしております。
第三に、返還実施
計画についてであります。防衛施設庁長官は、
駐留軍用地等について日米間で返還の合意がなされたとき、または自衛隊が使用しているものについてその用に供する必要がなくなったときは、速やかに土地所有者への返還の時期及び返還に当たっての措置等について、土地所
有者等の意見を聞いて返還実施
計画を定めなければならないこととしております。
第四に、
駐留軍用地等を土地所有者に返還する場合の措置についてであります。国は、
駐留軍用地等を土地所有者に返還する場合は、所有者の同意を得て返還される当該土地が
駐留軍用地等跡利用
計画に則し、有効かつ合理的な土地利用が可能な
状態となるよう必要な措置を講ずることとしております。
この場合、当該措置が賃貸借期間の満了の日までに完了しないときは、賃貸借期間満了の日の翌日から実際に返還される日までの間へ国が当該土地に支払っていた賃借料を基準とした返還遅延金を支払わなければならないこととしております。
さらに、
駐留軍用地等が返還される場合において、その返還予定地で土地区画整
理事業等が予定されているときは原状回復の措置を講じないで返還することができることとし、この場合には土地所有者等に対し損失補償を講じなければならないこととしております。
第五に、
駐留軍用地等跡利用
計画についてであります。この
計画は基本
計画及び市町村
計画に区分することとし、土地所有者等の意見を聞いて、基本
計画は
沖縄県知事が、市町村
計画は
関係市町村の長が定めることとしております。
なお、この
計画の
内容としては、道路、公園、学校等の公共施設の整備、水道、下水道等の
生活関連施設等の整備、農地開発等の産業振興に関する事項等について定めることとしております。
第六に、
駐留軍用地等跡利用
計画に基づく事業に要する経費については、国の負担または補助の割合について特例を設けることとし、その割合は、
沖縄県で施行される同種の事業についての国の負担または補助の割合に百分の百二十を乗じた割合とすることとしております。
なお、負担または補助の割合のない事業については、
予算の範囲内でその事業に要する経費について補助することができることとしております。また、この事業に要する地方公共団体の経費については地方債をもって充てることができることとし、この地方債の元利償還金については、地方交付税の基準財政需要額に算入する措置を予定しております。
第七に、その他の措置についてでありますが、この法律の目的が達成できるよう
駐留軍用地等跡利用
計画と他の
計画との調整措置、国有財産の無償または減額譲渡についての措置、跡利用促進事業に要する資金の確保等の措置、所得税、固定資産税等の軽減措置等について定めることとしております。なお、附則で
関係法律の整理等について定めることとしております。
以上が本法律案の
提案理由及びその概要でございますが、基地の返還と跡地の有効利用は
沖縄にとって
最大の課題となっておるし、これを推進していく屋台骨となる「軍転特措法案」の早期立法化は、百二十三万県民の総意となりつつあります。
何とぞ、慎重な御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げ、趣旨の説明を終わります。ありがとうございました。(拍手)