○国務大臣(
渡辺美智雄君) 時間の制約もございましょうから、かいつまんでポイントだけを
お話をいたしまして、それでは足らぬというときにはまた御
質問いただければ追加をして話をしたいと存じます。
今回の私の訪ソは、十四日、五日と訪日されるエリツィン大統領の訪日が成功だと、我が国にとってもロシアにとっても、そういうようにすることが
目的でございました。しかし、その場に至って意見が全く分かれちゃってというようなことでも困るし、
日本へ来て五回も六回も十時間以上も首脳会談をやるというようなやり方はいかがなものか、大体一致すべきところがあれば事前に一致をしておいた方がいいんじゃないかという話もいたしまして、その点については今まではロシア側も異議はないし、ぜひとも成果を得たいという点も異議はありません。
特に向こうは、今度の訪日というのは歴史上の大問題である、歴史的なものだということを大変強調されておりまして、その点を
日本もよく認識してくれと。これは我々もロシアが始まって以来初めてですから、ゴルバチョフ大統領が来たことがありますが、それはソ連時代であって、新生ロシアができてからそれは初めてですから、まさに歴史的なものであります。したがって、ゴルバチョフ大統領が来たときと同じではこれはだめなわけですから、それよりも前進をさせるということについて
お話をしました。彼らも同じようにそこは考えておるのであります。
しかしながら、大統領だけでなくて、我々はコズイレフ外務大臣とかれこれ三回、それからブルブリスという国務長官で随員にもなりますが、準備をやっておる担当の方がおります、その方とも話をいたしてきたんです。
大統領との話の点だけが問題が多少ありまして、ポイントからいうと、ともかくこの成功をおさめるためには向こうは領土、領土、領土ということを言わぬでもらいたいということですね。経済協力というような点から話に入ろうと言うのでございますが、我々といたしましては
日本で領土のことを一言も言わないというわけにもいかないわけでございますし、もともと北方四島は我が国固有の領土であるということについての認識をしていただければ、つまり主権の存在、
日本側に四島についての主権ありということを認めてもらえば、それはどういうふうにして引き渡すか、今までは一括即時とこう言っておったんですから、そこは柔軟に対応しましょうと申し上げた。
ところが、領土ということを言うことは、どうも
日本は最近我々に対して圧力をかけている、できる話もできなくなっちゃうと言わぬばかりでしてね。それで、サミット等においてもその国際的なところを回って
日本の主張を宣伝して国際的な圧力、包囲網というか、そういうものをかけようとしているんじゃないかということをおっしゃるから、いやそれは間違いですと、それは我々は、スターリン、ブレジネフ、フルシチョフの時代でも北方四島は我が国固有の領土、不法占拠、一括即時返還、こう言ってきているんですから。しかしながら、ロシアの現在の置かれている政治情勢等もかんがみまして、非常に苦しいようですから、それについては御相談に応じましょうと我々はトーンダウンをしちゃって話をしているので、圧力どころの騒ぎじゃなくて、こっちはトーンダウンをしているんだから、だからその点はちゃんと知っていただきたい。
もう
一つは、
日本は何にも協力しない、ロシアの復興、この困った立場でですね、一番協力が悪い、やってくれていないじゃないかということでした。その前に行ったときも言ったんですが、今度ももうほとんど何にもないとおっしゃるので、とんでもない、それは認識
不足じゃありませんかということで、こちらもぞろぞろといっぱい並べまして、一月にちゃんと私がもう五千万
ドルからの無償供与をやって、北方四島を初めみんなに人道的配慮から
国民の税金でミルクや医薬品を配って歩っているとか、あるいはロシアのチェルノブイル発電所が爆発して非常に被曝したりなんかしている人がおって、そういうものの救済にも協力しよう。
もう
一つは、技術協力もして再びああいう事件が起きないように世界でみんなで力を合わせてやろう。あるいは旧ソ連の科学者が逃げ出すというのでは困るから、これについてもヨーロッパ十一カ国で二千五百万
ドルだけれ
ども、
日本は一カ国だけで二千万
ドルをちゃんと出すことにしてやっておるとか。
それは国際的にも、IMFだって
日本は大株主だ、その
日本がIMFを支え、IMFの中でロシアの加入を賛成し、ロシアに対してもそれは六十億
ドルのルーブル安定
基金についても
日本はもうそれは結構でしょう、お貸ししましょう、こう言っているんじゃありませんか。IMFなんか金なんかないんだから、だからその余裕もない。そこで、第九次増資をやるについて、
日本の
財政当局もなかなか苦しい中でもそれはそれに応じて、アメリカ議会は反対だという中でアメリカも九次増資に応じる。みんながそうなって初めて
財源ができてロシアに貸せるというような話になってくるんであって、それは
日本が協力していないなんというのはとんでもないことですよ、それは。だから、これはこうこうしかじか言うだけ言わぬとわからぬからね、これは。言いたくもないんだけれ
ども、向こうがそう言うから、だからそういう話をして聞かしたんですよ。
パリ・クラブの話もしたり、それから一応来たときには一億
ドル、サインさえすればその
お金がすぐ出るように、食糧が買えるようになりますと、サインさえしてくれれば七億
ドルのガスの輸銀の貸し付けもできるように、これも
財政当局は本当に嫌な話なんだ、これ実際は。金をまだ払っていないので貸したくないんです、実際は。法律上からも、残金があるところへは貸さないというふうになっているそうだ。だから、それにもかかわら
ず超法規的措置に近いぐらいのことをやって、訪日を成功だというようにやろうとしているんじゃないですかと言ったんですよ。
しかし、これは全部できなかったのはロシア側の責任ですよ。ロシア側は、こうこうしかじかだと言うと、何だたったそればかりか、
日本の財政力から見たらちっちゃ過ぎるじゃないかという話になるんで、それは最初の突破口ですから、それができれば後は続々つながっていって、領土の話がその先も見えるような話になれば、もう後は続々、夢のようなとは言わなかったが非常に明るい、その何になりますということを申し上げて、それで帰ってきたんです。
大統領は、私の意見は事前に具体的にどうだこうだというんでなくて、それはコズイレフと詰めてもらっていいと、最後はそうなったんです。だけれ
ども、自分は
東京に行ったら二日目にその意見を言う、二日目に。二日目に言われてもう会談終わりになっちゃいますからね。これ。だから、事前に言ってもらって、そうすればいい共同宣言が出ますよ。突然言われたって、徹夜みたいな話になっちゃうから、なるべく早く言ってもらった方がいいですねということにはなっておるんです。それ以上のことは申し上げませんが、いずれにいたしましてもいろんな協定を結ぶという点が
幾つかまとまったのもございます。
それから、今言ったように、
日本の側はもう外務も大蔵も通産もみんな一緒になりまして、結局できるだけの協力はする、しかし我々の主張を放棄してしまう、それは絶対できない、これは。その点を明らかにしつつ、お互いに拡大均衡、お互いに歩み寄っていく、お互いが譲り合っていく、そういうふうにして日ロの間を未来の開けたものにしようじゃないか、この点は特にロシア
外務省は我々とほとんど同じなんです、考え方は。
人によってみんな違うことを言う人があって、確かに反対派があって、エリツィン大統領の足引っ張りがいっぱいいることは確か。足引っ張りなんて言っていいのかどうか知らぬが、まあ邪魔しているというか訪日さえも反対だというグループもあるわけです。そして領土返還を絶対だめだというのもありますしね、いろいろの人がいるんです。全く北方四島問題が政争の具に供されちゃっているというような
状況であることも確かでありますが、しかし、だからといって、全く進まないことでは意味のないことなので、何とかこれは、おいでになったときに、さらに根気よく、お互いに立場をよく理解しながら前進させる方向でやっていきたい。
それについては、やはり
日本側がばらばらになっては困るんですよ。
外務省の言っていること、ほかの言っていることが皆違うことを言い出しちゃってね、そういうことは絶対に困るものですから、ぜひともこちらも国論を統一して、そして一緒になって話をしていかないと、こういう交渉事はうまくいかない。ですから、
国民の各層の方々にも、我々の基本的な話はここで今
お話ししているわけですから、そういう点についての御理解と御協力を
お願いしたい、そう考えまして、少し突っ込んだ話をさせてもらった次第でございます。