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1992-09-09 第124回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年九月九日(水曜日)    午前十時十分開会     ―――――――――――――    委員異動  九月八日     辞任        補欠選任      岡  利定君    泉  信也君      久世 公堯君    西田 吉宏君  九月九日     辞任        補欠選任      木庭健太郎君    猪熊 重二君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        大渕 絹子君     理 事                沢田 一精君                鈴木 貞敏君                会田 長栄君                西野 康雄君                常松 克安君                高崎 裕子君     委 員                泉  信也君                大島 慶久君                佐藤 静雄君                清水嘉与子君                清水 達雄君                椎名 素夫君                永野 茂門君                西田 吉宏君                南野知惠子君                服部三男雄君                守住 有信君                矢野 哲朗君                中尾 則幸君                西岡瑠璃子君                堀  利和君                村田 誠醇君                猪熊 重二君                山下 栄一君                直嶋 正行君                井上 哲夫君                下村  泰君   国務大臣       法 務 大 臣  田原  隆君       外 務 大 臣  渡辺美智雄君       大 蔵 大 臣  羽田  孜君       文 部 大 臣  鳩山 邦夫君       厚 生 大 臣  山下 徳夫君       運 輸 大 臣  奥田 敬和君       建 設 大 臣  山崎  拓君       自 治 大 臣  塩川正十郎君       国 務 大 臣       (内閣官房長官) 加藤 紘一君       国 務 大 臣       (総務庁長官)  岩崎 純三君       国 務 大 臣       (防衛庁長官)  宮下 創平君       国 務 大 臣       (経済企画庁長       官)       野田  毅君         ―――――       会計検査院長   中村  清君         ―――――   事務局側       常任委員会専門       員        吉田 堯躬君   説明員       総理府国際平和       協力本部事務局  柳井 俊二君       長       防衛庁防衛局長  畠山  蕃君       防衛庁経理局長  宝珠山 昇君       法務省刑事局長  濱  邦久君       外務大臣官房審       議官       津守  滋君       外務大臣官房外       務参事官     高野 紀元君       外務省北米局長  佐藤 行雄君       外務省国際連合       局長       澁谷 治彦君       大蔵大臣官房審       議官       田波 耕治君       大蔵省主計局次       長        武藤 敏郎君       大蔵省証券局長  小川  是君       大蔵省銀行局長  寺村 信行君       大蔵省国際金融       局長       中平 幸典君       文部省体育局長  奥田與志清君       厚生省保健医療       局長       寺松  尚君       厚生省生活衛生       局長       柳沢健一郎君       厚生省薬務局長  岡光 序治君       厚生省社会・援       護局長      土井  豊君       厚生省保険局長  古川貞二郎君       中小企業庁長官  関   收君       運輸省鉄道局長  秦野  裕君       自治省行政局選       挙部長      吉田 弘正君       会計検査院事務       総局次長     安部  彪君       会計検査院事務       総局第一局長   阿部 杉人君       会計検査院事務       総局第二局長   小川 幸作君   参考人       日本銀行信用機       構局長      本間 忠世君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度  特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金  整理資金受払計算書平成年度政府関係機関  決算書(第百二十三回国会内閣提出) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百二十三回国会内閣提出) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百二十三回国会内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 大渕絹子

    委員長大渕絹子君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、岡利定君及び久世公堯君委員辞任され、その補欠として泉信也君及び西田吉宏君が選任されました。     ―――――――――――――  また、本日、木庭健太郎君が委員辞任され、その補欠として猪熊重二君が選任されました。
  3. 大渕絹子

    委員長大渕絹子君) 平成年度決算外二件を議題といたします。  本日は、前回に引き続き、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 村田誠醇

    村田誠醇君 私は、八月二十八日に発表になりました政府総合経済対策を中心にして質問をさせていただきます。それ以外に幾つかございますので、その案件の方から先に質問をさせていただきます。  イラクのクウェートへの侵攻に始まりました湾岸戦争で、日本政府は九十億ドル支出をしたわけでございます。これは出すことについてもいろいろ論議がございました。これだけの巨額なものを出しながら積算内容使途目的が全然不明じゃ ないかということで大分国会論議になりまして、使途が決まり次第国会等報告をするということになっておりましたけれども、それが現時点でどうなっているのか、少し御説明をいただきたいと思います。
  5. 佐藤行雄

    説明員佐藤行雄君) 先生の御指摘のとおり、国会審議過程におきまして、使途目的と申しますよりも結果の使用報告についてはしかるべき段階で御報告申し上げるということを御答弁申し上げた経緯がございます。  使途目的につきましては、実はこの前の国会審議過程幾つかのことを明らかにいたしておりまして、例えば九十億ドルについての目的については六項目ということを当時答弁申し上げた経緯があると承知いたしております。  そこで、その使用の結果はどうなったかということでありますが、結論から先に申し上げますと、目下湾岸平和基金からの報告を待っているところでございます。若干時間がたっておりますので我々も繰り返し督促いたしているわけでありますが、そういう経緯もありますので、そのおくれております理由について一、二申し上げたいと思います。  そもそもこの経費は、湾岸アラブ諸国理事会という国際機関、そこの中に設けられました湾岸平和基金日本から支出する、使途については我々からはそこの運営委員会に注文をつけて、そこの運営委員会各国との調整を図って支出する、そういう仕組みになっております。結果的には十六カ国に支出が行われております。  そこで、今その運営委員会各国からの報告を取りまとめて我々の方に報告してくる、こういう段階になっているわけでありますが、率直に申しまして、アラブ、この夏前後にありました回教の休暇を挟んでいろいろ作業がおくれているようでございます。夏前から我々督促をいたしておりまして、今後ともなるべく早く報告を受け取って、その上でしかるべく国会にも御報告したいと思っております。
  6. 村田誠醇

    村田誠醇君 これだけ多額な金を支出し、なおかつ金だけで汗を流さないといろいろ批判されているわけでございますから、相手のあることでございますから、ひとつ外交交渉を精力的にして一日も早く、国民の税金を使ったわけでございますから、使うことに関していろいろな論議はあったと思いますけれども、使った以上はきちんと国会報告をし、論議をもう一度起こすというふうにしていただきたいと思います。ぜひ外務省の方で努力をしていただきたいと思います。  それで、次の質問項目に移らせていただきたいんですが、順番が最初にお願いをしたのと少し違いまして、本年度税収不足がいろいろ言われておりまして、この点について御質問させていただきたいと思います。  ちまたでいろいろ言われておりますけれども財政当局としては本年度税収不足の額というんでしょうか、見込みというんでしょうか、あるいは見通しというんでしょうか、どのような数字判断をお持ちなのか、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  7. 田波耕治

    説明員田波耕治君) 平成年度税収動向でございますけれども、現在までに判明しておりますのは七月末までの税収でございます。それによりますと、累計で前年比で三・九%の減ということになっております。  ただ、四年度年度を通じました税収動向につきましては、まだ本格的な収納が始まったばかりでございまして、今後の税収動向であるとかあるいは経済情勢がどういうふうになっていくか等を見守っていくことになるわけでございますけれども、これまで出てまいりました三年度税収動向を見てみますと、三年度法人税あるいは源泉所得税につきましてはかなりの減収になっておりまして、その土台減影響は出てくるのではないか。また、去年の末に予算編成をしたわけですけれども、そのときの金利水準に比べますとさらに金利が低下しておるというようなこともございまして、利子源泉所得税への影響等がさらに出てくるということが考えられます。したがいまして、状況は極めて厳しいというふうに認識をしておるところでございます。
  8. 村田誠醇

    村田誠醇君 いろいろ数字を挙げてといいましょうか、数字を掲げて報道されておりますけれども、言われているような二兆円とか三兆円規模の税収不足が生じる可能性があるということなんでしょうか。
  9. 田波耕治

    説明員田波耕治君) ただいま申し上げましたように、まだ四年度税収については本格的収納が始まったばかりでございます。したがいまして、定性的に、今申し上げましたように法人税であるとかあるいは源泉所得税、そういったものが土台として三年度減ってしまった、そういう影響は受けるということはある程度言えると思いますけれども、今後出てまいります九月の中間決算動向、そういうものを見定めませんと具体的に申し上げる段階ではないというふうに申し上げざるを得ないと思います。
  10. 村田誠醇

    村田誠醇君 先の話で不足が出るのか出ないのかわからない、転ばぬ先のつえでの質問になってしまうわけですけれども、今のままで行くと恐らく多分税収不足が生じるんだろうと思われるわけです。  そうすると、これは東京都の例を出して申しわけないんですけれども東京都もバブル経済のときにはいろいろ税収がふえた。ふえたときは国を見習ってといいましょうか、いろいろ各種の基金を積み立てまして運営してきた。ここへ来まして、本年度に来て、やはり税収が落ち込んだことによりましてこの各種積み立てた基金の取り崩しをし始めたわけです。  国も同じでございまして、バブル経済税収がばっとふえたときにいろいろな基金を積み立てたわけでございます。そうすると、今度は税収不足が生じるのであれば、この余ったときに積み立てた基金を取り崩して一般財源に使うということが当然考えられるわけでございますが、その点についてはどのような御意見、御判断をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。
  11. 武藤敏郎

    説明員武藤敏郎君) ただいま御指摘がございましたように、例えば元年度におきまして芸術文化振興基金五百億円を補正出資しておりますし、スポーツ振興基金、これは二年度補正でございますけれども、二百五十億円の出資があります。  といったようなことで、幾つ基金の造成が行われたのは御指摘のとおりでございますが、例えば今お話を申し上げましたスポーツ振興基金について見ますと、スポーツに関する競技水準の向上というような目的があるわけでございますし、あるいは芸術文化振興基金につきましても同様な目的をそれぞれ担っておるわけでございますので、その目的運用等につきまして巌しく精査した上で措置したものでございます。  したがいまして、これらの基金につきましては、その創設目的に沿いまして、中長期的な視野から計画的かつ安定的に事業を行っていく必要があるというふうに考えておりまして、これらの基金を取り崩して財源の捻出を行うということは困難であるというふうに考えております。
  12. 村田誠醇

    村田誠醇君 今、御報告のありましたスポーツ振興基金について少しお聞きしたいんですけれども、これは政府出資二百五十億にプラス民間からの寄附金運用益で賄う、こういうことでございますけれども、この民間からの寄附金というのは目標額どのぐらいを設定して、現在どのくらい集まっているのか、ちょっと御説明いただきたいんですが。
  13. 奥田與志清

    説明員奥田與志清君) 先生お尋ねスポーツ振興基金でございますけれども平成二年の十二月に全会一致でお認めをいただきまして、政府出資金二百五十億、さらに民間からの拠出を鋭意お願いいたしております。非常に厳しい経済状況のもとでございますけれども、私どもは百億円を一応目標にいたしておりまして、今日までに既に約四十四億五千万円に上るお申し出をいただいておりまして、今後ともお願いをしていきたいと考えております。
  14. 村田誠醇

    村田誠醇君 民間からの寄附が百億円目標で、四十四億円余り。  それぞれいろいろな論議はあると思うんですけれども振興基金の使い方をこうやって資料をいただいて見てみますと、ヒマヤラ登山まで入っているんですよね。そうすると、具体的なものを挙げて申しわけないかもしれないんですけれども、果たしてこれがスポーツ振興の概念に入るのかなという気もするんです。そういう意味でこれがどうのこうのということじゃなくて、一般論として財政収支が黒字になっているときにはそれはどういう理由基金を積み立てるのか、それぞれ政策判断があると思うんですけれども税収不足が恐れられているときにはこういう積み立てたお金は使うということが私は原則じゃないかと思うんですよ。そうじゃなきゃ、積み立てた、黒になったときに使って、足りなくなったらまた増税かどこかからとってくればいいというような、そういう運営をされたのでは国民が大変迷惑をする。  特に苦しくなると、私は前から言っているんですけれども三つのところから大体大蔵省は手を突っ込んでお金をとってくる傾向があるんです。これはもう大臣御存じのとおり、一つは競馬のお金です。ここのところからばっととってくる。それからもう一つ外為特会からこれを持ってくる。三番目は税外収入として一番大きい日銀納付金をばっと多くとる。この三つが今までの補正の、補正といいましょうか、財源不足が生じたときの補てんの仕方なんです。  ところが、日銀に関しては、どうも金融界がこんな状態ですから、場合によったら公的資金を投入しなきゃいけないとか言われるとすると、こちらは当てにできない可能性が強い。一番可能性があるのが、円高に振れておりおります現在、外為特会が一番お金があるんだろうと思うんです。円高に振れていくに従って、この外為特会はどのくらいの利益が、利益と言っていいのかどうか、剰余金が、年度の途中でございますから確たることは言えないと思うんですが、一般論として、日本の円が対ドル当たり一円上がっていくと外為ではどのくらいの金額でもって利益といいましょうか、剰余金というんでしょうか、評価益が出てくるのか、もしおわかりになったらちょっと御説明をいただきたいんです。
  15. 中平幸典

    説明員中平幸典君) 突然のお尋ねでございまして、資料も何も手元にございませんので今の御質問に対しまして直接のお答えにはなりませんけれども外為特会外為証券というものを発行いたしまして借金をいたしまして、それをもって外貨を購入し、そしてそれを売買をしておるということでございまして、その外貨はまた預託をしたり運用しておるわけでございまして、その外為特会収益収支というのはいろんな状況、今先生お話にございましたような外貨が幾らになるかという為替レートの問題もありますし、内外の金利情勢もございます。しかも、その外貨というのはいろいろ外為市場で介入等いたしまして売買はいたしますけれども、実際には必要に応じて売買をするわけでございまして、全体の中では一部でもございますので、そういう面で言えば一円動くとどれだけになるかという、どれだけ収益が上がるかということを簡単に申し上げることはできないと思います。  それから、やや長い目で申しますと、その外貨は非常に以前から外為特会で保有しているわけでございまして、かつてはもっとずっと円安でございましたので、円安の時代に購入したドル、それがだんだん円高になってまいりますと減価してきている。それがときどきの状況円高になり円安になりということで動くということはございますけれども、したがいまして、短期間に外貨が動いたことによって直ちに外為特会としてこれだけ余裕が出てくるというものでないということも申し上げさせていただきたいと思います。
  16. 村田誠醇

    村田誠醇君 私が言ったこの三つのところから財源を手当てしないことを、あるいはそういう事態が起こらないことを希望しまして、次の問題に移らせていただきます。  これは会社によってそれぞれ名称が違うのですが、金貯蓄口座とかゴールドアカウントとかスーパーゴールドとかいろんな名前で呼ばれております金投資に関しての件についてちょっとお伺いしたいと思います。  現在、銀行の方はたしか取り扱いをほとんどしていないと思うんですが、証券会社の方の口座がまだ大分やっているんだろうと思いますが、この金投資口座の現在の販売高販売残高というんでしょうか、これはどのくらいになっているのか、あるいはこの金口座仕組みについて簡単にちょっと御説明をいただければと思うんです。
  17. 寺村信行

    説明員寺村信行君) まず、金融機関が行っております金投資口座につきまして御説明をさせていただきます。  顧客金融機関の窓口におきまして金地金買い付けると同時に、それを一定期間後、一週間から一年程度でございますけれども、その一定期間後に一定価格で売り戻すことを約する取引でございます。金融機関は、この金地金買い付け及び保管を商社等に委託いたしております。顧客にとりましては、この金の買い付け価格及びそれと同時に決定されます売り戻し価格の差が利益になる、こういう取引でございまして、金融機関金投資口座につきましては本年五月末の残高が約五億円程度となっております。
  18. 小川是

    説明員小川是君) 証券会社が行っております金貯蓄口座につきましても同様の仕組みでございますが、本年の五月末現在で約一兆四千億の残高が残っているところでございます。
  19. 村田誠醇

    村田誠醇君 これは事実関係を確認したいんですが、大蔵省が調査をした結果、多分これは証券会社だろうと思うんですが、金投資口座で集めた資金を金で運用するのではなくユーロ円大口定期で運用していた会社があるということが判明した、その結果いろいろな指導をした。こういう報道がされておりますけれども、この点について確認したいと思います。
  20. 小川是

    説明員小川是君) ただいまの御指摘の点につきましては、平成二年の十一月から、投資家保護の徹底を図るため、価格設定の問題であるとか、あるいは取引先である商社裏づけとなる金地金を保有していることを確認するため、商社から証券会社金地金預かり証を徴求、保存する、これを徹底するといったような指導証券会社に対して行ってまいりました。  今日、こうした通達による指導を明文化して、証券会社金貯蓄口座を扱うときには、ただいま申し上げた商社から金の預かりについてきちっとした証書を受け取っておくようにという形で進めているところでございます。
  21. 村田誠醇

    村田誠醇君 その指導、改善をした商社などに、金投資委託契約だけじゃなくて実際に金を購入したかどうか、その裏づけをしろという指導をしたのが今局長さんが言われた平成二年十一月からということでしたね。  そうすると、その前に、つまり金投資口座お金を集めていながら金を買わずに運営していたという会社があったからこういう指導をしたというふうに理解していいんですか。
  22. 小川是

    説明員小川是君) ただいまの点につきましては、そういったことがあるのではないかということが問題視されていたところから、私どもの方といたしまして証券会社指導することはできますが、商社等に対して直接かかわっていくことができません。したがいまして、当然のこととして従来から、二年十一月の以前から商社金地金を当然手当てをしていたはずでございますが、その確認を証券会社において整然と行うようにということを改めて指導したということでございます。
  23. 村田誠醇

    村田誠醇君 それではもう一つお尋ねしたいんですけれども、ここに参考のために大和銀行金投資口座の、これはもう銀行はやってないんですけれども、パンフレットをもらってきたんです。――三百グラム単位で申し込んでください、金の場合。各社それぞれ少し違うと思うんですけれども、大体最低単位が三百グラムでそれ以上は十グラムずつ買い足すという形でございます。現在の 金の一グラム当たり金額は定かでないんで、おわかりでしたら後で教えていただきたいんですけれども、現在の一グラム価格で割って、先ほど言われた金貯蓄金投資の五億円はちょっと端数でございますので除いて、一兆四千億に相当する金の地金現物で持っていないとこの仕組みは成り立たないわけですね。  金の地金を買ってそれを先物で半年か一年後に売る権利を同時に契約しているわけですから、一たん金は買ってくださいというのがこの仕組み原則なわけです。ですから、この金額に相当する金が、日本に輸入しているとは限りませんよ、ロンドンで保護預かりをしているんだろうと思います。金が、現物が動いていない、これはわかるんですけれども日本の金の輸入量に該当するものが出てこなければおかしいと思うんですね。輸入量から計算をしてこれに該当するだけの金があるんでしょうかねという質問なんです。  金の輸入量から見てみると、この金額に該当するだけの金が輸入されているのかどうか統計上極めて不明確なものですから、指導したということよりも、金の輸入量から判断してこれに該当するだけの量が果たして日本統計上に出てきているのかどうか、ちょっと御説明いただきたいと思う。
  24. 中平幸典

    説明員中平幸典君) 今、先生お話金貯蓄口座あるいは金投資口座取引が行われますと、先生お話のように、金が商社等を通じて購入される、あるいはそれが売却されるということが起こるわけでございますが、私ども国際収支統計というものをつくっておりまして、それでは国際収支統計上どういうふうになるかということでございますけれども、こういう金は実際に通関されるものではございません。つまり、日本現物が持ってこられるというのは通常ないわけでございまして、海外にある金を商社等が購入する、こういうことでございます。それで、そうしたものは通関統計にはあらわれませんけれども、所有権が購入者に移転いたしますので、国際収支統計上は輸入ということになります。  そういうものが実際にどうなっているかということでございますが、私ども統計金貯蓄口座ないしは金投資口座と直接の関係を持っているわけではございませんで、例えば商社自身がディーリングをされる、あるいは商社等がヘッジ取引をされる、そういうものも含めてのものになりますけれども、これは実際には通関されない金を投資用金と呼んでおりまして、そういう投資用金というものが相当規模で国際収支統計にあらわれてきております。例えば一九八九年度でいえばおよそ七十億ドル程度のものが購入増、つまり投資用金の輸入という形で計上されておりますし、最近の状態ではこれがむしろ売却されておりますので、そういう意味ではマイナスが立っている、こういうことになっているわけでございます。
  25. 村田誠醇

    村田誠醇君 事前に大蔵省から金の輸入量についで聞いたわけですけれども、これは全体の金の輸入でございまして、金投資だけじゃないと思うんですよね。工業用で使う、半導体に使う金の部分だとか装飾用に使う金だとか、ごちやまぜになって金の輸入実績という形で出た数字をいただいたんですね。これで見ると、九一年度で約二百六十トンぐらい、こういう数字でございますよね。  今、仮に三百グラム単位計算いたしますと、一兆四千億円ぐらい残高があるとすると、恐らく金地金計算からすれば、これは価格をどういうふうに設定するかということはありますよ、でも一グラムニ千円、これが高いのか安いのかは知りませんけれども、この時点で計算すれば約三百五十トンぐらいなきやおかしいんですよね。つまり、年間分の輸入量に相当する、あるいはそれ以上の部分が金投資口座として、多分ロンドンで保護預かりをされている金として出てくるわけです。ところが、通関ベースではこれは物が動いていないからわからないけれども、輸入実績の中には計上されてくるんでしょう。違うんですか。
  26. 中平幸典

    説明員中平幸典君) ただいま先生のおっしゃいましたその何トンというのは、ちょっと私ども手元に数字がございませんのでよくわかりませんが、仮にそれが通関統計数字であるといたしますと、それ自体は現物として日本が輸入しているものでございまして、それに加えて国際収支統計上にあらわれます金の輸入というのが出てくるわけでございます。その今の先生数字がどちらであるかはつまびらかにいたしませんが、恐らく通関統計上の数字ではないかなというふうに想像いたします。
  27. 村田誠醇

    村田誠醇君 それじゃ、これは調べていただけますか。これは我々も聞いたんですよね、工業用の金の部分なのか、装飾用の金の部分なのか、金投資口座用の金なのか。少なくとも三つ考えられるんですよ。しかし、そういう統計がないしわからない、こういうことなものですから、これは全体を含んだものという理解をして私は質問をしているわけでございます。  あるいは、これと同じぐらいの数量がロンドンの保護預かりの部分であるんですと言うなら、この金額と、一グラム当たり幾らにするかということはちょっと若干論議はあるとしても、現実にそっちに積み立てていますよということであれば、これは総体として問題はないということですけれども、その部分がないとすればこれは非常に重要な問題が発生してくる。つまり、一部で言われた、あるいは大蔵の調査の結果で、実際に金を買わないで金貯蓄口座を販売した業者がいるということになりますから、この金の輸入実績についての内訳、もしくはこれが通関ベースなのか、IMFベースでやるのか、やった数字なのか、その辺については後で詳しく説明していただけますか。
  28. 中平幸典

    説明員中平幸典君) 金の現物の輸入が一体通関統計上どういうものであるかということは、後刻御説明させていただきたいと思います。  ただ、一言つけ加えさせていただきますと、先ほど私も申し上げましたように、国際収支統計上で見まして、いわゆる投資用金の輸出入といいますか、投資用金の輸入によって最近の国際収支がかなり大きく動いております。それが影響を受けておるということは事実でございまして、そういう意味では、その投資用金の受け払いといいますか、そういうものは金貯蓄口座あるいは金投資口座というものの動きと関連しておるというふうに全体としては考えられますので、そういった事実があるということはここで申し上げておきたいと思います。
  29. 村田誠醇

    村田誠醇君 それでは、後で教えていただきたいと思います。  それでは、八月二十八日に発表になりました政府総合経済対策についてお聞きしたいと思います。  私も参議院選挙で各地にいろいろ応援演説等に行きましたら、いろいろな中小企業者の方から、資金を幾ら政府金融機関に申し込んでもなかなか借りたいときに貸してくれない、あるいは申し込みが殺到している状況で満杯に貸してくれない、あるいは中にはひどいのは、申し込んですべての書類が決裁が終わって了解がとれたんだけれども現実にお金が出てくるのはそれから三カ月待ってくれと、こういうことが言われるということで、中小企業の金融というものが大変締まっているというふうに言われまして、今回この政府の経済対策の中で中小企業の金融というものはかなり大幅に融資をしていただきました。これは中小企業にとって大変プラスになるだろうと思うわけです。  ところが、よく考えてみますと、昨年末に補正で手当てをし、本年度の予算でもかなり増額の手当てをし、なおかつ今回補正でさらに全体として手当てをしている。こういう状況の中で、つまりある意味においては滞貨分を一掃する程度かなという気もいたします。これで全体として中小企業金融が十分な資金が投入できたのかなという疑問も一方では起こるわけでございますが、その点について中小企業庁の方から見て、中小企業の金融手当てとしてはこのくらいでもう大丈夫というふうな判断をお持ちなのか、あるいはまだもうちょっとつけてほしかったということなのか、そ の辺についての御見解をお聞きしたいと思います。
  30. 関收

    説明員(関收君) 二点お答え申し上げたいと存じます。  まず、量のお話でございますが、去る八月二十八日に決定されました総合経済対策におきましては、中小企業向けの貸付枠といたしまして約一兆二千億円という規模を決定いただいておるわけでございます。  この中身でございますけれども一つは、政府系の中小企業金融機関の貸付枠、これは一企業当たりの貸付限度でございますが、これを大幅な別枠設定を行うということが第一点でございます。  それから第二点は、今のような状況で、先生指摘のように、資金繰りの困難化を来しております企業の方も大勢いらっしゃいますので、国と都道府県が協調いたしました特別の低利融資制度を創設しようという点が一つでございます。さらに、中小企業の方々が現在直面しております各種の構造的な問題、例えば時短促進のための省力化投資、あるいは環境対応のための投資、あるいは流通の活性化のための投資、こういったものについて財投金利よりも安い低利融資制度の創設を行いまして設備投資の促進を図ろうという二つの柱になっておるわけでございます。  私ども中小企業の金融を受け持っております中小企業金融公庫、国民金融公庫あるいは商工組合中央金庫の貸し付けの状況等から見て、これまでの実績を見ましても、今回御決定いただきました一兆二千億円という規模は、質におきましても量におきましても今後中小企業の皆様の御要望にこたえる枠であると私どもは考えております。  それから、さらにもう一点でございますが、具体的な貸し付け態度につきまして御指摘がございました。  先生御案内のとおり、去る三月三十一日に経済対策が策定されたわけでございますが、その際に大蔵省銀行局長名と中小企業庁長官名で政府金融機関に対しまして、中小企業金融の円滑化を図るため中小企業の実態に十分配慮しつつ適時適切な貸し出しを行うこと、中小企業者の個別の実態に応じ返済猶予を行うなど企業債務の条件変更についてもきめ細かい配慮を払うこと、担保の徴求に当たっては経営の実情に応じ弾力的に行うこと、この三点を通達でお願いをいたしているところでございます。具体的なお申し出に当たりましても、極力弾力的にこの線に沿って対応いたすように日ごろから政府系の金融機関には種々お願いいたしているところでございまして、これらを含めまして、その総枠におきましてもまた個々の対応におきましても、現在適切な対応をしていただいているものと私どもは理解しているところでございます。
  31. 村田誠醇

    村田誠醇君 政府系の金融機関の中で環境衛生金融公庫というのがあるわけでございますが、ここに対する苦情がはっきり言えば一番私どもに寄せられた中では多くございまして、先ほど言いましたように、一切の決裁が終わってから資金手当てを最後に受けるまで三カ月間待ってくれ、お金がないために三カ月間待ってくれという、これは自分のところが直接貸しじゃなくて代理貸しをしている関係上、代理貸しをしている取り扱い金融機関に通達まで流したということでございます。  ここに対して、つけた手当てで十分なのか。私どもも何回も苦情を言ったんですけれども、今回ついた措置はこれで十分なのか。特に環境衛生だけ、申しわけないんですが、今回の補正においてついた金額、あるいはこれで今までの滞貨を含めて十分なのかどうか、ひとつお聞きしたいと思います。
  32. 柳沢健一郎

    説明員柳沢健一郎君) 環境衛生金融公庫でございますけれども、申し込みから貸し付けまでの日数を大変要するというお話もございましたけれども、四年度の第一・四半期での実績によれば約四十七日間ということになっておりまして、前年に比べて若干の伸びはございますけれども、そういう程度でございます。  先ほど、通達を出したというようなお話もございますけれども、環境衛生金融公庫及び代理店である国民金融公庫からそのような通達は出されておりません。一般的に大口の資金貸し付けについて若干長期化していることは事実でございます。  なお、本年度環境衛生金融公庫に対しまして申し込みが例年に比べまして大変増加しているというのは御指摘のとおりでございます。この貸し付け申し込みに対しまして、できるだけ貸付資金を前倒しするというようなことなどによりまして対処して、いろいろ不足の起こらないようにこれからも指導してまいりたいと思っております。
  33. 村田誠醇

    村田誠醇君 今、通達が出ていないとおっしゃいましたけれども、国金の窓口に行って聞きましたら、そういう通達は出ているとはっきり言っているわけでございます。そのことを論争しようとは思いませんから、まあお金がついたのでほとんど問題は解決してきたんだろうと思います。  ただ、最後に一点お聞きしたいのは、中小企業の金融の申し込みが殺到すると同時に、事故による要するに倒産も片方でふえておりまして、焦げつきという事態も片方で起きてくるわけでございます。信用保証協会の代位弁済額は、平成四年の四月から七月までは前年同期比で二・二倍にぐっとふえているわけですね。片方で倒産が起こってきている。  そうしますと、保証協会や中小企業の信用保険公庫に対する手当てということも片方で考えておきませんと、お金を貸すだけでは回収できないという場合も起こってきますので、こちらの方に対する対応、手当てというのはどうなっているのか、簡単で結構でございますので、ちょっと。
  34. 関收

    説明員(関收君) 先生指摘のとおり、現下の経営状況から申しまして担保力が十分ではないということで、信用保証協会による債務保証の重要性が増しております。  また、御指摘のように、最近におきまして代位弁済額もふえておるわけでございますが、現在のところ私どもが考えておりますのは、これまで信用保証協会の経営基盤の強化に長年にわたって努力してきておりまして、その状況から見まして現在程度の保証承諾額の伸びに十分耐え得るものと考えております。  また、代位弁済の債務保証残高に対する比率も御指摘のように上昇いたしておりますが、過去非常に高かった時代に比べましてまだ低い水準にあるということから、現在の状況では、現在の経営基盤のもとで債務保証及び代位弁済に対応できるものと理解いたしております。  しかしながら、毎年着実に信用保証協会の経営基盤を強化することが重要であることも御指摘のとおりでございまして、本年度の予算におきましても二十七億円の信用保証協会の基金補助を計上いたしておりますし、平成年度の予算要求を今いたしているところでございます。そこにおきましても同額の信用保証協会に対する基金補助金を要求いたしているところでございまして、私どもとしては今後とも着実な形で経営基盤の強化にお手伝いをしてまいりたいと考えているところでございます。
  35. 村田誠醇

    村田誠醇君 あと投資減税のところについても聞こうかと思ったんですが、ちょっと全体の時間から考えると足りなくなりそうなので、申しわけないんですけれども飛ばさせていただきます。  本題であります今回の景気の悪化した一番の、最大の原因であります金融に関してお聞きをしたいと思います。  御存じのように、延滞債権というんでしょうか、不良債権というんでしょうか、かなりの高額に上っております。場合によったら金融機関が倒産するのではないかといううわさといいましょうか、おそれも言われているわけでございます。  そこで、日本の金融システムの安定を図るということが一番重要でございます。これは、個々の金融機関が大変暴走して地価の高騰を招いたとか、そういういろいろな批判は別といたしまして、ここまで来てしまうと日本の金融システムをどうやって安定させるかということが、これは一つ別問題として出てくるわけでございます。  そのときに、既存の体制でできております預金保険機構というのがこれに対応するものとして出てきているわけでございますが、約七千億ぐらいの金額しか積んでいない。そうしますと、金融機関が倒産ということになって預金者の取りつけ騒ぎが起こったときにこれで十分なんだろうか、この積んでおる金額で十分対応できるのかどうかという疑問も出てくるわけでございます。それがまず一つでございます。  二つ目は、確かに金融機関がいろんな暴走を起こした結果、金融機関の中の対応によって、優良なところと非常に内容的に経営が悪くなっているところと出てくるわけでございますけれども、リスクの度合いがいずれも違うのに同一の保険料率を適用している。これは護送船団方式で絶対につぶさないというときならわかるんですけれども金融機関がこれだけ資産内容といいましょうか、業績内容のばらつきが出てきている現状の中においては、保険料率を同一にするということが果たして適切なんだろうかということについて、これの監督官庁というんでしょうか、あるいはもっと広い意味での日本の金融制度全体のシステムに責任をお持ちの日本銀行――何かきょうは重要な会議のところわざわざこちらの会議の方に出てきてもらいまして申しわけないんですけれども日本銀行としては、預金保険機構に対して今私が言ったような点について一体どのようなお考え、あるいはどういうふうな活国策というんでしょうか、強化策というんでしょうかお持ちなのか、ちょっと御意見をお伺いしたいと思います。
  36. 本間忠世

    参考人(本間忠世君) お答えさせていただきたいと思います。  ただいま、先生から二つの御質問をいただいたというふうに理解いたしますが、一つは、現在の預金保険機構の全体の規模、特に集まっておりますお金、これを責任準備金とこういうふうに呼んでおるわけでございますが、これでこれから起こるかもしれない金融システムのいろいろな不安に対して十分な備えができているのかどうか、こういう最初の御質問でございます。  若干技術的な話にも入らせていただいて恐縮でございますが、現在の日本の預金保険機構の機能には、先生御承知のとおり、一つはまさに問題金融機関が起こりましたときにその倒産、それに対して預金者を救うという意味での保険金の支払い、まさにアメリカで言っておりますペイオフでございますが、こういう機能と、それからもう一つ、破綻をいたしました金融機関に対しまして、これを合併する金融機関に対して資金援助を行うという資金援助機能というものと大きく二つの機能があるわけでございます。特に、資金援助の方につきましては、いろいろな形態、やり方が予定されているわけでございます。貸し付けでありますとか、あるいはお金の預け入れでありますとか、あるいは贈与でありますとか、あるいは資産の買い取りでありますとか、これは預金保険機構としていろいろなやり方で破綻金融機関に対して出動し得るということが法律の上でも機能の上でも予定されているわけでございます。  さらに、資金の調達面、先生指摘の今の責任準備金の問題もございますが、資金調達面につきましては、五千億円の範囲の中で、日本銀行から資金の借り入れを預金保険機構ができるということになっております。日本銀行としましては、預金保険機構がただいま申し上げましたようなさまざまな形態あるいはファンクション、機能を活用、利用することによりまして、現在の責任準備金はことしの三月末で六千九百六十三億円、約七千億円ということになっておりますが、それに今申し上げました会員の場合でございますけれども日本銀行からの借入金五千億円を足しますと、約一兆二千億円のお金を預金保険機構としては活用し得るというふうになるわけでございます。これまでのところ、私どもといたしましては、預金保険機構の円滑な運営を図る上でこれで支障があるというふうには考えておりません。  なお、保険料率の引き上げということにつきましては、加盟金融機関のいろんな負担とかいろんなことも考えますと、なかなかこれは難しい問題があるのではないかというふうに考えております。  二番目の先生の御質問でございますが、現在の保険料率は加盟金融機関は御指摘のとおりすべて一律でございまして、○・○一二%ということでございますが、これに対しまして、危険の多いところには保険料率を高くしていいではないかという議論がございます。学界の一部にもございます。私どもそういう議論があることは承知しておりますが、現在までのところ主要な国の中でそうした考え方を実際に採用しております国はアメリカだけでございまして、しかもアメリカにおきましても、預金保険制度創立後六十年にわたる長い歴史の中で、先般その導入が決定されたというものでございます。  また、実務的にこれを考えてみましても、リスクに応じた保険料率を算定するという場合に、そもそも個別の金融機関の破綻のリスクをあらかじめ客観的に測定するということは非常に難しいという問題がございますし、それから相対的に高い保険料率が適用されます金融機関の信用不安をあおるというふうな心配も今度は当然出てくるわけでございます。  いろんなことを考えますと、私どもといたしましては、現状でこういうふうな意味での可変的な保険料率といいますか、そういうものを採用するあるいは導入するということは適当ではないのではなかろうかというふうに考えております。
  37. 村田誠醇

    村田誠醇君 大蔵省の方にお伺いをしたいんですけれども、この預金保険の機構、規模というんでしょうか、従業員というんでしょうか、体制というんでしょうか、何か十数人程度でやっておられる。極端な言い方をすれば、約七千億のお金の番だけをしている体制なんですね。システム上は、何かそれぞれ銀行に、金融機関に対して審査、検査ができるということにはなっているんですけれども、こんな十人ぐらいの程度の人間では何も役に立たない。当然この預金保険機構をもっと強化する必要があるんだろうと思うんですけれども、その点についてはどのようなお考えをお持ちなのかが一点。  それからもう一つ。これだけノンバンクあるいは住専等の不良債権を抱えて国際的にも日本銀行の資産評価というものが下がっている、ランクづけが下がっているときに、全体の金融機関のシステムを維持させるための頂点というのは日銀でございます。ところが、この日銀の根拠になっております日銀法というのが戦前につくられた法律、要するに国家総動員体制でもって戦時経済を賄うためにつくったこの日銀法が現在の日本の金融システムの一番トップにある法律でございます。これはもう明らかに時代おくれではないかと思うわけです。当然日銀法の改正をしないと、しないとといいましょうか、する時期に来ているんだろうと思うんですけれども、そのことについてと二点お伺いしたいと思います。
  38. 寺村信行

    説明員寺村信行君) まず、預金保険機構でございますが、これは保険料負担との兼ね合いもございまして、できるだけその組織を簡素なものとするようにしております。しかし、それだけでは本来果たすべき機能が果たせないのではないかという御質問だと思いますが、ただいま先生もお触れになりましたように、この金融機関を監督、検査いたしております大蔵省日本銀行、あるいは信用組合の場合は都道府県でございますが、そこに対しまして預金保険機構は必要な資料の提出を求めることができるということで、金融機関に関する必要な情報を取得するだけの措置が講じられております。  それから、さらに業務の円滑な遂行のために、預金保険法三十五条に基づきまして大蔵大臣の認可を受けまして、日本銀行または金融機関等に対しましてその業務の一部を委任することができるという体制が整っておりまして、このような体制で十分対応が可能であると考えているところでございます。  それから、二番目の日銀法の問題でございます が、これはこれまでもいろいろな議論がございまして、金融制度調査会におきましても検討なされてきたところでございますが、現段階では日銀法を改正する考えを持っていないところでございます。
  39. 村田誠醇

    村田誠醇君 それじゃ、個別具体的なものについてお聞きしたいんですけれども、土地の公的な買い上げが今いろいろ言われております。それは住専を持っている会社、土地といいましょうか、担保不動産を対象にしているわけでございますけれども、私どもであちらこちらにいろんな意見を聞きに行きましたら、確かに住宅専門会社も問題はあるんだけれども、もっと問題になっているのは、住宅専門会社が抵当証券という形で一般に抵当証券を売却していると、元利保証つきという形で売っていますということです。これは大和銀行に行って聞きましても、やはり自分のところで子会社があってやっていますと、こういうことでございます。  そうしますと、住宅金融専門会社が売っておりますこういう抵当証券が本体そのものが極めて現在危なくなってきている、あるいは金融機関金利減免等のお願いをしている、こういう状況のもとにおいて抵当証券の償還という点について、これは機関投資家だけじゃなくて一般の投資家が買っているんです。一般の消費者が買っているんですから、これは大変重要な問題だと思うんですけれども、この元利保証という部分、現在住専の会社ではこれが出したって絵そらごとみたいな感じになっているわけでございますけれども、抵当証券が元利で間違いなく保証されるという指導大蔵省としてはなさるんですか。それとも、これは一般債券と同じで、場合によって倒産をしたら取りっぱぐれてもしようがないんだということなのか。これは一般債券とは別の形で銀行に保証させるという、まあそこまで言い切れるかどうかというのは問題があると思うんですけれども、この元利保証という部門をどうやって担保するかということについては、どのようなお考えをお持ちなのか、ちょっとお聞きしたい。
  40. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 抵当証券の販売につきましては、抵当証券業の規制等に関する法律によりまして、投資家保護の観点から種々の規制が講じられているところでございます。  さらに、抵当証券は抵当権によって担保をされておりまして、その担保の評価につきましても、日本不動産鑑定協会の会員に対する通達によりまして、抵当証券の特性に配慮しまして、現況の評価を原則としておりまして、見込み評価を避けるなど、所要の措置を講じているところでございます。  さらに、抵当証券の原券は抵当証券保管機構において保管されておりまして、抵当証券保管機構が抵当証券業者にかわって投資家のために元利金の弁済を受けることもできると、このような仕組みになっているわけでございます。このように種々の投資家保護のための措置が講じられております。  それから、基本は、先ほどの住専、それから住宅専門会社の経営問題は別途の問題として今後も対応していくわけでございますが、抵当証券につきましては投資家保護の観点からこのような措置が講じられているところでございます。
  41. 村田誠醇

    村田誠醇君 住宅金融専門会社、これは八社あるわけですよね。だけれども、経営がおかしい、あるいは金利減免の要請が来ているのはそのうちの七社です。この七社のうち、それじゃ抵当証券を売却している現在残高、これはどのくらいあるんですか。
  42. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 平成四年三月末現在でございますが、四千六百二十六億円でございます。
  43. 村田誠醇

    村田誠醇君 その四千億強の資金は、その相手先つまり所有者は、機関投資家の方もいらっしゃると思いますけれども、大半は個人投資家が買っているわけでしょう。個人の方が住宅抵当証券を買っているわけですよね。そうすると、あなたが今説明したそういうシステムで、いや安全ですよ、こう言っても、住宅金融専門会社そのものが金融機関に対して金利減免等の措置を講じてほしいと言っているときに、本当に元本が返ってくるという保証があるんでしょうかね。片っ方で金利減免をお願いしておいて、片っ方には約束した利回りでもって確実に払いますという誓約を両方しているわけですよね。  ちょっとわからないんですけれども、その点については、住宅金融専門会社を母体行としての銀行がかばうという意味の中には、この債権の全額償還についても間違いなく確約されるということを意味しているのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  44. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 先ほども御答弁申し上げましたけれども、抵当証券は抵当権によって担保されておりまして、その抵当証券の原券が抵当証券保管機構に保管されておりますから、投資家が求める場合には抵当証券業者にかわって抵当証券保管機構が元利金の返済をすることができる、こういう仕組みの担保が講じられているということでございます。
  45. 村田誠醇

    村田誠醇君 だから、住宅金融専門会社が融資した相手先、これが焦げついちゃってお金が回収できない、だから銀行から借りたお金も返せませんから金利減免してくださいというのが今、住宅金融専門会社がそれぞれ金融機関に要請していることでしょう。そして、昨今の報道によると、この部分の土地について、公的な資金を含めてどう買い上げるかということが論争になっているわけですよね。つまり、システムとしては確かに銀行局長が言われるように安全な形にはなっているけれども、借りた当の債務者が倒産しちゃったりあるいはお金が払えないという状況のもとで大丈夫なんでしょうかねということですよ。  あるいは、これがもし一般債権と同じ扱いになりますよということであれば、住宅金融専門会社が倒産をしたら投資した一般投資家のお金はほとんど返ってこない。こういうことが起こってくると思うんですよね、元利保証と幾ら言ってみたところで。保証する会社そのものが倒産しちゃう、あるいは押さえた土地そのものが、担保として持っているかもしれないけれども、それが今の状況で売れない、あるいは債権額を全額回収できない、こういうことになると極めて不安定な状態に置かれている。  問題なのは、それだけじゃなくして、どんどんとこの現状のもとで住宅の抵当証券というものがまだ売られている。売っちゃいけないということを私は言っているんじゃなくて、こういう状況のもとでもまだ売られているという状況から見るとちょっと不安があるんではないかなと思うんですけれども、その点について、これは住宅金融専門会社の救済の方法とも絡みますけれども、特に抵当証券として直接一般投資家に売却したものについては大蔵省としてはどんな考え方、仕組みがそういうふうな安全性の仕組みになっているからこれ以上手当てする必要はないということなのかどうなのか、もう一度ちょっとお聞きしたいと思います。
  46. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 御質問の趣旨は、抵当証券で、抵当権で担保されている債権がおかしくなったときにどうなるんだろうかという御質問だと思いますが、今実は必要な場合には、仮にそういう事態が起きた場合にはその入れかえができるような仕組み一つできておりますのと、その後、具体的な担保の評価についても決して見込み評価を行ってはいけない。つまり、その抵当証券の対象になります債権が確実なものであるということを担保するための措置がいろいろ講ぜられているわけでございまして、その意味で抵当証券につきましては投資家保護のための各種の規制措置が講じられているということでございます。
  47. 村田誠醇

    村田誠醇君 それでは、住宅金融専門会社の現在の延滞債権というんですか、不良債権というんでしょうか、不良資産というのかしら、これはどのくらいあると大蔵省としては、何か先般緊急調査をなさっているというふうに聞いております。どのくらいの数字が出ているのか。  それから、それに絡んで金融機関、都銀で結構 でございますので、金融機関別の延滞債権を公表するのはいつごろになるのか。あるいは中間期で発表しなくていいとか言われておりますけれども、いつになったらこの中身を公表するのか、二つお聞きしたいと思います。
  48. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 最初の御質問は、今手元に資料を用意しておりませんのでちょっとお時間をいただきたいと思います。  それで、一般の金融機関の不良資産がどのぐらいあるかというお尋ねの方にまずお答えをさせていただきたいと存じますが、個々の金融機関が保有しております不良資産のディスクロージャーの問題でございます。  これは各金融機関によって実は不良資産の定義がまちまちでございます、それぞれの把握するものが。例えば、完全に倒産会社のものは確実に不良債権という認定ができるんですが、どの段階で、例えば利子の延滞がどのぐらいになったときに不良債権とみなすかとか、あるいは担保比、全体の債権のうち担保を除いたものをみなすとかそれぞれ実は定義がまちまちでございまして、これはディスクロージャーをやっている国でも、あるいは国によっても基準が違う。金融機関にとっても非常に基準がまちまちでございますので、これをばらばらにディスクローズするということはかえって一般国民に無用の誤解を与えるのではないかという問題がございます。  そういう問題がございますので、現在金融制度調査会におきまして金融機関のディスクロージャーに関する作業部会を設けまして、個々の金融機関によります不良資産のディスクロージャーのあり方につきまして御審議をいただいております。来年の三月末、今決算期末にできるだけその基準づくりが間に合うように今作業を急いでいるところでございまして、当局といたしましては、その結果を踏まえまして各金融機関が不良資産額のディスクロージャーを実施することを期待しているわけでございます。  しかし、それまでの間の措置といたしまして、今中間決算で都市銀行、長期信用銀行、信託銀行の不良資産額につきましてその概況を本年三月時点に一度取りまとめたこともございますので、その合計した額につきまして九月の中間決算時点での計数を取りまとめ、公表したいと考えているところでございます。  それから、住宅金融専門会社につきましての具体的な計数、実は公表しているところも完全にどの程度かというのは、今幾らであるという数字統計としても私ども入手していないところでございます。この前公表いたしましたのは、ある一定の何%以上、例えば延滞債権が三割以上のところは何社ということで、具体的に個々の住専会社が幾らであるというところまで私ども具体的には現在把握ができていないという状況でございます。
  49. 村田誠醇

    村田誠醇君 金融機関の不良資産の一番大きいのがノンバンクと住専に対する不良資産、こう言われておるわけでございますが、住宅金融専門会社八社中七社の救済についてその土地を買い上げる、現在そういう構想が進んでいると聞いておりますけれども、住宅金融専門会社の土地のみを買い上げるのか、それとももっと広げてやるのか。  それからもう一つ。これの再建策について、業界といいましょうか大蔵省は、母体責任主義ということで、親が責任を見ろ、こういうことを言っているわけでございますが、その方針について二つほどお聞きをしたいんです。  一つは、住宅金融専門会社の母体行、母体と呼ばれる中には証券会社も入っているわけです。自分のところが今かなり苦しい、こう言われているときに、一体この母体責任主義でいくとどういう責任を、責任といいましょうか支援責任を証券会社が負うのか。  それから、住宅金融専門会社の借り入れの内訳を見てみますと、母体行から借りているという比率よりもそれ以外から借りているという比率の方がはるかに大きい。具体的に言えば、農林中金系統の資金を借りているというのが圧倒的に多いわけです。こちらの部分の金利減免はしないで責任は、責任というんでしょうか、金利は払わないでおいてこっちだけ減免してくださいと言っても、最大の債権者がうんと言わないで効果があるのかという批判も出ているわけです。これは農中に責任を持たせろという意味じゃないですよ、住宅金融専門会社の農林中金系統の会社は優良なんですから。しかし、最大の貸し手である農林中央金庫がうんと言わないと再建策がまとまらない住宅金融会社がある、こう言われているわけですけれども、この農林中金の取り扱いも含めて、母体責任主義でもって大蔵省が住宅金融専門会社の救済に当たれという指導を現実になさっているのかどうか。あるいは母体責任主義というのは一体どんなことを含めて言っているのか、両方についてお聞きしたいと思います。
  50. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 住宅金融専門会社の問題は、ただいま先生から御指摘をいただきましたように、従来の金融機関の不良資産とは全くその性格を異にいたしております。つまり、関係している金融機関が極めて多数ある。しかもその利害関係が大変錯綜しているということでございます。したがいまして、あるノンバンクなり住宅金融専門会社の損失の処理の方式がその金融機関にとりまして他のノンバンクなり住宅金融専門会社の方式に必ずしも有利とはならないというような問題がございまして、なかなか合意形成が難しいという状況になっております。お互いにすくみ合っている状況でございます。  ただ、これは、すくみ合っていてはいつまでたっても不良資産の償却の処理は進まないということになりますので、私どもとしては、今金融機関に対しまして、金融機関の公共的な使命を認識されて、日本の金融システムの安定性を確保する観点からさらに御努力をお願いしたいと申し上げております。ただ、事柄の性質がそういう問題でございますので、ただいまお尋ねのような母体主義であるとか、そういうような一定の方向づけというのは行政当局として私どもはできない。あくまでも関係金融機関お話し合いを続けてできるだけ早い解決をしてください、こういう要請を繰り返してきているところでございます。
  51. 村田誠醇

    村田誠醇君 大蔵省のOBの方が住宅金融専門会社にかなり天下っているわけでございます。大蔵省の高官が多数天下っているにもかかわらず、経営が極めて悪い。だから絶対に大蔵省はつぶさないだろう、こういうことが業界で言われているわけでございます。こういう住宅金融専門会社は、これは同じノンバンクでも大蔵省の所管でございます。OBが天下っているから責任をとれと、こう言うわけではありませんけれども、経営のやり方について問題があったのではないか。ところが、なかなか大蔵省のOBの方が減らない。責任をとってやめるのかと思ったら、次の人が来てまたポストが確保されている。こんな状態では、一体大蔵省はどういう指導をしてきたのかということが疑われるわけでございます。  ただ、そんなことを言ってみたってしようがないんでしょうけれども、問題は、住宅金融専門会社の不良資産、これをどう処理するのか。政府の経済対策では「処理方針の早期確定と計画的・段階的処理」ということが書いてあります。基本的にどういうふうなスタンスでもって住宅金融専門会社の救済というんでしょうか、処理をしようとしているのか、この文句だけではわからない。もう一度簡単に言っていただけますか。
  52. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 不良資産の処理方針の早期確定、それから計画的、段階的な処理ということを当面の金融行政の運営方針にも掲げております趣旨につきまして御説明をさせていただきたいと存じます。  今回のバブル経済の崩壊に伴いまして、株価それから不動産価格の大幅な低下に伴いまして金融機関の内部蓄積の減少、それから不良資産の増大が発生したということでございます。これは高度成長期以降かつてないような事態でございまして、事態は大変厳しいという認識を持っているところでございます。しかも、多額に発生いたしました不良資産の処理が相当長期間に及ぶのではな いか。そういうところから金融システムに対する国民の不安感が醸成されまして、それがまた景気の回復の障害となるというようなことが危惧されているという認識を持っているところでございます。  問題はこの不良資産の処理でございますが、かなり長期間にわたるということは国民の皆様方かなりおわかりはいただけるのでございますが、この処理が一向に見えてこない。どういう形で金融機関がその処理をしていくんだということが見えてこない。それがまた不安感を醸成するということになりますので、とにかく個別の問題で早く処理方針をまず固める。そして、ある程度損失を確定し、確定した損失は計画的、段階的に時間がかかっても処理をしていくんだという方針が示されることが国民の金融システムに対する不安感を払拭するのに必要なことではないか、こういう認識で処理方針の早期確定と段階的、計画的処理という方針を出したところでございます。  それに従いまして、先ほど申しましたように個別問題、住宅金融専門会社に限らず他のノンバンク等におきましても不動産に関連いたします焦げつき債権が発生し、それが金融機関の不良資産の増大になっているということでございますので、それぞれ非常に多数の金融機関が関与しておりますけれども、まずは金融機関に汗を流していただいて、その処理方針を早くやっていただくという要請をしておりまして、現在それぞれの問題につきまして処理が進んでおります。  それから、その他の環境整備の問題といたしまして、担保不動産が流動化しないことが損失確定にならない、それによって段階的、計画的処理が行われないという問題もございますので、その流動化の方策あるいは急激に発生いたしました不良資産の税務上の処理の問題、これが今まで想定されなかったような事態が起きたわけでございますから、税務上の処理もその実態に合わせるようなそういう環境整備をしていく、こういう考え方で対応しているところでございます。
  53. 村田誠醇

    村田誠醇君 住宅金融専門会社の担保つきの不動産、これを買い上げるだけじゃなくして、幾つかのノンバンクのやつも対象になるんだろうと思うんですけれども、まず第一に努力しなきゃいけないのは銀行自身の努力だろうと思うんです。  私どもが見ているときに、一般の企業が左前になったときにどういう再建策をやるかといえば、自分の持っている資産、簿価と時価の落差の大きいやつを売却して負債を埋めていくということを一般的にやっているわけです。銀行の場合は株式の含み益と同時に土地の含み益も相当持っている。だれに聞いてもわかるとおり、駅前の一等地に持っているし、寮とかグラウンドだとか保養所だとかかなり広大な時価と簿価の差の大きい土地を所有しているはずでございます。これを売却させて利益を出してそして損失と相殺させる、このくらいのことをしてその上で初めて、ここまで努力したけれども金融システム上不安が生じる可能性があるので公的資金を導入してくれと言うのなら国民も納得できるかもしれぬ。そういう自助努力、自分の持っている資産を売却させる、そこまでして合理化させるという努力を大蔵省が片一方で指導しない限り、安易に公的な資金を導入されたのでは、これはもう国民からすればやり得、こういうことになるわけです。そういう点で、十二分にその辺について大蔵省指導をしていただきたいと思うわけです。  それからもう一つ。土地を買い上げる、これをどういうふうなシステムにするのか。今検討しているんだろうと思うんですけれども、抵当権が一社だけついているならいざ知らず、恐らく何社もついていると思うんです。そうすると、時価と抵当額との落差が、上についていりゃいいんでしょうけれども、下についている場合、通常の処理の仕方でいけば、第一抵当権者が自分の債権を全部とってしまえば二番手以下は何もとれないという現状が出てくるわけです。そうすると、共同買い上げでございますといったって一番抵当がくっついている人だけがもうかるという形になりますので、何らかの形が当然考えられているんだろうと思うんです。  そのときに、多分参考になるのが、石炭の会社をやったときの逆順位方式というんですか、それぞれ少しずつ負担をして、本来百億円とるべきところを七十五億円で我慢するという、落語で言えば三方一両損みたいな、そんなやり方をしようということも一部ではささやかれておるわけでございますけれども、どっこいこれもまた税法上何かいろいろ支障があるということでございます。買い上げた土地が高値安定でもっては困るわけですね。流通させるだけじゃなくて、低くならなければこれは意味を持たない。そういう意味で、ぜひ大蔵省に公的な資金を片一方で投入する前提条件と地価が不当に高値で安定しないように行政指導をしていただきたい。  そこで、土地の問題で一、二お聞きしたいんです。  一民間の、まあ金融機関といえども民間企業でございます。民間企業が暴走したその後始末を公的な資金でやってくれと言うのであれば、本来、国民の税金を使って国鉄の長期債務を賄ってきたわけでございます。国鉄清算事業団の土地を売却し、あるいは株式を上場して売却して税金を返す、まあ税金を返すといいましょうか、財投の部分を返す、こういうことになるわけですよね。こちらの方を優先させるのが当然だと思うんですよ。民間企業をどう救うよりも、国の資金を投入したものを優先するのが当然だと思うんですが、問題は、駅前の一等地にあるあるいは広さも十二分にある国鉄の用地、それですら売れない状況でございます。そういう意味で、旧国鉄の土地の処分がどんなふうな状況になっているのか、時間がないのでかいつまんで現状だけ御説明いただけますか。
  54. 秦野裕

    説明員(秦野裕君) 御説明いたします。  現在、国鉄の清算事業団の長期債務が二十六兆強でございます。これを可能な限り減らしてまいりますために土地あるいは株式について早急な処分を推進しておるところでございますが、ただいま先生指摘の土地につきましては 当校いわゆる土地の基盤整備と申しますか、土地をある程度整備した上で売却するということで若干手続がかかりましたことと、それから地価の高騰になるべく刺激を与えないというような配慮もございまして若干その売却がおくれておる状況でございます。ただ、このたび総合経済対策におきまして、地方公共団体の用地の先行取得につきまして財政上の支援をしていただくことも決まりました。また、私どもの方も随意契約につきまして要件の緩和をする、あるいは競争入札の場合の上限価格つきの競争入札を行うといったようないろいろの施策を講じておりまして、可能な限り速やかに土地を処分いたしまして債務の減少に努めたいというふうに考えている次第でございます。
  55. 村田誠醇

    村田誠醇君 そこで、先ほど言いましたように、土地が高値で安定しないようにということで政府では総量規制を実施し、それが効果があったということで解除したわけでございますが、最近になりまして業種別の貸し出しの状況を見てみると不動産向けというものが急激にまたふえてきている、そういう状況があるわけですね。これについてはどういうふうな認識をお持ちなのか。あるいはこれがこのままの伸び率が出てくると再び地価が高騰するのではないか、あるいはもしくはそれを防ぐためのトリガーの方式を採用する必要があるのか。トリガーの方式の説明を、前文では土地の高騰が生じるおそれがある場合という前提条件がくっついていますから、一定の率をただ超えただけではやらないようになっているみたいなんですけれども、その点についてはどのような御判断をなさっているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  56. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 二つお答えさせていただきます。  担保不動産の流動化方策が講ぜられることによって地価が上がるおそれはないかという趣旨の御質問がございましたが、当然そのときには適正な時価を用いる必要があると考えておりまして、 仮にこのような施策が実施されても、地価を下支えするということをねらっているのではなくて現在の取引状況に照らし適正な時価が実現する、そういう仕組みを考えていくという考えでおります。  それから、トリガー方式の問題でございますが、御指摘のように、そのような事態が起きた場合には当然再び発動するということになっておりますが、現段階ではそのような認識を持っておりません。  それから、最近、金融機関の不動産関連の貸し出しが若干でございますが伸びております。これは具体的な計数がはっきりと把握はできませんが、金融機関のヒアリングによりますと、地方公共団体の先行取得等にかかわる融資が出ているというふうに聞いているところでございます。
  57. 村田誠醇

    村田誠醇君 最後の、地方公社向けの貸し出しがふえている、だから総体として不動産の貸し出しがふえている。こういう説明でございました。  ということは、逆に言うと地方公共団体の用地の先行取得が進んでいるという裏づけなわけですよね、資金的にしているわけですから。つまり、地方公共団体はもう買えるだけどんどん民間金融機関からお金を借りて先行取得しているのにさらに地方自治体で買え買えと言うのは、果たして余力があるのかなという気もいたします。でも、ちょっと時間の関係でそれをやっているとほかに行けなくなっちゃいますので、株式の方についてお伺いしたいと思うんです。  どうも政府の対策を見ていると、我々には少しわかりづらい点がございます。なぜかというと、株式市況対策、株式市場対策というのは、別に値段が下がったからどうの上がったからどうのやるという性質のものでは僕はないと思うんです。そのときの経済状態に応じて株というのは上がったり下がったりする性質のものでございます。ただ、極端になってはそれはいけないという点においては同じだと思うんです。  それでは、何でこう急激に上がったり下がったりするのかといえば、株式を持ち合いをしていることで流通株が少ないから、上がったり下がったりが急激に起こってくるわけです。品薄のところに大量の資金を投入して買い占めを行えば、当然株というのは上がってくる。こういうことでございますので、株価を上げたり下げたりすることが市況対策じゃなくて、市場に出てくる株式が、株式数というんでしょうか、流通株が安定的に出てきて、それが一定の形で取引がされて初めて市場のボリュームが膨らんで安定してくる。それには当然個人が参加してこない限りはだめだということがもうはっきりしているわけでございます。  この乱高下を繰り返している一つ理由として、高値に上がってきたから余り皆さん言わなくなっちゃったんですけれども、株式の先物取引による乱高下というのが言われているわけです。特に、大阪証券市場に上場されています日経二二五というものがこれは非常に問題があると言われている。これは我々だけじゃなくして、よそ様の政党なんで正確に言わなければいけないんでしょうけれども、自民党の中の対策委員会でつくられた案の中にも日経二二五のことについて銘柄を二百二十五から五百にふやせと、こう言っているわけです。関係者に聞きますと、この日経二二五では株価操縦が極めて簡単にできるんだ、こういうことで反対だ、商品性を直してほしいという希望がかなり強く出てきている。  これに対して証券局長は、九月三日の大阪での、それぞれ業界代表というんですか、の中では、一部に出ている先物の商品見直しの論議が適当でない、こういうふうに言っているわけですけれども、この点の真意について、あるいは見解についてお聞きしたいと思います。
  58. 小川是

    説明員小川是君) 株価指数先物取引につきましては、昭和六十三年に導入されて、その後取引量は順調に拡大してきております。他方、現物市場の方につきましては平成二年以降極めて軟調に推移しております。そうした中で、先物取引が心理面あるいは裁定取引等を通じて現物市場に大きく影響を与えているのではないかという御指摘がございます。  そうした中で、そういう御指摘も踏まえながらこれまで先物取引制度について累次改善措置を講じてまいりました。また、東京証券取引所、大阪証券取引所、それぞれ先物取引等に関する市場管理あるいは取引制度、商品性のあり方等について幅広く検討を行ってきているところでございます。  この点につきまして、大蔵省といたしましては、両市場、つまり現物市場、先物市場、両市場の健全な発展を図る観点から、先物取引のあり方につき関係者から幅広く意見を聞きつつ検討いたしたいと存じておりまして、先日の八月二十八日の総合経済対策につきましても、先物取引のあり方について、「現物・先物両市場の健全な発展を図る観点から、先物取引等に関し、市場管理、取引制度、商品性の在り方等について幅広く関係者の意見を聴きつつ検討する。」ということで、この問題を検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  59. 村田誠醇

    村田誠醇君 この日経二二五というのが平均株価を使っているために、しかもそれも単純平均を使っているというところが一番の問題点だと、こう業界では言われているわけです。東証がやっているTOPIXは加重平均を使っているから、これを市場で操作するというのはなかなか大変だと言われているけれども、単純平均の数値ならこれは極めて簡単に数値を動かすことができる。現物市場を少し動かせば先物の数字がすぐ変わる、こういうことができる。したがって相場操縦性が極めて強い商品である。その強い最大の理由は単純平均をしていることだ、あるいは銘柄数が非常に少ないことだ、二百二十五という銘柄しか指定していないところに問題があるんだということを言っているわけです。これについては皆さんの意見を聞いて決めますというんですか、それとも改善するということについてみんなの意見を聞くということなんでしょうか、その辺についてはどのようにお考えなんでしょうか。
  60. 小川是

    説明員小川是君) ただいまの点につきましては、先物取引がちょうどこの株式市況が例のないほど活況を呈した中で導入されてきた経緯、そしてその反動として、非常に現物市場が細っていく中で先物市場の担う機能が非常に強く意識されて取引が活発化してきたという経緯、そうした経緯を踏まえながら、今後の両市場のあり方としてどうあるのが適切かということを十分慎重に検討する必要があると存じます。  御指摘がありましたように、日経二二五はそもそも単純平均であるというところから、そうした問題の指摘があるということは私どもも承知いたしております。片方、取引の対象となる商品性という観点からしますと、関係者にとってのなじみであるとか、あるいはわかりやすさといったような点もあるわけでございます。そうしたもろもろの問題を総合的に関係者の方から意見を伺った上で、御指摘のような問題も含めて改善の方向を模索してまいりたい、こう考えているわけでございます。
  61. 村田誠醇

    村田誠醇君 これは新聞報道なもので詳しく、詳しくといっても時間がないんですけれども、お聞きをしたいんですけれども、証券監督者国際機構が、この株式の先物取引による世界的な市場の動揺を未然に防ぐための措置をそれぞれで講じよう、こういうことがありまして、そのうち七つの項目で考慮しなきゃいけない、こういうことが言われている。その中に、採用の銘柄数、要するに銘柄が少ないと数値が動かされる、あるいは株価指数の算出の方法、これは単純平均か加重平均か、要するに簡単にやれるものかどうかということも含めて七項目挙げているわけですね。これは日本も入っているし、当然日本が先物、今私が聞いているこの日経二二五を見てみますと、株価指数の算出の方法だとか銘柄の採用数等において明らかに検討の対象に、国際的にもこういう相場操縦性の極めて高いような商品を先物指数として取り上げることについては論議して、多分これは規制しようという意味だと思うんですけれども、一体こ ことの絡みの中で日経二二五をどのような取り扱いをなさるのか、お聞きしたいと思います。
  62. 小川是

    説明員小川是君) ただいまお話しのありましたのは、IOSCOという証券監督者が国際的に集まって証券取引について意見交換をしているところでございます。先物の商品性の問題あるいは市場が非常に乱高下したときにもとの市場とそれを使って派生商品を取引している市場との連携の問題といったようなことについて専門家を集めまして会議をやってまいりました。その会議は、実は私ども証券局から参加して議論の取りまとめに当たってまいったところでございます。  商品性の問題につきまして、今御指摘がありました銘柄数であるとか指数算出方法であるとかいうものについて今後国際的にこうしたことをやっていくときの指針を取りまとめつつあることも、そのとおりでございます。  したがいまして、そうした考え方はある程度共通した考え方でございまして、問題は現在行われておりますTOPIXの先物あるいは日経二二五の先物の具体的な商品性に当てはめるについて妥当かどうかということでございますから、本日御質問のありましたような点につきましてもまさに関係者からさまざま御意見があるわけでございますから、それを十分聴収いたしまして、よりょい商品あるいは市場取引が行われるように対応してまいりたいと考えているわけでございます。
  63. 村田誠醇

    村田誠醇君 時間も参りましたので最後にしたいんですけれども、市場の関係者の中ではこの日経二二五の商品性については極めて意図的に数値をいじることができる、あるいはやっているということで言われているわけでございますので、少なくとも取引上、透明性、公平性を保つためにも、そういうことが起こりやすいような商品の内容であるならば、中身をぜひ改善するということをお願いしたいわけでございます。  最後に、長々経企庁に申しわけございません。この経済政策の取りまとめが経企庁だということでございますので、特に具体的なことがなかったので申しわけないんですけれども、いろいろの経済見通しあるいはその原因、対策について、これで出てきたわけでございます。しかし、一番大切なのはこれを早目に国会にかけて、景気が想定したよりも悪くならないように早目に回復するためには国会で早く論議し、そして必要な措置をとらなければいけないということが当然でございます。手を打つのが遅くなれば、場合によっては経済がもっと予想よりも悪化してしまうかもしれない。  そういう意味では、一刻も早く補正予算を国会に提出して国会が開かれなきゃいけないわけです。早期に国会を私どもは開催をしなければいけない、そして補正関連のものを審議しなきゃいけない。もちろん佐川もあります、PKOの問題もある。いろんな問題がありますけれども、そういうものを含めて国会でひとつ論議を早目にしなければいけないと思うわけです。  したがって、補正予算を早く上げてほしい、景気対策をするためにそれぞれ取りまとめをなさった所管庁としてどのような今御意見をお持ちなのか、それを経企庁長官にお聞きいたしまして、私の時間が参りましたのでこれで終わらせていただきます。
  64. 野田毅

    ○国務大臣(野田毅君) 先ほど来、非常に専門的な分野にまでわたっていろいろ突っ込んだ御議論、敬意を表しながら拝聴いたしておりました。  今回、多くの皆さんの御理解を得て従来にない抜本的な総合経済対策を取りまとめさせていただきまして、一刻も早くこれによって、やはり市場経済下においては民間部門が経済の主たる担い手であるわけですから、民間部門の皆さんが今日一生懸命リストラに努めておられるわけですけれども、さらにそれを徹底せられると同時に、ひとつ将来に向けて自信を持って取り組んでいっていただきたいと念願いたしております。  そこで、今回の対策ができるだけ速やかに実施に移されるということが極めて肝要であるということは御指摘のとおりでありますので、そういった点で今回の対策の中身をチェックしていただきますと、かなりの部分が実際問題、補正予算の成立を待たずに執行に移れるという、例えば税制上の措置もそうでありますし、あるいは財投の追加などにおいてもそうでございます。また、九月に入りまして各都道府県議会など地方議会が開催されておりますから、そういった中で地方公共団体の行われる事業などによりましてはこの地方議会が終わると同時に実施に移される、こういう部分もあるわけであります。  また、公共事業系統、いわゆる補正予算絡みの問題につきましては、基本的には本年度当初で予定をいたしております公共事業の上半期で七五%を超えるように前倒しの契約をお願いしておるわけですが、いわゆる下半期における残事業、これが二五%程度残っておる。したがって、その残事業を下半期においてもさらに前倒しをしてできるだけ早期に事業をやっていただく。いわば切れ目のないようにやってもらうということでございますと、今すぐ補正予算が成立しなければならないということではない。もちろん補正予算ができるだけ速やかに成立して執行態勢に入らなければならぬのでありますが、補正予算の編成そのものにつきましては、税収見通しについて御質疑がありましたように、若干補正予算の歳入見積もりについて、今まだ中間決算が終わっていない、まだ九月、進行中であるわけであります。そういったことをも念頭に置いて、できるだけ正確な税収、歳入見積もりをもやってもらわないとまた補正予算ができないわけです。  そういった点で、今大蔵省で鋭意御努力をいただいているわけですが、補正予算ができました暁にはできるだけ速やかにこれを成立させていただいて、実施に移させていただくということをぜひとも我々はお願いを申し上げたいと思っております。
  65. 大渕絹子

    委員長大渕絹子君) 関連質疑を許します。会田長栄君。
  66. 会田長栄

    ○会田長栄君 私は、大蔵省総合経済対策の問題で村田委員に関連をして、以下簡潔に質問いたします。  その一つは、銀行金融機関など焦げつき不動産買い上げ政策の問題について三点お尋ねいたします。  もちろん、金融システムに対する不安を取り除くためという大義名分のもとに不動産の買い上げ機関を設立するということを閣議で決定したとお聞きします。金融機関が抱えている不良債券の担保に入っている不動産を買い取って資金を流動化させる、銀行の健全経営を目指すという内容だとお聞きしています。もちろん、全国銀行協会が中心になりまして、大蔵省初め政府がてこ入れをする策だと聞いています。  そこで、私がお尋ねしたい第一点は、よく漫才のせりふに、赤信号みんなで渡れば怖くない、こういうせりふがあります。不良債権みんなで抱えれば怖くない、こういう指摘のあることも事実であります。したがって、何が何でも救済するというのではこれは筋が通らないだろうと私も思う。  そこで、自己責任というものをどう説明してもらうのか、あるいは大蔵省が求めているのかということが第一点でございます。
  67. 寺村信行

    説明員寺村信行君) 不動産の流動化方策についてのお尋ねでございます。  この担保不動産の流動化方策について検討を急いでおります趣旨は、金融機関の不良資産の処理が進まないことが金融システムヘの不安感を醸成している、そしてそれがひいては景気回復を図る上での障害となっている、このような御議論を踏まえまして金融機関の不良資産の処理方針を早期に確定し、その計画的、段階的処理を図るためにいろいろな環境整備を行う。その一つといたしまして、金融機関の担保不動産を流動化させ、それによって不良資産の処理方針を早期に確定させることが必要だと考えたからでございます。  このような背景のもとで、当局といたしましては、民間金融機関に対しまして担保不動産の流動化を図るための方策につきまして早急な検討を要 請したところでございまして、民間金融機関においてもできるだけ早くこの具体的な方策を見出すべく検討を急いでおります。  ただ、これはまさに委員指摘のとおり、担保不動産の流動化に当たりましては、あくまでも民間金融機関の自己責任原則原則として、自主的な努力によって仕組みがつくられるということが基本であると考えているところでございまして、公的資金等につきまして私どももまた金融機関も検討はしていないところでございます。
  68. 会田長栄

    ○会田長栄君 もちろん、これは土地神話を信奉いたしましてそれぞれの金融機関などが一二〇%融資して買い入れたもので、土地が値下がりしてどうにもならぬというところでてこ入れをしていくという状況でございますから、当然そのことが第一だと思っておりますので、その点は厳しく受けとめて対応してもらいたいと、こう思います。  それからもう一つは、何としても金融機関などが抱えている不良債権という問題についてどのぐらいあるのかというのはわからないんですね、これ。先ほど局長がお答えになったように、それぞれの銀行の基準というものが違いましてなかなか集約できないと、こういうことでありますから、集約できないのではこれは手の打ちようがないということも事実でありますね。  そこで、私が気になっている一つは、今金融機関等でささやかれている言葉は、不良債権というのは大体六カ月だとされている。六カ月過ぎれば大体この範疇に入るのではないかというおおよその定義になっている。したがって、五カ月と三十日の日に追い貸しをして不良債権の範疇に入らないようにということで大分気を使っているらしいんです。  そういうところで、先ほどの答弁からいうと、どのぐらいあるかということは集約できないと、こういうことでありますが、見通しとしてかつて大蔵省関係者が七兆円から八兆円あるんではないのかという意見が出たり、あるいは民間の調査機関がデータとして発表しているのは、とんでもない、七兆、八兆どころか三十兆を超すことは間違いないだろう、こういうことまで言われているわけでありますから、そのデータを定義と関連させて、これを厳密に本当に当初の目的どおり達成されるようにぜひしてほしいということでありますが、この点について大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  69. 寺村信行

    説明員寺村信行君) ただいま七兆円という御質問ございましたが、これは本年三月末時点で都市銀行、長期信用銀行、信託銀行から利息が六カ月以上未収となっております貸出金についてヒアリングを行いました。その結果として、貸出金総額約四百兆円に対しおおむね七、八兆円、そのうち担保保証でカバーされない貸出金は二、三兆円となっているということを国会でも御説明した経緯がございます。  三年度末の状況につきまして概算で把握したものでございますが、その後計数が確定いたしましたところでは、七兆九千九百二十七億円、それから担保保証でカバーされない貸出金が二兆五千六百十九億円ということとなっております。その後、この額は増加をしていると私どもは考えております。この九月中間決算時点での都市銀行、長期信用銀行、信託銀行につきましてもこのような方式で概況をまとめまして公表することを考えているところでございます。  さらに、お尋ねのように、新聞報道等によりまして当局が公表した以外のいろいろな不良債権についてのいろいろな推計が報道をされております。これは、先ほども申し上げましたように、不良債権の定義というのはまちまちでございまして、人によって自分の定義によればいろいろな金額が出てくると思います。しかも、個々の金融機関に見ましても、例えば特定の貸国債権が最終的に返済不能になるかどうかというのは借入企業が問題を抱えた場合の債権の見通し等に大きく依存するものでございまして、関係者はその返済確保のためにさまざまな検討、交渉、協議を重ねるのが通例でございます。このような努力によって返済の見通しがっくこともございまして、一概にいろいろな推計の計数がそのまま例えばその損失として確定されるという性格のものでもございません。  当局といたしましては、そのような努力が現在各金融機関におきましてなされている状況でございまして、個々の貸国債権の最終的な回収可能性までを織り込んだ問題債権、例えばいろいろな評論家の方とか個別の御自分のお考えで数字を公表されることはございますが、当局としてその具体的なケースを把握するということはなかなかできないという状況でございまして、ただいま御説明を申し上げましたように、この三月時点で公表いたしましたのと同じ方式によりまして九月中間決算時点の概況を取りまとめ、公表をいたしたいと考えているところでございます。
  70. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは三つ目に、これは大臣に、他の省庁と関係しますから最後に御所見を承りたい。  今度の総合経済対策の中で、実は一番私が忘れてはならない肝心なところというのは家庭経済の中の視点というものをどうするかだ、こう思っています。その点では大変弱いと、こう思います。どうしても今日の経済不況というのを乗り切っていく一つというのは、これ何としても家庭経済を潤すための所得税減税であろう。これが強固にこの計画の中に入らないところで皆さんの力が強く出ている、この点について一つ。私は、所得税減税というものは当然行って、勤労国民すべてがこの経済不況を脱するための決意を示した方がいいという点で、この問題をお尋ねいたします。  二つ目の点は、年金生活者対策、この点についてやっぱり欠けている。これは、預貯金の金利が引き下がっているでしょう。年金は思うように上がらないでしょう。そういう中にあって、一体どのように生活を支えていったらいいのかというのも一つ。  もう一つは、意外とこの不況の中で労働者の首切りが進行しているんですよ。不思議な話ですよ。総合経済対策を立てて活性化を目指すと言っているのに、一方では労働者の首切りがそれぞれの企業によって進行している。この点の政治的対策というものもどうも弱い。弱いというよりは欠けているというようなことがあって、総合的にこれから政府として検討していく場合に一体どうなんだろうか、こういうことを含めてひとつ御所見を大臣から伺って、この問題は終わりたい。
  71. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 今、御指摘のございました三つの点でございますけれども、家庭経済からの視点、そういったことを考えたときに所得減税をすべきであろうという御指摘でありますけれども、今度の総合経済対策の中には所得減税は確かに入ってございません。  これは、私どもやっぱりマクロ経済というのは全体的に大きくきちんと成長していく、これが確保される中で国民も全体が潤っていくということになろうと思っております。そして、特に所得減税をやるということになりますと、当然この代替の財源といいますか、これを補充するところの財源というものが必要であるわけでございますけれども、御案内のとおり、現在の税の収納状況というのは実はなかなか厳しい状況にあるということも先ほどから御議論があったところでございまして、そういう中で所得減税をやるのはいかがなものかということであります。赤字国債を発行してもという実はお話もあるわけでございますけれども、これをもしやるとすると、それこそ今現在をあれするために将来に大変な禍根を残してしまう、ツケを残してしまうということになることと、また歯どめがなくなってしまうというようなことを考えますときに、私どもは今所得減税というものをとり得るものにないんじゃないのかということを思います。  もう一点は、所得減税ということによって経済を刺激する効果というものが非常に大きいじゃないかということがあります。確かに、このところ百貨店ですとかあるいはスーパーですとか小売店等の売り上げの状況等を見ておりますと、伸びるどころかあるいは少しこれが下降にあるという、 前年対比もマイナスになっておるというようなこともあります。  ただ問題は、今度の不況の一つの原因として設備投資というのがずっと落ち込んでしまった。これは過去に、バブルの時代に相当大きなものが投じられたからということで、このストック調整がありますけれども、家庭の場合にも、例えば車なんかにいたしましてもあるいはその他の耐久消費財につきましても、相当レベルの高いものを相当多く実は各家庭もストックをお持ちになったというふうに見ましたときに、今例えば所得減税をやってそういったものが刺激できるかというと、むしろまた貯金に回ってしまうというようなこともやっぱり相当大きくあるんじゃなかろうかというふうに考えております。  そういったことで、今日の緊急的な総合経済対策の中には取り入れておらないということを御理解いただきたいと思うわけであります。  今、年金生活者ですとかというお話があったわけでございますけれども、確かに今度の公定歩合等が引き下がっているというような状況の中で、預金者の皆さん方、まあ目減りしているという状況があります。しかし、先ほど申し上げましたように、全体が成長することによってそういった皆様方のいろんな問題にもいろんなものが裨益してくるということを考えたときには、例えば公定歩合なんかの引き下げ等につきましても、総合的に勘案する中で御理解をいただきたいと思うわけであります。特に、今度の場合にはその中でも障害者ですとか、たしか母子家庭でしたか、そういった方々の預金の金利等につきましては、これは一年間でございますけれども据え置いておくというような対応をしておることについても御理解をいただきたいと思っております。  また、労働者の首切りというのが、いろんなものを新しく総合経済対策をやろうとしているにもかかわらず、首切りされている状況があるじゃないかということでありましょうけれども、首切りといいますか、確かにこのところ設備投資なんかが過剰であったということと同時に、サービスその他におきましても人数なんかが過剰になっておったというもの、こういった分野にありましては確かに人員の整理等が行われているということはあります。ただ問題は、むしろ表に顕在化してくるというよりは日本的な、何というのですか、アメリカあたりみたいに簡単にレイオフなんというのはいかない。企業内の失業といいますか、そういった方たちなんかもあるところに厳しさがあろうと思っております。  しかし、今度やりました総合経済対策、またその前の緊急経済対策、そういったものが相まちまして、これからいろんなものの調整が進む中において成長というものは確保されてくる。私は、そういう中でこういった雇用の関係もまた堅調なものになっていくであろうというふうに考えていることを申し上げておきたいと思います。  以上であります。
  72. 会田長栄

    ○会田長栄君 ありがとうございました。  それでは、法務省にお尋ねいたします。  昨日の残りでありますが、佐川急便グループの疑惑事件の問題については現在捜査進展中であり、個々の問題については控えさせていただくということでなかなか話が進まなかったということがあって、同じことは聞くつもりはございません。  ただ一点、佐川急便グループの疑惑事件についての強制捜査は全国で何カ所やりましたか。
  73. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) まず、今のお尋ねに対するお答えの前に先立ちまして、昨日、委員からお尋ねを受けましたリクルート事件において中曽根元首相に対する告発事件に関する過去の法務当局の発言について、先に簡単に御説明させていただきたいと存じます。  この問題につきましては、平成元年六月十四日の衆議院法務委員会、それから十六日の参議院法務委員会、さらに二十一日の衆議院決算委員会におきましてそれぞれお尋ねがございました。いずれも法務当局から、この告発事件は犯罪と認める証拠はないということで実質的な処理は終わっている旨御報告させていただいているところでございます。  次に、ただいま委員からお尋ねのございました東京佐川急便事件の関係の御質問でございますけれども、強制捜査をしたのは何カ所であるか答えろというお尋ねかと思いますが、これは捜査の中身にかかわることでございますので、法務当局からお答えすることは遠慮させていただきたいと思うわけでございます。
  74. 会田長栄

    ○会田長栄君 時間が足りないからあえて粘るつもりはありませんが、強制捜査をやれば、それはもう新聞の報道の上で明らかになっているわけですよ。これはもう捜査の中身と全く関係ない。今日までそれぞれの委員会でもその点について聞かれればきちっと教えてきた、こういうことです。中身は私は聞くつもりありません。一体何カ所やったのかということと、それから一体何人ぐらい事情聴取したのかは、中身とはこれは直接的に関係ないんですよ。これぐらい報告したって何も捜査にかかわり合いは私はないと思うんです。
  75. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) 昨日の当委員会での御質問にも何回かお答え申し上げておりますように、東京佐川急便事件につきましては現在東京地方検察庁において捜査を続けているところでございます。したがいまして、この捜査の中身にわたる事項についてはお答えいたしかねるということを申し上げているわけでございます。
  76. 会田長栄

    ○会田長栄君 これは時間の関係があるから、私の言いたいことを言っておきます。他の委員会の中で、かつて法務省がそういうことをお尋ねになられてお答えしていたという経緯があったときには、これは後ほどその機会に改めてお聞きいたします。その点は公平に扱っているということだけは間違いないんでしょう。だから、これは終わります。  それから、きのう申し上げまして、きょうは聞くつもりはありませんでしたが、いわゆる大阪のオンブズマンクラブというところから告発が出て、東京地検から文書回答が出ているんです、それは。どうぞ後ほどお調べになってください。機会があれば必ずやります。  それではその次に、自治省にお尋ねいたします。  もちろん、佐川急便疑惑事件と新潟知事選のルートの問題については、これだけ世上を騒がせているわけでありますから、当然にして自治省は平成元年の新潟知事選挙に関する政治資金収支報告書について見たことがありますか。――ない。ないならないで結構であります。
  77. 吉田弘正

    説明員吉田弘正君) 政治資金収支報告書とか選挙の収支報告書はそれぞれ所管の選挙管理委員会に提出されて、これは公表をされているわけでございまして、特に私どもが見るとか見ないとかではなくて広く公表されているというものでございます。
  78. 会田長栄

    ○会田長栄君 そういうことを聞いているんじゃないんですよ。これほど世上を騒がせている事件の中身でございますから、当然自治省の担当としてはちょっと見てみるかぐらいはあるのが私は当たり前だと思うんですよ。だから、見たかと聞いたんです。じゃ、見ないなら見ないでいい。  それでは、我が党の調査団が新潟の現地に入りまして、新潟県の選挙管理委員会に行ってこの事件と関連をする関係団体等の収支報告書を精査してまいりました。もちろん、その精査してきた根拠というのは、これは自治省も御承知のとおり、これまた毎日のように新聞をにぎわわしている問題でありますし、とりわけきのう加藤官房長官が政治資金規正法違反というようなことがあれば内閣も厳粛に受けとめていくということを言っているわけでありますから、私はそんなに毎日毎日こんなことを続けなくてもいいんではないか。これぐらいのことは率直にお互いに反省したっていいんじゃないかと思うから尋ねているんです。  どういうような経理で処理されているかというところで我が調査団は行ってきたんです。その結果はまことに、これまた法務省にお尋ねすれば捜査中でありますと、こう言うからあえて尋ねないわけでありますけれども、非常にこの新潟知事選 挙に関する政治資金の動きというのは、いわゆる「清新で活力ある県政をすすめる会」という県知事選挙の中心的母体、同時にこれを支える「新潟県の発展をめざす会」、「金子清後援会」、そして近藤元次自民党新潟県連会長後援会、いわゆる「元友会」、この金の流れというものを精査した結果、不突合がある、合わない、そういうことがわかりました。  だから、昨日から本人でありますところの副長官が来ていただければ一番時間をとらなくてもおわかりになるでしょうと。いわゆる虚偽の記載なのかあるいは架空の記載なのか、あるいはその金の流れがどうなっているのかというのはそう時間かからずしておわかりになるでありましょうと、こう思ったから、それならこの知事選挙に当たっての政治資金のいわゆる記載、収支報告書の誤記あるいはにせ、あるいはそれぞれの団体で合わない、こういったことについて説明いただければ終わったであろう、こう思っているんですよ。  その点につきまして、これは先ほど申し上げたとおり、本当に自治省としては報告書でありますからそれは出ていればいいんであって、これほど世間を騒がせてもそれを所管する省として全く関与していない、こういうことがわかったので、この点につきましては後刻もう一度させていただくことにいたしまして、きょうのところは関連質問でありますから終わっておきます。
  79. 大渕絹子

    委員長大渕絹子君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十分開会
  80. 大渕絹子

    委員長大渕絹子君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成年度決算外二件を議題とし、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  81. 西野康雄

    ○西野康雄君 カンボジアとアンゴラの国連平和維持活動、PKOに協力するための実施計画が正式に決まりました。そういう中で、私きのうも申し上げました、宮澤総理あるいは金丸元副総裁が選挙中に、やはり武装解除がなければと、そういうふうな非常な慎重論がございました。それにもかかわらず派遣を正式に決定なさいました。そこの部分だけきっちりと押さえておきたいと思います。そういうふうな慎重論があったにもかからわず派遣を正式に決定したその辺の政治的な判断、これをお示し願えたらと思います。
  82. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  昨日、官房長官からも御答弁ございました点でございますが、以前、宮澤総理が御発言になったということにつきましては、いわゆるポル・ポト派の武装解除が前提となるということを述べられた趣旨ではないというふうに承知しております。総理の御発言は、重要なのはポル・ポト派の停戦第二段階入りの実現でございまして、最高国民評議会、いわゆるSNC等におきましてポル・ポト派がどのような対応を行っていくかという問題の妥結の仕方に注目する必要がある、そして我が国としても関係者と力を合わせて停戦の第二段階入りがスムーズに実現するよう外交努力を払わねばならないということを述べられたものであるというふうに承知しております。  そして、いわゆる五原則との関係につきましては、これも昨日、官房長官あるいは私の方から御答弁申し上げたとおり、現状におきましてカンボジアの状況は、局地的あるいは限定的な停戦違反事案というのはございますけれども、しかしUNTACといたしましても、全体としては静穏である、そしてポル・ポト派も含めて各派ともパリ協定の停戦合意の枠組み自体を守っている、それを破って戦闘が再開するというような状況ではないという状況でございますので、そういうことであれば、この停戦の合意という五原則の第一原則でございますが、これを満足しているというふうに判断した次第でございます。
  83. 西野康雄

    ○西野康雄君 昨日テレビを見ておりましたら、中国軍のカンボジアにおける道路の補修だとかのいろんな活動が映っておりました。今おっしゃったとおり、ポル・ポト派の武装動員解除問題というのは国際平和協力隊派遣の条件ではないというそういうふうな立場に立っておられるわけですが、きのう見ていたテレビの中でも、やっぱり道路補修をしているところにポル・ポト派から鉄砲が撃ち込まれているわけですね。  そういうふうな報道があると、今おっしゃったことが本当に大丈夫なのか。ポル・ポト派の動向は停戦合意などの参加五原則とどうも、今の行動と柳井さんの答弁とに整合性があるようには思えないわけなんですね、昨夜のテレビなんかを見ておりますと。ですから、その辺の担保というんですか、自信のほど、そういうのはごく偶発的なものなんだというふうにとらえておられるのか、そこのところをちょっと押さえておきたいと思うんです。
  84. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 先生指摘の事実そのものは私は承知しておりませんけれども、先ほども申し上げましたように、UNTACといたしましても、局地的、限定的な停戦違反事件はあるという、それは事実であるということは言っているわけでございます。ただ、全体として見れば停戦の合意は維持されているということもUNTACの判断として言っております。  また、過去のいろいろな停戦の合意の事例を見ましても、これは理想的には一切そういう違反がないというところに行けばよろしいわけでございますが、ただ何分にも、カンボジアの例は非常に典型的にそうだと思いますけれども、二十数年も戦乱が続きまして、紛争当事者の間の不信感というのも非常に強い、そしてそういう長い戦乱の後でようやく停戦の合意ができたということでございますので、率直に申しまして、こういう停戦の状態というものにはどうしても脆弱なところが残るということで、局地的な違反事案というのは起こるものであろうと思います。  これが残念ながら現実だろうと思いますし、まさにそういう脆弱な和平の状態、これを国際社会が協力して周りから支えて、何とかこれを永続的なもっと強固な和平に持っていきたいというのがまさしくPKOの目的であろうと思います。そういう意味から、現在たしか軍事部門で三十一カ国、文民部門だけ出しておる国を含めて百カ国ぐらいの国がカンボジアに要員を送って、そういう和平を確固たるものにしようという努力をしているわけでございますので、まさにそういうPKOの目的に照らして我が国も応分の貢献をしよう、こういうことでございますので、御理解いただきたいと存じます。
  85. 西野康雄

    ○西野康雄君 御理解いただきたいと言われても、武装解除がどうも置き去りになったりしている不安な部分は確かにあると思いますので、外交努力の中で今後ともその不安を取り除くようにしていただきたいと思います。  今、SNCという言葉がございましたけれども、伝えられるところによると、日本政府はタイ政府とともにSNC強化のための行政諮問機関、略称ACBを設置する、それを柱とする仲裁案を提案したということですけれども、その提案の意図、それから各派の評価、対応をちょっとお聞かせ願えますか。
  86. 高野紀元

    説明員(高野紀元君) 日本といたしましては、和平プロセスの進展を図るために、話し合いを通じましてポル・ポト派が停戦の第二段階に応ずるようにタイと共同で働きかけを行ってきているわけでございます。  ポル・ポト派側は、SNCの機能強化を主張いたしまして、SNCの諮問委員会の設置案を提示しております。これに対して我が方といたしましては、六月二十二日の時点でございますが、復興閣僚会議に際して策定した十一項目の提案を踏まえまして、パリ和平協定の枠内におきまして正当とみなし得る同派の主張を勘案した上で、日本とタイで共同して案をつくりまして、これを提示した次第でございます。  ポル・ポト派につきましては、日タイの共同提 案に対する認識を深めたというふうに認識しておりますが、八月二十七日、最後の話し合いにおける意見交換を踏まえまして、依然これを検討しているというふうに理解しております。  その他、カンボジア各派の正式な評価につきましては、現段階では必ずしも承知しておりませんけれども、我が方としては、いずれにしても関係者の最大公約数の意見を念頭に置きながら対応してきておりまして、UNTAC及び国連の安全保障常任理事国等の関係国とは緊密に連絡をとり合っているところでございます。
  87. 西野康雄

    ○西野康雄君 そのポル・ポト派でございますけれども、みずからの提案であるSNC諮問委員会、略称CC設置案と我が国政府提案のこのACB設置案を折衷した新たな案を提示しているようにも聞いておるんですが、この提案は政府はどう評価をしておりますか。また、UNTACはこの提案に対してどう評価をしているのか。それに対しての各派の対応についてお尋ねいたします。
  88. 高野紀元

    説明員(高野紀元君) 今、御指摘の提案に関しましては、八月二十七日の協議の際、日本とタイ両国に一応の説明がございました。これを踏まえまして意見交換も行いました。さらに、このポル・ポト派側の提案については、次回のSNCの会合においても詳細に説明が行われるというふうにも聞いております。そういう段階でございますので、この段階でUNTAC及びカンボジア各派のこの提案に関する評価、対応はまだ明らかではございません。  なお、八月二十九日の段階では、プノンペン政権のフン・セン首相はプノンペンにて記者会見を行い、ポル・ポト派の新提案はパリ協定の枠組みを超えるものとして拒否するという旨明らかにした模様でございます。  我が方といたしましてもこれについて検討しておりますが、その内容の中にはパリ和平協定の枠組みを超える部分があるというふうに理解しております。
  89. 西野康雄

    ○西野康雄君 日本とタイとが一緒になってポル・ポト派と交渉を持ったりあるいはいろいろな折衝をするわけですが、非常に難しいなと思うのは、伝えられるところによるとプノンペン政府がカンボジアの八割近くを押さえている。そうすると、UNTACだとかあるいは日本だとかの活動の軸足はどうしてもプノンペン政府の方に行く。プノンペン政府というのは親ベトナム政権とでも申しましょうか、そういうふうなところにあるわけですから、ポル・ポト派は、そういうふうなUNTACだとかあるいは日本がタイといろいろ接触をしても、どうしてもプノンペン政府のところに軸足を置いているがために大変な反発をする。今ポル・ポト派が提案をしても、やっぱりプノンペン政府の側はぽんと反発をしたりするという、その辺が大変に私難しいんじゃないだろうか。  外交の折衝の中でポル・ポト派に対して日本とタイが頑張っていくわけですけれども、その辺に対しての配慮をしていかなきゃならぬのじゃないだろうか。かえってポル・ポト派がどんどん反発していく。日本とタイが一緒になって何とかしようと思っても、何だあれはプノンペン政府の差し回しじゃないかと言われる可能性もなきにしもあらずだと思うんですね。その辺のところはきちんと押さえているんでしょうか。先ほどから折衝だとかいろんなこと出てまいりましたけれども、そこの部分をちょっと聞かせてくださいますか。
  90. 高野紀元

    説明員(高野紀元君) 先ほどお答え申し上げましたとおりでございますが、去る六月二十二日に行われました東京におけるカンボジア復興閣僚会議の際に出しました十一項目というものは、まさに今先生が御指摘になられましたポル・ポト派側で考えている主張、このうち正当とみなし得るものについて、できる限りパリ和平協定の枠の中でこれを生かして対応できないかということに基づいて関係国が最大限の努力をした結果でございまして、さらに日本とタイは今の十一項目に基づきましてその延長線上の詳細な提案を今行っている、こういうことでございます。  したがいまして、我々としては、ポル・ポト派が行っている幾つかの主張のうち、できる限りパリ和平協定の枠の中で生かし得るものを生かそうという気持ちで対応しているという点は事実でございます。
  91. 西野康雄

    ○西野康雄君 それで、日本とタイと一緒になってポル・ポト派を説得したりするというのはよくわかるんですが、そうすると国連との意思疎通というんですか、国連中心でいっているんだと言っていて、片一方で日本とタイがやっているという、そこら辺の意思の疎通みたいなものはできておるんでしょうか。もちろんできておると答えるでしょうけれどもね。
  92. 高野紀元

    説明員(高野紀元君) 日本とタイがポル・ポト派に対して説得工作を行うに当たりましては、事前事後におきまして外交ルートを通じまして関係主要国、広い場合には十数カ国にわたって協議をしてまいって、それを踏まえましてこの協議に対応しているという状況でございます。
  93. 西野康雄

    ○西野康雄君 きのうも少し、姫路の歯医者さんで歯ブラシを贈ろうという運動をなさっている人の話をいたしました。  カンボジアへ行って自衛隊が来るんだと言っても、向こうのカンボジアの人たちはやっぱり軍隊が来るのかなというふうなこともあるし、それと活動の中の五原則というもの、これをきっちりと広報活動というんですか、そういうふうなことを、日本国内はわかってきているんですが、海外にきっちりとこういうふうな歯どめがあるんだ、こういうことをするんだというふうな広報活動というのをきっちりとしておかなきゃならぬのじゃないだろうか。カンボジアに行った人からも実際そういうふうなことも聞いておりますが、その辺の活動はどうなさっておられますか。そこまではもう手いっぱいで手が回らない、五原則を知らせるとかそんなことまでいっていないというふうなことでしょうか。
  94. 澁谷治彦

    説明員(澁谷治彦君) もちろん私どもも法律ができました後、この法律につきまして各国説明し、その過程で五原則についても説明しております。  先生指摘のように、草の根レベルに対しても、今後、相手方にわかるような形での広報活動を行っていく必要があるということは私どもも自覚しておりますので、今後その方面の努力を続けたいと思います。
  95. 西野康雄

    ○西野康雄君 国連の問題ですけれども、和平プロセスの進捗状況と関連して国連安保理がポル・ポト派に対して何らかの制裁措置を九月中に実施する、そういうふうなことも報じられておりますけれども、その中身だとか、あるいは本当にするのか、その見通し、下手にするとやっぱり向こうも反発するであろうし、なかなかこれは判断の難しいところだと思いますが、その辺お伺いいたします。
  96. 澁谷治彦

    説明員(澁谷治彦君) ポル・ポト派の主張につきましては、先ほど御説明いたしましたように、合理的なものについてはできるだけ取り入れる、パリ協定の枠内の主張であればこれを受け入れるという形で対応しておりますが、パリ協定の枠外の主張につきましてはやはり強い対応が必要であるというのが国際的な認識でございます。  我が国としても、このような観点からポル・ポト派が第二段階に入るように外交努力を続けているわけでございますけれども、このような努力にもかかわらずポル・ポト派が従来のようなかたくなな立場を変えないというような場合には、やはり国際社会としてもこれを見逃すことはできないと思います。したがって、国連の場においても適切な対応をせざるを得なくなってくるのではないかと思われます。  安保理事会でございますけれども、九月中にもカンボジア問題について審議をする可能性があると思いますけれども、現在の時点ではその具体的日程、それからその結果についてはなお不明でございます。
  97. 西野康雄

    ○西野康雄君 やっぱりまた国連の動きというか出方というのがわからないということですね。  さて、二十数年の戦乱の中で随分といろいろ難 民も出ましたけれども、難民の帰還状況、そしてカンボジアに帰ってきて今どういうふうな状態にあるのか、少し御説明願えますか。
  98. 澁谷治彦

    説明員(澁谷治彦君) これは国連難民高等弁務官事務所、UNHCRから得ている情報でございますけれども、ことしの三月三十日から九月四日までに計十万六千二百八十四名のカンボジア難民、避難民が国内に帰還しております。三月三十日から四月末までの帰還民の数は五千七百六十五名、五月以降の各月の難民、避難民の帰還数は、五月が一万三千四百二十六名、六月が二万二十九名、七月が三万一千三十名、八月が約二万九千名という状況で、一般的にはこの帰還のペースは加速されているということが言えるかと思います。  この移動につきましては、主としてバス、トラックを使っておりますが、一部は列車、船舶を利用して移動しております。
  99. 西野康雄

    ○西野康雄君 その難民の定住でございますけれども、地雷処理とやはり密接な関係が出てくるのじゃないだろうかと思います。地雷処理ができないと土地があかないうかつに耕作もできない、農地として土地を利用できないというふうなことになると、やはりカンボジアの定住の一つの条件である農業の振興だとか、そういうふうなところに支障を来すと思います。農地がないとやはり難民の定住がスムーズにいかない、こういうふうなことにもなるかと思いますが、地雷の撤去について今後もやはり、ふだんの生活もひっくるめてですけれども、カンボジアの最大の問題の一つではないかと思います。  政府は、UNTACのイニシアチブによる地雷処理センター、CMACの活動が早く軌道に乗るように努力すべきじゃないかと思いますが、財政的な支援も早急に実施すべきだと社会党としても考えております用地雷処理に関しての財政的な措置だとか、そういうふうなものはお考えでしょうか。難民の定住ということでふとそう思ったんですけれども、どうでしょうか。
  100. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 地雷の処理につきましてはパリ協定にも規定がございまして、UNTACがその指導を行いつつ現地の方々もこれに従事するという形で進められていると承知しております。ただ、その財政的な援助等につきましては、これは特に地雷のための拠出というようなものは行っていないというふうに考えております。ただ、UNTACそのものの諸般の活動のための我が国の拠出というのは、これはもう既に行っているということでございます。
  101. 西野康雄

    ○西野康雄君 その経費のことですけれども、UNTACの経費、そしてまた自衛隊の参加に伴う経費ですね、その辺を詳しくお述べ願えますか。まずUNTACからまいりましょう。
  102. 澁谷治彦

    説明員(澁谷治彦君) UNTACを含む国連の平和活動につきましては、各国が国連で決められました分担率に従って経費を負担しております。我が国の分担率は一二・四五%でございます。  UNTACにつきましては、これまで立ち上がり経費二億ドル、次いで当面の経費、これは十月の末までの経費でございますけれども、これが六億ドルということで国連総会において承認されております。これに対する我が国の分担金は、それぞれこのうちの一二四五%ということで、二千五百万ドル及び七千五百万ドルでございまして、計約一億ドルとなります。これは既に支払いを済ませております。
  103. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) それから、先生の御質問の中で、我が国の参加に伴う経費という点もあったと記憶しますが、この点につきましては、政府といたしましては今回の派遣等の関連経費に関する財源措置でございますが、まずは既定予算で対応することといたしまして、なお既定予算で賄い切れない部分が生ずれば、これを予備費で措置をするという方向で現在考えております。近く、恐らくは今週の金曜日の閣議でこの決定を行うということになる予定でございます。
  104. 西野康雄

    ○西野康雄君 自衛隊の参加に伴う経費は。
  105. 宝珠山昇

    説明員(宝珠山昇君) ただいま柳井事務局長が答弁したとおりでありますが、自衛隊の施設部隊等の派遣に伴う経費につきましては、出張の成果などを踏まえまして現在検討中のところでありまして、その金額によりまして、先ほどの既定経費でまずは賄う努力をし、さらに不足する場合には予備費等を充てるということで、今折衝を鋭意進めているところでございます。
  106. 西野康雄

    ○西野康雄君 こちらから見ておりますと、質問の答えをあちらに譲りこちらに譲り、譲り合う心一つで事故はゼロと申しますけれども防衛庁長官、ばっと答えられるように意気込みがあっていいんじゃないでしょうかね。内外のこと、いろいろ私どもとは対立はいたしますけれども、きちっと対応をお願いしたいと思います。  いずれにしても、カンボジア復興は国民の悲願であります。カンボジアのあらゆる政治勢力は、戦後冷戦体制の崩壊という時代の変化を踏まえてカンボジア再建のために責任ある対応が求められております。復興のためには各政治勢力の協力体制というものが不可欠であります。我が国も超党派的なあらゆるチャンネルを通じて、何がネックになっているのか、日本の立場から国連安全保障理事会やUNTACその他関係諸国にいろいろなものを説明し、カンボジア各派の合意形成に全力を尽くすべきかと思いますけれども、いかがでございますか。
  107. 宮下創平

    ○国務大臣(宮下創平君) 御答弁を申し上げます。  部隊としての派遣を担当する防衛庁長官の範囲をあるいは超えるかもしれませんが、先ほどからお話を承っておりますと、まず第一に経費の問題についてちょっと申し上げておきますと、経理局長の申されたとおりでございますけれども、実際は私どもは、まず第一にどのような種類のものにどれだけかかるか、これは今鋭意検討いたしておりまして、ほぼ大体見通しもついてきております。  それからもう一つは、国連との経費分担の問題、これもやっぱり明確にすべきであるということを私は考えております、日本がUNTACに対して拠出すべきものはする、しかしUNTACの方で各国に対して給付その他をやる場合には、平等な資格で行われる場合は受けるものは受けるということで、しかしそれが受けられない場合は立てかえてやるというような仕分けを今鋭意やっておりまして、この点はいささかもあいまいさを残さないようにしていきたいと思っておりますから、御了承いただきたいと存じます。  なお、それ以外の問題につきましては、これは私が答弁するよりも、むしろ外務当局あるいは本部の方で包括的に答弁いただいた方がよろしいかと存じますけれども、いずれにいたしましても、難しい情勢が一部ポル・ポト派を中心としてあることはこれは事実でございます。なればこそ、やはり国連がそこへ派遣いたしましてPKO活動を展開しておるわけでございたして、何にもないところにPKO活動をやる必要もないわけでありますから、ポル・ポト派が最終的にはパリ和平包括協定を破棄するような事態には絶対になることはないと私は信じておりますし、外務当局が今鋭意努力をしていただいておる。これは国連としては、明石さんとしても当然なことだと存じます。  そういう点で、我が国も協力できるところはいたし、そして民主的なカンボジア政府、来年の民主的な選挙によってこれをつくるということが最終的な目標になりますから、その方向に向かって努力すべきことは当然だと思っています。  答弁になったかならぬかわかりませんが、以上お答え申し上げます。
  108. 西野康雄

    ○西野康雄君 やはり国民の税金を使うんですから、経理の行方というんですか、会計の行方というものははっきりとさせておいていただきたいと思います。と申しますのは、湾岸戦争で我が国は総合計で百三十億ドル出しましたけれども、しかし一説によるとアメリカは五十二億ドルの黒字があったというふうなことで、いまだにこういう点もあいまいでございます。国民の税金を使って活動するものですから、きっちりとその点だけは押さえておいていただきたいと思います。  ちょうど時間が参りました。いろいろと質問もあったんですけれども、外務大臣もお疲れのよう でございましたので。ソ連との交渉、御苦労さまでございました。これにて私の質問は終えさせていただきます。
  109. 鈴木貞敏

    ○鈴木貞敏君 私は、ロシアあるいは中国に対する経済支援、こういった経済的な支援問題から御質疑をいたしたいと思うわけでございます。  ただいま国際平和協力法に基づく実施計画が閣議決定されまして、それに基づいて物、金以外に人の国際貢献という面での新しいスタートを切ったというこの段階において、自衛隊の方そして警察官の方、それぞれ選ばれて現地に派遣されるわけでございますが、日本が国際社会において本当に信頼される名誉ある地位を占めるという点で、ひとつ確実に石垣を築いて活動していただくということを心から願っておる者の一人でございます。そういう意味で、同僚議員いずれ後でこの問題で御質疑するわけでございますが、私も外交問題、こういった経済問題は全くの素人でございまして、そういう意味からひとつお答えも願いたいと思うわけでございます。  率直に言いまして、冷戦時代、これは核の傘の中で不安定の中である意味では安定であった、こういった情勢。しかし、冷戦後は安定しておるというふうな状況の中でむしろ不安定になってしまった。一言で言えばそんな感慨でございます。そういう中で日本の外交というのは本当に大変重要であり、また難しい。しかし、それだけいろいろな面で多角的に大変な御努力を願っておる。また、大変だなということを痛切に感じておるのでございますけれども、そういう中でもうあすあすエリツィン大統領も来日される、こういう時期でございます。  外務大臣、本当に御苦労さまでございました。訪ソされましていろいろ土俵づくりということで大変な御苦労を願ったわけでございますが、心から感謝を申し上げます。率直にいろいろ記者発表その他でやられておるわけでございますが、この機にひとつ、訪ソされましていろいろ御努力されたそういった結果を踏まえて、お話しできる範囲内の北方領土問題、そういったものを含めた見通しと今の状況というようなものについてお話し願えれば幸いと思います。よろしくお願いします。
  110. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 時間の制約もございましょうから、かいつまんでポイントだけをお話をいたしまして、それでは足らぬというときにはまた御質問いただければ追加をして話をしたいと存じます。  今回の私の訪ソは、十四日、五日と訪日されるエリツィン大統領の訪日が成功だと、我が国にとってもロシアにとっても、そういうようにすることが目的でございました。しかし、その場に至って意見が全く分かれちゃってというようなことでも困るし、日本へ来て五回も六回も十時間以上も首脳会談をやるというようなやり方はいかがなものか、大体一致すべきところがあれば事前に一致をしておいた方がいいんじゃないかという話もいたしまして、その点については今まではロシア側も異議はないし、ぜひとも成果を得たいという点も異議はありません。  特に向こうは、今度の訪日というのは歴史上の大問題である、歴史的なものだということを大変強調されておりまして、その点を日本もよく認識してくれと。これは我々もロシアが始まって以来初めてですから、ゴルバチョフ大統領が来たことがありますが、それはソ連時代であって、新生ロシアができてからそれは初めてですから、まさに歴史的なものであります。したがって、ゴルバチョフ大統領が来たときと同じではこれはだめなわけですから、それよりも前進をさせるということについてお話をしました。彼らも同じようにそこは考えておるのであります。  しかしながら、大統領だけでなくて、我々はコズイレフ外務大臣とかれこれ三回、それからブルブリスという国務長官で随員にもなりますが、準備をやっておる担当の方がおります、その方とも話をいたしてきたんです。  大統領との話の点だけが問題が多少ありまして、ポイントからいうと、ともかくこの成功をおさめるためには向こうは領土、領土、領土ということを言わぬでもらいたいということですね。経済協力というような点から話に入ろうと言うのでございますが、我々といたしましては日本で領土のことを一言も言わないというわけにもいかないわけでございますし、もともと北方四島は我が国固有の領土であるということについての認識をしていただければ、つまり主権の存在、日本側に四島についての主権ありということを認めてもらえば、それはどういうふうにして引き渡すか、今までは一括即時とこう言っておったんですから、そこは柔軟に対応しましょうと申し上げた。  ところが、領土ということを言うことは、どうも日本は最近我々に対して圧力をかけている、できる話もできなくなっちゃうと言わぬばかりでしてね。それで、サミット等においてもその国際的なところを回って日本の主張を宣伝して国際的な圧力、包囲網というか、そういうものをかけようとしているんじゃないかということをおっしゃるから、いやそれは間違いですと、それは我々は、スターリン、ブレジネフ、フルシチョフの時代でも北方四島は我が国固有の領土、不法占拠、一括即時返還、こう言ってきているんですから。しかしながら、ロシアの現在の置かれている政治情勢等もかんがみまして、非常に苦しいようですから、それについては御相談に応じましょうと我々はトーンダウンをしちゃって話をしているので、圧力どころの騒ぎじゃなくて、こっちはトーンダウンをしているんだから、だからその点はちゃんと知っていただきたい。  もう一つは、日本は何にも協力しない、ロシアの復興、この困った立場でですね、一番協力が悪い、やってくれていないじゃないかということでした。その前に行ったときも言ったんですが、今度ももうほとんど何にもないとおっしゃるので、とんでもない、それは認識不足じゃありませんかということで、こちらもぞろぞろといっぱい並べまして、一月にちゃんと私がもう五千万ドルからの無償供与をやって、北方四島を初めみんなに人道的配慮から国民の税金でミルクや医薬品を配って歩っているとか、あるいはロシアのチェルノブイル発電所が爆発して非常に被曝したりなんかしている人がおって、そういうものの救済にも協力しよう。  もう一つは、技術協力もして再びああいう事件が起きないように世界でみんなで力を合わせてやろう。あるいは旧ソ連の科学者が逃げ出すというのでは困るから、これについてもヨーロッパ十一カ国で二千五百万ドルだけれども日本は一カ国だけで二千万ドルをちゃんと出すことにしてやっておるとか。  それは国際的にも、IMFだって日本は大株主だ、その日本がIMFを支え、IMFの中でロシアの加入を賛成し、ロシアに対してもそれは六十億ドルのルーブル安定基金についても日本はもうそれは結構でしょう、お貸ししましょう、こう言っているんじゃありませんか。IMFなんか金なんかないんだから、だからその余裕もない。そこで、第九次増資をやるについて、日本財政当局もなかなか苦しい中でもそれはそれに応じて、アメリカ議会は反対だという中でアメリカも九次増資に応じる。みんながそうなって初めて財源ができてロシアに貸せるというような話になってくるんであって、それは日本が協力していないなんというのはとんでもないことですよ、それは。だから、これはこうこうしかじか言うだけ言わぬとわからぬからね、これは。言いたくもないんだけれども、向こうがそう言うから、だからそういう話をして聞かしたんですよ。  パリ・クラブの話もしたり、それから一応来たときには一億ドル、サインさえすればそのお金がすぐ出るように、食糧が買えるようになりますと、サインさえしてくれれば七億ドルのガスの輸銀の貸し付けもできるように、これも財政当局は本当に嫌な話なんだ、これ実際は。金をまだ払っていないので貸したくないんです、実際は。法律上からも、残金があるところへは貸さないというふうになっているそうだ。だから、それにもかかわら ず超法規的措置に近いぐらいのことをやって、訪日を成功だというようにやろうとしているんじゃないですかと言ったんですよ。  しかし、これは全部できなかったのはロシア側の責任ですよ。ロシア側は、こうこうしかじかだと言うと、何だたったそればかりか、日本の財政力から見たらちっちゃ過ぎるじゃないかという話になるんで、それは最初の突破口ですから、それができれば後は続々つながっていって、領土の話がその先も見えるような話になれば、もう後は続々、夢のようなとは言わなかったが非常に明るい、その何になりますということを申し上げて、それで帰ってきたんです。  大統領は、私の意見は事前に具体的にどうだこうだというんでなくて、それはコズイレフと詰めてもらっていいと、最後はそうなったんです。だけれども、自分は東京に行ったら二日目にその意見を言う、二日目に。二日目に言われてもう会談終わりになっちゃいますからね。これ。だから、事前に言ってもらって、そうすればいい共同宣言が出ますよ。突然言われたって、徹夜みたいな話になっちゃうから、なるべく早く言ってもらった方がいいですねということにはなっておるんです。それ以上のことは申し上げませんが、いずれにいたしましてもいろんな協定を結ぶという点が幾つかまとまったのもございます。  それから、今言ったように、日本の側はもう外務も大蔵も通産もみんな一緒になりまして、結局できるだけの協力はする、しかし我々の主張を放棄してしまう、それは絶対できない、これは。その点を明らかにしつつ、お互いに拡大均衡、お互いに歩み寄っていく、お互いが譲り合っていく、そういうふうにして日ロの間を未来の開けたものにしようじゃないか、この点は特にロシア外務省は我々とほとんど同じなんです、考え方は。  人によってみんな違うことを言う人があって、確かに反対派があって、エリツィン大統領の足引っ張りがいっぱいいることは確か。足引っ張りなんて言っていいのかどうか知らぬが、まあ邪魔しているというか訪日さえも反対だというグループもあるわけです。そして領土返還を絶対だめだというのもありますしね、いろいろの人がいるんです。全く北方四島問題が政争の具に供されちゃっているというような状況であることも確かでありますが、しかし、だからといって、全く進まないことでは意味のないことなので、何とかこれは、おいでになったときに、さらに根気よく、お互いに立場をよく理解しながら前進させる方向でやっていきたい。  それについては、やはり日本側がばらばらになっては困るんですよ。外務省の言っていること、ほかの言っていることが皆違うことを言い出しちゃってね、そういうことは絶対に困るものですから、ぜひともこちらも国論を統一して、そして一緒になって話をしていかないと、こういう交渉事はうまくいかない。ですから、国民の各層の方々にも、我々の基本的な話はここで今お話ししているわけですから、そういう点についての御理解と御協力をお願いしたい、そう考えまして、少し突っ込んだ話をさせてもらった次第でございます。
  111. 鈴木貞敏

    ○鈴木貞敏君 ありがとうございます。  私も、新聞紙上で圧力とかあるいはG7の中で日本の協力が一番低いじゃないかとかいうふうな、そういう発言を見ながら、法と正義の外交を掲げる中で、どうも言っていることはということで反ソ的な感情をあおるんじゃないかというふうな心配をしたりするものでございますから、いずれにしてもお話を伺って、そういう片言隻句によって感情を高ぶらせるということなく、長期的に冷静に四島返還を目指して、それぞれじっくり折衝していくべきかなと、こんな感想を持っているわけでございます。本当に御苦労さまでございますが、目標に向かって、外務省関係省庁力を合わせて、ひとつ我が国益のために頑張っていただきたいということを心から祈念する次第でございます。  旧ソ連の問題、技術的支援なり、あるいは緊急的な人道的な支援なり、あるいはいろいろあるようでございますけれども、今大臣からそれぞれ触れられました。時間もありませんので、もうそれ以上質問をやめますけれども質問通告もいたしておりませんが、その人道的な援助の中で、食糧あるいは医薬品、こういった援助を無償的にやっているわけですね。食糧援助とか医薬品というのはどういう内容でどういう方法でやっているのか、本当に事務的なことになりますが、もしおわかりの範囲でちょっと事務的にあれすればお教え願いたいと思うんです。食糧といえば現物日本の米をやるわけじゃないですから、恐らくFAOかどこかにやるようなそういう援助なんだろうと思うんです。非常に常識的なことでございますが、おわかりの範囲内でちょっとお教え願いたいと思います。
  112. 津守滋

    説明員(津守滋君) これまで我が国が旧ソ連ないしロシアに供与いたしました人道的援助、この中身は医薬品、医療機器及び食糧品でございますが、チェルノブイル関係が二十六億円、それから先ほど大臣から説明のありました本年一月に六十五億円を供与いたしております。チェルノブイル関係はこれは全額医薬品医療機器でございます。六十五億円につきましては食糧と医薬品、医療機器の割合は約半々でございます。  これらの金額をまず国際赤十字に渡しまして、そして国際赤十字がその大部分を日本赤十字の方に還付いたしまして、具体的な物品の輸送、配布はすべて日本赤十字にお願いして実施いたしております。ちなみに、六十五億円につきましては去る五月全額供与いたしました。
  113. 鈴木貞敏

    ○鈴木貞敏君 時間もあれでございますが、中国関係でございます。  天皇陛下の御訪中も決定するというふうなことでございまして、大変重要な段階に来ておるわけでございます。私も中国関係、シナには十億の民があるということで小さいときから習ってきておるわけでございますが、これはまことに日中間の関係、大変重要であることは何人も争いのないところであるわけでございます。  これに対する経済支援、大変重要だと思うわけでございまして、東欧あるいはアフリカあるいは南米、そういった国と違って、歴史的、地政的、あらゆる面から見ましてやはりほかの国とは違った重みといいますか、そういったものは当然あるわけでございますけれども、そういう意味で改めて今後の対中経済協力の基本姿勢といいますか、そういった面についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  114. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 御承知のように、中国とは日清戦争もやったこともあるし、あるいは青島等への出兵も大正時代にもあったし、そして何よりも第二次大戦において日本が多大の被害を人的にも物的にも与えたというのはもう中国であることはこれはもう明らかで、歴史的な事実でございます。  しかしながら、日華、それからその後になって日中国交回復が行われるに至って中国側は、賠償金を取るということは子々孫々に至って嫌な思いを残すというようなことでもあるので、田中・周恩来会談等において言われたことはそういうことであって、そのかわり我々はお互いの協力で、経済協力というか、そういうことでひとつやっていきたいというようなお話があって日中正常化というものが生まれたわけでございます。したがいまして、確かに他の国々とは違った立場にあることは事実でございます。  我々は、中国の民生の安定向上に協力しなきゃならないという点で協力しておりましたが、御承知のとおり八九年、いわゆる天安門事件というものがあって、せっかく九〇年から九五年度についての第三次円借款というものが決まっておったんですが、実は世界の大勢が中国に対して人権問題で非常に冷たい立場になって、我が国もそれに同調して一年間は円借の繰り延べといいますか、新規のものは執行停止と。そういう形をとりましたが、しかしながら、私も外務大臣以前からこの問題に着目して政府の裏の仕事もやらせてもらいま した。それで、アメリカの了解を得るようにして、サミットでも、まあ対中国の借款をしても文句を言われないようにしてやってきたわけであります。  それで、この九〇年度分については、三分割をして十七案件、総額一千二百二十五億二千万円の供与を行いました。なお、九一年分については、二十二案件の千二百九十六億円余の供与を行って、さらに本年分、これは交換公文の署名に向けて今中国側と話し合いをしている。ついこの間は、またエネルギー借款等も供与するというようなことで、今のところ、非常に中国の改革・開放路線に全面的に協力している、こういうことが言えるだろうと存じます。
  115. 鈴木貞敏

    ○鈴木貞敏君 どうもありがとうございました。それでは、同僚議員に譲ります。
  116. 永野茂門

    ○永野茂門君 最初に官房長官に、我が国のPKO参加の基本的な考え方及び基本原則といいますかについてお伺いしたいと思います。  アンゴラ及びカンボジアに派遣する平和協力隊の実施計画と政令が昨日閣議決定されました。そして、十一日には公布、施行されるということになりました。これは一昨年の夏、我が国の国際的な役割分担でありますとか貢献につきまして世界から要請され、期待されて以来、約二年間で達成した偉大な第一歩の踏み出しであると考えられます。世界の安全を確保し、安定的発展を続けるために、世界は一方で同盟に依存しながら、一方でますます国連の集団安保に依存するようになってきつつあります。このような意味から、国連PKOへの参加、協力というものはますます重要なものとなり、昨日の閣議決定はそういう意味において極めて重大なものであったと考えるものであります。  さて、PKO派遣の可否を決定するための一般的な基本方針は、いわゆるPKO法、国際平和協力法で五原則として、停戦の合意でありますとか、あるいは当事国の受け入れの意図でありますとか、あるいは中立性の問題でありますとか、業務の中断、終了、さらには必要最小限の武器使用の五原則が定められております。しかしながら、これらはこういうことが達成されなければ参加してはならないという、どちらかというと最小限の原則でありまして、参加することあるいは貢献というものが当然であるというものであってもなりませんし、参加というものは、やはり我が国益から考えて我が国のためにとって極めて有用であり有効であるという判断のもとに、積極的な意義を求めて参加を決定すべきものであろうかと私は思うものであります。参加は、したがってまたある意味で受動的なものであってはならず、どうしても積極的に国益を追求するということで能動的なものであるべきだと考えます。  こういうような観点から、今回のカンボジアヘの派遣は我が国の国益にとって、あるいは世界の安定、平和等、それはすなわちまた我が国の国益につながるものでありますけれども、そういうものについて積極的な意義をどういうところにお考えになってこの参加、貢献を決定されたのでありましょうか。その意義についてお答えをお願いいたします。
  117. 加藤紘一

    ○国務大臣(加藤紘一君) 今、永野先生指摘された問題点は、その五原則というものを満たしているならば、どこの活動、どの地域における活動にも参加するのか、それともそれ以外に、やはり何らかの我が国の国益とか世界平和の観点から見ての別のもう一つ何か基準があるのではないかという御指摘であろうかと思います。  確かに、その五原則を満たしているということは最小限の原則、これは法律から見ましてもしっかりと適用されていかなければならないし、我々もそのところは十分に判断の際に慎重に考えなければならない点であろうと思っております。それを満たしていると同時に、冷戦後国連が行っている活動というものには積極的に参加することが世界平和の実現のため、特に冷戦後の新しい平和秩序を構築する努力の過程としては非常に重要なことであって、それがまた同時に我が国の国益にも合致するものではないかという観点があろうかと思います。  例えば、アンゴラに今回参加いたしますけれども、我が国から遠く離れた地域でありますので、どうしてそこまでという一種の国民の気持ちがある。少し遠いんではないかという気持ちがあろうかと思いますけれども、しかし独立後日が浅くて、長く戦乱の続いた南西アフリカの平和と安定のために国連を中心に国際的な努力をされているときに、我が国もそれに応分の協力をしていく、確かに三名の派遣というのは数が少ないわけですけれども、そこに参加することのシンボル的な意味というのは非常に大きいのではないかと思います。  カンボジアの場合には、アジア地域でありますし、我々の近隣の国々でありますし、そのカンボジアの混乱収拾に我が国がどういう働きをするかはアジア諸国が全部見ていることでありますし、それがまた我が国の今後のアジア外交にとって大きなステップになると思っております。そして、アジアの平和と安定に資するということは、とりもなおさず我が国の国益に合致することであろう、こう考えております。
  118. 永野茂門

    ○永野茂門君 非常に立派な御見解でありまして、私はアンゴラ並びに今回のカンボジア派遣についての御決定に対して十分に理解し、そしてまたこれを支持するものであります。  私、ごく最近カナダの国防首脳と会いまして、カナダのPKO活動についていろいろと調査し意見を交換したところでありますが、カナダのPKOへの参加についてのクライテリアは七項目あります。その七項目の中にもちろん我が五原則の中の最初の三つの部分に当たるような部分も含まれておりますけれども、そのほかに例えば次のようなことがクライテリアとして挙げられております。  大変に意訳した内容でございますけれども、国連の計画は平和をもたらすものであり、そしてまた政治的解決を導き出し得るものであるかということ、あるいはまた、参加によって自国の安全が不利になったりあるいは政治的な立場が悪くなるというようなことはないか、あるいはまた、さらに国連の要請でありますとか計画が資金上も兵たん支援上も、あるいは政治的な考慮上などから見て、自国にとってもそしてまた国連にとっても実施可能なものであるかどうかというような実行可能性等について、あるいは有効性等についてのクライテリアも載っておりますが、これらも一つ参考として考えられるんではないかと思います。  いずれにしろ、五原則をまずクリアし、そして積極的に我が国益を追求し得るような決定がなされるべきものであると考えます。  さて次に、PKO隊員の諸手当などについて同じく官房長官にお伺いしたいと思います。  世界の注目のもとで、危険で困難な業務を悪い環境条件のもとで遂行し、そして国連の平和、被派遣国の近代化等にも貢献する派遣隊員に対しては、隊員が誇りと生きがいを感じながら、高い士気を維持して後顧の憂いなく任務に邁進できるような処遇などを与えるべきであると考えます。  昨日決定されました平和協力手当でありますとか、あるいは賞じゅつ金でありますとか、あるいは特別褒賞金、災害補償などは画期的なものでありまして、政府関係者の努力に対して感謝し、敬意を払うものであります。  ここで、ちょっとわかりにくいところがあるわけでありますが、それについて承りたいと思います。協力手当を五段階に分けることになっておりますが、五段階に分ける地域区分でありますとかあるいは業務区分、そういうものをどういうように考えていらっしゃるか、御説明お願いしたいと思います。
  119. 加藤紘一

    ○国務大臣(加藤紘一君) 今度の国際平和協力業務に参加する要員、隊員の諸君には大変な御苦労をかけることになろうと思います。  その点につきましては、処遇の面で十分に考えなければならないと思っておりましたし、それも財政当局とも大分話し合ってまいりまして、閣議決定までに今回の実施計画が大分時間がかかった のも一つの要因はそういうところにございました。でも、財政当局からも大分温かい御理解をいただきまして、あるものがまとまりました。今御指摘のその内容、区分の問題等詳細なことにわたっての御質問は重要な点でございますので、政府委員の方からお答えさせていただきます。
  120. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  先ほど、先生冒頭に御指摘になりました趣旨で、私どももこの国際平和協力手当というものを財政当局の御理解も得つつつくったわけでございます。この場合、派遣先国の勤務環境でございますとか、あるいは国際平和協力業務の特質というものを考えながら、業務のいわば困難性を総合的に判断いたしまして手当の額あるいは区分というものを算定したわけでございます。  UNTAC、カンボジアの場合について申し上げますと、先ほどもおっしゃいましたとおり、区分としては、一つは停戦監視または文民警察という形で、部隊でなく個人として参加するという場合を想定しておりまして、この場合につきましては、地域といたしましては国境付近で勤務する場合、これがいわばジャングルの中で孤立無援ということではございませんけれども、非常に補給の困難なところでございますので、あるいは生活環境も非常にきついというところで、これを最高額といたしまして一日当たり二万円としたわけでございます。  それから次に、カンボジアの地方で勤務する場合でございますが、これを一万六千円といたしました。それから、同じく地方ではございますけれども、州都などのあるいわゆる地方都市の場合を一万二千円、それから首府でございますプノンペンあるいはプノンペン空港といったところにつきましては八千円、それから附帯業務でカンボジア以外の近隣諸国で勤務する場合もございますので、その場合には四千円ということで、最高二万円といたしまして四千円刻みで五段階に分けたわけでございます。  なお、そのほかに施設部隊につきましては、地方の場合は一万六千円、プノンペンあるいはプノンペン空港の場合には八千円というふうにいたしました。  それから、輸送部隊につきましては、これは施設部隊の業務に附帯して行われる業務でございますが、輸送、補給等の業務を港湾あるいは陸揚げ、陸上で行う場合でございますが、この場合には四千円ということでございます。  アンゴラについては三段階に分けまして、一万六千円、一万二千円、八千円というふうに、地方の移動投票所をいわば一番きつい業務というふうに考えております。
  121. 永野茂門

    ○永野茂門君 ありがとうございました。  次に、同じ目的のことになりますけれども、この処遇とともに功績を褒めたたえるということは極めて大事なことであると思いますが、私も従来から特別委員会などでこのことを主張して官房長官より検討するという旨の答弁をいただいておりましたが、現在どのように検討されておりますでしょうか。
  122. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) 現在の状況について、私の方から御報告いたしたいと存じます。  私ども国際平和協力本部事務局といたしましても、この国際平和協力業務に従事する方々に対しましては、先ほど申し上げましたような手当等の処遇のほかに、顕著な功績がある場合にこれを表彰等の形でその名誉をたたえる必要があるというふうに考えております。この点につきましては、今までのところは、昨日の閣議決定に至るいろいろな準備に忙殺されておりましたのでいまだ具体的な結論を得ておりませんけれども、現在私どもが研究、検討しておりますことは、各省の有している表彰制度、特にこれは永野先生の方がお詳しいわけでございますけれども、防衛庁でもいろいろと制度を持っておられると承知しておりますが、そのほか各省いろいろ制度もあると思います。それから、内閣総理大臣表彰制度等の既存の表彰制度もございますので、そういうものも参考にさせていただきながら検討させていただいております。  現在、昨日の閣議決定をもちまして一つ段階が済みましたので、今後、御指摘の功労者に対する表彰制度というものも私ども大変大事だと思いますので、この検討を加速化して早急に結論を得たいというふうに考えております。
  123. 永野茂門

    ○永野茂門君 ぜひ立派なものをつくっていただきたいと思います。  次に、PKO派遣に伴う輸送手段などについて防衛庁長官にお伺いしたいと思います。  PKO派遣に伴う輸送は、タイムリーで安全で、しかも輸送に伴うロスでありますとかコストが少ないことが望ましいことはわかり切ったことであると思います。これから行おうとしておりますところのPKO活動は、今後もカンボジアのほかにもいろいろと拡大されていくものと考えなければならないと思いますが、自衛隊の部隊等がこういう業務を行うに当たって派遣あるいは撤収、補給というようなことを円滑に行うために、現有のものよりも大型で高速あるいはまた航続距離の大きい輸送手段が有利である、こういうように考えられます。例えば、建造が予定されていますところの大型LSTや政府専用機の増強等調達に長期間を要するものについては、できるならば前倒しで導入していくのが有利ではないか、こういうように考えますが、いかがでしょうか。  また、現地において例えば部隊内の急患等の短距離の緊急輸送等のために、派遣する部隊の中に編成としてヘリコプターを装備するというようなことが有用ではないかと考えますが、防衛庁の御見解はいかがでございましょうか。
  124. 宮下創平

    ○国務大臣(宮下創平君) 今回の派遣に当たりまして、輸送手段をいかなるものを使っていくかということが委員指摘のように大変重要な問題でございまして、私どもは基本的には航空自衛隊のC130あるいは海上自衛隊で申しますと輸送艦、補給艦等、こういうものを使っていきたいと思っております。しかしながら、今委員の御指摘のように、車両にしても二百八十近く運搬していくわけでございますから到底これらで間に合わせることはできませんので、民間の輸送の船舶をチャーターしていくということも考えております。  今回、そういうことでございますが、委員指摘のように将来どうかということでありますが、基本的な考え方を申し上げますと、このPKO活動は、防衛庁のいわゆる三条任務を主体にして、この防衛任務に支障のない限りこれに貢献するという建前を現在とっておりますので、このPKO自体のための装備を直ちに装備するということはただいまのところ考えておりません。  今、委員の御指摘のLSTの大型船、これは来年度の予算で二千トンクラスのLSTの更新のために八千九百トンくらいのLSTを概算要求に提出しておりますが、これは今回のPKOの輸送手段として要求しているというものではございませんで、あくまで二千トンの代替需要として国内における輸送力の機動化を必要といたしておりますのでこれを要求いたしておりますが、しかしこれができれば結果としてこれを使えばかなり有効な手段になり得ることも御指摘のとおりでございます。  また、今保有しております政府専用機でございますが、大型ジャンボ二機を今度ことしの四月から防衛庁に移管させていただいておりまして、これは御案内のようにPKOの輸送にも使います。また、本来は政府高官等々のためにこれは予定したものでございますけれども、過般成立いたしました国際緊急援助隊にもこれを活用できるということでございますから、これがいよいよどこへでも熟練をして飛んでいけるという状況になれば、当然これも活用していくものと思っております。しかし、PKOのためにそれだけを目的にして装備を調達するというようなことは今のところ考えておりませんが、できるだけ早くこういうものを調達してそしてこれを活用していくということは非常に重要なことだと、こう思っております。
  125. 永野茂門

    ○永野茂門君 多目的に使うことができるものは多目的に使ったらいいと思います。  次に、カンボジア派遣に伴う特別な装備あるいは資材等についてお伺いするつもりでございましたけれども、時間が迫っておりますのでこれを一応省略いたしまして、最後のミサイル防衛についてお伺いしたいと思います。時間がありましたら、今申し上げたその問題に入りますけれども。  周辺諸国を眺めますと、戦略ミサイルを別にいたしましても、ロシアの戦術ミサイルは本州の北部地域まで、そして中国のそれは九州並びに我が国の中国地方の北部まで、そしてまた北朝鮮のそれは中京地域までが射程内に入り、御承知のようにかなりの数を持っております。我が国周辺においても地域紛争の発生を考察から除外するわけにはいきません。もちろん、信頼醸成でありますとか軍縮でありますとか軍備管理を進めることが第一であることは言うまでもありません。そしてまた、日米安保による抑止に大きく依存しなければならないことも言をまたないところでありますけれども、みずからの対処力も極めて重要な抑止力の一部をなすものであって、何らの手段も持たないというわけにはいかないわけであります。しかも、この能力は全くの防御的な能力であって、周辺諸国に脅威を与えるようなことは全くないわけでありまして、我が国の専守防衛的な考え方に十分に入るものであります。  このような観点からお伺いいたしますが、イージスシステム装備のDDG及びペトリオットシステムの一番新しい型の装備の現況はどうなっていますか、そして、これらを総合して我が国のミサイル対処能力をいかに評価しておりますか、お伺いいたします。
  126. 畠山蕃

    説明員(畠山蕃君) ただいま御指摘になりました御質問はイージス艦の問題と対空のミサイルの問題でございました。  まず、イージス艦の問題につきましては、既に各護衛隊群一隻のイージス艦をということで整備を進めてまいりまして、既に四個護衛隊群のうち三個護衛隊群については手当て済みでございます。残る一艦、つまり四個護衛隊群目のイージス艦につきましては平成年度の概算要求におきまして要求をさせていただいているところでございます。  それから、ペトリオットの問題でございますけれども、まさに御指摘のとおり、最近の各国におきます軍事技術の向上といったものを踏まえて考えますと、従来のペトリオットでは必ずしも十分でない。といいますのは、例えば湾岸戦争のときに明らかになりましたように、スカッドミサイルのような高入射角で入ってまいりますものに対して必ずしもその能力が十分でなかったということがございまして、これを新式の能力向上型のペトリオットに改装するということで、既に平成年度からその事業に着手するということで進めておりまして、平成年度にも当然ながらこれを踏襲して、逐次これに改装を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
  127. 永野茂門

    ○永野茂門君 能力はいかに評価していますか。
  128. 畠山蕃

    説明員(畠山蕃君) 失礼いたしました。  今若干触れたつもりでございましたけれども、我が国の防空システムといいますのは、レーダーサイトと早期警戒機等によりまして、それで要撃戦闘機で対応するという形になっているわけでございますけれども、さらに地対空ミサイルというものについてペトリオットということで整備をしてきたわけでございますが、これについて、先ほど申し上げたように、スカッドミサイルといったようなものに対しては必ずしも有効でないという判断のもとに、これの能力向上型のものに改装をしようということでございます。
  129. 永野茂門

    ○永野茂門君 御承知だと思いますけれども、本年の六月に米国の戦略研究センター、有名なセンターでありますCSISは、二十一世紀における日本の安全保障の要件という報告書の中で、日本の持つべき能力として端的に、第一に対空、対ミサイル防衛の能力、第二に地域監視能力、この二つだけを挙げております。  そしてまた、さらに本年七月十三日、ブッシュ大統領は議会に対してアジア・太平洋地域の戦略的枠組みを報告しております。その中で、アジア地域における不安定要因として、北鮮、中国、カンボジア、南沙、そして別の概念で兵器拡散、これをアジア地域の不安定要因ととらえまして、日本に対してはシーレーン防衛のための早期空中警戒能力、艦載防空能力、これはイージスシステムだと思います、三番目に本土に対する対ミサイル能力、これが不足しておる、こう指摘しております。極めて重大な指摘であると思います。我々自身の評価においてもこういうことだと思います。  もちろん、いろんな情勢の中で、いろんな条件の中で我々の防衛力は整備し、維持していかなければならないわけでありますけれども、極めて重大な欠陥があるということを認識の上対応されることを望みまして、私の質問を終わらせていただきます。  以上です。
  130. 常松克安

    ○常松克安君 まず、外務大臣、術後にありましては何と申しましても養生が第一番かと存じます。どうか、これより大事な日本の行く末を担っていかれる方でもございましょうから、くれぐれも御身大事に御自愛いただきますよう心よりお祈り申し上げます。  さて、続きまして官房長官、率直に、具体的に、冒頭からでございますが申し上げます。  これから答弁いただきます官房長官の答弁の内容は、内閣を代表して責任ある答弁であり、はたまた総理大臣の御意思も受け継いでの御答弁だと存じますが、前もって確認いたします。
  131. 加藤紘一

    ○国務大臣(加藤紘一君) 官房長官というのはそういうことでやっているつもりでございます。総理にかわりまして、また内閣を代表しまして正確にその立場を申し上げるという職務であると心得ております。
  132. 常松克安

    ○常松克安君 御案内のとおり、まず第一番に私は、佐川献金問題における内閣の責任という、そういうふうな立場に立って、非常に切れ者であり、内閣の中で頭が一番いいといわれる内閣官房長官の胸をかりて、これから少し論議をさせていただきたいと思います。いろいろと御指摘、御指導、お怒りの場合は十分にお怒りいただいて結構でございます。前もって申し上げておきます。  この件につきましては、日一日追うごとく核心に迫る当局の捜査が行われている模様でございます。その中で国民は深い憤りを覚え、はたまた政治不信を増幅している、こういうふうにも感じられる昨今でございます。何しろ四百四病病むよりは貧する方がなおつらい、四百四つの病気にかかるよりも貧乏はもっとつらい、こういうふうな中で、いろいろお立場お立場の中で国民の皆さんは生活を営んでいらっしゃるわけであります。  そうした観点の上からいきまして、今回の問題のまず何といいましても第一番は、汚い金ではないんだろうか、こういうふうな疑問であります。これまでいろいろ御答弁の中では、正規に企業献金というものは政令に基づいて、そしてその企業といえども社会の人格を持っている、だからこの法律範囲ではいいんだ、こういうふうなお考えをたまさかお伺いいたしました。しかしながら、今回はこの渡辺という東京社長でありましたところの人は既にその環流金というふうなもので特別背任罪に問われております。当然、金には色がつくものではございませんけれども、額に汗して稼ぐ金もあれば、麻薬を売ってもうける金もあれば、金にはやはりその性格、性格という位置づけもございましょう、こういうふうなところからの怒りも多いんではないだろうか。  第二番目には、非常に金額が大き過ぎる。官房長官、唐突で申しわけございません、今十万円を一カ月に貯金して五億円になるには何年かかりますか。そういうふうに庶民は計算して、えらいこっちゃぞ、四百十六年六カ月です。もう昭和もだめ、大正もだめ、明治でもあかぬ、江戸時代でもあかぬ。言うならば桃山時代、信長以来ずっと貯金せんことには五億円というのは手に入らぬのです。こういうふうなことが庶民の感覚でございます。感覚なんです。  そういうふうに考えていきますと、いかにも無 造作に五億、二億、三億、どういうふうな真実、真相があるやにはわかりませんといたしましても、これが動いていく。はあ、政治家というものはようもうかるもんやなと、こういうふうなことが、これだけのみならず、いろいろだび重ねての事件から教えられてきたわけであります。  そして第三番につきましては、もうこれはどうしてもいかぬ。日本の言葉に、いろいろございましょうが、臭いものには敏感であり醜いものには鈍感であるという、こういうふうに世間でも申しております。言うならば、うそです。ありません、ありません、やっぱりありましたということで、リクルートで見せつけられました。小さくは新潟の知事。この知事さんは県議会で、いろいろ問われて、ございません、一日にして、ありますとかいうふうな情報もこれあり、そしてその職というものを辞職しなきゃならなかった。こういうふうな感覚というものが今日、国民の皆さんの、庶民という感覚の中で論議をし、あるいはこういうように見ているわけです。  こういうものについて、その認識を、どのように官房長官は内閣の責任者としてこの事件を見ていらっしゃるか、まずお伺いします。
  133. 加藤紘一

    ○国務大臣(加藤紘一君) 昨日、私ここで答弁いたしておりますときに、この問題についての答弁が大分先生の御立腹を買ったようで、鋭い不規則発言があったのをよく覚えております。  ですから、できるだけ率直にお答え申し上げたいと思うんですけれども、まず第一に、戦後の日本の政治というのは、経済成長から社会の安定度、政治の安定度という意味で、日本の我々が考えるよりは対外的な評価はかなり高いものだと思っております。かなり立派な社会建設ができてきたのかと思うし、それでその面で政治が果たした役割は卑下しなくてもいいほど大きいと思っておるんですけれども、ただ、時たま政治と金の問題につきまして、ある意味じゃ七年に一遍とか十年に一遍ぐらい大きな事件があって、そこで国民からの評価が下げられているということは紛れもない事実であろうと思っております。したがって、今度の問題等につきましても、やはり政治と資金の問題というものについては真剣に考えていかなければいけない問題であろうし、またいろいろ教訓を得ていかなければならないことがあるだろうというふうには思います。  ただ、今先生が御指摘幾つかの点で、まず閣僚について内閣はどう思うかという意味が一つあろうかと思うんですけれども、閣僚の人について幾つか報道があることは承知しておりますが、それは報道であって、そして正確にそういうことなのかということについては、どう考えても報道されていることを前提に私がここで答弁申し上げるというのは各閣僚の方に失礼だと思っております。それぞれ閣僚の方が自分の問題点につきましてはメディアを通じて直接国民に語られておりますので、それで総理大臣もそして我々も、それぞれの閣僚の方がメディアでおっしゃっていることを信じております。また、その信頼関係がなければ内閣というものは成り立っていかないし、それぞれの閣僚の方がそれぞれの省の記者会見で責任を持っておっしゃっていることについて、それを信じないでまた別途調査するというようなことがあったら、内閣というのは大変チームワークのとれてない変なものになっているんではないかなという気がいたしております。  それから二番目に、正規に手続をしてあったならばそれはいいじゃないかと官房長官は言っているけれども、しかしそのお金でもいい金と悪い金がある、いい企業の金もあるし、悪い企業の金もある、そこを区別しなきゃならぬじゃないかと今常松さんがおっしゃいました。しかし、それぞれ政治家はやはり資金を集めなければなりません。そういう段階で、そしてきっちりと手続を踏んでおられれば、後でそれが非常に問題のある金だということがわかった場合、確かにうんと思うところはあると思いますけれども、しかしそのとき、正規にきちっとやった政治家の人のそのときの判断とか責任を一〇〇%追及し得るものなのかというのがもう一つの議論であろうと思います。今立派にやっている企業でもいつかは何か問題を起こすかもしれない。そうなると、じゃ企業からは取らないようにしたらどうかという点につきましては、やはり企業も一つの社会的な存在として日本の社会の中では政治献金をやっていただいていい存在なのではないかと私たちは思っておりまして、その点はちょっと御意見が違うかもしれません。  それから、庶民感覚からいえば金額が大きいじゃないかということは事実だろうと思います。ただその際に、よく政治と金の議論があるときに、膨大な政治資金があり、その報告書があるわけですけれども、それが政治家個人が日常の家庭生活に使うんであったとするならばこれはもう膨大なお金だろうと思います。しかし、それぞれの政治家が五人とか七人の秘書を、スタッフを使い、そして猛烈な活動をしているときに、そこで使われる金額というものは、政治家個人一人が家庭の中で使うお金とその金額も混同されるとしたならば、それは話がちょっと違うんじゃないか。また、そこを混同しているなと思われないようにするために透明度は明確にしなければならないし、公私の区別はしなければならないし、また仮に公私の区別をしなくたって、政治家はそういうところは公私の区別をちゃんとしているなと信じてもらえるだけの信頼性を持たなければならないことなんではないだろうかなと思います。
  134. 常松克安

    ○常松克安君 いろいろとおっしゃいました。官房長官の人間性をかいま見た思いであります。  まず、一つ訂正申し上げておきます。十年に一遍じゃなくて、十年の間に何回こういう事件が起きておるかということの認識の違いを指摘いたしておきます。  さて、私が申し上げたい論点は何か。これは昨日の我が同僚木庭議員への回答の中で、内閣としてこれを調査することはしませんと、このようなことをおっしゃいました。そのときに、あわせて、しはしませんが、既に今司法は、検察庁特捜部はそれはそれなりにやっておりますから、事実調査をかいま見て終わってからというふうなお話もなすったわけでございます。  さて、ここで私が申したいのは、この事実調査といいますのは、司法の法令における事実調査というものと、内閣、少なくとも政治的、道義的に国民の皆さんに大いなる内閣として、その時流の中において、大事件が起こったときにはかくかくしかじかこうこうでございますというその事実調査、国民の皆さんに政治不信が持たれるならそう思っちゃこれは困る、これが事実でございますと、この二つの面があるはずでございます。しかし、きのうは、司法によるところの事実調査と、ここでとめられました。これは私は遺憾ではないか。そして、きょうこれから論議したいわけです。  御案内のとおり、司法の事実調査といいますと、検察庁が調査をしているのは、政治的、道義的な調査はしておりません。あくまでもそれが公職選挙法に、あるいはまた政治資金規正法に、あるいは刑法に、虚偽記載だとかあるいは個人に贈られるとするなら所得税としての脱税だとか、あくまでも犯罪の成否というものを基盤にしてこの案件というものが該当するのかしないのか、こういうことをしているわけでありますから、その捜査当局に少なくともああだこうだと言ったところで、政治的、道義的に求めても答えは返ってこないのが事実であります。根拠が違うわけであります。  ただし、そこで問題は、一つの大きな案件というものの中で確かに犯罪として法令に触れる、立件ができる。ところが、もう一つ外の枠の中に時効という問題があります。殺人犯ですら十五年の時効です。罪を問わない。問わないということは、その人の氏名も内容についても公表しない。それは個人的な名誉、人権を守るという司法の立場からであります。そうしますと、今回のこの案件が司法の捜査を待って待ってとおっしゃいますと、万々一にもそれは起訴猶予である、あるいはまたこれについてはあくまでも時効であると、こうした場合は検察当局は公表は絶対しません。これを するということは個人の名誉を侵害するからであります。当然であります。  こうなった場合は、第二弾として事実調査は、これだけ報道を多くの方々が、国民の皆さんが見ている中で、これをただただひたすらにそういうふうな、法務省は言っております、あるいは検察当局は、そういう結果でございました、以上終わり、何の公表もございませんと。これで果たして内閣としての政治改革を、政治の透明度、あるいはそういう金という問題に二度とこういうふうなものがあってはならぬという決意で内閣が総力戦で立ち向かっていらっしゃる、こういうことに関して、国民の皆さんにはこれを何ら一方的に知らすことがないままであっていいんだろうか。  そういうことで、私が昨日から、あるいは記者会見でおっしゃいます内閣としてこの閣僚云々については調査をしないということは、官房長官の個人的見解なのか、先ほどお尋ねした総理のその意思を受け継いでのあの会見になっているんですか。なっていると言うたらゆゆしき問題ですぞと、こう言いたんです。どうでしょうか。
  135. 加藤紘一

    ○国務大臣(加藤紘一君) こういった問題につきまして、まず一番かたいところといいますか、一番重要なところは、司法当局が厳正な調査をする、また捜査をするということを保障するということだと思います。政府として、その捜査というものに決して干渉することなく、厳正かつ公平に十分に調査できるような客観的な条件をつくっておくということが政府にとって非常に大事なことのように思います。  それから、常松先生がおっしゃいましたように、閣僚の方についてそれぞれどう調べるかということでございますけれども、内閣としてそれぞれの閣僚の方が国民に事実関係やその政治的な責任も含めて率直に自分の考え、立場、事実を語ってもらうというのが一番正確に伝わる。なぜならば、これは内閣とか役所の問題ではなくて個人としての政治資金に絡む問題でありますので、正確にお話ししていただくというのが一番的確なんではないか。そのかわり、それぞれの閣僚の方がおやりになった記者会見については総理大臣も内閣官房も責任を持つということなんじゃないだろうかなというふうに思っております。
  136. 常松克安

    ○常松克安君 いつから宮澤内閣は雑居ビル専門店になったんですか。そうしたら、各大臣が立場立場でわあわあ言うたことで、それだけで統括した内閣なんでしょうか。私は、少なくとも例を出せば百貨店の内閣だと。部長、課長がどんなところで事故を起こしてどういうことがあろうとも、最高責任者である立場でそれをぴちっとした報告というものがあって当然じゃございませんでしょうか。一般庶民の常識というものじゃございませんでしょうか。閣僚の皆さんがおっしゃいました、いろいろと。そういうことについて、そのとおりでございますと内閣官房長官として内閣の責任の上において発表すればいいじゃないですか、これだけ信頼できるとか間違いないことをおっしゃると言うのだったら。それがたまさか、ちょっと待てよと、リクルートみたいにどこかでまたやっぱり違うてましたわということになったらこれは内閣の責任を問われるんじゃなかろうかと。こういうふうなこだわりの気持ちがあっては今回の事件解明あるいは国民が政治不信を払拭するに足るだけの対応ができない、こういう考えを持たざるを得ないのであります。  でありますから、自分自分でおっしゃることは、本当の自分の潔白あるいは正当性はこれは御自由です、大いに、どのようにおやりになろうと。しかし、内閣としてこれを全体の問題の案件として調査の結果こうですよということもまた、内閣の責任を世に問われているんではないか、こういうふうな感覚でこれから考えを改めていただきたいと思いますが、いかがですか。
  137. 加藤紘一

    ○国務大臣(加藤紘一君) また考えてはみますけれども、やっぱりそれぞれの閣僚の方を御信頼申し上げて、我々の方も正直に言いまして、この問題について各閣僚に聞きますよというある新聞社からのアンケートが各閣僚にもあったわけです。そのときに、内閣でひとつまとめて調査してというのも一つかなと思ったんですけれども、官房長官のところにメモが来て、それを私が口頭でまた出したりするというと正確に伝わらない場合もある。伝聞というのはかなり事実が曲げられるときがありますので、それよりはテレビやマイクを通じて、国民の皆さんに直接メディアを通じて話してもらうのが一番正確かなと、それぞれでやっていただきたいと。それぞれの記者会見についてはどの閣僚がなさった記者会見についても内閣としては責任を持つ、こういう種類のものでないかなと今のところ思っております。
  138. 常松克安

    ○常松克安君 よくぞ申されました、本当。断じて口から出た哲学、言論に対しては一歩も引かぬ官房長官。そう言われてみれば考え直すかなと。よくぞそこまで前向きで。どうか、時間もあることですから、考え直して、その処断というものをお聞かせ願えれば結構かと存じます。  といいますのは、国民の側といたしましては、まことに申しわけありませんが、果たして報道は根も葉もないことをああいうふうに個人の名誉に関するようなこともあえて、存じた上であるかないか知りませんよ、私は。しかし、それを筆一本の命がけで記事にするということに対して、また国民の皆さんもここに一面これあり。そうなった場合のやはり内閣のその責任という立場において、いや、それは全部各個人個人のことですから任していますんやでこれは済むべきものではない、こういうふうに私は主張いたしまして、官房長官への質問はこれで切ります。どうかよろしく考え直してみてください。  じゃ、時間が非常に切迫してきましたけれども、第二弾といたしまして、大蔵大臣、端的にお教えください。  会計検査院の重要な立場についてどのように深く認識していただいておるでしょうか、お願いいたします。
  139. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 会計検査院は、予算が適正かつ効率的に執行されているか、あるいは各事業が所期の目的を達成しているか等につきまして検査を行われておりまして、これは私どもは重要な機関であるということを認識いたしております。私どもといたしましては、こういった検査の結果というものを踏まえながら、より適切な予算編成をすると同時に、やっぱりその執行を適正に図っていくべきであろうという認識を持っております。
  140. 常松克安

    ○常松克安君 特に私は、検査院の充実こそが日本の安泰にも大きくつながってくる、こういうふうにも考えております。しかし、どの省庁も予算の大変な中でやっていらっしゃいますが、予算額百四十億円ではあるが、九割以上が人件費となっている。これから高度化、情報化、国際化が進展するならば、少しその経費というものを増額して、これにこたえるべきものとしなきゃならないのではないか。  中でも、きょう申し上げておきたいのは、国内はさることながら、これからのODA、今日一兆七千億の事業量を構え、百四十四カ国にいろいろな形で援助申し上げ、国際貢献にふさわしくいたしております。しかし、そのお金を出すということよりも、出したお金が、私たち納税者の、国民の皆さんの立場から言わしていただくなら、果たしてそのものが本当に各国の、地球号の一員と称する、共通の友好の輪にあるそういう地域の方々に貢献しているんだろうかどうか、非常に関心をまた深くせねばならぬことでございます。  しかしながら、これとて非常に問題がある。例えば、会計法上五年の帳簿はもうありません。海外に行くにしても、百四十四カ国、今体制二十名、一年間に四つか五つの国しか行けない。そしてまた、行ったとしても外国語の壁があり、あるいは現地の外務省の方々のいろいろ御厄介にならなければこれまたならない。ところが、五年の帳簿というのはもうない。国々によって主権がございますから、その友好の上から逆なでするような、日本でやるような、そういうこともできない。日本では恐れをなしております。あすは会計検査院が 来るからトイレではむだ口をたたくな、食事をするときにむだ口を言うな、こういうおふれを回すところもあるかのように聞かれるほど厳しい一面の仕事をやっていらっしゃるわけで、外国ではそれがなかなか無理であります。  そういうふうな中で一、二現実的な提議、提案をさせていただくわけでありまするが、何とかしてこれが平素からスムーズにいくように、一つはそういう会計検査院のプロがそうした貢献のプロといたしまして、全世界を九ブロックに分け、そして外務省の大使館、公邸の中に位置づけて、そういう方々と平素いろいろと相談、アドバイスに乗り、かつまたそういうふうな援助をしていくということの見計らい等もしっかりすべきじゃなかろうか、こういうふうな考えが一つあるわけでございます。これにつきましてどのようにお考えいただけるか、お知らせください。
  141. 中村清

    会計検査院長(中村清君) 検査体制の充実強化ということにつきましては、私どもとしましてはかねてから強く望んでいるところでございます。ただし、会計検査院といえども国家機関の一つとしまして、直ちに会計検査院だけの考え方で進むというわけにもまいりませんので、その点は総合的な観点から段階的に充実を図っていく、こういうふうな形で現在まで進めてきたところでございます。  ODAにつきましても、今先生おっしゃいましたように、私どもとしましてはその充実強化のために今後とも力を注いでいきたい、こう考えて各種の工夫を凝らしているところでございます。
  142. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) 冒頭、常松先生には私の健康について大変なお気配りをいただきまして御礼を申し上げます。  ODAの事業が、本当にその国の国民から喜ばれて、生活の向上、福祉の向上につながるようになることが重要でございます。かつては、やはり冷戦時代は争いがあって、自由陣営の方の政府に加担するために金をくれるというか、援助するという傾向がなきにしもあらずの時代もございました。しかし、だんだん改められまして、十年ぐらい前から、プロジェクトも相手が言ってきたからうのみにして総額まとめて幾らというんでなくて、プロジェクトごとに大蔵省でも審査をする、こういうようなことに変えてまいりまして、余りデモンストレーション的な不急不要なむだな金は最初から使われないようにチェックするということも一つやっております。  それから、後でやはりフィージビリティースタディーがしっかりしておればそれだけいいわけですから、そういう点でいろいろ調査の上でお金を貸すというようなことをやっておるわけです。その後でどこまでそれじゃ調べられるのかといっても、先生からお話があったように、主権が違いますから、日本の役人が行って公権力を持って相手の中に入っていってかき回すわけにいきません、それは。したがって、一番いいのは、相手の国にも日本のような検査制度というものを、発展途上国が多いわけですから、できることならば取り入れてもらって、そういうふうな技術指導もやって、向こうの国の内部において内部牽制的に検査を実施してもらうということが私は一番いいんじゃないか、そういうように思います。  やはり援助した以上は、それが有効に機能しているかどうか、経済効率を上げているかどうか、こういうことも大事なことであります。不正使用とか、そういうようなことを排除するとともに、幾ら公正であったとしても効果が上がっていなければだめなわけですから、それは経済効果がなかったと。確かに、公正に実施されたがむだ遣いが多かったというんでは困るわけですから、そういうこともないように、今後いろいろ先生方のおっしゃったようなことも取り入れて、いろいろと教わりながら、一層むだのないように、公正を確保するように、各四省庁でも相談してやってまいりたいと存じます。
  143. 常松克安

    ○常松克安君 終わります。
  144. 山下栄一

    山下栄一君 大阪の山下と申します。今回初めての質問でございますので、いろいろ不手際があると思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず初めに、対ロシア外交交渉につきまして御質問したいと思います。  いよいよロシアのエリツィン大統領が来日されるわけでございますけれども、先ほども外務大臣おっしゃいましたように、新生ロシアの大統領として初めて来られるわけでございまして、日本の最高首脳が行かれる前にあちらから来ていただくということで、何としても大成功させなければならないという大きな課題があるわけでございます。特に、日ロ平和条約締結に向かっての大事なステップとして、またアジア、ひいては世界の平和安定のためにも何としても成功させなければならない、このように思うわけでございます。ただ、エリツィン大統領の立場も非常に国内で厳しいものがあるわけでございまして、経済改革も思うように進まないというようなことで、非常に政治的立場が厳しくなっておるわけでございますし、今回の領土交渉も思うような成果が得られないのではないか、このようなことを言われておるわけでございます。  大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、先月の末から病を押されてロシアを訪問されまして、日本の国のためにこの困難な問題に立ち向かわれたわけでございますけれども、そのことにつきまして心から感謝申し上げたいと思います。大臣は、領土交渉の相手としまして直接会われたエリツィン大統領をどのように評価されておられるか。またもう一点は、エリツィン政権中にこの領土問題を解決しようと考えておられるかということをお尋ねしたい、このように思います。よろしいでしょうか。
  145. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) エリツィン大統領をどう評価するかというお話でございますが、これはロシア国民が投票によって決められた唯一の大統領でございますから、もちろん我々はロシアの最高の指導者であるというように考えております。  そして、私は特に、エリツィン大統領が法と正義に従って今後外交を展開する、それから共産主義を捨てて本当に自由主義経済を極力取り入れて改革をやっていく、人権尊重と民主主義を取り入れていく、こういうようなことを幾つか言っておるわけです。そういうことを実は高く評価しておりまして、しかるがゆえに日本としては、領土問題いろいろございますが、今エリツィン大統領が考えている法と正義に従った外交の展開や民主主義、基本的人権、それから軍縮、平和というようなものの考え方はこれは大いにバックアップする必要がありますので、これらについては、領土問題は領土問題としてもG7の一員としてできるだけの協力はしてきておるということであります。  したがって、エリツィン政権が続くのか続かないのかと言われましても、我々としてはぜひとも今までのような姿勢でおやりになるとすれば大いに続いていただいて、今先生がおっしゃったような、近い将来にアジア・太平洋地域にも平和と繁栄をもたらすような政策を法と正義に基づいてとってもらいたいというように考えておるわけでございます。
  146. 山下栄一

    山下栄一君 今も積極的にバックアップしていきたいというお話でございましたけれども、経済支援の問題でお尋ねしたいと思います。  エリツィン政権の改革路線を支持していく観点からも、先ほど自民党の委員の方のときにも大臣おっしゃったわけでございますが、今回ロシアを訪問されて大臣は、ロシアの国内情勢は各国の支援を取りつけても非常に厳しい状況に置かれている、このような感想を漏らしておられましたし、きょう午前中に枝村駐ロシア大使が宮澤総理に会われたようでございまして、ロシアの国内情勢を見れば前向きにエリツィン政権を支持すべきである、このようなお話があったということをお聞きしたわけでございます。  特に、経済的な積極支援という観点から、今回通産省がたしか打ち出されているようでございますけれども、技術支援基金というお考え、それからまた大規模な合弁事業への融資を政府は決定したとかいうようなことを新聞報道で拝見しましたが、このような積極的な経済支援策をさらに推進すべきである。余り政経不可分の原則にとらわれ過ぎて、非常に厳しい状況に陥っているロシアに対する支援のタイミングを逸してしまうと日本にとってもマイナスであるというふうなことも考えますし、そういう意味で積極的な支援策をさらに推進すべきである、こういうふうに考えるわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
  147. 渡辺美智雄

    ○国務大臣(渡辺美智雄君) かねて私は国会でも申し上げているとおり、日本といたしましては政経不可分ということで、領土問題が解決しない限りソ連に対する支援は一切行わないということを言っているわけではありません。政権がかわってエリツィン政権が新生ロシアとして本当に極東に向かっても法と正義の外交を展開される。したがって、歴史的事実、日本と帝政ロシア以来の国境問題というようないろんな問題も歴史的事実を率直に認めるという立場に立って今後おつき合いをしていくというのであれば、我々は後援、応援することにやぶさかでない、拡大均衡路線でやろうじゃないかということを提唱いたしておるわけであります。  ただ、日本は領土主権の問題はもう一切棚上げで、それでロシアの言うことだけを一方的に聞いて国民の税金をどんどんつぎ込んでいくのかと言われますと、これはそうはいかないのでありまして、やはりそれは共存共栄でなければならぬわけですから、だからおのずから限界があることは当たり前のことでございます。我々はG7の一員としてやるべきことは、午前中にも申し上げたとおり、たくさんもうやっているわけですから、今後も領土が未解決であっても、今回も大いにいろんな面で協力をしていこうということで、サインもしようということで準備を進めているわけでございます。  したがって、大口の金融支援というからには、貸した金は返ってこなければいかぬわけでございまして、そういうようなこと等も考えられますし、やはり日本側だけが協力するということはいかがなものであるか。我々としては、お互いが協力し合うというのでなければこれはおかしいだろう。したがって、国民からの理解も得られないんじゃないか。やはり日本国民の大多数の人の理解を得られるような形にぜひとも持ってまいりたい、そう考えております。
  148. 山下栄一

    山下栄一君 非常に厳しい、困難な対ロ交渉であると思いますけれども、今回の大統領の訪日を契機に精いっぱいの外交努力をお願いしたいと思います。  続きまして、学校五日制につきまして文部大臣の方にお聞きしたいと思うわけでございます。  いよいよ今週の土曜日から学校五日制がスタートするということで、学制改革、そして戦後の六三制に並ぶ第三の教育改革というような評価もあるわけでございますけれども、文部省といたしましても非常にさまざまな受け皿づくりのために手を打っておられるわけでございますが、学校教育の観点からお尋ねしたいと思うのでございます。  最近の新聞報道によりましても、いろんな教育現場の心配な事実といいますか、声が載っておるわけでございます。特に、学校におきましては五日制によってかえってゆとりを奪ってしまっている、このような現実がある。本来、五日制というのは子供たちにゆとりを持たせるための制度であるにもかかわらず、学校という場所におきましては土曜日の少なくなった分、四時間分、三時間分を手当てするために学校行事を縮小して、例えば修学旅行をやめてでもとか、また始業式の日に午後は授業をするとかそういう形で授業の確保、手当てを考えたり、また何年か前から始まりましたゆとりの時間、小学校三時間とかまた中学においては二時間とか、そういう時間数があるわけでございますけれども、ゆとりの時間を正規の授業に充てるとか、このような形で対応せざるを得ない。授業時間を確保するために、また学力低下を避けるためにそのようなことを考えざるを得ないということで、かえって学校においてはゆとりを奪っているというふうな事実が、またそういう対応もされておるわけでございますが、これにつきましてどのように考えておられるかということです。
  149. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 今度の土曜日が皮切りになりまして、九・一二サタデープランというようなことで各他省庁の皆様方にもいろいろな受け皿等をお願いしておりますが、山下先生におかれては教職にあられた教育の専門家であられますので、その点は十分深く御理解をいただいているとは思います。  学校五日制というような大変大きな社会的変化が与えられるわけでありまして、とりあえず月一遍で始めましたのも、このような大変革が、一気に毎週土曜日全部休みということでは世の中にいろいろな波紋を広げるだろうというので、まず月一でやってみて、そこで出てきた問題点を解決しながら第二段階へ進む。そして、もちろん全部学校が五日制である、毎土曜日すべて休みというものを視野に入れて月一遍というのを九月十二日から開始するわけであります。したがいまして、これだけの大きな変革でございますので、幾つかの摩擦とかあるいは理解不足に基づく事柄とか、越えなければならないハードルあるいは避けて通ることのできない幾つかの課題というものをこれから克服しながら進めていきたいと思っているところでございます。  ただ、先生指摘のとおり、私ども学習指導要領を変えるとかあるいは学校教育法施行規則に言う標準授業時数を変えることなく月一遍の土曜の休みというものは実現できると思っておりまして、例えば夏等の短縮授業を見直すべきだとか、見直して時間を生み出すことができないかとか、学校のいろんな行事とかあるいは教科外の活動とか、その辺は工夫で何とかやっていってほしいというふうに思っておるわけであります。  土曜日は子供が自分自身の個性を見出す時間、そのように位置づけたい。そうでなければ学校五日制の意味がなくなってしまうわけでありますので、模擬試験を土曜日にやるんだなどというようなこともちらほら聞こえてまいりますが、そういう学校五日制の意義を理解していないような行動はなるべくやめていただきたいというのが私どもの願いでございます。
  150. 山下栄一

    山下栄一君 月一回程度であれば何とか学校の方で工夫してできるのではないかという文部大臣のお考えでございますが、教育現場においてはやはり授業を一時間減らすことが大変なことであるという現実がある。  と同時に、特に学校五日制の導入の根拠の一つの中に学力観の転換ということを考えておられるわけでございますけれども、学力というのは知識とか技能の量ではない、主体的に考える問題解決能力という観点から学力は考えるべきである、そういうようなとらえ方があるわけでございますが、授業時間数を減らして、そして教科書の厚さはそのままであるという行き方からは、どうしても知識詰め込みになってしまう。それよりも、主体的な生徒の能力を養うためには、やはり教育内容を精選して、そして生徒とやりとりしながら、その中で考える時間を与えながらというふうなことで、時間数を減らす方向ではなくて教育内容を減らす方向で考えないと、子供たちの主体的な力というのは、考える力、判断能力というものを養えるような授業は行えない。どうしても一方的な、とにかく教科書を終えなきゃならないということが出てくるということではないか、このように思うわけでございます。  本来、今のカリキュラムも六日制が前提になっているわけでございますから、そんな中で、今は月一回ですが、これから将来的には月二回、完全五日制実施ということで考えていきますと、さまざまな観点から教育課程を見直して、そして教育内容を精選するということがどうしても不可欠である。五日制は教育課程の見直しを伴う、そういうふうに考えるわけでございますが、その点につきましてはどうでしょうか。
  151. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 長期的に申し上げれば、先生のおっしゃるとおりだと私も思っているわけで、また学校五日制が新しい学力観に基づくもの、すなわち子供が余裕をもって自分の個性を見詰めていく、そして自然との体験とか旅行とかスポーツとか奉仕とかいろんな体験を積む、いろんな経験によって人間的な大きさというものを培っていく。それが社会へ出た場合には、教科書で得た知識以上に大きな力を持つ。これは学校五日制の基本理念にある一つの新しい学力観でございます。  主体的に行動するとか、自分で問題解決をする能力を身につけるとか、生涯学習の理念ではありませんが、みずから学ぶそういう姿勢を身につけるとか、そういう今までと若干違った新しい考え方、今先生が御指摘されたような考え方というのは、平成元年に告示されて、今小学校から、そして来年中学、再来年高校と順次実施してまいります新学習指導要領においても幾ばくかそのような考え方は示されてきているわけでございまして、小学校一、二年生の理科、社会を廃して、経験中心、観察中心、行動中心の生活科というものを新設いたしましたのもそのような基本的な理解から発したところでございます。そのような考え方というのは、これからも時代の流れとともに、もっともっと強く色合いを出していかなければならないことと思っております。  しかし、学習指導要領というものは、時代に沿って常に新しく変革されていくという要請も受けなければなりませんが、同時に一つの安定性というんでしょうか、法律上の言葉で言えば法的安定性というんでしょうか、毎年学習指導要領が変わって毎年教科書が変わりますと、それこそ入学試験でも新課程の人はこれをとりなさい、旧課程の人はこの問題をやりなさいと、こんなことが毎年続くようではやはり困るわけで、そんな意味で学習指導要領がおおむね十年に一度ぐらい改訂されているというのは、私はその時間の長さにおいてはおおむね適当ではないかというふうに考えております。  当然、学校五日制を完全実施した場合には学習指導要領も変えなければならないだろう。平成元年に告示して、平成年度から小学校で始めたこの学習指導要領の改訂というものが、ちょうど今から十年後に新学習指導要領に切りかわるころ、そのころにまた学校五日制も完全実施というのが、具体的に抱いているプランではありませんが、頭の中で大体そういうタイミングになるのかなというふうに私は考えております。  したがって、今先生がおっしゃった理念はまことに正しいと思いますし、十年先を見越してそのような考え方でやっていきたいと存じます。
  152. 山下栄一

    山下栄一君 カリキュラムの新しい新指導要領の実施が今始まったばかりであるという状況であるわけでございますけれども、それと五日制の実施が整合性なく実施されてしまったということがやはり非常に大きな問題点であろうと思うわけでございます。今、大臣おっしゃったように、五日制の実施は必ずカリキュラムの全般的な見直しを必要とすると、こういうふうに考えますと、十年後というのが一つのめどであるというお考えはひとつ了解いたしました。  時間の都合でもう一点だけお話し申し上げたいと思います。  教育費の父母負担軽減の問題でございますが、教育費の家計費に占める負担といいますかは年々重くなってきている。先日の文部省の教育費に関する調査でも、特に家庭教育費の占める比重が高いというお話がございましたし、また昨年度におけるさまざまな調査におきましても、例えば教育に関する貯金の比率が、特に三十代、四十代では三分の二以上の方が子供の教育のために貯金をされているというようなことの御指摘もございますし、特に高校生、大学生にかかる教育費は大変な重さであるというふうなことが言われております。  そういう観点から公明党は、特に大学生の入学金、初年度納入金の負担が大変重いという観点から、奨学金の中に入学金を対象にする奨学制度を考えたらどうかということを御提案しているわけでございますが、これにつきましてお考えをお願いしたいと思います。
  153. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 教育費の問題については、幼稚園から始まりましょうが、幼小中高のお子さんをお持ちの親御さんにとっては、いわゆる家庭教育費、小学校の低学年にあってはけいこごと、中学になりますと塾、家庭教師、そうしたもので大変経費がかかっていくということ、そして大学生のお子さんをお持ちであると、これがいわゆる学納金ということになってくるわけでございまして、そういった意味では大学生、もちろん院生を含めてでございますが、育英奨学制度の持つ意味というのは大変大きなものがあると思っております。  そして、先生が今御指摘をされました入学金も育英奨学の対象にすべきではないかというような御意見については、これは重く受けとめさせていただいておりますが、現在育英奨学制度のあり方について学識経験者等による調査研究会議がございますので、その審議の結果も踏まえて検討させていただきたいというふうに考えております。
  154. 山下栄一

    山下栄一君 前向きの御答弁どうもありがとうございました。  最後に一点、大蔵大臣の方にお尋ねしたいと思いますが、この教育費の負担軽減の一つの手だてとしまして公明党は、特に参議院選挙の一つの柱としまして教育減税というのを考えたわけでございます。特に、教育費の負担率の高い十六歳から二十三歳未満、高校生、大学生を対象にした年齢の方々、今の特定扶養控除の対象になっているわけでございますが、それをさらに十万円アップして教育減税という形で実施できないか、そういう政策を打ち出したわけでございますが、これにつきまして大蔵大臣のお考えをお願いしたいと思います。
  155. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 今、山下委員の方から御指摘のありました点につきましては、前国会の中でも実はしばしば議論になったわけでございますけれども、授業料ですとかあるいは入学金等の教育費そのものを控除する教育費控除の創設といったような、税制面で親に対する子女教育の助成の道を開くということになりますと、教育に対する財政的な助成、これは相当大きなものを国家として見ておるわけでございますけれども、こういったものに変更を加えるということになりまして、私どもといたしましては慎重に検討すべき問題であろうというふうに思っております。  特に、税制面のあり方といたしましては、これは税金を納められていない家庭の父兄には恩典が及んでいかないという事実があります。もう一点は、教育費などの生計費というものは所得のうちから支払われるものでございまして、教育費といった個別の支出項目、これを抜き出して所得税においてしんしゃくするということは、これはやっぱりおのずと限界があろうかというふうに考えます。  なお、今のお話の中にもあったわけでございますけれども、四十あるいは五十ぐらいですか、あるいは五十五ぐらいまでだろうと思いますが、働き盛りの皆様方の中で教育費等の支出がかさんで生活にゆとりのない世代の税負担の一層の軽減を図るという考え方から、お話のありました十六歳から二十二歳までの扶養親族につきまして、一般の扶養控除に対し三十五万を四十五万にしたということがありまして、この控除はやはり相当大きな優遇措置をしておろうというふうに考えております。私ども現在の財政事情から考えましても、今このことをとり得ることは難しいということを残念ですけれども申し上げざるを得ないことをお許しいただきたいと思います。
  156. 山下栄一

    山下栄一君 時間が参りましたので、終わります。
  157. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私は、この選挙の前まではサラリーマンの一人でございました。今サラリーマンの皆さん方にとりまして最大の関心事は何といっても税金と土地・住宅の問題でございます。サラリーマンとしての経験を踏まえながら、本日は税金と土地・住宅の問題を中心に政府の御見解をお伺い いたしたい、このように思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  まず、最初に減税、特にサラリーマン減税の問題について大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  今回の景気対策は、政府としても大変御努力された結果である、このように思います。しかし、やはりこの総合経済対策は公共事業中心の構成になっておりまして、何人かの方が指摘をされておりますように、これはあくまでも日本の経済全体を浮揚させるための呼び水にすぎない、このように思います。したがいまして、本格的に景気を拡大していくためには消費と設備投資が回復していかなければいけないんではないかと思います。そして、こういう視点で今回の景気対策を見ますと、やはり特に消費の拡大という面から見ますと、この所得減税が入っておらないということについては、大変失礼でございますが、何か大事なものが抜け落ちてしまったんではないかなと、このように思っております。  特に、サラリーマンを中心にした所得税の負担という面で見ますと、例えばこれはユニオン連合の試算でございますが、八九年年収が六百三十万ぐらいの方、この方の所得税の負担率が大体三・五一%、九二年ではこの方のそれ以降収入増がございまして約七百四十万円の所得に対して税負担が四・二八%、つまりここで約〇・八ポイント近い税アップになっております。また、国税収入に占める源泉所得の税の比率を見ますと、ちょうど消費税が導入されました直後の八九年は約一六%でございましたが、これは予算ベースですが、九二年を見ますと一九・六%、ここでも三・四%ぐらいアップをいたしております。  たしか消費税を導入するときにも、今非常に不公平になっているサラリーマンを中心にして、消費税を導入することによってその減税をして税負担を減らしていくんだ、このことも消費税の導入の大きな目的になっていたと思います。そういった視点から見ますと、とかくよく言われます税の公平性という観点から見ましても、私は、サラリーマンの税負担が大変高くなっているのではないか、このように思っております。  それで大蔵大臣にお伺いしたいわけでございますが、大蔵省として今のサラリーマンの税負担が高まっているこの現状について、これはどういう認識を持っておられるか、このまま放置しておいても差し支えないんだ、このように思っておられるのか、あるいはやはりこれは重要な問題だ、このようにお受けとめになっておられるのか、その御認識をお伺いさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  158. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) まず、今度の総合経済対策の中で所得減税が入っていないという実は御指摘があったわけでございますけれども、先ほどもちょっとお答え申し上げましたように、私どもといたしましては、今度の総合経済対策を進めることによりまして経済全体に大きな影響を与えていくであろう、そういった中でいろんな産業の中でお勤めになる方たちもそれによって裨益を受けていくであろうということを思いながらこういった措置をしたところでございます。  ただ、確かにこのところ全体を見ますと、消費の減退が見られるということはあります。ただこれは、確かにバブル経済というものが産業にも大きな設備投資を進める等によりまして大変な設備のストックがあるということがありますけれども、実はこれは個人の生活者にとりましても、この間に車あるいはテレビあるいはクーラーその他耐久消費財、こういったものの相当なストックというものがあったんじゃなかろうかと思っております。そして、今産業界がリストラ、いわゆる再構築をやろうとしておる、これと歩調を合わせるようにして、やっぱり個人の皆様方も生活が非常に堅調になってきておるということがあろうかと思っております。  その意味では、確かに減税ということは、これはありがたいことであろうと思いますけれども、しかし所得減税があるからそれではすぐ消費の方に移るかといいますと、相当高いストックがあるということでありますから、例えば車にしましても、その他の耐久消費財にいたしましても、むしろ今買いかえるのを例えば一年とか二年先に延ばそうというような動きがあるんじゃなかろうかというふうに考えておりまして、そういったことを考えたときに、果たして所得減税をやったからこれがすぐ消費に結びつくかというと、なかなかそういうものじゃないんじゃないのかということを私たち考えなきゃならぬし、また堅実な、今みんなそれぞれが家庭の再構築といいますか、そういったものをやろうとしているときに、無理して何か刺激するということが本当にいいのかということについても、私たちは考えなきゃならぬと思っております。  しかし、それをもしするといたしましても、これに対する代替の財源がなければできないことでございまして、御案内のとおり、景気が低迷しておるという中で、税の収納あるいはこれからの見通しというものも決して甘いものでない、相当厳しいものであろうといったときに、これをやることが果たしてできるのか。一部の方が言われるように、特例公債を発行してもというような御指摘がありますけれども、しかしもしそれをやるとすると、今日の状況を打開するために、まさに高齢化社会ということで相当将来大変になるであろう次代の人たちにツケを残してしまうことが本当にいいのかということを、私たちは真剣に考えなければならないだろうというふうに考えております。  なお、今のサラリーマンの皆さん、実は私もサラリーマンの出身でございますので、サラリーマンのお立場というのはよく理解しております。やっぱり税というものを簡素でありしかも公平なものにしていかなければならないということで、直間比率を見直しましょうという中で消費税の導入が行われたわけでございますけれども、そのときに、ちょうど六十二年、六十三年でございましたけれども、たしか五兆五千億円にわたりまして、これは住民税を含んででありますけれども、減税措置をしたということがございます。  この措置をしたことによりまして、いわゆる主要先進国といった国に比べましても、中低所得者層の所得税の負担というものは相当に低いところになっておるということが言えるんじゃなかろうかというふうに考えております。  標準世帯の所得税の負担の比較をいたしましても、課税の最低限が、日本が三百二十万に対しまして、アメリカは二百五万、イギリスが百十五万、ドイツが百八十六万となっておりますし、また最低税率も、日本の場合には一〇%、アメリカ一五%、イギリス二五%、ドイツ一九%、また所得税と住民税の負担額を見ましても、これは五百万円の場合でございますけれども日本は二十一万に対して、アメリカ六十一万、イギリスが九十六万、そしてドイツが六十一万というふうになっておりまして、日本の負担は諸外国と比較いたしましても割合と恵まれているといいますか、そういったものに対して我々としても対応してきておるんじゃなかろうかというふうに思っております。  そして、確かに日本の物価の上昇率は比較的低いところにあるわけでございますけれども、確かに少しずつ上がっていることは事実であります。しかし、いわゆる可処分所得の伸びを見ましても、実質で前年度と比較いたしましても、元年で一・五%、また二年で一・四%、三年でも一・九%ということでございまして、可処分所得につきましても私は確保されているんではなかろうかというふうに考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、所得減税というものをやるとなると、余り小さなものではこれはまた効果もないということになるんでしょう。そういうことを考えましたときに、また税のあり方というような問題について本当に検討しなければならない。私どもとしましては、サラリーマンの所得に対する税についてももう一度考えていくということをそういったときに考えるべき問題であろうというふうに思っておりますことを率直に申し上げさせていただきます。
  159. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 サラリーマンの方から見ますとなかなか厳しい所感でございますが、この問題もっと議論させていただきたいんですが、時間が余りございません。  ただ、大臣も御承知のとおり、例えば経済界も含めて、今減税の必要性ということを訴えられております。そういう点で言いますと、国民的な声が大きいということはぜひ御認識を賜りまして、今後また議論させていただきたい、このように思います。  続きまして、土地の問題の方に参りたいと思います。  今回の景気対策で、私が一番心配していますのが、この大規模な景気対策、これは非常に努力された結果でございますが、しかし、そのことによって下落傾向にある土地が値上がりをしていくんではないか、このことを率直に言いまして一番懸念いたしております。例えば最近の地価動向を見ましても、バブル前の八五年を一〇〇とした指数で見ますと、九二年は、東京圏は二一八・八、地方圏でも一四一・八、大変高い数字になっております。  私、実はこの約一年間に四十七都道府県を全部回ってきました。そしてそのときに、私と同じようにサラリーマンの方々の声を聞いてきました。年収の大体どれぐらいでこの地域で家が持てるんだと、標準的な家が買えるかと、こういうことを質問しました。そこで感じましたのは、三大都市圏、これはもう非常に土地が高過ぎる、とても手が出ない。したがって、これは土地は下げていかなければいけない。  もう一つ感じましたのは、三大都市圏のその周辺部分及び地方の中心都市、ここでの土地価格がサラリーマンが普通に家を持とうとしますと限界に達しつつある。したがいまして、大都市の土地価格を下げると同時に、地方における土地価格をこれ以上上げてはいけない、このことを認識いたしました。  宮澤内閣も生活大国ということで、大都市圏でも年収の約五倍程度で良質な住宅を持つことができるようにしていこう、こういう政策を打ち出されているわけであります。こういう政策から見ますと、私はやはりこれからもこの土地価格を、特に大都市圏ではもっと下げていく、こういう努力が不断に行われなければいけないのではないかと思います。  そこで、経済企画庁長官にお伺いいたします。  今、土地価格がこういう状況でございますが、今度の総合経済対策の中で、この土地の値段についてどういう問題意識を持って、これをまた上げないように政策的配慮をどうされようとしているのか、これが一点でございます。  それから二点目は、今回の対策の中で特に目玉になっておりますのが公共用地の先行取得でございます。この意味合いについて御見解をお聞かせいただきたい。  二つの点、よろしくお願いいたします。
  160. 野田毅

    ○国務大臣(野田毅君) これから生活大国をみんなで努力してその形成を目指していく上で、土地の問題が非常に大事な要素を占めるということは全く御指摘のとおりであります。  そこで、現在率直に私ども感じておりますのは、本年の一月一日現在の公示価格、これはもう既に発表されております。しかし、その後本年に入りましてからも、現実にはいわば地価、実勢地価とよく言われるんですが、これが公示価格を調べた一月一日現在の価格よりも半年余りの間にさらに下がってきておるのではないか、場所によっては公示価格すら切っておるのではないか、こう言われております。  ただ、現実には土地の取引がほとんどとまっておりますから、話はあっても実際の売買実例という姿の中でそれがまだ確認されていない。いわば下がった地価水準ということが顕在化していないというのが今の姿ではないかというふうに私は思っております。  先ほど来、いろいろ金融機関の担保不動産の流動化のお話も出ておりました。これにしても、融資先の再建計画を立てよう、場合によっては損切りをしてでも再建計画をしなきゃならぬ、そして競売をしよう、こう思っても競売そのものが成立しないというような状況にあるということでありますから、今回、これはもちろん金融システムの安定性の確保という角度からそういった担保不動産の流動化ということを別途考えておるわけであります。そういったことが一つ。それからいま一つは、後ほど申し上げますが公共用地の先行取得の問題。この二つの問題を今回の対策の中で土地に関連しては取り上げておるわけです。  今申し上げましたような動向をいろいろ見ておりますと、少なくとも今回の対策によって現在の地価水準が反転していくというようなことは当面のところ心配はないのではないかというふうに私どもは考えております。それは、いわゆるバブルが発生したときと比べて基本的な枠組みが少なくとも今はでき上がっている。すなわち、この三年ほどの間に土地基本法ができておる。同時にまた、金融の側面ではいわばトリガー方式といいますか、不動産に対する総量規制、融資の総量規制という枠組みもある。そしてまた、何よりも土地税制を抜本的に改革させていただいておる。こういうことでありますし、同時にまた土地の利用計画といいますか、そちらの側面においても、建設省のあれですからなんですけれども、都市計画法なりそちらの側面で、土地の利用という側面においても強化されておる、こういう枠組みであります。  私どもは、手放しで楽観しておるわけじゃありません。もしもそういうような懸念が出てきたときには直ちに対応措置をとれるというふうな体制に今はなってきておるということでありますから、まずそういった今回の対策が地価の現在の状況を悪くしていくようなことにはならない、こう判断をしております。  そこで二点目ですが、公共用地の先行取得という考え方は、むしろそういった側面よりも、率直に申し上げて、私どもが生活大国をつくり上げていこうとする上で、特に社会資本の整備ということが非常に大事なポイントであります。ところが、現在の状況ですと、そういう公共用地のストックが大体一年とちょっと分しかない。これからどんどん社会資本を整備していく中で、用地の確保、そのこと自体は非常に難しい環境にある。したがって、現在のように土地について地価が鎮静化し、むしろ取引が緩慢になっておる、いわば買い手市場というか、そういう形になっておる。こういう環境のときにこそ、逆に今のうちから手当をしておくということがこれからの社会資本を整備していく上では極めて大事なことである、このように考えておるわけです。  したがって、例えば道路用地などについても、たまたま予定地の上にそういった担保物件なんかがあれば、それも入るかもしれないが、基本的にはそれは結果論であって、ほとんどの場合は、今回の場合主としてこれからの社会資本整備のために必要な土地を確保していく、その点に絞って我々は今回の対策を考えておるということを申し上げておきたいと思います。
  161. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 時間がなくて大変申しわけないんですが、今の特に土地の先行取得について、建設大臣と自治大臣にそれぞれ、公共用地を先行取得していく場合に、それを所管する立場から土地の値段を上げないように具体的にどういうお考えでおやりになるのか。  特に一点指摘したいのは、ユニオン連合の政策懇談会で提言いたしておりますが、先行取得の場合に公共住宅とかあるいは大規模開発中心に目的を絞るべきだということと、もう一点は土地取得について一月一日価格より三、四割低い価格で上限価格を決めるべきだ、こういう提言がなされております。これについても一つのアイデアではないかなと思いますが、そういったものに対する御見解も含めてお答えいただければ大変ありがたいと思います。
  162. 大渕絹子

    委員長大渕絹子君) 時間が来ておりますので、手短にお願いします。
  163. 山崎拓

    ○国務大臣(山崎拓君) ただいま御質問がござい ました点に関しまして、先ほど野田経済企画庁長官の方から実勢地価で公共用地を取得すべきであるというお話がございました。そういう見地に立ちまして、各種の地価情報を定期的、組織的に収集して意見交換等を行うための組織といたしまして、都道府県の地価調査担当部局及び日本不動産鑑定協会の代表の参加を得まして、都道府県の用地対策連絡協議会というのがございますが、そこに地価情報連絡協議会を設置するということを決めました次第でございます。さらに、必要に応じまして都道府県の地価調査担当部局と緊密な連絡調整を行うよう関係機関に指示を行いました。  そのような対策をとりまして、現下の地価動向にかんがみて、公共用地の先行取得が現在の地価を反映した適正な価格で行われるように国土庁と十分連携をとりつつ対処してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  164. 塩川正十郎

    ○国務大臣(塩川正十郎君) 建設大臣と大体同じ方針でございますが、地方自治体としては、固定資産評価審査委員会というのがございますし、そういうところの意見も十分に吸収しながら、そして実勢に合った地価で売買でき得るよう地元の協力を得るということが大事だろうと思っておりまして、私の方は高圧的な買収よりも、あくまでも話し合いによって地元の協力を得る姿勢で買収に臨んでいきたいと思っております。
  165. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 まず、自治大臣にお尋ねいたします。  佐川から金丸さんへの五億円は、新潟県知事選の候補一本化の謝礼と言われています。八九年六月に行われた新潟県知事選に保守陣営から四人の候補者が名のりを上げた。そのとき、新潟出身の佐川会長と渡辺社長が一本化に奔走したけれども失敗し、金丸さんに調整を依頼した、こう言われています。その結果、一本化に成功し、金子知事が誕生した経緯があります。その謝礼の五億円献金ではないかと、こう言われているわけです。  ところで、これは判例もあるんですが、立候補を断念したことの報酬として金銭を供与したことがあれば買収であり、公職選挙法二百二十三条一項二号違反になるわけですが、そうですね。
  166. 吉田弘正

    説明員吉田弘正君) 公職選挙法第二百二十三条に関してのお尋ねでございます。具体的な事実関係は私どもは承知しておりませんので、一般的な二百二十三条の問題について御説明をさせていただきたいと思います。  公職選挙法第二百二十三条は、候補者であること、候補者となろうとすることをやめさせ、または当選人たることを辞させることを目的とする買収行為を処罰する規定でございます。概括的に申し上げれば、一つは、候補者であること等をやめさせる目的を持って候補者等に対して買収を行った場合、二つ目は、候補者であること等をやめたことの報酬とする目的を持って候補者等に対して買収を行った場合、三つ目が、候補者等が不正利益を受けたり要求をした場合、四つ目が、これらの行為に関し周旋、勧誘をした場合について処罰される旨の規定があるわけでございます。  御指摘お話が、公選法第二百二十三条に該当するかどうかについてはあくまで行為の実態に即して判断されるべき問題でありまして、具体的な事実関係については承知しておりませんので、お答えはいたしかねます。
  167. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 私は、立候補を断念したことの報酬としてお金の供与があればこれは当たりますねというふうに尋ねているわけですから、端的に答えてください。
  168. 吉田弘正

    説明員吉田弘正君) ただいまお答えしたような各条項がございますので、具体的な事実関係にそれは当てはめて判断をしなければなりませんので、私の方からのお答えは控えさせていただきたいということでございます。
  169. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 これは一九六三年の北海道の道議会選挙の判例で、立候補者を辞退させるため断念料を提供した事件ですけれども、金銭授受と無関係な自己の意思で断念したものでも、立候補を断念したことの報酬として金銭供与等の行為がなされればこれをもって足りるとするということで有罪の判決が下されているわけですから、私が指摘したことについては明らかに公選法二百二十三条違反であるということははっきりしているわけで、そう答えていただけないのは非常に残念です。  次に法務省にお尋ねいたしますが、そうすると、当時知事の候補者に名乗りを上げた高鳥代議士、岩村代議士らに仮に立候補の断念につきその謝礼として献金が渡っていたらこれは公選法違反となるわけです。金丸さんへの五億円献金は知事候補一本化の謝礼と、こう言われているのですから、そうであれば当然これらを念頭に置いて捜査の対象としなければならないと思うわけですが、いかがでしょうか。
  170. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) まず、報道されている事柄を前提にお尋ねになっておられるのではないかと思うわけでございますけれども、今委員がお触れになられましたようなことが報道されていることは一部私も承知しておりますけれども、その報道されている内容について論評をすることは、そういう立場にはございませんので、その点については論評いたしかねるわけでございます。  候補者の一本化調整について全員が授受された場合はどうかというお尋ねでございますけれども、候補者の一本化調整と一口で申されましても、いろんな具体的事案によりまして事実関係が異なってくるのではないかというふうに思うわけでございます。これはもう改めて申し上げるまでもないことでございますが、具体的事実につきましてどういう犯罪が成立するかどうかというようなことは、これは捜査当局が法律に定められた手続にのっとって収集した証拠に基づいて事実を確定した上で初めて判断できることでございます。したがいまして、仮定の事実あるいはその具体的事実関係が証拠によって確定されていないものについて、犯罪の成否を法務当局からお答えすることはいたしかねるわけでございます。
  171. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 この候補一本化にかかわっての金丸さんの五億円献金という問題は、一連の佐川急便事件と言われるものとして現在捜査継続中というふうに理解していいですね。
  172. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) いわゆる東京佐川急便事件につきましては、東京地方検察庁において捜査中であることは昨日もお答え申し上げたとおりでございます。ただ、現在東京地方検察庁においてどのような事実についてどのようなことを調べているか、捜査しているかということについては、これはお答えすることはいたしかねるわけでございますので、そこはひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  173. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 一連の佐川急便事件と言われる場合には、贈収賄事件あるいは公選法違反事件、政治資金規正法違反事件等々さまざまな事件に網がかかってくるわけで、きのう来の御答弁でも、一連の佐川急便事件について捜査継続中であるというふうに網をかけてというお話もきのうも私はいたしましたし、捜査継続中ということだと当然思うわけですが、その点いかがですか。
  174. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) 昨日もお答え申し上げたかと思いますが、検察当局におきましては、新聞等で報道されている事柄あるいは当国会で御論議のあります事柄につきましては当然承知しているものと考えておるわけでございます。  また、検察当局の使命からいたしまして、犯罪に当たる事実があると思料いたしますれば、これは厳正に捜査をして解明するであろうということは申し上げられるわけでございます。
  175. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 それでは次に、金丸さんの五億円献金の流れの解明で、金丸さん本人は大変重要な発表をされたわけです。八月二十七日のこの五億円の授受を認めた金丸会見で、「多額であるところから、わが同志への陣中見舞いだと認識した」と、こう述べられました。我が同志というのは派閥議員であろうことは間違いないわけで、経世会の所属議員に渡っているのではないかと思われるわけです。  そこで、大蔵大臣、運輸大臣それから法務大臣にお尋ねいたしますが、金丸さんまたは金丸さんの政治団体等から献金を受けていませんでしょう か。それぞれお答え願います。
  176. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 私どもは、実は今現在は党の方からも受けられない立場でございまして、たしかそのころはもういただいておらないと思います。もちろん、従来からの派閥ではそういった選挙のときに私ども資金を借り受けるとかそういったことがあったことは事実です。ただし、今お話しのその時点あたりからはちょっとなかったんじゃないかというふうにあれしておりますけれども、今ここで急にお尋ねありましても、少し調べてみないとわからないと思いますけれども、多分ないと思っております。
  177. 奥田敬和

    ○国務大臣(奥田敬和君) 金丸会長の政治団体からの献金はございません。
  178. 田原隆

    ○国務大臣(田原隆君) 金丸さんからの献金はないと思います。
  179. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 大蔵大臣は調べてみないとわからないと今お答えいただきましたが、調べて後日御報告いだだけますか。
  180. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 今申し上げましたのは、私どもの経世会という会からのことを申し上げたわけでございまして、金丸会長からというお尋ねだとすれば、私どもはなかったように思っております。
  181. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 金丸さんの政治団体もですか。
  182. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) はい。
  183. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 それでは自治省にお尋ねいたします。  経世会並びに経世会所属議員に金丸さんまたは金丸さんの政治団体から献金を受けているか、これを調べて報告していただきたいのですが、お願いできますね。
  184. 吉田弘正

    説明員吉田弘正君) 自治大臣に収支報告をいただいているものについて、具体的にどういう団体の名称かまた相手先がどうかということを特定させていただければ、収支報告が出たと思いますので確認することができるかと思います。
  185. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 団体名もおわかりかと思いますが、それがわかれば調べて提出していただけるということでお約束いただけますね。  そこで、官房長官にお尋ねいたします。  金丸さんは同志への陣中見舞いだと言われましたが、今、各大臣はいただいていないとおっしゃいました。それでは一体この五億円の大金というのはどこに消えたのかというのが大変重大になってくるわけです。金丸さんが同志へとおっしゃった以上、御自分の懐には入れていらっしゃらないと思います。恐らく党に入った可能性も考えられるわけです。  そこで、八九年五月三十日の自民党総務会の決定、その中で、党へ拠出された金銭については、党がこれを取りまとめた上、社会公共への還元などは党を通じてこれを行うというふうになっていますから、総務会決定に従って還元されますね。
  186. 加藤紘一

    ○国務大臣(加藤紘一君) それは党の処理の話でございますので、ちょっと政府側にお聞きいただいても答弁はできないのでございますが。
  187. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 きょうは内閣総理大臣を私要求しておりましたが、御出席できないと。内閣総理大臣にかわってお答えいただけるということで官房長官に出席していただいていますので、党の問題についてもお答えいただけるというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。今わからなければ、調べて御報告いだだきたい。そして還元するかどうかということもお答えいただきたいんです、仮にそうであれば。いかがですか。
  188. 加藤紘一

    ○国務大臣(加藤紘一君) 私たちは政府として答弁申し上げているのでございます。
  189. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 このやりとりをするとちょっと私時間がありませんので、総裁を代理して出席していただいているということを確認していただいていますので、その点も要求しておりますので、これはぜひ調べていただきたいと思います。  時間がありませんので、次に移ります。  これは法務省にお尋ねいたします。  金子知事側に渡った三億円の献金について政治資金規正法サイドの捜査がされているようですけれども、我が党が再三にわたって新潟調査をした結果、金子知事の職務権限にかかわり、佐川急便への便宜供与の疑いが極めて強いことが明らかになりました。  お配りした図をごらんください。  一つは、県が計画する日本海沿岸自動車道、新潟から村上間五十キロと国道七号線を結ぶアクセス道路をちょうど新潟佐川中条店のすぐ脇にぶつかるルートを決めたこと。しかも、計画ではアクセス道路は、この図は軽いカーブですが、もっと実際は大きくカーブしているんですね。なぜか大きくカーブして中条店に向かっている。  二つは、これと一体の計画として、そのアクセス道路と現在ある国道七号線が斜めにつながるため、中条店に入り込むためには大回りしなければならない。そこで、アクセス道路から直接中条店につながるよう十文字交差にするため、わざわざつけかえ道路、これは点線ですが、計画を県が進めていることです。これにより新潟佐川中条店は国道七号線とアクセス道路及び県道つけかえ道路でぐるっと囲まれることになります。こんなうまみのある話はめったにない。至れり尽くせりの便利な一等地になってしまうわけです。  特に、県道のつけかえ道路は交通量は極めて少なく、この九月三日、党の調査団に中条町の熊倉町長は、十字路となるような県道のつけかえは必要ないと明確に言い切っています。アクセス道路のルート、県道つけかえの調査、協議が始まった時期が極めて注目されます。東京佐川から三億円のやみ献金を受けたと言われる金子知事が当選した直後の八九年後半から九〇年四月以降に始まっており、しかも、この前後にも金子知事が佐川急便の佐川前会長や東京佐川の渡辺元社長らとひそかに何回も会っている。  こう見てくると、県が佐川のためにアクセスルートや県道つけかえで便宜を図ったのではないかという疑惑が浮かび上がってくるのは当然です。検察はこれらの事実関係について厳正に調査すべきではないでしょうか。
  190. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) たびたびお答え申し上げておりますように、いわゆる東京佐川急便事件について現在東京地検が捜査を続けていることは委員御案内のとおりでございます。検察当局がどのような事柄について捜査を進め、あるいは今後捜査していくかということについてはお答えいたしかねるわけでございます。
  191. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 これは新聞報道で私述べているんではないんです。昨日、新聞報道で承知している、必要なものについては捜査しているはずだというお答えいただきましたけれども、これは私どもの調査で明らかになったことをここで、国会の中で具体的に指摘したわけで、疑惑があるんだということを私今るる指摘もしたわけです。この点を承知して対応していただけますねということを聞いているんですが、いかがでしょうか。
  192. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、検察当局におきましては、いつの場合にも報道されている事柄、あるいは当国会で御論議のあるところは十分承知しているというふうに考えております。
  193. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 公選法の関係でさっきお話しされたように、犯罪に当たる事実があると思料すれば適時適切な捜査をして厳正に事件を処理するというふうに伺ってよろしいですね。
  194. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) これは、いつも一般論を申し上げておりますけれども、検察当局の使命として、犯罪があると思料いたしますれば、厳正な捜査を行って事実関係を解明するということは当然のことでございます。
  195. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 私ども今疑惑を指摘したわけですから、当然この指摘を受けて厳正に事件が処理されるものというふうに理解いたします。  次に、佐川の中条店が現在の場所に立地することが決まった経過にも疑惑が浮かび上がっています。  私どもの調査団に対し、中条町長ははっきりこう言われました。八八年初夏、田植えごろに北陸佐川の伊藤社長が当時の長谷川信参議院議員の秘書ら三人と一緒に、中条町長に中条店進出に当たって 新発田寄りに用地確保の協力要請があったこと、またその日に町長がここしかないと言って示した場所に立地することを決めたこと、用地については、公共用地確保という名目で町が前面に出て地権者と交渉したことなどが明らかにされました。  ところが、県の資料を見ますと、ちょうどこの時期と重なる八八年六月六日から七月二十一日に県は日本海沿岸道路のルートを関係市町村に説明していることが明らかになりました。こうなると、日本海沿岸道の計画ルートと中条インターチェンジの位置、このインターと国道七号線とを結ぶアクセス道路の概略の構想について、どこを通るということを事前につかんで、その事情をもとに佐川の中条店があの場所に立地するように便宜を図ったのではないかという疑いも出てくるわけです。  検察は、金子知事周辺に流れたと言われる三億円の政治献金がこうした佐川に対する便宜供与の謝礼という意味を持っていること、これに注目して捜査すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  196. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、検察当局におきましては、報道されている事柄あるいは当国会で御議論のある事柄は十分承知しているものと考えております。
  197. 大渕絹子

    委員長大渕絹子君) 時間が来ていますから手短に。
  198. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 ちょっと済みません、あと一問。  金子知事周辺に流れたと言われる三億円献金との関係で注目されるのが黒埼町にある新潟佐川黒埼ターミナルの建設にかかわる疑惑ですが、市街化調整区域で農振地域の指定を受けていたあの場所に、区域免許しか持っていなかった佐川が千ヘクタールを超える大規模ターミナルを建設するに当たって、建設省通達による特別の定めがどうしても必要で、そのために佐川とその意を受けた当時の黒埼町長らが猛烈な陳情を中央、地方政界に行って、とうとう通達による特例をつくらせたと言われました。八六年八月に通達の制度変更がされ、その前の六月十八日に県は土地利用調整会議、当時の会長は金子副知事です。これを開いて、黒埼町の助役らに、いずれ制度が変わり開発が可能になるから事前に手続を進めてもよいと早期建設に向け便宜を図った。  この点は、昨年十二月新潟県議会で我が党の県議が質問をし、金子知事みずから、黒埼町の助役が出席して昭和六十一年六月十八日にこの土地利用調整会議を開催したと答弁をしているわけです。この調整会議の議事録あるいは関係資料が金子知事が便宜供与したかどうかの大変重要な証拠書類となるわけですが、これも当然念頭に置いていると思いますが、いかがでしょうか。
  199. 濱邦久

    説明員(濱邦久君) 委員御案内のとおり、一般に検察当局がどのような事実について捜査をしているかあるいは捜査をするかということにつきましてはお答えはいたしかねるわけでございます。  なお、つけ加えさせていただきますと、検察当局は、先ほどもお答え申し上げましたとおり、犯罪の嫌疑があるかどうかあるいはその内容について捜査を行うわけでございます。これを使命としているわけでございまして、委員お尋ねになっておられますような疑惑の有無自体を捜査の対象とするものでないことは、これは十分御理解いただいているものと思うわけでございます。
  200. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 もう時間ですのでこれでやめますが、私が指摘したその点を、これは国会で疑惑を提起したわけですから、その点を酌んで厳正に捜査されることを国民も期待しておりますので、そのことを強く要望して、質問を終わります。
  201. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 まず、私は、昨日に続きまして東京佐川献金事件についてお尋ねいたします。けさの答弁であったかと思いますが、もう一度確認したいと思います。  新潟県知事金子さんの佐川急便からの献金、これは今一億円についてはほぼ御本人は認められた。そのことで辞任される。さらに残る二億円についても疑いがあるというふうなことが新聞に載っているわけでありますが、少なくとも御本人がどうも自分の後援団体に一億円が渡ったらしいということは認めて責任をとって辞任声明を出されたということからすれば、この一億円について知事選挙の際の政治団体に政治資金規正法に基づく届け出がなされたかどうか。聞くところによれば後援会は三つある。「清新で活力ある県政をすすめる会」、それから「新潟県の発展をめざす会」、それから「金子清後援会」、この三つの後援会、政治団体は政治資金規正法に基づく届け出があったかどうか、まずお答えを願いたいと思います。
  202. 吉田弘正

    説明員吉田弘正君) お尋ねの金子新潟県知事につきましては指定団体の指定はございませんけれども、「金子清後援会」、それから「清新で活力ある県政をすすめる会」及び「新潟県の発展をめざす会」につきましてお尋ねがありましたので、これは新潟県の選挙管理委員会所管の団体でございますので、そちらの方に照会をいたしました。平成元年分及び二年分の収支報告書の寄附の内訳の欄に東京佐川急便及び同社渡辺元社長の記載はございませんという回答でございました。
  203. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 そこで自治大臣にお尋ねをしたいと思うんですが、この新潟県知事をめぐる事件の報道を見ますと、どうも虚偽記載で略式裁判ではまかりならぬ、むしろ正式裁判の意向だと、さらに、虚偽記載の場合には届け出の会計責任者等形式犯に限らず、事実上の実行者にまで起訴の範囲を広げるというようなことが新聞で報道されております。そして、その根拠としては虚偽記載に深く知事がかかわっていたということは、いわゆる犯罪性といいますか違法性の程度が高い。さらに、当知事がまさに自治省のエリートであり、自治省のOBであった。そういう人であるということも、ある新聞によれば正式裁判の方向の要因でもあるというようなことが書かれております。  ところで、この知事があす付で退任をすると、三千八百五十万円の退職金が条例に基づいてあす支払い決定がなされるような新聞報道がなされておりまして、多くの国民の声として、おかしいんではないか、あるいは納得できないというような声が新聞にも記載されております。過去に引責辞職をされた知事でも条例があれば出されていたとか、あるいは本来金子さんは在任中には県政においていろいろな面で貢献が大変著しいというようなことを考えれば出してもおかしくないんじゃないかとか、いろんなことを言われておることを踏まえまして、自治大臣としてこの三千八百五十万円が功労の退職ということで出されるかもしれないといいますか、出される予定になっているということを前にどのようにお考えになりますでしょうか。これは自治省の大臣としてお答えをいただきたいと思います。
  204. 塩川正十郎

    ○国務大臣(塩川正十郎君) 新聞の報道はそのもの自体が正鵠であるとばかりも言えないと思います。そういう傾向であるということを報道しておる場合もございますのでわかりませんが、いずれにいたしましても、そういう事態が議会等におきまして議論になるときがあるだろうと思いますが、これはあくまでも地方自治の本旨に基づいてやっておることでございます。私たちといたしましてはそれに対するいろんな指示はできませんにいたしましても、そういう事態がもしありとするならば、考え方としてはこういうことを私たちは考えているということの意見の交換はいたしたいと思います。
  205. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 きのうも自治大臣にいろいろお尋ねをしたんですが、考え方として意見の交換はできるということでございますが、今自治大臣としてこういう問題に対してどのような所感といいますか感想を持ってみえるか、ぜひともお尋ねいたしたいと思います。
  206. 塩川正十郎

    ○国務大臣(塩川正十郎君) 残念ながら、まだ架空の問題につきましてここで私から発言することは差し控えさせていただきたいと存じます。
  207. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 今、架空の問題というふうな御返事がありましたが、私は新聞の報道を各紙見まして、単なる架空の問題ではなくて非常に確度の高いといいますか、あるいは蓋然性の高いところに来ている。  昭和四十一年に、過去にそういう条例に基づい て県議会の方に諮って出した例があるというふうなことまで書かれているわけでございますが、昭和四十一年の例をもってして今平成四年のこの件についてそれと同じように見るべきかというと、これは到底それと同じように見ることはできないだろう。時代の変化というのは非常に厳しいものがある。  さらに、今回の佐川献金の問題では残る二億円の授受についても究明が続けられているというふうなことが報じられ、この東京佐川をめぐる献金事件の巨額性あるいはダーティーな側面が非常に強いと言われている。そういうふうな背景を考えますと、少なくとも新聞に報じられるような退職金が出るような方向の論議がなされるのは好ましくないとか、あるいは場合によっては事態の真相がはっきりするまではやはりこの問題について留保するべきであるとか、そういうお答えが私はいただけるんではないかと思ってあえてお尋ねしたわけでございますが、いかがでしょうか。
  208. 塩川正十郎

    ○国務大臣(塩川正十郎君) あくまでもまだ未定のことでございますから、私から申すことは控えたいのでございます。また自治体のことでございますから、大臣だからといって地方自治体に介入するということは好ましくないと思います。しかし政治家として、一般国民として考えます場合は、お尋ねのようなそういう気持ちは私自身も持っております。しかし、立場からいいますと今はこうでございますということは申し上げられない、こういうことでございます。
  209. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 それじゃ、きょうはちょっと総務庁の方にお尋ねしたいと思います。急にお願いをいたしましてわざわざ時間をとっていただきましたことにまずお礼を申し上げたいと思います。  今回のような献金疑惑という事件が出ますと、これは初めて出たわけではなくて年々歳々のような形をとっているわけでありますが、国民の受けとめ方としては、どうも行政の許認可をめぐっていろいろな企業がこれを何とか自分だけ有利にクリアしたいとか、あるいは行政庁の指導監督というふうなところを見ますと何とか自分だけ手かげんしてもらいたいとか、そういうふうなことがあるからしばしばこういう事態が起こるんではないか、こういうふうに受けとめている。これはもう多くの国民が恐らく共通だと思うんです。  きょうもいろいろな方が質問された中でも触れておりますが、一体日本の行政機関の許認可は本当に透明、公正であろうか。あるいは行政指導についても同じく透明で公正であろうか。こういうことを見ますと、日米構造協議でも最近では、早くその点では日本のシステムを変えなさい、具体的に言うなら行政手続法を早くつくったらどうですか、こういうふうなことを言われておるわけであります。  私は、このところずっと行政情報の開示、行政情報の公開制が本当に実現されないと日本の民主政治というのは非常に危ない、こういうことでしばしば情報公開の観点からお尋ねしてまいりました。そういう情報公開のシステムから見ると、本当は行政手続の簡素化、そして公明さ、公明性や透明性を確保するというのは最終目標ではないと思っておりますが、少なくとも日本の弁護士会は三十年前から行政手続法を早くつくってくれというふうなことを要望してきたわけであります。そういうことを考えてみますと、今この行政手続法の制定を本当に一生懸命熱心に進める気配があるのかどうか、この点についてお尋ねしたいと思います。  臨時行政改革推進審議会が昨年末に答申を出しまして、その答申の中には行政手続法の要綱まで用意をしてある。さらに、この答申を受けて閣議決定で、この「行政手続法及び関連する規定の整理法の立案作業を進め、早期に法律案の提出を図る。」という閣議決定が昨年末なされているということで、そのことを踏まえて、一体今どのような作業の途中にあってどのように急ぐ姿勢があるか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  210. 岩崎純三

    ○国務大臣(岩崎純三君) 行政手続法制の整備につきましては、ただいま先生指摘のように、平成四年改革大綱を決めまして、まさに早期に法律案を提出する旨決定をいたしたところでございます。そうした閣議決定を踏まえまして、総務庁といたしましては閣議決定直後に十名による行政手続法の準備室を設けまして連日、まあ連夜と言いますと超過勤務の問題等もございますが、連日熱心にこの問題に取り組んでまいりまして、法案作成の整備に鋭意当たっておるところでございます。  行政手続法は、御案内のとおり、行政手続とそれから行政運営の一般法となる新たな基本法制を導入するものでございまして、その法文化に当たりましては、例えば学問上あるいは実務上用いられました今日までの概念、この概念につきまして厳密に煮詰めていく必要がございます。そのためにさらに一層吟味、検討することでございますから、一つは問題を詰めるという課題と、さらに、先生も御案内のとおり、行政手続法を完全に整備するためには五百を超える関係法律があるわけでございまして、この見直しの方針につきまして検討を加え、早期に法案化を図っていきたい。そして、次期通常国会におきましては行政手続法の法律が提出できる、そうした方針に基づいて我が庁といたしましては鋭意努力いたしておるところでございます。
  211. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 今のお答えで、私は率直に感想を申し上げたいと思うんですが、行政手続法の制定に関しては、長官おっしゃいましたように、五百を超える関係法律の再整備といいますか、そういうことが必要であると。行政手続法を早く制定しようという動きが総務庁であっても、現実、各省はこれは困る、これはこう直されたら困るという非常に大きな抵抗といいますか、障害があるやに聞いております。この行政情報の開示の問題についても、私どもが法案をつくろうということで各省に協力をお願いしても全く協力はしてもらえない。  私は、行政手続法を長官おっしゃいますように何とか次期通常国会に出していただきたいと思いますが、これが本当に次期通常国会に出されるかどうか内心では大変心配をしております、またも崩れるんではないかと。内容について決して私は今この答申に盛られた内容で十分だとは思っておりませんが、それでもなお、ないよりある方がましだというよりも、たびたびこういう献金疑惑が出てきますと、やはり一般の庶民の感情としては、なぜこんなに、お相撲さんや映画俳優にばらまくならいいんだけれども、政治家にばらまくんだろうかと、政治家はタレントだろうかという疑問は消えないと思うんです。そこからさらにうがった見方としては、何かあるからこういう形のばらまきがいつも起こるんではないか、こういうふうな目があるとすれば、全力で早く上程にこぎつけていただきたいということをあえてこの席をおかりしてお願いしたいと思います。  きょうは、本当に急な御出席をいただきまして、改めてお礼を申し上げます。時間があと二分しか残っておりませんので、労働省、厚生省の方の質問を残しておりますが、きょうはもうこれで私の質問は終わります。
  212. 下村泰

    ○下村泰君 まず、骨髄移植のことについてお伺いしたいと思います。  白血病、これは血液のがんと言われております。それから、再生不良性貧血症。きょうも私は大宮の方へ行ってまいりまして先天性免疫不全症の方々ともお会いしてきたんですが、この先天性免疫不全症あるいは再生不良性貧血症、こういう方々あるいは白血病の人たちにとっては、骨髄移植というのが最良の治療法であるというふうに最近になって言われてきたわけです。  それで、先般できました骨髄移植推進財団のことなんですけれども、この骨髄バンク事業の現状についてひとつ御説明願いたいと思います。
  213. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今、先生から御指摘いただきました骨髄バンクと申しますか骨髄移植の推進事業につきまして、現況をお話ししたいと思います。  私ども、当面五年間で十万人のドナーを登録しようということを目標に、今活動しておるわけでございます。昨年の末にこの財団ができましてから今ちょうど半年とちょっとになるわけでございますが、一万一千三百七十二名の方々が骨髄提供希望者として登録されております。  それからまた、今度は六月より骨髄移植を希望する患者の方々の登録でございますが、これは八月三十一日現在で四百十二名ということに相なっております。  現在、そのHLA検査の結果をもとに患者とドナーの合うかどうかということの検索をやっておるところでございます。したがいまして、この検索が済みますと、今度はさらに詳細な検査をやりまして確認した上で同意等の手続をやり骨髄移植へと持っていきたい、このように考えております。
  214. 下村泰

    ○下村泰君 財団の方に届け出ているドナーの方々の数も大分ふえていることは事実ですね、今。
  215. 寺松尚

    説明員寺松尚君) はい。
  216. 下村泰

    ○下村泰君 そうですね。これは大変うれしいことなんですが、実はおととしの十一月の十六日に都立駒込病院で骨髄移植による事故があったと承っております。そのあたりの事情についてひとつ御説明願いたいと思います。
  217. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今、先生の御指摘のケースでございますが、平成二年の十一月十六日に東京都立駒込病院におきまして一卵性双生児のお二人の兄弟の間で骨髄移植が行われました。その後、これは弟さんに当たるわけでございますが、ドナーの方が意識不明になりまして亡くなった、こういうケースでございます。  そこで、東京都の所管でございますが、これは外部の専門家を集めましてすぐさま検討委員会をつくったわけでございます。  その検討結果でございますが、いろいろ医学的にやった結果、麻酔法を初めとする医療ミスはなかったとかあるいは意識障害の原因はショック及びその続発的要因に基づく高度の無酸素脳症と考えられる、あるいはショックは特異な神経原性ショックであるというようなことが指摘されております。しかしながら、原因としまして医学的には不明というようなことに相なっておるわけでございます。  その後、先ほどもちょっと触れましたけれども、骨髄移植を受けられました患者さん、兄さんに当たるわけでございますが、兄さんも亡くなりまして、さらに先ほどのドナーとして提供されました方も意識不明が続いておりましたが、ことしの八月十日に亡くなった、こういうケースでございます。
  218. 下村泰

    ○下村泰君 私は専門的知識もございませんし技術もわかりませんが、これは二年近く前に発生していたということにもう大変なショックを受けておるわけです。  なぜかと申しますと、私はこの問題を予算委員会に提出して取り上げまして、また厚生省側にも鋭意努力していただいた、そのきっかけはもう七年前なんですよ。七年前からこのお話を進めてまいりまして、そしてこの財団までこぎつけた。その間に、こういう事故はかつてない。世界じゅうの専門家からもこういう大きな事故は出ていない。わずかに今までの日本の中の例を挙げれば、あの太い針で骨髄液をとりますから、骨盤のところにせいぜいちょっとしたかさぶた程度、おでき程度、それ以上のものはないというふうに今まで承ってきました。専門のお医者さんからもそういうふうに教えられてきました。  ですから、私は絶対にこういう事故はないんだということを声を高らかに申し上げて、あるときにはステージの上から集まったお客様方にお願いし、ドナーになってくださいというふうに提唱し、この骨髄移植財団をつくるときにも巨人の元監督王貞治さんにもこの話をして、何とかひとつ助けてほしい、できれば巨人軍の二軍にいる大して力のない人は血がたくさん余っているだろうから、その人らの丈夫な血液をこっちへくれやなんて冗談でも言いました。それで、王さんも多摩川へ行って、それじゃ早速二軍の選手にもお願いしましょうなどという話までありました。やっとこぎつけたところがこういう事故になったわけだ。  それで、お兄さんも亡くなり、弟さんも亡くなりました。私は、こんなふうにはならないんだということを、このことに携わってきてから言い続けてきただけにショックが大きいんです。これを言っている最中に実はこの事故が起きているわけなんですね。こういう席でなんですけれども、本当にこれは私はもう哀悼の意を表したいと思います。  恐らく、大臣もそんなことはよもやお気づきではなかったと思う。私も随分しつこく申し上げましたから大臣もすっかり私の言にだまされたかもしれませんが、その気になっていらっしゃったと思うんです。ところがこんなことになりまして、この御遺族の方たちにどういうふうにおわびをしていいのか、どういう責任をとっていいのかなんて感ずるんですが、直接お会いしておわびをしたい気持ちもあるんですけれども、どうにもこれはなりません。とにかくもうお悔やみを申し上げる以外に手はないんです。  しかし、今回の事故が今後のバンク事業を後退させるということになってはいけないと思います。しかも、高久先生初め十字先生、そういった方々がこういうことのないように、またこういうことがあってはいけない、どうして起きたかということも鋭意研究されていらっしゃるそうで、これはもちろん患者の方々、御遺族の方にも御理解いただけると思います。この事故を教訓として、バンク事業をつくるためにはこれからどうすればいいのか。  そこで、今回のこの事故についての大臣のお気持ち、これからの対応についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  219. 山下徳夫

    ○国務大臣(山下徳夫君) まず、最初に申し上げたいことは、先生は骨髄移植についてかねがね非常に深い御理解と御関心をお持ちになっているということは私も十分承知いたしております。敬意と感謝の念を表する次第でございます。  そこで、今回事故が起こったということで、今お話しございましたとおり、私ども想起だにしなかったことでございますが、実際に起きたということで、まずお亡くなりになった方そしてまた御家族の方に対して本当にお気の毒という気持ちでございます。  こういった種類の麻酔につきましては、骨髄移植に限らず全くこういうことが皆無ということは言い切れない、麻酔に伴う事故はたまにはあるということでございますから、私どもはこれが起きないようにかねがね十分注意はいたしておりますが、もしも起こった場合のことということで骨髄移植推進財団というものをつくりまして補償制度も今十分完備をいたしておる次第でございまして、こういうことが起きないようにさらに私どもは十分喚起をしながらやってまいりたい。  しかしながら、今お話があったように、このことによってこれをやめるということではなくて、また逆に人命を助けることの方がうんと多いのでございますから、これはやっぱり注意しながら進めていくべきであると思います。
  220. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございます。  こういう病気の発生する方が年間二千人いらっしゃるそうで、しかも今私がこうして話をしている間にもドナーを待っていらっしゃる方がおって、そのドナーの発見が早ければ早いほどその方の命が救われるわけです。この間も山形の方へ参りましたら、あちらの方でも三十七例ありました。そのほとんどの方が大体もう回復に近いいい状態になっております。ただし、完璧とは言い切れません、まだ。ですから、そういうことは専門家の方々にひとつお願いしたいと思います。  さて次に、人工内耳ですね、耳の方でございますけれども、こんな文書があるんです。タイトルが「人生の転機」となっておりますが、札幌市にお住まいの吉川伸子さん、三十八歳の方なんです。  人工内耳の恩恵により音を取り戻してから一九  九二年五月十八日で四年になります。毎年この  日はバースディケーキを買ってきます。今年は  四本のろうそくを立てます。本当の誕生日には  お祝いなんかしません。人生の転機となったこ  の日が私の誕生日と信じています。ですから私  はまだ四歳!人生はこれから始まると思ってい  ます。こういう記事なんです。  さて、人工内耳について御説明をいただきたいんですけれども、どういう方を対象にどういう効果があるのか、お聞かせください。
  221. 岡光序治

    説明員岡光序治君) まず、対象の患者さんでありますが、補聴器を使用しても会話が不可能な高度の難聴の患者さんであります。そういう方に埋め込みをいたしまして、体外からの音声を信号化して電極刺激をいたしまして直接聴神経を刺激することによって言語を聞き取る能力を回復させる。要するに、内耳の部分でございますから内耳の蝸牛の働き、つまり音の分析とそれに基づいた刺激電流の発生を代行する、こういうものを考えておるわけでございます。
  222. 下村泰

    ○下村泰君 実際にこれによって音を取り戻して大変喜んでいらっしゃる方が多いというふうに承っております。  さて、その費用の問題なんですが、高度先進医療として認定病院で手術を受ければその一部が保険でカバーされるということなんです。具体的に言いますと、人工内耳の装置一式が三百十九万円、手術代が約三十万円、入院、検査、リハビリ代が約百万、合計約四百五十万かかるんだそうです。そのうち現在保険でカバーされるのが約百万円と聞いています。厚生省としてもいずれ保険の全面適用ということも考えておられるんじゃないかと思うんですが、それをまず伺いたいと思います。  都議会では、この三月に全面適用に関する意見書を出しているわけなんですね。実施する病院もふえてきておるというふうに聞いています。今後どうなりましょう、大臣。こういう方向に向かいそうでしょうか。
  223. 古川貞二郎

    説明員古川貞二郎君) 人工内耳を用いた治療につきましては、ただいま御説明を申し上げましたように、大変高度の専門的な技術が必要とされるというようなことで、先生指摘のように、昨年の十月から高度先進医療の対象とされておるところでございまして、現在五つの医療機関が承認を受けてこれを実施している、こういう状況でございます。  そこで、お尋ねの件でございますが、こうした高度先進医療から保険医療を図るという場合には、従来から高度先進医療の実施の状況等を踏まえまして中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協に設置されましたところの専門家会議におきまして、普遍性、普及性といいますか、全国的にどのくらい普及しているのかという普及性とか有効性とか効率性あるいは安全性及び技術的な成熟度につきまして総合的に判断をしていただきまして、それをもとに中医協で御審議を願い、保険導入が適当と認められる場合には通例の診療報酬の改定時に保険導入を行ってきている、こういうことでございます。  現在、高度先進医療としてこうした形で導入したのは十九種類に上っているわけでございまして、人工内耳の問題につきましてもこのような手続のもとで、この人工内耳も含めまして先進医療につきまして保険導入について個別に判断をしていく、こういう手順になるかと思います。
  224. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、今の状況では保険適用を全面的にというわけにはいかないというお答えですね。
  225. 古川貞二郎

    説明員古川貞二郎君) ただいま申しましたような幾つかの基準でございまして、実際に高度先進医療を導入された最初が先ほど申し上げた昨年の十月でございます。それから、ことしに入って二月とか六月とかというふうに五医療機関が指定されておりまして、その辺の状況を今見きわめておりまして、次の診療報酬の改定ということであれば平成六年の改定時かと思うのでございますが、その辺でそういった実施状況を見まして保険導入について判断していく、こういうことになろうということでございます。
  226. 下村泰

    ○下村泰君 決算委員会でありますし、そこに目の前に大蔵大臣がいらっしゃいますので、ほかのことを書いていて全然こっちのお話は聞いていないだろうと思いますけれども、これは予算を伴うものですから、いきなり大蔵大臣にこういうときにお金出してくれますかと言ってもだめでしょうね。――別にお答えくださらなくても結構です、やみ討ちを食わしても気の毒ですから。  今度はヘルパー派遣事業のことについて伺いますけれども、障害者に対するヘルパーの派遣が高齢者と比べて比率が非常におかしいんです。厚生省の方のお答えとしては、高齢者もそれから障害者の方も一まとめにしてヘルパー派遣とこう言っていますから、中身のことについては余りお答えにならないんです。厚生省に伺っても、厚生省の方もさあそこのところは私の方もはっきりした数字が出てこない、こういうふうにおっしゃる。  ところが、ある大学の先生が調べた。中にはいるんです、こういう世話好きな方が。この方が調べた結果、高齢者と障害者の対比は八対二ぐらいだと。八の方が高齢者で二の方が障害者、こういうふうな数字も出ておる。  一体、厚生省はこれをどういうふうにその辺のところを認識なさっていらっしゃるのか。身体及び知恵おくれ、精神障害、おのおのについてひとつ御説明していただきたい。
  227. 土井豊

    説明員(土井豊君) ホームヘルパーの問題でございますけれども、市町村が今お話がありましたいろんな方々に派遣をしているという状況でございます。  ただ、市町村のホームヘルパーは、Aさんは障害者の方に、Bさんはお年寄りにというような形で対応していなくて、市町村がホームヘルパーの方を集めてきて、これをいろいろな要望に応じてその都度あいている人を派遣していく、そういう形で運営しているものですから、したがいましてお年寄りに何件、障害者に何件あるいは母子家庭に何件といったような統計は私どもでは持ち合わせていないところでございます。  ただ、お話がありますように、いろんな研究もあるようでございますので、よく勉強はさせていただきたいと思います。  なお、基本的にはホームヘルパーについては、例のゴールドプランの中で目標を定めておりますので、それに沿いまして私どもも精いっぱいの努力を今後とも続けてまいりたいと考えているところでございます。
  228. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございます。  恐らくそういうお答えしか出てこないだろうと思ったんです。  殊に、精神障害者の方に関してもまるっきり皆無に近いわけです。高齢者施策とか高齢者問題とかで、これから二十年たったら四人に一人が高齢者、六十五歳以上ということの方が全面的に押し出されて、しかも老人の方の面倒の方が見やすいわけです、障害者よりも。だから、必然的にそっちの方に数がふえて障害者の方は置き去りになっているんです。こういうところもやっぱり中央省庁の方からも目を光らせていただきませんと、先々の方ではみんなそういう状況で、その苦情が全部こっちへ入ってくるわけです。ですから、そういうところをひとつよろしくお願いしたいと思います。  精神障害の方のことを申し上げますけれども、これまでの入院治療一辺倒から、福祉サービス、在宅ケアという点に比重が移ってきているわけです。精神障害者の方の暮らしというものへの認識がなさ過ぎるというふうに私は思うんですが、大臣、ここのところをひとつよく検討していただきたいんです。  精神障害者の方も毎度私申し上げておりますけれども、よく精神障害、精神障害といいますけれども、実際のことを言って、今精神障害者というのは入院している方のたしか四七%でしたか、社会復帰できるんですよ、本来は。ところが、いきなりそこから今度一般の社会へどんとほうり出すと神経が弱いからまたおかしくなっちゃう。そのために、中間施設ですね、一番大事なのは。この中間 施設で精神障害者の方の面倒をよく見て、それから一般の社会へ出すとある程度復帰が可能という話はもう前々から言われていることなんです。  ところが、非常に置き去りにされるんですね。こういう方々は犯罪を一件でも犯すと、もう全部の障害者がそういう素質を持っているというふうに言われる。本当は凶悪犯罪は普通の神経の人間の方がよっぽど多いんですが、そういうふうに言われがちなんです。  ですから、ひとつ大臣、こういうことに対して何か御見解がございましたらどうぞ。
  229. 山下徳夫

    ○国務大臣(山下徳夫君) ただいま御指摘の点は私どもも実はかねがね考えておることでございまして、今具体的にこれをこうしますということよりも、これからの課題としてなるたけ早く詰めて、適当な解決策を講じたいと思います。
  230. 下村泰

    ○下村泰君 まだほかに、緊急一時保護とか医療費のことについてお伺いしたいんですが、もう既に時間でございます。それでなくても、むやみやたらに時間を延ばす方がいらっしゃいますので、私はこれで失礼させていただきます。  どうもありがとうございました。
  231. 大渕絹子

    委員長大渕絹子君) 以上で平成年度決算外二件の全般的質疑は終了いたしました。  次回の委員会は九月十七日午後一時三十分に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会