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梶原敬義君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、ただいま議題となりました
平成四年度総
予算三案に対し、反対の討論を行うものであります。
海部内閣を引き継ぎ、決断と実行を掲げてきた
宮澤内閣は、発足当初の待望論や本格政権論が完全に吹っ飛び、発足間際にあった五〇%台の
支持率は今やわずか二二%台に急落し、
日本列島は
宮澤内閣への失望感に包まれております。
総理みずからが関与したリクルート事件の解明も終わらぬうちに、これほどまでに
政治家と金の
関係が
国民の
政治不信を招いたことはありません。
共和事件では、
宮澤派元
事務総長阿部文男代議士が収賄容疑で逮捕されたのに続き、塩崎元
総務庁長官・
鈴木元
総理の事件への関与が、衆議院
予算委員会での証人喚問、参考人招致によって明白となり、
宮澤派ぐるみの構造汚職の疑惑がますます深まったのであります。さらに、佐川急便事件の疑惑解明はほとんど手つかずの状態で、これら疑惑の解明には、参議院においても
阿部文男代議士初め証人の喚問が不可欠であることは論をまちません。
しかるに、
政府・自民党の論拠薄弱な反対によって、証人喚問要求の動議すら採決できなかったことは、
国民の
政治への不信をますます深めるもので、憤激にたえません。失われた
政治への信頼回復には、これら疑惑解明が緊急の課題であることを強く申し上げ、以下、順次反対の理由を申し上げます。
反対理由の第一は、我々の要求している所得税減税が盛り込まれていないことであります。
平成四年度の税の直間比率は、直接税が実に七四%を超え、過去
最高だった元年度とほぼ同水準に達しております。景気後退の中で、法人税収が急激に落ち込んでいるにもかかわらず、直接税の比率が上昇していることは、所得税にいかに重い負担がかかっているかを示しており、パート減税が不可欠になっていることを物語っております。さらに、六十三年の所得税減税以来、消費者物価が九%近くも上昇しているにもかかわらず、この間全く所得税減税が行われなかったために、物価上昇分が確実に実質増税となっております。しかし、
政府は所得が伸びていることを理由にこの間の実質増税を認めようとしないことは、
宮澤内閣がいかに
国民生活を軽視し、犠牲にしているかを示すもので、到底容認できません。
反対理由の第二は、東西冷戦構造が終えんし、新しい平和と秩序が模索されているにもかかわらず、相変わらず軍備拡張が行われていることであります。
冷戦構造の終結とともに、世界主要各国が軍事費削減に動いているのに対し、我が国の防衛
関係予算は、その伸びを抑制したとはいえ依然三・八%増、千六百億円余も拡大しております。特に、地雷処理車両の新規計上は、PKOによるカンボジアヘの自衛隊の海外派兵を先取りしたものとの疑問も否定し得ず、
国民感情からも決して許すことができないのであります。防衛費拡大の根拠となっている中期防衛力整備
計画は、昨年末の与野党党首会談においてその見直しを渋々認めましたが、なお抜本的見直しか不可避であり、冷戦構造を前提とした防衛
計画の大綱そのものも根本的に再検討すべきは当然であり、その即時見直しを
政府に強く要求するものであります。
反対理由の第三は、生活大国化を目指しながら、そのための
予算が不十分であることであります。
宮澤総理は、施政方針演説で、生活大国化を明言し、その実現のために社会資本の整備を初め六項目の手法を述べました。しかし、社会資本の整備では公共事業の項目別、省庁別の配分比率は依然産業優先の構造そのままとなっております。三年度から設けられた生活関連重点化枠も二千億円のまま据え置かれ、住宅、下水道施設など生活関連社会資本の割合を目に見えて変えるには至らず、到底生活重視の
予算とは言えません。
反対理由の第四は、景気対策としての
予算が極めて不十分であることです。
景気は、昨年半ば以降急速に鈍化傾向を強め、特に年末以降は悪化の一途をたどっております。しかし、
政府の景気判断は、つい今年の一月までは、拡大を続けているとの誤った判断のもとに何一つ景気対策をとってこなかったのであります。年末の
予算編成では、一般会計公共事業費総額の伸びは四・五%増と、昨年の五・一%を大きく下回っており、到底景気配慮型の
予算とは言えません。その一方で、地方単独事業費は、三年度及び四年度と一〇%を上回る伸びとなっており、景気対策も地方に押しつけて、
政府予算は明らかに景気への配慮を欠いており、到底認めることができません。
最後に、失われた
政治への信頼を回復するには
国会がみずから疑惑の解明を白日のもとに正々堂々と行うことでありますが、今回の我々の証人喚問要求が
政府・自民党の反対によって本
予算審議中に実現しなかったことは遺憾であります。国政
調査権の手を縛ることは議会の自殺行為であり、二度と、再びあってはなりません。今後も我々は証人の喚問を要求し続けていくことを申し上げ、反対討論を終わります。(拍手)