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国務大臣(野田毅君) 冒頭の経済の認識の問題でありますけれ
ども、率直に申し上げて、過去数年間いわば過熱ぎみのペースでやってきたことはだれしも認めるところだと思います。そのままのペースで行き過ぎるということになると、これは大変悪性のインフレなりいろんな弊害をもたらしかねない。そういう局面から調整の必要が生じた。そこで、夏ごろから公定歩合の、その前から金利の引き上げがあり、そしてそれがやや調整局面に入り始めたなと思われるところから公定歩合の引き下げなどが累次行われてきたわけであります。
そういう中で、経済企画庁が毎月月例経済報告を閣議でいたしておりますけれ
ども、昨年の九月ごろから減速という言葉を用いてきておるということは御
案内のとおりであります。私が実際就任しましてからも、十一月ごろから既に、富士山に例えるならばもうピークは過ぎておりますよと。しかし、ピークが非常に高かっただけに落差感があるかもしれないが、少なくとも水準そのものは決してそんなに低いものではない。しかも、いわば人手不足下の減速ということが今回の調整局面の過去とは異なる非常に大きな特徴であります。企業の収益にしても、非常に業況感は悪いんですけれ
どもレベルそのものはまだまだかなり高いものがある。そういう
状況の中でどう表現をするかということであります。
そういった点で、私
ども、報道でどういうふうに取り扱われるかわかりませんが、少なくとも昨年暮れの段階において、そういった認識から景気に十分配慮した予算編成を行い、公定歩合の引き下げも行われたということはひとつ御認識おきいただきたいことだと思っております。
ただ、実体経済ということとそれから企業マインドというものの間にかなりのぶれがある。マインドがなお一層下ぶれしておる。それがいわば、例えば設備投資が過去三年間二けた、二けた、二けたの伸びを示してきておる。そして減価償却負担だとかあるいは設備投資が極めて安いコストによって調達をされ、それを今度はコストの伴う、金利の伴うものに借りかえなければならぬ。そういったことによって企業経営上コストとしてそれが圧迫要因になって今回の決算なりあるいは来期の決算にはね返ってくる。そういったところからいわゆる経営者としての業況感というものは決して芳しくない。そこへ加えてさまざまな方々が証券の問題あるいは金融システムの問題についていろんなことをおっしゃる。そういったことが重なっていわゆる企業マインドというものが実体経済以上に下ぶれしておるということを率直に
指摘をしなければならぬと思っております。
したがって、現在の経済の情勢はやはり基本的には過去の高いペースからの調整局面にあるんだけれ
ども、現在はさらにそれがマインドにおいて下ぶれしておる。やはり経済というものはマインドが大事でありますから、それが余り行き過ぎるということになりますと実体経済に悪影響を及ぼしかねない、そういうことから実は今回緊急対策をっくったということでございます。
そこで、その内容についてでありますけれ
ども、今申し上げましたような人手不足下における減速ということから、従来にない一つの柱を立てておるわけであります。それは、時短あるいは省力化のために投資を行う中小企業についてはさらに従来よりも金利を引き下げ、あるいは大手の企業についても開銀などの財投を活用して、
政府関係機関の融資を活用して、そういった省力化投資、いわゆる独立投資系統を支援をしよう、これが実は非常に大きな要素になっておるわけであります。
いずれにしても、全体に過去のスピードからスローダウンしておるわけですから、住宅の分野、個人消費の分野、さまざまな最終需要の分野において減速が見えておるわけでありますから、そういった最終需要の分野をてこ入れするという角度から、公共事業については国及び地方公共団体、さらには民間においても電力、ガス、あるいはNTTを初めそういった方々にも要請をして、そして極力執行の前倒しをお願いじょう、こういうことで対策をつくったわけでございます。
そういった中で、国、地方についてそれぞれ重複分もあるわけですし、特に地方公共団体はたくさんの団体があり、それぞれ自主的にお決めになることでありますから、必ずしも国と同じように足並みが完全一致というわけにはまいりませんが、仮に地方においても国に準じて足並みをそろえて七五%以上の前倒しをやっていただくという仮定計算をいたしますと、国、地方を通じておおむね昨年の上半期に比べて本年の上半期は四兆七千億程度ふえるという計算ができるわけでありますし、さらに民間のそういった事業においても設備投資の前倒しをやっていただく、こういうことによって五兆円を超えるいわば需要効果があるんではないか、このように考えておるわけでございます。
さらには、きめ細かい中小企業へのいろんな金融面への配慮だとか、あるいは下請企業への配慮だとかということも行いますし、特に住宅については既に本年度の予算あるいは四年度の財投の中で大幅な融資限度枠の拡大であるとか、さまざまな改善点を加えておるわけでありますから、そういった住宅あるいは設備投資、こういったものへの配慮を行ったということでございます。
そこへ本日、日銀が公定歩合の〇・七五%の引き下げを決定された。こういうようなことが両々相まって、私は、そういう調整が行き過ぎないような配慮、そういう
意味でのてこ入れということからするならば、財政、金融両面から十分条件が整い、これからそれぞれ経営者の方々が実体経済についてのコンフィデンスをお持ちになって経営活動をやっていただければ、内需を中心とする
日本の経済の持続的成長への経路ということに行けるんではないかと判断をいたしておるわけであります。