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政府委員(
濱邦久君) お答えいたします。
まず、具体的事実につきまして、今
委員お尋ねの贈収賄罪をも含めまして犯罪が成立するかどうかということは、これは申し上げるまでもなく捜査当局が
法律に定められた手続にのっとって証拠を収集いたしまして、その収集した証拠に基づいて事実を確定した上で初めて
判断することができるわけでございます。したがいまして、
法務当局から今の
お尋ねの点につきまして責任あるお答えはいたしかねるわけでございます。
ただ、一般論としてお答えできる
範囲でお答えをさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
これはもう申し上げるまでもないわけでございますが、収賄罪あるいは受託収賄罪の構成要件は、公務員がその職務に関してわいろを収受した場合に収賄罪が成立するわけでございますし、また受託収賄罪の場合にはそれに請託が加わった場合に加重要件とされているわけでございます。
一般的に政党の党首あるいは総裁を選出する行為というものは、本来これは党員としての党活動というふうに
考えるべきものであろうと思うわけでございます。また他方、
国会議員が
国会におきまして
内閣総理大臣の指名議決を行う行為、これは申すまでもなく議員としての公務というふうに
考えられるわけでございます。したがいまして、後者、今、後で申しました
国会議員の
国会における
内閣総理大臣の指名議決行為に関する趣旨で利益の授受がありました場合には、贈収賄罪の成立の余地は十分あり得るわけでございます。他方、政党の党首の選出行為に関する趣旨で利益の収受がありました場合には、これは贈収賄罪で問擬することは難しいであろうというふうに思うわけでございます。
加えて申しますと、政党の党首の選出行為に関する趣旨と
国会における
内閣総理大臣の指名議決行為に関する趣旨をもあわせて利益の授受がありました場合には、これはもちろん贈収賄罪の成立する余地は十分あるでみろうというふうに思うわけでございます。
委員が
お尋ねになっておられますのは、その政党が
国会において多数を占める場合の事例を想定して、
委員既に御研究になっておられますところの都議会議長選挙に関する東京地裁の判決あるいは大館市議会議長選挙に関する最高裁の決定を踏まえて
お尋ねになっておられるのではなかろうかと思うわけでございますので、その点をも含めてお答えを申し上げたいと思うわけでございます。
先ほ
ども申し上げましたように、政党の党首を選出する行為について見ました場合に、党の総裁たる地位は、これは単に
内閣総理大臣候補者たるにとどまるものではございませんで、党の内外を問わず、それ自体が
政治的にもあるいは社会的にも重要な価値ある地位として認められている。そういうものである以上、その総裁の選出行為もそれなりに重要な意義を持つものであるというふうに
考えられるわけでございます。逆に申しますと、党の総裁党首たる地位あるいは党活動の一環として行われるその選出行為というものは、
国会議員による
内閣総理大臣候補者の選出行為となっているとは必ずしも言えないというふうに認められるのではないか。この点につきまして、先ほどちょっと私触れました都議会議長選挙をめぐる東京地裁判決におきまして、都議会議長候補者選定に直接向けられた準備行為というような事例とは基本的には問題を異にするのではないかというふうに思うわけでございます。
もう少し加えて申しますと、要するに党の総裁たる地位が実質的に
意味を持って、その選出行為が党員としての党活動と認められる以上は、その決定がたとえ事実上
国会における
内閣総理大臣の指名に影響を及ぼすものであるといたしましても、これをもって公務員たる
国会議員の公務そのものと評価することはできないというふうに言わざるを得ないのではないがというふうに思うわけでございます。
ただ、いずれにいたしましても、先ほど申しました都議会議長選挙に関する東京地裁判決の事例、あるいはこの事例におきましては、御理解をいただくために少し付加して申し上げますと、本件における議長候補者選出行為は議会で投票する候補者を選出するものであり、議会での投票という職務権限の行使に実質上しかも直接影響を与えるものであるという実体のある事案につきまして贈収賄罪の成立を肯定した事案であるというふうに思うわけでございまして、いずれにいたしましても、この都議会議長選挙をめぐる東京地裁判決の事例、あるいは先ほど申しました大館市議会議長選挙に関する最高裁決定の事例、それぞれの具体的事例の実体に即して贈収賄罪の成立を肯定した
判断であるというふうに思うわけでございます。したがいまして、政党の党首選挙、総裁選挙と
国会における
内閣総理大臣の指名議決との
関係について、このような
判断が直ちには及ぶものではないのではないかというふうに
考えるわけでございます。