○立木洋君 私は、
日本共産党を代表し、PKO
協力法案等についての
反対の
討論を行うものであります。
政府・
自民党及び
公明、
民社の各党が、
質疑継続についての
特別委員会における一切の約束を踏みにじって審議中断を強行したのみならず、不当にも本
会議での
採決を求めていることに対し、満身の怒りを込めて抗議をするものであります。どのような策を弄したとしても、「
法案を
採決するという意味の
起立は行われていません」と述べたNHKのテレビ中継によっても明らかなように、いかなる
採決も
存在しなかったということは冷厳な事実であります。
採決は、
質疑の打ち切り
動議。及びPKO
協力法案を初め五
法案など六回にわたって行わなければならなかったはずでありますしかるに、自公民三党の
採決は正当だとする主張でも、
起立は一回しかなかったと明言しているのだから、
法案の採択は絶対に不
存在なのであります。
こうした状況であるにもかかわらず、
憲法の平和条項を踏みにじり、
日本の進路の根本的な変更にかかわるPKO
協力法案の
採決を強行しようとする自公民三党の行為は
議会制民主主義を踏みにじる暴挙であり、断じて容認できないものであります。自公民三党は、審議時間が百時間を超えたなどと言ってこの暴挙を正当化しようとしていますが、
憲法にかかわるこの
法案の重大な問題点が解明されないまま残されていることを見れば、こうした
論議が全く通用しないことは明らかであります。
その上、見逃すことができないのは、外務大臣渡辺美智雄君と防衛庁長官宮下創平君ら
関係閣僚の責任を問うべき
決議の上程に際し、自公民三党はこれを不当にも拒否したことであります。強い
国民世論に反して、
憲法をじゅうりんし参議
院決議にも反する
自衛隊海外派兵法を積極的に推進した
関係閣僚の行為は断じて許すことはできません。
特に、外務大臣渡辺美智雄君は、
日本国
憲法において明らかにされているように、
憲法を擁護する責任を負う国務大臣の
立場にありながら、
自衛隊の
海外派兵を公然と主張し
憲法に挑戦する言動をたびたび繰り返していたのであります。しかも、今回、徹底した審議が求められていたにもかかわらず、外務省は重要な資料
提出さえせず
国会の審議権を侵害したことは、担当大臣としても
議会制民主主義に反する態度と言わなければならないのであります。
また、防衛庁長官宮下創平君は、
自衛隊の担当大臣の
立場にありながら、
自衛隊を
海外に
派遣し軍事
活動に参加することを禁じた
憲法の平和原則と
自衛隊の
海外派遣を禁じた参議
院決議を一顧だにせず、PKO
協力法案の成立と促進の先頭に立ったのであります。
しかも、両君は、同
法案の審議の中で
国連の方針や原則に反する答弁を繰り返し、
憲法違反を覆い隠す詭弁的な答弁を繰り返してきたことは断じて容認できません。このため、外務大臣渡辺美智雄君、防衛庁長官宮下創平君はその職員にとどまる資格がないものとして、その無責任な行為を厳しく糾弾するものであります。
既に明らかなように、
特別委員会での
採決がなかったにもかかわらず不当にも
採決が強行されることになった以上、この
法案が持っ
憲法上の諸問題及び
我が国政治の進路にかかわる重大性にかんがみ、平和を願うすべての
国民の
立場に立って
反対の
理由を明らかにするものであります。
まず第一に、本
法案の重大問題は、戦後初めて武装した軍隊である
自衛隊を
海外に派兵するものであり、
我が国憲法の平和原則を真っ向から踏みにじることであります。
かつて専制と隷従、圧迫と偏狭の横暴をきわめた
日本政府が、引き起こした侵略戦争の痛苦に満ちた反省の中から、
日本国民は
政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないようにすることを決意し、主権が
国民に
存在することを宣言して制定した
憲法によって、
日本国民は、平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意したのであります。
憲法第九条は、戦争及び
武力による威嚇、
武力の
行使は永久に放棄し、戦力を保持せず、国の交戦権を否認することを明確にしたことによって、
国際社会に対して、いかなる名目であろうとも軍事的に関与しないことを
世界に高らかに宣言したのであります。この
立場から、いかなる口実をもってしても
自衛隊の
海外派兵が許されないことは明白ではありませんか。
自公民三党は、
武器の
使用は
必要最小限に限るなどのいわゆる五原則なるものを持ち出し、
憲法違反の
内容を隠ぺいすることに必死になっていますが、五原則なるものを幾ら強調してみせても同
法案の違憲性を覆い隠すことができないことは明白であります。そもそも、
憲法は、
武器の
使用や
武力行使があるなしにかかわらず、武装した
部隊が
海外に出動することなどを想定しておりません。それは
憲法が
武力の
行使のみならず
武力による威嚇を厳しく禁じているゆえんであります。しかも、PKOが
武力行使を含む軍事
中心の国際
活動であることは、さまざまな
国連文書が明記しているところであります。これを、
武器の
使用は要員の生命等の防護のための
必要最小限のものに限られるなどとしてこの国際
活動を
日本の国内法でいかに規制しようとしても、それが本来成り立ち得ないことは明らかであります。
まさに、五原則は、
日本国民に対して
自衛隊の
派遣が
憲法の枠内での
協力であるかのように見せかけるためのごまかしにほかなりません。このことは、武装しその
使用をも認められた
自衛隊の
海外派遣が、
武力による威嚇、
武力の
行使を行うものであることを完全に否定し得えなかった
政府の答弁によっても明らかではありませんか。
こうした
憲法上の重大問題を内包しているからこそ、自公民三党は、一九九〇年十一月九日の三党
合意で、PKO
協力に当たっては
自衛隊とは別組織にするとしたではありませんか。自公民三党はこの
合意を昨年の全国規模で戦われた一斉地方選挙の公約にしたのであり、選挙後この公約を百八十度転換してこれを強行することは公党として
国民を裏切る極めて無責任な行為であり、
議会制民主主義と
国民主権に対する真っ向からの挑戦と言わなければなりません。
一九五四年六月二日、参議院で
決議された
自衛隊の
海外出動を為さざる
決議は、その提案
理由で、「自衛とは
海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮屈であっても、不便であっても、
憲法第九条の存する限り、この制限は破ってはならないのであります。」と強調しています。
このことは、
自衛隊が違憲と主張する人々も
自衛隊を合憲と主張する人々も一致して認めていたことであります。しかも、この院の
決議の有権的解釈を行うため現在各党で協議中であり、それをいかなる口実であれ無視することは
議会制民主主義を公然とじゅうりんするもので、決して許されるものではありません。それにもかかわらず
自衛隊を
海外に
派遣する
法案を
強行採決した自公民三党の態度は、国権の最高機関としての
決議への重大な背信行為であります。本
法案が、
憲法の平和原則とともに参議
院決議にも違反するものであることを改めて明確に指摘しておくものであります。
第二に重大なことは、こうした
内容を粉飾するために自公民三党が持ち出してきた再
修正案なるものであります。
自公民三党がにわか細工で持ち出してきたこの再
修正案なるものは、
国連平和維持隊に参加するという新しい規定を公然と打ち出しています。これはPKO
協力法案という法体系をも変える重大問題であります。そもそも、PKO
協力法案には
国連平和維持隊という定義すらありません。これは何よりも再
修正案の欠陥ぶりを如実に示すものであります。しかも、参加という概念は、
政府の統一見解でも明らかなように、
国連の指揮下に入りその一員として行動することになるので、
法案は参加法ではなく
協力法案だとその違いを強調してきたのではないですか。再
修正案のこの新しい規定の挿入は、
国連の指揮下で
武力による威嚇や
武力の
行使を行うことをみずから告白したものと言わざるを得ません。自公民三党はこの点に関する質問にはまともに回答できなかったではありませんか。
また、再
修正案は、PKFの
国会承認について「七日以内に、それぞれ議決するよう努めなければならない。」として、
憲法第四十一条の「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」とした
国会の審議権をも不法に制限することを明記しています。
さらに、再
修正案は、PKFの凍結を言いながら、武装した
部隊と一体となる弾薬輸送や通信などの後方軍事部門に武装した
自衛隊の
派遣を公然と行うことを明記しています。このことは、いわゆる後方軍事部門における
自衛隊派遣が
武力行使と一体となる危険をみずから示すものとして極めて重大であります。
以上のように、これらの再
修正案の規定が本
法案の違憲性を何ら変えるものでないばかりか、
法案に新たな危険な
内容を持ち込むものであることは明らかであります。これらの重大な
内容を持つ再
修正案の審議が極めて短時間に行われ審議打ち切りとされたことは、二重三重に
議会制民主主義を破壊する暴挙と断ぜざるを得ないのであります。
さらに指摘すべきことは、今回の
特別委員会の審議の中で、自公民三党がかつての
日本の行った侵略戦争を明確に認めることができなかったということであります。このことは決して偶然なことではありません。侵略戦争の根本的な反省がないからこそ、自公民三党は
自衛隊海外派遣の
法案の
採決なるものを強行し得たのであり、この動かしがたい事実こそがこのことを明確に示しているのであります。
言うまでもなく、真に
歴史を学ぼうとしない者は
歴史の進歩の
立場に立つことはできないのであります。十五年戦争の
歴史から学ぼうとしない者が、アジア諸
国民との友好
協力関係を真に発展させることがどうしてできるというのでしょうか。断じてできないのであります。私は改めでこのことを強く指摘しておくものであります。
第三に、新たな重大問題となるのは、去る六月一日、
国連の平和維持
活動特別委員会が発表した平和維持
活動についてのまとめと将来への勧告の問題であります。
そこで検討された
国連平和維持活動の見直しの
内容は、
日本政府がこれまで述べてきた平和維持
活動を大幅に変更するものとなっております。それは、国際紛争の停戦後に行われる平和維持
活動が、それにとどまらず、紛争の初期の段階、いわゆる事前参加をもあり得るものとされ、また、その平和維持
活動は
紛争当事者の
合意の
存在を条件としてきたものも見直されるものとして検討されています。そして、必要な平和維持
活動は紛争当事国の拒否は許されず、当事国の同意が
存在しなくても平和維持
活動があり得るというのであります。こうした事態は、平和維持
活動の重要な中立性の条件をも問われかねない状況が生じていることを示しております。
こうした
国連での重大な見直しの状況が進行するならば、
政府の言う
合意、同意、中立の原則は全く成り立たず、PKO
協力法の
前提そのものが崩れるのであります。このような重要な
内容について、
日本政府は四月の段階からこの
会議に参加しているにもかかわらず
国会への
報告も何ら行おうとせず、新聞が報道することによって質問されて初めてあいまいな答弁をするという態度であります。このような
国会での当然の審議権をも無視し、
宮澤首相にあっては、この
法案は何ら
関係がないなどという開き直りの態度をとるに至っては言語道断と言わざるを得ません。
こうした方向でアジアでの平和維持
活動の
実施に
日本が加わることは、非軍事分野での
国際貢献を要望した中国や南朝鮮などの首脳を初め、少なくない国々で、第二次
世界大戦の痛苦の教訓に基づく
憲法の平和原則を踏みにじることは許されないという厳しい国際的な批判に対する挑戦的な態度であります。
最後に指摘したいことは、この
自衛隊海外派兵なるものが、
国連協力を名目にしながら、アメリカの要求に基づき、ことしの一月、日米首脳会談での東京宣言でも明記されているようなアメリカの
世界戦略への全面的、積極的な軍事
貢献をも含むものであるということであります。
五月に来日したクエール米副大統領は、
日本がグローバルな責任を背負っているとしてPKO
法案の成立を強く要求しました。また、米議会も、PKO
法案促進
決議を行うなど不当な干渉を行っております。自公民各党による今回の強行可決をアメリカ
政府が高く評価したのもこのゆえんであります。
宮澤首相がグローバルな
協力を念頭に置いていると発言し、小沢
自民党元幹事長がその「国際」という言葉を「アメリカ」と言いかえてよいなどと述べていることは、こうしたアメリカの要求に応じるという本質を明確に示したものであります。この
世界の憲兵としてのアメリカの軍事力を補完し、日米軍事同盟の機能を地球的規模で発揮させる道筋を整えるこのPKO
法案は、
日本の自主的発展を著しく妨げアメリカに追随する誤った道を一層突き進むものであり、
日本の進路をさらに危険な方向に陥れるものと断ぜざるを得ないのであります。
以上のように、PKO
協力法案は国の主権者だみ
国民の意思を乱暴にじゅうりんするものであり、
憲法の平和原則を正面から侵害し、
日本の戦後の進路を根本的に変更する重大きわまるものであります。今、最も求められていることは、
国民が築き上げてきた
憲法の平和原則を擁護する
立場に立って、これを真っ向から否定する
自衛隊海外派兵の本
法案をきっぱりと否決することこそが
日本の平和を築き平和的国際
協力ベの唯一の道であり
国会の責務であるということを強く主張し、私の
反対討論を終わるものであります。(
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