○乾晴美君 私は、連合参議院を
代表いたしまして、ただいま
議題となりました
看護婦等の
人材確保の
促進に関する
法律案外一件に対しまして
質問を行います。
高齢化の進行は着実にやってまいります。最新の
人口推計では、ゴールドプランが
策定されたときよりも
高齢化の進行がもっと速いと予測されています。
高齢化の進行とともに、
保健医療・
福祉における
人材がますます求められております。この
認識は、現在では
政府も変わらないと思います。私たちは、ゴールドプランが
策定されたときから
人材不足の問題を指摘してまいりました。今回の
政府の
人材確保に対する
法案の
提出は遅きに失した感さえあります。
厚生省は、今回この
人材確保法案を
提出する前提として、
看護婦、
社会福祉施設職員、ヘルパー等の需給についてどのように
認識しておられますか。
看護婦については、昨年の十二月に発表されました
厚生省の需給見通しによりますと、
平成五年に最も不足
状況が厳しく、
平成十二年になってようやく需給のバランスがとれるということですが、今回の
法案によってそれが達成されるのでしょうか。また、理学療法士、
作業療法士、
ホームヘルパー等
社会福祉関係の職員の需給見通してはどのようになっておられますか。まず、
法案提出の前提の
認識を
厚生大臣にお伺いいたします。
看護婦の
人材確保については、しばしば潜在
看護婦の再就職
促進が言われております。
厚生省の考えでも、潜在
看護婦の掘り起こしについては重要な
施策の柱の一つとして位置づけられていると思います。しかし、その前に、なぜ四十万人もいると言われているほどの
看護婦が潜在化してしまったのでしょうか。すなわち、どうして
看護婦さんは毎年そんなにも多くやめていくのでしょうか。
看護婦需給見通しては、およそ六%もの
看護婦さんが毎年その職場から離れていっております。この原因をどのように
厚生、
労働両省は把握しておられるのでしょうか。
見通しては、
平成三年の離職率と
平成十二年の離職率の差はわずか〇・七%の
改善にしかなっておりません。有効な離職
対策はないということなのでしょうか。私の
認識ではその原因の最大のものは
処遇にあると思いますが、所管
大臣の御答弁を求めます。
次に、
看護婦人材確保法におきまして六項目にわたる
基本指針を、また
社会福祉事業法におきましても四項目にわたる
基本指針を設けることとなっておりますが、それだけでは
人材確保が
国民の医療や
福祉の
向上にとってどのような具体的な意味を持つのかがはっきりいたしておりません。この
法案で
人材を
確保したいということはわかりますが、それ以上のことは全くわかりません。入院の場合、行き届いた
看護や
介護が受けられるようになるのでしょうか。付き添いさんを無理につけさせられるということもなくなるのでしょうか。デイサービスはだれでも気軽に利用できるというのでしょうか。
法律の目的には、「
保健医療の
向上に資する」ということがはっきり言われております。しかし、
厚生大臣、この
法律の目的とするところをだれでもわかるように具体的にお示し願いたいと思います。
私は、先ほど離職の原因は
処遇の問題であると申しました。
処遇には
給与及びその他の
労働条件が挙げられると思います。
看護婦さんの
給与につきましては、四月一日から
診療報酬が
改定されますが、その中で
看護婦さんたちにかかわる分が全体の引き上げのうち二・六%織り込んであるとの
説明がなされております。しかし、一方では、
診療報酬の引き上げ分が必ずしも
看護婦給与にははね返らないとも言われております。この点につきまして、
厚生省はどのような
指導を行う考えでしょうか。聞くところによりますと、
病院経営の中にまでは入り込めないとのお考えであるとも聞いておりますが、いかがですか。
現在、
女性の職場は
多様化しております。人手不足がそここで言われております。その中で
看護婦さんを
確保するには、
看護業務の質、密度にふさわしい
給与が支払われるべきです。特に、
看護婦さんは国家試験の有資格者ですので、それにふさわしい
処遇がなされてしかるべきであると思います。
看護婦の
確保が本当に必要であると切実に
認識しておられるならば、消極的な
お答えにはならないと思います。
大臣の誠意ある答弁を求めます。
次に、その他の
労働条件についてであります。
この問題での
代表的なものは、いわゆる二・八の問題です。二人以上複数勤務で万八回以内の勤務をということが
看護婦さんたちの要求でありますが、
大臣、二人だけで万八回以上も夜間勤務をすることがどんなに大変なことかおわかりいただけますか。
例えば、五十床の病棟で患者が夜間に平均二回のナースコールを行いそれぞれ平均十分の処理時間が必要であるとするならば、その
仕事時間量は一千分、夜勤の
看護婦さんは一人五百分の
仕事時間量となります。五百分とはすなわち八時間二十分です。八時間の日中の勤務時間を上回る
仕事時間量です。昼間働いていても、昼食の時間や休憩時間があります、それが、本来睡眠をとるべき夜間に休憩をとる時間もたく、昼間の勤務以上の
仕事を万八回以上も行うわけです。この
業務状況を
改善することなくして
看護婦さんの職場定着が図れるというのでしょうか。二人以上複数勤務で夜勤回数は月六回以内を
目標に、当面速やかに月八回以内にすることを強く要望いたします。
このことは
基本指針の中に明記されるべきだと考えますが、
大臣、いかがでしょうか。
基本指針を定めるに際しましては医療
関係者審議会などの意見を聞くことなどが定められておりますが、その前に
厚生省として、
厚生大臣としてどのような
基本指針を定められるお考えであるかをお伺いいたしたいと思います。
あわせて、ILO
看護婦条約の批准についてはいつまでに行う予定ですか、
大臣の御答弁を求めます。
看護婦の
給与等
労働条件の大幅な
改善を柱に総合的な
施策を講じるべきであり、
看護婦の
業務そのものにつきましても再考すべきであります。
平成四
年度予算におきましては
看護婦業務見直し事業に二千七百万円の新規
予算がつけられておりますが、レセプト処理や配膳
業務など、
看護婦の
業務としてもっと合理化すべきであるのに行っていないことが
看護婦の
労働条件をより厳しいものにしていると言われております。
看護業務の
範囲について、
厚生省はどのようにお考えですか。
このほか、
看護婦等の
社会的評価を高める
対策もとられると聞いておりますが、
病院内の地位はどのようにして引き上げようとしておられますか。
大臣、医師が全能ではなく、
看護婦さんが自主的に自分の判断でよりよい
看護を行えるような条件づくりにどのように取り組んでいかれるお考えですか。前向きにこの答弁をお願いいたします。最後に、
保健医療・
福祉人材確保は
政府全体で取り組むべき
課題であり、内閣直轄の
対策本部を
設置すべきであると考えますが、
総理大臣、いかがでしょうか。
看護婦につきまして多くを伺いましたが、これらの問題は
社会福祉施設職員についても同じことが言えると思います。
今回
議題となった
法律案だけで十分であるとは思えませんが、少なくとも取り組んでいくという
姿勢は評価したいと思います。今後この
法案をいかに具体化するかが
課題であり、また、今
年度をスタートに今後も継続して
取り組みを進めるべきであることを指摘いたしまして、私の
質問を終わります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣宮澤喜一君
登壇、
拍手〕