○針生雄吉君 桜前線が北上中で、全国至るところ入学式が行われておりますけれ
ども、入学式についてのことは時間があれば触れたいと思いますが、最初に、本
委員会においても過去にも
検討されたことと思いますけれ
ども。学校教育における禁煙教育について、復習をしながら
政府の
見解をお伺いしたいと思います。
まず、喫煙の害と功績について一席申し上げたいと思います。
初めに、喫煙と肺がん、特に扁平上皮がんとの間には密接な
関連があることは、もう既に一九五〇年代初めから疫学的研究で
指摘されて以来、年化学、動物実験、疫学及びその他の分野で精力的に研究が積み重ねられてまいりました。その結果、まだ未知の領域を多く残しているとは申せ、喫煙が肺がんの有力な原因の
一つであることは水う既に疑問の余地がなくなってきております。肺がん、この場合扁平上皮がんが主でありますけれ
ども、また喫煙の影響が肺がん以外の部位のがん、虚血性心疾患、慢性閉塞性呼吸器疾患、消化性潰瘍などにも及ぶことが明らかにされて、喫煙対策は
我が国においても公衆衛生上の大きな問題となってきておることは、皆様御承知のとおりであります。
世界的にも、一九六四年、アメリカ公衆衛生局は、紙巻きたばこの喫煙が肺がん死亡率に
関係があるということで、健康に障害を及ぼすので適切な対策をとるべきであると報告をしております。また、一九七〇年の第二十三回WHO
総会におきましては、喫煙の健康への影響についての決議、主として肺がんについての報告と喫煙制限についての提言を行っております。また、一九八六年五月の第三十九回WHO
総会では、たばこには発がん物質が含まれており、たばこが健康に悪影響を及ぼすことは既に科学的に証明されている、たばこ対策が緊急の問題であると決議したところであります。
世界的にも、第二次大戦後はかなり高い喫煙率でありましたけれ
ども、医学的研究の進展及び健康への
一般の関心の上昇につれて次第に下降し始めてきております。
我が国でも、一九六〇年代には男性が八〇%、一九八〇年代には男性六〇%、そして現今の一九九〇年代におきましては男性五〇%へといずれも低下を示しております。女性は一八%から一二%という低率で
経過しております。年齢別に見ますと、男性では二十歳代、三十歳代の若年層の低下率が小さい。四十歳以上の高年者層の低下率が大きくなっております。女性では五十歳以上の喫煙率は著しく低くなっているのに対しまして、二十歳代では逆に増加の傾向を示しておるというわけであります。
他の国に比しまして、今も申し上げましたように、男性の喫煙率が高く女性の喫煙率が低いのが
我が国の特徴であります。
次に、見方を変えまして、ここ六、七年の間の紙巻きたばこの
我が国における販売数量の推移で見てみますと、全体で
我が国の一年間のトータルの販売本数は大体年間三千億本から三千二百億本の間でありまして、特にここ三年間は前年比が一〇〇%以上でありまして、総数、トータルでは上向きになっていることがはっきりしております。喫煙人口が減少している中で消費量がやや上向きということは、喫煙者一人当たりの消費量がふえているということであります。
公的な税収の面で見ますと、たばこ税というものがありますけれ
ども、国税及び地方税がそれぞれ一本につき三・一二六円、三円十二銭六厘ずつの従量税でございますけれ
ども、年間で国に約一兆円、全国の地方税としても合わせて約一兆円ずつが公的な税収となっているわけであります。
この紙巻きたばこ販売数量の推移の中で注目すべきことは、外国からの輸入たばこの数量の全体に占める割合、つまり輸入たばこのシェアの増加であります。一九八五年から一九九一年までの六年間の推移を見てみますと、販売数量が、一九八五年には三千百八億本。その中で国産品が三千三十二億本、輸入品が七十五億本、全体で輸入品の占めるシェアが二・四%。それが一年ごとにシェアが、三・九%、九・八%、一二・一%、一四・七%、一五・九%、一九九一年には一六・六%に及ぼうとしております。つまり六年前の約七倍になろうとしております。
この数字から、よく
我が国の常習喫煙者のブラックユーモア的なつぶやきとして、我が身の健康を犠牲にして国家財政に年間一兆円、地方財政にも一兆円の貢献をしているというつぶやきがあるわけでありますけれ
ども、今やこれは、我が身と家族の健康を犠牲にして日米貿易摩擦の解消に貢献している、国際貢献をしているんだと胸を張るか背をすぼめるかは別といたしまして、そういうふうに言いかえてもいいのかもしれません。
次に、喫煙の功績のもう
一つの側面について
考えてみたいと思います、ブラックユーモア的な
意味を含めてでございますけれ
ども。
たばこの煙の含有成分というのは四千種類もあって、その中の数百種類が発がん物質だと言われております。それはさておきまして、たばこの主成分である御承知のニコチンでございます。これが単独に分離されたのが一九二八年で、以来いろいろな薬理学的活性作用が解明されてきております。近年は、分子生物学的手法の開発によってさらに新しい知見が加わりつつありますけれ
ども、現在もなお解明を待つ領域が多く残されているわけであります。そのうちニコチンの精神作用ということと、それからニコチンの依存性について述べてみたいと思います。
ニコチンの精神作用については、これはいい面として言うべきだと思いますけれ
ども、神経賦活作用と中枢興奮作用、それから神経安定作用、鎮静作用、抗不案件用、こういう二相性の作用が認められているわけであります。すなわち眠気からの覚せい作用、
委員会などでもその作用が大いに効果を発揮しているわけでございますけれ
ども、大脳皮質の活動高進による
認識、注意や情報処理能力の改善などが見られる一方で、抗不案件用、ストレス状況下での不安の解消、いらいらからの解放などが観察されているわけであります。
また、ニコチンの依存性について
考えてみますと、
我が国のこれまでの研究では、再びのみたいという欲求を起こさせ谷精神依存性は認められるけれ
ども、麻薬であるコカインよりは弱い。中断すると不安、不眠、不快、苦痛、徐脈、脈が遅くなる、そういういわゆる退薬症状というのが発現する身体依存性と言われるものでありますけれ
ども、これは麻薬であるヘロインなどよりははるかに軽度で、かつ精神依存性を増強しないとされているわけであります。つまり、ブラックユーモア的に言えば、ニコチンが入っているためにコカインとかヘロインとかそういうものに手を出さなくとも済むという、そういう功績があるという一面がブラックユーモア的に
指摘されるということであります。
さて、プロローグが大変長くなりましたけれ
ども、厚生省の担当の方に来ていただいておりますので、厚生省の
見解をお尋ねしたいと思います。まず最初に、喫煙に対する
政府の基本的態度について、厚生省としてはいかなるお
考えで臨んでおられるのか、お伺いをいたします。