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参考人(
秋山豊君)
茨城県の
農協中央会の職員で、かつ
茨城県の
連合会労働
組合の
委員長をやっております
秋山と申します。
できるだけ私の経験を踏まえて、単協、県連職員を代表するような
発言をしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
私は、自己紹介しますと、
茨城県の水戸市近郊にあります瓜連町という小さな町の米プラス養蚕の専業農家の長男です。大学時代
農業経済学をやって、うちを継ぎたかったんですが、おやじが、仲間がいないからおまえは
農協に出ろというふうに言われまして、集団営農で
地域の
農業を維持していこうと、そういう
目的を持って県の
農協中央会に入りました。
入会後、営農
指導を五年、
経営と監査の
関係を四年、そして労働
組合の専従を二年やりまして、県連及び単協の
事業の実態、そして職員、役員の実態というのを赤裸々に見てきた。そういう経験を踏まえまして、今回の
農協法改正及び今後の
系統農協の再生について一言
意見を申し上げたいと思います。
私が申し上げたいのは、今日、
系統農協が
農業あるいは日本の
農村の衰退、混迷、こういったものに十分に対応し切れない、あるいは金融自由化の波の中で十分に
農協経営を安定できない、こういう不十分さの原因というのは一体何なのかということであります。
私の経験からいえば、それは恐らく人の問題ではないか、そういうふうに感じております。人の問題というのは何なのかというと、
系統農協の役員とそして職員だと思います。現在、我々の
組織が抱えている問題に対して、役員やあるいは職員の解決の能力なり意欲、そういったものが我々の
組織の場合は不足しているんじゃないか、そういうふうに強く感じております。
具体的に役員について申しますと、農家
組合員から選任なり選挙で選ばれて、
組織の統率力というのはやはり
組織代表の役員というのは一番あると思っております。しかし、
農協運営の
改善とかあるいは職員を適正に採用して育てるとか、そういった
経営面についてかなり素人の面があるんじゃないか、そういうふうに思います。加えまして、
地域の名誉職的な形で就任されて、任期の間事なかれ主義ということで何もせずに終わられる
理事もかなりいらっしゃる、そういうふうに見ております。
こういった中で、農家なりが抱えている問題に
農協が取り組めない、あるいは職員が悩んでいることがいつになっても解決されない、こういったことが続いて、たくさんの
課題が
農協大会で挙げられたけれどもなかなか実行に移されない、私はそういうふうに考えております。
職員の実態なんですが、管理職の方は
組合長、役員を補佐してこれを補うような任務にあるわけですが、必ずしも十分に必要な
事項を提言したりあるいはたしなめたり、そういった形になっていない。一部のさすがに参事さんなり部長さんはもう昼夜身を挺して
農協のためになされているけれども、全体から見ると少ない。どちらかというと、定年等を意識して前年度踏襲主義の指揮をとられる管理職の方が多いんじゃないか、私どもはそういうふうに見ている。こういったもとで我々一般職員というのは、今、一体自分の
農協は何を目指して運動しているんだ、あるいは自分はその中で何をやらなくちゃならないんだ、そういう
目的がどうもつかめない。ただ前年どおり、与えられたこと、あるいは先輩から受け継いたことを毎日処理している。こういった中からは、
地域の
農業をどうしようかとか生活
事業をどうしようかとか、そういう発想というのはなかなか生まれてこない、そういうふうに思っております。
それで、管理職と一般職のそういった意識の問題についてもう少し触れたいんですが、その原因というのは、役員の姿勢なり率先垂範という問題もあるんですが、それ以上に就労条件が一般の
企業なり自治体に比べると非常に低い、こういった中で、職員の労働意欲、こういったものが上がらない、そういうふうに見ております。
ちなみに、
茨城の単協の
平成三年度の初任給の平均を申しますと十一万四千円なんです、八十八
農協なんですが。同じ年の民間
企業の高卒初任給平均が十三万七千円で、二万三千円ほど単協の方が低いという
状況であります。それから大卒で申し上げますと、単協で大卒で入られる方は少ないんですが、
農協の平均が十三万五千円、民間が十七万五千円と実に四万円からの格差が出ているというような
状況でございまして、その後の三十歳なり四十歳のポイント賃金も同様の、まあ初任給
ほどはひどくはないんですが、格差が生まれている。こういった、はっきり言って、一言で言うと
農協の労務管理、こういったものの対応が非常におくれているというふうに感じております。これがために、職員から労働意欲、あみいは何とか自、分の
農協をいう前に自分の生活がみじめで誇りが持てないという
状況ですから、仕事に前向きになれない、そういう
状況にあるというふうに感じております。
加えて、皆さんも御存じのとおり
業務内容が
推進が多くなりまして、販売担当でやってきたのに
推進推進で一体自分が何の担当だか最近はわからなくなっちゃった、こういう支所の職員もいます。中途退職が出ているせいもあるんですが、いなくなった人の分を何でもやらせられる。それで、この
組織にいると自分は一体どうなるのかわからないのでおれもやめる、こういう連鎖反応を起こしている
農協もあります。
こういったずさんな労務管理と
推進の増加によって、本県の中途退職は昨年度は二百九十名から出ました。全体の職員が五千七百十三名で、約五%の仲間が中途で
農協を去ったという
状況なんですが、ここ四年ぐらい二百名台の中途退職が出ております。しかも、二十代後半から三十代の中核的な、これから
農協で中心になっていくという人が退職する、敏感にそういう将来を予測して去っていくというような
状況であります。
このようなわけでして、県連でも同じような現象が最近出てきました。特に単協段階に人間的な空白が生じている。私はそのくらいの危機感は持っております。ですから、解決しなくちゃならないいろんな
課題、理想、こういったものを幾ら提起しても実践者がいなくては
農村に届かない、そのことを強く申し上げたいと思います。
時間もございませんので、広域
合併で何とか単協の人的
体制を立て直そうという考え方もありますが、基本的には就職した職場で、愛社精神のある地元の
農協の職員が
合併した
農協を支えていくということが私は一番理想だし、できれば県連からの人的支援というのは派遣程度にとどめて、
農協の職員だってやる気になって団結すればすごい力を発揮します。これは県連の職員なんかよりもずっと農家のことは知っていますし、チームワークさえよければちゃんとリーダーを中心にして仕事が進むんですね。
ですから、広域
合併農協、ちょっと話がずれましたが、広域
合併しても前の
農協とそういった労働意欲の低さというのは変わらないところが多いんですよ、
茨城の場合は。なぜかと申しますと、広域化しますとますます高い
運営管理能力がトップ層に求められるのになかなかそれが育たない。
組合長が二、三年、四、五人残っていましたり、なかなかトップ層の指揮が固まらないという中で職員は大変不安です。しかも、旧
農協の就労条件が、就業時間なんかが切り下げられたりしますので、それで交渉なんかしますと、しょうがない、こういう時代なんだから我慢しろという、何というか割ったような話をされて、本当に大丈夫なんだろうかというような形で、どうも職員自体も帰属意識なり
農協を愛する気持ちというのは育ってこないという中で、広域
合併農協でも中途退職が大人数で出ているというような
状況なんです。
そういう
状況で、私としましては最後に訴えたい、加えて具体策もあえて申したいというのは、広域
合併や
組織再編という、こういったものを行う前に、何とか単協、そして県連段階での人の問題を解決していただきたい、これは早急に取り組んでいただきたい。役員の問題は、今回の
農協法の
改正の中で一部端緒があらわれてきましたが、もっと具体的に責任ある
執行体制をつくっていただきたい。職員の場合は、早急に就労条件、賃金の問題なり週休二日制の問題に対応していただきたい。これは単に労働
組合だから要求しているんじゃなくて、
農協の職員がこのままでは育たないですしもちませんので、ひとつ早急に対応していただきたいということであります。
具体策で大変恐縮でありますが、学経役員につきましては、
茨城の場合は学識経験
理事というのはどういう
基準で決めるんだというのがなかなか決まらないんですね。例えば県連の経験者なり県庁の検査の経験者、ですからいつになっても育たない。そういう意味で学識経験者の
認定制度のようなものを検討していただきたい。これは農家
組合を中心に役員というのは育成すべきですから、農家
組合も含めて学経
理事というのを育成、
認定していくような考え方がいいんじゃないか。それで、常勤役員はそういった方でやっていただきたい。非常勤の
組織代表役員はそういった常勤役員を選任するというような形で、マネージャー制みたいな形にはなるんでしょうが、そういう形の方が職員は思い切って仕事ができるんじゃないかなと、そういうふうに思っております。
それから、職員の問題につきましては、先ほども言いましたように、まず賃金の問題で、
系統農協内の最低賃金のようなものをこれは労組法とは別に設定していただいて賃金保障を
充実していただきたい。それから、完全週休二日制については、もう金融
事業もやっておりますので、何とか
平成五年度、来年度までには実施していただきたい。それから
推進業務を、
農協法の設立の
趣旨に明らかに反するような
推進、あるいは職員ノルマ
推進、こういったものは規制していただきたいというのが本音でございます。それでは
事業が成り立たないというならば、日常的な契約をとる
体制あるいは予約をとる
体制というのが農家のためには本来ですので、これに取り組んでいただくよう
指導していただきたい。
最後に、協同
組合理論というのが軽視されてきた。こういった協同
組合理論に基づいた
事業改善について、
農協、県連内の役員が講師となって職員教育をやっていただきたい。本当に理解して率先垂範する役員とそれを信頼してついていく職員と、そういったものが育たないとなかなかいろんな
課題が前に進まないと私は思います。
以上でございますので、ひとつよろしくお願いいたします。