○板垣正君 私は、
防衛問題に関連して、若干
要望になるかもしれませんが、
防衛庁の見解を中心に承りたいと思います。時間も限られておりますので、簡明な御回答をお願いいたしたいと思います。
第一は、冷戦後の我が国の
防衛のあり方の問題であります。
これは極めて根本的な、基本的な問題であり、ソ連の崩壊により
東西冷戦構造が解体してまさに画期的な時代を人類は迎えておる、新しい世界の秩序を求め、その模索が始まりつつある、こういう意味におきましては、私どももいたずらに過去にとらわれることなく、思い切った新しい発想転換も必要であると思います。
しかし、そうした反面、既に地域的ないろいろな紛争が起こっておる、民族的対立が起こっておる、宗教的な問題もある、特にアジアにおきましては、またいわゆる冷戦が終わったという姿が具体的な姿として端的にあらわれてきておらない。こういう
情勢の中で、ああもう世界に平和が来るんだ、
防衛費は削ればいい、
自衛隊は縮小すべきだ、こういう極めて安易な風潮と申しますか、こうしたものは私は非常に危険だと思うんです。国家
防衛の問題はまさに民族、国家存立の基本でありますから、午前中の御答弁にもあり、また常日ごろ長官もおっしゃっているように、そういう情熱を踏まえ、慎重に対処していかなければならない、こういうことであろうと思います。
湾岸戦争の後、やはり各国が取り組んでおりますのは、この冷戦体制の解けた後、こういうある意味における激動の時代、こうした時代にいかに対処していくか、あるいは
防衛の面におきましては特に近代化が著しく進められつつある。こういう近代化に着手し、それが具体化されるというふうな
状況というのはほぼ十年かかると言われております。したがいまして、今の時点の
防衛の問題についても、やはり十年ぐらいの幅を持って、十年ぐらい先の姿のいろんなシナリオを描きながらこれに我々がいかに対応していくか、そういうことが必要ではないのか。
端的に十年後に描かれるシナリオとして、さらに国連が指導的な姿になっておるのか、米国の今の一極の存在がどういう姿になっておるのか、いわゆるブロック化というものがさらに進められた姿になるのか、あるいは地域的な紛争が頻繁に起こるというような
情勢も考えられるのか、さらには深刻な南北問題が大きな焦点となって南北対立の姿が十年後の問題になっているのか、こうしたものもやはり踏まえながら、かっ私どもは、きょう午前中のお話にもありましたとおり、ロシアは一体どうなっているだろうか、減少はございますけれども、ロシアは依然として超軍事大国である姿には変わりはない。百五十万にするとかなんとかいろいろ言われておりまするけれども、ロシアの軍事力あるいはその戦力、能力、こうしたものがどういう姿になっていくか。
朝鮮半島の動き、特に北朝鮮の核開発問題も依然として疑惑に包まれております。あるいは中国の場合も、膨大な陸海空を持ち、かつ
防衛白書にもあるとおり、いわゆる海洋戦力、南沙あるいは西沙、尖閣、こういう南シナ海におけるプレゼンスを求め、海洋戦力の強化を着々と図りつつあるということは今や明確な事実になりつつある。こういう動きも一体これからどうなっていくのか。
こうしたことを踏まえた場合に、やはり戦後の
防衛体制は基本的には正しかったと思う。専守
防衛を基調とする節度ある自衛力の
整備と、あわせ日米安保体制のもとに一度も戦禍をこうむることなく平和を守り、この繁栄を築き上げてきたその根本にありました
防衛政策は誤りなかったと言えると思うのであります。
しかし、これを規制しておりますのが「国防の基本方針」であります。我が国の
防衛の基本方針、
防衛政策の基本にある国防の基本方針は
昭和三十二年に制定されたものでございますけれども、私はなかなかよくできていると思う。じゃ、この
防衛の基本方針がそのとおりに具現化されたであろうか、そういう
立場から考えますときに、第一に言われている「国際連合の
活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する」、いわゆる国連協力の問題も高らかにうたわれております。今まさに焦点となっておりますPKO
活動に対する協力というようなことも、こうした
立場でもっともっと早くこういう問題に取り組んでもよかったのではないのか。「民生を安定し、愛国心を高揚し、国家の安全を保障するに必要な基盤を確立する」、こういうことも言われておりまするけれども、これが単なる抽象的なったい文句に終わったんではないのか。
熱心な愛国心とまでは言いませんけれども、いわゆる
防衛に関してはほとんど無関心である、
防衛・軍事問題というのはタブー扱いされている、こういう姿が今なお続いてきているのではないのか。
そのほかの問題もございますけれども、そういう
立場において、冷戦解体下における我が国の
防衛の基本的な考え方について長官の御見解を承りたいと思います。