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1992-04-07 第123回国会 参議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年四月七日(火曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月二十七日     辞任         補欠選任      喜岡  淳君     安永 英雄君      瀬谷 英行君     久保  亘君  三月三十日     辞任         補欠選任      久保  亘君     瀬谷 英行君      安永 英雄君     喜岡  淳君  四月六日     辞任         補欠選任      大島 友治君     谷川 寛三君      喜岡  淳君     大渕 絹子君  四月七日     辞任         補欠選任      大城 眞順君     石渡 清元君      谷川 寛三君     合馬  敬君      大渕 絹子君     喜岡  淳君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         梶原  清君     理 事                 板垣  正君                 田村 秀昭君                 翫  正敏君                 吉川 春子君     委 員                 石渡 清元君                 合馬  敬君                 永野 茂門君                 村上 正邦君                 大渕 絹子君                 小川 仁一君                 喜岡  淳君                 三石 久江君                 太田 淳夫君                 磯村  修君                 田渕 哲也君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 加藤 紘一君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  岩崎 純三君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  宮下 創平君         ―――――        会計検査院長   中村  清君         ―――――    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   荒田  建君        内閣審議官        兼内閣総理大臣        亘房参事官    野村 一成君        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        児玉 良雄君        内閣官房内閣広        報官室内閣広報        官        兼内閣総理大臣        官房広報室長   樋口 武文君        人事院事務総局  丹羽清之助君        宮内庁次長    宮尾  盤君        皇室経済主管   河部 正之君        総務庁長官官房        長        八木 俊道君        総務庁長官官房        会計課長     土屋  勲君        総務庁人事局長  山田 馨司君        学庁行政管理   増島 俊之君        防衛庁参事官   高島 有終君        防衛庁参事官   三井 康有君        防衛庁参事官   上原 祥雄君        防衛庁長官官房  村田 直昭君        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  小池 清彦君        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛庁経理局長  宝珠山 昇君        防衛庁装備局長  関   收君        防衛施設庁長官  藤井 一夫君        防衛施設庁総務        部長       竹下  昭君        防衛施設庁建設        部長       新井 弘文君        外務省アジア局        長        谷野作太郎君        林野庁次長    赤木  壯君        郵政大臣官房審        議官       金澤  薫君    事務局側        事 務 総 長  戸張 正雄君        常任委員会専門        員        菅野  清君    衆議院事務局側        事 務 総 長  緒方信一郎君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  生天目忠夫君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  澁川  滿君    国立国会図書館側        館     長  加藤木理勝君        収 集 部 長  井門  寛君    説明員        外務省アジア局        審議官      竹中 繁雄君        大蔵省造幣局東        京支局長     和田 恒夫君        大蔵省印刷局総        務部長      中山 寅男君        文部大臣官房審        議官       岡村  豊君        厚生省援護局業        務第一課長    村瀬 松雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○平成四年度一般会計予算内閣提出衆議院送  付)、平成四年度特別会計予算内閣提出、衆  議院送付)、平成四年度政府関係機関予算(内  閣提出衆議院送付)について  (皇室費国会所管会計検査院所管内閣所  管及び総理府所管総理本府、日本学術会議、  国際平和協力本部宮内庁総務庁北方対策  本部を除く)、防衛本庁防衛施設庁))     ―――――――――――――
  2. 梶原清

    委員長梶原清君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨六日、喜岡淳君及び大島友治君が委員辞任され、その補欠として大渕絹子君及び谷川寛三君が選任されました。  また、本日、谷川寛三君が委員辞任され、その補欠として合馬敬君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 梶原清

    委員長梶原清君) 去る三月二十五日、予算委員会から、四月七日の一日間、平成四年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議国際平和協力本部宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁について審査の委嘱がありましたので、御報告いたします。  この際、本件を議題とし、順次予算説明を聴取いたします。  予算説明につきましては、国会所管及び会計検査院所管以外は去る二月二十七日の本委員会におきまして既に聴取しておりますので、この際、国会所管及び会計検査院所管予算説明を聴取いたします。  まず、国会所管のうち衆議院関係予算説明を求めます。緒方衆議院事務総長
  4. 緒方信一郎

    衆議院事務総長緒方信一郎君) 平成四年度衆議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成四年度国会所管衆議院関係歳出予算要求額は五百六十九億三千万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと二十八億九千九百万円余の増加となっております。  次に、その概略を御説明申し上げますと、第一は、国会運営に必要な経費でありまして、五百五十二億六千六百万円余を計上いたしております。  この経費は、議員関係の諸経費職員人件費並びに事務局及び法制局事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し二十八億一千九百万円余の増加となっておりますが、その主なものは、議員室直通電話回線増設経費議員歳費並びに議員秘書及び職員人件費等増加によるものであります。  なお、議員秘書増員問題検討経費及び国会審議テレビ中継関係調査費を計上いたしております。  第二は、衆議院施設整備に必要な経費といたしまして、十六億五千六百万円余を計上いたしております。  これは、第二議員会舘内装改修費国会審議テレビ中継設備整備費電話交換設備整備費及び本館等庁舎の諸整備に要する経費並びに国会周辺等整備に必要な土地購入費でございます。  第三は、国会予備金に必要な経費といたしまして、前年度同額の七百万円を計上いたしております。  以上簡単でありますが、衆議院関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  5. 梶原清

    委員長梶原清君) 次に、参議院関係予算説明を求めます。戸張参議院事務総長
  6. 戸張正雄

    事務総長戸張正雄君) 平成四年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成四年度国会所管参議院関係歳出予算要求額は三百四十億三千五百万円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと約二十五億八百万円の増加となっております。  次に、その概略を御説明申し上げます。  第一は、国会運営に必要な経費でありまして、三百三十億七千八百万円余を計上いたしております。  この経費は、議員関係の諸経費職員人件費並びに事務局及び法制局所掌事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し約二十五億三千万円の増加となっております。これは主として、人件費増加によるもののほか、第十六回参議院議員通常選挙に伴う改選関係経費の計上によるものでございます。  第二は、参議院施設整備に必要な経費でありまして、九億五千二百万円余を計上いたしております。これは、議員会館昇降機改修費分館委員会室テレビ中継放送設備整備費及び庁舎等施設整備に要する経費でありまして、前年度に比し約二千二百万円の城となっております。第三は、国会予備金に必要な経費でありまして、前年度同額の五百万円を計上いたしております。  以上、平成四年度参議院関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  7. 梶原清

  8. 加藤木理勝

    国立国会図書館長加藤木理勝君) 平成四年度国立国会図書館関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成四年度国会所管国立国会図書館関係歳出予算要求額は百四十三億二千二百万円余でありまして、これを前年度予算額百四十億二百万円余と比較いたしますと三億二千万円余の増額となっております。  次に、その概略を御説明申し上げます。  第一は、管理運営に必要な経費であります。その総額は百二十二億六百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと三億八千八百万円余の増額となっております。これは主として、国会サービス充実のための経費図書館資料収集経費及び人件費等について増額計上いたしたことによるものでございます。また、関西図書館プロジェクト調査経費につきましては、新規に事項立てをして、一千二百万円余を計上いたしております。  第二は、科学技術関係資料購入に必要な経費でありまして、五億三千五百万円余を計上いたしております。これを前年度予算額と比較いたしますと一千六百万円余の増額となっております。  第三は、施設整備に必要な経費でありまして、十五億七千九百万円余を計上いたしております。これは、主に新館整備及び本館改修に要する経費で、前年度予算額と比較いたしますと八千四百万円余の減額となっております。  以上、簡単でありますが、国立国会図書館関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  9. 梶原清

  10. 生天目忠夫

    裁判官弾劾裁判所参事生天目忠夫君) 平成四年度裁判官弾劾裁判所関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成四年度国会所管裁判官弾劾裁判所関係歳出予算要求額は一億一千百九十万円余でありまして、これを前年度予算額一億七百五十五万円余に、比較いたしますと四百三十四万円余の増加となっております。  この要求額は、裁判官弾劾裁判所における裁判長職務雑費裁判員旅費及び事務局職員給与に関する経費、その他の事務処理費並びに裁判官弾劾法に基づく裁判官弾劾裁判に直接必要な旅費庁費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、主として職員給与関係経費等増加によるものであります。  以上、簡単でありますが、裁判官弾劾裁判所関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  11. 梶原清

  12. 澁川滿

    裁判官訴追委員会参事(澁川滿君) 平成四年度裁判官訴追委員会関係歳出予算について御説明申し上げます。  平成四年度国会所管裁判官訴追委員会関係歳出予算要求額は一億二千六百五十五万円余でありまして、これを前年度予算額一億一千九百七万円余に比較いたしますと七百四十八万円余の増加となっております。  この要求額は、裁判官訴追委員会における委員長職務雑費及び事務局職員給与に関する経費並びに訴追事案審査に要する旅費その他の事務費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、職員給与関係経費等増加によるものであります。  以上、簡単でありますが、裁判官訴追委員会関係歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  13. 梶原清

    委員長梶原清君) 以上をもちまして国会所管予算説明聴取は終わりました。  次に、会計検査院所管予算説明を求めます。中村会計検査院長
  14. 中村清

    会計検査院長中村清君) 平成四年度会計検査院所管歳出予算について御説明いたします。  会計検査院平成四年度予定経費要求額は百四十一億七千九百八万八千円でありまして、これは、日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づく、本院の一般事務処理及び検査業務を行うために必要な経費であります。  今、要求額の主なものについて申し上げますと、人件費として百二十三億九千六百五十六万円を計上いたしましたが、これは総額の八七%に当たっております。このうちには、会計検査充実を図るため、一般職員十一人を増置する経費も含まれております。  旅費として七億六千八百五十六万一千円を計上いたしましたが、このうち主なものは、会計実地検査旅費が七億一千九十三万七千円、外国旅費が二千七百六十八万八千円であります。  施設整備費として一億九千九百八十五万六千円を計上いたしましたが、このうち主なものは、庁舎別館昇降機更新工事費一億七百五万二千円、庁舎本館外壁タイル防護工事費七千九百六万円であります。  その他の経費として八億一千四百十一万一千円を計上いたしましたが、このうちには、検査の円滑な実施を図るための会計検査活動費八千五百二十二万円、会計検査充実強化のための経費四千七百十九万六千円、検査業務効率化を図るための経費二億百六十二万五千円及び検査要員充実強化のための研修体制整備経費一億四千六百七十五万六千円が含まれております。  次に、ただいま申し上げました平成四年度予定経費要求額百四十一億七千九百八万八千円を前年度予算額百二十七億八千三百九十万四千円に比較いたしますと、十三億九千五百十八万四千円の増加となっておりますが、これは、人件費において十二億四千九百四十五万円増加したことなどによるものであります。  以上、簡単でありますが、本院の平成四年度予定経費要求額概要の御説明を終わります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  15. 梶原清

    委員長梶原清君) 以上で予算説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 翫正敏

    翫正敏君 加藤官房長官質問をいたします。  きのう四月六日、中国共産党の江沢民書記が来日をいたしました。江沢民書記は今回の訪日に先立つ記者会見において、この訪日の意義について、ことしは中日国交正常化二十周年であり、共同声明友好条約の基礎の上に、未来を見つめて一層の中日関係の発展を推進したいと述べておられます。日中両国間の一層の友好関係を深める上で、我々日本人における原点は何といっても日中間の近代における歴史の事実を直視し、日本中国に対する侵略の非を率直に認め、謝罪をし、さらに日本侵略によって被害を受けられた方々に適切なる補償をすること、また、過去の歴史を知らない若い世代の人たちに、その歴史意味と教訓を受け継ぐための教育をすることであろうと私は確信をいたしております。  そこで、私はまず、日本国国会議員の一人として、中国人々にこの件について深く謝罪をしたいと思います。また同時に、一人の日本人として、いや何よりも一個の人間として、日本侵略行為に対する痛切なる反省に立って、戦争責任、戦後責任を全うしていく所存であることを表明いたします。  江沢民書記は、戦争賠償の問題について、日本軍国主義中国侵略戦争を起こし、中国人民に大きな損害をもたらした、一部の戦争の残した問題は実事求是で厳粛に受けとめるという原則により、協議によって善処すべきだと言っております。また、江沢民書記に先立って銭其シン外相も、中国への侵略戦争がもたらした複雑な問題。について日本政府は当然適切に処理すべきだと言い、事実上民間賠償請求権を認める発言をしています。そして、江沢民書記もまたこの外相のコメントを公的な見解だと言っているところでございます。また、昨日四月六日の宮澤首相との首脳会談においては、中国は前のことを忘れて未来を見る、日本は前のことを忘れず後の戒めとすることが重要であると、このような発言をしたということが報じられております。  さて、日本のかつての侵略による被害に対する民間賠償請求権の問題については、昨年一九九一年三月、中風の国会であります全国人民代表大会全人代建議が出されまして、昨年八月の海部首相訪中時には海部首相あて請願書も出されているところであります。そして、この三月二十日に始まった中国全国人民代表大会には法案として提出をされるところにまで民間要求が高まってきているということが報道されております。さらには、この国会に当たる全人代だけではなくて、重慶市などのいわば地方議会においてもこの民間賠償請求動きは広がりを見せております。  そこで、まず官房長官に総論的にお尋ねをしますが、昨年の全人代建議に始まりまして、続いておりますこれら一連の動きにつきまして、その経過とか内容について、また、日本政府にあてて提出されたものなどについてはそれをどのように受け取っているのか、受け取った上で、現在政府としてはどういう処置や話し合いを進めているのかなとを含めて、概略状況の報告をいただきたいと思います。
  17. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 総論的に申しますと、アジア・太平洋を初めとする関係地域人々が過去の一時期、我が国行為により耐えがたい苦しみと悲しみを体験されたことにつきまして、我々は深い反省と遺憾の意を表したいと思っておりますし、またこれはこれまで日本総理大臣が表明されてきたところでございます。我々はこのこうした過去の過ちを直視し、歴史を正しく伝え、二度とこのような過ちは繰り返さないという戒めの心をさらに培って、養って、国際社会の一員としての責務を果たしていくという心構えが肝要なことだと思っております。  なお、先生が今御質問になられましたここ一両年の中国におけるいろいろな動き建議、その経過等につきましては担当者の方から、また御質問があれば詳細にお答えいたしていきたいと思いますが、いわゆる賠償等の問題につきましては、連合国及び戦後我が国より分離した地域との間の請求権の問題につきましては、我が国としてはサンフランシスコ平和条約、二国間の平和条約その他の関連する条約等に従って誠実に対応してきているところでございます。  中国との関係について申しますならば、戦争にかかわる日中間請求権の問題は一九七二年の日中共同声明発出後存在してないものと思っておりますし、かかる認識は中国政府も累次明らかにされているところでございます。
  18. 翫正敏

    翫正敏君 そこで、条約外交保護権の問題につきまして少し立ち入って質問していきたいと思いますので引き続きお願いいたしますが、細かい条約解釈などについて政府委員の方から答弁があっても結構だと思います。  民間損害賠償請求権の問題につきましては、例えば日ソ共同宣言第六項に、「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。」、こう書かれているところでありまして、この条約法的解釈について、これは国家の持つ外交保護権が放棄されたということであって決して個人請求権が放棄されたものでは。ないと、昨年三月二十六日の本内閣委員会において私の質問に対して政府は、外務省の当局でありますが答弁をしたところであります。  それからまた、日韓請求権協定第二条の一項に、「両締約国は、両締約国及びその国民一法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題がこ「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」、こういうふうに述べられていることについても同様の答弁政府は、外務省として衆参の予算委員会などでしておるわけであります。ちょっと読みますと、平成三年八月二十七日の参議院答弁では、柳井俊二政府委員、「日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国国家として持っております外交保護権相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます。」、こう答弁されておることで明らかなのであります。  この国民請求権ということに関して、日本と各国との戦後処理条約賠償協定経済協力協定において、その基本的な枠組みはもちろんサンフランシスコ平和条約でありますけれども、このサンフランシスコ平和条約においては、第十四条の(b)に「連合国は、連合国のすべての賠償請求権戦争遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国請求権を放棄する。」、こう書かれてありまして、また第十九条の(a)には、「日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権放棄しこ云々、こう述べられております。  ところで、連合国側請求権放棄の条項であるこの十四条の(b)は、一九五一年三月の原案におきましては、「戦争遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国請求権」、こうなっておりまして、「連合国」と「国民」という言葉が当初入っていなかったのでおりますが、それでは範囲が不明確であるということで、日本政府が主張したことによって「連合国及びその国民」という文言がわざわざ入れられたということであります。  当時、一九五一年十一月九日の参議院平和条約及び日米安全保障条約特別委員会においてこのことは明文において明らかにされております。参考までに読みますが、昭和二十六年十一月九日の参議院西村熊雄政府委員、「その点は三月の原案では連合国賠償請求権だけあったのであります。それに対しまして、私どものほうから、それでは範囲が不明確であると主張いたしまして、戦争遂行中日本国又は日本国民がとった行動から生じた連合国政府又は連合国民の請求権という文句が入った次第でございます。」、こういうように答弁しておられることからも明らかなことであります。このように条約の文言に「国民」という言葉が入っているかどうかということは実は大変重要な問題なのであり、厳密にせねばならないことであります。  ところで、御承知のとおり、日中共同声明の第五項にはこのように述べられております。「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。」、こう述べられております。ここには「国民」という言葉はありません。したがって、民間賠償請求権問題についての今までの政府答弁に沿って理解するならば、まず、どう考えましても、被害者個々人が直接責任ある企業やまた日本政府に対して責任範囲で請求するという、こういう権利があることは、これは、それが消滅していな。いということはもちろんのことでありますけれども、中国日本との条約の場合、共同宣言の場合には、この被害を代表して中国政府が交渉することができるという意味での外交保護権というものすら中国政府は放棄しないということになると思いますが、どうでありましょうか。  もちろん、現在中国政府は、被害者個々人が直接日本の企業や、またその他政府などに接触し交渉することには干渉はしないのだ、こういう立場をとっておりまして、賠償問題は解決済みであるという、先ほど官房長官答弁になりました日本国政府の考え方と大枠においては立場を変えておらないことは私も理解をしておりますけれども、そういう意味では外交保護権を行使するというところに至っていないことも事実であります。しかし、江沢民書記が述べておりますように、協議によって善処すべき問題だ、こう言わざるを得ないほどに中国民間の中でのいわゆる民間賠償の要求が高まっているということも事実であろうと思います。  かつて中国におきましては、日本侵略責任日本軍国主義者にあるのであって日本人民にあるのではない、日本の人民に多大な負担をかけるわけにはいかない、第一次世界大戦後のドイツのように莫大な賠償を背負わされたことがかえってナチスの台頭を生むことになった、当時の日本に莫大な戦争賠償を請求することは、かえって日本軍国主義の復活につながるということで、戦争賠償を放棄したということを私は再三いろんなもので読んで聞かされているところであります。私はここに中国人の日本に対する、戦争に対する温情とか道義とかといったものを感ぜざるを得ないわけであります。  サンフランシスコ条約の第十四条(a)にも、「日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべきことが承認される。しかし、また、存立可能な経済を維持すべきものとすれば、日本国の資源は、日本国がすべての前記の損害及び苦痛に対して完全な賠償を行い且つ同時に他の債務を履行するためには現在充分でないことが承認される。」、このように書かれております。ところで、現在の日本はどうかといいますと、サンフランシスコ条約締結当時、また日中共同声明発表当時の日本に比べれば、その経済的な力量は比べるもなく大きくなっているわけであります。その証拠に、その結果といいますか、これだけ経済大国になったのだからということで、人的な貢献も含めての日本の国際貢献のあり方というものが国会においても、また国民各層においても大きな議論になっているというのが現状であります。  実際、日本は湾岸危機、湾岸戦争に際しましては、米国、多国籍軍に対して増税をしてまで莫大な金額のお金を拠出いたしました。このことに関しては前回のこの委員会でも私質問をいたしましたが、まだこの使途等について重大な疑義が残っておりますので、次の機会にはまた取り上げていかなきゃならないことと思っておりますが、それはともかくとして、私に言わさせていただくならば、日本がまず真っ先になすべき国際貢献とは戦争にお金を出すことでないのはもちろんのこと、海外に自衛隊を出すことではもちろんなく、これらの戦争歴史というものを直視する中からこれらは一番してはいけないことであって、この国際社会に対して貢献するという立場からいうならば、まずかつての戦争責任、戦後責任というものを果たしていくということがなければならないと思います。  中国全人代提出されたことで明らかなように、むしろ日本は莫大な債務というもの、これを負っていると言わなければなりません。借りているものも返さずに、一体本当に国際貢献などということが成り立つものでしょうか。疑問に思うわけであります。  そこで、加藤官房長官に、この中国民間戦争被害に対する賠償問題、日中共同声明及び日中平和友好条約という立場に立って、この条約民間戦争被害との関係の問題について、補償問題についてどのように認識しておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  19. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) お答えいたします。  先生御指摘になりました日中共同声明でございますが、これは日中国交正常化という大目的の達成のために、日中双方の基本的立場に関連するいろいろ困難な法律問題があったわけでございますが、これを政治的に解決しょうということででき上がったものでございます。こういう経緯もございますものですから、この賠償問題に関する規定におきましても、こうした事情を反映した表現ぶりになっているわけでございます。日中共同声明第五項がサンフランシスコ平和条約における戦争にかかわる請求権に関する規定とは規定ぶりが異なっているというのも、その背景はそのように御理解いただければありがたいと思います。いずれにせよ、戦争にかかわる日中間請求権の問題はこの一九七二年の日中共同声明発出後存在していないというのが我々の立場でございます。
  20. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今、審議官からお答えしたとおりでございます。
  21. 翫正敏

    翫正敏君 資料に基づいて、るる説明をして質問したわけでありますけれども、では、そのことについて逐次外務省の方から、サンフランシスコ条約のときには、最初「国民」という言葉が入っていなかったのを、日本政府条約の協議の中で入れたということですね。こういう経過の問題についてどうなのか、それが一点。  それからもう一点は、外交保護権の問題と条約との関係の問題。この二つについてもう少し厳密に答弁してください。
  22. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 私、条約の専門の者ではございませんので、必ずしも完全にお答えできるかわかりませんけれども、先ほど先生が引用されました、当時の条約局長の答弁ぶりから拝察しますところ、先生のおっしゃるような論点、「国民」という言葉を入れるかどうかということに関してはあったんだろうと思われます。
  23. 翫正敏

  24. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 国際法上の請求権については、一般に私人は国際法上の主体とはなり得ないというのが国際法上の立場でございます。外国人が個人の資格で日本政府に対し、政府官憲の行為に基づく損害について補償を請求した場合に、これが認められるか否か、これは我が国の国内法上の規定によるということだと認識しております。
  25. 翫正敏

    翫正敏君 国民請求権という、国民のという文言があるなしにかかわらず、まず確かめておきますが、従来の政府の見解や答弁を変更されるわけなんですか、変更されないんですか。さっき私読みましたでしょう。昨年八月二十七日の参議院予算委員会における柳井政府委員答弁の内容を読みましたね。変更されますか、されませんか。
  26. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 変更するつもりはございません。
  27. 翫正敏

    翫正敏君 それで、さっき言いましたように、一般的に、国民請求権という言葉が入っていようがいまいが、一人の人が例えば被害を受けた、例えば労働賃金をもらってない、そういうようなものについて、そういうものは条約によってなくなるものではないという、これは日本政府の基本的な考え方であるということは私は理解しました、従前からそういう答弁をいただいておりますから。その上で、なおかつ私がここで問題にしているのは、日中共同声明の場合には、先ほどおっしゃっな言葉では、いろんな政治的な状況の中でこの共同声明ができ上がったわけでしょうけれども、中国側が一方的に日本に対する賠償を放棄するということを声明した、わけですけれども、その中に国民のという言葉が入っていないことの持っている重さ、これをどう受けとめるかと、こういうことをお尋ねしているわけですよ。ですから、外務省の方は結構ですから、官房長官の方でもう一度、政治的な配慮の中で請求権の放棄が中国から一方的になされたというそのことと、そして、その文章の中に国民のという言葉が入っていないということの重さ、これをやっぱり受けとめる御答弁をぜひいただきたいと思うんです。重ねてお伺いしますが、いかがですか。
  28. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) サンフランシスコ条約が締結されたときの条約交渉の経緯等につきましては、ちょっと私も専門でないんでわかりませんけれども、いずれまた専門家から答弁させる機会をいただきたい、こう思いますけれども、今、竹中審議官が申しましたとおり、いわゆる一九七二年の日中共同声明によりまして、いわゆる政府政府国家間の請求権国家間の賠償に関する請求権中国側が放棄された。そして、その際に国民が訴える権利をなくしたものかどうかにつきましては、いろいろこの国会で、過去累次御議論があったと思います。そして、条約局長等が答弁しておりますように、個人の訴権、訴える権利というものは存在するけれども、それを政府外交保護権をもって日本側に要求する権利は中国側が放棄してくれたというふうに理解いたしております。  したがって、外交上個人が持っております訴える権利、日本政府に訴える権利というのは、国際法上私人は主体上なり得ないわけでございますので、そうしますと、それはどう取り扱われるかにつきましては、先ほど竹中審議官が申したとおり、日本の国内法上の規定によって処理をされるという形になるものと理解しております。
  29. 翫正敏

    翫正敏君 それで、そういう政府の立場は、中国の方の現在の政府のお立場も、民間人たち被害の請求をすることについては干渉しない、タッチをしないということを言っておりますから、現在のところ、日本政府の立場と中国政府の立場は、そういう意味では同じでありますので、外交上の問題はこの点に関しては起きていないと、こう理解をしております。  ただ、一方中国の国内においては、さまざまな形で民間の賠償を求める動きが数年前から起こっております。もっと前からもありましたが、後からちょっと時間があれば言いますが、近年非常に高まっております。そのことはやはり重く受けとめなければならないと、こう私は思うんですけれども、その中国における民間の賠償要求動きが、全人代への建議等も含めて各地区でのいろんな団体動き日本でもいろんな地区におけるさまざまな民間団体要求とか、動きというものが、もちろん公害問題とかさまざまなことがございますけれども、中国においてもそういう動きが活発になってきているということは、これは大きいこと、重いこととして受けとめるべきだと、こう思うんですが、その点に関していかがですか。どういうふうに受けとめておられますか。
  30. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 同じ答弁になるかと存じますけれども、戦争賠償の権限を相手側の国が放棄し、その状況のもとで、それぞれの国の国民の皆さんかどういう訴える権利を有するか。この問題につきましては、この委員会でも議論になりました朝鮮半島出身の慰安婦賠償の問題等についても、我々の立場は累次申し上げてきたところでありまして、訴権は存在する。したがって、日本の司法当局にそれを訴える権利は有するけれども、しかしそれは日本国内法上によって処理をされていく。そして、中国のことについても同じように理解しております。  今、先生が御指摘になりました、ことしの三月二十三日、中国銭其シン外相記者会見で述べられておりますように、戦争賠償の問題については、中国政府は一九七二年の日中共同声明の中で明確に表明を行っており、かかる立場には変化はないということは、従来中国政府が言っておりますように、戦争賠償の問題は中国政府としては放棄した。そして、これは我々は、個人の訴権に対して外交保護権を行使しないというものであろうと理解しております。
  31. 翫正敏

    翫正敏君 次に行きますが、外交保護権を行使しないということ、これが現在の中国の立場であることはよく理解をしておりますが、条約上できないということとは同じではないわけで、その点について先ほどから日中共同声明における「国民」という文言が入っていない問題について質問をしましたが、回答が平行線でありますので、さらに機会がありましたらまたお尋ねしたいと思います。  ところで、さきにも触れました民間賠償請求のこの件に関して、中国外相のコメントを報ずる三月二十四日の東京新聞がございました。これに対して日本外務省の方の見解も同時に載せられておりましたが、それによると、外務省は、従来どおり政府間の賠償問題は決着済みであると、こう今おっしゃったようなことを述べた上で、「中国民間の賠償請求中国政府に対して行われるべきだ」と、こういうふうに述べたと新聞には書かれておりますが、こういうふうにおっしゃったのかどうか、その点をお答えいただきたいと思いますが、私は、もし外務省がこのようなことを新聞に発表したということならばゆゆしき問題だと、破廉恥と言ってもいいんじゃないかと思うんですけれども、ちょっと事実関係を確かめさせていただきます。  もし、中国に対しては折に触れて経済協力や経済援助をいろいろしてきた、こういうことを理由にしておられるのであれば、例えば日韓請求権経済協力協定のような取り決め、これに類するものがいつどのような形で中国に対してなされたのか。そして、この国民請求権という問題について中国との間で議論をして、そういうことについてどんな形で同意が得られたのか。そういうことを明確にしていただきたいと思いますし、そのような戦後処理というものも明確になされていないままに、中国の方が一方的にこの請求権を放棄したのだからということをいいことにして、中国人の民間人の要求中国政府に請求しなさいというようなことは、これは先ほど恥知らずという言い方をしましたが、ちょっと別の言い方をしますと恩知らずであると、こういうふうに言わなきゃならないんじゃないかと思うんです。そういう意味で、経済協力というようなことではこの条約上の問題は解決しないのではないか、このように思います。  それで、他の国の例をちょっと挙げておきますが、昨年八月、戦争末期にフィリピンで起こりました日本軍によるパミンタハン大虐殺から奇跡的に生き残って、そのときに銃剣で胸を五カ所刺された、後ろの方も刺されておられましたが、そのせいで戦後もぜんそくがひどくて仕事に満足につけなかったというガルシアさんという方が戦後の補償を求めて日本に来られましたとき、私が外務省の方に同行をいたしました。そのとき訴えをされるガルシアさんに対して外務省の担当の方は、名前が今問題なのではないので申しませんが、その担当の方は、日本とフィリピンの間の賠償問題は、サンフランシスコ条約に基づいて一九五六年日比賠償協定が結ばれ、日本の方から千九百八十億円お支払いをして解決いたしましたと、こういうふうに答えたわけです。  そのときのやりとり、私まざまざと今も覚えておりますけれども、ガルシアさんは裸になられて自分の傷跡を見せられまして、そしてその上で、でも私は一ペソももらっておりませんと、こういうふうに言われて、涙ながらに自分の被害というものをお訴えになった姿が忘れられないわけであります。  現在、日本のODAというものが大きな金額になっております。しかし、そのことがかえって軍事政権を支えることになってしまっているという批判があったり、また、人権抑圧や環境破壊につながっているのではないかという指摘などもされているところでありまして、ODAの問題もやはり出発点は戦争賠償というような問題の解決に始まっていると聞いておりますけれども、こういうことも順次今後取り上げていきたいとは思っておりますけれども、こういう一つの例として、今のフィリピンの方のお訴えを取り上げさせていただきました。  そこで、ちょっと質問したいわけでありますが、日中共同声明中国政府が放棄をしました戦争賠償とは一体どれくらいの額であるのか、これを政府としてどう考えておられるのか、お聞かせください。  また、いかなる意味においても放棄されない個々人、民間損害額というもの、これは外交保護権の行使は中国政府はしないわけでございますけれども、どういうふうに解決するかしないかの問題は別として、とにかく金額として算出するとどれくらいのものになると日本政府は考えておられるのか、お答えをいただきたい。もちろん被害額というもの、人命というようなものに関する被害額を金銭で計算するなどということは、これはできないことであるという、こういう前提にもちろん立っているつもりでございますけれども、あえてそれを換算するとどれくらいになるのか。中国全人代の方に提出されているものによりますと、一国家間のものが千二百億ドルだと、米ドルでですね、こういうことになっております。民間のものが千八百億ドルであると、こういう建議がなされております。  この金額について、官房長官は大き過ぎると思われるか、少な過ぎると思われるか、このくらいだと思われるか、御感想を述べていただきたい。全然わからないと言うならば、ぜひ綿密な調査をされるべきではないかと、そういうことが日中友好の今後ということについて大事なのではないかと、そう思います。  それで、もしサンフランシスコ条約の第二十一条「中国は、第十条及び第十四条(a)2の利益を受ける権利を有し」に基づいて、サンフランシスコ条約の締結国でない中国も、日本が旧満洲などに残した在外資産などを処分する権利を得たのであるから、国民請求権についてもサンフランシスコ条約に従って解決されたと、こういうふうな見解ではないと思いますが、もしそういう見解であるとするならば、まずサンフランシスコ条約の枠組みの中で、一九五二年四月に締結された中華民国政府、現在の台湾政府との日華平和条約それから日中共同声明、この関係も明らかにしていかなければならないと思います。日華平和条約においては、請求権問題はまた別の「特別取極の主題とする」と、こういうことになっていたわけですが、その特別取り決めがなされることがないままに、一九七二年九月、日中共同声明において日本の方から中華人民共和国政府中国の唯一合法政府であるという承認をしたことによりまして、日華平和条約は失効したということであります。確かに日華平和条約には、「この条約及びこれを補足する文書に別段の定がある場合を除く外、日本国と中華民国との間に戦争状態の存在の結果として生じた問題は、サン・フランシスコ条約の相当規定に従って解決するものとする。」と、こういうふうに述べられております。  これによって、日華平和条約はサンフランシスコ条約を準用することで中国の対日請求権というものが放棄されたと、こういう見方も学者の中にはあるようでありますけれども、それはやはり基本的に正しい理解ではなくて、条約自体に請求権問題は別の取り決めをするということが決められておって、それがそういうふうにできなかったというわけでありますから、この問題は別の定めがあってしかるべき場合と、こういう場合に当たるのだと思います。  さらに、日華平和条約と同時に交わされた交換公文では、「この条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある」と、こうされております。中国大陸全体が中華民国政府、現台湾政府の支配下に今後入るというようなことはとても考えられないことでございますので、日華平和条約の効力はそもそも大陸には及ぶものではないと、こう理解すべきだと思います。  そういう日華条約と日中共同声明との関係について考えた上で申し上げたいのですが、そもそも日中共同声明は、他の協定などのようにサンフランシスコ条約の枠組みの中でなされたものと、こういうふうに考えるべきではないと思います。それは、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し一ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」とありますように、日中共同声明歴史的起源はむしろ直接ポツダム宣言に立ち返っているものであると思います。  そのポツダム宣言の第八項を見ますと、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」、こう述べられておりまして、そのカイ呈り言の関連箇所を若干引用してみますと、右同盟国、米国、中国、英国の目的は、日本国より一九一四年の第一次世界大戦の開始以後において日本国が奪取し、または占領したる太平洋における一切の島嶼を剥奪すること並びに満洲、台湾及び瀞湖島のごとき日本国中国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還することにあり、日本国は、また暴力及びどん欲により日本国が略取したる他の一切の地域より駆逐せらるべしと、このように書かれております。これはもちろん国家の領土について言っているものでありますけれども、今日の私たちにおいては、かつての日本侵略によって中国から奪い取ったものを中国人に返し、そして殺し尽くし、焼き尽くし、奪い尽くした、こういう中国人の命と物に対する補償というものは今後も全力を挙げて取り組んでいかなければならないと、こう思います。  具体的に、三月二十四日の東京新聞に掲載されました外務省の見解の真意を外務省からお答えいただきますとともに、今ほど私の方から少しく問題提起をしましたことについて官房長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  32. 梶原清

    委員長梶原清君) まず、外務省から答弁を命じます。
  33. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 最初に、先生の方から、三月二十四日の東京新聞に外務省関係者のコメントとして、民間人が賠償請求しているが、それは中国政府にあるとか、こういうことを言ったというようなことの報道があったが事実がと、こういう御質問がございました。  先生の御指摘を踏まえまして、我々も調べてみたのですが、確かにかかる報道がなされていることは確認いたしましたが、外務省関係者のいかなる具体的発言を踏まえた報道であるのかというのは残念ながら承知しておりません。私ども知っている限りでは、こういうことを言っている者はおらないと……
  34. 翫正敏

    翫正敏君 ないと。
  35. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) はい、ございません。  それから、法律的な問題で、日本国に対する中国賠償請求のもとは何かという御質問があったと思いますが、これに対する、日本国に対する賠償請求に係る問題については、政府の立場は、サンフランシスコ平和条約の第十四条並びに日華平和条約の十一条及びその議定書1の(b)により処理済みであるというのが法律的に見た場合の我々の立場でございます。
  36. 翫正敏

    翫正敏君 わかりました。  官房長官の方から。
  37. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 先ほど翫先生が、いろんな条約等があっても、個人我が国政府に対していろいろ賠償請求する権利はあるだろうという趣旨のことをおっしやられました。条約等解釈等につきましては先ほど述べたとおりでございます。個人の訴権はあるものと思っておりますけれども、それに対する外交保護権は放棄されたものと日中両国政府は理解しておるわけでございます。  ただ、その際に、それぞれ一人一人のアジアの国の国民の皆さんに、日本はどう考えるかと、そして今日本は豊かになったじゃないかというような問題でございますけれども、その点につきまして、我々は、先ほど申したように過去の一時期私たちの国の行為によって耐えがたい苦しみと悲しみを与えたことについて深い反省と遺憾の意を心の中に持ち、そしてそういう過去の過ちを先生が御指摘されておりますように、直視して、その歴史を正しく伝えていかなければならない、そういう心構えを持つべきではないかなと思っております。  そして、確かに一人一人の方に対する賠償の問題はいろんな議論がありますけれども、しかし、相手国政府も我々と合意したところでございます。そういう問題のあることはわかりますけれども、しかし、それは国と国との間でお互いに放棄し、そして今後我々は将来に向けて新しい関係を築き、そして日本はその国の民生安定、発展のために日本のでき得る限りの貢献をしていく、国全体に貢献していって、その国の民生の安定と福祉の向上に御協力申し上げるという形で戦後考えてきたものだし、また、今後も我々は考えていかなければならないのではないかなと思っております。
  38. 翫正敏

    翫正敏君 あと十五分残っていますけれども、自民党の方の出席もないようですので、しばらくちょっと留保させてください。速記とめてください。
  39. 梶原清

    委員長梶原清君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  40. 梶原清

    委員長梶原清君) 速記を起こして。
  41. 翫正敏

    翫正敏君 外務省の新聞コメントはあれはそういう発言はしてない、こういうふうに確認させていただきましたけれども、官房長官の方から、私が再三質問して、中国の方からの請求権の放棄という問題、それから「国民」という言葉が入っていないということの条約上の問題を含めて重みを尋ねておりますが、全然前向きなお答えがないので非常に残念に思います。これまで二十年の日中関係というものを今後さらに強固なものにしていくというような立場から考えましても、そして中国の国内において民間の賠償要求というのは高まってきているというこの実情を考えてみましても、やはり政府は従来のそういうかたくなな態度というもの、こういう恩義を否定するような態度はよくないと思います。中国の方は、暴に報いるに徳をもってすという、これは現在の政権の幹部の言葉ではないかもしれませんが、そういうことで対日請求権をすべて放棄したわけであります。  そういうことの持つ重みを十分受けとめていくというのは、私ども日本国会議員一人一人に課された課題でもあり、そしてそれは日本政府の重大な責務であると私は痛感するものであります。  ところで、先ほどから触れております全人代提出をされました建議、法案などにおきましては、日本侵略による中国民間損害賠償額千八百億ドル、こう算出されております。この額についてどう思うかという質問をしましたけれども、何らのそれについての具体的なお答えもありませんでした。もう一度聞きますから、ちょっと考えておいてください。  約二十四兆円、こう現在の円に換算するとなるようでありますが、この内訳として、この建議書を見ますと五つのことが並べられております。海部前首相あての請願書の内容と同じということなので、この請願書の内容に即してこれを読み上げてみますと、一としまして、中国市民を罪なく虐殺したことに対して負うべき賠償、殺害あるいは負傷させた中国市民、負傷者、捕虜等については関係資料、統計によれば約一千万人である。二番、中国人を強制的に苦役に服させたことに対して負うべき賠償、関係資料、統計によれば約三百万人である。三番、有毒、化学及び細菌武器を使用して中国市民に重大な支障をもたらしたことに対して負うべき賠償。四番、中国の公的及び私的財産を略奪、破壊したことに対して負うべき賠償。五番、中国においてアヘン侵略を行って、中国市民に重大な損失を与えたことに対して負うべき賠償、こういう五点が挙げられております。  ここで、この五点について一つ一つ詳しく確かめていかなければならないわけでありますけれども、本日の質問だけではとても時間も足りませんので、今後に順次譲っていきたいと思います。  この二番にあります、中国人強制連行の問題についてだけ、それも中国東北部、いわゆる旧満洲地区などに中国大陸において強制連行、強制労働させられた例は今回はこれも除きまして、いろいろ除くのばかりでありますが除きまして、そして日本の国に強制連行された方が約四万人、この問題に限って一、二ちょっと例を挙げて確かめてみたいと思います。  なお、そのほかの南京大虐殺の問題、七三一部隊の細菌兵器人体実験などの問題、毒ガス兵器の遺棄問題などについてもいろいろ資料を取り寄せて調べておりますので、今後順次取り上げていきたい、このように思っておるところでありますが、花岡事件について質問します。  終戦直後の一九四五年、昭和二十年六月三十日、秋田県大館市の郊外で起きた事件である。日本政府は、戦争が激化する中で国内の労働力を補うためにおよそ百万人の朝鮮の人たちを強制連行し、さらに一九四二年、昭和十七年、東条内閣が閣議決定によっておよそ四万人の中国人を日本国内の百三十五の事業所に強制連行したのである。花岡事件はこのような中で、日本官憲や企業側の極度の拷問と虐待に反抗して、およそ七百人の中国人が蜂起した事件であります。そしてその結果四百十八人が死亡しました。彼らは、当時残虐行為を行った日本の企業に対して合計四十九億円の賠償と謝罪要求しています。具体的には謝罪要求というものは、この企業が行いましたので一応済んだかと思いますが、あと一人当たり五百万円の補償というものを要求し、また大館市と中国の北京市に、こういうことが二度と起きないようにという意味の記念館を建ててくれという三点の要求をしておるわけであります。  これは、具体的には現在企業に対して中国民間団体がしておられるわけですから、これはこれでどういうふうに解決するかはそこの問題だと思いますけれども、我が国政府はこれにどういう関係があるのかどうかということをお聞きいたします。昭和十七年十一月二十七日、「華人労務者内地移入に関する件」を閣議決定した、これは事実ですか。
  42. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 昭和十七年十一月二十七日、「華人労務者内地移入に関する件」という閣議決定がございました。
  43. 翫正敏

    翫正敏君 そうしますと、この強制連行の問題、中国人の強制連行、日本国への四万人の方だけの問題に絞って今取り上げているんですが、これについて現在中国民間人たち団体をつくって、グループをつくって当該企業と交渉しておるというところでありますが、このことについて政府は傍観者であって、その様子を見ておればよいということでは済まないのではないか、日本政府責任がある、こう私は思うんですけれども、どういうお考えでしょうか。官房長官お述べください。
  44. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) いわゆる昭和十七年の十一月二十七日の閣議決定のことでございますが、当時の国内の労働力不足を背景に中国人労働者の移入を目的として行われたものと思っております。この風議決定によれば、中国人労働者の移入は契約に基づいて行われることになっておりますが、当時の詳しい事情については今明らかではございません。この閣議決定を見てみますと、契約は二年であって、その後「二年経過後遺当の時期において希望により一時帰国せしむること」とか、それから「華人労務者の食事は米食とせず華人労務者の通常食を給するものとしこれが食糧の手当に付ては内地において特別の措置を講ずること」とか、「華人の慣習に急激なる変化を来さざる如く特に留意すること」ということなどがいろいろ書かれておりまして、この閣議決定そのものは移入されてきます中国人労務者の人に対してかなり配慮をした閣議決定になっております。  しかし、当時どのような状況で、事実上どうであったかということにつきましては、終戦直前の話でございますので、なかなか詳しい事情はわかりません。ただし、当時の状況から、日本に来られた多くの中国人労務者が不幸な状態に陥ったことは事実であろうと思っております。  また、花岡事件につきましては、今申しましたように、かなり不幸な状況にあったということにつきましては、政府として甚だ遺憾なことだと思っておりますが、いわゆる請求権等の問題につきましては、先ほど言いましたような政府の立場でございます。また、この事件については民間の訴訟事件として提起されておりますので、その流れを見ていきたいと思っております。
  45. 翫正敏

    翫正敏君 この事件だけではなくて、中国人強制連行というものは、極秘と判こを押してあります昭和十七年の閣議決定に基づいて行われたものである以上、政府責任があるということをお認めになるかどうかが一点ですね。  それからもう一点は、先ほど、民間賠償請求額は中国全人代の方に建議されておりますのでは千八百億ドルである、現在の日本円にして約二十四兆円であるということになっていますが、この額についてどういうふうに受けとめておられるか、これについて二点お答えください。
  46. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 当時のいわゆる華人労務者、中国人労務者の移入に関しての状況がどういう事実関係であったかというのは、今具体的に明らかでございません。それが強制的に移動させられたんではないかという今の御指摘、そして、政府がそれについてどういう責任があるのかという御質問でございましたけれども、当時のこと、事実関係が明確でありませんので、なかなかコメントしにくいところだろうと思います。  それから、いわゆる千八百億米ドルの訴訟の金額の高をどう思うかということでございますが、この童増という方が建議されております書き物、建議を見ましても、根拠がなかなかわかりにくい、そういうものは示されていないし、その数字についてはあえてコメントは申し上げないことにいたしたいと思います。
  47. 翫正敏

    翫正敏君 民間賠償と国家間の賠償を分けておられるというところに非常に厳密さがあると私は思うんですが、この建議を見まして。そういうものに基づいてさまざまな民間団体要求や訴訟などが起こされている、こういうことだと思うので、そういうふうに分けているということの厳密さを、金額はさっきあなたお答えになったようによくわからないらしいが、そういうようなことをどう思われるかをお答えいただきたい。  それから、強制連行の問題については、当時の事実関係が明確でないので今のところ明確な答弁はできないと、こう理解をしましたが、その場合、当然政府として事実関係をさらに詳細に調査をして責任が明らかであるということが明確になればその立場に立って対処すると、こう理解してよろしいか、二点をもう一度お伺いして、これで終わります。
  48. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 戦争賠償責任と、それから中国人民と財産に対する賠償請求と、これを分けていることが条約上、法律上どういうことになるのか、ちょっときょう条約の専門の人間が来ておりませんので、いずれまたその際には申し上げさせていただきたいと思います。  それから、先ほどの中国人労務者の強制移入という、連行とおっしゃいましたけれども、この問題につきましては、事実関係は明確でございませんが、いずれにしましても、個人の国に対する請求権というものは一九七二年の日中共同声明によって放棄されたものだと、それに対する外交保護権は放棄されたものだと思っております。
  49. 翫正敏

    翫正敏君 とにかく調査してください。事実関係を調査してください。これいいですか。先ほどは事実関係が明確でないということだったから、事実関係だけは調査してください。事実関係も調査しないということじゃないでしょう。
  50. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) いずれにしましても、当時の状況というのは終戦直前の混乱期でございますので、当時の詳しい事情についてはなかなか明らかにするのに困難なところがあると思います。     ―――――――――――――
  51. 梶原清

    委員長梶原清君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、大渕絹子君が委員辞任され、その補欠として喜岡淳君が選任されました。     ―――――――――――――
  52. 小川仁一

    ○小川仁一君 官房長官、お願いします。  天皇の訪中問題についてですが、昨日行われた江沢民氏と宮澤総理の会談で、日中国交回復二十周年という歴史を踏まえながら、今後の日本中国歴史関係をますます強めていくために、双方の基本的な立場でお話し合いをされたと思います。しかし、我が国中国友好関係を発展させるに当たって、どうしても克服しなければならない問題は、日本中国に対して、あるいは中国国民に対してはっきりと戦争責任を認め、謝罪することです。天皇が政治的行為を行うことは厳に慎まなければならないと思いますが、しかし、かつての忌まわしい侵略戦争について、天皇がかの地を訪問されて率直に中国国民謝罪をすることが、両国間の、あるいは両国国民間の信頼関係を緊密にすることだと思います。  中国政府が何度となく天皇訪中を求めていることについて、政府はこれまで積極的に応じようとしてこられなかったと考えております。しかし、天皇訪中の受諾を発表する大変いい機会だと思いますので、結論を先送りしたという感じのあることは大変残念でございます。内閣として、天皇訪中についてどのように対処されるか、この点だけお伺いしておきたいと思います。
  53. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) このたび江沢民書記が来日され、昨日、宮澤総理との間で日中首脳会談が行われました。その際に、江沢民書記より、日中国交樹立二十周年に当たることしてございますので、ぜひ天皇、皇后両陛下が御訪中されることを希望し、また御招待申し上げるという重ねての、改めての発言がございました。これに対して総理大臣の方から、真剣に検討いたしますというお答えをいたしましたが、現在政府としては、この天皇、皇后両陛下の御訪中問題を真剣に検討いたしている状況でございます。
  54. 小川仁一

    ○小川仁一君 もう一点、江沢民書記は、きのうの総理との会談に当たって、総理がPKO法案への理解を求めたのに対して、敏感な問題であり、慎重な態度で対応を願いたいと発言されておるようです。さらに、日本は復興、再建の面で活躍すべきとも言われているようでございます。政府提出しているPKO法案に、アジア諸国が大変危惧を抱いていることは御承知のとおりです。かつての戦争で大変な被害を与えたアジアの最大の国である中国を代表する江沢民氏のこの発言を、政府としてどのように受けとめておられるか、官房長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  55. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 江沢民書記は、国連の平和維持活動に日本が参加することにつき、この点につきましては慎重に対応していただきたいという発言がありまして、それは一友人として申し上げるという表現でございました。  我々はPKO法案を今御提案申し上げておりますけれども、これはあくまでも国連のフレームワークの中で、国連の活動の一環として行う平和維持活動であって、それは軍事的な行為をするものではありませんし、御承知のように、国連の平和維持活動それ自身ノーベル平和賞を授与されたという平和のための活動でございますので、この点についての理解を今後ともアジア諸国に求めてまいりたいと思いますし、また、幾つかの国の指導者の方からはその理解が得られている。だんだん変化してきているのではないかと思っております。
  56. 小川仁一

    ○小川仁一君 私は、お隣の国のこの国を代表する江沢民氏の、友人としての言い方というのは、慎重に願いたいという言い方は、非常にある意味ではきつい物の言い方だと思ったんです。政府代表として、外交問題について物を言っているんじゃないですよ。友人としてと、こう言っておりますことを大事にお考え願いたいと思います。これでこの問題を終わります。  次に移りますが、国会図書館長にお聞きいたします。  国立国会図書館法第二十四条に基づく、内閣委員会関係総務庁、総理府本府、防衛庁などの出版物の納本のおおよその状況をお知らせ願いたい。
  57. 加藤木理勝

    国立国会図書館長加藤木理勝君) 国及び地方公共団体の機関が出版物を発行しましたときには、国立国会図書館に、その出版物の発行部数に応じまして一定部数を納入しなければならないことになっていることは二十四条の定めるところでございます。  それならば、どの程度のものが入っているかといいますと、図書におきましては、国の機関から、これは平成三年度の数字でございますが、四千百四十一、地方公共団体から六千九百二十一、国公立大学から五百十一、合わせて一万一千五百八十一部入っております。それから、逐次刊行物は、国が五千三百十九種、地方公共団体が一万二千六百五十九種、合計して一万七千九百七十八種となっております。  このように、国の各機関、地方公共団体から御協力をいただいているということを感謝している次第でございます。
  58. 小川仁一

    ○小川仁一君 答弁するとき、質問の趣旨を聞いてから御答弁願いたいと思います。  私が申し上げましたのは、総務庁、総理府本府、防衛庁などこの委員会にかかわる部分の省庁の納本の比率を聞いているんです。出版物に対してどの程度出しているかという状況をお聞きしたので、地方公共団体は聞いてないんです。ひとつこれから答弁はそういうふうにはっきりとお答え願いたいと思います。
  59. 加藤木理勝

    国立国会図書館長加藤木理勝君) どうも失礼しました。この比率は今ちょっと数字を持ち合わせておりません。
  60. 小川仁一

    ○小川仁一君 一〇〇%でないということだけは事実だと思います。  図書館法二十四条は、同法第二条の目的達成のために、国の諸機関による出版物と、国の諸機関のための出版物の納本義務を定めていますが、ここに言う「国の諸機関」と「出版物」というものについての解釈をお知らせ願いたいと思います。
  61. 加藤木理勝

    国立国会図書館長加藤木理勝君) 国の機関と申しますのは、国家行政組織法に基づきまして規定してあります国の機関、その機関、施設、そういうようなものを一切引っくるめて国の機関というように解釈をいたして協力をお願いしている次第でございます。  それから、発行と申しますのはこれは非常に難しい概念だと思いますが、公にされているものということでございまして……
  62. 小川仁一

    ○小川仁一君 出版物と聞いています。
  63. 加藤木理勝

    国立国会図書館長加藤木理勝君) これは出版物と申しますと、そこで出しているもの、一般の資料、図書として発行しているものを考えております。したがって、この出版、発行は難しい概念でございまして、相当部数発行されているもの、そして広く頒布されているもの、これを出版物の発行と考えております。  それから、出版物としましては、機密に属するもの、それから書式、ひな形というようなものを除くということが法律で書いてございます。
  64. 小川仁一

    ○小川仁一君 前半の部分の出版物の解釈についてはちょっと了解できませんが、討論はいたしません。  国会図書館は官庁出版物の収集について非常に苦労しておられるようですが、内閣としてどのような認識をしておられ、また納本について各省庁にどのような指導をしておられますか、官房長官
  65. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 内閣としましても、国会図書館法に規定する納本について適切に処理するように累次指導いたしておりますし、また、昭和六十三年でございますか、国会でも御討議いただいたときもございまして、格段の配慮をするように各省庁に通達いたしておりますが、その点につきましては広報室長の方から答弁させていただきます。
  66. 樋口武文

    政府委員(樋口武文君) 政府施策につきまして、国民の理解と協力を得るために政府の刊行物の普及は重要なものと考えておりまして、このために、政府におきましては昭和三十一年に閣議了解によりまして政府刊行物普及協議会を設けて、関係省庁と協議しつつ、政府刊行物の普及に努めているところでございます。  国立国会図書館法二十四条に基づく国の発行する出版物の納本につきましては、政府刊行物の普及を図る観点からも肝要なことと考えられますので、昭和六十三年の五月三十一日付で政府刊行物普及協議会議長名をもって各省庁の同協議会委員あてに格段の御配慮をお願いしていますとともに、昨年の九月四日にも各省庁の広報担当者で構成します連絡会議におきまして、国会図書館の担当官にも御出席をいただいて納本の要請を行っているところでございます。  なお、今後とも一層この趣旨の徹底を図ってまいりたいと思っております。
  67. 小川仁一

    ○小川仁一君 よく指導をして納本させるようにお願いをしておきます。  各省庁はそれぞれかなりの予算を使って委託研究をされております。しかし、総務庁は一部納本されているようですが、それ以外の、というのはこの内閣委員会にかかわる省庁という意味ですが、の省庁は委託研究の報告書を納本しておりません。この理由をそれぞれ総務庁、総理府本府、防衛庁、お答え願いたいと思います。
  68. 八木俊道

    政府委員(八木俊道君) 総務庁の官房長でございます。  ただいま委員御指摘の委託研究に関する国会図書館への納本でございます。二十四条の規定に従いまして、相当程度の部数が作成され、かつ部外に対して広く提供されている種類の資料につきましては納入をさせていただいている次第でございます。その他の資料、すなわち極めて少数の部数しかつくっていない資料につきましては内部資料として扱っている次第でございます。
  69. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) 防衛庁の発行する出版物については、従来から国立国会図書館法二十四条の趣旨にのっとり国会図書館に納本しておりますが、委託研究にかかわる報告書につきまして。は、これは部内の業務の参考に資するということで、少数作成しております部内資料でございまして、二十四条に規定する出版物には当たらないと解されることから、納本をしておらないところでございます。
  70. 樋口武文

    政府委員(樋口武文君) 私ども広報室で出しております定期刊行物等につきましては、すべて納本をいたしております。
  71. 小川仁一

    ○小川仁一君 各省庁は、調査をいたしますと、議員がお願いずれは貸し出してくれる資料もあります。あるいは一部納本している資料もあります。一切見せてくれない省庁もあるわけでございます。これはどういうわけなんですかね。議員がそういう資料を政策立案の考え方の基礎としてお願いずれは貸していただけるのですか。これも省庁ごとにお答え願いたいと思います。
  72. 八木俊道

    政府委員(八木俊道君) 残部数を考慮いたしながら、極力対応いたしたいと考えているところでございます。
  73. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) 先ほども申し上げましたように、部数が少数でございますので、御要求があればそれについては先生御指摘のとおり貸し出しをしておりますが、そのうち特に技術関係の委託調査をしたのものにつきましては、中には性能にわたるようなものも入っておりまして、そういうものはお貸し出しを遠慮させていただいているわけでございますけれども、技術関係の資料でありましても、例えば技術の一般的動向というようなものでありますれば、お貸しをしておるという状況でございます。
  74. 樋口武文

    政府委員(樋口武文君) 私どももごく極めて少数の部数でございますので提出はできませんが、ごらんいただくことは可能でございます。
  75. 小川仁一

    ○小川仁一君 予算を使って、これは国民の税金ですからね、政策立案に必要な委託研究をしておられると思います。立法府にいる国会議員がやはり同じように一つの政策をつくろうとするときに、当然その国会議員に貸していただくことは構いませんね。貸さないという理由のある省庁があったらお話しを願いたいと思います、絶対貸せないという省庁があったら。
  76. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) ただいまお答えしましたように、私どもの方で委託研究している報告書の中には二種類ございまして、一般的な調査、いわゆる各国の動向でありますとか技術の動向でありますとか、そういうようなものについては御要求があれば、その少数部数の中からお貸しをするということはできるわけでございますが、特定の装備品等に直接関係する、例えば技術研究本部がみずからの装備品の開発等のために必要な委託研究調査をすることがございますが、こういうものにつきましては、このうちの中に具体的な性能というようなものにかかわる部分も多く含まれておりますので、従来から提出を差し控えさせていただいておるわけでございます。
  77. 小川仁一

    ○小川仁一君 では、一応貸していただけると、こういう前提で考えてよろしゅうございますね。防衛庁からは一部お借りをいたしております。ただ、絶対貸してくれない、そういう省庁もあるんですよ、委託研究で。内閣官房は部内資料ということでお断りをいただきました。総理本府は、業務資料で隠すわけではないがお見せするほどでもない、こういうふうな御答弁をいただいておりますが、もう少しこういう調査というのはオープンにしていいと思うんです。部内資料は国会図書館にも納本しない、私たちにもお見せいただけない、これは非常に大きな問題だと思うんです。仮に百歩譲って、一定の期間が経過した後については当然国会図書館なり国立公文書館に納本されるという方式はお考えになりませんか、各省庁。
  78. 八木俊道

    政府委員(八木俊道君) 国会図書館法の規定によりまして、極力納本をさせていただきたいと考えているところでございます。
  79. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) 国会図書館法の規定に従って出したいと思いますが、性能にかかわるようなものについて、どのくらいの時点だったら解除されるものなのかということもわかりませんので、それは資料によるかと思いますけれども、規定に従って対応したいと考えております。
  80. 樋口武文

    政府委員(樋口武文君) 広報室につきましては、図書館法で定められました頒布される出版物につきましては当然納本をいたしているところでございます。
  81. 小川仁一

    ○小川仁一君 何か各省庁てんでんばらばらなようでございますが、納本できない、しないとすれば、せっかくお金をかけて専門家が研究されてでき上がった研究物がそのまま廃棄されることになってしまいます、もったいない話です。そんなものならおやめになった方がいい。改めるべきは、国の予算を使った調査研究、こういうものについては国会図書館法に従ってこれは納入すべきだ、こう申し上げておきます。仮に今すぐということがなかったとしても、一定の期間、それぞれ物によってあるいは省庁によって差があると思いますが、経過した後、国会図書館に納本すべきだということを申し上げますが、このことについて御異論のある省庁の御見解をお伺いします。
  82. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) 特に御異論があるわけではございませんが、検討させていただきたいと思います。
  83. 樋口武文

    政府委員(樋口武文君) 国会図書館法に従って納本いたしてまいりたいと考えております。
  84. 小川仁一

    ○小川仁一君 国会図書館長、今言ったような状態ですから、遠慮しないで、一定の時期がたったらあるいは直ちにでもいいです、その省庁の都合によって資料を集めてください。あなた方が資料を集めることが非常に大きな国民に対するサービスであり義務だということをお忘れなくお願いをしておきます。  特段異論がありませんから次へ行きます。  防衛庁からの納本の状況についてちょっとお聞きしますが、私の方でも資料は既にいただいておりますが、国会図書館長、どうですか。
  85. 加藤木理勝

    国立国会図書館長加藤木理勝君) 図書では「日本の防衛」等三点、それから逐次刊行物では「防衛庁公報」等十八タイトル、これらが国立国会図書館法二十四条に基づいて納入されております。
  86. 小川仁一

    ○小川仁一君 防衛庁からいただいた資料にあります出版物、それは自衛隊の各学校が発刊している出版物もございますね。これは国会図書館に納本されていますか。例えば、海自の第一術科学校の「研究季報」などはどうでしょうか。
  87. 井門寛

    ○国立国会図書館参事(井門寛君) 先生御指摘の各学校の出版物というのは納入されておりません。ただ、防衛大学校それから防衛医科大学校の出版物、これにつきましては先ほど館長が報告した中に含まれております。
  88. 小川仁一

    ○小川仁一君 なぜ納入してないんですか。納本しない理由を明確にしていただきたい。  また、納本するしないの判断はどの部局でなさるのですか。どうぞ御答弁ください。
  89. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) お尋ねの資料につきましては、陸海空の各学校で印刷、作成している印刷物でございますが、それぞれの学校の内部資料でございます。また、この資料は、装備の性能、操法、運用、部隊の運用等、自衛隊の能力及び行動要領等にかかわる事項を含むものでございますので、国立国会図書館法第二十四条一項に基づき国立国会図書館に納入すべきものとは考えておりません。
  90. 小川仁一

    ○小川仁一君 学校で出している本、ある意味では教材に属しますね。こういうふうなものが館法二十四条一項による出版物に該当しない、こんなふうな言い方はちょっと当たらないと思いますよ。  防衛庁は、何でもみんな秘密だ、機密だといって隠してしまいますが、私はそういうものでも一定期間たったらむしろ国会図書館に置かれる、そして後人のためにといいますか、後のためにお役に立てることも必要かと思いますので、すぐにという言い方でさっきから申しているんじゃないんです。一定期間置いたら出してもいいんじゃないかということを含めて申し上げているのですが、それでも出せないというのはどういうわけですか。
  91. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) ケース・バイ・ケースで判断すべきものだとは思いますけれども、一般論として申しますと、ただいま先生お尋ねの資料につきましては、繰り返しで恐縮でございますけれども、学校の部内資料でございますし、また装備の性能、操法、運用、部隊の運用等、自衛隊の能力及び行動要領等にかかわる事項を含んでおりますので、納入することが一般論としてはできない資料であるということを御理解いただきたいと存じます。
  92. 小川仁一

    ○小川仁一君 十年たったら作戦も秘密もなくなるんです、五年たっても大体そうです、今の日進月歩の技術の時代ではね。そういうものはやっぱり考えた方がいいと思いますし、それから議員がお願いずれは、例えば私たちが防衛政策なら防衛政策をつくろうというときにお願いずれは貸し出してはいただけますか、議員に対して。
  93. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) ただいまお尋ねの資料につきましては、大変残念でございますが、貸し出しも御遠慮させていただきたいと存じます。
  94. 小川仁一

    ○小川仁一君 これは納得しませんが、また改めて討論することにいたします。  話を変えますが、防衛庁の防衛局が出している「海外国防資料」、昭和五十六年までは納本されているんです、国会図書館に。今でも私たちが要求すれば見せていただけますが、そういうものをなぜ納本しないんですが。
  95. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 御指摘の「海外国防資料」といいますのは、部内の執務の参考ということで、防衛庁の監修のもとに財団法人ラヂオプレスというところに作成を委託しているものでございます。そういうような内部の資料ということから、これを納本していないということでございますが、ただいま御指摘にもございましたように三十二年から五十六年までのものは国立国会図書館に貯蔵されているところでございます。五十七年度以降の分については貯蔵されていない。その辺の経緯がどういうことであったのかというのは、調べてみましたけれども、ちょっとよく現段階ではわかりません。これを調べさせていただきたいと思っているところでございますが、いずれにしても現段階で納本していないのは内部参考資料という整理になっているところでございます。
  96. 小川仁一

    ○小川仁一君 いろいろな理屈をつけて納本してないようですがね、ちゃんと前は出してあるんです。何か特別なことでもない限りこの慣習をやめるということも妙だと思いましたのでお聞きしているんです。私らには貸していただけますね。特別秘密でもなかったらお考えおきいただいたらどうですかね。  それで、次は「朋友」というのがございますね。これは航空自衛隊幹部学校幹部会発行ですか、これはやっぱり途中までというよりも、六十二年の三月までは納本していますが、その後納本がないんです。どういうわけでしょう。
  97. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 「朋友」につきましては、防衛庁が作成した資料ではございませんのでコメントする立場にないわけでございますが、念のためにちょっと聞いてみましたところ、先生がおっしゃいましたような事実があったということがはっきりしない、こういうことを申しておりました。これはコメントする立場にはありませんけれども、たまたま聞いてみたらそういうふうなことを申しておりました。
  98. 小川仁一

    ○小川仁一君 というのは、発行されてない、納本されていないということですか、今まで。どうですか。国会図書館の方と両方から、納本されておるかされていないか、はっきりしてください。
  99. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 納本したことがあるかどうかはっきりしない、こういうことでございます。
  100. 小川仁一

    ○小川仁一君 図書館の方どうですか。今すぐわかりませんか。わからなければいいです。
  101. 井門寛

    ○国立国会図書館参事(井門寛君) 今すぐわかりませんので、後ほどお答えをさせていただきます。
  102. 小川仁一

    ○小川仁一君 それから、「陸戦研究」というのがありますね。これも六十二年までは納本されているように私は見ているんですが、今なぜおやめになるのですか。それとも議員が要求すれば見せていただけますか。納本しない理由を明らかにしてください。
  103. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) これも防衛庁が作成した資料ではございませんので、本来コメントする立場にないんでございますけれども、念のため聞いてみました。そういたしましたら、やはり納本したことがあるかどうかはっきりしない、こういう返事でございました。
  104. 小川仁一

    ○小川仁一君 関係のない団体ね。航空自衛隊の幹部学校の幹部会が発行しているのに防衛庁と関係ないという理由を明らかにしていただきたい。「陸戦研究」で言いますと、例えばこの「陸戦研究」を出しているところでは、私たちにも見せてくれない教範や野外令等の研究あるいは解説書をも出版している。こんなことで関係がないなんていうことを言えるわけないじゃないですか。私たちにさえ教範は見せてくれない。ところがその法人には教範出して、それの研究までやらせている。わからないで通そうというわけにはいきません、わからなければわかるまで待ちます。
  105. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) ただいまお尋ねの陸戦学会及び航空自衛隊幹部学校幹部会、これはいずれも防衛庁の組織ではございませんで、私的なサークルでございます。現職の幹部自衛官あるいはその関係の現職の幹部自衛官及び幹部自衛官であった者、そういった者が私的につくっておるサークルである、こういうことでございます。
  106. 小川仁一

    ○小川仁一君 知らないで物を言うつもりはないと思いますが、防衛庁と関係のない団体とこうおっしゃいますが、会員は幹部自衛隊員ですね。歴代の会長は陸自幹部学校の校長であります。各部隊の隊長が会員を勧誘しております。そういうものが「陸戦研究」をお出しになっている。これと関係ないと言うんですか。ここちょっと常識ありませんね。これはもう宮下さん、御答弁を願いたいと思います。
  107. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 陸戦学会の性格につきましては、今、小池局長の言われたのは形式的な意味で防衛庁の機関でないということを申し上げておるわけでございまして、もちろんこの陸戦学会は自衛隊のOB等が会長になっております。今御指摘のように、幹部学校長をやったような方あるいはそれ以外の方、幹部であった方が。会長になっておりまして、防衛問題について研究をするということでございますから、当然、防衛庁の防衛政策その他関係があることは実態的にはそのとおりでございますが、形式的にはこれは防衛庁の機関ではなくて、言うならば、学術研究団体とでも申しましょうか、そういうものであると思っております。  つまり、各省庁におきましても、私も大蔵省の出身でございますけれども、予算編成その地やっておりますと、それをやはり一つの法人といいますか法人に高める場合もありますが、そういったものの研究を、外郭団体としてそれを行い、かつ必要な刊行物を発行することもございます。これは各省庁がある程度はやっていることではないかと推測されますけれども、防衛庁におきましてもそのような扱いとしてやっておりますから、内容的にはもちろん防衛政策その他に関係のあることは御指摘のとおりでございます。
  108. 小川仁一

    ○小川仁一君 任意団体なら、国立国会図書館でお買い求めになっておそろえを願いたい。これは可能なはずです。  それから、防衛庁がかかわってそれを防衛庁以外に出さないというのであれば、これはもう任意団体のものですから、そんなことを防衛庁が言う理由がないと思いますから、その後お話し合いをしていただいて、というのは、私たちもそういうものをやっぱり政策やいろんな問題を考えるとき必要とするからお願いをしているのですから、はっきりさせておいてください。後日またこの経過についてお聞きをいたします。  官房長官にお願いしますが、こういうふうに幾つか国の機関もありますし、国の機関の一つの外郭団体的なものもあったりするので、国会図書館というものの性格からいってやっぱりいろんな資料をそろえておく、それは後世に対する責任でもありますよ。そういう観点から責任を持ってひとつこれから御指導を願いたい、こう申し上げて、あえて御見解はいただきません。  次の問題に移ります。今度は週休二日制です。  四月三日に公務員の週休二日制が閣議決定されました。五月一日からの実施であります。公務員大変喜んでおります。五月実施に苦労され九総務庁長官に改めて敬意を表します。御苦労さまでございました。  その実施につきまして、文部省においては、一学期は土曜日は授業をする、二学期は九月から月一回の学校五日制という形をとる、そしてその休暇をまとめ取りするという方針のように聞いておりますが、事実ですか。
  109. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) 答弁の前にちょっとおわびを申し上げますが、教育助成局長、本委員会に出席するため努力をいたしましたけれども、当院の文教委員会でちょうど委嘱審査が行われておりましてそれに出席中でございますので、お許しいただきたいと思います。  まず、学校五日制の問題でございますが、学校五日制につきましては、協力者会議を文部省内に設けて検討してまいりまして、本年その報告をいただきまして、その報告を踏まえまして文部省におきましては省議を開きまして、九月から月一回の学校五日制を実施する、こういうことにいたしたところでございます。そして他方、公務員の週四十時間制、完全週休二日制の問題があるわけでございますが、これについては先生の御指摘のとおり、五月から国家公務員について週四十時間制が実施されるわけでございます。  そうなった場合におきまして、国公立学校の教職員の勤務時間につきましては、九月以降につきましては月一回学校五日の日がございまして、その土曜日は勤務を要しない日になるわけでございますが、それ以外の土曜日につきましては、生徒が出てまいりますので、教員を休みにするわけにはいかないところでございます。  これにつきましては、これまでも教員につきましては長期休業期間中にまとめ取りを実施するということで、年間を通しまして週四十二時間制の勤務時間にいたしておるところでございまして、週四十時間制になった場合におきましても、この九月からの学校五日制月一回と合わせましてこのまとめ取りをふやしまして、ほかの公務員と同様、週四十時間制を実施するというふうに考えているところでございます。
  110. 小川仁一

    ○小川仁一君 まとめてとる日数は何日を予定しておられますか。
  111. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) ことしは九月から学校五日制月一回になり、かつ週四十時間制も五月からでございますが、これが平年度化して四月から月一回の学校五日制あるいは週四十時間制、こういう平年度化した状態で考えますと、まとめ取りの日数は年間二十日程度というふうに考えております。
  112. 小川仁一

    ○小川仁一君 夏、名あるいは春とありますけれども、これは生徒は来ないけれども学校は休みじゃないんです、おわかりのとおり。  今度の春休みなんといったって、机の入れかえから新しい名簿の作成からいろんな仕事があるんですよ。二十日間どれる日数がないんですよ。計算してみたんです、私は。この日は林間学校に何日行く、この目は夏季休暇あるいは水泳監視、夏はこういうことです。冬になってきますと、年末三日と年始三日休みが入って、土曜日、日曜日があるんです。そうすると三日あるかないかなんですよ、休日または土日でない日が。  だから、あなた、とろうといったって、一年が三百六十五日しかないんですからね、どう頑張ったって。そのほかに有給休暇のまとめ取りもそこへ指導しておられる、これじゃ文部省いかに頑張ってもとりにくいと思うので、ここでお願いしておきたいことは、改めて教育課程の改正か、定数の増員をしなければできないということだけは事実でございますから、文部省には真剣にお取り組み願いたい、これだけお願いしておきます。  続いて、国家で経営している企業、国営企業と略して言いますが、週休二日制、週四十時間制の実施をしているわけでございますが、現在の郵政、印刷、造幣、林野について、どういう状況になっているかお知らせを願いたいと思います。
  113. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) 郵政事業における完全週休二日制の準備状況でございます。あわせて現在の状況も御説明申し上げたいと思います。  郵政事業の勤務時間短縮の現状でございますけれども、貯金・保険関係職員につきましては、平成元年二月の貯金・保険窓口業務の休止等を契機といたしまして平成三年一月から完全週休二日制を試行いたしております。  郵便関係職員につきましては四週六休制を基本としているわけでございますけれども、交代制の職場における完全週休二日制の導入に向けまして要員配置の検討に資するため、実験的に四週七休制を試行いたしております。  未実施でございます郵便部門につきましては、郵便物が増加する中でサービスを確保し、しかも定員も抑制しながら完全週休二日制を実施するという非常に困難な課題があるわけでございますけれども、作業時間の平準化、それから夜間労働のあり方の見直し、それからさまざまな業務の部外委託等を推進する中で、何としても平成四年度内には完全週休二日制が実施できるよう努力していく所存でございます。
  114. 和田恒夫

    説明員(和田恒夫君) 造幣局におきましては、一般職の職員給与等に関する法律の適用を受けます国家公務員と同様、平成四年五月一日から土曜日の閉庁、週四十時間勤務制を円滑に導入することとしており、このために必要な業務の効率化、交代制勤務の警備部門における週四十時間勤務制の試行等、所要の準備を進めているところでございます。
  115. 中山寅男

    説明員(中山寅男君) 印刷局といたしましても、非現業の国家公務員と同様、完全週休二日制、交代制勤務職員の週四十時間勤務制を平成四年五月一日から実施することといたしておりまして、このため業務のより一層の効率化、応援体制の強化並びに勤務体制の見直しなど所要の準備を進めておるところでございます。
  116. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 国有林野事業におきましても、週休二日制による週四十時間の労働時間制につきまして、国有林野事業の実態に配慮しながら、給与法適用の国家公務員と同時期の実施に向けて現在検討を進めておるところでございます。
  117. 小川仁一

    ○小川仁一君 印刷、造幣、林野は五月一日から実施がほぼ確定的のようでございますが、郵政だけがおくれる。これは、郵政という事業を知らないわけでありませんから、どうこうと今ここで論評することは避けますけれども、やっぱりここにも問題点として残っているのは定数問題だと思うんです。したがって、今後郵政としては、定数問題あるいはその他の効率化を図って、他の国営企業よりおくれてやるということはやっぱり問題だと思いますので、最大の御努力を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  118. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) 先ほども申し上げましたが、郵政省といたしましても完全週休二日制の実施に向けまして最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  119. 小川仁一

    ○小川仁一君 今お聞きしたように、国営の企業の中には非常にアンバランスがあります。政府としても、このアンバランスは大変頭の痛いところだと思いますが、これは官房長官、ひとつさっき申し上げた幾つかの条件を含めながら、この企業、特に郵政、文部、ちょっと問題がありそうなので積極的な御指導をお願いしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  120. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 完全週休二日制の導入の問題につきましては、総務庁長官とともに私もこの委員会で昨年夏以来何度も御要望を受けました。宮澤内閣としては生活大国という言葉をスローガンにいたしておりまして、その中の一つの重要な要因として、国民が従来の生産中心から生活中心という観点に切りかえることが肝要であります。そのためには、いろんな条件がありますが、時間的な余裕というものも一つの重要な要素であると考えておりまして、時短の問題もございますし、また、この完全週休二日制の問題もその一つの大きな要素であろうと思っておりました。  ただ、前のこの委員会でも申しましたように、先憂後楽といいますか、公務員が先に率先してそれを実施していいのであろうかと、大企業の場合にはかなり実施されておりますけれども、地方、中小企業の場合には反発があるのではないかというような問題もございました。いろいろ検討を加えてきて、またいろいろな試行を行ってきたわけでございますが、人事院の方も、その点につきましてはまず国家公務員が踏み切るときに来たのではないかというような勧告もございましたので、このたび導入に踏み切った次第でございます。  この法案自体の成立も、両院において日切れ法案並みの扱いをして促進していただきましたこともあって、その後、いつからこの二日制を実施するかにつきましては政府部内でいろいろ議論がございました。総務庁長官はできるだけ早く実施してほしいということを政府部内で強く主張されてこられましたし、いろいろな御意見もございましたけれども、最終的には人事院の平成四年度の早い時期にという勧告もございましたので、やるならば五月からやろうということを総理大臣が決心され指示をされました。五月から実施といいますのは、具体的に言いますと、五月二日が土曜日でございますので、この二、三、四、五と、四日間続くという現実の変化にもなりますし、そういうところで踏み切ったわけでございます。  しかし、それを実施する場合に現業職員の皆さん、それからその他政府関係機関の皆さんに実施する際に、それぞれの事務の特殊性や事業の実態等がございますので、それは一概に機械的にはいかない部分があると思います。  また、今後の各省庁における労使交渉を踏まえて適切に対処していただかなければいかぬと思いますけれども、内閣としましては、実現できるならばできるだけ前向きにやってもらいたいと思っております。ただ、これも繰り返しますが、それぞれの事業所、それから職場等の事務の特殊性と事業の実態を無視するわけにもいきませんので、それぞれの関係省庁で努力をしていただきたい、こう思っております。
  121. 小川仁一

    ○小川仁一君 では、ぜひお願いをしておきます。  時間もなくなりましたが、防衛予算にちょっと入っていきたいと思います。きょうの審議のために実は各省庁から名目明細書をいただいております。  そこで、総理府所管の名目明細書を見ながら、特に防衛庁にお尋ねをいたします。  武器車両等購入費の予算額六千九十三億一千百七十四万八千円。このうち武器購入費は二千七百億四千八百六十三万四千円となっておりますが、この中で平成四年度国庫債務負担行為限度額の内訳について一、二お聞きしておきます。  戦車、装甲戦闘車、百五十五ミリりゅう弾砲というものの型式はどういうものですか、お答え願いたいと思います。
  122. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 戦車につきましては九〇式戦車でございます。装甲戦闘車は八九式でございます。百五十五ミリりゅう弾砲はそのままでございます。
  123. 小川仁一

    ○小川仁一君 次は、地対空誘導弾ペトリオットについての数量が書いてありませんが、幾つ購入するのですか、また、なぜ数量を記入していないのですか。これも機密ですか。
  124. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 名目明細の中には数量として記入してございませんが、防衛庁が本予算委員会にも提出させていただいております「予算一(案)の大要」の中では、ペトリオット〇・二五個群プラス一セットということで御説明を差し上げているところでございます。
  125. 小川仁一

    ○小川仁一君 そうしますと、今度は「等の購入」と、こう書いてある。この「等の購入」というのは中身があるんですか。
  126. 宝珠山昇

    政府委員(宝珠山昇君) 名目明細の中では代表的なものについて説明をさせていただいております。これの内訳としましては、防衛庁が出しております「予算一案)の大要」の中で詳細に記述しているところでございます。例示的に申し上げますと、八九式小銃、それから十二・七ミリ重機関銃、八七式対戦車誘導弾発射装置等々十数項目のものがございますが、これは差し上げております「予算(案)の大要」の中では七ページから八ページにかけて記述してあるものでございます。
  127. 小川仁一

    ○小川仁一君 去年の予算委員会で、名目明細のあり方について御質問を申し上げ、当時の橋本大臣から「できるだけわかりやすい形に今後とも努力」をいたしたい、こういう御答弁がありました。残念ながら、去年のとおりの同じ書き方でございます。いろいろ御工夫はなさったかと思いますけれども、改善の余地が見られないという関係でこのような質問をしたわけでございます。  大蔵省、防衛庁にお願いいたしますが、今までも予算書や名目明細書、財政法二十八条による予算参考書の書き方についていろいろ指摘をされておりますので、やっぱり国民によく知らせるということが防衛の前提でもありましょうから、次の予算からはぜひいろいろ御配慮を願いたい、こう申し上げて、私の質問を終わります。  なお、あとの部分、いっぱい残っておりますけれども、これは一般質問でやらせていただきます。
  128. 梶原清

    委員長梶原清君) 午後一時二十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十分開会
  129. 梶原清

    委員長梶原清君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成四年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議国際平和協力本部宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  130. 三石久江

    ○三石久江君 私は一昨年、平成二年五月二十四日の内閣委員会で皇室経済の内廷費の定額に関して質問をいたしました。  皇室経済法によりますと、独立の生計を営む親王は定額相当分、内親王に対しては定額の二分の一に、また皇族費の定額は、妃殿下は殿下の半額になっていることの理由をお尋ねいたしましたところ、男子皇族には皇位継承資格があり、皇族としての活動の量、範囲があるという判断が加わっている、皇位継承資格は一般的な基本的な人権には含まれない、これは憲法あるいは皇室典範におきましてその皇位継承資格を限定しているわけで、そのように差別を設けたとしてもこれが男女差別になるということにはならないと考えている、概略このような御答弁であったと記憶しております。  私は、この御答弁は皇室を一般社会とは別のものであるとの前提に立ったもので、やはり男女差別だなと今でも思っております。ですから、この条文は、ここのところだけは何とか変えていただきたいと強く要望するものです。  そこで、これらの根源になっている皇室典範についてもう一度質問させていただきます。  まず初めに、宮内庁にお尋ねいたします。  明治の旧皇室典範と現行の皇室典範で顕著に変更された二、三の問題についてお尋ねしますが、皇位継承資格者から非嫡出者が除かれたことに関する点でありますが、昔から伝統的に認められ、旧皇室典範でも継承された非嫡出者の皇位継承を現行の皇室典範で認めなかった理由は何でしょうか、お尋ねいたします。
  131. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) ただいま御質問の中にありましたように、旧皇室典範におきましては非嫡出子についても皇位継承がある、こういうふうになっておったわけですが、現在の皇室典範ではそういうことになっておりません。嫡出子のみに限っておるわけでございます。  これは、皇室典範制定当時いろいろ論議がなされたようでありますけれども、確かに皇位の永続性というような観点から考えるならば嫡出子以外にもそういうものを認めるというのも一つの考え方であろうと思いますけれども、やはり時代の趨勢というようなものの中で道徳的判断というものが漸次変わってきた、こういうことを考慮いたしまして、我が国におきます社会一般の道義的判断に照らして、天皇または皇族の資格としては嫡出子に限る、こういうふうに考えるのが適当であるというふうに判断をされたというふうに承知をいたしております。
  132. 三石久江

    ○三石久江君 昭和二十一年十二月七日の衆議院皇室典範案委員会会議録には、古い伝統に従って、嫡出者以外にも皇位継承の範囲を認めることは、一応の理由はありますが、しかし人間の間においても、道義的判断というものが漸次変遷してきた現在の段階では、嫡出者としからざる者との間に相当大きな変化を加えるのは当然のことで、正当な結婚の間に生まれた者が特に正しき血筋の皇位を継承すべき人であると考えられることは細かい理屈を超越して当然のことであるといわれながら、ただいまの御答弁は、道義に関する考え方が変化してきたという理由で、皇位百二十五代のうち大正天皇まで四十一代、実に三分の一は伝統としての非嫡出者の皇位継承があったにもかかわらず、現代の道義的判断から考えて除外されたというわけですね。  そこで、次に天皇の生前退位の問題について伺います。  日本の昔からの制度では、譲位されて上皇とか法皇になられることがしばしば起こっていますが、これを認めなくしたのはどうしてでしょうか、お尋ねいたします。
  133. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) これも現在の皇室典範制定当時いろいろな考え方があったようでございますけれども、その制定当時、退位を認めない方がいいではないか、こういうことで、制度づくりをしたときの考え方といたしましては三つほど大きな理由があるわけでございます。  一つは、退位ということを認めますと、これは日本歴史上いろいろなことがあったわけでございますが、例えば上皇とか法皇というような存在が出てまいりましていろいろな弊害を生ずるおそれがあるということが第一点。  それから第二点目は、必ずしも天皇の自由意思に基づかない退位の強制というようなことが場合によったらあり得る可能性があるということ。  それから第三点目は、天皇が恣意的に退位をなさるというのも、象徴たる天皇、現在の象徴天皇、こういう立場から考えまして、そういう恣意的な退位というものはいかがなものであろうかということが考えられるということ、これが第三番目の点。こういったことなどが挙げられておりまして、天皇の地位を安定させることが望ましいという見地から、退位の制度は認めないということにざれたというふうに承知をいたしております。  以上でございます。
  134. 三石久江

    ○三石久江君 ただいまの御答弁は、天皇の地位が日本国民の象徴であるという新憲法の趣旨にそぐわない、また生前退位にはいろいろな弊害があるので、伝統として生前退位はあったけれども、現代の国民意識から認めるわけにはいかないということだと思うんです。  この生前退位は、横田耕一氏の法律時報によりますと、百十三人の天皇のうち六十三人、実に五二・五%なのです。立派に伝統的制度ですが、現代の国民意識のもとでは認められないということのようです。このように皇位継承に関して伝統を重んじるとはいいながら、時代の道徳的判断あるいは趨勢に応じて、あるいは道徳的にも受け入れられない伝統は、現行の皇室典範では外されてきたわけです。  さて、ここで宮内庁に、皇位継承資格者を男系男子に限るという理由、その理由はどういうところにあるのでしょうか、お尋ねいたします。
  135. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 現在の憲法第二条には、「皇位は、世襲のものであって、」「皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」と、こういう規定があるわけでございますが、この規定をさらに具体化いたしまして、皇室典範第一条では、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」と、こういうふうに定めておるわけでございます。この憲法第二条の「世襲」という考え方の中には、もちろん世襲ということについてはいろいろな考え方があり得ると思いますけれども、皇位が世襲ということは、日本の伝統的なものを背景にいたしまして考えていくべきであると、こういうことから、我が国古来の伝統というものは男系男子が皇位を継承すると、こういうことが長い伝統となっておりますので、そういう考え方に立って男系男子が皇位を継承すると、こういう定めになっておるわけでございます。
  136. 三石久江

    ○三石久江君 ただいまの御答弁は、過去百二十数代にわたって一つの例外もなく男系を尊重してきている、この伝統に従ったということだと思います。  それでは、宮内庁にここで一点確認しておきたいのですが、憲法第二条は、皇位継承については「世襲」とだけ規定してあり、男子に限るとは規定しておりませんから、憲法の条文上は女子の継承を妨げておりませんね。いかがでしょうか。
  137. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 憲法解釈でございますので、私どもというよりはむしろ法制局において正確な御答弁をなさるのがしかるべきかと思いますけれども、これは、宮内庁といいますか。私の立場での考え方というものを申し上げますと、世襲という概念はいろいろな概念というものがあると思います。必ずしも日本ばかりではなくて、世襲制をとっておる他の国の王制というようなものもあるわけでございます。ですから、一概に世襲という言葉の一般論としてはこういうものであるという定義づけは難しいと思います。少なくとも日本国憲法の中において「世襲」というふうに規定をしておるところは、これは皇室の長い伝統を踏まえた上での世襲という考え方になるんではなかろうか。そうしますと、皇位の世襲という考え方から言えば、男系男子ということがずっと基本的な考え方として今までなされてきたわけでございますから、考え方としては、そういうものをバックにした規定であろうというふうに私は考えておるわけでございます。  ただし、これは法律の公的見解を申し上げる立場ではございませんので、もし必要があれば法制局の方へお尋ねをいただきたいと思います。
  138. 三石久江

    ○三石久江君 次に、宮内庁にお伺いいたしますが、憲法の条文上問題ないとすれば、皇室典範の改正により女子の継承が可能ということになると思いますが、これを憲法並びに他の法律の方から見ますと、皇室典範第一条で、皇位の継承を男系の男子に限定した理由としては古来からの伝統ということですが、皇室典範第十七条の摂政や、国事行為の臨時代行に関する法律に基づく臨時代行には女子の就任も認められております。特に摂政という制度は古くからあるようですが、これに女子の就任を認められた理由はやはり伝統なのでしょうか。お尋ねします。
  139. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 摂政制度というのは、先生も御承知のように古くからございます。皇太子摂政とかあるいは皇族摂政と言われたような時代、それから少し下りましては大臣摂政ということで、藤原氏の特定の方がなったというようなそういう時代もあるわけでございますが、女性の摂政というのは歴史的にはどなたもございません。  それで、女子の摂政が認められるようになりましたのは、これはいわゆる皇太子摂政といいますか、皇族が摂政となるべき方はまず皇太子あるいは皇太孫であり、次いで親王、王というような少なくとも形になりますが、皇太子あるいは皇太孫が原則という基本的な考え方に立っているわけでございますけれども、仮に皇太子あるいは皇太孫が極めてまた御幼少というようなことであると、これはそこだけに限定をしますと困った事態が出てくる可能性があります。そこで、摂政につきましてはもう少し幅広く摂政となり得る資格を広げておこう、こういう考え方のもとに女子皇族についても旧皇室典範以来そういう制度を認める、こういうふうになったというふうに承知をいたしております。
  140. 三石久江

    ○三石久江君 ただいまの御答弁は皇族女子は摂政にはいまだかつてなられた方はない。けれども、この制度はあるということですね。  次に、官房長官にお伺いしますけれども、憲法九十九条には天皇や公務員の憲法尊重擁護義務が定められています。憲法とはそもそも国家権力の行使に制約を加え、国民の権利を守ろうとするものであります。この九十九条の尊重擁護義務とは、憲法を遵守し、これに違反せず、さらにその目的の実現に努力し、憲法を破壊する行為に対し抵抗し、憲法の実質を確保することと解釈されると思います。憲法第十四条の男女平等についても尊重擁護の義務は当然あるわけですから、この義務のある方の皇位継承についても、その精神を酌んで、女子にも継承をお認めになってはいかがですか、お尋ねいたします。
  141. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) ただいま宮内庁から御答弁申し上げましたように、憲法第二条は、「皇位は、世襲のものであって、」「皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」と書いてございますけれども、この規定は皇統に属する男系の男子が皇位を継承するという伝統を背景として制定されたものでございますので、同条は、皇位継承者を男系の男子に限るという制度を許容しているものと私たちも考えております。したがって、皇族女子の皇位継承を認めない現在の皇室典範第一条の規定は、法のもとの平等を保障した憲法第十四条に違反するものではないというふうに考えております。
  142. 三石久江

    ○三石久江君 ただいまの御答弁では、皇位継承が男系男子に限られてきたのは世襲であって、古来からの伝統であるというような御説明だったと思いますが、いろいろおっしゃいましたけれども、ここで皇位継承資格を男系男子に限るという伝統について考えてみますと、文化人類学で無文字社会、すなわち未開社会においては、十九世紀の進化論学者のモルガンが書きました「古代社会」という本によりますと、四四%が父系制で、母系制は一五%でしかありません。他の文化人類学の研究によりましても父系制をとるものが圧倒的に多く、いわゆる未開社会ほど男尊女卑の風習が強いようです。その原因にはいろいろ解釈はありますが、最も普遍的な認識は次のような理由であろうと私は思います。  それは女性には妊娠と保育、育児の期間が長くなりますから、家にいなければならない。またそのために家庭内の家事労働、よく言われます専業主婦を余儀なくされたわけです。男性はその間に狩猟、農耕、闘争と性別役割分担ができ上がり、勢い家族内の権威も社会的地位も高くなり、男尊女卑の制度ができ上がってきたものと考えられます。なお、生物学的知識のない古代から近世に至るまで、子が父親に似るということから男性の性が女性のおなかに宿ると考えられ、昔世間で言われた女性の腹は借り物でしかなく、男性の魂までもが宿って子供が産まれるものと思われたのではないでしょうか。現代の人類学あるいは遺伝学から考えますと、全く誤った孝之方に基礎を置いたものであって、血統とか遺伝質が男性のみによって伝わるということを信ずる人は恐らく現代では皆無であろうと思います。血統は父と母からそれぞれ等しく子に伝わるもので、父系、母系いずれであってもその子孫に差はないのです。皇位継承が過去においては例外なく男系によって維持されたとしても、現在の社会通念からは何の根拠も持たない男尊女卑の名残なのです。  したがって、皇室典範制定時において女性の天皇を認めない理由として、皇族女子に皇族でない配偶者が入夫として存在し、その間に子孫がある場合、皇統が皇族にあらざる配偶者の家系に移ったと観念されるという懸念、言いかえますと、女性が天皇になることによってその子孫が皇族でない配偶者の家系に移るということは現代では考えられないことではないでしょうか。皇族でない男性が天皇の配偶者になることと、皇族でない女性が皇后になることと、そして子孫を残されることは全く同じであると考えます。出自が男系であろうと女系であろうと、現代では、学問的にも社会通念からも全く同等であって、男系のみが家系を継承するとの考えは古来の女性差別の最たるもので、その思想が皇室に残されることは、女性としてのみでなく国民としてもまことに耐えがたいことなのです。  官房長官宮内庁長官の御見解を賜りたいと思います。
  143. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 憲法に定められている皇位といいますか天皇の地位というものは、私どもはやはり国民の長い間の感情といいますか情緒といいますか、そういうものにも深く根づいておる制度である、こういうふうに思っております。  憲法の中に「世襲」ということを書いてある、認めておる。これは、日本の長い歴史的な伝統というものを受けながら、こういう中でどのような規定を設けるべきかということで憲法の定めができたというふうに考えておるわけでございます。  ただいま先生からいろいろお話がありました文化人類学的な考え方とか、あるいは生理学的な問題だとか、こういう点については、確かに一般論として考えれば、男子あるいは女子という関係についてそのおっしゃったようなことはあり得るかと思います。私はそうした方面の専門家ではありませんけれども、一般論としてはそういうお考えというのは十分あろうと思うわけでございます。  ただ、皇位というものをどういう形で認めていくか、こういう問題になりますと、我々現代社会というものは古くからの日本の文化、あるいは生活様式、いろんな感情、そういうようなものをずっと引き継いで現在があるわけでございますから、そういう意味で、憲法も世襲ということを認めたそういう中には、そういうものが織り込まれているというふうに考えるわけでございます。そうしますと、やはり皇室の長い伝統、皇位継承の長い伝統というものは男系男子ということでずっときたわけでございますので、これを今のように学問的な見地から一気に変えるべきであるというような考え方というのはいかがなものであろうかというふうに私は考えておるわけでございます。
  144. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) ただいま宮内庁の次長から御答弁申し上げましたように、やはり憲法自体に皇位というものを世襲であると明記いたしてありますところからもわかりますように、皇位というものはいわゆる憲法十四条の特則をなすものだと考えております。  それは、象徴としての天皇陛下及び皇室というものが、日本古来の歴史的な伝統に基づいての基礎の上に引き継がれてきたものでございますし、それを新憲法の中に引き継いできているということでございますので、確かにいろいろな御指摘はあろうかと思いますけれども、日本歴史の流れとして男系男子の継承ということで憲法は許しているし、また、それが今の日本の流れに沿ったものでないだろうかなというふうに思っております。  これは、一般の国民の権利義務に関する男女の平等というものとは違う論点で考えられるべきことではないかなと思っております。
  145. 三石久江

    ○三石久江君 そこで、宮内庁にお尋ねいたします。  昭和二十一年の第九十一帝国議会において皇室典範を審議されました委員会において、女帝に関し当時の金森国務大臣は、もう少し学問的にも歴史的にも研究の必要がある、女帝を認めることによって非常に考えなければならない幾多の場面が附属して起こってくる、新憲法施行の日、五月三日までにぜひとも完備しなければならない立場から言うと、これは将来の問題に残して、万遺漏なき制度を立てることが我々の行くべき道であると言われまして、さらに十分な研究をいたしまして、正しい結論が出ますれば、それに従うべきことは言うまでもありませんと言い切っておられます。この答弁に見合うような十分な研究はその後行われたのでしょうか、いかがでしょうか。行われましたのでしたら、経過並びに結果をお示しいただきたいのです。宮内庁にお願いします。
  146. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 今、御質問にありましたような国会での憲法制定当時の御議論があったことは十分承知をいたしております。  この問題については、宮内庁としても研究をしていくという考え方はあるわけでございますが、ただ、現在特にその女帝を考えなければならない状況にはないというふうに考えておりますので、これは将来の問題といたしまして今後とも研究を続けてまいりたいというふうに思っております。  どんな研究をしているかということにつきましては、例えば外国における王制というものについてどんなことがあるかとか、あるいはこういう憲法問題について検討されました憲法調査会でどんな御議論があったかというようなことを勉強しておるという状況でございまして、繰り返すようでございますが、現在直ちにこの問題をしっかり検討してはっきりさせなければならないという状況にはないというふうに考えております。
  147. 三石久江

    ○三石久江君 それでは、その研究は少しはしているということで、どこで研究なさっているのか、憲法調査会という声は出ましたけれども、いつどこでどういう研究をなさったか、少しお知らせいただきたいのですが。
  148. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 宮内庁として研究をしておるというか勉強をしておるというか、むしろ勉強しているということの方がよろしいかと思いますが、先ほど申し上げましたように、例えば外国の王制については在外公館等を通じまして、そういう王制のある国における皇位継承権というものはどうなっているかというような勉強をいたしておるわけでございます。
  149. 三石久江

    ○三石久江君 そこで、官房長官にお尋ねいたします。  今までの経過では、現行の皇室典範制定時の帝国議会の状況を思いますと、国会議員として女性がおりませんでした。選挙権もありませんでした。また、現在ほど女性と男性の社会的地位には考慮が払われていなかったと思います。  当時の審議過程を詳細に検討しますと、憲法第二条によって皇位は世襲であると決められており、これは古来からの伝統を受け継ぐもので、その伝統には男系男子という意味が含まれる。また、皇位継承資格者は国民の一部であり、その一部における不平等は男女同権の新憲法に反しないという答弁に対しまして、余り強く反対する意見もなく、質疑は大変多くなされましたが、議論が深められた様子がありません。また、その後も国会の各種委員会で先輩議員の質問が行われていますが、一貫してこのような伝統説で経過しております。国民一般は戦前までの家制度における男系男子の長い伝統を日本国憲法において男女平等に変えてきたわけでありますし、天皇一の地位というものも新憲法により国民の総意に基づくものに変わったわけですから、伝統を持ち出すのはいかがなものでしょうか。  官房長官も、「時の動き 政府の窓」四月一日号の「巻頭言」でおっしゃっておられます。「女性が男性とともに創り上げる社会を目指して」には、「個人の尊重と男女平等を基本原理としてうたった日本国憲法」と言っておられます。女性が選挙権を獲得してから四十五年以上たち、国民は国際婦人年を初めとして女性の地位向上に関する各種施策を経験し、家庭的にも社会的にも男女両性の地位関係は目覚ましい変革を遂げてきております。また、法的にも男女平等になっております。社会通念としての男女同権もかなり成熟してきていると思います。  ところが、国民の象徴である天皇家におきましては、明らかな男女差別とも言うべき皇位継承並びに宮家継承は男系男子に限るという皇室典範があります。憲法に反するとか反しないの論議以前に、前に例として挙げましたように、伝統というものは、時代の流れに沿って、また科学的根拠の上で改善されるべきものであり、国民の象徴である天皇家、皇室が率先して男女同権を取り入れるべきではありませんか。  私は、何が何でも女性を天皇にと言っているのではありません。制度として、女性を皇位継承あるいは宮家継承の資格者として認めてほしいと言っているのでして、これを認めてこそ日本の男女差別撤廃が本物になるものと思いますが、いかがですか官房長官、お尋ねいたします。
  150. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 先生がこの皇位継承問題と男女の平等の原則をお取り上げになったのは、それは日本社会全体における男女平等をより進めるためのお考えに基づいておっしゃっておられるのだろうと思います。また、今先生はそう御指摘になられました。  私たちは、男女がともにその主張を持ち、個性を発揮し、社会の中で生き生きと働いていく社会がやはり望ましいものだと思っておりますし、宮澤内閣の施政方針演説の中におきましてその点を書いておるつもりでございます。従来、女性問題を論ずるときに、ともすれば行政の中では、障害者と女性問題とか子供と女性問題と、こういうふうに一緒にされてきました。しかし私たちは、そういう観点ではなく、その女性を一つの項目として別記いたしまして、施政方針演説の中には女性という項目で特記し、そして障害者、高齢者の問題というようなものとはセパレートした形で書き上げたつもりでございます。その基本は、やはり女性は社会の中でしっかりとした個性を持って生き生きとして活動してくれることによって初めて社会は生き生きとするし、また、女性の人間としての魅力というものも発揮されるのではないかと思うからでございます。  そういう考えで、私たちはこれから男女平等の問題に取り組んでまいりたいと思っておりますけれども、しかしこの皇室の問題は、やはり日本の伝統に基づいた、そういった一般の男女の権利関係の問題とは別個に論じられるべきものではないか、またそういう伝統に基づいた統合の象徴というものが日本に私たちはあるべきではないか、またそれが国民の気持ちなのではないか。外国の比較的歴史の新しい国の指導者の方々が我が国に訪れられてそして皇室の皆様にお会いになるときに、長い伝統に基づいた皇室があり、そこの天皇陛下、皇后陛下にお会いし宮家の皆様にお会いになるときに、ある意味日本歴史に敬意を払ってくださるのも、そういった伝統を私たちが守っているからではないかという気がいたします。  したがって、この皇室の問題と日本社会の男女平等の問題は別個に論じられてもいいのではないか、それがまた憲法が予想しているところなのではないかというふうに思っております。
  151. 三石久江

    ○三石久江君 ただいまの御答弁を聞いておりますと、男系男子は日本の伝統であるから、象徴であるから変える必要はないとおっしゃっているんだと思うんですね、間違いでしたら一言お願いします。
  152. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 一般の日本社会で今後どういう家族関係になるかということは、これから国民の意識が決めていくものであろうと思っておりますし、その中では男女平等というものが私たちの目指す社会だろうと思っております。しかし日本の伝統を、歴史を象徴する皇室というものが男系の男子で継承されるということとそれが相矛盾するものなのであろうか、そこは別途に並列に考えてもいいことなのではないかと申し上げておるのでございます。
  153. 三石久江

    ○三石久江君 私には、今の御答弁は、やはり男系男子は日本のよき伝統とおっしゃっているように聞こえますけれども、女性の天皇に関する今までの委員会質疑を見ましても、よく言われた言葉は、差し迫った状況でないから研究をしていないというような、はっきり言って差し迫った状況とは何なんだろうかなと。万が一にも起こらないとは思いますけれども、皇位継承をされる男系男子がおられないということではないかなと思うのです。もしもそのような状況になったときに研究とか検討が果たしてできるものだろうか、この点は篤とお考えいただきたいと思います。  さらに、皇位継承資格が皇室の御都合で変更されるということは国民感情としてはいかがなものでしょうか。男系男子を古来の伝統として固執してこられて、皇室の御都合で伝統をあっさり破棄できるものでしょうか。私はむしろ差し迫った状況が国民の側にあると言いたいんです。国民の側は、男女平等の憲法の精神が定着してきているにもかかわらず、皇位継承が男系男子に限られるということが、るる申し上げたように学問的にも男女平等の社会通念上からも受け入れられないことであり、国民の象徴である天皇御一家に明らかな男女差別のしきたりが伝統として残されるようでは、我が国の男女同権とか、すべての分野における差別撤廃は完成しないのではないでしょうか。  憲法学者の中でも違憲の疑いがあるという現在、再度になりますが、審議会とか委員会を設置して本格的な研究に入るべきではないでしょうか、そう思っております。官房長官宮内庁長官、御答弁お願いいたします。
  154. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 憲法十四条の定める男女平等の原則、こういうものが日本の一般社会の中にもっと定着をしていくということは私も望ましいことであろうというふうに思っております。ただ、これまでもたびたび御答弁を申し上げておりますように、日本の最高法規である憲法の第二条は「皇位は、世襲のもの」ということで、皇室典範で具体的に男系男子、これまでの長い日本歴史、伝統に基づいて男系男子が皇位を継承していくという考え方をとっておるというふうに理解しておりまして、これは先ほども官房長官がお答えいたしましたとおり、憲法二条は憲法十四条に抵触するものではないと、こういうふうに政府としては考えておるわけでございます。  そこで、女子にも皇位継承権を認めるということを研究したらどうかと、こういうことでございますが、これはただいまの状況からいきまして憲法がそういうふうに定めておる、予想をしておる、それを今この段階で男女平等というような考え方から変えていかなきゃならぬという差し迫った状況にあるかどうかと、こういうふうに言われた場合に、そういう状況にはないというふうにこれまでも申し上げてきたわけでございますし、私は今そういう状況にはないというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、今御指摘がありました、余り差し迫ってからでは何か恣意的に変えるんではないかというようなことになりますよという御指摘だろうと思いますけれども、私どもこの問題については、これまでも申し上げていますように一般的な勉強はやはりしておく必要があろうと、こういうことで先ほど申し上げましたような勉強はやっておるわけでございます。すぐこれを何かしっかり議論をして検討結果を出すような仕組みというものを今つくるのはいかがなものであろうか、そういう状況にないところでそういう機関での研究というようなものはいかがであろうかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  155. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 繰り返しになりますが、日本の皇室制度は、歴史と伝統に基づいたものであり、だからこそ憲法で「世襲」という言葉が明記され、また皇室典範で「皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」というふうに書かれているのであろうと思います。この伝統と歴史を守るということと、一般社会の中において日本国民が男女平等を目指して努力するということは、私は相矛盾するものではないと考えます。
  156. 三石久江

    ○三石久江君 今、宮内庁の方から差し迫った状況にはないという御答弁があったと思いますけれども、その差し迫った状況ではない、その状況というのはどういう状況なのでしょうか。
  157. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 日本の国の成り立ちからいきまして、天皇制というものは憲法にも定められておるように非常に重要な事柄であるというふうに考えるわけでございます。その場合、天皇制といいますか、皇位を継承する仕組みというのは男系男子という原則に立っていると、こういうことになっておるわけでございますが、今、先生が御指摘のように、仮に男系男子の皇位継承者がおられないような状況というものが想定をされるというような事態になれば、これは天皇制を維持していくためにはどうしたらいいのかと、外国に女帝という制度もあるではないかというような、こういう御議論なわけでございます。  したがいまして、そういうことを考えた場合に、今直ちにそういう点をぎりぎり詰めてどうするかというようなことを考えるような状況にはない。やはり、我が国のこれ日本の皇位の問題でございますから、日本のこれまでの長い歴史に基づきながら今までの考え方でいってよろしいんではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  158. 三石久江

    ○三石久江君 次に、官房長官にお尋ねいたします。  天皇や皇族が広い意味での日本国民に含まれることは、昭和五十七年五月十三日衆議院決算委員会における宮内庁答弁で明らかなように、天皇及び皇族が憲法及び一般法令に基づく権利義務に従うことは言うまでもありませんと。ところが、皇室典範は親王の結婚に関し皇室会議の決定を必要とし、両性の合意による結婚の自由を認めた憲法の趣旨に反しています。  また、公職選挙法の、戸籍法の適用を受けない者の選挙権及び被選挙権は当分の間停止するという条項でもって、公職選挙法上の選挙権、被選挙権を認めておりません。政治に関し中立の立場を保持するとしても、皇位継承資格者以外の選挙権をも停止したままでよいのですか。これは国民としての基本的人権を無視したものと考えます。その他いろいろな問題について検討の余地があるように思います。官房長官の御意見をお尋ねいたします。
  159. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) 選挙権の問題でございますが、今御質問の中にありましたように、やはり天皇陛下というのは象徴的な立場にあられるわけでございまして、政治的な立場もこれも中立でなければならないと、こういうことが要請をされておるわけでございます。そういう意味から選挙権は持たない、また被選挙権も当然のことでありますが、そういう権利はお持ちにならない、こういうことになっております。  皇族さん方も、それは考え方は同じでございまして、やはり皇室というのは天皇陛下を中心とする御一家でございますから、やはり皇族さんが被選挙権、あるいは選挙権というものをお持ちになるということは非常にいろいろな問題が出てくる、こういうことになっておるわけでございます。  こういうような考え方というのは、例えば皇族さんにつきましても、当然皇族としての特権というものが片方にあるわけでございまして、例えば皇族については、男子の場合には皇位継承資格があるとか、あるいは男女を含めて、摂政あるいは国事行為の代行に御就任する資格があるとか、あるいは殿下という敬称を称せられる。品位の保持の資として、国から一定の皇族費が支給される。こういうような、片方でそういうお立場にある特別の権利というものを与えられておるわけでございまして、他方、皇族に対する制約としまして、今お話がありました、結婚について皇室会議で承認を得なければいけないとか、養子は禁止をされているとか、あるいは選挙権等がない。こういうような特権に対する制約というものがあるわけでございます。  そういう意味で、これはそういう観点からそういうことになっておることを御承知願いたいと思います。
  160. 三石久江

    ○三石久江君 ただいまの御答弁は、国民としての基本的人権を無視したものではないということだったように聞こえましたけれども。  さて、天皇家におけるさまざまな男女差別の制度は、男系男子のみを皇位あるいは皇族の継承者とする皇室典範の反社会的制度といいますか、男女平等を初めとして、あるゆる差別を撤廃しようとする日本国民の一般的社会通念に合致しないというところに、最初に申し上げましたその根源があります。日本の民主主義を確固とするためにも、一日も早く改定されることを願うものでありますが、この条文は、国内だけではなく国外でも関心のあることですので、改定に前向きに取り組んでいただくことを私はお願いをいたします。  最後に、官房長官宮内庁長官の御所見を承りたいと思います。
  161. 宮尾盤

    政府委員(宮尾盤君) ただいまのような御意見は、これまでもたびたびお聞きをいたしております。ただ、私どもこの問題について、ただいまもいろいろ御答弁申し上げたような考え方で、憲法十四条の趣旨を、広く日本社会に広めていくということは非常に結構でございますけれども、憲法二条というような規定は、必ずしもそれと同じレベルで御議論をされるのはいかがなものかというふうに考えております。そういうことで、十分御意見としては承っておきます。  それから、先ほどちょっと基本的人権に抵触するんではないかというお話がありましたが、先ほど申し上げたような理由で、私はこれは基本的人権というものには抵触しない、こういうふうに考えております。もちろん、それ以外の一般的な基本的人権というものは、天皇陛下も皇族さん方も享有をされておることは間違いございません。
  162. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 皇室は、今近代日本の民主社会にあって、戦後の社会にありましても、伝統を守り続けながら、そしてなおかつ多くの国民の皆さんから大変な関心を寄せられております。それは年代を問わず、男女を問わず、またいろんなそれぞれの人々の主義、主張を問わず、強い関心を寄せられており、また敬愛されていると思っております。  ですから、先生の御指摘の問題というものも恐らくいろんな議論があろうかとは存じますけれども、私は、伝統に基づいて、そして歴史的にこれだけ長く続いた皇室制度というものは、日本国内だけではなくて、先生御指摘のように、外国からも非常に畏敬の念を持って見ていただけるものであろうと思っております。  したがって、私たちがきょう御答弁申し上げました考え方は、私たちは日本国民の多くの方に支持され、また理解されていると思います。それと同時に、先生おっしゃいましたように、日本社会の中における男女の平等の問題は、それとは別途に我々は追い続けていかなければならないテーマであろうと思っております。
  163. 三石久江

    ○三石久江君 時間が余りましたけれども、これで終わります。
  164. 板垣正

    ○板垣正君 私は、天皇陛下の御訪中の問題について承りたいと思います。  まず、官房長官に現時点における政府のこの問題に対する基本的な姿勢についてお伺いいたしたいと思います。陛下の御訪中の問題です。
  165. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 中国政府の方からはここ数年来、天皇陛下の御訪中をたび重ねて御要請を受けております。昨日、江沢民書記が来日されまして、宮澤総理大臣と二時間半にわたる会談を行いましたけれども、そのときにも改めて陛下の訪中の要請を受けました。日中国交樹立の二十周年に当たるこの年はいい機会でありますので、ぜひ御来中いただきたいという要請でございましたけれども、これに対して、総理大臣からは、真剣に検討いたしますという答弁をいたした次第でございます。
  166. 板垣正

    ○板垣正君 外務省お見えですね。  外務省は御訪中については大変熱意を持っておられると、こう承っておりますし、また、流れの中においては、今度、江沢民さんがお見えになったときに決着、結論的なところまで運ぶはずであったかとも言われておりますが、外務省の立場においてこの天皇陛下の御訪中について最大の意義をどこに認めておられるのか、承りたいと思います。
  167. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 御承知のように、ことしは日中国交正常化二十周年ということでございまして、この機会をとらえて中国からぜひという御要望があるわけでございます。  そういう御要望を踏まえて、現在この陛下の御訪中につきましては真剣に検討しているということでございます。今こういうことで、そういう検討を行っているところでございますので、具体的なことをこれ以上コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  168. 板垣正

    ○板垣正君 もうちょっとはっきり言わないと聞こえませんよ。  この問題は、極めて我が国にとりましても大事な問題であります。そして、陛下の例外遊ということは、先帝陛下の場合、また今上陛下も東南アジアヘ行かれましたけれども、こうした機会にやはり陛下を喜んで送ってさしあげる、また現地でも喜んでお迎えいただける、そういう流れというものがやはりあってしかるべきだと思います。この問題をめぐって今、国論はいろいろ分かれております。非常に懸念があります。これは決して偶然ではない、決してこれは一部の反対ではありません。真剣に検討されるということは、本当にそういう立場において真剣に御検討いただきたい、慎重に御検討いただきたい、そういう立場でいろいろお伺いもいたしたいと思います。  やはり、現在の中国国際社会においてどういう立場にあり、どういう見方をされておるのか、また現在の中国をどういうふうに見るのか、さらに日中関係二十年の国交回復の歴史と言われ、それ以前の歴史もありますけれども、それをどのように見るのか、そういう集大成の中に、まさに二十一世紀につながる日中の新しい発展、そうした中で陛下の外遊ということも、御訪中ということも意義づけられるでありましょうが、これらについて、果たして現在そういうことが言い切れるのか、言えるのか。日中関係、いや、まず国際社会における中国のあり方、立場についてどういう評価を受けておるのか、この点について外務省はどう解釈しておられますか。
  169. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 中国の外交につきましては、御承知のように、天安門事件のとき以来なかなか関係国との関係は難しかったわけでございますけれども、徐々に西ヨーロッパ、それから近隣のアジアの国、北アメリカの国等々の関係が進みまして、中国の首相クラスの方が北アメリカに行き、あるいは最近はヨーロッパを訪問しておりますが、そういうこと。それから、周りの国からは日本あるいはイギリスあるいはイタリアから首相が訪中するということで、徐々にその関係が修復してきているというのが現状ではないかと思います。
  170. 板垣正

    ○板垣正君 はっきり申し上げて、いわゆる人権問題においてアメリカ議会等には非常に厳しい見方がある。あるいは文書等でも、何千人かの人間が近々に処刑をされた、天安門関連であるいは李鵬首相が最近四カ国ヨーロッパを図られたときの対応ですね、諸外国の。やはりこうした人権問題を無視しておる、その面の努力が足りない。あるいはいわゆる武器輸出の問題、軍備管理の問題、こういう問題においても、国際社会においてある面の非常な危険な存在ではないのかという見方すらあるのは事実ではありませんか。そういう見解についてはどう思いますか。
  171. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 先ほど申しました各国と中国との関係が難しい状況に行われた、その原因の大きなものは、先生おっしゃいましたように、人権の話、それから武器輸出の話でございます。  このうち、武器輸出につきましては、もちろん完全な意味で解決されたということではございませんけれども、例えば、中国はNPTに加入するという意図を表明するとか、あるいは例のMTCRと称しますミサイルの輸出規制のレジームに自分もコミットもしていいというようなことを言うとかというようなことで、ある種の前進が見られることは事実でございます。  それから、人権の問題については、この武器輸出以上にこれまた難しい問題ではございますけれども、中国も前のように人権の話はもう一切してくれるなというようなかたくなな態度は和らげて、自分たちも人権の問題はそれは意識しているんだというようなアプローチに変わってきているということも事実ではないかと思います。
  172. 板垣正

    ○板垣正君 人権問題については、これはもう自分の国の問題であって、内政干渉は御免こうむると、きのうの話でも出ているんじゃないですか。それが言うなれば冷めた見方です。私どもは、この際、そうした問題をやはり冷めた見方で、冷静な見方で見きわめていかなければならない。  次は、中国の情勢、特に最近の全国人民大会が開かれた経緯、非常に注目もされたし、いわゆる鄧小平氏の主張が一応通ったような形ですけれども、運びが極めて異例ですね。あの老躯をひっ提げて経済開放区を歩いて、そこで講話をされた、話をした、それが党政治局全体会議で、言うなれば党議として決まる、それが人民大会で国の政策として決まる、こういう行き方は、これは共産党支配の国である、そういう行き方かもしれませんけれども、その辺に一体これで安定していけるのだろうか。開放政策でいく、百年間これでいく、こう訴えておりますけれども、その基盤は一体どうなっているのか。早速この秋にはまさに注目の党大会が開かれる。今、党大会を目指して、いわゆる保革の権力闘争がまさに火花を散らそうとしているんじゃありませんか。それが今の中共の実態じゃありませんか。その辺の見解いかがですか。
  173. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 現在の中国の国内情勢につきましては、先生御指摘のとおり、鄧小平さんが中国の南の方を視察する云々ということで、大分世界の耳目を集めたわけでございますけれども、今度四月三日に閉幕しました第七期全国人民代表大会第五回会議というこの会議の結果、結局のところはさらなる改革・開放の推進に向けて一応国内のコンセンサスを取りまとめ終えだということが言えるのではないかと思います。
  174. 板垣正

    ○板垣正君 次は、日中関係です。  国交回復以来の二十年というのは長いようで短いと思うんです。悠久の歴史の流れから見れば、この二十年の節目というのを何としてでも一つのけじめとしてなすべきことはあると思いますけれども、今前段で申し上げましたような事態からも、陛下の御訪中と結びつけるには、国際的な評価からいっても、また現在の中国の実態からいっても決してふさわしくない、それは常識でございましょう。  同時に、日中関係について、我が国は過去の歴史反省の上に立って、平和国家として再生し今日に至っている。私どももその過去に対する反省、平和に徹する信念、そういうものにおいて人後に落ちるものではありません。しかし、日中関係というのは、結局この二十年間、常に過去に尾を引いて、言うなれば日中外交、中国の立場からは、伝統的な過去のカードを差し出す姿の中で、日本がそれに自縛されるというか、ある意味では新しい不幸な関係が続いてきたんではないのか。  端的に、例の五十七年の教科書の問題があります。そしてまた、靖国問題があります。靖国神社参拝、全国の遺族が、心ある人たちが、自分たちの肉親が祭られておるところに、せめて国の代表である総理に参拝してもらいたい、切なる長い長い願いであります。こうした問題が中国の内政干渉によって、日本政府の対外配慮の名のもとに、ここ数年総理の参拝が中断しているのは事実じゃありませんか。  今度の湾岸戦争に関連した掃海艇の派遣の問題をめぐって、あるいは現在審議中のPKOの問題をめぐって、そこにありますのは、やはり過去の日本、彼らの目から見た軍国主義日本、そのイメージ、それが今もつながっている立場においてこれらの問題がお互い相互理解の立場に届いておらない。尖閣列島の問題等も、日中友好二十周年の意義あるときに陛下に来てくださいと何回も要請をしている国であるならば、あえて領海法によって、問題の尖閣列島を我が領土である、これを侵すものは軍事力を発動する、こういう姿勢を示すということは常識では考えられない。こういう点にも日中関係が言うなれば極めてなお微妙な、直ちにこの日中関係を二十一世紀の新しい関係に発展させていけるようなところまで機は熟しておらないのではないのか、その点についてどう考えられますか。
  175. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 日中関係につきましては、もちろん過去にさかのぼる問題を初めとしていろいろな問題があることは事実でございまして、それにつきましては日中共同宣言の精神に従いまして、我々としても一つ一つそれを解決していくという精神で臨んできているわけでございまして、それなりの実績と申しますか、成果と申しますかというものは出てきたんだろうと思います。そして最近になりましては、ただ単に、日中の指導者が集まりますと、日中間の問題だけを議論するということだけではなくして、お互いを取り巻く世界の関心事項についても議論をするというところにまで関係が広がってきているわけでございまして、二十年間の間に大きな広がりと深まりが出てきたということが言えるのではないかと考えます。
  176. 板垣正

    ○板垣正君 次にまた外務省に伺いますけれども、一つの冷戦が終わり二つの冷戦が始まった、こういう中国共産党中央宣伝部の報道機関あての資料、これは共同通信が入手をし一部報道されましたけれども、これについては御存じですか。中国共産党中央宣伝部の報道機関あて、一つの冷戦が終わり二つの冷戦が始まった、こういう資料、御存じですか。
  177. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 申しわけございません。今の御質問の点につきましては承知しておりませんでした。
  178. 板垣正

    ○板垣正君 そういうところにも外交姿勢の真剣さを欠いていますよ。少なくとも共同通信が入手をし、我が国の新聞にも一部報道されておる。これによりますと、これはこの二月に共同通信が入手をした。ソ連、東欧崩壊後の国際情勢を初めて全面的に分析、地域別に対応を打ち出したものとして注目される。中国は、冷戦構造崩壊後に生じた、一つ、残りの社会主義国及び第三世界諸国と帝国主義との対立、これが一つ。二つ、旧ソ連という共通の敵を失った日米欧間の対立、これが要するに一つの冷戦が終わり二つの冷戦が始まった、を新たな冷戦と規定。第三世界との連帯を強化しつつ、西側諸国の矛盾を利用せよと指示をしておる。  対日工作については、一、国交回復二十周年を利用して大々的に宣伝工作を行う。二番目に、政治大国化、軍事大国化の動きに注意をしなければならない。三番目に、日本と米国及び韓国の間の矛盾を利用すべきだ、こういうことなんですね。  これは少なくとも外務省が、これは正式の文書であるのかどうか、これが正式の文書であるならば、これについてどういう見解を持つのか。あるいは、この文書が出た後今回の人民大会、党の基本決定、こういうことでありますから、これは今日ただいまの中国の考え方ではありませんということかもしれません。しかし一々うなずかれるんじゃないですか、中国が基本的にそういう見方でこの世界を見、そういう立場において対日政策、対日工作を進めていこうとしている立場。今度の人民大会における李鵬首相の報告も随分修正されたそうですが、あの中に対日正常化は既にできたとあった表現が削除されたということが伝えられておりますね。そのことは御承知ですか。それはどういう意味ですか。
  179. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) 先ほどおっしゃいました李鵬首相の報告に対して百五十カ所以上の修正が加えられたという点でございますが、その点につきましては報告を受けております。ただ、その中身がどうだったのかというこの詳細につきましては今のところ必ずしも全部承知しておりませんで、先生今おっしゃいました点につきましても、今の時点ではまだ確認できないところでございます。
  180. 梶原清

    委員長梶原清君) 竹中審議官に申し上げますが、語尾がはっきりしませんので聞き取れません。ですから、先ほど来御注意を申し上げました。そのとおりにしてください。
  181. 竹中繁雄

    説明員(竹中繁雄君) どうも失礼しました。
  182. 板垣正

    ○板垣正君 きょうは、江沢民さんもお見えで、局長もおいでになれない、これは万やむを得ないということで審議官で結構でございますということでございますけれども、まさにこれは基本的な問題であると思います。  官房長官、以上いろいろ申し上げてまいりましたけれども、今、我が国にとって大事なことは、この二十周年を意義あらしめる大事なことは、本当の日中外交をやるということじゃないでしょうか。お互いが本当に議論し合える、言いたいことを言い合える、そして本当のアジアの、日中の安定、繁栄を図っていく。そうではなくて、何かタブーがある、はれものにさわるような姿勢、意を迎えるような姿勢、そういう面を反省し、もっと日本国民の期待している本来の外交をやってもらうのが、この日中国交回復二十周年のまさに意義あらしめるところである。  私は、冷戦後の新しい世界秩序、この理念としては勝者も敗者もない、勝った者も負けた者もない、また勝つ者も負ける者もない、そういう立場における共存を求めていく、これが二十一世紀を目指す、また今の大きな転換期における新しい世界秩序の理念でなければならないと思っている。いつまでも勝った国、負けた国、いつまでもその恨みを、そういうものを尾に引いた姿を、これは求めれば切りがありません。中国は今や日清戦争までさかのぼって賠償問題を論議しているじゃありませんか。そういうものにやはりけじめをつけて前向きに、まさに前に向かってたくましくお互いの信念をぶつけ合っていく、これが日本の外交の基本姿勢、これは中国のみならず基本的な対米関係においてもそうだと思います。  そういう中に、今回の陛下の御訪中の問題、おのずからまだ時期尚早であり、その時期ではない、そういうお送りする国民的コンセンサスもまだでき上がっておらないし、お迎えいただく中国側も決して陛下をお迎えするにふさわしい体制ができておらない、こういうことで十分慎重に御検討いただきたいと思いますが、長官の御信念を承りたいと思います。
  183. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 大変いろんな角度からの最近の日中関係についての御所論を聞かせていただきました。日本中国は過去の一時期不幸な関係にございました。これからの日中関係を考えるときに、私たち日本はその一時期、我が国行為により耐えがたい苦しみと悲しみを中国に与えたということについては、深い反省と遺憾の意を持たなければいけないと思います。そして、我々はこうした過去の過ちを直視し歴史を正しく伝え、二度とこのような過ちは繰り返さないという戒めを心に持たなければならないと思います。我が国にとってはそういう心構えが必要であろうと思います。  また、中国にとりましては、今後の日中関係を考えるときにできるだけ、板垣先生のおっしゃいましたように、過去のことも過去のことですけれども、未来志向で考えていただくということをお願いしなければならないと思いますし、日中がそれぞれそういう立場で努力をしなければならないのだろうと思います。日中というのは、アジアの中において二つの大きな重い国でございます。そして一衣帯水の関係にあります。文化的にも歴史的にも非常に近い国でございますから、このアジアの中で二つの国が相対峙することはアジアめ平和と世界の安定のために資することにはなりません。したがって、この二国はいろいろな努力、あらゆる努力を通じていい関係になるように努力しなければならないと思います。ただ、その二つの大きな存在の国でございますから、それの間には経済の関係もありますし、文化の関係もあります。政治の関係もあります。したがっていろいろな摩擦が生じることがあろうかと思っております。それぞれ主義主張が違ったり、国の成り立ちも違いますから、それぞれの政策的な主張の中には違うところも出てまいると思います。それぞれの世界観、それぞれの政策が必ずしも全部一致するということはないと思います。  ですから、その点につきましては板垣先生おっしゃいましたように、お互いに何か胸に一物あるような表現ではなく、率直に問題を言い合わなければならないと思います。中国の方は日本のPKOについて懸念があるのかもしれません。私たちは、その懸念を表明されたら、それはそういうものではないと、日本のPKOというのは国連の枠の中で参加するものであり、また、そのPKO活動そのものがノーベル平和賞を受けるような平和のための行動であり、決して軍事行動ではないということを明確に言う勇気を私たちは持たなければならないし、また説得力を持たなければならないし、それを率直にお互いに言い合うことが私たちはいいことであって、向こうがその関心または懸念を表明したからといって、それを黙って聞いてもいけないし、また唯々諾々としてもいけないし、こっちの考えも明確に言わなければならないのだろうと思います。  そしてまた、もう一方、最近の中国が極めて民主化しているということも新しい事象でございます。  きょう、この委員会の中で民間の賠償の問題についていろいろ御提起がございました。翫先生からかなり詳細に資料に基づいた御質疑がございました。あれは全国人民代表者会議の中に出てきました一つの建議であろうと思いますが、私はあれが中国の人民のすべてを代表している意見ではないと思います。しかし、そういう少数の意見が表明されるような中国になってきたということは、ある意味では民主的な中国になってきたのかもしれません。そうでないのかもしれません。そこは我々これから見ていかなければならない点でありますけれども、少なくとも中国も民主化の方向に進みつつある予感というようなものもいたします。そういう中で、私たちは二つの国が率直に会話し、そして人間の往来を通じてより理解を深め合っていかなければいけないことになろうかと思います。  私は、陛下の御訪問について今大分御議論ございまして、そしてこの問題につきましては、政府としては真剣に考えていくわけでございますけれども、そういう中で皆さんの御意見を聞きながら政府としては判断してまいりますけれども、いずれにいたしましても、日中両国はお互いに率直に話し合いながら、そして分け隔てのない心で対話をしていかなければならないのだと思っております。
  184. 永野茂門

    ○永野茂門君 最初に、防衛計画の見直しについて防衛庁長官にお伺いいたします。  安全保障会議の決定並びに総理の御指示を受けまして、防衛庁では現在の中期防、三年度から七年度に及ぶ中期防の見直し、さらには、その根底にあります防衛計画の大綱についても見直し作業を始めていらっしゃると、こういうように承っておりますが、まず、中期防の見直しについてどういうタイムテーブルを描いていらっしゃるか、あるいはまた防衛計画の大綱の見直しといいますか、抜本的な考え直しといいますか、そういうものとの関連づけをどういうように考えていらっしゃるかというようなことを中心にして、今進められておる状況を承りたいと思います。
  185. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員の御指摘は中期防と防衛計画の大綱の見直しに関することに要約されると存じます。  世界が緊張緩和、こういう大きな劇的な変化を遂げました。そして、現在の中期防衛力整備計画が一昨年の暮れに策定されたのは御案内のとおりでございまして、現在の中期防自体は防衛計画の大綱に基づきながらも、この世界の傾向、つまり東西ドイツの統一あるいはその他東欧の民主化等々、非常に大きな変化を踏まえまして、当時の防衛計画の大綱の情勢判断の実質的な見直しをも行いつつ、非常に抑制的なものとして今度の中期防をつくっております。  今御指摘のように、中期防は平成三年度から七年度までの五年の計画でございまして、この内容自体二十二兆七千五百億円ということで、それ自体伸び率も非常に抑制的なもので、前の中期防が五・四で今度は三・〇とか、各種のいろいろ指標はございますが、詳しくは申し上げませんが、そういう形で抑制的なものとしてつくられておることは、委員御案内のとおりでございます。  その中で、しかしさはさりながら、その後の世界情勢の大きな変化がございました。旧ソ連邦の崩壊等々ですね。世界がこれだけ大きく動いておりますと、一昨年つくられた後の世界情勢の変化というものも、かなり大きな変化が予想されるわけでございまして、そうした問題等を踏まえまして、中期防自体の中に、中期防の総額範囲内における三年後の見直しということが第一。それから第二は、これは中期防全体期間中に検討すべき問題として掲げられておりますけれども、今、人的な資源、自衛官の募集その他、具体的に申しますとそういうことになるわけでありますが、人的資源の制約からして、この防衛力のあり方についての検討をすべきであるということをこの中期防自体の中に明記を二つしておるわけです。一つは、中期防の総額範囲内の見直し、一つは、防衛力のあり方の今中期防期間中の検討ということでございます。  前者について申し上げれば、これは今までずっと各種の委員会で御答弁申し上げておりますように、昨年の十二月二十八日の安全保障会議におきまして、総理より前広に検討せいということで御指示をいただきました。したがって、今防衛庁におきましては、防衛力検討委員会、これを従来設置したものに改めて、中期防の修正、見直しということの任務を付与いたしまして、精力的にこの修正問題に取り組んでいるところでございます。  他方、この防衛力の基本となっております防衛計画の大綱、これは総理も御答弁申し上げ、私も答弁申し上げておりますように、人的資源の制約ということになりますと、大綱別表の編成にかかわるもの、編成に及ぶものということでございますし、同時にそれは、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の三幕体制の体制にも影響のある問題でございますが、これにつきましても今中期防中に鋭意検討を重ねて、そして適切な、効率的な我が国の防衛力の整備のあり方を模索していきたいと、このように申し上げておるわけで、これもただいま防衛庁において、目下、鋭意勉強中である、このような状況でございます。
  186. 永野茂門

    ○永野茂門君 それでは、さらに中期防見直しの具体的なことについて承りたいと思います。  承るところによりますと、中期防の中期的な見直しというものは、下方修正に方向づけられておると承っております。  そこで、この下方修正への方向づけがいかなる理由から考えられたのであろうかということにつきまして、若干の要素ごとにお伺いしたいと思いますが、その第一は、現在保有しておりますところの防衛力、戦力というものは、まさに従来の防衛計画の大綱に基づきまして、それぞれの五カ年計画等によってもたらされました、いわゆる基盤的防衛力として維持しておるものであります。この中期防は、それをさらに若干の近代化をするということだと考えられます。  そこで、基盤的防衛九というものは一体いかなるものであるかということを、まず長官から承りたいと思います。
  187. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、委員御承知のように、我が国の防衛力の整備は一次防から四次防まで続けてまいりました。しかし当時、四次防の完成時、つまり五十一年前後におきましては、今日ほどではございませんけれども、米ソの対立それ自体はあるものの、非常に緊張緩和が行われ、デタントの情勢になりました。そして、三次防、四次防に至る過程を見ましても、防衛力整備予算が倍増倍増というような形でふえていくのはいかがなものかと、根幹的防衛力構想とも当時は言っておりました。  そこで、いろいろ議論の末に、我が国の防衛力は一体平時においてもいかなる姿であるべきかということ、そして脅威対抗論でなしに、平時においてもどれだけのものが必要かという観点から検討が続けられたわけでございまして、そのことが現在の五十一年につくられた防衛計画大綱の中に基本的な考え方が示されてございます。これは脅威対抗論ではございません。我が国が力の空白を生ずるならばかえって周辺諸国の不安定性を増すというようなことでございますし、同時に、我が国としては平時において十分な警戒態勢をとる、あるいはバランスのとれたものである必要がある。また、必要最小限度の専守防衛の原則に従って、これを防備するに足る基盤的な防衛力をつくる、装備する、こういうことでございまして、これはその以降の防衛計画なり、防衛庁予算の基礎になった発想でございまして、これを私どもは基盤的な防衛力と称しておるところでございまして、今日の中期防もそういった意味では、この大綱を下敷きにしているといいますか、基盤にしておる、こういうように存じ上げております。
  188. 永野茂門

    ○永野茂門君 言いかえますと、現在の基盤的防衛力構想というのは特定の切迫した脅威が想定されたものではなくて、現在のような情勢に非常に合った、骨格的で抑制された戦力であると考えなければならないと思うわけであります。  もちろん、現在のように大変化の時代でありますので、例えば技術進歩によるさらなる変化でありますとか、省力化でありますとか、あるいは新技術でありますとか、新戦法の要請による新しい戦力の整備でありますとか、あるいはさらに、基本的に言うならば、国際の安全度でありますとか、安定度の変化に応じて防衛レベルをどうするかというような調整はもちろん必要であると思うわけでありますけれども、基本的にはそういうことをにもんで、幅のある抑制されたものである、こういうように理解されるべきものであると思います。  そこで、次に今の世界情勢をどうとらえるかということで、今国会あるいは前国会からも同じでありますけれども、長官ないしは総理がたびたび国会答弁でお示しになっておることは、現在の情勢というのは計画大綱策定時に比較いたしまして、そのデタント情勢がさらに安定化していくといいますか、国際関係安定化の流れが進んでおる、こういうように何度もお述べになっておると思います。もちろんその大きな流れとして安定化を追求し、その方向に進んでおるということは、これは全くそのとおりであるし、特に米ソが対立から協調に変わったということ、あるいはまた、東欧だとかソ連が自由、民主化の方向をたどっておるということは極めて意義が大きく、そして世界の安定でありますとか、安全に非常にいい影響を与えることは間違いがありません。  しかしながら、世界じゅう至るところに紛争の要因は残っておるし、また紛争の要因がさらに激化されつつありますし、世界を大きくとらえても、経済圏のブロック化が進み、これが誤ると第二次大戦の前の状況と同じような状況になる。あるいはまた民族・宗教問題で、東ヨーロッパあるいは旧ソ連ないしCISの中においてもなかなか落ちつかない。大軍事力を持ったままソ連はああいう状況でありますし、特に、ソ連の軍人はこの大軍事力、統一軍を分解するようなことがあったならば、これは国内戦といいますか、共和国同士の戦いになることは必至であるというようなことを言っておりますし、先ほど板垣同僚から言われました中国の和平演変戦略といいますか、こういう物の考え方。あるいは中東和平は未確実である、アジアには社会主義国がなお現存をして、そして権威主義、全体主義を追求しておりますし、中国もインドも大変に海軍力を強化しておると。特に、中国は米ソのアジアからの戦略の削減の穴をみずからドミネートしたいというような動きもありますし、北朝鮮の状況については今さら申し上げることはありません。  今、ちょっと例を挙げたわけでありますけれども、このような状況でありまして、地域紛争、局地紛争と称するものは、これはまさに頻発するおそれが極めて大きく、これをいかにコントロールするかということは極めて重要であるし、それぞれの国の安全というものは、特に我が国の安全を考える場合に、近隣諸国のこういう状況、さらに大量破壊兵器、あるいはそれを運搬するミサイルの大拡散、ミサイル精度の向上というようなものは非常に短期的な戦争を急激に始めやすいというようなことがあるわけであります。  そういうことを見ますと、もっといろんな要素がありますけれども、時間がありません。とにかく今の状況を、米ソが手を握ったことによる安定化の大きな方向だけをとらえて、そしてますます安定化しつつあるということは、大きな流れの平均線を眺めることであって、波を全然見ていないんじゃないか、この波にも我が国の安全と各国の独立国の安全というのは対応しなければいけないのでありまして、米ソ協調による利益といいますか、平和の恩恵といいますか、これは必ずしも長期的安定的なものではないのであって、それに付随した世界のいろんな大きな波がある。したがって、単純にますます安定しつつあると眺めるのは非常に危険ではないかと思うのでありますが、それについてどういうような御見解をお持ちでしょうか。
  189. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員からるる国際情勢の変化についての御意見がございました。私もおおむねそのような感じで見ております。要約いたしますならば、米ソの超大国の対立、冷戦構造、これは一つの、当時としては超大国の対立によって緊張がもたらされ、冷戦構造と言われておりましたが、これが一方の旧ソ連の崩壊によって消滅したと。そして、世界の流れは総じて言えば好ましい、そういった方向にあることもこれはもう事実でございます。  他方、しかしながら、今御指摘のように、かえってそのためにソ連内部における状況も委員御指摘のとおりでございますし、またユーゴその他を見ても、中東問題を見ても、また、各地に宗教的なあるいは民族的な地域的紛争の可能性の生起というものはこれは否定することはできない状況になっていることも事実で、より一層米ソ東西両陣営に分かれていたときよりも、そういった問題の生起する可能性が大きくなっていることも事実でございます。  他方、アジアにおきましても、これは委員御指摘のように、いろいろアジア各国は多様性がございますし、また、地域的な、ヨーロッパのCSCEみたいな安全保障の体系をつくり得るような条件にございません。各種のいろいろな問題もございます。北朝鮮と韓国の問題、また我が国でも北方領土問題等々、各種の問題があることは事実でございます。  そしてまた、そういった中で我々は無条件に、平和になるからもう安心だというわけにはまいらないわけでございまして、私はやはりこういった国際情勢の変化というものはどのような変化をたどるか、これをよく見きわめていかなければならないと思います。そういう意味で、この軍事情勢につきましてもこの趨勢をよく見て、その安定化の方向をきちっと把握しつつ、我が国の防衛力整備計画等々も、これは先ほど申しました基盤的防衛力構想であるとは申せ、この世界あるいは我が国をめぐる周辺の軍事情勢というものを無視するわけにはまいらないわけでございますから、そういった方向で検討していくことが必要だと存じます。そういう意味で、ひとつ委員の御指摘、まことに適切なものがあろうかと思っておりますので、私も委員の御質問に、繰り返しになったような結果になって恐縮でございますが、御答弁を申し上げた次第であります。
  190. 永野茂門

    ○永野茂門君 長官の御見解を承りまして非常にありがたく存じております。慌てることはないのでありまして、前広にやらなきゃいけないという御下命ですから前広にやるべきだとは思いますけれども、慌ててはいけないのでありまして、新世界秩序がどういうように落ちついていくかとか、あるいはアジアの中がどういうように安定化していくかということを十分見きわめながらやるのが当然だと考えます。  そこで、新しい戦力についてもう少し真剣に整備を考えなきゃいけないんじゃないかということを一点だけ質問したいと思いますけれども、今や新聞でもテレビでもほとんど書かれていない日はないくらいに、核を初めとする大量殺りく兵器及びこれを運搬するミサイルの拡散状況、そしてその拡散が旧ソビエトの崩壊によって加速されているという状況が示されておりますけれども、これについてどういうように評価なさっておられますか、お伺いいたします。
  191. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ソ連における旧軍の動き、それから特に核兵器の技術者の流出問題等々いろいろ報道をされております。また、ソビエトにおける武器の売却等もいろいろ報道されている。これは私ども一々確認はできませんけれども、恐らくそうした事態も十分予想されることではないかと私どもは思っております。そして同時に、中東関係でもミサイルの問題、武器輸出の問題等々もございますし、また、アジアにおきましても、北朝鮮におけるミサイルの長距離化の開発の問題等々いろいろございます。  我々としては、やっぱり世界の軍縮、そしてまた大勢として平和を希求するわけでございますから、こうした懸念がないような方向でいろいろな場を通じてこれは努力していかなければならないと存じますが、同時に、専守防衛の我が国の立場に立っても、こうしたものにも一応、先ほど先生御指摘のように近代軍事技術の能力向上等もございますから、それらも勘案しながら、専守防衛の精神に徹するためにこうした問題も考えて対応していかなければならないと、基本的にはそのように考えております。
  192. 永野茂門

    ○永野茂門君 このミサイル兵器について考えますと、命中精度は大変に高くなっておる関係上、千数百キロを飛ぶものでもこれは通常弾頭で運用できるということは、既にイラクの湾岸危機並びにイラ・イラ戦争で示されておるわけであります。したがって、普通弾頭で使用できるということあるいはまた対ミサイル技術が必ずしもまだ確立されていないということから、非常に軽易に使用されることがあるということに我々は防衛上注意をしておかなきゃいけないと思うわけであります。特に、防衛計画の大綱を策定した五十一年のときには、まだこういうような戦域兵器あるいは戦術ミサイルですね、これはまだ多数は展開されていなかったわけでありまして、この防衛計画の大綱ではこういうものは考慮外にされていた兵器体系でありますから、これに対する対応の能力はしたがって現在の別表の中にはほとんどないということでありまして、これは本当に新しく備えなければいけない力であるということの御考察をお願いしたいと思います。  それからもう一つ、関連して特に注意を喚起したいと思いますことは、ヨーロッパであれだけ平和状態が比較的確立しておる、安定化に大きく前進しておるというのは、長官も御存じのとおりに、大体十五年以上の大変な話し合い、そして相互査察が行われて、その周に信頼醸成ができ、どこの国の軍事力がこういう状態で、どこにどういうふうに展開されて、研究開発はどういうように行われている、それはこういうものだということをお互いに知り合った後に初めて、ああいうCSCEのような平和状態に近い、あるいは集団安保に変わっていく体制がとれたのであって、アジアは全く何も進んでいないわけであります。  今回、中国との間にも軍備管理でありますとか、軍縮についていろいろと話し合われだということが出ております。中国あるいはロシア共和国連邦、南北朝鮮との間、アメリカを含めて、この地域においてそういう話し合いをじっくり詰めて、初めてどういう状況にあるかということがわかり、そして信頼関係ができて、そこで軍縮というものに進み得るのであって、軍縮を絶対に急ぐべきものではない、軍縮というのは後からやって結構だと私は思うのであります。軍縮に向かうことは、これは当然やらなきゃいけないことでありますけれども、慎重にやる必要がある。そんなことを前広に急ぐことはありません。  時間がなくなりましたので、自衛官の人材確保について最後に伺います。  自衛官の人材確保につきましては、具体的な業務をやっているのは御承知のように防衛庁の中の地方連絡部が第一線でやっておるわけでありまして、それに伴う司令機構といいますか中央機構があるわけでありますが、現在のような状況でありますと、地連の活動はもはやこれ以上拡大することはできない、まさに限界に達しておるわけであります。募集具ないしは部外の募集相談員を含めまして、もはやお手上げの状況である、こういうように認識をしなければならない、こう私は思っておるわけであります。  したがって、もちろんそれらを考慮したいろんな戦力の内容の削減といいますか、配置がえといいますか、そういうようなことについて十分検討してスリム化していくということが必要であることはもちろんでありますけれども、しかしスリム化してもある限度以内のものはどうしても確保しなきゃいけないわけであります。現在のように防衛庁に任せっきり、しかもそれが地方連絡部に任せっきり、地方連絡部だけでできないものですから、部隊は演習をやめてまでも募集に力を出す、こういうことはまことに困った状態でありまして、この際、国家的に、国全体としてどうやって人材確保を図るのかということを改めて考えてやる必要があると思うんです。  一般職につきましては、新聞にも出ておりましたけれども、これは本当にどういう名前になったのか、またどういう状態で準備されているか私は掌握しておりませんけれども、例えば、人事院の中に人材確保室(仮称)というものをつくっていろいろな対応をやろうとしておるそうでありますが、そういうものと協力して、総理府、防衛庁一体となっていろんな知恵を出し、そしていろんな対策を講ずるとか、あるいは地方自治体に募集業務の一部を既に現在でも法律、政令でお願いをしてやっていただいておるわけでありますけれども、こういうものももっと正確にやってもらうし、広報もやってもらっているわけでありますけれども、さらにこれを拡大するとか、そういうようなことを国としていろいろ処置していただくことが極めて大事であると思います。  それから、自衛官そのものに誇りを持たせるといいますか、応募する人の方からいいますと、自衛隊を魅力化するといいますか、これは極めて重要でありまして、魅力化するための施策が余り多くされておらない、いろんなことをやっていただいているわけでありますけれども、今まだ不十分なことを一つだけ申し上げますと、精強度を保ちながら、かつ、六十歳定年の実を上げるという方策をどうしても考えなければ、非任期制隊員あるいは若年定年でやめていくという、そういうシステムでございますから、これでは人が集まるはずはないんです。したがいまして、その辺を何とか防衛庁、国、人事院も知恵を出していただいてやっていただきたい、こういうように思います。  時間が参りましたので、今の終わりの人材確保のことについて、防衛庁長官並びに官房長官に御見解を述べていただきたいと思います。
  193. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員御指摘のように、やっぱり組織を動かすのは人でございます。そういう意味で、優秀な人材を確保することは極めて重要なことは御指摘のとおりでございまして、防衛庁としても、こういう認識のもとに、今、委員御指摘のような隊員施策の魅力化、つまり、隊舎、営舎、宿舎等の改善等々、人並みに施設をぴしっとして、そして厳正な訓練をやっていただける、そして誇りを持って自衛官がやっていただけるような環境をつくりたいと思っております。  なお、庁内にもこの問題意識は十分ございまして、自衛官募集施策検討プロジェクトチームというようなものを組織いたしまして、あらゆる手だてを通じて立派な、優秀な人材を量的に確保したいというようにいろいろアイデアを出してもらったりして検討しているところでございます。  なお、委員御指摘の定年延長の問題は、これは徐々にではありますが、そういった改善策を講じ、若年定年の自衛官についての退職給付金の制度等もおかげさまをもちましてこれを構築していただきましたけれども、今後こうした問題と装備との関係、あるいは防衛体制との関係の中でいろいろこれは検討すべき問題の指摘であろうと、このように存じて受けとめさせていただいております。
  194. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 優秀な人材を確保するためには、仕事に対する使命感を十分に持てるようにすることと、それから隊員の処遇、この二つの柱であろうと思います。特に、処遇の問題につきましては、私、今から八年前防衛庁。長官に就任いたしましたときは、恐らくこの処遇問題が一番ボトムにあったときではないかと思います。その後大分改善されたと思っておりますが、今後とも、今、防衛庁長官が言われましたように、若年定年制とその後の処遇の問題等を中心によく考えるなど、一生懸命努力をしていかなければならないと思います。  また、募集につきましても、今地方連絡部ではかなり限界に来たんではないかという問題は、確かに最近民間の景気がいいものですから、かなり募集に苦労されているところはあろうかと思います。政府全体といたしましても、自衛隊に対する理解と認識を深めるために、また、自衛官の募集を支援するための広報を積極的にしていかなければならないと思いますし、また、現実にやっておる次第でございますが、今後とも努力したいと思います。
  195. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、私は定員の問題についてお伺いしておきたいと思います。  平成四年度の国家公務員の定員増減審査結果を見ますと、削減数は平成元年度までは一万人台で推移してまいりましたが、二年度には九千人台、そして四年度には八千人台とだんだんと低下してきておりますね。一万増員はどういう状況かといいますと、だんだんと増加傾向にありまして、四年度は六千七百十人と、三年度に比べますとちょうど二百人増加しているわけです。この結果で見ますと、二年度まで三千人台を確保しておりました純減数が四年度には三年度の二千四百九十九人の約二分の一の千三百七十二人まで低下しているわけですが、総務庁長官、これはどういうような理由によるんでしょうか。
  196. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) まず、定員の削減状況でございますけれども、御指摘のように最近三年間を申し上げますと、平成二年度は九千七百十人、平成三年度は九千十一人、それから平成四年度は八千八十四人の定員削減ということになっております。増員状況でございますが、平成二年度は六千五百六十二人、平成三年度は六千五百十二人、平成四年度は六千七百十二人となっているわけでございます。純減数といいますのは、この削減と増員の差し引きでございますけれども、この御指摘のとおり千三百七十二人の純減となっておりまして、前年度の二千四百九十九人に比べますと、千百二十七人純減数が減っているわけでございます。  平成四年度から、この第八次定員削減計画というのがスタートするわけでございますけれども、全体として年平均の削減数で言いますと、約千人、第七次定員削減計画のときの毎年の削減数から減少しているわけでございます。平成四年度におきます定員削減におきましても、削減数につきましても、できるだけ上積みを図りましたけれども、結果として前年度の九千十一人に対しまして、八千八十四人ということで九百二十七人の削減数の減少でございます。  一方、増員につきましては大変厳しい新規増員の抑制という、そういう中でございますけれども、やはり必要なところには当然措置する必要があるわけでございます。そういうことで全体としてこの六千七百十二人ということで、前年度の六千五百十二人よりも二百人増になったわけでございます。そういう結果、差し引きの結果としまして、先ほどのような純減数の減少ということになったわけでございます。
  197. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 最近五年間の純減の推移を見てまいりますと、まず非現業では昭和六十三年、マイナス八百十三人ですね。それから元年度はマイナス九十三人、二年度はマイナス四百八十三人、三年度はマイナスの三百二十四人と、いずれの年度もマイナスでこうきているわけですね。それが四年度は逆に百五十二人の増員、こうなっているわけでございますが、行革が実施されている状況の中で純増というのは珍しい状況ではないかと思うわけです。非現業において、四年度で百五十二人もの純増となった理由というのは、何か特別な要因というものがあったんでしょうか。
  198. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) 御指摘のとおり、平成四年度につきまして非現業をとりますと百五十二人の純増となっているわけでございます。これも結局、削減と増員というものの差し引きの結果であるわけでございますが、増員につきましては、我が国の国際化の進展、あるいは国民から信頼されます公務サービスの充実という観点から、外交あるいは入国管理あるいは航空安全、そういう部門につきましての増員をしたわけでございます。このトータル、前年度よりも二十七人減の四千六百十五人といいますのが非現業の関係の増員であるわけでございます。削減でございますけれども、ただいま申し上げましたとおり、第八次定員削減計画の年平均削減数といいますものが、非現業につきましては、第七次の場合と比較しますと五百九十二人の減少であるわけでございます。そういうことで結局は差し引きということになってくるわけでございますが、最終的に百五十二人の純増ということになったわけでございます。
  199. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 一方、現業の純減を見てみますと、昭和六十二年度は二千六百三十七人、六十三年度は二千八百四十二人ですね、平成元年度は二千九百七十六人、こういうふうに純減が増加してきているわけですが、二年度には二千六百六十五人、三年度は二千百七十五人、そして四年度は千五百二十四人と減少してきているわけです。現業の純減数が過去二年間減少傾向にある理由というのは、どういうような要因があるんでしょうか。
  200. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) 現業の関係でございますけれども、まず、第八次定員削減計画の閣議決定をいたしましたときにも、この閣議決定の中にも明記されているわけでございますが、「経営の実態に応じ、非現業の職員に準じて措置する」というふうにされているわけでございます。最近三年間の削減数が減少しておりますけれども、経営の実態あるいは事業の合理化の進展状況などに応じまして、毎年度できる限りの削減数というものを計上しているわけでございます。一方、増員につきましては、国有林野事業それから造幣局につきましては増員というのはないわけでございますけれども、この現業の中でも郵政事業につきましては、郵便取扱部数、そういうものの増加等がございまして業務量が非常に増加をしております。したがいまして、必要最小限度の増員措置をする必要があるわけでございます。そういうことで毎年度増員数といいますものが増加してきているわけでございます。  繰り返して申し上げますけれども、純減数といいますのは、結局削減数と増員数との差し引きでございます。以上申し上げましたような事情の中で、純減数が減少しているということでございます。
  201. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうなりますと、これまでいろいろと見てまいりますと、定員削減という場合に、いつも削減の対象になると申しますか、削減の供給面と申しますか、それに重要な役割を果たしてきた、あるいは定員削減の目標を達成するための犠牲となってきた、こういうふうにも見られても仕方ないと思われます現業関係の定員については、これまで七次にわたる削減計画の実施で削減がそろそろ底をついてきた、もうある程度切れるところまで切ったというのが実態じゃないかと思うんですね。削減の数もどんどん年を追って減ってきているわけでございますから、そういうことが言えると思うんですが、定員管理を担当されている総務庁としては、定員削減の実態についてどういうようなお考えをお持ちでしょうか。
  202. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) この定員削減の仕組みといいますのは、現業それから非現業を通じまして、まず総数の膨張を抑制する、そして行政需要が常に変化しているわけでございますので、その行政需要の変化に対応して、既に決まっている定員といいますものをいつも見直す必要があるわけでございます。そして、その適正配置を図っていくということでございます。政府がみずから常に既定定員を見直して、その合理化努力を行うと、そういう仕組みとして、この定員削減計画といいますのは必須の仕組みであるわけでございます。  そういう考え方に立ちまして、昨年七月でございますけれども、第八次定員削減計画も閣議決定をされたところでございます。各省庁の定員事情というものを踏まえまして、現業を含めまして三万九千四十八人、これは三年度末定員に比較しますと四・五二%になるわけでございますが、それを目標として定員削減を行うということにしているわけでございますのでございますが、この定員削減計画といいますのは、昭和四十三年度から実施をしているものでございます。現時点におきます公務員の総数は抑制をしていく、しかし毎年度の定員需要というものにはこたえていくという、そういう仕組みとしてこの定員削減が位置づけられておりまして、今後とも継続されていくべきもの、そういうものであるというふうに考えております。
  203. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いよいよ平成四年度から、先ほどお話がありましたが、第八次定員削減計画が始まるわけですけれども、この第八次定員削減計画に示されていますところの平成三年度末の定員と、第八次定員削減計画で削減しようとしている削減目標数、これから各省別に削減率というのを出してみたのですけれども、削減率の最も高いのが農水省の一一・一三%で、これはもうダントツで高いわけですけれども、次いで北海道開発庁の六・四一%、総務庁の六・〇三%、建設省の五・七二%、労働省の五・五九%、こういうふうになっているわけです。逆に、削減率が低いのは、内閣官房、内閣法制局、公害等調整委員会の〇%。  そこで、素人でございますので疑問に感じますのは、大蔵省が三・四九%、環境庁は三・九〇%、科学技術庁は三・八二%、沖縄開発庁の四・七一%といったようなぐあいで、大蔵省よりも機構が小さい行政機関の方が大蔵省よりも削減率が高い、こういう状況になっているわけです。このように削減率が異なるというのは、定員管理を監督されている総務庁が、予算を握っている大蔵省に遠慮したのではないかとも思われるわけですけれども、それともどういう理由でこういうような状況になっているんでしょうか。
  204. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) 第八次の定員削減計画の省庁別削減目標数でございますけれども、この削減計画目標数を決定するに当たりましては、当然各省庁と十分協議の上決定するわけでございます。そういう過程の中で、職員の職種別に合理化あるいは効率化等による定員削減の、いわば難易といいますか、そういうものも勘案するわけでございます。また、各省庁の定員事情、そういうものを踏まえまして、削減目標を定めるということでございます。  御指摘の大蔵省でございますけれども、大蔵省につきましても、造幣局とか印刷局というものにつきましては、四・五%の削減率でございます。また、非現業ですと大蔵省は七万人強の定員でございますけれども、その九割は国税の職員、それから税関の職員でございます。そういう国税あるいは税関職員につきましては、削減計画をつくる上で、やはり特別な配慮を要する専門職種、そういうものが多うございますので、したがいまして、結果としてそういう数値になっているということでございます。
  205. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ところで、平成三年六月十二日に第三次行革審が出しました行革推進に関する意見、これを見ますと、臨調以降平成三年度まで、二度にわたり五年五%の定員削減計画を実施し、国家公務員の総数の膨張を抑制しつつ、その適正配置を進めてきた。平成四年度以降についても、行革へのこれまでの取り組みを緩めることなく、新たな定員削減計画を早急に策定すべきと、こうなっているわけでございますが、つまり、これまで実施をしてきた五年五%の「取組み姿勢を緩めることなく」となっているにもかかわらず、この第八次定員削減計画では、削減率は五%ではなくて四・五二%になっているんですね。これはどういうような理由によるんでしょうか。
  206. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) この定員管理につきましては、大変連年にわたりまして厳正な対応というものをしているわけでございます。二次臨調の一次答申が出ましたのを踏まえまして、この第六次定員削減計画ができたわけでございますけれども、昭和五十七年度からでございますが、平成四年度までを含めて考えますと、三万五千人を超えるそういう純減数になっているわけでございます。この第二次行革審の最終答申におきましても、行政改革の前進が見られた分野といいますものの、公務員総数の縮減というものも指摘されているわけでございます。  今回の定員削減計画の策定に当たりましては、従来行ってきました定員管理の実績、それから現下の行財政事情、そういうものを踏まえまして削減計画を策定したわけでございます。政府のこれまでの行政改革への取り組み姿勢、これが引き続き変わらない旨、こういう旨示すべきである、そういう姿勢を示すべきであるという行革審の意見、答申、そういうものに沿いまして各省庁とも御相談の上、今回五年間に三万九千四十八人という削減、これは先ほど申し上げましたように、三年度末定員の四・五二%に相当しているわけでございます。  第二次行革審でございますが、第二次行革審の最終答申で、定員総数の膨張を抑制しつつ。その適正配置を進めるべきであるという御指摘があるわけでございますが、こういう御指摘に沿いまして厳正に対応をしているわけでございます。そういう意味で、定員管理に対する姿勢というものは緩んでいるものではないというふうに考えております。  五%に準ずる削減規模というものは、当然こういう削減計画のいわば立案に当たりましては念頭にあるわけでございますけれども、この各省庁の定員事情等をぎりぎり見きわめまして、そういう積み上げの結果でありますので、そういういわば端数が出ているわけでございます。しかし、この行革審の意見あるいは答申に沿って措置をしているというふうに考えております。
  207. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いろいろと今御答弁ございましたけれども、この第七次の定員削減計画を決める際の第一次行革審の「今後における行財政改革の基本方向」、これでは、昭和六十二年度以降五カ年間で五%程度の削減をと、こう求めてきているわけですけれども、それに比べますと、第三次行革審の定員削減計画では削減数の具体的数字も明記されておりませんし、ただ単に「姿勢を緩めることなく」といった表現に変化しているんではないかと思うんですね。そうしますと、第一次行革審のときの土光臨調に比べますと、この第三次行革審の行政改革に対する考え方、行革の理念、そういったものが変化してきた、こう考えてもよろしいんでしょうか。
  208. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 国家公務員の定数管理につきましては、平成二年四月の第二次行革審の最終答申におきまして次のように書いてあるわけです。「定員の計画的削減等の方式を維持。継続し、総数の膨張を抑制しつつ、その適正配置を進める。」と指摘をいたしておるわけでございまして、第三次の行革審におきましても、平成三年六月の意見におきまして、ただいまの答申を踏まえまして、「平成四年度以降についても、行政改革へのこれまでの取組み姿勢を緩めることなく、引き続き過去二度の計画に準じた新たな定員削減計画を早急に策定すべきである。」というふうに言っておるわけでございまして、第三次行革審におきましても決して行革を後退させる、そういった考え方は持っておらないということを申し上げたいと思います。
  209. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほど、四・五二%のことについては局長の方からいろいろ御答弁がありましたが、長官にお尋ねしますけれども、平成四年度の増員要求を三年度と比べますと、三年度の七千四百六十人に対して、四年度は八千百六十二人で、これは七百二人増員となっているわけですね。この平成四年度七百二人の増加要員の主な職種はどんな職種ですか。
  210. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) 平成四年度の要求のうち増加しました主なものということでございますが、入国管理の関係が五十九人、外交関係が二十三人、国立学校が四十二人、航空管制等運輸省関係が八十人、労働省関係が八十二人、それから郵政事業の関係が二百三十四人、そういうようなものが主なものでございます。
  211. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この定員の増員要求につきましては、昭和五十三年度以降はシーリングが設定されておりまして、五十三年度は対前年度比二五%減、五十四年度は一五%減、五十五年度は二〇%減、五十七年度は行革が強く叫ばれたこともありまして五〇%減と。五十八年度は五%。それで、五十九年から平成三年度までは対前年度比七%城となっているわけですね。平成四年度が三年度よりも七百二人増になったということは、四年度の増員要求に対するシーリングはどのような基準で設定されているんですか。その点ちょっとお聞きしたいと思います。
  212. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) 先生御指摘のように、この増員要求基準といいますものを導入いたしまして要求数にシーリングをかける措置、昭和五十三年度のときにはこの増員要求数は二万六千強であったわけでございます。先ほど先生が御指摘になりましたようなこのシーリングを、年々厳しいシーリングをかけるということで推移をしてきたわけでございます。この平成四年度の増員要求基準でございますけれども、平成三年度は七千四百六十人になっているわけでございます。先ほど先生御指摘になられましたように、平成四年度八千百六十二人ということで増になっているわけでございます。しかし、考え方としましては、平成三年度要求数と同数とすることを原則としているわけでございます。ただ、定員査定の状況の中で各省庁の要求数がございますが、それに対しまして最終的な査定結果といいますものが頭打ちになってくるというところもございまして、そういう省庁につきましては三年度要求数の一〇%増の員数の範囲内の要求数を認めるという等の措置を講じたわけでございます。そういうところが違っているということでございます。  そのほか、この第八次定員削減計画のちょうど初年度目に当たるということもありましで、各省庁のいろいろ力中期的なそういう増員需要等の定員事情というものを勘案しまして、若干の調整も行っておるということでございます。
  213. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 今回、平成四年度で前年度と比べて七百二人の増加になったということは、総務庁がこれまで原則としてまいりました対前年度マイナスシーリングの方針を転換したんだ、こういうふうに考えられるわけですけれども、そのマイナスシーリングの方式を転換したと、こう理解してよろしいんでしょうか。
  214. 増島俊之

    政府委員(増島俊之君) 定員の増員要求につきましてのこの厳しいシーリングというものを設定するということにつきましては、やはりこういう厳しい定員管理の実現のためには、すなわち総数をふやさない、しかもこの行政需要に対応して措置をする。そういうことをするためには、各省庁におかれてもその省庁の中での御努力というのは当然要るわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、昭和五十三年度二万六千人強の増員要求数があったわけでございますが、現時点で八千人というような要求数自体についての縛りになってきたわけでございます。各省庁におきましても、やはり要求数につきましてある程度のアローアソスというものも必要であるということで、先ほど申し上げましたように平成四年度につきましてはその措置が政府の中で決定されたわけでございます。今後どういう方針をとっていくかにつきましては、毎年度概算要求のときにまた各省とも御相談をして政府として決められていくということでございます。  以上でございます。
  215. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この定員削減は、昭和四十四年の総定員法が施行されて以来今日まで二十四年間にわたって実施をされてきたわけです。しかし、最近の五カ年間の純減の推移を見てみますと、まず非現業では昭和六十三年度にはマイナス八百十三人、元年度はマイナス九十三人、二年度はマイナス四百八十三人、三年度マイナス三百二十四人と、いずれの年度もマイナスで推移してきたのですが、四年度は逆に百五十二人の増員となっております。また現業の純減を見ましても、昭和六十二年度二千六百三十七人、六十三年度は二千八百四十二人、平成元年度は二千九百七十六人七増加し続けてきていますが、二年度には二千六百六十五人、三年度は二千百七十五人、そして四年度は千五百二十四人と減少してきているわけです。  この定員削減のいわゆる供給面に大きな役割を果たしてきましたところのこの現業部門が、数次にわたる定員削減の結果そろそろ底をついてきた、これが実態ではないかと思うんです。加えて平成四年度の増員要求基準が対前年度比マイナスシーリングの原則から、平成三年度増員要求数と同数の員数とされたことは、定員削減というのは限界にきているのじゃないかと考えられるんですね。また、先ほど局長の方から話がありましたけれども、いろんな国際的な貢献の面とか、定員の需要が今ふえているわけです。外交あるいは国立医療機関、国立学校を初め、法務、労働等の各方面、あるいは郵政もそうですが、定員の強化が叫ばれてきておりますし、これらにどのように対応していくかということを考えますと、定員管理というのは非常に難しい局面にきているのじゃないかと思うんですね。  そういう点から考えますと、第八次国家公務員のこの定員削減計画の実施にはかなりの疑問を持っておるわけでございます。実質減を出せばよいという問題ではなくて、行政サービスの水準をいかに維持していくか、国民に対するサービスをどう向上させていくか、そういう観点に立ちますと、この第八次定員削減計画が今まだ実施をされていないわけでございますから、私は見直しをすべきではないか、こう提言をさせていただきたいと思うんですが、総務庁としてはこの計画が計画どおりの実績が出るとお考えなのか、その実績の見通しについて御見解を承りたいと思います。
  216. 岩崎純三

    国務大臣(岩崎純三君) 国家公務員の定員管理の目的は、御案内のとおり、総数の膨張を抑制しながら行政需要の変化によく対応いたしまして、既に決まっておる定員の見直しをし、適正配置をすることによりまして、国民の方から行政に対する信頼をされる、そうした効率的な業務処理体制を確立しようと、こういう考え方を持って行っておるところでございます。すなわち、あらゆる行政部門、職種を通しまして、社会経済情勢の変化に対応して、政府みずからが常に決まった定員を見直し、その合理化努力を行うということは当然のことでございまして、定員削減計画はそのためにも有意義なものであり、また欠かすことのできない仕組みとして導入をいたしておるところでございます。  第八次定員削減計画の策定に当たりましては、今日の行財政事情あるいは行革審の意見等を踏まえまして、各省庁の定員事情をぎりぎり見きわめながら各省庁ともに十分協議をするというか、話し合いをいたしましてその上で決定したところでございますので、この計画に従って適切な定員管理に今後ともさらに努めてまいりたい、このように考えております。
  217. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 終わります。
  218. 吉川春子

    ○吉川春子君 RF4Eファントム墜落事故について伺います。  去る三月二日、福島県平田村の水田に航空自衛隊百里基地に配備されている偵察航空隊所属のRF4E偵察機が墜落して乗員二名が死亡しました。亡くなられた二人の乗員におかれましては大変気の毒なことです。事故現場には民家も点在しており、さらに大きな惨事につながりかねない事故でありました。水田は、破片を回収しても土を入れかえないと稲も育たないなど農作業にも影響が出ています。  まず伺いますが、墜落したRF4Eの飛行コースは、百里基地から太平洋上に進出した後に左旋回し、日立または小名浜から陸地に進入したと思われますけれども、どういう飛行コースをとられたんですか。
  219. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 飛行コースといたしましては、大体ただいま先生がおっしゃいましたように、百里基地から離陸をいたしまして一度海に出まして、それから内陸の方に入りまして、さらに北上をいたしました。こういうコースでございます。
  220. 吉川春子

    ○吉川春子君 そのときの高度、それからどういう訓練をされていたんですか。まず高度から伺います。
  221. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 高度につきましては、約千フィートを飛行しておりました。訓練の内容といたしましては、ポイントを幾つか決めまして、そのポイントを偵察訓練をやりながら飛行して通過していく、こういう航法訓練をいたしておりました。
  222. 吉川春子

    ○吉川春子君 時間の関係もありますので、飛行コースとか、どこの管制を受けていたかとか、高度とか、それ後でもうちょっと詳細に文書で提出していただきたいんですが。
  223. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 提出できる範囲でお出しいたしたいと存じます。
  224. 吉川春子

    ○吉川春子君 できるだけ詳しく公表してください心  それで、事故原因はどういうことなんでしょうか。
  225. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 本日まで判明しておりますことは、機体の破壊、エンジンの火災、爆発、こういった突発的なふぐあいで墜落した可能性は低いというふうに考えております。  なお、現在鋭意事故調査中でございます。
  226. 吉川春子

    ○吉川春子君 そういう前提に立ちますと、あと残されたのはパイロットのミスということですか。
  227. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 必ずしもそういうことではございませんで、現在さらに鋭意事故調査中であるということでございます。
  228. 吉川春子

    ○吉川春子君 その偵察機の飛行訓練の区域ですけれども、通常との区域で、具体的に県名などを挙げていただければと思うんですけれども、どの区域で偵察飛行訓練をやっていますか。
  229. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 偵察航空隊の陸上での航法訓練は、中部地方の上空でいたしておりまして、具体的に県名を挙げますれば、北は宮城県、山形県、南は長野県、山梨県、その辺のエリアでいたしております。
  230. 吉川春子

    ○吉川春子君 新潟、栃木なども含むわけですね。そのほかにも含む県ありますか。
  231. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 大体そんな感じではないかと思います。
  232. 吉川春子

    ○吉川春子君 地域住民も自衛隊機の低空飛行訓練をたびたび目撃しているわけですけれども、どれくらいの頻度でこういう偵察飛行訓練をされているんでしょうか。
  233. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 一日数回程度というところでございます。
  234. 吉川春子

    ○吉川春子君 一日数回程度というと、百里には十四機の偵察機がありますね。それがそれぞれ一日数回程度やっているということですか。もうちょっと具体的に詳しくお知らせください。
  235. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 偵察航空隊は、このような陸上での航法訓練だけをやっているわけではございませんで、海上でも訓練をやっておりますし、海上の訓練空域でも訓練をいたしております。  また、こういった偵察訓練を行いながらの航法訓練以外に、通常の航法訓練などもいたしておりますし、ただいま申し上げましたのは、このたび事故が起きましたときにやっておりました偵察訓練をやりながら航法訓練を行っておるというものについて申し上げたわけでございます。
  236. 吉川春子

    ○吉川春子君 偵察を行いながら航法訓練をやっているというお話でしたけれども、偵察訓練の内容というのはどういうことをやるんですか、もうちょっと具体的に言ってください。
  237. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 偵察の訓練は、目視で行う偵察の訓練、カメラなどを使いましての偵察の訓練あるいはレーダーを使いましての偵察の訓練、そういったものでございます。
  238. 吉川春子

    ○吉川春子君 偵察の訓練の内容を伺っているわけですけれども、この訓練は非常に危険な訓練であると言われておりますけれども、この偵察訓練、低空飛行の危険性ということについては具体的にどのように把握しておられますか。
  239. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) このたび行っておりました航法訓練は、決して訓練自体としては危険な訓練ではございません。必ず千フィート以上の高度を守るようにきつく指導しておりますし、また、人家密集地の上空は避けて飛行するようにきつく指導をいたしております。飛び方といたしましても、決して曲技飛行でございますとかそういった飛行をやるわけではございません。また、対地航法用のレーダーなども使いまして安全な高度を保ちながら飛行をしておるわけでございます。したがいまして、この訓練自体は決して危険な訓練ではないということを御理解いただきたいと存じます。
  240. 吉川春子

    ○吉川春子君 これは、そうすると、パイロットが目視あるいは勘でやる、そういうようなことも一切されずに、全部計器で飛行するんですか。
  241. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 目視で飛ぶことももちろんございますけれども、対地航法用のレーダーもちゃんと持っておりますので、その助けも適宜かりながら飛行をするわけでございます。
  242. 吉川春子

    ○吉川春子君 米軍機が日本全国で超低空の飛行訓練をやっていることはよく知られておりますけれども、自衛隊も、超低空とまでいかなかったのかもしれませんけれども、かなり低空で危険な飛行訓練をやっているということが今回の事故につながったというふうに思うわけです。  こういう偵察訓練というのは何のためにおやりになるんですか。千フィートというと何メートルか、ちょっと念のため言ってください。
  243. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 千フィートは約三百メートルでございます。偵察の訓練としては高空で偵察をすることも。ございますし、これくらいの高度で偵察をすることもございますし、実際に行う行動の訓練を日ごろからやっておるということでございます。また、こうした訓練は災害派遣等にも大変役に立つわけでございまして、雲仙でございますとかあるいは大島、三宅島の噴火でございますとか、前回の日航機墜落事故の際でございますとか、いろいろ役にも立っておるわけでございます。
  244. 吉川春子

    ○吉川春子君 自衛隊は災害のために低空訓練をやっているんですか、そんなことないでしょう。私が伺ったのは、軍事目的でどうして低空訓練を行うのか、こういうことです。ちゃんと答えてください。
  245. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 災害派遣以外の我が国の防衛のための任務を果たします上には、偵察飛行を行うということは何にも増して大切なことでございます。そのための訓練を行っておるということでございます。それは、またあわせて災害派遣にも大いに役立っておるということを申し上げたわけであります。
  246. 吉川春子

    ○吉川春子君 低空で飛ぶわけでしょう。レーダーを避けて、敵のそういうレーダーをかいくぐるために飛ぶ訓練が低空訓練ですよね。なぜ日本の自衛隊が日本の領土内でそういう低空訓練を行う必要があるのか、その軍事的なねらいは何か、このように聞いていますので、災害の話は今回はいいです。ちゃんと答えてください。
  247. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 先ほどから申し上げておりますように、千フィートの高度、三百メーターの高度を守って飛んでおるわけでございます。それは決して極めて低空であるという高度ではないと思います。
  248. 吉川春子

    ○吉川春子君 防衛庁長官に伺います。もう押し問答になっています。  要するに、千フィートの高度でなぜ日本の自衛隊が偵察訓練を、低空の偵察飛行をする必要があるのか、なぜですか。どこのレーダーをくぐるためにやっているのですか。
  249. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 一般論として申しますと、よく例えば陸上自衛隊の戦車がなぜ必要かというような、これはちょっと今先生の御指摘の点と若干趣を異にしておりますけれども、私どもは専守防衛でございますので、侵攻を受けたときにこれに有効に対応して防衛機能を果たすということでございまして、侵攻がなければ当然そういう必要はないわけであります。しかし、抑止力としての力を持つというためには、国内に侵攻されたとき専守防衛で応戦するわけでございますので、そういった点の条件をも考慮して偵察飛行その他もやるわけでございまして、決して国外でどうのこうのということではございません。国内における専守防衛の体制をきちっとしたものとするための訓練である、こう理解をいたしております。
  250. 吉川春子

    ○吉川春子君 専守防衛の自衛隊がなぜ敵のレーダーをくぐるために低空で訓練する必要があるんですか。どこか外国へ出ていくというんだったらわかります。敵のレーダーから捕捉されるから、とにかく見つからないように千フィートであろうと五百フィートであろうと飛ばなきゃならないというのはわかりますが、今、大臣おっしゃったように、専守防衛だから日本の自衛隊というのはシベリアなんかまで行ったりしないわけでしょう。それなのになぜそういう訓練が必要なのか。戦車のことはもうきょうはいいですけれども、低空飛行訓練がなぜ必要かという点について端的に伺います。
  251. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) レーダーの下をかいくぐっていく訓練をやっておったというふうに考えておられるようでございますが、必ずしも千フィートで飛行していく訓練がレーダーの下をかいくぐっていく訓練だとは思っておりません。現にヨーロッパあたりはレーダーの下をかいくぐっていくのは百フィートの高度でやっております。百フィートと千フィートでは大分違うわけでございます。これが一つでございます。  それから、有事の際を考えました場合に、もし我が国に外敵が上陸してまいりました場合に、これを偵察に行くといたしますと、向こうは地上にレーダーをたくさん配置しておりまして、偵察機をキャッチいたしまして、これを当然迎撃してまいります。したがいまして、この訓練がレーダーの下を必ずしもかいくぐっていく訓練であったというふうには考えませんけれども、我が国侵略を受けた場合に、敵はレーダーを使わないということは絶対にあり得ません。何をおいてもレーダーを使ってまいります。
  252. 吉川春子

    ○吉川春子君 どこのレーダーをかいくぐるんでしょうね、日本の中で。どこの国のレーダーをかいくぐるんでしょう。つまり、本当に必要でもない訓練を、しかもソ連も崩壊したわけでしょう、何遍も国会でも論議になっていますけれども、ソ連も崩壊して、仮にソ連が元気のいいときは着上陸侵攻に対していろんなことが想定されたかもしれないけれども、私たちそういう立場じゃありませんけれども、しかし今となっては全くそういう訓練すら無意味だと思うんです。そして、そういう危険な訓練をあえて行う軍事的な理由も何もなくなっちゃったんじゃないかということを指摘しておきたいと思います。  そして、もう一つ伺いますけれども、防衛庁は、これまで実弾射撃を行う訓練、空中戦の訓練は言うまでもありませんけれども、低空飛行訓練についても指定された訓練空域で実施するというふうにしていたわけですね。
  253. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 昭和四十六年七月に雫石の事故が起きまして、八月に航空交通安全緊急対策要綱が定められまして、白米曲技飛行等は訓練空域で行うということになったわけでございます。しかしながら、曲技飛行に当たらない、通常の民間機が行っていると同じような態様の飛行になりますけれども、そういう飛行は航空法令で許される空域で行ってきたわけでございます。
  254. 吉川春子

    ○吉川春子君 では、要するに千フィートの航法訓練、低空飛行は訓練空域以外でも、つまりどこでも行う、こういうことですか。
  255. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 航空法で申しますと、航空路の計器飛行の最低高度よりも千フィート下、それよりも下の空域、それから計器出発進入経路よりも千フィート下よりも下の空域では有視界飛行を行っていいことになっております。そういった空域も使いまして航法の訓練を行っておるわけでございます。
  256. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと聞き取れなかったんですけれども、要するに千フィートの低空飛行訓練は訓練空域以外でも今やっている、こういうことですか。
  257. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) おっしゃるとおりでございます。  なお、最低の安全高度でございますけれども、これは運輸省令で定めがございまして、人家の密集地は原則三百メーター以上、人家がまばらなところでは百五十メーター以上、人家もなく人もいないところでは地表面以上でやっていいことになっておりますけれども、私どもは千フィート以上で飛行するようにきつく指導しておるところでございます。
  258. 吉川春子

    ○吉川春子君 一九八七年八月二十日の衆議院内閣委員会で防衛庁の長谷川教育訓練局長は、「偵察機であっても戦闘機と同様に訓練空域で行うわけであります。」、そして例えば、飛行態様が通常の民間機の飛行と何ら変わらない場合には空域的な制約というものはありませんと、こういうふうに答弁していますけれども、低空飛行訓練は訓練空域内でやるというふうに明確に言っているんですけれども、これはいつから修正したんですか、この答弁は。
  259. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) このたび行っておりました訓練は、先生がただいまお読み上げになりました一番後者の方の訓練でございます。曲技飛行等の訓練ではございませんので、訓練空域以外の航空法令で許された空域で実施しておる、こういうことでございます。
  260. 吉川春子

    ○吉川春子君 偵察機の低空飛行訓練を民間機の通常の飛行と同一視すると、そういうことですか、今の答弁は。
  261. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 飛行態様は同様のものである、こういうことでございます。
  262. 吉川春子

    ○吉川春子君 とんでもない答弁だと思うんですよね。これを、低空飛行訓練を民間機の通常の飛行と同じだなんて、そういうことはとても私はその答弁は納得できないわけです。指定された訓練空域でやるのは空中戦、実弾射撃だけだ、こういうことですね、そうすると。
  263. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 曲技飛行等の高度、速度、姿勢、そういったものを急激に変える飛行、これを訓練空域で行っております。
  264. 吉川春子

    ○吉川春子君 要するに空中戦あるいは実弾射撃訓練だけを訓練空域でやって、あとはもうどこでも日本の空、どこでもできるという考えは、これは米軍と同じですね。そして、従来の防衛庁の答弁とも変化していますね。米軍は実弾射撃を伴うもの、空中戦は訓練空域内でやるとして、ほかはもう事実上の超低空訓練は日本じゅうどこでもやって、大臣の地元の伊那谷なんかでも物すごい被害を出していますよね。私は長谷村とか高遠町まで見にいきましたけれども、本当に老人ホームの上であろうが保育所の上であろうが役場の上であろうがすれすれに飛ぶんですよね。そういうことを自衛隊機も今後はやるということなんですか。防衛庁長官どうですか。
  265. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この日米安保条約の地位協定その他によって訓練空域その他も決まっておりますが、今委員御指摘のように、米軍機の低空飛行、これも限度はございますけれども、実際は、委員御指摘のとおり日本全土で行い得る、こういうことになっております。  今、私の出身の村まで委員行かれたということでございますが、私の部落は過疎部落でございますけれども、確かに人家その他もございます。公共施設もありますから、私もそういった上空を超低空で飛ぶことの危険性、これは十分私も指摘してまいりました。そしてその要請をしてまいりました。私は具体的に申しますと、そういう超低空訓練をやり得る条件で、しかも民家のない谷合いとかそういうところまで指摘をいたしまして自粛を求めたことも率直に申しましてございます。そういう点がございますので、あくまでやっぱり訓練といえども我々国民の不安感を募るようなことであってはなりません。したがって、そういう角度から実施すべきものだと、基本的には私もそう思います。  しかし、今、訓練局長の申し上げておりますのは、自衛隊機といえどもこの民間の航空機と同じ航空法並びにその施行規則によりまして高度制限あるいは人家のあるところの高度制限等々の規制をかぶってまいりまして、この範囲内で訓練をいたしておるということを申し上げたわけでございまして、あくまでやっぱり安全性を確保するという見地は忘れてはならない視点だと存じております。
  266. 小池清彦

    政府委員(小池清彦君) 米軍機と自衛隊機のことにつきまして誤解なきようにお願い申し上げたいと存じますのは、曲技飛行等は自衛隊機は訓練空域でしかやってはいけないことになっておるわけでございます。しかし、米軍にはそういう制限がないわけでございます。ここが自衛隊機と米軍機の状態が違うところでございまして、自衛隊機が米軍機と同じ条件になったというようなことは毛頭ないわけでございます。
  267. 吉川春子

    ○吉川春子君 低空の飛行、そして偵察飛行を訓練空域だけではなくてどこでもできる、そういうことが米軍機と同じだと私は言ったんです。米軍機のもちろんこういう傍若無人なやり方は、もう大臣だって抗議しなければならない、申し入れをしなければならないぐらいのもので、もう大変なんですよ。やっぱり自衛隊の飛行機もそういう立場で今までどおり訓練空域を守って、少なくとも、私たちこういう訓練必要ないと思いますけれども、今までの答弁を超えてさらにどこでもできるんだ、こんな答弁は全く絶対に納得できません。ましてやレーダーをかいくぐるようなそういう訓練というのは何のためにやるんですか。さっき災害のときに役立つと言いましたけれども、そんなそういう詭弁でもって飛行訓練を正当化することはできません。時間の関係でそのことを申し上げて、もう一つの問題に移ります。  中国山西省残留部隊の戦後処理問題について厚生省にお伺いいたします。  この問題は、国会の各委員会で、また本委員会でも論議されており、戦後四十余年を経過していますけれども、関係者は一日も早く解決してほしいと切実に訴えておられます。  敗戦直後、中国の山西省に残留した二千六百名の将兵が中国国民政府の山西軍の支援のために戦闘を続行して多くの犠牲者を出しました。当時、軍は、一九四六年三月十五日に、残留した将兵全員を全員の知らない間に現地除隊として措置をとったため、軍人としての取り扱いを受けられずに物心両面で不利益をこうむったまま今日に至っています。私は古い会議録、そして関係者の証言などを読んでみましたけれども、当時の状況を考え合わせてみますと、個人の自由意思で残留したとはとても言いがたい状況だったのではないか、こういうふうに思いますけれども、厚生省、それでもやっぱりこれは、もうこの残留は個人の意思によってなされたと、こういうふうにあくまで主張されるおつもりですか。
  268. 村瀬松雄

    説明員(村瀬松雄君) お答えいたします。  ただいま御質問の、当時中国山西省にありました日本軍の第一軍でございますけれども、これにおきましては、山西軍に残留を希望する将兵に対しまして全員帰還の方針をもって説得しております。それで、これにもかかわらず、その説得に応ぜず残留した者に対しまして、当時の陸軍部隊の復員に関する規定に基づきまして現地召集解除の処置がとられたものであります。  それで、このことにつきましては、昭和二十八年から二十九年にかけまして山西省残留者の実情に関する調査を行いました。当時その調査に基づきまして、昭和三十一年に国会に御報告申し上げているところでございます。そういうことでございまして、私ども説得をしたけれども、しかしそれに応じないで現地召集解除措置をとられた、こういうふうに承知いたしているところでございます。
  269. 吉川春子

    ○吉川春子君 当時、確かに終戦になっておりまして、そして全員引き揚げの方針を政府が持っておられたということは事実だし、説得をされたという記録も残っておりますが、同時に厚生省もよく御存じのように、国会の参考人質問その他の証言では、やはり上官の命令、上官の命令は昔は天皇の命令と思えという教育をされたんだそうですね、その上官の命令でとにかく残ってくれということを強く言われて、そしてしかも日本に安全に帰れないかもしれないとか、日本に帰っても混乱のさなかにあるとか、いろいろ情報が飛び交う中で自由意思などというものではなくて、やっぱり上官の命令に従う、軍の命令に従うという形で残られた、残った方はそういう形だったと思うんですね。だから、それを個人の自発的な意思で残ったなどというふうに認定されるのは本当に残酷なことではないかと私は思うわけです。  今、この方々が団体をつくりまして二十一団体が集まって、そして三つの要求をされています。それは、山西残留犠牲者の公務認定、それからその現地除隊措置の取り消し、そして山西残留実情を究明するについて再審査の請求を求めておられます。  私は、当時もうまさに中国は革命のさなかで今の政府に刃向かったわけですね。そういう混乱の中にあったわけだから、自分で意思を決定できる状況にはなかったと思うんですよ。そういうこともよく勘案されて、戦後五十年近くたってまだこういう自分たちの思いを陳情し続けておられる方々のために十分に誠意を持って厚生省は接していただきたい、そのことを最後に要望して、時間ですので質問を終わりたいと思います。  何か、前向きにおっしゃることがあれば二言言ってください。
  270. 村瀬松雄

    説明員(村瀬松雄君) 今の御質問でございますけれども、当時におきます経過を私もう少し御説明申し上げたいと思うわけですけれども、どこの時期をとらえて上官の命令であったとおっしゃるかどうか、そういうことでございます。  確かに、おっしゃるように、ある時期におきましては、約六万人おったんですけれども、一万人ぐらい残さないと復員はさせない、こういうような、何といいますか、宣伝をしたということも伺っております。日本軍としましてはそれを受けまして確かに動揺をいたしました。それで、やはり我々が残らなければ部隊は復員できないんだ、こういうことになったことは確かでございますね。そのときは確かにいろいろと上官とかあるいは同僚の間で話し合ったというようなことも、私どもいろいろ調査の上承知しております。  しかし、その次の段階に参りますと、いろいろありまして、南京にあります支那派遣軍だとか、あるいは中国国民政府の方の指令が正確に第一軍に届いていなかった、そういうことがありまして、それが二十一年になりまして、支那派遣軍の方の総司令官がどうも山西軍の方の様子がよくわからないということで、総司令部の方から宮崎中佐、これは支那派遣軍の参謀なんですけれども、中佐を山西の方に派遣したんです。それで、実情を調べますと、果たして山西の方から正確な情報が支那派遣軍の方には入っていなかった、また山西軍の閻錫山という司令官ですけれども、それが第一軍の方に正確な命令を伝えていなかった、こんなことがありました。  それで、ようやくその時点で第一軍はそういう状況を知ったわけです。それから本格的な説得に入ったんです。それで、最終的に各部隊が、兵団長、それから部隊長、そういう人たちが、あるいは幹部、そういう方が積極的に説得に動いたわけです。その結果、二千六百人という方が残留をしたわけです。ですから、それにおいてもできるだけの説得をしています。部隊が二十一年の三月に、今お話がありましたように、復員する直前まで説得に努めております。そういう状況下で残られたと、私どももそういう実態、実情調査の中でそういうことを承知しております。  以上でございます。
  271. 梶原清

    委員長梶原清君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、大城眞順君が委員辞任され、その補欠として石渡清元君が選任されました。
  272. 磯村修

    ○磯村修君 防衛庁長官にお伺いします。  私ども連合参議院は、専守防衛という任務を持っております自衛隊の存在と、今、日本が置かれている姿というものは容認している立場にあります。しかしながら、防衛力整備の問題について一言触れさせていただきたいんですけれども、今非常に世界が大きく動いております。そうした中での防衛力整備の問題、つまり今は世界の情勢が変化しているということは、いわばかつての対立の時代から平和協調の時代へと、こういうふうに歴史が変わってきているわけですね。そしてまた、よく言われておりますところの平和安定化が進んでいる、そうした中での日本の防衛力整備というものも積極的にこれから見直しをしていく必要があるんではなかろうか、こういう考えも持っております。  そこで、防衛庁長官に、こうした世界の歴史が変わってきている中での日本の防衛のあり方、その基本的な理念というものをまずお伺いしておきたいと思います。
  273. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 連合の磯村さんから専守防衛についての御理解ある御発言をいただきまして、本当にありがたいことだと存じます。  今お尋ねの点は、今日の国際情勢が著しく変化しているのではないか、冷戦構造が終結した、こういう中で我が国の防衛のあり方について見直すべきであるという御質疑であったと存じます。私どもも世界の大きな流れとしてはそのような方向にあることを認識いたしておりますけれども、しかし、地域的にはかえっていろいろの民族的、宗教的あるいは地域的な紛争の可能性が大きいと思っております。これはアメリカの国防白書を私が引用するまでもなく、グローバルな地球的規模の脅威というものは消滅したけれども、地域的な脅威というものはこれはかえってクローズアップされているのではないかというのがアメリカの国防白書の見方でもございますが、私どももさように思います。そういった意味で、世界情勢の認識としては、決して冷戦構造が終結したからすべて平和で万々歳だというわけにまいらぬという認識は持っております。  しかるところ、一方、我が国の防衛力の整備の基本的な理念というのは、たびたび申し上げておりますように、防衛計画の大綱に基づきます基盤的防衛力構想でございます。したがいまして、この世界の情勢をどう認識するかということと直に結びつくものではないと理論的には言っていいかと存じます。しかしながら、そういう背景というものは当然私どもが整備していく上において考えなければなりません。特に、基盤的防衛力構想は五十一年につくられましたけれども、数量的にはおおむねその水準に達しておりますが、近代技術、軍事技術の発展に即応して、その近代化、効率化を図っていくということも当然なことでございます。    〔委員長退席、理事板垣正君着席〕  そうした考え方で、現在整備を図っておるわけでございまして、そういった意味でこの設備の更新、近代化、こういうことを主体にして正面装備も整備して、そして専守防衛という我が国の基本的な防衛政策の理念のもとにやっておる、こういうことでございまして、先生の御理解を賜りたい、こう思います。
  274. 磯村修

    ○磯村修君 ソ連の解体という大きな事件がありまして、世界の情勢は、これは紛争とか宗教的な問題などいろいろあるでしょうけれども、大局的に変わってきているんだ、こういう認識は、例えば先般の国会答弁の中で、宮澤総理は当面の問題として中期防の問題で答えております。  どのように答えているかと申し上げますと、こういう大きな国際情勢の変化があるときに、それではいかにも間延びをしているのではないだろうか、つまりこれは中期防室二年後に見直すということを前提にして答えたと思うんですけれども、すぐにもこの状況の中で、中期防をどういうふうにしたらいいかということを検討することが適当ではないかということを防衛庁長官と話し合った、こういうふうに答えております。そして、結論が出ればできるだけ早くそれを実行していきたいということで意見が一致した、こういうふうに述べております。    〔理事板垣正君退席、委員長着席〕  その後、宮下長官は国会答弁の中で、中期防は三年後の見直しを挙げているけれども、この問題は中期防の各種事業について検討を要する必要がある、したがって簡単にはいかない、例えば、整備計画というものを具体的に五年度に反映させていくためには六月ごろまでには見通しをつけなければならない、八月の概算要求時期には全体の姿というものを明らかにしていかなければならないというので、簡単には前倒しはできないんだ、こういう答弁をしております。  そうしますと、総理が言われておるところの、できるだけ早い時期に結論が出れば実施すべきだという趣旨の発言に沿わないんではなかろうかという受け取りもできるわけなんですけれども、その辺の見解をお伺いしたいと思います。
  275. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 御指摘のように、中期防には三年後の見直し規定がございまして、昨年の暮れの安全保障会議におきまして、総理から前広に検討を開始してほしい、正確に申しますとそういう表現でございまして、前広に結論を一年早く出せということではございませんでした、はっきり申しまして。しかしながら、我々といたしましては、中期防に三年後見直しの規定がございますから、早期に検討に着手するということで防衛力検討委員会をつくりました。  したがいまして、精力的にこれは努力をいたしておりますけれども、私が申し上げましたのは、そうは言ってもなかなかこれ簡単に数字合わせみたいなことで削減というわけにもまいりません。実際の作業、各幕僚監部等の作業もございますし、また、時期的に見ましても概算要求といいますと八月でございますけれども、それにはもう六月ぐらいまでには中期防の見直しの全体像を決めて安保会議、閣議で決めなくちゃいけない、そういうことは時間的に無理じゃないかな、そんな感じで申し上げておりまして、実際今の中期防自体が抑制的なものです。そして、その抑制的なものの中で、平成四年度予算もその精神にのっとりまして、一つの例を申しますと、三十二年以来の低い伸び率であるとか、伸び額もこれは五十五年以来の低い伸び額になっておるとか、主要装備の調達量も非常に減少しているとか、いろいろなことを申し上げてきておりますが、そういった傾向を十分加味しながら予算の編成をやっておるわけでございます。  私ども、決して中期防それ自体が年次割りでどうのこうのということではございませんで、今の平成三年度、四年度予算を見ますと、例えば正面装備でいいましても、中期防では平均二・三%のマイナスでいけばいいようになっているわけですね。全体として新規契約額が五兆円でございますから、その二・三、しかるところ平成三年度におきましては湾岸戦争の問題等もございまして、一千億は削減いたしますと、そしてなおかつ根っこに数%の減を見込んでおりましたから、まあ一六・二%くらいの削減率に去年はなりました。  その上に、さらにことしは平均伸率がマイナスで二・三でいいところを三・七くらいにいたしましたから、この二年を通じて見ても、今の中期防の中の正面装備の契約率は二割も削減している。  そういうことでございますから、実態的に申しますと、私どもは現在の中期防の中におきましても、そういったもろもろの事情を勘案いたしまして予算編成をしておりますので、平成五年度につきましてもいろいろの面から検討をいたし、この抑制的な中期防を頭に十分置きながら編成が可能であるというように見ておりますので、そういった趣旨のことを申し上げたわけでございまして、総理のおっしゃられていることと私が申し上げている点は、表現こそ異なれ、また、技術的な点の説明でも、私は所管大臣でございますから当然そうなりますけれども、それは食い違いはございません。
  276. 磯村修

    ○磯村修君 ちょっとくどいようですけれども、つまり、特別に前倒しをしてという意味ではないんですね、前広という意味は。
  277. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 前広と申しますのは、もう早期に検討してくださいと、そしてなるべく早く結論をという趣意は背後にあると思いますが、安全保障会議におきまして決められたことは前広に検討に着手するということでございます。その背後には、今、委員がおっしゃられたような、早く結論をという趣意がそれは読み取れる可能性は十分ございますけれども、そこはそこまではっきりと明確には総理も申されておりませんし、私どももこういう計画の修正でございますから、かなり慎重の上にも慎重を期しておるということでございますが、精力的には検討いたしております。
  278. 磯村修

    ○磯村修君 中期防は、この防衛大綱という基本的なものがありまして、それを前提にしていろいろと考えられているわけですね。  この大綱を読みますと、非常に現状の、今の状態というものがこれには明記されて、もちろんこれは五十一年の話ですから当然でしょうけれども、読んでいると現状に沿わないというふうな面もあるんじゃないか。したがって、これ大綱そのものを全面的に見直して、新しい防衛整備の基本方針というものをつくるべきことではなかろうかというふうな理解もするんですけれども、その辺のお考えいかがですか。
  279. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 防衛計画の大綱五十一年につくられましたものは、要約いたしますと、この趣旨、目的がまず一つでございます。それからもう一つ重要な要素は、今、委員御指摘の国際情勢だと存じます。そして同時に、戦略態勢それから三自衛隊の体制等に言及をいたしまして、そして別表で、その三自衛隊の体制の編成、装備の主要なものについて別表で掲記しておる。こういう構成になっておりまして、この情勢認識は当然違っております。これはもう言うまでもないことでございます。  しかし、私どもの基本的な考え方は、当時デタントの中でのそういう雰囲気の中で平和時に我が国のあるべき防衛力はどうかという検討を重ねてまいりましたが、今日といえども、これは世界の大きな変化はございますが、そういったデタントの考え方あるいは状況等がよりレベルアップされたものというように考えまして、この点は委員御承知のとおりでございますけれども、一昨年の十二月の二十日の前日にこの情勢判断について、改めて最近における国際情勢の変化を踏まえての認識を新たにいたしまして、翌日、今の中期防をつくったと、こういう経緯でございますので、情勢認識については御指摘の点は多々ございます。  その後、ソ連邦の解体もございます。しかしながら、基盤的な防衛力構想、あるいは我が国の平和時における防衛力のあり方と言ってもよかろうと思いますが、そういったものの基本的な考え方は、私ども専守防衛の立場をとる、そしてまたいろいろな各種の基本的な防衛政策、制約された基本的な防衛政策のもとでやる場合にはこの考え方自体は理念的な問題を含めて私はそう変えるべきものではないと思っております。  ただし、別表につきましては、現在の中期防におきましても、今中期防期間中に検討せいという項目がございます。これは人的資源の制約等でございまして、そういった点からの防衛力のあり方について検討するということになっておりますから、これはどうしてもやらざるを得ないと思っております。その検討の結果、次期防以降にその基礎になる防衛計画大綱の別表のあるいは変化、そういうものもあり得るということを申し上げておるところでございます。
  280. 磯村修

    ○磯村修君 ちょっとPKOに関連してお伺いしたいと思うんですけれども、私ども連合参議院は、このPKO法案につきましては大変国の基本方針にかかわる問題ですから慎重に我々検討を進めているわけなんですけれども、基本的には、PKO法案の中のFの部分についてはこれはまだ国民的な合意に達していないという意味合いにおいて削除したらいかがなのか、こういうふうな考えを持っております。それから、やはり国際貢献ということはもちろん人的な貢献というものは必要でありますから、やる場合にはこれは別組織でやるべきである。さらに、国会の承認を必要とすべきである。こういう三点につきまして基本的な考えを持っております。  そこで、防衛庁長官にお伺いしたいんですけれども、大変今この自衛隊の海外派遣につきましては国論が非常に分かれているわけですね。賛成あるいは慎重、反対というふうないろんな論議が大きく分かれているんですけれども、そういう中でこの問題を考えていくためには、やはり国論が分かれているということは、つまり国民の合意が形成されていないということであるだけに、慎重に対応すべき問題ではなかろうか、こういうふうに我々は考えております。  したがいまして、こうしたいろんな国論に対しまして長官としてもやはり耳をかして、いろんな世論を聞きまして、そしてこの問題に対処すべきではなかろうかと思うんですけれども、まずその辺の長官の所感を伺っておきたいと思います。
  281. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私がPKO法案の構成その他条件等について今さらここで申し上げる時間もちょっとございませんし、重々御承知かと存じますけれども、これは国際連合の要請に基づく我が国の平和的な戦後処理の国連への貢献でございます。そういった意味で、我が国我が国単独で政策遂行としてやるんじゃなくて、国際協力の一助として各国と協調のもとで行う業務であることはこれは間違いございません。そういう点で、私どもは、このPKO法案は平和的なこれからの国際貢献を日本が迫られる一つの有力な場面の中の一つの手段だと考えておりまして、これはぜひとも御理解をいただきたいなと思います。  他方、委員の御指摘のように、国民的な合意がありませんとなかなかこうした問題は本当に成功できないと私も思います。国民のみんなが理解を示してくださることが非常に大切だと存じます。しかしながら、一〇〇%というわけにいかないにしても、今までのいろいろの各種の世論調査、先生のおられたNHKの世論調査等でも六十数%は出してもいいんじゃないかとか、あるいは私どもこれは新聞で拝見いたしまして、現物は見ておりませんけれども、これは確かな数字だと存じますけれども、自治労の世論調査等々の報道もございます。  そういった問題をいろいろ考えますと、これはこれから我々の努力によってさらに国民的な理解を国会の論議等を通じて、あるいはその他の場所においても深めていくということが実に重要なことだと存じております。これからの国際貢献、我が国は経済的な支援ももちろんでございますけれども、人的な貢献、これはどうしてもなさざるを得ないわけでございまして、その場合には自衛隊の、今別組織というお話もございましたけれども、せっかく訓練された組織機能、こういうものを活肝いたしまして平和的な業務に従事することは、私どもとしてこれからの本当にあるべき姿じゃないかなというような感じを持っておるところでございます。
  282. 磯村修

    ○磯村修君 この問題につきましては、大変今世論が分かれている。そうしたいわば国民の合意が得られていない状況の中で、防衛庁の施策というものを見ますと、例えば今の国会にはPKO法案のほかに自衛隊の一部改正案が出ております。飛行機飛ばすとかあるいは救援活動に向かうとかという三つの法案が出ております。そういういわば国民の合意がまだまだ形成されていない中で、次から次へとそういうものを出してきてその下地をつくろうとしている、それがやはり国民が大きな疑問を持っているわけなんです。  つまり、国民である我々は合意してないじゃないか、なぜ、政府はどんどん次から次へと自衛隊を送り込むような施策を展開していくのかという一つの疑問が国民の間に現実にあるわけなんです。例えば国土防衛という自衛隊法三条の任務規定、それにプラス政府が考えていることは海外貢献という任務というものを織り込もうとするわけなんでありますけれども、実際は任務規定に規定せずして、いわば受託行為的なことでもってやろうというふうな、いわば自衛隊の姿というものがこういうふうに変わってきているんだという意味を薄めながら合意を得ようとしている、何かそういう一つの矛盾を感ずるわけなんです。また国民も大きな疑問を持っているわけなんです。その疑問に答えてください。国務大臣(宮下創平君) 今、御審議をお願いしておりますのは、継続案件でありますPKO法案と国際緊急援助隊法、それから今度閣議決定をいたしまして審議をお願いいたそうとしておる邦人救出のための自衛隊機、主として特別機でございますが、これの使用の問題でございます。いずれも自衛隊が海外に出ていくという形の上ではそういう形をとっております。しかし、我が国の専守防衛の基本的な立場、つまり海外において武力行使はいたさないという基本的な精神のもとにいずれも貫かれていることは間。違いございません。 そういう意味で、邦人の救出も当然他国の民間機を利用するとか、いろいろそういう方法もないわけではございませんけれども、非常に過去の経験からいって効率的に邦人を救出できなかったという反省もございます。特別機をたまたま購入いたしましたから、これも邦人救出に使いたいじ、同時にPKOの中で委託業務等がございますれば、それらをまた輸送委託ということにも使わせていただきたいし、それから国際的に他国が大災害で救援を求めているときには緊急援助隊としてこれを派遣する。いずれも平和的な目的でございますし、これから国際的な貢献をしていこうという精神のあらわれでございますので、まあ議論は議論として限界的なケースが衆議院におきましてもまた参議院におきましてもPKO法案を通じていろいろ議論はございますけれども、基本的に私どもはそういう趣旨のものであるということを確信しております。  この点をよく国民の皆さんに理解を求めていかなければいけないし、そしてまた、周辺諸国についての理解も求めていく。先ほど官房長官江沢民さんにもその旨を伝えられたとさっき答弁がございましたけれども、私どもはもっともっと国民に対し、また諸外国に対しても理解を求めて、そして真意のほどを本当に理解してもらった上で、祝福されて自衛隊がそういう平和業務につけるような条件をつくるようにしていきたいものだ、こう思っておるところでございます。
  283. 磯村修

    ○磯村修君 例えば防衛予算等にも、あるいはこれからの防衛庁の施策としての中にも、いわばまだこれからPKO法案というものがどういうふうに動いていくのかわかりませんけれども、ともかく継続審議になっている法案でございますね。  そうした中で、例えば先日の予算委員会でも問題に取り上げられました地雷原処理車ですか、こういうふうな装備だとか、あるいはペルシャ湾に行った掃海艇をさらに大型化し航続距離を長くするとか、さらには輸送船を大型化していくという、いわば海外派遣につながる法案がどうなるかということがまだ論議の過程の中でもって、装備はどんどん先行していく。そういういわば先行調達といいましょうか、先取り調達といいましょうか、そういうことが非常に問題ではなかろうか、こういう指摘もあり、私もそう考えます。  やはり法治国家である以上は、法律がきちっとしてからやるべきことであって、行政が先に先行するということは余りにもこれは国会審議している過程というものを軽視しているんじゃなかろうか、こういうふうに私は疑問に思うんです。そういう意味合いにおいて、そういう先取り調達、そういう問題につきましてお伺いしたいと思うんです。国務大臣(宮下創平君) 今、磯村先生御指摘の三つの、地雷原の処理車とか掃海艇、輸送船の建造等について言及がございました。これはしかし、直接的にPKOの任務が必要であるから調達するというような視点から、建造をあるいは取得を計画しているものではございません。  例えば地雷原の処理車について言いますならば、これは五十九年から技術研究本部で研究をする予算をつけましてずっとやってまいりまして、ちょうどたまたま平成三年度にその研究成果があらわれて実用化の可能性の域に達したわけでございまして、今、国会でPKOが議論されておりますので、それを結びつけられるということはちょっと本来の目的からしていかがかと思います。しかしそういうものができまして、もしかPKFで例えばカンボジアにおける地雷処理というような要請がございますれば、それを利用することも十分それは考えられることで、否定すべきことではないと存じます。  また、掃海艇も、これはペルシャ湾における掃海業務というのは非常に国際的な評価が高こうございます。平和的な業務として私はすばらしい仕事をしたと思いますけれども、こういったものを補強する意味で掃海艇の新造もやっておりますし、輸送艦も新造船の必要性があってやっていることでございまして、PKFその他の任務が与えられた場合にはすべてがそれに利用できるかどうか、その任務の内容いかんによりますけれども、それが貢献できるものであれば今御指摘のような点は利用可能かという感じは一般論としていたします。  そういうことでございますので、私どもはPKOに対していろいろそれでは準備していないのかどうかといいますと、率直に申してこれは準備をいたしております。それはどういう準備かといいますと、いわゆるソフトウエアといいますか、私も着任して以来このPKOの問題に取り組まさせていただいております。自衛官を中東地域に、現にPKOがどういう活動状況でどういう役割を果たしているかということを中東に派遣して調査をさせ、その報告も受けております。そしてまた、PKO法案が通りませんとできないようなことはいたしておりませんけれども、防衛庁として当然このPKO業務というのは、これからの国際貢献で必要であるという認識のもとにいろいろの面の準備をしている。例えば語学教育でございます。やっぱりPKOですと語学がある程度できないと、監視団に行くにしても何にしてもできません。  そういう点の配慮をしていることは事実でございますけれども、それ以上のものでもないということをはっきり申し上げておきます。
  284. 磯村修

    ○磯村修君 この問題については、また機会がありましたらいろいろと論議したいと思っております。  もう時間が来ましたので、一言、外務省の古いらっしゃいますね、お伺いしたいんですけれども、先日カンボジアのフン・セン首相がこちらへいらっしゃったわけですけれども、突然来まして、そしてまた今のカンボジア情勢に対応してほしい、自衛隊をよこしてほしいというふうな要請があったようでありますけれども、大変これは、私どもその報道を見ておりまして不自然に受け取ったわけなんです。なぜ彼が来て突然としてそういう要請をしたのか、非常に異例な要請であると私は思います。  これは外務省と事前の協議があったのかどうか。そしてまた、こうした国内世論がまだ合意されていない状況の中で、そうしたポストにある方が来て自衛隊要請をするということも、私はちょっと常識的に考えられないというふうな受け取り方をしたんですけれども、その辺、そういうことを考えていきますと、何か演出があったんではなかろうか、こういうことも勘ぐるわけなんですよね。特にこれは一般の人はそう受け取りますよ。今これだけ国論が。分かれているんだから、少し世論をあおると言っては語弊があるかもわからないけれども、自衛隊派遣論を高めようというふうなそういう一つのやらせがあったんじゃないがというふうな、そういう受け取り方もされております、現実に。  そういう意味合いにおいて、あったかどうか知りませんけれども、とにかく不自然な姿であるというように私は理解しておりますけれども、外務省の見解をお伺いしたいと思います。
  285. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) よい機会でございますから御説明をさせていただきたいと思いますが、実は、先般フン・セン首相が述べられた自衛隊の派遣につきましては、確かに東京でなさった発言でございましたから非常に大きく日本の新聞には出ましたけれども、私どもはあのような考え方、カンボジアの首相、領袖の考え方はっとに聞いておりまして、私どもはしたがいまして別に不自然ではない、いつもおっしゃっていることを改めて東京でも言われたのだなというふうに受けとめました。確かに新聞にやらせというような、今そのようなお話もございましたけれども、そのようなことは全くございません。非常に自然にあのようなお話が出てきたわけでございます。これは明確に申し上げておきたいと思います。  そこで、フン・センさんがおっしゃっておりましたのは、御案内のように、ただいまカンボジアは和平は到来いたしましたものの、今彼が必死になって求めておるのは、先ほど来お話のあるUNTACの展開なんでございます。したがって、そういう思いが非常に強いものでございますから、内政干渉にわたるつもりはないとおっしゃりながらその辺のことをおっしゃったわけで、フン・センさんが総理大臣等に申しておられたのは、日本が今日までカンボジアの和平のために御案内のようにいろいろ汗をかいてきた、努力もしてきた、金だけではない努力をされてきた、その日本の旗が見えないのが非常に寂しいということを言っておられました。  いずれにいたしましても、事前の打ち合わせで、ましてや私どもからああいうふうな発言を要請し、その結果あのような発言が出てきたのではございませんで、かねてからシアヌーク殿下、チア・シムさんという国会の議長がおられますけれども、そのような方、そしてフン・センさん御自身が、例えば田邊委員長がプノンペンにいらっしゃったときも同じような話をされておったわけでございます。
  286. 磯村修

    ○磯村修君 終わります。
  287. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 防衛問題で質問したいと思いますが、既に委員の方も言われておりますから、共通した面は省きまして、違う面だけをやりたいと思います。  現在、東西冷戦が解消しまして、世界は対立から協調へ向けて大きく動き、また各国間にも軍縮の動きが進められようとしております。特に我が国にとっては、潜在的脅威の対象であったソ連が解体されまして、当面の脅威も薄れつつある、こういうような環境からすると、やはり我が国もこういう際に防衛力をどんどんふやすというような世界環境ではないということが言えようかと思います。  それからもう一つは、国内の事情も非常に経済不況になりまして、予算が非常に厳しくなってきておる。こういうような事情からして、やっぱりここは何らかの形で防衛力の削減が可能ならば考えなくてはならない、こういう状況だと思います。  民社党も衆議院における予算審議を通じて、中期防の見直しあるいは防衛政策の見直しによって防衛費の削減の方向に努力するように政府に要請をしたところでありますけれども、まだ政府自身も中期防の見直し、これは前広に検討をする、そして総枠は一千億円プラスアルファの削減をする、こういうような言及もされております。さらには、大綱の別表の見直しとそれに関連する本文の見直しについてもそのような意向がうかがわれるわけでありますけれども、しかし、私は何となくいかにもその場逃れの印象を受けるわけです。私は、現在の状況からすると防衛費はどんどんふやすような環境にはないわけですけれども、しかし日本の防衛の体制、これが果たして十分なのか、問題はないのか、そういう点をよく検討してみる必要があると思うんですね。  したがって、まず最初に、防衛庁長官日本の防衛のあり方についての問題点をどう考えておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  288. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今日の国際情勢は、今委員御指摘のとおりでございます。しかし一方、やはり先ほど御答弁申し上げましたが、地域的なあるいは宗教的な民族的な対立抗争というものほかえって東西の冷戦時代よりも発生の可能性が多いと見る向きもございます。私もそのような傾向は否定できないと存じます。そういう中でございますから、我々は基本的にはこういう国際情勢の基調というものを正確に見きわめて、そしてこれに対応していかなければならないと基本的にはそう考えております。  しかし、我が国の防衛力は委員御承知のように、基盤的防衛力構想という防衛計画の大綱に従って整備されてきております。そして、量的な水準としてはほぼ四次防をもって大体この辺でよかろうと。しかし質的な改善充実は、これは当然なさなければならないという発想のもとに今日まで防衛力の整備をやってきておるわけでございまして、基本的には基盤的防衛力構想に立ったものということで、世界が例えばソ連はああいう格好で解体しました。米国におきましても、大幅な戦略的な戦力を中心に削減計画が立てられております。あるいはヨーロッパにおきましても一部の国ではそういう傾向もございますけれども、例えばアジアにおいて私も防衛力を減らした国があるかどうか調査いたしましたが、決してございません。そういうようないろいろな傾向全体を見まして、よくその流れを見て安定的にひとつ防衛力の整備というものは考えていかなければならないものではないかと思っておりまして、基盤的防衛力構想に立った今の我が国整備のあり方というものは間違いないのではないか、そして中期防自体も委員御承知のように、非常に抑制的なものになっております。  そしてその二年目といたしまして、平均伸率その他から見ましても非常に抑制的になっていることも事実でございまして、この上にさらに中期防策定後のソ連の解体その他の世界の大きな変化もございますので、この総枠の範囲内で見直しを検討しましょうということも申し上げておりますし、また基本的に自衛官の充足その他の問題もございます。有効求人倍率も非常に高いわけでございまして、自衛官の募集も大変困難をきわめておりますから、そういった人的資源の点から防衛力のあり方について全体として検討し、防衛計画の大綱の別表に及ぶような検討までしておるということを申し上げておるわけでございます。
  289. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、国の安全保障とか防衛というものは自衛隊だけでやるものじゃないと思うんですね。それから、ややもすれば正面装備の論議ばかりがされておるような気がするわけです。今、防衛庁長官も基盤的防衛力の水準からすればまあまあのところまで来たと言うけれども、これは正面装備のことを主に言っておられるような気がするわけです。防衛力が多過ぎるとか少な過ぎるという論議にしても、やっぱり正面装備が一番中心になっておるような気がします。それで、私は日本の防衛の体制が本当にちゃんとしておるかどうかというと、非常に不安の念を禁じ得ません。  なぜかというと、まず一つは国を守るというその理念というものが明確になっていない、個民の間にですね、明確になっていない。あるいは政治の場でもそうかもしれません。それから第二の問題は、防衛の問題について国民のコンセンサスが十分できておるとは言いがたい。第三は、自衛隊と国民との関係です。先ほど、自衛隊だけが国を守るものではないと言いましたけれども、自衛隊と国民との協力体制とか連携とかということについてどれだけ体制が整っておるのだろうか。内閣委員会でも自衛隊の基地を視察に行きますけれども、どこへ行っても感ずることは自衛隊の幹部の方は国民との関係ということに非常に気を使っておられます。自衛隊が国民から嫌われないように、国民から愛されるようにということで非常に気を使っておられますけれども、私は嫌われるとか好かれるという次元の問題じゃないと思いますね。いざというときに、自衛隊が国を守るために戦うときに、国民がそれにどう協力するのか、そういう点が全くできていないと思うんですね。そういう点考えても、基盤的防衛力のまあまあのところまで来たとは到底言えないのではないか、こういう気がします。  それからもう一つは、基盤的防衛力構想の中でも後方支援の体制を含め、均斉のとれた防衛体制ということがうたわれておりますけれども、これが果たして十分だろうか、私は疑問に思います。人の問題ということを防衛庁長官も言われましたけれども、もう人が集まらない。なぜそうなっておゐかということを考えないといかぬと思いますね。自衛隊の宿舎にしてもまだまだ低い水準です。それは昔の軍隊はもっとひどかったといえばそうかもしれませんけれども、やっぱり今の国民の若い人たちの生活水準を基準にして隊員の処遇を考えていかないと人が来ないのは当たり前です。それから、先ほども同僚の委員から触れられました若年定年あるいは早期定年、その後のその人たちの処遇の問題、就職の問題、こういう体制を整えない限りやっぱり人の問題は解決しないのは当然であります。こういう点も非常に不十分なままである。  それからもう一つ挙げますと、防衛計画の大綱の中でもこういうことが書いてありますね。「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意」、これは今のような状態を指しておるのではなくて、むしろ危機が高まって、もっと防衛力を増強する必要がある場合にスムーズにそれができるような体制という意味ですよ。これは、基盤的防衛力でできることというのは、限定的な小規模の侵略に対処すること、これはどういうことかというと奇襲であります。あらかじめ予想されるような大規模な侵略じゃなくて、奇襲によってある程度の既成事実を敵がつくる。全面的に日本侵略するんじゃなくて、どこかのある地域を限定的に占領して、奇襲によって既成事実をつくろう、そういうところに対応し得る力を目標としておるわけであります。そうでない侵略というものは日米安保に頼るしかない。  そういう点を考えた場合に、この情勢の変化に対応して円滑に移行というのは大体どういうことをいうかというと、これも防衛白書の中に書いてありますけれども、例えば防衛関連産業の育成、必要物資の備蓄、民間救護組織の整備、建設、運輸、通信、科学技術、教育等の各分野における防衛上の配慮、こういうようなことがありますけれども、私はこれもできていないのではないかと思いますね。  それから、もう一つ大きなことはやっぱり日米安保体制であります。これは、我々は当然のこととして受けとめて、またこれから先も続くであろうということを想定しております。もちろん防衛計画の大綱もその想定のもとにつくられておるわけですけれども、しかし日米安保体制自体、冷戦時代が生み出したものだと思うんです。アメリカがソ連勢力と対抗する必要上、日本を守ることはアメリカの利益である、日本にまで基地を置いてアメリカ軍を派遣することはアメリカの利益である、そういう前提のもとに出しておるわけでありますから、米ソの対立というものが本当になくなってしまえば、アメリカがわざわざ日本にまで軍隊を派遣する理由はどこにあるかということになろうかと思います。一番手ごわい経済的な競争の相手をそこまでして守ってやる必要がどこにあるか、こういう世論がアメリカの中で出てくるのは当然であります。  既に、アメリカは現在大統領選予備選の最中でありますけれども、ブッシュは苦戦しておると言われておる。そして、ブッシュに対抗しておる候補は、ブキャナンにしても、共和党の対立候補にしても、民主党の候補にしても、全部孤立主義を非常に色濃く出しておるわけですね。もはや、アメリカの世論はそういう方向に行きつつある。たとえブッシュが勝ったにしても、従来のようなブッシュの考え方による政策の遂行は非常に困難と見なければなりません。こういう点を考えた場合、私は基本的に日本の防衛のあり方というものをここらで再検討してみる必要があるんじゃないかと思いますが、この点について大臣はどう考えますか。
  290. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 田渕先生から大変広範な、基本的な問題についての御指摘がございました。私も非常に同感する面が多いわけで、あえて重複を避けますけれども、我が国の防衛の基本的な方針というのは、「国防の基本方針」、これは三十二年に定められたものでございまして、基本的には外交戦略によって平和の枠組みをつくる、それから民生安定、それから必要最小限度の自衛力の保持、それから国連による平和の維持、しかし、それができるまでは日米安保体制を基軸とするということが明確に述べられておりまして、これに基づいてやっていることはもう指摘するまでもございません。  私は、先ほど正面装備の点について重点を置いて答弁を申し上げましたが、基本的にはそういう発想というか、考え方のもとに今いろいろ申し上げておるつもりでございます。そして、正面と後方とのバランスの問題、これは確かに委員御指摘のとおりでございまして、私どもも、この平成四年度予算も伸び率としては三・八%、これはもう本当に昭和三十五年以来、三十二年ぶりの低い伸び率でございますけれども、この中におきましては、隊員の宿舎、隊舎の改善、あるいは厚生施設、あるいはまた隊員のいろいろ賞じゅつ金等々、処遇の問題、これはあとう限り努めたつもりでございます。そして、やはり人的資源の制約と申しておりましても、これは自衛隊が魅力があるものでなければ人は集まりませんし、それから先生が大変重要な視点を申されましたが、国を愛する気持ち、これをどうやって若者の間に本当に理解していただけるが、これは私は一番基本的な問題であろうかと思います。単に人数をそろえただけではどうにもなりません。本当に我々の国を守り、そして国民の生命、財産を守っていくんだ、これは崇高な使命であるというような若者の意識がどうやったら出てくるか、これは私は大変中心になる課題だと思いまして、先生の御指摘はまことにその点にお触れになられて、私は意を強うしておるところであります。  なお、円滑な移行という問題、これは確かに防衛計画の大綱に明記してございます。小規模の戦力といいますか、自衛力を持って、しかし必要に応じてそれがある程度、侵略を受けたときにエクスパンションできるということであろうと存じますけれども、それにも限度がございます。したがって、日米安保条約という枠組みによってこれを補完し、我が国の基本的防衛政策、非核三原則、その他制約の中で米国の来援を求める、それが抑止力になった、こういう構図になっております。  委員最後に御指摘になった点は、見方によれば日米安保条約は冷戦の産物であったと、したがって、今後我が国の防衛力のあり方を考える際には、日米安保条約だけではだめなのかどうかというような、あるいは言外にそんな意を感ぜられますが、私は、やはり日米安保条約というものはこれからも大変大切なものであると思います。  経済的な摩擦があっても、防衛上の問題その他、これがリンクするということは今までかってございません。そういう点では、アメリカも、アジアの安定、日本の安定、それから極東における安全、安定、これはアメリカの国益にとっても重要なものであると思いますし、何よりも我が国自身と我が国をめぐる極東の安全のためにこの米軍の抑止力、駐留と申しますか、これは非常に重要なことだと存じます。そして、我々はこの必要性を今後といえども認めてまいりたいと思います。そして、なぜかといいますと、それは我が国が自分だけで国を守ろうという防衛力を持とうとすれば、今のような防衛費だけではとてもこれに対応することはできないものだと存じます。そして同時に、アジア諸国の日本の軍事大国化がいろいろ議論されますけれども、このアジアの諸国も日米安保条約があればこそ、そこに安定性というものを基本的には持っておられるのではないかと思います。  そういう意味で、これから米ソの対立構造から局面は変わってまいりますけれども、安全保障の枠組みというものは基本的には日米安保条約というものを基軸として、そしてその中で日本をめぐる極東アジアの安全保障の枠組みを考えていかなければならないと、このように存じておりまして、大変いろいろ傾聴に値する御意見をいただきまして感謝申し上げます。
  291. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、愛国心と言われましたけれども、愛国心というよりも国を守るというその理念をどこに置くかということをもっと鮮明に出す必要がある。そのもとになるのは基本的人権だと思うんですよ。基本的人権を守ることに反対の人はおりません。基本的人権というのは個人の生命、財産、それから自由です。思想の自由、信教の自由言論の自由、結社の自由、これは基本的な自由です。生命、財産、基本的な自由を守ることがやっぱり基本だと思うんです。こういうものは他者に支配されたら侵されるわけです。外国に侵略されて基本的人権が完全に守られておる例はありません。だから、我々日本国民が基本的人権を守る国として成立しておるならば、やっぱりそれを守るというような国民の共通の意識をつくっていかないといかぬと思うんですね。  こういう点について、私は今の防衛の体制も戦後生まれた経緯は非常に異常なものだと思います。日本は敗戦国です。武装解除をされて全く非武装から出発した。それが朝鮮動乱が起こって、警察予備隊ができ、それが自衛隊になってきたわけです。その過程でやっぱりアメリカの影響力が非常に大きいもとでやってきたものですから、逆にアメリカ依存の体質ができておるわけですね。  それから、正面装備の増強についてアメリカからの要請に応じて何とかつじつまを合わせるのに精いっぱいで追っかけてきた。だから、肝心の日本切国独自の防衛の理念とか、防衛の政策というものは本当にあったんだろうかという気がするわけです。また現在でも、私はアメリカに甘え過ぎているんじゃないかという気がするわけです。しかし、日米安保体制はこれからも継続した方がいいと思います、アメリカが望むならば。日本にとってはこれはあった方がはるかにプラスであります。しかし、向こうの都合もありますからね。  それから、もう既に日米安保体制ができてから四十年経過しております。歴史を見ても国と国同士の同盟というのは永久に続いた例はないわけでありますから、いつかはこれがなくなる時代が来るわけです。そういう点を考えると、やっぱりこの際もう少し広く深く防衛の問題を突っ込んで検討することが必要ではないか。単なる中期防の見直しとか、大綱の別表の改正とか、そういう問題で解決する問題ではないのではないかと思います。防衛計画の大綱をつくるときも、政府は防衛を考える会を防衛庁長官の諮問機関としてつくって、広く民間の意見も聞かれました。私は、今のような大きな変化のときにはやっぱり広く民間の意見も聞いて、そういう諮問機関のようなものをつくって検討することも必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  292. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員御指摘の守るべき理念、これは私も基本的に委員の御指摘のとおりだと存じます。我が国の自由主義国としての価値観、基本的人権尊重、自由、民主主義、こういう価値観を守っていくということだと存じます。  同時に、安保条約につきましても、無条件に今までみたいに確かに安心をしておればいいという状況ではございません。私もそれは感じます。しかし、委員も御指摘のように、日米安保条約の必要性、そのとおりだと思います。そして同時に、我々がこうした中期防の見直しや防衛計画の大綱あるいは別表、その他の見直しに及ぶような防衛計画のあり方を考える際に、確かに五十一年の大綱策定のときには民間の有識者の意見等も当時の長官もお聞きになられました。私もそれも拝見をいたしておりますが、こうした国民的な理解を求めての防衛的なあり方、これはいつの時代でも必要だと存じますけれども、こういう激動期であれば余計そういう配慮をし、国民の理解のある防衛力ということに努めなければなりませんので、全体的な防衛力の整備のあり方を検討する際には、何らかの意味でそういった意見を吸い上げるといいますか意見を拝聴しながら、そしてまたそれを調整しながらいくという機会は必要なものであろうがと存じております。
  293. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に私は、PKOの審議もこの国会で行われるようでありますけれども、これに関連して、現在の国際情勢が変化して国連の重要性が非常に高まっております。これは、冷戦時代には機能し得なかった国連が何らかの平和的な機能を求められているようになっておる、それから日本の世界における立場というものも現在では経済大国とみなされてやっぱりそれなりの貢献が求められておる。こういう点から考えると、日本の防衛を考える上で国連への協力ということを非常に重要視しないといかぬと思うんです。  昭和三十二年の五月に、国防会議及び閣議の決定で国防の基本方針というのが初めて出されました。この基本方針の第一項に書いてあることは「国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する」、これが日本の国防の最初に出された方針の第一項です。だから、国際連合の活動に協力するということは、私は日本の防衛の非常に主たる目的ではないかと思うんですね。  そういうことを考えると、やっぱりPKOの問題にしても、これはPKOの法案との関係もありますけれども、出すならば、防衛計画の大綱の見直しの中でもこういう問題に触れ、そしてその別表にしてもそれに必要なものを調達するということを鮮明にしないといけないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  294. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 国連中心外交を方針とする我が国といたしましては、国連のウエートが高まっておりますだけに、国連を通じての国際協力というのは、これは当然国の方針として重要視しなければならない点でございます。そういう点は間違いないところでございますけれども、確かに三十二年の国防の基本方針に我が国のそういった方針が掲げられておりまして、そのもとで進められてきています。  具体的に、これからそれではどうすればいいかということでございます。例えば、PKO法案、ぜひ私どもはお願いをして通過させていただきたいのでございますけれども、これが自衛隊法の中の位置づけとして三条業務に該当するかどうかという議論は、これからは問題の指摘としてはございますけれども、今直ちにPKO法案が通ったからといって三条業務に加えて、本来の直接侵略あるいは間接侵略の防止のための本来任務、専守防衛の任務と並べて、しかも今委員の御指摘のように、それにふさわしい装備その他も具備すべきであるというような御指摘、これは将来の問題として私は大変示唆に富んだ意見だとは存じますけれども、今直ちにそのようなことを考える段階ではないのではないかと、こう考えております。
  295. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  296. 梶原清

    委員長梶原清君) 他に御発言もなければ、これをもって平成四年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議国際平和協力本部宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 梶原清

    委員長梶原清君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分      ―――――・―――――