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山田健一君 大臣の今見解を聞きました。なるほど私も大臣の記者会見のあれを持っておりません。ただしかし、そうはいいましても、
政府は一体であるという立場からすれば、官房長官の方がこういう談話、コメントを出す。会見をする。肝心の郵政大臣の真意が伝わってこない。こういうことじゃ困るわけでありますから、この点については、今後こういう関係があるかもしれませんので、十分踏まえていただきたい。
今おっしゃいましたように、法案の趣旨等についてしっかり
政府の立場として周知をする、これは私も理解をいたします。ただ、後でも述べられましたように、報道の
内容、中身等について、これは介入すべきでない。これはまさに民主主義の根幹にかかわる問題であります。この点については、改めて
政府の見解として明確にここに基本認識としていただいたという形にしておきたいと考えております。
同時に、きょう
決算でお見えいただいておるわけでありますが、
NHKにもこの関係で少し
お尋ねをいたしたいと思います。
NHKに対しても今日までいろんな見方あるいは批判等々含めてあることは事実でありますが、
公共放送としてどう
NHKを守り育てていくのかという視点からこの点
は考えなきゃいけない。特に、報道の中身等々につきましても、
政府あるいは
国会、これとの関係でいいますと、ややもすれば今日まで
国会が関与をするというような傾向もあったことも事実であります。そういうことをしっかり踏まえて、
NHKの立場で表現の自由をしっかり守っていく、こういう立場でぜひ努力をいただきたいというふうに考えているわけであります。
私は、大変実は感心をいたしましたのが、九一年八月一日、
川口会長の就任のあいさつの中で、「
放送の自由、表現の自由を守ることは当然のことです」、こういうことの中身なんでありますが、
私は非常に鮮烈な思い出がひとつあります。
それは私が
放送総
局長をやっていた時に、NH
Kスペシャルの特番で出した「核戦争後の地
球」です。
大きな共鳴と共感を得ました。
ところがこれを取り上げた方がいて、とうと
う
国会の
予算委員会の
審議にかけられるという
状況になりました。当然のことながら、
国会と
いえども、番組の
内容に介入することは絶対に
許されぬことです。だからわれわれはそれに対
して、必死の思いで抵抗しました。そのとき私
が非常に感じ入ったのは、当時の川原
会長の態
度でした。
川原さんは私を呼んで、「
川口君、戦争という
ものに対する憎しみ、人を殺すということに対
する絶対的な拒否、それこそが、われわれが果
たさなければいけない絶対的な心構えだ。それ
をこの番組は実に見事に出していると思う。だ
から絶対引かない、そうしょう」と言われまし
た。以来、私と川原さんは、いろいろなところ
と折衝を重ね、
質問にも答えました。結果とし
て、大方の支持が集まり、あの番組は堂々たる
番組としていくつかの賞に輝きました。その時
に、もし
会長が後ろを向いたり、逃げ腰になっ
たりしたらどうだったでしょう。私以下、番組
の制作にあたった人たちは、おそらくさんたん
たる思いを味わったに違いないと思います。
いま私は立場が変わって、そのときの川原さ
んの立場になりました。この
NHKが素晴らし
いところだというのは、そういう自由闊達な作
り方ができるからで、
内容の豊かなものを作り
出そうと思えば作れる環境を十分持っていると
ころだからこそ、やり甲斐がいっぱいあるんで
はないか。そして、それを自分たちで作り出し
ていこうと思っています。
これはすばらしい
会長の見識、決意、こういうものが述べられたというふうに思っております。報道機関として今やテレビの持つ、いわゆる報道メディアとしての役割というのは非常に世間のステータスを得ている。こういう立場からいいますと、この基本姿勢というのは非常に大事な立場だというふうに私は感じ入っているわけであります。
湾岸戦争のときも、今やアメリカあたりでもジャーナリズムとして言われておるのは、湾岸戦争で破れたのは、確かにイラクのフセインも破れたが、同時に報道も破れた、こういう言い方がある意味ではされております。かなり厳重な報道規制、管制、こういうものが敷かれた。この反省の上に立って、今後報道はどうあるべきかということがかなり熱心に議論をされております。
これとの関係でいいましても、実はイギリスのBBC、私の聞くところでは、常に客観性を保つという視点から、あの多国籍軍に参加をしたイギリス軍の報道については、最初から最後までイギリス軍はという報道を貫いた、こういうふうに言われておりまして、いわゆる客観的な視点をずっと貫き通した。果たして日本の場合、それはないけれども、仮に自衛隊が参加をしていた場合にどういう表現に一体なっただろうかな、その客観的な姿勢が貫き通せるだろうかということも、実はあわせてその裏返しとして考えていたわけであります。
国論をまさに二分するといいますか、そういう
状況の中でいろんな議論が行われておる。こういう
状況の中で報道の果たしていく役割、使命、しかも真実を伝えていかなければいけない、表現の自由を一方で守る、これがやはり民主主義の基本でなければいけない。こういう立場からいいますと、
NHKの果たしていく役割というものも極めて重大だというふうに考えております。先ほど
会長のごあいさつを私が御披露いたしましたが、そういうことを踏まえての
会長の考え方、基本的な態度、これをお聞かせをいただきたいと存じます。