○
国務大臣(
野田毅君) 確かに御
指摘のとおり、今回の
景気の現状につきましては、いわゆる円高不況と言われた当時と質的に異なる部分があると思っております。
これは、現象面でとらえますと、
一つはいわゆる失業率の問題であります。今回の
一つの特徴は、いわゆる有効求人倍率は若干低下してきてはおりますものの、いわゆる失業率で見ますと相変わらず二・〇である。非常に雇用の関係が、この需給がタイトなままであるということが
一つと、それからいま
一つは、最近は大分全国的に減速が広がってきておりますけれども、基本的に土地の値上がりの著しかったところの方が早くから減速が顕著に出てきておる。いわゆる関西圏、首都圏、こういったところが落ち込みが激しいという、これは非常に従来とは異なった特徴であると思っております。
〔理事
中曽根弘文君退席、
委員長着席〕
したがって、倒産の件数につきましても、昭和四十年以降、これはよしあしは別として、どんな好
景気のときでも月に五百件、いわゆる年間で六千件を下回ったことは実はないわけであります。これは
経済のいろんな構造の中で、ついていける
企業とついていけない
企業、いろいろあるわけでありますからやむを得ない部分はあると思いますが、少なくとも円高のときには二万件を超えたわけであります、年間の倒産件数が。昨年は一万件をちょっと超えたという、実はそういう姿、いろんな現象面から見ますとかなり円高のときとは異なっておる。これはやはり明らかに円高の場合には、外からのショックがわかるわけであります。したがって、輸出関連産業を
中心として直撃を受ける
分野、あるいはその
企業城下町といいますか地域、特に下請関係、そういう円高直撃を受ける特定不況産業、特定不況の
中小企業、特定不況の地域、そういう直接目に見えるところで手当てができた。
ところが、今回は御
案内のとおり、今御
指摘ありましたように、それがどちらかというと外傷性ではなくてむしろ内臓系の部分であるものですから、その
認識について
経営者自身も多少自分はバブル関連産業ではなかったという思いがあるだけに、対応にややおくれが、これは
政府の方も今御
指摘がありましたようにそういう点でおしかりを受けるような部分があるいはあったかもしれません。これは一室言いわけしてもしょうがないんですが、少なくとも
政府の月例
経済報告の中で昨年の九月から減速という言葉を用い、私自身も就任をいたしましてから物に耐えて、山に例えて富士山のてっぺんはもう既に過ぎましたと、下り坂になっていますよということは十一月ごろからアナウンスはいたしておりますものの、その辺の実感が、いや自分はまだ大丈夫だというふうなところもあって、多少在庫
調整がおくれたのではないか。
我々見ておりまして、かなり在庫が積み上がってきておるにもかかわらず、生産抑制の傾向が業種によってずれがある、対応が。その点が昨年の暮れから本年に入って特に在庫の圧迫感ということが顕著になり、そのことが昨年の暮れよりも本年に入ってから急速に業況感が悪化した大きな理由ではないか。さらに加えて、過去三年間二けたの高い
伸びの
設備投資、これの償却費負担がどんどん重なってくるわけであります。しかも、それが安いコストで調達をして投資をされましたために、その借りかえだとか、いわゆる今度は金利のつくお金に借りかえていかなければならぬ。そういう
意味で、過去の高いピッチでの
設備投資のいわばコストがはね返ってくるという、そういうこと。特に、
資金調達市場が思わしくないだけに、そういう経営に対する圧迫感というものがますます強まってきたということが非常にマインドを、先行きについても実態以上に
経営者のマインドを悪化させておるのではないか。
私は、そういう
意味で
経済の実態そのものを見ていけば、先ほど幾つかの重要
項目を申し上げました。これはある
程度すれば、
住宅にしても
個人消費にしても、それぞれずっとそういう最終需要が支える形で在庫
調整がほぼ本年度の半ばごろには一巡をするんではないか。そうすると、
実体経済そのものはそれから明るい兆しか進んでいくというふうに見ておるわけですが、マインドの方はそのほかの要素もありましてなかなか今のところはかばかしく好転はしていないと、いわば
マインド先行型であるというような
状況にあるのではないか。
したがって、先般の
景気対策及び
公定歩合の
引き下げ、特に
中小企業は金融機関からの借り入れ依存が非常に強いわけであります。大手の
企業は社債市場だとかそういう形で調達ができるわけでありますが、それだけに、この
公定歩合の
引き下げということも
中小企業のウエートが
設備投資の
世界でも大きいだけに
実体経済にもプラスの影響を与えてくれるんではないか、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。
もちろん、
経済のことでありますから、これから先どういうことになっていくか、
計画経済ではありませんので、十分注視をしていく必要があります。そうした中で、今後さらに必要とあらば
経済運営の面においてもタイムリーな手を打っていかなければならぬことは当然のことだと思いますけれども、先般作成を、決定をいたしたばかりでありますので、当分この
対策の実効性がどの
程度実体経済にプラスになっていくかということを十分注目をしてまいりたいと、こう思っておるわけであります。