○
近藤忠孝君 最近の
内外価格差は、一九八五年のプラザ合意以降の円高が急速に進展した当時と比べまして縮小の傾向が見られますが、しかし、東京の生計費全体の物価
水準、これは購買力平価割る為替レートでありますが、物価
水準は、欧米の諸
都市に比べてもなお三割
程度割高になっております。引き続きその解消のための対策が強く求められております。
〔
会長退席、理事情水嘉与子君着席〕
内外価格差を貿易面での購買力平価で換算して測定した経済企画庁の資料では、
日本の生計費の物価
水準は
アメリカのそれより一貫して割高であり、特に急速な円高の進展によって
内外価格差は大幅に
拡大いたしました。したがって、
内外価格差の解消対策としては、プラザ合意以降の円高によってもたらされた
価格差の大幅な
拡大部分と、それ以前から続いている必ずしも為替レートの変動には左右されない
価格差部分との両面の対策が必要だと思います。
第一の方の対策は、急速な円高の進展及びその後の円高基調によってもたらされた巨額の差益を全面的に
価格に還元し、
国内物価を引き下げさせることだと思います。
日銀
調査統計局の各年版物価指数年報によりますと八五年平均を一〇〇として、同じ年のプラザ合意以降、急激な円高の進展により、輸入物価指数は八六年六月には六〇を割りて五〇台前半まで低下いたしまして、その後今日まで六〇前後で推移しております。ところが、八五年以前は輸入物価指数と余り差がなく推移しておりましたその他の指数は、輸出物価指数が八六年には八〇台前半まで低下し、八七年には七〇台に低下、
国内卸売物価指数は九〇台前半までゆっくり低下しているものの、輸入物価指数との間には指数にして三〇から四〇の開きが生じて、最近のデータでもその差はほとんど縮小しておりません。また、同じ統計の製造業総全
部門投入・産出指数の推移で見ましても、プラザ合意以降同様の傾向の
動きを示し、投入と産出の間には指数にして約一〇ポイントの差が生じ、それ以後縮小しておりません。これは、プラザ合意以降の急激な円高の
もとで、大
企業には巨額の円高差益が生じましたが、十分
価格に還元せず、
国内向け製品は高く、輸出製品は安く
価格を設定して利潤を増大させているからではないでしょうか。したがって、急激な円高と関連した
内外価格差の大幅な
拡大部分の解消対策は、この大
企業の巨額な円高差益のため込みを全面的に吐き出させ、
国内物価を引き下げさせることであり、これこそが現時点での焦点だと思います。
このため、
我が国の全製造業について、プラザ合意以降の円高差益とその還元状況を厳しく精査し、ため込み差益を全面的に
価格に還元させ、
国内諸物価を引き下げさせることが最大の
課題だと思います。本
調査会においても、この点を十分
調査、
検討し、適切な提言を行うよう強く要請するものであります。
第二の対策は、円高など為替レートの変動には左右されず、以前から存在している
内外価格差の解消対策であります。これは、大
企業による
流通支配と不可分の
関係にあります。まず、大
企業による
流通の系列支配と結びついて、建て値制と呼ばれるメーカー希望小売
価格の強要など、不当な独占
価格の押しつけによる高
価格推持を
規制する、そして監視をしていくことが必要だと思います。
また、大
企業が系列支配下にある
流通業者に対して、その支配の維持のために、利潤の一部または労賃など必要経費の一部に食い込んで削減し、これをリベートという形で支払う慣行や、独占
価格の維持などの不当な目的のために支払うリベートなどは、適正な
市場価格の形成を妨げ大
企業に独占利潤をもたらす仕組みでありまして、こうした不明朗な構造にも抜本的なメスを入れる必要があると思います。
さらに、
流通段階だけでなくメーカーの
価格政策、とりわけ大
企業の独占
価格にメスを入れこれを
規制する必要があります。このため、独禁
行政に大
企業などの資本力、
市場支配力を乱用した不当な利益の追求を
規制する権限を持たせ、大
企業に対して各種製品の原価、資金
運用などの
報告を義務づけ、適切な形で公開させること、または、カルテル
価格や同調値上げ
価格に対しても
価格引き下げ命令が行えるようにすることなど、
独禁法の抜本的な
改正、
強化が必要だと思います。
料金の認可制など一定の
価格規制が実施されている業種については、大
企業の値上げ申請をうのみにするのではなく、原価や経営状況の
報告、適切な形での公開を義務づけ、厳格な
運営に努める必要があります。競争政策を阻害する要因などという口実で
規制を緩和、撤廃するならば、大
企業の自由な
価格つり上げに道を開く危険があることを
指摘せざるを得ません。
第三に、輸入ブランド品については、欧米メーカーが
日本市場向けに高
価格を設定する
販売政策をとり、輸入総代理店制を採用することから輸入
販売権の独占、
流通ルートの限定、製品差別化、並行輸入の妨害などでブランドイメージや高
価格の維持が図られるケースが多く、ブランド品メーカー等に超過利潤をもたらしていると言われております。したがって、輸入総代理店制を採用した海外メーカーの独占的な
販売戦略に対しても、
独禁法違反行為の取り締まりと監視の
強化はもちろん、同一製品の海外
市場での
販売価格や製品原価などの
報告を義務づけ、適切な形で公表させるとともに、
価格引き下げ命令権などの
措置がとれるよう
独禁法を
改正、
強化する必要があります。
なお、卸、小売業の多段階性、零細性、非効率性、高
流通マージン率などの弊害を
指摘する向きもありますし、現にありましたが、諸外国の実情と比べても必ずしも非効率、高マージン率では狂いこと、長い歴史を経て形成されてきたそれなりの合理的側面を持っていること、大
企業、大
流通資本による
流通構造再編のために中小零細業者を犠牲にするための口実である等の見解もありまして、これらは慎重に
研究すべき問題であることを
指摘しておきます。
また、
消費者利益の立場に立ってということを殊さら強調しつつ、競争政策の障害になるとの口実で公的
規制を緩和せよという主張がありますが、各種
規制の緩和は中曽根内閣の民活政策以来、
国民生活と
環境などを犠牲にしつつ、大
企業の利潤追求活動をやりやすくしてやるための方策となっておりまして、大
企業の横暴を許す結果となっている点に留意する必要があります。
例えば財界などは、米など
日本の農産物は割高だと攻撃して輸入
自由化が必要だと主張しておりますが、
内外価格差が顕著なのは大
企業がつくっている農用資材の方であります。
国内価格百七十二万円のトラクターは
アメリカに八十五万円で輸出され、化学肥料の硫安の
国内価格は輸出
価格の三倍であります。米の
生産費の六割を資材費が占めている現状から、この農用資材の
内外価格差を解消させることは安い農産物の供給を可能にするかぎだと思います。
また、
消費者利益を守るためと称して、大規模店舗法の
運用緩和や改悪が実施されましたが、東京都の
価格調査でも、スーパーの品物より中小小売店の品物の方が安い例が多かったことでも明らかなように、一般的には大型店の
価格が安いとは言えないこと、力のある大型店の進出で一時期の安売りがあっても周辺商店街の衰退が進み、結局は
地域的独占による
価格のつり上げに導くおそれが強いことなどの弊害も大きいことから、現行大店法の届け出制を許可制にするなど、諸外国並みに
規制を
強化する必要があることも
指摘しておきます。
次に、
住宅土地問題についてであります。
一九八五年以降に東京都心部から広がった
地価高騰は、
東京圏、
大阪圏で二倍から三倍を超す異常さでありました。最近の
地価動向で
下落傾向が見られるといっても、もう既に
指摘があったように、この期間の大幅な上昇率と比べれば微々たるものであります。依然として勤労者がマイホームを持てる
水準にはないことも既に
指摘があり、問題解決にはほど遠い
実態には変わりはありません。
今日における問題の焦点は、勤労
国民の
住宅の
確保であり、
住宅のための
土地の
確保こそ最大の政策
課題だと思います。東京など大
都市の
地価が途方もなく上がって、勤労者がマイホームの夢を無残に打ち砕かれている今こそ、低家賃の公共賃貸
住宅の大量
建設は
住宅対策のかなめであり、また
住宅のための
土地の
確保という視点に立ってこそ、
地価対策も実効あるものとなると思います。
この点で、ヨーロッパでは戦後の
住宅建設のうち、イギリスは六割、西ドイツは四割が公共
住宅であることなど、
政府が責任を持って
国民の
住宅を保障しているのに対し、
日本では
政府が責任を負っておりません。公共
住宅は一割にも満たないのであります。その上、最近の公営
住宅の
建設は年間四万戸
程度、公団
住宅はわずか二万戸台であります。そして、わずかばかり建てられた公共
住宅も、新設は月十万円を超える高額家賃となっているのであります。こうした貧困な
住宅政策を根本的に転換し、
政府が
国民の
住宅の
確保に責任を負うという、どの国でもやられている原則をしっかりと確立し、低家賃で良質な公共賃貸
住宅の大量
建設を
住宅政策のかなめに据える必要があります。
また、収入に応じた家賃制度を採用し、特に低所得者への減免制度の拡充、また今最も困っている老人世帯の優先入居を進める必要があります。この点を大前提として確認した上で、次の三点の
指摘を行います。
第一に、
住宅のための
土地を
確保するため、国公有地の民商売却を即時中止し、
住宅、
公園用地に充てるとともに、国鉄清算事業団用地は適正
価格で地方自治体に売却させることが必要であります。このため、売り主に自治体との優先協議を義務づけるのみの現行公有地
拡大法を改めまして、協議期間の延長、合理的な
価格設定方式、財源の保障を含む抜本的な
改正を行い、自治体の先買い権を確立するとともに、大
企業が保有する未
利用地、遊休地を原価プラス利子、管理費の適正
価格で強制買収できる権限を保障することが必要と思います。
第二に、家賃負担の一定割合超過分を所得、住民税の
課税対象から控除する家賃減
税制度の新設、
住宅ローン減税の欧米並みへの改善、老人世帯、低所得世帯が住みなれた町に住み続けられるよう家賃補助制度の創設と追い出しの防止、借地借家人の権利を大幅に制限する改悪借地借家法の施行の見送りと抜本的再
検討が必要と思います。
第三に、
固定資産税等の保有
課税や
相続税等については、
土地の
評価を時価方式から収益還元方式に転換して、銀行やオフィスビルは高収益に応じて高く、一般商店は低く、庶民の
住宅用地はさらに低くなるように、使用目的に応じて差を設ける
方向で法
改正を行うべきだと思います。また、現行法でも軽減特例を設けている二百平方メートル以下の小規模
宅地は、将来非
課税を目指すなど、生存権的
土地所有の税負担を大幅に軽減すべきであります。
市街化区域内の農地や雑木林は
都市計画の中にきちんと位置づけ保存すべきであり、営農意思のある農家への
宅地並み
課税や
相続税の
課税強化はやめるべきだと思います。
このようにして
住宅や家賃の
内外価格差の解消はもちろん、東京など大
都市部の
住宅土地問題のかなりの部分が解決されるはずであります。
以上をもって私の発言を終わります。