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1992-06-03 第123回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年六月三日(水曜日)    午後一時三分開会     ―――――――――――――    委員の異動  六月二日     辞任         補欠選任      鎌田 要人君     関根 則之君      藤田 雄山君     仲川 幸男君  六月三日     辞任         補欠選任      狩野  安君     藤田 雄山君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 上杉 光弘君                 岡野  裕君                 田村 秀昭君                 藤井 孝男君                 佐藤 三吾君                 谷畑  孝君                 矢田部 理君                 木庭健太郎君                 吉川 春子君                 井上 哲夫君                 田渕 哲也君     委 員                 板垣  正君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 合馬  敬君                 鹿熊 安正君                 木宮 和彦君                 須藤良太郎君                 関根 則之君                 仲川 幸男君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 藤田 雄山君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 翫  正敏君                 小川 仁一君                 喜岡  淳君                 國弘 正雄君                 小林  正君                 櫻井 規順君                 竹村 泰子君                 角田 義一君                 田  英夫君                 細谷 昭雄君                 太田 淳夫君                 常松 克安君                 峯山 昭範君                 立木  洋君                 磯村  修君                 寺崎 昭久君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        発  議  者  野田  哲君        発  議  者  久保田真苗君        発  議  者  村田 誠醇君    国務大臣        内閣総理大臣        外務大臣臨時代  宮澤 喜一君        理        国務大臣     加藤 紘一君        (内閣官房長官)        国務大臣     宮下 創平君       (防衛庁長官)    政府委員        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一  大森 政輔君        部長        内閣法制局第二  秋山  收君        部長        防衛庁長官官房  村田 直昭君        部長        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        外務省アジア局  谷野作太郎君        長        外務省欧亜局長  兵藤 長雄君        外務省経済協力  川上 隆朗君        局長        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合  丹波  實君        局長    事務局側        常任委員会専門  辻  啓明君        員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案(第百二十一回国会内閣提出) ○国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案(第百二十一回国会内閣提出) ○国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施  等に関する法律案野田哲君外三名発議)     ―――――――――――――
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を開会いたします。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施等に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案修正について磯村修君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。磯村修君。
  3. 磯村修

    磯村修君 私は、連合参議院を代表いたしまして、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして、修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。  まず、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案に対する修正案要旨を申し上げますと、第一に、自衛隊部隊等が行う国際平和協力業務及び輸送の委託に関する規定を削除すること。  第二に、国際平和協力本部に、国際平和協力業務実施協力隊員教育訓練国際平和協力業務に使用する船舶、航空機等管理等を行う協力隊を常設するとともに、個々の国際平和協力業務実施計画の定めるところにより、当該業務を行うために編成される協力隊部隊である派遣隊により実施されること。  第三に、内閣総理大臣は、実施計画の決定があったときは、速やかに、国際平和協力業務を行うことにつき国会承認を得なければならないとするとともに、国会の閉会または衆議院の解散のため国会承認を得られない場合に、国会承認を得ないで業務を行ったときは、その後最初に召集される国会承認を得なければならず、この場合、国会承認を得られないときは、遅滞なく当該業務を終了させなければならないこと。  第四に、内閣総理大臣は、国際平和協力業務国会承認を得た日から一年を超えて引き続き行おうとするときは、その三十日以内に、業務の継続につき国会承認を求めなければならないとともに、不承認の議決があったときは、遅滞なく当該業務を終了させなければならないこと。  第五に、協力隊派遣される自衛隊員は、派遣の期間中、自衛隊員の身分を保有するが、自衛隊員の職務に従事しないものとすること。  第六に、国際平和協力本部が、派遣隊構成員たる協力隊員安全保持のため保有し、隊員に貸与する装備はけん銃に限るものとすることであります。  次に、国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案要旨は、国際緊急援助隊への自衛隊参加に関する規定を削除するとともに、国際平和協力本部に置かれる協力隊国際緊急援助活動を行わせることができるようにするものであります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  4. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 以上で修正案趣旨説明聴取は終わりました。  ただいまの磯村修提出修正案のうち、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案に対する修正案予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。加藤内閣官房長官
  5. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 参議院議員磯村修提出にかかわる国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案に対する修正案については、政府としては反対であります。
  6. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) これより三案並び岡野君外二名提出及び磯村提出修正案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 國弘正雄

    國弘正雄君 私が御質問申し上げるときは、いつも何か私事にわたることで話をスタートする悪い癖がありますけれども、きょうもまた一つ私事から話をスタートさせていただきたい。というのは、私は番町グロリアヒルというところに事務所を持っておりまして、そのお隣が気丈聡明をもって鳴る委員長母刀自のお宅なわけです。言ってみれば向こう三軒両隣でおつき合いをさせていただいているので、ですからなおのこと、きょうはどうも世間には随分けんのん唐物騒な話がございますけれども審議を途中で打ち切るなどということは、委員長の権威とそれから職権にかけてひとつ御容赦をいただきたいということをまずお願いしておきます。(「慎重審議を尽くせ」と呼ぶ者あり)そういうことでございます。  三十八年前のくしくもきのうだと思いますが、例の自衛隊海外出動を為さざることに関する決議というのが参議院で行われました。当時参議協議員の一員であられた宮澤総理もその決議参加をなさったというふうに伺っております。  あのときの趣旨説明を行った人は言うまでもなく、この間も同僚の田議員がおっしゃいましたけれども鶴見祐輔さんでありました。鶴見祐輔という人は、改進党から衆議院及び参議院に出られた方で、厚生大臣のポストも占められた方であります。のみならず、彼は本当に日本を代表する世界的な視野と経験を持った文化人でもあられました。新渡戸稲造さんの高弟でございましたし、また後藤新平さんの女婿でもあった。そして今、日本を代表する知識人である鶴見和子俊輔兄弟の父上にも当たられる。松本重治国際文化会館理事長の兄弟子でもあられた。しかも、戦前から戦後にかけて随分あちこち世界を広く多かれて、日本国際社会との間の風通しを何とかしてよくしようということで献身された方でありました。その鶴見祐輔さんが趣旨説明に立たれたわけでありますから、私どもこれをあだやおろそかにするわけにはいかないというふうに思いますし、現にその豊かな戦前、戦中、そして戦後を通じての体験に照らして、鶴見さんは本当に情理兼ね備えた提案理由説明を行われたわけであります。  そのときに鶴見さんがはっきり仰せになっておるのは、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することは、先般の経験で明白であり、それは窮屈であっても、不便であっても、憲法第九条の存する限り、この制限は破ってはならないのであります、こういうふうに述べておられます。  鶴見さんもいわば自民党の大先輩のお一人になられるわけですが、その鶴見さんの趣旨説明を受けた時の防衛庁長官と申し上げていいと思いますが木村篤太郎さん、あの方はまあどちらかというと国際派よりは国粋派であられたし、剣道の達人でもあられた。そういうどっちかというと武張った形の方であられましたけれども、その当時の木村篤太郎長官が、自衛隊というのは「海外派遣というような目的は持っていないのであります。」と、「海外派遣」という言葉をお使いになって実に明白にそれを否定しておいでになるわけであります。私は、日本武装集団を海の外へは絶対に出さないというのは、憲法云々議論もさることながら、私たち日本人が戦後ずっと抱き続けてまいりました一つ悲願であった、祈りに近いものであったというふうに思います。  そして、鶴見さんのそのときのお言葉は、戦後間もなくの我々日本人が共通に持っておりました初々しいまでの、うぶなまでの理想主義あるいは平和主義というものをあらわしていたものだと思います。  ところで、今論議をされております自衛隊海外派遣原則として容認するというこの法案は、どのように考えてみましても、あの参議院決議に背馳するということだろうと思います。私もいろいろ鶴見さんの御発言やあるいはその文言自身を子細に吟味いたしまして、果たして一部の例えば自民党方々仰せになるような考え方が可能であるかどうか徴したわけでありますけれども、どうも私は、私の読みが浅いのか、あるいは私がある種の固定観念にとらわれているのかはわかれませんけれども、あの文言とあの鶴見さんの趣旨説明は明らかに自衛隊を海の外に出すということを禁じたものであるというふうに思わざるを得ません。もちろん、禁じているといっても、これは一種の政治的な拘束力と言った方がいいかもしれませんし、あるいは国民悲願のいわば象徴としての道義的なものにとどまるというふうに言われるかもしれません。現に自民党ないしは今の三党の皆さん方の中には、あの決議はもう古証文だ、もう時代的な役割は終わっちゃったんだというふうに仰せになる方もあるやに聞いております。  そして私は、もし古証文ということであるならば、あえて私はここで極めて戦闘的に三党の皆さんに挑戦を申し上げたい、あえてハンカチを投げたいというふうに思いますのは、もし古証文である、もうこれは時代が変化しちゃったんだ、事情変更のあれに従ってあんなものはもう意味がないんだというふうにおぼしめすのであれば、私はそうでないことを望みますけれども万が一そういうお気持ちをお持ちなのであれば、やはりあれだけの決議でございますから、それをやみくもに葬り去るというか、やみくもに有名無実化するというか、やみくもに死文化させてほっておくというわけにはいかない、そう思うんですね。むしろあの決議は、やはりもう決議のお弔いを出さなくちゃいけない。もしあれは古証文なんだ、あれは時代の変化に伴ってもう意味はないんだというふうにおぼしめすのであるとするならば、これは万が一と申し上げております、仮定法で申し上げております、であるとするならば、それは事情変更であろうとも、あるいはその問題についてのいわば我々の内なる生々しいまでの、あるいは初々しいまでの理想主義が死ぬということでありますから、それなりの死者儀礼を行わなければならない、お弔いをしなければならない、こう思います。  そこで伺います。あれはもう死文化したんだ、だから現状に即さないんだというふうにおぼしめしたとして、じゃ、あの全会一致決議をどのように扱う、扱いたい、扱うべきだ、扱おうと思われるのか、三党の方々お一人一人に御意見を賜りたいと思います。
  8. 岡野裕

    岡野裕君 國弘先生参議院にお越しになる前からいろいろ書物も読ませていただいたり、尊敬をしている斯界の先輩でありますが、冒頭から私に答弁を申し上げる場をつくっていただいてありがとうございます。  ただ、私どもは、國弘先生から、きょうの委員会を円滑に進めるべく、どんな御下問があるだろうかということで私の方の会派からもお部屋へ差し向けたのでございますけれども、残念ながらいただけませんでした。そういうことで、この種の問題につきましてはまだ我々三人で打ち合わせをしなければいけない問題が含まれているとは思うのでありますけれども、一応私から御答弁を申し上げようと思います。  もう一つ加えますと、これはそこに矢田部佐藤先生おいででございます、谷畑先生おいででございますが、先ほどの理事懇でこの二十九年の決議の問題についてはどうするかというような問題が議せられまして、ある程度の案が委員長から示されましたものをそれぞれ持ち帰る、いやもうおれの方は結構だというようないきさつがありますものですから、ここですぱっとしたお答えができませんこともそういうことがあるという前提でお聞きを賜ればまことに幸せだと、こう存じております。  それで、先生、こんなものは古証文と思っているのか、万が一にもそんなことはないだろうなというお話ですが、古証文だなどという思いで私はこれを受けとめているわけではございません。きのうもお話を申し上げた次第でございます。  決議中身はどういうことを指しているかという点については、繰り返しになりますけれども、これは海外派遣ではなくて派兵はいけないと言っているものである。先生お話しになられた、そのときに木村長官はいみじくも「派遣」と、「遣」と言っているではないかというお話、なるほどございましたけれども、これは以来四十年にわたる歴史の中で、派遣ということではない、派遣という言葉を使っているけれども中身派兵ということであるというように我々は理解をしているわけでありまして、憲法九条にもありますあの武力行使目的を持って武装した部隊他国の領土、領海、領空に派遣すること、これを禁ずるものであって、今回政府原案で、あるいは我々も修正案ということでその面には手を触れませんでしたPKOにひとつ我が国が参画をしようではないかという本法律案、これはいささかも、憲法はもとよりのこと、先生おっしゃいました二十九年の参議院決議にもとるものではない、こういうふうに考えております。  同時に、これは我々参議院決議であります。先生もこれは法的拘束力を持つかどうかはというお話でありましたけれども、一院の決議だけで国家、国民法律的に拘束するというようなことは、これはないわけであります。そういう意味合いでは、やはり理念的なものを宣明したのである、いわゆる政治的といいますかあるいは道義的と申しますか、その辺の意味合いを持つものであるというような意味合いで私はこれをかたく受けとめているという次第でございます。  一応、岡野裕からのお答えはそんな次第であります。
  9. 峯山昭範

    峯山昭範君 お答えさせていただきます。  自衛隊海外出動を為さざることに関する決議、実は私も予算委員会のときにこの問題を取り上げさせていただきました。ちゃんと覚えております。趣旨説明要旨もすべて読ませていただいたことを覚えております。それは、ご存じのとおり、先般の国連平和協力法案の、あの直後の予算委員会であったろうと思っております。  私どもはこの決議をどう考えるかということで当時から随分議論になりましたけれども、私どもといたしましてはこの決議趣旨はそういうふうに承知をいたしておりますが、いずれにしましても今から三十八年前になりますので、当時、終戦直後ということもございますので、現在と大分遣うんじゃないのかという認識を現在私は持っているわけです。それは、戦争当時の体験とか、自衛隊を初めて創設をいたしまして、新しい日本自衛隊が発足するに当たってのこの決議であったろうと私は思っております。  そういうふうな意味で、自衛隊侵略のために海外に出さないようにする、そういう思いがあの決議の中に込められていたのじゃないのか。そういうような意味で、戦争のために海外へ出さないという趣旨は、この決議は現在でも十分生きておりますし、また我々としても生かしていかなくちゃならないと私は思っております。  しかし、それはもっと逆に言いますと、現在の自衛隊戦争目的海外に出させる、出動させるなんということに賛成する国民は少ないと私は思うし、ほとんどいないと言ってもいいと思いますし、また自衛隊海外戦争のためにやるなんということは、これはみんな賛成してくれる人は一人もいない、私はそう思うんです。そういうような意味で、この趣旨は十分生きているんじゃないのか、こう思っております。  また、今回私どもPKO法案と絡んでこの問題を考えてみますと、現在の時点というのは、時間的な問題もありますけれども国際貢献というのが前々からたくさん問題になってきたわけでございますけれども、急激に高まってまいりましたのは、御存じのとおり、あの湾岸戦争の後であろうと思うんです。そういうような意味で、湾岸戦争、本当に私どもも悩みましたし、国民の各層の皆さん方もいろんな角度から検討し、悩んで、そして国際貢献はどうあるべきかということを随分御検討いただいたと私は思うんです。そういうような中で、やはりお金だけではだめだ、やはり人を出さなくちゃいけないという面については、これは各党とも御理解をいただき、また社会党さんも、また先ほど趣旨説明をされました連合さんも、人を出すということについてはこれはもう必要だと。そこまでは確かに国民的合意ができつつあるわけであります。また、日本が国際的に経済の面でも大きな発展を遂げている、そういうような意味で、私どもはこの趣旨をがっちり尊重し、憲法の範囲内で国際貢献を果たしていかなくちゃならない、そういうふうに考えております。古証文なんということは全く考えておりません。  もう一つ申し上げますと、この問題につきましては先ほどお話ございましたが、有権解釈はやはり参議院でやるべきだと私は思います。きのうは答弁をしませんでしたけれども、実は、三党の有権解釈はどうだと言われまして私も非常に弱ったわけですけれども有権解釈というのは三党で出すわけじゃありませんし、三党で有権解釈を出せと言われましてもこれは本当に困るわけでありまして、私どもの党はこう考えている、よその党はこう考えているということを各党が持ち寄って検討するということになると思いますし、今この問題は理事会の方で預かりということになっておりますので、そちらの方で十分御検討をいただきたい、こういうふうに考えております。
  10. 田渕哲也

    田渕哲也君 お答えいたします。  きのうも小川委員の御質問に対しましてお答えいたしましたとおりでございますが、この決議は、自衛隊法制定に当たりまして、憲法の精神を踏まえ、二度と他国侵略したりはしないとの意思表示をあらわしたものと受けとめております。我が党としては、現在もその気持ちは変わるものではありません。また、あの国会決議は、当時の国際情勢我が国の置かれた立場から見て、戦争のための海外出動を中心にした想定がなされ、平和時の平和目的自衛隊海外派遣など想定できない状況の中にあって、当時から見れば極めて当然の内容であったと思います。  しかし今日、我が国世界第二の経済大国となるなど、国際社会の中で重要な地位を占めるに至り、また国連活動も本格的には東西の冷戦などで十分な機能を果たせなかったものの、いわゆるPKO活動は進められ、その実績を積み上げてきたのであります。今日では、人的面でも我が国国際社会に積極的に貢献し、役割を果たしていかねばならない状況から考えますと、PKOに対する派遣は、決議に想定した侵略行動とは全く別であると理解しております。  政府は、これまでも南極観測あるいは湾岸戦争のときに敷設された機雷除去のための掃海艇派遣など、自衛隊海外派遣実施し、国際的にも高い評価を受けてきたところでありますけれども、今後も災害出動あるいはPKOへの自衛隊派遣など、自衛隊海外派遣を行っていくことは、憲法に掲げる平和主義原則に沿うものであり、昭和二十九年の国会決議趣旨に反するものではないと考えております。  なお、古証文と考えておるかということでございますけれども、たくさんの国会決議がございますが、我々はどの決議が古証文で、あるいはそうではないといったような考え方をしたことはございません。ただ、国会決議というものの趣旨から見て、先生もおっしゃったように政治的、道義的なものでありますし、また時代が変わったときにこれを改正するにしても、原則として全会一致決議されたものでありますから、改正するには全会一致の同意がなければできないのは私は当然のことだろうと思います。  そういうことになりますと、各会派解釈とか理解というもので差が生じてくるということはあるわけでありまして、これをどう扱うかは参議院の院で決めるべき問題でありますので、これは当委員会においても理事会預かりということで検討を進めることにしておる次第でございます。
  11. 國弘正雄

    國弘正雄君 申し上げたいことはいろいろありますけれども、しかし幾つかのテーマを抱えておりますから、もう一回後で戻らせていただきます。  さて、今のお話の中でもある程度ほの見えてきたんですが、いつものことで、何も今回に限ったことじゃありませんけれども法律の場合にしばしば、特にそれがややこしい、なかなかすんなりと皆の胸に落ちないような難しい法律の場合には、条文であるとかあるいは用語であるとかのあえて言わせていただければつじつま合わせみたいなものが行われるというケースがある。今回のこのPKO法案については、大変にそれが私には目立ったわけであります。  例えば、後でこれは触れますけれども、コマンドとそれから指揮、あるいは指揮権と指図、何か類語辞典を引くかのような、そういうような感じてこの三つの言葉がしばしば恣意的に用いられ、あるいはその用語が後で改定をされるというようなことがあって、恐らく一般の国民の目線で見ますといかにもわかりにくい。何か言葉のつじつまを合わせているのではないかというような感じがするだろうと思うんですね。これは、私は何も政府・与党だけを責めているんでなくて、国会全体がそういうような弊を今持ちつつあるというような気がいたします。  あるいは今回のPKO法案に関して申しますと、参加ではなくて協力である。何かよくわかったようなわからないような、少なくとも一般の国民の胸にすとんと落ちるような、そういう明快さには欠けている。明快さに欠けるだけではなくて、むしろ何か国民の側からすれば、たぶらかされているのではないかというような思いすらする。あるいは派遣であって派兵でないと、今もそういう話が出ましたけれども、そんなようなこと。あるいは平和維持隊対平和維持軍というような問題も既にきのうあたり出てきているわけで、どうも言葉の問題がいろいろ出てくるんですね。  そこで、どなたに伺うべきでありましょうか、これは外務省に伺うべきかもしれませんけれども、いずれ国連と約束というか協定を結ばなくてはいけない場合に、当然国連に対して日本PKO法律を解説し、説明しなくてはいけない、翻訳して説明しなくてはならない。そんなときにコマンドとそれから指図と指揮というのを一体どのように横文字に直されようとするのか。注釈をつけるというような、ぶざまとあえて申しませんけれども、かなり異例なことをして、何か言いくるめるという言葉は非常にひどい言葉かもしれませんけれども、しなくてはならないんじゃないだろうか。  皆さんの御苦労が何か私ですらちょっと気がかりだ。他人の疝気を気に病むなと、こうおっしゃられればもうそれっきりですけれども、しかし事はやっぱり日本の外交に関するわけでありますから、そのあたりについてちょっと伺っておきたい。これは後でもう一回伺うべきテーマですが、とりあえず伺っておきます。
  12. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  この点につきましては、特に指図とコマンドという点につきまして衆議院特別委員会の段階でも御指摘がございました。今ちょっと調べてみたのでございますけれども、十一月十九日の委員会におきまして私の方から答弁いたしております。  その趣旨は、この法案第八条第二項の「指図」というのは、国連派遣国とのいわゆるモデル協定にいいます国連のコマンドのもと、英語で恐縮でございますけれども、「アンダーザコマンドオブジュナイテットネーションズ」のコマンドと同じ意味である。これは今回の五月十八日の外務大臣の発言につきましても同義であるということを指摘しておるわけでございます。したがいまして、英語としてはコマンドが適当と考えられる、そういう答弁をいたしておりますし、そういう考え方でございます。
  13. 國弘正雄

    國弘正雄君 それほど単純なことで実はないんです。横のものを縦にするというような、そんな簡単なことで話が済むなら何も苦労はしないということをあえて申し上げたい。  そこで、そのコマンドあるいは云々はしばらくさておくとして、PKOという言葉自体について少し伺っておきたい。  もちろん、あれはピース・キーピング・オペレーションという英語の略であるということはそのとおりでありますけれども、それを皆さんは平和維持活動というふうにお訳しになった。それがもう人口に膾炙しちゃっていますから今さらこれをどうこうするということにはならないわけですが、ピースキーパーという言葉は一体どういう意味だと思われますか。そして、ピースメーカーという言葉にどういう意味があるというふうに思われますか。外務省の方、どなたでも。
  14. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  先生の御質問、私は、ピースメーキングあるいはピースキーピングと申しますのは、この言葉の使われておる文脈その他によって意味は違ってくるんだろうと思いますが、一般的には、ピースメーキングというのはピースキーピングも含んだ広い意味で使われている場合がございます。それから、別な文脈の中では、ピースキーピングと申しますのは紛争が終わった後でできた平和を維持するため云々云々ということですが、ピースメーキングというのはむしろ紛争そのものを起こさせない活動を指す場合に使われるといったようなこともございますし、そういう意味で、冒頭に戻りますけれども文脈その他使い方によっていろんな意味を持っているというふうに考えております。
  15. 國弘正雄

    國弘正雄君 私の質問が確かに舌足らずであってそういうお答えになっちゃったんですけれども、私が申し上げたいのは、もうお答えいただかなくて結構ですが、ピースメーカーという言葉は、驚くなかれ、アメリカの辺境地帯、西部開拓時代に恐らく濫觴するんだと思いますが、今日においてもなお銃器を指して使われることが多い、ピストルを指して使うことが多い。それからピースキーパーというのは、これはレーガン大統領がMXミサイルのことを、どういうつもりかはわかりませんけれども、ピースキーパーと呼んだ、こういう事実があります。  私の申し上げたいのは、ピースキーピングという言葉自体が、あるいはピースという言葉自体が、英語的な文脈においていうと武力とかあるいは軍事力とか、場合によっては暴力というもの、昨今のロサンゼルスの例の暴動のときにもこの言葉が頻用されておりましたけれども、そういう軍事力とかそれから暴力あるいは武器というようなものと背中合わせの、まあ寒さと言ってもいいと思いますが、を持った言葉であるということを申し上げたい。(「それがどうした」と呼ぶ者あり)いや、それがどうしたと仰せになりますけれども、もう少し待って、黙って聞いていてください。  それから、そのオペレーションという言葉についても、これはもう皆さんが御案内のとおりでありますけれども、いろいろな意味を持っておりますが、非常に重大な意味は作戦という意味であります。ですから、例えば経営学の用語として今では普通になっているオペレーションズリサーチ、ORなどというものも、もとはといえばいかに高射砲でもって敵を有効適切に撃墜するかということのいわば方法として発足をしたというような、何といいますか非常に薄ら寒いニュアンスを基本的に持っておる。  だからPKOというのは、何かPKOPKOというと、あたかもボーイスカウトのジャンボリーか、何か遠足みたいな、人畜無害なニュアンスが非常に強いんですけれども、実際はもっと生々しいというか、もっと、まあ言ってみれば血なまぐさいものを持った言葉であるということを申し上げたい。  だからこそ、だからこそ、例えばPKOの父と言われるイギリスのブライアン・アークハートが書きましたPKOについての書物も、「ア・ライフ・イン・ピース・アンド・ウォー」、ウォーという言葉がそのタイトルに使われているというようなのは、まさにその例であります。  言葉の問題は大したことないじゃないかと仰せになるかもしれませんが、言葉は我々の意識を決定いたしますし、意識は我々の反応やらあるいは行動やらに大きく影響を与えるわけでありますから、単なる言葉の訳の問題だ、あるいは誤訳だなどといって簡単に片づけられないものがある。今さらPKOを何かもう少しニュアンスの近い言葉に戻せと言われても、それはもう無理だとおっしゃられれば全くそのとおりでありまして、私は何もそれを言いかえてくださいと申し上げるんじゃないんだけれども、大変にPKO活動というものがそういう血なまぐささというか、あるいは暴力あるいは武力の使用あるいはあえて言えば行使、使用と行使は違う、武器の使用と武力の行使は違うんだとそちらは仰せになるでしょうけれども、とは紙一重のものなんだということを申し上げたい。  過去において、これは外務省も私は大いに責任があったと思うんだけれども、時の鈴木貫太郎総理大臣のポツダム宣言を黙殺するという、大変懐の深い言葉、黙殺というもう本当に苦心の策だったと思うんですが、という言葉を実にあっさりとイクノアあるいはリジェクトというふうに訳してしまった。そのことが結局は、日本はポツダム宣言受諾の意思がないんだというふうに連合国側にサインを与えて、ある人の説によれば、これは私はその説を必ずしも信じませんけれども、あるアメリカの研究者の説によれば、それが広島、長崎に結んでいったんだと、あるいはそれがソビエト軍の満州進攻につながっていったんだというようなことを言う人もおる。決してそんな単純なものでないということをぜひとも申し上げておきたい。  それから、米国の例の排日法案というものが盛んになりました大正の半ばでありますけれども、いわゆる排日法案と称されるもの、実際はあれは排日ではなかったので、少数民族あるいは黄色民族に対する排であったわけですが、我々日本人はこれを排日と単純に受けとめた。その排日法案が通ろうというときに、時の外務省の埴原駐米大使はアメリカの議会に対して、こういうものが通ったとしたら日米関係に重大な結果をもたらすであろうという意味で口上書を提出し、その重大なる結果というものをグレートコンシクエンシズと訳した。ところが、外交慣例として言えばグレートコンシクエンシズというのは戦争意味するわけでありますから、アメリカ側は、これはこの法案を通したら日本戦争に訴えてくるかもしれないというふうにアメリカのナショナリズムをえらく刺激し、またそれを悪用する低劣なアメリカの政治家がおりまして、日米関係が一層騒然としたというようなこともあるわけです。  近くは、構造協議というものが果たしてSIIの訳語として正しいかどうか。あるいは核の持ち込みをイントロダクションと言うわけですが、そのイントロダクションと持ち込みがイコールであるかどうかというようなことをめぐって論争が起きたことは記憶に新しいわけです。  ですから、私はこの言葉の問題、コマンド、指図、指揮というような、どうも言葉のつじつま合わせが非常に先行しているのではないか、そこに何か一般国民からすると割り切れないものを覚えるのではないかという気がしてならないからお伺いをしたわけであります。  それに関連いたしまして、ついきのうの一部の新聞あるいはきょうの朝刊も報じておったと思いますけれどもPKO特別委員会、これは我が方の特別委員会ではなくて、国連特別委員会が一日に報告書を出しました。その報告書をまだ精査するに至っておりませんからわかりませんけれども、どうも新聞報道だけでも、あの報告書を見ておりますと、何かPKOというものがえらく変化しつつあるのではないか。例えば、当事者の同意を求めないで派遣することも将来はあるであろうなどということが書いてある。あるいは軍事化と申しますか、無限にPKOがPKFに近づいていきつつあるのではないかという懸念を私どもに抱かせるような内容である。あるいは各国の待機部隊を設置するとか、安保理事会が自由に使うことのできる常設軍を設置しようとしている、そんなようなことが報道されております。  これは生き物でありますから、PKOだって生々発展の過程を経るのはよくわかりますけれども、ただやっぱり軍事力のウエートが非常に増大しつつある、あるいは大国主導型になりつつある、あるいはカンボジアのように国連という名のもとに、たとえ渺たりとはいえ、一つの主権国家の行政から軍事から外交から、一切合財に国連が網をかぶせてしまう。何かある種の総督府化みたいな傾向が見られるというふうな懸念があるんです。  そういうようなPKOのある種の向かう傾向というものを、日本政府当局者、特にこのPKO法案を進めようとしておられる政府ないしは三党の皆さん方、あるいはその事務当局の皆さん方は懸念しておられるかどうか、そんなことは何でもない、当然のことだと仰せになるかどうか、そのあたりちょっと伺いたいと思います。
  16. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  その前に一言だけ。先ほど先生、元国連次長でPKO担当のアークハートさんのお言葉を御引用になられましたけれども……
  17. 國弘正雄

    國弘正雄君 引用していません。
  18. 丹波實

    政府委員(丹波實君) という趣旨のことをおっしゃっておられましたけれども、そのアークハートさん自身は昨年九月十日の朝日新聞とのインタビューの中で、PKFにつきまして、平和「維持軍は非暴力、非強制の「敵なき兵士」だからこそ、偉大な力を発揮する。戦闘状態で武器を使えば、紛争に巻き込まれ、当事者のひとりになってしまう。戦う平和維持軍は、決して役に立たない。」ということもおっしゃっておられるので、双方あわせてぜひ御理解いただきたいというふうに思います。  それから、ただいまの先生の御質問ですが、まず、このPKO特別委員会と申しますのは一九六五年に国連総会のもとにできまして、三十四カ国が毎年集まって今後のPKO活動がどうあるべきかということを議論している委員会でございます。昨日、報道の対象になりましたのは、ことしの会合の結果を盛った報告書というものが公表されたということでして、その中ではいろんな国がいろんな意見を述べているという紹介がありまして、その中の一つとして、例えば、今後のPKOには同意がなくても国連はみずからの権威で紛争処理ということで入っていってはどうかという意見があったということでございます。  この点に若干触れさせていただきますと、御承知のとおり、PKOと申しますのは今は国連活動であるということ自体について加盟国には異論はないんですが、ただ、憲章上明文の根拠規定を持った活動ではない。そういう意味で過去四十三、四年の歴史がありますが、慣行の上にできておりまして、その慣行の中から停戦の合意ですとか、受け入れ国の同意、合意、それから中立性といったようないろんな原則が出てきて、その原則自体は今日までそういう原則として生きてきておると思います。  他方、私、先日この場で申し上げましたけれどもPKOを振り返ってみますと、進化、発展の歴史であったと思います。例えば選挙監視あるいは人権監視、UNTACでもそうですが、いろんなことが行われております。これは例えば五年前をとった場合、そういうものはなかったんです。現在、国連の中で、例えば将来PKOを使って海上交通の安全をやらせたらどうかとか、あるいは麻薬の取引ですね、こういうものをPKOを使って取り締まったらどうかといういろんな案が出ております。そういうことでございますので、今後このような原則が崩れることは全くありませんとここで私は断言するつもりはございません。  例えば、去年のイラク、クウエートの国境にできましたUNIKOMですね、これにつきましてはUNIKOMが設置されたときには一応イラク、クウエートの同意というものはとってあるんですが、その経緯にかんがみれば、一部の国連考え方は、イラクがたとえ将来同意を取り消しても存在し続けると言っているわけです。ですから、そこで既にひとつそういう問題が出てきている。  それから、もう一つだけ例を挙げさせていただきますと、現在、クロアチアに展開しております国連保安隊、保護隊と言った方がいいのかもしれませんが、保護隊につきましては、どうもこのボスニア・ヘルツェゴビナの紛争の煙がクロアチアの方にひっかかっておる、今後この保護隊をどうするか、性格を変えなければならないのかという議論が実は国連の一部で起こっておりますので、あるいはそういう場合には保護隊の性格は変わるかもしれません。  しかし、日本政府として一番重要なことは、今お出ししておりますこの法案が認められた場合にはこの枠組みでしか出ていかない。そういう意味では伝統的なPKOにしか参加するつもりはない。将来いろんな状況で見直しか行われる、それはまた別のあれですが、現在の法案の枠組みでしか考えるつもりはありません。  それで、見通し得る将来、その伝統的な意味でのPKOが非常に、全部ひっくり返ってしまうということは、まず当分はないんではないか、そういう意味では十分お役に立てるんではないかと私たち考えておるということでございます。
  19. 國弘正雄

    國弘正雄君 アークハートのことは、私は彼の書物の書名を「ア・ライフ・イン・ピース・アンド・ウォー」と言ったんであって、彼の発言を引用したということではございませんから、訂正してください。  ただ、今回のこの特別委員会の報告書を見てみますと、何か今までPKOというものを、ややもすると、これは何も与党だけではなくて、政府だけではなくて、我々を含めて、固定的に、あるいは静態的というんでしょうか、つまりステージョナリ「なものとして考えてきた嫌いがあるのではないか。ところが、今私も申しましたし局長もおっしゃいましたけれども、生き物として変化していく、生々発展していく、どういう方向であれ生々発展をしていく。その動いていく過程の中で、どうも軍事力の果たす役割が大きくなり、しかも大国主導型みたいな方向に向かいつつもしあるとするならば、一体日本はどこまでそういう傾向についていくのか。とことんまでついていきますということなのか、いや我々には我々の待てしばしというどこかのポイントがあるのかどうなのか、そのあたりを私は伺ったわけです。
  20. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 現在の国際情勢の動きの中で、果たして軍事力が重みを増しているのかどうかという点につきましては、見方によって、いろんな人によって違うんだろうと思うんです。  やっぱり東西の冷戦がこういう状況になったということを考えれば、米ソの対決と、かつてのソ連ですけれども、そういう確率というのが非常に下がっているわけで、今問題になっておりますのは、これまで冷戦の中でイデオロギーによって押さえつけられていた地域紛争的なもの、つまり、宗教とか民族とか領土とか、そういういわゆる伝統的な地域紛争というものが非常に頻発するようになってきて、それを何と申しますか、今まで冷戦の孤児的な存在であった国連がむしろそこから脱却して、国際の世論というものを背景にしてそういうものを処理をしていくという時代に入っているわけです。  そういう意味では、軍事力が大きな比重を占めつつあるというよりは、むしろ逆ではないかという見方もできるわけで、従来にも増して、例えばアフリカとかその他の貧困で悩んでいる地域の平和と安定のためには経済力が従来よりも重要だという見方もできるわけでして、そこは見方によっていろいろ異なるんではないかというふうに考えます。
  21. 國弘正雄

    國弘正雄君 それに若干関連するんですけれども、ごく最近カンボジアの明石さんが、カンボジア北部ないしは西北部と言うべきでありましょうか、パイリンというところを訪問したときに、いわゆるクメール・ルージュ軍にとめられてしまった、そしてクメール・ルージュ支配下の地域に入ることを拒まれてしまったというようなことが報道されています、つい数日前でありましたが。  どうもクメール・ルージュ側の言い分を聞きますと、明石術表はプノンペン政権寄りで余り公平とは言えないと。プノンペン政権もしくはシアヌーク殿下もしくはソン・サン前首相のグループに非常に近いと。我々クメール・ルージュをいわばそでにする。つまり、我々に好意を持っていない第三者というような言い方をクメール・ルージュ側がして、それが一応表向きの口実になって、来てもらっちゃ困るということを言って拒否されたということがございます。  私は、なぜカンボジアなのかということを後で実は総理に伺いたいんですけれども、我々日本人、そんなにカンボジアに今まで興味なんかなかったわけで、日本政府が何にもやらないときに、組織の若い諸君が例えば井戸を掘りに行ったりあるいはさまざまなボランティア的なサービスをやってくれていたわけで、それに対して一切の助っ人を公的機関がやらなかったということが言えるわけですが、にもかかわらず、急に何か火がついたようにカンボジア、カンボジア、カンボジアと、一体それはなぜなのか。  後でこれは総理に伺いたい問題なんですけれども、その前に、カンボジアの四派、あるいはさらにもっと派があるんだというようなことを専門家はおっしゃる。クメール・ルージュといっても決して一枚岩ではない、あるいは、プノンペン政権といってもこれは決して一枚岩ではないんだというようなことをこれは伺うわけですね。  果たして、今のような状態、つまり明石さん、ほかならぬ明石さんが出かけて行っても入ることを拒否される。しかも、非中立的な我々の友人ではないなどという理由で拒否されるというような状態があって、例えばPKOがカンボジアに行くというときに、そのいわば内戦というか、内輪争いというか、内輪もめというか、そういうようなものに巻き込まれてしまう。つまり、カンボジアの内戦にいわば干渉する、あるいは容喙するというような形になるのではないかということを私は大変に恐れるわけですね。  しかも、そういったようなところに、これは防衛庁長官いらっしゃいますけれども、この間の議論を伺っておりましても、小火器は持っていくんだ、そして正当防衛的なときにはその火器を使うこともあるんだ、しかしそれは武力の行使ではないんだというような御説明をるるなさったわけですけれどもね。そんなような、つまり相手方の国が非常におさまっていない。おさまった後へ行くんだと、こうよくおっしゃるけれども、全然おさまっていない。しかも、このおさまりのなさぐあいというのはもっとひどくなりそうな気配が既にもうカンボジアにあるわけですね。そういったようなところに、たとえ訓練を受けているとは言い条、若い、余り人生経験その他も豊かでない、しかも土地の事情とか風土とか、あるいは言語とか習慣とか、あるいは歴史的背景というようなものに不案内な若者が行って、何かいざというときには、正当防衛ということであるならば自分の持っている武器を使うこともあり得べしと、そんな大変なところに……(「五原則がある」と呼ぶ者あり)いやいや、五原則原則とおっしゃるけれども、そんなところに日本の若い者をむざむざ行かせてそんな目に遭わせることが、我々大人のすべきことなんだろうかどうだろうかという気が大変にするわけですよ。  だから、内戦がまだ決しておさまっていない。その内戦がおさまっていないのみならず、我々が入ることによってむしろその争いを激化させることにもなりかねない。必ずなるとは申し上げておりませんが、なりかねないというような状況のときに、そういう修羅場みたいなところに結局我々は我々の若い者を送るのかと。そこら辺が私としては何とも割り切れない、痛ましいという気持ちすらあるところなんですね。そんなことは大きなお世話だとおっしゃれば大きなお世話かもしれませんけれども。  しかし、そこで伺います。その四派のうちのいわゆるクメール・ルージュ派、キュー・サムファンというような人たちに日本政府当局はちゃんと連絡をとっていらっしゃるのかどうなのか。全然そういうところはつてもなければ知り人もない、だから、どこか民間の団体かなんかにつてを頼んで連絡方をお願いしているということなのかどうなのか。どうなんですか、そのあたりお聞かせください。
  22. 丹波實

    政府委員(丹波實君) たまたまアジア局長不在でございますので、本来アジア局長から御答弁申し上げるところでございますが、私が本省に入ってくる今川大使の電報その他の書類で観察する限り、今川大使はそのKRを含めまして四派の方々、指導者にまんべんなく接しておられて、常時意見交換を行っておるということでございます。
  23. 國弘正雄

    國弘正雄君 私は、そうでない話もあちこちから聞いておりますからね。政府当局としてフォーマルな、オフィシャルなルートを十分に持っていないために民間団体に委嘱をしてルートをつけなければならないというようなことも聞いておりますし、また向こうサイドが明石さんに対して見せた一種の敵意と言うと大げさですが、そういう感情、フレンドリーでない感情というものが、日本側が特にPKO法案が通ってカンボジアに出かけるというようなときに沸き立ってくるのではないかというような気がしてならないんです。  さっきの、いかに訓練を受けた人とは言いながらも、二十代の個々の若者に事情不案内な異国の地でとっさの場合に、ひょっとすると過剰防衛とかあるいは殺人罪に問われるような可能性を秘めて武器を使用させる、そんな判断力を、彼らが果たしてとっさの場合の判断力を持ち得るだろうかどうだろうか、そういう訓練というようなことが果たして実際可能なのかどうなのか。私は不可能だと思っていますけれども、そんなものは訓練によって受けるものではない。ある種の人生体験の蓄積の上にしか得られないだろうと思いますから、私は訓練で受けられる、身につくものだとは思いません。  ましてや、この法案が、政府原案を含め、それから修正案を含めて何か不完全きわまりない。あっちをつつけばこっちがぼろが出る、こっちをつつけばあっちがおかしくなるというような、すぐに雨漏りがするような破れ傘同様の法案だと思っているんです。思っているんですよ。はっきり言って思っているんです。  それは自民党皆さん方も、あるいは政府方々も胸に手を当ててこの法案そのものをじっくり吟味なされば、ああここが不十分だ、あそこがどうだというようなお気持ちをお持ちになると思う。しかも、三党のいわば合意という形でさらにその上に屋上屋を架している。その屋というのが何かというと破れ傘であり、あるいは何というのですか、(発言する者あり)これは何も私が言っているんじゃないんです。皆さん方自民党の有力者、例えば後藤田さんのような方がはっきりそうおっしゃっておる。(「いっぱいいるからいろいろだよ」と呼ぶ者あり)それはいろいろでしょう。それは自由民主党ですから、自由な気風をお持ちでありますからね。そうですけれども、しかし、例えば後藤田さんのような方がああいうことをおっしゃっておられる。さらにそれに屋上屋が重なるんですから、もう何というのか、私の言葉で言えば、荷崩れ現象を既に起こしているというふうに思うんです。だから、荷崩れ現象が起きないように徹底的にひとつそういう穴を詰めていただきたいというふうに思っています。それが一つですね。  そのあたりもう一回、カンボジアなんですけれども、例えば今私が申し上げたことについて防衛庁長官、何か御見解があればお漏らしいただきたいと思います。
  24. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) お話をお伺いいたしまして、私の感じたことを申し上げたいと存じますけれども、まず明石さんとクメール・ルージュとの関係について言及されましたけれども、これは国連のあくまで業務でございまして、その代表者として明石さんがたまたま日本人として、国連職員として最高のスタッフとして行っておられるわけで、あくまでこれは国連活動でございますので、日本人がリードしてUNTACをやっているわけではないわけでございます。そういう意味では、明石さんが日本人だからどうのこうのというようなことはまずないのではないかなという率直な感想を私は持ちました。それから、あくまで国連活動についての私ども協力でございますから、そういう点は多少誤解ではないのかなと。  それから、訓練によって若い人をいたずらにそういう危ない地域に出すのではないか、訓練でそんなことは不可能だ、二十四条の武器使用なんてのは厳格にできないじゃないかということを仰せられますが、私もある意味ではそういう面はやっぱり心して、自衛隊員をそういう面で今までの専守防衛の立場としての自衛隊の訓練と全く別個のこれは任務でございますし、訓練を要すると存じます。つまり、小型の自己防衛のための武器使用も抑制的にこれは使うということが法律ではっきり書いてありますから、抑制的な訓練もしなければなりません。もちろん個人差がいろいろございますから、派遣する場合には自衛隊員のそういう資質その他をよく見て、そして隊の編成をしなければならない。そういう意味で、委員の御指摘のようなことに必ずしも一義的になるものではないし、ならせてはいけないという感じを持って拝聴をいたしておりました。  私どもは、この任務が与えられたならば、きちっとしたこの法律趣旨目的に沿うような形で訓練をして、そしていわゆる直接侵略、間接侵略に対応する自衛隊のあり方と機能と全く違う別次元のこの派遣目的でありますから、そういった方面の訓練をきちっとやって、隊員の安全も確保できるような体制で派遣をしたい、このように存じております。
  25. 國弘正雄

    國弘正雄君 PKOもそうですし、あるいはもう少し平和裏に行われる貿易とか通商とかそういったような営みも私はそうだろうと思うんですけれども、ある種の異文化体験みたいな部分があるわけですね。特に危険なところにはやらないんだと、こういうふうにおっしゃるけれども、しかし例えば海部さんは総理大臣のときに、犠牲は覚悟していますというようなことを、たしかあれは衆議院予算委員会でそういうことをひょっと仰せになった。余りマスコミが注目しなかったので、私は何でもっと注目しないのだろうと思ったぐらいそのまま、言ってみれば平穏無事に通っちゃったわけですが、とにかくそういう危険といいますか、明らかに危険が存在をする。  それで、こちらがどんなに善意でいたとしても、場合によっては向こうから急襲をかけられるというようなこともあり得べしというような状況でございますね。しかも、それは知らぬ他国に行くわけですね。日本のどこかで演習しているというようなそんな生やさしいことではない。そうなってくると、私はその自衛隊の今おっしゃった訓練というのは、ある種の異文化体験ということの上に立っての訓練でなければならないだろう。そういったようなことが果たして十二分に行われているのかどうかということを考えざるを得ない。  それに関連して申し上げるんですが、もう一つ、今、防衛庁長官お答えいただいたので、もう少しそこを突きたいんですが、PKO法案に基づく海外派遣というのは、これは自衛隊はもともと予想してなかったわけですね。予想してなかったということはどういうことかというと、例えばいわゆる防衛出動でもないし、治安出動でもないだろうと、こう思うわけです。そうすると、何か自衛隊法の中に空白地帯みたいなものがそこで生ずることございませんか、法的に見て。つまり、治安出動でもないし、それからいわゆる防衛出動でもないと。それに関連して、じゃ、自衛隊法を変える、改正する要をお感じになっていらっしゃるかどうか、そのあたりはいかがですか。
  26. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今お述べになりましたすべての点にあるいは答弁する必要ないかもしれませんけれども、危険な地域であるかどうかというような点は、これは確かに一般的な全く危険のない地域で平穏無事であればPKO派遣する必要ないわけでございますから、危険な状況、あるいはカンボジアという特殊な地域のまた悪条件、それからまた過去の歴史を、十三年間の戦い、内戦の状況を負った状況、特に地雷なんかはここでも議論されておりますが、非常にいろいろな条件があると思います。  そういう悪条件を克服して、先生は異文化体験とおっしゃられましたけれども、私どもはカンボジアの民族、風俗、習慣とか、そういうこともやっぱり行く以上はよく検討して、私はできればこの法案を成立させていただくならば、直ちに出して、いろいろの面で検討をして、そして準備態勢をどうすればいいかということをきちっとやっていきたい、こう思っておるところでございます。今まだ法案が成立いたしませんものですから、内部で一般的な研究はやっておりますけれども、特にそういう点に焦点を合わせてやるということは、これは調査団でも派遣して、その結論を見なければ何とも申し上げられないというのが事実でございます。  それから、もう一つ自衛隊法三条との関係でございますけれども、今委員の御指摘のように、直接侵略、間接侵略、公共の福祉の、そういう主任務が三条に掲げられてございますけれども、同時に、自衛隊が行うのはその三条だけに基づくものではございませんで、百条以下、例えば要人輸送でございますとか、南極観測でありますとか、あるいは委託業務規定でございますとか、自衛隊が三条の本来業務以外の業務法律改正によって付加的にこれが与えられまして、それを執行しておるわけでございます。  今回のPKO法案に当たりましても、私から申し上げるまでもございませんけれども自衛隊法の百条の七でございますか、それにつけ加えまして、自衛隊の任務の遂行に支障のない範囲でこのPKOに従事することができる権限規定を明確にこの中に織り込むようにこの法案には書かれておるわけでございまして、新たな任務が付加されますので、空白で行くとか、決してそういうことではございません。本来の直接侵略、間接侵略の任務のほかに、付加的な任務が与えられれば、本来任務の遂行に支障の生じない範囲内で任務を遂行していくということは当然でございます。  今回、私どもは、新しい国際情勢のもとのこういう新しい任務でございますけれども、それらを覚悟しながら、法案もきちっとそこに根拠づけが与えられておりますから、それに基づいて派遣をする、こういうことに考えておるところでございます。
  27. 國弘正雄

    國弘正雄君 防衛出動待機命令というようなものが、今自衛隊の人たちに対して出ておりますか。あるいは治安出動待機命令ですか。もし、防衛出動待機命令というようなものが出ているとなると、言葉が適当かどうかわかりませんが、臨戦態勢ということになるんだろうと思うんですが、そのあたりいかがですか。
  28. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 待機命令の規定もございます。しかし、今はそのような状況ではございません。
  29. 國弘正雄

    國弘正雄君 それでは、きのう小川委員がるる御指摘になりました再修正案の問題点について、小川委員の指摘されたポイントを少しなぞらせていただきます。  ただし、先ほどのお話によると、これはまだ自公民の発議者の方々の間で預かりになっておるということでございますから、これはむしろ野田さんに伺うべきだろうと思うんです。  きのうの話で何点か大事なポイントが出たように思います。例えば、修正案によると、国会の事前承認というものに関しまして、両院はそれぞれ七日以内に「議決するよう努めなければならない。」というふうに書いてあるわけです。私の漏れ承ったところによると、原案は、つまり三党がお出しになった原案は、議決しなければならないというふうにあったと伺うんですけれども、これはやっぱり自公民の発議者に伺わなくちゃいけませんね、本当にそうだったんですかと。もしそうだったとすれば、国会に対してこの種の義務をいわば課すというのは一体どういうことなんでしょうかということを伺います。
  30. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) どなたにお答えを頼みますか。
  31. 國弘正雄

    國弘正雄君 まず、自公民の発議者に、岡野さんに伺います。
  32. 岡野裕

    岡野裕君 私ども修正案を御審議を願うというような項目の中で、その一つが新たに国会承認を義務づけようではないかということであります。  しからば、なぜ国会承認ということを新たに持ち出したかといいますと、このPKFの活動は、我々一国だけがPKF活動をやるわけではない、諸力国が、多くの国々が一緒に平和維持のための活動業務を展開するのであると。そういうことでありますと、我々のPKF部隊は、国連総会あるいは安保理事会の結論に基づき、事務総長の要請によって出かけていくということであります。日本に要請を事務総長がしたにもかかわらず、来るのか来ないのか、イエスなのかノーなのかさっぱりだということは、日本国の外交関係をおかしくします、信頼を失うものであります。  しかしながら、やはり我々には憲法前文あるいは九条というものがあります。その中で、シビリアンコントロールというような観点の中で、政府原案の中でもその実施計画というものが決定された段階においてこれを国会に対して報告をするというような建前になり、国会報告が行われれば当然それを中心にして皆様方の間で議論の闘わし合いがあるというようなことで、シビリアンコントロールというものも十分にきいていると、こういうように一応は理解をいたしました。  しかし、九十余時間にわたるところの御審議をいろいろ拝見、拝聴しています中で、やはりこの新しく日本がつくるところのPKO法案、なるべく多くの皆様に御理解をいただく方がいいのではないか、もう十分にいただいているように私は思うのでありますが、より一層御理解をいただく方がいいのではないかというような意味合いで、新たに私どもは、在来からも話が出ておりました凍結、国会承認、そうして見直しという三つの項目を加えたわけで、その中の国会承認ということで今お問いかけがあったわけであります。  これは、きのう話が出ましたのは、先議の院で七日、後議の院で七日、その間に議決をというように言っているわけであります。それが、言うならば憲法違反だ、立法府が立法府をみずから縛るのではないか、これは許されないことだと、これが小川先生から提起をされた問題であります。しかしながら、我々立法府がこうしようではないかということで、議決しなければならないという言葉ではありません。先生がお読みになっておられますように「努めなければならない。」ということであります。こうしなければならぬじゃなくて、我々はこうやっていこうというようなことをみずから言うわけであります。そういう意味合いでは、立法府が立法府を拘束するというものではない。やはりPKFを出さねばならないということと同時に、我々のシビリアンコントロールをきかそうということの二つの課題を一緒に満たす一番私は妥当な案だということで我々は、努力をしなければならないということにしたわけであります。
  33. 國弘正雄

    國弘正雄君 全く納得できません。  こんなことを大先輩に申し上げるのは大変じくじたるものがございますけれども法律というのは、立法府が法の執行に当たるべきいわゆる行政府の義務とかあるいは行動の範囲というものを定めるためのものですね。ですから、立法府に対して内閣が責任を負うというのは、比喩で言うたら株主総会が役員会に責任を負うというのとちょっと似て、いささか本末転倒ではないかという気がする。そして、しかも七日以内に議決の期間を限定したというのは、これは国会審議権の拘束というんでしょうか、侵害に当たらないかということ、このことについては私は憲法上非常に大きな問題があると思うので、社会党の発議者であられる野田議員のこのあたりについての御意見を伺いたいと思います。
  34. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 國弘委員の御質問にお答えをいたします。  国会審議法律によって条件を設けたり、あるいは努力目標であっても一定の拘束を課すことができるかどうか。こういう点については、同じケースで三年前一九八九年の十一月に同様の議論が、この部屋で大変ホットな議論が行われております。  それはどういう経過であるかといいますと、当時、社会党、公明党、民社党、連合、この四会派で消費税廃止法を提出いたしました。その消費税廃止法の中で、消費税を廃止した後の新しい税制について、国民税制改革協議会を設置して、そこで審議をして答申をいただく、その答申をいただいた政府とそれから国会は速やかに所要の措置を講ずるものとする、こういう原案を書いていたわけであります。これに対して自由民主党の委員の方から非常に強い問題提起がございました。最初にその問題を提起されたのは宮澤議員でございます。宮澤総理の御実弟に当たられる議員でございます。  どういう主張をなさってこの問題を提起されたかといいますと、「国会に関してはさらに重大な問題が私はあると思います。つまり、国会が報告を受けて、やはり「速やかに所要の措置を講ずるものとする。」ということは、国会が報告内容に従って立法することを義務づけられるわけですね。国会がこの法律の八条二項の措置をとらなければこれは八条二項違反になってしまう、こういうことなんですね。」「これは国権の最高機関である国会の自由な意思決定を拘束することじゃありませんか。」「三権分立の建前でこ「立法府に立法を義務づける権限は最高裁判所にもないんですね。これはもう憲法で明白でございます。」「議員たる者が国会審議権をみずから侵害するような立法を審議し通過させるというわけに私はまいらぬと思います。」と、こういう御主張がありまして、自由民主党が審議を拒否されました。当時の消費税廃止を審議している税制特別委員会はそのために私の記憶では一日半ぐらい空転をいたしました。  そして、そのことについてさらに内閣法制局長官がその委員会に出席をされましてこういう見解を述べられました。「憲法に定める国権の最高機関であり国の唯一の立法機関である、こういうふうに定めております。その国会の機能を侵すとも読まれるのでありまして、私の知る限りでは、このような立法例はございませんし、また今日の憲法を頂点とする法体系の中では適当ではないのではないかと、かように考えております。」と、こういう見解が表明されまして、結局私どももその非を認めて、これは提案をした内容の原案からそのくだりを訂正して審議を進めていただいた、こういう経過でございます。(「趣旨が違う」と呼ぶ者あり)
  35. 國弘正雄

    國弘正雄君 自民党筋からは趣旨が違うという声が盛んなんですけれども、私は範疇として全く同じ種類の問題だと思うんですね。  官房長官、何かこのあたりについて御意見ありませんか。それじゃ峯山さん、最初にどうぞ。
  36. 峯山昭範

    峯山昭範君 お答えいたします。  消費税国会におきまして実はこの点を私も攻撃された方でございますから、当時のことは十分承知をしているつもりであります。まず、当時の税制改革協議会の中身、実は法案も何も私持っていませんし、前もっておっしゃっていただければ用意したのでございますが、当時の法案がないものですから多少違う点があるかもしれません。  私の記憶で説明をさせていただきますと、当時は国民税制改革協議会の答申を受けまして、国会は「速やかに所要の措置を講ずるものとする。」と、こうなっていたわけです。それで、特に「講ずるものとする。」、これが義務規定であり拘束だということでさんざん問題になりまして、これは改めないといけないということで宮澤さんから相当攻められたことを今でも記憶いたしております。このことがありましたので、今回の修正に当たりましてはこれをやめまして、努めるものということにしたわけであります。  したがいまして、今回の修正につきましては、まず七日間ということにつきましては、この法案を読んでいただければわかりますが、要するに、いろんな途中の案のお話も先ほどございましたが、最終的に、何回も検討させていただきまして、「それぞれ議決するよう努めなければならない。」というふうに、努力義務というふうにやらせていただきました。  それで、これは七日という問題がどうかという問題が一つはかかわってまいります。これは要するに七日が短いか長いかという問題が一つあります。これはあくまでも国際貢献という問題あるいは国連の要望にどうこたえるかという問題、それからあるいは現在日本が国際的な立場に置かれているわけですから、日本で今まで一回もやったことのない初めてのいわゆる国際貢献をやるわけですね。法律をつくってやるのは初めてです。そういうような意味で、そこら辺の妥当性というのがそこに一つかかってまいります。  それからもう一つは、先ほども申し上げましたように、これから日本国際貢献をどうするかという問題、そして国連の要望にどうこたえるかという問題、結局こういうようなことの考え方からこの七日間ということを、我が日本の国としてはやはり国連の要望にこたえて速やかにこういうことをやった方がいいんじゃないかと、我々立法府自身が我々の努力義務として提案をさせていただいたわけでございます。  いずれにいたしましても、これは国権の最高機関である国会の判断ということにもなります。そういうような意味ではそうですが、いずれにしましても、我々としてはこれは今までにないことではございますけれども、要するに消費税のときとは多少事情も違いますし、言葉内容も違いますので、こういうふうにさせていただいたということでございます。
  37. 國弘正雄

    國弘正雄君 さっきも私申し上げたんですが、やっぱり国会審議権を束縛というんでしょうか、あるいは侵害というんでしょうかね、するという点において、つまり可能性としてはそういうことだということにおいては私は同質の問題だ、カテゴリーとして同じだと思うんですが、いかがですか。
  38. 峯山昭範

    峯山昭範君 お答えします。  ですから、国会審議権を拘束するかどうかという問題につきましては、これは先ほども申し上げましたように、七日という期間は両院合わせて十四日、いわゆる国連の要望にどうこたえていくかという問題との判断の問題でございますから、いずれにしましても、これは政策判断の問題といたしまして私どもは七日間が適当である、こういうふうに判断をさせていただいた次第でございます。
  39. 國弘正雄

    國弘正雄君 恐れ入りますが、野田さん、このことについて。
  40. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 当時、宮澤先生がその委員会で問題にされたのは、要するに国権の最高機関である国会の自由な意思決定を拘束することになる、ここが一番の問題ではないかという点を問題にされているわけであります。  それからもう一つは、法制局長官の見解では「国会の機能を侵すとも読まれるのでありまして」云々、こういうふうになっておりまして、これは今回の場合の努力目標であっても、当時の経過、内容からいっても僕は国会の自由な意思決定を拘束するあみいは機能を侵すことになる、こういうふうに受けとめています。
  41. 國弘正雄

    國弘正雄君 今の野田議員お話は大変に明快だと思うし、それから宮澤議員が御指摘になった点も私は実にすとんと胸によく落ちる。それだけに今の三党の方々修正案のこのあたりについては私は何ともよくわからないというふうに思いますが、田渕さん、まだ御発言を願っていませんけれども、それで何か御意見ありますか。
  42. 田渕哲也

    田渕哲也君 先ほど峯山議員お答えになったことで十分ではないかというふうに考えております。  なお、法的な解釈につきましては法制局の方にお答えいただければというふうに考えております。
  43. 國弘正雄

    國弘正雄君 まず冒頭、私、連合参議院が案をお出しくだすったということに対して、非常に入念な案をお出しくだすったということに対して、お礼を申し上げることをうっかり忘れちゃって申しわけありません。おくればせながらお礼を申し上げます。  磯村さん、急なことで申しわけありませんけれども、今のこのあたりの問題について、何か御意見あるいは御見解ございましょうか。
  44. 磯村修

    磯村修君 私どもの考えは、前後二週間とはいってもやはり国会審議権というものは拘束すべきものではないということに考えております。以上でございます。
  45. 國弘正雄

    國弘正雄君 もう一つこの問題に関連して、閉会中もしくは解散中は事後承認だというようなことが出てくるんですが、これも私はちょっと異論のあるところであります。しかし、これらの問題についてはいずれも理事会で取り上げなさって今おまとめになっておられるとのことでございますから、今のこの議論をお聞き取りいただいたわけですから、そのあたりを踏まえて理事会で御処理いただきたいと思います。  委員長、それでよろしゅうございましょうか。
  46. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 理事会で諮っております。
  47. 國弘正雄

    國弘正雄君 さて、このPKO法案について、この法案憲法文言及び精神に照らしてどういうものであるかということについては、当然、彼我意見が分かれるところだと思います。それを承知の上で私自身はどのように思うかということを申し上げさせていただくならば、いわゆるPKO法案というのは、武装した集団である自衛隊を少なくとも武力行使の危険が伴う任務を遂行するために海外に送るという道を開くためのものではないかというふうに思うんです。その意味においては、私はやはり憲法に反するという疑いがどうしても消え去らないわけであります。  日弁連のこのところの五代、六代ぐらいの会長さんたちが、法律家としての立場から意見を最近公的に発表されました。そういう趣旨意見を発表されました。それから憲法学会の憲法の専門家も、約八〇%ぐらいの方々がそういう意見を公に発表しておいでになります。私自身は、全く専門が憲法でもありませんし法律でもありませんから大変に暗いわけでありますけれども、しかし昭和二十年、敗戦の年に中学三年生であったというような過去のみずからの歴史に照らして、今の憲法というものをそれこそまぶしいものでも見るかのようにきらきらとしたものとして受けとめた世代であります。  そういう世代であるということもありましょうけれども、どうも今回のPKO法案というものが憲法に相反するという重大な疑いを持たざるを得ないわけでありまして、このあたりは当然水かけ論になることは承知の上でなお、ぜひ宮澤総理もしくは加藤官房長官に御意見をちょうだいしたいと思います。
  48. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 國弘先生御指摘のとおり、我が国憲法というのは世界に類例のないすばらしい憲法であろうと思っています。その特色は九条に一つあるということも事実でございますが、今回のPKO法案というのはその憲法九条との関係において細心の注意を払って作成された法案だと思っております。  両立し得るかどうかということについて、今ここで大変な御議論をほぼ百時間いただいているわけですけれども、現在のこの我が国憲法を守るがゆえにも私たちはその憲法九条の中でやり得ることは十分にやっておかなければいけないと思います。国際社会の中で日本がある種のことをできないんだとするならば、それは逃げ口上ではなく、やれるところまでは徹底的にやった日本がある部分についてはやれないというんだから、それは積極的に日本意見に耳を傾けようという信頼を受けるためには、やれるところはやっておかなければいけない。それが私たちは今度提出いたしましたPKO法案でないかなと思っております。  一方、それは国際的な我々の責務であると同時に、また諸外国に対する説得力を持つための動機であると同時に、国内的にも重要な点だと思います。  我々国内で、ともすれば湾岸戦争以来多くの人間が、日本はどこまでやるべきなのか、また何もやらないでチェック外交だけでいいのだろうか、本当に惑いを持ちました。そして、日本国民が仮にやれるところまで自分たちもやってないんだというような気持ちを持ったとするならば、また国内的に今の憲法のままでいいのかとかいろんな議論が出てくると思います。国内のコンセンサスを固めるためにも、我が国憲法九条の中でできることは徹底的にやっていかなければいけない。その国際的な面と国内面から総合的に判断いたしまして、今度のPKO法案というものは国民世論の大方の御賛同を本来得られるものとして出したものであり、国民から私たちはきっと御理解いただけるものだと確信いたしております。
  49. 國弘正雄

    國弘正雄君 最も基本的なところで、イスカのくちばしのように、今の官房長官の憲法九条とこのPKO法案との関係というのは、私と食い違っておりますから、これはある種の水かけ論になっちゃうことは承知の上でなお申し上げたいと思うんです。  国際社会ということを盛んにおっしゃいました。一体、官房長官のおっしゃる国際社会というのはだれですか、どこですか。国際社会日本に対してどういういわば批判あるいは非難を具体的にどのようにこの問題について加えておるのか、そのひとつ証拠をお示しいただきたい。
  50. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) それはこれまでの例の中で幾つか、日本はチェック外交だけでいろんな意味で汗を流すところが少なかったということは、いろんな事例で出てくるのではないかなと思います。  ただ問題は、私はこのPKO法案等について社会党の方といろんなところで議論しました。NHKの国会討論会でも議論しました。そうしますと、今國弘先生もおっしゃっていましたけれども、よく武装して自衛隊が出ていくからけしからぬとおっしゃるんですけれども、それならば、全く武装しない緊急援助隊法に社会党賛成でございますかと言うと、反対だとおっしゃるんです。ここは論理が一貫しない。よく考えてみますと、結局は自衛隊というものについての不信感というものが根っこにあるのではないか。今度、連合の方が緊急援助隊の方には賛成なさっているというのは一つの明確な政策の意思表明であろうと考えております。
  51. 國弘正雄

    國弘正雄君 今のお答えしっくりしません。しかし、いずれにしても、私は自衛隊が違憲であるか、あるいは合憲であるか、あるいは違憲合法であるかということを今ここ全然問題にしてないんです。そうじゃなくて、武装集団であることは間違いないわけで、その武装集団としての自衛隊をいかなる名目であれ、あるいはいかなる旗印のもとにおいてであれ、海の外に出さないと決めてきたわけです。だから、それがいわば国是と言ってもいいかもしれないんですけれども、それに重大な変更を加えるというのであれば、そちらもそれだけの御覚悟の上で処していただきたいし、それから何よりも国民に対してそちらさまのいわば論理をわかるように説得的にお示しいただきたい。それを、私は手続を欠いておられると思いますよ、政府は。  だから、そのあたりが私どもの疑心暗鬼というか何というか、を生み、国民皆さんが賛成してくれているんだというふうに仰せになりますけれども、私はそうではないと思う。少なくとも半分は、国民は納得していないという現実があるわけですね。ですから日本も、自衛隊の違憲かどうかというようなものは全く離れても、とにかく外に、海の外に出さないんだと。  だからこの間も、ある市井の方が、自衛隊が海の外へ出るということは、自衛隊自衛隊でなくなって他衛隊になっちゃうじゃありませんかと、ほんの市井のおじいさんでありましたけれども、私は、そういう疑念というか、どうなんだろうというふうに国民がまだたくさん思っていると思いますよ。PKO法案に対する反対、賛成というものは、要するにそこに尽きるのではないか、そこに帰結するのではないかというふうに思うんです。  そこで、今官房長官が国際的に云々というふうにおっしゃいましたから、私はあえて反論をさせていただきたいんですが、アジアの反応についてはまあいろいろあると。いや、昔はみんな反対だったけれども、事情を説明したらよくわかってくれたというようなことを、ここにいらっしゃらない方を名指しで申し上げるのは失礼かもしれないけれども、渡辺外務大臣がそう仰せになった。それでそのときに、シンガポールのリー・クアンユー前首相の話をなさった。リー・クアンユーさんと話したら実によくわかったというふうなことをおっしゃったわけですよ。  つまり、PKOに対してリー・クアンユーさんは、昔は反対だったけれども、今は賛成だというような趣旨のことをおっしゃった。リー・クアンユーさん、この三月に日本に来て、そして京都の会議で公の席で渡辺さんのおっしゃったこととは全く違うことをおっしゃっていらっしゃる。あのときにも、かつてリー・クアンユーさん、例の掃海艇の湾岸派遣のときと前後してリー・クアンユー氏が、たしかインターナショナル・ヘラルド・トリビューンだか何かだったと思いますが、のインタビューを受けて、我々東南アジア人がこのことをもし認めるとすれば、それは、比喩としては非常に厳しい比喩だけれども、アル中患者にウイスキー入りのボンボンを食べさせるようなものだということを言った。その同じセリフをこの京都の会議でも公の席ではっきり述べているわけです。ですから、本当に私は渡辺さんの、リー・クアンユー氏は改宗したんだみたいな話をいささかもってまゆにつばをつけて伺ったわけなんです。  しかし、アジアはしばらくおくとして、じゃ皆さんがあるいは大変に気にしておいでであるような、あるいは国際世論といったら即アメリカと、あるいはブッシュ政権というようなものとして措定しておいでになるのではないか、これは私のげすの勘ぐりであったらお許しください。しかし、アメリカの世論というものが一体全体今度の日本PKOに対してもろ手を挙げて賛成したり、批判なしで無条件でこれをのんだりしているとおぼしめしますか。これはもしそういうふうに考えておられるとしたらとんでもない誤解ですよ。  その証拠に、私は四つ五つ持ってきましたけれども、全部もうあれする時間がありませんけれども、きょうの朝の新聞にも出ておりましたニューヨーク・タイムズの社説です。ニューヨーク・タイムズというのは、今さらこんなことを申し上げる必要ないけれども、普通のアメリカ人にとって憲法と聖書とそれからニューヨーク・タイムズの社説、この三つだけは違った意見があってもやっぱり逆らうことができないというぐらいのいわば権威を持った存在である。そのニューヨーク・タイムズが、この二日、「ジャパンズヘルシーミリタリーアラジー」、日本の軍事的なものに対するアレルギーというのはまことに健康である、健全である、そうであってほしい、そうでなくちゃ困るというようなことをはっきり言っている。PKO法案について説いております。  それから四月二十日の同じニューヨーク・タイムズの社説の、「ジャパンズベターエグサンプル」、日本のよりよい実例というのは、書き出しとしてどういう書き出しかというと、一体全体ブッシュ政権はなぜ戦後初めて日本の武装勢力を海外に出させようとして見当外れな決心をかたくなにしているのであろうか、というような趣旨のことで書き出しています。  そしてその中では、日本の政治家の中にはアメリカの歓心を買うべくこの法案の成立、あるいはこういう方向に向かうことを、それがアメリカの意を迎えるゆえんであると考えているかに見える人々がおるというようなことも言っている。そして日本こそはいわば地球大でのシビリアンパワーとして、つまり文民大国とでも訳しましょうか文民国家とでも訳しましょうか、として、むしろアメリカに対して範を垂れる立場にあるじゃないかと。アメリカは、今まで超軍事大国への道を歩んだ結果、大きな大きな過ちを犯して、アメリカ国内はもはやさんざんな状態だ、それに引き比べて日本はというような言い方をして、日本の非軍事的な貢献、例えばきょうから開かれるであろうリオデジャネイロの例の世界環境サミットなんかに大変な努力をしている、出費をしている。そういったような例を具体的に挙げている。むしろ我々アメリカは今まで日本が経てきた例にならうべきであろう、それがいわゆる「ジャパンズベターエグサンプル」、よりよい実例と。  これはニョーヨーク・タイムズの社説ですから、そうあだやおろそかにできない。何もそれが絶対だなんて、私そんなばかなことを申し上げるつもりありません。だけれども皆さんが余りにもアメリカを例にとって、アメリカがどうこうだから、だからというようなことを言外に漏らされたり、あるいはそういうことを御主張になる向きも随分あるんです。だから私は、それに対するささやかな反論を申し上げたわけであります。  そこで伺いたいんですが、なぜカンボジアなんですか。なぜアジアの一国であるカンボジアなんですか。PKOに賛成の皆さんの中にも、例えば前の防衛大学校の校長さんだった猪木正道、政治学者ですよね、正道先生にしても、あるいは同じ京都大学の高坂正堯氏にしても、PKOは賛成だと、しかしアジアに出すことだけは相ならぬと非常に強い言葉で主張しておいでになる。私はそれはわかるんですよ。仮に百歩、千歩譲って、PKOを例えば海外に出す、日本武装集団海外に出すということを仮にがえんじたとしてもアジアには出してほしくないなと、これは。まあユーゴスラビアならともかくなんというようなことを言うのは大変不遜宣言い方だし大変失礼な言い方ですけれども、しかし千歩譲れば私はそういうことは言えるのではないかと。  それで、やっぱりカンボジアというのは、考えてみれば確かに日本軍がそう大きな破壊を与えなかった地域であるということは事実ですよね。それは私も認めます。しかし、旧仏印を足がかりにして日本は太平洋戦争に突入していったということも事実ですよね。そして、カンボジアのタイ国に近い地域を無理やりにタイ国に割譲した、させたと言うべきですかね、したというような歴史的な事実も残っている。だから、千歩譲ってPKOを認めたとしてもなぜアジアなのか、なぜこの時期にカンボジアなのかということを申し上げたい。  というのは、日本国民はあるいは日本政府は、先ほどもちょっと触れましたように、あえて侮べつ的な言い方をお許しいただくならば、カンボジアなんぞには何の芋の煮えたほどの関心も持っていなかったんですよ、本当に。    〔委員長退席、理事上杉光弘君着席〕  そして、わずかに若い人たちがボランティア的にいろいろと仕事をしてきてくれた。そこへいわば後から公的なものが入っていったということですから、だから私はなぜカンボジアなのか、なぜアジアの一国なのかという疑念はどうしても抜けないんですけれども総理あるいは官房長官、何かそのあたりについて御見解をいただけますか。
  52. 加藤紘一

    国務大臣加藤紘一君) 今、我々日本人はカンボジアに対してPKO論議が出る前には芋の煮える煮えない程度の関心さえも持っていなかったというお言葉は、國弘先生のお言葉としてはちょっとあれと思われるお言葉なんじゃないかなと思います。  と申しますのは、PKOの論議が出る前から我々の国の政府はカンボジアの和平に非常に積極的に関与してきたと思うんですね。それで、一九九〇年六月、ちょうど今の二年前ですけれども、カンボジアに関する東京会議を日本がホストしてみたと。これは日本における政治的な新たなイニシアチブをとろうとした一つの、何といいますか、若干不安げであろうけれどもやってみようとする努力の形だったと思うんですね。それで、それがまたパリ会議にもつながっていきましたし、それなりにカンボジアというものについて我々はこれを自分たちの問題として考えてみようという日本の中に新たな意欲と意識が出てきたことは、PKO以前の話でございます。  ですから、またこれについて、やはりアジアの一員で、あそこの国でこれから全世界の人々が集まってその国の再建をしようとしているときに日本だけが参加しない、お金だけを送るということはできないと思います。
  53. 國弘正雄

    國弘正雄君 お言葉じりをとらえるようで大変恐縮なんですけれども、二つ申し上げたい。  一つは、確かにPKOまでは何も日本の公的機関はやらなかったと、もしそういうふうにお受け取りになったとすれば、これは私の言葉の行き違いです。訂正いたします。しかし、かなりこれは比較的最近のことに属するということだけはお認めいただけると思う。それ以前は、だってあれだけ長いことお互いに戦火に苦しんで、何というか、兄弟垣に相せめぎ合う戦をやり、内戦をやり、しかもそこにみんないわゆるスポンサー筋がくっついて、中国だやれ何だってタニマチがくっついて盛んにやってきたわけでしょう。そのときの話を私は申し上げている。ああいうときであるにもかかわらずジャパン・ボランティア・センターなんかの若い諸君は懸命の努力をささげてきた。  今になって皆さん方は、ややもするとそんなボランティアだとか民間人だとかNGOなんというのは足手まといだみたいなことを仰せになるけれども、それはとんでもないことだと思いますよ。彼らが政府の何の、何のと言うと言葉が過ぎますけれども、大した援助もなしに頑張って歯を食いしばってやってきた。例えば私の上智大学の教え子の中なんかにもそういうのがいますよ。そういう人たちに対して、あんたたちは足手まといだみたいなことをおっしゃられたら彼らは立つ瀬がないですよ、本当に。これはもう立つ瀬も何もないですよ、ということを申し上げたい。  それから、国内的にも重要だというふうに仰せになったんですね。私はあえて伺いたいんですけれども憲法というものをないがしろにすると言ったらまたしかられちゃうからもう少しトーンダウンして申しますけれども、だってこの間中島通子さんが、憲法九条なんというようなことを言い始めた途端にそちらの方から大変に厳しいやじが出たということを悲しんでおられた。私もその場に居合わせましたから、確かにそういうやじが出たということは明白に知っています。  だけれども、それはとにかくとして、憲法というものをややもすると何かこう粗末にするというか、もっとありていに言わせていただければ、ややもすれば邪魔者扱いをしているというような傾向が私はどうも目立つのではないかと。現に自民党は少なくとも党是として、党の政策として改憲を掲げておいでになるわけですから、その事実だけは変わらないわけです。改憲を掲げているからないがしろにしていると申し上げているのじゃありません。そうじゃなくて、改憲をおっしゃっておられるというそういう過程の中で、憲法に対してよそよそしいというのか、あるいは悪びれたというのか、そういうような感じをお持ちではないのかと思うんですよ。  話をもとへ戻すと、さっき加藤長官がお金を出すだけじゃと言って、何かお金を出すだけでは悪びれなくちゃならないように仰せになったけれども、ちょっと待ってください。それは我々の税金ですよ。何も自民党皆さんのポケットマネーをお出しになっているんではないんですから。我々の税金ですよ。その税金の中から出すわけですから、たかがお金とかお金だけじゃとか、そう軽々におっしゃっていただきたくない。やっぱりそれは何というか血を流すようにしてお金をつくっている、皆一般の市民は。そしてその人たちが取られる血税とあえて言えば、血税の中から出しておるお金でありますから、どうぞ御自身のポケットマネーを動かしておられるような感じで物をおっしゃっていただきたくない。このことだけはっきり申し上げておきます。  そこでもう一つ、国内的にも重要だということを仰せになりました。全く私もそう思うんです。ただどうでしょうか、憲法というものを、いい言葉がありませんからないがしろにしてとあえて使わせていただければ、ないがしろにしているようで、これはもう与党の特に台閣に列しておられる方は言うまでもなく、我々野党の一介の国会議員であっても公的な職にある、公職にある人間というものが憲法を粗末にするということは完全な自己否定につながらないかと、私はこういうふうに思うんですよ。(「粗末にしてない、大事にしている」と呼ぶ者あり)いやいや、とすればと言っているんです、とすればと。  なぜかといいますと、総理大臣以下がすべての公人が持っておる立場とかあるいは機能というものは憲法によって規定をされて、憲法に書かれてある手続に従って例えば宮澤喜一さんは総理大臣になられたということでありますから、そのいわば自己の権限なりあるいは立場なりというものを規定し、それを可能にしてくれている憲法というものをあんまり粗略にしない方がいいよ、お互いに。これはお互いにと言っているんですよ、皆さんのことだけを申し上げているんじゃない。それは自己否定につながってしまうからだと。  憲法が最高法であり、あるいは至高の法であるということは言うまでもないわけで、すべての法律や法規は憲法に由来をするわけですから、もし日本の公人、我々を含めた公人が、特に政府・与党の重要なお立場にあられる皆さんが、かりそめにも憲法をいい加減にしているというような印象を万が一にも国民に与えるというようなことになると、国民に遵法を説くことはできなくなりますよ。国民に遵法をどうやって説けるんですか。  私は、遵法精神ということをおっしゃるならば、あるいは国民の遵法を求めるならば、隗より始めよでありまして、皆さんのような方あるいは我々のような立場の人間がやはりもう少し憲法のことを大事にしなければならないだろう。もしこれをおろそかにしちゃうと、法の支配とかあるいは法治主義とか、そういうようないわば近代が生み出した理念というものがどこでがたがたしてくるんじゃないかと恐れられるわけですよね。だからそういうことが一つあると。  もう一つは、これはもう本当の悪口になりますから、後でおしかりを受けても仕方がないと思って首を洗って覚悟しますけれども、あえて申し上げると、例えば特に政府自民党の要路の方々に見られる金銭をめぐるいろいろな問題、これはまだ未解決で今現在進行中のような問題もありますけれども、ああいったようなことにどうも偉い人はずぶぬれになっているらしいというふうに国民に余りに長いこと思わせ過ぎると、これは私は、法の支配というものは本当に崩れると思うし、その意味においてはやっぱり自己否定だと、そういうふうにならざるを得ないと思う。  しかも、さっき防衛庁長官仰せになりましたけれども、若い人々が、とにかく命令とあれば、法律が通って命令とあれば本当に大変なところに行くわけですよね。私もカンボジアは何回か伺ったことがありますけれども、まあ瘴癘の地という言葉があるとすれば瘴癘の地だし、しかも四派による戦闘状態がまだ全然終息していない、これからますます広がるかもしれないというようなところに若い諸君を行かせるわけでしょう。その若い諸君が余りといえば余りな政治の現状を見て喜んで行くだろうか。命令だから、仕方がないから行くということはあるかもしれません。今ここで除隊をすると退職金がもらえないとか、いろいろな罰則の適用を受けるから、やむを得ず唇をかんで行くということはあるかもしれません。  しかし、政治がやっぱり余りといえば余りであるという印象を国民は残念ながら持っていますよ、これは。もう次から次から、我々の目のくらむような大きな金額が右に左に揺れ動いているというようなことは、残念ながら国民は知っていますよ。だから、そういう意味からいえば、私は、今度のPKOの問題と、あるいは政治改革とか政治不信の除去とかという問題とはどこかで通底している、全く無関係なものではないというふうに思うんですけれども、そのあたりいかがでございましょうか。どなたかもし御意見をいただければ幸いであります。(「総理だよ」と呼ぶ者あり)総理についてはこれからもうちょっと質問をさせていただきます。
  54. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) いろいろの政治的な諸条件と自衛隊隊員の意識の問題についてお触れになりましたので申し上げさせていただきますけれども、私も先生の指摘されている点は基本的に非常に重要な点だと考えております。  政治への信頼がない場合は、もうこれは国民全体が非常におかしくなることはもちろんでございますが、特に自衛隊というような、国を守るというような、私は崇高な任務と思っておりますが、こういう任務の遂行に当たる人たちが政治への不信を抱くようだと非常に私は危機的な状況が出ると思います。そういう意味では、一般論として申し上げますならば、やはり自衛隊の諸君が、政治家の人たちもああいうように本当に日本のことを考えているんだから、私どももそれは行かなくちゃいけないという状況をつくり出すことは、私は政治家の使命だと思っております。
  55. 國弘正雄

    國弘正雄君 ありがとうございました。私も全く今防衛庁長官仰せになったような気持ちであります。  特に、自衛隊というのが武力集団である、これはもうだれが何と言ったって武力集団であることは間違いないわけでありますから、その人たちが政治という、特にシビリアンコントロールなんていうような話をさっきから皆さんおっしゃっておられますけれども、その文民支配というものを本当に全うしようと思えば、やっぱり政治に対する最低限の信頼というものが存在しないと、これは本当に今防衛庁長官仰せになったように危機的な状況だって起こり得べしというふうに思います。特にその場合は、我々野党よりも与党の、しかも長い間与党におられる皆さん方の責任の方がはるかに大きい、我々も免責されるものではないけれども、ということを申し上げたいと思います。  さあそこで、もう時間がありません。総理に伺うんですが、けさの朝日新聞、ごらんになったでしょうか。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) けさの朝日新聞、見ました。
  57. 國弘正雄

    國弘正雄君 済みません。どこをと申し上げるべきでありました。一面トップの左肩、一面の左肩なんですね。「PKO法案 日本の転換点」という、何といいますか続き物てきようが五回目で、朝日の国正武重さんが書いているポイントなんですね。  私はきょう実はずっと読んでおりまして、最初気がつかなかったんですが、後でふっと気がついて実はびっくりしたんですけれども、横の見出しに「宮沢首相の変節」と書いてあるわけです。私はこれは、変節という言葉は幾ら何でもひどいと。大体、変節という言葉は悪い言葉ですからね、変節漢なんて言うとろくなことを意味しないわけですからね。だから、変節というのは、これはちょっとしんどいなと思うんですが。(発言する者あり)私が書いたんじゃない、朝日が見出しをつけたんですから、私を怒らないでいただきたい。  それで、「宮沢喜一首相といえば、戦後保守政治家の中で「護憲派の代表格」と見られてきた。本人は「今でもそうだ」と自負する。」と。私もそう思います。宮澤さんは何としても護憲派でいていただきたいと思いますし、特に総理・総裁になられたわけですから、なおのこと、そういう意味でリーダーシップを発揮していただきたい。そのリーダーシップというのは何かいわゆるむきつけな力によるリーダーシップでなくて結構であります。一種の道義的というかモラルリーダーシップと言っていいと思うんですね。  そのモラルリーダーシップを発揮していただくに当たって、やっぱり一番大事なのは政治姿勢ということだし、それから、これからの人類が直面するであろう、あるいは日本人が逢着するであろうところの主たる問題、それは環境問題であるかもしれませんし何であるかもしれませんが、そういう問題についてやはり先見性を御自身もお持ちですから、その先見性を発揮して、おれについてこいなどということをおっしゃるのはこれはもう宮澤さんの柄合いに合わないことですから、それはもう何もそんなことはしていただく必要はないけれども、少なくともモラルリーダーシップを発揮していただきたい。  ところが、この記事によればですよ、総理は何か変節をされたと。つまり、護憲派としてのどうも変節をされたというふうにしか読めないわけですね。果たして、そういう変節という言葉の当否は別として、やっぱり宮澤さんは変わっちゃったなと周りの人がもし思うとしたら、それは思う方が悪いんだと、おれは変わってないよと、こうおっしゃいますか、どうですか。
  58. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 國弘委員とは長いこと随分おつき合いをいただいて、戦後同じようないろんな体験をしてまいりました。戦前体験は私の方がまあ長うございまして、私は戦争体験というのを真正面からいたした方でございますからそこは違いますけれども、戦後、国ができてきょうに至るまで、国のためにお互いにいろんな議論もしてまいりました。  けさ私のことについて論評されましたその新聞の方々も、実はそういう意味では同じでございます。私自身は、これは何度も申し上げたことでございますけれども憲法を変える必要はないという、今でもそういう意見を持っておる人間でございます。そこで、そういう長いこと同じ立場をかなり共通な意識のもとにとりながらきょうまで戦後の日本をつくってきたお互いの中でこの問題をめぐって非常に議論が分かれたということは、私はある意味で残念でもありますが、しかしそれだけに軽々に看過していいことではないと思っております。  問題になりますのは、先ほど官房長官がやはりそれに関したことを言われましたけれども、我々はこれだけ国際的に責任を負うべき国になりましたけれども憲法を持っておりますから、憲法の上でできることとできないことがあります。それは明瞭にしなければならないと思う。  しばしばいろいろな人から、日本はいわば世界の安全と平和のただ乗りをして何らそれに貢献せずに自分だけ繁栄を築いてきたということを言われて、それはフェアでない批評ですけれども、恐らく國弘委員もお聞きになったことがあるし、それに対しては何度も何度も反論をしてまいったわけですけれども、たまたま湾岸戦争というものがあって、という意味は二重の意味がございますが、一つ国連というものが初めて有効に機能できるようになった、冷戦が終わりましたから。ということで国連というものが今後の世界の平和を維持増進する役割を担う可能性というものが相当大きくなってきたという事実があります。  また他方で、冷戦後かえって民族とか宗教とかいうことをめぐっての局地紛争が多くなって、そこへ国連の存在が非常に大事になってきたという事柄がございます。そういうことの中で、我が国世界にどういうことが起こっても自分の利益に関係ない限り知らぬ顔をして長いこと参りました。それは、戦後の日本はそれが許されたと思います。  その最初の例外のケースは、多分、大平内閣のときにソ連がアフガニスタンに侵攻をいたしました。イランがアメリカの人々を人質にいたしました。あの年の暮れに、初めて我が国がイランに対して経済制裁をした。モスクワのオリンピックに参加をしないということを表明した。これが初めてのケースでありましたけれども、それは一種の不作為、インアクションとしての我が国側の決定であった。  しかし、それから後、湾岸戦争が起こりまして、国連が事態の処理の中心になってきたときに、果たして我々はそれに対して何にも貢献しなくてもいいのかというかなり深刻な、しかも戦後初めての国民の間のいわば議論があって、そして、もちろん財政的な貢献はいたしましたけれども、これは戦争が終わってからであったけれども自衛隊が掃海をしたというような事実が出てまいります。  そこで、私どもが考えましたことは、これだけのいわば国民の間の議論が起こってきた、長い間お互いに考えていたことではありますけれども、我々として本当にこの世界の平和と安全に積極的な貢献をもう少ししなければならないのではないだろうか、それは財政的なことだけでいいのだろうか、ODAだけでいいのだろうか、というような種類の議論でございます。  先ほど官房長官が御説明をしましたように、我々は憲法でできないことがある。そのことはだれが何と言ってもできないことはできないことであって、アメリカがどう考えるかということに、申し上げますが、関係のないことである。我々のこれは決心であります。しかし同時に、できないことがあるとすれば、それならどこまでできるのか、できることだけは真面目に一〇〇%やっておかなければ、我々ができないことはできないという立場は実際相手に対して説得力がないということは、これは恐らく國弘委員もそこのところは、私はそこまで御賛同いただけると思うんです。  そうしますと、できることの限界は何かということになります。そこで、さっきから言われることは、自衛隊というものは武力集団である。そこは私は、自衛隊は武力集団である、それは我が国の自衛のための武力集団である。自衛隊が掃海に行きましたのは、私は武力集団として行ったのではないと思います、それは相手と交戦をするために行ったのではありませんから。自衛隊国連の平和維持活動参加する、それは武力集団として行くのではないと思います。何となれば、相手と交戦をするためではないからであります。  このことはしかし、おっしゃいますように、また何度もこの委員会で御議論になったように、それでもその自衛隊は武器を持って行くではないかという問題があります。それについては、政府は何度も、その武器はこの法律によってかくかくの制約のもとにかくかくのためにしか使われないということを何度も申し上げたわけですけれども、それでも先ほどのお言葉によれば、いわば非常に瘴癘の地で、しかも硝煙立ち込めるところへ行けばいろんな危険があるだろう。そうすれば、その武器がいわば武力の行使になる危険があるじゃないかということを言っていらっしゃるわけです。    〔理事上杉光弘君退席、委員長着席〕  それについてもこの法律は、そういう場合には我々の平和維持活動についての参加は中断いたします、あるいは撤収いたしますと。のみならず、場合によっては隊員の危険にかなり影響があるかと思われるような場合にも、武器の使用というものをかなり厳密に縛ってしまっておる。そこから危ないではないかという御議論があるぐらいに縛ってしまっておりまして、それだけの用心をした上で、我々としてはやはり国連活動に貢献をすべきであろう、政府としてはそう考えるわけでございます。  くれぐれも國弘委員が、このことについては幾つかの日本の過去を知っている国々が懸念している点があるだろう、あるいはまたこのことは事の進展いかんによっては危険なことになるかもしれない、カンボジアのことも言われまして、文化体験と言われる、異文化の体験と言われることも私は大事な点だと思います。  ですから、この法律が通ったからといって、どこへでもどんなときにでも我々は国連の平和維持活動参加していいということではないかもしれません。そこは十分に政治が判断をしなければならないし、また周辺の国々、関係の国々がどう思うかということも慎重に判断をしなければならないでございましょうけれども、しかしそれだけのことを申し上げた上で、この法律を通していただくことによって、国民がこの場合には国連の平和維持活動にやっぱり参加をした方がいいと考えられたときには、我々がそれに参加をできるようなそういう余地をつくっていただきたい、そういう基盤をつくっていただきたいというのが政府の念願でございます。
  59. 國弘正雄

    國弘正雄君 非常に御懇篤な御説明をいただいたことに対しては、まことにかたじけないと思います。  私自身も一九八二年にある本を出しまして、そのときに、やがて日本国際社会に対して何かをやらなくちゃならない時代が来るだろう、早晩来るだろう、それを避けるわけにはいかないと。そのときに備えて日本は何ができるか、何をすべきか、そして何をしては絶対にならないか、そういうことをあらかじめ国民的なディベートというか討議を起こしていく過程の中でやっぱり少し時間をかけて決めていきたいな、こういう趣旨の本を出したわけです。残念ながら何かそういう話というのは先の話みたいになっちゃって、結局今になって何かあたふたと倉皇のうちにこのPKO云々というのが出てきた。そしてしかも、アジアを対象の、一国を対象にしたものが出てきた。  私は、今の総理おっしゃってくだすったことは一方においては大変よくわかりますけれども、他方においてはやっぱり釈然としない点が残る。これはもう見解の相違でありますから仕方がないと思いますが、私は少なぐともこのいわゆるPKO法案というものについてはやっぱりこれからも反対の立場を貫いていくということを申し上げて、きょうは終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  60. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほど御質問された國弘委員の方からも外務省に質問がございました。それは国連特別委員会での機能強化の報告書の件でございます。私もせんだって、ユーゴスラビアの情勢がいろいろと悪化している点をとらえまして、このPKO活動の拡大されることについて警告の意味をも込めて国連局長にお尋ねいたしました。そのときに国連局長からも従来の伝統型のPKOについては堅持する旨のお話がございましたし、きょうもこの法案に照らした活動しかしないということで先ほど御答弁があったかに伺っております。  しかし、これは非常に重要な問題でございますので、私たちこのPKO法案を作成するに当たりましては相当党内でも深刻にこの問題について討議を重ねてまいりました。憲法をどうしても守らなきゃならない、憲法の精神を生かしていかなきゃならない、そういう立場で相当議論をしてここまで来たわけでございます。したがって、再度確認の意味国連局長そして総理にお尋ねをしておきたいと思います。  これはいかなる報告書が国連決議案として提出されようとも、我が国は今回のPKO法案に盛り込まれたこの五原則をあくまで遵守していくんだと、そういうことで貫き通していかれるのかどうか、その点確認しておきたいと思います。
  61. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生、まず事実関係の方を私の方から。  先生が言及になっておられるこの報告書、六月一日付で採択されたものですが、これは先ほどもちょっと別の先生に御説明申し上げましたけれども国連の中にPKO特別委員会というものが、三十四カ国が構成になっていますけれども国連総会のもとに設けられまして、国連として今後のPKOのあり方についてずっと研究してきておるということで、ことしはことしの研究の成果を発表したということでございます。  その中で、今後のPKOの問題でございますので、過去のPKOというのも実は実践の積み上げということでできてきておるものでして、憲章上明文の規定に立っておらないということがある意味では何と申しますか、柔軟にPKOがこう性格を変えてきた、そういう歴史をつくってきたんだろうと思うんです。  そういう文脈の中で、例えばある国の代表団は、PKOを行うに当たってその同意というものが非常に重要だけれども、同意がなくてもPKO活動をやり得るという、そういう分野を考えてはどうかという意見の表明があったと。これに対して別なパラグラフでは、いや、やはり同意というのは非常に基本的に重要だという議論をした国もあったというような紹介があります。  いずれにいたしましても、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、そういう実践の積み上げということでできてきて今後もできていくものでございますから、将来いろんな変化があるいは出てくるかもしれない。しかし、日本に関します限り、この法案で言っておりますところのその今の議論で言えば最初の三つでございますね。停戦というものがある、それから受け入れ国がPKOを受け入れるという同意がある、その中に入った国に対する合意がある、それから中立的な活動でなければならない。こういうPKOの基本的な原則というものは、少なくとも日本法案の枠組みの中で参加していく限りにおいては、この三つの原則は基本的に我々としては重視していくものであるということでございます。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その報告というのを私は新聞でしか見ていないのですが、恐らく平和は、平和維持だけでは足りない、紛争が起こらないうちに何かできないかというようなことをきっと考える、そうすると当事国の同意がなくても行ってやれば紛争が起こらないで済むだろうとかなんとかいうことをきっとお考えになっているんだろうと思いますが、それはなかなかそういうわけにまいりませんですね。理想論ならともかく、それは戦争に巻き込まれてしまう、現にユーゴでそういうことが起ころうとしているわけですから。  ああいう御意見はああいう御意見として、私は本当に実行可能なものになっていくとは思いませんですが、それはそれとしまして、今我々のお願いを申し上げている、御審議を願っている法律案は全くそれとは無関係のことでありまして、今政府委員が申し上げましたような点が五原則の中心点でございますけれども、これが外れますと、先ほどから申し上げております我が国憲法との関係が非常に難しいことになります。ですから、ああいうことに我々は煩わされるわけにはいかない、やはり五原則でいかなければなりません。
  63. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 総理、この委員会も長時間にわたりまして慎重に審議を重ねてきているわけでございますが、その議論をいろいろと聞いておりますと、PKO国連を中心とした平和維持活動、これに対しましてはどの政党もやはり積極的にこれは参加しなきゃならない、何らかの役割を果たさなきゃならないということについては大筋において合意をしているんじゃないかなという感じがしてなりませんが、総理はどのようにおとりになりますか。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 何もしなくてもいいんだというお立場は聞かれなくなっておると思います。殊に、カンボジアばかりじゃございませんけれども、現地をごらんになった方々がやはり何かをしないといかぬなということはお感じになっていらっしゃるようですから、その点は共通点がかなり基盤は広いと思いますけれども、ただしかし、憲法の問題であるとかいろんな国の反応であるとかそういうことを御心配になっておられる方々がおられる、そういうあたりが争点になってまいっているんだと思います。
  65. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 先ほども憲法の問題につきましては論議がございました。大きく各党意見の分かれるところは、やはり憲法の問題と、それから自衛隊参加を認めるかどうかという点ではないかと思うんです。  確かに自衛隊参加を否定される方々もお見えになります。当委員会でも各党の立場でその議論が展開されたところでございますね。その中には、PKOの本質あるいは任務というものに意図的というか、何かありますかどうかそれはわかりませんけれども、目を向けないような議論というのもありました。しかし、多くの二十一世紀に向けての日本の国際的な進路をどう見定めていくかという基盤については共通の認識のある議論であったんではないかと、私もそう思います。  PKOというのは戦わざる軍隊である、あるいは国連を中心として平和を維持する崇高な使命のある活動であるということは、今までもこの委員会で私たちも議論してきたところでございます。ノーベル平和賞を受賞することができたのもその活動のためであるということでございます。  このようなPKOの実態につきまして国民皆さん方理解されつつはあると思いますけれども、一方ではその本質について誤った判断というのがまだ存在するのも事実だと思うんですが、総理はこのような議論についてどのようにお考えでしょうか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) PKOという言葉自身が、二年ほど前でしたらこれを知っていらっしゃる方は有識者の中でも少なかったと思いますので、国民にとっては新しい概念であったと思います。したがいまして、それが、しかも目に見えてこれがそうだということがないものでございますから、今日でも漠然としたとらえ方になっておるかもしれません。これはやむを得ないことでございますけれども、こういう国会における御議論等々を通じて国民の間でもある程度の漠然とした御理解が出てきたのであろうと。私ども思いますのは、こういうことは経験によってお互いが全体に学んでいく。なるほどこういうものであったのか、それならばといったような、そういうことの積み重ねの上に立っていくことがやっぱり大事であろうかなというふうに思います。
  67. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私は、せんだってのこの委員会でも申し上げたと思いますが、PKO参加するということは、これはもはや国際社会の一員として、我が国国際貢献というよりもむしろ国際的な責務である、最低限の義務になっているんじゃないかと思います。お金の面では、先ほども議論がありましたが、世界第一位の拠出国になっている我が国でありますけれども、人の面では、そういった意味では最低限の義務さえ果たしていない。これが現状ではないかと思うんです。  同じ国連の難民高等弁務官をされております緒方貞子さんはこのようにおっしゃっております。平和というものを真剣に考えているという一つのあかしとして、PKO参加することを相当真剣に考えるべきだと思いますとおっしゃっているわけです。国連という舞台で幅広く活躍されておりますと、そういうことを痛切に感じられるんじゃないかと思います。  確かに、自衛隊海外に出ていくということになりますと、やはりそこには戦闘という場面が思い浮かびますので、いろいろと御心配をされるというのは、これは素朴な国民感情ではないかと思います。しかし、PKOのいろんな実態というものを無視して、自衛隊イコール戦争というふうに結びつけていくことだけは、これは転換をしていただきたいと私は心から思うわけでございます。  私どもも、このPKOの実態を知るまでは、自衛隊参加については党内で議論も重ねてまいりましたし、反対の意見等もありました。また、湾岸戦争におけるような、あの多国籍軍のようなものについては、絶対に私たちは参加することについては反対を貫き通してまいります。  ところで、今では世界の約八十カ国以上の国から五十万以上の人々がこのPKO活動参加しているんですが、外務省、現状はいかがですか。今現在何カ所で活躍されていますか。
  68. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 現在、PKO活動世界で十一カ所ぐらいのところで展開されております、UNTACを含めまして。この時点で世界の五十カ国ぐらいの国が、非常に丸い数字で恐縮ですけれども、トータルで三万人弱ぐらいの要員を送っておるということで、昨年の夏ぐらいの時点での御説明では一万三千人ぐらいということを申し上げておったんですが、その後、御承知のとおり、これも丸い数字ですけれども、UNTACが現在四千数百名が集まってきている状況、それからユーゴが一万人前後ということで、加えますと約三万弱、そういう数字に会ううかと思います。
  69. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 現在、このPKO参加している人たちはほとんど軍人だということを、この前局長はたしかお話しになっておりましたけれども、それは事実ですか。
  70. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 一番わかりやすい例はUNTACだろうと思うんですけれども、これで御説明させていただきますと、トータルで二万人を上回る、まあ二万四千とかいろいろ数え方がありますけれども、要員を必要としております。その中で軍事要員が一万六千という数字でございますので、それじゃその残った数字は何かといいますと、文民警察を含みますところの行政監視要員が四千四百、それから選挙要員が千四百ということでございますので、これは非常に総合的なPKO活動でございますので、そういう意味でその文民を含みますけれども、例えばサイプラスの例をとりますと、これはもう純然たるPKFなんで基本的にはもう大多数が軍事要員、中には文民の方若干おられますけれども。それから、UNDOFというゴラン高原におけるPKFもそうですし、UNIFILというPKFもそうですけれども、純粋にPKFだけ、広い意味でのPKFだけで展開しているところにつきましては、大多数が軍事要員と言うことができるかと思います。  繰り返しになりますけれども、このUNTACは複合的なPKOなものですから、四千四百人の行政監視要員、文民警察を含んで、それから選挙監視要員が千四百という数字がありますけれども、それをとってみても、やはりその二万数千人の中の一万六千という軍事要員の比率というのは相当重いのではないかというふうに考えております。
  71. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 せんだっての委員会でも局長答弁されておいでになりましたけれども、実際にそこで交戦状態になっているところがあるんでしょうか、どうですか。
  72. 丹波實

    政府委員(丹波實君) その交戦状態の意味でございますけれども、いわゆる五原則のうちの第一原則が崩れたような状態が現在展開されているPKFの中で起こっているかという御質問に引き直してお答え申し上げますと、それはないと申し上げることができると思います。  ただ、基本的に紛争当事者としては停戦状態、停戦協定を遵守はしているけれども、他方、散発的な衝突といいますか、散発的なものが若干起こっている例としては、それは例えば事務総長報告によりますと、クロアチアに展開している国連ユーゴ保安隊には若干そういうものがまだどうもあるということでございます。  UNTACの場合には、一部コンポントム地域などにつきましては四月のある時点ぐらいまでは若干の不安定要因というのはあったようですが、これもSG報告によりますと、最近は基本的には平穏である、クワイエットという英語音使っていますけれども、平穏であるという報告書が出ている次第でございます。
  73. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうすると、今の局長答弁を総合しますと、このPKOはやはり活動の大部分については軍事要員が占めているということと、決して戦争に行くために、戦うために行くのではないんだというのがPKOの実体だということがはっきりいたしたと思います。  日本もやはり平和憲法を持つ国でございますし、この平和憲法を守っていかなきゃならない、だからこそ国連の平和の維持のための活動自衛隊を送れるのではないかと思います。PKOへの参加というのは、私たちは平和憲法の精神に合致したものだと、このように思っておるわけでございます。このような平和憲法を持ち、その憲法を守り抜くための闘いの歴史を持つ日本でありますからこそ、カンボジアの人々もUNTACの人たちも我が国からの参加を強く望んでいるのではないかと思いますが、総理、どのようにお考えでしょうか。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のとおりであると思います。
  75. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 当然といえば当然過ぎるような御答弁でございますけれども、これはいろんな議論の中にございましたが、PKOへの参加というのは自衛隊を活用しないでも我が国として十分な協力ができるんではないか、こういう主張もこの委員会でも行われてきているわけです。また、それに沿った主張もございます。しかし、いろいろとPKOの実態とかあるいはUNTACの現実を見てまいりますと、なかなかこれらの御主張というものは論拠がないんではないかというふうに私たちは感じるわけです。社会党さんでも、このような事実というのは認めていると私は思うんです。  先般、カンボジアを訪問されました社会党の調査団の方々は、帰国後の記者会見でこのようにお話をされているということを私もお聞きいたしましたが、それは、兵たん、輸送、通信、医療等の分野における協力は民間人にやっていただくのが文民参加の観点から最も望ましいが、簡単には参加していただけないと思う。また、組織的にしっかりしていなければ意味がないので、自衛隊を文民の組織に移しかえ、その組織、能力を活用したい。そして、その上でUNTACに参加したいと考えている。このようにおっしゃったと私もお聞きしたわけでございます。  これを見てまいりますと、自衛隊派遣に社会党の方々も反対されておりますけれども、やはりこのUNTACに参加をして、あるいはPKO活動をするに際しましては自衛隊の持つ経験というもの、あるいは組織の力、そういうものに頼らざるを得ないということを認めているんじゃないかと私は思います。  そうだとしますと、ほかの諸国が当然前提として行っておりますところの国連の平和の維持のための活動自衛隊参加することをなぜ認めようとされないのか、なぜこういった国際的な常識に従わないのか、その点私たちは疑問に思わざるを得ないわけです。自衛隊の能力あるいは経験を平和的に活用していく、国連の平和活動に活用していく、その点についての総理の見解をお伺いしたいと思います。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 幾たびもこの委員会で御議論になったことでありますけれども、この国連の平和維持活動というものは決して易しいものではない。三Kとおっしゃる方のあるほど苦労の要るものでございますし、また組織力の要るものでございますから、やはり自衛隊のようなそういう組織力と訓練等を積んでいる人々でないと有効にこの仕事ができないということは、殊に派遣先がしばしば自然あるいは気候の条件が悪い、また硝煙がまだ立ち込めているようなところでございますから、決してホテル住まいをしてやれるというようなところでない。自分が自分で生きるということ自身が非常に大変だというようなそういうことから、現地をごらんになった方は多くやはりそういう印象を実は持ってお帰りになっておられる。  他方で、この間もこの委員会にお一人ボランティアの方が見えまして、ここで参考人として意見を述べられました。最後に、自分たちはカンボジア人を尊敬しているからいわばこの仕事を楽しんでやっているという、まことに頭の下がるよう宣言葉も言われましたが、それはボランティアでいらっしゃるからああいうことをやっていただけるんであって、国民のみんながなかなかああいうふうに残念ながらなれるわけではございません。いわんやボランティアの仕事はそんな大きな組織的な仕事でございませんから、やはり本当に組織的な大きな仕事を国連の平和維持活動としてやろうとすれば、我が国の場合には自衛隊にこれを頼むということが現実的な可能な唯一の方法ではないかと私どもは考えておるわけでございます。
  77. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 今ボランティアの方のお話をされました。私どももカンボジアに調査団を派遣いたしました。そこで、現地でやはり民間のNGOの代表の方々とも懇談をする機会を得たそうでございます。NGOの皆さん方もさまざまな分野で活動されております。しかし、そういう方々活動を効果的にしていくのも実際に国連PKO活動があればこそ、これが効果的に発揮されているんだという現地の状況でございます。  ですから、PKOという一つの言うならばハードの面ですね、ハードな援助活動一つの方法でありますし、NGOの性格に即したソフトな援助、これも必要である。この二つの援助が車の両輪のように行われることがやはり民生安定にとって、紛争をこれから解決して新しい国づくりをしようという国にとっては必要になってくると思います。したがって、現地で活躍されております日本の人々はこのNGO活動が行いやすい環境、これを日本政府が支援してくれるような態勢というものを非常に訴えてお見えになりました。やはりその点が日本政府として欠けていたと思いますし、これからまた検討を重ねていただきたいと思うわけでございます。  さて、先ほどカンボジアの情勢について社会党の調査団の方々の報告の中から取り上げさせていただきました。カンボジアの問題を申し上げますと、私どもも調査団を派遣していろいろと現地を見てまいりましたのを先ほど申し上げました。やはり、過去二十年近く内戦が展開されてきたわけでございますから、国土が大変に荒廃しております。人心も荒廃しておるでありましょう。飲料水、住宅、電気といった生活環境はもちろんのこと、かつてはあの国は緑豊かな牧歌的な農業国でありました。クメール文明という文明国家でもありました。農業輸出国でさえもあったわけでございます。それが内戦で木が伐採されて緑が大幅に減ってきた。赤茶けた風土に変わりまして、生態系自体そのものが変化をしておる。川もかつての清流からどぶのような濁った川になっている。  そういう中で、まだまだ地方では治安も悪く、生命維持の基盤である水の確保も困難だ。先ほど総理もおっしゃったような状況があるし、また気温も四十度前後という非常な過酷な画然状況の中でされているわけです。したがって、民間のボランティアの皆さん方も活躍されておりますが、なかなかままならない面があろうかと思います。  また、UNTACの部門と申しますのは、これは今川大使も調査団に対しておっしゃっておりますけれども、統一をされた指揮系統のもとで動く軍人によるPKOの中にあって、一緒に活動する相手が軍事的知識が少なく、部隊として行動することになれていないとやはり相手のことが気になって仕事ができにくくなるおそれがある、こういうことを調査団に対しておっしゃっておりました。  やはり、軍事的な知識を持ち組織的に訓練された要員でありませんと、UNTACの要請にこたえて、いろいろとUNTACと連携をとりながら、その中で効果的に活動することは非常に難しいんじゃないか、こういう調査団のお声もありました。私も同感であると思っております。この点につきましては、防衛庁長官はどのようにお考えでしょうか。
  78. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私は、ペルシャ湾における機雷掃海艇の実際上のお話をるるお伺いしましたが、その中にやっぱり現地で海上自衛隊の自衛官があの任務を遂行する際に、アメリカ軍のみならずほかの国々、大変共感を呼んで協力をしてくださったという点がございます。それで、私はやはりそういう今委員の御指摘のような点が確かにあろうかと存じます。  これからカンボジアによしんば派遣する場合に、やはり今川大使も言っておられましたけれども我が国自衛隊、国際法上軍隊になりますけれども平和目的のために出るわけでございますが、そういう組織それから訓練を持ち共感を持ち得るような、そういう任務を帯びておる人たちが共同してやることが一番円滑に共感を呼んでできるんだというお話を承りまして、私も今委員仰せられた点と全く同感でありまして、この点私も異存はございません。そのとおりだと存じます。
  79. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 調査団の報告によりますと、ざらにUNTACはいよいよ武装解除が始まる第二局面を迎えるわけです。秋ごろからはPKO本体の活動よりもむしろ後方支援、人道的支援、医療、選挙事務、治安維持、そういった面でのニーズが増加してくる、こういうことでございました。この意味で、PKFを凍結した上で後方支援分野を含めました本格的なPKO参加というのは極めて重要ではないかと思うんです。  調査団によりますと、会見した要人の多くの人たちはこの私たちの主張に理解を示して、かつ日本PKO参加については歓迎の意を表明されているそうでございます。特に、実際の当事者の皆さん方が強くその自衛隊派遣を望んでいるということに強い印象を受けたということでございます。その点、総理はどのように思っておられますか。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 紛争をしておられた当事者、関係者、住民はもとよりでございますけれども、これから本当にいわば三十数万という人々が生業につくために、地雷をよけて復帰と申しますか、新しい土地なり家なりを与えら九るという、そういういわばここから平和への道が始まるわけでございますので、そのときに我が国のような国の助けがやっぱり私は一番大事であろうと。そういう段階が早く来なければならないので、そのためにはそのフェーズⅡが早く実は実現しなければならないという、そういうところに今来ておるのだと思います。
  81. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私は、カンボジアの支援に対しましては、人道的な立場で顔の見える協力、ともに汗を流す協力、心の通う協力が必要だろうと思います。  内紛によって荒廃した中から、せんだっても申し上げましたが、一つの国家を、一つの平和国家を、文化国家を建設しようという大事業であります。しかも、国連を中心として世界の国々がこれに協力をして行っていこうという画期的な大事業だと思います。大変にこれは努力の必要な事業ではないかと思います。シアヌーク殿下がUNTACの継続を三年望まれたのもゆえあるかなと思います。そのくらいの事業でございます。したがって、日本がこれに同じアジアの一員として参加していくことは当然だろうと思うんですね。しかも、カンボジアの人々が望むような方法でやはり参加をすべきではないかと私は第一点として思います。  さらに、カンボジアを中心といたしますところのインドシナ三国の状況、これは今後のアジアの安定あるいは繁栄にとっても大きく影響してくるんではないかと思うんです。カンボジアの周辺にはラオスもございます。ベトナムもございます。中国もあります。タイ国もあります。インドネシアもあります。それからマレーシアもあり、フィリピンもあり、それぞれがいろんな利害関係を持ってこのインドシナ三国の今後の発展、安定について寄与しようといたしておるわけでございます。ですから、日本はその中で明確に、アジアの諸国に対する日本の国としての政策というものをより明確にしていかなきゃならないんじゃないかと思うんです。  今までのアジア諸国の中のいろんな批判の中には、日本はアメリカ寄り、アメリカにべったりの外交方針ではないか、我々アジアよりもアメリカの方針によっていろいろと日本の外交政策というのが揺れ動き、リードされているんじゃないかという批判もあったように思います。最近はその点についてはいろいろと努力されていると思いますけれども、今ここに国連のUNTACを中心としてカンボジアを一つの国家としてつくり上げていこう、しかもそれに周辺諸国が努力、協力をしていこう、世界協力していこうというときでございますから、そういう批判を日本は払拭するような対アジア外交、経済政策というものをやはり明確に確立をしていくべきではないかと思いますが、総理、どのようにお考えでしょうか。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは大変大事なことであるし、また大変難しいことでもあると申せますが、ともかくここでインドシナ半島に平和が来るということによりまして、アジアはこの地域でまだ一つ二つございますけれども、これはやはりこの地域の平和と繁栄にとっては非常に大きなことでございます。  しかも、太田委員が今言われましたように、新しい国をつくるということは経済だけ、経済援助だけをすればいいということではなくて、そういう人がやっぱり育たなければならないとか、そういう意味での我々が貢献し得る分野というのは実は非常に広いのだろうと思いますが、我々ということの中に、しかしそれは日本が何も先に立ってというふうに考えますよりは、今おっしゃいましたような国々がみんな周辺におるわけでございます。そして、それらの国々は必ずしも常に友好的であったわけではありませんけれども、今こうなりますればお互いにやっぱり助け合ったり補完し合う関係にもございますので、我が国の役目というのは、そういうことをみんなでいわばお互いに協力しながらやっていくために我が国が果たす役割は何かということになるのであろうと私は思います。  そのことは同時に、アジアのこの地域に対する我々の大きな貢献になるわけでございますから、来るべきカンボジア復興会議などのテーマも多少、閣僚会議がありました後、事務方の委員会におろしていきたいと思っておるのでございますけれども、そういうところの考え方も、太田委員の今言われましたような長い将来を展望しての我が国の果たす役割は何かということを常に考えながら、この復興が周辺の国々全部の共同の仕事になっていくように考えていかなければならないと思います。
  83. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 終わります。
  84. 立木洋

    ○立木洋君 私は、まず最初に再修正案を提案された三党の方々にお尋ねすることにいたします。  最初に、自民党岡野さんにお尋ねいたしますが、現在カンボジアのUNTACの軍事部門、幾つがあり」ますが、その中に派遣できるのはどの部隊で、派遣できないのはどの部門になるのか。    〔委員長退席、理事上杉光弘君着席〕  言いますと、UNTACの軍事部門には軍管区本部、軍事監視員グループ、歩兵部門、工兵部門、航空支援グループ、通信部隊、衛生部隊、混成憲兵中隊、兵たん大隊、海軍部門ということで成り立っているわけですが、どこに派遣できてどこに派遣できないのか。
  85. 岡野裕

    岡野裕君 立木先生からのお尋ねでありますが、私ども政府原案修正してこれで可決成立を願おう、可決成立を願った場合に、どこに出るかというのは改めて行政府の方で決定するわけであります。今お尋ねのカンボジア、どういう部門どういう部門どういう部門があるかという点につきましては、私、立木先生ほどつまびらかではありません。したがいまして、具体的に名前をお並べになられたそれのどれかというのは、あるいは違うかもしれませんけれども、抽象的にお答えをすることで御勘弁を願いたいと思っております。  今回、凍結によりましてどの部門にまず派遣することができなくなるのか、その逆が派遣することが可能になるわけであります。  先生、この法文をお持ちでありましたならばごらんを賜りたいと思うのでありますが、政府原案三条の第三号、ここにずっと協力業務というものが列記されているところであります。その中で、イかもへ及び政令にゆだねられている同種類の関係ということでレというのがございます。自衛隊部隊として参加するという場合にはこの部門が凍結をされることになります。しかしながら、これらの部門でありましても個人参加でありますならばイからへまでも可能であり、レについても可能な部分があるであろう。それからロジ部隊、これはヌからタまでになるわけでありますが、これは自衛隊部隊として参加をすることは当然許される。  というような原則論に立ちまして、アバウトではありますけれども、私が聞きかじったところでお答えをするといたしますならば、UNTACにつきましては軍事部門の中で次のような分野で協力が可能だと。停戦監視団、これは個人の方です。それから航空部隊、通信部隊、医療部隊、ロジ部隊というようなものになろうと思っております。先生、本部というようなお話もあったように思うのでありますが、本部要員についても協力は可能だと、こう存じております。  なお、文民部門、これは文民警察・選挙、行政、人権監視、難民帰還、復旧、これらがありますが、これらは当然可能であるというようなことで掌握をしております。
  86. 立木洋

    ○立木洋君 民社党の田渕さんにお尋ねしますけれども、きのうのあなたの御答弁の中で区分けする問題について、軍事活動、つまり歩兵が中心だと、いわゆる戦闘能力を持った部隊というのが対象になるという説明がございました。それを今の岡野さんの話と兼ね合わせて考えてみますと、第一、国連の公式文書にはPKF本体という言葉はないんです。それから後方支援、後方という言葉もありません。それからパリ協定にも全くそれはございません。それが一つですね。  それからもう一つは、カンボジアに駐屯する九つの駐屯部隊には、歩兵大隊を初め他の部隊もほとんど同地域に駐屯するということになっております。そして、それらの部隊は歩兵大隊だけではなく、通信にしても衛生部隊にしてもあるいは兵たん大隊にいたしましても、すべて武器の携行が許されて武器の使用が認められております。これは法文上でも明確です。  そうすると、武器を持ち、武器を使用することができるということは、歩兵大隊のみではなく、他の部隊もすべていわゆる戦闘能力を持っているということになるわけで、きのうあなたがお述べになったように、戦闘能力を持っているかいないかということでの区別は私は成り立たないと思うので、区別する理由がどこにあるのか、田渕さんにお答えいただきたい。
  87. 田渕哲也

    田渕哲也君 凍結、承認の対象を戦闘能力のある部隊がどうかで判断をしておるということではございません。前の委員会でも申し上げましたとおり、これは具体的な業務で区分けをしておるわけでありまして、法文上その対象は、法第三条の第三号イからへまでと、それに類するレの「政令で定める業務」、こういうふうに具体的に挙げておるわけであります。そして、この業務は総括的にどういうものかというと、俗に言うPKF本体の業務である。もちろんこれは戦闘とか武力行使目的とするものではありませんけれども、軍事的な業務であることは間違いがございません。  私が申し上げた意味は、いわゆる凍結、承認の対象とするPKF本体の業務は、一般的には歩兵部隊自衛隊でいえば普通科部隊によって構成されておりまして、輸送とか通信とか医療等の後方支援の部隊に比べますと相対的に戦闘能力が高いという意味で申し上げたのであります。  もちろん、輸送とか通信とか医療とか、こういう部隊におきましても武器は携行いたします。これは治安状況が決して定まっていないとか、あるいはインフラの整備も行われていないから自給体制が必要であるとか、こういうことからやはり自衛隊部隊でないとこういう仕事ができない。さらに後方支援の仕事のみならず、被災民の救援であるとかあるいはインフラ整備を行うとか、そういう民生的な仕事にも携わるわけでありますけれども、先ほど申し上げた事情によって自衛隊の組織が行く必要がある。こういうところを承認の対象から外したというのは、比較的、直接的に軍事的な仕事という部分が非常に薄い。それからほかに、人道的な国際救援活動派遣する場合、国際緊急援助隊派遣する場合と似たような装備で行きますので外したわけであります。
  88. 立木洋

    ○立木洋君 今の御答弁でわかりましたように、戦闘能力があるかないかで区別したわけではないと。つまり、相対的に高いかどうかという述べ方をされました。それから比較して軍事的な色合いが薄いかどうかという述べ方をされました。  まさに明確なように、歩兵大隊だけではなく他の部隊自衛隊が出ていくということを認めているのは、まさに武器を持って、その武器を使用することが認められている自衛隊部隊として派遣されるんだという点については全く変化がないということだけは明確になっておりますし、今お述べになった点についても、これを本体という言葉と後方という言葉で、国連の文書上明記がないことを改めて新たな概念を持ち出して、そして国民に対して事実を明らかにするという点を怠っている。そういうことも明確に指摘しておきたいと思うんです。  特に、三党の合意の中では「PKFの本体の業務と複合した時にしか実施できないような後方支援の業務は、事実上本体の業務と同じ扱いになること述べておきながら、法文上は明記されておりません。この点も極めてあいまいであるということも指摘しておきたいと思うんです。  次に、公明党の峯山さんにお尋ねをいたします。  この再修正案の中では、「我が国として国際連合平和維持隊に参加するに際しての基本的な五つの原則」というふうに述べられてあります。そこで、まずお尋ねしますけれども国連平和維持隊というのは武装して、国連でいう自衛の場合に武器の使用が認められている軍隊であるということはこれはもう言うまでもないわけですが、これに参加をするということは、その国連の司令官の指揮下に入ってその一員として行動することを意味するのではないでしょうか。公明党の峯山さんにお答えいただきたい。
  89. 峯山昭範

    峯山昭範君 お答えをいたします。  修正案の中で、「我が国として国際連合平和維持隊に参加するに際しての基本的な五つの原則」ということで、これは私どもは「我が国」から始まりまして「五つの原則」までを一つ言葉として受け取っていただきたいと思っているわけです。その参加するに際しての五つの原則ということで、その下に具体的に一つ一つ示しているわけであります。  そこで、PKFという問題についてお話がございました。これは、きのうからいろいろと申し上げましたように、PKFにつきましては当委員会でもいろんな議論がたくさんありましたが、いずれにしましても、国際的に確立した定義があるわけじゃない、しかしながら大体二つの分野に分かれる、こういうふうに認識をいたしております。  一つは、武装解除の後の……
  90. 立木洋

    ○立木洋君 参加するというところだけお願いします。
  91. 峯山昭範

    峯山昭範君 ですから、参加するということを説明するためにこれを詳細にお話をした方がわかりやすいのでさせていただきたいのでありますが、簡単に申し上げます。  簡単に申し上げますと、要するにこのPKFというのは、トータル的に申し上げますと、本体に参加する部分と、それから先ほども御説明がございましたように、後方支援に参加する部分があるということです。そして、いずれにしましても私どもは、この参加する部隊はすべて憲法上いろんな問題がありますので、この「基本的な五つの原則」できちっとした歯どめをして、そして参加をするということです。  それで、参加する意味につきましては、この法案そのものが国際連合平和維持活動協力するという法律になっておりますから、協力するという意味は、参加するという意味と、もう一つ物資の協力とかそういうようないろいろなものを含めた広い範囲にこの協力というのはなりますので、参加するという意味は、単独のいわゆる参加という範囲を狭めた意味参加、そういうふうにしているわけでございます。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 今の峯山さんの御答弁は全く納得できません。  協力参加がという問題については、あなた御承知のように、あなた方の党の市川議員衆議院で徹底的に問題にした問題なんです。そして、参加協力がということは重大な憲法上の違いがあるとして問題にして、そしてそこで政府は統一見解を出したんです。その統一見解で出されたのが、「「参加」とは、当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味しこと、これが参加なんです。協力というのは違うんです。「「協力」とは「国連軍」に対する右の「参加」を含む広い意味での関与形態を表すものであり、当該「国連軍」の組織の外にあって行う「参加」に至らない各種の支援をも含む」と書いてある。これは憲法上の解釈の重大な問題で、参加とするか協力とするかというのは大問題になってきた、この問題なんです。  あなた方の党がそのことを主張してこういう統一見解ができて、参加協力とは違うと明確な政府見解が出されておるのに、そのことをあなたは十分御承知の上で今度の再修正案参加という新たな概念を持ち込んだんでしょうか。明確にしていただきたい。
  93. 峯山昭範

    峯山昭範君 十分承知をいたしております。詳細に説明をさせていただきたいということで説明をさせていただけなくて、そうおっしゃっていただくと非常に私も不本意なんですけれども……
  94. 立木洋

    ○立木洋君 中心だけ言ってもらいたいんです。
  95. 峯山昭範

    峯山昭範君 中心だけといいましても、この問題は非常に大事な問題でございますし、いずれにいたしましても、私ども参加をするにい火しましても、具体的に国連のいわゆるコマンドの指揮に従うということは明確になっているわけでございます。  そこでこの法案でも、本部長国連のコマンドに適合するように実施要領を作成するわけです。そしてその国連のコマンドは、その実施要領を介して我が国から派遣される平和協力隊により実施され、そして、それはしかもいわゆる五原則の前提が崩れない限り、我が国から派遣される平和協力隊国連軍のコマンドに従うということでございまして、その点が参加するということでございまして、決して憲法に違反するとかそういう問題ではありません。
  96. 立木洋

    ○立木洋君 峯山さんの御答弁は全く答弁になっていない。  それで、自民党岡野さんにその点ちょっとお尋ねしますけれども、この法案それ自体の名称は御承知のように、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法案なんです。協力に関する法案なんです。目的も明確に「迅速な協力を行うためことなっているんです。協力なんです。そして、この第二条のところに明確に協力の基本原則が書かれてあります。協力業務も書かれてあります。どこにも参加なんというふうな概念は入っていないんです。  これは、重大な問題として今まで議論された経過があったからこそすべて協力にしたと。協力法案なんです。参加法案じゃないんです。この問題は、協力と違って参加をするということは、政府の統一見解にあるように、「「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動するし、指揮下に入るということは、もうコマンドではないんです。直接指揮権が完全に認められることになるんです、国連の。武力行使をやれと言ったら武力行使しなければならなくなるんです。そういう点について、自民党岡野さん、いかがでしょうか。
  97. 岡野裕

    岡野裕君 先生がおっしゃいます衆議院におきますところの見解は、あれは先生、外務委員会でおともをいたしましたけれども国連平和協力法案のころのお話でございまして、今回出しておりますところのPKO法案とは別異の法案でありますので、あの当時の見解をこのまま、新たに提案を政府からされておられる、あるいは私ども修正案の中に書いてあります「参加」と同一に論じていただいたんでは、これはまことに違うといいますことを大先輩お話しを申し上げます。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 法案が変わっても、これは協力法案なんです。参加というような全く新しい概念を再修正案の中に持ち込むということ自体が問題なんです。新しい概念を何で持ち込んだかという問題になりかねない。  私は、あと時間がないので、もう御答弁いただかなくて結構です。あなたは明確な答弁をしていただけないと私は思うものですから、もうここは問題が残っておるということだけ私ははっきりさせておきたいと思います。あと時間をいただければ、あしたでもあさってでも私は何ぼでも議論いたしますから、ひとつそのようにしていただきたいです。  最後に、首相の方にお尋ねしたいんですが、これはこの問題と直接かかわりはないんですけれども、実は先ほど来問題になりましたいわゆる今国連PKO特別委員会でいろいろ議論をされているPKO内容についての見直しということについて同僚議員が質問をされました。これは非常に重要な内容を私は含んでいると思うんです。ただ単に定例的に行っている問題ではなくて、今起こっている事態を反映した議論が行われている。それは何か。これはユーゴの問題だと思うんです。  ユーゴにおきまして、結局、先月の十三日にボスニアからガリ事務総長がPKFを撤退させるという指令を出しました。そしたら、十五日の安保理の委員会で問題になりましたのは、ECから出ておるイギリス、フランスあるいはベルギー等がそのPKFを撤退させることはおかしいと。引き続いてPKFを駐留させるという意見が出されました。そして、御承知のように、ECの側としては、PKFで入っておきながらいわゆる戦闘状態が激しくなると撤退するというのではこれは問題にならないではないかという批判が出てきているんです。そういう状況の中から問題が出てきているのは、そういう新しい問題点を考えるべき必要があるんではないかという問題が出てきております。  そうすると、今いろいろ問題になって出てきておる今度の六月の一日に行われた提案、勧告あるいは報告等の内容、これは今紛争のあり方が変わりつつある、紛争抑止の機能を強める必要がある、つまり武力の行使によって事態を解決する方向を一層強めていく必要があるというふうな方向が出されておる。  もう一つは、当事者の同意なしにPKFの派遣の方向への見直しか問題になっている。そしてさらには、そうすると中立性が完全に保障されるのかどうかという問題まで問題になってくる。ですから、今まで問題になった、最初にしKOが問題になったころはいろいろさまざまな問題がありました。その後、敵はなくなりました、そして戦闘なんかなくなって合意が行われた後に出ていくことになります。  ですから、PKO参加することは問題ございませんと言ってきましたけれども、今の新たな事態というのは極めて深刻な事態になっていて、当事者の合意がなくても出ていくかもしれないような事態、中立性の保障がなくなるかもしれないような事態、より一層武力の行使が求められかねないような事態という問題が重大になってきているんですね。  そうすると、これは今の政府が述べておられる五原則なんというふうな問題はもう飛んでしまうんですね。私は、こういう新たな問題が問題になって国連議論されているわけですから、これを急いでこういう問題を、たくさんの問題を残しながら採決するというふうなやり方というのはこれは大変な問題だ。将来に禍根を残すことになるので、この問題については十分な審議ができるようにしなければならないというのが私たちの考え方です。  ですから、今のそういう新たなPKOをめぐる国連等で起こっている議論等々について、あるいはユーゴの事態等々の動きについてどういうふうにお考えになっておられるのか、最後に首相の見解をお聞きいたします。
  99. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、あれは私も報道で読んだっきりなのでございますけれども、読みますと、ちょっと立木委員の今言われましたようなことを考えている節がございますね。私はあんなことはとても現実性がないと思います。この法案の御審議とは何も関係がありません。
  100. 立木洋

    ○立木洋君 大変な問題なんで、あしたまたもう一遍やります。
  101. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 私は連合参議院を代表しまして質問をいたします。  私ども修正案を出させていただきまして、大変おくればせながらで恐縮でございますが、きょう趣旨説明もさせていただいて、皆さんの仲間入りをさせていただいて、わずか二十分の質問時間でございますが、いろいろとお尋ねをしていきたいと思っております。  私ども修正案、こういう時期に出したことについてはいろんなところからいろんな御意見をいただきましたが、現時点での国民の合意の得られる最良のものは実は私ども修正案だと、こういう確信から出させていただいたものであります。  まず、自民党、公明党、民社党さんが出されました修正案についてお尋ねをしていきたいと思います。  田渕委員にまず最初にお尋ねをいたします。  自公民のいわゆる修正案に私どもも仲聞入りをさせていただきたかったわけでございますが、残念ながら別組織というところで無念の涙をのみました。この別組織について、私ども連合参議院は、終始ほかの方からはこだわり過ぎるという御批判をいただくぐらいこだわってきたわけでございます。これは私どもは、一昨年自公民での三党合意がありました。この三党合意の中には自衛隊とは別の組織でPKO参加をするということが明確に出されていた。その自衛隊とは別組織のということが、政府の原案を見ますと、国民レベルの納得というところでは全然別組織になっていないと、こういう受けとめ方をしたわけでございます。  これはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、戦前の軍部の行き過ぎに対する懸念、不安、そういうおののきがある。それはおののき過ぎるんだと言われますが、政権をとってみえる自民党と、さらに公党である公明、民社の方が、わざわざ三党合意という形でつくったものがいともあっさり覆されるということになると、おののかざるを得ないというふうな気持ちがあるわけであります。そのことについていろいろ議論を重ねても、これは時間の、これまでのことでありますので。  そこで、今回出されました修正案については、最後の附則のところに、三年後に実施のあり方も含め見直すと、こういう事項が付加されました。この見直しの中に、その別組織、私が申し上げるような別組織も含まれるのか、あるいは含めるおつもりがあるのか。その点、デリケートなことではございますが、まず、その質問をいたしたい。それで、とりあえず民社党の田渕委員にお願いをいたしたいと思います。
  102. 田渕哲也

    田渕哲也君 お答えいたします。  三年後の見直しにつきましては、特に項目を定めて見直すということを言っておりません。だから、いかなる制限もなく、全般について見直しを行うということでありまして、別組織の問題についてはそこから除外するというような考え方ではございません。
  103. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 同じ質問でございますが、岡野理事にお願いいたしたいんですが。
  104. 岡野裕

    岡野裕君 井上先生、いつも理事会理事懇で一緒になっておりますので、岡野理事ということでお呼びでありがとうございますが、しかし理事として答えるわけではありません。発議者岡野裕としてお答えいたします。  先生、法文ごらんのとおりに、「施行後三年を経過した場合において、この法律実施状況に照らして、この法律実施の在り方について見直し」と、こうなっております。「実施状況に照らして」でございます。まだ残念なことに成立し実施いたしておりません。したがいまして、やはり実施をするその三年間の実態、これを見ないといけません。しかも、先ほどからお話が出ておりますように、PKOというのは全世界的に非常に大きく展開をし、いろいろ中身内容も、私は、平和の方向で変化をしてきているということでございます。まず、やっぱり中に入って経験を積み、その中から見直していこうということであります。  別組織が入っているか入っていないか、私は、今の時点では先生のおっしゃる別組織というよりは、せっかく経験も豊富な、しかも自己完結性が一番完備をしている自衛隊以外のものをわざわざつくるということは、予算的にも非常に非効率的ではないかと、こう思うわけでありますが、三年後の見直しの段階に別組織元々を検討の範囲から除外するという趣旨ではございません。
  105. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 最後になりましたが、峯山さんの方から公明党のお考え、同じ質問でございます。
  106. 峯山昭範

    峯山昭範君 お答えをいたします。  まず、初めにお話ございました修正案とか、いろいろと連合参議院皆さんが御苦労されたことにつきましては私も高く評価したいと思いますし、私も井上さんと話をさせていただきましたし、また評価するという意味で申し上げますと、自衛隊海外へ行くということについては、休職・出向とはいえ、海外へ行くということを認められたということは大変なことだと私は思っております。  それで、別組織の問題で申し上げますと、確かに連合さんがおっしゃるように、私ども議論の過程の中では休職・出向がいいのではないかということを議論したときもあります。そういうような意味でいきますと、理想論としては確かにこれでいいんじゃないかと私は思うんです。ところが実際、現実の問題としては非常にいろんな問題がある。その点では、私どももいろんな面で調査をし、一昨年、去年、ことしとかけまして、それこそ数十カ所にわたって調査をいたしましたし、いろんな実態の中から憲法の範囲内でこれが最良のものというふうにしたわけであります。  それからもう一点、三党合意の問題で、別組織かと言われれば、一応自衛隊とは別組織に現在なっているわけではございませんけれども、常設の組織となっているわけではございませんが、国際平和協力隊という組織を新たにつくって、一応別組織という形にはなっている。この点だけは申し上げておきたいと思います。
  107. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 なかなか、今三人の委員からお話をお聞きしますと、一昨年の三党合意で言う別組織に戻られる余地が感じられなかった。これは私のひとり主観的なものかもしれませんが、残念に思います。  そこで、連合参議院磯村委員にお尋ねをいたします。  これは身内の八百長質問と受け取られるかもしれませんが、私どもがいただいた質疑時間は二時間ほんの少しで、そういう中で必死にこの修正案をつくってきた。そういうことで磯村委員に、この修正案で言う別組織は何を具体的にどのように考えているか。そして、その骨子もあわせてお尋ねをいたします。
  108. 磯村修

    磯村修君 私どもの今回提案しておりますところの修正案の中で、特に別組織ということをうたっているんですけれども、やはりこれは今の国論が本当に分かれている、そうした国民世論というものを我々はどう吸い上げていくのか、そういうことを本当に真剣に考えながら編み出したものがこの別組織ということでございます。  そこで、我々が考えている別組織というのはどういうものかと申しますと、国際平和協力隊国際平和協力本部のもとに置きまして、これは常設組織とするわけでございます。PKOはこの協力隊を中心にして展開していくわけでございます。すなわち、自衛隊部隊ごとに参加してほしいということを要望したり、あるいは自衛隊員参加を求めたりということはしないで、組織上自前の組織として運営していくということであります。  しかしながら、PKO、今の段階では自衛隊の人材活用ということも考えなければならない事情もあるというふうなことから、身分の問題を考えると、自衛隊の能力というものを活用していくための自衛隊別組織とどういうように考えたらよいのか、その辺を検討した結果、休職・出向という形をとるということでございます。もちろん、この別組織の協力隊は、民間あるいは行政機関の方々、こういう方々も含めての別組織でございます。こうした独自の別組織を持って、国連の要請があればこの別組織の協力隊の中から派遣隊を編成して海外に送り出す、こういう仕組みでございます。  この平和協力隊がどんな協力隊であるのかということをイメージとして御説明申し上げますと、具体的には、やはりPKO参加するわけですから装備が必要になってまいります。ボーイング研くらいの、いわばこれは航続距離が約五千九百キロ、最大二百九十人の定員ですが、こうした航空機を一機、それから海上自衛隊の「とわだ」型八千三百トンクラスの補給艦、これを一隻、さらにスーパーピューマ級のヘリコプターを三機、これはプルトニウムの輸送をするための護衛をする巡視船に搭載されているヘリコプターでありますけれども、その程度のものを三機ぐらい用意する、そしてまた協力隊隊員は一千人くらいでスタートさせていく、これが私どもが描いている、考えている別組織の中身でございます。  もちろん派遣をする場合にはやはりそれなりの訓練が必要になってまいります。そういう意味で、隊員教育訓練もこの中で実施していく。そしてまた協力隊から、政府から提案されておりますところの災害の緊急出動をする場合、そうした場合にもこの協力隊をその方面にも派遣できるように仕組んでいく、これが我々が考えている別組織による平和協力隊の組織でございます。  以上でございます。
  109. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 私は、何度もここで別組織を防衛庁長官にくどくどと御質問をして、その際くどくどと言ったのは、今度の自公民の修正案におかれても、自衛隊部隊ごと防衛庁長官の指揮権を外さずにPKO隊に参加をさせて出す、これでは私どもは納得できないということを、指揮命令も外して一たん個人にばらして、大変失礼な言い方かもしれませんが、そういうことを何度もお尋ねしたわけでございます。  そこで、もう一点だけ磯村委員に御質問をしたいと思います。  きょう少し官房長官の答弁の中にも出たわけでございますが、連合参議院が一体、昭和二十九年六月になされた国会決議自衛隊海外出動を禁ずると、こういう国会決議についてどのような考えを持って、しかもこの修正案でそれをどのように具体化しているか、そのことについてお尋ねをいたします。
  110. 磯村修

    磯村修君 国会決議のお尋ねでございますけれども、いろいろ国会決議にはございます。例えば政策的な決議、米の自由化を認めない決議というのもそのたぐいに入ると思うんです。それから国会移転の決議、あるいは憲法にすこぶる関連する重要な決議というものもございます。  御指摘の決議につきましては、憲法九条と自衛権、そしてまた自衛隊にすこぶる関連するものであろうと私ども受けとめております。自衛隊法が制定されました昭和二十九年、そこで本院が国会決議として海外への派遣をやらないというこの決議があったわけです。それから既に三十八年間歴史があるわけです。この間、この決議というものは政府国会答弁を厳しく拘束あるいは影響を与えてきたと私は思っております。そういう歴史的な経緯から見まして、自衛隊海外派遣しないというふうな三十数年前の国会決議というものが憲法第九条を補完し得る法規範と同じような拘束力を持つものと私たちは理解しております。  つまり、その内容というものは、武器を持った自衛隊海外に出ることを禁じたものである、このように理解をして今回別組織と、こういう形でもって国民の合意を得る形でPKO参加すべきである、こういうふうに我々は考えております。私たちが考えているこうした修正案というものは多くの国民皆さんに支持されて、そういう形でもってやるべきである、こういうふうに合意ができるものと確信しております。  以上であります。
  111. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 最後にもう一点だけしか質問ができません。しかも最後に社会党の野田委員に御質問するというのは、もっと先に他党の方には質問しなきゃいかぬわけでございますが、これまで私がいろいろと他党の別組織の認識、理解、それから私ども連合参議院の別組織の修正案にあらわれたる見解を質問してきました。  これまでの答弁を聞かれて、対案を出されてこれまで御検討を重ねられてみえた社会党としては、私ども修正案についてどのような評価をいただけるのか、御見解を賜りたいと思います。
  112. 野田哲

    委員以外の議員野田哲君) 私どもの出している案は、先ほど来井上委員が論議の対象にされておりました一昨年の十一月の自民、公明、民社三党の合意、結果的にはあの合意に一番乗っているのは私どもの案だと、こういうふうに思うんです。  そういう立場から、きのう連合の対案を拝見いたしましたし、磯村さんの説明を聞きまして、第一の自衛隊部隊等が行う業務規定を削除するとか、あるいは常設の協力隊をつくる、あるいはまた国会承認事項、こういう点については私どもと全く共通項を持っている。  一つだけ若干見解が異なりますのは隊員の身分の問題でございます。この点につきましては、今後さらに審議がこの委員会でも続けられ、会派同士の協議を続けていければ共通項はもっと拡大をする案だと、こういうふうに思っております。
  113. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 ありがとうございました。終わります。
  114. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 まず、防衛庁長官にお尋ねいたします。  湾岸戦争が終結した後、九一年四月に我が国は、自衛隊法九十九条にのっとって掃海艇をペルシャ湾に派遣したわけです。目的は機雷掃海のためです。このとき民社党は、平和時であること、平和目的のための出動であること、それからペルシャ湾が我が国にとって死活的に重要な地域であると、そういう観点から一定の歯どめがかかっているということで賛成いたしました。  PKO協力法菜との関係でお尋ねするわけですが、掃海艇がPKOの一環として派遣される場合には、当然事前の国会承認の対象になると思いますが、湾岸戦争のときに出かけていったような形で掃海艇が出る場合は国会承認の対象になるのかならないのか、お尋ねいたします。
  115. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員御指摘のように、昨年四月から、四月の後半から半年かけまして参りました。状況は、イランとイラクの長期の戦争が行われているときもこの議論があったわけでございます。法律的にはそれは可能であったんですが、湾岸の状況がああいうことでございましたから派遣をしませんでした。しかし、今回は委員が御指摘のような状況です。  ところで、今回、九十九条の海上自衛隊の任務として機雷掃海に行きましたのはどういう意味を持つかということでございますが、これは我が国の海上交通の安全確保を目的としたものでございます。申し上げるまでもなく、石油をあそこに依存する度合いが多くて、我が国のタンカー等が往来いたしております。そういうことのために九十九条で出たものでございまして、結果として湾岸諸国の平和貢献、その他貢献をされ、高く評価されていることは、たびたび申し上げているとおりでございます。    〔理事上杉光弘君退席、理事田村秀昭君着席〕  一方、PKOの本法案によりますと、これは我が国の海上交通の安全、保護という目的とかそういうものなしでも、国際協力の一助として行われれば、これは三条の「定義」の中の廃棄された武器の処理の問題として扱うということになろうかと存じます。そうなれば、我が国の航路の安全確保とかそういうことを離れましても、その必要を我が国が認めればそのPKO法案に従って出すということでございますので、これは観念的に、法律的には並行して行い得るものと、こう思っております。
  116. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 PKO法案の場合に、事前の国会承認あるいは凍結という修正案が出されているわけでありますが、その前提になるのは、自衛隊海外派遣されるから国会承認を必要とする、PKF業務参加するから凍結が必要だという考え方が根底にあったと思います。掃海艇を派遣したときのことを考えてみますと、自衛隊参加しました。目的は、いわゆるPKF本体に相当する機雷除去であります。しかも、国連あるいは国連安保理の要請がないまま出ていっているわけであります。  となりますと、なぜPKFの場合には国会承認が求められて、中身で言えば同じなのに、ペルシャ湾へ行く場合には国会承認の対象にならないのかという疑問を明らかにしておかなければいけないと思います。もう一度御答弁願います。
  117. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 少し平易に申しますならば、九十九条は我が国の防衛目的、広くいえば防衛目的ですね、そういうことのためにもともと設けられた条文でございます。したがって、我が国の例えば今申し上げましたように船舶の安全確保というために必要であれば、これは我が国の領海だけではございません、公海上もよろしゅうございます。そして、現実に湾岸に参りましても、相手国の領海内における作業について同意が得られればこれは九十九条でできるわけでございまして、あくまでもこれは我が国の防衛上の必要、つまり広い意味我が国は輸入国でございますからその航路の安全を確保する、障害を取り除くという意味でございます。  一方、今委員の御指摘のように、PKOはこういった戦後処理の五条件の中で、そうしてそれを満たした地域に、我が国のそういう防衛上の必要性とかそういうこととは直接は関係ございません、そういう国際協力業務の一環として行うわけでございますので、機雷掃海それ自体の作業の中身はこれはもう同じであるか似ている場合が多うございましょう。しかし、それは目的が違うわけでございますので、これは法律的に明確に、はっきり画然と区別されておるもの、このように理解をいたしております。
  118. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 我が国の防衛上というのがキーワードになるということですね。いろんな人と話をしておりますとこの辺がかなり一緒くたに論じられている場合がありますので、あえてお尋ねをいたしました。  この問題というのは、一面においてPKO協力法案修正、そしてまた再修正されつつあるという関係の中から出てきた問題であろうと思いますし、したがって、私は先ほどの掃海艇派遣のケースを国会承認の対象にすべきだということを申し上げているわけではありません。むしろ、言うならばPKO参加部隊あるいは要員が国民から安心して信頼されるぐらいの実績を積んでいただくということに期待しているわけでございます。  それでは、その次にもう一問、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、今国会内閣から自衛隊法の一部を改正する法律案提出されております。またこれは委員会審議等に付されていないように聞いておりますが、それによれば、防衛庁長官は外国における災害、騒乱その他緊急事態に際して航空機による邦人輸送を行うことができるということになっております。もちろん自衛隊機も使えますという内容のようであります。そして、外国人も同乗させられますという中身のように思います。    〔理事田村秀昭君退席、委員長着席〕  これはもちろんPKOとは異なるケースであるわけでありますが、自衛隊自衛隊機が海外へいくということに着目すれば、PKFではありませんけれども自衛隊海外派遣するというところに着目すれば、あるいは国会承認の対象になるのかならないのかという論議にもなりやすい部分だと思いますが、この法案がもし改正されたとしますと海外自衛隊機を飛ばすことは国会承認の対象になるのかならないのか、伺います。
  119. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは今委員が大体側説明になられたとおりでございますが、ただ一点ちょっと補足させていただきますと、これは外国の邦人救出でございますから外務大臣の判断と要請に基づきます。これが非常に重要な点であろうかと思っております。そして、必要な場合に邦人救出として自衛隊機を使うということになります。この自衛隊機の中には、既に昨年購入いたしましたジャンボ機が二機入っております。そのほか輸送機としてはC130とかC1とかそういうものもございますが、それら航空機を、いわゆる自衛隊機を、ジャンボ機も自衛隊機に所属がえにこの四月からなりましたから、自衛隊機を使って邦人を救出するということに相なります。  しかし、その場合の外務大臣の判断が、非常に現地の状況がどうかというような問題、確かに御指摘のようにあろうかとも存じますけれども、これはあくまでも安全な中で、安全に邦人の救出をしようということでございまして、今、法律要件として国会承認要件に係らしめてはおりません。あくまでこれは邦人救出の意思決定を内閣でいたしまして実施するという建前になっておるわけでございまして、これまた審議はされておりませんので、これから御議論をいただかなくちゃならない点が多々あろうかとも思います。
  120. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 今の点でもう一度お尋ねいたしますが、先ほど掃海艇の派遣の場合には防衛上の必要性というのがキーワードになりましたけれども、今度の場合、この飛行機を海外へ出す、自衛隊機を海外へ出す場合に、なぜ国会承認が要らないのかというのをわかりやすくもう一度御説明いただけませんか。
  121. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先ほどの機雷掃海艇の場合は防衛上と一般に言いましたが、我が国の防衛の必要性からそのようなことになっておるということを申し上げました。  他方、この邦人救出もこれは我が国の邦人の救出でございますし、あくまでも紛争に巻き込まれない事態の中での救出ということを前提にいたしておりますから、これは国会承認に係らしめないでもよろしいというように私は考えているところでございます。
  122. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 それでは、総理にお尋ねいたします。  PKO協力法案国会提出されてから既に九カ月になろうとしておりますし、当委員会における審議時間もちょうど百時間になったのではないかと思います。この間の経過を振り返ってみますと、衆議院段階で二年後の国会承認条項が付されたりあるいはPKFについて事前承認、凍結、また複合業務についても同様の措置がとられようとしておりますし、三年後の見直しという条項もただいま審議されている最中であるわけであります。このことは、法案の枠組みに変化を与えないにしても、かなり大きな修正だろうと私は受けとめております。  しかし、このことは冷戦構造崩壊後の新しい世界秩序の構築、そして平和を求める各国の努力の中で我が国として何をなすべきか、何ができるのか、それぞれの党が真剣に考え、またこの種の法案というのはできるだけ多くの支持を得て成立させるべきものだという考え方の中で生まれてきたものであり、言ってみれば産みの苦しみというか、そういったものが反映されている中身なんだろうと思います。  我が党にしましても、これまで何度か軌道修正をし、試行錯誤を重ねてきたことは確かだと思います。各党との接点を求めるために譲歩したこともたくさんあります。そういう意味では、原案を提出された政府にしてもいろいろ不本意なところがあろうと思いますし、三党合意を行った公明党、民社党にしても決して一〇〇%満足している中身ではないだろうと思います。しかし、それを言い出したら切りがないわけでありまして、今、大事なことは、そういったものをのみ込んで一日も早くこのPKO協力法案を成立させ、日本PKOを待っている国、そこの国の期待にこたえることであろうと私は思っております。  PKO参加に不安だとか懸念がないのかと言われれば、それは大部分の人にとってはPKO派遣隊がこの法律趣旨にのっとって職員を全うしてくれることを確信しながらも、しかし注意深く見守る、温かく見守る、必要ならサポートもする、場合によっては軌道修正をするということ以外、やるやり方がほかにないんだろうと私は思います。それは産みの親の苦しみあるいは願い、そして責任というものだろうと私は考えております。産みの苦しみが多い子供はどかわいいということを言いますが、私は愛情を注ぐだけじゃなく、やはり厳しい目で見るということも大事だろうと思いますし、これからのことの方がむしろ大事なのかもしれないと思っております。  前置きが大変長くなりましたが、法案審議も大詰めの段階を迎えつつあると私は認識しております。したがって、これまでの経緯あるいは経過を踏まえて、総理の御所見あるいは決意というものをお伺いさせていただきたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府提案につきまして極めて長い時間にわたりまして御熱心に御審議をいただきましたことは、心からありがたいことでございます。また、その御審議の結果として幾つかの修正案が提案せられました。その御趣旨につきましても私どもも承ることができました。政府の提案を最善とは存じておりますけれども、院の多数の御意思によって修正が行われますならば、もとよりそれに対しては政府は謙虚でなければならないと思います。  政府の提案の意の存するところにつきまして、大変長い時間をかけてお聞き取り願いました。その上での御決断であれば、私どもとして悔いを残すところはございません。修正の末、本法案が成立いたしました節は、院の御審議の御趣旨を体しまして誠実にこのできました法案を執行いたしまして、国際貢献の実を上げてまいりたいと考えております。
  124. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 終わります。
  125. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ただいままで皆さんの御審議を傾聴いたしておりました。なるほどなるほどと理解できることもたくさんございました。ところが、お聞きすればするほど疑問点がまた多く広がっておるということも実感でございます。  そこで、短い時間ですので、総理にお尋ねしたい第一点は、国民の中にPKO法案に対する多くの反対の声のあることを総理は知っておられるでしょうかどうか、まずこの点をお聞きします。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君)  政府の御提案に対しまして幾つかの修正案が提起されておるところから判断いたしましても、いろいろな御意見があるということは察知しております。
  127. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 日がたつにつれてこのPKOに対する国民の疑問、反対、いろいろの形でこれが広がりつつあることが実態であると私は受けとめております。  そこで、第二問に総理にお聞きしたいことは、この法案に対する国民の多数の反対の声に対しては総理はどのようにおこたえになりたいと思っておられますか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府の提案に対しまして院においてそれを修正するという御決定が行われるのでありますれば、それは民意を反映した御決定であるというふうに謙虚に承らなければならないと思います。
  129. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 率直に申し上げまして、日がたつにつれてこのPKOの問題は国民の隅々まで広がりつつある。その反響は陳情、要請の形で毎日のように私も含めて各議員の部屋に、この法案をどんなことがあっても通してもらっては困る、こういう声が日にち毎日刻々と広がりつつあることを率直に申し上げておきます。  次に、宮澤内閣は申し上げるまでもなく自民党政権であり、宮澤総理は同時に自民党総裁でもあられます。この自民党が中心になって今回、自公民三党による共同修正案が出されましたが、この修正案の骨子は、PKF本体の凍結、派遣の際の国会の事前承認法律の施行三年後の見直しなどであります。この修正案は、政府原案に対する国民の危機感、法案の違憲性、不安定性を反映したものであると考えるべきであると思いますが、総理はどのようにお考えになっておられますか、御見解をお聞かせください。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 幾つかの修正の御提案がなされておるわけでございますが、その結果として院が多数をもってどのような御決定をなさいますか、これは今後のことでございますが、その御決定が政府の原案と異なるということでありますれば、それは院が民意を反映されてそうされたものというふうに承らなければならないと思います。
  131. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 総理の御所見を承れば承るほど、非常に自信過剰と申しますか、国民の本当の声というものを率直に受けとめていらっしゃらないのではないかと、こう思われてなりません。そのことを私は率直に申し上げておきたいと思います。  そこで、今回のPKO法案は初めからガラス細工と言われましたが、さらに修正、再修正を繰り返して寄せ木細工になろうとしております。それも見事な寄せ木細工なら結構でありますが、国民の審判を仰いたら不合格になるような代物でしかないと思われてなりません。このような法案は廃案にすべきであるということを率直に申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。総理、御所見をお聞きできれば幸いです。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府といたしましては、国連の平和維持活動我が国も貢献しなければならないという立場でございますので、そのような立場につきまして国会から御承認を得られることを切に念願いたします。
  133. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時六分散会      ―――――・―――――