○
國弘正雄君 今の
お答えしっくりしません。しかし、いずれにしても、私は
自衛隊が違憲であるか、あるいは合憲であるか、あるいは違憲合法であるかということを今ここ全然問題にしてないんです。そうじゃなくて、
武装集団であることは間違いないわけで、その
武装集団としての
自衛隊をいかなる名目であれ、あるいはいかなる旗印のもとにおいてであれ、海の外に出さないと決めてきたわけです。だから、それがいわば国是と言ってもいいかもしれないんですけれ
ども、それに重大な変更を加えるというのであれば、そちらもそれだけの御覚悟の上で処していただきたいし、それから何よりも
国民に対してそちらさまのいわば論理をわかるように説得的にお示しいただきたい。それを、私は手続を欠いておられると
思いますよ、
政府は。
だから、そのあたりが私
どもの疑心暗鬼というか何というか、を生み、
国民の
皆さんが賛成してくれているんだというふうに
仰せになりますけれ
ども、私はそうではないと思う。少なくとも半分は、
国民は納得していないという現実があるわけですね。ですから
日本も、
自衛隊の違憲かどうかというようなものは全く離れても、とにかく外に、海の外に出さないんだと。
だからこの間も、ある市井の方が、
自衛隊が海の外へ出るということは、
自衛隊が
自衛隊でなくなって他衛隊になっちゃうじゃありませんかと、ほんの市井のおじいさんでありましたけれ
ども、私は、そういう疑念というか、どうなんだろうというふうに
国民がまだたくさん思っていると
思いますよ。
PKO法案に対する反対、賛成というものは、要するにそこに尽きるのではないか、そこに帰結するのではないかというふうに思うんです。
そこで、今官房長官が国際的に云々というふうにおっしゃいましたから、私はあえて反論をさせていただきたいんですが、アジアの反応についてはまあいろいろあると。いや、昔はみんな反対だったけれ
ども、事情を説明したらよくわかってくれたというようなことを、ここにいらっしゃらない方を名指しで申し上げるのは失礼かもしれないけれ
ども、渡辺外務大臣がそう
仰せになった。それでそのときに、シンガポールのリー・クアンユー前首相の話をなさった。リー・クアンユーさんと話したら実によくわかったというふうなことをおっしゃったわけですよ。
つまり、
PKOに対してリー・クアンユーさんは、昔は反対だったけれ
ども、今は賛成だというような
趣旨のことをおっしゃった。リー・クアンユーさん、この三月に
日本に来て、そして京都の会議で公の席で渡辺さんのおっしゃったこととは全く違うことをおっしゃっていらっしゃる。あのときにも、かつてリー・クアンユーさん、例の掃海艇の湾岸
派遣のときと前後してリー・クアンユー氏が、たしかインターナショナル・ヘラルド・トリビューンだか何かだったと
思いますが、のインタビューを受けて、我々東南アジア人がこのことをもし認めるとすれば、それは、比喩としては非常に厳しい比喩だけれ
ども、アル中患者にウイスキー入りのボンボンを食べさせるようなものだということを言った。その同じセリフをこの京都の会議でも公の席ではっきり述べているわけです。ですから、本当に私は渡辺さんの、リー・クアンユー氏は改宗したんだみたいな話をいささかもってまゆにつばをつけて伺ったわけなんです。
しかし、アジアはしばらくおくとして、じゃ
皆さんがあるいは大変に気にして
おいでであるような、あるいは国際世論といったら即アメリカと、あるいはブッシュ政権というようなものとして措定して
おいでになるのではないか、これは私のげすの勘ぐりであったらお許しください。しかし、アメリカの世論というものが一体全体今度の
日本の
PKOに対してもろ手を挙げて賛成したり、批判なしで無条件でこれをのんだりしているとおぼしめしますか。これはもしそういうふうに考えておられるとしたらとんでもない誤解ですよ。
その証拠に、私は四つ五つ持ってきましたけれ
ども、全部もうあれする時間がありませんけれ
ども、きょうの朝の新聞にも出ておりましたニューヨーク・タイムズの社説です。ニューヨーク・タイムズというのは、今さらこんなことを申し上げる必要ないけれ
ども、普通のアメリカ人にとって
憲法と聖書とそれからニューヨーク・タイムズの社説、この三つだけは違った
意見があってもやっぱり逆らうことができないというぐらいのいわば権威を持った存在である。そのニューヨーク・タイムズが、この二日、「ジャパンズヘルシーミリタリーアラジー」、
日本の軍事的なものに対するアレルギーというのはまことに健康である、健全である、そうであってほしい、そうでなくちゃ困るというようなことをはっきり言っている。
PKO法案について説いております。
それから四月二十日の同じニューヨーク・タイムズの社説の、「ジャパンズベターエグサンプル」、
日本のよりよい実例というのは、書き出しとしてどういう書き出しかというと、一体全体ブッシュ政権はなぜ戦後初めて
日本の武装勢力を
海外に出させようとして見当外れな決心をかたくなにしているのであろうか、というような
趣旨のことで書き出しています。
そしてその中では、
日本の政治家の中にはアメリカの歓心を買うべくこの
法案の成立、あるいはこういう方向に向かうことを、それがアメリカの意を迎えるゆえんであると考えているかに見える人々がおるというようなことも言っている。そして
日本こそはいわば地球大でのシビリアンパワーとして、つまり文民大国とでも訳しましょうか文民国家とでも訳しましょうか、として、むしろアメリカに対して範を垂れる立場にあるじゃないかと。アメリカは、今まで超軍事大国への道を歩んだ結果、大きな大きな過ちを犯して、アメリカ国内はもはやさんざんな状態だ、それに引き比べて
日本はというような言い方をして、
日本の非軍事的な貢献、例えばきょうから開かれるであろうリオデジャネイロの例の
世界環境サミットなんかに大変な努力をしている、出費をしている。そういったような例を具体的に挙げている。むしろ我々アメリカは今まで
日本が経てきた例にならうべきであろう、それがいわゆる「ジャパンズベターエグサンプル」、よりよい実例と。
これはニョーヨーク・タイムズの社説ですから、そうあだやおろそかにできない。何もそれが絶対だなんて、私そんなばかなことを申し上げるつもりありません。だけれ
ども、
皆さんが余りにもアメリカを例にとって、アメリカがどうこうだから、だからというようなことを言外に漏らされたり、あるいはそういうことを御主張になる向きも随分あるんです。だから私は、それに対するささやかな反論を申し上げたわけであります。
そこで伺いたいんですが、なぜカンボジアなんですか。なぜアジアの一国であるカンボジアなんですか。
PKOに賛成の
皆さんの中にも、例えば前の防衛大学校の校長さんだった猪木正道、政治学者ですよね、正道
先生にしても、あるいは同じ京都大学の高坂正堯氏にしても、
PKOは賛成だと、しかしアジアに出すことだけは相ならぬと非常に強い
言葉で主張して
おいでになる。私はそれはわかるんですよ。仮に百歩、千歩譲って、
PKOを例えば
海外に出す、
日本の
武装集団を
海外に出すということを仮にがえんじたとしてもアジアには出してほしくないなと、これは。まあユーゴスラビアならともかくなんというようなことを言うのは大変不遜宣言い方だし大変失礼な言い方ですけれ
ども、しかし千歩譲れば私はそういうことは言えるのではないかと。
それで、やっぱりカンボジアというのは、考えてみれば確かに
日本軍がそう大きな破壊を与えなかった地域であるということは事実ですよね。それは私も認めます。しかし、旧仏印を足がかりにして
日本は太平洋
戦争に突入していったということも事実ですよね。そして、カンボジアのタイ国に近い地域を無理やりにタイ国に割譲した、させたと言うべきですかね、したというような歴史的な事実も残っている。だから、千歩譲って
PKOを認めたとしてもなぜアジアなのか、なぜこの時期にカンボジアなのかということを申し上げたい。
というのは、
日本国民はあるいは
日本政府は、先ほ
どもちょっと触れましたように、あえて侮べつ的な言い方をお許しいただくならば、カンボジアなんぞには何の芋の煮えたほどの関心も持っていなかったんですよ、本当に。
〔
委員長退席、理事上杉光弘君着席〕
そして、わずかに若い人たちがボランティア的にいろいろと仕事をしてきてくれた。そこへいわば後から公的なものが入っていったということですから、だから私はなぜカンボジアなのか、なぜアジアの一国なのかという疑念はどうしても抜けないんですけれ
ども、
総理あるいは官房長官、何かそのあたりについて御見解をいただけますか。