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1992-05-22 第123回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月二十二日(金曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月二十一日     辞任         補欠選任      磯村  修君     吉田 之久君      猪木 寛至君     寺崎 昭久君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 上杉 光弘君                 岡野  裕君                 田村 秀昭君                 藤井 孝男君                 佐藤 三吾君                 谷畑  孝君                 矢田部 理君                 木庭健太郎君                 吉川 春子君                 井上 哲夫君                 田渕 哲也君     委 員                 板垣  正君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 合馬  敬君                 鹿熊 安正君                 木宮 和彦君                 須藤良太郎君                 関根 則之君                 仲川 幸男君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 翫  正敏君                 小川 仁一君                 喜岡  淳君                 國弘 正雄君                 小林  正君                 櫻井 規順君                 竹村 泰子君                 角田 義一君                 田  英夫君                 細谷 昭雄君                 太田 淳夫君                 常松 克安君                 中川 嘉美君                 立木  洋君                 吉田 之久君                 寺崎 昭久君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        発  議  者  野田  哲君        発  議  者  久保田真苗君        発  議  者  村田 誠醇君    国務大臣        内閣総理大臣   宮澤 喜一君        外 務 大 臣  渡辺美智雄君        国 務 大 臣  加藤 紘一君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣  宮下 創平君        (防衛庁長官)    政府委員        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一  大森 政輔君        部長        内閣法制局第二  秋山  收君        部長        人事院総裁    弥富啓之助君        人事院事務総局  森園 幸男君        給与局長        防衛庁長官官房  村田 直昭君        長        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  小池 清彦君        局長        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛庁経理局長  宝珠山 昇君        外務省アジア局  谷野作太郎君        長        外務省北米局長  佐藤 行雄君        外務省経済協力  川上 隆朗君        局長        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合  丹波  實君        局長        外務省情報調査  七尾 清彦君        局長事務代理    事務局側        常任委員会専門  辻  啓明君        員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案(第百二十一回国会内閣提出) ○国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案(第百二十一回国会内閣提出) ○国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施  等に関する法律案野田哲君外三名発議)     ―――――――――――――
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を開会いたします。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施等に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 木宮和彦

    木宮和彦君 自由民主党の木宮でございます。  最初質問ではございませんが、私も長いことこのPKO審議状況をずっと聞いてまいりました。大分わかってきたつもりでございますが、しかし一般国民はまだまだこのPKOの実情といいますか、内容についてなかなかわかりにくい点がたくさんあるということを聞いておりますし、また事実そのとおりでございます。私は、まず最初に私の理解、これが間違っていますと一般国民がわかるはずがございませんので、私の理解を今から復習の意味で、大分長くやりましたから申し上げて、もしそれがどうもおかしい、理解がおかしいとおっしゃるんだったら、政府側でもあるいは野党側先生でも御指摘を賜りまして、それから質問を始めていきたいと思いますので、よろしくどうぞ。  私の理解でございますが、どうも今までの話を聞いていますと、自か黒か、オール・オア・ナッシングのような理屈が非常に多いような気がいたします。果たしてそれで日本国際的に通用するだろうか。例えば、PKOに参加することはこれはイコール戦争だという説の方と、いやそうじゃない、PKOに参加するということは世界の平和のためになるんだという考えと、まさに真っ向から対立しているような気がいたします。自衛隊にしてもそうでございます。党によっては、これは違憲である、いやそうじゃない、これは合憲だという、まさに白か黒か、オール・オア・ナッシング国論を二分していると私は思います。  ただ、ここにおいて今回政府は、その間に白でもない黒でもない灰色部分がありますから、その灰色部分を何とか探って、恐らくPKO武器使用について、これは自己防衛のため、正当防衛のため、それからまたPKOがその任務を実力で阻止された場合にはいい、ただし日本はその第二の場合には行わない、こういう主張のように私は聞いておるわけでございます。その場合に、第二の主張が果たしてできるかできないか、あるいはそれが今までのいわゆるマニュアル、SOPと日本憲法との間でどうなっているのか、あるいはコマンドという訳し方が指揮権なのかあるいは指図なのか、そこら辺が現在ますますこのPKOをわかりにくくしているんじゃないか、私はかように思います。  しかしこれは、(「法案欠陥がある」と呼ぶ者あり)法案欠陥じゃなくて、その人の世界観人生観の違いだ、私はそう思います。特に、戦後四十年間の民主主義を信用するのか、いや日本民主主義は信用できない、こういうぐあいにおっしゃるのかによって、このPKO法案の価値といいますか、これが変わってくるような気が私はいたして仕方ないんです。  ただ、ここ四十年間、日本が今日、GNPで言いますと世界じゅうのGNPの一五%、人口は一億二千万、世界人口は幾らか知りませんが、人によって違いますので、五十三億と言う人もあるし五十五億と言う人もあるし、実際のところはわからないかもしれませんが、アバウトに言えば二%が日本人口でございます。二%の人口日本が一五%のGNPを占めるということは、一五を二で割ればいいんですから、平均の七・五倍の経済力があることだけは、これは統計上まさに間違いないと思います。  これには何が大きな原因がといいますと、やっぱり何といっても今まで四十五年間世界が平和であった、私はそれは間違いない事実だと思います。いま一つは、日本人が勤勉で、しかも明治百年、今から百二十年前、明治政治家は偉かったと思うんですけれども、義務教育をやろうと。  明治政府というのは金がなかったんです。やることはたくさんあったんです。江戸幕府は橋もつくっていませんから、橋も道路もつくらにゃいかぬし、役場もつくらにゃいかぬし、病院もつくらにゃいかぬし、工場もつくらにゃいかぬし、すべてのものをつくっていくために、しかもなおかつ学校に義務教育を課して、気の長い話でございますが、日本じゅう国民をともかく何とかして字の読める人間にしよう、「邑に不学の戸なく家に不学の人なからしめん事を期す」という太政官布告がございます、これは当時は内閣はないですから。そうして今日の日本経済繁栄が私はあると思います。  その意味で、日本は平和をひとり占めといいますか一国でもって享受してきたことは、前々から総理大臣がおっしゃるとおりでございますので、ここでやはり日本国憲法範囲内で何とかこのPKOが成立して、そして世界に恩返しかできるようにすべきだと私は思う。その原因一つは、やはり今までは米ソ二大国の間にあって、谷間にあって我々はじっとしていればよかった、むしろその方が得だった。だから憲法を狭く狭く解釈、これは政府もやったし、政党もやったし、与党も野党もみんな、国民全部が九条を狭く狭く解釈することによって今日の経済を享受できたんですから、決して間違っていたこととは思いませんが、もうソ連が崩壊し、アメリカがごらんのように経済が非常に破綻をしております。ECも決していいとは言えません。  一つ日本だけが優位に立っている世界情勢において、日本が今までと同じ態度をとって果たして今後生きていかれるのだろうか。子供のときは、道端でだだをこねておもちゃをやってもいいと思いますが、もう二十面して、ひげが生えて、それでもっていまだにだだをこねていて通りますか。私はそれを非常に恐れている一人でございます。私の理解がそういう程度でございますので、もし、いやそれは違うよ、まだ日本はだめだというのか、どうぞひとつ政府並びに野党先生に御感想をまずお述べいただいて、あるいは修正いただいて、質問に入りたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 立派な御意見であると存じます。
  5. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 私も立派な御意見であると存じます。  私どもの立場としては、今これだから、冷戦が終わったから、ますます憲法の精神を生かした分野日本貢献するという、その新しい道をもう真剣に探っているところでございまして、今までの憲法解釈状況が変わったからといって非常に場当たり的にころころと変えていくというようなことはとらないと。文民、民生、非軍事という分野日本貢献を、ぜひ新しい境地を国連のために切り開きたいと思ってこの社会党案を出しているという次第でございまして、御理解いただければ幸せでございます。
  6. 木宮和彦

    木宮和彦君 久保田先生のおっしゃることも決して私は間違っているとは思いませんが、しかし、今私が申し上げましたように、戦後はいいんですよ、はっきり言いまして。ただしかし、ここまで日本が成長している段階において、国際貢献といいますか、やはりそういうことをやっていかないことには私は間違っていると。  それで、私は、九条は確かに素直に読めば、あなたのおっしゃるように自衛隊は軍隊であり、海外派遣違憲という考えも私は一方にあると思います。  しかし、問題は、日本国憲法前文と全部の文章、前の文章と全文を素直に読めば、私は決してそうとれないんです。むしろ国際平和主義でなくちゃいかぬと書いてある。それは確かにそういう意味で、私は今日本国際協力主義でなければ日本憲法を素直に読んだとは言い切れないと思います。(「軍事的な協力じゃないか」「いいかげんな解釈じゃ困る」と呼ぶ者あり)それはお互いの言い分があるんですから、黙って聞いていてください。言い分があるんですから、だから今もめているんです。白か黒かとやっているんで、そのときに私は白と言っているんだから、黒、黒と言ったってそれはしょうがないんだ。白の意見も聞いていただいて、黒の意見も聞いて、国民がどっちをとるかということによって日本の運命が決まるというふうに私は理解しているんです。どうぞひとつその辺は誤解のないように。  日本国憲法国連中心平和的国際秩序をやりたいと。しかし、それはもう大分この四十五年間の間に形骸化されたことも事実です。しかし、ここでまた再び日本日本国憲法普遍性のある、そして先見性をぜひ指摘してもらいたいというのが、私は日本国憲法の一番の大事なところだと思います。  私は、これからそれでは講義をしたいと思いますが、よろしくどうぞ。講義ですから、決して別に、皆さんが九条だけにこだわっているから、私はそうしゃないよということをこれから申し上げたいと思います。これは余り長くなって申しわけないんですけれども、ひとつもう一回イロハからやり直さなくちゃいかぬものですから、済みませんがお聞きいただきたいと思います。  まず、日本国憲法り特質は前文であります。何と書いてありますか。「諸国民との協和による成果」「を確保しこ「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こう書いてあります。しかし、他国に全く依存しようというのではなく、続いて前文には「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてみる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」、こう書いてあります。「われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から月かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とされています。  そして、第九条の第一項に、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、と相なっていますから、積極的に国際協力によって平和を確保し、国際社会の名誉ある一員となろうと決意している。  これのよって立つ基盤は第十一条に書いてあります。何と書いてあるかというと、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と書いてある。二十九条には、「財産権は、これを侵してはならない。」と。九十七条には、「この憲法日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得努力成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久権利として信託されたものである。」と書いてある。そして、前文で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動しこ「ここに主権国民に存することを宣言しこと定めております。  これらを合わせますとどういう結果が出てくるかといいますと、日本国憲法は、社会主義共産主義、全体主義ではなくて、ここですよね、市場経済主義、いわゆる資本主義自由主義民主主義平和的生存自由主義的基本人権、それから立憲主義を将来も含めて目的にしておりますし、政治道徳法律とすることをはっきりさせてそこの上に立っております。  ですから、第十二条にも、「国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」から、「生命、自由及び幸福追求に対する国民権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」、これは第十三条ですが、このように規定してございます。そして、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」と宣言し、それから対外的にも約束しています。「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」、これは第九十八条二項に書いてあります。  したがって、自衛隊国連軍など国連平和活動協力することはむしろ憲法上の要請でありまして、集団的自衛権憲法では制限された範囲ではあるが持っているし、将来すべての国が国連に入り、その国連の中で国連憲章違反犯罪行為があった場合の制裁は、自衛行動にも、国際紛争解決する手段としての武力行使、または脅威にも威嚇にも属さない別のカテゴリーの問題であって、憲法の定める国際協力条約国際法優先、それに認められるものであるということはまさに間違いないと私は思います。  どうぞひとつその意味で、政府の現在の法律解釈は、集団的自衛権だけを見ても、国連憲章五十一条、平和条約五条同、日米安保条約前文日ソ共同宣言の三の第二段などとの整合性をやや欠いて、もっと政府は積極的に、条約を遵守する義務がありますから、ぜひともこのPKOについては自信を持ってひとつ国民に普及、PRをしていただきたいと、私はそう題いますが、御意見がありましたらどうぞ。
  7. 柳井俊二

    政府委員柳井俊二君) ただいま御指摘集団的自衛権等との関係でございますが、御説のとおり、国連国家間の紛争が平和的な手段解決をされるべきであるということを基本としているわけでございますが、他方現実侵略行為等がございました場合には、国際の平和と安全を維持し回復するために国連加盟国が一致団結してこれに対処する、これに制裁を加えるという、いわゆる集団安全保障立場に立っているわけでございます。  これは、ただいま御指摘になられましたとおり、国連憲章の禁止する武力行使でもございませんし、また、各国の個別的集団的な自衛権とも別のカテゴリーの概念であるということは御指摘のとおりでございます。  そして、国連憲章におきましては、この考え方に基づきましてその第六章で紛争平和的解決について定めますとともに、第七章では、侵略行為が発生した場合等に安保理がとることのできる一連の具体的な行動を定めているわけでございます。このような国連の平和の維持回復活動に対しましては、我が国としても憲法の枠内でできる限りの協力を行っていくべきことは当然であるというふうに考えております。また、憲章上も安保理の決定を履行すべきことは加盟国義務であるということを明記しているわけでございます。  他方憲章第七章のもとでのいわゆる国連軍につきましてはいまだ設立されたことはございません。冷戦が終えんした今日の状況におきましても、将来国連軍を設立し得るような環境が生まれるかどうかにつきましても予断を許さない次第でございます。したがいまして、かかる国連軍我が国がどのように関与するかということについては現在研究中でございまして、このような事態が現実の問題となるような場合に、その時点で具体的な判断をすべきであろうというふうに従来から申し上げているわけでございます。  それからもう一つは、先ほど先生指摘になりました国連憲章あるいは平和条約等我が国が締結しております諸条約において集団的自衛権を認めているという点でございますが、国際法上、我が国主権国家として当然個別的自衛権とともに集団的な自衛権も持っているわけでございます。先ほどお引きになりましたような条約は、このような我が国国際法上の権利を確認するものでございます。他方政府といたしましては、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権行使は、我が国を防衛するため必要最小限度範囲にとどまるべきものであるというふうに従来から解しておるわけでございまして、集団的自衛権行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないという考えをとってきているわけでございます。こうした考え方憲法に規定する条約の誠実な遵守義務に抵触するということはないというふうに考えております。  繰り返しになりますが、先ほどお引きになりましたような条約で確認しておりますのは、あくまでもこれは国際法上の集団的自衛権権利の確認ということでございます。
  8. 木宮和彦

    木宮和彦君 国際条約もございますし、それから憲法との整合性もございます、その辺をぜひひとつ慎重に、かつまた四十年前のことにとらわれることは私は決して日本のためにならない、こう思います。  日本国憲法のそもそもの生い立ちでございますが、日本国憲法の草案というか、原案をつくった占領軍の総司令官マッカーサー元帥は、最初に、日本紛争解決のための手段として戦争、さらには自己の安全を保持するための手段としての戦争をも放棄する、そういうことを実は指令をするつもりだったらしい。これはマッカーサー・ノートを見ますとそれが書いてございますが、しかし、安全を保持するための手段としての戦争放棄日本政府に手渡された案の中には入っておらないのでして、これはなぜかというと、当時の司令部のホイットニーさんが、これは削除した方がいいと、一独立国としてはやっぱり自衛権というものは認めなくちゃいかぬので、国連軍国連憲章のもとにできた場合、想定した場合をやはりマッカーサーはあくまで念頭に置いて、こういう憲法をつくろうということで第九条ができてきたことはまず間違いないと思います。  ただ、日本がその後、第九条を必要以上に狭く狭く解釈して、できれば軍備をやらない方がいいというような気持ちで今まで政治をやってきて、それが私は決してマイナスだとは言わない、今までの日本にとって非常にプラスだったと思います。しかし、再々総理大臣もおっしゃるように、日本世界でもって平和を維持していただいて、言葉は悪いですけれども人のふんどしで相撲をとってきたようなものでございまして、ここでもってやっぱりある程度もう一回国民に広く日本立場日本国政府は訴えなくちゃいけない。私はPKOはそういう大きな一つのチャンスだと思一いますし、また、将来の日本に大きなインパクトを与える。決してこれはPKOに二千人が行ったから大戦争になるわけでもないし、またドンパチやりに行くわけじゃございませんので、どうですか、その辺はひとつ憲法論議というものをなお一層、ある程度一遍にはいきませんけれども着実に、みんなして政治家は、いい悪いじゃなくて、やはりもう一度原点に返って論議すべきときが来たような気がいたしますが、総理大臣のお考えはいかがでございますか。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国が平和のいわゆる一方的な受益者であってはならないという点につきましては、木宮委員が仰せられますとおり、また私も何度がここで申し上げておるとおりでございます。そのようなことは、湾岸戦争を契機として、国民の間に非常に高い意識の高まりになった。また、冒頭に言われましたように、米ソの対決の終えん、それによって国連活動し得る基盤が広くなった、強くなったということもこれに関係をいたしておると思います。  したがいまして、憲法の禁ずるところをやるわけにはまいりませんが、憲法の許す範囲において我々が国際的な貢献をする、そういう立場に立って考えるべきである。この法案もそのような立場から御審議を願っておるわけでございます。
  10. 木宮和彦

    木宮和彦君 なかなか一朝には物にできる問題だとは私も思っておりませ人。ただ、今国論を二分しておりますが、いろんな意味で世の中がだんだん変わりつつあることは間違いありません。湾岸戦争以後は、やはり日本立場というものが国民に広く、最近の世論調査でもある程度PKOについての賛成がふえていることも事実でございます。  これは同じ我が自民党でも憲法あるいは海外派遣について是とする人と非とする人があるわけでございます。昨年の十一月十六日の朝日新聞には「アリの一穴」ということで後藤田元官房長官が、当時、中曽根内閣が掃海艇を出すときに、それはアリの一穴で、歴史の流れを知らない人の見方だと。例えば今から六十年前の満州事変も柳条溝でもって戦争が始まって以来、それがついに第二次大戦に発展して日本は敗戦になったわけでございますから、そういう苦い経験があるわけで、我が自民党の中にも無論それを慎重にやれという意見もあります。  逆にまた、それはどうもアリの一穴の論は情結論じゃないかと、これは小沢一郎元幹事長のお考えでございますが、むしろ日本は「世界との協調を絶った途端に孤立し、「いつか来た道」になってしまうと。これは満州事変後ですか、松岡洋右が国際連盟を脱退して日本が孤立してしまい、ついに世界を相手に戦争せざるを得なかった。今回のPKOも、世界の小国も大国もみんな参加して、そして協調して世界平和をやろうというときに、日本だけがやらないよと言い切れるのか。それによって、かつて国際連合を脱退したときと同じように日本世界の中でもって孤立するんじゃないかという私は危惧を持っております。決してこれは極論じゃございません。  これは田邊委員長が昨年の九月。一日に小樽でもって記者会見をしておりまして、その中で、PKOのかかわりについてこう言っております。何らかの形で自衛隊の能力、経験が加わる必要があると、こう言っている。(「だから法案出しているじゃないか」と呼ぶ者あり)自衛隊ですよ、法案じゃないですよ。自衛隊の能力、経験が加わることが必要であると、社会党の田邊委員長さんもこう言っていらっしゃる。  それからまた、これは衆議院議員に新しく誕生した松原脩雄さんという人が、「私は、国連中心主義は国是に近いものと考えPKO活動を高く評価している。」、「憲法が禁じているのは国権の発動たる武力行使だ。PKO国連の指揮下だから、PKFも本来は憲法違反ではない。」、こういうぐあいに明確に社会党の同志の中にも、一回生でありますが、松原脩雄さんは、昨年の十一月二十日の朝日新聞に……(「それはいろんなのがおるよ」と呼ぶ者あり)それはそうですよ、自民党にもいますし。だから、社会党さんの言うことも、中にはそういう人も多勢いるんですからもう少しやはり論議を深めていくことが必要だ。もう入り口でもってシャットアウトするような、あるいは新聞によると牛歩をやりたいという、それもちょっとおかしな話ですが、私がそれを言ったわけじゃない、新聞やテレビでそう言っておったというだけで、別に決してそれがどうのこうのじゃございませんが。  これは国際的にもそうなんですね、やっぱり二つに分かれています。盧泰愚さんは、日本国会で審議中のPKO法案の背後にある考え方理解するが、アジアの国々の考え方を整理すると日本の役割は経済を中心とした非軍事な面で貢献してほしいということは、ことしの正月に宮澤総理大臣と会見した折にそうおっしゃいました。中国の江沢民さんも、日本の青年にはかつての軍国主義が中国に大きな害を与えたことを理解してほしいと。これは昨年の八月に北京に行かれた小渕さんにお話しになったことでございます。  確かに昨年の前半そういう意見が非常にたくさんありましたが、カンボジアの停戦がある程度実際的になってからというものはやや趣が変わってきたんじゃないかと思います。その一つは、フン・セン首相が、国連の名のもとで軍事的貢献をすることは、国連と無関係に第三国に自衛隊派遣することとは違うよと、こういうぐあいにことしの三月二十三日に宮澤総理大臣にフン・セン首相がおっしゃったと。  これも新聞記事でございますから、私は直接話したわけじゃありませんから真偽のほどは知りませんが、私の見聞きする新聞からの情報だとこういうふうに国際的にも分かれているし、自民党の中でも今かれているし、社会党さんの中でも分かれているんですから、この問題というものは、私はそういう意味オール・オア・ナッシングではなくて、やはり双方が話をしてそれを凍結するなり、ある程度外務大臣のおっしゃるように青葉マークのような状況でやったらどうだということは私は非常にいい御意見だと思いますけれども、一遍にはいきませんが、ひとつぜひこの際PKOについては野党の皆さんにも御理解を賜って、そしてぜひひとつこの法律がいち早く可決して、そのかわり私はむしろこの問題は、法律をつくるときに非常にぎゃあぎゃあ言うよりも、できてから後のアフターケアが一番大事じゃないかというような気がいたします。  どうも日本人というのは「のど元過ぎると熱さを忘るる」で、入学試験でもそうですが、入るときはあの手この手で、私も困り切っていることがありますけれども、入学するときや会社へ入るとき、あるいは認可をもらうときにはあの手この手で、一生懸命予備校へ行って勉強したり徹夜で勉強したり、あるいはいよいよそれでも足りなければ金を持っていったり物を持っていったりして何とか横からでも入ろうという、そういうのが日本人の習性なんですが、入っちゃうと親も知らぬ顔、学校も知らぬ顔、政府も知らぬ顔というのはこれは困るんでして、むしろ入ることよりも入ってからのことが私は本当に大事だと思うんですよ。  そういう意味で、今回のこの法案は、私は通すことよりも通った後に何とか、衆議院には安全保障委員会がありますが参議院にはないんですよ、参議院もやっぱり安全保障委員会をつくってその都度その都度チェックしていく機能をつくるべきじゃないかなというような、これは私の希望でございますが、政府あるいは社会党の先生とうですか。私の今の意見は間違っておったら御指摘賜りたいし、ぜひひとつ御感想があればゆっくりお話しいただきたいと思います。
  11. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 世界の大勢は、各国が軍備増強をして自分を守ろうという時代から、各国の軍備はなるべく減らして集団安全保障的なことでそれぞれお互いに助け合っていこうじゃないかというようなのが私は大きな流れだと思いますね。全欧州安保なんというのは、安全保障会議というのはもちろん軍事同盟ではございませんが、やはりそういうような考え方のあらわれの一つ。  国連憲章はいち早くそういうことを見込んで第二次大戦のときにつくられたものでありますから、そこには集団安全保障というような考え方国連軍というものを書いたんでしょう。しかし、それがいまだにできなかった。しかし、米ソの対立がなくなって、今後世界が全部平和になればいいんだけれども、実際は時々無法者があらわれる。石川五右衛門じゃないが、かまゆでになるときに、石川五右衛門は死んでも泥棒の種は尽きまじと言ったというんだが、全く豊かになっても泥棒はいることは事実です。  また、時々謀反を起こしてイラクのフセインのような人がいることも事実ですから、それを取り押さえていくためには、やはり各国がそれぞれそれに対抗する軍備増強をやっておったのでは大変なことでおって、そういうような人をつくらないのと、もし万一できた場合には安保理などで、みんなが多国籍軍でこの間やったわけですが、ああいうようなことはだれも好きこのんでやったわけじゃないんで、世界秩序を守るためにやむにやまれず行われたことだと私は思っております。そういう傾向が私は世界的にはだんだん強くなってくるんじゃないか、そういう気がしますね。  おもしろいことには、中国が日本に対して海外派兵は慎重にということを言っていますが、海外派遣は慎重にとは言ってないんです、実際は。派兵は慎重にと。中国のブルーヘルメット部隊というのが今四百人参加をしているんですが、そのときの軍の機関紙とも言うべき「解放軍報」という新聞がありまして、第一面ぶち抜きででかでかと中国のブルーヘルメット参加の意義というものを説いているんです。  その二、三をそこから拾い読みをしてみますと、国連というものがカンボジアに非常に注目している。国連は四十七年の歴史において最大の規模を誇ったUNTACをつくった。これは非常に複雑でたくさんの金もかかるけれども、平和維持を自信を持って今国連自身がやろうとしている。このような状況のもとでブルーヘルメット軍事プロジェクトチームが生まれたんだ。この重要な憲義を理解して行動に今移そうとしている。中国でもこれまでの歴史のいかなる中国軍人の出国、そういうものとも異なって非常に厳かに中国でブルーヘルメットが生まれようとしている。そして、この軍事プロジェクトの人たちはこのようにして国連世界平和の舞台に初めて登場するんだと。  大変なこれは歴史の大転換だと言わんばかりであります。そうして、いろいろこれは書いてあるんですが、最後にこういう締めをしているんです。  これも御参考までに申し上げますと、非常に今までこういうチャンスの来るのを待っておった。長い時間かかったが、ついにこういうチャンスが来た。世界の舞台に中国が進み、迅速に配役の仲間入りをしたのだ。中国はもはや観衆ではない、見物人ではなくて応援団でもない。このときから中国のブルーベレー部隊はカンボジアにおける十八カ月間の平和維持活動を開始する。これは歴史的、現実的な意義を持った偉大な先駆けであって、一つの時代の終えんと新しい一つの時代の始まりだということを言っているんです。そしてまた、世界平和というすばらしく、かっ輝かしい偉業を達成するために、平和を熱愛する中国人民と中国軍の役割は大変に重要になってきたことをあらわしている。こういう締めをしているんです。  非常に高くこのブルーヘルメットに対して中国軍人の使命感と、それから国民がこれに対する非常に尊敬の念を持っているといろいろ書いてあるんですが、やはり中国も国際社会で今度は貢献できるだけの国になったんだということで誇りを持っているんですね。どこの部隊沌やはり行く人は誇りを持って出かけていっているんですよ。  そういう中にあって、まして戦争でなくて戦争の後片づけであって、しかもそこでもう一回内乱を起こされないようにいろんなことをやろうと、難民も帰してやろうと。そういうような中で、また危険が伴うから、一般の民間の人が先に出かけていくといっても統制もとれない。しかし、国連という旗のもとで各国が八百人から五百人とか、その程度の訓練された人たちを出してカンボジア和平に貢献しようというのでありますから、これは良識ある方ならば話せばわかるのであって、私は日本国民の圧倒的多数が必ず支持する日が近く来ると、今だってもう過半数超えているわけですから。  いつかも言われたような、自治労といったら左のようによく言われますが、この自治労の諸君もかなり知的水準は高いからね、これは。大学出以上だから、今ほとんどが。したがって、これは七割ぐらいの人が、六割以上の人がPKOに賛成をしているという、この一事をもって見ても私はわかるんだろうと。  したがって、PR不足という点も大いにあります。ありますが、私は自信を持ってこれはもうどんどんと説明をすれば、わからない人は時代に取り残される人たちであると私は思うんですね。だから、大いにこれはもうPRを私もしますが、木宮先生も大いにやってください。  以上であります。
  12. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 先ほどから御意見ずっと承っておりまして、これに最も合致するのは社会党案じゃないかという感じを私、持つんです。  それは、一つはもちろん憲法との合致でございますけれども、国論が二分されている。国際世論もさまざまである。そして、そういう中でどういう対処ができるかといいますと、国民が行ってらっしゃいと言えるのはやっぱり非軍事、文民による活動だと思います。文官、文民の資格で行くということ。確かに我が党にもいろいろな意見はありますでしょう。しかし私は、個別の意見よりは国会の中で表明されている論議を中心にごらんいただきたいと思うのでございます。自衛隊のあるいは自衛官の能力を活用するという意味合いにおきましても、社会党案はその中身として、今後常設されるものの中にそういった方々に退職して中核として入っていただくということを考えておりまして、そういうこれからの新しい実験的な試みの中に歓迎するものなのでございます。  それから、先ほど先生がおっしゃいました、世界の繁栄の中で日本は恩恵を受けてきた。それも事実でございます。しかし、その反面、日本が平和憲法に徹して海外に一兵も送らず、かつ非核三原則、武器禁輸原則というものを持って、全く節度のある行動をとってきたということが世界貢献しているという面も見逃すことができません。私は、これからも武器の移転に関するさまざまの措置を政府がますます一生懸命やってくれることを期待いたしますし、そういった知的貢献を入れていくという意味において日本ほど適した国はないものというふうに思います。  国連憲章の問題が出ましたが、かつてハマーショルド事務総長が、このPKOは七章による軍事の強制措置でもなく、六章の平和的紛争解決オンリーでもなく、その中間の六章半だと言われた言葉がございます。私たち日本国民は、この六章半、〇・五、そこに踏み込む合意があるのでございましょうか。私どもはやはり非軍事、文民で参加すべきだと思います。  また、私は、憲法論議も出ましたけれども、それに全面的に立ち入るのでなく、この政府案についてだけ非常に難点があると思いますのは、さっき先生指摘されました自衛の問題について、憲法解釈国連の概念であるところの自衛との間に開きがあるということは御指摘のとおりなのでございます。  その第一の、正当防衛相当のもの、それも日本の隊員に限るというあの範囲内の日本自衛隊のあり方、それからウ・タント事務総長の覚書、及びSOPが言っておりますところの第二の、安保理に与えられた任務遂行のための武力行使の可能性、ここに踏み込めないという自衛隊のあり方、その間にギャップがあることは歴然としておりまして、それをあえて送るならば、日本自衛隊はまことに国際的性格を持ち得ない、しかも他の外国の部隊とともに共同行動することが非常に難しい、そういった存在にならざるを得ないのではないかと懸念しているわけでございます。  でございますから、そのような問題がクリアされない現状におきまして自衛隊を送り出す、まあいいじゃないかというようなことは、事憲法に関しておりますので、私たちとしては到底とることができません。ぜひとも非軍事、文民、そして民生のために日本が新しい境地をい国連のためにその経済力、その専門技術性、その熱意を使ってやっていきたいと考えます。よろしくお願いします。
  13. 木宮和彦

    木宮和彦君 それでは、社会党案について質問させていただきますけれども、私は社会党案を、久保田先生の今おっしゃることを聞いていますと、社会党さんは今回の政府案に対して自衛隊ありきと、こういうふうにおっしゃいますが、私に言わせますとむしろ社会党案は非自衛隊ありきで、自衛隊に対する拒否反応がもとであって、それで今回の文民だけでやろうと。だけれども、果たして文民が、養成できる範囲内、それから世界平和に、本当に参加することによって成果が上げられるかということを私は非常に疑問に思っています。  その辺はどうなんですか。本当に文民でもってPKOをつくって、そして果たして、まだインフラもできていませんし治安もよくないところで、ほかの国にむしろそういうものは、まあ邪魔になると言ってはだめですが、足手まといになるんじゃないかという危惧を。しかも世界じゅうのPKOは全部軍人なんですね。日本だけがそれでないという異質性というものについては、PKOに参加させることによって私はむしろマイナス面が出るんじゃないかという気がするんですが、いかがでしょうか、その辺は。
  14. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) お答えいたします。  私、先日来から政府側の御答弁を聞いておりまして、もう気になって仕方がない言葉があるんです。それは、民間のボランティアの方などが現にカーンボジアにたくさん行っておられるわけですが、そういう方をつかまえて役立たすとか足手まといになってはとかという、そういうも言葉がございます。それは、今現にカンボジアで活躍している、世界各国から来ているボランティアの方々に対して、非常に無理解なお言葉であるんじゃないかと思うわけでございます。  先生のお聞きになっているのは多分PKOに対する即応性とか自己完結性とかあるいは安全性とかといった問題ではないかと存じますけれども、社会党案でいきますと、文民といいましても文民の中にはいろいろございまして、警察官あるいは選挙管理、監視員あるいはその他の行政官、またいろいろな民間ボランティア、こういうものを含むわけでございますけれども、即応性につきましては、社会党案は常設の隊をつくるという構想でございますので、少なくとも二千人のうちの中核的な一部につきましてはこれを常設しておく、そしていろいろなチームを設けておきまして即応的にこれを出していけるという点では、そのときになってさあ出そうといって呼びかけるよりもずっと即応性があるものと思っております。  また装備は、この社会党案によりますと国際協力隊に自前の装備を持たせるということでございますので、必要な装備はすべて持っていく、武器以外は持っていくということでございます。  また、自己完結性につきましては、確かに自衛隊自己完結性は強いのでございますけれども、例えば国連の難民高等弁務官事務所の世界各国にいる職員あるいは消防隊、こういったところにも自活能力が十分にございまして、これの規模を少しく広げていくという意味合いにおきましては、この社会党案の中で教育訓練を行ってこの自己完結性をより一層充実するということとしておりますので、そういう意味で、私は足手まといどころか非常に役に立つ隊ができていくものというふうに考えております。  また、国連の中で文民の役割の増大ということを非常に真剣に計画しておりまして、既におととし出ました事務総長報告でも「PKOにおける文民の役割」というリポートが出ておるのでございますが、国連PKO委員会の方でも毎年熱心にこの点を検討しておりまして、ナミビア以来非常に文民部門が広がり、かつPKOの内容が冷戦時代のものあるいは中東型のものよりもずっと、選挙でございますとか人権でございますとか、難民の援助でございますとかあるいは民生の面の援助でございますとか、そういうところへ広がってきておりまして、その面から私どもは非常に貢献する面がふえておりますし、そこで一つのリーダーシップを持ちたいものだと考えているところでございます。
  15. 木宮和彦

    木宮和彦君 社会党案ですと、そうすると要するに武器は携帯しませんね、全然。
  16. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) はい。
  17. 木宮和彦

    木宮和彦君 そうすると、もし、しかし戦争が終わって必ずしも治安がいいとは言い切れない場合もあるわけです。これはニューヨークヘ行ったって治安が悪いということもありますし、ほかのソ連へ行ってもそう、東京でもあると思いますが、その場合に、いろいろ監視なりあるいは選挙のあれをするにいたしましても、あの山のあの部落はどうも怪しいというときには国連の方で、UNTACの方で武器を持っていってくれ、小銃を持っていってくれという要請があるかもしれない。その場合には社会党案ですとそれを拒否するんですか、拒否できるんですか。それとも嫌だと言って、それが実行できるんですか。
  18. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 紛争地におきましても、現に多くの国連職員、HCRその他国際機関の職員、赤十字の人々、それから加盟国から行った文官、そして内外のNGO、ボランティア、こういう方たちが今まで丸腰で働いてきましたし、現在も働いていますし、これからも働いていくという、このことはお認めいただけると思います。そしてカンボジアでも例外でなく、一九七九年、ヘン・サムリン政権にかわりましてから後、国際ボランティアの人々が実際には国連の開発援助の機能を置きかえるぐらいの勢いで長年この仕事に従事しているということも、今までの紛争の中でさえもそれをやってきたということもお認めいただきたいと存じます。  治安上の問題はもちろんないとは申せないのですけれども、しかし、その安全の確保は現地の警察が行うという、それが本来の仕事であると思います。そして、どうしても危険な場合にはもちろん退避、撤退をするという場合はあり得ると思います。しかし、それは国際的な常識ではありますけれども、文官、文民だからといって全く危険がないというようなことを私どもは申しているわけではございません。しかし、非軍事部門でいたします、文官、文民でいたしますと言う以上、他の国の人々がその部門でやっている程度の危険は私どもも覚悟しなければならないと考えます。  しかし、それは国連の指揮のもとで行われる仕事でございまして、それは現地でさまざまな手当てが行われるはずでございますし、現地の警察が、あるいは私どもも派遣をしたいと考えている国連の文民警察がそのような仕事に、現地の警察を助けてその任務につくことは当然であると考えておりますのでございますから、危険なのはもちろん軍人だけではございませんけれども、しかし私どもはむしろ文官、文民が武器を携行などしてすぐ腰に手がいくというようなそういう状態であることの方がよほど危険だと思います。丸腰である、日本から来ている要員は非軍事である、そして文官である、文民である、このことをはっきりと明示して、そして活躍してほしいと思います。
  19. 木宮和彦

    木宮和彦君 この論議を幾らやってもどうも何にも実りがないような気がいたしますけれども。  治安が悪いということは想定は全くできるわけなんですね。むしろそれは戦争、今まで紛争があったところがおさまったばっかりでまだ余熱というのがありますわね。まだほかほか余熱があるところだから小競り合いというものは、もう当然治安の問題があると思いますから、そのときにやはり、あそこへ行けと言われて、よその軍隊で来た、参加したよその国の人に守られて行くようでも困る。  だから、その意味で私は、別段武器というものは使うのは決してこれは望ましいことじゃないし、ない方がいいに決支っているんです。ただしかし、今の先生のお話を聞いていると、もう自衛隊は嫌いだ、情緒的に。だからほかの文官が武器を持っていくのならいいけれども、自衛隊だけは嫌いだ、こういうように聞こえてしょうがないんですが、それは私の偏見でしょうかね。
  20. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 文官が武器を持っていくなどと私は言っておりません。文官、文民は当然のことながら武器は携行いたしません。そして、私は、軍人の場合も、どのような武器を持つかは国連によって指定されるものと思っております。そして、文官、文民に対して、警察を含め、国連が武器を携行するという要請はいまだないと思います。しかし、文官、文民が、特に日ごろそのようなものを使ったことがない者がそのようなものを持つということ自体は非常に危険ですし、事故があった場合本人の責めにすることも不可能でございますし、またそのような武器を持つことによって危険を誘発するという側面を十分考えなければならないと思います。  私どもは、ですから他国の文官、文民、そしてボランティアが武器なしで現地で勤務しております。その姿に倣いたい、それを思うのみでございまして、それ以上のことは何もないのでございます。
  21. 木宮和彦

    木宮和彦君 じゃ、その文民がやられちゃったという場合には、その責任はどこにあるのですか。
  22. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) その責任とおっしゃいますけれども、それは国際協力隊の隊員である場合にはその後ろ層となるのは政府でございますから。しかし、その責任をだれがとって、それがだれの罪でどういう理由がということにつきましては、私は、国連のもとにそういった警察あるいは法律、こういうものを扱う人がいて、それによって相手国と交渉するとかいったような実務に入っていくものと考えております。
  23. 木宮和彦

    木宮和彦君 納得しかねるんですが、それじゃ社会党案のそういう法案ができましたけれども、社会党さんから政府法案に対して、国連とどういうコンタクトをとっているのかということをしばしばこの席でもお話がたくさん出ます。社会党案の場合には国連との突き合わせといいますか、今の武器携帯をしない文民だけのPKOをつくって、それについての何というかコンタクトといいますか、そういうものは過去においてどの程度、だれとどこでどのくらいやっていらっしゃるのか、その辺をひとつ具体的にもしわかればお教えいただきたいと思います。
  24. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 社会党は野党でございますから、政府として法案について国連と交渉するというその意味での調整はいたしておりません。けれども、私どももこの三年ぐらいの間に、あるいはそれ以前にもですけれども、社会党としてあるいは議員の有志の調査団として方々に行っております。特に国連本部につきましては社会党の調査団も二度ほど行っておりますし、また国連議運の中に入って行ったこともございますし、また個人としては私自身も含めまして何人もが国連本部あるいはPKOの現場、それから北欧待機軍、カナダ、そういったところへ調査に行っております。  特に国連につきましては何度も行っておりまして、その意味では国連関係文書を検討いたしておりますし、それから国連の原則、国連文書、そういったものをもとにしてあちらの方と話し合っております。  内容につきましては、私どもが意図しております文民の役割がどれだけあるか、あるいは丸腰で行けるのか、あるいはそういった軍事部門、非軍事部門のいろいろな部面に文民としてどれだけの参加の余地があるのか、国連としては今後非軍事文民部門をどれだけふやしていく意図があるのか、そういったことを伺いました上で私どもの法案をっくりました。  つくりました法案は二度にわたって廃案になりまして、今回のものは一番新しいわけでございますけれども、国際緊急援助、災害援助の分も含めて入れでございます。これにつきましてもジュネーブヘ団を派遣いたしまして、HCRあるいは赤十字、そういったところの活動状況を調べた上これをっくっているところでございます。  一番、災害時の便についての即応性を確保する意味から、やはり二国間協定を結ぶということがいかに大事かを痛感いたしましてここに入れましたし、またPKOその他、人道援助、災害援助のための資材、備品の備蓄の場所をつくる必要も感じておりますし、またできることならば地域において選挙管理その他、レスキュー活動のための訓練の場も設けたいということで、この私どもの法案に入っているわけでございまして、そのようなことにつきましては、国連本部と、グールディンクさん初め担当官といろいろなお話をした結果でございます。その意味では国連の了解がこのような形ではあるというふうに考えております。
  25. 木宮和彦

    木宮和彦君 じゃ、もう一回聞きますけれども、社会党案でも今言ったような部隊に等しいようなものをつくって訓練し、そして兵たんも抱え込んで、そして行けるときにすぐ行こうと、こういうようなお答えでございましたけれども、それじゃあれですか、社会党さんがお考えになっているPKOも、やはやブルーヘルメットをかぶって日本の旗を持って、服装はどういう服装をして行かれるのか、その辺のイメージ、やっぱりそれをやらないと、何だかネクタイ締めて行くように感じちゃって、どうにも一体これは何しに行くのかな、見物に行くんじゃあるまいしと、こう思っちゃうもんですから、ぜひその辺をひとつ……(発言する者多し)そう思っちゃうからはっきりそう言ったんですよ。(発言する者多し)
  26. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) お静かに願います。
  27. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 社会党案によります文官、文民の派遣国際協力隊としての派遣でございまして、すべては国際協力隊員として活動するわけでございますから、それに独自の制服を貸与することになると思います。それは法案の中では「総理府令で定める。」といたしております。そのデザインは機能的で清潔なものを考えることになると思います。  それから、頭にかぶるもの、それから記章、そういったものは、国連平和維持活動に参加する場合は国連の規定に従うことになると思います。また、人道援助、災害援助で二国間の協定によって行う場合は、それは独自のものを考えることになると思います。  装備とおっしゃいますのは、多分今のは服装の問題だと思いますので、その他装備、例えば病院船から云々といったことは今は省かせていただきます。
  28. 木宮和彦

    木宮和彦君 そうすると、ベレー帽はかぶるんですね、PKOで行く場合に。二国間でなければ。
  29. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 文官、文民に対して国連がブルーベレーをかぶるようにもし指示した場合にはかぶることになると思いますし、そのような指示がない場合もあり得るかと思います。
  30. 木宮和彦

    木宮和彦君 そうすると、ブルーベレーをかぶれと言われればかぶるし、服装も総理府のあれで決めると。恐らく自衛隊も同じようなことで、決して自衛隊の服装そのまま行くわけじゃないと思うんで、そうすると見たところは一緒ですな、自衛隊もその文民も。ただ自衛隊の籍があるかないか。日本人ですからね、両方とも。その辺はどうなんですか、結局は外国人から見たら同じだと私は思うんですけれども。
  31. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 国際協力隊は、社会党案ではすべて文官、文民の資格で参ります。したがいまして、それぞれの服制に、例えばもとの実家の服制に必ずしも従う必要はないと思います。国際協力隊の制服であるということになるんではないでしょうか。そのように総理府令で定めるということになると思います。
  32. 木宮和彦

    木宮和彦君 だから、私さっきから別に失礼なことを聞いていると思わないんですけれども、服装とベレー帽と、自衛隊も同じような格好をして行く。武器の携帯はありますけれどもね。ですから、日本人がそこで貢献するんであって、外国人から見れば自衛隊なのか文民なのかということは全くこれは予見も予測もできないわけですから、そういう集合の中に方々のPKOが集まったときに、日本だけが異質の行動をとらざるを得ないということは、私は非常に国際協調の上からいっても実際活動として行った人がやっぱり気の毒だ。  私は別に軍人が行くことに賛成しているわけじゃないけれども、やはり行く以上は貢献できるようなスタイルと貢献できるような立場を与えておくということが我々国民の責務のような気がするんですが、間違っているでしょうかね、その辺は。
  33. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 先生、何度も申し上げるんですが、私どもの案では自衛隊派遣しないんです。ですから、行く人は文官、文民ですから国際協力隊の制服でよろしいんではないかと思うんです。文官、文民の資格で行く者が自衛隊の制服を着る、つまり私どもの場合は退職するということが前提なのでございますから、その方たちが自衛隊の服装、制服を着るということはおかしいわけでございまして、国際協力隊の制服というもので、明らかに日本の文官であるということがはっきりわかる服装であることが望ましいと考えます。
  34. 木宮和彦

    木宮和彦君 自衛隊も行くときには服装について格段、日本自衛隊の服装でなくてもいいんじゃないかと私は思うんですが、それはやっぱり総理府令で決めればいいことであって、同じことだと思うんですがね。その辺はいかがですか、防衛庁長官
  35. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 自衛隊が参加する場合の服装の問題でございますが、原則的に我が国自衛隊の自衛官の服装で行くことになるだろうと思います。ただし、この表示につきましては、我が国自衛隊であるという表示が必要でございますね。あるいはこういう腕章で日の丸をつける、片方には国連のマークをつける。あるいは帽子も場合によると国連のそういう帽子をやるということもあり得るかと存じますが、基本的には、自衛官が派遣される場合に、今現有している自衛隊の制服と別個のものを調達いたしましてそれでやるということは今のところ考えておりません。
  36. 木宮和彦

    木宮和彦君 要するにPKOについて、日本自衛隊であろうが文民であろうが外国人が見た場合には日本人が来るということ。ですから私は、自衛隊といえども国連旗のもとに働くし、国連旗のもとに行動をとる以上はもう日本自衛隊じゃないんですよ、その活動そのものは。私はそう思うんです。  だから、それはあくまで日本のためにやるんだという考え方じゃなくて、国際のために、世界のために、平和のために我々は行くんだよというそういう自覚がなければこれはいかぬし、また事実そのとおりに、日本のために行くんじゃなくて、しかも戦争に行くんじゃなくて戦争をおさめに行くんだと、私はそういうふうに理解しているものだから、何でそこに自衛隊を、それは自衛隊違憲だという根底があるとは思いますけれども、その辺は防衛庁長官、行く場合にはどうなんですか。無論日本自衛隊としては矜持はあるかもしれませんが、やっぱり国連の中に組み込まれて行動をとるものだというふうに私は考えますが、これはそんな難しいあれじゃないんですけれども、どうなんですか、それは。
  37. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員から今非常に平明な形で御質問をいただきましたが、実はこの点が当委員会において野党の皆さん方から厳密な議論として提起されている点でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この任務はあくまで戦後処理、戦争に参加するわけではございませんから、平和協力業務ということで参ります。そして、これがたびたび議論になりますように、国連の要請に基づきまして我が国が行くことが適当であると判断した場合に五原則によって行くわけでございますから、この行動それ自体はあくまで国連の方針、これはコマンドと言われておりますが、この枠内で平和的な貢献をしていく。  しかし一方、この指揮権の問題等もございましたけれども、これはたびたび総理、外務大臣あるいは政府委員からも答弁がございますように、懲戒その他の人事的な指揮権総理大臣ないし防衛庁長官がこれは当然持っているわけでございます。したがって、完全に国連のその現地のPKOの組織の中へすべて、言葉は悪いかもしれませんけれども、たこの糸を切ったようにぷっっりと切れて任すものではございません。その点はもう明確でございますが、しかし現地に派遣される自衛隊員はこうした本当に我が国としての国際貢献をやるという意識でやるわけでございますから、これは国連のそういう平和的活動に献身的に、共同といいますか参加してやるんだということはもう当然なことだと存じます。
  38. 木宮和彦

    木宮和彦君 私もそのとおりに思います。やはりグッドコモンセンスというか、常識的に判断していかないと、政治的な問題は。余り重箱の隅をつつくような話だけに終始しますと、それだけがクローズアップされては日本の責任は負えないような気がするんです。それは確かに大事ですよ。そういう細かいことがありますから、私はその指揮権の問題、指図の問題も大事だと思います。決してそれは不毛な論議だとは思いませんけれども、しかし、大局を見なければ日本の使命は私はないような気がするんです。  ところで、防衛庁長官一つお伺いしますけれども、防衛庁も今までは日本だけのことを考えていればよかった。しかし、これからやっぱり米ソがこういう状況になりますと、国際平和に挑戦するようなことがしばしば方々で発生すると私は思います。私は、憲法上、さっき最初にくどくどと申しましたけれども、当然その要請を受けて国連協力する義務があると思うんですね、国連に加盟している以上は。そのためには、時にはその武力の抑制に対してどういうふうなことをするか、あるいは安全保障のシステムをどういうふうにするか再検討して、もう一回その法制度を見直す必要がある。それは、国際平和協力という観点で、今まで欠けていたから。  だから、そういう意味で私は、自衛隊法第三条で定める自衛隊の任務として国際貢献の業務を規定することをもう検討する時期が、このPKOも大事だけれども、そのこともやっぱり念頭に置くべきような時代が来たような気がしますが、いかがでしょうか。
  39. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員の御質問の本意といいますか趣意は、私も方向性としてこれはよく理解できるところでございます。今後、我が国国際社会の中で本当に平和貢献をしながら生きていくためのこの基本的な方向性についてあるいは理念について述べられた点は全く同感でございます。  ただし、現在御審議をいただいておりますPKO法案は、あくまで五条件のもとで国連の要請に応じまして、これは義務ではないと私は思っています。これは要請を受けたら義務的にどうしても応じなければならない、応じなければペナルティーを受けるという性質のものじゃなくて、我が国が積極的にこれからの国際社会の平和秩序維持のために貢献をしていくというものでございまして、本委員会でも貢献なのかあるいは責務なのか、あるいは今先生義務だというようなことを御指摘になられますが、私は義務ではないと思います。  つまり、この方向性からいいますと、我が国はあくまで主体的な我が国自身の判断に基づいて、そしてこれを派遣をしていく、自衛隊派遣していくということでございますから、義務とまでは言い切れませんが、将来方向の問題としては、先ほど条約局長から国連憲章を引用なさっていろいろ説明がございましたとおり、また我が党の一部におきましてもそういう有力な見解もございます。  将来方向としての方向性は、私はそれは十分検討に値し、またある意味で正しい方向を指し示していると思いますけれども、現実の場合はまだ国連軍もできておりませんし、四十三条の協議もできませんし、七章は稼働しておりませんし、PKO自体がこれは慣行によって積み重ねられた平和的な業務でございますので、まだ現時点ではそういう現実にはなっていない。したがって、我々としては五条件をきちっとした法律で、そして憲法の制約下と調和しつつ国際貢献を果たそうということでこの法案をお願いしておるというのが現実だと存じます。
  40. 木宮和彦

    木宮和彦君 私も別に、義務と言ったのはどうも勘違いしたようで、責務でございます。その辺はそのとおりだと思います。  ただ、何か私の質問はひどく右翼がかっているように聞こえるかもしれませんが、私は逆でして、私はもともと戦争を経験した者の一人でございますし、当時反ミリタリズムで、何とかして士官学校、兵学校へ行かない、それでにらまれた方で、教練は丙をとりまして、高等学校へ入るにもなかなか丙だと入れてくれなくて困ったことがあるんです。至ってそういう点では平和的である。むしろ逆に、それはあの時代にそういうことをやったんですから、反骨でもないかもしれませんが、根はどっちかというとおとなしくて、まことに戦争は大嫌いなんですよ。  ですが、しかし今の日本は、かつて日本の陸軍や帝国主義の一部の勢力が非常にばっこしていた時代とは私は違うと思うんですよ。やはりそれは戦後四十五年間の民主主義を、成熟したとは言わないまでも、少なくともこれはもう信用してもいいという観点に立つか、あるいはどうも日本民主主義、いつ一日でひっくり返るかわからない、タイみたいなものですね、そういうふうに認識されるのかによってこのPKOの問題も随分変わってくると思う。  だから、自衛隊は過去四十五年間随分自重して、防衛庁事務次官なんかも大変いい発言をなさって、私はやっぱり国民に愛され、国民が支持、国民がやれよということでなければ自衛隊はできませんよと。これは本当にグッドコモンセンスで、昔ば自分が大将になりたいからやったかもしれぬが、今はそんなことはないと思うので、どうぞひとつそういう意味で、これからの自衛隊というものは国民に愛されると同時に国民も尊敬するような関係になることが今回の根底に私は一番必要な問題だと。それが、別に報道機関を悪く言うわけじゃないが、やや傾向的にどうもアレルギーが強いような気もしないでもない、これは私の偏見が。  私は自衛隊は嫌いな方ですけれども、でもやっぱりそういう意味ではこれから本当に愛されていくことが大事だと思うんです。ちょっと支離滅裂で精神分裂かもしれませんけれども、別にそういう意味じゃございません。趣旨はわかると思うんですが、総理大臣、どうですか、これからの日本の歩むべき道についてひとつ御訓導を賜りたい。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、冒頭に幾つかのことをお述べになりました中で、要するに日本民主主義、戦後五十年に近いこの日本というものを信用するかどうかということが問題の基本にあるだろうとおっしゃいました。私もそのとおりであると思います。  そうして、そのためのまたシビリアンコントロールでありますとか、この法律で申せば五原則というようなことでございますが、そういう信用を担保するためのことがどれだけこの法律考えられておるかということも大事な点であると思いますが、その点、私ども万全を尽くしてこの法律の中にそういう幾つかのいわば保障措置を入れておる、そういうふうに考えております。  結局、確かにこの戦後五十年に近い我が国の歩んでまいりました道、それを支えるだんだん若くなるジェネレーション、憲法の下で育った人々が今形づくっているこの国のいわゆる民主主義に対する自分自身のいわば自信と申しますか、それについての信念というものがどの程度であるかということがやはり議論されているだろうと思います。  一部には、いやそれはまだまだ自衛隊というものもいろいろ危険がある、あるいは極端に言えば違憲だと考えていらっしゃる方もある。国民の大多数はその点はそう考えていないということがほぼ明らかでありますけれども、しかしそういう一部に疑念があるということもやはりまた事実でありますならば、この法律の中で、殊に自衛隊に海外に平和目的のためですが行ってもらうとなれば、シビリアンコントロールとかあるいはいわゆる五原則に述べられておるようなことを十分にこの法律の中に取り込みまして、そして一部にありますような、これは内外ともにあり得ることでございますから、懸念に対して十分に対応する。  あるいは木宮委員が先ほどもおっしゃいましたように、いわばこれをつくるということも大事だが、実施をするときが非常に大事なんだとおっしゃいました。この法律の運用につきましても、そういうことはさらにさらに注意をしていかなければならないと考えておりますが、しかし、それだけのことを申しました上で、やはりこの際我が国が内外ともに求められておるのは、このような金ばかりでない国際貢献である。それも実行をもって有効に国連の平和目的協力できるような体制をとっての国際貢献である、このように考えております。
  42. 木宮和彦

    木宮和彦君 それでは、最後に久保田真苗先生にお尋ねして終わりたいと思いますが、現在これだけ日本経済大国になったことはもうお認めだと思います。その日本が、今私も言いましたが、成熟した民主主義まで行っているかどうかは別といたしまして、しかし世界のレベルから比べれば現在の日本はかなり民主主義は成熟しつつある、こう理解しても私は間違いないと思うんです。  その日本世界の平和のために、その民主国日本自衛隊PKOに参加するということは、その資格が全くないというふうにお考えなのか。最後にひとつその辺の先生のお気持ち、個人の気持ちで結構ですが、その自衛隊に対するお気持ちをお伺いしたいと思います。
  43. 久保田真苗

    委員以外の議員久保田真苗君) 日本民主主義の制度で戦後頑張ってきたことは間違いないことですし、日本人が民主主義を目指していることも間違いないと思います。  民主主義の国としては、世界の国の成熟度はさまざまだと思いますけれども、この国連平和維持活動に軍を出すことに関しましては、あるいは文民の場合もそうですけれども、利害関係のある国、そういうところを省くといったことなど、そのような条件のものを除外すれば、これはすべての国に開かれているものだと思います。国連の場合は、でございますから厳正中立に立つこと、そして国連の指揮下で働くこと、そういったことを受け入れる国であればすべての国に開かれている、利害関係の国以外は。  ということですけれども、日本の場合、日本自衛隊を出す資格があるかないかというよりは日本自身の憲法あるいは国民合意、そういった観点からしまして一定の自分の枠というものを憲法で持っていると思います。そして、その枠を守っていくということの中から、その枠の中でできる最大限の活動の場をむしろ非軍事面に求めるということを私どもは本当に真剣に考えているわけでして、それは日本民主主義の国であることも、日本自衛隊だけが国際世論によって特に禁ぜられているという、そういうことがないことは当然でございます。私ども自身の判断におきましてどうやっていくかということを考えていくというのが筋だと思っております。よろしゅうございますでしょうか。
  44. 木宮和彦

    木宮和彦君 残念ながら、どこまで行っても平行線ということだけを悲しいかな認識いたしまして、私の質問を終わります。
  45. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今回の審議一つの焦点になっておりますカンボジア問題で、きょうはお伺いし。たいと思います。  私たち公明党も、石田委員長を団長にカンボジア訪問団を先日派遣いたしまして、現地の実情をつぶさに調べてまいりました。昨年七月にも、私物め党調査団をカンボジアに派遣しておりまして、今回が二回目でございます。既に、総理初め政府にカンボジア問題での提言を行っておりますが、きょうはこれを中心に質問をしたいと思います。  まず、最初にお伺いしたいのは、カンボジア問題と我が国のかかわりをどうとらえるかであり、日本国際貢献のあり方をどうするかという問題でございます。  カンボジア和平が単に一国の平和にとどまらずに、冷戦後のアジア地域全体の平和に不可欠な課題である。また一方、冷戦後、世界において地域紛争が多発する傾向がある中で、カンボジア和平、特に国連PKOであるUNTACの展開は、国連を軸として地域紛争を平和裏に解決するというテストケースであるというようなことは多くの方が指摘をしております。また、カンボジア問題は、我が国にとっても湾岸戦争後、一体日本国際社会の中でどうあるべきか、どういう責務を果たそうとしているのか。いわば、我が国に求められている総合的な国際貢献の試金石と認識いたしております。  カンボジア問題こそ我が国が、先ほど総理もおっしゃっておりましたけれども、従来のような金、物中心の国際協力にとどまもず、顔の見える協力、ともに汗を流す協力、心を通じ合う協力とする第一歩と思うのですが、まず総理の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般も、石田委員長ほか皆様がカンボジアを訪問されまして、現地の状況をつぶさに御視察になり、また指導者とも会談をされました。我が国として何をなすべきかについて私にお話しをいただきまして、御教示を受けるところが非常に多うございました。  我が国といたしましては、ただいま木庭委員の言われますように、本来、パリ平和会議の段階で、第三委員会の復興支援のための議長を務めておりました。また、一昨年の夏には東京において、カンボジアに関する東京会議を開きまして、これ自身はすぐには実を結びませんでしたけれども、その後に四派の間の話し合いが成立することについて一つの契機を提供したものと考えております。  幸いにして、四派の間で十三年間にわたる紛争の終結についての合意が一応でき、またスプリームカウンシルのようなものもでき、そしてシアヌーク氏が長となって一応の体制を整えた上で国連に対してUNTACの派遣を求めた、こういう状況でございます。  したがいまして、我が国としては、もともとこれは当然のことでございますけれども、アジアの隣の近くにある国の和平というものが何といっても、その当事者の方々はもちろんですが、アジア全体、近隣にとっても大事なことである。しかも、我が国の力からいえば、このことについてできるだけの貢献はしたいということを今までもやってまいりましたが、いわんや国連がこの処理に当たるということになりますれば、この国連の平和維持活動貢献することは、従来のいきさつから見ましても、またアジアにおけみ我が国のアジアに対する責務から申しましても当然のことであろう。  ただ、我が国には我が国憲法がございますから、その中で我が国のでき得る限度はどこであるか。また、態様はいかにあるべきかということがいわゆる五原則であり、あるいはこの法律に盛られた幾つかのいわば保障措置でございまして、羊のうちの中で我々としてはやはり全力を振るって、かつてのような金だけの行為であるといったようなことでなく、それとともに汗を流すという貢献をいたさなければならないというのが基本的な私どもの考えでございまして、この点は先般石田委員長から御教示を受けましたお考え基本と、政府と同じ考えをいたしておるということを強く感じております。
  47. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今、総理からカンボジアに対する基本姿勢をお聞きしたわけですけれども、一つは、私ども非常に心配しているというか、現地でも既にどういう声が上がっているかということも調査団、訪問団が聞いてまいりました。  例えば、プノンペン政府のフン・セン首相、あの方が日本に強い期待を寄せられて、旗の話をされていますね。一つだけ旗が欠けているという話をされておりました。また、私どもが会った、これは現地でPKOを展開しているインドネシア部隊の責任者の方ですけれども、この方は、日本がなぜ平和をつくる活動に参加できないのか、日本は金は出すが人は出さないという批判を私も聞く、このままでは国際社会から取り残されるのではないかというような話をされた。  また、プノンペンの市内で今いろいろ声を聞いたときに、どんな声が出てきているか。日本は平和づくり、平和維持活動には協力しないで平和の果実だけを持っていこうとしている、こんな声が既に出始めている。  また、私自身、昨年七月、カンボジア初め東南アジアを回りましたときに多くの方から共通して言われたことがございます。どんなことかというと、日本は平和なときにはいろいろと協力をしてくださる、本当にありがたい。ただ、私たちが本当に困ったとき、なかなか難しいんですねということを言われました。その声に対して私自身は、いや、今日本国内でそういうこともできる体制を整備しておりますと、そうお答えをしましたけれども、こういった声、私たちは真摯に受けとめなくちゃいけないと思っております。  総理自身こういうお声を多分聞かれると思いますけれども、どういう御感想をお持ちか、一言あればお伺いしておきたいと思います。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう現地の声はフン・セン首相からも直接聞きましたし、またいろいろな機会を通じて聞く機会が多うございまして、それはまことに真実の叫びであろう。全く十三年間戦乱の末にようやく何とかその戦争が終わろうとしている。戦争をはっきり終わらせて平和を築くために、できるだけ国連を中心とした力をかしてくれるというからかりたい、その中で日本が有力な国であるということは、これはカンボジアの人たちはみんな知っているわけでございますから、日本からひとつ、おっしゃいます。その二十何本目かの旗ということに象徴されるように助けをくれないんだろうかと。それはまことに私は真実な叫びだと思います。  もちろん、その方々が日本憲法ということをよく知っておられるわけではありませんから、恐らくその人たちは全くよその国並みにと普通は考えておられるだろう、それも無理からぬことです。しかし、そういう声を聞きながら、我々としては我々のできる限りの協力をする、できる限りの助力をする、貢献をするということが我々としての当然の務めだというふうに思います。
  49. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 UNTACの協力の問題でお伺いしたいと思います。  UNTACは、六月からいよいよ武装解除の監視、動員解除の監視といった第二段階に入ります。そういった監視業務を行うPKFの本体、いわば歩兵大隊の部門は要員がほぼ充足したとも間いております。先日、参考人として御出席いたがきましたUNTACの明石代表からも、今要員が足りないのは緊急の建設とか道路補修などを担当する工兵部門とかロジ部門、輸送、通信、また中腰で参加します停戦監視団についても、五人でも十人でも参加してほしいとの指摘がありまた、  私どもの訪問団も現地をつぶさに調査し、今からカンボジアに展開するUNTACに我が国として支援しなければならないのは、こうしたいわば後方支援分野であるとの認識を強くいたしました。私どもはPKFの本体業務の凍結を主張しておりますし、それでも十分な協力ができると確信もしております。  ただ、今私が外務大臣にお尋ねをしたいのは、凍結論への政府の対応は別として、カンボジアの現状、またUNTACの現状から見て、我が国として現地のニーズの高いこうした後方支援分野にまず参加することが最も肝要ではないかと思うんですけれども、それについての外務大臣の見解をお伺いしたい。
  50. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) もう既に御承知のとおり、分担金その他では積極的に日本協力をいたしまして、お金は支払い済みということになっております。  これは、どこまでも協力でございますから、押しかけていくわけじゃないので、ニーズのないところへ行っても仕方がない。やはりUNTACとよく相談をした上で、今言われたようなロジ部門とかその他の向こうの希望するところに行くというのが基本だろうと存じます。
  51. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つは、UNTACにどういう人たちを派遣できるかという問題であります。  訪問団の報告、また私自身カンボジアの現状を見てまいりまして、隊員の住居の確保とか飲料水とか食糧の確保、四十度近くにも達する気候、いまだ不安定な治安状況など、私はやはり極めて困難な状況だと思います。正直申して、文民が本格的に参加するというのは難しいと思っております。やはり専門的に訓練された自衛隊の能力を活用することが不可欠だと判断いたしております。  現在、UNTACに参加している例えばインドネシア部隊は、兵舎一つを建てるのに自分たちの力で一カ月、二カ月かけてようやく準備が整った、こういうことを言っておるわけであります。また、先日から指摘されていますけれども、例えば医療とか通信とか輸送、さっき出た道路や橋の復旧などの緊急のインフラ整備、こんな軍事色の薄いこれらの部門も現状ではUNTACではすべて軍人が担当しておるのであります。我が国が万一文民を派遣しようとしても、UNTACでは受け入れられず、さらに一緒に活動する相手が全然軍事的知識がないということになれば、部隊として動くことになれていない、そういうことであれば業務に支障のおそれがあるということを現地のUNTACの部隊の方がおっしゃっているわけでございます。  確かに、UNTACに文民警察、選挙監視など文民の活躍できる分野があることも承知しております。しかし、それはUNTACの基礎的整備が終わり、将来の、少し後の話だと思うし、そのときはもちろん積極的に参加すべきだと考えます。  たびたび総理も外務大臣も同様の認識をお示しされておりますけれども、UNTACへ派遣する場合、人の問題についての基本認識を再度伺っておきたい。
  52. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはもう先生のお話のとおりでありまして、特別に説明する必要はないと存じます。  どういう部門が希望されるかわかりませんが、希望された部門ではやっぱりその道の訓練された人たちを選んで出すということが重要であろう。全く不向きな人を出しても仕方がありませんから、それに向くような人を、自衛隊ばかりでなくて、海上保安庁あるいはその他関係行政機関等からもそれぞれの専門家を出したい、そう思っております。
  53. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっと突然ですけれども、一つ聞いておきたいのは、文民警察はどういう装備を持っていくかという話が先ほどのやりとりの中であったんですけれども、丸腰という話がちょっとあったんです。私の認識では、文民警察の場合は日本の警察官と同じですから、少なくとも短銃の装備は持っていくはずだと思うんですけれども、政府委員、わかれば答弁してください。
  54. 丹波實

    政府委員(丹波實君) PKOとの関連で文民警察が活躍いたしますのは、過去の例ではサイプラスの例、それからナミビアの例、今回が三度目になりますが、ピストルに類する武器の携行というものが認められておる。例えば、UNTACの例で申しますと、全部を調べたわけではございませんけれども、例えばオーストラリアから出ていっている警察、それからマレーシア、シンガポールなどの警察はピストル類似の小火器を携行しておるというふうに承知いたしております。
  55. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 わかりました。ちょっと疑問だったのでお聞きしました。  次は、先ほど外務大臣もおっしゃったUNTACに対する財政上の負担の問題であります。  確かに、日本は今一生懸命やっております。一二・四五%の枠ということもきちんと果たされようとしている。ただ、世界的なPKOの展開の現状を見、またUNTACが今財政支援を受けている状況を見ると、やはり我が国としてはこれはもう少し対応すべき課題ではないかなと思うわけでございます。  明石特別代表は三分の一というお言葉を参考人として何かおっしゃっているようですけれども、私ども、やはり三〇%程度は日本として負担する必要があるんではないか、それを国民に広く理解を求めても理解が得られるんじゃないかと思いますが、この点について見解をお伺いしたいと思います。
  56. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) UNTACの総経費については、明石代表が日本に来られたときにおおよそ二十四億ドルというふうなことを言われたのでございますが、現時点で、国連事務局の見積もりでは約二十三億ドルとなっておるというように聞いております。UNTACの本体が十七億ドル、そのうち立ち上がり経費が二億ドルがありますから十五億ドルということでしょう。復旧部門で六億ドル、そのうち難民の帰還部門で約一億ドル強、これは現在、国連総会で審議中でございます。  今の段階で何%がいいかというようなことはまだちょっと申し上げる段階じゃないと思いますが、日本として今までのいきさつその他も考えて、二丁五%では済まない、そう思っております。
  57. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つUNTACの問題でお聞きしておきます。  このUNTACというのは選挙が終了すれば任務が終了するわけでございます。ただ、カンボジアの現状を見、選挙後の政治情勢を考えると、まだ各派の間には根強い対立感情もございますし、予断は許されないと感じるわけでございます。政治的安定と健全な民主主義をつくるためにも、私どもは選挙後一定期間のUNTACの存続が必要ではないかと感じます。ただ、泥沼のような長期化は避けるべきであるとも思っております。  私どもの石田委員長がシアヌークSNC議長にお会いしたときに、シアヌーク議長は、カンボジアの指導者として五十年近くになる歴史的経験から、少なくとも三年間の継続を強く主張なさっておりました。それはそれとして、UNTACの参加に当たっては、我が国としてもこうした点を念頭に置かなければならないと考えておりますけれども、カンボジアを含めて東南アジア情勢には渡辺外務大臣は精通しているとお聞きしておりますし、この辺の点についてお聞かせ願えればありがたいと思います。
  58. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは今UNTACが一年半ぐらいで終了しようという段階ですから、そこから先のことまで言ってしまうのはいかがなものかと。ただ、シアヌークさんを初め、内部にはそれぞれ三割武器を持ったグループが全部いるわけですから、それが本当に新しい政府の安全な指揮下に入って騒ぎがないということになればもうそれで結構なんでしょう。しかしながら、まだ民主主義が定着していないというような点から、シアヌーク殿下などは少し落ちっくまで残ってもらいたいような希望が出ていることも事実ですが、どういうふうに日本がするかは、まだ法律もできていませんし、実際に出発したわけでもないし、そういうような全体の動きを見た上で、これは国連と相談の上で決められることになろうと存じます。
  59. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は視点を変えまして、現地で頑張っていらっしゃるNGOの方々の支援策についてお伺いいたします。  今回の訪問団もプノンペンで、現地で頑張っていらっしゃるNGOの方々約六十人と懇談の機会を得させていただきました。一番やはり意見が多かったのは、住居、水、食糧といったバックアップ態勢がないという中で、その厳しさをお訴えになっておられました。そういう状況ですからやはり体調を壊される方も多くて、また帰らざるを得ないというケースも出ておるようでございます。ただ、そういう状況の中でも、例えば自動車整備の指導とか医療とか、いわばきめ細かな支援に全力を挙げていらっしゃる。私は、いわば国の顔の見えるこういう、UNTACへの本格参加という問題がありますが、それは別としてこういうきめ細かいことをやっていらっしゃるNGOの方々を政府として全力で支えてあげることも大事だと感じております。  政府として現在かンボジアのNGOへ具体的にどういう支援を行っているのか、具体的かつ簡潔にお話をお伺いしたいと思います。
  60. 川上隆朗

    政府委員(川上隆朗君) お答え申し上げます。  カンボジアにおきましては、和平の達成の前からでございますけれども、御案内のように、民間援助団体、NGOが非常に活発な活動を行っているというふうに承知いたしておりまして、このようなNGOの活動に対しましては、政府として従来からNGOの補助金、事業補助金でございますけれども、こういうものを用いまして積極的に支援してまいった次第でございます。  例えば昨年の例をとって説明させていただきますれば、カンボジアでNGO四団体が行う八件のプロジェクトに対しまして、総額五千三百万円という補助金を出しておりますが、それは今御指摘ございました職業訓練事業、あるいは人材育成事業、医療事業、あるいは生活環境、これは井戸掘りでございますけれども、こういうものに対する補助金を供与いたしております。  さらに、ことしに入りまして先方政府がだんだん安定してきたということで、我々が持っております小規模無償制度というものを導入いたしまして、我が国の二つのNGO、これは今お話のあった日本国際ボランティアセンター、それから「二十四時間テレビ」チャリティ委員会といったようなところに対しまして、これは病院の事業、さらには病院の検査室の整備計画、それから自動車の整備技術といったものでございますけれども、これらに対しまして約一千万円近い援助も実施しておる次第でございます。  こういうことで、我々といたしましては、NGOとの連携強化というものは、御指摘のとおりきめの細かい援助ということで大変重要だというふうに考えておりまして、これからも優良なプロジェクトに対して適切に積極的に支援してまいりたい、こういうふうに考えております。
  61. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 確かにやっていらっしゃる面があるんですけれども、例えば現地で聞くとどうなのかというと、今、日赤からカンボジアの中でいわゆる出産技術というのが、出産技術というのは子供を取り上げる技術がまだ余りきちんとできていないということで、日赤からこのためにお医者さんと看護婦さんが派遣されているわけです。そういう方たちが言われたのは、例えば日本から分娩のための器具をカンボジアヘ持っていった、しかしこの器具が壊れてしまった。ところが、こういう壊れた場合は現地では直すことができないのだそうであります。  そこで、どういうことを考えたかというと、やっぱり現地の知恵だと思うんですけれども、いわゆる分娩器具、金属製じゃなくて木を使ってできないかということで、木を使った新たな分娩器具を自分たちでつくられた。それがなかなか好評で、じゃ今度はそれをいざ皆さんに教えたい、皆さんに指導したい、こう思っても、この器具をつくるだけのお金というまではなかなかない。なかなか現地のニーズに合ったきちんとしたことができないで悩んでいらっしゃる面があるのも事実であると思うんです。本当に細かい話ですけれども、一つは国の顔の見える部分、こうした細かいことが私はぜひ必要だと思います。  今、局長の方から今後も積極的に支援したいというお話があっておりました。私は、それならば、政府が六月にカンボジアの復興閣僚会議を開かれるわけですね、これは中長期的視野だと思うんですけれども、そういった際にぜひこういうNGOの方々の意見をそういう場にも反映するべきだろうと思うし、政府政府という援助だけではなくて、現地の人たちに直接かかわりあるようなものも、今一生懸命やっていらっしゃるNGOの方々から聞くことが大事だと思っております。  私は、復興会議にもぜひNGOを参加させてほしいと思うんですけれども、それとともに、会議をやる前にぜひ政府としてこういうNGOの意見を聞く場をきちんと設定して、総合的な援助を考えるときの一つの部門とするべきだと考えておりますが、これに対する見解をお伺いしておきたいと思います。
  62. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) ただいま政府委員から御答弁申し上げましたように、このカンボジアの復興、復旧を考える場合に、やはりNGOのお役割、我が国のNGOの方々も含めてでございますけれども、大変大事だと思います。そこで、六月に開催いたします復興会議、閣僚レベルの会議でございますが、その場にNGOの代表の方の参加をぜひ確保したいと思っております。  先般、準備会合をさせていただきまして、一応オブザーバーでお呼びしたらどうであろうかというようなお話でございました。しかし、その後本委員会におきましても、発言の機会を与えられるべきであるという御意見もございまして、そんなことも含めまして、どういう形で御参加いただくか。御参加いただくことは間違いないわけでございますけれども、どういう形で御参加いただくか、オブザーバーといいましても御発言の機会が全くないわけではございません。そういうことで、今カンボジアのプノンペンにCCCという対カンボジア協力委員会というのがございまして、NGOの連合体でございますけれども、そこと今連絡をとらせていただいております。  それから、会議の前にNGOの方々だけのお集まりをいただいて私ども御意見を伺うということも一つの御意見だろうと思います。参考にさせていただきます。
  63. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、NGOへの支援という問題とともに、やはり緊急的に必要なのは具体的に目で見える、いわば即効薬的な援助というのも要ると思います。これは特に人道上の面からどうするかという視点でございます。  前回この委員会で同僚の太田委員が、タイで義足をつくっていらっしゃるお医者さんの話をさせていただきました。カンボジアには地雷によって足を失われた方が十万人近くいらっしゃる。その人たちに割合簡単な方法で安く義足をつくっていこうという方法なんですけれども、基金をっくってやっていこうというようなことをやっている方もいらっしゃる。そういった人道的な支援というのが、NGOの援助とともに、一つ大きな中長期的な援助、UNTACの援助とともに別に要る問題だと私たちは考えているわけでございます。  特に私は、この緊急援助、即効薬的援助で最も大事なのは次の五点だと考えております。一つは、今言いました義足の提供の問題であります。次は、非常に医薬品が不足しております。これは別に高度な医薬品とは言いません、家庭常備薬程度の医薬品。もう一つは、水の問題が前から言われております。簡単な水のろ過器。もう一つは、それとともに水不足の問題がありますから給水車。もう一つは、今一生懸命行われている難民輸送用のバス。この五つが今至急要る問題だと思います。私ども公明党がカンボジアに行きましたときに、給水車と難民避難用のバスの手当てをカンボジア政府に申し入れましたら非常に喜ばれました。本当にありがたいという声が返ってまいりました。  本当に簡単にできることでございますけれども、少なくともこの五つについて政府が取り組む考えがあるのか、伺っておきたいと思います。
  64. 川上隆朗

    政府委員(川上隆朗君) お答え申し上げます。  カンボジアの国土の復旧、復興、それから国民生活の安定に積極的に貢献するというのが我々の基本的な姿勢でございますが、今御指摘のように人道的援助、緊急に必要とされる援助というもののニーズが非常にカンボジアには高いというのも我々の基本的な認識でございます。そういうことで、中期的な援助ニーズとともに、とりあえず何が必要かということについても、我々随時調査団を出してその把握に努めている段階でございますが、まず今までやったことについて申し上げれば、本年一月に医薬品、それからこれを輸送するための車両といったような晃のを日本赤十字社を通じまして供与した実績がございます。  御指摘の五つのうちの医薬品についてはそういう形でやったわけでございますが、水それから給水車のニーズがあるという御指摘、それから義足についても我々今までの調査団で調べてはきておりますけれども、この点についてももうちょっときちっと調べて、その調査に基づきましてできるだけの手当てを可能な限りやってまいりたいというふうに考えております。  まだこれからいろいろなニーズの把握、カンボジアの場合援助の迅速性ということとともに適正に行うという要請もございますので、その辺を両方両立させながら援助をやってまいりたいというふうに基本的に考えておる次第でございます。
  65. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、今度は中長期的、総合的な援助を検討する場合のことでございますけれども、これも現地を見た調査団から復興援助のあり方についてひとつ褒言をしたいと思っております。  先ほどもお話があっておりましたけれども、六月にカンボジアの復興会議が開かれる。そこでカンボジアに対する中長期的、総合的な援助が検討をなされるわけでございます。  ただその際に、ぜひ注意していただきたいと感じるのは何かといいますと、一つは、総理も外務大臣も御存じのとおり、今カンボジアの行政機構自体が残念ながら不備なこともありまして、今までの日本の援助の形式ですと、まず復興計画の策定を相手政府にやっていただくわけですね。そして正式な援助要請が出てくると、それが出てきたところで初めて日本の援助が決まるというのが通常のパターンなんですけれども、今のカンボジアの現状を見たときに、それをやっていたらいつ出てくるのかという、これは極めて厳しい問題があると私たちは感じております。ですから、日本が今までどおりの従来的な形式的な手続にこだわり過ぎてしまえば、この援助というものができなくなってしまうんじゃないかということも危惧いたしております。  ですから、これはもちろん内政干渉の問題があります。もちろんその点は注意していただきたいんですけれども、やはりカンボジアの援助を考える場合は、相手側の立場に立って、例えば復興計画の立案とか、細かい話ですけれども援助要請文書の作成方法なんかも、ある意味ではこの手続の進め方も日本が教えてあげるというようなことも必要になってまいると思います。ある意味ではこういう親切な、今までの日本の援助と変わったやり方も頭の中にぜひ入れていただいてやっていただきたいと思っておるんですけれども、これに対する考え方を聞いておきたいと思います。
  66. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 確かに御指摘のとおりで、普通のやり方をすると一年も二年もかかっちゃって、もう本当に遅いということに必ず私はなると思うんですよ。したがって、これは超法規というわけにはいきませんが、いきませんよ、それは。いきませんが、できるだけ親切にやはりやってやることが非常に重要ではないか、そう思っておりますから、そういう考えで進めさせていただきます。
  67. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は、カンボジアの大使館の問題でございます。  私どもの党も、今川大使初めカンボジアで日本大使館の方々には本当にお世話になりました。たまたまあの時期社会党からも調査団が出て、連合さんもたしか調査団を出されてどっと錯綜したものですから、大使館としては非常に御苦労なさったというような新聞記事が出ていたことも事実でございます。  それだけの問題でなくて、これから本当にカンボジアに対する復興支援活動が本格的に始まる、また私どもとしてはぜひこの法案を通してUNTACへの本格参加ということを考えておるんですけれども、そういうUNTACの活動が始まっていく、もちろん先ほど指摘したNGOの方々初め民間の方々も支援をしていただく、そういう状況になっていったときに、幾ら大使館の方々が献身的な努力をしていただいても現在の体制、たしか今八人だったと思いますけれども、これで対応できるかというと非常にこれは厳しい面があると思います。また、ここにUNTACが展開するということであれば、防衛駐在官の問題もやはり頭の中に入れて検討しなければいけない問題であると思っております。  外務大臣御自身も、このカンボジア大使館の問題、これでいいのかというようなことをおっしゃったとお聞きしておりますし、やはり普通の大使館の規模と別の側面をいろいろ持つわけですから、そういった意味で抜本的強化が必要だと私は思っておるんですけれども、この点についてお考えがあればお聞きしておきたいと思います。
  68. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 現在の大使館では、ホテルじゃだめですから、公邸とか事務所はホテルの中に今あるそうですよ、あることは。
  69. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 カンボジアのホテルですか。
  70. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ホテルの中に。ですから、今移転する大使館の事務所と公邸は物色中だというように報告を受けております。それから館員の宿舎とかなんかは、もしなければプレハブでも何でも持っていって建てたらいいんじゃないかと私は言っているんですが、そこは多少臨機応変にやらなきゃ、人をふやすわけにもいかない。  参考までに言うと、アメリカが九名とそれから武官が四名とか言っていました。それからフランスが、自分が宗主国だというようなところもあって二十二名、豪州が七名、イギリスが七名、ドイツが四名、日本が八名ということなんでしょうが、これはどれくらい仕事の量があるか、これからの協力の仕方ですが、必要に応じてやりくりしても安定すればそんなに要らぬわけですから、当初のうちだろうと思いますので、それは柔軟に対処していきたいと考えています。
  71. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひこういった面、私たちも本当にお世話になりましたし、ぜひこういう面は対応を緊急の場合は考えていただきたいと思うんです、本当に御苦労なさっていますから。  最後に、総理にお伺いをいたしたいと思います。  先ほども総理からお話がありましたけれども、私たちカンボジア訪問団の提言は、既に石田委員長から総理に直接お渡しをしてあり、ぜひ真剣な御検討をお願いしたいと思っております。  私どもは、カンボジアの支援を考えるときに三つの視点がいずれも欠けてはならないと思っております。三つの視点とは何か。一つは、やっぱり現在展開しているUNTACにどれだけ本格的に協力できるか、この視点を失ってはいけない。また、きめ細かな援助に取り組まれているNGOの方々にどれだけ力がかせるか。日本として民間に力がかせるのか。三つ目に、中長期的視野に立った我が国の復興援助をどうするか。支援を考えるときにこの三つを立て分けながら考えていかなければならないと考えております。特に私が心配しておりますのは、この中で一番緊急性がありながらいまだ体制ができていないのがUNTACへの協力の問題だと感じております。  先ほど総理もおっしゃいました、カンボジアは私たちアジアの一員でございます。そしてまた、第二次世界大戦中に日本が迷惑をかけた国の一つでもございます。その国が、十数年続いた内戦がようやく終わって、何とか平和をつくりたい、助けてくれ、そう今悲鳴を上げているわけでございます。その声にこたえて、国連のもと、多くの国がUNTACに参加している。それなのに我が国が、社会党さんには申しわけありませんけれども、文民だ民生だとこだわってしまえば、私は実質的にはほとんど何もできないと思うのであります。  私どもは、このPKO法案をきちんと成立させることによって、憲法の今のきちんとした範囲内で自衛隊の能力、経験を平和的に活用することが、何度も繰り返しますけれども一番大事だと確信しております。我が党の提言も含めて、カンボジア支援に対する総理の決意をもう一度お伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) カンボジアの事態に対して秩が国としてなすべきことを三つの視点からただいま御指摘になられました。これは、先般石田委員長から承りました公明党の提言の御趣旨と軌を一にしているものでございますけれども、確かに第一のUNTACへの協力、これが当面一番の差し迫った問題であると思います。  これは、いわば十三年間の戦争が終わって、生き死にの中から人々がようやく生への希望を生み出しつつある、そういう状態の中で平和を確立すること、そして戦争はやめましても地雷というものもございますし、それから自分の定着するところはないわけでございますから、そこのところがまず一番の喫緊の問題である。これは命の問題でございますから、それはまさにそのとおりであると思います。それがただいま御審議いただいております法案の意図するところでございます。  次に、NGOへの応援につきましては、先般も御提言の中で、その活動の財政面及び現地で活動する人々への後方支援体制をしっかりせよ。先ほど外務大臣からお答えいたしましたとおりでございます。  それから最後に、中長期的な復興の援助でございますが、これはおっしゃいますように、やはり一つの国づくりが行われている。政府そのものがしっかりしていて国をつくっているんではなくて、一緒にみんながしなければならないというのが私は本当のところだろうと思いますので、したがって中長期的な復興の援助につきましても、向こうの立場になった気持ちで、ツケが来ないから応援はいたしませんというようなことではこれは仕事ができないだろう、やっぱりここはこうするかといったような、中へ入って相談を授けながら、意見を交換しながらといったような心がけでの中長期的な援助が必要ではないか、三つの視点についてそのように感じております。  特に、当面お許しを得て政府が、これは国会のお許しかないとできませんのは第一の問題でありますので、ひとつ御承認をお願いいたしたいと考えております。
  73. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  74. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十一分開会
  75. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、三案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  76. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 私は、まず今のPKOをめぐる政党間の精力的な党首クラスの会談の姿に対する総理の御所見と、そしてまた法案成立への思いについて伺ってまいりたいと思います。  それは、ここ数日間、このPKO法案の取り扱いをめぐりまして、国会での活発な論議とともに、与野党間なかんずく野党の中でも公、社、あるいは社、民、あるいは公、民、連合間で、人的な国際貢献は必要であるとの、いわば合意点を見出そうと必死の党首会談が相次いでいるわけであります。  この姿自体は、国民に対して政治に責任を持つ政党と、そしてまた国会PKO法案にも真剣に取り組んでいる姿であり、私は大変いいことではないかと思っております。  そこで、このような状況に対する総理の御所見と、また法案成立に向かっての御決意のほどをまず伺っておきたいと思います。
  77. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) しばしば申し上げておりますとおりの環境の中で、この法案国会に御提出をいたしまして、かなり長いこと今日まで御審議を願っておるところでございます。衆議院におかれましては修正議決をされて、当院におかれまして御審議をお願いして今日に及んでいるわけでございます。  そこで、この法案の内容をめぐりまして、各党、各会派の間でいろいろな御意見が、当然のことながらおありになられまして、その間でこの法案をさらに修正すべきではないかといったような御議論がございますことは、私どももよく承知をいたしております。政府といたしましては、御提案をいたしましたものをもって最善と信じておりますけれども、もとより、立法府の御意思がまた多数で別途に形成されるということであれば、当然それは尊重せられなければならないことだというふうに考えております。  したがいまして、ただいままでのところ、このような修正についての各党各会派間の御討議に対しては、政府はもとよりでございますが、与党としても直接に関与をする、参画をするというような形をとっておりません。  これはさきほど申しましたようなことから、当然そうなるのであろうと思いますが、したがいまして各党各会派の間で、院としてのコンセンサスを得るためにいろいろな御努力がなされているということ、それによってまたある意味ではこういう御審議を通じて、あわせまして国民の間にこの法案についての理解が深まるというような、そういうような結果も生んでおるかと存じます。  いずれにいたしましても、そのような各党各会派間の首脳部による御折衝の中から、院の御意思か結成されるということでございますれば、それは政府といたしましては御提案を最善と心得ておりますけれども、しかし院の多数の御意思が結成されるということであれば、それに対してはもとより政府としては謙虚にそれを承るという態度でなければならないとこう存じておりますけれども、このような御折衝、御討議について、政府・与党としては直接にそれに参画をするといったようなことにはなっておらないものというふうに考えております。
  78. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 非常に慎重な御答弁であったわけでございますが、この党首クラスの会談とともに、報道によりますと強行採決の可能性であるとかあるいは物理的抵抗の文字が躍っているわけです。  私は、国会として国民に説明がつかないような、いわゆる旧態依然とした行動というものは断じてあってはならない、このように思うわけです。このような行動がなされないようにするためへの総理の強力な指導力を求めてまいりたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの御質問の主たる部分は、国会あるいは本院の運営についての御意見であるというふうに承りますので、それにつきまして政府として何か申し上げますことは適当なことではないと存じます。
  80. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 それでは、この点はこの程度にいたします。  次に、いろいろこのPKO法案に反対の方々の要請書でありますとか、あるいははがきとかいろいろあります。二、三日前に来た中で、いまだに「自衛隊海外派遣に反対します、近隣の国の人々を武力で威嚇するような国にしないでください」と、こうなっているわけなんです。あるいはまた、あるところから来た封書によりますと、その封書の下の方には「教え子を再び戦場に送るな」と、はっきりと印刷がされているわけであります。  この内容を見てすぐに感ずる点は、やはりPKO法案が上程されてから表現が全く変わってきていないという点にまずは着目せざるを得ないわけですけれども、果たして今まで法案をこういう方々は理解しようとしても理解できなかったためにこういったことが続いているのか。もしそうだとすれば、やはり政府国民に対するPR不足は否めないんじゃないかと私は思うわけです。あるいは、こういうことが単なるPKO反対だけから来る感情的な背景によるものなのか、いずれにしてもここで言っている「近隣の国の人々を武力で威嚇するような国」を目指すのがPKOなのかどうか、改めて政府より明確に答弁をしておいていただきたい、このように思います。
  81. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) もうこれは、名前の示すとおり国際貢献への協力隊でございますから、まして戦争が終わった後片づけであって、それは平和をつくる最初の仕事なんです。そういうことをよくわからせるためのPRが足らないと言われればまだ足らないかもしれませんが、かなりわかってきたということも事実でございます。
  82. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 一部に言われているところの、まず自衛隊ありきというこの宣伝とか主張に対して、政府は本当にそれを念頭に置いて本法案を提出されたのか。あるいは今まで種々の論議で私たちは理解し得たわけでありますけれども、いわゆるPKOの実態からそうならざるを得なかったのかについて、もう一度経過的に、ここでちょっともう一回交通整理していかなきゃならないと思いますので、御答弁をいただきたいと思います。
  83. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  今先生自衛隊派遣が先にありきという御指摘がございましたけれども、この法案の作成に当たりましてそういった点をまさに頭に描いてつくったものじゃ全くございません。やはりPKOの実体、先ほど外務大臣から御指摘がございましたけれども、それに照らしまして、PKOに適切かつ迅速に協力我が国協力を実効あるものにするためには、まさに自衛隊の技能、経験、組織的な機能を活用することが適当であるというふうに判断いたした次第でございます。  特に、これは累次御指摘させていただいておりますPKOの実体というのを見ますと、まさに停戦監視団とかあるいはPKOの中心的な役割を占めますPKFを見ましても、これはやはり国際法上の軍人のステータスを持っている人が活動しておられるというのが実態でございます。同時に、この法案に基づきますPKO活動のほかに人道的な国際救援活動にいたしましても、これも繰り返し御指摘させていただいておりますけれども、やはり自活のできるそういう組織的な力というのが必要であるというのが実態でございます。  そういう実態に着目いたしますと、やはりこのPKO協力ということに相なりますと、法案をつくるというときにはまさにこれは自衛隊の組織的な機能を活用することが適切である、そういう順番の思考のもとでつくっているのがこの法案でございます。
  84. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 大変くどいようでありますが、次の点についてももう一度、けさほどから論議がありましたけれども確認しておきたいと思います。  一部で非軍事、民生、文民による貢献ということが盛んに強調されているわけですけれども、果たせるかなその実態は現実PKO活動では人為的にも体制的にも非常に制約が多いわけで、むしろ逆に危険性すら増大しかねないという点で憂慮せざるを得ないわけです。これは今までもいろんな論議で出てきております。このことに関して、政府として現実にどのような点が挙げられるかという問題です。  先ほど我が党の木庭委員からも指摘されておりました私どもの石田委員長の帰国後の印象の中で、摂氏四十度というような猛暑のもとで果たして民間の方々が耐えられるかどうかという問題が指摘されておりました。気候とか風土にもいわゆる耐えられるという保障が何らない中で積極的に動き活動するという、これはもう極めて困難と思うわけでございます。  そこで、要するに政府として非軍事、民生、文民だけで十分な国際貢献ができるという認識なのかどうか、また国連としてもこの分野に限定した人的貢献を望んでいるということなのかどうか、もう一度確認をしておいていただきたいと思います。
  85. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは民間でできればどこの国でも民間を出すんです。それは民間ではやりづらいことでもありますから参加国はみんな軍人を中心に出している。この現実が私は如実に物語っておるんだろう、さように思います。  したがって、いろいろ考えても、やはり自衛隊を中心に考えた方が非常に万事やりやすいし、自衛隊の方々にはお気の毒と言ってはなんですが、御苦労なことでございますが、やはりこれは各国ともそういうことで協力をしていただいておるので御協力をいただきたいということで話をしておるのでございます。
  86. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 確認事項としてもう一点だけあります。  午前中の質疑でもってPKOに対するアジア諸国の懸念問題、外務大臣もいろいろ御答弁されておったわけですが、この種の問題については歴史的経緯を踏まえて慎重な上にも慎重な対応というものが必要である、このように思います。政府レベルの会談で理解が得られたから大丈夫という問題ではむしろないんじゃないか。国民レベルにおいても理解が得られるように努力すべきである、このように思います。  一度他民族に与えた不信というものは、何十年かかっても真摯の努力というものがなければ払拭することはできない。これは世界の歴史が示すところでもあるわけです。諸国の懸念を払拭するための努力を続けなければならないという問題で、そうでないと我が国の平和協力業務を行うこと自体がかえって混乱を招くことになってしまう。業務に参加する自衛官が現地で大変につらい思いをするわけでございますが、総理及び防衛庁長官の御認識をここで伺っておきたいと思います。
  87. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員の今御指摘の点は、基本的には私も同感でございます。私どもがこの平和業務に従事する場合には、やはり国民的な理解と、それからまた周辺国その他関係国からも歓迎される機能、行動でなければならないことは当然でございます。  そういった意味でこれからも努力を重ねていかなければならないと存じますが、しかし、たびたび本院で議論されておりまして今さら申し上げる必要はございませんけれども、私どももこの点は自衛隊が、要するに自衛隊の本質は何かというところからスタートしている議論でございますから、自衛隊はあくまでも日本の国が攻められた場合にのみ個別の自衛権に基づいて守るんだというこの建前はいささかも変わりないわけでありまして、その機能、組織を持った自衛隊、それを憲法に抵触しないそういう平和的な業務に平和的行動で参加するということが本件の主題でございますから、これはあくまでも私どもも粘り強く理解を求めていかなければならないし、本院の理解も得たい、こう思っております。
  88. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 PKOはいいことだからそのために派遣するのは構わないというだけではやっぱり済まされないと私は思いますし、今の御答弁で理解いたしますけれども、素朴なアジア諸国のやはり懸念があるということです。  この前、私実は本会議の質問のときにも触れたわけですけれども、というのはここで総理に対して一つ提案を行いたいと思いますが、かつて我が国戦争の惨禍をもたらしたアジア諸国の首脳に対して、全部でない、要するにその中の幾つかということから始まるかと思いますけれども、総理が親書を送って本法案の真意について誠意をもって説明するということ。これに対して、この件は既にクリアしてます、あるいはまた行くのは一部分だから今はこれはもう大丈夫だというようなことは、これはやっぱりもう通用しないんじゃないだろうかと思います。何らかの具体的な努力を要請したいと思うわけですけれども、いま一度総理の御答弁をいただきたいと思います。
  89. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 総理答弁の前に一言私から申し上げます。  もう何が一番わかりやすいかということは、行ってみることが一番わかりやすいんです。それはちょうどペルシャ湾に機雷が捨てられて、それで海上自衛隊を出すか出さないかと国内で大騒ぎがありました。ありましたけれども、帰ってきてみたら大変な評価を受けておった。あれもともかく領海まで入っているわけですから、領海、領空、領土というのは大体主権の及ぶところでございまして、やはりそれは日本の軍艦がペルシャ湾に出動といったら大騒ぎするでしょうが、それは機雷を除去に行くんだと。  機雷の除去と地雷の除去と似たり寄ったりなんです、実際は。実際の問題といたしまして、海に捨てたか陸に捨てたかというような話なんですから、ですからそれによって第三者がけがをしないようにやってやろうと。まして機雷のようなものは民間の人にやってもらうといったってこれはできるはずがないんですよ。かなりの訓練を受けた人でなければならない。たまたま自衛隊法律の中に、要するに機雷を撤去することができるということがあるからそれは行くんだ、行けるんだと。いや、あれは日本の近海のことを言っているんじゃないか、遠いところは言ってないじゃないか。それは言ってなかったかどうか立法の趣旨は知りませんが、いずれにいたしましても行った結果がもう一目でわかる。  だから、今回やはり日本自衛隊が行って救援活動、いろんな面で国際社会にわかるような形で物を運んでやったりあるいは医療のことで従事したりいろんなことをやってやれば、本当にこれはもう危なくないことよくわかっているわけですから、各国の軍隊がみんな来ているわけですから。その中で、先ほども言いましたが、中国などはこれは初めて中国の軍隊が国際社会において平和維持活動に従事できる、このように中国も国際のひのき舞台に出られる、しかも人助けができるんだということで大変な使命感と誇りを持って出ていることが「解放軍報」に載っているわけです、四月の。  それと同じことであって、やはり絵で見せることが一番私はわかりやすい。幾ら言葉で説明するよりもやってみせることが一番いいと。したがって、ぜひとも法案を上げていただいて、それをもう如実に見せていただくこと、それによって国民が今度は文句をいっぱい言うようになってだめだというなら、その次はまた別の話でしょうが、まず試しにやっていただきたいと思うんです。
  90. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 いや、私は総理に伺っているんであって、今おっしゃったことは、御答弁いただいたことは大変ありがたいけれども、今のことは全部わかっていますよ。ここにいらっしゃる委員の方も全部わかっています、今のことは。時間がないんだ、時間が、大臣。もったいない、この時間は。わかり切っていることじゃないですか。総理どうですか。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、外務大臣の言われようとしましたことは、いわゆるPKOというようなものはそうすべての人が国の内外でよく理解しておるわけではございませんから、実際に行ってみたときにはわかってくれる要素が多いんではないか、こういう趣旨と思います。  そのこともございますけれども、しかしいろんな意味で懸念の表明もございます、ニュアンスはいろいろございますけれども。それに対しては、やはりこの法律が成立いたしましたその運営に当たりましては、表明されたそのような懸念あるいは意見というものを十分心がけて私ども運営をいたさなきゃならないと考えておりますことが一つ。  それから、成立いたしました際には、その内容につきまして改めて在外の公館に連絡をいたし、政府の運用の意図についても誤解なきようにいたしておきたいと考えております。
  92. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 親書をお出しになるかどうかということに対しての御答弁はなかったわけでございますが、これ本会議と合わせてきょうで二度目ですけれども、御答弁がこの点に関してはないということで、残念ですが次に参ります。  この法律案の運用についてでありますが、今回の法律案が成立した場合、政府は一体どの程度の国際協力業務が可能である、このように考えておられるのか。第十八条では、従事する者の総数が二千人と、このように定められているわけですけれども、これまでの議論の中で、例えば輸送等に関する現実の能力の問題等も指摘をされている。基本的な認識として、この法案が成立すれば世界じゅうどこへでも行ける体制、いつでもどこへでもと言った方がいいかもわかりません。これができると考えておられるのか、あるいは法案成立後になってしかるべき体制をつくろうと考えておられるのか、この点についてお考えを伺っておきたいと思います。
  93. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 別に法律ではどこそこという限定をしているわけじゃありませんから、国連から要請があって、しかも受け入れ国の同意があるという場合にはどこへでも行けると、一応はそうなっております。
  94. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 例えば、一定の地域に対する貢献ということで、ほかのところへは人数であるとか、あるいは装備であるとか、そういう関係国際貢献ができないというような場合が出てくるかもわからない。そこに何といいますか限界を感ぜざるを得ないような気もするわけですけれども。  関連して伺いますが、考え方としては、国際貢献といっても我が国はアジアの一員である、一国であるということからまず近い地域、今カンボジアのことはちょっとこっちへ外しておいていただきたいと思いますが、いわゆるアジア・太平洋地域には一義的に責任を持つべきだという見方もあろうし、また我が国にとって非常に重要な影響を持つ地域、例えば資源輸入国であるとか、あるいは貿易対象国とか、こういったところにまず派遣すべきではないかという見方もあるようでございます。これは仮定の問題で、非常に答えにくいかもしれませんが、何らかのお考えがあればもう一度伺っておきたいと思います。
  95. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはもともと人道的なものが中心になるわけでございますから、何かそれによって利害関係者が特にあるから行くんだというようなことでない方がいいんじゃないか。やはり国連から話があって、そういう場合は当然に外務大臣はその状況判断をいたしまして、これは行ってもらった方がいいかどうかといういろんな四囲の状況を見ながら、総理大臣に進言をして閣議で決定を得る、そして相手国の同意も得る、こういうようなことになっております。
  96. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 確かに人道的問題でもあり、またボランティアとしての性格を持つPKOであるならば、私は決してここで一気に枠を拡大するべきなんて毛頭言ってないわけで、要するにキャパシティーの点で人員とか装備に限界がありということかと思うわけです。しかし、これは今後の重要な検討課題でもあるということで、きょうのところは次に進んでまいりたいと思います。  私は、PKO活動に参加する隊員の訓練とともに、非常に重要なのが現地の情報把握の問題だと思います。平和協力隊を派遣するに当たっては多くの情報が必要になりますけれども、政府としてはこの点に関してどのように対応をされるつもりなのか、まず伺いたいと思います。
  97. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  先生まさに御指摘のとおり、具体的にどこで国際連合のニーズに応じまして協力するかということを決めるに当たりましては、現地の情報把握ということが極めて重要と認識いたしております。特にこの法案の枠組みにのっとる一例でございますけれども、例えば手当という仕組みがございます、あるいは賞じゅつ金の制度も考えないといけない。そういったことを考えるに当たりまして、やはり現地がどういう状況になっているか、まずそれを把握しないことには検討が始まらないわけでございます。  そういう意味におきまして、随時、的確な情報、特に場合によっては先遣隊あるいは調査団を派遣するなり、また地域にもよるでしょうけれども、現地に大使館があるようなところではその大使館の機能をフルに発揮する等々、あらゆる手段を講じまして情報の収集にこたえていかないといけない、そういうふうにいたく認識しておる次第でございます。
  98. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 私が答弁に立っても同じぐらいのことは言えるような答弁だったと思うんですが。  自衛隊行動に当たってはかなりの情報が必要である、このように思います。どういった内容の情報がどういう時点で必要と考えておられるか。この辺について、部隊が現実に作戦する場合、すなわち防衛活動をする場合はどのような情報が一般的に必要なのか。それからまた、平和協力業務なり国際緊急援助活動をする場合にはどうなのか。これは防衛庁長官だと思いますが、お答えいただきたい。
  99. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員、防衛出動等の場合の基礎になる情報はどうかというお尋ねとPKOの場合と二つお尋ねいただきましたが、前者につきましては、もう常に私どもは、やはり専守防衛の立場でありますれば、それだけに余計情報をキャッチすることが必要でございます。我が国単独で情報も得ておりますが、しかし単独では得られません場合も多うございますから、これは日米安保条約に基づく機能、こういうものをフルに活用いたします。また、客観的にも各周辺国あるいは関係国等々から情報を収集するということで、万般怠りなくこの点は最重点に考えていくべきものと考えております。抽象的で恐縮でございますが。  そして第二点の、PKO活動開始までの時点で具体的にどのような調査が必要であるかという点は、ただいま野村室長が言われたように、抽象的にはそのようなことになると思います。具体的にそれじゃどうかといえば、要請がありました場合、例えばカンボジアの問題が今議論されておりますが、これはもう派遣先国の生活や風俗とか習慣、あるいは地理、気象、利用可能な交通輸送のインフラの状況とか、あるいは治安状況、また現在までの歴史、文化等々非常に広範にわたると存じます。  また、実際の任務が与えられたPKO活動を行うに際しましても、その地域の周辺住民の状況でありますとか活動場所周辺の自然的な地形的な条件でありますとか、またカンボジアでございますと地雷が広範に埋められておるというような状況もございますが、これも派遣地域でどのような密度であるのかとか、いろいろなことを事前に調査して的確に処理していく必要があろうかと存じております。
  100. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 今、長官が挙げられたいろいろな項目、別にそれを補うつもりで別の項目を言おうなんという気持ちはないんですけれども、また言ったからといってまだまだもっとたくさんあるかもしれない。だから、それで私は今、どちらかと言えば後者の方を重視して聞いたわけですね、PKOの方を。  PKOの場合はプラスアルファとしていろんなものがあるわけで、例えば土地のかたさであるとかあるいは地質そのもの。目的地に行く手段ですね、キャタピラなのかタイヤでいいのか。こうやっていくとたくさん出てくるわけで、建物がどの程度点在をしているのかしていないのか。あるいは道路とか橋とか樹木の状況はどうなっているのか。天候、水は言うに及ばず、食糧そのものをどのような形で調達し得るのかとか住民の実態、さっきもおっしゃっていたけれどもどうなっているか。あるいは危険物ですね、例えば原子力発電所があるいは行く先によってはあるかもしれない。石油とかガソリンの保管状況がどうなっているかとか、いろいろあるわけです。そういったことも、実は内々検討はしておりますということなのかどうなのか。イエスかノーかだけで結構ですけれども。
  101. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) まだ具体的な任務の要請がございませんから、自衛隊としてはまだやっておりません。
  102. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 正直にお答えをいただいたわけですが、情報把握の問題は派遣された隊員がもうすぐにぶつかる問題だし、それから時によっては死活的な問題とも考えられるわけで、一般的共通的なものとしては、先ほども触れておられましたが地形とか地質とか気候とか気象ですね。あるいは民族、宗教、言語、政治体制。このほかにも社会的な習慣、食生活、儀礼、タブーなんかもあります。  大変難しい問題がたくさんあるわけですが、特殊固有なものとしてはどうかというと、混乱が生じている背景自体を理解するために、やはり歴史的な観点からの紛争原因の考察であるとか、あるいは双方の主張がどういうふうになっているかとか、これらの情報が手元にないと、どんな装備を持っていくべきかという非常に基本的な問題も解決し得ないと私は思うわけです。そういったことも全部含めまして、もう一度長官の御答弁をいただきたいと思います。
  103. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員のもう御指摘のとおりでございまして、そういった項目について我々は調査し、それを知った上で準備をし行動しなければならないと存じますけれども、今までのところUNTACの情報あるいは外務省を通じての情報等々、概括的な情報は得ておりますが、具体的な任務が与えられる場合は、今先生めお話しのような状況把握はこれはもう随時必要でございます。  そしてなお、私も当委員会で申し上げましたけれども、この法律を成立させていただくならば、公布を待たないで、そういったいろいろな視点を踏まえて直ちに調査団等を出して、そして任務遂行に遺漏のないようにしたい、こう存じております。
  104. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 ぜひそのような、もし成立した暁にはということは当然ありますけれども、調査の方を手がけていただければと、こんなふうに私も実は思うわけで、例えば一例を挙げると通信能力。これは通信能力はあるけれども、しかしながら日本の通信機を現地に行ってすぐ使えるかどうかという問題は、周波数の問題とかあるいは割り当ての問題とかいろいろあるわけだし、それから湾岸戦争のときには、車にしても、もう砂でもってフィルターが詰まってしまってどうにもならない。何遍も取りかえたというふうに聞いています。これはもちろん多国籍軍の場合です。  それから、温度とか湿度、気圧問題、こういったものでハイテク技術がもう本当にほとんど通用しなくなってしまったというような話も聞いていますし、したがってこのような情報というものは片手間ではやっぱり集められないと私は思います。  そこで、今長官が言われたように、できるだけ早い機会にそのような調査にも乗り出しますというふうな御答弁ですけれども、そういった今までずっと述べてきた収集とか整理とか分析とか保管ですね、こういったことはどこが責任を持って行うのか、これを明確にしていかなければならないと私は思います。  一つ一つ押さえて聞いていこうかと思いましたが、時間の関係でこれを申し上げておきまして、ですから私は間違っても旅行案内所的な発想ではならないと私は思いますよ、これは。今までも述べたように、相当量の情報を持っている米軍ですら、あの湾岸戦争のときにはもう本当に現地で驚いたというわけですから、こういった調査の問題については、政府として責任を持ってきちっとこの整備をすることをこの機会に約束をすべきだと私は思います。  現在ある行政機関の情報は、総合的にもうどんどん使えるような体制を組むべきじゃないか。特に外務省が保有している情報が当然重要なものとは思います。思いますけれども、当委員会でも問題になったように外務省のこの資料提出の姿勢が非常に消極的な面が目立つ、私もそのように実は思うわけで、これは外務大臣かと思いますが、本件に関してぜひとも前向きの大臣御答弁をいただきたいと思います。
  105. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 外務省も何せ人数に限りがございます。ございますので、確実な情報をどれだけ持っているかと言われましても、自信を持って言えるのにはまだもう少し人数を充実してもらわなきゃならぬと思いますが、もちろん外務省は専門的にいろんなところと情報連絡をとっております。おりますけれども、他国ほどスパイがましいようなことは日本の外務省はやっておりませんからね。だからどうしても陰の情報をとるという点ではまだ少し努力はする必要があるだろう、そう思っております。
  106. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 午後のこの時間ですから、大臣もちょっと私の質問を率直に受け止めていらっしゃらないような気がするんです。  要するに、私がお聞きしたのは外務省が今現在持っている、そういうことですよ。人数がおられるおられないという問題じゃない。要するに現在あるその資料を例にして言っているわけですが、今までその出し方が消極的なところが非常に多かったように私は思う。いろんな情報関係質疑を今展開してきましたけれども、やはりそういった意味ではむしろ積極的な前向きな姿勢で、一国のそういうPKOの参加ということにかかわる問題ですから、むしろ前向きな答弁がいただけるかなとこういうふうに思ったわけなんです。  この問題は、したがって今ここで一問一答でやるわけにいきません。このいわゆる情報、資料、こういったものの提出問題、これはやっぱり場所を改めてやらなければならない問題かと思いますけれども、どうですか、総理、今の資料提出の問題、情報の問題について、そんな深いものじゃなくてもいいと思いますよ、今私が言っているのは。手持ちのいろいろの情報があるはずですね。それを何かこう消極的で出し惜しむというふうなことじゃなしに、積極的に、どちらかというとオープンにむしろなさるべきじゃないかと、ただこういう簡単なことを聞いているわけです。
  107. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生、当委員会での御審議との関連での資料の要求につきまして、各党の先生方から大変膨大な資料の要求がございまして、私たち、国連との関係で例えばどうしてもお出しできないような資料は別といたしまして、それは時間のおくれやその他で御不満はあったかと思いますけれども、本当に担当官によっては徹夜をしながら処理してきたつもりでございまして、不備なところはもっと今後とも必ず改善してまいりたいと思います。誠意を持って対応してきたつもりでございますけれども、今後とも本当に努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  108. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 ありがとうございます。そのような誠心誠意、非常に夜中を徹してやられた職員の方々もおられるわけですから、決して私たちはうがった見方をするのでなしに、極力そのようなプラスになるということであるならば情報提供にひとつ努力をしていただきたい、このように思います。  例えば、ちょっとしたあやふやな情報であったとしても、あるいは断片的な情報であったとしても、結構これが役に立つ場合があるわけなんですね。ですから、先ほど長官がおっしゃったように、新しいところというのは本当にいろんなことを一歩からそれこそ調査していかなきゃならないということをおっしゃったように、ちょっとこれは危ないかな、あやふやかな、不確かかなというようなことであっても、断片的であっても、そのもたらされた情報は何らかのまた役に立っていくんじゃないか、こんなふうに思います。  だから、一般の海外旅行と違っているところはもちろん当然なんですけれども、いわゆる緊急的な派遣において、しかもある程度長期間にわたる場合。ちょっと視点を変えますけれども、例えば予防接種ですね、予防接種。こういったことが必要な場合には一体どうするか。これは国際緊急援助隊の場合も同様であると思いますけれども、この点を御説明いただきたい。特に第一陣ですね、今回の任務は長期に及ぶものですから、従来の緊急事態の場合、すなわち短期間のものとは異なるわけで、できましたら政府答弁の法的根拠もあわせてここで確認をしておきたいと思います。
  109. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  協力隊員の予防接種も一つの例でございますが、具体的に派遣の態様にもよるのであろうとは思いますけれども、私はやはり要員の健康管理と申しますか、そういった点に十二分の配慮をするというのは当然のことであるというふうに考えております。  一般論ということで恐縮でございますけれども、そういった現地の情勢、先ほどの情報把握といった御指摘の点にも関連するわけでございますが、まさに健康管理その他につきましてできる限り適切に対応していくようにいたしたい、そういうふうに思っております。
  110. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 もう少し具体性のある御答弁がなと実は思ってはいたんですが、いいです。  情報把握の問題は、先ほど述べたように派遣される隊員の死活にかかわる問題であるだけに、重ねてひとつ遺漏なきように万全を期されることを防衛庁長官に特に要望をしておきたいと思います。  それから、隊員の処遇とかあるいは名誉については今までいろいろとこれまた論議が交わされておりましたが、協力隊がその任務を遂行するに当たっては隊員一人一人が勇気と忍耐を持って行動しなければならないわけですけれども、そのためには、万一不幸にも殉職あるいは障害を受ける状態となった場合に十分な補償がなされなければならないということは言うまでもないことです。  従来、問題となっていた賞じゅつ金制度、これは自衛官と地方公務員とのアンバランスの問題ですね。これは政府努力された結果一定の是正が行われた、このように承知しているわけですけれども、改めてこの全般的な補償の内容、これをちょっと伺っておきたいと思います。
  111. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  先生、今、全般的なということでございます。協力隊員が不幸にして死亡等をされた場合の補償につきましては、協力隊員につきまして国家公務員災害補償法による補償が行われます。自衛隊派遣隊員でございますと、自衛隊員につきましてはこの法案の十二条第八項、それから十三条の第三項でございますけれども、防衛庁職員給与法によって災害補償が行われるわけでございますが、その法律国家公務員災害補償法を準用い火しておりますので、したがいまして自衛隊員につきましても協力隊員と全く同様の補償が行われることになっております。  それから、先ほど先生ちょっと御指摘がございましたが、やはり行く地域によりましては、政情等が非常に不安定なところでございますので、賞しゅっ金の制度もこれは必要に応じ設けなければならないというふうに考えておりまして、今鋭意検討を進めているところでございます。  それが一般的な内容でございます。
  112. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 次に、平和協力手当ですけれども、これはそれぞれの業務の実態に着目して決めるというふうになっておりますが、具体的にはどのような内容になるのか。法案の第十六条では、この手当に関する政令の制定または改廃に関しては人事院の意見を聞くことになっているわけですが、人事院の基本的な認識も伺っておきたいと思います。
  113. 弥富啓之助

    政府委員弥富啓之助君) お答えを申し上げます。  派遣地、派遣先国の勤務環境あるいは業務内容の特殊性を考慮いたしますと、俸給のほかにその勤務上の負担を国際平和協力手当という形で措置するということは、平和協力業務の円滑な遂行を図る上で大変重要なことではないかと考えております。  そこで、国際平和協力手当につきましては、先ほど来お話のありましたように、まずは政府において個別の派遣先国の諸事情あるいは業務内容を十分に把握した上で手当の内容を検討されるものでございますけれども、人事院といたしましては、その検討結果について意見を求められる際には、一般職の給与制度を所管する立場から、一般職員の給与制度における諸手当のうちで比較的類似した手当についての理念を念頭に置きながら、諸条件の差異をも踏まえた上での相対的均衡などの観点から意見を申し述べることになろうと考えております。
  114. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 この平和協力手当の支給についてですが、自衛隊の部隊参加の場合には防衛庁、それから自衛隊員の個人参加の場合には国際平和協力本部が支給する、このようになっておりますけれども、このように区別をした理由はどういうところにありますか。
  115. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  先生指摘のように、法案第十六条で「手当を支給することができる。」と書いてございますが、具体的には、国際平和協力業務に従事することを命令したというか、命じた者が手当の支給を行うことになるというふうな仕組みでございまして、ただいま先生が御指摘の、部隊参加の場合には防衛庁の業務としてこの法案第九条四項の規定によりまして防衛庁が、それから個人参加の場合は第十二条四項の規定によりまして国際平和協力本部が支給する、そういう関係になっておるわけでございます。
  116. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 派遣される平和協力隊員にとっては、今まで言ってきたような金銭的な補償と並んでいわゆる自分たちの行為に対する社会的な位置づけ、今までも論議が交わされておりましたが、これはやっぱり重大な関心事であろう、このように思います。  すなわち、協力隊員の平和への貢献に対しては最大限の栄誉というもの、もっとたたえられてしかるべきだと私は思いますが、総理及び防衛庁長官の御認識をいま一度伺いたいし、また、参加した協力隊員の栄誉をたたえるための具体的な方策を何か考えておられるかどうか伺っておきたいと思います。
  117. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 実は、その点が大変私ども責任者としては重要なことでございまして、隊員が本当にやる気を起こして、そしてその業務の遂行が本当にたたえられるということは、その活動に対するやはり最大の賛美すべきことだと私は思います。  ペルシャ湾の例を申し上げますと、これは自衛隊始まって以来のことでございますけれども、特別ほう賞という形で総理の表彰をいただきました。また防衛庁長官といたしましても、それ以下の部下等に対しては賞詞その他最大限の賞詞を与えることにいたしましたけれども、今回の場合もその業務の実態に応じて、それはもうその誇力を持てる裏づけをきちっとしていきたい、こう思っております。
  118. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 平和協力隊員の具体的な派遣までの手続について伺いますが、これはまず国連安保理事会の決議があってから派遣の手続が開始されるとは思いますけれども、実施計画案というのは作成にどのぐらいかかるのか。また実施計画が閣議決定されれば直ちに国会にその報告をされることになるのか。また実施要領は実施計画案が閣議決定されてから作成するものなのか、それとも同時並行的に作成されるのか、ちょっとこの辺をもう一度伺っておきたいと思います。
  119. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  実施計画は、まさにこの法案に書いてございますように、いっ具体的にどういう規模でどういう内容の業務に従事するかということの大枠を決めるものでございます。これを決めるためにはやはり国際連合との間で十分折衝する必要があるわけでございます。したがいまして、それが完了次第、国連の要請に非常に迅速かつ的確に対応するようにしなければならない、そういうふうに思っております。  ただ、具体的にどのくらいの期間がというと、現実の要請の内容にもよろうかと思いますので的確にお答え申し上げかねるわけでございますけれども、ポイントはやはりその要請に応じてもう本当に迅速かつ適切に対応することであろうというふうに思っております。  それから実施計画は、閣議決定を見ますと、この法案に書いてございますように、遅滞なくまさに国会に御報告申し上げるということでございます。それから実施計画の作成過程におきまして個々の業務の、私先ほど大枠と申しましたけれども、それは当然我が国がどういう業務に従事するという場合に、実施要領が個々の隊員にとっての行動のいわば指令書的なものでございますので、これは並行して検討を進めていくということに相なろうと思いますが、順序といたしましては、やはり実施計画ができましてそれを受けて実施要領に作成する、そういうことに相なろうかと思います。
  120. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 実施要領はこの平和協力業務を具体的に実施する上で極めて重要な文書となるわけですが、特に隊員の行動の指針となるべきものであるだけに、いわば隊員が判断に迷うようなことじゃ非常にまずいわけで、概括的なものでは絶対にならない。むしろ具体的で解釈が一義的であるもの、できるようなもの、こうでなくてはならないと思います。また、したがって量的にも相当膨大なものになるのじゃないかと私は思うんです。実施計画の閣議決定後、どのくらいの期間で作成できるかどうかという問題もだから当然出てくるわけですが、敏速にというような御答弁の中身でもあります。  そうしますと、実施計画が国会に報告されれば国会でもさまざまな論議が行われることは当然予想されるわけです。派遣前であれば、場合によってはそのような国会の論議を反映させて実施計画並びにこの実施要領を変更した上で派遣するというケースも考えられるのかどうか、この辺はどうでしょうか。
  121. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  実施要領の重要性、それから先ほど、それは具体的かつ一義的なものであるべきという先生の御指摘、全くそのとおりだというふうに考えております。  それから、ただいま御質問のこの実施計画の国会との関係でございますけれども、やはりこの第七条に基づきまして国会に報告することになりまして、国会で御審議いろいろあろうかと思いますが、その結果を踏まえまして実施計画を改めるという機会もあろうかというふうに考えておる次第でございます。
  122. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 いろいろとこれに関連しては伺いたいことがありますが、時間がありませんので進んでいきますが、要するに早く正確に細かくということになりますと、こういう前提を持った作成ということになりますと、非常にやっぱり困難なものが現実に出てくるわけですけれども、この法案の枠組みでは国連安保理事会等が決議してから派遣可能となるには何日程度かかると考えておられるか、ケースによって違うので一概に言えませんというのであるならば、何日程度をめどとしておられるか、少なくともこの辺のことについて明らかにしておいていただきたいと思います。
  123. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 御質問の趣旨が、総会または安保理決議によって設立されてから具体的な到着までどのぐらいかかるかというふうに御理解させていただいて御答弁申し上げますと、例えばUNEFIという一九五六年の十一月にできたものがございますが、これは十一月六日に総会の決定が行われましてデンマーク、ノルウェーなどの第一陣が到着したのが十五日ですから、その間九日間かかっている。それからサイプラスの場合は、一九六四年の三月のことでございますけれども、安保理が決議を採択してから第一陣が到着するまで九日かかっておる。UNDOFという平和維持隊がございますが、この場合には、一九七四年のことですけれども、やっぱり四日かかっております。  そういう意味で、一週間から十日前後、二週間に延びることもありますが、大体のピクチャーと申しますか、あれは御理解いただけるのじゃないかというふうに考えます。
  124. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 とにかく法案成立に際してはこれらのことに敏速な対応ができるような工夫と努力、これを講じられることを要望しておきたいと思います。  時間がありませんので最後に移っていきますが、せんだって五月十二日の参議院における本委員会の参考人として明石氏が発言された中で、地雷探知技術の開発といった技術的な貢献もできるのではないかという指摘もありました。そして、日本のしなければならないことできることのリストは非常に長くなるというふうにも述べられていたわけです。そういう観点からすれば、この法案はそのリストのほんの一部ではないかというような感じもするわけですが、政府はどのように考えておられるか。また、同様に考えるのであれば、政府としてもそのリストを作成して実行に移していくべきではないだろうかというふうにも思うわけなんです。この点についての御所見を伺っておきたいと思います。
  125. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  あのときの明石特別代表の御発言は、いろいろな側面のことを念頭に置いての発言であったのではないかと考えます。その意味は、カンボジアについてお話をしておられたわけですが、UNTACそのものに対する協力という点については明石代表自身が大変詳細に述べておられますが、それに加えて非常に重要なことは、中長期的なカンボジア復興のためのインフラ整備あるいは農業、エネルギーあるいは人材育成等の分野において、日本がいかに二国間あるいは多数国間の援助をやっていくべきか、そういう問題は一つやっぱり重要な問題としてあると思います。  この点につきましては、先生御承知のとおり、本年六月に東京におきましてカンボジア復興閣僚会議というものが開かれますから、そういう会議を通じて日本の対応ということも考えていかなければならない分野であろうというふうに考えます。  そわからカンボジアのLNTACの拒動そのものにつきましては、来年の四月、五月の選挙を通じて自由な民主的なカンボジア政府が樹立されていく、そういうことでUNTACの活動自体また非常にこれは重要で、その活動日本がいかなる分野でいかなる規模で貢献していくべきかという点はまさに大変重要な点で、これはしかし現在国会でお願い申し上げている法案というものを成立させていただかなければ、具体的なリストづくりというものを国連と協議の上で作成していくプロセスには入っていけないものですから、そういう意味で一日も早い成立をお願い申し上げておる、こういう次第でございます。
  126. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 国際貢献のために我が国がなし得ることは、この法案での活動だけではなくてさまざまな分野で残されているんだという、この指摘に対する政府の認識を伺ったわけであります。したがって、リスト作成なり実行なりに前向きで取り組む必要だけは、これは法案はまだ成立しているわけじゃありませんけれども、一応そのような必要性だけは自覚しておいていただきたい、このように思います。  最後に、それでは総理に伺いますが、PKOへの参加を通じて国際貢献の役割を積極的に果たしていくこと、これはまことに重要なことであります。しかし、国民とか近隣諸国の不安や懸念、たびたび出ておりますが、そういったものをそのままにして実行しても将来を考えた場合決して好ましいことではない、かえって不必要な誤解を与える結果になるおそれもあるんではないか、こう思います。また、国内の準備体制を考えますと、今拙速にPKFに参加しても決して十分な支援体制が整っているとも思われない。これでは派遣される隊員とか自衛官が大変に苦労する結果になるのではないか、このように心配するわけです。  これだけいろいろと問題になって、しかも議論を呼んでいる法案でありますから、成立後の実施については失敗はどうしても絶対許されないというふうに私は思います。したがって、十分な準備が整って国民や近隣諸国の理解が得られて、そして任務遂行の自信がついてから派遣すべきではないかなと、このように思うわけですが、このような前提が整うまでやはりPKFへの参加は凍結することが現在なし得る賢明な選択ではないかというふうに私は考えるわけです。いま一度ひとつ総理の御認識をここで伺って、質問を終わりたいと思います。
  127. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたが、政府といたしましては、それらの点につきまして法案の作成過程におきまして十分留意をいたしたつもりでございますし、また法の執行に当たりましても、もとより十分留意をいたしてまいりたいと考えております。  政府は、そのような心構えてこの法案を御提案し、御審議をいただいておりますが、なおまた院におかれまして、ただいまの中川委員の御指摘のような点につきまして院としての別の御意思をお持ちになるというようなことに相なりますれば、もとよりその院の御意思に対しては政府としては謙虚にこれを承らなければならないと考えております。
  128. 中川嘉美

    ○中川嘉美君 終わります。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 私は、まず最初に法制局長官にお尋ねしたいと思います。  今まで憲法の問題について何回かお尋ねをしてまいりました。きょうは、そういうことを踏まえて、まず最初に幾つかの点を確認的にお尋ねをしていきたいと思います。  日本では、自衛隊の存在を合憲だとする人々の中でも、あるいは自衛隊の存在が違憲だというふうに主張する人々の間でも、自衛隊の海外出動については一致して憲法に反するというのがこれまでの見解として存在していたと思うんです。これは参議院で決議をいたしました自衛隊の海外出動なさざることに関する決議ということを引用するまでもなく、明確なことだろうと思います。  そこで、今回のこの国際的な協力に関する問題が登場したとき、当初、長官は、国連の平和維持軍の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、それへの自衛隊の参加は憲法上許されないというふうに述べられてまいりました。この点は間違いないでしょうね。いかがでしょうか。
  130. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 今、委員お尋ねの点につきましては、昭和五十五年の十月の政府答弁書がございます。この答弁書におきましても、政府国連がその平和維持活動として編成した平和維持隊などの組織について、個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないが、その目的・任務が武力行使を伴うものであれば、我が国がこれに参加することは憲法上許されない、こういう答弁がございます。そういう意味で今の答弁書に則して申し上げたことがございます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 それを去年の八月の段階で、長官は、この平和維持軍への、つまり目的・任務が武力行使を伴うものであっても自衛隊の参加が許されるというふうにされた根拠は何だったのでしょうか。
  132. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  先ほどお答え申し上げましたように、まず政府答弁書で申し上げているところが、それへの参加の可否を一律に論ずることはできない、目的・任務が異なるので、こういうのがまずございました。その政府見解の趣旨といたしますところは、平和維持隊の目的・任務が武力行使を伴う場合には通常これに参加した我が国自身も武力行使をすることが予定される、こういうふうなことで、我が国自身が武力行使をしないとしても、仮に他国が構成します平和維持隊が武力行使をしますと、我が国としてもその平和維持隊への参加を通じてその武力行使と一体化することになるのではないか。結局、我が国武力行使をするという評価を受けることにもなりかねないので、そういった参加は憲法上許されない、これがかつて申し上げていた政府の答弁書の趣旨だろうと思います。  それに対しまして、まず目的・任務が武力行使を伴う平和維持隊への、平和維持隊というのが全体としてそのようなものではないとは存じますが、そういうふうな平和維持隊への参加でありましても、一定の前提を設けることによりまして我が国としてみずから武力行使はしない、あるいは平和維持隊の行う武力行使と一体化することはない、こういうことが確保されるのであれば、我が国武力行使をするという評価は受けることはございませんので、そういう意味でいわば一定の前提を設けるならば、憲法に違反するようなものではない。  それで、今回の法案に則して申し上げれば、いわゆる五原則というものがございます。五原則の中身につきましてはもう詳しくは申し上げませんが、その場合に、例えば武器の使用については、我が国の要員の生命または身体、こういうものの防衛のために必要最小限度を超える、あるいは紛争当事者間の合意が破れた、こういうことであります場合には我が国が参加します前提が崩れる、こういうことでございます。したがいまして、短期間にそういう前提が回復しないというときには我が国から参加した部隊の派遣を終了させる、こういう五原則の中の部分もございます。そういう前提を設けて参加することになります。  仮に、そういった他国で構成されます平和維持隊というところが行動いたしましても、我が国としてみずから武力行使をすることはない、あるいはそういう武力行使と一体化するという評価を受けることはない、こういうことでございまして、そういった理由で、昨年秋でございましたか、衆議院の委員会においてもお答えしたところでございます。そういう意味で、従来の政府見解ともそういう観点で整合性を保っている、かように考えております。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、目的・任務が武力行使を伴うものであっても平和維持軍への自衛隊の参加が許されるとしたのは、みずからが武力行使はしない、それから一体となるようなことはしない、あるいはそういう場合になったら撤収する、最小限要員の生命防護のために限られるというふうなことを述べられましたが、そうすると、以上述べたような条件が整わないと平和維持軍への自衛隊の武装した参加はやはり憲法上疑義が残る、憲法上許されない。というふうに解してよろしいですね。
  134. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) ただいま申し上げたのがいわゆる理論上の整理でございまして、実態上にはいろんなことがあろうと思いますけれども、今申し上げたようないわゆる五原則、これが守られる限りにおいてはそのようなことはないと、かように考えております。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 今、長官が述べられた論理で言えば、以前は参加できなかった、それが参加できるようになった、それはこれこれの条件が整うならば参加しても憲法違反にはならないということになったわけです。ですから、いわゆる武力行使目的・任務とするような平和維持軍に自衛隊が無条件に参加をするということは依然として憲法上許されないということになることは当然の結論ではないでしょうか。違いますか、いかがでしょうか。
  136. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) お答えいたします。  今回の法案におきましては、そういう五原則を法案の条文の中に織り込みましてそういう形で構成しているわけでございますから、したがいまして平和維持隊として我が国が出てまいります場合にその五原則は法案上きちんと守られる、かように考えております。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 長官、法案上の問題については、これは後で私はお尋ねするんです。  私は、今あなたが述べている論理上の帰結として、いわゆるこういう条件が整わないならば、これは憲法上やはり依然として疑義が残るということはだれが聞いても明確だと思うんです。法案上のことは抜きにして、あなたがお述べになったことから言うならば、そういう条件が整わないならばやはり憲法上問題が残るというふうになるのは当然の帰結ではないでしょうか。その点だけ、長官、もう一遍。  委員長質問にちゃんと答えるように……。
  138. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 先ほど申し上げましたような、従来の昭和五十五年の答弁書、あるいは昨年の秋等におきます答弁というふうなことは、すべてそういうことで疑義の生じないようにということで整理をいたしたものでございます。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 法制局長官が一番答えにくい嫌なところだと思うんです。いわゆる問題は、条件が整わなければ憲法上やっぱり疑義が残るんですよ。法案上め問題については後からお尋ねしますが、そのことだけここで述べておきます。  じゃ次に、外務省の方にお尋ねしますが、武器の使用の問題についてですが、国連のPKFが武力を使う場合には、これは自衛のためだというふうになっております。それは要員の生命の防護のため、これが一つ。もう一つは任務の遂行が実力によって妨害される場合。これが自衛のためという国連の規定で、その場合には武器が使える、これは間違いないでしょうね。
  140. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  その前に……
  141. 立木洋

    ○立木洋君 簡単でいいですよ。
  142. 丹波實

    政府委員(丹波實君) その前に、今の法制局長官とのやりとり、それから恐らく先生のこの後での議論とも関係すると思いますので、非常に重要な点を申し上げさせていただきたいんです。  先般、当院で明石参考人が述べておられますけれども、PKO、PKFの本質についてやはりどうも御理解をいただいていないと思います。明石参考人は次のように述べておるわけです。PKOのユニットは、武力行使目的としていないし、その能力もない。国連の声望を担い、その権威を背景としておる。PKOをより多くの国によって構成するのは、これに刃向かうことは多くの国に弓を引くことであることを認識させるためです。PKO武力行使すれば紛争当事者になってしまい、行使しないことによって一段高い立場に立てると考える。PKO安保理決議により国際社会を背景にして派遣されるものであり、道義的、精神的に強い。  それから、前にも申し上げたアークハート前事務次長は、PKFについて、戦う平和維持隊は役に立たないということでございまして、基本的にPKO、PKFは戦うために出ていっていないわけです。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 私はそんなことを聞いていないんですよ。
  144. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 過去の歴史を見ますと、コンゴのような例外はありますけれども、私は基本的に非常に重要な点であると思います。  それから、ただいまの御質問にお答え申し上げますけれども、これは例えば一九六四年に事務総長がサイプラス平和維持隊との関連で、先生も御承知と思いますけれどもエードメモワールといろものを出しております。そのエードメモワールの中でも、「平和維持隊の要員は武器使用のイニシアティブをとってはならない。武器の使用は自衛の場合にのみ許される。」ということを言った上で、基本的には、一つは生命を維持、防衛するため、二つ目は任務が妨害されたときという限定を付して、そのときには武器の使用をしろと言っているのではございませんで、武器の使用が自衛片して認められるということを言っておるわけでございます。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 今、あなた、明石参考人の発言を引用されましたが、明石さんが言われたのは、その前に私はPKF、軍事部門についての専門では右りませんから十分な知識はございませんがと言ってそのことを述べたんですよ。いいかげんなことをあなた言ってもらったら困るんですよ。  問題は、これまで行われた平和維持軍、八回にわたる平和維持軍で七百七十二名の方々が命を夜としているじゃないですか。私は今度のこの平知維持活動というのが戦闘ではないということは十分に承知しております。合意があって、そして当事国の賛成のもとに参加するのだということは十分に心得た上で私は聞いているんです。あなたの長々としたお説教を聞くために私は質問したわけではありませんから、質問したことにお答えいただきたい。  では、ここでは私は限定した形でお聞きしますが、PKFの現場でその任務が実力で妨害される事態が発生し、それに対して繰り返して説得したが受け入れることができない状態で、威嚇射撃も効果がなく任務の遂行ができなくなって、国連のコマンダーが限定つきであれ発砲のコマンドをしたとき、このとき日本から参加している部隊はこのコマンドに従うんでしょうか、従わないんでしょうか。大臣。
  146. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生の御質問にだけお答え申し上げます。  過去のPKFに、先ほど申し上げたような紛争になってしまったら、どちらかといえば、その失敗例となったようなコンゴの例のようなことがございますから、それを除いて通常の状況のことを考えますと、任務が妨害された、任務を遂行しようとしている者が説得その他いろいろ努めたけれども、どうしても向こうは言うことを聞かない。そのうちに、そういうプロセスの中でこちらの生命が危なくなったというのは、これは最初申し上げた生命を防護するために武器を使える、そういう状況になろうかと思います。  第二番目の、いわゆるBのケース、単に任務が妨げられている状態が続いているときに、国連のコマンダーが発砲せよという命令を下してくることは過去の例にかんがみますればないわけでございます。
  147. 立木洋

    ○立木洋君 全然違うんですね。今までのブルーヘルメットから何から見ましても、武器の使用については決定がされるんですよ。決定がされないで、平和維持軍に参加した部隊が発砲するなんてことはないんです。  ですから、ここでは今も私が質問したことに大臣に答えていただきたいのですが、そういう発砲せよというコマンドが出たとき、コマンダーがコマンドしたとき、それに従うんですか、従わないんですか。
  148. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) コマンダーは、そういうコマンドはしません。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 全然答弁になっていないんですよ。いいですか、このSOP、平和維持軍は武器を持っていくんです。武器を使用する規定があるんです。武器を使用することがあり得るんです。そのときに、部隊の指揮官が、そういう危険な状態になって任務の遂行が実力で妨げられておるとき、そのときにこれに対して対処せよという指令を出すこと、そういうことはあるんですよ。軍隊はないですか。長官。
  150. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ケースとしては、それはもう理論上あるいはあり得るかもわかりませんが、この国連協力の場合には、そういう想定はないという前提でこの方向性もできております。  したがって、先ほどの先生の、端的に言えといえば、国連の現場の司令官といってもどの程度になるか、これは具体的にわかりませんけれども、普通コマンダーというのはヘッドクオーターその他のコマンダーだと思いますが、現場で少数部隊を直接指揮するようなことはないと思いますけれども、よしんばそういうことがあったとした場合に、我が国自衛隊武器使用の原則は二十四条の三項できちっと決められておりますから、これはないというように言ってよろしいかと思います。
  151. 立木洋

    ○立木洋君 大体、武器を持っていく、そしてその武器の使用についての内容が決められている。それがまさに武器を使用することが一切あり得ないというようなことを、いわゆるこの法文上使用する内容を定められておきながら、そういうことが一切ない、今までの議論を全部ひっくり返すような、そういう言い方をしてもらったら困るんですな。  ここで、そうしたら言葉を改めて聞きますけれども、PKFに参加した日本の部隊、この日本の部隊が武器を使用する場合、その武器を使用する権限は国連は持っているんでしょうか、持っていないんでしょうか。日本の部隊が武器を使用する場合、権限は国連にあるのかないのか、使用の権限。
  152. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほどちょっと触れました、事務総長が一九六四年の四月にサイプラスに関しまして出しました覚書、エードメモワール、その部分の中に次のような表現があるわけです。このパラグラフ十八ですけれども、   自衛のための行動をとる場合には、最小限の実力行使の原則が常に適用されねばならず、説得による平和的手段が全て功を奏さなかった後に武器使用が行われるもめとする。こうした状況の下で武器使用が許されるかどうかの決定は、発砲する必要のない事件であるか、要員が武器の使用を許される状況であるかの区別に主要な関心を有する現地指揮官の判断にかかっている。要員が武器使用を許される例として次のものがある。 こう続いております。  要するに問題は、武器の使用が許されるかどうかという点についての判断というものが国連の司令官に関係してくるところだと思いますけれども、先ほど外務大臣、防衛庁長官が申し上げておりますことは、こういう過去のドキュメントあるいはプラクティスにかんがみて、国連司令官から武器を使えという命令が来ることはまず考えられないということを申し上げているわけでございまして、国連司令官が武器を使ってもよろしい状況であるという判断を下すことはあり得ましょうけれども、コマンドとして武器を使えという命令が来ることはまず考えられないということを申し上げていることでございます。
  153. 立木洋

    ○立木洋君 これは各国とのモデル協定の中にはっきり書いてあるんです。あなたの方の統一見解にも述べられているじゃないですか。  いいですか。この平和維持活動に参加する者についての国連の権限については「配置、組織、行動及び指令について完全な権限を有する。」。武器の使用についての指令の権限は除外するなんて書いてないですよ、どこにも。武器の使用ということが最も更要な構成部分なんです、平和維持軍の活動の。そういうことが起こった場合の武器の使用があり得るんです。それに対する指令の完全な権限が司令官にはあるんじゃないですか。モデル協定に書いているんじゃないですか。あなた方だって統一見解に述べているじゃないですか。  外務大臣どこへ行ったんですか。黙って行ってもらっては困るな。彼が書いた統一見解にそれが書いてあるんだから。そういういい加減なことを言ってごまかしたらいかぬですよ。使用の判断をするんです。使用の判断をして、使用しなければならないといったときに指令を出すんです。完全な権限を持っているんです。違いますか。
  154. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 事、武器の使用に関しましては、過去の慣例、関係各国も調べましたけれども、先ほど申し上げた御説明に尽きておると私は考えております。
  155. 立木洋

    ○立木洋君 現にレバノンで二千回以上に上る武力衝突が起こっているんです。  大臣、あなたがトイレに立たれたのでちょっと時間を損じましたけれども、ちょっと聞いておいていただかないと困る。  あなたが出されたこの外務大臣発言という統一見解の中で、モデル協定の第七項をあなたは引用されている。このモデル協定については、ここでは指揮官の出す内容については「配置、組織、行動及び指令について完全な権限を有する。」となっているんです。完全な権限を有するんですよ。武器の使用についてはその指令の権限、完全な権限を除外するなんて書いてないんです。武器の使用というのは最も重要な構成部分なんです。その構成部分について完全な権限を有している、この指令を出さないなんということはないんです。これはあなた自身が統一見解で述べられている内容なんですから、もう一遍答えてください、そのことについて。  丹波さん、あなたに私は聞いていない。
  156. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 武器の使用につきましては過去の慣例ということが非常に重要でございまして、なぜならばPKF活動は過去の慣例の積み上げでできておるからでございます。  過去の慣例あるいはそれを受けたいろんな国連の説明によりますれば、画衛のためにのみ武器の使用が許されるということでございまして、通常の場合、国連のコマンダーが武器を使えという命令を下してぺるということはまず考えられないと。いうのが過去の慣例から我々が承知していることでございます。
  157. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 今答弁したとおりでございまして、それは使わなければ日本の人たちが全滅して死んでしまうというような事態になればどうか知りませんよ。しかしそれ以外は、私は、説得をしてきちっと相手がそれに従うかどうかということであるし、また向こうが大きな部隊で全然前提条件が破れるというようなときは中断をするということもあるわけですから、決して武器を先に使うことありきということじゃないんです。
  158. 立木洋

    ○立木洋君 それは外務大臣、全然違うんですよ、前提が。我々も、平和維持活動というのは最小限、武器を使わないようにやることが最もいいんです。それは合意があって、同意があって、仲立の立場でやるわけですから、これは国連の内容としてもそういうふうになっているんです。だから、何でもかんでも出ていって、我々はすぐ戦闘するなんというようなことは毛頭思っていません。  しかし、いざという場合に、そういうことが全く避け得るかといったらそうでない場合が起こり得る。起こり得るからこそ武器の携行が認められているんです。起こり得るからこそ武器の携行が認められ、使用の規定があるんです。その場合のことが今国会の中でも大問題になっている。それが武力行使に当たるか当たらないかということが、憲法に反するのか反しないのかということで議論してきたのがこれまでの経過じゃないですか。だから、そういうことを踏まえて私はお尋ねしているんです。  ですから、そういう武器の使用なんということは一切あり得ません、そういう命令を出すようなことは一切あり得ませんと。だってモデル協定にはちゃんと書いているんです。武器の使用についての指令の権限を完全に有するんですから、そういう今まで議論をやってきたことを完全にごまかしてしまうような論理の前提の上で、時間さえたてばいいというふうな答弁の仕方では、私はそれは絶対納得できないですよ。  もう一遍お聞きしますが、そうすると、日本の部隊、自衛隊が平和維持軍に参加したときに、日本の部隊が使う武器の使用についての権限を国連は持っているんでしょうか、持っていないんでしょうか。端的に答えてください。
  159. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生の武器の使用についての権限という言葉の意味が必ずしも私理解できませんが、先ほどから繰り返して申し上げておりますとおり、日本の隊員に対して一定の状況のときに武器を使用しろという命令が下ることは、過去の慣例にかんがみてまず考えられないということでございます。  一言だけつけ加えさせていただきますと、まさにそういう状況でございますので、過去、オーストリアは十八年間にわたって平和維持活動に参加してきているにもかかわらず一度も発砲した例がない。フィンランドにつきましても一度も発砲したことがない。イタリアについても武器の使用を行ったケースはないということを言ってきておるわけです。そこで、私が冒頭先生にしかられながらも御説明申し上げたPKFの本質というのは、まさにそういうことだということなのでございます。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 丹波さん、あなたが言われたのを私は全面的に否定しようとは思いません。武器を使わなかった部隊もあるんです。しかし、武器を使った部隊もあるんです。あなたはその事実を隠してはいけない。使った部隊もあるということをあなたもお認めになった上で、使わない部隊もあったというならばそれは正確だと思う。あなたは使わなかった部隊のことだけ挙げていかにもそういうことがあり得ないことに言うのは、それは正確な答弁にはならない。そのことだけ述べておきます。  SOPの中に明確に書いてあるんです。武力の適用に対する諸原則、武力行使の決定が行われた場合のことが書いてあるんです。武力行使の決定は一体どこで行われるんですか。SOPに述べられている武力行使の決定はだれが出すんですか。あると書いてあるんですよ、SOPに。
  161. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生がSOPのどの部分を指しておっしゃっておられるのか即座にはわかりませんけれども……
  162. 立木洋

    ○立木洋君 二十三項。
  163. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 例えばパートスリーのオペレーションのところにございますけれども、参加各国は武器の使用について同じ政策に従わなければならないということがございますが、これはまさに武器の使用については自衛のためのみに許されるという、そういう政策に従わなければならないということを言っているものであると理解いたしております。
  164. 立木洋

    ○立木洋君 だから私が言っているのは、SOPで言っている、武力行使の決定が行われればと。武力行使の決定が行われるということが書いてあるんです。だから、だれがやるんですかと。指揮官なんです。いいですか。そして、国連のSOPの中では、純粋に非武装の監視団を除くすべてが武力行使に関して同じ方針を守らなければならない。そして、特に武器の使用はばらばらではなく、射撃は統制されると。個々人が発砲して統制されますか。何のために指揮官があるんですか。何のためにモデル協定が結ばれて、そして完全に指令まで統制するというふうになっているんですか。  私は、その点で外務大臣に改めてお尋ねしますけれども、そうすると平和維持軍に参加している日本の部隊が武器を使うという場合には、国連のいわゆる使用の権限、つまり国連の指令に基づいて使うおけではないということが大体はっきりしました、答弁で。そして結局、自衛隊も隊としては武器を使うことにはならないということになるわけですね。どうですか、長官。
  165. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) おっしゃるとおりで、二十四条にそのように「自衛官は」と明確に書いてございます。
  166. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、武器の使用についての権限は国連にもない、PKFに参加した日本の部隊が武器を使用する権限は国連にもない、自衛隊の隊にもない、これは個人にあるということですね。  そうすると問題は、ここから生じてくるのは憲法上最も重要な問題になっているんです。武器を使う場合どうなるのか。武器の携行は、この法案では六条の四項で事務総長が必要と認める限度を規定しているわけですね。この法案では武器を使用する規定はあります。ところが、今私が問題にしているのは、最も重要な平和維持活動の任務を実力で妨害してきたとき、武器を使用してはならないという憲法上最も重要な問題に関する禁止の規定というのは一体どこにあるんですか、長官。
  167. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは委員の御指摘のように、明文では書いてございませんが、武器を持っていった場合の使用の条件を厳格に書いておることからして、そのことは当然であるというように考えております。
  168. 立木洋

    ○立木洋君 問題は、今言いましたように武器の使用上の問題については国連にもその権限がないんです。命令を出すことができないとあなた方はおっしゃる。自衛隊も隊としては命令を出すことがないと言うんです。最も重要なのは、武器の使用をする権限というのは個々人に完全に任されてしまっているんです。そうしたときにいざ問題が起こって、このときに武器を使ったらそれが自己の防衛になるのか、この場合には武力行使に当たらないのかどうなのか、最も重要な憲法上の違反になるのか違反にならないかという判断が完全に個々人に任されてしまうんです。そのようなときに、この最も重視されなければならない憲法違反にならないとあなた方が言われるのが法文上に明文規定がないというのはおかしいじゃないですか。憲法違反になる可能性があり得る、法文上は。一体どうなるんですか。
  169. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) ただいま問題となっております二十四条の三項に明確に書いてございますのは、「自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員若しくは隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で」「武器を使用することができる。」、こう書いてございますので、その余のものはできない、こういうことでございます。
  170. 立木洋

    ○立木洋君 その判断が難しいというのは自衛隊の幹部でさえ明確に述べているところじゃないですか。幾つかの新聞の中でもそういうことが出されておりますよ。「任務について隊員の足元に、不意に銃弾が撃ち込まれたとする。威嚇が、流れ弾が。それとも隊員を狙ったものか。隊員はとっさの判断を迫られる。「そう簡単に判別できるとは思えない」と、陸上自衛隊の幹部は首をひねる。」と。  いいですか。問題は重大な問題なんです。ただ鉄砲を撃つか撃たないかという単なる行為じゃないんです。それが憲法違反になるのかならないのかという判断が個々人の自衛隊の自衛官に任されてしまっている。ところが、それを明確に規定する条文がないじゃないですか。そうするとこれは憲法に違反する可能性を多分に含んでいる、そういうふうに言われたってやむを得ないじゃないですか。そこのところを明確にお答えいただきたい。
  171. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) たびたび申し上げておりますように、二十四条で武器使用の要件が厳格に書いてございますから、この実施要領で持参する武器の使用、これはそれ以外に使っちゃいけないわけですから、これは明確に禁止されておるということでございます。
  172. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ、ここのところを詳しく説明してください。「自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員若しくは隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で」、これを明確な具体的な事実でちょっと説明してくれませんか。こんな場合には自己防衛だ、こんな場合には違反になると、ちょっと説明してください。あなたがそう言われるんだから、明確に規定されているんだと。明確に述べてください。こんなわかりにくい法文で憲法違反の重要な問題があいまいにされるなんということは許されないです。
  173. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 自衛官がぎりぎりの場合に武器を使用することができるとした立法例は、何も今回これが初めてではございませんで、九十五条しかり、それから治安出動の場合の緊急避難あるいは正当防衛に該当する場合しかり、いずれも「自衛官は」と書いてありまして、自衛官の個々の判断で武器の使用が許される、こういう状況でございます。  その場合において、通常の限定的な書き方の表現ぶりがこのようなことになっておりまして、これは余計なことを申し上げるようでございますけれども、刑法上の正当防衛、緊急避難というものも、まさにそれを外れたならば罪にも問われる。しかし、これは危害許容要件というか違法性阻却要因ということで、抽象的な文言のもとでそれが許されておるということでございますので、法文の立て方として従来の立法例に倣ったぎりぎりの限度としてこういう書き方をしたものでございます。
  174. 立木洋

    ○立木洋君 局長、あなたはこの法案の重大性というのを認識してないですね。  正当防衛、緊急避難、そういうことは私はわかりますよ。しかしこの問題は、自衛官がその武器を使ったときに憲法上違反になるのかならないのかという重大な問題がかかるんですよ、ここに。そのあいまいさを残してはならないからこそ私は指摘したんです。だから、ここであいまいな規定でやって、そのときにここに、私が先ほど新聞のあれで引用したように、どうしたらいいかわからないことがあり得る、そんな場合にどうするのか、重大な問題なんです。だから私はここを明らかにしてほしいと言ったんです。どういう場合が憲法違反になって、どういう場合が憲法違反にならないのか。
  175. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 自衛官がある状況に置かれたときに、非常に切迫しまして、座して死を待てということではなくて、まさに自然権的な権利行使するという非常に切迫した状況でございますので、その判断において間違いがないと私は思います。  自分の生命が危険にさらされている状況でございますから、それはまさに座して死を待てということじゃなくて、それに対して当然認められる正当防衛権利行使ということでございますから、それは個々の判断にまつしかないということでございまして、状況を述べて説明するというのは、個々のケースによって状況によって異なりますから、そういう具体例をかえって前提として申し上げるわけにいきませんが、今申し上げたような立法の趣旨から照らしてそういうことはまさに明らかであろうと私は思います。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 正当防衛の場合だって、それが正当防衛なのか過剰防衛なのか、それとも正当防衛でないのか、これは裁判でもいろいろな形で問題になることなんです。  だからその場合に、ここで問題になっているのは、それが本当に正当防衛だと、身の危険があったときというのは具体的にどういう事態のことを言うのか。それが任務を妨げておる実力による行使の段階は、どこまでがその実力による任務を妨害する段階なのか、どこからが自分の身に危険を感じたという段階なのか、弾がどこまで飛んできたら身の危険だというのか、そういうことまで判断が求められることになる。笑い事じゃないんです。憲法に反するかどうかという基本的な問題なんです。  そんなことをいいかげんな問題で、こうして出ていって、ここに書いているじゃないですか、自衛隊が持つ最新式の89式は一分間に八百五十発もの弾丸を連射できる機関銃に近い高性能の兵器だ、これが使われた場合、過剰防衛とみなされるおそれもある。これは自衛官だって問題になるわけです。  だから、その問題が明確にされないでいるからこそ、この問題はいわゆる憲法で規定した武力行使、そういう事態にはならないなんていうふうなことは言えないんですよ、これでは。結局は、この問題で言うならば、武力行使、これについて憲法の違反をいつ犯すかわからない条件が現実に存在しているところに武装した自衛隊派遣するということ自体が問題なんです。大臣。
  177. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、先生は二十四条の三項の問題に限定して御議論を展開されておられますけれども、この前提にはやっぱりPKOの五条件、これが厳然として存在しておるわけでございます。その上で、平和的な業務でございますから自衛官が自己の、あるいはそばにいる自衛官の生命、身体を防護するために必・要最小限度の条件をきちっと決めて、そして武器使用を認めているわけでございまして、それ以外の武器使用は認めておりません。  先ほど来、任務遂行から転化することがあるのではないかという御議論もございます。それはケースとして任務遂行がそういうことになる可能性は私は否定できないと常識的に思います。しかしながら、それは任務遂行が妨げられるから武器を使用するのではなくて、たまたま任務遂行上自衛官の生命、身体がこのままほうっておけば脅かされる、他に逃避の方法がないという場合には武器使用がこの二十四条の三項で認められております。そして、相手を殺傷するというようなことになった場合は、刑法三十六条ないし三十七条の緊急避難、正当防衛に該当しませんとだめですよということを、ここまで厳密に書いてございます。そういうことでございますから、御理解をいただくしかないと思います。
  178. 立木洋

    ○立木洋君 私は、一番長机に法制局長官にお尋ねしました。かつては、武力行使、これが目的・任務となる平和維持軍に参加することは憲法上許されない。これが許されるとしたのには幾つかの条件がつけられました。これは、みずからが武力行使に参加しない、武力行使と一体となるような行動はとらない、問題が起これは中断をする、最小限武器の使用は身の防衛に限る、こういう条件があるから憲法違反にはならないと。そうすると、つまり条件があって、その条件が整わなければ、それは憲法上疑義を生じるということは論理上明確なんです。  それで、私は具体的な事例を挙げて、いわゆる武器の使用の権限が一体どこにあるのかと。国連にもない、自衛隊も隊としてその指令を出すことがない。すべてが個人個人の判断に任される。憲法上それが違反になるのか違反にならないのか、それが個々人の判断に任される。ところが、まさにその武器の使用というのは、どこまでの範囲が身の防衛のためなのか、何がいわゆる任務の実力による妨害、それに対する対処になり得るのか。この判断というのはこの法案上どこにも明文で規定されていないんです。全くあいまいなんです。  そうすると、そういう危険が存在するところにそもそも憲法上問題があるとされていた自衛隊を出して、そしてそういう条件が整わないということがあり得るにもかかわらずそういうところに自衛隊派遣するということは、まさに憲法上違反が生じるということは明確じゃないですか。私はそのことをここでははっきり指摘しておきたいと思うんです。  それで、この問題については改めて機会を設けて、この点は絶対に私は承服できない、憲法違反の武力行使の問題、指揮権の問題とかかわって問題があるので、その占用では改めて問題にしなければならないと思います。  その点で外務大臣が先日、十八日出されたここでは、「国連との「モデル協定」第七項において、国連の「コマンド」と言われている。国連のこの権限を法案では「指図」と規定しており、「指図」と「モデル協定」第七項にいう国連の「コマンド」とは同義である。」こういうふうに述べられているわけですが、同義である、つまりモデル協定で言われているのは、部隊の配置、組織、行動及び指令について完全な権限を有する、同権限は現地においては事務総長に対して責任を負う派遣団の長によって行使される、こういうことになっているわけです。  つまり、私は先ほど言いました武器の使用の問題について、モデル協定では、ここでいわゆる指令について完全な権限を有するというふうにされておりながら、その指揮下には一切入らないということになるならば、外務大臣の出したこの統一見解というのは全く矛盾に満ちたものだ、自己矛盾に陥っていると言わざるを得なくなるんですが、大臣いかがですか。
  179. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 自己矛盾に陥っていることはないと思います。  それは、コマンダーのコマンドに従うということは言っておりますが、そのコマンダーがあなたのおっしゃるようにやたらに撃て撃て撃てなんということを言うはずがないんですよ。確かに、武器は全く使用しないということを言っているわけじゃないですから、先ほど言ったように緊急避難、正当防衛、それによって自分の生命を守るという場合がありますから、それは武器は全く使用することはありませんとは言ってないんですよ。だからその他のことについては、これは国連の権威と説得によって任務遂行をやっていくということを言っているわけです。  その段階において、それは言うことを聞かない場合もあるでしょう。あるけれども、それはやむを得ないことであって、ただ、とっさに任務遂行でトラックならトラックの検査をしようと思ったところが、それが飛び上がってきてはんと撃ってきたというような場合は、それはおりますよ、使用することも、百分の命が危ないんですから。それは一々司令官まで上げて許可をもらっておったら自分は殺されちゃうわけですから。だから、それはその場所場所のいろんなケースがあるわけであって、それはもう各人にお任せする以外にはない。法律で一々そういうことを規定しょうがないんです。それに似たような立法例はたくさんあります。
  180. 立木洋

    ○立木洋君 私は、今の大臣の答弁は納得しません。憲法上最大の問題である武力行使になるのかならないのかという問題の判断が、自衛隊員の個々の判断に任されているということは極めて危険な事態です。そういうところに自衛隊を出して、そして武力行使になるような事態は一切起こりませんというふうなこと自体が私は最大の問題だということを改めて指摘しておきたいと思う。  もう時間がなくなりましたので、首相にお尋ねしないのもあれですから、最後にお尋ねします。  日本の国内でいろいろこの問題について批判があるということは首相も御承知だろうと思うんです。先日も私のところに自衛隊の家族の方からはがきが参りました。そのはがきの中ではこういうふうに、私は六十七万四千五百十八人の自衛隊員の家族の一人である、海外に出ていくために私たちの家族や婚約者が自衛隊に入ったわけではありません、わけもわからないような形で海外に行って命を落とすようなことになるような事態だけは避けてほしい、廃案にしてくださいということを自衛隊の家族の方から私のところにはがきが来ました。そういう問題があります。  それから、これは自衛隊の幹部の方がみんな一致してこのPKOに賛成がといったら、そうじゃないですね。私はここであえてお名前を申し上げませんけれども、新聞で既に報道されている。れっきとした自衛隊の幹部の方が、こんなようなガラス細工、これは廃案にすべきだ、アメリカに対して何一言まともなことを言えないでこんなような法案をつくるというのはとんでもないことだということがちゃんと活字になって新聞に載っております。そういうふうな問題もあるわけです。  国内ではさまざまな批判があります、しかし問題はそれだけではない。国際的にもさまざまな意見が起こってきている。この問題については、アメリカでは当初湾岸戦争が起こったころ、日本は派兵できないというふうなことについて憲法の第九条が存在するなどということは多くの方は知らなかった。だけれども、事態が進行する中でその事態が明らかになってきたということが指摘をされております。そしてブレジンスキー元カーター大統領補佐官が五月十三日のアメリカの下院外交委員会で、自衛隊海外派遣は奨励しない方がよいと証言をしております。レーガン大統領の時代のワインバーガー国防長官も自衛隊海外派遣という日本の軍国主義化を全く不気味なものというふうに指摘しております。あるいはハワード・ベーカー首席補佐官は、日本に対してこの軍事的役割を支持する国はアジアにはないと断定をしております。こういう意見が出てきた。  それで、世界の新聞でも、ニューヨーク・タイムズ、フランスのル・モンド、シンガポールの連合早報、韓国の朝鮮日報などなど厳しい批判が向けられております。  アメリカのオハイオ大学名誉教授のチャールズ・オーバビー氏が次のように述べております。日本国憲法の第九条に触れまして、戦後四十七年間、世界のただ一人も日本軍人によって殺されたり撃たれたりしていない、これはすばらしい記録だ、大切なことは日本のような経済大国が武力によらない紛争解決の方法を身をもって知らせることだ、極めて見識のあることだ、世界が今必要なのは戦争放棄を明文化した日本憲法九条の理念にある、こうして訴えているわけです。  まさに国際的な批判は、日本憲法違反による世界の流れに逆流することに対する厳しい批判が寄せられているというのが現状ではないかと思いますが、その点についての総理の認識をお伺いしたい。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国連の平和維持活動に参加いたしますこのPKOというものは、どなたかも言われましたように、発砲するようになればそれは紛争当事者になるようなものでございますから、そうなるのは失敗なのであって、そうしないことが目的であるということは何度も申し上げました。  きょうの立木委員の御所論は、この法案の二十四条をめぐっての御疑義であったわけでありますけれども、この二十四条は先ほど政府委員も申し上げましたように大変にきちんと書いてございまして、正当防衛のことでございますけれども、ただ漠然と書いてあるのではない。やむを得ない必要があると認める、しかも認めるに相当の理由がなければならない、その場合でも事態に応じ合理的に必要と判断される限度でなければならないと違法性阻却のことを非常に厳しく書いてございます。これは抽象的でいかぬとおっしゃいますけれども、これ以上法律としては私は詳しく書くことはできない。それは国内法の刑法の正当防衛の違法性阻却の書き方と同じでございますから、実際に運用してみて弊害があるとも思えない。これ以上詳しくは私は書けないと思います。  もしおっしゃいますように、しかし間違えると憲法違反の事態を起こすよとおっしゃいますけれども、君は憲法違反の事態を起こしちゃいけないからこういうときでも死んだ方がいいよというようなことは、それは言えるものでない。これをもって何かこの法案全体が日本が外国で武力行使をするということになるんだという御所論にはどうも私は承服ができません。
  182. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 立木君、時間です。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 今の首相の答弁に私は全く納得することができません。  問題は、武力行使という憲法違反の事態をいつ起こすかわからない条件のもとに自衛隊海外派遣を行うというふうなこと自体が誤りだ。いろいろな条件をつけてその条件を満たさない限り憲法違反になり得るということは論理上明白ですから、きょうは時間がありませんからこれ以上お尋ねすることができませんけれども、今後引き続いて質問をすることにしたいと思います。
  184. 吉田之久

    吉田之久君 まず、質問をいたす前に連合参議院としてこの法案に対してどういう考え方を持っておるかということをあらかじめ申し上げまして、それから質問に入った方がいろいろ質疑答弁のかみ合わない点などが省略されると思いますし、そういう考え方で、少しまず私どもの現時点におけるこの法案に対する考え方を申し上げる必要があると思います。  私どもは、よりよき形において国際平和協力隊というものが組織されて、それが世界平和のために所期の目的に沿うように大いに有効に役立ってほしいという考え方に立っております。しかし、そのためには、先ほど来各委員からもいろいろと質問がなされているわけでございますが、より広範な国民合意を得た中でこの平和協力隊というものが組織される、そして活動を展開する。また折隣諸外国にいささかも懸念を与えない形でこれから長く国際平和のために協力していく。そういうことのためには主体は自衛隊員であろうと思いますけれども、しかし、つくられた国際平和協力隊というものは自衛隊そのものではないいわゆる別組織にすることが一番賢明な方法なのではないかという考え方に立っておるわけでございまして、そういう考え方を持ちながらこの政府案に対しまして若干の質問をいたしたいと思う次第でございます。  まず、政府の方では、自衛隊の部隊をそのままの形で参加させる、それが固有の既成の確立された組織であり、平素から十分チームワークがと島れている組織であるからそれが一番適格な部隊になるだろうという考え方だろうと思います。それで、もしもそうだとするならば、この協力隊員を編成するときにどのような形で個々の意思を確かめてそしてその編成部隊に入れようとなさるのか、防衛庁長官からお答え願いたいと思います。
  185. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ただいままでの議論を通じまして、自衛隊の技能とか経験とか組織的な機能の活用を図るものということで申し上げてまいりましたが、実際にPKO派遣する場合には部隊は既存の部隊そのままではございません。これは法制的にも人数も限定されておりますし、それから何よりも、いろいろ議論のございますように、ある程度の話学力、資質、それからまた本人の希望等も聴取しながら編成することになっていくだろうと思います。  したがって、私ども今まで申し上げている点はべ既存の部隊が訓練されているからそれをそのままそっくり持っていくということを一度も申し上げたことはないわけでございまして、そういう訓練を受けている自衛隊員、優秀な者を集めれば即座にそういう機能がまた果たし得るということも事実でございますから、そういうことを含めて申し上げているわけでございます。
  186. 吉田之久

    吉田之久君 おおよその考え方はわかりましたが、具体的に例えば二千名の隊員を編成するとして、例えば北部方面隊の第二師団のある普通科連隊を主力として選ぶのか、あるいは第二後方支援連隊というようなものが旭川にありますが、こういう部隊がより機能を果たすのかどうか、あるいはそういう形じゃなしに、北部方面隊も東北方面隊も、およそ日本の陸上自衛隊全部を対象にして、その中から各部隊ごとに優秀な隊員をセレクトして選ばれようとするのか、どちらでございますか。
  187. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) まず基本的なことは、要請を受けた場合の自衛隊の任務でございます。これがPKFであるか、あるいは後方支援部隊であるか、施設的な業務であるか等によって異なってまいります。したがって、例えば施設の貢献というようなことでございますれば、今の自衛隊委員御承知のとおり施設部隊というようなものもございますから、おのずからそういったものを中心にその中から選抜して編成することになることは間違いございません。  しかし、一般論として言いますならば、これはそういう特定の目的と結びついたようなものであればそこが主体になることはもちろんでございますが、他から一般的に選抜して、そして本人の希望等も考えながら編成するということは、これは十分あり得ることだということを申し上げておきます。
  188. 吉田之久

    吉田之久君 任務によって編成の仕方が変わることはよくわかるわけでございますが、これは法案がまだ成立していない前から余り論議してもどうかと思いますが、例えばFが凍結されておる。しかし、後方支援部隊はまずは送ってもよろしいという判断でそういう部隊を編成する。それで、Fが仮に解除された場合にまたそれを編成する。そういう場合に、必要に応じてその都度編成がえをするのか。あるいはその人数は、例えば二千名を上限として、Fが凍結されている場合には何百人程度でいいのか。その辺はなかなかに判断なさらなければならない点だと思うのでございますが、今の時点でどのようにお考えでございますか。
  189. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) まず、ちょっと誤解のないように申し上げておきたいんですが、この二千名の法律の限度は、全部自衛稼で満杯にするということには私はならないだろうと思います。特に三条の中で、イから、イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘまではPKいわゆるFと言われ、その後の三項目については、選挙監視、警察あるいは一般行政でございますから、それらを全部含めて国際平和協力隊を編成するわけで、その限度を二千名ということでございますので、二千名自衛隊が行くということは、私は現実の問題としてまずあり得ないということだけ最初に申し上げさせていただきます。  そして同時に、業務が与えられますならば、それに応じまして必要な適当な人員装備等を、これは自衛隊のさまざまな部隊から持ってきてやるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、拝察するところ、将来的にどう考えるかという委員の御意思もあろうか思います。それは、私はやっぱりこの実施状況を見まして、将来的にパーマネントにやる話なんですけれども、専属部隊というわけにまいるかどうかわかりませんけれども、これは非常にやはりPKOの歴史なり経緯なりいろいろの知識を要しますし、ま次語学力等も要しますから、あるいは必要によっては将来的には組織の一部を考えてもいいのかなと思います。  しかし、これはあくまで自衛隊は三条の任務によって有事即応の能力を保持することが第一義的な目的でございますから、そういうものを仮によしんば置いたとしても、その任務は第一義的にございます。そして同時に、定員のもちろん枠内でなくてはいけませんし、それからそれが恒常的にそれだけを目的としたものでないわけでございまして、一般的な我が国専守防衛の任務を果たし得るようにするということは十分考えておかなければいけないと思います。  ただ、それだけを専属的に一つの何といいますか、組織として並立しておくということは今は時期尚早であり、将来的にはどうなるか、これはまたそのときの問題であろうかと思いますが、そういうことも将来的にはあり得るのかなということを申し上げたわけでございます。
  190. 吉田之久

    吉田之久君 私の考えでは、やっぱりこれは一特例えばカンボジアヘ行って、事がおさまって帰ればそれでおしまいというような性格のものではなしに、まあ望まないことではありますけれどもかなり永続的な平和貢献の部隊として日本がその体制をとらなきゃならない、そういう時期に来てしまったと思うのでございますね。  それだけに、私は、将来あるべき姿としては、今長官がお話しになりましたように、専属的なそれにもう専念する部隊、もちろん部隊員の出入りはあってよろしいが、やっぱりそれをもうプロパーとして活躍する部隊というものが組織される。私どもの考え方によれば、その中に一般の国民も参入者があれば参入を求める。例えば特別な医療の専門家でありますとか、あるいは英語を初め東南アジアの言葉もフランス語も十分通訳できるような、そういう人たちもかなり配置しなければなりませんし、あるいは看護婦さんも必要でございます。  だからそういういろんな人たちの参入を求めて、より完璧なより優秀な、そういう部隊を将来構築するのが一番正しいのではないかという考え方を持っているわけでございますが、仮に当面、長官のおっしゃるとおり自衛隊を主体として送るとしても、自衛隊の任務、自衛隊法の第三条は、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」と。このままでは幾ら拡大解釈しても、公共の秩序の維持に当たるために国際的な平和のためにも貢献するんだというのはちょっと無理だと思うのでございますね。  これは、本来そういうことを想定していない時代に、治安出動があり得るとかあるいは災害派遣に出動されることなどを想定しての文言だと思うのでございますね。だから、やっぱりこの自衛隊法の第三条に明らかに、こういう国際平和協力のためにも自衛隊員はその任務を遂行するというきちんとした明記された条項がないと、自衛隊員の本来の任務の中には入っていない別な仕事に駆り出されるというような感じを持つ隊員もあるいは出ないとは限らないと思うんです。  特にこの機会にお聞きしたいんですが、自衛隊員になる場合には宣誓を行っていますね。あれは個々に宣誓するんですか、団体で代表でやるんですか、どういう形でやっていらっしゃいますか。
  191. 坪井龍文

    政府委員(坪井龍文君) お答えいたします。  自衛隊法に服務の宣誓が法律に明文があり、また総理府令で宣誓の文言がございますが、これは学校に入校した際、あるいは二士の隊員等でございましたら部隊で教育を受けるわけですが、その都度全体が集まったところで代表が宣誓する、そういった形でやっております。
  192. 吉田之久

    吉田之久君 そうだろうと思います。  現在自衛隊員には次のような服務の宣誓があります。   私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使  命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一  致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養  い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみが  き、政治活動に関与せず、強い責任感をもつ  て専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険  を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もつ  て国民の負託にこたえることを誓います。こうなっているようでございます。  こういう宣誓をした自衛隊員は、我が国が侵略された場合には、もちろん命を賭して戦う決意を持っていると思いますが、この宣誓の時点で今でき上がっている自衛隊員が海外に平和協力隊として行くことを命ぜられた場合、もちろ人個々の承諾を求めるだろうと思いますけれども、私はいろんな立場であるいは家庭の都合で今は海外に行けませんと言い出した場合に、それに対してのペナルティーなどは一切ございませんね。
  193. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 宣誓をしております以上、自衛隊の職務として負荷されたものを含めてその任務を整々と行うことが、これはもう本旨だろうと存じます。  委員指摘の、家庭の事情その他の点についての配慮はどうかという点については、私ども人事政策上やはり今の自衛隊員のそうした事情はよく平素から把握いたしまして、そして宣誓の場合にもそれらを反映するようにしなければ真の力は発揮できないものと、このように思っております。
  194. 吉田之久

    吉田之久君 次に、私はやっぱり気になりますのは刑法第三十五条正当行為の問題でございまして、先ほど来の質疑を聞き答弁を聞きまして、そういう事態はまずは起こらないだろうと思うわけなんでございますけれども、やっぱり紛争の後の処理に当たるわけでございまして、いっどんな異常な事態が起こらないとも限らない。  そこで、正当防衛及び緊急避難は、それぞれ刑法第三十六条及び三十七条、つまり国内法では規定されておりますが、これに類似するものとして国際法、すなわち条約と慣例では自衛権行使と緊急状態排除行動というものがありまして、古い話でございますけれども、旧海軍の軍艦外務令などにも非常に事細かに詳細に規定されているわけなんでございます。つまり、法令または正当の業務によりなしたる行為はこれを罰せずという規定が適用できたわけでございますが、しかし自衛隊法第九十五条に武器等の防護のために武器使用が規定されておりますけれども、この自衛隊法もしょせん国内法でありまして、PKFのような部隊に参加して外国に出た場合にその国内法が通用しないと思うのでございますが、この辺、総理いかがでございますか、長官でも結構です。
  195. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、九十五条の武器等を防護するための武器使用の点についてお触れになりました。私どもは今回、PKOが、例えば輸送手段として艦船を使用すること沌ございましょう。そうした場合には、やはり公海上におきましてその原則が当てはまることはもちろんでございますけれども、派遣先国においてこれを使用するというようなことは考えられないわけでございまして、派遣先に行けばこれはこのPKOの規定に従ってきちっとやっていくということが原則だろうと、そのように存じております。
  196. 吉田之久

    吉田之久君 そうだろうと思います。それで参るがゆえに、実は国連のコマンドのもとで行動するということ、そのコマンドが一体何なのであるかということはかなり重要な意味を持ってくると思うんです。国連のコマンドのもとで行動するということは、その規範は国連のガイダンス及び指揮命令であり、そのベースは国際の法規、慣例のはずでございます。したがって、日本は特にこの日本の特殊事情というものをよほど懇切丁寧に国連によく説明される必要があります。  例えば、日本から派遣された部隊が番兵に立つ場合、やっぱりどんな危険があるかもしれません。事によっては武器を使用しなければならないことがあるかもしれませんが、それはかなり制約された日本の部隊でありますから、例えば日本から派遣された部隊は番兵には使わないようにしてくれと、そんな話が国連と協定の中で結び得ることができるのかどうかと。あるいは、ちょっと失礼な言い方かもしれませんけれども、自衛隊が仮に六本木でデモをかけられたときは警視庁の機動隊に守ってもらうしかないというような現状に置かれているわけでございますね。といって、外地へ行ってそういう危険が迫ってきたときに、まさかガードマンを雇うというわけにはいかないと思うんですね。それは漫画ですからね。  大体、こういうことに対してどのように国連と話し合おうとなさるのか、お尋ね申し上げます。
  197. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいま、先生御案内のとおり、この法案の二十四条、あくまで武器の使用というのは二十四条の枠の中でしか我が国の場合にはできないわけでございまして、それを基本にいたしまして、具体的にこの業務、我が国に対して国連の方から要請がありますときにどういうふうに対応していくかということを決めていくわけでございます。  なお一武器の賞用、法案二十四条のそういった対応に限られるということについては特に国連にも説明いたしまして、問題がないというふうに了解を得ておる次第でございます。
  198. 吉田之久

    吉田之久君 十分事情を説明して、念には念を入れて、日本派遣するPKO、PKFは諸外国のそれとはかなり事情、背景が違うのでございますということをよっぽどはっきりしておかないと、これはあもぬ混乱に巻き込まれるおそれが大いにあると私は心配するわけでございます。  国連のガイダンスや現地のPKF指揮官の命会に従った行動で、もし他人に傷を負わせあるいけ命を落とさせたような事態が発生した場合に、刑法第三条「国民の国外犯」に基づき、刑法第百十十九条「殺人」や第二百四条「傷害」、第二百千条「傷害致死」等の罪にもしも問われるようなことになれば、これは大変気の毒なことになるわけでございまして、そういう点まで十分配慮してこの措置を決めていかなければならないと思うわけでございますが、総理の御所見はいかがでございますか。
  199. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはもう御指摘のとおりでございまして、そのゆえにこの二十四条でも非常に厳しい条件をつけておるということだと思います。
  200. 吉田之久

    吉田之久君 そこで、やっぱり気になりますのか、コマンドと指揮権についての問題でございます。  米国においても、統合参謀本部と国防総省、これはネーバルオペレーションという指揮権を持っておるのと、それから海軍省の方はネービーデパートメントという形で立場があるわけでありまして、だから軍令と軍政とが区分がされていると思うんでございますね。  このようにして、軍令、用兵つまりオペレーションと、それから軍政、管理すなわちアドミニストレーションというものを分離して考えるのが東西の常識だというふうに思うわけなんです。指揮としては用兵指揮と管理指揮というのに区分されているはずであります。それで、そういうものを両方含めてフルコマンドと言う場合もあります。アメリカの大統領などはそういうフルコマンドという立場にあるようでございますけれども。ここでコマンドとかコマンダーとかいった場合には、普通オペレーションの方の指揮であって指揮官であります。  なぜこんなことを申すかと申しますと、自衛隊員が協力隊に派遣される、そのいわゆる軍政の部分に属するところ、いわゆる管理でありますとか組織でありますとか給与でありますとか、それは自衛隊が統括すべきでありましょうけれども、現地に行った以上はその用兵命令系統は国連の指揮下に入り、国連のコマンドを受けるべきであるというふうに私は思うんですが、防衛庁長官、いかがですか。
  201. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) おおむね先生のおっしゃられたような構成にこの法律はなっておるように思います。  つまり、このコマンド、国連の指図に適合するように実施要領をつくってやるという点はまさに今先生のおっしゃったことを別の言葉で法律上規定したものと思いますし、それからまた懲戒その他身分上の問題についての指揮権、これは部隊等の場合には防衛庁長官が持っておりますし、個人としての国際平和協力隊への任免については総理大臣が直接指揮をするということでございまして、その辺はやはり機能的にある程度はっきり意識をしてこの法文は整理されているものというように存じます。
  202. 吉田之久

    吉田之久君 それにしては、きょうまでの政府の答弁が私どもにしてみれば極めてあいまいもこたるものでありまして、一方では国連の方のコマンドを指図と言い、日本自衛隊が掌握している命令系統を指揮と言うと。しかし、指図と指揮とはどう違うのか、これはどこまでいったって日本人にははっきりしないと思うのでございます。  例えばこの指図という言葉をいろいろ調べてみましたら、指図債権、指図証券、指図手形とか指図小切手とかいうような用語が見当ります。商法や手形法や小切手法などではしばしば用いられている言葉としての指図でありますけれども、こういう場合に、指図というあいまいもこたる表現を使っていかにも指揮権のニュアンスが違うようなことでこの部隊を派遣しようということはかなり危険だと思うのでございます。  やはり向こうに行って、そして国連下の一部隊の構成員になった限りはあくまでも国連の指揮命令系統に従うと、ここをはっきりしておかぬと、指図はどれだけの権限があるのか日本人に説得する場合には、いやあれは指図なんだ、おれたち自衛隊がちゃんとした指揮を持っているんだと言い逃れようとするのでございましょうけれども、これはあくまでも言葉の遊戯だと思うんですね。  この辺をはっきりしておかないと、もしもの事態が起こって相手に何らかの危害を加えたときに、それが指図を受けたぐらいでやって後でまた法に問われれば、これは惨たんたることになるわけでございます。あくまでも出た以上は国連の指揮命令に属する、この辺をはっきりしてやらないと、行く自衛隊も、まして一般の国民もこれは容易じゃないと思うんですが、外務大臣、いかがでございますか。お得意のところをひとつ。
  203. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 今お話がありましたように、私がこの間言いましたことを要約いたしますと、国連の現地司令官は、各国から派遣される部隊が、いっ、どこで、どのような業務に従事するかといった部隊の配置等についての権限を持っています。しかし、これは国連のコマンドという、法案では指図という訳をしております。これは指揮と直したらいいじゃないかという御意見がございます。指令でもいいじゃないか、指揮でもいいじゃないか、何でもいいじゃないかと。  それは私は一つ考え方かもしれませんが、なぜこういうことを言っているかというと、法案では本部長国連のコマンドに適合するように実施要領を作成または変更することとなっており、国連のコマンドは実施要領を介して我が国の部隊により実施をされると。その意味我が国から派遣される部隊は国連のコマンドの下にある、あるいはコマンドに従うということができますと。  結局、指揮系統は、指揮監督はもう本部長総理大臣防衛庁長官が持っておりますが、やることについては国連行動規範等とのすり合わせを行いましてこれでやるんですよと。それから、もしそうでないようなものが仮にあったとする場合は、それは国連のコマンドに従いなさいということを言いますから、完全な指揮権は、その命令に違反したような場合は日本が全部持っていますと。そういうことでこの法案の中にも本部長の指揮監督というものがあるものですから、国連の指揮監督ということでなくて、本部長が指揮監督をすると。国連の方を指揮と訳すと混同するおそれがあるので、それであえて指図というような言葉を使ったということでございます。
  204. 吉田之久

    吉田之久君 大体大臣の言わんとされる本音がわかったような気がするわけでございますが、しかしこういうときにどんな有事の事態を迎えるかもしれない。そういう状況下に置く部隊の指揮命令系統というものは単純明快でないといかぬと思うんです。  国連のコマンドに従うということは国連の指揮に従うということなんです。国連のあれは指図なんだと、指図と言ったら大変日本語で何となくソフトな感じを受けますが、厳然たる指揮権自衛隊にあるんだと、それはそう言いたいでありましょうが、実際そういうことに臨む部隊にとってはそういうあいまいな規定の仕方というのは大変な危険を伴うことがあると思うんです。だから私は、派遣された部隊は国連の指揮下に入り、国際の法規、慣例に従って行動するものとするということをこのPKO法案の中にきちんと明記しておけば、それに従った行動は法令または正当の業務によりなしたる行為ということで国際法で守られると思うのでございます。  場合によっては、日本政府指揮権によって撤収させる場合があると思うんです。しかし、実際の段取りとしては、派遣元が出向者に対して、例えば民間会社の場合もそうでございますね、派遣元の会社が出向先の会社に出向させている人間に対してある日突然引き揚げろと命令できませんね。したんじゃ、それはもう出向先の方が大混乱に陥るわけでございます。給料は出向元の方からちゃんと保障される、しかし出向先の就業規則に従うと。出向元は週休二日制だ、土曜日は働かないんだ、出向した先は土曜は半分は働くんだ、おれはそれに従わないんだと、そんなことはあり得ないんですね。  だからきちんと、自衛隊というものは国連の元に出向するわけでございまして、そしてきちんと国連の指揮下に入ると、この辺をやはり明文化してやらなければならない。どうしても派遣元が出向者に引き揚げさせる場合には急にはいきませんので、事情を言って、いつには代替要員を送るとか、あるいはどちらの方の支援に回るからそこを埋めてくれとかいうことをやらなきゃいけません。  だから、事態の変化に応じて日本政府派遣部隊を撤収させるという場合は、国連の事務総長に通告して指揮、コマンドを国連から日本政府にそのときに移管する。テークオーバーと呼ぶそうでありますけれども、きちんと移管する。それからは日本指揮権下に入る、その逆もあり得ると、この辺をはっきりして、その上でしかるべき地点や空港や港湾へと集結を命じていく。それは日本の権限、指揮だと思うんですが、その辺ははっきりしなきゃならないと思うのでございます。  総理、いかがでございましょうか、こういうやっぱりかなり重要な問題だと思いますので。
  205. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、吉田先生のおっしゃられる点は重要な視点だと存じますけれども、この国際平和協力業務は、あくまで我が国の自主的な判断で憲法の制約との整合性を図りながらこれに貢献していくものでございまして、基本的にそういう性格のものでございます。  したがいまして、この指揮権につきましては今、指図の問題と指揮権関係について再度外務大臣の方からも御答弁がございましたように、国連の指図、コマンドというのは部隊の組織、配置、行動等に関するもの、これは基本的なものでございます、任務遂行上。大体我が国の場合もこの指図に適合するように実施計画ないし実施要領をつくって実施するわけでございまして、この法制上の建前は、あくまで指揮権は本部長である内閣総理大臣または防衛庁長官にあるわけでございます。同時に、このことは国連との調整が図られて一致すべきものでございまして、そのような構成になっております。  そして、なおかつ今の中断の問題についてあるいは撤収の問題について、私どものこの法制上の建前とは違う考え方、これは軍事一般ではあるいは先生のおっしゃるようなことであろうかとも存じますけれども、私どもが直接侵略に対応する場合と異なりましてこれはあくまで国際協力でありますから、我が国の主体的な意思とそれから憲法の建前というものはきちっと守らなければならないわけでございまして、そのためにこそ五原則というものがあります。  その重要な一つが中断であり撤収であるわけでございます。この点は国連との間で事前了解もあり、またそれに従って法文上も我が国はそういった状況になった場合は撤収するということを明確に規定してあるわけでございまして、この点はこの平和協力業務の特殊性に基づくもの、そして我が国自衛隊を海外に派遣する場合の制約条件をきちっと我々が踏まえてこのような構成になったものということで、これはきちっと貫いていかなければならないものだと思っております。
  206. 吉田之久

    吉田之久君 長官は、国際紛争の場合と違ってこの平和維持軍の場合にはそういう懸念はまず及びにくいだろうというような考え方でいらっしゃるようにも思うわけでございますけれども、やっぱり不幸な例もあるわけでございます。  例えば、レバノン南部に配置されたPKFは、一九八二年のイスラエル軍のレバノン進攻に際してこれを阻止しなかった。あのイスラエル軍のレバノン侵攻はイスラエルの国家意思によるものでありましたので、その阻止はPKFの任務外でございますから阻止はしなかった。しかし、そこで撤収するか否かは国連事務総長、現地国連代表のシビリアンコントロールによって決せられたはずでございます。現地の部隊指揮官は、これを阻止すること、イスラエル軍を阻止することはしないで、たしか展開しておった部隊を、イスラエル軍の進攻通路は主要幹線道路沿いに攻めてきたようでございますので、それから外して幾つかの集結地点に集めたはずだと、しかしその間にも若干の犠牲者が出たと聞いております。  こういう事態がやっぱり万に一つ起こらないとはだれも断定できないわけでございます。そのときに、あれが指図だとかこちらが指揮だとか、それはちょっと、そういう言葉のニュアンスでは判断に苦しむことが生じては大変だと思うわけでございまして、私は自衛隊指揮権を全部もう完全に外せなどと言っているわけではありませんが、いやしくも一つの部隊として国連の配下に入った以上は厳然として、目の色の違う指揮官であろうともその指揮官のコマンドに従うということをやっぱりよほどはっきりしておかなければならないというふうに思うんです。  この辺をはっきりしませんと、いざというときに対処をどうすればいいのか的確な判断がおりてこない。あるいはおりたって、それが指図なのか指揮なのか、日本語で解釈したんじゃよくわからない。もたもたしておれば犠牲者がふえるばっかりの事態もあり得ると思うんです。  先ほどもいろいろ委員から御質問がありましたが、隊員個人個人の判断で自衛のために応戦するか否かを決めさせるのならば、持ち場を離れて撤退するのも個人個人で判断してもいいはずでございまして、それならもう指揮官は全然要らぬわけでございます。そんな部隊というのはない、まさに烏合の衆になると思うんですね。だから、だれがけじめをつけるか、だれが束ねるのか、この辺をよほどはっきりしてやっていただきたいと思うのでございますが、総理、私の言うことはおわかりいただけますでしょうか。
  207. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘の点はよく御質問としてはわかっておるつもりでございます。  我が国として、このような国連の平和維持活動に積極的に貢献をしたいと私ども考えましてこの法案を御提出しておりますけれども、我が国には我が国憲法がございますから、そうでない国と常に同じような条件で国連の平和維持活動に参加するわけにはまいらない。それが御承知のように五原則等々になるわけでございますが、この法案り中で申しますと、先ほどの武器の使用の場合がその一つでございます。これは御承知のとおりのことでございます。  それから、なお申しますと、法案の第六条にございます派遣の終了と言われる事態、あるいは第八条にございます中断に関する事項、これらはいずれも紛争当事国、当事者、あるいは当事者の属する地域の国の間の同意が存在しなくなった場合、国連の中立性、普遍性というものが失われた場合ということを言っておるわけでございますけれども、それらはいわゆる海外における武力行使というものが行われることがあってはならないという、そういう憲法の配慮から出たものでございますので、その限りにおきまして、いかなる場合でも全く無条件に他の国と同じょうに標準的な国連のOPに従うというわけにはいかない。そういうことを考えました結果、実施要領によって両方をつなぐという、多少法律的には確かに複雑な構成をいたしておりますけれども、趣旨といたしますところはそのような趣旨でございます。  御質問の趣旨も十分了解いたしました上でお答えを申し上げております。
  208. 吉田之久

    吉田之久君 総理初め各大臣の思い、願望、それはもう痛いほど私どもにもよくわかります。あくまでも終始平和そのものの部隊でありたい、断じて武器は使わせるべきではない、全くみんな日本国民同じ思いだと思うんです。しかし、参加するPKFは、他国の正真正銘の軍隊も参加しているわけでございますね。そこで、日本は違うんですよ、違うんですよと十分丁寧に断って対応するんでありましょうけれども、いざ予期せぬ戦闘場裏に入りましたら、そんなことは一々火急の中で区別できなくなるおそれは十分にあると私は心配するんです。  だから、例えばきょうまでの答弁でも、いよいよ正当防衛しなきゃならない場合には個人個人の判断で武器使用はしてもいい、しかし指揮官が撃ち方やめだけは束ねるとか、撃てとはだれも言わない、やめろだけ言うとか、それじゃやっぱり非常に判断に迷いますね。そういうおそれを私は感ずるんです。感じない人は幸せだと思いますが、心配し過ぎかもしれませんけれども、私は思うんです。ですから、その辺の対応をどうするか、よほどコマンドの問題を初めきちんとその対応を明快にしてやらないと、とてもやPKFは凍結を解除できないんじゃないかというふうな気がするわけなんでございまして、どうかその辺のところをさらにひとつ政府としても慎重に御検討をいただきたい。  それから凍結除外に関する問題でございますけれども、例えば通信は後方支援だから凍結の対象から除外してはというような意見もあるようでございますし、医療機関はどうするのか、あみいは任務規定の中には警察行政事務がありますね、そういう部分については果たして自衛隊だけでいいんだろうかとか、いろんな問題が出てくるわけなのでございます。  私は特に申し上げたいのは、後方支援だから絶対だ、絶対大丈夫だとは言えないと思うんですね。昔から戦いの常識として、前方に展開してくる部隊が強ければその後方を遮断する、輸送路を断つ、通信網を遮断してしまえばもう前の部隊は自滅するわけでございまして、だから後方だから絶対安全だと言い切れない。何をもって後方支援とするか、何をもって凍結から除外して自在に活動が展開できるのか、この辺もよほど研究をしなければならない。  時間がございませんので固めて申しますが、医療機関の場合にも、これはやっぱり自衛隊とは完全に絶縁した組織で、まさに素っ裸で赤十字の旗で守るというようなことの方がより安全だし、任務が遂行できるのではないか。いろんなそういう問題を思うわけなのでございますが、長官、いかがですか。
  209. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 凍結論の話はこれは国会でお決めいただくことで、私どもは今提出している法案がベストだという建前で議論をさせていただいております。  今の医療の問題は、やはりそれは委員のおっしゃるように、赤十字その他の場合によると、それは全然役に立たないということはないと存じますけれども、今自衛隊では例えばビッグレスキューというのを北海道の自衛隊で最近大きな演習をやっております。そして、野戦病院的な、いわゆる完結型の手術その他の応急手術ができるというようなそういうような組織を持っておりまして、派遣国の状況によっては自衛隊のそうした組織力、そうした装備、そういったものが必要な場面というのは私は必ずあるだろうと思うんです。  この法案では、そういうことも可能だということで三条の任務の中に「医療」ということが書かれてございまして、私どももこの法案を成立させていただければ医療面で十分な対応をしていきたい。量的には、もちろん自衛医官の充足状況も今十分でございませんが、必ずしも量的な問題はそう大きなものにならないとしても、完結型の医療救援業務は自衛隊でなければできないものではないかなと、そんな感じがいたしております。
  210. 吉田之久

    吉田之久君 重ねて申しますが、私どもは自衛隊派遣を全面否定しているわけではございません。大いに自衛隊も役立ってほしい。しかし、それは自衛隊プロパーでなければいかぬのだというかたくなな考え方よりは、ある部分本当に海外協力に役立つ、志願する人があればそういう人たちも参入させていく方がより国民の合意も得られますし、また送られる部隊は自衛隊そのものではないということも十分他国に説明がつきますし、そういうことを考えているわけでございます。  この間、明石代表がお帰りになったときにこの委員会が開かれまして、そしてその質疑の中で、例えば沖縄にでも一つの訓練基地をつくって常時訓練させてはどうかというような意見があったようでございますが、私は、沖縄はやっぱり特殊なところでありまして、沖縄でそういう訓練場所を新しくつくることはいかがなものかと思うのでございます。  むしろ富士すそ野に、富士駐屯基地にこの訓練場所をつくって、そしてきちんと国民の目にはっきりと平和協力隊が編成された、自衛隊とはそれは別個のものであって、国連旗を授与されてブルーベレー帽をかぶって、そして記章を着用して、各級指揮官がそれぞれ任命される。また、その後も大いにその辺で訓練をする。あるいはできるだけ外国語の勉強をする。事情が許せば他の国のPKFとも総合共同訓練をやる。あるいは時にスウェーデンの指揮官を呼んで指揮をとってもらうというぐらいのことをやればいいのではないか。  井上議員の御了解をいただきまして時間を全部いただいてしまって申しわけないのでございますが、そんな考え方を私は持っているのでございますが、どなたか、いかがでございますか。
  211. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  明石代表の御指摘の研修センターの点でございますけれども、やはり私どもこの法案をぜひ一日も早く成立させていただきまして、それで現実の実績を積み重ねていくということが重要だと思っております。その実績、PKO協力の実績を積み重ねるということは、まさに訓練、研修についても同様に実績が積み重なるということでございますので、まずそういった実態をよく見きわめることが重要であゐというふうに考えております。  非常に的確な御指摘でございますので、その上で真剣に検討すべき課題であるというふうに認識いたしておる次第でございます。
  212. 吉田之久

    吉田之久君 総理を初め各大臣に重ねて申し上げますが、我が国開闢以来初めての経験になるはずでございます。外国に軍を進めた経験は持っておっても、外国に平和のために貢献する部隊を派遣する、それが自衛隊、民間、いずれであろうともこれはかってない初めての経験であり、それだけに重大な意義を持っておる。かつそれは半年や一年で終わるべき問題だとは残念ながら思いません。だとするならば、ここまで見事に成長した責任ある国家が本当に世界平和のために身を挺してどのように貢献すべきであるかという重大な問題でありますだけに、どうかひとつあらゆる問題を懇切丁寧に御検討いただいて間違いなきを期していただきたいと思います。  時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  213. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 PKO協力法案国会に提出をされて以来多くの議論が重ねられてきたわけでありますけれども、その是非の分かれ目になっているのはやはり武装自衛官あるいは自衛隊海外派遣の是非であろうかと思います。すなわち、我が国国際貢献憲法九条との関係をどう考えるのか、その辺が議論の分かれ目になっていると思いますので、まず憲法九条の問題について総理のお考えを伺いたいと思います。  少し歴史をさかのぼりますが、昭和二十一年の六月二十五日、第九十回国会において、当時の吉田首相から憲法改正に関する趣旨説明が行われております。このときの議事録を見ますと、第九条に関して野党は総じて、なぜ自衛権まで放棄しなければならないのか、あるいは戦争には侵略戦争と防衛戦争がある、したがって侵略戦争だけ放棄すればいいんではないかというような主張が行われており、これに対して吉田首相は、国家正当防衛権を認めることは有害である、もし平和団体か国際団体が樹立された場合においては正当防衛権を認めること自体有害なんだという趣旨を繰り返し答弁されております。  こういう議論を思い起こしてみますとまさに隔世の感があるわけでございますけれども、その際でも歴史観あるいは情勢判断をどう持つか、そういったことについて明らかにするということが大事なのではないかとあわせて考えられるわけであります。当時と今日とでは情勢も大きく変わり、また日本のポジションも変化しているわけでありますけれども。  そういう中で、先日、自民党の小沢調査会から答申案が出され、その中で憲法九条にも触れる問題が取り扱われております。憲法九条の読み方に関しては、今もって軍事的覇権は求めないという自制的な規定なのだと言う人がいたり、あるいは海外軍事不関与の表明だと言う人がいたり、その他意見はたくさんあるわけであります。そういう中で、この調査会答申というのは憲法論議に一石を投じたという意味で私は有意義なことだと感じている次第であります。  そういうことを頭に置きながら質問するわけでありますが、総理は、憲法前文にある「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という規定と憲法第九条との関係をどのように把握、理解されているのか、あるいは小沢答申案を今後どのように取り扱おうとされているのか、伺いたいと思います。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 憲法解釈につきましては、本来ならば法制局長官からお答えをすることが私は正確を期する意味でよろしいと思いますけれども、我が国がいわゆる軍事大国にならないということについては、私は憲法基本的な考え方、そういうことであろうと存じておりますし、また前文にございます平和を愛好する諸国家の信義に信頼をして云々ということにつきましては、我々は軍事大国にはならない、したがって世界の平和の維持についてはそれらの国々のいわゆる信義というものに信頼をしたい。これはすぐ国連ということを言っておるわけではございませんけれども、いわばそのような世界全体の平和の維持増進の仕組みあるいは機構、あるいは意思というものに信頼を寄せたいということを言っておるものと考えております。  私どもの党内で、憲法につきましては、憲法そのものについての討議をする機関もございますし、また小沢議員による小沢調査会もございます。私自身は、憲法を常にあらゆる角度から検討する、考えるということは大事なことであって、これをいわば神棚へ置いておけばいいというような考え方は私はいたしておりません。憲法についていろいろな議論が行われることは極めて大切なことである、国民憲法に関心を持つゆえんであると考えておりますので、そのことは私はむしろ積極的に歓迎すべきことだというふうに考えておりますけれども、そのことが即憲法改正が入り用だということには別につながっておりませんで、常にそういう議論が行われることは望ましいことであるというふうに私としては考えております。
  215. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 小沢調査会の答申案では、憲法九条に関する政府見解を修正すれば国連軍にも参加できるんだという趣旨のことが述べられております。この答申とは切り離してのことでございますが、総理自身は今の憲法でも九条に関する政府見解を修正すれば国連軍に参加できるとお考えなのか、あるいはどう見てもそれは無理だとお考えなのか。私は国連軍がにわかに創設できるとは思っておりません。ただ、そういう機運に動きつつあることも確かですし、一つの答えを持っておくことが大事なんではないかと思いますので、お尋ねいたします。
  216. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 第一に、いわゆる小沢調査会が最終的な結論にまだ達していないというふうに承知をしておりますし、議論の過程においていろいろな経緯があるようでございまして、どのような結論になっていくのかも定かではございません。ただいま御指摘になりましたような方向を示唆しているかどうかにつきましても、曲折がございまして、ただいま必ずしもはっきりしていないようでございます。  第二に、いわゆる国連軍我が国が現行の憲法のもとで参加できるかどうかということにつきましては、国連憲章第七章で国連軍というようなことが想定されておるようではございますけれども、かつて国連軍が真剣に議論されたあるいは創設されたことはもとよりないわけでございます。そしてそれとの関連で、そのためには国連憲章の第四十三条でございますか、特別協定を結ぶことが必要であるというふうなことも書かれておりますけれども、その特別協定がいかなるものであるかも実はそれ以上敷衍されておりません。  したがいまして、国連軍というお尋ねについて、国連軍というものが定義されておりませんので明確なお答えができない。むしろ、ある一定のもとにこういう種類の国連軍についてはどうかということであれば、これはまた法制上の立場からもお答えができるわけでございますけれども、国連軍そのものが明確に規定されておりませんために正確なお答えができないということが真実ではないかと考えております。
  217. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ところで、ことし一月、総理は安保理サミットに出席されました。そのとき我が国が常任国入りを目指していますという趣旨のことを言われたやに報道されているわけですが、それは本当でしょうか。もし安保理入りを目指すとすれば、ほかの常任理事国並みに安全保障についても日本は一定の責任を持ちますという決意がなければならないと思いますが、そうした決意をお持ちの上発言されたのかどうか、お尋ねします。
  218. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ことし一月の末に安保理事会サミットにおいて私が申しましたことは、正確に申しますと、このような新しい平和秩序を構築する時代に向けて果たす国連の役割というものを強調いたしました。またそれと同時に、国連が新たな時代に適合したものとなるように絶えず検討することが重要であるということを申したのであります。  それは、そういう言葉は使いませんでしたけれども、お互いがよく知っておりますように、今の国連憲章そのものは第二次大戦の戦勝国と敗戦国というものを反映したような書かれ方になっておりまして、だれが見てもそれは時代に適合いたしませんし、また国連加盟国の数ももう今は百七十八になったんでございましょうか、最近またふえたりいたしておりますし、安保理事会の機能もそうでございます、財政もそうでございます。そういうことを一般的に申したわけでございますけれども、我が国国連安保理事国になることを目指しておるとは私は直接には申しませんでした。  本来、今申しましたような国連憲章あるいは国連のあり方を今の時代に適合したものに改めるといたしますれば、これは大変な大きな仕事になると思いますが、今寺崎委員が御指摘になりましたような問題が恐らく当然に出てくるのだろうとは考えておりますけれども、なかなかそこに至ります道が、問題の大きさが大きさでございますのではっきり見えてまいりませんで、私といたしましては、その国連が今の時代に与えられた責務、それにたえ得るようなものに適合したものになるように検討することが絶えず必要であるという問題提起にとどめたというのが一月の末の私の発言でございます。
  219. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ところで、湾岸戦争のときの我が国の対応というのは、後で機雷掃海のために海上自衛隊派遣いたしましたが、結局のところ多額の資金を提供したということにとどまったと思います。このことの是非についてその後の議論というのが意外に少ないのが実態ではなかろうかと思いますし、私は資金の提供ということがベストの選択であったのか、日本の将来にとってこういう方向で進むのか、そういったようなことはもっともっと議論されなければいけないと思うんです。  あわせて、湾岸戦争我が国がとったような態度が、つまり汗は流しませんというような態度が今後通用するのかどうかというようなことも考えておかなければいけないと思います。世の中全体を見ますと、やはり湾岸戦争のときのように各国が集団で国際的な平和維持活動を行うための行動をするという方向に向かうのではないかとも思われるわけで、その際我が国としては集団的自衛権の問題をどう考えるのか、避けて通れない問題なんだろうと思うんです。  今まで、政府見解については承知しておりますけれども、総理自身はこの集団的自衛権についてどのように理解しておられるのか、あるべき姿はどうだとお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。
  220. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点も法制局長官を煩わすことが適当であるかと思いますけれども、大まかな常識といたしまして、我が国自衛権を持っていもことはこれはもう明らかでございます。九条のもとにおいて許容されている自衛権行使は、これが我が国を防衛するためにいわば必要最小限度範囲にとどめられるべきものであろう、そういうふうに解釈すべきものであろうと。そうでありませんと、これは無制限な自衛という観念に発展しかねないであろうと思いますので、そこでその集団的自衛権行使することは、いわゆる日本を防衛するための必要最小限度範囲を超えるものであるのでできない、それが憲法九条の定めるところであると、これはごく常識的な理解でございます、余り正確じゃないかと思いますが。正確なことはお入り川ならばまた法制局長官からお答えいたしますが、そのように考えております。
  221. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) いいですか。
  222. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 じゃ、お願いします。
  223. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 集団的自衛権憲法との関係についてのお尋ねでございますが、国際法上、国家集団的自衛権、ここの場合定義して申し上げた方が適当だと思うんですが、自国と密接な関係にある外国、そこに対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもってそのような攻撃を阻止すると、こういうことが正当化されるような地位、これをいわば集団的自衛権と言っていると思いますが、そういうものを有しているかどうか。我が国国際法上の観点から申し上げればそのような集団的自衛権を持っていることは主権国家である以上当然であると、これは従来から申し上げてきているところでございます。  ただ、従来からこれまたあわせて申し上げておりますが、政府としては次のような理由から、従来から一貫して我が国集団的自衛権行使することは憲法上許されないと、こういう立場に立っております。その理由と申しますのは、憲法は、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとること、これは禁じられていないということでございますが、それはあくまでも外国の武力攻撃に対しまして、国民の生命、自由それから幸福追求権利、こういうものが根底から覆される、そういう急迫不正の事態に対しましてそういう権利を守るためのやむを得ない措置として初めて許される、こういうことでございまして、その措置は当然いわゆる自衛権発動の三原則等々にも言われておりますように、こういうやむを得ない措置というのもそういう事態を排除するためにとられるべき必要最小限度範囲にとどまるべきであると、かように考えているわけでございます。  したがいまして、先ほどの定義に戻りますが、他国に加えられた武力攻撃を阻止すること、これをその内容といたします集団的自衛権行使、これは憲法上許されないと、こういうふうに申し上げているのが従来の解釈でございます。
  224. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 憲法九条に関して、あえて反論もせず幾つかお尋ねしましたのは、私は、憲法というのはもともと国家国民の財産、生命を守るためにあるものだし、そのために国民が決める基本ルールであって、それ以上のものでもそれ以下のものでもないと。また憲法というのは、どんなに正確を期して整合性考えてつくったとしても、欠点がないというものはないであろうという認識のもとにお尋ねしましたので、あえて反論はいたしませんでした。これまでは、一定の憲法解釈の幅の中で、その憲法の持つ欠点とか、さらに言えば矛盾を処理してきたわけでありますけれども、しかし事九条に関して言えば、国民から見てますますわかりづらくなっているというのが今日の実態なんだろうと思うんです。  ある人は、針の穴から象を引き出せるかどうかということを国会は何日もかけて議論するんですかというようなことを言っております。恐らく国民の副から見れば、今のPKOの問題にしてもそういうふうに感じられる部分が少なくないんではないだろうかと思います。といって、憲法を改正するというようなことはこれは大変人ごとなことですし、やっていいのかどうかということも大きなその前提として議論が必要になると思うわけです。  ですから私は、憲法は変えないで、例えば安全保障基本法というような基本法を制定する中で、例えば九条と自衛隊関係、あるいは自衛権の問題、国際社会における貢献のあり方の問題、そういったものをあわせて議論をしながら、国民にわかりやすい状態にしていくことが今求められているのではないかと思いますが、総理はこういう提案をどのように受けとめていただけますか。
  225. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたのと同じような意味において、つまり憲法についての国民の各層における広い議論というものは常に有意義であるという意味におきまして、九条につきましても議論が起こりますことは私は一向に差し支えないことであるし、むしろ憲法の志向いたしますところを国民理解するゆえんであろうというふうに思っております。  ただ、先ほども法制局長官からもお答えをいたしましたが、九条が許しております自衛というものは文字どおり、例えば他国に対して起こった危害が即我々にとっての危害であるといったような、それが集団自衛ということの仮に基本であるといたしますならば、そういうふうに広く解釈いたしますときには九条の解釈が大変に広くなってしまいまして、これが破れるおそれ少なしとせずと思いますものですから、私どもはそこを先ほどから申しましたようなふうにとらえておるわけでございます。もとより、これと違う解釈についていろいろな議論が行われるということはこれは自由でございますし、そのことを封殺しなければならない理由は別段少しもございません。議論は自由に行われてよろしいことでございますが、政府といたしましては、従来からただいま申しましたような見解をとっておるところでございます。
  226. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 経済に国境がなくなったというようなことを言われて久しいわけでありますけれども、最近の政治世界でも内政干渉という言葉がだんだん垣根を低くしているように思えます。そういう中で、自衛権考えた場合に、自衛というのは言うまでもなく広い、自衛とか防衛というのは広くも解釈できる問題でして、経済的な防衛だとかエネルギー防衛だとか食糧防衛だとかそういうように使われているケースもないわけではない。したがって、そういった問題も含めて我が国国際貢献のあり方として、我が国の持てる力をどう発揮するかとか、自衛のための力の行使というのはどういうところが限界なのだとか、そういうこともいろいろ安全保障基本法みたいなものを提案することによって固めていくというのが一つの方法ではないかと申し上げたんですが、その点に関してはいかがでしょうか。
  227. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 専門家でございませんので余り深入りをしてはいかぬかと思いますけれども、今のような御発想でまいりますと、経済問題おどとの関連で申しますと、お互いにいわば一種の相互主義、お互いにお互いを助ける、あるいは利益をいわゆる相互主義というふうに経済上の原則は考えなければなりませんけれども、安全保障につきましては、先ほど申し上げましたような理由で相互主義というものが非常にとりにくい。  これは端的な例は日米安保条約でございますが、厳格な意味でもアメリカに戦争の危機が生じましたときに我が国がそれを我が国に対する危険だととるわけにはいかない。御承知のとおりでございます。その逆のことは可能でございますけれども、我が国からそういう相互主義立場をとることが九条の私どもの伝統的な解釈から申せばできないことでございますので、広い意味での経済、広い意味での国の安全、セキュリティーも含めまして一つのこのコンセプトをつくるということにやっぱり難しいところがあるんではないかという、これは私、深く考えませんので、もう少し考えさせていただきますが、お尋ねについてはそのように私は今考えます。  正確を期しますために、法制局長官から補足することをお許しいただきたいと存じます。
  228. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 若干補足させていただきますと、先ほど私、集団的自衛権の定義を申し上げましたように、集団的自衛権と申しますのはいわば実力の行使に係る概念でございまして、そういう意味経済的な問題というのとはおのずからその範囲を異にしているかと。そして、いわゆる集団的自衛権の議論のときに、経済的問題というところまで私どもは範囲を広げているわけではございません。  それからなお、双務的というふうな御指摘ございましたけれども、これは例えば昭和五十五年に答弁しているところでございますが、いわゆる集団的自衛権は我が憲法において認めていないと解釈しております。御指摘の双務的なものにするという意味集団的自衛権行使という意味でございましたら、そういうことは憲法九条に反する、かようにお答えした例もございます。
  229. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 自衛権政府見解については、今までも幾たびか伺っているわけでありますけれども、PKO協力法案審議するに当たって、例えば武装した自衛官あるいは自衛隊を海外に派遣することの是非という話については全くコンセンサスができていないというような状態で、すれ違い論議がもう二年近くも繰り返されてきたんではないか。そういうことを懸念するので、安全保障基本法のようなものを通じて議論を整理していく、そういう時期に来ているのではないかという意味で御提案申し上げているわけでして、ここで自衛権の定義をお伺いしようというわけではございません。  外務大臣にお伺いいたします。  五月十八日に当委員会で、指揮権に関する見解を改めてお述べになりました。正直なところ、従来の見解とどこが違うのか、あるいは同じなのか、私にはなかなかのみ込めないんです。ということは、国民はもっと、普通の国民というか普通の関心しか持てない立場国民の人は何を言っているのかよくわからないんじゃないか。  また、コマンドを受ける立場の人もぱっと読んでのみ込んだという状態にはならないんじゃないかと思うんですが、外務大臣流にわかりやすく説明していただきたい。
  230. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 従来言っていることは変わらないんです。この間言ったことは総まとめにして言っただけでありまして、もともと参加をする以上はコマンターのコマンドに従うということでございますから。しかし、これは日本法律のもちろん範囲内で従うわけですよ叫ですから、あそこのところを仮に指揮と、掛図が指揮というように訳したっていいじゃないですかという議論がたくさんあります、わかりやすいから。  ところが、この法案の中で本部長の「指揮監督」というような言葉もありまして、これは首尾、一貫したいわゆる懲戒権まで持った指揮権が本部長にあるわけであります。ところが、向こうの司令官の方は懲戒権まで持った指揮権というものは持っていないので、それがごっちゃにされるのでは困るというようなこともこれあり、指図というように訳したと。  この言葉がともかく耳なれないと。指図権なんていうのはないんじゃないかというようなところからいろいろな議論が出ておるものと考えられますが、我々の言うのは、やはりそのコマンダーのコマンドに従うんだと。しかも、日本の本部長が向こうといろいろこの行動基準等の規範ですか、すり合わせ等をちゃんとやって、その実施要領とか実施計画をつくるわけですから。そこで、その他のことについても、五原則というようなものを守ったほかにおいてはコマンダーの指図に従うんですよと、こちらが命令をして出すわけですから、自衛隊員にですね。だから少しもそごは生じないということを言ったわけであります。
  231. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 この法案で、指揮と指図を区別して使われたのはそれなりの考えがあってやられたことだとは推定しておりますけれども、大変わかりづらいというのも確かだろうと思うんです。  例えばこの法案のつくり方として、いわゆる五原則の部分派遣だとか撤退、終了あるいは身分に関する部分については国連日本国政府が外交交渉で取り決める。それから、現場におけるオペレーションコマンドについては全面的に国連にゆだねるという前提で法律をつくるということも可能だったし、そうすれば余りコマンドについての混乱がなかったんではないかと思うんですが、そうした場合に何か支障があるんでしょうか。
  232. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生、この法案の背後にある考え方は、PKFが通常の状態で活動しているときに、国連のコマンドが、何度も当院で議論の対象になっておりますこの派遣モデル協定の国連の司令官が、配置、組織とか行動について行うその権限をそのまま実施するというそういう仕組みにしておるわけです。  ですから、繰り返しますけれども、通常の状態におきましては、国連の司令官が出すそのコマンドはそのまま日本から行った派遣隊によって実施される、そういう仕組みになっておるものですから、まさにこの間の外務大臣の見解の中でも、そういう意味におきましてはこの指図と国連のコマンドとは同義ですと、こういうことを申し上げていることでございまして、そういう意味では先生がおっしゃっておることと同じ考え方に立って仕組みをっくっておるつもりでございます。
  233. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ニアミスをしているような御回答をいただいているんですが、先ほど私が申し上げましたように、外交交渉にゆだねる部分と、それから現場の指揮権国連にゆだねるというような前提で整理しますと、例えば外務大臣発言は二カ所ほど修正していただくとすぐ頭に入ってくるんです。    〔委員長退席、理事岡野裕君着席〕  ペーパーをお持ちのようですから見ていただければと思うんですけれども、パラグラフの2で、「防衛庁長官はこというところがありますが、「防衛庁長官は、この実施要領に従って、我が国から派遣される部隊を指揮監督しこと書いてありましたが、「部隊の指揮権国連に委任しこと直して、「国際平和協力業務を行わせることとなっている。」というと、ああそうかと、外務大臣流に言うとこういう言葉になるんだと思います。  その次、「このように、国連の「コマンド」はこじゃなくて、「国連の平和協力業務」、「PKOはこと。「「コマンド」はこじゃなくて、「PKOはこと主語を直していただいて、「実施要領を介して国連の「コマンド」のもと実施されることになっておりこというと大変一貫性があるんですが、こういう読み方は間違いでしょうか。
  234. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  今の先生の御指摘の一番のポイントは、防衛庁長官の指揮を国連に委任、たしか「委任し」とおっしゃいましたですか、というところでございまして、やはり国際連合が有しております権限と各部隊に対する権限、これはもう何回も御説明申し上げておるところでありますが、長年の慣行からできておりまして、モデル協定第七項で規定されておるものでございます。いつ、どこで、どのような業務に従事するかといった配置等についての権限でございますが、同時にこの第七項には、やはり派遣された要員というのは引き続き本国の役務に服するということ、つまり国連PKO活動への参加協力ではございますけれども、我が国公務員としての公務に従事するという側面があるわけでございまして、そこはやはりはっきりさせておく必要があろうかと思うんです。  つまり、国際連合の有しておる権限に基づきまして、各国からいろんな部隊が参加するわけでございますけれども、それがきちんと国連の指図のとおりに運用されるということがやはり国連にとって一番の関心事でございまして、そこの点について、それを各国の部隊がどういうふうに受けとめて実施するかというのは、それは各国いろいろ考え方があろうかと思います。  我が国の場合には、やはりこの法案実施要領というのが入っております関係上若干わかりにくい側面があろうかと思いますけれども、実施要領を介しまして、防衛庁長官がこの法案の枠内で、その国連の有している権限でございますコマンドどおりに実施するということでございますので、その点、私今申しました、先生の御指摘の一番のポイントの防衛庁長官の持っております。そのコマンドを受けての部隊の指揮監督権というのを委譲とか委任してしまいますと、まさに部隊の指揮はとれなくなってまいります。そうしますと、そのコマンドどおりの実施法案の枠内での実施というのができなくなるものでございますので、ひとつ御勘弁いただきたいと思います。
  235. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 なかなかこの問題は複雑怪奇で私もよく理解できないんですが、せんじ詰めて言うと、SOPによると、PKOにおける軍事要員は、活動事項に関しては出身国の命令は受けず、国連事務総長から命令を受ける指揮官の命令のみを受けることがPKOにおける基本原則であるというところがありますが、国連のコマンドと実施要領をすり合わせることによってこのSOPの規定もクリアできるというように受けとめてよろしいでしょうか。
  236. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  大臣が何回もすり合わせという言葉で使っておられますけれども、現実のコマンドの内容、それをまさにこの法案でそれに適合させるように実施要領を作成、変更すると、そういう形できちんと調整を行うわけでございまして、その点そごが生じないようになっております。  また、同じくモデル協定で、これは第九項でございますが、各国から派遣される部隊がいかなる他の当局からも指示を求めまたは受けてはならないというふうな点がございます。先ほどあるいは先生がSOPで御指摘になった点もそういうことかと思うのでございますけれども、ここで言っておりますことは、あくまで国連のコマンドに反するような内容の指示というものを受け取ってはならない、そういう趣旨と理解しております。そういう意味におきましてもそごはないように私どもこの法案の仕組みで考えておるつもりでございます。
  237. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 外務大臣もそういうことで、今の答弁と同じでよろしいですね。  それでは、国会承認についてお尋ねします。  民社党は、かねてから自衛隊PKO派遣する場合は国会承認が不可欠であるということを主張してまいりました。それは、武力行使目的にしないにしても、この種の活動にある程度武装した自衛官ないしは自衛隊派遣されるというのは初めてのケースでありますし、そういう意味では国民理解協力も必要である、またシビリアンコントロールを実効あらしめるためにも国会承認が必要であるというような主張をしてまいりました。しかし、その後各党、各会派の考え方主張もあって、衆議院での修正もあったわけでございます。  これについて民社党は、民社党の元来の主張ではないとしながらも、しかしこの種の法案というのはできるだけ多くの政党、会派の賛同の中で成立させるべきであるということから譲りまして、二年後承認には不十分であるとしながらも、承認の範囲についてはおおむね妥当であろうという見解をとってまいりました。  その後、与野党協議や政府答弁の中から、外務大臣流に言えば、いわばPKFは凍結する、若葉マーク、初心者運転も考えられるんじゃないかという趣旨のお話があったように記憶しております。  これについても、民社党からすればもともとの主張とは大分違うなというようには思いますけれども、これも各党、各会派できるだけ大勢の賛同が得られればということで対応をしないわけにもいかないのかなという方向で考えているわけでありますし、また、たとえPKFの部分を凍結した場合であっても我が国国際貢献の一部は、一端は担えるんではないかというようにも考えているわけでありますが、外務大臣は、この若葉マーク運転をした場合に、国際的な評価ないしは反応はどのようなものであろうとお考えなのか、評価されると思っておられるのかどうか、お尋ねします。
  238. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は凍結ということを言っているわけじゃなくて、法案を出しておる以上は法案はひとつぜひ成立させてくださいと。しかし、実施に当たっては日本の国内事情等もよく話をして、なれる場合には、後方とか輸送とか、そういうようなものから国連と話をして始めるということも一つの、皆さんが心配なさっているから、心配を解くための手段としてはいいのでなかろうかという意味で言ったわけでございます。  したがって、全面的に各国のように何でもできるというようなことでなければ、まあそれなりに評価は多少落ちることはあるかもしれません、それは。あるかもしれませんが、しかし何もやらないよりははるかにいいということは間違いないことでありまして、特にまた今回は第一線の歩兵部隊の方は大体人手が間に合っていますというんですから、足りないのは後方支援とか医療とか難民輸送とか、そういうような点がまだまだ足りないということなので、それならば私はこれは評価は高く受けるだろうと思うわけであります。
  239. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 政府が凍結云々する立場にないのはわかりますけれども、ただ現実の問題として、各党協議の中で凍結という言葉が使われ、その飾囲についてもすり合わせがされていることは御存じだろうと思うんです。したがって、このことは一方的な主張、要望になるかもしれませんけれども、もし凍結という問題を考えるのであれば、いわゆる法案第三条三号イからへ及び同号の政令で定めるものを対象にするのは当然だと思いますけれども、しかしこれだけでは不十分な場合があるわけです。  例えば、カンボジアなんかの例で、今タイが難民輸送のために道路の整備、橋の整備、そういったことも含めて努力をしているように聞いておりますが、本来は難民輸送が任務であっても、その過程で地雷処理をしなければいけないというケースも出てくるんであろうと思います。したがって、凍結をする場合には、あるいは国会承認という対象に考える場合には、そうした複合業務不あった場合でもこれはその対象にするべきで太る。どちらが主がどちらが従かということは関係なく、行けば当然地雷は埋まっているな、その仕事もやらなければいけないということがあらかじめわかっていた場合には凍結、国会承認の対象にすべきだと思いますが、何か感想ございますか。
  240. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) あるいは質問の趣旨が正しく理解できないで御期待に沿う答弁にならないかもしれませんが、私は凍結という法律用語があるかどうか知りませんけれども、イからヘまでを完全にやらないということは実務的ではないと思いますね。  主としてそういうことはやらないということは私は言えるだろうと思いますが、しかしながらたまたまジープで走っていったところが、武器、機関銃を捨てて山の中に逃げちゃった人がいる、これは武器の回収だから、これはもう凍結の部分に入るからそれはそのまま置きっ放しでこちらへ行ってしまうということが現実的かどうか。あるいは、橋をかけようと思って、ここには地雷が埋まっておりませんよ、全部探しましたというので安心して橋をかけ始めたらたまたま一個出てきた。これは大変だ、地雷だ、日本自衛隊はさわれませんと、どこかへ無線で三十キロも離れたところから外国の軍隊を呼んでひとつこれを拾ってくれぬかと、そんなことをもしやったらもう天下の笑い者になっちゃうんじゃないか。    〔理事岡野裕君退席、委員長着席〕  したがって、私は、それは主たる業務でない、全く偶発的な付随的なそういうようなものは、例外の問題があったからといってそれは凍結違反だという話になることはいかがなものかという疑問を持っています。
  241. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 私も、緊急避難的に処理すべきものまであらかじめ凍結をしろなんていうことは不可能だと考えております。ただ、複合業務であってもあらかじめ地雷撤去が何カ所も予想されるような場合には、凍結、国会承認の対象にするべきではなかろうか、こう申し上げたわけです。  ところで、この法案が作成されて今日までの論議を通じまして相当修正が入ってきているわけです。それから、今各党各会派の協議が行われている中で、それがもし例えば凍結であるようなことが入るとすれば、これまた何らかの法案修正ないしは読み方を限定するというようなことが出てくるのであろうと思います。そういったことを考えますと、政府原案にこういう修正が各段階で加えられる、その場合に法律全体として果たして整合性のとれたものになるのだろうかという心配も一方ではあるわけです。  それから、本格的なPKO活動というのは初参加ですから、やってみた結果やっぱりこれじゃぐあいが悪いという部分も出てくるかもしれません。そういう意味ではより適切なPKOを行うという観点からも、やはり三年なら三年たったところで見直しますということを本文にあらかじめ盛り込んでおくことが大事なことだし、そうすればまさにならし運転という趣旨にも合うんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。総理、いかがですか。
  242. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 何度も申し上げることでございますけれども、政府国会に提出いたしました案をもちまして最善と考えておりますし、同時にこの御審議いただいております法律案はいわば永久法案でございます。ある時点において失効する、あるいは見直しをするということを政府といたしましては想定をいたしておりません。  御提案申し上げましたものを最善と考えておる立場に違いはございませんけれども、また立法府の御観点から、御見識から今のようなお考えにつきまして多数の御意思がまとまるということでございますと、それはどうも私どもとして、立法府の御意思であれば立法府の御意思としてこれを受け取らざるを得ない。政府といたしましては、原案を御承認いただきますことを期待いたしておるところでございます。
  243. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 このPKO協力法案については、私は原案を出したから絶対動かさないというようなかたくなな態度ではなく、よりよい国際貢献をしていくためにいい知恵があったら直していきますというのが基本姿勢でなければならないし、そうでなければやっぱり国民も安心できないんだろうと思うんです。そういう意味で、私は一度出したから絶対直しませんよと、こう宣言するのではなくて、要すれば見直しもやりましょう、よりよいものをつぐっていきましょうという意味で、ある一定年限を区切ったところで見直し、チェックをするというのを本文の中にぜひうたっていただきたい、そのように要望しておきます。  時間が余りなくなってまいりましたので、費用の問題について若干お尋ねします。防衛庁長官にお願いしたいと思います。  この法案が成立した場合に、我が国PKOに参加することになり、当然費用も発生するわけでありますけれども、それをお尋ねする前に、先般の湾岸戦争後の海上自衛隊派遣のときの費用は幾らだったのか、どういうふうに予算措置をされたのかお尋ねしたいと思います。
  244. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 派遣は半年に及び、五百十余名でございましたが、追加的な費用といたしましては十三億円というように承知しております。
  245. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 船ですから、外洋へ出れば当然傷んだりなんかします。何でも毎年補修する部分、四年ごとに補修する部分、そういうのがあるそうでありますけれども、そういう意味では追加的な支出も出たように思いますが、そういったところを含めると幾らになるんでしょうか。
  246. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 修理等、通常修理もございますし、また、ああいう特殊な任務を遂行したための付加的な分もございます。これはちょっと区別できませんので一概に申し上げられませんが、事後的に艦船の修理等で二十二億円を要しておりますが、これは行かなくても相当程度必要であったと思われるものでございます。
  247. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 もう一問。  この法律が成立した場合の予算措置はどこがされるのか、どういうふうな方法でやられるのか。例えば、予備的な費目でやるのか補正予算でやられるのか、どこが取りまとめをされているのか、その点についてお尋ねします。
  248. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  この法案の仕組みといたしましては、いろんな業務を所掌する組織の別に従って適切な予算措置、具体的に予備費になるか、そういった方法につきましては財政当局とも協議して適切な予算措置を講ずることになるわけでございます。  大きく分けて二つございます。組織参加と申しますか、自衛隊が部隊で参加する場合、海上保安庁が船舶等で参加する場合、これは防衛庁、海上保安庁がそれぞれ負担する。それ以外の場合、この中には民間からの参加の場合の本部の負担も含むわけでございますけれども、その基本給については派遣元が支払うわけでございますけれども、それを除きまして、総理府の中に設けられます国際平和協力本部の負担、そういう仕分けに相なります。
  249. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 どうもありがとうございました。
  250. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 連日の審議を拝聴いたしまして、大変私も勉強になりました。ところが承れば承るほど疑問は累積しまして、胸いっぱい詰め込んでございます。  ところで、与えられた時間が短いので到底全部を尋ねることが不可能でありますので、どうして質問を進めたらいいか大変迷うておるところでありますが、まず問題点は、私は、憲法自衛隊とのかかわりに非常に重点が絞られたと、こう承っております。その中でも、武器を使用するかしないかという問題を非常に強調されました。そういう情勢のもとに、私は、繰り返すようでありますが、自衛隊派遣するPKOはどうしても賛成するわけにはまいりません。反対であります。いろいろ理由はございますが、詰める時間も持ちませんので控えておきます。  武器を使用することに対して、私は、かつて陸軍参謀中将で名将と言われた遠藤中将、戦後いわゆる平和憲法を守る会の会長をしておられました遠藤中将とお近づきする機会が多うございまして、いろいろと教訓を賜りました。そこで、人類の軍備の歴史の中で兵器を持って使わなかったためしはない、だから持つことは使うことである、どう説明をしようがその事実が証明しておるんだ、だから危ないものは持たざるにしかず、こういうことをたびたび私におっしゃっておられました。  そのことで、武器を使用する、万一に備えてという前提で持つことということに府になっておりますが、武器を持つ、それは意図的に使うことで、万一の場合に安全のためにという条件はついておりますが、ところがいかなる理由があるにせよ、武器を持つことは当然使う方向にだんだん道が開けてくるんだ、こう述べておられました。  ですから、武器を持つという前提ではさらに私は反対せざるを得ません。そのことについてひとつお答え願いたい。
  251. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先生の御説でございますけれども、これはもう何度も申し上げておりますように、自衛隊が海外でこの協力業務をやる場合に国連としては、これはもう各国ともそうでございますが、必要最小限度の武器の携行を認めておる、いわば国際法上の軍隊ですね、これが行くことになっております。  我が国の場合も、参加する場合は、この法文の中にもございますように、国連の事務総長と協議した範囲内における装備、その中の武器でございますが、これを携行していくということに相なっておりますが、しかしこの法律の中でたびたび申し上げておりますように、自己の生命、身体を防護するときにのみこの使用を認めております。今、先生の持っていけば必ず使うんじゃないかという御説でございますけれども、私どもはそうは解しておりませんで、持っていきましても厳格な要件のもとに、つまり今申しました自己の生命、身体の防護のためにのみ使用を認めるということでございますので、決しでそのような委員の御指摘は当たらないのではないか、このように思いますし、またそうあっては。いけないと思います。
  252. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今申し上げたことはこの喜屋武の意見ではなく、こういう人類の軍備の歴史の中で兵器を持って使用しなかった事実はないと、これを私ははっきり申し上げただけですよ。それをどう受けとめるかということなんですね。そんなもの要らぬというのか、そんなことあり得ぬというのか。これは過去の事実を私は遠藤参謀中将から何遍も聞かされました。特に中将は沖縄のことに対する深い理解を持っておられまして、だから危ないものは持つより持たざるにしかず、こういうことを繰り返し述べておられたことを私ははっきりと覚えて、信じております。そういう意味で申し上げたのであって、私がただ思いつきで言ったのではないということを理解してもらいたい。  言葉ではあるいは文言では万一の場合にだと、自己の防衛のために、命を守るためにという、それは理解しております。ところが、いざああいう場に行った場合に果たしてその文言がまかり通るかどうか、またそれを最後まで守るのかどうかというところに問題があると私は信じております。ですから、そういういろいろと疑問のあるものはむしろ整理して、持たないでも目的を達成する方法があるはずであります。そういうことで申し上げたんですから、誤解のないようにしてください。  次に、いわゆる国際協力といえども、国際協力そのことは非常に善意に解釈すれば当然であり、大賛成であります。ところが問題は、第一に、その協力される相手の国が、協力する側に対して十分なる理解と信頼を前提にしなければいけないということ。二つには、常にその協力してもらう相手に対して感謝をし歓迎をするという感謝と歓迎の心がなければ、いわゆる押し売り、強引な押しつけはむしろ結果的には反感を持たれる、このことを私は信じております。理解と信頼を前提にしないいかなる話し合いもむなしいものである、このことと、そうして相手から感謝と歓迎をされる、この条件でなければいかぬと思いますが、長官、いかがですか。
  253. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) まさに先生のおっしゃるとおりでございます。私も全く同感でございます。
  254. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 政府PKO法案に関しては論点は限られてきたが疑問点は一向に解消されていない、こういう感じがいたします。それはある意味では当然のことと言えます。なぜなら、政府案はPKO自衛隊派遣しようとするものであり、自衛隊が出ていけば当然武力行使のおそれがつきものであり、武力行使憲法の禁ずるところである。PKF凍結の問題も指揮権の所在の問題も、すべて憲法の禁ずるものをあえて行おうとするところから来るものである。このような議論は根本が間違っているのであるから、どこまでいっても疑問が解消されないのは当たり前のことではないでしょうか。  そこで私は、国民の真摯で素朴な疑問に答えてもらいたいという立場で何点がお尋ねしたいと思いますが、まず外務省関係に問題点だけ申し上げますから、簡単で結構です、答えてください。  一点、PKF凍結論が出ておりますが、PKFとPKFを伴わないPKOとはどこで区別するのか。  二点、PKOのどの部分へ参加しようとするのか。  三点、武器携行と武力行使関係。  以上の三点について簡単に明確に答えてください。
  255. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 簡単にお答え申し上げます。  国連の広報局が出しておりますブルーヘルメットという本がございますけれども、その中で、このPKOとPKFの違いにつきまして次のように言っております。  国連PKOは大きく言って原則として非武装の将校から成る監視団、それが一つ、それから必要な後方支援要員を擁する軽武装の歩兵部隊から成るPKFに区別される。しかし、これらの区分も完璧というわけにはいかないということでございまして、要するに、国際社会におきましてPKO、PKFあるいは監視団につきまして非常に厳格な意味での定義というものは必ずしも存在していないということでございます。いろんな議論の文脈あるいは見方によっていろんな議論ができる、こういうことでございます。  それから第二番目の、PKOのどの部分に参加するつもりかという御質問につきましては、現在のお出し申し上げております政府の原案によりますれば、理論的にはPKO活動の非常に広い分野に参加できる仕組みになっておるということでございます。  三番目の武器の問題でございますが、先ほどからも御説明申し上げてまいりましたけれども、軍事要員が派遣される場合に、武器の携行が国連の過去の慣行あるいは文書によって認められることになっておりますが、この武器は自衛のためのときにしか使ってはならないということになっておりまして、その自衛と申しますのは、自己の生命を防衛する場合、それから国連の任務が武力により阻止された場合それに抵抗する場合という二つのケースがその自衛の中に含まれるということで、いずれにいたしましても、これは武器の使用でございまして、武力行使という考え方理解されているものではございません。
  256. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、法制局長官にお尋ねいたします。  一点は、国連への協力であっても憲法の制約を受けるのは当然であると思うが、いかがか。  二点、日本国憲法第九条の意義を説明してもらいたい。  三点、日本国憲法の第九十九条の意義を説明してもらいたい。  以上の三点、法制局長官、お願いいたします。
  257. 工藤敦夫

    政府委員(工藤敦夫君) 三点お尋ねがございました。  まず第一に、国際貢献といったような場合と憲法の制約との関係と存じます。  もちろん我が国が何らかの行動をいたします場合に憲法に従わなければならない、これは当然のことと存じます。  それから第二番目に、憲法九条の意義、こういうお尋ねでございます。  憲法九条につきましては、従来からお答えしているところでございますけれども、いわゆる国際紛争解決する手段としての戦争武力による威嚇あるいは武力行使、とういうものを永久に放棄するということ等について規定をしておりますが、これはまた反面におきましては、独立国家に固有の自衛権まで否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度武力行使することは認められている、かように従来から申し上げているところでございます。  それから、第三点の憲法九十九条の話でございますが、憲法九十九条は、若干前は省略いたしますが、「公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と、こういうことで規定してございます。これは当然のことながら、日本国憲法が最高法規である、こういうことにかんがみまして、公務員は憲法の規定を遵守するとともにその完全な実施努力しなければならない、かような趣旨であろうと存じます。
  258. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が、冒頭にも申し上げましたとおりに、現実審議を拝聴いたし大変参考になったと申し上げた裏には、この大事な憲法とそして自衛隊との結びつきの観点が何かしら論点がぼかされておるということを感じたから冒頭にそれを申し上げたんです。それで、いかなる問題も憲法を抜きにしては、また崩しては相ならぬということを再確認しなければならぬ、こう思っております。  次に、総理に二点お伺いしたいんですが、PKO法案の立法は国民の意思を直接有権者に問うた後に行うべきであると思うんですが、いかがでしょうか。  二点は、いわゆる平和憲法を持つという意味での平和国家にふさわしい国際貢献のあり方についてもっと議論を尽くし、国民のコンセンサスを得た後で国際貢献実施すべきであると思われてなりませんが、いかがでしょうか。  この二点について総理の明確な所信を述べていただきたい。
  259. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、先ほどの国連協力といえども憲法にたがうことはならないというお尋ねと当然のことながら密接に関連をいたしましたお尋ねでございます。  この国会、前国会もそうでございましたが、におけるこの法案の御審議の主な点は、憲法との整合性の問題であり、また政府はこの法案憲法と整合するためにいわゆる五原則その他いろいろなことをこの法案の中に盛り込んでおりますけれども、そのことについての国連との関連等々、この問題をめぐりまして十分な私は御議論が行われておると思います。したがいまして、今当院で御審議になっておられますことも、御審議いただいております貢献は平和国家にふさわしい貢献であるかどうか十分論議せよとおっしゃっておられます。その議論は、私は十分にこの委員会においても過般来行われておると思いますし、政府はこれに対してそのように考えておりますというふうにお答えをいたしてまいっておるわけでございます。  民意に問えということにつきましては、この法案そのものが、先ほど申しましたような憲法との関連、シビリアンコントロールとの関連で十分配意をいたしておると私どもは考えております。過般の何回かの国会を通じまして、この法案につきましての国民の関心も非常に高まっており、またいろいろな意味での世論調査等々も行われておりまして、政府はこの法案についての国民のいろいろな反応、反響について十分注意をいたしてまいりましたし、また御審議をいただいております院におきましてもそのことにしばしば御言及があっておりまして、国民のこの法案に対する反応、受け取り方はこのたびの御審議でもいろんな意味質疑応答の対象になってまいったと考えております。
  260. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 くどいようでありますが、私が特に総理に聞きたいことは、過去の日本の歴史の中でもあの忌まわしい戦争は何とお呼びでしたか。一億一心だとか東洋平和のためにということを強調されましたね。一億一心だとか東洋平和のために、いわゆる戦争も平和のために戦争するんだ、こういう理屈になるわけであります。私はそれを言わされ、聞かされ、そして教えられ、沖縄戦でひどい目に遭ってこう生き延びておるわけであります。  そして、復帰二十年という去る五月十五日に国においても沖縄においてもイベントがあったわけでありますが、それを思うにっけ、平和がこの法の前提であることは間違いない、だのに沖縄の現状は、基地は二十年経た今日も依然として変わらない。だから、五・一五を踏まえて沖縄県民はさらに団結をして立ち上がって基地撤去に邁進しよう、そうしてその自衛隊につながるPKOに反対しよう、こういうムードが日にち毎日広がりつつ、高まりつつあります。のみならず、その国民世論の広がりつつあること、毎日のように陳情、要請が私の部屋にも続々と参っております。このことを思うにつけ、国民に対してまだ十分なる理解がいっていない、コンセンサスがいっていない、このことをまざまざと今見せっけられておるわけであります。  いろいろと問題を残し、国民の不平不満を醸しておるという現状の中で、これからどうPKOを進めていこうとしておられるのか、沖縄の復帰二十年のあのことも含めて、また国民に向かってこれをどうこれから進めていこうとしておるのか、そのことの確たる総理の御所見をひとつ承りたい。  同時に、沖縄へいらっしゃるということについても、繰り返しませんが、二度にわたって、この前は三度目の正直のという前置きで要望もいたしましたが、沖縄に必ず行くという、これは総理一人の決定では無理でしょうから、今どの程度沖縄へいらっしゃる結論が進みつつあるのであるか。  そして今、何といつでも沖縄の世論は基地撤去、それから公平公正な政治、行政の中でも特に二つの目玉、厚生年金の本土並み、この前向きの話し合いはこの前三機関で、厚生省、開発庁、それから総務庁ですか、三省庁が寄り寄り集まって前向きで話し合うということは申し入れられておりますが、それは総理の意思であるのか、そこを窓口にされるのであるか、そういった点も明らかにしていただきたい。  以上、申し上げまして、私の質問を終わります。
  261. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 沖縄県民の過去から現在につながっておりますいろいろ御苦労をおかけしております御辛苦についての私の心情はしばしば申し上げましたし、これはまた私ばかりのものではないと思っております。その沖縄で自衛隊に対する反対、不信が非常に強いと仰せられまして、残念なことであると存じますが、沖縄以外の本土と申しますか、地域におきましては国民自衛隊に対する信頼度は私は高いと考えておりますので、この法案自衛隊につながるがゆえに反対だということは、私は国民の多数のお考えではないであろうというふうに考えておるところで、この点は、御心情は理解しつつ、私どもの立場にも御理解を得たいと思います。  沖縄につきましては一度お伺いをしたいということは依然として考えております。二つばかり懸案がございまして、殊に一つは今仰せになりました懸案でございますが、これは厚生年金の枠内ではどうも解決のしょうがないというふうに考えまして、先般三省庁で、これをどう扱うべきかについて、私の意思で協議機関を設けるに至りました。十分御期待に沿える答えが出ますかどうか、検討いたしてみないとわかりません。ともかく、何か考えてみなければならないという誠意だけはお酌み取りを願いたいと思います。
  262. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時三十分散会