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1992-05-08 第123回国会 参議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月八日(金曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月七日     辞任         補欠選任      石川  弘君     狩野  安君      櫻井 規順君     堀  利和君  五月八日     辞任         補欠選任      鎌田 要人君     木宮 和彦君      斎藤 文夫君     仲川 幸男君      堀  利和君     櫻井 規順君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         下条進一郎君     理 事                 上杉 光弘君                 岡野  裕君                 田村 秀昭君                 藤井 孝男君                 佐藤 三吾君                 谷畑  孝君                 矢田部 理君                 木庭健太郎君                 吉川 春子君                 井上 哲夫君                 田渕 哲也君     委 員                 板垣  正君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 合馬  敬君                 狩野  安君                 鹿熊 安正君                 木宮 和彦君                 須藤良太郎君                 関根 則之君                 仲川 幸男君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 星野 朋市君                 真島 一男君                 翫  正敏君                 小川 仁一君                 喜岡  淳君                 國弘 正雄君                 小林  正君                 櫻井 規順君                 竹村 泰子君                 角田 義一君                 田  英夫君                 細谷 昭雄君                 堀  利和君                 太田 淳夫君                 常松 克安君                 中川 嘉美君                 立木  洋君                 磯村  修君                 猪木 寛至君                 喜屋武眞榮君    委員以外の議員        発  議  者  野田  哲君        発  議  者  久保田真苗君        発  議  者  篠崎 年子君        発  議  者  村田 誠醇君    国務大臣        内閣総理大臣   宮澤 喜一君        法 務 大 臣  田原  隆君        外 務 大 臣  渡辺美智雄君        大 蔵 大 臣  羽田  孜君        文 部 大 臣  鳩山 邦夫君        厚 生 大 臣  山下 徳夫君        農林水産大臣   田名部匡省君        通商産業大臣臨  渡辺 秀央君        時代理        郵 政 大 臣        運 輸 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  近藤 鉄雄君        建 設 大 臣  山崎  拓君        自 治 大 臣        国 務 大 臣  塩川正十郎君        会委員長)        国 務 大 臣  加藤 紘一君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣  岩崎 純三君        (総務庁長官)        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)      伊江 朝雄君        (沖縄開発庁長        官)        国 務 大 臣  宮下 創平君        (防衛庁長官)        国 務 大 臣        (経済企画庁長  野田  毅君        官)        国 務 大 臣        (科学技術庁長  谷川 寛三君        官)        国 務 大 臣  中村正三郎君        (環境庁長官)        国 務 大 臣  東家 嘉幸君        (国土庁長官)    政府委員        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        内閣法制局長官  工藤 敦夫君        内閣法制局第一  大森 政輔君        部長        内閣法制局第二  秋山  收君        部長        警察庁長官官房  大森 義夫君        総務審議官        防衛庁参事官   高島 有終君        防衛庁長官官房  村田 直昭君        長        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練  小池 清彦君        局長        防衛庁人事局長  坪井 龍文君        防衛施設庁施設  大原 重信君        部長        経済企画庁調整  柳沢  勝君        局審議官        環境庁長官官房  森  仁美君        長        外務省アジア局  谷野作太郎君        長        外務省北米局長  佐藤 行雄君        外務省経済協力  川上 隆朗君        局長        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合  丹波  實君        局長        外務省情報調査  鈴木 勝也君        局長        厚生大臣官房総  大西 孝夫君        務審議官        厚生省保健医療  寺松  尚君        局長        厚生省年金局長  加藤 栄一君        厚生省援護局長  多田  宏君        海上保安庁次長  小和田 統君    事務局側        常任委員会専門  辻  啓明君        員     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案(第百二十一回国会内閣提出) ○国際緊急救助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案(第百二十一回国会内閣提出) ○国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施  等に関する法律案野田哲君外三名発議)     ―――――――――――――
  2. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を開会いたします。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施等に関する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 おはようございます。  このような質問初めてでございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  まず、昨日のことでちょっと気になったことがございますので総理お尋ねをさせていただきます。  それは、総理は、昨日のこの委員会での竹村先生とのやりとりの中で、自衛隊は、まず国連から要請があって、紛争当事国から要請があって、さらに周辺の国の同意があって行くのであって、そういう条件が整わなければ出かけていくことはないというふうにお答えになったのでありますが、私は、受け入れ国紛争当事国同意のみ、このように理解をしておりましたので、紛争周辺国同意まで必要なのか、お尋ねをいたします。
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どうも失礼いたしました。  実は昨日、PKO参加いたしますためには、紛争関係者同意が前提となるということを申し上げるつもりでお答えをいたしたわけでございますけれども、正確に条文を見ずに申し上げました。条文によりますと、第六条一号は、「国際連合平和維持活動のために実施する国際平和協力業務については、紛争当事者及び当該活動が行われる地域の属する国の当該業務実施についての同意」とございますので、ただいま尾辻委員の言われることが正確でございます。昨日竹村委員に不正確な御答弁をいたしましたので、改めまして訂正をいたします。おわびをいたします。
  5. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 ありがとうございました。安心をいたしました。  それでは、通告いたしました質問に入らせていただきます。  急を要しておりますカンボジア問題から質問をいたします。  東南アジア最大不安定要因であったカンボジア問題は、昨年十月のパリ会議において和平協定が調印され、十三年に及ぶ紛争に終止符が打たれ、カンボジアでは国連による平和維持活動が本格化しつつあります。  私自身、この連休に、大変に駆け足ではありましたけれどもカンボジアを訪問し、プノンペン中心現地の事情を見てまいりました。三月に明石特別代表のもとで国連カンボジア暫定機構UNTAC活動が正式に開始されるとともに、国境の避難民帰還も始まり、和平現実のものとなったカンボジアでは人々は大変活気にあふれておりました。とはいっても、明年に予定されている選挙及び新政府の樹立に向けてカンボジア各派の軍の武装動員解除選挙準備など課題は山積しています。  そこで、今後の具体的なこうした動きについて、政府はどのように見通しておられるのか、お尋ねをいたします。
  6. 丹波實

    政府委員丹波實君) 先生承知のことかと思いますけれども、このUNTACの設立に当たりまして、国連事務総長安全保障理事会に対しまして一種の展開のスケジュールと申しますか、計画の表を出しております。それによりますと、一番重要な時期は六月、七月、八月、九月でございまして、その意味は、六月からその四カ月にかけまして、停戦監視武装解除あるいは軍隊の収容の監視、それから武器の引き渡しといったような非常に重要なことがこの六、七、八、九の四カ月で行われまして、それを受けまして選挙の登録が始まるということになっております。  その期間、三月の三十日から先生が今おっしゃった難民帰還が始まっておりまして、全体で三十六万とか七万とか言われておりますけれども、この難民がスムーズに帰還してこそまさに選挙人になるわけでございますので、そういう軍事部門でのスムーズな活動、それから難民帰還ということが非常に大きな重要な柱になろうかと思います。それを受けまして、来年の遅くとも五月までには選挙を行うということでございまして、その間いろんな難しい問題があろうかと思いますけれども、これまでのところUNTACは一応順調に活動を始めておるということであろうかと思います。
  7. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 そのとおりだろうと私も現地を見て思ったのでありますが、そこであえてでありますけれども、一つだけお尋ねをさせていただきたいと思うんです。  それは今回、私、かつてポル・ポト派プノンペンを治めていたときに、ポル・ポト派の残虐な行為を後世に伝えるためというんでしょうか、博物館と言っておりましたけれども、ポル・ポト派反対派人たちを収容して拷問し虐殺をしたところを見てきたわけでございます。そのとき私は率直にこれはアウシュビッツだと思ったのであります。本当に同じだなと、こう思いました。  そのときに感じたこと二つあるんですが、一つは後ほど質問させていただくとして、そのとき思いましたのは、こういうものが残っていて、これほどの憎しみがあって、このクメールルージュを入れた和平というのが本当に進むのだろうか、大変難しいのではないかと思ったのが私の率直な感想でありまして、政府はどのように見ておられるか、お答えください。
  8. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 実は、私も二度ほど見に参りました。うわさには聞いておったが、そういうようなことでは到底人心を収らんすることはできないと思い出すと今から十年、十二年ぐらい前ですか、私が経済閣僚として中国を訪問したときに、当時、趙紫陽総理それから鄧小平さんがおりまして、ポル・ポト派中国援助をしておるようだけれども、ポル・ポト派幾ら援助をしてもあのような大量虐殺をした政権に応援をするということはどぶに金を捨てるようなものじゃないかと言ったところが、大変御立腹でもなかったけれども、余りいい顔をしませんで、結局、ベトナムの勢力カンボジアにこれ以上波及しないことが大事なんであって、カンボジアが中立の非同盟の国になるのであるならば、それは何も資本主義だっていいし、シアヌークさんだっていいし、だれだっていいんだというようなことを言ったことを今さら思い出すんです。  結局、武力だけではなかなか人心というものは収らんできない。そのためにポル・ポト派が帰ってくるということに対する民衆の不安が一方には非常に強い。しかしながら現実武器弾薬を持っている実力派ポル・ポトグループというものを除外したのではカンボジア和平は成り立たない。こういうようなところでいろいろ苦心の結果、それはそれとして過去はある程度水に流して、それで各派がそれぞれの勢力に均衡した形で連合政府というか、それをつくってやろう、SNCの中にもそれぞれ全部入って、余り昔のことばかり言ったんではいつまでたってもこれは内戦がやまないということで現在に至ったという歴史だと私は思います。  今後どういうような情勢になるかわかりませんが、しかし、とりあえずは現状をどうしていくかというところにみんなが力を合わせる以外に方法はないんじゃなかろうかという感じを受けています。
  9. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 実は、私も現カンボジア政府高官に同じ質問してみたんです。クメールルージュ和平を受け入れるだろうか、そしてまた国民がクメールルージュを受け入れるのだろうか、そう聞いてみましたら、その高官は、自分は楽観主義者だからと断った上で、極めて楽観的というか、何とかなるさということを言っておりましたことだけを申し上げておきたいと思います。また、私もそのように望みたいと思います。  そこで、最近のカンボジア情勢との関連において、UNTACが現在どのような活動状況にあるのか、また、今後どのような見通しにあるのか、その際、例えば中国ドイツスイスのような国はどうしているのかを含めてお伺いをいたします。
  10. 丹波實

    政府委員丹波實君) お答え申し上げます。  私たち承知いたしておりますところ、国連は、全体として五十四カ国に対してその要員派遣ということを要請したと聞いております。しかし、結果的には、私たち現在承知をしておりますところ、三十六カ国がその要員を出すことになったと、なる予定であるというふうに承知いたしております。  現在のところ、実は五月の一日に追加的な事務総長報告現状について出ております。それによりますと、四月末現在では軍事要員が三千六百九十人集まった、それから、数字で出ておりますのはもう一つ文民警察ですが、百九十三人集まったというふうにその事務総長報告では出ております。ちなみに現在の軍事要員ですけれども、歩兵部隊、全体では十二カ国が出してきますが、現在のところ現実に展開しておるのはインドネシアマレーシア工兵部隊につきましてはタイニュージーランドニュージーランド地雷訓練部隊ですが、それから中国が四百人の工兵部隊を出しておる。それから航空輸送部隊につきましてはフランスが出しておる。通信はオーストラリア。医療部隊ドイツロジ部隊はカナダ。それから軍事監視団が十九カ国から出ておるというふうに承知いたしております。  先生が今御質問になられたスイスにつきましては、医療部隊を出すと承知しておりますが、何人出すかという点については現在話し合いが行われておるというふうに承知いたしております。
  11. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今のお話を伺っても、まさに日本がいないのがおかしな状況でございます。  このように、UNTAC活動が開始されることに伴い、国連関係者UNTAC受け入れ国カンボジア要人等日本に対する期待についてさまざまな発言が最近報じられるようになりました。特に、三月十一日、衆議院のPKO特別委員会参考人として出席された明石特別代表は、UNTACには中国も含めて軍事部門には三十三カ国、文民警察部門には四十七カ国の参加計画されているが、その中に日本の国名がないのは寂しいと述べておられます。  しかも、私がUNTAC本部に参りましたときに、ある幹部は、UNTAC自身がまだ予算も含めて極めて危ない綱渡りをしているんだ、しかも、もし万が一ここでUNTACが失敗したとカンボジア人たちが判断をしたらもう取り返しのつかないことになる、UNTACといっても武力的には極めて弱い存在であるから本当に開き直られたらどうしようもないんだ、カンボジアがまた泥沼になるということを心配しておりました。  まさにそんな状況なんですが、カンボジアにおけるPKO活動に関し、国連及びカンボジア政府関係者は我が国からの要員派遣に具体的にどのような分野での期待を寄せているかについて、きのうも御質疑あったところでありますけれども、財政的支援期待とあわせて政府が理解しておられるところをお伺いしたいと思います。
  12. 丹波實

    政府委員丹波實君) お答え申し上げます。  ただいまの明石代表の言葉でございますけれども、私は実は先週の水曜日に明石代表にお目にかかりましたけれども、その際、明石さんが言っておられたのは、アジアの中で日本参加していないことが非常に目立っている、ASEANをとると参加していないのはブルネイだけだ、それからあとは韓国と日本ぐらいなものではないかということを明石さんが言っておられたことを御紹介させていただきたいと存じます。  今の期待の問題でございますけれども、昨日も山崎大臣の方から御紹介がございましたけれども、私たちも例えば明石代表などの発言からあるいはサンダーソン軍司令官発言などから承知しておりますところでは、日本に対しましては医療分野あるいは通信分野輸送等分野、そういった後方支援分野における参加、それから文民警察が足りなくて困っているということをしきりに言っておられる。それから選挙監視分野におきましても、その全体の一割に当たる百名程度の参加をぜひ得たいということを言っておられるということで、そのほか地雷処理については、かつてはUNHCRの緒方さんも日本地雷処理期待するということを言っておられたことも御紹介させていただきたいというふうに存じます。
  13. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今、政府お話を伺ったわけでありますが、私が現地でお聞きしたお話も全く同じようなものでございました。当面必要な歩兵部隊は充足をしておるがと。これも厳密に言うと約束はできておるがという状況でございまして、みんな到着しておるわけではない。それ以外の輸送医療等後方支援部門については全く充足しておらず、これらの分野日本参加期待されておるというか、私の感じを率直に言わしていただくと、熱望をされておるというふうに感じたのでございます。  去る四月十五日、ガリ事務総長北京において、PKFは既に構成されており、新たに他の国に参加を求める理由はないと発言をしたのでありますが、その後、発言趣旨を明確にするための記者発表を行い、さらにプノンペンにおいても、真意が伝わっていないとして、PKF及び国連活動における日本部隊を歓迎する旨述べたのもそういう趣旨があったと私は理解していますが、いかがでございましょうか。その辺のところをいま一度御説明ください。
  14. 丹波實

    政府委員丹波實君) お答え申し上げます。  ガリ発言につきましては、大体今先生がおっしゃったとおりではないかと思います。私たち、最初に事務総長北京記者会見をされたときに、大体充足しておるということを言われましたけれども、彼が念頭に置いておりましたのは、十二カ国から集まってくる十二の歩兵大隊について、まさに今先生おっしゃったとおり、大体めどがついたと、その部門だけを念頭に置いて発言したわけでございまして、先ほど申し上げた通信とか後方支援とか航空部隊とか、そういう分野については念頭に置いてない発言だったんです。しかし日本のブレスの報道は、あたかもUNTAC分野全部がもう埋まったというふうな報道だったものですから、その辺はそういう意味ですかということを聞いたのに対して、いや実はそういう意味で言ったものではないというのがプノンペンにおける記者会見だったと私たち承知いたしております。  歩兵部隊そのもの分野につきましても、先生今おっしゃったとおり、それから先ほど私申し上げましたけれども、現在のところ十二カ国に対してめどはついたと。しかし、現実に出してきているのはインドネシアマレーシアの二カ国でございまして、例えばアフリカのたしかガーナだったと思いますが、来ることにはなっていますけれども、しかも六月の一日までに集まることになっているんですが、いろんな装備、輸送、そういった問題があってなかなか出てこれないというような状況があるわけで、そういった場合には、将来必要があればそういうところでも日本に頼みますということもあわせて言ったのがプノンペンにおけるガリ発言であったというふうに理解いたしております。
  15. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 そこで、ここで地雷撤去のことをちょっとお尋ねしておきたいと思います。  その一つは、昨日の夕刊報道なんですけれども、タイスチンダ首相が公明党の石田委員長との会談の中で、タイとしては日本自衛隊が海外に出ることに何ら疑問を感じていない、そして、カンボジアPKOにおいて地雷除去は重要な作業であり自衛隊が役割を果たすことが期待されていると、こう述べられたというのでありますけれども、実は、私が現地UNTAC本部で率直にお尋ねした話があるものですから、これとの関連お尋ねをするわけであります。  私もUNTAC本部でそのことを聞いてみましたら、これはある方が言われたのでありますが、ある方が言われた話をそのまま申し上げますと、今地雷撤去タイ部隊が七百人入っておる、そしてやってもらっている、本当に申しわけない話でありますが既に事故も出ておる、こんなことでございました。ただ外国の、この地雷撤去作業にほかの国の部隊に入ってもらう計画は今のところない。この後、このタイ部隊中心にして五千人ぐらいのカンボジア部隊にその能力を身につけてもらって、それから先はUNTACが直接かかわり合うことでもないだろうけれども、今度はカンボジア部隊がみずから次の人たちにその能力を教えることによって総勢二万人ぐらいの部隊をつくってもらえばこの後の作業は何とかなるのではないかな。  ですから、結論だけ言いますと、今のところUNTACとしては、地雷撤去タイ以外の部隊にお願いするつもりはないというお話もあったんですけれども、タイ首相ですからやっぱり一緒にやってほしいなという気持ちもあるのかもしれませんが、その辺のところ政府はどのようにつかんでおられますか。
  16. 丹波實

    政府委員丹波實君) お答え申し上げます。  基本的には、先生がお聞きになられたとおりだと思っております。まさに、七百人ぐらいのタイの軍人さんが地雷の撤去に今当たっておりますが、それに加えて、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、ニュージーランド地雷訓練のための要員を送っております。それに加えて、たしか国連はイギリスとイタリアからもそういう地雷訓練の要員を求めております。  これらの要員は、カンボジア人たちに、まさに地雷除去のテクニックと申しますか、技術を教え込んで、カンボジア自身が今度は地雷の撤去を行っていくという計画でございますので、少なくとも現時点では、タイ以外の外国に対して地雷撤去作業要請するということは現時点では考えてない、私たちもそういうふうに承知いたしております。
  17. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 いずれにいたしましても、一日も早い我が国の要員派遣が求められておるのであります。  そこで、UNTACへの要員派遣時期についてお尋ねをしてみたいのでありますが、その前に、私が現地の声として耳にしたことをもう少し御紹介をさせていただきます。  ラズメーさんというシアヌーク殿下の官房長にお目にかかったのでありますが、この方は、シアヌーク殿下初めカンボジア要人は皆日本自衛隊にぜひ来てほしいと願っている、それももう一日も早く来てほしいんだと、こういうことでありましたし、UNTACのさる幹部は、率直に言って六月にも予定されるUNTACの第二展開のときまでには来てほしいのが正直なところなんだと、こう言っておりました。  UNTACに我が国が要員派遣しても、時期を失するとまたぞろ各国よりは結局何ら評価されないことになりかねません。我が国が意味のある人的貢献を行うためにはいつまでに要員派遣する必要があるのか、このことにつき政府の認識を伺いたいと思います。このことについては、社会党もどのように見ておられるのか、お尋ねをいたします。
  18. 丹波實

    政府委員丹波實君) お答え申し上げます。  先ほど私、地雷の撤去の問題につきまして、現時点ではということを二度繰り返して申し上げましたけれども、何せ一説では三百万とか四百万の地雷の問題でございますので、今後の作業いかんでは再び外国に頼むこともあるべしという意味を込めて、二度そういうぐあいに現時点でということを繰り返したことを申し上げさせていただきたいと思います。  それから、いつまでにということでございますが、先ほどの事務総長報告にありますUNTACの展開スケジュールをずっと見ていきますと、先生も今おっしゃいましたけれども、軍事要員の収容と動員解除というのが非常に重要な中心的な活動一つなのでございますけれども、それがことしの六月、七月、八月、九月に行われると、これがピークでして、それから下がっていくという状況にあるものですから、もし日本要員を送るということであれば、九月が最後ということではございませんけれども、それ以降も活動は続きますけれども、ピークはことしの秋ということを念頭に置いて要員派遣していけば一番UNTACとしては歓迎するという、そういう状況ではないかというふうに考えております。  しかし、UNTAC活動は来年の四月、五月の選挙を終えて、予定どおりいけば来年の八月ぐらいまで続くわけですから、それまでの間は需要というものはずっとあり得るんではないかというふうに考えております。
  19. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) 私どもの方では自衛隊派遣を想定しておりませんので、文民について特に今急いで求められているのは選挙関係の指導、監視に当たる要員、それから文民警察、これが急いで求められておりますので、とりあえずは先遣隊として必要な人員、選挙関係でいえば十人ないし二十人、文民警官でいえば数十人、指導要員あるいは段取りをつくる要員として派遣をするのは早速にでも可能だ、こういうふうに考えているわけです。そしてまた、今提案している形の法案が通れば、それによって随時必要な求められるものから早速にでも派遣をしていくことが可能である、こういうふうに考えております。
  20. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 とにかく、さっきから何回も言っておりますけれども、現地の声を一言で言いますと、一日も早く、これはもう全くそのとおりだろうと思います。どうぞ、そのことだけは申し上げておきたいと思いますので、御努力をお願い申し上げます。  そこで、カンボジアは長年の戦乱により国土が荒廃し、基礎的なインフラが破壊されておりますし、衛生状態も必ずしも良好ではない、そうした厳しい国内の状況にあるようです。私自身現地を訪問して、こうした中でPKO活動を行う場合、端的に水や食糧、機材の調達等も容易ではないと思われました。こうした中で、UNTAC活動に際してカンボジアの国内情勢からどのような困難があるというふうに認識しておられるか、お尋ねをいたします。
  21. 丹波實

    政府委員丹波實君) 先生おっしゃいますとおり、この十年以上に及ぶ戦火の結果としての現在でございますので、それからその地理的な状況その他からいたしまして、大変困難な状況下で活動を強いられるということだろうと思います。具体的には、気象条件それから衛生の状況、例えば高温多湿であるということ、それからマラリア等の風土病が存在しているといったような問題。それからインフラが大変に残念ながら未整備である。この辺は今後日本がまさに助けていかなければならない問題だと思いますけれども、インフラがこの内戦によって大変破壊されておる。住居、電気、水道、道路その他の施設が非常に不十分だということでございまして、まさにそういう理由のために国連は各国に対して、軍事要員を出してくる場合には六十日間分の自給体制を整えてきてほしいという条件を付している状況にあるわけです。  それから三つ目に、治安状況が非常に不安定だということでございます。カンボジアの場合、首都のみならず、さらに首都よりももっともっと状況の悪い地方における活動というものも求められている。かつその活動の期間が長期にわたる。例えば選挙の登録でございますと、これはことしの秋に文民による登録活動が行われますけれども、ことしの十月、十一月、十二月と三カ月にわたって滞在して登録活動を行うという、そういう状況を考えますとなかなか容易ではないなという印象を持つ次第でございます。
  22. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 今のお話で十分なわけですが、もう少し申し上げますと、私が参りましたときも、日本大使館ですら用意された建物では電気とか水道とか早く言えばそんなことの関係で仕事ができずに、事務所も大使初め館員の皆さんも全員ホテル住まいでありました。まともに使えるのはそのホテル一つでございまして、私ごとを言いますと、私も事前に予約しようと思いましたら予約を断られまして、野宿覚悟で行ったんですが、何とか一部屋あった、そんな状況でございます。  そんな状況ですから、医療輸送通信その他のロジ活動など、いわゆる非軍事部門というんでしょうか、そういう部門といえどもカンボジア現状に対応できる十分な装備と訓練された要員でなければ求められる協力は行えないと感じました。すなわち、自衛隊が長年にわたって蓄積してきた技能、経験、組織的な機能を活用するしかないわけであります。社会党の言われる文民はすぐに派遣するには余りにも危険でありましょうし、また今から訓練するんだといえば、まさに泥棒見て縄をなうの例えになるわけでございます。  重ねて申し上げますが、現実的に自衛隊しかないと考えますが、政府の認識を伺います。
  23. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 常識的にそうでしょうね。
  24. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 まさに私も常識的にそれしかない、そう思って申し上げたわけでございます。常識的でない方もおられるようであります。(「だれだ」と呼ぶ者あり)だれかと聞かれれば後ろとしか答えようがないのでありますが。  申し上げてまいりましたように、カンボジア援助は急を要しております。そこで、PKOPKOとして、このたび政府が青年海外協力隊のカンボジア派遣をお決めになったことは大いに結構なことでございます。この派遣について御説明をお願いします。
  25. 川上隆朗

    政府委員(川上隆朗君) 青年海外協力隊の派遣問題でございますが、先生御案内のとおり、昭和四十五年、協力隊員を全員引き揚げてから、これまでずっと中断状態にあったわけでございます。先般一月に経済協力の総合的な調査団が現地に参りましたときに先方が受け入れ方を表明いたしまして、これを受けまして三月末から四月初めでございましたが、青年海外協力隊の青木事務局長を団長とする調査団を本件につきましてカンボジア派遣いたしまして、協力のニーズ、それから特に治安状況、生活環境といったようなことを調査した経緯がございます。現在、早期派遣に向けて鋭意検討中という状況でございます。  他方、こういう一般隊員を新たに派遣する場合には、現在実施中の春の募集の手続というものが終了する八月以降に、八月上旬でございますが、それ以降に八十日間訓練を行う必要があるということでございますので、今次募集で隊員が確保できたとしても、カンボジアに対する派遣というのは早くとも十二月ごろにならざるを得ない。そういう状況でございますので、実はもう少し早く何とかならないかという発想から、政府といたしましては、短期の緊急派遣制度というのがございまして、若干名でございますけれども隊員のOB、OGという方々を早期に派遣しまして、先ほど申しました一般的な派遣が可能になる十二月までにデモンストレーション的な活動、あるいは後続隊員が効果的に活動を展開できるような予備調査といったようなことを活動として行うということも現在鋭意検討中、そういう状況でございます。
  26. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 先ほど来申し上げておりますように、本当に現地の事情、いろんな援助を必要としておりますから、この青年海外協力隊についてもできるだけ早く送っていただいて、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  ただ、老婆心ながらといいますか申し上げておきますと、現地地雷の危険というのは、これは極めて深刻な状況のようでございますし、今まだ新たに地雷を埋めるというのですか、埋めておるという情報すらあるわけでございますから、どうぞ隊員の皆さんに本当に事故のないように十分気をつけて派遣していただきたいなと申し上げておきます。  カンボジア問題の最後に申し上げますが、このたびカンボジアに参りました。きのう板垣先生も言われたのでありますが、行きの飛行機の隣は、たまたま隣に座っておられたのでありますが、カンボジアに中古の自動車を売りに行く方でありました。ホテルに着きますと、アンコールワットの観光客の皆さんがおられました。商売はします、観光にも行きます、しかしPKOはしません、これでは国際世論絶対に納得はしてくれないと思います。もう待ったなしたと思いますので、それこそ一日も早く合意をしてカンボジア復興のお手伝いをする必要があることを申し上げておきたいと思います。  続きまして、社会党案についてといいますか、社会党のお考えもこの際お聞きしておきたいと思いますのでお尋ねをいたします。  まず、通告いたしました御質問を申し上げる前に、昨日の板垣先生との質疑の中でちょっと私なりに確認をさせておいていただきたいと思うこと何点がありますので、それから先にお尋ねをしたいと思います。  その一点は、きのう板垣先生がお触れになりました国旗、日の丸の旗についてでございます。私も現地でその話を聞きました。その話というのは、社会党の代表団というんですか調査団というんですか、の皆さんがぜひ日本の日の丸を掲げろと言われたという話を聞きまして、正直言ってうれしかったんです。そのことを板垣先生はお触れになったので、改めて、そしてきのうそのことについては特にお答えもございませんでしたから。  PKOに参りますと、どちらの肩であったかは忘れましたけれども、一方の肩にみんな国連の旗をつけていますね。一方の肩には自分の国の国旗をつけています。いざ行って、こんなことでごたごたするのもみっともないし不幸な話でありますがら確認をさせておいていただきたいんですが、やっぱり日本の場合は社会党がお考えになっておられる隊員も日の丸をつけて行かれるんですねという確認でございます。
  27. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) きのう板垣先生の御質問のというよりも、これは板垣先生の御意見として述べられて私が見解を述べる機会がなかったので、改めて今御質問がありましたからお答えをいたしますが、私ども社会党といたしましては、国籍、国家を表示する標識が必要であるということは当然のこととして考えておりますし、航空機あるいは船舶等についてもその必要性、私どもは肯定をしております。その国をあらわす標識がスポーツの国際大会等を通じて現に日の丸が国際的な認識になっているということについても否定するものではありません。  ただ、この日の丸については、特に東南アジア中国においては侵略のシンボルというイメージがいまだに消えていないわけでありますから、それについてきちっと払拭をする国会決議等の措置が伴うことによって私どもは国旗というものについて認めてまいりたい、このように考えて、その討議を今、党内でやっているわけでありますし、シャドーキャビネットでもそういう議論を高知で提起をしたことを発表されております。  私どもよく誤解を受けるのは、日の丸と君が代をワンセットにして問題を提起されることについては私どもとしては同意できない。国の標識としてのそれが日の丸であるかどうか、これについては社会的にあるいは国際的にも必要だということは認識をしておりますが、君が代については私どもとしては今日の憲法の思想から妥当ではない、このように考えています。
  28. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 この議論、ここで余りする場でもないでしょうから一つだけ申し上げておきますと、現地でJVCというボランティアの皆さんにお会いしたんですが、やっぱり大変でしょうね、危険でしょうねと、こういう話をいろいろしていました。その中で皆さんが一つだけ言っておられたのは、できるだけやっぱり日本人だとわかる方が安全なので、どこへ行くのでも大きな日の丸つけて行きますと言っておられたという話だけは御紹介をさせておいていただきたいと思います。  次に、確認させていただきたいこと三点ありますが、これはもう順次申し上げますめで一括してお答えいただきたいと思うんです。  一点は、要員派遣について直ちにと言われたんですね、きのうのお答えの中で。直ちにというのはやっぱり危険じゃないかなと思ったんですが、これどうですかという確認と、それからもう一つは、旧国鉄の職員をカンボジアに行ってもらおうというお話がございましたが、これの内容を少し御説明いただきたいと思いますのと、それから自衛隊をくらがえという表現をなさいましたので、くらがえという表現の内容、いま一度お伺いをしておきたいと思います。以上三点、確認させていただきたいと思います。
  29. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) 私どもの構想といたしましては文民を派遣するということでございますから、先ほども申し上げましたように、文民については法改正を必要としないで派遣できる分野が、先ほど言いました選挙とかあるいは警察官とかこういう分野であるわけでございますから、これは今でも派遣できるわけであります。それを今、全部の要望にこたえる人員を派遣するということではなくて、段取りをするために、あるいは指導要員として先遣的な役割を持った者を必要な人員派遣することは直ちに可能だと、こういうふうに考えております。  それから、旧国鉄職員ということを触れましたけれども、現地で一番求められていることの一つに鉄道の整備復旧、これが一番求められております。旧国鉄の職員、今はJRということになっておりますけれども、そのような指導的な技能を持った人たちがいるわけでございますから、その方々を活用することも考えるべきことではないだろうか、こういうふうに考えて、それは指導要員としてです。  それから三つ目に、くらがえという言葉は適切ではなかったと思いますが、要するに新たな機構、国際協力隊という機構をつくってそこに移管をして、そっちに身分をかわっていただく、こういうことで申し上げた意味でございますので、御理解願いたいと思います。
  30. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 それでは、通告させていただいた質問をいたします。  まず、今度の法案をお出しになったときにその御説明の中で、国連の改組改革ということを何回も言われました。そこで、この内容、改組改革の内容をお示しいただきたいと思うんですが、特にその中で安全保障理事会の常任理事国になることについて、望ましいとか、もうその必要はないんだとか、どういうふうに見ておられるのか、含めてお答えいただきたいと存じます。
  31. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) この点につきましては宮澤総理渡辺外務大臣とも一致するところがあると思うんですが、まず第一に、現在の国連の中で私どもとしては改組すべきところとしては、国連そのものがやはり第二次世界大戦の戦勝国によって運営をするという状態がいまだに続いている。そして安全保障理事会常任理事国が五つの国がずっと指定席のような形で運営に当たっている。この点はやはり安全保障理事会の機構、運営を改組して、世界の各大陸のバランスをとるとかあるいは経済的な状態についてもそれぞれのバランスをとるとか、こういうふうな改組が必要ではないだろうか。そしてもう一つは、やはり戦勝国、敵国という理念がいまだに続いている。この敵国条項というのは、やはりもうこの辺できれいにけじめをつけていくべきではないだろうか、こういうふうに考えているわけであります。  それから、平和維持機構については、紛争の事後処理だけではなくて、やはり予見された場合の事前の防止策とか、あるいはまた、これは日本政府からも提唱されておりますけれども軍縮あるいは武器の移転の禁止あるいは登録制度、核兵器の管理体制、こういう分野について国連の機能を、総会の機能、安全保障理事会の機能、事務総長の機能をもっと強めていく必要があるんじゃないだろうか。  それからさらに、今大きな課題になっている地球環境問題それから南北間の格差の問題、これに国連が有効にその役割を果たせるような機能を持つべきではないだろうか、こういうふうに考えております。
  32. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 お話を伺いまして、極めて同じような認識であるということでございまして、安心をさせていただきました。  そこで、この問題を論じておりますときに、アジアの各国が日本PKO参加についてどのように見ているかということでは見方が随分違うなと思って聞いておるわけでございますが、確かにきのう言われたように、出かけていっても会う人がお互いに違ったり、人間でありますから相手がどんな人か知っていると言い方もニュアンスもちょっと変わってくるというようなこともあって、お互いに受け取り方が違うのかなと思ったりもいたします。  そこで、ただちょっと気になりますのは、平成三年十二月五日のこの委員会で矢田部先生が、「フィリピンでは、ここに御紹介をいたしますが、一昨日上院に、このPKO法案に批判をし、自衛隊の海外展開に重大な懸念、憂慮を表明するという決議案が上程をされました。これはいずれ可決をされる見込みです。シンガポールも同様です。」と言われたんですが、私は気になりましたのでこの後調べてみたんですが、私が調べられた範囲では、フィリピンは可決もされておりませんし、シンガポールにはそのような事実があったのかなと思うものですから、このことだけはお教えをいただけませんか。
  33. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) フィリピンの上院で日本自衛隊派遣についての反対の決議案が上程の手続をとられたことは間違いのない事実であります。それからその問題が採択されないままに今選挙戦に入っておりまして、そのままになっている、こういう状況でございます、事実は。  そこで、私どもとしては、それが上院で決定に至らなかったからその懸念は全く消滅をした、こういうふうに受けとめることは少し事態を甘く見るのではないだろうか、やはり国会にそういう決議案の上程の手続がとられたということはそれなりに重く見なければいけないんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  34. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 シンガポールはどうですか。
  35. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) シンガポールにはそのような事実はないというふうに受けとめております。
  36. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 ここでいろいろお言葉を返すようなことは申し上げるつもりありませんけれども、いやしくもこの委員会の中で可決される見込みだとかシンガポールも同様ですと言っておられるわけでありますから、言葉は正確でありたいなと、こう思うわけでございます。  今お話しのように、可決されないからまるっきり心配ない、無視するという話だと決して私も申し上げているわけじゃありません。ただ、本当に可決されるような状況なら極めて深刻だなと私も思いましたので大変気をつけて見ておったんですが、今のところ可決されるような状況にはないと私は判断しておりますので、深刻さの受ける度合いだということだけを申し上げておきたいと思います。  次に、これはぜひ野田先生の率直な御意見をお聞きしてみたいなと思いまして、私ももう率直に申し上げます。  先ほど申し上げたあのポル・ポト派の残虐な行為を博物館といって残しておるところ、先ほど申し上げたとおりであります。私を案内してくれた人が言っていましたけれども、ポル・ポト派というのはインテリを徹底して嫌ったようでありまして、英語をしゃべれば殺す、フランス語がしゃべれれば殺す、これでも足らずにもういよいよ、眼鏡をかけてりゃインテリだから殺す、ここまでやったようであります。そして、殺し方も極めて本当に残酷な殺し方をしております。  そこで、私がその場で率直に思いましたのは、そういう状況にあるということを承知の上で中国ポル・ポト派を支援したわけであります。百も承知の上でそれを支援したんです。そして今、工兵隊を四百人か送っております。それはそれでいいんでしょうけれども、その中国日本PKO参加は慎重にしてほしいと言われなきゃならぬのかなと正直に私はそう思うんですが、先生いかがお感じになりますか。
  37. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) 中国カンボジアヘの支援というのは、先ほど御説明がありましたけれども、PKOの中のPKF分野では、工兵隊という表現が使われましたが、施設関係の部隊だと。それと停戦監視、こういうことで、兵力引き離しとかあるいは武装解除とかそういう軍事部門参加していない。これは私は賢明な措置だというふうに思っているわけであります。  そこで、その中国日本に対してあのような慎重な対応を求めるということについての発言はいかがなものか、こういうことでございますけれども、これは私から中国の首脳部の発言をかれこれ申し上げる立場にはないわけでございまして、中国中国としてのカンボジア政策について、あるいはまた日本に対する対応措置として述べたものでありますから、言及は避けたいと思います。
  38. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 率直な御意見をお聞きしたいなと思ったんですが、お避けになりましたので仕方がありません。  それでは次に、皆さんの言っておられる非軍事、文民、民生ということでお尋ねをしたいわけでございますが、率直にこのPKO全体の中で非軍事、文民、民生がどのくらいの割合を占めるかなど。私に言わせていただくと、それでは余りにも割合が小さいのではないだろうかというふうに思うわけでありますが、これはいろんな計算の仕方もあると思いますので、きのうなどはたしか九割と一割というような話が出たように記憶いたしておりますけれども、社会党の言っておられるその非軍事、文民、民生だけで全体の中でどのくらいの支援はできるんだというふうに思っておられるかお聞かせください。
  39. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) これは尾辻先生現地へ行って見られたようでございますけれども、私どもとしては、私どもがどのぐらいの割合の仕事ができるか、役割が果たせるか、こういう点について数字的に何割であるとかいうふうなものは正直に言って持っておりません。しかし、文民の分野で果たす民生的な役割というのは、今後のカンボジアの民生の安定、国民生活の向上、そして経済の発展には基礎的な分野でかなり長期にわたって効果をもたらす分野であるというふうに考えておりますので、ここはやはり各方面でしっかりやっていかなければいけない分野だ、こういうふうに考えております。
  40. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 十分と考えるか不十分と考えるかの意見の違いなんだろうなと思います。  そこで、まさにこの法案審議のポイントだと私は理解しているんですけれども、このPKOに対する日本の貢献の中で、PKFから逃げても国際世論は許してくれるのかどうか、ここだと思うんですね。それで、私なりに議事録読み返させてもらいますと、恐らく社会党のお考えというのは、平成三年十二月二十日に堂本先生が我が党の合馬先生質問に対して、「そこは軍隊が出せる国が、申しわけないけれどもやっていただく、そのことの方が日本としてはきちんと整合性がつくと信じております。」と答えておられるんですが、その辺が集約されたお考えなんだろうなと私は理解をするわけであります。  そこで、申しわけありませんがと言って、私は国際世論はいいですよとは言ってくれない、村八分に遭うんじゃないかなと思うんですが、社会党はどういうふうにこのことを思っておられるか、いま一度お尋ねをしておきたいと思います。
  41. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) 軍事的分野を受け持たなくても、民生の分野、文民をできるだけ派遣してインフラの整備とかあるいは可能な限りの援助を行っていけば、私は国際世論の中で日本が孤立することはないだろう、こういうふうに思っておりますし、また、その場合には日本の憲法の規定というものを各国に対して十分理解を求めるような活動も必要ではないか、こういうふうに考えております。
  42. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 申しわけないがという言葉をお使いになったのは社会党のお答えの中ででございますので、そのことは申し上げておきたいと存じます。  そこで、私もよく遺骨収集にも行くんです。そうしますと、場所によっては本当に軍隊の護衛がついできます。ひどいときにはゲリラとの撃ち合いがあったこともあります。遺骨収集に行ってもそんなことなんですね。ペルーのあの悲惨な事故は記憶に新しいわけでありますし、文民で本当に安全の確保ができるのかなと私は思うわけでありますが、文民の安全確保について本当に大丈夫なんだというふうに考えておられるか、お尋ねをいたします。
  43. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) 残念ながら、今世界各国で日本人、あるいは日本人だけではなくて各国の人たちも、予想しないような危機に見舞われることが往々にしてあるわけでございますから、私どもが文民を派遣して一〇〇%安全なのか、こう言われれば一〇〇%と答えることはできないと思うんです。  ただ、政府の今の原案によっても文民によらなければならない分野があるわけですね。選挙の指導、監視、あるいは行政の指導、それから警察行政の指導、こういう分野はこれは自衛隊の役割から外してあるわけで、文民によってやっていく、こういうことになっているわけです。それから、今お話がありました海外青年協力隊も派遣をされる。あるいはまた現地にも、私の聞いているところでは約百人ぐらい今ボランティアの方が活動されている。これはやはり、自動車の整備とかあるいはまた飲料水の供給のための井戸を掘るとか、そういう活動中心になってやっておられるわけです。これはやはり健康保持の上からいってもまた治安の上からいっても非常に危険な状態であるということは私も否定するものではございません。しかしそれは、現地UNTACとの交渉によってできるだけ最大限に安全確保の方途を講じながらやっていくということしかないんじゃないか、こういうふうに思うんです。
  44. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 私も、危険なところに行くわけでありますから、危険だという話はしておるわけでありますが、危険を回避する能力を持っているか持ってないかということもあると思うんですね。ですからその辺のことを申し上げたかったんですが、時間もありませんから、もうそのことは申し上げません。  そこで、自衛隊に対する御認識というのを、昨日来、まあ私の印象では少し変えてこられたのかなとも思うのでありますが、ここで少しお尋ねをさせておいていただきたいと思います。  本当は防衛庁長官お尋ねしたかったのでありますけれども、もうあえてお尋ねするまでもないわけでありますから、まず申し上げますと、雲仙・普賢岳のあの自衛隊の皆さんの大変な御苦労というのは申し上げるまでもないところでございます。その他もう災害に大変な皆さんの御苦労があるわけでございますが、その辺のところはどういうふうに評価しておられるのか。それからまた、掃海艇が派遣されて、私どもはよくやってくれたと思っておりますが、この辺に対する評価もどのようにしておられるのか、ちょっとそこのところをお尋ねさせていただきたいと思います。
  45. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) 雲仙・普賢岳を初めとした大災害に、自衛隊の特に施設大隊の方々が出動して、あるいはまた近辺にいる陸上自衛隊人たちが出動して活動していることについて、私どももその災害救援活動、これを評価することはやぶさかではございません。ただ、自衛隊本来のこれは任務ではないわけでありますから、その点はやはりょく考えていかなければならないことだ、こういうふうに思うわけです。  それから、掃海艇業務の問題につきましては、私はさほど評価する行動であったとは考えておりません。
  46. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 余り時間もなくなっておりますから先を急がせていただきたいと思いますが、きのうから国論二分という言葉を先生お使いになっておられました。  そこでお尋ねしてみたいんですが、このたびの読売新聞の世論調査では、自衛隊派遣を六八%の人が容認しております。これを見ても国論二分というふうにお感じになりますでしょうか。ちょっと御感想をお聞かせください。
  47. 野田哲

    委員以外の議員(野田哲君) 新聞社やマスコミその他調査機関でやるいろんな調査がありますから、読売の六八%だけをもって国論二分ではないという評価にはならないと私どもは受けとめております。
  48. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 いろいろ意見の違いが浮き彫りになったと思いますので、後の皆さんがまた質問をしてくださると思っておりますから、社会党に対する質問は以上にさせていただきたいと思います。  そこで、残された時間、政府に率直にお尋ねしてみたいと思うことが一つありますので、それをお尋ねするんですが、この議事録を読み返してみて思うんですけれども、国連PKOというのは国連憲章やなんかでしっかり決まったものではない、長い積み重ねで、まさに積み重ねででき上がってきた原則がある、そのように理解をしました。  その原則と、今度は日本がこのたびPKO法案をつくるに当たって五原則ということを言いました。改めて五原則と言ったので、どうもその日本の五原則だけが突出しているような印象を私自身も最初持ってしまったんですが、どうもしょせん何かほとんど同じものではないかと思うんですが、その辺をどう理解すればいいのかということをお尋ねいたします。
  49. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、国連PKO活動は長年にわたりまして蓄積された経験に基づく基本的な枠組みにのっとって進められているものでございまして、今回の法案はこのようなPKO活動の実態には十分配慮して作成されたものでございます。我が国のPKO活動への迅速かつ実効のある参加がこの法案によって可能になると確信している次第でございます。  今御指摘のいわゆる五原則につきましては、派遣の終了、業務の中断及び武器の使用といった部分につきまして、我が国の独自の立場が確かに反映されておるわけでございますが、全体としまして国連PKO活動の基本原則に沿うものであるというふうに認識いたしております。スイスが今後、PKO参加に当たって日本と同様な条件を付す予定であるというふうに伺っております。そういった点を勘案いたしましても、今御指摘の五原則が必ずしも日本独自の特異なものであるというふうには考えておりません。
  50. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 最後に、防衛庁長官お尋ねをいたします。  掃海艇は本当に現地で苦労しておりました。私も激励に参りましたので、承知をいたしております。また、この法案が通りますと世界各地で皆さんにあんな苦労を強いるのだなと、そう思うわけであります。苦労を強いるのであればやっぱりそれなりのことを考えてあげるのが道であろう、そう思うわけでございまして、処遇についてどのようにお考えか、お尋ねをいたします。
  51. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ペルシャ湾の掃海艇に関する困難な勤務状況の中で、政府としてどのような対応をしたかというお尋ねだと存じます。  ペルシャ湾の掃海艇派遣部隊が世界から大変評価されておるということ、それから非常に困難な任務を自衛隊が敢然として遂行されてきたということ、そういう点についてはもう私から申し上げませんが、それだけに自衛隊の方々が自信と責任を持って遂行できる体制をつくらなければならないことは当然のことでございますが、その一つの問題として、処遇等の問題がございます。  平和協力法案によりますと、平和協力手当の問題が法律に明記されております。これは政令で定めることになっておりますから、あとう限りそうしたPKFの困難な問題、掃海艇はちょっと別でございますけれども、これは対応しなければなりませんが、掃海艇の問題について申し上げますならば、帰国に当たりまして、内閣総理大臣防衛庁長官が歓迎式典で迎えに行って、しかも総理大臣から自衛隊創設以来初めての特別賞状を授与させていただきました。  また、同部隊の落合指揮官に対しましては、その職務の遂行を推賞するということで、防衛庁長官から第一級の賞詞を授与いたしましたし、その他の隊員につきましても、幕僚長等から各級の賞詞を与えております。また、隊員につきましては、新たな防衛記念章を制定いたしまして、国際貢献に関する業務に従事したことを記念するそのようなシンボルとして、誇りを与えるということをいたしました。  なお、このほか湾岸諸国から非常に感謝をいただきまして、特にクウエート政府からは同部隊の指揮官に対しまして記念メダル、これは幹部職員八十八名でございましたけれども、記念メダルをわざわざ私を通じまして授与をいただきました。そしてまた、落合一佐以下幹部に直接来ていただきまして授与もさせていただきました。こうした栄誉をたたえるということは、大変これからの自衛隊派遣につきまして励みになると私は思います。  同時に、経済的な問題も重要でございます。派遣された隊員の勤務の特殊性をかんがみまして、特別掃海業務手当というのも支給を今回いたしました。また、特別報奨金を新設するなど、処遇面でも特別の措置を講じております。  なお今回、平成四年度予算におきましては、賞しゅつの問題につきまして地方警察官との格差が指摘されておりまして、最高五千万円までは出すことを、今までは一千七百万円でございましたが、そのような措置を講じております。今後とも、隊員が自信を持ってできるようにあらゆる施策を講じなければならない、このように存じております。
  52. 尾辻秀久

    尾辻秀久君 掃海艇に派遣された隊員の一人が、国民の皆さんに頑張ってこいと言われるならば我々はどんな苦労もいとわないのですと言ったことを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  53. 星野朋市

    ○星野朋市君 私は、法案の質問に当たりまして、特に一言強調したいことがございます。  今回の我が国のPKOへの参加ということは、私は国際貢献というよりもむしろ国際責務ではないがというふうに考えております。貢献とい立言葉は、どちらかというと、してさしあげましょうというニュアンスを持っておるわけです。したがいまして、積極的な貢献であるとか、貢献するにやぶさかではないというような言葉が使われるわけでございますけれども、国際責務、責務というのはもちろん義務を果たすべき責任、しなくてはならないこと、こういうことだろうと思います。恐らく私は、総理の胸中に国際責務ということがあるんではないか、こういうふうに考えております。  それから、昨日も竹村委員質問の中に、我が国の憲法の前文について触れられた部分がございます。憲法の前文というのは、私の承知している限りでは非常に少ない、あっても比較的短い前文。しかし、日本の憲法の前文は異例の長さであります。そこに日本の真情が託されていると思うのでありますが、我が国憲法の前文には「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」云々とありまして、中略しますけれども、その後に「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とあります。この憲法の前文は、まさしく国際の平和のための国連活動に我が国がどういう形で参加しなければならないかということを明確にこれは述べているものと思います。  我々は、今PKO法案について真剣に討議し、一日も早くこれを成立させたいと思っておりますけれども、万が一この国会でこれが成立しないようなことがあったら我が国の受ける評価はどんなものであるか、総理に改めてこの法案の意義をお尋ねしたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず最初の、貢献であるか責務であるかということにつきましてでございますが、振り返ってみますと、貢献という言葉が使われるに至りましたゆえんは、恐らく我が国が戦後長いこと世界平和から一方的に列挙を受けていた、受益者としての立場を長いこと続けてきた。その反省の上に立って、こちらからも何かやはりお返しをしなければならないと申しますか、我々としても我々のできることをしなければならないではないか、一方的でなく、やはり双方交通のものであろう、こういうことが貢献という言葉の出てきたゆえんであったと思います。  ですから、それなりにこの言葉には沿革的な意味があると思うのでありますが、さらにそれが委員の言われますように、もう一つ定着いたしますと、そんなことはむしろ当たり前であって、我々としてのむしろ責任があるんだ、こういうことまで一歩踏み込んで私はもはや考えてもいいのであろう。しかし、この貢献という言葉にはそういう沿革があるということを私は感じておるわけでございます。  それから憲法前文、まさにこのような長い憲法前文というのは私は例が少ないと思いますが、やはりこれは我が国が敗戦後新しいスタートを切るについて、その新しいスタートの理念は何であるかということを、これは法律の権利義務の条文と申しますよりはプリンシプルの問題として、物の考え方の問題として、あるいは哲学としてでもよろしゅうございます。そういう意味で、私は前文が意味を持っておるというふうに考えておりまして、まさにただいま御審議をいただいております法案は憲法の前文が意味しているそれを具体化しようとしている我々の試みであるというふうに政府としては考えておるわけでございます。  そこで、この法案が不成立に終わったときにどうかということでございますけれども、我が国が湾岸問題以来、国際的な責務あるいは貢献をいかに果たすべきかということについては国内で非常に議論がございましたと同時に、国際的にも大きな議論を呼びました。それは一つには、我が国がこのような憲法を持っておるということを今まで世界の人がそうたくさん知っておったわけではないのであろうと思いますが、私どもですら実はドイツの憲法の限界というものをそう具体的には存じませんでしたものですから、そういう意味日本というのはそういう国であることはわかった、それはわかったが、しかしそうであれば憲法の中でできることというものがなおあるだろうという内外ともに私はそういう議論になってまいったと思うのでございます。ですから、やはりできることはしなければならないというのが委員の言われる私は貢献ということであろうと思います。  ことしの一月にニューヨークで国連の安保理事会のいわゆる首脳者会議がございましたときに、私といたしましては、今政府としては国会にこのような法案の御審議をお願いしているということを申しました。それは、私としては国会のお許しを得て我が国としてはこのような貢献をしたいということを実は公の席で申す機会であったわけでございますが、それはそれといたしまして、この問題につきましての我が国における議論はかなり世界的に知れ渡るに至りました。むしろドイツの場合よりはより広く世界の注目を集めておるかと存じます。そういう意味で、いわゆる経済大国というのは小切手だけをやる国かということに日本がどうこたえるであろう、どう汗をかくか、いわば自分自身の金銭以外のそれこそ貢献をどうするであろうかということは世界的な注目を集めておるところであろうと考えております。  たまたま、ただいままたこの一、二年急にふえました国連平和維持活動の中で最大の規模のものがカンボジアで行われようとしております。しかも、それには我が日本人が枢要な地位を幾つか占めてこの国連平和維持活動をしようとしておりまして、日本アジアの国であるということから申しまして、日本はそれではどれだけの貢献をこの際するであろうかということは一層注目を浴びておるばかりでなく、カンボジア自身から直接に我が国に対していろいろな要請が来ておりますことは先日以来いろいろこの委員会でも御議論になっておるところでございますので、あれこれ考えまして、国会の御賛成を得てこの法律案法律として成立をさせていただきまして、内外から起こっております。そのような我々の貢献に対する求めに対してこたえていかなければならないと考えております。
  55. 星野朋市

    ○星野朋市君 我が国は今まで冷戦構造の枠組みの中でむしろ西側の一員として平和を享受し、繁栄を続けてきたわけでございますけれども、このポスト冷戦の後必ずしもそういう形にはならないんではないか。私は、日本の商人国家の終えんだ、こういうふうに位置づけておるわけでございます。  それで、経団連の中に、これはソニーの盛田さんが会長をなさっております対米投資関連協議会というのがございました。今はもっと発展して海外事業活動関連協議会になったかと思うんですが、日本の企業がアメリカに大分進出をいたしまして日本の企業の行動規範がいろいろ問われるようになったときのことであります。最初は日本の企業に対しましてアメリカの社会からいろいろ寄附の要請があった。現地ではなかなか対応できないから一々本社へお伺いを立てる、なかなか決裁が出ない、タイミングが非常におくれる。そういうような繰り返しかありまして、それは次第に改まって、だんだん地元の日本企業も独自に寄附を出すようになった。アメリカの社会は一面寄附で成り立っている面がございまして、御存じだと思いますけれども、アメリカ人の確定申告はそういう寄附行為その他を含めましたことで、確定申告は俗称タックスリターンということで呼ばれているわけですね。  ところが、だんだん日本の企業がメーカーを中心にして地方の都市へ進出してまいります。アメリカの地方の都市は町の真ん中に教会がございますから、休みのときは礼拝の後にいわゆる地域活動というのを教会を中心にして行っておる。日本の企業人はそこがよくわかりませんから、傍らゴルフバッグを担いで歩いている。こんな光景がアメリカ人の目に映りますと、日本の企業というのは、寄附をする、金だけで片づけるのか、こういうような逆に悪い印象を与えてしまう。  そこで、対米投資関連協議会の主要な議論は、要するに日本人もそういう国際社会に進出して国際化企業としての地位を占めるならば、社員一人一人がグッドシチズンシップを持たなければならない。要するに、地域の人々と仲間として認めてもらうような同質、同レベルの行動をしなくちゃならない。こういうふうに議論されておりまして、今日本が資金面だけじゃなくて人的貢献の面もかなりいわゆるコンセンサスとして出てきたわけでございますけれども、まさしく今私は、いわば日本がグッドネーションシップと申しますかそういうものを持って他の国の人々と同質、同レベルの行動をしないと本当の人的貢献とは言えないんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  国際社会の一員として国際社会の常識にかなった行動をとるべき時期だと思います。政府としてそれはどのような理念に基づいているのか、重ねて総理お答えをお願いしたいと思います。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在、我が国は世界で第一のODAの援助供与国になったわけでございますけれども、そう遠くない昔に我々はむしろ援助を受けていた時代があったのでございますから、その間における我が国の成長、あるいは国民意識の変化というものは、なかなかこの事実についていけないところがやっぱりあったことはある程度私はやむを得ないことであったろうと思います。  湾岸戦争というものがやはりそれについての一つの大きな問題を考え直す転機であったのであろうと思いますが、まさにおっしゃいますように、我々は軍事力をもって世界の平和に貢献することはほとんどできないわけでございますけれども、いわんやそれ以外の方法において我々が最善を尽くすということは、おっしゃいますように、いわば世界という大きなコミュニティーにおける一人のメンバーとして当然に貢献をする務めがあるというふうに考えるべきものと存します。
  57. 星野朋市

    ○星野朋市君 ちょっと話題を変えまして、経済企画庁にお尋ねしたいと思いますが、二年前に経常収支が若干減少いたしました。昨年度は政府の見通しよりもかなり大幅な経常黒字を計上したように思います。  平成四年度についてはどのくらいの経常収支を見込んでおられるのか、また恐らくこれ三年間で総額二千億ドルに近い経常収支の黒字になると思うのでございますけれども、その持つ意味はどうなのか、世界的にこれはどう見られているのか、経済企画庁にお尋ねをいたします。
  58. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 御指摘のとおり、昨年度における経常収支の黒字は九百一億ドルということでありまして、前年度、一九九〇年度を五百六十四億ドル上回ったわけであります。  この五百六十四億ドル上回ったことの要因分析をいたしてみますと、一つはいわゆる湾岸危機に伴う移転支出、これが九十六億ドルほどあります。さらには、その残りはほとんどが貿易収支の黒字ということで説明をされるわけですけれども、その貿易収支がそれだけ黒字がふえたということの要因は、大きく四つの要因があろうかと思います。  一つは、投資用の金輸入が九〇年度に比べて大幅に減少した。それからいま一つは、石油の輸入価格が低下をした、それから三つ目は、いわゆる絵画とか自動車、こういった高級品の輸入が大幅に減少した。そしていま一つは、いわゆるJカーブ効果というようなことがよく言われておりますが、そういうドル建て輸出価格が上昇した。大体この四つの要因によって貿易収支の大幅な黒字がふえたということの要因は説明はされるわけであります。  一応これを数量ベースで見てみますと、特に石油関係、こういう鉱物性燃料は変動が大きいわけですから、これを一応外したところで見てみますと、輸入の伸びは、九〇年度に対して九一年度は二・九%増であります。一方で、輸出の伸びの方はどうかといいますと、これは一・八%の増ということでありまして、数量ベースということで見ると若干輸入の伸びの方が上回っておる。したがってトレンドとしては、一つの傾向は、日本が引き続き大幅な黒字を積み上げていくトレンドではない。九〇年度は、ある意味ではでき過ぎという要素はあったということは言えるかと思っております。  今後の展望でありますけれども、この中で経常黒字が縮小する要因の一つとしては、本年の後半から景気が拡大をしていく、緩やかに回復をしていくということになりますと、輸入が増加する傾向が出てくるであろう。それからいま一つは、昨年のJカーブ効果がなくなると同時に、一昨年来の円高という現象が結果としては輸入の拡大ということにもつながっていくのではないか、そういう見方をいたしておるわけであります。  これは、大体臨時的な、一時的な要因を除いていきますと、経常収支がGNPに対してほぼ二%程度というのが一応基調的な数字かなと見ておるわけですが、基本的にはこの基調的な経常収支の黒字というものは、さらに一段と国内の規制緩和だとかそういった努力を続けていかなけりゃならぬ。外国の企業が日本国内においてもっともっと活発に活動できるような環境づくりをする、新規参入の問題、いろんなことを、いわゆる内外価格差という問題もあるわけでありますから、そういった努力を引き続きやっていかなければならぬと思っておるわけです。  第二点目の、これをどう諸外国が評価しておるかということであります。  政治的には確かにいろいろな問題を引き起こす要素が強いわけであります。しかし、一応国際機関の評価は一体どういうことかということで申し上げてみますと、例えばOECD、これは昨年の十二月時点の日本の経常収支に対する評価でありますけれども、黒字それ自体はその修正が必要とされるような状況にはない。このことは、世界の多くの地域において投資資金フローの不足が懸念されている状況においてはなおさらである。  IMF、これは昨年の十月の評価であります。近年における急速な縮小の後、日本の経常収支は再び拡大に転じた。しかしながら、予想される収支黒字の水準は心配には及ばない程度のものであるというのが一応の評価であります。  政治的な問題を抜きにして考えてみますと、これはやはり世界的な貯蓄不足、それに伴う投資資金フローの不足というものがあるわけでありまして、それを結果として日本の方が補っておる。そのことがまた結果として実質金利を抑制する効果をもたらしておるというのが、いわば経済の論理の世界であると思っております。  ただ、今申し上げましたように、このことが、直ちにそれで手放していいのかなと。いろいろな政治的なフリクションもこれに伴ってあるわけでありますから、我が国としては、やはり国際協調、特に世界経済における日本の役割を考えていきますと、国際的な資金の協力というものをさらに念頭に置いて努力していかなければならぬことであると思っております。  なお、本年度の経済見通しにおきまして経常収支の幅を七百十億ドル程度と、こう見込んでおりますけれども、今の段階で、特に為替レートの動向あるいはこれからの景気動向、さまざまな不確定要因があるわけでありまして今直ちにどうのこうのということは言うわけにはいかないと思いますが、我々も十分この点は注目をしながら経済運営をしていかなければならぬと思っております。
  59. 星野朋市

    ○星野朋市君 日本の経常収支の黒字が、確かに世界の資金の還流とかそういうところに果たす役割は大きいのでありますけれども、これを一般的に見ますと、経済大国という中で先進国唯一の黒字国でありますから、非常に注目を浴びるわけでございます。  それから、残念ながら、この経常収支の黒字が大きいということは、いかにも日本政府に財政的な余裕が生じてしまうんではないかというような誤解が実は普遍的にございまして、だから日本に対しての資金援助の要求というのはこれからますます大きくなると思うのでございます。私は、当然それはなすべきことではございますけれども、実は世界的に言えば、キリスト教国、回教国、こういうところでは持てる者が持たざる者に金を出すというのは実はごく当たり前のこと、感謝はされますけれどもそれほど尊敬されないという事実があると思うのです。  この意味で、この資金的な援助に匹敵するような国際評価を得るためには、やはり人的な貢献、いろいろな難しい面があると思いますけれども、先ほどから申し上げているように、その人的貢献も他国と同質、同レベルのものでなくてはならないと思いますけれども、重ねて総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさに星野委員の御指摘のとおりであると思います。今のお言葉に続けて申し上げますならば、湾岸戦争のときにいわゆるチェックディプロマシーという言葉を言われまして、この言葉は非常に我々も嫌な気持ちを持って迎えましたのですが、それは今まさにおっしゃっていらっしゃるような、世界という大きな社会の中の有力な一員として、人と同じだけの貢献をしていないではないかということを言われたに等しいと思っております。  先般、カンボジアのフン・セン首相が来られましたときに、私に対して、各国がみんな汗を流していわゆる平和維持活動に入ってきてくれるときに、日本がお金だけを出してつらい仕事はしないということは日本にとってぐあいが悪くはないですかという意味のことを言われましたが、そういうことがあってはならないと思っております。
  61. 星野朋市

    ○星野朋市君 国際収支の問題に関しまして、昨年の四月に私は月例経済報告会で経済企画庁に、昨年度の経常収支は多分政府の見通しよりもかなり上回るだろうと、こういう質問をいたしました。その中で、政府当局のお答えの中に、実は海外旅行というのが湾岸戦争のおかげで昨年の前半は非常に落ち込んでおった、これが平和を回復して秋からは再びもとに戻るだろう、こういうような御説明がございました。確かにそのとおりになりました。  海外旅行が盛んになるということは、先ほどからもいろいろ例を挙げて御説明がございましたけれども、新しく海外旅行く出るという人よりも何回も出ている人の積み重ねが大きいわけでございます。そうすると、単にハワイヘ行くとかヨーロッパ一周するとか、そういうことでなくて、旅行社の方もいろいろな新しい企画をつくるわけでございますね。ひどいのになりますと、南米のパラグアイの奥地、マトグロッソを探検するなんという、ここは一日に水を一ダースぐらい飲まないと命が保てないという、そんな旅行まで計画される。当然のごとく、カンボジア和平の跡を見ようとか、それからアンコール遺跡を見ようじゃないんですね、アンコールワットを修復するツアーというのが出てくるわけです。  ところが、現地の人及びこのPKOに多数参加している国の人たちはそれはわかりません。確かに観光とか御商売でその国に貢献している面はございますけれども、いわゆる人的貢献という意味では全く質が違う。昨日の朝日新聞の「かたえくぼ」という欄にいみじくも、人的貢献をしてきたよ、ゴールデンウイーク海外旅行者、こういうのが出ておったですね。  私は、今度のカンボジアの問題についても、渡辺外務大臣が前からカンボジアヘいろいろな折衝をなさっておった。それから、二年前、一九九〇年六月ですか、東京会議も主催しまして、それでやっとカンボジア和平が訪れたときに、実はそこに必要な人間が行っていないと。現にカンボジアUNTACについては、明石代表、それから緒方さんが難民高等弁務官として代表として赴任なされておる。そこに日本の顔が見えないというのは、まことに御本人たちにとっても残念なことであろうと思います。外務大臣はいかがお考えでございましょうか。
  62. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 全くそのとおりだと思います。
  63. 星野朋市

    ○星野朋市君 御同意を得まして、意を強ういたしました。  それから、先ほど来御議論になっておりますUNTACの内容につきましては、実は非常に誤解があると思うんですね。正確でない論議が私はされているように思います。後方支援はあたかも軍事部門でないような質疑が行われておったように、これは私の誤解かもしれませんが、そう思っております。  それで、UNTACの概要につきまして、私の手元にありますこの資料によりますと、実は軍事部門というのが歩兵部隊工兵部隊通信部隊ロジ部隊医療部隊航空部隊、海上部隊、軍警察停戦監視団、こういうことになっているわけです。非軍事部門は何かということになりますと、それは文民警察部門選挙部門、行政部門、この三つが主でありまして、あと残りは非常に人数の少ないいわゆる人権監視部門であるとか復旧部門であるとか、こういうことになっていると思うんですが、外務省、この点は間違いございませんか。
  64. 丹波實

    政府委員丹波實君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
  65. 星野朋市

    ○星野朋市君 したがいまして、しばしば議論になっております後方部隊というのは実は大部分が軍事部門である、そういうことを確認したいと思います。  その軍事部門についてはもちろんのこと、訓練され組織された部隊が動かなければ、日本というのはそれ以外のものを派遣したときに、私が先ほどから申し上げているような同質、同レベルの行動とは受け取られない、むしろ足手まといではないか、こういうふうに考えております。  したがって、ほかの理由もいろいろございますけれども、カンボジアUNTAC日本参加するならばやはり軍事部門自衛隊を出す、このことについて再確認をさせていただきたいと思います。
  66. 丹波實

    政府委員丹波實君) まず、先ほどの御答弁をもっと正確に数字的に申し上げますと、UNTACの規模は約二万二千人ぐらいと言われておりますけれども、そのうち、歩兵部隊それから先生がおっしゃっておられる通信その他の後方を全部含めた軍事要員というのは約一万六千名、文民警察も含めた行政監視要員が約四千四百人、選挙要員が約千四百ということで、その二万二千のうち軍事要員が占めるのは一万六千ぐらい、そういうことになっております。  それから、今の御質問でございますけれども、今御提出申し上げておる法律の枠組みとしては、理論的にはすべての分野参加し得る法的な仕組みになっておるということだけを申し上げたいと存じます。
  67. 星野朋市

    ○星野朋市君 UNTACには、我が国と同様の過去や憲法上の制約を持つドイツも現在軍事要員派遣していると承知しておりますけれども、ドイツ参加はどのような形でどういうふうになっておるか、詳しく御説明いただきたいと思います。
  68. 丹波實

    政府委員丹波實君) 四月八日になりますけれども、ドイツ政府のスポーグスマンが、UNTAC参加について発表いたしております。それによりますと、ドイツは連邦の軍医療要員を百四十人UNTAC派遣する、それから七十五人の国境警備警察官を文民警察として派遣するという発表でございます。  御承知と思いますけれども、ここ一、二年、国連PKO参加するために連邦の基本法の改正をどうするかということがドイツの中で論じられておりますけれども、この医療団及び警察の派遣につきましては後方支援分野参加であるのでとりあえず基本法との関係は生じないということもあわせて発表になっておる次第でございます。
  69. 星野朋市

    ○星野朋市君 続いて、先ほどからも議論の対象になりました例の中国の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  いわゆる近隣諸国の懸念ということでしばしば中国の問題が引き合いに出されるわけでございますけれども、今度中国UNTAC要請に応じまして直ちに停戦監視団及び工兵隊を派遣することになりました。中国はこのPKF参加について、長く待っていたときがついに来た、世界で役割を果たすのだ、中国はもはや観衆や応援団ではなくなった、そういうふうに自画自賛をいたしております。派遣中国の誇りであり、中国軍は今後世界の平和に貢献すると自賛をしている、こういう報道もなされているわけでございます。これは軍の機関紙に報ぜられたことでございますけれども、PKOは世界の平和を維持するための活動であり、ノーベル賞を受けて、しかも今まで八十カ国から五十万人以上の人々が参加をいたしたわけでございます。  掃海艇の派遣に見られるように、いい結果が出て懸念することが何でもなかったというような事実もございますし、中国の懸念もこのPKO日本参加する結果を見てみればそういう懸念は全くなくなるんだろうと思いますけれども、外務大臣はいかにお考えでございましょうか。
  70. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これも一言で言えば全くそのとおりで終わってしまうわけでございますが、それでは余りそっけない話でございますから多少つけ加えさせていただきます。  私は、あの戦争の被害というか、直接日本と戦ったというような人たちについては日本の軍隊に対する恐怖感がある、これは事実なんです。したがいまして、今の日本自衛隊と昔の軍隊と同じように思っている人が非常に多い、これも事実でございます。  しかしながら、よく話をしてみるとわかるんですね。例えば、シンガポールの例を見ましても、新聞等でこれは再三出ておることですから私が言ったって差し支えないと思いますが、リー・クアンユーさんなどは、最初は消極的な、否定的な発言がやや多かった。ところがこの間、私は飯を食いながら話をしたんですが、もう全く変わっておりまして、日本が出したってそれは当然でしょう、おつき合いですからと、そういうふうに変わっているんですね。  スハルトさんも同じ。最初のうちは、ペルシャ湾のころはともかく我が国は海外に出兵はしないんだというようなことを言っておりました。しかし、その後になって、それではUNTACには出兵はしないのかと言ったら、あれは戦争ではないし憲法には抵触しないと。あそこも海外には兵隊を出さないという憲法があるらしいんですな、私は詳しく知らぬけれども。それには抵触はしないということでいち早く出すことにした。  私がゴー・チョクトン・シンガポール首相と会って話をしたときも、彼は最初は海外に日本が兵隊を出すことについて、これは非常に言葉を気をつけなければならないセンシティブな問題でありまして、特に年輩者に心配する人がいるということを言っていました。しかし、だんだん話をしていけば、それはやはり日本が自分でカンボジア和平会議を主催したりいろんなことをやっておって、いざそれじゃ平和の実現というときになったら何もやらぬというのでは引っ込みつかぬでしょう、日本が出すのは仕方がないというふうな話が、だんだんに時間がたてば出すべきだ、こうなっているんです。だから、やはり誤解に基づくところがかなりあることも事実でございます。  したがって、日本自衛隊というものはいわゆる外国の軍隊と違うんだ。しかし、みんな自衛隊なんて言ったってわからないです、これは。やっぱりアーミーはアーミー、ネービーはネービーなんであって、海上自衛隊と言うのは日本ぐらいのものでありまして、やはり海軍とか陸軍とか空軍とか言った方が世界には共通して通じるんです、実際のところは。しかしながら、我々は憲法上海外に武力行使を目的としてやることはやらないんですということをよく話すということが非常に大切である。  だから、私が再三言うように、ペルシャ湾に出ていったときの掃海艇のことをひとつ考えたらいいじゃないですか。あれは自衛隊法違反だとか、それは理屈があるんです、言う方には。もともと自衛隊法をつくったときに、それはインド洋の方まで自衛隊の兵隊が行くことを想定してつくったかという理屈は一つあるでしょう。それは私は一理あると思う。しかしながら、現実の問題として、自衛隊法をつくったときはそう考えていたかどうか知らぬけれども、現実には掃海艇は出せることになっておる。やっぱり時が違えば解釈も多少違ってくるのは、これは仕方がないことなんですね。  そういうようなことで、ペルシャ湾まで掃海艇が出動をいたしましたが、随分このときも、領海内に入るんですから、例えばあそこの領海内へも入って結構ですと。領海内まで入る。領海、領空、領土というのは同じ主権の及ぶところなんです、これはみんな。しかし、そこに入っても結構ですと相手国の了解があって、そしてそこでほかのドイツとかアメリカとかフランスとかみんなで探したけれども見つからなかった部分を、非常に難しいものを後から行っても三十数個も探した、爆破した。そういうようなことで、これは結果的にはえらい評価を受けているんですよ。一兆何千億払った方は足りないとか少ないとか遅いとかいろいろ言われたけれども、しかし遅く行っても、掃海艇が行ったときに、人が見つけなかったものをちゃんと見つけて航海を安全にしてやったということは事実なんですから。  だから、出るときは反対した人も、帰ってきたときはみんな拍手した。それでも反対する人は、数のうちですからいますよ、これはどこの国へ行ったって。一〇〇%というわけにはいかないわけだから。それと同じようなことなんだから、今回もやはり法案を通してもらって、それでそのPKO活動参加をする。やってみれば、今テレビ時代だからテレビでよく見れば、何だ、あんなことか、やって当たり前じゃないか、ほかの軍隊はみんなやっているんだから、そういうことになるんですよ。  しかし、そんなことはないと言う人もいますよ、それはいつまでたっても。どこの国だっているんだから。しかし、大多数の国民が納得できればそれでいいんじゃないか。それによって国際的にももっともだと思うんですから。それがやはり国際的日本の責任である。難しい話じゃないんですね、何もこれは。反対だ反対だと言うなら理屈は何ぼでもつきますし、まあ渡辺の言うのは本当だなと思えば大体そうなってしまうし、そんなところじゃないか、私はそう思っているんです。
  71. 星野朋市

    ○星野朋市君 今テレビというあれが出ましたけれども、残念ながら日本の映像メディアは、このPKO法案の審議についても、自衛隊はどうなるかといったときに、必ず戦車が出てきて砲撃を加えたり、それからヘリコプターが飛び交う、ひどいものになるとありもしないミサイル艦が出てきてミサイルを発射する、PKO法案どうなるかは、こういう形で実は放映されているわけです。これは、竹村健一さんが紹介したマクルーハン理論というものによりまして、映像メディアの場合はとにかく印象、これが先だ、内容は残念ながら三〇%ぐらいしか理解されていない、こういうことであります。  それで、私は、いわゆる五原則、これについて何回繰り返してもいい、これは戦争ではないんだということを周知徹底させるべきだと思っております。  最後に、若干時間が残りますけれども、現在カンボジアにおいて、明石国連事務次長がUNTAC事務総長特別代表に任命され、UNTACの事実上の責任者となっており、また先ほど申し上げましたとおり、難民帰還を担当しておられるのは緒方国連難民高等弁務官であります。このように我が同胞が国際的な場でカンボジアの平和と復興のために活躍しておられるときに、国会は、我が国が何をなすべきかという哲学、展望を論ずべき場であると思います。  明石事務次長が先般来日されたときに、私も参議院の政審でお話を聞きました。PKOは抑止力としての存在であって、決して戦うものではない。PKOの基本理念をしっかりと押さえないと重箱の隅をつつくような議論となる。我が国の議論は国連の内部では非常にわかりにくいとおっしゃっておられます。この言葉に謙虚に耳を傾けるべきだと思います。  私は、我が国が国際社会で国力に相応した役割を果たし、名誉ある地位を占めるため、これは憲法の前文を先ほど申し上げたとおりでございますが、UNTAC参加を含め、我が国が国際の平和と安定のための努力に参加し得る法的体制を一日も早く整備することが重要だと思っております。カンボジアPKO活動はもう既に始まっております。日本の対応はいつも後手に回りがち。この歴史的な活動UNTACに我が国として参加しようとするならば、この国会でのこの法案の成立はぎりぎりだと思っております。我が国としては、中国ドイツまたスイスを含む多くの世界の人々とともに平和の維持のために国際社会の一員としての責務を果たすことができるのかどうか、今問われていると思います。  改めまして、法案の成立にかける首相の御決意をお聞きしたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから星野委員がるる述べておられますような環境、そしてるる述べておられますような我が国のいわば世界の一員としての果たすべき責務について、私も全く同感でございます。そして、これが湾岸戦争を契機として国内で国民の大きな関心を呼ぶ問題となったこと、また国際的にも今日の地位を持つ我が国がどういうことを貢献するかという非常な注目を浴びておりますこと、ましてすぐ近くのカンボジアにおきまして非常にかつてない規模の国連平和維持活動が行われておりますこと、我が国がこれに参加することを深く期待されておりますこと等々を考えますと、どうぞ本院におかれましてもこの法案につきまして御審議の上、できるだけ速やかに御可決を賜りまして、内外のこの我々に求められているものにこたえることができますようにお願いを申し上げたいと存じます。
  73. 星野朋市

    ○星野朋市君 若干の時間を残しておりますけれども、これで質問を終わります。
  74. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      ―――――・―――――    午後一時十分開会
  75. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) ただいまから国際平和協力等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、三案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  76. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、社会党の皆様方が対案をまとめられましてPKO協力の論議を深めようとされましたことに敬意を表しまして、最初に提案者の方々に質問をしたいと思います。  社会党案の骨格を見てまいりますと、非軍事、民生、文民の立場から平和協力隊を常設しPKOや災害救助活動に当たるということでございますけれども、幅広い分野のあるPKOに対します協力の窓口をみずから狭めてしまおうとするとなります七、現在までPKOについて熱心に取り組んできました諸外国から、我が国はPKOに不熱心だ、そう思われるような予期しない結果を招くことになるんじゃないかという危惧もあるわけでございますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  77. 村田誠醇

    委員以外の議員(村田誠醇君) お答えをいたします。  社会党の案は窓口を狭めているのではないかということでございましたが、我が党の提案しております条項を、協力する範囲を見てみますと、政府案と比較すれば、項目の数でいけば確かに減っている、そういう意味で窓口を狭めているという疑問だと思うんですけれども、委員承知のように、国連PKO活動というのは憲章上にこういう行動をするのがPKO活動であるという規定をされているわけではございません。その意味でいけば、過去国連が行ってきた行為の積み重ねの中でこういった分野PKO分野だろう、あるいは国連の平和維持の分野だろうということでまとめたわけでございます。  ただ、その中で国連がどういう目的を持ってどういう行動をしてきたかということを、ある程度逐条的といいましょうか、主要項目を並べたのが停戦監視活動だとか、あるいは民生の分野活動だとかということが主として言えるんだろうと思うわけでございます。そういう意味で、国連平和維持活動に対して我が党の案が狭いとか広いとかということの基準にはならないわけでございます。  むしろ、国連が今までやってきた平和維持活動に対して、我が国が国内的に持っているいろいろな制約の要件、私どもでは憲法九条ということが非常に重要な制約要件であるというふうに理解しておりますけれども、そういったものから判断して、そして我が日本としてどの部分をやるのかということを論議したときに、私どもがこの分野だけができるというのが非軍事、民生、文民の立場からやれる範囲として私どもが規定したわけでございます。  それで、これは委員御存じのとおり、国連平和維持活動といいましても、国連平和維持活動、現在のザイールという国でございますが、ここにおける活動は確かに国連の中の分野においてもPKOの範疇であるということは言っておりますけれども、俗も言葉で言って申しわけないんですが、PKOの失敗作と呼ばれている活動でございます。それは最終的に国内問題に介入する形をとりまして、軍事行動まですることを国連がしてしまったという意味で、非常に従来の平和維持活動から大きく逸脱したということは国連自身も、事務総長報告等を見ても出ているわけでございます。したがいまして、PKOと俗称、総称される行動をすべて我が党は無条件で受け入れるというわけにはいかないわけでございます。  それと同じように、国連に加入している国すべてがすべて同一の行動をとらなければいけないという規定があるわけではございません。それぞれの国内条件に応じてできる範囲内のことをするというのが原則でございます。そういう意味で文民、民生、非軍事の分野で私どもはやるんだということでございます。しかも、この軍事部門に関しては、要するに鉄砲の撃ち方やめといった状態を永続化させる、あるいはこれ以上紛争が悪化しないようにすることが前提でございますので、我々が言っております民生部門というのは、むしろ建設的に産業基盤の整備をしたり行政機構を改革したりつくり上げたり、そういう建設的な部門でございますので、決してその活動の範囲が委員が御指摘されるように狭い、あるいは貢献策が足りないというふうには私どもは思っておりません。
  78. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 しかし、今まで世界のいろんな秩序、平和の維持につきましては米ソ両国という大きな力があったわけですが、それがもう解消してしまっている現状でございますから、国連のこのPKO活動というものはますます重要な役割を帯びなきゃならなくなってくるわけでございます。そういった意味からしますと、先ほど申し上げましたように、予期せぬ結果を招くんじゃないかと私たちは危惧しているわけでございます。  これから停戦の監視、治安の維持あるいは選挙監視、行政部門文民警察、復興支援、先ほどおっしゃいましたけれども、いろんな分野がこれから複合して機能することが最近のPKO活動を見ますとますます要求もされてきますし、そういう実態になってくるんじゃないかと私たちは思っております。  そういうことがら考えますと、我が国のPKO協力をより実効性あるものにするためには、国連のもと、世界各国と手を携えながら平和の国際社会を形成していこう、そういう努力をしなきゃなりませんし、そうなりますとPKOの方法というのは幅広くなりますし、我が国もそういう幅広い提供をしていかなければ、そして目に見える貢献をしていかなきゃならない、そういう事態になっているんじゃないかと思うんです。  また、そういうことを私たちも世界に示しながら、その上で実際の活動というのは国民世論の支持あるいは近隣諸国の理解を得ながら貢献の中身を徐々に豊かにしていく、そういう方途をとるべきではないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  79. 村田誠醇

    委員以外の議員(村田誠醇君) 国連平和維持活動が単一の目的を持ったものをやるという形からいろんな形、まあ複合化というんでしょうか、停戦の監視とか治安の維持とか選挙監視とか、幾つかの要素を兼ね備えて活動するということが確かに最近は多くなってまいりました。それは私どもも認めるわけでございます。  ただ、問題は、じゃ幅広くなったからすべて参加していいのかということになる、先ほどと全く同じでございますが、この国連平和維持活動が慣習的といいましょうか慣行的に行われてきたということに着目いたしますと、今後とも国際的な情勢の変化によっては変化をしてくるということは当然考えられるわけでございます。それはイラク国内におけるクルド人保護のための国連の警備隊とかあるいはイラク、クウエートの国境の監視団について、従来のPKOの原則からいたしますと、五大国は入らないとかあるいは関係国の同意を得るとか、これをPKO活動と見るのか対イラク制裁の担保措置と見るのか、いろいろ論議の分かれるところではございますけれども、そういう意味で若干変化してくる可能性を非常に秘めておりますし、固定して考える必要性は私は確かにないと思うわけでございます。そういう意味で、最初から幅広くとこう言いますと無原則的にもなりかねない場合もございます。  ですから、窓口をまあ百貨店方式というんでしょうか、広めるだけではなくて、まず日本ができるところから出発をしまして、その経験と知識を得て、より幅広い分野に出ていくということの方が今大切なのではないだろうかと思っているわけでございます。
  80. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 憲法の立場云々とおっしゃっておりましたし、いろんなお考えを聞いていますと、幅広くやりながら、後は世論を形成しながら憲法論議しながら少し進めていく。大体似たところに落ちつくんじゃないかと私は思うわけですが、それはそれとしまして、次の質問に入ります。  総理、今回のこのPKO法案につきましていろいろ論議されております国際貢献策のあり方について、この論議というものはこれから我が国が世界の平和と繁栄にどう関与していくか、そしてその責任をどう果たしていくか、そういうことがやはり明確に示されていく重要な論議ではないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  81. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように思います。殊に冷戦後の時代に入りまして、国連というものが非常に大きな力を持ち得る状況が生まれ、また現に重要な役割を果たし始めております。そしてまた、世界各国で国連平和維持活動が求められるようなそういう状況があちこちに起こってまいっておりますことも御承知のとおりでございますので、我が国としてこの国連平和維持活動に積極的に貢献できるかどうかということは大変に大切な意味を持つと考えております。
  82. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 現在のような国際貢献の必要性に対する論議が高まってきましたのは、いわゆる湾岸危機ですね、あれが勃発してからということだと思うんです。したがいまして、その当時は対応すべき現実の問題が既に起きておりましたし、時間町な制限もありました。その中で十分な検討がされないままに軍事的な関与とかそういう思惑だけが先行した論議が展開されてきた。それが現在まで尾を引いて、国民の間にもあるいは諸外国にもいろんな懸念を与えているんじゃないかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 戦後四十年、いわば国際的な平和の受益者というような立場でまいりましたが、ああいう形で湾岸戦争が起こった。起こった、しかしそのときに米ソの関係というものが大変に変わっておりましたがゆえに、国連が湾岸戦争の対応の中心に置かれるようになったというそういう、こういう幾つかの事情が同時に発生いたしましたために、我が国の国民としてこれはやはり何かをしなければならないのではないかという意識が高まりました。高まりましたが、何分にも戦後長いことそういう問題をお互いに国民が現実に考える機会がなかったものでございますから、これについていかにあるべきかといういろいろな議論が起こって、いわば試行錯誤というようなものの繰り返しの結果、今日政府が御審議をいただいておりますような法案として我々のとるべき方策を御審議願っておる、こういうことでございます。
  84. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その当時、いろんな議論が混乱しましたのは、さまざまな誤解を与え不安を生じた原因と申しますのは、我が国の進むべき方向あるいは世界秩序のあるべき姿、そういうものに対します日本としての理念、ビジョンというものが明確になっていなかった、あるいはわかりにくかった、そういうことがあるような気がするわけです。  そこで、総理お尋ねしますけれども、我が国が達成すべき国家的な目標、あるいはどのような国際社会の実現を目指していくのか、そのために我が国はどう貢献するのか、その点どのように総理としてお考えでしょうか。
  85. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、やはり憲法の前文並びに憲法全体を流れておりますようないわば我々の軍事大国にならないという決意、そして国際的な協調のもとに世界の平和と繁栄をつくり上げていきたい、そういう物の考え方が中心になりまして、そういうことのために我が国がいかなる貢献をいかにしてするかということが問題であるんだと思います。
  86. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、よく国際貢献という言葉と国際的責務という言葉が使われるわけでございますが、総理はこの二つの言葉をどのように理解されておりますか。また、今回のこのPKO法案につきましては総理の認識としてはどちらの認識でいらっしゃいますか。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはけさほどもちょっと申し上げかけましたが、責務という言葉を私どもが使うようになりましたのは、やはり長いこと我が国は世界の平和の受益者であった。平和に対して積極的に寄与するよりは、まあ一方的に受益をするという立場が長く続いた。しかし、これではいけないという、一方交通でなく双方交通にならなければいけないということから貢献という言葉が生まれてきたんだというふうに私は考えておりますが、いやそんなことはもうわかったと。当然のことであって、貢献をするかしないかということはこれはもう一つの責任なんだというふうにまた考える立場というものが私はあるんだと思うんです。  ですから、この法案をどちらかと。二つの貢献と責務ということは相反する概念でございませんので、我々は国際の平和と繁栄に貢献する当然の責任がある、こういうふうに考えてまいりたいと思います。
  88. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 どちらかというと、日本の平和と発展のためには世界が平和でなければならない。それを守るのは当然の義務である、国際的な責務と。そういう能動的な立場で総理はお考えになっているんじゃないかと私は受け取っております。  そこでまたお尋ねしますけれども、新たな国際秩序の今構築ということでいろいろと国際間で協議もし協力もし合っているわけでございますが、我が日本に対して安全保障であるとか、経済問題あるいは政治問題、いろんな分野があろうと思いますけれども、そういう分野でどういう責任分担を要請されているんでしょうか。その点どうですか。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはやはり世界の第二の経済大国であるという事実は争えないことでございますから、それなりに世界から期待されるものは大きい、各分野。ただし軍事大国でございませんので、軍事的に大きな貢献ができるとは恐らくどの国も期待をしておりませんでしょうし、我々もそういうことは考えておりませんけれども、それ以外の場におきましてはもうできるだけの貢献をしなければならないし、それが期待されておると思います。
  90. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 けさほどもおっしゃっておりました軍事力では世界に貢献はできない、軍事力で日本が世界に貢献することは求められていないと、こういうふうに理解してよろしいですね。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 軍事力ということを余り私厳密な意味で使いませんでしたけれども、軍事大国がなし得るような軍事的貢献というものは我々にはできない、こう考えております。
  92. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 わかりました。  次に、今回のPKO法案につきまして、せんだって同僚委員からもいろいろと質問がございましたが、国民の不安解消あるいはアジア諸国の懸念解消ということがやはり問題になろうかと思うんですが、このPKOへの参加日本の国際的責務を果たすに当たりまして極めて重要な意義があると私ども認識しておりますけれども、仮にこの法案が成立をいたしましても、国民の理解と協力あるいは諸外国の正しい理解が得られませんとその目的というのはなかなか果たし得ないんじゃないか、こう思うんですが、その点はいかがですか。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この法案が法律となりました場合には、政府としてと申しますか我が国としてこの法律に定められておるようなことができるということになるわけでございますが、それをどのような場合に実行するかしないかということは、これはまたひとつ別途の判断をしなければならないわけでございまして、本当に我が国がこの法律に従って積極的に行動することが世界の平和と繁栄のために真実役に立ち、また我々の善意がそのとおり理解をされるかどうかといったようなことを含めまして、それはやはり判断をしなければならない問題であると思います。
  94. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その点につきまして、最近のいろんな報道機関の世論調査等も発表されておりますけれども、PKO活動あるいはそれに対する自衛隊参加の問題、海外派遣の問題につきましては次第に理解は深まってきているんじゃないか、こういう感じがするわけですが、依然としてその賛否というのは二分されている状況にございます。しかし、そういう問題につきましても、こういった種の論議というのがいろいろと討議されるようになりましたのも湾岸危機ということの勃発以降でございますので、わずか一年十カ月か二年ぐらいの間のことでございますから、現在の混乱とかありますのはある程度仕方がないと思うのでございますが、私どもとしましてはいたずらに持論に固執をしていいことだから強行しよう、そういう姿勢ではなくて、やはり十分時間をかけて理解を得られる努力を続けていくことが必要ではないか、そして合意のできた点から確定させ、そして実行していく、実施をしていく、そういうことが必要ではないか。そういう慎重な対応と申しますか、それが一番必要であるし、またそれが一番スムーズにいく方法じゃないかと思うんですが、総理としてはどんなお考えですか。
  95. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 理想からいえば、それは国民一〇〇%、だれも反対なし、国会もそのとおりというのが一番いいんでしょう。しかし、問題はやはりどこかで賛否を問わなきゃならないという時間的制約もございますので、我々としてはその時間の中でできるだけみんなが、なるべく多数の方が賛成してもらえるような努力をしていく。また、これは国会は話し合いでやっておるわけですから、もうちょっとここのところを譲ってくれれば賛成できるんだけれどもというような場合も出てくるかもしれませんし、今まで法案の取り扱い等においては何度もそういうことがあるんです。これは民主主義の立場で我々は少数意見を尊重する。しかし、少数意見にだけ振り回されてしまう、これもいかがなものかということでございますので、その兼ね合いが大変難しかろうが、できるだけ審議を尽くした上で、そして話し合いがまとまる方向で結論を出していくということが現実的な対応ではなかろうかと私は存じます。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、外務大臣の答えられたことで尽きておると思います。
  97. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 世論調査の動向を見ましても、PKOというのは国連のもとでの平和的な国際貢献であるということはだんだんと国民の皆さん方も理解を深められてきているんじゃないかと思うんですが、やはり一部には自衛隊の海外派兵に道を開くんだというような点の誤解もございます。政府もパンフレットを作成したりして広報に努めていることは理解できるわけでございますけれども、もっと幅広くマスコミを活用されたり、あるいはビデオ等を作成されて、国民が見てもわかりやすいような、そういう一層の広報活動の充実を図るべきじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか、事務的に。
  98. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まさにそのとおりだと思います。  私、先ほど自民党の質問に対して、ペルシャ湾への海上自衛隊の出動という言葉を使いましたが、あれは今までそういう言葉は使わないことになっておって、派遣と言うんだそうでございますので、派遣に訂正をいたします。これは言葉の問題でありますが、これは余談になりますけれども、私は中国へ行きましてある人と話したとき、派遣というのは北支派遣軍司令官とか中支派遣軍司令官とか、かなりの大部隊じゃないか、分遣ならばちっちゃなやつだけれどもと言った人がありますが、やはり国によって言葉の使い方というのがございますので、やっぱり日本は出動はいかぬ、派遣ならいいということでございますから、派遣に訂正します。  これもPRの一つのつもりで言ったんですが、まさにそのとおりでありまして、できるだけ政府広報その他を通じてPRはしたいと思いますし、こういうようなテレビ放映の中で忌憚のない意見の交換が行われるということも私は自然のPRだろうと存じます。
  99. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 言葉遣いは慎重にお願いしたいと思います。  先ほどちょっと申し上げましたけれども、やはりこの法案に対する一番の批判というのは国際貢献に名をかりた自衛隊の海外派遣法案じゃないか、あるいは派兵法案じゃないかということが一番の批判じゃないかと思うんですけれども、今広報活動と申し上げましたけれども、PKO参加というものが自衛隊抜きでは十分でない、こういうことに対する国民の理解が得られていないということがやはり原因じゃないかと思うんですね。  そこで、外務当局にお尋ねしますけれども、現在世界のさまざまな地域で活動しているPKOを構成されている人たち、これはどういう人たちなのか説明していただきたいと思うんです。
  100. 丹波實

    政府委員丹波實君) PKO活動のその中を分けますと、いわゆるPKF、平和維持隊、それから停戦監視団と分けることができると思いますけれども、この二つにつきましては、基本的に各国は軍事要員派遣しているというのが現実であろうかと思います。
  101. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 また、北欧にはPKO訓練センターがあるということでお聞きしております。この委員会でもそれが取り上げられてお話がありましたけれども、そこで訓練を受けている人たちはどういう資質の人たちで、どういう訓練を受けているのか説明してください。
  102. 丹波實

    政府委員丹波實君) お答え申し上げます。  北欧四カ国が共同してと申しますか、いろいろ訓練し合ったりしておるわけですが、簡単に二つだけ例をお挙げいたしますと、フィンランドには、ヘルシンキの北北西約二百七十キロぐらいの二ーニサロ市というところに国連の訓練センターがございます。ここで国連平和維持活動派遣する要員の訓練を行っております。研修コースといたしましては、平和維持隊の要員のコース、それから幕僚要員コースというのがございます。それに加えて軍事監視員コースというのがございまして、派遣される者が年に三回程度、各二週間ないし四週間にわたり訓練を受けるということになっています。  それからスウェーデンにおきましては、ストックホルムの近郊にアルムネスというところがございますけれども、ここに国連センターがございまして、やはり国連平和維持活動派遣される要員の訓練を行っております。コースといたしましては、国連レバノン暫定軍ロジ部隊派遣部隊要員のコース、それから待機軍要員コース、それから司令部幕僚要員コース、それから文民警察のコースなどがございまして、やはり年に一、二回程度、一回一週間から三週間にわたって訓練が開催されております。  訓練内容は、以上フィンランドにつきましても、スウェーデンにつきましても、要員の種類により違いますけれども、それぞれの専門技能に加えまして、行き先の歴史でありますとか、それから行き先の現在の政治、軍事情勢あるいは国連PKOの任務等について研修が行われております。  それから、資質の訓練というのも非常に重視されておりまして、例えば情緒の安定性とか、それから忍耐力、協調性、それに加えまして、当然かと思いますけれども、やはり語学の訓練と申しますか、語学のレッスン等も挙げられております。我々の聞いたところでは、一番重要な点は、その行動に当たっての中立性ということを非常に強調しておるということでございます。  概略でございますが、以上でございます。
  103. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 防衛庁にお尋ねしますけれども、そのような今おっしゃったような訓練と自衛隊員が受けている訓練とどこか共通しているところがあるんでしょうか、あるいは全然違っているんでしょうか。その点どうですか。
  104. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ただいま国連局長から北欧のPKO訓練センターについての御説明がございました。もちろん、この法案が通りませんと私どもといたしましてはそのような訓練を本格的に実施するわけにはまいりません。  しかしながら、自衛隊の現在の活動、訓練の中でも、軍事英語でございますとかあるいは通信情報あるいは輸送、衛生あるいは統率、武器の取り扱い、地雷処理、体育、その他必要な教育訓練の一部分あるいはかなりの今お伺いしていた部分が現在自衛隊の本来の任務遂行のために行われているものと承知しておりまして、これらの組織、経験、機能を今回のPKOで生かしたい、かようなことでございます。
  105. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 もう一点、外務省にお尋ねしますけれども、十分な訓練を受けていない一般の人がPKO参加するということが可能なのかどうか、その点についてはどうお考えですか。
  106. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、PKO参加要員につきましては十分な訓練、研修が不可欠であるというふうに考えておりまして、この法案におきましてもそのために第十五条で「適切かつ効果的な実施のための研修」というのを各隊員に義務づけております。  同時に、この法案の仕組みといたしまして、これは十二条でございますけれども、関係行政機関に我が方の必要な要員派遣を求める際には、その関係行政機関の方であらかじめ必要な技術、能力等を有する者の派遣というのを実は予定しておるわけでございます。したがいまして、先ほど先生の御指摘のとおり、まさにそういう基礎的な訓練、能力、技術というのが備わった要員派遣されてくるというのがまず第一番目に重要なことでございます。  それに加えまして、さらにこの法案の十五条におきまして、共通して隊員に対する研修として、先ほど国連局長の方からも御紹介がございましたけれども国際連合あるいはPKOそのものについての基本的な基礎知識、あるいはそれぞれ各派遣される要員が行うこととなるでありましょう活動あるいは任務についての基本的な知識、あるいは派遣先の国情、社会、文化、そういった点について基本的な知識を植えつけるということが極めて重要であるというふうに考えております。  先ほど北欧センターのことにつきまして国連局長から御説明がございましたけれども、そういった経験からも学びつつ訓練、研修に万全を期していく必要がある、そういうふうに考えておる次第でございます。
  107. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 今、研修の重要性ということでお話がございましたが、私どもも同感でありますけれども、この法案が通りますと、やはり広い分野からの方々がPKO参加されます。自衛隊も含めてでございますけれども、PKOという平和的な活動に従事する、これは一口で申しますとそれだけで済むわけでございますが、大変な仕事ではないかと思います。そういった意味で、この研修ということは非常に大切であると私たちも思っております。  この研修についての今までの政府の答弁を見てみますと、法案が成立したら具体的に考えるということで来ているわけです。海部総理の答弁等もございましたけれども、既設の研修施設の利用という狭い発想ではなくて新しい研修施設を建設するぐらいの意気込みを示してもらいたいと私たちも思いますし、これは明石代表からもそういう要望があったように聞いておりますし、その場合には近隣アジア諸国からのPKO参加者の研修も同時に行われるようにしながら、やはり我が国のPKO参加に対する理解というものを深めてもらう一助にしてほしいと考えるわけですが、外務省としては研修についての具体的な青写真はどのようにお考えでしょうか。
  108. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答えさせていただきます。  御指摘のとおり、訓練、研修につきましては非常に重要なことと考えております。ただいま先生の方から、むしろアジアという広い地域にわたっての一種の研修センター的なものをつくるぐらいの考えがあってよろしいのではないかという御指摘がございましたけれども、私ども今回この法案が成立した場合、それに基づきまして具体的なPKO協力が行われるわけでございますけれども、その具体的な法律の運用ぶりと、その中で先ほど指摘申し上げました法案十五条の実施ぶり、そういったことをよく踏まえまして、何よりもまず実績と申しますかを重ねた上で、その上で検討すべき将来の課題である、そういうふうに認識いたしておる次第でございます。
  109. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 外務大臣、これは海部総理のときにも、アジアにおいても環境条件が一日も早く醸成され、日本のセンターで訓練を受けたいという国が出てくることは非常に望ましい、今後の検討課題としたいとおっしゃっているわけですが、国際的な合同訓練センターの設立についてやはり検討はされているんですか、どうですか。
  110. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げたのでございますけれども、まずこの法案を通していただきまして、この法律に基づく我が国のPKOの実績と申しますか、その協力の実績、その中には当然法案十五条等に基づきます研修、訓練というようなものの実績も伴うわけでございまして、そういう実績を重ねた上でやはり検討をしなければならない一つの大きな課題であろうというふうに考えておる次第でございます。
  111. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 仮にカンボジアだけというのでなくて、残念ながら、世界各地で民族的な問題とかいろんなことで独立国家がたくさんできたけれども、紛争はない方がいいんだが、現実はある危険性というものほかなりあります。  そのような場合に国連全体としてこれをどう処理するかというようなことになってくると、やはりPKO活動というものが将来ふえる。大きな戦争はないけれども、むしろ紛争処理のためにそういうチャンスが多くあるかもわからないということになれば、やはりそのような訓練センターのようなものも将来的には考えられるだろうという趣旨のことを申し上げたのであります。
  112. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 今、国際的なこれからの情勢変化について外務大臣からもお話がありました。やはり地域的な紛争というものが、あるいは民族的な抗争というものが何かふえているような感じがしますね。それについて国連の立場というのはますます重要になってくるんじゃないか。  総理、先ほど午前中質問があったように聞いておりますが、国連の今の情勢でいいんでしょうか。あるいはアジアの今後の情勢についてどういう見通しを日本としては持ってみえるのか。それから、国連の機構あるいは仕組みについて今のままでいいのかどうか、どういう改革をされようとお考えですか。
  113. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国連のあり方につきましては、けさほどもこの委員会質疑応答が行われておりました。  戦後発足いたしまして、長い間米ソの冷戦が続いておりましたために、本当に米ソの利害が対立するような場合には国連がなかなか十分に機能し得ないうらみが長く続いておりました。冷戦後の時代になりまして、それが大きく変わりつつあることは非常に希望の持てることでございますが、さてそうなってみますと、国連というものが戦後に発足した時代の憲章を初めいろいろな仕組み、運び方が戦後四十何年を経だきょう果たして妥当であるかどうかということは、多くの人が当然問題視するところでございます。  問題点はもう太田委員がよく御承知のことでございますので一々申し上げませんが、まさに第二次大戦の戦勝国と敗戦国といったようなものの残滓が国連憲章なりいろいろ仕組みの中に残っておるというようなことを初めといたしまして、加盟国の数も全く違ってまいりましたし、そういう意味ではいろいろに根本的に考え直さなければならない問題をたくさん持っておるように存じます。その点は先般安保理事会の首脳会議が行われましたときにもいろいろ議論になったところでございます。  ただ、憲章を変えるとなりますと、これはちょっと気の遠くなるような大変な仕事でございますので、当面こういういろいろな国際的なニーズに適合しなければならないような点を重点を拾い上げながら改善をしていくということにならざるを得ないのではないかと思っております。
  114. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それではもとへ戻りますけれども、いろんな論議の中で、やはりPKOが行われる地域は危険だから軍人でなければならないという点が強調されている面があったのではないかと思うんです。その点について自衛官の皆さん方が不満を持っているというお話もお聞きするわけですが、むしろPKOには軍事的な知識と申しますか、あるいは経験と申しますか、そういうノウハウが必要なんだと言うべきではないかと思うんです。この点の説明不足がやはりPKOに対する誤解につながっている気がするんですが、その点はどのようにお考えですか。
  115. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 御指摘の点は、今、委員のおっしゃるとおりでございまして一私どもは自衛隊の持つ機能とかあるいは経験とか組織的な機能を活用することが極めて適切であるということが基本にございます。  そして同時に、停戦監視団と言われるいわゆるPKF本体の業務につきましても、加盟国の軍人、軍隊により構成されておるということはたびたび本院でも説明されております。また、活動する地域によりまして、特にカンボジアの問題が議論されておりますけれども、非常に劣悪な条件のもとにありましては自衛隊のいわば自力でいろいろの面を賄える、つまり食糧、住居、輸送等を賄えるいわば自己完結的な能力というものも必要でございます。こういった面に着目をいたしまして困難な状況のもとで任務を遂行していくということでございまして、決して危険だから、危険なところだから行くというのが本来の趣旨ではございません。  ただし、この法案の対象とする地域は、紛争が終結をいたし停戦の合意はございますが、なおそういう状況は免れない地域であることもこれは事実でございますので、いろいろの手当てをしておるところでございます。
  116. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この法案が通りますと、国の機関の職員も要請を受けて参加するということになっているわけでございますが、これは具体的にどのようなケースを想定されていますか。
  117. 野村一成

    政府委員野村一成君) このPKOに基づく活動といたしましては、法案の第三条でずっと列記してあるわけでございますけれども、その中にはいわゆる停戦監視団とかPKFのように主として軍人によってなされなければならないと規定されている活動もございます。他方、それ以外にやはり警察行政業務とかあるいは選挙監視等いわゆる文民によってなされる活動もきちんと規定されておるわけでございます。
  118. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 わかりました。  要するに、自衛隊派遣ということはかり強調されているのではなくて、やはり国の能力全部を挙げてこのPKO活動には臨むんだな、協力していくんだなということを確認したかったんです。それでよろしいですね。  私どももPKOのこの国際平和に対する貢献については、今、防衛庁長官おっしゃったように、自衛隊の組織力、技能は活用したい、こう考えておりますけれども、何が何でも自衛隊の海外派遣を進めていくという立場はこれはとりません。今般提出をされております生命等の保護を要する在外邦人の輸送自衛隊が行うことができるあの自衛隊法の一部改正案に対しましても、我が党としては慎重な態度で臨むことにしているわけでございます。  今申し上げましたように、PKO活動については政府能力を全部挙げてこれについて協力をしていくんだという立場から考えますと、自衛隊の海外派遣ばかりを前面に出すということではなくて、政府専用機の運用等につきましてもやはり海上保安庁であるとかそういう柔軟な対応が私は可能ではないかと思うわけですが、政府、民間を問わず、先ほども私最初に申し上げましたとおり、我が国のこの国際貢献組織というのを幅広いものとしていくようなお考えはないか、その点ちょっとお伺いしておきます。
  119. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  この法案に基づきまして、まず第十二条でございますが、関係行政機関、もちろん防衛庁、自衛官も含むわけでございますが、それ以外の国の行政機関から要員派遣していただくということがまず想定されております。さらにはこの十一条にのっとりまして、一般、ボランティアと申しますかそういう方々の中からもこの業務に、適当な国際平和協力業務に従事するということのため、「選考により、任期を定めて隊員を採用することができる。」という規定がございます。  したがいまして、停戦監視とかPKFにつきましては、これは国際的に軍人のステータスを持っております自衛官しか従事できない、そういう任務もございますけれども、他方、それ以外にも選挙監視あるいは文民警察等、文民によってなされるべき業務もあるわけでございます。さらにこの法案におきましては、「人道的な国際救援活動」ということで医療あるいはその他の被災民の救難、被害の復旧等についての活動も規定されておるわけでございます。  そういった面におきまして、法案の仕組みにのっとりますと、関係行政機関あるいは民間からの積極的なこの協力隊への参加ということ、あるいはこの法案には別途民間の協力ということで第二十六条に、これは主として物資の面でございますけれども規定されております。そういうことでかなり網羅的にやはり国を挙げてのこういう国際貢献の仕組みをつくり上げている、そういう認識でございます。
  120. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、防衛庁長官お尋ねしますけれども、昨年の九月、防衛庁は自衛官、内局から成るPKO調査団を派遣されたようですけれども、国会に提出されました報告書を見ましても非常に概略的なものでありますし、今まで外務省からいろいろと聞いているような報告と同じようなことではないかと思うんです。しかも制服の方が行かれたわけでございますから専門家から見たいろんな問題点もそこにはあるんじゃないかと思うんですが、あの報告書を見ますと、これは何のための報告書だったのかなというような気もしてなりませんけれども、その点に関する説明というのは防衛庁長官にはきちんと報告されているんでしょうか。
  121. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 昨年の九月七日から九月二十日まで約二週間でございますけれども、PKOの実態調査のために防衛庁といたしまして制服、ユニホームの方をほとんど構成要員といたしまして、シビルも一名加わっておりますが、七、八名の要員でもって特にこのPKO現実を見てくる必要があるということで派遣をいたしました。そして、現実に行きましたのはUNFICYP、すなわちサイプラス島でございます。それからイスラエルのUNDOFでございます。この二地域につきまして、そこでいろいろの調査をしていただきましたし、また実際に従事しているPKOの各国の方々との対話あるいは説明等も聴取して、私もその報告を詳細に承りました。  国会に報告いたしました点はあるいはその要旨等々であったかとも存じますが、私の聞いた限りでは大変現実的な調査をいたしまして、非常に私は参考になりました。もし必要であれば、これは別に隠すことでも何でもございません、多くの方々にPKOの実態を知っていただくということは非常に必要なことでございますから、御要望であれば先生にまた御説明をし、資料提出を追加的にやりたいと思います。なお、ただいま答弁を必要とするということでございますれば、担当局長が参っておりますので詳細な説明をいたさせるつもりでございます。
  122. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 報告の内容はかなり大部になっておりまして、ただいま時間の制約もあろうと思いますので、私が報告を受けたその概要についてまとめて申し上げさせていただきます。  一つの点は、私が報告を受けましてある意味で非常に意外といいましょうか、こういうことなのかと注目をしたという点が二点ございます。  一つ武器の使用の問題でございますけれども、これは非常に抑制的、慎重に行われそおりまして、現地の司令官と話をした限り、現地の司令官の在任期間中一度も武器を使用したことがなかったということを言っていたと。それで、例えば監視、検問などを行ったときに相手が、どこかの人が違反行動をしたというときも、これは抗議をするというのが最大限の対処措置であったということでございまして、非常に慎重な対応をいわば平和裏に行っておるという点が一つでございます。  それから第二点は指揮、コマンドの問題でございますけれども、これは何といいましょうか。事前にかなりの調整が、指揮を受ける側とそれから指揮をする側とで事前に話し合いをした上で、それを指揮という形で流すということが多々あったということが注目すべき二点であったと私は思いました。  そのほかに、今、問題点というふうに言われましたが、問題点として私なりに整理をさせていただきますと、要するに自衛隊はいわば有事のために行動訓練をしているわけでございますが、PKOはそれとは必ずしも一致したものではない部分がありますので、その相違から来る問題点あるいは特殊性といいましょうか、そういった問題について申し上げますと、第一点は、先ほどの国連局長の話にも関連するわけでございますけれども、要員の選定の困難さという点でございます。  これは求められる人材の要素が、先ほどの国連局長の話もありましたように、協調性、柔軟性あるいはまた辛抱強さといったことが求められる、それから特に監視団の場合には語学力が求められるということでございますので、自衛官であればだれでもいいというものではなくて、あるいはまた戦闘行動に適する自衛官であればいいということではなくて、そういう意味の人材の選定の難しさというのがあると思います。  第二は、行動の際の特殊性という問題がございます。一つは、一般住民との接触があるということでございますので、現地の文化、慣習を知ることが何よりも必要と。それからマナー、言葉遣い、ここでもまた語学力といったようなことが必要になる。それからさらに言いますと、通例の戦闘行動と異なりまして、夜間もライトをつけまして一定時間、定時に同じルートを巡回するという単純行動を繰り返すというようなことでございますので、そうしたこつこつとした辛抱強い行動が必要になるというような点がある意味の特殊性だろうと思います。  三番目の範疇といたしまして、健康、安全管理といったものがございます。  それは一つには、地域によっては、例えばカンボジアの場合、地雷の問題がございます。さらには風土病あるいは毒虫、毒蛇等いろんな問題がございまして、事前に十分な調査をしないと派遣された者の安全管理、健康管理が難しくなるということでございますので、前広な実態調査が必要であるというふうな印象を得たところでございます。
  123. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 今お話を聞いていますと、もう既にこの委員会等でいろいろと報告され、話をされていたことと大体同じような調査結果ではなかったかと思います。  いずれにしましても、先ほど防衛庁長官からも、調査につきましてのいろんな詳しいことについては提出をしてくださるということでございますので、それは提出はしていただきたいと思いますが、今までの論議を見ましても、そういう現場の人たちのいろんな疑問点とかあるいは問題点あるいは要望事項、そういうものがこういった法案の審議の中でも提出をされていろいろと論議をされていくことがやはり必要ではなかったかと思います。  せんだっての報告書を見ますと、そういったことはほとんど概略的なものしかなかったものですから一言申し上げました。シビリアンコントロールというのは、そういう派遣される立場の人たちのこともやはり論議してあげることも必要ではないかと思います。総理、いかがですか。
  124. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のとおりだと考えます。
  125. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 次に、国内のいろんな懸念につきましては最近の動向について先ほど申し上げましたが、やはりあとは近隣アジア諸国の懸念ということでございますけれども、これにつきましてもいろいろと報道され、当委員会でもいろいろと論議になってまいりました。  我が国としましても、そのような声というのは無視することができない。また、そういう人たちに十分に理解をしていただくためにも、どういうような方々の発言であるかということもきちんと調査をし、そして分析をして効果的に対応していかなきゃならない。そうしなければいつまでたっても懸念が消えないのじゃないかと思うんですが、その点、政府のお考えはどうでしょうか。
  126. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それも御説のとおりでございます。  特にアジアにおいては、日本がかつて戦争で出かけていって、いろんな被害を与えたという事実があることは、これは認めなければなりません。したがいまして、そういうような誤解を解くために、新生日本自衛隊というものは全く別な、本当に自衛のための自衛隊なんだということをよく知ってもらうということが一番大事なことでございます。そうして、PKO等に出てもらえば皆さんと一緒のことしかやりませんということもちゃんとわかるわけでございますから、そういう経験を通じて、マスメディアを通じて絵で見てもらう、日本は別なことをやっていないということを見てもらう。これはもう百聞は一見にしかずだと私は思っております。  アジアの平和の問題につきましては、いろいろ思想の違う、国の体制の違うところもございますが、できるだけ我々は経済面等においては一緒にやっていこうということで呼びかけて、APEC等につきましても、中国と台湾と香港が今まで相反しておったと思われたものが一緒のテーブルに着いて共同の目的に向かって自由な討議をするということになったことなどは大変私はいいことであると。あとは、今後ベトナムがまた近隣諸国から今まで警戒をされておったけれども、これなども見直されてベトナムに対するASEANの援助等をやるべきだと、そして戦場を市場にしようというような言葉さえ生まれるようになって、さらに今度北朝鮮、それからロシア、極東と、こういうようなものも含めまして、やはりアジアというものがみんなで話し合いの上で仲よく相互依存関係を強めていくという努力をしていかなければなるまいと、さように考えております。
  127. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 政府レベルでも相当なやはり近隣諸国の懸念を解くための努力をされていることはよく承知しておりますが、去年の九月十一日、タイ国の前総理大臣のアナン氏は、PKOへの日本自衛隊参加に反対する理由はない、こういう発言をされておりました。しかし、同じASEAN諸国の中のインドネシアのアラタス外相は、日本カンボジア和平独自提案しましたね、それについて日本の新聞記者に対しまして、日本の政治的な役割は経済力で果たすべきで、カンボジア和平後のPKOに加わる必要はない、こういう発言をされているわけです。くしくも日本カンボジアに対する役割に対して両国の姿勢の差がちょっとあらわれたんじゃないかと思うんですが、そこもいろいろ努力をされておられると思います。その点の諸国の懸念というのはもうありませんか、どうでしょうか。解消されたでしょうか。
  128. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは、そのときの新聞記者の聞き方なんですよね、それによって答え方が少し変わると。そこのところだけ大きく取り上げるという点がございます。  先ほども私はお答えをしたんですが、それはリー・クアンユーさんなども最初のうちは余り賛成しないようなことを言っておりましたよ。しかしながら、時がたつにつれてそれは当然だろうということになってまいりますし、若い世代はそんなに心配していないんです。やはり戦争で直接に日本軍にいじめられたりなんかした経験のある人たち、そういう人たちがやはり若い人よりも懸念を多少持っているということは事実なんです。(発言する者あり)事実。しかしながら、よく話せばわかることであって、しかも出てみればもっとよくわかるんです。だから、日本が特別なことをやるかどうかということはやってみることが一番なんです。まさに先ほど言ったようなペルシャ湾の掃海艇の派遣、あれと同じなんです。だから、ぜひそういうことに参加して見せるということが非常に大事だと思います。
  129. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 掃海艇の派遣のときには相当な論議をここでもやりました。その掃海艇の皆さんが出航された後、ペナンヘ寄港された直後に私も行きましたけれども、そのときのいろんなあれもございますが、きょうは申し上げませんが、いずれにしても、いろんな地道な実績を重ねながらと申しますとあなたと同じになってしまうわけですが、やはり対話をしてこれは理解を得るように努力をしていかなきゃならない。ある面では慎重にそういう懸念を払う努力を重ねていくことが必要ではないか。それが今度、もしも法案が通って自衛隊の皆さん方が派遣されることになりますと、隊員の皆さんにとっても有益になるんじゃないか、こういう感じがしております。  そこで、こういう意見もあるわけです。近隣諸国の理解を得るまでの間はアジアにおけるPKOには参加しないでそれ以外のPKOで実績を積むべきではないか、こういう考え方もあるんですが、その点についてはどのようにお考えですか。
  130. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、PKO法案を提出している責任者ですから、そしてこれだけ審議を尽くしてかなりの御理解を得られるようになっておる現在、PKO法案が成立しないことを前提にして物を言える立場にはないんです。したがって、どうぞPKO法案の中で合意が得られるように皆で話し合って成立をさせていただきたいということを申し上げておるんです。  通っても、じゃアジアでやらないでほかの地区に出す、それは一つの考え方でしょう。一つの考え方でしょうが、しかしながらカンボジアでは、あそこのシアヌークさんも、それからフン・センさんもテア・シムさんも、日本の人が行けば、口をそろえて日本の旗もひとつ掲げてくれ、我々は今後日本とよくやっていかなきゃならないのに既に各国の旗が全部すっとあって日本の旗だけ一つない、寂しいと。ぜひとも日本国連の傘下のもとに参加をしてもらいたい、そういう気持ちがあるんですよ。それは確かにお金の話というのは大事ですが、国連にお金を出すわけですから、カンボジアの人に日本が出した出したと言ったってだれもそんなこと聞きませんからね。だから、やはり日本参加してほしいということは私は本当に素直な気持ちだと思いますよ。私もぜひそういう意味では参加をしていただきたいと思っています。 ○
  131. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 カンボジアの問題になりましたので、それについて申し上げます。  東南アジア、これが安定した秩序形成をしていくためには、いろいろとインドシナ諸国とASEAN諸国との交流を強化することが必要である。これはもう福田ドクトリン以来の日本の考え方じゃないかと思います。日本がそれに貢献することが必要でありますし、その中心カンボジア和平と復興であろう、これは私もそのとおりだと思います。そのためには、やはり日本の役割が大きければ大きいほど、中長期的な秩序構想というのを持ってカンボジアとも協議をすることが必要になってくるんじゃないかと思うんです。私たちも先ほど申し上げましたように、カンボジア和平と復興には最大の努力をすべきであると考えています。  そこで、UNTACの役割でございますが、PKOが始まって以来最大の規模で行われることになろうと思います。このカンボジアを初めとする諸国はやはり長い間の征服をされてきた歴史があるわけです。あるいは内乱があったということで相当な荒廃をしているわけですね。そうした荒廃をした一つの国を再建していく、そして一つの新しい国家体制をつくるまでに国連中心として援助していこうということでございますから、国連始まって以来の壮大な実験の場だ、こういうようにも言われておるわけですね。これはもう先刻御承知だと思います。これはUNTACの役割を見ましても、軍事的な面、あるいは民生安定、選挙、大変な役割がここにあるわけです。  そこでお尋ねしますけれども、先般のガリ事務総長発言は、UNTACのいわゆるPKFの部分については既に見通しが立ったということを述べられているわけですけれども、いわゆる後方の部門については現状はどうでしょうか。
  132. 丹波實

    政府委員丹波實君) お答え申し上げます。  PKFの本体の部分につきましても、ガリ事務総長は、もし将来必要があれば日本は歓迎するということを後で述べたと私は理解いたしております。  それから、後方の分野につきまして、きのうもきょうも若干話題になりましたけれども、やはり後方の分野はまだ充足していないところがいろいろあるということでございまして、つい最近、カンボジア現地の責任者と会談して帰られた山崎建設大臣がきのうここで述べておられましたけれども、現地のサンダーソン司令官は、一言で申し上げますと自衛隊の施設隊や衛生隊の早期派遣期待しているということを大臣が昨日ここで述べておられましたし、私も先週の水曜日、明石次長と会談したときに、明石次長は、例えば工兵の部門では中国とポーランドのみしかまだ要員を送ってきていない、依然半分程度しか埋まっていないということを言っておられました。それから輸送分野では車とか飛行機がともに足りていないのが現状だということ、それから、それに加えて通信とか運輸その他の面で足りないところがたくさんあるということを述べておられまして、現状はまだ充足しているということではないんではないかというふうに考えております。
  133. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、各国に対して後方部門について具体的にどういう分野で不足して協力を求めているのか、我が国に期待される分野はどの分野だとお考えですか。
  134. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 司令官、コマンダーから直接聞いた一番最新の話を山崎建設大臣が聞いてきていますから、ちょっと答弁させてください。
  135. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 きのう話しされたからいいです、もう時間ないから。  それから、先般、きょう午前中もありましたね、中国の問題について。総理、どうですか、中国もいよいよ派遣されたわけです。これは初めてのPKO参加ですけれども、中国は常任理事国ですから、常任理事会の決定ですし国連の決議ですからこれは十分責任を果たさなきゃならないんですから。  そのPKOの後方部門であれば、我が国も同じように派遣しても別にこれは問題起きないんじゃないかと思いますが、その点いかがお考えでしょうか。
  136. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは中国の何か軍の新聞に書いてあったと言いますが、非常に今回そのような平和維持活動参加できることは喜びであるし、これは誇りだと思っていると、全くそうだと思うんですね。軍隊というのは戦争することになっておったのが、戦争がもうなくてむしろ戦争をやめさせる方に軍隊が使われる新しい時代ですから、そこにやはり一つ中国の軍隊の使命感というか喜びがあると言っても私は不思議はないし、日本にしたって専守防衛ですから戦争はしない。しかも、戦争の後片づけと言っては語弊がありますが、戦争の再発防止と平和維持のために軍隊の、自衛隊の今までの訓練の成果が発揮できるということは私は非常にいいことだと、どこの国もそう思っているんじゃないですか、どこの国も。
  137. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 ですから、日本が後方部門に出したとしても、支援をしても理解得られますねということをお聞きしているんです。
  138. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは得られると思います。
  139. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 同じょうに西ドイツの問題も出ました。西ドイツ日本と同じように憲法の問題を抱えながら今回決定しているわけです。これはいろいろありました。  我が党も現在、委員長カンボジアを訪問中でございます。以前にも現地調査団を派遣しておるわけでございますし、その中で軍事的な知識あるいは技術、能力を有する組織的な支援の必要性ということも感じてきているわけでございますが、PKF参加については、停戦時の兵力引き揚げなどいわゆるPKF本体の活動を凍結して、輸送通信医療などPKF後方支援とか停戦監視活動について国連とかあるいはUNTACなどの要請があれば自衛隊の組織的な能力、技能を活用することを考慮する必要があろう、こういうことを考えておるわけですが、総理、お考えいかがですか。
  140. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 我々の立場からすればぜひとも原案で通してもらいたい。しかしながら、話し合いの上でやることですから、完全分離はできるかどうかということはいろいろ議論のあるところでしょう。  それから、目の前に地雷があった、わかったと。しかし、今はそこを通らなきゃならぬ。しかし、それを拾わずに通っちまう、そういうわけにはいかぬでしょうからね。ですから、私は、地雷が目の前にあるという場合はちょいとよけるぐらいのことは、それはPKFの部分といったって自分の生命の方が大事なんですから、だからその程度のことはあるかもわかりませんが、私は、それは話し合いの上でのことでございますから、国会でひとつ話し合っていただければそれには従わざるを得ないですね、ざるを得ないです。
  141. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 時間ないので急ぎますけれども、このPKO法案に基づきましてUNTAC後方支援自衛隊を活用するということが認められますと、将来、湾岸危機の多国籍軍のようなものへ後方支援を行うことも法律の運用によって可能である、こういう危惧もあるわけでございますが、その点については、こういうことは不可能であると断言できますね。
  142. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  この法案におきましては、我が国の協力の対象といたしまして、いわゆるPKO国際連合平和維持活動、それから人道的な国際救援活動、その二つが掲げられておりまして、それぞれにつきましてきちんと定義をいたしております。例えば国連平和維持活動につきましては、まず国際連合の決議に基づいて国際の平和及び安全を維持するために国連の統括のもとに行われる活動であること、紛争当事者間に停戦合意があること、そういった活動が行われる国の同意があること等、これは法案第三条第一号でございますが、きちんとそういった要件のもとで実施されるものであるということが定義されております。  したがいまして、御指摘の湾岸危機の際のいわゆる多国籍軍の活動というのは、本法案に定義されましたPKO国際連合平和維持活動にもあるいは人道的な国際救援活動にも該当いたしません。したがいまして我が国としましては、この法案の枠組みの中におきましてはこのような活動に対する参加はその後方支援も含めましてできないものというふうに考えております。
  143. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私、いろいろと申し上げてきましたことを最終事項で申し上げますと、総理国連中心として国際的に協調主義をとってやっていくということを確認されました。あるいは軍事力によるいろんな要請はない。それから、国内あるいは周辺の世論は現在でもまだ二分されている状態である。そういう懸念を払うための軍縮の問題については、私はきょうは質問しませんでしたけれども、まだまだ防衛庁としての明確な答弁はないように思います。あるいは研修の必要性もあります。それから、後方支援についてはUNTACあるいは国連からの要請があるということでございます。  そういうことで先ほど申し上げましたように、自衛隊のこの問題についての論議もされておりますが、やはりPKFへの自衛隊派遣については、そういう点から考えましても当分の間行わずに、いろんな今指摘をされたことを十分固めるまで法案上は凍結をされておくことが一番賢明ではないか、こう思いますが、総理、いかがですか。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお述べになられましたいろいろな事情、背景につきましては、先ほどからのお話でよく私も理解をしつつ承ってまいりました。  政府といたしましては、先ほど外務大臣からお答えをいたしましたように、御提案いたしましたところでその間のことは十分配慮をしてあると考えておりますけれども、しかし、立法府におかれまして多数の御意思をもってこれはこの方がいいというような御決定であれば、それは当然のこととして立法府の御意思を尊重しなければならないものというふうに考えております。
  145. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 質問する当事者はどこかへ黙って打っちゃったけれども、どうなっているんですか。質問者に断っていかないでどこへ行くんですか。ちょっといけませんな、終わってないのに。私に断っていったのですか。いかないでしょう。緊急事態ですか。ちょっと時間戻してください。二分に戻して。
  146. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  147. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記を起こして。
  148. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 外務大臣、カンボジアの復興閣僚会議が六月中に行われるということでございますが、これは当然もう日本が議長国だと思います。これに対してどういうビジョンで臨まれる予定ですか。
  149. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まず、どういうようなカンボジア側の要望があるか、具体的にいろいろな調査団とかなんか各国も出ていますから、そういうような話を聞き、どういうようにして今後その復興にみんなが協力できるか、そういう相談をしたいというのが主たる趣旨であります。
  150. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 外務大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、せんだって、石田委員長カンボジアヘ参りました。そこで、その前にタイ国に寄りましたが、そのタイ国でいわゆる義足博士と言われる方ですわ、タイ国立チェンマイ大学附属病院の助教授でターチャイ医師さんといろいろとお話をされたわけですが、その中でカンボジア人のための義足援助についていろいろとお話がありました。この方はカンボジアの義足製作が非常に数少ないから対応し切れない、そういう現状を紹介しながら、その医師が考案されて今一生懸命つくってみえるものは、安く、早く、電気のないところでもつくれるということで、これはカンボジアの皆さん方のそういう被災に遭われた方々に対して非常に役に立つんじゃないかというお話がありました。その中で、今本格的に義足支援のために義足製作あるいは技術者養成のための基金の設立の準備をされているということをお話しされているわけで、石田委員長もそこで百万円の寄附を基金にされているわけでございますが、そういうことはやはり民生安定のためにいろいろと我が国としましても協力をすべきではないかと思うんですが、外務大臣、その点どのようにお考えでしょう。
  151. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 石田委員長がお帰りになられましたら、早速いろんなことを聞かせていただいて、できるようなことは最大限いろいろやってまいりたいと考えます。
  152. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 終わります。
  153. 立木洋

    ○立木洋君 まず最初に、宮澤首相お尋ねしたいと思うんですが、今の同僚議員の質問に対して、あなたは軍事大国がやっているような軍事貢献はできないと答弁されました。軍事大国がやっているような軍事貢献はできない、その答弁でよろしいんですか。
  154. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もう少し正確に申しましたら、一般に軍事大国に期待されているような種類の軍事的貢献は我々はできない、こう申し上げるともう少し正確かもしれません。
  155. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、軍事大国としてではない軍事貢献は行うと。軍事貢献を行うということが問題なんですよ。  私が一番最初にあなたに質問したときに、軍事は何かと言ったら、軍事とはどういう意味でしょうかとあなたはおっしゃったんです。それをあなた、軍事貢献ができるということにこの表現ではなるんです。これは今までの国会の答弁全体を覆すことになるんです、日本が軍事貢献をできるという意味は。これは重大なんです。ちょっと私は黙って聞くわけにはいかないんで、その点については明確にしていただきたい。
  156. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは立木委員が前後をお聞きいただいていればおわかりいただくことで、このPKFPKOということを皆さんお話しになりますときに、こっちは軍事部門、こっちはそうでないというふうに使っていらっしゃいますから、それでそういうことを申したんで、海外で武力行使をすることはいたしません。
  157. 立木洋

    ○立木洋君 私は、今までの討論の経過、私がお尋ねしたことの内容についての首相の答弁を振り返ってみて、軍事貢献ができるということになるとこれは重大だということを改めて強調しておきたいと思います。  同時に、先ほど外務大臣が言われた自衛隊の出動、これもただ単な至言葉の意味ではないんですね。私は、いわゆる軍事的な貢献をしてはならないんですから、そういう意味では、その言葉遣いについても厳密にしていただかないといけないということを最初に述べておきたいと思うんです。  それで、今問題になりましたPKFの問題について、これをどう理解するかということが問題になっているので、今回の法案ではPKFについての規定はない、業務によって分けられておるというふうに理解しておりますが、規定がないということでよろしいんでしょうか。
  158. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  そのとおりでございます。
  159. 立木洋

    ○立木洋君 五月六日に、丹波局長が衆議院の外務委員会で、次のように質問に答弁されておるんです。歩兵部隊活動PKFと呼ぶ人もおり、また工兵部隊や海上部隊までの広い分野も含めてPKFと呼ぶ人もいるというようなことを述べられて、それは言葉をどのように使うかということにも関係するとも言っておられるわけですね。  政府としては、PKFをどのように規定されるんでしょうか。
  160. 丹波實

    政府委員丹波實君) 私の衆議院外務委員会におきます答弁との関連でございますので、私からお答えさせていただきたいと思います。  UNTACを例にとりました場合に、先生承知のとおり、軍事部門として歩兵部隊から挙がっておりまして、歩兵部隊工兵部隊通信部隊ロジ部隊医療部隊航空部隊、海上部隊、軍警察、停戦監視団、こういうふうに挙がっているわけです。あのときに申し上げて、現在もそう思っておりますけれども、いわゆるPKFというものについて、国際法的にと申しますかあるいは国連憲章上と申しますか、法的な定義というものは必ずしも存在しておりませんで、いろんな意味で使われております。人によりましては、歩兵部隊活動そのものをPKFと、例えば明石次長はそういうことをどこかで言っておられますけれども、そういう考え方でPKFという言葉を使う方もおられますし、軍事要員活動という考え方でとらえて、歩兵部隊以外の工兵部隊通信部隊云々というところを全部PKFと呼んでおられる方もおります。  それで、日本のと申しますか、現在お願い申し上げている法案との関係で申しますると、PKOとかPKFという分け方ではございませんで、三条三号は、イロハという順番で任務を挙げておる。その中には、ここで言うところのPKFに当たるものもあるし外れているものもある、そういうことではないかと思います。
  161. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、日本政府としては、PKFということについて特別の規定は持っていないと。
  162. 丹波實

    政府委員丹波實君) お答え申し上げます。  この法案の中では、PKFという言葉自体としては使われていないと思います。
  163. 立木洋

    ○立木洋君 これは去年あるいはおととし、今までのPKO特別委員会でいろいろ言及された内容については、PKFと申されてもそれはPKFの本体、これは部隊という意味ですが本体、あるいは支援的な活動、いろいろな側面が考えられますということで、PKFについては本体、本部隊という意味と支援的な活動とその部隊という意味、両方含めて政府は繰り返し答弁されておるということを述べておきたいと思うんです。  国連ではPKFという言葉を使っております。これは国連の「ブルーヘルメット」第二版、九〇年八月に出版された内容で述べられておりますけれども、「平和維持軍に従事する要員は軽装の防衛用武器を装備するが、自衛の場合以外の武力の行使は認められない。」、「平和維持軍は軽武装歩兵部隊から構成され、必要な兵站支援部隊をともなっている。」、「その活動において、非武装軍事監視団援助されることが多い。」というふうに記録をされております。この長年にわたって蓄積されてきた国連の「ブルーヘルメット」によるPKOの規定を大体読んでみますと、ここではPKFは、武器を携帯する各種の部隊によって構成されているいわゆる平和維持軍である、こういうふうに理解することができるんではないかと思いますが、国連PKFについてのそういうふうな記録、これに間違いがあるのかどうか、お述べいただきたい。
  164. 丹波實

    政府委員丹波實君) ですから、先ほど御説明申し上げましたけれども、国連の中でもインファントリーバタリオン、歩兵部隊活動のみを指してPKFと言っておられる方もおられるわけです。それを俗にPKF本体という言葉でよく言われるわけですが、そのほかの後方支援的なものも含めて全体としてPKFということもありますし、そういう意味で使い方がまちまちだと、いろんなコンテクストによって、あるいは使う方によっていろんな使われ方をしているというのが現実だと思います。
  165. 立木洋

    ○立木洋君 それは丹波さん、少し違うんじゃないでしょうか。  国連の文書を見てみましたけれども、国連において、PKFの中で歩兵本隊とそして支援部隊と、これを分けて片一方だけがPKFだと述べている根拠がありますか、あったら出してください。
  166. 丹波實

    政府委員丹波實君) きょうの先生とのやりとりの中で、冒頭に申し上げましたけれども、厳密な定義というものは憲章上あるいはその他の文書で存在してないんです。まさに慣例上積み上げてきたのがこのPKO活動でございまして、そういう意味でいろんな使われ方をしているというのが現実だということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  167. 立木洋

    ○立木洋君 そういうふうに述べていれば私の考え方に近くなるんですよ。先ほど述べたような述べ方をされると、国連の中でもPKF歩兵部隊だけだというふうな主張をする人もいますという言い方になるとこれは正確ではないんで、そのことを正確を期すために私はあえて重ねてお尋ねをしたわけです。  それでは、兵たん支援部隊武器を携行し、自衛の武器の使用は認められているというふうに理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。
  168. 丹波實

    政府委員丹波實君) いわゆる平和維持隊、PKFは、この場合は私は狭い意味でとりますけれども、自衛のための真にやむを得ない場合に必要とされる最小限の範囲内の武器を使用することができる、そのために武器の携行が許されておるということは御承知のとおりでございますが、後方支援活動に従事する者につきましても、一般にその本体である歩兵部隊と同様に軍事要員から構成されている場合には武器の携行が許されておるというのが過去の慣例であろうかと思います。しかしながら、そういう後方支援に従事する部隊武器現実に持っていっているかどうかは別として、一応許されているというのが国連の考え方であると理解いたしております。
  169. 立木洋

    ○立木洋君 今度のUNTACの文書の中に、後方支援部隊という後方という文字が記せられているところがあるでしょうか。兵たん支援部隊じゃないでしょうか。私は、兵たん支援部隊武装していないかと聞いたんです。あなたは後方支援部隊とわざわざ後方をつけられた。UNTACには後方というのはないはずです。正確にその兵たん支援部隊武装しているのかいないのかということを私は聞いたんです。
  170. 丹波實

    政府委員丹波實君) 先生おっしゃるとおり、後方部隊、もっと正確に申しますと、先ほど私が申し上げました歩兵部隊工兵部隊通信部隊ロジ部隊云々というところのロジ部隊という意味で使われているという、言葉があることは御承知のとおり。私が申し上げたのは、この歩兵部隊以外のずっとこっち側に並んでいる工兵部隊通信部隊ロジ部隊医療部隊航空部隊、海上部隊等は武器の携行を許されておるということを申し上げたつもりでございます。  ただ、一つつけ加えさせていただきますと、停戦監視団につきましては原則として非武装であるということでございます。
  171. 立木洋

    ○立木洋君 軍事監視団が非武装であるということは私も理解しております。ここでは、いわゆる歩兵部隊であれ、あるいは兵たん支援部隊通信、工兵、航空あるいは海上いろいろな部隊が挙げられましたけれども、これらはすべてやはり武装している。だから、武装しているものとして歩兵部隊も他の部隊も軍として構成されているんであって、これを本体と支援部隊と分ける必要は私はないだろうと思うんです。あえてそれは分ける必要が何かであるんでしょうか。業務という任務以外にいわゆる支援部隊歩兵大隊とを分けなければならない理由は何かあるんでしょうか。
  172. 丹波實

    政府委員丹波實君) 先生の御質問を一〇〇%正しく理解したかどうか自信ありませんけれども、いわゆるPKFの本体なるものの活動は、これもUNTACに即して申し上げますと、停戦監視であり武装解除あるいは動員解除監視であり軍隊の収容、監視であり武器の管理であり地雷の除去訓練、UNTACでは地雷の除去は工兵部隊になっておりますけれども、いずれにしても一番の核心をなす活動をする、そういうものであり、その後に並んでおるのはやはり一歩下がったところの通信とか航空とかロジとか、まさにそういう違いはあるんだろうと思います。  その違いは、例えば武装の態様、先ほどから先生武器のことを質問しておられますけれども、武器の携行の態様を見ますると、例えばタイ工兵部隊を出していますけれども、ピストル、ライフル程度、それから中国の工兵隊は小銃しか持っていっていないということで、PKFの本体に比べますと非常に軽武装である、そういう違いになってもあらわれてきていると私は理解いたしております。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 問題は、武装するか武装していないかということは、基準を定める上で非常に重要な範疇なんですね。軍というのは、平和維持軍、PKFというのは武装しているんです。問題はこれが平和維持軍であるかないかの基準なんです。それをあえて平和維持軍の中で、後ろの方に一歩下がっているだとか後方支援的なものだとか言って歩兵大隊と何らか区別しなければならないような概念があるかのような問題を持ち出すというのは、ある意味で言うならば、業務以外の区別を意図的につくり出そうとする考え方である、それは間違いだということを私は述べておきたいと思うんです。  ここで、仮に、今修正等々が問題になっておりますが、もしかPKFが凍結だといって歩兵大隊、これがいわゆる凍結となってもその他の兵たん支援部隊派遣できることに論理的にはなるというふうに言えると思うんですが、それはどうでしょうか。
  174. 丹波實

    政府委員丹波實君) 先生申しわけありませんけれども、私が勝手に仕分けをしているのではございませんで、国連事務総長報告を読みましても、歩兵部隊として武装解除監視武器の管理云々と先ほど申し上げたようなことになっておりまして、例えば通信部隊については通信をやる、それから医療部隊については医療をやる。通信とか医療というものは、先ほど申し上げた武装解除監視とか武器の管理とか、やっぱりそれは仕事の内容は相当違うんじゃないか、そういう分け方を国連がしておるということを申し上げただけでございます。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 それは、ここに私も現物を持っておりますが、国連カンボジア暫定機構実施計画、ここには軍、本部軍事監視団、歩兵部門、工兵部門通信部隊、衛生部隊、混成憲兵中隊、兵たん大隊、海軍部門、分けてありますよ、確かに。これは任務で分けてある。私が言っているのは、それをなぜ歩兵大隊とほかの兵たん支援部隊を分けなければならないか、そういう分け方をする必要はないんじゃないか、同じように武器を持っているんですから。これは一体となって、軍となって任務を構成されているんです。かっては例えば前線でドンパチがやられた場合に一番直接被害を受けるのは歩兵大隊でしょう、最前線にいるわけですから。しかし、このようなあらゆる部隊というのは、今度の場合にはどこにいても相手が攻撃した場合に反撃する、武器を使うと。どこを攻撃してくるかわからないじゃないですか。だから、まさに歩兵部隊だけがドンパチがあるんだなんというようなことを言って分けようとするところに最大の問題がある。  ですから、私がここで述べたいのは、この支援部隊の中に工兵部隊というのが入れてあるわけですが、この任務には地雷撤去援助、これを行うというふうに規定ではなっております。ところが、この問題については、これまで衆議院であなた方が答弁されている内容で言えば、PKFが凍結されるとイからヘまでの業務を行うことができなくなる。つまり、その中のニの「放棄された武器の収集、保管又は処分」ということができなくなるのだから当然工兵部隊派遣することができなくなる。ところが、PKF歩兵大隊だけだとすると、他の部隊は送ることができるとなれば業務で禁止している工兵部隊も送ることが可能になる、こんな矛盾が生まれてくるんですよ。  だから、私はこの点ではっきり述べておきたいのは、いわゆる本体あるいは支援部隊、これを、PKFをそういう形で分けることによっていわゆる前線と後方に平和維持軍が分けられるかのような印象をつくり出して国民の反対の世論を鎮静化させようとするところにこのねらいがある。ですから、PKF凍結論は結局はPKO協力法案の通過が困難になった中で何とかしてでも自衛隊の海外派兵を実現しようとすることを助けることにほかならないということを私は指摘しておきたいと思います。(発言する者あり)よく聞いていただければ私がどういう筋を通しているのかということは明確だと思うんです。  次の質問ですが、今までも問題になりましたけれども、四月の十五日にガリ事務総長北京記者会見で記者の質問に答えて、カンボジアヘの軍の構成は既にでき上がっており、新たに別の国の参加を求める理由はないと述べております。これは、政府が申し入れをして修正されたかのように述べておられますが、現実国連ではカンボジアUNTAC軍事部門の編成については日本を抜きに進めているということは間違いないんではないでしょうか。いかがでしょうか。
  176. 丹波實

    政府委員丹波實君) 二週間ぐらい前になりますけれども、シハビ総会議長が訪日いたしましていろんな機会に日本滞在中会談いたしました。国連としてやはり日本参加には関心を持っている、しかしながら現在日本政府は法案を国会にお願いしてそれが審議中である、自分たちはそれを待っておるということを言っておられましたけれども、まさに国連はそういうぐあいにして待っておるという状況でございまして、日本抜きに云々という善言葉の意味は必ずしもわかりませんけれども、現実には法案が成立しておりませんので、国連としては見守っているという、恐らくそういう状況にあるんではないかというふうに理解いたします。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 私は丹波局長の言葉をそのまま信用するわけにはまいりません、今まで何回かいわゆるスカンを食わされましたから。  私はここに、今まで国連及び国連代表部、二十数カ国と言ってよろしいでしょう、へ行って私たちは直接接触をして情報や資料を得てまいりました。  その一つとして、ここにことしの三月二日に、マラック・グールディンク氏がガリ事務総長にあてた覚書、カンボジアの軍事及び警察部門の構成についてという覚書があります。これについては、私は繰り返し外務省に要請しましたけれども、ついに提出してもらえませんでした。この文書は、グールディンク氏の署名がなされております、ここにありますが。ここでは、グールディンク氏は、「私は貴下の承認を求めるため、UNTACの軍事及び警察部門の構成にかんする軍事顧問と私の提案を提出します。明石氏は合意しています。」、こういうふうに述べられております。  UNTAC軍事部門の構成案、一、歩兵大隊十二掛ける八百五十名、アフリカ二カ国、ヨーロッパ三カ国、アジア五カ国、ラテンアメリカ二カ国。二、軍事監視団四百八十五名、全部人数が書かれてあって、二十カ国挙げられております。三、兵たん・支援部隊通信部隊一カ国、工兵部隊四カ国、空軍部隊四カ国、海軍部隊四カ国、医療大隊四カ国、兵たん大隊四カ国、兵員派遣国案のまとめ三十三カ国、UNTAC警察部門の構成案四十七カ国の国名が挙げられております。  このマラック・グールディンク氏の署名された内容では、既に明石氏は合意しているんです。日本を除いてこういう形で軍隊を構成するということに明石氏は同意しているんです。このことを私は指摘しておきたい。  そして、三月三十一日に国連安保理文書S/23773、これはガリ事務総長国連安保理事会議長にあてた三月三十一日付の書簡です。この書簡は、「私はUNTAC軍事部門が以下の諸国の分遣隊から構成されることを提案します。すべてが必要な要員を利用可能にする準備を原則として表明しています。」と、二十七カ国を挙げております。このグールディンク氏の提案に基づいてこれらの国に調整を進めて、あなたの国は送れるのか送れないのか全部明確に約束をし、二十七カ国からいわゆる準備を原則として表明しているという書簡が、ガリ氏の署名入りで国連安保理の文書として採択されております。  そして問題は、先ほど言いました四月十五日記者会見をやった内容ですが、この記者会見の内容では、先ほど述べたことで明らかなように、まさにここではこれまでのこうしたグールディンク氏の部隊編成についての提案に基づきそれぞれの国に折衝し、そしてガリ事務総長が安保理議長に三月三十一日に、これこれしかじかの国からは原則として準備の表明を受けておるという内容が出され、こういう形で進められてきた結果として、四月十五日にカンボジアUNTAC軍事部門の構成は既にできているというふうに述べたのは当然の根拠があると言わなければならないと思いますが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  178. 丹波實

    政府委員丹波實君) 今、先生が述べられた書類、私も持っております。それはいろんな国に、こういう国にこういうことを要請するという計画書のようなものでございまして、もし全部が既に、PKFの本体もそうでない部門も全部含めて埋まっているのであれば、現地でサンダーソン司令官が最近山崎大臣に述べたような発言は出てこないわけです。サンダーソン司令官は、まさに一言で言いますと、自衛隊の施設隊や衛生隊の早期派遣というものを国連期待しているということを言っておるわけです。  それから、まさに、ガリ事務総長発言の背景にはどういうことがあったのであろうかということを私自身明石代表に先週の水曜日に聞いたときに、明石代表は次のように述べておられるわけです。  来週日本明石代表が来られて、いろいろなところで講演されるようですから、恐らくそこでも発言されると思いますけれども、要するに、全部が全部充足したとはとても言えない、問題は、ある国が何を出すと言っても、計画がおくれていて当てにできない国も出てきておるということを言っておられ、それから文民警察のほか医療ではドイツが百四十名、インドが二百名、三百名の派遣をコミットしているにすぎず、依然として不足している状況です。また工兵部門では中国とポーランドのみしか要員派遣を言っておらず、半分程度しか埋まっていない。それから輸送部門では車とか飛行機が足りないということをずっと言っておられるわけです。  そういう意味で、先ほど先生が述べられた計画書、それは仏そのとおり存在していると思います。しかし、現実に、それでは全部充足しているかというと、なかなかそうではない。ですからそういう発言になって国連当局者から出てきているというのが現実ではないかと私は理解いたしております。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 あなたは、前にこの三月二日付の文書を出してほしいと要請したのに、そのときはないと言って、今私はそれを持っておりますと。全くそういうふうに文書を出そうとしないんですね。都合が悪い文書は出そうとしない。そして事実が提示されれば、それは実は私も持っています、しかしその内容、文書の解釈はというふうな注釈を加えるようなやり方というのは、正当な審議を進めるという態度ではないと私は前回もはっきり指摘したんです。  問題は、ここで私が重ねて述べたいのは、あなたは先ほど言いましたが、私が言ったように、計画書が出されてこれこれの国にこういう形で編成したい、それで相手国に相談をして可能ですかどうですかと約束を取りつける。約束を取りつけたということは、これは構成ができたという意味で、展開されたということとは違うんです。私はまだ展開されていないと思うんですよ、全部。それはいろいろなところでドンパチがありますよ、現に。展開されてはいない、しかし構成はできている。  これは四月十六日、国連のプレスリリース、これに出されて、これは渡辺外務大臣が柿澤政務次官に指示をされて、ガリ事務総長に会われてその真意を確かめろと言われたんですね。あれは十六日の外務委員会でそういうふうに述べられた。その結果がここの国連のプレスリリースに載っているんです、四月十六日に。  「その夜、事務総長日本の柿澤弘治外務政務次官と会った。事務総長は、国連の平和維持に」、維持軍じゃないです、「平和維持に日本がよりいっそう参加することを歓迎するが、それをどのような形にすべきかを決めるのは日本である、と語った。」、その後が重要なんです。「UNTACにかんして事務総長は、現在必要とされているすべての兵員を提供することで加盟国が合意していると指摘した。」、いいですか、「事務総長は、現在必要とされているすべての兵員を提供することで」、国連に加盟している国がですよ、「加盟国が合意していると指摘した。」、構成ができたどいうことなんですよ。四月十六日の時点でちゃんと国連のプレスリリースに書いてある。問題はそれが展開されていないということなんです。そして、先ほど、事務総長日本に来てくれというふうなことを四月二十日にカンボジアプノンペンで述べたかのようにあなたはおっしゃいました。ところが、私はここに国連のその四月二十一日に出しましたプレスリリースの原文を持ってきておりますけれども、これを見てみますと、そんなことはただの一言も書いていない。ここで書いているのは、お金が足らないからお金を出してくれということを記者会見で述べられたということが書いてある。五億三千九百万ドル、これだけの金額を要請したい、これが記者会見の内容ですよ。  あなたが先ほど述べたように、日本に対して支援部隊が足らなくなったら来てほしいという意味のことを述べられたというふうに私は解釈していますと言ったのは、そうではない。十六日のプレスリリースを見るならば、事務総長は明確に言っているんです。将来さらに兵員が必要な場合、これが一つの条件です。もう一つは、日本がそれを提供できる立場にあるならば、これが二つ目の条件です。二つの前提条件をつけてUNTACへの日本参加は歓迎されるであろうなんです。推定なんです。明確なんです、このことは。  ですから、このことについて先ほどあなたが述べたように、足らなかった部分については来てほしいということを事務総長要請したというふうなことは真実ではないということを私はこの問題についてもはっきり指摘をしておきたいと思いますが、このガリ事務総長発言、これらの四月十六日にプレスリリースで述べている、現在必要とされているすべての兵員を提供することで加盟国が合意していると述べている内容について、間違いがあるのかどうなのか、展開はまだされていないけれども。
  180. 丹波實

    政府委員丹波實君) まず、先ほどの先生の言及された国連の内部における書類ですけれども、私、実は先週ニューヨークとワシントンに行ったときに入手いたしましたわけでして、資料要求があったときにはなかったのは事実です。その点ぜひ御了承いただきたいと思います。  それからただいまの点ですが、私、前にもこの場で御説明を申し上げたことがあるんですが、私の理解では、ガリ事務総長が一貫して述べている部隊というのはまさにインファントリーバタリオン、歩兵部隊の、その部隊のことを言っておりまして、先ほど申し上げた工兵隊以降のことを念頭に置いて発言しているものではございませんで、そういうふうに御理解いただきたいと思うんです。  そこから二つのことを申し上げることができるんですが、一つは、それじゃインファントリーバタリオン、歩兵部隊については十二カ国から全部来ることが決まっているかというと、その点は大体決まっておるようでございます。しかしながら、この点についても、将来もし穴があいた場合には日本にお願いしますというのがプノンペンその他における記者会見意味であり、それからもう一つは、その工兵隊以降のいわゆる広い意味での後方支援部隊については、先ほどから何度も申し上げておるとおり、サンダーソン司令官にしても明石次長にしても埋まっていないということを何度も言っておられて、日本にできたら来てほしいと言っておることもこれまた事実でございます。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 これは、グールディンク氏がガリ事務総長にあてたいわゆる部隊の構成、軍事部門の構成については、三十三カ国の名前が挙がっているんです。歩兵大隊の十二カ国だけではないんです。その手紙をもらったガリ事務総長が十二カ国だけしか念頭になくて、三十三カ国については念頭にないというふうなことは全く論理が合わない。これが一つ。もう一つは、事務総長自身が安保理議長にあてた三月三十一日の書簡は、十二カ国だけではないんです。二十七カ国で既に準備が進んでいるという回答が来ているんですよ。二十七カ国も歩兵大隊要請しているんですか。していないじゃないですか。これはまさに三十三カ国、歩兵大隊とその他の兵たん支援部隊を全部念頭に入れて四月十五日に述べているんですよ。これは文書から見れば明確なんです。  それなら、ガリ事務総長が十二カ国の歩兵大隊しか念頭になかったという根拠を示してください。どうしてそんなことが言えるんですか。
  182. 丹波實

    政府委員丹波實君) 先生の御質問に対しては、それではサンダーソン司令官とかあるいは明石次長が足りないということをなぜ言われるのかという、結局そこを私たちは考えれば、現実にそういう事態になっているということでございます。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 私が繰り返し言っているように、部隊を構成すること、編成すること、これはもう充足したんです。しかしその部隊は、現地に行って必要な場所に展開されていないんです。展開されていないからこそ、まだその分では不十分だと言っているんですよ。だけれども、問題は、どこの国からどれだけ来てもらうという約束はほぼ完成しているんです。このことをごまかしてはいけないと思うんですよ。今お聞きになったら、よく理解される方は、丹波さんの言われていることが真実かどうか明白だろうと思うんです。  私はこの点で、昨年の十二月六日、宮下防衛庁長官は、当委員会で答弁された内容で、任務が自衛隊に付与されました場合には要員の選定をやらなくてはなりません、そして適切な教育訓練の実施もいたさなければなりません、また自衛隊として部隊としての行動ですから細部基準等の研究も十分に検討し定めなければなりませんと述べておられます。そして、私は一概に期間を何年くらいということを申し上げられませんけれども、一年程度といった相当の期間を要すると考えられますと。この法案ができてから一年間たたないと部隊を送ることができないと。  これは、先ほど丹波局長が言われましたように、今軍隊が一番必要とされているのは六月から九月です。あなたが言われました、六月から九月です。これが通ったって間に合わないんです。まさにこの問題については、つまり充足しているというところに何とかして行かしてくれ行かしてくれというふうなことになっている。そして、現在の政府カンボジア問題を持ち出しているのも、結局、間に合わないということを知っておりながら、徹頭徹尾自衛隊を海外に派遣したい、そのことの口実にすぎないということは私は明白だと思うんです。このことははっきり指摘をしておきたいと思います。  最後に、私がどうしても言わなければならないのは、丹波局長、もう一つあなたのこの間の答弁にうそがある。あなたは私の質問に対して、四月二十八日、「私どもが現時点で承知しておりますところでは、国連は、この院でも御論議の話題になりましたSOPも作成されてございません。それから各国に対して一定の何と申しますか、これとこれとこれの武器を携行するようにといったようなガイドラインというものも発出されておるというふうには承知いたしておりません。」と明確に述べました。  私は調べました。あそこに軍隊を送っている国々、複数の国が回答を寄せてくれました。国連事務総長から軍隊を派遣してほしいという要請の文書、これに対して、私たちは引き受けますという返事の文書、この文書が一つあります。もう一つは、展開軍のルールなど書かれたガイドライン、これがあります。三カ国の国連代表部がはっきりと答えてくれました。あなたはうそを言っているじゃないですか、ガイドラインは発出されていないと。そんな言い方をされて、どうしても文書も出さない。私たちが行って調べればちゃんと答えてくれるのに、そういうことすらまともな回答をしない。そういうことでは審議ができないじゃないか。  大臣、どうですか。さっきのガリ事務総長に対する書簡の問題もそうですよ。文書があっても出さない。もしかすると彼が言われたように四月の下旬に行ってから手に入れたかもしれない。しかし、五月の初めに、連休明けに私たちはその文書を再度要求しているんです。しかし、依然として出されない。今のこの問題だって、先般、私が四月二十八日、少し声を荒らげて言いましたけれども、反省してほしいと言ったのは、必要な文書について、あるならある、出せないなら出せないなりの理由をちゃんと言えばいい。あるのにもかかわらずないと、そういう言い方をやって、ごまかすようなやり方で国会の審議を進めるというようなことは絶対に容認できない。大臣、この問題についてのあなたの責任ある答弁を求めたい。
  184. 丹波實

    政府委員丹波實君) 私、ここに電報を持っていて、その電報を見て先生に御答弁申し上げたんですけれども、国連本部に聞きました。四月二十二日です。UNTAC及びユーゴに展開しているPKFについてSOPは作成されていますかというのが質問で、それに対して、国連の責任者はSOPは作成されていませんという答えがあったものですから、それを申し上げただけでございます。  それから、そのときに申し上げたのは、ガイドラインということであれば武器使用のガイドラインということを念頭に置いたと恐らく私は思っておりますけれども、そういうものもこのSOPと同様に作成されていないというのが理解でございまして、ただ、派遣に当たって派遣国との間で口上書のようなものが交わされたということは、それは申し上げたつもりでございます。  この場でうそということを先生おっしゃいましたけれども、こういう場で私は、間違ったことを間違って申し上げることはあるかもしれませんけれども、うそを申し上げるということは、そういうことはしておらないつもりでございます。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 時間が来ましたから簡単に済ませますけれども、私が言ったのは、何回もそういう形で文書があるにもかかわらずないというふうも言い方、これは事実を突き詰めればそれはうそになるんですよ。存在しているにもかかわらず存在していないという言い方、これもうそになるんです、結果としては。この問題については責任を持たないと、いわゆる国会の審議に対して責任ある立場で局長として答弁されるならばそのようにして私は答弁していただきたい。そうしないと審議が進まない。必要な資料についてはこれからも出すように、あるものはあるとして、きちっと明確な態度をとるようにしていただきたい。  最後に、首相にこの問題についての、きちっとやっぱり審議をされるということを。
  186. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国会の御審議に対しては、政府は常に誠実に対応いたしております。
  187. 磯村修

    ○磯村修君 連合参議院の磯村でございます。  五月三日は四十五年目の憲法施行記念日、大変ことしの記念日は意味のある日であったと思います。今ここで論議されておりますようにPKO、つまり平和の問題が非常に今国民的な世論の中でも真剣に考えられている、そういう意味合いにおいてことしの憲法記念日というのは大変意味のある日であったと。私も戦中派でございますけれども、戦後からずっとの日本の歩みというものを考えてみました。ともかく今日本は、憲法のもとに平和の維持、より一層我が国の平和というものを、世界の平和というものを発展させていかなければならないという、こういう哲学が国民の気持ちの中にも芽生えている、こういうふうに私は思います。  そうした中で、特に湾岸戦争が終わってからの実情というものを見ておりますと、何と申しましょうか、軍事面での役割を担うこと、これがいわば今の日本には必要なんじゃないか、こういう考えが台頭してまいっております。いわばこれが今審議されておりますところのPKO法案にもつながっているんではなかろうか、こういうふうに思います。あの戦後の廃墟あるいは荒れ果てた中から立ち上がって、今日本は経済大国と言われるようになっております。大変これは先人の努力、国民の努力に対して感謝を申し上げる次第でございますけれども、私は私なりにまた感無量なものをこの憲法記念日には思ったわけでございます。  そこで、今の日本の経済力による貢献だけでは国際的に通用しないというふうなことが言われております。それはそれとして私もよく認識できます。ただ問題は、そうした経済力だけではなくていわゆるPKO法案の中でいろいろ論議されておりますところの軍事面での協力、こういうことをしていくことによって国際社会に対する日本発言力を強めていく、こういうふうな一つの権威主義と申しましょうか、権力と申しましょうか、かつて過去の日本がたどってきたような何かそういう危惧がまた一方には生まれてきている。  そういう意味合いにおいても、やはり日本はこれまでODAを初めいろんな方策で平和的な国際貢献というものをやってきている援助国でもございます。そういう意味合いでこれからもそういう面での主導的な役割を果たしていくのが日本の姿ではなかろうか、こういうふうに私は憲法記念日に思ったわけなんです。  この今審議されておりますPKOの問題につきましても、憲法九条の解釈というものが、ずっとこれまでの審議過程というものを見ておりますと、非常に法の解釈といいましょうか、憲法の解釈というものがだんだん広がってきている。そんなことから、国民の多くの皆さんの平和の寄りどころ、これは国の基本法でもある憲法じゃないか。そういうことを考えてまいりますと、限りなく解釈が広がっていくような、そういうこと自体がいわば法に対する国民の不信感を買うんじゃないかというふうな危惧もあるわけですね。  これから特に、今国際的な流れの中でも歴史の流れの中でも、今こそ憲法の精神と申しましょうか、具体的には憲法九条の平和条項、こういうものが大きく国際的にも評価されていく、そういうものがあるんじゃないかというふうな感じもするんですね。そういう意味合いから総理に、この憲法九条の平和条項の価値観というもの、これを改めてお伺いしたいと思うんです。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま磯村委員お話しのように、我が国はかつて援助を受けておった国でございましたけれども、今や援助を与える国になり、それも世界第一の援助国になっております。したがいまして、当時の援助を受けた国であった我が国と今日の我が国とは当然世界から期待されるものも異なりますし、また、我々は平和の一方的な受益者ではなくて、世界の平和に積極的に貢献する責務を持った国になっておるというふうに考えております。  ただ一つ、いわゆる軍事大国に期待されるような種類の軍事的な貢献は我が国に期待をされてはなりませんし、我が国もまたそういうことは行うことができない、そういう意味で憲法の精神は不変だと思っております。
  189. 磯村修

    ○磯村修君 総理は、自衛隊の海外派遣をめぐりまして、派遣をしなければ国際的に汗にならないんだ、苦労にならないんだ、いわば汗をかかない、苦労を避ける、これはよろしくないと。つまりそれは、自衛隊派遣こそがいわば汗になったり苦労になったりするんだ、こういうふうに解釈する国民が多くいるわけなんですね。  そこで、それはそれとして外務大臣にお伺いしたいんですけれども、同じ汗をかく、苦労をするという意味合いから、我が国がこれまでこの憲法の理念と申しましょうかそういう立場に立った国である、こういうふうなことを国際社会に対して、いわば国際貢献についてもできること、あるいはできないこともあるはずなんですね、憲法の制約というものがあれば。そういう我が国の立場というものを海外に、諸国に対してどのくらい外交努力をしてきたのか、また、そういう日本の姿というもの、日本の立場というものは海外から見た場合にどのくらい認識されているんだろうか、こういうふうなことについてどういう受けとめ方をしているのか、ちょっとお伺いしておきたいと思うんです。
  190. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 御承知のとおり、湾岸戦争のときなども日本は多国籍軍には憲法の制約上参加できませんということははっきり言ってきておるわけです。  PKOの問題につきましては、これは戦争が終わった後の、言うなら戦後処理でございますから、こういうことについては何十カ国も参加をしておって日本だけは参加をできませんと言いづらいですね、これは。しかも、憲法の精神からいっても、後片づけですから、戦後処理というのは。しかも、難民の問題、医療の問題いっぱいあるわけですから、そういうことにはできるだけ参加をして、何十カ国もやれることは日本もやりますというぐらいのことは私は言わなければならない立場になったと。  それじゃ、自衛隊でなくたっていいじゃないかと。それは自衛隊でなくて民間を出してやれることならばいいんだけれども、しかしそれにはかなり訓練された人が行かないと非常に危険も多いし、やはり効率も上がらないし、だからどこの国でも軍隊を出しているというのが。現実なんですよ。だから、我々もこのことは少しも憲法には抵触しないという解釈でやっているのであります。
  191. 磯村修

    ○磯村修君 先ほど外務大臣の御答弁の中でちょっと私思ったんですけれども、自衛隊という組織と日本の旧軍隊ですね、こういうことを同様に考えているんじゃないか、こういう誤解があるんじゃないか、こういうふうな趣旨の御発言がございました。しかし、それはやはり相手がもしそういうふうに誤解しているあるいはそう受け取っているとするならば、それだけ日本の立場でいわばこの憲法の条項というものが外交面を通じて理解努力がなかったんじゃないか、こういうふうに私感じたわけなんです。  例えば、自衛隊は九条で定められているような制約がございますですね。それから、海外派遣の問題につきましても、これはいいか悪いかは別問題として、海外派遣につきましても自衛隊法がつくられた当時の本院の決議もございます。そういうことも、やはり日本はこういうあれなんだというふうなことで、諸外国に向かっての外交努力がなかったから今日のようなややこしい問題を論議しているんじゃないか。また、中国の側からも慎重にしてほしいとかというような一つの大きな見方もされるんじゃないか、その辺の外交努力がなかったんじゃないかというふうな感じ方もするんですよ。その辺いかがでしょうか。
  192. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは事あるごとにそういう外交努力はいたしておりますが、いろいろ国の指導者は立場がありますから、建前というのがあるんですよ。したがって、そういうことは建前上ともかく慎重にしてくださいというようなことを言われたからといって、それは別に内政干渉と我々は思っておりません。みんなお互いに内政干渉はしないことにしましょうと言っているんですから。しかし、一応言うだけのことは言うということはあっても不思議はないと私は思います。
  193. 磯村修

    ○磯村修君 これまでの外務大臣の御答弁について、社会党ではどう評価しますか。
  194. 篠崎年子

    委員以外の議員(篠崎年子君) 磯村委員お答えいたします。  社会党は、前々から申しておりますように、平和憲法を守ってまいりました。そして、その中でも特に九条のことにつきましては、これは私たち日本の国だけではなくて世界に広めていかなければならない大変大切なことではないだろうかと思っております。中に憲法九条を持っていることを世界の国々に対して恥ずかしいなどと言う人があるということを聞いたこともございますけれども、これは決して恥ずかしいことではなくて、日本の九条があるからこそ私たち日本の国の四十数年間の平和が保たれたことでございます。  ちょっと、たまたま読みましたので、ほかの新聞にも書いてあったと思うんですけれども、毎日新聞の五月三日付の新聞の中に特にこのことにつきまして、やっぱり日本の国はこの憲法九条を持っているということを各国にわかってもらうように努力をしていかなければならない、そういうことが書いてございました。先ほど来渡辺外相もいろいろ努力をしているとおっしゃっておりますけれども、まだまだ私たちは努力が足りないのではないだろうかと。  その証拠に、昨年、湾岸戦争のときに日本の市民団体がお金を集めましてニューヨーク・タイムズに意見広告を出したわけです。その中で、日本の国は憲法九条を持っているので外国に軍隊を出すことはできない、この場合もいろんな援助はできるけれども、自衛隊を出すことはできないんだ。そういう意見広告を出しましたらたちまち反響が返ってまいりまして、日本にそんな憲法があるとは知らなかった、なるほど、それでは出せないのは当たり前だ、こういうのが返ってまいりました。これが真実の姿ではないだろうか。  こう考えますときに、私たちは、やはり日本の国は憲法九条を持っているということをもっと広く全世界の人々に知らせて、それで、これがあれば全世界平和になれるんだ、そういうことに努力をしていかなければならないと思っております。
  195. 磯村修

    ○磯村修君 PKO法案の主たる柱になっておりますところの自衛隊の海外派遣につきまして、総理は、先月二十八日の当委員会で、自衛隊の機能を活用し、実効性のある貢献を説きました。そして、なぜ自衛隊を排除するのか理解できない、国民の大半の支持を受けている自衛隊派遣することが適当である、このように述べられました。  そこでお伺いしたいんですけれども、国民世論は依然としてこの自衛隊派遣をめぐっては賛否両論に本当に分かれております。国民のいわば合意形成がなされていないわけなんです。特にPKFですね、平和維持軍の活動参加していくということにつきましては非常に強い反対論もあるわけです。これは最近のマスコミの世論調査を見ましても、依然としてPKFへの参加というものに対しては慎重論あるいは反対論というものが多く出ております。  そういう意味合いにおいて、総理が言われているところの国民の大半の支持を受けている自衛隊という意味は、私がそういう国民の世論動静というものを見た限りにおいて国民の大半が自衛隊を支持しているという意味は、いわゆる国の自衛権に基づくところの専守防衛、そうした目的、任務を持ったところの自衛隊ということを支持しているんですね。問題は、要するにその多くの国民がという部分においてPKFまでは及んでないんですね。つまりPKF参加については、自衛隊を支持する人は確かにこれは世論調査でも多いわけ、しかしPKFについては非常に少ない、慎重論もある、反対論も強い、こういう結果にもなっているわけなんです。  そういう意味合いにおいて、やはり今PKO法案の審議の中で、いわばこの現地状況、環境、あるいは地形、地理というふうなことを考えていけば、外務省が答弁したように二カ月程度の持久力がなかったならば無理だ、そのためには自衛隊が必要なんだという筋のことを言っております。だが、やはりそれはそれとしても、この国民の世論というものが半分に分かれあるいはPKFへの参加というものに対して強い反対論があり、国民合意の形成というものが成り立っていないところで自衛隊派遣するということは大変今後に問題を大きく残すんじゃないかと私は思います。  そういう意味合いにおいて、私ども連合参議院は、いわば今の時点では国民の合意形成が成り立っていないんだから、まず国民の合意を得ていく手段としては、やはり自衛隊とは一線を画した別のそういう平和維持隊というもの、協力隊でしょうか、そういう別組織をつくって派遣することが一番国民の合意を得やすい平和貢献ではないか、こういうふうに思うわけであります。そういう意味において、そういうことがなされれば、自衛隊に対する認識と国際貢献に人を派遣するという認識、非常にこれが明確に国民の支持が得られるような結果にもなっていくんじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。  そういうことで総理に、自衛隊の支持をめぐる評価、それから我々が考えているそういうやり方に対する見解ということをひとつお聞かせ願いたいと思うんです。
  196. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは政府委員からも申し上げましたし、ただいま磯村委員も仰せられましたけれども、例えばカンボジアの場合でございますが、派遣部隊を送る各国には六十日程度のプロビジョンを持って来てもらわないと困るという意味は、結局まさに生活そのもの、水とか電気とか食糧とが安全はもとよりでございますが、輸送とかそういうもの自身が、インフラが非常に悪いので余計そうしてもらわないと活動ができないということを言われておるということは、恐らくそういう実情であろうと思うのでございます。  したがって、ここで有効に役に立とうとすれば、やはりそれだけの準備を持ったものでなければ本当に国連平和維持活動に役立たないのではないかというふうに私どもは考えておりますものですから、それで自衛隊に行ってもらうのが一番いいのではないかというふうに思っているわけでございます。  他方で、しかし自衛隊というのはいろいろ過去の第二次大戦の記憶にも関連をすることであるからそれはやめておいて、何か別のものをつくってそれを送ったらどうだというお話は、実効性の問題としては私は失礼ですが大変に疑わしい。とてもそういうことが急にできるとは思いませんし、またそれができました場合に、ちゃんと一つの組織と命令系統と秩序を持ってこういう難しい仕事を十分な訓練なしにやってもらえるんだろうかということを思いますと、私は、そこは失礼でございますけれども、実効性はなかなか疑わしいのではないかという意見を持っております。
  197. 磯村修

    ○磯村修君 私どもが考えていることは、先ほどから繰り返し申し上げましたけれども、国論が二つに分かれているという、国民の合意形成というものが成り立っていないんだ、そういう一つの手段としてはやはりこういうことがいいんじゃないかということでもって考えている一つの方法論だと思うんです。この別組織の問題につきまして、社会党も今提案されております対案の中でも言われておりますけれども、その別組織というものはどういう形でつくっていくのか、その辺のことをまず別組織論についてちょっとお伺いしたいと思うんです。(発言する者あり)
  198. 篠崎年子

    委員以外の議員(篠崎年子君) 真剣な委員会での審議をしている最中にそういう冗談半分なことを言われては困ります。みんな真剣になってやっているんです。ままごと遊びとは何ですか。  お答えいたします。  私たちが考えておりますPKOの組織ですけれども、これはお手元に差し上げております国際平和協力業務及び国際緊急援助業務実施等に関する法律案の中の第二章の中に国際協力本部というものを出しておりまして、そこの中のさらに第五条の方で国際協力隊というものをつくっていこうと、こういうことにいたしているわけでございます。  このことにつきましては、先ほど来からの御説明の中にもありますように、例えば自衛隊を出すにしましても、その自衛隊をそのまますぐに出せるかというと、そうではないということは先ほど来からの御答弁の中ではっきりしているわけですね。例えば、協調性がある、語学力がある、あるいは忍耐力があるということ、あるいは健康の管理もしなければならない、そういうことから考えますと、やはり私たちが考えております常設の協力隊というものをつくっておいて、それを訓練する中で行動を援助していくということができるのではないだろうかというふうに考えているわけでございます。
  199. 磯村修

    ○磯村修君 外務大臣は、国連のコマンドをあらかじめ日本政府国連との間で、約束事なり実施計画をすり合わせてコマンドを受け入れて、憲法違反になることはやらないように仕組んでいくというふうな趣旨のことを御発言になっております。それから、派遣する条件というものが、すり合わせをして出す以上は向こうのコマンドに入るんだということですね。そこで、そういういわば法案の五原則というものがございますですね。そのすり合わせというのは、つまりこの五原則というものの趣旨国連と我が国の政府が取り交わす協定というものがあると思うんですけれども、その中に明記されるということでよろしいのですか。そういうふうに理解してよろしいんですか。
  200. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 取り決めのことでございますので、私の方からお答えさせていただきたいと存じます。  PKOへの要員派遣に当たりましては、我が国と国連との間でどのような取り決めと申しますか枠組みを設定するかという点に関しましては、どういう地域で行うPKOであるか、あるいはどういう業務内容であるか等の具体的な状況でございますとか、あるいは国連側との協議の推移いかんによって決まってくるものと存じます。したがいまして、現時点で確定的なことを申し上げるのが難しいのでございますけれども、政府といたしましては、この法案が成立いたしますれば、その後できるだけ早くこの法律に基づく我が国のPKOへの要員派遣につきまして、国連事務局との間で事務的なすり合わせと申しますか話し合いをいたしたいと考えております。  いずれにいたしましても、この法案が成立いたしますと、我が国からの要員派遣は、この法律に基づいて行われるというものである以上、国連側との枠組みの設定に当たりましては、我が国の関係国内法令、なかんずくいわゆる五原則を盛り込んだこの法律、法案の枠内の派遣になるわけでございますので、そのような、この法律に基づいた派遣になる、その枠内で派遣されるということを確保するように政府として対処すべきは当然である、そのように考えております。
  201. 磯村修

    ○磯村修君 五原則の枠組みというものがあるわけなんですけれども、ただ、私お伺いしたいことは、今幾つかのPKO活動というものが行われているんですけれども、いわゆるPKFと言われている部門の中でもって、外務省は、カンボジア、例えば停戦あるいは紛争が終わった後行ってPKFが平和を維持する、平和を復興していくというふうな役割を担うわけなんですけれども、実際にまだ紛争しているという状況の中にPKFが展開しているというケースもあるようですね。あるいは性格は違うんだといえばそうかもわかりませんけれども、ユーゴの問題もございます。  それから、いろいろ幾つかPKFの展開の仕方が、最近の例では紛争地のところに展開ししかも攻撃し合うというふうなケースもあるようなんですけれども、そういうPKFの展開の仕方につきまして、最近の例からいって外務省はどういうふうに受けとめておられますか、認識しておられますか。
  202. 丹波實

    政府委員丹波實君) PKOの展開につきましては、何と申しますか幾つかの原則的な国連の考え方の中に停戦というものがあることは御承知のとおりだと思うんです。  例えばUNTACの例をとりました場合に、和平協定が昨年の十月二十三日に署名されて、その中に停戦合意というものがあったわけです。その後、基本的には合意は守られた状態にあったと思いますが、しかしコンポントムにつきましては散発的な戦闘というものが非常に最近まで行われていたことは事実だと思うんです。ですから、私はまさにこの点とUNTACの展開との関係で注目をしておったわけです。  コンポントムにUNTACの先遣隊が四月の一画に実は入ったんですが、UNTAC全体としては、やはりコンポントムの状況というものを非常に注目しておりまして、平静を取り戻すまではその展開を差し控えていたと、基本的にはそういう状況だったんではないか。確かにその後も散発的なものは若干ありましたけれども、基本的には事実上の停戦というものが成立してから入っていったというふうに私たちは観察、判断いたしております。  ユーゴにつきましては、ボスニア・ヘルツェゴビナは大変戦闘状態になっていますけれども、ユーゴの現在のPKFといいますのはボスニア・ヘルツェゴビナの地方の北にありますところのクロアチア地帯に三カ所に展開しておるということで、紛争当事者の間では基本的な停戦協定も存在しておりまして、全体としては紛争当事者は停戦状況、停戦を守っておる。しかし事実上、SG報告によりますと散発的なものが若干は続いておるというのが現状ではないか。しかし、全体としては停戦協定は守られている。  そういう意味で、大きな停戦というものの性格というものはPKOを設置するに当たって崩されていないというふうに、ユーゴとUNTACの例だけで申し上げますとそういうぐあいに言えるのではないかというふうに考えております。
  203. 磯村修

    ○磯村修君 そこで、非常に衝突もあるというふうな状況の中でもってPKFが展開している。そういう実態、実情というものがある以上、先日も論議があったんですけれども、心配されることは外務大臣が御答弁になった指揮権の問題なんですね。  国連の指図、それから日本政府の指揮というふうな言葉の使い分けでもっていろいろ言っているわけなんですけれども、例えばそういう紛争地域でもって仮に駐留している部隊がその任務を実力でもって妨害されたといった場合に、これは法案の二十四条に書かれておりますところの「武器の使用」という条項があるんですけれども、この法案では、つまり隊員個人の判断によって身を守るための武器使用ということになっているんですが、実際にこの組織が、部隊そのものが駐留しているところに実力でもって妨害されたといった場合に、やはりそれをはね返すということもあると思うんです。  そんなときに、集団でいるときに個々人が、いや法律どおりに個人の判断でもって反撃するんだというふうなそんなことをやっておったら、本当にこれは部隊そのものが混乱するんじゃないか。撃たない者も撃つ者もいるというふうなことでしょう。そういうことも想定できますね。そうすると、やはりそこには上官の指揮命令系統というものがきちっとしていないと部隊は救えない、そういうことも危険な例として想定されるわけなんです。そういうことに対してどういう認識を持たれるのか。  もう一つは、国連の指図、それから日本政府の処分権を伴うところの権限といういわゆる指揮ですね、そういうものを二通りに分けて考えているようなんですけれども、例えば仮に自衛隊が行っておってそういう今私が言ったような問題に遭遇した場合に、憲法の制約からはみ出すような場面も想像できるわけなんです。そういう場合に、はみ出した場合に、一体だれに、どこに責任があるんでしょうか。  外務大臣は、指図、指揮は一体性のものであると言っているんですけれども、指揮こそ要するに一元性のものでなきゃいけないと思うんですね。そうしますと、国連には指図があって日本には指揮権がある。仮にそういうふうな武力行使につながるような問題が起きたときに一体どこに責任の所在があるんだろうか、こういう素朴な疑問が出てくるんですけれども、お答え願いたいと思うんです。
  204. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  先ほど、指揮とそれから国連のコマンドとの関係で二つの要素ということに触れて御質問がございました。  この国連のコマンドとそれからPKF派遣されます自衛隊部隊に対する指揮監督ということの関係につきましては、法案の仕組みを若干具体的に申し上げますと、まず国連現地司令官がコマンドを出します。いっどこで何をするか、配置等に関する権限に基づいて出すわけでございますけれども、それに基づきまして本部長またはその権限を委任された者が、いわゆる五原則を盛り込んだ法案の枠の中でこのコマンドに適合するように実施要領を作成、変更するわけでございまして、防衛庁長官はこの実施要領に従って自衛隊部隊を指揮監督して業務を行わさせるという、そういう仕組みになっておりまして、実施要領を介しまして国連のコマンドは我が国から派遣される部隊によって実施される、そういう流れになっております。したがいまして、指揮系統はそのような形で一元化されているということでございます。  そういう意味で、国連の指図と申しますかコマンドと我が国の指揮が一体のものとして考えられている、そういう趣旨でぜひ御理解いただきたいと思いますし、それがこの法案の仕組みでございます。外務大臣が答弁されたものもそういう趣旨というふうに理解しております。
  205. 磯村修

    ○磯村修君 つまり、そういう武力衝突なりなんなり憲法の制約からはみ出るような行動が自然発生的に出た場合、それは日本側に責任があるということですか。
  206. 野村一成

    政府委員野村一成君) お答え申し上げます。  ただいま憲法違反の行為があったらという前提に立っての御質問がと思います。  私どもこの法案をつくるに当たりましては、いわゆる五原則、憲法第九条との関係からいたしましてこれを織り込むことがまさに憲法違反との関連で必要であると、そういうことで手当てした法案でございます。したがいまして、この法案に基づいての行動である限り憲法違反の問題は起こらない、そういう仕組みでございます。
  207. 磯村修

    ○磯村修君 私が聞いていることは、ぺーパーの上でもって論議すればそういう論理も成り立つでしょうけれども、私たちは人間を送るわけですから、部隊を送るわけですから、そういう場合に、政府側の答弁の中にもありましたように、いわばいろんな環境の中に行くわけでしょう。環境というのは、つまり生活がしにくいというだけの環境じゃないんですよ。実際に紛争している、やまない、そういうふうな状況もある中に行くわけでしょう。場合によってはそういう武力衝突というふうなことも想定できるわけなんですよね。その場合に、偶発的というか自然的に発生したものに対する責任は一体どうなるんですか。法律で書かれているからそういうものはありませんということは言えないでしょう。
  208. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 指図と指揮の問題につきましては、指揮権の問題につきましては、今室長のお答えしたとおり一貫しております。国連の指図に即応した実施要領に基づきまして我が国は一致した行動をとるということでございますが、ただ懲戒その他人事等々の問題は防衛庁長官が指揮権を、権限を持っております。  しかるところ、先生今御指摘の点は武器使用に関してでございますが、武器使用はまさに自己の生命、身体もしくはそのそばにおる他の隊員等の生命、身体を守るためにのみ武器使用が認められると、狭義にそう解しております。したがいまして、私どもは刑法三十六条あるいは三十七条の要件に該当する場合にのみ危害を加えてもこれは免責されるということを書いておるわけで、まさに個人の判断に任せてあるわけであります。  しかしながら、私どもが今まで答弁を申し上げている点は、部隊として数人かの、何人かの、これはケースによってわかりません、しかし例えば数人がおってそこにゲリラその他の急襲を受けるようなことがあった場合に、やはり共通した危機の場合には共通した行動をとり得ることもあるでしょうということはたびたび申し上げておるわけでございます。  そして、私は余り束ねるという言葉は適切であるかどうか多少疑問に思いますけれども、指揮官がそこにおりまして抑制的な意味で、つまり隊員が個々の判断でいろいろ違った場合に、いや上官の判断としてはこれは撤収するべきであるとか、いろいろその武器使用について、今発砲すれば非常に状況がよくないというような場合には、これは消極的な意味で指揮官が発砲はちょっと待てよというようなことはあり得るということを束ねるということで申し上げたわけでございまして、積極的に任務遂行のために武器使用を命ずるというようなことは考えておりませんし、そういうことはいたさないつもりでございます。  なお、そういう事態が起こります場合は、これは要するに戦闘行為に巻き込まれるおそれのある場合は、そもそもこの平和協力業務というのはそういう場合には中断もしくは撤収を予定いたしておりますから、そういう場合には撤収をいたすということでございます。したがいまして、この平和協力業務というのは、今までいろいろ議論のございますように、あくまで平和協力業務であります。そして、過去の事実に徴しましても、五十万人くらいの延べ参加人員がございますけれども、七百人くらい、そのうち武力の、武力というか武器使用によって死傷した方はそのうち全部ではございません。そういうことでございますから、非常にレアケースとして考えられることはあろうかと存じますけれども、そもそもこの協力業務は平和的な業務であります。  したがって、その点はよく御理解をいただきたいなと思うわけでございまして、国内における直接侵略等についての武器使用、それはもう当然部隊としてこれは武力行動で自衛のための専守防衛の建前に立って、もしくは武力侵略を受けた場合は堂々とやることはこれは当然でございますが、今回の場合はあくまで平和協力業務の一環として行うものでありますから、このような体制になっておるということを御理解をいただかざるを得ないと、このようにお願い申し上げます。
  209. 磯村修

    ○磯村修君 時間が来てしまったので残念ですが、ともかく一言だけ(「答えになっていない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  210. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  211. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 速記を起こして。  それでは、政府側で質問を受けた点でまだ補足が必要だという質問者の意向ですから、補足の説明をどなたかやってください。――それでは、磯村委員の方から、まだ不十分な点について質問の要点をもう一回おっしゃっていただいて、それに政府側から責任ある答弁をお願いいたします。
  212. 磯村修

    ○磯村修君 先ほど防衛庁長官お答えになったことは、私どもは法案を勉強していればわかることなんです。  私が聞いていることは、現場へ法律を持っていくわけじゃないんですよ、書いたものを。つまり、私最初申し上げましたように、今PKFの展開の状況から考えられることは、そういういわば集団的に業務を妨害されることもあり得ることなんです、これは実際に紛争をやっているところへ展開しているんですから。そうでしょう。その場合に、個人でもって何か行動していって正当防衛なりなんなりでもって武器を使用することもあるでしょう。それは重々わかるんですけれども、ただ集団でもって部隊でいた場合、部隊の駐留地に実力の妨害があったときに、そんなときに個々でもって判断するなんてないでしょう。  自衛隊は指揮命令によって動くことを訓練されている組織なんです。そうでしょう。その場合に、憲法で制約されていることからはみ出すような行動も考えられるんですよ。その場合に、その責任の所在はどこにあるのかということを聞いているんです。
  213. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先ほど申し上げましたように、先生はある想定のもとで部隊が急襲を受けた場合に応戦するのではないかという御趣意ではないか、その場合の責任はだれが負うのか、指揮権はだれが持つのかというような御質問かと存じますが、それでよろしゅうございますか。  私は、やはりこの法律趣旨に基づきまして、これからのことでございますけれども、自衛隊がこの法律が成立して出動いたしました場合、そのような場合には集団として応戦をしない、そういう訓練というか状況判断といいますか、これは徹底的に行わなければいけないと思っています。そうでないと、向こうが撃ってきたから直ちに応戦するとかいうようなことであってはならないと思うんですね。したがって、SOPで、任務遂行のための武力行使をSOPでは認められておりますけれども、我が国はそれはとらないということまで明確にいたしておるわけでありますから、そういう想定は私どもはいたしておりません。  もしかそういうような状況が仮にあれば、瞬間的に起こる場合もあるいはあるかもしれません。私は、恐らく多くの場合は状況判断によってそれは可能だと思います。そういう場合は、逃避するなり中断をするなりあるいは安全を求めていくなり、そしてなおかつそういう状況が継続するような状況でございますれば、撤収といいますか中断をいたすというのが本法律のあくまで建前でもございますし、私どもは、この法律が成立しますならば、そういった国内における武力集団としての自衛隊、これと全く違った意味の訓練その他もまた考えていかなければならない、こう思っておるところであります。
  214. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) もう時間が参りました。
  215. 磯村修

    ○磯村修君 もう時間がございませんので一言だけ。  非常に納得できない答弁でございます。私は、ぜひこの責任の問題につきましては十分な検討が必要であろうと、こういうふうに思います。  終わります。
  216. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 このPKOの法案が提出され、そして審議が行われておるわけでありますけれども、私はこの背景には世界情勢の大きな変化というものがあると思います。  総理もおっしゃっておりますように、まさに第二次大戦後の一つの時代が終わった、これから新しい時代が始まろうとしておるのだと思います。この新しい時代がどういうものになるかというのは、これはだれにもわかりません。推測はできたり評論はできますけれども、これはこれから日本人も含め世界の人々がつくり出していくものでありますから、だれにもわからないと思います。そして、それはやっぱり日本を含め世界の人々の希望とか意思とか行動力がつくり出していくものだと思います。  そして、この新しい時代の世界の秩序をどうつくるか。残念ながら、大戦後の今までの時代においてはヤルタ体制という一つの枠組みがあったわけですけれども、これをつくるに当たって日本がこれに参画したものではありません。敗戦国としてむしろ処分される側でありました。この第二次大戦後の世界の枠組みは当時の戦勝国を中心としてつくられたのであります。したがって、日本の立場というのは、過去の半世紀の時代というのは与えられた枠組みの中でやってきたわけです。言うならば、その中で非常に幸運に恵まれて経済的に繁栄することもできた、平和も維持することもできたのであります。  ただ、今は、新しい時代に変わろうとしておる現在は、今回は日本もこの新しい枠組みについて役割が求められておると思います。世界がそれを許容視しておるわけですね。戦争に負けたときには前科者であって、謹慎処分、保護観察を受けてきたわけですけれども、この今の変化の時代は日本は一人前の国として役割を果たせということが言われておるのだと思います。私はPKOの法案も、それのすべてではありませんけれども、その中の一部だろうというふうに考えるわけです。ただ残念ながら、この法案については与野党で、各党それぞれ違いはありますけれども、大きく言えば二分されておるような感じがします。  しかし私は、これから新しい将来に向けて一歩を踏み出すときに大事なことは何かというと、今まで過ぎ去った時代の経験というか実績、そういうものに対する評価をすることが大事ではないかと思うんです。この評価がまとまっておりますとこれから踏み出す方向も一致できるんですけれども、この評価が分かれておりますと、新しい方向に行くのに、いやおれはこっちだ、おれはこっちだというふうに分かれるわけですね。私はやはりこの評価、今までの日本の半世紀、日本だけではありません、半世紀のヤルタ体制下の世界をどう評価するか、あるいはその中で日本が歩んできた道をどう評価するか、それからその間の世界平和というものあるいは日本が享受してきた平和というものをどう評価するか、これに対する認識の一致が大事なのではないかという気がするわけであります。  そこでまず第一に、ヤルタ体制における世界をどう評価するのか、またその間歩んできた日本の今までの半世紀をどう評価するか、またその間の我々が享受した平和をどう評価するか、まず総理にお伺いをしたいと思います。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 田渕委員がただいまお尋ねになられました背景の御説明、私も同様のことを実は考えておるものでございます。  最初に言われましたヤルタ体制という、いわば与えられた枠組みの中で今日まで我が国はやってくることができたと言われました部分は、私は、いわば我が国が従来世界の平和の受益者であった、そこからいわば一方通行で利益を得てきた、それが田渕委員の言われるいわゆる枠組みの中で暮らすことができたと言われる意味と思います。そして、今やその枠組みが壊れて新しい枠組みをつくる時代になって、我が国はその枠組みをつくる中で一つの役割を求められていると言われましたことは、私流に表現いたしますれば、平和の一方的な受益者から今度は世界平和と繁栄に対する我々の貢献をしなければならない、そういう責務を持っている立場にあると申し上げましたこととほぼ該当する。田渕委員の御説明の方がむしろ非常にわかりやすかったと思いますが、私も同様な考え方をいたしております。  そこで、これから我が国がどういう役割をいたすべきかということについては、この過去の、五十年近い過去の、及び我々がした経験をどう評価するかということにかかっているというふうに言われました。そのとおりであると思います。私自身は、この枠組みというものをやはり米ソの対立というふうにとらえることが一つのとらえ方であると思います。それはいわば広い意味ではマルクス・レーニニズム対自由主義あるいは市場経済というようなものの対立てあったととらえることができるであろうと思います。そして、そのマルクス・レーニニズムというものは、ソ連の崩壊を一つの象徴として一九一七年以来の時代を終えたと考えてよろしいであろうと思います。  そのときにまた、米ソの対立という冷戦という時代がやはり終了をした、そういうふうに私は過去を評価いたしますので、いわゆる自由主義陣営あるいは市場経済というものがただこの争いに勝ったといって勝利に酔っているわけには実はまいらない。その陣営そのものにもいろいろ問題があるわけでございますからそういうふうには思いませんけれども、しかしそういう意味でのこの対立というものは終わった、及びそういう意味での冷戦というものは終わった。したがって、この時代を私は所信表明、施政演説で申しましたとおり、新しい世界の平和秩序の構築がこれから始まるというふうに考えておるわけでございます。  そして、そのような過去の評価をいたしますから、我々としてはいわば過去四十何年軍事大国にならずにまいりました。このような新しい平和の構築に当たって、いわゆる平和の配当というものが我々おのおのにばかりでなく、いわゆる南北問題等々、難民でありますとか、疾病でありますとか、麻薬でありますとか、飢餓、貧困あるいは地球全体の問題等々に、初めて武器や軍備に対する支出の負担を軽くしつつその配当を大きくする時代が人類のためにやってきたと考えますので、そういう方向に我が国はやっぱり先頭に立って進めていかなければならないということが一点であります。  第二点は、そのような冷戦が終わりました結果として国連というものの役割が非常に大きくなってきた。これはたまたま湾岸戦争でそうでございましたが、米ソの対立がなくなって国連が機能できるようになりました結果、各地に起こりました地域的な紛争に対して国連平和維持活動のようなものが求められるようになった。あるいはまた、いわゆる地球上の問題について、環境もそうでございますが、国連に非軍事的な役割を求める声が非常に強くなっているといったようなことから、これは我が国が憲法で考えております国連中心主義、国際協調主義に合致するものでございますから、そのような国連を強めることが大事である。  我々が国連活動に貢献をすることによって、そのような国連活動に寄与し、活動を強めていくことが必要である。それがこれからの我々の施策の方向でなければならないというふうに考えております。
  218. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 社会党からもこのPKO法案について対策が出されております。私は、今の問題について基本的な考え方をまず社会党からもお伺いしたいと思います。
  219. 久保田真苗

    委員以外の議員(久保田真苗君) 世界情勢につきましては、私どもの世界情勢の考え方、今非常に大きい転機にあると、非常に我が国の平和主義の外交にとって大きいチャンスが訪れていると、そういうことを思います。また、それゆえに新しい世界平和の秩序づくりをやっていく、そのことに参画していくためには、私どもは平和的な手段でもって今まで以上にいろいろな紛争を解決していくというその手段を多く発見すべきであると思っております。したがいまして、きのうも申し上げたのでございますけれども、武力にかわる法の支配、武力にかわる政権の担当の仕方、そういったものを広く認め、それを形成していくためにその一翼を担いたいものだと、新しい秩序についての私どもの考え方はそういうことでございまして、そのラインの上に今回の対案をつくらせていただいております。
  220. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 さらに、私は具体的な問題として平和の問題についてお伺いをしたいと思います。  これは、前に政府の方にはお伺いしたことがありますから、社会党の方にお伺いしたいと思いますが、日本が今まで戦争に巻き込まれることなく来たというのは非常に幸せだったと思います。しかし、この平和というものについてどのように考えられておるか、どのように評価されておるか、お伺いしたいと思います。
  221. 久保田真苗

    委員以外の議員(久保田真苗君) 私もまことに幸せな状況であったと思います。  この平和を維持するために一番大きく作用してきました要素は幾つかございますけれども、やはり我が国民の熾烈なる平和愛好心であったと思います。また、それをしっかりと支えるための憲法がこのことに役立ってきたと思います。また、世界的な状況を見ますならば国連の創設、国連が少なくとも戦争の惨禍の中から紛争の平和な解決をはっきりと打ち上げたということがございますし、また各国で見ますならば、戦後、普選それから婦人参政権、そして植民地解放、独立、こういった民意が政治に近くなったということがこの平和を支える大きな要素であったと思います。  もちろん平和につきましては以前から不戦条約というようなものがありまして、その建前は非常によかったのですけれども、多くの留保が出まして、実際には我が国憲法の志向しております平和とは非常にかけ離れたものに現実はなったということが言えると思います。また、私どもが考えているこの平和が、日本の憲法の中にある非常に徹底した平和を守っていくという、そのことがこれまでの平和をさらに一段と進める上に大いにこれから生かされるものと考えております。
  222. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、日本の平和憲法、それから日本の国民のコンセンサスとなってきた平和主義、これが大きな役割を果たしたことは否定しません。少なくとも日本が軍事大国になることは防いできたと思うんですね。これは一つの評価すべきことですけれども、現実の問題として、国連はまだまだ世界の平和を維持するだけの機能を果たしませんでした、残念ながら過去半世紀の間は。それを補ってきたのは何かというと、私は日米安保体制だったと思うんです。日本自衛隊日本を独力で守るには小さな規模です、小さ過ぎる規模です。しかし、我々はそれを日米安保体制というもので補ってきた。だから軍事大国にならずに、しかも平和が保たれたと思います。  それから、もう一つ大事なことは、常に東西間の恐怖すべき核戦争というものに脅かされながらも、東西間の大きな戦争には至らなかったことだと思いますね。したがって、私はいわゆる理念的に平和主義を持つのは大事ですけれども、現実に国際社会は、日本の憲法に言うような正義と秩序を基調とする国際平和の状態が十分な状態にはまだなっていない、これが過去半世紀の国際社会ではなかったかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  223. 久保田真苗

    委員以外の議員(久保田真苗君) 国連の平和維持機能というものが冷戦のために働かなかったという、そういう側面があることはそのとおりだと思います。しかし、そうは言いましても、いろいろな条約によりましていろいろなものを抑えてきたという効果もあったかと思います。  日米安保体制は、私ども基本的に考えますならば、軍事同盟というものが二国間あるいは多国間で結ばれるということは、やはり力の、武力を背景にする平和の現出、それを抑えていこうという、そういう働きでございますから、それはない方がいいという基本的な立場を失うことはできないと思います。しかし、日米安保条約というものが日本の国とアメリカとの間に結ばれているということはこれは事実でございますし、私どもが国の立場からそれを否定できないのは当然だと思います。けれども、それが基本的に我が憲法の考え方からして、そのようなあり方でしかなかったということは改められるべきことだと思いますし、また基本的には軍事同盟から離れ、そしてもっと地域の中の平和の信頼関係を醸成する、あるいは武器の移転、そういったものを厳格に制限していく、そういった平和的な手段を選んでいくためにより多くの努力がなされなかったことは非常に残念だと思います。今からでも遅くはないので、そういうことに精出すべきだと思います。
  224. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 やっぱり理想というものと現実というものとはよく考えないといけないと思いますね。  私は、平和憲法の理想は立派なものだと思いますし、それを否定するものではありません。憲法に言うような国際社会をどうつくり出すかということが大事である。そういう状態ができていないのにその理念だけで国を守ることはできません。そして、理想的に言うならば、国連というものがもっと強化されて、そして国際的な平和維持機能というものを十分に果たす、国際正義や法秩序を守っていく、そういう力が国連にできれば、法と秩序を基調とする世界平和というのが出てくるわけです。それがない不十分な段階は、決してそれで私は理想的なものとは言いませんけれども、次善の策として日米安保体制は必要であったと思うんです。  これから世の中が変わります。世界が変わります。私は日米安保条約もだんだん変わっていくだろうと思います。なぜならば、東西対立というもの、米ソの対立というものは、アメリカと日本の利害が一致する部分を大きくして、やっぱり条約というものは双方に利益がないとそれは成り立つものではありません。日本はアメリカに守ってもらうという利益がある。アメリカは日本がソ連に味方しない、ソ連圏に入らない、自由主義諸国の中の一員として活躍する、そういう利益があるから存続したと思います。  しかし、東西対立がなくなると、私は逆にこの日米安保体制の中で双方の利害の一致する部分が少なくなってくる。それで、むしろ経済的な対立とかそういう面がクローズアップしてくる。それから、アメリカ自体がもう財政的に非常に窮屈な、困難な国になっております。いつまでもなくさんの軍隊を外国に派遣するなんということはできないだろうと思いますね。それにかわってどうすればいいかというと、早く国連の平和の仕組みというものをきちんとしていくことが大事ではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  225. 久保田真苗

    委員以外の議員(久保田真苗君) 私、国連による平和がどのように実現されるべきだということについてはもっと多くの論議が必要だと思います。  なぜかといいますと、国連が仮に今の七章のもとでの最終的には軍事的措置による強制行動、それをとったとしても、それで実現できるものは、相手はだれなのかということを考えますと、それもなかなか万能ではあり得ないわけでございます。そういうことを考えますと、国連の中で、国連の立場からして、第一義的に平和的解決を追求することを義務づけているというそのことを守りながら、軍事的行動というようなものの前にもっと幾つかの、実際にだれの目から見ても公正な、そういった決着がつけられるような場、それを国際世論で支えていくというそのメカニズムが強化されなければならないと思います。それはいろいろな国連の機関にも分かれておりますし、またヨーロッパのECの中にあるようなああいった組織にもそういうことを期待することができるかもしれません。  確かに、冷戦の構造は変わりましたからこれに見合うようなものを、国連を含んでそれを考えていかなければならないと思います。直ちに軍事的に強い国連というふうな考え方はとることができないと思います。それは客観的に見てもそうだと思いますし、また、我が憲法の立場からはそれはとれないことだと思っております。
  226. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 国連憲章にうたわれた理念も決して武力偏重ではありません。武力を行使するのはもう本当に最後の手段としてあるわけです。また、最後の手段としてそういうものがバックにないとなかなか世界の秩序というものは保たれません。  日本のような比較的人種もほぼ単一であるし、平和で社会的にも落ちついたところでも、やっぱり警察がなければ社会の治安は保たれないのと同じなんです。個人個人、みんな私はほとんどの人が立派な平和的な人だと思いますけれども、それでも法律を守るためには警察が必要である。だから、国際社会で法秩序を守るには、やっぱり国連が最終的には武力も行使し得るということがないと守れないんじゃないかと思います。  それで、私は、今回のPKO法案の賛否が分かれておるのも湾岸戦争に対する評価、これに対する考え方の相違と全く一致しておると思うんですね。湾岸戦争に対する評価、これはいろいろ賛否はあるでしょうけれども、これはどう考えられますか。
  227. 久保田真苗

    委員以外の議員(久保田真苗君) もちろん侵略行為を許すことはできない。それは確かです。ですけれども、国連は武力、ああいった集団的自衛権による多国籍軍、あれは国連軍でもないわけですけれども、そういうところへ行く前に幾つも幾つもの平和的解決の手段を要求しているわけでございます。それを、とてもそういうことが待てないで、そしてああした軍事行動に出、そして非戦闘員を含む多大の犠牲を出したということについては、私どもはあの戦争に参加しなかった、あそこへ要員を出さなかった、そのことを全く恥じる必要はないだろうと思っております。
  228. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、湾岸戦争の問題点はいっぱいあると思うんです。  ただ、これは比較の問題でして、もし国際社会がああいう行動をとらなくていまだにイラクがクウエートを支配し続ける、あるいはその脅威がサウジとかほかのところにも及んでいく、そういう状態と比較した場合にどっちがよかったかということを考えなければならないと思うんです。私は、湾岸戦争はやっぱり多国籍軍という形で国連軍ではない、だから非常な危険性もはらんでおります。それぞれの国の思惑で軍隊が勝手に走り出すという危険性もないではない。そういう問題はありながらも、私は大きな評価をすべきだと思います。  一つは、国際正義と秩序をともかくもとに戻した、破ったものをもとに戻した。それからもう一つは、あれがこれからの第二のフセイン、第三のフセインのような存在があらわれた場合の抑止力になることは間違いがありません。またああいうことをすれば、国連が決議をして、今度は多国籍軍じゃなくて国連軍になるかもわかりません。この抑止力というのは非常に大事でありまして、私はそういう意味では問題があることは承知しつつも、やはり国際秩序、平和秩序の確立という面からは評価すべき点が多いと思いますけれども、いかがでしょう。
  229. 久保田真苗

    委員以外の議員(久保田真苗君) 私は、ああいう形で問題が軍事的に解決されたというそのことがもし正義と秩序に基づくということを非常に普遍的な意味で考えるならば、それではあの侵略を行うものがもっと大国であった場合はどうなのか、そういうことを考えますと、その限界というものは非常に明白なんじゃないかと思います。そうであるならば、それは中小国あるいは開発途上国、そういったところにはあの形で、ともかく事は短期間でおさまったということでございますけれども、そのときそのときに適用されるそのやり方が違ってくるということも思わざるを得ないのでございます。そこに私は軍事的な解決による大きな正義の上の限界があるんじゃないかとどうしても思わざるを得ないわけでございます。  したがいまして、あれは少なくとも国際世論をやっぱり引き裂いたものではなかったかと思います。それは経済的な、私どもは経済的な制裁を続けるべきだという意見はたくさんあったわけでございます。しかし、その論議とかそういったものが国連総会とかそういったところでもっと議論を尽くさないで、そして非常に早い、手の早い、実に巧みな外交でございます、あのやり方でやられれば、いかなる国も口出しかできないというそのようなプレッシャーのもとでああいうことが行われたということは遺憾に思います。  また、もっと平和的な手段、少なくとも経済的な手段、そういったものをもっと尽くすべきではなかったか、私はそう思っております。
  230. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私が申し上げたいのは、やはり憲法に定められたような国際社会をつくるための現実的手段をどうするかということなんです。そのためにはやっぱり国連中心とした平和維持のための活動、これは軍事面ばかりでもありません。平和的な説得も含めあらゆる手段を含めて、そして最終的には軍事的な手段も残しながら、国連というものをどのようにつくり上げていくかということが大事ではないかと思いますね。  その意味で、このPKO法案も国連の仕事の中のごく一部です。すべてではありません。ごく一部に我々が力をかそう、お手伝いをしようというので、非常にやっぱり重大だと思うんですね。残念ながら今までの日本の平和は、米ソの猛烈な軍備競争、それからまかり間違えば大戦争になる危険の上で、幸い日本が幸運な地位を占めて平和が保たれた。言うならば火薬庫の上で昼寝しておるようなものです。いつ爆発するかわからない。そういう平和では我々は満足できませんね。やっぱり憲法に書いてあるような、法と正義を基調とするような国際社会をつくらなくてはならない。  その方法は、我々が立派な憲法を持っているぞと言うだけではやっぱりだめだと思いますね。やっぱり国際社会における具体的な行動がなければだめだ。だから、PKO参加するのもその一環であるという考え方だと思うんです。その意味で私はこの問題を考えないといかぬと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  231. 久保田真苗

    委員以外の議員(久保田真苗君) 私たちは対案を出しておりますけれども、その中で私どもはPKOには大いに参加するのでございます。非軍事部門、文民の力で参加したい、その道を私どもは対案の中で探ったつもりでございます。平和を担保するのがどうしてストレートに軍事的な問題に結びついていくんでしょうか。その考えでいる限り、私はやはり恐怖の上の力の均衡ということを最終的には求めざるを得ないというふうに思うわけでございます。  ですけれども、もう一つ別の方向もあるわけでございます。例えば軍縮を進めていくとか、武器の製造とか武器の移転を制限していくとか、その方のことはほとんどレッセフェールで行われてきたというのが現実でございまして、私は、そちらをもっと私どもが力を尽くさない限り、また大国の人たちにもわかってもらわない限りなかなか平和は来ないし、そしてその大国が自分の武器を売り込んだところを後から攻撃をするという、マッチポンプのような非常にナンセンスなことを多くの民衆の犠牲の上にやっている、この構図をぜひ反省したいし、改めなければならない、こう思うわけでございます。
  232. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、確かに軍縮も大事です。ただ、軍縮を進めるのも軍縮軍縮と言うだけでは進みません。  世界的にこれから軍縮を進める道は、まずアメリカとソ連は持ち過ぎるぐらい持っているわけですから、これは双方が話し合って削っていけばいい。ところが、現在アジアの諸国はむしろ軍拡をやっていますよ。前年比二けた台の軍拡をやっておる。これはなぜかというと、確かに東西の対立は終わりましたけれども、人間の歴史をたどってみると戦争の歴史なんです、悲しいことに。そして、その原因はいっぱいあります。イデオロギー対立もその一つにすぎません。  そのほか領土問題、資源問題、民族的対立、宗教的対立、経済問題、こういう問題がこれからもどんどん起こってくるわけですね。だから各国は軍拡を、軍備競争ということをやるわけで、これを防ぐ道は、私はやっぱり国連を強化して、国連憲章による平和の仕組みというのは、一方では個別国家の武力行使を慎むことが一つです。もう一つは、それにかわって国連が平和維持機能を果たすことなんです。  だから、個別国家の軍備を縮小するかわりに国連が安全保障の大きな役割を果たしましょう、各国の共同行動でそういうことを果たしましょう、こういう仕組みをつくらないと、私は今軍拡をやっている国に軍縮を説いたってそう簡単にやらないと思います、やっぱり自分の国を守るのが大事ですから。国連がそれだけの信頼性を持たない限り個別国家の軍縮は進まないと思うんですね。だから、我々が国連の仕事に協力するというのはやっぱり将来の世界的な軍縮を進めるための一つの手段だと思いますが、いかがでしょうか。
  233. 久保田真苗

    委員以外の議員(久保田真苗君) 確かに共同の行動をとるということは一つの大きい流れであるかもしれません。私どもそうした状態ができるということは、今の個別国家の争いがあるということよりは大変望ましいことだと思います。しかし、その形で国連を動かしていくのはそれじゃだれなのか、だれに対してそうしたものが本当に公平に使われるのかということに対して、開発途上国にかなり疑念があるということも事実だと私は思います。  それは、そうした共同行動が例えば今の七章のもとの国連軍であったとして、仮にその国連軍が今ある大国に勝てるものでしょうか。もしかしてもっと小さい国にも勝てないかもしれない。そういうことがあると思います。また、その中でおのずから一つのリーダー格の者が出てきて、そしてその戦略によって不平を持つという国も出てくるということがあるかもしれません。  でございますから、私は安保理のような小さいところでやらないで、もっと大きいフォーラムでこういうことを徹底的にやるべきだというふうに言っているわけでございます。おさまってもおさまらなくてもそのプロセスを経ないということは実にアンフェアなことだと思っております。  先生の御意見に私、十分答えたかちょっとわからないんですが、またその意味一つの軍事行動を最終的にはということでございますけれども、それ以外の選択肢というものをふやすということに力を入れなきゃならないんじゃないか。例えば国際司法裁判所ですとかそれから人権委員会ですとか、お笑いになっているようですけれども、国の中ではリンチとか死刑というものは禁じられているんです。それは法の支配が力の支配を乗り越えている、それが国の中では当たり前なんじゃございませんか。でも、国際社会ではそうではない。一日も早くそういうところへたどり着くべきだと思います。
  234. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 時間がなくなりましたけれども、一つだけ申し上げておきます。  国連に対していろいろ問題があることも、これは私も認めます。しかし、日本国連の一員なんです。あるいは国連に物すごいお金を出して支えている国なんです。だから国連を、やっぱり問題があるならそれをよくしていく、そして普遍的なものにしていく、権威にしていくということが大事だと思うんですね。国連に対して不信感があるからだめだということでは何も進まないんじゃないかと思います。  以上、私の意見を申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  235. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、お尋ねする前に次のことをはっきり申し上げておきます。  私は、沖縄に生まれ、沖縄に育ち、沖縄戦に巻き込まれて、奇跡的に生き延びて今日を得ております。    〔委員長退席、理事岡野裕君着席〕  ですから、戦争のむごたらしさ、悪魔さ、米軍の暴虐、日本軍の残虐性、すべて私はこの目で見て体験しております。そのことを前提にして、次のことを私はお尋ねします。  まず、外務大臣は連日外国を回っておられていろいろと感想を述べておられますので、次のことを尋ねたいと思います。  その国のいい政治ということは、外交と内政の調和の問題、そしてまた次にこういうことをよく聞かされます。我が国は経済大国、世界に優位であるが、世界の先進国に比べて福祉が非常に立ちおくれておるということをよく私は聞かされます。すなわち、経済大国ではあるが福祉劣国、福祉面においては先進国に比較して最も劣っておると聞かされますが、私もそう思っております。そのことを、外務大臣は私のこの質問に対してどうお感じでしょうか、お聞かせ願いたい。
  236. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、先進国の中では日本の福祉は非常にいい方の一つだと思います、年金制度にしても、医療制度にいたしましても。国の名前を言っちゃ申しわけないから言いませんが、一番すぐれておる。したがって、この五十年の間に寿命が世界一長くなったのはその証拠でございます。
  237. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 福祉面はどうですか。
  238. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それが福祉の話でしょう。福祉でしょう、ウエルフェア、違いますか。
  239. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 はい。
  240. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) だから、お答えをしたつもりなんですがね。
  241. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、我が国の国際貢献の問題を考える場合には、自衛隊の、海外派兵でさきの大戦の際に日本政府が我が国民及び近隣諸国に対して多大な犠牲を強いた結果発生したもろもろの戦後処理問題をまず優先して解決、処理すべきであると考えます。  外に対しては、いわゆる従軍慰安婦の問題、サハリン残留韓国・朝鮮人の問題、台湾出身元日本兵の問題等がございます。内に対しては、被爆者援護法の問題、また我が沖縄県における厚生年金の格差問題、戦争マラリアの問題、遺骨収集の問題、不発弾処理の問題。中でも最大の問題は、米軍占領の結果、強制的に取り上げられ、その後日本政府が日米安保条約の名のもとに米軍の自由使用を追認し、そうして積極的に提供しておる沖縄米軍基地の問題等があります。  ことしは復帰二十年、政府におきましても沖縄におきましても復帰二十年に向けて数々の行事が計画されておるようでありますが、国内の戦後処理問題である被爆者援護法に対してはどのように考えておられるか。また、沖縄のもろもろの現状においても、米軍の専用基地の七四%が沖縄に温存されておる。その重圧のもとに、空からも海からも陸からも生命と人権を抑圧されつつ、復帰二十年といえども毎日毎日そのような重圧を受けておる現状であります。このことに対して総理はいかがお考えでしょうか。    〔理事岡野裕君退席、委員長着席〕
  242. 山下徳夫

    国務大臣(山下徳夫君) ただいま具体的な御質問でございまして、私の所管でございますから私からお答えをいたします。  おっしゃるとおり、この沖縄地区における方々については、いろんな面で大変お気の毒なことは私も十分承知をいたしております。ただいま御質問の中にもございましたが、野党からも被爆者援護法案が提案されております。これは、一つは原爆死没者の遺族に対しての補償、もう一つは被爆者全員に障害の有無にかかわらず年金を支給すること、このような内容になっております。  そこで、原爆の放射能も何もない健康な人力にまで全部これらの補償を行うということは、今日までやってまいりました一般の戦災者との均衡がとれなくなるということで、いろんな種類がございますものですから、そういったことを見ながらできるだけのことはやってきたつもりでございます。  もう一つの問題は、被爆当時から既にもう半世紀近くたっておりまして、したがいまして、今日この死没者の状況とかあるいは遺族関係の確認ということが非常に難しくなっておりまして、これを一つの物差しでもってやるような、そういった法律によってこれをやるということは非常に困難な状態であるということをひとつどうか御認識いただきたいと思います。  それから、健康被害の全くない人に年金を支給する、これも今申し上げました戦争の犠牲者に対してあらゆる面であらゆる措置をとっておりますが、そういったものとの均衡を著しく害するということでなかなか御期待に沿うわけにはいかないわけでございます。  いずれにいたしましても、被爆者の保健、医療、福祉等につきましては、今後とも誠心誠意を持ってやってまいりたいと思っております。
  243. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 総理にも御答弁をお願いしたいんですが、次のお尋ねによって答えてください。  三度目の正直という言葉がございますが、総理は、沖縄にお伺いして県民に慰めでしょうか、お礼でありましょうか、何かとにかく沖縄に行って県民に会って話したいということを二度にわたって私におっしゃいましたね。それで、私は三度目の正直という言葉を言いました。間違いなくおいでくださるでしょうね。まずそのことから。
  244. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように考えております。  喜屋武委員には前にも申し上げておりますけれども、沖縄の方々には戦争中に表現しがたい苦難をおかけいたしましたし、戦後、今日我が国がこのような安全を保っていることについて沖縄県民の御協力に負うところは多いと私は考えております。二十年を迎えますが、そして新しい振興開発計画をいたしますけれども、まだ、ただいまお触れになりましたような幾つかの問題について、沖縄の方々のお立場からいえば十分な解決が図られていないということで、私も、沖縄であるがゆえに何とかして解決の道はないものかと、関係閣僚にも実はお願いもし、督励をしているような内情でございますが、そういうこともやりながら、いずれ私も現地に伺わなければならないということを考えております。
  245. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 お気持ちはよくお伺いしました。  それで、御参考までに次のことを申し上げます。もしおいでいただくとしますならば、この五月十五日は復帰二十年の日に当たっておりますので、日本政府とされても、あるいは日本の民間の団体とされても、また沖縄県としても、いろいろの二十年の行事がございます。  それで、私も既に国からも県知事からも案内をちょうだいしておりますが、その返事をこの前求められておりましたので、何と申しましてもこの喜屋武は、現地沖縄に五月十五日はおるべきと、こう決意しまして、五月十五日は沖縄県の行事に参加すると、こう申し上げた次第でありますが、この五月十五日。次に、六月二十三日が、連日語られております慰霊の日、いわゆる平和の日でございます。次に、十一月三日は、例の首里城が復元して、そして首里城内に伝統文化の正殿が復元しまして、その落成記念祝賀会が、記念式典がございます。その他も結構でありますけれども、御参考までにこの三つを一応御検討いただいて、ぜひお願いをいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  246. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ありがとうございます。  五月十五日は御承知のように東京でも米国から副大統領も見えまして式典をいたしたいと考えておりますが、実は私が思っておりますのは、先ほども申しましたような幾つか懸案をいただいておるわけでございまして、それが、年金にいたしましても、今までの年金の法律の中では、厚生大臣がいろいろ御苦労をしていただいておるのでございますけれども、うまい答えが出ませんし、マラリアのこともまだ事実関係も調査が進んでおりませんし、これがほかのことでございましたらもう一度うもこれはやりようがございませんと申し上げたいところなんですが、沖縄の方ですから何とかならないかなというのでみんな、関係者一同いろいろ苦労しておるところでございます。正直を申しますと。  ですから、そういうことでも少し整いますと伺いましても伺う方の立場もよろしいんですけれども、なかなか問題が片づかないものでございますので、それを実はいろいろに苦労をただいまいたしておるところで、お察しをいただきたいと思います。
  247. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大変失礼と思いますが、皆さんのお願いを込めて握手をさせていただきたいと思います。  ありがとうございます。  次に、社会党のカンボジア調査団が、UNTACのサドリ特別代表代理と会談したところ、平和維持軍の中でも、兵たん、工兵、通信輸送医療部門であれば文民組織による代替が可能であり、即応性、完全装備、安全性さえ確保できればよいとの回答を得たと聞きます。政府は、カンボジアのシアヌークSNC議長やフン・セン・プノンペン政府首相自衛隊UNTAC軍事部門への参加を歓迎する発言をしたことを理由に、もはや非軍事、民生、文民によるカンボジア貢献は無用であるかのような論理を展開し続けていますが、国連の側もPKFへの自衛隊参加だけが日本PKO協力であるという立場をとっているわけではございません。  それにもかかわらず、政府はなぜ、PKO法案が成立しなくては文民の派遣ができないと言い張り、今すぐにでもできる貢献までもやろうとしないのでありましょうか。もはや文民による国際貢献は意味がないのでありましょうか。宮澤総理は今のことに関していかがお考えでしょうか、お尋ねします。
  248. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは昨日以来何度もお答えを申し上げておるところでございますけれども、財政的な貢献も決して、これは約税者の負担でやることでございますから軽々しく考えていいことではございませんけれども、やはりそれなりに、我々なりに憲法の許される範囲で汗を流して、他の国々の人々と一緒に国連平和維持活動協力をすべきではないか、こう考えておりまして、しかも平和維持協力活動というものは、実はかなり専門的な組織的な、また地域によりましてはいわゆるロジスティックスの面をちゃんといたしませんとなかなか簡単でないというような面を持っておりますものでございますから、このような法案を御審議願っておるわけでございます。
  249. 下条進一郎

    委員長下条進一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、来る十一日午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会