○
国務大臣(
渡辺美智雄君) これも一言で言えば全くそのとおりで終わってしまうわけでございますが、それでは余りそっけない話でございますから多少つけ加えさせていただきます。
私は、あの戦争の被害というか、直接
日本と戦ったというような
人たちについては
日本の軍隊に対する恐怖感がある、これは事実なんです。したがいまして、今の
日本の
自衛隊と昔の軍隊と同じように思っている人が非常に多い、これも事実でございます。
しかしながら、よく話をしてみるとわかるんですね。例えば、シンガポールの例を見ましても、新聞等でこれは再三出ておることですから私が言ったって差し支えないと思いますが、リー・クアンユーさんなどは、最初は消極的な、否定的な
発言がやや多かった。ところがこの間、私は飯を食いながら話をしたんですが、もう全く変わっておりまして、
日本が出したってそれは当然でしょう、おつき合いですからと、そういうふうに変わっているんですね。
スハルトさんも同じ。最初のうちは、ペルシャ湾のころはともかく我が国は海外に出兵はしないんだというようなことを言っておりました。しかし、その後になって、それでは
UNTACには出兵はしないのかと言ったら、あれは戦争ではないし憲法には抵触しないと。あそこも海外には兵隊を出さないという憲法があるらしいんですな、私は詳しく知らぬけれども。それには抵触はしないということでいち早く出すことにした。
私がゴー・チョクトン・シンガポール
首相と会って話をしたときも、彼は最初は海外に
日本が兵隊を出すことについて、これは非常に言葉を気をつけなければならないセンシティブな問題でありまして、特に年輩者に心配する人がいるということを言っていました。しかし、だんだん話をしていけば、それはやはり
日本が自分で
カンボジア和平会議を主催したりいろんなことをやっておって、いざそれじゃ平和の実現というときになったら何もやらぬというのでは引っ込みつかぬでしょう、
日本が出すのは仕方がないというふうな話が、だんだんに時間がたてば出すべきだ、こうなっているんです。だから、やはり誤解に基づくところがかなりあることも事実でございます。
したがって、
日本の
自衛隊というものはいわゆる外国の軍隊と違うんだ。しかし、みんな
自衛隊なんて言ったってわからないです、これは。やっぱりアーミーはアーミー、ネービーはネービーなんであって、海上
自衛隊と言うのは
日本ぐらいのものでありまして、やはり海軍とか陸軍とか空軍とか言った方が世界には共通して通じるんです、実際のところは。しかしながら、我々は憲法上海外に武力行使を目的としてやることはやらないんですということをよく話すということが非常に大切である。
だから、私が再三言うように、ペルシャ湾に出ていったときの掃海艇のことをひとつ考えたらいいじゃないですか。あれは
自衛隊法違反だとか、それは理屈があるんです、言う方には。もともと
自衛隊法をつくったときに、それはインド洋の方まで
自衛隊の兵隊が行くことを想定してつくったかという理屈は
一つあるでしょう。それは私は一理あると思う。しかしながら、
現実の問題として、
自衛隊法をつくったときはそう考えていたかどうか知らぬけれども、
現実には掃海艇は出せることになっておる。やっぱり時が違えば解釈も多少違ってくるのは、これは仕方がないことなんですね。
そういうようなことで、ペルシャ湾まで掃海艇が出動をいたしましたが、随分このときも、領海内に入るんですから、例えばあそこの領海内へも入って結構ですと。領海内まで入る。領海、領空、領土というのは同じ主権の及ぶところなんです、これはみんな。しかし、そこに入っても結構ですと相手国の了解があって、そしてそこでほかの
ドイツとかアメリカとかフランスとかみんなで探したけれども見つからなかった部分を、非常に難しいものを後から行っても三十数個も探した、爆破した。そういうようなことで、これは結果的にはえらい評価を受けているんですよ。一兆何千億払った方は足りないとか少ないとか遅いとかいろいろ言われたけれども、しかし遅く行っても、掃海艇が行ったときに、人が見つけなかったものをちゃんと見つけて航海を安全にしてやったということは事実なんですから。
だから、出るときは反対した人も、帰ってきたときはみんな拍手した。それでも反対する人は、数のうちですからいますよ、これはどこの国へ行ったって。一〇〇%というわけにはいかないわけだから。それと同じようなことなんだから、今回もやはり法案を通してもらって、それでその
PKO活動に
参加をする。やってみれば、今テレビ時代だからテレビでよく見れば、何だ、あんなことか、やって当たり前じゃないか、ほかの軍隊はみんなやっているんだから、そういうことになるんですよ。
しかし、そんなことはないと言う人もいますよ、それはいつまでたっても。どこの国だっているんだから。しかし、大多数の国民が納得できればそれでいいんじゃないか。それによって国際的にももっともだと思うんですから。それがやはり国際的
日本の責任である。難しい話じゃないんですね、何もこれは。反対だ反対だと言うなら理屈は何ぼでもつきますし、まあ
渡辺の言うのは本当だなと思えば大体そうなってしまうし、そんなところじゃないか、私はそう思っているんです。