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針生雄吉君 しかし、このたびの
改正案においては、第一条の二に、
医療の「
内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。」、「疾病の予防」という
言葉が入っておるわけであります。つまり、
医療の
理念、
医療の概念の
一つとして「疾病の予防」というものを明記している、こういうことがあるわけです。私はこれを評価するものでございます。
さらに
政府は、さまざまな形態があるし、正確を期せないというような理由ではございましょうけれ
ども、
国民医療費の推計に当たっては、依然として疾病の治療に要する費用を中心とするというふうに、今御答弁にありましたように、疾病の予防にかかわる費用を健康保険の適用外だという理由から
国民医療費の中に入れようとはしていない実態であるわけであります。
特に、この傾向は東洋医学、漢方医学の
医療への応用
分野であります東洋医学的な治療、漢方医学的な治療の
分野において顕著であると思います。そもそも東洋医学、漢方医学というものは未病を治す、いまだ病にならないものを治すという考え方に立って、疾病の予防の
分野にも極めて大きな威力を発揮する医学であるわけでありますのであるにもかかわらず、
政府が東洋医学療法、漢方医学療法の大部分を健康保険の適用外として
国民大衆にその大きな恩恵を受けさせまいとしているように思われる。そんなことはないとはおっしゃるんでしょうけれ
ども、そういう態度は極めて遺憾であり、納得できないものであります。
こういった従来からの
政府の姿勢は、このたびの
医療法改正の中で示している
医療の「
内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。」という条項に自己矛盾、反しているのみならず、既に健康保険法の第二十三条、これは我が党内では高桑法と言っている条文でございますけれ
ども、第二十三条にも反する矛盾点であります。すなわち、健康保険法の第二十三条では「健康教育、健康
相談、健康診査、被保険者及其ノ被扶養者ノ療養ノ為必要ナル費用二係ル資金ノ貸付其ノ他ノ被保険者等ノ健康ノ保持増進若ハ被保険者等ノ疾病苦ハ負傷ノ療養ノ為必要ナル
施設ヲ為シ又ハ比等二必要ナル費用ノ支出ヲ為スコトヲ得」と規定しているわけであります。要するに健康保険であっても健康の保持、増進のために健康教育、健康診査等の
分野でも健康保険からの費用の支出を認めているというふうに規定をしているわけでありまして、この条項にも反しているように私は思われるのであります。
この点については特にコメントはお求めしないつもりでございます。
また、しばしば
指摘されておりますように、現在も漢方生薬製剤は健康保険の適用になっているわけでありますけれ
ども、現在よりもさらに多くの漢方生薬製剤に健康保険を適用すべきであるという声は非常に大きいわけであります。
大臣にもお考えいただきたいんでありますけれ
ども、さらに敷衍して言えば、このような東洋医学、漢方医学に対する、無
認識とは言いませんけれ
ども、あるいは意識的かどうかもはっきりしませんけれ
ども、いずれにしても東洋医学、漢方医学に対するこのような差別というものは、大上段に構えれば、憲法で保障されている基本的人権を追求する権利の侵害であると言えるのではないか。すなわち生命、自由及び幸福追求の権利、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、学問の自由を追求する権利の侵害にもなりかねないと思うのであります。WHOを初め、全世界の医学
関係者がこの東洋の英知のエッセンスの
一つである東洋医学、漢方医学に注目しているという世界的な流れも無視することはできないと思います。
昨年もお示ししたのでありますけれ
ども、WHOの中嶋事務
局長が一九九〇年に行った講演の一節を御
紹介します。中嶋事務
局長は、
複合製剤あるいは鍼灸の総合的治療方法につ
いては、数千年来の伝統的な
システムが既に成
立しているのであるから、この
システムを有効
かつ安全に用いるということが至上の問題であ
り、
政府の責任でもある。という見解を述べておられます。
あるいは今喫緊の話題になっております
エイズ治療薬の開発にしても、
一つの研究所に百億、二百億の研究費を出すよりは、みんなで集まって一千、二千億の開発費用をかけようじゃないかという、そういう構想もあるやに聞いておりますけれ
ども、そういう行き方は当然必要でありますし、推進されなければならないと思います。現在我々が既に人類の英知の結晶として持っている東洋医学あるいは漢方医学の中にそういう
エイズ治療のかぎというものがあるのだということを、詳細は省きますけれ
ども、主張しておきたい、そういう眼もぜひ向けていただきたいということを強調しておきたいと思います。
せっかくでありますので、
厚生大臣の御見解もお伺いしておきたいと思いますので、いかがでございましょうか。