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参考人(板山賢治君)
参考の
意見を申し述べます機会を与えていただきましたことを大変光栄に存じます。
私は、今回の二つの
法律の改正案につきまして、全面的にこれを支持し、そして早急に御審議の上成立を期待する
立場から、所感の一端を申し上げてみたいと
思います。
私
ども社会
福祉に従事します
全国の関係者約八十万人という
立場に立ってその成立を御期待申し上げたいと思うのでありますが、この八十万人という
人々は、
全国七十七種類五万一千カ所余りの社会
福祉施設で働いております約六十二万人の人たち、そして三千二百五十市町村で働いております四万人余りのホームヘルパー、さらには法人経営者など地域
福祉の担い手としての三千三百六十六市町村社会
福祉協議会などで働いております
人々、合わせて八十万人という数であります。
これらの
人々は、今、
坂上先生からもお話がありましたように、国民の暮らしとそして命と人権を守るために、よりよい幸せを守るために一生懸命働いておるわけでありますが、長い間なかなかにその働く
条件あるいは
養成、採用その他につきまして十分な状況に置かれておりませんでした。ただ、
施設運営につきましては、公的な財政措置、措置費というお金でその運営が賄われるという基本的な
条件がありましたので、国の行財政の状況等でその実態というのが左右されるという
現実にあります。
今お話がありましたように、人の命を大切にし、そして人の幸せを守るという社会
福祉の活動は、新しい
時代を迎えて、今、二十一世紀への対応も含めて極めて重要な段階に到達しております。社会
福祉は人である、人の生活をめぐる諸問題に対しまして人の手を通して必要なサービスを提供する、これが社会
福祉の本質であるということに着目されまして、今回の二法の改正が政策
課題として登場したことを大変に私
どもは喜んでおるのであります。
この人の生活をめぐる諸問題への対応でありますが、その対象とされるサービスを必要とする
人々は、寝たきりのお年寄りでありましたり、重度の障害者でありましたり、あるいは保護者を持たない
子供たち、あるいは精神的、身体的、環境的な理由で通常の生活を営むことに大変困難な
人々でありまして、その数は私の推計によりますと一千三百万人ぐらいになる。国民の一割を超える
人々がそのような状況にあるというふうにとらえておるわけでありますが、高齢社会への進捗の中で、要介護高齢者や重度障害者はますます増大をし、そして対象者の意識も変化し、さらには高学歴社会、成熟社会を迎える中で、新しい自立生活を求める
人々の動きや、よりよい生活を求めるそんな動きの中で、社会
福祉の任務、取り組む
人々の質と量とが問われるようになってきております。
恐らく、厚生省が二十一世紀社会に対応するためにということでおつくりになりましたゴールドプラン、このゴールドプランの進行の中で新たに必要とされる
人々も四十万人というふうに言われておるわけであります。
施設対策なり在宅サービスを担うために新たに必要とする
人々がこの十年間に四十万人ぐらい得られなければいけないというような数字も出ておるわけであります。先ほど八十万人と申しました
人々は、いずれ十年後には百二十万という量的な拡大も見なければいけない、そんな状況の中で今回この法改正が計画されましたことはまさに時宜を得たものだ、このように思うのであります。
最近におきます社会
福祉の現場の人をめぐる問題をちょっと御紹介を申し上げておきたいと
思います。
これは
全国的な
調査あるいは一部の都道府県等の
調査から得たものでありますが、
全国に五万を超えます社会
福祉施設がありますが、最近その三〇%余りが職員を得ることができない、欠員という状況の中で苦労をいたしておるわけであります。特に重度の介護
施設であります特別養護老人ホーム、身体障害者の療護
施設、一部都市におきます
保育所などで
人手不足が強く叫ばれております。
職種の面では寮母、保母そして
看護婦さん、さらにセラピストと言われる療法士などの人手が足りない、こんな状況が強く訴えられている状況にあります。また、社会
福祉施設経営者の声を聞きますと、今後の職員採用につきまして見通しが暗い、大変厳しい状況であるという
人々が七五%に達しておるわけであります。
それでは、
人材確保のために何が大切なのかということを問うてみますと、
一つはやはり
給与、
労働条件の
改善が大切である。宿直を必要とする、
夜勤を必要とする状況、これは
看護婦も同様でありますけれ
ども、介護を要します老人ホーム等はまさにその状況が同一の状況に置かれているわけでありまして、そうした中で努力をいたしますためには、勤務時間あるいは職員の配置基準、そういったことを通して、休みもとれる、ほどほどに
給与もと、こういうふうな
希望が強いわけであります。勤務時間の軽減というものも大切であるということを言っておる人たちが四分の一ぐらいおるわけであります。
さらに、社会
福祉の
職場のイメージアップとか、あるいは
養成大学等との連携を通して就労体制をしっかりとつくらなければいけない、あるいは結婚をしてやめておる
人々の再開発といいましょうか、研修体制などで新たに参加をしてもらう努力も必要であるという声も強いのであります。今回の法改正がこういった問題に対して手を打たれるというその方向を示されておりますことに強い期待を持っておるものであります。
特に、最近におきまして社会
福祉施設あるいは在宅
福祉の現場におきまして、その
中心になります
施設長でありますとか主任の指導員でありますとか主任の寮母さん、主任ヘルパーなど、いわゆるキーパーソンと言われます
人々に対します
専門的な資格、理論、
技術、そういった
レベルアップが強く求められている状況にあります。これはまた増大する対象者の人たちのために
チームプレーでもって対応しようということが強く主張されますし、人手を
確保するためには朝、昼、夜、そういった状況の中で、パートな
ども含めて多様な就業形態を必要とするという現場の実態もあります。しかし、絶えずその
中心はお年寄りや障害者、
子供たちの人格を尊重し、その問題に対応するために
専門的な勉強をしたキーパーソンが必要であるということを忘れてはいけないのでありまして、これらの
人々の
確保もまた大切である、このように言われておるのであります。
しかしながら、
福祉系大学、現在七十三校ほどありますけれ
ども、八千人の卒業生があるといいますけれ
ども、その半数を超える
人々が、せっかく激しい競争試験をパスして
福祉の勉強をしてくれた人たちが
福祉以外の
職場に
就職をしてしまうという
現実があります。また、保母の
養成短期大学が二百校近くあるのでありますが、その二万八千人の卒業生の中で四三%に及ぶ
人々が
保育以外の
職場に流れていってしまうという
現実を私たちは厳しく見直さなければいけないと思うのであります。
小中学生などは将来何になりたいと聞くと、保母さん、幼稚園の
先生と答えてくれるのであります。そしてまた親も
子供たちが将来なってほしい
仕事は何かといいますと、保母さんなどはいいなとおっしゃるのでありますが、だんだん成長して大学卒業するときには他の
職場に移っていくという
現実は、
保育や社会
福祉の現場への理解、認識の不十分さもありますが、受けとめる体制の不十分さをも物語っているように思えてなりません。
また、民間
福祉施設、
全国で今二十三万人ほどおるのでありますが、一年で三万人を超える
人々が離職をしているという事実、しかもその
退職者の年齢は三十四、五歳、
平均勤続年限が五年ぐらいでやめていくという事実を私たちもまた見直していきたいものだと思っておるわけであります。この若い
人々が
退職していくという事実はまことに残念でありますけれ
ども、同時に
福祉の現場が男子一生の
職場、時に
女子一生の
職場でないという声すらも今聞くのであります。もちろん、一法人一
施設というふうな零細事業とでもいうべき社会
福祉法人の実態を考えますと、将来性、ポストの問題、人事
異動、そんなことも含めて大変複雑な状況があります。これの解決が必要でありますけれ
ども、こうしたものへの対応を急がなければいけないというふうに思っておるわけであります。
私
ども社会
福祉関係者もこうした実態と
課題というものをとらえまして、実はここ数年来一生懸命取り組んで努力をしてまいりました。お
手元に小冊子をお配りをいたしております。「
福祉従事者
確保に関する緊急提言」、この一ページの一番下に載せてありますように、私たちはこの緊急提言の中で、社会
福祉法人等
施設を経営し社会
福祉事業を経営する者が
福祉従事者の勤務
条件改善への熱意を持って取り組まなければいけない、そのために「勤務
条件等
改善目標・十か条」というのを定めました。これは後ほどごらんをいただきたいと
思いますが、昨年の十二月、二年余りの検討を通して、社会
福祉事業経営者自身が反省をし、そして近代化への努力をしなければいけないことを幾つかみずからの反省を込めて取り上げております。
第二は、社会
福祉法人等の関係者が共同して福利厚生事業や職員の募集、研修などに取り組まなければいけない、そんなことをみずからの提案として関係者にぶち当てたものであります。
そして
最後に、こうした従事者の勤務
条件等を
改善し、その
確保を
促進するためには、
法律面での整備や、国や地方自治体の各種施策の御努力をいただきたい、こういうふうにつくり上げているものでございまして、今社会
福祉の現場が直面しております実態の一端をごらんいただけるのではないかと、御
参考に供したのであります。
さて、今回の法改正でありますが、
社会福祉事業法の改正の中で基本指針を国がつくられ、社会
福祉事業経営者等にその実施を指導し指示していくという、こういうことがあります。これは私
どもがつくりました緊急提言の十カ条に沿うものでありまして、私
ども関係者も一生懸命その実現に向けて努力をしていきたいと
思いますが、この基本指針の内容が
法律上はまだ明確でありません。今後の検討に当たられましては、民間社会
福祉関係者の実態をしっかりととらえていただきまして、関係者の
意見も聞きながらお決めをいただきたいものだ、このように思うのであります。
また、
施設経営というのは、先ほど申しましたように公費に大きく依存しております。この措置費等を含む財政的な裏づけにつきまして十分な配慮が必要ではないかと思うのであります。
また、
福祉人材センターの規定がありまして、中央、地方に設置することはまことに適切でありまして、これを大いに歓迎をいたしますが一地方センターの場合、やはり人材を
確保しますと同時に、その
レベルアップのための研修部門でありますとか情報あるいは経営指導といった部門の一体性を
確保した形でこの人材センターの実現を図っていただきたいと思うのであります。都道府県等に対します指導を十分に含みながら考えていただきたいものだと思っております。
福利厚生事業の充実につきましてもまことに適切でありまして、小規模の社会
福祉法人等が共同事業としてこれを行う、そのきっかけをおつくりいただくことは大変大事なことでありますので、歓迎をいたしております。
なお、社会
福祉施設職員の
退職手当共済の問題につきましても、範囲の拡大は今後さらに御検討の上、ヘルパー等介助従事者にとどまらないで幅広く地域
福祉を支える
人々をも対象に含めていただきたいものだと思っています。
なお二つだけつけ加えます。
一つは、社会
福祉従事者の八五%、約六十万人は女性であります。今後、二十一世紀に向けても。ゴールドプランの進行等、女性の力に頼るところが大きゅうございます。育児休業問題でありますとか介護休暇の問題でありますとか、
保育所の問題等関連施策が十分にこれにタイアップいたしませんと、この法改正をもってしてだけでは
人材確保対策として不十分だと思うのであります。女性一生の
職場に社会
福祉の現場がなりますように、ぜひ内容充実をお考えいただきたいと思うのであります。
第二に、社会
福祉施設等の経営母体は一法人一
施設というふうなことに象徴されますように、まことに財政的にも不備な、極めて脆弱な状況にあります。共同事業として取り組む福利厚生問題などを含めましてこの財政的な裏づけ、そういったものが相伴いませんと、仏をつくって魂入れずになるのではないかという危惧をいたしておるわけであります。
法改正が一日も早く実現をし、二十一世紀
福祉社会へ向けての
人材確保のために基盤整備のスタートになっていただきますことを心からお願いをいたしまして終わりたいと
思います。
ありがとうございました。