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説明員(植村昭三君)
お答えいたします。
まず、御
質問の第一点でございますが、ガットにおける知的所有権の交渉の
状況でございます。御
案内のように、ガットにおきましては五年来の交渉を続けてきておるわけでございますが、その
一つの交渉項目といたしまして、貿易に歪曲あるいは障害をもたらす知的所有権の問題につきまして、いわゆるTRIP交渉という名前で呼んでおりますが、五年来の交渉を続けてまいっております。このTRIP交渉におきましては、知的所有権の保護基準を定めるスタンダード、例えば特許期間であるとか権利の
内容であるとか、そういった保護規範が大きな
一つの柱、それから知的所有権の行使のためのエンフォースメント、これは水際措置と言いますが、こういった二つ目の柱等につきまして国際ルールを作成するための
検討が行われてきたところでございます。
現状でございますが、御
案内のように、一昨年の末のブラッセルのいわゆる閣僚
会議におきましてはついに最終合意に至らなかったわけでございますが、九一年、すなわち昨年の末、十二月に知的所有権
分野を含む包括的な最終合意案が提示されるに至ったわけでございまして、現在最終的な政治的合意を目指しまして調整作業が進められているところでございます。
我が国といたしましても、このガットでの知的所有権交渉が実りある
成果を得られるように引き続き努力してまいる所存でございます。
それから、第二番目と第三番目をまとめて
お答えしたいと思います。
先生御
指摘の
事例、すなわちミノルタあるいはセガの二つの例でございますが、最近特許係争事件が生じております。これは一義的には
民間企業間の問題であるとも言えますが、これらの
民間企業の係争事件の背景の一因といたしまして、
先生御
指摘の
日米間を含みます各国の特許制度あるいは運用、そういったものが相違しているということも挙げられるのではないかと思います。
それで、先進国間の特許制度あるいは運用というのを比較してみますと、特に日欧、それと
アメリカとの対比で考えますといろいろ基本的な点で差がございます。例えば、日欧では先に出願した人が特許を取得できる先願主義であるのに対しまして、
アメリカでは先に発明した人が特許を取得する先発明主義をとっております。これが
一つ。
それから、
アメリカでは特許期間の起算日、いつから特許期間を計算するかということでございますが、特許が付与された日から十七年とされております。これに対しまして、日欧におきましては出願日から、いわゆる上限と申しますか、二十年の縛りがかかっている、シーリングがかかっているということでございます。したがって、そのシーリングが
アメリカではないために、出願日から何十年も経過してしまった発明が、既に市場では陳腐化しているような時点で急遽特許になって、それから十七年も権利行使の
対象になるというような
事例も生じておりまして、しかもこれはまれではない
状況になっております。
そのほか、
アメリカでは、
日本、ヨーロッパにございますような特許出願後一定期間の後に自動的に公開するといった公開制度、こういったものもないというようなことでございます。それから、先ほどの事件にも
関係いたしますが、運用面で、例えば特許請求の
範囲、特許権の解釈も国によって異なっている、こういった
状況でございます。
こういった制度、運用面での差に基づきますいろいろな特許紛争が生じないように、国際的な特許制度の調和といったものが非常に重要だと我々考えておりますが、先ほどのガット等含めまして、WIPOという、これはジュネーブに本部がございますが、そこでの特許法の国際的な調和を目指した一連の取り組みに対しても当庁として積極的に取り組んでおるとこちでございます。
以上でございます。