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参考人(
佐田登志夫君) 私は、かつて
研究職でございまして、また現在
研究所の
研究運営のコーディネーションの責任を持っている、そういう
立場の人間として少し
考えを述べさせていただきたいと思います。
基礎研究を行っております。その中で、
研究者が異なった文化というようなものに接することによりまして
研究の進展上大きな発展、飛躍というんでしょうか、ブレークスルーというようなことが起こることがしばしばございます。そういう意味で、今回の
研究交流促進法の一部
改正によりまして
日本と
外国の
研究者との
交流が活性化する、また
国内でも官学と民間との
研究者の
交流が盛んになるというのは大変結構なことだと思って、心から賛同いたします。特に、民間の
研究者がたとえ
任期つきといいましても
国研の
研究に
参加できるという枠組みがつくられました意義は非常に大きいものがあると思います。
また、
国際共同研究の
成果につきまして諸
外国との間の
制度的な調和が今回図られるということですので、今後
国際共同研究をオルガナイズしていくという
立場にある人間として非常にオルガナイズしやすくなるということで、大変うれしく思っております。
それから、
国研の
研究施設について民間の
研究者の
使用条件が緩められるということは、同じ
研究施設でございましても違う人あるいは違う
立場の人が使いますとまた違う結果が出てまいります。そういうような意味からも大いに歓迎すべきことだと思うんですが、余り時間もないようでございますので二つだけ例を申し上げて理解を深めていただきたいと思うんです。
一つは、私
どもの
理事長の小田稔が、三十七歳のときに
アメリカのマサチューセッツ工科
大学のミーティングプロフェッサーでございました。そのときに、
研究グループのリーダーのロッシー教授から、おい稔、どうも空からエックス線が来ているようだぞというような話がありまして、それぞれのグループで、エックス線は雲や大気で通りませんので、ロケットにエックス線の検出器を乗せまして観測しました。その話があったのは六一年で、観測をやりましたのが六四年だそうですけれ
ども、六四年にどうも空からエックス線が来ているというのがわかった。
そうしますと、今度は曇り空のようにぼやっとエックス線が来るのか、特定の星からエックス線が来るのかというのが問題になります。そのときに、みんなでどうやったら望遠鏡で見えるような範囲内に場所を追い詰められるだろうかということを
考えたんですが、私
どもの小田稔が
考えましたのは、
日本に昔すだれがございましたが、窓際と廊下の反対側にあって、
先生、蚊帳もそうなんですが、こうやって見ますとしま目が見えます。そのしま目というのを小田稔が思い出しまして、よしこれでいこうと。金属でエックス線の通らないすだれを二つつくって、こうやってちょっとずらしますとしま目ができる。それでやると、星からだとすれば場所を追い詰められるというようなことで、それでやりましたところが、見事に成功して、カニ座の中の
一つの星から非常に強いエックス線が出ているというのがわかったわけでございます。ですから、それによりましてMITはエックス線天文学のセンター・オブ・エクセレンスだと。
ですから、そのときに小田
先生がいなければ、というのは、小田
先生の後ろにあったのは、すだれというのは
日本文化でございます。それがなければ、
アメリカ人には到底思いつかない。ロッシー教授は稔のすだれコリメーターということで言われているわけです。ですから、これはそういう意味でMITが
外国人を入れたというために大いに進歩したという、ブレークスルーがあったという例でございます。
それからもう
一つは、私
どもの
研究施設を
外部の人が使うとどういうことがあったかということですが、私
どもに谷畑主任
研究員という者がおりまして、原子核物理の専門家なんですが、そこにオハイオ
大学のボイドという教授がサバテイカルで、休暇でちょうど来ていた。私
どもにリングサイクロトロン、重イオンの加速装置があるんですが、それに不安定核の発生装置というのがついている。谷畑はそれについていろんな
実験をやっていたんですが、それがあるので、いろんな
研究ができないかとみんなに声をかけていました。
で、ボイドが来まして、何回も
議論しているうちに、その人は天文学の
実験物理の専門家なんですが、宇宙の開闢のビッグバンのときに数秒の間で現在あるような元素がほとんどできている。それがどうできているかというのはわからなかったんですが、おい、これを使うとできるかもしれないと。谷畑の方はそれをどう測定するかという技術、それからノウハウを持っているわけです。それで二人がこの間
実験をやりまして、ある種の元素結合が可能であるというようなことがありました。これも理研の
研究施設を
外部の人に貸していなかったらそういう
研究を恐らく我々の
研究者は
考えつかなかったという例でございます。
今のようなことで、ぜひ
研究交流促進法の
改正をしていただきたいと思っております。