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1992-05-27 第123回国会 衆議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月二十七日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 川崎 寛治君    理事 愛野興一郎君 理事 大野 功統君    理事 長勢 甚遠君 理事 三原 朝彦君    理事 岩田 順介君 理事 永井 孝信君    理事 河上 覃雄君       赤城 徳彦君    北村 直人君       小泉純一郎君    田澤 吉郎君       野呂田芳成君    林  義郎君       平田辰一郎君    平沼 赳夫君       森  英介君    岡崎 宏美君       沖田 正人君    川島  實君       五島 正規君    鈴木  久君       井上 義久君    中村  巖君       金子 満広君    伊藤 英成君       高木 義明君    徳田 虎雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 近藤 鉄雄君  出席政府委員         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働大臣官房審 岡山  茂君         議官         労働省労働基準 佐藤 勝美君         局長         労働省職業能力 松本 邦宏君         開発局長  委員外出席者         法務省入国管理 大澤  久君         局政策課長         国税庁長官官房 中井  省君         総務課長         通商産業省産業         政策局企業行動 生田 章一君         課産業労働企画         官         自治省財政局財 湊  和夫君         政課長         労働委員会調査 下野 一則君         室長     ————————————— 委員の異動 五月二十七日  辞任         補欠選任   齋藤 邦吉君     森  英介君   船田  元君     北村 直人君   池端 清一君     沖田 正人君   外口 玉子君     川島  實君   伊藤 英成君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   北村 直人君     船田  元君   森  英介君     齋藤 邦吉君   沖田 正人君     池端 清一君   川島  實君     外口 玉子君   高木 義明君     伊藤 英成君     ————————————— 五月二十五日  短時間労働者保護法制定に関する請願(藤原  房雄君紹介)(第二七〇九号)  パートタイム労働者に関する法の整備に関する  請願堀込征雄紹介)(第二七一〇号)  労災病院の全府県設置に関する請願遠藤登君  紹介)(第二七六七号)  同(岩村卯一郎紹介)(第二七六八号)  同(木村守男紹介)(第二七六九号)  同(丹羽雄哉紹介)(第二七七〇号)  同(船田元紹介)(第二七七一号)  同(保利耕輔君紹介)(第二七七二号)  同(小里貞利紹介)(第二八八八号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八八九号)  同(東力紹介)(第二八九〇号)  労災ナーシングホーム増設入居基準に関す  る請願遠藤登紹介)(第二七七三号)  同(岩村卯一郎紹介)(第二七七四号)  同(木村守男紹介)(第二七七五号)  同(丹羽雄哉紹介)(第二七七六号)  同(船田元紹介)(第二七七七号)  同(保利耕輔君紹介)(第二七七八号)  同(小里貞利紹介)(第二八九一号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八九二号)  同(東力紹介)(第二八九三号)  労災年金受給者遺族補償制度受給要件の改  善に関する請願遠藤登紹介)(第二七七九  号)  同(岩村卯一郎紹介)(第二七八〇号)  同(木村守男紹介)(第二七八一号)  同(丹羽雄哉紹介)(第二七八二号)  同(船田元紹介)(第二七八三号)  同(保利耕輔君紹介)(第二七八四号)  同(小里貞利紹介)(第二八九四号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八九五号)  同(東力紹介)(第二八九六号)  労災補償保険法等福祉制度改悪後退阻止  に関する請願遠藤登紹介)(第二七八五号  )  同(岩村卯一郎紹介)(第二七八六号)  同(木村守男紹介)(第二七八七号)  同(丹羽雄哉紹介)(第二七八八号)  同(船田元紹介)(第二七八九号)  同(保利耕輔君紹介)(第二七九〇号)  同(小里貞利紹介)(第二八九七号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八九八号)  同(東力紹介)(第二八九九号)  障害者雇用率引き上げ雇用完全実施職域  拡大及び指導強化に関する請願遠藤登君紹  介)(第二七九一号)  同(岩村卯一郎紹介)(第二七九二号)  同(木村守男紹介)(第二七九三号)  同(丹羽雄哉紹介)(第二七九四号)  同(船田元紹介)(第二七九五号)  同(保利耕輔君紹介)(第二七九六号)  同(小里貞利紹介)(第二九〇〇号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二九〇一号)  同(東力紹介)(第二九〇二号) 同月二十六日  労災病院の全府県設置に関する請願岩田順介  君紹介)(第三〇一〇号)  同(田邊國男紹介)(第三〇一一号)  同(三塚博紹介)(第三〇一二号)  同(森田一紹介)(第三〇一三号)  同(山中末治紹介)(第三〇八一号)  労災ナーシングホーム増設入居基準に関す  る請願岩田順介紹介)(第三〇一四号)  同(田邊國男紹介)(第三〇一五号)  同(三塚博紹介)(第三〇一六号)  同(森田一紹介)(第三〇一七号)  同(山中末治紹介)(第三〇八二号)  労災年金受給者遺族補償制度受給要件の改  善に関する請願岩田順介紹介)(第三〇一  八号)  同(田邊國男紹介)(第三〇一九号)  同(三塚博紹介)(第三〇二〇号)  同(森田一紹介)(第三〇二一号)  同(山中末治紹介)(第三〇八三号)  労災補償保険法等福祉制度改悪後退阻止  に関する請願岩田順介紹介)(第三〇二二  号)  同(田邊國男紹介)(第三〇二三号)  同(三塚博紹介)(第三〇二四号)  同(森田一紹介)(第三〇二五号)  同(山中末治紹介)(第三〇八四号)  障害者雇用率引き上げ雇用完全実施職域  拡大及び指導強化に関する請願岩田順介君  紹介)(第三〇二六号)  同(田邊國男紹介)(第三〇二七号)  同(三塚博紹介)(第三〇二八号)  同(森田一紹介)(第三〇二九号)  同(山中末治紹介)(第三〇八五号)  パートタイム労働者に関する法の整備に関する  請願木島日出夫紹介)(第三〇八〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  職業能力開発促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五八号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 川崎寛治

    川崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付職業能力開発促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沖田正人君。
  3. 沖田正人

    沖田委員 職業能力開発促進法の一部を改正する法律案質問を始めたいと思います。  初めに、技能者養成規程職業訓練法制定、そしてまた職業能力開発法と変化してきた経過と、なぜそのように変化してきたのか、時代的ニーズ、つまりその必要性、そして法律制定の変化がもたらした成果と効果はどのように評価をされるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  4. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 職業能力開発法制は、戦後の産業経済情勢あるいは雇用情勢の動向を反映いたしまして、逐次改善を図ってきたというふうに思っております。  戦後の職業能力開発制度は、まず昭和二十二年の労働基準法に基づきます技能者養成規程制定に始まりまして、近代的な技能労働者を確保する沈めに昭和三十三年に制定をされました職業訓練法で一応の体系化を見たというふうに思っております。  昭和四十四年には、いわゆる高度成長下技能労働者不足という事態に対応いたしまして、公共職業訓練施設整備を図るための改正を行ったわけでございますが、昭和五十三年には、公共民間一体となった職業訓練実施体制を確立いたしますために、養成訓練向上訓練能力開発訓練という三区分を設けまして訓練体系整備を図る、そのほか職業能力開発協会の設立などを内容とする改正を行ったわけでございます。  さらに、前回昭和六十年の改正では、民間の自主的な職業能力開発振興を図るという観点から、雇用する労働者に対して多様な職業能力開発の機会を確保すること、これを事業主の責務という形で決めまして、これに対して国及び都道府県からの援助、助成の施策を充実するというようなことによって、労働者の生涯にわたる職業能力開発促進するということにしたわけでございまして、名称職業能力開発促進法というふうに改めたわけでございます。  今回の改正では、その前回改正の趣旨をさらに発展をさせまして、特に地域職業能力開発の中核でございます公共職業訓練施設につきまして、単に職業訓練を実施するだけではなくて、その情報提供あるいは相談援助機能といったものを強化すること、あるいは在職労働者対象といたします技術革新等に対応した高度な職業訓練というものが実施できるというようなことを図りまして、中小企業事業主等が行う自主的な職業能力開発の一層の促進を図るということにいたしたい。そのほか、昭和五十三年の改正以来の三区分に基づきます訓練体系というものを再編いたしまして、多様な対象者に対して柔軟な公共職業訓練が推進できるような体制をとりたいということを考えているわけでございます。  今御説明いたしましたように、職業能力開発法制を数次にわたって改正をいたしてまいりましたけれども、それぞれの時代の要請に合わした改正であったと思っておりますし、また、これを受けて民間並びに公共ともそれぞれ努力をいたし、所要の成果を上げてきたというふうに我々は評価いたしております。
  5. 沖田正人

    沖田委員 特に今回の改正案の意義については特徴的なものがありますか、もう一度ひとつお尋ねいたします。
  6. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 先ほども申し上げましたように、地域中心である公共訓練施設につきましては、従来は訓練だけをやっていたわけでございますけれども、最近、事業主が自主的におやりになる訓練について、相談が大変参ります。カリキュラムはどうすればいいかとかあるいは講師などについての御相談もございますので、むしろそういう情報提供とか相談機能、そういったものを充実させたいということが一つはございます。  それからもう一つは、従来もやっていたわけでございますけれども、どちらかといえば養成中心型の訓練であったかと思いますけれども、今度は在職者に対する訓練あるいは高齢者女性に対する訓練、そういったものを充実させたいというようなことも考えておりまして、内容高度化あるいは対象者多様化に応じた訓練ができるようにしたい。そういうことで従来の訓練体系ももっと柔軟なものにしようということで改正を考えております。  そのほか、最近の技能軽視といいますか、若者の技能離れのようなものもございますので、一方では技能振興を図るような施策も考えたいと思っておりますし、あるいは外国からの日本における技能習得を得たいというような希望もございますので、公共訓練施設等についても一部そういった外国人に対する研修にも道を開くというようなことも改正中身として考えているわけでございます。
  7. 沖田正人

    沖田委員 このたびの改正案では、公共訓練重点なのか、それとも民間認定訓練を大切にしようとされるのか、また切り捨てようとされるのか、一体どちらなのか見解を率直にお伺いいたしたいと思うのであります。  予算的にいいますと、この五年間では認定訓練については大分予算的に減らされているように思うのですが、いかがでしょうか。
  8. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 労働省考え方といたしましては、我が国が経済発展をこれまで順当に遂げてきたという背景の中には、労働者職業能力開発が効果的に行われてきたということが挙げられると思いますけれども、特に、認定職業訓練を初めとする民間の自主的な職業能力開発というものの取り組みが基本にありまして、公共部門がこれをいわば側面的に支援するとともに、企業内で十分な職業能力開発を行うことが困難な中小企業労働者、そういった方々に対して公共職業訓練を実施するということでございまして、いわば官民一体取り組みというものがうまく行われてきたということが言えるのではないかというふうに思うわけでございまして、我々はそのどちらをより重視するということではなくて、認定訓練を初めとする民間の自主的な取り組み促進するための援助、支援を充実するということとニーズに対応した公共訓練を推進するということの双方を一つの歯車としてやっていきたいというふうに考えているわけでございます。  認定訓練の予算の減少の問題につきましては、これは認定訓練校内容訓練中身は実は少し変わっておりまして、認定訓練校自身が、従来の養成訓練中心から、むしろ成人訓練といいますか在職者中心訓練になってきておりますために、養成訓練というのは比較的長期でお金もかかりますけれども、在職者訓練というのは比較的短期でそういう意味では費用もかからないということで、重点がそういうふうに移ったということで費用は減ってきておりますけれども、訓練人数自体は、そういう意味では在職者訓練で非常にふえておるという状況でございます。
  9. 沖田正人

    沖田委員 非常に型どおりのお話でございます。そうおっしゃらなきゃならぬだろうと思いますが、切り捨てるとか軽視するとかいうようなことはおっしゃらないことはよくわかりますけれども、実態として認定訓練が粗末にされているという事実があるだろうと私は心配をいたします。したがって、あえてこういう質問をしているわけでありますので、その意味については御理解いただきたいと思います。  そこで、お伺いをするわけでありますけれども、技術技能とはどう違うのか、一体これをどのようにつかんでいらっしゃるか、具体的に説明をいただきたいと思います。
  10. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 我々行政をしていく場合でも技術技能の差というのを常に議論するわけでございますが、これは境界というのは必ずしも明確でないというのが正直なところでございますけれども、一応申し上げてみますと、技術と申しますのは、学術上の原理あるいは自然法則といったものを応用して、生産等に必要な理論あるいはノウハウといったものを定式化する能力ということでございまして、理論を知った上で、それを生産等に必要な理論あるいはノウハウに具体的につくり上げていく能力というふうに思っております。一方、技能といいますのは、技術によって定式化された理論ノウハウを具体化して、実際に生産等を行う能力ということであろうかと思っております。  ただ、生産のためには技術技能も両方が必要でございまして、そのどちらかがどうだということではないと思っております。これはやはり一体になって生産を支えていくものというふうに考えております。
  11. 沖田正人

    沖田委員 このことは少しく議論がありますから後で触れますけれども、養成訓練向上訓練能力開発訓練というものを今度やめてしまって、普適職業訓練高度職業訓練長期訓練短期訓練というふうに改正されなければならなかった経過とその必要性について、ひとつ特徴的に説明を願います。
  12. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 現在の養成訓練向上訓練能力開発訓練という区分につきましては、養成訓練というのは、要するに、新規学卒者等に対して、職業に必要な基礎的な技能を習得させる訓練だというふうに認識をされておるわけでございます。それから向上訓練については、既に相当程度技能を有している労働者、すなわち在職者に対して、その職業に必要な技能を追加的に学習させる訓練、それが向上だというふうに理解をされております。能力開発訓練について言いますと、これは離転職者に対して、離転職でございますから、新たな職業に必要な技能を習得させるための訓練だ、こういうふうに、いわば対象者別理解をされているというのが一般的な理解でございます。  しかし、実際にはこの区分が非常に硬直化しておりまして、例えば高年齢の離職者であるとかあるいは育児を終えて再就職しようというような場合には、従来ですと離転職者の扱いになりまして、自動的に能力開発訓練に一義的に分類をされたわけでございますけれども、今後の労働力尊重時代ということを考えますと、高齢者女性に求められますのは、基礎から新たな技能を身につける、今までの能力開発というのはそういうことで考えているわけでございますけれども、それよりはむしろ、従来積み上げられてきた能力向上させる向上訓練の方がよりふさわしいという感じがあるわけでございます。  そこで、そういった高齢者だとか女性というのは能力開発訓練で新しい訓練をやればいいんだという固定的な概念を打ち破ろうということでございまして、対象者別訓練区分を決めるのではなくて、新しい訓練体系では、むしろ訓練レベル訓練内容的に高度であるか一般的なものであるか、それから訓練期間がどうであるかということで、いわば内容別に明示をするということで、したがって、内容別の多様な訓練コースを設定しよう。こうすれば受講する側も自分の欲する内容に応じて実際には訓練が選択しやすくなるのではないかということでございまして、訓練をする側にとってもあるいは受ける側にとっても、固定的な概念をむしろ払拭して内容に応じた訓練が的確に受けられるというような形にしよう、こういうことでございます。
  13. 沖田正人

    沖田委員 どうもよくわからぬのですが、養成訓練向上訓練ではなぜ悪いのか、どういう不都合があるのか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。  現在、認定訓練を行っている団体の中では非常に不安を感じているわけであります。もう打ち切られてしまうのではないかという不安感を持っているわけでございます。用語を変えるというのならば、普通訓練向上訓練または先端技術訓練でいいのじゃないか、私はこう思うわけでありますが、見解を伺いたいと思います。  さらに、普通訓練高度訓練とはどう違うのか、この点も明らかにしていただきたいと思うのです。  先端技術訓練とはどのような内容を持っているのか、この点についてもひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。高度訓練とせずに先端技術訓練でいいのじゃないか、私はそう思いますが、ひとつ見解を伺いたいと思います。
  14. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今もちょっと申し上げましたけれども、例えば新たな職業に必要な技能を付与するという意味では、養成訓練も、全く技能のない人に付与するわけでございますから新たな職業に必要な技能になるわけでございますし、能力開発訓練も、新たな職業につく人に新たな技能を付与するという意味では、いわば同じ新たな技能付与ということになるわけでございます。問題は、要するにその程度の差があるだけではなかろうかと思っておりますが、しかし従来は、新卒は養成だ、離転職者は、同じ新規職業につくための新しい技能を付与する場合であっても、それは能力開発訓練だということで画一的にやっておりまして、それに伴って訓練期間も、養成なら二年だけれども能力開発は六カ月だよというような形で、画一的に決めておったわけでございます。それでは非常に柔軟性に欠けるということで、運用上はいろいろなバラエティーを実は取り入れているわけでございますが、そうしますと、養成だ、向上だ、能力開発だと言いながら、内容的には同じようなものがごちゃごちゃに行われているということで、むしろ混乱も生じている面もあったわけでございます。  そこで、対象別とかなんかではなくて、むしろ内容を明示することによって、実際に自分が受けたい訓練はどのレベル訓練なのだ、期間的にはどのレベルのものが望ましいということをはっきり言って、私はこれが受けたいからこれを受けるのです、こういう形にした方がむしろはっきりするのではないかということを考えているわけでございます。  ただ、先生御心配のように、長年そういった名称でやってきておりますので、名前を変えることについての若干のトラブルといいますか、そういったものが予想されるわけでございますので、その点については十分配慮していきたいと思っております。  それから、普通と高度との関係でございますけれども、高度職業訓練といいますのは、技能者のうちでいわゆる高度技能者養成するための訓練というものを考えておりまして、具体的に申しますと、現在、職業訓練短期大学校でありますとか高度技能開発センターで行っております職業訓練程度に相当するものを考えております。それから普通職業訓練と申しますのは、高度技能者以外の技能者育成ということでございまして、具体的に言えば、都道府県職業訓練校及び技能開発センターで行っておる職業訓練程度というものを考えているわけでございます。  なお、高度技能者と申しますのは、先ほど言いました生産理論ノウハウ、いわゆる技術でございますが、そういったものを十分理解して、これを、現場を踏まえつつ個々の具体的なニーズに応じて応用し、生産に結びつける者、いわば生産仕様書も作成できるし、なおかつ実際の生産もできる人、つまり技術技能を結びつけられる人、こういうことでイメージをしているわけでございます。  先端的な技術訓練だけが高度職業訓練ではなくて、我々は、伝統的な技能の分野でございましても、先ほど言いましたように生産理論ノウハウを具体的に生産に結びつけるということでございますから、例えば新しい工法を編み出すような技能を身につけるというのは、ここで言う高度な職業訓練に該当するものだというふうに理解をしているわけでございます。
  15. 沖田正人

    沖田委員 少し例を引いてお尋ねをいたしますが、日光の東照宮をつくったとされている左甚五郎と現在の一級建築士の皆さんと、どちらが普通でどちらが高度に技術技能を有していると考えられるか、先端技術を持っていると考えられるのか、この辺をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  16. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 左甚五郎さんの技術というのが具体的にどうであったのか、私もよくわかりませんので評価はいたしかねますけれども、我々が考えております技能士というのは、どちらかといえば、現場の実際の生産をする上で高度な能力を発揮する人という感じでとらまえているわけでございます。
  17. 沖田正人

    沖田委員 最近、大きなビルの建築などでは、床面のコンクリートの打設の仕上げについてはロボットが採用されて、床面は鏡のように仕上げられていると聞いているわけであります。昔、伊豆の長八という左官屋の名人上手がおられたようでありますけれども、その腕とわざは、ロボットと競争したらどちらが普通でどちらが高い技術技能を持っていたのか、これをどういうふうにお考えになるか、その辺のところをひとつ判定を示していただきたい。
  18. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 私も技術屋ではございませんので具体的な話になるとちょっと苦手でございますけれども、考え方からいいますと、いわゆる非常に高度なテクニックであっても、単にそれを現場で忠実に実行して生産物をつくり出すだけの人というのは、いわゆる高度技能者という範疇では考えてないわけでございまして、むしろその中で、例えば新しい工法を工夫する能力だとかあるいは新しい素材を開発するとか、そういったいわば可能性を持つような基礎的な訓練を受けている人、これが高度技能者、そういった訓練をするのを高度訓練、こういうように考えているわけでございます。
  19. 沖田正人

    沖田委員 もう一つ具体的に伺います。  墨つぼと差し金、のこぎりやかんな、のみやちょうな、トンカチなどを使ってつくり上げた五重の塔だとか薬師寺の西塔とか東塔という建築と、コンピューターやロボツトなど近代建築のあらゆる機器を使って建てられた建築物、それぞれに携わった大工の棟梁や一級建築士や有資格の技術者の皆さん、どちらが普通でどちらが高度というふうに判定をされるか。今お話しのように、理論ノウハウを生み出していくとするならば、いわゆる薬師寺の西塔などはコンピュー夕ーでは測定できない、計測できないような建物ですね。したがって、どういうふうにお考えになりますか。技能というものを軽視されるのですか。
  20. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 私も薬師寺が具体的にどういう形で形成されたか存じませんが、推測いたしますと、薬師寺をおつくりになった場合にも、いろいろなレベル技能者がおられただろうと思うのです。単に上級の技能者の指示に従って忠実に作業をされただけの技能者と、恐らく薬師寺をつくるについては新しい工法とかいろいろな工夫をされた技能者もおられると思います。そういう新しい工夫を取り入れる技能を持った方は、私どもの言う高度技能者の範疇でございます。ただ高度技能者のいわば指示に従って忠実にその作業を行うだけの技能者、これはいわゆる普通技能者というふうに考えているわけでございます。  したがって、コンピューターの技術を駆使する場合でありましても、単に従来開発されたコンピューターをそのとおりに、いわば忠実にこなして物事をつくり上げていくだけというのは普通技能でございまして、コンピューターを駆使しながら新しい工法を工夫するとか、そういったものはむしろ高度の範疇で考えているわけでございます。
  21. 沖田正人

    沖田委員 大分答弁が苦しいように思いますが、私の耳がおかしいのかもしれませんけれども、私は今のお話はよくわかりません。  申し上げたいのは、普通訓練高度訓練という用語の使い方については、聞く側からすれば差別的な語感を与えているのではないかということを実は心配しているわけであります。用語についてやはり再考していただきたい、こう思うのです。ひとつ見解をお示しいただきたい、このように思います。  通達や運用面でいろいろ配慮して適切に考えるということだと思いますけれども、その辺のこともあわせてひとつ回答をお願いいたしたいと思います。
  22. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、普適職業訓練高度職業訓練といいますのは、提供する訓練内容が違うということでございまして、一方がすぐれており一方が劣っておる、こういう優劣を言っているつもりはさらさらございません。  実は現行法の中でも職業訓練短期大学校の業務といたしまして「将来高度の技能を有する労働者となるために必要な基礎的な技能を習得させるための訓練課程の養成訓練」、こういう言葉遣いをしておりまして、現行法においても既に使われている言葉ではございます。  しかし、先生御指摘のように、一方が非常にすぐれており一方が劣っているというような誤解を生ずることのないように、これは運用面では十分注意してまいりたいと思いますし、御指摘のように通達の中でもその点は明確にさせたいというふうに考えております。
  23. 沖田正人

    沖田委員 第八条の例示の削除というものが、現在の訓練校にとりましては制度の廃止ではないかと受け取られている向きがあるわけでありまして、実態はどうなっているか、この点をひとつ伺いたいと思います。  養成訓練という用語が法律や施行令、施行規則から消えていくというふうに聞いておりますけれども、この辺のところは、通達の中で養成訓練職業訓練などの用語も十分残しながら、運用はある程度自由に伸び伸びとやれるような対応というものを考えていただけないか、こう思うのですが、この辺についての所見を伺いたいと思います。
  24. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 法律上、例示を落としますけれども、新しい訓練体系のもとで実際の課程を設ける際にどういう名称をつけるかどうかということについては、今後検討していくことになろうかと思います。  ただ、今回の訓練体系の再編といいますのは、認定訓練の実施の面でも非常に柔軟な対応をしていただきたいという気持ちでつくっているものでございますから、それがかえって今までの訓練の支障になるようなことになっては元も子もございませんので、そういう点については十分配慮していきたいと思っておりますし、認定訓練校で認定を受けた訓練について、当該訓練校で今いわゆる養成訓練としてやっておられる内容のものが消えるわけではございませんから、養成訓練という名前をお使いになってもそれは差し支えないというふうに考えておりまして、その点についても通達等の中で明示をいたしたいというふうに思います。
  25. 沖田正人

    沖田委員 時間がないようでありますから簡明にお答えいただきたいと思います。  全国で公共訓練校や認定訓練校の数、生徒数の推移などはこの五年間でどうなっているか、お答えをいただきたいと思うのです。予算的には一体どういう推移を示しているのか。公共訓練認定訓練と比較いたしまして財政的な措置はどのようになっているか、この辺をひとつお伺いしたいと思います。  冒頭の質問の中で少し私も触れましたが、やはり問題は、私の言いたいのは、補助金や助成金などはふえているのか減っているのか、具体的にひとつその辺の影響についてお答えをいただきたい、こういうことでございます。
  26. 岡山茂

    ○岡山政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御質問がございました職業訓練施設の数の五年間の推移でございますけれども、昭和六十三年度におきましては千五百六十八校でございまして、平成四年度におきましては千七百十一校ということになっております。この中で特に認定職業訓練施設の増加が多いわけでございます。  それから、訓練生の数について申し上げますと、公共職業訓練養成訓練につきましては約三万二千人台でほぼ横ばいで推移しておるわけでございますが、お尋ねございました認定職業訓練養成訓練生につきましては、若干の減少を見せておるわけでございますが、先ほど局長からも御答弁申し上げましたとおり、一方、認定職業訓練におきましては成人訓練数がふえてきておるわけでございます。  予算額につきましては、公共職業訓練につきましては約百六十億円台で、若干増加をしつつも横ばいで推移しておりますけれども、平成三年度あるいは平成四年度予算では若干の増額も図られておるところでございます。それから認定職業訓練についての予算額につきましては、昭和六十三年度に三十億八千百万円でございましたが、平成四年度におきましては二十八億八千五百万円ということで減少をしておるわけでございます。この点につきましては、先ほど局長からも御答弁申し上げましたとおり、認定職業訓練におきまして養成訓練から成人訓練にシフトしておりますために、予算の額につきましては減少が生じているということでございます。
  27. 沖田正人

    沖田委員 今度の改正で若い人たちに魅力を与える形になりますか。訓練生の確保が大きく期待できるとお考えでしょうか。この点をひとつお伺いをいたしたいと思うのです。訓練生の確保について、その見通しについてはふえると思われますか、減ると思われますか、その点をお示しいただきたいと思うのです。  従来の職業訓練校の社会的、経済的な評価、すなわち訓練校を卒業、終了した人たちの評価というものは一体どうなっているとお考えでしょうか。この点もあわせてお伺いいたしたいと思うのです。卒業したことを隠している人たちも存在しているという事実を御存じでしょうか。どのようにお考えがお答えいただきたいと思います。
  28. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 若年の技能労働者中心にいたしまして、技能労働者が我が国の経済社会に果してきた役割は非常に大きなものがあると思っておりますし、最近のサービス経済化とか技術革新の進展、そういう変化の中で若者の技能離れという傾向が見られるということは大変残念でございまして、今後とも若年技能労働者養成、確保というのは非常に重要な課題であると思っております。  そういう若年技能労働者の育成の面で公共職業訓練施設の果たす役割も大きいと思っておりますが、我々としては、できるだけ訓練校の魅力を高めるためにいろいろな面でのイメージアップを図っているわけでございます。一つは、施設設備の改善整備、これによってやはり入校者がぐんとふえるというケースは大変ございます。それからもう一つは、訓練受講を終わった時点で、就職に際して有利な条件で採用されるというためには、いろいろな資格が取得できるかどうかということがやはり重要でございまして、この点でも、クレーンの運転士であるとかボイラー技士であるとか自動車整備士であるとか、そういった資格が取得できるような訓練内容にするということでの魅力づけもやっております。  それから、特に今回の改正の中では、先ほど申し上げましたように、訓練体系を一新いたしまして、多様で柔軟な訓練ができるようにしようということを考えておりまして、そういう中で特に高度な訓練というものもより一層推進をしたいということも考えているわけでございます。やはり内容高度化ということも若者には大変魅力があるわけでございますので、そういう形でいろいろな手だてを講じながら、何とか若者に魅力のある訓練校にしていきたいというふうに思っております。  認定訓練校でも、新しい訓練体系のもとでは各校の特色を出していただける余地が非常にふえるというふうに御理解いただいていいと思いますので、そういう形で各校の特色を大いに発揮する訓練というものをやっていただければ、若者にとってもより魅力があるようになるのではなかろうかというふうに思います。  先生御指摘の訓練卒業生であることを隠しているという話は、私も寡聞にして存じませんけれども、一般的に訓練校の人材を送り出している立場から申し上げますと、例えば平成二年の訓練終了時における養成訓練の就職率は九三・八%にも達しているわけでございまして、聞くところによりますと大学の就職率が八〇%というようなことのようでございますから、それから見ても大変高い評価を受けているというふうには考えております。これは即戦力としてすぐ使えるというようなこともございまして、高い評価を得ているというふうには思っております。  ただ、それが経済的に十分評価をされているかということになりますと、我々も残念ながら必ずしも十分ではないという感じも持っておりまして、訓練終了後における就職に当たって企業がもっと適正な評価をしていただけるように、企業に対するいろいろな働きかけといったものを進めてまいりたいというふうに思っておりますし、全般的には技能というものを社会的にもっと評価をしていただく、そういう機運づくりといいますかそういったものもぜひ必要だというふうに考えておりまして、技能尊重機運を社会全体としても盛り上げるということでありますとか、あるいは技能がきちっと社会的にも会社の中でも評価される、こういうような仕組みをつくりたいというふうに思っているわけでございます。  実は我々も、例えば技能検定でございますとか技能五輪とかやってまいりましたけれども、実際、検定に合格した人あるいは技能五輪で優勝した人が、具体的に企業の中でどういうふうにそれが評価をされたかされなかったかというようなことについては、残念ながら調査もやっていなかったものでございますので、今年度そういった調査もやって、その上でまた企業に対していろいろな働きかけをしたいということを考えておるところでございます。
  29. 沖田正人

    沖田委員 能開法の改正によって高度訓練先端技術訓練というものが加えられることになるわけでありますが、そのことによって普通訓練養成訓練がお粗末になり、さらには伝統工芸、伝統工法技術技能の継承訓練や財政的な助成というものが後退させられることのないように十分努力をしていただきたいと思いますが、この点について見解をお示しいただきたいと思うのであります。  能開法の改正によりまして、認定訓練、すなわち事業内共同職業訓練の運営がうまくいくようになるならばいいけれども、制約を受けたり窮屈になったりすることのないようにしていただきたいと思いますが、その点について見解を明らかにしていただきたいと思います。  また、補助金や予算の面で後退するようなことはありませんか。この点についてもお尋ねをしておきたいと思うのであります。
  30. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 今回の法改正の目的は、局長が再三御説明しておりますように、従来の養成訓練向上訓練能力開発訓練という、どちらかというと形、枠組みにとらわれた状況から脱しまして、普通訓練高度訓練という形で、むしろ訓練ニーズに適応するようなきめの細かい、必要に応じた訓練ができるようにしよう、こういうことでございます。  その中で、先生御指摘ございましたように、いわば先端技術だけに傾斜して、そして従来の伝統的な工法についての訓練を軽視することにはならないか、こういうお話でございますが、そういうことでは全くございませんし、まさにそうした伝統的な工法、技法、技能というものが我が国にあることが、むしろ我が国の技術水準を高めているという面もあると私は考えているわけであります。  私は山形の代議士でございますが、山形県に従来からの織物だとか最近のニットの工場がたくさんあるわけでございますけれども、同じような機械、コンピューターでコントロールされる機械を日本でも使っているし、例えば韓国とか台湾とかでも使っているわけでございますが、そう言ってはあれだけれども、山形でつくるそういったニット製品とか織物は、同じような機械を使っておっても海外でできるものと一味違うのですね。  ですから、そういうコンピューターを使ったような技術であっても、昔の伝統的な我が国の織物技術だとか勘だとか色合いに対する評価だとか、そういったものが生きてくる、こういうことでございますので、先ほどから技術がどうだ技能がどうだとございましたけれども、技術技術として、それを超えて多少人間的な勘だとかそういった職人気質というものがこれからますます大事になってくるわけでございますので、そういったことの訓練を積極的に今後とも能力開発の中で取り入れていきたいというのが私どもの考え方でございます。
  31. 沖田正人

    沖田委員 大変にくどいのですが、訓練生の確保や募集活動に不利益が生じるようなことがないだろうと思いますけれども、その点念を押しておきたいと思いますが、いかがですか。
  32. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 先ほど御質問ございました補助金が減少したりしないようにということでございますが、今回の法改正訓練体系についての再編をいたしますけれども、先ほどの高度と普通とか、そういう訓練内容によって補助率あるいはその補助対象経費などに格差を設けることは全然考えておりませんので、この法改正と補助金の増減とは直接関係がないと思っておりまして、補助金そのものにつきましては我々としてもできるだけ獲得をするような努力を続けたいと思っております。  それから、訓練生の募集につきましても、今回の法改正で直接影響が及ぶことはないと思っておりますけれども、先ほどおっしゃっておりましたように、伝統的に養成という形で募集をしておったのが、今後は別の呼び方でやるのかどうかというようなこともございますが、その点は、先ほども申し上げましたように、内容的に変わらないのであれば従来どおりの言葉も使っていただいて結構なわけでございますので、そういう運用面の配慮を十分いたしまして、募集についても影響ないように十分配慮をしたいと考えております。
  33. 沖田正人

    沖田委員 新設される短期大学校と既存の職業訓練校と比べてみて、卒業生、修了生への資格や特典はどう開きがあるのか、格差があるのか、ひとつ説明を願いたいと思うのです。短期大学校の高度訓練修了者と既存の養成訓練二カ年修了者の技能照査、合格者への称号は同格であるべきだと思いますが、所見をお伺いいたしたいと思います。
  34. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 訓練短期大学校と訓練校の修了生の間には、例えば学校教育法によります修士だとか学士だとか、そういった違いはないわけでございますけれども、訓練内容に若干の差がございます。例えば、技能検定の受検をする場合の受検資格でありますとか、あるいは学科免除をする場合の訓練修了後の実務経験の年数が必要でございますが、そういった年数のカウントの上では若干の差をつけるというようなことはいたしているわけでございます。それからまた、訓練修了生に対していろいろな公的な資格がございます。労働省が所管している資格もございますし他の省で所管している資格もございますが、それについてもやはり訓練内容によって若干の差があるということは事実でございます。  それから、今度の技能照査、つまり、訓練を修了した人に対して行う技能照査の合格者に対する称号の扱いにつきましては、法律上は、高度であるのと普通であるのと差は設けておりませんで、同じように技能士補と称することができるようにいたしております。  ただ、この技能照査のあり方につきましても、実は訓練基準との関連で今再検討を行っておりまして、そういう一環としてこの合格者に対する称号の扱いについてもどうするかということは検討いたしたいと思っております。
  35. 沖田正人

    沖田委員 次に、「税と経営」第千百十三号の伝えるところによりますれば、「労働省が税務の資格認定制度創設 職業能力開発が目的、法案を今国会提出」「すでに予算措置も講じた。」こう報道されているわけであります。  「実施機関は中央職業能力開発協会。現在、準備室を設置して、関係教育機関のカリキュラムの収集・分析・開発をはじめた。」とありますが、労働省及び国税庁の方々はこの「税と経営」の報ずるところを御存じかどうか、また、能開協会の動きについてどのように承知しておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。  あわせまして、予算がついているとすればどのような予算措置が行われているか、お示しをいただきたいと思います。
  36. 岡山茂

    ○岡山政府委員 ただいま御指摘のございましたものにつきましては、そういう雑誌に載っているということは私ども承知をしております。  ただ、私どもがいろいろと準備を進めております産業人能力開発単位認定制度といったことで、中央能力開発協会にお願いをして、あるいは研究会を設けるなどいたしましていろいろ検討を進めておるところでございますけれども、その具体的な内容につきましては、その記事について若干誤解があるように思っております。
  37. 沖田正人

    沖田委員 「産業人能力開発単位認定制度の段階的実施として、ホワイトカラー等の職業能力開発向上促進するための産業人能力開発単位認定制度について、人事・労務・能力開発及び経理・財務・税務の二分野において実施準備を行う」としているようでありますが、この中で経理・財務・税務の分野の認定制度はどのようになるのでしょうか、明らかにしていただきたいと思います。
  38. 岡山茂

    ○岡山政府委員 ただいまお話しございました産業人能力開発単位認定制度でございますが、それにつきましては、いわゆるホワイトカラーが仕事をしていく場合に必要ないろいろな能力開発を体系的に進めていくための制度としていろいろと検討し、準備を進めておるわけでございますけれども、お話しございましたとおり、一遍に各分野について実施をしていくということは困難でございます。  そういう意味で段階的な実施を考えておるわけでございまして、現在のところ人事・労務・能力開発分野あるいは経理・財務の分野、この二分野について具体的な検討をしているところでございます。  この産業人能力開発単位認定制度の考え方でございますけれども、これは、先ほど言いましたようにホワイトカラーが仕事をしていく上におきまして、例えば人事・労務畑とかあるいは経理・財務畑といったような形で分かれておるわけでございますが、そういう専門的な能力を体系的、継続的に勉強していただくことを支援していこうということで新しいシステムを考えておるわけでございます。  その骨格につきましては、一つは、先ほど言いましたようなホワイトカラーの職務の遂行に必要な専門知識を、例えば人事・労務・能力開発あるいは経理・財務といったような各職務分野ごとにそれぞれの必要な科目とレベルによって単位を区分いたしまして、ユニットと言っておりますけれども、体系化をいたしまして、それによってホワイトカラーが長期的に学習をしていくための具体的な指針を提供するための目標を明らかにしたいということでございます。  それからもう一つは、具体的に勉強していただくために、現在、専修学校とかいろいろございますが、そういう各種教育訓練機関におきまして提供しております訓練コースが、具体的に先ほど言いましたような単位にどれがどれに当てはまるかといったようなことを審査いたしまして認定をしよう、それによって勉強していただく具体的な手段を明らかにしようということでございます。  そういうことによって労働者個々人がその認定されたコースを順次学習していくことによりまして、体系的な知識を修得することができるということで考えておるわけでございます。
  39. 沖田正人

    沖田委員 認定を受けるためのカリキュラムの内容については、経理・財務の中に税務も入るんだろう、こう思いますが、どうでしょうか。そして、税務の分野ではどのような科目が含まれていくのか、詳細にひとつ答えていただきたいと思います。
  40. 岡山茂

    ○岡山政府委員 先ほど申し上げましたとおり、人事・労務・能力開発分野とそれから経理・財務の二つの分野について、具体的に今検討をしておるところでございます。そういう分野で専門知識の体系、それから教育訓練コースの認定基準、どういう内容のものであれば適格とするか、そういう認定基準の作成をしなければいけないということで検討をしておるところでございまして、まだその具体的内容については確定をしていない状況でございます。  ただ、経理・財務という分野について現在も検討しておるところでございますが、例えばその中には、当然、簿記とかあるいは原価計算とかあるいは資金繰り表とか、それから企業の経理・財務に必要な法人税等の知識といったようなことが含まれるわけでございまして、そういう企業の経理・財務部門のホワイトカラーが仕事をしていく上に必要な知識が含まれてくるというふうに考えておるわけでございまして、もちろんのことながら、企業の経理・財務を遂行する職員として必要な税務処理の知識といったようなものもその対象として含まれてくるであろうというふうに考えておるわけでございます。  先ほど言いましたように、その具体的な内容は現在まだ検討中でございまして、確定をしていない状況でございます。
  41. 沖田正人

    沖田委員 認定を受けられる対象は産業人だけですか、一般の個人も含まれているんですか、この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。  また、認定を受けた産業人が退職されて認定資格を業として活用されるという場合は、その扱いはどうなるんでしょうか、この点をひとつ明らかにしていただきたい。  また、認定者に対しては称号を与えることになりますか、この点を明確に示していただきたいと思います。
  42. 岡山茂

    ○岡山政府委員 先ほど申し上げましたように、この産業人能力開発単位認定制度につきましては、企業におけるホワイトカラー労働者の専門的な職業能力開発向上させる、そういう段階的、体系的に勉強してもらうためのシステムをつくろうということを目的としておるわけでございます。したがいまして、その主たる対象は、現在もちろん勤務しておられるホワイトカラーが中心になろうかと思いますが、しかし、例えばこれから就職しようとするような方、あるいは転職をしようというような方もおられるでしょうし、そういう分野の就職を希望する方々もその対象には含まれるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、先ほど言いましたように、このシステムにつきましては、そういう学問を勉強した、そういう学習を行ったという事実を明らかにしようということで、その修了者について修了認定を行うことも考えておるわけでございますけれども、それは、ただそういう学習を行ったという事実を明からにする性質のものでございますから、したがって、それは、その方が退職をしたからそういう事実がもちろん消えるわけではございませんで、そういう意味で、在職とかあるいは退職といったことに直接かかわるものではございません。  しかし、勉強したということを認定するのは、何も特別の業をなすために資格を付与するものではないわけでございまして、そういう意味におきましては、私どもは、先ほど御指摘になったような御心配はないというふうに考えております。
  43. 沖田正人

    沖田委員 称号を与えられるのですか、どうですか。その称号というものは、何々士というような士名をつけるというような形になりますか、具体的にお答えをいただきたいと思うのです。または、マスターとかエキスパートとか、どんな称号が検討されているか、経過をひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  44. 岡山茂

    ○岡山政府委員 先ほど申し上げましたとおり、そういう職業分野の必要な教育訓練コースをすべて修了したという方につきまして、どのような称号を与えるかということについては現在検討しておるわけでございますけれども、もちろん、その名称を決めるにつきましては、いろいろと現在既に行われております国家資格といったような名称と混同されることのないように、十分配慮していかなければいけないというふうに考えております。  そういう意味におきまして、何々士といったような名称につきましては、やはり資格と混同されやすいというおそれがあると思いますので、そのようなものは避ける必要があるのではないかと考えております。
  45. 沖田正人

    沖田委員 マスターとかエキスパートとかいうような称号も検討されているように仄聞たしますが、御存じでしょうか。
  46. 岡山茂

    ○岡山政府委員 ただいま、どのような名称にするかということも含めて検討しておるわけでございますが、その中で、確かに、マスターがいいんじゃないかとか、あるいはそういう名前がいいんじゃないかといったようなことが挙げられておるわけでございますが、ただ、この名称につきましては、ただいま申し上げましたとおり、そういう体系的な学習を修了したということを認証するためのものでございますので、非常に誤解を与えるような名称は避ける必要があろうかというふうに考えております。
  47. 沖田正人

    沖田委員 この認定制度には種々の分野が入っていますから、いろいろ検討なされるのだろうと思います。  また、税務については、これは財務・経理の中に入っている、先ほどもお答えの中に、法人税などにも関連をして教育がなされるというようなこともお話がございました。非常に控え目な説明でございますからよくわかりませんけれども、いずれにしても、やはり大蔵省や国税庁とも関連が出てくることが予想されますけれども、労働省としてはこの点について大蔵省や国税庁とどのような打ち合わせや協議、調整を進められてきたか、この点を明らかにしていただきたい。このことにつきましては、労働省のみならず、国税庁からもこの経過をお話しいただきたいと思います。  また、一定の履歴を証明するものとして称号を授与しようとするものとされておりますけれども、称号と資格の認定とはどう違うのか、明らかにしていただきたいと思います。
  48. 岡山茂

    ○岡山政府委員 先ほど御説明申し上げましたとおり、この産業人能力開発単位認定制度につきましては、新たな資格制度を創設するということを目的としたものではございません。そういう意味におきまして、既存の国家資格に抵触するものを考えているわけではございません。したがいまして、その資格を所管している省庁との協議、調整というのは、特に現在まで行っておりません。  先ほどお話しいたしましたとおり、経理・財務分野につきましても、その内容は、あくまでもその企業の経理・財務部門に従事するホワイトカラーが学習するための制度でございまして、この制度に基づいた学習の結果、新たな資格が付与されたり、あるいは税理士法に基づく税理士業務に影響を与えるものというふうには考えておりませんので、特に現在まで大蔵省との正式の協議、調整という形はとっていないところでございます。
  49. 中井省

    ○中井説明員 ただいま御質問のこの制度につきましては、大蔵省との協議、調整がなかったということにつきましては、労働省の御答弁のとおりでございます。  我々の立場をこの場をかりて御説明申し上げますと、先生これも御案内のことかと思いますが、税理士法の第五十二条におきまして、「税理士でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を打ってはならない。」と規定されてございます。また、同法律第五十三条第一項におきまして、「税理士でない者は、税理士若しくは税理士事務所又はこれらに類似する名称を用いてはならない。」と規定されているところでございます。  産業人能力開発単位認定制度に基づく称号等につきましては、このような法令の規定を勘案して労働省において配慮がなされまして、恐らく問題が生じる懸念は少ないと考えておりますけれども、なお国税庁としても税理士法に触れることのないよう十分注視してまいりたいと考えております。
  50. 沖田正人

    沖田委員 丁寧な御答弁がありましたから足りるようには思いますけれども、あえてもう一つお伺いしておきたいと思います。  称号の授与、称号の取得が特に税務の分野ではその業務が紛らわしくなる可能性があるわけでございますが、税理士のにせものづくりに手をかしたりその温床になるようなことがあってはならないことは言うまでもないわけであります。少なくとも、将来に照らして、この税務分野の称号取得者が増大をして、税理士法の第一条、第二条、五十二条、五十三条に抵触するようなことがあってはならないと思いますが、労働、大蔵両省から責任ある御答弁をもう一度ひとつお願いいたしたいと思います。
  51. 岡山茂

    ○岡山政府委員 この産業人能力開発単位認定制度におきます称号というのは、先ほど申し上げましたとおり、ホワイトカラーの学習の動機づけと、それまでに行った学習内容を明らかにするということを目的としておるわけでございまして、特定の業務を業として行うことを保証するといったような、資格といったものではないわけでございます。  具体的なケースを考えた場合におきまして、この教育訓練コースをすべて終了した者に授与する称号につきましては、先ほどお話し申し上げたとおり、現在検討中でございますけれども、税理士といったような既存の国家資格の名称と混同されるおそれのないように十分配慮していかなければいけないと考えております。また、この制度に基づく称号が、この学習を体系的にやっていく、こういう目的に沿って正しく理解、活用されるように努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  52. 中井省

    ○中井説明員 この産業人能力開発単位認定制度というものが本旨に基づきまして、例えばサラリーマンの方々が税務の知識を深めていただくということでございますならば、我々税務当局といたしましても基本的には大変ありがたいことと考えておりますが、先ほども御質問ございましたような先生の御懸念がないように、我々としても十分注意して事に当たってまいりたいと考えておる次第でございます。
  53. 沖田正人

    沖田委員 称号を悪用して税理士業務を行うことのないように、あらかじめその可能性をなるべく小さくしておくことが非常に大事なことじゃないかと思いますし、違反されたときには制裁措置も講じておくべきではないかと思いますが、その点についての見解もあわせてお伺いしておきたいと思います。  少なくとも産業人の能力開発、ホワイトカラーなどの職業能力開発向上を図るというような立派な行政を行われようとしておられるわけでありますから、税理士法や他法との競合、介入、違反行為などの規制などは適切に措置をしておいていただきたいと思いますが、見解を明らかにしていただきたいと思います。
  54. 岡山茂

    ○岡山政府委員 先ほど申し上げましたとおり、国家資格を付与するようなものではございませんし、また、それと混同されるようなことのないように十分配慮してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、今申し上げました点につきまして、例えば具体的な法律に触れるかどうかといったことにつきましては、それぞれの資格を所管しておられます省庁におきまして、その制度に設けられております罰則等の適用といったような措置があるわけでございまして、それらにつきましては、それぞれの所管省庁において考えていただけるものと考えております。
  55. 沖田正人

    沖田委員 最後に、労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  職業訓練制度はまだ歴史も浅く、予算も、財政的裏づけも必ずしも十分とは言えないのじゃないかと思うわけであります。しかも、社会的な地位も確立されているとは言いがたいと思うのであります。養成訓練向上訓練普通訓練高度訓練などの用語に振り回されることのないよう職業訓練全体の地位の向上のために各分野の努力が自由に伸び伸びと発揮されるように保障していただきたいと思いますが、見解を明らかにしていただきたいと思います。  さらに、伝統技術や伝統技能、つまり伝統工芸、伝統工法、こういうふうな点につきましても、その継承、発展については十分力を尽くしていただきたい、このようにお願いをしておきたいと思うのであります。  能開法の施行というものが、勢い余って、とりわけ税理士法など地法との競合や違反行為を招来しないような御努力もあわせて強く御要望を申し上げたいと思います。  大臣の決意のほどをお伺いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  56. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 まさに産業発展の基礎は、産業に関係する労働者の方々の技能技術でございますから、これは私たちはまずます尊重して改善、向上させていきたいと思っておるわけであります。  一方において、御指摘ございましたが、若い人のいわば技術離れ、技能離れという現象もございます。したがいまして、今度の能開法の改正は、そういう状況を踏まえまして、訓練を受ける方々のニーズに即応しながらやはりきめの細かい対応ができるように、従来の三段階方式を二段階にしていろいろな余裕をつくった、こういうことでございますので、ぜひひとつ、この法律の改正によって、まさに変化をする、激変しておる産業構造に適応できるような、そういった産業ニーズに合うような能力開発訓練をさせていただきたいと思っております。  あわせて、御指摘ございましたいわゆる先端技術でない伝統工芸技能といいますか、工法、技法につきましては、これはもうますます尊重しなければならない。そういった伝統工芸によって培われた繊細な技術や感覚が、先ほどちょっと申しましたハイテク技術の運用にも活用されている、それが日本のハイテク産業を支えているんだ、こういう認識もございます。  最後に、いろいろ関係する、例えば税理士だとかそういったものとの混乱がないように十分に配慮しろ、こういう御指摘でございますが、先ほど答弁いたしましたように、その点は十分わきまえて混乱がないようにいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、激変する産業構造に合うようなすぐれた職業技術者、技能人をつくるために今後とも努力してまいる決心でございますので、よろしく御指導のほどお願いいたします。
  57. 沖田正人

    沖田委員 終わります。
  58. 川崎寛治

    川崎委員長 鈴木久君。     〔委員長退席、永井委員長代理着席〕
  59. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 ただいま沖田議員から、訓練体系の改善の問題やら技能尊重社会の能力評価の問題等々については詳しく質問がありましたので、私は主に公共職業訓練関係に重点を置いて質問をしたいと思います。  本法の改正の提案理由の説明の中で、構造的な労働力不足、とりわけ若年の労働力の大幅な減少、こういう中で人材の育成と労働者職業能力開発向上必要性というのが強く叫ばれて今回の法改正内容になっている。特に技能離れ技能労働者不足は極めて深刻な状態に立ち至っておるわけでございまして、その意味で、技能を尊重する社会を形成する、そういうふうに言っておられますけれども、極めて重要なことであろうというふうに認識をいたしております。そういう中で、事業主労働者の自主的な労働能力開発促進をするために支援強化をしましょう、そして高度で多様な職業能力開発の機会を提供するために公共職業訓練体系の整備をいたしましょう、こういうことがポイントになっていると思うのですね。  ところが問題は、どうしてこんなに技能離れが進んでしまったのだろうか。技能労働者の不足という今日の深刻な現象ですね。職人さんと言われる人たちあるいはまた伝統産業や工芸に携わる人々、こういう人々が大変高齢化をし、後継者がいない。何ゆえこういう事態に進行してしまったのかということについて、これは大臣どうですか。所管の大臣として、今日のこの状態というのはこれは大変ですよ。ですから、大臣の認識をまず伺っておきたいと思います。
  60. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生御指摘の若者の技術離れ、技能離れ、これはいろいろな原因があると思います。私は、端的に言って、現在の労働力不足状態というのが、いわば地道な技能訓練職業訓練をしなくてもしかるべく高給でそして楽な仕事につける、こういうことがありまして、その点から、残念でございますが、若い人たちの中にそうした安易な職業選択をする、こういうことではないか。  ただ、一方において、若い人の中にもまさに脱サラをして、自分で板前さんになってみるだとか、伝統的な工芸につこうという人もいるわけでありますから一概に言えませんけれども、やはり基本的には今の労働力不足経済というのが若者に安易な職を選ばせるのではないか、こういうことでございますので、これをひとつ打開して、それなりに努力をすれば技能がついて、そしてそれなりの収入が得られて、社会的な、また企業内でも地位が確保できる、そういう制度を推進していきたいと考えております。
  61. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 私は、現在のそういう構造をつくってしまったというのは、やはり日本の就労構造あるいは職場におけるそういう技能者の労働環境、条件、今は三K職場などという言葉まで出るくらい極めて劣悪な状態になっていること、これがやはり若者離れをし、技能離れをしていくということをより一層促進をしているというふうに言わざるを得ないのです。  例えば、ヨーロッパと日本を比べた場合、職業能力開発の問題や職業訓練技術の問題ということを考えたときに、いわゆる職能別、技能別、そういうレベルで労働条件や労働契約を決めるというスタイルと、会社に雇用契約を結んでから会社の中で仕事を身につけていって、日本の場合は、雇用形態がずっと三十年勤めれば少し賃金も上がっていきますよという、企業に縛りつけるような意味での雇用契約になっている。そういうところに私は技能尊重をする、あるいは技能形成をしていく、特に自主的にそういうことをやるということから考えますと、そういう点で今日の日本の社会の場合は、ヨーロッパなんかと比較すると、極めて技能労働者技能に対する認識の不足といいましょうか、そういうものを来してしまったんじゃないだろうか、こういうふうに思うのです。  そこで、今度のこの提案説明の中で、技能を尊重する社会を形成する必要、こういうふうに皆さんおっしゃっているのですが、それはどういうふうなイメージを持っていらっしゃるのか、具体的にそういう社会形成というのはどういう方策をもってするのか、この辺をまずお聞かせいただきたいと思います。
  62. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 技能を尊重する社会というふうに我々がイメージいたしておりますのは、技能というものの社会に占める重要性というものが社会全体として認識をされておって、すぐれた技能を有する労働者が適正に評価をされ処遇される社会、こういうことではなかろうかというふうに思うわけでございまして、労働省は、今までも技能検定でございますとかそういうものを通じて、労働者の有しておる技能の適正な評価をしようということをやってまいりました。また、卓越した技能者の表彰、現代の名工と俗称しておりますが、そういった人たちの表彰でありますとか、あるいは技能五輪の国内大会、国際大会、そういったものへの参加を呼びかけるとか、一級技能士の全国技能競技大会といったものを開催いたしまして、何とか技能に対する国民の関心あるいは評価を高めようということで努力をしてきたわけでございます。  ただ、残念ながら、先生がおっしゃいましたような技能離れという風潮はやはりございまして、それは、先生も御指摘のように、日本の社会が一つは就職、職につくというよりは就社というような形で形成をされてきたというようなことも、確かに風潮としてあったというふうに思います。ただ、最近の若者の中にはむしろ就社というよりは就職だ、文字どおり実際の職を選んで会社へ入っていこうという方もふえておるわけでございまして、そういった風潮をできるだけ助長するという意味では、今の技能検定なんかに加えまして、さらにもっと事業主団体が行う技能審査だとか社内検定だとか、そういう技能評価をする仕組みというものも充実をさせたいと思っておりますし、また、評価をされた仕組みが実際の処遇なり給与なり、そういう面で反映されるというようなことについても一層の啓発活動をやっていきたいと思っております。  実は今年度各界の有識者に御参集をいただきまして、技能の重要性についてどういうふうにすればいいかというようなことでの意見の交換をやっていただこうというようなことも考えておりますし、技能評価というものが企業あるいは社会の中で実際どういうふうに行われているか、そういった実態調査というものもやってみたいというように考えておりまして、今回の改正を機にさらに一層技能労働者の地位向上技能尊重がなされる社会の形成に努めていきたいというふうに考えているところでございます。
  63. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 そうだとすれば、日本の雇用形態なり、今お話がありましたように企業に就職をする、言葉は別にしてそういう形をとる。大きな企業は、自分たちの企業をさらに一層大きくしたり利益を上げたりするためには人材育成をする、みずから努力をする、そういう能力も力も持っています。問題は、そうじゃなくて、今一番労働力の問題、技能労働者の不足をしているところは、そういうところじゃない、全く違うんですね。違うでしょう。皆さんが重点を置こうとしなければならない技能者も、そういうところに存在をしているのではありません。そうじゃなくて、むしろ中小企業であり、あるいはまた建築、土木、伝統工芸、こういうところに携わる人々の技術者離れが進んでいる、ここに深刻な事態があるんだろうと思うのです。今やそういう三K職場と言われるところに、不法就労などと言われておりますけれども、外国人労働者が実質的にはもうどんどん入って労働しているという現実もあるわけですね。外国人労働者の問題は後で私も質問いたしますけれども、このままの状態は極めて深刻であろう。  したがって、先ほど沖田さんの職業訓練のあり方の問題で、民間重点を置いて公共は支援の形をとりましょうというお答えのようですけれども、それで本当に大事な一番職業訓練を必要とする人々に十分な訓練をやれるのだろうか、能力開発ができるのだろうかということなんですよ。みずからできるところに公共がバックアップするというのじゃなくて、なかなかできないところに公共がしうかりと手を差し伸べる、ここに私は今最も重要な公共職業訓練の役割というものを求めていく必要がある、こういうふうに思うのです。  技能を尊重する社会を形成する、そういうことからもその基本を、そういう一番大事なところ、やらなければならないところ、そのためには私はどうしても公共職業訓練の役割というものを主に置くべきじゃないか、こんな認識を持っておりますが、いかがですか。
  64. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 我々も先生の認識と基本的に変わっておりませんで、大企業のように自分のところで養成ができる方については、もう自分のところで養成をやっていただければよろしいというふうに基本的には考えておりまして、やはり我々の公共訓練が分担するのは、中小企業のような方々のための養成訓練であり、向上訓練であろうというふうに思っておるわけでございます。  実は、最近の人手不足の中で、訓練校の卒業生も大企業から大変お声がかかりますということで、大企業に流れている分野もございますけれども、基本的にはやはり中小企業労働力確保のための訓練をやっているのだというふうに認識をいたしておりますし、建設業でありますとか伝統産業のようなことで、やはり産業経済の中でどうしても存在をしなければならない、しかし、各種学校のような商業ベースにはなかなか乗りにくい訓練、どうしても養成しなければならない訓練、こういったものもやはり公共訓練の役割だろうというふうに考えておりまして、仮になかなか訓練生が集まりにくくとも、どうしても必要な訓練というものは公共が担っていくべきだろうというふうに考えているところでございます。
  65. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 特に労働力不足で一番問題になって、能力開発をしていこう、あるいは新しく労働力を求めていこう、こういう場合に、いわゆる女子の労働力確保の問題等かなりいろいろな議論を今日まで労働委員会でもしてまいりました。育児休業法を制定したりいろいろな方策をとっております。あるいは高齢者の問題も同様でしょう。先般、障害者雇用の促進の法律の論議もいたしました。ここは重度者まで本当にしっかりリハビリテーションをやって自立、参加を求める、こういうふうな展開をしようということなんですね。  そのために、この間も私は議論をいたしましたけれども、口だけじゃなくて、具体的に今御答弁のあった内容公共職業訓練施設でしっかりとやる、よもやそういうものがここの答弁だけでお茶を濁す、こういうことではなくて、本法改正以降具体的に公共職業訓練施設の中で展開音される、そういうふうに受け取ってよろしいですか。
  66. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 我々の公共訓練重点の中で、先生御指摘の高齢者の問題あるいは女性の問題、これは大変重要な対象であろうというふうに考えておりまして、現実にもそういった、女性向けと言うと語弊はあるかもしれません、我々は余り区別はいたしておりませんけれども、女性が比較的受けやすいような、受けたくなるような訓練科の増設でありますとか、あるいは高齢者向けの訓練科の増設でありますとか、そういったところに重点を置いているところでございます。また、実際にそういった方々が受けやすいような体制づくり、例えていいますと、短時間の受講もできる、あるいは夜間、休日の受講もできる、そういった体制も徐々にとろうとしているところでございます。今後若者が全体として減るというようなこともございまして、やはり公共訓練対象をそういう女性あるいは高齢者の方に徐々に重点を移していくべきだろうというふうにも考えております。
  67. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 そこで、職業能力開発のそういう開発計画を策定する場合に労働組合とよく協議をしてこれを定める、こういうふうにすべきであろうし、当然、特に労働者の意見を十分尊重していかなければならないのじゃないか、こういうふうに思いますけれども、本問題についての労働省考え方を確と承りたいと思います。
  68. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 公共職業訓練施設は、地域社会に開かれた能力開発のための総合的なセンターとして機能していくということが必要であろうと思っております。  そのためには、地域ニーズというものを的確に把握をするということが必要でございまして、地域事業主団体あるいは労働組合、市町村等を構成員といたします運営協議会というものを公共訓練施設には設置するようにいたしておりますが、そういう中で労働組合等の御意見も十分聞きながら具体的な地域ニーズの把握に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  69. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 私は、これも本当に具体的に実践していただきたい。というのは、先ほども議論がありましたけれども、地域には、今特に地方に行けば行くほど伝統産業やそういう問題で後継者がいない、技能離れしている今日の社会の中で大変悩んでいる。これは通産省が伝産法で新しく振興策もつくりましたけれども、それでも高齢化、技能者離れというのが進んでおりまして、深刻ですよ。  こういう問題を考えたときに、今話がありましたように、そういう能力開発計画の策定というのは企業内でやる場合も労働組合の意見をしっかり聞くこと、同時に、地域でもそういう問題について十分しっかり聞いて、そういうものが先ほど言ったように公共職業訓練施設の中で十分に取り入れられて訓練計画に盛り込まれる、こういうところまでいって初めて開かれた職業訓練施設あるいは職業訓練、こういうふうになっていくのだろうと思うのですけれども、いかがですか。
  70. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 日本の訓練はオン・ザ・ジョブでやるというケースが非常に多いわけでございます一そういう意味では、職場の中で訓練と仕事が一体的に行われるというケースが多いわけでございますから、当然職場のいわば他の労働者理解を得ながら訓練しなければならないというケースが非常に多いわけでございます。  そういう意味では、訓練全般について事業内の訓練についてもやはり労働者の意見を十分お聞きいただくということは必要でございますし、先ほど申し上げましたように、公共的な訓練施設の中でも労働者あるいは事業主の意見を十分吸い上げた訓練をしていくということが必要でございますので、できるだけそういった御意見を聞くようにということを、この点は法律上は必ずしもそういう義務づけはいたしておりませんけれども、通達等の中では十分にそういう点を周知させたいというふうに考えております。
  71. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 今まで余りやってこなかったことだと思うのですよ。新たに公共職業訓練施設公共職業能力開発施設という名称の変更までして、そして情報の提供や相談援助や、あるいはまたいろいろなそういうレベルでの総合的な施設としてサービスをしていきましょう、こういうところに踏み込んでおりますね。ですから、この点についても労働省所管の技能開発センターやあるいはまた都道府県でやっていらっしゃる各種職業訓練施設、そういうものを一体的に結んで、システム化をして、情報の提供や援助やそういうものもしっかりやってほしいと思います。同時に、今私が申し上げたのは、地域ニーズもしっかり拾って訓練施設をやっていただきたいということです。  問題は、その場合に今まで余りこういうことをやってこなかったそれぞれの施設で、人的に十分こういうものをやれるのかどうか、人的配置が十分に行われるかということです。それから財政的援助も十分に行われるのだろうか。こういうことをしっかりとしなければ、幾ら今度法改正で新たな業務をやろうといっても、これは絵にかいたもちになってしまうんじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、十分にその体制をとるかどうか、明確にお答えいただきたい。     〔永井委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今回の法改正で、公共職業訓練施設の名前も公共職業能力開発施設ということで改正をいたしまして、相談援助あるいは情報提供といった新しい業務をやっていこうということでございますので、先生御指摘のように、やはりそれなりのきちっとした体制をとらなければならないということはもとよりでございます。  ただ、まだこれからスタートでございますので必ずしも十分ではございませんけれども、各公共訓練施設には向上訓練等推進員というような形での人員の配置もいたしておりますし、予算的には今年度新たに一億二千万の予算を計上したところでございまして、これについては、これをスタートとして今後さらに充実に向けて努力をしたいというふうに考えております。
  73. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 もう少し具体的にお尋ねしますが、都道府県の関係のいわゆる職業訓練施設でこういうものを行う場合、人的なものはもちろん財政的にはどういう形で援助いたしますか。
  74. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 都道府県立の職業訓練校の予算措置につきましては、施設整備費についてその経費の二分の一を国が補助する、運営費についてもその経費の一部を負担するということでやっているところでございます。
  75. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 それは全体的なものでしょう。今度の新しい施策を実施するに当たって一体どうするのかと私はお伺いしているのです。
  76. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 新しい相談援助関係の経費といたしましては、先ほど御説明いたしましたように新たに一億二千万の予算を計上しておるということでございますが、必ずしもこれで十分だというふうに我々は考えているわけではございませんから、これをスタートとしてさらに一層の充実に努めていきたいということでございます。
  77. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 あと、情報の提供やそういう場合に、中央にあるすぐれたノウハウとか今まで蓄積してきたいろいろなノウハウとか、そういうものを伝達する手段、情報のネットワーク、こういう、ものはどういうふうになされるおつもりですか。
  78. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 具体的に都道府県職業訓練校情報提供あるいは相談に応じますためには、今先生御指摘のようにやはりデータをいろいろ持っていることが必要でございます。これにつきましては、現在、中央職業能力開発協会にデータベースがございまして、これと、国の施設につきましては一定のネットワークができておりますが、今年度新たに各都道府県と、さしあたり一校でございますけれどもネットワークを結ぶということを考えておりまして、したがって、これも将来また徐々にふやすような形で、そういういろいろな能力開発に関する情報が都道府県訓練校でも提供できるようにしてあげようということを考えているところでございます。
  79. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 大体国民の皆さんがそういう問題についていろいろと身近な役所で相談をするというのは、割と自治体の方が、それは機能的にも、周りの人たちも行きやすいし、あるいは通常そういう形でおつき合いをしているということからすると、もっとそっちへこういう情報の提供や援助とか指導とか、もちろん職安の行政の中でもおやりになったりしていらっしゃるでしょうけれども、もっと拡大をすべきなんだろう。今スタートの段階で一校なんというのでは一体どうなのかな、こういう感じもするのです。  それでは、どのくらいのスピードでこれから自治体のそういうところに今のネットワークシステムができるのですか。
  80. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 各県一校と申しましても一挙に四十七校の数になるわけでございまして、我々としてはできるだけ早くやりたいとは思いますが、これには何分にも財政当局という相手もいることでございますから、できるだけ早く整備されるような努力はいたしたいというふうに考えておるところでございます。ただ、一方で、地方にやるということになりますと都道府県の御負担も一定のものをいただかなければいけませんので、そういうことも考慮しながらできるだけ早く整備をいたしたい、かように考えております。
  81. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 ひとつしっかりやっていただきたいと思いますね。  次に、国と都道府県の役割の問題についてお尋ねをしたいと思います。  職業訓練の体系の問題も含めてでございますけれども、国と都道府県の役割をどのように分担していくか。今までいろいろとダブったりしていろいろな行政をやってまいりました。それなりに整理はされてきているんだろうとは思いますけれども、ダブるのもしょうがないんでしょうけれども、そういう中で、地方の都道府県がやっている職業訓練校というのは、実はどんどん統廃合、合理化されて消えてなくなっていっているのですよ。これは現実ですね。  そういうことを含めて、まず役割をどういうふうにするのか、そしてその現状をどういうふうに認識しているか、お尋ねをしたいと思います。
  82. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 公共職業訓練分野での国と都道府県の役割分担につきましては、従来の基本的な考え方は、地域ニーズに基づいた基礎的な技能者育成のための養成訓練都道府県でおやりいただいて、離転職者などを中心とした能力開発訓練であるとか、あるいは養成訓練の中でも特に高度な訓練については国の役割というようなところで実施をしてきたというふうに思います。  こういった基礎的なものは都道府県、高度なものあるいは離転職者対象にした訓練は国という役割分担については、今回の改正でも基本的には変えるものではございませんけれども、ただ、最近地方自治体の中でも高度技能者養成というもののニーズは大変高まってきております。そういうこともございますので、平成四年度からは必要に応じて新たに一部の都道府県では職業訓練短期大学校、これは従来は法律上は設置できることになっておりましたけれども事実上認めてなかったわけでございますが、そういったものの設置も認めるというようなことにしたいということで考えております。  ただ、訓練の実施につきましては、多々ますます弁ずという面もございますけれども、一定の予算の中でやるわけでございますから、できるだけ重複のないように整理しながら役割分担を図っていくということでやってまいりたいというふうに思っております。
  83. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 そうすると、先ほども議論になりました体系では、今度は高度と普通、こういうふうになるんだ。そういう意味からいうと、現在やっている都道府県職業訓練の方は、ほとんどが普通になりますね。高度というと短期大学校レベルというお話をいたしておりますから、大臣のおひざ元の山形が唯一その短期大学校だ、こういうことでございますね。  これからどんどんふやされるという今のお話ですけれども、やはり都道府県に対してももう少し、言葉はどうかは別にして、短期大学校をもっと推進する、こういう方向へ歩むべきであろうと思うのですけれども、いかがですか。
  84. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今申し上げましたように、都道府県につきましても最近は高度養成をしたいという要請が非常に高まっております。これは御承知のように中卒者がだんだん減ってまいったということでございまして、高卒の養成訓練だということになるとやはり高度なものをやりたい、こういうことになってきておるのであろうというふうに思いますから、都道府県についてもできるだけそういう高度訓練の方をやっていただくということは大変結構なことだと思っておりますが、短期大学校については、全国に既に二十三校、計画中のものも入れますと二十六校という予定になっておりますので、そういったものとのいわば市場調整といいますか、余り定員が重複するとか生徒の奪い合いになるというようなことでも困りますので、そういった既存の施設の状況、そういったものを十分勘案しながら新たな設置については検討していきたいというふうに考えております。
  85. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 次に、都道府県職業訓練のそういう学校がどんどん閉鎖されていったり統廃合されていっていると申し上げました。その中で、どうしても財政負担の問題について考えないわけにはいかないのです。自治省来ていますね。  昭和六十年の改正で、運営費等に対する補助の関係を補助金方式から事業交付金方式に改正いたしました。それ以降交付金の推移を数字で追いましても、昭和六十年度と平成三年度の比較で総額ではほぼ変わらない。ですから、ずっと横ばいです。補助率にすると、相対的比較ですけれども、都道府県に対する補助率は、人件費などがアップするわけですから、維持費もアップするのですから、そうすると下がっているというふうに見ざるを得ない、これはどうですか。自治省サイドから見ていわゆる超過負担という考え方の問題、よくこれは議論になっていますね、国と地方の財政の問題で一番大きな不満になって、地方から中央に問題提起をされている。どうなのですか。都道府県職業訓練施設に対するいわゆる事業交付金方式による援助というのは、地方から見たらどのくらいの超過負担になっていますか。
  86. 湊和夫

    ○湊説明員 お答えを申し上げます。  今お尋ねございました職業訓練校の運営費に関する交付金でございますが、御指摘のように、昭和六十年に既存の補助体系を整理いたしまして、職員設置費、それから事業費の一部にかかります補助負担金を交付金に組みかえたわけでございます。  この交付金でございますけれども、その性格は従前の補助金とは大幅に変わっているわけでございまして、例えて申しますと、その配分でございますけれども、通常の国庫補助金の場合は一定の補助基本額を前提に配られていくわけでございますが、この交付金につきましては、雇用労働者数でございますとかあるいは求職者の数、こういった客観的な指標で配分していくという形にまず変わっているわけでございますし、それから関係する職員、そしてその定員配置等につきましては、以後、基本的には地方団体が実情に即して自主的に取り決めあるいは配置を行うことができるという形になっているわけでございます。極端に言いますと、交付金をもらってどれだけの事業をやるかということは、都道府県がその自主的判断で行うことができるというふうな形になったわけでございまして、職業訓練校の運営に関しましては、この交付金制度の切りかえに伴いまして都道府県の自主性を広く認めるという形になっておるわけでございます。  これを受けまして、自治省といたしましては、地方交付税におきます措置を、各団体が合理的、標準的な水準で職業訓練校の運営を行うことができますように、その経費を毎年度需要額として措置をいたしております。したがいまして、地方団体が財源措置されている額といたしましては、例えて申しますと、毎年度の人件費のアップ相当分もすべて織り込んだ形で交付税上では措置されているという形になっておるわけでございます。  そういう意味で、この交付金の制度に関連いたしまして、厳密な意味での超過負担という概念は私どもはないというふうに考えております。ただ、お話しございましたように、交付金の総額は横ばい状況であるというふうに私どもも承知いたしております。  超過負担という考え方ではございませんけれども、この交付金交付の目的とか趣旨あるいは交付金化された当時の経過、こういったものもございますので、今後とも所管省庁で実情に即した適切な対応をお願いしたいというふうに思っておるところでございます。
  87. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 そういう説明になると思うのですよ。地方はどんどん拡大して、縮小再生産みたいなものですよ。生徒が縮小する、事業費が圧迫されてくる、どんどん交付金は小さくなっていく、財政能力のない自治体はそのまま放置ですよ。それはどんどんしぼんでいく。東京のように例えば財政力があれば、それはそれで独自に今言ったようにある程度手当てをして自治体の職業能力のそういう施設を充実することができる。まさに強いところと弱いところを比較したら、そのまま反映してしまっている。  しかし、大事なのはそういうことじゃないのじゃないか。こういう財政力がなくて負担できない団体に対しても、むしろ厚く補助をして、職業訓練施設の充実を図り、そして技術者の養成をしていくというスタイルにしなければ、これだってみんな一極集中じゃないですか。地方はみんな切り捨てですよ。  ですから、補助金の方式そのものも問題があると私は思っているのです。やり方そのものも問題があると思っている。そういうふうに六十年度に改正して現在推移しているわけですから、少し交付の仕方というのは地方に厚くすべきなのじゃないか。  そういう点で、労働省どうですか、少し見直してみてはいかがですか。
  88. 岡山茂

    ○岡山政府委員 都道府県に対します訓練校等の運営費につきましては、先ほど話がありましたとおり、昭和六十年度に事業交付金化をしたわけでございまして、それによりまして基礎的な訓練事業に応じて対応しているところでございます。  その際に、先ほど自治省からも御答弁がございましたとおり、その配分に当たりましては、新規学校卒業者の人数とかあるいは失業者の状況といったような労働者の数等をベースにいたしまして、勘案をいたしまして配分をいたしておるわけでございます。その中におきましても、特に景気の動向等に応じまして特別に配慮が必要なところ、急激な失業情勢が生じているといったようなところについては特別の配慮をするといったようなことも織り込みながら対応をしているところでございます。  いずれにいたしましても、財政事情の厳しい中でございます。そういうことでございますけれども、私どももその予算の確保につきましてはこれからも頑張っていきたいというふうに思っております。
  89. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 その点は十分配慮していただきたい、こういうふうに要望しておきます。  もう一つ職業訓練技能センターや自治体経営のところも、これだけスピードアップする高度技術化といいましょうか社会の中で、それにこたえなければならないという側面があろうと思うのですね。これはむしろ民間職業専門学校とか何かがどんどん受け持っている分野ももちろんあります。それは先ほどから議論になっているように、それで採算がとれるところはどんどんそういうところへ進出してくる。しかし、実際は経営的にも成り立たないような分野だけ取り残されていくということが現状として進んでいる。  しかし、どういう職業訓練であっても確実に高度な技術を要求されてきている、これだけは事実だろうと思うのです。例えば身体障害者職業リハビリテーションのレベルでいつでも、今の先端技術をどんどん導入をして、その人たちが自立をするように進んできている。だとすると、なおさら高度化の要求にこたえられるような科目の新設やあるいは指導者の育成というものを迅速にしなければいかぬ、こういうふうに思うのですけれども、今までいろいろそういうものをやっていく場合に、法律や規則の網でなかなか新設を認めなかったり対応がおくれて、かえって職業訓練校時代ニーズにおくれてしまってきたのじゃないか。  そこで、特に地方自治体などの職業訓練の問題についてはニーズと合わない状態というのが続いてしまっているのですが、こういうことを含めて、高度化の要求あるいは科目の新設、そういうものについて迅速に対応できるような指導とあり方というものについてどのようにお考えですか。
  90. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 訓練校を運営していく立場からいいますと、できるだけ訓練生を集めたい、そのためには人気の高い最新の科目にできるだけ切りかえたいというお気持ちはあるわけでありまして、もとより産業界の需要も多いわけですから、そういう点の科目の切りかえもやっておりますが、一方で公共訓練としては、なかなか訓練生が集まらなくても、しかし、実際に産業を支えていくために必要な訓練というものはやはり残していかなければならないという役割もあるわけでございまして、その辺の兼ね合いというのが非常に難しいというのが実情でございます。  しかし、実際に訓練をやっておられる訓練校あるいは訓練指導員の方にできるだけやる気を出していただくという意味からは、その訓練科目についての絶えず見直しあるいは中身高度化、そういったものが必要でございますので、先生御指摘のように、できるだけそういった実情をお聞きしながら、いろいろな制約がございますけれども、できるだけ現状に合わしたような形で対応していきたいというふうに思っております。
  91. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 それともう一つ、その指導員の確保の問題なんです。  特に職業訓練高度化に伴ったり、あるいは特に自治体なんかの経営の場合には、そういうものに対応できる先生方をしっかり確保するということが大変難しくなってきているように言われております。今度の法改正でこの点はどういうふうに対応されようとしておりますか。特に指導員の学校を卒業して自治体の方へ就職してやられる方が少ない、大変確保が難しい、こういうふうにも言われております。ですから、なおさら、今後推進をしていく立場から考えるとその手当てというのをどういうふうにしていくか、方針をお示しいただきたい。
  92. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 訓練内容高度化多様化の実を上げるためには、やはり優秀な訓練指導員の確保が非常に重要でございます。  現行制度では、指導員といいますのは原則として免許を有しなければだめだというふうに言っているわけでございますが、今回の改正では、当該訓練科について、一部の教科については訓練指導員の免許がなくてもやれる、免許を有する人と同等以上の能力があればやれるということにしたわけでございます。  これによりまして、特に最新の技術のような分野では、民間のまさに最新をやっておられるところの方にも講師になって、指導員になって来ていただけるという道も開けましたし、従来ですと実務経験のないような新規学卒のような方についてはすぐ指導員にはなれなかったわけでございますけれども、その訓練分野の一部であればそういった方にも担当していただけるという意味では、新規学卒の将来性のある優秀な人材もこれによって採用ができるということになるだろうというふうに思っておりまして、自治体が命後の高度なあるいは多様な訓練ニーズにより一層たやすく対応できるのではないかというふうに考えております。
  93. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 そういう新しい制度を導入した、免許を持たない人を新たに今度は指導員として採用するという方式に踏み切った、しかし、これはどうなんですか、これがどんどんもし拡大していったなら、本来の、しっかりした今までの体制でやってきた免許制度というものが大幅に崩れて意味をなさないものになりはしないのか、こういう懸念を強く持ちますね。ですから、免許を取るためにしっかり勉強して努力をされている人々と、そして熱意を持って仕事をしよう、そういう人々と、一方で、免許がなくてもどんどんできますよ、こういうふうになった場合、本来の免許制度の問題、こういうものを危うくするんではないかという懸念を持つんですが、いかがですか。
  94. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 訓練をやるについて、その指導員は免許を持つ方が指導するんだという基本線を変えているわけではございませんので、今回の改正につきましては、免許を持たない人についてはその訓練科目の一部だけを担当していただくということにしているわけでございますので、その点は担保はできていると思います。  それから、既存の訓練免許をお持ちの方についても、同じ溶接なら溶接といっても内容が変わってくるわけでございますから、そういう新しい技能に応じた訓練指導員に対する訓練というものもこれからは充実させていかなければならぬというふうに考えております。
  95. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 技能検定問題については沖田委員の方から詳しい議論がありました。ただ、一つだけ参考までに申し上げておきます。  これはきのうの日経に載っておりましたけれども、専門学校卒業生に専門士という名前をつけよう、こういうふうなことを検討するために調査研究協力者会議というのを発足させました、こう書いております。  先ほどから職業訓練校を卒業した人々にどういう資格を与えたらいいんだろうかという議論がありましたが、皆さんが技能を尊重する、そしてそれを育成していく、こういうことを考えるとすれば、もっと本格的に本気になってこの種問題を検討すべきじゃないか。ただ文部省が、この専門学校の人々にもそういう資格を与えて、自信を持ってこれからいろいろやってほしい、こういうことから恐らくこういう称号の問題が議論されているんだろうと思うのですが、どうですか。いろいろ先ほどから新しい分野のホワイトカラーの方にもいろんな訓練をやろう……。もちろん今までの検定制度があったり認定制度があったりしますから、あるいはもともと国家試験を通っている、そういう資格を持っている人々もいます。認定校の学校でやっている方あるいはまた公共レベル職業訓練を受けた方々、いろんな分野で職業訓練を受けていますけれども、やはり少し総体的にこの人々のそういう立場を理解する意味で称号の問題について考えてみる必要はないでしょうか。
  96. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今先生御指摘の分野は文部省で恐らく検討されているんだろうと思いますが、それはいわゆる資格というよりは、学部を出た人に学士というのが与えられるのと同じような名称ではなかろうかというふうに思っております。詳細は存じませんけれども、多分そういうことであろうと思います。  我々はむしろ、それよりは、先ほどもちょっと御答弁いたしましたけれども、卒業が一定の資格取得、文字どおりの資格取得に結びつくというような形のものが本当は望ましいであろうというふうに思っておりまして、そのためには、一つはやはり教育訓練内容自体の高度化をやるということも必要だろうと思いますし、いろんな現在の資格制度とのすり合わせ、そういったものも必要だと思っておりますので、そういう面ではいろいろ工夫を重ねていきたいというふうに思います。
  97. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 次に、時間がありませんので、いわゆる国際貢献という形で公共職業訓練施設の中で外国人研修生を受け入れるという新たな方策が打ち出されておりますので、この問題で少し質問をさせていただきたいと思います。  業務に支障のない範囲で外国人研修生を受け入れることができる、こういうふうにいたしました。もちろん今までも民間における外国人研修生の受け入れというのをやっておられたと思います。今までの実態と、今度この受け入れをする趣旨といいましょうか、その辺はどこにあるのか、まずそこからお尋ねをしたいと思います。
  98. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 現在、日本に対しましては人づくりを通じた国際協力をやってもらいたいということが非常に強いわけでございまして、開発途上国において求められておる技能というのは、我が国の中小企業の産業現場に多く蓄積されているであろうというふうに考えられるわけでございまして、そういう意味では、中小企業で人材育成をしていただくのが非常に望ましいと思っておりますが、ただ、中小企業指導員であるとかあるいは施設、そういった面では必ずしも十分な対応ができにくいという面もございますので、最初の基礎的な技能の付与というものを公共訓練施設できちっとやって、その上で実際の中小企業現場技能を付与していただく、こういうことがより適切ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  そこで、公共訓練施設といいますのは、もともとは日本人のいわば保険受給者を対象にした施設ということで構築されているものでございますが、全くゆとりがないわけでもございませんので、本来的な日本人のそういう訓練に支障のない範囲内では外国人の研修というものを受け入れてもいいだろう。これはもう論理的に言えば当然認められていることであろうと思っておりまして、現実にも部分的にはやっているわけでございますけれども、この際、そういうことができるんだよということを内外にもいわば宣明をして、訓練施設としてもその辺を意識的におやりいただくというためにこういう条文を設けたということでございます。
  99. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 それで、この法律に今度はちゃんと書き込みましたけれども、今までも中小企業のそういう民間の方々がおやりになっている研修に対して、公的な職業訓練施設でいろいろ開放したりお手伝いをしてきた経過があると思う。それらについてどんな教訓があるのか、どういう実態なのか、端的にちょっとお聞かせください。
  100. 岡山茂

    ○岡山政府委員 先ほど御説明申し上げましたとおり、外国人の研修生につきまして国の補助等を受けながらやっているケース、あるいは民間ベースで研修生を受け入れられているところが現実にあるわけでございまして、国といたしましても、先ほど局長が答弁申し上げましたとおり、中小企業において対応しやすいようにということで、とりあえず雇用促進事業団でやっております技能開発センターというものを各都道府県地域に設置をしておるわけでございます。その中で、例えばこれまでに外国訓練センター等に指導員として派遣された方々がおりますので、そういう方々で対応できる施設についてとりあえず実験的にやってみようということで、現在、雇用促進事業団におきまして取り組みをしておるところでございます。  そういう意味におきまして、まだ数としてはそう大したものがないのでございますが、そういう取り組みを今やっているところでございます。
  101. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 それで、これは法務省にお尋ねをいたしますが、一昨年夏に外国人研修生の受け入れ基準が緩和をされました。その後の受け入れ状況といいましょうか、これは基準を緩和する前と現在、その辺の比較も含めてどんな状況になっているのかお示しいただきたい。
  102. 大澤久

    ○大澤説明員 まず、最近五年間の数字を申し上げます。  過去五年間に研修の在留資格で新規入国をいたしました外国人の数は、昭和六十二年は一万七千八十一人、それから昭和六十三年は二万三千四百三十二人、平成元年は二万九千四百八十九人、平成二年は三万七千五百六十六人であり、平成三年は四万三千六百四十九人となっております。  次に、入管法の改正の前後の数でございます。  改正入管法は平成二年六月一日に施行されておりますが、この施行前の平成元年六月から同二年五月までの一年間における研修目的の新規入国者数は三万四千二百七十一人でございまして、改正法施行後の平成二年六月から同三年五月までの一年間における新規入国者の数は四万五百十八人でございまして、施行前と比較いたしまして一八・二%の増となっております。
  103. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 規制緩和を含めてこの数字を見ますと、どんどん研修生がふえている。もちろん公的に受け入れている機関もありますね。例えばJICA、海外技術者研修協力協会、オイスカ、あるいは労働省なんかのかかわっている中央職業能力開発協会あるいは日本ILO国際技術協力センター等々、公的な意味での研修制度で受け入れている。しかし、ここはそう大幅にふえているということではなくて、ふえているのは、いろいろお話がありますように中小関係の企業に来ている。民間の方々が受け入れている研修生というふうに言っても言い過ぎでないと思うんですね。  そこで、通産省にちょっとお尋ねをいたしますけれども、通産省はこの研修生について、商工会議所や中央会あるいはまた民間の協同組合をつくって受け入れる、そういうものの促進をする意味で補助を出したり新たないろいろな誘導策をとっていらっしゃいますけれども、現在のこの状況、そしてこの制度のあり方についてどのようにお考えでございますか。
  104. 生田章一

    ○生田説明員 一昨年、中小企業団体が管理した形で研修生を受け入れるという制度ができまして以来、私どももきちんとした適正な研修生受け入れを行うようにということで中小企業団体に指導を行ってまいりました。その後着々とその実績が増加しておりまして、本年一月現在でございますが、この受け入れ実績は五十一団体に上っております。受け入れの研修生の数も千二百九十三名というふうに増加しております。  私ども、こういった中小団体については、その親組織というか日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、それから全国商工会連合会といったところを通じまして、適正な運営が行われるように研修に関するマニュアルの配付、必要な助言ということを行っておりますし、さらに国際研修協力機構、昨年の秋に設立されましたが、そこを通じての指導ということも充実させているところでございます。  いずれにしましても、今後とも関係省庁とも連携をとりながら適正な研修生受け入れが行われるように指導を行っていきたいというふうに存じております。
  105. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 この研修問題を考える場合に、JICAとかなんかは別にしまして、民間の場合を想定して、特に企業で受け入れる場合には実技研修というのはどうしても生産ラインの中に入っていきます。ですから、なおさらいわゆる労働と研修という両面性を持ちます。その区分けというのがなかなか難しい。  今まではその研修のあり方についても、座学を三分の一くらいやりなさいよ、あるいは技術研修をあとの三分の二ですよ、そしてその期間も一年間くらいです、こういうふうにして、今の通産省がお答えになりましたような民間訓練も実施をされてきている。  ところが、いろいろ指摘をされておりますけれども、こうしたルールを全く守らないでいろいろな問題を起こしている場合もある。ほとんど時間外労働までどんどんやらせて、実際には労働力として使ってしまっているという場合も大変多く見受けられているようでございます。しかし、これを健全にしっかりと制度として導入をしていく場合に、どうしてもそこのところをきちっとしないといけない。そうですね。  ですから、新たに労働省が導入している問題についてはこれから質問をいたしますけれども、これまでそういう両面性を持っている難しい対応の中で、十分に制度を守ってやってこられたのかどうか。これらの実態について労働省と通産省、両方にお尋ねをしたいと思います。
  106. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 我々労働省の団体でやらしておる研修というものがございます。これは、昨年の場合でいいますと実績的には七百ほどでございますけれども、これにつきましては最初にきちっとした計画を出させますし、その後の巡回指導というような形で、本当にその計画どおりやられているかというのをチェックいたしております。  ただ、それ以外の国の団体でおやりになっているもの、あるいは民間団体でおやりになっているものにつきましては、我々としてはどこでやっているかということも承知いたしておりませんし、具体的な内容のチェックをやる権限もありませんから、やっておりません。  ただ、御指摘のように、就労にわたっているのではないかというようなことがさまざまなところで指摘をされていることは事実でございまして、我々は今度の新しい制度については、後ほど御質問があるということでございますが、きちっとした技能評価がなされるかどうかということによって、本当に研修だったのか、単に労働者を働かせたにすぎない就労であったのかということのチェックが可能ではなかろうかと考えておりまして、研修の終わった段階での技能評価というものが非常に重要なものではなかろうかと考えておるところでございます。
  107. 生田章一

    ○生田説明員 通産省におきましても、先ほど先生から御指摘ございましたAOTS、海外技術者研修協力協会、それから商工会議所といった中小団体を通じた受け入れにつきましては、その団体に対する指導を従来からやってきております。  それ以外の個々の企業での受け入れに対しましては、それぞれの関係業界、業界団体がございますので、そこに対しての適正な受け入れが十分に行われるようにということで指導を従来からやってきております。  さらに、先ほど申しましたが、国際研修協力機構というものもそういった業界に直接指導ということで今非常に活躍をしておりまして、そこを通じた指導もこれから充実させていきたいと考えております。
  108. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 この問題で随分通告をしておったのですが、もう時間がありませんから、端的に申し上げてまいります。  その背景には労働力不足があり、現在の不法就労までになってしまっている状態がございます。 そういう意味から、研修制度を悪用して今のようないろいろなことが起きてしまっていることなども実はあるわけですね。過去に労働力不足問題で知恵を絞っていろいろおやりになったんだろうとは思うけれども、例えば日本語学校をどんどん認めていって、アジアの人々を呼んで勉強する機会を与えよう……。ところが、これが不法就労の、何といいましょうか温床になってしまった。あるいはまた、二世、三世は特別に受け入れましょうという、これは法務省の入管の関係でそういう特別扱いをした。これがまたいろいろなトラブルを今起こしている。  今度新しく労働省が、技能実技制度というのですか、三カ月勉強する、六カ月技術研修をする、あとの十五カ月は端的に言ってしまうと労働しながら勉強する、そういう新たな制度を導入した。これは第三のそういうものにならない、絶対ならない、そうしなければならないと思いますけれども、言ってみれば検討している段階でどういうふうにそういうところを配慮され、確信を持ってそういうふうに言えるのかどうか、お答えいただきたい。
  109. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 現在、労働省技能実習制度についても検討させていただいておりますが、これは昨年の十二月に行革の答申でもそういうものが提言されているということで、関係各省でそれぞれ御検討なさっているわけでございます。  我が方で検討しております段階で、今先生も御指摘ございましたように、不法就労に流れないようにする歯どめがどうしても必要だろうと思っておりまして、そのために新しい仕組みをつくるについてのキーポイントと申しますか、それは一つには研修生の受け入れあるいは研修中の管理体制といったものをきちっと構築する必要があるだろうということと、もう一つは、先ほど言いましたように、公的な、客観的な機関によって、本当に研修されたかどうかという技術評価をきちっとやるということがこの制度の生命線ではなかろうかと思っておりまして、それによって不法就労にわたることのないような仕組みができ上がるのではないだろうかというふうに考えております。
  110. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 そこで、そういう検討をされているやさきに、今度の法改正で、外国人研修問題を公共訓練施設でそれぞれ受け入れましょう、少しやりましょう、こういう格好になってまいりました。それは、新しく検討されている今の実技研修制度というのでしょうか、これを視野に入れた法改正なんですか。それとも、現在までやっている民間レベルの中小企業の研修を受け入れるという延長線上のレベルで考えていらっしゃるのか、どちらですか。
  111. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 これは現在の研修というものを一応建前にして考えているわけでございまして、現在の研修の場合でも、最初に座学というものをやって、その後実務研修をやるということになっているわけでございます。  その座学をやるにつきまして、基礎的な、きちっとした基礎教育といいますか、そういうものはなかなか中小企業ではできにくかろう、そういう点を公共施設できちっと付与してやってはどうだろうと考えているわけでございますが、もとより、新しい制度の中でもそれは十分応用が可能だということでございますから、新しい技能実習制度の中でもやはり公共訓練施設というものは一定の役割をきちっと果たしていくべきだろうと考えております。
  112. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 そうだとしますと、大臣、新しい制度を今検討されているでしょう。通産省や関係省庁、法務省も含めて、外国人労働問題とあわせてこの研修問題というのは、かなりいろいろな意味から注目を集めていますね。  例えば、そういう研修制度が、この制度によって今まで以上にはるかに需要が大きくなってどんどん来る、こういうことになったときに、新しく公共職業訓練施設で研修生を受け入れるという場合、公共職業訓練施設にどんどんとこういうものが要求をされていくということは想像にかたくないような気がするのです。その場合、十分に対応できるのかどうかということが一つ。  同時に、都道府県職業訓練施設をも含めてこれをおやりになる、こういうことですね。そうすると、特に外国人研修の場合は言葉の障害がある、あるいは技術レベルを伝えるという意味でもいろいろな障害が出てくる。特にそういう意味では教官の、指導員の体制をどう確立するのか、財政をどうするのかということを含めてどんな方針をお持ちなのか、そこのところをまずお聞かせいただきたい。
  113. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今回の法律でも考えておりますのは、あくまで現在の日本人に対する訓練に支障のない範囲でということでございますから、外人を受け入れるために指導員を大量に雇わなければならぬとかそんなことを考えているわけではございませんので、支障のない範囲の中でやろうということでございます。  ただ、今まで日本人にやっていた訓練を今度は外国人にやるわけでございますから、その限りでは、指導員について行う追加的な訓練が逆に必要になってくるケースはあるかと思いますが、体制的に言えば、支障のない中でやっていこうということでございます。
  114. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 最後に、そうだとすると、新しく検討している実技研修制度を導入し、そしてそれを推進していくということだとすると、改めて、それをどんどん受け入れる場合には法律は見直すということですね。
  115. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今の職業能力開発促進法は、基本的には日本人のいわば訓練生を頭に置いて書いておりまして、予算的にも、一般会計はもちろんいただいておりますが、雇用保険の方から主として出しているわけでございます。外国人ということになりますとそういう対象でもございませんから、もし本格的にやるとすれば、それは能力開発促進法の改正というよりは、むしろ別途の法制をあるいは考えるべきではなかろうかという感じがいたしております。
  116. 鈴木久

    ○鈴木(久)委員 終わります。
  117. 川崎寛治

    川崎委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  118. 川崎寛治

    川崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村巖君。
  119. 中村巖

    ○中村(巖)委員 ただいま議題となっております職業能力開発促進法改正案について質問をいたします。  職業能力開発ということは大変大事なことでございまして、人それぞれに学校教育を受けるわけでありますけれども、学校教育だけではこれは職業能力があると必ずしも言えないわけで、やはりそれなりに職業能力を身につけるということが必要でありますし、あるいはまた、時代がだんだん変わってまいりますと、既に職業能力があるといいましてもそれが時代に即応しないという問題にもなってくるわけでありますから、それについて何がしかの職業能力開発するような措置というものが必要であるということはわかるわけであります。  しかしながら、本来的には職業能力というものは、これは今の社会の仕組みの中ではやはり企業において職業能力を身につけさせるというのが基本的なあり方だろうというふうに思うわけで、これに対しまして国家がどれだけのことをやるのかということは、議論のあるところだろうというふうに思っております。  例えば、私は弁護士でありますけれども、弁護士になるためには、司法研修所というものがありまして、司法研修所で二年間研修をすることになっておりますけれども、その司法研修所の問題についても、司法研修所で国家が弁護士になる者のために金を出して教育をする、そしてそれは、結局は弁護士になって自分の金もうけをするのじゃないか、一体こういうことの必要があるのか。司 法研修所は法曹三者を養成するわけでありますから、検事あるいは裁判官になる人に対しては国家が金を出してもいいだろうけれども、弁護士になる者に対して何で金を出すのだ、こういうような問題もあるわけです。  したがって、職業能力開発ということについても国家がどこまで施策を講ずべきものなのか、それについてはいろいろ議論があってもいいだろうと思うわけであります。しかしながら、中小企業というようなものを想定いたしますと、これはなかなかその企業の力だけで職業能力開発するというわけにはいかない、こういう面もあるわけでありますから、やはり国家が何がしか一定の助力をしなければならぬのだろうということも考えられるわけであります。その辺のこともいろいろありますけれども、それを論じますと大変基本的であり、かつ抽象的で難しいことでありますから、ここではそれは論じないことにいたしまして、とりあえず法案の問題に入っていきたいと思うのであります。  まず最初にお伺いを申し上げたいことは、この法律ができることによって何かが変わるのだろうか、こういうことであります。  従来この法律があるわけでありまして、これを改正しようというわけであります。ということは、言い直せば、従来の法律では、従来の法律に基づくところの運用では問題があったのだ、こういうような問題点があったのだ、だからこれは変えなければならぬのだ、こういうことがあるはずでありまして、では、今回こういうことで法案が出されて法律が改正になる、こういうことになると、この職業能力開発問題について何かが変わるのだろうか、こういうことをお伺いしたいわけであります。  法案を拝見すると、「職業訓練」というのを「職業能力開発」というふうに変えるとかそんなことが見られるわけでありますし、あるいはまた、例えば訓練指導員の免許のない者にも指導をさせられるとか、幾つかの細かい点が、細かい点と言っては申しわけないけれどもそういうようなことがあるわけでございまして、さらにはまた、今までの養成訓練向上訓練及び能力開発訓練の三区分を廃止するというようなことがありますけれども、これらのことというものは法律を変えなくてもやれるのではないのか、そんなような気がするわけでございまして、何かが変わるのだろうかということをまず第一にお尋ねを申し上げたいと思います。
  120. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 能力開発の基本的な考え方につきましては、今先生御指摘ございましたように、日本の企業社会でありますと企業が基本的にやる、企業に入る以前の教育については、それは文部教育が受け持ったり、あるいは労働行政の場合でも養成訓練という形で請け負う場合もございますけれども、一たん企業の中に入った企業教育という観点から見ますと、それは基本的には企業がおやりになるというケースが大半だろうと思います。  ただ、それにつきましては、先生も御指摘ございましたように、中小企業における人材養成といいますか、そういった点についてはやはり能力的に問題があるというようなことで公共的な分野がお手伝いをする、こういうことでなかろうかと思いますが、訓練体制のあり方につきましては、やはり経済社会の状況に応じてそれぞれに対応していかなければならないだろうというふうに考えております。  まず、今回基本的な背景になりましたものから申し上げますと、やはり今後の若年労働力の減少ということで構造的に労働力不足基調に移るであろうということが考えられます。一方、技術革新あるいは情報化というものが急速に進展をしているという意味では、その持っておる能力についての高度化ということも必要になる、それから若年者を中心にした技能離れと言われるような風潮もある、こういったことが能力開発という意味では非常に問題でございまして、こういった状況に対処していく必要があるだろうということでございます。  そこで今回、幾つかの新しい機能を付与できたというふうに考えておりますが、まず、公共職業訓練施設というものを、従来の訓練だけの施設から、むしろ訓練に関してといいますか、職業能力開発に関して中小企業あるいは労働者がみずから行おうという場合に、いろいろな情報提供をしたり相談に乗るというような機能を持たせたいということが一つの柱としてございます。これによって民間の自主的な能力開発促進されるのではなかろうかというふうに考えております。  それから、公共の部門では、先ほど御指摘ございました三区分を廃止するということを考えておりますが、これは従来よりもより柔軟な体系を訓練に導入したいということでございまして、社会経済の状況に合わせて柔軟な対応ができるようにということで、訓練基準等についての縛りもできるだけ緩やかなものにしたいということから考えているわけでございます。  それからもう一つは、訓練短期大学校などでは、従来から長期訓練をやっておりましてかなり高度な訓練をやっておりました。これは専ら養成訓練でございましたけれども、こういう高度なものを在職者向けにも提供する必要があるだろうということで、短期大学校でも在職者向けの、そのかわりそれは二年ということではなくて短期になると思いますが、そういったものも提供するようにしたいということでございます。  そのほか、技能検定の資格の弾力化というようなことも行おうということでございます。  先生御指摘の、法改正をやらなくてもやれるのではないかという点につきましては、確かに能力開発法全体が国民の権利義務にかかわるようなものではもともとございませんから、法律がなくても、ぎりぎりな議論をした場合に、やれないかとおっしゃれば、法律の先生でございますから専門家でございますが、なくてもある意味ではやれる面はないことはないと思います。ただ、この法律につきましては、いろいろ実際にやるについては予算的な措置なども講じておりまして、そういう意味では法的な規制も従来からやっておるわけでございますので、内容を改めるについても過去のそういった経緯もあって、今回きちんとした改正をやって実際の運用に当たる、こういうことで考えておるわけでございます。
  121. 中村巖

    ○中村(巖)委員 その点に関連してもう一回お尋ねをすれば、今回法改正をしたことによって職業能力開発に関する理念というものが変わるのかどうか、その辺はいかがですか。
  122. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 職業能力開発に対する基本的な理念というのは変わっていないというふうに考えております。ただ、言葉は、前回のときにも職業訓練というのを職業能力開発ということに変えました。それを今回は、法律の名称だけではなくて施設の名称にまで及ぼすというようなことがございますが、それは先ほど言いましたように、職業能力開発というものを職業訓練というよりはもっと広くとらまえていこうというようなことでございまして、そういう意味での若干の変更はございますけれども、基本的な理念そのものは変えているつもりはございません。
  123. 中村巖

    ○中村(巖)委員 次に、今労働省が行っているあるいは考えている職業能力開発対策、そういうものは概略どういうことであるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  124. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 職業能力開発についての基本的な対策は幾つかございます。  一つは、公共職業訓練施設を、実際には雇用促進事業団に運営をお願いしておりますが、国みずからが運営をするということがございます。  それからもう一方では、民間がおやりになる訓練をいろいろ援助する。そういう意味では、生涯能力開発給付金による助成の措置でありますとか、あるいは今回新しくやろうといたしておりますが、能力開発に関するいろいろなデータベースを活用しての情報提供とか相談業務、そういった業務がございます。これは、能力開発促進法が理念といたしております経済社会の変化に対応した生涯にわたる職業能力開発促進するための措置ということでございます。  もう一つ能力開発法の柱、能力開発対策の柱では、技能を尊重する社会の形成ということがございます。これも法律の中にも一部書いてございますけれども、技能検定制度を初めといたしまして職業能力評価の仕組みというのが幾つかございます。そういったものを総合的に推進する、あるいは技能競技大会とかすぐれた技能労働者の表彰といったような制度を通じて技能振興策の推進を図っていくということがございます。  それからもう一つは、人づくりを通じた国際貢献、これはもう最近は大変重要な施策でございまして、やり方といたしまして、一つ開発途上国に訓練センターを設置する、そこでいろいろな人材養成をするということがございます。これは法律上の能力開発そのものの制度ではございませんが、ODAの予算を利用してそういう形でやる。最近は、それ以外に、向こうから研修生の方に来ていただいて日本国内で研修するということも非常に重要になってきております。この面では、今回の法律改正の中では、公共職業能力開発施設についてもそういった海外からの研修生についても一定の利用の用に供しようということを考えております。それ以外に、いろいろな外国人研修生受け入れに対して、国際研修協力機構等を通じた援助などをやる、こういうようなことが現在の職業能力開発の具体的な考え方ないし対策でございます。
  125. 中村巖

    ○中村(巖)委員 職業能力といっても、言葉は悪いけれどもピンからキリまでいろいろありまして、建設現場での仕事の職業能力開発するというようなものもあるわけでありますけれども、そういったものは職業訓練校とかというところでやっておるわけであります。しかしピンの方へ参りますと、今経済社会が大変に複雑になってきて、また技術そのものも大変に複雑になってきている、高度化しているということがあるわけであります。  そういういわば高度の知能を要する技術、大学を卒業してもまだまだ研究、勉強もしなければならないようなものに対する職業能力開発、こういうことについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  126. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 技術全般につきましては、最近のいわゆるME関連技術だけではなくて、いろいろな分野においても技術革新は行われておりまして、そういった技術革新に対応した訓練科の増設という問題は常にございますし、それから、同じ訓練科であっても訓練内容そのものを高度にしていくということはあるわけでございます。  我々としては訓練科目の不断の見直しあるいは訓練基準の不断の見直しといったものをやっておりまして、時代から取り残されないようにするように心がけているわけでございます。
  127. 中村巖

    ○中村(巖)委員 高度の職業能力開発する施設というかセンターというようなものも今運営されているわけですね。具体的にどういうことでしょう。
  128. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 最近の技術革新、情報化の進展に伴いまして、特に情報処理関連職種というものが非常に需要があるわけでございまして、これにつきましては、公共職業訓練では職業訓練短期大学校というのを設置いたしております。ここではこういったものを特にやっております。それから高度技能開発センターというのが千葉と岐阜でございましたか、二カ所ほどございます。ここでも特に中堅の技術者を対象にしたハイテク関連の職種をやっております。それから、先ほど言いましたようにME関連の訓練科はその他の訓練校でも適宜やっているわけでございます。  それ以外には、第三セクター方式でございますけれども、情報処理技能者養成するためのコンピュータ・カレッジ、これは高卒二年を対象にしたものでございますが、こういうコンピュータ・カレッジの運営をいたしております。それから、これは通産省との共同事業でございますが、システムエンジニアグラスの高度のソフトウエア技術者を育成するための地域ソフトウエア供給力開発事業というのがございます。それからもう一つは、これは郵政省との共同事業でございますが、電気通信関連技術者を養成するための電気通信基盤充実事業といったものも推進をするというようなことでございまして、高度な技術者の対応については幾つかの手段をとって養成をしているということでございます。
  129. 中村巖

    ○中村(巖)委員 そういう高度の技術もあるしいろいろな技能もあるわけでありますけれども、今具体的に職種によってはそういう技能者が不足しているということがあるわけで、職業能力開発という観点からしてどういう技能者重点的にどういうふうに養成をしなければならないのか、その点について労働省はどうお考えですか。
  130. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 平成二年に私どもが実施をいたしました技能労働者等の需給状況調査というものを見ますと、技能労働者全体は労働者の中で約一三・六%ぐらいが不足しているというふうに言われております。その中では、コンピュータープログラマーだとかシステムエンジニアといったものも大幅に不足するということでございます。  こういう技術革新の進展に対応した高度な技術者、技能者あるいは情報処理の関係の従事者といったものの不足に対する養成も非常に重要でございますが、一方、建築関係でもやはり不足の状況がございますし、あるいは介護労働者といった面でも不足はあるわけでございます。そういった職種についても我々は重点を置いております。  それから、最近のもう一つ重点は、やはり高齢化あるいは女性の職場進出ということに伴って、そういった方々に対応した職種の設定というようなこともやっているわけでございます。
  131. 中村巖

    ○中村(巖)委員 最近では、建設業関係で非常に技能労働者が不足をしている。例えば型枠工というような者が大変に足りないというようなことが言われているわけでございまして、それのみならず、ほかの部分でもいろいろ技能労働者が不足している。それは労働力全体が不足の状況にあるからにほかならないわけでありますけれども、殊に建設業関係はいわゆる三K、こういうふうに言われておってなかなか人が集まりにくい、なかんずく人が集まりにくいから、それについて熟練した技能を有する者がない、こういう状況にあるわけであります。  そういう点で、そういう人たちを養成するために何か特別な配慮というようなものはやっておられるんでしょうか。
  132. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 中小企業の中でも、特に今御指摘の建設業のようなものについては人材が不足しておるというような状況がございます。そこで、我々は中小企業人材育成プロジェクトというようなものを別途予算的に措置をいたしておりますが、これは、建設業も含めまして、中小企業の事業の高度化に対応した人材育成をやろうというようなものでございまして、いろいろな協同組合等々で高度な人材育成をやりたいというような場合に、特別の予算措置を講ずることによってそういった人材育成を助けるという措置も講じているところでございます。
  133. 中村巖

    ○中村(巖)委員 その辺の問題になると必ずしも職業能力開発の問題ではないのかもしれませんけれども、やはり労働省全体としては、その種のいわば建設業というような最近の若い人たちに嫌われるそういう仕事について、それを労働者確保というか、そういうことについていろいろ考えていかなければならないと思いますが、その辺のことは、これは職業能力開発と必ずしも関係がありませんが、労働大臣のお考えはいかがですか。
  134. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 建設労働者はいわゆる三Kと言われているわけでありますが、ただ私は、いろいろな建設現場を回ってみまして、特に最近は、みなとみらい横浜だったですか、あそこの建設現場で二十名ぐらい女性の方々が働いていらっしゃるところを視察したわけでございますけれども、大変明るい方々で、意欲的にやっている。周りの男性がみんな大事にしているからすばらしい仕事だ、こういう話だったのでありますが、それは一つの例でありますけれども、女性の方々でもできるような建設作業がふえてきているわけですね。建設事業だからといって力仕事というわけではないので、まさにボタンを押すだけでいろいろなことができるわけであります。  そういう意味で、建設労働者不足に対する一つの対応は、建設作業の徹底したロボット化、機械化、省力化ということをすることによって建設作業のいわば魅力を増すことも大事ではないか。率直に言って、給料の問題もございますけれども、やはりイメージが相当マイナスに作用している、こう思いますので、そういった点で、建設作業の合理化、そして、そうしたいわばオペレーターにするような、そういった建設作業の機械化、ロボット化と並行して、操作の仕方を教える職業訓練ですとか、そういったことをあわせてやっていけば、私は、建設労働者の供給は決して悲観したものではない。かように個人的に考えております。
  135. 中村巖

    ○中村(巖)委員 その一方では、先ほども申し上げたわけでありますけれども、経済社会が高度技術化する、ハイテク化をしていくということの中で、いわば社会そのものが非常に技術革新というようなものがなされてくる。そうすると、従来はその仕事に適応する能力を持っていた者が、高度化をする、あるいは技術革新あるいは情報化が進むと、それに適応できない、こういうようなことが起こってくるわけで、これに対するやはり能力開発というものが必要になってくるだろうと思うわけであります。それと同時に、その種の状況がつくられてくると、そういう高度技能に適応する労働者の数が足りなくなってくる、こういう問題が起こってくるわけであります。  その辺についてはどういう考え方、対策をお持ちでございましょうか。
  136. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 先ほどもちょっと触れましたけれども、平成二年十一月に実施いたしました技能労働者の需給状況調査によりますと、プログラマーあるいはシステムエンジニアの不足率というのは、技能労働者全体では一三・六%でございますが、それぞれ三〇・四、三四・九というようなことで、かなり高率な不足が見られるわけでございます。  それからまた、今後の見通しにつきましても、これは通産省の産業構造審議会の小委員会で出された報告でございますが、二〇〇〇年には約九十七万人ぐらい不足するんではないかというようなことが言われているわけでございます。  そこで、先ほどちょっと触れましたけれども、我々といたしましては、訓練課程の見直しという中で情報処理科といったようなものを新しく加える、新設をするというようなことをいたしておりますし、それから職業訓練短期大学校でもそういう情報処理科を設置するというようなことでの高度な技術養成ということをやっているほかに、第三セクター方式を使いましたコンピュータ・カレッジとか、あるいは、通産省、郵政省との共同作業による養成、こういったことをやっているわけでございまして、不足状況を見ながらまだ必要な対応を講じていきたい、かように考えておるところでございます。
  137. 中村巖

    ○中村(巖)委員 コンピューターのプログラマーとかあるいはシステムエンジニアというものは、これはある程度技能を要するわけで、パソコンの端末をたたいている分にはそれほどの技能は要しないのかもしれませんけれども、やはりプログラムをつくるとかあるいは全体の機構というものをつくるということになれば、それは大変な技能というか知識というか、そういうものを要するわけであります。こういうものがなければ今の世の中というものは進んでいかない状況にあるわけで、あらゆる物事がコンピューター化される。例えば、生産工場における機械の操作それ自体についてもコンピューター化されて、コンピューターによってオペレーションがなされる、こういうような状況になっているわけです。  ですから、かなりこの部分というものは今の産業社会の中では基幹的な部分になっているということが言えると思いますけれども、それに携わる人たちが大変に不足しているということでは、社会そのものが円滑に回転をしていかないということになりかねないということだろうと思うわけです。  ただ、今御指摘の、通産省の予測で九十七万人二〇〇〇年までに不足するというのは、これは本当だろうかなというふうに思うわけで、九十七万人というのは膨大な数でありますから、また、それはちょっとオーバーなんじゃないかというふうに論ずる人もあるわけでございまして、その辺のところは労働省としてはそういう今の不足状況から推算するというか推測するというか、何かそういうことはやっておられないのでしょうか。
  138. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 今のところ我々としては九十七万人にかわる数字がないものでございますから、一応それでお話をしているわけでございますけれども、もとより公共訓練ですべて、そういった不足が仮にあるとしても、それを養成するということには必ずしもならないだろうと思いますから、民間訓練の方でも、当然民間企業でもそれなりの力を入れていかれると思います。  そこで、先ほど申し上げましたように、実際の不足状況がどうかというようなことをよく見ながら、民間のあり方も見ながら公共のあり方というものも考えていきたい、こういうことで考えているわけでございます。
  139. 中村巖

    ○中村(巖)委員 それは、もとより、いわば労働省の仕事としての職業能力開発によってすべてが解決されるという問題ではないわけで、民間におきましても、そういうプログラマーなりシステムエンジニアというものを養成をするということをやっているわけで、もともとそういう開発をする会社すらたくさんある、ソフトハウスというか、そういうものはたくさんあるような状況ですから、多くは民間養成をされる、こういうことになろうかと思いますけれども、労働省の関係の中では、現時点ではどのくらいの人間を年間養成をする能力があるのか、その辺のことをお伺いしたいと思います。
  140. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 ちょっとここでは訓練全体のあれでは数値はございませんが、情報処理科のございます短期大学校は、二十三校中二十二校はもう既に持っておりますし、それから県立の方でございますと、これは数字がございますが、今全体で八百十名ほど県立の関係では情報処理の定員を擁しておるところでございます。
  141. 中村巖

    ○中村(巖)委員 情報処理科で何人かはいるんでしょうけれども、例えばそれが年間、年間で計算するのかどうかわかりませんけれども、千人や二千人ということでは、九十七万という数字からすればこれはとてもとても話になるものではないというふうに思いますけれども、その辺をさらに、九十七万はオーバーとしても莫大に不足するならば、それに相応したところの施設なり訓練課程なりというものを大幅にふやさなければならぬじゃないかというふうに思いますけれども、いかがですか。
  142. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 実は我々の将来の訓練校のあり方ということにも絡みまして、四職種、いわゆるテクニシャンと称する人たちの職種、今の情報関連の職種、建設関係の職種、それから介護労働の関係の職種、この四職種を取り上げまして実は今研究会をやっていただいておりまして、数の将来予測と今までの供給源がどういうところから実際に来ていたのだろうか、今後はどういうところから来るであろうか、そういうような予測をしていただいているところでございまして、間もなくその研究成果がまとまろうと思います。  こういった研究に基づきまして、我々はまた将来の訓練校における訓練体制というようなものを考えていきたいというふうに考えております。
  143. 中村巖

    ○中村(巖)委員 現実にいろいろな企業を見た場合におきまして、これはまた職業能力開発とは関係ありませんけれども、そういうプログラマーとかあるいはシステムエンジニアという人たちが大変に忙しい状況にあるというのは事実でございます。  ただ、いろいろな関係もございましょうけれども、例えば発注先の方でいついつまでにやれ、こういうことを言われて、それを設計してかつプログラムを組むということは簡単なことではないので、それに間に合わせるためには徹夜してでもやらなければならない、こういうような状況というものも生み出されている。必ずしもそうでなくても、かなり長時間労働に従事しているということがある、これが現実だろうというふうに思うわけでございます。そうなりますと、長時間従事しているとやはり体にいろいろな障害が生じてくる、こういうことがあるのでございます。  その辺について、コンピューター関連職種の職業病というのはどういう状況か、それに対する対策を労働省としてはどう考えているのか、お伺いを申し上げたいと思います。
  144. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 労働省ではコンピューターに関連する職種の疾病というとり方で統計的な分類、把握はしておりませんけれども、ただ、コンピューター関連職種におきましては端末機、いわゆるビジュアル・ディスプレー・ターミナルといいますかVDTと呼ばれる表示装置を操作する作業、VDT作業と言っておりますけれども、こういった作業が大変多いわけでございます。この作業におきましては目が疲れるとか手腕系、手とか腕ですけれども、手腕系に対する影響があるということがつとに指摘をされておるわけでございます。労働省では昭和六十三年にVDT作業者、これはコンピューター等の関係を扱う方々でございますけれども、調査をした結果によりますと、愁訴といいますか、要するに心身に不ぐあいを訴える方の割合はほかの産業に比べてかなり高いということが出ておりますし、情報サービス業におき、ますVDT作業岩のうちの二二・五%が目の疲れ、あるいは目がかすむというようなことを訴えておりますし、一三・一%が肩、腕それから手指、指でございますが、しびれを訴えている、こういう実態にございます。  他方、労働省では、この調査以前から、VDT作業のもたらします健康に対する影響あるいはその予防対策に関しまして専門的な研究調査をしておったわけでございますが、昭和六十年の十二月に一連続作業時間等の作業管理あるいは健康診断、労働衛生教育などといったVDT作業におきます総合的な労働衛生対策を取りまとめまして、これを「VDT作業の労働衛生上の指針」というガイドラインとしまして定めました。これに基づきまして、現在、鋭意関係の事業者を指導しているという段階でございます。  それから、コンピューター関連の業種では、この業種に限りませんけれども、特にこういった業種では技術革新のスピードが大変速いわけでございます。こういうことを背景にいたしまして、労働環境とか作業態様等の変化により疲労とかストレスを感じている労働者の割合が高くなっておるわけでございます。  今後はさきにこの国会におきまして成立をさせていただきました労働安全衛生法等の一部を改正する法律に基づきまして、すべての労働者が疲労、ストレスを感じることの少ない働きやすい職場、つまり快適な職場環境をつくるという政策をさらに推進をしてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  145. 中村巖

    ○中村(巖)委員 今ガイドラインを設けられたということでありますけれども、従来、労働安全衛生というものについては、労働安全衛生法の一部を改正して今回快適な職場環境ということも入ってきたわけではありますけれども、主たる部分が工場労働というものに焦点が向けられておった。しかしながら、こういうふうに世の中が変わってまいりますと、今コンピューターで職業病が発生するというような状況に応じたところの法的な対応というものも必要になってくるのじゃないか。ガイドラインは結構でありますけれども、やはりその種の法的な規制というようなものを考えなければいけないのじゃなかろうかと思いますけれども、その点はいかがでしょう。
  146. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 労働衛生上の問題につきましては、現在、御承知のように労働安全衛生法に基づきまして、労働基準監督署あるいは局において、事業所が必要な措置をとっているかどうかということにつきまして監督指導を行っておるわけでございます。  そういった法律に基づきます監督指導の中で、ただいま申し上げました指針を適用しまして、それに基づく指導をいたしておるわけでございますから、そういった意味では、やはり法律制度に基づきます職業性疾病の予防という観点から対処しているというふうに考えております。
  147. 中村巖

    ○中村(巖)委員 次に、もう一点お伺いをいたしますけれども、今回の法律改正の中で、外国人の研修というか職業能力開発というか、それについても定められたところでございます。  九十七条の二関係ですか、外国人研修生等に対しても職業訓練または指導訓練に準ずる訓練を行うことができる、こういう規定になっておりますけれども、これはどういう意図からこういう規定が設けられたのでしょう。
  148. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 最近、日本に対しましては人づくりを通じた国際貢献をしてほしいという要請が大変強いわけでございます。開発途上国で求められている技能というものは、我が国の超先端というのではなくて、むしろ中小企業の作業現場にある技術というのが非常に有効なケースが多いわけでございますので、そういう意味では、中小企業においてそういった研修をしていただくというのは非常に必要だろうというふうに考えております。  しかし、中小企業では指導員という人材あるいは施設の面で必ずしも十分でないというようなことがございますので、その最初の基礎的な技能付与の部分、今の研修制度でも三分の一は座学をやりなさいというようなことが言われておりますが、そういった当初の基礎的な部分については、むしろ公共訓練施設のようなところできちっとした訓練を最初にしてさしあげて、その上で実際に現場でオン・ザ・ジョブでやりながら実務研修をしていただくというのがよろしいのではないかということを考えたわけでございます。  そこで、本来公共職業能力開発施設というのは、日本人の労働者といいますか、そういったものを頭に置いた施設でございますから外国人は範疇には入ってないわけでございますけれども、日本人の訓練をしていくのに支障のない範囲であれば、それはそういった利用を妨げるものではないのではないかということでございまして、これは法律的に言えば当然書かなくてもやれるのではないかと思ったわけでございますけれども、それを内外に宣明するという意味でこの際そういった条文を念のためにつけ加えたということでございます。
  149. 中村巖

    ○中村(巖)委員 研修というのは、入管法に基づいて研修をするために外国から来るわけでございまして、研修の受け入れというものができるような企業なり、あるいは団体なりというものが研修を受け入れてそれを行うわけで、現実的に中小企業等において必ずしも十分に座学等ができない場合においては、財団法人を設けてそこで研修機構をつくっておられるわけで、その上にまた職業訓練の規定の中に外国人の問題を入れると、何か屋上屋を架すというか、何かそのつながりがわかりにくいような感じがするのですけれども、いかがでしょうか。
  150. 松本邦宏

    松本(邦)政府委員 昨年の十月に設立されました国際研修協力機構といいますのは、みずから研修をしてさしあげる機構ではないわけでございまして、実際には、研修生を受け入れたいけれどもどこの国からどういう人がいるのかわからないというような方、そういう中小企業について実際の研修生を御紹介するとか、それから、実際に訓練をやるのだけれども、どういうカリキュラムでやるのが本当に訓練の実が上がるのかよくわからない、そういう御相談に応じて実際のカリキュラムをおつくりするとか、あるいは具体的には訓練指導員を派遣するとか、そういうことを考えている仕組みでございまして、みずからやることではございません。みずからやるのは、やはりこういう訓練施設でお手伝いをするということがいいのではないかということでございます。
  151. 中村巖

    ○中村(巖)委員 時間ですので、終わります。
  152. 川崎寛治

    川崎委員長 金子満広君。
  153. 金子満広

    ○金子(満)委員 限定された時間でありますから、一つの問題に絞って具体的に政府の考え方をお聞きしたいと思います。それは障害者職業訓練障害者能力開発をどう強化していくかという問題です。  これは言うまでもないことですが、職業訓練については民間訓練公共訓練の二つあることはしばしば指摘されているとおりですが、障害者職業訓練という場合には、民間訓練でやってできないことはありませんけれども、やはり本筋は国が責任を持って方向と具体的な裏づけを持った施策を実行していくことだと思うのです。  それをしないと、言葉はあっても実際歯車は回らないわけですから、この点について、まず大臣に、政府がやはり本筋としてやっていくんだという点についてのお考え方を伺いたいと思います。
  154. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 障害を持っていらっしゃる方々が強く希望されることは、健常者と同じような職場で仕事をするということでございますので、そういう点でも、そういった健常者の職場で肩を並べて仕事ができるためには、必要な職業訓練というのが健常者以上に重要になってくるわけでございますが、先生御指摘のとおり、これはなかなか民間ベースでできない仕事でございますので、やはりこれは国もしくは地方自治体の責任においてきちっとやるべき分野である、かように考えております。
  155. 金子満広

    ○金子(満)委員 職業を持って自立したいというのが、私は障害者の圧倒的多数の切実な願いだと思うのですね。しかし、ただ頑張れではできないし、そして見ているだけではどうしようもないわけです。  そこで、具体的に若干の問題をお聞きしたいのです。全国には幾つかの障害者のための公共訓練の施設がありますが、そういう中で、きょうは具体的に、東京小平市にある東京障害者職業訓練校の問題について伺っていきたいと思います。  私は、今までこの東京にある東京障害者職業訓練校については、いろいろ関心もあるだけではなくて実際に地方自治の問題からも、あるいはまた全国的な政治の問題からも資料をとって見てまいりましたが、きのうは直接行って具体的なお話も伺ってまいりました。  東京小平市のこの訓練校は、歴史は古いわけで、戦時中にさかのぼるわけですけれども、戦後いろいろの改革もあり、そして現在の訓練校になったのは一九六九年、それまでは職業補導所という形でやってきたわけですね。  こういう中で、いろいろ実情を聞いてまいりましたが、確かに職業を持って自立したいという障害者の熱意というのは、ここに対する応募を見てもわかるわけですね。今この小平の訓練校は職安を通じまた養護学校を通じて全国的に呼びかけているわけですね。そうしますと、東京を中心に関東一円からの応募が多いのはそのとおりです。しかし、実際を見ますと、九州や東北、近畿、数は少ないけれどもそういうところまで及んでいるのですね。特に軽度の知恵おくれの方々の入校希望というのは、実際入校している人の倍以上になっているわけです。今のままではこたえ切れないんですね。現在入っている総数が二百三十名ということになっています。実務作業で軽度の知恵おくれの方というのが三十名。これも十名ふやしたのですよ。施設を無理してふやしたのですね。ところが、受験希望というのは七十二名あるわけです。こういう状態の中でこれ以上どうしようもないという点で、一つは施設の問題なんですね。  小平市ですから都心と違ってかなり土地はあります。環境も非常にいいですね。そして入ってみて、中も明るいし、障害者の表情が明るいですよ。校長さん初め指導員の方々の努力というのは並み並みならないということを私も感じました。しかし、残念ながら要求にこたえられないんですね。その中で、現在この訓練校にある別棟で、ここが実際には実習室という形になっているのだが、軽量鉄骨の平家でかなり老朽化しているのですね。この改築をということで要望はもう出してあるそうです。それから、敷地面積もいっぱい空き地があるんですね。ですから、かなりの規模のものはできると私は思うのです。ただ予算とか全国の順序とか労働省の計画とかいろいろあるんだろうと当事者は言っておりましたが、やはり待っていたのではどんどん障害者が置いていかれて、そして、そのうちにそのうちにという中で事態は悪化するわけですから、この辺で要望が出ているということをどのように計画し、早期に実現していくのか、この辺をちょっと伺いたいと思うのです。
  156. 岡山茂

    ○岡山政府委員 ただいま東京の障害者職業訓練校の入校状況についてお話がございました。確かに精神薄弱者の方を対象といたします実習作業といいますか実務作業につきましては、定員に対しまして入校希望者は大変多うございまして、それに十分おこたえできないような実情にあることはそのとおりでございます。今回も定員三十名ということでございましたが七十数名という御応募がありまして、残念ながら三十名の方しか入校していただくことができなかったというようなことがございます。  それらにつきまして、私どもも東京都の方と対応についてこれまでもいろいろと御相談をしておるわけでございますが、特にこの入校希望者の状況といったことを勘案いたしまして、今後の訓練科目の設定、定員について東京都とよく相談をしてまいりたいと思っております。同訓練校の中におきましても定員に必ずしも満たない科目もあるわけでございますので、そういう科目との関係など含めまして、今後の訓練科目の設定、定員について実際に照らしまして東京都とよく相談をしてまいりたいと思っております。  それで、施設につきましては、特に障害者職業訓練校についての施設の整備を計画的に進めておるわけでございますけれども、その施設それぞれの耐用年数とか今までの経過年数といったようなことを勘案しながら、緊急性の高いものから順次整備をしているというような状況でございまして、必ずしも御希望に沿うような状況にいってないというのが実情でございますが、私どもといたしましては、今後とも全体的な障害者職業訓練校の中での緊急性を勘案しながら施設整備の充実に努力をしてまいりたいと思っております。
  157. 金子満広

    ○金子(満)委員 言われるように、御希望になかなか沿いかねる面があるということはもう当事者が一番よく知っているわけだし、実情を聞けば、障害者はなお痛切にそのことを思うと思うのですね。法改正をするんだから、その裏づけになる予算とか順序とかスピードとかいう点も改正しないと、裏づけは従来どおり、法律だけは改正しましたでは、本当にこれは不十分というより、一面は進むが一面は引っ張ってしまうわけですよ。ですから、法改正というのは予算措置や具体的な施設の改善を早めていくという上でも一つのチャンスだと思うのですよ。チャンスというのは外すとチャンスでなくなるのですよ。一年超えたら惰性になってしまうわけですから、やはりこの際は大臣を先頭にして労働省も、本当にこの願望を入れなかったら苦痛がだんだん広がると私は思うのですね。  言われるとおりに、軽い、知恵おくれでない方の身体障害者の方は、職種にすると十の系列があるわけですね。その中で皮革・履物関係はやはり実際の入校人員より応募人員の方が多いんですね。私が実際きのう行ったら、靴関係の指導をやっている指導員がおりますよ。もう話すときに体全部で話していますね。ここで一年間いろいろと訓練し、そして卒業してそれぞれの地域でまた新しい靴をつくって、一年たってあそこで展示即売会をやるんだそうです。みんな生き生きして来るというのですね。それがもっとここのところで強化されればできるんだということを切々として言うのですね。  そういう中で、この改築の問題はその気になれば、予算の裏づけさえすれば、別に土地を買う必要もなければ何もないわけですよ、すぐできるんですから、これをぜひひとつ、後で回答してもらいますが、大臣、努力してほしいと思うのですね。  それと、これに関連するのだけれども、指導の充実と強化の問題です。その上で必要な問題は、指導員の増員という問題です。  この中で実務作業というところが四つの部門に分かれておって、ここは軽度の知恵おくれの方だというのですが、女性の方も大分いました。そして縫製、ブラウスや何かをつくっていました。見ていると、実によくやっているんですね。そして、そういう中で手の不自由な方、両方持っている方もあるんですね。そういう方のために、今あるミシンをいろいろあそこで指導員が改造してやっているのですよ。ちょっと説明を聞くと、なるほど本当にこういう知恵が出るのかなと思うくらい指導員の役割の大きさがあるのですね。ただ、残念ながら、知恵おくれの方は五人に対して指導員一名、それから身体障害の方は十名に対して一名という目安という言葉が使われておりましたが、別に法律でそうだという規制はないのですけれども、本当に知恵おくれの方は軽度ですから、微妙な神経はある、指導員をふやしたら、画一的でなくてその人に見合ったことがどんどんできるんですね。入校したときはちょっと元気がなかったけれども、一年たったら別れが惜しいくらい感激して感動するというのですから、そういう点で指導員をふやす措置をとれないか。これは切実な問題として訴えがありましたし、指導員の方もそのことの重要性を強調しているのですね。  だから、民間訓練でできないところが公共という立場に立ったここでなら可能だろう、こういうふうに思うのですが、その点どうでしょう。
  158. 岡山茂

    ○岡山政府委員 障害者職業訓練校におきます指導員の配置につきましては、一般の訓練校とは特別に配慮いたしまして、訓練生十人に一人の割合で配置をしまして、特に重度障害者とか精神薄弱者の方につきましてはおおむね訓練生五人に一人ということで、こういうのを目安にして対応しておるわけでございます。  それで、全体としての指導員を増員していくということにつきましては、全体の訓練科目をどうするかといったようなことを毎年ヒアリングしながら、その中でいろいろと検討させていただいておるわけでございますけれども、特に昭和五十七年度からは重度障害者の方、あるいは昭和六十二年度からは精神薄弱者の方の訓練科目を特に増設をしていくという方向で対応しておるわけでございます。その中で指導員の増員を図るあるいは派遣講師をお願いするといったような形も工夫をしながらそれに対応しておるわけでございますが、今後の指導員につきましても、毎年訓練科目の見直しやそういうものをヒアリングしながらやっておりますので、そういう訓練科目の見直し等を踏まえながら充実に努力をしていきたいと思っております。  具体的な対応につきましては、東京都の方ともよく相談をしながら対応してまいりたいと思っております。
  159. 金子満広

    ○金子(満)委員 五名に対して一名とか十名に対して一名、その基準というのは何が基準でつくられたか。予算からそれを割り出したのだったら、ちょっとおかしなことになると思うのですよ。金がないからこれだけだというその計算はちょっとむちゃだと思うのですね。  それから、障害者の方について今お話がありました。わかりやすく一般的に言えば重度、中度、軽度ということが言われますね。軽度の人はほかの訓練校でもできますし、自力でやるのですね。ここに入ってくる人は中度、重度で、しかも重複している人があるのですね。具体的例もお聞きしましたが、交通事故で例えば足がきかなくなる、頭を打ったためにてんかんが起きる、こういう方は重度のものを二つ持っているわけですね。そういう方も、それからとにかく障害者であれば十人で一人という、これは成り立たないわけです。ですから、ああいう訓練校は中度、重度というのが前提になっておるわけですから、この基準、十人に一人という基準、それから知恵おくれというあの問題で言えば、五人に一人ではこれはだれが見てもちょっと無理ですよ。  ですから、そういう点で緩和するためには指導員をふやさなければならないのですが、私はよく調べてもなかなかわからないのだけれども、目安の基準は何から割り出したのでしょう。相当古いらしいですね。世の中どんどん進むし、社会の構成もいろいろ内容も変化するのだから、何か大昔のあれで、ここだけが十人に一人、五人に一人という基準はいつから何をもとにしてできたか、だれかわかりませんかね、これは。
  160. 岡山茂

    ○岡山政府委員 訓練校の中での指導員の配置の基準につきましては、私ども通達におきまして一つの目安をつくりまして、それで運営をしておるわけでございます。  では、具体的に何人に一人が適当かということにつきましては、これまでのいろいろな訓練の実績の中から経験的に割り出しておるものでございまして、先ほどお話がございましたとおり、特に重度障害者の方とか精神薄弱者の方の訓練につきましては、多くの指導員をできるだけ配置をするということを勘案いたしまして、一般の障害者の方に比べまして倍の形で、五人に一人ということで現在やっておるところでございます。
  161. 金子満広

    ○金子(満)委員 最後に、今経験をもとにと、確かにそれはそうだと思いますね。その経験則が経験に照らして寸法が合わなくなったというのが関係者の一致した意見なのです。確かに通達で目安を出されている。しかし、この際、法改正もあるのだから、この通達も見直す方向で検討してもらいたいということが一つ。  それからもう一つは、具体的に申し上げましたが、老朽施設の改善をして、一人でも多くの方の願いが実現できるように、ここは大臣の所見を伺って、終わりにしたいと思います。
  162. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 今回の法律改正は、まさに変動する産業構造に適応するような能力開発体制をつくっていこう、こういうことでいろいろ準備させていただきました。  したがいまして、先生御指摘の障害者能力開発問題については、一応今回触れてございませんけれども、今御指摘ございましたように、現実に能力開発職業訓練を希望する方がおられてそういった御希望に十分沿えないということは、非常に残念なことでございますし、また、実際入られても、今五人に一人、十人に一人という話がございましたけれども、十分でないという御指摘もございました。また、いろいろな施設その他老朽化しているじゃないか、こういう御指摘がございましたので、私も、実は障害者職業訓練校にいずれお伺いしてみたいと思っておったやさきでございますので、国会が終わりまして時間ができましたら、視察に参りまして、また、いろいろ先生の御指摘を踏まえて考えさせていただきたいと考えております。
  163. 金子満広

    ○金子(満)委員 終わります。
  164. 川崎寛治

    川崎委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  165. 川崎寛治

    川崎委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  職業能力開発促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  166. 川崎寛治

    川崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  167. 川崎寛治

    川崎委員長 この際、本案に対し、長勢甚遠君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党の四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。河上覃雄君。
  168. 河上覃雄

    ○河上委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     職業能力開発促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 有給教育訓練休暇制度の周知、普及をはじめ、各種助成制度の活用等により、企業労働者の自主的な職業能力開発促進を図ること。その際、事業内職業能力開発計画の策定や実施、職業能力開発推進者の選任等について、労働者の意見が十分反映されるように行政指導を行うこと。  二 公共職業能力開発施設の運営に当たっては、その円滑な実施体制を確保するとともに、中小企業とその労働者が利用しやすいよう、情報提供相談援助サービスの充実に努めること。また、地域事業主団体、労働組合、市町村等を構成員とする運営協議会を設置する等により地域ニーズの把握に努めること。  三 公共職業訓練については、指導員の質の向上確保に努めるとともに、新しい訓練体系の下で、在職者に対する高度な職業訓練及び高齢者、女子、中卒者、障害者等の多様なニーズに対応した職業訓練を弾力的に展開できる体制整備充実に努めること。  四 認定職業訓練に対する援助の充実等により、その振興に努めるとともに、新しい訓練体系の導入に当たっては、従来の職業訓練の実施状況に留意し、混乱が生じないよう十分配慮すること。  五 技能検定の多段階化等技能検定制度の整備充実及び事業主等の行う職業能力検定の普及に努めるとともに、技能振興施策の拡充を図り、技能労働者の地位の向上技能を尊重する社会の形成に努めること。  六 外国人研修生の受入れについては、人づくりによる国際協力の実効を確保するため、研修が適正かつ効果的に行われるよう、企業に対する指導援助に努めること。 以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  169. 川崎寛治

    川崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  長勢甚遠君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  170. 川崎寛治

    川崎委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。近藤労働大臣。
  171. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。     —————————————
  172. 川崎寛治

    川崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 川崎寛治

    川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  174. 川崎寛治

    川崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十二分散会