運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1992-03-12 第123回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年三月十二日(木曜日)     午前九時開議 出席分科員   主 査 柳沢 伯夫君       内海 英男君    佐藤謙一郎君       真鍋 光広君    村岡 兼造君       有川 清次君    井上 普方君       池田 元久君    遠藤  登君       小川  信君    大畠 章宏君       川島  實君    輿石  東君       日野 市朗君    兼務 北沢 清功君 兼務 小森 龍邦君    兼務 五島 正規君 兼務 新村 勝雄君    兼務 仙谷 由人君 兼務 田中 昭一君    兼務 谷村 啓介君 兼務 河上 覃雄君    兼務 藤原 房雄君 兼務 渡部 一郎君    兼務 木島日出夫君 兼務 吉井 英勝君    兼務 江田 五月君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 中村正三郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁長官官房         会計課長    井上  毅君         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         環境庁企画調整         局環境保健部長 柳沢健一郎君         環境庁自然保護         局長      伊藤 卓雄君         環境庁大気保全         局長      入山 文郎君         環境庁水質保全         局長      眞鍋 武紀君         農林水産大臣官         房長      馬場久萬男君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    海野 研一君         農林水産省農蚕         園芸局長    上野 博史君         農林水産省畜産         局長      赤保谷明正君         食糧庁長官   京谷 昭夫君         林野庁長官   小澤 普照君         水産庁長官   鶴岡 俊彦君  分科員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯企画課         長       津和 孝亮君         警察庁刑事局保         安部生活経済課         長       松原  洋君         警察庁交通局交         通指導課長   人見 信男君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         国土庁土地局土         地利用調整課長 伊藤 威彦君         外務省経済協力         局調査計画課長 小島 誠二君         大蔵省主計局主         計官      松谷 明彦君         大蔵省主計局主         計官      細川 興一君         文化庁文化財保         護部記念物課長 吉澤富士夫君         厚生省保健医療         局疾病対策課長 有川  勲君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   浜田 康敬君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課産業廃         棄物対策室長  三本木 徹君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課浄化槽         対策室長    喜多村悦史君         農林水産省食品         流通局企画課長 樋口 久俊君         林野庁指導部研         究普及課長   龍 久仁人君         通商産業省生活         産業局日用品課         長       田中 映男君         運輸省港湾局環         境整備課長   川嶋 康宏君         建設省都市局下         水道部流域下水         道課長     稲場紀久雄君         建設省河川局開         発課長     荒井  治君         建設省道路局企         画課道路環境対         策室長     城処 求行君         自治省財政局調         整室長     森元 恒雄君         消防庁防災課長 古内  晋君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君         環境委員会調査         室長      西川 義昌君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   内海 英男君     山口 俊一君   井上 普方君     池田 元久君   日野 市朗君     常松 裕志君 同日  辞任         補欠選任   山口 俊一君     真鍋 光広君   池田 元久君     遠藤  登君   常松 裕志君     加藤 繁秋君 同日  辞任         補欠選任   真鍋 光広君     内海 英男君   遠藤  登君     川島  實君   加藤 繁秋君     日野 市朗君 同日  辞任         補欠選任   川島  實君     大畠 章宏君   日野 市朗君     志賀 一夫君 同日  辞任         補欠選任   大畠 章宏君     輿石  東君   志賀 一夫君     山元  勉君 同日  辞任         補欠選任   輿石  東君     有川 清次君   山元  勉君     日野 市朗君 同日  辞任         補欠選任   有川 清次君     小川  信君 同日  辞任         補欠選任   小川  信君     井上 普方君 同日  第一分科員小森龍邦君、江田五月君、第二分科  員河上覃雄君、第三分科員北沢清功君、田中  昭一君、谷村啓介君、渡部一郎君、吉井英勝君  、第四分科員新村勝雄君、藤原房雄君、木島日  出夫君、第六分科員五島正規君及び仙谷由人君  が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成四年度一般会計予算  平成四年度特別会計予算  平成四年度政府関係機関予算  〔総理府環境庁)及び農林水産省所管〕      ――――◇―――――
  2. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  平成四年度一般会計予算平成四年度特別会計予算及び平成四年度政府関係機関予算総理府所管環境庁について、政府から説明を聴取いたします。中村国務大臣
  3. 中村正三郎

    中村国務大臣 平成四年度環境庁関係予算案について、その概要を御説明申し上げます。  まず予算基礎となっております環境政策基本方針について御説明申し上げます。  本年は、環境開発に関する国連会議、いわゆる地球サミットの開催を六月に控え、同会議を契機として環境政策のさらなる展開を図ることが大きな課題となっております。  御高承のとおり、地球環境問題は、人類生存基盤にかかわる緊急かつ重要な課題であります。我々は、これまでのようなやり方で人間活動拡大を続けるのではなく、有限な地球環境と資源の中で、国際的な協力のもと、環境経済の統合による持続可能な開発を目指した経済社会形成に向け、具体的施策推進していかなければなりません。  その中で、我が国がこうした環境分野でどのような責任と役割を果たしていけるかに国際的な注目が集まっております。我が国は、持てる英知を結集し、地球の将来、そして人類の幸福と繁栄をかけて、地球環境問題の解決に向け、積極的、主体的にその国際的地位にふさわしい貢献を果たしていかなければなりません。  また、国内の環境問題に目を転じますと、大都市地域における窒素酸化物等による大気汚染生活排水等による河川湖沼内湾等水質汚濁、あるいは身近な地域において緑や生き物と触れ合うことのできる自然が失われつつあるなど、地域における環境問題は山積しております。  国民の一人一人が、豊かさとゆとりを日々の生活の中で実感しながら暮らしていけるような生活大国への前進のためには、国民生活環境保全しつつ、さらに質の高い快適な環境づくりに取り組み、安全で安らぎと潤いのある地域環境形成していかなければなりません。  こうした国内外の環境問題を根本的に解決するには、社会経済システムを幅広く見直し、経済活動全般環境観点を広く織り込み、環境への負荷の少ない環境保全型社会形成が不可欠であります。  このため、環境行政をめぐる課題の変化、時代要請を踏まえ、法制度のあり方、新たな政策手段導入等について議論を深め、地球化時代環境政策を展開していく必要があります。  このような認識に立って、次に掲げる施策について重点的に取り組んでまいります。  第一は、地球環境保全のための施策推進であります。第二は、自然環境保全と適正な利用推進であります。第三は、都市環境保全対策推進であります。第四は、総合的な水俣病対策推進を初めとする環境保健施策推進であります。第五は、環境汚染対策環境管理の総合的な推進であります。  平成四年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、以上のような基本的考え方のもとに計上した環境庁予算要求額は、五百八十億八千四百八十九万円であり、これを前年度の当初予算額五百三十八億二千三百七十四万円と比較すると、四十二億六千百十四万円、七・九%の増額となっております。  予算要求額の主要な項目につきましては、お手元にお配りしてございます資料のとおりでございますが、委員各位お許しをいただきまして、説明を省略させていただきたくお願いを申し上げます。よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  4. 柳沢伯夫

    柳沢主査 この際、お諮りいたします。  ただいま中村国務大臣から申し出がありました環境庁関係予算主要項目説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 柳沢伯夫

    柳沢主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――   〔中村国務大臣説明を省略した部分〕  予算要求額の主要な項目について、御説明申し上げます。  第一に、環境保全企画調整等については、地球温暖化をはじめとする地球環境保全分野我が国が世界に貢献するため、本年六月に開催される「環境開発に関する国連会議」の成功に向けてこれを支援し、その成果を広く国民に普及するとともに、開発途上国等環境保全計画づくり支援等国際環境協力推進に努めるほか、地球環境保全に関する関係閣僚会議が決定した「地球温暖化防止行動計画」の推進先端技術の進展と化学物質使用拡大に対応した環境保全施策充実国民各界各層に対する環境教育強化環境影響評価及び公害防止計画策定推進に必要な経費など、合わせて十億九千八百八十八万円を計上しているところであります。  第二に、公害による健康被害者救済等については、新たに水俣病問題の早期解決を図るため、総合的な対策実施するほか、従来に引き続き、公害健康被害補償制度の適正かつ円滑な実施を図るとともに、公害健康被害補償予防協会に設けられている基金を活用した健康被害予防事業や総合的な環境保健施策推進することとし、これらの経費として二百三十二億九千八百四十万円を計上しております。  第三に、大気汚染等防止については、都市地域窒素酸化物対策として、自動車が排出する窒素酸化物総量抑制、低公害車普及推進等を進めるほか、オゾン層保護対策として、フロンガス等監視及び調査研究推進等酸性雨対策として、監視測定体制整備等に努めるとともに、未規制大気汚染物質対策、脱スパイクタイヤ対策及びアスベスト対策等推進を図ることとしております。  また、騒音、振動及び悪臭対策についても、引き続き推進を図ることとし、これらの経費として九億五千九十二万円を計上しております。  第四に、水質汚濁防止については、生活排水対策推進するため、市町村の生活排水対策推進計画策定及び水質浄化等施設整備助成推進するほか、水質総量規制推進湖沼水質保全並びに地下水質保全等対策推進するための経費として十億八千六十六万円を計上しております。  このほか、地盤沈下防止及び廃棄物対策費として一億三千六百九十四万円、土壌汚染防止及び農薬対策費として一億九千二百五十九万円をそれぞれ計上しております。第五に、公害防止事業団については、国立国定公園保護及び整備推進産業廃棄物処理施設整備促進等環境行政上の重要課題に対応するため、事業の見直しを行うとともに、名称を環境事業団に改めることとし、事業団事業運営に必要な事務費等助成費として四十三億五千四百八十三万円を計上しております。  第六に、公害監視等設備整備については、地方公共団体監視測定体制等整備助成するために必要な経費として八億二千八百八十四万円を計上しております。  第七に、環境保全に関する調査研究推進のための経費については、総額五十三億八千二百万円を計上しております。  この内訳としては、まず、国立試験研究機関等公害防止等試験研究費として十九億千八百四万円を環境庁において一括計上するとともに、環境保全総合調査研究促進調整費として一億九百万円を計上し、関係省庁が所管する各種環境保全に関する調査研究総合的調整を行うほか、地球環境研究総合推進費として十九億円を計上し、関係省庁の所管する国立試験研究機関等が行う各種地球環境保全に関する調査研究総合的推進を図ることとしております。  また、地球観測衛星アデオスに搭載する成層圏オゾン等観測機器開発光化学スモッグ環境汚染による健康影響の解明、その他大気汚染水質汚濁自然保護等に関する調査研究費についても十四億五千四百九十五万円を計上し、必要な調査研究を進めることとしております。  第八に、自然環境保全対策及び施設整備について申し上げます。  まず、自然環境保全対策及び自然公園等維持管理等については、自然環境保全基礎調査をはじめとする調査研究実施するとともに、国立公園等保護管理充実強化を図ることとしております。  また、野生生物保護対策については、絶滅のおそれのある野生生物種保護対策推進するとともに、国設鳥獣保護区の管理強化等を図ることとしております。  これらに必要な経費として、合わせて十六億九千百三十九万円を計上しているところであります。  次に、自然公園等施設整備については、国民の快適で安全な利用を図るため、国立国定公園利用施設長距離自然歩道自然環境保全活動拠点及び国民公園施設整備推進するほか、野生生物保護管理施設等整備に必要な経費として五十二億九千六十二万円を計上しております。  第九に、国立環境研究所については、地球環境問題等環境全般にわたる研究を積極的に推進するため、地球環境研究センターの拡充及び研究施設整備を図るために必要な経費として六十億千六百二十三万円を計上しております。  また、国立水俣病研究センター運営等に必要な経費として四億四千九百九万円を計上しております。  以上、平成四年度環境庁関係予算案概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ、本予算案の成立につきましては、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
  6. 柳沢伯夫

    柳沢主査 以上をもちまして総理府所管環境庁についての説明は終わりました。
  7. 柳沢伯夫

    柳沢主査 質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。  また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  8. 新村勝雄

    新村分科員 まず、環境維持に御努力をされております長官に敬意を表したいと思います。  そこで、まずお願いしたいのは東京湾に関する問題であります。  東京湾については既に多くの人から環境維持必要性については論議があり、指摘があるところであります。御承知のように、東京湾東京都、神奈川県あるいは千葉県に抱かれた、囲まれた内湾でありまして、いういろの観点から極めて重要な自然の機能を果たしているわけであります。その大きさは、南北が八十キロ、東西が三十キロ、面積が十五万ヘクタール。内湾ですと、観音崎から富津岬を結んだ線の内側ですと十二万ヘクタールということですね。水の容積が内湾で百八十億立方メートル、いわゆる広い意味での東京湾では五百四十億立方メートル。  こういう規模のところでありますが、歴史的に東京湾というのは江戸の発展あるいは東京発展と同時に東京ごみ処理の、ごみの捨て場にされておった。さらにまた、湾岸の異常な発展によってこの沿岸がまあいわば無計画埋め立てをされたということで、今や最初のといいますか湾の面積から比較をすると、約二〇%近くその沿岸埋め立てをされておるというような状況でありまして、これを放置をしますと、湾の自然的な沿岸に対する気象上の影響あるいは海水の汚染による海産物への影響、それにまたいろいろの意味での自然機能が破壊をされるというようなことで東京湾埋め立てについてはもう今限度である、この際東京湾埋め立ては原則として抑制をすべきではないかというような議論があるわけであります。我々も東京湾沿岸住民として、長官もそうでありますけれども、住民としても東京湾汚染、あるいは言葉は過ぎるかもしれませんけれども無計画なこれ以上の開発埋め立てはこの際厳しく抑制をすべきだ、こういうことが今言われておるわけであります。これについて基本的にまず長官からのお考えをいただきたいと思います。
  9. 中村正三郎

    中村国務大臣 東京湾委員指摘のように首都圏にあります限られた貴重な水面であり、その空間でもあるわけであります。かけがえのない自然環境、これを守らなければならないということでは委員と全く同じ認識を持っております。  東京湾については、私考えますに、今から二十年くらい前委員からの御指摘がありまして、私も選挙区がべたっと東京湾に面しておるものですから、あそこのフェリーボートヘ乗ったり釣り船で出たりして見てまいりまして非常に汚れた時期があって、それから随分改善はされてまいりましたけれども、依然として赤潮青潮が発生する水質保全上の問題を、今何かちょっと素人目に見ますと横ばいみたいな状態で抱えているような気がいたします。この水面を守らなきゃいけないということで、今埋め立てという御指摘でありましたが、埋め立てに関しては、その地域発展ということとの関連もあると思いますが、今伺っておりますところ、千葉県知事は、埋め立てについては極めて必要なところ以外は自然環境を変えないんだということで、極めて慎重に対処をしていただいておるというふうに伺っております。  環境庁といたしましては、従来にも増してこの水質改善のための総量規制実施だとか対策を進めまして、そしていろいろな事業につきましては、関係機関と連携を図って、環境アセスメントの適切な実施だとか各種開発計画環境配慮充実を求めるとか、そういうことで委員と全く同じ認識に立って東京湾の総合的な環境保全に努めてまいりたいと思っている次第でございます。
  10. 新村勝雄

    新村分科員 長官から力強い御答弁をいただいたわけでありますけれども、現実の問題としては、なかなか今おっしゃったとおりにはいかない状況というか趨勢があるようであります。  これは申し上げるまでもありませんが、東京湾の地理的な条件等からして、非常に奥が深いわけであります。しかし、水は浅い。そういうことで、水の交換が悪いわけですね。湾ではありますけれども、非常に袋状に深く入っていますから、水の交換が悪いわけです。そのために富栄養化が進む、あるいは赤潮青潮というような現象が起こるというようなことであります。それで、今おっしゃるように、四十年代が汚染のピークであったというふうに言われておりますけれども、その後、汚染については必ずしも改善はされていない、横ばいだということですね。ですから、決して気の許せる状況ではないわけであります。そして、これも前に委員会でお願いしたことがあるんですが、沿岸開発が進むに従って、その沿岸から生じたいわゆる普通の産業廃棄物だけではなくて、建設土砂廃材等、主として土砂ですが、建設の残土、土砂等が湾内に投棄をされているということがあって、これが問題になったことがございます。  そういうことのほかに、基本的には、やはり東京湾沿岸が大きく工業化をされて、その新しい土地を必要とする急速な工業化要請に従って埋め立てをされたということであると思います。したがって、あの沿岸の大規模埋め立てによって日本が工業化をした、そのために大きな沿岸経済発展があったというプラスの面はありますけれども、同時にまた、そのマイナスの面も大きいわけでありまして、沿岸自然海浜、遠浅の、砂がずっときれいに続いていたというような自然海浜というのがほとんどなくなっているわけですね。今沿岸自然海浜というのは、三番瀬と言われておりますが、市川の沖にあるもの、それと木更津沖にも一部あると思いますが、それぐらいで、自然海浜はほとんどもうなくなっているという状況であります。  こういう中で、今、実は千葉県の、選挙区でいえば四区でありますが、市川地先の三番瀬の埋め立ての可否が問題になっております用地元自然保護団体でも強く、三番瀬については保存をしてもらいたい、内湾の奥の方ではもう唯一の自然海浜である、こういうことのために、ぜひこれは保存をすべきであるという議論が起こっておるわけであります。しかし、これは市川沖のいわゆる市川沖二期埋め立て計画には入っているわけでありまして、この点について、直接の許可は県であるかもしれませんけれども、国としてこういう最後に残された自然海浜をどうするのかというような点についてはどういう御見解ですか。
  11. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは委員指摘のとおり県でおやりになる事業であり、それに港湾審議会とかいろいろ審議会があり、そこで審議がなされ、私どもとしては原則的にあの自然環境を守ってくださいということでお話をしていくことになると思います。  ただ、お許しをいただいて、千葉県の人間として所感を述べさせていただきますと、今千葉県の港湾取り扱いの量の多くがやはりまだ東京、横浜に頼っておる。それが全部東京を経由して、湾岸道路だとか京葉道路を経由してくるために非常な交通混雑を来す。結果的に、委員も今御指摘になられましたけれども、いろいろな弊害もあったでございましょう。京葉工業地帯があれだけ発達してきてという中で、県がお考えになって、ああして計画をお立てになったんだろう。それにはやはり交通混雑の緩和もあるし、千葉県としてはそれだけの荷物を処理するところが必要であるんだろうというようなことも感じさせていただいております。  それから、三番瀬についてでありますけれども、これは、私も海が好きであそこらを歩くもので、よく伺っていたのですが、私の記憶が間違いでなければ、あの瀬は江戸川か何かをしゅんせつしたときにできた砂を置いたものが瀬になったんですね。ですから、千葉県の人間として、環境庁長官としてでなく考えさせていただければ、千葉県で埋めるということをお決めになったら、千葉県でそこにまた瀬を人工的につくっていくというようなことも考えられるのではないかなというふうに思っております。これは環境庁長官でなくて、先生と同じ千葉県の人間としての感想でございます。
  12. 新村勝雄

    新村分科員 環境を守る、自然を守るということと経済発展ということはしばしば矛盾をするわけであります。経済発展について、これは全面的に否定をするわけにはまいりませんけれども、同時にまた、かけがえのない環境をどう守るかということも極めて重要なわけでありますから、その両方を比較考量をして、どっちが重いかということで判断するということもあるでしょうけれども、今や地球環境というのはまさに、先ほど大臣が言われたように、かけがえのない、回復不可能な開発が進められた場合には自然環境というのはもう永久に失われる、回復がつかないというような状況もあります。  特に、東京湾のように、いろいろな意味沿岸に自然を保持するということにおいて利益を与えているその自然状況、これを何とか保持をしていかなければいけないのではないかと思います。例えば、漁業とかあるいは交通とかという非常に大きな利用価値がありますけれども、そのほかにも自然的な機能として、沿岸に対する気候の調節というふうな機能もあるわけであります。これは申し上げるまでもありませんけれども、東京湾の冬は北から風が吹いてくる。その北から吹いてくる風が湾の上を通るときに暖められて千葉県の方に渡ってくるわけですね。そのために千葉県は、房州は大変温暖だ。これはこちら側からの親潮の影響もありますけれども、北からの風の影響もあるわけですね。それで房州、千葉県などが各大変暖かいということもありますし、また、夏の場合には、南風が湾の上を通って東京に達する。そのために東京の酷暑が若干、一度か二度かわかりませんけれども緩和される。こういう自然的な機能、これもまたかけがえのない機能だと思いますけれども、そういう機能があるわけでありますから、何としても東京湾を守っていくということが必要だと思うのです。  ところが、現在の行政組織上あるいは権限上の問題からしまして、東京湾を総合的に管理をしい総合的にいかに自然を守り開発抑制をしていくのか、あるいはある場合にはこの分は許すというそういう全体的な管理、その行政の組織が残念ながらないという状況ですね。環境庁さんはその点では大変御苦労されておりますけれども、許可権は知事にあったりあるいは建設省にあったり他の省庁にあるわけですね。それから、その水面利用する水面の問題については運輸省というようなことで、行政がいわゆる縦割りになって、それが絵合されていないというこういう問題があるわけでありますけれども、東京湾のような場合には、何かそういう東京湾を総括的に管理をし、東京湾に対するいろいろな意味の行政を一括して総合判断をする組織なりセクションが必要ではないか、また、そういう段階に来ているのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  13. 中村正三郎

    中村国務大臣 委員指摘のように、東京湾東京都、神奈川県、千葉県がかかわっておりまして、思い出すのですが、東京湾横断道路は今建設が始まっておりますが、あれをずっとやってまいりまして、国道昇格しようとしましても、千葉県で申請できるのは湾の真ん中までなのですね。反対側は神奈川県で申請しなきゃいけない。そういうふうに分かれておりますので、あらゆることがいろいろ不便があるということは事実だと思いますが、県知事の間でも東京都を中心に湾岸の知事が集まって会議を定期的に持っていろいろなことを行っておられるようでございますし、環境庁といたしましても、環境問題に対する総合的な調整をする官庁でございますから、それは運輸省にかかわることでも建設省にかかわることでも厚生省にかかわることでも、環境に関しては我々が努力をしていかなければいけないことだと存じまして、一層の努力をしてまいりたいと思っております。  それから、東京湾の汚れの場合、今実をいいますと非常に問題になっておりますのは、工業排水より家庭雑排水でありまして、家庭雑排水のために赤潮青潮という現象が起こってくる。やはりこういったことを、下水道の整備だとか、いろいろな省庁が持っております合併処理槽の問題とか、そういった面から取り組まなければいけないということで、環境庁といたしましては、これは全国的なことでございますけれども、ことしはそうした都市型家庭雑排水対策というものを各省庁と一体となって進めていこう、こんなこともやっているわけでありまして、委員指摘のように、各省庁と連絡をとりながら東京湾に関しまして一層の努力をしてまいりたいと思っております。
  14. 新村勝雄

    新村分科員 それに関連してでありますが、これは東京湾に限らず、環境維持ということになりますと、やはり環境庁が全体を総合調整をする権限、力を与えていただかなければいけないのではないかというような気がいたします。そういうわけで、東京湾に限らず環境維持ということについての環境庁の権限の強化といいますか、総合調整機能を単に大臣がほかの省庁に要請をするあるいは協議をするというだけではなくて、権限としてやはり環境庁が全体を環境維持の立場から総合調整していく力をぜひ与えていただくような御努力をいただきたいと思います。  時間がありませんが、もう一つ内水面の問題で、実は私の近所にワーストワンという沼がありまして、この手賀沼については歴代の長官が必ずおいでになって視察をされるというのが恒例になっております。既にもう長い間恒例になっておりますが、恒例になっているということは、それだけ関心をお持ちであるということで、その点は評価をするわけでありますけれども、おいでになって歴代の長官がごらんになるけれども、なかなか水がきれいにならないということがあります。これはいかに長官が御努力になっても、一朝一夕であの水を昔のようにきれいにすることは難しいと思います。私どもが子供のころはよくあそこに泳ぎに行ったのですけれども、そのころはもう本当に底まできれいに見える。透明度は、恐らく何十メートルという透明度であったと思います。ところが今の透明度は数十センチですね。場合によったら十センチ、それ以下だ。十センチぐらい手を沈めると手の行方がわからないというこういう状況になっているわけでありますが、これについては、沿岸の急速な発展等がありまして、ある意味では不可抗力の面があったと思いますけれども、不可抗力で済ましていては困るわけでありまして、ぜひあの水の浄化については御努力をいただきたいわけであります。  これも、東京湾と同じように生活排水が大部分だと思います。沿岸にそれほど大きな工場はありませんから大体が生活排水であると思いますけれども、生活排水の解決はもちろん公共下水道でありますが、そのほかに、公共下水道については一挙に全面的に完成をするということは難しいわけでありますから、それができるまでの間、つなぎの施策として、今かなりすぐれた浄化槽があります。各家庭ごとにつくる浄化槽、この浄化槽の設置を奨励をして、場合によったらそこに補助金でもつけるというようなことは考えられないものでしょうか。
  15. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 湖沼水質改善の問題でございますが、先生御指摘のとおり、湖沼は閉鎖的な水域というふうなことで、一度汚れますとなかなか水質改善が難しい、こういう特性を持っておるわけでございます。また、御指摘のように人口増加とかそういうこともございまして、流入汚濁負荷量が増大をしておるというふうなことで、印旛沼でございますとか手賀沼を初め水質汚濁が著しい湖沼があるということでございます。  そういうふうなことで、私どもといたしましても、御指摘のように生活排水が最近では特に問題になっておるわけでございますので、水質汚濁防止法を改正いたしまして、生活排水重点化地域というものの指定制度をつくったわけでございます。そういうふうなことで生活排水に取り組んでおるわけでございますが、浄化の方法としましては、御指摘の下水道の整備、それから、農林水産省でやっております集落排水整備事業というふうなこと、さらに、厚生省でやっております合併浄化槽の設置、こういうふうなものがございます。そういうふうな手段があるわけでございます。  そこで、印旛沼でございますとか手賀沼のような水質汚濁の著しい湖沼につきましては、湖沼水質保全特別措置法という法律がございまして、計画をつくってそういうもろもろの対策を総合的、計画的に実施する、こういう制度がございます。そういうふうなことで計画をつくって実施をしておるということでございます。この計画が、印旛沼、手賀沼等五つの湖沼につきまして昨年度で終わったわけでございまして、現在第二期目の計画をつくっておるところでございます。本日、その最終的な第二次の計画策定をする県計画の同意というものが、内閣総理大臣の同意という手続があるわけですが、その手続を進めることにしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、関係省庁協力をしながら湖沼の水質を一日も早く改善をしたいということで、引き続き努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  16. 新村勝雄

    新村分科員 今の話に出ましたけれども、合併浄化槽ですが、実は、合併浄化槽については私も実際に見学をいたしておりますが、かなりその機能がいいものができております。全く飲用水にもできるような程度まで浄化できるということです。ですから、それらの合併浄化槽を急速に普及をさせるということ、これが一つの解決の策ではないかと思いますね。この辺について、何か行政的に政策として普及をさせるということについてのお考えはありますか。
  17. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘のように、水質。浄化のためには、先ほど申し上げましたようないろいろな対策があるわけでございます。その場所場所に応じまして、公共下水道を待っていたのではなかなか間に合わないというふうなところについては農村集落排水であるとか、あるいはその場所によりましては御指摘の合併浄化槽の設置が適当であるというふうなことで、合併浄化槽につきましては厚生省で制度化していただきまして、補助制度ができております。  そういうことで、印旛沼、手賀沼につきましても、その地域の実情に応じて五カ年計画、ここは下水道てやろう、ここは合併浄化槽てやろう、ここは農村集落でやろうというふうなことで計画をつくっていただいたところでございますので、その計画にのっとりまして、早くできるものから地域の実情に応じたものを積極的につくってまいりたいと思っておるわけでございます。
  18. 新村勝雄

    新村分科員 そうしますと、やはり水の浄化についても、公共下水道は建設省、合併浄化槽は厚生省ということでありますから、今おっしゃるように、地域的に地域の特性に応じて、この地域は何、この地域は何ということをやる総合的な立案、推進をやはり環境庁でおやりになるということでしょうから、その機能といいますか、指導力を強力に発揮をしていただきたいと思います。  時間がありませんが、それからもう一つは、これは具体的な問題でありますけれども、ゴルフ場の農薬について、大分一時世論が、その点について反対運動等が起こったことがあります。現在もその点については住民の関心は深いわけであります。  千葉県は御承知のようにゴルフ場が非常に多いわけです。そのゴルフ場の農薬対策について、千葉県で知事さんが先進的な構想を示されたということは評価すべきである。しかし、これがどの程度実際に実効を上げているのか。それから、特に新設のゴルフ場については農薬を使わないようにということでありますけれども、それが厳しく守られているかどうか、実効を上げているかどうか。それからまた、新しいゴルフ場についてはそうであっても、今までのゴルフ場は依然として昔のままであるということでは困るわけでありますから、直接生産に関係のないいわばレクリエーション施設でありますから、少なくともゴルフ場のようなところから薬害の徹底的な排除ということに手をつけていかなければいけないと思います。  少数のゴルフ場はかなり前からあったわけで、昔の我々が子供のころのゴルフ場は、農薬なんというものはほとんど使っていなかったと思います。ところが、最近になっていろいろゴルフ場間の競争が激しくなる。このゴルフ場は向こうよりはグリーンがきれいだとか虫が少ないとかということで、そういう面でのゴルフ場間の競争がそういうところまで完全主義を持ち込んできているのではないかということもありますから、ぜひゴルフ場の農薬禁止という点について、環境庁におかれましても、強力に指導をされて実効を上げることができますようにお願いをいたしたいと思います。  ちょうど時間でありますから、以上で終わりますけれども、今お願いしたことをぜひ実効を上げることができるように、長官の一層の御努力を御期待をいたしたいと思います。  以上で終わります。
  19. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて新村勝雄君の質疑は終了いたしました。  次に、五島正規君。
  20. 五島正規

    五島分科員 私は、最近大変問題になっております杉・ヒノキ花粉症の問題についてお伺いしたいと思います。  最近、この形花粉症によって悩んでおられる方々が非常にふえているわけでございますが、この杉・ヒノキ花粉症という病気、戦前及び戦後しばらくの間、日本においては有病率も罹病率も全くなかった疾患でございます。しかし、近年その被害は年を追って増加し、現在でも全く減少傾向を示しておりません。こうした病気、日本においてほかには全くないわけでございます。  東京都が調査されましたデータを見ましても、これはアンケートの抜き取り調査でございますが、昭和五十八年の秋川市において七・五%、昭和六十年大田区において八・九%、昭和六十二年調布市において一五・七%というふうな数字も出されております。現在、全国的に形花粉症で悩んでおられる方々は約一〇%を超えているというふうにも言われているわけでございます。  この杉・ヒノキ花粉症でございますが、この原因が、直接には杉、ヒノキ、現在では特に杉でございますが、形花粉が直接の抗原である、そのことは間違いございません。数シーズンにわたってこの花粉の暴露を受けた場合に花粉症が発症するというふうに言われているわけでございます。  従来見られなかったこうしたアレルギー性の疾患が増加してきた原因としては、やはりこの花粉の飛散量がふえてきた。戦後大量に植林されました杉やヒノキが開花期を迎えてきた。また一部の学者の中に、あるいは一部の林業家の中には、近年特に杉の枝打ちや間伐が放置される、あるいはそのことによって花粉の飛散量が増加した、また杉の育つ環境が非常に悪化している、種族保存のために大量の花粉をつけるようになったというふうに言っておられる方もあるわけでございます。  また、杉の花粉というのは、何も最近初めて出だした問題ではございません。私の出身地であります高知へ行きましでも、魚梁瀬杉という、非常に有名な林業地帯でございます。その中においては、従来杉の実をとるというふうなことを職業にしてこられた方々もたくさんおられました。しかし、かつて、こうした杉の花粉によってアレルギー症状が発症するということはございませんでした。従来、抗原とならなかった杉やヒノキの花粉がこういう症状を起こすようになった原因の一つは大気の汚染にある。すなわち、大気中に含まれます微粒子、とりわけ今日ではディーゼル車の排出するいわゆるDEP、微粒子によってIgE特異抗体が異常に産出される。その結果、花粉に対する抗原抗体反応が成立して花粉症になるというふうに指摘されているのでございます。ディーゼルの微粒子によるこうしたIgE抗体の産出は、アトピー性の疾患の発症にも、症状にも関与しているというふうにも指摘されているわけでございます。  そこでお伺いしたいわけでございますが、まず厚生省の方、きょうおいでいただいたと思いますが、この杉・ヒノキアレルギー症の有病率あるいは罹病率について調査はなさっておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  21. 有川勲

    有川説明員 花粉症の患者数についてのお尋ねでございますけれども、先ほどの先生の御指摘のとおり、東京都が行いました調査がございます。これによりまして、約一割前後かというふうに思われますが、全国的な調査についてはまだ実施しておりませんで、これからその調査を行いたいと考えております。
  22. 五島正規

    五島分科員 厚生省に後から再度お伺いすることといたしまして、昭和六十年ぐらいで大体一〇%ぐらいの有病率と言われてきたわけでございます。こうした、確かに季節的に非常に起こり、そして重篤ではないという性質は持っているものの、こごまで多くの国民が花粉症に対して悩んでいる。これはこれとして非常に重要な問題であるだろうというふうに考えるわけでございます。  林野庁の方にお伺いしたいと思うのですが、戦後植林された形あるいはヒノキ、杉で平均的には植林して大体三十年くらいたちますと開花期を迎えるとも言われているわけでございますが、近年それが早まっているとも言われております。日本において杉やヒノキの開花の時期、大体何年くらいがそのピークになるのか、お伺いしたいと思います。
  23. 龍久仁人

    ○龍説明員 杉とヒノキの林齢とヒノキ、杉の花粉の発生量の関係についてでございますけれども、杉についてはおおむね三十年くらいになりますとそのピークの状態になりまして、それ以降は大体一定量であるというふうに言われております。また、ヒノキの花粉につきましては、ヒノキの成長が杉に比べましておくれているということ、それから杉の花粉発生量が三十年前後でありますのに比べまして、そういうことから十年くらいおくれるのではないかということでございます。それから、ヒノキにつきましては、林齢構成が杉に比べまして若齢の方に偏っております関係から、これからヒノキの方については花粉の発生量がふえてくるのではないかというふうに考えております。
  24. 五島正規

    五島分科員 三十年くらいということでございますが、杉について言いますと、大体最盛期にもう差しかかっているわけでございますか、それともまだこれから差しかかるということでございますか。
  25. 龍久仁人

    ○龍説明員 杯分構成の一番面積の大きな部分がちょうど三十年程度のところにかかっておりまして、したがって大体花粉がたくさん飛ぶ時期に来ている。しかしながら、まだ若い外分もございますから、そういったものについては今後またふえる可能性もあるというふうに思っております。
  26. 五島正規

    五島分科員 先ほどもちょっといろいろな御意見を少し紹介させていただいたわけでございますが、林野庁は今年度の予算の中におきまして、花粉症の対策費約一千数百万円の予算で、非常に雄花をつける枝を伐採する、そうした措置をおとりになっておられるわけでございます。ここに林野庁造林保全課の総括課長補佐さんの原稿がありますが、その中で、今年度の予算の中で新規の地域森林環境整備事業、枝打ちなどによる森林の環境効果の整備を行う事業という項目がございます。その中に、「人工林を対象として、計画的、集団的な枝打ち等を実施するものであり、この事業の実行により今注目されている花粉症対策にも効果があるものと思われる。」というふうに書かれているわけでございます。  最近、国有林、民有林を問わず、木材価格の低迷の中で、山林が非常に放置されている。せっかく植林した木が十分に枝打ちあるいは間伐がされていないというのは周知のことなわけでございますが、こうした枝打ちあるいは間伐がされていないということが花粉飛散量の増大に結びついている、そのように林野庁はお考えなのでございましょうか。
  27. 龍久仁人

    ○龍説明員 手入れ、間伐等と花粉の発生量の関係についてでございますけれども、実はスギ花粉動態調査というものを過去実施してまいったわけでございますけれども、そういう中におきましては、通常の間伐等については花粉の発生量には変化はないというふうな報告が出されております。
  28. 五島正規

    五島分科員 学者の意見としても、陽樹冠のところの面積影響するのであって、間伐とは余り関係ないという意見が多いのは私も承知しております。ただ、こういうふうに林野庁の方が出されました予算説明の中で、枝打ち作業が花粉症の対策に効果があるというふうにも書いておられますので、もしそういうことであるならば、それをぜひ進めていただきたい。  やはり、基本的には人工林が非常にふえた、それが開花期を迎えだということが今日の花粉症の発生を非常にふやしている原因なわけでございますが、この点について林野庁は何か対策をとろうとしておられるかどうか、その辺、お伺いしておきたいと思います。
  29. 龍久仁人

    ○龍説明員 花粉症問題に関しまして林野庁といたしましては、先ほど申し上げました昭和六十二年度からスギ花粉動態調査を行いまして、杉林の分布状況、形花粉の発生状況等について調査をいたしてきております。  平成二年度からはヒノキにつきましても同様の調査を行っているところでございます。また、平成二年四月には、当面対策といたしまして、先ほど先生もお話がありましたような花粉発生量の抑制に資する間伐あるいは枝打ち等の森林施業の推進について指導を行ったところでございます。  さらに、平成三年度からは新たに、一つは花粉発生量の少ない杉の品種についての育種面での調査、二つ目に雄花を多くつける個体につきまして、間引いたり枝を除去するなどの森林施業と花粉発生量との関係を解明し、花粉発生量を減少させる森林施業のあり方に関する調査、三つ目に花粉の飛散を抑制する固着剤等の散布法を確立するための調査を行うこととしておりまして、さらに首都圏の花粉発生量の多い杉林を優先的に間伐する都市近郊杉林緊急整備モデル事業、それから枝打ち等により花粉飛散の抑制に資する地域森林環境整備事業等を実施しているところでございまして、これらについて平成四年度につきましても引き続き推進していきたいというふうに考えております。
  30. 五島正規

    五島分科員 調査をしていただく、あるいは特異的に非常に早期に花粉をつけたり、あるいは花粉を大量につけるそういう枝を切っていくというその措置をやらないよりはやる方がましだろうなと思いますけれども、林業対策として果たして花粉症対策というものを林野庁は可能とお考えでしょうか。すなわち、現在やっておられるような状況によって、戦後植林が非常にふえてきている中において、そういうことが可能であると考えておられるのかどうか。  これは平成二年の林野庁のデータでございますが、東京都の場合、二月の中旬から四月の上旬、一平方センチ当たりの花粉の飛散量を計算いたしまして、東京都では約千六百四十二個という数字もお出しになっておられます。これがなぜそれだけ飛散するかと言えば、花粉がふえているということ、それからもちろん風向きその他もあるにいたしましても、都市の構造がコンクリートが非常に多くなって、それがさらに風その他によって舞い上がって、ある一定期間花粉が地面に落ちてしまわずに空中の中で飛散している時間が非常に長くなっている。さまざまな原因が指摘されているわけでございますが、林野行政としてこの花粉症をこれ以上ふやさない、そういうふうな対策が可能とお考えなのかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  31. 龍久仁人

    ○龍説明員 先ほど各種の調査等を申し上げましたけれども、そういった中で具体的な方法については検討していきたいというふうに考えておりますが、少なくとも先ほどもお話を申し上げました当面の対策を指示したところでございますけれども、その中には、枝打ちそれから間伐あるいは複層林の推進、それから周辺に広葉樹を植える、この四本の柱の対策実施しているところでございます。  間伐につきましても、従来の通常の間伐ではなく、一つの株分の中におきます、雄花をたくさんつける木が入っておるわけでございまして、そういったものに着目した間伐。それから、枝打ちにつきましても、その雄花をたくさんつけている枝、特に下枝が容量が多いものですから、そういったものを対象にしていけば減らすことは可能であるというふうに考えております。
  32. 五島正規

    五島分科員 ぜひその下枝の枝打ち等々についてはお進めいただくといたしまして、この花粉症の直接の抗原が花粉であるということは、これはもう言うまでもございません。しかし、これがいわゆる抗原としてアレルギー反応を起こしてくるということのためには、これをもととした抗体が産出されないといけない。通常であればそういうことはあり得なかったわけでございます。それが抗体をつくりアレルギー反応を起こしてきた。その一つの理由として、さまざまな物質が指摘されているわけでございますが、実験その他において非常に明らかになって、今日問題となってきている物質の一つが、ディーゼル車が排出する微粒子、いわゆるDEPと言われている物質でございます。  そこで環境庁の方にお伺いしたいわけでございますが、ディーゼル車の排出するこのDEPの規制について現在どのようになっているのか、今後どのように進める予定であるのかお伺いしたいと思います。
  33. 入山文郎

    ○入山政府委員 ディーゼル車の排出ガス中の粒子状物質対策といたしましては、昭和四十七年から黒煙の規制を実施しているところでございますが、平成元年の中央公害対策審議会の答申におきまして、ディーゼル粒子状物質対策の抜本的な見通しが示されたところでございます。  答申では、短期それから長期の二段階の目標を立てているわけでございますが、短期目標におきましては、黒煙規制を二〇%強化する、さらに、新たに黒煙を含む粒子状物質全体に対する規制を新設することとしているわけでございます。それから長期目標でございますが、これは黒煙規制をさらに約四〇%、それから粒子状物質規制を六〇%以上強化するということを求めているものでございます。  このうち、短期目標につきましては、もう既に所要の行政手続を終了いたしておりまして、平成五年及び六年から規制の強化を行うことといたしております。また、平成十一年までに実施する必要があるとされております長期目標につきましては、自動車メーカーにおける技術開発を促進しながら、できるだけ早期に達成してまいりたいと思っているわけでございます。     〔主査退席、佐藤(謙)主査代理着席〕
  34. 五島正規

    五島分科員 少なくとも平成十一年までにはその炭素物質及び粒子物質を六〇%程度削減するということは、これは守らせるというふうに、実際それを進めていくというふうに受け取って間違いないですね。
  35. 入山文郎

    ○入山政府委員 私ども、ぜひ達成したいと、関係の業者に対しましても強く指導してまいりたいと思っておるところでございます。
  36. 五島正規

    五島分科員 この物質は、今問題としております花粉症の問題だけでなくて、今日非常に問題になっておりますアトピー等の問題とも関連いたします。産業界ともあるいは市民生活とも直接関連する問題であるだけに、実際実施するとすれば数々の困難があるだろうということは理解できますが、この計画はやはり何としても具体的にぜひ実施していただきたい、そういうことを強くお願いしておきたいと思います。  そこで、厚生省の方に再度お伺いしたいわけでございますが、こうしたアレルギー性の疾患というのは非常に今日問題になってきております。ふえてきております。ただ、重篤でないということの中において、余りこの問題がいろいろと国政の上で大きな問題になるということはないわけでございますが、しかし今の時期、各医療機関にとりましては、花粉症の患者さんというのは大変な数でございます。あるいは小児科にとりまして今日何が一番問題かといいますと、実はアトピーだ。感染症が医学あるいは生活レベルの向上ということで基本的に非常に大きく改善された中において、こうした疾病が今非常に大きな問題になってきております。  厚生省が、直接死亡原因などとは関係しない疾病であるけれども年々増加してきているこういう疾病について、全国的に定点を指定して、例えば診療レセプト等を通じてでもこの有病率あるいは罹病率というものを経時的に把握していく、そういうお考えはないかどうかお伺いしたいと思うのです。
  37. 有川勲

    有川説明員 レセプトを活用した患者の把握方法についてのおただしであるわけですが、レセプトから疾患の動向を調査するということは可能でありまして、そういったものが社会医療診療行為別調査として毎年公表されております。この中に花粉症も含まれるわけでございますけれども、花粉症はこの疾患のくくりがアレルギー性鼻炎というくくりの中に入っておりまして、その中から花粉症のみを取り出して動向を数字として出すことはできないというふうに現在なっております。  しかし、この花粉症の動向を調査するということを平成四年度のアレルギー総合研究において進めたいと考えており、その疫学的調査を進める中で、方法論の一つとして検討してまいりたいと考えております。
  38. 五島正規

    五島分科員 確かに現在の疾病分類の中でそのままでは非常に難しいのはよくわかります。また、こうした疾病を全部完全に把握してみてどうかという問題はあるわけでございますが、例えば市町村単位に実施されております国保のレセプトあるいはそうした調査に基づいて、林野庁あるいは営林署、保健所等の協力を受けながら、全国的に幾つかの定点の中でこうした花粉症の動向というものを追求していくということは大事なことだろうと思いますので、ぜひ何らか有効な方法を御検討いただきたいというふうにお願いいたします。  最後でございますが、大臣にひとつ御決意をお伺いしたいと思うわけでございます。繰り返して申しておりますように、生死にかかわるような重篤な疾病ではございません。しかし、この杉、ヒノキの花粉アレルギー症というのは、この発生の状況、発生の機序を考えますと、間違いなくいわゆる公害性疾患の典型を備えております。これを公害病に加えるか加えないか、そういうふうな問題ではなくて、実態としてそういう原因、状況になってきている。  その中で非常に大きな対応の切り口というのは、一つは林業の中において、花粉の着花といいますか、雄花が非常にふえてくるのを抑えていただくということにあわせて、今日では大気の汚染、特にディーゼル車の排出するDEPをどのように抑制するか、これしかないだろうというふうに考えます。そういう点において、ぜひ大臣が、現在計画のディーゼル車の排ガス規制について、英断を持って断固として進めていただきたい。  あわせまして、このアレルギー性疾患の発生の状況について、今後林野庁、厚生省両省とも協力して、この対策について具体的に進めていくべき時期が来たのではないかというふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  39. 中村正三郎

    中村国務大臣 花粉症のことについては、きょう委員のいろいろな御指摘を受けまして、いろいろ啓蒙されるところがございました。そういうことについては林野庁、厚生省ともいろいろ御相談しながら、これからも環境庁としていろいろ考えてまいりたいと思います。主体的には厚生省、林野庁でやってくださることだと思います。  それで、ディーゼルの排気ガスとの関連でありますけれども、これはディーゼルの排気ガスの健康に与える影響ということを非常に懸念いたしまして、私はこれを強く大きく取り上げてまいりました。よく言われるのですが、ディーゼルの方がいいんだとかなんとか言われますが、実は私は、私的なことを申し上げて恐縮でございますが、路線トラックの業、路線バスの業を長いこと親の代からやっておりました。終戦後は全部ガソリン自動車だったのです。それがディーゼルオイルの税金が半分しかかかっていない、非常に安いのでディーゼルにしなさいということで、誘導されてディーゼルエンジンを使った。使った当時は、運転手はみんな嫌がったのです。悪いガスが出る、しかも振動が多い、加速が悪い。それが今になりますと、何かディーゼルがいいものだというようなことを言われていますが、決してそうではなかった。なぜそうなったかといえば、それは税制がああいうことで、ディーゼルを使えという誘導税制のようなものがあったから、こうなったのですね。それじゃとめようということで今始めたのですが、今委員指摘の形花粉症との関連においては私も随分、今ちょうどここにうちの方の研究所のデータを持っているのですが、確かにNO、を長期に吸わせると気道閉塞状態になって、気道抵抗がふえる。先生御専門家だからよくおわかりと思う。それで過敏になってくる、肺の方の異常な細胞の増殖も見られるというようなことで非常に問題があるということなんですが、ただ、杉の花粉の場合は、刺激するのが鼻やなんかの粘膜であって、必ずしも奥の方とどうかなということがある。しかし、私が素人で想像しまずに、体を過敏にさせる物質が浮遊しているということは決して無関係じゃないのじゃないかな、私は素人なりに考えさせていただいているものでございます。  それから、ディーゼルバティキュレートでいえば、未規制の物質のパティキュレートの中にいろいろな芳香族がありますから、その中にベンツピレンだとかニトロビレンだとかアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、すごいものがいっぱい入っているわけですよ。だからこれをとめなかったらどうにもならぬということで、自動車業界を呼びまして、今大気保全局長が御答弁いたしました長期計画をもっと早く達成してくれ、私自動車メーカーまで参りました。そうしたら自動車メーカーでは、石油をよくしてくれなければだめなんだということでありまして、十八日には石油業界の方を呼んで石油から改善をしてほしいというお願いもいたします。それからディーゼルを使うような税制になっていること、これに対しても問題提起をしたりして、対策を早めるように努力をしてまいりたいと思っております。
  40. 五島正規

    五島分科員 どうもありがとうございました。ぜひおっしゃったように進めていただきたいと思います。
  41. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 これにて、五島正規君の質疑は終了いたしました。  次に、河上賀雄君。
  42. 河上覃雄

    河上分科員 早速質問に入ります。  まず、トリクロロエチレンは無色透明の有機化合物でございまして、金属の脱脂洗浄あるいは各種溶剤等に広く用いられております。しかし、地下浸透をしますと分解が困難になるために、地下水の汚染が生じた事例もたくさんあるわけでございます。このトリクロロエチレンの人体への影響といたしまして、神経障害などを生じさせるおそれがありますほか、巷間発がん性を有するとの報告もされているようでありますけれども、発がん性のある有害な物質であるのかどうか、まずお尋ねしたいと思います。
  43. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 トリクロロエチレンにつきましては、エーテル臭を有する無色の重い液体でございまして、不燃性でございます。曲とよく混和することから、主に金属洗浄用の溶剤として用いられておるわけでございます。  トリクロロエチレンの毒性につきましては、御指摘のように、中枢神経に対する影響、肝臓とか腎臓に対する障害、それから動物に対する発がん性が知られておるところでございます。
  44. 河上覃雄

    河上分科員 トリクロロエチレンは、平成元年の四月に化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、これにおきまして第二種特定化学物質に指定されているわけです。この法律において第二種特定化学物質とは、人の健康にかかわる被害を生ずるおそれがあると認められている化学物質でポる、このように定義されておるわけでありますが、トリクロロエチレンの製造、輸入及び使用に関しては、同法に基づき、どんな規制になっておるのでしょうか。-まあこれは通産関係でございますので、さまざまなものがあると思いますが、一応この化学物質第二種に特定されている。それで、人の健康を損なうおそれがある化学物質であるとしてトリクロロエチレンが明記さているわけでありますが、過去におけるトリクロロエチレンの汚染状況あるいは実態等、どんなふうに掌握をいたしておりますでしょうか。
  45. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 公共用水域及び地下水の水質につきまして、水質汚濁防止法に基づきまして、都道府県知事が測定計画を作成しまして監視を行っておるところでございます。  平成二年度の測定結果でございますが、公共用水域の水質の測定結果によりますと、全国で二千八百三十七地点で一万一千四百十五検体のトリクロロエチレンが測定されたわけでございます。すべて水質環境目標値を満足していたという調査結果が出ております。  また、地下水の方でございますが、地下水質測定結果によりますと、調査いたしました五千八百十七本の井戸のうち、四十四本の井戸で評価基準を超過していたという結果を得ているところでございます。
  46. 河上覃雄

    河上分科員 トリクロロエチレンの検出率については、例えば一九八二年、環境庁の地下水調査結果を見てみますと、浅井戸で二六・七、深井戸で三二・五、河川で三三・八と、こうなっております。他の調査物質と比較してもかなり高い検出率であろう。このように以前はかなり汚染が報告されていたわけでありますが、現在トリクロロエチレンの汚染防止の規制についてはどのようになっておりますでしょうか。
  47. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 トリクロロエチレンによります公共用水域及び地下水の水質汚染防止するために、平成元年に水質汚濁防止法等を改正をいたしまして、トリクロロエチレンの排水基準、これは〇・三ミリグラム・パー・リットルでございますが、排水基準を定めまして、工場、事業場からの排水の規制を行うとともに、トリクロロエチレンの地下浸透を禁止する規定を設け、これを遵守してもらうように行っておるところでございます。  さらに、平成三年七月には規制対象となる施設を追加いたしまして、トリクロロエチレンの汚染防止対策充実を図っているところでございます。
  48. 河上覃雄

    河上分科員 トリクロロエチレンは、生産量も多く、環境への浸入割合が高い。難分解性でもあり、土壌に吸収されにくい。水道水水質基準値と比べると水溶解度が大きいなど、最も地下水汚染を引き起こしやすいような性質を有した化学物質であります。地下水は大気や表流水とは異なりまして、難分解性の化学物質に一たん汚染されると、その汚染というのはかなり長期にわたって続くことになるようでありますし、貴重な水資源を永久に利用できなくしてしまうおそれもあるのではないかと懸念されるわけです。  そこで、汚染されている地下水に対してどのような対策をとっているのか、この点について伺います。
  49. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 先生御指摘のとおり、地下水は一度汚染をされますと、その原因を究明することが非常に難しい、さらにはその浄化対策を講ずることが非常に難しい、こういう特性があろうかと思います。  そこで、常時監視等によりまして汚染が発見された場合には、速やかに汚染の範囲を特定いたしまして、衛生部局とも連絡をとりまして、飲用指導、飲まないように指導をする等の措置を講じながら、地域の実情に応じまして汚染地下水の拡大防止対策、遮水工等を行いまして拡大防止対策を行う。さらには浄化対策としまして、くみ上げまして曝気処理をするというふうな浄化対策等を行うように指導をしてきているところでございます。今後ともこのような指導を徹底してまいりたいと思っておるわけでございます。  さらに、今国会で御審議をお願いをしております公害防止事業団法の改正案に、公害防止事業団の貸付対象事業の一つとして、新たに地下水の汚染防止等の事業を追加する改正を盛り込んでおるところでございます。  さらに、環境庁としましては、汚染地下水の浄化対策推進するために、現在、地下水の汚染機構の解明や効果的な浄化対策手法についてもあわせて調査研究を進めておるところでございます。
  50. 河上覃雄

    河上分科員 公害対策基本法第九条第一項に『政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」このようにあるわけであります。トリクロロエチレンについては環境基準は定めてあるんでしょうか。
  51. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 トリクロロエチレンにつきましては、現在環境基準を設定しておりません。しかしながら、水質汚濁防止法に基づきます排水規制を実施するということに際しまして、その目標を設定する必要がございますので、公共用水域において当面維持することが必要な水質のレベルといたしまして、水質環境目標、こういうものを設定しておるところでございます。
  52. 河上覃雄

    河上分科員 環境基準はそれではなぜ定められていないのか。また今後定める予定はおありでしょうか。
  53. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 トリクロロエチレンのような発がん性が問題となる物質の長期間の影響につきましては、なかなか難しい問題があるわけでございます。専門用語で閾値と言うわけでございますが、その値以下であれば、生体に影響を与えないというふうな数値、こういう閾値を設定する方法が現在のところないというのが一般的な考え方になっているところでございます。そのようなことがございまして、環境基準が現在まで定められておらないという事情にあるわけでございます。  このため、トリクロロエチレンの環境基準の設定につきましては、平成元年の三月の中央公害対策審議会から環境庁長官あての答申におきまして、「発がん性が問題となる物質に関する環境基準の設定については、引続き検討を行っていく必要がある。」というふうにされているところでございます。  したがいまして、トリクロロエチレンの環境基準は定められておりませんが、環境庁としましては、環境基準の設定に向けて現在いろいろな調査検討作業を鋭意進めておるところでございます。
  54. 河上覃雄

    河上分科員 いろいろとお伺いしてまいりましたが、ところで、このように人体に影響が懸念されますトリクロロエチレンの汚染について、最近でありますが、神奈川県の相模補給廠、これは米軍の施設でございます。そしてまた寸同じく神奈川県の相模川でこのトリクロロエチレンが水質基準を上回る、このような実態が新聞報道でもなされておるわけでございますが、この点について幾つか確認と御質問をいたしたいと思います。  まず、相模補給廠の件でございますが、昨年の四月、米下院軍備委員会環境回復審議会がまとめましたレイ報告、これによれば、在日米軍の陸軍基地内に有機溶剤、有機物質であるトリクロロエチレンによる水質汚染があった、このように報告をされているわけであります。レイ報告は、一昨年在日米軍基地を視察をした際、結果としてまとめたものでありますけれども、ここにあります陸軍基地、これは視察をした箇所からすれば相模補給廠と特定できるのではないかと思っております。ただ、この陸軍基地内にトリクレンによる水質汚染があったとの報告が直ちに米軍相模補給廠が汚染源であると決められない、こうは私は考えますが、事実として基準値の三倍に至るトリクレンが検出されているというところからすると、そうではないともこれは言い切れないんではないかと思うのです。この点について既に日米合同委員会環境分科委員会で協議が行われた、こう見聞しておるわけですが、その内容と、また、これら在日米軍等への申し入れ等政府としての対応について、どのようになさったのか、報告をしていただきたいと思います。
  55. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 去る三月五日に日米環境分科委員会が開催されたわけでございます。そこで御指摘の相模総合補給廠の地下水汚染問題についても協議がされたわけでございます。その協議の内容は以下のようなことでございました。  米側からトリクロロエチレンが相模総合補給廠等の地下水の中に検出されたというふうなことは確認を得ておるわけでございます。米側の調査では、この汚染が米軍施設の外に端を発しておるというふうなことで、米軍施設はトリクロロエチレンの汚染源ではない、こういうふうな意見の表明があったところでございます。  それで日本側といたしましては、相模原市では昭和六十三年度から同市の地下水調査を実施しておるわけでございますが、その結果と地下水の流れを考えてみますと、地下水にも流れがあるわけでございまして、地下水の流れの上流側の汚染については、確かに相模総合補給廠が汚染源であるというふうに考えるのは難しいというふうに思っておるわけでございますが、しかし下流側、地下水の流れの下流側の汚染につきましては、相模総合補給廠が汚染源である可能性は否定できないんではないかというふうなことを日本側は米側に指摘をいたしまして、米側が持っておる調査データを提供するように、こういうことを要求したところでございます。これに対しまして米側は、そのような情報を提供するというふうなことで同意を得ておるところでございます。
  56. 河上覃雄

    河上分科員 これはある新聞で明確になっておるわけでありますが、在日米軍司令部報道部がその新聞社の要請に応じまして何点か回答をしているわけであります。その報告によりますと、昭和二十四年から四十九年の間、この相模補給廠ではトリクレンを使用していた、このように報告が出されております。  さらにまた、この補給廠に勤めておりました日本人従業員の証言というのもここに出ておるわけでありますが、それによりますと、昭和二十四年から四十九年までこの補給廠内には金属の被膜処理工場やメッキ工場がありました。くしくも米軍が二十四年から四十九年と言うこの時節にぴったりと符合するわけであります。そしてこの被膜処理工場では、戦車、軍用車両の部分洗浄のためにトリクロロエチレンなどを巨大なタンクに入れて使用をしていた。またメッキ工場では油を落とすために使用しておりました。工場内ではこのトリクロロエチレンが漏れたのを何度も見ております。それが地下に浸水をした、このような証言もあるわけであります。退職者の中にはけいれん症状を起こした者もいました。この工場は四十九年に閉鎖をされているわけでありますが、トリクロロエチレン以外にもカドミウムの廃棄物がドラム缶で百本補給廠の地下に埋納されている。まだまだたくさんあるわけでありますが、こうした証言もあるわけであります。  直ちにすべてをとは私は申し上げませんが、こうした構造、こうした環境、こうした傍証的な要素も加味しながら、もしこれらが事実とすれば大変ゆゆしきことだと思っております。その意味では積極的に解明に臨むべきであろう。現段階での汚染源がどうかの解明ということもさることながら、こうした状況がもし事実だとすれば、過去の状況等、長い間に蓄積されている可能性すらあるわけでありますので、こうした観点から米軍に対する調査の求め方も必要になるのではないか、私はこう思っているところです。この点についてはいかがでございましょう。
  57. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘のレイ報告につきまして、二月の二十七日に行われました日米合同委員会におきまして日本側から懸念を表明をいたしまして、先ほど申し上げましたように、三月五日に環境分科委員会が開催された、こういうふうな経緯もあるわけでございます。そういうふうなことで、米側では、レイ報告書の中にも指摘されておるわけでございますが、在日米軍は日米双方の環境上の法律、規則を遵守する上で立派な実績を上げている、こういうふうな指摘もあるわけでございますが、他方では御指摘のようにいろいろな問題も指摘をされておるわけでございます。そういうふうなことで、米側にとりまして環境上の安全確保は常に最優先事項の一つであるというふうに我々が行いました環境分科委員会の席でも意見の表明をいただいておるところでございます。米軍としても環境上の安全確保を優先事項とするというふうなことの意見の表明をいただいておるわけでございます。  そういうふうなことでございまして、引き続き必要な情報を日本側に提供してもらうというふうなことで、次回の環境分科委員会をできるだけ早い時期に開催するというふうなことで合意をいただいておるところでございますので、当面はこの環境分科委員会を通じまして実態の把握に努めまして、この結果を見て必要な対策を検討してまいりたいと思っておるところでございます。
  58. 河上覃雄

    河上分科員 局長、補給廠というのは野っ原の真ん中にあるんじゃなくて隣はすぐに民家なんです。フェンス一枚なんですね。施設によって形状はさまざま違うと思いますが、この相模補給廠の場合は、隣は大きな団地がありまして、フェンス一枚で仕切られるという程度の町中にあるわけであります。ここだけよければいいということじゃなくて、周辺に対する影響住民に対する影響等も大いにあるわけでございまして、積極的な解明を先方に対しても強く求めて原因解明をすべきだと私は思うのです。  そしてトリクロロエチレンが難分解性、また人体に影響のある化学物質であると先ほど確認をいたしましたが、これらの管理、処理につきまして、その安全性の視点から今後在日米軍に対しても厳重に申し入れるべきだ、そしてさらにこれが実行効果あるものにしなくてはならない、そうした対応、対策をすべきであろう、私はこう考えるのですが、いかがでしょうか。
  59. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘のように、相模総合補給廠の近辺にいろいろな人家等があるわけでございまして、我々といたしましても、その基地の中はもちろんでございますが、その周辺の汚染状況等につきましても、環境基準点におきまして水質の調査とかいろいろな汚染状況の調査はやっておるところでございます。そういう補給廠の中の問題につきましても、先ほど来申し上げておりますような日米環境分科委員会の場を通じまして積極的に対応してまいりたいと思っておるところでございます。
  60. 河上覃雄

    河上分科員 時間もだんだんなくなってまいりましたのですが、相模川の件について二点だけ質問させていただきます。  相模川の件につきましては、県の調査でも判明いたしましたように、基準値の三倍を上回ります〇・〇九ミリグラム・パー・リットル、こういう事実が判明したわけであります。この汚染源を特定するにはかなり時間がかかると私は思うのです。したがいまして、このように基準値を超えている事実がわかりました場合は、原因が判明するまでの間随時調査を行っていくべきではないかと私は思うのです。尋ねてみますと、環境庁でしょうか、一年に一遍都道府県は報告をするようになっておるそうでありまして、現場の県では一カ月に一遍とることになっておるようです。一日に四回から五回やっておるそうでございますが、こうした原因が解明されるまでの期間、積極的に汚染源が特定できるまで執拗に調査を繰り返すべきじゃないかと私は思うのですが、御見解いかがでしょうか。
  61. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 相模川の永池川谷流地点付近におきまして、民間団体の調査によりまして水質環境目標値を超えるトリクロロエチレンによる汚染が判明したことは事実でございます。このために、神奈川県で早速二月の二十九日に調査をしたわけでございますが、ほぼ同じ地点でトリクロロエチレンが最大〇・〇九ミリグラム・パー・リットル検出されたわけでございます。その後も同じ場所を三月の五日に再調査をしておるところでございます。そのときには検出されなかった、こういうふうな報告を受けておるわけでございます。  そういうふうなことでございますが、こういう物質による汚染ということは、人の健康に影響を及ぼすものでございますので、引き続き県を通じまして実態の調査に努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  62. 河上覃雄

    河上分科員 よろしくお願いいたしたいと思います。  これはお伺いしたいのですが、こうして発生源が特定できない、これまで時間がかかる、こうした状況の場合、有害物質というのはこのままずっとあっても放置されておくんですか。解明されるまではそのまま放置されているんでしょうか。そうじゃないんですと言うならば、まだ汚染源が特定できない場合一体だれが処理すればいいんですか。これは決まっているんですか。そのまま置いておくんですか。
  63. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 大変難しい問題でございます。有害物質によります環境汚染の処理・回復対策につきましては、いわゆる汚染者負担の原則、こういうものがございまして、その汚染を引き起こした者が対策実施するという原則になっておるわけでございます。環境庁としても環境汚染の原因解明のために汚染機構の解明等に努めておるところでございます。  御指摘汚染源が特定しない場合にどうするのか、こういう問題でございますが、とりあえず汚染が見つかったところにつきましては、飲用指導、要するに飲まないようにするとか応急対策を講じておきまして、被害が出ないようにしておきながら原因を究明して、やはり負担をしていただく方を特定するというのが現行の原則になっておるところでございます。
  64. 河上覃雄

    河上分科員 非常に難しいでしょうけれども、これはやはり落ち度があるかもしれませんね。そのことだけ指摘させていただいて、終わります。
  65. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 これにて河上寛雄君の質疑は終了いたしました。  次に、田中昭一君。
  66. 田中昭一

    田中(昭)分科員 長官も私がここに立ては何を言うのか大体おわかりだと思いますけれども、三十数年を経ましてなお解決ができずに多量の訴訟が起こされて紛争の状態が続いております水俣病問題につきまして、環境庁がいろいろと御苦労されておる、総合対策などについても力を入れて、今平成四年度の予算編成などについても御努力をされておる、こういうことについては私は十分理解をしております。その理解の上に立ちまして、しかしこれだけやりながらなおかつ水俣病の全面的な解決ができない、そしてなお紛争状態がずっと続いていく。  特に、私が非常に心を痛めておりますのは、御承知のように六月にブラジルで地球サミットがございます。これには恐らく長官も御出席だと思いますし、うわさによりますと竹下前首相も参加をされる。この中で先進国、経済大国としての日本は世界における環境問題のリーダーシップを発揮する、こういう会議になるのではないかな、こういうふうにお聞きをいたしております。私もまたそうあらなければならない、こう思っております。しかし一方、水俣病の患者さんたちが六十名この会議にNGOの立場で参加をする、そして世界の公害の原点と言われておるこの水俣病の問題がなおいまだ解決せずに、患者の皆さんは既に七十歳に届こうとしておる、何とか世界的にもこの問題の解決を図るようにお互いに努力をしてほしいという訴えを現地でやる、こういうことも実はお聞きをしておるわけであります。そういう意味では日本の国にとっては極めて不幸なことであろうと思っております。  私は熊本県の出身でありまして、代議士になる前も支援団体の一員として、この問題にずっとかかわり合ってきた経過もございまして、今この問題の解決をやらなければ未来永劫この問題の全面的な解決は不可能になるのではないかなというふうに実は考えておるわけであります。二月七日に東京地裁の判決が出されました。二日前の五日には福岡高裁で今までの和解協議の中間的な総括がなされた。東京地裁の判決は、御承知のように六十二年の熊本地裁の判決とまるっきり反対の判決が出ておる。この二つの判決が控訴されて、そして上級審で議論がされまして、最高裁で最終的に争われるということになった場合にはもう何年かかるかわからない。一説によりますと、十年かかるのではないかな、こういうことも言われておりまして、司法当事者自体がこの判決による解決というのは無理じゃないかなということを言っているわけであります。そういう状況の中で、この水俣病問題をこのまま放置しておくということは、やはりやるべきじゃないんじゃないか。何とかして発想の転換をして、この問題の全面的な解決の方途を見出すべきではないかな、私はこういうふうに実は考えております。  昨日もこの場で、同じく国家賠償責任を問われておる農林水産大臣にも私はそのことを申し上げました。それから同じく昨日通産大臣にもこのことを申し上げました。先々週は厚生委員会で厚生大臣に対しても私の考え方を訴えました。官房長官にも訴えました。やはり今こそ全体として英知を結集して、何とかしてこの水俣病の解決を図る、こういう方途を見出すように努力をすべきではないかな、こういうふうに考えるわけでありまして、この点についてまず長官の方から御所見をお伺いしたいと思います。
  67. 中村正三郎

    中村国務大臣 今委員指摘地球サミットの前に問題の解決をということでございます。世界を挙げての地球環境時代に対応するために地球環境保全の具体的な枠組みをつくっていこうという重要な会議でありますから、我が国も積極的にやっているわけでありまして、その前にいろいろな問題が解決していればというのは、私も気持ちはわかるわけであります。そういうのが望ましいことは言うまでもございません。  ただ、水俣病問題、田中先生からもいろいろ教えていただきまして、私も子供のころに非常に悲惨な災害であることを見てまいりました。そうして十年ぐらい前に環境委員会にいたときいろいろな先生方から意見を伺って、また十年たって今環境庁長官になってみましていろいろな御意見を伺ってまいりました。そういたしますと、これはやはり長い歴史があり、いろいろな問題があり、訴訟もいっぱいなされ、我が国公害問題の原点であるような問題でもありますし、私どもが理解するには軽々にできない非常に難しい問題であるなというふうに感じております。  国といたしましては、公害健康被害の補償等に関する法律、先生に何遍も申し上げるものですから繰り返しになって御無礼かと思いますが、そういう一万のものをもって患者の公正な救済ということを一生懸命やってまいりまして、そしてこの間の判決というものを受けまして、政治的責任ということも言われました。まさにそこらだと思うのですが、私どもといたしましては、新たな患者の発生というのはなかなか考えにくい状態かと思いますが、今なお相当な数の未処分者が残されている、そういう中で水俣病総合対策というようなものを中公審から御答申をいただきまして、そしてそういったものをもって、これについてはだれかが何かをしたときに国がどこまで救済していくかという行政の根本にかかわる問題でありますから、やはり財政当局とも交渉いたしましたときに、そうした話も出ましたけれども、財政当局に一生懸命話しまして、これは満額いただかないと大変なことになるということで予算をいただきまして、それの実施を四年度やるべく今準備をしているわけでございます。そういう中で、私どもとしては、行政のやり得る可能なことを、考え得る限りのことをやって役目を果たしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  68. 田中昭一

    田中(昭)分科員 総合対策は、もうこれは私が言うまでもなく、医療手当、医療費の全額負担などを含めまして、これは環境庁の御努力である、私は実はこう思っております。しかし東京地裁の判決でも、恐らく十一章の真ん中ごろに書いてあったと思いますけれども、この総合対策、行政施策だけではこの問題の解決はできないんじゃないかということが指摘されているように、三十数年の歴史的な、この問題というのは非常に奥の深いものがあると私は思うのですね。ですから、そういう意味では、この問題を解決するためには一定の、これは私も何回も申し上げたのですが、だれかが調停をする、仲裁をする、これしかないのではないかなというふうに思うのです。これは常識だと思うのですね、ところが、その仲裁をやったり調停をするのは一体だれがやるのかといった場合に、やはり日本の政治制度の仕組みからすれば裁判所、司法ではないかな、私は実はこう思うのです。ですから、きちんと早々に判決が出て、その判決によってやるというのが私は一番の筋道だろうと思っているわけです。  ところが、三十数年たって出てきたこの東京地裁の判決と六十二年に出された熊本地裁の判決がまるっきり裏表違う判決になっておるというほど難しい問題です。これは福岡高裁を初め七つの裁判所が和解勧告をやった場合に、責任論にしてもあるいは病像論にしても、法理論的にも医学上も、これは結論が出ないのではないかな。それから、この水俣病の救済は、今ある公健法上の認定制度、それに基づく補償協定による救済ではできないんじゃないかということを裁判所が実は言っているわけですね。  これはもう御承知のように、今二つの控訴審がずっと上に上がっていく、ほかの、三月三十一日には新潟地裁の判決も出る、大阪もある、京都もある、どんどん出てくるでしょう。恐らく原告の方は自分の主張が認められなければ控訴するし、国の方も国の意見が認められなければ控訴する。お互いに控訴し合いながら最終的には最高裁まで行く。最高裁の判決が、例えば来年でも出るという見通しがあれば、それを待つという方法もあると私は思うのです。そして、それに従う。しかし、先ほども言ったように、裁判所自体が、これはもう無理だ、こう言っているわけですね。無理だと言っているわけです。仮に十年先に最高裁の判決が出たとしても、そのとき患者もみんな死んでしまう、これはもう日本の歴史上、世界史上大変な問題になると思うのです。ですから、裁判所自体が、この問題を解決するには、判決でなくてお互い当事者の意思を集めて和解による解決しかないんじゃないかということを言っているわけですね。ですから、恐らく国としては、熊本地裁の判決は、これはもう国としては認めるわけにはいかないという立場で控訴されておるわけです。しかし、東京地裁の判決を国は今踏まえておると思う。これはこの間の予算委員会における長官なり厚生大臣の御回答を見ても、東京地裁の判決に依拠して国は今この水俣病問題の基本的態度に立っておられる、こういうふうに私は考えておるわけです。その東京地裁の判決ですら和解による解決しかないんではないかということを言われておるわけですね。そういう意味からしますと、仲裁役、調停役をとる裁判所がそう言っているわけですから、やはりこれに従うという道以外にこの問題の解決の方途を見出すことは無理じゃないかな、私はこう思っているわけですが、国としては、それは行政の筋を通すという立場からだめなんだということをずっと言われておるわけですね。  だとするならば、この問題を本当に解決する意思があるとすれば、どういう方途が別にあるのかということを、やはり原告の皆さんが納得しなければ、これは紛争状態というのは解決しないわけですね。幾ら国が一生懸命やったとしても、原告の方がそれじゃだめだと言うなら、紛争状態というのはいつまでたっても収拾できないわけですから。満足するかしないかは別にして、しょうがないだろうということで納得できるような、そういう方策があるのかないのか。私は一生懸命勉強しましたけれども、なかなかそれは難しいんじゃないか。やっぱり東京地裁の判決十一章で言われておるような立場に立たざるを得ないんじゃないかな、こう思っておるわけですが、この点いかがですか。
  69. 中村正三郎

    中村国務大臣 今お話ございましたように、非常に奥の深い問題でございますし、司法が違う一最高裁じゃございませんが、判断を示すという中でございます。そして、今国は東京の判決によって動いているんじゃないかということでございますが、決してそういうことではなくて、その判決が私どもの考えていることと合っているなということを考えているわけでありまして、最終的にはやはりこうした問題を決定してくださるのは司法の立場だと思っております。  この水俣病のことに限らず一般論として申し上げますと、これは、こういった自由主義のもとの国でありますから、やはりいろいろな意見の違いが出てくる。そして私ども行政は法律に基づいて行政を行うわけでありますから、その枠の中で踏み出せないところがある。そういうところで意見が合わなくなってしまったときには、やはりそれは司法でどっちがいいんだということを判断してくださるというシステムがあるわけで、そこで司法が判断を下せないということをもしおっしゃるなら、これは三権分立が成り立たなくなるわけだと私は思うのでございます。私、長官としてでなく、一立法府の人間として考えれば、それは困るなというふうに思います。  ただ一方、日本の裁判が非常に時間がかかるといういろいろなところからの御批判があるやにも伺っております。その中でさてどうするかということでございますけれども、私は行政の立場から申しますと、先ほどから申し上げ、また先生にもいつも申し上げていて大変恐縮なんでございますけれども、何かこうあったときに国なりがどういうふうな責任をとるかという行政についてのゆるがせにできない根幹の問題にかかわるものですから、行政にただ今和解に乗れと言ってもなかなかそうですかと言うわけにはいかない立場というものがございますと思います。  そこで、長官としてでなくて議員として考えさせていただきますと、まさに政治問題ということになると政治の方の御出動があるのかなというようなことも考えさせていただいているわけでありまして、そういう中で、東京の判決も責任はないんだということを言って、しかもこれも最高裁の判決じゃないわけですが、言って、しかし、その政治的責任はあるよ、こういう判決でありますから、そういう中で政治的ということになりますと、それはまさに政治の御出動があるのかなというようなことも政治家としては考えさせていただいておるわけでございます。
  70. 田中昭一

    田中(昭)分科員 長官が言われることが全くわからぬということじゃないんですね。司法の判断を求める、これはもう私そのと、おりだと思うのです。その司法の判断の中身が、正規の判決以外は司法の判断といいますか司法の考え方として認められないか。私は司法の判断として判決を行うということになれば、もう長時間を要する。膨大な審理をやらなければ、何千名ですから膨大な審理の時間が必要だ。それから法的責任ですね。国家賠償責任などというのは法理論的に非常に難しい、なかなか難しい問題だ、裁判所はこう言っているわけです。それから病像論についても、医学上この問題の結論を出すとすれば、それは永久に終わらないんじゃないか、これは裁判所が言っておるわけです。そういう中から裁判所、司法の判断として、和解で解決以外にないんではないですかという提起をしてきているわけですね。これはもう福岡高裁を初め各地裁で和解勧告として全部やってきておるわけです。この間の東京地裁の判決も、おっしゃるように、国に国家賠償責任はない、しかしこの問題を解決する政治的責任もあるし、解決する責任はある。その解決のやり方としては、和解による解決しかないんではないかという意味の判決になっているわけですね。そうしますと、長官言われるように、仲裁役、調停役はだれが果たすのか。それは原告も被告も納得する、そういう調停役、仲裁役を選ばなければいけない。それはもう司法しかないとするならば、司法の判決がだめで、だとするならば、司法が提起している和解を司法の判断として受けとめる以外にほかに解決の方途はないのではないかということを私は言っておるわけです。だから、判決には従うけれども、裁判所が言う和解の提起についてはだめなんだ、これはちょっと矛盾していると思います。だとするならば、ほかに方途があるのかというと、それは今まで何回も私お聞きしています。その方途があるなら、私たちも、その方途について、悩みながら少しまとめてみたいという気持ちを持っています。しかし、それはなかなか出てこないんです。また、考えてもそれはないんじゃないか、こう実は思っているわけで、そこのところをもう少しきちんとしてほしいな、こう思っているわけです。
  71. 柳沢健一郎

    柳沢(健)政府委員 環境庁といたしまして、最大の、先生御指摘の方途といたしまして、総合対策、来年度から実施しようといたしております総合対策があるというふうに考えておるわけでございます。これは、もちろん中公審答申に基づきまして、もう水俣病の発生地域では健康に関する特別な問題があるということでもって、その中公審答申に沿っての総合対策でございます。同時に今回、東京地裁の判決におきましても、チッソによります損害賠償が認められた三分の二の人たち、これについては、医学的には水俣病と診断するに足りるそういう証明がない、しかし健康障害が水俣病によるものが含まれている相当程度の可能性があるという、そういう考え方での東京地裁の判決があったわけでございます。これは中公審答申の考え方とこの判決に言っております考え方と、考え方といたしまして極めて同じ考え方であるという面も持っておるかと思いまして、私どもといたしましては、この水俣病ではないというふうにされた人たちに対する総合対策、これは、具体的には一定の条件を持つ健康障害を有している人たちに対しては、月々一万六千円から二万二千円の療養手当を支給するという制度でございます。これは、仮に月二万円ということになりますと、一年二十四万円になりますし、それが仮に十年になると二百四十万円になる。それにさらに療養費が追加するということで、もちろんこの中には弁護士さんたちの分ということについては全く入っておりませんけれども、いわゆる原告の方、被害者の方に対するものといたしましては、環境庁として、全く発想の転換を図って、今までやらなかった施策を今回実施するということでございます。これは今日現在実施しているわけではございませんで、明年度から実施するということでございますので、その明年度からの実施状況を十分見ていただいた上に不足であるというならば、それを追加していかなければならないかもしれませんけれども、現時点においてこれだけでは不十分であるというふうに言われるということにつきましては、私どもとしては最大限の施策であるという自信を持っているということでもって御理解をいただきたいと思います。
  72. 田中昭一

    田中(昭)分科員 環境保健部長と議論するときには、私はいつもやはりお役人的な発想だと思いますね。これだけやってやるんだからこれで我慢しろという発想では、紛争というのは解決しないんですよ。紛争というのは、相手との関係では同等同列の立場に立って紛争を解決するという立場に立たなければ解決しないんです。ここのところがいつも部長とはやはり基本的に合わない。  だから、東京地裁の判決でも言っておるわけです。今言われたように、療養費とか「療養手当を支給するといった行政措置の導入が、本件水俣病紛争解決のために必要、有益なものと考えられるが、本件水俣病紛争を早期、適正かつ全面的に解決するためには、結局のところ、これらの行政措置とともに、訴訟上の和解による合意を全当事者間で形成することが何よりも必要」だ、これは東京地裁の判決で言っておるわけです。その上に立って、最後に、「水俣病紛争の根の深さからすれば、和解によって合意を形成することには多くの困難を伴うことになろうが、本判決が一つの契機となり、その冷静な検討の中から、この紛争を和解によって解決しようとする気運が本件の全当事者間に生まれてくることを期待したいと思う。」というふうに締めているわけです。ですから、私もさっきから言っているように、環境庁が努力をした総合対策がだめなんということを言ってないわけです。それでは解決しないから、だからといって最高裁の判決を待つには、余りにもむごたらしい結果になるから、早目に解決するためにはどういう方途があるかということになれば、この東京地裁でも言っておるような和解による、集まって知恵を出し合う。だから私は、病像論についても責任論についても、それからお金のことを言われましたけれども、私はお金のことなんか一銭も言ってないのですよ。和解というのは妥協ですから、その場の中でまとめる今後の問題であって、その道筋をどう見つけるかということを私は言っておるわけですから、そのことについてぜひ御理解をいただきたいと思います。  それから、時間もございませんから申し上げますが、長官、二月二十日の予算委員会、これは田邊委員長の代表質問を受けまして、新盛委員が水俣病の問題。この際も、論理は、和解による解決しかないんじゃないかという論理で、いろいろ議論がありまして、厚生大臣の御答弁などもずっとございまして、途中中断をしかかるようなそういう状況の中で、最終的に中村長官が、「行政の立場ということもございますが、新盛委員の御指摘もあることでございますので、この判決の内容を真摯に受けとめまして、新盛議員のお言葉もいろいろ聞かせていただきながら、誠意を持って水俣病の対策に当たってまいりたいと存じております。」こういう答弁で、あの予算委員会が中断しかかったものが収拾された、こういう経緯になっています。私たちは、これは新盛議員が一生懸命和解の解決の提起をした、そして厚生大臣の答弁もあった、長官答弁も二、三回ありました。結論として、こういう結果になったと思っておりますので、この答弁からしますと、提起された内容について真摯に受けとめる、こういう立場で従来のスタンスが変わってきているというふうに受けとめたいのですが、いかがですか。
  73. 中村正三郎

    中村国務大臣 あのときは、予算委員会のいろいろな運営上の経緯がございまして、打ち合わせた上御答弁させていただきましたけれども、私の真意は、あれはまさに、あの判決に盛られた、国家賠償法の責任はない、しかしながら政治的に責任はある、それを真摯に受けとめて、いろいろな御意見がありましたので、これから水俣病の対策に当たっていきたいということを申し上げたわけでありまして、あくまでも今私どもが推進しております総合対策、この対策について申し上げ、その最大限の対策を行って、この解決に全力を挙げていきたいという意味でお答えしたことでございます。
  74. 田中昭一

    田中(昭)分科員 それは長官、違うんじゃないですか。総合対策だけでは解決つかないという論理の追及の中で、最終的に、和解による解決を提起をした新盛委員の意見を真摯に受けとめる、私は、そういうふうに理解をしたからあの場は収拾された、こう思っております。まあしかし、時間がありませんから。  それで、長官、私は最後に二つだけ意見を申し上げて、終わらせていただきたいと思うのです。  その一つは、昨日も農林大臣、通産大臣にお願いをしました。一昨週厚生大臣にもお願いをしました。官房長官にもお願いをいたしました。それから二、三日前に熊本県知事と我が党の田邊委員長との話し合いをセットいたしました。いずれにしても、私は、この問題をこのままの状態で、この紛争状態がずっと続いていって、もう将来歴史に汚点を残す、こういうことにしてはいけない。そういう意味では、私は国だけを責めるつもりはありません。それは弁護団とも、原告とも、十分話し合いをしたい、こう思っております。生きているうちに救済をという命題で、この問題を何とか解決をしたいと思っています。  それで、長官、お願いをしたいのは、関係閣僚会議です。各大臣の皆さんにもお願いを申し上げました。関係閣僚会議で、環境庁として総合対策として努力をしてきた、これを一生懸命やりたいと思うが、それだけではどうしてもやはり紛争の状態が解決することにはならないのじゃないか、こういう立場から、やはり何らかの新しい発想の転換が必要ではないかという立場を踏まえて、関係閣僚会議で再度この水俣病の問題についての認識を新たにしていただいて、そしていろいろ議論をしていただきたい、このことをまずお願いしたいというのが一つです。これはよろしゅうございますか。  それから、もう一つついでに申し上げますが、先ほど言いましたように地球サミットです。地球サミットの場で、私もNGOからお誘いを受けております。患者が病魔を押してこの環境会議に参加をする、もうホテルもございませんからキャンプを張ってやる、こういうまさに悲壮な決意で行くわけでして、この中で世界の先進国、経済大国日本が環境問題のリード役を果たすということをやっておる外では、公害問題でもう何千何万という人がどんどん死んでいったり、あるいは病魔に侵されたまま救済されずにおるという、そういう状況というのは、私は好ましくないと思いますから、やはりこの地球サミットに向けまして、この水俣病問題について一定の結論をつける、こういう立場でのさらなる御努力をお願いしたい、この二つを最後にお願いしたいと思います。いかがですか、長官
  75. 中村正三郎

    中村国務大臣 委員の御指摘のこれは早く解決しなければいけない、サミットの前にもこういうものを決着をつけてという気持ちはまさに我々も一緒でございますが、何回も繰り返しになって大変御無礼でありますけれども、和解についてということになりますと、訴訟の焦点が、究極的に何らかの損害が生じた場合、これは損害を与えたのは企業でありますから、どこまで国民全体の負担によりそれを補てんすべきかという、行政にとってまことに基本的な問題を含んでおりますので、交渉等による妥協ということの性質のものではなくて、私どもとしては裁判で決着をつけていただくという以外にないわけであります。そして、その中でできる限りのことをしようということで、行政当局にも一生懸命働きかけまして、総合対策というものを進めて、一歩踏み出して、政治的責任と言われれば、我々のできるぎりぎりのところかなということをやらせていただいております。  その上で、今の関係閣僚会議のことでございますけれども、平成二年十月に国の見解ということを出しております。その国の見解を閣僚会議に報告され、これを了承されておりますので、それを今変えるという状況にはないということをお話し申し上げさせていただきたいと思います。     〔佐藤(謙)主査代理退席、主査着席〕
  76. 田中昭一

    田中(昭)分科員 もう時間がありませんが、ほかの大臣の皆さんは、この問題について、いろいろ提起もある、それから代表質問での提起もある、予算委員会での提起もある、各分科会委員会の提起もあるので、関係閣僚会議で改めて議論をすることについてやぶさかでない、こういう答弁をいただいておりますから、環境庁長官がそれはもう必要ないなんて言われますと困りますから、それはその場で環境庁長官の意見を言われることは、これはもう長官の権利ですから、それまで言うなとは言いませんけれども、いずれにしても情勢の認識を改めてやっていただいて、何らかの解決の道がないのか、もう一回関係閣僚会議議論をしていただく、このことだけ約束してください。よろしゅうございますか。
  77. 中村正三郎

    中村国務大臣 どういうことをやれということを限定されて、これをやれと言われても困るわけでありますけれども、関係閣僚会議においてはいろいろと論議をしてまいりたいと思います。
  78. 田中昭一

    田中(昭)分科員 終わります。ありがとうございました。
  79. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて田中昭一君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  80. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 きょうは、空き缶の問題に絞りましてお尋ねしたいと存じております。  空き缶の問題は、ぽい捨て問題その他として非常に庶民に打撃を与えている上、そのごみが散乱しておりまして、環境行政の一つのシンボルマークみたいに受け取られているわけであります。庶民の側から見るとひどく不満がございまして、関係各省庁があるいは責任をなすり合いしているように見えるわけでございまして、全国の婦人団体のあらゆる関心事項の最高トップに、この瓶、缶問題というのが敏感に反応されているわけであります。したがって、きょうはいろいろ情報をお持ちで調整を続けてこられた環境庁を中心にされまして、関係各省にお尋ねしたいと存じております。  最近、アルミ缶とスチール缶が値崩れを起こしておりまして、特にスチール缶については大変な値崩れ、したがってその費用負担でもめております。そこで、しょうがないものですから、各市町村がそれを引き取ったままごみの山の中へほうり込んでおるという惨たんたる状況が発生中でございまして、こうした状況を一つ見ましても、政治の対応が望まれているわけでございますから、私は、短く関係省庁にお尋ねいたしまして、最後に長官の御見識をお尋ねするというふうにしたいと存じます。  まず、空き缶を投げ捨てることについて警察は取り締まっていないではないかという不満がすごくあるわけでございます。現在どういう法令に基づいてどういう態度をとろうとしておられるか、警察庁からお尋ねをいたします。
  81. 松原洋

    ○松原説明員 お答えいたします。  空き缶を投げ捨てる行為でございますけれども、これは態様によりましては廃棄物処理法あるいは道路交通法あるいは軽犯罪法等に違反する場合があるというふうに考えております。  警察といたしましては、この空き缶問題につきましては、専らその取り締まりによって解決すべき性格の問題であるというふうには考えてございませんで、まず国民一人一人のモラルの向上を図る、また、いわゆる投げ捨てが生じにくい社会システムといいますか、環境づくりを進めることが重要ではないかというふうに考えているところでございます。  そういったことから、警察といたしましては、関係省庁から構成されております空き缶問題連絡協議会に参画をいたしまして、いわゆる投げ捨ての防止のための普及啓発活動に協力をいたしますとともに、違法行為を現認いたしました場合には、指導、警告等の措置を講ずることといたしておるところでございます。
  82. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 デポジット制度について伺いたいのでありますが、現在全国の状況はどういうふうになっておるか、売る方じゃなくて今度は回収する方の非常に強力な手段として考えられているわけでございますが、そこを御説明いただきたいと存じます。
  83. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 デポジット制度の問題でございますが、現況についての御質問でございますのでお答え申し上げますが、平成二年度現在で環境庁が把握しておりますところによりますと、十五都県の四十八市町村でこういう試みが行われております。このうち埼玉県の神泉村、それから長瀞町、大分県姫島村では大体市町村の全域、あるいはそれに近い規模で行われている。そのほかは公園とか体育館とか駐車場、駅前などの一部地域を限定しでそのような試みが行われているということでございます。  また、どういう実施方式に基づきましてそのような試みをやっているのかということでございますが、十円程度の金銭を預かり金といたしまして販売価格に上乗せをする方式、また缶と引きかえに奨励金を渡す奨励金方式、またメダルを渡すメダル方式、また抽せん補助券等を渡す発券方式等がございます。その内訳は、大体四八%がデポジット方式、一六%が奨励金方式、五%がメダル方式、残りの二七%が発券方式、こういう状況でございます。
  84. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 臨時行政改革推進審議会の第二次答申、昨年十二月十二日のものによりますと、豊かなくらし部会のお話として、デポジット制度の全国的な推進についてお話がまとまっているようでございます。これについて全国的に進めておられるのかどうか、この見通しを伺いたい。決意を承りたいと言った方がいいかもしれません。  その当時、農林水産省はひどく反対されたそうでございますから、まず農林水産省からお話しいただき、環境庁からお話しいただきたい。
  85. 樋口久俊

    ○樋口説明員 お答えいたします。  今委員御質問ございましたいわゆるデポジット制度の導入につきましては、いろいろな考え方がございまして、またさまざまの御意見がございます。解決をされなければならない難しい問題が多く残されている状況にあると考えているところでございます。しかしながら、地球環境問題への国民の関心の高まりがあることも事実でございまして、食品の過剰な包装の見直しや容器の散乱の防止、廃資源のリサイクル等を推進することはまだ大切なことであると考えております。  そういう状況でございますので、まずは先般制定されました改正法の定着を図ることが肝要士考えておりまして、現在御審議をいただいております予算案の中に私どもの方の関係で盛り込まれております新しいパイロット事業を活用するなどによりまして、回収業者、飲料メーカー、流通業者、地方自治体等が一体となりまして、飲料容器の分別収集、再資源化のためのシステムづくりが行われるように指導してまいりたいと考えている・ところでございます。
  86. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 デポジット制度の導入についての考え方ということでございますが、私どもといたしましては、今までの空き缶という、美観上廃棄物が捨てられるという対策のほかに、これからの世の中としては環境保全型社会をつくっていかなければならぬ、そういうことからしますと、再生資源の回収を促進するというようなことはかなり重要な課題になってきているという認識をしているわけでございます。  そこで、我が国でも先ほど申し上げましたように若干の例もありますし、またビール版業界では瓶について自主的なものをやっているということもございます。農林省の方からお答えになりましたように、回収の手間とかコストとか保管場所、中小企業の負担といった問題点があることは事実でございますが、現実にこういう制度を導入しているところもございますし、先ほど申し上げましたような視点からいって、やはり私どもは社会的に受容される仕組みがあるのか、またそれをどのように講じていくかという観点からこれは検討を進めていく課題ではないかというぐあいに考えているところでございます。
  87. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 検討を進める課題だというところから先に進んで、このデポジット制を進めるのか進めないのか、どこが中心になって推していくのか、今関係省庁がばらばらに検討しておられるのはわかるけれども、そういう状態では甚だ心もとないのであります。どこがおやりになるのか、進めるのか進めないのか、いつまでに進むのか、どうぞ。
  88. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 私どもとしましては、先ほど申し上げましたような課題が幾つかございます。そこで、そういった課題を詰めていかなければならぬ。先ほど申し上げましたように、リサイクルがうまくいくようにというのは環境庁としても重大関心事でございますから、私どもはこれを積極的に勉強していくということで検討会をつくってやっておる……(渡部(一)分科員「いつまでに」と呼ぶ)大体ごとしいっぱいぐらいにはそういう検討会で結論を出してもらい、どういう方策をとろうかということを検討してまいりたいというぐあいに考えております。
  89. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 瓶の統一規格について承りますが、再生資源の利用の促進に関する法律、リサイクル法の第一種指定製品に統一規格瓶を追加することを通産、農水、大蔵省が検討しておられると承っておるわけであります。通産省としてそれをおまとめいただいているようでございますが、この統一規格問題は、もう一歩前進させると大変いい制度になると私も思います。そこのところを御説明いただきたい。
  90. 田中映男

    田中説明員 お答えいたします。  ガラス瓶には丸瓶、角瓶のほかに、先生おっしゃいますような変型瓶といういわゆる化粧品、アルコールの瓶がございます。  ガラス瓶の再資源化、道が二つございます。一つは、カレットとしましてガラス瓶の原料として再使用する方法でございます。実は、いわゆるデザイン物の瓶でございましてもカレットとして再資源化をすることはございます。それから、私どもとしましてはリターナブル瓶、再使用の可能な瓶がリサイクルに効果的であると考えております。そこで、現在利用されております一升瓶とかビール瓶などの利用推進に加えまして、新たに規格統一瓶を導入するべく関係省庁、関係業界と検討を進めておりまして、現在酒造組合におきまして五百ミリリットルの規格統一瓶というものを定めまして取り組み中でございます。この利用拡大することを期待しているところでございます。  それから、お尋ねの点でございますが、こうした状況を踏まえまして規格統一瓶の利用拡大を図るために、通産省としましては再資源化法に基づきます第二条の第一種指定製品への指定をするべく、今関係省庁と鋭意検討しているところでございます。(渡部(一)分科員「いつまでですか」と呼ぶ)ちょっと今ここで直ちにめどは申し上げかねますが。
  91. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 検討しています、それが気に入らないんだね。何十年も検討するように見える。現に何十年も検討してひどい目に遭った例がすごくあるから、ここを主婦の代表が聞いていたとしたらもうぎらぎらして、何を言っておられるのですか、私たちは毎日それこそ油だらけ、ゴキブリだらけになりながら分別収集をやっているじゃないですか、随分ゆったりと御検討されているのですねというふうな非難が来るでしょう。庶民と接触しているときに、その検討ののろさは許しがたい。だから私はがあがあさっきから言っているのですが、いつまでにどの辺のめどでおやりになるのか、そして実効的な措置はどうとられるのかお尋ねしたいのです。
  92. 田中映男

    田中説明員 お答えいたします。  私は予算委員会でやはりきっちりしたお話をさせていただくべきだと思いまして、あえてめどは立たないと申しましたけれども、先生のおっしゃるような何十年もかかることではございません。あえて申しますならば、もっと短い期間で、一年もかからない期間で、関係省庁の今の熱意から考えましてこれはもちろんま、とまるもの、かように私は思っております。
  93. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 では次に、生産者や流通業者、回収業者あるいは地方自治体を含めた行政、そして消費者、この五種類の方々が何らかの意味で打ち合わせして何か決めなければならない、そしてそのコストをどっちにするか、だれがどの辺に手を出すかというのを決めなければならない。改正廃棄物処理法におけると、市町村にこうした方々が参加される廃棄物減量等推進審議会を置くことができる旨の規定が盛り込まれたところだと承っているわけでございます。これは大変結構なことなんだが、小さな地域であればあるほど話がまとまらない。例えば巨大工場が一つあって、その工場が物すごい廃棄物を出したとすれば、横の住民団体とか消費者とか市町村とか声も出せないという形になってしまう。  したがって、これは小さな単位でこの審議会を置くことができるのは各グループのバランスがとれている場合に限るのであって、むしろかなり大きな単位で、県とか、あるいは東北地方とか関東地方とか、場合によっては全国一斉にこうした問題について裁断のできる、実行力のある、そして力のある決断機関というものが必要であると私は思うのですが、いかがですか。
  94. 浜田康敬

    ○浜田説明員 先生御指摘のとおり、改正廃棄物処理法におきまして市町村に廃棄物減量等推進審議会を設けることができるという規定が置かれたわけでございます。  この機能は、資源となるごみの回収あるいはごみの減量化、資源化の方策等々を御審議いただいて、地域レベルでまず実践的な取り組みを関係者が協力しながら実施していただくという趣旨でございまして、これに対しまして厚生省といたしましては、予算上新たな補助制度等を今平成四年度の予算案の中にも盛り込ませていただいている次第でございます。  ただ、先生も御指摘のように、単に地域だけでこうした取り組みがうまくいくかという点につきましては私どもも懸念している面もなきにしもあらずでございまして、特に空き缶等のリサイクルというふうなお話でございますが、こういった点で広域的な対応、例えば都道府県が市町村の東ね役として努力するという必要も感じておりまして、今申し上げました平成四年度予算の廃棄物の再生あるいは減量化のための補助金の中に、都道府県として広域的にリサイクルを進めるための取り組みもやっていただくような補助金を盛り込んでおるところでございます。  なおまた、国レベルにおきましても、こうした地方の取り組みをバックアップしていくために、関係省庁が話し合ってそれぞれの立場でそれぞれの関係者が責任を果たしていただくことが大事だろうと思いますので、厚生省といたしましても国レベルでの話し合い、廃棄物の減量化、再生のために努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  95. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大臣、国務大臣としてちょっとここをまとめていただきたい。今の話、微妙な話をされている。ということは、各省庁が責任を持ってやるのですから、その地域に踏み込んだ場合、省庁ごとの意見というのがまとまらない可能性というのは極めて高い。主務官庁を決めておかなければならない、あるいは責任者を決めておかなければならない。そうしないと、タクトが振れないのですね。他と同じにすればいいというものじゃなくて、キャッシュが絡む話になってくる。  例えば、大臣、分別収集をしない町村はだめですよとある地域では言わなければならないでしょう。本当は全部やればいいけれども、必要のないところがあるかもしれない。だから、分別収集やりなさいと消費者に号令しなければならぬところもあるでしょう。あるところでは、生産者に買い取りなさいと言わなければならぬところがあるでしょう。あるところでは、自動販売機にデポジット機をくっつけなさいと号令しなければならぬ場合もあるでしょう。あるところでは、港がそばにあるから集めたスチールを外国に輸出しなさいよ、そういうふうにサジェスチョンすることもできるでしょう。ところが、最終的にお金が少し足らない。埋め立てに使うのか、回収業者に市町村が金を払うのか、消費者が払うのかあるいは流通業者が払うのか、メーカーが払うのか、一番面倒くさいのは最後のお金のさばきですね。それを、今のお話を聞いていると、厚生省がやるのか通産省がやるのか環境庁がやるのか警察がやるのか農水省がやるのか大蔵省がやるのか、わからないですね。お話をしなさいでまとまらなかったら、だれがやるのですか。  つまり、今度の改正されたリサイクル法その他を見ると、金のさばきをやる人がいない。議長がいない。多数決で決めるかどうかもわからない。つまり、授権されざる話し合いというものでこれを推そうとしている。これは必ず混乱を招く。したがって、環境庁として、これは政府全体に閣議に提起され、これをだれかがさばくというシステムをつくらなければならぬと思いますが、長官の見せ場だと私は存じますが、ここですばらしい答弁をなされば歴史に名が残ると私は思っているわけでありますが、御返事いただきたい。
  96. 中村正三郎

    中村国務大臣 環境庁長官としてお答えすれば、ごみの問題は厚生省所管であり、リサイクルとかなんとかということになれば通産省が絡み、そしてそれが環境にどういう影響を与えるかという観点からとらえれば私どもが関与する問題。環境問題という断面からとれば、私どもが調整をする。ごみということから考えれば厚生省がやる。リサイクルからということになると通産省もかむ。こういうことになってくるわけでありますけれども、今委員の御指摘のことは大変重要な問題を含んでいると思います。そして私は、これを根本的に解決するためには、省庁間のあり方というものを見直さなければならない。  でありますから、今地球規模環境問題というような時代に入ってまいりまして、いろいろな御議論があります。例えば、下水だとか、河川管理というようなものは国によっては環境庁が持っているところもあれば、それからごみ環境庁がやっているところもある。だから、そういったものをどう統合させて、厚生省のものを出してきて、通産省のものを出してきて……(渡部(一)分科員「簡略に」と呼ぶ)わかりました。そういったことまで踏み込まないといかぬ問題だと思います。そしてそれについては、私どもといたしましては、そういう時代に向けての環境行政どうあるべきかというような諮問もいたしまして御検討をいただいているところでありますし、いろいろな部署でそういった御検討がされていると思います。  それから、もう一つ私申し上げさせていただきたいのは、こういうデポジットをやろうとかなんとかいったときも、捨てられてはどうにもならないということであります。道路をつくれば道路の周りは缶だらけになる。道路沿いにおうちをお持ちの方はみんな知っていると思いますけれども、一カ月に何個かの缶を投げ込まれる。私は、日本人がこうやって物を捨てることを日本人の一人として、一緒にこれは憂うべきことだとかそんななまなことは言いたくないと思います。やはり捨てる人は悪いのですよ。それを捨てた人は罰せなければこれは続きますよ。そういう意味で、例えばシンガポールが非常にきれいだ、非常にきつい罰則がある、そんなことも考えまして、今デポジットだとかリサイクルだとかいうものの根底にある、捨てることが悪いことだということになると教育の問題にもかかわってきましょうし、それから、捨てさせないようにするためには罰則ということもあるかもしれませんし、そういうことについて事務方に検討してくれという指示をしたわけでございます。  昔、委員と一緒に環境委員会にいたことがございますけれども、そのころもこういう問題を提起いたしましたが、実を言いますと、こういった省庁統合していろいろ考えるとか、それから捨てた者には罰則を科せというのは少数派でありまして、非常に苦労しているのですが、どうか先輩のいろいろな御支援を賜りたいと思っております。
  97. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大臣、いろいろな面全部おっしゃいました。今私、わざわざ絞ってもう一回言いますよ。大臣、今ここのところで随分システムがよくできてきた、法律も随分突っ込んできた。今最後のすごい穴のあいているのを一つ申し上げたい。  それは、さっき言った五者を集めて各地域ごとに、場合によっては県別に協議を開始したとする。その協議を開始したらまとまらないということが起こる。つまり、だれが中心でやるかが決まらないからです。そこのところをぜひ関係大臣と協議されて決めてもらいたい、それを提案してもらいたい。そこを私申し上げたい。  だから、全体的な見直しをなさるのは、大臣は能力がおありだからいろいろおやりになるのは私わかるけれども、今大事なことは、ここの間で、そこで行き詰まってしまうのですね。やった途端に行き詰まる。では、鉄の缶は今神戸でも値崩れしておりまして、引き取り業者は一万一千円と言っているのです。一万一千円のものも売れるのですけれども、運ぶのに二千円も三千円もかかるのですね。そうすると、八千円とかそういう値段でしか売れなくなってしまう。ところが、実際に集めた方からいうと、そんな値段ではとても売れないわけです。そうすると、どういうことになるかというと、全部ではありませんけれども、年間に千七百トン神戸で回収しているのです、市民や何かにお願いしたり学校で集めさせたりして。そうすると、それに市が補助金をつけなければならぬ。金のある市だからそれくらい出せよとこっちは言っているのですが、それは無理ですね。そうすると、メーカーにそのくらいのものを抱き取りなさい、少し損してもいいだろうと言わなければならない。神戸市の中の業者がいないですね。運びに行かなければいけない。そうすると、運搬賃はだれが面倒を見るか、どこのメーカーが泣くのか、回収業者のだれが泣くのかという議論にすぐなってくるわけです。それを決める人がない。決める人がないから今どうなっているかというと、神戸市役所が集めたのを結局しょうがないから一部は金出して回収業者に濃さしていますが、全部が全部そういかないから捨てているのです。それは回収でも何でもない。一般ごみの中にほうり込んでいる。集めてもう一回はうり込む。そんなことなら集めないでほうり込んだ方が早いのです。  そうすると、だれが悪いのですか。それは通産大臣ですか、環境庁長官ですか、神戸市長ですか、自治会の会長が悪いのか、メーカーが悪いのか、流通業者が悪いのか、こういうふうに攻め寄せられてくる。一体だれが悪いのだ。じゃ、五者でこれから協議いたします、集まって協議して、またわかりません。そうしたら、結局住民運動にどういうのが起こるでしょうか、住民段階で。小学生は何と言うでしょうか。小学生は、今一生懸命四年生のときに空き缶回収をやらされているのですね。あなた方の集めたのはむだでした、集まって圧縮された鉄はそのまままたごみ屋さんの手で捨てられているのです、君たちのやったことはみんなむだなのですと小学生に説明するのでしょうか。つまり、行政が完結しないわけです。論理が貫徹してない。だから私は言うのですね。ここはどっちが払うかという、手を振る人がいなければこれは終わらない。日本は資本主義ですから。だれが何ぼだと言わなければならない。行政コストというのは必ずしも、流通経路に普通乗っているようにもうかるだけで全部完結すればいいけれども、どこかで負担が生ずるわけですね。それを裁断しない役所だったとしたら、結局悪いのはだれですか。小学生はたちまち絵をかいて言うでしょう。総理大臣が悪いのですとか環境庁長官というのが悪いのですとか通産大臣が悪党ですとか市長が悪いですとか、どこかにやり玉が上がるでしょう。だから私は、そこを決めてくれと言っている。決めるシステムをつくってくれと言っている。五人の代表で多数決でやるならそれでもいいですよ。どこかで決めなきゃいけない。決める場所を持たないで、法律だけつくって、つくりましたと言うのだったらそれはひどいじゃありませんか、こうなるのです。だから、大臣の御見識を私は高く評価するからあえてここで議論しました。こういう話がわからない大臣だったら私は議論しません。  そして、これは決まっている法律のもう一つ先の話ですから、新規立法するか何かしなきゃならない。法令でやるか何か。決めなきゃならない。協議会をやるか何かしなきゃならない。政治的アクションを要する問題だから、私はここで大臣に何かやってもらいたい、こうお願いしているのです。
  98. 中村正三郎

    中村国務大臣 もとより御指摘と違いまして、私には力もございませんし、私は環境庁長官という立場でありますから、今はただ審議会だとか臨時行革審だとかの御論議に期待をしているわけでございます。しかし、委員指摘のとおり何かやらなきゃいけない。それは私は、もう環境庁長官も、選挙もあるようですから、議員に戻りましたら力いっぱいやらせていただきたいと思います。  行政だと、今大変にその自分のやれることに限りがございます。先生の言われたことと同じなんですが、私の友達のボランティアが缶を集めました。それで缶を集めたら、最初集めたということでごみの担当の方のところに持っていったら、集めないでくれと言われたといって物すごい怒って来られました。こういうようなことをしていたら国民から不信が起こって大変なことになる。そこは今の許された範囲内で各省庁といろいろなお話し合いをして頑張ってまいりたいと思いますけれども、根本的な問題は、いろいろやってみないと解決しない問題だというふうに思っております。
  99. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大臣、最後にもう一回言いますよ。  今の答弁を議事録でごらんになった人はがっかりしてしまうでしょう。大臣としての職員を尽くされて、関係各省とも協議してその問題についての答えを近い将来において出す、国務大臣としてこう言ってもらいたい。(中村国務大臣「いや、厚生省」と呼ぶ)いや、厚生省にも聞くけれども、あなたは国務大臣ですから、ここは内閣を代表して、総理のかわりにそこに座っているのでしょう。違うのですか。――じゃ、あなたのお勧めに従って厚生省に伺います。
  100. 浜田康敬

    ○浜田説明員 先生御指摘のとおりの状況、つまり鉄くずの価格の下落によりまして、回収しました空き缶が従来は有償で引き取られたものが、最近では一部地域では特に、逆にその費用を要求されるというふうな状況にございまして、市町村がそのための予算措置等の負担をふやしたり、あるいは一時的に市況が回復するまで鉄くずとして保管をしているというふうな状況にございまして、私どもとしても、ここのところをきちっと流れるようなことを考えていかなければならない。  私どもの基本的な考え方でございますが、やはり市町村が廃棄物行政の中でそうした有価の資源についてはきちっと選別までしていくということを責任を持っていくべきではないかというふうに思っておりますし、その中で集団回収についても必要な助成等を講じていく必要があるだろうという考え方ております。  ただ問題は、その集めました物がきちっと、むしろ有償とは言わないまでも逆有償じゃなく引き取られる仕組みというのは、これは需要拡大の問題でございまして、従来から特に通産省の方ともお話し合いをしておりまして、最近そうした需要拡大策というものが通産省の方で鋭意検討されております。具体的に申し上げれば、従来はくず鉄は電炉メーカーが引き取られていたわけですけれども、高炉あるいは転炉の方にも使うというふうなことで、現在通産省の方で検討されているというふうに伺っておりまして、そうしたことによって需要が拡大すれば、少なくとも現在のような逆有償の形は解消されていく。そういう中できちっと廃棄物のリサイクルが進んでいくことを我々としても期待し、また努力をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  101. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 ありがとうございました。
  102. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて渡部一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  103. 木島日出夫

    ○木島分科員 私の地元であります長野県の八ケ岳中信高原国定公園、この中にあります国の天然記念物の霧ケ峰湿原植物群落の保護の問題に絞りましてお尋ねをしたいと思います。  最初に文化庁、お呼びしておりますので文化庁から先にお聞きをいたしますが、この霧ケ峰湿原植物群落は、昭和十四年九月七日に八島ケ原湿原植物群落、踊場湿原植物群落そして車山樹叢湿原植物群落、この三地域が一体となって国の天然記念物に指定されたものでありますが、その指定の理由、特にこの湿原植物群落の持っている文化的あるいは学術的な価値がどのようなものかについて、まずお伺いしたいと思います。
  104. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 霧ケ峰の湿原につきましては、先生今お話がございましたように、近接する八島ケ原、踊場、車山、この三つの湿原から構成されておりまして、これらは少なくとも約一万二千年前ごろから泥炭の堆積が始まりまして、そこに湿原植物が生息していたというふうに考えられております。こうした長期にわたる湿原形成の過程の中で植物の種の分化などが起こりまして、他の湿原に見られないキリカミネヒオウギアヤメ、キリカミネアサヒラン、こうしたこの湿原に生息する植物種それからこの湿原を南限とするチャミズゴケ群落などがございます。  以上のように、霧ケ峰の湿原の植物は植物地理学上の位置づけ等の上で学術上の価値が高いものであるというようなことでありますので、このような学術的価値に着目して、お話がありました昭和十四年に三つの湿原がそれぞれ天然記念物に指定されまして、昭和三十五年にこれを一カ所にまとめて霧ケ峰湿原植物群落として現在に至っているというものでございます。
  105. 木島日出夫

    ○木島分科員 実は今、この三地域の中の一つであります踊場湿原植物群落の南側に隣接する土地について、ダイケンホーム株式会社それから大建工業株式会社によるリゾート開発計画されているわけであります。  その計画概要によりますと、ダイケンホームはリゾートホテル百三十五室、これは六百人収容、土地つき建て売り住宅百二十八戸五百二十人分、土地分譲百十八戸分四百七十人分相当、大建工業が別荘地造成として八十三戸三百三十二人相当、こういう計画が打ち出されているわけです。この開発が、踊場湿原の植物群落にとって大きな影響を及ぼすのではないかという懸念が非常に高まっているわけであります。  以下、この高層湿原の文化的価値とその保全のために何が大切かについてお伺いをしたいと思うわけであります。  この湿原植物群落の調査や研究に非常に大きな役割を果たしてきた方に広島大学教授の鈴木兵二さんという方がおられるわけですが、この教授が一九七七年五月に「霧ケ峰湿原植生の今昔」という文章を発表されているんですが、その中にこんなエピソードが書かれておるんですね。一九七四年六月に国際植生学会の日本大会に出席された西ドイツの湿原研究者ジェンセン博士を現地に案内した、そうしますと、現地を見た同博士から、「これ程美事なものは外にはベルギーに残っているだけであろう」という絶賛の言葉があった、こう記されているわけであります。  この高層湿原植物群落というのは、このジェンセン博士の発言にありますように、国際的にも非常に大きな価値があるものではないかと思うわけですが、文化庁の位置づけ、もうちょっと詳しくお聞かせください。
  106. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 ただいま御説明いたしましたけれども、ここには長い一万二千年の間の湿原形成の過程で、いろいろの植物の種の分化などが起こっておりまして、ここだけに見られる、ここの湿原だけに生育する植物として、先ほど申し上げましたキリカミネヒオウギアヤメとかキリカミネアサヒラン、それからイトミズゴケ、そういう意味ではここで特有のものというふうに言えるのじゃないか。それからさらに、この湿原を南限とするチャミズゴケ群落などがあるという意味において、植物の地理学上の位置づけは非常に高いというふうに思っております。
  107. 木島日出夫

    ○木島分科員 時間の関係で急ぎますが、ちょっと環境庁長官にもこの価値がいかに大きなものか知っていただくために、一言だけ専門的なことを聞きます。  湿原の中には高層湿原、低層湿原、それから中間的な湿原があると言われていますが、ここは高層湿原で非常に価値のあるところだ}特に、問題になっております踊場湿原は、一つの湿原でありながらそこの中に高層湿原と低層湿原が併存しておる、そういう面でも非常に貴重なところであると言われておるわけですが、簡単で結構ですが、高層湿原と低層湿原の定義等についてお答えできますか。
  108. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 ちょっと専門的なので、今お答えすることは残念ながらできませんので、御了承いただきたいと思います。
  109. 木島日出夫

    ○木島分科員 簡単に言いますと、高層か低層かというのは、要するにミズゴケ等が死滅してそれが蓄積された泥炭が非常に高いもの、それが厚いもの、それが高層なんですね。その泥炭層が低いものが低層湿原と言われているわけでありますが、泥炭層が一ミリ蓄積するのに何年かかるかということで逆算して、今御答弁にありますように、この湿原はつくられるのに八千年から一万年かかっているんじゃないかと言われているわけですね。それだけをもってしても大変貴重なものであるということがうかがえるわけだと思うのですが、文化庁としても、これは将来にわたって、この高層湿原植物群落は完全に保護すべきものであると考えているわけですね。確認をしたい。
  110. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 湿原の植物群落としては十七、国が指定しておりますけれども、それぞれ皆学術上の価値は高いということで指定してあるわけでありまして、今後ともこれについての保全については十分努力したいというふうに思っております。
  111. 木島日出夫

    ○木島分科員 所管の環境庁にお伺いしますが、環境庁もこの霧ケ峰の湿原植物群落については、これは自然公園法に基づいて国定公園に指定し、そのうち八島ケ原湿原と、今私が問題にしている踊場湿原については特別保護地区、こういう地区に指定しております。車山湿原については、第一種特別地域、こういうものに指定して特別の保全を図っていると思うわけであります。  これは昭和三十九年に指定されたわけで、その当時まだ環境庁というのがなくて厚生省の所管だったようでありますが、環境庁が特に八島ケ原と踊場について特別保護地区として指定した理由、その特別保護地区というのはどういうものなのか、特にこの湿原の価値をどのように環境庁として位置づけておられるのかについてお伺いしたいと思います。
  112. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 これは、国定公園は、先生御案内だと思いますけれども、手続的に都道府県の知事の申し出によりまして、その区域の種類等も検討いたしまして指定をするという手続になっておるわけでございますが、特別保護地区あるいは特に規制が厳しいものとして第一種特別地域といったような分類がありますけれども、そういったものにつきましても、今御議論になっておりますような文化財があるとか、そういったことも頭に置きながら、県の申し出を前提として、特に保護をするという観点から区域指定をしておりますが、そこにおきましては原則的に開発的な行為は行わない、許可をしないという前提で臨んでいるわけでございます。
  113. 木島日出夫

    ○木島分科員 特別保護地区においてはもう原則として開発行為は許可しないという位置づけだということですね。ということは、それだけその守られるべきものの価値が高いということだと思うのですね。ですから、その守られるべきものが破壊されようとする行為に対しては特別の、特段の措置が必要かと思うわけでありますが、続いてお聞きしますが、環境庁は特定植物群落調査というのを行っているようでありますが、それはどんなものですか。
  114. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 私ども、環境庁発足以来全国的な調査をいわゆる緑の国勢調査という形でやっておりますけれども、その一環といたしまして、特に貴重な学術的な価値のあるものの植生群落、植物群落を取り出して調査をしておるものでございます。
  115. 木島日出夫

    ○木島分科員 今私の手元に、一九七八年に行った特定植物群落調査票というのがあるわけでありますが、それを見ますと、選定基準の欄にBとDということが書かれております。特定植物群落選定基準のBというのは「国内若干地域に分布するが、極めて稀な植物群落または個体群」と書かれております。Dというのは、砂丘それから湿地とか高山「等の特殊な立地に特有な植物群落または個体群で、その群落の特徴が典型的なもの」というふうに記載がされておりまして、この霧ケ峰の高層湿原はこのBとDに該当するということで、今答弁がありましたような調査がなされているようでありますが、その一九七八年の調査の内容の中にこういうことが書いてあります。「これらの湿原は、本州中央部に位置して、我が国では、最も発達した高層湿原に数えられている。」最も発達した高層湿原の一つなんだということですね。「また、キリカミネアキノキリンソウやシツゲンヤやウルシ、キリカミネヒオウギアヤメ、キリガミネアサヒラン等々、学問的にも未解明な種が多数分化、出現している。」こういうことを書いてあります。  要するに、非常に学問的にもこれからもっともっと解明をしていく価値のあるところだということで、位置づけが非常に高いということをこの調査票からも私はうかがったわけであります。当然だと思うのですが、これはこういうものを保全するために、五年に一度ずっと継続的に系統的にこのような調査をしているわけですね。
  116. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 そのとおりでございます。
  117. 木島日出夫

    ○木島分科員 実は、こういう高層湿原は非常に微妙な水や大気の条件の中に守られているわけでありまして、これを守るというのはどんなに大変なものであるか、これもまたいろいろな学者から指摘されているわけであります。  一つだけ私御披露いたしますが、先ほど引用いたしました広島大学の鈴木兵二先生の「霧ヶ峰湿原植生の今昔」という学術論文の一番末尾に、このようなことが書かれております。この先生は、一九六〇年と一九七四年どこの地域の調査を進められたわけです。わずか十四年の間にどのようにこの地域が変化しているか書いているわけでありまして、こんな言葉が結論のところに書かれております。「一九六〇年と一九七四年とで、本質的な差が認められるのは、湿原周辺の低層湿原部並びに草地部であって外来種の高層湿原部への侵入は今のところはみられない。湿原への踏み込みがなければ、容易に侵入し得ないものと推定される。しかし、湿原周辺の丘側特に八島ヶ池付近における、ヒメジョオン類の繁茂は著しいものがある。」「湿原内の立入りは厳しく禁止すべきであろう。」そしてその後に、「僅か十四年間の極く最近の今昔でありながら、その間には全くやりきれない変貌がある。最も重要と思われる一点だけ指摘しておけば、八島ヶ池、小池および鎌ヶ池の丘側でミズゴケ類は殆んど絶滅していることである。特に小池は二種のミズゴケで埋められ、池底は見えなかったのだが、現在では誠に寒々とした深い池底に生きた植物の姿は全くみられない。八島ヶ原湿原は、周辺から虫食まれていると言っても過言ではあるまい。周囲の歩道は湿原側の斜面につけてはいけないのである。ふみ跡を洗った水は湿原にとっては毒水なのである。序ながら二種のうちイトミズゴケは日本人によって学名が与えられた最初のミズゴケであり、シナノミズゴケは、八島ヶ原湿原以外の生育地は日本にはまだ発見されていないのである。」こう記しているのですね。要するに、人が周辺部分を踏み荒らすと、その人が踏み荒らした上を水が、天然の雨水が通過して湿原に入り込んでいくと、それはもう植物にとっては毒の水になるということを厳しく指摘して、これを守るのがいかに大変な、大事な仕事であるかということがここでもうかがわれるわけであります。  そこで、環境庁にお聞きしたいのですが、踊場湿原の南側隣接地に、さきに指摘したようなダイケンホーム、大建工業が計画をしている、このような開発行為がもし行われた場合に、どのような影響が湿原の植生にあらわれるか、そこが根本問題なんですが、こういう計画があることを、私はこの質問をするに当たって環境庁にはお伝えしたのですが、今まで知っておりましたか。
  118. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 以前にそういったお話があったことは聞いております。
  119. 木島日出夫

    ○木島分科員 それはいつごろですか。
  120. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 地元の方の御陳情等もあったようでございまして、昨年の七月ごろというふうに承知しております。
  121. 木島日出夫

    ○木島分科員 そういう陳情があったときに、環境庁として、今私はるる、いかにこの湿原が大切なものであるか、文化庁と環境庁に御答弁いただきました。もう大変大切なものである、後世に保存すべきものである、後世のために守るべきものであるという御答弁だったと思うのですが、じゃ、そういうダイケンホーム、大建工業がいわゆる伝えられるような開発行為を行ったときに、この隣接する踊場湿原にどういう影響を与えるか、水とか大気とか、その植生にどういう悪影響が出るだろうか。どんな認識環境庁は持たれたでしょうか。わかりますか。
  122. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 今先生のお話の中にもありましたように、この区域は国定公園の区域外ということでもございますけれども、既に長野県におきまして県条例に基づく手続が行われておる、さらに行政指導等も行われておるということでございますので、県においての対処を見守っておるという段階でございます。
  123. 木島日出夫

    ○木島分科員 これは国政レベルの問題でなくて長野県政レベルの問題ですが、実はこの計画が最初に打ち出されたのが昭和五十一年でありまして、その当時はまだ残念ながら長野県におきましても環境アセスメントの制度が確立していなかったわけですね。しかし、実際には計画は実行されずに来て、今また動き出したわけですね。長野県に対しては、自然を守ろうとする県民の皆さんから、これは環境アセスメントをしっかりやるべきではないかということを盛んに要求しているのですが、なかなか県当局はやろうとしないわけであります。  そこが問題なんですが、世界的に非常に価値のある高層湿原植物群落であります。これは極めて特異な水質やあるいは水量それから大気によって歴史的につくられ守られてきたものなんですね。これが変化する、環境が変わるあるいは環境が破壊されるということになりますと、こうした微妙な上に成り立っている湿原の植物群落ですから、致命的な影響が出るであろうことは大いに予想されるわけてあります。だからこそ、本当にこの植物群落を守ろうとすれば、計画されている開発行為が植生にどのような影響を与えるのか、非常に詳細な調査がされなければならぬであろう、その検討が行われなければならないであろうと思われるわけであります。要するに、環境影響評価、アセスメントでありますが。これを今日の時点に立って、こういう計画が現にあるわけですから、踊場の高層湿原、文化財保護法による指定もあり、また環境庁の方の指定もある大事な学術的、文化的な価値のある湿原でありますから、どうしてもこの影響評価、影響調査はやってもらわなきゃいかぬと思うわけでありますが、私は、環境庁にぜひともこの調査をやっていただきたいと思うわけでありますが、いかがなものでしょうか。
  124. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 先ほど触れましたように、区域外のことでもございまして、県の対応を見守っていると申し上げたわけでございますが、県の方では行政指導の一つの形といたしまして、自然保護協定なるものを県、市、業者という形で締結をいたしておると報告を受けております。  その中で、そういった湿原等に及ぼす影響予測調査を実施すること、それから、その結果によって水量及び水質に影響があると判断される場合には直ちに取水を中止すること等相手方に義務づけるという措置を講じているというふうに伺っておりますので、それを見守ってまいりたいと考えます。
  125. 木島日出夫

    ○木島分科員 それじゃ全く不十分なんで、私はこういう質問をしているわけです。県と諏訪市が業者と取り交わした自然保護協定書というのは、昭和五十一年、五十四年の段階のものなんですね。まだ環境アセスメント制度が確立する前の段階の協定書なんですね。  その中に、例えばこういう文言があるわけです。今答弁されましたように、これは「5 水資源の確保および水質汚染防止」、その中の「(3)制天然記念物踊場高層湿原および既設水源等の水量および水質に影響を与えた場合は直ちに工事を中止するとともに、乙および丙」、県と市「の指示に従うこと。」とあるのですね。要するに水量、水質に影響を与えた場合は工事を中止するというのですね。しかし、影響を与えた場合はもうこの植生はつぶれるのですよ。破壊されてしまうんですね。与えさしちゃいかぬわけですよ。だから、事前にこの計画がどのように水や大気に影響を与えるのか、植生に影響を与えるのか、事前に評価していかなければならぬというわけですね。この事前の環境アセスメントの制度が、長野県によってつくり出された前の保護協定書、それを更新しているだけなんです。これでは世界的な文化的な価値のある高層湿原を守れるはずがないのですよ。こんな程度で環境庁は守れると考えているのですか。
  126. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 私の手元にありますのは、片仮名のダイケソホームに関して交わされた協定書でございますけれども、これによりますと「事前調査」という項になっておりまして、「与えた場合」という表現ではございませんで、「水量および水質に及ぼす影響について予測調査を実施する」、それから「影響があると判断された場合は、直ちに取水を中止する」というような表現になっておりまして、事前的な判断が可能じゃないかと考えております。
  127. 木島日出夫

    ○木島分科員 文書をよく読めば同じことですよ。要するに、工事をやって与えた場合、影響が出た場合には工事中止だ、そういう文書でしょう。工事をやらせてしまって影響が出たらとめる、そういう意味ですよ。それではこのような高層湿原は守れないと思うわけですね。今、残念ながら昨年からこの計画地の中に一本道路があけられました。しかし、その段階に今とまっていますから、今の段階で、この計画が実行されたときに、隣接地である国の指定にされているこの湿原がどういう影響を受けるかということに乗り出すべき時期なんですね。  これは大臣にお伺いしたいと思うのですが、ぜひそういう調査に、本当にこの湿原を守るという立場に立って調査に乗り出していただきたいと思うのです。
  128. 中村正三郎

    中村国務大臣 もとより委員御存じのとおり、日本は民主主義の国であります。そして、どの自然を守るべきかどうかということは、究極的にはやはり国民が決める問題だと思います。御案内のとおり、我々議員でもあり、そこでつくられた法律によって、私どもはその中で許された限り自然を守るということであります。  今委員指摘の、歩道をつけただけでそれが影響があるというようなこと、これは大変いい御示唆をいただいたので、そんなところも実際調べてみて、そういうことならそういうところも改善する方法はないかとか、いろいろ考えてまいりたいと思います。しかしながら、私どもとしては、これは区域外のことであり、そこの県の方々がいろいろお進めになることでありますから、もとより自然を守ってくれ、こういうものがあるからということは申します。しかしまた、自然というのはそこにあって、守って、だれも入って見られないのではだれのための自然かということがあると思うのですね。それから、今こうしたリゾート開発みたいなものが進むことによって、私どもの仲間でもサラリーマンや何かで随分こういうところを買う方がふえてきて、それはそれなりに私はいいことだと思う。そういうことを総合的に、やはり自然を守らなければならないという立場、それからそれを御利用したいという地元の方の立場、またそれを買いたいという国民の志向もある中で、私どもはその許された範囲の中で法律に基づいてこの湿原を守っていく。だれのために守るかといったら、国民のためにこれを守っていくということだと思います。
  129. 木島日出夫

    ○木島分科員 長官は恐らく現場を知らないですね。(中村国務大臣「いや、知っています」と呼ぶ)知っていますか。ここにはもう道路が一本通っていまして、だれでも見られるのですよ。問題はそのことじゃなくて、この国が指定した湿原の隣接地、今山林です。そこに先ほど言いましたような宅地開発をして、大きなリゾートホテルを建てて人が住む、あるいは土地分譲で二戸建ての建物を、これでいきますと三百戸以上建てて人が住むようにする、そういう計画なんですね。今この場所は、そんなうちなんかないところですよ。そういうふうになったときに、その隣接地がどういう影響を受けるかということが今まさに問題なんですね。ですから、そういう調査をまずやってもらわぬといかぬということで、ぜひこの調査に乗り出してほしい。指定した対象地内でないから調査しないというような立場をとっておりますと、これは自然ですから、植物ですから、非常に貴重な植生ですから、隣接地の環境影響をもろに受けるのをどう守るかということですから、隣接地の環境変化についてやはり調査が必要だと思うのです。これはやっちゃいかぬという法律はないわけでしょう。ぜひやってもらいたいと思うのです。
  130. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 重ねてになりますけれども、私どもとしては、全国的な立場から景観なり自然環境の問題を考えておりまして、特に傑出した風景地を守るという点では、自然公園法に基づいて国立公園という指定の仕組みを持っておりまして、それに次ぐものとして国定公園、それから必要なものについては県立公園というような形でのゾーニングによる規制、しかも手法としてはその中でいろいろな地種区分をしてやっていくという手法を与えられておりまして、その手法をはみ出てどこまでできるかという問題でございますが、その区域以外の問題についてどうするかというのは、非常に大きな問題でございますけれども、やはりそれは県なら県のレベルで、あるいは地元なら地元のレベルでそれぞれお考えいただく、そういった中で法規制によらない方法もいろいろ考えていただくというしか手段としてはないだろう。基本的には自然保護教育を進めていくことによって、国民の方が、あるいは事業者の方がこれは守ろうという気持ちにしていくようにするのが、回りくどいようですけれども、実効のあるやり方ではないかと考えております。
  131. 木島日出夫

    ○木島分科員 時間が来たから終わりますけれども、私地元だからこういうことを言っているのじゃなくて、先ほど答弁ありましたように、全国的な立場から見ても大変守るべき価値のある高層湿原だという立場から御質問しているわけでありまして、これから引き続いて、全国の皆さんとも力を合わせまして、これを守るため、また環境庁長官等にお願いをしたいと思いますので、よろしくお願いしたい。  最後に一点だけ要望しておきますが、こういうものを守るためにやはり土地の問題というのは大事な問題で、この土地が民有地なんですね。指定された土地も民有地なんです。網のかぶったところを買い上げてそれに国の補助金を出す制度はありますが、それだけでは守れないので、隣接地についても自然を守るための買い上げに対して国の補助金をつくっていただけるように、そこまで網を広げていただきますように、これは要望です、要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  132. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて木島日出夫君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  133. 柳沢伯夫

    柳沢主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田元久君。
  134. 池田元久

    池田(元)分科員 三十分が与えられた時間ですので、早速質疑に入りたいと思います。私は、山梨県にございます道志村で計画されておりますゴルフ場の問題を中心にお尋ねしたいと思います。このゴルフ場の計画されております道志村は、神奈川県北部に接しております。神奈川県のいわば水源地に当たるところでございます。  まずその前に、ゴルフ場の問題について一言お尋ねしたいのですが、日本のゴルフというのはどうも純粋なスポーツと違うのではないか。社用ゴルフが盛んであったり、また最近よく報道されておりますが、投機と結びつく。この辺につきまして、いろいろスポーツをやっていらっしゃると伺っております中村長官の御見解を伺いたいと思います。
  135. 中村正三郎

    中村国務大臣 最初から大変難しい問題をいただきましたけれども、私がいろいろなスポーツをやった経験というか、そんなにやったわけでもないのですけれども、感じますのは、日本人というのはだれか一つのスポーツに熱中するとみんなそれをやり出すという傾向がございまして、今スキーといえばみんなスキーをやる、スキューバダイブというと今スキューバダイブが非常に盛ん、その中でゴルフは飛び抜けて皆さんがおやりになると思います。その中で、先生御指摘の社交上もあると思いますけれども、私、友だちのサラリーマンをやっている方だとか、自営業の方だとかいろいろな方の話を広く聞きますと、ほとんどの方がゴルフをやられますね。だから、国民みんなが楽しんでいるスポーツであるということは間違いないと思います。
  136. 池田元久

    池田(元)分科員 今最後におっしゃったことは確かにそのとおりなのですが、いろいろ問題を含んでいることは、長官も御存じだと思います。そして、ゴルフ場の開発が、初めは都市の近郊、それからさらに郊外へ行く、さらに河川でいったら下流から上流地帯に行くということで、環境問題が非常に顕在化してきたわけでございます。ゴルフ場ができますと、ほかの大きな施設もそうですが、やはり自然環境を破壊するという点で非常に心配が出てくる。さらには農薬等による水質汚染も憂慮されるということだと思うのですが、環境庁のこういった問題に対する基本的な方策といいますか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。基本的な点で結構です。
  137. 中村正三郎

    中村国務大臣 ゴルフ場というのは開発の形態としては非常に大きな面積を持つ大規模開発であります。したがって、自然の変更ということが大きいわけであります。また、農薬等の問題で水質汚濁等も影響があろうということでありまして、はっきり言えば環境への悪影響が生じないような非常に十分な注意が必要な開発であろうというふうに考えております。  でありますから、環境庁といたしましては、四十九年以降、国立国定公園の特別地域でのゴルフ場のあれは許しておらないということであります。そして、一昨年から普通地域でも指導指針を策定して規制を強化しているというところでございます。  また、ゴルフ場で使用される農薬につきましては、水質汚濁の未然防止を図るために、おととしにゴルフ場使用農薬に係る暫定指導指針を策定いたしまして、これに基づいて都道府県が農薬流出実態を監視して、問題があれば適切に指導するということになっております。  これからも、私、実は千葉県でありますので、よく千葉県は非常にゴルフ場が多いと言われる、そこでいろいろな実態を見ておりますが、やはり自然の保護ということは十分考えながらやっていかなければいけない事業であるという認識を持っております。
  138. 池田元久

    池田(元)分科員 今の後半の水質汚染対策についてお尋ねしたいのですが、九〇年五月ですか、厚生省がゴルフ場使用農薬に係る暫定的水質目標として二十一種類の農薬とその水質目標値を設定した。続いて、間を置かずに環境庁が同じような農薬に係る暫定指導指針について発表した。暫定指導指針を超える農薬が検出されたらどうするか、その辺は非常に問題点としてあるのです。  千葉県がまさにそうでしたが、無農薬ゴルフ場にするとか各都道府県が千差万別といいますか、要するに国より上乗せした形でのいろいろな規制策をやっております。その暫定指導指針の十分の一にするとかそういったことをやっております。さらには、もうちょっと広範にそういった農薬をとらえるとか、もうそろそろ環境庁もこういった自治体の大体の大勢を見てさらに強めるといいますか、規制をもっと充実させるという考えはないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  139. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 暫定指針ということでございますが、先ほど長官が御答弁申し上げましたように、平成二年の五月に関係省庁でいろいろ相談をしまして、ゴルフ場の農薬について、適正使用については農林水産省で担当する、水道水源の安全確保については厚生省で担当するというふうなことで、環境庁としましてはゴルフ場からの排水の監視指導をやる、こういう役割分担のもとに御指摘のゴルフ場農薬暫定指導指針を決めましで削減指導に取り組んでおるところでございます。  御指摘のように、県によりましては上乗せ指導でございますとかいろいろなことをやっているところでございます。しかしながら、これはあくまでも一般的な条件下でのゴルフ場の排水口における値を決めたものでございまして、そういう意味から一律にこれを上乗せするというのは難しいわけでございますので、やはり上下流それぞれゴルフ場の立地条件いろいろあるわけでございます。排水口の近くで取水が行われるとかそういうふうな条件もございますので、したがいまして、県の対応を見てみますと、県一律に上乗せをしておるところもあるし、特定の市だけやっておるところもあるし、一部の地域を限って上乗せしているところもあるというふうなことでございまして、やはり環境庁が決めた一般的基準を基準にしましてそれぞれの地域に応じた規制が行われることが適当であろう、現段階においては、私はそのように考えております。
  140. 池田元久

    池田(元)分科員 そういう答えが返ってくると思ったのですが{とにかく現状を見てみますと、一律に上乗せしなくても、個別の一つのケースを想定してガイドラインをもうちょっと強化していいんじゃないかという考えもいたします。ですから、ぜひ検討されてよりきめの細かな方針をまとめていただきたいと要望しておきます。  さて(冒頭申し上げました神奈川県と接しております山梨県道志村で計画されておりますゴルフ場の問題ですが、このゴルフ場は、有名なミサワホームとコスモ開発という会社が中心になって一九八八年に三ツ喜観光開発という会社をつくってゴルフ場の開発に乗り出したものでございます。およそ百十ヘクタールの山林にゴルフ場を造成するという計画ですが、その計画によりますと、平成五年、一九九三年完成を目指して九十三億円余りの事業費をかけて造成する。三回に分けて千七百人の会員を募集する。百七十一億円の収入を上げるというもくろみだということでございます。七十五億円の利益が上がるという計算もなされております。これに対して、地元の漁協そしてまた下流の四自治会が反対の決議をしております。工事の差しとめ訴訟も出されております。また、道志川といいますのは昔から横浜の水源地でございます。一九八七年、水源を横浜市は道志村一帯に求めまして、一九ニ八年には村の山林の三六%を買い入れて水源涵養林として大事に育ててきた。そこへにわかにゴルフ場の開発が持ち上がったということでございまして、三百二十万横浜市民は大変憂慮している、このような問題でございます。  水道事業としても、現地の保水能力の減退とかダムの富栄養化、もちろん農薬による健康への心配もございます。こういった貴重な水源地にゴルフ場をつくる計画があるのですが、これについて環境庁長官の御見解をお尋ねしたいと思います。
  141. 中村正三郎

    中村国務大臣 環境庁といたしましては、先ほど申し上げましたように、こうした事業が行われるときに自然環境を守ってくれということで業務を行うわけでありますけれども、私は、一つに問題は、日本人の要求が強いと申しますか、外国へ行ってゴルフをやると、先生も御存じかもしれませんけれども、フェアウエーがブッシュだか何かわからないようなところもありますし、ごろごろ石の出ているところもある。非常にきれいな芝生を要求するというようなところがあってまた農薬が使われるのだろう。私の県でありますので手前みそで申しわけありませんが、やはりそこらは我慢していただいて、農薬を使わないということを千葉県は決断したのでありますが、それによってゴルフ場の質は下がるかもしれません。それに満足してやっていただく方がいいのじゃないかということで千葉県はやった。そういうのも一つの方法ではないかと思うのでございますね。  ただ、やはりゴルフ場が必要かどうか、そこにつくるべきかどうかというのは、その地域地域のいろいろな御要望もあり、いろいろなこともあると思いますので、やはりその地域の地方自治体の御指導なり住民の方たちのお考えに任せられるべきことではないかと存じております。
  142. 池田元久

    池田(元)分科員 確かに、一般的にゴルフ場を建設する場合については、今中村長官がおっしゃったように地元の意向というのはもちろん大事だということは当たり前の話であります。しかし、この道志村のゴルフ場につきましては関係者が横浜までいるわけですね。その狭い地域だけではございません。しかも、狭い地域にはまだいろいろ異論もある。しかも県は、やはり地元がそういう状態ですから、事前協議の準備書も地元段階で預かりにしているわけです。いわゆる一般のゴルフ場の立地問題とちょっと違うと思うわけですね。  それで、環境庁は御存じのように大変重要な役所でございまして、これは私が申し上げなくても、これからの特に二十一世紀に向かって世界的にも地球環境の問題が大きく言われておりますね。こういった状況の中で、一たん壊せばもう取り返しのつかないようなことになるおそれはあるのですから、その辺について環境行政の元締めでいらっしゃる中村長官の、そういった環境を守る立場からの御答弁を再度お願いしたいと思います。
  143. 中村正三郎

    中村国務大臣 私の選挙区のことをまた再度申し上げて恐縮でありますけれども、こういった開発をやりたいという市町村におきましては、やはりこういうことをやることによっていろいろな可なり村なりの収入もあり、それで地域住民の福祉の向上も図られるよというようなことで誘致をしているところもございます。そういうところにまた反対であるというような御意見の方もいらっしゃいます。それで、それはその地域地域でやはりご相談になった上、どうしようかということが決められるべきものだと思います。  私どもといたしましては、それによって公害が起こらないようにいろいろな、先ほど申し上げました農薬の基準を定めたりなんかいたしまして、公害防止するという面から指導をしていくという立場でございます。あくまでもやはりその地域の方のお決めになるべき問題であろうと存じております。
  144. 池田元久

    池田(元)分科員 ちょっと今の御答弁にはいささか失望したのですが、要するに環境庁は今までの役所の縄張りでこれだけ守っていればいいという役所とは違うと思うのです。単なる許認可で上がってくるものをただ判こをつくというような行政じゃございません。新しい面に踏み込まなければならない面がたくさんある役所ですから、当然相互領域的、新領域、そこに踏み込まなければ環境行政の存在理由がないと思うのですよ。かつて三木武夫さんにしてもそれから大石武一さんにしてもそういう点をよくわきまえていらっしゃったと思うのです。ですから車の排気ガスの問題についても非常にその当時としては画期的なことができたということが言われております。  ですから、地元に任せてというのじゃなくて、やはり環境が大きなテーマになって地球環境汚染も非常に心配されている今の時期、しかも最近政治家といいますか、政治の世界でも環境に非常に目を向ける人が多くなって、最近環境議員連盟とかそっちの方に大分集まるようになった、こういう御時世でございますので、もっと積極的に環境行政を展開していただきたい。御要望を申し上げたいと思います。  さて、ちょっと話を進めたいと思うのですが、ゴルフ場建設の話が出ましてから国土利用計画法違反問題が持ち上がったのですが、国土利用計画法二十三条の趣旨について、簡単に一言お願いします。
  145. 伊藤威彦

    伊藤説明員 お答えいたします。  国土法の二十三条の規定は、「土地に関する権利の移転等の届出」の規定でございまして、一定面積以上の土地売買につきまして土地の売買当事者は事前に届け出を要するという規定でございます。なお、この規定に違反した場合につきましては罰則が設けられておりまして、同法四十七条で「六月以下の懲役又は百万円以下の罰金」ということになっております。
  146. 池田元久

    池田(元)分科員 問題のこのゴルフ場の建設をめぐっては、建設する側が地権者から同意書を取りつけた。ここに同意書のコピーを持ってきましたけれども、この同意書を取りつけるに当たって地権者に対して百万円の金を交付した、こういう話といいますか、疑いが出ているわけでございます。  このゴルフ場の建設をめぐっては、届け出前に提出する開発計画の事前協議準備書が、先ほど申し上げましたように県の預かりとなっているわけですね。ですから、売買や売買の予約というのは、まだ届け出も出てませんから、それ以前の段階でストップされていますから、できないはずです。国土庁はこの辺について承知していたかどうか、お尋ねしたいと思います。
  147. 伊藤威彦

    伊藤説明員 御指摘の件は、道志村のゴルフ場。建設につきまして建設差しとめを求めた民事訴訟の公判におきまして、建設同意書段階で現金授受があったという村の中のうわさについて裁判長が取り上げたということは承知いたしております。
  148. 池田元久

    池田(元)分科員 今課長が申された点から、山梨県が調査に乗り出したという報道がなされております。県の調査はいずれまとまると思うのですが、それについて報告を受けているかどうか、お尋ねしたいと思います。
  149. 伊藤威彦

    伊藤説明員 うわさが事実ということでございますと国土法違反の疑いがございます。山梨県におきましても事実関係を調査いたしましたけれども、まず法務局におきまして登記簿を確認いたしましたところ、所有権移転の登記等はなされていませんでした。それから、現金の授受につきましては事実が確定できませんでした。  ということで、現時点では国土法違反と推定できるだけの事実は判明していないというふうに報告を受けているところでございます。
  150. 池田元久

    池田(元)分科員 これは、売買予約がなされたかどうかが焦点でありまして、登記簿上に変化が出るというのはそれとはちょっと異なる話で、そこまで行ったらもう完全にはっきりしていますから、売買予約があくまで焦点であるということなんですが、その県の調査はまだ途中のようですけれども、県の調査の結果が出ればどのように対処されるかお尋ねしたいと思います。
  151. 伊藤威彦

    伊藤説明員 仮に国土法違反という事実が判明いたしました場合には、国土庁といたしましては告発等も含めまして厳正な措置が講じられる必要があるというふうに考えておりまして、山梨県に対しましても、裁判の推移を見守りながら、さらに事実関係を調査するよう指導しているところでございます。
  152. 池田元久

    池田(元)分科員 国土庁のお役目柄ぜひそのように指導をしていただきたいと思います。  さて、この問題について、警察庁の方が見えておりますのでお尋ねします。  県が調査をしておりますが、これは実際に個人の家に行って、恐らく訪問して聞き取りぐらいでありまして、どうしても自治体の調査には限度があると思うのです。そこで、警察の動きもうわさされていますが、この国土利用計画法違反問題について、警察としてはどのように対処するかお尋ねしたいと思います。
  153. 津和孝亮

    ○津和説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、この件につきましては山梨県当局の方が調査を行っているところというふうに聞いておるのでございますけれども、県当局がその結果としまして告発を行うということになりますれば、山梨県警察といたしましても、法手続に従いまして厳正に措置することになるというふうに考えております。
  154. 池田元久

    池田(元)分科員 そういう成り行きになるのではないかと思うのですが、その国土利用計画法違反問題だけではなくて、いろいろなうわさがございます。警察の方でも承知されているのではないかと思うのですが、単なる同意書を渡す際に現金を供与したというのではなくて、もっと大きな金が動いている、黒いうわさが大分出ているようですが、それについて警察庁当局の御見解を伺いたいと思います。
  155. 津和孝亮

    ○津和説明員 お答えいたします。  新聞報道等いろいろと伝えられているやに聞いてもおりますし、山梨県警察といたしましても本件の推移はいろいろ関心を持って見ておるというふうに聞いておるところでございます。ただ、ただいま御指摘のような話では具体的な情報といったようなことでは入手していないというふうにも聞いておりますし、県警察としましても、種々の状況等を見守りながら、県当局の調査とも相まって今後の対応をしていきたいというところでございます。
  156. 池田元久

    池田(元)分科員 今の段階ではそこまでが限界ではないかと私は思います。大事な問題ですので、ぜひ積極的に厳正にこの問題について扱ってほしい、このように思います。  今までの国土法違反問題、国土庁それから警察庁当局の考えを聞きましたが、スポーツであるゴルフ場の開発をめぐって既にそういう話が出ているということ、この辺につきまして環境庁長官としてどのような考えをお持ちか、お尋ねしたいと思います。
  157. 中村正三郎

    中村国務大臣 それは私がお答えすることじゃないと思います。
  158. 池田元久

    池田(元)分科員 環境庁長官というのは単なる行政府の長だけではありません、国務大臣ですから。国会というのは、議員同士が議論するのが本来なんです、憲法の規定によれば。たまたま戦前の遺物が残っておりまして、行政府に対して立法府が質問するというのが、いわばそれが常態化しているのでそれが普通だと思っていらっしゃるかもしれませんが、そうじゃないのです。これはやはりお互いにあるべき、立法といいますか、ものを目指して議論をするのが本来の立場ですから、全然所管外とか所管でないとかそんなことは、議員、そして立法者、国務大臣としては、そういうことはないと私は思うのですが、余り中村さんに迫るのは私の好みじゃございませんけれども、ただ所感を、スポーツであるゴルフ場の建設をめぐって早くもそういったうわさが出ているというのは全く嘆かわしいのじゃないか、このような観点からお尋ねをしたわけでございます。
  159. 中村正三郎

    中村国務大臣 それでは、環境庁の立場をちょっと離れてお答えさせていただきたいと思います。  もちろんゴルフ場に限らず、いろいろな開発事業でこうした不洋事が起こるということは大変嘆かわしいこと、よくないことだと思います。それはそれで、法に基づいて厳正な裁きがあるものと思っております。  ただ、何度もお答えさせていただくことでありますけれども、私の地域でもそうですが、やはりゴルフ場に対して需要もあれば、その部落でつくってほしいという要望も随分ございます。そういう中で千葉県の例をとりますと、県土の面積の中でどれだけの面積に限ろうかというようなことも考えたり、どこの町の中には何個以上はやめようかとかいうことをやりまして、全国的にいろいろなことを自治体が工夫をしてやっておられるようです。  それで、私は、自由主義市場経済の世の中で、しかも地方の時代と言われているときに、国が何でもかんでも口出すというのは、議員として言わせていただければ反対であります。そこで、地方自治体において住民の意見を聞きながら、そこにつくるべきかどうかを御判断いただく、それに対して私どもは自然を守ってくださいということを申し上げる、こういう立場だと思います。
  160. 池田元久

    池田(元)分科員 最後に一日おっしゃった、自然を守ってください、これこそまさに大事な一日でございますので、ぜひそうしていただきたいと思います。  私もゴルフはやらないわけじゃないのですけれども、日本のゴルフは非常に特殊でありまして、さっき申し上げた社用ゴルフが多いし、非常に投機と結びつく。預託金制度もありますから、事前にお金を集めて、それをほかに流用する。そして、最近のようないろいろな疑惑が出てくるというのはまさに異常な事態でございます。私は、湘南の方でローンテニスクラブに入っているのですが、テニスクラブでも一部そういうところはあるのですが、私が入っているところはずっと歴史的にありまして、テニスをやるためにいろいろやっているということで、お互いがお金とは全く無縁な立場で、楽しむために、それも会社のためじゃなくて、自分自身がテニスを楽しむためにそのクラブに入っていろいろな施設をよくしたりなんかするということをやっております。私は、本来スポーツ施設というのはそれが基本ではないかと考える次第です。  一言だけ最後に申し上げますが、実際の事業主体でありますミサワホームは、最近の日本経済新聞の報道によりますと、会員権の相場が下落したからゴルフ場の計画を半分にする、このようなことを言っております。会員権の相場が下がったからゴルフ場の建設はやらないよ。要するに、もうけだけ考えればまさにそのとおりであります。しかし、これは投機とゴルフ場の建設とまさに直結した、そのような考え方です。最近、ソニーの盛田会長が、日本型経営についていろいろ言っておりますけれども、まさに競争力至上主義、利益中心主義、それがもっとひどい形で僕は出ているのじゃないかと思うのですが、企業というのは、最近よく言われます社会貢献、どのくらい社会貢献をしたか。企業というのは社会的存在でございます。ところが、まさにこの件ではマイナスの貢献ではないかという感じを持った次第でございます。  ですから、これは環境行政の単なる数値がどうだという話ではございませんで、ぜひ環境庁におかれましても、本来の基本的な存在理由ということを自覚されて、もっと積極的に相互領域的なあるいは新領域にも踏み込んでやっていただきたいと要望したいと思います。  またさらには、国土庁、警察庁も、このような問題がもう既に出ておりますので、先ほど御答弁ございましたけれども、ぜひこういう地方の隅々まで清潔で公正な地方行政、そしてそういった地方の環境を守るためにも協力していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  161. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて池田元久君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  162. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 私は、二年前の予算委員会分科会で、大阪の方の第二阪奈道路の生駒山トンネルの建設をめぐって、大阪府の道路公社と東大阪市の間で協定書が交わされて、これからつくるトンネルには自動車の排気ガス処理のために最新の知見を取り入れて開発された脱硝装置をつけるんだ、こういう協定が結ばれていることを御紹介いたしまして、環境庁にもまた建設省にも脱硝装置の開発について特段の努力を払ってもらいたい、そういう趣旨の質問もすれば議論もいたしました。  あれから二年たちましたが、自動車排ガス中の窒素酸化物を処理する脱硝装置の開発が進んで、工場内の大型実験プラントでは八〇%の脱硝のめどがついたというふうに、環境庁の方で出していらっしゃるレポートなども見せていただきますと出ておりますが、この点について、まず開発の現状がどの辺にあるか、これを最初に伺いたいと思います。
  163. 入山文郎

    ○入山政府委員 窒素酸化物による大気汚染改善を図るためには総合的な対策が必要でございまして、その一環として、道路沿道における局地的な対策推進も重要であると私ども考えております。こういった見地から、環境庁におきましては、昭和六上二年度から、トンネル換気ガスの脱硝装置の有効性でございますとかあるいは実用性等につきましても検討を行ってきているところでございます。  具体的に申し上げますと、トンネル換気ガスは換気ガス量が大量でございまして、さらに窒素酸化物の濃度が低いということがございます。また、湿度も高くない、常温であるということがございます。その処理装置は固定発生源で用いられております高温・高濃度ガスの処理装置とは違うものであるということで、新たな技術的課題があるということでございます。このために、パイロットプラントによる試験などを行いまして調査を行ってきたところでございますが、二年度末にはその結果が御指摘のように報告されているということでございます。  この報告では、常温・低濃度という特性を持つトンネル換気ガスにつきまして、御指摘のように、八〇%近い効率によって脱硝を行うシステムが技術的には構成が可能であるという見通しが得られたというふうに評価をされているところでございます。  今後は、実際の道路トンネルの実験などを行いまして、さらに検討を進めていく必要があるわけでございますが、建設省におきまして、この報告を受けて、実際の道路トンネルにおいてその実験を開始して本格的に検討に取り組まれるというように私どもは伺っているわけでございます。
  164. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 東京都の方は、首都高湾岸線の東京湾トンネルの埋め立て十三号のあたりで、三億七千万円かけて、実際トンネルの排気口のところで実機装置を設けて二年間かけてやろうというわけですね。一万建設省の方は、東京湾トンネルの大井のあたりでコンペ方式でフィールド実験、実機試験をやろうとしていらっしゃる、こういうふうに伺っております。  建設省の方からちょっとお聞きしたいのですが、参加企業と機械の原理的な違いなど、時間も余りありませんので、簡潔に御紹介いただきたいと思います。
  165. 城処求行

    城処説明員 低濃度脱硝技術の実用化に当たりましては、今環境庁の方からも御説明がありましたとおり、その研究結果からも、実際の道路の換気ガスに対する性能の確認でありますとか耐久性の確認、あるいは装置を非常に小さくしなくてはいけない、あるいは省エネルギー化といったことに関しましてさらに研究開発が必要でございます。  そこで、建設省におきましては、トンネル換気ガスの脱硝技術に対しまして、実際のトンネル換気ガスを使いまして、脱硝の性能、安全性、耐久性、また換気風量の濃度、あるいは風量の変動への対応性といったことに関して検討を行うということで、今お話がございましたように、平成三年度でございますが、当面二カ年程度ということで、首都高速道路の湾岸線、その東京湾トンネルの大井あるいは十三号、両方の換気所におきまして実験を行うこととしたものでございます。  なお、今回の実験に際しましては、民間が持っておられます技術力を積極的に活用したい、こういった観点から実験参加を広く募ったわけでございますが、その結果、六社の方に御参加いただけるということで進めているところでございます。
  166. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 その六社と原理的な違いですね、本当にごく簡単に言っていただいたら結構なんですけれども。
  167. 城処求行

    城処説明員 各社それぞれの技術力に基づいて開発されてきている経緯がございまして、それぞれ違うようでございますが、私どもがお聞きしているところによりますと、反応吸収法でありますとか電子線照射法でありますとか吸着法でありますとか、そういった違いはあるようでございます。また技術力の開発の進捗にも違いがあるようでございますが、これにつきましても検討してまいりたいと思っております。(吉井(英)分科員「六社は」と呼ぶ)  同じところもございますし、似たような方法をとっておられるところもございますし、違う方法もあるということでございます。
  168. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 ですから、六社の名前を言っていただいたらよかったのですけれども。
  169. 城処求行

    城処説明員 参加をいただいております企業でございますが、荏原製作所、川崎重工業、それから神戸製鋼所と清水建設の共同体、それから日立造船、松下電器産業、三菱重工業、この六社に参加をいただいております。
  170. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 その企業と原理的違いは私もわかっているわけですが、問題は、やはり実用プラントヘと進む上で、大体一時間に三百万立方メートルぐらいの処理量とか、あるいはもっと大きな処理量とか、小型化、省エネ化など解決すべき課題はあるわけですが、私は、今日の日本の技術力からして、これは十分早期に開発できるというふうに見ているわけです。  これは環境庁でもいずれでも結構ですが、見通しですね、大体どれぐらいでめどがつくと見ておられますか。
  171. 城処求行

    城処説明員 お答え申し上げます。  実験の方はただいま申し上げましたようなことで、実験各社におきまして今装置をつくっていただいておりまして、それらを調整するなり現地に運び込むという作業をしておる段階でございます。  これからまさに実験を始めていただくということでございますので、いつまでにということはもう少しお時間をいただかないとはっきりしたことは申し上げられないところでございますが、当面、この実験は二カ年程度を予定しておりまして、その前提となります実験結果の評価でありますとか実用化に向けての小型化や省エネルギー化についての問題点等につきましては、私ども、専門家と申しますか学識経験者の方から成る委員会を設けさせていただいておりますので、その中で検討をしていただくということにしております。そこら辺の議論を踏まえまして判断をしてまいりたいというふうには考えているところでございます。
  172. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 大臣にもお聞きいただきましたように、よく御存じのことと思いますが、なかなか技術力を持った企業がコンペに参加して、そしてこれまでは少し遠いところにあった課題なのですが、かなり実用化のめどもついてきて、私は、日本の技術力からすれば、本当に数年を経ずしてちゃんと完成できるところへ多分行くだろうと思っているわけです。  この点で、中央環状新宿線の建設大臣認可に先立って、環境庁長官建設大臣に対して述べた意見の中でも、大気汚染の現状にかんがみ、脱硝装置に関する調査研究を進め、その成果を踏まえて換気塔における脱硝装置等汚染物質の除去装置の導入を図るというふうにしているわけであります。また、ことしは地球サミット地球環境についてのサミットが開かれ、環境行政を前進させるまたとないチャンスだと思うのです。そういうときだからこそ、機運が実ってきていますから、脱硝装置を早期に完成させていくという上で、やはり私は環境庁の取り組みに、これまでも環境庁研究所等で、余り日の目を見ないころからずっと頑張ってきていただいただけに、ぜひここでもう一段の努力をしていただいてと申しますか、全力を尽くして早期完成に向けて頑張っていただきたいと思うわけですが、この点についての長官の決意を伺っておきたいと思います。
  173. 中村正三郎

    中村国務大臣 空気の汚染の問題として、もう委員御専門でいらっしゃいますが、SO2が減ってきたので、NO2が残った問題としてございます。その一つの対策としてこのトンネルの脱硝装置、これはやはりこれから力を入れて進めていくべき問題だろうと存じております。ただ、根本的には、私取り組ませていただいているんですが、ディーゼルエンジンから出るNOx、この単体規制をさらに一層力を入れてまいりたい、そして委員指摘のこういったことにも力を入れてまいりたいと思っております。
  174. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 まさに大臣おっしゃるように、何といっても公害対策の大原則は発生源規制です。同時に現に深刻な地域がいっぱいありますから、そこについては発生したものについて少しでも前進させるという対策が極めて重要で、ぜひその点で進めていただきたいと思います。  なお、人口密集地での高速道路のトンネルの出入り口、それから換気塔の周辺とかインターチェンジとか、特に料金所なんか随分渋滞するわけですね。こういうところでの汚染問題というのは非常に深刻で、大阪の西淀もありますし、せんだっての尼崎の方の国道の裁判もありますし、今なお非常に深刻だというのが現状でありますから、私は、こうした悪化した環境を少しでも改善するという努力は、技術的に解決可能なこれからの環境行政の一つの大事な課題になってきておると思うのですが、こういう点で特段の努力をさらに進めていただきたいと思います。この点では、技術的に可能な課題になっているという点では多分私は長官認識が一緒だと思うのですが、どうですか。
  175. 中村正三郎

    中村国務大臣 今の脱硝装置等については私もよく勉強させていただきますけれども、自動車のエンジンについては、ガソリンエンジンは当時非常に厳しい規制を行ったためにいいエンジンができて、今世界一きれいなエンジンと言われております。ところが、ディーゼルに関しては、先生御案内のとおり、構造的に非常に高圧縮した空気の中にバシャッと噴射してやるものですかも、高温で一どきにデトネーションで燃えるということですから、いろいろなものが出てくる。しかしながら、これは放置できない問題でありますので、今いろいろメーカーの方にも私参りまして、お願いをいたしましたけれども、一生懸命やると。しかし、今一生懸命やっておるけれども、いま一つ解決が見出せない。それはキャタリティックコンバータのゼオライト系のものが作動温度が四百度以上でなければいけないとか、いろいろなことをやって、パティキュレートの中にもベンツピレンとかニトロビレンだとかホルムアルデヒド、アセトアルデヒドという非常に悪いものが規制外物質として入っている。これは私非常に重要に考えまして、どうしてもやはりやっていただかなければいけない。それにはやはりガソリンエンジンのときのように長期目標ももっと近づけたところでやって、技術屋に努力していただきたいと思っておりますが、そちらの方はむしろ先生の方が御専門家なのでおわかりかと思いますが、今月いっぱい自動車メーカーにお願いし、また自動車メーカーの方は軽油の方をきれいにしていただかないとだめだというので、軽油メーカーの方にも十八日の日にお願いすることにいたしまして、力いっぱい対策をやっていただくように今お願いをしておるところでございます。
  176. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 発生源対策と同時に、発生源対策をとってもなおかつ自動車の台数はどんどんふえておるということもありまして、さらに、都市の過密問題で、渋滞してそういうところでかなり局地的に非常に汚染濃度が高い、こういうところもありますので、そういうところについては同時に最新の技術を駆使してといいますか、その点ではトンネル内脱硝装置、これを完成するということが、例えば料金所についてはフードを設けてその区間について解決するとか、いろいろこれから技術的に可能な解決ができますので、一層の努力をお願いしたいと思います。  次に、私は、産業廃棄物ということだけになりますといこれは厚生行政の方が主たるものになるかと思いますが、少し観点を変えましてきょうは伺いたいと思います。  実は、大阪に金剛生駒国定公園というのがあるのですが、そこに接して、昨年一年間大河ドラマの舞台となりました、太平記の里ですね、その舞台となったところの大阪の宮田林市の東条という地域、ここの山間の農業地域、田畑のあるところなんですが、実は産業廃棄物の処分地としては大阪の場合は堺七-三区の埋立地とか、南北二カ所で新たなフェニックス計画による産廃処分地などがあるのですが、そこへ持っていくと検査が厳しい、金がかかる。それで、業者の方がちゃんとあるところへ持っていかないで、そして検査にひっかかるようなものを持っていくのですね。その結果、宮田林市なんかでは今深刻な事態になってしまって、市の方でも「埋め立て等に関する指導要綱」というのをつくって、不法な産廃などの投棄から地域環境を守ろうということで今、市も頑張っています。  それから一方、業者の方は、この安定五品目でうちは知事から許可をもらっているんだからということでもうやりたいほうだい。私は何度か現地へも調査に行っておるのですが、ここに写真も持ってきておりますから、委員長さん、ちょっといいですか。
  177. 柳沢伯夫

    柳沢主査 どうぞ。
  178. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 これが産廃の現状です。その写真を見ていただいて、これが産廃かというふうに多分見ていただけると思うのです。五品目以外のものはいっぱいあるのですね。私、そこへ行きますと、カラスが飛んでいるのです。周辺の農家の方に聞きますと、大体カラスが百羽以上いるというのです。産廃だったら、安定五品目だったら絶対来ないんですからね。生ごみ等はもちろんのこと投入されておって、それから安定五品目はにおいがしないはずなんですが、硫黄臭とかメルカプタンのような悪臭がもうその近くへ寄ったら漂っているわけです。  それから、地元の農家の人たちは、その産廃処分地の下流域になるところ、まだ公共水域にはならないところですが、そういう下流域でこれまで魚がたくさんいたのにもう一匹もいなくなった。全滅してしまって、一点が全く住めなくなった。川底もきれいだった砂にかわって今や汚いヘドロだ。この点で、地元の自治町会、連合町会とかさまざまな団体から今地方自治体などへもさらに要請等も出されておりますが、私、一緒に協力してもらっている科学者、専門家の方にも意見を求めたのですが、どうもあれはシアン系のものとかPCBとか重金属とかトリクロロエチレンなど、そういったものが流れ出している可能性がある。まだ埋め立てが新しい時点ではどんどん浸出してこないにしても、今後溶け出して流出してくるもののふえる可能性がある。当然埋め立てられたものの中に、それらのものであるとかあるいはアスベストなども入っていると思われるわけでありますから、早急に調査をする必要があると私も思うのですが、学者、専門家もそれを指摘しているわけです。水質汚濁の問題は環境庁の担当ということになりますが、魚が全滅して全くいなくなったような川あるいはその周辺の地下水について、これはまず調査をする必要があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  179. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 御指摘の東条地区の件につきましては、最終処分場の下流部での佐備川及び宇奈田川におきます水質調査につきましては、大阪府でやっておるわけでございます。その報告によりますと、BODについては佐備川が一・〇から二・八ppm、それから宇奈田川では一・一から三・八の範囲内になっておる、こういうふうに聞いておるわけでございます。また、有害物質は検出されていない、そういうふうな報告を受けておるところでございます。
  180. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 実は、それはかなり下流域の話なんですね。一度現地へ行っていただいたら、大体基準に危なくても達しているようなところで何で魚が死ぬんですか。農家の皆さんは、魚が死んだと言う。で、戻ってこない。その現実の姿を見て、このままやっておれば、それは田んぼにも水を引いているわけですから、やがてかつてのカドミ米とかそういう問題が出てくるということを非常に心配しておられるのです。府の方はそんな話は全然地元にしないのですよ。何か慌ててやり出したのか、どこかのデータを持ってきたのか知りませんけれども、データをちゃんととって公開してくださいと地元が要請してもしていないのです。大体、大阪府段階でちゃんと行っておって、大丈夫、大丈夫だということになっておれば、私が改めてここで質問をするようなことはないのです。科学者、専門家の皆さんの御協力なども得ながら私もその現地に何度も入っておりますが、本当に深刻な事態です。特に産廃というのは、埋め立ての早い時期に溶け出して全部さっと出てくるんだったらすぐ検出できるのですが、必ずしもそうはいかないものですから、それで今後流出量がふえるということも心配しているわけなんです。  その点では、私は当然まず調査は地元市の関係の衝にやらせるという、これは当然のことだと思うのですが、それにしてもこれだけの問題になっているところについては一度ちゃんと調査をやってもらいたいと思いますし、なお、トリクレンであれPCBであれ何であれ、やはりそういうものの危険があるところについては、この発生源について明らかにしていくということが大事で、私はこの点では、明らかに安定五品目以外のものが入っている、そういう事態ですし、大阪府にも私も現場で聞いたのですけれども、何が入ってくるかチェックしていますか、堺七-三区と言われる府が管理しているところはきっちりとチェックしている、ところが、ここは全くチェックしていませんと言っていますね。そういうところでありますから、私はアスベストやPCBや重金属などがないかどうか、こういうものは今きっちりと調査をすることが必要だと思うのです。それが私は今環境行政に求められている問題だと思うのですが、どうでしょうか。
  181. 三本木徹

    ○三本木説明員 先生御指摘地域産業廃棄物の処分場につきまして、私ども大阪府の方からいろいろとその後の状況を調べて、あるいはお話を聞いているところでございますが、御案内のとおり、産業廃棄物処理業者が守るべきいろいろな各種の基準というものがございます。例えば、埋め立て処分の場所からの浸出液によって公共水域があるいはまた地下水が汚染してはならないとか、あるいは埋立地の外に悪臭が発散しないような措置を講じなさいとか、各種の基準というものを定めておりますし、さらには埋め立てるべき処分場の中に持ち込まれる産業廃棄物の種類というものも実は法律上は限定しております。  ただ、御案内のようにこの地区がそのような問題を起こしているのかどうか、私ども十分把握をしておりませんが、搬入管理を徹底させるということが大変重要であるというような認識を私どもは持っておりまして、実は昨年の四月に都道府県知事に対しまして、立入検査の強化、それから産業廃棄物処理業者のいわば搬入物の管理のチェックなどについて十分な指導を行うようにという指導をしてきております。したがいまして、先生今御指摘のような検査というものについて、私ども都道府県知事を指導してきておりますので、さらにそれをきちんとした形で立入検査等々強化をさせていくということは必要だと思っておりますので、そういった方面で対応を今後とも図ってまいりたいというふうに思っております。
  182. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 法律があるから守ってくれる、これは当然のことなんですね。それを言い出してしまったら、道路交通法があれば交通事故は起こらないというのと同じ論法なんですよ。現実にはそうではないからこそ、こうして国会の場で議論をしているわけであります。水質汚濁防止法、大気汚染防止法に基づいた調査等は環境庁とか、産廃問題としてだったち厚生省とか、それぞれに所管の省というものがあるでしょうが、私は直接やっていただくにしても大阪府にやらせるにしても、やはり今現に、何しろ地域に住んでいる人が一番詳しいわけですから、あそこの魚が死んでしまった、ヘドロがひどくなった、そしてにおいが臭い、カラスがいっぱい飛んでくる、地元の方がそのことを指摘している問題について、やはりこれは私は早急に調査をして、そして報告をしていただきたいと思うのです。それはいいですね。
  183. 三本木徹

    ○三本木説明員 先生の方に御案内かと思うのですが、立入検査等、昨年の四月にいろいろな指導の強化ということで各都道府県知事を指導しているわけでございます。具体的には立入検査の回数あるいは結果というものをきちんと整理しておきなさいとかそういったような指導をしてきておりまして、私どもも、その指導状況については、これはその場その場という意味じゃないわけでありますが、全国的に各都道府県から毎年度その状況というものが把握できるようにはしておるところでございます。  ただ、個別の地域に当たりましては、やはり国と地方の問題がございまして、御案内のとおり廃棄物処理法の指導権限あるいは許認可権限、これは都道府県知事に任せられている問題でございますので、なかなか私どもの立場として直接現場で指揮監督をするということは困難な状況にあるということを御理解いただければと思います。
  184. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 当然、直接であれ間接的に指導してであれ、それはお任せしますから、ですからまず魚が死ぬようなところ、これは近く大きな問題が出てくるということは今既に出ているわけですから、まずちゃんと水質は調査されるか、それから、大阪府と立ち会いまして、現場でボーリング調査やりますかと言うと、なかなかやると言わないのですね。しかし、安定五品目以外入っているかどうか調査すればすぐわかるのですから、まずそれをやらせる、そして報告いただけますかというこの点だけ、もう一遍簡単にお願いします。
  185. 三本木徹

    ○三本木説明員 先生御指摘の件につきましては、大阪府の方からよくお話を聞きまして、廃棄物処理法上、問題がないような形で行われているかどうかは十分私どもも確認をさせていただければというふうに思っております。
  186. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 大臣にこのことをお聞きいただきましたのも、やはりこれから産業廃棄物の処分場が全国的に新たな公害の発生源になるようなことを食いとめるという点で、これは法律があるから業者が確かにそのとおり守ってくれればだれも心配しないのですよ。そうなっていないから全国あちこちで問題が出ているのです。だからこそやはりこういう問題を指摘したところにつきましては、まず府にやっていただきますとかいろいろあるにしても、どこがやってくれてもいいのです。まず水質の調査、それから産廃の既に掘られているところについてはボーリングをして、安定五品目はどうかというのは数カ所とればわかるわけですから、そしてその中には、アスベストは入っていないか、重金属は入っていないか、PCBはどうか、きちっと調査すればはっきりするわけですから、これを進めていくということが――今この地域では業者はひどいんですよ、やり方は。農地改良組合というので業者の方がでっち上げるのですよ。そして産廃で埋め立てて最後に上土をすっとかぶせたらこれは農地だということで農地改良事業だと称しているのですね。恐るべきやり方でやっているわけです。このままいきますと、しかも現在まで二百三十五万立方メートル埋め立てられ、新たに八百五十万立方埋め立てられると、約四倍埋め立てようということですから、今手を打つかどうかということが大事なときなんです。  太平記の里がごみの里にならないようにということできょう私は問題提起したのですが、最後に、もう時間がありませんので大臣、私は、やはり環境行政の責任者として、この問題について少なくとも水質の調査とそしてボーリング小調査でもやって、現況はどうなのかということをつかんで本当に環境を守るという方向へ前進させてほしい、それが全国的にこの種の問題について、産廃処分場が公害発生源にならない、そういう行政を進める大きな力になると思いますので、大臣のお考えだけ伺って質問を終わりたいと思います。
  187. 中村正三郎

    中村国務大臣 行政のあり方についての、これからの環境行政についてのいろいろな御検討というのはいろいろなところで行われていくものだと思います。ところが、今御案内のとおりこれは環境庁の所管ではありませんで厚生省の所管になっております。そして今いろいろ御答弁ありましたように、やはり今地方の時代、地方の権限を強化して地方でいろいろなことをやっていこう、地方の自治体の方が一番事情がよくわかるということの中で、もちろん公正に対応する地方の組織もあれば、大阪府にもちゃんと環境部門があるわけでございます。私はこういうことを根本的に考えますときに、やはりちょっと大きなことを言うようですが、大量生産、大量消費、そういった社会経済、我々の生活自体のやり方を考え直す時期に来ていると思うわけで、大きな環境行政の立場からいえば、リサイクルだとか製品のライフサイクルの問題、そういう面からのアプローチも大切だと思います。  ただ、今先生の御指摘でありますので、よく大阪府の方にも聞いてみまして、適切な対応をするように指導してまいりたいと思います。
  188. 吉井英勝

    吉井(英)分科員 終わります。
  189. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤登君。
  190. 遠藤登

    遠藤(登)分科員 環境問題、それぞれの先生方から提言なり質問があったと思いますが、地球規模で問題になっている環境行政について大変な御努力をされていることに深く敬意を表する次第であります。  まず、環境庁が創設をされて二十年を超えた。今や人類規模地球規模でこれらの問題が重大視されているという昨今でありますが、環境庁としての環境保全環境行政対応についての基本的な対応状況、対応方針などについてお聞かせをいただきたい。
  191. 中村正三郎

    中村国務大臣 近年のこの環境行政課題というのは、昔と随分変わってきたと思います。昭和四十五年当時ですから、今から二十年ぐらい前の環境国会で環境庁ができて公害に対応してきた。当時は出てきた公害をつかまえよう、それに対する対策はどうするんだ、被害者を救済するのはどうするんだ、こういう観点から対症療法的に物事をとらえて公害抑制というものをやってきた。非常に悪い公害は経験したのですが、それなりに我が国は世界からも評価されるぐらい、ある程度克服をしてまいったのだと思います。  ところが、今変わってきましたのは、地球がもう発展の限界にあるだろう。一六〇〇年代、ちょうど関ヶ原の戦いのときは地球の人口というのは五億人だったそうですが、今は五十四億人。そして、もうこのまま行ったら百億人を突破するだろうというような状態。そして、そういう中で、産業革命の当時と今と比較すると、ここの中の炭酸ガスの含有量が毎年毎年〇・五%ずつふえている。二〇三〇年には産業革命前の倍の炭酸ガス濃度になってしまう。こんなことを続けていていいわけがない。すなわち、そうした我々の社会活動、経済活動、そして人間の活動自体が地球環境にえらい影響を与えて、これがもう非常に差し迫った課題になっている。でありますから、昨今国際的に出てきておりますサステーナブルディベロプメント、持続可能な開発ということで、地球環境保全しながら、その中でもって我々が暮らし、そして地球保全された環境を我々の次世代に送っていくにはどうしたらいいかというところから発してくる。  そういうことになりますと、我々の産業だとか生活のあり方というものを、環境というのを主体に考えた中でどう取り組むかということになってまいるわけであります。まさにそれの国際的会議が六月にUNCED、地球サミットが開かれて、そこで論議をされ、地球がどうあるべきかという地球憲章というようなものも考えられておりますしい温暖化をとめるにはどうしよう、そしてフロンガスが出てオゾン層が減って大変危ないことが起こってくる、熱帯雨林が切られてしまう、どうしよう、こういったことに対する国際的な合意を得ようという中で、我々の、日本の環境行政もどうあるかということになってくると思います。  しかしながら、今の環境庁をめぐる法律だとかいろいろなことは、そういうことに対応。するようになっていないのですね。ですから、私どもは今この地球化時代、国際化時代環境行政というのはどうあるべきかということを私どもの中公審、自原審等に諮問をいたしまして御検討をいただいているところでありまして、各党におかれましても、もちろん社会党さん、公明党さん、民社党さんも、私どもの自民党もみんなそういうことに関心を持って今取り組み出している。まさに転換期にあると思いますので、そうした持続可能な開発という観点からの環境行政を打ち立てるように頑張ってまいりたい、このように思っておるわけであります。
  192. 遠藤登

    遠藤(登)分科員 まさに大臣のおっしゃる状況にあるのではないかというふうに思います。  そこで、一つはこういう状況でありますから、しかも先進国として、あるいは日本列島が置かれている海に囲まれている環境という非常に位置的な好条件もあるのだとは思いますが、今までの、あるいは今行われている環境保全あるいは環境保護、そういう基準を今それぞれの立場から見直しを必要とするというお話もあったのでありますが、改めてあらゆる分野の基準を含めて見直しをする必要があるんじゃないか、あるいは設定されていない部分の基準設定を含めて見直しする必要があるのではないか。それから地球サミットあるいはワシントン条約の京都会議なども開催されておりまして、積極的な対応について敬意を表するわけでありますが、中国大陸あるいは朝鮮半島を初め、大陸との日本の関係というのは環境問題、酸性雨を初めとして大事な課題としていろいろ問われているし、それなりの対応もなされていらっしゃるわけでありますが、日本もせめてアジアの環境会議を初めとして環境保全環境保護のために連帯した組織体制をつくるとか、先進的なそういう日本の役割があるのではないだろうか。また、大臣がおっしゃった六月の地球サミットの開催を初めとして、国際的に地球規模環境保全のために日本の果たしていかなければならない役割、大臣がおっしゃるような状況だとも思います。いろいろな提言もあるわけでありますが、国際的なあるいは世界の環境機構を日本に設置して、国際環境機構などもあるわけでありますが、地球環境保全のために日本が国際的にも積極的に役割を果たしていく必要があるんじゃないかというようなことが大きく期待され、しかも指摘をされているのでありますが、そういう点についての対応方針などをお聞かせをいただきたいと思います。
  193. 中村正三郎

    中村国務大臣 私どもの国は、先ほど申し上げました非常にひどい公害を経験し、それを克服してまいりましたものですから、そういったことに対するノウハウですとか技術だとか、蓄積がございます。また、世界の中で資源を輸入して大きな工業生産を行い、世界の貿易量のうんと大きな地位を占め、そしてGNPも世界の一五%ぐらいということでありますから、もとより、これは国際的に環境問題について、特に地球環境問題について協力をし貢献していくということは日本のやるべき国際貢献の一つの大きな柱だととらえております。  しかしながら、非常に難しい問題がいろいろ今UNCEDに向かって出てきております。発展途上国の方たちは、今経済発展をさせなければいけないということで、環境よりどうしてもそういったものが先行するお考えをお持ちだ。先進国におき。ましても、一つの例を挙げますが、先生今日本は島国だと言われました。このままほうっておきますと、炭酸ガス濃度がこのままふえていくと海面が上昇してくる、百年ぐらいで一メーターは上昇するだろうと言われておりますのでありますから上海だとかバングラデシュ、モルディブが埋まっちゃいそうだ、日本も大変な影響を受ける、これは大変なんですね。ところが、比較的大きな土地を持っているお国の方たちはそれほど関心を持たれないのかなというようなことも出てくる。また、オゾン層が壊れて紫外線が入ってくる、これは白人の方には皮膚がんをつくりやすいのですね。我々は幸いに皮膚がんができにくい。そうすると、そのオゾン層を壊すということには非常に熱心になってくださるからこういうことは早く解決する。しかし、そのどの面においても、日本はほかの国におくれをとらないように環境について一番熱心な提言をして、今UNCEDへ向けての準備会議を行っているところでございます。  また、環境について発展途上国にODA等をやるにしましても、例えばの話としてお聞きいただきたいのですが、脱硫装置をつけてくれというODAをやるとすると、もしかするとそれをつくるよりかもっと橋をつくってくれという御要望があるかもしれない。しかし、それはやはり地球環境のためにやっていただかなければいけないということでやらなければいけない。そういうところを今度のUNCEDで一つの地球憲章というものができて、地球は何人たりとも地球環境保全する義務があるんだよ、それを子孫に伝えていく義務があるんだよというところから始まって、国際的な合意が得られるように努力して、その中で日本がいろいろなことをやっていかなければいけないのじゃないかなと思っております。
  194. 遠藤登

    遠藤(登)分科員 今地球サミットの問題が出されたわけでありますが、日本に対する期待もあらゆる分野で非常に大きいようであります。それで、地球サミットに対する日本の、あるいは環境庁としての対応はどんなことをお考えですか。
  195. 中村正三郎

    中村国務大臣 今サミットで決められようとしておりますことは、今申し上げました地球憲章ですね。地球憲章は、日本がいろいろな諮問機関に御審議もいただいていたのですが、基本的な方針を環境庁として決めまして、今ちょうどニューヨークでやっておりますが、具体的に提案をして対処しております、  それから森林減少について、これは一年間に千七百万ヘクタールという大変大きな森林、日本の半分ぐらいの面積が切られている。これは切られる原因が、やはり生活のために切ってしまう。焼き畑農業であり、まきに使う、そういったこと。よく言われることですが、輸出している木材はその中で大した量ではないのですね、相対的に見れば。そういうものをやめていただきたいと言うのだけれども、やはり発展途上国の方はそれはやめるわけにはいかないということで、これについての条約がなかなかできないので、森林憲章というようなものをつくって、やはり森林を保全する努力をしていこうやというようなことをやりたい。それに日本の独自の案を持って臨んでおります。  それから気候変動枠組み条約というのですが、気候を上げて、気温を上げて海面が上がらないようにする、また気候の変化を大変なことにして人間が住めないようなことにならないようにする。これは条約をつくろうということで、日本が今率先して、私ももう外国から来る人にいろいう言っているのですが、二〇〇〇年までに一九九〇年のCO2の排出レベルで抑えようということを提言してやっておりますが、これはアメリカが、やはりなかなかそこまでできるかなということがあるのでございましょう。こういうものをまとめていきたい。  それから、アジェンダ21と申しまして、こういったことを実行して地球環境保全するためにいろいろな事業を出しまして、それにはどれだけのことをやらなければいけないか、それにはどれだけのお金が要るんだ、それをどうやって国際的に集めよう、それをどうやって発展途上国の方に技術とともに差し上げていくのかということで、大切な論議の的になっております。  それに関しましては、国連のUNCEDという地球サミットの事務局のストロングさんが主催されるのですが、四月に、竹下元総理が請われて名誉議長をやって東京で賢人会議というのを開きます。そこでどういうような資金の集め方をしてどういうようなことをしようかというフレームワークをしていく。あらゆる面で今日本は積極的にこのUNCEDの成功に向けて働いているところでございます。  しかしながら、先ほどから申し上げているような難しい問題があるわけであります。しかし、もうこのUNCEDが失敗に終わったとき、これだけ何年も準備して何回も準備会議をやってきたやつがまたいつ開かれるかということを考えますと、この会議は成功させなければいけない、そんな決意で臨んでいるところでございます。
  196. 遠藤登

    遠藤(登)分科員 大変な課題でありますが、さらに成功に向けて御努力を願いたいというように思います。  リゾート開発あるいはリゾート法が施行されて五年目を迎えるわけでありますけれども、乱開発、自然破壊が非常に目に余るものがある、こういう問題についてもっと規制を見直す必要があるんじゃないのかというような問題等々、あるいは環境行政としても、それぞれの各省庁に関連する部分がありますが、その元締めである環境庁としてもっと強力な指導体制を強化する必要があるんじゃないかということが求められていると思うのでありますが、環境庁としての対応状況などについて伺いたい。
  197. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 乱開発による自然破壊の問題ということで御指摘でございますけれども、基本的には私ども、豊かな自然を守り、育て、また国民共有の財産といたしまして後代まで伝えることが責務であるというふうに認識しております。  私どもとしても、先生御指摘のように関係省庁とも共同でいろいろ取り組んでおるわけでございますが、やはり何といたしましても私どもは、自然環境保全という観点から基本的な法律を持っておりまして、例えば自然環境保全法それから自然公園法、こういったものがございますので、こういった法律に基づきまして、自然環境保全地域あるいは国立国定公園などを指定いたしまして、この指定地域に関しまして保全あるいは保護計画策定し、あるいは利用計画策定し、それに基づいて許認可あるいは届け出といった手続を活用いたしまして、その地域保全に努めておるところでございます。  特に、お尋ねのリゾート関連でございますけれども、総合保養地域整備法というのがございますが、これにつきましては都道府県知事が総合保養地域整備に関する基本構想を定める、その策定に当たりまして主務大臣の承認を求めることになっておるわけでございますが、その承認に際しまして環境庁長官が協議を受けるという立場に立っておりますので、こういった協議の場を活用いたしまして、自然環境保全する観点からいろいろ意見を申し述べる等調整を図っておるところでございます。  いろいろ自然環境保全に関する諸制度ございますけれども、こういったものの運用を通じて適切に自然環境保全されるように、今後とも努めてまいりたいと考えております。
  198. 遠藤登

    遠藤(登)分科員 全国的に非常にいろいろな問題が提起されている状況がありまして、そういう問題は御案内のとおりであろうと思います。各省庁との連携の中で、乱開発や自然破壊が大きく伴わない、そこに産業廃棄物め不法投棄の問題などを含めて、これは厚生省も関連してくるわけでありますが、先ほどからいろいろ話が提起されていらっしゃるわけでありますけれども、十分な対応をお願いしたいというふうに思います。  それから、国立公園関係の話が出たわけでありますが、国定公園を初めとして、この管理体制を強化する必要があるんじゃないか。行革その他大変な歴史をたどってきている昨今でありますけれども、例えば磐梯朝日、お話によりますと、あの広大な朝日に一人ようやく管理者を配置をいただいた、その御努力に敬意を表するのでありますが、これからますます自然景観あるいは自然環境保全をしていくという意味において、この管理体制を強化する必要があるんじゃないか。管理体制の現状とかその強化、対応について、お聞かせをいただきたい。
  199. 伊藤卓雄

    伊藤(卓)政府委員 ただいまの国立公園の管理の体制についてでございますけれども、私ども現在、国立公園は全国で二十八カ所指定いたしておりまして、総面積が約二百万ヘクタールあるわけでございます。これを十一の管理事務所で統括しておりますが、その指揮下におりますのが百十七名の国立公園管理官でございまして、彼らが現地で公園管理の業務を行っておるところでございます。環境庁発足は四十六年でございますが、それ以来管理官の増員には特別意を用いてまいったところでございますが、やはり許認可等あるいは山野の管理等につきましては、私どもだけでできるわけでもございませんので、内容によりましては都道府県知事に権限を委任するというような形で地方公共団体協力も得ておるところでございます。  なお、陣容の拡充は非常に大事なことでございまして、環境庁発足当時五十三名でございましたけれども、先ほど申し述べましたように、現在約二倍の陣容になっておりますが、なおこの拡充を図りたいということで、平成三年度から増員対策の一環といたしまして、林野庁職員の方の部門間配転というものを特別に推進することといたしました。これは林野庁と協議の上、従来毎年数名程度でありましたものをうんと拡充しようということで御理解を得、進めておるところでございます。  なお、こういった自然保護の仕事というのは役人だけでできることでもございませんので、自然保護局長が委嘱いたします自然公園指導員あるいはパークボランティア、こういったものの活用も図りながら、相まって公園の管理体制の充実を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  200. 遠藤登

    遠藤(登)分科員 環境保全の立場からも、あるいは景観保全の立場からも非常に大事な課題だと思います。ぜひこの管理体制の強化について努力してもらいたいということを要請をさせていただきます。  時間がありませんから、今フロンガス、大臣からも話が出たんですが、炭酸ガスの問題を初め大変な問題になっているわけであります。また特に、大都市における排ガスの問題ですね。ほとんど環境基準を上回っている。これも大気の汚染の問題について大変な問題を提起しておりますが、大臣がおっしゃるように、このまま放置できないという問題が提起をされているのでありますが、環境庁としてはどのような対応状況にありますか。
  201. 中村正三郎

    中村国務大臣 フロンにつきましては、これはモントリオール議定書というものがございまして、二〇〇〇年までに悪質なフロン、悪質というのもあれなんですが、細かいことございましたら事務局からあれですが、害の大きいフロンの生産をやめてしまおうということで国際的な合意がございます。それから、先ほど申しましたように、がんになりやすいお国の方々が非常に熱心でありますから、これはそのままいくと思います。  問題はCO2であります。CO2は、日本は、閣議決定をされた地球温暖化防止計画というあの十一省庁にまたがる関係閣僚会議の決定がございまして、二〇〇〇年までに一九九〇年の排出レベルでおおむね抑えようということが決められておりまして、それに向かって今努力を政府一体となってしているところであります。ところが先生、ここで問題は、世界全体のCO2の発生量の、日本はこれだけの経済生産を行いながら四・七%しか出してないのです。ところが、アメリカが二四%以上出しておる。そして中国が一〇%でソ連が二〇%、これで半分ぐらい出しておる。だから、大きく出しておるところで対策をしてくれないと、地球温暖化というのはとめられない。ですから、国際条約が大切だ、そんなところで各国の説得に向けて頑張っているところでございます。  それから、排ガスのことでありますが、これは、残されたのがNOxという窒素の酸化物と、ディーゼルエンジンから出てくるパティキュレートというあのいろいろな炭素の化合物みたいなものでありますけれども、これが残された公害として残ってまいりました。ガソリンエンジンは非常に厳しい規制をしたものですから世界一きれいなガソリンエンジンと言われるようになったけれども、ディーゼルは残ってきた。  そこで、何とかしなきゃいけないというので、今国会にこの総量規制の法律を出して御審議をいただくわけです。これもぜひやらせていただきたいわけですが、何といってもそのディーゼルエンジンから出すことをとめなきゃいけない、それを今強力に各メーカーの方にお願いをし、長期目標を設定して、目標達成に向けて、むしろ目標をもっと早く達成してくれということでお願いをし、また、自動車メーカーの方は、それをやるには石油をきれいにしてくれなきゃいけない、軽油をきれいにしてくれなきゃいけないということで、十八日に軽油メーカーの方に集まっていただいて、また御要望しようということにもしております。  それと、もう一つ根本的な問題ですが、それじゃ、何でこういう公害を出すディーゼルがふえたかというと、これは税制の問題であります。軽油にかかる税が安いものですから、ガソリンの半値ぐらいの値段。経済性を重んじるから公害が多く出るディーゼルの車がどんどんふえている。これは総合的にそこまで考えていかないと直せる問題ではない。総合的なディーゼルの対策をしていかないと、これは排ガスによる公害の基準がどうしても達成できない。そこらにはうんと力を入れてやってまいりたいと思っておるところでございます。
  202. 遠藤登

    遠藤(登)分科員 非常に大事な課題でありますので、大変な御努力に敬意を表しながら、なお一層国際的な問題なども含めて御努力を願いたい。  時間がありませんから、国際条約、バーゼル条約の批准の問題について環境庁としてはどのような対応をされているのかというような問題、それからクロロエタンのハイテク汚染が問題化されているわけでありますが、これらに対する対応、場合によったらこれは業者に回収を義務づける必要があるんじゃないかというようなことなども指摘をされておりますが、環境庁としてはどのような対応状況にありますか。酸性雨の問題などもこれは重要な課題になってきているわけであります。  最後に、環境庁が創設をされて二十年、それで、もう人類規模地球規模環境問題が大臣がおっしゃるように問題化されている中で、むしろ環境省に昇格をさせて、体制を強化して、国内あるいは国際的な対応を、人材あるいは財政的な、研究分野を含めて強めていく必要があるんじゃないのかということを強く痛感するものでありますが、そういう点についてもお聞かせをいただきながら、先ほどの質問項目も含めて答弁願いたい。
  203. 中村正三郎

    中村国務大臣 一つ訂正させていただきたいのですが、さっきの地球温暖化防止計画をつくった関係閣僚会議の決定は、十一と申し上げたが、十九の省庁が集まって関係閣僚会議で決定したことでありますので、そのようにお願いいたします。  細かいことは事務当局からといたしまして、今の省への昇格のことであります。先ほどから御答弁させていただいておりますように、今の環境庁のあり方は、新しい時代環境問題に取り組むにはやはり不足であるということを感じております。そういうわけで、新しい地球環境時代に向けての環境庁のあり方というのはどういうことであろうということで、中公審、自原審等にも諮問をいたしまして、今検討していただいているところであります。我が庁においても検討をしております。  そこで、根本的に組織、内容の強化充実ということが必要だと思いますけれども、そこに省に昇格という大変ありがたい御提案をいただいたわけであります。ところが、私ども今の組織の中では、総理からいただいた権限によって、政府を調整して環境行政に対する計画を立ててやる機能を我々授かっておるわけでございますね。ですから、それがいろいろな仕事を持っている省と同列に並んだからそれで済むものかというと、そうでもないと思うのでございます。ですから、総合的にいろいろなことを考えていかなければいけないと思います。  ただ、やはり象徴的にも、この国際情勢の中からも、環境庁の組織、体制が充実されるという意味で、省への昇格は、私は行っていい方向だと思いますので、どうぞ御支援を賜りたいと思っております。
  204. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 バーゼル条約の批准の関係につきまして、私からお答え申し上げます。  バーゼル条約、いわゆる有害廃棄物の国境を越える移動に伴います環境汚染問題につきましては、六月の地球サミットでも取り上げられる重要な地球環境問題の一つでございます。環境庁としましては、バーゼル条約への早期加入の必要性を強く認識をいたしておるところでございます。  条約に入りますためには、国内法を整備する必要があるということでございますので、条約を誠実に履行して有害廃棄物の国境を越える移動に伴う環境汚染防止するという見地に立ちまして、これまで関係省庁と鋭意調整を図ってきておるところでございます。現在までのところ、残念ながらまだ調整がついておりませんが、できるだけ早く調整を終えまして、できるだけ速やかに所要の国内法を国会に提出できるように全力を挙げてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  205. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘になりました新素材等による汚染の可能性、また化学物質、最近非常に開発が進んでおりますが、こういった新たな汚染可能性のあるものについての環境汚染についての懸念でございますが、これはやはり環境汚染を未然に防止するということが一番大事でございます。そういう観点から、こういう化学物質に関しましては、調査を継続的に実施するというような視点、また、利用に伴ってそれがどういうふうになっていくかという環境実態調査というのを間断なくやっていく必要があるというようなことから、関係省庁と連携して進めているところでございます。
  206. 遠藤登

    遠藤(登)分科員 どうもありがとうございました。
  207. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて遠藤登君の質疑は終了いたしました。  次に、川島實君。
  208. 川島實

    川島分科員 私は、既に通告をいたしております三河湾の環境保全と浄化対策、長良川河口堰の環境対策、油ヶ湖の浄化対策の三点につきお尋ねをいたします。  三河湾は、知多半島と渥美半島に囲まれ、北西部に矢作川などの注ぐ衣浦湾と、東部に豊川などの注ぐ渥美湾から成る面積約六百平方キロメートルの波静かな内湾です。それゆえに、海水の交換が少ない閉鎖性水域であるため、汚濁物質が蓄積しやすく、富栄養化、ヘドロの堆積による水質悪化が見られるなど憂慮すべきものとなっております。しかし、この三河湾は古くから良好な港を抱え、交通、物流の拠点として、あるいは漁業、観光の場として重要な役割を果たしてまいりました。  また、近年には外国企業の自動車の輸入基地として二百五十億の企業投資が行われるなど、またトヨタ自動車の輸出基地を初め臨海工業地域の中核として、あるいは海洋性スポーツ、レクリエーションの場としても重要性を増してきております。  また、平成二年七月に、かつての美しく恵み多い三河湾を再び取り戻すよう、関係七市十町が集まりまして三河湾浄化推進協議会を結成し、今日まで三河湾浄化につながる各種施策を講じているところであります。  環境庁として今日までどのように取り組みを行ってまいったのか、まずお尋ねをいたしておきたいと思います。
  209. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 三河湾等につきましては、広域的な閉鎖性海域でございまして、御指摘のように海水が交換されにくいというふうな地形的な要因があるわけでございます。さらに、人口や産業が集中をしておるというふうなことで、環境基準の達成が非常に困難な状況にあるということでございます。  三河湾におきましては、依然として環境基準の未達成の水域が残されておるわけでございまして、赤潮が発生するなど水質の改善がまだ十分ではないということでございます。三河湾を含みます伊勢湾について、現在平成六年度を目標年度といたします第三次の総量規制実施をしながら水質の改善を図っているところでございます。  この第三次の総量規制では、愛知県全体で発生する汚濁負荷量の七%強を平成六年度までに削減をしていくということを目標に設定をしておるわけでございます。県では、このために、生活排水処理施設整備の促進等の生活排水対策、あるいは総量規制基準の強化等の産業排水対策等の諸施策推進しているところでございます。  環境庁といたしましても、このような施策が積極的に展開されますように指導に努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  210. 川島實

    川島分科員 次に、この三河湾に面する蒲郡市では、市内の小中学校の協力を得て河川の生物の調査を、昭和六十年から四河川について、環境庁が示しております水生生物による水質調査法に基づき続行してまいりました。ところが、そのたびに川が汚れ、清流に住む生物が年ごとに減っている、こういう現状なのでございますけれども、このことに対しまして環境庁はどのようにこれを受けとめておるのか、まずお伺いしたいと思います。
  211. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 川の水質の問題でございますが、最近の水質汚濁につきましては、工場排水もあるわけでございますが、生活排水による汚れというものが深刻になってきておるわけでございます。これにつきましては、対策といたしまして、下水道を整備する、あるいは集落排水等の施設整備するということ、さらにそれに加えまして厚生省でやっております合併浄化槽というふうなもので、要するに生活排水を浄化して川へ流す、こういうふうな対策を積極的に推進する必要があるというふうに考えておるわけでございます。環境庁といたしましても、水質汚濁防止法を改正いたしまして生活排水重点化地域というものを指定をして、そこに集中的にそういう施設整備をしていくというふうなことを行ってきておるわけでございます。  さらに、平成四年度の予算で、小さな川につきまして、環境庁独自としての予算でございますが、川の汚れた水をくみ上げ一まして、きれいにしてもとの川に戻してやるというふうな施設整備を、生活重点化枠の一つとして予算を確保したところでございます。こういうものを使いまして生活排水対策強化し、川の水質の改善に今後とも努めてまいりたいと思っております。
  212. 川島實

    川島分科員 このような小中学生の協力を得て行う環境調査というのは、非常に大切なことだと思うのですよ。これはお金がさほどかかりませんし、地域の市町村の人に対しても非常なPRになります。例えば、矢作川ではもう豊田市が協議会をつくってやってきておる、その成果がすごく上がってきておりますので、今後とも三河湾に面する河川のあるところの市町村にはすべてこういう調査を御依頼をするよう、ひとつ働きかけを行っていただきたいと思います。  次にまた、蒲郡市では、市民に対して環境保全のためのPRを再生紙を使って積極的に、生活排水対策だとか啓発事業、水質浄化対策等を行っているわけでございますが、こうしたことを、そういう地域でのいろいろな施策を積極的に行っている優良市町村の模範というような形で、ほかの市町村へもそれらの施策が全般的に行き渡るよう環境庁として指導すべきだと思いますが、御所見をお伺いしておきたいと思います。
  213. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 先ほど来申し上げておりますように、最近の水質汚濁につきましては、生活排水が汚濁源の大きなウエートを占めてきておるわけでございます。そういう意味で、先生御指摘のように、生活排水ということになりますと、生活者がそれぞれが自覚をしてできるだけ汚れた水を流さないといいますか、汚濁源を減らしていく、こういう取り組みが大事でございます。そういう意味におきましても、先ほど来先生御指摘の、水生生物でございますとかそういうものによりまして、目に見える形で水をきれいにしていくということが大事でございます。  そういうふうなことで、我々としましても、生活排水に関する普及啓発のパンフレットをつくりまして、いろいろ配っているわけでございます。さらには、優良事例をいろいろ調べて、各市町村が積極的にそういう問題に取り組めるよう今後とも努めてまいりたいと思っております。
  214. 川島實

    川島分科員 我々地元におりまして、大分格差が激しいものですから、そういう点で指摘をしているわけでございます。  次に、三河湾の水質浄化対策として重要な役目を担っております建設省の下水道整備事業、厚生省の浄化槽整備、それの管理事業並びに運輸省が行う海域環境創造事業、これらの促進が水質浄化を左右するとも言われております。そこで、順次お尋ねをしていきたいと思います。  まず、下水道整備事業についてお尋ねをいたします。  この地域の各エリアにおける現状の達成率ですか、愛知県は下水道においては全国的には非常におくれておりまして、それはなぜかと申しますと、流域下水道を行うということで反対運動等がございましておくれている。その一つがこの三河地方に影響を及ぼしているわけでございますが、これらの達成率と目標年次等をお伺いしておきたいと思います。
  215. 稲場紀久雄

    ○稲場説明員 三河湾にかかわります流域下水道といたしましては、豊川流域下水道それから矢作川・境川流域下水道の二つの流域下水道がございます。豊川流域下水道につきましては、既に供用が開始されております。また、矢作川・境川流域下水道につきましては、境川処理区、衣浦西部処理区におきまして既に供用が開始されております。また、この三月下旬には、矢作川処理区におきましても使用が開始される予定でございます。  岡崎市等の公共下水道を含めます整備水準でございますが、平成二年度末で処理人口普及率がおよそ一六%という状況でございます。  したがいまして、建設省といたしましても、流域下水道を初めといたしまして下水道の整備促進に万全を期していきたい、このように考えております。
  216. 川島實

    川島分科員 次に、一般浄化槽及び合併浄化槽の現状と管理の状況についてお伺いをしたいと思います。  浄化槽は、管理が問われている、つくるだけつくって後の管理がなかなか法律どおりになされてないというのが現状でございます。今市町村では、三河湾を少しでもきれいにしようということで、合併浄化槽の国の補助金、県の補助金に新たに上積みをして促進を図っているところでございますが、これらの補助の拡充についてどのようにお考えになっているかもあわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  217. 喜多村悦史

    ○喜多村説明員 浄化槽についてのお尋ねでございます。  浄化槽につきましては、過去には単独処理浄化槽のみであったわけでございますが、これが全国で相当な数ございます。その維持管理につきまして適正を図るということで、浄化槽法に基づいて保守点検を行うあるいは定期に清掃を行うという義務づけが管理者に課されておりまして、そうした保守点検、清掃の実施につきまして都道府県を通じて指導をいただいておるということでございます。  それから、合併処理浄化槽でございますが、し床とあわせまして雑排水を処理できる合併処理浄化槽、これが非常に排水問題の対策上有効であるということで、厚生省といたしましてもその補助を行っておるわけでございますが、三河湾の周辺の地域の市町村におかれましても積極的に取り組んでおられまして、その場合には愛知県もあわせて補助をしていただいておるわけでございます。  その補助の内容でございますが、国庫補助の仕組みは、単独浄化槽に比べまして合併処理浄化槽の場合に規模が大きくなりまして経費が多くなります。その差額につきまして、国と県あるいは市町村で補助をしようという考えでございます。この補助事業によりまして、年々合併処理浄化槽の普及が進みつつあるという状況でございます。
  218. 川島實

    川島分科員 次に、海域環境創造事業、シーブルー計画とも言われている事業でございますが、その内容と進捗状況についてお尋ねをいたしたいと思います。  そのうちでも、砂浜の造成計画が水質浄化に一番有効だと言われておりますし、特に子供たちに海辺をお返しするためにもぜひやらなければならないことだと思っております。三河湾の海辺の割合はどのくらいあって、そのうち今回の事業でどれほど工事がやられるのか、その点についてもあわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  219. 川嶋康宏

    ○川嶋説明員 私ども運輸省では、従来から実施をしてまいりました汚泥しゅんせつなどの公害防止事業に加えまして、先生御指摘のシーブルー事業、海域環境創造事業を昭和六十三年度から開始しております。  その内容といたしましては、水質とか底質の改善あるいは生物相の回復を目指しまして、汚染の著しい海域に覆砂をいたしましたり、あるいは海浜を造成したりいたします事業でございます。  御指摘の三河湾につきましては、国の直轄事業といたしまして港湾区域外の一般海域で覆砂を行う予定にしております。現在は調査を実施しているところでございます。  また、港湾管理者がみずから行う事業といたしましては、三河港の蒲郡地区におきまして水質、底質の改善を図りながら、さらに市民の方にレクリエーションにも利用していただけるような海浜の整備平成三年度から開始いたしたところでございます。  それから三河湾の海浜についてのお尋ねでございますけれども、三河湾の海岸線延長は約三百二十キロぐらいございますの私どもの方で調査をいたしました結果によりますと、港湾の中での海岸線といたしましては約百四十六キロございます。現在、そこに砂浜を持っている海岸は約二割でございます。  これから実施いたします事業で海浜を造成してまいるわけでございますが、その事業としては、まだ計画をこれから具体化していくものもございますので明確に何キロとは申し上げられませんが、数キロに及ぶものを造成するということでやらせていただいております。
  220. 川島實

    川島分科員 海辺は子供たちの夢でございますので、ぜひ一日も早く、おたくの担当のところは百四十六キロすべて海辺になるように期待をしておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  次に、渥美半島の横断運河構想についてお尋ねをいたします。  この調査は、今から十六年前に愛知県が四、五年かけて調査を行った報告書が今貴重に保持されておるわけでございます。当時私も県会の一人として審議にかかわった者でありますが、あの当時はまだ企業本位の行政だなどと言って決めつけておったと思うのでございます。しかし、工事費も千五百億という当時の見積もりのデータ等もきちっとありまして、改めて調べてみると、この三河湾の水質浄化はもうこれしかないのではないかという思いが実はするわけでございます。この地域環境保全は、今の政策ではどうしても現状を悪くしないのが精いっぱいでございまして、時たま台風のおかげで赤潮等が解消されてきれいになる、こういう気候の条件を待つような状況になっておるのが現状でございます。  この間も我が党の早川政審会長と推進協議会の会長を務めております豊橋市長に会談の申し入れをいたしまして、この件の御協力を依頼したところでございます。潮の差が中と外で大体一メーターぐらいあるそうでございまして、余りにも急激に潮の流れが激しくなるので、中でいろいろなゲート等の操作をする機械が要るようでございますけれども、これらは現代の我が国の技術でいけば簡単にその運河構想が成立てきるということも承っておりますので、この件についての、これは大臣の御所見をいただきましょうか。
  221. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 ただいま御指摘の三河湾におきます運河の構想でございますが、渥美半島横断運河建設構想というのを愛知県が昭和四十五年から四十九年にかけて調査を実施しておるわけでございますけれども、幅三百メートルの運河の建設による三河湾の奥部の水質改善効果を検討しておるということでございます。  愛知県から我々聞いておるところでは、運河の掘削後の外海への汚染の拡散、地域分断、あるいは投資額に比べまして投資効果が必ずしも高くないというふうな問題があるというふうにも聞いておるわけでございまして、現時点におきましては、運河掘削構想について愛知県としては慎重にならざるを得ないというふうな報告を受けておるところでございます。  環境庁といたしましては、そのような構想があることは承知しておるわけでございますが、内容について十分聞いてないわけでございます。現時点では、県を初め地元の検討状況を見守ってまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  222. 川島實

    川島分科員 この件は、私も地元で十分協議をしてまいりたいと思っております。  次に、長良川の河口ぜきについてお尋ねをいたします。  今地球環境保全の面から、河川の持つ自然資源の価値が何物にもかえられないものとして非常に大切に扱われてきておるところでございます。長良川の河口ぜきの問題は、日本じゅうの人々が、また自然を愛する世界の人々が我が国河川行政のあり方を問い、当局の百年の大計に立った河川行政の見直しに新しい期待が集まってきておるところでございます。日本自然保護協会からも意見書が出される中で、建設省はこれらの疑問に十分答えることなく工事が進められております。まことに遺憾なことであります。  我が党も去る二月二十日、三重県、岐阜県、愛知県本部がこの問題について、環境、治水、塩害、水利等、事業全般のアセスの完全実施、関係自治体の負担等の結論が出るまで建設の一時中止を求めております。現在の河口ぜきの進捗状況について、まず建設省にお尋ねをいたしたいと思います。
  223. 荒井治

    ○荒井説明員 御説明申し上げます。  現在長良川河口堰の進捗状況ということでございますが、長良川河口堰につきましては、長良川下流部が我が国最大のゼロメートル地帯であるということで古くから水害に苦しめられた地域でございます。そういうことで、我々としては治水事業の重要性にかんがみて長良川の大規模しゅんせつを行うというようなことから、その塩害を防除・するために河口ぜきをつくっているというような状況でございます。  現在、工事の状況等につきましては、河川敷地の造成等のフランケット工事等の関連工事を行う一方、六十三年に全二十二漁協の着工同意を取りつけまして、六十三年三月から本体工事に着手しております。現在十三本の河口ぜきのせき柱のうち五本が完成しておりまして、平成三年度にはさらに三本のせき柱を完成させ、合計八本が完成する予定でございます。  事業費ベースでの進捗率につきましては、平成三年度末で六一%に達する見込みでございまして、平成六年度末の完成を目途に現在工事の進捗を図っているところでございます。
  224. 川島實

    川島分科員 次に、環境庁から建設省に対しまして環境調査事項の申し入れが三点行われておると聞いております。これに対しまして、近々これらの結果が発表されると聞いておるわけでございますが、その件についてどうなっておるのか。さらにまた、水需要の変化に伴って水道や工業用水の負担が増大をいたしまして、当初計画の見直しかどうしても必要じゃないか、こういう声もあるわけでございますが、この件についてお尋ねをしておきたいと思います。
  225. 荒井治

    ○荒井説明員 まず、追加調査の件でございますが、これは平成二年の十二月に環境庁長官の見解を踏まえまして、これまで実施してきました環境調査とか各種保全対策の具体的な内容につきまして建設省と環境庁との間で点検を行った結果、念のため一部の項目について追加的な調査を実施することになったわけでございます。  実施項目の内容につきましては、水質シミュレーションによる既往調査結果の検証、それから魚類のカジカ類の補足的調査、さらに改変予定の高水敷の動植物の補足的調査のこの三項目でございます。  現地における調査はほぼ現時点で終了いたしておりまして、現在それらを取りまとめ中でございまして、ことしの三月末を目途にその結果を公表する予定で現在鋭意作業を進めているところでございます。なお、環境庁とこの追加的調査の実施状況について適時打ち合わせを行っているところでございます。  また、水の需要の変化に対応しての問題でございますが、水につきましては、国民が健康で豊かな生活を営み、地域経済社会が着実に発展するために不可欠な資源でございます。そういうことで、本地域の将来の発展を支えるためには、長期的な観点に立った安定的な水資源の確保を進めることが必要じゃないかと考えております。  具体的には、昭和四十八年度から平成二年度までの十八年間において、既にそのうち十年間にわたって木曽川水系は取水制限を余儀なくされております。そういうことで、全国的にも有数の渇水頻発地域でございます。そういうこともございまして、長良川河口堰によって確保される水資源は中部圏の将来にとって必要不可欠なものではないかというぐあいに考えている次第でございます。  また、一般に水需要につきましては、地域発展とともに年々……(川島分科員「簡潔にお願いします、時間がないので」と呼ぶ)そういう点で、長期的な視点によって利水者は将来の水需要を見込んでこの事業に参画しているわけでございます。  なお、利水費の問題につきましては……
  226. 川島實

    川島分科員 時間がございませんので、あと十分討議ができませんが、油ヶ湖の水質浄化対策についてはカットさせていただきます。  最後に、建設省はこの治水対策として、堤防を補強するか川を広げるか、そして川底を下げるか、こういう三つの方策があった、そのうち川を下げる方策をとった。ところが、川を下げることによって塩害が上がってくるから、こういうことで、今日ああいう形の設計になったわけでございます。しかし、いろいろと環境対策上、魚の上へ上がっていく遡上については、現在階段式の急遽だとかロック式の急遽というのが考えられておるわけです。なぜ環境に最もよくなる効果を持つロック式の急遽を、全面的にそれを採用しなかったかというのが私は建設省の姿勢にあらわれていると思う。環境保全についてはこれからはお金がかかる時代です。なぜ、ロック式の急遽を全部改良するということができればもっともっと多くの自然保護を訴える人たちの環境に対する心配を和らげることができると思うわけでございますが、この点について最後に御所見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  227. 荒井治

    ○荒井説明員 ちょっとその前に、先ほどの利水費でございますが、千五百億の事業費のうちの六二・六%が利水事業ということでございます。  それから、今御質問をいただきました点につきまして、すべてのゲートをロック式にしたらどうかということでございますが、これにつきましては、昨年の十一月二十五日、参議院の環境特別委員会で学識経験者によります参考人の意見聴取が行われました。その中で、水野信彦参考人及び中村中六参考人からの御指摘もございまして、魚というのは多くの魚が岸沿いに上がってくるという性質を持っております。また、呼び水式魚道というのをつけるわけですが、そういったようなことによりまして、左右に集まってきた魚類を急遽に誘導するというようなことが重要なことでございます。そういうことで、急遽については両岸に設置することが適当であるというような御回答もいただいておりまして、十分な効果を上げるものと私たちは判断しております。  また、すべての河口ぜきの、十門ゲートが真ん中にございますけれども、それらについては二段式のローラーゲートという方式を採用しておりまして、これにつきましては今まで以上に上から流すことができる、下からも流すことができるということで、いろいろきめ細かな操作ができるようになっておりまして、こういったようなことが環境にとって非常によろしいのではないかということにつきましては木曽三川河口資源調査団の大きな結論になっております。  そういうことで、我々につきましては、長良川の魚類の生息環境ということは非常に重要なことでございますので、そういう点を十分配慮いたしまして、このような対策を講じているということでございます。
  228. 川島實

    川島分科員 終わります。
  229. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて川島實君の質疑は終了いたしました。  次に、江田五月君。
  230. 江田五月

    江田分科員 第五分科会環境庁関係最後の質問でございますので、ひとつ長官、よろしくお願いいたします。  実は私、つい先ほどまで我々の大先輩である加藤シヅエ先生、永年表彰も受けられて額も上がっておられる先生ですが、九十五歳を祝う会というのに出ておりまして、楽しいひとときを過ごしてここへ入るのがちょっとおくれて冷や冷やさせたかと思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。加藤シヅエ先生、九十五歳いまだかくしゃく、どうも地球環境の方が先に参ってしまうのではないか、そんな心配をいたしましてというのも変な話ですが、きょうはひとつ、それぞれの地元問題もさることながら、ぐっと大きく地球環境問題について伺ってみたいと思います。  私は、この二月の上旬に実はワシントンで開かれましたGLOBEという会議に出席をしてまいりました。GLOBEというのは、地球環境国際議員連盟、こう言っておりますが、グローバル。レジスレーターズ・オーガナイゼーション・フォー・ア・バランスト・エンバイロンメント、衆議院の同僚議員の小杉隆さん、前環境庁長官愛知和男さん、参議院の方から堂本暁子さん、広中和歌子さんたちと御一緒だったのですが、そこでの議論について二月二十六日に商工委員会でガットと環境問題、それからシベリアでの森林伐採、こんなことについて質問しました。きょうはひとつこの機会にGLOBEで議論になったその他のことについて若干質問をいたします。  このGLOBEの主たる目的は、これはもう有名なことし六月の地球サミットヘの提言を決議をすることでございました。そこで、まず長官に、このブラジルでの地球サミットに臨まれる長官のあるいは日本国政府の基本的な態度あるいは御決意を簡単にで結構ですからお伺いしておきます。
  231. 中村正三郎

    中村国務大臣 もう江田先輩よく御存じのことでありますから簡潔にお答えさせていただきますが、この地球サミット、やはり地球の限界とかいわゆる開発の限界を迎えた地球の中で、人類の生存の基盤である地球環境保全するために、具体的な方策について国際的合意を得ようということを目的とする極めて重要な画期的な会議だと思います。よくもこういう難しい会議が今まで何回もプレップコムを続けてやってきたということだと思います。  ここで討議されます温暖化の問題にいたしましても、いわゆるフロンガスのオゾン層の破壊のことでも、熱帯雨林の減少でも極めて重要なことであります。しかしながら、会議が近づけば近づくほど、総論賛成、各論反対とは申しませんけれども、いろいろな意見が出てきてなかなか大変だ。そして、この中で地球憲章をつくり、そしてまた行動計画、アジェンダ21をつくり、地球環境保全するためにはどうしようかという枠組みの中でもって実際に資金も集め、技術移転を発展途上国にして対策を講じていこうという大変な画期的なことであろうと思います。  でありますから、確かに大変難しいのですが、我が国といたしましては、政府を挙げて具体的な問題を掲げて、例えば地球憲章についてはもう提言をいたしておりますし、森林憲章についても提言をいたしております用地球温暖化というか、いわゆる気候変動枠組み条約と申しておりますけれども、そこには具体的に我が国で持っております十九省庁集まってやりました温暖化防止計画という行動計画というのをもって、二〇〇〇年までに一九九〇年の排出レベルでCO2の発生量を抑えよう。あらゆる具体的なものをもって今やっているのでございますが、大変難しい局面がある。資金の面もしかりであります。しかしながら、これだけやってきた会議、これだけ大きな会議が、今度成功しなかったらまたいつ開かれるのかなということに思いをいたしましたときに、どうしても成功させなければいけない。それの成功に向かって精いっぱいの努力をしていかなければいけない。特に環境問題というのは、日本が激しい公害を経験し克服してきた中で、国際的に協力し貢献するべき一つの大きな柱だと思っておりますので、精いっぱいの協力、努力をして貢献をしていきたいと思っております。
  232. 江田五月

    江田分科員 心強い決意をお伺いをいたしました。今地球環境大変重要なところへ来ておるので、日本は経験もあるし、あるいは世界に対する責任も発言力も大きな国にもなっているわけで、最大限の努力をしていただきたいと思います。  この気候変動枠組み条約、生物学的多様性条約、森林についての合意文書、地球憲章、アジェンダ21、いろいろ難問山積だと思います。その中で、特にこの地球環境問題の財源、モーリス・ストロング事務局長は千二百五十億ドルでしたか、大変な金が要るというようなことも言われたりしておりまして、そういう財源問題について四月中旬には東京で竹下元総理がホストになって地球環境賢人会議が開かれるという。これは日本も単にホストだというだけでなくて、やはり重要な役割を果たさなければならぬ、提案もしていかなければならぬということだと思うのですが、この財源問題の議論の流れと見通し、これもひとつコンパクトにお教えください。
  233. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生御指摘の国際的に必要な資金の確保は、地球環境保全のための最重要課題の一つでございます。地球サミットの準備会合は、これまで三回開催されまして、現在四回目の準備会合をニューヨークで開催している最中でございまして、この問題も議論されているところでございます。  今までの経緯を申し上げますと、第一回及び第二回の準備会合では、先進国、途上国が将来の地球環境資金のあるべき姿について総論的な議論を行ったわけでございます。さらに第三回会合につきましては、事務局から資金源のオプションにつきまして、例えばODAの拡充案、それから自然保護債務スワップなどの債務免除の案、さらには環境税といったようなアイデアが提案されたわけでございますが、資金の管理の仕方についても同時に議論が行われておりますが、何というのですか、資金の性格をニュー・アンド・アディショナル、またニューをつけないとか、資金の性格が補償的な性格を有する、いや、そうじゃなしに国際協力的な性格のものだとか、そういう基本論をめぐってなかなか議論が進まず、資金問題の基本的な枠組みについての検討はそれほど進まなかったというのが実情でございます。  そこで、現在行われている第四回準備会合におきましては、先ほど先生から御指摘になりましたUNCEDの事務局による必要な資金量についての試算等も示されたわけでございまして、ここで引き続きこの資金問題の基本的な枠組みを中心とした検討が行われるものと私どもは期待しているわけでございます。今後第四回の準備会合やさらにまた先生御指摘の四月に東京地球サミット事務局の主催で開かれます地球環境賢人会議を通しまして、この六月サミットに向けて、この問題に関する検討がさらに進むというぐあいに承知しておりまして、私どもはこういった会議に真剣に取り組んでまいるということで今従事しているところでございます。
  234. 江田五月

    江田分科員 地球環境賢人会議ですが、これはUNCEDの全体の議論の中に位置づけられた会議で、そして準備会議の結果出てくる提案について、この地球環境会議でさらにそれを具体化させるためのいろいろな議論をするということなのだろうと思います。そして、その結論がUNCEDに出されていくということだろうと思いますが、竹下さんがホストですから知恵を絞らなければならぬ。私どもは野党の立場ではございますが、やはり小さな頭を一生懸命絞って、いろいろな提案が、ああでもないこうでもないとできるかなと考えているのですが、GLOBEでもフィナンシャルメカニズムというセッションでさまざまな議論や提案が行われました。環境税構想についても積極的な議論もありました。  そこで、きょうはいろいろな方法の一つとして、今ちょっと言われました環境スワップ、デット・フォー・ネーチャー・スワップ、自然保護スワップともいいますが、これをひとつ取り上げてみたいと思います。いろいろなものの中の一つで、この財源問題に果たす役割はべらぼうに大きいというわけじゃないかもしれませんが、しかし小さなものでもたくさん寄せ集めて財源をつくっていかなければいかぬということで、小さいからといって意味がないということにはならないと私は思っているのです。  実は昨年の三月ごろ、環境問題の国際的NGOの一つであるコンサーベーション・インターナショナルという組織のスティーブ・ルービンという人が日本に参りまして、この環境スワップのキャンペーンをされました。私もお会いをして話を聞いて関心を持ったのですが、彼の来日などがきっかけになって我が国でも取り組みが始まった。経団連は最近積極的、環境庁研究会をつくられた。ひとつ環境庁のデット・フォー・ネーチャー・スワップに対する評価と取り組み方について、これも毎度申しわけありませんが、簡単で結構ですので、お教えください。     〔主査退席、佐藤(謙)主査代理着席〕
  235. 加藤三郎

    加藤説明員 先生御指摘の債務と自然環境保護とをスワップするというのは、私どもにとりましても非常に貴重な自然環境保全の一つの方法だと考えておりまして、昨年の六月、私ども環境庁内にスワップに関する研究会を設けておりましたが、その報告を取りまとめまして、それをもとに環境庁といたしましても、この問題に積極的に取り組んでいきたいというふうに思っておるわけでございます。  幸い、これを取りまとめたこの時期に、昨年の七月でございますけれども、日本の都市銀行の一つである銀行がアメリカのWWFと一緒になりまして百万ドル相当のスワップの契約を結ぶということがございまして、我が国のスワップ第一号を実施しておるわけでございます。そのほかに、今先生もお触れになりましたように、経団連あるいは他の都市銀行なども極めて積極的にこの問題に取り組んでおりまして、私どもとしても、こういう取り組みを支援をしながら、さらにこのスワップに関連いたしますいろいろな問題点なども深めていきたいと思っておるところでございます。
  236. 江田五月

    江田分科員 今銀行名をお挙げにならなかったのですが、何か配慮がおありなのか、東京銀行ですよね。心強いことだと思うので、ひとつ大いに奨励をしていただければと思います。  現在までに実施をされたデット・フォー・ネーチャー・スワップのリストを見ますと、例えばスウェーデン政府、オランダ政府、こういう政府がコスタリカに対してスワップを行っている事例がある。これはODA資金から拠出されているということですが、日本のODA予算からも支出を考えてもよいのではないか。これはどういう具体的な仕組みになるかはいろいろあろうかと思いますが、具体的なプロジェクトについて日本のNGOやあるいは海外のNGOに日本のODAから支出をされるという、そういう事例もいろいろあって、一九九〇年のヒューストン・サミットの経済宣言では、「我々は、債務・環境スワップが環境を守る上で有用な役割を果たし得ると認識する。」こう書かれているので、日本のODA予算の活用、外務省、いかがですか。
  237. 小島誠二

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  昨年十二月にOECDの開発環境合同の閣僚会議がございまして、その場におきましてポリシーステートメントというものが採択になったわけでございます。そのポリシーステートメントにおきましても、債務・環境スワップの方法というのは、今後の地球環境問題解決のための資金メカニズムの一つとして有効なものという位置づけがなされておるわけでございまして、私どもそういうものとしてとらえておるわけでございます。私どもも関心を持っておりまして、アメリカ等のNGOといろいろな話を聞く機会を持っておるわけでございます。他方、今のODAのスキームということを申し上げますと、私どものODAのスキームの中では、例えば日本のNGOに直接支援をするというスキームもございます。それからまた当然相手国政府にODAを供与するというスキームもあるわけでございますけれども、いずれも基本といたしますのは、やはり具体的な事業がございまして、それに対してNGOの場合には補助を与える、あるいはODAの場合には資金、技術を供与する、そういう仕組みになっておりまして、今の既存のメカニズムで考えますと、なかなか難しい面があるというのが正直なところでございます。  ただし、途上国が例えば環境基金のもとで特定の事業をやるといった場合に、そういった事業についてODAで、既存のメカニズムで、例えば無償資金協力をやるとか、あるいは技術協力をするとか、そういうやり方は私どもは検討可能だと思います。特に、環境基金の場合には、当然現地国の内価と申しますか、現地国通貨でございますから、やはり外貨で買わなければならない機材とか、そういうものが必要になってくるわけでございまして、そういう部分におきましてODAを使って、いわばパラレルといいましょうか、途上国と一緒になって、二国間のODAを使って協力ができる、そういうことができるのではないかということを私どもは考えております。何分新しい制度でもございますので、私どもとしても少し制度自体を勉強させていただきたいと思っております。
  238. 江田五月

    江田分科員 今の御説明、お答え、実は二つの点が入っておりまして、私の質問があるいは悪かったのかもしれませんが、分けて質問するつもりだったんです。一つは、日本のODA予算を活用して債務国の債務を買い取るという、そちらにODAが使えないか。これを例えば国際的NGOなんかに出すとか、日本のNGOでやるとか、それからそのNGOが途上国でいろんなプロジェクトと関係を持って、これを実施していくというようなことになるのでしょうが、もう一つは、途上国がスワップによって義務を負うといいますか、施行することになる環境保護のさまざまなプロジェクトに対してODA予算を出していく。それがスワップによって生まれたプロジェクトに対してODA、予算を出していくということができるのかどうか、ちょっとかなり複雑ですが、これは別の問題ですよね。その二つの問題を実は伺おうと、――二番目の問題についてもお答えをいただいてしまったわけですが、いろんなやり方がある。  私はもう一つ、今デット・フォー・ネーチャー・スワップは民間の金融機関が持っている債権のみを対象と考えているということですが、これも国その他公的な機関の持っておる債権についても活用していいのではないだろうか。それをやると、まじめに払っている国と怠けている国との間での不公平が起きてくるとかいろんな難しい問題もあると思いますが、そこに一つ、例えばUNEPなどの国際機関に入っていただいて、そしてそこでの調整で、いろんな公的機関の債権についてもスワップの対象にするということも考えられるかな。とにかく賢人会議でいろいろ考えていただかなきゃならぬわけで、こちらもない知恵を絞って考えているんで、当たるも八卦かどうかわかりませんが、ぜひそういうことも考えていただきたい。これは大蔵省関係のことかもしれませんので、ちょっときょうここで質問ということにはいたしませんが、先ほどの日本のODA資金を途上国のプロジェクトに、スワップでやることになったプロジェクトに対して出していくということについては、それは十分そうしたことは検討に値するということでございます。  さきのGLOBEの会議で、私はそのやり方、日本のODAと債務国とそれから債権を買い取るNGO、そういうものとの間に三角関係、トライアングルができるわけで、環境スワップ・トライアングル、そういう提案をいたしまして、これは今後研究していくということがGLOBEのアクション・ジェンダで採択をされておりました。ぜひひとつ積極的に検討していただきたい。スワップというのがインフレの心配があるのだというようなこともあって、そんなこととの関連でもこういう方法があるいは意味があるかなという気がしております。外務省の方からもお答えいただきましたが、今の環境スワップ・トライアングルについて環境庁はいかがですか。
  239. 加藤三郎

    加藤説明員 先ほども申し上げましたように、環境スワップといいますのは一つの非常に有効な方法だということでございますが、最初に行われてからまだ五年程度しかたっていないいわば新しい制度でございます。したがって、まだまだいろいろなことが考えられますし、いろいろな工夫もし得るというふうに思っております。  私どもといたしましては、今先生が御提案になった象につきましても、その有効性といったようなことにつきまして十分に検討してまいりたいというふうに思っております。
  240. 江田五月

    江田分科員 外務省にもう一つ伺っておきたいと思います。  昨年四月に当時の海部内閣総理大臣がいわゆるODA四原則というものを表明された。これは援助対象国の軍事支出、武器の製造、輸出、市場経済と人権、民主主義などの状況、そういうものを考慮してODAを実施していく、そういう原則ですが、私はこれは画期的な意思表示だったと高く評価をしているわけです。  ところが一つ残念なのは、このODAの原則の中に環境保全という原則が入っていない。私は軍事支出、武器の製造、輸出、市場経済とか人権、民主主義、そして五つ目に環境原則というものを入れてODA五原則にするべきだと思います。今ODAについていろいろと批判が出ておりまして、それはODAというものがいけないというのじゃなくて、ODAはいい、いいと言われるけれども、実は、こういう醜い面、こういう悲しい面、いろいろあるのですよ。それをひとつ注意してほしいということなのですが、そうした中に、ODAで開発をする、しかしその開発環境を害するということになっている事例があるじゃないかということも言われているわけで、ぜひ環境原則も含めていただきたいと思いますが、いかがですか。
  241. 中村正三郎

    中村国務大臣 ODAに環境原則を含めるということでありますが、この間、実はODAの関係閣僚会議が開かれまして、そこでもすべてのODAに持続可能な開発という理念を織り込まなければいけないということを私の方から発言をさせていただきました。そして二つあると思うのですね。一つは、すべてのODAにそうした理念を入れていくということと、環境をその目的とするODAと二つあるわけですね。そこで、非常に難しい問題があるのですが、今までのODAのやり方というのは、主に要求ベース、頼まれてやるということが多かった。人道的なことだとか、自助努力をあれするとか、いろいろなことがありますけれども、こういう時代になって、UNCEDで発展途上国にやっていただかなければならないことはこういうことだということを決めて、枠組みをつくってやっていこうということになると、それでは済まなくなると思うのです。ところが先生おわかりのように、例えば脱硝装置をつけてくださいと言ったところが、そんなお金くれるなら橋つくってくださいと言う方がいるかもしれない。わかりませんよ、これは想像で申し上げるのですけれども。そういう中でやっていかなければいけないのですから、きのう実はGEFの事務局長とずっと話をしていたのですが、私と意見は同じでして、やはりUNEPなりなんなりの組織を強化して、きちっと発展途上国にやっていただきたいのはこういうことだ、そこをIDAでこうやって、GEFでどうやって、ODAでどうやるということをきちっと決めていかなければならないなということを話し合っていたわけでありまして、そういった枠組みをつくった中で日本はどうあるべきかということを考えていかなければいけない、そんなことを考えております。
  242. 小島誠二

    ○小島説明員 御指摘のとおり、援助、ODAを実施するに当たりまして、環境に与える影響というものを十分配慮するというのは非常に重要なことでございまして、私どもといたしましては、昨年発表しました四指針といいますか四原則、これと同様に重要な我が国経済協力基本方針というふうに考えております。この点については、ロンドン・サミットでもあるいはアルシュ・サミットでも、この考え方に基づいて日本の考え方を申し述べたところでございまして、今後はガイドライン等さらに拡充いたしまして、この方針を十分に貫いていくということをやっていきたいと思っております。
  243. 江田五月

    江田分科員 大変心強いお返事をいただきましてありがたいと思います。要請ベースだったということはそのとおりなのですが、しかし、今世界も新しい秩序に入ってきて、例えば四原則つくったのも、日本としては、戦争のないあるいは人権や民主主義が守られるそういう世界をつくりたい、そういう世界になっていきたいという一種のメッセージ、青写真に基づいて日本としての努力をしていくのだということのあらわれだと思いますので、そうしますと、環境問題はUNCEDで議論されるように、それぞれの主権国家が勝手なことをやっていいという時代はもう過ぎているわけですから、これは内政干渉とかいろいろあるだろうけれども、そこは息長く、粘り強く話し合いをしながら、みんなの了解、国際的コンセンサスをつくりながら、そうした環境原則というものもODAの中にぜひ含めていただきたいと思います。  最後に、環境アセスメント法について伺いたいのですが、ただいま申し上げたように、これも皆さん当然おわかりのことなのですが、地球環境を守っていくというのは、いや、自分のところは主権国家だから主権の行使に関する限り何をやっても勝手だというわけにいかない世界共通の課題だと思います。そして地球規模環境問題に関する懇談会、これはどこでおつくりになったのかちょっと後でお教えいただきたいと思いますが、環境庁長官が諮問する懇談会ですか、この中で、「個人、団体及び国家の一般的原則」というので、「国境を越える環境影響に対する責務」これは第一章の第四というところ、ここには「国境を越えて影響を及ぼすおそれのある活動の企画に際して、事前に、環境アセスメント実施するとともに、速やかに関係国に情報を提供しなければならない。」日本がこういうことをすべきだということを建議されている、「国際的なルール化に努める必要がある。」こういうことも書いているわけですが、私は、そうだ、そのとおりだ、しかし同時に、国境を越える環境影響を与えるようなプロジェクトについては環境アセスメントをやらなければいけない。  国内だって同じことだと思うのですね。環境アセスメント法、そういう環境影響を与えるおそれのあるような大きなプロジェクトを実施するときには、必ず環境アセスメントをやりましょう。まずそれは原則ですよということを国内の場合にもやるべきだと思います。最近、橋本龍太郎前大蔵大臣を中心にして環境基本問題懇談会、これは自民党の中ですか、できたりして、そういうところでもいろいろな議論が行われているようで大変心強いことでございます。そして環境アセスメント法というのは、政府の中でもこれまでいろいろ議論になって、その都度、どうも残念ながら挫折をしてきた経過がありますが、ぜひ中村環境庁長官のもとで環境アセスメント法制定に向けての努力をお願いしたいと思うのですが、最後に長官にその決意を伺います。
  244. 中村正三郎

    中村国務大臣 アセスメント法については、私は深い思いがございます。と申しますのは、今委員指摘でしたけれども、政府の中で論議をされたと申されましたが、実は国会に提出をされました。それが廃案になったときの私は環境委員会の自民党の責任者であります。廃案になったその状況をよく知っております。当時は、簡単に言えば環境アセスメントをやることについての御理解がなかなか得られなかった、いろいろな御懸念が出てきた。これは自民党ばかりではありません。野党の一部の方からも御懸念があった。そこで理解が得られないままに審議未了、廃案ということになりました。でありますから、その後これを閣議決定のアセスメントということでやりまして、いろいろ地方自治体の方もそれなりの条例を設けられたり、いろいろやってまいりました。でありますから、私どもは、このアセスソントということがやはり国の中に定着するということ、そして円滑に実施されるということに力を注いできたわけでありまして、今やそのアセスメントというのは当然のこととして行われるようになってきた、御理解が得られてきた時代だと思います。  そこで、やはりこういったものの法制化というのはやらなきゃいけない問題だと思いますが、当時と状況が変わったのは、地球化時代環境問題でありますから、サミットで地球憲章もつくられることになっております。何人も地球にいる人間環境を守る義務があるんだというところから発しなきゃいけない。そこで国境を越えることもいろいろ出てこようと思いますし、それに対応して日本でもやはり環境基本法みたいなものをつくらなければいけない。そうした中に公害防止だとかアセスメントだとかいろいろなものがついていくという法体系を考えなければいけない。そういうことを今各種の諮問機関にも諮問しておりますし、私どもも勉強しておりますし、そうした法体系の全体を見直す中で、地球化時代環境に対応できるような、そうした法制について努力をしてまいりたいと思っております。
  245. 江田五月

    江田分科員 終わります。どうもありがとうでざいました。
  246. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 これにて江田五月君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、総理府所管環境庁についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  247. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 次に、農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。真鍋光広君。
  248. 真鍋光広

    真鍋分科員 組織体というものは、時代の変化に即応して初めて存続が可能となるというものでございます。農協を取り巻く環境は大きく変動いたしております。そしてまた、こういった事態の変化に対応して即応すべく、農林水産省を初めとしまして関係者の皆様が大変御苦労され、真剣に御検討され、そしてその成果が法律改正に結びつけられる、さらにまた実行に移されていくということでございまして、その御努力に対しまして、まず初めに心から敬意を表するわけでございます。  いかなる手を打ってまいりましょうと、農協制度が厳しい試練のさなかにあるということには変わりはないわけでございまして、農協運営のあり方につきましてこれから少しく政府のお考えをただしていきたい、このように思うわけでございます。  まず、何といいましても、置かれた環境が随分変化してまいったということでございます。農協制度の基盤となる農村、農業といった面におきまして、例えば、担い手の減少であるとか、過疎化、高齢化の進行、さらにまた混住化や兼業化の進展、こういったことが指摘されておるわけでございます。また一方で、農協の事業を支えておる基盤構造というものも急速に変化が迫られておるというふうに私は認識をいたしておるわけでございます。  その第一が、食管体制というのでしょうか食管事業方式というのでしょうか、つまり、国の食管法のもとで、農協が米の代金を代理受領し、独占的に集荷代行するため、その売却代金がいわば自動的に農協の組合員の貯金口座に振り込まれるという仕組みの上に農協の事業の仕組みが構築されておるわけでございますが、これらは今国際化を迫られており、そしてまた自主流通米市場といいますか、そういうことの面におきましても変革が迫られておるわけでございます。  また第二に、これは大蔵省の行政になってまいりますけれども、いわゆる金融護送船団の行政方針が大きく転換いたして、金融自由化に向かって本当に劇的な転換を進めておる。そしてまたこの国会にやがて金融制度改革に係る法律案が出てまいるわけでございます。これらが農協の経営に対して大変大きな影響を与えるわけでございます。  第三は、いわゆる連合会整備促進法のもとでの整促七原則というのがありまして、これによりまして事業連の事業から赤字が出ないようにという仕組みを構築しておるわけでございますが、これまた予約注文、無条件委託、全利用など厳しい目で各方面から見られておるという状況にあるわけでございます。  さらにまた、農協制度の組織原理である協同組合の理念に関しましても、その基盤が喪失しつつあるのではないかというふうな気持ちがいたしておるわけでございます。といいますのは、農協は当然のことながら村社会の伝統的な仕組みの上にまず初めに成り立っておったはずでございます。いわば用水路の補修であるとかあるいは田植え、稲刈り、冠婚葬祭、すべて村社会の伝統、お互いに協力し合ってやっていくというこの伝統の上に、助け合い、支え合いの伝統の上に経営の基盤を置いていたわけでございますが、今や用水路の補修は地方公共団体、国がやる公共事業となり、田植え、稲刈りは機械化でそんなに助けは要らぬ、冠婚葬察は冠婚葬祭屋がしっかりやる、こういうことでございまして、そういった意味合いでは、今や村八分が怖くない、村八分がなくなった時代、こういうことでございます。それは言いかえれば、場合によれば農協はもうなくてもいい時代に入ってきた、こういうことさえ、嫌な言い方をすればなるわけでございます。  農協の組合員意向調査によりましたら、こういう質問をしておるのですね。農協は組合員のために仕事をしていると思いますかという質問に対しまして、六〇から八〇%ぐらいの方が、農協のために仕事をしておるんだ。組合員のためとは答えてないのですね。質問は、組合員のためにやっていますか。答えの方は、その六割から八割が農協のためにやっています、こういう話をしておるわけでございます。  新しい時代に果敢に対応して、この協同組合、日本の農村社会の貴重な財産組織である農協制度を大いに伸ばしていくためには、ここでやはり時代認識といいますか、環境認識というものをしっかり詰めていかなきゃいかぬと思うわけでございますが、このあたりの点につきまして一言お答えいただければありがたいと思います。
  249. 川合淳二

    ○川合政府委員 今先生御指摘のように、戦後農協組織が新しくつくられた時代と現在とでは非常に大きな環境的な違いがあるわけでございます。しかも、その環境的な違いが地域によってまた非常に多様化しているということも一つ特徴であろうかと思っております。そうした中で、ともすれば、今まさに御指摘がありました農協に対する批判として、果たして組合員の本当のニーズと申しますか、これを受けとめて、その事業運営をやっているかということについての厳しい批判があるということも、私ども承知しているところでございまして、新しい時代の動き、先生今お触れになった金融の一つの流れということをとらえましても、農協の環境は厳しいわけでございます。  そうした中で、また農業、農村を取り巻く変化の中で、農協がどういうふうにそうした期待にこたえていくかというのを改めて問い直してみる時期ではないかということを私どもも感じているわけでございます。
  250. 真鍋光広

    真鍋分科員 そこで、農協制度のいわば基盤が変動してきておるというのを端的に示す姿が准組合員の推移であろう、こう思うわけでございます。  農水省の統計を拝見いたしておりますと、総合農協の平均でございますけれども、准組合員のすべての組合員の中での構成割合は、昭和五十年に二五%、六十年には三一%、平成元年には三五%ということで、逐年割合が増加してまいっておるわけでございます。そういう中で、私は、農協というのは地域に密着した存在、農村社会に一体となったものであるだけに、これを平均の姿で見ることはできないと思います。先ほど局長がお答えになられたように、農協というのは地域によって多様化してまいっておるということをおっしゃられました。そういう中で、これは平均ではちょっとよくわかりませんので、中山間、平場農村、都市近郊、このような三つに分けて、それぞれ大体の姿でいいのですけれども、准組合員というのはどうなっておるのかを伺いたいと思うわけでございます。  といいますのは、農協はかつて、総合農協ですが、一万二千ぐらいあったのが、今は三千五百七十四までいっています。しかし、これとても全国一の市町村の数より多いわけでございまして、それだけに、いわば日本全土、すべての地域をカバーしておる。それは過去四十年にわたる日本の国土の大きな変化をそのまま農協が各地域において受けておるわけでございますので、ひとつ地域に分けて、一准組合員の構成、その推移というものをお示しいただければありがたいと思います。
  251. 川合淳二

    ○川合政府委員 総合農協の統計によりますと、今先生お触れいただきましたけれども、中山間と、いわゆる純農村といいますか平場地帯と、都市近郊と分けた統計がございますが、准組合員の比率で申しますと、山村、これは漁村も入っているわけでございますが、三五%平均に対しまして二七%、都市的な農村地域が四六%、純農村地帯が二二%ということでございます。特に都市的な農村地帯では、この割合が伸びつつあるということでございます。
  252. 真鍋光広

    真鍋分科員 准組合員をどういうふうに見るかというのは非常に難しいと思うわけでございます。またいろいろな報告の中でも、両様の考え方があるのだということは指摘されております。  ただ私は、やはり准組合員といえども、准組合員を入れるのは、結局組織のために必要であったから入っていただいたということであり、組織がうまくいくということは、ひいては正組合員の利益になっていくということでございます。大事なのは、要するに地域というものが守られておるというところが大事であって、准組合員、何かちょっと本来の協同組合の精神に反するのだと余りきつく考えていっては組織が死んでしまう。生きた組織というのは、生きるためにみずからの中へ取り入れていくわけでございます。これを何となく役所の上あるいは連合会の上の方から見て、イズムに押されて、理念はこうなんだということで余りあれしては、大体農協というのは地域密着て、地域で生きる道を探していく。それで単独で生きるということは地域の利益でありますから、そういう意味では、ぜひひとつこのあたりについても、地域地域の実態に見合ったきめの細かな行政といいますか、指導をよろしくお願いしたい、このように思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  253. 川合淳二

    ○川合政府委員 農協の性格と申しますか機能につきましては、今先生まさにお触れいただきましたように、二つの大きな考え方があると思います。  一つは、職能的と申しますか、農業者を中心として協同組合として機能すべきだという意見と、農村地域と申しますか、地域としての協同組合として機能すべきだという二つの意見が、ある意味では古くて新しい問題としてあるわけでございますけれども、私どもこれはどちらというふうに決して決めるわけにはいかない。  と申しますのは、これも今まさに先生お触れの点でございますが、地域状況がそれぞれ異なりますものですから、そこの地域によってこの協同組合に期待される機能というものは違うわけでございますので、決して協同組合という、組合員が原点であるという精神はもちろん必要でございますけれども、その中にあって、やはり地域の実情をどうとらえていくかというところに重点を置いて見ていかなければいけないのではないかと思っております。
  254. 真鍋光広

    真鍋分科員 といいますのは、地域の方を非常に言いますのは、例えば平場のように准組合員が二二%程度というところは、そういった意味では純農村地帯で残っておるわけですから、これは変革は必要がないわけですね。准組合員が大きく膨れているところこそが変化をしていかなければ生き延びていけないというところにあると思うわけでございます。  そういう中で、農協経営の中身を見てみましたら、信用事業、共済事業というものに大きく経営が負担を負っておる。つまりそこに依存しておるということがわかるわけでございます。同じ資料によりますれば、約三百の総合農協の平均だということでございますけれども、平成元年の姿で、純損益というものは一億二千八百万、そのうち信用事業で一億三千万、共済事業で七千八百万プラスであり、残りの購買、販売、倉庫、その他というのは軒並み赤字に総平均ではなっておるわけでございます。こういう中で、恐らくこの収益、信用部門なんかのあれというのは、かなり都市近郊が特に比重が高いのではないかと思うわけでございます。そのあたり、これまた中山間と平場と都市近郊に分けて、一体どんな数字になっておるのか教えていただけませんか。
  255. 川合淳二

    ○川合政府委員 山村地域で申しますと、総収益が二千四百万、信用部門が三千七百万、共済部門が三千五百万ということでございます。やはり総収益自体も小さいわけでございますが、これは一つは、こうした地域では農協の組織自体が小さいということもあろうかと思います。  それから、まさに都市的な地域に近いところ、都市近郊におきましては、総収益で一億七千五百万、信用部門で申しますと一億七千六百万、共済部門が九千三百万ということですので、こちらにおきましては、信用部門、共済部門のウエートが非常に高い、また総収益も大きいということが言えるかと思います。  それから、その中間の地帯であります平場地帯、水田地域でございますが、総収益で申しますと八千八百万、信用部門で八千二百万、共済部門で申しますと六千七百万というような、先生御指摘のように、非常に典型的な数字になっております。
  256. 真鍋光広

    真鍋分科員 実は、今から申し上げたいことは、販売事業その他の赤字になっておる分野について少しお話を進めたいと思うわけです。  といいますのは、本当の赤字というのは、やはりきちんと赤字額を決めていかないと、共益部分というか共通経費分というものを、何となくこの際は主がこれだからぼんと置いてしまうと、これは非常に難しい。こういうあれが不公平といいますか割り振りに問題があるから、おれは赤でもこれは知らないんだ、こういう話になってしまいますと、これはやはり厳しい経営というのは成り立たないと思うのです。  そこで、問題とされておる点というものを申し上げますので、これについてどうお考えなのか、お話しさせていただきたいと思います。  一つは、指導事業の話は、この割り振りはよくわかります。それとても本当にどこがどこだという話は、私は何となく見ておってああそうなのかな、よくわからないな、何か総務的なものをふわっと置いておるのかな、こんな感じもしたりしてよくわからぬわけですけれども、販売事業についての損益でございますが、農業主業地帯の農協では、最も大きな吸収資金といいますか、資金の吸収の仕方というのは通常は販売代金であるということでございます。本来は販売事業部門の吸収資金であるのに、これが信用事業部門の吸収資金になってしまうんだという物の考え方があるわけです。割り振りが不公平じゃないか。しかも、次の集荷資金については、販売事業部門が信用事業部門から内部資金を借り入れて、それに利子をつけるというようなことをやっておるんで、本来であれば、販売事業部門が独立てあったら、その金が残って、それをまた自分のものじゃないけれども、蓄積資金として出せるのに、信用事業部門に利子を払ってやっておる、これは不公平じゃないかというふうな言い方もありますし、それから余裕金も結局各事業部門のが一体になってプールされておる。それがすべて信用事業部門のプラスになって入っておるということも言われています。  また、本所、支所の固定資産費の負担割合につきましても、信用事業部門がほとんどとは言いませんがハそれがでんと中でおるにもかかわらず経済事業を各部門に割り振っておって、そっちの方が重くなっておるんじゃないか、こういう指摘もありまして、私は真実かどうかよくわかりませんけれども、このあたりやはりこういう表で出すのはこれでいいと思うのですが、実際の経営という観点からは、そのあたりかなり厳しく見ていかないと、おれのところは赤字だ、しかしこの赤字は信用事業部門の黒で出ておるんだから別にとやかく言われる覚えがない、こういう姿勢になっては経営体というものは全体としてそこから崩れていく、このように思いますので、そのあたりについての御印象やら何かあればお聞かせください。
  257. 川合淳二

    ○川合政府委員 この問題はやはり二つの面があると思います。一つは、やはり信用事業、共済事業が収益の高い部門ということでそちらに依存しておる、そういう基盤といいますか構造基盤の問題が一つと、それからもう一つ、いわゆる組合員の農業と直結していると申しますか、経済事業、販売事業、購買事業でございますけれども、その部門につきましては、どうしても採算を度外視と言うとちょっとおかしいのですが、今先生まさにおっしゃられた、例えばアロケーションなどの分野で、そこにどうしてもしわ寄せをするというようなことがあろうかと思います。  しかしながら、やはり経営の原点というのは、それぞれの事業が損益計算でどうなっているかということを正確にとらえるということが、今御指摘がございましたように非常に大事でございますので、私どもの指導といたしましては、部門別の損益計算というものを正確にやるということを一つの指導の中心に据えております。なかなか難しい点ではございますが、やはりここが原点で経営の分析なりなんなりが進んでくるわけでございますので、この徹底を図りたいということを考えておるわけでございます。
  258. 真鍋光広

    真鍋分科員 次に、農協の役員が場合によって少し多過ぎるんじゃないかなという気がいたしておるわけです。とりわけこれから金融の分野で生き延びていかざるを得ぬというようなことであれば、ますますそこがひょっとすると負担になってまいるのかな、今まで問題が少なかったのは預賃率が極めて低いという結果に救われておったんじゃないかなという気がいたしますので、その点につきまして少しくお尋ねしてみたいと思うわけでございます。  統計を拝見しますと、総合農協の一組合当たりの職員数は八十人という数字が出ております。一方で、常勤理事、非常勤理事、監事を合わせた役員の合計は一農協当たり十九・二人という数字が出ております。一方で、常勤理事の方はまた一・四と余りに少ないのでございますけれども、そのようになっておるということでございます。結局、金融というのは情実と一番合わないのですね。情実は一番困るのですね。ところが、協同組合の理念というのはまさしく地縁、血縁、情そのものといいますか、そこから共同してやっていこう、こういうことでございます。だからこそ役員の数も多い。全員参加、みんなの参加、こういうことで、これは非常によくわかるわけでございます。しかし一方で、預貸率が今四割とか二割とか低いからこれでいけるわけであって、これから預賃率をどんどん上げていきましょう、そういうことも、それが適切な農協につきましてはやったらどうだ、こんな方向もある程度出ておるようでございますけれども、問題が起こってくることがあるのじゃないかな、こんな心配をいたしておりまして、このあたりのことについてひとつぜひ御注意をいただきたいがな、こんな気持ちがいたすわけでございます。これについて一言。
  259. 川合淳二

    ○川合政府委員 御承知のように、農協は数次にわたって合併を進めてきております。そうした過程で農協の規模も大きくなっているわけでございますが、そういうことを考えますと、役員の数はまあまあ横ばい、若干微増かという感じに今なっております。ただ、まさに先生御指摘のように、これから効率化、合理化ということが、競争が激しくなる環境にありますので、求められている中にありまして、言葉がちょっと悪いかもわかりませんが、本当に組合のためにな、る役員という、ある意味では常勤役員が少ないというふうにお触れになりましたが、そういう人こそ求められる、数ではなく質だということだろうと思っております。  そういう観点から、農協自身、系統組織自身も、農協の効率化、合理化ということで再編を進めようということを決めておりますので、私どもそうしたことを十分支援していきたいと思っております。先生御承知のように、私ども、農協法の改正を検討しているわけでございますが、その中でやはりその問題、組織、経営管理体制というものを一番今回の改正の主眼に置いて進めていきたいと思っております。
  260. 真鍋光広

    真鍋分科員 これは蛇足になりますけれども、一言だけここで申し上げておきます。  この間も総理に申し上げたのですけれども、今バブルは終息に向かっておるというふうに考えたらおかしいのじゃないですか、物によっては今拡散中ですよということを申し上げております。といいますのは、私が実際に見聞きしておる、地上げ屋さんとは言いませんけれども、不動産関係、大都会でやっておる方々、これがノンバンクから直接金融を受けているのですけれども、そのもとは銀行ですから、銀行がとめる、ノンバンクも大蔵省から調査を受けると報告上困るからもう金が出せない、そこでとりあえずノンバンクに金利を支払っている。そこでやはり農協に目をつけるのですね。この間九州の農協から四億、四国の私の県じゃないのですけれども、四国から三億、こんなので足りぬから農中からひとつぼかんと貸してくれぬか、こんな話があるぐらいでございまして、農協の単位は小さいわけですから、なかなか目も届かないし大変だとは思いますが、ひとつそのあたり、貸し付けという問題は、本体が傷んでおっても、利息が返ってくればなかなかわかりやせぬのですね。本体が傷むと全部パアになってしまう、これが普通のケースでございまして、ひとつぜひ厳しい目で、なかなか難しいのですけれども、緊張した気持ちで御指導賜るようにお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、もう一つ申し上げたいのは、結局農協の調達資金も、貯金も自由金利型の貯金が猛烈に比率が上がってきておりますね。例えば昭和六十三年には組織全体、農協全体として八・七%ぐらいが自由金利型貯金であったのが、八・七から元年に二四・九、二年には四七・八とすごい勢いでふえてきておるわけでございます。これは要するに、この利益の部分をほかの事業部門、とりわけいわゆを一番大事な本質的な事業だという指導事業部門に配賦さえしていかなければいかぬ。この分は競争相手の金融機関との関係でそれだけ不利な立場にあるということでございまして、このあたりのこともぜひひとつよく考えて、先ほど来言っています。その他の赤字の事業部門についてはやはり、理念から出てこれはやるべきだ、それはそうなんですけれども、そのあたりのところはやはり組織が生きていくことが大事なんだ、農民のため、地域のために大事なんだ、この点はひとつやはりそういうことで考えていっていただかなければいかぬ、このように思うわけでございます。  そこで、最後に大臣にひとつお伺いいたしたいわけでございますが、お米の問題から始まってとにかく大変に大切な、いわば日本人の心のよりどころを所管しておられて本当に毎日御苦労しておられるわけでございまして、また、農協制度につきましても大変に御尽力の跡が私ども見受けられるわけでございまして、感謝をいたしておるわけでございます。そこで、大臣から農協のあすの姿というものについてひとつ抱負なり決意を語っていただければありがたいと思います。
  261. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 農協に対する多くの批判というものは私もわかっておりますし、企業は人なりということでありまして、私の身近な農協でも組合長のポスト争いとかそういうことが非常に多いわけであります。もうかっている部分というのは余りない、信用と共済部門で。金融の自由化になったら一体どうなるんだろう。これがおかしくなったら農業経営というのはおかしくなってくる。しかし、農家にとっては大事な組合であります。  ですから、この営農と生活を基本としたものをやはりきちっとやる。そしてその上でその地域に合った多様なニーズにこたえることをやっていくんだ。どこかがやっていると私もやるということだけではなくて、商売は専門家に任す部分はもう任す、自分たちでどうしてもやらなければならぬものはやっていくということが必要でありますし、先生お話しのように、その部分はやはり真剣になってやらなければいかぬというのと、従来からやはり経営感覚にすぐれた人を外から入れなければだめだ、こういうことをもう何年も主張してまいりました。今度も農業が経営感覚あるいは企業感覚、経営管理能力、そういう若い人を育てようというときでありますから、農協自体も、営農も大事でありますが、これからの農業は、やはりもうかる農業ということになると、経営管理をきちっとしてやるという人がおっていいのではないかということを考えて、いずれにしても農協が組合のニーズにこたえる、そして農業振興や活性化に十分な役割を果たす、その体制を真剣にやはりつくって健全な経営をやっていくということに私どもも全力を挙げたい、とう思っております。
  262. 真鍋光広

    真鍋分科員 御期待申し上げております。  終わります。
  263. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 これにて真鍋光広君の質疑は終了いたしました。  次に、北沢清功君。
  264. 北沢清功

    北沢分科員 私は、ウルグアイ・ラウンドの世論形成というか、そういう面で冒頭特にお尋ねをいたしたいと思うわけです。  私は実は長野県の安曇野というところで、水田の、長野県のウクライナと言われる比較的恵まれたところでございます。そんなことで、実はいろいろと米の自由化を中心として昨年一年大変な論議をし、このことは、ただ単に農家の皆さんばかりではなくて、国民の皆さんのやはり関心も非常に高い問題であります。ちょうど私は、十二月の十幾日ですか、今から三カ月前ですが、宿舎に帰りましてたまたま九時からテレビを見ておりました。そのことは私は精神論で申しませんが、その内容はここに実はビデオをとってきてございます。そのことはいわゆる「対決シミュレーション米」ということで、東大の森島教授と青学の速水教授の論争が乗りました。その中ではいろいろと論議がされたけれども、共通していることは、米の自由化というものは相当数の農家の激減につながるのではないかということでは一致をしておりました。  このことは、後で私は農業の規模論ということで時間があれば御質問いたしたいと思うのですが、その番組の後に実は三十分番組でルポルタージュというか、「イノシシのいる村」というのが劇的に、特にローカルの放送局で特集としてつくられまして、これは島根県であろうと思いますが、お年寄りの七十幾つの夫妻が、山村の中で自分のつくっている三、四十アールぐらいだと思いますが、それを守るために、毎年毎年イノシシに収穫前に食われる、それをどうか防ぎたいということで一生懸命闘っている姿であります。そのことは、もう息子さんたちはずうっと都会へ出ていますから、老夫婦の方が本当に自分の一生の生きがいというものを、自分の仕事を守ろうという姿、そしてその夫妻も、もうあすにも体が弱るんじゃないかというときに木を育てているという。これはこれからの時代に木をつくっておこうという願いであろうと思いますが、そういう中で、やはり自分の力でそのイノシシのさくをこさえることができないわけですが、自分なりに努力をしまして村にも補助金をお願いしたけれども、なかなか補助金がもらえない。材料だけは最後には村の皆さんから認めていただいて、二人でもって金づちでさくを打って、針金で締めるという姿を私は見まして、これは日本農業の、特に最近の中山村地域における一つの大きな姿であろうというふうに私は思っております。  そういう番組の後、いわゆる作家とも評論家とも言われる方がウルグアイ・ラウンドの問題を解説をしておりまして、その内容たるや、これまたもう日本は自由化をしなきゃいけないんだ、そういう主張の中で全く工業と農業というものを同一視をして、ずうっと工業の例を挙げながら説明をされておりました。  私は、この三つの一連のたった一時間ぐらいの番組なんですが、そのことの中に今日の姿があるのではないかという思いをいたしております。一遍も米をつくったことのない人、または本だけを読んで、知識として農村の現状というものを、中核農家が今やどんどん減っているのですね。これはもう疲れているのです。規模は、これから新農政の展開がされるわけでありますが、そういう中で、ここ十年間というもの、決して、権利としての農地の取得はあっても、いわゆる農地の移動というものは、流動化ということはなかなか集約をされない。むしろ横並びの形をとっておりますから、これは明らかに規模論においては現状は昔のまま余りふえておらぬ。畜産は選択的拡大ですから、私も畜産は日本的にも相当大きくやった経験を持っていますから知っていますが、これは農家としてふえておりますが、今言った米の問題を中心とした世論形成というもの、そういうものが大きくマスコミの力によってされるということ、そしてそのことによって世論調査をするということ。だから、真の農業の姿、これからの農業の姿というものが、やはり農村に生きる者としては、もう全く憤りというか、ある面では減反以上にショックとして、あきらめという形に移行しているのではないかと思うわけであります。  そういう中で、いわゆるその時期に一番彼らが主張したことは何かというと、米の規模を二十町歩にすればいいのだということを主張しておりますね。これはまさに夢物語なのですね、現状では。五年後には米価を半分の値段にする、八千幾らですか、それから十年後には四分の一にするのだ。これはタイの国のように日本の労賃の十分の一、一日六百円という形や、またアメリカのように非常に大きな広大な土地を持っている経営の中でも、既に工業生産的な農業というものは土壌の流失というような形でむしろ破綻をしているのです。そういう中で、いわゆるアメリカそのものもやはり家族労働的な経営にもなっていますし、フランスも私はそういうふうに理解をしております。  そういうようなことで、今言った空想論というか、ありもしないことや、また農業そのものの持っている特質、それから農業に働く皆さんの気持ちというものを無視した国政というものがされるならば、私はとんでもないことになるのではないかというふうに思っております。  たまたま農水大臣、前の山本農水大臣もしばしば農水委員会でも、私の言わんとすることは伝わらない、どこから来るかわからぬようなことが記事になっているのだということを言われております。その時期は、ちょうど日本にドンケル・ペーパーの、あの期限の前に決断を迫るということですね。  だから、今のウルグアイ・ラウンドの現状とは違う前に日本が態度を決定をしなければいけないということですから、これは今日のこのウルグアイ・ラウンドでの交渉の経過というものを見ると、そのことが果たして正しい主張であったか。例外なき関税化と言われているが、やはりそういう意味ではもっと例外のあるウルグアイ・ラウンドというものが認められてもいいのではないか、私はそういうふうに感じておりますので、これを中心として、いわゆる農水省でもマスコミに対しては一定の態度を表明したと思いますが、今言われるように、このマスコミの報道されております日本責任論について農水大臣としてどういうふうにお考えになるか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  265. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 国内にもいろいろな考えの方がおりまして、自由化した方がいいという人あるいは一部の自由化という人もあれば、ざまざまあるわけであります。  日本責任論ということは、いつまでも日本が反対ということでは、よその国がそうでない方向を出しておるというときに、そのおかげでウルグアイ・ラウンドが成功しなかったということでの責任論、こういうことが言われているわけでありますが、しかし私どもは、基礎的食糧たる米あるいはこの十一条二項(c)対象品目たる乳製品等については包括関税化の対象外とすべきだということで、ダンケル合意案の修正を実は求めているわけであります。したがって、この考え方を踏まえて、これらの品目の関税相当量等については、この間総理と外務大臣と私と官房長官で国別約束表に記載をしないということで実はやっておりますが、これをもって日本の責任だということは私は当たらないだろう。  例えば、ECがダンケル合意案の削減数値等に関する約束数値を提示していないほか、カナダも十一条二項(c)では対象品目であります乳製品等について関税相当量を記載しない。言ってみれば、多くの国は、それぞれの自分の国の考え方に基づいてこれを提出していると思うのです。したがって、これからどういう交渉事が行われるかはわかりませんが、各国全部そろったところでいろいろ」の議論をされていくということで、日本責任論ということは、その国の事情事情があってのことでありますから、それだけをもってさっき申し上げたような批判というものは決して当たらない、私はこういうふうに考えております。
  266. 北沢清功

    北沢分科員 今大臣から考え方についてお話がございましたように、やはり日本農業を守るということ、例えば企業原理といっても、じゃあるときはよかったけれども、私も戦争中そういう経験はありますが、ないときは、企業原理でやったら一体どんな結果になるかということは、これは持てる者は食べられても持てない者は買えないということになるわけですから、ぜひそういう意味で、日本農業を守るという形においても今の考え方というものを国際的によく主張をしていただきたい、そして日本農業を守っていただきたいということを強く要請をいたしたいと思うわけでございます。  幾つかございますが、あと一連の同和地区の農家、いわゆる部落農家についてのお尋ねをいたしたいと思います。  従来同和対策事業の中で、唯一農業の分野の指導育成対策を担っておりました営農指導員の制度が徐々に縮小されてきまして、一般的な改良普及に任務が移行しつつあるのが現状であるというふうに私は理解をしておりますが、それでよろしいかどうかということをお尋ねをいたしたいと思います。
  267. 上野博史

    ○上野政府委員 同和地区への普及事業の取り組みに当たりましては、関係府県の農業改良普及所におきまして、関係農家に対する普及指導活動の窓口相談員を設けているわけでございます。そして、関係農家からの要請に基づく技術や経営指導あるいは研修会の開催、農業経営に必要な各種の情報等の提供を行ってまいっております。また、地域におきます重要課題等につきましては、普及指導計画に盛り込みまして、計画的に濃密な指導を実施してまいっているところでございます。  同和地区におきます農業の振興を図るために、今後とも農業改良普及所の窓口相談員を中心にいたしまして、生産組織のリーダー等との接触を密にしながら関係農家のニーズの把握等に努めてまいりたい。その際には、関係機関、団体との連携も強化し高度な技術、経営等に関する普及指導活動をより一層強化してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  268. 北沢清功

    北沢分科員 そこで、次に部落農家の実態についてどのように把握をされておるか伺いたいのですが、例えば五年ごとの農業センサスの結果についてはどのようにお考えでしょうか。一般農家と比較して、また一九九〇年に最近のものとしてセンサスが出ておりますが、その五年前のものと比較をされていかなる現状認識をされておいてか、お尋ねをいたしたいと思います。
  269. 海野研一

    ○海野政府委員 五年前に比べますと経営規模はわずかながら大きくなっております。特に、施設園芸や畜産等ではある程度の前進が見られるわけでございます。それにいたしましても、特に土地利用型農業などを中心にして見ますと、やはり他の府県の農家の平均と比べますと、まだ規模は小さくて格差があるというふうに考えられます。
  270. 北沢清功

    北沢分科員 施設園芸等はやはり国の対策がある程度進んでいますから、そういう面では進んでおるというふうに私も理解をしておるのですが、こういう状況認識をされておいでの中で、従来の営農指導員制度を持っていると思われる改良普及制度というものがどのように、部落の農家に対して濃密指導など何らかの具体的な手を差し伸べる方策が当然とられておらなければならないと思われますが、ここら辺が私もいろいろ指導要綱等を見てはっきりと明示をされておらないというふうに思いますし、その辺についてはいかがでしょうか。
  271. 上野博史

    ○上野政府委員 この改良普及所の対応というのが一般的に私どもが普及指導活動をやります際にも基点になっているわけでございまして、同和地区に対します普及につきまして普及指導所に窓口相談員というものを設けまして関係農家からのニーズに基づいて必要な技術指導や経営指導等々のサービスを提供しておる、こういうことでございます。その実施に当たりましては、普及指導計画に重点的な事項として盛り込んで、十分に注意を払いながらやらせていただいている、かような状況でございます。
  272. 北沢清功

    北沢分科員 そういたしますと、まだまだ一般農家と比べて非常に低位にあるという明確な、実態調査にもあらわれておるわけでありますが、例えば今日機械化が進んでおる中で、その説明書を理解するにも障害を来すような、満足な教育を受けられなかったということが過去においてあったわけであります。特に、最近の高齢者の農業従事者がまだまだ多いという一つをとってみても、単なる一般的対策では行政の目が行き届かないではないかという部面も多く見られるというふうに私は思います。  改良普及員の運動の指針である協同農業普及の運営に関する方針に、離島、過疎地域、山村等が配慮の対象として位置づけがされておるのでありますが、せめてそこに、相談員がなくなったわけでありますから、普及所の窓口相談員ということはこれはだれでも一般的に受けられるわけでありますが、特にそういう意味でのおくれといいますか、先ほど私がイノシシの村の老夫婦のことを言いましたけれども、非常に大きな悩みを持っていながらやはりそういうものになかなか手が届いていかぬという事情等もあるわけであります。特に最近の普及事業というのはいわゆる伸びる農家というか中核農家というかそういう新しい農業部面に重点的にされておりまして、普及所の数も専門化をして減っておりますし、また普及員そのものの予算もことしは昨年に比べて五億円も減っているわけであります。そんなようなことで、ぜひそこに部落農家を加えるなどして、具体的にきめ細かな対策を明文化して、厳しい状況に置かれている部落の農家にとって実効ある農業施策を進めるお考えはおありか、どうかぜひ前向きの御答弁をお願いいたしたいと思いますが、どうでしょうか。
  273. 上野博史

    ○上野政府委員 この普及事業の場合には、改良普及所の普及工員によります技術指導等の普及指導活動を通じまして農業経営と農家生活改善に取り組んでまいる農業者を育成するということを基本にいたしているわけでございます。そのことにつきましては、地域改善関係の農家に対する普及指導活動も全く同じなわけでございますが、ただ具体的な取り組みといたしまして、それぞれの地域改善地区の状況、それぞれの地域状況にも応じまして指導に特段の重点的な配慮をしているというようなそれぞれの地域別での、地域ごとにおきます対応をやっているという状況でございます。  今後とも窓口の相談員を中心にいたしまして生産組織のリーダー等との接触を密にさせるということに努力をいたしたいと思います。関係農家のニーズの把握に努めながら努力をするようにいたしてまいりたい、かように考えております。
  274. 北沢清功

    北沢分科員 今御答弁では既にそういう連携を持っているという話でありますが、しかしこの実施要領等を見ても、対応というものが非常に後退しているんではないかという感じを私は持つのです。そんなことでぜひ濃密な指導の位置づけというものをさらに明確にしていただくように、それぞれの都道府県に対してもひとつ格別な御指示等の御配慮をしていただきたい、そういうふうに私は思っております。そういう面でやはり部落における経済的位置づけというものを、一歩でも二歩でも大きく上昇するような指導の徹底を期してもらいたいということを特に強調してまいりたいと思います。  それでは最後に、農業基本法が制定をされてから、特に見直しをすべき時期であるということで、昨年から新しい食料、農業、農村政策、いわゆる新政策について今農水省は取り組んでおられるわけであります。これは当初四月というようなお話もございましたが、その見通し、時期、そして現在の作業状況、まだこれからの手順についてお尋ねをいたしたいと思います。
  275. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 今仰せられました新しい食料、農業、農村政策の見直しという作業は、おっしゃるように昨年の五月から省内に検討本部を設けまして省内の検討を進めるとともに、学識経験者に懇談会を随時開いてもらいまして、問題点の検討を行っていただいているわけでございます。  一昨年五月以降、数次にわたります懇談会を開きつつ省内の検討を行って、現在本年春をめどにということで、問題点の整理、論点の整理、それから方向づけということをしようとしているわけでございます。  本日も午前中省内で会議を開いておったわけでございますが、今それぞれのテーマにつきまして懇談会等で論ぜられましたいろいろな論点を整理し、その中でどういう方向を目指すべきかということの最終的な整理の段階に入っておりまして、何月何日というふうなことを申し上げる段階までは来ておりませんが、なるべく早く結論を得たいというふうに考えております。
  276. 北沢清功

    北沢分科員 それでは、当初私ども聞き及んでいるところでは、四月くらいにはというようなことを言われたのですが、そこら辺はいつ幾日ということではおいが、おおよその目安というのは作業日程でついておるのですか。
  277. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 本年春ということで、何月とまで申すつもりはございませんが、いずれにしても極力急ぎたいというふうに考えております。
  278. 北沢清功

    北沢分科員 懇談会を今八回か九回されておるのですが、その中でやはり規模拡大ということは、私は、特に二十町歩とか三十町歩というようなことはなかなか至難なことでありますが、適正な規模規模拡大をするということは重要なことだと思います。しかし、規模拡大がすべてであるということになれば、冒頭申し上げたような農家経営の規模の現状からして非常に問題点があるんじゃないかというふうに思っております。  特に畜産の場合は、私もやっておりますが、家畜の多頭飼育の中でのふん尿の処理ということも、これは非常にもう経営ができないような状況になるわけでありますから、やはり適正な規模というものをもっと具体的に明確にして、規模拡大即農業の近代化ないしはコストの低減ということには、やはり規模の上においてはつながらぬのじゃないかというふうに私は思っております。  そんなことで、規模、そしてその中における農業環境といいますか、周囲の自然環境との調和のとれた、そうして農村の担い手がますますなくなっていくわけですが、私はこの前の農水委員会の中ではオペレーターの果たす役割というのは非常に重要だ。オペレーターはなぜ重要かというと、中核農家といっても、周辺の農家に委託栽培をすると、その人たちがするわけでありますから所得が低くなるわけでありますので、なかなかやり手がない、または体がへとへとになって疲れてやめるという状況が中核農家の後退につながっているというふうに申し上げてよかろうかと私は思いますから、規模即何々ということのないような、もっと現実的な案の中で日本型農業をつくっていただきたいということを強く要請をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  279. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 これにて北沢清功君の質疑は終了いたしました。  次に、大畠章宏君。
  280. 大畠章宏

    大畠分科員 日本社会党の大畠章宏でございます。  地域の細かな声というものをベースとして何点かお伺いを申し上げたいと思います。  ちょっと当初の順番を変えまして、林野庁や消防庁もお見えになっていると思いますので、林業についてからまずお伺いしたいと思います。  ちょうど一年前、昨年の三月七日に発生いたしました日立市の林野火災におきましては、消防庁や林野庁初め多くの関係者の皆様方の大変な御尽力を賜りまして鎮火をすることができました。しかし、残念ながら十軒を超える家が焼失するという状況にもございまして、山火事の恐ろしさというのを改めて地元の一人として感じたわけでございます。  そこで、昨年の分科会でも何点かお伺いをしたわけでありますけれども、この日立市の山林火災を教訓として、現在までにどのような対策を講じてきたのか、そして今後どのような対策を講じようとしているのか、現状についてお伺いをしたいと思います。
  281. 小澤普照

    ○小澤政府委員 お答えいたします。  昨年の分科会で先生から大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。その後、この林野火災につきまして関係機関とも御連絡をとり、特に日立市の山火事、大変話題にもなりました。我々に対しても大きな課題を提供してくれたと思いますので、林野火災対策研究会を開きましで、これは茨城県なり日立市の消防本部も入っていただきまして、今後の対策を検討したわけでございますが、その中で出てまいりましたものは、まず林野周辺での住宅地開発状況等の調査ということで実施しておりますが、これはまだ、詳細な報告は今後に待たれるところでございます。  いずれにいたしましても、種々検討いたしました結果、火災の延焼を防止する機能を有するとともに、円滑な消火活動に役立つ林道の開設が必要ではないかということ。それから、樹木によります防火樹林帯の設置でございますが、こういうものとか、それから防火線の問題がございますので、これらを有機的に配置された火災に強い森林の造成を行う必要があるというようなこと、こういうことが延焼拡大防止に有効であるとの結論を得まして、平成四年度におきましては、新たに防火林道や防火森林を造成する事業を創設することとしておるわけでございます。  また、地域住民に御協力をいただくということが大変重要であるということでございますので、地域住民の方々が予防活動を行われるような場合にこれを支援する事業でございますが、これも予防のための事業ということになりますが、これも強化させていただくことにしておるわけでございます。  これらの事業を林野火災の発生あるいはまた延焼の危険度が高い地域において実施いたしますとともに、それからもう一つは、国有林でございますが、国有林におきましても防火林道でありますとか防火森林あるいは防火用の貯水ダム等を整備いたしてまいりたいというように考えております。  このような対策実施を通じまして、林野火災の予防と延焼拡大防止に努めてまいる所存でございます。
  282. 大畠章宏

    大畠分科員 林野庁の方でもいろいろ御努力をいただいていることに対して感謝を申し上げたいと思います。  過日、ちょうど一年ぶりでありますけれども、三月八日に日立市の私の住んでいる、まさに林野火災の起こった、火が迫った団地の自主防災隊といいますか消防隊、そして町の協力を得たり、ある企業の消防隊の協力を得て山林火災訓練をやったところでありますが、そういう意味で、今お話がありましたけれども、どうも最近の団地等については住民相互の連帯感というのが薄れてきまして、火事になったら消防署に頼めばいいか、そういう傾向があるのですけれども、やはり自分たちでできることはやっておこうという意味でも、今お話がありましたとおり、住民サイドでの防火訓練ですとかそういうものを、もっと防火に対する住民の意識を高める上でも年一回は大きな団地ではそういう消防訓練をやるように、そういうことについてもぜひ御努力をお願いしたいと思います。  それから、きょうは消防庁と警察庁が来ていると思うのですが、一人来ていますね。昨年の山林火災のときに一番困ったのは、情報連絡網が非常に悪かった。それは何かといいますと、警察の方ではヘリコプターを持っていますので、ブルンブルンと飛んで、大体どこで山火事が起こったとかなんか入手しているのですが、その情報を消防署の方に連絡するパイプがなかったということで、消防署の方では一生懸命地上を消防車が走り回った。煙が出ている方に向かって走ったりなんかして{実際の対処すべきところになかなか消防車がたどり着かなかったというような話を伺っているところでありまして、このヘリコプターというもの、非常に有効だな。そういうことから、防災という意味からヘリコプターの設置というものを、警察だけじゃなくて、そういう総合的に使えるヘリコプターの整備というのが必要だと思うのですけれども、こういう問題に対する今消防庁の方での対応、この山林火災を教訓としての対応についてお伺いしたいと思うのです。
  283. 古内晋

    ○古内説明員 御指摘のとおり林野火災におきましては、ヘリコプターによります空中消火の実施、非常に有効でございます。消防庁としましては、地方公共団体におきまして消防防災用のヘリコプターを備えることを期待をしておりまして、来年度予算案におきましても五機分の消防防災ヘリコプターの整備助成費を計上しておるところでございます。また、今後とも林野火災が発生したような場合には、その状況に応じましてヘリコプターの広域的な応援が円滑に行われますように指導をしてまいりたい、そのように考えております。
  284. 大畠章宏

    大畠分科員 実は先ほど言いましたように、三月八日の日曜日に林野火災の団地としての防災訓練をやったところでありますが、その夜、十一時ぐらいに近所のところで火事がありまして、全焼しました。まさに私も火事の怖さというものを改めて感じたわけでありますが、ぜひ消防庁の方でも、今ちょっと声が小さかったようでありますが、もっと大きな声で、自信を持って消防行政に取り組んでいただきたい、そういうことを申し上げたいと思います。まさに今、火災の季節というのはおかしいのですが、そういう季節でもありますので、ぜひ自信を持ってといいますか、各地のいろいろな御意見も賜りながら、住民の方々が安心していただけるような消防行政を推進していただけるようお願いを申し上げたいと思います。  警察庁の方もお見えになっていると思いますが、団地がいろいろございますけれども、古くつくった団地では道路が大変狭いというのが実態であります。十一軒だったと思いますが、山林火災による火の粉で飛び火で火災を起こして、大変残念なことに全焼された家があるのですが、その団地の道路というのは非常に狭いのですね。その狭いところに、またこれは住民サイドでも考えなければいけないのですが、駐車が大変されている。そういうことで、消防車がなかなか現場に行けなかったというのもあります。水源が、ポンプで上げていましたから、電気がとまったために水が途絶えたというのも、これはもちろん大きな問題でありますが、そういうことから、古い団地といいますか、道路が狭い既存の団地に対する軍の駐車の対策をどうするかというのも現実問題大変重要な問題だと思いますので、警察庁の交通局の方では、こういう既存の古い団地の防災といいますか、違法駐車といいますか、車が駐車している、どういう考え対策をとられようとしているのか、細かい話でありますが、お伺いしたいと思います。
  285. 人見信男

    ○人見説明員 お答えいたします。  都市部や団地等における違法駐車の蔓延によりまして、救急車や消防自動車等の緊急自動車の通行の障害となるなど、国民生活に大きな影響を及ぼしているということから、これに対処するために平成二年に道路交通法と自動車の保管場所の確保等に関する法律を改正していただきまして、道交法につきましては昨年の一月一日、また改正保管場所法については昨年の七月一日から施行されたところであります。いずれにしましても、本来駐車は路外の駐車施設で賄うのが原則でありますが、先生御指摘のとおり、住宅地等における違法駐車の発生は、駐車需要と駐車施設のアンバランスに原因があると認識しているところでございます。  そこで、警察といたしましては、団地、マンション等の駐車場不足、特に既存の団地、マンションも含めてでございますけれども、これに対処するために、自治体等に対しまして、公共駐車場の整備やあるいは駐車対策協議会の設置、あるいは駐車場附置義務条例の制定などの働きかけを行いますとともに、団地の自治会等に対しましては、団地内駐車場の整備要請、あるいは団地住民への違法駐車防止の広報啓発活動の推進、また、付近の駐車場業者等も含めまして、団地内の駐車協議会、こういったものを設置したり、あるいは官民一体となった合同駐車パトロール、こういうものを実施しているところであります。そのほか、当然でございますが、団地等における交通規制あるいは違法駐車の指導取り締まりを今後とも私ども推進していきたい、こう考えておるところであります。
  286. 大畠章宏

    大畠分科員 住民の方からすれば、余りそう厳しく取り締まるな、こういう声もあるのですが、災害のときには大変大きな障害になりますので、例えば消防車がたっと出たときに障害物として残っている車というのは警察じゃないと動かせないのですかね。それとも、例えば消防庁あたりに消防車とともにレッカー車をくっつけて、たあっと走って邪魔者はどんどんどかしながら消防車を走らせる、まだ私も勉強不足ですが、そういうことは消防庁としてできるのですかね。そこら辺はどういう感覚が、ちょっとどちらかお話があったらいただきたいと思います。
  287. 古内晋

    ○古内説明員 道交法上の権限で警察の方でやっていただくというのがもちろん本筋だと思いますけれども、緊急やむを得ないような場合であって、どうしてもそこで車を動かさなければというような場合は、消防の権限でも消防法上の一定の要件を満たせばできるというふうに考えております。
  288. 大畠章宏

    大畠分科員 まあ普通の乗用車だったら六人くらいだったら持ち上がる、邪魔だったらどければいいんじゃないかというけれども、やはり二、三メーターどかすならいいけれども、十メーターもどかすといったら、今度は運ぶ人がくたびれてしまうし、腰が痛くなりますからね。だから、そういう意味では消防庁の方でもいろいろ考えて、これだけの車社会ですから対応策として、消防車とともにその付近にレッカー車を各消防署に一台くらいずつやって、大体消防庁の方ではあの団地は道路がどのくらいというのをほとんどマークした地図があるそうですが、どうもあそこの団地、あそこのところで車が一台とまっていて通れない、よし、というので、そういう施設考えて対応するということも一つかなと思います。  この問題、ここで答弁を求めてもなかなか難しいと思いますので、交通当局と消防署と考えて、地域社会では別に縦割りではありませんので、ぜひ連携をとりながらそういう問題に対しても対応できる、そういう消防体制をとっていただきたいということを要望して、この山林火災の問題については終わりたいと思います。したがって、消防庁結構でございます。どうもありがとうございました。  それから、林業に対する基本的な考え方についてお伺いしたいと思いますが、今お話がありましたとおり、山が大変荒れてきている、そういうことも山火事が大きくなった一つの原因だという認識をしております。防火帯というのがあるのですが、そこに下草が生えていますと防火帯を通過して火が走ります。そういう意味から考えると、私たちは町の中に住んでいるんですが、山の大切さ、山を管理する大切さというのを改めて知ったように感じます。また、人間が生きていくためには自然と一緒に生きているんだという、酸素をつくるのも木でありますし、そういう意味から山の管理というのをもっと大切にしなければと思います。  今、山の山間地と川下の町というところでは一見断絶しているような感じがするのですが、川下の町も、やはり上流の山があって、そこに降った雨が浄化されて川に流れ、そしてその水を飲んでいるという意味ではともに生きるという関係があると思うのですね。したがって、川の上流と下流でもって相互に経済的な援助をするといいますか、森林をともに整備するという考え方に基づく動きが必要じゃないかと思うのですが、現在の状況についてお伺いしたいと思います。
  289. 小澤普照

    ○小澤政府委員 先生御指摘のように、森林の整備というのは、その流域の上流、下流一体となって進めていただく方が効果も上がるというように考えておるところでございます。そういう意味で、下流域の協力関係を取りつけるということが大きい課題でもございますし、重要だというように思っております。  そのような中で、森林法も昨年改正をさせていただいたわけでございますけれども、流域ごとに活性化していこうというようなことをしておるわけでございます。それから、上流、下流の協力関係というのも各地でいろいろと事例も実は見られるところでございまして、流域ごとに森林の整備基金をつくっていただいたり、あるいは分収造林なり分収育林を設定して森林を守ろう、また整備しようという動きもあるわけでございます。  しかしながら、まだまだこれからこういう分野拡大してまいりたいというように考えておるわけでございまして、そのような中で、若干最近の事例なども御報告させていただきますと、この中で新たに森林の整備協定制度というのもつくらせていただいたわけでございますけれども、この制度は昨年四月に改正いたしました森林法に基づくわけでございますけれども、昨年の十二月に長野県の根羽村と愛知県の安城市との間で、これは矢作川の流域になるわけでございますが、水源の森を整備するということで森林の整備協定が新たに締結されたというようなこともございます。  今後におきましてもいろいろな形での上流、下流の協力関係というものが進展していくことが好ましいわけでございますので、今後ともこのような。ことが進みますように普及、啓蒙、啓発の場をつくっていきたいというように思いますし、このような事柄を通じまして森林の整備がさらに進むように考えて努力をしてまいりたいと思っております。
  290. 大畠章宏

    大畠分科員 山という問題、一時は採算ベースで山を管理しようという流れがありましたけれども、今これだけ環境破壊が進む中で山をどう見るか。そういう観点から見ますと、今お話がありましたとおり山を大切にしていこう、それも川下のいわゆる町で住む人も、やっぱりそこの町の行政としても上流側の山村の育成に協力していこう、そういう流れをぜひつくって、将来の子供たちにきちっとした環境を残せる、そういう努力を今後ともお願いしたいと思います。  次に農業問題に移りたいと思います。  最近、私の友人でありますけれども、近いうちに農業をやめるんだという電話がありました。原因は農地の相続の問題でありまして、小さな、そんなに大きくない農地を持っていたんですが、最近になってお父さんが亡くなって、そして四、五年たったので名義を変更しようとして東京のお姉さんのところに判についてくれ、こういう話をしたところ、このお姉さんのだんなから、そんな農地があるんだったら半分は相続権限があるんじゃないか。したがって、そう簡単に判こ押すなど言うので名義変更ができない。半分出したらおれは農業を続けられないんだという話もありましたし、そういう意味から、何かその土地の分だけのお金を分割でずっと払うというような話を検討しているということなんです。  また、地方の方を歩いていますと、本当に休耕田だと思うんですけれども、草ぼうぼうの田んぼなんかも目につきまして、また農家の長老の方々よりも、減反減反と言っているけれども、そろそろもう減反しなくたってどっちみちつくる人がいなくなるんだからな、そういうつぶやきも耳にいたします。これまでの日本を、また日本人を支えてきた農業という産業のまさに今活力が失われようとしているような感じを受けます。このまま十分な食糧政策というものを国民に示せないまま諸外国との交渉等により米の自由化などをした場合に、この日本の農業という産業に痛烈な打撃を与えることはまさに目に見るよりも明らかであります。  私はここで少し農業問題についても大臣と討論をしたいと思って来たんですが、時間がなくなってまいりました。いずれにしてもこの農業の問題点、将来像が見えない、農家の、農業の収入が他産業に比較して少ない、農業の果たしている役割と理念が国民に理解されていない、農業という職業に魅力がない、結局農業後継者不足、嫁が来ない、いろんな観点につながってきています。私はまさに今独立国日本として食糧政策を示すべきだと思うのです。それも農業に対する国民の理解を一生懸命求めたりあるいは世界各国に日本の食糧政策と、それから食糧の足らない地域地球規模であります、そういう問題はどうするのか。日本だけのことじゃなくて、食糧問題についても世界の食糧をどう充足していくか、確保していくのか、そういう観点も踏まえた日本の食糧政策というものを世界に示すし、国民にも示す必要があると思うのです。  そういう意味から農林大臣にお伺いしたいんですけれども、そういう実態にある日本の農業あるいは農家の青年層が自信をなくしている、そういうものに対して今後どういう形で農業という産業を向上させるおつもりなのか、あるいは農業という職業を魅力あるものにするためにはどうしたらいいのか、そういうことについて農林大臣のお考えを伺いたいと思います。
  291. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 魅力ある農業ということで今いろいろと検討いたしておりますが、何といっても農業には国民の理解が大変重要であります。相当いろんな規模拡大やら体制を変えていくにしても、アメリカやタイなんかと比べて、どんなに努力しても競争できるような体制というのをつくることはなかなか難しいんです。難しいだけに国民がどれだけ農業というものを理解し、みんなが守り立ててやろうというこの機運が高まってこないと、過保護だとかそういう一片の言葉で片づけられるということでは大変残念だと思うし、したがって今考えておることは、今先生お話しのように、他産業の従事者と遜色のない農業所得が得られないというところにまず魅力がない。そうすると、どういう体制ならば他産業と同じようにいくかというと、じゃあやっぱりある程度規模がないといかぬですね。小さい規模で機械を導入してやるということになると、どんなに努力してもこれは限度があります。ですから、サラリーマンは一年間月曜日から金曜日まで働いても毎週働いておるわけですから、農業の場合は十アールで大体平均四十時間、北海道は二十何時間という記憶がある、そのくらいの労働時間。そうすると、三十アールとかそんなに大きくないものでは労働時間も限られている。それで収入だけは一緒に欲しい、これは無理なのですね。ですから、そういう条件をまずつくってあげるということで、水田はこのくらい、畑はこのくらい、これで年間ずっといけるという基本的な規模。それで私は機械も見ておって、何日間しか使わないものをどうもむだにふやされているという気がするのです。ところが農家にすれば、隣がいいものを買った、あれに負けないものをというような競争心で機械をどんどんふやしていく。この辺が問題でありますから、やはり規模をきちっとして、そして小さいものしか持っていない人もそれに参画すればいい、そしてその一画だけは崩さないような方法で、例えば受委託でやってもらうとか、いろいろな工夫はあると思うのですね。ですから、何といっても、若い人が企業的な感覚で、経営管理をきちっとして、帳簿もつける。そしてつけた結果、どこが過剰投資だったか、どこに投資をしなければいかぬかというのをその中で見ながら経営をしていくということにしないと、今お話しのように他産業従事者並みの所得というのはなかなか不可能ですから、そういう若い人たちを育てていきたい。  それから、付加価値の高い農産物の生産、せっかく自分たちでいろいろなものをつくっていながらどこかに売って、そっちの方は付加価値を高めてやっておる。それも農家の人たちが自分の作物を加工して、そして販売する。あるいは機械もそういうことでリースか第三セクターかつくって受委託を専門にやってあげるとか、そういう全体の中で農業というものが支えられていくというのが一つ、これは生産部門です。  一方では、そうはいっても、さっきお嫁さんが来ないという話がありましたが、やはり環境がよくないとなかなか、農家自身が自分の娘はどこかのサラリーマンに嫁にやりたい、自分の息子には農家から欲しい、こういう実態ですよ。ですから、この辺からして、やはり農家自身が、娘には苦労させたくないという気持ちがあるのでしょうけれども、しかし、今六割が婦人で農業を支えているという実態もありまして、そういうところにもう少し――全然だめなんじゃないのですよ、いい人は喜んでやっているわけですから。そのだめなところの原因を追求して今申し上げたような体制をきちっとつくって、そして本当に若い人たちがコンピューターもパソコンもいじって、そして一生懸命努力するという姿を描きながら頑張ってほしいな、こう思っております。新しい農業農村という中で検討しております。いろいろ村づくりも、今回美しい村づくり、予算をお願いしてあります。そういうことを含めて、農村に住んでみたい、農村に行ってみたいというふうに都市の人たちが思えるようなものに仕上げたい、こう思って頑張っております。よろしくどうぞ。
  292. 大畠章宏

    大畠分科員 ありがとうございました。
  293. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 これにて大畠章宏君の質疑は終了いたしました。  次に、輿石東君。
  294. 輿石東

    輿石分科員 今大昌委員の御質問に答える形で、大臣の方からまさに農村へ行ってみたい、住んでみたい、そんな農政を展開していこうという決意が話されたわけですけれども、今我が国の農業問題は、御承知のようにガット・ウルグアイ・ラウンドにおける米の関税化や保護措置の問題をめぐって最大の政治課題となっておりますし、緊急の外交問題にまで発展をしていることは、私が今さら言うまでもないことだろうと思います。  与えられた時間が三十分ということで限られておりますので、私はまず日本の農業の現状についてお尋ねをしたいわけですけれども、農業基本法が一九六一年に制定されてもう三十年を超えているわけですけれども、この平成三年度の全国の農家数が三百七十八万八千五百六十戸、農家の人口はおよそ千七百万人。この基本法が制定された前年の農家の総戸数六百五万六千六百三十戸に対して、三七・四%も減少をしているという実態であります。加えて全国における農業の新規就農者、学卒者はついに平成二年度には千八百人を割ったという驚くべき実態でありますし、これは全国の三千二百四十市町村の一市町村に割りますと、〇・六人という驚くべき数字が出てくるわけであります。そして、これは農家二千百戸に一人しか農業後継者は誕生していないという実態でありますし、その担い手の大半は六十歳以上の高齢者だ、五年後、十年後の日本の農業を考えたときに、背筋の寒くなる思いがするわけです。  そこで大臣、このような日本の農業の現状をどうとらえられているのか、そして今後どのようにされようとしているのか、まず大臣の決意についてお話しをいただきたいと思うのであります。     〔佐藤(謙)主査代理退席、主査着席〕
  295. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 担い手の不足、高齢化、国際化、いろいろな節目を迎えているわけでありますけれども、何といっても、大変農家の人口が減ったわけでありますが、しかし、生産がそんなに落ちているのかというと、そうでもない。畜産にしても何にしても、若干ではありますが、だんだん規模拡大が行われて、機械化がどんどん進むことによって余剰人員といいますか、まあ少ない人数でやれるようになってきた。したがって、稲作なんかも労働時間がぐんと短縮して、どこかで働いている、そういうことだろうと思うのですね。しかし、このままの少ない人数でいきますとだんだん農業後継者が不足してくる、そういうことは考えられるわけであります。  そこで、何といっても少ない人で現状を維持しようとすると、それ相当の規模にしていかなければならぬわけですね。半分に減れば半分は耕作面積を大きくしていくということを考え、農家の所得を、農業はいいなということにしないと魅力のないものになるというものですから、やはり所得の上がる農業にしていきたい。となると、これは適当な規模、まあ私はいつも例えで申し上げて、水田が二十町歩、畑が十町歩とかというように、これは適正なものにする。その適正は、年間ずっと何かで働いていくような体制にしないと、よく米価のときなんか、サラリーマンの月給が上がって米価が下がるのはけしからぬといって、私は農振協の幹事長をしておったものですから五年間怒られ通したのでありますが、しかし考えてみますと、水田で何十時間も働いてないのですね。少ない人なんか本当にそうなんです。それで収入はサラリーマンと一緒といってもこれは大体が無理な話なんです、サラリーマンは一年間ずっと働いていますから。ですから、まず農業も周年働けるような形にしていくということでなければいかぬということで、そのためには、土地利用型の農業については何といってもこれが事業だという感覚になってもらわぬといかぬですね、もうけるのですから。  そこで、経営管理でありますとか企業経営、そういうものが身について、ちゃんと帳簿もつけて会社みたいにやってみて、むだなもの、投資をしなければならぬもの、そういうものをきちっと把握して、そして、何人でそれをやると本当にもうかっていくのかというところから始めてもらう。そのためには機械を買った方がいいか借りた方がいいか、いろいろなものがわかってくるわけでありますから、そういうことでやっていかなければだめではないのかな、こう思って、今検討会の中でそれぞれ一生懸命やっております。  私はよくスイスやオーストリア、カナダもその一つでありますが、いろいろな国を回って、農村というのはこんなに環境のいいところかな、オランダのあの風車なんか見に行きましたけれども、ああいうものにたくさんの観光客が並んで、そういうものを見ておってどうして日本の農業というのはこういう環境にできぬのかな、そう思って、その面にも、生産と生活環境の両面、そういうものを一生懸命していくことによって、嫁が来ない、来ないということも解消されていくのではないかということを考えておるわけであります。  いずれにいたしましても、今省内で精力的に検討をいたしております。また、もう既に予算でお願いしてスタートしているものもありますので、これからさらにその努力を重ねて、若い人たちに本当に意欲を持って取り組んでいただけるような基盤というものをつくっていきたい、こう考えております。
  296. 輿石東

    輿石分科員 今大臣から御説明をいただいたわけですが、生産とそれから経営努力とか生活環境をというお答えですけれども、その範囲で日本の現状の農業が回復できるというふうには思えないわけでして、もう少し発想の転換を図るべきだというふうに思うわけであります。農業生産の持つ環境保全というような、国土を守るという発想に農政を転回しない限りなかなか難しいのではないかという考えを私は持っているわけですけれども、その辺について論議を深めてまいりますと時間がありませんので省略をしたいと思いますが、それにかかわって、二十六、二十七日の両日パリのOECD、経済協力開発機構で、地球環境と共存の農業政策へというようなものが打ち出されるというような一部マスコミ報道もあるわけです。  大臣、このパリの会議は出席をされるおつもりかどうか。それと、今の環境保全、国土の保全という発想の転換はあり得るのかどうかという点について若干お聞きしたいと思います。
  297. 川合淳二

    ○川合政府委員 先にOECDの動きにつきまして御報告をさせていただきます。  OECDでは従来、どちらかと申しますと貿易の自由化と申しますか、農産物の貿易の自由化を通じます世界的な規模での構造調整というような視点が色濃く出ていたわけでございます。こうした動きが今御承知のガットの農業交渉に反映されているわけでございますが、そうした中で、昨今、今私が申しましたような流れがまだ主流ではございますけれども、環境に対する配慮と申しますかそうした考え方が出てきているわけでございます。  やはり、先生御承知のように、ヨーロッパあるいはアメリカの畑作的な農業は農業自体に環境に対しますマイナス面があるという考え方、これは我が国の水田農業と違う点でございますけれども、そうしたこともございまして、そうした農業の持つマイナス面を何とか抑えながら持続的な農業を続けていくという考え方が出てきております。まだ主流とまでにはなっておりませんが、そういう動きが出つつあるということは御指摘のとおりでございます。
  298. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 会合に出席できるかどうか、まだ国会の日程がどういうことになるかわかりません。もう少し見きわめて、何となく重要な時期に差しかかるのではないか、こう思いますけれども、国会の方の日程を十分考えて検討してみたいと思っております。  それから環境のことでありますが、最近特にこの問題が非常に大きく取り上げられております。ヨーロッパ、アメリカ等は特に地下水が非常に汚染される等、問題になっているわけでありますが、それは土地が平たんでしてそういう問題が出るのだろうと思いますが、日本の場合は、雨が非常に多い、それから急傾斜地が多い、あるいは水田が中心でありますので、そういう汚染物質というものはつくられにくくなっているわけですね。それにしても最近、少しずつではありますが、湖枠が汚染された、川が汚れた、あるいは地下水が汚れたという傾向が見られていることからも、だんだんそういうものが農業の中にも取り入れられたということだろうと思います。また一方では、地球環境的な熱帯林、そういう環境もあります。そういうものも含めてやはりOECD等で、農業だけではなくて環境議論されるということになってきたと思います。
  299. 輿石東

    輿石分科員 今、出席されるかどうかは大変微妙な時期だし大事な時期だと言われるその背景には、やはりガット・ウルグアイ・ラウンドヘの対応、そういうものをめぐる問題が大変重要になってきているわけですけれども、簡単で結構ですから、このガット問題に我が国としてどういう方針で臨まれるのか、短くお答えいただきたいと思います。
  300. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 従来から申し上げておりますが、国会決議等を体して、食糧輸入国としての立場が確保されるということで今までもずっとやってまいりました。この方針で臨んでいきたい、こう思っております。
  301. 輿石東

    輿石分科員 ぜひそういう方向で頑張っていただきたいというふうに思うのであります。  先ほどお答えの中に、環境問題に触れて、アメリカやヨーロッパの方では平たん地が多いので地下水汚染が急激に問題化されている。日本は中山間地域が多いという逆の現象があって、そこにまた大きな問題を日本の農業では抱え込んでいると思うのであります。  そこで私は、中山間地帯の農業問題について具体的にお話をいただきたいと思うのでありますけれども、そこにかかわる問題として、既に明らかにされているように、最大の課題は何といっても農業労働力の高齢化と後継者問題だろうというふうに思いますし、その結果として耕作放棄地というのが大変近年急激にふえている状況であります。こういう、とりわけ中山間地帯におけるこの問題は深刻な問題であり、緊急を要する問題だろうと思いますので、中山間地域農業対策についてどのようにお考えであるか、またその対策としてどのようなことが考えられているか、お答えいただきたいというふうに思います。
  302. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 中山間地帯、先生おっしゃるように過疎化、高齢化が特に進んでおるというのは我々もよく承知しておるところでございます。確かに、自然条件が厳しいあるいは交通条件等からいって不利であるということがあろうかと思います。ただ、一方では標高差が大きい、昼夜の気温の較差が大きいという、いわゆる平地部にない特色も有しているわけでございまして、地域によってではありますが、そういう特色を生かして多様な付加価値の高い農業を展開するというところもないわけではございません。  そういう状況を踏まえまして、私どもといたしましては、個別にはいろいろ施策ございますが、全体として見ますれば、その地域の創意と工夫のもとに、特色のある資源を生かしながら担い手の育成確保、あるいは付加価値の高い作物の産地づくりというようなことに励んでいるわけであります。また、そこでとれましたものにつきましての加工流通の促進、あるいは単に農業だけでありませんで、その地域を活用した保健休養施設等の整備ということを促進しようと思っております。三年前に長期低利の特別の資金制度もつくったわけでございます。そういうことによりまして、その立地の条件が生きるような形での基盤整備事業をやるとともに、今後生活環境の総合的な整備等も進めてまいりたい、概括すれば以上のようであります。
  303. 輿石東

    輿石分科員 その地域の特産物と言われるそういう資源をどう活用していくかとか、流通機構を改善するとか、その村の社会環境等を考えて村づくりをしていくということはありましょうけれども、そういうことになりますと、これはもう単に農水省だけの問題ではなくてそこには教育の問題も出てきましょうし、いろいろな厚生省、自治省、他省庁とのかかわりも当然出てこなければ、若者に夢ある町おこし、村おこしは不可能だろうというふうに思うのであります。  私は山梨ということもありまして、私どもの県も農業県でありますし、果樹王国と言われる状況の中で、この後継者問題についてはかなり深刻な状況になっているのであります。例えば一九九〇年、平成二年の調査によりますと、山梨においても経営耕作面積二万七千十三ヘクタールに対して耕作放棄地というのが二千五百八十ヘクタール、八・七%にも及んでいるわけであります。これは試みとしまして、全国の平均が平成二年では三。三%かというように記憶しておるわけでありますけれども、まさに全国でも九万三千ヘクタールから十五万一千ヘクタール増加しておる。これがまた近年、一年の上昇ポイントというのは急激に上がってきているわけでありまして、その辺に、一方では東京への一極集中、多極分散型の国土づくりだというふうに国土庁は言うわけでありますけれども、深刻な状況になり得ていると思うのであります。  そうした問題に拍車がかかっております折に、この農業従事者を年齢別に見てみても、六十歳以上が六三・三%、そのうち六十五歳以上でも四七・一%ということですから、まさによく言われる昭和一けたの人たちによって日本の農業は守られている、これが五年、十年たったときに、肉体的にも引退をしリタイアしていかなければいかぬ、後継者は出てこない、冒頭申し上げた実態であります。単に経営努力や所得の向上という視点だけで、この特に中山間地帯の多い日本の農業が果たして守られるだろうか、そう心配する者の一人であります。  どうかその点について、もうちょっと具体的な政策や今後どのように考えるかという視点でお話しいただければありがたいと思います。
  304. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 冒頭申し上げたことは、日本の国土をそれぞれ見てみますと、北海道のように広大な平地もあるし、東北もややそういう傾向にあります。四国なんかはそういうことはない、また先生の山梨県も山が多い、それぞれ特色があるわけでありますから、そこに合ったきめ細かいやり方をしないと、さっきはそこのところを飛ばしましたが、中山間地は中山間地としてさっきもお答えありましたが、どういうものが一体適しているのか、どういう雇用の場が創設できるのか、ここはやはり国土環境保全、そういう観点から見てあげないと、平地の何十町歩というものを耕作できるところとは一緒に私どもは考えておりません。  そこはそこでみんなで国土を守っていく、水資源ということもあるし、いろいろな観点からここはそういうふうに考えていこう、まあしかし、その中でも何とか収入が上がるような、またその町、村に合った何か施設をつくって経営を若い人たちがすることができないだろうか。端的に言うと、あんなにゴルフ場がたくさんできておるので、私は自治体でおやりなさい、こう言って主張しておったのです。町の若い人たちを社長にして経営させれば喜んで第三セクターででも、そうすれば相当雇用の場も創設できたのだろうと思うのです。私のところに、私はおかげさまで青森県の体育協会の会長をやりまして、九ホールでありますけれども、飛行場のそばに持って、ここが安くて朝から晩まで夏は四時か四時半ごろからオープンするのですが、そういうものも体育協会の若い人たちに経営させる、喜んで元気でやります。  そういうことで、何もそれに限ったことではないのですが、例えばゲートボール場を岩手県でありますが、つくって、そこに宿泊施設をつくってお年寄りの皆さんがみんな行く。ですから、いろいろな雇用の場を考えて、若い人たちにこの経営をきちっとさせる、いろいろ考えられると思うのですね。それと中山間地で高所得を上げられることもあわせてやっていけば、若い人たちは喜んでやってくれる人もおるだろうという期待を持って、いろいろなことをとにかく林野庁とも相談し、自治省ともかけ合い、いろいろ今やっておりますので、どういう仕上がりになるかわかりませんが、何とか喜んでもらえるような形にしたい、こう思っているのです。
  305. 輿石東

    輿石分科員 私は冒頭に申し上げましたけれども、もう大変時間がなくて論議を深める時間がなくなりました。  最後に私は、もう三十年もたっている農業基本法を中核とした近代農法、所得を上げるとか規模拡大という形で行われてきた日本農政の限界がある、そう思えば思うほど、大臣今言われましたように、中山間地帯については環境保全、国土の保全という視点からこれを見ていかなければいかぬというお話もあったわけでありますから、ぜひ環境保全型農業への発想の転換をしていただいて、それには単に経営者といいますか、農家に努力せよということだけでは避けて通れない問題でもあります。農家の所得の補償制度というようなものをも含んだ、今後の対応が緊急に迫られているだろうというふうに思います。五十三億の地球上の人々が安心して安全な食糧を確保していく、平和の中に食糧が確保されていくときに、人間の生存権も保障されるというふうにもとらえている、そういう視点で今後の日本の農政のあり方について御検討いただければありがたというふうに思います。  最後に、その辺の、農家への所得補償制度というようなものを考えていくおつもりがあるかどうか、その点についてお尋ねをし、質問を終わりたいというふうに思うわけであります。
  306. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 先ほど抽象的に中山間地帯に対する対策を申し上げましたが、現在我々がやっていることは、中山間地帯に対する活性化資金、低利融資の資金制度でありますとか、あるいはいろいろな土地改良事業等についての高率補助、普通の平地に対しまして、高率の補助金を出すことでありますとか、あるいは地域の採択基準を緩和する、例えばため池の採択基準を、平地の半分くらいの小さい面積でも認めるとか、いろいろなことをやっておるわけであります。  ただ、先生が今仰せになりました、所得補償という考え方は、これは我が国の今までのいろいろな農業に対する助成の仕組みが、団体、組織を通じるものでありまして、個別農家に対する直接的な補償というのをやっておりません。また、それが農村社会になじむかどうかということについては、いろいろ問題があろうかと思います。確かにヨーロッパにおいて、一部条件不利地域において所得の補償をやっていることは我々もよく知っておりますし、内容について勉強もしておりますが、我が国の農村社会にそういうやり方がなじむかどうかということについてはいろいろな問題がございます。なお、研究をさせていただきたいと思います。
  307. 輿石東

    輿石分科員 個々の農家に一人一人所得補償をすることには、日本の農業の性格上なじみ得るかどうか、そういう課題もある、そのことも私は十分承知しているつもりでありますけれども、仰せこの問題については、根本的な課題として考えていくというお考えがあるというふうにお答えいただきたかったわけでありますが、その点についてはいかがでしょう。
  308. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 地域の活性化なり産業の振興ということをも考えますと、私どもとしては今申し上げたように、直接の所得補償ということについては、やや、どちらかと言えば消極的だと申し上げた方がよろしいかと思います。
  309. 輿石東

    輿石分科員 最初から私はずっと言い続けさせていただいたことは、農業が単に一つの、他の産業と同じレベルで語られたり考えられるのではなくて、まさに一次産業の果たし得る役割というものを違う側面から眺めて、これからの日本の農業の再生に最大限の努力をしていただきたいということを最後に申し上げ、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  310. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて輿石東君の質疑は終了いたしました。  次に、有川清次君。
  311. 有川清次

    有川分科員 私は桜島降灰対策、特にその中で防災営農についてお伺いをしたいと思います。  活動火山対策特別措置法の十二条一項によりまして、現在、降灰防除地域、二市三町、鹿児島県では鹿児島市、垂水市、桜島町、福山町、輝北町のこの地域が激甚地域の防災営農地域として指定をされているところでありますが、特にこうした激甚地域の問題についてお伺いをいたします。  本年二月二十九日付、地元の南日本新聞でありますが、「垂水異常ドカ灰」「二カ月で昨年の二倍を超す(海潟) 除去費 市予算木ーバー 一平方メートル一七〇〇〇グラム」、この新聞でありますが、大きな記事が出ておるところでございます。二月で二万三千二百グラムを記録しておりますし、市の中心街でも五倍の約十センチ積もるほどの状況でございますし、私、鹿屋市でありますから近くにいるわけでありますが、しょっちゅう通りますと、終日非常に真っ暗なような状態が続いておるという大変ひどい状況がございます。  こういう状況の中で、最近特に海潟地区のどか灰は連日異常な状況となっておりまして、降灰でキヌサヤを初め農作物は多大の被害を出しております。三月四日の農業新聞でもこのことが取り上げられました。「降灰でキヌサヤ悲鳴 手間賃も出ない 復興事業助成急げ」、この新聞でありますが、写真入りで非常に大きく取り上げられているところでございます。  このような三十数年絶えることなき桜島の降灰で、現地の人々は大変苦労しながら、それを乗り越えて今日まで努力をし悪戦苦闘して、ただひたすらに営農に取り組んでいるわけで、この姿を見るときに、ただ行政があれもやったこれもしてやった、そうしたことで満足するのではなくて、現地を見るたびに、もっと血の通った施しをする必要があるということを私痛切に感じておるところでございます。  農作物は、品質での産地間競争もございます。付加価値の高いものを生産しなければなりません。しかしながら、降灰の激甚地域はどうしても品質が落ちるために、まず激甚地域の産物ということがわかった途端に評価が下がるという実情にもございます。こうした地域は特にビワの産地でもありますが、ビワは、花芽の出るときに灰がつきますと、それが果実になっても取れずに、品質評価を大きく落とされる、こういう現状でもあるところでございます。こうした品質の上に、生産や出荷過程においては降灰との闘いがありますし、労働時間も長くなり、生産コストも非常に高くなるなど、大変な苦労の連続でございます。地域の皆さんは、どこか降灰のないところに逃げ出したい、どこかそういう農場に移転をして農業をしたい、こういうことを言われますし、そういう中で、先ほど来お話もありますように、後継者も一般的にできないところになお後継者ができないという悲鳴に似た叫びが聞かれるのは当然だというふうに思います。  農業以外の一般の人たちも生活面での苦労や不快感はひどいものですが、そうした、人と同じような生活をするのに加えて、農家の皆さんは降灰の中をもいとわずに戸外で農作業をする、そして生産に励むというわけでありますから、こうした人たちの、営農者でないとわからない、到底理解できない苦痛があることを私たちは十分理解しながら、そのハンディを乗り越える助成なり指導が非常に重要だと思うところでございます。  雲仙・普賢岳の噴火もまだ続いておりますが、被災地の農民の方々も、土地の愛着もございまして、将来も居残って営農したいという人もたくさんあるということも聞いております。農業の場合に天候異変や台風、干ばつ、長雨など自然との闘いはつきものでございますが、それに加えて三百六十五日、毎年降灰と闘いながら営農を続けている、この農家の救済助成対策は、多くのハンディを乗り越えて営農意欲がわくような血の通った温かい施策、実態に十分応じた援助が重要と感ずるところでございます。  私は、最近の状況をぜひわかっていただきたいという気持ちから以上申し上げましたが、そうした実態を踏まえての血の通った行政のあり方について、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  312. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 私どもは東北、本州の最北端でありまして、雲仙・普賢岳、先生の方の桜島の火山あるいは相次ぐ台風で沖縄、九州、テレビを通じて本当に大変だなと思って実は見ておるわけであります。私の方はまた逆に豪雪というのがありまして、これに大変悩まされるわけでありますが、しかし火山の噴火とは比べようも広いほど、先生方の方の被害から見れば軽微だ、こう思います。  しかし、この防災営農対策については、もう御案内のように、四十八年の火山対策特別措置法制定以来いろいろと降灰除去施設等を設置して、何とか営農の確立を図りたいということで努力はいたしてまいりました。また、これまでも降灰等による被害の著しい地域では酸性土壌を中和する事業実施、そういうものも実はいたしてまいりましたし、今後ともその地域の被害の実態を踏まえて、被害農業者の経営の安定あるいは地域農業の健全な発展に資するよう一生懸命努力をしていきたい、こう思っております。
  313. 有川清次

    有川分科員 いつも私どもは何回も質問するわけですが、同じような理解を持った答弁がございます。しかし、あそこを通るだけなら大変だなという程度で終わるのですが、そこに生活をして、そこで降灰のない地域と品質の競争をしながら付加価値の高いものを生産をしなければならない、この苦労は並み大抵のごとではないと思うのです。しかも、それにかかわる労働時間というのが非常にかかるわけでありまして、そういう意味においては逃げ出したくなるという皆さんの気持ちが本当に行政の側も十分わからなければならぬなということを思います。  いろいろな施策が行われております。それらの施策についてもかなり幅を持って、余りとらわれずにだんだんそういう行政がされていることは地元の人たちも感謝をされておりますが、なかなか枠を取り外し得ないものがあるために、こんなに頑張って農業をやっておる、後継者もつくりたい、そういう気持ちで頑張っておるのに、桜島をもうあれ、ふたをしてとめればいいのだけれどもとめられない、そういう状態の中で、なぜ我々の気持ちや衝動をわかってもらえないのかな、こういう気持ちが非常に強いわけです。  私も雲仙にも何回か行きました。それで、この間現地の農家の皆さんと懇談会をしたのですが、この人たちも雲仙に行きました。ところが、雲仙の火砕流なりそれはもう人命にかかわることで大変だ。それはよくわかるけれども、うちの場合は朝晩黒いのがもう降ってくるのだ。場合によっては岩石が降る。こういう状態の中で外で農作業をするのだ。そのことが、今雲仙対策は非常に大事で当然やらなければならぬけれども、桜島は陰に隠れて、今一、二カ月で昨年の一年分の灰が降るような状態の実態をわかってもらえない、こういう苦悩が、叫びが言われるわけであります。どうかそういうことをぜひわかっていただいて、品質競争の中でもきちっといい製品ができるような体制をとれるような状況考えていただきたいというふうに思います。  さらに、若干実態をわかってもらう意味で申し上げますが、防災営農のハウスを補助いたします。降灰量においては、ハウスを対象とする地域と激甚地域とあるわけですね、どっちもハウスはとれる。ところがもう雲泥の差があるという状況の中で、一つの例を申し上げますと、海潟地区は二棟建ったハウス、この真ん中に降ったときは、両方の屋根の高さと同じ降灰が積もるのです。五十センチです。そしてちょっと離れた垂水のまた防災営農している地域の皆さんは、はかってみると大体十五、六センチある。これはちょっと雨でも降れば、しょぼしょぼ雨でもコンクリートのようにかたくなる、それを除去していかないと大変だという実態があるわけであります。  そうしますと、一日じゅうそういう除去作業もしなければいかぬ、農作業もしなければならぬ。除去してもどんどん降っているわけですから、また積もっていく。非常に採光が悪い。だから、やむを得ず天気の場合は動噴機などで噴き飛ばすわけです。ところが、大体団地経営をせよという指導でありますから団地になっておる。自分のところが風下であれば、せっかくのけたのに風上が作業の都合上やりますとまた同じように積もっちゃうわけです。横の農道を車が通ると全部巻き上げでまた乗る。それでハウスの中にいると暗いというのです。作業を終わって外に出ると、外は明るくて目がまばゆい。びっくりする、まだこんなに明るかったのか。こういう実態は、実際営農している者でないとわかりにくい状況だというふうに思います。  また、人家の近くでは、動噴で出しますと灰が散るものだから人家の人は嫌うわけですね。それはもう自分で手で落とす以外にないというそういう苦労の中で、そうやりますと、自然ビニールももちが悪くなって採光も悪くなる。こういう状況ですから、今度は野菜をつくりますと、ピーマンやらいろいろなのをつくっていますが、緑色であるべきはずの葉っぱが黄色いというのです。少なくともほかのハウスよりも十五日はおくれる、そして黄色い、品質は悪い、こういう状況になっておるわけですから、そういう意味ではもう少しもちのよいビニールとかあるいは取りかえとか、これは最初から消耗品のようなものだからそれはだめよというそうした単純なものでなしに、この激甚地域だけはもっと考え方を変えて、営農を支えをという、あるいは産地間競争に打ちかつような農作業ができる、製品ができるということを考えた特別な配慮が望まれるというふうに思っておるところでございます。労働力とあわせ、生産コストも高いし、商品価値は余りない、他の地域と肩を並べていくことは非常に困難だということがございます。  そういうような実情をわかって対応をお願いを申し上げながら、このハウスの問題やらいろいろ対応はしてもらっていますので特別な御回答はいただく必要はありません。また個別にも相談をしてまいりたいと思いますが、そういう意味で、何かコメントがあればお聞かせを願いたいと思います。
  314. 海野研一

    ○海野政府委員 桜島の降灰、今大臣も申し上げましたけれども、先生の御指摘のような、要するにどんな対策を打っても灰のない状態と同じにはならないという中で、特に灰が余計降ってきたときというのは本当に大変だというのはよくわかるわけでございます。  そういう意味で有効な対策というものが、現在行われているビニールをかぶせるとか洗い流すとか酸土矯正、さらに他の作物への転換というようなことぐらいしかなかなかないわけでございますが、そういう対策自体、鹿児島県庁とも連絡をとりながらできるだけ弾力的にやっていきたいと思いますし、特に平成四年度が現在の計画の最後でございまして、平成五年からはまた新しい計画になもという中でございますので、今おっしゃったような点十分配慮いたしまして、なかなか灰のない状態と同じにはなりませんけれども、できるだけ灰による悪影響というものを除去できるように十分弾力的に考えてまいりたいと思います。
  315. 有川清次

    有川分科員 ぜひお願いを申し上げたいと思います。  ただ、もう一つは、非常に労働力もかかって難儀しながら、しかも不必要ないろいろなものを買うために農家の負担が非常に大きいということも理解をして対応をお願い申し上げたいと思います。  時間の都合もありますので、一、二点だけ、細かいもので恐縮ですが、一つは、ハウス内はハウスをしているから灰が降ってこないと思っていらっしゃるかもわかりませんが、防除のためですけれども、降灰はとめることはできてもすき間から、サッシである家でも入るわけですから、かなり入っているわけです。だから、農作業をする場合はマスクをして現地の人たちはやっています。そういう中で求められているのが砕石なんかで使う防じんマスクですね、こんなような手だてというものはできないのかというのが一つ。  それから、鹿児島県も努力をして健康調査をされておるようでありますが、今のところ余り異常はないということだけれども、農家のハウス内で働く皆さんは、おれたちは健診を受けたことは一回もないよ、だから我々はじん肺にかかっているんじゃないかという心配もあることでもありますから、今度は農政の立場でそういうような配慮というものも、県への指導も含めてお願いを申し上げたいと思うわけであります。  それから、農道の場合ですが、一定の地域を県が県単事業で除去をしています。ところが、現実には二センチ以上かなりの灰が積もるんだけれども、やはり自動車が通る、農作業の耕運機が通るという状況の中で、なかなか二センチとはかるのが難しいわけですよ。そうすると、その吹き飛ばされたのは道路の両わきに積もる、あるいは畑やハウスに積もっていく。雨が降りますと道路が川になるわけです、両わきに灰が積もるわけですから。だから、こういうものも、二センチという厳しいのがあるとしても、もっと簡便に農家の皆さん方のそういうことを救済するような対策を御検討願いたいと思います。コメントがあれば。
  316. 海野研一

    ○海野政府委員 先ほどおっしゃったハウスの中へ入ってくる灰の問題でございます。  私ども、ハウスの中へ入ってくる灰につきまして、例えば酸土矯正とかそういうものにつきましてはハウスの中だから排除するということでなく考えておりますけれども、その他の今おっしゃった防じんマスクであるとか健康診断とかなんとかということになりますと、いわゆる営農対策になるのかどうかという問題もございます。しかしながら、いずれにしましても、ともかく桜島での営農も生活も非常に大変であるということは十分理解しておりまして、いわば桜島対策全体として県庁とも十分相談をしながら進めてまいりたいと思っております。  それから、農道の問題でございますけれども、私ども農道に灰が積もってそのために通れなくなったということになりますと、これはもちろんある程度にならないとあれですけれども、通れなくなった場合にこれを復旧するというものは国庫補助の対象になり得るわけなんでございますが、おっしゃったような一カ所にまとまってたまる、国の災害査定に持ち込む間に手でやった方が早いとか、それからまた、いわば厚さなどの問題からなかなかそのあれに乗ってこないというような問題について、現実に県単ないしは市町村の単独でやっているという実態があることはよく承知しておりますけれども、私ども、これはいわば災害復旧事業、ただ、一カ所の復旧が三十万円ないといかぬものですから、そういうものが出てきた場合には十分考えてまいりたいと思います。
  317. 有川清次

    有川分科員 私は、今降灰のひどい実態を、非常に活発になって営農は大変だという実態をきょうはわかってもらう意味で申し上げましたので、個別な問題はまた相談をしてまいりたいと思います。  時間の都合上、次の問題を申し上げます。  これは猿害、猿の対策です。もう大まかにしか申し上げませんが、北海道を除いて全国的に非常に増加の傾向にあるようですね。神奈川県の小田原市でも、昨年の十一月、こんな新聞が出まして、農産物に猿の被害があったというのが出ておりました。国の方でも一定の調査もされておりますが、農林業の極めて厳しい中山間地域でこのことが起こっておる、こういう状況だと思います。野菜類や果樹や芋類、いろいろな作物がやられておるわけでありますが、果樹の場合等は枝を折られたり、あるいは根物の場合は引き抜きをされるなどの実態がございます。現地の写真を持ってきましたから、大臣にちょっと見せます。――この間NHKのテレビを見ましたら、宮崎県の北浦地区ですか、高齢の婦人が農作業をする場合に、猿が来るものだから爆竹で猿を追い出して農作業をするという実態もあり、高齢化社会では非常にまた問題のあるところです。  今ワシントン条約の京都会議も開かれて、自然保護人間の共存が問われておるわけですが、こうしたさなかに北海道ではクマの射殺の問題がありましたが、私は、猿は本来人間が殺すような種類の動物じゃない、共存できる、そういうすみ分けをする必要があるのじゃないか。そのためには、人間がいろいろな自然破壊をしたために環境が破壊されて食べ物がなくなって里に出てくるようになった、そのことをやった者でない地域の農家の皆さん方が今苦労する、こういう状況になっておるわけですから、やはり猿が生息できる環境をきちっとつくることが必要だと思います。そういう意味では、天然林や広葉樹林の植栽、さらには乱開発防止、こういうことが必要だと思います。そのためには、基金または予算から環境保全対策資金とかなんとか特別なものでやらないと、口では言っても実際現状はこれが実効がないというので、だんだん広がってきてどうにもならないのではないだろうか、このように思います。  それからもう一つは、鹿児島県を中心にして今まで私も申し上げてきたのですが、現。実は全国的な国の統計資料を見てみますと、残念ながら小まめな資料がなくて、しかも被害面積と被害量と出ているのです。被害金額じゃないのです。被害量となれば、芋類とか果物とかあるいはキヌサヤとかいろいろな面、もう全然、量では観測できないのですよ、測定が。これは国がやはり全体的な被害の状況を把握し切ってない。もうどこでも、この神奈川の場合でも、自然保護などの問題もあって防衛策はなくて手の施しようもない、早く何とかしてほしいと叫ぶだけという記事になっておるわけですね。  そういう意味では、全国どこでも追い詰められておる現状がございますので、被害状況の正確な把握、あるいはそれを報告を受けて把握する、あるいは全国レベル・での猿害対策協議会というものをつくるとか、あるいは全国レベルでの試験研究をするとか、各省庁は環境庁やら文部省やらありますが、そういうところとの連携をきちっと図ってやるような体制が必要なんじゃないか。毎年予算が要求されてきた環境庁予算要求の中で、ことし、四年度、初めて特定地域野生鳥獣保護管理費ということで、マニュアル策定費として一千五万四千円顔を出しておるようでございます。しかし、そうしたものだけではなくて、農林省ももっと考えて全国的な対策を、知恵のある猿との闘いですから、共存共栄ですから、考えていただきたい。私のところに各地域から、市町村、組合長、たくさんの署名が最近はどんどん来るようになっておりまして、これは組織的に対応しなければならぬという声が高まっておりますので、ぜひそうした立場の国の体制を要請をしたいと思いますが、ただ、鹿児島県だけは平成二年度の被害額八千九百万、こうしたきちっとした数字も出して努力をしておるところであります。これらをただ防除対策だけということでなくて、そういうことをしながら、中長期的な、抜本的な対策をとる、こういうことにしていただきたいと要請するわけであります。  大臣の所見を伺って、終わります。
  318. 上野博史

    ○上野政府委員 この猿害の問題が非常に難しい問題であるということにつきましては、委員従来この問題に取り組んでおられまして、我々としてもそういうことについての理解を深めているつもりでございます。  対策につきましても、現在のところ、先ほどのお話にもございましたが、必ずしも十分ではないかもしれませんけれども、それなりのことをやってまいっているわけでございますが、一方では自然保護との調和の問題というようなこともございまして、なかなか思うに任せない事情もあるわけでございます。今のお話も踏まえながら、先行きの問題についてはさらに我々なりに努力はいたしてみたいと思っております。  ただ、被害金額の把握の問題につきましては、猿害を受けた結果品質にどういうような影響があったのか、あるいは個々の被害を受けたものについての単価がどうであるのかというようなことについての把握というのは非常に難しい問題がございまして、金額的な把握をしかねているというのが実態でございます。県と協力をしながらさらに努力はしてみたい、かように考えております。
  319. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 私の方も下北で同じ状況でして、どうも捕獲すると環境保護団体がわあわあ騒ぐし、被害を受けるのはその地区の農民でして、ここのところが本当にどうするか。私もこの農家の実態を見ると、これ以上被害を受けさすわけにはいかぬと思うし、環境保護団体、もっと金を集めて何かしてやるとかというのがあればいいのですが、反対だけには来ますから、いま一つこれは的確にこうすればいいという案が私もないのですけれども、えらい被害を受けているのです。本当に同じような悩みを持っている県がある。  おっしゃるとおり、そういう県が集まって、猿ばかりではないのです、いろいろなもので被害を受ける、ツルによって被害を受けるという県もあるし、総体的にこれはやはり環境庁なんかと基本的にどうするかというのが決まらぬとなかなか難しい問題だなと思っております、申しわけありませんが。
  320. 有川清次

    有川分科員 時間が来たのですが、ただ島とかイノシシとかシカとかと違うのですよ。これなんです。教育がされているのですよ。そして、私は九州が「番ひどいと思っていたら、違うのですね。関東、近畿。我々が森林を破壊した、そういうツケが回ってきておるのですよ。  そういう意味で、林野庁もせっかくお見えですが、答弁はもらう時間がありませんでしたけれども、ぜひ共存できるような、すんでもらう、猿が生息できる条件をつくっていただいて、全国レベルで各県に指導して調査をすれば、さっき被害額はわからないと言ったけれども、鹿児島県が出ているわけだから、それだけの構えがあってやれば大体のものがつかめる。その上に立ってどう対策をするか、こういうことになると思いますので、ぜひお願いを申し上げまして、時間がありませんので、終わりたいと思います。
  321. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて有川清次君の質疑は終了いたしました。  次に、小森龍邦君。
  322. 小森龍邦

    小森分科員 それでは、私の方から質問を申し上げたいと思います。  質問の大体の粗筋は、日本の農村における部落問題、そして今回政府が提案をなさってきた地対財特法の五年延長、事業内容を少し絞り込んでおるようでありますが、そのことに対するいきさつのようなものにつきまして、お尋ねをしてみたいと思います。  まず、今日国民注視の的になっております米の市場開放問題と絡みますが、農林大臣はかなり頑張っておられるということについて私どももよく承知をしておるのでありますが、これは諸外国からすれば、つまり米の生産を行って日本の市場に何ほどかの気持ちを、期待を抱いておるような国々からすれば、一体日本にどれくらいの米を買ってもらおうと思っておるのだろうか。これはしかし、相手のことだから十分わからぬにしても、日本の農水省とすれば世界的な動きからしてどれぐらいかなというような目安でも、数値が予想でもできれば、話の都合上ちょっとその辺のところから聞いてみたいと思うのですが、どうでしょうか。
  323. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 食糧庁がおりませんので、かわりまして私の方からお話しします。  先生も御案内だ士思いますが、世界の米の生産量、これはもみで大体五億トンございます。米という作物は大体が各国で自給するものでございまして、世界の貿易量というのがやはりもみ換算で千三百万トンぐらい、つまり総生産量の三%弱ぐらいでございます。輸出国は限られておりまして、東南アジアの方のタイ、それから最近ではベトナムも少し輸出しております。それからあとはアメリカ、オーストラリア。輸出国はそのぐらいに限られております。  今言いました千三百万トンぐらいの、もみ換算でそのぐらいのものを今四カ国か五カ国が輸出をするということでございまして、現在日本には輸入することを認めていませんので、日本に幾ら売りたいという数字はございませんが、ただ過去において、特にアメリカの精米業者団体が強く日本に市場開放を求めてまいりましたのは、各東南アジアでも今まで米を輸入していた国がございました。例えばベトナムなんかはそうでございましたが、だんだん自分の国でつくるようになる。そうすると、それまで輸出していたマーケットが狭くなってきます。マーケットが狭くなってくると、それを日本に買ってもらいたというような形になってくるわけでございまして、そういう意味で全体的に言えば千三百万トンぐらいの中の一部を日本にというような形だろうというふうに思っております。
  324. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 ウルグアイ・ラウンドの関係で申し上げますと、今官房長からも話がありましたように、量としてはそんな大きなものではないと思います。ないと思いますが、ECから見ると、私は交渉、話し合いをしたことがあるのですが、ECからおいでになった。そのときにECは、ウルグアイ・ラウンドでは日本に米を売る心配もなければ買う心配もない。結局今言ったような、特にアメリカが非常にこの問題には強いのです。じゃ、そこそこに日本に販売した場合にどのぐらいになるかというと、決してブッシュ大統領が言っているように、アメリカの財政のために大きな役に立つか、まあ今貿易の赤字の〇・七%ぐらい、あるいはそれによって雇用労働がふえるわけでもないということから、いろいろ判断してみますと、他の分野もウルグアイ・ラウンドで交渉いたしておりますから、そっちの方ではアメリカが得るものが非常に多い、こう見ていると思うのですね。そのために、米がつぶれると全体がだめになってはいかぬ。ですから、何としても土俵にのせて交渉のテーブルに着けて、そして自分たちの他の分野でも、金融とかサービス、そういうものも成功させたいという考え方があるのだろうと思います。ですから、今先生が御質問の御趣旨とウルグアイ・ラウンドとの関係においては、必ずしも売り買いだけを希望しておるわけではないということは言えると思います。
  325. 小森龍邦

    小森分科員 数量としてはごくわずかであろうということがわかるわけでございますが、我が国における被差別部落の耕地保有面積というのは、去年あたり農林水産省の把握しておる数字を私議事録で見ますと、私の質問に対して答えておるのを見ると、五ヘクタールぐらいで、それは一般の農家に比べたら断然格差がある、こういう説明でございました。私どもの広島県あたりからいくと、私のところは都市近郊だから特にそういうことなのかもしれませんけれども、大体二反百姓ぐらいの程度でありまして、これはほとんどさまにならぬのであります。そこで、減反のときも、そんなにわずかしか耕地を持っておらない者に同じ割合で減反されたら困るということで、かなり県当局や市町村当局と話しまして、多少の具体的な対応というのはやってもらったのでありますが、農林大臣、大分頑張っておられるから大丈夫かなとは思うけれども、もし米が幾らかでも入るということになりますと、それだけまたしわ寄せを食うわけでして、そうすると、わずかの耕作反別しか持っていない者にとっては、そのわずかのことが致命傷になってくる、こういうことになります。要するに、部落差別というのは、その時期その時期の社会的矛盾に最も敏感に反応して、最も被害を早く受けるところ、ここのところを承知しておいていただきたいと思うのですね。  私は広島でありますけれども、広島の瀬戸内海の各地に造船所がございまして、例えば因島というところに因島日立造船所というのがありまして、これはもうほとんど今工場を閉じているような感じでありますが、もう二年くらいしたら造船所を閉じるという段階のときに下請がばたばたっと影響を受けるのですね。その下請の中で最も不安定な臨時工が一番に首を切られるのですね。だから日立という大きな会社が何かの方針を打ち出したら、ちょっと大きい息をしたら、こっちはもう風邪をひいてまちょるという感じになる。それと同じような構造が農村にあるということを承知をしておいていただきたいと思うのであります。  そこで、お尋ねをしたいと思いますことは、農。水省とすればいろいろ問題はあったけれども、長らく同和対策を進めてこられた。今日時点で農村における部落問題というのがどのように変貌を遂げたであろうか。これをどう今つかんでおられるかということをちょっと聞いてみたいのです。
  326. 海野研一

    ○海野政府委員 昭和四十四年の同和対策特別措置法制定以来、私どもいろいろな形で、土地基盤整備事業や近代化施設整備事業、経営指導、いろいろなことをやってまいりました。その結果、施設園芸や畜産など余り土地を必要としない分野では、他の農家と遜色のない経営も随分できてきております。  ただ、何といっても今御指摘にございましたように、そもそも面積が小さいという問題がございまして、もちろん面積が小さいといっても、その小ささの下限は県によって随分違います。特に、他の農家について見た場合、中国、四国というところは一番面積が小さいところでございますので、そういう中でさらに小さいのだろうと思います。現在、全国の同和関係農家の平均で申しますと五十三・三アールということで、五年前の五十一・四アールよりは多少ふえておりますけれども、都府県の農家総平均七十八・三アールに比べましてまだまだ低いというふうな状況にございます。先ほど申しましたような施設園芸や畜産にかわれるところは、それなりの面積でそれなりの営農ができるわけでございますけれども、そうでない場合には、何といっても経営面積が小さいということが致命的な足かせになります。  そういう意味で、農業経営の近代化、経営の規模拡大ということを図っていく上で、なおまた不利な状況にあるというふうに考えております。
  327. 小森龍邦

    小森分科員 そこで、これは農水省に限らず建設省とかほかの事業省庁にかなり力を入れてもらっておるのですが、我が国の同和問題をまとめるまとめ役の総務庁というのがどうも事業を切ろう切ろうとしていかぬですね。今回も格好よく一般行政への円滑な移行というような言葉を使って切ろうとしたわけですが、ついにそのたくらみは挫折をしてしまいまして、そして余りにもいろいろなまだやらなければならぬことがあるので、地対財特法は延長しなければならぬということで、閣議の決定もあり既に国会に提出されておる。恐らくこれは二十六日に内閣委員会審議をして、日切れ法案の扱いで今年度中には成立をすると思いますが、いろいろな省庁が自分がやらなければならぬ仕事というものがわかっておるのに、どうして五年ぐらい前からこんな雰囲気になるのでしょうか。農水省も表向きは事務次官が地域改善対策協議会に出られるわけでしょう。どこの省庁もそうなのですけれども、省庁別に個別にいろいろと聞いてみると、いや、やらなければならぬことがたくさんありますと言うのに、あの地対協の会議へ出ると総務庁に押しまくられる。私はきのうでしたか、総務庁に大分きついことを言ったのです。君らは差別をなくそう思って頑張りおるんかと言うたのですけれども、その辺、つまりやってもらっておる面については私は感謝をするけれども、そこのところのふがいなさですな。地対協へ出る、表向きは事務次官が出たということになるが、本当は出たことがないと思うのですけれども、どうしてそこは非常にふがいないことになるのでしょうか。
  328. 海野研一

    ○海野政府委員 今回延長法案の出ておりますいわゆる財特法の対象でございます昭和六十二年から平成三年度にかけてでございますけれども、この五カ年の間に農林省といたしましても、当時六十一年度に調査をいたしまして、必要となる事業を一応把握いたしまして、それだけのものは、その五年の間に全部やってしまいたいということで努力をしてまいってきたわけでございます。  ただ、実際には、特に私どもの事業土地基盤の整備その他につきましては、関係所有者、利用者の権利関係の調整もございます。それから、その他私どもの事業に限らずいろいろなもので用地の取得の問題などもございます。そういう意味で、まだ当時考えていた事業実施されないものが残ってしまったということで、気持ちとすれば、そのとき考えていた事業は全部本年度までにやりたかったわけでございますが、やれないものが残っている、残っているものについては今後実施をしていこうというようなことになったものだと理解しております。
  329. 小森龍邦

    小森分科員 去年のこの分科会政府委員答弁を見ますと、今お話しになりましたように、「地対財特法の期限内に所要の事業を完了できるように最善の努力をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。」去年の段階でこう言っておるのですね。これは言葉としては通るのですよ。しかし、それから三、四カ月しないうちに、七月の段階で地対協の会長が、来年も予算を組んでもらわなければ困りますよという意味の地対協会長談話という、苦肉の策ですね、そういうものを発表せざるを得ない。だから、本当の意味のこの問題に対する議論なりあるいは政府の構えなり、それぞれの省庁の構えなりができていないのじゃないですか。どこかの言うことを気にして、本当はこう言いたいのだけれども、言ったらにらまれるということもないが、何か自分だけ突出しておるように思われてはいかぬ、そういう微妙な空気が流れておるのではないでしょうか、どうですか、それは。
  330. 海野研一

    ○海野政府委員 この地域改善対策自体は、省庁を横断して各省庁足並みをそろえてやっていく事業でございますので、何といいますか、一省だけが突出してやるとかやらないとかいうわけになかなかまいらないという性格のものもございます。そういう中で、いろいろ各省庁の事業のこなしの事情などを踏まえて、さっきおっしゃいました地対協会長談話というようなことで、各省足並みをそろえて残事業量の処理のためにい平成四年度以降も実施していきたいというようなことになったものだと考えております。
  331. 小森龍邦

    小森分科員 こんな質問は非常に答えにくい質問ですので、私も同じ質問は繰り返しませんけれども、大臣にぜひひとつこれは聞いておいていただきたいと思います。  去年のこの分科会で、やはり近藤農水大臣が一般行政への円滑な移行みたいなことを言っておられるのですよ。まるで流行語のごとく言っておるのですね。それから甚だしきは、地対協の意見具申がもう一カ月ほどしたら出るという十一月の十日ごろではなかったかと思いますが、我が党の田邊委員長の代表質問に対して、宮澤総理がまた同じことを答えておるのです。知らぬは亭主ばかりなりという言葉がありますけれども、宮澤総理は、これは完全に総務庁の役人に乗せられておるというか、書いたものを読まされておる。もうそのときには私らは総務庁の地対協の審議状況をちゃんと知っておりますからね。だから、これはいずれにしても、会長談話の緑もあるし、法律はつくらねばならぬということになるという、一つの行政の状況の必然性みたいなものを私は確信を持っておりましたが、総理大臣にそんなことを言わせておるのですね。  だから、これは農水大臣を前にして総務庁をけなすというのもおかしいですけれども、しかし地対協の委員として、農水の事務次官が表向き出たということになっておるのですから、そこはよく考えてもらって、虚構状態で虚構の議論をオウム返しのように言うというのは、適当に私はこの辺でピリオドを打つべきじゃないか、こういうふうに思うのですね。  どこかの省庁を相手にして、私このたびは八つの分科会全部回って話しましたけれども、どうして残事業量がこれだけだと言ってからまたふえるのですか。それは今あなたがちょっと言われた、いろいろな事情で残ったものがあるというような意味のことを言われましたけれども、国全体からすれば残ったものじゃないでしょう。残った事業というよりは、後から気がついてやらねばならぬという事業なんでしょう。農水の中にそういうものもあるでしょう。だから、それは答えていただかなくてもよいんですけれども、こう小刻みでは、憲法的原則だと海部前首相も言われながら、そして今の宮澤総理も本会議でたびたび言われましたが、憲法的原則、人は生まれながらにして自由であり平等である。「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」というあの憲法の条文を読みながらたいがい総理大臣は答えられたのですね。それがどうして小刻みに小刻みに、当事者の団体が少しでも気を緩めたらぐっと押しまくって、問題を未解決のままにしようということになるのか、どうも私はそれが不思議でいかぬのですよ。こんなことを長く続けておったら、日本の政府は部落差別をてこにいろいろな行政をやっておるのか、こういうようなことになるので、私は農水大臣とこういう格好で私の言うことを聞いてもらうというのは初めてですが、そこはひとつその辺のところをよく大臣聞いて、聞き分けていただいて、余り小刻みにその場逃れのことをするのでなくて、どうしたところで問題が完全解決をするまでは我々は断念しませんからね。一寸の虫にも五分の魂ですからね。差別が続いておって絶対にそれでよいということにならぬのでありますからね。だから、小刻みというのはやめてもらいたい、こういうふうに思うのです。  そこで、小刻みというのは御承知でしょう。一九六五年に同対審答申が出て、それから四年間ぐずぐずして、同対審答申には法律つくれと言っておるのに、四年間延ばして、我々はもう我慢し切れなくなってちょっとがたがたやって、そして私どもの団体の委員長と時の総理大臣や官房長官が会って、いや法律つくるからということでできたのが同和対策事業特別措置法。これは前期五年、後期五年という全体の十年の間に解決つけるのだ、こう言ったけれども、もともと本当に解決づけようという気持ちがないから、本当にしっかりした実態調査やらなかった。それから、同時にまた、日本列島にはおよそ六千カ所の部落がありますけれども、まだ部落民だということが表面に出ていろいろなことをやると、生涯のうちに随分不利益なことになると思って肩をすぼめて生きておる者、そういう者はずっと除外してきた。そういうようなことでこうなっているのですから、やはり根本的に解決するということが私は大事だと思うのですね。  それを今のところは、残事業があるから地対財特法を延長しなければならぬというところまでは、あの壁を私らは破ったと思っていますが、一般行政への円滑な移行という、だがまだ流行語のごとく基本法はだめよ、こんなことを言う者がおるのです。我々は断念しないけれどもね、根本的に解決つくまで。この五年間で本当に解決つきますか。まだ未指定地域千カ所あるのですよ。未指定地域に今の制度の適用ができますか。時間がだんだんなくなりますから、そこのところちょっと答えてみてください。
  332. 海野研一

    ○海野政府委員 私ども、現在想定されています事業は何とかこの五年間でこなしてまいりたいというふうに考えております。  今未指定地域の話でございました。今おっしゃったような、いろいろな事情から要求できないというような事情もあろうかと思いますけれども、各地域として事業実施の希望のあるものは六十二年までの十八年間に一応確認をされたというふうに考えておりまして、今後未指定地域から事業の要望がもしあった場合には、一般対策の中で実施してまいりたいというふうに考えております。
  333. 小森龍邦

    小森分科員 大臣、ここのところをちょっとよう聞いておいてくださいね。一般対策でやると言われるんですけれども、確かに一般対策でもできぬことはないでしょう。しかしながら、所によっては、その村の村長とか村議会とか町長とか町議会で、おまえ今ごろ差別がないのに部落部落言うな、こう言って押さえ込むのがおるわけです。それで事業が出しにくいという点も一つあるし、もう一つは、同和対策の特別の補助率でもってやれば多少有利であるのに、一般対策でやったら不利ですから余計押さえ込むんです。ついに三十年たとうが五十年たとうが問題が解決つかないということになるんですね。だから我々は部落解放基本法ということを言っているんです。  大臣、昔から六千部落三百万というんですが、まあ三百万というのはどうもあいまいで私よくわからないのであります、解放同盟の書記長だけれども。三百万という数字はちょっとあいまいで、ごろ合わせみたいになっているけれども、六千部落というのはほぼ六千部落なんですよ。そのうち今四千六百三部落が指定されておる。一千部落は寝た子を起こすな、こうなっておるのです。しかし、寝た子を起こすなでは問題は解決つかぬのです。しかし、それは部落の人のその歴史的時期における選択だから、それは大臣の立場からあれこれ言われないと思うけれども、問題は、それがそのまま残されていて日本の部落問題が解決つくと思いますか。これはちょっと大臣、あなた答えてみてください。
  334. 海野研一

    ○海野政府委員 大臣がお答えする前にちょっと一つ触れたいと思います。ここのところの考え方は非常に難しいと思います。その地域の人たちの幸せのために、今おっしゃった寝た子を起こすなという問題、これも考えようによっては大事な点だろうと思いますので、この辺のところ十分考えていかなければならないだろうというふうに思っておりますが、ただ、先ほど申しましたように、そういう地域事業をやりたいということがあった場合に、一般対策で何とか必要な事業ができるようにしてまいりたいと思っております。
  335. 小森龍邦

    小森分科員 大臣の答弁の前にちょっともう一つ。それちょっと考えが違うのは、同和対策審議会の答申は、寝た子を起こすなという考え方にくみすることはできない、積極的に揺さぶりを起こして、そして物事を真正面から、差別を受けておるということを真正面から見詰める力をつけていかなきゃいかぬということなんやね。これは総務庁長官、去年私が質問をする前にほかの人が質問されたときに、いや、そんなことやったらまた新たな差別事件が起きる言うから、寝た子を起こすなというのは、差別がきついから寝た子を起こすなということを言っておるので、自然にほっておいて寝た子を起こすなという気持ちになっておるんじゃないので、問題は差別が厳しいから当面の防御措置としてそうなっておるんだということを理解してもらわにゃいけませんよ。その価値判断は同対審の原則を言うにとどめますけれども、大臣、六千のうち千残っておって、客観的に答えてもらえばええんですよ。だれが見てもわかることやな。六千のうち千、行政的に何の手だてもせずして日本列島におけるこの四百年続いた部落問題が解決つきますか。
  336. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 私は不勉強で申しわけないのですが、余り私の方にはないものですから。そういうことで、話だけはいろいろ伺っておりまして、就任早々一番先に視察に行きましたのが福岡の田川市でありました。その市長さんに御案内いただいて、その農村の地域説明を受けた。これが初めてでありますよ、本当に、率直に申し上げて。  ただ、先生のお話とちょっと、私は見た場所がそういうことだったのか、大変意欲的に堆肥をつくって一生懸命やっておるのを見て、私はびっくりしました。私も農薬を使わない農業をやれやれと言って、地元でも言っておるんですが、堆肥は大事だ、これからは。私の青森県ではそういうのをやっているのがおるかもしれませんが、余り聞いたことがない。それをやっておったのを見て実はびっくりして帰ってきた。ただ、今いろいろと説明を聞いておる中で、耕作面積がすこぶる小さい、稲作に依存しているというのを聞いて、確かにあの周辺も水田が多かったように思います。ですから、あれだけの堆肥つくってやるんですから、もっと生産の上がる、収益の高いものをやったらいいのになと思って実は帰ってきました。  ですから、単純に六千がどうのこうの言われても、現地見ておりませんので、どういう状況になっておるのかというのはわかりませんからお答え申し上げにくいんですが、状況がわかれば、これももっとこうだという判断がつくと思うのです。機会がありましたらまた視察をさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、最初にこの視察をしたのがここでありましただけに、私の印象というのは逆な印象で実は帰ってきたわけであります。
  337. 小森龍邦

    小森分科員 時間がないからやめます。今農水大臣が視察したところとは全く逆のことの部面を私は言っておるので、また機会を改めてひとつやらしてもらいます。どうもありがとうございました。
  338. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて小森龍邦君の質疑は終了いたしました。  次に、仙谷由人君。
  339. 仙谷由人

    仙谷分科員 日本社会党・護憲共同の仙谷でございます。  国営かんがい排水事業の農家等と市町村の負担について質問をさせていただきます。  過去二年間毎年、私の地元でございますが、徳島県に吉野川北岸用水という極めて立派な農業用水ができ上がったわけでございますが、種々の問題が存在するわけでございます。大変な問題に政治的にも社会的にも現在なっておるということでございます。大臣の地元にも国営かんがい排水事業おありになるようでございます。農家あるいは農村がそれほどいい環境で今農業経営といいますか、農業に従事しておるわけではない。いろんな矛盾を集中的に農村にしわ寄せ受けながら何とか農業を守っていこうという方々が多いわけでありますが、今この徳島県の吉野川北岸用水というところで一昨年、昨年、この間に不払いあるいは訴訟という格好で負担金を払えない、払わないというふうな農家がどういうふうにふえているか。つまり推移をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  340. 海野研一

    ○海野政府委員 この吉野川北岸地区は平成元年度に完了いたしまして、平成二年度から負担金の償還が開始されたところでございます。実は平成三年度まだ終わっておりませんので、平成二年度の負担金について申しますと、平成三年度が終わる現在になってまだ一四%が未納であるというような状況であると承知しております。
  341. 仙谷由人

    仙谷分科員 訴訟を提起されておるのはどうですか。
  342. 海野研一

    ○海野政府委員 訴訟は現在までに五百七十八人、受益者全体の約四%でございますか、五百七十八人から訴訟が提起されておるというふうに理解しております。
  343. 仙谷由人

    仙谷分科員 私の存し上げている限りでは、そして昨年のこの分科会でもお伺いしましたときには四百四十九名であったわけでございます。それが五百七十八名ですか、ふえているわけでございます。  そのほか、各町村議会で農家の吉野川北岸用水についての負担が議論されて、決議をされたり、あるいは地方行政とし三」ういうふうに取り組もうということが行われておるかどうか、御存じの範囲で結構でございますが、お聞かせをいただきたいと存じます。
  344. 海野研一

    ○海野政府委員 この事業につきましては、地域の営農全体の問題もございますけれども、農家の負担金支払いがなかなか困難であるというようなことから、都道府県、市町村、両方において農家貧。損の軽減のために負担をしなければならないという動きがございまして、現在、都道府県では、通常の事業の場合の都道府県負担分よりも大きな割合で負担をしておりますし、各市町村も既に三%の負担をするというふうになっていると承知しております。
  345. 仙谷由人

    仙谷分科員 各市町村も三%の負担をするようになった。それから国、県の負担も、逐年といいますか、年ごとに増加をしておる、こういうことではないかと思いますが、何といいましても、大臣に申し上げておきたいのですが、当初の計画が総事業費百四十七億円が六百九億円になった。年数としては七年の工期の予定が十九年かかった。当初の農家負担の予定は十アール当たり三千円だったのが、私が承知している限りでは十アール当たり二万円強。米なんかつくっていると、何のために米をつくっているのかわからぬ、そういうのが一つの状況でございます。  それからもう一つは、まだ幹線だけで支線が引けてない。つまり、状況が変わったことのほかに、現在、その水を使おうとしても、客観的にとても使える状況になってない、こういうことがあって、農家の方も払いたくないし払えないという状況が続いてきたわけでございます。  そこで、農林省の方でも、あるいは県、市町村の方でも努力していただいておるようでございまして、平成二年、三年、そしてことしと、十アール当たりの農家の負担金がどのくらい減ってきておるか、それはおわかりになるでしょうか。あるいは十アール当たり何円だったという話で結構でございます。
  346. 海野研一

    ○海野政府委員 農家の負担金でございますが、これは一律に申してもあれかと思いますが、一番高いところで申しますと、国営事業そのものの負担金が十アール当たり四千三百円、維持管理費が三千七百四十円というようなことになっていると聞いております。
  347. 仙谷由人

    仙谷分科員 平成元年からでは、国営事業分の約二千円ぐらい安くなっておると考えればいいのでしょうか、そういうふうに思いますが、この負担金ですね。負担金の軽減という方法ではないけれども、実質的に負担が減るようなことのできる土地改良法の改正が昨年行われたということです。地方財政措置がある要件を満たせば行われて、実質的に農家の負担が軽減する、こういう仕組みができたというふうに聞いておるわけですが、それを素人にわかりやすく説明していただくとどういうことになりましょうか。
  348. 海野研一

    ○海野政府委員 土地改良事業についての負担関係は、従来は、原則的には国が持ち、県が持ち、あと農家が持つという格好が建前になっておりました。やはり農村地域での混住化という中で、いわば地元負担分を農家だけが持つというのが必ずしも適当でないというような、この事業自体の公益的な効果などの増大を背景にしまして、市町村が一部持つという動きが出てきたわけでございます。  そういう意味で、私ども所管省と一緒に検討を行いまして、市町村が持つ場合、特にダムその他公共性の高い施設については、市町村の持った分のいわば償還額の一定部分について、事業費補正と言っておりますが、普通交付税が面積割りで配られるのではなくて、その償還をした実額に応じて交付税が市町村に渡されるというような仕組みができたわけでございます。
  349. 仙谷由人

    仙谷分科員 私も国営かんがい排水事業に係る地方財政措置の図表になっておるものを拝見いたすのでありますが、容易にわからない複雑な仕組みになっておるようでございます。  結論の部分で結構でございますけれども、結局、常識的な言葉で言うと、肩がわりと言われておるようなことでございますね。これを市町村が行ったという場合には、市町村には地方財政措置がなされて、市町村の負担分も、その肩がわりした分については実質的にほとんどなくなるか、もしくは全くなくなるというふうな措置が、ある要件のもとに、つまり公共的な意味合いといいますか、公共的効果がある施設については、そういう財政措置がなされる、こう理解してよろしいですか。
  350. 海野研一

    ○海野政府委員 私ども力足りないのか、まだほとんどなくなるというところまで行っておりませんで、特に、本来の交付税の分を別にしまして、事業費補正の分だけとってみますと、ダム、頭首工その他の公共性の高いものについての三五%が交付税で見てもらえるということでございます。
  351. 森元恒雄

    ○森元説明員 ただいまの件につきまして補足して御説明申し上げたいと思います。  従来は、土地改良事業につきましては、国の負担と地方の負担というものが決まっておるだけでございまして、地方の負担についての県、市町村あるいは農家の負担割合というものが明確に決まっておりませんでした。そういう関係もございまして、私どもの方では、地方団体に対する財政負担については、各都道府県なり市町村が、実際に日本全国の市町村、都道府県が負担している実額を一つの基準によりまして配分をしております。  そうしますとどういうことになるかというと、実際に事業をやってもやらなくても、これは交付税の性格もあるわけでございますが、各団体に配分されております。そうしますと、勢いたくさん事業をやるところには余り交付金が来ない、余り事業をやってなくても交付金がそこそこ来る、こういう状態でございます。しかし、これでは各都道府県なり市町村の負担が重くなりまして、たくさん事業をやっているところがその負担に耐えかねるという点がございまして、その実態に即した措置をした方がいいのではないか。これは地方団体あるいは農林省の方からもそういうお話がございまして、いろいろ検討いたしました結果、ただいまお話ございますような一部事業費補正というものを導入いたしまして、県あるいは市町村が負担をしやすくした、そういうルールをつくることによって、結果的に農家負担が軽減されるような道を開いたというふうに私どもとしては考えておるところでございます。
  352. 仙谷由人

    仙谷分科員 昨年からことしにかけて、北岸用水沿岸関係十二町ということになっておるわけですが、十一の町が実質的な肩がわりの決議をしたり、もうその措置に入っておるところもあるわけでございます。支払いが始まってから三年がたっておるわけでございまして、私は、この種の問題は、未納者がどんどんふえてくるとか、あるいは未納者そのものの金額が累積してくるということになりますと、農家間の感情問題も出てこようと思いますし、あるいは隣の町は町村が負担をしてくれるのに、要するに町の境界なんという線はございませんから、ところがこちらの町では依然として負担をしなければいかぬ、いろいろなややこしい問題といいますか、解決困難な問題が出てくるんではないだろうか。この種の問題はできるだけ早く、政治的といいますか行政的な解決をしなければ、政争の種にまでなるのでは大変困ったことになるだろう、そういうふうに考えておるわけであります。  徳島のこの吉野川北岸用水については、何か全市町村が今おっしゃった徴収のルートを市町村に変える、改良区ルートから市町村ルートに変えるという決議をすれば、農家負担は実質的にますます軽減をされるということになるというふうに伺ったりもするのですが、そのことがそうなのかというのが一つ、それと、何かその点について、今年度じゅうにそういう決議をしなければいけないというふうな話も聞いたりするのですが、それはそうじゃなくて、別に今年度じゅうということに限らない、いつやってもいいんだ、その次の年度から始まるんだということなのかどうなのか、それを一つお聞かせをいただきたいと思います。
  353. 海野研一

    ○海野政府委員 今の市町村ルートヘの切りかえという問題、これは実は平成二年からこの制度がスタートいたしましたために、平成二年以降に事業が完了するもの、これを大体頭に置いた制度でございまして、六十三年、平成元年に完了した地区につきましては、その辺の扱いが、いわば既に負担が始まってから乗りかえるというわけでございますので、多少複雑になっておりますが、おっしゃるとおり、全町村が市町村ルートに変更するということでないと、この今の制度に乗れないわけでございます。  ただ、別にこれは平成三年度中でなければ締め切りでだめだというようなわけではございませんけれども、今先生御指摘のような事情から、こういうものは少しでも早くに動いた方がいいというようなことでございます。ただ、町村の負担というものは、あくまでもその各町の自主的な判断によるものでございまして、私ども干渉がましいことはできないわけでございますが、しかし、特にこの土地改良法改正の経緯とか地方財政措置などの内容を十分説明をして、関係可及び関係者の間の話し合いが円滑に進められるようにしてまいりたいというふうに考えております。
  354. 仙谷由人

    仙谷分科員 そこで、町村がやはり負担をするということになりますと、住民に対する説明が多少必要になるわけですね。例えば、ここに私が持っております地元の新聞記事ですと、昨年十二月に町議会が開かれて、多目的利用が必要なんだ、そういうことが町議会で議論されて、町長もそういう答えをしておるというところがあるのであります。いわゆる水利用の問題としまして多目的利用というふうなことが、直ちにではなくても、将来的に実現可能性があるということならば、町議会もあるいは町長も、とりあえず今の段階で負担金の肩がわり的なことをやろうかなということになる、あるいは徴収ルートを市町村に変えるということになってくるのじゃないかと思うわけであります。この多目的利用につきましては、一昨年のこの分科会で私が山本農林大臣にお伺いしましたら、勉強させるけれども甚だ難しいというお答えでございました。昨年またそういう質問をしましたら、何とかしたいというふうな感じの雰囲気もあったわけでございますが、この農業用水、もっと問題を矮小化して言いますと、農林省の予算でつくった用水は、そこを流れる水は工業用水にも上水道にも使えないんだという、まあ国民の目から見ますと甚だ不都合なといいますか、つまり農業用水に使う水量が変わって住民が上水に使う必要が時代状況の変化とともに出てきても、工業用水に使わなければならない、使った方がいいんじゃないかという問題が出てきても、依然としてこれは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律でございますか、それがあってできない、こういう議論があって、がんじがらめになるわけであります。しかし、やはり時代はもうそんな縦割り行政万能の発想ではとてももたないのではないか。農村は特に人口構成から生活基盤から動いておりますので、もたないということで、農村の活性化、あるいはもうと言いますと、農村に農地が健全に存在するだけでも、文化的あるいは環境保全意味合いを含めましても、いろいろな意味合いがあると思うのですね。そういう観点から、この多目的利用に推移できるように、私はずっと以前からお願いをしておるわけですが、その点について、農林大臣、お考えがございましたらひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
  355. 海野研一

    ○海野政府委員 確かに農業用水ということでやった事業でございますけれども、経済事情というものはいろいろ変わってくるわけでございまして、そういうときに、これは農業用水としてつくったのであるから、未来永劫農業にしか使ってはいけないんだということを言うつもりはございません。ただ、現在のところ、土地改良区としては、特に畑地かんがい用水というのは、これは一つは保険みたいなものでございまして、平時はほとんど使わない、干ばつが来たときにはこれがなかったら大変だというようなことがございます。そういう意味で、ある意味では、各農家の意見というのと土地改良区としてまとまったときの意見と違うかもしれませんけれども、そういう観点から、土地改良区としてはやはり干ばつ等勘案した場合に現在だけの水量は確保しておきたいというふうに言っておりますが、今後例えば水田と州との関係が変わってくるとか、農地転用等によって農業用水の使用量が減ってくるというような状態があった場合には、他種用水の要望の状況に応じて県や土地改良区、国なども入って相談をして、本当に水が有効に使われるようにしていきたいと思います。
  356. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 今局長お答えになったとおりでありますが、私たちも身近な例で見ておりますと、よその方はよくわかりませんが、都市化がどんどん進みましていろいろな問題を起こしております。農地転用、自動車の販売会社を建てるとかなんとかというと一々これは問題になりまして、そういうことではそこそこで何とか解決をしているのでしょうけれども、いずれにしても、農家の皆さんが負担をしている、あるいは維持管理もしていくという中で、ほかの人が全然負担なしで使えるというところに問題があるようであります。いずれにしても、何とか解決しながらその方々にも負担をしていただいて維持をしているという例等もあります。ですから、今先生のお話しのところの例、私の方にもやはり工事が長引いて問題を起こしているところがあります。ありますけれども、人がいいのかどうか、文句言いながらも払っているところは随分ありますが、決して先生の方が人が悪いという意味で申し上げているわけではないのですが、そういう問題はあります。  したがって、基本的に農家の負担の軽減というものをどうしようかということで、実は私が党のべトコンの幹事長をいたしておりまして、米価の問題のときにこの負担問題の軽減の話が出ました。平成元年ごろであったと思いますが、計画償還制度というものを設けてもらった。今団体の方も各県ばらばらでありまして、これも自治省と話をして一律にして、平成三年度も一部やるところがありますが、自治省には大変苦労をかけました。  いずれにしても、全体これから先の話で、私の夢物語として聞いてほしいのですが、どうも私もこれは気になるところでありまして、これから本当に超優良農地等をつくる場合には何とか負担金の問題を解決していかないと、確かに個人に補助金をという問題、財産に問題はあります。ありますが、本当に未来永劫に農地としていくのだということになると、個人といっても個人が勝手に別なものに使えないという問題等があって、協力してみんながやっていこうというところについては何らかやはり研究する余地があるなどいう感じがいたしております。
  357. 仙谷由人

    仙谷分科員 これで終わりますけれども、要するに本件の場合は払いたくないとかなんとかということだけじゃなくて、二十年かかってやった。吉野川の水というのは香川県に水資源開発公団がつくった用水路を通じて流しておる。それはもともと多目的なものですから、これは農家負担がもともとゼロだという話なんです。それから、当初計画からしますと、農地に使っている水量は今幹線が通じてももともと少なくて、水からいえば余っているという状況が元来あるわけです。  そういう状況の中で、とにかく農林省の予算でつくった用水は絶対にほかのところへは渡せないのだという話があるやに私は聞きますから、それはもうそろそろ、去年聞きましたときには何か愛知用水ではそれをうまく調整してほかに振り向けている例もあるということです。やる気になればできるという話ですから、農林大臣にもこの点十二分に考慮をしていただきまして、吉野川の北岸用水の水が多目的にも使えるような方向に動き出していただきたい。そうすると、結果としてこの農業用水負担というのですか、要するに農家の負担金が当然のことながら減ってくる、こういう仕掛けに私はなると思うのです。ひとつその点重々お願いをいたしまして質問を終わります。どうもありがとうございました。
  358. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。  次に、谷村啓介君。
  359. 谷村啓介

    谷村分科員 農林業についての基本政策についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  前大臣のもとで、新しい農業・農村政策を中長期的に展望するために新政策本部を省内に開設するにど積極的な姿勢を示しておられましたが、現大臣もこれを継承してやっておられるのかどうか、まず確認をさせていただきたいのでございます。     〔主査退席、佐藤(謙)主査代理着席〕
  360. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 前大臣が、これはもう大分以前からでありますが、私ども米価のときに、いつも米価のときだけ慌てて農業対策をやるのは問題がある、じっくり腰を据えて基本的な政策をやろう、近藤大臣が党の方の部会長で私はベトコンの幹事長のときに、そういう話をしたことがあるのです。近藤前大臣が就任してこれをおやりになったということで、私はこれは本当にいいことだ、こう思いまして、まさか私がその後を受けると思っていませんでしたが、就任いたしましたので、前大臣の計画したことを立派に花を吹かせてやらなければいかぬ、こういう気持ちで今心構えを持って対処しているわけであります。今案をつくっていろいろ検討しておりますので、いずれ方向がまとまった段階でまたこれに肉づけをしなければいかぬわけですから、十分先生方の意見をお伺いして、二十一世紀につながるという見通しで誇りと希望を持って若い人たちがやれる、今の人たちから多少恨まれることがあるかなと思っても、本当に先のことをみんなで考えて立派なものにしたい、こう考えております。
  361. 谷村啓介

    谷村分科員 今肉づけというお話がございましたが、新政策は具体的に何を目指しているものなのか、簡単に御説明願いたいわけでございます。  三十年前の農基法のように、財界筋といいますかそのシナリオに沿うというようなこと、そんな感じがいたしますが、あるいはMSA小麦協定の受け皿というようにアメリカとの関係の有無について懸念を抱く向きも実はあるわけでございますが、その辺も明確に御説明を賜りたい、そういうふうに思います。
  362. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 これを熱心にやる余りにそういうお話もありますし、ウルグアイ・ラウンドのことを言う人もおります。ウルグアイ・ラウンドがあろうがなかろうが、このままで日本の農業はいいかというと、いいと思っている人は恐らく先生方の中にも余りいないと思うのですね。何とかしなければいかぬというこの何とかは、農業従事者が高齢化しておる、出生率が低下して、卑近な例で申しわけありませんが、かつては私の親戚やいとこたちでも八人も十人も子供が生まれたわけですが、最近はやはり都市並みに一人とか二人なのですね。私の本家も女の子二人で、一人はお婿さんもらったけれども農家の跡を継がない、下の方は嫁にやるということで、今一代でこれは終わり、そんな例がいっぱい。私の親戚だけを見ても、おばのところも、長男が市役所に勤務、あとは女の子が二人ですから嫁に打っちゃった。下のおじのところは、学校の先生、一人は警察官、女の子が嫁いだ。こういうことで、こういうのを見てもいかに担い手の育成が重要かということに着目をして考えているわけてあります。  特に土地利用型の農業、とにかく米や畜産もそうでありましょうが、この生産体制を確立して、何とかいま少し、もうからぬところに若い者が、幾ら頑張れ頑張れと言ってもやはり嫌だ、他産業の方がいい、こういうことになりますから、何とかもうかるためにはとにかく適正な規模のものをつくって、中山間地はまた別ですが、そういう中で通年働けるような環境をつくる。  ですから、この問も私が表彰した人は、夫婦で十九町歩耕作していますというので、これも立派に成功している。そういうのを見ると、適正な規模に何人で働けばどれだけの経費がかかってどれだけの利益が出るかという計算ができてくるだろうし、そうなると、何といっても経営感覚といいますか、企業みたいにやはりこれから日本の農業もきちっと帳簿もつけて、そして、もうかった、損したというのをはっきりして、何でもうかったのか、損したのかということがわがらぬといかぬ。それから機械も、今のまま少ない耕地を持ってもみんなそろえるということはやめて、何とか機械の、公社になるかリース会社がいいかあるいは受委託をする会社がいいか、そういうものも若い人たちにやっていただく、あるいは生産したものを加工してやるのも若い後継者の人たちにやっていただく。そういういろいろなところで考えていかなければいかぬだろう。したがって、今高齢者の人がやっていることをそのまま踏襲するのではなくて、もう機械も導入、機械というのはパソコンやコンピューターやいろいろなものを導入して何か少しやる方法を考えてあげたいと思っているわけであります。  また一方、そればかりでいいかというと、農村の環境というものをもうちょっとよくして、都会からもどんどん来れる――いいものはあったわけですね。水車小屋とか昔の農家のうちとかそういうものは残して、みんなが見れる。いろいろ考えているわけです。もう既に予算で今回お願いしているものもありますが、いずれにしても嫁が来ないということでありますから、嫁さんも喜んで来れるように、都会の人たちも農村に住んでみたいと思うような環境をつくる、この両面で努力をしてまいりたい、こう思います。
  363. 谷村啓介

    谷村分科員 私、この際大臣に改めてお尋ねしたいわけですが、農業基本法の果たした三十年間の功罪といいますか、成果あるいは結果といいますか、そういった点をどのように評価をされておるのか。私どもは、零細な米作農民や中小畜産農家、小規模酪農家などの立場に立ってみる場合に、低米価政策から米の減反政策の犠牲になったり、アメリカの余剰農産物としての飼料穀物の消費拡大に加担させられる橋渡しとしての農基法の機能しか見えてこない、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、そんな感じもするわけでございます。大臣の所見いかがでしょう。
  364. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 農業基本法は、何といっても国の農業に関する政策の目標として、農業の生産性の向上でありますとかあるいは農業従事者の所得の増大を掲げて、制定後いろいろなことを実施してきましたが、中でも酪農、養豚、採卵鶏など畜産や園芸施設、この分野を中心に生産性は非常に向上した、こう思っております。農家総所得が勤労世帯を上回るなど一定の成果を上げたということもありますが、もう一つは、経営規模拡大がおくれている稲作とか麦、大豆などの土地利用型農業についても、各地で農家の創意と工夫のもとに一定の生産性の向上というものが取り組めたと思います。  一方、農業をめぐる環境というものがこの近年大きく変わってきたことも事実であります。特に、担い手の減少あるいは農業構造の変動が大幅に生じておる。このために、中長期的な展望に立って、今先ほど私がお話し申し上げたようなこのことを何とか総合的に見直しを進めていきたいということを考えております。
  365. 谷村啓介

    谷村分科員 次に自給率の問題ですが、日本の食糧自給率、これを大臣としてどうお考えなのかということでございます。その中で、自給率の向上についてどの程度の目標というものをお持ちなのか。この点もぜひ伺っておきたいと思うのであります。
  366. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 日本における自給力の低下、これはもういろいろ考えられるわけでありますが、何といっても食糧消費が多様化してきた。米がだんだん減少してまいりまして、畜産物の消費がどんどんふえていっておる。そういうことで勢い飼料穀物が輸入に依存せざるを得なかった。そういうことで低下傾向にあったわけでありますが、お話しのように平成二年度に供給熱量で四七%と実はなっておるわけであります。しかし、何といいましてもこれを、閣議でも平成二年に決めましたけれども、西暦二〇〇〇年に何とか農産物の需要と生産の長期見通しては五〇%にカロリーベースでこの自給率を見込んでいる。わずか三%でありますが、いろいろとこれは相当力を入れませんとなりません。しかしながら、今申し上げておるように、これを達成しようとすると、担い手の育成あるいは生産基盤の整備を図る、あるいはバイオテクノロジーの先端技術開発普及、こういうものを一緒に進めながら何とか五〇%の自給率を達成したい、二〇〇〇年までに達成したい、こう思っております。
  367. 谷村啓介

    谷村分科員 現在カロリー計算で四七%ですね。今の大臣の答弁によりますと、二〇〇〇年までに五〇%にする、先進諸国と比べた場合でも余りにも目標が貧しいのではないかという気がいたしますが、外国との比較でどうお考えでしょう、大変困難なことはわかっておりますが。
  368. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 一番の問題は、農地に限界がありまして、米も自給する、あるいは消費者がだんだん肉を好むようになった、飼育がどんどんふえておりまして、そのためにはえさをどうするかということになるわけですね。限られた国土でえさを貯えないものですから輸入する、輸入するとこれが多くなるものですから、どうしてもそういう現象になっていくということではありますが、まあヨーロッパ、先生もおいでになったことがあると思うのですが、日本より小さいなと思うような国でも真っ平らでありまして、山がないという国がいっぱいあるわけです。ですから、農地としては優良な農地で、日本のように七割も山に囲まれてやっている農業とはいささか趣を異にしているということでありまして、これは最大の努力で何とか自給率を高めなきゃいかぬ。経済が豊かになって消費者も、国民もいろんなものを食べてみたいということで、胃袋は一つでありますから、やはりどうしてもいろんなものを輸入に依存しておるというのが現状だろうと思います。目標はまず当面達成して、それから次の新たな目標に向かっていかなきゃならぬ、こう思っております。
  369. 谷村啓介

    谷村分科員 次に、ガット・ウルグアイ・ラウンド、この農業交渉の中で、難航する米の自由化問題が関心の的となっておるわけです。その後も若干のといいますか、これは重大など言っていいかもしれませんが、変化といいますか、せんだっての関税率の問題についての白紙提出という問題がございますけれども、農民といたしましては大変関心の強い点であることに間違いございません。私が今さら言うまでもなく、国会決議ももちろんあるわけでございますし、政府といたしましてはその決議を踏まえて対処したいという、そういう態度のようでございますし、真に食糧安全保障の観点という点から見ましても、私どもは慎重な対応というものを求めたいと思うのでございますし、政府・与党内での御議論も踏まえられてのこの点についての大臣のお見通しと決意を伺っておきたい、こういうふうに思います。
  370. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お話のように食糧安保もあります。これは私はいつも石油でもそう思うのですが、食糧もこれは戦略物資として使われたら一体どうなんだろうな、こう思って、特にお隣のロシアを見て、あの大国ですら、ロケットを打ち上げて月に行ったとかあそこへ行ったとか言っている国でも、食糧がなくて今やまさに我が国から援助を受けなければいかぬという、そういう状態を見ても、やはり食糧というのは大事にしなければいかぬ。それは何といったって我々の先祖がもう本当に苦労し努力してここまでつくってきたものですから、これは大事にしていかなければいかぬと思います。  そのほかに、また国土や自然環境保全、これは大変なことでありまして、水田なかりせば水害がしょっちゅうあっちこっちで起きて、これにまた多大な投資をしていかなければならないというものを、水田がしっかりと、これはまあおおよそ全量の三分の一は受けている、こう言われておりますが、そういう面からも大変大事だ。また、地方にとってはこれは地域経済を支えている大きな分野なんですね。ですから、米の農家だけではなくて、これがおかしくなると商店街から何からみんな影響を受けるということになると、何としてもやはり地方の町や村の経済というものを、私たちはこれ以上お年寄りだけ残して若い者が東京に来るということをさせてはいかぬ、そういう観点からいろいろ考えてみて、国会決議もございます、また国内産で自給する、この基本方針のもとで対処してまいる所存であります。また、ガット事務局長に提出した国別約束表においてもそういう方針のもとに対応して提出をした、こういうことであります。
  371. 谷村啓介

    谷村分科員 大変模範的な答弁をいただきましたのですが、どうぞひとつ今後もお守りいただきますようにお願いをいたしておきたいと思います。  それでは、基本問題についてはこれぐらいにいたしますけれども、追加質問といいますか、質問を追加いたしました地元の問題がございますので、それに移ってまいりたというふうに思うのでございます。  実はこの問題は平成二年、おととしのこの分科会で私は取り上げた問題でございますが、岡山市内の新福町というところがございますけれども、そこに場外馬券売り場設置の問題が昭和六十年に浮上いたしたわけでございます。その後いろいろな経過がございましたけれども、平成二年の五月二十二日に中央競馬会の方からこの設置計画を断念をする、こういう趣旨の書類が参りました。公・の書類でございます。それをやろうとしておりました会社とそれから岡山市長あてにそういうものが届いたわけでございます。その経過については通告しておりますから、大臣お聞きになっておりますか。いかがでしょう。
  372. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃったとおりでございまして、ちょっとお聞きになっていないことまでしゃべって申しわけないのですけれども、その後、動きございません。
  373. 谷村啓介

    谷村分科員 今、その後動きがないことがないから質問に立ったわけですよ。その後、その問題については確かにごく最近まで動きがなかったわけですね。当然これでやまってしまったというふうに、こういう責任者でございます中央競馬会の澤邊さんから公式な文書で参っておるわけですから、したがって安心をしておりましたところが、ごく最近になりまして岡山市議会の方に請願書が出てまいりました。これは九日でございますが、新たにその新福と千日前は、当時問題があったわけですけれども、そういう問題がありましたそこを、改めて二つを拠点にする場外馬券場をつくりたい、こういう請願書が提出されましてちょっと慌ただしくなっておるわけでございますが、そういう点についてはお聞きになっておりませんか。
  374. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 先生持っておられる新聞、これを拝見いたしましたが、これは拝見しただけでございます。  それで、岡山の場外馬券場についてですが、先ほど先生おっしゃられましたように、日本中央競馬会から平成二年の五月二十二日付で設置断念を関係方面に通知をした、そういう旨の報告は受けておりまして、その後の動向については一切お聞きをいたしておりませんし、また今のところ日本中央競馬会においても設置に向けた動きはない、そのようにお聞きをいたしております。
  375. 谷村啓介

    谷村分科員 実は、きょう競馬会の理事の渡邊さんと中央競馬会の場外調査室長末広さんですか、お二人がお見えになりまして、その事情をお尋ねいたしました。今までの経過を踏まえて、今御答弁のような、同じようなことがございましたけれども、こういうふうに公の書類で一応の区切りがついて、中央競馬会の方としてはこれは態度としては変わりません、こういう御回答を賜っておりますけれども、この種の問題でありますから、しかも従来の経過から見てすんなりと受け入れられないような業者の問題がございますので、念を押して実は質問をいたしておるわけでございますが、どうでしょう。
  376. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 私どもとしては、やはり中央競馬会に追加の御質問がございまして、照会をした。その結果、今申し上げましたように、今のところ日本中央競馬会においても設置に向けた動きはないというお話を聞いておるところでございます。
  377. 谷村啓介

    谷村分科員 そこで大臣に、時間もございませんからお尋ねをぜひいたしておきたいと思うのですが、これはおととしのこの分科会における私の質問に対する山本農林大臣の御答弁でございますが、「たびたび申し上げておりますとおり、地元の経過、いきさつが市議会の議決を含めましてあるわけでございますから、その調整が整わない限り、仮に承認申請が出された、そういうことはないと思いますけれども、本省に上がってきたとしてもこれは承認されることはあり得ないと私は考えております。」こういう答弁。この直後に強力な指導を山本農相がされました、中央競馬会を。それで、その直後に、先ほど申し上げましたような態度が、中央競馬会断念という公文書が実は参ったわけでありますが、そういう経過を、長い経過をお話し申し上げますと時間がございませんからはしょりますけれども、これは先ほど言いますように動きとしてはまだまだ顕著なものではございませんけれども、そういう大変心配を関係者がいたしておる関係から、私はぜひ農林大臣も、山本農林大臣がおとりになったような態度を、もし仮にそういう事態が起きた場合、毅然たる態度で、従来の農水省の態度、中央競馬会の言っておりますような態度をとらしめるような、そういうぜひひとつ御指導を願いたい、こう思いますが、いかがでしょう。
  378. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 場外馬券の設置問題について、私はその経緯は全く承知しておりませんり地域住民がこれをどうするか、あるいは議会、これは同じことが私の方でもありまして、八戸市で、そのときは場外馬券場をつくりたいということで、それはいいということで進んでおったのですが、モーターボートの方をやってくれと言われまして、これは反対になっちゃったんです。それで、私はどうして、モーターボートはいかぬが場外馬券はいいというのはおかしいじゃないかなと思っておったのですが、そのうちどっちもだめになりまして、お隣の岩手県、県境ですから、種市町に場外馬券場ができまして、それで大量に私の市からみんな行くものですから向こうが喜んでいるということで、こっちはとうとうだめになっちゃったという経緯がありまして、まあしかしそれもこれも地区の人たちがいろいろな経緯があってそれを選択しなかったということであります。何か今になると損したのかどうかわかりませんが、種市町の方が大分入るんでほくほくしているようですが、それは別として、そういう問題は全国至るところにありますが、基本的には地元の皆さんの意向ということは尊重しなきゃならぬことでありますが、いずれにしても、この中央競馬会が十分に慎重に、一たんそういうことになった、こういうお話でありましたから、慎重に対応するように指導すべきことを事務当局に指示をしたい、こう思います。
  379. 谷村啓介

    谷村分科員 ありがとうございました。
  380. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 これにて谷村啓介君の質疑は終了いたしました。  次に、小川信君。
  381. 小川信

    小川(信)分科員 あと一時間でございますが、おつき合いをいただきたいと思います。そのうち三十分、どうぞよろしくお願い申し上げます。  一九九〇年の世界農業センサス、この農業センサスはFAOの提唱による国際条約に基づくもので非常に権威がある農林統計でもございますけれども、特にこの農業センサスは悉皆調査であり、農業集落全体にわたっての調査というようなことで、非常にある意味では権威もあると同時に日本の農業の実態というものを相当具体的かつ詳細に私は描き出しているのではなかろうかと思うのです。  一九九〇年農業センサスの、これについて農水省はいろいろな角度から分析をしておられるだろうと思います。そういうような中で、きょう私がテーマとして取り上げ、農水省のお考えを十分聞かしていただき、対策を講じていただきたいというのは、いわゆる部落農業、いわゆる同和地域の農業の現状でございます。これは一九八五年のセンサス以来五年間、その前の十年と、いろいろ状況を把握しておられるだろうと思いますけれども、一九九〇年センサスに出てきた部落の農業の現状、特徴点、こういうふうなところをひとつまず要点的に御説明いただければと思います。
  382. 海野研一

    ○海野政府委員 一九九〇年センサスに基づく分析によりますと、同和関係の農林漁業地区は全国で三十二府県、約九百市町村にまたがっておりまして、約四千集落にあるわけでございますが、農家戸数で約五万三千戸ということでございます。内訳は、専業農家二一%、第一種兼業六%、第二種兼業八二%ということになっております。  八十五年センサスに比べますと、家畜の飼養規模拡大施設園芸面積の増加等の改善が見られておりますが、依然として稲作に対する依存度が高いわけでございまして、また平均耕地面積は約五十アールということで、府県の平均に比べますと三分の二程度でございますし、農産物の販売金額も全体として低い状態にございます。
  383. 小川信

    小川(信)分科員 今全体的なことを大体概要お話がございましたけれども、御説明にありますように、まず生産構造から見まして、府県というか全体に比べてもう生産構造そのものが弱いという現実があるわけですね。これは部落の歴史的な経緯もあると思います。先般、今ちょうど始まっております「橋のない川」、これはまさに戦前の部落農業の現状の中での問題が出ておるわけですけれども、端的に言って、今お話しのように経営耕地面積が絶対的に低い、小さいということですね。府県農業の農家の大体六八%ということですからもう圧倒的に低いということですし、特にセンサスの数字の中を見ますと、〇・五ヘクタール未満農家、いわゆる俗に言う五反未満の農家の割合というのが六〇%、府県では四五%ということですから、非常に規模の小さい農家群だ、こういうふうなことなのですね。  そういうふうなことだから、結果的に第二種兼業農家が多い。農業だけではやれない。一兼という、第一種兼業というようなことも不可能だという形で第二種兼業が多いわけですけれども、実はこの第二種兼業農家の兼業先の中身をこうして見ますと、恒常的な勤務とかいういわゆる安定的な勤務先というよりは、臨時雇用的な、日傭的な不安定部分に就業しておる者が非常に割合が高いということになると、農家経済全体の弱さというものは非常に端的に出てくるだろうと思うのです。  センサスですので、個別の農家経済調査とは違いますけれども、農家経済調査の部落の地域の農家とそうでない全体というのが統計的に出ておりませんけれども、きっとその格差が出てきておるだろう。だから、農家経済余剰も片一方はほとんどない、こういうような状況下に置かれておるのだろう、こういうふうな構造的な一つの側面がある。  だから、続いて言えば、農業の担い手層というものもやはり大きな格差があるのではないか。それを、どういう見方があるかといいますけれども、センサスによる、農業従事日数百日以上がどうかというようなのを見ますと、部落農業では百日以上従事する人たちが全体の一六%だ。全体では三〇%という。女性で一五%、全体が三〇%ですから、百日以上農業に従事する人が、普通、一般的な農家の半分しかないということですね。そうすると、半分しか働く機会がない、場がない。また、先ほどちょっと出ておりましたように、農業の仕組みに問題がある、こういうふうなのが私は構造的な問題点としてあるのではないかと思いますが、その辺について確認をさせていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  384. 海野研一

    ○海野政府委員 おっしゃるとおり、農家経済調査、サンプル調査でございますので、センサスのようなものでない、なかなかつかめないというようなことでございますので、私どもさっき申し上げたような農産物の販売階層別の数字なんかで類推しているわけでございますけれども、例えば販売額で三百万円以上の農家というと極端に少なくなってまいります。そういう点から、やはりどうしても面積が小さいということが致命的な、不利な条件をなしているのだろうというふうに考えております。
  385. 小川信

    小川(信)分科員 今そういうふうにおっしゃって、確認した基本的なところは、経営耕地面積が小さいのだということだと思うのですね。  そういうふうな中で、先ほども一言お話がございましたが、農業生産が稲作に特化しておる、規模が小さい中で土地利用型稲作農業に特化しておるということ、ここに私は一つの部落農業の、今からの、現状から脱皮していく一つの道を探る一点があるだろうと思いますけれども、稲作に特化しておる、特化しておるけれども、その面積も府県全体に比べたら小さいということですね。それで、販売する農家も規模が小さいけれども、農産物販売農家の七七%がお米だということですし、それから稲作単一経営ということから見ても、部落農家の人たちの経営の八三%が稲作単一経営だ。プラスアルファという複合的なものがないということですね。こういうふうな弱さを抱えておられる。そして結果的に百万円以下の農産物販売が全体の五五%ぐらいを占める。府県よりもずっと多い。販売なし農家が三一%、これも府県より一〇%高いというような結果になってきている。百万円以下が八六%でございます。  これじゃ農業をやっていけないというのが現状だろうと私は思うのですね。農業とは言いながら、本当に農業の生産、経営という面から考えると致命的な欠陥がここにあるのではなかろうか。これについて、稲作への特化、部落農業をそこから転換をしていかなければならない。お米に頼り過ぎているものから、稲作オンリーに近い形になっているものから脱皮していかなきゃならぬと思いますが、その道筋を、お考えがあればひとつ聞かせていただきたいと思います。
  386. 海野研一

    ○海野政府委員 特に稲作単作というような状況の中では農業で食べていくわけになかなかいかないということは、実は同和地区に限らず、我が国の農家全体の悩みの一つであるわけでございまして、そういう中で規模拡大ということを進めているわけでございまして、実は同和関係農家の場合にも、農家戸数が五年前に比べますと約一万戸減っております。そういう中で、わずかではございますけれども、二戸当たり五十一・四から五十三・三へというふうにふえたわけでございますが、ただ何分にももとが小さいわけでございますから、面積拡大して本当に農業で食べていくというのは、特に他の農家に比べても容易なことでないわけでございまして、そういう意味で一番手っ取り早い方法としては、高付加価値作物といいますか、小さい面積から高い収益を上げていくというような作目に取り組むわけでございまして、ただこれは地域の立地条件がありますから、どこでもというわけにはまいりませんけれども、現に施設園芸や畜産などで同和地区以外の農家に匹敵する農家も相当できてきているというような状況でございまして、そういう方向というものは一つの追求すべき方向だろうと思っております。
  387. 小川信

    小川(信)分科員 今局長の方から大体の基本的なベースは聞かしていただいたと思う。いわゆる規模拡大、耕地面積拡大規模拡大をして大規模の農業経営を志向するということはいろいろな制約があって難しい、だから限られた面積の中で高付加価値の農業経営ができるような方向づけをしていくことが必要ではないか、こういうようなお話だろうと思います。言うなれば、高級な野菜、花卉、それから抑制とか促成の果実、それからキノコとか、そのほか工芸作物とかありましょうけれども、こういうようなものを中心にやっていく。そうしますと、言うなれば相当な施設に投資をしなければならない。  それから、これに対応できる担い手をどうつくっていくかということですけれども、先ほどお話し申し上げていたように、担い手の仕組みは非常に弱い、いわゆるお年寄りの方々が多い。そういうふうな中で、今おっしゃるような方向の農業が可能になるような資金的な要件、担い手要件をどうつくっていくかということが非常に大事じゃないかと思うんです。しかし、今までやってきておられた中で、一つの方向づけとして出ておるのが畜産農家、特にその中でも肥育経営農家が規模拡大をしながら一定の成果を上げてきておるという事実があるわけなんですね。これは府県なんかで見ますと、一戸当たり部落の関係は約三十三頭、府県が二十四頭ですから、約九頭多頭飼育をしておられる。これは同和対策事業等での一つの成果であると思います。しかし、これは九〇年センサスですから、ことしまた関税が下がってくるというふうな中で、これはどうなるかわかりませんけれども、一つの方向は示しておると思います。  そういうふうなことを考えると、今からの同和地区、いわゆる部落農業というのは、規模拡大指向の方向ではなくて、家族農業型の経営をあくまで追求していきますよ、限られた、立地条件の歴史的に悪いところなので。そして、どちらかというと、家族経営でいけば高付加価値とはいいながら、環境保全型で付加価値の高い、高齢者や女性にもできるような農業を組み立てていく。そして、地域全体の中でそういうふうなものの役割分担を果たしていかなければならぬと思います。  そのためには、今まで取り組んできました地域改善対策のいろいろな農業改善の関係の諸事業、これを濃密的に予算的な財政的な裏づけもさらに強化していかなければ、農業環境の全体が厳しい中で、その中でさらに厳しいここをやっていくためには、地域改善対策の農業関係の諸事業、同対事業等をさらに充実強化していかなければならぬじゃないかということと、もう一つは、技術の指導とか経営指導のさらに充実した濃密的な指導体制というものを組まなければいけないのじゃないかと思います。限られた力、体制の中でそれは不可能かということもあるかもわかりませんが、今まで置かれてきた部落の実態、部落農業の現実、そういうような中で濃密的な対応があらゆる面で必要だと思いますが、その辺の対応というものはいかがなっておるか、お聞かせいただきたいと思います。
  388. 海野研一

    ○海野政府委員 施設型農業へ持っていくということは、おっしゃるように、特に高齢者の場合には、特に今まで水田をやってきたのが高齢者になってから作目を変えるというのが容易なことではないわけでございまして、そういう意味で若い担い手が中心になって進めていかなければできないことだと思いますけれども、私どもとしては、この地域改善対策の中で、特に土地基盤の整備でございますとか、園芸施設、畜産施設導入等の物的な条件整備地域の実情に即して、また地域の要望といいますか、意欲に即して実施をしていくと同時に、いろいろな関係機関からの技術指導そのもの、その他を組み合わせて、何とか高付加価値農業で営農の改善を図ってまいりたいというふうに考えております。
  389. 小川信

    小川(信)分科員 そういうことで、実は昨年の十二月二十日に今後の地域改善対策に関する大綱が閣議決定されております。その中ではいろいろと取り上げておられますけれども、この改善対策の効果測定の問題で、全国的な調査をというのがありますね。農業関係は幸いにしてこのセンサスがあります。センサスで部落農業の実態、他との格差というのは相当はっきり出てきて、改善対策の取り組みは相当きめ細かくやれるという点があると私は思います。それで先ほどからの議論ができるわけです。  やはりその中でもう一つ必要なのは、これはプライバシーの問題、いろいろな問題があって難しいかもわかりませんけれども、全国規模での農家経済調査的なものをやって、個別農家のトータルの所得内容、可処分所得がどうなのか、農家所得や家計費がどうなのか、やはりこういうふうなものをあわせてやることが必要ではなかろうか。そうしたらもっと問題点がはっきりしてくるのではなかろうかというふうなことを考えております。  それからもう一つは、この閣議決定、大綱の中にもありますけれども、先ほどおっしゃったように、「同和地区の農林漁業については、施設型農業経営への移行や協業化等を進め、地域全体として農林漁業に取り組む意欲の向上を推進する。」地域全体で取り組む意欲を増進するんだ、こういうふうに決められておりますけれども、これが来年度の予算の中で具体的にどのように数字的に反映されておるのか、わかれば聞かせていただきたいと思います。
  390. 海野研一

    ○海野政府委員 今おっしゃった、地域全体として上がっていくための特別のそのための予算というのはないわけでございますけれども、しかし全体が特に施設型農業へ進むようなことを前提として、特に物的事業に対する予算を組んでいるということでございます。
  391. 小川信

    小川(信)分科員 個別の取り組みがトータルとして地域全体の意欲の向上につながるように濃密的な指導体制をさらに強化していただくと同時に、地域改善対策等々、一般事業への移行とか廃止とか、いろいろなことが検討されておりますが、まだまだ濃密的な指導対応なり取り組みが必要だという現状を十分御理解いただいて、対応を進めていただきたいと思います。  それと同時に、今ここにもありましたように、地域全体の意欲の向上を進めていくというためには、同和地域といいますか、部落農業を含めたその地域全体が、この地域の農林業等の中で彼らが占める役割というものをお互いが理解し合い、協業というものが、昔の部落とそうでない地域の枠を超えた協業なり協力体制ができることが、村社会全体の差別をなくすることになるわけなんです。  そういう意味で農村地域の中で大きな役割を持っておる、社会的にも影響力のある農協、私はこの農協を通じて、管内の組合員に対する差別をなくしていく教育、啓蒙活動を積極的に農協の機能を通じてやっていくことが必要じゃないかと思うのですね。農業協同組合は、その大事な役割の中に組合員教育活動というのがあるわけなんです。そして協同組合の基本的な理念というのは、差別のない社会をつくろう、公正社会の実現というのが協同組合の基本的な理念ですから、当然一番受け入れやすい、そして影響力のある農協組織ではなかろうかと私は思います。そこに活動に必要な予算的な措置、補助なんかを出したらどうか。それは個々の農協は直接出せませんから、全国農協中史会を通じ、各都道府県の農協中央会を通して、先ほどおっしゃった全国の地域等に対して出していくということが考えられるのじゃないかと思いますが、いかがなものでありましょうか。一つの提案として申し上げるわけです。
  392. 川合淳二

    ○川合政府委員 今先生からお話がございましたように、農山漁村地域におきまして一番中心的な組織でございます農協あるいは漁協は、行政機関はもとよりでございますけれども、農山漁村地域におきます同和問題の解決を図っていくためには非常に大事なキーになる組織であるということは、私もそのように思います。従来からもそうした観点に立ちまして組合員に対する啓発活動などをやってきているわけでございますが、具体的には各種事業の効果的あるいは効率的な推進とあわせまして、農林漁業団体役職員などの啓発を図るために、都道府県が実施する対象地域農林漁業振興推進会議の設置、運営にかかります経費に対しまして所要の予算措置を講じておるわけでございます。  予算措置の問題、確かに先生の御提案のような形もあると思いますが、まず私どもといたしましては、従来からやっておりますけれども、これは全国中央会から始まるわけでございますけれども、各都道府県の農協中央会を通じまして各農協でのこの問題の対策推進担当者の設置などを指導してきております。さらに、この取り組みの強化を図るということで、昨年十二月にも私どもの通達を発出いたしまして、改めて同和対策推進体制の確立あるいは啓発活動というようなものの積極的な取り組みにつきまして指導の強化に努めているところでございます。  非常に重要な問題だと私ども認識しておりますので、こうした農林漁業団体の取り組みをさらに強化するということを踏まえまして、今後とも十分指導してまいりたいということを考えておるところでございます。
  393. 小川信

    小川(信)分科員 今、川合局長の方からのお話もございましたが、従来都道府県を通じて農協中央会へ来ている。これはどちらかといいますと、農協組織による役職員を対象にしての教育啓蒙活動の役割を担っておったかと思うのです。ですけれども、さらにこの地域全体の組合員を含めたもっと充実した啓蒙活動をこの際やっていく必要があるのではなかろうかというような気持ちで御提案をしたわけでございますので、ひとつ御検討いただければと思います。  それと、先ほど一言申し落としておったのでつけ加えさせていただきますけれども、農家経済調査的なものも必要ということと、もう一つは、せっかく農業センサス、集落調査をやっておりますから、集落調査の中にある、例えば農業集落の土地利用状況がどうなのか、それから共同の農機具の利用とか集団的な土地利用状況がどうかとか、それから農業集落の慣行、廃棄物の処理とか生活雑排水、し尿の処理の状況はどうか、こういうふうな面も調査がございますので、これも全体と部落とで分けてみて分析をしてみることも必要ではなかろうか、このような感じがしておるところです。  最後になりましたけれども、大臣から一言お考えを聞きたいのは、先ほどからいろいろ部落の農業の現状というものが非常に厳しいというような状況で、まだまだ濃密的な改善対策を要する状況下にあるわけでございますが、農林水産大臣としてこの部落の農業改善をし、まず全国一般並みにし、日本農業全体を引き上げていく、そういうふうな中でのこの部落農業に対する濃密的な対応についての大臣のお考えなり御決意を聞かせていただいて、終わりたいと思います。
  394. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 大臣に就任して最初に視察に出ました。福岡県に参りました。そのときに一番先にお伺いしたのが田川市でございまして、そこの市長さんに同和地区の視察を御案内いただきまして逆に驚いてきました。堆肥をつくっておりまして、もう私はかねてから農業は堆肥をつくってやらなければだめだということを青森県でも主張をし、知事にも進言して、そういう取り組みをしなければだめだ、農薬を使わない農業ということになるとやはり土を一生懸命手をかけなければいかぬ、こういうことを言っておって、田川市にお邪魔をして、それがもう物すごい規模の堆肥づくりをしておって私はびっくりしてきました。よく一生懸命やっておるなとその場でもあいさつの中で私の感心した気持ちをそのまま申し上げてきましたが、いずれにしても、今後とも同和関係農家の実態を踏まえて、今先生のお話をいろいろ伺って、非常に規模が小さい、水田が多いという、そう言われると確かにあそこも水田はそう広いとも、私の方に比べると小さいという感じがしましたが、お話を聞いて確かにもっと思い切った転換をして、私の方でも水田をやめてハウスでイチゴをやっているところがありますが、これは非常によくやっているんですね。そういうことを見ておりまして、いずれにしても担当大臣として、地方公共団体とも一体となって、今国会に提出している法案の早期の成立も含めて、同和問題の一日も早い解決を図っていきたい。  そのためには、何といってもやはり若い人たちが今後やろうということでやりませんと、さっきも答弁ありましたが、そういう中で一体今後どうして何をやるか、それにはどれだけかかるか、どれだけの利益が出てくるかということをまずきちっと計画を立てて、そうしていろいろと進めていかれることがいいのではないか。何といってもあの田川市の農民の人たちは物すごい意欲的でありまして、あの意欲でそういうことに取り組むという姿勢が大事だなと思って帰ってまいりました。今後とも最善の努力をしてまいる所存であります。
  395. 小川信

    小川(信)分科員 終わります。
  396. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)主査代理 これにて小川信君の質疑は終了いたしました。  次に、藤原房雄君。
  397. 藤原房雄

    藤原分科員 大変時間も遅くなりまして、いよいよ最後でございます。皆さん方には大変お疲れのところと思いますが、最後でございますので緊張といいますか、ひとつおつき合いのほどお願い申し上げます。  最初に酪農の問題、そして沿岸漁業の問題、二点申し上げたいと思うのでありますが、酪農のことについては過日も申し上げましたし、きょうわずかの時間でございます。予算委員会の第五分科会ということでございますので、当面する予算に関連するこういうことでの問題点を何点か申し上げたい。何点といいますか、当面する問題を申し上げたいと思うのであります。  その一つは、何といいましても目前に迫っております乳価、畜産物価格、これは昨年牛肉の自由化によりましていろいろな変動があったわけであります。この問題についてはいろいろな数値を出して申し上げればいいのかもしれませんが、過日は、別海町におきます新酪農村の理想的な経営をつくろうということで皆さん方の御努力でつくりました。そしてまた、本人もそのつもりであったと思うのでありますが、しかし途中で挫折する、非常に残念なことでありますが、そういうこともございました。これは象徴的な問題として私は過日も申し上げたわけでございますけれども、個別問題、そういうこととは別にしまして、非常に牛肉の自由化によります余波といいますか、当初考えられます。その影響性を考えて諸対策は農林省としましてもいろいろ立てられたはずでありますけれども、こんなに酪農にまで大きな影響が及んでいるということにつきまして、私どももいろいろな状況、現場を見まして痛感いたしております。まず、この認識について大臣にお伺いしておきたいと思うのです。
  398. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 日本の酪農でございますけれども、従来から規模拡大の進展だとか一頭当たりの乳量の増加等を通じまして経営の内容の充実が図られてまいりました。それで、ここ数年負債が減少するといったように順調に発展してきたところでございます。  しかしながら、酪農経営の最近の動向を見てみますと、粗収益の大部分を占める生乳の販売価格、これは飼育規模拡大だとか一頭当たりの泌乳量の増加、そういうことによりまして順調に増加すると見込まれるわけですけれども、平成二年の夏以降のぬれ予価格の低下等によりまして、副産物販売価格は減少いたしております。その結果収益性は低下をしているものと思っております。
  399. 藤原房雄

    藤原分科員 まず最初に大臣に申し上げたいのでありますが、いろいろな陳情等大臣のところにも来ておると思うのでありますけれども、乳製品の輸入自由化、関税化、これはもう断固こういうことになってはならないということで、お米のことは国会でも随分問題になりました。お米はササニシキのようなおいしい、コシヒカリのようないい米がということですが、乳製品はそういう品質で争うなんということはできませんから、殊のほか農民の方々は危惧を抱いておりますし、この問題についての大臣のお考えをまずお聞きしておきます。
  400. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 決して乳製品、でん粉等別扱いしているわけではありませんが、何分にも議題になるのは米ばかりでありまして米に答弁しているわけでありますが、十一条二項(c)にかかわる問題は米と同様に、さらにそれ以上に重要視をして決意を新たにして臨んでおるところであります。
  401. 藤原房雄

    藤原分科員 次に、限度数量枠の拡大ということでありますが、ここのところ飲用乳が非常に需要が強いといいますか、そういうことで数量的な制限を受けずに来ておるわけであります。今後につきましてもそういう方向性だと思いますが、やはり規模拡大ということで大きくする、そういう中でさらに生産調整を受けるようなことになりますと、これは肉の自由化にさらに追い打ちをかけることになるので、今年のこの価格決定に当たりましても強い要求が出されておりますが、最近のこういう環境状況、また農林省のお考えをお聞きしておきます。
  402. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 いわゆる不足払いの対象になります限度数量の問題でございまするが、これも不足払い法の規定に基づいて審議会の意見もお聞きをし決定をしていくということで、今その需給計画の作成の作業というか検討をいたしておるところでございます。
  403. 藤原房雄

    藤原分科員 作業中でありますが、今日まで参りましたものがブレーキがかかるようなことはゆめゆめないだろうと思いますが、先ほど局長もおっしゃっておりましたが、牛肉の自由化以来農家経営というのは非常に緊迫といいますか、追い詰められたような状況の中にあることは御存じのとおりでございますので、この辺も十分にひとつ勘案して最終的な御決断をいただきたい。これは大臣がなさるのだろうと思います。     〔佐藤(謙)主査代理退席、主査着席〕  それから、八五年から七年間、一九八五年から九十円七銭だったものが現在七十六円七十五銭ということで乳価は七年で一五%下がっているということ等を考えますと、今日それなりの経営努力といいますか、いそしんできたと言えると思うのであります。その中にはいろいろなことがあったわけでありますが、先ほど局長のお話にもございましたように、規模が大きければ大きいほどぬれ予価格の影響というのは非常に大きいわけで、副産物という言葉が当てはまるかどうか、これは乳価決定に当たりましてもその価格というのは算定基準の中に算入されることになったわけであります。平成元年には十四万からいたしましたものが平成四年の一月には四万七千ということで三四%、こういう非常に急激な変化。また、関税率が本年六〇%、年々関税率が下がるわけでありますから、輸入量が多くなる。これがまたどういう影響を及ぼすか。現在もまだこういう非常に不透明な状況の中にあり、決して持ち直すなどという状況ではないだろう、こういう不安の中に今営農を続けているわけであります。  このぬれ予価格の問題につきまして一つお伺いしておきます。  今まで、牛肉の輸入自由化が始まりますと大変だということでいろいろな施策が講じられてきました。講じられたというか、もともとあるのもあるでしょう。その一つは、肉用子牛生産者補給金制度、こういう制度もあり、また近くは酪農経営経産牛活用対策事業、新規でこういう事業を行おうということや、そのほかこの問題につきましても手をこまぬいていたわけではなくて何らかの対策は講じられてきた。また、優良乳用牛緊急確保対策事業ということもやっておりまして、乳用牛資源基地緊急活性化対策事業、初妊牛緊急活用対策事業、いろいろな事業が行われていることを私もよく存じております。しかしながら、これがぬれ子対策にうまく機能していないというのが問題なんですよね。  流通の中で、北海道は多頭化飼育が進んでおりますが、最近の様子を見ますと、都道府県におきます酪農家の減少率というのが最近は非常に大きい。これは私が一々申し上げるまでもなく、北海道は六十三年は一・九%、平成元年一・九、平成二年が二・六、平成三年が二・八、農家戸数の減少率です。都府県の方は六十三年が五・七%、平成元年が六・六、平成二年が五・八、平成三年は六・四と非常に大きく戸数が減少しておる。この影響が北海道のような優良乳用牛といいますか、ぬれ子を出しておるこういうところに大きなしわ寄せが来ておる。途中の流通のところではそれなりの効果は働いているのかもしれませんけれども、現実、多頭化飼育の中で家族労働でやっておりまして、そして本当に四カ月、十二カ月これを飼育すればそれなりのことがあるのかもしれませんが、現場的には、私ども随分歩きましたけれども、やはり百頭前後やっていますと、五十頭、六十頭の子牛の面倒を見るということは大変なことで、組合でもどうしようかといろいろ検討をしておりますし、建物を建てるときには面倒を見ましょうという制度もあることは知っておりますけれども、これも建てて、また世の中がどうなるのかわからないというようなこともございまして、なかなかそれに踏み切れないところがあったり、そういう投資したものが果たして将来どうなるのか、こういう非常に難しい状況の中にあるのですね。農業団体の方々も、また地元の方々も、ぬれ子に対する対策を、四カ月、十二カ月置かなければというのじゃなくて、当初牛肉の自由化の中で予測し得なかったこういう現象、これらの措置の中にも今年度限りで終わる事業もあるわけですけれども、まだ安定していない段階では当然これらの事業については継続していただかなければならぬ。優良乳用牛緊急確保対策事業や、そのほかの先ほど申し上げたいろいろな事業がございますが、本年度で切れるものについては継続するということと、やはりぬれ子対策というものをもう少ししっかりいたしませんと、これは乳価決定の要因の一つでありますから、こんなに暴落しますと乳価が物すごく上がることになるのですけれども、これは本当に上げ要因になりますが、下げ要因もあるのかもしれません。あるのかもしれませんが、しかしこんなに暴落しました、三割方いっているということになりますと、大きな影響を持っていますから、それがまともに計算して出て。くるならいいのですけれども、国際環境やいろいろなことの中でそういう大きな乳価の上げは考えられないということになるならば、この対策を講じなければならないのじゃないか。  いろいろな問題があるのですけれども、これは後日またきめ細かに申し上げますが、一番の問題は酪農家の、しかも専業で多頭化でやっている、農林省の指導どおり本当に理想的に大きくやっている人ほどぬれ子の価格の暴落で非常にこの先の見通しがない、一こういうことで頭を痛めておる。ここにひとつ政治の力を及ぼさなければならぬ、私はこう患うのですが、何をどうすると具体的なことを申し上げても、それは総合的ないろいろなことがありますからあれですけれども、大臣ひとつ、これは数字を挙げそもっと具体的にいろいろ申し上げれば大臣も納得いただけるのかもしれませんけれども、やはりここを打開といいますか、一つの糸口にしませんと、酪農は今でさえもこんな大きな勢いで減少しておるのですけれども、本当に今まで築き上げたものが崩壊する、こういう危機感を私は非常に持っているのですけれども、ぜひこの対策をお考えいただきたい。大臣、よろしくお願いします。
  404. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 ぬれ子の価格が低下をいたしまして酪農経営に影響を及ぼしておる、先生おっしゃるとおりでございます。  今先生のお話の中で、四カ月から十二カ月、それまでというのは無理なのでもう少し短くできないかというようなお話もございましたが、これは先生御存じのとおり、乳用種であっても肉用として肥育されるときには不足払いの対象にするわけですけれども、余り小さいときには肉に回るのか乳を搾る方に回るのか判断できない、そういう難しい問題もございますし、一定の事故率、小さいときにはあります。うまく肉用に回るのかどうなのかという問題もございまして、期間を短くするというようなことはそういった難しい問題があるわけでございます。  いずれにいたしましても、酪農家の皆さん非常にお困りというか影響を受けている、上げ要因もあり、おっしゃるとおり下げ要因もございます。近々資料も出ますので、これからそういう点について精査をしてまいりたいと考えております。
  405. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 ぬれ子のことについては、実際に酪農農家にすればいろいろ難しい問題があると私も思います。話を伺って、何かそこに知恵が出てこないのかな。例えば、農家にそれを全部面倒を見ろといっても難しいということであれば、だれかが面倒を見る方法、だれかといっても四カ月間だけ頼んでというわけにはいかぬ。組合等で何か四カ月間集中的に全部その辺の農家の面倒を見る方法がないのかなとか、いろいろ先生の話を伺って今考えてみてはおるのですが、いずれにしても、分業的な感覚がいいのか、余り過重な農家の負担にならぬようにすることがいいのか、そういう何かいろいろとまたうまく、これがいいとは私も思いませんが、とっさに考えたことで、何かそういうことで面倒を見でやることができれば一つの前進なのかな、実はこう思っております。  いずれにしても、大変重要な畜産、酪農、こうしたものを私どもはどうしても育てていかなければならぬ、こう思っているわけであります。
  406. 藤原房雄

    藤原分科員 精査をしてという局長のお話、まあ何とか考えましょうという大臣、ひとつ大臣、事務局によく聞いていただければおわかりですが、これは本当に切実な問題で、これを何とか、どういう形でできるか、知恵を絞っていただきたいと思います。それを要望しておきます。  それでは、時間もございませんから、次に移ります。  これはもう大臣も私も共通認識にあると思うのですが、北海道から下北半島といいますか青森まで日本海沿岸、ずっと磯焼けですね。これはいろいろお聞きしますと、過去の歴史、江戸の昔からあるんだそうですから単純な原因ではないのだろうと思いますが、私ども子供のころ本当に繁茂しておりました昆布がもうすっかり赤茶けて、そのうちなくなってということでございます。この磯焼けの原因の調査研究、こういうことをお聞きしますと、農林水産省でも専門の方がいらっしゃっていろいろ研究なさっているようでありますが、地球の運行や水温とか塩分とか、もう大きいことから身近なことからいろいろな原因があるようでございますので、これは研究にぜひ真剣に取り組んでいただきたい。これは相当大がかりな研究になるのだろうと思いますので、それなりの予算をしっかりひとつ確保していただきたいものだと思います。大蔵省の古いらっしゃったらいろいろもっと必要性を申し上げたいと思うのですが、公海の漁場から締め出されたといいますか、だんだん漁場が、日本の十二海里、二百海里、大事にしなければならない今日であります。そういう中で、磯焼けのために磯物を初め沿岸の漁業が妨げられるということは非常に日本の漁業にとって大事なこと、大事といいますか打開しなければならない大事な問題だと思います。  今日までも機会あるたびに問題になってきておりますし、だれも見過ごしてきたことではないだろうと思うのでありますけれども、しかし、なかなかこれの対策といいますか、これに対する対処、対応が見られていないというのが現状でございまして、原因の究明とともに、日本の大事な漁場である日本海を初めとします東北、北海道の海辺を守るということにおいてひとつ一段の対策のための調査研究に力を入れていただきたい、こう思うのですが、大臣。
  407. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御指摘のように、北海道から東北地方の日本海を中心とする沿岸地域に磯焼け現象が起こり、治山甲漁業に影響を与えているということは私ども承知しておるわけでございますけれども、今先生御指摘のように、国の機関あるいは都道府県の機関でいろいろ調査研究を行われておるわけでございますけれども、なかなかその原因というのがどういうものによるのか、有用海藻類のウニ、アワビ等の食害とか、あるいは石灰藻の繁茂による海藻類の生育阻害であるとか、あるいは水温とか塩分等海況に要因があるのか、いまだ十分に解明されていないのが実態でございます。  水産庁では、これまで得られています知見をもとに、特に有用海藻に対するウニの食害ということに着目いたしまして、沿整事業の中で国の直轄調査事業、その一環としまして、平成二年度から北海道の寿都湾をモデル海域としまして磯焼け地域における漁場造成手法の開発に取り組んでおるところでありまして、平成四年度においても引き続きこの調査を実施するための予算を計上いたしておるところでございます。  また、これに加えまして、水産庁の北海道区水産研究所等を中心といたしまして磯焼けの発生機構の解明等のための研究平成四年度から行うべく、予算を計上しておるところでございます。  また、先生御案内と思いますけれども、各都道府県でも、例えば北海道では栄養塩添加のための施肥の実験事業でありますとか、水中プルトーザーによる漁場の回復のための調査事業でありますとか、また青森県等におきましては、水を噴射させて石灰藻を除去するシステムあるいは海中に昆布の林をつくるための昆布造林とか、いろいろな対応をいたしておるわけでございます。  原因がなかなかはっきりしないだけに、試行錯誤もこれから重ねる必要があろうかと思いますけれども、関係の道県と十分連絡をとりながら、できるだけこれを解明すべく積極的に取り組んでいきたいと思っております。
  408. 藤原房雄

    藤原分科員 青森も昆布がとれるわけですけれども、昆布の漁獲高の激減、ここのところちょっと落ちたということで青森でも大変問題になっているのをこの前新聞で見ました。地域の死活問題といいますか非常に大きな問題でありますし、植生が変わりますとウニや磯物にも大きな影響があることは当然で、地域経済には大きな影響を及ぼすだろうと思うのです。  こういうことから、被害対策を講ずるということと、今長官からお話ございましたが、個々にいろいろなことをやっておるのですけれども、ちょっと遅きに失したといいますか、イカ流しから日韓の問題からいろいろなことで、かつて世界の海に出かけておりました遠洋、これがだんだん自国の中で漁業を営まなければならないという状況になっているわけでありますから、ならば、日本の沿岸漁業というもの、沿岸の漁場というものを非常に大事にしていかなければいけない。ところがこれは、ここのところはずっと変わりませんで、ぜひこれは対応をしっかりしていただかなければならぬ。相当これはお金をかけて、大がかりにといいますか緻密にやりませんと、複雑な要因がいろいろまじり合っているようでございますので、ひとつ大臣も今後の、ことしは予算が大体決まりましたけれども、明年度以降につきましても是が非でも十分な対応策について、原因究明、こういうことでひとつ御配慮いただきたいと思うのです。  利尻とか礼文とかそれから根室、こういうところへ流氷が参りましてごしごし岩をこすりますと、次の年はいい昆布がとれるということでありますから、そういうこと等も現実的に自然現象としては見ているわけでありますし、先ほども長官の言われたように、いろんなことで実験的なことはやっているのですけれども、これは今日こんなに狭められた漁場の中で、一日も早くこの打開策を講ずるということでなきゃならぬ、こう思うのです。この点については大臣から、ひとつまたしっかりやっていただきたいということで、決意を聞きたいと思います。  さらに、海洋汚染防止法というのができまして、海に物を流すということができないことになったんですが、北海道は、上ノ国漁協というのがあるわけですが、ここでイカの内臓を流しまして、要するに貧栄養化、栄養が足りない、こういうことでありますから、そういうことのためにイカの内臓を流すことがいいのではないかという漁民の知恵ですね。そういうことで、これは勝手に流すわけにはいきませんから、いろいろ許可を得なきゃならぬ、こういうことで関係当局とお話をして、みんなやっておった。たまたま手続が怠ったといいますか、滞ったところでこれは問題になりまして、海を汚したということで罰せられたということがあるのですけれども、その後ちゃんと関係各省庁、関係のところでいろいろなお話し合いをしまして、試験的にやってはどうかということになっておるやに報道を聞いておるのですけれども、確かに昔は水産加工場の汚水が流れておって、それなりに海は栄養が与えられておったのかもしれません。今きれいになって、一切そういうものを流してはならないということになりましたから、そういうことで海が変質したといいますか、ひところとは違ったという様子になっておるということなのかもしれません。  漁民の方々の知恵として、そういうことをいろいろ試験的にやっていますし、それから関係の諸官庁も、海上保安庁を中心としまして、そういう手続をきちっとするならばいいだろうということになっておるんですけれども、国としてはこういうことについてはどうお考えになっていらっしゃるのか。あっちでもこっちでもというわけにはいかないかもしれません。総量規制みたいなものもありますから、一カ所だからいいのかもしれませんけれども、法律があるから法律にのっとってすべてを厳しく律する、こういうことだけではなくて、時代の大きな変化の中で、重金属を初めとします海洋汚染防止ということは一つの大きな命題だったわけでありますが、今日ここにまいりますと、そのことについてもこれは考えてみなければならない、また別な面から海というものを見直さなければならない、こういうときが来たんではないかという、こんな感じがしてならないのであります。  水産庁としましては、これは北海道が中心になって、海上保安庁、いろいろなところと協議しながら進めているんですけれども、ここには水産庁の名前が全然出てこないから、どういうふうに考えているのか不思議に思っているんですが、これはぜひひとつ長官にもお聞きしたいし、大臣からもこの貧栄養化を初めとします磯焼け、そしてまた今後の対策、これらのことについてひとつ締めくくりに大臣からお話を聞いて、終わりたいと思います。
  409. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 私ども、漁業の立場からいいましても、海をきれいにしていくことが大事なことは言うまでもないわけでございますけれども、また一方、今先生からお話があっておりますように、磯焼け現象による貧栄養化というようなものが漁業の展開にとって極めて問題であるということも事実であります。  そういうことと関連しまして、前から北海道の地方でイカの内臓を漁場、海の中に捨てる、これがいい影響があったんではないかという漁民的な、現場的な知恵があるということも私ども承知いたしておりまして、それが海洋汚染防止法との関連でちょっとストップ、制御がかかったというようなことで、その動きを私どもも注目しておるわけでございますけれども、今御指摘のように、道庁が中心になりまして、環境関係の部局とそれから水産部局の間で調整が行われ、どういう場所に、どういう時期に、どれくらいの量を出したらいいのか、そういうふうな基準を決めるということで、かなり詰まってきているというふうに承知しているわけです。  私ども、そういうことに直接顔は出しておりませんけれども、極めて関心を持ってその動きを見ているわけでございます。
  410. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 磯焼けの問題は私の県でも大変な問題でして、特につくり育てる漁業ということで一生懸命取り組んでいるわけでして、先生の方もそうかもしれません。私の方はアワビもウニも養殖を一生懸命やっておる地域ですし、そんなことを考えて、あれやこれや何とか、こういう要因ではなかろうかということはあっても、それが十分にまだ解明されていないのが現状であります。何としても、つくり育てる漁業を振興しておる日本にとっては、これは重要な問題でありますから、いずれことしも予算をお願いしておるわけでありますが、これでもってよしとするわけではありません。解明できなければなおさらこれを続けて努力をしていかなければならぬ、こう思っております。  長官の答えたことでもいいと思うことはいろいろとどうする、やり方は別としてあらゆる手だてをして、どれがいいのか、これはわからぬわけでありますから、そんな考え方を持っておりますし、これからもまたいろいろなところで私の出番があれば、各省庁とも連絡をとりながら、この対策のために努力してまいりたい、こう思っております。
  411. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて藤原房雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力により、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後九時十二分散会