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1992-03-09 第123回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年三月九日(月曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 山村新治郎君    理事 中山 正暉君 理事 原田昇左右君    理事 町村 信孝君 理事 村岡 兼造君    理事 村上誠一郎君 理事 串原 義直君    理事 野坂 浩賢君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       池田 行彦君    内海 英男君       小澤  潔君    越智 伊平君       越智 通雄君    狩野  勝君       唐沢俊二郎君    倉成  正君       後藤田正晴君    左藤  恵君       志賀  節君    戸井田三郎君       浜田 幸一君    原田  憲君       細田 博之君    松永  光君       松本 十郎君    村山 達雄君       柳沢 伯夫君    井上 普方君       伊東 秀子君    加藤 万吉君       小岩井 清君    新盛 辰雄君       関  晴正君    筒井 信隆君       日野 市朗君    水田  稔君       和田 静夫君    石田 祝稔君       遠藤 和良君    日笠 勝之君       宮地 正介君    児玉 健次君       佐藤 祐弘君    古堅 実吉君       中野 寛成君    和田 一仁君       菅  直人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         大 蔵 大 臣 羽田  孜君         文 部 大 臣 鳩山 邦夫君         厚 生 大 臣 山下 徳夫君         農林水産大臣  田名部匡省君         通商産業大臣  渡部 恒三君         運 輸 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 近藤 鉄雄君         建 設 大 臣 山崎  拓君         自 治 大 臣         国家公安委員会 塩川正十郎君         委員長         国 務 大 臣 加藤 紘一君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 宮下 創平君         (防衛庁長官)         国 務 大 臣         (経済企画庁長 野田  毅君         官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長 谷川 寛三君         官)         国 務 大 臣 中村正三郎君         (環境庁長官)         国 務 大 臣 東家 嘉幸君         (国土庁長官)  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣 伊藤 博行君         官房内政審議室         長         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣総理大臣官 石倉 寛治君         房管理室長         公正取引委員会 梅澤 節男君         委員長         公正取引委員会         事務局官房審議 植松  勲君         官         公正取引委員会 糸田 省吾君         事務局経済部長         公正取引委員会 矢部丈太郎君         事務局取引部長         公正取引委員会 地頭所五男君         事務局審査部長         警察庁刑事局長 國松 孝次君         警察庁刑事局保 関口 祐弘君         安部長         総務庁恩給局長 新野  博君         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務 竹下  昭君         部長         防衛施設庁建設 新井 弘文君         部長         防衛施設庁労務 荻野 貴一君         部長         経済企画庁調整 吉冨  勝君         局長         経済企画庁国民 加藤  雅君         生活局長         経済企画庁総合 長瀬 要石君         計画局長         経済企画庁調査 土志田征一君         局長         科学技術庁科学 須田 忠義君         技術政策局長         科学技術庁原子 石田 寛人君         力局長         科学技術庁原子 坂内富士男君         力安全局長         環境庁長官官房 森  仁美君         長         環境庁企画調整 八木橋惇夫君         局長         環境庁自然保護 伊藤 卓雄君         局長         環境庁大気保全 入山 文郎君         局長         国土庁長官官房 藤原 良一君         長         国土庁長官官房 森   悠君         会計課長         国土庁地方振興 小島 重喜君         局長         外務大臣官房領 荒  義尚君         事移住部長         外務省アジア局 谷野作太郎君         長         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君                 局長         大蔵大臣官房総 日高 壮平君         務審議官         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省理財局長 寺村 信行君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融 江沢 雄一君         局長         国税庁次長   冨沢  宏君         文部大臣官房長 野崎  弘君         文部省初等中等 坂元 弘直君         教育局長         文部省学術国際 長谷川善一君         局長         文部省体育局長 逸見 博昌君         厚生省健康政策 古市 圭治君         局長         厚生省保健医療 寺松  尚君         局長         厚生省生活衛生 玉木  武君         局長         厚生省薬務局長 川崎 幸雄君         厚生省児童家庭 土井  豊君         局長         厚生省保険局長 黒木 武弘君         厚生省年金局長 加藤 栄一君         厚生省援護局長 多田  宏君         農林水産大臣官 馬場久萬男君         房長         農林水産大臣官 山本  徹君         房予算課長         農林水産省経済 川合 淳二君         局長         農林水産省構造 海野 研一君         改善局長         農林水産省農蚕 上野 博史君         園芸局長         農林水産省畜産 赤保谷明正君         局長         食糧庁長官   京谷 昭夫君         林野庁長官   小澤 普照君         水産庁長官   鶴岡 俊彦君         通商産業大臣官 渡辺  修君         房総務審議官         通商産業大臣官 榎元 宏明君         房審議官         通商産業省通商 岡松壯三郎君         政策局長         通商産業省貿易 高島  章君         局長         通商産業省立地 鈴木 英夫君         公害局長         通商産業省機械 熊野 英昭君         情報産業局長         通商産業省生活 堤  富男君         産業局長         工業技術院長  石原 舜三君         工業技術院総務 横田 捷宏君         部長         資源エネルギー 山本 貞一君         庁長官         運輸省鉄道局長 井山 嗣夫君         運輸省自動車交 水田 嘉憲君         通局長         運輸省海上交通 和田 義文君         局長事務代理         海上保安庁次長 小和田 統君         労働省労政局長 清水 傳雄君         労働省労働基準 佐藤 勝美君         局長         建設大臣官房長 望月 薫雄君         建設大臣官房会 近藤 茂夫君         計課長         建設省建設経済 伴   襄君         局長         建設省道路局長 藤井 治芳君         自治大臣官房総 滝   実君         務審議官  委員外出席者         会計検査院事務 安部  彪君         総局第一局長         参 考 人         (日本銀行副総 吉本  宏君         裁)         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   越智 通雄君     狩野  勝君   村田敬次郎君     細田 博之君   春田 重昭君     宮地 正介君   日笠 勝之君     遠藤 和良君   山口那津男君     石田 祝稔君   小沢 和秋君     佐藤 祐弘君   中野 寛成君     和田 一仁君   楢崎弥之助君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   狩野  勝君     越智 通雄君   細田 博之君     村田敬次郎君   遠藤 和良君     日笠 勝之君   宮地 正介君     冬柴 鐵三君   佐藤 祐弘君     古堅 実吉君   和田 一仁君     中野 寛成君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成四年度一般会計予算  平成四年度特別会計予算  平成四年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  平成四年度一般会計予算平成四年度特別会計予算平成四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  3. 新盛辰雄

    新盛委員 国民の注目を集めました昨日の宮城選挙内閣支持率が低下しつつあり、末期的政権だというふうにも言われている際、この宮澤政権になって、奈良の選挙いわゆる参議院補選で、自民党政治汚職、米の問題など、痛烈な国民の判断があったと思われます。特にまた今回の選挙では、結果的に接戦であったということでありますけれども、逆転という現象の中で連合会萩野浩基氏が当選をしたことは、まさしく政治不信表明である、このようにも言われております。  きょうは宮澤総理がいらっしゃいませんから、副総理である渡辺外務大臣から、このことについてどうお考えか、感想をお聞きしたい。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 非常に惜しいところで惜敗をしたということで、まことに残念至極に思っております。しかしながら、やれ一〇%開くの、八%開くのという世論調査もあるわけでございまして、我々はもう最初から接戦だというように見ておりました。考え方によってはよくやったということでもございますし、こちらは自民党の単独の公認候補、向こうは連合軍というようなこともありますから、これだけによってどうこうということは言えない。私は、よくやったという感じを実は受けているんです。
  5. 新盛辰雄

    新盛委員 米どころ宮城のこの選挙で、一貫して米の問題では腰の定まらない農政、こういうことの指摘がこれまで国会でもしばしば論議されていたわけですが、これと同じように共和、佐川の政治不信というのが私は出たもの、こう思っております。そういう意味で、今渡辺総理がお答えになったその範疇の中で、これからの政局展望はどうなるか、あなたのお考えを聞きたい。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 もちろんいろいろな問題があって政治不信があることは事実でございますから、それには率直、謙虚に耳を傾けて、真摯な態度をもって再発防止その他に努めていかなければならない、さよう考えております。  しかしながら、宮城選挙、あるいはあそこで負けたとしても、もともと我が党の実は議席しゃなかったのでして、我が党の議席が減ったというわけじゃないのです。したがいまして、それが直ちに政局につながるとかそういうことにはならない。我々はよく反省をしてみて、選挙やり方等について、私は公の席ですからちょっと言葉は慎むわけですが、いろいろ党内の、要するに取り組み方、いろいろそれは反省すべきところもなきにしもあらず、しかし、いい経験でございますから、これも素直に、率直に受け入れて、この次は絶対勝てるようにしたい、さよう考えております。
  7. 新盛辰雄

    新盛委員 本題に入りますが、この三月二日から始まっておりますワシントン条約京都会議CITESで今、クロマグロの問題、捕獲規制について作業が進められております。きょうは九日ですから、恐らく附属Ⅰ、附属Ⅱの中に入れるのか入れないのか、こうしたことで委員会が開かれるようでございます。  そういう状況ですが、今巷間どういうことになっているのか、中間報告を求めたいと思います。
  8. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  この京都において二日から開かれておりますところの、ワシントン会議の中でのクロマグロの問題につきましての政府の基本的な考え方につきましては、先般、二月の二十日に当委員会先生に私の方から御説明申し上げました。  その後日本政府といたしましては、スウェーデンに対して申し入れを続けてきております。例えば二月の二十五日には、渡辺大臣から、当時来日中でありましたスウェーデンディンケルスピール貿易大臣に対しまして日本考え方申し入れスウェーデン提案を撤回してほしいということを申し入れました。前後いたしまして、出先の日本大使スウェーデン政府にも申し入れ、また東京におきまして私から、スウェーデン大使、それからスウェーデン臨時代理大使に対して同様な申し入れをいたしました。そういう申し入れを受けまして、スウェーデン専門家がこの京都会議に参加するために参りましたけれども、その専門家と、私たち及びその他の国の専門家同士話し合いをいたしてきております。  そこで、具体的にこの附属書関係でどうするかという点につきましては、実は、きょう以降具体的な討論が行われるということでございまして、現在非常に微妙な段階に来ております。一言だけ申し上げられますのは、基本的にはいい方向に向かっている。しかしそれ以上のことは、ここ一日、二日が非常に重要な段階でございますので、中身は御勘弁いただきたいと思いますけれども、基本的には、日本側として満足のできる方向に向かっているということだけは、今の段階で御報告させていただきたいというふうに思います。
  9. 新盛辰雄

    新盛委員 絶滅に瀕する動植物というこの中に、我々の魚食民族中心になります特にクロマグロ、こうしたことに対して毅然たる態度で臨んでいるという決意表明もあったところであります。  私が心配しておりますのは、ジンバブエなど、象牙の問題でいろいろ問題提起があったのですけれども、話し合いがついてこの会議からもう既に帰国されているし、日本にたくさん理解を示しておられる国々が、自分のところの仕事は終わった方々はもうお帰りになって、ひょっとしたら三分の二の確保が採決の場合できるのかどうかなという不安も一面持っているわけであります。  したがって、本腰を入れてこれは対応していただかなければ、あさってまでのことですから、ぜひともここのところは頑張っていただきたいと思うし、実は、ここで何とか乗り切ったとしても、かつての捕鯨問題のように、捕獲規制を求める側としては、これは長期の戦略をもって規制の網をかけてくることも間違いないと思われます。そういう経験を通して、今現にオーストラリアなど科学者の間からあのタスマニア沖中心にするミナミマグロ、これは焼津の漁民皆さん、あるいは串木野の漁民皆さん、この地に捕獲をしておられる方々には大変な問題でございまして、こうしたことに対してぜひとも日本の立場というものを明確に主張してもらわなければなりません。  それと、さらにこうしたクロマグロ全体の資源を科学的に調査をして把握をするためには、どうしても科学的な国際会議が必要になるのじゃないか。我が国の主張が生かされる範囲の中で、まあ捕鯨ではIWCがございますけれども、また各国関係国十分連携をとっていただく国際会議、こういうものをつくっていいのではないかと思うのでございまして、この点については、外務省、担当の農水省、お答えいただきたいと思うのです。
  10. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  先生承知のとおり、世界各国マグロ漁業関係者民間レベルで昨年も東京会議を開催いたしております。政府レベルにおきましては、先生承知のとおりICCATが一番大西洋マグロ類保存の問題では権威を持った国際機関であろうかと思います。私たちといたしましては、このICCAT中心に既存の国際機関というものを十分に活用しながら本件に対処してまいりたいと思っておりますが、先生の御意見も十分に念頭に置いて、本件、本当にまじめに対処していきたいというふうに考えております。
  11. 鶴岡俊彦

    鶴岡政府委員 マグロ類につきましては、先生案内のとおりその回遊域は広範でございまして、複数の国が同一の資源を利用しているということで、沿岸国漁業国が一体となった国際機関において科学的知見に基づきまして資源の適切な保存を図りつつ、その合理的利用を行うことが必要と考えております。ただ、鯨と違いましてマグロ類は、御案内のとおり大西洋、しかもそれが北太平洋と南太平洋と違う、あるいは西大西洋、それぞれ違う資源を利用しておりますので、IWCような統一的な機関よりはむしろそれぞれの利用する資源関係する国の間での国際機関をつくってやっていくというのが適当ではないか、そういう方向で現在もやっておりますし、将来もそういう方向で進めていきたいと思っています。
  12. 新盛辰雄

    新盛委員 環境庁長官、お伺いしますが、UNCED、いわゆる地球サミットでこれから六月までに向けていろいろな準備もされておりますし、御報告もございました。環境基金の創立というのがいろいろ言われておりますし、各国GNPの〇・三%というのを一%に引き上げたらどうか、あるいはまたこの世の中、国際的に変わってきている、だから軍縮、平和の配当、そういう角度からもこうした基金の蓄積に努力をすべきじゃないか、そういう中で昨今、地球保全財源基金をどういうふうに財源的に保障し得るかというので、竹下元首相などが環境税の創設を検討したらどうかという御提起もございます。この点は将来の、二十一世紀にかけての地球サミット全体のひとつ憲章としてその基本をなすものではないかと思いますが、お考えをお聞きしておきたいと思います。
  13. 中村正三郎

    中村国務大臣 この環境に関する国際貢献ということを考えますときに、問題を整理しなきゃいけないと思うのですが、UNCEDに向かって今やっておりますことは、一つは、この地球がこういうふうに環境が危ぶまれる状態になってきた、それを直そう。それはどういう対策が今、当面必要かということになると、これは先進国のいろいろな対応になってまいります。CO2の問題だとかフロンガスの問題でございます。そして、将来起こり得べく、また、これからも対策を立てていかなきゃいけない問題として、発展途上国の問題があるわけであります。  ところが発展途上国においては、今の地球環境を危うくしたのは主に先進国、主というか、先進国の責任であるから、先進国は賠償的な気持ちをもって発展途上国にお金を出すべきであるという思想がございます。そして、そういうことでありますから、発展途上国の方からすると、ODAというのは環境に関するものでも何でもひっくるめて、このUNCEDに向かって、何でもいいからひもをっけずにODAをふやしてくれという話があるわけであります。しかし、事環境に関してサミット地球サミットということから考えれば、これはやはり私どもがお願いしていくのは、環境に関するODAということに範疇が限られていくわけでございます。  そういう中で、今どういうことが必要であろうかということをUNCED事務局で積み上げまして、これぐらいのことが必要だからこれぐらいの資金が必要であろうということを今算定をしている段階でありまして、非常に膨大な仕事でありますし、大変な困難な問題がありますので、どこまでどう出てくるかということも今途中であります。そこで、その資金をどうするかということになってくるわけであります。  でありますから、今申し上げましたような事情で、私は何の、例えば今の倍にするとか何の何%ということでなく、実際に環境としてやってもらえるのはどういうことがあるのか、幾らあるのか、その算定をしていくということも必要なことではないかと思うのです。しかしながら、発展途上国でいろいろな対策をしてくれなければ将来大変なことになりますから、これを、資金技術力を還流していくということはどうしてもこのUNCEDでまとめていかなきゃいけない。そこで、今財源の問題になりますけれども、発展途上国が持っておりますあの債務を割引きしてあげて、それを環境に使ってもらう、スワップだとか環境税とかいろいろな問題が今まさに論議をされているところでございます。そして四月に、よく言われることですが、UNCEDが主催する竹下賢人会議竹下総理名誉議長を務められるやつが四月に行われます。ここでの検討も非常に重要な意味を持ってまいると思います。  ただ、私、ヨーロッパ状況等を見てまいりますと、ヨーロッパ人たちというのは非常に北の方からずっと、思い切りがよくて、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、オランダ、デンマーク等CO2発生税を今かけております。ただ、これは目的税にはなっておらぬようですけれども、こういうもので発生を抑制して、しかも財源を確保して、それを環境に使っていこうという姿勢であります。私は、いろいろな議論の途中でありますけれども、私個人といたしましてはやはりそういう方向も検討されるべきものと思っております。
  14. 新盛辰雄

    新盛委員 できるだけ御返事の方は短くやってください。  ブラジル会議で今、特に二十一世紀に向けた地球環境保全行動計画ということの中に、海洋保護に関しては沿岸国主権を二百海里以遠にも拡大をする構想がありますね。このことについて、日本遠洋漁業というのは外延的に大変大きな成果を上げたわけですけれども、この二百海里以遠拡大ということになれば、規制が厳しくなってくるだろう、憂慮すべき状況も出ます。さらに、今回のCITESにおける捕鯨問題も、モラトリアムをさらに継続をせよとニュージーランドあたりからも提案があります。断じてそういうことにならないように、これは環境庁も農林水産省も外務省も、その決意をひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  15. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 海洋法の問題につきまして、まず私の方からお答え申し上げたいと存じます。  先生承知ように、現在、漁業水域または排他的経済水域を設定しております国は百二カ国ほどございますが、いずれも二百海里またはそれ未満の水域で設定しておりまして、一般的に申しますと、二百海里以上に沿岸国の管轄権を漁業に関して拡大ようというような動きは見られないところでございます。  他方、御指摘のとおり、国連等の場におきまして一部の国から、特に二百海里水域と、その水域を越えてあります魚種の保存管理につきましては公海においても沿岸国の優先権を認めるべきであるという声があることも事実でございます。国連海洋法条約、これはまだ未発効でございますけ仰ども、我が国も含めて多くの国が署名しているわけでございますが、この条約では、漁業に関しまして二百海里水域を越えて沿岸国の主権的権利を認めてはおらないわけでございます。そして、二百海里水域とそれを越えたところにある魚種の保存につきましては、これは沿岸国それから漁業国の双方の利益があるわけでございますので、その沿岸国漁業国の間で合意するように努力するという考え方でございます。  我が国といたしましては、沿岸国を含めて漁業国その他の国、各国が対等の立場で、この魚種の保存管理というものは重要な問題でございますので、その間で協力をしつつ漁業資源保存を図っていくべきであるというふうに考えております。ただ沿岸国だけが一方的にこれを管轄するということは認められないという立場でございましたし、今後もそのような立場を堅持していきたい、そういうふうに考えております。
  16. 中村正三郎

    中村国務大臣 地球サミットの準備会等では先生御指摘のようなことはまだ出ておりません。ですから、先生の今御指摘のようなこともあったということをよく頭に入れておこうと思います。
  17. 鶴岡俊彦

    鶴岡政府委員 公海の漁業資源につきまして、沿岸域と公海域を出入りする魚の管理につきましては、沿岸国漁業国が対等の立場に立って管理するという方針で対応したいと思います。  また鯨につきましても、科学的な知見に基づいた資源の利用という観点から対応していきたいというふうに考えております。
  18. 新盛辰雄

    新盛委員 人類の原点は海から始まったという学説がございます。我が国は四海海に囲まれた海洋国家である、これはもう御存じのとおりであります。こうした日本の、海洋国家としてこれまで海にかかわる教育、あるいは最近の釣りやクルージングあるいはマリンレジャー、マリノベーション、いろいろと最近ではこのリゾート問題を絡めて海にかかわる問題提起がございます。この海を愛するという、そうした教育というのは文部省としてはどういうふうに取り組んでおられるでしょうか。
  19. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、我が国は周囲を海に囲まれた海洋国家でございます。そういう意味で、児童生徒に海洋についての正しい知識と海への関心を身につけさせることは極めて重要だというふうに私どもも認識いたしております。このような観点に立ちまして、従来から社会科及び理科を中心に、小中高等学校を通じまして児童生徒の発達段階に応じて指導してきているところでございます。  御承知のとおり、今回、学習指導要領を改訂したわけでありますが、海洋にかかわる事項については、各教科等の内容の充実を図ったところでございます。例えば小学校におきましては、社会科で、第四学年で国土の特色について理解させ、第五学年で我が国の水産業の特色や水産資源の大切さなどを取り扱うというのが従来から定めておりましたが、さらに新たに今回第五学年で、我が国の陸上、海上、航空などの運輸業の働き、特に海上運輸を中心とする貿易の重要さ、特色について理解させることを加えたところでございます。  例えば小学校の教科書で申し上げますと、かなり海洋に関する部分を広げまして、周囲を海に囲まれた我が国の国土の特色、それから水産業、日本近海における暖流、寒流の流れを理解させて、我が国が水産業に大変力を入れているということを教科書で触れ、さらには貿易を支える海上輸送ということで、海が我が国の産業そのものに大きな貢献をしているということを教科書で詳しく触れるようにしたところでございます。  今後とも私どもそういう方向で努力をしてまいりたいと考えております。
  20. 新盛辰雄

    新盛委員 戦後は特に、海を利用して長距離大量輸送に適した船舶、そしてまた世界じゅうの原材料を輸入して加工貿易立国としての経済成長を果たしてきたというのは、今日の日本の繁栄したのは海上輸送を多く利用したその結果でございまして、ここで働いておられる方々あるいは気象やこの変化の激しい状況の中で懸命に商船、漁船に乗り組んでいる漁船員の苦労、こうした特性を持つ海の状況を我々は考えて、日本人の日常生活に大きく深くかかわり合ってきております海の恩恵に感謝をする、こういうことで海に対する認識を深めていく必要があるだろう。  そういうことで、昨年も取り上げたのでございますが、内閣がかわりましたからこの際申し上げておきますけれども、地球上の七割を占める海は人類にとってかけがえのない重要な環境資源で、海洋国家日本として世界に先駆けて、この際、国民の祝日として海の日を制定をすることはどうか。徐々に世論も高まってきておりますし、こうした国際社会の一員として先進国たる日本が、海洋国日本が祝日を設けることはいいじゃないか。  幸いにこの我々の祝日は、御承知ように六月、七月、八月、この間、祝日の指定はないわけですね。みどりの日という、山を守ろうという、あるいは自然を愛そうというこの日は設けられておりますが、先ほどからるる申し上げておりますように海の日というのはない。したがって、ぜひともこの際、昭和十六年、戦前のことですけれども、閣議で海の記念日というのがございました。そしてまた戦後も、運輸省を中心にして、ただ海の日の行事として七月の二十日を一つの、海をみんながもう一回見直そうという、そういう雰囲気づくりで行事が進められておるわけでありますが、国民の祝日に関する法律、これを改正して海の日を制定してはどうか。  こういうことでぜひともここは、総理中心でしょうが、また運輸省、そしてこの今の、現状の認識の上に立って各閣僚も、そのことは「われは海の子白波の」と歌った皆さんですから、海のない県もございます、だけれども、それはそれとして、ここは新たな二十一世紀への展望を切り開いていくという意味で、ゆとりと豊かさの原点をここに求めていくことはいかがなものかと問題提起をするわけですが、ぜひともしっかりしたひとつお答えをお願いをしておきたいと思います。
  21. 加藤紘一

    加藤国務大臣 新盛先生、一昨年その趣旨の国会論議をなさったことを議事録でよく拝見いたしました。また、宮澤内閣になりまして、先般、一カ月ほど前であったと思いますけれども、関係団体の方から七月二十日を海の日として祝日に指定してほしいという強い要望をいただきました。  この問題は、確かに日本にとっての海の重要性を認識するという意味で七月二十日をその祝日にすることは一つの構想ではあろうかなと思いますけれども、問題は、国民世論がどこまで高まるかということだと思います。国民の祝日に関する法律は、「国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日」ということになっておりまして、もちろん海の日についてもそういう世論は非常にあろうと思いますが、現在我が国の祝日は、御承知ようにもう年間十三日で、世界各国先進国レベルからいったらかなり高いところまで来ておりますし、それから最大の問題は、祝日に指定してほしいというほかの御意見がいろいろ強く要望をされておりまして、一番強く言われておりますのが五月一日のメーデーを働く者の日にしたらどうかというやつでありまして、その次に多いのが、十二月九日の障害者の日を設定して福祉全体を国民考える日にしたら意義あるのではないかという御議論であります。それから家庭の日を六月の第一土曜日にしたら、それから婦人の日、これを三月三日のひな祭りの日にしたらどうか、それから人類総ざんげの日として反原爆の日、八月六日、九日というのをしたらという御提案も政府の方にいただいておりますし、国民ハートの日、平和の日、平和の日というのは八月十五日にしたらどうかという、内閣にそういうようないろんな要望が来ておりまして、そういう国民世論全体の中で、比較、そして国民の意見の高まり、そういうものの中で論じていかなければいけないし、国民世論の動向を十分に慎重に見きわめていかなければならないと思っております。
  22. 新盛辰雄

    新盛委員 いろいろそういう御要望があることも承知の上で申し上げているわけでして、それを取捨選択をするのも大変でしょうけれども、これは総じて国民の世論形成にありますね。したがって、ぜひともこれを前向きに検討していただくことを希望しておきます。  そこで、二百海里の問題、先ほども出ましたが、この際二百海里の検証、もう一回原点に返って議論をしてみたいと思うのでございますが、昭和五十二年、我が国もアメリカやイギリスあるいはソ連などの二百海里設定に伴って専管水域の法律をつくりました。それからもう十五年ぐらいたつわけですが、ここで問題になってまいりますのは尖閣や竹島の領有権と漁業権益の問題、そして、さらには今回の北方四島周辺におけるロシアと韓国の漁業協定、また最近ようやく交渉が調ったと言われる日韓漁業協定、こういうことから見ますと、問題は、二百海里設定というのは日本海だけがどうしてもできないわけです。これはトラブルが起こるもとになっている。不法操業がある、監視船が出る、中には妨害をされて、撃沈まではいきませんが、漁船員も命がけでこの日本海をめぐる操業をやらざるを得ないという実態ですね。  で、交渉が、いつもの場合必ず出ますのが、尖閣列島はどっちが本当に領土としているのか。竹島は現に韓国の方からその領有を、というよりはもはや現地実効支配、こういうことになっています。この問題も国会では既に、サンフランシスコ条約以降毎年、毎回議論をされています。したがって、防衛の問題もこれにかかわってくるわけでして、海上保安庁も常駐をしていろいろな、漁業者のいわゆる安全航行あるいは操業を見守っているという状況でございます。また、尖閣列島も沖縄県の漁民からは、漁場の保全のために避難港や灯台やあるいはそうしたそれらの施設をつくってほしい、こういう要望も出されているという状況でございますから、これから考えますと、一体、尖閣列島そして竹島、北方四島周辺、北方四島は我が国固有の領土であるということを常々我々も主張しておりますし、そのことによってロシアとの交渉も始まっているわけですから、この辺の一連の流れの中で政府としてはどういうふうに考え、そしてまた対策を立てておられるかということでございます。  ちなみに、この竹島の問題だけでもとらえますと、日本の側は、これは島根県の知事が所有する、いわゆる知事の管轄にあることを明らかにしておりますけれども、韓国の方は、これはいわば日本が侵略的に暴力及びどん欲によって略取した地域より駆逐せられるべし、これはカイロ宣言を引用して、同島の島根県編入は侵略行為だ、こういうふうに言っている竹島ですね。中国の方は、尖閣の方はこの間、御承知ように、中国は二月二十五日に領海を制定をして、中国固有の領土であるというふうに、この魚釣島、尖閣列島をそういうふうに宣言をしたわけですから、これに対して、これは外交の面でも、まあある意味では厳しいものがあるでしょうけれども、しかしこのまま放置しておったのでは、日本のこれからの、二十一世紀にわたっての領土の考え方ということに国民は疑惑を持つのじゃないかと思うのです。このことはきちっとひとつきょうはお答えをいただきたい。  もう時間がないものですから一連で申し上げましたが、それぞれにお答えをいただきたいと思います。
  23. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま領土をめぐる一連の問題につきまして御指摘をいただきましたが、私の方から初めにこの領土権の問題につきまして取りまとめてお答え申し上げたいと存じます。  まず、最近問題になっております尖閣諸島でございますが、これは明治十八年以降我が国政府が再三にわたり現地入り調査を行いまして、単にこれが無人島であるというのみならず、当時の清国の支配が及んでいる痕跡がないということを慎重に確認の上で、明治二十八年一月十四日に閣議決定を行いまして正式に我が国の領土に編入したものでございます。これらの諸島は、自来、歴史的に一貫して我が国の領土たる南西諸島の一部を構成しているわけでございます。  御承知のとおり、サンフランシスコ平和条約では、その三条のもとでアメリカの施政権のもとに一時置かれましたけれども、幸い、昭和四十七年に至りまして沖縄返還協定のもとで、この尖閣諸島を含めて沖縄が我が国に無事返還されたものでございます。  それから竹島でございますが、これは江戸時代の初期に、既に伯耆の国、現在の鳥取県でございますが、の大谷、村川という方々が竹島を幕府から拝領いたしましてこれを経営してきた事実、あるいは明治三十八年二月の閣議決定とそれに続く島根県の告示によりまして、竹島が島根県に編入されたわけでございます。このような行為によりまして、我が国政府が近代国家として竹島を領有する意思を再確認したこと等によりまして、歴史的にも法的にも竹島が我が国の領土であるということは明らかでございます。  韓国側からは、また別な主張がこれまでいろいろな機会になされた経緯がございますが、日本政府としては、これらにまたその都度反論をしてきております。現在、現実の問題として韓国側が竹島を占拠しているということはまことに遺憾でございますが、これにつきましてもあらゆる機会をとらえて抗議し、返還を求めているわけでございます。  それから、最後に北方四島でございますが、歴史上一度も他国の領土となったことがないという歴史的な事実に照らしましても、また、一八五五年の日露通好条約及び一八七五年の樺太千島交換条約の諸規定から見ましても、我が国がサンフランシスコ平和条約第二条(c)項により放棄した千島列島には北方四島は含まれないということは明らかでございます。  以上のように、尖閣諸島、竹島、北方領土は、いずれも法的、歴史的に我が国固有の領土であることは明らかでございまして、かかる我が国の立場につきましては、従来から外交ルートを初め各種の機会をとらえて明らかにしてきているところでございます。  北方四島につきましては、また近く交渉の段取りができているというのが現状でございます。  なお、竹島と北方四島につきましては、遺憾ながらこれまで外国の占拠が続いていたという現状があるわけでございますが、尖閣諸島につきましては、このたびの中国の動きは遺憾でございますけれども、幸いにして我が国が有効にこれを支配しているという点におきまして、竹島と北方四島、それに他方において尖閣諸島の状況は異なるということが言えると思います。
  24. 新盛辰雄

    新盛委員 今のお答えで、尖閣列島は有効的に日本が支配をしているというだけであって、じゃ日本の自衛艦あるいは海上保安庁ですね、現実、実効的な行使をやって日本国有の領土であるとしているのか、漁業権益を守る面でその辺の海域における操業は安全なのか、この点お答えいただきたい。  そして竹島も、これも海上保安庁が実効支配をしていると言っているのですが、現実は韓国のいわゆる海軍がここを支配をして既に占拠している、こう言われているわけであります。だから、北方四島の問題はこれからの議論にもなりましょうけれども、これは漁業協定の問題でいささか我々は不満があります。日韓漁業協定との関係でもあります。しかし、そこはこの次の議論にして、渡辺外務大臣にここの両島の領土、これは日本国有の領土である、そのためにはどうするかということについてお答えをいただきたいと思うのです。
  25. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今るる条約局長からお話があったとおりでありまして、我々は、我が国の領土であると確信をいたしておりますから、いろいろな機会をとらえまして、韓国に対しても抗議をずうっと、これも説明をさせますが、し続けてきておるところであります。にもかかわらず、それを一方的に占拠しているということになって、それならばこれに対してこちらも実力行使をやるのかという政治問題になってくるわけであります。我々は、それをどうしても今取り戻さなければ、実力行使をやってても取り戻さなければならないという政治判断に至っておりませんので、これは話し合いといいますか、それによって解決するという態度を続けておるわけであります。  一方、尖閣諸島の問題につきましても同様でありまして、日中正常化のときからもいろいろな問題はありましたが、我々の方はこれは固有の領土だと言ってきました。中には、これはひとつしばらく後回しにしようという議論も相手側からは出たと承っております。しかし、それに我が国は賛成をしてきたわけではありません。しかし、中国側がそれを地図の上で法制的に自分の領土と今度書き込んで発表した。これに対して、それではやはりそういうことをさせないために自衛隊なりなんなりを派遣して駐屯させるという必要が今すぐあるかということでありますと、これも大きな大政治問題でございます。  今のところ中国側は、その島に対して自分たちが軍隊を駐留させるとか、実効支配のために具体的にどうやるとかいうことは何もやっていないわけでございますから、我々としては今までどおり、これについては数度にわたって抗議をしておりますが、今後も抗議をし続けて、平和裏な解決を求めていくのが一番いいのではないか、そう考えておる次第であります。
  26. 新盛辰雄

    新盛委員 今その決意を聞きましたが、相手のあることですから、極めて交渉は長引くだろう。また、会議において毎回紛争の種になる、ある意味では限定的紛争、地域紛争的に潜在的脅威論、こういうことで防衛庁ではやはり今回の予算の中でも、まだ東西両陣営のこうした大きな冷戦構造解体が平和の配当というところまではいかないんだ、もっと潜在的なそういう脅威があるんだ、そういう一面のとらえ方をして、自衛隊に名誉をなどという話が出てくるわけであります。  しかし、この問題は、これは領有権をめぐって、しかも日本近海で起こっているわけです。そして、二百海里という設定もできないという状況ですね。だから、これは外交的な面においても大きな問題を抱えていると思いますよ。こうしたことに対して、防衛庁とかあるいは海上保安庁、実務的には海上保安庁でしょうが、これは一体どう考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  27. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 尖閣列島、竹島につきまして、今外務当局並びに外務大臣の方からるる御説明がございました。私も、その判断のとおりだと存じます。  したがいまして、今直ちにどうのこうのということはございませんけれども、しかし、我が国の防衛力というのはやはり基盤的防衛力構想に立っておりますから、必要最小限度の自衛力を保持するということでございまして、こうした領有の、領土の問題でございますから、理論上は私ども大変関心を持たざるを得ませんが、しかし同時に、今外務大臣のおっしゃったように、これは一義的に外交的努力によって解決すべきものであるという御判断が副総理から表明されましたけれども、私も全くそのよう考えております。したがって、こういうことがあるからといって我が国の自衛力を増強しようというようなものでないことは御了承いただきたい、このように思います。
  28. 小和田統

    ○小和田政府委員 ただいまお尋ねの海域における海上保安庁の警備の状況について、お答え申し上げます。  まず尖閣諸島周辺海域につきましては、昭和四十七年五月の沖縄復帰以降、海上保安庁では、巡視船を常時同諸島周辺海域に配備し、また、航空機を随時哨戒に出しております。この尖閣諸島周辺海域は、台湾漁船が一年を通じて、また、中国漁船は例年ですと三月から五月ぐらいにかけて多数操業する海域でございますけれども、中には領海の中に侵入する者もございます。そのようなときには、巡視船によって退去させるなど、厳正な警備を実施しております。  それから、竹島周辺海域でございますが、我が国の漁船の安全を確保するという見地から、同島周辺海域に巡視船を常時配備するとともに、各種漁業の漁期、あるいは我が国漁船の出漁状況等を勘案して、必要に応じ、巡視船の増強配備、警戒に努めております。  それから、北方四島周辺海域におきましても、我が国漁船の安全の確保、拿捕防止等の見地から、根室海峡を中心として同海域に常時巡視船艇を配備しているところであります。  なお、先般の中国の領海法施行に関しまして、尖閣諸島の領海警備は従来どおり厳正に行っております。現在のところ、領海法施行以後、同島周辺海域において特段の状況の変化は認められておりませんが、今後とも、従来に増して厳正な警備を続行する所存であります。
  29. 新盛辰雄

    新盛委員 この問題はまた後刻、その都度変化してくると思いますので、議論は後ほどにしておきたいと思います。  ODAの問題で、我が党の委員から数回にわたってここで論議がされました。今、ODAは顔の見えない援助だ、水が漏れる底抜けのダムをつくっていたり、政府とプロジェクト、そして援助国の、その相手国との意思の疎通が全然図られていない。あるいはまた、国民一人当たりの税金、血と汗の税金が一万四千円から五千円、今回の予算で、一般会計でございますが九千五百二十二億、そして、七・八%というのは今回の予算では相当大きくつくられている、結構なことであります。しかし、これが財投やあるいは国際機関の拠出金などを入れた全体的な事業ベースということになれば一兆六千九百九十億、一兆七千億というこの莫大な金額が毎年毎年ODAに活用されていくわけであります。しかも、これに対して、国会で議論するではないし、報告があったわけではないし、そしてまた、かっどういういきさつになっているのかということについての実態は国民の前に明らかにされておりませんから、ODA増額に対して五七%の国民が批判をしているという世論調査が出てきております。  こういうことから見ますと、これはもう密室でやるべき筋合いのものではない。はっきり言って、外務、大蔵、通産、経企、それにかかわる十八省庁、まことに複雑をきわめている、ここに問題がある。そして、このうちの半分、いわゆる外務省所管の一般会計で見ましても四千八百八億、約五〇%は、これは外務省がいわゆる外交の基軸をなしているものとして使うことができる予算であります。こういう状況から見て、これらの問題で、最近いろいろ事件がありました。いわゆるインドのナルマダの融資問題、これは松浦委員が取り上げました。あるいはクドゥン・オンボ・ダム、あるいはコト・パンジャン・ダム、フィリピンのルソン島でのカラバルソン・プロジェクトが今、行き詰まっている、現地の反対運動が起きている、こういう数々の事例がございます。  そこで、会計検査院が昨年監査をされた結果があるのでございます。もう中身はよくわかっていますが、ODAというのは、この会計検査院の方も指摘をしておられますように、閉鎖性的である、使い道に明確性を欠いている、あるいは現地との対話が一つもなされていない、こういう批判と、具体例を挙げてその監査の実態が出されておりますが、それについて、ひとつ会計検査院の責任においてお答えいただきたい。――特にこの会計監査の指摘事項がこれからのODA計画に対してどうしていくかという展望をつくっているんですよ。あれを読んでいるんですよ。何をやっているんですか。  それなら、外務大臣、責任者として答えてください。
  30. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 ODA日本の国際協力という点から年々増加をし、アメリカと一、二を争う規模になっている、事実そのとおりでございます。多くのプロジェクトでございますから、中にその所期の目的が一〇〇%達成されない、いろいろな点で途中でトラブルがあるというようなことも、残念ながらございます。これは日本国内におきましても、ダムをこしらえようとして大騒ぎになったりしていることは、進捗が予定どおりいかないという例も実はございます。  したがいまして、日本と全く同じようにきちっとやっていただくということは非常に望ましい、そうあるべきであることは間違いありませんが、いずれもODAをやる国は発展途上国であることも事実であります。したがいまして、我が国の尺度で一〇〇%評価をするということは、それは理想として非常にいいことでございますが、現実の問題からすれば、なかなかそうもいきかねるというところも事実であります。  殊に、ODAというものは、まずこちらからプロジェクトを押しつけるものではありません。その国から、こうこういうことが民生の安定上、あるいは食糧の確保上必要であるからぜひお願いをしたいと言ってまいりますが、それらについては、世界的に権威のある調査機関でそれぞれそのフィージビリティースタディーといいますか基礎調査、そういうものをつけて、しかも一応の経済効果等も見積もって出してくるわけでございます。当然、これに対しましてもうのみにするわけではなくて、大蔵省などでは、予算をつける場合と同じように個別に査定をしておることも事実でございまして、そういうことでやるんでありますが、やった先は、これは相手国政府中心になってそれを実行していくわけでございますから、それに我が国の官憲が随時そこに行って、指導し監督し何をするということはこれはできません。やはり相手国政府を信頼をして、時々視察には参ります、注文もつけます、つけますが、権限的にああせい、こうせいということはなかなかこれはできない。やはり信頼の関係なんです。余りやり過ぎますと、これは内政干渉、こういうようなことになってきまして、なかなか難しい。  でございますが、大体私は、部分部分でいろいろ御批判の受けるような点があったことも事実でございますが、全体を見てもらえば、私は日本ODAというものは非常によく評価をされている、そのよう考えております。しかしながら、委員のおっしゃるようなことは大変結構なことでもございますので、その趣旨をもっと徹底をさせるようにいろいろ創意工夫を凝らしてまいりたいと思っております。
  31. 新盛辰雄

    新盛委員 ODAの受益者はだれか、ここは一番の大事なところでして、確かに成功している例もあります。また、悪い例、いわゆる光と陰というので、私どもは一昨年、昨年ODAの実態を見てみました。本当に悪いのは悪いんです。だから、そうしたことをどういうふうにこれから政府が十分に目配りをするかというところでございます。  先ほど会計検査の方は出ていらっしゃいませんが、こんな監査の結果を出しておられるんです。  ごみ収集が進まないタンザニアの公衆衛生整備事業、これは無償資金。時間給水のみのネパール上水道の整備事業。パルプ工場を断念、インドネシア山岳林収穫技術協力事業プロジェクト。発電機がお蔵入り、インド、これは水を掲げて発電所をつくる建設事業ですが、直接の借款になっています。送水一六%どまり、タイ、送水建設事業。こういうふうに会計検査院も指摘しているんですね。そして、なおかつ不透明さがある、非常に問題だ、政府は再考を促すという内容のものなんですよ。  ここでお聞きしますが、各省庁の大臣にひとつお答えいただきたいのですが、昨年臨時行政改革推進審議会、いわゆる第三次行革審世界の中の日本部会、この中で、ODA実施計画で外務、大蔵、通産、経企庁のこれまでの四省庁の独占を批判をして、閉鎖性を改善し、公平性、透明性の確保を求めていくべきである、そして、ODAに関しては情報公開がほとんどないので国民に対する説明義務があるんではないか、こういうことも言われているわけであります。  そしてさらに、人道的な配慮でこの日本ODAはやっているのでありますが、ここで問題なのは、いわゆる政府として、今回の予算を見ますと、これは九一年度の外交青書でも指摘しておられるようですが、他の援助国より見劣りがするのが現状と言われているのが、いわゆる借款と無償資金、この比率であります。これは非常に問題なんだと思いますが、借款の比率が高いのは、日本ODAでは人道的な配慮で援助をしている政府の立場からすれば、なぜこの贈与の方が低いのか、借款の方が高いのか。勘ぐって言えば、借款は各事業、いわゆる企業が、プロジェクトがJICAを通して介在をしますから甘みがある。国民の前に知らさない、資金は援助じゃなくて逆流をしているのじゃないかという批判も出てきているわけですね。  そういうことから見て、恐らく今までのこの予算の状況を見ますと、贈与比率の低い点、これは日本の場合は贈与が四八・三%、借款が五一・七%、この比率であります。ここ数年四〇%台が贈与ですね。アメリカは九二・五%、西ドイツが六八・五%、イギリスが九八・一%、フランスが七三・一%、いずれも八八年から八九年の平均でありますが、これは贈与なんです。ほとんど援助というのは贈与な人です。そこに金をやれば大国である、平和の配当である金を配りさえすれば何とかなるという、そういうやり方ではなくて、ちゃんとこれを監視するいわゆる開発庁という中心をなす省庁がちゃんとポイントを握っているわけですね。そういうこともあって指摘されたと思うのです。  だから、この行革審のいわゆる「世界の中の日本」、ここで言われているこの閉鎖性、透明性が欠けている、この際一庁体制に直す必要があるのじゃないか、こういうことを言っているわけでして、我が党もこれまで参議院の方で、国際開発協力の事業として、「ODA基本」をつくってはどうかということを提起しております。だから、こういう状況がだんだん醸成されているのじゃないか。皆さん自民党の側でも加藤前政調会長は、開発庁をつくってほしいということを何か書いておられますね。こういうことに対して、なぜ一庁体制に整理ができないか。一兆七千億の金を使う、これは国民に対して、公開的な論議をする、あるいは計画に対してそしてまた実行した内容について報告をする、そして国会で承認を受ける、こういうやり方がなぜできないか。この点について、各大臣、お考え聞きたい。まず外務大臣。
  32. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 かねてこの議論は承知をいたしております。  まずその前に、その贈与と有償、無償の話でございますが、日本の方は無償が足らない、有償が多い、有償の方は日本が事業をとってくるのじゃないかというような趣旨だったと思いますが、そうじゃなくて、無償資金の供与の場合は、大体これはどこの国でも同じように、言うならひもつきといいますか、その国が受注をする、大体そうなっているのです。有償の場合は貸すわけですから、これは国際入札ということで、日本も非常に最近、日本のとる比率はどんどん少なくなって、ほかの国に日本の貸した金で事業をやらせているということは評価を受けてきている。  ただ、無償をうんとふやすのは確かにいいのですが、直接これは財投資金が使えないということで、税金から出してもらうという話になりますからそんなにふやせない。ということになれば、借りる方は三%程度の、あるいは場合によっては一%とか、非常な低利なお金でたくさん借りて今すぐやりたいという事業があるものですから、その要望にこたえて有償の円借というようなものがふえている、これが事実なんです。それは相手国の要望を入れているからそういうことになっているわけであります。  それからもう一つは、一省何か別な開発庁をつくってそこでやらせたらどうだ。ただ単にそれは事業の執行だけをやるというのならいいかもしれませんが、どこの国でも同じように自分の国家の、戦略的と言うとまたおしかりを受けるかもしれませんが、よく言う、スポーツでも、それは春闘でも戦略、戦術とかいいますから、そういう意味で私は使うわけでありますが、どこの国でもその政策目的を遂行するためには、相手国の協力というものを得たいと思うのは当然なんですね。したがって、日本は今までの援助の中身というものは、非常に多くのものがアジアにつき込まれているが、アフリカなどが少ない。フランスなどはアフリカなんかが非常に多い。昔の宗主国関係というものもあって、やはり自分たちの影響力といいますか、つき合いが多いというところにどうしてもそうなりがちなんですね、これは。日本だけ言われても困る、世界じゅうほとんどそうですから。そういうようなことで、やはりいろいろな外交上のカードとして援助が役立っていることも事実でございます。  国連等において日本がいろいろの提案をいたすのですが、本当に小さな国などは、わずかな援助をやることによって日本に対して大変感謝をして、日本の提案には一番先に賛成してくれる。この間の武器の移転の問題ですね、あの登録制度、そういうようなことでも何でもいろいろあるわけですよ。政治的な、平和のリーダーシップをとるというようなときに、日本が提案するのならというようなことで賛成をしてくれるということもいろいろございまして、ただ、どんどんくれてしまえばあとは自由に向こうでやらせればいいじゃないかというようなわけにも実はいかない。  しかし、援助の中身がわからないということはないのでありまして、どういう援助をやったか、どういうふうにその事業をやったかということは、いろいろな報告書その他に書いて、外交青書にも書いてあるように、それは別に秘密にしているわけでも何でもない。成功の例もあるし、うまくいかなかった点もちゃんと自己批判も加えておるわけです。でございますから、これを一省庁だけにしてしまうということじゃなくて、やはり今までのような方法が私はいい。  それから、各省の技術、ノウハウ、これは大いに活用しなければなりませんから、援助の場合の調査団等を派遣するときはそれに関係する省庁の方々も団員に加わってもらっている。この間ベトナムなんかに行ったときも他省庁かなり入っておりまして、そういうことで専門的な意見を聞くということをやっておるわけですから、御趣旨に沿うようにいたしますからどうぞよろしくお願いいたします。
  33. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今、無償と借款につきましてのお話はもう外務大臣からお話がございましたけれども、いずれにいたしましても我が国の場合には、八〇年代前半というのは五割程度がアンタイド化されておったわけでありますけれども、今日までは八割を超えていくということでございまして、しかもこれは各国の参加もできるということで、この点についてはかの国にも均てんしておるということが言えるのじゃなかろうかと思っております。  なお、透明性につきましては、これは相手国の立場というものもありましょうけれども、随時国会の方にも資料を提出して私どもは情報の公開というものを進めておる。そして、その効果についても、各省の皆様方が一緒になりながらその効果等についての調査も行っているということが言えると思います。  そして、これは一庁体制ということでありますけれども、それぞれの、例えば建設省あるいは農林省だとか郵政省ですとか厚生省ですとか、そういったところが、やはり世界の国を目配りしながらみずからのノウハウというものを出してくるという意味では、今日の体制というのは決して悪くないんじゃないかというふうに考えております。
  34. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 今いろいろお話がありましたが、我が国の円借款については一般アンタイド化を推進してきており、九〇年度には一般アンタイド化率は八四・四%に達しており、残りの一五・六%についてはLDCアンタイドとなっており、タイドの援助は全くございません。したがって、すべての円借款事業における調達は、発展途上国側が原則として国際競争入札を実施し、公平かつ公正な審査を行った結果、価格面、技術面で最もすぐれた企業を選定することにより事業企業が決定されております。このように、我が国円借款については国際的に最も開かれたものとなっておるということを御理解いただきます。  また、円借款は、発展途上国におけるインフラ整備などの大規模なプロジェクトヘの供与が可能であること等から、相手国からも毎年強い要望が出されております。  なお、贈与比率については、第四次中期目標などを踏まえ、引き続きその改善に努めてまいるつもりでございます。  最後のお話でございますけれども、これは各省庁それぞれ立場があります。私どもはエネルギーの技術協力をするとか、また経済援助とうまく密接に連携をとりながら民間の投資インフラを促進してその地域の国の将来の改善、発展を図るとか、それぞれの独自の持ち味を生かしながら、外務省中心にして各省十分に相談しながらやっていくことが最もよろしいのではないかと存じます。
  35. 野田毅

    野田国務大臣 基本的には、冒頭外務大臣から申されたとおりでございます。  一つ若干補足をさせていただきますと、確かに現在のODAの実施体制について各方面からさまざまな御意見、御批判をちょうだいしておることは事実でございます。そういったことを踏まえて、政府としてもいろいろと公表なり情報公開なり今日まで努力はしてきております。しかしさらに、今御指摘ありましたように、行革審の答申の中でも、当面いろいろあるけれども運用の改善、特に各関係省庁の連絡をより密接にせよ、こういう運用の面における改善、あるいは政府開発援助大綱というものをしっかりつくれ、こういうことでございます。現在、その大綱をまず策定をしようということで、その検討、着手ということの段階にございます。  これから時代の推移とともにいろいろなニーズが入ってくるし、そういったことにどうこたえていくか、引き続きさらに真執に検討を続けていかなければならならぬと思っております。
  36. 新盛辰雄

    新盛委員 会計検査院がいらしたそうですが、もう先ほど昨年の監査実績については私の方から概略申し上げました。  先ほども議論しましたが、日本企業のための円借款だという悪評、疑惑を持たれないためにもこの際政府ODAに受注する企業、JICAを通してのプロジェクトをいろいろつくりますが、これを国民の前に公開する必要があるのではないか。そのことによって、どういう内容のプロジェクトで、どういう円借款をして、こういうふうになっていくのだということが明らかになるはずであります。この受注の企業名を要求しておきましたが、資料を提出てきますか。  それと、ODAの基本法について先ほど指摘をしました。これは日本には関連する法律はありませんけれども、今日本政府が言われているのは、外交が拘束されるのじゃないか、あるいは援助にかかわる外交的な対応の柔軟性を欠くのじゃないか、機動性がなくなって、援助基本法というのは今おっしゃるようにどうも消極的なんであります。しかし、DAC十八カ国中、これは援助国でありますが、援助基本法を持っているのはアメリカ、イギリス、オーストラリア、デンマーク、スイスなど、そしてアメリカなどは年次計画を毎回議会の承認を得てやっているわけです。今度、第四次の中期の目標計画は来年度をもって終わりますね。したがって、九三年度以降の中期計画は一体どうするかという非常なけじめであるから、この際ODA基本法、いわゆる国際開発協力の法律をつくってはいかがか、開発庁を設けてはいかがか、こういうことを申し上げているわけでして、まず一つは公表してもらう企業名、そして今の基本的な援助国のあり方、ODAの基本法、こういうことについてお答えをいただきたいと思います。
  37. 吉冨勝

    ○吉冨政府委員 援助の透明性を高めるためと広く国民の理解を深めるために、実は昭和六十二年の十二月以降、先生御存じかと思いますけれども、既に海外経済協力基金の年次報告書におきまして、円借款の主な受注企業名については毎年公表してきております。したがって、今後ともこうした受注企業名の公表を通じて円借款の実施についての一般国民の理解を深めていきたいと思いますので、年次報告を後ほどお見せしたいと思います。(新盛委員「出しますか」と呼ぶ)出します、これは毎年公表されておりますので。
  38. 野田毅

    野田国務大臣 法律の制定の部分でありますけれども、先ほど申し上げましたとおりそういう考え方も十分我々も承っております。  ただ、先ほど申し上げましたとおり私どもは、現段階において、少なくとも現在の基本的な枠組みとしての四省庁体制ということは行革審においても評価をされておるものだと思っております。ただ、それのいろいろな運営のやり方、実施体制等についてまだまだ改善、工夫を凝らすべき点も多々ある。まず何よりも、法律云々の前に、先ほど申し上げました開発援助大綱というものを早急に私どもは検討し、その策定作業に入りたい、こう考えておるわけであります。
  39. 新盛辰雄

    新盛委員 会計検査院に伺っておきますが、今すぐ資料が出るかどうかわかりませんけれども、失敗をした、借款によって現地で、ナルマダもそうですし、今度のフィリピンのルソン島におけるプロジェクトも凍結、こうすると、凍結をしたから、金、これどうなっていくのか、いわゆるその報告がないのですね。成功した事例の中ではいろいろとそれは使ったわけですから。あるところでは、せっかく日本がこの借款やっておいて、ほかの国が企業としてなってやって、テープを切るときには日本の国は来るな、大使も呼ばれないという惨たんたる状況もあるわけですから。  だから、この際、失敗をしたり凍結になったり、そして皆さんが去年会計監査報告を出した、指摘をされたいわゆる背景にあるこの金の費途、これについて監査されておるわけですか。もしされているならそれを報告してください。されなければおかしいわけですから。総額はどれくらいか。トータル的にできますか、総額どれぐらい。
  40. 安部彪

    安部会計検査院説明員 ODA検査の重要性につきましては、私どもも十分に認識してこれまで検査をしてきているところでございます。  検査のやり方としましては、相手国に対しまして私ども直接の検査権限ございませんので、主として現地に参りまして援助の成果、事業が順調に推移しているか、あるいは援助成果が発現されているかというような観点から現地調査を行ってきているところでございます。  ただいま先生が具体的な事例について御質問ございましたけれども、突然の質問でございますので私どもちょっと手元に資料がございませんし、また、全体の総額につきましても手元に資料を持ち合わせておりません。
  41. 新盛辰雄

    新盛委員 出しますか、この次。答弁中で恐縮ですが、その総額を提出をしてください。昨年の分では事業ベースで一兆六千億ですから、そのうちに借款としてどれぐらい使ってそして今現実、過去の第四次計画の中で事実どれだけ残っちゃったとか凍結されたとかあるわけですから、税金ですから、これ総額をひとつ出してください。資料でいいですから。
  42. 川上隆朗

    ○川上政府委員 私どもに非常に関係の深い点もございますので、私の方から御答弁をお許しいただきたいと思います。  全体といたしまして、先生承知のとおり、先ほどいろいろなプロジェクトについて今中断といったようなお話もございましたが、先ほど挙げられましたようないろいろなプロジェクトにつきましては、一言で申しますと今検討中、例えば環境それから住民に対する配慮といったような視点からの御指摘もいただきまして、我々の内部において慎重に検討している、いわゆる継続中の案件でございます。  そこで、会計検査につきましては、先生案内のとおりでございますが、経済協力というのは基本的に相手の自助努力というものに対して行われるものでございますので、実施の主体が相手国政府になっております。この点は先ほど外務大臣からも御指摘がございましたけれども、我が国が供与する援助の資金の使用は基本的に相手国の責任において行われるということになってございますので、我が国が会計検査を、検査を行うという考え方は、援助のあり方として相手の立場、権利の尊重との関係からして妥当ではないのではないか。他方、我々は援助しました案件につきましていろいろ評価……(発言する者あり)
  43. 山村新治郎

    山村委員長 御静粛に願います。
  44. 川上隆朗

    ○川上政府委員 資料の中身につきましては会計検査院とまた御相談いたしますが、ちょっと必ずしも資料になじまない点があるということ、その側面だけをちょっと申し上げさせていただきます。
  45. 新盛辰雄

    新盛委員 くどいようですが、会計検査院の方から先ほど申し上げましたように総額についてきちんと出してください。  それでは時間がないので、何か答えがありますか。会計検査院ですか。
  46. 川上隆朗

    ○川上政府委員 先ほどの検査院の点についてだけ申し上げますと、昨年末に出されました平成二年度の決算報告につきましては、検査院が海外で視察を行われました七十六の案件につきまして、大体プロジェクトとしておおむね順調に推移している、しかしながら五案件につきまして問題があるということで御指摘を受けまして、その点についての報告を出されているというふうに承知しておりますし、その点については、当然のことながらお出しできることであろうかと思います。これはちょっと私がお答え申し上げることではありませんが。
  47. 安部彪

    安部会計検査院説明員 ODAの検査につきましては、私ども書面検査とそれから実地検査と両面で検査は実施しているわけでございます。書面検査につきましては全体的なチェックをしているわけでございますけれども、現地に参りましての実地検査につきましては、あくまで私どもが、一定の対象につきまして、対象を選定しまして実地調査をするというようなやり方でやっているわけでございまして、全体について、それがどういうような形になっているかという点につきましては、総体については私ども必ずしも把握しておるわけではございません。実地調査をした、実地に、現地に参りまして調査をした対象につきましては私ども実態を把握しておるわけでございますけれども、ただいま先と言われました総体の状況につきましては、必ずしも資料を持ち合わせておりませんので、御報告を差し控えさしていただきたいと思います。
  48. 新盛辰雄

    新盛委員 極めて不透明です。これがODAの顔でしょう。だからこの問題については、やはり国民の前に公開するという政府は積極的な気持ちを持たないと、いつまでも議論が出てきますよ。したがって、この問題では納得できません。資料については、後刻総額等についてもお示しをいただきたい。  そのことを要望して、残余の国鉄問題、JR問題、特に重要な問題がございましたが、関係大臣を呼びました、労働大臣にも雇用問題でお越しいただきましたけれども、厚生大臣には年金の問題でお伺いする予定でしたが、質問時間を終了しましたので、後刻機会を改めて申し上げておきたいと存じます。  終わります。
  49. 山村新治郎

    山村委員長 これにて新盛君の質疑は終了いたしました。  次に、伊東秀子君。
  50. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 社会党・護憲共同の伊東秀子でございます。  まず外務省にお尋ねいたしたいと思います。  従軍慰安婦の補償に関してでございますが、二月三日の我が党の山花議員の質問に対しまして政府は、従軍慰安婦の補償の問題について政府の基本的な考え方はどうかと聞いたのに対し、訴訟の手続がとられているので「その帰趨を見守る」、「あえて申し上げますれば、この種の問題も含めて法的には六五年の日韓の正常化の折に決着済みである」というふうにお答えになっておりますが、現在問題になっております請求というのは、個人が日本政府に対して民族的な迫害及び人格権を侵害された、人間の尊厳を冒涜されたという精神的な損害に対する慰謝料請求でございます。こういったものが最終的に解決されたという答弁だということになるわけですが、それで間違いないでしょうか。
  51. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この問題につきましては、これまでいろいろな機会に私どもの考え方、るる申し上げておりますので、それを繰り返すことはいたしたくないと思います。  結論から申し上げますれば、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定におきまして、その第二条で、財産請求権の問題が完全かつ最終的に解決されたと規定しているわけでございますが、具体的には、この第二条のそれ以下の規定におきまして、いわゆる国内法的根拠のある実体的権利については、相手国でそれを消滅させる等の措置をとったとしてもそれに対して文句は言わない、それから、法律的な根拠のないその他の請求についてもいかなる主張も行うことができないということでございまして、財産権であれば、我が国の場合には、韓国及び韓国国民の財産権を消滅させる法律を当時制定してこれを消滅させたわけでございます。それ以外の請求につきましては、日韓間の問題としては、いわゆる外交的にこれを取り上げることはしない、すなわち外交保護権を行使することはしないという意味で解決をしているということでございます。     〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
  52. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 そうしますと、外務省としては、一身専属権であると言われております慰謝料請求、精神的な損害に対する慰謝料請求というものはその者にしか専属し得ないし処分し得ないと言われている権利でございますが、これを完全かつ最終的にこの慰謝料請求権を国家が解決できるという立場に現在でも立っておられるということなんでしょうか。
  53. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほども申し上げましたが、この協定上措置をとって、そして権利を消滅させる等の国内的な処理をするということの対象は、いわゆる「財産、権利及び利益」と協定で称しているものでございます。合意議事録で了解が確認されておりますように、このような「財産、権利及び利益」というのは、「法律上の根拠に基づき財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利をいうこと」が定義されて了解されているわけでございます。  いわゆる慰謝料請求というものが、いわゆるクレームというものがどのようなものと国内法上観念されているかにつきましては、私必ずしもつまびらかにいたしませんけれども、いわゆるこの「財産、権利及び利益」というものには該当しないものが多々あろうと思います。そのようなものにつきましては、この協定上は、いわゆる財産、権利、利益というもの以外の請求権というふうに観念しているわけでございまして、そのような請求権につきましては、国内的に、国内法的に処理をとるということはここでは想定しておりませんけれども、いずれにせよ、そのような問題を国家間で外交的に取り上げるということはこの協定の締結後できないというのが当時の日韓間の合意であったというものでございます。
  54. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今、私の質問にお答えいただいてないわけでございますが、私は、本問題、今韓国の女性たち日本政府を訴えているのは個人としての慰謝料請求である。それが最終的に解決済みであるというのが政府の答弁でございますが、こういった一身専属権を国家が本人の承諾もなしに勝手に放棄できるのかどうかということの外務省の見解を簡潔に答えてください。
  55. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 当時の協定上の処理といたしましては先ほど申し上げたとおりでございまして、いわゆるクレーム、財産権以外の、実体的権利以外のクレームにつきましては、外交保護権の放棄という形で決着を図る一方、それと並行して経済協力というものを行ったわけでございます。いわゆる無償三億、有償二億という経済協力を供与いたしまして、そういう全体の合意によってこの問題も含めて、日韓国家間では最終的に解決したという処理を行ったわけでございます。  そして慰謝料等の請求につきましては、これは先ほど申し上げたようないわゆる財産的権利というものに該当しないと思います。そのようなものについては、いわゆる財産的な権利につきましては国内法的な処理をしても文句を言わないという規定があるわけでございますが、それ以外のものについては外交保護権の放棄にとどまるということで当時決着をした。これはいわゆる請求を提起するという地位までも否定しないという意味においてそのような権利を消滅させていないわけでございますが、しかしそれが実体的な法律上の根拠を持った権利である、実体的に法律上の根拠を持った財産的価値を認める権利であるというふうには当時観念されなかったろうと思います。
  56. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今の条約局長の御答弁を伺っていますと、慰謝料請求権そのものは消滅してないという御答弁になるわけで、放棄したのは外交保護権であるということをはっきりおっしゃいました。そうすると、慰謝料請求、彼女たちが今問題にしているのは慰謝料の問題でございまして、そうしたら最終的に解決したとは言えないじゃないか、論理的にも。全くそれは最終的に解決してはいない。  ただし、今もう一つ条約局長は重要なことを御答弁なさったと思いますが、彼女たちの権利は実体法上の根拠があるかないかというようなことを問題になさいましたが、条約局長としては、慰謝料請求権は消滅はしてはいない、残っている、しかし、実体法上の根拠がある請求権ではないという趣旨に御答弁なさったと伺ってよろしいでしょうか。
  57. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 協定の解釈に関します、いわゆる「財産、権利及び利益」の定義につきましては、先ほど読み上げましたとおりでございます。いわゆる慰謝料請求権というものが、この法律上の根拠に基づき財産的価値を有すると認められる実体的権利というものに該当するかどうかということになれば、恐らくそうではないのだろうと私は考えます。いずれにいたしましても、昭和四十年、この協定の締結をいたしまして、それを受けて我が国で韓国及び韓国国民の権利、ここに言っております「財産、権利及び利益」について一定のものを消滅させる措置をとったわけでございますが、そのようなものの中にいわゆる慰謝料請求というものが入っていたとは記憶しておりません。
  58. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 慰謝料請求権は入っていなかった。そうしたら、政府がこれまで繰り返してきました彼女たちの請求権は完全かつ最終的に解決したということが、全く答弁を覆さなければいけなくなると思いますが、官房長官、いかがでございましょうか。
  59. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 官房長官の御答弁の前に一点だけ補足させていただきたいと存じますが、いわゆる個人の請求の問題については解決していないのじゃないかという御指摘もあるわけでございますけれども、先ほど私答弁いたしましたとおり、この日韓請求権・経済協力協定におきましては、これは繰り返しませんけれども、先ほど申し上げたような規定によって日韓両国間においては完全かつ最終的に解決を見たということで合意がなされたということでございます。ただ、いわゆる法律的な根拠に基づかない財産的な実体的な権利というもの以外の請求権については、これは請求権の放棄と申しますことの意味は、外交保護権の放棄ということでございますから、それを個人の当事者の方々が別途裁判所なりなんなりに提起をされる、そういうような地位までも否定するものではないということは、これまでもいろいろな機会に政府側として御答弁申し上げているとおりでございます。
  60. 加藤紘一

    加藤国務大臣 条約局長が答弁したとおりでございます。
  61. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 そこが大変論理的に矛盾であるところでございまして、訴権があるのは当然である、だれでも裁判所に訴える権利はあるわけでございまして、訴権とそれから慰謝料請求権という実体法上の権利とは全く別である。裁判所に訴える権利というのは手続法上認められている訴権でございまして、今条約局長が答弁なさったのは、従軍慰安婦だった方々の慰謝料請求権については消滅していない、これは解決の枠外というふうに答弁されたわけですから、とすれば訴権にすりかわる論拠は全然ないわけでございます。それがなぜ手続法上の裁判所に訴える権利だけで実体法上の権利は消滅したんだということになるかが全く論理矛盾である、そういうことで私は先ほど官房長官の御答弁を求めているわけでございますので、もう一度、慰謝料請求権を当人の承諾なしに国家が消滅させることはできないという条約局長の見解を前提にして、何ゆえにそれでは政府は解決したと言うのか、この点を明快にお答えいただきたいと思います。
  62. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 官房長官へのお尋ねがどうやら私の答弁が原因になっているようでございますので、一点だけ補足させていただきたいと存じます。  先ほども申し上げましたとおり、我が国としては、この協定上外交保護権を放棄した、そして関係者の方々が訴えを提起される地位までも否定したものではないということを申し上げたわけでございますが、しからば、その訴えに含まれておりますところの慰謝料請求等の請求が我が国の法律に照らして実体的な根拠があるかないかということにつきましては、これは裁判所で御判断になることだと存じます。ですから、その点についてはちょっと誤解があるといけませんので補足させていただきます。
  63. 加藤紘一

    加藤国務大臣 条約上または法律上のかなり専門的なことでございますので、条約局長の答弁の方が正確かと存じます。私がかつて答弁申し上げましたのも、今条約局長が申し上げたとおり、双方の政府の間で外交上はこれは決着したものである、ただ、韓国の国内にいる方の一人一人の訴権というものを否定しているものでありませんという答弁はいたしております。それが、訴える権利というものがいわゆる手続法上のものであるのか、それとも実体法上のものであるのか、そういうような点につきましては、専門家の答弁の方にお任せしたいと思います。
  64. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 訴権があるのは、だれも訴権を否定されている人はいないわけでございますから、訴権があることは当然である。問題は、今問題になっているのは、訴権のあるなしじゃなしに、彼女たちの慰謝料請求権、個人としてそれは消滅しないという答弁をされたわけですから、それをなぜ解決したと言うかが問題だということを私は伺ったわけです。  それはおきまして、内閣法制局長官に伺いますが、条約でもって国家が個人の精神的な損害に対する慰謝料請求、これを放棄できるかどうかということが第一点と、今政府はできないということを前提としつつも、その残っている慰謝料請求権は裁判所に訴える権利、つまり訴権でしかないんだというふうに非常に限定的にしているわけでございますが、この二つの点に関する法制局の見解をお答えください。
  65. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  ただいま条約局長あるいは官房長官からもお答えございましたように、現実に日韓の請求権協定といいますかで放棄しておりますのは、我が国の外交保護権あるいは韓国の、双方の外交保護権でございますので、そういう意味で外交保護権についての定めというもの自身が直接個人の請求権とかこういったものの存否に消長を及ぼすものではない、こういうことだろうと思います。  次に、第二の点のお尋ねでございますが、それ自身につきましては、現在訴訟になっておりまして、現実に裁判所でどのようないわゆる法規の適用といいますか、そういうものが行われるか、私の方から予断を持って申し上げることはいかがかと存じます。
  66. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 私は、裁判の中身のことをお伺いしているのではございませんで、今法制局長官がお答えくださいましたように、外交保護権の放棄が個人の請求権の消滅には何ら影響を及ぼさない、とすれば、全く影響を受けていない個人の請求権が訴権だけだという論理が成り立つか否かという見解、解釈を伺っているのでございますが、いかがでしょう。
  67. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  訴権だけかというお尋ねでございますけれども、現実に訴えを起こしまして、私もその内容を詳細には存じませんけれども、損害賠償請求をされているわけでございます。その損害賠償請求について、いかなる取り扱いがされるか、これは裁判所の判断にまつところであろう、こういうことでございまして、訴権だけであって、あと損害賠償請求権があるとかないとか、そこの部分を私の立場で申し上げる……
  68. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 あるなしの問題じゃなくて、損害賠償請求権は消滅しないと言いながら、それが訴権だけという論理が成り立つかどうかを潤いておりまして、裁判所の判断をかわって言ってもらいたいと言っているのじゃないのでございますが、その点について、そういう論理が成り立つかどうかを答えてください。
  69. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 訴権だけというふうに申し上げていることではないと存じます。それは、訴えた場合に、それの訴訟が認められるかどうかという問題まで当然裁判所は判断されるものと考えております。
  70. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今の御答弁で、つまり今まで政府が、請求権は消滅してすべて解決済みとかあるいは消滅していないけれどもそれは裁判所に訴えるという権利のみだということが、大変論理的に矛盾であるということが明らかになったのではなかろうかと思います。  そこでその問題はおきまして、次にもう一つ、条約局長の二月三日の御答弁に即してお伺いいたします。  二月三日の山花議員の質問に対して、柳井条約局長が、「日韓の条約の上ではこ「当時具体的に取り上げられなかった問題も含めてすべての請求権の問題が両国間では完全かつ最終的に解決されたというふうに規定しているわけでございます。したがいまして、この点につきましては、日韓両国政府間で合意の上でそのような処理をしたということでございます。」という答弁がございます。  そこで一点目。まず、私はここに請求権及び経済協力に関する協定、議事録、すべての書類を持ってきておりますが、この最終的に解決されたというふうに規定してあるというのはどこの部分に規定してあるのでしょうか。最終的に解決されたというのが、つまり対日八項目要求、これも私ここに用意してございますけれども、これ以外に取り上げられなかったこと、議題にならなかったこともすべて解決するというふうにこの協定に規定されているというふうにお答えになっているわけでございますが、取り上げられなかった問題まで解決するというのがこの協定のどこに書いてあるのか、教えていただけますでしょうか。
  71. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 それは協定の第二条の一項に、ここにいわゆるサンフランシスコ平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて完全かつ最終的に解決されたというふうに言っているわけでございまして、国交の正常化でございますとかあるいは平和の回復ということを行います場合に、平和条約あるいはこのような日韓間の協定等いろいろな条約を結びまして請求権の問題を解決するわけでございます。  その際に、大抵の場合は個々の請求項目についていろいろ議論をするということがあるわけでございまして、御指摘のとおり日韓の当時の交渉におきましては、いわゆる八項目の請求というものが韓国側から出されて、その請求に対する補償の積み上げというよう話し合いもしたわけでございますが、当時既に戦後相当時間もたっていた、そしてその間にいわゆる朝鮮動乱というものも介在したということで、一件一件の積み上げではこれは到底解決のめどが立たないということで、いわゆる一括解決方式というものが日韓間で基本的に合意されまして、そしてそのような線に沿ってこの条約が起案され合意されたわけでございます。  この協定上の根拠ということになれば、それは「完全かつ最終的に解決された」ということでございまして、これが八項目にあるかないかということで判断するというよりは、日韓間の請求権の問題を一括して全部解決したと。そこで論議されたものもあったでしょうし、あるいは具体的な論議の対象にならなかった請求というものもあったと思います。しかし、そのような論議されなかったものあるいは場合によっては八項目の請求の中に関係のあるものもあるかもしれませんが、論議されなかったものを後になってあれもあった、これもあったということでは、いわゆる一括解決というのはできないわけでございますから、それはこの条約の趣旨、そしてこの第二条の規定から申しまして、現在問題になっているような請求についても、これは日韓間の問題としては一括、完全かつ最終的に解決されたという趣旨であるということを申し上げた次第でございます。
  72. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今、取り上げられなかった問題も請求権もすべて解決したというのは、条文上の規定としてはこの二条一項でしかないということが明らかになりました。しかしこれは、法の一般原則に反するのではなかろうかというふうに私は考えるわけでございます。  というのは、二つの理由から法の一般原則に反しております。一つは、政府はこれまで昨年の十二月まで、軍の関与はない、民間人が勝手にやっていたことだという公式見解をずっと表明してまいりました。つまり、前提となる事実認識において全く新たな事実が判明したという、つまり、前提事実に錯誤があったということに法律上はなろうかと思います。つまり、こういう場合には、契約の前提になる事実に変更が後で発見され、かつその変更が全く予期できなかったような場合には、法の一般原則として事情変更の原則というものがとられるわけでございます。  これは何も日本だけの問題ではなくて、フランスでは、例えば不予見の理論とか、つまり予見できなかったことが契約の後に発見されたらその契約の効力はなくなる、あるいはドイツでは行為基礎の理論と言われておりまして、行為の前提となった、契約の前提となった基礎が崩れたときにはその基礎の上に立っていた契約は無効になるという論理があるわけでございますが、こういった法の一般理論からいっても、全く事実認識が変わってきた今も、しかも全然それが事実認定が違っていたために取り上げられなかったことに対して、それがこの請求権の中に入っているんだという論理はどうしてもとり得ないんじゃないか。その点について法制局長官にお伺いしますが、今のように、条約の解釈において法の一般理論というものは適用になるということが私は当然だと思うのですが、いかがでしょうか。
  73. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 法制局長官から御答弁がある前に、私の方から一点だけお答えさせていただきたいと存じます。  いわゆる慰安婦の問題につきまして、政府が関与したか否かという問題が確かにあるわけでございますが、いずれにいたしましても、この日韓の協定上は、韓国国民の我が国政府に対する請求あるいは財産権というものだけではなしに、我が国の政府に対する請求ももちろんでございますが、両国国民間の請求の問題あるいは財産権の問題というものも含めてこの条約上の処理の対象にしているわけでございます。
  74. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  個別具体の事情を離れまして一般的にと申されますと、非常に私の方もお答えしにくいわけでございますが、もちろん国内法的にも事情変更といったようなものは一つの考え方として働き得ると思いますが、ただ同時に、事情変更というものをただ安易に、容易に認めていくというのもまた問題があるということだと存じます。
  75. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今の御答弁で、安易には認められないけれども、その考え方は条約を解釈する場合にも適用になるというふうに理解いたします。  このことは、私は事前に質問通告の中にお渡ししておきましたが、法制局長官にもう一度お伺いしますが、国際間の紛争を解決する場合の国際司法裁判所規程の第三十八条の一項Cというところにも認められているんですね。つまり、どういうものに準拠して国際的な紛争を処理するかというときのその適用するものの中に、「文明国が認めた法の一般原則」というふうに書いてございますが、つまり事情変更の、原則的なその前提事実が変わった場合の条約の解釈に関するものが、この国際司法裁判所規程の中では「文明国が認めた法の一般原則」という形で認められているというふうに解釈してよろしいかどうか、いかがでしょうか。
  76. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 事情変更の原則等につきましていろいろ御指摘があったわけでございますが、まず一般的な問題といたしまして、もとより各国の国内法で認められた、事情変更の原則を含めましていろいろな原則があるわけでございますが、そのようなものがそのまま国際法の原則として適用されるというものでないことは当然でございます。したがいまして、もちろん国際法の解釈につきまして、いろいろ類推でございますとかあるいは参考になるということが各国の国内法の中にあることは事実でございますし、事情変更の原則というのも、特にその条約の無効取り消し原因という観点から非常に議論されておりまして、これについては非常に議論の多いところでございます。  その条約の無効取り消し原因というのはただいまの問題ではございませんのでこれ以上触れませんけれども、例えばそういうような問題につきましては、国際間で条約法条約というようなもので合意されて、その意味あるいはそれを適用する場合の一定の手続というものをきちっと決めて適用するということになっているわけでございます。したがいまして、事情変更の原則というようなものがそのまま国際法に適用されるということはむしろ言えない、そういう考え方はあるけれども、そのままの問題ではないということでございます。  他方、国際司法裁判所規程の三十八条一項には、御指摘のとおり法の一般原則というものが挙げられているわけでございます。この三十八条一項のいわゆる柱書きのところは、「裁判所は、付託される紛争を国際法に従って裁判することを任務とし、次のものを適用する。」とありまして、aとして条約等を挙げております。それからbとして、法として認められたいわゆる国際慣習というのを挙げておりまして、そしてcとして、「文明国が認めた法の一般原則」というものを挙げております。さらにその他の点も書いておりますが、いずれにいたしましても、裁判所が法の一般原則を適用するというのは、個々具体的な国際間の争いについて、特に条約あるいは国際慣習法というようなもので解決ができないというような場合に「文明国が認めた法の一般原則」というものも適用して判決を下すということでございまして、そのような個々具体的な争訟を離れて何が国際的に適用される法の一般原則がということは言えないことでございます。
  77. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それは当然でございまして、今回従軍慰安婦問題では大変日韓間の重要な、外交レベルには乗っているかどうか別に伺いますけれども、国民感情の問題として、これはもうどうしようもない状況に来ているんじゃないかと思われるわけですね。  つい先日の新聞報道によりましても、三月一日の独立記念日を前に韓国紙が韓国国民日本観を問うた、アンケートをしたところ、日本人に好感を持てないというのが六七・四%、日本という言葉を聞いただけで気分が悪くなる、二六・一%、日本政府は南北統一に反対していると思う、七九%、こういう形で大変反日感情がふだんより高まっている。その大きな原因として従軍慰安婦、自分たちの民族がこれほど凌辱されたという事実が明るみになったことが大きく問題があるというふうに報道されているわけですね。だからこそ、この問題は国際間のこういった条約の解釈において非常に重要な問題になってくるであろうと私は考えるわけでございます。  しかも、先ほど読み上げました柳井条約局長の答弁では、もう解決済みというのは、「日韓両国政府間で合意の上でそのような処理をしたということでございます。」というふうに答弁なさっておられますが、実はそうではない、韓国の方にも、私は政府要人にもお会いしましたが、それは別としまして、韓国政府はことしの一月二十一日、各省庁の実務責任者会議を開いて、日本政府に対して徹底した真相究明と適切な補償などを求めていくという、そういった方針を決定したというふうに伝えられているわけですね。つまり、韓国政府はここで処理済みということには納得していないということがこの報道で明らかにされるわけでございますが、そういう意味でも国際司法裁判所規程に用いられているようなこの法の一般原則ということは大変重要になろうかと思うわけでございます。  そこで、外務省にもう一度お伺いしますが、外交ルートを通じてこのような徹底した真相究明及び適切な補償というようなことが韓国政府から伝えられておりますでしょうか。
  78. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいま先生がお示しになりました韓国側の措置について、その部分を読み上げてみたいと思います。  まず徹底真相究明に努めてほしい、そしてこれを基礎に補償、賠償等の問題について国内の専門家あるいは当事者の意見をよく聞いて、その上で日本と外交交渉を展開する、こういうことでございまして、私の申し上げたいのは、今までのところ韓国政府が外交ルートを通じまして日本政府に要請してきておりますのは、まずは徹底して真相の究明をしていただきたいということでございまして、補償あるいは賠償という話は今のところございません。
  79. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 私が韓国の方からお伺いしたところでは、この問題は非常に民族の尊厳の根幹にかかわる問題であり、基本的な新たな事実が判明した現時点においては要求したから払うという性質のものではない。申しわけなかったというふうに謝罪するのであれば、日本側が信義のある国として自発的に補償を申し出てくるというのが国際間の信義であろうと考える。だからそれを今は見守っている。ただし、日本政府があくまでも解決済みということを、前提を早急に変えないのであれば法的な措置をとるということを、私は直接韓国の政府関係者の方からお伺いいたしました。ということは、今は適切な補償の要求が外交ルートに乗ってないにしても、早晩、いつまでも裁判を見守るとか決着済みということを繰り返している限り外交ルートに乗るであろうということが予想されるわけでございます。  外交ルートに乗った場合どうなるかということを私は調べてみましたが、これは先ほど条約局長も条約の無効や取り消しの問題にちょっと触れましたが、条約法に関するウィーン条約というのがございまして、この四十八条というところに「錯誤」の項がございます。つまり、条約を締結するときにその基礎をなしていた事実関係に錯誤がある場合には、この場合は韓国側ですけれども、韓国側はこの条約の無効、だから、日韓条約の一部、従軍慰安婦については請求済みと日本が主張し続けているこの部分に関してのものをたとえ前提にしたにしても、これの無効を主張して、国際的な、国連への平和的解決の協議の申し出とか、あるいはそれでも日本政府が聞かない場合には国際司法裁判所へ訴え出るというような重要な外交問題になるのではなかろうかということが予想されるわけでございます。  こういったこれまでのことを前提にして、渡辺外務大臣、まだ真相究明ができるまでは裁判の結果を見守るという態度を続けるのか、あるいはとにかく新たな事実が発見された、しかもその前提事実には錯誤があった、条約の解釈としても錯誤無効という、一部条約の無効という問題が外交ルートに乗るかもしれないということを前提にして、どうお考えになりますでしょうか。お答えお願いいたします。
  80. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 日韓条約が交渉が始まって締結されるまでには十三年ぐらい長い時間がかかっているんです。当然その中では意見の違いがあるから、交渉が長引いた。最初は賠償というようなことも出たでしょう。いろいろ出ました。しかし、いや、こちらは別な意見を出した、そして最終的には賠償でなくて、それで請求というようなものに決着をつけようということになり、それは経済協力という形をとろう。で、無償三億ドル、有償二億ドルということで決まったわけです。  じゃ、何でそれを算出したんだ、無償という金の中身を。これについても私など当時の交渉の記録等に出ているところを見ると、やれ軍隊の徴用だとかいろんな問題が出たそうです。出たけれども、それじゃそれらを全部金目にして、何が幾ら何が幾らと積み上げることは事実上、事実上ですよ、これは不可能に近い、評価の仕方が。そこで、政治決着ですから、こういうものは。だからそれはひっくるめて、それで無償三億ドルでお金を差し上げますから、経済協力で、どういうふうにお使いになるも向こうにお任せする。それから有償については二億ドル出します。当時は、まあ三百六十円ぐらいのレートだったと思いますが、予算も今の恐らく十分の一ぐらいじゃないですか。正確なことはちょっとわかりませんが、一千億円ぐらいの金を出したんですから、今でいえばまあ数兆円か一兆円か、それぐらいの金額に匹敵するでしょう、経済の規模あるいはGNPの大きさ、予算の規模等から比べると。そういう中ですから、当時としては日本の国力もそれほどじゃありませんし、かなりのものを出すことで決着がついたということですね。  そこで私は、法律論争をこれは幾らやっても同じことの平行線で、これは繰り返したと思うのです。しかし、現実の問題として、大きな人道問題としてこれが提起され、それでまた政治問題になっている。これは事実ですから、だからこれは法律論争で負け勝ちを決めると言ったって、実際は、それはそう簡単に決まる話じゃない。幾ら国際裁判所へ訴えようが何しようが、年数ばかりかかっちゃって、私は決着しないんじゃないかと思う。したがって、非常に悲惨な方々ですから、だれが考えたってお気の毒だ、本当に申しわけないという気持ちはあるんですよ。だから、そういうものについて何か、まあ申しわけなかったというんなら申しわけなかったようなことを、目に見える形で何かするのがやはり政治かなという感じを受けているんです、実際は。  しかしながら、そうはいっても、じゃ、だれとだれがその対象なんですか、今訴え出た人だけなんですかと。すると、数名という話になっちゃうわけですね。だからもっと実際はいるんじゃないかというようなこともあって、しかし、そういうような方の実態がわからないことにはやりようがありませんから、裁判は裁判でそれは継続されるのは結構ですが、一方はそういうような実態調査をやって、大体この程度の人が確実ということになれば、しかし、この問題についてやり方を間違うと、どんどんどんどん広がっていっちゃって、何のために日韓の条約を結んで、ここで一切終わりと決めたかわけがわからなくなってしまいますからね。  そこらの兼ね合いも、これは日本としては国益の問題ももちろんありますし、負担が多ければ多いほど日本国民が喜ぶという話じゃありませんから、これは国の税金との関係もあるわけですから、だから、ほかのところにどういうふうに広がるか広がらないかという問題も含めて、韓国政府政府として当時の軍人さんとかなにかには何がしのものを出したということも聞いていますよ。だから、そことの兼ね合いというものも一体どうなるのかというもの等も含めて考えなきゃならぬ。  しかし、お気の毒であったということも事実ですから、どういうふうにするかは、これはまあそこらのところを全部見た上で解決をするというのが政治じゃないかなというように私は思っているんですよ。しかし、それは今訴えられている方の御希望どおりになるかどうか、それはわかりませんよ、それはわかるはずがないんですから。だから、そこらのところでどうなるかはもう少し調べていかないと結論は出せないと私は考えています。
  81. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 大変積極的な御答弁で私としてはうれしいわけでございますけれども、今の御答弁で伺いますと、つまりだれが慰安婦であったかが、調査というか真相究明は、だれが慰安婦であったか。つまり、支払い先を確認しなければいけないということが、それがわかれば支払います、軍が積極的に、しかも組織的また計画的に関与していたという事実を前回私は明らかにしたわけでございますが、支払いはするけれども支払い先を明確にしたい、そういうことと受けとめてよろしいんでしょうか。
  82. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 そこまで私は具体的に言っているわけじゃないんですよ。何かの記念事業という問題もありましょうし、よく戦没者等に忠霊碑を建てるというようなこともございましょうし、何かそれはこれから考えることであるが、しかし大体どれくらいの人数でいるかということも全くわからないのですね。もう三人や五人の解決なら話は簡単ですよ。しかしそういうこと、実態がまずつかめなければ話のしようがもちろんないわけですから、ですからそういう点については向こうでもよく真相を究明をする、調査をしてみると言っているそうだし、我々の方でも調査をしますと言っているわけですから、そこは友好国との間でございますから、よく相談をしながらやるということではなかろうかと存じます。
  83. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 実態調査は当然しなければいけないことでありますし、宮澤首相も誠実な調査を韓国に約束してきたという事情もございますので当然かどば思いますが、ここに、日朝の交渉に出席しておられる第六回交渉の中平代表の発言というものの中に大変気になるのがあるんですよ。従軍慰安婦の問題の噴出に驚いている、朝鮮の指摘する罪行の真相が解明されるには何世紀かかるかわかもないというようなことを言っているわけです。つまり、何世紀かかるかわからないよう調査のことを考えているとしたら大変問題なわけで、あくまでも誠実に、実態が解明したら、形はともあれ支払う気持ちがあるということを前提にするのかどうかのことは大変重要な問題だと思うんですね。払うか払わないかはわからないけれども、何世紀かかってでもとにかくえっちらほっちら調査しましょうなんというんじゃ、大変国際関係の、重要な外交のパートナーとしての韓国との日韓関係はますます悪くなるんじゃないかと思うわけでございます。宮澤さんが初めての外国訪問に韓国を選ばれたというのも、やはり北東アジアの平和とか安定にとって非常に重要なパートナーだというお考えのもとに私は韓国にいらっしゃったんだというふうに理解しておりますし、やはり調査というからにはいつごろをめどに何と何を明らかにするということを明確にしなければいけないんじゃないかと思うわけですね。  それと、あとこういうことは、私が従軍慰安婦でしたということを名のり出て受け取る側も非常に恥ずかしい。もう今お金が欲しくてこういう訴えをしているのではなくて、やはりあれは軍は関与してない、民間人が勝手にやったんだというふうに言い切っていた政府態度に対する自分の屈辱に、汚辱にまみれた人生は何だったのかという、戦後五十年たって彼女たちの人間としての憤りと憎しみが噴出したのが今回の訴えであり、日本政府に対する請求だと私は思うわけでございますけれども、そういう意味からいっても、だれに払うかわからないというんじゃなしに、とにかくこういう事実が従軍慰安婦と言われる人たちに対して行われた。そうすれば、とにかく、基金にするかあるいは記念碑を建てるか歴史博物館を建てるか、あるいはそういった人たちの生活保障、名のり出てきた人たちに蓋然性が証明されれば生活を援助いたしましょうと、何らかの形をとるとか、そういったことが非常に私は、日本は経済大国と言われているわけでございますけれども、大事なことじゃなかろうかと思うわけでございます。そこまでもういま一歩踏み込まなければだめなんじゃないかなという気がするわけでございます。  それで、それを前提にしまして、また今までこういった措置が幾つかとられておりますので、こういったことは考えられないかという形で提起できる例があるわけでございますが、昭和六十二年の九月に台湾住民の戦死傷者への補償という形で弔慰金を払っているんですね、議員立法をつくって。こういう方法もあるのじゃなかろうかと思うわけですが、これをすることに何か支障があるかどうか、この辺の見解はいかがでしょうか。
  84. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは、日本の軍に徴兵されてそれで戦死した方とか、それかも重度の負傷を受けて目が失明したとか、あるいは腕が足がなくなったとか、いろいろなそういうような方、悲惨な方があって何もされていない。そういうようなことで議員立法をされたことは事実ですが、こういうのはどんどんそれはもう申し出がありますよ。だから人の確定もしやすい。しかし、この従軍慰安婦の問題というのは、申し出の問題というのはなかなか実際問題として、これは生存されておったとしても、あるいは遺族にしても薄々わかっておってもそれはなかなか言いづらい問題ではなかろうかと私は思います。したがって、そういうものも含めて何らかの済まないという気持ちをあらわす何がいいか、それは今後考えていきたい。それには一人一人の者がみんなわからなければなんて、そんなことはそれはもう不可能ですから、大体大ざっぱなところがわかれば政治的な配慮をしていくということ以外に私はないんじゃないかという感じですよ。これは内閣で決まったわけじゃないからちょっと言い過ぎかもしらぬけれども、よく相談をしていきたいと思っています。
  85. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 大変積極的な御姿勢でうれしいのですが、もう一つ、立法は難しいとすれば、在韓被爆者への処置として、九〇年の五月に盧泰愚大統領来日の折に、総額四十億円の支援を表明された。つまり、人道的な立場から、本来ならもう日韓条約で決着しているけれども、政治的な決断として、四十億円在韓被爆者への支援をしたわけですね。そして、医療費とか診療体制とか、あるいは福祉センターをつくるとか、そういった韓国に住んでおられる被爆者の方々への四十億円予算措置をして、去年十七億、ことしの平成四年度の予算でも二十三億円計上しているんですね。こういった措置は考えられないか。つまり、個々人を特定しなければというんじゃなくて、もう政府の関与がここまで明らかになった、そうしたら、この在韓被爆者への措置的な一種の基金をつくって、そして後は、基金の使い道は、当事者とかあるいは韓国にそういった関係者が集まった機関をつくってもらって、その機関に任せるというような方法、これはいかがでしょうか。
  86. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 私の方から、事実関係だけ確認のために申し上げたいと思いますが、在韓被爆者の問題、確かに四十億円の基金をつくりました。ただいまお願いしております予算案でそのうちの二十三億円をお願いしておるわけでございますが、その前提になりますのも、先生もお触れになりましたように、六五年でこの種のことも含めて日韓間においては決着済みだということを日本側は明確にいたしました上で、この問題を特に取り出して、人道的な見地から何とかしてさしあげなければいけないということで、四十億円の手当てを基金の形でさせていただいておるわけでございます。
  87. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私が今答弁した中で、大ざっぱな調査と言ったみたいですが、それは語弊がありますから訂正しますが、おおよそという意味ですからね。正確な一人一人、何千何百何十何人という意味じゃないという意味です。  それから、その後のことは、数字を挙げて何をするというような具体的なことをここでまた申し上げられる段階ではない。
  88. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 いや、外相として、こういった政治的な解決、立法までしなくても、基金を設置して、そして関係者の福祉に役立ててもらうというような構想についてはいかがですかというお伺いをしているのです。
  89. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 そういうことがいいのか、もっと気持ちがすっきりするような形がいいのかも含めまして、それは内々、相談をする場合は、内々話をするということじゃないのか。ここで一方的にこっちが決めちゃってどうのこうのという話じゃないと私は思っています。まだその段階ではありません。
  90. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 内々というのは、韓国との間でというふうに私は理解してよろしいんでしょうね。  それから、調査の問題にもう一回戻りますが、誠実な調査、それから真相を徹底的に究明するというのであれば、今まで政府がやってきたよう調査では大変私は、まさしくふまじめだと思うんですね。どういう調査をやってきたかを伺いましたところ、ヒアリングを平成二年の六月に五名、二日間にわたって厚生省の勤労局にもと勤めていたような人から聞いたということとか、あと、やはり平成二年度に、二日から三日かけて九万人の強制連行者の名簿を当たったが従軍慰安婦らしき人はいなかったとか、それで、裁判が起きてから、昨年の十二月十二日に、自治体への調査とか、六省庁に調査を指示したというのですけれども、もっと本格的に、韓国の方の方々も含めたり、韓国へ出かけていくぐらいの実態調査が必要じゃないかと思うわけです。それには、たとえ数百万円でも予算措置を講ずべきだと思うわけですが、この点について、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  91. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 この点につきましては、昨年の末から官房の中で調整、調整といいますか連絡をとりながら調査を始めているということでありますし、また先ごろも、たしか先生に対する御答弁だったですか、総理からも誠心誠意やります、調査をしていきたいということを申し上げて、実際に調査に各関係省庁が今当たっておるということでございまして、今予算的な問題があるというふうに私どもは聞いておりません。予算的に、予算がないからどうこうということじゃなくて、各省の中でそれはやりくりしながら十分調査ができ得るものであろうというふうに考えております。
  92. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 特別には予算措置は講じるつもりはないというふうに御理解してよろしゅうございますでしょうか。
  93. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 関係省庁の中でそれは手当てしながら対応しておるというふうに承知しております。
  94. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 ぜひともこの問題については、誠実にして現実的な対処をお願いしておきたいと思います。  次、防衛庁への御質問に移らせていただきますが、防衛庁長官はこれまでも、中期防とこれから今後の予算措置に関して、日本は基盤的防衛力構想、これは一九七六年十月の大綱の基本思想なわけでございますけれども、それにのっとって平和時における最低限の防衛力の整備をしてきたわけだから殊さらに変える必要がないので、中期防においても、若干の正面装備の抑制は行ったけれども、変更しなくてよいと考えるということを、たびたびこういった趣旨の御答弁をなさってまいりました。  それで、簡潔にお答えいただきたいんですけれども、この大綱以降今日まで、日本の防衛計画はすべてこういった基盤的防衛力構想にのっとってやってきたということを言明できるかどうか、いかがでしょうか。
  95. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先生御指摘のように、昭和五十一年の防衛計画大綱、これは基盤的防衛力構想ということで、平和時における我が国の防衛力のあり方につきまして検討の結果取りまとめたものでございます。以後、一時的には防衛庁内部の計画としてこれを実現してまいりましたが、しかし前中期防から政府レベルの中期防として、六十一年から平成二年まで、また平成三年から平成七年度までの中期防衛力整備計画を策定して、これに基づいて各年度の予算を計上しておりますが、基本的に、この防衛計画大綱の基盤的防衛力構想、これに根拠を置いて整備を図ってきているものでございます。
  96. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 私は、大変この問題に興味を持ちまして、防衛庁長官が何度も何度も御答弁になるものですから、全部防衛白書を、五十一年以降情勢分析のところをもう一回丹念に読ませていただいたんですよ。そうしましたところ、八〇年代、昭和五十五年、これは、国会でも大平首相がソ連の潜在的脅威という言葉で答弁された年であり、防衛白書においても五十五年においてははっきりと「わが国周辺の軍事情勢も、一貫して続けられてきた極東ソ連軍の顕著な増強などによりこという形でソ連脅威論を出してきている。本来なら、基盤的防衛力構想であれば脱脅威論に立つはずでございまして、この辺が大変矛盾しておられる。つまり、八〇年代は、五十五年の防衛白書以来ずっと見ますと、ソ連の潜在的脅威論というものがずっと台頭してきておりまして、今宮下防衛庁長官がおっしゃった脱脅威論の立場の平和時の最低限の防衛力の整備という立場ではないということが、これを読みますと、明らかなわけですね。  さらに、八一年の白書以降になりますと、これは五十六年でございますけれども、この中の情勢の中には「高度の即応態勢を整備することの必要性が高いものと考えられる。」とまで書いてありまして、つまり、平和時の脱脅威論に立つどころか、臨戦、即戦いに臨める態勢をとることが必要なんだということまで強調されております。そして、八八年以降、昭和六十三年でございますが、これを見ますと、もうこのころは東西の冷戦構造の緩和というか、ゴルバチョフの新思考外交が出始めた時期であるにもかかわらず、冷戦構造はなお継続している、侵略の未然の防止のためにそういった侵略事態に際して有効に機能する自衛隊ということをちゃんと情勢のところへうたっているわけでございます。  とすれば、今まで基盤的防衛力構想をとってきたから、平成二年の十二月ですか、現行の中期防を策定するときだって変える必要なかったんだということが崩れてしまうではないか、大変事実に反していると言えるのではなかろうかと私は考えるわけでございます。  そこで、一九九〇年の十二月に現行の中期防を策定するに当たって、ソ連の脅威というふうなものはどのように認識なさったのか。どうでしょうか。
  97. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基盤的防衛力構想と申しますのは、いかなる情勢変化があっても固定的に考えるべきものではないと私は思うのです。つまり、基盤的防衛力構想は、数量的に別表で掲げられておりますけれども、国際的な情勢の変化、特に軍事技術の変化でございますね、そういうものに応じまして、数量的にはある程度の規模に達しておりますが、その近代化を図っていきませんと専守防衛、抑止力という防衛本来の任務を果たすことができません。そういう意味で変化をしていくもの、こう考えます。  そしてまた、第二に、先生が今五十五年以来の国際情勢の変化と国防白書の認識を示されておられますが、それは例えば、私ども五十一年につくりました際には、確かにデタント、ベトナム戦争も終わりまして、米ソのデタント的なムードが非常に高かった時代につくられたものです。その後、七九年にアフガニスタンヘの侵略その他がございました。確かにそういう国際情勢の変化がございますから、私どもはその変化に即応して直ちにどうこうということを考えているものではございませんで、そういう国際情勢認識自体は私どもとして深刻にきちっと把握しておかなければなりません。そういうことを申したわけでございまして、そして同時に、基盤的防衛力といえども、やはり即応態勢ということがなければ抑止力としての効果を持ち得ませんから、私どもは、こういう国際情勢に十分注意を払いつつやったものでございます。  そして最後に、平成二年の十二月の中期防衛力整備をつくる前提になりました平成三年以降の防衛力整備の検討に当たってという閣議決定の情勢判断についての御指摘だろうと思うんです。これは、五十一年につくられた国際情勢の認識は基本的にデタントだった、しかし今日も、抽象的に言えば、平和、デタントムードがよりレベルが高くなって現実的なものになったものというように私どもは理解しておりまして、今期中期防を策定する際にも、その前提の国際情勢につきまして大綱の表現と若干、国際情勢は刻々変わるものでございますから、変化する点がございまして、改めて国防会議、閣議で中期防を策定する前日にこの国際情勢判断等についての認識を示したものでございます。しかし、基本的には、五十一年の防衛計画大綱の情勢認識のデタントの、この問題がさらにレベルが高まって世界がこういう緊張緩和の状況になっているものという認識に基づいて中期防を策定したものでございます。
  98. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 基本的には大綱の一九七六年の時点の国際情勢の認識だというんですが、あのころはデタントとはいえ冷戦構造は厳然と存在していたときでございますし、現時点では全くもうソ連邦が消滅してしまった。しかもロシアの新予算案、九二年度の予算案が最近報道で明らかになっておりますけれども、つい一番新しいきのうの新聞でも、兵器の購入費は昨年の二八%になったというぐらいに、急激に一九九〇年、九一年、九二年と進んでいるわけでございますね。  七六年の情勢分析を前提にしてつくった現行中期防は、もう物すごい時代変化、そこから以降は時代変化しておりまして、そういった情勢分析を前提にしたというのであれば、ますます現予算においては、この国際情勢、特に極東ソ連軍の脅威ということを八〇年代ずっと言い続けてきた、防衛白書にほとんど書いてございますけれども、防衛庁としては大幅な削減に踏み切らなければいけないじゃないか、大蔵省としても当然じゃないか、そう思うわけでございます。その点については、いかがでしょうか。
  99. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先生の情勢判断につきましては、今御指摘がございましたが、まあ専らと言ってはちょっと言い過ぎでございますが、大勢として、米ソの対立という視点だけに視点を合わせていらっしゃいます。しかし、この防衛計画大綱をつくりました際も、米ソの対立の緩和傾向は見られるものの、しかし地域的なあるいは民族的な、宗教的な多様化された紛争はなお生起の可能性を否定しておりません。  そしてまた、今日といえども、これは、旧ソ連の崩壊によりまして米ソの基本的な対立がなくなったのは御指摘のとおりでございますけれども、しかし、その旧ソ連においてすらなお不安定要因がたくさんございますね。それからまた、ヨーロッパ等におきましても、ユーゴの問題等も今非常にシリアスな問題になっておりますし、アジアにおきましても、これはヨーロッパ正面、あるいはヨーロッパのNATOあるいはワルシャワ条約の対立の状況と全く違って、今CSCEというようなことがヨーロッパで議論されておりますけれども、アジアにおきましてはこれはやはり非常に状況が異なっておる。一々申し上げません。  そういう点もございまして、また私どもも、大勢として、非常にこれは好ましいことであるが、しかし地域的なまた民族的な、宗教的な紛争は生起の可能性を否定できないと思いますし、過日の米国の国防白書におきましても、グローバルな世界的な脅威といいますか、そういうものは消滅宣言をしてもいいけれども、しかし逆に、地域的なそういう問題はよりクローズアップしてきているものということで、米国の国防白書等でもアジアの特定国主言及をしているよう状況でございます。
  100. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今のお答えを伺っていますと、極東ソ連軍の脅威という、そういった六十三年、平成元年、平成二年、ずっとソビエトのゴルバチョフ誕生以降、軍事費をどんどん削減してきた以降も、防衛庁は防衛白書で言っているわけでありますが、現在も極東ソ連軍の脅威というその認識は変わらないというふうに考えていいかどうかというのが第一点。  それからもう一つは、地域紛争や民族紛争がある、それに備えなければいけないとおっしゃいましたが、地域紛争や民族紛争は、専守防衛、侵略されたときにのみ行う自衛隊には、今のところそれを前提に防衛力を考えなければいけないということは論理的に成り立たないのじゃないのか、その二点についてはいかがでしょうか。
  101. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ソビエトの現在の極東における軍事力、これはかなりな質的には高いものが存在していることは事実でございます。かつてのように量的には膨大なものではないにしても、まだ存在をいたしております。ただし、CISの中でも、こうした戦略軍的なものの管理その他が明確ではございません。私どもは注目をしておるところでございまして、決して、今これが脅威である、脅威というのは、やはり潜在的脅威とかいろいろ言葉はございますが、脅威であるというようには感じてはおりませんけれども、依然として注目すべき極東ソ連軍の存在というものは、これは無視できないというように思っております。  それから、私が第二番目の地域紛争に言及いたしましたのは、世界はデタントになった、もう万々歳だというような認識が非常に世上強いわけでございますけれども、そういう情勢でないという国際情勢の認識を示したものであります。そしてなおかつ、アジア等において例えばそのような事態が不幸にして発生した場合は我が国専守防衛の立場にとっても無関心ではおられないことも事実でございますから、そういう点を含めて申し上げたわけでございます。
  102. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今最後に、無関心ではおられないので防衛力はそう減らせられないというようなことの趣旨に受けとめられるわけでございますが、例えばユーゴで民族紛争が発生した、そういったことに日本の自衛隊がでは発動するということを考えるのでなければ、無関心でいられないとは、それは国民としては無関心ではいられないですよ、世界のいろいろな情勢に。しかし、自衛隊の増強とどういう形にそれがつながるのかということが第一点。  それから、陸上自衛隊の今後の方向性をどのよう考えているのか。つまり、私の質問の前提には、今陸上自衛隊というのは日本国土の中での戦闘を前提に成り立っているわけでございますけれども、日本国土に攻められるという場合にはもう日本の制空権が制覇されているということが前提にあるわけですね。そうすると、私はきのう資源エネルギー庁の方から、今の原発がどういうところに何基あるかという資料を出していただきました。ところが、四十一基日本海沿岸にばあっと存在しているわけでございます。とすれば、まず陸上自衛隊が国土内で戦闘する事態という場合には、この原発をまず爆撃する。それはもう湾岸戦争でも原発に向かって多国籍軍が爆破を試みたというようなことも報道されておりますし、そういうことが前提になるわけでございますが、こういった四十一基も日本海沿岸に、侵略されるであろう、上陸するであろうというところに原発を抱えていて、それでなお国土の戦争を想定するということは、今のこの日本の状態からいって大変おかしなことではないかと思うわけでございます。こういったことを前提にして、原発に対する爆撃ということは全く考えてないのかどうか、これは金丸さんの発言も私後で申し上げますけれども、その点、二つ目にはお願いいたします。
  103. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先ほどソ連の情勢につきまして、量的な問題について私言及したと存じますが、量的な問題は必ずしもはっきりしませんが、質的な増強があったということは明確でありますので、その点ちょっと補足させていただいておきます。  なお、ユーゴ問題がどうだ、我が国の自衛隊とどうだという御指摘のような点もございましたが、これは我が国がユーゴに行くはずのものではございませんし、我が国は専守防衛、そして我が国の自由と独立を守る任務を付与された、憲法上制約されたものでございますから、私どもは世界の情勢に大変いろいろ関心を持ち、情報をキャッチすることは当然でありますが、そのことが直ちに自衛隊の行動につながるものではございません。これはもう申し上げるまでもございません。  なお、陸上自衛隊の問題につきまして言及がございました。我が国の防衛戦略といいますか防衛構想は、基本的には国土を防衛する、専守防衛の立場でございますから、上着陸を阻止して、我が国に上陸させない前にこれを撃退する、上着陸阻止でございますね、それを基本原則にいたしておりまして、海空の装備等も非常に重点化をそこにしておるわけですね、それだけではもちろんございませんけれども。しかし、陸上自衛隊はやはり、その場合でも有効な機能を果たし得るものでありますが、同時に上着陸阻止が不可能な場合もございます。そういう場合は当然想定、こういうことは私どもは本当は想定したくはありませんが、しかし侵略がされた場合は上着陸阻止を突破されてくるという可能性も否定できないわけでございまして、上着陸阻止に陸上自衛隊が有効な機能を果たすと同時に、中に入られた場合に、これに対してきちっとした対応をしていくということも、これは防衛の基本的な考え方であろうかと存じます。そういう意味で、防衛計画大綱には陸海空のそれぞれの機能、役割が明記されておるわけであります。  それから、想定の問題で、原発、我が国は原子力発電所を持っておりますから、これが空撃を受けたらどうかというような御質問でございますが、これは、私どもとしては、そういうことを防止、侵略がされて攻撃されるよう状況をつくらない外交的枠組み、努力、平和的な努力がぜひ必要でございまして、(伊東(秀)委員「そしたら防衛力削減」と呼ぶ)いや、それは違うのですね。やはりそういう努力をしつつ、同時に我が国の防衛力をきちっとしておけば我が国に、まあ平たい言葉で言いますと、ちょっかいをかけられないということだと思いますね。我が国に侵攻しても、我が国の自衛力がきちっとしておる、それから日米安保条約によってきちっとされておるという体制が我が国の抑止力になっておるわけでございまして、これが何よりの防衛の基本的な立場である、このように申し上げておきます。
  104. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今の長官の、ちょっかいを出されないために防衛力を整備しておくという考え方は、冷戦構造の崩れた今日の安全保障の考え方ではない、それはかっての問題ではないか。  これは、ゴルバチョフの新思考外交の誘因になったソ連の国際第一副部長ザグラジンさんという方が欧州の軍縮円卓会議で演説しておられるわけですけれども、今日では通常戦争が核・化学戦争になる。例えば欧州だけでも原子力発電所が二百、大規模な化学工場が四百以上あり、このうち十カ所を破壊すればそれですべてがもうおしまいだ、こういうような時代に立ち至っているんだということを言っておりまして、つまり、核・化学戦争と同じ状態を引き起こす可能性のある通常戦争の勃発を防がなければならないのであって、その通常戦争を引き起こさないようにするためには、今まで自分たちはワルシャワ条約機構というような形での軍事同盟をつくる道を選んできた、しかし、これではもう地球全体の絶滅につながる。共通の包括的な国際安全保障システムを考えなければならない。今は軍備ではなく、軍縮が安全保障の基礎にならなければならないというふうに結論づけているわけです。  つまり、それぞれが軍備戦争をしている、そういう考え方では、原発とか化学工場、日本にもたくさんあるわけでございますが、そこへ一発やられたら日本全土、日本全土のみならずアジア全体が本当に絶滅の危機に陥るようなこの中では、軍備を持ってちょっかいをかけられないというよう考え方ではなくて、軍縮をやりながら、ヨーロッパ共通の家、ああいった構想に基づく平和的な安全保障、軍縮しかないということを言っているわけですね。こういったものに基づいてどんどん今米ソは軍縮を始めている。きのうも、アメリカの予算はさらに四十二億ドル、ブッシュの提案よりも削減されたとか、いろいろ軍縮の報道がなされております。  今の日本の今防衛庁長官がおっしゃった、ちょっかいをかけられないために軍備を整えておくというこの構想こそ、やはり今は国際的に通用しない防衛力構想であり、それがあるからこそ、こんなに税収の伸びが逼迫しているにもかかわらず、そして来年度、再年度と不景気で、ますます税収の伸びが懸念されているにもかかわらず防衛費の削減には至ってない、これこそ私は重大だと思うわけでございますが、この点についての大蔵大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  105. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今、これの状況判断につきましては防衛庁長官からお話がありましたから、もう私から特に申し上げませんけれども、いずれにいたしましても、中期防を策定いたしましたこの時点におきましても、三年後にその時点における国際情勢を勘案して、必要に応じ、修正を行う仕組みというものはもう組み込まれておるということでございまして、しかも、今その後の国際情勢が非常に大きく変化しておる、いわゆるソ連の解体等がございます。そういったことに対して、総理の方からもこの間の会議におきましても、前広にこの中期防について検討をしようということを言われておるわけでございまして、私どもはそういった議論というものを基本にしながら予算というものを編成すべきであろうというふうに考えております。
  106. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 より大幅な大なたを、税収の伸びがどんどん逼迫してきているとしても、高齢化社会で、ホームヘルパーあるいは看護婦さん、この方々の身分保障をして、国民が安心して老後を迎えられる、これが急務になっているときに、本当に国際情勢に合わない、ずれのあるような防衛、安全保障認識のもとに防衛費の拡大を続ける、これだけはやめてもらいたい。  それからもう一つ、この問題に関して金丸さんが大変いい発言をなさっているわけでございます。北海道を中心に陸重視の部隊配置を維持する自衛隊に対して、陸上自衛隊は戦車の重要性を説くが、戦車を使うときは日本はおしまいだ、こういうように金丸さんが発言したということが新聞で報道されております。私は、大変卓抜した識見をお持ちでいらっしゃる。もう陸上自衛隊を、ことしは九〇式戦車というのを二十両ですか、また新たに購入するという、一車両が十億円以上するような戦車の購入計画を立てているわけでございますけれども、戦車を使うときになったら、これだけ原発を抱えて、化学工場を抱えている日本において、もう日本はおしまいだ、このことを金丸さん、副総裁がおっしゃっていらっしゃるということは、大変貴重なことだと思うのですね。この金丸発言に対して、防衛庁長官、いかがお考えでいらっしゃいますか。
  107. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 金丸発言の真意その他、私もまだよく正確には承知しておりませんけれども、陸上自衛隊の戦車無用論ではないのではないかと思います。先ほど申しました戦略構想に基づきまして、陸上自衛隊が抑止力として上着陸を阻止する、あるいは場合によってその周辺で戦闘をする場合に、戦車の機動力とか装甲力とかそういうものは、これは各国とも大変評価されている問題でございまして、私どもは、やはり陸上自衛隊の戦車の保有量その他は、いろいろ防衛戦略その他で検討されるべき問題は今後あろうかとも存じますけれども、現有の戦車が直ちに無用であるとか、あるいは必要ないというようなことは私は考えておりません。
  108. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 終わります。
  109. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五分休憩      ――――◇―――――     午後二時一分開議
  110. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松浦利尚君。
  111. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 まず官房長官にお尋ねをいたします。  我々、野党ですから大臣任命の手続等はわからないんでありますが、与党の大臣経験者の方からお聞きをいたしました。認証は、すべての大臣は国務大臣ということになっておるそうです。そしてまた総理から改めて各主管大臣の任命がある、こういう手続がとられておると承っておりますが、官房長官、そのとおりですか。
  112. 加藤紘一

    加藤国務大臣 法律的に権威のあることをなかなか言えないんですけれども、たしかそのとおりだと思います。
  113. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 認証のときに国務大臣です、すべての方が。ということは、やはり各省庁の大臣という形で主管大臣としての任命を総理からいただくのではありますが、国民が見る目は、各官庁を主管しておられても国務大臣、こういう目ですべての大臣を見ておられると私は思うんです。その点について官房長官、どうですか。
  114. 加藤紘一

    加藤国務大臣 大臣は全員国務大臣ということで、そしてそれぞれの担当は総理が任命されるわけですけれども、それぞれの省の仕事をやりながら、内閣の一員として国全体のことを考えるのが国務大臣であろうと思います。
  115. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ということは逆に言うと、政権与党ですから、皆さん方は党籍としては自由民主党に所属をしておられることは、これは事実です。ですから、自民党の国会議員等が行うもの、あるいは社会党の国会議員が、あるいはその他の政党の議員がいろいろ仮にトラブルがあったとしても、それは各政党が浄化的な責任を持つべきだと思うんです。少なくとも選出された国務大臣というのは、そういう意味ではまずみずからが国務大臣にふさわしいかどうか、認証を受け総理から主管大臣の任命を受けられて、みずからがその地位にふさわしい人物であるかという判断は、まずそれぞれの主管大臣あるいは国務大臣が行うべきものだと思うんです。他人がとやかく言うべきものではない。その人がみずから律して行っておることが正しいかどうかということは、みずからが判定をすべきだ、まずそのことが第一番だと思うんですが、官房長官、どうですか。
  116. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それぞれの大臣の方々が、当然のことながら自分が任務につきながらその任務を全うできるように常日ごろから研さんし、また考えられていることだと存じます。
  117. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 きょう私は、当面お気の毒ですから、ここにお呼びはいたしませんでした。しかし、今までのこの予算委員会の議論を通じて、ここでみずから所管をする政策について議論をするというより、あるいは国務大臣として質疑に答えをするというより以上に、御本人が自分の行動あるいは国民の批判を受けて、ここの場所で、私は反省をし続けておりますとか、針のむしろに座っておる思いですとか、そういうことばかりしかここに答えられない。にもかかわらず、みずからは依然として国務大臣として座っておられる。私はどこか狂っておるような気がするのです。そういう大臣が仮にここにおったとすれば――ここには今おられません。あなた方のことを言うつもりはありません。しかし、そういうことがここで行われておるとすれば、その政治に対して、あるいはその国務大臣に対して国民は理解をするでしょうか。反省をするなら、みずから国務大臣の席を去って、一自民党議員となってみずからの行為を反省すべきなんです。国務大臣というのは反省をするために存在をするんじゃない。  そういう意味で、私は宮城選挙がどうだ、奈良の選挙がどうだということは言いません。お互いが今真剣に政界の浄化を図らなきゃならない、お互いが真剣に議論をして正しい方向に国会を導いていかなきゃならぬ、政治を正さなきゃならぬ、そういう思いで与野党いっぱいだと思う。  私はそういう意味で、官房長官、今郵政大臣は、あってはならないことだが、現実に入学金は、入学をさせた人のお礼金をもらっておられる、形は違うけれども。ここで幾ら言いわけをしよう国民は納得をしていない。あるいはその他の献金の問題も出ている。みずからがやめるということを言われない。依然として、私は反省をしつつ厳しい気持ちで主務大臣としての郵政大臣の任務を果たしていきたいと、あの人はこう言っておられる。宮澤内閣はそういう大臣をいつまでも抱えておくんですか。みずからの意思で去ろうとせずに、第一次宮澤内閣が続く限り皆さん方は温かい目で抱きかかえて宮澤内閣は進もうとするのですか。国民の立場に、もっと峻厳な立場で対処しようとされるんでしょうか。私は、官房長官は、ここに総理がお見えになっておりませんから、そういう問題について官房長官の御意見をお聞かせいただきたい、また総理に伝えていただきたい。  同時に、大変言いにくいことでありますが、私は内閣に派閥はないと思います。しかし外務大臣、副総理の外務大臣、あなた自身の御出身の方だとお聞きをしています。たくさん優秀な人がおられます。優秀な人がたくさんおられると思う。本当の意味で郵政事業、本当の意味国務大臣、ガラス張りに立って国民に推薦できるような人はたくさんおると思う。私はこの際、そういう意味で副総理であり外務大臣である渡辺さんの御意見も承っておきたい。お答えいただきたいと思います。
  118. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 内閣に派閥はございません。先ほどもお話があったように、国務大臣総理が任命をします。ただ、陛下の前で任命証を渡すからそれを認証式と言っておるわけでありまして、閣内は一体でございます。
  119. 加藤紘一

    加藤国務大臣 渡辺大臣は、御自身のことについていろいろ報道があり、また御質問があるものですから、ここで答弁に立つことが多いわけですけれども、その事実関係について、この御質問に対して誠心誠意、一生懸命答えておりますので、またその気持ちも酌んでさしあげていただきたいと思います。
  120. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は渡辺大臣の言っておられることがわからないではありません。しかし国務大臣だ、少なくとも。国民の上に立つ人なんだ。そういう職員である。一自民党の議員ではない。一国会議員ではない。場合によっては日本を代表する大臣なんだ。この前も宮澤総理に申し上げたが、一〇〇%正しいという人はおらないかもしれない。しかし少なくとも国務大臣たる者、みずからがその職員にふさわしい立場に立っておる人物かどうか判断ができると思うんです。  官房長官は、立場上郵政大臣のことを今ここで言われたけれども、それはそのとおり、わかります。しかし、副総理それから官房長官、国民が、全体が見ておる、宮澤内閣というものを。そういう点、厳しい目で見ておるということをぜひお伝えいただきたい。それから郵政大臣には、そういう国民の世論というのが強い、そういうこともお伝えをいただきたい、そのことをぜひお願いをしたいと思います。よろしいですね。外務大臣がうなずいておられます、官房長官もうなずいておられますから、そのようにお伝えいただけるものと理解をして、次の質問に入ります。  それじゃ、続いて経済問題に入らしていただきたいと思うんですが、先般の集中審議で岡田委員がいろいろと質問をいたしましたが、さらにその問題について少し詳しく掘り下げて御意見を承りたいと思うのであります。  まず第一点は、先般ブッシュ大統領がおいでになりまして東京宣言が出されました。そしてその中で、宮澤総理大臣とブッシュ大統領との間で世界経済の強化を目指した共同声明が出されたわけであります。その中で、宮澤総理大臣は、「日本政府が、これらの施策に期待された効果が実現するよう、その進捗状況を見守るであろうことを表明した。日本銀行による最近の公定歩合引き下げの決定も、物価安定を伴った持続的な成長の維持を目的としたものである。」こういった共同声明を出しておられるんでありますが、来年度の経済成長率は実質成長三・五%程度ということで既に発表されておりますが、この三・五%というのはこの共同声明の中に具体的に数字としてはあらわれておりませんが、この三・五というのは少なくともアメリカとの間の国際的な公約だ、こういうふうに判続できるわけでありますが、その点についてのお答えをいただきたいと思います。
  121. 野田毅

    野田国務大臣 今御指摘ありましたように、共同声明の中で、いわゆる「物価安定を伴った持続的な成長の維持」、こういう表現をいたしておるわけであります。これはまさにそのとおりでして、基本的に表面上の数字がどうのというよりも、大事なことは、内需中心型の持続的な成長ということを念頭に置いて日本がこれから経済運営を行っていく、そのために現在、この中にも表現をされておりますけれども、日本政府が上記のようなことを念頭に置き、「日本政府が、厳しい財政状況の下で、国、地方を通じた公共投資の増加により内需を強め、政府開発援助等により世界に貢献することを目指した一九九二年度予算及び財政投融資計画を国会に提出することを表明した。」それに付随して昨年暮れに行われました公定歩合のことも言及をいたしておるわけであります。  これを受けて、御案内のとおりG7においても世界の経済成長を重視する声明が出されておるわけでありまして、私どもは世界の経済全体が、少なくとも旧ソ連地域などあるいは東欧などを考えても、全体的に成長志向型の経済運営が行われるということが世界の繁栄と平和のためにも今は大事なときであるということを認識をいたしております。
  122. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、この三・五%というものが達成できなかった場合、これはまた大変な日本批判というのが出てくることは間違いないと思うんです。ですから、そういった意味では、この共同声明から見る限り三・五%というのは何としても確保しなきゃならぬ数字だと私は思いますね。その点についての御確認はよろしいですか。
  123. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 三・五%ということにつきましては、これはまさに政府として今、経済企画庁、各省との連絡の中でこれをつくり上げておるわけでありますけれども、私どももブレイディ長官その他とも大分議論をいたしました。このときに、やはりこれは経済の一つの見通しであるということ、そして日本の経済というのは私経済といいますか、民間の経済というものが非常にやはり大きなウエートを持つところであるということで、私たちのこれがこうですということを約束するものではないけれども、しかし私たちはやはりこの目標を目指して、政府としてやり得ることを、もうるる申し上げません、平成四年度の予算ですとかあるいは公定歩合の三次にわたるものあるいは例のゼロ国債というものを六千億認めました三年度の補正予算、こういったもので、国としてやり得ることをひとつやっていきたい、また、民間の活動ができ得るようにいろいろな措置もしていきたいということは申し上げでございます。
  124. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、そういった意味では三・五%というのは確かに数字の目標ではあるけれども、達成しないときの与える影響というのは極めて大きい、そういうふうに理解をしておるところです。  ところが、これは経済企画庁等からいただいた資料でありますけれども、各民間経済団体がそれぞれ成長見通しを出しておられるんでありますが、その中で三・五%の政府見通しよりも高い見通しを出しておられるのは国民経済研究協会だけなんですね。あとはほとんど三・五以下、野村総研は二・三%程度と見ておるわけですね。そして、昨年の十二月十九日にOECDが各OECD加盟国の数字を発表いたしましたが、その発表を見ましても極めて数字が低い。OECDは、これは暦年でありますから、年度でありませんから、一月から十二月というそういう暦年と、それから年度とのとり方の相違はありますけれども、OECDは、暦年九二年度は二・四%と見ておるわけですよね。ですから、日本の経済の実質成長の伸びというのは極めてOECDも厳しく見ておるんです。  しかも一方では、御承知ように調整局面が長引くんではないかということが既に報道され始めています。げたはありません。ですから、そういった意味からいえば、三・五%を後半まで維持し、三・五%、要するに、今は悪いけれども今年度中盤以降後半に向かって景気が上がってくるという読みをして三・五という数字が出てきておるんだろうと思うんですが、実際そういう数字の確保が可能ですか。見通しとしてそういうことが成り立ちますか。
  125. 野田毅

    野田国務大臣 今OECDの見通しのお話ありました。御指摘のとおり、大体OECDの方は暦年ベースでありますし、特にOECDの方も年度の後半以降かなり高目の、前半に比べて高い予測をいたしておりますので、これを年度ベースということでいきますと、そう大差のない見通しをやっておるということにあります。  問題は、今御指摘ありましたけれども、在庫調整が本格的に現在進んでおる状況にあります。これが、いっこの在庫調整の動きがめどがついて、そして生産の回復につながっていくか、こういう見方によっていろいろ分かれてくると思っております。ただ、この在庫調整の動きも、これは一つは、いろんな見方ありますけれども、例えば住宅需要の側面でいきますと、これは前から申し上げておりますとおり、少なくとも昨年の秋ごろから減少傾向にあるけれども、ほぼ下げどまりの傾向が見られる。特に、この十一月、十二月、年率換算でありますけれども百三十万戸ペースになり、一月になって百三十八万戸のペースである。現在も住宅公庫の申し込みは非常に堅調である。こういうようなこともありますし、それから個人消費の動向につきましても、基本的には雇用者所得が堅調に増加をする。何よりも物価が安定をしてきておるということは、消費の環境としては大変好ましいことである。  あるいは設備投資について先生御指摘ございました。民間との比較の中で大きく食い違っておる部分は、一つは設備投資の問題であります。これは、御指摘のとおり、在庫調整が本格化をし、特に今現在足元の感覚でいえば、従来の決算と比べて大幅減益が予想される中で、実体以上に経営者のマインド、いわゆる業況感というものは冷え込んでおるということは実態であります。しかし、これも在庫調整がある程度進んでいくというようなことになれば、いずれ、これは毎年のことでありますけれども、出だしはやや弱目でありますが、進んでいく上で上方修正する傾向がございます。  そういったことを考えますと、特に公共投資がかなりの下支え効果が出てくるであろう、そんなことをいろいろ思いますと、必ずしも悲観材料ばかりではない。むしろそういった、基本的にことしの四-六で完了すればいいんですが、かなり七-九まで在庫調整の動きがずれ込んでいくということも業種によっては予想されるわけでありまして、いっどうなるかということを断言するわけに今からいきません。しかも、平成四年度の経済そのものはまだスタートしておらぬという状況でありますから、今からどうのこうのと言うことはできませんが、少なくとも今実態以上に冷え込んでおるマインドというものをどうエンカレッジしてあげるかということは非常に大事なことであると思いますし、同時に景気の現状を的確に把握をして、そしてタイムリーに手を打っていくということも政策的に必要なことである。そういったことを両々相まってやっていくことができれば、私はこの政府経済見通しの三・五%程度の達成、特に内需を中心とする経済成長を達成していくということは大事なことであるし、それは決して私はそれほど今からそう悲観的なことばかり言い立てるのはいかがなものかと思っております。
  126. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 悲観的なことを申し上げるつもりはないんです。だから、三・五を達成するためにいかに努力するかということを私たちは申し上げようとしておるんです。  そこで、今長官もお話しになりましたけれども、企業心理というのがバブルの崩壊で冷え込んでおる、あるいは株価の低迷による資金調達が困難だ、そのために転換社債の発行等が不可能だ、あるいは返済資金が十兆円近く見込まれている等々の関係からいって、そう簡単に政府が言うような言葉だけの状況じゃない。ですから、日銀の専管事項である公定歩合の〇・五%あるいは再引き下げということが盛んに政界、財界から言われるのも私は一つの方向を示しておるんだろうと思うんですが、これは日銀がどう判断されるのか、日銀政策委員会範疇ですからここでとやかくは申し上げませんが、しかし、いずれにしてもこの三・五%を達成するということは、今日の状況から見て容易なことじゃない。  それで、具体的にお尋ねをするんですが、景気対策として公共事業を前倒しする、予算が通ったら。ところが、これは公共事業の量がふえるわけじゃなくて、前倒しするだけでありますから、経済企画庁が言うようにあるいは宮澤内閣が言うように、後半息切れをしてきた経済が息切れをしてきたときには、公共事業を前倒ししておりますから空白が起こる。空白が起こってきたときに、景気がなおかつ冷え切っておるときには、当然金融ばかりに依存しておるわけにいきませんから、財政的な景気のてこ入れもあわせて並行してやらざるを得ない。そうなれば補正予算を組まざるを得ないという事態も当然出てくると思うんですがね。そういう場合には補正予算を組まざるを得ないということは、これは当然の方向としてお考えになっていますか。
  127. 野田毅

    野田国務大臣 今いろいろ御指摘あったんですが、まず何より今大事なことは、再々申し上げてありますとおり、この平成四年度の今御審議いただいております予算には、国の一般会計のみならず、あるいは財投、あるいは地方財政等々においてかなり思い切った景気に対する配慮をいたしておるわけでありますから、何としてもこれを早期に成立をさせていただいて、そして極力速やかなるその執行ができる態勢に入ることが今何よりのことだと思っております。  そして、もちろん現在の経済の情勢を考えてみますと、金利政策のみにいわゆる景気対策を傾斜をさせるということは、さまざまな一方では弊害を伴うわけであります。そういった点で、今大事な点は、一つは最終需要をどうてこ入れをしていくかという角度からの発想というのは非常に大事な御指摘だと認識をいたしております。そういったこともございまして、先般、総理の御指示によりまして関係閣僚集まりまして、五項目の一応でこ入れ策を決めたという状況にございます。  補正予算の問題については、これは大蔵大臣がお答えになるのが適切であろうかとは存じますが、少なくともまだ本予算の御審議の最中、しかもこれが成立をし、そして早期に執行がされ、そしてそれからの当面の経済の動向というものをしっかりと冷静に見守りながら、必要とあらばいろんな手を打っていくということは、これは当然のことであると思いますけれども、今の段階で補正予算の可否について論ずるのは遠慮させていただきたいと存じます。
  128. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これはもう大蔵大臣のお答え要りませんけれども、先ほども申し上げましたが、財政が景気に対して役割を果たさなくなった、そうすると、金融偏重となってしまいますと日本の経済というのはまたいびつなことになりますから、だから、そういう意味では今ここで補正予算云々ということは言えないのはよくわかります。しかし、そういうことは当然念頭に置かなきゃならない問題だ、こう理解を私たちはしておるんですが、大臣も、今するせぬじゃなくて、そういうふうに御理解しておられるでしょうね。
  129. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今経企庁長官の方からお答えしましたように、また私どもも何回もこの場所でも申し上げてまいりましたけれども、平成四年度の予算というのは、景気にやっぱり配慮をしながら私どもは編成したという考え方を持っております。そして今お話があったように、やはり地方でも相当な活発な仕事ができること、あるいは中小の企業に対しても金が回っていくように、政府機関を通じての資金が回るように、財投でも相当配慮しておりますし、また公共事業等につきましてもこれは配慮しておるということでありますから、今御審議をいただいておるわけでございますけれども、やはりこの予算というものが整々と執行できる態勢、いわゆる予算を上げていただくということがまず一番のところであろうというふうに思っておりまして、私どもは、執行につきましてはやはりそのときどきの状況というものをきちんと見きわめながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  130. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは経済企画庁にお尋ねをいたしますが、今年度の経済成長三・五、名目五%でありますが、一人当たりの雇用者所得の今年度の見通しはどれくらいに見ておられますかね。
  131. 吉冨勝

    ○吉冨政府委員 四%程度の見込みでございます。
  132. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 四%の金額は年間所得幾らになりますか。
  133. 吉冨勝

    ○吉冨政府委員 ちょっと手元に実額そのものは持ち合わせておりませんので、後ほど……。
  134. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いただいた資料は五百二十七万八千円です。  この当初見通しの雇用者所得の実績の中にはベア分は見込んでおらないと思うのでありますが、春闘相場等におけるベア分のパーセントは幾らですか。
  135. 吉冨勝

    ○吉冨政府委員 雇用者所得とベアにおける賃金の上昇率とは、幾つかの点で統計上の違いがございます。したがって、雇用者所得の伸び率がそのままこの春闘の賃上げの率になるというわけではございません。
  136. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もうあなたと議論しておっても始まらぬから申し上げておきますが、平成三年度の組織された労働者の賃上げ率は、主要企業、一千名以上で五・六五、それから中堅企業、三百から千人が五・七六、中小企業、三百人未満が五・五二、水準としては大、中、小全部ほぼ平均化しておるんですよね、五%を超えて。ですから、その中に大体ベースアップ分が二%程度見込まれておるというのが常識なんですよ、この中にね。ですから、この雇用者所得の四%というものの中に、実質的には今言ったようなベア分というのは含まれておらないんでしょう、これ、全体的な意味で、トータル的な数字だから。そういうものが幾ら幾らというのは分析されて入っておらないということを言いたいんでしょう。そうでしょう。
  137. 吉冨勝

    ○吉冨政府委員 ベースアップの分というのはこの中に含まれておりますけれども、先ほどのように、雇用者所得の概念は賃金よりも大きいものですから、ストレートにそれが反映されるわけではございません。
  138. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは労働大臣にお尋ねをいたしますが、要するに最終需要、ですからその中の個人消費というのが極めて大きなウエートを占めておるわけですが、経営者の多くがもう時短でいいんだ、賃上げよりも時短でと、こういう発想が盛んに今宣伝をされておるのですが、少なくとも、この当初の経済見通し、四%は確保されなければ三・五という数字に、基礎が狂っできますから。同時に、昨年度の平均賃金のベアですね、宮澤総理もそのことを意識して言われたのでありますが、当然、昨年度程度の賃上げ率というのは見込まなければ三・五%の達成は非常に難しい。これは労使の問題で考えられると、それは労使で決める問題だというお答えになると思うのですが、三・五の経済成長を維持するための最終需要、特に個人消費を拡大するという意味で、この前宮澤総理が言われた昨年度並みは最低どうしても欲しいんだということは労働大臣としてもお認めになるわけでしょう。
  139. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生、当委員会でたびたび申し上げておりますように、ことしの春闘の特徴は時間短縮でございまして、この時間短縮については労使がもう基本的に一致しておりますし、宮澤内閣としてぜひこれは進めてまいりたい、こういうことでございます。  問題はベアをどうするかという問題でございますが、先生、マクロの経済で考えますと、おっしゃるように、賃金がアップして雇用者所得、勤労者所得がふえることは即消費の拡大につながるということで、これは一つの成長の要素になりますが、それはマクロの考えでございまして、問題は、ベースアップが決まるのは個々の企業の労使間の話し合いで決まるわけでございますので、現在のような景気の見通しの中でどの程度のベースアップに労使の話し合いで落ちつくかということについては私ども政府が関与することじゃないわけでございますが、基本的には雇用者所得の収入増が内需拡大につながるということは、まさに経済学的にそうでございますし、それはベースアップだけでなしに、今お話がありましたように、雇用者数が大体百二、三十万ふえておりますから、これはそれだけでも二%ぐらいの所得増大の原因になるというふうに私は考えております。
  140. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 近藤大臣、私は、財界首脳が宮澤総理の発言にびっくりして何か官邸にやかましく言ってきたというんですがね、あの人たちは矛盾しておると思うのですよ。三・五%の経済成長はどうしても維持しなければならぬ、公定歩合は下げなければならぬ、大合唱しておる割に、宮澤総理やらあなたが当たり前のことを言うとすぐ圧力をかける、圧力をかけたのかどうか知らぬけれども、脚注進、脚注進で出かけてくるんですね。それなら三・五%放棄すると言えばいいんですよ、あの人たちも。そんなに公定歩合を下げろ、下げろと言わなければいいんですよ。しかし、景気を上げなければいかぬ、自分の都合のいい部分だけは言うけれども、ここでまともに答えたらすぐ翌日は言って、あなたが今言ったような答弁に、急に一歩下がるでしょう。それじゃ私は三・五%の成長なんか維持できないですよ。  やはり必要なものは最低限守るということを宮澤内閣は、労使問題に介入せよとは言うつもりはありませんよ、賃金なんというのは労使で決めるものですから、場合によっては労働時間だって労使で決めていけば決められるものだから、これは。しかし、少なくとも政府の政策として経済成長三・五を確保するという前提に立ってここで物を言ってもらわないと私は困ると思う。だから、歯切れのいい近藤大臣が何か歯に衣を着せるようなことを言わずに、すぱっと言われたらどうですか。
  141. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生、先ほど申しましたように時短は、ぜひこれは日本の労働条件……(松浦(利)委員「時短じゃない、賃金」と呼ぶ)ですから時短はぜひやっていきたい。これは一つの経営のボトムアップになりまして、そういう時短のもとにこれから経営を考え、経済を考えてまいるためには、先生、これは私どもの多少分野から外れるかもしれませんが、私は、そういう時間短縮関連の投資需要というものがこれから我が国経済の中では相当広範に行われると思うわけでありますので、現在もう民間の金利も非常に下がっておりますから、経営者の方々がやる気にさえなれば、私は、安い金利の金を借りて積極的なロボット化、合理化、時短関連投資ができるし、特に問題は、中小企業の場合は問題がございますが、これは昨年の夏に中小企業労働力確保法ができて、五・五%、六%と非常に低利の金でこういった時短関連促進投資ができる体質ができておりますので、片や時短を進めながら積極的なそういう時短関連投資を推し進めるという政策を私たちはとりたい、こう思っておりますので、そういう面で、消費需要も、また投資需要もある程度のことは確保できる、私は個人的にそう考えております。
  142. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 やはり先ほど言いましたように、雇用者所得の伸びというのは極めて重要ですよ、今言われたこともわかりますけれどもね。  これは、きのう中野さんが、副をとったら総理だそうですから、大臣にお聞きしましょう。――いや、いいです。では、経済企画庁長官、答えてください。
  143. 野田毅

    野田国務大臣 まず先生御指摘のとおり、個人消費のウエートが約六割を占める経済の情勢ですから、そういう意味で、最終需要の一番のウエートのあります個人消費をどうエンカレッジするかということは非常に大事な視点だと思います。そういった点でいろいろ御指摘の雇用者所得、特に今春闘が行われている最中でありますから、最大の関心を持って見守っておることは事実でございます。  ただ、別の側面からいたしますと、昨年におきましてもいわば消費の環境としては雇用者所得も実は伸びておるわけであります。しかし、どう表現したらいいのでしょうか、多少消費者マインドを必要以上に冷やしておるよう環境が今あるのではないか。もちろん、耐久消費財系統を中心に多少一服感、一巡感があることも否めないと思いますけれども、基本的に消費の環境そのものは、物価も安定しておりますし、雇用者所得も堅調に伸びておるわけでありますから、もう少し元気があっていいのかなという感じがしておりますが、それが必要以上にシュリンクしておるのではないか、これはやはり心理的な相乗効果というものがある程度影響しておるのではないかというふうに見ております。  したがって、この春闘における賃上げ率というものがもちろん消費に対して非常に大きな影響を与えるということも御指摘のとおりでありますけれども、それが、かといってストレートに、そのままの姿の中で表現されるということではないのではないか。今労働大臣がお答えございましたように、やはりテーマとしては時間短縮の問題、賃上げの問題、いろいろございますが、一方でまたそのことが生産性向上への投資につながってくれればなおありがたいと私どもは考えておるわけであります。
  144. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 こればかり時間をとっておれませんから。  ただ、労働大臣、時短の関係を言われました。もう時間がありませんから、私の方から質問ではなくて資料の中から申し上げますけれども、大体、所定外労働時間は小さい企業になればなるほど少ないんですよね。私たちは逆だと思っておったんです。中小零細企業が所定外に頼って所定外所得で生活をしておる、こう思ったんですが、雇用不足というようなことから底辺底上げがありまして、逆に五百人以上の企業にこそ所定外労働時間が非常に多いわけですね。中小企業の方はもう千八百時間にあとわずか、千八百三十二時間、千八百六十六時間で、所定外労働時間も百四十六時間、百八十二時間と非常に少ない。ところが、大きな企業は千八百時間に、千七百九十八時間と所定内は入っておるけれども、所定外が二百二十九時間と非常に大きいんですね。だからこういう大きな企業、要するに中心になっておる企業がやる気になれば経営者の方はすぐできるわけですよね。それはオートメですから、ずっと二十四時間稼働しておりますからなかなかそう簡単にいかないという面もあるでしょうけれども、ここの方が中小企業よりも多いという事実からすれば、労働大臣が言われるように、ことしは本当の意味で千八百時間に到達される最大の好機であるということは私も認めます。ぜひその点については積極的に取り組んでいただきたい、そのことだけ申し上げて、簡単に御返事ください。
  145. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 実は先生がおっしゃるとおりでして、我が国の労働時間は大企業はいわば所定外、すなわち残業が多いわけです。そして中小企業は所定内労働時間が多い。具体的に言うと週休二日制がないとか有給がないとか、そういうことでございますので、むしろ大企業の場合がそれこそ残業、残業、残業で生産をどんどんふやしておる、こういう実態がございます。現在、いまだ景気調整過程でございますので、そういう点で所定外労働時間が減りつつある。そのことがまさに時短への一歩前進になっておるというふうに我々考えておりますので、この方向はぜひひとつ今後進めていって、早い機会に千八百時間に近づけたい、こういうことでございます。
  146. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは大蔵大臣、いつも言われておることですが、生活大国、生活大国とこうよく言われるのですけれども、やはり冷戦が終えんして要するにもう大きく時代の転換に来ておるわけですから、我が国の財政もこれにどう対応するか。やはり政策順位というのがあっていいと思うのですね、多くの人がここで議論されましたが。ですから、従来のようなパターンでシーリングに拘束されて歳出構造を変えることなく継続していくという時代はもう終わりだ。やはり来年度予算編成からは政策順位というものを立てて、そういう予算編成を私はしていくべきだ。官僚という機構がありますから非常に難しいと思いますね。そのことは認めます。しかし、そういう努力をお互いにしていく時代に入ったんじゃないでしょうか。そのことを一つ最後に経済問題の希望として申し上げておきたいと思います。ぜひ御返事ください。  それから二番目の問題は、仮に三・五%が達成されないとまた外需の働きが激しくなりまして、それこそ貿易収支が一千億ドルを超えるというよう状況が生まれてくることはもう間違いないですよ。そうなってきたときに日本がまた、ジャパン・バッシングじゃありませんが貿易摩擦からくる大変な攻撃をしかけられてくる。だから、それだけにことしの経済運営というのは非常に難しいと思う。景気の何といいますか、監視というのは非常に難しいと思うのですね。ですから、そういった意味で我々も皆さん方に協力することはやぶさかでありませんが、そういった意味で対応できる機動性を持った経済運営をやっていただきたい。  それぞれお答えいただいて、次の議題に移ります。
  147. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 一つの御議論と私どもは理解するところでありますけれども、やはり概算要求のこの基準、シーリングというものを設けることによって、夏から冬にかけましてそれぞれの役所の中で重点的な項目というものを積み上げていくという意味では、やはり一つのやり方、手法としてはまだ必要なのかなというふうに思っております。  しかし、総理も生活大国を目指すということを言われたわけでありますけれども、これは平成三年度から生活枠というものをとりながら、そういった下水道ですとかあるいは住宅ですとか公園ですとか、そういったものを特に積み上げていくような手法というものを我々も今とっておるということを申し上げておきたいと存じます。
  148. 野田毅

    野田国務大臣 海外との貿易黒字の拡大、輸出増加につながるんじゃないかという御懸念でありますが、私は、もう御案内のとおり、このところ日本のいわば産業構造といいますか経済構造がかなり内需中心型の経済構造に変わってきておるということはもう御案内のとおりであります。したがって、貿易黒字がさらに拡大をするということは、そういう点で輸出ドライブがかかって貿易黒字が拡大するということは考えておりませんが、少なくともやはり国内需要が余り必要以上に冷え込んでしまうと、逆に輸入が減少していくということを通じての貿易黒字の拡大ということにつながりやすい側面があるわけであります。  そういったことから、私どもは引き続き内需中心のインフレのない持続可能な安定した成長を達成していけるように、さらなる民間経済、いわゆる経済の主体であります民間の経済の活力をどうエンカレッジするかということと同時に、また一方で、我々の経済運営の政策努力ということも必要であると認識をいたしております。
  149. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 次に、これも我が党の小岩井委員が質問をしたことでありますが、独禁政策について一、二お尋ねをさしていただきたいと思います。  これはこの前、各大臣の御返事を聞いておりましたが、我が国は課徴金という制度がございますから、カルテル行為に対して刑事罰を科すことについては両罰規定等の関係で極めて問題があるような御発言がありました。しかし、これは公取委員長にお尋ねをしますが、カルテル行為というのは、大きい小さいには無関係にこれは企業犯罪だ、カルテル行為というのは。そう思うのですが、公取委員長はどう思われますか。
  150. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 いわゆるカルテル行為につきましては、我が国の独占禁止法では独占禁止法三条によってこの行為が禁止されておるわけであります。違反行為が行われました場合には、特に価格に影響のあるカルテルにつきましては、企業の規模いかんにかかわりませず、一定の要件のもとに課徴金が課せられるわけでございます。  ただ、我が国の場合はアメリカと違いまして、アメリカはカルテル等につきましては即刑事訴追という制度がとられておるわけでありますけれども、我が国の場合は、公正取引委員会の行政措置としての勧告、必要な場合の課徴金の処分というものがまずございまして、その中から非常に悪質、重大なカルテル事件についてはさらに刑事訴追を行う、こういう形になっておるところでございます。
  151. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、そういう点が、通産大臣、大変失礼ですけれども、何か日本の企業はカルテル行為に対して非常に、これは公取の姿勢の問題にも過去あったと思うのですけれども、やはりカルテルというものに対して極めて軽く見ておる風潮があるのじゃないかと思うのですが、そういう点は大臣お気づきになりませんか、お感じになりませんか。どうでしょう。
  152. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは自由主義経済に活力を持たせるために、企業の公正な競争、これはまた消費者を守ることでもありますけれども、当然のことであって、我が国の自由主義経済が今日これまで発展しているということは、公正で公平な競争が行われてきたものと思っております。
  153. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これはこの前も小岩井議員が質問して、これからそれぞれの各常任委員会で議論があるでしょうけれども、やはり早急にこのカルテル問題についての刑事罰を含めた独禁法の改正法案というのは提出されるべきである、私はそう思います。恐らくそういう作業を公取ではしておられると思うのですが、ぜひそういう努力を続けていただきたい。それについてはよろしいですね。
  154. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 この問題につきましては、何としてもこの国会に政府として法案を提出すべく、現在関係方面と調整の努力を続けております。
  155. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 通産大臣も、この問題は日米構造協議にもかかわってくる問題ですから、ぜひ独禁法の改正は今国会でやり上げていただきたい、そのことを強くお願いしておきたいと思いますが、どうでしょう。
  156. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 まだ具体的な相談を受けておりませんので、ここでどうこうということではありませんが、それが我が国の産業を発展させ、あるいは国際経済における我が国の調和ある責任を進めていくという正しいものであれば、十分相談に応ずるつもりであります。
  157. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それから、これも公取委員長にお尋ねをいたしますが、再販適用除外の問題ですね。  政府規制等と競争政策に関する研究会は、昨年の、平成三年の七月、化粧品、一般用医薬品、レコード盤、音楽用テープ、音楽用CD、これは音楽用テープと音楽用CDは除外をいたしますけれども、こういうものについては再販を解除しても、適用除外しても各層に影響なしという研究会の報告書が出されておりますが、これについて公正取引委員会としてどう判断されるのか、適用除外はいつごろなさるのか。  そして、これを受けて廉売等の問題等が当然出てくるわけでありますが、通産大臣としてのお考えも承っておきたいと思います。
  158. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 独占禁止法の適用除外になっております再販価格維持制度につきましては、現在、一定の価格以下の化粧品、それから一般用医薬品、それから音楽用CDの取り扱いというものが従来議論になっておるところでございます。  今委員が御指摘のありましたように、昨年、研究会の報告を受けまして、その後、当委員会事務局が実態調査を行いました。この結果は既に昨年じゅうに公表をいたしております。さらに、昨年十二月に消費者、事業者、学識経験者を煩わせましてこの問題について公聴会も開いております。その後、この問題について関係方面からの御意見等も今幅広く伺っておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、今後関係行政機関関係省庁とも十分調整を経まして、なるべく早くこの三つの問題についての取り扱いの結論を出したいと考えておるわけでございます。
  159. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 再販適用除外制度については、乱売やおとり廉売が発生することによって商標品の信用が損なわれ、あるいは中小小売業者の経営が不安定すること等を防止するためにこれは設けられたものでございますから、もし再販制度の見直しか行われるというようなことに当たっては、そのようなことにならないようにこれは努めていくことが極めて重要であると考えて、これから見守ってまいりたいと存じます。
  160. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ぜひ公取と通産とで十分御議論をした上で、消費者サイドに立った結論を出していただきたい、そういうことを申し上げておきたいと思います。  それから次の問題は、談合の問題です。  これは建設大臣にお尋ねをいたしますが、私たちはよく天の声というのを聞くのですね。天の声というのですよ。この天の声というのは何でしょうかね。建設大臣ちょっとお教えいただけぬですか、天の声。入札のときには必ず天の声というのを聞くのですよ。これは何でしょう。
  161. 山崎拓

    ○山崎国務大臣 公共事業の入札は、会計法令等によりまして厳正公正に行われていると信じております。天の声というのは何であるか存じません。
  162. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は、予算におられるメンバーの方々は別だと思うのですが、天の声というのは、力を持った国会議員だ、あるいは首長だという話をよく聞くのです。私は、そういう声が出てくるところに入札の不明朗さがあると思うのですね。現実にこの前も埼玉県で入札を一時延期をいたしました。その最大の理由というのは、入札の前に、大体今度はこの会社が入札しますよという通知が来たので入札を一応停止して、様子を見て解除をしてみたらやっぱりその人が、企業が入札をした、こういう事実があるのですね。  そして、この談合に対する公正取引委員会の摘発件数という、警察の取り締まりというのも間々ありましたけれども、この談合に対する公取の文書警告等はここに数件もらっておるのですけれども、新聞等にこうわんわんわんわん騒ぐ割には余りないのですよね、実際は。しかし、実際には談合が行われておる。そのことに対して非常に国民は、この談合、入札について不明朗さを持っておる。しかも、これは国民の税金じゃないか。特に今度は、来年度は景気対策として公共事業にあるいは財投融資等に大変な肉づけをしている。ですから、これにまた砂糖にアリが群がるようにこんな談合とかなんとかということが行われたんじゃ、これでは何のために公共事業を一生懸命政府が苦労し、我々が苦労して発注をするのかわからなくなりますね。  ですから、こういう問題について公正取引委員会、この談合に対してこれからどういう対応をされようとするのか、また、今までも厳しくしておられるでしょうが、この談合に対して山崎建設大臣はどう対応されようとするか、そういった方針について簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  163. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 いわゆる談合というのは、委員承知のとおりこれはカルテルの一種でございます。各種のカルテルがあるわけでございますけれども、公正取引委員会といたしましては、近年特にこの各種のカルテルについての摘発に全力を挙げているところでございまして、先ほど数件の談合について文書警告を発したという資料ということをおっしゃいましたけれども、これは文書警告ではございませんで法的措置をとっておりまして、それについて相当額の課徴金も徴収をいたしておるわけでございます。  今後ともこの談合につきましては、他のカルテルと同様、効率かつ厳正な方法でもって対処してまいりたいと考えております。
  164. 山崎拓

    ○山崎国務大臣 先生は埼玉県の事例をお挙げになったのでございますが、先生の御指摘によると、天の声が「まあ首長といえば県知事ということになりますが、また国会議員のいずれかが天の声を出したんではないか、こういうお話でございますが、一切そういうことは存じておりません。  それから、先ほど申し上げましたとおり、今後とも公共事業の入札、発注等に関しましては、会計法令等に従いまして公正、厳正に行っていくようにいたしたいと考えております。
  165. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 天の声というのは全国至るところで聞くんですよね。私は最近の例として埼玉と、こう申し上げたんですが、しかし、いずれにしても先ほど申し上げましたように、官公需の入札というのはこれは国民の税金ですからね。いやしくもそういうものについてそういう疑いがあるようなことは避けてもらいたい。そのための厳しい行政指導をしてもらいたい。指名業者からもう外す、そういうところは。それぐらいの思い切ったことをやらなければこれは直らないですよ。  そうすると、公正取引委員会は、私は少なくとも行政措置で処理するんじゃなくて、もう次々告発すべきだ、この際。そうしなければもう絶対に直らない。そのことを強く要求したいと思うんです。特に来年度は、さっきから申し上げますように、景気対策としてそこに主力を置いておりますからね。だから、そういう意味で、建設大臣、それから公正取引委員会は、それぞれのお立場で措置をしていただきたいと思うんです。  そして、こういうことが続けばまた日米経済摩擦の対象になるんですよ。日本の市場には参入しにくい。どうやってみても必ずそういう形で、談合という形で結果が出てしまう、そういうことにならぬようにしてもらいたいと思うんです。  それからもう一つ、これは今の制度では正しい行為ですけれども、コンピューターが一円玉で入札されるとかあるいは水道事業が七万五千円で入札されるとかあるいは航空撮影が二十万円近くで落札されるとか、もう常識を外れた形で応札するんですね。もう赤字、出血を覚悟で応札をして、後からそれに関連をして随契で発注を受けようとするから、事前にこういうふうに破格値の落札行為というのが起こってくるんだと思うんです。これも日米経済摩擦で、どうも日本というところはおかしなところだという、こういう疑いの目で見られるんですね。  これは安ければ安いほどいいんですけれども、安いものは必ず後からツケが取られるわけですからね。後からもうけるから、今は損してでも受注する、こういう行為が公然と行われておること、これは現在の法体系の中では許されることになっておるんですが、こういうものについて、公正取引委員長は何かお考えありますか。それと、これは自治大臣、どうでしょうか、こういうものについて、どうお考えになりますかね。
  166. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 コンピューターは、まだ現在の段階におきましては、いろいろと使用していただくことによってそこから研修し、改良していくという、そういうことも込めて業者の間で、私は決してそれは望ましい価格とは思いませんけれども、そういうようなので実験を依頼するとかあるいは宣伝、普及する、そういう意味を込めてやっておるのがあるということを聞いておりますけれども、必ずしもそれは正当な経済行為ではないと私は思っております。
  167. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 じゃ、どうなさいますか。
  168. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 業者の方でいろいろと当事者と話をいたしまして、再度入札をし直す者もございますし、あるいはまたもう一度価格を修正してそれに応じるということ等、個別によって違うと思いますが、特別にこれを指導するということはいたしてはおりませんけれども、それぞれの自治体におきまして、やはり住民が納得するような方法でそれに応じて対応をとっておるということを聞いております。
  169. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 コンピューターシステム等、このエレクトロニクスを使いましたシステムの発注というものが最近公共団体で大変盛んに行われておるわけでございます。  一昨々年でございましたけれども、ある地方公共団体の安値発注につきまして、関係事業者に厳重な注意を発したところでございます。独占禁止法上は、これは有力な事業者が繰り返してそういうことをやる場合に不当廉売に該当する場合がございますし、あるいはその事後のシステムそのものでございますね、ハードのシステムとかあるいはプログラミングの発注のいわば誘引手段として使う場合にはこれはまた別途の不公正な取引方法に該当する場合があるわけでございます。  ただ、一昨々年の事件につきまして、当委員会事務局がかなり綿密な調査をしたわけでございますけれども、これはまだこの種の市場が必ずしも成熟していないわけでございます。つまり、基本計画から概略設計、詳細設計、ハードというふうに各種の段階があるわけでございますけれども、そういったものが細切れに発注されるあるいは事後のハードのシステムの発注と前段階が遮断されてないといったような発注方法そのものについて今後検討されるべき問題が私どもはあるのではないかと考えておるわけでございますけれども、ただ公正取引委員会といたしましては、そのことはさておきまして、これからもその種の情報に接しました場合には、これまでもすべてこれは事務局が入念にチェックをいたしております。つまり、コストと入札価格との関係、それから事後の発注と遮断されているかどうかといった状況すべてチェックをいたしておりまして、現在までのところ独占禁止法上間擬すべきような事件はない、今までのところはないというふうに考えております。
  170. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは自治大臣あるいは通産大臣、あるいは航空写真などは恐らく国土庁等と関連をしてくるんだと思うんですが、いずれにいたしましても、こうした破格値落札というのは内外の批判をやはり受けつつあることは事実なんです。ですから、これを早急に防止をどうするのか、そういったものについて、現在は適法であったとしても将来の問題として必ず日米摩擦の対象にもなりかねないことですから、ぜひひとつ、今後こうした批判にどうこたえるのか、防止策をどうするのか、鋭憲政府の方で御検討いただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、最後になりましたが、公正取引委員長にこの際、公取の姿勢についてお願いを申し上げると同時に、少しく批判を申し上げたいと思うんですが、この前の証券問題で公正取引委員会の対応は少し遅かったと思うんです。私は、公正取引委員会は、行政機関である大蔵に遠慮した面もあったんじゃないかと思うんですが、やはり公正取引委員会は、大蔵省の検査等の結果を待たずに即座に対応すべきではなかったか、こう思います。  しかし、それはそれとして、証券取引等監視委員会が今国会で大蔵から法律として提出をされる予定になっています。ですから、このことによって証券・金融の公正取引委員会の対応が消極的であってはならぬと思うんですね。もっと私は積極的に、証券であれ金融であれ、公正取引委員会という枠の中でやれる行動は積極的にやってもらいたい。そうすることが市場の明朗化と市場に活性化を取り戻す私は道だと思います。特に証券市場、金融市場に対する国民の批判は厳しいものがありますので、ぜひ公正取引委員会の役割に期待をしたいと思うんですが、公正取引委員長の決意を述べていただいて、次に移ります。
  171. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘が二つあったと思うんでございますが、一つは、証券取引法の先般の改正以前に行われましたいわゆる証券会社の損失補てん行為についての公正取引委員会の対応が手ぬるかった、あるいは機動性を欠いていたという御批判でございますけれども、これは当委員会でも私たびたび御説明申し上げましたように、事実関係として申し上げますと……(松浦(利)委員「簡単でいいです。もういいです、わかっていますから」と呼ぶ)はい。結論から言いまして、改正前の証券取引法のもとでは、規制官庁である大蔵省はできる限りの措置を講じられたと思うわけでありますけれども、法律違反として措置するには独占禁止法に最後よらざるを得なかったということで、私は、今の時点におきましても、当時両機関が手分けをして効率的に事件に対処したということについては、判断は間違っていなかったと考えております。  それから、二番目の問題でございますけれども、監視委員会等が今後できます。しかし、いずれにいたしましても、カルテルその他不公正な取引方法については、業種を問わず独占禁止法を所管する公正取引委員会が違反行為について対処すべきことは当然でございますけれども、ただ、今回の損失補てんのように、独占禁止法上の行為概念と証券取引法の行為概念が重複する場合には、幸い、今回証券取引法が改正され、これについては罰則という強い規制措置がとられるわけでございます。それに対して、規制機関としても、監視委員会というものが国会で御承認を得て設置されます場合には、この重複する分野につきましては、やはり私は、新しい機関が第一義的にこれを規制するというのが行政上も制度上も一番望ましい効率的なあるべき姿と考えております。
  172. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 公取委員長は、この前の証券不祥事、金融不祥事のときとった態度は正しかった、こう言われたのは、あなたが大蔵省出身だからそう言われたというふうに私は受けとめます。そうでなければ今のようなお答えはなかったはずです。私はそのように受け取りますよ。あなたは、言わぬでもいいことを今言われたんだ、私はそう思いますね。非常に今の発言は、公正取引委員会委員長としては、私は、問題のある発言だと思いますね。私の言っておることが間違いなら、また改めて公正取引委員会主管の常任委員会等で議論をさしていただきましょう。  そうしなければ、公正取引委員会というのが本当の意味で消費者のサイドに立った公正取引委員会にはなり得ない。今大蔵省の方は、姿勢を正そうとして法律上の改正や何かを出してこられた。公正取引委員会は何の反省もない、むしろ正しかったという判断をしておられる。極めて今の公正取引委員会委員長の発言は、私は問題のある発言だと思います。よく考えておいていただきたい。  次に移ります。  答弁は要りません。――答弁がありますか。もう時間がないですから簡単にしてください。
  173. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 私のお答え、非常に委員、私の本意でないふうにお受け取り願ったと思うわけでございますから、誤解を生じました点については、私おわびを申し上げます。  ただ、私が申し上げたかったことは、証券取引法の規制の分野と独占禁止法の規制の分野は、やはり効率的に行政上の重複がないように行われることが一番望ましいわけでありまして、そういった反省にも立って、先般証券取引法の改正が行われたというふうに私は理解をしているわけでございますが、私の答弁について不行き届きな点があったとすればおわびしたいと思います。
  174. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 今言われたことで了解をいたします。ぜひ頑張ってください。  それから次に、もう時間がありませんから簡潔に質問をしてお答えいただきたいと思うんですが、武器の移転の問題ですね。  先般、我が国が提案をして、軍備の透明性決議が国連でなされました。国連事務総長に対して、政府技術専門家パネルの支援をするために、我が国からも一人派遣をされておるというふうにお聞きをしておるわけでありますが、そういった意味では、軍備の透明性を確保するということは、我が国にとっても極めて重要な問題だと思いますから、一、二、防衛庁長官、それから外務大臣、通産大臣等にお尋ねを申し上げます。  国家公安委員長、それから経済企画庁長官、あとの質問にはもう時間で入れませんので、どうぞ、申しわけありません。建設大臣も結構です。済みません。お帰りください。ありがとうございました。  それじゃ、ちょっと待ってください。官房長官、お休みのようですから、官房長官にこの質問をして、お帰りください。  実は、財団法人世界平和研究所というのがありますね。中曽根先生中心になっておられるんですが、これが、一九八八年六月、竹下内閣のもとで指定団体として財団法人に指定をされたわけです。やっておられる内容については私は批判を申し上げません。ただ、国民の目に映る問題としては、どうも、あのリクルートの問題が出ましたときに、やはりこの平和研究所の方にリクルートからの関係が、こことの関係が出てきた。そうするとまた、今度佐川の問題が出てきますと、郵政大臣が仲を取り持って佐川のところに五億円の出資を要請して五億円持ってきた。どうも名前にふさわしくない、平和研究所にふさわしくない団体の名前がぽっぽこぽっぽこ出てくるんですね。  だから、結果ですから、もらった企業がそうなるということを想定しておらずにもらったという御答弁だと思うんですけれども、しかし、これほどそういったものが出てきたら、この際、この財団法人を解散せよとかなんとかということは申し上げません、私は、内閣の指定団体を取り消されたらどうですか。取り消された方が逆にいい。そして、現在派遣をしておる、防衛庁、経済企画庁、外務省、大蔵省、通商産業省から各一人ずつ休職して職員を派遣しておられます、これももう全部本庁に引き揚げられたらどうか。そうされた方が、むしろこの平和研究所、中曽根先生中心にして思い切った平和活動ができる、こう思うのです。私は思い切ってそうなさるべきだと思いますね。どうですか。それをお答えいただいたらお帰りください。
  175. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御質問の財団法人世界平和研究所は、安全保障の確保、国際経済の健全な発展のための諸施策を調査研究し、総合的に政策提言をするという趣旨でつくられておるものでございますが、非常に研究の公益性が高いということもございまして、昭和六十三年六月二十八日に閣議了解して、その行う事業に必要な協力を行うものとするというふうに定めてございます。行っている事業は非常にいい事業だと思っておりますので、現在も極めて高い公益性を保っておられるものだと思いますので、財団法人の取り消しとか閣議了解の解消というのはちょっと考えてないのでございますが。
  176. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それは副総理・外務大臣、どうですか、もうこの際スウェーデンようにやっぱり思い切って、しておられることは今言われたように、決してそれをやめろと言うつもりはありません。政府が指定団体にして、そしてこれに政府の職員を出向させるというようなことはもうおやめになったらどうか。そうしないと、いろいろなところで出資を受けた団体がこういうふうに次々出てきますと全体がおかしいんじゃないかと言われるようになりますから、その前にこの際指定を取り消したらどうか。私は親切に申し上げておるのです。どうですか、外務大臣。
  177. 加藤紘一

    加藤国務大臣 副総理はこのことを余りよく御存じございませんので、私から答弁させていただきますが、なかなかいい研究をされておりますし、その点は御理解いただきたいと思います。また、どこのところからどういう出資金がありますかということは公表を申し上げないことになっておりますので、その点は御理解いただきたいと思います。  詳細につきましては、担当部局よりお答えさせます。
  178. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 やっぱりおかしいですよ。ぜひその点は検討しておいてください。非常におかしい。ですから、そういう意味では国民皆さん方の御批判が平和研究所自体に来る前に整理された方がいい。私はそのことを官房長官に申し上げて、ぜひ総理と御検討いただきたいと思います。どうぞお帰りください。  それから、時間がもうなくなりましたからいろいろ申し上げられませんが、これは防衛庁にちょっとお尋ねをします。  資料要求しまして、主要装備品の海外からの購入状況と購入計画というのを出していただくようにお願いをしたのです。そうしたら、平成三年度予算及び四年度予算案で調達する装備品等の輸入予定については、現段階ではお答えできません、こういうことなんです。予算審議しておるのに、何で平成四年度予算案で調達する装備品等の輸入予定については現段階でお答えできないのか。予算審議をする必要がないというなら別だけれども、予算審議をして、防衛予算も賛成、反対は別にして議論をしておるわけですから、そういう面についてなぜこういうことになっておるのか、お聞かせをいただきたい。  それからさらに、政府が支払った開発分担金、これはアメリカに対して。地上武器あるいは航空機、誘導弾等をアメリカから輸入する場合に、政府がアメリカに支払った開発分担金の総額等については提出を差し控えさせていただきたい、これは出さぬと言う、ここに。アメリカの製品を買った方が安いじゃないかとアメリカが言うのですよね。日本でつくるよりも、ライセンス生産をするよりも、あるいはアメリカの航空機会社から直接買った方が安いじゃないか、防衛庁が買ったら高くなる、こういった意見があるのですが、政府が提出しました資料では、日米政府間で部外に出さない性格のものとされているため、提出を差し控えさせていただきます。確かにF15ならF15を開発するためには開発資金がたくさん要るでしょう。しかし、その開発資金に対して日本政府が幾ら負担をしておるのか、これは我々国民に知らすべきですよ、F15という飛行機を買うのだから。買う中に対してF15の開発資金について日本がどれだけ分担をしました、それを我々予算審議の中で、それも教えるわけにはいきません。  防衛庁長官、それは秘密があることはわかります。しかし、調達をする予算の審議の場にこういうふうに頭から、平成四年度はどういうものを輸入するか、そういうデータは出せませんとか、分担金の内容については提出を、あるけれども差し控えさせていただきますなんということは、予算委員会、もっと早ければこれ以上前に進まない、自然体でとまるということもあるような内容なんですよね。しかし、そういうことは言いません。なぜこうなっているのか、言ってください。
  179. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先生御指摘の点は、二つの点に触れられました。  まず第一の主要装備品の海外からの購入状況でございますが、確かにお手元にお届けいたしました資料は、平成二年度までが艦船、航空機、武器弾薬等について記述をしてございますが、平成三年度と四年度については記述してございません。その資料の注も書いてございますが、これは現段階でお答えできないと、今御指摘のように書いてございますが、実は、三年度の問題は大体これから大口のものが契約されることが多うございます。そして、それは金額的にも当時の為替その他の状況等を勘案して契約をするわけでございますので、これを確定値でここに申し上げることはできないという点を申し上げておるわけでございます。  それから四年度につきましては、四年度の装備品、まあ防衛庁一般に装備品の調達はFMSでありますとかライセンス生産でありますとか共同開発でございますが、これらをどのような有利な形で調達するかということが大変私ども重要なことだと考えておりまして、確定的なことは、ひとつぜひ予算成立後に有利性等を判断して調達をなるべく効率的にやりたいということでございますので、掲げておりませんことを御理解いただきたいと存じます。  それから第二番目のライセンス生産の場合の開発分担金の総額について、確かに注で、先生に御提出した資料では、日米政府間で部外に出さない性格のものとされているため、提出在差し控えさせていただきたいと記述をして、わざわざメンションをしてございますが、これは実はMOU、交換公文によりまして、武器調達をやる場合にはそういう交換公文あるいは細目取り決めを決めるわけでございますけれども、これはアメリカ政府日本政府の間では秘密扱いにするという申し合わせがございます。  その一つの理由として考えられることは、アメリカが例えばF15の開発をやったわけでございますけれども、日本だけにこれを供与するわけではございません。これはその開発費用の分担、各国等に行われるわけでございまして、これはアメリカ側の事情によってその公開を差し控えてくれということでもございますし、それからアメリカ企業と日本の企業でライセンス費を払うこともございますけれども、これは一般購入でございますが、これも企業の商業上のいろいろな秘密の問題等もございまして、こういう制約から先生に資料が提出できないということを申し上げておるわけでございまして、防衛装備の調達の特殊性からくるもの、しかも日米間の協定に基づくものということで御理解を賜りたいと存じます。
  180. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう時間が来ましたからこれ以上議論はいたしませんが、この問題は予算編成にも絡んで極めて重要な問題だと思うのです。これを輸入にするか国産にするかは、もう初めから、積み上げのときにわかっておるものですから、だからそういう問題については、また後刻改めて議論をさせていただきます。  時間が来ましたから、終わります。
  181. 山村新治郎

    山村委員長 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  次に、宮地正介君。
  182. 宮地正介

    宮地委員 私はきょう、農業問題、ウルグアイ・ラウンドの関係から最初に御質問をさせていただきたいと思います。  今回のこのウルグアイ・ラウンド交渉におきまして、EC諸国としては国内保護については今回触れておりません。また、アメリカにおきましても、ウエーバーの十四品目につきましては関税化の方向ということで、今回リストを発表になっております。日本は今回、三月四日に提示いたしまして、いわゆる米につきましては税率については空白、こういうような形で今提示をされたわけでございますが、このウルグアイ・ラウンド交渉というものは、今後の調整が大変難しい段階にあるわけです。一応四月の十九日をタイムリミットにしておりますが、大変に今後の見通しが不透明であるわけでございますが、まず外務大臣、今後日本政府として、この交渉についての調整難航の中で、見通しをどういうふうにお考えになっておられるのか、伺っておきたいと思います。
  183. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはたびたびこの席から申し上げているのですが、ウルグアイ・ラウンドを何年間もやってきた成果をつぶしてしまった方がいいという国は、私は聞いていないのです。我が国なども積極的にウルグアイ・ラウンドを成功させましょうということを何回も約束をしておるわけであります。これによって世界の貿易が縮小しないで拡大均衡されるということの方のメリットが非常に大きい。だからといって、いろいろ問題点を抱えておりますから、お互い百点満点というわけになかなかいかない。百点満点といったらこっちが絶対反対、こうなりますから、だから少しずつ譲り合ってひとつまとめていきたい、今でもその気持ちは変わりはありません。
  184. 宮地正介

    宮地委員 そこで具体的に、今回の農業に関する国別約束表が農林水産省から、特に米問題等につきまして三月四日提示をされておるわけでございます。この中でまず、米の市場アクセス、関税化のところにつきましては、関税相当量の数値を提示しない、引き下げ率等の欄は空欄とする。これは基本的に日本政府として例外なき関税化は断固反対なんだ、こういう意味合いで空白にしてあるのか、それとも、今後その状況、国際情勢、具体的にはアメリカとかEC諸国のそうした変化に伴って、我が国としても今後、この包括的関税化というものは条件つきで合意の方向を意図しているのか、この空白の意図はどちらなのか、この際明確にしていただきたいと思います。
  185. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 第一義的には、国会決議で自由化をしない、それを尊重して実はやっているわけであります。  また次には、今も申し上げたように、外務大臣からお話しのように、どこの国も非常に困難な問題をそれぞれに持っているわけでして、例えばECでは削減数値を提示しない、あるいはカナダも十一条二項(c)の対象品目たる乳製品等に関税相当量、これについても記載しないということで、それぞれの考え方に基づいて提出をしておる。私どもも、いろいろとどの角度から考えてみても非常に受ける影響も大きいということですね。  それからいま一つは、ルールがどうも同じルールでプレーをしていない。もう先生案内ように、輸出補助金をそのままにして、私どもは輸出補助金というものをやってなかった、やってない国は自由化をしなさい、こういう案ですから、まあいろんな、まだまだたくさんありますけれども、御承知おきいただいておることでありますから省略させていただきますが、そういうことで、いろいろの修正も含めてこの問題は、日本としては関税化ということは受け入れがたいということで数字を書き込まないで提出した、こういうことであります。
  186. 宮地正介

    宮地委員 非常に大事な答弁だと思うのですね。修正を含めて空白にした。まさに今回のこの国別表の提示に当たりまして添付したカバーノート、総括文書には、追加提案の用意、これを示してあるわけですね。これは、今後の交渉において修正の用意があるということは、まさに例外なき関税化、この容認の方向政府として動く、こういう場合もあるというふうに理解してよろしいのか。特に今国民の間では、米についてはガットの十一条二項、この食糧安保論から例外なき関税化反対、こういう声が非常に大きいわけでございまして、我が党としてもそうした立場を表明しているわけですが、今の農林水産大臣の答弁は、国民の立場から非常に心配をする答弁でありますが、そういう点いかがでございましょうか。
  187. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 誤解をされると困るのでありますが、米と十一条二項(c)は、きちっとこれはだめです、修正の部分というのは別な品目で、第四トラックで議論してほしいというようなことがあります。何でもかんでもだめというのではなくて、従来、牛肉等はもう自由化は稔ました。高率の七〇、六〇、五〇ということでだんだん下げていきますけれども、そういうもの等も出しておる。したがって、修正部分というのは、例えば十一条二項(c)の中でも、脱脂粉乳とバターをまぜるとミルクになる、そういうものは明確化してないじゃないですか、明確と修正とだめですと、こういうふうに分けて出しておるわけでありますから、そこのところは誤解のないようにお願いしたいと思います。
  188. 宮地正介

    宮地委員 そうすれば、米については、確認ですけれども、ガット十一条のいわゆる第二項にきちっと入れるように今後とも要求していく、こういうことですな。
  189. 川合淳二

    ○川合政府委員 大臣からも御答弁ございましたように、私どもはこの国別表の提出に際しましては、従来から申し上げている基本方針に基づきましてこの国別表を提出しております。  ただいま先生がお触れになりました、今後修正があるというような文言につきましては、これは、私どもが基本的に考えている交渉そのものとは関係ございませんで、当然のことながら、こうした交渉につきましては、状況によりましては撤回することもございますし、また修正することもあるという、一般的な書き方をすることが通例でございます。そうしたことにつきまして触れているわけでございまして、お触れになりました点が米あるいは十一条二項(c)とは直接的に何ら関係のないことでございますので、その辺を御理解いただきたいと思います。
  190. 宮地正介

    宮地委員 それは十分わかっているのです。米は十一条二項(c)の対象じゃない、ガット十一条の二項においていわゆる食糧の基礎ということで、食糧安保論で日本は今後とも強くいくんだ、こういう意思であろうかと思います。  そこで、問題は、穀物とか大豆とか砂糖とか生乳等については今後国内支持として、国内の保護の状況として六年間で原則二〇%削減、こういうことで提示をしているわけです。この原則二〇%削減というところが非常に重要であろう、こう考えます。これは、こうした農家に対しては補助金のカットとか、今後の保護の、この政府の政策の削減、こういうことを意図しているのかどうか、この点について確認しておきたいと思います。
  191. 川合淳二

    ○川合政府委員 国内支持につきます御質問でございますが、御承知ように国内支持につきましてはAMSという概念、農業の支持、保護の総合的計量手段というふうに私ども解しておりますけれども、そうした手段を使いまして削減を二〇%するというのがダンケル案でございます。  この削減の対象となる政策につきましては、現在、まだ私どもも問題意識を持っておりまして、修正すべき事項といたしまして、これにつきましても私ども主張している点があるわけでございますが、いずれにしてもこのAMSというのは、ただいま申しましたように総合的な計量手段でございますので、個々の政策、例えば価格政策そのものをどうするかということとは直接的に結びつかない概念でございます。これを削減するということが今の具体的な政策をどうこうするというふうには直接的には結びつかない、そういうような概念であるというふうに私ども考えております。
  192. 宮地正介

    宮地委員 日本の今の農業は大変に経営的にも深刻な今危機に瀕しているわけです。そういう中で国内保護のカットという、二〇%、六年間でやる、これが補助金のカットなどにつながりますと、ますます日本の農政は大変な深刻な危機を増幅するわけでございますから、私はそういうことのないように十分な配慮をしていただきたい。  例えば具体的に何点か、私もこの七日、八日に北海道の農業の実態の調査ということで、蘭越町とかあるいはニセコとか仁木とか喜茂別などを、実際に農家の方々にお会いをして、そしてその生の声というものをいろいろ調査をしてまいりました。例えば、その中で皆さん方が、十三万ヘクタールの減反を今回緩和をいたしました。しかし、この減反緩和というものが果たして農家のためになっているのであろうか。それも一年限りの減反緩和策、こういうことでございまして、実態は大変に厳しいものでございます。  農林水産省からのこの減反の緩和対策に対する資料も見ましても、平成四年度で約四億五千八百万、この程度のいわゆる予算しか計上しておりません。北海道においては、今回減反が約一万八千ヘクタール、こう言われております。  そういう中で、この減反を緩和した、緩和したその今回の新たにこれから水田を行う、それに対する復元の費用というものも大変なものでございます。用水路とか排水路の整備とかあぜの補修とか、それだけでなく、固定経費におきましても、大体私どもが現地で確認したところによりますと、一ヘクタール当たり約百四十六万かかるという計算も出ております。苗を育てるための費用とか、収穫の農機とか、施設とか、そういうところの固定経費だけでも大体百四十六万ぐらいかかる。ところが、皆さんの農水省の報告によりますと、大体十アール当たり十万円、一ヘクタールで大体百万ぐらい、こう言っていますが、実態はこんなに現場には落ちていない勘定であります。私は、そういうことを考えましたときに、この減反緩和一年限り、まさに例えば苗を育てるのにもこの費用を、ハウスの問題とかあるいはそうした今後の対応については償還するのに最低五年ぐらいはかかる。コンバインだとかそういうものを買った返済というのは、大体八年ぐらいかかる。せっかく政府が減反で緩和しても、一年限りでは償還もできない。こんな実態の中で、さらに農家は深刻な経営にあえいでいるというのが現場の実態であります。  この際、この緩和一年限りを私は解いて、少なくとも今後三年、五年ぐらい検討していくことが必要ではないか、また、この平成四年度四億五千万という予算ですが、来年度以降においてはもっと増額をしていくべきではないのか、余りにも実態と乖離しているのではないのか、こういうふうに考えているわけですが、農水大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  193. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 転作等目標面積について、まあ農家の皆さんから随分強い要望がございます。気持ちもわかりますし、これからの農作業等を考えますと、今お話しのようなことであろう、こう思います。思いますけれども、私どもも農家の中期的な営農計画というものに支障を生じさせないようにしたい、こう思っておるわけであります。今調査しておりますので、どの程度になるかわかりませんが、いずれにしてもまあ今回のこの十三万ヘクタールの軽減措置というものについては、緊急、応急的な措置として実はお願いしているわけです。  そこで、もう立派な畑地にしたとか、いろんなものにお金をかけてつくった、そういうものを水圧に戻すということは避けて、安易にというか、簡単にといいますか、多少の手直しで水田に復せるというところをまず調べまして、あるいは地域間での調整もしますが、県ごとに、もしどこかの県がそこまでの目標を達せないというところがあれば県同士でまた調整をしてもらう。いろいろな方法でやっているわけであります。  ただ、お話のように、この後期対策後もずっとやらせろというお話が強いのでありますが、何といっても潜在的な需給ギャップというのが見込まれておりますので、何らかの生産調整というものは今後もしていかなければならぬ。先生も御案内ように、ひところには二兆円かけて過剰米を処理したということもあるものですから、どういうふうに持っていくかというのは、例えば備蓄をどうするかというのもいろいろ議論されて、今のような備蓄にしておったものが、多少、非常に狂ってきたということもあります。  いずれにしても、ことしの秋の在庫、需要、そういうものも見通しながら、また関係者の意見も聞いて結論を出していきたい、そう思っております。
  194. 宮地正介

    宮地委員 この一年限りという問題が非常に農家の経営を圧迫している。やはり、新たに水田を起こしてもとをとるためには五年ぐらいかかる。今具体的な積算を、根拠の一つの実例を挙げてお願いしているわけですから、ぜひ今後十分に、来年度以降は前向きに検討をして、本当に実態に合った減反緩和策にしていただきたい、強く要求しておきたいと思います。  さらに、やはり最大の問題は、日本の農業の今後の活性化の問題で大事なのは、農業を営む後継者の問題であります。この後継者の問題については既に、例えば新卒業者の就農者、全国で平成二年度で千八百人、こういうふうに言われております。  私も北海道へ参りまして、仁木町などでは八十人のうちゼロ、こういうよう報告も受けました。その一つのネックとして、具体的に私は再検討していただきたいのは、いわゆる農地法の第三条第一項によりましての取り扱いの問題であります。  北海道におきましては、新たに農業を営もうという新就農業者の場合に二ヘクタール、都府県においては五十アール。やはり農地を今後求めようとするための資金が大変厳しいということです。まず、この農地法第三条第一項の五のこの面積によって、これは最終的には知事や農業委員会が決裁するわけですが、これによってなかなか新就農業者が、仕事をやりたくても資金面あるいは法律面でどうも歯どめにひっかかってしまう。そういう意味で、この農地法の運用についてももう少し弾力的に、二ヘクタールという問題を超えていく必要があるのではないか。  また、資金につきましても、北海道の場合は今大体反当たり七十万ぐらいから五十万ぐらいに土地も下落しているようであります。例えば五十万にしても一ヘクタール五百万、二ヘクタールですと大体一千万かかります。これが、やはり高等学校を卒業したそうした子供たちが求めるということは大変な問題であります。  そういう点で私は、もっとこうした農地の流動化資金、こういうものが求められるよう基金制度の導入とか、こういうものも積極的にやっていくべきではないか、こういうふうに思いますが、この二点について、農林水産大臣の御見解を伺っておきたいと思います。時間の関係もありますので、端的に結論の方からお願いします。
  195. 海野研一

    ○海野政府委員 北海道での新規就農の問題でございますけれども、二ヘクタールという下限面積は、一般的な作物をつくります場合に、例えばこれより小さな面積からスタートするということになりますと、なかなか何といいますか、自立してその後拡大するだけの収益性が得られないということで、一応二ヘクタールという基準を置いているわけでございますけれども、収益性の高い作物をつくるとかいうような場合には、これを割っても十分な農業が成り立つ場合には可能だということにいたしております。  それから、資金につきましては、新規就農の場合に、一つは、土地の手当てにつきましては農林漁業金融公庫の農地等取得資金というものがございまして、さらに全く農外から入ってくる場合、土地だけでは済まないということもございますので、今般、農業改良資金でそれ以外の初度資金などの手当てについても手当てをしようというような予定にしておりますけれども、そのような金の制約の面でこれから本当に意欲ある人が始められないというような状態については常にウォッチをしまして、必要な資金手当てができるように措置してまいりたいと考えております。
  196. 宮地正介

    宮地委員 私の質問に、答弁になってないのですが、ぜひこの農地法の第三条第一項の運用についても、頭から二ヘクタールなきゃ、面積が少なきゃ、こういう論理だけの展開じゃ、やはり後継者問題というのは育たないわけです。都府県では五十アール、北海道では二ヘクタール。実態をもっと正確に調査して、もっと弾力的な運用ができないのかできるのか、実態に合っているのかどうか、これをぜひ確認の上、今後検討していただきたいと思うのです。  確かに今、資金面においても農地等の取得資金として制度がありますけれども、やはりそうした基金制度も何とかつくってもらえないか、こういう深刻な声があるのですから、これもぜひよろしく今後検討していただきたいと思います。私、また今後引き続き、決算委員会理事もやらしていただいておりますので、あらゆる場でこの問題はお願いをし、進めてまいりたい、こういうふうに考えております。  もう一つの活性化の中の、また現在の農家の大変な経営危機の問題、それは今までの国の政策に基づいて農家がやってきたその政策に相反しまして、大変な今債務を抱えているということです。その債務を抱えているために大変な金利負担に苦しんでいる、これがまた農家の大変な実情であります。  そこで、具体的にきょうは、先ほども農水省にはお話をしておきましたから既にお調べになっていると思いますが、ちょうど北海道の道南地域の南羊蹄区域畜産基地事業、これが行われております。農用地開発公団として昭和五十三年の六月に当時の中川農林大臣に許可を得まして、事業に着手し、昭和五十七年三月完了しております。総額約五十六億二千万円であります。  そうした農家が今大変な償還問題で苦しんでおります。金利は七%を超える金利であります、約七・二%。この問題については、地元の農用地開発公団事業北海道実施市町村協議会の会長である別海町の町長などから農林水産省の方にも、何とか金利の負担を軽減できないかということで、既に六年前から陳情を要請しているようでありますが、現場のこの農家の皆さんのところには何ら政府からの回答が届いていない。何とか公明党さん、公明党の力で政府にお願いしてぜひこの問題の解決に努力していただけないかという我々は要請をいただきました。  例えば、これは黒もの和牛をつくっている方でございますが、五十頭規模のAという方はこの事業をやるのに約一億三百万円、これに対しましては国の方から約六五%、五千九百三十七万、これが補助され、北海道として一七・五%、約一千五百九十万、残りは農家の自分の手でということで、利息などを含めますと最終的な償還は六千二百六十万になるのです。これは三年間の利息の据え置きで償還十七年、まさに当初自己資金としてお借りした約三千万が倍額返しになるわけです。  ところが、平成二年からの牛肉の自由化だとかそうした新たな問題あるいは土地の下落だとかこうした問題によって大変な、農家の経営はピンチの上にピンチを迎えているわけです。ところがこのお金は財投からということで、農水省は、財投の金の金利は変えられません、こういうことで、何ら地元の現場に対しての回答もしなければ、それじゃ財投の金利が下げられないんなら別の利子補給で、別の制度資金の軽減でこのように対応しますという具体的な、南羊蹄区域のこうした農用地の酪農家の方々に対して、現場に政府の対応が届いていない。農水省ではいろんな一般論的な制度で対応していると言いますが、現実はそうなんです。  私はこの際、政府としてこうした高金利に苦しんでいる農家に対しての思い切った利子補給制度、また負担の軽減のために、農林水産省のみならず大蔵省も関係当局も全力でやはりこの日本の農業の活性化の、最大の今この金利負担にあえいでいる救済のために立ち上がるべきではないか、こう思いますが、まず農水省の決意を伺っておきたいと思います。
  197. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 利率自体は下げるわけにはまいりません。預けている人の方の利息ということもありまして、余り、そのときどきによって決まった率でありますから、そのことは御理解いただきたいのでありますが、しかし何といっても負担金の償還が困難な農家というのは、牛肉の自由化、そういうものの影響を受けていることは確かであります。そういうものについては、北海道庁ともよく相談申し上げて、低利融資への借りかえあるいは資金の一部を農協等から借り入れる場合の利子補給という措置によって対応してまいりたい、そう思っております。
  198. 宮地正介

    宮地委員 農林水産大臣、私、具体的な南羊蹄区の農用地開発公団の問題についてお話ししたわけです。すぐ答弁でどうしろとは言いませんが、これは既に六年前、中川農林大臣の時代に関係の町長さんが協議会をつくって、何とかこの利子の軽減措置はできないかと真剣な要請をしているわけです。北海道開発庁などを通じて農林水産省にも届いていると思いますが、ぜひこれ具体的に、案件ですから御調査をしていただいて、具体的に農水省としてどういうことができるのか、これを現地にきちっと回答をして、説明を誠実にやっていただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  199. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 十分検討をして、現地の方にきちっとおろすようにいたしたい、こう思います。
  200. 宮地正介

    宮地委員 きょうは大変限られた時間で申しわけございません。  それでは次に若干景気問題について、これは日銀の、きょうは副総裁見えておりますので、ちょっと日銀の方からお伺いをしておきたいと思います。  過日、日銀から短観の調査のデータが発表になりまして、大変景気が今後退しておる。この問題で私は、今後の公定歩合の再引き下げの問題でいろいろな、金丸副総裁初め政治家あるいは財界の公定歩合の引き下げに対する大変な暴言的な政治的圧力といいますか、そういうふうに見えるようなことがぽんぽんあちこちで発言されておる。日銀というのは本来、専管事項であり、中立の立場で、日本のやはり金融政策のかじ取りの一番の大事なところであります。率直に申し上げて、余りこうした外圧みたいなことがちょいちょいあちこちで起きますと、やりたくてもやれないんじゃないか、こんな心境になってしまうんじゃないか、こんなことで私は、本来の金融政策をねじ曲げてしまうおそれがある、こういう心配をしているんです。  三重野総裁も今海外に行かれているようですが、副総裁、率直に言いまして、こうした発言に惑わされないで、やはり日本の金融政策、このかなめ役として毅然とした対応をすべきである、こう思いますが、まずこの点についての姿勢、今率直にどうお感じになっておるか伺っておきたいと思います。
  201. 吉本宏

    ○吉本参考人 お答えを申し上げます。  最近、公定歩合の第四次の引き下げというものを要望する声がかなり強いということは私ども十分承知をいたしております。これは私どもに対する御意見なり御批判、こういったものについては私どもとしても謙虚にこれを受けとめて政策運営に当たっての糧としていかなければならない、このよう考えております。いろいろそういった御批判に対して、私どもとしては決してあれこれ申し上げる立場にない、こういうことでございます。
  202. 宮地正介

    宮地委員 通産大臣、やはり今一番景気後退の中で企業マインドですね、これが非常に意外にやはり深刻になってきている。この企業マインドが、どうこれを今後高揚していくか。それからもう一つは、現実にやはり相当ハイテク産業を初め在庫が非常に今たまりつつある。その在庫をはくのに当初より相当おくれるんじゃないか。こういう点見まして、非常に今後在庫がたまればやはり設備投資はこれはなかなかやりづらいわけですから、在庫がはけなければ設備投資に火がつきません。在庫があるということは消費も冷えてきているということですから、これは三つは相関関係にあるわけですね。やはり一番の元締めは生産メーカーの対応というのが非常に大事だと思う。  そういう点で、やはり生産メーカーから金融政策については早く引き下げをしてもらえないか、こういう声があるのは私は当然であろうと思う。産業界を抱えている大臣として、実体面から見てこの景気に対してどの程度今後退している、こういう認識を持っていますか、また今後の金融政策についてどういう考えを持っていますか。
  203. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私は、昨年の十一月から景気の問題、先生と同じように大変心配をしてまいりました。抽象的な表現で、日本の経済は減速しつつあるもなお底がたく堅調に進んでいくとか、いろいろな言葉はありますけれども、実体としての経済に接しておりますと、これは主要産業、基幹産業、まあ基幹産業の中でも例えば、今まで不況であった造船はよくて、好況を続けておった自動車や電機メーカーが悪いとか、いろいろまばらではありますけれども、総合して大体先生おっしゃるように生産も停滞し、在庫が詰まり、これはなかなか調整ができないでおる。実態としての産業界の人にしてみれば、去年より売り上げがふえてもうけが出ればこれは景気がよかったということになるし、去年より売り上げが減って在庫がたまって利益が少なくなれば、これは不況感というものにとらわれてしまうわけでありますから、したがって私は、大臣就任直後からこの問題を心配していろいろのことを言ってきたわけでありますけれども、昨年二度にわたって公定歩合の引き下げが行われましたけれども、今その声がまた産業界に満ち満ちております。  やはりこの辺で、どこかでけりをつけてもらわないと、設備投資をしようとする産業にしても、もう一遍金利が下がるならばそれまで待とうということになりますから、日銀の方で、我々はとやかく干渉はできませんが、この日本の経済界の実態なりまた世界に置かれておる産業の実態をよく見て、ある日突然皆が想像しないような思い切ったことをぱっぱっとこうやってくれれば、ばんと景気も企業マインドもよくなるんだなと、こういうようなことを言った記憶がございますけれども、まさに我が国の産業はすぐれた技術を持っておりますし、また、大蔵大臣おりませんけれども、郵便貯金は百六十兆円、また国民の預貯金も一千兆円を超える、十分にこれは景気を盛り返し、あるいは三・五%の成長をさせられる潜在力は持っておるわけでありますから、ただ、今残念ながら冷えておるわけですから、何か明るいニュースなり、未来に対する希望なり展望なり、そういうきっかけをつくって、この冷えておる企業マインドに明るい希望のともしびをつけて、そうすれば消費もあるいは設備投資も、特に中小企業等は時短という問題で、労働力不足で何とか新しい設備の近代化をしなければならない、こう思っておるところでありますから、何とか期待にこたえてこの経済に明るい希望のともしびをつけるようにしてまいりたい、いい工夫はないか、こう頑張っておるところでありますので、先生もいい知恵があったら御拝借をいただきたいと思います。
  204. 宮地正介

    宮地委員 きょうは関連質問でこの後ありますので、本来ソ連情勢について外務大臣等にいろいろお伺いしたかったのでございますが、時間が参りましたので、また別の機会に御質問させていただきたいと思います。大変その点をお許しいただきたいと思います。  それでは、次の遠藤君に譲りたいと思います。
  205. 山村新治郎

    山村委員長 この際、遠藤和良君から関連質疑の申し出があります。宮地君の持ち時間の範囲内でこれを許します。遠藤和良君。
  206. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 私は、最初に北海道の酪農の問題についてお伺いしたいと思います。  実はきのうとおとといでございますけれども、私も北海道の中標津と別海町に参りまして、町長さんあるいは農協の幹部の皆さんそれから酪農家の皆さんから実情を聞いてまいりました。北海道の酪農の実態というものを大体大まかに私なりにまとめてみたのでございますが、特に根室の酪農家は三重苦にあえいでおる、これが実態ではないかと思います。一つはぬれ子、これは雄の子牛でございますが、これが暴落をした。これは牛肉の輸入の自由化の直撃を受けておりまして、一戸当たり年間三百万円ぐらいの副収入が消えてしまった。それから二番目は、乳価が六年連続下がりっ放してございまして、昭和六十年の一キロ当たり九十円七銭から平成三年の七十六円七十五銭に下がってしまった。それから三番目は、雪だるま式にふえる借金です。  ことしの一月に別海町で一億六千万円の借金を残して酪農家が失跡しました。置き去りにされた百九頭の牛を今農協と家畜商が奪い合いまして損害賠償を求める訴訟事件にまで発展している、こういうふうな状態でございまして、特に政府の肝いりで建設いたしました新酪農村、ここは離農が続いておりまして、牛肉の自由化以来十一月で既に五軒離農しています。平均負債額は一億二千二百万円と言われておりまして、この潜在的離農者は半分を超えるのじゃないか、このように言われております。現地の皆さんは、私どもの新酪農村は国にもう切り捨てられてしまった、こういう怨嗟の声が渦巻いているわけでございますが、こうした実態を大臣はどのように認識をしているのか、本当に切り捨ててしまったのかどうか、これを確認したいと思います。
  207. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答えをいたしますが、結論から申し上げると、切り捨てたのではありませんが、私もいろいろな酪農経営、畜産経営、視察をしてまいりますけれども、うまくやっているところとそうでないところがございます。その辺はどういうことでそうなるのか、御視察のところを私は見ておりませんが、いずれにしても、北海道の酪農は、土地が非常に広いということで規模拡大をいたしたり、一頭当たりの乳量の増加というものがあって経営内容の充実が図られてきたのであります。今お話しのように、この数年来負債が減少する等順調に発展をしておったのでありますが、今でも生乳生産は着実に増加をしておる。しかし、お話しのようにぬれ子等の販売価格が低落をいたしまして、非常に苦しい状況にあるということは私ども認識いたしております。そのための対策はいろいろと考えて実施をしたいということでございます。  もっと詳しく申し上げますと、特に乳量、乳質の向上を図っていくあるいは乳肉複合経営の育成をする、あるいは酪農ヘルパーの組織を育成をする、借入金の償還が困難となった経営に対して長期低利の資金を融資する、いろいろと実施をして、何とか健全な経営をしていただきたい。何といってもやはり土地利用型の農業、私どもが今新しい食料、農業、農村の中で、土地利用型の農業、畜産であり米、そうしたものに一体どうして取り組んでいくかということを今勉強もいたしておりますが、今申し上げたようなことでは何とかこの方々にも頑張っていただきたいということであります。
  208. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 私は、この酪農家の問題は構造的に基本的な問題がある、このように認識いたしました。それは、ぬれ子対策というのはこれは副産物に対する対策ですから、基本的にはやはり乳価の問題です。乳価の算定基準のあり方の問題でございますけれども、今の政府の保証価格の制度というのは、推定平均生産費というのを推定をいたしまして、それに租税公課請負担あるいは集送乳経費、販売手数料、企画管理労働費を加算をして決めている、こういうことでございます。いわゆる生産費所得補償方式ですね。この方法だと、酪農家がまじめに努力をいたしまして生産費のコストダウンをすると、結局乳価は下がる、こういうことですね。そうしますと、結局政府の不足払い額、これを圧縮するために酪農家は協力しているだけだ、自分のところは何にもよくならない、こういう構造にあるわけでございまして、乳価が下がるものですから、収入を安定するためには搾乳量をふやさなければいけない、こうなると規模拡大しかない、規模拡大すると労働が過重になりまして、そして借金は雪だるま式にふえる、こんな悪循環が繰り返されている。これは農家の自助努力の範囲を超えているのではないか、政府の構造的な政策の見直しをやるべきではないのか、このように強く思います。  そこで、この乳価の算定基準を抜本的に見直すべきではないか、このように思いますが、どうですか。
  209. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 平成四年度の加工原料乳の保証価格につきましては、御案内ように加工原料乳生産者補給金等暫定措置法、いわゆる不足払いですね、に基づいて、この生乳の生産条件あるいは需給事情その他の経済事情を考慮して生産性の確保を旨として決めるわけでありますけれども、これはあくまでも畜産振興審議会の意見を聞いて三月末までに決めるわけであります。  私は、先生のお話のように、よくなったら農家の手元に残してやらぬとという気持ちはあります。ありますものの、一方では国民の税金という形でいろいろと補助金等あるいは制度資金等使っているわけでして、やはり消費者の立場にも立ちますと、やはりそういう努力をして規模拡大する、あるいは何とか生産コストを下げて、赤字になってはいけませんが、消費者にも安い良質のものを提供する、この辺が非常に難しいところなんですね。  ですから、いずれにしてもこの計算の仕方等十分検討しながらやってもらいたい、こう思いますが、しかし、平均で出しますので、平均以下に努力している人は非常にいいわけであります。平均以上の人は非常に苦しい経営をしているんだろう、そう思います。その辺になりますと、個人の努力といいますか創意工夫、そうした努力によって達成している人たちもおって、なかなかうまい決め方というものは、毎年米もこの種のものを、難しい問題を抱えております。しかし、みんながやはり納得できるような方法でこの審議会でお決めいただきたい、こう思っております。     〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
  210. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 酪農家の努力が収入の増大につながるというのでなければ努力のしょうがないのですね。一生懸命努力してコストを下げると、乳価が下がってしまって収入は減ってしまった、こういうふうな状態になっているわけですね。これを基本的にやはり考え直してもらいたいと思うのです。  それからもう一つは、平均値という話がありましたけれども、生産費所得補償方式の数字というのは本当の数字じゃないんじゃないか、実態というものを認識した数字じゃないんじゃないか、机の上の数字じゃないか、もっと極論すると、最初にもう結論だけ出してしまって、後で数字を入れているんじゃないか、政治決着をいつもしている、そういうふうなことをおっしゃる方もいらっしゃいました。毎年毎年乳価が下がるというのでは先行き大変希望が持てないわけでございまして、この乳価というのは酪農の基本でございますから、少なくとも十年間ぐらいはこの保証価格を一定の水準にキープする。皆さんの声では、政府は一番最初、キロ百円ぐらいを目指していくんだというふうな話をしていたんだけれども、今七十六円幾らでしょう。ですから、少なくとも八十円ぐらいを十年間ぐらいキープしてくれれば自分たちも経営努力のしがいがある、そして将来に展望も開けてくる、こういうふうなことを強く要望しておりました。こういう考え方はありませんか。
  211. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 乳価を十年間程度の固定をしたらどうかという御質問でございますが、加工原料乳の保証価格につきましては、いわゆる加工原料乳の不足払い法、これに基づきまして加工原料乳地域における再生産を確保するということを旨といたしまして、毎年の生産費調査の結果等を踏まえ、またその他の経済事情を勘案をし、大臣からお答えを申し上げましたように畜産振興審議会の意見をお聞きをして毎年適正に決定をしていくことといたしております。また、この生産費は毎年の資材価格の変動等にも影響されるものでございまして、この動向と無関係に保証価格を決定するということは同法の趣旨からも困難ではないかというふうに考えております。
  212. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 ですから、再生産を保障するというのは単年度になるわけですよね。それだと先行きの展望が開けない。ここのところを酪農家の皆さん一番心配しているわけです。ですから、私は違った算定のあり方というものを考えるべきじゃないのか、こういうことを申し上げているわけでございまして、発想を変えるべきだ、こういう意味で質問しているわけでございます。
  213. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 御質問の趣旨は理解をできるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、この保証価格、これは再生産を確保することを旨として定める、それで生産費調査、先ほど調査が農家の実態、実感とは合っていないのではないかというお話がございましたけれども、私どもの統計情報部の方で毎年調査をいたしまして、その調査結果に基づいて再生産が確保されることを旨として決定をいたしておるわけでございます。その過程でもちろん審議会の意見等を十分お聞きをして適正に決定をしてまいる、そういうことでございます。
  214. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 それでは、その再生産の算定に当たって、少なくとも酪農ヘルパーの利用料、これを生産費に算入すべきだと私は思います。今他産業は週休二日制というふうになっているわけですが、酪農家の皆さんは休みがない、それで休みをとるためにヘルパーさんをお願いしているわけですけれども、この利用料ですね、これをぜひ再生産のコストの中に入れる、こういうことをぜひ検討してもらいたいと思います。
  215. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 保証価格の算定のもととなります牛乳の生産費調査におきまして、雇用労働は実際の支払い賃金が計上されることとなっております。酪農家がヘルパーに作業を委託して賃金を支払った場合には、それが生産費調査の雇用労働費に計上されまして、ヘルパーにかかる費用は保証価格に反映される、こういう仕組みになっているわけでございます。
  216. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 それから、規制緩和のことです。これはお金が要らないことですからすぐやれることなんですが、例えば牛舎を建設したいと思いますと、自分で自己資金で建てれば安く建つんですが、政府の補助対象にする、補助金をいただくと大変大きなものをつくらなければいけない。これは何が災いをしているかというと、建築基準法が牛舎にも適用されるわけですね。何で住宅の建築基準法がそのまま牛舎に適用されるものかという問題があるわけでございまして、これは建築基準法を考え直す、こういうことは弾力的にできるんではないか、このように思います。  もう一点、トラクターというのがあるんですけれども、これは車検制度があるわけです。貨物自動車と同じように一年更新の車検制度がある。こんな制度がある国はほかにはない、こういうことでございまして、こうしたことも規制緩和の対象として考えるべきではないのか、こう思います。
  217. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 牛舎に対する建築基準法の適用、もちろん受けることになっておりますが、畜舎のコストダウンは重要な課題であると私ども考えておりまして、その規制の一部について、例えば雪おろしの慣行のあるようなところでは、積雪荷重規制の緩和だとか、あるいは防風林等の設置による風圧力の規制の緩和だとか、あるいは防火壁、隔壁の設置義務の免除、そういった緩和措置が設けられておりますので、これらを最大限活用することにつきまして、関係者に対する周知徹底を図る。それから、設計施工をしております建築サイド、こういうよう方々に対しても、畜舎コストの低減の必要性についての理解を求める。それで、法規制の最低基準での運用がなされますよう積極的に働きかけを行うよう、畜産関係者を指導しているところでございます。  その他、畜舎の建築コストの低減のため、いろいろ優良事例の収集、普及とかその他の措置を講じているところでございます。
  218. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 これは他省庁に関係することですから、事務局レベルじゃなくて、大臣に答弁してもらいたいと思うんですが、そういう実態が農家にはあるんですね。規制緩和してほしい、政府は金がないと言うんだったら知恵を出せ、そのぐらいやるべきだ、こういう話がありまして、そういう意味では指導力の一番あります副総理、いかがでしょう。建築基準法は建設省の関係です。それから、トラクターの車検の制度は運輸省の関係でございますけれども、これは酪農家を救う意味で、建設省並びに運輸省にこういうものはもう少し検討しろ、こういう指示を出してもらいたい、こう思いますが、どうですか。
  219. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 規制緩和のことでありますが、今までも随分建設省と打ち合わせをして変えてきました。ただ、限度がありまして、特に雪が相当屋根に積もりますと、つぶれる可能性もある。つぶれない程度のものにしておきませんと、やはり南の方と違って、柱が太くなるとかあるいは鉄骨のこういうものにしなければいかぬとか、ただ、つぶれますと、今度牛にも被害が出るわけでありますから、なかなか被害を出すようにするというわけにもまいりませんし、その辺のところ非常に難しい問題がありますが、従来から見れば相当緩和をしてきておる、こういうことでございます。
  220. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 私はそんなに難しい問題じゃないと思うんですよ。政治決断をすればできることですから、こういうことは。要するに酪農家の皆さんは、政府は金も出さない、文句ばかり言う、こういう話ですから、少なくとも酪農家の皆さんの立場に立って、今これだけのことはやってあげますよ、こういう態度を示さなければならない。これは自由化の中で本当に大変な、離農が続いているし、大変な状況ですから何か手を打つべきだ、こう強く思います。副総理、お願いします。
  221. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは過剰投資の話だと思いますが、補助金制度の欠陥なんです、これは。補助金を三割とか何割とかもらう。そうすると、新品でなければコストがわからない。だから、苦かった土台の石まで取りかえて、新しい石に取りかえるとか。そんな必要はないんですね、豚小屋とか牛小屋なんというのは、実際の話が。  私は沖縄へ行ってみたところが、牛小屋の柱が三十センチぐらいのコンクリートの柱で、屋根が十センチぐらいコンクリート打つであって、一体何様が入っているんだと思ったら、牛が入っておった。何でこんなの必要あるんだと言ったところが、台風が来て吹っ飛んでは牛が大変だというので、お役所でそう言うから、その基準でやった。私はしかりましてね。こんなばかなことがあるか。隣の村へ行ったら、やはり同じ沖縄で、丸太小屋の牛小屋があるんですよ。かなり古くなって、台風が来ているはずなんだけれども、これはひっくり返らないんですね。だから、風当たりの悪いところへ建てればいいんであって、わざわざ風の一番当たるところへ鉄筋コンクリートの牛小屋をつくることないじゃないか。そういうようなことは、これはやはり緩和をしてほしい。規制緩和。  だから、低利融資の方がいいんですね。そうすると、農家が自分の判断でやりますから、余り高額補助をやると、今言ったようにむだな投資をしからであるということは事実。したがって、これは私は農林大臣のころから直すように言っているんですが、まだ直らないですかね。直ったはずだがね。だから、かなり直っているはずですよ。農林大臣に聞いてもらって。
  222. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 補助事業に係る事務的なことなので、私から御説明させていただきますが、先ほど来申し上げていますように、畜舎の建設については、できるだけ安くつくるというようなことでいろいろ指導をいたしております。畜舎、サイロ等の整備指針というようなものも昭和五十七年につくりまして、自家労働も、あるいは古村の活用、こういうものも認めている。それから、そのほか昭和六十二年にも助成事業についての通達を出しておりまして、地域の実情に応じた事業費の低減を図るために、古村の利用だとかまたは直営施工、こういうものも積極的に図れということにいたしております。
  223. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 渡辺総理から大変前向きな答弁をいただきました。やはり政治家の発言は魅力がありますね。そう思いました。その勢いでやってもらいたいと思います。  それで、私、きょうはたくさん質問を用意してあるものですから、次の質問に入ります。  私、こういうカードを持ってきました。これは光カードというのですが、大体この中に電話帳一冊ぐらいの情報が全部入ってしまう。ですから、健康管理カード、生まれてから死ぬまで健康情報が全部入ります。こういうカードが今あります、実際に。これを通産省、自治省、文部省、厚生省、各省で予算化したりあるいは積極的に政策展開されていると思いますけれども、今実態はどうなっていますか。
  224. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 調査なくして発言なしか先生の信条だというふうに承っておりまして、そういう意味では、精密機械のような知識をお持ちの遠藤先生が全部わかっておられて聞かれているわけですから、私のような知識のない人間が答えないで、それは政府委員から答弁をすべきかと思いますが、文部省といたしましては、文部省が、あるいは政府がと言ってもいいかと思いますが、世の中の学術研究に対して交付いたしております最大の目玉は科研費、いわゆる科学研究費補助金でございまして、この医療用光カードにつきましては、昭和六十三年、平成元年、平成二年という三年間に千七百万円を、代表者は東京医科歯科大の椎名先生となっておりまして助成をいたしております。そして、平成二年から二、三、四の三年間で、今度は、同じ方ですけれども、千四百万円を助成をいたしておるわけで、もう先生よく御承知とは思いますが、科研費の場合には、いわゆる総合研究と申しまして、異なる幾つかの機関方々が、すなわちこの昭和六十三年から平成二年の三年間の研究では十四大学、十九人の方々が集まって研究をする、こういう光カードのようなものがどういうものだろうかといういわば総合的な研究をした。  その成果が一定より上がってきましたからこれを実用化してもいいのではないかというような形で、この後の方の平成二、三、四の三年間の研究はいわゆる試験研究ですから、まあ一段階クリアしてその次の具体化あるいは試験的、応用的な研究というふうに段階が上がっているわけでございますから、文部省といたしましては、そういうような形で助成をいたしておるということでございます。
  225. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 厚生省では、目下保健医療カードシステムというやつを開発すべく研究をいたしております。ただこれ、保健は全国共通でございますから、それぞれに持たせるとしますと、これ一億二千万になりますか、おおよそ。それに身長、体重ぐらいならよろしいですけれども、いろんなデータを、これはずっと毎年毎年入れていくということになりますとかなりの量でございますから、これをいかに合理化し、簡素化するか、そういう点まで含めて今研究中でございます。
  226. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 通商産業省としては、従来からニューメディアコミュニティー構想等、地域の情報化のための施策を推進しております。その一環として、神奈川県伊勢原市、兵庫県加古川地域、岩手県沢内村等において、今先生からいろいろお示しありましたが、ICカードまたは光カードを利用し、地域住民の健康管理、緊急時の基礎的健康データ管理、または慢性疾患の指導管理等に資する地域医療情報システムのモデル構築を進めております。  また、情報処理システムの活用により高齢者の積極的な社会参加を支援するメロウ・ソサエティ構想を推進しており、その一環として、平成四年度より三年計画で個人健康医療情報ファイリングシステムの開発に厚生省と共同して着手することとしております。具体的には、医療用に規格化された光磁気ディスクを活用し、エックス線写真、CT画像等の医療画像を含めた個人の健康に関する諸データを一元的に管理することのできるシステムの開発、構築を行うもので、当面は国立がんセンターにおいて実験を行うこととしております。  通産省としては、関係省庁と連携をとりながら、引き続きICカードなどの電子媒体を活用した医療情報システムの開発を積極的に推進してまいる所存でございます。
  227. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 自治省では平成三年度から地域情報通信システムの開発の検討に入っているところでございまして、そのプロジェクトの一つとしてICカードを用いた地域カードシステムを取り上げているところであります。  平成三年度は、山形県の米沢市など五団体をモデル事業実施団体として指定し、各市町村におけるシステム開発を支援するとともに、学識経験者等による検討委員会を設け、全国共通の標準的なシステムの開発に取り組んでおるところであります。  なお、平成三年度の実施団体といたしましては、山形県米沢市、茨城県北茨城市、京都府日吉町、岡山県岡山市、岡山県成羽町の五団体でございます。
  228. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 ありがとうございました。  文部大臣にお願いしたいんですけれども、大学の研究だけではなくて、私は大変これは効果があると思うんですが、小学校とか中学校とか高等学校で学校健診が義務づけられているわけですが、これがつながってないわけですね。小学校は小学校だけ、中学校は中学校だけです。子供の成長期にずっとつながった健康情報が蓄積されていく、これは成人になってからも大変有益でございますから、小学校、中学校、高等学校の学校健診にこのカードの適用ということを、これは将来の課題でございますけれども、ぜひ検討していただきたいとお願い申し上げる次第です。
  229. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 先生御指摘のとおりの、それは小学生中学生だけでなくてまさに国民的な健康の問題を考える上で、その一枚のカードにA4判千ページ分の情報が入るわけですから、その個人が忘れてしまっているような病歴とか検査とかあるいは投薬とかすべて入っているわけですから、それが国民の健康保持あるいは病気の治療等にとって大変大きな効果を持つということはよく理解をいたしておりますがゆえに科研費で助成をさしていただいているわけですが、先生御指摘の点についても全くおっしゃるとおりだとは思っております。  ただ、小学校とか中学校のいわゆる健康診断と申すものは、先ほど厚生大臣がいみじくもおっしゃいましたが、身長とか体重とおっしゃいましたが、そういう要素が非常に強いわけですね。すなわち、学校で児童生徒を指導していく教育上の資料を集めるということあるいは記録するというような観点が相当中心にありまして、一般の定期検診とか健康診断と言われるものとやや質を異にしているという部分があるわけです。そして、学校のような医療の専門機関でないところがそういうカードを本当にうまく管理できるだろうかとか、あるいは子供に若干の疾患等があったような場合にそのプライバシーの保護というような観点で保護者がすんなりそういう制度を認めてくれるだろうかとか、幾つか乗り越えていかなければならない課題があるということだけ申し上げておきます。
  230. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 私もそういう課題がたくさんあることは承知しておるつもりでございますが、意欲を持ってぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  それから、ことしの三月に兵庫県が、都道府県レベルでは最初でございますけれども、ぜひこのカードを導入したい、このように知事さんが議会で答弁されております。それで、兵庫県として国に対するどういう要請があるのかということを私聞いてまいりましたけれども、一つは、これは厚生省にお願いしたいことですが、国レベルで医療機関、特に医師会の皆さんの同意または理解を、協力をぜひお願いをしたい、こういうお話がありました。  それから、これは特に自治省にもお願いをしたいわけでございますが、全国ネットで展開されて初めてこのカードの持つ特性が発揮できるわけでございますが、そのために国において入力の方法だとかあるいはプライバシーの保護だとか、そういうもので効率的かつ利用しやすいシステムの開発とハードの技術開発ですね、こういうものをぜひお願いをしたい、このようなことが最初に導入を計画いたしております兵庫県からも要請されておりますが、私はもっともだと思うわけでございますが、この兵庫県の導入に対して国も協力をいたしていただけますか。
  231. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 私は制度としては非常にいいと思うんですけれども、そして兵庫県がある町村において若干やられたと思うんです。今年度から姫路市においてやりたいというような御意向もあるやに私は聞いておりますからできるだけの援助はしてまいりますけれども、先ほどからお話がございましたようにプライバシーの問題とか、あるいは場合によっては預貯金でもって前から問題がありました名寄せなんてこれは簡単にできるような結果になりましょうし(いろいろ難しい。あるいはまた入力について、どうやってそれを整理をしていくのか。大変な量でございます。そのカードの保管の場所とかいろいろな問題まで波及してまいりますので、そういうものを少し手際よく整理しながら、また兵庫県がおっしゃることについても協力をしながら前向きにこれは検討すべき問題だと思っております。
  232. 古市圭治

    ○古市政府委員 前段の御質問でございますが、医師会等の関係者への要請ということでございました。私どもの研究班の中にも医師会の関係者に入っていただきまして、一緒になって検討しているという状況でございます。
  233. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 兵庫県において、在宅介護支援システムの一環として、援護を要する人々の保健医療、福祉に関する情報を入力した総合的社会サービス利用カードのシステムの検討を行っております。平成四年度から学識経験者などを構成員とする検討委員会を設置しまして、その実施方法等具体的な検討に着手したところでございまして、これは積極的に進めてまいりたいと思っております。  その際に検討すべき問題は、やはり一つはプライバシーの保護ということと、それから何を入力していくかというファクターの問題と、それからその情報をいかにして、実用する場合のそういう医療機関なりあるいはその施設なりにどのように結んでいくかということ、ここなんかをまだ実験段階として勉強し、鋭意進めていきたいと思っております。
  234. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 大変前向きな御答弁をありがとうございました。  別の問題ですが、乳幼児の医療費無料化制度ということでございますが、この制度を全国四十七都道府県のうち四十二道県がやっています。私どもの公明党で全国でアンケート調査をいたしましたところ全国から回答がございまして、国の制度としてぜひこの制度をつくってもらいたいという声が圧倒的に寄せられております。  私の勝手な試算でございますけれども、大体どのぐらいお金がかかるかということを計算いたしてみましたら、三歳未満の人口、ゼロ歳児、一歳児、二歳児でございますが、これが三百八十万人おりまして、ゼロ歳から四歳の一人当たりの医療費の平均が月額六千八百円でございますので、そして医療保険の給付率が八割と換算しますと本人負担が二割でございます。これを掛け合わせますと六百二十億円、単年度に。このうち国が半分支給するといたしますと三百十億円でこの制度はできるわけでございますが、厚生省といたしまして、全国の地方自治体で行っている制度ですけれども、これに対して国が助成をする、こういうお考えはございませんか。
  235. 山下徳夫

    ○山下国務大臣 難病等につきまして既に公費負担でやっております。ただ、これを全部に及ぼすとするとこれは大変なことでございまして、既に市町村単位で若干やっておられるところもありますけれども、例えば熱が出た、風邪を引いたというようなものから全部入れていくのかな。毎年百三十万から百四十万の新生児が生まれてくる。これを大体生まれてから一年入れるのかあるいは入学するまで入れるのかとか、いろいろな今後検討をし整理をすべき問題があると思います。  おっしゃることは私も大変結構だと思いますし、これまた前向きに検討すべき問題であると思います。
  236. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 最後に、地球サミットヘの対応について外務大臣にお伺いしたいと思います。  一つは、バーゼル条約の批准と国内法の整備という問題でございますが、有害廃棄物の国境を越える問題に対する規制の問題ですが、このバーゼル条約の批准を早くしなければいけないということでございますが、今国会でこの国内法がまだ出ていないのでございます。環境それから通産、それと厚生の各省が法案を考えていらっしゃるわけでございますが、まだ国会に出ていないと理解をしております。早くやらなければやはり日本がこの問題に対して不熱心であるということになりますので、どうか、外務大臣は副総理でもいらっしゃいますから、各省に指導力を発揮していただきましてこの調整をしていただきまして、国内法をまずつくる、そしてバーゼル条約の批准を進める。できればサミットに参加するまでにされた方がいいのではないか、このように理解しますが、どのようなお考えでしょうか。
  237. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 まさしく趣旨は我々大賛成でございまして、なるべく早くその国内法の整備が必要である。各省にも御協力を求めて、できるだけ早く法案をつくれるようにしたい。サミットまでには間に合わないかもしれませんが、なるべく早くやりたいと思います。
  238. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 それから、森林保全と緑の平和部隊構想ということでございますが、環境庁でもグリーンPKOということでこの構想を持っているように伺っています。やはり日本が熱帯雨林の破壊に対して大きな影響を持っているというふうな非難もございますし、日本がこういった緑の平和部隊のような構想を今回の地球サミットで提言をしていく、例えばアジェンダ21の中で日本考えとして提言をしていく、こんなことも大変有益なことではないかと思うのですが、そんな考え方はございませんでしょうか。
  239. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  森林保全と砂漠化防止のための努力でございますけれども、先生承知のとおり、日本といたしましても専門家や青年海外協力隊の派遣を含むいろんな努力を行ってきておりますことは御承知のとおりだと思います。緑の平和部隊という構想につきましては、実は日本の中でもそういう議論があるのみならず、ヨーロッパの国でもそういうことを提案しておる国もあるわけでございます。先生の今の御意見も一つの大変貴重な御示唆と承りまして、今後サミットのアジェンダ21、そういったものをつくるに当たってぜひ研究させていただきたいというふうに考えます。よろしくお願いいたします。
  240. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 それから、いわゆる日本の足元の問題といたしまして、公害の原点であると言われている水俣病がいまだに全面解決に至っていない、こういう問題があります。これは環境庁等の見解というものは十分承っているわけでございますが、このサミットに参加する外務大臣といたしましてこういう問題が日本に残っているということについてどういうふうな認識をお持ちであるのか、これをお伺いしたいと思います。
  241. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは所管事項でありませんので、まず厚生省の方からお答えさせます。環境庁か。
  242. 丹波實

    丹波政府委員 この問題は先生承知のとおり外務省が直接所管しておる問題ではございませんけれども、確かにUNCED、そういったところに出ていくに当たりまして、国内におきましてこういう水俣病というものが円満に解決しているということはその国際的なイメージその他からいって重要なことだと思います。そういう意味で、本件が国内におきまして円満な方向で解決されることを外務省としては祈っておるというのが外務省考え方でございます。
  243. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 最後に、外務大臣にお伺いしたいのでございますが、国連の改革についての考え方でございますが、私はこのよう考えております。  安全保障理事会というのがあるのですけれども、これをこの際二分をいたしまして、要するに従来の軍事をやる安全保障理事会と別に環境とか開発とかいうものを中心にする安全保障、環境も、これは大事な安全保障問題でございますから、環境安全保障理事会というものを創設するよう日本国として提言をされてはどうかと思っているのでございます。  といいますのは、従来の安全保障理事会の常任理事国入りを日本が目指すというのは、私はある意味で難しい問題があるのではないかと思うのです。といいますのは、日本は平和憲法がございますから、武力の行使あるいは武力の威嚇をもって国際紛争を解決する手段としては使わない、永久にこれを放棄するというものがある。それにもかかわらず、安全保障常任理事国になった場合は、この間の湾岸戦争のようなことがあった場合は武力行使決議をしなければならない、こういう問題がありますと、日本としては行動できなくなるわけですね。  ですから私は、安全保障常任理事国入りを目指すのではなくて、日本の役割としては、環境安全保障常任理事国入りを目指して日本の役割を果たすべきだ、世界に貢献をすべきだ、このよう考えているのでございますが、何かの機会にこういった考え方を外務大臣としてお述べになることはないでしょうか。
  244. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは国際会議に出すことですから、よく下調べをきちっとした上でないと、軽々に持ち出すわけにもいきませんので、検討させていただきます。
  245. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  246. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 これにて宮地君、遠藤君の質疑は終了いたしました。  次に、日野市朗君。
  247. 日野市朗

    ○日野委員 ただいまの質問者からも環境問題による国際貢献という話が出ておりました。私も非常にいい提案であるというふうに思っております。  宮澤内閣の施政の一つの大きな柱に国際貢献というものがあるわけでありますが、私は過般の総括質疑の中でも申し上げましたが、PKOなんかおやりになるよりはやはり環境問題で貢献をなさい、平和的な貢献をなすった方がいいですよということを申し上げておいたわけでありますが、私は、この環境問題というのは国際貢献という中でも最も説得力のある、そして現在世界にとって最も必要な国際貢献であるというふうに思っております。しかし環境問題、そう簡単ではないのでありまして、私もこの環境問題というものの難しさというものの中で、我が国がこれから果たすべき役割というものをいろいろ考えざるを得ないところであります。  私はヨーロッパに行くとき、ずっとヨーロッパの上空を飛んでみますと、見事に整理された耕地を見て、ああ見事なものだな、こういう感じは一面いたします。しかしそれと同時に、ここはかってうっそうたる森林であったということも考え合わせますと、非常に複雑な感想を持つわけであります。私もそんな思いを持ちまして、森林というものはどうしてヨーロッパから消えていったのだろう、そんなことに興味を持ちまして、ちょっと調べてみました。そうしたら、やはりだんだん人間がふえてくると森林が減っていくのですね。経済活動に伴って森林は減ってまいります。ところが、十四、五世紀にまた森林がヨーロッパでわっとふえるのですよ。その理由は何かというと、実はペストの流行と戦争なんですな。私もこれにはちょっとショッキングな思いをしたこともございます。人間の活動と森林の存在というものを両立させていくということは、現代の人間にとって、人類にとって、これは難しいとか易しいとか言っていられない問題ではないかというふうに私考えております。  ところで、我が国は熱帯雨林材を輸入しているということでは、もう世界で最も大量に輸入をしているわけでありますが、私は、今言いました私の考え方、それからこの熱帯雨林材を輸入するということについてのかなり国際的な批判というもの、これもあります。そういう点から、この熱帯材の輸入ということについては、かなり勇断を奮ってこれを規制していかなければならないのではないかというふうに考えているわけであります。私は、輸出国にはそれぞれの事情があるということもよく存じております。しかし、いつまでも我が国が熱帯材の輸入を続けていくということは、熱帯雨林の保護ということ、それに伴う国際的な批判ということからいって、もういつまでも続けることはできないのではないか、こう考えますが、いかがでしょうか。輸入規制をお考えになるおつもりはございませんか。
  248. 高島章

    高島(章)政府委員 今御指摘ございましたように、地球環境の保全を図る上で熱帯雨林の保全は極めて重要な課題であると我々は強く認識をしているところでございます。現在、国連環境開発会議に向けまして、国際的な場で森林問題も含めました地球環境問題の取り組みが議論されておりますが、通産省といたしましても、関係省庁と協調しながらそのような取り組みに対応してまいる所存でございます。  ただ、御指摘ございました輸入規制に関連する点でございますが、現在、関税の引き下げ等木材貿易の進展が図られ、求められている中で、新たに国境調整措置を導入することは極めて困難ではないかと考えているところでございます。
  249. 日野市朗

    ○日野委員 国際的な、国際会議の場でという話は、これは私もよく承知している話でございまして、それから、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおける木材の貿易についての関税の問題も私はよく承知しております。しかし、そういう場と、それから二国間での場というものになるとおのずから違った問題があると思うのです。  例えば、マレーシアならマレーシアが材木を日本に輸出をする、そのことによって外貨を獲得をしていくというようなことをこれはやっているわけでございますね。そして、その外貨が非常にマレーシアにとって貴重なものであること、私もよくわかります。そういうことは十分理解しながら、これを、熱帯材の輸入を抑えて、それに対する何らかのマレーシアに対する援助といいますか、これはODAというようなものを使ってもいいでありましょうし、そのほかのいろいろな援助の方法、これはいろいろの面から考えられるのではないかというふうに思いますが、この点ではいかがでしょうか。
  250. 高島章

    高島(章)政府委員 途上国への我が国のいろいろな協力は御指摘のように幅広いものがあるわけでございます。木材だけではもちろんございませんが、現在、途上国からの木材の輸出、特に南洋材の輸出につきましては、大半が実は当該国での薪炭、燃料のために使われているのがほとんどでございまして、輸出はその全体の中での四%程度にしかすぎないわけでございます。したがいまして、むしろその地におきます植林、造林、そちらの方にいろいろな技術協力をしていくことが肝要かと考えているところでございます。
  251. 日野市朗

    ○日野委員 これは、輸出は確かにパーセンテージからいうと低いのですね。エネルギー資源として当該国で利用されていることは、それは間違いないのですが、しかし、だからといって、日本の方でどんどんどんどん南洋材を輸入していいということには決してならないのであって、これを抑えていくこと、これが日本が熱帯雨林を守るというその環境に対する姿勢、これを示すことになると思う。いかがでございましょうか、その点は。
  252. 高島章

    高島(章)政府委員 南洋材につきまして、我が方の輸入を拡大するような政策を特にとっているわけではございません。むしろ、これも先生よく御案内かと思いますが、南洋材につきましては用途が限られておりまして、せいぜい合板程度でございますので、国内に入ってくるウエートとしては少ないものでございます。いずれにいたしましても、当該国におきます、今後の森林が成長発展をいたしますように、技術面での支援が肝要かと思うわけでございます。
  253. 日野市朗

    ○日野委員 合板にして型枠に使って、二回ぐらいそれを使用してポイと捨てるということ、また割りばしなんかにして、使い捨ての割りばしなんかにするというような例も非常に多いわけですね。こういうことが私は、その比率からいったら小さいとあなたはおっしゃるかもしれないが、全体の熱帯雨林を守っていく、樹木を守っていくということからすれば、ちょっと感情的にこれはなかなか許されないところではないかというふうに思っているのですよ。いかがでしょう。
  254. 小澤普照

    小澤政府委員 確かに森林資源、大変重要なものでございますし、またそこから供給される林産物につきましては、私どももその高度利用なりやはり有効利用を図るということでございまして、その観点に沿って対応もしたいというよう考えておるわけでございます。  いずれにしましても、使い捨てというようなことは、やはりこれはそういうことのないような努力をしていくというよう考えておりまして、今コンクリートの型枠合板のお話も出たわけでございますけれども、我が国に輸入された熱帯木材というのは、大体七割が合板、二割が家具とか建具等に使われる、それから残りの一割が紙の原料とか、若干でございますけれども割りばしというような分野もございます。  それからもう一つは、七割の合板のうち、実は合板のおおよそは建築資材に使われているのが多いわけでございましで、型枠合板に使われておるのは私ども大体この合板のうちのまた二割から三割の間ではないか、このようには見ておりますけれども、しかし、貴重な資源の利用ということでございますので、型枠合板につきましてはこの利用回数を増加させたらどうか。  それからもう一つは、原料を針葉樹へ転換するというための技術開発でございますとかあるいは導入の促進、それからまた関係業界の指導も行いたいということでございます。  平成四年度からは、新たにさらに、取り壊してございますとか建てかえ等で生ずる使用済みの建築材料、これのリサイクルも促進したいという観点から、これに必要な技術対策等も講じてまいりたいということでございます。  なお、割りばしの問題がございましたので若干触れさせていただきますと、これにつきましては、確かに我が国での割りばし使用量、年間五十万立方程度ございますけれども、このうち熱帯材から入ってくるのは十万立方以下であると思いますし、熱帯諸国の中ではインドネシアからの輸入というように私ども考えておりますけれども、これはメルクシマツという造林をした松の、しかも松やにをとったものをさらに利用するというようなふうにも考えておりますので、いずれにいたしましても、今後とも木材の高度利用ということはやってまいりたい。  それから、熱帯林の劣化したものの回復とかあるいは維持につきましては、私どもも大変重要なことでございますので、大いに努力をしてまいりたいわけでございます。現在も、アジア諸国はもとより、南米、アフリカまで十二カ国、十六のプロジェクトのために森林の造成等の技術協力もしているということでございますので、なお一層努力をしてまいりたいと考えております。
  255. 日野市朗

    ○日野委員 熱帯雨林の回復は回復だ、それから、それを資源として使うのは使うのでまた別の問題ですから、材を使うということについても、熱帯雨林を破壊するよう方向で使うというようなことで国際的な非難を受けたり、また環境に対して悪影響を与えたりというようなことはないようにくれぐれも注意をしていただきたいものだ、こんなふうに思います。  それから、環境問題を考える場合、何といっても化石エネルギー、これからの脱却を図るということが何よりも必要ではなかろうかというふうに考えます。かつて科学技術庁も、サンシャイン計画とかそれからムーンライト計画ですか、石油が乏しくなりそうだというと、そっちの方に一生懸命走るわけですね。そして、石油がだぶついてきたころになると、それがいつの間にか下火になって、また環境問題がかまびすしくなってくると、じゃまたぼちぼちというような形で、いろいろサンシャイン計画とかムーンライト計画というようなものがまた注目されるというような形になっております。  私は、これではいけないので、やはりエネルギーについては、使ってしまって消費したらもうだめになるエネルギーということではなくて、循環可能なエネルギーというものをどんどん使っていく必要があるのだろう、こう思っておりますが、根本的に石油依存型といいますかね、そういうエネルギーの使い方というものはここで大きく転換をしていかなければならないという認識を、いかがでしょうか通産大臣、お持ちでしょうか。     〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  256. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは先生御指摘いただいておるように、地球環境を守っていくということは極めて重要なことであります。これはなぜ守っていかなけりゃならないか。この地球で未来永劫にわたって豊かに人間が生活をしていきたいからであります。したがって、この環境問題というのを考える場合、私は経済成長と環境問題を両立させる、これは非常に難しい問題ですが、今我々人類の当面しておる最大の課題だ。その答えは革新的な思い切った技術開発と、そしてそれがもう一国内の問題でなくなってきておりますから、したがって、この技術を途上国に移転していくということで、今お話しのエネルギーの問題にしましても、もちろん非化石エネルギーの開発に私ども全力を挙げて取り組んでいる。  かつては水力発電がエネルギーの大宗をなした時代がありますけれども、その時代とエネルギーに対する今日の豊かな生活、経済の中での需要はもう大きく変わってきておりますから。かつて私の郷里の猪苗代でできた水力発電で東京をともしておったという時代があったわけですけれども、これは今ではもうとても東京の霞ケ関ビルを一つ保てるかどうか、こういうことになっちゃっておるわけですから。  これは自然を守っていくために、先生御指摘のように今後できる限り非化石エネルギー、今お話しのあったいろいろのものにこれから一生懸命取り組んでまいりますけれども、また、もう一つは、化石燃料にしても、石油や石炭を使うのにも技術を開発することによって地球を汚さないでどれだけ石油や石炭や使えるか。天然ガスなんかは非常に大きな可能性を持っているわけですから、そういう多面的なやはり国民の生活を守るためのエネルギーの需要にはこたえていかなければならないわけですから。これは昔の電灯の時代に戻って、みんながもう電気冷蔵庫も使わない、高層建築も五十階まで歩いていくということであれば、非化石エネルギーで間に合わせようということに今できますけれども、現実にはやはり非化石エネルギーということになると一番大きなものが現在のところは原子力であるということも御理解いただかなければなりませんが、そういう難しい、困難な中で通産省としては地球環境を守っていく、しかも、これは今や国際貢献の中の非常に大きな位置づけられたものであるということで、非化石燃料の開発や技術開発に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。
  257. 日野市朗

    ○日野委員 今の大臣のお話を聞いて私感ずるのは、やはり日本資源小国なのであって、そしてそのエネルギーの賦存状況も少ないという考え方が根本にあって、化石燃料からはできるだけ離れたいという考えを持ちながらも、すぐ後は原子力というような話にいくような感じを私も感想として持ったんですが、実はエネルギーの存在というのは日本だって相当なものだという考え方もこれは一方で成り立つわけですね、自然のエネルギーを利用しながら。  ここにちょっと新聞の記事があるのですが、これは朝日新聞です。昨年の十二月二十八日に、私が考える生活大国というようなことで全国からいろいろなアイデアを集めて、そのすぐれたやつを掲載した新聞に、風力発電船を大量に開発しろ、こういうような大変おもしろいアイデアが載っておりました。私も非常におもしろいなと思って目にとめていたんですが、ここで、「日本が「生活大国」になれないのは「日本は無資源国」との強迫観念があるためだ。エネルギー自給は可能だ。」こう言っているのですが、ほかにもいろいろ書いてありますがね。まず、風力エネルギーなんかを使ってそして風力発電船を大量につくれ、そして発電をして、何もこれは売電をしたりなんかすることはないんで、そこでできた電力で海水を電気分解しろ、こういうアイデアなんですね。そして、水素として貯蔵をする、またはメタノールなどの燃料にかえてそして保存すればいいではないかというような、これも非常におもしろいアイデアで、まあおもしろいから朝日新聞もこれを採用して載せたんでしょうけれども、私はやはりもっと日本にあるエネルギー資源の賦存状況というものに自信を持っていいと思うのですよ。  ひとつそっちの方向に大きく踏み出すべきだと思いますけれども、どうも資源エネルギー庁の方はなかなかそういう方向、少し申しわけ程度にしかやっていないような感じがいたしますが、ひとつこういうのをもっと前向きに進めるようにしたらどうですか。
  258. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 これは通産省の方で書いてくれた答弁があるのですけれども、これは先生の期待にこたえるようにちゃんと書いてあるのですが、数値からいいますと、九〇年十月に閣議決定された石油代替エネルギーの供給目標において、官民を挙げての最大限の努力を前提に、自然エネルギーを中心とする新エネルギーの一次エネルギー供給に占める割合を現状の一・三%から二〇一〇年において五・三%にまで拡大することを目標としており、今目標の達成に向けて新エネルギーの開発導入に取り組んでおるところである。さらに、平成四年度からは太陽光発電について従来からの技術開発を進めることに加え、これにより養った成果の活用を図りながら、公共施設等への導入による運転データ等の収集等の普及策を講ずることとし、これらの施策を通じて自然エネルギーを中心とする新エネルギーの開発導入に向けての最大限の努力を傾注してまいる所存でございます。
  259. 日野市朗

    ○日野委員 科技庁長官には後で伺いますから……。  ただ、私も、いろいろエネルギーのフローチャートというのですか、何かそんなのを何回も見せてもらっているのですが、さっぱり進まないのですよ。さっぱり進まぬ。だから、私はあえて申し上げているのです。今大臣が読み上げられたそれでのエネルギーのフローなんかも私の方でもよく見ているのですが、もっとスピードアップしないと、本当に地球環境問題ということをあわせ考えるとおくれてしまいますよということを強く私の方から要望しておきたいと思います。
  260. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 できるだけ御期待にこたえるように努力をいたします。
  261. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 もう通産大臣の答弁に尽きていると思いますが、基本方針だけ申し上げます。  エネルギーの研究開発につきましては、従来から御案内のとおり、内閣総理大臣が定められましたエネルギー研究開発基本計画、これに従いまして関係各省庁で連携いたしまして積極的に推進しているところでございます。この基本計画におきましては、エネルギーの安定供給の確保及び地球環境問題への対応の観点から、原子力の開発利用を安全性の確保を大前提に着実に推進いたしますとともに、太陽エネルギー等の自然エネルギーの利用の拡大を目指した研究開発を推進していくことにしております。  先生の御意見と私も全く同感でございまして、この計画に基づきまして、具体的に申しますと、自然エネルギーとして太陽、地熱、海洋、風力等の各エネルギーごとに研究推進すべき課題を提示しておりまして、今後ともこの基本計画に基づきまして自然エネルギーにつきましても研究開発を積極的に推進してまいる、こう思っております。よろしくお願いします。
  262. 日野市朗

    ○日野委員 今通産大臣には、さっぱり進まぬ、こう私申し上げました。何で進まないか、これをちょっと考えてみる必要があると思いますね。何で進まないんだろう。  例えば四国で太陽光発電をやりましたよね。これは失敗をして撤退をしました。あれは何で進まなかったかというと、やはりスケールが大き過ぎた。規模が大き過ぎる、あれでも大き過ぎる。もっと小さいスケールでやれば太陽光発電だってかなり生かされるはずなんですね。  それから水力発電といっても、今小型水力発電というのは大体二万五千キロワット以下を小型ということになっていると思います、たしか。しかしもっと小さなスケールでやれば、水力発電をやれるサイトというのはもっともっといっぱいあるのです。アメリカあたりではレフェレルという会社がつくっていますが、本当に小さな、五百ワットぐらいから発電できる小型発電機が今生きて、生きてというとおかしいですが、どんどん使われている。その会社は大きいものもっくるけれども、そんな小さいものもつくっているわけですね。  それから波力だってやったけれども、なかなかうまくいかぬとかといって、これも今どんざをしているわけでしょう。地熱だってそうですね。それからあとは風力発電だって、これは外国なんかではちゃんと風力発電をやって、その電気を電力会社に売って結構な商売にしている人たちがいるわけです。  日本だってそういうことをやって、さっき私ちょっとお話ししましたが、電気ができたら、これは今の電気事業法では買電に難点ありと言われるかもしれませんが、これでそれこそ水、海水を電気分解をして水素にかえる。それから水素をちゃんと燃焼する、運搬をする、貯蔵する、そういう技術も開発していく、そういうことをやっていけばもっともっと自然エネルギーの利用度というものは高くなると私思いますね。そうすると、さっき言ったように二〇一〇年までには何ぼなんということではなくて、もっと加速されると思いますが、いかがですか。
  263. 山本貞一

    山本(貞)政府委員 先ほど大臣からも答弁がございましたが、再生可能エネルギーあるいは自然可能エネルギーは、先生御指摘ありましたように、まさに私ども従来から技術開発、あるいはその導入の促進、あるいは制度の検討、いろいろな努力をしてまいっております。  ただ、確かに先生御指摘のように、目覚ましい勢いで進んでいるというようなことでは現在ございません。この一番大きな理由は、やはりコストがまだ高いということは事実でございます。それからもう一つは、非常に自然条件に左右されやすい。例えば太陽電池であれば雨が降ったり夜はだめ、あるいは風が吹かないと風力発電はできない、そういう問題がございます。かつ、エネルギー密度が非常に希薄でございます。その希薄なエネルギー密度をいかにしてうまく使うかという技術開発、あるいは助成措置、あるいは制度的な対応が必要だと思いまして、私どもも電気事業連合会にもお話をしまして、国の審議会を通じて、電力会社が、今先生おっしゃったような大規模でなくても分散型のものを発電したときにいかにそれを買うか、いかにそれを高く買うような努力をするかというようなことを今進めております。  今先生御指摘の点は、私どもも地球環境問題あるいは将来のエネルギーの安定供給という点から、今後さらに力を入れてまいりたいと思っておりまして、来年度から太陽エネルギーについては三分の二の助成措置を講じて少しでも進めてまいりたいと努力をしているところでございます。
  264. 日野市朗

    ○日野委員 あなたのおっしゃるとおりなんです。本当に自然的な状況に非常に左右されますね。風がとまったり曇ったり、こういう問題はいろいろあるわけですね。そういうことは当然考えなくちゃいけない。それなら風があるときだけ風車が動いて、そして発電をして、それで本当に水を電気分解するというような形で水素を取り出しておく、その水素を貯蔵しておくというよう方向考え方を進めることはできないのですか。私はこれは非常に魅力的な提案だと思うし、水素を使おうということは、これはもう随分前からいろいろな人が言っていることですね。しかし、そっちにさっぱり問題は進展していかない。そして賦存状況が希薄でございますとかそんなことばかり言っているんですが、どうでしょう。
  265. 石原舜三

    ○石原(舜)政府委員 先生御指摘の水素につきましては、御承知のとおり非常にクリーンでございますし、また変換、貯蔵その他の点で自然エネルギーの利用として非常にすぐれた点であると考えております点は、先生御指摘のとおりでございます。  私たち工業技術院といたしましては、従来からサンシャイン計画におきまして、そういう観点から水素の製造技術、それから御指摘ございました輸送、貯蔵技術、利用技術等の研究開発を実施しているところでございます。これと御指摘のその他の自然エネルギーと組み合わせまして鋭意技術開発を行っているところでございますけれども、現在は水素製造コストの低下、輸送、貯蔵のための水素吸蔵合金の高性能化などの主要な研究開発を鋭意実施しているところでございまして、今後ともこれらの課題に対して着実に研究開発を進展させていきたい、そういうふうに考えているところでございます。
  266. 日野市朗

    ○日野委員 私は化石燃料については、これはいずれにしても有限なことでございますし、これを全くクリーンにするということはなかなか難しいと思う。それに、原子方発電ということについてもいろいろな壁が次から次と発生して、決して発電コストが安くなるというものではないというふうに私思いますし、また世界各国を見ても、いろいろな壁にぶつかっている国があるようであります。私としては、やはり自然エネルギーをうまく使っていくというのは人類の将来のこれからの課題だと思っています。  そして、水素の問題についても難しい問題がいろいろあることもよく私も知っていますが、要は意欲じゃないかなと私思っているんですね。もっとひとつ長官も意欲を持った取り組みが必要だと思いますね。ことしの予算なんか見ても、そういうところに格別強度の配慮があるともちょっと思えないものですから、これはけつをたたいておくといいますか、ぜひこれはもう意欲を持ってやってもらいたい。この問題に成功しないと、このエネルギーの問題、しかも循環可能なエネルギーの問題に成功をしないと、私は人類の生き残りということすら非常に問題あり、こういうふうに見ているわけです。  ひとつ、私のこういう注文を聞いていかがお考えになりますか、御感想をお聞かせいただければ……。
  267. 谷川寛三

    ○谷川国務大臣 お説のとおりでございます。私から申し上げるまでもございません、日本のエネルギー供給構造はまことに不安定でございます。これから脱却することをどうしても考えていかなきゃならない。省エネはもちろんでございますが、その場合にやはり供給安定性、それから経済性、環境影響等の問題をよく考えなければいけませんから、基本計画にありましたように原子力の問題を大きく取り上げておりますが、その他の自然条件を使いましての電力、これはこれからも一生懸命やっていくことを申し上げまして、お答えといたします。よろしくお願いします。
  268. 日野市朗

    ○日野委員 私、質問事項を出しておりまして、順番はそのとおりというふうにやっておりましたが、農業問題に時間をとると、景気の問題や何かについて時間がなくなるとちょっと聞きたいことが聞けないということがありますので、今大蔵大臣もおいでになるし、経済企画庁長官もおいでになるので、景気浮揚策の問題についてちょっと伺っておきたいというふうに思います。  今度の予算は景気浮揚に非常に配慮された予算だということは、もう繰り返し繰り返しお話は伺ってまいりました。その中で、非常に公共事業の点について経済企画庁長官なんかお話しになっておられますが、公共投資基本計画を踏まえてやっておられることだ、こういうふうに思うわけであります。ただ、この現在の景気の状況が決して私もいいとは思っておりません。そしてこの予算が通ればあたかも景気浮揚のための特効薬みたいに考えるのも、これもまたちょっとどうかと考えているわけですね。  非常に私気になるのは、公共事業に対するウエートがかなり重いわけですよ、この予算の内容を見ますと。ただ、今私、公共事業というものがそれほどの景気浮揚効果があるのだろうかということを考えてみますと、ちょっと疑問ではないかなという感じがします。何よりも第一番に問題にされなければいけないのは、何か公共事業をやるという場合、用地取得に物すごい金がかかってしまうわけですね。用地取得に物すごい金がかかる。それから、もう大体人手がありません。それで機械に依存せざるを得ない。それからいろいろな機材、資材のたぐいも輸入物がかなりふえている。こういうこともあって、果たして公共事業がそれほどの景気浮揚の効果があるのかどうか私はちょっと疑問に思っているのですが、いかがですかね。
  269. 野田毅

    野田国務大臣 日野先生御指摘のとおり、いわば需要の側面で見た場合に、公共事業といいますか、いわゆる公共投資、公的資本形成という側面のウエートというものは、いわば個人消費だとかあるいは民間の設備投資などと比較してみればそのウエートはかなり小さいということは御指摘のとおりだと思います。さらにまた、そういう公的資本形成という中には、御案内のとおりこれは用地費は入っておりません。いわゆる公共事業という予算ベースのことでいきますと、おおむね、過去の経験でいきますと一五%程度の用地費などが入っておる、こういうことですから、そういう意味で公共事業だけで云々ということは多少どうかという部分はあると思います。  しかし、そうはいいましても、基本的にいわば経済政策という側面からいえば、実際に経済の担い手があくまでやはり民間主導という経済であるということを考えますと、一つはそういう設備投資だとかあるいは住宅、個人消費をどうみんながそういう明るい気持ちでやっていくか、それをどう政策としてエンカレッジをしていくかという側面はあるわけですけれども、同時に、金融の側面のみならず、やはり財政政策というようなサイドからこれをどうとらえていくか、さまざまなやり方があろうと思います。  そういう中で、やはりより端的に、そしてまた即効性ということを考えますときに、最終需要の側面で即効性をあらわすという場合には、やはり公共投資というものは、これはおろそかにできない非常に大事な要素がある。特に本年度予算、これはまあ平成三年度の補正予算から続いてそうですけれども、四年度予算については、これはかなり国、地方を通じて思い切った景気配慮への予算を組んでおるわけでありますから、それが早く執行されるという態勢に入るということは、この景気をいわば下支えし、そして少なくとも最終需要をエンカレッジしていくという効果は、それなりの効果は期待できるものだと思っておるわけであります。
  270. 日野市朗

    ○日野委員 私も、公共投資ですね、これに全然効果がないと言っているわけではないんで、これは非常に大事なことですからそれはそれなりに評価はするんですが、もっといろいろ大事に考えなければいけないポイントというのは幾つかあるかと思うんですね。私、その中でちょっとこれはいかがなものかと思った事例が幾つかありましてね。幾つか私、そういう事例にぶつかったものがある。  それは金融の問題なんです。総量規制をやったときに、ちょうどバブルがはじけて総量規制ということになった。そのとき銀行、特に大銀行と言われるところがかなり過酷な処置を不動産業界、建設業界なんかにとったですよ。私、非常に憤りを禁じ得なかったのは、自分の系列のところには貸す、しかし自分の系列以外のところには、今まで同じプロジェクトを一緒にやりましょうと言って契約まで結んで、そして事業を進めてきて、そしてある段階でぷつっと、もうこれ以上はだめ、こういうことをやった例が随分ありましてね。私それを見て、こんなことではまさに、何度も何度もここで話が出ましたが、企業家のマインドがこれはもたないだろう。ある業界ではそれで、不動産業界とかなんかではばたばた倒産も出た。大蔵省もこれについては、そんなことまでしちゃいけませんよという通達までお出しになったと思います。しかし、その傾向というものはいまだにとまってはいないのではないか。もしこれで、こういうような形で金融というものが抑えられてしまう、系列以外には貸し出さないというようなことがあったら、こういうことこそむしろきっちり規制をして、そして企業家マインドをエンカレッジすべきことではなかろうかというふうに思いますが、このような傾向があって、現在もなお続いている。そして、こういうことはきちんとやめさせるべきだと私思っておりますが、いかがでしょう。
  271. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 系列という問題につきましては、貸し出し行動というのは、やはり私企業ということでもございますから当然経営判断というのは入ることだろうというふうに思います。ただ、金融機関と企業との関係は、経済構造の変化ですとかあるいは金融の自由化進展、そういう中で相当変化してきておりまして、個別の例はあるいは何かあれなのかもしれませんけれども、最近ではいわゆる系列という概念ということはあんまりないんじゃないかというふうに私ども承知をいたしております。  ただ、一般論で言いますと、金融機関の貸し出しの伸びなんかについても指摘される場合もあるわけなんですけれども、これは一時の伸びに比べましてやはり落ちておるということは、景気の減速傾向が続く中でやはり企業の資金需要というものが従前に比べて後退しているということはあろうと思っております。  それから、これは金利がいろんなふうにあれされます、そういう中での先安観といいますか、こういったもので借り控えの傾向もあるということも言えるでしょう。それから、企業が手元流動性、これを取り崩しているということ、あるいは普通社債の発行、生保の借り入れなど、今までほとんど銀行から借り入れておったというものがほかのいろいろな機関を通じながら対応しておるというようなことがあって、確かに金融機関、いわゆる銀行の貸し出しというのは伸びてないということは言えるのじゃなかろうかと思っておりますけれども、そんなことがあるんじゃなかろうかと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、貸し出すということ、これが銀行の中のやはり一番の主のあれでありますし、今申し上げた自由化という中にあって、あんまり系列の関係のところだけに貸し出すというよりは、幅広く、得意先といいますか顧客をつかんでいくということに銀行が今なってきている。私ども、今そんなふうに受けとめておるわけなんですけれども。
  272. 野田毅

    野田国務大臣 基本的には大蔵大臣が今御答弁されたとおりです。ただ若干、具体的な数字で表現することはできないかと思うのですけれども、こういう事情もあるんじゃないかな。  率直に申し上げて、過去のいわゆるバブルと言われたときには、いわば金余り現象の中で金融機関もどちらかというと一生懸命貸出先を探すというくらいの状況にあった。したがって、そのときには我々見ておりましても、多少そういう態度自体が問題ではないか、担保さえあれば貸し出すというような貸し出し態度はいかがなものか、しかも土地さえ担保にすればそれでいいということはいかがなものかというようなこともあり、それがまた地価の高騰ということの一つの要因にもなったのではないか、こういう反省もある。  そうした中で、最近いろいろ我々耳にいたしますのは、いわば本来金融機関が融資をする際に、担保さえあればいいというのではなくて、やはりその事業計画が適正であるかどうか、あるいは経営者の信頼度がどうなのか、さまざまな要素の中で本来融資審査というものは行われるべきである。そういう中で、先般来いろいろな事柄が起きた中で、金融機関自身もその貸し出し態度ということについてやはりかなり節度あるといいますか、融資審査という姿に、いわば本来の姿に戻ろうとしておるんじゃないか。このことがいわば借り手の側からすれば、前はどんどん貸してくれて、それほど事業計画のチェックも大したことなかったんだけれども、このところいろいろ審査に関連してあれを持ってこい、これを持ってこいというしち面倒くさいことを要求してくるから、借り手の側からすればいわば貸し渋りに映る。融資する側からいえば、適正なそういう事業計画がなかなかないからいわば資金需要が少ないんだという見方ができるという、率直に言って、多少そういうミスマッチもあるんじゃないか。  私は、そういう中で、余りそういうようなことで、金融機関態度についてもいろいろ反省すべき点多々あると思うんですけれども、逆に、いわばたたかれ過ぎて、その結果非常にシュリンクしておる部分もあるのではないか。いわば行き過ぎたこともよくない、どちらに振れ過ぎてもよくないな、そういう中で、落ちついた態度で冷静に節度ある金融の流れができれば大変結構なことだ、ぜひそうなってもらいたいと思っております。
  273. 日野市朗

    ○日野委員 まあ、借り手にとってみれば、特に借り手の方が弱小な企業なんかである場合には、これはもう銀行は銀行様々であると同時に大変横暴な取引相手でもあるということでございまして、特にあれば私はひどかったと思うのは、総量規制をやったころですな、これはかなりひどいなと思うこともありました。そして、それが終わってみても、やっぱりその資金需要ということの関係もこれはあるんでしょうが、ややもすれば系列にのみ厚くてそのほかには非常に薄いというような事態が間々見受けられますので、そういうことのないように厳重な監督をひとつお願いをしたいというふうに思います。  じゃあ、次は農業問題に移りますから、あとは……。  農業問題に一番時間をかけてやろうと思いまして一番最後に回してしまったんですが、どうも時間がなくなってしまって、農水省の皆さんどうも申しわけありません。  減反緩和ということで、今までずっと生産調整をやってきた米政策がちょこっとこう変わりましたね。ちょっと変わったわけですね。何でこのようなことをおやりになったのか、その目的を伺っておきたいと思いますし、それから、こうやって生産調整を緩和するということもやられ、打ち出されて、今、下部では一生懸命それの消化のために農協とか役場とかみんな一生懸命努力しているんですが、どうですか、農水省が考えているとおりの減反緩和ですな、これ、できそうですか。
  274. 上野博史

    ○上野政府委員 十三万ヘクタールの転作面積の緩和は、これは昨年の夏の低温だとか、あるいは台風の被害がございまして、昨年産米の作柄が全国平均で九五という、やや不良ということになったことが原因でございます。そのために本年十月末の持ち越し在庫が相当低下するというふうに見込まれまして、そのために平成五米穀年度における米の円滑な需給操作に資するように、来年度の目標面積、ことしの稲作面積になるわけでございますけれども、十三万ヘクタールほど転作を緩和するということにしたものでございます。  現在、この面積の調整を最終の農家の段階まで進めているわけでございますが、状況を、まだ現在作業中でございまして、具体的にどの程度の緩和が実現をするのかというような見通しを得る段階には至っておりません。ただ、その作業の過程あるいは種子の確保の状況というようなことから、概括的に申し上げまして、従来、保全管理だとか地力増進作物や青刈り稲といったような形での転作の対応をしてまいっておった水田中心に、稲作の回復というのが相当程度見込まれるだろうというふうに見ております。  他方、野菜やなんかの転作が定着をしている地域、あるいは担い手が脆弱で固定的な保全管理の対応が多くなっているような山間地域というところにつきましては、稲作の復元が困難ではないかというよう状況がございまして、現在、地方公共団体あるいは食糧事務所等と一体になりまして、所要の水田の水稲の作付を確保すべく努力をいたしている段階でございます。まあ、過不足、地域によっては出てまいると思うわけでございますけれども、地域間の調整を行う、あるいは必要な手直し、水田の手直しを行うというようなことによりまして、これを来年度の予算の中にも計上いたしておりますので、所要の転作の緩和を達成したい、かよう考えておるところでございます。
  275. 日野市朗

    ○日野委員 大体見込みとして、米穀年度の末にどの程度の不足が出るというふうに考えておられますか。
  276. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 米の需給についての見通してございますが、平成五米穀年度、つまりことしの十月末以降でございますが、この時点におけるる平成三年産米の在庫見込み約三十万トンと私ども予測をしております。私ども、適正在庫として考えるレベルが百万トンでございますので、若干ショートするというレベルでございます。  ただ、あわせて御考慮いただきたいと思いますが、御承知のとおり、ことしの夏場以降十月末にかけて四年産米が相当量生産をされるわけでございます。このうち相当量が十月末までに事実上集荷をされるわけでございますが、そのレベルにつきましては、私ども、四百万トンないし五百万トンのものが本年産米としてことしの十月末までに集荷をされるであろう。それで実質的には、ただいま申し上げました平成三年産米の期末在庫三十万トンと新穀の集荷量というものを合わせて、いわば平成五米穀年度を迎えるという状態であろうかと考えております。
  277. 日野市朗

    ○日野委員 まあ、言うなれば何とかっなげるわということでございますね。もしことしも、これは天候の状況が思わしくないということになると、これはかなり、ショートという言葉を使われましたけれども、かなり苦しいんじゃないですか。
  278. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 先ほど農蚕園芸局長からお答えしましたとおり、平成三年産米の作況の状況に照らしまして十三万ヘクタールの転作緩和措置をとったわけでございまして、十分平成四年産米の生産見込みを確保できるというふうに私ども考えております。お話しのとおり、自然条件いかんによって変動要素がないとは申し上げられませんけれども、通常の作況でありますれば十分な需給確保ができるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  279. 日野市朗

    ○日野委員 政府米がなかなか集まらぬ、これは我々も悩みの種でございまして、どうして政府米を集めるかということになると、これはやはり政府米の米価をある程度上げないと集まらぬのじゃないかと私なんか思いますが、いかがなものでしょうね。こんなに政府米が集まらない状態が続いてきますと、これは食管制度そのものがゆゆしき事態に直面するというふうに思いますけれども、どうですか。
  280. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 集まるかどうかはお天気次第ということもありますが、いずれにしても見通しが、気象条件でありますので定かに申し上げるわけにはまいりませんが、いずれにしても米価を上げるかどうかというのはこれまた別の角度で、私どもは食管法の第三条に基づいて、御案内のとおりでありますが、米価審議会で毎年御審議をいただく、その間にはいろんな意見も私ども十分お聞きをしながら、しかし、生産費、物価あるいは経済事情、再生産を確保することを旨として、いろんな角度で米価を決定してまいりたい、こう思っております。
  281. 日野市朗

    ○日野委員 おてんとうさまの問題だけじゃなくて、自主流通米の価格、あとは自由米とか、そういったものの価格なんかも、これは事実上政府米と競争関係にあるわけですな。これはやはり米価を上げる以外に、どうも今までの実績を見てまいりますと、政府米集まらぬぞというふうなことで、私なんかは非常に心配しているんですよ。そこいらはどうなります。
  282. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 計画どおり生産が確保されるということになりますと、自主流通も含めて安定的に供給できるわけですね。さればといって自主流通、まあ市場原理を導入して価格を決めた、それと同じよう政府米を上げなければ、依然としてやはり政府に米がそう集まるというものではないのではないかな。したがいまして、いい米とそうでない米がありますので、いい米はどんどん高く売って農家の収入を上げていただくということでありますから、全体の量の問題だろうというふうに思います。
  283. 日野市朗

    ○日野委員 ここで余りそこのところをやっていると、水かけ論になっちゃいかぬですからその程度でやめておきますが、やはり私の感じとして、考え方としては、米価を上げない限り、これは政府米集まらぬぞというふうに思います。  それで、現在各地で、何とかして政府が言う十三万ヘクタールの減反緩和をやろうということでみんな努力しているんですがね。大変な苦労をしていますよ、これは。現場にいる人たちなんかは本当に気の毒なくらい苦労をしているわけですね。大体、牧草地にしたり畑にしたりしたところをまた田んぼに戻せといったら、これは開田しろと言われているようなものですし、青刈りがいっぱいあるところはいいですが、ないところは、これはもう大変だ。そして、じゃ来年はどうなるんですかと。ことしは、じゃ、また田んぼに戻しましょう、そして来年になったらまたころっと変わって畑にしろ、転作しろ、こう言われるのですかというようなことをいろいろ聞かれるわけですがね、ここいらはどんなふうにお考えです。どうなさいますか。
  284. 上野博史

    ○上野政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、十三万ヘクタールの転作等目標面積の緩和、これは昨年の不作に対応するためのものでございまして、ことしの稲作面積は単年度の需給のベースで見ればかなり大幅な生産の増加ということになるわけでございます。農家の側から見まして安定的に営農を続けたいという意向が強いというのは、これは我々もよくわかっているわけでございますが、国全体としての在庫所要量を確保するという当面の目標のためにかかる措置をとったわけでございます。  これから先の問題につきましてはポスト後期の問題ということになるわけでございますが、一方で、過剰を来すということは、またこれは非常に難しい問題を生ずるわけでございまして、需給のバランスのとれた稲作生産というものを確保する観点、これは考えてまいらなければならないわけでございます。そのために、米の潜在的な生産能力の問題であるとか、あるいは今年のお米の生産高、これは需給のベースになるわけでございますけれども、そういうもの等々、ポスト後期を考えるに当たってのいろいろな条件というものを十分に勘案をいたしまして、一方では農家の中期的な安定的な農業経営というものも考慮をしながら検討してまいりたい、かよう考えているところでございます。
  285. 日野市朗

    ○日野委員 さっぱりわからなかった。わからなかったんですよね。どうするの、これ。来年になったら来年にまた考えます、こういうことですか。
  286. 上野博史

    ○上野政府委員 現在は、水田利用確立対策の後期計画の最終年度が来年度ということになっているわけでございまして、平成五年度の水稲の作付のあり方というものはポスト後期の問題として考えなければならないという、そういう建前といいますか、ことになっているわけでございまして、それを考える際には、一番大きな要素というのはことしの稲作の状況、これがどういうようなことになるのかということが一番大きな問題だろうとも思っているわけでございますが、その数字を見、あるいは先ほど来申し上げましたような各種の要素を勘案をいたしまして、ポスト後期の枠組みというものを考えてまいりたい、かよう考えているわけでございます。
  287. 日野市朗

    ○日野委員 ことし牧草地だったものから、また、じゃ水田にしました。そういうところは、何年かはやって結構ですよということにはならないの。端的に聞きます。
  288. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 余り過剰になるのも困るものですから、さりとてせっかくそういうことをしたということを考えますと、確かにおっしゃるとおり、またすぐ牧草地にするのかということはあります。十分私も気持ちの中には、余りそういうことをしないで、全部いいというわけにはいきませんが、何とか地域の事情、いろいろな状況考えながら本当に困らぬようにしてあげたいという気持ちはあります。今、具体的に何をどの程度とうするということは申し上げられませんが、気持ちの上では、農家の皆さんがせっかくそういう努力をしてくれておることには十分心を配ってあげたい、こういう気持ちはあります。
  289. 日野市朗

    ○日野委員 気持ちはだれだって同じでしょう。それはお金がかかるのですからね。お金がかかる。そして、今まで自分が思い描いていた営農設計何年かのやつを変更するわけだから、それはお気の毒でございます、何とか何か考えてあげたいということになるのは当然で、それでなおかつそれをやれ、やってくれと言うからには、やはりそれにふさわしい見返りといいますか、感謝をあらわすような何かが必要でしょう、これは。
  290. 上野博史

    ○上野政府委員 農家の営農の安定を図るということは、これは十分に考えていかなければならぬとも思っておるわけでございまして、ただ、ポスト後期の枠組みをどうするかということについては、先ほど来申し上げているようないろいろな要素を把握した上で考えたいと思っておるわけでございますが、ただ、今回の十三万ヘクタールの転作の緩和に当たりましても、我々として望ましい形で転作が定着をしているものをもとの形に戻していくということが決して得策でないというふうには思っておるわけでございまして、そういう地域の転作の緩和というものは、できれば望ましい形での水稲の復元ができるようなところに引き受けてもらうというようなことを考え、これは地域間調整と我々俗に申しておりますけれども、そういう形のことをやりながら、できるだけ望ましい形の転作を保持し、そしてかつ必要な稲作の回復を図ってまいりたい。しかし、先ほど来申し上げておりますように、今回の水稲の作付緩和、これは単年度ベースで見ますと需要に比較いたしまして非常に大きな生産量になるわけでございますので、長期的には生産の調整をしていくということがどうしても必要かと考えるわけでございます。
  291. 日野市朗

    ○日野委員 これは、それぞれ出先、現場では地域間調整も何とかやりたい、そういうテクニックも使って何とか目標を達成したいと思っていますが、現実には、大体ならしてみたら半分まで消化できているかどうかだと思いますよ。もうそろそろ種も買わなくちゃいかぬ、それから農作業も始めなくちゃいかぬ、こういうことですから。私は非常にこれは情のないやり方だなと思っているのですね。今まで農水省というのは、何だかんだ言ったって農家の側に立ってやってきたのは私もよく見てきてわかっているつもりですが、これはかなり苛政だな、過酷な政治だなというふうに私はここで思わざるを得ない。そのことは私の感想として申し上げておきましょう。  とにかく現場を苦労させないでくださいよ、現場を。本当にみんな泣いているのだから、これで。しかも農家だって、ことし協力したって来年またどうなるかわからぬ。こうころころころころ変わられたら、ただでさえもう非常に厳しい中で何とか農家をやろうと言っている人たちがどっといなくなっちゃう、そんな感じが私はしてなりません。とにかく現場、それから個々の農家を苦しめないようにしてください。そのことは、私の方から強くこれは申し上げておく。  次に、構造政策の問題について若干伺っておきます。  構造政策を進めよう、規模の拡大をしようということで随分苦労をしてまいりました。私も、本当に随分苦労をしながらさっぱり進まずにいらいらしていたというのが実情であります。規模の拡大が進まぬ、後継者はどんどん減っていく、こういうことで、何とかして強力に担い手を確保し、規模の拡大をしていくというシステムづくりが必要と私も思っていたのですね。  新農地銀行事業というのを今度の予算の中に組んでありまして、私はこれは一応評価するのですよ。農地銀行、それと農地保有合理化法人とか、そういったいろいろな関係者がお互いに協議をし合いながら強力に進めていきましょうという一つの事業ですな、これは。私はその点、そういう方向に進み出したことは私も評価するのです。しかし、これではまだまだ、とてもこんなことで規模の拡大進むかいなと、担い手確保できるかなというふうに思っているのですね。思い切ってこれを農地銀行に一元的に、もちろん情報は全部集める、しかしもっと強力な機能をこの農地銀行に一元的に集めてしまう。そして、もちろんその農地銀行を強化するということになれば農業委員会の強化ということになりますが、人的にも財政的にも、それから事務的ないろいろな内容についても強化していくということが必要になってくるわけです。それをきちんとやらなくちゃいかぬのじゃないかというのが私の感想なんです。いかがでしょうか。
  292. 海野研一

    ○海野政府委員 この新農地銀行、おっしゃったような完全に同じ機関が一緒に全部やるということではなくて、現在でございますと、農地保有合理化事業は県公社が中心でございます。これと農業委員会の新農地銀行活動事業、連携をとりながらというふうなことでこの仕組みを考えているわけでございます。  ただ、おっしゃるように、本当に一つの機関でやった方がいいという面があることはもちろん私も理解するわけでございます。ただ、これで私ども走らせてみまして、もちろん同時に、特にこういう新農地銀行活動なんかとの連携をしていく場合に、県公社だけでは必ずしもうまくいかないという場合に市町村単位の農地保有合理化事業というものも活用しながらと思っておりますけれども、なおかつ、やはりどこかで一つでやらないとどうもうまくいかないということが出てまいりました場合には、またそれなりに検討いたしたいというふうに思います。
  293. 日野市朗

    ○日野委員 いや、いろいろな事業を今まで随分やってきていますが、本当にいろいろな、これはいいなと思われる制度もばらばらに散らばっちゃっているのですよ。例えば所有権移転による農地流動化施策、これを見たって、法制上だけで五つある、予算上の措置では四つ、金融上の措置で二つ、それから税制上の措置でも四つ、それからそのほかに賃貸借による流動化、それから経営委託による流動化、こういうのがみんなばらばらに広がっちゃっているのですね。これがうまく有機的に結びついて機能していかなかったところに、これらの施策がうまくいかなかったという一面は私は確かにあると思うのですね。  これはもっと農業委員会、農地銀行、これを強化したって、そんなにお金がかかる筋合いのものではありません。ここに全部情報も集めて、もちろん農地の取得なんというのは県の公社とか農協とかいった、それは法人がやらなくちゃいかぬでしょう。それは法人は法人で持っていてもらう。それから、その各地域においてだれがどこでどういう仕事をやりたがっているよ、どういう人なら後継者に来てくれそうだよ、どこの土地とどこの土地は集められそうだよ、こういう情報をきちっと一元的に集めておいて、そしてそれに応じて土地を動かしていく。こういうやり方の方が私はもっともっと機能的だろうというふうに思うのですが、そういう方向に変えたらどうですか。
  294. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 金と人と物という考え方で今お話しのことも確かに検討してみる必要があると思いますが、農家とすれば土地に愛着を持っておる、地価も高騰しておる。まあ場所によっては農地は低下しているところもありますが、そんなことで、いずれにしても貸し借りを中心に経営規模の拡大を図っているわけでありますけれども、余り十分進展しているという状況でないことは明らかであります。  そこで、何といっても農地の中間保有機能を活用して規模の拡大を図っていくことが一つ大事なことだと思うし、いま一つは物という面から見ると、何といっても生産基盤の整備を図ることが必要。それから担い手に係る今お話しの情報、そうしたものを提供して、あるいは土地利用調整活動を行う、そのためには今お話しの農地銀行活動事業、そういうものを活用をしていかなきゃならぬ。  まあいずれにしても、いつも申し上げるようでありますが、優良農地をとにかく確保して生産の上がるような体制をつくっていく。もちろん国も県もあるいは市町村も、構造政策の推進会議というものを設置していろいろと相談してみたいと思います。お話しのように、どれだけ集中してやれるかということも十分念頭に置きながら検討をしてまいりたいと思います。
  295. 日野市朗

    ○日野委員 私は、現在の農業、農村の実情を見るときに、これはぼやぼやしちゃいられぬ、今強力に進めないとだめだぞと思っていますから、この点はこれからもさらにいろいろのところで話し合いをしながら進めてまいりたいと思っています。私の方としても、社会党としても、そんなに金がかかるわけではないんだから、これをもっと強力なものにすべきであるということで、シャドーキャビネットの方でも一つの予算上の援言はしてありますから、ひとつ御検討いただきたいというふうに思っております。  それからもう一つ、私非常に気になって気になってしょうがない部分を申し上げます。それは、環境保全型農業の推進ということで、これは有機農業といったらいいか、自然農業といったらいいか、余り農薬やなんかも使わないで農産物を生産していく方向に進んでいるんですが、私、外国の有機農業だとか自然農業だとかというものも見てきておりますが、日本は歩みが遅い。そして、有機農業なんて言って市場の入り口にちゃんとそういうラベル売っているんですな。そして市場の入り口でそのラベル買って、農薬さんざん振りまいたかどうかわからぬけれども、農作物が入った段ボールにぺたぺた張って市場に持ち込むというようなことが行われている。では我が国の農水省としては、そういった有機農業、また自然農業というか、そういったものに対してどういうことをやっているかというと、余り大したことはやってないですね。これは外国におくれておりますね。我々よく外国の農産物についてポストハーベストの危険なんということを言うが、これは成長過程での農薬、化学肥料、そういったものの投入の状況からいえば、日本はそんなに褒めた状態ではないと私は思っています。早くこれを何とかしないと、日本の農産物の国際競争力というのはがたっと落ちてしまうよというような感じを強く持っているわけです。  今、むしろ民間の方がそういった農作業やなんかの試みを随分やっていますね。こういうところからいろいろの資料をとり、どういうふうにやったらそういった農法の手法が確立てきるか、これを急ぐべきだと私は思っています。現在の程度の予算の内容で果たしていいのだろうか、むしろ全国的にかなり幅広い範囲でやっているそういった試み、もっとこれに助成をし、そして向こうから多くを学ぶという態度が必要ではなかろうかというふうに思っているのですが、どうお考えになりますか。
  296. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 おっしゃるとおり、おくれておると思います。いろいろアメリカやヨーロッパに比べまして、この種のことは、雨が何といっても多いとか、あるいは森林に恵まれたとか、傾斜地が多いということで、地下水の汚染なんというのはヨーロッパほどはなかったという問題もあると思うのですね。しかし、何といっても少しずつではありますが環境の問題、地下水が汚染されてきた。そう大きな問題ではなくてもあることは、だんだん出てきております。したがって、湖沼でありますとか地下水なんかの水質の悪化、こういうこともありますので、私ども遅まきながらではありますが、環境保全型の農業、これに向けて積極的に取り組んでいくことが重要だ、そう思っております。  このため、平成四年度から環境保全に配慮した新しい農法の確立を中心とした環境保全型の農業を推進しよう、こう考えておるわけでありますが、その際、現在各地で行われているいわゆる有機農法の事例等も参考にしながら地域の実情に合った方法でやっていきたい、一生懸命これはしなきゃいかぬということでこれから取り組んでまいりたい、こう思っております。
  297. 日野市朗

    ○日野委員 これは実際の農業、生産活動もそうですが、流通から消費に至るまで非常に難しい問題を多く含んでおりますのでありますから、そういった面をも含めて早急な対策を樹立する必要があると私は思う。それまで含めていかがお考えになっているか、聞かしてください。
  298. 上野博史

    ○上野政府委員 基本的には今私どもの大臣からお答えを申し上げたとおりでございますが、若干補足をいたしますと、有機農業の推進を図るためには、今委員御指摘のとおり、生産の段階のみならず流通の段階の問題もございまして、例えば有機農産物だというレッテルを張るにしましても、いかなる要件をクリアしたものにそういうものをつけるかというようなところもなかなか難しい問題があるわけでございます。しかも、どうやって生産の段階から流通、消費者の段階まで損なうことなくそういうものが渡されていくかというようなことの確保の問題もあるわけでございます。その辺も含めまして、今省内でいろいろ検討いたしております。  それから生産面で言いますと、農家、生産者の方々がこの問題の重要性を認識するということが大事でございまして、展示圃場を設けたりして大いにPRをする、あるいは肥料の投入、あるいは農薬の投入をできるだけ減らすというようなことのために土壌のマップを作成をする、今まであったものにさらにそういう点からのチェックを加える、あるいは農薬について言えば、虫の発生状況を今まで以上にそれぞれの地域において詳細に把握をいたしまして、農薬をまく量をできるだけ少なくするようなコントロールをしてまいる等々、来年度の予算におきましても相当の力を入れて対応してまいるつもりでございます。
  299. 日野市朗

    ○日野委員 実践支援も実施する、こうなっていますが、実際はプロの農家よりも、プロでない農家といいますかエコロジストなんかがやっている場合がかなり多いのではないかというふうに私思いますが、そういうところにも実践支援は拒まないというようにしていただきたいものだというふうに私の希望を述べまして、質疑持ち時間が終了いたしましたという紙が回ってきたので終わりますが、また、別の機会にいろいろ議論をしたいと思います。ありがとうございました。
  300. 山村新治郎

    山村委員長 これにて日野君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会