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1992-02-19 第123回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年二月十九日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 山村新治郎君    理事 中山 正暉君 理事 原田昇左右君    理事 町村 信孝君 理事 村岡 兼造君    理事 村上誠一郎君 理事 串原 義直君    理事 野坂 浩賢君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       池田 行彦君    小澤  潔君       越智 伊平君    越智 通雄君       唐沢俊二郎君    倉成  正君       後藤田正晴君    左藤  恵君       志賀  節君    住  博司君       戸井田三郎君    浜田 幸一君       原田  憲君    松永  光君       松本 十郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    柳沢 伯夫君       井上 普方君    伊東 秀子君       加藤 万吉君    小岩井 清君       新盛 辰雄君    鈴木  久君       関  晴正君    筒井 信隆君       時崎 雄司君    日野 市朗君       水田  稔君    和田 静夫君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       二見 伸明君    冬柴 鐵三君       木島日出夫君    児玉 健次君       菅野 悦子君    中野 寛成君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         法 務 大 臣 田原  隆君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         大 蔵 大 臣 羽田  孜君         文 部 大 臣 鳩山 邦夫君         厚 生 大 臣 山下 徳夫君         農林水産大臣  田名部匡省君         通商産業大臣  渡部 恒三君         運 輸 大 臣 奥田 敬和君         郵 政 大 臣 渡辺 秀央君         労 働 大 臣 近藤 鉄雄君         建 設 大 臣 山崎  拓君         自 治 大 臣         国家公安委員会 塩川正十郎君         委員長         国 務 大 臣 加藤 紘一君         (内閣官房長官         国 務 大 臣 岩崎 純三君         (総務庁長官)         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     伊江 朝雄君         (沖縄開発庁長         官)         国 務 大 臣 宮下 創平君         (防衛庁長官)         国 務 大 臣         (経済企画庁長 野田  毅君         官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長 谷川 寛三君         官)         国 務 大 臣 中村正三郎君         (環境庁長官)         国 務 大 臣         (国土庁長官) 東家 嘉幸君  出席政府委員         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣 有馬 龍夫君         官房外政審議室         長         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一 大森 政輔君         部長         公正取引委員会 梅澤 節男君         委員長         公正取引委員会 矢部丈太郎君         事務局取引部長         警察庁刑事局長 國松 孝次君         総務庁行政管理 増島 俊之君         局長         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁参事官  三井 康有君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁長官 藤井 一夫君         防衛施設庁総務 竹下  昭君         部長         防衛施設庁施設 大原 重信君         部長         防衛施設庁建設 新井 弘文君         部長         防衛施設庁労務 荻野 貴一君         部長         経済企画庁調整 吉冨  勝君         局長         経済企画庁総合 長瀬 要石君         計画局長         環境庁長官官房 森  仁美君         長         環境庁企画調整 八木橋惇夫君         局長         国土庁長官官房 藤原 良一君         長         国土庁長官官房 森   悠君         会計課長         国土庁土地局長 鎭西 迪雄君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 濱  邦久君         外務省アジア局 谷野作太郎君         長         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君         局長         大蔵大臣官房総 日高 壮平君         務審議官         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融 江沢 雄一君         局長         国税庁次長   冨沢  宏君         文部大臣官房長 野崎  弘君         文部省初等中等 坂元 弘直君         教育部長         文部省教育助成 遠山 敦子君         局長         厚生大臣官房総 大西 孝夫君         務審議官         厚生省保健医療 寺松  尚君         局長         厚生省生活衛生 玉木  武君         局長         厚生省生活衛生 小林 康彦君         局水道環境部長         厚生省薬務局長 川崎 幸雄君         厚生省社会局長 末次  彬君         厚生省保険局長 黒木 武弘君         農林水産大臣官 馬場久萬男君         房長         農林水産大臣官 山本  徹君         房予算課長         農林水産省経済 川合 淳二君         局長         農林水産省構造 海野 研一君         改善局長         通商産業大臣官 榎元 宏明君         房審議官         通商産業省通商 岡松壯三郎君         政策局長         通商産業省通商 藤原武平太君         政策局次長         通商産業省立地 鈴木 英夫君         公害局長         通商産業省機械 熊野 英昭君         情報産業局長         資源エネルギー 山本 貞一君         庁長官         資源エネルギー 土居 征夫君         庁石炭部長         運輸省運輸政策         局次長     向山 秀昭君         兼内閣審議官         運輸省鉄道局長 井山 嗣夫君         運輸省自動車交 水田 嘉憲君         通局長         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         郵政大臣官房経 山口 憲美君         理部長         労働大臣官房長 斎藤 邦彦君         労働省労政局長 清水 傳雄君         労働省労働基準 佐藤 勝美君         局長         労働省職業安定 若林 之姫君         局長         建設大臣官房長 望月 薫雄君         建設大臣官房会 近藤 茂夫君         計課長         建設省建設経済 伴   襄君         局長         自治大臣官房審 石川 嘉延君         議官         自治省行政局長 紀内 隆宏君         自治省行政局選 吉田 弘正君         挙部長         自治省財政局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         参  考  人         (地域振興整備 田中誠一郎君         公団福総裁)         参  考  人         (日本銀行副総 吉本  宏君         裁)         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ————————————— 委員の異動 二月十九日  辞任        補欠選任   相沢 英之君    住  博司君   内海 英男君    井奥 貞雄君   戸田 菊雄君    鈴木  久君   日野 市朗君    時崎 雄司君   石田 祝稔君    二見 伸明君   不破 哲三君    菅野 悦子君 同日  辞任        補欠選任   井奥 貞雄君    内海 英男君   住  博司君    相沢 英之君   鈴木  久君    戸田 菊雄君   時崎 雄司君    日野 市朗君   二見 伸明君    石田 祝稔君   菅野 悦子君    木島日出夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  証人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  平成四年度一般会計予算  平成四年度特別会計予算  平成四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  平成四年度一般会計予算平成四年度特別会計予算平成四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  平成四年度総予算について、証人出頭要求に関する件及び参考人出頭要求に関する件について順次お諮りいたします。  まず、証人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  来る二十五日午前十時に塩崎潤君を証人として本委員会出頭を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  来る二十五日午後一時に、平成四年度総予算について、参考人として鈴木善幸君の出頭を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  ただいまお諮りいたしました両件についての諸般の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 山村新治郎

    山村委員長 総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  この際、加藤万吉君の残余の質疑を許します。加藤万吉君。
  7. 加藤万吉

    加藤(万)委員 前回の質問の中で、共和の福岡県の工場に対して、私の質問、途中で中断をせざるを得ませんでした。その後、この共和九州工場に対する地域振興整備公団の御説明を私はいただきました。率直に申し上げて、細かく内容を申し上げることはできませんが、結果として極めてずさんな融資の結果が説明の垣間に見られるわけであります。どうでしょうか、この際、地域振興整備公団から、私は、時間がありませんから、私の申し上げたことに対しておおむねそのような状況であるということだけ確認をひとついただきたいと思うのであります。  第一に、貸付金総額に対するそれぞれの担保物件土地担保物件は残念ながら貸付金総額を下回る、いわば融資額より下回る担保要件であり、なお私が追及をいたしました担保日にち貸付金日にちよりも後になっているということ、これも間違いないと思います。  二つ目に、さらにこの貸付金に対する担保物件を拡大をするために工場財団に対する担保要求をいたしたのでありますが、結果的にこれは失敗をいたしまして今専ら裁判で争われているという状況であります。さらに担保不足を補うために共和社長であります松浦氏の自宅を差し押さえをしている、こういう状況にある、こういうふうに聞いております。したがって、結果的には、当初八億円を貸し付ける際に本来ならば当然のことそれに似合う担保要件設定をされなければならないわけでありますが、担保要件設定をされずにそのまま融資が行われた、この事実関係については、公団の方、間違いないと思いますが、いかがでしょうか。
  8. 田中誠一郎

    田中参考人 ただいま先生の御指摘、おおむねそういうことでございますが、第一の御指摘の点でございますが、債権総額八億円に対しまして第一回の資金交付は五億六千四百万円でございまして、それに対する最終的な担保は、土地につきまして七万三千五百五十五平米でございます。鑑定評価によりますと一平米当たり一万五百円でございますので、土地評価額は七億七千二百万円ということでございまして、第一回の資金交付額五億六千四百万円に対しましては一応その評価額はこれを上回っている、貸付額を上回っているというふうに考えているわけでございます。  それから、第二番目の点でございますけれども、第一回の資金交付五億六千四百万円は三月三十一日に行ったわけでございますが、担保の提供、第一順位の抵当権の登記は三月二十八日にいたしましたので、抵当権担保をとりました日付は貸し付けの前ということになります。  それから、第三点目の工場財団の組成につきましては、私ども、相手方の不誠実がございまして、ついに工場財団に対しまして抵当権設定ができなかったわけでございまして、御指摘のとおり現在訴訟中でございます。  それから、第四点の連帯保証人についての差し押さえは、御指摘のとおりでございます。  以上でございます。
  9. 加藤万吉

    加藤(万)委員 この問題、長く時間をかけるわけにもまいりません。これは通産大臣、私は、いわば振興公団のような低利なお金が比較的安易に借りることができる、しかもそれを社会的信用の一つの物差しとしてさらに共和がさまざま伸びていく、こういう構造が非常にこの中にあるんですね。それだけにお金融資をする際には政治家がそこここに見え隠れをするわけであります。  そこで大臣、私は、通産の所管の公団ですから大臣にこの際お聞きをしておきたいのですが、かかる融資の場合、私は、大臣が細かく目を通すわけにはいかないとは思います。しかし、今回のこの事件国会でこれだけ私、問題にしたわけですから、これを契機にしてこれからの貸付額あるいはこういうものに対する融資の方向についてはもっと厳格に、しかもずさんのない、ここで私、申し上げましたけれども、当時森口が被告人であったということも知らなかったという状況の中で保証人にならせる、こういうずさんなこともあったわけですから、そういうことがないようにぜひ御指導すべきではないか、かように思いますが、大臣の見解を聞いてこの問題を終わりたいと思います。
  10. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、加藤先生からいろいろ御指摘がございました。出発点はこれは産炭地地域における雇用の確保、また地域振興という目的というものを達成するということ、極めてこれは大きな問題で、このような融資が行われたわけでありますけれども、これを実施するに当たっては、まさに加藤先生指摘のとおりいささかも懸念を挟まれることのないように厳格、適正に今後仕事を進めていくように努力させてまいりたいと存じます。
  11. 加藤万吉

    加藤(万)委員 法務大臣に三点ほどお聞きをしたいというふうに思います。  せんだっての質問で、私は、指揮権発動に絡む問題で処分請訓規程提出を、ぜひ当委員会提出をしていただきたい、この旨要求をいたしました。これは山花書記長質問とも関連をいたしまして、大臣は、公正、厳格に当事件を扱っておりますのでという回答をこの場でいただいたわけでありますが、その後法務省各党を回りまして、阿部議員の本委員会への証人喚問に対しては、法廷維持関係捜査段階ども含めて、この際差し控えをしていただきたい旨の陳情がありました。これはもう各党でも反発があったわけですが、いわば三権分立という中における立法府へのかかわり合いの点からいって、極めて遺憾な陳情行動ではなかったか、こう私は思うわけであります。大臣の、私ども委員会に対する御答弁の書面でいただきました内容によりましても、厳正に行うという立場から見るといささかこの行為は逸脱をしているのではないか、かように思うのですが、まずこの点についての御意見が第一点であります。  第二点に、阿部議員捜査が終了したと言われております。捜査を終了したという段階では、当委員会に呼ぶことについて、法廷維持という問題は陳情の中にもあったようですが、当委員会に呼ぶことについて、捜査段階における支障という問題は排除された、こう見るべきだと私は思いますが、阿部議員の当委員会への証人喚問について、支障があるとお考えですか、いかがですか。  第三点は、これまた先ほどの第一項に関連するわけでありますが、指揮権発動の問題については、まさにこれから起きるでありましょう佐川急便事件などを含めてまいりますと、本来あってはならないことでもありますし、また、政界の大物と言われる人が本件に関係をするなどという報道もなされている今日ですから、仮に佐川急便事件捜査、今は渡辺東京佐川急便の前社長が逮捕されている段階でありますが、よもや政治家かかわり合いがあった場合に指揮権発動などということはないと思いますが、三点について法務大臣の御意見をひとつお聞きをしたいと思います。
  12. 田原隆

    田原国務大臣 加藤先生にお答えいたします。  第一の点でございますが、処分請訓規程を開示してないのは事実でございますが、この点につきましては秘密扱いということになっておるようでありましで、後で政府委員から詳しく御答弁しますが、第一に絡みました第二の点の陳情をいたしました点でございますけれども、これは、現在刑事被告人として起訴されて公判を求めている段階国会証人喚問されますと、いろいろと裁判に予断を与えるとかなんとか、これは私、素人の意見でございますが、そういういろいろな支障があるということで、これは事務的にお断りしたいということを陳情したわけでございます。  それから、阿部議員捜査が終了いたしました件につきましては御存じのとおりでございますが、正式の国会報告ということは、国会から御要請があった段階で、従来の慣例に従い、いたすわけでございますが、お許しを願いたいと思います。  また、これから行われる、行われつつあります佐川急便に対しての問題を御指摘になりましたが、私は、前にも指揮権についてお答え申しましたように、この佐川急便の前の、阿部議員が絡んだ共和事件におきましてもそうでございましたが、検察としては、私は、厳正、公正に、不偏不党の立場で、昼夜を分かたずやってきた結果であると思っておりますし、私はこれに対して不当な制約を加えたことはございませんので、私も、この佐川急便事件につきまして、必要以上のことを考えたり、不当な制約を加えたりとかいうことは考えておりませんので、御承知をお願いしたいと思います。
  13. 加藤万吉

    加藤(万)委員 この前の質問段階で、私は法務大臣に、阿部代議士が逮捕されたときに談話を発表された、この談話も極めて遺憾な談話である、いわば職務権限にかかわる問題については難しいのではないかということは、検察当局に先入観を与えるような印象を強く与える、結果的に、指揮権発動という問題は表には出なくても、そういう形で圧力がかかる、プレッシャーがかかる、こういう点は避けるべきだというお話をしました。総理は、これは楢崎弥之助代議士の御質問でお取り消しにはなりましたけれども阿部代議士がああいう形になったことは、無罪になるように祈るというのですか、正式には私ここにメモしてありますけれども、そういう御発言をされてお取り消しになりました。何か今度の共和事件をめぐって、どうも行政当局検察に対する圧力といいましょうか、プレッシャーといいましょうか、そういうものがここかしこに見えてくるのですね。ですから、国民の疑惑はそこから生まれてくるわけですよ。  さらに、今回の陳情行動は、野党に対して、いわば阿部代議士が本委員会出頭することがあたかも法廷指揮を誤らせるというような印象を与えようとする意図があったのではないかということすら私どもは勘ぐりたくなる。どうですか、大臣、今度法務省各党にこの陳情をされたのは法務大臣の命によってですか。
  14. 田原隆

    田原国務大臣 そういうことは一切ございません。これは国会の良識にゆだねられた事柄でありますから当然でございますけれども、事務的に考えた場合に、事務方として自発的にそういうことを陳情したわけでございまして、私は、命令し、行ってこいというようなことを申し上げたことは一切ございませんので、よろしく御理解いただきたいと思います。
  15. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これはこれからの議論のあるところですけれども、仮に大臣の命でなければ、私は、事務次官、官房長は行き過ぎだったと思いますよ。いずれにしても後で佐川問題をめぐって同僚議員からもいろいろ御質問がありますから、この点は大臣から、なかったということだけ確認をしておきたいというふうに思います。  総理、今度共和が出まして、佐川が今度また逮捕されるという事態になりまして、政治不信という問題がこれほどまでに国民に蔓延し、高まっているときはないんじゃないでしょうか。私は、そういう意味では、総理が物すごい決断をされるという時期が今来ていると思う。総理は、本会議で、政治倫理の問題が一つある、同時に政治改革制度上の問題があるという二つにお分けになって答弁をされている。私は、政治倫理、いわゆる制度改正に至るまでにやるべきこと、すなわち、政治家一人一人の倫理の確立などを含めてやるべきことが先にある、こんな気がするのです。  そこで、私は一番気になるのは、やはり金と派閥と権力というこの構造ですよ。私は、二人寄れば、気の合った者で一杯飲もうとか、グループを組むことはしばしばあることで、決して私は否定はしないのです。派閥というものは、やはり政策集団であるべきだと私は思うのです。ところが今日、率直に言って、今度の共和にいたしましてもあるいは佐川にいたしましても、その構造的なものはやはり派欄に対するお金の献金、そして寄附、今度は受ける方ですね。さらには猟官運動などなどを通しまして、派閥がまさに金権派閥になっているのじゃないでしょうか。ここを断ち切る決意が私は必要だと思うのですよ。  失礼な話かもしれませんが、総理が中心であります宏池会歳入歳出を私、調べさせていただきました。歳入歳出と言うのはおかしいですね、収支と言った方が正確ですね。調べさせていただきました。総理になると大変なんですね。派閥の長ともなると大変だということがわかりました。総理は一年間二億円ぐらい宏池会に寄附されていますね。これは総理の名前ではございません。例えば備後会であるとか、いわゆる総理が持っていらっしゃる後援会グループを通してでしょうが。しかし、二億円というお金は、私は仮に後援会が相当有力な人があったにしても、個人の寄附として求めるということは極めて困難な、極めて至難な、我々では常識でも考えられないくらいのお金ですよ。  私は、このお金が例えば六十三年度には阿部議員に千九百万寄附という形で渡っている、あるいは塩崎潤代議士にも二千万という形が寄附行為として渡っている。こういう構造総理みずからが断ち切るということがなければ、本当の意味での私は政策集団としての機能を果たさないと思うのです。いわゆる派閥金権派閥に成り下がり、今日の日本の政治の権力の構造の底辺になっている。ここを何か断ち切るという決意を示さなければいけないと思いますよ。  世界がこれだけまさに改革、しかも物すごい急テンポで変革をしているという時期に、日本の政治権力の構造というのがそういう地下水脈でつくり上げられて、この権力の構造ができていくというところにメスを入れない限り、私はこの問題、何回やっていっても同じ事態が生まれるのじゃないでしょうか。どうでしょう。派閥の金権的な派閥、ないしはそこの派閥派閥の長である宮澤総理お金を寄附される、それが今言ったような形で時には若手代議士を培養する、時には猟官運動につながっていく、さらに猟官された者が年に一千万ずつ寄附する、こんな構造をおやめになったらどうですか。総理の見解をお聞きしたいと思うのです。
  16. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 このたびの事態の基本に根本的な政治改革の問題があるということは、御指摘のとおりであると思います。その一番の根本は政治倫理の問題であることも、そのとおりと思います。次に、いかにして政治に金をかからないようにするかという、いわば出の方について、過般も幾つかの改革はございましたけれども、なおしなければならないことが制度上いろいろあるであろう。次に、しかし、どうしても必要な金というものについては、その透明性をどのようにして確保するかという、そういう問題があろうと存じます。  その他、制度の問題、いろいろございますが、お尋ねに関して申せば、そういうことが非常に緊急な課題になっておるということはそのとおりであります。各党におかれましてもいろいろそれについての立法の御準備をしていらっしゃるというふうに伺いますが、私どもの党でも緊急にそれらの問題についての基本的な考え方を取りまとめたいと思っておりまして、政治改革協議会においてその上でいろいろ御検討いただきたいと考えておるのでございますが、そういうことの痛切さは感じております。  派閥というものは政策研究ということから発足をしたわけでございますけれども、おのずから同志の間に、若い代議士諸君、何といっても若いという意味でいろいろ選挙運動に出費もかかる、しかし自分でそれを十分に調達できないというようなことから、先輩として、友人として何か助けてやりたいということは、これは自然にあることでございますけれども、それが今加藤委員の言われますような弊害に発展するということは、厳に慎まなければならないことだと思っております。
  17. 加藤万吉

    加藤(万)委員 総理、金がかかるのじゃなくて、私は金のかけない政治というものを考えるべきだと思うのですよ。今おっしゃったように、若手を育成するために若干金が必要だ、政策研究のために。私は、その範醸でそれぞれが相互で共済的な資金の供給を行うというそういう意味はわかりますよ。ならば、政策集団として存在するとするならば、例えば小選挙区のあのときに、派閥を超えて自民党さんの中でいろいろ集団ができましたね。私はああいう姿が正しいと思っているのです。我々野党の場合でも、それぞれ意見が異なる、政策の力点が違う場合には、その政策に基づいて集団化される。それはもう派閥の枠を超えていますよね。そういうものをこれからつくり上げていくという努力をお互いにしませんと、金のかからない、金をかけない政治というものは何なのかと、そういうところに持っていきませんと、一千万とか二千万とかいう金を派閥がそれぞれ供給するなんというのは、まさにそれは選挙活動、おっしゃられるように政治活動というよりも、地元を培養するためのいわゆるもち代ですよ。こんなものにお金を使う必要はない、私はそう思いますね。  むしろそれよりも政策能力を高めて、有権者との間に、あの代議士はどういう政策を持っているんだ、それによって共感を得る、その政策能力を高めるために何をやるべきかという、そういう派閥の指導というものが、なかんずく、きょうは外務大臣もおいでですけれども、長にとっては重要なことじゃないでしょうか。私は、それでないといつまでたっても金脈政治と言われている構造というものは直っていかない、かように思います。時間がありませんから、私の所見だけ申し上げました。  さて、最後に、いよいよ制度の改革ですね。私は、今の問題は主として政治倫理の上に立つ、それぞれの派閥がもたらす悪影響というものをどうそれぞれの長として解消していくかというところを重点に置いたのですが、制度の改正は緊急を要するのじゃないでしょうか。今総理から御答弁がありましたように、自民党の中でもそれぞれ政治改革について研究をされている。野党の中でもあるいは我が党でも、政治腐敗防止法などというのを中心にして今国会で成立ができないかどうか、ぜひ与党の皆さん、いわゆる政府とも話し合いの場、協議、討論する場を設けたい、こう思っているわけですが、政治改革に対する、当面緊急に、今国民の非難にこたえて政治の信頼を回復するという立場から見ると、何を優先すべきですか、総理の見解をひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  18. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先ほども申し上げかけましたが、まず第一に政治倫理の確立という問題があると思います。次に、なるべく金がかからないようにすると申し上げました意味は、先般いわゆる寄附等の制限につきまして新しい改革をいたしましたが、寄附等を制限するという冠婚葬祭等の問題でございますが、この結果としてはかなり人件費、つまり、冠婚葬祭を完全に行いますために無地にたくさんの秘書を置かなければならないという意味の人件費の節約には、かなりの効果があったように存じます。そういう意味での金がかからないようにする、出の方をもっときちんとする改革が一つ大事と思います。その上で、入ります金についての透明性をどのように制度的に確保するかという問題があると思います。  それらに並びまして、やはり全体の選挙制度の問題、これはある意味ではいわゆる一票の価値の問題もございますし、定数の問題もあろうと思いますが、それらの問題を総合いたしまして全体を考えなければ、おのおのが関連をいたしておりますから、総合して考えることが必要でございますが、その中から非常に急ぐもの、それから多少の時間をかけて考えた方がよろしいもの、そういう区分けがあるいは必要である、可能であるかもしれないと思っておりますが、私どもの党ではそれらを総合いたしまして、できるだけ早く党としての結論を得まして、協議会において皆様と御相談をし、御審議をいただいて、そうして改革をできるだけ早く、火急の問題として実施をいたしたいというふうに私はただいま考えております。
  19. 加藤万吉

    加藤(万)委員 要するに、三点セットと言われる政治改革の方針がありますね。公職選挙法の改正、政治資金の問題、さまざまこうあるんですが、その中で選挙の定数の問題に触れていくと、相当小選挙区の問題その他がありまして時間が食ったことは皆様御案内のとおり。しかし、今緊急に国民から求められているのは、とにかく今日の金権政治と言われ、腐敗政治と言われるそのこと自体に対する緊急な政府側の姿勢というものが求められておる。こうなってまいりますと、私はおのずと今この国会でやるべき優先度というものが生まれてぐると思うんです。これに対する総理の見解をひとつお聞きしておきたいと思うんです。  それから、時間がありませんからいま一つだけ、これは法務大臣にお聞きした方がいいんでしょうか、あるいは総理にお聞きした方がいいんでしょうか。共和の問題が一応捜査段階が終わったと、こう言われております。あとはまあ法廷で黒官を争うことになるんでしょうが、この中間報告を当委員会に出す意思はございませんか。中間報告の中で我々がさらに何か問題点を、何が問題になったのかということを明らかにしておきたい、こう思っているわけであります。当然共和の問題では、後ほど証人として塩崎潤代議士、あるいは参考人として鈴木善幸前代議士、総理がおいでになるわけですから、私どもその際にこの構造的な問題を徹底的に解明したい、こうは思っていますが、その間における中間報告をなさる意思はありますか。いかがでしょう。
  20. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 政治改革の問題でございますが、私どもの党内におきましても、実はほとんど連日極めて熱心な各観点からの検討が行われておりまして、近いうちに私といたしまして、それを集約する形でどういう優先度をつけることができるか、あるいはいいか悪いか、それから全体としてどのような姿勢で進めていくかというようなことについて関係の諸君とともに協議をいたしまして、党としての方針をできるだけ早く定めたいと思っております。その上で、協議会において各党の御主張もおありでございますから、その中で御相談をしていただく、そういうことにいたしたいと考えております。  あとの問題は法務大臣からお答えをいたします。
  21. 田原隆

    田原国務大臣 お答えします。  東京地検は、いわゆる共和問題に関しまして、阿部元北海道開発庁長官を受託収賄罪で一月十三日に逮捕し、約二十日間勾留し、二月一日に起訴いたしました。その後捜査を進め、十七日に追起訴し、これをもって一連の捜査を終了したと聞いております。検察当局においては厳正、公正な捜査を遂げ、適切な結論を出したものと信じておりますが、国会の正式な御要請があれば、時期とその他を考えて御報告申し上げる所存でございます。前例もございますことでございますから、よろしくお願いします。
  22. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最後の話尾がわからないんですが、中間報告を国会の要請があれば出すんですか。
  23. 田原隆

    田原国務大臣 失礼しました。  国会の要請があれば、共和事件に関して報告を出させていただきます。
  24. 加藤万吉

    加藤(万)委員 終わります。
  25. 山村新治郎

    山村委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  次に、和田静夫君。
  26. 和田静夫

    ○和田(静)委員 政治不信、政治腐敗が続いて、日本の政治は破滅的なまでの病気に陥っていると国民は感じていると思います。この事態をどうするのか、政策論議の前に、この予算委員会において、日本のリーダーたる宮澤総理に明確な方針と決意を伺わなければなりません。具体的なこの問題意識と課題との取り組み方を示していただくという意味で、以下、順次伺います。  一月二十四日の宮澤総理の施政方針演説をじっくり聞かせていただきました。さまざまな批評、批判が加えられていますが、私は与野党の立場を離れて考えても、あるいは国民のためにも総理自身のためにも残念だと思うのは、この施政方針が明確性に欠けているということであります。かつ、保守政権ならば一度は宮澤さんにという、そういう期待が政界を問わずたくさんあったと思うんですが、どうもその宮澤さんという人が見えてこないのが私にとっても非常に残念なことでありました。  そこで伺いたいのは、今日における政治の使命ということであります。総理は、昭和六十一年に宏池会から出されました「再び旗を掲げよう」の中で、じっくり読ませていただきましたけれども、第一に、国民に対して向かうべき目標と政策手段を明示すること、第二に、政治の指導性を回復すること、第三に、政治に対する国民の信頼性を構築するように努めることと述べられました。首相になる前だからこういういいことが言えて、首相になられたから言えなくなったのはなぜかというのが非常に私にとっては不思議であります。いずれもこの宮澤総理の言動と施政方針演説から私はどうも欠けていると思われて仕方がない。非常に残念であります。  あなたは昭和五十一年にイギリスのキャラハン総理と話をされましたね。あなたはキャラハン総理に向かって、イギリスでも党首選挙のときに候補者はいろいろの選挙運動をするのかと尋ねられた。すると、日本はどうなのかという形で返ってきた。で、宮澤さんは、派閥がホテルに陣取ってあの手この手の多数派工作をする自由民主党総裁公選のあり方を説明をされたようであり、以下お二人の応答です。  「英国ではそんなことは全然やらない」とキャラハンさんは述べる。「じゃ、候補者は一体何をするんですか」とあなたは言う。「じっとしているんです」とキャラハンさんは言う。「でも、電話ぐらいはかけられるでしょう」とあなたは言う。「いや、そんなことをしたらみんなにばかにされてしまう」こうキャラハンさんは述べられる。  このキャラハン総理から得られたあなたの政治的経験というのが十五年後のあなたの著述になってあらわれるのでありますけれども、キャラハン総理のまねをあなたがされなかったということが私にとっては大変不満であります。それどころか、電話をあなたはかけまくられた。議員を個別訪問された。小沢前幹事長の口頭試問を受けて、まあマスコミでは韓信のまたくぐりなどという批評を受けられた。こうした政治行動が国民の政治に対する信頼性を失わしていると私は思うのであります。キャラハン総理が言ったように、自由民主党内はいざ知らず、マスコミを通じてみんなにばかにされてしまうことをあなたはなぜおやりになるのだろう。あなたなるがゆえにこんなことをやらない、そのことが私は必要だったんだと思うのであります。  また、当選年次別派閥順送り大臣就任ということをあなたは改められるかと思ったら、相変わらずであった。これも国民政治不信の一つになっているのでありますが、これらの点についてどうお思いになっていますか。
  27. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 かつてサミットがありましたときに、キャラハン英国首相とそういう話をいたしました。事実でございますので、そのとき思いましたことは、やはり英国という国は我々と違って、何世紀あるいはそれ以上のいろいろな政治的な激しい事柄を繰り返しながら今の議会政治、民主政治の段階にたどり着いた、そういうことを私は非常に強く感じたわけでございます。我が国の場合、まだまだ議会政治の歴史はそう長くはないわけでございますから、そういう意味で、そういうお手本を見ながら少しずつでもそっちに近づいていかなければいけないということを強く感じましたし、今も感じておるわけでございます。  私自身がそのとおりのことを実践できずにおりますことは自分でもよくわかっております。決して理想的な、イギリスのたどり着いたような段階にまだ全体の問題がたどり着いていないということはよくわかっておりますけれども、しかし、かつて先人が申しましたように、そうかといって民主政治以上にいい政治の形というものは見当たらないのでございますから、やはりそれを立派なものにしていくというために、自分も一人の政治家として努力をしていかなければならないということを強く感じております。そこまで今至っておりませんことはまことに残念でありますけれども、しかし、そういう努力を続けていかなければならないと思っております。
  28. 和田静夫

    ○和田(静)委員 あなたがキャラハン元総理のようにおやりにならなかった、阿部文男さんのような方を事務総長にして首相におなりになった。私は、これは政治の信頼の低下を宮澤さん自身がおつくりになっているということを非常に残念に思います。  で、今日の派閥運営資金の話が今は話題になったのでありますが、幹部による上納金システムということが言われていますが、宏池会はそうですか。
  29. 加藤紘一

    加藤国務大臣 それぞれ、先ほど総理が申しましたように、幹部、当選回数の多くなりました人間が、派に自分の許せる範囲での貢献をするということは現実に行っております。
  30. 和田静夫

    ○和田(静)委員 渡辺さんのところもそうですか、今のところは。
  31. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 全部出しているというわけでもないが、出す人もあれば出さない人もあるし、強制はいたしておりません。
  32. 和田静夫

    ○和田(静)委員 宮澤さんはリクルート社から実質的には献金を受けられたと見られることが原因で大蔵大臣をおやめになった。その後も派閥の会長として舞台裏で政治を動かして、そして念願かなって総理におなりになった。中曽根さんは、同じリクルート事件で自由民主党を離脱をされた。ところが、あなたの判断で復党をされた。党三役、大臣にも同様の復権が行われた。前海部内閣では自粛していたことが、あなたの内閣、総裁になって破られた。あなたの考えでは、選挙でみそぎを受けた人は復権をしてもよい、こういうふうに述べられる。  問題は、私は他党内のことを言って恐縮でありますが、かつてあった自由民主党内の派閥解消の努力の消滅と開き直り、政治改革の取り決めの空洞化、無力化の姿勢に私はあるんだろうと思う、第一には。それを率先しているのは、結果的には宮澤さんということにまあなっているわけでありますが、このことについて宮澤さん、どうお考えですか。
  33. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今おっしゃいましたような方々が過去においてそういう経験をされ、またそれについての反省をおのおの持っておられる。私はもとよりそうでございますけれども。その後で衆議院の選挙もございました。で、皆さんそういう立場から、選挙民から二度と過ちを繰り返さないようにという意味での信任を受けて出てこられたという事実の上に立ちまして、ある程度の時間もたっておりますから、そういう方々が選挙民の信頼にこたえて力いっぱいの活躍をされるようにということが私は正しい選択だと考えましたので、党の役員につきましてもあるいは内閣の構成につきましても、そういう方針をとったわけでございます。そのことは私は誤っておらないと思いますが、このことは決してその関係をした、例えば私でございますが、過去の反省をしていないという意味ではございません。二度と過ちを繰り返さないという決心のもとに選挙民の負託にこたえたいと考えておるわけでございます。  ただいま党の運営は私自身が責任者でございますので、そういうことを間違いなくしかも先ほどから御指摘のような事件に顧みまして、根本的な、抜本的な政治改革の実を示しまして国民の御理解を得たい、こう考えております。
  34. 和田静夫

    ○和田(静)委員 たくさんのことを申し上げませんが、私は政治改革のつまずきの石というのは自由民主党内にあるのではないかというふうに考えます。派閥政治につきましては先ほど加藤委員が触れましたからこれ以上は言いませんが、だから私は、政治資金や選挙制度改革というのは国民には問題のすりかえに見えるのではないだろうか。まず隗より始めよで、あなたと自由民主党が政治腐敗の根絶、政治資金以外の資金を受け取った議員の処分、追放、辞職勧告などを定めるべきだろうというふうに私は考えているんですが、もう一つ、ちょっと具体的なことで、先ほど不規則発言にもありましたが、盆暮れには派閥からお金を百万単位で派の議員に配られるそうでありますが、これは事実なんですか。
  35. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今派閥を離脱していることになっておりますので、そこでのそういう意味での答弁はなかなか、ちょっと言いにくいところですけれども、確かに盆暮れですね、派閥からそれぞれある一定の資金援助をいたすことはございます。(発言する者あり)
  36. 山村新治郎

    山村委員長 御静粛に願います。
  37. 和田静夫

    ○和田(静)委員 渡辺郵政大臣の場合には、一年間の政治資金というのは一体どれぐらい、郵政大臣、必要なんですか。——郵政大臣。郵政大臣と申し上げました。
  38. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 突然の御質問で、一年間にどれだけかかっているかということ、まことに申しわけありませんけれども、ちょっと今きちんとしたことをお答えできないで恐縮でございます。会計の方は会計責任者がおりましてそれぞれ対応いたしておりますので、まことに申しわけありませんけれども、ちょっと今すぐに即答できかねて恐縮であります。
  39. 和田静夫

    ○和田(静)委員 郵政大臣、本委員会で入学問題をめぐってあなたに関して問題点がございまして、過日答弁があったのでありますが、これはどういうけじめを、あなたは郵政大臣として今つけられようと考えていますか。
  40. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 この件につきましては、先般当委員会で山花先生から釈明を求められました。私、まことに身の不徳のいたすところでございまして、本当に恥じ入る次第でございますと御答弁申し上げました。  今後は、私のつたない政治経験の中で、かつまた、これから自重自戒しながら、私自身の政治活動の中で信用を何とか取り戻し、そしてまた、皆さんからも納得していただくように努力をいたしてまいりたいと思っておりますので、何とぞひとつ御理解をいただきたいと思います。
  41. 和田静夫

    ○和田(静)委員 総理、こういうことについてもやはりけじめをつけることが私は必要だろうと思うのでありまして、とにかく政治資金についてどういう御方針をお持ちなのかということを、総理自身の考え方を、党内で論議をしているということではなくて、ちょっと明確にしてもらえませんか。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 まず、政治資金の出の方につきましては、先般、いわゆる冠婚葬祭等の寄附につきまして改革をいたしました。これはかなり実効を上げておりまして、寄附そのものもさることながら、それを、冠婚葬祭に対する対応を完全に行うために必要なたくさんの秘書のための人件費というものがかなり顕著に節約されつつございます。  そういう面から、まだまだいろんな形で出の方を規制していく、私はやり方がいろいろ考えられるであろう。それは、多少人情に反するようなこと、多少の不便はやむを得ません、やはりそれは思い切ってやるべきことが幾つかあるであろうという検討をしております。それから、出の方はそういうことの上で、やはり要る金はきちんと透明性を確保する、そういう観点からやってまいりたいと思っています。
  43. 和田静夫

    ○和田(静)委員 田中角栄元総理を支援する政治団体である政経調査会が、一九八五年に佐川急便から約一億円の寄附を受けられた。普通なら政治資金規正法の規定に基づいて報告をしなきゃならないのでありますが、この一億円を佐川急便グループ百社に分けて、一社百万円ずつ百社からの寄附にした。これなら届け出る必要はない。  しかし、国民から見れば、田中角栄氏の政治団体が一億円もらったことは見えないことになるわけであります。国民の常識、国民感情から見て、このような法規制の現状が妥当なのかどうか。これは総理でいいですか、お答えを。
  44. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 事実関係確認しておりませんので、お答えは難しいと思うのでございますが、そういう点等についての問題点を、透明度の問題ということと絡めて議論をされていくべき問題ではないかと思っております。
  45. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、田中角栄さんを支持する政治団体のこの行為というのは、これは実際上は、形式的に合法ではありますが、法の精神からいえば脱法行為であると思いますがね。法制局長官、いかがです。
  46. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 恐縮でございますが、私自身その政治資金の扱いのところにつきまして実態をよく存じませんので、私自身がこの場で何か申し上げるという自信まではございません。
  47. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは、自治大臣いかがです。
  48. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 実態が明確になればお答えできると思うのでございますが、今のところ私は確認いたしておりませんので、お答えは差し控えさせていただきます。
  49. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この東北佐川急便の当時の経理課長の松野一利さんが裁判所で証言をされているのでありますが、昭和六十三年に清和会に一千万円出しているそうであります。  自治省、これは政治資金規正法上の届け出はありますか。
  50. 吉田弘正

    ○吉田(弘)政府委員 お尋ねの、昭和六十三年度の清和会の政治資金収支報告書には東北佐川急便から一千万円の献金の記載があるかどうかということでございますが、清和会の昭和六十三年分の収支報告書の寄附者の名称欄には、東北佐川急便の記載はございません。
  51. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それから、平成元年四月から毎月、株式会社サンセイというのに顧問料名目で百万円ずつ支払われているそうであります。株式会社サンセイというのは三塚代議士の後援団体所有のマンションに置かれていまして、三塚さんの秘書である伊藤慶治さんが代表である、それから藤倉知格さんが取締役であります。  代表取締役伊藤慶治さんは、三塚薄暮らしと政治の研究所、三塚博自治研究会、三塚博政経懇話。会、三塚博とニューライトの会、三塚博博仙台、三塚博古川連合後援会、三塚博連合後援会、宮城博友会、新経済懇話会、いずれもこの政治団体の事務責任者であります。  また、取締役の藤倉知格さんは、三塚博さんの秘書を十一年間おやりになって、平成二年十一月に三塚博事務所を退任をされた方であります。  ところで、この証言によりますと、顧問というのは名ばかりであって、ほとんど顧問らしいことはしていられなかった。こういうことであるとすると、この毎月百万円は実質的には政治資金なんじゃないだろうか。つまり、三塚代議士の関係されている会社だからこそ出されたお金と思われるのでありますが、こういう場合の解釈というのは、法務大臣、どういうふうに解釈されますか。
  52. 田原隆

    田原国務大臣 実務的な問題でございますので、刑事局長にお答えさせます。
  53. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  具体的事実関係につきまして犯罪の嫌疑があるかどうかというようなことは、改めて申すまでもなく、捜査当局が法律に定められた手続にのっとりまして証拠を収集して、その証拠に基づいて事実を確定した上で判断するわけでございまして、ただいま法務当局から、お尋ねの点について御意見を申し上げることはいたしかねるわけでございます。
  54. 和田静夫

    ○和田(静)委員 どうも私は、政治団体じゃないところに政治資金が入る、それがもし堂々と認められるということであったならば、これは、政治家がみんな株式会社をつくって顧問料をもらえば政治資金の届け出をしないで済んでしまうわけであります。しかし、それでは政治資金規正法が成り立たなくなるわけであります。この法律は空文化をしてしまうということに、自治大臣、なろうと思うのですね。自治大臣の見解を求めます。
  55. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 その際、やはり顧問行為というものがどういうものかということと密接に関係することだと、私はそう思っております。したがいまして、これからの政治改革の議論をされる場合にぜひそういうような問題を議論の対象にして、政治の面でこれを判断をしていただくということにしなければならぬのではないか、このように私は政治改革の今後の議論の展開を注目しておるところであります。
  56. 和田静夫

    ○和田(静)委員 自治大臣には注目じゃなくて主導をしてもらわなければならぬお立場にあるわけでありますが、仮にこの顧問料をもらっておいで時々政治的な力を発揮されて顧問としての役割を果たす、それ以外はすべて政治活動をしているということになりますと、これはいわゆる政治顧問料であります。そういう言葉はあるかどうかは知りません。  株式会社がそういう活動をしているとします。もちろん私はこれは調べまして、会社の定款には政治活動をするとは書いてないのであります。法務省もそれを認めています。そうすると、政治資金規正法の少なくとも私は第一条、第二条の精神には反する、こういうふうに思いますがね。これは法の解釈ですが、法制局長官、いかがですか。
  57. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 委員のお尋ねでございますが、先ほどもお答え申し上げましたように、何とも実態を私存じませんので、お答えのしょうがないと申しますか、恐縮でございますが、お答えを差し控えさせていただきます川
  58. 吉田弘正

    ○吉田(弘)政府委員 政治資金規正法上のお尋ねでございまして、私の方からお答えをさしていただきたいのでございます。  政治団体につきましては、先生御承知のとおり政治資金規正法第三条に規定がございまして、その第三条で、一つは、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体」、二番目は、「特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体」、そして三つ目といたしまして、前の二つに掲げるもののほか、「次に掲げる活動をその主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体」として、イとして「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること。」ロとして「特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること。」という規定があるわけでございまして、こういう具体の、この規定に当てはまるかどうかということでございまして、個々の実態に即して判断をするということになっているわけでございます。
  59. 和田静夫

    ○和田(静)委員 当てはまらないことは当然なんですけれども、法の違反であることはもう明確ですけれども、郵政大臣、ワタナベさんというのは三人もいらっしゃるからあれですがね、あなたのファミリー会社、ユウコウ・インターナショナルに毎月コンサルタント料で合計六千百万円ぐらいが入っていると報道されていますね。これも実質的には政治顧問料なんでしょうね。
  60. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 実は先生、これは会社の問題とおっしゃいますが、私自身本当に関係していなかったのです。前の秘書がいろいろやってくれておりまして、もちろんその秘書のせいにすることじゃありませんが、その実体が、実は今は実体が変わっておりまして、私がその調査をするという段階でございません。  しかし、いろいろ指摘されている問題が、これは事実だとすると、私もかなり反省をしなきゃならぬという問題だと思っております。悪意でやったのか、善意でやったのか、故意にやったのかというところの問題も絡めて、私もしっかりと当時のことも再調査してみなきゃならぬと思っておりますが、何しろ実際問題として私自身の手元にないことでございますので、決して逃げの答弁するわけじゃございませんけれども、ひとつ御推察賜りたい、こう思うんです。
  61. 和田静夫

    ○和田(静)委員 いろいろ言われますけれども大臣の最も身近な方が役員として名前を連ねていらっしゃるわけでありますから、きょうこの問題でこれ以上言いませんが、調査をされようというお気持ちのようでありますから、ぜひ調査をしておいていただきたい。後日また、この問題については尋ねたいと思いますが。  ところで、この株式会社サンセイに、同じ東北佐川から平成元年五月二十五日に一千五百万円、これは新潟知事選挙資金として送金をしたそうでありますが、明らかにこれは政治活動のための資金と言うほかありません。株式会社が政治資金を受け取る、しかもその会社が、今清和会会長秘書をしていらっしゃる方が代表取締役である。実質的にこの政治団体の別働隊とでも言うべき存在と言うほかは、これはないでありましょう。政治資金規正法はそういうケースを想定していないようにも思うのでありますが、しかし、現実に即して考えますと、第八条を援用すれば、これは違反をしていることになるんじゃないでしょうかな。繰り返しますが、これをもし認めれば、政治資金規正法というのは成り立っていかなくなる可能性、その可能性が十分にあるのですが、これは自治大臣いかがです。あるいは部長
  62. 吉田弘正

    ○吉田(弘)政府委員 法律の問題でございますので私の方からお答えいたしますが、政治資金規正法第八条では、「政治団体は、」「届出がされた後でなければ、政治活動のために、いかなる名義をもってするを問わず、寄附を受け、又は支出をすることができない。」という規定になっております。  ところで、政治団体ということにつきましては、先ほどお答えしましたように、政治上の主義主張を推進し、または支持する、あるいは特定の公職の方々を推薦し、支持するということを本来の目的とする団体、あるいはそれを組織的、継続的に主たる活動として行う団体ということになっておりますから、そういう団体について政治団体としているわけでございまして、それ以外のものについては政治団体でないということでこの法律が構成されているわけでございます。
  63. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この会社は活発な営業活動をしているようには見えないのであります。  で、この税務申告、これは国税庁、適正に行われていますか。
  64. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 一般論でお答えさせていただきますが、顧問料というのは、もし正当な役務の対価ということでございますれば、払った方は損金扱い、受け取った方は収入ということになるわけでございますが、その実体を伴わないということになりますれば、払った方に対しては寄附金ということで、損金扱いをしない、受け取った方につきましては、いずれにしてもこれは法人ということでございますれば収入ということでございまして、その実体を見きわめまして、私どもとしては適正に課税するようにしておるところでございます。
  65. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ちょっと質問の趣旨と——これは通告してないんなら話は別ですが、佐川急便全体をやりますからと通告をちゃんと国税にもしてあるわけですから、一般論のお答えは困るのであります。  で、顧問料は申告されているのだろうかということを非常に関心を持ちます。千五百万円の選挙資金は申告されている、具体的なことは今はわからない、そういうことですか。調べて私に知らせますか。
  66. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 私ども、個別の案件に関します内容につきましては、答弁をお許しをいただくことでお許しいただきたいと思います。
  67. 和田静夫

    ○和田(静)委員 こういう答弁は、この予算委員会にはふさわしくないのですよ。千五百万円は、もう一つ聞きますが、公選法上の届け出は、これは自治省、していますか。
  68. 吉田弘正

    ○吉田(弘)政府委員 突然のお尋ねでございますので、政治資金としての報告あるいは選挙の収支報告に記載されているかどうかは、調べてみないとわかりません。
  69. 和田静夫

    ○和田(静)委員 じゃ、これは調査して後から教えてください。  そこで、渡辺郵政大臣は、この新潟の知事選挙が行われるその前までといいますか、直前までは自由民主党新潟の責任者でしたよね。よって、この千五百万円というのは受け取られましたか。
  70. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 それは佐川急便からのお話ですか。(和田(静)委員「ええ」と呼ぶ)全くございません。
  71. 和田静夫

    ○和田(静)委員 いえ、株式会社サンセイからか、東北佐川急便からか、あるいは三塚事務所からか。
  72. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 全くございません。
  73. 和田静夫

    ○和田(静)委員 新潟の知事選挙に佐川グループから三億円を出したというような証言もあるのでありますが、そして裏選対は、報道されましたように二億円は授受したというような形で裏選対の方が答えられている記事がございましたが、郵政大臣、当時県連会長をされていて、こういうお金に関与はされましたか。
  74. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 関与いたしておりません。
  75. 和田静夫

    ○和田(静)委員 郵政大臣は、東京佐川急便渡辺広康前社長とはお知り合いでしょうね。
  76. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 いえいえ、親戚じゃありません、同じ渡辺ですけれども。選挙区内の方でありまして、何回かお目にかかったことはございます。
  77. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは堀之内、大臣の選挙区のことでありますから当然のことでありまして、世上、小沢一郎さんを総理にする会と言われている会があるのだそうでありますが、この渡辺広康前社長と小沢さんなどの会にあなたも御出席になりましたか。
  78. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 一部報道されましたが、その会の存在も承知しておりませんし、あるいはまたその会に伺ったことも一回もございません。また、誘われたこともございません。
  79. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この東京佐川急便グループあるいは佐川急便グループから政治献金はお受けになったことは、郵政大臣、ありますか。
  80. 渡辺秀央

    渡辺(秀)国務大臣 調べてみましたが、後援会にも入っていただいておりません。また、ちょうだいしたこともございません。
  81. 和田静夫

    ○和田(静)委員 佐川急便グループとつき合ったからといって、私は別に悪いわけではないと思っています。ただ、結果としてわかったということでありましょうが、この佐川急便グループは、どんどん巨額の献金をされている実態は、これはもう明らかになってきています。それから、暴力団ともつき合いがあります。きょうは主として、そこの部分は後ほど新しい暴力団法との関係で論議を進めさせていただきますが、企業舎弟などと言われている。  そうしますと、結果に責任を負わなければならない政治家として警戒心が足りなかったということはあると思うのでありますが、これは副総理渡辺さんの方でありますけれども、赤坂のエザンスで佐川会長や渡辺社長らとお会いになったことはございますね。
  82. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 10チャンネルが来まして、社内報か何か載っているというビデオを見せてもらいました。それで思い出しまして、ありました。それは私の仲間というか近しい人が立候補をするということで、同じ新潟県の大なもので、いろいろお世話になっているのでちょっと顔を出して、よろしくお願いします、大変お世話になりますと言ってくれと言われたので一度行ったことがございます。何年ぐらい前が、六、七年前じゃないですか。
  83. 和田静夫

    ○和田(静)委員 立ち入って恐縮ですが、佐川グループの会社から政治献金は受けられたことはございますか。
  84. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 記憶にありませんし、報告も受けてありませんから、ないと思います。
  85. 和田静夫

    ○和田(静)委員 きょうは総論的な論議をさせていただいておりますので、どっちみちこの論議はずっと続くことでございますので、答弁はじっくりお聞きをして、私の記憶にとどめさせてもらいます。  佐川会長は、これは佐川さんは東京の方じゃありません、佐川会長は会津小鉄会と大津の土地をめぐって疑惑が持たれていると言われています。また、山口組ともつき合いがあるという報道もございます。金銭関係を含めてどういう把握をされているのか、これは国家公安委員長、いかがですか。
  86. 國松孝次

    國松政府委員 お答えをいたします。  佐川急便佐川清会長に関しますことにつきましては、滋賀県の大津市内に存在する山林につきまして、会津小鉄会の構成員に対してその土地を譲渡をするというような事案があったわけでございますが、その関係につきましては、現在福岡県警察の方におきまして、その前提となります書類のやりとりにつきまして、公正証書原本不実記載及び同行使の事件があるということで捜査を続行いたしておるところでございます。
  87. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今度は東京ですが、東京の佐川急便渡辺社長は稲川会の石井前会長らとおつき合いがあって、企業舎弟などというような解説つきの報道もあるのでありますが、おおよそどれくらいの金が稲川会系の会社などに流れたのだろうか。これは概要は、警察庁、説明できますか。
  88. 國松孝次

    國松政府委員 お尋ねの件でございますが、昨年の夏、一連の証券・金融不祥事が明るみに出て以来、警察といたしましては、稲川会の前会長が巨額の資金を運用いたしまして株の取引をしていた事実に注目をいたしまして、暴力団対策を進めるという観点からその資金の流れを解明し、そこに何らかの違法行為があれば厳正に対処するという基本方針で捜査を続けてきたところでございますが、その過程で、東京佐川急便の前社長等の不正な貸し付け等が捜査の視野に入ってまいりました。去る二月十三日、関係箇所の捜索を行い、強制捜査に乗り出したというのが現在の状況でございます。  今後とも東京佐川急便の前役員と暴力団との関係を頭に置きまして、着手した事件の容疑事実を初め事案の真相解明を進める中で、東京佐川急便の方から暴力団関係の会社にどのような金の流れがあったかというようなことを私どもとしては追及してまいりたいと思っておりますが、現在どのくらいの額がどう行ったかということにつきましては、捜査中でございますので、確たることはまだ申し上げる段階ではないということでございます。
  89. 和田静夫

    ○和田(静)委員 昨年の六月末現在時点で、北洋産業、これは、石井前稲川会の会長ですね、そのファミリー会社と見られているわけでありますが、約二十八億円余、岩間開発、これも稲川会系で、大手企業が巨額のお金を会員でもないのに出したということで知られている会社ですね、これが、約六十四億円の資金づくりが東京佐川グループによって行われていた、こういうあたりというのは、警察庁、これは確認できますか。
  90. 國松孝次

    國松政府委員 いろいろ取りざたされております会社のうち、北洋産業あるいは北東開発という会社は確かに暴力団稲川会との関係のある企業であるというように考えておるところでございます。ただ、それへの具体的な金額の流れ等につきまして、今確たる金額を申し上げるような段階ではないということでございます。
  91. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今のような答弁、ちょっと予想しましたが、今言った北洋産業、岩間開発に加えて、キタイチ十七億、ノースサンアイ百十億、ケーディーデザイン二十億、キューイーディー十七億、三ッ喜百六十四億、ゴールドバレーカントリークラブ三百三十一億、エイトワン百三十二億、ニッケイ開発百七十一億、北映百十五億、それからいわゆる松沢泰生氏の平和堂グループで、平和堂不動産四百二十二億、ギャラリー平和堂七十一億、平和堂三十三億、住友開発六十五億、ハッピー商事四十億、こうした巨額が貸し付けや債務保証などの形で資金づくりをされていますね。合計すると一千八百一億円。これらは渡辺広康前社長関係から流出し、あるいはつくり出された。渡辺−松沢ルートというふうにとらえてみますと、そこからかなりの額が稲川会系に流出をして、あるいは増幅したと見られるのでありますが、警察庁、どう把握されていますか。
  92. 國松孝次

    國松政府委員 ただいま警視庁において捜査中のことでございますので、具体的な個々の金額等につきましてはお答えを差し控えさせていただきますが、私どもといたしましては、東京佐川急便の前役員と暴力団との関係、そこにおける金の流れというものにつきましては、十分関心を持ちまして、それに重点を置きながら今後とも捜査を続けてまいりたいと考えておるところでございます。
  93. 和田静夫

    ○和田(静)委員 このほかに、早乙女潤前常務のルート、北東開発五百二十八億、ユートピア修善寺百七十億、市原観光四百三十七億、オムネス四億、リバスター音産四百二十一億、橋幸夫さんが社長のユーホーシャングリラに九十五億、合計千六百五十四億円。ここからの資金が暴力団関係に流出しているかどうか、警察庁、これはどう把握されていますか。
  94. 國松孝次

    國松政府委員 同じお答えを繰り返すようで恐縮でございますが、現在捜査中でございますので、詳しいことにつきましての御答弁は差し控えさせていただきます。
  95. 和田静夫

    ○和田(静)委員 先ほど答弁があったように、重大な関心を持ってこれを注目されているということでありますから、私はそういう態度をお持ちになってしっかりやってもらいたいと思うのですが、まだ大きな流れがあるのであります。  その中には、猪木参議院議員が代表する新日本プロレスリングに九億、アントン牧場に十二億、古葉竹識さんが代表のテイクワンに三十五億、日本ロイヤルクラブ二百八億、中沖建設十一億、千翔十一億、武田弘之氏十一億、中央土地建物二百十億、八州東日六十億、エクサインターナショナル百四億、匠栄三百五十八億、太平洋エンタープライズが三十九億、朋栄森林開発百十一億、グレンピークマナーゴルフクラブ百六十億、廣糧五億、スペースプロディースが三十億、スタックが十九億、インターナショナルアールアンドディが六十一億など合計一千四百五十四億円。これも恐らくもう警察庁、国税庁は把握をしていると私は思うのでありますが、ここで答弁がないようでありますから、指摘をまずいたしておきます。  つまり、私は、ここのところを分けて述べたのは、三つの資金ルートということで、グループ分けにして私自身は分類をしてみました。全部合わせると四千九百八億円、これが昨年六月三十日の残高であって、今日なおいろいろの情報を集めてみますとふえているようでありますが、ともあれ、これはほぼ全容であろうと私は思うのであります。  問題の一つは、暴力団の資金づくりが行われたと考えることで、これは全部で大体一千億円近くと言われる。これは警察庁、どこまで把握されていますか。大枠のところなら言えるんじゃありませんか。どこまで解明できるかが私は問題だろうと思っています。殊にこの三月に暴力団新法が施行されますが、こんなふうでは、企業舎弟だかあるいはどういう関係だか、どういうふうに考えたらいいのか、ぜひ伺いたいのでありますが、暴力団新法が空文化してしまうのじゃないかという危惧を実は持つがゆえにきょうあえて指摘をさせていただきました。  警察庁、いかがです。大臣、いかがです、これ。
  96. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほど来刑事局長から説明しておりますように、この問題は幅広く、しかも多方面にわたっております。そこで、暴力団関係をにらみながら警察庁がその分を担当し、そして商法関係の分につきましては検察庁が主として担当しておられる。目下捜査中でございますので、中身につきましていろいろ御質問ございましても、これを具体的に申し上げるわけにはまいりませんので、お許しいただきたいと思っておりますが、刑罰的な規定に抵触するものがあれば、これは厳重に処分するということは、これはもう両庁ともその上に立っての捜査でございますので、そういうことには厳格に臨んでいきたいと思っております。  それから、暴力団新法が三月一日から施行されるのでございますが、これは要するに、暴力団が、この際に正常な市民活動、経済活動に戻ってくれれば、それで、その法の施行によって何も追いやってしまうということでは一概にはないのでございまして、いわば法の適用が行われなければこれにこしたことはないわけでございますが、しかし、今までの経過から見まして、暴力団がいわばその団体の威力を用い、あるいはそれによって恐怖心を与えていくという行為がしばしばあったものでございますから、それを未然に防いでいくということが今回の暴力団新法の大きいねらいでございますのでございますから、この法の施行に当たりましては、万全の措置をとっていくと同時に、それとあわせまして、市民一般の情報の提供ということも大きく期待しておるところでございます。  現在、第一次指定をいたしますにつきましての全力を挙げての調査をしておりまして、これの準備に万全を期しておるところでございます。
  97. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この暴力団新法の趣旨を生かすために、企業舎弟などというその存在ですね、こういうのがあっていいのだろうかということを非常に疑問に思うのですが、大臣はどういうふうに思っていらっしゃいますか。
  98. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほど説明しておりますように、企業舎弟というのは、これはどんな意味なのか私は概念的にわかりませんが、しかし、そういうことから、経済活動が、暴力団の威力を用いて経済行為を行うということがあるとするならば、これはまさに暴力団新法に抵触することでございますので、これに対しては厳重な対処をいたしたい、こういうことでございます。
  99. 和田静夫

    ○和田(静)委員 暴力団新法がこの三月に施行されましても、暴力団は地下に潜行してマフィアのようになるだけで壊滅しないのではないだろうかという説があるほどであります。なぜかといいますと、この日本社会の必要悪といいますか、この暴力団を利用している企業や人たちがいるからであります。暴力団新法の第十条は、この暴力団を利用することをやめさせようという意図と見えるのでありますけれども、そのために企業側や利用者に対して有効な方法がこれはありますか。
  100. 國松孝次

    國松政府委員 御指摘のとおり、三月一日から施行されます暴力団対策法の十条は、「何人も、指定暴力団員に対し、暴力的要求行為をすることを要求し、依頼し、又は唆してはならない。」という規定をしておるところでございまして、ある意味では、暴力団を認容したり利用したりする行為というものを、この規定を活用することによりまして、ある程度制約できるのではないかというように考えております。  ただ、やはりこういう場合につきましても、先ほど大臣の御答弁の中にもありましたように、暴力団が威力を使ってやる取引と、それを背景にして行う取引というものが問題になってくるわけでございまして、そういうものが全くない、癒着をしてしまったといいますか、お互いに積極的な、威力を背景としない取引というものがありました場合には、この法律は、新法はどだい動かないわけでございます。したがいまして、私どもとしては、これはまた暴力団対策法がもう一つ大きな柱として規定しているところでございますが、各都道府県に暴力団排除運動の、追放運動の推進センターというものができるわけでございますので、そういったところを中心にいたしまして、やはり暴力団というものに金を出さない、利用しない、恐れないといったような、企業を含めましての民間の皆様方の暴力団排除の決意といいますか意思といいますか、そういうものを高めていくということがやはりどうしても必要になってくるのではないかと思います。  そうした暴力団排除の機運を高める過程で、暴力団を利用するとかそういったような行為を許さないといいますか、そういうことがしようと思ってもできないというような雰囲気をつくっていくことが大変大切ではないかと思います。これも暴力団対策法のいわばその行為規制の面でのあれではございませんけれども、暴力団対策法のもう一つの側面といたしまして、そういった暴力団排除の機運というのを大いに高めていくというものもございますので、そうした暴力団対策法の施行がされました段階、暁には、そういったものを私どもといたしましても大いに支援をいたしまして、そういった暴力排除の機運を高め、そして企業にもいろいろとお考えをいただき、利用するというようなことが仮にもないというような状況にしていただきたいというように考えておるところでございます。  その点、この暴対法が昨年成立いたしましてから、これまでの状況を見ますと、各企業におきましても大変真剣なお取り組みがあるところでございますので、私どもとしては、そういった機運が今後ますます高まるように、いろいろな形で警察としてできる限りの支援をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  101. 和田静夫

    ○和田(静)委員 暴力団新法の実効性について私はもう一つ考えるのですが、暴力団を追い詰めるのもまあ結構ですが、この暴力団を市民として更生させる教育と方法ですね、それについては大臣、どういう対策をお持ちですか。
  102. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほども申しましたように、今、法人成りとかいうようなことを準備の一つとして暴力団の指定を受ける団体、相当のところがそういうことをやっておるということを聞いております。  それで、つきまして、そういう法人成りをいたしまして正常な市民活動、経済活動に従事してくれるならば、それはそれなりでいいわけでございますが、その会社あるいは事業体がその威力を、やはり暴力団の威力をかさに着て新しい経済活動をやるという場合には、この新法によって厳重な取り締まりの対象にしたい、こういうことでございますのでございますから、あくまでも、この機会に、そういう過去において暴力団に関係しておりましたような人たちが、この機会に正常な市民活動に戻ってくれるように私たちは期待しておるところでございますし、そういうものについての指導育成というか助言というかいろんなお手伝いを、先ほど刑事局長の言っております暴力団防止、暴力活動防止の推進センターがございます、今度は各県につくっておりますが、そこなんかが積極的に窓口となって対応していきたい、こう思っております。ただ、追いやっていくだけがいいことではございませんで、そういう再生、活性化の方向にも我々も努力をしていきたい、こう思います。
  103. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは前国会、参議院の委員会でも問題になったことでありますが、竹下元総理総理になる前のことですが、高松市の皇民党という右翼団体が国会周辺で街頭演説、宣伝行動を繰り返した。まあ言うせりふが振るっていましたがね、竹下登は日本一金もうけのうまい政治家です、竹下新総現実現を。それで、これは言葉と裏腹に嫌がらせであったのでありましょうが、竹下さんはすっかり嫌気が差して、出馬をやめたいとまで言われたというふうに当時報道されましたけれども、警察庁、こういう皇民党の街宣があったことは把握をされていましたか。
  104. 國松孝次

    國松政府委員 突然のお尋ねで、私、今私自身のかすかな記憶で物を申し上げているわけでございますが、そういう街宣がかつてあったというようなことは記憶に残っております。
  105. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それで、この街宣をやめさせるために、まあいろいろの方が奔走されて、その結果、東京佐川渡辺社長から稲川会の当時の石井会長に頼み込んで、そして俗に言う手打ちが八七年十月一日夜、赤坂の料亭で行われて、そして渡辺社長、早乙女常務、皇民党の故稲本代表、稲川会の石井会長の代理、それに何人かの方が出て、それでおくれて金丸さんや竹下さんも出席をされたということのようでありますが、お金が何億動いたというようなことが過日問題に参議院でなっていましたけれども、警察庁はこういうところは把握をされているわけですか。
  106. 國松孝次

    國松政府委員 警察といたしまして確認をしておるところではございません。
  107. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、こういう個人攻撃、しかも竹下さんに対するある意味での嫌がらせと思われる街宣をするのは、これは幾らこの民主主義社会であっても、やはりその行動力は厳しく批判されなきゃならないと思うのでありますが、しかしまた、街宣をやめさせるために渡辺社長のような方を使って暴力団の幹部を動かす、これも私は妥当な措置ではない、こう思うのであります。  かつて六〇年安保のときに、児玉誉士夫さんがやくざ機動隊を構想して関東会をおつくりになったと言われ、その関東会が河野一郎さんを総理にしようとして動いたと当時言われ、報道されたことがありますが、この暴力団の動き、政治介入への危惧、そういうものから佐藤栄作総理が深刻にそれを受けとめて、あの暴力団追放の第一次から第四次にわたる頂工作戦が行われたのだろうと私は理解をしているのですが、つまり、仮にも政治家が暴力団を利用しようとすれば、そういうことこそが暴力団をアウトローとして存在せしめる、そういう温床になったのだということを実は指摘をしておきたいのであります。  総理大臣、こういうことについてはどういうふうに所見をお持ちでしょう。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 具体的なケースを存じませんので具体的なこととしては申し上げられませんけれども、そのような暴力というものは、いかなる人といえども利用してはならないものだというふうに思います。
  109. 和田静夫

    ○和田(静)委員 佐川急便グループは人身事故を含めて交通事故が非常に多かったという証言があります。例えば松山佐川では一年二カ月に四ないし五人もの死亡事故があったそうでありますが、このグループ全体の状況は一体どうなのか、説明をしていただきたい。もしこれが事実としますと、グループ会社全体が暴走していたのではないかというおそれもあるわけでありますが、この事故のもみ消しやあるいは示談に問題はなかったのかどうか、事実を解明してもらいたいと思います。
  110. 國松孝次

    國松政府委員 私がお答えすべきものかどうかもわからないまま出てきてしまったわけでございますが、佐川急便にかかわります交通事故が多いか少ないかとかいうようなことにつきまして、突然のお尋ねで、私、何の資料もございませんし、そういう各企業ごとの事故の統計数字というようなものは、私ども、多分とっていないのじゃないかというように思いますが。
  111. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは運輸大臣、どうです。
  112. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 詳細は存じておりません。また、担当の政府委員を出して答えさすように努力します。
  113. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは後ほど、時間もたちますから、調査して回答ください。  よろしいですか、委員長
  114. 山村新治郎

    山村委員長 はい。
  115. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この佐川グループは、暴力団とのつき合いとともに政治家とのつき合いも深かったようで、多くの政治家の名前、お金の動きについての文書もないわけではありませんが、それを具体的に指摘することは控えておきますけれども、しかし、既に触れましたように、田中角栄さんを支持する政治団体への献金やらあるいは三塚代議士の関係していると考えられる会社への献金など、関係者の証言も出てきております。  そこで検察庁に伺いたいのは、そうした東京佐川急便グループ会社などからのこの政治資金の流出についてきちんと調べておられますか、いかがですか。
  116. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  法務当局からお答えすべき事項かどうかわかりませんが、私どもの法務当局の関係でお答え申し上げたいと思います。  先ほどもお話の中にございましたように、この東京佐川急便事件をめぐる刑事事件につきましては、東京地方検察庁の関係で申しますと、去る二月十三日以降、関係箇所の捜索、それから十四日に、東京佐川急便株式会社の前代表取締役ほか三名を、商法上の特別背任の嫌疑によりまして逮捕いたしました。現在、東京地検におきまして捜査をしているところでございます。したがいまして、今お尋ねの点も含めまして、捜査内容等については、現段階でお答えをいたしかねるわけでございます。
  117. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これも捜査内容だと言われてしまえばそれまでになってしまう危険性がありますが、東京佐川には、一日に数人は政治家や秘書が出かけていたそうであります。入り口にはこの受付名簿がちゃんとあったわけで、で、そういう受付名簿というのは、これは検察が押収をされたんですか。
  118. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今委員お尋ねの個別の証拠の内容等については、法務当局でもちろん把握しているわけではございませんし、仮に把握しているといたしましても、お答えすることはいたしかねるわけでございます。  ただ、一般論としてお答え申し上げますれば、検察当局を含めまして捜査当局におきましては、必要と考える証拠につきましては押収等の手続を進めることは当然でございます。
  119. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今、私は、国民はどこまで検察厳正捜査をしてそれを公表するかを見守っていると思うのであります。かつてロッキード事件で、いわゆる灰色高官の公表が行われたわけでありますが、検察はそこまで、法務大臣、おやりになりますか。そういう政治家への資金の流れまで含めた厳正捜査を当然行うと思いますが、法務大臣、大丈夫ですね。
  120. 田原隆

    田原国務大臣 お答えします。  ロッキード事件のときのようなああいう報告は現在考えておりません。
  121. 和田静夫

    ○和田(静)委員 いや、そういう趣旨じゃありませんが、まああなたの答弁は何かこう含みがあるような答弁に思えて仕方がありませんけれども、これは厳正捜査というものを強く求めておきます。  そこで、この東京佐川の政治的動きの一つで表面化したのが、あの猪木参議院議員の関係会社への貸し付けや債務保証であります。これはビジネスだと本人が言っておられるようでありますから、まあそれはそれとしておきますが、疑問なのは、都知事選挙に絡んで金丸氏、小沢氏あるいは渡辺広康前社長、猪木さんが会食をされる、で、その後に猪木さんが出馬を取りやめられる、そして貸し付けや債務保証が行われたのではないかということでありますけれども、そうしますと、お金の性質が、私は、政治的にはやはり疑問が生ずる、こう思うのであります。この辺は法務省がお考えになるのかな、あるいは自治大臣の方ですかね、答弁を求めます、政府として。
  122. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは、私たちはそういうことはないと信じておりますし、また、当事者からそういうような話も聞いたこともございませんので、お答えできません。
  123. 和田静夫

    ○和田(静)委員 まあこれ以上はちょっと深追いはしませんが……
  124. 山村新治郎

    山村委員長 許可を得てから質問してください。和田君。
  125. 和田静夫

    ○和田(静)委員 国税庁は、この平成元年までの五年間の東京佐川急便の調査をされているはずであります。そのときに、同社の莫大な暴力団やあるいは政界やその他通常取引以外の取引を既に把握をされていたんじゃないかと思うのでありますが、あなた方は守秘義務をお持ちでありますから、あなた方から外に漏れることはないんでしょうが、こういう事実はありましたね。
  126. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 これも一般論でございますけれども佐川急便のような大きな、資本金一億円以上の会社につきましては、かなり密度の高い調査を実施しているところでございます。調査に当たっては、当然、取引内容、取引先等について確認をし、適正な処理が行われておるかを調査をしておるところでございますけれども、個別の調査の内容につきましてはお許しをいただきたいと思います。
  127. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、総理、これは国税庁はしっかりと平成元年に既に一定の動きは把握をされている。しかしながら、それが政治的な疑惑にまでこうずっと出てくるのには大変な時間がかかっているわけであります。私は、政府部内で、守秘義務の限界、大平総理と守秘義務問題を私は参議院議員時代にいろいろ長い時間をかけて論議をした経験を持っていますけれども、省庁間の関係というのをもう少しやはり総理の指導でもってこの時期におやりになれば、しっかりした全貌が出てくるのだと実は思うのであります。そういうような姿勢をお持ちになるという御決意はございませんか。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 国税庁は国税庁として、厳正に与えられた仕事をいたしておると思いますし、また守るべき守秘義務はやはり守らなければならない、こう考えております。
  129. 和田静夫

    ○和田(静)委員 余り期待に沿う答弁じゃありませんで非常に残念ですが、佐川急便関連で、昭和六十一年の内需拡大の関係閣僚会議決定に基づいて、同年八月に建設省から市街化調整区域における開発許可制度の運用について通達が出されていますね。そして早い話、市街化調整区域を活用しようということであったのですが、しかしそれでも不十分だった。つまり、知事の許可制度の運用がしゃくし定規であったので、平成二年十一月三十日に平成三年の貨物自動車運送業法の制定に伴う取り扱いの変更が行われるわけであります。それで、開発許可等の取り扱いについてさらに弾力的な運用がなされるように明示されたのです。これは今の山崎大臣のときじゃありませんけれども、この一連の中で、ターミナルの建設がその中に入ってきた理由ですね、これは端的に御存じですか。
  130. 伴襄

    ○伴政府委員 お答え申し上げます。  市街化調整区域における開発の許可基準につきまして、一般的に開発規制を地域の実情に応じて緩やかにしてきたところでございますけれども、六十一年のときには、当時ちょうど内需拡大策の一環といたしまして、規制緩和の一環としてこの許可基準の見直しをしたところでございます。  特にこのトラックターミナルにつきましては、市街化区域でつくりますと大変迷惑施設というようなことでなかなか立地できないというようなことがございます。したがって、非常に限定的にこのトラックターミナルを調整区域の中で許可しようということにしたわけでございまして、そのときはトラックターミナルだけでございませんで、大規模既存集落内の自己用住宅だとかあるいは地域振興型の工場とか有料老人ホームとか一緒にやったものでございまして、これは社団法人の全日本トラック協会その他からたびたびの陳情あるいは国会からの質問等も受けてやったものでございます。
  131. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この二度の市街化調整区域の開発行為についての規制緩和指導には、今お話があったように、答弁があったように、業界の働きかけが非常に強かったのであります。例えば東京佐川急便の資金調達というのをずっと追って調べてみましたが、この時期に非常に急増しているのですよ。それで、住友銀行、三和銀行などかなり巨額の貸し付けがこの時期にずっと出るわけですが、これは銀行局長も把握されている。
  132. 土田正顕

    ○土田政府委員 この東京佐川急便はもちろん運輸業者でありまして、金融機関それからノンバンクが取引をしておるという状況であろうと推察をしております。  ただ、私どもは、どのような金融機関からどのような融資が行われておるかということについて全貌をその金融機関が必ずしも承知しておるわけではございませんで、東京佐川急便の方からこのような説明を受けておるということを、金融機関から必要に応じて、報道が出るごとにフォローするようにしておるというようなことでございます。  これは、いずれにいたしましても、金融機関の特定取引先にかかわる事柄でございますので、私ども、その全貌を把握しておるという自信もございませんし、立ち入ったコメントは差し控えたいと存じております。
  133. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この問題は、私、若干金額を挙げておきますがね、なお持続的にこの論議をしたいと思っていますがゆえに。  東京佐川急便は、売り上げ、これは九〇年の十二月期で千五百六十八億あるんですが、これに比較して借入金及び債務保証が大き過ぎると思うんですよ。それに対して大手銀行がざっと三千億円程度の融資をしているんですね。例えば、住友銀行三百六十億、三和銀行三百十億、富士銀行二百八十億、協和埼玉銀行二百七十億、太陽神戸三井銀行二百十億などであります。私の判断では、過剰融資というほかはこれはないというふうに思うんですが、現に再建問題が出ているわけですから、ここのところは、大蔵省ですか、どこですか、担当のところで再建問題との兼ね合いにおいてどういう判断をされるんですか。
  134. 土田正顕

    ○土田政府委員 金融機関の融資については、もちろん今さら申し上げるまでもなく、銀行みずからの経営判断において決定するのが基本でございます。  そこで、この東京佐川急便の現況でございますが、既にマスコミなどでも報道されておりますように、前社長の時代にかなりの、いわば簿外保証を行ったというようなこともございまして、同社単独ではいろいろな債務の支払いが困難であるというようなことから、私どもが承っておりますのは、佐川急便が同グループの合併による再建を方針として決定しまして、現在、監督官庁へ合併認可の申請中であるというようなことを聞いております。
  135. 和田静夫

    ○和田(静)委員 農水省に伺いますが、農林中央金庫も東京佐川急便に貸し出しをしているようであります。貸し付けの経緯をまず説明してください。
  136. 川合淳二

    ○川合政府委員 お答え申し上げます。  農林中央金庫は、農林水産業の発展にとって不可欠な重要性を持つ関連産業法人に対しても貸し出しをすることができることとなっておりまして、佐川急便につきましては、農産物等の運送事業を営む法人ということで融資を行っております。そうした一環といたしまして、事業に必要な資金につきまして安定的に取引を続けているというふうに報告を受けております。特に返済が滞ったり事故があったりというようなことはないというような報告でございます。
  137. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは農林中金の名誉のためにも触れておかなきゃならないでしょうから申し上げますが、この東京佐川への融資グループの会社へ転貸されているわけですね。これは内部資料で明らかであります、そういう状態。転貸されたお金というのは、株式運用に使われたようでありますけれども、そういう把握はされているわけですか。
  138. 川合淳二

    ○川合政府委員 今お話しのような新聞報道がございまして、私ども、農林中央金庫からその辺の事情を聞いておりますけれども、これまでの同金庫の調査結果ではそのような事実はないというふうに同金庫が受けとめているという報告を受けております。
  139. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ターミナル建設は、これまた大きな問題がございますから、きょうの時間の中では消化できませんが、おおむね当該物件が担保であります。これは過小担保の可能性というのは非常に強いですがね、大蔵大臣、この辺はお聞き及びですか。
  140. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ちょっと私、この問題について聞いておりません。今担当の方からお答えを申し上げます。
  141. 土田正顕

    ○土田政府委員 融資の債権の保全措置は、物的担保のほかに人的保証ないしは企業の保証もあるわけでございます。そこで、本件の場合にかなり多額のものが東京佐川急便の保証によっていろいろと融資されておったというような話は承っております。それから、ただその物的担保の評価でございますが、不動産なり有価証券など、その担保価値は経済環境の変化などによって変動するものでございまして、その現状について私どもとして必ずしも担保状況を承知しているわけではございません。
  142. 和田静夫

    ○和田(静)委員 先ほど来、この問題での銀行融資問題で幾つかの点を指摘をしましたが、日銀の立場から、こういう銀行の実態についてはどういうふうに判断をされてますか。
  143. 吉本宏

    ○吉本参考人 これは一般論でございますが、私どもとしては、常々金融機関に対しては自己資本の充実あるいはリスク負担の回避ということについて十分注意をするように申し上げております。  ただ、個別問題といたしましては、私ども常々日々のモニタリングあるいは実地の考査ということで金融機関からいろいろ情報をいただいておりますけれども、これらにつきましては私ども行政権限はございません。いわばその取引先との約定でやっておるものでございますので、それらについては申し上げることは差し控えさせていただきたい、このように思っております。
  144. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日銀の参考人のあれがありますから、ちょっとここで話題をわずかな時間だけ変えますが、実は私は、今月の五日にこの総括質問、そのときにデノミ論をぜひやりたいということを考えていましてね。ところが、渡辺総理が最近言われた。そこで副総理、本当にやるつもり、これ。私は、大蔵にもやはりデノミをこの機会に、どういう見解を持っているのか一遍聞かしてもらいたい。できれば文部大臣、あなたのお父さんは著名なデノミ論者であって、私はいろいろと教えてもらった参議院時代がありますが、最近威一郎先生はどういうふうにお考えになっているんだろう、もしおわかりならば。日銀はどう考えているか。それから、最近のいわゆる利子の引き下げ問題で、いろいろなこと重言われているのでありますが、この辺で正直に日銀は見通しを一遍、円高誘導の問題と同時に語っておく必要があるんではないだろうか、いかがでしょう。
  145. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 きょうは時間がありませんから長くは申し上げませんが、これは前々からある議論でございますから、一つの意見として私見を申し上げただけでございます。
  146. 吉本宏

    ○吉本参考人 デノミネーションと申しますのは、これは政府がお決めになることであります。したがいまして、私どもからデノミに対して格別御意見を申し上げるのはあれでございますが、一般論として申しますと、ただいまコンピューター時代でございまして、既に現在のレートを前提に金融機関等に組み込まれております。したがいまして、これを直すのは大変なコストがかかりまして、そういったコスト負担等から申しまして、これはかなり問題があるのではないか、このように考えております。
  147. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 父は、私の子供のころからデノミということを確かに外でも言い、私どもにもデノミというものはいつかやらなければいけない、それは日本の戦後が終わるという意味でも、一ドルが何百円というものではいけない、両方とも一けたの通貨単位同士が比較できるようでなければいけないということを確かに申しておりまして、と同時に、デノミというものはいわゆる経済的な影響の基本的にはないものであって、景気を刺激するとか景気が悪くなるとか、インフレとかデフレとか、そういうことも、本来一切そういうものとの関連のないものでなければいけないというようなことを申しておりましたし、実際、父が大蔵省におりましたころは、その後半の時代も余り政治志望という気持ちはなかったようでありますが、その後参議院へ転じてまいりましたのも、一つはデノミというものをやってみたいという気持ちが心のどこかにあるのではないかと、母も私どももよく予想し合ったことがありますが、現在に至ってもデノミは実施はされておらないようで、最近の父の状況につきましては、この一年半ほど入院をいたしておりますので、余りそういう話をいたしておりません。
  148. 和田静夫

    ○和田(静)委員 大蔵大臣、答えはないですか。  私は、宮澤内閣にとって、宮澤総理が一つの政策としてあなたの本質が全然あらわれない内閣でお気の毒だと思っていますけれども、この辺のことは歴史に残るものとしてあると思うのですが、総理はどう考えていらっしゃるのですか。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 いろいろ御議論のあることは存じておりますけれども、現実の日程に上っておる問題だとは思っておりません。
  150. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日銀、ありがとうございました。  東京佐川急便のこの再建の見通し、運輸大臣
  151. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 今先生も御承知でございますけれども佐川急便グループの中から合併申請と申しますか、そういった形が出ております。大阪佐川、北陸佐川、中京佐川、東京佐川、北関東佐川を合併して事業を継続したいということで申請が出ております。  問題は、東京佐川の保証債務の履行がもう迫りつつあります。そういったことで、同社の単独ではとてもこういった債務を履行していくことはできませんから、そういった形でこの合併によって、何とかグループ全体としてこういった債務履行をしていこうということでの合併でありますから、私どもとしては、この対応としては、やはり関係銀行団を含めて支援策が具体的にどういう形で行われるのか。それぞれの企業は、今はもうこちらの方の企業は——佐川のやっていることの問題が事件化しているわけですけれども佐川全体のいわゆる運送事業そのものは順調に推移しており、しかも一万五千台ぐらいのトラックを中心にした、しかも二万五千人近い従業員体制のことも勘案しながら、こういった金融支援の措置を見守って、これもいつまでもほっておくわけにいきませんから、早い時期に、まあ今月末あたりをめどにして結論を出したいと思っておるところです。
  152. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この佐川急便の問題について、検察答弁、警察の答弁、大蔵の答弁を聞いていましても、しっかり煮詰まらない部分が御承知のとおりありました。  そこで、私はこの佐川清会長、東京佐川急便の湊川現社長、それから三塚さんの秘書の伊藤慶治さんを、証人として事実関係を確かめさせていただく観点から、本委員会にお呼びを願いたいと思います。  特に、佐川会長を私は証人としてお呼び願いたいのは、第一に、東京佐川を含めて佐川グループ全体の総帥であること、したがって、佐川イズムとでも言うべきこの今日まで発展をしてきた経営姿勢は彼がおつくりになったものであること。第二には、東京佐川の前社長を解任をし、告訴をし、そして再建の指導者として、前社長などの行った資金の流れの全容を把握をしていると思われること。第三に、暴力団や政治家とのつき合いは、この佐川会長から始まって、それを引き継ぐあるいは対抗する形、そういう形でもって渡辺社長らが一層推し進めたという点で、佐川会長自身にその政治家、暴力団とのおつき合いを説明していただきたいこと、外ではいろいろお話しになっているようでありますが。  以上から、国会での証言が私はぜひ必要であると考えますがゆえに、理由を明確に申し上げて、取り扱いを任せます。
  153. 山村新治郎

    山村委員長 和田委員に申し上げます。  理事会で協議をさせていただきます。
  154. 和田静夫

    ○和田(静)委員 予算委員長として、私が今理由として申し述べたことに対しての見解を承りたい。
  155. 山村新治郎

    山村委員長 よくわかりました。理事会で協議をさせていただきます。——理事会で慎重に協議させていただきます。
  156. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それじゃ、佐川会長がお見えになった後、私は私の観点に立ってこの問題、さらに深めたいと思います。  そこで総理、大きな経済的な事件とでも申しますか、そういうものが起きますと、必ずと言っていいほど政治家問題が論議をされる、関与しているんではないかなんとかいうことが。そのこと自体に私は、我々全部反省があってしかるべきだろうというふうに思うのでありますが、何か政治の根本のところがやはり私はおかしいんだろうと思っています。問題があるというふうに国民は当然今見ています。総理は、その点はどういうふうにお考えですか。
  157. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今朝以来御質問にありますように、やはり政治に大変な金がかかるという現実があって、そこからいろいろな問題が生じているということは疑いを入れないことであると思いますので、やはり先ほども申し上げましたようなそういう政治の改革を、お互いの倫理の問題としてばかりでなく、制度の問題としてやっていかなければならないというふうに考えます。
  158. 和田静夫

    ○和田(静)委員 総理御自身が政治腐敗というお言葉をお使いになっているわけでありますが、それを直すには、けさほど加藤委員とのやりとりもあったのでありますが、どうしたらいいのかということを、総理御自身はどうお考えになっていますか。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 まず政治に金が要る、その出の方をどうやって少なくするかということでございますが、これにつきましては、第一次の改革はなされましてかなりの成果を上げましたけれども、まだまだ思い切ってする気持ちがあればするべきことがあると思います。これがもう何といっても第一と思います。  それから次に、しかしそれでも正当な理由があって入り用な金というものがございますれば、それはやはりその透明性の確保をする、世の中に公開をしてそうしてこのような性質のものであるというその透明性を確保する、こういうことがさしずめ必要であろうと思います。
  160. 和田静夫

    ○和田(静)委員 問題の根本が政治資金にあることは、これはもう明確であります。ロッキード疑獄だとかリクルート疑獄、そして今佐川急便から政界へ流れたと見られる巨額の政治資金をめぐって、疑獄事件に発展するのではないかという疑惑が持ち上がっている。最近でも、前内閣の深谷郵政大臣の政治資金をめぐる問題、私もここで論議をさせていただきましたが、あるいは共和事件など、毎国会のように問題が絶えないのであります。  端的に言って、こんなことが続いているから政治不信が広がるのでありましょうし、本来であればこういう議論よりも政策論を闘わすべき国会が、十分な政策論議をやらずに舞台裏で折衝が行われるということになっている。こういう事態を基本的に改めるべきであります。その決意と方針は、宮澤総理はどういう形でお持ちでしょうか。
  161. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 幾たびか政治改革の試みがなされてまいりましたけれども、なおこのようなお話しのようなことが後を絶ちませんということは、政治改革が不十分であるということにほかならないと思いますので、この国会におきまして各党側協議の上で、ひとつ思い切った政治改革が行われるべきであろう。それにつきましては、私どもの党も具体的な案を具しまして各党と御相談をさせていただいて、この国会においてただいま御指摘のような問題についての対処をお願いをいたしたいと私は希望しております。
  162. 和田静夫

    ○和田(静)委員 朝からの同じやりとりになりますから、少し、ちょっと具体的な問題で総理の見解を尋ねておきたいのですが、政治資金規正法は、現状では先ほど来私が指摘をしたところに見られますように、報告義務などの規制があるにもかかわらずすり抜けられて、それで実質的な効果を上げることができない。つまり、形式的な規制に終わっていると思うのですね。現行法ではその目的を達することができない、ざる法であると言わざるを得ないのですね。言ってみれば、現在の政治資金規正法はそういう意味でどうも私は、重ねて言うがざる法だ。そうすると、政治資金の出入りの透明性をふやすという考え方、例えば一万円ぐらいの収入や物品授受まで出入りの全体を公表している国もあるわけでありますが、自由民主党の政治改革基本要綱をずっと読ませてもらったのですけれども、これもやはり収支全体を全く透明にすると書いているのですね。政治資金の出入りについてその全体を押さえて公表する、そういうような、現行法を一定の期間内に改める、そういう考えは、もしおありならば、ずるずるずるずるいくんではなくて、いつの時点でというようなことを述べられますか。
  163. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 御質問ございましたように、自由民主党の方でも鋭憲政治改革の要綱を取りまとめいたしておりますし、過日、日本社会党、公明党、民社党の諸政党におきましても、基本的な考え方が公表されてまいりました。したがいまして、これを受けまして、私たちといたしましては、できるだけ速やかに、国会決議等もございますしいたしますので、院内におきますところの政治改革協議会でございますか、あそこで各党間の協議を速やかにしていただきたいということを期待いたしております。  それと同時に、政治改革を担当しております自治省といたしまして、各党間におきますところの主張をしておられることをわかりやすく国民に理解していただくような、そういう手だても講じまして、この問題が国民の合意の上に改正されていくようにしていきたい、それが政治に対する信頼回復への大きい一つの要因にもなってくるのではないか、こう思っておるのでございまして、取り急ぎひとつ院内におきますところの政治改革協議会の進行をお願い申し上げたい、こう思っております。
  164. 和田静夫

    ○和田(静)委員 総理に。公的資金によって政治活動を行うというような見解も吐露されているグループもあるわけでありまして、そういうことについてはどういうふうに考えていらっしゃるのかということを含んで、今もお話がありましたし、けさ来総理からのかなり強い決意もありますが、政治腐敗防止法を制定すべきだと私たちは考えていますね。  今月十六日に放映されたテレビ会談でも、我が党の田邊、民社党の大内、公明党の石田、三委員長が企業、団体献金の禁止を骨子として政治腐敗防止の提案をしておって、ここのところは一致をいたしました。  そうすると、総理がここにしっかり理解を示されれば、この国会、早急にこれはでき上がっていくということになるんですが、総理は何か御見解をお持ちでしょうか。
  165. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねは、先ほどから申しております、私どもの党内で検討されております全体の案がどのようなものになるかということと、それから協議会において御協議がどのような方向をたどるかという、そのことに実は関係をいたしておりますものですから、そこまでを見越して私が申し上げることは今適当でないと思いますが、しかし、どういうふうに呼びましても、一つの倫理の問題というのが取り上げられるということは大事なことであると思います。  それからもう一つ、公的な政治資金の援助あるいは補助——どう申しますか、支出でございますは、政府が前国会でございますか、提案いたしました三つの法案の中ではそういうことを考えておったわけでございますが、これは御承知のように大変に三つがお互いに関連をいたしておって、そのことだけが先行するということは非常に難しいという事情がありましたことは御承知のとおりでございます。  ですから、理想的な姿としてはそういうことがやはり考えられるということは申し上げることができますけれども、そういう条件がどのようにして具備されるかというところを御議論いただく必要があるであろうと思います。
  166. 和田静夫

    ○和田(静)委員 通告してあったすべての問題と言っていいほどの問題をきょうはやりおおせないのでありますが、宮澤総理は、政治使命として、「指導性それから信頼構築とともに、国民に対して向かうべき目標と政策手段を明示すること」、冒頭申しました「再び旗を掲げよう」の中でそう言っておられるのであります。政治改革の目標、手段を示していないことはさておくとしましても、政治目標としては、内に生活大国、外に国際貢献を掲げていらっしゃいます。  で、生活大国——大国という言葉は、私個人はちょっと疑問がありますが、趣旨は結構だとして、あなたに本来もっと明確な政策目標を、私は、この中で見られるように持っておられたと思うのですね、宮澤総理は。資産倍増論ですよ。目標は、これははっきりしていますね。しかも、あなたは相当な切迫した気持ち、相当な覚悟でその提案を私、されたと思うのですね。これをずっと読ませていただきましたが、「美しい日本への挑戦」の中でも六ページに、「我が国にとって二十世紀最後の大事業である。この時期を逃すと当分チャンスがやってこないと考える。」とまで総理言っていらっしゃるわけで、やはり卓見だ、こう思うのですが、ところが、なぜこの政策の旗を掲げないのかということを、私は冒頭申し上げたように非常に疑問なんですね。  そうすると、総理は資産倍増論というのはもう放棄されたということなんですか。確かに生活大国への道で六つの目標などというのはしっかり踏まえた上で私は質問してますので、そこのところだけ一言御答弁願えますか。
  167. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは決して放棄をいたしたわけではありませんで、実は私がそういうことを唱道いたしました後、いろいろな事情から、我が国は十年間に四百三十兆という生活関連の投資をすることをいわば国際的に約束をいたして、それを遂行を開始いたしたわけでございますので、そういう意味では政策そのものは軌道に乗ったと考えております。また、それをさらに具体化いたします意味で、今年から新しい経済計画を出発させていただきたいと思いますので、その新しい経済計画の中でも、その線に沿いまして具体的なプログラムを書いてもらいたい。  重ねて申しますならば、そのような、つまり二十一世紀になりまして十年あるいは十五年いたしますと、非常に老齢化率が高くなりますので、それに至りませんうちにいわば豊かな国をつくっていきたいということは全く同じことを考えておりまして、具体的にはそれが四百三十兆の公共投資計画で毎年実現されつつある、また、しなければならないと考えておるわけでございます。
  168. 和田静夫

    ○和田(静)委員 四百三十兆円が出たのであれですが、この四百三十兆円というのはどうも漠然としているのですね。ここに焦点を合わして実はこの総括質問やろうと思ったものですから、大蔵省にも来てもらった、経企庁にも来てもらった、建設省にも来てもらった。そして四百三十兆円を具体的にずっと詰めたが、どこもはっきりしたことは言えないのですよ。なおいろいろ考えてみると、どうも政治的な大枠として金額が日米の間で決まったという感じしかずっと持てない。  四百三十兆円というのは何ですか。
  169. 野田毅

    ○野田国務大臣 四百三十兆とは何ですかという質問、非常に難しいんですけれども総理から御答弁ございましたように、基本的には、一九九一年を初年度として今後十カ年の間に社会資本の整備の総額を四百二十兆ということで目標値を定めたわけであります。これはもう御案内のとおりであります。  ただ、それを具体的に各事業ごとに幾ら幾らという配分はいたしておりません。これも御案内のとおりです。少なくとも基本的にはそれぞれ事業ごとにつくっておりますが、各五カ年計画、それぞれ具体事業についてそういう五カ年計画をつくり、そしてまたその各年度の予算の配分の中で、それらの長期計画あるいはそのときどきの国の財政の状況あるいは地方の財政の状況などを見ながら配分を具体的には行っていく、こういうものであります。
  170. 和田静夫

    ○和田(静)委員 どうも基本計画も全部読みましたけれども、上位計画に経企庁のやつがなっていない。ばらばらだ。したがって、経企庁来てもらった。それじゃ、今出ている五カ年計画、各省十三のやつを合わせたら幾らになるんだと言ったらそれも計算できていないなどというようなことで、たくさんのことを申し上げなさやなりませんが、もう時間もありませんから、後日四百二十兆円問題ではもう少し突っ込んだ論議をいたしたい。  また、大蔵省に財源どうなんだと言ったら、これもノー、自治省に財源どうなんだと言ったら、これもノー、今答弁ができる状態にはない。どれもないんですよ。これは非常に不思議なことでありまして、ここのところはしっかり詰めなきゃならない政策論議の基本だ、こう思うのであります。  国際貢献につきましてもう一つだけちょっと述べておきますが、このODAなんですが、第二次答申、行革審の中でいろいろなことが出ているのです、総理。政府開発援助大綱を策定せよとまず提言を、外務大臣、されています。ここね。それから、ODAの中期目標、年次方針も大綱を踏まえて作成せよと提言されています。それから、援助の広報、情報の公開・提供、ガイドラインを策定し、公表せよ、これも提言をここでされていますね。それから、経済協力研究会を経企庁の中に設置してODAについて報告をまとめているわけでありますが、私は、我が国のODAが各国の経済成長に寄与しているのか、それを示すところの、何といいますか、それを具体的に示すのが最も国民に疑惑を挟まずに理解をされる道だと思っているのですが、そんなことをもう考えていますか。あるいは、各国がどれくらいの雇用を創出して教育、福祉を向上させたか、こういうことを明示できますか。私は明示すべきだというふうに思っています。  時間が来ましたから答弁を求めて、まだODAについてもたくさんのことがあるのでありますが、それらのことはおやりになるのかならないのかということをお聞きをしておいて、後の討論に譲りたいと思います。  それからもう一つは、これは国土庁長官でありますが、この首都機能移転問題に関する懇談会の中間報告が出ましたね。国土庁長官、これは六十キロ以上離れた場所に新しい首都を建設するということでありますが、これについてどういう見解をお持ちですか。
  171. 東家嘉幸

    ○東家国務大臣 お答えいたします。  今、今日、有識者会議、懇談会等で鋭意検討していただいているところでございますので、まだ中間報告、出ておりませんので、この経緯を十分尊重しながらお答えをさしていただく時期が来るんではなかろうかと思っております。
  172. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これも時間の関係ございますから結論を申し上げますと、今おっしゃったようなことはいろいろ、みんな問題点でございます。ただ、経済効果その他の問題は、いずれもODAを出す国は発展途上国が多いので必ずしも正確な答えが出るかどうかわかりません。わかりませんが、重要なことでございますから、十分意を用いてまいりたいと考えます。
  173. 野田毅

    ○野田国務大臣 その効果の分析でありますが、今それを具体的にいろいろ勉強しておる次第でございますが、今日まで日本の、特にアジア地域におけるODAを初め経済協力の成果が今日のアジア諸国の経済の成長に大いに役立っておるのではないかということは言われておるというところでございます。
  174. 山村新治郎

    山村委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  175. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伊東秀子君。
  176. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 社会党・護憲共同の伊東秀子でございます。  午前中の答弁で若干気になることがございましたので、まずそのことからお伺いいたします。  今回の阿部証人喚問に関しまして、法務省官房長、事務次官、それから刑事局長、刑事課長が手分けいたしまして、この予算委員会理事とかあるいは国対関係者のところを、阿部証人喚問は何とか取りやめていただきたいという陳情をしたということが、私たちは部会で報告されております。それに関しまして法務大臣は、何ら関知しておられないという御答弁を午前中になさいました。  そこで、もう一度法務大臣にお伺いいたします。  この問題は、国政調査権という意味から大変重大な問題である。今問題になっておりますのは、司法関係では贈収賄という刑法上の問題でございます。刑事責任でございます。しかし、国会で今追及したいのは、政治倫理の問題であり政治責任の問題でございます。私たちが全員議員が持っておりますこの「衆議院手帖」、これにおきましても、政治倫理綱領のところには、議員は、政治倫理に反する事実があると疑惑を持たれた場合にはみずから真摯な態度で疑惑を解明し、責任を明らかにするよう努めなければならない、こういうふうに書いてあるわけでございます。  そこで、法務大臣としては先ほどの御答弁では何ら関知してないということでございますが、そういった法務省の官僚の方々の行為に対してどのような御意見をお持ちであるか、お伺いいたします。
  177. 田原隆

    田原国務大臣 お答えします。  法務省の職員が野党の幹部の方々を訪れて、刑事被告人証人として国会に喚問することに関する法務省の考え方を御説明申し上げたことは事実でございますが、その内容は、国会への証人喚問については国会の良識にゆだねられた事柄であるとした上で、一般論としては、刑事被告人証人として国会に喚問し、刑事事件内容について証言を求めるとすれば、裁判に予断を与えるとかいうようなことで司法の公正を欠くのではないかということと同時に、刑事被告人といえどもまだ被告でありますから、憲法上の権利保障の観点等から問題を生ずるようなおそれがあるという実務的な事務的な感覚から参ったのでありますけれども、ただ、党の幹部の方々をお訪ねするわけでございますから、法務省内の役人の中でも地位の高い人たちが手分けして回ったというふうに私は解釈しております。  そういうふうに地位の高い人たちのところを回るのでございますから役所の幹部が手分けして回ったと承知しておりますが、それにつきまして事前に私が回れとかどうとか指導したり指揮したり命令したりしたようなことは全くございません。——後で報告を、今問題になってから報告を聞いたからでありますから知るわけで、事前に知ったわけではありません。これは全く天地神明に誓ってそうでございますから、そのように申し上げます。
  178. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 この事実に対して、国政調査権の重要性、特に宮澤首相は、今回の国会政治改革国会だというほどの力を入れて施政方針演説をなさいました。そういう意味ではこの問題に対する国政調査権の発動というのは大変重要なわけでございますが、今の事実関係から考えて、宮澤首相は法務省のお役人の方々の行動に対してどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  179. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ただいま法務大臣が御説明されましたような気持ちからやられたことであろうと思います。
  180. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 役人として、公務員としての越権行為である、国会に対する介入であるとお考えになりますかどうか。
  181. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 国会に介入するというようなことは公務員は考えるはずはないと思います。
  182. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 望ましいことであるかどうかについてはいかがでしょうか。
  183. 田原隆

    田原国務大臣 望ましいとか望ましくないとかというよりも、公務員として実務的に考えてどうしてもその方がいいと判断してやったことでありますから、そのように御解釈をいただきたいと思います。
  184. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 公務員としてどうしても必要だと考えてやったことだからいいんだということなのでしょうか。別に問題はないというふうに今の御発言は受けとめてよろしいんですか、大変これは重大な問題だと思うんですが。
  185. 田原隆

    田原国務大臣 国政調査権は極めて重要な調査権であり、三権分立の一角であるということは十分承知の人たちが実務上そういう陳情をやったわけでございますから、これは真心から発したものと私は思っております。
  186. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 真心からしたから問題ないという御発言だとしたらまた大変な問題じゃなかろうかと思いますが、それはまた次に譲りまして、政治改革の問題についてさらに進めたいと思いますが、今回、午前中の答弁を伺っておりましても、宮澤首相はとにかく政治改革の実現に全力を挙げるという意気込みを大変強く示していらっしゃいます。私としては期待しているところでございますけれども国民としては、またか、またかけ声倒れじゃないか、またまた国民をだますのか、そういう思いでこの国会を見ているのではなかろうかと考えるわけでございます。というのは、それは実証済みだからでございます。  というのは、リクルート事件のさなかに阿部代議士共和に対して金の無心をなさっておられた。リクルート事件で江副氏が逮捕されたのは八九年の二月でございますが、そのころから彼、阿部さんは共和に接触してお金の無心等を始めていると言われております。そして、リクルート事件国民が大変な政治不信を示し、国民の指弾のさなか海部内閣がクリーン内閣として登場したわけでございますけれども、そこに阿部代議士は北海道・沖縄開発庁長官として入閣したわけでございます。そういう意味では大変、今回もまたかという思いで、国民がどこまで宮澤さんは国のためを思って政治改革に力を入れるかと注目しているということを重々今回は考えていただきたい。  九〇年の二月の選挙において、自民党は自民党政治改革大綱というものを公約に掲げました。大変立派なものでございまして、私も何度も何度もこれは熟読させていただきました。そこに書いてある一節を読ませていただきますと、「いま、日本の政治はおおきな岐路に立たされている。リクルート疑惑をきっかけに、国民の政治にたいする不信感は頂点に達し、わが国議会政治史上、例をみない深刻な事態をむかえている。」「いまこそ事態を深刻かつ率直に認識し、国民感覚とのずれをふかく反省し、さまざまな批判に」こたえなければならない。こういうふうなうたい出しで、改革の考え方とか改革の内容を掲げているわけでございます。その中でも、私が大変注目しておりますのは「党改革の断行」という部分でございまして、そしてそこに、第一番目に「派閣の弊害除去と解消への決意」というものをうたっております。  そこで伺いますが、首相はこの大綱を今後も守る気があるのかどうかについて、この派閥の弊害解消へ向けてですが、いかがでしょうか。
  187. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 平成元年という文書ですね。
  188. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 これは八九年の五月作成の、そうです。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは私ども政治改革の原点になるものでございますので、大切にしてまいるつもりでございます。
  190. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 大切になさるということは、これを断固やはり守る決意があるというふうに受けとめてよろしゅうございましょうか。
  191. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 その趣旨とするところを一つ一つ実践をしてまいりたいと考えております。
  192. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それでは伺いますが、この大綱の中には、派閥の解消の第一歩として早急に次の措置を講じたいというところの第一番但に、「最高顧問は派閥を離脱する」、これが「(イ)」でございます。「(ロ)総裁、副総裁、幹事長、総務会長、政務調査会長、参議院議員会長、閣僚は、在任中派閥を離脱する」と書いてございます。これは何ゆえにこういう規定を第一番目に設けたのでございましょうか。総理にお願いいたします。
  193. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それはやはり党運営を公正にやっていくという意味で、考え方として設けられた一つの方針であると思います。
  194. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 党改革のためには真っ先に取り組まなければならない問題として、最高顧問や党四役は派閥を離脱するということをうたっておりますが、現自民党の党四役それから閣僚の中には派閥を離脱しておられない方々がかなりたくさんいらっしゃいますね。私の調べたところでも、綿貫幹事長初め党四役、派閥を離脱しないと表明しておられますし、ついせんだって副総裁に御就任なさいました金丸さんも、首相だって大臣だって派閥から出ているんだから会長職にとどまるんだということを宣言なさっておられます。この事態について総理はいかがお考えでしょうか。
  195. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 形式的に派閥を離脱するしないということよりは、やはり党運営について全党的な立場から考える、そういう心構えでそういう方々はおられますし、また現実にそうしておられるように私は思っております。
  196. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 といいますのは、派閥離脱するしないということは形式的なことだ、だから第一番目の「派閥の弊害」と掲げたことも形式的なこと、派閥を離脱するということもどうでもいいんじゃないかというふうに受けとめるんですが、そういうふうに受けとめていいんでしょうか。
  197. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 やはり党を運営する立場にある人々は党を全党的な立場で運営するという、そういう心構えが大事でございますから、それが一番大切なことだ。ですから、もうそれは派閥はどうでもこうでもいいんだと申し上げておるわけじゃございませんけれども、やはりそういう心構えがまず大事であろうと思います。
  198. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 といいますと、自民党総裁として、先ほどはこれを、大綱をきちんと実践していくと御答弁なさいましたけれども派閥離脱に関しては離脱するよう勧告、勧める気持ちもないというふうに受けとめてよろしゅうございますでしょうか。
  199. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 伊東委員の今そこにお持ちになっておりますものは、私どものこれからの党改革の原点でございます。それを実行していきますために政治改革等々いろいろ具体的なことをこれから積み重ねてまいらなければなりません。ですから、すぐ全部の理想が翌日あるいは一年後にできるというものではありません。必ずしもそうではございませんで、そういう具体的な改革を積み重ねていってこういう姿に最終的にはしていきたいというふうにその党改革の要綱は考えておるわけでございます。
  200. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 素朴に、率直にお答えいただけたらありがたいのですけれども、この決めたことを実践していきたいという首相のお気持ち、私大変わかるのですけれども、そうしたらやはりまず党四役や閣僚、そういった方々の派閥離脱ということを実践したいというお気持ちがあるかないか、この点についてはいかがでしょうか。今すぐという意味です。
  201. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そこへ掲げておりますいろいろな理想が一つ一つ具体的な改善を積み重ねることによって実現をしていく、そういう努力をいたしたいと思っています。
  202. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 渡辺総理にお伺いしたいのですが、渡辺総理はまだ渡辺派の会長のままであるというふうに承っているわけでございますが、そのとおりでございましょうか。
  203. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 派閥を離脱しておりますから、空席です。
  204. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 といいますと、渡辺派の会長さんは空席のままということなんでしょうか。
  205. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 まだ戻ることもありましょうし、いろいろ事情がありますから。実際派閥の実務をやらない、したがって空席なんです。ですから、会長代行というのを置きまして、そのために会長代行が全部仕切っているわけです。
  206. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それから、この大綱のやはり派閥の弊害のところには、三番目に、派閥の実務者間によって実質的に党機関の意思決定にかわると思われるようなことは行わないというふうに言っているんですね。つまり、事務総長会議、あれはやめますということをうたっていると思うのですが、ついせんだって私もテレビでこの目でしっかり見たんですけれども加藤六月派事務総長を入れるかどうかということで事務総長会議がいろいろ持たれたということが放映されておりました。この事務総長会議についての、今後行わないというふうに大綱にうたっているわけでございますが、今後どうするかについての首相の御意見をお伺いします。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは、党の執行部が決めますことは執行部の責任において決め、実行されているのであって、それ以外の人々があれこれそれに干渉したり、そのかわりに何かを決めるなんということは、これはいたしません。私どもも大きな政党でございますから、中を運営するのにはみんなでいろいろな工夫をしてやっておりますので、その点は、執行部は執行部としての責任を立派に執行部の責任において果たしておられますことを申し上げておきます。
  208. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 リクルート事件というのは、大変総理、日本の歴代の総理それから実力者と言われている方々が総なめにリクルート事件に関与していたという大変な政治不信を生んだ事件だったわけですね。日本は総理大臣を犯罪すれすれの人しか持てない、こんなことになるのかという大変な国民は危機感を持ったわけでございます。その元凶に派閥がある、これ以上派閥が肥大化していったら大変だということもそのとき考えたからこそ、国民派閥に対する問題を指摘し、自民党もこういう大綱をつくったのではなかろうかと思うわけですが、今の御答弁を伺っておりますと、総論では華々しく政治改革を全力を挙げると言いながら、各論、具体的な問題になると何だかうやむやになっていく。大変宮澤首相の政治改革に対する情熱、そういったものに大変な後退を感じるわけでございます。  それともう一つ、今度は阿部さんの問題に移らせていただきますが、阿部代議士平成三年の四月に宮澤派の事務総長に就任なさったときの、新聞のインタビューに答えているものでございますが、「私は宮澤政権実現のために全力を尽くします。」開口一番そういうふうに答えておられます。さらには、同じく新聞のインタビューですが、九一年の十月、つまりこれも平成三年の十月ですが、「竹下派の金丸会長にお百度参りしても宮澤政権をお願いしたいと思い、私はもう何回も通った。」というふうにインタビューにお答えしているわけでございます。この阿部代議士の発言を伺いましても、派閥というのは、総裁を出していく、つまり政権のヘゲモニーをとるためのものだ、そのために人と金を集めるところだというふうに私など新人議員には映るわけでございますね。  そこで、宮澤首相にもう一度お伺いしたいのですが、こういった、宮澤派事務総長として阿部代議士が金丸会長にお百度参りに何度も通ったという事実があったのでしょうか。いかがでしょうか。
  209. 加藤紘一

    加藤国務大臣 派閥というのは、それぞれお互いに何となく気性の合う人間が集まってできる集団でございますし、また、政策的に傾向が似ている人間の集まりであって、そして当然その中心になる人を総理大臣にしたい、こう思うわけでございます。  そういう中でいろいろな、いざ総裁選挙のときになりますと、いろいろな人がいろいろなところに理解を求めて行くのは当然でございまして、阿部さんも行かれたと思いますし、私もいろいろなところにお願いに参りました。その回数が一体何回であったとかということは、別にそれはみんな記録があるわけでもありませんけれども、必死になってあちらこちらにお互いが声をかけ合ったことは事実でございます。
  210. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今大変おもしろい御答弁がありました。傾向を同じくする人間が派閥に集まるというようなことでございましたが、今回の共和事件は宮澤派ぐるみの事件ではないかという疑惑を国民が持っているわけでございます。  といいますのは、私は、共和事件との関係が、客観的に、づまり花輪を贈ったとかパーティーに出たとか共和関係者がお金を配ったと供述しているとか、そういうようなものをもとにどういう議員が挙がってきているかを数えましたところ、十一名おられました。亡くなった方は除きます。その中に何と九名、宮澤派の議員がいるわけでございますね。残念ながら、今お答えいただいた加藤官房長官の名前も挙がっております。  それはどういうことかと言いますと、共和の函館分室、平成二年の一月二十日、函館分室の開設のパーティーに花輪を贈った、それから共和関係者が一千万を渡したと供述しているとか、大変いろいろ言われているわけでございますが、私の地元の北海道の道会議員にも阿部さんからお金が渡っている。それが全員宮澤派の方々でございまして、うわさされている方々は。その中で三人の道会議員はお金をもらったということを認めているわけでございます。その認めている三人も残念ながらすべて宮澤派というような状況でございまして、国民としてはどうしても宮澤派ぐるみではなかったかというような疑惑が持たれているわけでございます。  ですから、この問題については進んでいろいろ積極的に疑惑解明のために御答弁いただきたいわけでございますが、阿部さんが一九九〇年の一月に総選挙で宏池会の資金が必要だということで共和お金要求した、それで五千万円受領したということを供述しておられるようですが、こういう事実はあったんでしょうか。
  211. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど同じ傾向というのは、政策的な傾向でございますので、それは当然伊東さんの御質問であったらそういう意味におとりいただくだろうと思って申したのですが、政策的傾向。あるところではタカ派だとかハト派だとか、いろんなことを言われますけれども、やはりそういった政策的な傾向というものは、一つの流れみたいなものが派閥にはそれぞれあるかもしれません。肌合いみたいなものかもしれません。  それから、今お話しの、確かに阿部さんが私たちのグループに属していたということもありまして、いろんなことの名前が出ていることが御指摘ありましたけれども、その事実関係等につきましては、私がここから申し上げることではないと思います。  私について言えば、花輪というのは、ある事情がありまして、というのは、あそこの地元が私の出身の鶴岡市というところの移民者の多いところで、鶴団地区、鶴岡小学校というのがあるところなものですから、そういうことがあって、まあ、ある種の選挙運動みたいなもので、名前を出したことはあります。一千万の話はありません。  それから、ほかに今、総裁選挙のときにお金を出したかということですか。(伊東(秀)委員「受領した」と呼ぶ)そういうような事実関係等につきましては、私がここで申し上げられることではありません。事実関係等については存じません。ただ、派閥に総裁選挙でお金が入っているかということについては、ございません。阿部さんから正規に派に対する献金が一千万あったということは累次お答えいたしているとおりでございます。
  212. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今のお答えでは、阿部さんしか知らない事実ということになろうかと思います。ほかにも阿部発言、阿部代議士の供述として、一九九〇年三月、宮澤派への献金を要求して、同じく五千万円受領した。また、同じく一九九〇年の六月ごろには一億四千万円も受領したと言われているわけでございまして、今の加藤官房長官の御答弁では、一千万円の献金以外ない。とすれば、阿部代議士としては、自分にくれと言っているんじゃなくて、宏池会の資金が必要だとかいうことでこういう形で金品を要求している。大変大きな事実が食い違うわけでございますが、どうしても阿部さんを呼ばなければこの事実は明らかにならないわけでございますが、こういった今贈収賄事件で問題になっている九千万円ですか、九千万円以外の、宮澤派ぐるみではないかという疑惑に直結する、そういったお金について、この国会の場で阿部さんに証言させるのが最も国民の前に事実を明らかにするのではなかろうかと思うわけです。検察がやっているのは九千万円でございまして、この今申し上げたお金についてはやっておりません。  この点について、宮澤首相の御意見はいかがでしょうか。
  213. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ちょっと御質問が、私がお答えすることではなさそうに思います。
  214. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 つまり、宮澤派へお金をもらいたいということで阿部さんは要求し、五千万円、二回受領した。さらには一億四千万円も受領したというふうに供述していると伝えられているわけですね。先ほどの御答弁では何ら一千万円以外は宮澤派には入ってきてないというふうに答弁されている。非常に食い違いがある。この点について、阿部代議士本人に、きちんとここで、宮澤派には疑惑がないということを明らかにするためには、証人としてお呼びになって明らかにしたらいかがですかということを申し上げているわけでございますが、いかがでしょう。
  215. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私として申し上げられますことは、そういう事実がないという先ほど官房長官が申し上げたとおりだということでございます。
  216. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 何ゆえに阿部さんを証人としてお呼びになることに反対なのか。つまり、今申し上げたのは刑事責任を訴追されていること以外なのですよね。そこが非常に問題だということを指摘するにとどめておきます。  あと、それからもう一つ阿部さんに関してなんですが、ちまたに聞くところによりますと、入閣なさるには派閥の領袖の推薦にないと入閣できないというようなことを伺っておりますが、宮澤首相は宮澤派の会長として阿部さんを北海道開発庁長官に推薦なさったのでしょうか。いかがでしょうかひ
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 阿部さんが言われたと伝えられることについて、私はかわってお答えを申し上げることはできません。
  218. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 宮澤派の会長として海部内閣を組閣するときに推薦したかどうかという、宮澤さんに関する事実をお尋ねしているのでございますが。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 閣僚の選考は総理大臣のやられることでございます。
  220. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 といいますと、派閥の会長として、大臣を選任するに当たって推薦したことはないというふうにお受けとめしてよろしゅうございますでしょうか。
  221. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 閣僚がどのようにして選ばれ、内閣がどのようにしてできるかというようなことは、これは一々申し上げるべきことではないだろうと思います。総理大臣のおやりになることであります。
  222. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 決定についてもいろいろ、竹下派何人あるいは宮澤派何人、三塚派何人というようなことが報道されて、非常に、猟官運動とともに国民の疑惑の焦点になっているわけでございますが、今のお答えでは、まるでちょっと他人事のような、推薦はしたことがあるのかないのかわからないような答弁に例えるわけでございますが、北海道開発庁長官という職務には北海道の出身の議員は、いろいろと利権が絡むので推さないというか、余り就任しないというような不文律があった、あると言われておりますが、この阿部さんの場合はまさしく北海道出身の代議士でございまして、それで長官になられた。そして、このような不祥事が出てきたということが事実として出ているわけでございますが、阿部代議士を推薦したのではない、しかし、就任した。この事実については、宮澤派のかつての会長さんであり、党の総裁としてはいかがお考えでいらしゃいますか。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 御質問の意味がわかりませんけれども、閣僚の選考は総理大臣が御自分の責任でなさることであります。     〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
  224. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 重ねて伺いますが、阿部代議士は宮澤派の事務総長でございました。どういうことで事務総長に就任させたのでございますでしょうか。
  225. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは、事務総長といいましてもいわゆるお役所や何かの役職と違いますので、政治家グループの集まりでございますから、みんなのいろんな意味で世話をやいてもらうのにだれが今度はいいかなというようなことで自然にやはり決まっていくのであって、役所のように任命するとかなんとかいう、そういう難しいものではない、一般的に申しましてそういうことだと思っています。
  226. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 大変、大した職業、大した地位ではないような御答弁でございましたが、現実には宮澤政権誕生の大変な裏役者になったというふうに我々は見ているわけでございますよね。そして、その宮澤派の事務総長であった方が——ちょっと静かにしてください。このような前代未聞の贈収賄事件にかかわっていた、この事実はもうゆるがせにできないわけでございます。そして、宮澤政権誕生直後に週刊文春でも今回の疑惑の報道がなされております。それについて宮澤総理としては、当時はまだ事務総長であられたわけでございますけれども、本人やその周辺を調査するというようなことはございましたでしょうか。
  227. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 別にそういうことをいたしておりません。
  228. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それは何かお考えがあって特に調査しなかったのでしょうか。する必要がないというふうに御判断なさったのでしょうか。
  229. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは、もしそういういわば法律に触れるというようなことであれば、それは当然それをつかさどられる司直がおられるのでありまして、それ以外のことを、ちょっと何かにあったからお互いに調べてみようというようなことは、私は別に考える人間じゃありません。
  230. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 冒頭に私が質問したことともかかわると思うのですけれども、司直の問題は、法は道徳の最低限と言われることわざもありますように、最低限の道徳でございます。それで政治家国民の信託にこたえる。そういう意味では、最低の道徳を持ってたらいけない。だからこそ政治倫理綱領が定めてあるわけでございまして、今そこが問われている。司直の手にかからなければ問題はないんだというその御姿勢が、今回のようなこの本当におぞましいと言われる事件を生んだのではなかろうかと私は考えるわけでございます。リクルート事件のさまざまな疑惑の未公開株の譲渡を受けた方とかあるいはロッキード事件の有罪確定した方とか、そういった方々が党の三役や今回閣僚にたくさん宮澤政権では就任しておられるわけでございますが、それに対して午前中の質問で首相は、もう選挙でみそぎを受けたからいいというふうにお考えになったとおっしゃいました。そのとおりでございましょうか。もう一度御答弁いただきたいと思います。
  231. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それよりもう少し詳しく申し上げております。  おのおのが、自分の犯した間違いについてやはりおのおのが反省をし、今日もそういう反省をしておる。そういう立場で選挙民から、もう過ちを犯しなさんなよと言われて負託を受けて国会にまた送ってきてもらった。そういう人々であれば、そういう負託にこたえるために反省をしつつ、そのおのおのの才能を選挙民のために生かして使う、選挙民のために努力をするということは、これは大事なことではないか、こう思いまして、いたしましたというふうに申し上げたわけでございます。
  232. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それは未来に向かってということでございますが、やはり未来に向かって何かをする場合には、その起きた事件をきっちりと事実を直視する、そしてその原因を究明するということが一番重要じゃないかと思うのですね。宮澤さんの、私は今回の施政方針演説も大変熟読させていただきましたが、その中にも大変、国際貢献のくだりにおきまして、経済、政治の両面で日本が積極的な役割を果たさなければならない、そこで留意すべきことは過去の歴史認識の問題であります、我々は過去の事実を直視し、歴史を正しく伝え、二度とこのような過ちは繰り返さないという戒めの心をさらに培っていきますと、かつての戦争について述べておられます。これと同じことではなかろうかと、リクルート事件も。みそぎを受けたというようなそんな生易しいものではない。やはり事実をきちっと明らかにする、みずから、まず隗より始めよで明らかにする。そのためにも、この共和という事件を目の前にして、リクルート事件が決して終わってはいなかった、その全く連続線上にあるということが明らかになったわけでございますので、宮澤さんに関するリクルート関係証人喚問に応じるという点、そういうふうにしたら、より国民は納得するんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  233. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは前国会におきまして、お求めの資料を御提示をいたし、私自身が誠意を持って御説明を申し上げた、私はそう考えております。
  234. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それで納得できないから野党が、全野党が証人として請求しているわけでございますので、これはこの国会でもぜひ前向きに、その政治改革への意気込みをあらわす証明として応じていただきたいと重ねて要望しておきます。  さらには、政治家と官僚と業界の癒着の構造をあらわすものとして、今回北海道開発庁の長官であられた阿部さんの問題が事件として係属しているわけでございますが、北海道開発庁の出先機関である北海道開発局、ここと業者との癒着の問題が今大変北海道では問題になっております。これは私は、開発庁、開発局を追及するという視点よりも、むしろあらゆる官庁に見られる事象ではないか。だからこそ政治家猟官運動をしてまでも大臣になりたがる、政務次官になりたがる、族議員になりたがる。そして官僚への影響力、さらにはその官僚が持つ業界への影響力を利用して業界から政治献金を多額に集めるという構造が今開発局の癒着の問題として北海道内では問題になっているわけでございます。  具体的に申し上げてもいいんですが、私はここに北海道開発局が発注し受注した百社の、受注上位百社のリストを持っておりますが、何とこのリストを調べますと百社のうち四百七十一名の一ちゃんと最後まで聞いてください。四百七十一名の開発庁OBが天下っている。そして、例えば上位六社、読み上げてもいいんですが、時間がございませんので、六社の状況を見ますと、昭和六十一年には十三位であったある建設会社は、六十三年に開発局の局長社長に、あるいは元年には道路事務所長を営業部次長にと迎えて、平成二年には六位、六十一年には二十六億六千万だった受注額が一挙に四十五億四千万に上がっている。こういった不明朗な関係が今指摘されているわけでございます。  この点につきましてさらに調べましたところ、開発局の官僚の天下りの状況なんですが、これはもうトップだけを申し上げますと、昭和六十二年と平成三年、これを比べますと、何と六十二年に十八名だった土建会社会長さんが平成三年には三十二名になっている。六七%のアップ。技術顧問は、六十二年は百八十八名だったものが二百八十八名、五三%のアップ。大変、わずか三年余りの間にこういった土建業界への開発局の高級官僚の方々の天下りが増加している。  この点について伊江北海道開発庁長官いかがにお考えでしょうか、お伺いいたします。
  235. 伊江朝雄

    ○伊江国務大臣 突然のお尋ねでございますけれども、報道によって一部新聞にそういう記事のあったことは承知いたしておりますが、中身についてはまだ承知いたしておりません、事実関係について。
  236. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 じゃ、次回までに必ず調査して、こちらの方にお伝えください。  さらに、この問題で私は阿部代議士の政治資金の収支報告書を拝見させていただきました。六十三年と平成一年では、たくさんの政治献金の中で建設業界は七社ございました。総額五百十三万円でございます。ところが、阿部代議士が北海道開発庁長官に就任して以降の二年度の報告によりますと、プラス十一社、建設業界からの献金の数がふえておりまして、それは彼の選挙区に関係ない釧路とか、そういった全道にまたがっております。その献金額も千二百六十六万円、二・四六倍でございます。このようにわずか十一社ふえた形にしかなっておりませんけれども、報告がある分でもこのような状況である。ちなみに共和は北海道開発局の指名業者として八九年度から登録されております。  こういう形で大変政治家が官庁というパイプを通しながら業界と結びついていく、そして多額の献金あるいは私設秘書あるいは選挙の応援をもらう、こういった金権の政治が今国民から指弾されているわけでございますけれども、首相としては先ほど午前中の御答弁政治改革、腐敗防止法も検討したいということをおっしゃっておられました。この、業界から政権政党である政治家へ上がっていく企業献金、これを禁止する、そういった腐敗防止法をつくるというお考えについてはどうか、御意見を伺います。
  237. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 一般論として考えますと、企業というものも社会的な存在でございますから、企業が政治家の政治活動を助けることそのものがすべて悪いということは私は言う必要はないであろう、ただそれにはおのずからやはり節度というものがあるであろうというふうに考えます。ただいまのお話のずっと流れでいきますと、企業というものは基本的に何か悪いものだから、それはもう政治に金を出すのはやめさせろというようなふうにちょっとお話の流れは聞こえますけれども、そう企業が全部悪いわけではございませんで、やはり企業としても社会的存在として何がしかの政治への応援をしたいというときに、それを全部いけないと言うことは、私はいかがなものかなというふうに考えます。
  238. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 私は企業が全部悪なんて申し上げているのではございませんで、今回の問題はやはり構造的な問題である。そして業界と密接に結びついていけるがゆえに九千万円、大臣になるには必要だと言って、阿部さんが猟官運動のための費用を共和に対して無心したとか、あるいは大臣になりたい、政務次官になりたい、族議員、そういう形で業界と結びついていくその構造を何とかやめるのにはどうしたらいいかということを提案しているわけでございます。企業が悪などと言っているわけではございませんので、その趣旨を十分お酌み取りの上、ぜひこの開発庁、もっともっと私は資料をたくさん持っておりますので、時間があったらやってもいいのでございますが、企業献金禁止の方向で、政治浄化の方向で御検討いただきたいと思います。  あと次に、従軍慰安婦問題について質問を移らせていただきたいと思います。  従軍慰安婦問題では、一月に宮澤さんは訪韓なさって、日本国の総理として謝罪なさったその誠意には、私も大変敬意を表するものでございます。しかし、そこにやはり裏づけになる補償がないということで、大変韓国の方々も、それから日本の私も含めてやはり悲惨な実態、従軍慰安婦の方々の実態を思うときに、非常に良心と誠意が問われているということを思うわけでございます。  平成三年の三月二十六日の参議院の内閣委員会で政府は、日ソ共同宣言における請求権放棄の問題に関して、放棄したのは国家自身の請求権及び国家が自動的に持っていると考えられる外交保護権であって、国民個人からソ連またはその国民に対する請求権までは放棄していないという御答弁をしておられます。  これを裏返しますと、つまり今従軍慰安婦の方々が日本国政府を相手として損害賠償請求をしているわけでございますが、彼女らが個人として日本国政府に対する請求権、損害賠償請求、それは何ら消滅していないというふうに受けとめていいわけでございますね。
  239. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる請求権放棄の条約上の意味につきましては、これが国家の持っている外交保護権の放棄であるということは、従来からいろいろな機会に政府が答弁申し上げているとおりでございます。そして日韓の請求権の処理でございますが、いわゆる日韓請求権・経済協力協定におきましては、ほかの場合よりも若干詳しい規定を置いておりますことは、先生も御承知のとおりでございます。  御案内のことなので余り詳しく御答弁申し上げませんけれども、重要な点でございますので、ポイントだけ申し上げさせていただきたいと思います。  この日韓請求権・経済協力協定の第一条におきましては、いわゆる経済協力のことを規定しているわけでございますが、第二条の第一項で、日韓の両国間のあるいは両国民間の財産、権利及び利益並びに請求権に関する問題が、「完全かつ最終的に解決されたこととなる」ということを確認しているわけでございます。そして二項では若干の例外、すなわちこの協定による請求権処理の対象にならないものを挙げておりますが、これは戦後の通常の日韓間の取引に基づく財産権というようなものでございますので、従軍慰安婦のような問題には関係ないわけでございます。そして三項におきまして、要点としては、財産、権利及び利益に関する措置、国内的な措置、そして請求権につきましては「いかなる主張もすることができない」ということを規定しているわけでございます。そして、この三項の規定を受けまして、これも御承知のとおり、我が国におきましては昭和四十年に財産権の処理に関する国内法を制定いたしまして、いわゆる法令上の根拠のある実体的な権利につきましては、韓国及び韓国国民が我が国において有するそういう財産権を消滅させる措置をとったわけでございます。ただ、この場合におきまして、そのような国内法上の根拠のない財産的価値を認められるいわゆる実体的権利というものでない請求権につきましては、この法律の対象になっていないわけでございます。  そこで、それではこのような意味の請求権は何かということになるわけでございますが、これはクレームとも言っておりますけれども、このような請求を提起する地位を意味すると考えております。いわゆる外交保護権の放棄でございますから、そのような個人がこのようなクレームを提起するということまでも妨げるものではない。したがいまして、我が国の裁判所に訴えを提起するというようなことは、そこまでは妨げておらないということでございます。
  240. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 裁判において請求する権利、つまり請求権は消滅していないという結論だと思うのですが、それで、韓国において首相は、補償の問題については裁判の行方を見守りたいということを両首脳会談の中でも発言しておられます。しかし、今問われているのは、日韓基本条約の締結の段階では、軍の関与は全くなかった、民間業者が勝手に連れ歩いていたのだという事実のもとに締結した条約であり、さらに新しい事実が出てきたときにその事実に基づいて宮澤総理は謝罪をした、その新しい事実に対しての一つの加害国としてその誠意をどうあらわすか、つまり道義的責任、政治的責任がこの問題では問われているのではなかろうか、こう考えるわけでございます。  そこで、それに入る前に、まず現在の従軍慰安婦に関する軍の関与についての首相の認識をお伺いしたいと思います。  訪韓の段階では、軍が何らかの形で関与していたことは否定できないという大変消極的な事実認定のもとに謝罪なさったわけでございますが、その後、私は二月二日に四十七点の新しい従軍慰安婦に関する資料を入手いたしましたし、昨日さらに九点資料を入手いたしました。その入手した資料では、総理の訪韓前の見つかっていた五点の資料にはないものがいろいろ出てございますが、総理はそういった新しい資料に基づく内容を報告を受けているかどうか、さらに、その報告に基づいてどのような事実認識を持っておられるか、ちょっとお伺いいたします。
  241. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは、官房長官を中心に各省庁がやっておりますので、官房長官から御報告をいたします。
  242. 加藤紘一

    加藤国務大臣 政府の方でも六省庁を中心に資料調査を鋭意やっておりまして、幾つかの資料もまたこちらの方でも見つかっております。その状況につきましては、担当局長から報告させます。
  243. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 御指摘、御示唆のような資料がその後も出てきておりますが、まさにこれらを踏まえて、総理が韓国に行かれます前に、我が国として、従軍慰安婦の募集や慰安所の経営等に旧日本軍が何らかの形で関与していたことは否定できないということを言われ、そのような認識が引き続きこれらの資料によって裏づけられているということだと存じております。
  244. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今の御答弁を聞きますと、何らかの形で関与したことは否定できないというこの事実認定、これは変わってないように聞こえるわけでございますね。  それでは、私は資料に基づいて、時間もございませんのでこちらで事実を明らかにしたいと思うのですが、きょう委員長の許可を得まして事前にお配りしております資料を見ていただけたらと思うのですが、これは資料一というところを見ますと、昭和十九年五月に中山警備隊というところで出した軍人倶楽部の利用規定というものでございます。この第二条のところをごらんください。「第二軍人倶楽部ト称スルハ慰安所トス」と書いてございます。さらに第三条には、「部隊副官ハ軍人倶楽部ノ業務ヲ統轄監督指導シ円滑確実ナル運営ヲ為スモノトス」と書いております。さらに第四条には、「部隊附医官ハ軍人倶楽部ノ衛生施設及衛生施設ノ実施状況並二家族、稼業婦、使用人ノ保健、調理、献立等ノ衛生二関スル業務ヲ担任ス」となっております。第五条では、「部隊附主計官ハ軍人倶楽部ノ経理二関スル業務ヲ担任ス」、すべてこれを見ますとこの慰安所については軍が全面的に統括していたということが明らかになるわけでございます。  さらには付表がついておりまして、一番最後を見ていただきたいのですが、その利用時間表とか第二軍人倶楽部、つまり慰安所の料金表までついております。これを見ますと、将校と准士官と軍属、こういうふうに分けて、値段もさらには時間も軍で区別していたということがはっきり出ているわけでございます。  さらには、第二番目の資料二というものをごらんいただきたいのですが、この資料二の二枚目の昭和十七年の三月十二日に台湾軍の司令官から陸軍大臣あての電報でございまして、この内容は、「「ボルネオ」行キ慰安土人五〇名為シ得ル限リ派遣方南方総軍ヨリ要求セルヲ以テ」、つまり台湾の慰安婦の方五十名、なし得る限り派遣してほしいということを南方総軍から要求された、だから陸軍省としてはその先に書いてある経営者三名の渡航を認可してくださいという申請の電報でございます。それで、資料二の最初のページに返りますと、この電報に対して陸軍省の副官から台湾軍の参謀長あてに、先ほどの電報の件は認可しますという返電を打っているというものでございます。  これを見ましても、明らかに軍が陸軍全体で組織的にこの慰安所を設置し、派遣からさらには経営、慰安婦の方々の衛生の状態の管理、経理まで携わっていたということが明らかになるわけでございます。  三番目についでに申し上げますと、この資料二の三枚目の資料でございますが、これは同じく昭和十七年六月十三日に台湾軍の参謀長から陸軍省の副官あてに出した電報でございまして、「「ボルネオ」ニ派遣セル特種慰安婦五十名二関スル現地著後ノ実況人員不足シ稼業二堪ヘザル者等ヲ生ズル為尚二十名増加ノ要アリトシ」というふうに書いてございます。つまり、五十名要求したから送ったけれども、足りないから二十名の増加の要求があった、それでその二十名についての増加の了承をしてください、こういった電文になっているわけでございます。  このように、これは伺いますと、首相が訪韓する前には多分首相はごらんになってなかったのではなかろうかと思うわけでございますが、ここまで明らかに軍が組織的、計画的に慰安所を設置していたということが明らかになるわけでございますが、この点について首相はいかがお考えでございますでしょうか。新しい事実に関してでございます。
  245. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 訪韓いたしました段階でこの具体的な事実を知っておったわけではございませんけれども、当時既に入手いたしました各種の資料、情報等々から、あの当時訪韓で申しました基本的な認識は持っておりました。したがいまして、この資料はそのことを一層いわば裏づける資料でございましょうと思いますが、基本的な認識はあのときに既に間違いなく持っておりました。
  246. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 当時から、このように軍が組織的に慰安所を設置していたということは認識していたということでございますでしょうか。
  247. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 当時私が持っておりました認識は、その当時日本政府がこのような従軍慰安婦の募集並びに慰安所の設営、経営に関して関与していたと考える理由がある、こういう認識でございますので、その認識は今日と大体同じでございます。
  248. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 渡辺外務大臣にお尋ねするのですけれども渡辺外務大臣は一月十四日の夜のテレビでこのような発言をなさっております。能動的な関与かどうかはわからない、慰安婦の数を数えたり慰安所設置を許可したりという関与かもしれない、それは調べてみないとわからないというような趣旨のことを発言しておられます。つまり、この発言だと、あくまでも従的な、募集にちょっと手をかしてあげたんだとか、そういった関与かもしれないというような発言のようなんですが、新たな事実が出て、今私が読み上げました事実を見たら、これじゃ取り消さなきゃいけないと思うのですが、いかがでしょうか。
  249. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 一月の十三日の当時はわからなかったわけでございますが、そのような資料が出てまいりますと、それは軍が関与したと認めざるを得ないというように思います。
  250. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 渡辺外相の大変誠実な御答弁で、当時はわからなかったけれども、新たに軍が関与していた、積極的に関与していたということがわかったということでございますが、さらに私が入手しました資料によりますと、大変、もう全面的というのがより一層明らかになるわけでございますね。  というのは、「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」という、昭和十三年の三月四日に出されております陸軍省の兵務課というところの文書なんですが、ここで、募集に関する件で、もうちょっと地元の憲兵や警察との緊密な連携をとるよう派遣軍も関与せよということを陸軍省が指示している文書でございますが、これの決裁をしている方が今村均、その後陸軍大将になられて、今村均回顧録という大変立派な本を私も今回読ませていただきましたが、そこの中に慰安所の部分も出てまいりました。そういう方が決裁しておりますし、さらには、当時の陸軍の次官が梅津美治郎という方でございまして、この方の決裁印もございます。梅津さんという方は、周知のとおり最後の参謀総長と言われた方で、そして日本がミズーリ号で降伏文書を調印するときの軍側の調印をした方でございます。もう十三年当時から、こういう形で軍の高官が関与していた。  しかも、どういう関与をしていたかということの実態でございますが、沖縄の平山隊というところから出てきました平作命第五号という文書によりますと、慰安所が足りなくなったので、その増強のため一月十六日より十日間の予定をもって兵寮を築造した、そのために一部兵力を差し出したというような記述になっております。  また、今回出てきた資料によりますと、これは資料三というところを、きょうお配りしたものをごらんいただきたいのですが、資料三の、表紙を入れて三枚目でございますが、これは慰安婦の方々の梅毒の検診を軍医が行った資料でございます。そこにはっきりと、「検査延人員」というところに、「内地人」「半島人」「中国人」という形で、半島人、つまり朝鮮半島の方々が、この報告では南京や蕪湖とかあるいは金壇とか鎮江というところに慰安婦として軍に働かされていたという事実がございますし、さらに、もっと私は、これはもう大変民族差別の象徴たるものだなと思うものは、昨日入手いたしました資料の中に、「昭和十三年三月 常州駐屯間内務規定」というのがございまして、その第九章に「慰安所使用規定」というのがあります。これはきょうの資料にはお配りしてないのですが、そこにその慰安所の料金が書いてあるわけでございますが、「使用時間ハ一人一時間ヲ限度トス」、支那人は一円、半島人は一円五十銭、内地人は二円、「以上ハ下士官、兵トシ将校(准尉含ム)八倍額トス」、こういうふうに書いております。つまり、こういう形で——委員長、お示ししてよろしゅうございますでしょうか。
  251. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 はい、どうぞ。
  252. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 こういう形で、植民地支配をしてきた朝鮮半島の女性を強制的に、あるいは軍隊の方々の炊事とか洗濯とか身の回りの世話をするのだとか、あるいは兵器工場で働かせるのだというふうにだまして運行してきた女性たちを、慰安所で一日に十人も二十大もという日本兵の相手をさせていた。しかも、料金は内地人、半島人、支那人という形で差別をしていたという、非常に非道な実態が出ているわけでございます。  こういうような状況でございますが、なぜこういう軍の慰安所を設置しなければならなかったのか、その点についてはどのような御意見をお持ちでいらっしゃいましょうか。
  253. 加藤紘一

    加藤国務大臣 何せ古い話でもあり、明確にお答えできないことについては御理解いただきたいと思うのですけれども、発見された資料等を読んでみますと、当時の前線の状況から、軍の慰安所の管理運営に関与することを、軍の方が関与することが必要な状況がちょっとあったのではないかな、こう思っております。
  254. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 その必要な状況の中身はどのように把握しておられますでしょうか。
  255. 加藤紘一

    加藤国務大臣 当時、日本軍が駐屯しておりました地域で現地の人たちと軍との間でいろんなトラブルが起きて、軍の規律がちょっと守られないようなところもあって、突き詰めて言いますと、そういう観点から、性的な慰安についての対処をしておかなければ、例えば強姦事件とか起きてしまうというような配慮が、軍の中にそういう声が出て、そしてこういう現地軍からの要請という形になったのではないかと思っております。
  256. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 今の御答弁では、大変消極的な、まあ言いづらいことかもしれませんけれども、かつての戦争は聖戦であったというふうに日本国政府は言っていたわけでございますから、言いづらいことなのかもしれませんが、私が入手した文書にはっきり出ているわけでございますね。  それは昭和十三年の七月一日から七月三十一日までの歩兵第九旅団陣中日誌というものの中に出てくるものでございますが、これは、昭和十三年の六月二十七日に、北支那方面軍参謀長岡部直三郎という人から陸軍の方面軍各部隊に指示した通牒としてこういうふうなものが出ております。つまりこの北支那方面ですけれども、軍占拠地内の治安が大変悪くなってきている。治安回復の進捗は遅々たるものである。その主なる原因は、「軍人及軍隊ノ住民ニ対スル不法行為カ住民ノ怨嗟ヲ買ヒ反抗意識ヲ煽リ共産抗日系分子ノ民衆煽動ノロ案トナリ治安工作二重大ナル悪影響ヲ及ホスコト尠シトセス」。中略しますと、「日本軍人ノ強姦事件カ全般ニ伝播シ実二予想外ノ深刻ナル反日感情ヲ醸成セルニ在リト謂フ」。この軍の発行した文書に、日本軍の強姦事件がその占領地全般に伝播しちゃってどうしようもない状況だ。だからこのような「軍人個人ノ行為テ厳重取締ルト共ニ一面成ルヘク速ニ性的慰安ノ設備ヲ整へ設備ノ無キタメ不本意乍ラ禁ヲ侵ス者ナガラシムルヲ緊要トス」。このように軍の参謀長自身が、強姦とか放火とか住民に対する不法行為がもう蔓延してどうしようもない、だから取り締まると同時に、もはや慰安所をつくって何とかしなければいけないということを通牒として出しているわけですね。ここに見られることは、日本軍が、いかにこれは聖戦と言いながら蛮行を繰り返していたかということの、この太平洋戦争の内実が明らかにされるかと思いますし、女性をセックスの対象としか見ない、この軍の発想というもの、これが非常に人道上も問題であるということを、軍自身の文書が裏づけているのではなかろうかと思われるわけでございます。  これは昭和十五年に、さらに軍紀振作対策という、支那事変の経験より見たる軍紀振作対策という文書でございますが、陸軍省の副官の文書にも、川原直一という人が出した文書の中にもはっきり出ておりまして、もうこの支那事変の中で、中身だけ紹介させていただきますと、略奪、強姦、放火、捕虜惨殺等、皇軍の本質に反する幾多の犯行を生じたために、聖戦に対する内外の反感はもうどうしようもない状況に至っているということがうたってあるわけでございます。このような目的から非常に、何とも非人道的な目的から軍の慰安所が設置されたということが資料上明らかになっておりますし、さらには、もう一つ重要な文書としては、金沢大学の医学部の教授で、当時、軍の軍医大尉という位におられた早尾席雄と読むのでしょうか、この方の「戦場ニ於ケル特殊現象ト其対策」という中にも同じようなことがありまして、さらには上海事変、これは昭和十二年のころですが、大変強姦がふえたことと、中国での商売の女性との接触から性病が軍隊に蔓延している。だから内地や朝鮮半島の少女たちを、女たちを連れてきて、性病を予防して、その管理も軍がやらなきゃいけないというようなことが書いてあるわけでございます。  こういった、本当にこの日本の戦争の本質にかかわるようなことを暴露する形で、今回従軍慰安婦の方々の訴訟が提起されている。まさしく、これは法的な責任などというものではなくて、私は、新たな日韓関係の構築とか、国際社会で信義を求めたいという、首相の施政方針演説にもございました。これから見て、まさしく道義的責任、政治的責任が問われていることではなかろうか。この事実に誠実に対処するためには、被害者になられた方々のいる国の方々に対して、申しわけなかったと、誠意をこういう形で受け取ってくださいと自発的に補償を申し出るのが、私は、本当に新しい日韓関係の構築につながると確信しているわけでございますが、そういった点については、首相はいかがお考えでございましょうか。
  257. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 大たいは実例についてるるお述べになられましたことは私も伺っていて、残念であるがそういう事実が過去においてあった、もともとそういう認識を持っておりましたので、韓国に参りましたときに、大統領に対しても韓国国民に対しても謝罪をいたしたわけでございます。  そこで、次の問題でございますが、これはやはり今、私どもの方で、官房長官を中心に過去のそういう事例をもう少し資料を集めておりますし、また訴訟も提起されております。そういうことの経緯の中から、どういうふうにすべきか、訴訟等々の経緯も見ながら考えていかなければならない問題であろう。ただいまどうということをにわかに申し上げられる段階になっておりません。
  258. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 裁判の経緯を見守るということをおっしゃっていらっしゃいますけれども、もう原告になられた方々は大変高齢である。戦後五十年近く経ておりますし、しかも、ここには内閣法制局長官もいらっしゃるように、この事件は戦前の事件である。戦前の事例を国家に対して、国家の不法行為に対して損害賠償を請求する場合の法的な、適用される法律があったのか。民法上は、天皇は神聖にして侵すべからずであり、天皇のもとにあった皇軍の不法行為は問われない状況、民法の適用はないじゃないか。さらには、国家賠償法というのは昭和二十二年にできた法律でございます。ですから、これが裁判にかかっているといっても適用される法律はないわけでございまして、裁判の経緯を見守るというのはまさしく時間稼ぎ、責任逃れの方便にすぎないじゃないか。本当に誠意があり、新しい日韓関係の構築を真剣に模索するのであれば、この韓国の国民感情、それはもう私などよりも、首相が一月に訪韓なさったときにつぶさにごらんになったと思うのですけれども、それに政治家の決断として何らかこたえるということ、それが今問われているのじゃないかと思うわけでございます。  裁判の経緯を見守るということは、非常に責任逃れである。それはなぜかといいましたら、適用される法の問題、時効の問題、あらゆる、また慰安所の中のあのおぞましい実態を重言しなければ、今原告になった方々は損害賠償を受けられないのかという非常に人道上問われる問題があるわけでございます。こういったことを考えても、まだ首相は裁判を見守るとおっしゃるのかどうか、いかがでしょうか。
  259. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先ほど条約局長からお聞き取りいただきましたような国と国との法律関係、それから訴訟について、個人が我が国の法廷に訴訟を起こすということは、もとよりその個人の自由である、権利である、ただ国家的な保護は受けないけれどもという、そういう法律関係等々万般のことを考えてまいりますと、我々の先輩が我が国として、サンフランシスコの講和条約を初め多国間あるいは二国間のいろいろな条約、協定等によって、問題はともかく整理をされてきたという、過去のそういういわば事実がございます。そういうことも考えながら問題を考えてまいりませんとなりませんので、そういうことから先ほど申しましたようなお答えをいたしておるわけであります。
  260. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 もう私としては、裁判の経過を見守る、適用される法もないような状況で、本当に彼女たちの救済はもう九九%政治的決断にかかっているという状況の中で、裁判を責任逃れの道具には使ってほしくない、心から切実にそう思います。  次に、なぜ彼女たちが、どういう形で連行されてきたかということでございますが、ここに大変重要な証言をなさっている方がございまして、吉田清治さんという方でございますが、彼は戦時中、山口県の労務報国会下関支部の動員部長であった方でございます。彼自身が約千人近くの女性を下関から、朝鮮人の女性を従軍慰安婦に強制連行した。  そのときの実態としては、十人か十五人がまず、吉田さんの部下ですね、十人か十五人が朝鮮半島に出張する。総督府の五十人あるいは百人の警官と一緒になって村を包囲し、女性を道路に追い出す。木剣を振るって若い女性を殴り、けり、トラックに詰め込む。一つの村から三人、十人と運行して警察の留置所に入れておき、予定の百人、二百人になれば下関に運び、下関からその必要とされる中国やあるいは仏印と言われるようなところ、あるいはフィリピン、あらゆるところに送ったということを証言しているわけでございます。そのときには、小さな子供を抱える母親もいた。子供たちが泣き叫ぶ、お母さんと言って泣きつくのをけ散らかして女性を連行していったということを証言しておられますし、これは今裁判になっておる原告の方々も同じことを言っているんですね。  この原告のAさんの場合は、お嬢さん、お金を稼ぎに日本に行かないか、倉敷の軍服をつくる工場へ行けばお金を稼げるし、ミシンも買うことができるよと言われて、そして半強制的に埠頭に連れていかれた。そして船に乗せられた。それからもう自由はなくなった。で、数日後に軍の輸送船に乗せられてラバウルに到着した。ラバウルから教会に連れていかれて、そういった女性が二十人ぐらいいるところに連れていかれ、性行為を強いられた。嫌だというふうに拒否したところ殴られた。もう逃げることはできなかった。そういうことをこの原告の方も訴えておられます。  さらには、一月の十四、十五、十六、大変日韓問題にまじめに取り組んでおられる市民団体の方が従軍慰安婦一一〇番というものを設置されたところ、三日間に二百三十件、三台の電話は鳴りっ放しだったと言われておりますが、そこに寄せられた言葉の中にも同じようなことはいっぱい出てきまして、例えば旧朝鮮国民学校の元教員だったという方の中には、昭和十八年ごろ六年女子のクラスを受け持っていたとき、校長に命じられて女生徒八人を挺身隊員として選別し送り出した。依頼には特に、できるだけ体格がよくて家が比較的貧しい者を選ぶようにと指示があった。当初は飛行機部品作業員の募集と聞いていた。後にそれが慰安婦だということを聞かされて、本当に申しわけないことをしたと思うというようなことが寄せられております。  さらには旧海軍の元少年飛行士という人の証言の中には、昭和十九年四月中旬、南方への移動の途中で仲間と下関の旅館に泊まった。朝鮮人の若い娘さん三、四十人が泣いていたので事情を聞いたら、挺身隊として飛行機をつくったり鉄砲の弾をつくって日本人と一体となって働けるという、喜んで日本に来たのに、これから南方に連れていかれて慰安婦にさせられると泣いていたという、そういう証言も寄せられております。  これについて首相はどういうふうに、連行の事実についてはどういうふうに認識しておられるのでしょうか。
  261. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 御指摘になりました吉田氏の著書の存在でありますとか、今の御紹介になりました一部の方々が話しておられるというようなこと、全部ではありませんけれどもども捕捉いたしております。  いずれにいたしましても、従前から御要請に応じて政府としては内閣官房が調整しながら、我が国政府がいわゆる朝鮮半島出身の従軍慰安婦の方々の問題にいかように関与してきたかは調査しているわけで、それを続けているわけであります。  それから、今最後に御指摘になっておられますようなことは私どもが今調査しているこの段階ではこれを示唆するものはございません。
  262. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 強制連行の実態、慰安婦をどういうふうにして連れ出してきたかはまだ資料は見つかっていないということでございましたが、ここに日本の中にも、あるいは韓国に慰安婦と名のり出ている方々がもう十数人になっているというわけでございますが、ぜひその調査をすべきではなかろうか。韓国政府に対して宮澤総理は誠実なる調査ということを約束なさいました。  そこで私は、どのような形で慰安婦の方々が戦地に送られたかということを明らかにするために、今紹介いたしました吉田清治さん、この方をこの国会において参考人としてお呼びすることを申請いたします。
  263. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 伊東議員に申し上げます。  後刻理事会において検討いたしたいと思います。
  264. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 この吉田清治さんも、もう御高齢でいらっしゃいます。戦後約五十年たつ、早くに取り調べないと生き証人の方々が亡くなってしまうという問題でございますので、ぜひとも誠実な実態調査の履行として、こういった生々しい現実、事実を知っておられる方々を調べていただきたい。吉田清治さんはこの委員会での参考人招請をここで申請したわけでございますが、そのほかにも日韓の合同実態調査を私はすべきではなかろうかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  265. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  先ほど外政審議室長からお答えいたしましたように、内閣官房の御指示によりまして関係省庁におきまして、ただいま日本側におきましては鋭意調査を継続中でございます。他方韓国側におきましても同じような仕組みをつくりまして、韓国側は韓国側で調査を継続中のようでございますから、とりあえずはそれぞれの側でその調査を継続するということではなかろうかと思います。
  266. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 さらには、今政府は九万名余りの朝鮮人強制連行者の名簿を公表しておりますが、朝鮮人強制連行真相調査団という団体の調査では十四万一千九百十六名の名簿を公表いたしております。それは国内と韓国で独自に調査した結果でございますけれども、その中の朝鮮人帰国者初期名簿というところの百六十五名中百四十七名の女性が載っております。これは従軍慰安婦ではなかろうかと思われるわけでございますが、これをさらに裏づける資料がアメリカのスタンフォード大学に保存されていた文書の中から発見されております。  それは一九四五年の十月及び十一月の二回にわたって沖縄に駐留していた米軍の報告書という形で報告されておりまして、この十月の報告書によりますと、「もう一つの公安問題は日本軍が沖縄に残していった慰安婦達だった。彼女達が統制区域内に絶えず問題を起こしていた。米軍は沖縄内すべてのこの女性達を集合させ、韓国に強制的に帰国させることを占領当局に報告し、帰国までの食料等の面倒をみて欲しいとも依頼をした。」そのほかにも四十名ほど集めたということがありまして、さらに十一月の報告によりますと、「沖縄その他のリュウキュウ諸島から集められた韓国慰安婦は無事帰国された。」という報告がございます。そして、この報告とともに、同じ百四十七名の女性のリストがついているわけでございまして、そのリストには、これがそのリストのコピーでございますけれども、韓国の住所と氏名がちゃんとついております。  ですから、首相が本当に誠実に、実態調査を早急にしたい、調査を早急にしたいというのであれば、この名簿からでも住所と氏名をたどるということはできるかと思うんですが、いかがでございましょうか。
  267. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 御指摘の資料につきましては私ども承知いたしております。多分二つの資料が同一のグループに言及しているんだろうということも御推測のとおりではないかなと感じております。  他方、その方々について調査をするということは、何と申しますか、それらの方々のプライバシーにもかかわることであって、いかがなものかと考えております。
  268. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 プライバシーの問題もあるかと思いますが、その辺は調査を非常に、やり方の問題でありまして、まず熱意の問題ではなかろうか。その名簿を掌握しておるのであれば、ぜひ調査に移ってもらいたい。  さらには、あと、本当に調査をする気になるのであれば、強制連行で連れてきたその一九四四年以降は、朝鮮総督府の労働部というところが主体的に朝鮮半島から日本に労働者などを送り込んだわけでございまして、その朝鮮総督府が毎回の帝国議会への報告資料という形で動員の状況などを報告している、そういったことを私は文献上探しているわけでございますが、政府が多分この総督府からの議会に対する説明資料を保存しておられるであろう。これを公表して、その中から強制連行の、アメリカで爆撃の資料の中から発見された、約六十六万名いたというふうにいいながら九万名しか強制連行の名簿もまだわかっていない、こんなずさんなことではなしに、総督府の議会に対する説明資料でもって、強制連行の名簿、さらにその中から女性の従軍慰安婦と思われる方々の資料もわかるのではなかろうか。それを調査するということをここで、する気はないかどうかについてはいかがでしょうか。
  269. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 その御指摘の資料につきましても、現在関係官庁で行っております調査の過程で見つかりますれば、従来どおり公にしていく所存でございます。
  270. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 その総督府の資料、総督府作成の資料そのものは存在しているかどうか、それについてはいかがでしょうか。
  271. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 この資料に言及しております書き物もございますので、調べてみましたけれども、現段階ではきちっとわかっておりません。
  272. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それから、今回明らかになりました問題に関してですが、首相は施政方針演説の中でも、歴史を正しく伝えること、事実を直視することが今後の、二度と過ちを犯さないためには大切であるということを強調なさっておられます。  これは私は大変重要なことで、歴史的なこの日本の戦争に関する子供たちへの教科書問題、これにかかわることだと思うんですが、昭和五十五年の教科書検定におきましても、これは家永第三次訴訟で問題になったわけでございますが、南京大虐殺のころの強姦の多かった事実を削除させております。  当時、教科書論争の一九八二年に大変に起こった当時、宮澤さんは官房長官であられました。それで大変お骨折りいただいたわけでございますが、こういった歴史的事実、日本の戦争の本質にかかわる強姦の実態などを、戦争にはっきものだからという調査官の修正意見で削除させた、こんなことを今後も続けるのかどうか、大変問題だと思うんですが、教科書の記述に関する首相の責任ある御答弁をお願いしたいと思います。
  273. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 総理の今回の国会演説、あるいはその前の韓国での政策演説、あるいは昨年の海部前総理大臣のシンガポール演説、大体皆同じような趣旨であろうと思っておりまして、今先生指摘にありましたように、昭和五十七年当時の、総理官房長官であられたころの官房長談話、まあこのような観点で、いわゆる教科書の検定基準の中にも国際理解と国際協調という、そういう側面を取り入れていくということで、今ちょっと席に置いてきてしまいましたが、現在使われております小学校、中学校、高校の教科書は、一般の方が予想されるよりもはるかに近隣アジア諸国と日本との関係、近隣の諸国にいろいろな損害や迷惑をかけたということが相当記述をされるようになってきているわけでございます。  ですから、既に従軍慰安婦の問題も、たしか一社だけ高校の歴史では日本史で取り上げられているわけでございまして、まあそういう意味では、私としては総理の先般の演説等の精神を踏まえてこれからも教育をやっていかなければならないと思っておりますし、現実に総理が韓国へ行かれてあのような話し合いをされたというようなことについては、きょうも見えておりますが、文部省の坂元初中局長が都道府県の教育委員会の主管部課長会議とかあるいは教育長を全部集めた会議等でも話をされているところでございます。  ただ、教科書に何を書くかということについては、日本の教科書は国定教科書ではありませんで、民間の方に執筆をしていただいて発行をしていただく、その過程で検定を行っているわけでありますから、どの事象を取り上げるかというのはあくまでも執筆者や発行者にゆだねているということでございます。
  274. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 では、終わります。
  275. 中山正暉

    ○中山(正)委員長代理 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。  次に、筒井信隆君。
  276. 筒井信隆

    ○筒井委員 共和事件との関連を中心に、まず政治改革の問題についてお聞きをしたいと思います。  政治活動あるいは選挙活動にかかる費用と比べて議員報酬の額が極めて少ない、極めて大きなギャップがある。私自身は極めて少ない、そういう費用しか使っておりませんが、それでもまだ足りない、大きなギャップがある。自民党議員の皆さんはその十倍、二十倍と言われておりますから物すごい大きなギャップになる。そこで団体献金とか個人献金を求めることになる。そこまでは現行制度上、何の問題もないわけでございまして、わいろでも裏金でもなくて、ちゃんと届け出を出している正当な献金まで私は非難しているのでは全くございません。正当な献金だけではなくて、わいろ、リベートとか裏金を求める、これが繰り返されて今政治への信頼が失われているわけでございまして、これをどう防止するのか、その点をまず確認をしていきたいと思います。  金が不足していて、そこに金がぶら下がっていて、自分にとれる力があるなら欲しいと思う、万一発覚しても政治家を続けられるならなおさら手を出す、現在そういう状況でございまして、必要かっ正当な費用と議員報酬とのギャップを埋めて、かつ、わいろなどに手を出したり不当な支出をしたら厳罰に処す、こういう制度に根本的にこの時期に早急に変えなければいけないというふうに強く考えます。  そのために、まず第一点目としては、社会党と野党も要求しておりますが、企業献金等すべての団体献金を禁止して、最低限度必要な選挙費用、政治活動費用を法定して、その分を国庫から支給する、そういう団体献金禁止、政治資金助成の制度をまず制定すべきだと考えます。  それから、ただそれだけをやったところで、税金を使うわけですから国民は納得しない。国から助成される金額を超える費用を使ったものとか、あるいは助成金を正当な政治活動、選挙活動以外に使ったもの、これらに対してはやはり厳罰に処すという政治腐敗防止法が必要であるというふうに考えます。政治腐敗防止法の対象としては、それ以外にわいろを受けた政治家、あるいは裏金を受けた政治家、さらには買収、供応した政治家、こういうものを対象にすべきというふうに考えるわけでございまして、それにプラスして三つ目としては、監査制度とか訴訟手続の迅速化、こういうものも明確にしなきゃいかぬ。  いずれも野党の方でも要求しているところですが、これらについて宮澤総理に聞いたところで、検討中、検討中という答弁が予測されますので、今挙げた点すべてにわたって現在検討対象になっているのかどうか、それとも、もう既にそんなの検討対象から排除されている事項があるのかどうか、その点をまずお聞きをしたいと思います。宮澤総理。     〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  277. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 御承知のように、かつて政府が御提案をいたしました政治改革に関する三つの法律案の中には、今御指摘になりましたような幾つかのことが含まれておったわけでございます。そして、これは三つともお互いに相互関連するということから三つを御審議を願ったわけでございますけれども、その中で、例えばただいま仰せられました政治活動の国庫補助といいますか、負担といいますかというようなことを取り上げてみますと、そのような補助を受ける資格のある団体はどういうものであろうか。例えばそれは政党というものを定義しなければならないであろうか。しかし、だれも最初から大政党であったことはない。よく俗に言われることは、仏様も最初はおひとりだったというような議論がございます。そういうことから、非常にいろいろ難しいことがありまして、三つのことを一つに関連づけながら御審議をいただきたいということをお願いをいたしたわけでございましたけれども、これはいろいろ事情がございまして廃案になったわけでございます。  でございますから、今おっしゃいましたいろいろな点は、一つ一つメリットを持っておると思うのでございますけれども、全体が相互連関をいたしますから、全体としてどのような構想を持ち、そしてそれを、仮に後先があるにいたしましても一貫した形で政治改革をするということが必要だということで、私どもの党内の中でただいま議論が行われておるわけでございます。
  278. 筒井信隆

    ○筒井委員 今の質問の中には選挙制度の改革は一言も入っていなかったわけでございますが、いずれにしても、今挙げた点はすべて検討対象である、検討対象になっているというふうにお聞きをしておきます。  そのうちの一点について、大蔵省、大蔵大臣にお聞きをしたいのですが、今度の共和事件でもそうですが、非常に大量の使途不明金が出ている。その使途不明金が、わいろ、リベート等、政治倫理に反する金として出回っている。この使途不明金は、現在、税制上正式に認められていて、通常の課税を覚悟しさえすれば、どこに支出したか、だれに支出したか、それを一切言わないで済む、追及を避けることができる、こういう現状になっているわけですが、この使途不明金を認めている現状自体を根本的に変えるべきではないか、たとえ少なくとも使途不明金に関しては通常の課税ではなくて極めて重いペナルティー課税を課すべきではないかというふうに考えますが、その点どうでしょうか。
  279. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 使途不明金につきましては、今御指摘がございましたように、いわゆる適正な課税を行うこと、これ、解明をして適正な課税をするということになっております。  ただ、今御指摘がありましたように、何かペナルティーをどうだろうというお話がありますけれども、これは実は税制調査会の方でも御検討をされたことがございまして、「本来、何らかの経費としての性格を持つ支出を損金不算入とし全額を結果的に課税することは、法人税制の枠内の措置としては限界であるとも考えられる。なお、これ以上の措置を講ずる必要があるとする場合には、商法、刑法等の関連で検討されるべき問題であるとの指摘」がされておるところでございます。以上のような観点を踏まえますと、使途不明金に対しまして税法上の特別な重課税というようなものを設けるということは考えられないのじゃないのかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、今後とも、今御指摘あるいは御意見がございまして、私も直接お聞きしておりますので、今後いろいろな意見を注視してまいりたいというふうに思っております。
  280. 筒井信隆

    ○筒井委員 この政治腐敗防止法の対象にして、あるいは政治腐敗防止法を制定しないにしても、現在、わいろ、収賄を受けた政治家は執行猶予になればそのまま政治家を続けることができる。しかも、収賄として認定するためには職務権限という大きな壁があるという問題があるわけでございまして、ただ、刑法上その職務権限の幅を物すごく緩やかにするというのは、また別の問題が起こってくるので余り賛成できないというふうに考えております。だから、職務権限の有無にかかわらず、政治家としての地位を利用して特定の団体とか特定の個人のために便宜を図ってその報酬を受ける行為をした場合には、刑法としてではなくて政治腐敗防止法の対象として一定期間の立候補制限をすべきだというふうに考えるわけでございます。そのことを具体的な例でお聞きをしていきたいと思います。  今度の共和事件を見てみますと、民間とか国、自治体からの発注工事を企業に受注させてやって、わいろとかあるいはリベートを取る、さらに公団公庫や金融機関からの融資を企業に受けさせてやって、あるいはやると約束をして、わいろ、リベートを取る、この二つの形でございます。阿部代議士はその二つともで起訴されている。その前者、国とか自治体からの発注工事を企業に受注させてやって、わいろ、リベートを取ろうとした例が共和関係でもう一つございます。  田澤吉郎代議士の後援会の沢友会の例でございますが、この沢友会の東京事務所の実質的な責任者というふうに裁判所で認定されております田澤吉郎代議士のおいの田沢克郎という人が中心になってやったわけでございますが、三沢市の一般廃棄物最終処分場建設工事等を三井造船に受注させて、その代償として三井造船から金を取ろうと画策した。その沢友会、田澤代議士の後援会、沢友会の意向を受けて、被告人となりました山本松夫が当時の三沢市長に接近して、市長上京のときに供応したりわいろの支払いを約束するなどして工作すると同時に、現在問題になっております共和の元副社長森口五郎を介して三井造船とも接触した。この沢友会の責任者はこの被告人山本にこういうふうに意向を表明したことが認定をされております。  三井造船に三沢市の工事を受注させてやれば工事額の五%のリベートを取れるはずだし、今後五年間くらいはいろいろな名目で金を出させることができる。結局、この被告人山本の、沢友会の意向の結果始まった行為は、工作は成功して、三井造船に工事が受注されたわけでございまして、その金が共和の東京支店応接室で山本に対して森口五郎から五千万円が渡された。こういうふうな事実結果、有罪判決が出ております。  この被告人となった山本は、沢友会の責任者の意向に従って行動していたわけですが、この沢友会の要求額が余りに高過ぎるので、それでは森口とか自分の立場がなくなるのではないかと恐れて、途中から沢友会を排除して別個に行動した。こういう事実がこの共和関連でございます。  まず確認をしたいのですが、法務省平成三年四月十七日にこの有罪判決があったこと、そして今私が指摘したような事実がこの判決の中で認定されていること、このことを確認したいと思いますが、どうですか。
  281. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今委員お尋ねの件は、株式会社共和の森口五郎らに関する平成三年四月十七日青森地裁判決の贈収賄事件についてのお尋ねであろうと思うわけでございます。  今委員指摘になられました事実関係のうちで、これは委員も御承知と思いますけれども被告人森口ら四名が受託収賄と贈賄の罪で起訴されているわけでございますが、被告人らが沢友会の関係者というふうにはこの判決の中では認定していないのではないかというふうに、少なくともこの判決を読みました限りでは私どもはそう理解したわけでございます。ただ、そのほかの点につきましては、おおむね委員が仰せになった事実関係をこの判決は認定しているということだと思います。
  282. 筒井信隆

    ○筒井委員 私が質問してない部分までお答えになっているのですが、沢友会と読むようですが、この沢友会、田澤代議士の後援会の責任者が、「三井造船がごみ処理工事について実績のない会社なので、本件工事を受注させてやれば、同社から工事額の五パーセントのリベートを取れるはずだし、今後五年間位は色々な名目で全員を提供させることができる」、こういう意向を被告人山本に表明した。そして、被告人山本が当初においてはその沢友会の意向を受けて三沢市長等に接近して供応したり、あるいは工作して、さらには森口にも接触を図ってきた。こういう事実は明確に認定されているわけでございまして、今私が二回目に言ったこと自体は、そのまま認定されていますね。今判決文を読み上げたのですが、どうですか。いろいろなことはいいですから、今言ったことだけ、認定されているかどうか。
  283. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今仰せになられました事実関係につきましては、おおむねそのとおり認定されていると思います。
  284. 筒井信隆

    ○筒井委員 おおむね……。まあいいです。  それで、宮澤首相にお聞きをしたいわけですが、田澤代議士もやはり宮澤派の重鎮でございまして、先ほど同僚議員も引用されましたが、政治倫理綱領でも、「全体の利益の実現をめざして行動することを本旨」とする、国民の代表として。「特定の利益の実現を求めて公共の利益をそこなうことがないよう努めなければならない。」まさにこれは、特定の利益の実現を求めて、しかも、その後援会に金が入るような工作をしようとした。この行為自身、確かに今度の贈賄、収賄の判決の対象にはなっていないわけですが、しかし政治倫理には明確に反する行為と考えますが、宮澤首相、どう考えますか。
  285. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今御質問で御指摘になっておられましたことと、政府委員が答えられましたことと、伺っておりましたけれども完全に同じことであったかどうか、ちょっと私にわかりかねました。したがいまして、事実につきましてのお返事をいたしかねます。
  286. 筒井信隆

    ○筒井委員 私は新聞報道とかマスコミ報道を根拠に聞いているのではなくて、証拠に基づいて公的な裁判所が認定した事実について、それを前提に聞いているわけでございまして、もし、今私が読み上げたところが疑問があれば、判決文を持っておりますからそれをお見せしてもよろしいですが、そこになされているこの後援会責任者の行為、これは実にやはり政治家としては政治倫理に反する行為と考えないのかどうか、この点を聞いているのです。
  287. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今、正確にお答えしておるつもりでございますけれども政府委員がお答えを申し上げました中で、それが沢友会でございますか、沢友会でございますか、それとすぐに関係しているというふうには言っていないように思うという、そういうお答えのようでございましたので、私は事実関係を存じませんから、お二人の御質問と答えを伺っておる限りでは事実に基づいて私の判断を申し上げることができない、こう申し上げておるわけです。
  288. 筒井信隆

    ○筒井委員 じゃ、法務省にもう一度確認しますが、田沢克郎という人が田澤吉郎後援会沢友会東京事務所の実質上の責任者である、こういう認定がこの判決でされているかどうか、まず一点。それから、その実質上の責任者の意向を受けて被告人となった山本という男が、三沢市長に接近して、それを供応したり歓心を買うべく工作して、あるいは森口と接触を図った、こう認定されているかどうか、これが二点。それから三点目として、この後援会の実質上の責任者が、先ほどから二回も読み上げましたが、この被告人山本に対して、「三井造船がごみ処理工事について実績のない会社なので、本件工事を受注させてやれば、同社から工事額の五パーセントのリベートを取れるはずだし、今後五年間位は色々な名目で全員を提供させることができる」、こういうことを言った。  この三点、認定されているかどうか明確にお答えください。おおむねとかなんかじゃなくて、今そのまま読み上げたんだから。
  289. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  先ほど私おおむねと申し上げましたのは、委員の方で判決内容を要約されたと理解しておりましたので、正確を期するために申し上げたつもりでございます。  それで、今御指摘になられました、お読み上げになられました三点は、その判決に記載されているところでございます。
  290. 筒井信隆

    ○筒井委員 それを前提に宮澤総理にもう一度お聞きしますが、こういう後援会の責任者と認定されている人の行為、これはやはり政治家としての政治倫理に反する行為というふうに考えられませんか。
  291. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 もし田澤代議士との関連についてのお尋ねであれば、田澤代議士との関連は今お話しの中では私には明らかではありません。
  292. 筒井信隆

    ○筒井委員 今、田澤代議士の後援会の責任者である、こう認定されている事実を前提に聞いているのです。自分の後援会の責任者がそういう行動をとることについて、政治家としての、政治家として政治倫理に反した行動と言えないかどうかの判断を首相としてどう考えるかをお聞きしているのです。
  293. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 事実関係を存じませんから一般論で申し上げますが、後援会の責任者のしたことが代議士本人に帰属するというようなことは、人格が全く別であるのにそういうことがすぐに言えるものでありましょうか。一般論としては、私はそういうふうには思えない。
  294. 筒井信隆

    ○筒井委員 後援会一般の人を言っているのではなくて、その責任者であると認定されている人の行為について聞いているのですが……。  そうすると、今のお答えですと、たとえ責任者であったとしても政治家本人については政治倫理は問えないという判断、そういう考えですか。
  295. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 筒井委員も法律にお詳しい方でいらっしゃいますから一般論として申し上げますが、後援会の責任者とはまず第一とういうことであろうか。で、それはまた、その代議士とは人格は全く別の人でありますし、法律的にも組織的なつながりがない——これは一般論でございますよ、一般論にすぎませんが、そういう場合に、ですからすぐそれが代議士の何か政治的な責任とか道義的な責任につながるというふうに一般論として私は言えるものであろうかどうかと申しておるわけです。
  296. 筒井信隆

    ○筒井委員 本件の場合は田澤代議士のおいが責任者であるということですが、じゃ、それはそれでよろしいです。  そしてもう一点ですが、私は、政治腐敗行為の対象としては、政党内での地位確保のための運動費を出したり、あるいは閣僚就任のための運動費を出したりした場合には、やはりこれも明確に、それを受け取った人もそれから出した人も政治腐敗行為として処罰、処罰といいますか、立候補の一定期間の停止、この対象にすべきだというふうに考えております。  この今までの宮澤首相の答弁によりますと、共和でも阿部さんが事務総長就任のための、つまり政党内での地位確保、向上のための出費、こんなのは聞いてないし、あり得ない、閣僚就任のための運動費等も、こんなのはあり得ないし、聞いてないというふうに言われているわけでございますが、きょうももちろん同じお答えですね。
  297. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 なるべくそういうことは厳しくしなければならないのですけれども、厳しくするためにはやはり事柄をきちんとしておきませんといけませんので、今政治腐敗行為というようなことをまず真っ先におっしゃいましたが、そのことは定義されておるわけではありません。定義のないのに、それが当たるか当たらないかということを答えると言われることが難しいわけです。
  298. 筒井信隆

    ○筒井委員 質問の趣旨をちょっと御理解いただいてないようだったようで、例えば事務総長就任のために金を出した、派閥に金を出した、こういうふうな事実は全くないというふうに否定されておりますし、それから沖縄開発庁長官、閣僚就任のために金を出した、これも全くないというふうに否定されているわけですが、今までも全くこんなことは聞いたこともないというふうにも答弁されているが、その答えは今も同じですかという質問です。
  299. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 同じでございます。
  300. 筒井信隆

    ○筒井委員 やはり判決ですが、稲村利幸前衆議院議員に対する判決が平成三年、去年の十一月二十九日に東京地裁で出されました。その中で、こういう事実認定がされております。要約をせずに、また先ほどみたいな法務省の答えがあると困りますから、要約せずに、途中中略だけして読み上げてみます。  「政治資金の内容、すなわちその資金の使途は多種多様なものがあり、例えばこ「政治家本来の活動である政策の研究調査立案のため使われる費用こ二つ目として、「政治家としての活動を支える秘書や事務所のため使われる経費、選挙地盤や後援会組織の維持拡大のための様々の出費、具体的な選挙に際しての運動活動費、傘下地方議会議員への支援のための出費こここまではよろしいのですが、その次です。「所属政党内での地位確保・向上のための出費、閣僚等就任のための運動費などが挙げられる。」「被告人が領収書の取れない裏金の政治資金を作る必要があったと述べこ「これらはまさに政治資金の実態を表しているといえるのであって、政治資金には公表をはばかられる出費がある」。  まず法務省にもう一度確認しますが、こういう判決があって、今読み上げた部分の事実認定があることは間違いないですね。
  301. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今委員が御指摘のような記載があることは、そのとおりでございます。
  302. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうすると、今まで総理大臣だけが聞いてなかったのか。ここで明確に証拠に基づいて、証拠と条理に基づいて判決文は出されるわけですが、その証拠と条理に基づいて、政党内での地位確保・向上のための出費、閣僚等就任のための運動費、領収書のとれない裏金がある、政治資金には公表をはばかられる出費がある、こういう認定が公的機関である裁判所で指摘されてはっきりと認定されているわけでございまして、まあ新聞報道等でも今度の共和に風してもそういうことは報道されておりましたが、新聞報道が事実であるかどうかはっきりしないということで逃げられるかと思いますが、明確にこういうふうに認定された限りは、これはもう逃げるわけにいかない。  そして、これは物すごい疑惑だと思うのです。派閥の例えば事務総長等の地位まで金で売買されるのか、あるいは大臣の地位さえも金で売買されるのか、国民政治不信は極限に達してくると思うわけでございまして、こういう判決を前にして、もう一度、先ほど同僚議員が読み上げた政治倫理綱領を読みますが、「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」疑惑どころではない。新聞報道では疑惑かもしれませんが、これはもう認定されてしまっている。政府としてどういう対応をとられるか、その点、総理大臣にお聞きをしたいと思います。
  303. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは高度の政治問題でございますから、総理大臣お答えになるのも当然だと思うのでございますが、しかしその前に、私は政治改革の担当者の一人といたしまして、確かに筒井さんのおっしゃっていることは、本当に今一番大事な急所をついておられると思うのです。このことがまさに政治問題なんです。これは、我々こちらに座っておりますのは、政治家のバッジはつけておりますけれども、一応は、要するに所管事項を処理する役所の代表として座っておるわけでございまして。したがいまして、こういうことが本当は、おっしゃるのは透明度の問題と非常に密接に絡んでまいります。ここは非常に急所だと思います。  でございますから、こういうのは一刻も早く各政党間でそれをどういうふうに認定していくかという基準なんかを協議していただいて、その方針を示していただければ、それなりに自治省の方で政治資金規正法の改正案とかなんとか、そういう形で具体的に提示できるものだ、こう思っております。おっしゃる点は私らも十分に問題点として承知いたしますので、そこを、政治問題でございますから、そこはきちっと政治家の範囲内で決めていただくということが大事なことだと思います。
  304. 筒井信隆

    ○筒井委員 総理にもお聞きしておりますので……。
  305. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そういうことをおまえは知っておるかとおっしゃいますから、私は存じませんと言っておるのです。
  306. 筒井信隆

    ○筒井委員 自分は今まで知らなかった。しかし、明確に判決でこう認定されている、明確かつ断定的にその事実が認定されている、それについてどう考えるかという点の質問総理大臣に対する質問でございました。自治大臣についての意見、もう一度後でも言います。  まずその点、知らなかったら知らなかったでいいのです、今までそれは聞いているのだから。ただ、こういうふうに判決で明確に公的機関で認定されている。そのことを少なくとも今は知ったわけでございまして、これが物すごい国民政治不信のもとになる。判決でさえ認定されているものを、まだ相変わらず総理大臣は知らない知らないと言って逃げている。こういう状態はもう許されないと思うので、それでどう考えるか、その点を総理大臣にお聞きしているのです。
  307. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 お読みになったのを伺っておりましたけれども、その判決は稲村元代議士がそういうことをされたという判決ですか。(筒井委員「いや」と呼ぶ)たしかそうではないのですね。そうではないのですね。ですから、それだったら何のことか、これは私がお答えのしようがありません。
  308. 筒井信隆

    ○筒井委員 この判決が、政治資金の使途としてこういうものがあるという形で事実認定をしているわけでございまして、その中で、今の猟官費とか政党内での地位確保のための金のやりとり、こういう事実があるということを認定しているわけでございまして、それを前提に首相としてどう考えるかということを聞いているのです。
  309. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは私がお答えすべきことかどうかわかりませんけれども裁判所が判決で世の中にこういうことがあるということを言っておる。そのことを認めるか。世の中ですね。今稲村さんの話ではないとおっしゃいますから……(発言する者あり)
  310. 山村新治郎

    山村委員長 ちょっと発言をお慎みください。
  311. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 一般論をおっしゃっているので、裁判所がそういうことを言っている、それを君は認めないのかとおっしゃいますから、それは裁判所の御認識はそうかもしれませんけれども、私はそういうことを知らないとこう申しているのです。
  312. 筒井信隆

    ○筒井委員 知らないということも、事実かどうかは別にして知らなかったとしても、今判決で公的にこう認定されてしまっている、そういう事実があるというふうに認定されてしまった。これをそのままに放置しておいたら、まさに国民政治不信は物すごく強まるわけでしょう。だから、その政治不信を解消するために疑惑を解明することが、政治倫理綱領にも書いてありますように政治家の義務でもあるわけで、これをまずこういうふうに認定されて、政治不信が広がるのが確実な状況でどう対処されるのか、どういうふうに疑惑を解明していこうとされるのか、今の点に関して。では、まずこの点からお聞きします。
  313. 吉田弘正

    ○吉田(弘)政府委員 現行の政治資金規正法上、政治資金については、その収支を報告をしていただきましてそれを国民の前に公表をする、明らかにするという仕組みになっているわけでございます。そして政治団体が収入がありました場合に、それを支出した場合には政治資金規正法の十二条の規定によりまして、これにつきましては人件費、光熱水費その他の経費以外の経費につきまして、その支出を受けた者の氏名とか住所とか、当該支出の目的、金額、年月日等を報告をするというようなことになっているわけでございます。そして、それを国民の前に明らかにするというような仕組みになっているわけでございます。
  314. 筒井信隆

    ○筒井委員 全然質問関係ないんですが、先ほど自治大臣がおっしゃいました一緒に考える。確かに私たちも単に攻撃し非難するだけではなくて、どうやってこういう問題をこれから防止していくのか、これをやはり考えていかなければならない。しかし、それを一緒に考えなければいかぬ前提として、これほどはっきり認定されている事実に対して、宮澤総理のように知らない知らないと逃げているだけならば、一緒に考えるそもそも基盤がないじゃないかということを言いたいわけです。一緒に考えるためには、こういうことを本当に宮澤総理の場合も事実は事実として認めて、そしてそれをこれからどうやって解消していくのか、これを考えていただきたいと思うのです。  特に、今度の共和の疑惑というのは、まさにこの二つが物すごく大きな問題となっている。先ほども同僚議員が一部引用されましたが、大臣になるためには有力者に一人三千万ずつ配らなければならぬといって阿部さんが金をもらった。阿部入閣運動資金として現金一千万円受領したり、あるいはその後にまたもう一回一千万受領したりして、その後に実際に開発庁長官になっている。そしてまた事務総長になる前においても、宏池会で金が大変必要なんだということで献金を要求して金を受け取っている。  こういう事実と今の稲村事件の判決がまさに符合するわけでございまして、だからこれについて、単に私は知らないということで逃げるわけにはいかない。大きなまさに争点になっている問題、単なる新聞報道だけなら、先ほどから言っていますように、あるいはそれは事実に反するというふうに逃げられるかもしれないけれども、公的な機関で明確にそういう事実があると認定したわけですから、だから宮澤総理として本当にこれから一緒に考えていくならば、これに対し、この疑惑をどうやって解明するのか、解消するのか、これをもう一度お答えいただきたいと思います。
  315. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そこが論理が私はつながっているようでつながってないと申し上げているのであって、二つのことが符合しているといえば、それじゃ阿部元長官はそういう金を使って、だれかにやって本当に大臣になったのか、本当に事務総長になったのか、あたかもそうおっしゃっていることくに聞こえますね、符合ということは。  それから、裁判所が世の中にこういうことがあるぞと言っているじゃないかということと阿部議員のことを並べておっしゃいますと、だから阿部議員もそうだったんじゃないかとおっしゃっているように聞こえますから、それは私の知っている限り事実ではございませんと申し上げているだけあって、もっと平らに言えば、そういうことが世の中で言われるようじゃいかぬじゃないか、だから塩川自治大臣の言われたように、やはりそういうことはいろいろ制度として考えなければならぬじゃないかという御意見であれば、それはもう最も素直なお話なんですが、阿部議員の場合がそうだとおっしゃれば、そういうことは私は承知してないと申し上げているだけです。
  316. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 筒井さんのおっしゃっているのは、私も言ったように、一番今世間が関心を持っておる、あるいは疑惑を持っておる問題で指摘しておられるわけでございます。  認定認定とおっしゃいますけれども、そういう判決が出ておるということでございますが、しかしながら、大臣になるために使った、こう言っておりますけれども、稲村さんは言っておりますけれども、その金が本当に政治資金として、そういうものが政治資金の範疇に入るのか入らないのかということは、これは世間一般から見ましたらそれも入っているじゃないかと思っておられるかもわかりませんけれども、政治資金というものが規定されておらないのであります。いや、政治資金というものはこういうものをもって政治資金とみなすとかという規定ははっきりとないものでございますから。でございますから、先ほど来私ちょっと申しましたように、政治資金とはこういうものが政治資金であって、こういう違法なものに使ったものは政治資金の支出として認めないというような問題がやはり個々の使途について議論をされて明確にしておく必要があるのではないか、こう私は説明しておるわけでございます。  そのことが透明度の強化というものとのつながりを持ってくるものであるから、そこは要するに役所の者に言いましてもそれは決定できないものですから、ですから政治家同士話し合っていただいて、政治資金というものは一体何なのかということをきっちりしていただければ、これからの処理は役所の方でできる、こういうことを言っておるのでございます。
  317. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私の申し上げようとしておりましたのは、阿部議員についてそのようなことが私はあったというふうには思っておりませんと申し上げたのですが、他方で、先ほど御引用になりました稲村元議員ですかについての裁判所の判決の中に世の中にこういうことがおるという裁判所の御認識があるということについては、それは大変にゆゆしいことでございますから、そのようなことをやはり世の中から誤解を受けないように政治改革にも努めなければならない、そういう点につきましては御指摘は私はよくわかります。
  318. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうしますと、自分は知らなかったけれども、しかしそういうふうに事実で認定されているから、今後そういうことがないように最大限の努力をする。極めて抽象的で、本当はもっと具体的に何をするのか聞きたいのですが、時間がもう過ぎましたので、次の質問に移ります。  塩崎さんの松山土地問題について、これは直接本人が出頭されることになっておりますので、本人に聞くところはきょうはすべて割愛させていただきますが、大蔵省に銀行、金融機関の関係で一点お聞きをしたいと思います。  協和銀行が塩崎さんのファミリー企業に便宜を図ってやった、この問題についてお聞きをしたいのですが、共和が塩崎さん、つまりファミリー企業の今日社のために土地を買った。そしてその土地を、その後にファミリー企業の名義に移した。名義に移す際に、もちろん今日社は土地を買ったわけですから、その売買代金を払わなければならないわけでございまして、払わなければ抵当権の解除もしないのが本来でございますが、その抵当権を解除した時点においては売買代金が払われていなかった、こういう事実が私ははっきりしていると思うのですが、大蔵省、その点どうでしょうか。
  319. 土田正顕

    ○土田政府委員 このような個別の問題につきまして、本件の場合には銀行は債務者であった方の了解を得て報道機関その他にも説明をしておるという趣でございますので、ここでお話を申し上げてもよろしいかと思うのでございますが、ただいまの御指摘の件につきましては、私どもは協和埼玉銀行から聞いておりますのは、平成三年五月十七日に共和から松山の土地購入資金の返済を受け、同日抵当権の抹消が行われたというように聞いております。
  320. 筒井信隆

    ○筒井委員 その返済というのは帳簿上の話で、協和銀行が今日社に金を融資して、そしてその融資した金を、また協和銀行に共和を通じて払ってもらう形で支払われた、そういう形をとっているのではないですか。
  321. 土田正顕

    ○土田政府委員 いわゆる今日社に融資を行ったことは事実でございます。ただし、これは申すまでもないことでございますが、共和という会社と今日社という会社は別人格でございますので、共和に対する融資はこの日をもって返済されたという説明を聞いております。
  322. 筒井信隆

    ○筒井委員 だから、結局協和銀行が今日社、ファミリー企業に対して金を融資してやって、それを自分が受け取ったという形で支払われたという形をとっているわけでございまして、しかも、この元本についてはそういう形で返済されたという形をとっているわけですが、遅延損害金に関しては——まあ、いいです。この質問は今撤回します。  今の塩崎さん関係でもう一点、大蔵省の方に税金の関係でお聞きをしたいのですが、大蔵省の差し押さえを解除した後、塩崎さんのファミリー企業に名義が移転されているわけでございまして、同僚議員が聞いた際には、大蔵省の差し押さえの解除は国税の滞納が全額消滅したから解除したのだという趣旨の、一般論という形でしたが回答がございました。しかし、共和の破産申し立て書、つまり差し押さえ解除した後の書類に添付されている資料を見ますと、東京国税局の航空燃料税がまだ滞納されていたという点と、それからその後大蔵省自身が交付請求、支払い請求をしている国税についての加算税、延滞税、これもまた残っていたという点があるのですが、その点どうでしょうか。
  323. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 お答えいたします。  これも一般論でございますが、差し押さえと申しますのは、その年度、税目等を特定いたしまして差し押さえをいたしますわけでございまして、その国税が消滅いたしますと差し押さえを解除しなければならない、こういう規定になっております。その解除後に未納の税金があるということでございますれば、改めて所定の手続を経て滞納処分手続を行う、そういうことになろうかと思います。
  324. 筒井信隆

    ○筒井委員 加算税、延滞税は確かに差し押さえ解除後に発生した滞納と見れないことはないのですが、航空燃料税、東京国税局の航空燃料税、これはそうじゃないんじゃないですか。差し押さえ解除した時点で既に発生した滞納の税金じゃないんですか。
  325. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 これも一般論でございますけれども、先ほど申し上げましたように、滞納処分と申しますのは、税目、年度、これを特定して行うことになってございますので、その滞納処分に係る、差し押さえに係る税額が消滅いたしますれば差し押さえは解除をしなければならない、こういう規定になっております。
  326. 筒井信隆

    ○筒井委員 さらに、その後に国税を還付をしております、共和に対して、大蔵省が。しかし、国税を還付するためには国税の滞納が一切ないことが前提になるわけでございますが、先ほど申し上げました国税の滞納について、七月時点で発生する納期限の国税が九月時点で支払い請求を大蔵省はやっている、その間に消費税を還付している、こういう事実があるかどうか。これは証拠で明らかですが、これは完全な便宜供与ではないですか。
  327. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 これも個別にわたる事柄でございますので答弁を差し控えさせていただきたいのでございますけれども、法律的には、おっしゃいましたとおり、還付金がある場合においては、その還付金等をその国税に充当しなければならない、こういうことになっておるわけでございます。
  328. 筒井信隆

    ○筒井委員 一般論で逃げられるわけですが、先ほど申し上げましたように、大蔵省の資料自身によって、七月時点で納期限が生じている国税が九月の時点でまだ支払い要求をしていた、滞納になっていた、その間に消費税を還付している、このいずれも証拠があるわけでございまして、明確に便宜供与だというふうにこれは断定できるだろうというふうに思います。  では今の資料について大蔵大臣に示して回答を求めたいと思います。委員長、よろしいでしょうか。
  329. 山村新治郎

    山村委員長 理事さん、ちょっと資料を。
  330. 筒井信隆

    ○筒井委員 一点目は、大蔵事務官の作成した交付要求書でございまして、ここに先ほど申し上げました納期限が平成三年七月二十九日というふうに記載されておりまして、この交付要求、支払い要求をしているのが九月十三日でございます。大蔵大臣にお示ししたいと思います。  それと、もう一点がこの共和の第一回債権者集会における破産管財人の報告書でございますが、ここで、その期間の間、滞納されている期間の間、つまり平成三年七月三十一日に東京国税局より国税の還付がなされている、このことを報告されている書類でございまして、それをお示ししたいと思います。
  331. 山村新治郎

    山村委員長 見て、打ち合わせしてください。
  332. 筒井信隆

    ○筒井委員 今資料をお示しいたしましたが、私が今言った事実は確認されますね。
  333. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 交付要求書につきましては、確かに拝見をいたしました。
  334. 筒井信隆

    ○筒井委員 私が今言った事実については、つまり国税が滞納されている期間に国税の還付をしている、国税通則法違反の行為があった、この事実を確認されますねという趣旨です。
  335. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 この資料によりますと、ここに源泉所得と書いてございますが、源泉所得税と申しますのは、会社が給料等を払いますと、その翌月の十日に源泉所得税の納税義務が観念的に発生するわけでございますが、ただ、その時点におきましては税務当局というのはどこの会社がどれだけの月給を払ったかというのは全部報告が来るようになっておりませんので、源泉所得税につきましては納まっておらないということがわかったときに私どもとしては納税の告知というのをいたします。それを出発点としていわゆる滞納処分ができる状態というのが進行するわけでございまして、これだけを見ますと、滞納処分ができる状態になっておったかどうかということにつきましては、何とも確認ができないわけでございます。
  336. 筒井信隆

    ○筒井委員 そんなに最後まで追い詰めるつもりはないので、ただ、七月二十九日納期限の税金が発生していて、それが九月十三日時点まではまだ滞納されていた、その間に消費税を還付した、いずれも国税である、この事実だけは確認されますね。それで結構ですから。
  337. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 ただいまいただきました資料に基づきまして、そういう日付は確認をいたします。
  338. 筒井信隆

    ○筒井委員 それはそれで結構です。  それから、地域整備公団についてお聞きをいたしますが、今まで二回にわたって計八億円を交付している、この事実はもうここでも答弁されているわけですが、最初五億六千四百万円を交付した。そしてこれについては評価額鑑定評価額の八割であるという、そういう主張をされておりますが、この共和がやはり破産申し立て書に添付した一覧表によると、この評価額は二億三千二百万円である。つまり、金を貸した五億六千四百万円の半分の額しか評価額がない。これは評価額の見解の相違かもしれませんが、まず、共和が破産申し立て書において、添付資料において公団が貸した金の半分しか価値がないというふうに評価している点、この点どうですか。
  339. 田中誠一郎

    田中参考人 私ども、第一回の資金交付に際しましては、不動産鑑定士の鑑定書に基づきまして評価してございまして、不動産鑑定士の鑑定評価によりますと平米当たり一万五百円ということでございますので、七億四千万円という評価でございまして、ただいま先生指摘の二億三千二百万円でございますかは、どのような事情で評価されているか、私どもとしてはつまびらかにしておりません。
  340. 筒井信隆

    ○筒井委員 私が聞いているのは、その評価の正しさではなくて、共和自身が貸した金の半額しか評価していない、この事実を確認されているかどうかだけを聞きたいわけでございます。  時間がありませんからもう一点、一緒に聞きたいのですが、二回目に二億三千六百万円を交付している。このときに、本当は工場財団を財団抵当に入れる予定だったけれども、それをしないで他の銀行の保証書、しかも六月三十日までの期限つきの保証書を担保にとって貸してしまった。六月三十日までの期限つきの保証書ですから、その期限が過ぎればもう紙切れ同然、同然じゃなくて紙切れになってしまうわけでございまして、だから最初の五億六千万円の貸し出しは、これは私の方から見ると担保の過大評価である、二回目の方はもう完全な無担保で貸してしまった、こういう結果になるのですが、どうですか。
  341. 田中誠一郎

    田中参考人 まず先ほどの点でございますけれども共和が破産申し立てについて書類の中で不動産一覧表二億三千二百万円というふうに評価しているのは私どもも承知しております。ただ、同時に破産申し立て書の添付資料中には五億四千七百万円という、これは簿価ではないかというふうに想定されますけれども、表示がございます。したがいまして、二億三千二百万円、これは私どもの全くの推定でございますけれども、仮に法定地上権が設定されているとすれば、あるいは減額されているのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから御指摘の第二点でございますが、御指摘のとおり第二回目の資金交付につきましては私ども工場財団を組成いたしまして第一順位の抵当権設定する予定でございましたけれども工場が完成いたしまして資金需要が生じておりましたので、私どもとしては工場財団組成が通常できる期間、六月三十日ということで銀行の保証もございますので、お貸ししたわけでございます。  その際、共和に対しましては、仮にそれまでに工場財団が組成されない場合には保証期間を延長するようにという念書をとったわけでございます。しかし、御指摘のように六月三十日に保証期限が切れたわけでございますが、その間私どもとしては銀行保証の期限の延長等についても再三要求しておったわけでございますけれども、期限切れになったということでございます。  ただ、その後の段階におきまして、私どもとしては繰り上げ償還ということも考えられるわけでございますが、この敷地には現在でも従業員が働いておりまして、操業にも影響するというところから、私どもとしては工場財団の組成につきまして粘り強く交渉してまいったわけでございます。しかし、共和はそれに応じなかったわけでございますけれども、私どもとしてはその間、第三者が第一順位の根抗当を設定しておりましたので、両者に対して損害賠償請求をするという措置をとったわけでございます。
  342. 筒井信隆

    ○筒井委員 二回目の二億三千六百万円の交付は期限つきの保証書で、そんなのを担保にして貸した。公団はまさに年間七十件ぐらいこういう件で貸し出しをしている貸し出しのプロでございまして、期限つきの保証書でこれだけの金額を貸してしまう。期限が来たらもう紙切れになってしまうことは当然わかって貸し出しているわけでございまして、ちょっと常識では考えられない異常な貸し出したというふうに考えざるを得ない。今までもこんなことはあったのでしょうか。それともこの共和の件が初めての経験でしょうか。
  343. 田中誠一郎

    田中参考人 今までにはそういう事例を承知しておりません。
  344. 筒井信隆

    ○筒井委員 すると、共和の問題が今度は初めてだということですが、公団自体が独自の考えでこんな素人から見ても考えられない異常な貸し出しをする、これはちょっとなおさらまた考えられない。やっぱり圧力があってそれで貸し出した、こう考えるしかこれを理解する方法がないわけでございまして、だからこれを何回か私たち同僚議員と一緒に調べて聞いているところでございます。さらにこれまた後でも聞くかと思いますが、その次の問題に移ります。  全く共和から離れまして、外交、防衛問題について宮澤首相の姿勢についてお聞きをしたいと思います。  憲法九条に誇りを持って国際的な合意にする、軍事的貢献はできないということをはっきり諸外国に言って非軍事的な貢献を積極的に行う、こういう態度を明確にするのが日本の外交の基本姿勢であるべきだと思うのですが、その点、宮澤総理はどうお考えでしょうか。
  345. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 日本は軍事大国にはならない、世界に対する貢献はそれ以外の方法をもって行うべきであるというのが私の以前からの考え方でございます。
  346. 筒井信隆

    ○筒井委員 私は今具体的に聞いているので、憲法九条に誇りを持って、二十一世紀に向けてこれを国際的な合意にする、そのために日本の外交としても努力をする。それから明確に、軍事的な貢献はできませんと明確に言う、そして非軍事的な貢献を積極的に行う、こういうことが必要ではないかというふうに具体的に確かめているのです。
  347. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 大体のお考えは私も同じなんでございますが、つまり我が国が海外において武力行使をするということは、これは許されないことである。ということは、武力をもって世界平和に貢献するということはできないことでございますから、それ以外の方法で貢献をいたしたい。また、理想としては、やがて世界各国がいわゆる平和に向かって、戦争を最終的にはなくすというような方向に向かって歩むべきだということは私も常に思っておりますから、それは、憲法九条の理想とするところは、終局的にはやはり私はそれが世界平和に導くものであるというふうに考えておることも確かでございます。
  348. 筒井信隆

    ○筒井委員 宮澤総理は以前、後で必要ならば出典を明示しますが、こう言っておりました。「憲法第九条は日本民族が運命をかけた人類史上初の実験であった。我々は我が国の戦争放棄の主張に自信を持ち、これが二十一世紀に向けての国際的合意となるよう努力しなければならない。」そして、「我々としては軍事的な貢献はできません。そのかわり、平和で豊かな世界をつくるための建設的な努力には積極的にできる限りの協力をいたしますよ。」という姿勢です。  まさに私たちの主張と一致するものですから、それでこれを確認しているのですが、日本の外交の基本姿勢としてこういう方向で行く、これは確認いただけますね。
  349. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、大筋は私はそういう考え方をしております。
  350. 筒井信隆

    ○筒井委員 同時に、宮澤総理は以前、国連常設軍の創設と全面軍縮の提唱、これを行われました。国連常設軍を創設して各国の大幅軍縮を行う。これは去年の提唱ですから、その当時においては、一、二年前には夢であった国連常設軍の創設を現実の問題として考えるときが来た、平和憲法を持つ日本はその推進者として各国の先頭に立つべきだと信じる、こういう提唱をされているわけですが、しかもこれは単なる夢とかそういうものではなくて具体的な今現在の問題として提唱されているわけですが、まず外務大臣、この提唱についてはどうお考えでしょうか。
  351. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私は確かにそういう提唱をいたしました。ただ、それは今すぐできると思って申したのではございませんで、その部分だけは一言申させていただきます。
  352. 筒井信隆

    ○筒井委員 今すぐという趣旨ではない。もちろんそれはすぐはできないことはわかっております。ただ、現実の問題として今それに向かって行動すべきとき、そういう趣旨では書かれておりますわね。だからそれを前提にして、単なる将来の夢、理想像としてではなくて、現在の政策の問題として言われている。  例えばここでも、政府は五月に、五月とは去年の五月ですが、国連軍縮会議の東京開催を要望している、その際、軍縮とともに国連常設軍の創設を話題に提供する用意はないであろうか、まさに去年の時点で既に国際的な機関においてそれを話題に提供するべきであるという趣旨のことを出されているわけでございますから、現実の政策の問題として提唱されている。これがはっさりしていると思うので、それを前提に外務大臣防衛庁長官のこの提唱についての見解をお聞きをしたいと思います。
  353. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ちょっとお許しを得て、私は外務大臣にも防衛庁長官にもそう詳しく申し上げたことがございませんので、一言だけ私から申し上げさせていただきます。  私はそういう提唱を将来の問題としていたしましたし、今もそれが理想であると思っておりますので、背景と申しますのは、よく御存じのように、片っ方で米ソの新しい関係から大幅な軍縮が進行する可能性が高くなってまいりました。このことは相対的に国連の力を強めることになってまいると思います。他方でまた、湾岸戦争等々から国連というものが世界平和の推進者として力を発揮する可能性が高くなってまいりました。  そういう二つのことから、やがていつの日にかは国連が、小さくてもいいから自分の、つまり国連総会議長でございましょうか事務総長でございましょうか、国連がいわゆる国際公務員としてのピース・キーピング・フォースでございましょうか、そういったようなものを持って、他方で各国が本当に軍備の水準を低下さしていけば、その国連が持っているそういう平和維持軍というものが実際ににらみをきかせることができる、力を持つことができる。ただしもう一つ、その際国連というものは本当に加盟国全部の公平な代弁者であるということになってくれなければ困る。そういう幾つかのことを申しながら将来像を申しましたことは確かでございます。
  354. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 総理の言われていることは私も賛成でして、総裁選挙のときに同じようなことを言ってきました、言葉遣いは違うかもしれませんが。しかし、一挙にそこまでなかなか行けないから、まあとりあえずいわゆる世界的に見て軍事行動だと思われない平和維持活動のPKOをまず法案を成立さして派遣をしたいという、やっぱり腕より始めろですから。
  355. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 総理の、戦後長らく政治に携わってこられた総理としての見識を申し上げたものだと思っております。ただいま総理がおっしゃられましたように、各国の大幅な軍縮が前提である、つまりその国連軍が非常に小さいものであって各国の主権に基づく軍事力が大きなものでは効果がないとか、あるいは国連がすべての加盟国の公平な代弁者となることというような前提条件をただいま総理が申されましたが、私もそれは同感でございまして、総理意見としてそれなりに私ども傾聴に値するものである、こう考えております。
  356. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうしますと、総理が去年提唱されました国連常設軍の創設と、それと前提としての大幅全面的軍備の削減、これに防衛庁長官も外務大臣も賛成であるというふうにお聞きしました。しかも、先ほど確認しましたように、単なる将来の夢ではなくて現実的な現在の政策として、目指すべき政策として考えるというふうにお聞きをしておきたいと思います。  それで、先ほどの外交の基本姿勢とも関連しますが、まさに軍事的な貢献はできない、非軍事的な貢献にする。しかも、今言いましたような全面大幅軍縮、これを目指す。それから、憲法九条の戦争放棄の主張に自信を持って、これが日本にとってだけではなくて、二十一世紀に向けての国際的合意となるよう努力する、こういう方向性が明らかになったわけでございますが、当然、その先頭に日本が立つとすれば、日本こそが思い切った大幅な全面的な軍縮でも範を示さなければならない、そういうことになると思うのですが、その点どうでしょうか。
  357. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今申し上げましたこと、あるいは委員が私の考えとして御紹介賜りましたことは、私は真実そういうふうに思っておるわけでございますし、また、日本は戦後そういうことを実践してまいった国でございますから、一番先に立ってそれを唱道する資格があると考えておるわけでございます。  他方で、しかし現実の世界の動きというのは、ここに来まして非常に激しくその方向に動いてはおりますけれども、まだまだ戦争がなくなった世界とまでは申せない。そういう意味では、お互い国民に対してあるいは子孫に対しても責任のある立場として、一気にすべてのガードをおろしてしまうわけには、それはすぐにはまいらない、これも御理解いただけることだと思います。  殊に、我が国の防衛力のように、いわゆる基盤的な防衛力として、仮想敵を考えずに基盤的なものを持っておる程度の国としては、すぐにそれが、大幅にそれを減らせるというようなところまで世界はまだ来ていないということも事実でございますから、理想は理想としておいて、それに一歩一歩近づきつつ、しかし自分の安全というものはガードしておかなければならない、このことは御理解いただけるであろうと思います。
  358. 筒井信隆

    ○筒井委員 その軍縮の問題について大蔵省にお聞きをしたいと思います。  今度の来年度、平成四年度の予算、防衛費に関する予算で、正面装備について概算要求されたものに対して大蔵省がゼロ査定した部分、それから概算要求よりも下げた部分、こういうものがございます。そして、さらにそのゼロ査定したり下げた部分から政府案、最後の政府案で、ある程度復活された、そういう正面装備についての部分がございます。  例えば、陸上では新八十一ミリ迫撃砲とか百二十ミリ迫撃砲、それから新多連装ロケットシステム、海上では護衛艦とか試験艦、航空では要撃戦闘機F15とか中等練習機、基本操縦練習機、新型救難捜索機、こういうものについてゼロ査定をした理由を大蔵省にお伺いをしたいと思います。
  359. 斎藤次郎

    斎藤(次)政府委員 大蔵原案でいわゆるゼロ査定となった正面装備があることは事実でございます。  ただ、大蔵原案後、政府部内における種々の折衝で復活が行われるわけでございまして、予算編成の過程と申しますのは、最初に各省から概算要求が出て、それが長い各省との調整過程を経て、大蔵原案それから復活折衝ということで決まるわけでございます。いわば大蔵原案はその間の一つの断面でございまして、私どもとしましては平成四年度の防衛関係費、今予算として国会にお出ししているものが最良、最善のものと考えているわけでございます。  せっかくのお尋ねでございますので強いて申し上げますれば、復活のためのいろいろな財源の用意その他もございまして、その断面における厳しい財政事情のもとでは、新規の装備の導入の緊要性等を勘案して認めるに至らなかったということでございます。その後、防衛庁等との折衝の結果復活が行われて、今お示ししている予算の姿になったというぐあいに御理解をいただきたいと思います。
  360. 筒井信隆

    ○筒井委員 抽象的なお答えなんですが、いずれにしてもはっきりしているのは、今挙げたような正面装備の必要性は他のものと比べて少なかった。この予算を組んでいる際にはまだ新中期防の見直しとか大綱の見直しなんということは決まっていないわけですから、大綱とか新中期防を現在のものを前提にした上でも、それでも今挙げたような正面装備の必要性は他のものと比べて少なかった、だからゼロ査定にした、そういうことは言えますね。
  361. 斎藤次郎

    斎藤(次)政府委員 いずれも予算編成の一断面についてのお尋ねでございます。  ただし、はっきり申し上げられますのは、私どもとして、例えば戦闘機F15について、大蔵原案の段階で、認めたのに対してゼロ査定になったものについては、その緊要度という面において確かに優先順位はその段階では低かったということは申し上げなければならないと考えております。
  362. 筒井信隆

    ○筒井委員 大綱とか新中期防を前提にしても優先順位が薄いものであった。それは今少なくともその点はお認めになられたわけですが、少なくとも総理大臣、その優先順位が遅いものはもう来年度、これは削ってもよろしいんじゃないですか。
  363. 斎藤次郎

    斎藤(次)政府委員 復活についての過程の御説明をちょっといたしたいと思います。  我が国の予算というのは、先生もちろん御承知のとおりでございますけれども、いずれも大蔵原案の後、復活という過程が行われまして最終の予算ができるという形になっております。それで、それは何も防衛関係費に限らないわけでございまして、その他の経費についても復活という過程を経て予算が成立をするということでございますので、その一連の過程において復活しました予算というのが私ども事務当局としては最善のものと考えているわけでございます。
  364. 筒井信隆

    ○筒井委員 端的に答えていただきたいんですが、いずれにしても大綱の見直しも何も言われていなかったときでさえも、この部分は優先順位が薄いものと少なくともその点はお認めになられた。大綱の見直しさえも今は言われている、宮澤総理大臣自身が言われている状態。その状態においては、少なくともまず大蔵省が優先順位が低くて認めることができなかったというふうに考えた部分は、まずこれは削減すべきじゃないですか。宮澤総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  365. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 大綱の見直しということを私は申したことはないんでございます。ちょっと違いまして、別表というものは定員の関係で見直すことがあるかもしれません、これは少し時間がかかりますけれども、という趣旨のことは申し上げたんでございますけれども、それは大綱そのものと違いますので、念のため申し上げておきます。  そこで、大蔵省の査定というのは、原案と復活といろんなやりとりがございますので、最初のところで落としたものは大事でないかというと、案外そういうことはなかなか言えませんもので、最終的にできましたもののことでやはり御判断をちょうだいいたしたいと思います。
  366. 筒井信隆

    ○筒井委員 今の話、ちょっと私の記憶と違うんですが、別表の見直しをする、大綱の別表の見直しをする、それは大綱の内容の見直しにも連動する、今までそういうお答えをされていたんじゃないですか。それ、変わられるんですか。
  367. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 変わりませんで、昭和五十一年でしたね、五十一年に定められました防衛計画の大綱というものは、先ほども申し上げましたけれども、いわゆる基盤的な防衛力の整備という基本的な思想に立っておりますから、その思想そのものを見直すということは私は必要であろうかどうであろうか。私はそういうことは実は申したことはないんでございます。ただ、別表の中にその定員の問題がございますから、これは場合によってはあるいは考え直すことがあるかもしれない、それはしかし中期防のあの三年の見直しということとはまた別でございますがと、こう申し上げておるつもりでございます。
  368. 筒井信隆

    ○筒井委員 その点まだはっきりしませんが、大蔵大臣にお聞きしたいんですが、大蔵原案でゼロ査定した分、削った分、これは優先順位が低いもの、これはやっぱり削るべきだというふうに、今の冷戦構造が終了した世界情勢の中では特に削るべきだというふうにはお考えになりませんか。
  369. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先ほど主計局長の方からも申し上げましたように、まず各省の方から御要請がある、こういったものに対して相当厳しい実は査定をいたします。ですから私ども今、先ほどからお話がありましたように国際関係も非常に安定化してきておるという一つの方向があるということ、もう一点は、財政事情も非常に厳しいということ、そういう意味で、しかも今度の予算の一番の重点といいますか基本であったのは後方部門、人件費ですとかあるいは隊舎ですとか宿舎ですとか、こういったものはどうしてもやはり確保しなければいけないだろうということになったときに、ともかく正面装備の方からお願いしますということで真っ正面から実はあれしながらお互いに議論する過程で、今皆様に御審議をいただいておる案をつくり上げたということでありますから、別にその優先順位がどうこうということよりは、まずこういう情勢の中で正面装備ひとつお願いしますということで切り込んでいったということだけを御理解をいただきたいと思います。
  370. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 簡単に補足させていただきますけれども先生、ちょっと混乱があってはいけませんので。  現在の中期防は二つのことが書いてあります。一つは、三年後見直し、修正、それからもう一つは、この中期防期間中に、自衛官の定数等の充用状況が非常に悪い、あるいは人員構成が今後若生層が減っていくというようなことを考えまして、「自衛官定数を含む防衛力の在り方について検討する、この二つのことが書かれておるのが特色でございます。  第一の方は、三年後までに見直しを決めて、戸の中期防は六年、七年にそれを反映させていきましょうということが第一。それから第二の、今先生指摘の大綱の方は、今中期防期間中、つまり平成七年度までに結論を得て次期防に反映させていく。総理が申し上げましたのは、その後半の防衛計画の大綱の別表に掲げられております点も検討対象になり得るということを申し上げておるわけでございます。その点をちょっとはっきりしておいていただきたい。  それから、予算要求は、私どもは勝手に年次年次でやるわけではございませんで、これは一昨年の十二月の二十日につくられました。これは国防会議、閣議決定も経ておりますが、その中期防衛力整備計画の二年目として要求をいたしておりまして、その主要装備等についても、そのときにターゲットとしてのものは認知されているものと我々は考えております。  そして、私も予算の方はやりましたけれども、これは内示のときには、やはりそれ以後のプライオリティーその他を、いろいろの諸条件を勘案して最終的に枠内で決めようということでございますから、決して内示がなかったから、後でついたから優先度は低いというようなことはございません。私の個人的な感覚からすれば、むしろ重要なものほど後に残して、そして事務次官折衝、大臣折衝等でやるということでございますから、その点を申し添えておきます。
  371. 筒井信隆

    ○筒井委員 防衛費の予算案についてもそうですが、またほかの予算についてもそうですが、どうも日本の予算というのは前年対比で、伸び率で考える。前年のものを、既得権を前提にして、それをさらに幾らプラスするかということを前提に考える。一遍全部ゼロに戻したところで、初めからどことどこが必要なんだというところから考えない。そういう癖といいますか、そういう形で今まで実績主義、前年度プラス主義でなされていた。こういうある意味で役人同士の既得権みたいなものがある。  まずこういう事実を宮澤総理、認められるかどうかという点と、それをやはり改革すべきじゃないか、防衛費に関しても。その点どうでしょうか。
  372. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 しばしば前年対比でなくて本当に全部ゼロからスタートして見直すべきだという御議論はありますし、また実際仕事をしている人たちもそういうことをしばしば考えるようでございますけれども、部分的にはそれができます。部分的にはできますが、全体としてはなかなか、今まであったものはやはりあっただけの理由があって存在しておりますから、全体的にそれはなかなか難しいらしいというのが私が予算編成を見ております限りでの実感でございますが、防衛費の場合には、これは中期防が幸いにしてございますので、やはりこれを中心に毎年考えていくのがよろしいんじゃないかと思います。
  373. 筒井信隆

    ○筒井委員 今そういう議論があるという言い古されましたが、宮澤総理自身がやはり以前そのことを指摘されておりまして、「どうしても行政というのは実績主義、前年度プラス主義という癖がございます。本当に役人同士の既得権みたいなものかもしれませんですね。」ということを指摘されておるんですが、この見方はもちちん今も変わっておりませんね。
  374. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今でしたらもう少し丁寧に言わなきゃならぬと思います。
  375. 筒井信隆

    ○筒井委員 だから、できる範囲で、一遍ゼロに戻して、実績主義ではなくて、ゼロに戻して何が必要か考える、そういう行政の習慣づくろう、そういう意向を持っておられるというふうにお聞きをして、その上でさらにお聞きをするんですが、宮澤総理はこういうふうにもまた言っておられます。「防衛費は、自衛力の効率を高めるため、あらかじめ各部門間の優先順位を定め、それに従って重点配分すべきである。」優先順位を定めて、それに従って重点配分すべきである。この趣旨をちょっと説明していただけますか。
  376. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 その限りでは恐らくどなたもそれに異存を持たれないと思いますし、防衛庁自身もまたそういう気持ちで中期防もつくってこられておると思います。  ただ、優先順位というものの置き方が、やはりこれも長い間の継続して続いてきている仕事でございますから、突然白い紙に思い切って新しいものを書くようなわけにもまいらない。現実に人がついておりますし、地域との関連もいろいろございますから、考え方としてはやはり絶えず何が優先するか、そっちの方に重点を置いていくべきだという考えそのものは私は間違っていないし、受け入れられているところであろうと思います。
  377. 筒井信隆

    ○筒井委員 現在の平成四年度の政府原案、これはその考えに基づいて編成されているというふうにお考えですか。それともまだやはり不十分で、自分としても不満足だというふうにお考えでしょうか。
  378. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは予算案全体……(筒井委員「いや、防衛費について」と呼ぶ)それはしかし、やはり大蔵省の査定もございますし、殊にこういう世界の動きもございますので、防衛庁長官以下皆さんが余計その点は気を使って、そうして注意をしながら編成されたと思ってます。
  379. 筒井信隆

    ○筒井委員 平和協力外交といいますか、宮澤首相の平和外交についての姿勢をお聞きしでまいりました。国際貢献、PKO等も言われますけれども、その前提として軍縮が必要であるというふうに考えますので、先ほどもその点をお聞きしたわけでございます。  もう一つ、国際貢献のためにどうしても必要だと考えるのが、先ほど一部出ましたが、戦後責任、戦争責任の問題でございまして、国家間の戦後責任については条約等でおおむねあるいは解決されているというふうに考えることができるかもしれませんけれども、しかし先ほど同僚議員から出ました従軍慰安婦の問題を初めとして、こういう個人補償の問題については全く日本は終わっていない、行っていない。その点で西ドイツと本質的に違うというふうに見ることができると思います。  その戦後責任を全く果たさないままPKOとか国際貢献とか、こういうことを言ったところで、特にアジア諸国に対しては信頼を得ることができないんじゃないかというふうに思うんですが、その点どうでしょうか。
  380. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 一応、アジアの諸国と戦争いたしまして、その間、日本はまだ現在ほどの国力はありませんが、国力精いっぱいの誠意を尽くして、それぞれの国と条約を結んで平和を取り返してきたわけでございます。しかしながら、ある国は賠償を放棄する、中国のような国もございます。したがいまして、我々は、日本がこれだけ大きくなったわけですから、できるだけそれらの国々の開発、発展のための協力をしていこうということで物的、人的、技術的な援助をやってきておるし、今後もできるだけの誠意は尽くして友好関係を一層増進してまいりたいと思っております。
  381. 筒井信隆

    ○筒井委員 戦後責任の問題について言うと、謝罪、反省の意の表明、これは総理自身もこの所信表明演説でもされておりますが、我が党の田邊委員長もお聞きしたように、謝罪をしたところで、補償しなければそれが真心からのものとして出ているのかどうかは信用されない、補償があって初めてその実を伴うというふうに主張されたわけですが、その点は現在どうお考えになりますか。
  382. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 それは今言ったように、一応戦後賠償というものは済むものは済んだんですよ、みんなね。済んだけれども、その後に当たって、我々はいろいろな意味も含めまして、経済協力をやったりいろいろな協力をやってきているということは、これは誠意のあらわれだというように考えていただきたいと存じます。
  383. 筒井信隆

    ○筒井委員 私は、先ほども申し上げましたように、条約等で国家間の戦後補償、これは済んでいると考えてもいいかもしれない。しかし、個人補償は終わってない。国家間の補償と個人補償は全く趣旨が違う。これは政府自身がシベリア抑留の問題についてその区別は明確に認めているわけでございまして、もう一度確認しますが、アジア諸国に対する国家間の補償ではなくて、戦争賠償ではなくて、個人補償、これはまだ終わってないと考えますが、その点どうですか。
  384. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは個人補償と申しましても千差万別でありまして、どこで一体線を引くかということになりますと、個々の個人に対して日本政府が対応することは不可能でございます、現実問題として。したがって、国家間ではそういう問題は、例えば対韓国との条約でも、これで完全に一切終了しました、請求権や何かはもうありませんということを宣言するということになったわけでございます。  しかし、戦争というものは非常に悲惨なものでありまして、本当にその慰安婦の問題等は、話を聞くと涙の出るような大変お気の毒な仕打ちを受けたということがよくわかります。その同情心においては全くそうでございますが、しかしどこで線を引いたらいいのか、韓国の問題だけでなくて、台湾も中国もあるというような資料も出て、日本にもあるというような資料も出てきておる。そういうような中にあって、これは国が取り組もうとしたらどういうやり方がいいのか、実は本当に頭の痛いところでございますが、我々といたしましては何らかの形をとる必要があるんじゃないかということで、今後内閣として相談をしていきたいと考えております。
  385. 筒井信隆

    ○筒井委員 西ドイツでは、被害者団体等を結成してもらって、その被害者団体等に一括して支払うとか、あるいは年金等の形で支払うとかいう形で戦後責任をずっと現在においてもまだ履行しているところでございまして、それを今、何らかの形を内閣でも検討するという話がありましたので、ぜひそこで早急に結論を出していただきたいと思うのです。  それと、同じ町題で、国籍条項というのがございます。日本人ではなくて、例えば韓国、併合されていた朝鮮の人たちが日本の軍人として行動して、そしていろんな障害等をこうむった。まさに日本の軍人としていろんな障害をこうむったのに、日本軍人にはいろんな援護がされているのに、その朝鮮等の日本軍人として行動した人に対しては何の援護もされていない。これは全く差別待遇ではないかというふうに思いますので、今度、次の機会の質問で私はそれを少し細かく聞こうと思うのですが、今現在その点について、総理でも外務大臣でもよろしいですが……。
  386. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これももう先ほどの話と関連した話でありまして、当時韓国側からはいろんなものを挙げまして請求が交渉の過程ではあったことがございます。しかしながら、それをどういうふうに計算していくかということになりますと、なかなか難しいというようなことがあって、そういうものもひっくるめて、それで無償三億ドル、有償二億ドルということで、これで一切解決と、こういうふうに政治決着をつけざるを得なかった。あとはその韓国の中でどういうようにするかについて、私の聞いたところでは、遺族その他については一定の何かの、補償とは言わないが何らかの給付ですな、それが行われたと聞いております。
  387. 筒井信隆

    ○筒井委員 今私が聞いているのは、日本の十三の法律にある戦争被害者に対する国籍条項の問題なんです。被爆者等についての二法については国籍条項がなくて、例えば韓国の被爆者もその医療等を受けることができることに一応なっている。しかし、それ以外のものについては国籍条項で、同じ日本軍人としてあるいは軍属として行動して、結果の障害に対して全く国籍条項のために援護を排除されている、この問題についてどう考えるかということの質問です。
  388. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国籍条項につきましては、これはそれぞれの法律の制定の背景によるところが多いと存じます。したがいまして、私の方からお答えするのが適当かどうか承知いたしませんけれども、現在の国際社会が国民国家によって構成されているというところから、ある程度の内外人の合理的な取り扱いの差異というものは禁じられていないものであると思います。それぞれの法律の背景は違うものでございますから、これはまた所管の各省庁の方から御説明いただくのが適当かと思いますが、基本的には、一般的に申し上げればそういうことであろうと思います。
  389. 筒井信隆

    ○筒井委員 さらに本格的に後でお聞きしたいと思いますが、いずれにしても日本の外交の前提として、一つは軍縮、軍事大国にならないというだけではなくて、今の冷戦構造のもとにおいて大幅な軍縮を先頭に立って行う。そのためには、先ほど指摘しました大蔵省が優先順位が低いと考えたものまで現在政府案として正面装備の中に入っている、少なくともその点を直ちに削減をしていただきたいということと、国際貢献等のためには、前提として戦後補償、個人補償を含めた、個人責任も含めたものをやはりちゃんと西ドイツのようにやらなければ、本当に国際社会、アジアの一員としての受け入れられ方が難しくなる、この点をもう一度確認をしておきたいと思います。  最後になりますが、最後に宮澤総理にこの点を確認をしておきたいと思います。  共和関係に関する去年の予算委員会での宮澤総理答弁なんですけれども、公明党の草川昭三代議士が、共和もしくは共和関係者からのお金が入っているのかいないのかという質問に対して、ないと申し上げならないということを御信用いただけないでしょうかという、大変御立腹なさったようですが、そういうふうな答弁があって、その後阿部議員の政治団体から一千万円の献金が判明したわけでございますが、これは、ないと申し上げならないという、こういう答弁を今は訂正されるわけでございますか。
  390. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは先ほど官房長官が申し上げたのでございましたが、私どもの派を運営していく上でいわば先輩格の人たちが自発的に自分のできる程度の寄附を派のためにしてくれるということはございまして、阿部さんもその一人として千万円を宏池会のために寄進してくれたことはあるわけでございますけれども、これは共和ということと全く関係のないことというふうに私は考えておりますし、もちろん、何と申しますか、私ども宏池会でございますか、共和というところから金を受けたというようなことはないというふうに承知しております。
  391. 筒井信隆

    ○筒井委員 共和関係者というのを阿部さんは入らないというふうな認識でお答えになったというふうにお聞きをしておきますが、しかし共和関係者といえば阿部さんは入るというのが常識的な感覚ではないかというふうに思いますし、みんなそういうふうに思っていると思うのですが、塩崎さんからもやはり同じ年に一千万円宏池会に献金されてますわね。別に献金自体が私は悪いと言っているわけではないんですが、正当な献金はいいんだということは先ほども申し上げたんですが、ただ、先ほど共和関係者からのお金は絶対入っておりませんというふうにあれほど強調されておりましたけれども、私たちの常識から考えれば阿部さんも塩崎さんもまさに共和関係者。そのお二人から入ってきているので、もう一度確認しますが、塩崎さんからも入ってきておりますね。
  392. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そこは調べてございません。塩崎先生もそういう先輩格の議員の先生であるから、あるかもしれないし、ないかもしれません。調べておりません。
  393. 筒井信隆

    ○筒井委員 今まで阿部さん、塩崎さんがこれだけ強調されていたわけですが、現在もまだ調べていないという点が全く理解できないわけです。  その加藤官房長官がやっぱり去年のこの予算委員会で、阿部さんについて会って事情聴取しているかという質問に対して、まだそれまでは忙しくてその時間がありませんでしたというふうな答弁をされておりますが、御記憶ありますか。
  394. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ございます。それで、そのすぐ後の委員会で、私は先般の、前の委員会でそう申しましたけれども、やはり個人に関する事実関係のことでありますので、私がお聞きしてここで御報告するのはまたいろんな途中の誤解も得ますのでそれは適当でないと思います、その点は訂正して直しますというふうに次回で言っております。
  395. 筒井信隆

    ○筒井委員 私が特に調べていただきたいのは、別に阿部さん個人がどうしたかということではなくて、まさに宮澤派との関係についてでございました。疑惑の対象は阿部さんだけではなくて宮澤派そのもの、こうなっているので、先ほど判決でも指摘しましたが、閣僚就任のための運動費とかあるいは政党内での地位確保・向上のための出費とか、こういうのが認定されていて、また阿部議員自身もそういう発言をしている。これは阿部議員の疑惑を調べてほしい、事情聴取してほしいということではなくて、宮澤派の疑惑について、そう言っている本人に確かめてその疑惑の解明のために行動すべきではないかという点でございまして、やっぱり会って事情聴取すべきじゃないですか。
  396. 加藤紘一

    加藤国務大臣 その点は先ほど総理が御答弁なさいましたけれども、いろいろそこで我々が調べて、ここで御報告、お聞きして調べたりして御報告するのも適当ではないんじゃないかなと思います。ただ、今筒井委員が御指摘のように、宏池会に塩崎先生からのいわゆる資金の支援が、カンパがあったかどうか、それは派のことでございますので、それは帳簿を調べればわかると思いますので調べます。
  397. 筒井信隆

    ○筒井委員 まさに宮澤派に対する疑惑、阿部議員に対する疑惑ではなくて、それが問題になっていてそれについて否定されておりますので、阿部議員をどうしてもやっぱりこの国会に呼んで聞かなければ真相は解明されない、ぜひ呼んでいただきたい、この点を最後に強調して、私の質問を終わります。
  398. 山村新治郎

    山村委員長 これにて筒井君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君。
  399. 二見伸明

    二見委員 私も最初に東京佐川問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。  いわゆる逮捕の理由が特別背任容疑でありますので、当然捜査当局としては金の流れを特定しなければならないと思います。この問題に関しては政界にも巨額の金が流れたといううわさもありますし、その点についても捜査当局は徹底的に解明をしていただきたいと思います。と同時に、これは政治にかかわる、政界にかかわることですから、私たち国会もこの問題については本腰を入れて真相の解明をしなきゃならないというふうに思っております。  それで、きょうはこれからいろいろとこの問題についての質疑が重ねられていくんでありましょうけれども、きょうは素朴な疑問を呈して御意見捜査当局の考え方を伺いたいというふうに思います。  それはどういう疑問がといいますと、全く素朴な疑問なんですが、東京佐川急便が事業を拡大するために政治家を利用したのかどうかということであります。これはまだ明らかになっているわけではありません。しかし、東京佐川は昭和五十三年四月三日に渡辺運輸から社名を変更いたしました。六十年五月三十日に埼東運輸から一般路線貨物自動車運送事業を譲り受けました。以後、物流二法が成立するまでの約五年間、急激にエリアを拡大したわけであります。  そこで、運輸省にお尋ねいたしますが、昭和六十年以降この五年間の間に東京佐川急便が路線の延長の申請をし、免許を申請した日にちと免許を取得した日にちをここでお述べいただきたいと思います。
  400. 水田嘉憲

    水田政府委員 お答えいたします。  東京佐川急便の前身でございます渡辺運輸が昭和五十三年の四月に東京佐川急便に社名を変更しました後、いろんな許認可の事案があったわけでございます。まず、昭和六十年の五月に一般路線貨物自動車運送事業の譲渡譲受の認可を受けておるということでございます。それからその後でございますが、昭和六十一年から、六十一年の四月からでございますが、平成二年の十月にかけまして、東京都またはその近郊から東京の周辺の埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県等の周辺各県でございますが、ここに至る路線延長というものを合計七件ほど免許を受けておるわけでございます。  具体的な日時を……(二見委員「申請の日時と免許を取得した日にちと両方言ってください」と呼ぶ)はい。  まず、具体的に申し上げますと、六十一年の四月に東京都の区部から狭山市までの免許を受けておるわけでございます。この申請は六十年の十一月でございます。それから、その後でございますが、昭和六十一年の十一月に東京都の区部から藤沢市に至る路線、それから春日部から千葉市に至る路線、この両方について免許を受けておるわけでございます。この申請は六十一年の六月でございます。それから、次に至りまして路線関係では、六十三年の五月に東京都の区部から下館までの路線の免許を受けておるわけでございます。この申請は六十二年の七月でございます。それから、東京都の区部から町田市に至る路線でございますが、これを平成一年の一月末に受けておるわけでございます。平成元年の一月末に受けておるわけでございますが、この申請は六十三年の十月でございます。それからさらに、平成元年の十月に東京都の区部から千葉市に至る路線の免許を受けておるわけでございますが、この申請は元年の八月でございます。それから最後に、平成二年の十月に八王子市から山梨県の昭和町までの免許を受けておるわけでございますが、この申請は平成二年の六月でございます。  これ以外に、区域の拡張の免許の申請をいたしまして、六十二年の四月に受けておるわけでございます。これは従来東京都だけを事業区域にしておったわけでございますが、神奈川県、千葉県、埼玉県全体に拡張したいというふうな申請でございました。六十一年の十月に申請が出て、六十二年の四月に免許を受けておるという状況でございます。
  401. 二見伸明

    二見委員 実は、物流二法が成立するまでは、こうした路線の延長の免許というのは、需給関係もありますので、免許取得まで通常でも最低一年はかかるだろう、場合によっては二年も三年もかかるというふうに私は運輸省から聞いているわけです。免許申請から取得までの期間は大体そんなものでございましょうか。
  402. 水田嘉憲

    水田政府委員 お答えいたします。  免許の事案の処理の期間でございますが、これはそのときの事案の多寡によっても異なりますし、それからその反対聴聞の有無によっても違います。それから路線とか区域の違いによっても異なるわけでございまして、一概に幾らだということはなかなか申し上げられないわけでございますが、例えば東京の管内の場合には通常カ月から五カ月程度を要しておるのが実情でございます。東京佐川急便にかかわります免許につきまして、先ほど申請と処理の月を申し上げたわけでございますが、ほぼ同程度の期間で処理されているというふうに理解をいたしております。
  403. 二見伸明

    二見委員 運輸省の局長さん、私、この問題で文句言いたくないんだけれども、運輸省が事前に私のところに説明に来たのは最低一年はかかると言われた、場合によれば三年かかると言われていた。おかしいじゃないか、答弁が。じゃ、私に運輸省はデマ言っている、間違った情報を流したんですか。事前に私のところに来た説明ではそうなっている。冗談じゃない。そんなことじゃきょうこれは質問できないじゃないですか、そんないいかげんなことをやられたんじゃ。きょうはやめましょう、これやるの。
  404. 水田嘉憲

    水田政府委員 いろんな局によって若干数字は異なるわけでございますが、この関東運輸局の管内につきまして、先生から御質問があるということで具体的に調べたわけです。この対応するそれぞれの年について、どういう期間、免許の申請及び処理に時間がかかっているかということを調べたわけでございますが、その結果、今申し上げましたとおり二カ月ぐらいから、長いので五カ月程度の状況でございます。
  405. 二見伸明

    二見委員 私は、この免許取得で運輸省がどうのこうのと言う気は全くなかった。捜査の問題にかかわるから私は聞きたかったのです。それを、私のところに来た説明とこの説明は全く違っているじゃないか。そんなことで質問できるわけないじゃないですか。きょうはやめましょう。
  406. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 満足な答弁にならないかもしれませんけれども、私の聞いた形の点だけを御報告させていただきます。  実は先生も御指摘のとおり、物流二法の改正後、許認可が認可対象になりましたからこれは非常にスピードアップされてきていることは事実でございます。その前の時点におけるこの許認可のスピードと申しますか、二年、三年かかるといったやつが実態はどうだという形に対する政府委員答弁で大変御指摘を受けておるわけでありますが、私の手元に届いておる段階のこの七路線の免許日程に関しては随分変動があります。五カ月かかったのもあれば十カ月、中には三カ月、一番早いので一カ月二十七日、こういうのもございます。一カ月二十七日のやっは近々、平成一年八月の路線延長で東京都区部から千葉市という短い区間のやつでございますけれども、そういう早いやつもありますけれども、平均六カ月、長いやって十カ月、そういう形になっております。これは細かい路線名、きちっとお答えできますけれども、そういうことになっております。
  407. 二見伸明

    二見委員 普通、路線のこういう免許を取るには一年もかかる、二年もかかると言われてきている。それは常識。ところが、佐川の場合、東京佐川急便の場合は五カ月、五カ月、六カ月、十カ月、三カ月、二カ月、四カ月と、要するに常識から考えるとかなり早く免許を取得しているわけです。私このことについて、これは今度の金の流れのうわさもあるから、この免許の取得については運輸省に何らかの圧力がかかったのじゃないかという素朴な疑問を持っている。疑問を持っているから、私は運輸省に事実上はどうなんですかと聞いたのです。  ところが、私にしてきた説明と全く違う説明をされた。それでは一体何を信用すればいいのですか。政治的配慮をしたのですか、これは。それではこの問題について質疑はできませんね。もうきょうはやめましょう。  私は、リクルートと佐川の違いというのは、リクルートの場合は行政官庁に彼らは手を伸ばした、佐川の場合には行政官庁ではなくて政治家を動かしたというところに、リクルートと東京佐川との違いがある。この免許を取得するのに、これだけ早い期間に佐川に免許がおりたということについては、私は佐川から、これは確定できませんよ、佐川から資金の提供を受けた政治家がもしこれに圧力をかけているということになれば、これは大変な問題だな、こう思っているわけです。いいですか。まあいいや。  私は別にここで運輸省を追及してどうのこうのという気は全くないわけだ。私は非常にこの免許を取得するのが短いというのは不自然だなという印象を持っている。——いや、これは当たり前なんですよというのは、別なんです。私は不自然だと思っている。普通は一年も二年もかかる。だが、これが佐川については五カ月とか六カ月とか、早い場合は二カ月だ。これは不自然だなという印象を持っている。だから、その不自然だということを同じように捜査当局も、私みたいにど素人が不自然だと思うんだから、専門家だったらばどういうふうに思うのかなと。当たり前だと思うのか、不自然だと思うのか、それを聞きたかったのです。
  408. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  具体的事実関係につきまして検察当局がどのような認識を持っておるかということにつきましては、法務当局からは御答弁いたしかねるわけでございます。
  409. 二見伸明

    二見委員 そんなこと聞いているんじゃないよ。私みたいに素人ですら不自然だなと思っているんです。捜査当局がこれは不自然だと思っているのか、これがノーマルだと思っているのか、そのくらいの感想を言ったっていいじゃないですか。我々は、これは政治に絡んできているというから、国会としてこれを明らかにしなきゃならぬ、政治不信を取り除くためにも明らかにしなきゃならぬと思っているから聞いているわけじゃありませんか。
  410. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  重ねてのお尋ねでございますけれども検察当局がどういう認識を持っているかということにつきまして法務当局からはお答えはいたしかねるということを申し上げているわけでございます。
  411. 二見伸明

    二見委員 例えば、しかも東京佐川は特別監査を受けていた時期に、平成元年五月五日というのは特別監査を受けていた、そのときも路線延長の免許を受けている。しかも期間が短い。私はこれは非常に不自然だという感じを持っている。だが、捜査当局はなかなか言わない。  では、もう一点お尋ねいたしますが、政界に多額の金が流れたということになるので、それを解明するためにも、もしこの免許取得に、捜査当局は佐川急便の金の使途を特別背任とかずっと特定していくわけでしょう、その段階で巨額の資金を受けていた政治家がいたとする。それがこの免許取得に対して何らかの圧力なり何らかの働きかけをしたということになると、これはいろいろな問題が起こってくるのじゃないか。これから捜査がどんどん進展していくわけだけれども、そういうことも念頭に置いて、視野に置いて捜査を進めるのかどうか。その点についてはお答えいただけますか。
  412. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今お尋ねになっております東京佐川急便株式会社をめぐる事件につきましては、検察当局において捜査をしている限りのことで私の方からお答えするわけでございますが、現在捜査をしているところでございますので一般的なお答えしかできないわけでございますが、一般に検察がどのような事柄について関心を持って、どのような捜査をしているかということにつきましては、これは捜査の秘密に属することでございますので、ここでお答え申し上げることはできないわけでございます。それは御理解いただきたいと思うわけでございます。
  413. 二見伸明

    二見委員 それでは、どうせこれ以上言っても。恐らく同じ答弁が返ってくるでしょうから、これは、これからじっくりといろいろな機会にこの問題は議論されていくわけですから、後日に譲りましょう。  それでは、これは国税当局にお尋ねしますけれども、特定された段階で、職務権限には関係ないけれども、例えばAならAという人に巨額の資金が流れた。それが税務申告をしていればともかく、もししていない場合には、これは所得税法違反、脱税ということになるのかどうか。これは国税の判断はどうなりますか。
  414. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 一般論でございますけれども、そのお金がどういう性格のものであるかということによるかと思いますけれども、仮にそれが政治資金というようなことでございますれば、それは雑所得の収入金額ということになりまして、その受け取った額から政治活動のために費消した金額を控除した残額が課税の対象になる、また個人的にそのお金が費消されたということでありましたら、これは課税の対象になる、そういうことだと思います。
  415. 二見伸明

    二見委員 逆に言えば、これは脱税ということもあり得るということですね。
  416. 冨沢宏

    ○冨沢政府委員 個別のケースについてはあれでございますけれども、収入として課税さるべきものが適正な申告をされておらないということであれば、それは脱税ということになり得るケースだと思います。
  417. 二見伸明

    二見委員 自治大臣、これをもし政治資金として受け取った場合、政治資金収支報告の中に届け出なければ、これは届け出違反ということになりますか。
  418. 吉田弘正

    ○吉田(弘)政府委員 お答え申します。  政治団体に対する寄附あるいは政治家個人に対する政治活動に関する寄附につきましては、これは、政治家個人に対する場合は政治団体を通じてなりあるいは保有金として収支報告をするということでございますし、政治団体が受けたものはその政治団体が収支報告をするということでございます。
  419. 二見伸明

    二見委員 実はまだこれは捜査が始まったばかりだし、捜査当局もなかなか言うことを言いません。しかし私は、政界への不信を取り除くために、この政治の部分、政界にかかわる分野について、捜査の一つの区切りがついた段階で、ぜひともここに中間報告をしてもらいたいというふうに思いますけれども総理大臣、これはいかがでしょうか。
  420. 田原隆

    田原国務大臣 お答えいたします。  この事件、ただいま捜査に入ったばかりでございますから、現段階でいつごろ中間報告するとか、そんなことするとも言えないわけでございますので、(二見委員「区切りがついた段階で、それはいつだかわかりません」と呼ぶ)それがわからないし、その時点で改めてお話を伺わしていただきたいと思うのであります。
  421. 二見伸明

    二見委員 私は、大臣、きょうここで報告しろと言っているのじゃないのです。捜査進むでしょう、それはいつわかるかわかりません、このことは。だけど、ある一つの区切りがついた段階国会からの要請があった場合には中間報告をしてもらえますねということを伺っているわけです。
  422. 田原隆

    田原国務大臣 捜査がある程度進んで区切りがついて、その時点で国会から御要請があった場合は検討さしていただくということでございます。
  423. 二見伸明

    二見委員 いずれにいたしましても、この佐川急便の、佐川グループの問題というのは額もけた外れに大きい、四千九百億円とかいろんな数字が出てきている。しかも暴力団との関係もある。巨額な金が政治家に、政治の世界に流れてきた。これは我々としてもほっておくわけにはいきません。私は、この問題を徹底的に解明するために、またこれを解明することが政治への信頼を取り戻すために非常に大事なことだと思っているわけです。  ですから関係者、佐川佐川急便会長、そして東京佐川社長の湊川さん、これには証人としてこの場においでをいただき、そしてありのままにお話をいただいて、政治の不信を取り除くためにこの場に証人としておいでいただきたい。証人喚問要求いたしたいと思います。委員長のお取り計らいをお願いいたします。
  424. 山村新治郎

    山村委員長 二見委員に申し上げます。  理事会において協議させていただきます。
  425. 二見伸明

    二見委員 防衛問題について一、二伺いたいと思います。  二月四日、公明党、我が党の市川書記長の質問で明らかになったのは、一つは、中期防二十二兆七千五百億円については、平成三年度で後年度負担分も含めて一千億円が削減された結果、中期防の総額は当初の二十二兆七千五百億円から二十二兆六千五百億円に圧縮された、この点が明らかになったと思いますけれども、この点は防衛庁長官、間違いありませんか。
  426. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 現在の中期防は三年後の見直しを規定しておりますしかるところ、今先生指摘のように、昨年の中東問題、湾岸戦争の九十億ドルの拠出に関係いたしまして一千億円の削減を約束をいたしました。過般、この点につきまして市川書記長の方から御質問がございまして、私はこの一千億につきましては中期防の見直しの中においてきっぱりと減額をいたしますということをはっきり申し上げた次第でございます。
  427. 二見伸明

    二見委員 もう一点確認いたしますが、これは総理の御答弁でしたけれども、中期防を前広に再検討する、こうおっしゃられました。それからさらに、別表と大綱は一体不可分ではないかという書記長のいろんなやりとりがありましたけれども、大綱の別表も検討するということもこれも明らかになりましたですね。これは確認と同時に、今どういう状況になっているか、御説明いただきたいと思います。
  428. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先生二つのことをお尋ねでございますが、第一の前広に検討するというのは、これは先ほど申しましたように中期防の三年後見直しにかかわる問題でございます。  総理の方から、昨年の十二月の二十八日の安全保障会議におきまして、国際情勢の急激な変化あるいは厳しい財政事情等を勘案して前広にこの検討に着手すべきであるという御示唆、御指示がございまして、私どもはこれは異存がございませんから、直ちに着手するということで防衛庁に防衛力整備委員会を発足させまして検討に着手したところでございます。  第二の問題は、防衛計画大綱に関する問題でございます。  総理からも答弁申し上げましたように、この中期防の中には、自衛官の充足状況等人的資源の制約等からして、防衛力のあり方についてこの期間中、つまり中期防の期間中に検討、結論を出すということは掲げておりまして、この点が防衛計画大綱の別表との関連で議論された点であります。総理から御答弁申し上げましたように、この検討は今中期防期間中、つまり平成七年度までにこれはいろいろの条件あるいは分野、広範な分野等を擁しますから時間のかかる問題でございますが、検討いたします。  そうしますと、別表の方も当然検討の対象になり得るものというように総理から御答弁申し上げ、さらに市川書記長の方からもお尋ねがございまして、単に別表の修正で終わるのかどうかという念押しかございました。これにつきましては、本文の方におきましては、まあ当然なことながら目的、趣旨あるいは国際情勢あるいは防衛構想、防衛態勢また三幕のあり方等が規定されておりますが、三幕のあり方等には影響をあるいは及ぼすものという御答弁を申し上げているところでございます。
  429. 二見伸明

    二見委員 実は私は、防衛費の削減というのは、防衛費の構造からいって、単年度だけで削減するとか考えるというのは非常に難しいというふうに思っております。したがって、今後、平成四年度から七年度の四年間でもって防衛費の削減というのは考えなければならないのではないか、こう思います。  既に世界情勢というのは激変しまして、ソ連が解体し消滅してしまった、アメリカも今後五年間で五百億ドルの軍縮をしようとしている、ドイツも軍縮を進めようとしている、そういう世界の激変状況の中で中期防の見直し、再検討、大綱の別表の見直し、そうしたことが行われるわけでありますが、私は、中期防及び別表の見直しの結果、中期防の総額は現在は二十二兆六千五百億円ではありますけれども、これがさらに圧縮され、下方修正されるべきであるというふうに思っておりますが、政府の御見解はいかがでしょうか。
  430. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ただいま御指摘の点は、現在の中期防は、非常に今までの防衛計画と違っております点は、これは総額二十二兆七千五百億、総額明示方式でございますから、その範囲内において必要に応じて修正する、これは過去の防衛計画にはございません。そういう趣旨は、これは一昨年の暮れにつくられたものでございますが、情勢の変化等を踏まえまして、今後の防衛力のあり方について、今先生指摘のような防衛計画に反映すべきものということで書かれたものと、私はこれはそう考えております。  したがいまして、今先生指摘のように、一千億につきましては、これはまだ正式に二十二兆七千五百の中でどうこうするという要式行為としてはやっておりませんけれども、当然私どもは三年後見直しのときにはこれは一千億円減らしますから、今御指摘のように二十二兆六千五百億円になると存じます。しかもその中で、こうした総理の御指示等もございますし、それを反映させながら、こういうことが書かれておるということは下方修正ないし減額修正をあるいは示唆しているものというように私どもは受けとめるのが素直な受けとめ方だと存じますので、そうした方向で今後それらを含めて検討さしていただきたい、このように存じております。
  431. 二見伸明

    二見委員 総理確認いたします。  今防衛庁長官答弁は、二十二兆六千五百億円をさらに削減、下方修正するということも念頭に入れて検討するということですが、私も改めて、二十二兆六千五百億円を削減する、圧縮する、下方修正する、そういう形での見直しはぜひともやるべきだというふうに思いますが、総理の重ねての御見解を承っておきたいと思います。
  432. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 防衛庁長官からお答え申し上げましたとおり、このような世界の大きな変動によりまして、見直し期間を前広にすること、しかも見直しというのは、これは減額修正ということと考える、こう申し上げました。私もそういうふうに考えております。
  433. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣、財政問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  政府は、去る一月三十日発表の「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」という中で、九五年度、平成七年度、国債依存度五%未満という目標を掲げました。それを実現するために、国債発行額を毎年一兆一千五百億円ずつ減額するという方針を明らかにいたしました。これによりますと、平成七年度発行額は三兆八千三百億円ということになります。これはバブルのときと同じような大幅な税収増がない限り、到底達成できる数字ではありません。  そのことをまず冒頭に申し上げて、まず大蔵大臣平成二年度で赤字国債発行は脱却しましたけれども、これは私は、財政当局の努力を全く否定するわけじゃないけれども、むしろバブルによる異常な税収増の恩恵であったんではないか。  ちなみに、この間のいわゆる税収、租税、印紙収入の決算ベースでの額を見ますと、昭和六十年では実績で三兆二千九百四億円、六十一年三兆六千七百八十億円、六十二年四兆九千二百十一億円、六十三年四兆二百八十六億円、平成元年四兆九百五十三億円、平成二年五兆一千八百四十一億円。この間のGNPの伸びは、六・四、四・四、四・九、六・四、七・一、七・六。GNPが伸びだと同じように税収もこのように実績で伸びております。これが赤字国債を脱却した大きな原因であります。  私は、好況の次にはリセッションが来るのは、これは当然です。いつまでも好況が続くわけがない。それならば、景気のいいときに、バブルによる税収がうんとあるときに、リセッションが来たときにはどうしようか、そのとき税収は落ち込んでくるだろう、そのことも念頭に置いた考え方をしておかなきゃならぬ。そのためには、そういうときに歳出の優先順位というものをきちんとしておく、あるいは歳出の膨張体質を是正する、それをこの期間にやっておくべきだった。それをやらなかったということについては、私は大変遺憾だと思いますし、これは結局、平成四年度での歳入欠陥というのは従来の財政政策の失敗以外の何物でもないというふうに私は思いますけれども、大蔵大臣、御所見いかがですか。
  434. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今御指摘がありましたように、いわゆる失敗じゃないのかという御指摘があったわけでございますけれども、今、二見委員の方からも御指摘がございましたように、この間の予算の編成に当たりましても、やはり節減というものをしていこうということ、あるいは制度を見直していこうということで実は対応をしてきております。  それと同時に、今御指摘がありましたように、大変過熱ぎみと言われるような経済成長というものがあった。そういう中で税収に大変恵まれたということもありまして、そういう中で、今お話があった平成二年度、これは初めて、初めてというより十五年ぶりに特例公債から脱却するという措置をすることができたわけでありますし、その三年度の予算につきましても、いわゆる公債依存度というものを引き下げるという努力を行うこともできたというふうに私ども思っております。  ただ、御案内のとおり、今までの多少過度と言われたこの成長というもののいろいろな要因というものが落ちてしまったという中で、平成三年度二兆八千億ほどの減収になるであろうということであって、見込まれておりまして、なかなか厳しい状況にあるということは御指摘のとおりであります。  そういう中で、私ども平成四年度の予算を編成するに当たりましても、このいわゆる公債依存度というものを下げながら、また、公債費というものを少しでも下げようということで努力してまいったわけでありますけれども、そしてそのための節減合理化等を行ったわけでありますけれども、残念ですけれども建設公債というものをやはり伸ばさなければならなかったということ、これは残念に思っております。  しかし、私どもは、これであきらめてしまうというのではなくて、今御指摘のございました、ひとつ、努力目標といいますか、こういったものを目指してやはり努力をしていかなければいけないんじゃなかろうかということを改めて思っております。
  435. 二見伸明

    二見委員 また、「財政の中期展望」によりますと、税収の弾性値を一・一と試算して、平成五年度の税収は、平成四年度の六十二兆五千四十億円よりも三兆一千三百六十億円増の六十五兆六千四百億円になる、こう試算をしているわけです。一方、国債発行は、平成四年度の七兆二千八百億円よりも一兆千五百億円減らした六兆一千三百億円になる。その結果、歳入は、その他の収入も含めて七十四兆一千四百億円、歳出は、新規施策を考えなくても七十七兆二千億円であり、要調整額は三兆六百億円、こういう試算になっている。  なお、一般歳出の伸びは年々どのぐらいかといいますと、平成三年度では、二年度に比較して一兆六千六百億円、平成四年度では、平成三年度に比較して一兆六千億円。この一兆六千億円というのは基調的な増加と私は考えますので、これはなかなか歳出カットは難しい分野だろう。しかも、平成五年度では、要調整額が三兆六百億円、これをどうするのか。六年度の要調整額は三兆八千二百億円、七年度は四兆一千八百億円。これだけお金がないんです。  対処する方法というのは三つしかない。歳出を削減する、増税、国債発行、この三つきりないんです。平成七年度に五%未満にするという以上、どういう政策手段を考えているのか、大蔵省の御見解を承りたい。しかも、これは、ただこの三つの組み合わせだけではなくて、景気対策だって絡んでくるわけでしょう。そうなると一体どういう手品をされるわけですか、これは。
  436. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 確かに、御指摘がございましたように、何というんですか、要調整額というものを私どももやらざるを得ないだろうということを考えております。ただ、私どもは、この間に努力していくことは、今度の予算の中にも景気というものをやはり配慮をいたしております。ですから、この景気というものをきちんと維持することになりますと、税収というものもやはり余計に見込むこともできてくるでしょう。過去のような余り過度なものを求めるということは許されないと思いますけれども、そういった努力というものはあろうと思っております。  それと同時に、やはり私どもとしましては、税収を新たに、何というんですか、例えば消費税なんかをどうこうしてというようなことを考える、そんなことではなくて、まず歳出の削減ということを、これはもう徹底してやっていかざるを得ないであろうということを、私どもはこれを一番念頭に置きながらこれからの財政運営というものをしていかなければならない。  御指摘のございました公債につきましては、先ほどお話がありましたように、やはり国債費が二二・数%というような状況になってきますと完全に財政が硬直してしまっておるということ、それから、このままあれしていきますと、また再び今度特例公債というものに引かれてしまうというようなことがあるだろうということを考えますときに、これはもう高齢化社会の到来することが間違いなく予測されるわけでありますから、そういったことを考えたときに、私どもは、やはりこの公債についても何とか抑えるように努力していかなければならないだろうというふうに思っております。
  437. 二見伸明

    二見委員 確かに歳出削減は一番考えなければならない課題ですが、三兆円も四兆円も削減できますか、大臣
  438. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 いや、今申し上げましたように、歳出削減だけではなくてやはり増収を図っていくということ、これを我々は考えていかなければならないことだろうというふうに思っております。
  439. 二見伸明

    二見委員 私は、平成七年度五%という、言うなれば不可能な目標をあえてこの際に掲げた本当のねらいというのは増税にあるんじゃないですか。消費税を一%上げれば三兆円や四兆円入ってくる。この要調整額、三兆円とか四兆円という穴を埋めるために消費税率は引き上げる、あるいは何らかの増税を考える、こういうことになるわけですか。私は、増税をするためのプロパガンダではないかなというふうに考えておるのですけれども、大蔵大臣いかがです。
  440. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 いや、この案をあれしましたときのあれは、現在のような、景気というのが少し調整局面にこんなに早く、しかも急激にあれするというようなことは見込んでおらなかったということでございますから、増税というものを見込んで、またそこに誘導するようなつもりでこの中期展望というものはつくられたものでないというふうに理解をいたしております。
  441. 二見伸明

    二見委員 ということは、増税は念頭に置いていない、こう考えてよろしいですね。
  442. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 そのとおりであります。
  443. 二見伸明

    二見委員 やはりこれは大変大事な問題だと思います。これは大蔵省だけを責めるとかということじゃなくて、やはり国会でもまじめに議論しなければならぬ課題だと思います。  それで、総理大臣、お尋ねしますけれども、一体政府としては国民にどういう選択肢を求めるのか。今増税しないとおっしゃった。歳出削減、これも当然です。あるいは七年度無理だからもう少し先に延ばしてもらって、依存度五%はもう少し先送りします、一方では歳出削減する、増税はしない、だけれども、三兆、四兆というのはなかなか大変だから、これはちょっと先に延ばしますとか、いろいろな選択肢を国民に私は明らかにする必要があるだろう、そうしたまじめな議論をしていく必要があるんじゃないかと思いますが、総理大臣の御見解はいかがでしょうか。
  444. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先ほどからお話をごもっともだと思って承っておるわけですが、お話の中に先ほど過去における成長率の推移も話されました。その間、実は租税弾性値の推移もございますわけで、要は、私は経済をどういうふうに運営するかということではないかと考えます。もうバブルがいいということを決して思っておるわけではございません。しかし、やはり経済というものが順調に成長する、推移するということであれば、それなり増税でない、自然増と仮に言わせていただきますが、これがかなり大きくなることは過去の経験でも明らかでございますから、殊に我が国のように労働力の不足ということはもうほとんどどこまでも間違いないということは、殊に時間短縮を加えますと、やはり合理化投資とか設備投資とかいうものはしなければならないという企業家側の意識がございますので、それは順調な成長要因になり得ることだと私は思っておりますものですから、そういうふうな経済運営をすることによって、いわば今落ち込んでおります税収をもう少し高い水準に回復できる。そうするのが一番大事なことではないか。  この消費税の税率を上げるなんていうことはもう経済政策としては下の下でありまして、そういうことをやらずにやはり経済運営を我が国はできるはずだし、そうしなければならないと思っておるわけであります。
  445. 二見伸明

    二見委員 私も、歳出削減に努力する、と同時に景気対策、景気を浮揚させていく、日本経済の力をつけていく、これが今後の政策の基本になるだろうと思います。  今、総理大臣から景気の問題が出ましたので、私も景気問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  世界の経済が低迷している中で、さきの日米首脳会談あるいはG7等を通じて、経済大国である我が国に対する期待が高まっていることは事実であります。この面からも政府経済見通しの実質三・五%というのは何としてでも達成しなければならぬ責任が出てきているというふうに私は思います。  総理大臣、認識として伺いますが、三・五%を下回るようなことになりますと、貿易黒字がさらに拡大して、対日批判が激化するのではないかという私は憂いを持っています。もう一つ、貿易摩擦を緩和して世界に貢献するには、三・五%の達成は今や国際的な公約になってしまったのじゃないかという私は感じを、今までのいろいろな会談を通してそういう印象を受けておりますが、政府として、総理大臣の御認識はいかがでしょうか。  と同時に、経済企画庁長官、その次、総理大臣の後にお尋ねしますけれども、三・五%を達成するというのであれば、在庫調整だとかあるいは四半期別の経済の見通しというものをどういうふうに描いておられるか、それもあわせて総理大臣の御答弁の次にお答えをいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  446. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 三・五%を確保すること、殊にそれが、どちらかといえば内需が大きく、外需は幾らかでもマイナスに立つ、そういう意味での三・五%でありませんと、二見委員の言われておられますようなまさにそういう問題に到達するであろう、それは国際的には非常に実は批判を受けることであろうと思います。  先般、大蔵大臣がG7に行かれました。その後ステートメントが出ました。これは何も我が国が機関車役を買ったというわけではございませんけれども、しかし我が国がその期待どおりの成長をするということに、やはりG7、そういう自由主義国家群の大きな期待がかかっているということも事実であろうと思います。
  447. 野田毅

    ○野田国務大臣 四年度の経済見通し三・五おということについて、今総理から基本的な御答弁もあったわけでございます。  ざっくばらんに申し上げて私は、天気予報ではない、こう思っておりまして、それを達成していく私どもは当然の政策努力もしていかなければならぬし、同時に、現在の景気の現状について見ますと、かなりこのところ減速が強まっておるというふうに考えておりますが、ただ、短期的なものと若干基調的なものをあわせて考えますと、基調的にはやはり過去のやや過熱ぎみのハイペースの姿から、むしろ雇用の均衡を図りながらバランスのとれた持続可能な成長経路に今まさに移行する調整過程にある。しかし、調整過程にあるとはいいながら、今冒頭申し上げましたように、かなりそれよりも、望ましい姿よりも下ぶれがしておるのではないか、特に経営者のマインドがさらに下ぶれをしておるのではないか。  そこで、こういうことではよくないということで、昨年の暮れに補正予算、あるいは現在御審議をいただいております四年度の予算、この四年度の予算についてはかなり景気に中身の厚い配慮をしておる。これはもう御案内のとおり、国の一般会計歳出のみならず、あるいは地方単独あるいは財投、こういった公共事業系統は御案内のとおり思い切って伸ばしておるわけでありますから、いわば薬は調合した、調合したのだけれども、まだこれが予算が通っておらぬものですから、薬をまだ飲んでいないのが今の現状である。だから、何とか早くこの薬を飲ましてやりたい、そしてできるだけ早期に執行したいというふうに実は感じております。  そこで、在庫調整のお話がありましたのですが、いろいろ業種によって異なると思います。率直に言って、このところの生産は下げておりますが、しかしまだ在庫は積み上がっておるという、これが非常に業況感を悪くいたしております。一−三で在庫がさばけ始めるという期待感が、やや四−六にかかるのではないかというような、基礎素材部門なんかでもそういう判断がございます。しかし、基本的には設備投資は、総理からお話がありましたように、このところの金利の低下傾向あるいは特に省力化投資、時短などから来る省力化投資、合理化投資というものはどうしてもやらなければならぬ、こういう根強い要素がありますし、それから個人消費についても、物価が安定しておること、あるいは個人所得が堅調に伸びる、あるいは住宅投資についても昨年十一、十二月ごろから大体下げどまり感が出てきておる、さまざまないわば明るい要素も実はあるわけであります。  こういった最終需要が逆に元気が出てきて、そしてそれが在庫をさばいていくという形になって景気も明るい方向に向かっていくだろう、こういうふうに実は判断をいたしておるわけであります。
  448. 二見伸明

    二見委員 平成四年度予算は景気に配慮したとおっしゃいますけれども、法人税等増税しておりますね。こうした増税措置というのは民間の資金を吸い上げることになるわけですから、これは景気に逆行するわけです。とても景気に配慮したというふうには理解できません。
  449. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 確かに御指摘のあれはございますけれども、しかし実際にもう御案内のとおり今度の税というのは、一応この間の湾岸のときの臨時の石油のあれ、それから法人税、これは一応失効させるということであります。それから、もう一つのいわゆる消費税ですね、六%、これを失効させたということでありまして、新たに法人税については基礎控除、これは三百万円を四百万円ということにし、そして自動車については六%を四・五%ということで、確かに厳しいあれだってあったわけでありますけれども、しかし前年に比べますと今現在よりはこれは低くなるということであって、私は、これは景気の足を引っ張るものじゃないだろうというふうに理解をいたしております。
  450. 二見伸明

    二見委員 私は、それはおかしいと思いますよ。これは平成四年度だけじゃないでしょう。この増税は二年間でしょう。二年間に増税が及ぶということは、やはりかなり影響は大きいと私は思います。  来年度、要するに平成四年度の後半から景気が回復すると見ているのであれば、二年間増税する必要なんかない。やはり景気の回復力は弱いという認識があるから二年間続けて増税しなければならぬ、そういうふうに考えているわけでしょう、大蔵省は。
  451. 野田毅

    ○野田国務大臣 今大蔵大臣が基本的に御答弁申し上げたとおりでありますが、政治的にはそういう意味で期限が来たらやめるというのは当然で、期限が来たのに引き続いてやるというのは増税であるというふうな受けとめ方があるということは否定できないと率直に思います。  しかし、経済効果としていうならば、この税制改正によって、じゃ昨年度と今年度とでどうなったかということでいえば、経済効果としてはやや減税になっておるということ。それから租税特別措置の世界はほとんどが実は期限つきであります。そういう中で、いろいろな角度の中から租税特別措置によって減税をしておるわけであります。これを全部期限が来たからやめるのは当たり前だというわけにはいかない。したがって、そういう意味で、期限が来たものであってもお願いするものはお願いをするし、認めるのは認めるということでありますから、基本的に今回の税制改正が経済の上で、私は率直に言って経済効果としては多少の減税になっておる、これは来年度においても再来年度においても同じであるというふうに思います。
  452. 二見伸明

    二見委員 いいですか、もう一点言いましょうか、別の観点から。  政府の経済見通しては、固定資本形成の伸び率は三・三%になっていますね。これは平成三年度は五・六%だった。名目経済成長率の五%を下回っている。しかも、景気のよかった三年度よりも下回っている。これで思い切った拡充と言えますか。言えないでしょう。  もう少し言わせてもらうけれども、私はこれでは冷え切った、冷え込んでいる現在の企業マインドを好転することはできないと思っているのです。日銀が一月三十日に発表した「わが国金融経済の分析と展望」では、在庫調整が広がっており当面調整が続く、景気の不透明感は強まっていることを明らかにしている。それなのに二年続きの増税に加えて、財投では増加したとおっしゃる。しかし、一般会計では平成三年度よりも二百三十六億円少ないでしょう。私は、公共事業は景気を押し上げるほど組み込まれているとは思っていないのです。これでは冷え込んでいる産業界のマインドを変えるわけにいきませんね。  経済企画庁長官も先ほど、かなりマインドは冷え込んでいる、景気は減速傾向が強まっていると。減速傾向が強まっているものを何とかどっこいしょと上げるような内容の景気対策、予算になっておりませんよ、これは。
  453. 野田毅

    ○野田国務大臣 公的資本形成の経済見通しですが、仰せのとおり平成四年度当初では三・三%程度と見込んでおるわけであります。これはいわば毎年、残念ながら日本は災害常襲国でありますので、御案内のとおり災害などによって常に補正予算をお願いをしておるわけでありますが、おおむねその規模が、ざっと公的資本形成ということで換算をしてみると八千億程度になる。それがさらに上乗せになると、これは恐らく実績ベースでは六%程度になるであろうということは推測はされると思っております。
  454. 二見伸明

    二見委員 公的資本形成、これは平成三年度が五・六、平成四年度は、景気の落ち込んでいるときが三・三。私はこれはやはり景気の浮揚には余りつながらない性格のものではないかというふうに思います。  私もう一つ憂えるのは、冷え込んでいる景況感がさらに落ち込んでいく、そうなりますとやはり個人消費も控えてきます、これは。デパートでの売り上げがちょっと陰りが出てきていますね。そうしたことで、個人消費が今までは堅調であった。この景気を支えてきたのは個人消費と設備投資です。その個人消費にも影響が出てくるようなことになるとこれは景気はえらいことになる、こういう判断をしているのです。  だから国民に、景気は将来、平成四年度の後半にはぐっと上向いてくるなという期待感を抱かせる、そうした確信を抱かせるということが大事なことだと思うのです。そのためには具体的に国民の目に見える形で対策を講じることが必要なのではないか。つまり、今予算案を審議している真っ最中ではあるけれども、景気の一層の停滞を防ぐためには公共事業の前倒しということは当然考えなければならない施策だと思いますけれども総理大臣、これは、そのことは念頭に置いておられますか。
  455. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 御指摘の点はまことに同感でございまして、そのようなお立場から予算を御審議いただけることは大変にありがたいことだと思っております。  そこで、さしずめ、地方財政におきまして単独事業が十四兆、大きくなっておりますので、地方の方が比較的、年度が変わりますと自由にこの単独事業をやりやすい立場でございますので、この間も自治大臣にお願いをいたしまして、その方のことをさしずめお願いをいたしておるところでございます。これは額が大きゅうございますので、かなり効果があろうと思います。  国の予算でございますが、何よりもまず予算を早く成立をさせていただきたいということを念願いたしております。その後にどうすべきかにつきましては、労働事情とかいろいろなことやありそうでございますから、いずれにしてもベストの方法をとらなければならぬと思っておりますけれども、今そこを定かに申し上げるのには少し時間が早いかと存じます。さしずめ地方からお願いをしたいと思っております。
  456. 二見伸明

    二見委員 地方に前倒しをお願いしたならば、国だって前倒しは念頭に置いてよろしいんじゃないでしょうか。確かに今予算は審議中ですが、そのことは念頭に置いてよろしいんじゃないでしょうか。
  457. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 国会の御審議の御議論も拝聴しながらベストを尽くさなければならないと考えております。
  458. 二見伸明

    二見委員 また、三・五%の達成には、住宅投資や設備投資が政府の見通しのように増加するかどうかという、これがやはり問題があると思います。地価の下げどまり感が見えない中で、住宅投資が果たして二・八%増加するんだろうか。平成三年度はマイナスになった、ことしはプラスになっている。二・八%増加するというその要因は何でございますか、これは。
  459. 野田毅

    ○野田国務大臣 一つは、先ほど申し上げましたように、昨年の九月、十月、大体百二十六、七万戸台であります。十一月、十二月が約百三十万戸台に、百三十万戸ぐらいの年率ベースになっております。  ことし一月に入りましてさらに住宅関連の金利が大幅に低下をしてきておる。現在住宅公庫でいろいろ募集中でありますが、かなり出足が好調というようなこともございます。そういった点で、そろそろ住宅も私は下げどまってきておる、建設戸数は下げどまってきておる。したがって、これからさらにより手が届きやすい環境ができつつあるわけでありますから、そういう意味で、おおむね平成四年度においても戸数においてはある程度の戸数はできるんじゃないかと。  さらに、基本的にはむしろ持ち家の割合が、その新規着工戸数の中で持ち家の割合が実はふえてきております。二月当たりの、そういう意味では面積がふえてきておるわけでございます。そういったことがいわゆる住宅投資全体としては多少ふえていくというふうに実は見込んでおるわけであります。  さらに、貸し家についてもやや下げどまりの傾向が出てきておるということをあわせて申し上げておきたいと思います。
  460. 二見伸明

    二見委員 私は、長い目で見て住宅投資が堅調に伸びるためには、また土地購入を伴う設備投資が回復するためにも、地価が一層低下してバブルが消滅するのが大変望ましいというふうに思っているのです。  国土庁にお尋ねしますけれども、地価の値下がりというのはもうこの辺で終わりなのか、それともまだバブルが残っていてさらに下がっていくと国土庁は見ているのか。今後の地価の動向について簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
  461. 東家嘉幸

    ○東家国務大臣 お答え申し上げます。  現在の地価の動向につきましては、大都市圏において今日まだ下落傾向にございます。地方圏においても鎮静化傾向が拡大いたしております。  なおまた今後の問題につきましては、やはりこれからの総合土地政策要綱に従って、中堅サラリーマンの年収五倍以内におさめるべく私たちは努力をしていかねばならないと思って……(二見委員「地価はまだ下がりますね」と呼ぶ)はい、そのように考えております。
  462. 二見伸明

    二見委員 ところで、これは大蔵大臣かな。銀行、ノンバンク等は土地に対してたくさん金を貸しましたね。ところが地価が下がっちゃった。売れない。不良債権をたくさん抱えている。だから、銀行やノンバンクはさらにこれ以上地価が下がることについては危機感を持っている。金融機関の、土地に多額の融資をした金融機関の経営の状況というのはどういうことになりますか。
  463. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 確かに御指摘がございましたように、土地の価格が下がるということでノンバンクですとか銀行等の不良債権といいますか、これが増加していることは事実だろうというふうに思っております。ただ、金融機関が持ちます収益力ですとかあるいは内部留保、こういったものを考慮いたしましたときに、私ども直ちに経営に懸念が生じるというふうに考えてはおりません。ただ、ノンバンクにつきましては、不動産業ですとか建設業向けの融資が大きく比重を占めているということは事実でございまして、直接経営面に影響を与えることも予想されるということは申し上げることができると思います。  ただ、これが具体的にどの程度のものであるかということ、あるいは、それぞれ個別のノンバンクのいわゆる融資内容がおのおの違っております。また、ノンバンク側もそれぞれ経営判断に基づきまして別途さまざまな債権保全措置、こういったものを講じているところでもございまして、私は一概に懸念ということを言うことはできないであろうと思っております。ただ、我々としては引き続き、ノンバンク等も含めまして金融機関の動向について注意をしていかなければいけないというふうに思っております。
  464. 二見伸明

    二見委員 国土庁長官が地価はさらに下がるというふうな見通しを話されましたけれども総理も、やはり地価はさらに一層下がった方がよろしいという御認識ですか。
  465. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 どちらかといえばそう思っております。
  466. 二見伸明

    二見委員 やはり地価が下がらなければ本格的な住宅投資というのは進まないと思うし、設備投資も本格的に動き出さないと思います。ですから、地価はさらに下げるべきだというふうに思います。  この設備投資ですけれども平成四年度、政府は四・五%伸びると見ていますね。平成三年度は四・七%。平成三年度も四年度も同じぐらい設備投資が伸びると見ている。しかし、民間のいろいろな金融調査では三%以下と見るところが多いし、あるいはマイナスというところもある。あるいは一%台と見ているところもある。しかし私は、設備投資というものほかなり厳しいんではないか。  通産省が昨年十一月二十一日に主要企業の設備投資動向を発表しましたけれども、それによりますと、平成三年度の設備投資計画は対前年度比は全産業で九・一%増、これに対し四年度の計画は一・二%、こう低迷していますね。  設備投資は個人消費とともに今回の大型景気の牽引車であったわけでありますけれども、その間はどのくらい伸びたかというと、九〇年度では、九〇年度までの三年間では、毎年一五%程度設備投資は伸びてきた。確かに、省力化投資あるいは研究開発投資の意欲が高いことは事実だけれども、それが景気を引っ張るほどの大きな力があるんだろうか。私はそうじゃないと思う。設備投資をめぐる情勢というのはもう急激に変化しているというふうに思います。  一つは、資金調達が厳しくなっている。株価の高いときでは、エクイティーファイナンスによって一%程度の低いコストの資金調達ができましたね。しかし、こう株価が低迷したのでは、そうした安い、低い資金の調達ができません。結局、金融機関のコストの高い資金によらざるを得ないでしょう。  例えば百億円融資を受ける。一%ならば年一億円でいい。六%なら、金融機関で六%なら六億でしょう。五億の差がある。五年間で二十五億の差がある。百億借りて五年間で片っ方は五億円、片っ方は三十億円。これは企業にとってはもう大変な問題だと私は思います。  もう一つ、第二バブルのときにワラント債とかいろんなエクイティーファイナンスで調達した資金がちょうどことし、四年度から返済の期限が始まりますね。理屈の上でいけば、返済期間はちゃんと社内にとめておって、こう返せばいいんだけれども、そんなわけにはいきやしない。まだ上がるだろうと思って企業はそんな手当てしていない。これから返済するための資金というのは銀行から借りるかあるいは社債を発行するか、そうしたコストの高い金でなければ返せないでしょう。これだって企業の資金計画を圧迫することになるし、設備投資にとっては去年とは全く違ったマイナス要因だ。そうですね。  もう一つは、BIS規制が厳しいですね。ですから、銀行が貸し渋りというのですか、なかなか貸したがらない。これが中小金融機関においては一層貸し渋りを招く結果になる。そうなれば、中小企業等では資金調達が非常に難しくなって、設備投資意欲が政府の見方のように私はいかないんではないか。この全く環境の変化というものをどう認識されているのか。私は、設備投資は相当厳しい状況に置かれていると思いますけれども、この点についての御認識は、これは通産大臣かな、どうです。
  467. 渡部恒三

    渡部国務大臣 確かに委員指摘のように、昨年から我が国の基幹産業あるいは主要産業の景況感は、残念ながら企業マインドが冷えて設備投資も鈍化しておることは事実でございます。  しかし、産業の将来を考えますと、今人不足の問題あるいは環境、自然保護の問題、これは、我が国の産業が無限に発展していくためには、常に技術革新により新しい設備投資というものがなければならないということを産業界の皆さん方も十分承知をいたしておりますから、私も昨年十一月、この立場に立って、できるだけ公定歩合の引き下げが早く大幅に行われてこれが実勢金利あるいは貸出金利、これに反映しておって、企業の皆さん方が設備投資意欲を持つようにしてほしいという期待を表明してきたわけでありますけれども、公定歩合、二度にわたって引き下げが行われ、これが今実勢金利、貸出金利に反映しつつありますし、またこの予算、厳しい財政の中でありましたけれども、財政投融資、幸いに郵便貯金が非常にふえておるということで、この面では昨年の補正予算の際もかつてない大幅な積み増しをお願いし、また今御審議いただいておる予算の中でも財投の大幅な積み増しをお願いしておりますので、この予算が成立すれば、通産省の関与する制度資金等も大幅に設備投資を促していく要因になってまいりますので、三・五%の成長を実現するためには産業の設備投資が極めて重要であり、また我が国の将来の発展、産業界の発展のためにも設備投資はどのようなことがあっても怠ってはならないということを重々産業界の皆さんは知っておりますので、これらを積極的に進めるような努力をしてまいりたいと存じます。
  468. 二見伸明

    二見委員 やはり設備投資が拡大するためには、金利を私はもう一段引き下げる必要があるというふうに思っております。これについては総理大臣に後ほどお尋ねいたしますけれども、日銀はお見えになられていますね。  私は、やはり金利はもう一段下げてしかるべきだというふうに思います。ただ、これに対してはこうした問題点が指摘されていることも私は知っております。例えば、金利低下が設備投資拡大にはつながらず、下がるべき地価が金利が下がったために下げどまり、結果としてバブルが残る、いやバブルが再燃するのではないかという意見のあることも私は知っております。また、低金利政策は円安を誘導し、黒字幅が拡大する、こういう意見のあることも承知いたしております。  私は、これらの意見は傾聴に使いたしますけれども、バブルの解消というのは金利だけでできるものではありません。むしろ税制とか土地利用対策とかそうしたことが総合して行われて初めて地価が、バブルが解消するわけでありまして、このことを理由に金融政策を考える必要はないのではないか。また、金利を引き下げるということは、確かに瞬間的には円安になるかもしれないけれども、金利を引き下げた結果、景気の将来に明るい灯が見えてくれば、これは円高に誘導、結果として円高になるのではないか、こういうふうに思います。  民間の信用調査機関によりますと、一月の倒産件数というのは九百四十八件で前年同月比四七%増、原因別では不況型倒産の割合が五〇・七%で前月の四八・四%から二・三ポイントアップした、こういう民間調査機関のデータもある。私は、角を矯めて牛を殺すことのないような機動的な金利政策をとるべきではないかと思います。  その点について日銀の御判断をお尋ねしたいのと同時に、私は、これは確かに金利の問題は建前の上でだけいけば日銀の専権事項です。しかし、日本の経済に大きな影響を及ぼす問題である以上、総理大臣としての御見識もその次に承っておきたいというふうに思います。
  469. 吉本宏

    ○吉本参考人 お答えを申し上げます。  まず足元の国内景気でございますが、景気の減速度合いがやや強まる中で在庫調整の動きが広がりつつございまして、生産も一進一退の状態を続けるなど、先ほど野田企画庁長官が仰せられたように、現在の景気は調整局面にあるというふうに私どもも判断をいたしております。何分、我が国の経済が過去数年にわたりましてかなり速いスピードで成長を続けたことや、あるいはいわゆる資産価額の高騰が生じた、こういったことから考えますと、現在調整局面が生ずること自体はやむを得ないのではないかと思っております。  もちろん、そうした調整が必要以上に深いものになることはぜひ避けなければならない、こういうことで、私どもとしては昨年、三次にわたる公定歩合の引き下げ、その他金融措置をとったわけであります。特に、昨年の十二月三十日に第三次の公定歩合引き下げを実施いたしました結果、現在、市場金利は急速に下がりつつございます。例えば、短期プライムレートについて申し上げますと五・八七五%でございまして、これは直近のピーク時に比べまして二・四%のダウンということであります。また、長期プライムレートは六%ということでございまして、これも直近のピーク時に比べまして二・九%ということでございます。これは歴史的に見てもかなり金利水準としては低い水準でございまして、私どもとしては現在の金利水準で十分設備投資をサポートするに足るというふうに理解をいたしております。  しかし、今後、この金融情勢、経済情勢等の推移についてなお慎重に見守ってまいりまして、適時適切に措置をとるということについては、これは私どもも常々考えておるところでございます。
  470. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいま副総裁の方からも申し上げたわけでありますけれども、私どもも、景気あるいは今お話しのございました円高の問題あるいは経常収支の問題、やはりいろいろなものをにらみながら物事を対応していかなければいけないわけでありますけれども、今、副総裁の方からもお話がありましたように、やはりこの三度の利下げというものが、マル公を下げだということが、今じわじわじわじわと実は実際の貸出金利等に影響してきておるということでございまして、これは政府の見通しもありますし、あるいは一般の研究所等の見通しもございますけれども、やはり幾つかのところの見通し等をこうやって私ども見たり、あるいは直接話を聞いておりましても、ここまでくると設備投資というものについて対応することはできるという実は言い方をされる方も割合と多くあるということであります。しかし、この動向というのは十分私ども見きわめながら、やはり適切に対応していかなければいけない。  それからもう一方、何というのですか、預金金利についての一般の国民の方、これはやはり預金の額は相当日本は大きいわけでありますから、これに対する指摘もあるということ、このことも念頭に置きながら、今お話があったことも我々念頭に置いて、もろもろの問題をにらみながら機動的に適切に対応していきたい、かように考えております。
  471. 二見伸明

    二見委員 金利が下がりつつあることは事実ですけれども、去年までは一%の資金コストだったのです。下がったからといって、一%と比べればえらい高いですな、これは。ですから、設備投資を拡大するためにはもう一段の金利を引き下げる必要があるんではないかと私は認識をしているわけです。それは、機動的に反映するということはよくわかりませんけれども、設備投資の動向によっては、もう一度金利の引き下げはしなきゃならぬというふうに思います。この点については、産業を所管をしている通産大臣の率直な気持ちと、総理大臣の、これは専権事項は日銀だけど、それはわかるけれども、経済政策としてどうお考えになるのか、その点を伺いたいと思います。
  472. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは、設備投資を行う企業にとって、貯金をおろして設備投資する企業は余りないわけですから、借金でやるわけですから、金利は、限られた枠というのはあるでしょうけれども、安い方が設備投資を促進することになるのは当然のことであります。  それからまた、これは預金者の問題等もあるでしょうが、これは大蔵省の大臣の判断ですから、いずれにしても、また金利が下がるというようなことになれば、それまで設備投資を待っていようというようなことにもなるので、私たちが今ここでどうこう言うことよりも、三・五%の成長はまさにこれは必要なことなんですから、それらの動向を見て、ある日突然ぱっと私も知らないときにこれはやられるものだろう、こう考えております。
  473. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先ほどから二見委員が御指摘の点は、私は全部大変にごもっともなことだと思って伺っておりました。が、同時に、日銀副総裁が言われましたように、短プラで五・八、長プラで六というのはかなり実は長短期とも下がってきておりますし、なお日銀が低目誘導しておられますので、私はそれはそれで、いっときのような夢のような低い金利はもう別といたしまして、まず企業家としてはこの辺だと思ってもらえる金利になっているのではないんだろうか。私としてはマネーサプライが二とかいうことがむしろ異常でございまして、そういう金利で、しかし、それならちちゃんと設備投資の資金が供給を受けられるという状況をつくることの方が必要なのではないかなという感想を持っております。
  474. 二見伸明

    二見委員 経済問題はちょっとおきまして、全く毛色の変わった質問をいたしたいと思います。  実は私は死刑廃止論者でございまして、この点について法務大臣の御意見を伺いながら、最終的に総理大臣の御見解を承りたいというふうに思っております。  死刑廃止条約というのがあります。これは、死刑の廃止を目指す市民的及び政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書というものでありまして、その前文では「死刑の廃止が人間の尊厳の向上と人権の漸進的発展」これは原文でプログレッシブ・ディベロプメント、こうなっています。「に寄与することを信じ、一九四八年十二月十日に採択された世界人権宣言の第三条及び一九六六年十二月十六日に採択された「市民的及び政治的権利に関する国際規約の第六条」を想起し、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第六条が死刑の廃止が望ましいことを強く示唆する文言をもって死刑の廃止に言及していることに留意し、死刑の廃止のあらゆる措置が生命に対する権利の享受における前進」プログレスですね、「前進と考えられるべきであることを確信し、このようにして死刑を廃止するという国際的な公約」コミットメント、「を企図することを願って次のとおり協定した」こう前文で述べておりまして、「第一条で「何人も、この選択議定書の締約国の管轄内にある者は、死刑を執行されない」「各締約国は、その管轄内において死刑を廃止するためのあらゆる必要な措置をとらなければならない」」と規定しております。  ところで、この表題にある市民的及び政治的権利に関する国際規約とはいわゆる自由権規約のことで、日本は一九七八年に署名、一九七九年に批准をしております。その六条では、第一項で「すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。」と、こう規定しています。そして、同条六項では「この条のいかなる規定も、この規約の締約国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げ谷ために援用されてはならない。」と、こうなっております。  また、世界人権宣言の第三条は、「すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。」こういう規定です。世界人権宣言、自由権規約の基調をなす哲学は生命に対する固有の権利を保障するということであり、死刑は好ましくないというものだと私は思います。それを明確にうたいとげたのが死刑廃止条約であります。この条約に対して賛成している国は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ニュージーランド、イギリス、ソ連など五十九カ国が賛成をしており、反対しているのは、日本、アメリカ、中国、インドネシア、エゾプトなど二十六カ国であります。インドやシンガポール、ケニアなど四十八カ国は棄権をいたしております。なぜこれを日本は反対をしたのか。その理由を、これは法務省か、外務省ですか、お尋ねします。
  475. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  先生がただいま引用されました、いわゆるB規約の六条を先生お読みになられ、その他の国際文書を引用されましたけれども、これらはすべて死刑の廃止というものを国家に義務づけていないことは先生御承知のとおりで、まさに、死刑の廃止につきあらゆる措置をとるべしというのが今先生質問しておられるこの議定書でございます。まさに先生がおっしゃったとおりの数で、賛成五十九、反対二十六、棄権四十八という数字で八九年の国連総会で採択されまして、昨年の七月に発効いたしまして、締約国は現在までのところ十一カ国ということでございます。  先生の御質問は、この採択めときに日本はなぜ反対したかということであったと思いますが、その理由は、日本は、死刑廃止の問題は一義的には各国によりその国民感情それから犯罪の態様等を考慮して慎重に検討されるべきものであるというふうに考えております。また、死刑廃止についての国際世論の一致があるとは必ずしも言えない状況におきまして、この議定書は残念ながらこの人権委員会及び国連総会そのものでも必ずしも十分な論議が尽くされないで採択に回されたということで、日本は反対したということでございます。
  476. 二見伸明

    二見委員 法務省にお尋ねしますが、死刑を全廃している国、通常の犯罪についての廃止国、事実上の廃止国をお示しいただきたいと思います。
  477. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  世界各国における死刑制度がどうなっているかという御趣旨の御質問だと思うわけでございます。これは、一九九〇年の死刑に関する国際連合事務総長の報告書、この報告書は国際連合事務総長の報告書としては一番新しいものというふうに理解しておりますが、これによりますると、すべての犯罪について死刑を廃止している国または地域は三十八、通常の犯罪について死刑を廃止している国または地域は十七で、通常の犯罪について死刑を存置しているものの過去十年以上にわたって死刑の執行が行われていない国または地域は三十でございまして、通常の犯罪について死刑を存置しかつ使用している国または地域は九十一ということでございます。
  478. 二見伸明

    二見委員 詳しい国名その他は後ほど資料として御提出をいただきたいと思います。  実は、私も普通の感情を持った人間でございますから、例えば自分の息子、娘が惨殺されれば、怒り心頭に発してその加害者に対して死刑にしろという気持ちになる、これは私も同じです。その報復感情というか、ベランダから小さい赤ん坊を投げ殺したなんという事件を聞けば、頭にきて、そんなやつは殺せ、死刑にしろという感情を私も同じように持っています。そういう感情を持ちながら、なおかつそれでも死刑というものは存置させるべきなんだろうかというと、私はそういう感情は持っているけれども、やはり死刑というものは存置させるべきではないんじゃないか。  例えば、刑法百九十九条では殺人罪に対しては「死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役」と、こうなっている。死刑と無期では、これは生か死かという全く質的な断絶がありますね。裁判官の判断というのが二一〇%正しいと裁判官が思っているとしたら、それは思い上がりです。自分の下した判決は正しいかもしれないけれども、万々が一の誤りもあるなというおそれを抱いているのが、私は人間としての裁判官だと思う。  誤判という問題もあった。幸いにして免田事件やなんかは無罪になったからいいけれども、もしあれが死刑が執行されていたとすればどうなるんだ。確かに死刑を存置させるかどうかというのは一国の刑事政策ではあるけれども、万々が一無罪になるかもしれない、本当なら無罪になったかもしれない、それが執行されてしまった、そんなことが果たして許されていいんだろうか。誤判が一二〇%ないなんて断言できるわけじゃない。そういうことを考えると、私は死刑というのは存置させる理由はない、無実の者が処刑という人道上絶対に許すことのできない大きな不正義の犠牲において刑事政策を認めるというわけにはいかないというのが、感情は感情として私はそういうふうに思っております。法務大臣、いかがですか、これは。
  479. 田原隆

    田原国務大臣 お答えします。  ただいまいろいろ二見先生の御意見をお伺いしてもっともだという、気持ちもよくわかるのでございますが、法務省としてはこの責任を負わされておりますが、これについていろいろ国民はどう考えているかということを統計的に調べてみると、国民世論は必ずしも廃止ではない。存続を願っている人が六六・七%もいる。廃止していい人が一〇%もいる。そういう数字はどうなのかということなども勘案しなければならないし、また、正義の維持というのは応報なのか教育なのかという二大論争が果てしなく続いておりますけれども、そこらも考えてからいかなきゃいかぬわけであります。  我が国においては現在死刑制度が法律上定められておるわけでありますが、これを改正するとすれば、そういう国民の世論を十分聞きながら、法制審議会に諮問し、その答申を待たなければならないのだと思うのです。そしておっしゃったように、無期と死刑とは天と他とほど違うということもよくわかります。無期で仮釈放その他一切ないというやり方がある国もありますが、それもかつて法制審議会の特別部会で審議されたことがありますが、その方がより残酷ではないかという意見どもあって一致を見なかった過去の経験もありますので、十分慎重に検討しながらこの問題に取り組まなければならない、そういうふうに覚悟しております。
  480. 二見伸明

    二見委員 この死刑の問題は、死刑囚の親族、家族の人権ということもある、執行官の人権もある。裁判官は判決を下すだけで自分で執行するわけじゃない。法務大臣は判こを押すだけで自分で執行するわけじゃない。執行する人の立場、その家族の人権、気持ちというものだって私はあると思うのです。その点は、極悪犯人だから死刑にすればいいんだ、そういう短絡的に、私も気持ちはわかるよ、全くわかるけれども、そういうような短絡的な発想で存置していいんだろうかというふうに私は思います。この点について法務大臣の御見解を承りたい。  さらに、今、応報刑か教育刑かというお話があったけれども、一九七二年六月二十九日、アメリカ連邦最高裁のマーシャル判事は死刑違憲判決に際して何と言ったかというと、アメリカ国民の多くは死刑がなければ応報感情を満足し得ないような品位の基準ではないと信ずる、こう言っているわけです。それは日本とアメリカの違いはあるかもしれない。日本だって、これは団藤教授の研究によると、保元の乱以前三百四十年間はほとんど死刑なんかなかった、死刑が復活したのは保元の乱からだという話なんだ。日本だってかつては死刑はやらなかった。私は、死刑執行官の人権、家族の人権、そうした人たちのことも法務大臣はどうお考えになるのか、御見解を承りたいと思います。
  481. 田原隆

    田原国務大臣 大変難しい質問をいただきましてありがとうございました。  私としては、今おっしゃったようなお気持ちはまことによくわかるのでありますが、現在法律に定められているものを法務大臣がやらないと明言することはこれまた不可能なことではございますが、しかし、死刑囚にも新たな証拠が出たような場合には再審という制度もあることもあるし、あるいは判決文があるわけでございまから、証拠とともに、もう一回一字一句この目で自分で読み直してみてという時間も欲しいしというようなことで、執行官の家族の人権等、それもテレビ等で私見たことがございまが、そういうのも十分わかっておりますが、現行法を変えていくには、国民の世論をどうするかということを先ほど申し上げましたけれども、そういうことを配慮しつつ変えていかなければいかぬわけでございまして、今すぐ判こをつけとか今すぐつくなとか、そういう問題では今ないと、私は先生質問の趣旨はそうじゃないというふうに解釈しております。  非常に難しい問題でございますので、答えになったかどうかわかりませんが、御了承いただきたいと思います。
  482. 二見伸明

    二見委員 イギリスでは、一九六五年に五年間殺人罪に対する死刑を廃止した後、一九六九年に両院の決議によって廃止を恒久的なものにいたしました。ミッテラン大統領も死刑廃止を公約し、一九八一年に全廃をいたしました。一七〇〇年代のイタリアの法律家でペッカリーアという人がいますけれども、この人は、人間の精神に最も大きな効果を及ぼすのは刑罰の強さではなくて、その長さである。  確かに、死刑を廃止するかどうかということは法制審議会の議を経なければ決められるものではありません。私はそれはわかりながらあえてお尋ねするのですけれども、死刑を廃止するための前段階として執行されない死刑制度、死刑を法定刑から削ってしまわなくても現実に死刑が執行できないような制度というものを考えてもいいのではないか。あるいはこれは法制審議会の問題になるだろうけれども、いわゆる無期。無期という場合には十年たつと大体仮釈放の資格が取れて、平均十七、八年で仮釈放になってしまう。そうなれば、被害者の家族の心情というのはたまったものじゃない。だから、むしろ仮釈放なき終身刑、これを検討しても私はいいのではないかというふうに思います。  これは法務大臣の御見解を承り、大変難しい問題であるけれども総理大臣の感想を、これは感想です、感想をお伺いをして、この問題については締めくくりをしたいと思います。
  483. 田原隆

    田原国務大臣 ただいまのお話を要約すると、死刑制度を廃止し、終身刑を考えてはどうかというようなことになると思うのですが、これはかってそういう問題を法制審議会の特別部会で審議されたことがあるのですが、そこで問題になったのは、一生出てこれない終身刑というのは死よりも残酷ではないかという意見が出たことも確かでありますし、それを預かる刑務所ですか、そういうところの人たちがその人をどういうふうに処遇するかという処遇上の問題を大きく取り上げ、なかなか審議が進まなかった経緯がありまして、私もそのとおりではないかと思っておりますので、先ほどから申し上げておりますように結論はなかなか出にくいわけでございますが、ただ、現在は現行法に定められており、漫然と見送るわけにはいかないものではないかと思いますので、私は再審の機会はないかとか間違いばないかとかいうことを自分の目で一字一句確かめながら、時間をかけ最後の決断を下さなきゃいかぬのが今の制度ではないかというふうに考えておる次第であります。
  484. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私自身、長いことこの問題について自問自答していながら自分が答えを出せないでおるという、まあ告白をいたしますと気持ちでございますが、現在法制審議会といったような本当にその方面の権威者がおられる状況の中で維持されております今の制度、これに従うということが今自分のあるべき考え方であるかなというようなふうに思っております。自分で、しかしこのことはなかなか考え切れない種類の問題であるというのが本当の気持ちでございますけれども、法制審議会等々において絶えずこの問題について検討が行われているということを承知しつつ、今の制度に従っておるというのが今日でございます。
  485. 二見伸明

    二見委員 環境問題について二、三お尋ねをいたします。  環境庁は、昨年十二月五日、中央公害対策審議会と自然環境保全審議会に地球化時代の環境政策のあり方について諮問をしました。この中で、「我が国の環境政策は、これまでの個別事象に対応した対策にとどまらず、各般の経済社会活動から生活様式にまで環境保全を織り込んだ環境保全型社会の形成を図っていくことが求められている。」と述べていることについて、私は評価してもよろしいと思います。私は、政府はこの際、公害対策という面からのみではなくて、環境保全という観点から思い切った法整備をすべきだと考えております。  現行の公害対策基本法は、昭和四十二年に公布されて以来、五度改正されましたが、既存の利害を異にする各省庁所管の法律や行政を基本施策に取り込めたこと、あるいは紛争処理や被害救済の制度づくりに道が開かれ、公害が鎮静したことなど、公害対策基本法の歴史的役割は大変大きかったと感じておりますが、しかし、当時の背景と比較して、現在は地球環境の破壊という問題が惹起いたしましたし、我が国としては地球環境保全を視野に入れた総合策が求められております。また、快適環境の創造あるいは環境の管理などに見られるように、環境を総合的にとらえていくという流れが定着しつつあります。また、ハイテク技術や新技術の発展とあわせて、汚染物質の種類や排出形態が多様化し、汚染経路が複雑化してきているなど、公害対策基本法が制定されたときとは大きくバックグラウンドは変化しているわけであります、私は、これらの視点を新たに含んだ法律に改めていく必要があるんではないかというふうに思います。  また、現行の公害対策基本法の問題点として、この法律から直接実施される施策は環境基準の設定や公害防止計画の策定を除くとほとんど存在せず、すなわち公害行政の指針を示しているにすぎない。同法で言う公害の定義、いわゆる典型七公害のみでは狭過ぎて、今日の環境問題には対応し切れない。また、現に発生している大気汚染や水質汚濁という個々の公害現象を除去するための規制の範囲にとどまっており、受け身的で、積極的な公害の未然防止、環境保全の発想が欠けている、こうした点が指摘されております。  また、自然環境保全法にしても、国立公園行政の枠を脱し切れず、生態系の保全といった原則がまだ明示されておりません。特に問題なのは、地球環境の保全に関する我が国の基本理念や指針等を定めた法律がないということです。  ガルブレイス教授は、環境にとって脅威は貧しい国ではなく先進国だ、こう言っております。公害対策基本法、自然環境保全法を私は発展的に廃止し、補強し、新たに地球環境保全をも含めた環境保全基本法というものを制定する時期にもう来ているというふうに思います。環境大臣、ミニスター・オブ・エンバイロンメント、環境大臣の御見解はいかがですか。
  486. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 委員指摘のとおりだと思います。  最近の環境行政の課題は、地球環境問題というのが大変注目されてまいりまして、その中で将来の発展の基盤である地球環境を守っていこう、その上で発展を続けていこうということで、持続可能な開発というようなコンセプトが出てきて、それによる政策の展開というのが求められている。そういったものを踏まえて、おっしゃられたとおり公害対策も、出てきたものをつかまえよう、征伐しようというばかりでなくて、社会経済全般の中に環境保全ということをビルトインしていって環境保全型の世界経済をつくっていくという方向になってきていると思います。折しも六月に環境と開発に対するサミットが開かれ、そこでも地球憲章というものが検討され、いろいろな地球環境保全に対しての枠組みが国際的合意に向けて今検討されているところであります。  そういう中で、仰せのとおり従来の公害対策基本法や自然環境保全法だけではこれは足りないということでございまして、こうしたことを視野に入れまして、今各般の審議会に諮問もしているところでありまして、そういったこと、またこのUNCEDへ向けて、地球サミットヘ向けての各国の論議等を見据えながら、委員が御指摘のような方向で急いで検討を進めてまいりたいと思っているところでございます。
  487. 二見伸明

    二見委員 環境保全基本法制定に前向きに取り組むというふうに理解をいたしたいと思います。  それで、地球サミットでは環境と開発をめぐる対策を実施するための資金的措置についても方向づけがなされるというふうに聞いております。ですから私は、地球環境保全ということになると日本も資金面でも何らかの具体的な考え方を示さなきゃならないというふうに思います。ですから、例えば環境税だとかあるいは環境国債だとか、資金措置についてはいろいろな議論があります。地球サミット事務局の公表によりますと、一九九三年から二〇〇〇年までの八年間で年間千二百五十億ドル、百二十五円で直しますと十五兆七千億円という莫大なお金がかかる。もちろん、これに対して日本が一国で負担するなんて、そんなことできるものではない。世界じゅうでこの金は出し合わなきゃならないんだけれども、そうした資金措置ですね、これについては環境大臣はどういうようなお考えを持っているのか。また、国際貢献という立場から、総理大臣、この資金措置ですね、これはどういうふうに今後考えていくのか。しかも、これはことしだけというわけじゃない。かなり、ずっと長期にわたる資金措置になりますからね。その資金をどういうふうにしていくのか、それも大臣に伺い、総理大臣の御見解を承りたいと思います。
  488. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 おっしゃられますとおり、地球環境の保全ということになりますと資金ということになってまいります。とりわけ、地球環境の保全には発展途上国の参加、そして適切な措置を発展途上国がやってくれるということ、それには発展途上国がどのような資金を得られるであろうかということが一番重要な課題になってくるわけであります。  この地球サミットヘ向けて過去もう四回準備会を開いておりますけれども、また三月にも準備会が開かれる。そして、そういう中でサミットの事務局から要請をされて竹下元総理が名誉議長を務められる賢人会議というのが四月に開かれて、そこでこういったことを検討していこうというようなことになって、今その資金メカニズムの確立に向けて国際的な協調に向けての話し合いがされているところでございます。そういう中で、税の問題だとか債務救済の活用とか、いろんなことが議論されておりますけれども、私は、やはり国際的合意の上に国際的枠組みをつくって、その中で日本がどう貢献していくかということを考えるのが一番重要ではないかと思っているわけであります。具体的にはこれから詰めていく問題であると思っております。
  489. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 二見委員の言われましたとおり、この問題はこれから二十一世紀にかけまして非常に大きな問題になってくることはもう間違いございません。殊に、ことしのブラジルの会議がその契機になるであろうと思っております。その場合、やはり国際的な貢献の一つの大きな我が国にとっての仕事になると考えていかなきゃならないと思いますけれども、非常に膨大な資金でございますし、また、発展途上国との累積責務なんかの関係でもいろんなことが考えられますので、これから本当にこれは取り組んでいかなきゃならない課題だというふうに認識しております。
  490. 二見伸明

    二見委員 開発途上国から環境分野での援助の要請が増加してきているというふうに私は伺っております。そうした要請にこたえるために、問題はやはりマンパワーだ。派遣する専門官の不足にどう対処するかということが大きな問題だと思う。  私は、昨年十一月十四日のこの予算委員会で緑の平和部隊という話を私は申し上げた記憶があります。十二月二十四日の党首会談でも、石田委員長から総理大臣に緑の平和部隊をつくったらどうかという提案をしたら、総理は、これはいいお考えですねとおっしゃられた。一月の代表質問でも、石田委員長は緑の平和部隊をつくったらどうかと、こう提案した。  私は、各省庁、地方自治体の中に環境や公害を担当する担当官をまず増員をする。ふだんは通常の仕事をしている。要請があったときに、緑の平和部隊の一員として、要請された国に半年なり一年なり行って向こうの緑をつくる、公害を防止する、そうしたシステムというものをつくっていく必要があるんじゃないか。私は、国際貢献の一環としてそうした緑の平和部隊という、わかりやすい名前だけれども、そうした制度をつくって、いつでも要請に応じられるようにする必要があるんだと思いますけれども、その点についての環境庁長官の御答弁をお願いをしたいと思います。
  491. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 実は二月の十七日付の夕刊に、緑の平和部隊を含む国際貢献の原案を検討しているということが出ました。これは実は環境庁で検討しているのではなくて、環境庁がお願いした審議会で検討しているということでありますけれども、まさに委員が御指摘のように、今発展途上国からの環境協力に関する要請が非常にふえております。そして環境庁といたしましては、従来人材バンクというようなものをつくって、今三百名以上の者が登録されておりまして、そしてJICA等の要請に従って派遣をしているわけでありますが、なかなかこれでは足りない。そこで今申し上げましたような方向で今審議会に諮問をしているところでありまして、こうした答申を受けてこうした制度の拡充に向かって努力をしてまいりたいと思っております。
  492. 二見伸明

    二見委員 最後にお尋ねいたします。これは環境問題で国際貢献の話が出ましたので最後に一点お尋ねします。  これは、実はCIS、旧ソ連ですね、この旧ソ連については核兵器廃棄の問題だとか頭脳流出だとかいろんな問題があります。例えば頭脳流出がある。頭脳流出が現実にどっと行われますと、旧ソ連にとってはもう基礎的なところで立ち直りができなくなりますね。だから頭脳流出はしないで済むようにしなきゃならぬ。核兵器を廃棄しようとしても、日本にはノウハウがないと総理はおっしゃられた。ノウハウがないからほっとけばいいんじゃなくて、そのための資金も出さなきゃならないだろう。カンボジアの和平が実現した、それに対する資金も必要だ。対旧ソ連の資金にしても、核兵器の廃絶のための資金、頭脳流出を防止するための資金。カンボジア支援のための資金。これもかなり、全部長期にわたってこの資金というのは必要になるんです。結局、国際貢献に対する基金をどうしようかということになる。私は、やはりそのために日本はきちんとしたものを持つ必要があると思います。  国際貢献に必要だからといって、私は直ちにだから税だという発想は差し控えるべきだ。いろんなことを考えてもいいんではないか。例えばプラス一円のお年玉のはがきがありますですね。例えばカンボジア難民を救援するためのプラス一円のはがきを出してみょうとか、頭脳流出を防ぐためのプラス一円だとか、あるいは核兵器廃絶のための資金にするんだというプラス一円、こういうこともあってもいいと思うし、あるいは国際基金というものを設けて、そこに寄附した人は、これは税金をその分だけ控除するとか、いろんな制度を考えてもいいんじゃないかと思う。  なぜか。国際貢献だ。それもやらなければ、日本は国際貢献は、総論、口では言うけれども結局何もやらないんじゃないか、こういうことになる。だから、国際貢献というのは、国民もそれぞれいろいろと痛みを伴うものではあるけれども、まず税というものを考える前に、そうしたいろんな仕組みというものを私は考えてもいいんじゃないか。そうしなければならない時代に来ているんではないかと思いますけれども、これは総理大臣の御見解をお伺いをいたしたいと思います。
  493. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 私が言うよりも大蔵大臣が答えた方がいいのかもしれませんが、何か一つアイデアを出してもらって検討をしたい。やはり歳出の話ですから、先ほどお話があったように税収で上げるか歳出カットするか借金するかしかないわけですから、それ以外のこととなると今言ったようなことになるのかなと。しかし、それじゃ余りまとまった金はなかなか集まらない、現実は。何十億程度だったらあるいはできないこともないでしょうが、どれをとってもしかし大きな金額ですから、一緒になって今後勉強をさせていただきます。
  494. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今お話をずっとお聞きしながら、緑の平和部隊の問題にいたしましても、あるいは今の国際貢献の問題にいたしましても、やはりここまできた我が国というのが果たしていかなきゃならない役割、また地位にふさわしい役割というのを分担しなければならないだろうというふうに思います。ただ、今お話がありましたように、また二見委員の方からもお話がありましたように、これを今の厳しい財政の中で何かやるといってもなかなかこれはできないということでありまして、一体どういうことを日本がやらなきゃいけないのかということ、そしてその財源というのを一体どこに求めるのかということ、これはやはり国民の中に広く議論を巻き起こしていくことが必要であろうというふうに思っておりますので、御提言を私どももやはりよく念頭に置きながら皆さんとお話をしていきたいというふうに思っております。
  495. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ただいま両大臣から申し上げましたように、十分問題意識を持って考えてまいります。
  496. 二見伸明

    二見委員 以上で終わります。
  497. 山村新治郎

    山村委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時八分散会