○宮下国務
大臣 お答え申し上げます。
大変防衛について造詣の深い、また御理解をいただいております
米沢先生の御
指摘でございますが、ただいま広範な問題についての御
指摘がございましたので、若干お時間をちょうだいしたいと存じます。
まず国際軍事情勢の認識でございますが、これは先生御
指摘のように、冷戦の終えんあるいはソ連の消滅等平和と安定への流れがあることは、もう
指摘するまでもございません。しかしながら、やはり依然として多くの、例えば民族問題、宗教問題、地域問題等の不安定要因が存在していることも事実でございます。
我々はそういう認識を持っておりますが、特にアジアにおきましては緊張緩和へ向けて注目すべき動きが存在しております。南北朝鮮の国連への同時加盟でございますとか、あるいはカンボジアの包括和平の実現、調印というようなこともございます。しかしながら、無条件で安心していいかといいますと、この地域のアジアの情勢は複雑かつ未解決の諸問題が存在いたしております。朝鮮問題あるいは今論ぜられておる北方領土問題等々でございます。また、御
指摘のように極東ソ連軍は、旧ソ連の解体ということもございますけれ
ども、依然として質あ高い防衛力が現に存在しておることも事実でございますし、その成り行きがどうなるかということも私
ども不透明でございまして、これはあわせて注目しなければなりません。また、北朝鮮の核関連施設の問題は今非常に議論されておりますけれ
ども、この問題の実行性の問題、それからまた、地対地ミサイルの、スカッドミサイルの長射程化への懸念等も私
ども大きな不安定要因だと考えております。
そういう中で現在
我が国の防衛の基本思想はどうかということでございますが、これは今先生御
指摘のように、大綱に書かれておりますことは、
我が国には力の空白があってはならない、必要最小限度の自衛力を持つんだ、そして攻められたときにのみ民族の自由と独立を守るんだ、こういう体制であることは事実でございます。そしてまた、今御
指摘の
我が国の防衛の基本原則つまり専守防衛あるいは非核三原則等々、これは申し上げるまでもございませんが、そのような
立場に立っております。
ところで、今問題になっております中期防の問題とそれから防衛
計画大綱の問題が議論をされておりますので、その点に分けて申し上げたいと存じますけれ
ども、まず中期防は、これは一昨年の十二月の二十日に制定されました。しかしこれは、御案内のように当時は既に東西ドイツの統一もございましたし、東欧の民主化も進んでおりました。そしてソビエトの動向もほぼ予測し得る方向にございまして、私
どもはこういう
状況を背景に考えながら中期防を策定したものでございます。
そうして、東西冷戦が終えんするという国際の情勢の変化を織り込んだものとして我々は考えておりますけれ
ども、例えば、具体的に申しますと、この中期防の防衛
関係費の平均実質伸率、これは私
ども数字だけで議論を云々ということではございませんが、マクロ的に見るとそれが非常に重要なことだと存じますので申し上げますが、前期中期防よりかなり抑制されております。つまり、六十一年がち
平成二年までの防衛
計画は全体として平均伸率実質五・四%でございましたが、今回、今行われております、すなわち
平成三年度から七年度までの中期防衛力整備
計画が三・〇%ということになっております。
また、いろいろの正面装備につきましても、戦車あるいは護衛艦の保有量を前期中期防よりも減少をいたしております。例えば、戦車で申しますと、前中期防では千二百五両ございましたが、千百三十六両にする、あるいは護衛艦も六十二隻を五十八隻にするというようなこと
どももございます。また特に、私
どもは後方を非常に重視いたしておりますが、問題は正面の装備でございますが、この正面装備は、防衛庁の契約の特質として、国庫債務負担行為等によって後年度負担を求める契約方式をとっておりますが、この契約ベースの平均実質伸率を見ましても、前期中期防に対しまして大幅にマイナスとなっております。つまり、前期中期防では七・七%の上昇傾向にございましたけれ
ども、今回の、今実施中の中期防はマイナス二・三%という下方ダウンを示しております。
そういうことでございますが、なお、その後の変化、つまり中期防を策定いたしました一昨年の暮れ以降、ソ連の昨年の消滅その地大きな変化がなお続いておりますので、この中期防の中に今までの防衛
計画では規定されておりませんでした三年後に必要に応じて
計画修正を行うという仕組みがビルトインをされておるわけでございまして、この点は、議論たびたびございますように、昨年の十二月二十八日の安全保障
会議におきまして、
総理の御指示もございまして、こういう激動しつつある
状況を見きわめつつ、中期防の修正につきまして前広に所要の検討に着手してほしいということでございますので、ただいま防衛力検討
委員会をつくりまして、鋭意検討を急ぎつつあるところでございますけれ
ども、どういう点がまあ議論になるかといいますと、これは中期防自体の中で定められているいろいろ各種の事業、装備等がございますが、その優先順位をどうするか、あるいは防衛力全体の中の位置づけをどうするか等々、これを問題を提起して考えてまいりたい、このように思っております。
なお、先ほ
ども公明党の
市川書記長に御
答弁申し上げましたように、この点につきましては、昨年一千億の正面装備の問題についてもお答え申し上げましたが、これははっきり今期二十二兆七千五百億円の中から削減することは予定をいたしております。
それから第二番目の大きな問題といたしましては、防衛
計画の大綱の見直し論の問題でございます。
これは実は、これも中期防の中に一部触れられております。つまり、どういうように触れられておるかというと、人的な制約要因がございます。これから自衛官を募集するにしてもなかなか困難でございますから、そういう人的な制約要因等を勘案しながら防衛力のあり方について検討しょうということが、これも定められております。これも今期中期防の特色でございます。ビルトインされいるわけでございます。
そこで、今この問題につきましては、防衛庁内部でいろいろ事務的に勉強をいたしまして、本
計画期間中に結論を得て、次期防にこれをぜひ反映さしたいと思っておりますが、考慮すべき要素としては、短期間ではなかなか結論を得られない問題ばかりでございます。つまり、この人的資源の制約がどういう
状況に今後なるであろうか、あるいは技術水準の動向はどうなるであろうか、あるいは駐屯地のあり方等はどうなるであろうか等々、あるいは組織編成はどうなるであろうか、また
対象も広範でございまして、定数、編成の見直し等も必要でございます。
そういう
意味で、長中期的な観点から立ってこれをやろうということが防衛
計画の中に定められておりますので、これも私
どもは、これは先生はまあ専門家でいらっしゃいますからよくおわかりと存じますが、かなり時間を要する問題でございますが、やってまいりたいということでございまして、私
どもは、今後の検討の結果によりましては、
総理が申されておりますように大綱の別表の変更、そしてまた、大綱の別表というのはそれだけ、単独ではございませんで、本文の中にもこれに密接に関連する部分がございます。つまり、陸上、海上、航空自衛隊の体制の問題について記述がございますが、それと連動をいたしておりますので、当然そうした問題が検討の
対象になるであろうということは明白でございます。
総理もそう」いう
趣旨で本
会議等において述べられたものというように私
ども理解をいたしております。
しかしながら、大綱の情勢判断あるいは別表の見直し等に及ぶことがあり得ても、先ほど申しましたように、大綱の基本的な考え方、つまり基盤的防衛力構想、これは申し上げるまでもございませんけれ
ども、軍事的脅威に直接対抗するよりも、みずからが力の空白となってこの地域の不安定要因とならない、この基本的な理念は、あるいは防衛政策は堅持していきたいということでございます。なお、簡単に申し上げますが、包括的な
質問でございますから、もうしばらく、ちょっとあれしてください。
米国や欧州やアジアの
状況も申されましたね。これは確かにそうでございますが、
米国、欧州の戦略的な問題、これは、
米国は戦略核を中心としたグローバルな兵力削減、再編成
計画です。英国もやっておりますけれ
ども、NATOからの兵力の削減です。ドイツも統一の際の国際公約でやっておりますね。しかし、私がここで申し上げたい点は、不安定性を持っております、ただいま申し上げましたアジア等におきましては、中国あるいは韓国など、ほかのASEAN諸国も
防衛費を削減している国はございません。これはあったらまた御
指摘をいただきたいんですが、そういう
状況でございます。
私
どもはそういう観点からこれからの防衛問題を考えていきたいと存じておりますので、どうかその点は御理解いただきたい。多少長くなって恐縮でございましたが、基本的なことでございますので申し上げた次第でございます。