○
国務大臣(
羽田孜君) お答え申し上げます。
独立性、中立性、これが
確保されるかということでありますけれども、
市場ルールの
遵守状況を公正中立的な立場から
監視することが極めて重要な
証券取引等につきましては、その
監視機能を
行政部門からの独立性の高い合議制の
機関に担わせることが適当であるという考え方に基づいて、
証券取引等監視委員会は設置されるものでございまして、このような
監視機能につきましては、
行政処分等の
行政機能の間に一定の距離を設けることにより、両者とも厳正を期することが適当であろうと思っております。
また、
委員長及び委員は、先ほども申し上げましたように、任命に当たって両院の同意を要し、また職権を独立して行使することが定められておるところであります。
委員会はまた、
調査、
検査の結果に基づきまして、みずから告発ができるほか、
大蔵大臣に
行政処分等の勧告を行うことができるということであります。これらを考えますときに、
委員会の独立性、中立性は十分
確保されるというふうに考えております。
また、健全で透明な
証券市場の確立は果たせるかという御指摘でありますけれども、
取引の公正の
確保を図るために、
証券取引に係る
犯則事件の
調査及び
証券取引に係る諸
規制の
遵守状況についての
証券業者への
検査等を所掌するほか、
調査、
検査の結果に基づきましてみずから告発ができること、及び
大蔵大臣に
行政処分等の勧告を行うことができまして、これを
大蔵大臣は尊重しなければならないということであります。さらに、
委員会は、その勧告に基づいてとった
措置について
大蔵大臣から
報告を求め得ることによりまして、健全で透明な
証券市場の確立は果たせるものというふうに考えておるところでございます。
なお、
証券取引等監視委員会に銀行
業務の
検査・
監視、これの
権限も与えるべきじゃないかという御指摘でありますけれども、
証券取引というのは、原則といたしまして
市場において、
証券業者の仲介を得つつも、
市場のルールにのっとりまして不特定多数を通じて形成される価格のもとで成立するものでございまして、このような
市場にとりまして
取引の公正の
確保に係るルールの
遵守状況を
監視することは、
市場の公正性、透明性を高め、
市場メカニズムの十分な
機能を
確保するために不可欠であろうと思います。
これに対しまして、銀行預金や貸し出し等の
金融取引というのは、いずれも
取引自体が相対の
取引であり、また、
金融市場につきましても、
金融機関のみが参加するインターバンクの
市場でございます。不特定多数の一般投資家は参加しないことから、
取引の公正に係るさまざまな
規制は設けられておらないところであります。
以上のような差異を踏まえまして、
証券取引等監視委員会の
検査・
監視の
対象は、
証券取引の公正の
確保に係るルールの
遵守状況として、銀行
業務は
対象外といたしたところであります。
なお、
行政当局と
証券業界の癒着の原因と考えられる免許
制度の運用についてでございますけれども、昨年の行革審の答申におきまして、
証券行政が業界の
保護育成に偏り、
証券市場における
競争が不十分であったという批判がなされたところでございまして、大蔵省としましても、今回の
法改正におきまして、免許の
審査に当たっては、
証券業における公正な
競争が
確保されるよう配慮しなければならない旨の
規定を盛り込んだところでございます。
また、
証券業への新規参入の実現を積極的に図るために、先般の証取審の
報告におきまして、免許
基準の具体化、
明確化について基本的方向が示されたところでございまして、現在、免許
審査に当たっての運用の具体的
基準を策定中であるところでございます。大蔵省といたしましては、今
国会における
金融制度改革等についての御審議を踏まえつつ、今後、速やかに当該
基準を公表してまいりたいというふうに考えております。
なお、委託手数料を原則
自由化すべきという御
意見でありますけれども、この
自由化につきましては、昨年十月に再開された証取審におきまして、
証券会社、投資家、
証券市場に与える影響など、広い視点から御審議をいただき、先般御
報告をいただいたところであります。
この
報告は、流通
市場における適正な
競争、これを促進する見地から、委託手数料の固定制についても
見直しを行うことは避けて通れたいこと、
自由化の実施に当たっては、比較的問題の少ないと思われる大口の
取引に係る手数料について
自由化を図り、
証券市場に与える現実の影響というものを十分見きわめつつ、その後の
自由化への展望を探るということになっております。大口
取引の水準、実施時期等の具体的な実施に係る細目等につきましては、専門家をも含めた作業部会を設けて、十分な検討を行うことが適当であろうということであります。また、作業部会における検討は、およそ一年程度を目途とすることが適当であろうとされております。
この証取審の
報告に基づきまして、この四月七日から議論が開始された作業部会におきまして、大口
取引に係る手数料の
自由化実施の細目等について御検討をいただいておるところでございます。
なお、引受手数料について、
制度上だけではなくて、実質上も
自由化するための
措置を講ずるべきではないかという御指摘でございますけれども、
我が国の引受手数料は、国際的に見ましては決して高いというものではございませんけれども、大蔵省としては、引受手数料については、
証券の発行の都度、発行体と引受
証券会社との間で、引き受けリスクですとかあるいはコストを基本に自由に設定されるべきものであろうと考えます。個々の発行について自由に設定されるべきものでありまして、より弾力的に決定されることが望ましいと考えております。
現在、時価発行増資につきましては、
株式市場の低迷によりまして事実上中断しているものの、
社債等の発行に係る引受手数料につきましては、発行の都度、交渉によりまして手数料が決められておりまして、近時、その水準がさらに引き下げられておるところでございます。今後とも引受手数料の弾力的な決定が行われるよう、私どもとしては、関係業界に働きかけていきたいと思っております。
百二十五条の
見直しにつきましてでございますけれども、昨年十月の
国会における
決議を踏まえ、証取審不
公正取引特別部会に、
相場操縦的行為禁止規定等のあり方について検討をお願いをいたしたところであります。その結果、同部会は本年一月二十日、
報告書を取りまとめましたけれども、その中で、いわゆる株価操縦
禁止規定である証取法百二十五条二項一号につきまして、運用に際しての基本的考え方を整理した上で、
行政当局に対し、同
規定の積極的活用を求める盲の提言を行ったところであります。
大蔵省としましては、この提言を誠実に受けとめまして、そこで示された運用の考え方を踏まえて、今後積極的に同
規定の活用に努めてまいりたいというふうに考えております。
また、
証券関連業界への天下りの抑制でございますけれども、
証券会社への再就職が
証券業界に対する厳正な
行政を損なっているのではないかという御批判があることは、私どももよくお聞きしておるところでございます。
そこで、前大臣であります橋本大臣の方からさきの
国会でお示しいたしましたように、大蔵省といたしましては、当面、大蔵省幹部職員の人事院承認を要する
証券会社への再就職につきましては、本人及び
証券会社両当事者の理解を得まして自粛を求め、人事院承認の申請を行わないようにしたところでございます。いずれにいたしましても、大蔵省に
在職した者が再就職したことによって、
証券行政がゆが奉られてはならないということは当然でありまして、今後とも厳正に処置をしてまいりたいというふうに考えております。
なお、補てんの認定
基準となる業界の自主ルールの
整備についての考え方でありますけれども、損失保証、
損失補てんにかかわる
禁止規定を新設した
改正証券取引法の施行を契機といたしまして、
証券取引の公正、
円滑化に資する
観点から、
証券取引として適正と考えられるものの典型例を明示するとともに、あわせて
証券事故の処理の
円滑化を図るため、
証券業協会及び
取引所は、昨年十二月に自主
規制規則の
整備を行ったところでございます。
この規則の作成に当たりましては、大蔵省といたしましても、その
内容を
審査した上で関係当局とも協議を行いまして、先ほど申し上げましたような規則の
趣旨から見て問題のない旨の確認を得ておるところでございます。
なお、専門的、分業的
金融体系を
見直して、
金融市場の一層の
自由化、
国際化を推進していく必要があるということでありますけれども、このたびの
制度改革は、
金融・
資本市場における有効かつ適正な
競争を促進することによりまして、
金融機関、
証券会社が新しい
金融商品・サービスに対する
国民の多様なニーズにこたえられるようにすること、
金融の
効率化を通じた
国民経済全体の発展や
効率化を図ること、
世界各国の
金融・
資本市場の一体化が進む中で、
我が国の
市場が
世界の主要
金融センターとしての責務を果たせるよう課題にこたえていきたいというふうに考えております。
御指摘のとおり、
我が国の
金融・
資本市場の
自由化、
国際化を推進をしていくことは喫緊の課題であろうというふうに考えておりまして、この
改革をぜひとも早期に実現をさしていただきたいということをお願いしたいと思います。
業態別子
会社方式の選択の点でございますけれども、この点につきましては、「各
金融機関が子
会社を通じて他業態の
業務にも幅広く参入していくことが可能であるとともに、預金者
保護、利益相反による弊害の防止といった
金融秩序の維持の
観点から優れている。」とされております。また、
証券取引審議会
報告書におきましては、「
証券業務以外の
業務を営む者が、本体で広く
証券業務を営むことは適当ではない。」とされ、子
会社方式が提案されております。
今回の
金融制度改革におきましては、これらの答申、
報告書を踏まえまして、
金融秩序の維持及び
投資者保護の徹底を図りつつ、
金融・
資本市場における有効かつ適正な
競争の促進を図る
観点から、業態別子
会社方式を主体とすることが最も適当であろうと判断をしたところでございます。
なお、この
金融制度改革の基本理念ということでございますけれども、まずこれは
利用者のための
改革であること、また国際性を
確保するということ、そして
信頼回復、これが挙げられます。この
金融制度改革によりまして、
金融・
資本市場の効率的、安定的発展が図られ、ひいては
我が国経済の安定的発展がもたらされることを期待いたしておるところでございます。
なお、不祥事を起こした銀行などの体質は完全に改善されたと考えているかということでありますけれども、昨年の夏発生した
金融不祥事の反省を踏まえまして、昨年八月、
金融機関の内部管理体制等の総点検、
行政の透明化と
検査体制の
充実などを
内容とする
金融システムに対する信用回復のための総合的な
対応策を発表しまして、その実現に努力しているところでございます。
金融界並びに個別の
金融機関におきましては、不祥事に対する深刻な反省に立ちまして、各
金融団体とも
再発防止のため、直ちに
業務運営全般についての総点検及び内部管理の
見直し、改善等、広範囲にわたって
対策に着手しておりまして、必要な改善
措置を講じておるものと承知しております。
私どもといたしましては、今後とも、
金融界が一丸となって
再発防止に向けた自主的な
経営努力を発揮することを期待したいと思っております。
一般の消費者、
利用者の支持を得ていると考えているのかということでありますけれども、
制度改革につきまして、
利用者代表の方の
意見も含めまして、各方面の幅広い議論を経て答申等が取りまとめられたところでございまして、この答申を踏まえまして、最大限
利用者のためになるよう私どもは考えたつもりでございます。業態別子
会社方式もそのための重要な手段の一つでございまして、これによって専門制、分業制に基づく各業態の間の垣根を低くすることによりまして、
金融・
資本市場における有効で適正な
競争の促進、
市場の
効率化、より多様で良質な
金融商品・サービスの
利用者への
提供が可能となるものと考えておりまして、
利用者にとりまして大きな意義を有するものであろうというふうに考えております。
中小
金融機関の
経営への影響いかんということでありますけれども、信用金庫、信用組合等の中小
金融機関の
業務範囲の拡大が図られておりまして、中小企業や個人等に対して、多様な
金融商品や的確かつきめ細かなサービスの
提供が
確保されることによりまして、これらの中小
金融機関等の
競争力が高まり、
経営体質の向上にも十分資するものとなると考えております。
なお、
証券会社が銀行
業務に参入することは極めて困難じゃないのかということでありますけれども、
金融機関、
証券会社が
経済・
金融環境の
変化に弾力的に
対応し得るように、業態別子
会社方式を採用することによりまして、
経営の選択肢を拡大するものであるということでございます。実際に子
会社を保有するか否かにつきましては、各
金融機関や
証券会社においてどう子
会社を
経営戦略の中に位置づけるかということでございまして、これは
経営側の判断であろうというふうに考えます。
個人株主の立場に立って行うべきであろうということでありますけれども、全くこの点については同感でございまして、
株式市場の基盤
強化、ひいてはこれが
証券市場の健全な発展にとって重要なものであろうというふうに考えておりまして、そのためには、やはり
市場が安定すること、公正性及び透明性を
確保するとともに、
投資者の利益に配慮した配当性向水準の設定等によりまして
株式投資魅力の向上に努めることによって、一般投資家の
市場への
信頼を
確保することが重要であろうということであります。
私どもといたしましては、昨年来の一連の
証券問題を契機に、その
再発防止や個人投資家の
証券市場に対する
信頼回復を図ることこそが一番重要であろうというふうに考えまして、この
法律をこの
国会に
提出しておるところでございます。
最後に申し上げます。
先物
市場についてでありますけれども、現物
市場と先物
市場のバランスを図りまして、
証券市場の健全な発展を
確保する見地から、証拠金率の引き上げですとかあるいはディスクロージャー、これの
充実等の
措置を累次にわたりまして実施してまいりたところでございまして、派生商品のあり方につきましては、かねてから東証あるいは大証が協力して
市場管理のあり方について、
取引制度のあり方につきまして、また、派生商品の商品性等の面にわたりまして幅広く検討を行ってきたところでございまして、今月の中旬には大証におきまして研究会を発足させることになっております。
私どもは、このような関係者の検討が十分に行われることを期待しておりまして、その検討の
状況を踏まえながら、適切な
措置をしてまいりたいというふうに考えております。
以上であります。(
拍手)
〔
国務大臣渡辺秀央君
登壇〕