○神田厚君 私は、民社党を代表して、ただいま提案のありました
地方税法の一部を改正する
法律案、
地方交付税法等の一部を改正する
法律案、
平成四
年度地方財政計画につきまして、
総理並びに
関係閣僚に
質問をいたします。
まず、
地方自治の
あり方、国と
地方との
役割配分について、
政府の
基本姿勢を
伺いたいと思っております。
「近代
民主政治」の著者でありますJ・ブライス、この人は、
地方自治は
民主政治の最良の学校、その成功の最高の保証人と述べております。この言葉に端的にあらわされているように、
地方自治の成否、
地方自治がうまくいくかどうかということは、
民主政治の成否につながるほど重要な意味を持っていると思われます。
しかし、現在の
地方行
財政制度は、真に
地方自治、
地方の
民主政治を保障する仕組みとなっているのでありましょうか。毎年の予算編成の時期に、霞が関に多くの
地方団体の
関係者が陳情に訪れる姿は、現在の中央集権政治を如実に示しております。また、首長選挙のたびに保守系候補者は中央直結を有権者に呼びかけております。このような利益誘導の政治を改革しない限り、
地方政治の健全な発展は望むべくもないと言わざるを得ません。
この見地から、私は、
地方分権の具体的
推進について数点にわたり御
質問を申し上げます。
第一は、
行政事務の再
配分についてであります。
戦後四十七年が経過し、この間、我が国の
社会経済情勢は目覚ましい進展を見せてまいりました。しかし、我が国の
行政体制は、三公社の民営化など幾つかの改革が行われましたものの、依然として戦後間もなくつくられた体制が続いております。
国際化の進展と国際情勢の急激な変化に対応し得る
行政体制とするためには、可能な限りの
行政事務を
地方におろし、国の事務も、国際的に取り組まなければならない事務を中心に、外交、防衛、
教育水準の
維持、年金、医療などのナショナルミニマムの
確保、空港、港湾、幹線道路網の
整備など、統一的に処理をしなければならない事務に限定した思い切った
行政事務の再
配分を行う必要があると
考えるものであります。
これまで歴代内閣は、口を開けば
地方自治の
尊重と
行政改革推進を述べてまいりました。しかし、現に実行されているとは到底思われません。規制緩和の動きを例にとっても、許認可の数は
平成三年三月三十一日現在で一万七百十七件に上っており、前回調査に比べても百三十六件増加をしております。
総理、あなたは第百二十二回国会における所信表明演説の中で、
行革審の答申を最大限
尊重し、
地方分権、国・
地方を通じた行
財政改革を
推進すると述べておられます。
行政事務の再
配分について
総理の強力なリーダーシップによってこれを
実現していただきたいと
考えるものでありますが、明快な御答弁をいただきたいと思います。
第二は、
地方の
自主財源の
拡充であります。
自主財源の
充実は、
地方自治確立の大前提であります。また、
総理の述べておられます
生活大国を本当に
実現するためには、まずすそ野から、すなわち多様化する
住民ニーズに一つ一つこたえていくことが大切であり、そのことは、とりもなおさず
地方の果たす
役割が非常に重要であると
考えております。この見地から、できるだけ多くの
財源を基礎的
地方公共団体である市町村に
移譲し、
住民要求にきめ細かく機動的に対応する体制を築くことが必要であると
考えております。
しかし、現在は
財源配分が
地方に比べ国に偏り過ぎており、
地方公共団体の
自主性は大きく阻害される結果となっております。すなわち、
平成三
年度における国と
地方の租税収入
配分割合は、国六六・一%、これに対しまして
地方は三三・九%にとどまっており、
地方公共団体はそれぞれが独自性の発揮や政策の選択余地がないのは、約三割にしかすぎない
地方自主財源に根本的原因があるということであります。
この際、
行政事務の再
配分にあわせて、国と
地方の租税
配分を少なくとも国、
地方それぞれ五〇%程度に改めていくことが必要だと
考えますが、この点について
総理並びに
自治大臣の御答弁を求めるものであります。
第三は、補助金
制度の改革であります。
補助金一件を国に申請して交付されるまで膨大な事務手続と
費用を要し、その使途も細かく限定され、
実情にそぐわないばかりか、多くの超過
負担が発生するという、このような
現状を抜本的に改革することが必要であります。
そのために、まず民社党が提唱しております、普通建設
事業費の補助
負担金分を国庫補助金の体系から外し、第二
交付税として
地方に一括交付をし、その使速は
地方公共団体の裁量にゆだねるという第二
交付税制度を実行することが、
地方財政の
自主性を
確保する最善の道であると確信をいたしますが、
総理並びに
自治大臣の御所見はいかがでありましょうか。
次に、今回提案されました中から、
地方交付税の
総額の
特例措置について
お尋ねをいたします。
現在、
地方財政は豊かではないかと一部で言われておりますが、景気の減速による
影響は、国のみならず
地方財政にも及ぶことは明白であり、
地方財政の
運営に
支障が生ずるおそれが懸念をされております。
自治省がまとめた
平成二
年度の都道府県普通会計決算の
概要によると、実質収支の黒字
総額は千二百九十九億円、前
年度を二百八十四億円下回り、実質単
年度収支も五年ぶりに八百五十三億円の赤字に転じたことが明らかになっております。
このような状況のもとにおきまして、
政府は、
地方公共団体の強い反対にもかかわらず、
地方固有の
一般財源である
地方交付税交付金を、
平成三
年度の五千億円に引き続き、来
年度八千五百億円
減額する
措置をとりました。これは
地方公共団体に大きな
影響を与えるばかりでなく、
地方の
自主性、独自性を阻害するものであります。
国の
財源が不足し、
地方の
財源余剰が表面上続いていることを理由に、今後も
特例減額を実行するならば、国から
地方への返済は実質的に棚上げされ、
地方交付税はカットされ続けたままになるわけであります。
今後、
地方交付税の圧縮は実施すべきではないと思いますが、
総理の明確な御答弁をお
伺いしたいと思っております。
次に、
地方税制改正について、一時に固定資産税の評価がえについてお
伺いをいたします。
不動産取得税の
住宅及び
住宅用土地に係る
税率等の
特例措置の
適用期限の延長をすることは、我々もおおむね妥当な
措置と
考えております。ただ、
平成六
年度の固定資産税の評価がえにおいて、地価公示価格の七割程度を目標に宅地の評価の
均衡化、適正化を
推進するとしていることについては、本当に実施できるのかどうか疑問を呈さざるを得ません。
この評価がえが実行された場合、小
規模住宅居住者の急激な
負担上昇を招くことは明白であります。居住用
住宅とその土地は、投機
目的の土地、
住宅と区別されるべきでありまして、固定資産税が追い出し税と化すことは絶対に避けなければなりません。そのためには、生活の根拠となる一定
規模以下の小
規模居住用
住宅の宅地については、思い切った軽減
措置をとるべきであると
考えますが、いかがでありましょうか。
また、公示価格に対する評価額の割合と、その
地方公共団体の
財政力とは密接な
関係があり、評価割合を一律に七〇%に引き上げることは、市町村
財政の格差の拡大につながるおそれがあると
考えるものでありますが、以上、二点について
自治大臣の御答弁をいただきたいと思います。
最後に、一極集中是正と魅力ある
地域づくりについて
お尋ねをいたします。
政府の
推進する四全総などの国土開発、特に、東京一極集中是正と
地方活性化について、我々は大筋三つの点で問題があると
考えております。
第一に、東京一極集中是正について、具体的解決策どころかきちんとした方向性すら見られない点であります。首都圏機能の分散については
意見の分かれるところであると思われますが、
政府の態度は、首都圏機能の分散など実行できるわけがない、ただ表立って反対できないがため、一省庁一機関の移転などと場当たり的、形式的な分散策を表明し、お茶を濁しているのはだれの目にも明白であります。首都機能の分散については、
政府は明確な
基本方針を示すべきであると
考えます。
第二に、国土の均衡ある発展、都市機能の再配置などの大きなネックになっている土地問題であります。首都圏においては、サラリーマンが一生働いてもマイホームが持てない、
住宅を持っていても固定資産税、相続税等で追い出される、これが
生活大国と呼べるでしょうか。土地問題解決の青写真を示すことが
政府の責任であると
考えるものであります。
第三に、
地方圏の持続的な発展のための具体策が示されておりません。特に、四全総の
策定段階におきまして、
地方より東京重視、
地方軽視と厳しい批判を受けたことは記憶に新しいところであります。宮澤内閣は、
地方活性化のための具体的方策を含め、長期的展望に立った
実現性のある国土計画を明示すべきであると
考えております。
以上、三点につきまして
総理の答弁を求め、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣宮澤喜一君
登壇〕