○渡瀬
委員 きのうの
鳩山文部大臣の
文教行政に対する
基本的な方針、「人づくりなくして
国づくりなし」、しかもこれは二十一世紀はもとより二十二世紀までを視野に入れた壮大な、そして本当に哲学いっぱいの文教の
基本方針を承ったわけでありますが、私は、そのお
考えを
基本にして、これから若干御
所信を承りたいと思うわけでございます。
かつて、私
どもの先輩たちも、まさに国家興隆の源泉は
教育の振興にありというわけで、そういう志に燃えでいろいろな
施策を意欲的にやってこられたことを思い出します。若干振り返ってみますと、昭和二十年代には理振法、産振法、あるいは三十年代に入りますとすぐいわゆる高専法などを制定されまして、戦後の経済発展の基礎を築かれた。そしてまた全世界にショックを与えましたスプートニクショック、これもうまく乗り切ってきたわけでございます。三十年代に入りますと、御案内の平和部隊とかあるいは青年の家あるいは青少年の海外派遣などの青少年対策の非常にダイナミックな
施策が展開されてまいりまして、青少年に夢と希望を与え、士気高揚に非常に役立った、そういう
施策が
文部省でどんどん進んでいかれたように思います。
平和部隊について若干感想を申し上げますと、あれは最初は
文部省で、
日本の青少年が生活
条件の劣悪なところに行って現地の人と一緒に生活をしながら自分を鍛えるという趣旨であったと思い出すわけでありますが、近ごろでは何か
技術援助が主になっておるような形跡がありまして、ちょっとこれは最初のスタートと違っておるような気がしてなりません。それはともかくといたしまして、そういう
施策がどんどん行われてきた。
そしてまた、四十年代に入りますと、例の
社会観、価値観を一変ずるような大学紛争が起こりました。これにつきましても
文部省は大学立法等、適切な対応をされまして、それから四六答申、中教審の本当に何と申しますか、格調の高い、今でも
教育改革のバイブルと言われるくらいに立派な
教育改革の方針を策定されたわけでございます。そのほか、教職員のために人確法を制定するとかあるいは
私学助成法を制定して、あらゆる面に目配りをしながらダイナミックな
文教行政が展開されてきた。
そういうことを実は思い起こすわけでありますが、残念なことに、これはもう率直な感想を申し上げさせていただきますと、昭和四十八年と五十三年でしたか、二回にわたるオイルショック、そして国家財政が非常に窮乏を来してきた。そのころから何かこの
文教行政が高原状態のまま推移をしている。あえて沈滞とは申しませんけれ
ども、何かぱっとしない、そういう感じを実は持っておるようなわけでございます。
例えば、
文部省の予算は、きのうの政務次官の御説明にもございましたように、七〇%くらいが人件費である、それにシーリングをかけたんじゃ、これはもう仕事ができなくなるのは当たり前でありまして、人件費こそが
文部行政では事業費である、それくらいの哲学を持って財政当局と渡り合う、そういう気概があってしかるべきだと思うわけでありますが、残念ながら何かだんだん財政当局に圧迫されて、その結果、
教育行政が少し沈滞しているんじゃなかろうかというような気がしてなりません。抽象的なことを言っておってもしょうがないわけでありますので、若干私見を交えてこういうことをやったらどうでしょうかということを申し上げてみたいと思うわけであります。
何もかも国でやるのではなくて、国で当然やるべきことを民間、あるいは
文部省の場合は私学にも分担してもらう、そういう発想一に立って、例えば今問題になっております基礎研究、これも民間の
教育団体との連携あるいは私学にもそういうものを分担してもらったらどうか。今でも私学でやっておられますけれ
ども、何か経常費の裏に隠れてちょこちょこやっている感じがしてならぬわけでありまして、一項目をきちんと起こして、こういうことを協力してくれ、そういう呼びかけがあっていいんじゃないかという気がしてなりません。
私学のことにつきましては、これはもちろん
文部省で方針を定められました標準経費の五〇%達成、これには全力を挙げなければならぬわけでありますけれ
ども、これすらも何か行き悩んでおる印象であります。
特に、私が私学について申し上げたいのは、国際交流、特に留学生の世話、これはもう御案内のとおりに今世紀中に十万人目標でありますけれ
ども、今のペースですと、量はあるいは概成できるかもしれませんが、本当に
外国からの留学生を受け入れて
日本の姿を知ってもらう、
日本で落ちついて勉強してもらう、そのためにはやはり国だけではいかぬわけでありまして、私学の協力といいますか、その仕事の分担、これはいろいろな
経験をして承知をしておりますが、私学の方が非常にうまくいっておるわけでありまして、そういうことも何か私学振興策の
一つの大きな柱として改めて抜き出してやる必要があるんじゃないかなという気がしてなりません。
私も地方短大の運営に若干
関係しておりますが、地方の短期大学は東京の短期大学とは存在意義が違うわけでありまして、一種のカルチャー
センター的なあれがあります。したがいまして、もう少し何か経常費助成でも傾斜配分ができないか。そういうことによっていい
先生を集めて、いい
教育ができる、文字どおりカルチャー
センター的な機能が果たせる、そういう気がしてなりませんが、これもちょっと何か右へ倣えのような感じがしてなりません。
高等
学校の過疎対策等もこれからはいよいよ深刻な問題となってくるわけでありますが、こういう問題もあります。
それから、公立文教あるいは
社会教育の施設の助成。これはきのうのこの施政方針にも量的な拡大ということが書いてありましたけれ
ども、私はむしろこの際、質的なといいますか、例えば基準改定あるいは単価改定、そういうものももう取り組むべき時期ではなかろうかと思っております。世の中のレベルがこんなに上がってきた。それから残念なことに農林省とか労働省とかでも同種の仕事がどんどん始まってきている。何か
文部省の場合は見劣りがするという批評が次々に耳に入ってくるわけでありまして、質的な転換を迎えておるのではなかろうかという気がしてなりません。
それから、次々に申しわけありませんが、例えばこういう国際化が非常に進んでまいりまして、
我が国の若い者もどんどん国際機関に入っていかなきゃなりませんが、そういう養成の問題についてもよく
指摘されることでありまして、そういう問題はないか等々、具体的に若干私見を交えて申し上げましたけれ
ども、そういうこと等も含めながら、この
文教行政全般についてもう少し何かダイナミックな展開といいますか、そういうものが期待できないかという強い感想を持っているものですから、その辺のことにつきまして
大臣の御
所見を承ればと思うわけでございます。