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1992-05-20 第123回国会 衆議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月二十日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 高村 正彦君    理事 岩村卯一郎君 理事 金子徳之介君    理事 杉浦 正健君 理事 東   力君    理事 簗瀬  進君 理事 石橋 大吉君    理事 前島 秀行君 理事 藤原 房雄君       赤城 徳彦君    石破  茂君       上草 義輝君    内海 英男君       江口 一雄君    大原 一三君       金子原二郎君    亀井 久興君       鈴木 俊一君    中谷  元君       西岡 武夫君    畑 英次郎君       鳩山由紀夫君    星野 行男君       松岡 利勝君   三ッ林弥太郎君       三原 朝彦君    御法川英文君       有川 清次君    佐々木秀典君       志賀 一夫君    田中 恒利君       竹内  猛君    辻  一彦君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       目黒吉之助君    倉田 栄喜君       西中  清君    藤田 スミ君       小平 忠正君    江田 五月君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      馬場久萬男君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    海野 研一君         農林水産省農蚕         園芸局長    上野 博史君         農林水産省畜産         局長      赤保谷明正君         農林水産省食品         流通局長    武智 敏夫君         農林水産技術会         議事務局長   貝沼 圭二君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局小学校課         長       近藤 信司君         文部省初等中等         教育局教科書課         長       矢野 重典君         自治大臣官房参         事官      鈴木 良一君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十日  辞任         補欠選任   鳩山由紀夫君     三原 朝彦君   保利 耕輔君     畑 英次郎君   宮里 松正君     江口 一雄君   柳沢 伯夫君     中谷  元君   阿部 昭吾君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   江口 一雄君     宮里 松正君   中谷  元君     柳沢 伯夫君   畑 英次郎君     保利 耕輔君   三原 朝彦君     鳩山由紀夫君   江田 五月君     阿部 昭吾君     ――――――――――――― 五月二十日  米輸入自由化反対に関する陳情書  (第八四号  ) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三六号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 高村正彦

    高村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付農業改良資金助成法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子徳之介君。
  3. 金子徳之介

    金子(徳)委員 私は、今回提案されました農業改良資金助成法の一部を改正する法律案について、若干の御質問を申し上げたいと思っております。  この資金制度は、昭和三十一年発足以来今日まで、農業者創意自主性を基調に、新しい技術生産方式導入によって農業経営改善に資するという重要な役割を担ってまいったわけであります。  その後、経過としては、三十九年に農業農村をめぐる情勢変化対応して、農業後継者育成、また生活改善のための資金貸付対象に加えられました。また、昭和六十年においては、農業生産の再編成、そしてまた経営規模拡大生産コストの低減などの要請にこたえるための技術導入資金生産方式改善資金へと改変をされております。また、新たに農業経営規模拡大資金が新設されているわけであります。  以上の経過から、農業経営の安定と農業生産力増強にこれほど制度の趣旨が生かされ、しかも農業者の中に定着したものはないと言っても過言ではないと思います。かつまた、普及指導等技術展開拠点的展示効果を果たしてきたことも見逃し得ない大きな成果であろうと評価をいたしております。  要約いたしますと、農業関係のただ一つの無利子資金であることから強い政策誘導性を持っている、極めて高いインセンティブのある制度である、そのように考えられるわけでありますが、この制度がこれまでどのような役割を果たしてきたか、そのことについての評価、そしてまた、今後の農政の新しい展開の中でどのように位置づけをされようとしているのか、まず初めに、大臣所信のほどを伺いたいと存じます。
  4. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今お話しになりましたように、この農業改良資金制度は、数ある制度の中でも本当に農家のためになる資金制度だ、私はこう考えております。  昭和三十一年に発足以来、普及事業と密接な関係のもとで運営される無利子資金貸付制度として、お話しのように、農業者自主性創意工夫を生かして政策誘導を行ってまいりました。農業経営の安定と農業生産力増強には大きな力を発揮した、私はこう思っております。  具体的には、新技術等の合理的な生産方式導入による地域農業の再編成あるいは経営規模拡大農家生活改善でありますとか農業後継者育成に大きな役割を果たしてきておると思っております。
  5. 金子徳之介

    金子(徳)委員 農水省としても政府としても、そうした評価の上に立って今回の提案になったわけでありまして、私はまことに時宜を得た提案であるというふうに考えて、敬意を表しているわけであります。  次に、農業改良資金貸付総額については逐年増加をいたしておることは、この目的に沿った大変効果のある、いわゆる行政効果が非常に上がっているのではないかと思っているわけであります。経済効果ということになりますと、また別な次元の問題でありますから。  その資金内容を見てみますと、種別ごとにおのおのその需要が違っているようであります。生産方式改善資金は全国的に順調に伸びておるようでありますが、その他の資金は必ずしもそうではない。貸付実績かなりのばらつきが見られるわけであります。資金需要そのものかなりの偏りがあるということで、今後このような資金需要動向を踏まえまして、資金内容について適時、随時見直しを行っていく必要があるのではないか。特に最近の農業情勢というものはドラスチックに変化しておる。そうしたことから新たに生じた政策課題に対しては新しい資金によって対応していく、これがぜひ必要になっているわけであります。  これらの資金需要への貸付動向についてどのように認識をされ、今回の改正にこれをどのように反映をされているのか、お尋ねをしたいと存じます。
  6. 上野博史

    上野政府委員 今委員、例示としてお挙げになられましたように、資金種目によりまして貸し出しの状況が確かに違っているわけでございます。  最近、全体として見ますと、平成二年度では四百六十億円の貸付実績があるわけでございますけれども、五カ年間を通じて見ますと、対前年が六・三%ぐらいの増加を見ております。しかしながら生産方式改善資金貸し付けというのは、稲作畜産や野菜を中心に六十年以降一三・四%とかなり大きな伸びを示しておりまして、それに対しまして経営規模拡大資金の方は、一括前払いのメリットが最近の小作料低下傾向のために若干縮小をしているというようなこともございまして、必ずしも平均のレベルまで達していない。それから農家生活改善資金の方は、六十年に個々の農家炊事衛生に関する資金というものが廃止されまして以来、貸付実績というのは減少をしてまいっている。それから農業後継者育成資金の方は、後継者減少等から貸付実績減少傾向にあるという事情にございます。  貸し付け動向対応いたしまして、あるいは農業農村変化反映をしながら、資金種目貸付枠についてそのときどきの政策要請貸付動向に応じて見直しをしていかなければならないというふうに考えるところでございます。今回の改正も、最近のこういう農業事情変化に基づきます政策要請対応するために、青年農業者育成確保あるいは農産物の高付加価値化促進経営規模拡大推進というような観点から行おうとしているものであるということでございます。
  7. 金子徳之介

    金子(徳)委員 ぜひフレキシビリティーのある運用といいますか、新しい適用をどんどんと御研究をいただきたいとお願いをしておきたいと思います。  今回提案されている法改正事項を含めまして、本資金制度の大幅な見直しを行って貸付対象拡大して、あるいは償還期間延長貸付額引き上げ等を行いまして制度充実を今後図ろうとしなければならない、またしているわけであります。  これらの措置に伴いまして、これは当然予算が伴うわけでありますが、この予算増額について、財源確保されているのか、またどのようにして確保していくお考えなのか、伺っておきたいと思います。
  8. 上野博史

    上野政府委員 この農業改良資金制度は、国と県に特別会計を設けまして、資金を繰り返し貸付財源に充てるという制度でございます。すなわち、貸付財源というのは農家からの償還金一般会計からの繰入金という、そういうものが主になっているわけでございます。平成四年度の一般会計からの繰り入れを十五億円ほど予定をいたしておりますけれども、これは今先生お話ございました、今回の法改正に伴います資金需要増加というようなものを考慮に入れ、かつ特別会計資金の出入りを精査をいたしました上で予定をいたしておるわけでございまして、資金需要に十分対応できる、かように考えているところでございます。
  9. 金子徳之介

    金子(徳)委員 ぜひ財政措置の方は遺漏のないようにお願いをしたいと存じます。今後、構造政策等が急速に行われた場合に、財源措置がおくれたためにそれぞれの行き詰まりがあって、やれるものがやれないというようなことも出ないとも限りませんので、その点についてもあわせてお願いをしておきたいと思います。  続いて、ちょっと具体的になるわけでありますが、稲作等土地利用型農業については、近年賃借権中心とした個別農家経営規模拡大の着実な進展があるわけであります。それとともに、農作業受託を行うことによって実質的な規模拡大を図る動きもあるわけであります。その動きはいまだ十分とは言えないわけでありますが、農業労働力減少あるいは高齢化婦女子化等進展を考慮すれば、技術経営能力にすぐれた農業者による規模拡大の一層の推進進展が必要であると考えるわけであります。  このように土地利用型農業経営規模拡大を図ることは、構造政策上最も重要な課題と考えますけれども、借地による経営規模拡大を支援する手段である経営規模拡大資金貸付実績について、どのように今まで出ておるか、また評価しているのか、またこの資金内容をさらに充実拡充すべきではないかと考えますけれども、この点についての所見を、これは構造改善局長になるわけでありますか、お願いをしたいと思います。
  10. 海野研一

    海野政府委員 経営規模拡大資金のこれまでの貸付実績は、六年間の累計で見まして二百四件、面積にして七百十三ヘクタール、貸付金額八億六千万、量としては比較的小さなものでございます。  先ほど農蚕園芸局長が答弁しましたように、特に近年、小作料低下傾向に伴いましてさらに貸付実績が落ちているというような問題もございます。ただ、一件当たりの貸し付けを見ますと、面積が北海道で五・四ヘクタール、都府県で一・三ヘクタールという、いわゆる利用権設定の普通の場合に比べますとはるかに大きな面積が動いているということでございまして、そこでのこの一括前払い資金を使うことによっての経営規模拡大効果というのは非常に大きなものでございまして、また賃借権設定期間も、この場合には八〇%までが十年間の設定をしておるというようなことで、借り手農業者経営の安定には非常に貢献しているわけでございます。ただ、それにしましても、一方貸し手の方から、十年間の分をもらってしまうと自由がきかないというようなこともございますし、借り手の方でも、これから小作料が下がってくるのに前払いしてしまうというのも損だというようなこともございます。  そういう中で、量としては伸びてきてないわけでございますけれども、ただいま御指摘のように、これから特に高齢化労働力減少が進んでいく中で、技術経営能力にすぐれた農業者規模拡大ということはさらに一層推し進めていかなければならないということでございますので、御指摘のように、本資金内容をもっと魅力あるものにして、これによって経営規模拡大を進めていくということが必要だと思いまして、今般、一つ利用権設定だけではなくて、利用権設定に伴って必要になる初度的経費を貸付対象にするとか、さらに一括前払い資金につきましても、賃借権を、例えば十年間の賃借権設定をしても、そのうち一部だけの期間について前払いをするとかというようなことについても貸し付け対象にする、さらには事実上小作料が高い場所でも、その地域標準小作料をもって頭打ちにしておりましたものを、現実に支払う小作料はすべて貸付対象にするというような改善を図ることにしておりまして、それによってできるだけこの制度によりまして利用権設定普及拡大を図ってまいりたいと考えております。
  11. 金子徳之介

    金子(徳)委員 構造政策というものは、農地流動化をいかに図っていくか、土地利用型農業経営については特にその点が極めて重要な点になるわけでありますが、今後はやはり農地法等との関連で、本当に農業経営者として適切なそれぞれ人格、識見を持った実行力のある方々を後継者としてどんどん発掘していかなければならない。そうした面では、新規参入者も含めてのこれからのこの資金利用、大いに活用すべきであるというように考えておりますので、よろしくこれからもそういった点に視点を注いでいただきたい、御要望申し上げておきたいと存じます。  近年、我が国経済社会が極めて国際的にもトップレベル成熟化をしているわけであります。国民生活も非常に豊かになり、また多様な価値観のもとに進展をいたしておるところであります。これに伴って、農業生産面においても加工外食用農産物生産、あるいは多品目少量生産、小ロット多品目化、それから高品質化高級化、あるいはまたその上の健康志向健康食品、そうした需要が高くなってきているところでありますけれども、これに即した生産も考えていかなければならない、その対応が必要となってまいってきているわけであります。また一方、ガット・ウルグアイ・ラウンド等では、残されている十三品目、米を初めこれらの輸入自由化の問題がさらされているわけでありますけれども、海外からの輸入農産物との競合にも耐え得るような、用途に合った品質の高い農産物生産、供給することが、これから国民生活安定のためにも農村農業が担っていかなければならない大きな役割であるというふうに思うわけであります。  このような消費者需要に的確に対応した農産物の高付加価値化、あるいは農業生産多様化等推進することによって、新しい時代にふさわしい農業生産展開あるいは村づくりまでおりていく、それぞれの方向が定められていくのではないかと考えられますけれども、今回農産物加工をこの資金制度対象にしようとしていることは、まことに時宜を得たものであると評価をいたしているわけであります。  そこで、農業者生産とあわせて加工まで取り組む場合、農業者はどちらかというと加工部門についての経験が乏しいわけであります。さきの委員会で御質問申し上げたときにも、ふるさとおこし農産物の二次加工、あるいは直接食卓に上る食品加工について、各地域ごとに特色を生かしてその産物を利用している、そういったことの大きな指導援助生活改良普及員末端活動でやっている実績を申し上げたことがございました。これらの加工技術の習得に、今後どのような指導をしていったらいいのか。経営のふなれな面もございますし、加工技術経営面での直接指導を強化する必要がないものかどうか。そういった意味で、生活改良普及員役割やあるいはまた専門家役割導入していく必要があるというように考えますので、その点、所信のほどを伺っておきたいと思います。
  12. 上野博史

    上野政府委員 今加工に対する指導の問題を、普及事業との関係で、先生その重要性を御指摘いただいたわけでございますけれども、我々の普及事業の進め方につきまして平成三年度に見直しを行ったわけでございますけれども、その際、生活関係普及事業の四つの重点事項一つといたしまして、農畜産物利活用促進というものを新たな重点分野として定めたという事情がございます。  これによってでもおわかりいただきますように、従来の加工技術に加えまして、経営方法につきましても指導を強化するというふうに考えているわけでございまして、お話ございましたように、需要多様化高度化、そういうものに合わせて農家の側の対応ができるような指導は強めていかなければならない、かように考えているわけでございます。  今回お諮りをいたしております農業改良資金助成法改正内容にも、農産物加工関係改正が入っているわけでございます。これは、生産方式と一体となった加工ということではございますけれども、やはり加工まで手を伸ばして必要な資金の供給を行わなければ、あるいは必要な指導を加えなければ、しっかりした転作なりあるいは新規作物導入といったものができないというような事情を考えたことによるわけでございまして、そういう加工面における指導の強化を図ってまいるということの手段として位置づけたい、かように考えているわけでございます。  今後とも、今お話ございましたような加工重要性配慮をいたしながら、消費者のニーズに即した加工に取り組んでいくというふうに考えたいと考えているところでございます。
  13. 金子徳之介

    金子(徳)委員 戦後、増産増産国民食糧を供給する、ワンサイドでそれを進めてきた時代がございました。例えば、耕土培養事業によって土地生産性を上げていく、あるいはまたいろいろな、量を余計にとって国民食糧の自給をしていこう、そうした時代を経てから、今日は加工のできる農産物でないと農業経営でペイしない。他産業と肩を並べることができないという一つの、かなり先進農業地帯ではそのような形で言われているわけでありますけれども、私はぜひこのふるさとおこしで、末端でこつこつやっておるそうした農業経営者生産団体生産組合、そうしたところにはスポットを当てていただいて、流通面も含めて大いに御指導をすべきではないのかと思っておりますので、これもよろしく御配慮をいただきたい、御要望いたしておきたいと思います。  この改良資金制度運用の問題につきましてはいろいろと要望の点がございます。貸付要綱要領等については、事業の認定の方式であるとか、あるいはまた今後高齢化婦女子化対応して貸付条件を緩和していくとか、あるいは施設園芸等の高額を必要とする施設に対するそれぞれの該当する認否をしっかりとやっていくとか、貸付期間見直しも、延ばしていくとかいろいろありますが、これらについては細部、後でお伺いをしたいと思います。  時間がございませんので、最後に大臣にお伺いをしておきたいと思いますが、今回の改正の大きな柱は、何といっても農業経営者の中で、後継者対策充実にあると考えるわけです。外部から農業に参入してくる青年を含め次代の農業を担う若い農業者確保することは、新規学卒就農者が急激に減少している上に、農業就業者中心をなす昭和一けた世代がリタイアする時期が迫っているわけであります。全く悲しいことには、平成三年は全国でわずかに千八百人しか農業後継者がなかったという現実であります。しかも、ことしに入ってもそのトレンドは変わっていない。魅力がない職業に見られておる。あるいは厳しい、そしてまた危険な仕事ではなくても、容易でないという仕事の中でみんなから嫌われている面と同時に、逆に今農村が求めているのは、新しい時代に即した、そしてまた新しい価値観のもとに市場の動向国際化進展、これらに的確かつ弾力的に対応できる人たちは、これは若者であります。  これだけでなくて、農業そのものが、我が国国土は御承知のように七割が急峻な山地であり、また急勾配な河川が非常に多いなど、災害に対してもまことに脆弱な立地条件にあるわけでありまして、このような中で、我が国農業農村は洪水の防止や山崩れの防止等、目に見えない形で国土を守っているわけであります。水田の遊水機能などはまさにその代表的なものであります。また、水資源の涵養や水質浄化を初めとして緑豊かな景観と自然環境の維持、都市住民への憩いの場の提供等農業生産以外の多面的かつ公益的な役割を担っておることは御承知のとおりであります。  このような農業農村を長期的に維持し発展させていくのは、まさに若者であると思います。このように、農業後継者確保は極めて重要でありますけれども後継者現状は今どうなっているのか、また農業後継者対策現状及び今後の対策をいかに考えておられるのか、また政府においては新しい食料、農業農村政策に関する検討を行っているわけでありますが、後継者対策を新政策検討の中でどのように位置づけをされているのか伺って、質問を終わります。
  14. 田名部匡省

    田名部国務大臣 我が国農業農村にとって、何よりも意欲のある、あるいは能力の高い青年農業者育成するということは大事なことだと思っております。もとより、働く喜びといいますかそういうものは、目標があって、その目標に向かって努力することによって働く喜びというものは出るんだろうと思うのですね。そういうことから私どもは、若い人たち、まだ将来に向かって無限な可能性を秘めておるわけでありますから、大事に育てなければいかぬということは責任としてあると思うのです。一方では、本人の持つやる気といいますか意欲といいますか、これと相まって成功していく。農業危機的状況であるとか大変だとか言いつつも、やはり成功をおさめて立派にやっている人もある。そこの差は一体何だろうかということを私どもが直視をして手を打っていかなければならぬ、こう思うのであります。  平成四年度においては、ただいま御審議をいただいておりますように、農業改良資金助成法の一部を改正し、農家子弟のみならず、今お話し農外からの新規参入青年貸付対象とするとともに、この限度額の大幅引き上げ、償還期間延長等を図っていこうということを考えてお願いをいたしておるわけであります。  いずれにしても、青年農業者育成確保を図るためには、何よりもまず将来に展望が持てなければならぬということで、足腰の強い農業と活力のある農村を確立することが基本であります。申し上げたような観点から、現在鋭意検討を進めているところであります。その検討も踏まえて、総合的に施策の展開に努めてまいる所存であります。
  15. 金子徳之介

    金子(徳)委員 ありがとうございました。終わります。
  16. 高村正彦

  17. 御法川英文

    御法川委員 今さら申し上げるまでもないわけでございますが、我が国農業を取り巻く状況は依然として厳しいものがございます。こうした現状を踏まえまして、農水省におきましては、昨年の五月より、新しい農業政策展開するため鋭意検討を重ねてまいったところでございますが、いよいよその方向が姿をあらわしてまいったところであります。大臣を初め農水省関係の皆様方の御労苦に心から敬意を表するものでございます。  きょうは農業改良資金助成法改正案についてでありますので、新農政につきましては別の機会にいたしまして、改良資金についてお伺いします。  農業改良資金の最大の特徴は無利子であるということにあろうかと思います。農家にとりまして、この資金は大変大きな味方であります。今回の一部改正によりまして一歩前進ではありますが、率直に申し上げまして、私は、この制度こそが制度金融の中核であるべきだ、このように考える者の一人でございます。  今後新農政を展開する中でも、大規模化を初め農業経営の法人化、あるいは後継者対策を進めることになるわけでございますが、活力のある農業農村を建設するために相当量の資金が必要でございます。そのときに当たりまして、この農業改良資金の果たす役割は大変重要になってまいると思うのでございます。  その意味で、今後さらにこの農業改良資金見直し、大きく拡充強化を図るべきであると私は考えるのでございますが、この点についてまずお伺いいたします。
  18. 上野博史

    上野政府委員 ただいま委員からお話ございましたように、農業改良資金制度というのは、無利子資金であるという特色を生かしまして、従来、農業者自主性創意工夫を生かしながら政策誘導を行う制度ということで農業経営の安定と農業生産力増強に大きな役割を果たしてきたことはまさにそのとおりであろうと考えているところでございます。この制度につきましては、そういうこの制度のねらいが十分に果たされますように、農業農村事情変化対応いたしまして、必要な制度充実に努めてまいったわけでございます。  今回の改正も、青年農業者育成確保農産物の高付加価値化促進農業経営規模拡大というような差し迫った農政の課題対応しようとするものでございまして、この制度が将来とも本来の目的に沿って活用をされますように、今後とも時代要請に的確に対応してまいりたいと考えておるところでございます。
  19. 御法川英文

    御法川委員 先ほど金子委員からも質問があったわけでございますが、ただいまの答弁にもございますが、この限度をもっと大きくする、あるいは年数を延ばす、資金量の絶対量をふやす、そして多くの農家の期待にこたえる内容にしていくことが本当の意味の農業金融である、私はこう考えますので、この点を十二分に腹に入れていただいて対処いただきたい、こう思うのでございます。  そこで、この制度資金でございますが、制度資金はもちろん事業等に対応する形でそれぞれ創設され、運用、活用してまいったわけでございますが、利用する末端、つまり農家の立場からいたしますと非常に数が多過ぎる、制度が多過ぎるということがよく聞かれるわけでございます。これまでも若干統合されまして、現在二十二ぐらいまでになっておるようでございますが、それにしてもまだ、こんなことを言っては失礼でございますが、取り扱う事務所、そしてまたこれを利用する農家の方々、二十二の制度がこういうふうにあるということを十二分にわかっておる方々は非常に少ないわけでございます。そういう意味では、この制度をもうちょっと簡素化する必要があるのじゃなかろうか、こういう声を末端で聞くわけでございまして、この点につきましてのお考えを伺いたいと思います。
  20. 川合淳二

    ○川合政府委員 今お話がございましたように、制度資金、特に農林漁業金融公庫資金につきましては、確かに先生の御指摘のような面がございます。この資金は御承知のように政策性の強い資金でありますので、その都度、政策に応じて資金設定をいたしておりますものですから、どうしてもやや複雑になり、わかりにくくなるという面があるわけでございます。  しかしながら、今お話がございましたように利用する人があっての資金でございますので、利用者に十分理解していただくことがどうしても必要でありますので、私どもといたしましてもその都度見直しを行いまして、あるいは統合などをいたしまして簡素化するという作業をしておりまして、今先生がおっしゃる二十二の資金というものに統合しているというのが現在の姿でございます。  もちろん、これでいいというわけではございません。また一方で、いろいろなそのときどきの資金需要が出てまいりますものですから、また新しい資金がつけ加わるというようなことも避けられないわけでございますが、常に利用者のことを考えて見直すという目を持って私ども対応していきたいと思っております。  今後とも、各種資金状況を見ながら、極力簡素化に努めてまいりたいと思っております。
  21. 御法川英文

    御法川委員 わかりました。  次に、この農業改良資金でございますが、これは農家の方々から非常に好評でございます。ところが、申し込んでから借り受けまでの、金が来るまでの期間がちょっと長過ぎる、こういう声を回っておりますとよく聞くわけでございます。そういう点で、申し込んでから借り受けるまでの期間の短縮あるいは事務的な簡素化、こういうものも大変重要であろうと思うわけでございますが、この辺についてはどのようなお考えでございましょうか。
  22. 上野博史

    上野政府委員 農業改良資金の申請書の提出時期、貸し付けの決定の時期、あるいは資金交付の日というものは、これは資金貸し付けの主体が都道府県になるわけでございますけれども、都道府県がそれぞれの都道府県の農業の実態に合わせ、あるいは事務体制を考慮いたしまして決めております。これは資金需要に季節性があるということもございまして、必ずしも各県同じだということではございません。ただ、現在我々が把握しておりますところによりますと、申請から貸し付けまでに要する期間というものは、大体一般的には一、二カ月程度というような範囲に入っております。  改良資金貸し付けは、普及事業と非常に緊密にタイアップをいたしておりますので、普及所を初めとする関係機関が協議をして貸し付けを決定しなければならないというような事情もございまして、ある程度の審査期間が要るということは当然やむを得ないことだろうと思うわけでございますけれども委員の御指摘になられますように、農家の側から見ますとできるだけ早く資金を得たいというのは当然のことでございまして、我々とすれば事務手続の簡素化をぜひとも図ってまいらなければならないだろうというふうに考えております。そういうことで、貸付回数の増加を図って使う側の利便を考えていくとか、あるいは金融機関におきます審査の迅速化を図るということなど、都道府県に対しても指導してまいりたいというふうに考えております。
  23. 御法川英文

    御法川委員 次に、保証制度につきまして、これまでは保証人が必要であったし、保証人に限定されておったわけでございますが、今回の改正案でいわゆる物的担保に道を開くことになっております。このことは一歩前進であると思います。ただその際に、運用に当たりまして、こんなことは当然でございますが、借受者の農家の意向をひとつ十分尊重して対応していただくということが大事かと思いますが、この点につきましてもひとつお伺いいたしたいと思います。
  24. 上野博史

    上野政府委員 債権の担保の問題につきましては、今回の改正によりまして連帯保証人あるいは物的担保によるという道が開かれることになるわけでございますけれども、具体的には、事務処理体制あるいは借り受けの実態というようなものを考慮いたしまして、都道府県が貸付規定等において具体的に定めるということになるわけでございます。  今回こういうふうに保証制度について改正をいたします趣旨は、借り受けを希望する農業者が保証人をなかなか得にくいというときに物的担保を提供することができれば貸し付けが円滑にいくというような事情、これは貸付金の額がふえてくるというようなことを配慮して考えているわけでございます。一方では、これは普及事業との関連のもとに貸し付けがなされる制度である、つまり、かなり人的な要素を含んだ資金であるというようなこともありまして、あるいは物的担保につきましてはいろいろ事務処理的にも都道府県に負担のかかる面もございまして、借受者の利便を十分に考えていかなければならないというふうには思っておりますけれども、都道府県側の事情もあり、その辺を両々勘案しながら指導してまいりたい、かように考えております。
  25. 御法川英文

    御法川委員 先般農協法が改正になったわけでございますが、その際に、農協の固定化負債解消のために基金制度を設けるというふうなことになったと思っております。全国のことはよくわかりませんけれども、少なくとも私どもの県内の農家の方々は相当の固定化負債を持っているのが実情でございます。こうした大きい荷物、重い荷物を何らかの方法で解消してやることが今後の農政、農村を考える場合に非常に大事である、私はこう考えるわけでございます。そういう意味から、今後の農政を進める中で農家個々の固定化負債の対策を十分に行うことが農村活性化にも当然つながってまいる、こう考えるわけでございますが、農家の固定化負債に対する農林水産省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  26. 上野博史

    上野政府委員 農家の固定化負債全体の問題でございますとちょっと私の所管を離れる面があるわけでございますが、この改良普及資金関係につきましては、幸いなことに余り延滞が大きくないというふうに考えております。  一般的な状況でございますと、農家二戸当たりの借入金というのは横ばいで推移をいたしておりまして、平成二年度末では二百十五万円。これに対しまして、貯蓄の方は堅調に増加をして、平成二年度末には二千二百八十八万円というような状況で、割に落ちついた様相を呈しているということでございます。ただ、今委員指摘のとおり、厳しい農業情勢のもとでございますので、地域や個々の経営によりましては農家負債が非常に大きな問題になっているということはあるわけでございます。  こういう農家負債、固定化負債の問題につきましては、償還期間延長等によります負担軽減措置を講ずるように関係機関を指導しているということでございますが、とりわけ既往の借入金の償還負担の軽減が緊急の課題であることにかんがみまして、制度資金あるいは土地改良負担金の償還金の借りかえというようなことのためのリリーフ資金を創設した、これは平成元年の話になるわけでございますが、あるいは農山漁村振興基金を設置いたしましてリリーフ資金等の金利負担をさらに軽減するというようなことを行ってきている、あるいは土地改良負担金の償還の平準化をするための資金の造成をするというようなことを順次やってまいっておりまして、その活用が図られるように現在関係機関を指導している、こういう状況でございます。
  27. 御法川英文

    御法川委員 次に、農業後継者問題、これも言われて大変久しいわけでございますが、現在全国に単独の農業高校というのが二百を超える高校があるはずでございます。したがいまして、今後の農業後継者というものを考える場合におきましても、この農業高校の果たす役割が重要であるわけでございます。  しかしながら、現在農業高校を卒業しまして直ちに就農するという方々は全国で約千八百人ぐらい。私の地元にも農業高校がございますが、二人か三人程度、こんな状況でございます。学校教育の関係になりますと文部省の管轄ということにはなるわけでございますが、農業高校というその内容からいたしまして、私は農林水産省が農業高校に対してもう少し手を伸ばし力をかして、そして本当の意味の農業後継者が育つ、そういう教育内容に変えていく必要がある、こんなことを強く考えるわけでございますが、この点につきましてどのようなお考えがございますか、お伺いしたいと思います。
  28. 上野博史

    上野政府委員 この農業高校の問題につきましては、文部省に日ごろから私どもとしての考え方をお伝えするそういう協議会の場なども設けまして、農業後継者育成にできるだけ資するように、あるいはちょっと話題から外れますけれども、学校教育全般の問題として農業に対する理解を得ていただくような内容にしていただくようにお願いをするというような努力を続けているわけでございます。  残念ながら、ただいま委員お話ございましたように、農業高校の卒業生が必ずしも十分に農業に就業しないという事情があるわけでございますけれども、ともかく新しく学校を出られる方が農業に従事するということにつきましては、農業自身の魅力といいますか、そういうものを高めることが何よりも大事だというふうに考えているわけでございまして、その方策を鋭意検討しておるという状況でございます。
  29. 御法川英文

    御法川委員 最後の質問でございますが、きょうは大臣もせっかくお見えでございますので、最後に大臣にお伺いしたいと思いますが、農業者、特に若い方々が就農するということに当たりまして、やはり誇りと自信を持って取り組める農業、この確立が最も重要である、こう考えるわけでございます。それを実現するために昨年から現在まで農林水産省におきましていろいろ検討を重ね、一つの方向づけができつつあるわけでございますが、大臣といたしましてこの問題につきましてどのようにお考えでございましょうか、お伺いいたしまして私の質問を終わります。
  30. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今お話をずっと伺っておりましたが、私ども今、中長期的な展望に立って農業農村をめぐる施策の総合的見直しをいたしておりますが、何といっても今お話しのように誇りと自信を持って取り組める農業、一体何だろうか、こういろいろ考えてみますと、所得の面から見ますと、農業所得という農家の所得ですね、これは非常に高いんです。その次が勤労所得、サラリーマン等ですね。そして一番低いのが漁家の所得、こういう順位があります。農家でもまた千差万別で、平均でありますから、確かにサラリーマンと同じように勤めをして農業をやる人は、サラリーマンの所得のほかに農業の収入があるものですから高い。しかし専業にやる人はどうかということになりますと、こっちの方が苦労しているわけですね。従来とも農業一般で何でもやるものですから、なかなか苦しい方がいい状況になれないという面がありまして、ですからもう少しきめ細かく政策というものを立ててあげないとなかなか困った方の農業者がいつまでたってもよくならないという面があるんだろうと思いまして、そこのところを何とかしよう、こういうことでいろいろと検討しております。  一方では、そのことはやりますが、じゃそれだけでいいのかということになると、生活環境もやはりすばらしいものでなきゃいかぬということで、美しい村づくりでありますとか集落排水の事業でありますとか、やっているわけです。それからいま一つは、やはり多角経営といいますか、そういうものもやったらどうか、あるいは就農の機会をうんとつくってあげる。これは農林省だけではどうにもならぬ分野もありますから、郵政省あるいは自治省、いろいろなところと、今話しかけて、一体で考えられぬかということをやっております。  それからいま一つ、私がいつも思うのは、農業者ももっと他産業といいますか別の方の人たちとの交流というものがなければ、農業の中だけで農業を見ておりますと、なかなか新しい発想というのは出てきません。ですから、例えばスーパーでありますとかデパートでありますとか、一体消費者は今どういうものを望んでおるかとか、いろいろとこれからの農業というのは、従来ただ何となくやっていればいい農業から、どうやれば所得が上がり経営が成り立っていくかというところにやはりもっと私ども誘導していかなきゃいかぬというふうに考えております。  いずれにしても、この新政策についても、今のことで議論すると反対という人はおると思うのですね、目先のことにとらわれると。しかし、今委員お話しのように、担い手が減少しておりますから、いずれにしてもこの人たち、次の世代の子供たちに一体どういう農業を我々大人としてさせなきゃならぬかということで、二十一世紀以降を考えて、やはりこれならやる意欲を持とうというようなことでなきゃいかぬということで検討しておりますので、そういう立場で見ていただきたいし、また御意見も聞かしていただきたいということでございます。いずれにしても、農村地域に定住できるような基本的な条件を整備していくということが私どもにとって大事なことだと考えております。
  31. 御法川英文

    御法川委員 ありがとうございました。終わります。
  32. 高村正彦

    高村委員長 志賀一夫君。
  33. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 私は、まず今回提案されております農業改良資金助成法の一部を改正する法律案についてお伺いをいたしたいと思います。  この法律が今日までの農業改良の重要な役割を担ってきたと言えるにしても、今日の農業情勢は極めて厳しいものがあり、特に農業後継者をめぐる状況は、我が国農業が産業としての存立を将来ともに果たして持続できるものであろうかと思わざるを得ないような状況下にあると考えられます。  昭和三十五年、二七%を占めていた総就業人口に占める農業就業人口の割合は、平成元年にはわずかに七%に低下しております。また、基幹的農業従事者に占める六十歳以上の人口は今や平成二年度で四八%と約半分を占め、着実に高齢化は進んでいるのであります。さらにまた新規学卒就農者は、先ほどもお話がありましたが、昭和五十年には一万人であったものが平成二年度ではわずかに千八百人というふうに激減しておりまするし、また一方、Uターン青年についても、昭和五十年度において三万人が平成二年度では千九百人まで減少し、離職就農者に占める割合も一四%足らずとなっており、離職就農者自体も高齢化が進んでおるわけであります。特に、近年の農業後継者動向は過去五年間で五分の一と著しい落ち込みを見せており、将来に向けて担い手の確保は喫緊の課題となっております。  かかる後継者不足はいかなる原因によるものなのかを明らかにするとともに、改良法の一部改正による資金対策で十分対応できるとの見通しに立っての提案であるのかどうか、まずお伺いをしたいと思います。
  34. 田名部匡省

    田名部国務大臣 この改良資金制度改正だけで十分対応ができるのかというお尋ねでありますが、これだけでもって十分だとは考えておりません。しかし、いろいろな施策を講じながらやっていくことが重要である、こう思っております。  その中で、再三申し上げておりますが、何といっても意欲能力の高い青年農業者育成確保するということが重要な問題だ、こう考えておりますが、特に新規学卒就農者減少は今委員お話しのとおりでありまして、そういうことを見ますと、まことに憂慮すべきものだと実は考えておるわけでありますが、農業後継者問題を解決するためには何よりもまず農業そのものに魅力がなければいけないということであります。  最近、Uターンの若い人たちが多くなっておる、あるいは農業には全く関係なかったけれども農業経営もやってみたいという人も実はふえておるわけであります。私どもが大いに力を入れていかなければならぬ分野でありますが、一方においては、大都市におけるサラリーマン生活、何年かやってみると、どちらかというとほかの分野というのはよく見えるという部分もあると思うのでありますが、やってみると、一時間半も電車で通いながら休む間もない、そういうことで、やはり田舎の方がいいなと思う人たちもたくさん出ておるのだろうと思うのでありまして、そういうことも考えながら、私どもは今新しい食料、農業農村政策に関して検討をいたしておるわけであります。  今回の法改正は、近年の新規学卒就農者の急激な減少等にかんがみまして、従来農業後継者対策として行われてきた農業改良資金制度の拡充について御審議をお願いしておるものでございます。今後とも、今申し上げたような新政策検討も踏まえて魅力のあるものとなるように総合的な施策の展開に努めてまいる考えでございます。
  35. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 この制度内容について、若干お伺いをいたしたいと思います。  まず、本制度が融資対策一本に絞った理由と一さらには各資金とも融資期間が非常に短いということであります。他産業と比較いたしまして収益性の低い農業であり、かつ経験の少ない新規就農者にとって、これらの期間で十分対応可能なのかどうかは極めて疑わしいと思うのでありますが、いかがでしょうか。  また、本制度改正によってどれくらいの成果が期待されるという見通しがあっての施策と考えられますが、一般後継者及び新規参入就農者の数はどの程度と予想し、かつ各制度資金枠は総額でいかほどを予想しながら準備されたのか、それらの諸点についてお伺いしたいと思います。
  36. 上野博史

    上野政府委員 いわゆる後継者対策全体の問題といたしますれば、いろいろな観点から取り組む必要があるのだろうというふうに考えるわけでございまして、現在検討中の新しい政策の方向づけ、そういうものを踏まえた上で全体としてのまた努力はしてみたいというふうに考えるわけでございますけれども、さしあたり農業改良資金制度改正という観点対応できる問題として、今回青年農業者への資金供給の道を開くという改正予定をしたわけでございます。  具体的に、この制度を創設することによってどれぐらいの新規就農者が得られるのかということにつきましては、定かになかなか申し上げにくいわけでございまして、ちょっと私としても具体的に数字を挙げて申し上げるほどのものはないわけでございますが、現在千八百人の方々が新規就農される、あるいは農業外から七十数人の方が入ってこられる、そういう方々に対して、より貸付条件のいい形で、あるいはより多額の資金を提供できるという道を開いてまいって、それらの方々の営農に資してまいるというふうに考えているわけでございます。  必要な貸付枠といたしましては百十五億円というものを一応設定をいたしているわけでございまして、これは平成三年度の貸し付け実績見込みが四十五億円程度、千件をちょっと上回るくらいの水準であるということから見て対応できるのではないか、かように考えているところでございます。
  37. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 先ほど申し上げましたように、融資期間が非常に短いのではないかということに対して、やはり従来の後継者なり新規就農者なりがやった場合に、もしも資金的、期間的に不足するあるいは不十分だという場合には、十分検討の上それらの新たな要請にプラスをして対処できるのかどうか、その辺明らかにしていただきたいと思います。
  38. 上野博史

    上野政府委員 融資期間の話、ちょっと私お答えを漏らしまして大変失礼をいたしました。  この資金予定をいたしております貸し付け対象経営開始当初必要な機械、施設あるいは必要な農業資材というようなものを予定をしておるということから、そういうものの耐用年数等も考慮に入れて十年以内という考え方をとったところでございまして、貸付対象を考えれば、十分といいますか、お返し願うのに無理のない期間設定をしているのではないかというふうに考えております。  土地等の取得まで対象にするというようなことになりますと、これは相当長期ということになるわけでございますけれども、改良資金の考え方としましてそういう土地の取得等に必要な資金というところまでは広げていないというような事情から、この程度の期間で足りるのではないかというふうに考えたところでございます。  もちろん、今後いろいろな情勢変化等によりましてこういう貸付要件あるいは貸付金額というものについての見直しをしなければならないというような事情が参りますれば、当然必要な見直しを行ってまいりたい、かように考えております。
  39. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 次に、後継者が年々低下をして、前に申し上げましたように産業としての農業の存立が危ぶまれるという現状は、その原因として農業経営の不安定性、他産業と比較した農業収益性の低さ、労働環境の厳しさ、配偶者難、若者にとって魅力に乏しい農村環境等さまざまな原因を挙げることができると思います。  今回の改良法の一部改正についても、後継者対策一つとして、特に新規参入者を含めての融資対策については十分評価できるのでありますが、この資金対策によって国が期待するほどの効果が上がるかどうかということについては極めて疑問なしとしないのであります。若者農業への意欲を引き出すような具体的な農業政策を今つくり上げていくということが最も求められているのではないでしょうか。そういう観点について、大臣はどういうふうに考えておられるのか、ひとつお聞きをしたいと思います。
  40. 上野博史

    上野政府委員 現在の農業就業者動向等を見るに、今委員指摘のように、農業のあり方を見直しましてこれから農業に従事しようとする方々にとって魅力のある農業あるいは農村での生活というようなものを考えていかなければならないということは、まさに御指摘のとおりだろうと思うわけでございまして、そういうことにつきまして鋭意省内で検討をしておるという状況でございます。
  41. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 本年度は減反面積の削減は十三万ヘクタール割り当てられたわけであります。その消化について全国的に極めて難渋をしたということを聞いているわけでありますが、その結果はどうであったか、お教えいただきたいと思います。
  42. 上野博史

    上野政府委員 十三万ヘクタールの緩和の問題につきましては、まだ全国的に見まして水稲の作付が必ずしも本格化をしていない、北の方はかなり進んでまいっておりますけれども、そういう状況にございまして確たる見通しを申し上げるということができにくいわけでございますけれども、現在得ております状況を総合的に見てみますと、北海道においては大体達成できるということではないかというふうに考えております。     〔委員長退席、金子(徳)委員長代理着席〕 都府県におきましては相当程度達成されるというふうに見込まれておりますが、野菜等の転作が定着をしている地域であるとか、あるいは担い手が脆弱で固定的な保全管理の対応が多くなっておるような山間地域等で稲作復元が困難な地域もあるという状況にございます。  まだ、これから麦の後への水稲作付のチャンスがあるということもございまして、各地方公共団体あるいは農業団体等と一緒になりましてこの作付面積の達成に努力を続けているという状況にございます。
  43. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 既に全国的に作付はかなり進んでいるという状況下にありますから、いまだにどういう状況なのかを最終的に把握できないというのは非常にどうかなというふうに思っているところであります。そういう背景には、十三万ヘクタールつくれ、こういうことを言っても、農家がもう既に八十三万ヘクタールという減反面積については畑作転換あるいは他の作物に転換ということでかなりな程度まで定着しているのが現況で、これを畑作で何をつくっていたから今度は水田化して稲をつくれ、米をつくれ、こう言っても、それに定着している以上なかなか対応しないというのが一般的な農家の皆さんの受け取り方ではないのか、そういうふうに私は思っているところであります。  そういう状況を考えますと、この辺で水田の減反政策を全面的に廃止しろと言ってはちょっと無理かもしれませんけれども、しかし、またかなりな程度まで減反をやめるということになれば、農家農業に対する意欲かなりな程度まで引き出すことができるのではないかというふうに考えますと、ひとついろいろな角度から検討されて、この八十三万ヘクタールのかなり面積を減反をやめる、こういう政策転換をこの際検討したらいかがなものか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  44. 上野博史

    上野政府委員 転作が完全に定着をして、お米の生産能力需要がほぼマッチするという事態になれば、委員お話しのとおり生産調整の必要性がないという判断になるわけでございますけれども、結論的な感じになりますが、現在のところ私どもの考え方としては、後期対策が終了をいたしますことしの段階の後におきましてもなお潜在的な需給ギャップがあるのではないか、そのために何らかの形で引き続き生産調整を行っていく必要があるのではないかというふうに考えております。  もっと具体的にお話をさせていただきますと、現在の転作の定着状況を見ますと、果樹や野菜を中心に転作作物の三分の一程度が定着をしているというふうに言えるのではないかということでございますし、それから麦、大豆を取り込みました地域輪作農法の関係につきましても転作面積の一割程度をカバーするにすぎないというような状況でございまして、さらに引き続きまして転作の定着なり水田農業生産性の向上に向けた取り組みというものが必要ではないかというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、水田農業後期対策は今年度をもって終了するわけでございまして、来年度以降の取り組み方については現在鋭意検討をいたしているところでございますけれども、ことしの作柄が今後のお米の生産調整のあり方を決める非常に大きな要素になるわけでございますし、それから潜在的な生産能力あるいは需要動向等々、あるいは水田農業の健全な発展を図るというような大きな政策目標というようなことを相互に考慮勘案しながら、関係者の意見も聞いて慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  45. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 次にお伺いいたしますのは、山村とか中山間地域でのデカップリング政策については、ここで何回も議論をされておるところでありますが、私はこの政策がやはり何らかの形で必要ではないのか、こんなふうに思うのであります。国の方ではこの政策我が国にはなじまないというふうに言うのでありますけれども、昔のことわざにあるように、牛の角を矯めて牛を殺すというように、環境保全や景観維持、自然を守るといっても、その地域に人が住まなくなってしまったらどうにもしょうがないのではないでしょうか。  この新しい食料、農業農村政策展開についての資料の中でも、山村、中山間地域、そういう地域での人口の減少が数字的にかなり出ております。また同時に、若者の定着もどんどん減っているという状況下にあるわけでありますから、今具体的にデカップリングを一つのモデルにした政策的なものをそういう地域にやらなかったら、若者が定着するようなそういう具体的な政策をやらなかったら、若者の定着を期待する方がむしろ無理だ、こういうふうに考えざるを得ないと思うのですが、この辺はいかがでしょう。
  46. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 新政策との関係で、デカップリング政策、我々もいろいろと中で検討しているわけでございますが、先生も御指摘のように、やはりこれはこれなりにいろいろヨーロッパでこの政策がとられるに至った歴史的経過あるいはその農業状況等ございまして、我が国の今の農山村あるいは中山間に直ちに適用するにはいろいろ問題があろうかというふうに考えるわけであります。  我が国の中山間においての農業のあり方というのは、確かに平地に比べますと条件的に不利な面があることも事実でありますが、一方またその立地条件を生かせれば、例えば平場で、平地では生産できない時期に野菜等をその高低差を利用して生産をすれば有利な生産ができるとか、いろいろ立地条件を生かした農業展開というものがあり得るわけであります。また、今御指摘のように、人がそこに住んで生活していくのに、単に農業に関しての所得を維持するというだけでなくて、その地域として人が、農業者もそれ以外の人も住んで、その地域全体が活性化することが必要であります。  そういう意味では、単なる所得の問題以外にいろいろとまだまだ整備する問題もあろうかと思っておりまして、我々がこの検討の中で申しておりますのは、そういう立地条件を生かした高付加価値の農業展開する、あるいは地域の資源を生かした関連産業等を振興するというようなこと、あるいは地方都市へのアクセスの条件の改善等生活環境の整備を図る、さらには林地も含めましてそこの資源の利用、管理を適正に行うというような多方面からの政策展開することによって、そこに人の定着あるいは活性化を図ろうというふうに考えている次第でございます。
  47. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 ただいまの議論については、後でもう一度触れますので今申し上げませんが、次に移りたいと思います。  この一つに、経営規模拡大ということでの問題があります。農業経営の規模の拡大を一層推進するための農用地の利用権の取得による農業経営規模拡大に伴う必要な資金を新たに貸し付けるというふうな制度は、もちろん結構だと思うのでありますが、問題は、規模拡大するために必要な土地がもっともっと流動化しやすい状況をどうしてつくっていくのかということがまずこの前提条件になると思うのであります。このことについてはいかなる方策を考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
  48. 海野研一

    海野政府委員 利用権設定のために土地を出させる方途という非常に幅の広いお尋ねでございますので、いろいろなことが関係してくるわけでございます。  一つには、そもそも兼業の方を主体として、自分は何も農業をしなくてもいいというような人がなかなか貸さないという問題がございます。これは、我が国では昔から農地を家産として意識する傾向が強かったというようなことがございます。特に農地改革を経まして、土地というものは貸したら返ってこないんじゃないかというような不安、そんなようなものがあってなかなか貸さないという問題がございました。これにつきましては、今御指摘ございました農用地利用増進法による利用権設定ということで、賃貸借期間が満了したときには離作料なしに確実に農地が返る制度ということで、その普及定着を図っておりますし、さらには農地保有合理化法人や農業委員会その他の公的機関の介入というようなことで、安心して貸借ができるようにする。そのようなことで大分現在のところでは、現実に貸した人について見ますと、今や返してもらうことについての不安というものは相当部分の人は消えているというふうに思いますが、それでもなおかつまだそのような不安があるという意味では、出し手の抵抗感の少ない農作業の受委託というような利用権設定を伴わない形というようなことも推進をしていく必要があると思います。  ただ、それにしましても、そもそも本当に農業以外で働く先が十分あるならばするけれども、現在の兼業先、不安定で心配だから、ともかく土曜、日曜は農業をやってなければいかぬというような状況もあるわけでございます。そういうことで、兼業先をできるだけ確保していくということが必要でございまして、昭和四十年代から農林水産省として農村地域への工業導入政策というものをとってきたわけでございますけれども、だんだん工業自体がオートメ化していくという中で、工業だけで人間がなかなか吸収しがたいというような面もございます。そういう中で、さらにはどの地域へも雇用が外から入ってくるというわけにはなかなかいかないというようなことで、特に中山間地帯の、大きな工業のなかなか入りにくいところについては、特に平成四年度からスタートしました新山村振興事業であるとか農山漁村活性化定住圏創造事業などで、農産物加工その他を軸として地場産業の振興を図るというようなことも考えております。  さらには、すべての地域に兼業先が来ないとすれば、道路をよくすることで近隣の中小都市に通勤をするというようなことのために、農道ももちろんでございますけれども、建設省所管の道路なんかとも連携をとりながら、近いところへ通勤できるような道、さらには、これは通勤先があるということと人がいるということとうまくいけば好循環になるわけですが、悪くいくと悪循環になるわけでございまして、同時に農村の生活環境の整備を進めて、ともかく人がいるということが逆に企業が来ることの条件にもなるわけでございます。そういう意味で、生活環境の整備、通勤道路の整備というようなもの全体を含めまして兼業先を確保していくというようなことを考えております。  それにいたしましても、近年は、先ほどから御指摘のございましたような高齢化というようなことで引退をしていく農家が多いわけでございます。そういう中で、集落の話し合い等によりまして、その引退をしていく農家の土地というものが今後農業を担っていく人に円滑に集積していくような集落の合意というものをしていくことが必要であろうというふうに考えております。
  49. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 私から若干申し上げようというような点もいろいろお話がございました。  まず一つは、農家の持つ伝統的な資産的所有権の行き来をどう進めていくのかということがやはり一つのおっしゃられている課題であります。これについてはやはり農家の伝統的な、歴史的な一つの意識でありますから、これを改革するためにはそれなりの手だてが必要ではないのかというふうに思いますが、それには国のもっと大きな力が必要ではないのか、条件整備が必要ではないのかというふうに思うのであります。  それからまた一方で、いわゆる中山間地帯の農地の整備ということで現にやっておりますが、こんなところで果たして経済効果があるのかなと思うような場所さえかなり整備をやっている地域もあります。また、やっていない地域もあります。しかし、そういう整備をされたところで、整備が終わってもいまだに作物を植えつけようとしないで荒れたままに放置してあるという状況もあります。それはやはり今の農業に対する意欲がないことの具体的なあらわれだ、こういうふうに考えざるを得ないわけであります。  さらにもう一つは、農村地域へ誘致されている工場というのは中小企業が非常に多いわけであります。あるいはまた、下請企業も非常に多いという現実の姿があります。そういう中で、労働条件あるいは賃金等についても極めて安い、雇用が不安定だ、そういうところから、勢い土地は手放さないで、そして土地にしがみついて足りない所得を埋め合わせよう、こういうふうにいくのが兼業農家の皆さんの自然のお気持ちだろう、そんなふうに思うわけでありますが、これにはやはり下請企業、中小企業のあり方と農業との関連をどうするのかという一つ対策が必要だ、そういうふうに思うわけであります。しかし、こういうことについてもだんだん若者が農作業をやる割合が少なくなってくる、あるいは土地と、直接農地とのかかわりが少なくなっているという現状の中で、多分に変化をしている要素も決してないわけではないというふうに思います。  しかし、いずれにしても国が今日まで中核農家に土地の集積ということで、先ほどもお話ございました農村工業の導入等によってやってきたけれども現実にはそれが成功しなかった。やはり中核農家にどんどん土地が集まるという状況にならなかったということは、やはりそういったいろいろな面での障害があるわけであります。この障害をどう除去していくのかということがそういう山村あるいは中山間地域でのこれからの中心的な政策でなければならないと思うわけであります。これについてやはりもっと抜本的な対策というか、そういうものを考えていかないとなかなか実現ができないのではないか、こういうふうに思うのでありますが、再度お聞きをしたいと思います。
  50. 海野研一

    海野政府委員 今御指摘の、農村地域で雇用が安定しないという問題、なかなかこれは農林省が胸を張って、こうやりますからよくなりますと言えないところが、ある意味では特に中山間地域の問題であろうかと思います。  ただ、一点申し上げておきますと、いわゆる工業導入促進法でつくりました農工団地への立地企業というものは、もちろん中小企業もございます。しかしながら、日本全体の工業の平均からしますと、多少上の方の企業が入ってきているというような状態がございます。そういう意味で、ああいう工業団地という形でまとまった土地を用意するということによって少しでも大きな企業を呼ぶということはできるだろうと思います。ただ、それにしましてもそれだけでは雇用先というものがどうしても足りないので、先ほど申しましたようないろいろな形で、零細なものでも何でもともかく事業を興すということもやっていかなければならないというふうに思います。  これまではいわばそういう商工業の問題につきましては、農林省ではさっき申しましたように早くから農村地域へ呼ぼうという意識はあったわけですが、なかなか政府全体と申しますか日本の国民の考え方全体として、商工業を農村へ持っていくというような意識がなかったわけでございます。ただ幸いなことに、特に近年、東京一極集中問題から多極分散、そういうふうな志向、先日衆議院を通過させていただきました地方拠点都市地域の整備法案に見られるように、地方へ雇用の場、住居の場その他をできるだけ移していこうというような空気が出てきております。そういう中で、できるだけ働く場自体を地方へ持っていきますと同時に、先ほど申しましたような道路その他の整備によって、自分の村にはなくても近場のところへ通勤できるようにというような格好でできるだけやってまいりたいというふうに考えております。
  51. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 次に、「新しい食料・農業農村政策展開の基本的視点と方向」、こういうことで資料をいただきましたので、それについて若干お聞きをしたいと思います。  この中で大変結構な分析をやっているわけであります。「地球的視野をも踏まえた食料・農業政策展開が必要」ということで、「経済力にまかせて食料輸入を行うことに伴い生ずる問題を考慮し、まず、自らの国土資源を有効活用し、国内供給力を維持強化していくことが我が国の責務。」とし、「可能な限り効率的農業展開していくことを基本としつつ、一定の国境措置と国内農業政策を講ずることにつき、国民的コンセンサスを確立」することを政策展開の基本的視点とし、さらに二番目の「政策展開の方向」の中では、食糧自給率の低さを国際比較の中でとらえ、さらに世界食料需給モデルによる予測、また世界の食糧供給の不安定要因を挙げて我が国農業の国際的位置づけを明確にしている以上、食糧自給率向上を今後の政策展開の基本に据えていくべきであるとの認識に立っているというふうに理解してよいのかどうか、これについての見解をお聞きしたいと思います。
  52. 田名部匡省

    田名部国務大臣 狭い国土に一億二千万の人口を擁する我が国としては、何といっても国民の生活は一体どうなっていくであろうか、急激にはどうこうということはなくても、この生活の豊かさはずっと維持していくであろう、あるいは食糧消費の多様化、これは継続していくと見込まれておる。あるいは食糧自給率の維持向上を図ることは、今申し上げたようなことから大変な努力が必要だということが考えられまして、平成二年に閣議で決定されました将来の生産規模等、カロリーベースでありますが大体五〇%を見込んでいるわけでありますから、これを需給フレームの基礎として考えているわけであります。  そのためには、何といっても土地利用型の農業における生産性の向上が一番悪い、これをどうするかということと、生産性が悪いものですから担い手も不足をしておるということであります。あるいは一方では、私は再三申し上げますが、経営管理能力というものにすぐれた企業的経営のできる担い手、そういうものを目指していきませんと、担い手の方々が意欲を持とうという気にならぬだろう。やはり他産業並みの所得ということもしていかなければならぬ。一方では、今委員お話しのように、中山間地はどうするか。これはまた平場で土地集約できるような状況にない。  やはりそれぞれ地域の特徴に応じたことをしていかないと、一律に何でもかんでも農業でくくったのではこれから先の農業はなかなか難しいということを考えたり、多様な経営体が全体としてしっかり生産体制づくりを進める、これも先ほど農村工業導入法というお話等ありましたが、いろいろ手を尽くして、どうしても農外収入に頼らざるを得ない人たちにはどういうことをしていくか。今構造改善局長からお答えしたのもそういう一つであろうと思うし、あるいは卑近な例で、漬物工場を共同でやっていくとか、あるいはジャムをつくるとか、あるいは野菜のドレッシングをつくるとか、特徴のあるそういうものでみずからが働く場所をつくっていく、そういうことが全体として大事なことだ、こう私は思っております。  いずれにしても、基本的な食糧供給力を確保するのだという観点に立って検討をいたしておるところであります。     〔金子(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 いろいろ大臣の御意見もお聞きいたしましたが、最終的に私が申し上げたいことは、この中で、デカップリング政策については我が国には全くなじまないものだという批判のみに終始した書き方がなされています。しかし、デカップリング的な政策をやらなければ、山村や中山間地帯で若者意欲を持って定着していくということは恐らく不可能であろう。そういう地域では、若い者が希望する勤め場所というのは、農協なり役場なり、あるいは郵便局、あと若干建設業というような程度しか現実にはないわけであります。これから国が責任を持って若者が定着し意欲的に飛び込んでくるような施策在具体的にやられるなら別ですが、そういう状況下にありますので、その辺を十分お考えいただいて何らかの形でデカップリング的な政策をやらなければ、環境保全も景観維持も自然保護ということもできなくなってしまう。  こういうことでありますので、改めてこの辺に十分な意を用いて今後の検討をやっていただきたいことを特に要望申し上げて、私の質問を終わります。
  54. 高村正彦

  55. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 時間の制限もございますので、質問予定しておりましたうちで、例えば本農業改良資金制度の果たしてきた役割やこれまでの運用の実情、あるいは資金ごとの問題点などについては先ほど金子委員からもお尋ねがありましたので、この辺は少しはしょっておきたいと思います。  それから、今度の改正の一番の眼目とされておりますのは、多様な担い手をどうやってふやし、確保していくかということでありますけれども、この担い手が少なくなっているということについてのやりとりも今志賀委員の方からございましたのでこれも少しくはしょりたいのですが、しかし、これはやはり触れておかないわけにはいかないと思っております。  全国的な担い手不足については、先ほど来数字でも出ているわけですが、例えば私の出身であります北海道、御案内のように我が国で最大の農業基地、食糧基地、こういうことになっているわけですけれども、これでも御多分に漏れず農家戸数も減っております。昭和三十五年には農家戸数は二十三万三千六百三十四戸あったのですけれども、これが昭和五十年には十三万四千二百六十三戸に減る。そして平成二年には九万五千四百三十七戸というので、昭和三十五年に比べますと実に四一%、大変な激減であります。一方、農家子弟の新規の就農者ですけれども、さっき全国で千八百人しかいないというお話がありましたが、これもまた北海道も大変なものでありまして、昭和四十年当時には八千四百人だったのが、平成二年ではたったの四百人しかいないのですね。これは大変なものです。そして、農業後継者の充足率からいきますと、北海道では、昭和五十年当時には六二%であったのが、平成二年には実に一六%、これは大変低い数字になってしまっております。  ただ、この農家の人口あるいは農業生産者の数、それから後継者あるいは新規参入、学卒の新規就農者あるいは新規就農者を含めて、この労働生産人口というのがどのくらい必要かということは、一概には言えないだろうと思うのですね。つまり、我が日本国民の生命を維持するためにどれだけの食糧が必要なのか、農産物はどのくらい必要なのか、随分外国からの輸入物が多くなっているわけですけれども、この輸入に頼るものとそれから自給をするものと、この割合をどういうようにしていくのか。そしてどういうようにその目標設定していくのか。だとすると、自給の分について、その目標を達成するための農業労働人口というのはどの程度必要なのかというふうにはかられるのではなかろうかと思っているわけです。ところが、どうも先般発表されました農業白書、あるいはまた今般出されることになりましたいわゆる新農業政策の中でも、その辺の目標というのが果たして出ているんだろうかということになると、どうもはっきりしないのではないでしょうか。  もう申し上げるまでもなく、我が国は、先進諸国の中ではこれは異常だと言われるくらい自給率が低下をしている。カロリーベースでは、昭和三十五年当時は七九%であった自給率が現在四七%、それから穀物ベースだと三〇%、これは先進諸国と比較して考えられない。ECの諸国では、現在は八〇%から九〇%自給率を確保していて、食糧安全保障の確保にも心配がないと言われておりますけれども、日本の場合は果たしてどうなるんだろうかということが私は大変問題なのではないかと思っております。現在我が国の耕地面積、これは平成三年度、田畑合計いたしまして五百二十万四千ヘクタールということが言われています。それで、田の面積はそのうち二百八十二万へタタールですけれども、稲の作付面積ということになると二百四万九千ヘクタールにとどまっている、こういうことになるわけですね。こういう点で、食糧安保の点からいっても大変心配なのではないか、危機的な状況にあるととらえざるを得ないのではないかと思うわけです。  我が党は、かねて新農業プラン、これを出しまして、こういうような自給率の状況ではいかぬ、自給率を六〇%まで高めなければならない、そのかわり、これはもう短期間にできることではないので二十年がかりで、しかし、取り組むべきことだ、こういう提案をいたしました。これに対しては、与党からも、絵にかいたもちじゃないかというような御批判もあったようですけれども、しかし、やらなければならないことはやはりやらなければならないし、またできることだと思うのです。  最近は随分田畑が荒れているわけですけれども、これを利用する、そしてまた、それを利用する人があれば、それに対する国の本当のやる気のある助成があって、金もつぎ込まれればできない相談ではないわけですけれども、今のままだと、だんだんだんだん自給率は恐らくじり貧になってしまうのではなかろうか。そして言われるわけですけれども、今の耕地面積が仮に五百万ヘクタールを切るということになれば、特に土地利用型の農業農地が減るということになれば、一般に言われている国民一人当たりの摂取熱量は一日二千キロカロリー必要だと言われているのですけれども、これの確保すらおぼつかないのではなかろうかと言われている。足りなくなった分は、それでは輸入のものに頼ればいいのかというと、そんなことはなかろうと私は思うのですね。  そこで、例えば今のこの規模を少なくとも、現在カロリーの自給率で四七ですけれども、せめて五〇%ぐらいを堅持するということをミニマムの目標にするということについてのお考え、そしてまた、仮にこの辺の目標設定に誤りがないとすれば、それとの関連で農業人口は今のままでいいのか、そしてまた新規就農者を含む新たな担い手というのは、今足りない足りないと指摘があるわけだけれども、先ほどのお尋ねの答弁で、仮にこの改正が行われてもどれだけの効果があるか、どれだけの新たな担い手が得られるかということについて予測するのは難しいというお話があったわけですけれども、しかし、少なくともこのぐらいの担い手は欲しいんだ、学卒者、それから新規参入者を含めて、この五〇%という自給率を維持していくためには、どれくらいの新たな担い手が必要なんだという少なくとも希望的な数字ぐらいは挙げられるのではないかと思うのですけれども、今申し上げましたような目標と、この要員の数ですね、これとの関連などについてお示しをいただきたいと思います。
  56. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 全体の政策検討するに当たってのフレームにつきまして、先ほど大臣の方からも申し上げましたように、私ども平成二年の「農産物需要生産の長期見通し」というのを一つのフレームとして置いているわけでありまして、そこでは先生御案内のとおり、自給率を五〇%にするということを前提にそれぞれの作物の作付面積動向、見通し、例えば水稲について言えば、平成十二年で大体百八十七から百九十八万ヘクタールぐらい必要であろうというようなこともお示ししているわけであります。  おっしゃるように、そういう面積農業を営む上で一体どれだけの担い手が必要なのか、それは計算で出したらどうかというお話でございますが、これは人の問題は、釈迦に説法でございますけれども、国家が、国が計算してこれだけといって集まるわけではありません。もちろんそこで働く人たちのそれぞれの仕事に対する考え方、農業に対する考え方というものがあって、農業頑張ろうという人もいれば、いや農業よりもっとほかの方をやりたいという人もいるわけでありまして、国が全国規模で何万人の人間がぜひ必要というようなことを示すことが必ずしも、そういう具体的な個々の人の、あるいは農家の方々のこれからの生き方と合わせるというのは難しい問題だというふうに私は思うわけであります。  我々が考えていますのは、むしろ現在の方がこれからどういう規模で経営をやっていけば農業として成り立っていくのか、あるいは農業は従にして他産業に従事するならどういう人たちが来るのだろうかということを現状からある程度分析して見通しを立てて、その中で、しからばそういう人たちでどのくらいの規模の経営をやってもらえれば、今言いましたような、例えば水稲でいえば百八十七から百九十八万くらいの面積経営できるのであろうかというような感じのとらえ方をしておるわけで、まず面積なり生産量があって、それを人手としては何人要るというような形の手法はなかなかとれないわけでございます。  またこれは検討中でございますが、議論の素材として先般お示ししたこれからの農業経営像の展望の中でも、いわゆる現在の中核的農家等が将来どうなっていくんだろうかというものの試算もお示ししているわけでありますが、これらもそういう意味ではある程度、今ある農家現状から見て将来を考えた場合こんな形になるのかな、若干その経営規模等を、例えば土地利用型で十ないし二十ヘクタールくらいを経営する経営体というふうにとらえてみた場合にはこのくらいになるかなというものをお示ししているわけですが、そういう幾つかの条件のもとで将来の経営体のあり方というものは我々確かに検討しておるわけであります。これをいわばそれだけの人間をぜひ確保するというような形でお示しするというのはなかなか難しいという状況でございます。また、先ほどお触れになりましたが、例えば新規就農者は確かに千八百人、非常に減ってきているということであります。しかし、ほかにも自家農業に従事していて他産業に従事している新規学卒者というのは二万三千人ほどおるわけです。この方々というのは、確かに農業を主とした新規就農者ではないけれども、しかし、自分のうちの農業もやりながら他産業に従事している。これはやはりその地域農業の発展の今後の動向によっては農業の方に移ってくることもあるわけであります。今、先生御案内のように途中から他産業へ移る農家の方もいるし、逆に他産業から農業に戻る方もいるわけであります。これは、いわばこれからの農業の発展の仕方によって人というのは状況が変わってくるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  57. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 足腰の強い農業経営体をつくる、これが一つ昭和三十六年にできた農業基本法の眼目であったと思うのですけれども現実にはそうなっていないわけですね。そこで、今度はまた新たな新農政というものもお考えになってきているんだろうと思う。そしてまた、この新農政の中でも強調されているし、それから今度の平成三年度の農業白書の中でも一番大きな問題点になっているのは、やはりこの農業の担い手不足であるわけです。  その対策の一環として、全部じゃないけれども農業改良資金制度改正、これも今考えられていることになるわけで、何といっても農業の担い手がそうやって相対的に考えると絶対に少ないんだということになるのだろうと思うのです。現在の規模からいっても、それからまた、今お話がありましたような自給率というものを少なくともカロリーベースで五〇%ということを目標にした場合でも、足りないからこそこういうように問題になってくるのだろうと思うのです。  しかし、それじゃそれの要因、新たな担い手がどれほどいればいいのかということについては今お示しいただけない。せめてこういう農業政策をつくるつくり手、メーカーである農林水産省としてはこのぐらいの人数は欲しいんだという希望的な数字だけはお示しいただいてもいいのじゃないかと私は思うのだけれども、これはお示しいただいてない。この間参議院の農水委員会での議事録も拝見しましたけれども、やはりこの問題が質問で出ているのですよ。だけれども、これについては答えがないのです。これはやはりおかしいのじゃないかと思うのですよ。ここのところをひとつ考えていかないと、これから先は進まない。非常に楽観的な見通しだけの話になってしまうんじゃないだろうか、そしてこれまでのようにじり貧になってしまうんじゃないか、このことを私は非常に心配いたします。きょうお答えいただけないとしても、このことはひとつお互いに宿題にして、ともに課題にしていこうじゃないですか、材料は幾つもあるわけですから。このことをひとつ申し上げておきたい、こういうように思います。  それから、担い手たらんとする人ですけれども、さっき言ったように、本来ならば親が農業をやっている子供たちがそれに意欲を持ってやることに喜びを覚えて、自分もおやじ、おふくろの跡を継いでやろうということになってくるのが一番望ましい姿だろうと思います。私も時々農村地帯を歩いてみますと、随分子供たちが減りました。小さい子供が本当に減った。だから農村地帯によっては小学校、立派な校舎もできたのに、しかしそれがもう通う生徒がいなくなって遊んでいるような状況もある。しようがないから部落の公民館に使うとかそういうようなこともあって実にもったいないような思いをすることもありますが、それでも小さな子供たちが皆無ではありません。その小さな子供たちが親の手伝いを結構しているのですよ。畑へ入って泥まみれになりながら、遊びと同じように考えておるかもしれないけれども、いろいろ作業を楽しそうにやっている。特に収穫期になると親と一緒にとっているなんというのはすばらしい喜びだろうと思うのですね。だから、農業そのものがいろいろ言われるけれども意欲のわかないような仕事であるとは私は思わないし、まして何といっても周りの自然条件がいいわけですし。ところが、そういう子供たちが大きくなるとそこを離れていく。それは何かということになるわけですね。  そこで、これは今度の農業白書の中でも示されているんですけれども後継者等に関する意向調査を農林水産省はおやりになっていますね。この調査の結果ですけれども農業後継者確保のための課題として一番大きい要素、これは規模拡大、高付加価値農業推進など農業所得の増大、確保が最も重要であるとする者が五二%、それから配偶者問題の解決が二〇%、労働条件の改善が一五%、生活環境の整備が一五%、こういうようになっているわけですね。  先ほど大臣から生活環境の整備ということの重要性お話があった、確かにそうだと思うのですね。住みよくしなければいけません。住環境などが整備されないとなかなか配偶者も来ないということがありましょう。しかし一番多くを占めている、五二%を占めているのは、端的に言えばやはり所得の問題なんですよ。先ほど大臣農業収入は決して悪くない、ただ、専業農家の場合にはなかなかというお話がありましたけれども、北海道などは専業農家が多い。そして、現に専業農家が多い北海道でも農家戸数が減り、後継者が居つかない、こういう状況にあるわけですね。  一方、今度の農業改良資金助成法改正では、新規参入者のことも十分認識している。それからまた、今度の白書でも新農政の中でも、新たな担い手として新規の参入者に対する対策というものを非常に考慮されているように見えます。これについては、これまた一九八八年の農水省農業への新規参入に関する動向調査によると、これは不安要因の調査なんですが、新規参入者の就農前の不安として、第一に農地の取得ができるかという農地取得の問題、二番目が技術の不足の問題、三番目が資金の不足、四番目が生活不安、こういうものがある。それから就農後の不安として、技術、経験の不足、二番目が現金収入の不足、三番目が圃場の問題、四番目が労力の不足などなどが挙げられているということなんですね。  これなどをあわせ考えてみると、この担い手対策の方向というものも出てくるのではなかろうか。もちろん、先ほど大臣お話しのようにさまざまな要素がある、そのことを意識されて対策を立てられようとしている、そのことはよくわかるわけですけれども、果たしてこういうような不安あるいは要望にこたえるものになっているのかどうか。そこのところを十分に詰めて現実に即応した対策を立てていかないと、だんだんじり貧になってしまうのではないか、こういうように思いますので、この点を指摘しておきたいと思いますが、これについて大臣、御感想いかがですか。
  58. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も全体を見ているわけではありませんが、北海道は規模も大きい、専業農家も多い、あるいは四国等に参りますとそうはいかない、地域によって千差万別であります。私の地元を見回すと、後継者がいないというよりももうそこの両親でやれる程度になっちゃったんですね。かつてはどうしても手作業が多かったものですから人手というものは必要であった。機械がどんどん進んで、子供たちがそんなに努めなくてもいいよということで、農業もやりますが他産業に就職してやっておるという実態になってきておると思うのです。それと、今おっしゃったように何といっても子供が生まれない。農家といえどももう平均一・五一ぐらいという状況ですから、人手不足の問題というのは全体的に考えていかなければいかぬだろう、こう思うのです。  その中でも、直接の後継者、担い手というのはいないわけではないのです。親がやめたら今度は自分がという体制にあることもまた事実なんですね。それから、私の地方でもそうでもないところもありまして、ですから、その地域地域によってどういうふうに手を打っていくか。あるいは規模を拡大することによって、さっきもお話がありましたが、どれだけの農家の担い手が必要か。全体の生産が、米とか麦は少し減っておりますが、野菜とか果物、畜産というのは逆に大幅に伸びている。全体ではやはり、規模が大きくなった分そういう戸数が減ったとか人口が減ったとかということは言える。そのことによって農業全体が落ち込んでどうにもならぬという状態でないとすれば、生産性の向上の方向に進んでいると見れば、私は結構な状況だ、これがもっと進むことによって、生産と人口、農業人口のそれは変わってくると思うのですね。いずれにしても、今出生率が低下しておって、これで見通して二十一世紀以降すっと見ると、十ヘクタールとか二十ヘクタール規模にしないと、全体の農業生産というものは一億二千万を養えるような状況になっていかないということだとすれば、そこへ集約しなければいかぬ。集約したものとそうでないものが若干何かで差がありませんと、専業農家をやろうという意欲が出てこないと同じで、そういうことをどう見ていくかということ等もあると思います。  いずれにしても、そういうことで私どもは、他産業の従事者並みのことができないとやはりなかなか魅力のある状態にはならぬだろう、こう見ておりまして、また新規参入の確保についても、資金の調達でありますとか技術の習得、そういう面で解決すべき点が非常に多い。そこまでやっても、やはり最後は経営する感覚といいますかそういうもので、そこで足りなければ何かをまた事業としてみんなで、もうひとりでやる時代ではなくて、やはりみんなの力でやっていこうという時代ですから、そういう産業を新たに自分たちで興しながら、農業とそれとやっていくという、いろいろなことを私たちは考えていかなければならぬというふうに考えております。  いずれにしても、その上で集落排水でありますとかいろいろなことをやりながら、道路も整備して村からそこへ働きに行ける、いろいろな状況を整備しながら、やはり嫁対策もしっかりとしたものにしていかなければならぬということで、いろいろと総合的に推進して、魅力ある農業の振興、住みよい農村づくりを進めてまいりたいというふうに考えております。
  59. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 農業の家族だけに産めよふやせよというわけにもいかないわけでありまして、しかし、育っている子供たち、これが跡を継いでやってくれるというのが、なじんでいるわけですし、見ているし、本当は一番助かるのですよね。全く新たに入ってくる新規参入者は、意欲はあるかもしれないけれども技術の習得だとかその土地になじむのでも大変時間がかかる、手間もかかるわけで、それなりの対応はあるわけですけれども、何とか後継者意欲を持ってもらうというような方策に力を入れる必要が本当にあるのではなかろうかと思います。  それともう一つは、大臣おっしゃるような生産性の高い農業、足腰の強い農業をつくっていくことになると、非常に高齢化しているわけですけれども、やはり体だけではなしに頭を使う農業がこれから必要になってくるわけですね。技術もそうですし、知識もそうですし、いろいろなメカも使わなければいけない。ますます若い人が欲しいわけですよ、そういう意味では。ところが、そうでないところに問題がある。  そこで、多様な担い手として、これからは共同化の問題が非常に重要になってくると思うのですね。それともう一つ、規模の点からいくと、北海道の場合には十ヘクタールから二十ヘクタールなんというのは別に珍しくもない話でありまして、しかし、そうしておりながらなかなかに収入が上がらないというところに実は問題があるわけです。そこで、高収入を上げるためにも協業化する、あるいは生産者同士で法人をつくる、この方式というのはこれからもだんだん重要になってくるだろうと私は思うのです。それだけに、今度のこの改正貸し付け対象を広げたというのですけれども、例えば青年農業者育成確保資金、これは千二百万まで上げたわけですね。この貸付対象を個人のみで生産法人にしていないというのは、これはどういうわけですか。いっそのことやったらどうですか、生産法人まで。
  60. 上野博史

    上野政府委員 おっしゃられるとおり、これから多様な担い手を育成するということを考えます場合に、法人の構成員になります若い方の確保、そういうものにどういう配慮をしていくかということは、これは非常に大事な問題になってくるんじゃないか、私もそういうふうに思います。今回の法律改正も、その辺を考慮に入れてないわけではございませんで、法文上は貸し付け対象者を「農業を担うべき者」ということで広く書いておるわけでございますけれども、具体的な青年農業者育成確保資金というのは、現在のところ自然人を対象にしておるということでございます。  その辺の理由につきましては、実は従来の後継者対策というのが、どうしてもやはり個別農家後継者確保していくという考え方でやってまいっておりまして、法人の構成員である若い農業従事者をどう確保するかということにつきましては、またそれはそれでいろいろ考えていかなければならない問題があるのではないか。現実のところ、今差し迫ってそういう事態がたくさん起こっているということでは実はないわけでございまして、これから具体的にいろいろ今検討いたしております新しい農政の方向づけみたいなものができてまいりました後に、その辺の具体的な問題を考えてまいる、その辺の方向づけに合わせて考えてまいるというふうなつもりで今いるところでございます。
  61. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 私が法人に貸し付けよと言うのは、何も企業参入をせよということではないのですよ。そのつくる法人の主体、つまり社員ですね、あるいは株式会社の場合だと株主ということになるかもしれませんが、それがそれぞれの生産者、それが個人で今までやっていたものが集まって資金を出し合ってやる。だから施設にしても土地にしても、これは法人なんですから、民法上権利義務の主体なんですから、土地を法人で持つことだっていいわけですし、法人で持つことによって規模も拡大することができる、経済効率もよくすることができる、それで、それを担保にすればいいわけですから、幾らでもそういうような方法というのはある。ただ、法人の性格のところは条件づける必要があると私は思っておりますが、これはぜひそういう方向を考えていただきたいと思うのですね。  それから、今度担保制度が大分変わって、今まで人的担保だけだったのに、今度は物的担保も加わった、こういうことですが、これは一つには物的担保というんだから、不動産だけではなくて、家、土地だけではなくて有体動産ももちろん入るわけですね。これは間違いないですね、
  62. 上野博史

    上野政府委員 状況に応じまして、そういうこともあり得るということでございます。
  63. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 そうすると、この担保の設定の仕方、これもいろいろ問題になってきます。不動産の場合だと抵当権の設定などでいいわけですけれども、有体動産の場合だと担保のとり方がいろいろ出てくると思います、譲渡担保ですとか。それからまた資産的な価値がある動産でなければならない。この評価もなかなかまた難しいのですね。この評価によって貸付金額というものもまた変わってくるのではなかろうかと思われるのですね。  それと、物的担保と人的担保の組み合わせですけれども、これは本来でしたら銀行から私ども金を借りる場合にも、どっちかというと物的担保ですよ、第一次に言ってくるのは。それになおかつ連帯保証をつける、こうなるわけだけれども、物的担保だけで十分の場合は人的保証なんて要らないんです、本当は。だけれども、今の農地状況からいうと、都市近郊の農地だったらこれは十分価値があるかもしれないけれども、私どもの北海道なんかそうはいかないんだよね。しかしまた、そういうところにこそ本当は農業専用地としてやってもらわなければならないわけですよね。こういうところは、物的な担保を評価してその担保価値が足りない場合に、その足りない分について人的な保証をつける、こういうような措置というものも考えられていいのではないか。つまり一千万借りるとすれば、そのうち物的担保については五百万の価値がある、残りの五百万分についてだけ保証人になってもらう。保証の限度額を決めるわけですよ。この方が保証人になる方も全部よりは気分的に楽だと私は思うのですよ。そんなこともいろいろ考える必要があるんじゃないかと思いますけれども、新たに物的担保を導入することによってこの辺の関係はどうなりますか。
  64. 上野博史

    上野政府委員 今回物的担保も担保の方法としてとれるようにするということにいたします。その背景の考え方としましては、この改良資金貸付金額も今お話がございましたように千二百万が上限になるというかなり大きな金額になるわけでございまして、従来の人的担保だけで手当てをするということが実態的に難しくなってきているという状況対応したものでございます。したがいまして、先ほどお答えしましたように、物的担保として譲渡担保ということも考えているわけでございまして、機械、施設等を導入した場合にそういうものを譲渡担保の形で担保に提供してもらうということで、必要な資金についての担保を十分とれるということになるのではないかというふうに思うわけでございます。仮にそれで足らないというような事態が起こります場合には、今委員からお話がございましたように、不足分について人的担保で手当てをするということも出てまいるだろうというふうに思います。  物的担保を今回採用するということになりますと、今お話ございましたようないろいろな点につきまして研究をしなければならないところがあるのは事実でございまして、その辺については今関係の団体で研究をしていただいておりますので、その結果等も踏まえながら具体的な指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  65. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 いずれにしても、これは要するに新規参入者を含めて担い手が担いやすくしようということのための制度であるわけですから、余りがんじがらめにするようなことではなくて、そしてまたこれは無利子資金なわけですから、何もこれでもうけようとするわけじゃないですね。しかし、それが返ってくる、それが財源になってまた新たな貸し付けをしよう、還流をさせようというわけですから戻ってくればいいわけですけれども、その辺を考慮しながら物的担保を入れたメリットというものを十分に生かしていただく、つまりメリットというのは、利用者にとってのメリットと感じられるような実施策を講じていただかなければならないだろう、こういうふうに思いますので、その点特に強く要望しておきます。  それから、この資金が土地購入費は対象外にしていますね。これはほかの制度資金を使えというのだけれども、ほかの制度資金だと利子もあるのですね。特に新規参入者の場合にはなかなか担保になるようなものを持たないということもあるわけで、むしろ土地購入のためにも。これを利用させるということになれば、買った土地そのものがまた担保になるということになるわけですから、そういう配慮ができないのか。  例えば農地法の第一条では、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、」こうなっているわけですね。この農地法の一条の精神からいっても、もちろん利用権の利用ということで借地の関係というのはこれからも広く広がっていくだろうし、これは一つの望ましい方向だとは思うけれども、さっき御紹介したように新規の参入者の不安要素の中には、農地の取得ができるかというのが第一にあるのですね。こんなことを考えますと、今度のこの貸付資金を土地購入のための貸し付けから外すというのは何か殊さらな感じがするように思えてならないんだけれども、これはどうですか、考慮の余地はないんですか。
  66. 上野博史

    上野政府委員 無利子資金であるがゆえにということなのかもしれませんが、土地の取得資金をこれに加えてくれという御意見、いろいろあるところでございますけれども、私どもとしますと、新規就農者が借りる資金の総体の金額みたいなものが余り大きくなるということはどうだろうか。要するに、やっと一歩踏み出すわけでございまして、その最初の段階で非常に大きな負債を負うということがその方の農業経営に過分な負担をもたらすということはやはり避けなければならないだろうという配慮も要るんだろうと思うのです。  それからまたもう一つ、土地というのは買った方の資産、要するに償却資産でございませんから財産を構成するわけでございまして、そういう資産の取得に無利子資金を使うというところまで考慮するのかなとか、あるいは土地取得資金ということになりますと、先ほど言いましたように金額的にも大きいということもございまして非常に長年月の償還ということになるわけでございます。制度資金などはそういうことになっているわけでございます。この無利子資金運用の仕方というのが回転資金ということになっているわけでございますから、できるだけ多くの方々に御利用をいただくというような点からも、やはり余り長い融資期間にわたるということもちょっといかがであるかというような考え方をしているわけでございまして、そういうことのゆえに、土地の取得資金についてはこの対象に加えていないという事情でございます。
  67. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 この新規の参入者の場合などには、確かに今度の場合も一つ経営主体になることをお考えの上でのことなんだけれども、場合によったら研修期間も長くなるかもしれないような場合に、先ほど申し上げたような生産法人の中に一時経営主体としてではなくて入って、そしてそこで一定の労賃をもらいながら働いて、技術などを習得してから経営主体になるというようなことだってこれから考えられてくるんじゃないかと私は思うのです。だから、それだけに法人への貸し付けということもお考えいただきたいわけだし、それからまた土地取得の場合の資金運用ということもやはりこれから考えていっていただく必要があるのではないだろうか。殊に、新規参入者の場合には、そこへ入っていったから農地を取得してそれで財産形成しようなんて考える人は余りなかろうと思うのですね。むしろ担い手が少なくなった地域、そういうところで働き手がいなくなったところだから来てくれよということの方が多いだろうと思うので、そういうところというのは農地の地価にしても決してそう高くはなかろうと思うのですね。だけれども入る人にとってみれば、それはそこそこの規模でやらなければならないということになれば、土地取得のためにはまとまったお金も必要だということになるんだろうと思うのです。  そういう点で、やはりこれからもいろいろと、せっかくつくる仏様なんですから、魂を入れて活用するためには考えなければならないことがあるんじゃないだろうかと思うので、これは実施の段階でまた御検討いただきたいと思ったりしております。  それから、時間がなくなりましたので、ちょっと本法に関しての予定した質問はこれではしょらせていただきたいと思いますけれども、先ほど志賀委員のお尋ねで減反緩和の問題でのお答えがありました。あらかじめお知らせはしてなかったのですけれども、関連としてお答えいただければお答えいただきたいと思います。  十三万ヘクタール緩和をしたわけですね。いよいよ田植えが緩和分についても行われております。私の地元の北海道も、ことしは大分気候が悪くて遅かったのですけれども、今水張りをしていよいよ植えつけが始まろうとしておりますが、全国的にもこの減反緩和が消化されたかどうか。これは掌握されておられると思うんだけれども目標の十三万、実際には消化されたのは何万ヘクタールですか。
  68. 上野博史

    上野政府委員 我々、状況把握は先ほどもお答え申し上げましたとおり努めてやってまいっているわけでございますが、数字をきちっととるというような形での報告になっていない、大勢の状況がどうであるかというやや抽象的な全体としての基調みたいな話をとっているというようなことで、こういう場でお答えを申し上げるだけのそういう正確な数字を持ち合わせていないということでございます。
  69. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 ちょっとそれはおかしいと思うんだよね。私のところの北海道は一万八千三百ヘクタールだったはずなんですよ。これ、苦労があったのです。物すごく苦労があったのだけれども、北海道は全部消化したのです。中には、消化し切れないという町もあり、そこは例の地域間調整で、それでは私の方はもっとできるからやりましょうととったところもある。  これが一つのネックになったのは、御案内のようにこれが決まったのは去年の十二月でしょう。遅過ぎるんだよ、大体。そして、これが単年度だということでしょう。来年もやりますよというんだったら、もっとやれる人いたんだよ。だけれども遅い。それでも北海道は頑張ったのですよ。そして、復田作業もみんな苦労しながらやったのですよ。だけれども心配されているのですよ。復田したけれども、水張りから何からやったけれども、これに金がかかった。補助も出るけれども、金がかかった。そして、今まで転作でやっていたものを田んぼに戻したわけだから、ことしの天候ぐあいもあるかもしれないけれども、果たして今までつくっていた田んぼでとれる稲と今度復田してつくる稲とで品質的に差が出てこないか、悪いものになりはせぬかと非常にみんな心配しているのですよ。そういう苦労しながら、しかし消化してやっているのですよ。  だから、もう既に田植えが始まっているのだから、お役所がわからないわけはないと思うんだ。そして、それを把握した上で、そして今の在庫も少ないわけでしょう、これからの見通しを立てていかなければならないわけでしょう。それをこれから調べるなんというのはおかしな話だと思うのですが、どうなんですか、率直に言ってくださいよ、把握しているなら。無理があるんだったら、無理があったことを言ってくださいよ、どこが困難だったのか。
  70. 上野博史

    上野政府委員 各地で稲作、稲の植えつけの時期が来ているわけでございまして、先ほど来言いましたように北海道については、委員お話しございましたところでもございますけれども、大体目標面積をカバーをするような状況にあるということでございます。ただ、全国的に見ますと、植えつけの時期が進んだといってもまだそう大幅にいっているというわけではございません。これは市町村間が中心ではございますけれども地域間の調整もやっておりますし、それからあと麦の後作への水稲作導入ということについて現在さらに努力を続けている。ただ、達観して言えば、予定どおりの十三万ヘクタールを達成するのがやや困難かというような状況にございます。
  71. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 これは、私どもの聞いているところでは十万までは全然いってない。ひょっとすると七、八万じゃないかという話も聞いているのですよね。中には北海道のように本当にそうやって努力しているところもあるのですよ。そういう実情をやはりわかってもらわないと困る。だから早く把握しないと、その後の後期対策だって影響してくるわけですから、ことしの米価にだって影響しますよ。  これは、時間がなくなりましたからもうこの程度にしますけれども、早急に把握をしたところを私どもにお示しください、またお伺いしますから。それによってまた協議しましょうよ。ということで、終わります。
  72. 高村正彦

    高村委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  73. 高村正彦

    高村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹内猛君。
  74. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、今審議をしている農業改良資金助成法の一部を改正する法律案に関連をして若干の質問をいたします。  本法案に関しては、もう既に参議院において質疑が終了し、附帯決議などもつけて可決をしている経過があり、また、我が党は参議院に青年農業者就農援助法、いわゆる法律を提案して審議を願っているところであります。そういう関係から、重複を避けて法律に対して質問をいたしますが、これに関連をして、私は最近農業者大学に行っていろいろ話をして、後継者の問題等々について生の声を聞いてきたし、それから農村地域でやはり意欲のある青年の話も聞いてきておりますので、これらも含めて現地の声を反映していきたい、こういうふうに考えています。  問題は、なぜ農村後継者が残らないで年々減っていくか。先ほど佐々木委員からもかなり詳細な質問がありました。現在農業経営していく上には、何といっても土地、それから水、これに労働力、人ですね、この三つがなければ農業は成り立たない。土地と水はありますね。働く者がいなかったら農業生産はできない。その働く人たちが減っていくわけですから、農業がだんだん後退をし、特に、一万四千と言われる集落の中で二千くらいが、それ自体がなくなってしまう。最近は、若者がいなくなったということだけではなしに、一つの集落がなくなってしまう、農村がなくなってしまう、そういう状態になってきているということが大変問題なわけでありますから、これを危機と言わないで何と言うことになるかということで、やはりこれは農業の危機である、こういうふうにとらえて、先般、大臣所信に関連をして私は二、三の質問をいたしました。  農地改革が行われ、そして自作農が創設された。農地法、農協法、土地改良法が相次いで制定されて農業の発展に努めてまいりましたが、三十六年に社会党が出席できない状態のもとで現状農業基本法が強行採決をされた。それから三十年たって、日本の現状はその当時ねらった状況とは違った現状になっている。したがって、今人間の体に例えて言えば、重症であると言わなければならない。こういう重症の農業というものに対して今正確な診断をして、そしてそれに対する処方せんを出し、その処方せんに基づいて投薬をするなり切開手術をするなり、健康なものにしなければならない。これが今日課せられた日本の農業の実態ではないかと思うのですね。  考えてみると、土地がだんだんだんだん減少し、耕作放棄が行われている。三十万ヘクタールとも言われている。外国からは穀物あるいは主要食物がどんどん入ってくる。そして、若い者がいなくなって跡取りがいなくなる。この状態に対して一体農水省がどういうような考え方を持っているのかということについて、この前一、二、三と求めたわけですけれども、もう一度簡単に、これは大臣じゃなくて官房長がいいな、官房長から一、二、三、四というふうにわかりやすくひとつ答えてもらいたい。
  75. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 先般もお尋ねがございましたけれども農業基本法から三十年たって、その間におきまして我が国農業をめぐる情勢は非常に大きく変化しているわけでございます。  御案内にように、日本の経済がちょうど農業基本法ができました昭和三十六年以降急速に発展したということが背景にありまして、まず一つは、農業に対します他産業が非常に発達したということがあります。これは産業の規模、生産性等において他の産業の方がはるかに予想を超えて進んだということがございます。また、その関係国民の食生活が豊かになりまして、食糧に対する国民需要が非常に多様化してまいりました。これに対して、国内で対応できる部分ももちろんありますが、輸入に頼る、あるいは輸入した農産物を使って生産するというような分野が広がったということがございます。それから、産業の発展に伴って土地に対する需要労働力に対する需要が非常に強くなりました。この結果、土地の価格あるいは労賃というのがやはり当時に比べ大きく上がってきたというような変化がございます。  その中で、農業生産の規模はなかなか拡大しない。個別の作物の、例えば単収でありますとか労働生産性というのはかなり上がってきているわけでありますが、何といっても土地利用型農業中心に規模の拡大が進まないというようなことがありまして、現在におきましては、農業に対して新たに農業をやろう、ないしは親の跡を継ごうというような人が減ってきている。また、実際に農業をやっている人の中でも、農業について先行きが不安であるということで、他産業に従事することをむしろ重視するような傾向がある、こういうことだと思います。
  76. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今お答えがありましたけれども、やはり急所になかなか触れにくい面がある。  そこで、昨年の近藤農林水産大臣が本委員会でどういうことを言ったかというと、農業基本法を見直しをしなければならないということで、六月に懇談会が開かれた。十二名の委員によって懇談会が十三回持たれた。その十二名のメンバーを見ると、農業会議所、あるいは全農、農協ですね、それが二人入っている。あとは財界、評論家、学者であって、その十二名の中で本当に後継者の、跡取りの二十代、三十代の声、あるいは農村に実際働いている女性の声、女性の代表もいますけれども、働いている、汗を流している人の声が聞こえない。だからこれも、答申は出したけれども、本当の中身については物足りないものがどうしてもある。この法案自体は別に問題はないと思いますけれども、全体としての扱いに問題がある。そういうことで、せっかくいろいろ出されたものでありますけれども、この沢辺座長ですか、深刻な状態の中で農業農村を活性化していくためには、十年、二十年という長期展望で物を考え、そして、目標は明確に、政策は極めて具体的にということをある新聞に発表している。そしてまたあるところでは、家族経営の問題や土地改良の問題にも触れております。  そういう点で、幾つかの点について問題を提起していますけれども、昨日私は、企画室から新しく出される食料、農業農村に対する方向というものを見せていただきました。これを見ると、一体いつの時点から入って、どこの方へ抜けて出ていくのか、入り日もわからなければ出口もわからない。こういう政策を堂々と出すということは、これは未熟じゃないか、いかがですか。
  77. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 私どもの方で新政策検討するに当たりまして、昨年どういう期間のといいますか、どれくらい先のことを見通して考えようかということは当然話題となったわけであります。確かに十年先あるいは二十年先、あるいはそんなに遠くではだめなので五年先、いろいろな御議論がございましたけれども、私どもとしては、おおむね十年前後ということで考えていくのがいいのではなかろうか。といいますのは、五年先というのはかなり今ある問題をどうするかということに拘束されるわけでございます。かといって、二十年といいますとちょっと遠過ぎて、逆に言えばいろいろ議論が拡散してしまう。それで十年ぐらい。その具体的な基礎となりますものとしては、平成二年に閣議で御決定いただきました「農産物需要生産の長期見通し」というものがベースにございますので、それを踏まえて十年前後先のことを考えて議論をお願いするということで、現在検討をしているところでございます。  したがいまして、先生のおっしゃいますような、いわばその入り口というのは、あえて言いますれば、来年から十年ぐらいまでの間を考えての入り口であり、出口というのはその十年後ぐらいというふうに一応頭の中に置いて議論をお願いしておるところでございます。
  78. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それは農業基本法というものをやめるのかやめないのか、大臣農業基本法を残すのかやめるのか、どっちですか。
  79. 田名部匡省

    田名部国務大臣 必要なものは残すであろうし、しかし、そのままではどうもこれからの農業にふさわしくないというものについてはやはり変えていかなければならない。やはり時代がもうどんどん進んでおりまして、それに対応できないというものはいっぱい出てくると思うのです。これからもさらにそういう変革期を迎えて出てくると思いますので、もうこれからは改革の時期だと私は全体でそう考えております。
  80. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農業基本法が法律である以上、あの一条と現実農業の実態と比べたら、一つ一つ違反をしているのだ、違反ですよ。外国との関係なんか、まさに十一条、十三条違反だ、これは。あらゆるときに、所得の問題もそうなんです、どうにもならない。  そこで、第八条には、長期計画というものをつくるときには、農政審議会の議を経て、閣議の了解を得てという形になっている。この長期計画というものがあって、それからそれに伴って単年度やその他の政策がなければならない。ところが、そういうものをつくっておきながら、二十一世紀の農業というような形で六十二年には出してきた。あるいは、日本型食生活をやれという言葉も出てきた。それからいろんな形で、言葉があって中身がない。だから、今度の政策の中にも、文書の中にも、まことに豊富な表現がありますよ。我々が飛びつくような、ほれるような表現がいっぱいある。ところが、中身が何もないじゃないか。形容詞ばかりが多くて中身がない。予算も、予算を盛り込むようなものもなければ、だから農村青年が言っているのは、我々の将来における展望と現在これならやっていけるという気力と励まし、これがなければ残る気がしないと言うのですよ、これは。その都度その都度、減反したかと思うと今度は減反を緩める、また今度は減反だ、これでは一体行政の責任というのはどこにあるんだ、こういうことを、霞ヶ関が信頼できないということを言うのです。これじゃいけない。官民一体、働く者も行政も一体になってやっていかなければいけない。ところがそうではないというところに、あれやこれやの文言だけが動いて実態が動かないというところにある。これも大臣、ひとつこれに対して率直も言葉を聞きたいと思うのです。
  81. 田名部匡省

    田名部国務大臣 中身がない、こうおっしゃいますが、いいという感じを受ける、こういうことでもありますが、いいものをつくりたいということで今検討をしているわけでして、全体の姿を見てまだ御指摘をいただけるんだろうと思います。  いずれにしても、どの方法がいいのかというのはやってみないとわからぬという部分があるのですね。紙に書いたようにぴしゃっといくわけではない、みんながそれに向かって努力するかどうかということが大事であって、やはり批判や足を引っ張るだけではなかなかうまくいきません。  というのは、これも私はしばしば監督の経験を申し上げますが、どの方法がいいかというのは監督も選手もわからないのですよ。時代によって教え方もやり方もどんどん変わっていくのです。ですから、その時代に一番いいと思う方法で練習をする、それをこれじゃだめだ、あれじゃだめだと選手が言っていたのでは、何をやったってうまくいかぬので、間違いかどうかわからぬけれども、ベストだと思うことで全力を挙げてチームというのはできていくわけでありますから、私は農業政策というのもそうだろうと思うのです。先輩の人たちもこれがいいと思ってやったことが、日本の経済が発展した、輸入物をどんどん買えるようになったということからまた変化もしていったし、そういうことは、この先々はわからぬけれども、よりこれがベターであろうということに向かって官民一体といいますか、両方が努力して初めて進んでいくのであって、これはいかぬと初めから言っていたのでは、なかなか政策は進んでいかないという気がするのですね。ですから、今よりも前進であるという認識でありますならば、私たちと農家の皆さんと一緒になって新しい時代に向けてまず動くということが大事なことではないのかな、こう考えております。
  82. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先々のことはやってみなければわからないでは、不安で不安で、それはやると言ったってだめですよ。工業の場合には、土地を買って投資をする、ちゃんとこれは利益があるということであちこちに投資をする。農業というのは土地と人と水というものをうまく活用して、その地域の歴史と伝統、あるいはそういう気候風土を利用して、やはりその地区における特産物を生かしながら物をつくって、消費者に新鮮で安全でいい物を供給していく、こういうことで今までやってきたわけだ。だから、それを長期の見通しというものを立てないで、その場その場でやったのではかなわないですよ、これは。それはもう行政だってなくたっていいということになってしまう。  そこで、この問題はどうしても、私どもは、農政に関する理念と哲学というものが不足しているのじゃないか、余りにも技術的にやり過ぎやしないか、理念と哲学があってそれに基づいて政策が立てられなければいけない。有名も言葉で、東畑精一博士が、農林水産省、当時は農林省というのは補助金の分配機関であるという言葉も皆さんは覚えているはずなんです。今だってやはり補助金というものがあって、それに基づいて霞ヶ関で方針をつくって、一定の指示をして、申請をして許認可によって進めていく、この制度は今だってある。ところによると、その出身の議員の名前を頭につけて、何々土地改良、何々農免道路というように、そういう形になっているところもある。やはり地域の声が、あぜ道の声が結集して、それが要求になってあらわれて、そして地域と一緒になってやるというところに、仮に失敗をしてもおれたちが要求したことだからこれはしょうがない。  ところが、今までは補助金をもらうことによって仕事をした。北海道の根釧の一町歩一頭の牛の開発にしても、あるいは岩手県の久慈にしても、大分県、熊本県の久住、飯田にしても、お互いに畜産団地をつくって一町歩ぐらいで一頭の牛を飼おうじゃないか、ところが、それも機械あるいは施設に一定の規格をはめて、これをやらなければ補助金を出さない、こういうことになるから、いよいよ仕事をすると今度は金がない。そこへ持ってきて乳価が下がる、死亡率は高まる、外国から入ってくる、借金の金は払わなければならぬ、これでは農家に希望が持てるわけないんですよ。だから、そういうものを一緒になってやらなければならぬということを、私たちは、あぜ道の声と霞が関の行政というものを一体のものとして考えていかなければならないということを強く言っているのだけれども、官房長、これについてどうだろう。
  83. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 これまでの農林省の行政について、先生おっしゃるような御批判があることは私ども承知しております。ただ、これはあえて弁解をさせていただきますと、決して霞が関が決めて押しつけるというような形のものではなくて、その時点時点ではやはり農家の方で新しいことをやりたい、どういうことがやれるのだろうかということが意識としてあるのでございます。それをまた市町村なり県なり単協が吸い上げてきて農林省の方にむしろ、こういう事業ができないだろうか、こういうことをやるのに補助金がもらえないだろうかというお話があって、我々はそれを予算化したりしているというのが大半でございます。  ただ、おっしゃるように農業というのは、一つは自然を相手にするものでありまして、工業とは違いまして計画どおりのものができないということがございます。また、一年に生産される量というのは限られてまいりますから、それが軌道に乗ったころになると世の中の環境が変わっているということもございまして、農家の方も望んだ計画が必ずしも現実に合わないということが出てきている場合も多々あるわけでございます。  我々としては、やはりそこは、工業でも農業ほど極端ではありませんけれども見込み違いというのはあるわけでございますので、農業のある程度のそういう自然を相手にした生物産業としての変動というのは踏まえた上で政策展開しなければいかぬと思っておりますし、先生御案内のように昭和三十八年から従来の農地事務局を地方農政局に変えて、いろいろな行政がなるべく地方に近いところで決定できるようにという努力もしてきているわけであります。例に挙げられたところで必ずしも十分効果を発揮していないという地域があることは承知しておりますけれども、全国で見れば、やはりそういう地域の声、農業者の賛成を得て事業を進めるという姿勢は従来から持ってきたつもりでございますし、今後ともそういう方向で努力をしてまいりたいと思っております。
  84. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 地域で話を聞くと、霞が関のことを、別に農林水産省だけじゃないですよ、これは大蔵省も含めてすべてお上、こう言う。やはりお上の言うことは従わなければならない、こういうことがあるのですね。これは昔からそういうことが言われている。大臣もそういうことを聞いたと思うのです。これは、別も言葉で言うと、上がとうとくて下が卑だ、官尊民卑という言葉に通ずるかもしれない。これはやはりいけないですね。そういうことじゃない、やはり民主主義の段階になると、地域の民主主義というものがあって、そこでこうすればこうなるよという話が出てきて、それを巧みに吸い上げていって政策化し実行していくということでお互いに責任を分け合っていく、仕事を分け合うという中で、失敗してもそれは仕方がないよということになれば、意欲も出るし元気も出るというものだ。結局補助金だけもらうということだけでは、うまくいけばいいし、悪かったらこれは何だ、こうなってしまう。現在はその方面がはるかに多いのではないかな、こういうふうに思っているのです。  そういう中で、今農業者大学で、私が聞いたところによると、これは茨城の場合に八十名が定員です。八十名の中でどこを望んでいるかというと、農学一般に二十人望んでいる。次には情報、そして施設園芸それから畜産という形になっています。学生が求めているのは、農政全般について知りたいということですね。それから情報、情報化時代、情報を手に入れたい。それから土地利用型というよりはむしろ施設利用型の方に重心がある。こういうことで、あとはその他になりますね。  そこで、展望と活力がある、苦しくてもいい、困難でもいいから元気が出るようなそういうものがないか、そうすれば我々は残ってやっていく、こういうことなんですね。その中で七割が農家後継者、三割が農外つまり新規参入者、こうなっている。だから、今度の法律の中には新規参入者の道も開いてあるから、それは結構だと思います。そういう点でこの法律に関連をしても別に異議のないところですが、先ほど佐々木委員が言ったように、担保のつくり方等々についてはまだまだ検討の余地が十分ある。  そこで問題は、やはり物をつくって所得がどうなるのか、最終的には所得ですよ。大臣の言葉で言うと、もうかる農業をしなければならないとしばしば新聞に書いてある。きょうあたりの日本農業新聞にもいいことを言っていますよ。選手が元気が出るのはもうかるかもうからぬかだということを言っている。そのとおりなんです。だから、もうけなくてもいいんだよ、もうからなくても損をしなければいいんですよ。だから、もうかる前に損をしないことだ。現在は損をしてどうにもならない。これをやるために基幹作物をどうするか、それにプラス何をするか、その次のプラスは何だ。そして二戸の四人家族で少なくとも一千万を下るような粗収入ではやっていけない、こういうことでしょう。  あるところの青年が言っていましたよ。一町三反のたばこをつくっています、一町五反の水田をやっています、私は公務員です。それで一千六百万の粗収入があります。それからいろいろな経費を引くと一千万そこそこでしょう。四人家族。これがあるところの、これはかなり大きいです、水田と畑で二町八反、しかもたばこ、米それから公務員、こうなっている。それでも一体農業はどうなるのかという心配をしているのです。ましてや、そこまでいかない人たちが心配するのは当たり前なんです。どうですか、所得政策というものを考えているのか、そこが問題です。確かにここの文章の中に所得政策があるよ。どうしたらそうなるかということが書いてないんですよ。だから、文章はあって迫力がない、こうなってしまう。どうですか。
  85. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 私ども検討の段階で、確かに農家の所得がいわゆる他産業並みといいますか、一定のものが確保されるという経営でなければ経営が成り立たないだろうということは十分中で議論しているところでございます。そのためには、一定の経営のあり方といいますか経営像を示すということも必要だろうというふうに考えております。  具体的に言えば、いわば労働時間が他産業従事者並みで、かつ、これは年によって農産物の場合所得の変動がございますから、生涯所得で考えて大体他産業従業者並みというようなことが描ければいいなというようなことも中で議論をしているところでございます。  ただ、今委員おっしゃられました所得政策というのは、ちょっと私どもとしてはそのことと別といいますか、概念がやや違うのではないか。つまり、一般に所得政策と言われているのは、国が政策として一定の、例えば農産物の価格の支持であるとか、あるいはもっと直接的に所得の補てんであるとかいう形で何か所得を維持することを普通所得政策と言われるのではないかと思うのです。  これにつきましてはいろいろと議論のあるところでございまして、農業に従業する人にそういう形の所得を国が何か補てんするような政策をとるのがいいのかどうかということについては、デカップリングの場合にも申し上げましたけれども我が国においてなじむかどうか、あるいはそういうことが他の国民の皆さんから理解が得られるかどうか、いろいろな問題があるというふうに考えておりまして、農業という産業に従業する方の所得が他産業に従事する方と比べて劣らないような農業経営であるということについては、我々十分認識しているつもりであります。
  86. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この議論は、きょうはする場所じゃないから、今の時点で官房長の答弁を聞いてそのままにしておきます。  その次に、二十一世紀は国際化時代だと言われている。世界の人口が現在五十三億、それから今世紀末には六十三億になり、二〇五〇年には百億になるだろう。一方、環境がどんどん破壊されて、日本の国土の半分くらいが砂漠化し、日本の農地全体ぐらいのものが一緒に砂漠化されていく、二千三百万ヘクタール。そして、人口が一日に二十七万ふえるというのは農水省から出した文書の中に書いてある。  こうなってくると、これはまず第一に日本がやるべきことは食糧の安全保障ですよ。その国の主要食糧というのはその国でつくるということなのです。そして、そのために土地利用をどうするかという問題が当然出てこなければならない。国内資源の持続的活用ということも必要だし、それから農業労働者、農業に働く者の確保。先ほど佐々木委員からかなり厳しい話がありましたが、ああいう問題をまだうやむやにしているところにあいまいなものがある、その問題。特に青年、婦人、それからUターン及び定年でおやめになった方々が農村に帰ってくるというこの組み立て、こういうものをしっかりしなければいけないと思います。そして、家族経営というものを軸にして、農業の所得の見える努力をしながら、地域の基幹作物を中心としてプラスアルファ、プラスアルファで四人家族で少なくても一千万の所得が構成されるようにしなければ、それは本当の血の通った農政とは言えないじゃないか。  そのときに、今まで主張してきた土地利用型の農業であるとかあるいは環境保全型の農業であるとかということを言っておりますが、それは当然のことであって、食生活の中で日本型食生活という問題を一時高く評価をしながらすっと消えてしまった。なぜ一体、あれをもっと高く評価しないのだ。今、小中学校の子供の中に非常に肥満があって糖尿病などがあるということも、これは食事からくることだし、いろいろな点から問題がある。  そういう点で、この日本型食生活、それから有効な土地利用ということをして、消費者生産者を結んでいくということとともに、水や緑や、そういう安全なものとして国土を保全していくというのは、一貫した農政の一つの循環でなければならない。その点について、官房長、どうですか。
  87. 武智敏夫

    ○武智政府委員 日本型食生活につきましてのお尋ねにお答えしたいと思います。  我が国の食生活、先生も御承知のとおりでございまして、平均的に見ますと、お米なりあるいは魚なり野菜を中心にいたしました伝統的なパターンに加えまして、その後、肉類ですとか乳製品など豊富に加わったようないわゆる多様性がありまして、栄養バランスのとれたいわゆる日本型食生活になっておることは御承知のとおりでございます。  ただ最近、いろいろ生活様式が非常に多様化いたしましたり、あるいは国際化進展等を背景にいたしまして、脂肪のとり過ぎが懸念されておりますことですとか、あるいはそれぞれの個人ですとかあるいはまた年齢層によりますと、栄養バランスの崩れですとか、あるいはマナーの乱れが見られるというようなこともあるわけでございます。  したがいまして、こういったような食をめぐります経済的、社会的な環境の変化対応いたしながら、農林水産省といたしましては、我が国の風土に根差しましたお米などの基本食糧の消費を中心といたします健康的で豊かな日本型食生活を維持、定着させることが非常に重要であると考えておるわけでございます。具体的には、このためにテレビなりパンフレットなり新聞等を通じた情報の提供をやっておりますし、それからまたいろいろな実態調査ですとか、それらを踏まえました講習会とかグループ活動の助長等もやっておるわけでございます。  それから、一昨年の十一月に、この日本型食生活を定着させるために望ましい食生活を実現するための食行動指針とも言うべき新指針も策定いたしたわけでございます。それからまた、これを受けまして今年度といいますか、平成三年度からでございますが、全国の消費者あるいは食品産業界あるいは農林水産漁業者、それに国と県が入りまして、先生の言われる官民一体となりまして、食文化に関心を持つ人々が一堂に集まりまして、我が国の食生活がどうあればいいかといったようなことで情報交換をしたり、あるいはあるべき姿につきまして議論できるような全国食文化交流プラザ事業というのを実施いたしたところでございます。  昨年度、平成三年度、初年度でございまして、去年の十二月に京都において一週間行ったわけでございます。その際には、「日本の食文化と世界、その伝統と未来」といったようなことを総合テーマにいたしまして、アメリカ、フランス、中国、台湾、韓国といったようなところの食文化に造詣の深い人たちに集まってもらいまして国際的なシンポジウムも開催いたしました。それからまた、各地域におきましていろいろな食生活の実践活動をやっておるグループがいらっしゃいます、そういったような方々の報告ですとか表彰ですとか、そういったようなことを盛大にやったわけでございます。本年度はまた、十月に仙台におきまして「句・鮮・健・美〜発信・伊達な食文化」というようなことを総合テーマにいたしまして各種のシンポジウムなりイベント等を実施するということで、全国段階なり県段階で現在準備を進めておるところでございます。  そういったもろもろの施策の推進によりまして、先生のおっしゃるような形での日本型食生活の一層の普及定着に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  88. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ちょっと時間の関係から、あと二点の問題を御質問いたします。  養鶏の問題について、鶏卵の価格の問題について、先般養鶏協会ですか、これが基準価格を百八十二円で協定をした。現在の一般価格が、市場は百四十円から百五十円、こういうことで卵価安定基金を活用するというわけですが、なぜ一体、この過剰な段階で、値が下がっているときに生産者価格百八十二円という協定を結んだのか理解に苦しむのですね。これはなぜですか。
  89. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 卵価安定基金の基準価格の引き上げの問題についての御質問でございますが、御承知のとおり卵価安定基金制度、これは卵価が一定水準を下回った場合に加入生産者等の積立金から差額の一部を補てんする、そういう制度でございまして、農林水産省としても鶏卵の計画生産の実効性を確保する、そういう観点から基金に対して毎年一定額の助成を行っている、そういう制度。そういう制度における平成四年度の補てん基準価格、これは近年の鶏卵の需給だとか価格動向、あるいは生産費の見通し、そういうものを勘案して前年度から一キロ当たり六円値上げをしまして、キロ当たり百八十二円にするということを承認したところでございまして、この算定方式、御存じのとおり需給実勢方式、従来の方式を基本として計算をして引き上げを承認したところでございます。
  90. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題は、今から数年前に卵価が下がったときに本委員会で特別決議をして、農家養鶏を守ろうではないか、こういう決議をして、社会党が中心となって卵価安定需給法という法律をつくろうとしたときに、物すごく抵抗に遭いまして、そして今日の事態を迎えた。今一億三千五百万羽というものが自主調整の羽数になっていると思うのですけれども、それを中小と農家と企業養鶏、こういうふうに分かれていて、この百八十二円という形になると、生産は過剰になっていよいよ市場は混乱をする、こういうことをまず警告をしておきたい。これ以上のことはもう時間がないから言いませんが、この扱いは決していい扱いではない、こう思います。  もう一つ畜産局に要求をしますが、やはり地域を回ってきますとこういう話があるのですね。茨城県の真壁郡関城町藤ケ谷に農水省の家畜センターがありますね。ここに三十八名が働いている。そこには二十八町歩の農場があって、三十年ほど前からそこに宿舎が建てられている。この宿舎に入る皆さんが、古くなったから建てかえてくれ、こう言う。ところが、それは文書でいただいたけれども、受け付けて一切何の返事もない。ところが、地域は工業団地化しているから、いや、これはもういつか工業団地になってしまうんだ、こういうことが宣伝されている。やはり一番の末端で働き、皆さんのこれは関係の深い人たちでしょう。盛岡から来たりあっちからこっちから来て苦労して働いている人たちに希望を持たせるように働きがいのある職場を持たせるためには、少なくとも住宅くらいは、要請をしたら、一挙に建てかえなくても順々に建てかえるくらいの愛情があっていいじゃないか、余りにも冷たいじゃないか。やめてしまうなら、それは話は別だ。いつかどこかへ行ってしまうんだからもう建てかえないよというなら別だけれども、あそこには黒豚、バークシャーが入ってきて非常に人気がいい、今オーエスキー病が入っているから今のところちょっと人気が出ないけれども。これはどうなんですか、一体。
  91. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 関城町にある家畜改良センターの茨城牧場、やめてしまうなら別ですけれどもというお話がございましたけれども、決してそんなつもりはございません。おっしゃるとおり家畜改良センターの牧場、全国にございますが、関城町の茨城牧場は、豚のいわばセンターのような機能を果たしておりまして、約三百頭の豚を保養しておる、地元茨城県を初め各県に優良な種豚を供給している、それはもう先生承知のとおりでございまして、私どもとしましては、今後とも受精卵移植等を取り入れた新しい手法を使った育種改良に取り組みまして、我が国の養豚の改良増殖に努めてまいる、そういうつもりでございます。工業団地にするというようなお話もございましたけれども、そういうようなことは承知をいたしておりません。  宿舎の問題でございますけれども、今二十八戸ございます。建築後三十年以上経過したものも含まれておりまして、その宿舎の建てかえにつきましては、限られた予算の範囲内で新たな宿舎需要対応しながら、緊急性の高いものから順次建てかえを実施せざるを得ないという実情でございまして、今年度につきましては茨城牧場については実現できなかったわけですけれども、今後とも引き続きそういう生活環境の整備、宿舎事情改善というようなことについて努力をしてまいりたいと考えております。  なお、これまでも宿舎の修繕、これは当然のことといえば当然でございますが、修繕につきましては必要に応じてそれぞれ随時実施してきておりまして、これからも職員の皆さん方の生活環境の改善に努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  92. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはしっかりやってもらいたいと思います。  最後に、時間が来たからこれでやめますが、今企画室から出している新しい農業政策というものの提案について一つだけ注文をしておきます。  それは、新聞にも出ているように十ヘクタール、二十ヘクタールの農地を集約をしていく。新聞もこれを高く評価したりしなかったりしていますが、十ヘクタール、二十ヘクタールというものを一カ所に集めるということになると、それに所有権なり利用権を提供した農家の所得をどこで償うのか、その人たちの働き場をどうするのか、その問題の方が先なんだ。その問題を出さないでいきなり十ヘクタール、二十ヘクタールを出して集めてくれなんということは本末転倒だ。そのことだけはっきり言っておく。  それで、石川県の竹本という人は、これは米価審議会でやっていますよ、米の値はいつまで上げないのか、それからガットはどうなるのか、こういうことが心配ですね。それから減反はまだ続くのか、圃場整備はどうするか、こういうことについて提案をしていますよ。それで二十ヘクタール、本人が六・四、借りているのが十四・五ヘクタール、その枚数が二百五十です。こういうような二百五十地区に分散したものを十ヘクタール、二十ヘクタールにするなんということは並み大抵のことじゃない。簡単にそういうことを言うけれども、何を基準にしてそんなことを言うのか。これは大変な問題ですから、そのことは宿題に出しておく。これはまたいずれ議論します。  以上で終わります。
  93. 高村正彦

    高村委員長 辻一彦君。
  94. 辻一彦

    ○辻(一)委員 前回の農協法の審議のときにもいろいろな論議をしましたが、きょうは引き続いて農業改良資金助成法について若干の質問をしたいと思います。  まず、これは念のための問題でありますが、日本の農業農村は、外には農産物、特に米の自由化の圧力という大変な問題がありますし、内側ではもう既に論議された農業者高齢化後継者難、担い手の激減、耕作放棄等々の困難な問題を抱えて危機的な状況にあるとも思われますが、農政の最高責任者として、農林大臣はこの実態をどういうように認識されておるか、一応念のためにまず伺いたいと思います。
  95. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農業基本法制定後、いろいろな施策を実施してまいりました。特に酪農、養豚、採卵鶏など、畜産施設園芸の方は生産性の向上が大変進んでまいりました。農家の総所得が勤労者世帯を上回るに至ったという面もありますが、一方では経営規模拡大がおくれている水稲、麦、大豆、一般的に言う土地利用型の農業、これについても、各地域農家創意と工夫のもとに生産性の向上に向けた取り組みが進められているところでありますが、一方、今お話しのように環境もまた近年大きく変化しておって、専業農家等特に担い手が減少しておるということと、一方では日本全体の高齢化進展、それでまた農業も同じような経緯をたどっておるし、逆に農村、漁村等においては高齢化進展は特に著しいということもあります。また、耕作放棄地等が増加をいたしておりまして、国際化の進行等により大きな節目を迎えていることも事実であります。  したがいまして、何としても他産業並み、勤労者並みの待遇、労働時間、あらゆることを想定しても、今の規模のままではこれの解決のためになかなか進むこともできない。さらに、第二種兼業といいますか、要するに、結局どこかに勤めて休みに農業をやるという若い人たちも多いんですね。ですから、もう危機的状況で日本農業は将来はないんだとは私は決して思わないので、要するに機械化の進展とともに、その程度でもやれる人たちがまた多くなっておるものですから。しかしいずれは、両親が、年をとった人がもう農業をやれないということになれば自分でやってもいいが、しかしこの耕作面積ではやっても将来に展望がないということもありますので、全部が全部そうできるとは思いませんが、やれるところは土地を集約して、そうして何とか村づくりもやりながら将来に展望を持ってやっていただきたいというために、農業農村をめぐる施策の総合的な見直しをしたい、その作業を実はいたしておるわけであります。
  96. 辻一彦

    ○辻(一)委員 基本的な認識は今までも伺いましたし、大切であろうと思います。  そこで、そういう幾多の非常に大事な中で、後継者の激減、担い手の不足が非常に大きな問題であるということは、もう言うまでもないと思います。これに対する認識と対応は一応、一つとして農業改良資金助成法の一部改正という形で打ち出されてはおりますが、随分とこの問題は以前にさかのぼって指摘をされてきた問題ですが、余りにも遅きに失したという感じが一つするのです。その点はどうでしょう。
  97. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いろいろ検討してみて、先ほども竹内委員からも御議論のあったところでありますが、基本的には、私は前にもお答えしたとおり、農家が一体何をやりたいのか、どの程度の規模をやりたいのか、そして、どういう経営形態で、本当にこれによってこれだけの収益が上がるというそのことでいかないと、今でも農林水産省の方で政策を押しつけていこうということはないんですけれども、いずれにしても、農家の皆さんがやりたい、それが全部完璧に補えるかというと、いろいろな法制度でありますとか他の産業とのバランスとかいろいろなことがあって思うようにいっていない、それに対する不満というのはあると思うのですね。  しかしいずれにしても、農家の皆さんが本当にこういうことで将来展望を持ちたいということについては極力、法の許される範囲内、あるいは納税して負担している方々もおるわけでありますから、その人たちの立場というものも考えながらやるために、言われるように、さっぱりやってくれないという面はあろうかと思いますが、精いっぱいやっているつもりでありますし、またそうなければならぬ。やりたくないものをやらされたというのではこれは絶対成功しませんから、やっぱり基本的には農家の皆さんがやりたいという方法で、私どもがお手伝いをしていく。ただ、それについては何となくやるんではなくて、この程度なければこれだけの収益が上がらぬというきちっとした経営理念といいますか、そういうものがないでやりますと、やっぱり失敗するんですね。失敗すると、何だ、こういう不満がまた出てくる。私が今までも申し上げておるように、いろんなことをおやりになる場合でもおのずからきちっと後までを計算して、そうしてこれならばいけるというもとでやっていかないといけない。  ですから、やっぱり経営感覚を持って、あるいは経営管理とかそういうものもきちっとやるというためにはいささか教育も必要でありますし、そういうためには新規参入の方々でも、あるいは今の若い人たちは相当教育を受けておりますから、学校教育の中でも経営というものももっと徹底して教育をしてあげるとか、あるいは新規参入の人たちというのは大体どこかの企業におって、大体経営というものはこうやらなきゃいかぬという考えを持っておやりになるとすればこれはうまくいくであろう。それに対するいろんなこうした、例えば農業改良資金制度を拡充するとか、他のものもあります、たくさん総合的に活用して、そして立派な経営をしていただきたいというのが私たちの願いでもあります。
  98. 辻一彦

    ○辻(一)委員 かなり重症になり、かなりおくれたからといって、やらなくてはならないことは当然あるわけですから、だから遅くてもやってもらわなくてはならないと思う。  ちょっと、例えばフランスの例を引いて比較をしてみたいんですが、もうちょっと早く手を打つことが大事ではないか。例えばフランスは、もう御承知のとおりですけれども、一九七三年から始めた青年農業者就農助成策を一九八一年に大幅に拡充して、今日では三十一歳未満の青年農業者、適格者には、就農するとき、山岳地であると御承知のとおり十六万二千から十万八千フラン、カップルであれば二十七万フラン、日本円で六百五十万円を、これは貸し付けじゃなしに交付をしておりますね。そういう人数が今までに十万人に上がっている、こう言われますね。  この一九八一年の施策をとった前年の一九八〇年に、実はこのフランスの農業就業者の中で二十四歳以下の青年農業者が七・八%まで下がってきた。逆に言うと老齢化ということですが、六十五歳以上の農業者が六・七%になって上向いてきた。こういうときに、これはいけない。若い人が少なくなる、年配の人がふえるということは裏腹な関係でありますから、この数字はそれぞれを意味しておりますが、そういう点で一九八〇年の二十四歳以下の農業青年が七・八%に下がり、六十五歳以上が六・七%になったというところでかなり画期的な政策をとった、こういうふうに言われております。  日本の方を私調べてみると、これは統計情報部の方からもらった資料ですが、昭和五十五年、一九八〇年でありますが、二十四歳以下は我が国においては五・五%ですね。それから六十年、八五年では三・七%。九〇年、平成二年では三・三%。平成四年は数字がまだわからぬのですが、これは三・一%、三%強というところじゃないかと推定されるのですね。当時フランスは、さっき言いま一したが、一九八〇年、昭和五十五年に二十四歳以下の青年層が七・八%になってきた。  今度は六十五歳以上の方を見ると、我が国昭和五十五年には二四・五、六十年には二九・一、平成二年、一九九〇年には三五・七%というように——フランスが政策かなり強化した、一九八〇年農業就労者の中の六十五歳以上は六・七%というときに拡充強化をしたのです。それに比べると、老齢化が進み、若い人がどんどん農村にいなくなるということは随分長い間言われてきたのですが、本格的な政策に踏み切ったのはこの見直しであり、そしてその前の助長法の改正等による、一部千二百万からの就農金を出すという、半歩の前進があったとは言えますが、こういう状況からして余りにも遅い感じがするのですが、そこらの反省点はどういうふうに思っていらっしゃるのか、まず伺いたい。
  99. 上野博史

    上野政府委員 農業をめぐる環境あるいは農業従事者の状況が大変変化をしているわけでございますので、そういう状況に合わせて施策の組みかえ、新規な政策の立案をしなければならないということで努力をしていることにつきましては、先ほど来大臣お話をしているとおりでございまして、そういう検討の結果、また必要な政策を今後充実させて実施してまいるということになるだろうと考えております。  今お話ございましたフランスの就農助成金の問題につきましては、私ども、今お話ございましたように、農業改良資金制度充実というような形てやろうという考え方、あるいは集団的な生産組織に対する助成、あるいは共同利用施設に対する助成というような形でいろいろ補助金を出している。こういう我が国の助成の仕方に対比いたしまして、フランスの場合にはああいう個別農家に対する助成が一般的にあるんじゃないかと考えるわけでございまして、一つは、助成体系が国によって違うというところがあるのではないかと考えております。  我が国の場合に就農助成金、委員直接これをやれとおっしゃっている御主張がどうか、そこら辺はややはっきりしなかったかというふうに思うわけでございますけれども、直接所得を付与する、あるいは農家に直接資金を供与するということにつきましては、我が国の場合個人補助をやっていないという、先ほど来の裏返しの話になるわけでございますけれども、そういう観点で難しい面がある。  それから、国民的な世論といいますか感情といいますか、そういうことからしまして、ある特定の職業につくことについて助成をすることの受け取られ方があるのではないか。これは必ずしも受ける人ではなくて、納税者と言った方がいいのかもしれませんが。  あるいは受ける側から見ましても、先行き生業としてそれによって生きていくことを考えていく場合に、一定の期間、一定の金額をもらうことによって、そこら辺の事情が変わってくるものなのかどうか。もっと長い目で見て、農業に従事することによって生計を立てていけるというような基礎を築くことに努力するという考え方も一方ではあるのではないかと考えるわけでございまして、いろいろ慎重に検討しなければならない問題を含んでいる話ではないか、かように考えております。
  100. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、各国がそれぞれの国情に沿った政策展開していると。だから、フランスがやったことが一番いいんで、こちらはいけない、こういう意味ではないのです。  今、見直し等の中でも最大の問題は、若い人が、後継ぎがいなくなる。いないとどうするかということが一番中心になっているとすれば、フランスでは若い人の激減する数字と老齢化の数字を追って、大きく政策を転換というか拡充した一つの時期は、若い人の変化を見たわけですね。そうすれば、我が国は長い間これだけ減っている。もう少し早くこの変化を押さえて政策展開すべきでなかったか。こういうことで、特徴あるそれぞれの政策、我が方は我が方でやっているということ、私はそれは当然だと思います。そういう点で、かなり遅きに失した感じがありますが、しかし大事なことは、多少おくれても、かなりおくれても、ぜひやらなくてはならないわけでありますから、そういう点でしっかり頑張ってほしいと思っております。  そこで、意欲のある農業青年農村を歩いてみると相当いるということもまた、ある面では事実だと思うのです。やる気のある青年農業者意欲を押しつぶすことのないように、ひとつ考えてもらいたいと思うのです。  その一つの例として、農業改良資金の中で、稲作省力化安定資金や水田農業生産高度化資金、今度はいろいろ統合されるようでありますが、従来、こういう名前で三年度まで呼ばれてきました。それらの貸付条件、借りる方からいえば借入条件等々がありますが、北陸地方の米作の平たん部では規模拡大を目指している個人農家、家族農家がある程度あるということも事実ですから、その場合に、目標経営面積が六ヘクタール以上という一つの基準が出たようですが、こういうものは、今十五ヘクタールだとかかなりなのが出ていますから、六ヘクタールを全体として達成するということはそんなに無理ではない、やる気のある個人農家の場合にはかなりできると。しかし、規模拡大を目指す場合、連担化の面積かなり高いとなかなか難しさがある。これは私の方の県内でも、一区画一ヘクタールはもちろん、二ヘクタールの大型化の基盤整備をかなりやって取り組んでいるところがある。ところが、そこらへ行って聞いてみても、連担の場合、一ヘクタール、ぎりぎり一・五あたりまでならば何とか、しかしそれ以上になると、現実としては該当するものはほとんどなくなる、こう言っておるのです。  私は、これは政策誘導の方向があるのですから、そう簡単に、これから基準をつくるのでしょうから、そういうものを甘くするわけになかなかいかないとは思いますが、できる限りそういう声を受け入れて考えてほしいと思うのです。連担化のこの場合の条件というのは、規模的におよそどれぐらいを考えているのか。検討中ならばそれでもよし、一応の輪郭が出ているならばちょっと聞かせていただきたい。
  101. 上野博史

    上野政府委員 今お話のございました水田農業生産性向上等資金、これは現行の二つの資金をまとめて一つのものにして実行したいというふうに今検討しているわけでございますけれども、これは、先般出しました土地利用型農作物生産性向上指針、これは今後の我が国土地利用型農業へのガイドラインだということで示したわけでございますけれども、こういう指針に沿った土地利用型の農業経営をつくっていく、そのためにこの農業改良資金を活用していただくという趣旨でつくろうとしておるわけでございまして、今申し上げましたことから、その資金貸し付けに当たりましては、このガイドラインにおおむね沿ったような形の土地利用型農業ができ上がるというものが対象になってくるというふうに、我々としては考えているわけでございます。  意欲のある方々をバックアップするというつもりでこういう資金を用意しておる。農業改良資金というのは、大体先導的な役割を果たす先進的な農家に対する援助という意味合いも持つ制度でございまして、そういう方々の意思、意欲を大いに助長するというためにこの資金を供与していくのだということでございます。地元の事情等いろいろあろうかと思うのですけれども、ひとつそこら辺の私どもの考え方をもう一段くみ上げていただきまして、各自の経営の向上にさらに一段の御努力をお願いしたい。  連担の要件等につきましては、全体として面積要件が、全体の面積が合計で六ヘクタール、それから連担面積が二ヘクタールというのがこのガイドラインの趣旨でもございまして、その辺が検討対象になっているということでございます。
  102. 辻一彦

    ○辻(一)委員 政策誘導する必要もありますから、ガイドラインを示してそれを基本にするということはわかりますが、一つの過渡期的な点でもあり、例えば畦畔を挟んで連担化を考えるとか、運用については柔軟にして、若い人たちがせっかくやろうとする芽を伸ばすようにぜひひとつ努力をいただきたい。その点、一言伺いたいと思います。
  103. 上野博史

    上野政府委員 先導的な役割資金の果たす役割というものと、現場のそれぞれの地域事情というものを兼ね合わせながら検討いたしたい、かように思います。
  104. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一つだけ具体的な問題で伺いたいのですが、私、県内を歩いてみると、規模拡大を目指している若い人が、大型の機械を改良資金を通して入れたい、こう言っているのですが、最近、トラクター、大型の田植え機、それからコンバイン、この三点のセットじゃないと、一つずつは難しいというような指導方針、ガイドラインもあるということを聞いておるのですが、まだ相当使える可能性のある機械を持っている場合に過剰投資になるおそれがある。それから、トラクター、田植え機、コンバインは耐用年数が違う。トラクターの場合は十年くらい、コンバインは七、八年、それから田植え機は五年くらい、こういう差があるわけです。だから、大型の機械をある程度持っておって、耐用年数の違いで一部を切りかえたいという場合に、三つそろわなくては無理だと言われてはこれは相当な金額になるわけですから、過剰な投資で、やっていけなくなるわけです。  こういう点については、一つずつ買いかえて更新をしていく、こういうことも柔軟に対応できるように考えてもらいたいと思うのですが、簡単で結構ですが、いかがですか。
  105. 上野博史

    上野政府委員 実は、この水田農業生産性向上等資金というのは、機械を一台一台買いかえるというのには、率直に申し上げましてなかなか対応しにくい資金じゃないか。先ほど来申し上げておりますように、土地利用型農業として一つ経営の全体の像を生産性向上できるように考えていくという、全体としての体系立った助成といいますか資金供与ということを考えているわけでございまして、そういう理想とするといいますか、自分の、それぞれの農業者の方が目指されます農業経営の姿というものを実現するのに必要な機械、施設をワンセットで提供をしたいというのが基本的な考え方でございます。  しかしながら、現在の段階でそれぞれの方が持っておられる既往の経営に使っている機械、施設、こういうものがございまして、それがこれからつくり上げていこうという新たな経営の中で十分使えるような能力のものであるということであれば、もちろんそれを組み込んだ計画をお立てになられるということは一向差し支えない。ただ、言うなれば、今ある機械をもってしては新たに目指そうとする体系全体の中でどうも不十分だというようなケースもあるのじゃないかというふうに思うわけでございます。そういう事態には、むしろ既存の機械の償却の状況や何かを考えて、トータルとしての経営転換をどういう時点で図ったらいいのかという、トータルの立場として移行の時期等をお考えになられるということも必要なのじゃないかな、かように考える次第でございます。
  106. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一言補足しますと、規模をある程度拡大して、ただ田植え機やコンバインは今までので間に合う、しかし二十馬力の中型トラクターを三十とか四十馬力のもう少し大型にしたいというときには、トラクターを更新して全体としてやっていきたい、こういう点がありますから、これはあくまでケース・バイ・ケースでしょうが、運用する場合には十分柔軟に考えて取り組んでもらうように希望したいと思います。  そこで、平たん部の方は今のようなやり方で、米作地帯の我々の周辺を見るとかなりやりようもあるのですね。しかし、私の県でもより多いのは中山間地ということになるのですが、中山間地の状況を見ると、これがなかなか大変だという感じがしますが、一番大きな問題はやはり耕作放棄だと思うのですね。十八日に全日農の皆さんが仙台で東日本のブロック会議をやったということの報告をけさちょっと受けたのですが、そのときも、米価と並んで耕作放棄の問題が一番大きな論議になった。もう五年たったらどうなるんだ、こういうような論議が随分出たということを聞いたのですが、これは担い手と裏腹にはなりますが、今日の日本の農業が抱える最も大きな一つの問題ではないかと私は思うのです。  そこで、面積はもう既にわかっておりますから私の方から申し上げますが、十五万ヘクタールに非農家のそういう耕作放棄されている農地六万へタタールを加えれば、二十一、二万ヘクタールというのがセンサスで出てきた数字であるのですね。しかし現実には、もう何年かたてばさらに拡大しているのじゃないかと思われる。これを二十万ヘクタールとしましても、私の県の福井県の水田は五万弱ですから、福井県の四倍以上の耕作放棄が現実に行われているという状況。これをどうするか。ある面では日本の農業の荒廃のバロメーターでもあるのです。また、国土保全や環境保全という観点からすれば、これをこのままにしておいていいわけはないのです。  そこで、私は三つの型を考えるのです。一つは、去年の五月に、新潟県の入広瀬村という山村ですが、非常によくやっているところを我々の土地改良小委員会で見に行きました。これは、山村でもやりようによってはこういうことがやれるのかという内容であり、山の中ほどにあるような農地も全部土地改良、基盤整備が行われている。それから集落と集落をつなぐ農道も、村で暇なときに簡易舗装を建設からやっている。農林省の圃場事業の展覧会のような感じもしましたが、全部やっているのです。ああいうやり方も確かにある。そうすると、兵庫県あたりから若い人がUターンしてきてそこに住んでみたいとか、それから工場も、アメリカに輸出する先端的な電子工業を一部やっている。だから若い人もそこに雇用される。山村にもああいう行き方もやりようによってはあるんだなと私は思いました。しかし、これを日本のたくさんの山村に適用することはまず難しいことではないか。  第一はそういうようなやり方もあるとすると、第二は、環境保全、国土保全という観点からすれば、一つは、農協法のときにも随分論議されましたし、きょうもお話がありましたが、日本式のデカップリングによって所得を農家に補償して、そういうところでも国土、環境保全という考え方から、この農地農業に使われるようにしていくという、こういう形もあると思うのです。  もう一つ私は、農協法のときに随分論議になりましたが、農協の単協の受託経営というのが前からあり、連合会にもあったが、普通で採算がなかなか悪いところがまず耕作放棄になる、それをひとつ引き受けてどうするかということになると、これは地域で考えれば農協以外にそういうことをやれる場所がないと思われますが、しかし、普通でも赤字が出る、採算が合わない、そういう不採算、条件の悪いところの農地を、散らばっているのを農協がやった場合に、これは赤字は必至である。そうすると、国土保全や環境保全という観点からすれば、農協がそういう受託経営をやって赤字を出したときに、国が新たな意味でのデカップリングであるか、名前は別として、それを助成をする、補償をして、農地の保全というか、国土保全や環境保全を図るという、こういうことも考え得ると思うのですが、新しい政策の中で、こういう山間地等におけるこれからますます拡大するであろうと思われるいわゆる耕作放棄農地、これについてどういうように対応しようと考えているのか、聞かせていただきたい。
  107. 海野研一

    海野政府委員 耕作放棄地の問題、今御指摘になりましたように、現在既に相当の分量に達しております。これからさらに高齢化、引退する農家がどんどん出ていくということからいたしますと、うっかりすれば今までよりさらに加速をしてふえるということになりかねない状況じゃないかというふうに考えております。  それで、その場合にこれを食いとめるのにどうするかということでございますが、今三つの事例を挙げられました。確かに、耕作放棄というのは農道に面した土地にはほとんど起きていない。農道に面していない土地でございますと、一つには、面が小さい面もありますけれども、それほど小さな面でなくても、農道に面していないところは貸そうといったときに借りてくれる人がいないというようなことなど、いろいろございます。そういう意味で、中山間地域の圃場整備というのは、平たん地の場合に比べて金がかかります。なかなか難しいわけでございますけれども、既にいろいろ等高線沿いの区画であるとかいろいろな工夫をしてやっているところがございます。  何といっても、まず条件の悪いところは整備をする、ただ、そのときに、耕作放棄の中に本当に耕作放棄するのがもっともだというところもございます。ところが、事実上見ていますと、耕作放棄するのがもっともなようなところは一生懸命つくっておって、その内側、もう少し条件のいいところが耕作放棄されたりというような例もございます。そういう場合には、その地域全体の圃場整備をかけながら、ある意味ではいわば山に戻しても仕方がないところと、現に耕作放棄されているけれども立派な農地としてやっていけるところと、うまく入れかえていくというようなことなども含めまして、やはり整備をする。  ただ、整備をしても、地域によって本当に人のいないところもございます。人のいないところ、何とかだれか一人でもいれば、そういう人につくってもらうということでございますが、人のいないところ、現在私ども考えておりますのは、農協なり市町村公社なりというものが、そこをいわば未来永劫やっていくということではなくて、とりあえず耕作放棄をされているところ、これを借り上げて整備をして使えるような形にして、そこを耕してくれる人を探すというような格好でやっていきたいということで、一つにはこの間、政令で市町村公社を農地保有合理化事業対象に加えましたし、それから、農協、市町村公社、そういう市町村のレベルの合理化事業について助成の対象にするというようなことにしたのが一つでございます。  特に、平成四年度から特別の農地保有合理化事業ということで、耕作放棄地などについてそこの整備をするということでの予算もとりあえず用意しておるものでございまして、何といっても、いろいろどうやっても難しいということはあろうかと思いますが、まず何とかして整備をして、機械の入る土地にしていくということをまず第一にやってまいりたいというふうに考えております。
  108. 辻一彦

    ○辻(一)委員 土地改良や基盤整備を山村でもどんどん進めるということ、これは大変大事で、大いにやっていただきたい。しかし、速度を見ますと、山村の基盤整備が進む速度よりも耕作放棄が起こる速度の方がはるかに速くなる可能性があるのですね。基盤整備は基盤整備として強化をしながら、この山村における耕作放棄を、幾つか私はタイプを挙げておりましたが、これはこれからの新政策の中身の大変大事な問題になるのではないかと思いますので、十分検討して具体策を打ち出していただきたいと思います。  最後に一、二点伺いたいのは、農業農村が先ほど申し上げましたように高齢化や、後継者、担い手の激減そして耕作放棄、それから農外新規参入者育成であるとか、あるいは新しい担い手の育成であるとか、従来考えなかった新しい形の内容普及事業というものがこれからさらに必要になってくるのではないかというように思いますが、こういう日本の農業農村の新しい変化の中で、農業改良普及事業の必要性と重要性についてどういうように認識をされているか、伺いたいと思います。
  109. 上野博史

    上野政府委員 委員指摘のとおり、農業改良普及事業重要性はますますふえてまいるというふうに考えております。それにつきましても、御指摘のとおり農業就業者減少高齢化というような今までの我が国農業の経験したことのないような事態に直面をしているわけでございますし、御婦人の方々にさらに活躍をしてもらわなければならないというような事情もございますし、経営感覚に富んだ効率的な農業経営をどうやって育てていくのか、経営面を重点とした改良普及事業というようなことの方への脱皮もしていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
  110. 辻一彦

    ○辻(一)委員 地域における農協の役割と並んで農業改良普及事業の必要性が痛感されますが、ところが従来財政当局は、予算編成期になると必ず、農業改良普及事業の国庫負担金を一般財源化をしろ、こう言っていつも問題になってまいりました。幸い、一昨年、五カ年凍結ということで、一応これは五年間はおさまってはおりますが、この農業改良普及事業重要性からして、これからとも、この現行の制度というものを堅持をして継続していく必要があると思いますが、農林省としてどう考えるか、お伺いしたいと思います。
  111. 上野博史

    上野政府委員 ただいまお話ございましたとおり、農業改良普及事業重要性、これは言うまでもないわけでございまして、この仕事を円滑にやれるように努力をしていかなければならないわけでございます。  事業自身は国と都道府県との共同事業という基本的な性格を持っているわけでございまして、その財政的な裏づけとしての協同農業普及事業交付金制度というものを現在とっているわけでございますけれども、こういう制度を、制度の基本のところを踏まえながら質的な向上を図る等の努力をやりまして、農業の発展の動向農業者のニーズに、より的確に対応した農業改良普及事業にしてまいりたいというふうに考えております。
  112. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最後に、教科書と農業体験学習の問題について一言だけ伺いたいと思います。  今大事なことは、国として国民生活国民経済の中に農業をどういうように位置づけるかという明確な、先ほども同僚竹内委員から出ましたが、農業の理念、哲学をひとつ打ち出す、こういうことがまず第一に大事であると思います。それをひとつもとにして、小さな子供さんの、小学校のときから土に親しむというか、農業の大事さ、やはりこういうことを教科書の中で、体験の学習の中で身につけていくということが、農業国民的なコンセンサス、合意を得るために、将来とも欠くことのできない要件じゃないかと思います。  そこで、この教科書問題はいろいろ新聞にも報じられておりましたが、やはり我が国食糧安全保障、そして環境の保全、国土保全という点で農業を考える以上、そういう線に沿った教科書の記述というものが必要だし、また、子供さんが山や農村へ行って具体的な農村の生活、山村の生活を体験する農山村の体験学習も、非常に広い意味の農業を理解する上において大事ではないかと思います。  これについて、文部省の担当の方から、ひとつそれぞれ一言ずつ見解を伺って、終わりたいと思います。
  113. 矢野重典

    ○矢野説明員 委員お尋ねの件でございますが、小中学校におきましては、農業我が国の産業として大変重要な産業であるという認識に立ちまして、社会科を中心指導しているところでございます。  小学校におきましては、例えば五年生の社会科におきまして、先ほど御指摘がございましたように、我が国農業問題につきまして、国民食糧確保の上で農産物生産が大変大切であるといったこと、さらには、農業に従事している人々の工夫や努力に気づかせるといったようなことを学習させることとしているわけでございます。  さらに、中学校におきましても、社会科の地理的分野におきまして、日本の諸地域における農業の特色などを学習させることとしているわけでございます。  教科書では、このような観点に立った記述がなされているところでございまして、学校教育におきましては、こうした教科書の記述をもとにいたしまして、我が風の農業についての理解と関心を子供たちに得させるように指導しているところでございます。
  114. 近藤信司

    ○近藤説明員 お答えをいたします。  教科書の記述につきましては今教科書課長から申し上げたとおりでございますが、先生質問のとおり、農山村等での体験学習が行われることは大変意義のあることと考えております。  文部省におきましても、勤労生産学習を推進するために、これまでも農作物の栽培を中心とした勤労生産学習研究推進校というようなものを指定をいたしまして、その成果を広く全国に紹介をいたしまして、学校においてさらに充実した勤労生産学習が行われるように努めているところであります。  また、関連をいたしまして五十九年度から、子供たちが農山村等の豊かな自然環境での集団宿泊を通じまして、自然との触れ合いでありますとか人間的触れ合いを深めることなどをねらいといたします自然教室推進事業、あるいは、六十年度からは、自然や社会環境が異なる地域にある学校、例えば都会の学校と農山村の学校が相互に交流をするといった事業推進をいたしますふるさと交流学習推進事業といったものを実施をしているところでございます。  今後とも、このような教育が適切に行われますよう指導充実に努めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  115. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間になりましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  116. 高村正彦

    高村委員長 倉田栄喜君。
  117. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。私、農業改良資金助成法の一部を改正する法律案に関してお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、これは今までるる議論をされておりますけれども、本制度改正の目的と趣旨に関連をいたしまして、担い手対策の視点からお尋ねをいたしたいと思います。  さて、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおいて農水省がよっておられます基本的な立場というか主張の根拠が食糧安全保障論である、この食糧安全保障論によって交渉をされておられる。そこで、この食糧の安全保障論というのは、基本的には国内においては耕地面積をどのようにきちんと確保していくか、こういうふうにつながっていくのだろうと思うのです。ところが、その耕地面積をきちんと確保するためには、まさに担い手の育成というのが急務となっている。ところが、盛んに議論されておられますけれども、いわゆる昭和一けた世代の方々のリタイアとともに、いわゆる新規就農者、この数の激減の問題がある。これで果たして食糧安全保障論を海外で、対外において主張する中において、この耕地面積確保ということが本当にできるのであろうかと非常に危惧するところであります。  そういう意味において、農業改良資金助成法のこの改正一つの趣旨が、後継者育成という視点において改正をされておることは私は評価をいたしますけれども、その基本的な視点において、本当に危機感に立って抜本的な対策、施策を講じなければいけないのだという、その覚悟のもとでこれが改正されておられるのかどうか。その点、私ちょっと疑問に思うところもございますので、まず、その担い手対策の視点の側面において、本制度の効果、その内容と見通しについてお尋ねをいたしたいと思います。     〔委員長退席、岩村委員長代理着席〕
  118. 上野博史

    上野政府委員 意欲あるいは能力の高い青年農業者育成確保する、これが当面する農政にとっての非常に重要な課題だということについては論をまたないわけでございます。  それでは、一体どうやってそれを実現するのかということになりますと、これはなかなかそう簡単な話ではないわけでございまして、農業の先行きあるいは農業の営み方、そういうものについて、就農を考えられる若い方々が魅力を持って、将来これなら自分の一生が託せる、そういう環境条件ができ上がっていくということがトータルとして必要なんだろうというふうに考えるわけでございます。  今回の農業改良資金助成法改正は、そういう意味では全体としての必要な対策の一部をなすということに多分とどまるのであろうというふうに考えるわけでございます。トータルとしていかなる対策が必要であるのかということにつきましては、現在鋭意検討中の新しい農政の方向づけの中で結論を出していきたいというふうに考えているところでございます。  それから、これをやるとどれぐらいの効果があるのかということにつきましては、今申し上げましたように、これは必要な施策の中の一環をなすものであるということは十分言えるというふうに思うわけでございますが、トータルとしてのものではない、必ずしもこれで全部であるというふうに考えているわけではないということから、これの効果を具体的に数値等でお示しをするということについては非常な困難を感じるということでございます。
  119. 倉田栄喜

    ○倉田委員 農水省の方でも、いわゆる多様な担い手、こういう言い方をされております。そこで、本制度は基本的にはいわゆる青年農業者育成確保資金、この部分があるわけですけれども、この名のとおり、いわゆる青年農業者、ここに一つの視点を当てて改正をされておられる。しかし、その多様な担い手ということの中には、青年農業者以外の方々も考えなければいけないのではないのか。例えば、後で質問をさせていただきますけれども、ここでくくる青年という範疇に入らない方々、壮年農業者と言っていいのかどうかわかりませんけれども、そういう方々であるとか、あるいは、私一度質問をさせていただきましたけれども、定年退職されて農業をこれからやってみようという方々、いわゆるここでくくられる以外のそういう方々の支援策というものは何かお考えになっておられるのかどうか。あるいは、本制度そのものが一つ農業政策誘導政策の一環として位置づけてある、そしてそういうふうに考えるならば、支援をしていくのはあくまでも青年農業者、いわゆる農業というものを中核として担っていく人たちだけをいわば育成あるいは支援をしていくのだ、それ以外の方々は自由にやってください、そこまでは農水省としてはやれませんよ、こういう趣旨なのか、その点について基本的なお考えをお尋ねいたしたいと思います。
  120. 上野博史

    上野政府委員 青年以外の就農者の方々が平成二年で一万二千人、五十歳以上の方が一万人おられる、こういう数字から見ましても、これらの方々がそれぞれの地域に入られまして農業に従事する、そして一定の役割を果たすということについては大きな意義があると考えるわけでございます。  しからば、そういう方々に対してどういうような施策を講じていくかということにつきましては、一般的な各種の農政が当てはまっていく面も当然あるわけでございますし、それからまた研修をしていただくとか、あるいは必要な土地の取得についての情報の提供等をやっていただくとか、就農をするに当たって必要な情報の提供というようなことについては、これは十分考えてもらわなければならぬだろうというふうに思います。  ただ、何らかの青年就農者の育成確保資金で考えておりますような資金の提供、初度的な経営を始めるに当たっての必要な資金の提供をやる、このことについては、年配の方々であればそれなりに資産もお持ちになっておられるのではなかろうかというふうに考えられる面もございまして、若い方々と一様に考えるというふうにはいかないといいますか、必要はないというか、そういうことではないかと考えているところでございます。
  121. 倉田栄喜

    ○倉田委員 農業というものだけを見た場合には、後継者あるいは青年農業者という視点だけを考えれば、場合によったら大丈夫という考え方もできるかもしれませんけれども、農山村地域の集落の維持、あるいは今現在農業が果たしているいろいろな側面、それを維持していくんだということを考えていくとすれば、まさにそこには多様な担い手、まさに多様でなければいけない、こういうふうに思うのです。そういう意味からすれば、今お答えいただきましたけれども、この農業改良資金でカバーされない方々についても、それはそれとしてやはり何らかの基本的な対策、指針というものをお考えいただきたい、このように思います。  それから同時に、担い手の中に、この間も私は質問させていただいたところでございますが、いわゆる農村女性、農業労働人口の六割を占める農村女性の問題がある。今回の改正の視点の中に、いわゆる農村女性の自立を支援する、こういう視点は入っておるのかどうか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  122. 上野博史

    上野政府委員 私どもとすれば、今委員指摘のとおり、御婦人の割合というのは非常に大きいわけでございますので、当然御婦人の方々をも含めた対策をとっていかなければならない。両者、男性、女性の間に差をつけることはむしろ全然考えていないということでございまして、今回お諮りをいたしております青年農業者育成確保資金貸し付けに当たりましても、男女を問わず青年農業者であれば貸し付け対象になる、これはもう当然のことだというふうに考えております。それからまた、研修教育資金につきましても同様でございまして、農家婦人にも貸し付けが行われるというふうに考えているところでございます。
  123. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私が冒頭、担い手問題というのが非常に危機的な状況にある、昭和一けた世代のリタイアとともに新規就農者の数が非常に少なくなっておる。これは食糧の安全保障論という観点、耕地面積確保という観点から考えれば本当に危機的な大変な状況である。こういう本当に危機的な大変な状況なのだということを認識されてこの制度をつくっておられるのかどうか、あるいは今後の基本的方針というのを考えておられるのかどうか。先ほどの御質問の中に出ましたけれども、フランスのいわゆる青年農業者就農助成策ですか、これはカップルで日本円ですると最高六百五十万ぐらいが、融資ではなくて交付をされる。ここまで危機的意識を持って対応しているわけですね。それぞれ状況が違うわけですから、我が国にこの制度がそのまま導入されるとは、また導入することができるとは思いませんけれども、しかしながら、そういう危機的な認識に立って対応していかなければとてもこの問題は解決できない、そういうふうに思うわけでございます。  そこで、関連してですが、この現行制度改正する前の本制度が今まで果たしてきた役割をどのように考えておられるのか、そしてその総括というものは本制度にどのように生かされているのか、これを確認のためにお尋ねをしておきたいと思います。
  124. 上野博史

    上野政府委員 農業改良資金制度は、三十一年に発足しまして以来、普及事業と密接な関連のもとに運営をされてまいっておりまして、農業者自主性創意工夫を生かしながら政策誘導を行っていく、それによって農業経営の安定と農業生産力増強に大きな役割を果たしてまいっているというのが全体としての総括でございます。  具体的に申し上げますと、新技術等の合理的な生産方式導入による地域農業の再編成、あるいは経営規模拡大農家生活改善農業後継者育成というような事項に大きな役割を果たしてまいっているわけでございます。  今回の改正は、最近の農業農村事情変化対応いたしまして所要の手当てをしようということであるわけでございますが、今お話がございましたように、若い農業者が急速に減っている、そこで農業の担い手を広い範囲から緊急に育成確保していくということに対応する、あるいは稲作等の土地利用型の農業については経営規模拡大が十分でないので、その一層の促進を図っていく必要がある、あるいは国際化消費者ニーズの多様化進展対応して農産物の高付加価値化を進めていかなければならないというような要請対応すべく所要の改正を行おうとしているものでございます。
  125. 倉田栄喜

    ○倉田委員 さて、大臣にお伺いをいたしたいと思います。  いわゆる担い手問題、非常に危機的な状況にあるということは大臣も御認識のとおりだと思います。この担い手問題に対して、いわゆる新政策本部がるる検討をされているというふうにお伺いいたしております。そこで、この新政策本部の担い手問題、後継者問題に対する基本的な方針はどうなっておるのか、また、この問題に対して大臣御自身はどのような御決意で取り組んでおられるのか、取り組もうとされようとしておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  126. 田名部匡省

    田名部国務大臣 担い手問題は非常に重要な問題だと私は考えております。現状で全体で見てまいりますと、確かに農家の戸数、働く農家の人口、そういうものは減っております。しかし、農産物においてはそんなに減っていないということを見ますと、まあこの点ではいい、こう判断するわけでありますが、いずれにしても若い人が少なくなっている。きょう、あすの問題ではありませんが、だんだん高齢化が進み、農業を営むことができないという時代にやがて入ってくるであろうと思うのでありますが、そのときを想定いたしまして現状でいいのかということになると、これは問題があります。  先ほどもお答え申し上げたのですが、しからば全然ないかというと、二種兼業でどこかの会社に勤めておる、私の親戚なんかもそうでありますが、親と奥さんが農業をやって十分賄える程度の農地であって、本当に役所をやめて親の跡を継いで農業をやろうとするにはいささか規模が不足しておるという事態にだんだん入ってくるであろう。あるいは議論の中にありましたが、卑近な例で申し上げると、田澤吉郎先生はリンゴの経営をやっておりますが、御本人は国会議員、長男は県庁の職員ということで、奥さんだけがリンゴ生産をしておるとこの間も言っておりました。だんだんお年を召してくるとリンゴの木に登ることができなくなって困った、こう言っておりましたが、やはりそういう事態というのは作業によっては出てくると思うのですね、ミカンとかリンゴとかというのは高いところで作業いたしますから。そういったもの、あるいは相続によって土地はもらったけれども全然やっていない。あるいは、私なんかも見ておりますと、山の上に無理をして開田計画をやった、しかし今そんなことをしないでもいいというような動きになっている。  そういうもろもろの判断をしていかなければならぬということを考えますと、何といっても土地を集約して規模を拡大する、機械は買った方がいいのか借りた方がいいのかというコストの計算までして、そして一体どの程度の規模でやれば他産業並みの収益が上がるという見通しを立てて、それに向かって私どもは努力していかなければ、担い手、担い手と言ってみたところで、大した収入もない、農村の生活環境もよくない、こういうことではなかなか進まぬであろう、しかし全部がそれができるわけではありませんので、今ヨーロッパの例等もお話がありましたが、いずれにしても、地域によって実情に応じた農業政策というものを立てていくことが重要であろう、こう思っております。  それで、しばしば企業的経営のできる担い手、こう申し上げておりますのは、ややもすると私から上の方々は、農業は教育は要らぬということで学校教育を受けていない。たまに農業高校に私の村なんかでも入る人がおると、農業後継しないという人が、私よりも上ですが、現に市役所に入って消防署長をやって市会議員になったとか、あるいはもう一人もやはり役所に勤務して農業試験場に勤めておるとか、結局そうなるものですから学校に入れなかったのですね。入れなかった人にいろいろな経営をどうこうと言っても、なかなかなれていないという面はあります。しかし今の若い人は学校教育を受けておりますから、そういう面で、私たちは、企業的な感覚あるいは経営管理能力、そうしたものを駆使して、新しい時代農業経営者として育ってほしいということはあります。  幸か不幸か経済がこんなに発展して、そして外国からどんどん食糧輸入できる、これが日本の農業一つの不幸であったかなと思うのですね。でなければ、農業生産にもっと従事して一億二千万の食糧を国内で完全に賄うという体制をとらなければならなかったわけでありますが、もうこれだけの高収入でいろいろな食糧のニーズというものが高まってくると、結局はそういうことができるようになった。そのことが一方においては、農業がだんだん厳しい環境に置かれていっておる、こういう認識で、これに対応してやっていける農業ということですから、いろいろ厳しい状況、環境、条件はあると思いますが、しかし何としてもこれは達成したいということで、この新しい政策の中で検討をしておるわけであります。
  127. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今のお答えでございますけれども、担い手、担い手と言ったとしても、農業そのものを魅力的なものにしていかなければこれはどうしようもないんだという大臣お話は、私ももっともだ、そのとおりだと思います。  その側面と、しかしもう一つ私が申し上げておきたいのは、先ほど大臣のお答えの中では、農産物は減っていませんよ、まだまだ農業は大丈夫なんですよ、こういう御認識でお答えをなさっておられる。確かに農業そのものは、農業人口が減ったとしても生産性の向上、機械化の導入あるいは集約化というようなことで、まだまだ大丈夫かもしれない。しかし、今私たちが議論をし、問題にしているのは、農業が持っている非常に多様な側面の機能、これもきちんと維持し評価をしなければいけませんよ、こういう議論をさせていただいておるわけでございます。そのときに、いわゆる生産としての農業という側面だけを考えて、その担い手だけを考えていっていいのかどうか、もっと多様な、あるいは中山間地域の集落をどう維持し、そこに居住の場をつくり上げていくのか、そういう問題意識もなければいけないのではなかろうかと思うのですね。  そういう意味からすれば、現実に耕作放棄地がどんどんふえていくあるいは集落そのものが廃村になっていく、後でこれも質問させていただきますけれども、いわゆる川上がどんどん荒れていく、この問題点をどうするんだ。そういう意味では、単に生産としての農業だけの担い手、後継者、そこだけを問題意識として持っていたのではまだ危機感に乏しいのではないのかな、実はもっとせっぱ詰まった危機的な状況にあるのかもしれないな、私はそう思いながら質問をさせていただいたわけでございます。  そこで次の方に移りたいと思いますが、この農業改良資金制度役割ということについてお尋ねをさせていただきたいと思います。  今さまざまなことが農業政策について議論される中で、いわゆる補助というものから融資へ、そういう一つ政策の流れがあるようにお見受けいたします。今まで補助をやっていたものを融資という形で切りかえていく。本制度は無利子ということでありますから、その中間的なものになるのかなというふうにも思うわけですが、いわゆる補助から融資へという流れの中における、いろいろな絡みがありますけれども、今後の補助事業位置づけ、及び本制度がそういう流れの中でどんなふうに位置づけられていくのか、そのことと、今後の農業政策誘導政策の中における役割というものをお尋ねいたしたいと思います。
  128. 上野博史

    上野政府委員 一般的に補助金の制度というのは、公共性の強い分野、政策推進上の重要性が高く、特に強力に推進すべき分野というものを対象といたしておりまして、個人の私的な資本の形成に対する補助は行わないというのが制度の建前でございます。  農業改良資金制度は、そういう補助の制度と有利子の制度との中間的なところに位置する制度でございますけれども、具体的に言いますと、農業者に対しまして綿密な普及指導との連携のもとに、貸付対象技術生産方式の普及を促進する必要がある分野、あるいは農業後継者という人の育成の分野、あるいは経営規模拡大農家生活改善政策誘導を行う必要のある分野というようなものを対象とする無利子の貸し付け制度だという位置づけでございます。  今後におきましても、こういう農業改良資金の基本的な制度位置づけというものは変わらないだろうと思うわけでございますけれども、新規就農を予定をしておられる青年農業者に対する資金供与というような点でいえば、補助についての問題点は先ほど来出ておりましたが、そういう方々の経営開始に当たっての必要最小限のといいますか、資金を提供する制度ということでございまして、今後とも、この改良資金の基本的な制度を維持しながら、そのときどきの状況対応してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  129. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私も、今回いろいろ勉強させていただきまして、農業改良資金と一口にいいますけれども、随分たくさんあるのだなと思って実は驚いたわけでございますけれども、そのたくさんある農業改良資金、もうずっと続いているものもありますけれども、その貸し付けの額とか方法についてもいろいろ差異があるというのか、動向もいろいろあるみたいでございます。  そこで、今ある農業改良資金、その種類、そしてその一つ一つについてさらにもう一つ見直してみる必要はないのかどうか。その見直しの必要性はないのかどうか、その辺のところはいかがでございましょうか。
  130. 上野博史

    上野政府委員 確かに、大別すれば四つぐらいの資金制度に区分できるのだろうと思うわけでございますが、それぞれ事情がございまして、その事情のもとに、非常に貸し出しが盛んに伸びている分野と、必ずしもそういう状況にない分野があるわけでございます。  我々とすれば、この資金の有効利用を図るという観点から、状況変化に合わせまして、過去においても何回か制度の改変を行ってまいったわけでございますが、今回お諮りをしておりますこの改正は、このところの青年農業者育成確保の必要性、あるいは農産物の高付加価値化を進めていかなければならない、需要に合った農産物生産をしていかなければならない、それに対応するための手当て、あるいは経営規模拡大をしていかなければならないというような農政上の要請といいますか、そういうものに対応するために、今見直しを行って、所要の改正をしようということでございます。
  131. 倉田栄喜

    ○倉田委員 その内容、種類、また現行の状況でいいのかどうか、これは大いに検討し、また見直しをしていく必要があるのではなかろうか。  同時に、これは報道されていたことですけれども、いわゆる助成措置についても、例えば転作奨励金は廃止の方向で検討されているとか、これは報道されていることですからまだわかりませんけれども、そういう意味で、今大きないろいろな問題を検討し、新しいものをつくり上げていかなければいけないのじゃないのか、そのように思いますので、ぜひ御検討をいただきたい、このように思います。  それから、ちょっと細かな話になって恐縮ですけれども、これはお聞きしましたら、近代化資金の問題であろうということでございますけれども、例えば申込者が、借りたいということで申し込みをする。なかなか保証人がいない。今回物的担保の導入という問題がありますけれども、保証人がいない、あるいは保証人不足ということで、これは保証協会でしょうか、県の公的機関が保証をしてくれる、そういうことを求められる場合があります。県の保証協会が保証する場合については、当然保証料というものは納めなくてはいけない。  そうすると、その問題において申込者というのは、確かに利率は低い利率だと思いますけれども、保証料を納めることによって一般の民間の金融資金の借り入れと何かそんなに差がないような気がして、これは何とかならないかという話を聞いたことがあるわけですけれども、この点について、何か当局として問題意識を持っておられるようなことがありますでしょうか。
  132. 川合淳二

    ○川合政府委員 いわゆる保証でございますが、近代化資金の場合でございますと、県の信用保証協会の保証によりまして円滑な借り入れをしているということになろうかと思います。  今お話がございましたけれども、仕組み、先生承知のように、県の農業信用保証協会につきましては出資を県がしているわけでございますが、これにつきましては国も補助を出すというような形で、したがいまして、系統だけの出資でやる場合に比べますと、この協会自身の保証につきまして、公的なお金が入っているだけに、保証料は全体としては安くなっているというふうに思っております。  したがいまして、例えば全国平均で見ますと、近代化資金の場合の保証料率は〇・二九というのが平均でございますので、ほかの民間などに比べると、これ自体もかなり低いというふうに私ども認識しております。  この制度は、人的担保あるいは物的担保と併用する場合もございますけれども、それにいたしましても、やはり人的担保、物的担保ということになりますと、農村におきましてはなかなかそろえることができないというような場合には、この保証制度による融通というのは非常にそういう意味でのメリットもございますので、私ども今の段階では、一般金融と比べるとかなり有利性があるのではないかというふうに思っております。  もちろん、いろいろなケースがございますので、先生の今のお話のようなお話もあろうかと思います。私ども、いろいろよく事情を把握しながら、この運用に努めてまいりたいと思っております。
  133. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ぜひ、この点も御検討をいただきたいと思います。  そこで、次に、これは大臣にぜひともお伺いをしておきたいと思います。  先ほども少し申し上げましたけれども、さまざまな助成金、それからこの農業改良資金だっていろいろな種類がある。いわば農業というものに対して積極的な誘導政策とともに、その助成とか金融制度においてもさまざまな制度政策を置かれておる。この点に関してさまざまな本があります。国民の皆様の中にも、この点をとらえて、いわゆる農業過保護論というものがある。実は我が党の中にもあります。都会のサラリーマンは、何の支援制度もないというのは語弊があるかと思いますけれども農業農家の方々に比べると、本当に何も都市のサラリーマンはありませんよ、それに比べて農業農家の方々のさまざまな助成金あるいはこういう制度、これは余りにも過保護ではないんですか、こういう議論があります。私は、これはちょっと違うのではないのか。こういう批判が当たることもあり得るかもしれませんけれども、ちょっと違うのではないのか、こう思っておりますが、実はこの問題をきちんと解決をしておかないと、これからさまざまな形の農業政策展開する場合において非常に大きな障害になってしまう。  そこで、大臣に、いわゆるこの農業過保護論に対して、大臣自身はどのような問題意識を持って、またそれはどういうふうに違うというふうにお考えになっておられるのか、これをぜひとも確認をしておきたいと思います。
  134. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農業については、気象条件がまず違いますね、これに左右されるという。一般の企業あるいはサラリーマン、そうしたものとの非常に大きな条件を背負っているわけですね。  私はよく選挙区でも言うのですが、農産物を売ってやっているんだという気持ちになるな。買っていただいていると思いなさい。都会の人は農産物を売っていただいていると思えば、いろいろな意味での感情というものが非常に変わってくるということをたびたび申し上げるのですが、今申し上げたような条件が違うし、あるいは保存のきかない農産物を安定的に供給しなければならぬ、こういう仕事であります。あるいは生産から流通面にわたって、他産業に見られない特殊な制約がある、そういうことで、これはいずれの国においてもこうした農業の特殊性というものに配慮して何らかの保護をいたしておる、保護の基準がそれはいろいろと違いますけれども。このような中で、一億二千万に及ぶ国民への農産物の安定的供給のほか、地域社会の活力の維持をしている。これはなおヨーロッパと大きな違いがあるのは、都市と農村がはっきり区分けされているのですね。ヨーロッパ等へ行ってみると、農村に日本ののように都市が近くにあるとかというのは余りない。日本の場合は混住化が進んでいまして、農村と都市というのは一体感がなければならない。  そういうことからいたしますと、例えば国土自然環境の保全、そうした役割を混住化していながら農村の方々が分担してやっていかなきゃならぬということであろうと思うのですね。ですから、農業関係予算についてもこのような多面的な機能の維持あるいは増進を目指して、その受益が多方面に及ぶように農業生産農村生活の基盤整備を含めて幅広く用いられており、一般サラリーマンと比べて農業農家が過保護であるとする議論は当たらないというふうに私は考えます。  ただ、中小企業の人たちから見ると、融資も金利が高い、倒産しても何にも面倒を見てもらえない、こういう話は私も時々伺います。そういうことからいたしますと、確かに私どもは土地というものを失ってはならぬということで、相続税も農業をやる場合には課していない。しかしこれをやりませんと農業経営は成り立ちませんから、そういうこと。あるいは、フランスとの例で先生方よくお話になりますけれども、例えば就農助成金等は二百五十万から六百五十万、配偶者も含めて受給額がなっておるわけでありますが、私どもの方の青年農業者育成確保資金経営開始資金は、無利。子で十年間、三年間の据え置き、これは償還するわけでありますが、これを普通に市中銀行から借りると、十年借りておりますと金利が六百五十万ぐらいになるわけですね。  そういうことから見れば、どっちがいいかというのは別として、やはりそういう政策をやってある。要するに、政策として打ち出した補助金とかあるいは融資とか、あらゆるものから見ると多少おもしろくないという感情を持たれる方々もあります。漁業の皆さんも、農業はいいな、おれたちは厳しいのに何だ、こう言われますが、かつては農業、漁業は、それそのもので経営がきちっと成り立っておった。最近厳しくなってきたものですから、どうも農業の方が優遇されている、我々の方はさっぱりという話を聞くことがございます。  いずれにしても、私どもはそういうことでは一億二千万の食糧、安全で生鮮な食糧を供給していただくというための措置というものはしていかなきゃならぬ。ただ、今もう少し私が言いたいことは、そのためにはやはり農家自身も規模を拡大するとか、生産性を上げてコスト低下を図るとか、負担している方々の身になって努力をしていただきたい。努力はしていると思いますが、さらなる努力をしてほしい。それで精いっぱいやってどうしても成り立たぬという部分は、今言うとおり国民の皆さんが農業に理解を示して、そうしてみんなで守っていくということでなければならぬ、こう考えております。
  135. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私は、今農業に関連して必要なことは、国民の皆さんにどう農業というものを正しく理解していただけるのかということだと思うのですね。  それで、ちょっと今私、「アメリカ・EC・日本の農業関係予算の推移」という表を見ていたわけですけれども、そのうちの「価格所得支持費(指数)」、日本は一九八〇年を、一〇〇といたしますと一九八六年は六三というふうに書いております。それだけ減ってきている。一方、ECは一〇〇から一九六、アメリカはこれは一〇〇から九五六なんて書いてありますけれども、そういうふうな何か物すごく伸びているような表がある。こういうことを見れば、農水省当局としてはいろいろな意味で保護策というものを見直し検討されている結果が一つはこれなんだろう、こう思うわけですけれども、ここまでこうしてこられた一方には、やはり国民世論の農業過保護というものに対する農水省自身の問題意識だったんだろうと思うのです。しかし、やはりここはもう一度、果たしてそうなのかということをきちんと考えていただかなくてはいけない。そうしないといけないんじゃないか、実は私はこういうふうに思っております。  これも後で質問させていただきますけれども、熊本、大分は台風十九号で物すごい山林被害を受けました。倒伏された木がそのまま残っております。二次災害のおそれがあるということを盛んに申し上げておりました。今般政府の御努力をいただきまして自衛隊の方々に入っていただくようになりましたけれども、それは、従来は山林所有者の方々が自力でやってこられた、山が果たしている機能というものを守ってこられた。しかしそれができなくなった。できなくなったから自衛隊の方々にやってもらわなければいけなくなった。それはやはり税金なんですね。そうすると、まさに耕作放棄という形で農業が今まで果たしてきた機能というものが放棄されてしまった場合には、本当にすごいコストになるだろう。そのことをやはり考えなければいけないだろうし、また、国民の皆様にも訴えていかなければいけないことだろうと思うんです。  同時に、批判を受けるようなところはきちっと改めていかなければいけない。それは、一つには今やっている農業に対する助成金あるいは各種の支援制度、それが果たして本当に農業のためになっているのかどうか、役に立っているのかどうか、ほかのところから見てこんなむだな使われ方をしていていいのかどうか。そのことは、先ほどの資金見直しとともに検討していかなければいけないことであろう、こういうふうに思うわけです。  そこで、これは先ほどから議論も出ていましたけれども、いわゆる国の支援制度というのは、基本的には政策誘導、それが基本となっての政策助成金である、そういうことだから直接的に農家個人に支援をするものは基本的に難しい、こういうお話でしたけれども、いわば農協であり団体であり組合であり、そういうところにお金は流れるようになっている。農業をやっている方々に直接この助成とか支援というのが、果たして本当に政策という関連の中で問題があるのだろうか。途中経過することによってやはりむだな使い方、流れ方をしているんではなかろうか。こういうことは実はもっと考えなければいけないんじゃないんだろうか、こういうふうに思うわけです。この点についてもう一度、やはり団体を通じないとだめなのかどうか、あるいは直接農家に支援策、助成策をつけるということをもっと見直せないのかどうか、いかがでしょうか。
  136. 上野博史

    上野政府委員 個別の農家に対する補助金というのも相当以前にはあったようでございまして、それを現在のような形に切りかえていくについてはそれなりの事情があったのだろうというふうに思うわけでございますが、もう一つ私感じますのは、どうしても我が国農業は、従来は経営規模が小さかったために、機械なり施設なり土地改良事業なんかもそうでございますけれども、やろうというときに個々の農家だけでは成立をしがたい、あるいは助成をしても余り大きな効果が上がらないというような事情があったんじゃないかというふうに考えるわけでございまして、それが共同利用という形に、あるいは集団に対する助成というような形になっていたのではないか。農協なりなんなりに金を通すがために共同事業なり集団事業をやったということでは必ずしもないんだろうというふうに思うわけでございまして、その辺の政策の必要性のよってまいっております理由がかなり関係をしているんではないかというふうに考えます。
  137. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今回、新政策本部ですか、新政策検討されておられるところで、これももうるる議論の出たところでございますけれども、いわゆる直接所得補償政策というものも検討されているというふうに報道されております。そうしますと、このいわゆる直接所得補償政策、これが導入されるかどうかはさらに今から議論をされるんだろうと思いますが、これはどういうふうに位置づけておられるのか。現在の時点でお答えいただける範囲で結構ですので、お尋ねしたいと思います。
  138. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 新政策検討の中での問題でございますが、新政策本部での検討というのは、御案内のように、非常に中長期の展望に立って、多様な担い手の育成、それから土地利用型農作物の新たな生産体制の確立、新しい地域政策展開等、非常に広範な問題の論点整理と方向づけを行っているわけであります。  そこで、農家の所得の問題というのは確かに重要な問題でございまして、所得が確保されるということは望ましいし、また、そのためにどういう経営であればいいかということも示したいということでやっているわけであります。しかし、これはあくまでも農業あるいはその関連する産業の振興を通じて、農家が努力して、生産なり創意工夫をして所得を得るという形が望ましいわけでありまして、そのために効率的、安定的な経営体の育成、あるいは、地域資源を生かした関連産業の振興というようなことまで検討したわけであります。  今お触れになりました直接所得補償といいますか、という政策でございますが、これは一般的に考えますと、政策理念の問題として非常に大きな議論があるわけであります。先般来出ています、例えば中山間地帯、条件不利地帯というふうに限ってやるにしても、いろいろとまた問題があるわけであります。今もお話がありましたけれども、特に日本の農業というのは、やはり地域の中で多くの農家が零細な地片を耕すという形で来ております。そういう意味では、個別の一種の経営の形が確立されていませんから、それをとらえて個別の農家に直接国が何らかの補てんをするということは技術的にも難しいし、また、そうでなくて社会的に、農家の心情あるいは周りの他の事業に従事している方々の考え方、いろいろありまして、政策理念の問題あるいは具体的な手法の問題等々、非常に問題があろうということで、中ではいろいろ話が出ておりますけれども、どちらかというと、なかなかこの新政策の中では盛り込むのは難しいかなというのが現時点でございます。
  139. 倉田栄喜

    ○倉田委員 関連になってしまいますけれども農業に関してはさまざまないわゆる金融制度がある。そういうことの中で、同時に、農業経営自体が天候であるとか外的要因に左右されて非常に困難な部分がある。そういうわけで、資金をお借りしてもなかなか経営がうまくいかなかったということで、資金を借りたままになっている状況の方々というのもあると思うのですね、いわゆる負債農家。この問題ですけれども、現在、農水省がとらえておられる負債農家の実情、また、この問題に対してどんな対策というのを考えておられるのか、関連してお尋ねをしておきたいと思います。
  140. 川合淳二

    ○川合政府委員 負債農家の実情はなかなか平均的にはつかみにくいわけでございますが、統計的にはどうしても平均的になりますのでそれでお話しさせていただきますけれども、ここのところ、一戸当たりの借入金は横ばいという感じでございます。平成二年末で二百十五万円ということでございまして、貯金は、これも農家は多様でございますのでいろいろでございますが、二千二百八十八万円というようなことの数字でございますので、この数字自体もそうでございますが、横ばいで推移しているというようなことで、まあまあ、全体的傾向としては農家経済というのは落ちつきを見せているというふうに考えております。ただ、地域それから作目によりまして、それぞれ違いがあることは御承知のとおりでございます。  しかしながら、私どもとしても、特に専業農家におきます負債対策ということは非常に大事だと思っておりますので、個々には、償還期限の延長というようなことで個別のケースにそれぞれ対応することを関係機関に指導しているところでございますけれども制度的には、平成元年から平成二年度、かなりいろいろな議論がございまして、リリーフ資金の創設とか、あるいは重要な資金に対します金利負担の軽減のための基金の創設とか、あるいはいろいろと議論がございました土地改良の負担金の償還のための平準化を図るための資金というようなものをやってきております。現在、こうした資金は円滑に活用されておりますので、この面では農家負債に対する対応となっているというふうに今考えております。
  141. 倉田栄喜

    ○倉田委員 次に、本法案の申請の仕組み、資金借り入れ手続の流れの面において、少しお尋ねをしておきたいと思います。  これは、申請するとき、あるいは借り入れの申し込みをするときには、農業改良普及所等の意見及び農協を通じて都道府県に提出をする、こういう基本的な形となっております。そこで、私がお尋ねしておきたいのは、農業改良普及所等の意見もそうですけれども、農協の窓口を通る、こういうことで、いわゆる農協組合員でない農外新規参入者、この方々が、組合員でないがゆえになかなか申し込みづらかったり、あるいはその窓口でじゃけんに扱われるようなことがないのかどうか。これは私はないだろう、そういうふうに信頼をいたしておりますけれども、この点。  もう一つは、農協組織を離れて独自に自分たちで農業というものを、青年の方々の一部の中で、農協組織とは一線を画した形で農業展開しておられる方々がおられる。こういう方々が、いろいろ議論の対立もあった中で、どうも農協には顔を出しにくいというか、そういう方がもしかしたらおられるかもしれない。そういう方々が、その農協という窓口を通すというこの枠組みをつくることによって不利益を受けてはならないと私は思うのですが、この点については、農水省としては問題意識を持っておられないかどうか。この点は、大臣にもぜひ御確認をしておきたいと思います。
  142. 田名部匡省

    田名部国務大臣 この農業改良資金の借り受け申請の窓口は、今おっしゃるとおり、原則として農業協同組合としております。これは、資金利用者の利便を図らなければならないということ、あるいは債権管理事務を信用農協連合会から単協に委託をしている、あるいは農協による営農指導上の助言等が期待できるということもありまして、農協を窓口、こういたしております。  しかし、本資金貸付対象者は農協の組合員に限定されているわけではありませんから、おっしゃるような心配が出てくるのは当然だと思いますが、この貸付審査は農業改良普及所等の意見を踏まえて都道府県が行うということにしております。したがって、農協はあくまでもこの資金の申請の窓口であって、非組合員が不利になるということはないというふうに考えております。
  143. 倉田栄喜

    ○倉田委員 その点は、ぜひとも徹底をして、指導お願いしておきたい、このように思います。  そこで、もう時間もなくなりましたので、次はこの青年農業者育成確保資金について、対象者年齢二十代というのが現行法というふうにお聞きしております。これはもう質問は出たのかもしれませんけれども改正ではどのようになっておるのか、その範囲。例えばUターン青年。Uターン青年というのは離職就農者のうち三十五歳未満をいうのだそうですが、これ以上に範囲が広げられておるのかどうか。女性は、先ほど男女間差別はないということでございましたけれども、あるいはそのとき育成資金の種類、内容について条件が異なるのかどうか。その辺をお尋ねしておきたいと思います。
  144. 上野博史

    上野政府委員 今度の青年農業者育成確保資金貸付対象でございますけれども、これはどこで線を引くかというのはなかなか難しいということでもあるわけでございますが、私どもとすれば、三十代までの方を青年農業者ということで扱おうかな、かように考えておるところでございます。
  145. 倉田栄喜

    ○倉田委員 一つ運用ですから、どこかで線を引かなければいけないのはやむを得ないとは思いますけれども、現行が二十代だから、三十代ということは三十九歳まではいい、こういうことなんでしょうが、先ほど、これの対象以外の方々もいろいろな形で支援をしていただきたいとお願いをしておきました。四十歳の方も、その一歳の違いのために現実には受けられないわけですけれども、受けられなくなるかもしれませんけれども、その方々に対しても何らかの対応お願いしておきたい、このように思います。  もう時間もなくなってしまいましたので、きょうは自治省の方にもお見えいただいております、最後にお伺いをしておいて、私の質問を終わりたいと思うのです。  実は当農水委員会で、私は二回ほどにわたって、台風十九号被災地において、いわゆる川上で被害を受けておる、二次災害というのはある意味では、そこの災害地もそうですけれども、いわゆる川下に被害が起こる心配がある、こういう意味においては、先般台風十九号で熊本、大分、随分山林地で被害を受けたわけですが、それをそのままにしておくと二次災害で川下もやられてしまう、そういう意味では、川下の地方自治体というのもその被災地の川上の地方自治体に対して何らかの支援策、協力策があってしかるべきではないのでしょうか、こういう形でお伺いをさせていただきまして、難しい問題はあるかと思いますが検討をいたしておきたいと思います、このような御答弁でございました。現実、熊本県、大分県もそうですけれども、自衛隊の方々に入っていただいて、倒木の除去作業をやっていただいておるわけでございます。地元の方々、大変喜んでおられます。  しかし、喜んでおられると同時に、そこの小さな町、小さな村の地方自治体にとっては、そのさまざまな経費、費用負担、実は当初考えてもみなかったような費用がぼんと来てしまって非常に驚いておられる。これは、県としていろいろな対策を講じてくださっているかとは思うのですけれども、やはりこの川下の地方自治体としても何らかの形での支援策、応援策があってしかるべきではないのかな、こう私は思うわけです。この点について自治省にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  146. 鈴木良一

    鈴木説明員 昨年の森林災害の復旧の関係のお尋ねでございますけれども、特に、いわゆる川上、川下と申すのでしょうか、上流、下流の流域市町村の中での災害に際しての財政面での支援協力体制というお尋ねでございます。  昨年もお尋ねいただいたところでございますけれども、まず結論的に申し上げますと、現在、制度上直接そういうものに当たるような支援の体制と申しますか、制度というものは存在をいたしておらないというのが実態でございます。そこで、それではこれをまた財政指導というような形で、そういう体制をつくるようなことを指導できないかということもあるわけでございますけれども、私ども、単なる財政指導というような形でそういう災害に際しての流域市町村間の協力体制を指導するというのは、これはちょっと難しいのではないだろうかと考えておるところでございます。  ただ、今回のケースにつきましては、いわば市町村を包括する広域的な地方公共団体という立場で、関係四県でございますが、この四県が今回の自衛隊の派遣に伴います市町村の財政負担を軽減しようということで、相当の助成を行う予定にしておるというふうには聞いておるところでございます。  私ども自治省といたしましては、こうした被災、特に市町村の実情を十分把握をいたしまして、あるいはまた、当該団体の全体の財政事情といったものも十分にお聞きをいたした上で、その市町村の財政運営に支障が生じないようにということで対処してまいりたいと考えております。     〔岩村委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 倉田栄喜

    ○倉田委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  148. 高村正彦

    高村委員長 藤田スミ君。
  149. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 農業改良資金助成法の一部改正案に関連して、質問をさせていただきます。  今回の法改正の一番の目的が農業後継者育成することにある点では、我が党もこれを支持するわけでありますし、ますますこの面を充実していただきたいというふうに考えるわけであります。問題は、現在の深刻な農業後継者が激減している原因を明確にし、その対策を抜本的にどう打ち出すかが問題であると思います。  そこで私は、ずばり大臣にお伺いをいたしますが、なぜ若者たちは就農しないのかと問いかけられたら何と答えられますか。なぜ若者は就農しないのか。
  150. 田名部匡省

    田名部国務大臣 端的に答えることは非常に難しいのでありますが、何といってもやはり天候に左右されて安定しない、所得が他産業に比べて低い、これは農業だけで考えるとですね、ある程度の規模、中核農家対象で申し上げております、二種兼業は別でありますけれども。いずれにしても、高度成長の波に乗って日本の経済がどんどん発展してきた、そのことが都市で若い人たちを必要としたということ等、いろいろ原因はあります。何としても他産業への志向が強い。それといま一つは、生活環境あるいは嫁対策、いろいろなものが折り重なって、新規の就農者というか担い手が減少してきた。あるいは今申し上げたように、将来展望の不透明感が広がる、そうしたこともあったと思います。  農業で自立できるような経営を確立するためには、相当の農地等の経営規模、資本の装備、そうしたことに加えて、農村集落の環境整備をきちっと整えるということが必要だろうと思うのであります。特に数軒で相当の山村で生活をしている人たち、もう車社会ですから、道路を整備して、適当な方々が一緒になって集団で生活をする、そこには学校もあり病院もあるという、そんな環境にしていきませんと、親は住めば都で、そこで生まれ育ったのですから愛着があって、なかなか他産業に従事といっても、当時のことですから高等教育も受けていない。そういうことからすると、今の若い人たちは学校教育は受けておるし、どこへ就職しようとしても一向に困るような状況にない。そうしたことが挙げられるのではないだろうか、こう思っております。
  151. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 少し肝心の点が触れられていないんじゃないかと思いますので、ちょっと聞いていただきたいのですが、私は、ここに少し古いですが、一九八七年の北海道の旭川市の農業者意向調査というのを持っています。  ここで調査をしたところでは、後継者が定着する条件は何ですかという問いに対して、トップが三六・四%で農業情勢の安定化、二番目が二八・九%で所得の増大、こういうふうに答えています。同じく八九年の北海道本別の農業者意向調査でも、後継者が居づくための条件はという問いに対して、七四・八%の人が、農業の長期的展望を持てれば、こういうふうに答えているわけであります。多くの農業者が、日本の農業の先行きに不安を感じ、自分たちの職業としての農業の継続に確たる自信を持ち得なくなってきていることが後継者不足の根底にあることは、これは明らかであります。  その点では、先ほども問題になりましたが、農業関係予算がどんどん削られていっている。そして、牛肉・オレンジの輸入自由化を行い、さらに乳製品、でん粉の輸入枠拡大の日米合意を進める。米についても、最近は参議院選挙を前にして大分おとなしくされておられるみたいですが、閣僚のそうそうたる皆さんが公然と部分自由化だとか、自由化を口にされて、それをマスコミがまた大々的に報道していくというようなことの中で、果たして農業の長期的展望が持てるというふうに大臣はお考えでしょうか。
  152. 田名部匡省

    田名部国務大臣 予算が減ったということもあると思うのですが、これは食管が減ったために特に落ち込みが激しいということでありますから、予算だけで若い者が定着するかというと、体制が変わっていきませんとなかなか難しいだろう、こう思います。  それから、自由化の問題もあったでしょう。農林水産省の立場から見れば、一切合財国内で自給できていけばいいわけでありますけれども、残念ながら、もうこれだけ高収入を得て、いろんな国民食糧に対するニーズというのが高まって、あれも食べてみたい、これも食べてみたいということになると、日本国内で、農業で賄うだけのものにはなっていない。もう既にカロリーベースでも四七%ということになったわけでありますが、それは一体どういうことが原因がというと、やはり高度成長で日本がこれだけの自由貿易の中で繁栄していったというところに一つ問題が私はあると思うのです。これなかりせば、今まではみんな自分で自分の食べるものをつくり、あるいは余剰のものは国民に販売したという程度であったわけでありますが、ですから、おっしゃるとおり確かにそうでありますが、なかなかここのところは私は難しい問題であろうと思うのですね。生活は豊かになる、一方ではそういう問題が出てくる、これを一体どこで受けとめるか。確かに自由化ということで農家の皆さんには大変な批判を受けた、あるいはウルグアイ・ラウンドでも米の問題でもそうなっているわけでありますが、いずれにしても国内で全部賄えないということでありますから、守るべきものは守る努力はいたしますが、しかし、足りないものは売ってください、こう言わざるを得ない状況の中でありますので、非常に今後の運営というものは難しかろう、こう思っておりますが、最大の努力はいたしていかなければならぬ、こう思っております。
  153. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、この問題にこだわってここで議論をしているほど時間がありませんが、ただ、国内で貯えなくなったから輸入せざるを得ない、国民が高収入を得て暮らしか豊かになったから、食に対するニーズが高まって輸入しなければならないというようなことじゃない、そういうふうに言われると、それは本当に困った認識だというふうに言わざるを得ません。まさに十分国内で賄えるものであっても、輸入自由化をして、つくりたいものもつくれないような状態になったということだけ申し上げておきます。  ことしの農業白書を見ましても、「新規学卒就農者が円滑に就農するためには、その労働力農業で完全燃焼し、他産業に従事した場合と同程度の所得を確保できる経営の確立が基本的要件といえる。」こういうふうに指摘をしているわけでありますが、やはり米価を初めとする農産物価格の長年にわたる引き下げ政策が、農業白書でも指摘をしているような、「農業所得は全農家平均及び農業専従者のいる農家とも勤労者世帯の所得水準を大きく下回っている。」状態を招き、農業後継者の激減をもたらしたということも明らかではないでしょうか。大臣は、この点いかがお考えでしょうか。
  154. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私の記憶では、農家所得が一番多いと思っております。平均ですからそういうことになっておりますが、二種兼業が非常に所得が高い、専業農家はそうでもないわけでありますが、しかし、全部をひっくるめますと、勤労者よりも農業が多くて水産業がもっと低いということが、最近の統計でそう出ておったと私は記憶いたしております。
  155. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は農業白書をちゃんと読んでそして質問をしているんですから、そういうふうに認識されると本当に困るのです。農業白書にちゃんと、私はうそも言っていませんよ、百六十三ページの中ごろ、「農業所得は全農家平均及び農業専従者のいる農家とも勤労者世帯の所得水準を大きく下回っている。」こういうふうに書かれているのです。
  156. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農業所得でいきますと、例えば全農家ですと、百十一万、全体が七百九十九万円。ですからもう、農業収入はうんと低い。その中で、例えば専業農家でありますとか第二種というふうに分類してまいりますと、二種ではたった四十八万円、農業収入、あるいは基幹男子農業専従者のいる専業農家ということになると、七百二十八万が総所得の中で、農業収入が五百五十万、いずれにしても、農業だけでは容易でないという実態ではあります。
  157. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私が言いたいのは、それが農業後継者の激減をもたらしているんだというふうに申し上げたいわけであります。  ここで、今回の法改正農業改良資金の保証人制度が連帯保証人制度から物的担保の提供でも可能という形にされたわけでありますが、要するに借りやすくなるわけであります。それ自身は大変結構なことです。また、いたずらにいろんな制約を加えることはよくないということを承知しておりますけれども、しかし、安易に借金に依存してしまうという危険性はやはり回避しなければなりません。特に今の若い人たちはカード世代と呼ばれる世代です。カード世代。だから、借りることに余り抵抗を持っておりません。その点ではきちんとした営農計画、営農指導、そして営農経営計画が極めて大事だというふうに思っています。そういった丁寧な対応が求められると思いますが、その対応はいかがですか。
  158. 上野博史

    上野政府委員 まさに委員の御指摘のとおりだというふうに考えておりまして、この農業改良資金制度は、もともと制度本来の内容として、普及事業との関連のもとに営農計画を立てて所要の資金を供給する、こういう連関関係にあるわけでございますので、今後ともこの普及事業で十分に面倒を見ながら、濃密指導をしながら、資金の有効な活用につながっていくように努力をしてまいりたい、かように考えます。
  159. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう一点、せっかく制度をつくっても、これが広く知らされなければその効果を果たさないわけであります。今回の制度は、農外から新規参入の青年に対しても門戸を開いていくのだというふうに言われておりますし、そのことは大変結構なことでありまして、私たちの周りを見渡すと、元サラリーマンで北海道へ農業に、ぐるみで行ってしまったというような人も結構おりまして、やはり大事だな、そういう面も伸ばさなければいけないなと思っているのですが、そうなりますと、農村地域だけの宣伝だけではなく、広く都会で働く青年に対しても知らせていくことが大事ではないかというふうに考えますが、この点ではいかがでしょう。
  160. 上野博史

    上野政府委員 この点につきましても委員のおっしゃられるとおりだというふうに考えます。農業改良資金のあるものは農村部の利用に限られてくるというものももちろんあるわけでございまして、市町村や農業委員会、農協という、普及事業やなんかと関係の深いそれぞれのところにも十分な対応ができるようにPRをいたしたいと思いますけれども、それのみならず、今お話ございましたように、このごろ農外からの新規参入を希望する方、こういう方々がそれぞれの相談窓口に直接訪れておられるということもございますので、そういうところにも今回の改正内容を十分に周知徹底を図る、あるいは、一般的にいろいろな媒体を使いましてPRにも努めてまいるというふうに努力をしてまいりたいと考えております。
  161. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 EC諸国では、若者の就農を促すために奨励金を出したり、あるいは借入金の利子補給や特別な投資助成を行っているわけでありまして、日本でもこれからは少なくともEC並みの努力を重ねていくべきではないか、こういうふうに考えます。  ところで、最後になりますが、先ほどからも問題になっております新政策の問題について、時間のある限りただしていきたいと思うのです。  先日出されました「新しい食料・農業農村政策展開の基本的視点と方向」において、「農業を職業として選択し得る魅力あるものとするため、農業構造の見通しを踏まえ、労働時間は他産業従事者並みの水準、主たる従事者一人当たりの生涯所得も他産業従事者と遜色のない水準とすることを目標として、稲作中心とする十年程度後の望ましい経営体像を提示。」されたわけであります。  この中では、農業生産法人を中心とする担い手の再編を打ち出しているわけでありますが、問題は数多くありますが、現在の農業経営の大多数である家族経営が一層圧迫されることになりはしないか、また大企業の農地所有を認め、農業経営に乗り出すということにならないかという点について、大臣の御見解を明らかにしてください。
  162. 田名部匡省

    田名部国務大臣 再三申し上げておりますように、経営管理能力にすぐれた企業的経営のできる担い手を育成したい、これが基本であります。先ほどもこの担保制度のことで、余り借りやすくしてという御質問もありましたが、私も基本的に余り賛成でないのです。借りやすくするということは、返すときに大変ですから。今までもいろいろな制度、漁業の方を見てまいりまして、安いから借りておかなければ損だというので、借りるのはいいのですが、いよいよ返すときには非常に苦しいということで、これをまた助ける資金を用意するということも、経営というものは一体どういうものかというそろばんをきちっとはじいて、借りた方がいいかどうかということをやらないとやはりうまくいかないという観点から、これは私は何回も申し上げてきました。  それから、一般の企業が農業に参入ということの議論は今いたしておりますが、私は、基本的には選択肢は広くしておいた方がいい。ただ、農地をどうするかという問題がありますから、株式会社がいいのか何がいいのか、これは別として、例えばどうしても自分で生産をして、農業等は使わない、そういうものはきちっとして、それでコストはこの程度で、スーパーもあろうし、いろいろなところでやりたいというところもあるかもしれぬ。これはわかりません。ただ、何となく米や麦には参入はしないだろうと思いますが。  いろいろ考えられることで、例えば家族農業でありますと、卑近な例で、親が子供に給料を払っていない。給料をもらえないところで若い人たちが一体本気で働くだろうかという心配、私はあります。ですから、そういうことをするためには、休みもとる、労働時間も。他産業並み、こうなってくると、ある程度のそういう形をとらないと無理なのかなということもあります。いいか悪いかは別です。  逆に考えても、農業だけではなくて、例えば農家は別な、自分でホテルを経営する、あるいはこれもやるという場合に、自分でつくった物はそこへどんどん供給できるという逆の立場もあろうと思うのですね。ですから、いいか悪いかは議論の上で出していかなければならぬわけであります。  一方では、契約栽培等、それでやるというのもありますが、それだといわゆる無農薬、有機栽培、そうしたものの管理ができないとかいろいろございまして、農家もこの方が一番いいということであれば何も拒否することでもないし、実態としてうまくいくのかどうかという、農家が安定した賃金体系の中でやっていけるのかどうかということもあるかもしれません。いずれ検討いたしたいと思います。
  163. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 見せていただいた新農政の中間まとめみたいな報告書の中には、その農業生産法人の要件の検討に際し、「投機又は資産保有目的での農地取得につながることとならないよう留意。」したい、こういうふうに書かれているわけです。  これは私は、非常に狭い概念だというふうに言わざるを得ません。現在のリゾート開発の現状を見ましたら、それは一層明らかではないでしょうか。大企業がリゾート開発に一斉に乗り出して、今や全国各地にリゾートのバブルのつめ跡が及んでいるわけであります。しかし、その大企業の行動というのは、あれは投機だったのでしょうか。恐らくリゾートに踊った大企業の行動というのは、あなた方の判断では投機ではなかったはずであります。企業というのは、その行動の動機はもうけであります。もうからなければさっさと撤退しますし、短期的なものでも当座のもうけになるとしたらどんどん参入をしてくるでしょう。農業は、おっしゃったように自然に左右される産業であって、長期間安定的にもうけるということは非常に難しいものであります。ですから、もうかる期間中は参入をし、それが困難になれば撤退をする、それは企業の行動としてはむしろ当然のことなのであります。  しかしながら、一億二千万の食糧確保するべき農業生産にこういうことでかかわってくるということになれば、大変なことになるんじゃないか。そういう点で、その投機につながることとならないよう留意したいということは、投機でなければ大企業の参入もあり得るというふうに考えていいわけですか、大臣
  164. 海野研一

    海野政府委員 紙に書いてあったことの問題でございますので、ちょっと私から申し上げますが、投機や資産保有につながらないように配慮したいということは、最初の意図がまじめに農業をやろうということであれば、後は、例えば災害があってうまくいかなかった後、その農地をどうしようと構わぬという意味では決してないのでございまして、何といいますか、最初にいかにまじめな意図を持って入ってきたとしても、その後いろいろなことから、事実上投機や資産保有につながってしまうというようなおそれは十分考えて検討をいたしたいということでございます。
  165. 田名部匡省

    田名部国務大臣 最初から投機目的でこのことを考えているわけでなくて、人と物と金が必要だ。物は農家が保有しているわけでありますから、仮に会社にしたとしても農地は農民が持ってできないのかとか、あるいは大企業、大企業とおっしゃいますが、大企業が米づくりやるとか麦づくりやると私は思えないんですね。  もちろんそういう目的でやったんであっては、もう最初からそれは受け入れるわけにいかぬし、撤退しても農地はきちっと農家のものとして残るわけでありますから、いずれにしても、まだどれがいいのか私もはっきりしたものを持っておりませんが、何にしても農家がこういうことでやった方がいいという場合に、その選択肢を摘んでおくということがいいのかどうかという問題もあってまだ検討しておりますので、決して大企業が土地を買い占めて、そんな田舎の農地の真ん中を買って何かしようとしたって、道路のそばなら別でありますが、そういうことは私どもは心配しておるわけではありません。むしろ農民をどうやってよくしていくか、人と金を持ったそういう体制でうまくいける方法があればなあということでありますから、まだ十分検討してまいりたいと思います。
  166. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので終わらざるを得ませんが、昨年の世界消費者大会でも、持続できる農業ということが消費者としての大きな願いになりました。持続できる農業というのは、その根幹は家族経営にあると思うのです。それが大きな禍根を残すようなものになっては大変だし、そういう点では日本の農業にとっても重大な問題でありますので、私はその点を強く主張して、きょうの質問は終わります。  ありがとうございました。
  167. 高村正彦

    高村委員長 小平忠正君。
  168. 小平忠正

    ○小平委員 農業基本法制定から三十年たちまして、我が国農政は農業の所得の向上を基本的な目標に、生産性の飛躍的向上、価格政策展開等産業としての農業、そういうことで懸命に進んでまいりました。  しかし、一方では、高度成長の中で農村から労働力が流出し、農村の過疎化と高齢化が進んでしまったわけであります。今や、まさしく農村に残って農業を継ごうという若者は減る一方で、新規学卒就農者の数も実に寂しい状況になっていることは御承知のとおりでございます。  なぜ若い人たち農業から離れ、農村から離れていってしまうのか。魅力のある農業農村をつくり出し、若い人たちをそこへ呼び戻すのには何が必要なのか、このことは、きょうの質疑でも既に質問があったと思います。私は、まさしく今のこの問題は、農政にかかわる一人一人がそういう素朴な疑問、問題の原点に立ち返って再考してみる必要が特にあるのではないか、こう痛感する一人でございます。  今回の農業改良資金制度改正も、深刻な後継者不足の中にあって新農政に示されるであろう担い手対策全体の骨組みに沿って、新規就農促進のための一手段としての政策的効果を期待しているものと私は思いますが、まず大臣、このことは御答弁あっておりますけれども、私からも、農業後継者減少を続けている原因についてどのようにとらえておられるのか、そこのところをまずお聞かせを願いたいと思います。
  169. 田名部匡省

    田名部国務大臣 何といっても、御案内のように平成二年には千八百人に新規学卒就農者減少したわけであります。いずれにしても後継者がいないということになると農業はもう成り立たぬということでありますから、この点に全力を挙げて、私どもは取り組んでいかなければならぬ、こう思っております。  減少した原因でありますが、いろいろ考えられるわけでありますが、何といっても自然の気候に左右されて収入が不安定である、あるいはそれだけの規模がないためになかなか農業だけで生活ができるような状況にはない、さまざまな条件があると思います。あるいは生活環境がどうもよくないということで、若い人たちに魅力がなかったこともある、私はこう思っております。  したがいまして、我が国農業農村にとって、意欲能力の高い青年農業者育成確保するということは大事でありますから、前段に申し上げたようなことを整備しながら、本当に農業意欲を持って取り組んでもらえる基盤というものを整備していかなければいかぬ、こう思っております。
  170. 小平忠正

    ○小平委員 大臣御答弁のように、厳しいという条件のもとに、また生活環境が悪いという、まさしくそのとおりだと私も思います。  そこで、そのことにこれから視点を据えて質問していきたいと思うのでありますけれども、その前に、まず今回のこの制度改正の目玉の一つは、農外からの新規参入者農業経営を始めるときに必要な資金貸付対象に加えたことであると言えると思います。確かに新規参入者人たちは知識や意欲も十分にあり、実際に地域における中核的役割を担う期待が大であると思います。こういう人たちの就農を支援していくことは重要なことであって、私も大いに積極的に進めるべきだと考えているのであります。  そこで、農業経営を開始するのに何が必要か、このことを考えてみますと、当たり前の話なんですが、まず農地が必要、農機具や施設、倉庫等々ですね。さらには種や農業、肥料などの生産資材、そして住宅も最低限の必要条件であると思います。しかし、農外新規参入者のように農村に生活基盤を持たない人がこれから農業に取り組もうというときには、この当たり前のことが殊のほか大きな障害になっていることも多いのではないか、こう思うのであります。  そこで、今回本改正による青年農業者育成確保資金の中で経営開始資金の具体的な貸付対象について、さきに挙げましたさまざまのものの中で、どういったものに資金が貸せるのか、あるいは貸せないのか、またどういう条件でなら貸せるのか、現在予定されている内容をぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  171. 上野博史

    上野政府委員 具体的な青年農業者育成確保資金経営開始資金についての貸付対象いかんという御質問でございます。  我々が予定をいたしておりますのは、従来からやっておりました親の経営を将来承継をする農家子弟、これは従来どおり対象になるわけでございますが、それのみならず非農家の出身の新規参入を希望する青年あるいは離職をして就農しようとする離職就農青年、こういう方々、男女を問わず幅広く、年齢については先ほど三十歳代というお話を申し上げましたが、そういう方々をひとしく対象とするというふうに考えているところでございます。  貸し付けの条件というのは、本資金の性格上、近代的な農業経営の基盤の形成に必要な資金ということでございまして、借受者は経営の基礎の形成のための明確な計画及び年次別の経営発展計画というものを定めることが必要だ、それから貸付対象の経費といたしましては、経営を開始するのに必要な種苗、家畜、資材、施設、機械の導入に要する経費というふうに考えているところでございます。
  172. 小平忠正

    ○小平委員 局長、その御答弁はわかるのですが、私は、次にこのことをお聞きしたいのです。  今の質問でも私申し上げましたように、農村に入って農業を営もうと思えば、土地を購入したり借りたり、あるいは機械を持つというだけではだめであって、まず農村に生活する、いわゆる青年、若い人たち農村に生活するための基盤をしっかりとつくる、すなわち住む家を持つことがまず基本的な要件ではないかと私は思います。  そこでお伺いしたいのですが、新規参入者農村で住む家を確保するために、国や自治体、公的機関などによる何か特別な施策があるかどうか、これについて簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  173. 海野研一

    海野政府委員 農業後継者であるということをもって特別の住宅のための制度というのはございませんけれども、特に農村の場合、まさに今の集落の周りに、現在ある集落に近いところに住んでいくということが大事だと思います。  そういう意味で、昨年度から特に住宅を頭に置きまして、集落周辺の農地を整備する、同時に宅地予定地等を生み出していくというような農村活性化住環境整備事業というのを始めたところでございまして、これは既に宅地が手当てされている場合には関係ないわけでございますけれども、そういう格好で後継者が親と別の住宅に住むという格好での住宅需要にこたえるような事業をつくったところでございます。
  174. 小平忠正

    ○小平委員 幾つかのそういう事業があることは私も伺っております。ただ、私がここで問題にしたいことは、この問題はいわゆる新規参入者だけでなくて、農家子弟後継者にも同じく当てはまることだと私は思うのです。  なぜかといいますと、今私は視点を変えて、農業が今抱えている問題を見詰めてみたいと思って申し述べているのですが、つまり農家の子弟が家業である農業を継ぐ上で何がネックになるのか、単に収入が確保されればいいのか、あるいは技術や機械によって仕事が楽になっていけばいいのかと考えていきますと、必ずしもそれだけではないのではないか。農村で快適に暮らすことができなければ、若い人たちにとって農業は魅力的な職業だとは思えないだろう。まして配偶者問題、お嫁さんの来手もないという、そんなことでは農家若者農村に残って農業を継ごうという気持ちになれないのも無理からぬことであると思うわけであります。結婚して家庭を築くという、そんな当たり前のことが今の農村若者にとっては大変な問題になっているわけであります。  この配偶者難の原因についても、農業がもうからないだとか、あるいは三Kといいますか、厳しい労働条件のせいだとかいろいろ言われております。確かにそれも大きな要因でありましょう。しかし、私は一般的に言って、母屋に親子三代あるいは四代が一緒に暮らしているといった農村生活のスタイルが、親とは同居せずつかず離れずプライバシーを保ちながら暮らし、夫婦水入らずで自由に生活をエンジョイするという、そういう今の若い女性の生活志向というか、そういう面に合わない部分が多過ぎるからではないか、こんなふうにも思うのですが、いかがでしょうか。私はそう思うのです。  それなら敷地の中にもう一軒息子夫婦のための住宅を建てるとか、さらに言えば、少し離れたところにあります町の中に息子夫婦が家を持って、例えばサラリーマンが出勤するように農作業に毎日通っていくとか、そういうそれぞれの生活観に合った農家生活というものが、特に若い人向けのそういうものがあってもいいんじゃないか、こう思うわけであります。そういう点では、既に親の家という生活の場が存在する農家子弟にとっても、家の問題は、結婚を考えるときに別な意味で就農に踏み切る上での一つの障害になっている可能性があるのではないか、こう思えるわけであります。  そこで、農家子弟農業を始めるに当たって気になるであろう配偶者問題の原因なり背景について、またそのことと農家生活とのかかわりといったことについて、政府はどのような御認識を持っておられるのか、この際、お聞きをしておきたいと思います。
  175. 上野博史

    上野政府委員 農業後継者の配偶者難、これがどういうような原因で起こっているのかということについては、いろいろ考え方があるわけでございます。今委員指摘のように、多世代同居の問題がある、それに対応するためにいろいろな工夫がなされておって、問題を解消してうまくいっている事例もある、それはそのとおりだと思うわけであります。  そういう住居の問題でいえば、これは必ずしも所要の資金の問題だけではないと思うわけでありますけれども、それが解消すればお嫁さんが来るというならそういうことをするということが非常に大事な話になるだろうと思うわけでございますが、一般的に言われておりますのは、農業労働が厳しい、あるいは労働に対する報酬が適正に支払われない、あるいは多世代の同居があるというような都市と農村との生活の習慣の違いということが言われているわけでございます。ただ、そうはいいましても農村にも立派なお嫁さんが参ってうまくいっているケースもあるわけでございまして、この配偶者の問題というのは極めて個人的な問題であり、行政として対応が難しい問題だというふうに考えられるわけでございます。  しかしながら、何かうまい工夫はないのかということになりますと、月並みな話でございますけれども農業を魅力ある産業として育てる、住みよい農村をつくり上げる、あるいは意欲を持って農業に取り組めるための条件整備を行うという、そういう基盤的な整備をすることが非常に大事であると考えるわけでございます。それからまた、このごろの若い農業者の方々の意識の変化に合わせまして、機械化の推進による農家労働の軽減をするとか、あるいは農休日の設定をする、そういうようなことによりまして労働環境の改善を図る。それからさらに、農村におきます婦人の地位の向上、これは我々の方ではいろいろな観点から、今問題点の解明と対応策の検討について努力をいたしているわけでございますが、そういうことを図っていくことも、この配偶者問題解決への環境を整備をすることにつながるのじゃないかというふうに考えているところでございます。
  176. 小平忠正

    ○小平委員 私が主張したいことは、若者農村に引き戻すために、あるいは引き寄せるために生活面から考えてみることも大事である、そんな意味合いからるる申し上げた次第であります。そういう意味においては、私は、住宅資金の融資や低廉な公営住宅の建設など、何かもう少し農業後継者に特別の手だてがあってもいいようにも考えるわけであります。  いろいろ申し上げてきました。私は本当に強調しておきたいことは、我々が農業を考えるときに、ともすれば生産性や所得といった経済性、言いかえれば産業としての農業をどうするかという議論がとかく先行しがちで、生活の場としての農村の姿に関する議論なり対策がまだまだ不十分ではないか、そう思えるわけであります。今回の農業改良資金制度改正も、そういう意味では、産業としての農業という側面からの就農支援策の一つであって、その内容自体、私も大変結構なことだ、こう思っております。しかし、この制度を初めさまざまな担い手対策が十分に効果を上げ、あしたの農業を支えてくれる若い農業者の人々がふえて、なおしっかりと農村に根づいてくれるようになるためには、家の問題を初めとした農村の生活をどうしていったらいいのかということについて、もっと考えを深めて政策全体に反映させていくよう進めていく必要がある、こう思うわけであります。  そこで最後に、この農業問題の根幹である担い手問題について私から述べてまいりましたけれども、こんな諸点も含めて、大臣の見解、今後の取り組みと申しますか、そういうところをぜひお伺いしておきたいと思います。
  177. 田名部匡省

    田名部国務大臣 お話しのとおり、ただ産業としてだけ考えているわけではありませんが、いずれにしても一定の所得がなければ、なかなか後継者が育たないということも一方ではあると思うのです。したがって、私は、再三経営管理、企業的感覚、こう申し上げますのは、これはどの産業でも同じ、商売でも同じでありますが、やったから絶対にもうかるという保証はないけれども、自分でこういうことでいけばこれだけの借り入れをして、そして返済をしながら家も建てるし、こういうものもやっていく、この感覚といいますか、そういうものがなければいかぬと思うのです。ですから、何回も申し上げておるわけでありまして、今の若い人たち意欲を持ってそこまでいけるように私たちも政策誘導はしていく、しかしやるのはやはり農家、担い手自身でありますから、そういう意欲がなければどんな手当てをしても成功していかないということもあろうかと思います。  この間も何テレビかわかりませんが、畜産か酪農で東京から若い夫婦が、子供二人おって、そして一生懸命取り組んでいるテレビ番組がありました。私も見ておりました。その人の意見を聞いたら、いや、都会で生活しているより子供たちのためにはこの自然の環境、こういうところで教育できることは、人間の心を取り戻したような気がする、こういう話を聞いて、私は本当に安心をしました。ですから、そういう人たち経営が成り立って年々いろいろな整備をしていく、そういう努力をしていただけると、本当に農業がいいな、こう思って見ておりました。  全部が全部そうだとは思わないのですね。やはりその人の経営能力といいますか、そういうものが最後はあらわれてくるであろうということで、そういう研修もしていかなければならぬし、農協でも営農指導ばかりではなくて、何とか経営指導をできないだろうかということも申し上げておるのでありますが、一方では生産を上げる努力をする、一方では快適な生活を営むためのいろいろな対策を進めていく、両々相まって後継者育成されていくものだ、このような観点から、食料、農業農村政策に関して今鋭意検討をいたしておるわけでありまして、いずれ総合的な施策の展開に努めてまいりたいと考えております。
  178. 小平忠正

    ○小平委員 最後に、私は、今新政策、そういう観点から結論が出されていくと思います。そして、担い手が、いわゆる若い後継者意欲を持って農業に取り組んでいける、そういう施策を講じていくという、もちろん大事でありますけれども、今大臣お話の中であった都会的な生活、そういうこともちょっと触れましたけれども、私は、やはり若者の精神構造というのは時代によって変遷すると思います。したがって、今若い人たちが何を求めているか、そういう生活観というかそういうことを考えるときに、それにマッチした生活、言うならば都会的な生活をしながら農業にいそしむ、そんなことも、若者を引きつける意味においては大きなインパクトというか効果があるような気がいたします。  したがって、私は、そういう意味において農業というものを生活面からもとらえて、そして若い人たちが、後継者を含めて、新規参入者も含めて農村に目が向くような、そういうことをこれからのいろいろな施策の中で講じていってもらうと、おのずからこの配偶者問題もいい方向に向かっていく、こんなように思うわけであります。  そんなことを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  179. 高村正彦

    高村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  180. 高村正彦

    高村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出参議院送付農業改良資金助成法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  181. 高村正彦

    高村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  182. 高村正彦

    高村委員長 この際、本案に対し、東力君外五名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。佐々木秀典君。
  183. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党及び進歩民主連合を代表して、農業改良資金助成法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農業改良資金助成法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   近年、農業就業者減少及び高齢化が一層深化する中で、次代の農業を担うべき後継者の激減、耕作放棄地の増大等農業経営基盤の脆弱化が進行しており、農業の振興及び農村における地域社会の維持が困難になりつつある。   このため、農業及び農村の健全な発展と食料の安定的供給を図る観点から、将来に展望の持てる農業を確立して、農業を魅力ある産業とするとともに、優れた担い手の育成確保を図ることが農政上の重要かつ喫緊の課題となっている。   よって政府は、中・長期的視点に立った担い手対策の確立・推進に万全を期するとともに、本法の施行に当たり、左記事項の実現に遺憾なきを期すべきである。       記  一 農外新規参入者、Uターン青年及び農家子弟の就農を促進し、その円滑な定着を支援するため、青年農業者育成確保資金の積極的な活用及び適切な運用に努めること。    また併せて、新規就農ガイド事業等の情報提供活動の拡充、農地等取得資金等の制度資金の活用、改良普及員等による営農や生活に関する指導・助言、農業者大学校等における研修に対する援助等総合的な施策の推進を図るとともに、農業改良普及所、農業委員会等の関係機関の連携・協力体制の一層の充実が図られるよう適切な指導に努めること。  二 研修教育資金貸付対象範囲を、婦人、中核農家等に拡大するに当たっては、これらの者が家庭生活や農業経営中心になっていることに配慮し、研修期間等について弾力的に対応すること。  三 経営規模拡大資金については、生産方式改善資金との総合的活用によって土地利用型農業経営基盤を一体的に整備できるよう、その運用改善に努めること。  四 生産方式改善資金に追加される加工方式導入のための資金については、中山間地域の活性化及び農業の振興並びに転作作物の定着化等に資するようその適切な運用に努めること。  五 物的・人的担保制度運用に当たっては、農業改良資金を借り受ける農業者の意向を十分尊重するよう指導すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  184. 高村正彦

    高村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  東力君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  185. 高村正彦

    高村委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田名部農林水産大臣
  186. 田名部匡省

    田名部国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     —————————————
  187. 高村正彦

    高村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 高村正彦

    高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  189. 高村正彦

    高村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会