○有川
委員 今御回答をいただいたわけでありますが、簡単に包括的な報告がございましたけれども、今最後の方に環境の破壊あるいは
担い手の減少、
高齢化、そうしたものが何を原因として今日起こってきたのか、そこの総括を私はお伺いをしたわけであります。そこがきちっとなければ、しからばこうした足りない面には今後こう
対応する、この正しい、具体的な、将来性のある、実効性のあるものは生まれてこない、こういう立場でもお伺いしたところであります。
ただ、そこで申し上げますが、今日までの農政はやはり資本の論理が貫かれまして、
商工業優先、貿易自由化のそういう形の
産業政策の
展開のもとに、
農業が犠牲にやはりなされてきたのではないのか。
日本経済の国際化は、都市と農村の不均等な発展を加速をさせると同時に、東京一極集中化も起こって、農産物輸入自由化によって食糧の自給率が大きく低下をいたしました。
昭和六十一年の四月に、国際協調のための経済構造調整研究会の報告書の中で、いわゆる前川レポートで、貿易黒字削減のために農産物を含めて市場開放を徹底化し、輸入を
拡大するとともに内需
拡大をするという路線が打ち出されました。このとき政府の農政から食糧自給という言葉が消えまして、食糧供給、こういう形になりました。そして今日も言われておりますが、
生産規模の
拡大、中核
農家の
育成、企業として自立できる
農業、国際化に太刀打ちできる
農業、足腰の強い
農業の確立等々の一大合唱が始まったわけであります。これは明らかに国際化の
社会の中で、
産業優先の、企業優先の輸入自由化を進めるそういう立場から、
農業もそれに
対応できるものをつくりたい、こういうことだったのではないかと思います。
また、内外格差を理由に、コスト低減を強く一方では農民に強いてまいりました。政府の買い上げ、支持価格は年々引き下げられました。
生産者が
生産性向上に自助努力した部分はかなりの部分が価格引き下げで消滅するという、まさにそういう
状況になったのではないでしょうか。また
農業の場合は、天候異変や台風、集中豪雨など災害も多く、それに左右されるわけでありますが、第一次
産業の場合には、他の
商工業のように、合理化や
技術革新で計画的にコストが短期間に切り下げられて
生産性が高まるという性質のものではないと思っております。結果として、
規模拡大等や
高齢化による
機械化貧乏、化学肥料の過量使用と単粒化構造による表面の流亡、不活性化土壌の塩濃度障害、窒素過多などの現象も進行いたしまして、
農業を主体とした
農業となり、河川、湖沼、飲料水まで汚染されるという現象まであらわれてまいりました。
畜産は
一定の
生産性向上の中で成果を上げた、このようにおっしゃっておりますが、今複合
経営を盛んに言いますけれども、かつては私の鹿児島あたりでは、各
農家に豚が数頭、数十頭おりまして、あるいは馬、牛がおりまして、その肥料が有機肥料として有効に土に還元をされるというサイクルがありました。現在は、特定の大型養豚、養鶏、そういうものに集約化されまして、結果としては消毒剤と抗生物質の多量使用で安全性が問われる、あるいは一方でふん尿の処理能力がなくて垂れ流し等による畜産公害をまき散らすなど、自然環境の破壊と
施設費の重圧が大きくのしかかってきておるのも現状であります。大型養豚家、
農家が次々と倒産をするという事態も現実には起こっておるわけであります。
こうした資本の論理、企業優先の
政策、つまり採算が合わなければ食糧は安いものを外国から買えばよい、こうした言葉が出されておったように、このような資本のただもうかればよいといった理論、利益
中心、企業優先の
政策から、今農政は一大転換を図らなければならない。かつて、今言われておる複合
経営の柱になるとも言われるオレンジや牛肉の自由化、これも今、大きく具体的な現象があらわれつつございます。後でまたお伺いしますが、さらに主食である米までも今危険な状態にさらされ、政府の方は一部は不協和音が続出するという状態も続いておるわけであります。そう
考えてまいりますと、これからの農政は国境調整あるいは自給率向上の
対策、
土地利用型計画や
農地の
確保、価格
対策、
後継者対策や農村
社会維持のための福祉、教育、文化、
生活対策など、これらの問題も明らかにしていかなければならないと思います。
さらにまた、
農業予算を見てまいりますと、一九九〇年の時点で占める割合が一〇%であったものが、九一年で四・六%ということで大きく落ち込んでおるのも現状であります。農政は、
農業の農の農政ではなくノー政じゃないか、こういうことで、
展望もなく非常に不満を持ちながら、どうしようもないと焦りを
感じている
農家の
実態を
考えてみますと、こうした政府の今日までとってきた
施策に大きな誤りがあったのではないか、ここを一大転換をするというところからスタートしなければ、
農業の再建というのは極めて厳しい
状況にまで今落ち込んでおるというふうに思っております。
その辺のことに対して大臣はどのように把握されながら、今度の新農政を確立されようとしておるのか、もう少し具体的に御見解をお聞かせを願いたいと思います。