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1992-05-13 第123回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年五月十三日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 高村 正彦君    理事 岩村卯一郎君 理事 金子徳之介君    理事 杉浦 正健君 理事 東   力君    理事 簗瀬  進君 理事 石橋 大吉君    理事 前島 秀行君 理事 藤原 房雄君       赤城 徳彦君    石破  茂君       内海 英男君    大原 一三君       金子原二郎君    亀井 久興君       鈴木 俊一君    西岡 武夫君       保利 耕輔君    星野 行男君       松岡 利勝君   三ッ林弥太郎君       御法川英文君    有川 清次君       佐々木秀典君    志賀 一夫君       田中 恒利君    竹内  猛君       辻  一彦君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    目黒吉之助君       倉田 栄喜君    西中  清君       藤田 スミ君    小平 忠正君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君  出席政府委員         農林水産政務次 二田 孝治君         官         農林水産大臣官 馬場久萬男君         房長         農林水産省経済 川合 淳二君         局長         農林水産省構造 海野 研一君         改善局長         農林水産省農蚕 上野 博史君         園芸局長         農林水産省畜産 赤保谷明正君         局長         農林水産省食品 武智 敏夫君         流通局長         食糧庁長官   京谷 昭夫君         林野庁長官   小澤 普照君         水産庁長官   鶴岡 俊彦君  委員外出席者         内閣総理大臣官 関根 康文君         房参事官         警察庁刑事局保         安部生活経済対 荒木 二郎君         策室長         警察庁刑事局暴         力団対策部暴力 石附  弘君         団対策第一課長         環境庁大気保全 丸山 晴男君         局企画課長         外務省アジア局 武藤 正敏君         北東アジア課長         大蔵省理財局国 宝賀 寿男君         有財産第一課長         文部省初等中等         教育局教科書課 矢野 重典君         長         厚生省生活衛生 牧野 利孝君         局食品化学課長         厚生省生活衛生         局水道環境部水 藤原 正弘君         道整備課長         農林水産省経済 須田  洵君         局統計情報部長         中小企業庁計画 太田信一郎君         部計画課長         運輸省海上技術 山下 邦勝君         安全局総務課長         海上保安庁警備 赤石 憲二君         救難部管理課長         海上保安庁警備         救難部警備第一 野崎 典重君         課長         海上保安庁警備 徳野  勤君         救難部救難課長         郵政大臣官房人 内田 幸一君         事部厚生課長         労働省労働基準 出村 能延君         局補償課長         建設省建設経済 橋本 万里君         局宅地開発課長         参  考  人         (住宅都市整 鈴木 政徳君         備公団理事)         参  考  人         (住宅都市整 依田 和夫君         備公団理事)         農林水産委員会 黒木 敏郎君         調査室長     ――――――――――――― 四月二十四日  米の市場開放反対に関する請願岩村卯一郎君  紹介)(第一七七九号)  米の輸入自由化反対等に関する請願寺前巖君  紹介)(第一七八〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三六号)(参議院送付)  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 高村正彦

    高村委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩村卯一郎君。
  3. 岩村卯一郎

    岩村委員 おはようございます。  ことしは例年になく天候の不順があるようでありまして、晴れは少なくて、気温が低く雨が多い、何か日本農業を暗示しているような感じがして、余りいい感じがしないわけであります。  こんなときに農水省では、新政策検討本部におきまして新しい農政について鋭意研究を重ねてこられました。聞くところによりますと、五月中に提言を発表するといったような話も伝わってきておりますが、これに対しまして、農業に関係する方々を初め、本委員会におきましてもまたそうでありますが、各階層に至るまで、農業をめぐる極めて厳しい情勢は一刻も遅滞を許されないほど深刻になっておるということで、期待と不安と錯綜した感じが入りまじっているわけであります。農産物価格の引き下げ、あるいは海外農産物輸入の増加、さらには食管改変等のもとで、我が国農業はまさに危機的な状況にあります。早急に抜本的政策展開が必要であって、これまでのような専業、兼業を含めた農家対応では四百万農家は共倒れのおそれがあり、この際、農業生計を立てようとする人に役立つ政策展開が必須である、こういった現場の声が悲痛の叫びとなって聞かれてまいってきております。  そこで私は、限られた時間でございますので、その中から、当面する最大課題であります高齢化後継者難による担い手確保に一向に好転が見られない、こういう状態を見まして、これをどうやって解決していくか。特に、土地利用型の稲作担い手対策中心にして、農水省の確固たる方針を順次質問してまいりますので、適切に、簡潔に、要領のいい御返答をお願いしたい、こう思う次第であります。  まず、農業後継者難あるいは担い手不足、こういうふうに言いますけれども、内実は、花卉あるいは園芸、さらには都市近郊における作物生産といったものの部門には若者参入が見られまして、生き生きとした生産活動展開をしているわけであります。問題は、稲作などの土地利用型農業である、こう思います。特に稲作日本農業のシンボルであり、稲作部門担い手不足日本農業全体を暗いイメージに仕立て上げております。そのことが農業への参入を阻害しているという悪循環につながっているのじゃないか、こういう印象を強く受けるわけであります。  花卉、蔬菜などは、新しい技術を試行できるということが若者魅力を持たせておるわけであります。しかしながら、稲作創意工夫の余地がない、こういったことから敬遠をされる。そして、イノベーション、つまり、技術革新を重ねて生産性の高い、収益性の高い目標を達成した商工業に流れているというのが実情ではないか。つまり、稲作に対する魅力と明るい展望が持てない、こういうことが担い手不足要因になっているものと考えるわけであります。この要因というものがきっちりと把握できない限り、対応ができないわけでありますが、農林水産省当局ではこの要因についてどのような認識を持っておられるのか。まずお尋ねをしたいと思います。
  4. 上野博史

    上野政府委員 土地利用型の農業をめぐる状況といいますのは、今委員御指摘ございましたように、農業者方々老齢化が進んでまいりまして、それに対応しただけの若い新たな青年農業就業者確保が十分できない、このことが一番大きい問題だろうというふうに考えるわけでございます。  したがいまして、担い手確保につきましていろいろな手だてを講じていかなければならない。その一つが、私ども国会に提案をいたしております農業改良資金助成法の一部改正案ということにもなるわけでございますけれども、基本的に限られた農業従事者方々、この方々がうまく労働力を寄せ合って効率的な生産体制をいかに築き上げていくか、これを考えることが極めて重要な話ではないかというふうに考えているわけでございます。このために、今省内に中長期的な展望に立った総合的な検討をやるということで、新政策検討本部を設けまして検討しているところでございます。  ただ、その検討に先立ちまして、平成二年三月に土地利用型農作物生産性向上目標というようなものを示しておるところでございまして、この目標に向けまして、経営規模拡大あるいは生産組織の実現、それから共同利用施設整備というようなことにつきまして、各般の施策を集中的に実施するということで努力をいたしているという状況でございます。
  5. 岩村卯一郎

    岩村委員 今若干対策についてもお触れになりましたが、要はどのような手段あるいは具体的な政策によって担い手確保育成するかということが最大課題であるわけでありますが、担い手対策中心というのは、今後規模拡大を志向する中核的農家農業生産法人を含む生産組織とすべきであるというふうに私は考えるわけであります。つまり、新しい担い手像として企業的家族経営、さらには協業的な経営、さらには農業生産法人、こういった形式等中心として施策展開をすべきである、こういう生産現場の声も強く聞かれるわけであります。この点についてはいかがに考えられるのか。  また農水省は、育成すべきこれらの担い手経営基盤である営農類型別耕作面積はどれくらいを想定しておられるのか。この理想とする担い手像耕作面積経営面積と申しますか、これらは一体どのように想定されているのか、お示しをいただきたいのです。  この場合、日本農業特に土地利用型農業というのは、欧米諸国に比して分散錯圃でありまして、絶対的に規模が小さく、農地流動化が飛躍的に進んだとしても、規模において肩を並べることは不可能であるということを前提にすべきであって、一部の意見で、日本においては米国並み規模あるいはそれに匹敵する規模農業経営が可能であるといったようなことをおっしゃる方もおりますけれども、我が国の地形、気象条件、水利一圃場条件考えますと、これはまさに虚言と言ってもいいのではないかと思うのでありますが、この点についてもあわせてお聞かせをいただきたい。
  6. 馬場久萬男

    馬場政府委員 委員おっしゃるとおり、今後の担い手をどういう形で育成していくか、そのときにどういう類型のものを考えるかということは重要な問題でございまして、現在私ども種々検討しておるところでございますが、いずれにいたしましても、これからの農業経営を担う者というのは、農家経営意識を喚起しながら経営管理能力にすぐれて、企業的な経営ができるような者というふうに考えなければいかぬ、これが基本であもと考えております。  そういう観点から、一定規模の大きな、効率的、安定的な経営が可能となるような多様な担い手育成するということで現在検討しておりまして、おっしゃるように企業的な家族経営あるいは協業経営または農業生産法人、こういうような担い手それぞれ、その地域あるいは農村におきます位置づけ、いろいろございますので、一口に多様と申しておりますけれども、地域実態に即して育成していきたいというふうに考えております。  あわせてお尋ねでございますので、経営規模の御議論がございましたが、これも将来の土地利用型としてどの程度規模を想定するかということをいろいろ検討しております。特に、現在の技術水準なり機械化体系前提としてどのくらいの規模のものが適正であるか、委員おっしゃるように、アメリカとかほかの国と比べて同じものでなければならぬということではなくて、日本で今現実に実現している技術水準機械化水準というものをある程度前提にしまして、その中で効率的な生産単位を追求すべきだろうということで現在検討しております。  数値について具体的に結論が出ておるわけではございませんが、平成二年三月に公表しました土地利用型農作物生産性向上指針、これは農蚕園芸局の方でつくっております。そこにおきましては、現在の技術水準前提として、一ユニットの機械化体系を効率的に駆使して実現する水稲作業規模、これは作業規模でございますが、作業規模としては、生産組織としては二十から三十ヘクタール程度個別経営において六から十ヘクタール程度規模というのを当時策定しているわけでございまして、それらのことも踏まえて、今回検討していきたいというふうに考えております。
  7. 岩村卯一郎

    岩村委員 生産組織というのは、生産生活の分離による生活改善、休日等の就業条件経営管理技術向上等によって、今後土地利用型農業の大きな担い手となる可能性があります。したがって、むしろ現行の農業生産法人の抜本的な要件緩和を含めた育成対策、こういう検討をもっと進めるべきである、こういう声も強くあるわけでありますが、この点について当局はどういうふうにお考えになりましょうか。  さらには、こうした担い手育成が当面困難な地域において、そういうところでは地域農業公社あるいは第三セクター、農協による農地取得農業経営を認めて、担い手を補完する施策としての位置づけを与える、そうして機能が発揮できるように制度改善整備を図るべきではないか、こういうことが言われるわけでありますが、この二つの点についてあわせてお示しをいただきたい。
  8. 海野研一

    海野政府委員 まず最初生産組織の問題でございます。生産組織の中には、基本的な作業といいますか、一部の作業は個別の農業者がやりながら、特に大きな規模機械を動かすというような共同作業に適する作業だけをやっていく生産組織が、さらに全体の経営までやっていくものまでいろいろ幅が広いものがあると思います。しかし、いずれにしましても生産組織自体がその経営の中身をしっかりとした形にしていく、さらにそこで働くオペレーターの安定というようなことを考えますと、その生産組織が法人化していくというのは好ましいことだと考えております。ある場合には農業生産法人でない農事組合法人であったり、ある場合には農業生産法人になったりというようなことがいろいろ考えられるわけでございます。  そういう中で、特にそこでの労働力周年の消化でございますとか幅広い人材の活用というような面から、その生産組織、さらには協業経営のあり方というものには検討を加えているわけでございまして、必要に応じて農事組合法人なり農業生産法人なりの要件というものも、そのような内容に合わせて見直していくことが必要だろうと考えております。  それから、特に最近担い手の不足する地域におきまして、市町村の設立する公益法人、いわゆる公社と呼ばれている場合が多いわけでございますが、これが基幹的な農作業受託をしているというような事例が出てきております。これは、これから伸びていこうとする個別経営体との競合という問題がございますけれども、これを起こさない限り、当面担い手のいないところで農地を適切に管理していく上で一つの有効な方策だというふうに考えておりまして、このため、平成四年度からは農作業受託につきまして、市町村公社対象にして一定助成を行うというようなこともしているわけでございます。  さらに、今回農地法施行令改正いたしまして、そのような市町村公社農地保有合理化法人としてその土地を貸したり借りたりというようなこともできるようにしたわけでございまして、当然のことながら、借りたけれども転貸をする農家がまだいないような場合にはみずからそこで耕作をするというようなことになるわけでございます。  これらの制度施策を適切に活用いたしまして、地域実態に応じて、市町村公社が当面担い手の不足したところでの生産対応というようなことをやりながら、優良農地を適切に保全する役割を担っていくことを期待しているわけでございます。
  9. 岩村卯一郎

    岩村委員 今いろいろ施策展開を御答弁されましたが、なかなか思ったように進んでいかない。したがって、今おっしゃったことについての一層の充実強化を強く要望するわけでありますが、そのほかに担い手確保のためには、経営的な側面からいろいろな隘路が想定されます。市町村あるいは県などの地方自治体公的負担というものも可能にするために、何らかの国の対応を私は求めたいのです。  例えば、担い手不足稲作が特に影響を受けているところから、米どころ新潟県では真剣に担い手対策に取り組んで、平成四年から県の単独事業新規就農支援特別対策事業、こういうものを設けております。これは研修中の新規就農者全額県費負担で月額十二万四千円を保障するという新しい制度を発足させております。そのほかに、就農する場合の借地地代機械施設の導入、小規模土地改良事業などを市町村とともに助成する施策でありまして、平成四年度は一年間で個人に対して三十人、生産法人グループ五つ、これが対象となっておるわけでありますが、地方自治体では今後このような施策がかなり広まってくる、こういうふうに想定されているわけであります。農水省としてはどのようにこれに対応されるつもりなのか、その点については自治体で勝手にやれ、ほったらかしにしておくのか、あるいはこれに対してどのように対応するのか、その点についてお伺いをしておきたいわけであります。  ただ、私は、所得を補償するという面については、今の日本の国の国家体制自由主義体制のもとで、あるいは競争の原理を導入している、こういった面から、所得を補償するという点については社会保障的な意味がある、したがっていささか疑義があるわけでありますし、また、所得を補償することによって農業というものがますます暗いイメージ産業である、劣等産業である、こういうレッテルが張られるというおそれもなきにしもあらずでありますから、しかし、自治体の方でどんどんこういう施策展開していくというと、国も黙っておれないのじゃないかという感じがするわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  10. 上野博史

    上野政府委員 委員からただいま、今年度からということでございますか、新潟県で開始される新たな施策についての御紹介があったわけでございます。これまでもそうでございますけれども、各地方公共団体、都道府県が中心でございますが、やはり後継者確保新規就農者確保ということは、直接その地域の問題に非常にかかわりのある事柄であるという考え方からだろうと思うわけでございますけれども、財政の事情もそれぞれの地方公共団体によって違うところももちろんあろうかと思いますが、それぞれの事情を踏まえて非常に多様な対策をとってきておられるというふうに我々把握をしているところでございます。  このことについては、今言いましたように、この問題がそれぞれにとって非常に重要な問題であるということですから、そういう対応が行われるということをいわば当然だというふうに思うわけでございまして、国として余りあれこれと言える話であるのかどうか、その点はむしろ地方公共団体自主性を尊重した方がよろしいのではないかという気がするわけでございます。  国といたしましても、先ほど申し上げましたように、農業改良資金助成法改正をやりまして、新規農業就農をされようとする方々に対する資金的な手当てをしようというようなことを初めといたしまして、いろいろ考えて実施をしているところでございます。その際、委員質問ございました所得補てん的な内容のものについてどう考えるかということにつきましては、やはり農業就農をされるということであるならば、当然それによって生計を保てるという見通しがなければ、なかなか学校を卒業して新規に新たな社会に飛び込もうというときにそれだけの覚悟ができないのではないかという気もするわけでございまして、最初からそういう所得面での手当て考えるということがいかがなものであるかなという気分は確かに持っておりますし、それから生活保障的な意味合いの兼ね合いとの問題も確かにあることだというふうに考えております。ただ、この新潟県の新たな施策について我々が知っておる限りで申し上げますと、そういう面でのところまでは踏み込んでいないのではないか、かように承知をいたしているところでございます。
  11. 岩村卯一郎

    岩村委員 これは所得補償の面についてはかなり県当局も苦悩の選択の結果である、こういうように聞いております。したがって、直接国がこれに関与するということはかなり難しい問題があろうかと思いますので、このための基金制度といったものをつくったらどうかといったような考えも浮かんでまいりますし、また地方自治体に対する交付税対象にしたらどうかといったような意見もあるわけです。したがって、いろいろ問題をはらんではおりますけれども、ほっておくわけにいかないような事態になる可能性は十分含まれておりますので、これはひとつ検討課題にしていただきたい、こういうふうに要望をいたしておきます。  それから、担い手問題というのは単なる農家継承者意味しない、こういうふうに私は思うのです。経営マインドを持つ担い手をどう育て、そして今後引退が予想される高齢者農地を若い担い手にどうして結びつけるか、そういうことであると思うのです。そのために、農地流動化を積極的に進める必要がある。この流動化はかなり進んでいると言われるのですけれども、そのかなめとなっている農地利用増進事業によって利用権設定面積がやや伸び悩んでいるという点が大変私は気にかかっております。また、このところ農地の借り手が不足している現象も見られる。これは日本農業の宿命とも言うべき飛び地を借りても規模拡大の利益につながらないからであります。是正するためには農業生産基盤整備がまさに不可欠であります。この辺に思い切った手を打つ必要があるわけであります。  特に、公共性社会性の強い土地改良事業には、公的負担を大幅にふやして農家負担を限りなくゼロにする、こういった点まで踏み込んでやってほしい。土地改良法改正をやっていただいて農家負担も漸次軽くなっておりますけれども、特に公共性社会性の強い土地改良事業、例えば農道あるいは排水事業といったものについてはよく分析の上、ゼロに近くする、こういう点まで踏み込んでしかるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  12. 海野研一

    海野政府委員 今お話しの流動化がなかなか進まない、そのために耕作放棄が出ているというようなことを考えますと、特に耕作放棄地などを見てまいりますと、圃場整備済みの水田の場合はほとんど耕作放棄がない。先ほど最初にお話がございましたような分散錯圃の中でぱらぱらと引退する人が出てくるという中では、なかなかこれが利用増進計画その他に結びついてこないというような問題がございます。そういう意味で、おっしゃるように土地基盤整備を速やかに進めることが必要だと思います。そういう中で、農家負担の問題というものは絶えず問題になってくるわけでございます。  そういう意味で、既に先生質問の中でおっしゃったわけですけれども、土地改良法改正を初めといたしまして、事業費単価の抑制とか国営事業償還方法改善でございますとか、負担円滑化のための融資措置とかいろいろなことをやっております。そういう中で、特に公共性の高い施設についての地方公共団体事業費負担支援ということで、先般の土地改良法改正もそうでございますが、その後も引き続いて自治省と相談をいろいろしておりまして、この三月にも団体営事業維持管理事業について、一部特別交付税交付措置が講じられたところでございます。  そういう意味で、今後とも公共性に応じた公的負担がなされるよう、制度面、地方財政措置面、さらには市町村、これまた市町村によって、農道について全都市町村が見ているところと余り見ないところと、そういう違いが現在でもまだございます。その辺のところ、各市町村公共性程度というようなものを十分把握して必要な負担をしていくようなふうに誘導してまいりたいというふうに考えております。
  13. 岩村卯一郎

    岩村委員 一層の検討をされて踏み込んでいただきたいと思うわけでありますが、時間がほとんどなくなりました。  そこで、項目を並べて、最後に大臣に総括的な答弁をお願いしたいのですが、地域対策、特に条件不利地域の問題であります。  中山間地域農業の多面的な役割を積極的に評価して、この地域所得確保して地域を維持するためには、活性化対策に対する対策がどうかということでありますが、農村地域高齢化も急速に進行しております。高齢者福祉対策や年金制度の抜本的な拡充も急がれます。これは農林省の所管ではありませんが、そういった問題。さらに、地域政策展開を可能にするためには、国の政策的な支援措置がどうしても必要であるわけであります。同時に、地方自治体創意工夫が生かせる条件整備もまた必要であります。さらに、農水省によって、農業、農村政策の枠を超えた、文字どおり地域政策としての位置づけが必要になってくるわけであります。したがって、省庁を挙げた施策展開、こういったところに踏み込むべきである、こう考えるわけでありますが、これを最後に、大臣から決意のほどをお聞かせいただいて、終わりにしたいと思います。
  14. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答え申し上げますが、全くそのとおりなんです。農林省だけでこの中山間地対策をどうこうするということは非常に困難であります。  と申しますのは、農業面だけで見ると、温度の昼夜の較差があるとか標高差があって、順番に耕作をしていくという特徴があることはありますが、それだけではなかなかこの中山間地域の活性化というのは私は困難だと思いまして、今リゾート法で華々しくやっておりますが、どうも週休二日制がどんどん実行に移される、労働時間の短縮、家族ぐるみで勤労者の方々ももっと低額な、しょっちゅう遊べる、あるいは休養できるというようなことも考えてみますと、保健保養施設とかいろいろな面で各省が持ち寄って、この対策というものはやはり立てていかなければいかぬというふうに私は考えております。今林野庁にもお願いして検討してもらっておりますが、何かそういう方法で、林野庁ばかりではなく、構造改善局等も、農林水産業関係でそういうことにうまく取り組んでいける方法がないか。  文部大臣にもこの間相談いたしまして、休みを利用して、そういうところに子供たちが体験学習といいますか、親子で行ってもいいわけでありますが、そういうものをこの林間学校やあらゆるものを含めて活性化したいのだがと言ったら、大いに賛成だ、これからそういうことを極力文部省としても学校にお願いをして、家族ぐるみ、学校ぐるみでそういうところに行って経験をさせるということは大事だと思うというお話をいただいておりますので、それで各省に、自治省にもお願いしてあります。そういうことで、総合的な対策の中で、農業もしっかりしたものにしていくというふうに考えております。
  15. 岩村卯一郎

    岩村委員 終わります。
  16. 高村正彦

    高村委員長 鈴木俊一君。
  17. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 今我が党の岩村卯一郎委員から、農業のことにつきましていろいろお話がありましたので、私からは水産のことについてお伺いをいたしたいと思います。  先般発表されました平成三年度の漁業白書を拝見いたしますと、平成二年の我が国の漁業生産量は、前年に比べますと七%減少をして千百五万トンになったということでありまして、国別に見てみましても、どうやら中国が第一位で、旧ソ連が二番目、我が国生産量は三番目になったのではないかと言われているわけでありますけれども、水産庁はこの漁業生産減少の主な原因をどのように認識をしているのか、冒頭にお尋ねしたいと思います。
  18. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 今御指摘のように、最近まで漁業生産量、千二百万トン台で推移してきたわけでございますけれども、平成元年、二年と減少しまして、二年には、今御指摘のとおり千百五万トンという量になったわけであります。  その要因としましては、昭和六十三年に四百五十万トン程度の漁獲を上げましたマイワシの資源が急激に減少している。平成二年には三百七十万トンを割るというようなことが一つの大きな原因ではないか。そのほかに、一般的に我が国周辺水域の水産資源の状況は、一部魚種で増加しておるものもございますけれども、総じて、底魚類を初めとしまして悪化傾向にあるということが原因ではなかろうかというふうに考えております。
  19. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 今分析をしていただいたわけでありますけれども、私なりに考えてみますと、いろいろ異常気象なんかがありますので、海の中の海況というものも変化するということもあるのかもしれませんが、今までのように、例えば海外漁場が制約をされてきたために生産量が少なくなったというよりも、主には我が国の二百海里内を初めとする資源そのものの低下といいますものが生産量の減少につながっているのではないかと私は思います。  そのようなことを考えてみますと、資源管理をいま一度徹底的に行わなくてはならない極めて重要な時期に今あるのではないかと思っております。今日、今の段階におきまして、資源管理をしっかりできるかどうかが今後の日本漁業の盛衰を決めると言っても過言ではないと思っております。  日本の戦後の漁業の発展の沿革をたどってみますと、沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へというように、外延的な発展をたどってきたわけでありますが、昭和五十一年から五十二年にかけまして、いわゆる二百海里時代というものが到来をして、日本漁業発展の自由操業といいますか、そういう条件の根底が変わったわけであります。  それに従って、政策の方も相呼応して、資源管理型漁業、つくり育てる漁業ということを推進してきたわけでありますけれども、私は、この水産庁のつくり育てる漁業を推進するという基本的政策は全く正しいものでありまして、高く評価をしているわけでありますが、しかし問題なのは、昭和五十一、二年から資源管理型漁業ということを推進してきたにもかかわらず、今日資源状態が悪化をしてきたということは、これは本当に深刻にとらえなくてはならない問題であると思っております。資源管理型漁業の推進という基本政策は正しいとしても、今その内容をもう一度検討し、さらに充実させなければ、何か将来取り返しのつかないことになるのではないか、そんなような気がしております。  資源管理型漁業を推進するために行われております事業の柱というのは幾つかあると思うわけでありますけれども、その中心であります栽培漁業と沿岸漁場整備開発事業、これは、特には栽培漁業なんかを見てみますと、瀬戸内海のヒラメですとか、北海道沖のホタテガイでありますとか、それから三陸のシロザケですとか、その成果が上がっておりますし、これは高く評価をするわけでありますけれども、資源というものに着目をいたしますと、資源を再生産する力というのは、そういった人為的な努力はもちろんでありますけれども、やはり自然の海が本来持っている力の方が資源を再生産する力ははるかに大きいと思います。  海が持っている資源再生産の力を十分発揮させる状態を一方でもし壊していたならば、幾ら人為的な努力をいたしましても、何か穴のあいているチューブに一生懸命空気を入れるようなもので、実効はなかなか期待できない。私はむしろ、あいた穴を閉じるといいますか、ふさぐといいますか、そちらの方が先決というか重要でないかというような気がするわけであります。  そこで、以下、具体的な質問をさせていただきたいと思いますけれども、資源管理型漁業を進める基本的な前提は、やはり資源状態というものをしっかりと把握するところから出発をしなくてはいけないと思うわけでありますが、水産庁は、資源状態の把握のためにどのような調査を行っておりますのか、伺わせていただきたいと思います。
  20. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 先生御案内のとおりでありまして、漁業は、資源状態に合った操業をする限り、未来永続に維持発展できる産業であるということで、資源の状況に合った漁をやっていく、これは我々行政だけでなくて、団体の方々あるいは漁業者の方々につきましても、一般的な考えとしてはそれはあるのですけれども、具体的な対応は、おれはやはりとった方がいいというようなことで、総論と各論がなかなかマッチしない。  しかし、いろいろなところでそういう資源管理漁業をやるというような芽生えも出てきますので、それを推進していきたい。そのためには、御指摘のように資源の実態というものを十分把握する必要があるのではなかろうかということで、国の水産研究所が中心になりまして、都道府県の水産試験場等と連携を図りながら、我が国周辺水域の漁業資源の調査を実施しておるわけです。  我々としましては、当面、主要資源でありますマイワシとかサンマ、イカ、スケトウダラ、マダイというようなものに重点を置いた資源動向の把握を現在進めているわけでございます。  それからまた、特に減少が問題にされておりますマイワシにつきまして、若齢魚が少なくなっているというようなこともありまして、本年度につきましてはそれに重点を置いてやっていく、あるいは資源の状況把握のための精度を高めていくというような試みもやっていきたいと考えております。
  21. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 今長官のお答えの中にも含まれていたわけですけれども、海が持っている資源の再生産力を維持するためには、漁業資源というものを正確に把握いたしまして、それに対する適正な漁獲努力量を設定してそれを守っていかなくてはならないと思っております。日本の漁業が外延的に発展をしておりましたときには、その当時はいかに少ないコストでたくさんの魚をとるか、まさに文字どおり一網打尽のような漁法が合理的な漁業と言えたかもしれませんが、今日のように資源管理を進めなくてはいけない時代におきましては、漁業資源のいわば元本に影響を及ぼさないような、資源に対する適正な漁獲努力量を守る漁業こそが合理的な漁業であると私は思います。  そこで、漁業資源に対して現在の漁獲努力量というものは、印象的なのでありますけれども、総じて過剰ではないかと私は思うわけでありますけれども、水産庁は資源に対して適正な漁獲努力量を割り出す努力をしていただいて、それを行政に反映していただかなくてはならないと思うわけであります。  例えば、ことしは漁業権の一斉更新の年であったわけでありますけれども、資源管理型漁業を推進する観点からも、このような一斉更新を通じて適正な漁獲努力量の実現を図るべきであると思いますが、この点はいかがでしょうか。
  22. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 漁業も産業である限り、効率的な漁業の推進ということは一つの大事な柱であろうかと思います。しかし、漁業は天然の資源を利用するということから見ますと、御指摘のように資源に見合って、資源を減少させない、永続させるような漁業をやっていくということも大事でございまして、その辺の調和をどうするかということが基本であろうかと思います。  最近の状況を見ますと、総トン数自身は比較的ふえていませんけれども、スピードが速くなるとか魚群探索の技術が向上するとかいうようなことで、現在漁獲量が減少しているということから照らしてみましても、漁獲努力量はやや過剰ぎみではなかろうかということは我々も十分認識しているわけでございます。  今回の指定漁業の一斉更新、許可更新につきましても、漁獲努力量の抑制ということと資源管理型漁業の推進を基本的な柱として掲げまして、許認可隻数もそれぞれの漁業ごとに縮減を図るとか、あるいは操業規制につきましても漁獲努力量の引き下げを図る。これは今回週休二日制その他もございますので、漁業の面でも、やるときはやるし休むときは休むということを導入することも、今後の後継者対策その他から見ても、効率的な漁業から見ても必要なのではなかろうかということで、操業規制等につきましても、漁獲努力量の引き下げを頭に置いて内容の見直しを進めているところでございます。  ちなみに、今回の許可または起業の許可をすべき隻数として公示しました隻数は、前回六十二年の公示の隻数に比べまして約二割の減少になっています。  いずれにしましても、今後ともそういうことを前提にしまして、現場におきまして実態に合った資源管理協定制度に取り組ませていただきまして、一斉更新後におきましても引き続きそういう資源を前提とした漁業の推進に全力を挙げていきたいと思っております。
  23. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 ぜひそういうことで進めていただきたいと思います。  次に、幾ら行政の方の指導をしましたり漁業者同士の自主的な取り決めをいたして適正な漁獲努力量を設定いたしましても、それが守られなければ全く意味がないわけでありますけれども、資源に大きな影響を与えている密漁の問題について質問をいたしたいと思います。  密漁と一口にいいましてもその中は多様でありまして、例えば漁業者が決められた以外のところでやるというような違法操業に近いものもありますし、また漁業者以外の、しかも最近では暴力団組織のようなものが資金源としてやろうという悪質なものまで非常に多様であると思うわけでありますけれども、水産庁は密漁の実態についてどのように把握をされておられるのか、お伺いしたいと思います。
  24. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 沿岸海域におきます状況でございますけれども、都道府県から私どもが報告を得ています密漁の検挙件数等は、ここ三年間千四百件前後で推移していると承知しているわけでございます。  最近の特徴といたしましては、アワビとかサザエ、ウニ等の磯の資源でありますとか、あるいはサケなどの放流する資源、いわゆる高級な水産物をねらった密漁が多発している傾向にあると承知しております。アワビ、ウニ等の密漁の中には、今先生御指摘のような高速艇とか無線機等を使用した組織的な密漁でありますとか、あるいは威嚇とか暴力行為に及ぶような極めて悪質な違反もあるということで、極めて懸念しているわけでございます。  ただ、私ども残念なのは、この中に漁業者による密漁もかなり多いということがございまして、この辺はやはり我々も、県あるいは市町村を通じたり団体を通じて徹底しないといかぬのではないかと考えておるところでございます。
  25. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 いろいろその中は多様なわけですけれども、私はここでちょっと触れたいのは、暴力団組織によるような悪質な組織的な密漁についてであります。  私は、そもそもこういうような集団による密漁の取り締まりというのは、漁業調整規則のような漁業の枠内で行うにはおのずと限界があるのではないかと思っております。先般暴力団新法というものが成立いたしまして、世論も暴力団に対して厳しい対応を望んでおりますし、警察の方もその資金源を断つために、例えば覚せい剤の取り締まり等にも力を入れている、こうお聞きしておりますけれども、密漁による稼ぎも、これは新聞報道によるのですけれども、アワビなどの高価なものでは一回二百万円にもなる。それから、やはり新聞報道ですが、北海道においてウニの密漁で短期間に二千万円も稼いでいた。まさにこういうものは暴力団の資金源になっているわけでありましで、そういうものを断つ観点からも強力な対応が必要であると思います。  宮城の塩釜の海上保安部がつかまえました例では、船に船外機を三台もつけ、時速も三十から三十五ノットで高速艇並みに走る。レーダーとか船舶電話まで装備をして、酸素ボンベも十八本、ドライスーツ四着をそろえているということで、これはもう恒常的にやるためにいろいろそういう設備を整えているとしか思えない極めて悪質なものであるわけであります。  今、栽培漁業ということで、国や県が例えばアワビの稚貝放流などをしておるわけでありますけれども、一方においてこのような悪質な組織的な密漁が進んでいるのではこの効果も期待できないわけでありまして、この対策を強力に講じていただかなくてはならないと思いますが、水産庁を中心に、警察とか海上保安庁との連携の強化をぜひ図っていただきたいと思っております。  そこで、時間の関係もございますので水産庁からのお答えはとりあえず結構でございますが、海上保安庁にお聞きをいたしたいと思います。  密漁の取り締まりについていえば、海の上のことでありますから保安庁の対応というものが大変重要な要素になると思いますが、先ほど述べたような三陸沿岸のそうした装備を非常にするというような悪質な暴力団等による密漁事犯の取り締まり状況とか、今後の取り締まり方針について保安庁にお伺いをいたしたいと思います。
  26. 野崎典重

    ○野崎説明員 お答え申し上げます。  近年の沿岸の漁業資源を根こそぎ採捕するような密漁につきましては、これは財産権の侵害の色合いが大変濃うございまして、悪質で反社会性がより強まっていると言えます。また、カニの密漁やウニ、アワビ等の潜水器密漁に見られますように、計画的に夜間小型高速船を使用して行われるケースが多くて、また一部の地域では暴力団が介入するなど、組織化、巧妙化しております。  このため、海上保安庁におきましては、巡視船艇、航空機を動員いたしまして、万全の取り締まり体制をとり、その取り締まりに当たっております。例えば三陸沿岸におきますアワビ密漁などのような悪質密漁事犯に対しましては、監視船に海上保安官を警乗させ取り締まりを行うなど、都道府県や漁業関係団体等の関係機関との連携を強化いたしまして、組織的な密漁取り締まり体制を確立の上、取り締まりに当たっております。  さらにこのほか、密漁者が厳罰に処せられるよう余罪の追及や、販売ルートまでさかのぼった捜査を行うなどいたしまして、悪質性の立証に努め、この種事犯の根絶化を図っております。今後とも引き続き関係機関と連携を密にいたしまして、巡視船艇、航空機を集中的に動員するなど、海上保安庁の機動力を駆使いたしました徹底した取り締まりを実施いたしまして、地域の善良な漁業者の期待にこたえてまいりたいと考えております。
  27. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 暴力団組織によるような悪質な密漁への対応は、海の上も大切なわけでありますけれども、情報の収集でありますとか、それから密漁したものを保冷車で輸送する段階で摘発するとか、それから、今お話がありましたけれども、販売先の摘発など、陸上における取り締まりも大変重要だと思いますが、この点につきまして警察庁の対処方針をお伺いしたいと思います。
  28. 荒木二郎

    ○荒木説明員 お答えを申し上げます。  昨年中全国の警察が検挙いたしました密漁事件は約三百七十件に上っておりまして、最近、御指摘のように暴力団が関与する悪質な事犯も目立っているところでございます。警察としては、この種の暴力団の資金源となっているような悪質かつ組織的な密漁事犯につきまして、重点的な取り締まりを推進いたしております。  特に密漁が深刻な県におきましては、県警と知事部局など関係機関との連携を強化することによりまして、密漁グループの情報収集を強化しております。密漁行為について漁業法あるいは漁業調整規則違反ということで検挙するのはもちろんのことでございますけれども、例えば違法な潜水具を使用していたというような事犯につきまして高圧ガス取締法を適用するとか、各種の法令を多角的に活用して取り締まりを行っているところでございます。  さらに、御指摘のありましたように、陸上で密漁された水産物の輸送を行う者、あるいはこれを故意に買い受けた業者等についても、漁業調整規則の適用等によりまして、的確な取り締まりに努めておるところでございます。  今後とも、暴力団関与の悪質な密漁事犯について、関係機関との連携のもとに厳しく取り締まりを推進してまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  以上であります。
  29. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 いずれにしても、水産庁、海上保安庁、警察という関係機関の連携がこういう密漁を防ぐことになるので、密漁をしても割に合わないのだ、そういうふうに密漁者に思わせるくらいに徹底した取り締まりといいますか、そういう強化をお願いをしたいと思います。  次に、運輸省にお尋ねをしたいと思いますけれども、現行では五トン未満の船舶については船名の表示義務というものがないわけであります。そのために、密漁船を監視をしていたりしましても、あれは密漁船だと思ってもなかなか船を限定できない、適当な通報ができずに取り締まり等にも支障を来しているわけであります。  それからまた、密漁の問題を離れましても、最近はプレジャーボート等がふえるに従いまして、漁港や港湾に無秩序にそういった船が係留されている。私も実際に見たわけでありますけれども、もう船が半分海に沈みかかっているのがつないであるというのは、明らかに所有者が廃棄をしている、捨てておる、捨て場所になっておる、そういう例もあるわけであります。そういうことに対処するためには、五トン未満の船舶についてもしっかり制度的に管理をし、船名の表示義務を適用すべきではないかと私は思うわけでありますが、どのようにお考えでしょうか。
  30. 山下邦勝

    ○山下説明員 お答え申し上げます。  今御指摘のとおり、現在、総トン数五トン未満の小型の船舶につきましては、船を特定するという制度がございません。これにつきましては、特に今御指摘になりましたようなプレジャーボートの放置問題、こういったところから、何らかの対策が必要ではないかという指摘がなされておるところでございまして、私どももその重要性は十分認識をしておるところでございます。  ただ、一方におきまして、この数が相当な数に上る、五トン未満だけ取り出してみましても五、六十万隻というような数、オーダーの問題でございまして、行政面における体制をどういうふうにしていくかというようなこと、また所有者に対する新たな義務づけの問題、こういった点をどういうふうにしていくかというような点につきまして、総合的な検討が必要だろうと思っておるところでございます。非常に難しい問題でございまして、どういったやり方ならば我が国考えられるかということについて検討していかなければならないわけでございますが、平成三年度から私どもの関係の団体でございますシップ・アンド・オーシャン財団に小型船舶の特定制度確立のための調査研究委員会を設けまして、諸外国ではどういうふうなことをやっておるのか、また、我が国に導入するにはどういう環境整備が必要であるかという点について検討をしておるところでございまして、できる限りの前進を図っていきたいと思っておるところでございます。
  31. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 今のことは漁船対一般船舶ということのみならず、これからプレジャーボート、五トン未満の船がふえていけば、まさにプレジャーボート同士のトラブルの問題にもなるわけですから、ぜひ前向きに検討をしていただきたいと思います。  時間がもう少なくなりましたので急がせていただきますが、今まで資源の把握と適正な漁獲努力量の話をしてきたわけでありますけれども、自然の持っている資源再生産の力ということを考えますと、一番基本的なのは、海が汚染されることなしにきれいであることと思うわけであります。そこで、海を汚すことの要因としていろいろな排水が考えられるわけでありますけれども、今宮澤内閣では生活大国ということを一つ政策に掲げておりますけれども、漁村の生活環境の改善を図るのとあわせて、漁場の水質汚濁を防止するという意味からも、立ちおくれております漁村の集落排水整備を強力に進める必要があると思うのでありますが、この点について水産庁のお考えをお伺いしたいと思います。
  32. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 漁場環境を保全していくということは、漁業の振興に不可欠なことでございます。水質の問題、あるいは産業廃棄物でありますとか包装資材その他海を汚すことにつきましては、極力それぞれのあれで防止してもらうとともに、何とかいい環境を保全するために全力を挙げたいと思っております。  その一つでもありますし、また、漁村の環境を整備していくという意味からも、集落排水施設整備というのは極めて重要であると思っております用地形的な制約から、事業自身なかなか難しい点はございますけれども、我々の方では五十三年度に新しい事業を創設して以来、この事業に力を入れております。また、平成四年度から生活関連重点化枠というような仕組みが公共事業の中に設けられましたので、そういうのを活用いたしまして、生活関連施設整備につきまして努力をしていきたいというふうに考えております。
  33. 鈴木俊一

    鈴木(俊)委員 時間が参りましたので、最後に大臣にお伺いしたいと思うわけであります。  私はいろいろ質問させていただきましたけれども、資源管理型漁業を推進するためには、やはり一つには漁業資源というものを的確に把握をして、それに対して決して過剰にならないような適正な漁獲努力量を守るということでございます。それから二つ目は、やはり海の汚染がないように漁場の保全をしていかなくてはならない。そして三番目には、一番の適正な漁獲努力量を守るということに含まれるのかもしれませんけれども、密漁でありますとか、例えばきょうは質問できなかったわけでありますけれども外国船漁船の問題でありますとか、そういうものを行った上で、自然の持っている資源の再生産の力をフルに生かした上で、初めて栽培漁業とか沿整漁業の実効が上がると思っております。  まさに今、きょうの時点でそうした資源管理がきちっとできるかどうかが将来の日本の漁業の盛衰にもかかっていると思いますし、また、ことしは国連環境開発会議の開催の年でありますけれども、ただでさえ環境保護派の圧力によってますますその厳しさを増しております海外漁場を確保するという観点からも、自分の庭の二百海里内で資源管理がきちっとできていなければ、漁業交渉で外国とやるときに我が国の主張にも説得力を持たないことにもなるわけでありますし、あらゆることを考えましても、今こそ資源管理型漁業の一層の推進、充実、こういうものが必要だと思うわけであります。  大臣は大変水産関係にも造詣が深くて、もう全国の漁業関係者の期待も大きいわけでありますが、大臣の抱負といいますものを最後にお伺いいたしまして、私の質問を終了いたしたいと思います。
  34. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お話を伺っておりまして、私も何回か外国交渉に参りました。おっしゃるとおり、やはりみずからがきちっとした漁業管理をしなければ、こちらがいいかげんにして外国にだけそれを要請するということは、いかに交渉するときにつらかったかという経験もあります。  お話しのように、もう限りある資源でありますから、それに見合っただけの漁獲努力というものをしてまいりませんと、とにかく根こそぎ漁獲をするという、どうしてもそういう風習があります。気持ちはわかるんですけれども、しかし、だんだん資源が枯渇してきたら、それに合わせてやはりやってもらわぬといかぬというふうに私も思います。  とにかく、二百海里でありますとか今のような過剰の漁獲努力、こうしたものが今の水産業界を非常に苦しい立場に置いておりますし、このために資源管理型漁業とかあるいはつくり育てる漁業、こういうものを一生懸命努力をしていかなければならぬということで、魚礁の設置でありますとか培養殖場の造成、海の畑づくり、そのためには今おっしゃったように、環境が、海が汚されてはこの事業は成り立ちません。各省庁と連携をとりながら、こういうことを進めていきたい。  よく私のところに、水産物の輸入を抑えてくれという話がありますが、抑えますと国内の沿岸の漁獲がぐんと今度はふえてくるということになりますと、今お話しのようにこれはもう絶対できないことになりますから、やはり加工業がどんどんふえて、そしてその加工に間に合わせる分の漁獲がどうしても必要だということで、この過剰な漁獲というものが私は進んできたと思う。それが二百海里の規制を受けましたから、そういうことによってさらにそういうことが加速的に進んできた。ですから、必要量をこれはもう輸入にやはり依存するところはする、そして、管理をしながら沿岸の人たちが生活をしていく、そういうすみ分けといいますか、それと、とる方はとる方、つくり育てる方は育てる方ではいかぬので、やはり漁師の皆さんも、応分の負担をしながら自分たちで大事にしていこうというそういう意識の芽生えというのはぜひ必要だと思います。  さらに私は、定着できるウニとかアワビとか、あるいはホタテでありますとかノリ、ワカメ、昆布、そうしたものも優良な資源でありますから、また、ホッキガイでありますとか、いろいろなものをやる。さらにはまた、マグロなんかも何とかできないだろうか。今八十種対象にしておりますが、栽培の方は、養殖は六十種ありますけれども、さらにこれを広げて、そして国民のたんぱく資源を確保してまいりたい、こう考えております。
  35. 高村正彦

    高村委員長 有川清次君。
  36. 有川清次

    ○有川委員 農林水産省は、近く新しい食料・農業・農村政策、いわゆる新農政を発表しようとしておりますが、私は、日本農業の目指す方向を決めるに当たっては、まず、これまでの農政がどのような展開を図ってきたのか、さらには、そしてどのような問題に現在直面しているのか、この正しい総括からスタートしなければならないと思っております。  日本農業は、今そういう意味では大変厳しい面を迎えているところである。それは、円高による内外格差の拡大であり、食糧自給率がカロリーベースで四七%、穀物で三〇%と、先進工業国では極端に低下していることであります。また、労働力の不足と、土地利用に関する農業生産基盤が弱体化いたしまして耕作放棄地が年々増大し、既に五百五十万ヘクタールを割り込んでいるという状態にもあります。そして、農業人口の大幅な減少、消滅した農村集落の増大、農村地域の過疎化の一層の進行、高齢者と女性の労働力が主力になりつつあって中核的農業後継者が年々減少し、新規就農者は年一千八百人程度に落ち込んでいることなどでございます。  これは、農業所得の減少など労働が報われず、将来展望がないからではないでしょうか。こうした現象は、農政が今日まで小手先に終わり、十分な食糧自給体制を目指した政策が打ち出し得なかったことが原因だと思いますが、どのように判断されておるのか。  かつて言われてまいりました、農民は生かさず殺さず、こういう政策で、必要なときの産業予備軍と言われるような対応ではもはや許されないのみか、むしろUターンを待つ、農業就業者を労働者から期待をする、こういう状態に今なっておるわけでありまして、今日までの農政をしっかり検証しなければならないと思いますが、大臣の見解をお伺いをいたしたいと思います。     〔委員長退席、簗瀬委員長代理着席〕
  37. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 農業基本法を制定いたしまして、国の農業に関する政策目標として、生産性の向上でありますとか農業従事者所得の増大を掲げてやってまいりました。各般の施策の実施によりまして、酪農、養豚、採卵鶏などの畜産や施設園芸の分野を中心生産性の向上が進んできたことは確かでありまして、農家所得が勤労者世帯を上回るなど一定の効果はあった。所得だけで見る限りでは、先ほどの漁業、平成二年度ではもう五百九十万でありますから、八百三十万の農家から比べると相当やはり厳しい状況にある。全国の勤労者世帯でも六百二十六万ということでありますから、農外収入が多くてこうなっていることは私もそのとおりだと思う。ですから、農業面での収入をいかに上げていくか、経営をどうするかということが一番大事なことだと思うのでありますが、特に経営規模拡大がおくれている稲、麦、大豆などの土地利用型ですね、これについて創意と工夫をしていただいて、生産性の向上に向けた取り組みを進めているところでありますが、一方、農業をめぐる環境を見ますと、これはもう先生御案内のように、担い手が減少しております。あるいは農業構造の変動が生じておる、高齢化が進んでおるということでありまして、いずれにいたしましても、農業、農村をめぐる施策の総合的見直しを進めていかなければならないという観点から、現在そのことに着手をして検討をいたしておるところであります。
  38. 有川清次

    ○有川委員 今御回答をいただいたわけでありますが、簡単に包括的な報告がございましたけれども、今最後の方に環境の破壊あるいは担い手の減少、高齢化、そうしたものが何を原因として今日起こってきたのか、そこの総括を私はお伺いをしたわけであります。そこがきちっとなければ、しからばこうした足りない面には今後こう対応する、この正しい、具体的な、将来性のある、実効性のあるものは生まれてこない、こういう立場でもお伺いしたところであります。  ただ、そこで申し上げますが、今日までの農政はやはり資本の論理が貫かれまして、商工業優先、貿易自由化のそういう形の産業政策展開のもとに、農業が犠牲にやはりなされてきたのではないのか。日本経済の国際化は、都市と農村の不均等な発展を加速をさせると同時に、東京一極集中化も起こって、農産物輸入自由化によって食糧の自給率が大きく低下をいたしました。  昭和六十一年の四月に、国際協調のための経済構造調整研究会の報告書の中で、いわゆる前川レポートで、貿易黒字削減のために農産物を含めて市場開放を徹底化し、輸入を拡大するとともに内需拡大をするという路線が打ち出されました。このとき政府の農政から食糧自給という言葉が消えまして、食糧供給、こういう形になりました。そして今日も言われておりますが、生産規模拡大、中核農家育成、企業として自立できる農業、国際化に太刀打ちできる農業、足腰の強い農業の確立等々の一大合唱が始まったわけであります。これは明らかに国際化の社会の中で、産業優先の、企業優先の輸入自由化を進めるそういう立場から、農業もそれに対応できるものをつくりたい、こういうことだったのではないかと思います。  また、内外格差を理由に、コスト低減を強く一方では農民に強いてまいりました。政府の買い上げ、支持価格は年々引き下げられました。生産者が生産性向上に自助努力した部分はかなりの部分が価格引き下げで消滅するという、まさにそういう状況になったのではないでしょうか。また農業の場合は、天候異変や台風、集中豪雨など災害も多く、それに左右されるわけでありますが、第一次産業の場合には、他の商工業のように、合理化や技術革新で計画的にコストが短期間に切り下げられて生産性が高まるという性質のものではないと思っております。結果として、規模拡大等や高齢化による機械化貧乏、化学肥料の過量使用と単粒化構造による表面の流亡、不活性化土壌の塩濃度障害、窒素過多などの現象も進行いたしまして、農業を主体とした農業となり、河川、湖沼、飲料水まで汚染されるという現象まであらわれてまいりました。  畜産は一定生産性向上の中で成果を上げた、このようにおっしゃっておりますが、今複合経営を盛んに言いますけれども、かつては私の鹿児島あたりでは、各農家に豚が数頭、数十頭おりまして、あるいは馬、牛がおりまして、その肥料が有機肥料として有効に土に還元をされるというサイクルがありました。現在は、特定の大型養豚、養鶏、そういうものに集約化されまして、結果としては消毒剤と抗生物質の多量使用で安全性が問われる、あるいは一方でふん尿の処理能力がなくて垂れ流し等による畜産公害をまき散らすなど、自然環境の破壊と施設費の重圧が大きくのしかかってきておるのも現状であります。大型養豚家、農家が次々と倒産をするという事態も現実には起こっておるわけであります。  こうした資本の論理、企業優先の政策、つまり採算が合わなければ食糧は安いものを外国から買えばよい、こうした言葉が出されておったように、このような資本のただもうかればよいといった理論、利益中心、企業優先の政策から、今農政は一大転換を図らなければならない。かつて、今言われておる複合経営の柱になるとも言われるオレンジや牛肉の自由化、これも今、大きく具体的な現象があらわれつつございます。後でまたお伺いしますが、さらに主食である米までも今危険な状態にさらされ、政府の方は一部は不協和音が続出するという状態も続いておるわけであります。そう考えてまいりますと、これからの農政は国境調整あるいは自給率向上の対策土地利用型計画や農地確保、価格対策後継者対策や農村社会維持のための福祉、教育、文化、生活対策など、これらの問題も明らかにしていかなければならないと思います。  さらにまた、農業予算を見てまいりますと、一九九〇年の時点で占める割合が一〇%であったものが、九一年で四・六%ということで大きく落ち込んでおるのも現状であります。農政は、農業の農の農政ではなくノー政じゃないか、こういうことで、展望もなく非常に不満を持ちながら、どうしようもないと焦りを感じている農家実態考えてみますと、こうした政府の今日までとってきた施策に大きな誤りがあったのではないか、ここを一大転換をするというところからスタートしなければ、農業の再建というのは極めて厳しい状況にまで今落ち込んでおるというふうに思っております。  その辺のことに対して大臣はどのように把握されながら、今度の新農政を確立されようとしておるのか、もう少し具体的に御見解をお聞かせを願いたいと思います。
  39. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 広範な御意見を承りましたが、一体日本という国がどういう方向に進むべきか、私たちが政治家としてでないまだ志しもしておらぬ時代までさかのぼるわけでありますけれども、瑞穂の国であった日本農業でこれだけの人口を抱えて生きていくことは困難であるということから戦後工業国を目指して、そうして繁栄をしたことは確かですし、また、失ったものも私はあると思います。両面ありますけれども、それでは一切この農業を、従来のように瑞穂の国で農業で一億二千万の人たちが生活が豊かになっていけるかということになると、やはり疑問があったと思うのです。先達、我々の先輩でありますけれども、そういう選択をしていったということにおいては農家は犠牲になったことは確かであります。農地がどんどんつぶれて工業地帯に変わっていったということが、私はあったのだろうと思います。  ですから、私もよく農家の組合長さんたちに、工業製品を売るから農産物を買わなければならぬ、けしからぬ、こういってよく怒られます。農家の立場からだけ見ればそういうことになるのでしょうけれども、では機械化がどんどん進んで、子供や兄弟がみんな他産業に就職するようになって、そっちの生活はどうするか、一切売らない、買わないということになればそれは防ぐことができる、しかしその人たちを全部呼んで農業生計を立てて、そして油も農産物を売って購入することはできないとすれば、一体どういう調整をしていかなければならぬかということは、何回か私も議論しました。話はよくわかった、こう言ってくれるのでありますが、まあしかしどの程度が限界なのかということは非常に難しい。私も、このまま日本がどんどん経済成長達成のためにあらゆる努力をして、多くの犠牲を払いながらいつまでいくべきなのかという疑問は常に持っております。  しかし、何としても現今、他産業に比べて農業の方はどうかといってみると、五十年も百年前も持っている農地というのは同じであって、その中で米の価格を上げながらやってまいりましたが、しかし農地は何十年たってもふえていっておりませんので、その中で生計を営めるだけの収入を得るということは、もう確かに困難であります。したがって、私どもも自由貿易の中で確かにいろいろな恩恵も受けてきたし、日本もまた相当のものを輸出して、そうしてこれだけの国になったことは事実なんです。  そこで、ここでいびつになっている農業を一体どうするか。今日までもあらゆる努力はしてまいりましたが、何といっても他産業の収入の方が高いものですから、若い人たち但農業を捨ててそちらに移っていく、あるいは農業をやりながら農外収入の方が多くなってきた、こういう事実はあります。国民も決して農業がどうだこうだという意見はないのであって、ただ、もっと規模拡大したりいろいろな努力をやれる分野があるのではないか、それをやってほしい、そして安全な農産物をつくってほしい、こういう声も、これは負担をする側の勤労者の方々から見ると、もっと一生懸命やってもらってもいいという部分があるなということは感じておると思うのです。決して農業をだめにするなんという国民は一人もおらぬのであって、やはりほかも努力すれば農業も努力をして、負担をしておる人たちのためにもコストの安い安全な供給をしてほしいという気持ちに沿って、そのためにはどうするかということになりますと、やはり適正な規模拡大していかなければならぬ、担い手はそうでないと育たぬわけでありますから、そういうことでいろいろな、新農政ということで部内で検討もし、大体の骨子をまとめて、そして御相談いただきながら、これを二十一世紀以降、農業後継者が喜んでいける、そんな方向につくっていきたいということを考えております。  御指摘のとおり、一つ一つ見れば至らなかったものもあるし、外国の影響を受けたものもございます。そこのところは日本目標というものを立てながら、この狭い国土で一億二千万の人たちが豊かな暮らしかできる、そういう道をどうやって選ぶかということとの関連で、総合的に見れば失敗であったか成功であったかというのはまた別の問題だと思いますが、私どもは農林水産業を預かっておりますので、そういう中にありましても農業あるいは林業、水産業、この向上のために最大の努力をしていかなければならぬ、こういうふうに肝に銘じて、農家の人たちも本当に喜んでやれる、そんな体制をつくってまいりたい、こう考えております。
  40. 有川清次

    ○有川委員 御答弁をいただきましたけれども、私も、工業が中心になって日本が繁栄をしてきた、それは否定するものでないわけですが、しからば農業を犠牲にしてよかったのか、そこが問題だろうと思うのですね。その場合に、政府の農政といたしまして農家所得政策というものは徹底して手当てをする、資本の側も利潤追求だけでなくて利潤の見返りを農政につき込む、こういう手だてなどをもっと考えるべきだったのではないか、そういう意味では農工一体となった農政のこれからの体制が重要だと思うし、まあ農業はアメリカにもかなり穀物を頼っておるわけですが、表土が流失したり、あるいは干ばつに見舞われたり、非常に自然環境に影響されやすいものでありまして、地球上には飢餓人口もたくさんありますし、そういう意味では、日本農業が限られた土地の中でどれだけ所得が安定するような、農家が希望を持つような政策をとったのかどうか、ここにやはり問題があろうかと思いますので、そういうことを視点に入れながら、新しい農政を具体的に実のあるものにしていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  次に移りますが、地球の環境破壊の問題が今大きな課題になっております。ことしの六月にはブラジルで第一回の国連環境開発会議、地球サミットが開催をされますが、地球環境問題はオゾン層の破壊、地球の温暖化、酸性雨、海洋汚染、砂漠化の進行、熱帯林の破壊、野生動物の減少など、幅広い領域に広がっております。今や地球環境の保全に人類が全力を挙げなければならないのは当然であり、そのことをやらなければ自滅する以外にない、このように思います。  地球は、今から約四十六億年前にこの宇宙に誕生したと言われております。それから数十億年経で、酸素、空気、水、そういうもの、あらゆる物質のおかげで地球上に動植物の生命が宿ったわけでありますが、こうした生物は成長に必要なものを摂取し、種を保存して、進化して今日に至っております。万物の霊長たる人間も生存に必要な食をとり、子孫を残していく、これ以外にないわけであります。健康、成長、繁殖、成熟は生物に与えられた自然からの最良の贈り物だ、私はこのように思います。生物界においては、現在に生き、将来に不滅でありまして、これを疎んじて、あるいはまた忘却しては自然の平衡が崩壊し、すなわち自然構成、環境の破壊以外にないと思うわけでありますが、また生命は、これを維持継承するために、みずから健康で、充実した農畜産物の摂取しかないわけであります。  農業は、まさにこうした人類生存の最も重要な部分の生産に当たる基礎的な、基本的な職業であり、誇りを持たなければならないと思います。この原則、哲学なくして、安全な食糧の安定的生産の意義がなくなります。効率化、利潤追求だけではなく、自然形態の破壊をしないようにしなければならないと思います。地球環境の破壊は、やがて世界的食糧の危機をつくり、また死の商人の食糧生産につながるのではないでしょうか。  日本農業も、自給率の向上と環境保全の農業になるよう、その意味では全力を尽くさなければなりません。つくったから食べる、こうした主義の体制や、自分は安全なものを食べ、市場に出すのは薬づけという農業づけなどもありまして、安全性もなくソフト性のない現在の生産体制であってはならないと思いますが、これはまた生産者だけの責任ではなくて全消費者の問題でもあろうかと思います。生産者と消費者が全国民的体制をもって一体となった農業の取り組みが重要だと思いますが、こうした環境保全型農業振興に対して、対応を含め、御見解をお伺いしたいと思います。
  41. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 環境問題は世界的に取り上げられて、ブラジルのサミットもいよいよ開催ということになりますが、またそれぞれの国の立場というのもございまして、開発途上国等においては食糧難、人口がどんどん、今五十三億でありますが、大体十年で十億ふえていく予想でありますね。そういうことを考えますと、開発途上国の人口がどんどん増加しているというところに食糧と人口との大きな問題が私はあると思います。  したがって、この方々意見というものは、幾ら環境、熱帯林を保護しろと言っても、生きることが先でありますから、どうしても伐採をする、焼き畑をするというこの傾向というものをとめていくためには、先進国は一体何ができるのかということが今回の環境問題で大きな問題になると思います。  ただ一方、我が国においては雨が多い、あるいは森林に恵まれて傾斜地等が多いわけでありますから、気候や地形条件のため地下水というものが汚染されにくいということがあります。ですから、欧米と違いまして水田も多いものですから、とにかく汚染物質というものはつくられにくいという環境には確かにございます。しかし、今ではそんなに表面化はしておりませんが、一方では少しずつ地下水でありますとか湖沼、そういうものの環境悪化が出てきておるということも事実であります。  こうした状況のもとで、現段階から関係者の理解を得ながら、生産性向上とこの環境問題を両立させていかなければならぬ、持続し得る環境保全型農業を私どもは確立していかなければならぬということで、平成四年度から、環境保全等に配慮した新しい農法の確立を中心として、地域の実情に合った環境保全型農業を進めておるところであります。  ただ、無農薬等でありますが、何といっても手間暇がかかるし、収量が落ちるという傾向がありまして、まだまだこの面については研究を重ねて努力をしていかなければならぬというふうに考えております。  いずれにしても、環境問題は、日本の環境と世界の環境と一体となって日本が果たしていく大きな課題であろう、こう考えております。
  42. 有川清次

    ○有川委員 日本農業中心にしてどうするかという意味で聞きましたが、しからば、今度の新農政の中に環境保全型、持続できる農業というのもあるようでありますが、この環境保全について、ヨーロッパ、スイス、西ドイツあたりでも環境保全のために不利益な地帯に対する特別な資金をよごすとか補償する、こういう制度がとられておりますね。そういうことを考えると、日本の場合にこれから具体的に環境保全のための所得維持、そういう立場からの助成、そういう具体的なものも考えておられるのかどうか、ちょっとお伺いしたい。
  43. 馬場久萬男

    馬場政府委員 新政策の関係ですので、私の方からお答えします。  環境保全のためにということと所得維持ということとを結びつけるのはなかなか難しいことがございます。それは、先生御承知のように、環境というのは地域全体の問題であり、例えば川で言えば上流、下流が密接に結びついておるわけでございまして、範囲も非常に広いものであります。  おっしゃる条件不利地域、いわゆるヨーロッパで言われています条件不利地域における農業に対する所得の補てんという問題と環境とを結びつけるのは、なかなか私どもとしては難しいと思っております。またそれが、所得がある農家であろうがない農家であろうが、やはり環境保全という意味では、どちらがどうであって、環境を損なうような農業をやってもいいということにならぬわけでありますから、これはやはり全体の農業のあり方として、先ほど大臣からも御答弁申し上げたように、どういう形態の農業を進めていくかという問題であろうと思っておりまして、私ども検討の中では、環境とその所得補てんというのを直接結びつけるような検討はいたしておりません。
  44. 有川清次

    ○有川委員 直接それに限ってという特定をした内容ではないということで、どういう形態の農業を進めるかという意味では、やはり思い切った所得の向上、安定対策の裏づけをする、こういうふうに受け取っていいですね。
  45. 馬場久萬男

    馬場政府委員 どういう農業をこれから進めていくかということについては検討しておりますが、それがすぐ所得対策対象にするかどうかということは、これは別でございます。  つまり、農業に対する所得をどうするかということは、やはり我々としては積極的に国民に受け入れられる、評価される農産物をつくっていただく、それがやはり生産活動としての農業を支持するわけでありますから、所得政策と直に結びつけての議論ではこざいません。
  46. 有川清次

    ○有川委員 そこにまた、これまでの農業の総括の視点の弱さというものを感じます。さらにまた農業全体に、ただ生産者にコスト低減を図れ、生産性向上を図れ、そればかり押しつけて、一方では農機具を売り込んだりいろいろする、こういう状況からは脱却する展望はあろうかと思いますが、その辺十分な今後の検討を、また折に触れて私たちも意見を述べてまいりたいと思います。  そこで、時間の関係もありますので、順番をちょっと変えまして質問申し上げます。  島国で山林の多い我が国におきまして、中山間地域農業振興、農村集落の充実、生活環境の整備保全、地域の活性化政策というものは、極めて重要な分野でございます。またこれは、単に農林行政にとどまらず、生活基盤の整備や福祉、医療、教育、文化など、総合的な対策が要請されるところでございますが、そうした意味でも、今日の行政が縦割り行政であり、あるいは農業だけの部門でいろいろ検討する、こういうところに一つの問題があるように感じてなりません。こういった地域での農家の努力が報われる農政の確立が求められているのは当然でありますが、しかし、現実には過疎化が進行して高齢化社会となり、若い担い手の不足は厳しいものがあります。我が党でも、今議会の中にこれに関係する法案を提起しておるところでありますが、私は、こうした問題地域一つの例として、次のことを提起をしたいと思います。  鹿児島県の離島や沖縄でも現在発生しておる問題でありますが、この地域はサトウキビが基幹作物でございます。台風常襲地帯でもあり、台風に強い伝統のキビ作を営々として今日まで農家は取り組んで続けております。しかし、刈り取りなど収穫作業が重労働でありまして、高齢者と女子労働者が主力の地域の作物としては、極めて厳しいものがあるところです。その上、そうした労働の報酬としての所得が低いというのも現状であります。  二年連続の台風襲来もあり、大幅な減収のために価格は実質的に据え置かれたとはいうものの、政府の支持価格は、内外価格差を反映いたしまして生産費すら償えない状況で、やむを得ず野菜や花などへの転作をする農家も多く出まして、キビ離れも一方で進んでいる状況がございます。  作付面積が減少する理由は、生産農家所得確保が厳しいこと、あるいは生産者の高齢化機械化、品質改良のおくれ等であると思いますが、これらの背景となる農政上の問題の一つに、内外価格差の是正問題がございます。  輸入自由化の進行は、あらゆる作物にこうした問題を投げかけ、農家生産意欲を阻害をしているわけでありますが、この点では糖価安定法に支えられつつも、低糖価政策のもとで対処しておるのが現状です。しかし、このことが糖業生産工場と生産農家にコスト低減、合理化の強要となっており、また、農家等のその努力は、結果として支持価格据え置きということで吸収されまして、所得向上にはつながっておりません。その上、農家は、生産資材、例えば機械とか肥料とかビニールとか燃料とか、そういうものの値上がりがあるために、実質所得は低下をする一方だという不満が、あるいは怒りがあるのも現状です。  もう一面では、平成元年度に決まりました、平成六年産より品質取引に移行する問題が絡んでおります。農家はこの品質取引の行方を大変気にしており、極めて大きな不安を持っておるのが現状です。その意味では、品質取引に向けた諸条件整備としての品種改良、機械化の推進、土地基盤整備、栽培管理の強化などがまだまだ不十分ではないかと言えるところです。また、糖業者にとって品質取引がコストアップの要因にならないよう配慮してほしいところでもございます。  このような状況では、地域農業、離島、中山間地域農業はますます寂れていくので、それらの対策を含む農政の再検討が求められているところでございます。  以下、こうした状況を含めまして、三点質問いたします。  第一点は、アメリカ、EC等に比べまして、農業規模の違いから内外価格差が生じているのはやむを得ないことでありますが、ましてや中山間地域では、なお一層厳しいものになっております。価格差の是正を図るには、その作物の置かれている実態地域経済に与える影響、農村地域の環境保護、地域の活性化等をいろいろ踏まえた上での対応が必要と思いますが、どうでしょうか。  また、品質取引への移行に伴う取り組み状況は進んでおるのか。機械化では、刈り取り機が〇・七%、脱葉機が一七・一%の普及率で、小型機を六十三年度から導入するよう努力しているという、平成二年に私が質問したときの回答がありますが、現状はどうなっているのか、まず第一点、お伺いをいたしたいと思います。
  47. 上野博史

    上野政府委員 私の方から、品質取引への移行を踏まえての生産対策あるいは機械化の状況についてお答えを申し上げたいと思います。  平成六年産から品質取引に移行するというそういう時点を目の前にいたしまして、機械化体系の確立、普及を図る、あるいは先ほど委員からお話ございましたような複合的に行われます園芸作物等の導入のための必要な機械施設あるいは共同利用施設の導入、整備、あるいは高品質なサトウキビの安定生産技術の啓蒙、普及を進めるための展示圃の設置あるいは土壌条件の改善というようなことについて、鋭意努力をいたしております。  それから、品質取引に移行するということになりますと、どうしても品種改良を進めなければならない。収穫の時期をずらしまして、工場の効率的な稼働にもなれるような品種を導入するということが必要だというふうに考えておるわけでございますけれども、これにつきましても、種子島と沖縄にございます試験場の試験地を用いまして鋭意努力をいたし、幾つかの品種については既に普及の段階に入っているところでございます。  それから、機械の関係について申し上げますと、労働力が足らない、あるいは高齢化をしているという状況対応いたしまして、このところ収穫機の導入に産地の方での意向が非常に強くなっております。小型の収穫機も平成二年度までに開発を終わりまして、昨年度から具体的に現地に導入が行われ始めておりまして、私どもの聞いている限りでは大変好評である。これによりまして、大型、中型、小型というそれぞれの状況に合った機械化が行えるような一応の装備ができてまいっているわけでございます。共同利用でできるだけ、非常に高い機械であるというのはそのとおりなんですけれども、効率的な利用をやって収穫作業機械化を進めるという努力をいたし始めているところでございます。     〔簗瀬委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 武智敏夫

    ○武智政府委員 先生お尋ねのサトウキビの品質取引の問題でございますけれども、この問題につきましては、平成元年度の価格決定の際に、平成六年度からの導入が決定されたところでございます。  その後、この円滑な導入に向けまして検討、準備を進めますために、元年の十一月以降、国と県、これは鹿児島県と沖縄県でございますが、そこから生産者団体、これはそれぞれの県の農協中央会長さんに入ってもらっております。それから、糖業者をメンバーといたしますさとうきび品質取引推進連絡協議会というのをつくりまして、そこで品質の定義なり、品質の測定方法なり、あるいは品質取引に関する、先生おっしゃいましたような農家方々の不安もございますので、そういった啓蒙宣伝なり、あるいは栽培技術等の普及改善等々を進めておるところでございます。  具体的には、昨年の七月にこの連絡協議会におきまして、要は、甘蔗糖度を基本とするということで品質についての定義は決めたところでございます。これらを受けまして、現在、鹿児島県なり沖縄県の両県におきまして、県段階におきましても品質取引についての協議会を設置いたしまして、現地での推進体制を整備いたしますと同時に、地域の実情に応じました具体的な施策について、国と歩調を合わせて検討を進めておるところでございます。  いずれにしましても、残された期間はあと二年でございますので、その期間に円滑に品質取引に移行できるように、品質の測定手法の確立てすとかあるいは糖度の高い品種の普及ですとか、そういったことにつきまして、これから県とも相談しながら進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  49. 有川清次

    ○有川委員 時間がありませんので、簡潔にあと二つお伺いします。  現実的には、政府の考える価格是正は、生産農家を初め関連産業にコスト低減、合理化を強いておるわけでありますが、具体的に基幹産業であるキビ作が減少をいたしまして、このため工場の統廃合問題が急浮上しております。その実態を把握されておるのかどうかお伺いいたします。
  50. 武智敏夫

    ○武智政府委員 先生から先ほど来お話もございますように、サトウキビの生産面積が減っておりまして、それに伴いまして生産量も減っております。したがいまして、現在の鹿児島県におきましては、種子島ですとか沖永良部とか六つの島におきまして六社九工場が操業をいたしておるわけでございますけれども、この生産量の減少に見合った適正操業上いいますか、少しでもコストを下げた操業をやるといったような観点におきまして、一部の企業が二つの工場を合併するというような動きがあるということは承知いたしております。  しかしながら、サトウキビの生産は、離島におきま中非常に重要な基幹産業でございます。当然に甘蔗糖の製造業が地域経済に果たす役割も非常に大きいわけでございますので、こういった問題につきまして、県も市町村もあるいは生産者団体も入れまして、地元におきまして十分話し合いながら対応を進めていくことが重要であるというふうに思っておるところでございます。
  51. 有川清次

    ○有川委員 地元において十分話し合いながら対応が重要だというふうに御回答いただきまして、それをぜひ行政指導の中で十分な体制をとっていただきたい。  次に、この種の問題は単に工場の統廃合と単純に片づけられる問題じゃないということだから話し合いをしてもらいたいと思うのですが、地域農業及び地域経済に与える影響が非常に大きくて町の活性化にも決定的な打撃を与える、こういうふうに思います。  そうした実態を踏まえながら十分な行政指導をしてもらって、問題が発生し重大な局面を迎えないよう指導の強化を要請するところでございますが、この点について指導の立場から、希望だけでなくてどう考えているのか、もう一回お聞かせをいただきたい。
  52. 武智敏夫

    ○武智政府委員 現在、既に鹿児島県も入っておりまして、我々本省といたしましても既に話も聞いております。したがいまして、基本的には県を中心としまして、メーカーの方々と地元の企業、それと市町村を含めて話し合いによって円満な解決をしていただきたいというふうに思っておりますけれども、必要な場合には我々も当然に参加いたしまして、円満に解決するように努力したいというふうに思っております。
  53. 有川清次

    ○有川委員 企業の方は都会的な産業という立場で判断をする、現地ではその町の全体的な経済の活性化、その基本は農業、その基幹作物、そういう立場で非常に影響があるわけで、考え方に大きな食い違いもあるようでありますので、その辺を踏まえた農業振興の立場、地域活性化の立場で、おっしゃるとおりぜひ十分な対応をしていただきたいと思います。  続いて、最後に、持続できる農業の問題で自然環境を含めていろいろお伺いするつもりでありましたが、もう時間がございません。そこで要請にとどめたいと思いますけれども、土づくり等に関連をいたしまして、やはり健康な土づくりというのが非常に大事だ。さらに複合経営という立場からすれば、畜産との複合経費その畜産のふん尿処理について、有効適切にそれを処理する、生かしていく。あるいは尿の部分は有機液肥化など、完熟堆肥をもって弱酸性の土壌づくりなどを心がけなければならぬと思います。これは私も従来から言ってきたところであり、きょうは質問はいたしませんが、具体的に複合経営の推進の中でこれが生かされるような、公害として邪魔者にされずに、これから先は最も大事な生産物だという立場からの対応を要請しておきたいと思います。  それからもう一つは、枝肉価格が低落したことから子牛価格が軒並みに今低下いたしておりまして、乳用子牛の肥育素牛が安定基準価格は十六万が十一万を切るという状況、黒毛和牛もかなり下がりましたし、褐毛牛も下がってきております。これが一時的なものか、牛肉自由化がいよいよ具体的に生産農家に影響し出したのか、この辺が皆さん非常に心配をされておるところでございますので、十分な対応を要請しておきたいと思います。  それから、安全食糧の問題については輸入食品、食肉の安全性の問題があるわけでありますが、この検査体制、いろいろ御報告を受けたところでは、私は極めて不十分だ。テレビ、ラジオ、新聞等でも報道されるように、有毒物質が乳から出たりいろいろなものにあらわれておる、ワインにまじっておる、こういう問題もございますので、検査体制の充実に向け、要員の確保を含めて万全の体制をとっていただくよう御要請を申し上げまして、私の質問を終わります。
  54. 高村正彦

    高村委員長 田中恒利君。
  55. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は、最近大変大きく世間を騒がせております瀬戸内海のサメの問題について、若干御質問をいたします。  実は三月八日に、午後三時ごろだと言われておるのですが、松山市の沖合で、タイラギと申しまして大きな貝ですが、このくらいの大きな貝の操業を海底でしておりました潜水夫の原田一太さんという人が、突然インターホンで、助けてくれ、引き揚げてくれ、こういうせっぱ詰まった気持ちの伝わった連絡が船上の同僚に伝えられて、二度三度あったそうですが、慌てて引き揚げると大変軽くて、既に潜水服は右足から全然ない、腹部はもうずたずたになっておる。ヘルメットがあったそうですが、ヘルメットには三センチ程度のきばの傷跡が残っておったというようなことでありまして、若干肉片が残っておったと言われておるのであります。これは大変なことだということで大騒ぎが起こったわけです。  その後の鑑定で、四月の中旬に北海道の水産学部の方で専門の先生が、奥さんが持っていかれた遺品を細かく調べて、サメの歯の一片が発見せられて、どうもその歯の形状からしてホオジロザメという判断をされておるようでありまして、ほぼ間違いないんだろうと言われておるのです。  当時、この海域では、一月三日と二月十四日、二日間にわたって同じ地点でやはり巨大な、五メートルから六メートルというような、ドラム缶よりもっと大きな腹のサメが泳いでおって、そして、実はその原田さんの弟さんが最初にヘルメットにきばをぶっつけられたのですよ。彼は、ぶっ倒れて海底にはったというわけです。それで終わったのですけれども、まさに危機一髪であったわけです。そういう事件が起きまして、この地域の漁業者は、これは大変なことだということで操業を中止して、それから一カ月ほどサメの捕獲に実はその地域一帯、瀬戸内海の伊予灘と言うのですが、あの付近一帯の海上でサメ退治、捜索に入ったわけですが、どうも効果がないということで解消した翌日に、これが三月八日ですが、お兄さんがやられた、こういうことになっておるわけであります。  それで、このことについて、当時、海上保安部が松山にありまして、海上保安部がいろいろなお世話というか、状況を知っておるわけでありますが、海上保安部はこの事件について、その後どういうふうにこれを受けとめて、どういうふうに対応せられたか、同時に水産庁も、どういう受けとめ方をして、どう対応したか。これをまずお尋ねしておきたいと思います。
  56. 徳野勤

    ○徳野説明員 お答えいたします。  事故の概要から説明させていただきますが、平成四年三月八日午後三時二十分ごろ、愛媛県松山市堀江港沖におきまして、ヘルメット式潜水器具を使用してダイラギガイを採捕しておりました漁船第七正立丸の潜水夫から船上の乗組員に対しまして緊急に引き揚げるよう合図がありまして、同船乗組員らが引き揚げましたところ、腹部及び右足の部分が引きちぎられたようになった潜水服及びヘルメットのみが揚収されただけで、潜水夫は行方不明となったものであります。  同日午後四時十五分、同船からこの情報を入手いたしました松山海上保安部は、直ちに巡視船艇を出動させまして行方不明の潜水夫の捜索に当たりまして、三月十二日までの五日間に、巡視船艇延べ十一隻、航空機延べ五機を出動させまして捜索を実施いたしましたが、まことに残念なことに、行方不明者の発見には至りませんでした。  次に、海上保安庁の対応でございますが、事故発生後、先ほど申しましたように、松山海上保安部では、行方不明者の捜索を行うとともに、県、漁業関係者などから成ります対策会議に参加いたしまして、同会議において決定されました海洋レジャー関係者及び海洋工事関係者に対する注意喚起、県、漁業関係者などが実施いたしますサメ捕獲作業につき、巡視船艇によります現場海域の警戒等の協力支援を行っております。  また、広く海事関係者などからの協力を求めまして、サメ発見情報の入手に努め、発見情報を入手いたしました場合には、これを速やかに関係先の方に伝達をいたしております。  以上でございます。
  57. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 瀬戸内海におきましては、もう御案内のとおり、これまでサメの漁業被害や人身事故等は余り記録されなかったわけでございますけれども、今回このような事件が起きたことは、今保安庁から申し上げたとおりでございまして、とうとい人命が失われ、まことに痛ましいものであり、謹んで被害者の方の御冥福をお祈り申し上げるとともに、このような事故が二度と起こらないように対応していく必要があるんではないかというふうに強く認識しておるわけでございます。  今回の事件発生に対しまして、水産庁といたしましては、まず瀬戸内海漁業調整事務所を中心にしまして、サメに関する情報の収集でありますとか、関係県との連絡態勢を強める、それからまた、関係県あるいは漁連の方々に御参集を願いまして、専門家を招いて、サメの生態とか被害防止対策等につきまして協議会を開催したところでございます。さらに、操業自粛を余儀なくされました漁業者の方々のうちで、漁業近代化資金でありますとか公庫資金の借入金の償還が困難となっている方々には、その実情に応じまして償還猶予等の措置をとるよう、関係機関を指導したところでございます。また、あわせまして、漁港等の公共事業の海中工事の事故防止につきまして、各県を通じまして御注意を喚起いたしたわけでございます。
  58. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 この出来事は、地元の愛媛県はもとよりでありますが、多分豊後水道から瀬戸内海の狭いところに入ってきたんだろうと思われるのですけれども、そこの一帯である高知、大分、それから山口、広島、岡山、兵庫、大阪、和歌山、徳島、香川、こういう瀬戸内地区の各県に対して非常に大きなショッキングな出来事として、特にマスコミが、外国の報道社も参りまして相当激しい取材をしたものですから、連日の報道で非常に大きな出来事として、各県ともいろいろな対策会議をつくったり相互の連絡体制をとったり、ともかくこの瀬戸内海というのは海の公園と我々は思っておったのでありまして、そこに人食いザメが出てきたということで、各界、特に関係地区の漁民は、今なおまことに壮絶なまなじりで、このサメをとりたいということで毎晩出ておるわけであります。  漁協、さらに県、自治体が挙げてこの二カ月余り、もう二カ月経過したのですが、日夜いろいろなことをやってきたわけであります。一つは遺体の捜索ですね。今保安庁から話があったように、その遺体は発見されてないわけであります。あるいは、このサメをつかまえたい、かたき討ちしたいということで、もう二十四時間態勢で捜索をやって、いろいろなえづけをやって網を投げてやったわけでありますけれども、これはちょっとひっかかったときもあったのですが、逃げたといったようなことで、間に合いませんでした。そういうことをやった。それから因果関係。どこから来て、どういう経路で、大体この瀬戸内海にこういうサメが生息しておるのかどうかという不安、こういうものについても究明をしたいという希望があるわけでありますが、これがまだはっきりしておりません。いずれも、遺体の捜索も、サメの捕獲も、因果関係の究明も、ほとんど実らない状態で今日を迎えておるということであります。  したがって、私は、水産庁としてこの問題について、どういう角度でこれをとらえて、どういう対応をせられていくかということについては、もう少し瀬戸内海全体の環境の問題も含めた方向としてお考えをいただく必要があるような気がするのです。大臣は、水産は大変ベテランですが、一応大臣のお考えをお聞きをした方がいいと思いますから……。
  59. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 本当に、私どもも漁民のことを考えると、自分の立場に置きかえてみると、もう海に入ることすら恐らく怖いという気持ちだろうと思うのですね、それはいつあらわれるかわからぬ状況ですから。いろいろな意見を私に言ってくれる人もおります。何とか、金の網というのですか箱というのですか、そういうものをやって操業したらどうかとか、サメは、並んでみて自分の身長より長いと襲わないとか、いろいろなことを水泳の古橋JOC会長さんも言ってくれたりいたしましたが、まあしかし、どうあろうとも、出てこられると、それはショックで大変だろうと思うのです。受けない人も、今度入っていて出てきたらどうしようか、海の中に入っているわけですから、さっと逃げるといったってそう簡単にはいかないということを考えますと、本当にこれは困ったものだなと、実は私もいまだにそう思います。  このホオジロザメですが、従来外洋に生育するものだと言われているわけでありまして、瀬戸内海のような内海に入ってくるという、被害でありますとか人身事故等はほとんど見られないというのが定説のようですね。しかし、原因についてはおっしゃるとおり明らかでありませんし、中には海洋の環境の変化ではないかと言う人もおるわけであります。  いずれにしても、漁業は海洋環境の変化によって大きな影響を受けるものでありますから、従来から、国及び都道府県の水産研究機関において漁海況の状況について調査を行うとともに、これらの研究機関や漁船から得た情報を取りまとめながら、適宜漁業者に提供する事業を行ってきてはおります。また、瀬戸内海の海洋環境の状況については、このような調査結果や情報を踏まえ、研究機関、行政機関、関係者による検討を行うことについて考えてみたい、こう思っております。
  60. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は、この際水産庁は、このホオジロザメというのがどういう形で入ってきたのか、そして瀬戸内海に常時生息をしておるのかどうか、このことについていろいろな調査機関を動員して、学者や水産研究所もありますが、県、自治体、あるいはいろいろな人にも聞かなければいけませんが、聞いて、一遍瀬戸内海のこういう危険な動植物に対する総合的な把握をする必要があるのではないか。  それはなかなか難しいと言う人もあるのですが、ただ私は、短い期間ですけれども、この事件が起きてからいろいろ聞きますと、サメでやられたのは、国や何かの資料を見ると日本では四件しかないのですね。そして、十年か十五年に一回ほどしかないということになっておるのです、しかし、隠されたものも相当あるようで、私のところの近くの漁民も足をとられたと言っております。これはホオジロザメかどうかは別ですけれども、我々のところでは、サメというのはフカの一種で、一年に十何頭くらいは二メートルや三メートルのものは実はとっておるのですよ。だからそれもあるし、最近ホオジロザメが、問題が起きてから周辺の漁業関係者が寄って話をすると、一昨年も出ておった、昨年はなかったという声はあるのです。ちょうど貝を採取しておったときに同じような状況があったのだという話もあるので、これはどうも瀬戸内海の構造が変わって若干生息しておる危険性もあるという心配もあるわけでありますので、それらの点を科学的に、水産庁として、どういう調査をするのか難しいことですけれども、一遍この問題については研究をしていただいて、瀬戸内海は全体として潮の温度が、温暖化が、世界全体がそうでありますが、二度ぐらい上がっております。これが大きな関係をしておると言う学者もおるわけでありますが、そういうような点も含めて総合的な調査、海流の流れ、温度の変化、そんな点を十分に把握していただきたい、こう思っておりますが、長官どうですか。
  61. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 日本の場合にはサメによる人身事故が比較的少なかったというようなこともありまして、私どもも、今回のこういう事件に遭遇しまして、知見を集めたいと思っていろいろなところに照会したわけでありますが、なかなかサメの専門家も少ないというようなことでございます。しかし、いろいろ御意見もございますし、今大臣申し上げましたように、今回集められました情報あるいは知見その他、これから相談してどういうことをやっていったらいいのか、それを含めまして、行政、試験研究機関あわせまして検討、どれだけ具体的に接近できるかどうか、その辺自信はございませんけれども、勉強してみたいというふうに考えております。
  62. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そこで当面の問題としては、亡くなった原田さんという方は佐賀県の方でありますが、この方は現在なお行方不明ということになっておるのです。恐らく十中八九亡くなっておる、サメに食われたというのがもう一〇〇%間違いないと思うのですが、原田さんの御遺族に対して、こういう不慮の出来事に対して何らかの哀悼の意を表す必要があるのじゃないかと思って、私などもいろいろな法規、法令を調べたのですけれども、なかなかございません。ございませんが、共済制度あり、労災あり、あるいは海難事故に対する遺児の育英資金などもあるようでありますので、そういういろいろな問題を一遍水産庁として検討していただいて、御遺族に対する何らかの哀悼の意を国としてもささげる、こういう気持ちを出していただきたいと思っております。  まず保安庁にお聞きをいたしますが、この方は今行方不明ということになっておるわけでありますが、これは恐らくもう死亡という認定をしなければいけないのだと思うのです。それについてはどういうことになっておるのですか。これはどこがやるのですか。
  63. 徳野勤

    ○徳野説明員 お答えいたします。  海難などで行方不明になられた方の死亡の認定につきましては、戸籍法八十九条によりまして、これを調査いたしました官署が実施することになっておりまして、本件の場合には海上保安庁が死亡の認定の手続を実施いたします。したがいまして、行方不明者の御親族の方から松山海上保安部の方に死亡認定の申請をしていただきましたならば、以後海上保安庁内部で作業を進めていくことになろうかと思います。
  64. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 労働省にお聞きしますが、この方は労災に加入していらっしゃると私は思っておるのですが、どうですか。
  65. 出村能延

    ○出村説明員 お尋ねの原田さんの件につきましては、まだ必ずしも状況が明らかになっておりませんので、現時点で労災保険給付につきまして申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。  なお、一般的に申し上げますと、被災者が労災保険の適用事業場に雇用されている労働者であれば、そしてその災害が業務上のものであれば、労災保険による給付が行われるということになっておるところでございます。
  66. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は、ちょっとその点も心配で愛媛県の漁連で聞きましたら、どうも労災には加入しておるというふうに聞いておるし、これは完全な業務実施上の災害ですから、もし必要な手続が出たらそういう措置を早急にしていただきたいと思います。  水産庁の関係で、御遺族に対して配慮すべき事項が若干あるのじゃないかと思うのですが、ございますようでしたらお知らせいただきたい。
  67. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 被害者あるいは遺族の方には極めて痛ましいことだというふうに思っておるわけでございます。  被害漁業者の方は、漁協の普通厚生共済と乗組員厚生共済に加入しております。共済金につきましては、普通厚生共済については四月二十三日に、乗組員厚生共済については四月二十四日にそれぞれ遺族の方に支払いが行われております。  それから遺児の方でございますけれども、漁船海難遺児につきましては育英会によりまして奨学金の支給が行われているわけでございます。この方につきましても、所属漁協、佐賀県の大浦漁協の方から育英会の方に問い合わせがございまして、育英会の方で出願に当たっての手続等につきましていろいろな指導を行ってもらっている状況にあります。  本件につきましては、事故の態様から見まして支給が可能な案件ではないかというふうに育英会側で判断いたしておりまして、出願があり次第、選考委員会の審査手続を経て支給する方向にあるというふうに我々聞いておるわけでございます。
  68. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 大体概要は出てまいりましたが、問題は労災だと思うのですがね。だから、労災の問題については、労働省の方でちょっといろいろ現地の方とも連絡をとり合ってみていただいて、もちろんこれは今の行方不明の状態が続いたのでは労災の支給もできないのだと思いますから、その辺も含めて、海上保安庁や水産庁や労働省の方で二足の連絡をとりながら、何さまこれは、まことに残念なことですが、人の命が亡くなって、しかもぱくっと、それだけで終わったのですから、ひとつ最善のことはすることができるように、十分関係庁々で御配慮をいただきたい、そういうふうに思っております。  それから、あとはさっき水産庁の長官の方からおっしゃられたことの中に含まれておるわけでありますが、実は公共事業は、ことしの三月三十一日いっぱいでやれなくて、私の県なんかも十何カ所かあるはずでありますが、いわゆる潜水ができないから潜水ストップをかけたわけであります、海に潜ったらいけないと。あの周辺を初めほとんど、伊予灘海域あるいは宇和海海域、海に潜れないのだから、海岸の護岸工事であるとか防波堤の工事であるとか、そんなものは全部ストップをして工事の繰り延べを要請して、それは認めるということになっておるわけですが、これから先、今工事が再開を始めました、再開を始めましたが、その際に、やはり危険なので防御ネット、網を張ってそして防波堤をつくって、そして中で仕事をする、こういうことになったのです。その網、防御ネットについては、県の方も何か考えていくということになっておるのですが、当然水産庁もこれは一緒だろうと私は思っておるのですが、これからやはりちょっと、そういう危険な地域については、安全な対策施設を補助の対象にしていくという配慮をしなければいけないのじゃないか。これは、その地域はことしはもう海水浴のシーズンになりますから、海水浴の客が恐らく全部とまってしまう、みんなこういうふうな心配をしておるのです。そのおそれはあると思うのですが、とりあえず公共事業についての、そういう工事についての防御ネットなどについて援助の対象にしておるのかどうか、この辺をちょっと。
  69. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 漁港でありますとか沿整事業でありますとか、公共事業の実施につきましては、サメ被害の防止の観点から、潜水作業等に従事する作業員の安全を確保するため、必要があれば防御ネット設置などの対策を講ずること、その際、必要な経費は補助対象とすることを既に関係都道府県等に対しまして通知をいたしておるところでございます。
  70. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それから、これは金のことばかり言ったって、えらいなんですが、確かに潜水漁業者というのは仕事がストップしてしまっておるのです。それで収入はないわけですから、生活が困る、こういうことになってくるので、これは県や地方自治体市町村が、いち早くサメに関する特別な制度をつくって生活資金の補給というものを開始しております。大体愛媛県なんか、約一億、一戸当たり二百万、三年以内償還、金利は七分で、四分は県が見る、あとは市町村が見て、大体関係漁民は一分程度の利子負担になる、そんな制度も特別につくって補給の活動も始まっておりますが、こういうものに対して何らかの救援というか援助はできないかどうか。  あるいはこの二カ月の間、関係自治体は恐らく、私の県なんかは宇和海も含めて、全体の沿岸地帯はサメ退治で住民もやっきになっておるわけですよ。大体どのくらい金を使ったかと言って聞きますと、対策本部ができまして、これは副知事が委員長になっておるのですが、そこが使っておるのは大ざっぱに大体五千万近くになると言っておりました。それは県が半分持って、あと市町村、漁協、それから建築業界、それから海に関する民間団体ですね、そんな民間のボランティアなんかもそれぞれ資金を出し合って、必要なサメ退治の経費を賄っておるのでありますが、こんなものについては何とか多少でも援助できないのかどうかという声があります。私は、国会議員としてそれを皆さんにおつなぎをしなければならないと思っておるわけでありますが、何かこれは案が、いい考えはありませんか。
  71. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 サメ問題により影響を受けております漁業者の方々に対しましては、先ほども申し上げましたように、制度資金の償還猶予等の措置を具体的な実例に応じて講ずるよう、関係機関に指導しておるところでございます。それからさらに、サメ問題による減収の結果、経営の再建を図るための資金が必要な場合等につきましては、漁業経営維持安定資金等の活用が可能でございますので、そういう要件を頭に置いて、何か必要に応じ対応するよう、関係県を指導しておるところでございます。  さらに、愛媛県その他松山市等で利子補給をやっておることは承知しておるわけでございますけれども、そういうことに対する助成はちょっと難しいのじゃないか、やはり我々としては、経営維持安定資金で対応していただくというようなことではないかと思います。  それからまた、サメ問題の発生以来、関係の県あるいは関係の漁連等がサメ退治その他情報の収集等に人力あるいは経費を相当使っているということは承知いたしておるわけでございますけれども、私どもとしまして、既に支出しました金について助成するというのは、率直に申し上げまして難しいのではないか。今後対応する場合に、必要がある場合、私どもとしまして、有害水産動植物の駆除事業というのがございますけれども、そういう要件に該当する場合には、それを利用した助成ということが考えられるわけでございますけれども、県当局とも相談をしているところでございます。
  72. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そのものずばりでは、今の制度の中ではいろいろ問題があるということはわかりますが、実態は今申し上げたような状態で、地区の住民の全体の不安あるいは瀬戸内一帯の関係者全体が非常にこれを心配をして、いわゆる国民が非常に心配をして、たった一匹の、あるいは二匹か三匹か知りませんが、このサメに対応しようとしているわけであって、それをめぐって善意のある各界各層が力を合わせて汗を流しておるわけでありますから、これを既定の制度の中にどうだこうだといったようなことだけでは解決できない面があると私は思うのです。  だから水産庁としては、この問題についてはこういう面でこういうことをやりたい、例えば、ことし一年ではできない、来年、再来年かかるかもしれぬけれども、何かやりたいといったような具体的なものを示していただけたら、水産庁はじっと眺めておるのかというような声がやはり起きますから、だから私は、最初に申し上げたように、この原因、因果関係を、なぜこういうことが起きたかということについてはなかなか県単位では把握できないのですから、水産庁として責任を持って対応してもらいたい。そのために予算が必要ならば、これは農林大臣として未年の予算要求あたりでがっぽり出してもらって対応していくということが必要だろうと思います。  それから、今やってきたいろいろなことについての援助などについては、何か関係があった分野で、ひとつできるだけ配慮をできるところはしてもらうということで、県の側と十分協議してもらうようにお願いしておきたいと思います。大臣、いいですか、その点。あなたの方で何かありますか、この問題で。
  73. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 いろいろと科学的に分析をしたりなんかしなければならぬ分野も相当あります。いずれにしても、漁民の立場というものを考えてみると、本当に深刻な状況であろうと私は思いますので、十分関係者よく相談を申し上げて、対策を立ててまいりたい、こう思います。
  74. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私も、実はこの問題は、国政の段階ではどの程度に取り扱っていいのかと思っておりました。マスコミが非常に過激な報道をしたときには、ちょっとと思っておりましたが、実はこの間現地へ行って、特に漁民ですね、漁民の諸君のまことに異常な執念にはたじたじであったわけです。これはしかしえらい大変な気持ちだと思っておりまして、また、このサメというのが、実はその方々と話すと、決して突然入ってきたようなものではない、そういう受けとめ方をしていらっしゃるものですから、もう必死になって、女房を質にしたって退治するものは退治せんかったら大変なことになるというような取り組みをしておりますから、私も熱気にあてられて、こういうことを皆さんにお願いをしておるということでありますから、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  それで、あと五、六分ありますから。  実は先ほども若干御意見が出たわけでありますが、有機農業の問題について、私は、佐藤隆さんが農林大臣のときに、この問題で佐藤さんと国会でもちょっとやりましたが、実は二人で相当突っ込んだ話をした思い出があるのです。もう亡くなりましたが。その後、農林省の中に有機農業対策室ができたわけですが、やはり新しい科学的な技術、バイオ、そんな先端技術も必要だが、現に日本の農村の中で芽生えて農民自体によって広められておる有機農法というものに農林省が黙っておるわけにはいかぬ、やはりこれに目を向けるべきだということで、佐藤さんも同じだと言って、当時相当重視をしたお考えを示されておったわけであります。  それからだんだん、急速に有機農法自体もどうも大きくなり過ぎるような状態で大きく出てきておるようでありますが、農林省も今度この有機農業対策室を環境対策室か環境保全対策室か、こういう形でちょっと上に上げるのですね。そういうことでありますが、これはそれだけでは済まない日本の農政の基本的な方向、つまり自然環境と農業を結びつけるという大きな問題と結合してくる内容を持っておると思うのですが、まずこの有機農業というものについて、新しい農政も出されようとしておりますが、そういうものの中で、これからの農政との関連でどういう関連性を持たせて進めたいという気になっていらっしゃるのか、そのことだけ、ちょっと簡単でいいですから、お話しいただきたいと思います。
  75. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 亡くなられた佐藤先生、これは本当に御熱心でありました。引き続き、これがずっと私どもも申し送りされまして、この有機農業については消費者も本当に期待をしておる。目に見えないものに対する恐怖というものは一番厄介でありまして、農業が何年たったときにどういうのが出てくるかというのはだれも目で見ることはできない、さわってみることもできない問題でありますから、私は消費者の方々のこれに対する期待というのが大きいということは当然だと思うのです。  そればかりでありません。地域農業振興等の観点からも大切な農業形態の一つだと考えております。有機農業は化学合成農薬でありますとか化学肥料等の使用をしないわけでありまして、労力でありますとか、収量面での問題があります。特に、堆肥づくりを熱心にやられて、土に栄養が多くなりますと意外に病気に強いという面があって、この面を重視してつくっておられる方々もあるわけでありますが、いずれにしても生産者の方々地域の条件に合わせてさまざまに工夫をしながら取り組んでおるというのが実態だ。問題は、今申し上げたように、この収量面をどうするかというような研究はいま一つ努力していかなければならぬと思いますし、私ども、農林水産省としては、今後ともこうした取り組みに対して、情報の提供あるいは無利子の農業改良資金の貸し付け等の所要の支援をしてまいりたい、こう考えております。
  76. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間がありませんからこれだけにしたいと思いますが、実は私も自分の村で、もう二十年近く経過ありますが、一つの有機農業のグループを育てたと言ったら横着てすが、育成してきたつもりです。私のところはミカンですが、ミカンの三分の一ぐらいはそういう若い連中が中心になってやってくれておるわけであります。  そこで、今有機農産物の規格の統一の問題が、規格の設定の問題が議論になっておるはうですが、農林省の有機対策室ができてから、実際どういうものが有機農業なのかという調査をたくさんやられて、その調査結果をいろいろ話を聞いておりますが、非常に参考になる点があります。それをずっと見てみると、やはり基本的には生産者と消費者が直接結びついて双方が信頼し合う、こういう信頼関係の前提の上に、有機農法というもの、農業というものが非常に広まっておるという点が一つの特徴だと思うのです。  ところが、非常に広範な範囲でこの農法が広まって、農法が広まっているかどうかは別にして、市場というものに商品がどんどん出荷し出すということになってきて、規格をどうするかという問題が出てきておるんだと思うのですが、その場合にはどういうふうにこれは考えたらいいのか。  実は有機農業をやっておる諸君の中にはいろいろな意見がありまして、これは規格の統一とか規格の設定ということは避けるべきだという意見もある、あるいはこの段階ではやはりやらなければいけないという意見もある。私なども迷っておるわけでありまして、実は社会党も近いうち、十名近くの人が宮崎の綾町へ行って、あそこは七〇%、野菜の有機農業をやっておるところですが、あそこを勉強してこようという話になっておるのですが、やはり非常に慎重にこれに対応していただく必要があるということを要請をしておきますが、今の段階で有機農産品の規格をどういうふうにしていくとお考えになっているのか、現状だけ御報告をしておいていただきたいと思います。
  77. 上野博史

    上野政府委員 これは有機農産物の流通の問題でございますものですから、食品流通局長に本来お答えをいただくべきことかというふうに思いますけれども、便宜私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  今委員いろいろお話されましたように、有機農産物の定義をどういうふうに考えるのか、これについては種々意見があるわけでございまして、おっしゃられるとおり、産地、消費地が直結したような流通形態をとっている間では比較的問題の考え方はやさしいという面もあろうかと思うわけでございますけれども、市場を通す流通というようなことになってまいりますと、この辺の定義の仕方というものが非常に難しいものになってくるという事情があるわけでございます。  しかしながら、いろいろな形で有機農産物であるということを示すネーミングをつけて農産物の流通が行われている、それをどう整理をしていくか、そのことがやはり必要なんじゃないかという考え方に立ちまして、消費者、関係団体、学識経験者等から構成される検討委員会、青果物等特別表示検討委員会と我々呼んでおりますけれども、ここにお願いをいたしまして検討をいたしてもらいまして、先般一つの結論を出しております。  極めて簡単に申しますと、要するに有機農産物というものは一切の化学肥料あるいは化学薬品といいますか、そういうものを用いないで生産されたものという以外にどうも定義のしょうがない、一言で言えばそういうことなのではないかと思うのでございますけれども、そういう考え方のもとに、新しく表示の方法などを含めましてガイドラインを策定するという方向で現在準備を進めている、こういう状況でございます。
  78. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私質問を終わりますが、それがだんだん発展して法律でどうだこうだというようなことになっていくと、これはいろいろな意味で問題があると思いますので、ともかく生産者、消費者、そして流通業界も大いに聞かなければいけないのでしょうが、その辺のコンセンサスがとれるかどうか、十分やった上で慎重に対応した方がいいんじゃないかと思っております。何か一定の基準みたいなのが欲しいということもよくわかりますし、その必要性も感じるわけですけれども、これからの進め方については非常に慎重に対応していただきますようにお願いをして、私の質問を終わります。
  79. 高村正彦

    高村委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  80. 高村正彦

    高村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業振興に関する件について、本日、参考人として住宅都市整備公団理事鈴木政徳君、同理事依田和夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 高村正彦

    高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――
  82. 高村正彦

    高村委員長 質疑を続行いたします。目黒吉之助君。
  83. 目黒吉之助

    ○目黒委員 きょうは最初に、文部省から御出席願っておりますので、米の輸入問題に触れた学校図書出版の小学校五年生の教科書の問題について伺っておきたいと思っております。  このことは一部マスコミでも報道されましたけれども、この教科書で「日本農業と私たち」というパラグラフがございます。この中で、越後平野の代表的な農家として二十二ヘクタールを耕作しておる農家を事例として挙げまして、農業についての理解をさせようという記述部分についてでございます。この記述の最後の部分で、例示農家の希望といいますか、願い、これからの農業に対する願いといったようなことで発言を求めて、この農家が話しましたことを記載をしておるわけであります。  その中身は、大型化、機械化すればという前提で話したことでありますけれども、こう言っております。「買った農業機械もむだなく使えるし、収入も多くなります。また、外国の米が輸入されても、競争できると思います。」こういう記述が、実は教科書に記載をされておるわけであります。私も、そこかしこの週刊誌などであれば別にこういった委員会でお話をするということはしないのですけれども、事が教科書でありますので、この辺につきましてはぜひひとつ、どうこれに対処するかという点は確かめておきたい、こういう観点から、文部省の方にお伺いをしていきたい、こう思っております。  この記述をした教科書につきましては、新潟県下で一採択地区で現に使用をいたしております。これに関連いたしまして、新潟県の農協中央会は、四月の十三日に文部省に対しまして、米の輸入ができるかのような印象を子供に与えて誤解をされるおそれがあるではないかという趣旨の指摘をいたしまして、適切な指導をするよう申し入れてまいったところであります。これに対しまして文部省の側からは、農家の意気込みを示そうとしたものだが、現場で適切な指導が行われるよう配慮したい、このように対応されたという報道がなされておるところであります。  この点について若干私の意見を申し上げて、見解を伺っておきたいのでありますけれども、こういった記述は、現行の日本農業実態に照らしますときに、極めて特殊など申しますか、全体としては、二十二ヘクタールといいますればもう二%あるかなしかの経営規模ということになるわけでありますが、こういうものを農業を理解させる一つのサンプルとして教科書に示すということが果たして適当であるのかどうかということがありますので、こういう点から見れば、何かしら農家の意気込みを示したかったんだというものの、これは大変独断的な取り上げ方になっておるという点は指摘をしなきゃならないと思うわけであります。  なおかつ、今日的な農業実態に照らしますときに、教科書にこのようなことを書くことによって農業意欲をかき立てることができる、あるいは示すことができるというふうに判断をしておるところにむしろ問題があるのではないか。そういう点でいいますと、現実は余り理解をされていない、素人と言っていいくらいな農業認識でこれを取り上げる、あるいはまたこういった教科書を採択する。検定という制度もありまして、これはいい悪いは別といたしまして、侵略戦争なんというとかなりやかましく議論されますが、こういったところは余り見られないのかどうかわかりませんけれども、こういったものが通っておるということですね。こういった点で、例示が適当であったかどうかということもありますし、農業実態に照らして、意気込みを増進させるという点では全くそぐわないんじゃないかという点ですね。どういうことなのか、一点、この点を伺っておきたいと思います。  それから、この教科書は、採択されてから一年目でありますから、このまま使われますればあと二年使われる、こういうことになるわけであります。したがいまして、申し上げたことを全体としてどのように配慮をして、誤解のないような指導をされておるのか、冒頭に文部省の方から見解を伺っておきたい、こう思います。
  84. 矢野重典

    ○矢野説明員 委員御指摘の教科書の記述についてでございますが、まず私ども、教科書の中身につきましては、国で学習指導要領という教育の内容についての基準というのを定めるわけでございますが、その学習指導要領では、小学校五年生の社会科の学習内容一つといたしまして、こういうことを教えることになっているわけでございます。「農業の盛んな地域の具体的事例を調べて、農業に従事している人々の工夫や努力に気付くこと。」ということが、国の教育内容の基準として定められておるわけでございます。  今御指摘の教科書でございますが、この教科書は、今申し上げました国の基準に従いまして、その観点に立ちまして、具体的な事例として新潟県の一専業農家を例に挙げまして、具体的にその米づくりの工夫と努力を記述しているというのがこの教科書の単元全体の記述であるわけでございます。その点をまず御理解をいただきたいと思うわけでございますが、御指摘の記述につきましては、委員からお話がございましたように、新潟県の農協の方から関係機関に対する、こういう意味での誤解を生ずるおそれがあるから、適切な指導方をお願いしたいどいうお話がございましたので、文部省といたしましては、新潟県の教育委員会とも具体的に連絡をとりまして、そういった御心配がないように、実際の授業において適切な指導が行われるように、既に配慮をいたしたところでございます。
  85. 目黒吉之助

    ○目黒委員 新潟県の教育委員会と連絡をとって誤解のないような措置をした、こういうことですね。それではそれ以上申し上げませんけれども、ともあれこのような、農業の目指そうとしているところと全く逆になるような誤解を受ける教科書というものについて、これは非常に影響が大きいわけでありますから、ぜひ誤解のないように皆さんから対処をしていただきたいということを強く申し上げて、あと、現場での意見等も聞きながら、今後の成り行きについて私どもも関心を持っていきたいと思っておりますので、そのようにひとつ措置をしていただきたいと思います。  それでは本題に入らせていただきますが、新政策について、午前中もいろいろ議論がございました。農水省の事務次官を長として食料・農業・農村政策検討委員会が設置されてから、農業をめぐる議論が非常に活発化してきておる、こんなふうに見ておるわけでありますが、まだ中身ができ上がったわけではありませんけれども、その点では大変大きな、議論を起こす一つの誘因になっているのじゃないか、こんなふうに思っておるところであります。  それで検討結果について、大体五月には出るというふうに聞いておったわけでありますし、先日の本会議でのやりとりでもそういった観点からの御答弁があったわけでありますが、およそいつごろこれを出されて、できますれば、今後の取り扱い考え方について、あわせてひとつお尋ねをしておきたい、こう思います。
  86. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答え申し上げます。  五月中に出したいということで鋭意作業を進めております。  基本的な課題、何回がここでもお話し申し上げましたが、論点整理と方向づけを行おうというものでありまして、具体的な制度施策については、この検討結果を踏まえて、要すれば農政審等に諮問をし再検討をしていただく。各党もいろいろ検討していただいているようでありますが、幅広く国民、生産者もありましょうし消費者の方々もおるでしょうし、本当に日本の農政がどうあるべきかということが大事なことだと私どもは考えております。  私どもの方も、ただいまのように事務次官を長として、今まで経験したあるいはいろいろ実施した中で、こうなければならぬということを今いろいろとやっておるわけでありまして、また、そういうことが進んでまいりますと、来年度以降の予算編成や法制度改正等についても、事項の緊要性、検討の進展状況に応じて順次措置していきたい。何もかも一遍にばっといくというものでもないし、また、もう既に急がなければならぬものには、例えば新規参入でありますとかいろいろなことは少しずつ手を加えて進めている、そんなことで、いま少し検討させていただきたい、こう考えております。
  87. 目黒吉之助

    ○目黒委員 今大臣からお答えいただきましたが、この点は、おっしゃいますように余りはっきりしていないのですけれども、この間の総理の答弁でも、検討結果を踏まえて関係機関の意見、関係機関の意見というのは農政審を指しているのだろうと思いますが、などを聞いて、どうするかということをなお検討する、こういう趣旨ですから、きょうの大臣の答弁とほぼ同じと私は受けとめまして、これからの検討作業の進捗とあわせて、こういった関係機関の意見も聞き、制度化に向けてそれぞれ検討していくというふうに理解をいたします。  そこで、大臣のおっしゃいますように、必要なものについて順次措置をしていくということは私も理解できるのでありますが、ただ、順次措置では間に合わない部分と申しますか、待ったなしの部分というのが幾つかあるのじゃないか、私はこんなふうに実は見ておるわけであります。  この点については午前中の議論でもありましたから、そういう状況になった由来等について私の方から申し上げることは避けさせていただきますけれども、例えば政府は今ガット農業交渉の場で、日本は食糧の安全保障というものをやはり重視していかなければならぬのだと。もう相当部分は輸入に頼っておるわけですし、これ以上、米を含めて自由化ということになってきますれば大変な事態になる。いわゆる基礎的食糧の自給ということを基礎にして、食糧安保を主張してまいっておるわけであります。新政策でも食糧の安全保障を指摘していないわけではないのですが、問題は、これを指摘するだけでは世間が納得しない事態になっておるわけでありまして、どのような手段でこれを実現していこうとするのか、ここは明確にしていかなければならない時期に来ているのじゃないか、こう思うわけであります。  これは大臣でなくてもよろしゅうございますけれども、どのように考え、取り扱いをどうされるつもりでおられるのか、お答えを願いたいと思います。
  88. 馬場久萬男

    馬場政府委員 新政策におきまして、当然食糧の重要性、特に一億二千万という国民を抱えております我が国におきまして、食糧の安定供給を図っていくということは農政の基本だという位置づけを行って検討しているところでございます。かつ、食糧の供給につきましては、御案内のとおり穀物等の国際需給が中長期的にはなお非常に不安定だということ等もありまして、今後とも、基本的には国内生産と輸入の適切な組み合わせを図りながら、国民に食糧の安定供給と不測の事態にも対応できる能力、いわゆる食糧供給力を確保するということで考えておるわけであります。  ただ、新政策検討におきましては、どちらかというと、近年におきます国内の農業をめぐみ情勢の厳しさから、国内におきます土地利用型農業生産性の立ちおくれとか担い手の不足の問題がまず重要な問題となっているわけでございましで、そこでは、経営管理能力にすぐれ、企業的経営のできる担い手育成確保すること、あるいはそれぞれの地域実態に応じた多様な形態が、全体としてしっかりとした生産体制づくりを進めるということを中心政策のあり方を検討しておるわけでございまして、このことが実現することによって、食糧の安全保障、特に、先ほど言いました国内での生産体制の維持強化が図られるという観点から取り組んでおるところでございます。
  89. 目黒吉之助

    ○目黒委員 食糧安保の確保の仕方について、国内生産と安定輸入というのを柱にする、こういうことでありますが、安全確保には潜在生産力の維持、それからそのほかに備蓄といったようなものがあって、石油などについては備蓄でもって安全保障する立場で施策展開をされてきておるわけでありますが、こういう国内生産とそれから安定輸入ということで食糧安保の基礎にするということになってまいりました場合、そうしますと、一体潜在生産力なんというのはどのように理解をしてとらえておられますか。どういうふうにこれは理解されているんでしょうか。
  90. 馬場久萬男

    馬場政府委員 お答えします。  国内の農産物の供給につきましては、先生御案内のとおり、平成二年の一月の閣議決定をいただきました二〇〇〇年を目標とする「農産物の需要と生産の長期見通し」がございまして、そこにおいて、国内において今後生産可能なもの、そして、そのために必要とする農用地等につきまして試算を行いました。それを一応めどに置いておるわけでありまして、新政策検討前提としましても、そこで一応、約二年前でございますが、示しましたものを前提として、政策の組み立てを行うというふうに考えておるわけでございます。もちろん、その後事情の変化等がありますれば、考えなくてはいかぬということはあるわけでございます。  それから、お触れになりましたが、備蓄につきましても、従来から殊に穀物関係については備蓄政策というのは一応とっているわけでございまして、これらも踏まえて今後の供給については検討いたしたいと思っております。
  91. 目黒吉之助

    ○目黒委員 もっと具体的にこの点お尋ねしたいんですが、国内生産と安定輸入、それに備蓄、それに潜在生産力といったようなものが安全を保障していく基礎として考えられるわけでありますが、具体的に今ガットの場で日本が主張しておる言葉、安全保障として主張しておる言葉の中で、含まれておる作物というのは一体何を言っているんですか。米だけではないと思うのですよね。ここのところがはっきりしないと、何の潜在生産力なのかというのがよくわからぬわけでありますが、私の考え方を申し上げますと、米一麦、大豆、それから食肉等々が基礎的食糧の中に入るのであって、ここらあたりが一定程度安定的に確保される措置というものでなければならぬと思うのですね。  これは後から議論もあろうかと思うのですけれども、大体一人当たり二千七百カロリーを摂取するという観点に立って、日本農地でどのぐらい生産するか。最近の議論として、大体五百万ヘクタールで一人当たり二千カロリー、こう言われておって、現状では外国の農地千二百万ヘクタールを使うことによって、今日摂取しておるカロリーが供給されておるという関係にあるわけですよね。カロリーで見る安全保障もありましょうし、物で見る安全保障もありましょうし、作目で、日本農業の基幹としてこの辺が国内自給もしくは作目によっては一定水準という一つのメルクマールがなければ、安全保障、安全保障と言ってみたところで、これは言葉だけ先走ってしまって中身がないものになっているんじゃないかという気がするんですよね。この辺については一体どのように考えておられるのか、考え方だけちょっと聞かせておいていただきたいと思います。
  92. 川合淳二

    ○川合政府委員 ウルグアイ・ラウンドにおきます食糧安全保障につきます我が国の主張についてのお尋ねですので、私の方から先にお答えさせていただきます。  先生御承知の点でございますけれども、ウルグアイ・ラウンドでは貿易関係のルールを議論しておりますので、今申しました個別の国の個別の作物についてどういうふうなことかというような議論ではないわけでございます。私どもは、その中で御承知の基礎的食糧という概念、これは御承知のように国民の主たる栄養源というようなことから重要な位置づけを持っている食糧につきまして、所要の国境措置を講ずることができるという主張、それから生産調整の対象となっておる品目につきましてその輸入制限を許容する、現在もございます十一条二項(c)の維持、明確化ということを安全保障の観点から主張しているわけでございます。  それから、もう一つの問題といたしまして国内措置の問題がございます。国内支持についての主張といたしまして、私どもは、例の削減の対象とするかしないかという、線あるいは黄色という議論でございますが、その中で農業生産に非常に重要であります、インフラ整備といっておりますけれども、いわゆる基盤整備の問題あるいは農業生産技術的な改善技術開発あるいは普及の問題、それから先ほど先生もお触れになりました公的備蓄の問題等々につきまして、緑にすべく主張しております。これも国内支持の面におきます食糧安全保障の考え方に根差すものでございます。
  93. 目黒吉之助

    ○目黒委員 大臣、私はいろいろと新政策についてなお詰めたり検討しなければならぬところがあることは承知をしておりますが、早急に実行が迫られておる部分の一つとして、食糧安全保障という概念もさることながら、具体的にもうここのところは方針として定めて実行しなければならない、こういうふうになっておるということで、この点申し上げたわけでありますので、そういう観点に立って、ひとつここのところはぜひ新政策の中でも重要な部分として位置づけて取り組んでいただいて、実際にこういった事業もしくは制度が実行されていくように取り組んでほしい。特に、新しい政策などという場合はここが一つの柱にならなければならぬと思うのです。農業基本法でいいますれば、ここのところは農業政策展開一つの重要な目標に定めなければならないと思うのです。今農業基本法にこれがないのです、書いていないのです、食糧安全保障というのは。これだけ重要な問題でありながら、農基法の目的にここの部分が落ちて、ないのです。ですので、やはり農業政策展開に当たって一つ目標として位置づけられる重要な課題だろう、こういうことを私は申し上げておるわけです。  それで、同じ立場からもう一つ指摘をしておきたいのですが、やはり環境と農業の問題だろうと思っております。午前中もこの点についてはお話がありまして、馬場さんの方からお答えがあったわけですが、環境農業所得政策というのをリンクさせて実施していくというのはこれはなかなか難しい問題だ、こういうふうにおっしゃったわけであります。しかしながら、ここのところはいずれ整理をして、環境保全型農業というのは日本でどのようにこれから取り組んでいくのかということは、これはもう早急に方向を見出さなきゃならないわけであります。  それから、条件不利地域所得ということは、これもやはり避けて通れない課題、こんなふうに思っているわけですが、まずこの点についての認識はどのように持っておられるのか、そこからひとつ聞いておきたい、こう思います。
  94. 馬場久萬男

    馬場政府委員 一つ申し上げておきたいのは、まず最初に午前中に御質問にお答えしたのは、要するに環境保全ということと所得というのを結びつけるというのは非常に難しいということを申し上げたわけであります。条件不利地域というのは、これに比べますとかなり概念がはっきりしているわけでございまして、先生おっしゃるのは、恐らくECにおいて条件不和地域について所得補償的な政策をとっているということを頭に置かれての御指摘かと思います。  我が国においてそういう条件不利地域をどうするかというときに考えなくてはいけませんのは、そこの条件が不利というふうに一遍にはっと言いますけれども、その条件をむしろ活用して農業ができないだろうか、そういうためにはどういう政策が必要かということがまずあろうかと思うのです。  御案内のように、ヨーロッパあたりで条件不利地域と言っているところは、傾斜度であるとか高度であるとか、いろいろな要件があるわけでございますが、そこでは主として畜産、牧畜業が営まれている。かなり人口が疎でありまして、そこで個別経営がずっとある。そういうところに対する政策としては、所得補てん的な政策というのがとられているわけであります。  日本の場合は、どちらかというと、いわゆる中山間というところでも比較的狭いところに大勢の人がおられまして、そこでみんなで農業をやっていくというような形でございまして、そういう地域をとらえて国が政策をする場合に、すぐ所得補償というような形に行くのがいいのか、あるいは、現在も多少行っておりますが、例えばそこでの基盤整備等に一般の平地よりも高い補助率の基盤整備をして、そこで産業に積極的に取り組んでいける条件をつくる方がいいのかというような議論があるわけでございます。  それらの点で、我々、そういう条件不利の地域について、もちろん平地と同じような政策でいいというふうには考えておらぬわけでありますけれども、そこにどういう政策が最も有効であるか、また国民に納得してもらえるかということを頭に置きながら、現在検討しておるというところでございます。
  95. 目黒吉之助

    ○目黒委員 これは新政策でも皆さんの方から提起をされておりますように、いわゆる環境に適した農業ということで、化学肥料や農業の多投による土壌汚染等は防がなきゃならぬし、それから、家畜のふん尿等で不適切な処理をして環境に影響を及ぼさないように、こういういわゆる農業をやっておる者に対する補助というやり方。  それからもう一つは、やはり農業が持っておる多面的な機能に対して一定程度やはり評価をして、そして、今おっしゃいましたような角度から交付税で見るとか、あるいはそこに住んでいる人の税制を考えるとか、あるいはまた、環境保全の役割を果たしているものをそれぞれ計量計算をして何らかの手当てをするとかというようなことが考えられ、現に欧米では実施されておるわけでありまして、この点については、先ほどの安全保障の問題と同じように現実にもう実行が迫られておる課題、いつまでも、検討しますよ、検討しますよということを言っておれない課題という認識を持っておられるのかどうかということを聞こうと思ったんでありますが、そういうことは出なかったようであります。  もうセンサスでも出ておりますように、この辺のことが実行されないと日本の農村集落の破壊というのはやはりとめどもなく進んでいく。過去十年間に二千三百というのは白書でも公表されておるところでありまして、私は、やはりこういった施策展開というのは待ったなしの課題であると同時に、新政策の中では基本的な部分を構成しなきゃならない、新政策を定めるに当たってやはり目的の一つにきちっと位置づけておかなきゃならない二つ目の課題だろう、こう思っておるわけでありますが、どうやら何かまだそこまで深刻に受けとめられておらないようでありますけれども、もう一度御答弁いただきたい。
  96. 馬場久萬男

    馬場政府委員 新政策の場合に、当然今の中山間地域といいますか条件不利地域といいますか、そういう地域について問題意識は我々持っておるわけでありまして、そこにいかなる政策を行うべきかということも検討はしておるわけであります。  ただ、御質問にありましたような具体的な話になりますと、これはなかなかいろいろ問題があるものですから、やや、答弁において非常に消極的にとられるようなことを申し上げて恐縮でございますが、問題意識は我々も十分持っておりますし、そこに最も有効な、今必要な施策は何かということを真剣に検討しているところでございます。
  97. 目黒吉之助

    ○目黒委員 これは、真剣な議論をいつまでもしてもらっても困るんでありまして、私どもの方は、中山間地域農業振興特別措置という観点から、国土保全、自然環境維持、農業継続、いわゆる持続的農業の問題も含めまして、やはりここはもう実行しなきゃならない。農業の持つ国土保全機能等については、十アール当たり二万円。それから、アメリカでやっているLISA等々に当たる低農業、低肥料というものを実行した農家については、それなりの手当てをしていくというような具体的な施策がもう展開されなきゃならぬと思うんですが、こういった主張について、新政策検討の方向と矛盾はしていないと思うんですね。どう思われますか。これはどなたでもいいです。
  98. 馬場久萬男

    馬場政府委員 今先生がおっしゃられました、社会党の提案予定法案としての中山間地域農業振興特別措置法案の内容のようなことについて、我々ももちろん検討の視野には入れておるわけでございます。  これはたびたび御答弁も申し上げておるところでございますが、我が国でそういう個別の経営所得補給金のようなものを交付するということについては、これはまたいろいろと他の助成政策との関係等で問題があるところでございまして、研究の対象にはしておりますけれども、なかなかこれを新政策で打ち出すというようなことを申し上げる段階ではございません。
  99. 目黒吉之助

    ○目黒委員 この点は農水省が委託をして、そして三菱総研でしたか、委託をして出された一つの資料もあるようでありますので、ぜひそれらも踏まえて速やかにやはり実行される必要がある。何回も言うようですけれども、先進国では既に実行しておるわけですから、日本が、経済大国だ、経済大国だと言いながらこのくらいのこともできないというのは、やはりどこかに欠陥があるんだろうと思うんですね。果たして国民が承知してくれるかどうか、国民的な理解を得なきゃならぬというようなところでつかえておるわけでありますけれども、そんなことを言っているうちに村がなくなるんですね。地域社会をなくしてしまうんですよね。地域経済が崩壊してしまう。農業は、やはり環境に付加させることによって衰退していくのは一体ですから、もう釈迦に説法ですけれども、したがって日本農業の衰退になってしまう、こういうことになるわけですね。ここのところはぜひひとつ大臣に決意のほどを伺っておきたいのですが、これはもう大臣も深刻に受けとめておられる。青森の中山間地域も同じことだろうと思いますので、新潟とそう変わりはないはずでありますので、どうやってやるかということになってきますと、世界じゅう、この辺知恵を絞ったんだけれども、やはりアメリカやヨーロッパで実行されておるような手段しかないんじゃないか、こんなところで日本でも議論をされておるわけでありますし、実行方法、手段というものについてどのように考えておられるのか、この点について大臣の考え方を伺っておきたいと思います。
  100. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 中山間地といい、環境と農業といい、関連あるわけですけれども、環境と農業という場合には、先般もヨーロッパでこの会合をやったようでありますが、開発途上国の環境と我々の環境、あるいはEC、アメリカの環境、それぞれ違いますけれども、それはさておきまして、私どもの方はどういうふうにするかということで、たびたび事務当局からも答弁いたしておりますように、これもまた存在する環境が歴史的にも若干違うことをずっとやってきたものですから、いずれにしても、私は午前中にも答弁しましたが、中山間地はこれからどういうことでいくのが一番活性化をし、担い手が残って意欲を持てるようにするかということでいろいろやりましたが、農林省だけで物事を考えるとなかなか困難な問題があります。  ですから、農業ももちろん高収益の上がることを考えていかなければならぬし、あるいはどうしてもそこを離農して耕作が行われない土地等は、残ってやる意欲のある人でまたやっていく。あるいは農業だけに限らず、他の、例えば都会から家族が全部行って過ごせるようなことでも収益を上げることを考える。林野庁は林野庁で今課題をお願いして検討してもらっておる。いろいろな立場からやっていきませんと、それでもやはり大変農業に厳しい山間地というのはあるのだろうと思うのです。それはデカップリングみたいなことで考えるのか。あるいはそういう地域は別途に、平場の規模拡大とそれは別にして考えて、対策というものは立てなければいかぬ。そこのところはやはり国民の合意も得られて、みんながそれならいいと言うような方法でいきたいものだ。  いずれにしても、確かに待っていればおかしくなるよ、こういうことでありますが、急ぐべきものは急いで対策を立てる、多少時間がかかっていくものはそれは時間をかけて、とにかく二十一世紀に日本農業を一体どうするかという観点で実は検討をいたしております。見ていて至らない、歯がゆい部分もあるかと思いますが、省を挙げて、あるいは他の省庁とも連携をとりながら対策をしっかりと立ててまいりたい、こう考えております。
  101. 目黒吉之助

    ○目黒委員 大臣に反論するわけではありませんけれども、どうも何かそれをやると農林省の枠を超えて仕事をしなければならぬみたいな御認識を非常に強く持っておられるんじゃないかという点で、一つ心配なんです。確かに農村地域のインフラ整備とか生活保障みたいなことになってまいりますれば、それなりに問題があるのかもしれませんが、デカップリングというのは、それなりに農業中心としてこれを維持させながら一定所得確保させていくということで進められなければならぬわけでありますから、日本でもやろうと思えばそれは十分に実行できる施策なんじゃないですか。何も他省庁の縄張りを侵すみたいなことじゃなく、できる部分はたくさんあるわけですから、そこは私はひとつ早急に着手をしていただく必要がある、このように申し上げておりますので、誤解のないようにしていただきたいと同時に、実行をぜひ実現していただきたいと思っております。この点は、今回は要望でとどめさせていただきます。  次に、平成四年の米価問題についてであります。  いよいよまた生産者米価の時期を迎えるわけでありますが、ことしはとりわけ、取り巻く環境が多過ぎてなかなか苦労も多くあろうと思うのであります。しかし、実際に米価が引き下げられるような状況もまたないわけでありまして、ガット農業交渉がどうなるかとかポスト後期対策との関係がどうだとか、あるいは新農政との整合性をどうするかといったような取り巻く状況が非常にたくさんあるわけでありますが、こういった状況を踏まえながらも、米審懇談会等々で本年産米について、算定方式そのものについてはなかなか変更することはできない、去年の米価審議会の意見の取りまとめ等についてもいろいろな意見があったわけでありますが、どうやら昨年と同じような方式で算定をしていくというふうに理解をしておるわけでありますが、この点についてまず最初に伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  102. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま御指摘のとおり、平成四年産米の価格を決める時期がこれから到来するわけでございますが、去る五月六日に米価審議会の懇談会を私ども開催をいたしまして、これからのいろいろな作業に臨むに当たりまして諸般の情勢についての報告をし、委員各位の自由な御討論を願ったわけでございます。  その席上におきまして、昨年の米価審議の過程でいろいろ議論になりました算定方式のあり方について一つの話題提供ということで、確かにいろいろな宿題を私どもとして負っておるわけでございますけれども、諸般の情勢を見るに、去年の宿題になっておりますこの算定方式について、直ちにこれにかわるべき方法を私どもが具体的に提示をするという状況にはなっていないということを御報告申し上げ、これについての御意見を拝聴をいたしました。こういう経過になっておるわけでございます。  その自由な討論の中で、私どものただいま申し上げたような見解について特別異論が出るとか、あるいはまた、こうすべきであるというふうな御意見は出なかったのでございますが、いずれにしましても、これからの具体的な作業の過程で、私どもの最終判断をして対処をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  103. 目黒吉之助

    ○目黒委員 統計情報部の方からも来ていただいておったのでありますが、時間が終了してしまいましたので、大変恐縮でございましたが次回に回させていただきますので、ひとつよろしくお願いいたします。  以上で終わります。
  104. 高村正彦

    高村委員長 竹内猛君。
  105. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 きょうは農林水産委員会で、農業問題に関する質問もいたしますけれども、住宅整備公団のお二人の理事をお招きいたしました。お忙しいところ理事方々にはおいでいただいて、ありがとうございました。  まず最初に、農林省官房長、これは要請ですが、去年の近藤農林水産大臣は本委員会で、農業基本法の見直しをしなければならないということを発言された、そして五月にこの懇談会が発足をして、三月十二日には懇談会が十三回の会議を終わって一応論点整理に入っている。いつまでにこれの整理をするのかということが第一点。  そして、マスコミにはしばしばいろいろなことが載るけれども、本委員の手には何も入ってこない。マスコミにちらちら出すにもかかわらず本委員会の手に渡らないというのはおかしいんだ。これは全部の委員に討議の過程、経過、こういうプリントを配付してもらいたい。  この二点についてまず要請します。いかがですか。
  106. 馬場久萬男

    馬場政府委員 日程につきましては、先ほど大臣からもお答えがありましたように、五月中にまとめたいということで今鋭意努力をしておるところでございます。  それから、資料の関係でございますが、マスコミが書いていることというのは、これはいつものことでございますが、マスコミはいろいろなところから取材して書いているので、我々が公表したものではございません。ただ、この新農政の検討を進める上で、私ども懇談会の学識経験の方にお諮りした資料というものはできるだけ外に出すことにしておりますので、今御要請がございましたけれども、当委員会に必要なものであればそれをお出しすることはやぶさかでございません。
  107. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それに基づかなくても、今までの経過に関する限り、平成二年の西暦二〇〇〇年を目標とする農業の需給見通しというものを基礎にして物をやっているのか、それとも新しい問題を基礎にしてやっているのか。一体入り口はどこで出口がどこなのか。あれによると、十年、二十年先の農業展望する、こういうふうに言っている。沢辺座長は、目標は高く政策は具体的に、こういうことも言っている。これは入り口がどこで出口がどうなっているのかさっぱりわからない。これはどうなんです。
  108. 馬場久萬男

    馬場政府委員 新政策検討本部、先ほど委員お触れになりましたように、昨年設置するときから二十一世紀を展望して農政のあり方を検討しようということで鋭意しておりまして、今おっしゃいますいわゆる入り口、出口でございますが、二十一世紀、大体十年先というのが一つのめどでございます。もちろん中身の問題によりまして、より近時点の問題も当然入るわけでありますし、より先のものも入るわけでありますが、一応は二十一世紀を展望ということを言っております。  それから、先ほどお触れになりました平成二年の農産物の長期の需要と生産の見通しも、これは二〇〇〇年をめどとしております、平成十二年というのをめどにしておりまして、そこら辺はおおむね一致をしているつもりでございます。
  109. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題については二十日の改良資金の問題のときに詳しく質問するからこの程度にしておいて、それまでには、先ほども要請したように、論点について一致したところもあるし一致しないところもあると言っているんだから、どこが一致しなかったのか、どこが一致したのか、そういうのは農林水産委員に配るのは常識だよ。別に秘密主義じゃないんだから、そうしてもらいたい。強くこれは要請します。  さて、私はきょう住宅整備公団の理事の方をお招きしましたが、五月二日に、地元へ帰るとよく小さな座談会を開くわけでして、その座談会の席上に幾つかの問題が出てまいりまして、住宅整備公団に関する問題と地元の郵便局に関することが出てまいりました。  そこで、このことについて今から質問をいたします。しかも、そのことは現地で対応できることではない、すべて中央でなければ解決のできない問題ですから、きょうお招きをした次第です。  まず、郵政省にお伺いをしますが、筑波学園の郵便局が今から十四年前、昭和五十四年の十二月にでき上がって、恐らく五十五年から開設をしたと思いますが、そのときは二百人分のスペースを持った郵便局ができた。当時の職員は五十九人、現在は百八名となっている。一日平均の郵便の取扱量は三万五千通が現在十万六千通、それから預金あるいは為替、こういうものについても取扱量は八万一千が現在二十二万八千というように約三倍弱、それから保険に関連しても約二倍近い取り扱いをしている、このことが一つ。  もう一つの点は、通勤で一時間から一時間三十分以上かかるところから通っている者が七名いると聞いていますけれども、この点は事実かどうか、郵政省にお尋ねします。
  110. 内田幸一

    ○内田説明員 ただいま先生からお話のありました筑波学園郵便局の定員それから郵便の取扱件数、貯金、保険の取扱件数及び保有契約件数、先生のおっしゃるとおりでございます。  それからもう一つ、筑波学園郵便局の職員で通勤時間が一時間以上また一時間三十分以内でございますけれども、そういう職員が七名いるという先生のお話、事実でございます。
  111. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、問題が二つあります。その第一は、懇談会の席上に出たいろいろな要求、意見として、一般者の利用として、筑波学園のような、これは一般的に住宅が密集して、また郵便局であるとか警察であるとかNTTであるとかそういう公共の建物というものがあるところに集中している。車がなければどうにもならないというのがこの学園の特徴ですね。そういう中で、学園郵便局の駐車場の場合には三十人分の職員、それから二十五人分の来客者のスペースができていた。ところが、現実に取扱量が多くなったということはそれだけ出入りが多いということでありますから、職員もふえているし来客もふえているというわけで、私は五月六日の日に局長に会い、いろいろ聞きましたところが、午後の三時をピークとして大変な状況だ。すぐ近くに警察がありますから、路面に駐車をするとすぐにやられる。大変厳しい警察であります。これは当然の話なのです。そういうことだからどうしても、その郵便局のすぐ隣にある土地が郵便局ができて以来、これは五百坪ぐらいあるのでしょうかね、あいているのです。この土地は一体どうなんだ、どういう土地なのかということをみんなが心配している。  そこで、その土地はだれが管理しているかと聞いたら、いやそれは住宅都市整備公団のものじゃないのかという話だった。そこで、その近くにつくば開発局がありますから、そこで聞いたら、そうだとおっしゃる。それじゃ、すぐ使わせろとそう言ったら、そう簡単にいかないということで、財団法人交通センターというところが管理をしているのだからそこに相談をしてくれと言った。ところが、いやそれは金をくれと、今度はこう言うのだ。なるほど十年余も草を生やしてほっておいて、使おうと言ったら金を取る、住宅公団というのは一体どういう組織なのか、不動産屋じゃないのか、これではちょっと困るぞということで、これは建設省にお伺いします。一体、住宅整備公団というもののできたゆえん、由来、思想は何ですか。
  112. 橋本万里

    ○橋本説明員 先生御承知のように、住宅公団として発足したわけですが、当初は住宅不足を補うということでかなり力を入れてやってきておりました。途中から都市の整備もあわせてやろうということで、現在は特に大都市周辺の地域、大都市圏の住宅不足を補うために住宅を供給し、あわせてよりよい都市づくりということにも最近では力を入れてやっているということでございます。特に、民間ではできないような大規模なものとか、あるいは事業が長期にわたって採算が非常にとりにくいというような事業に力を入れてやっているということでございます。
  113. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それは行政が直接にそういう事業をやると非常にまずいから、民間でもできないことを公社公団が取り上げて、一面はサービス、一面はいい事業をする、こういう思想でできているということはよく知っています。私は、住宅整備公団ができるときにも審議をしたからよくわかっているが、そういうふうに説明してもらえれば結構です。ところが、やっていることがそうじゃないんだね。十余年も草を生やしてほっておいて、市民から意見が出て、隣の家から意見が出たら、それじゃ使ってもいいよ、使うには金をくれ、こうくるから、それじゃ悪徳不動産屋じゃないか、こう見られても仕方がない。いや、住宅公団はほかにもいろいろいいこともしていますよ。あそこに関する限りは余りいいとは言えない。  そこで、いろいろ話をしている中で、とりあえず局の隣を開放して整地しよう。そして、今まで三十人分の職員の駐車場を隣に有料で借りて一台七千円、二十一万円に消費税、これは悪税ですね、三%を払っている。だから、仮にそこを開放してもらっても、有料であるとするならば、これは郵便局で予算を組まなければ使えない話なのです。やむを得ないから、それじゃそこを開放して整地して有料のところを移して、そして来客用も入れて郵便局専用に近いような取り扱いをするかどうかというところまで話ができているけれども、この辺は公団、どうですか。
  114. 鈴木政徳

    鈴木参考人 先生はつくばのことに関しましてはよく御存じの方でございまして、御存じのことが多いかと存じますが、ただいま御指摘の場所につきましては、新住宅市街地開発法という法律に基づく施行計画によりまして、特定業務施設として将来事務所用地あるいは商業施設用地として土地利用が決められているところでございます。しかしながら、当然発展途上でございますので、将来の土地利用が決められていながら未利用になっている土地も多々あるわけでございます。  一方で、駐車需要、つくばセンター地区におきます駐車需要は非常に多くなっております。こうしたものに対しましては、現在、つくば市等が出資しましたつくば都市交通センターが一元的に駐車場設置及び管理をしようということで、恒久的な施設である立体駐車場、それからただいま申しましたような未利用地を利用した暫定的な駐車場を使っている。現在多摩センター地区だけで全部で四千台ほど駐車スペースがございます。そのうちの一千台強が恒久施設によって賄っているものでございます。ということになっているわけでございまして、ただいま御指摘のつくば郵便局の隣の未利用地につきましても、先生からも御指摘がありましたし、私どもも早速検討しまして、暫定的に駐車場として使うについては有力な案、適当なことではないかというふうに考えますので、早速つくば都市交通センターに駐車場として整備すべく検討を要請したいと思っているところでございます。
  115. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういうふうに使うということは世論に従順であっていいと思う。しかしながら、すぐ後ろから金をくれと言って手を出す。この辺のことは、罰則を設けろとは言わないけれども、少なくとも友情を持って、愛情を持って配慮しなければまずいのじゃないか、これだけのことは強く要請をしておきます。というのは、次の問題に関係があるのです。  つくばのあの地区は、三十八年ごろから学園都市をつくる、二千八百ヘクタールの土地の買い上げをした、活用したのですね。一部は買い上げをした。その前に自動車研究所というのが二百五十町歩ぐらいある。それから万博があった。このときも土地を提供した。常磐新線にも土地を提供した。だから、地権者はたくさん土地を提供して協力しているのですね。  そこで問題になっているのは、今大きな問題は開発利益というのが問題になっている。どういうことかというと、今の郵便局のある地区、NTTもあるし第一ホテルもあるし、銀行も二つある。そこに三井センタービルという十九階建ての大きな立派な建物がありますが、その土地は、一般に四十三、四年ごろ三百坪、一反歩四十三万円で放した土地なのです。現在、坪が七百万から時には一千万という、これは極端な話ですね。土地が七百倍から「千倍になっているのですね。では一体この開発利益というものがどうなったのかというのが、地権者がまずその行方を知りたい、確かめたいという形なんです。先般私は予算委員会質問しようとして、新しく当選した木村市長が、参考人で行って説明をしてもいいよという話だったけれども、短い時間でそれは無理だからいいということで、いずれこの質問をするときには来るからという形で、きょうはその話をするのですけれども、そうなっている。  それで済めばいいのですけれども、現在、常磐新線をつくるという形で、四・四方式という形で、四割先買い、四割減歩、そういう四割を先買いをするということを、公団にやがてお願いしなきゃならぬかもしれないが、今は県がやっている。地権者は余りそれに対して乗ってこないのですね。なぜかというと、所有権を渡してしまったらもうどうにもならない、もう手のつけようがない。何を建てられようが、草を生やしてほっておかれようが、もうどうにもならない。やはり発言権を持つためには所有権を放してはいけないんだ、こういうことを地権者に教えてくれたのですね。だから今、遅々として進まない。  そこで、まず第一に公団の方にお願いしたいことは、これはきょうじゃなくてもいいですよ、この開発利益というものを一体どういうふうに見るか。これは地権者側からの一つの話。それで、逆にそこへ入ってきた学者、技術者、文化人、大体一万人を超える学者などが入ってきていますが、この人たちは定年になってやめるわけですね。本来であれば、そこに家族が移ってそこで生活すれば一番いいわけですけれども、二十二万人予定をした筑波研究学園は今十七万人。茎崎町まで入れてそうなんです。五万人足りない。十万人予定の新入が今は五万人足りない。そういう状態です。それはなぜかというと、地価が高いですわ。地主が出して公団が区画整理をして地主に返したその土地でも、今、坪が八十万から百万。現在の公務員の退職金あるいは年金ではとてもこれはやれない、だから住めないという形で手が出ない。地権者から見てもおもしろくない開発利益。そこへ入ってきて住み込もうという公務員から見ても手が出ない。一体この開発はどうしたことか、こういう悩みがある。  そういうことですから、つくば市というのは、女性と男性と比べると、男性が六千人も多い。日本で、一つの市で、十四万ぐらいの市で六千人も男女の差があるというのはつくば市だけだ。こういう形になっているというのが特徴なんですよ。だから、この問題については大変深刻ですから、この点をしっかり検討していただきたい、こういうことで、地権者の問題についても、これは公団としてはどのようにこの事実に対してお考えなのか、ちょっとお聞きしたい。
  116. 鈴木政徳

    鈴木参考人 大変大きな問題の御指摘でございます。筑波学園都市は、確かに建設途上でございますので、まだ完成した姿ではないということも含めましていろいろ問題があろうかと思います。  御指摘のありました就業の場、特に女子の就業の場であるとか、あるいは退職後の就業の場というようなこともそうでしょうし、交通問題もその大きな要素、そういうことでいろいろ問題がございます。こういうものはもちろん公団だけでできることではございません。国、その他地元地方公共団体等のいろいろ御協力もいただきながら、私どももぜひそういう問題の解決には協力をさせていただきたいと思っております。  それから開発利益、これまた大変難しい問題でございます。大規模プロジェクトに伴って生ずる開発利益をどうするかというのは、これまた国政レベルの大きな問題かと思います。私どもも今後ともこれにつきましては勉強させていただきたいと思います。  ただ、筑波の都心部は、現在新住宅市街地開発法及び一団地の官公庁整備事業ということでやっておりまして、この事業につきましては、公共施設等を公団が整備して、ほぼ無償に近い形で管理者である地方公共団体等にお渡しするというような形で、事業の終わった段階では収支とんとんになるということで進めております。  ただ、先ほどもお話ございましたように、区画整理地につきましては確かにいろいろ開発利益というものが民有地を含めて残っているかと思います。現在の地価公示でいいましても、大体平米二十万から二十五万ということですから、坪に直しますとそういう非常に高い呼び値になっているということも事実でございまして、こうしたことが確かに筑波の今後の発展の大きな問題点になっているということを私どもも認識しているところでございます。
  117. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、まだ公団が管理をしている土地が百ヘクタールぐらいあるはずですね。郵便局の隣のように、だれが持っているかわからないけれども、草を生やしているような土地ばかりがあるわけだから、少しわかりやすくして、ここは公団の管理地であります、将来こういうふうにするんだというぐらいなことにしないと、非常に誤解を招く点が多い。ひとつ管理の仕方について、これは苦言を申しながら提言もしたいと思っています。  というのは、他の商事会社はかなり丁寧に所有権を明らかにして工事をしていますよ。だから、そうすれば、いつまでもいつまでも公団が同じ土地を持って草を生やしているからということでまた注意が来るでしょう。それは、東京から移るときに、こういうふうにするから、ああいうふうにするからと言って、みんなだましだまし各機関を引っ張っていった経過があると思うんだな。そのために大変広い土地を遊ばせているところが目につく。現にそれはもう、ここでは記録に残るから余り言わないけれども、よく知っている。そういうことは理事たちは知っているはずだ。だからそれは申し上げませんがね。そういうところはやはり有効に使わないと、また旧地権者からやり玉が飛んでくるから、そのことはこれからの開発に関係するから、ぜひ注意をしてやってもらいたいと思います。  と同時に、先ほどの開発利益の問題については、これはひとつしっかりチームをつくって研究をしてもらいたいと思うのです。あの三井センタービルの中には一流の会社が全部入っているんだ、保険会社が。あれは一般のものなんて手もつかない。ああいうような三井、財界、銀行、大型のデパート、こういうものがどんと入ってくる。それは悪くはないですよ。悪くはないけれども、それならそれなりに扱わなければ、一般の人から見たら、何だ、また次にやることはあの調子のことをやるのかと、こう言われると、一体これはどうみんなが思いますかね。やはり、一方科学技術のすぐれた町であると同時に大衆の町でもあってほしいんだよね、筑波学園というものは。そうでなければいけない。そういうふうに考えるから、ぜひそれはしてほしい。  なぜならば、その次の問題がある。その次の問題というのは、先ほどちょっと言ったように、今県がやっているけれども、筑波研究学園都市にもう一本鉄道を入れようという、筑波新線の問題がありますね。鋭意やっておりますけれども、四・四方式というものについて、四割先買いというものについては大変警戒をしている。それなら二・二・四でどうか。二割先買い、二割貸し付け、四割減歩、これはどうか。こういう提案をしているけれども、これもまだまだ話に乗れないということなんです。だから、そういう点を考えてみると、非常にこれは大事なことになっていますから、公団の皆さんにあえて苦言を呈しながら、同時に、今日までのいろいろな努力をしたことに対しては敬意を表しながら、ぜひ前向きにこの問題を取り上げてもらいたいということを、これは御要請をしたいと思いますが、いかがですか。
  118. 鈴木政徳

    鈴木参考人 ただいま御要請のありましたことは、筑波新線も含めまして、これからのあの地区の開発を進めていくに当たって、現在はもちろん県が前面に立って研究はしておりますけれども、私どもも当然関係者としていろいろ勉強させていただきたいと存じます。
  119. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大蔵省、見えていますね。  先ほど郵政省から、筑波研究学園の郵便局に一時間から一時間半以上の通勤者が七名いるということがはっきりした。今から何年か前に同じような条件があったときに、あそこには公務員住宅がかなりあいていますね、そのあいているところを使わせてくれと。形は違うけれども、同じ国家公務員じゃないか、国からも、人事院勧告等々の関係もありますけれども、それを一時使わせてもらったことがある。ところがいつの間にか、郵政省の方からそういう要請がなかったのか、自然に出ていってしまったのか、それはわかりませんが、現実に七名の者が往復三時間を通わなければならないということは、これは大変だと同時に、それを耐えかねて民間に借りれば、一カ月四万円以上の家賃を払わなければならない。安い賃金で四万円を払うということは勤労者として耐えられない。そういう両面から、あいている住宅を使うことについてはまげて協力してもらいたい。いかがですか。
  120. 宝賀寿男

    宝賀説明員 筑波に未貸与の宿舎がかなりあるというのも確かでございます。今後の全体の需要あるいは各省庁からの要望を踏まえながら、未貸与については適切に有効に利用してまいりたいということで、先生の御要望もしっかり受けとめて対応いたしたいと思います。
  121. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは、郵政省の方から要請すれば、十分に温かい心で迎えてくれますね。
  122. 宝賀寿男

    宝賀説明員 郵政省とよく相談して、前向きに対応してまいりたいと思います。
  123. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 郵政省、よく十分に連絡をとってやってください。  そこで、大体時間が来てしまって、あと大変短い時間になってしまったのですが、公団の皆さん、お忙しいところ大変ありがとうございました。これからもしばしば来てもらうことのないように、ひとつぜひいい町づくりをしてください。ありがとうございました。  さて、今度は林野庁にちょっと要請します。  今、国会では国際協力という問題で、PKOの問題で、自衛隊を出すか出さないかということで大変激しい議論をしていますが、憲法、自衛隊法、いずれを見ても、直ちに自衛隊を海外へ出すなんということはおよそ不可能な話なのです。そんなことよりも、日本が今、現在の憲法のもとで国際協力をするというのはもっともっと立派なことがあるはずなんです。  私は一昨年、環境委員会を代表してサウジアラビアに行きました。そのときにサウジの王様は何を言ったかというと、戦争は御免だ、日本に求めたいことは、この汚い海の水をきれいにして飲めるようにしてほしい、そして砂漠に木を植えて森をつくってもらいたい、この技術に対して力を入れてほしい、こういう要求なのです。  ことしは日中国交回復二十年、この日中国交回復二十年を記念して、今、鳥取大学の遠山教授を中心として中国に植樹運動をしようという形で、百五十万本から二百万本の木を黄河の奥の方の砂漠に植えよう、そういうような運動も起こっている。世界の人口が現在五十四億、やがて六十五億、そして二〇五〇年には百億という。一方、毎年千七百万ヘクタールの日本の国土の半分の砂漠が発生をする。そして農地が六百万ヘクタールつぶされる。二千三百万ヘクタールというものは使えないような状態になってしまう。人口がふえる、農耕地が減る、そうしたときに食糧というものは国際的に見て大変なことになる。だから、木を植える運動そして砂漠化を防止して物をつくる仕事、こういうことに科学技術を最高度に動員して協力していくというのが平和憲法を持っている日本の大きな仕事だ、こういうふうに考えるわけです。  林野庁長官、これはいかがですか。大臣にも後で聞きます。
  124. 小澤普照

    ○小澤政府委員 先生今お尋ねあるいは御指摘ございましたけれども、私どもといたしましては、この世界の森林の減少あるいは砂漠化に対応してまいらなければいけないと考えております。  森林の減少は毎年約千七百万ヘクタールという推定をしておりますが、この森林の減少が即砂漠化ということにはならないわけでございますけれども、私どもがいろいろ数字を見ておりますと、砂漠化というのはまたこれはこれで進行しておりまして、毎年六百万ヘクタールぐらいが砂漠化しているという数字があるわけでございます。そのほかに当然いろいろ劣化現象というのがございますから、これに対応してまいらなければいけないということでございます。  この砂漠化の原因につきましては、地球的規模での大気の循環変動に伴う気候的要因があるとされておりますし、また、放牧等の人間活動によって脆弱な生態系が失われるという人為的要因があるとされておるわけです。  これらに対しまして、このままでいきますと、地球全体の環境保全にも大きな影響を及ぼすということが懸念されるわけでございますので、林野庁といたしましては、まずこの砂漠化に対応する対応策といたしまして、現在、中国の寧夏回族自治区というところ、北京甘西方約千四百キロ、黄河の流域になるわけでありますが、ここで調査事業あるいは実証的な事業も含めてやっておりますが、そのほか砂漠化の進行しつつある世界各地におきまして二系列の事業を実施しております。  一つは、治山の緑化工法等を活用いたしまして森林への復旧を図るということで、復旧のための技術的指針を策定しようという目的で実証的な調査事業を実施する。今の中国などもそういう事業でございます。もう一つは、国際協力事業団を通しましたプロジェクト方式の技術協力によりまして半乾燥地における森林造成等の技術開発、普及を行っているところでございまして、これはアフリカのケニアとかタンザニアのようなところとか、世界各地へ私どもの方からも人間を出しておりまして、国際協力事業団へ出向という形で行っておりますけれども、世界各国で仕事に従事しておる。そのほかに、今先生おっしゃいました大学とか民間の方もいろいろ御活躍されておりまして、これらに対しましても私どもいろいろな御支援をしていかなければいけないのじゃないか、こんなふうに思っておるところでございます。  今後私どもは、この地球的規模での環境保全に資するために、砂漠化の抑制あるいは森林への復旧につきまして、国際の森林林業協力を通じまして積極的に推進してまいりたいと考えております。  中国では、隣国でございますが、現在鋭意緑化の推進をやっておられますので、これにつきましてはプロジェクトを今二つつくりまして、山西省の黄土高原におきます土砂浸食防止それから荒廃地の復旧プロジェクトというもの、それからもう一つは、福建省で森林の造成を中心といたしましたプロジェクトを推進しているところでございます。
  125. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 隣国でありますし、広い国土を持っておりまして、地球の環境を守るという観点からも緑化を推進するということは大事なことだと私は思います。技術協力を通じて、今長官のお話しになったようなことを進めてまいりたいと思います。基本的には世界全体の中で一体どこが急を要するのかということからいきますと、これは私もちょっとわかりませんが、そういうこともあわせて、国としては中国ばかりではなくて援助をしておる。  それから、これは話は別でありますが、ODAの援助をするときに、軍隊を持っておって我が国から援助を受けるというのはおかしい、少なくとも軍縮をやった分くらいの援助をしてくれというなら話はわかりますが。どうもイラクに行ってみて、私たちが病院の援助をいたしました、ちょうどイラン・イラク戦争のときでありますが。考えてみますと、私たちが向こうの国が必要だということで援助をする、その分が向こうの国は必要でなくなるものですから、それが今度は武器に回るという、何か間接的に戦争、武器、軍備拡大の片棒を担いでいるというと言葉は悪いのですが、どうも戦争が始まってみるとそんな気がしてならない。  このことは、私はもう何年も前から援助の仕方の基準というものを明確にすべきだということを申し上げてまいりました。ですから、別にどこの国ということではなくて、日本からそれ相当の援助を受けたいという御意思があるときには、ソ連でも中国でもどこでもそうですが、それ相当に自分の方もみずから努力をする、そういうことも削減するという方向を示していただかないと、援助をした後のそういう結果を見ると、やったことのむなしさを実は感ずるということは、これは別個のことでありますが、しかし、いずれにしても地球環境上必要なことについては私たちの持てる力を発揮して応援してまいりたいと思っております。
  126. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  127. 高村正彦

    高村委員長 藤原房雄君。
  128. 藤原房雄

    藤原委員 当面する諸問題について何点かお伺いをする次第でございます。  最初に、現在一番の関心事といいますか、減反緩和のことについてお尋ねを申し上げたいと思います。  合理的水田営農緊急促進事業、こういうことで昨年、作況指数九五、そういうことで今後の需給見通し等から十三万ヘクタールについての緩和が打ち出されまして、これに協力するようにということでございます。新聞にはちらちらその進行状況というのが出ておるのでありますが、公に農水省から現状等についてお伺いをしておりません。  私どもも、これがどういうふうに進行しているかというのは非常に関心がございまして、今日までずっと減反をしておりました、そしてまた集団転作、こういう枠組みの中でどれだけのことができるのか。北海道はどちらかというと規模拡大、大きな規模の中で専業的にやっておるわけでありますから、非常に難しさがあるだろうということで、各地を回りますと、それぞれ復円するということは大変な経費がかかることであり、トラクター一時間八千五百円、十アール一万二、三千円ぐらい、そしてまた水路が長い間使われておりませんでしたので、その修理とか、あぜなどの補修や、それに耐えるようにするには相当な経費がかかる。  こういう実態等については農林省においてもいろいろ御調査していらっしゃると思うのでありますが、私はまず最初に、この事業の現況について、そしてまた十三万ヘクタールというご上ですが、報ずるところによりますと十万そこそこかとも言われておるわけでありますが、それが進まない理由はどこにあったのか、どのように認識していらっしゃるか、その辺のことについてお伺いしておきたいと思うのであります。
  129. 上野博史

    上野政府委員 連休も終わりまして、若干の面積では既に水稲の植えつけが行われたという状況に参っておりまして、それぞれ各地域農家の段階への配分というのはもう完全に終わっているだろうというふうに思っているわけでございます。  おっしゃられましたように、北海道の場合は大体予定どおりの面積がこなされるのではないかという見通しのようでございますが、それ以外の地域につきましては、復円が容易でない。担い手がいないというような状況になっているところ、あるいは転作がすっかり定着をして思うように復田がいかないというような感じのところ等ございまして、必ずしもすんなりと十三万ヘクタールの緩和が実現をできるということのようではないという事情にございます。  数字につきましては、いろいろ報道をされているわけでございますけれども、私どもとしてこういう場で幾らぐらいになるということについてはちょっと、調査自身がそういう形でしっかり数字を積み上げるというような感じ調査になっていないものでございますから、いわば状況を把握するというような感じての調査でございまして、具体的な数字を口にすることについては控えさせていただきたいと思っております。しかし、思うように十三万ヘクタールがいかないというような状況がございまして、地域間のやりとりを通じましてできるだけ稲作の行われるところで引き受けてもらうという努力を今しておる、特に麦作の後の水稲作ができるだけ行われますように、そういう点での努力もいたしておる、こういう状況でございます。     〔委員長退席、岩村委員長代理着席〕
  130. 藤原房雄

    藤原委員 現場方々とお話しいたしますと、非常に苦労している中で、このたび協力をしなければならぬということで、知恵を絞り合っておるということであります。政府の方のこの事業に対する予算等につきましても、新規事業として十六億二千三百万円、合理的水田営農緊急促進事業等のための予算ですね、それから用水路整備等につきましては四億五千八百万円、こういうことでありますから、自己負担分が非常に多い。市町村、またそれから地方自治体や農協、そういうところでバックアップをして何とかやっておる。  こういう現状からしまして、農家方々が異口同音に言うことは、こういう中で、非常に厳しい中でも協力をするわけでありますから、一番自分たちにとって厳しいのは単年度限りというところであって、単年度で協力して、それが、金銭にこだわるわけじゃないのですけれども、割に合わない仕事をしなければならぬ。これは需給関係からいたしまして、やはり協力しなければならない、こう思いますけれども、大変な犠牲を強いる中で、しかもこれは単年度であるという、ここのところが異口同音にみんな厳しい意見を言うところであります。  やはり実態をよく調べていただいて、大臣、このたび協力した方々実態というものをひとつよくお調べいただきまして、いろいろなことを私も聞いておりますけれども、時間がありませんから一つ一つ申し上げることはできませんが、このたびの協力なさった方々実態に即して、これはやはり少なくとも三年は減反の緩和措置というのは継続しなければならぬのではないか。本年度で後期対策終わるわけでありまして、ポスト後期対策ということでまた新たな対策を計画しなければならぬ。その中に十分これらのことを加味して、これを配慮すべきであるということを私は強く大臣に訴えたいと思うのでありますが、いかがですか。
  131. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 たびたびこの件に関する御質問、いろいろな先生方からちょうだいいたしましたし、私のところにも直接陳情に見える方々が多いのです。気持ちはよくわかりますし、私どもも、農家の中期的な営農計画に支障を生じさせないように、極力変動のないようにすべきだという思いは実はあるわけでありますけれども、今回の十三万ヘクタールの軽減措置についても、できる限り安定的な転作営農の確保にも配意しつつ、今後の米の円滑な需給操作に資するため、緊急、応急的にお願いをしたという経緯が実はあるわけでありまして、必要最小限の面積の緩和を実は行ったつもりであります。最初から、何年間やりますということになりますと、今度は相当やりたいという人が出てきまして、恐らく十三万と言っても何十万にもなって、今度はそれがまた大変なこともあるだろうと思うのです。しかし、必要最小限のところでとどめるということになると、この数字にならざるを得なかった、お願いせざるを得なかったということであります。  いずれにしても、さっき申し上げたように、今の段階で三年こうしますとか、こういうことをしますとかということは申し上げにくいのでありますが、いずれにしても潜在的な需給ギャップというのがあるわけでありまして、何らかの生産調整はしていかなければならない。  その具体的なあり方については、需給調整規模のあり方も含めて農家の営農安定にも配慮していかなければならぬ。あるいはこの四年産米の作柄、本年秋の時点における在庫、需要の動向、米は残念ながら年々消費が減っておるわけでありますから、それがどのぐらいになるかというものも見きわめないと、また過剰な在庫を抱えて大きい負担をするということも避けなければならぬ、こう思っておりますが、いずれにしても水田農業確立後期対策の推進状況でありますとか、水田農業の健全な発展を図るとの観点を踏まえながら、いろいろな方々意見を伺って慎重に検討してまいりたい。  気持ちの上では、農家の皆さん方の言っていることはよくわかるつもりでありますけれども、私どもとしても全体の農業予算の中でバランスよくやはり見ていかなければならぬという立場もありますので、いま少しひとつ時間をかしていただいて、いろいろな御意見等も伺って、今申し上げたようなことも含めて検討をさせていただきたい、こう思います。
  132. 藤原房雄

    藤原委員 需給云々ということも十分わかりますけれども、とにかく今回相当な目標突破するような状況であるのかという、そんな考えもありましたが、現在もう米に対する魅力、そしてまた復田力、こういうものが想像以上に落ちておるという現状、こういうものが端的にあらわれておるのじゃないかという、そんな感じもします。そんな、緩めたからといって三十万も四十万も一遍に手を挙げるなどという状況にないという現実をしっかりひとつ踏まえ、このたびその困難の中協力しました方々に対しまして、行政として十分な配慮をすべきである。大臣のおっしゃることはそこだろうと思うのでありますが、ぜひひとつ行政上今後の配慮をいただきたいものと思うのであります。  話は変わりますが、漁業問題、公明党といたしまして、北海道の漁業の実態につきまして、各地いろいろ懇談しまして見てまいりました。それらのことにつきまして何点か申し上げたいと思うのであります。  最初に、大臣は漁業の専門家といいますか、明るい方でございますのでお伺いをするわけでありますが、各地を回ってみまして、漁業者の方々経営状況というのは、改めて状況の非常に悪いのに認識を新たにしたところであります。漁師の方々も大変に苦悩の中での厳しい現実を訴えておりました。統計を見ましても、漁業従事者の一人当たりの収入というのは、農業の収入や都市労働者の収入よりも著しく低い、こういう統計が出ておるわけでありますが、これらのことにつきまして、大臣の認識をまずお伺いしておきたいと思います。
  133. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 まず実態について、私申し上げたいと思います。  漁業経営状況を漁家所得の面から見ますと、全漁家の平均所得は六十二年から三年連続して増加をしておりましたが、平成二年には、前年が六百二十六万円に対して五百九十四万円となっております。御指摘のように、勤労者世帯の平均所得と比較してみますと、漁家所得は六十二年から三年連続して勤労者世帯の所得を上回っておりましたけれども、平成二年にはそれを下回るに至っています。また、農家所得と比較しましても、これを下回る水準となっています。  これは、漁家の場合に、農家と比べましても、兼業所得を得る機会が低いというようなことがあるわけでございますけれども、それ以外に、平成二年には、漁船漁業につきましては漁業収入は横ばいであったのでございますが、養殖関係の漁業収入が魚価が低迷したということで減少した反面、漁業支出が原油価格の上昇でありますとか労賃その他の上昇によりましてなべて上昇したことによるものでございます。  私ども、こういう状況に対しまして、やはり沿岸漁場の整備、先ほども論議がありましたけれども、つくり育てる漁業の展開その他によりまして、水産業振興をまず通じまして漁家所得の向上を図っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  134. 藤原房雄

    藤原委員 大臣もその辺の認識については同じだろうと思うのでありますが、一人当たりの所得、勤労者それから農業者、これと比較しましても、農林省からいただいた統計を見ましても、漁業がずっと低いという現況については統計の中にはっきりとあらわれているわけであります。そういうことからいたしまして、漁業の活性化といいますか、非常に緊急を要する、こんな気持ちで御質問するわけであります。  最初に、北海道の漁業につきましてはロシアとのかかわりが非常に多いわけでありますので、この問題から入らせていただきたいと思います。  一つは、ロシアのトロール漁船の根室海峡での操業問題でありますけれども、六十三年十二月以降、根室海峡におきますロシア共和国の大型トロール漁船、時には二十そうからの船団で操業いたしまして、スケソウダラを初めとします資源の枯渇ということが懸念されておるわけでありますが、我が国の漁民の立場からいいますと、資源保護ということや経営上の問題等からいたしまして、操業についてはこれは何とか考えてもらわなければいかぬ、こういう地元からの訴えが非常に強かったわけでありますが、いかがでしょうか。
  135. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御指摘のように、羅臼沖の根室海峡におきまして、昭和六十三年十二月以降、ロシア、当時はソ連でございますけれども、トロール漁船の操業が行われてきているのは事実でございます。  本件は、北方領土に接続する我が国領海におけるロシア漁船による操業であることに加えまして、御指摘のように、資源の減少により周辺海域におきます我が国漁業に悪影響を及ぼすおそれがあるというようなことで、平成元年一月には、外交ルートを通じましてロシア側にロシア漁船の操業に抗議するとともに、本件につきまして善処方を求めたわけであります。しかしロシア側は、当該水域はロシアの領海である、日本側の申し入れは受け入れられない旨回答がございました。  本年におきましては、一、二月は同海域におきますロシア・トロール船の操業が行われていましたが、視認隻数は前年の半数以下となっておるようでございます。また、三月以降はロシア・トロール船の操業はほとんど行われていないというふうに伺っているわけでございます。  いずれにしましても、本件問題の基本的な解決のためには、北方領土の解決を図ることが不可欠でありまして、今後とも、外務省を先頭に我々も協力をいたしまして、北方四島の返還に向けて努力し、あの辺の漁業の安全、操業の安全というものにも配慮していきたいというふうに考えております。
  136. 藤原房雄

    藤原委員 根室海峡の水産資源の状況調査ですが、中間ラインから内側については道の水産試験場が行っているのですけれども、外側といいますか向こう側の方については調査が行われていないわけでありまして、根室海峡全体の資源調査というものをやって、その資源の状況というものを見なければならないのじゃないかと思うのですが、水産庁としてのお考えを聞かせていただきたいと思うのです。
  137. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 漁民の方々がそういう意識を持っているというのは我々承知しておるわけでございますけれども、片っ方側につきましては、ロシアでは自分の領海であるというような主張をいたしているわけでございまして、生物資源を調査する場合に、仮に行うとすれば、現実にはロシア側の許可証を必要とするわけでございます。我が国調査船がロシアが発行する許可証を受けてこの地域調査を行うことは、我が国の領土に関する主張を害することになりまして、私どもとしては適切ではないというふうに考えておる次第でございます。
  138. 藤原房雄

    藤原委員 資源調査ということでありますから、粘り強く、また機会あるたびにひとつ念頭に置いていただきたいものだと思います。  それから、報ずるところによりますと、ロシア共和国は四島周辺においての韓国漁船の操業を認めるということが報じられておるわけでありますが、領土返還を熱望しております。辺の方々にとりましては非常に容認できないことだと思うのであります。日韓のことについては、今日まで交渉に当たりました外務省から交渉の現状、それからまた、日韓漁業関係につきましては水産庁としての今後の対応、これらのことについてお聞かせいただきたいと思います。
  139. 武藤正敏

    ○武藤説明員 お答え申し上げます。  二月末に、韓ロ漁業協定に基づきまして、ロシアが我が国北方四島周辺水域を韓国に対し操業のため割り当てたことが判明いたしました。政府はこれを受けまして、韓国政府に対しまして、北方四島は我が国固有の領土であり、韓国がロシアの領有権を認めるがごとき対応を行ったことは、北方領土問題に関する我が国の基本的立場を著しく害しかねず、遺憾である旨直ちにハイレベルで申し入れますとともに、早急に善後策を講ずるよう申し入れを行った次第でございます。  その後、法的問題につきましては、韓国側より、今般の韓ロ間の合意は北方四島に関する日本の立場に影響を与える意図を有するものではなかった旨表明されております。  次に、操業問題につきましては、我が方より、我が国北方四島周辺水域で韓国漁船がロシアの許可を得て操業を強行することとなれば、日韓漁業関係のみならず日韓友好関係の推進にも重大な影響を及ぼすおそれがある旨、韓国側にハイレベルで申し入れを行っております。こうした申し入れを何度も繰り返しまして、また韓国側とも話し合いを行いました結果、北方四島周辺水域における韓国漁船の操業を自粛するということとの関連で、ロシアに対して韓国漁船の操業水域の拡大を求めるという方向で双方努力しようということになったわけでございます。  これを受けまして、日韓双方はロシアに対しまして韓国漁船の操業水域の拡大を要請しております。先般渡辺外務大臣がロシアを訪問されました際にも、大臣よりロシアのコズイレフ外務大臣に対しましてこうした要請を行っております。  ロシア側の反応は極めて厳しいものがございまして、なかなか予断を許しませんけれども、粘り強く韓国、ロシア双方と交渉していくという考え方ております。
  140. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 農林水産省といたしましても、漁業問題にも関係することでありますが、基本は領土問題でございまして、今外務省から答弁申し上げましたように、外務省を中心に、前面に立って対ソあるいは対韓につきまして交渉、折衝をやっていただいておるわけでございますけれども、私ども自身も、事は漁業問題に関することでありまして、大臣が韓国の駐日大使を招請しまして話をする、あるいは私どもも日韓の漁業委員会その他の場を通じまして直接に韓国側にも働きかけ、あるいはロシア側にも働きかけておるわけでございます。  先般渡辺外務大臣が訪日されました際にも、水産庁から嶌田海洋漁業部長を派遣しまして、渡辺・コズイレフ外相会談に基づきまして、ロシア漁業委員会あるいはロシア外務省との間で本件協議を行ったわけでございます。率直に申しまして、日本御提案について検討はするということでございましたけれども、特段の具体的な進展はなかったわけでございます。  今後とも外務省と連携をとりつつ、北方四島周辺水域での韓国漁船の操業を自粛させるというような基本的立場に立ちまして、韓ロ両国との間で協議を進めてまいりたいと考えております。
  141. 藤原房雄

    藤原委員 これからの日本とロシアとの漁業関係を見ますと、相互互恵の考え方と、それから合弁方式による漁場の確保、こういうことが非常に重要であろうかと思うわけであります。その推進のためには、政府の漁業外交とか経済協力というものが不可欠であろうかと思うのでありますが、さらにまた、個別の合弁事業や洋上買魚についても政府のバックアップが必要であろうかと思います。  この買魚につきましても行政のバックアップが重要であるということは、ことし各地を回りまして、合弁とか買魚というのが行われましたが、時期がちょっとおくれたためにスケソウの十分に入っていないものが多かったとかいろいろなことがございまして、もう少しスムーズにいけばというこんなこと等もございました。  今後の日ロ漁業関係のあり方と、また漁場を安定的に確保するということに対しましての政府の基本的な姿勢をお尋ねをしておきたいと風います。
  142. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 我が国の北洋漁業につきましては、御案内のとおり二百海里体制の定着てありますとか、公海でのサケ・マス漁の禁止等によりまして、種々の制約が生じているところでございます。  このような状況の中で、ロシアとの間におきましては、政府間ベースで日ソ地先沖合漁業協定に基づきます相互入漁あるいは日ソ漁業協力協定に基づきますロシア系サケ・マスの漁獲というようなことが一つの枠組みです。二番目は、民間ベースではサケ・マス等の合弁事業、カニ、エビ等に係ります共同事業あるいはスケトウダラの洋上買魚等が行われているわけでございます。  政府間協議につきましても、従来からの積み上げに基づきまして、円滑な操業が確保できますように最大限の努力を傾注する考えでございますけれども、民間ベースの合弁事業等によります操業につきましても、その機会の確保を図るために、政府間協議の場におきましても、ロシア側に対しまして漁獲枠の確保等につきまして話し合いを進めているわけでございます。また、業界に対する情報の提供等々できるだけの支援措置を講じてきたところでございます。今後とも、日ロ間の民間ベースでの合弁事業が円滑に推進されますよう、政府としても格段の努力を図っていきたいというふうに考えております。
  143. 藤原房雄

    藤原委員 海上保安庁の体制の強化についてでありますが、平成三年度は新鋭の巡視艇「あさかぜ」が配備になったということでありますけれども、釧路海上保安部の管轄、これは道東方面それから北洋、ただいまいろいろ御答弁ありましたように非常に大事なところでもございますので、地元からもぜひ、広大な地域であるだけに保安体制の強化ということで、砕氷機能を有する巡視船を増隻してもらいたいということと、それから中型ヘリコプターの増機、こういうこと等で一段と強化を願いたいということを言われておりますが、これらに対しまして、海上保安庁はどのようなお考えを持っていますか。
  144. 赤石憲二

    ○赤石説明員 お答え申し上げます。  オホーツク海沿岸とか道東海域では、冬季に流氷が押し寄せてまいりまして、船舶の航行とか漁業等に大きな障害になっております。このため、海上保安庁では、例年十二月から四月にかけて巡視船、航空機によりまして流氷の分布、動向等の観測を実施して、随時その観測結果を流氷情報として一般の船舶や漁船に周知して注意を呼びかけております。さらに、流氷によって推進機に障害を受けて航行不能になるとかあるいは流氷に閉じ込められる等の海難に対応されるために、釧路海上保安部に、一・五メートルの砕氷能力を有するヘリコプター一機搭載型の巡視船「そうや」を配属して、流氷が押し寄せる時期にはその海域に重点的に配備することとしております。またそのほかにも、道東海域には耐水構造を有する巡視船を配備する等しておりまして、流氷による海難への対応には万全を期しているところでございます。  砕氷能力を有する巡視船の配備でございますけれども、今後とも巡視船艇の代替計画でありますとか港湾事業、気象、海象の状況等を総合的に勘案いたしまして検討を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
  145. 藤原房雄

    藤原委員 十分にひとつ現状を分析しまして、世界の三大漁場と言われる重要なところでもございますし、またいろいろな今後の動き等もありますので、今後の保安体制の充実ということでひとつ御考慮いただきたいものと思います。  次に、公海イカ流し網漁業の禁止問題でありますが、国連の決議によりまして本年で禁止になるわけでありますが、転換する漁法の開発のめどは立ったのかどうか。公海イカ流し網漁業のすべてが転換できるのかどうか。また、減船をしなければならない場合には、政府が責任を持って十分な救済措置を講ずべきであると思いますけれども、いかがでしょうか。
  146. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 流し網漁業につきましては、残念ながら昨年の国連決議等に従いまして、本年十二月三十一日をもって終わりにするということで、日本としてもそれを受け入れたわけでございます。ただし、流し網漁法自身が問題にされておるわけでございまして、アカイカ自身の漁獲は当然のことながらやっていいわけでございます。現在流し網漁業にかわる漁法につきまして、国あるいは県の関係機関あるいは業界を動員いたしまして対応いたしておるわけでございます。  ただ、現在がわる漁法として考えられますのは釣り等でございますけれども、アカイカはスルメイカに比べましてかなり大型であるということで、釣り上げ自身の操作に問題がある、あるいは太平洋、公海上に生存する魚でございまして、薄く広く分布しているということで、通常の集魚灯では効果的な集魚が問題があるようでございまして、これは商業ベースに乗せるにはこれらの問題を解決する必要があるというようなことで、現在総動員して研究に入っておるわけでございます。  この調査につきましては、延べ十三隻の調査船を使用しているわけでございますけれども、本年八月末を目途にとりあえずの結果を取りまとめたい、それに基づきまして関係漁業者あるいは都道府県とも協議しながら適切な対応をしていきたいというふうに思っているわけでございます。  流し網漁業が停止になりますと、これは関係漁業者のみならず関連業界とかあるいは地域経済にも影響を及ぼす可能性が大きいというふうに認識しておるわけでございまして、そういうことからこの影響を極力緩和し得るよう代替漁法の開発に努めておるわけでございますけれども、その結果を踏まえて、もしどうしても減船というような事態に至らざるを得ない場合には、関係者や関係省庁とも十分協議しながら適切な措置をとるべく検討する考えでございます。
  147. 藤原房雄

    藤原委員 今日までも相次ぐ減船ということで漁場も公海からだんだん狭められておりますので、対策といいましてもなかなか困難だろうと思うのでありますが、ひとつ積極的な広範な、そしてまた総合的な観点からお取り組みをいただきたいものと思うわけであります。  その中で、さらに韓国のイカ流し網漁船、これが日本の二百海里内で操業するというような危惧の声もあるようでありますけれども、我が国のイカ流し網漁業の禁止という問題との関係でこういうことのないような断固たる対応をしなければならないと思うわけであります。この点についてのお伺いをしたいということと、それから最悪の場合減船ということも考えなきゃならぬということでありますが、今日までも引き続く減船の中で、政府によります減船への対応、それから業界での共補償という形での減船のあり方、今日いろいろなことがなされておりますが、各地を回りますと、やはりこの減船によります負債、こういうものの重圧に大変苦しんでいる方々が多いわけでありまして、その点のことについても十分ひとつ御配慮をしていただきたいもの、こう思うのであります。いかがですか。
  148. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 公海におきます大規模流し網漁業につきましては、昨年の十二月二十日に開催されました第四十六回国連総会におきまして、本年六月までに漁獲努力量を半減すること、本年十二月末をもってモラトリアムとすることを骨子とした決議が行われたわけでございますけれども、これは韓国を含む国の全会一致で採択されたわけでございます。  我が国といたしましては、機会をとらえまして韓国側に対して国連決議の趣旨を踏まえてどういうふうに具体的に対応するのかただしているわけでございますけれども、残念ながら、現在検討中であるというふうなこと以上の返答は得ておりません。  ただ、私どもは、韓国が国連決議に反対しなかったこと、満場一致で決められたこと、それから、これは仄聞するところによりますと、公海の漁獲努力量を本年六片末までに半減するための構想を立てているというようなことが聞こえておりまして、韓国は国連決議に従った対応をするものというふうに我々は見ているわけでございます。いずれにしましても、我々といたしましては、今後とも韓国側の対応について注視してまいりたいというふうに考えております。  それから流し網漁業自身の対応でございますけれども、先ほど申し上げましたように、現在、国、県あるいは開発センターの調査船十三隻を動員いたしまして調査をやっているところでございます。私は、やはり何よりもまずできるだけ漁業として新しい漁業で残っていただくことが先決かと思います。その辺の論議を踏まえまして、後の対応については実態を見ながらしかるべく対応していきたいというふうに考えております。
  149. 藤原房雄

    藤原委員 今、資源の管理型漁業ということが言われるわけであります。これも非常に大事なことでありますが、なかなか調整が難しいということであります。  沿岸漁業と沖合底びき網漁業との協調操業体制づくりということでありますが、まず一つは、沿岸漁業と沖合底びき漁業の協議の場づくり、協議をする場というものも現在まだ十分に形成されていない。これはやはり、知事の認可、それから大臣の認可というそれぞれ違う立場にあるということもございまして、それぞれの行政が力を入れなければこういう恒常的な協議の場というのはなかなか推進できないのではないか、このように思うのであります。  それから、夏季調整等につきましては、底びきの禁止ライン、こういうものに対しましても、それぞれの立場で話し合うということが原則かもしれませんけれども、非常に難しい。今日までの経緯を見ますと、やはり行政庁がこれらのことにつきましても十分な配慮というものが必要だろうと思います。  八月に許認可の更新のときを迎えておるということでありますけれども、それらのこと等もあわせて、水産庁としてはどういう対応をなさるのか、お伺いしておきます。
  150. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 漁場利用が稠密に行われているということもありまして、それぞれの漁業種間で漁場をめぐる紛争といいますか、対立というのは、沿岸、沖合に限らず沿岸同士でもあるわけでございます。それにつきましては、漁業調整委員会あるいは道県の当局を煩わし、場合によれば、両県にまたがるものについては私どもが直接調整に及んでおるわけでございます。  御指摘のように、ことしは一斉更新の時期になっております。一斉更新につきましては、やはり資源に見合った漁業をやっていく。最近、底魚を中心に一部魚種では漁獲量は若干ふえていますけれども、全般的に資源量といいますか水準が減少している、漁獲努力量が若干過剰になっておるのではないかということで、一斉更新に当たりましては、全般的に資源に見合った漁獲水準にとどめて、資源管理型漁業を推進するという観点に立ってそれぞれの漁業種類ごとに見直しをやっておるわけでございます。  それからまた、例えば底びきと沿岸部分の調整につきましても、これは大臣許可でございますけれども、実際に都道府県の周辺の漁場を利用する場合には、やはり道県当局の調整とか、そういう規制をかけたり、調整、具体的なあれについても煩わす必要があるわけでございまして、そういう点で都道府県のあれを煩わしておるわけでございます、  北海道につきましても、特に道南地域につきましては道庁に入っていただきまして、沿岸と沖合との調整につきまして煩わしておるわけです。そういうことを踏まえまして、できるだけ円滑な漁場利用ができるように一斉更新については対応していきたいというふうに考えております。
  151. 藤原房雄

    藤原委員 日本海を初めとしまして北海道周辺の漁業資源の停滞といいますか、非常に著しいものがあるわけであります。特に武蔵堆それから襟裳堆とか、こういうところにつきまして、長年にわたります韓国漁船の底びき網の操業が資源を枯渇させたと言っても過言でない、こういうことが言われておるわけであります。  去年の暮れから日韓漁業関係についてはいろいろな協議が行われたわけでありますが、資源の回復ということにつきまして、日本でも自主規制をしておるわけでありますから、当然それに準じた形で資源を回復するための努力というものを自身もしなければなりませんし、また今まで韓国漁船の底びきが大きな支障であるということであるならば、これに対するさらにまた粘り強い交渉というものも必要ではないか。このことについて、今後の交渉についてのお考えをお伺いしておきたいと思います。     〔岩村委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 武蔵堆は北海道の日本海側で良好な漁場であるというようなことから、あそこの漁場利用をめぐりまして、国内でもまた韓国船との間でもいろいろな問題が起きているというのは承知しておるわけでございます。  かねて来、国内での底びきとの調整につきましては、オッタートロールの禁止ラインが特に沖合に張り出して設定されておりまして、武蔵堆のほとんどはオッターラインの内側に囲い込まれているというような状況になっておるわけでございます。韓国底びき網漁船につきましても、二百海里設定以来数次の自主規制措置の設定に際しまして韓国側とオッターラインの内側での操業の禁止ということを粘り強く交渉しました結果、現在では基本的にはオッターラインの外であるというようなことで、武蔵堆につきましても、韓国漁船はそのオッターラインの外側ということで、基本的にはその操業から保護される段階になっているというふうに理解しておるわけでございます。  それから本年三月から実施しております新たな自主規制措置につきましても、これまで韓国漁船に乗船していた韓国の監督公務員を我が国の漁業監視船にも乗船させて、規制の遵守徹底を図ることにしているわけでございます。  武蔵堆近傍を含めまして北海道周辺で操業する韓国船底びき網漁業につきましても、四月から八月の間に一カ月の休漁を行うことに合意しておるわけでございます。こういう合意に基づきまして具体的な措置について早急に話し合いを行いまして、そういう自主規制が実効あるように努力をしていきたいと思います。  それからまた、武蔵堆周辺におきまして漁場の再整備を図るということから、平成三年度から人工礁漁場造成事業を実施しているわけでございます。早急に事業を完成させまして、この事業による効果も期待をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  153. 藤原房雄

    藤原委員 今日までは漁場に恵まれ、北海道には漁業の漁獲高というのはそれ相応にあったわけであります。しかし最近の日本海沿岸を初めとします海流の変化といいますか、それからまた自然条件の大きな変化によりまして、そういう今までとれておりました漁業というものが大きくさま変わりをいたしました。北海道でも真剣に培養殖事業というものに取り組まなければならない、そういうところに参りました。  つくり育てる漁業ということは早くから言われ、本庁におきましてはいろいろなことが推進されておりますけれども、北海道は緒についてこれからということだろうと思うのであります。それは非常に季節の厳しい中でのことでありますから、どこでもできることではないのかもしれませんが、しかし、それぞれの立地条件を生かして定着させていこうということでございますから、今後ともつくり育てる漁業に対しまして沿岸漁業の振興ということでさらにひとつ力を入れて水産庁としましても見ていただきたい。  その一つは、北海道の日本海側に栽培漁業センターを初めとします研究機関というものをぜひひとつ推進をしていただきたい。これは、今調査とかいろいろなことをしておることはよく存じておりますけれども、これから、今申し上げましたように地域に合ったいろいろな形のものを試行錯誤しながら進めておるという現状でありまして、強力な研究機関というものがなければ進まない、そういう現況にあるということをぜひひとつ御認識いただきたい。  それから、ウニとかアワビの増殖、こういうことも推進されておりますが、これらのことにつきましてもさらにひとつ力を入れていただきたい。さらに、ヒラメの人工種苗の大量投入、ふ化放流事業、これも実施されているようでございますが、これらも各地でそれぞれ条件にかなった形で進めていきたい、こういうことが各地で要望としてございました。  それから、いそ焼けについての試験研究、これも一つの原因ではございませんで、複合的ないろいろな要素があろうかと思います。私も過日、当委員会でもいろいろ申し上げましたけれども、その地その地でいろいろな諸要素がございますけれども、これらのことについても、その土地に合った形で試験研究の成果が実りましてこのいそ焼けを克服できるような対応というものをぜひひとつ進めていただきたいものと思います。  過日、寿都に参りまして、国のお金をいただいてやっておりますところについてはそれなりの成果のあることも見てまいりましたが、これはもう日本海沿岸、ずっと青森の方までいそ焼けというのは深刻な状況にあることは御存じのとおりでございまして、これらの沿岸漁業の振興ということについて、水産庁としての積極的なお取り組みを要望しておきたいと思うのであります。
  154. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 北海道につきましては、北方系の魚介類に関する基礎的な技術開発を行う国営栽培漁業センターを厚岸に設けておるわけでございます。また、道庁といたしましても太平洋側の鹿部あるいは日本海側の熊石等にウニとかアワビの種苗センターを整備しておるわけでございます。それから、平成二年度からまた漁協、市町村等が行います種苗生産施設整備につきまして助成しておるわけでございます。特に、御指摘のあります日本海側でも五地域で種苗生産施設あるいは中間育成施設整備を行っておるわけでございます。  なお、北海道におきまして新たな栽培漁業センターの整備検討しているというふうに我々は聞いておるわでございますけれども、その計画が具体化した段階でその対応については検討していきたいと思っております。  また、御指摘のようにウニ、アワビ、ヒラメ等は北海道周辺漁業にとりまして基幹的な種目でございます。我々としてもそういうものを念頭に置きながら、道の意向も聞きながら施策を進めていきたいと思っております。  北海道はおくれているという御指摘があったわけでございますけれども、サケ・マスふ化事業は世界に冠たるものです。あれはやはり道、国のサケ・マスふ化場を中心とします道あるいは関係漁業者の方々の成果でございまして、そういう成果がほかの分野にも浸透していくことを我々は期待いたしておるところでございます。
  155. 藤原房雄

    藤原委員 次に、過日も申し上げておりますが、稚内からずっと道南方面まで、トドの被害というのは、動物愛護という一面もございますけれども、被害額が年間二億を上回るという現状でございまして、これに対する対策といいますか、一つは防衛措置、それから救済措置、これらの角度から見ませんと、さらにまた、襟裳の方ではゴマフアザラシ、こういうことで、漁民が一生懸命やりましても、ちょうど十二月から五月ごろまでということですから四カ月、五カ月仕事が思うようにできない、そしてまた、二億を超す大変な被害を及ぼす、こういうことが毎年行われるわけでありますので、このことについては以前の委員会でも申し上げたのでありますけれども、さらにひとつ防衛措置や救済措置、被害措置、これらのことについて駆除対策に力を入れていただきたい、このように熱望しておりましたので、訴えておきたいと思います。
  156. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 北海道沿岸域におきますトドによる漁業被害は、御指摘のように直接被害で二億円から三億円に上るというようなことを承知しているわけでございます。被害防止のために一定の駆除事業を行うことは必要であろうかというふうに考えております。私どもとしましても有害水産物の防除事業ということで助成を行っているわけでございます。ただ、諸外国の調査によりますと、トド自身相当に減少しておるということも報告されているわけでございまして、今後トドと共存できる漁業のあり方というのが模索できるかどうか、そういう検討も必要なのではないかということが言われておるわけでございます。  現在、北海道や国におきまして資源生物生態調査等を実施しているわけでございまして、音波を利用したトドが逃げるというような実験でありますとか、網の強化による破網の防止の実験等を行っているわけでございます。トドはなかなか知的レベルが高いということが言われておるわけでございます。どういうことが具体的に成果が得られるか、この辺まだ現段階で申し上げることはできませんけれども、道と連携しながら、そういう漁業が可能であるかどうか探求いたしていきたいと思っています。  それから、トド被害によりまして休漁とか漁具被害を受けました漁業者の方々につきましては、漁業収入が減少することによりまして漁業経営が著しく困難になっておるという沿岸漁業者の方々に対しましては、経営再建費及び減収補てんというようなことで、公庫資金であります沿岸漁業経営安定資金の融通を行うということにいたしております。また、漁具被害につきましても、公庫資金あるいは近代化資金の融通で適切な対応を行っていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、公庫資金、近代化資金等の制度資金の借入金の償還が困難になっている方々には、実情に応じまして償還条件の緩和措置をとるよう対応していきたいというふうに思っています。  また、漁獲共済でございますけれども、この共済に加入している沿岸漁業者の方につきましては、こういう被害を含めまして共済期間を通じました漁獲金額が契約した補償水準を下回る場合には共済資金が支払われる仕組みになっております。  こういういろいろな制度を利用して漁業者の方々に対する経営安定のための対応をしていきたいというふうに考えております。
  157. 藤原房雄

    藤原委員 午前中もございましたが、私も密漁のことについて、沿岸の振興策については先ほどウニ、アワビ、それらのことについてお話し申し上げましたが、従来はウニ等につきましては無主物という考え方もございましたが、本年の三月札幌地方裁判所室蘭支部で判決がございまして「不法行為法の保護法益は被害者の所有権のみでなく、法的権利及び法的に保護されるべき生活上の利益でもよいと解すべきところ、一定の海域内で独占的排他的に魚類及び「うに」等の海産物を採取できる権利は漁業権として法的に保護されるべき権利と言うべきである。」こういうことが言われたわけであります。  せっかく沿岸漁業、培養殖、こういうことをされて努力しているにもかかわらず、密漁ということが頻繁に行われておるわけでありますが、こういう判決等も考え合わせますと、今後は十分に取り締まりを強化していただきたいものだと思いますし、一義的には海上保安庁だと思うのでありますが、御答弁をいただきたいと思うのです。
  158. 野崎典重

    ○野崎説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘もありましたように、最近の沿岸漁業はいわゆる従来からのとる漁業からつくり育てる漁業に変わりつつありまして、地元漁業者が長年努力して育てた魚介類を根こそぎ採捕するような密漁は、これは財産権の侵害の色合いが極めて強うございまして、悪質性並びに反社会性が非常に強いというふうに言えるかと思います。また、近年の密漁事犯は、カニの密漁やウニ、アワビ等の潜水器密漁に見られますように、夜間、小型高速船を使用して行われるケースが多く、また一部の地域では暴力団が介入する等、極めて組織化、巧妙化しております。  このため、海上保安庁といたしましては、このような特に悪質な密漁事犯に対しましては徹底した取り締まりを行うという方針のもとに、都道府県や漁業団体等の関係機関との連携を強化いたしまして、積極的な情報収集、それから厳しい条件下での内偵、張り込み捜査等を実施いたしましてこの種事犯の根絶化を図ってきております。今後とも引き続き関係機関との連携を密にいたしまして、当庁の機動力をフルに駆使いたしまして、徹底した取り締まりを実施してまいりたいと考えております。
  159. 藤原房雄

    藤原委員 次に水産物加工業、加工流通のことではありますが、一つは水産物中核流通加工施設整備事業、これは明年新しい事業になって組みかえることになるわけでありますが、釧路へ参りますと、釧路機船漁協の施設の更新、製氷、冷凍等の施設整備事業、これを採択していただきたいという強い要望がございました。ぜひひとつこれもまた御検討いただきたいと思いますし、また、中小企業庁の特定中小企業集積の活性化に関する臨時措置法、新しく今度法律ができたわけでありますが、北海道におきましては釧路、根室、函館、稚内また小樽など中小水産加工業の製造業、この活性化のためにこの法律を生かしていかねばならない、こう思うわけであります。  水産庁それから中小企業庁におきまして、これらの北海道の水産加工業というものに対しまして、ひとつこの活性化のために力を入れていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  160. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 水産業の発展のためにも、また地元の振興のためにも、水産業振興とあわせまして水産加工業の活性化が必要であるというのは、我々十分認識しておるところでございます。  御指摘の釧路につきましては、現在水産物の中核流通加工施設整備事業は行われてはいませんけれども、昭和四十六年度にこの前身の事業が開始されて以来昭和六十二年まで、これらの事業を活用しまして各種施設整備を進めてきて、産地としての体制をつくってきておるわけであります。今のところ、先ほど申しましたように中核流通加工施設整備事業は行われていませんが、今後、道や地元の意見を聞きつつ検討していきたいというふうに考えております。
  161. 太田信一郎

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の特定中小企業集積の活性化に関する臨時措置法、本国会で成立いたしまして、今月の六日に公布されました。この法律は、いわゆる産地あるいは企業城下町などの中小企業集積の活性化を図ることにより、地域中小企業が中長期的にかつ自律的に発展基盤を強化することをお手伝いするということを目的としております。  中小企業集積の活性化を図るためには、各地域における自主的な取り組みが不可欠と考えておりまして、本法では、地域自主性を尊重する観点から、国が地域指定するのではなく、国の示す活性化指針に基づき都道府県が対象となる集積、その発展の方向などについて活性化計画を作成し、国がこれを承認するという仕組みになっております。さらに個々の中小企業者、組合が活性化計画に沿って新分野進出あるいは高付加価値化等の事業を行う場合に、財政、税制、金融上の支援措置を講じることとしております。  したがいまして、先生から根室あるいは釧路等の名前が出ましたけれども、北海道の水産加工関連の中小企業集積についても国が指針告示後、まあ指針はできれば秋口には出したいと思っておりますが、北海道庁においてこれらの地域対象として活性化計画が策定されることが必要であり、国としては北海道庁から計画承認申請があれば、法及び指針に従って審査をさせていただくことにしております。  いずれにいたしましても、北海道の水産加工集積をめぐる厳しい状況については、私ども中小企業庁としても十分承知しております。各地域において本法を積極的に活用していただきまして、中小企業集積の活性化に取り組まれることを強く期待しているところでございます。
  162. 藤原房雄

    藤原委員 最後になりますが、沿整事業とかそれから沿構事業、これらのことについてもいろいろお伺いしたいと思ったのですが、時間もございません。最近、漁業のあり方、周辺環境の変化、こういうことで漁港とか漁港環境の整備、都市住民が海に親しむとか、漁業と触れ合う場、こういうようなことで最近はいろいろな計画が進められておるようであります。釧路におきます千代ノ浦漁港の早期完成とか、桂恋漁港の拡張整備、こういうことについては強い要望がございまして、また稚内の宗谷漁協の富浦漁港についても、従来の大きさより漁船が大きくなって、それに準じた形の利用しやすい漁港にということをなかなか進められないということでございますが、これらのことについても十分ひとつ時代の大きな変化の中に対応できるようなことで対応いただきたいものと思うのであります。  最後になりますが、水産物の輸入、このたびの漁業白書を見ましても、輸入については数量、金額とも前年対比で一一%ふえておるということであります。IQ品目の堅持ということは当然といたしまして、また秩序ある水産物の輸入対策、こういうことが重要だろうと思うわけであります。ことしは国際環境ということについて非常に、国際会議も開かれますが、ある特定の魚種だけを選択的に大量に持ち込むということは、それは生態系に大きな問題を残すのではないか、そういうことから、この水産物の輸入ということにつきましても、地球環境全体ということ、また地域の生態系ということ等も考え合わせませんと、特定の魚種だけを選択的に大量に日本に輸入する、こういうことが果たしてどうなのか、こういうことについての非常に危惧する声もあるわけであります。貿易の自由化ということは当然のことといたしましても、日本の今日までのあり方というものについて考えなきゃならないときを今迎えておる、こう思うのであります。また、輸入の増大に伴います魚価の低迷、経営不振、こういうことも国内的にもございますし、また加工業の安定的な原点の確保ということも一つの大きな命題だろうと思うわけであります。  この輸入ということにつきまして、最近とみに金額、数量とも一一%を超す前年対比での増加であるという漁業白書を見まして、このような危惧を抱くのは私一人のみではないと思うのであります。大臣、今後のこと等につきまして、この問題についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、秩序ある水産物の輸入ということ、IQの堅持、こういうこと等もあわせまして、お考えを最後にお聞かせいただきまして、終わりたいと思います。
  163. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 輸入については国内で供給の不足しておるエビでありますとかマグロ、タラ、こういうものが中心に増加傾向にあるわけであります。  ウルグアイ・ラウンドでも、貿易交渉においては水産物についても市場アクセスグループの中で国境措置について議論がされておりますが、我が国としては国内漁業生産に重大な影響のないようにこれは対応しなければならぬ、また漁業は自然の生態系を利用して水産物を漁獲するものでありますから、持続的漁業を維持するためには適正な漁獲を行うことが必要ということでありまして、国際的な資源管理については我が国としても積極的に対応してまいりたい。特に生産者と加工業者を一体どうするかという問題があります。ですから、輸入を余り抑え過ぎますと加工がもたぬ。極端に入れてまいりますと生産者が圧迫を受けるという問題がありますので、そこのところはバランスよくやっていかなければならぬということであります。  いずれにしても、各国とも環境問題、資源保護問題でいろいろありますけれども、科学的見地に立って漁業というものはどうしていくかということをこれからも盛んに世界各国に、今までも問いかけてまいりましたが、さらに問いかけをしながら我が国の体制はきちっとしたものにしていきたい、こう考えております。
  164. 高村正彦

    高村委員長 藤田スミ君。
  165. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、残留農薬基準の問題についてきょうはお伺いいたします。  先ごろ、三十四品目の残留農薬基準の食品衛生調査会の答申が出されたわけですが、私はこの問題を予算委員会においても取り上げました。そしてこの基準設定が、今ガット・ウルグアイ・ラウンドでダンケル事務局長から打ち出されたダンケル提案の中で、盛り込まれている食品安全基準の国際基準への統一つまりハーモナイゼーションを先取りしたものであることを明らかにしたわけでありますが、きょうは三十四品目のうちの一品目を取り上げまして問題点を明らかにしたいと思います。  それは臭素であります。今回の残留基準における臭素の基準は、米が五〇ppm、小麦が五〇ppm、トウモロコシが八〇ppm、そしてそばが一八〇ppmとなっているわけでありますが、この中でトウモロコシ、そばなどについては、当初よく調べもしないで国際基準五〇ppmを当てはめていたものを、これでは輸入時の臭化メチル薫蒸による臭素の残留実態に合わないと農水省の方から指摘を受けて、慌てて三月二十六日に臭素の基準を変更したわけであります。それもこっそりと、その後マスコミに指摘されて初めてその失態が明らかになったわけであります。ここに、今回の農薬の残留基準設定の問題点が極めて浮き彫りにされていると言えると思います。農薬の残留実態を十分調べることもしないで、ただハーモナイゼーションをうたい文句に国際基準を導入していく、こういうことは全くあきれるばかりです。  臭化メチルによる薫蒸によって臭素がどれだけ残留するかなどということはイロハのイでありまして、事前に調査もしないで国際基準を食品衛生調査会に諮問する、こんなことはいまだかつてなかったことです。  きょうは厚生省に来ていただいておりますが、このようなやり方について、あなた方はどういう反省をしていらっしゃるのかお伺いをしたいわけです。
  166. 牧野利孝

    ○牧野説明員 お答えいたします。  残留農薬基準の策定につきましては、その農薬に関します安全性に関する資料、特に、ADIと申しますけれども、一日許容摂取量あるいは我が国国民の農産物摂取量、こういった資料をもとにいたしまして、さらに諸外国の規制基準、もちろん我が国も含めますけれども、そういった規制基準をもとにいたしまして基準を設定するわけでございます。  その設定いたしました基準値でございますけれども、その基準値の上限いっぱいまで仮にその農薬が残留したと仮定いたしましても、その農薬のトータルの摂取量が先ほど御紹介いたしました安全レベルでございますADI、一日許容摂取量以下になるように残留基準を設定したものでございます。
  167. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 答弁になっていませんよ。そういうことを言っているのじゃないのです。最初に五〇ppmを決めて、農水省からそれじゃ輸入時のそばの薫蒸した後の残留はクリアできないということで、わざわざ三・六倍も引き上げたんじゃありませんか。実態を当然調査するべきなのに、調査もしないでやったということの反省を求めているわけです。もう一度御答弁ください。
  168. 牧野利孝

    ○牧野説明員 お答えいたします。  ただいまの臭素の摂取量の件でございますけれども、御指摘のように臭素が実際にどの程度摂取されているかということにつきましての調査は、現在までのところ行われておりません。したがいまして、臭素摂取量がどの程度あるかということにつきましての推定もなかなか困難ではないかというふうに考えております。
  169. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 全く反省の色はない。これは大変なことだと思うのです。聞いてもいないことを語られますが、こんなことは国民にとっては大変なことなんです。実際に調べもしないで、言われたら慌てて三・六倍引き上げて実態に合わすというそのやり方がまず国民の健康にとって大きな不安じゃありませんか。  しかも、一日の許容摂取量、今回残留基準で定められたものの占有率はあなた方の資料でも三八%になると言われておりますが、バックグラウンドは調べてないというのでしょう。もう一度答えてください。  大体こういうふうに臭素は、臭素を含む農薬から出る臭素過剰摂取の人体への影響というものが極めて危惧をされているのです。もともと臭素というのは海水に六五ppmのレベルで天然に存在しています。当然海草などの海産物には天然の形で臭素が残留しています。また、塩にも含まれています。しかも、我が国は土壌における天然の臭素濃度が世界の土壌の二十倍もあるということも考慮しなければならないでしょう。さらに、都立の衛研が八一年五月に発表した「農産物及び加工食品中の臭素含有量」というのを見てみますと、おしょうゆの中には臭素が一〇〇ppmから二一九ppm含有されているのです。当然、日本人の臭素摂取量は基本的に非常に高いものになっている可能性があるわけです。そして今回、一日の許容摂取量に対して三八%の占有率を占めるという残留基準を定められた。一体あなた方は日本人の臭素を摂取するそのバックグラウンドというものについて調査をされたのか、もう一度明確に言ってください。
  170. 牧野利孝

    ○牧野説明員 お答えいたします。  臭素の摂取量が実際どの程度の量であるかということにつきましての調査は、現在までのところ行っておりません。
  171. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私はもう全く許せないことだというふうに思います。そんなことで一体国民の健康を守る立場に立つ厚生省が、こういうことを申し上げておきたいわけです。  しかも、今回の臭素残留基準では、野菜やあるいは豆類さらには種子類などには残留基準を設定しておりません。  きょう私が問題にしたいのは、産地の大型化などの中で輪作体系が確保できずに連作となって、その連作障害を避けるために土壌殺菌が不可避になる中でこの臭化メチルを多用している点であります。特に、ハウス栽培における臭化メチルの薫蒸は広範に行われており、農業環境技術研究所の報告によっても、「燻蒸有は、無しに比べて作物の葉と身、可食部とも平均二十一・五倍も高く、有の茎葉中濃度は平均二〇〇〇ppmに達している。きゅうヅ果実は新鮮物当りでも平均七三ppmと我が国の米、麦の基準値を上回っている。トマト、ピーマンなど他の臭化メチル燻蒸ハウス栽培野菜でもきゅうりに近い値となっている。」こういうふうに報告が出されています。  農水省、このよいつな臭化メチルの多用による農作物の臭素残留についてどのように評価されておられるのか。また、厚生省として、今後野菜などの残留農薬基準策定に当たって、このような実態前提としてADIは果たして守れるというふうに考えていらっしゃるのかどうか、明らかにしてください。
  172. 上野博史

    上野政府委員 臭素の残留の問題につきましては、先ほどの厚生省の担当課長の方からお話がございましたように、今後さらに野菜などにつきましても残留基準を策定していくんだというお話があったというふうに理解をいたしておりまして、そういう事態になった場合には、私どもといたしましては、臭素の残留量が基準内になりますように農薬取締法に基づきます臭化メチルの安全使用基準というものを策定をいたしまして、使用現場におきましてこの使用基準が遵守されるように指導を徹底してまいりたい、かように考えております。
  173. 牧野利孝

    ○牧野説明員 お答えいたします。  今後豆類あるいは野菜類などにつきましても順次農作物中の残留基準値につきまして設定をしていく考えでございますけれども、その場合、先ほど御指摘もございましたような臭素の摂取に係ります情報の収集に努めまして、実際の摂取量がADIの範囲内におさまるように野菜等につきましても残留基準を設定したいと考えております。
  174. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 さらに心配なことは、ハウス薫蒸臭化メチルによる臭素が地下水を広範に汚染していることであります。これも農業環境技術研究所の報告で明らかにされているわけです。私はここでその報告書の一部を読み上げてみたいと思いますが、こう書いています。  「宮崎平野の農家の飲料用井戸水中臭素濃度はこ「四・二六ppm(年平均)であったが、飲料水として一日二・二リットルを摂取すると臭素の摂取量は九・四ミリグラムとなる。これは、WHO勧告に有る体重六十キログラムの成人の許容摂取量六十ミリグラムの一六%に当る。また、我が国の臭素残留基準値の五〇ppmの米二百グラムを食べた場合の臭素摂取量十ミリグラムにほぼ匹敵する量である。」さらに、「土壌燻蒸剤臭化メチル剤起源の臭素のかなりの部分は、がんかい水に溶存して下層へ浸透し地下水層に流入すると推定される。地下水の汚染はハウス内の作物や土壌と異なり、汚染域が広大になりやすく、かつ持続性も大きいので、作物や土壌の汚染に比べて制御しがたいといえる。」こういうふうに警告をしているわけです。  これはまたもう一つの論文ですが、臭素は水中の有機物と化合して発がん物質であるトリハロメタンを生成することが明らかにされているわけです。だから、一層問題は重大だというふうに思うのです。  厚生省、このような汚染実態について調査をするべきだと私は思うし、発がん物質の生成が指摘されている以上、臭素の水質基準を定めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
  175. 藤原正弘

    藤原説明員 水道水源の原水中に有機物質が存在しまして、それと浄水過程で用いる塩素が反応いたしましてトリハロメタンが発生するというようなことが言われておりまして、事実この問題は水道事業体にとりまして大変問題でございます。厚生省では、昭和五十六年に総トリハロメタンについての制御目標値を設定いたしまして、その低減対策の実施等につきまして各水道事業体に対しまして指導してきておるところでございます。  臭素との反応によってもトリハロメタンが発生するというふうに言われております。この点は委員御指摘のとおりでございます。臭素化トリハロメタンがどの程度水道にとって問題かということにつきましては十分検討していかなければいけない、その必要があると考えております。現在生活環境審議会の水道部会水質専門委員会におきまして、微量化学物質を中心とした水質基準の見直しか行われております。その中で、臭素化トリハロメタンを含む消毒副生成物につきましても個々に検討が行われておるところでございます。検討結果が答申として出された後、行政上必要となる措置を講じてまいりたい、このように考えております。
  176. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この地下水の臭素濃度が明らかに高い値を示し、地下水にまでこんなに悪影響を及ぼすような農薬は使うべきではないと、西ドイツでは既に一九七六年、その使用を事実上禁止しているということもまた伝えられているわけであります。したがって、私はこの問題はどうしても農水省としても考えていただきたいというふうに思います。  さらに、臭素はオゾン層の破壊にもつながるというふうに言われておりまして、フロンとともに世界的に問題になっておりますところですが、既にこの臭素を含む消火剤のハロンは、モントリオール議定書で二〇〇〇年までめ全廃が決まり、その前倒しもされることになっております。同様に、同じ臭素を含む臭化メチルも規制の対象にするかどうかということの検討がなされるんだということも伝えられているわけです。したがって、場合によっては臭化メチルの全廃もあり得るわけでありますが、環境保護の面から臭化メチルの多用は問題があるというふうに考えていらっしゃるのかどうか、環境庁にお伺いしたいわけです。  あわせて私は大臣に、この土壌殺菌では太陽殺菌というのもあるわけです。これはもちろん別に有害でも何でもありませんが、長期的な観点からもこういう臭化メチルにかわる代替物の開発や、あるいはまた臭化メチルだけに依存しない土壌殺菌、そしてもっと根本的には、連作ではなく輪作などによる連作障害を起こさない農産物の生産の確立など多角的に検討すべきじゃないかというふうに考えますが、大臣の御答弁も求めておきたいと思います。
  177. 丸山晴男

    ○丸山説明員 お答え申し上げます。  オゾン層の破壊につきましては全球的に進行いたしておりまして、それに伴います人の健康への影響あるいは生態系への影響が懸念されておりまして、フロンなどのオゾン層破壊物質の規制につきましては、一昨年六月にモントリオール議定書の第二回の締約国会合におきまして規制強化が図られますとともに、さらなる規制強化のために世界各国の専門家から成るアセスメントパネルが設けられまして、以後検討がされてきたところでございますが、その過程におきまして新たな規制対象の物質として、例えば代替フロンなどと並びまして御指摘の臭化メチルにつきましてもオゾン層破壊物質として新たに規制を検討すべきではないかといった意見が出てまいっております。  この臭化メチルによりますオゾン層の破壊につきましては、そのオゾンを破壊する力がどのくらいあるのかといったこと、あるいはまた発生源といたしましては海洋からも蒸散しているということで、いわば自然系あるいはまた人為系ということがありまして、その自然起源のものと人為起源のものの寄与の程度がどうなっているかということなど検討課題があることも事実でございますけれども、何らかの対策が講じられないかどうか、ことしの十一月にモントリオール議定書の第四回の締約国会合が予定されておりまして、そこで検討されることになっておるわけでございます。  環境庁といたしましても、最新の科学的知見を踏まえまして、国際協調の見地から関係省庁ともよく協議をしながらオゾン層保護対策の一層の推進が図られるよう検討してまいりたいと考えているわけでございます。
  178. 上野博史

    上野政府委員 後段の御質問につきまして、技術的な関係が深いものですから私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  臭化メチルは現在我が国農業にとりまして非常に有用な広く使われている農薬でございまして、これが使われないということになりますと、一方で農業者の目から見ますと非常に難しい、営農がやりにくいという事態になる、こういうこともまた事実であるということをまず申し上げておきたいと思うわけでございます。  しかしながら、オゾン層の破壊の問題あるいはその土壌中の水への浸透の問題等々、環境への影響の問題を真剣に考えなければならないということについても、また我々として十分理解をしているところでございまして、この辺につきましては、農業者がそういう対応を求められたときに、やはり理解できるだけの科学的な根拠の上に立った対応を求めていく、そういうことでないと理解がなかなか得られないんじゃないか、かように思っている次第でございますけれども、しかし、疑いがあるものであれば、できるだけそういう臭化メチルを使わないでほかにより環境への負荷の少ないものを用いていく、あるいは物理的な方法を用いていくということについては考えなければならぬというふうに思っているわけでございまして、先ほど委員が幾つか挙げられましたようなことについても大いに検討いたしまして、実用化の方向に向かっての努力はしてみたい、かように考えているところでございます。
  179. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 専門的な、技術的なことでありましたから局長からお答えいたしましたが、なかなか他に代替できるものがないという問題もあります。ありますけれども、御指摘がありましたような抵抗性品種の利用、開発、適正な輪作体系の導入でありますとか、対抗植物の利用、お話しの太陽熱利用土壌消毒法、いろいろなものがあると思います。専門家の皆さんに十分研究していただいて、適切なものがあればそれを利用してまいりたい、こう思っております。
  180. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、早晩、この臭化メチルというのはもう国際的にもその使用が大きく問題になって禁止されてしまうだろうというふうに思うだけに、農家の皆さんがそのときに困らないように、やはり責任を持って皆さんが取り組まれるべきだ、そういうふうに思うわけです。農家の皆さんが理解できる云々かんぬんというような話じゃなしに、やはり積極的に、しかもこの問題はもう科学者の中では十年も前から取り上げられているわけでありますから、ぜひ真剣に対応していただきたいと思います。  時間がありませんので、最後にもう一問だけお伺いいたしますが、鳩レース協会の問題については、私は昨年の九月二十五日にここで鳩レース協会の運営及び暴力団の関与問題で取り上げました。これに対して局長は、「下部組織の取り消しか特定の会員の活動を制限することになりますれば、公益法人である協会の目的が十分に達せられないということになるとも思われますので、今後さらに事実関係を調査確認をして、今申し上げましたような線、つまり協会の目的が十分達せられる、」「そういう方向で指導をしてまいりたいと考えております。」「公益法人と暴力団との関係の状況等、それにつきましては十分調査の上、関係方面とも協議をしながら適切に対処をしてまいりたい」こういうふうに答弁をされたわけですが、その後の経緯を見ておりますと、私は何ら改善されていないと思うのです。  行政の対応は極めて不十分だと言わねばなりません。運営はますます非民主的になり、昨年十月には、この鳩レース協会の下部組織である浪速連合会を、定款で定められている弁明の機会を与えることもなく除名をしてしまいました。あまつさえ広域暴力団の関係者が運営に影響を与えるなど、その関係は強まっています。  農水省として、このような団体に対しても農林水産大臣杯を交付しているところでありまして、公益法人と暴力団との関係面から、果たしてこういうことが妥当なのかどうか、明らかにしてください。また、総理府及び警察庁として、公益法人と暴力団との関係についてどのように対処されるつもりか、明らかにしてください。
  181. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 鳩レース協会についての御質問でございますが、この協会には下部組織であります地区連盟の取り消し処分の問題だとかあるいは会員の除名の問題、そういうような問題がございまして、言葉が適当かどうかあれですけれども、いわば組織の内部での内紛状態、そういう問題があるわけでございまして、私どもとしても一刻も早く円満な解決が図られるように願っておりまして、その協会に対して指導を続けているところでございます。  また、協会の組織の運営あるいはその暴力団問題、こういうことに関しまして、先般協会の方で、私どもの意向を受けまして運営協議部会というものを設置をしまして、その中で鋭意検討していくというふうにお聞きをいたしておりますので、協会側の努力を期待をして見守っているところでございます。  なお、連盟の取り消しの処分あるいは会員の除名問題につきましては、現在訴訟中、裁判中でもありまして、裁判の推移を見守りながら適切な指導を行ってまいりたいと思います。  それから、大臣賞の交付についての問題ですけれども、申し上げるまでもなく、公益法人の中に反社会的な存在である暴力団の構成員がいるということは好ましくない、当然ですがそう認識をいたしております。このため、私どもとしましては、暴力団問題等を所管をしております警察庁等と緊密な連携をとりながら、協会の民主的な運営が行われるようこれまでも指導をしてきたつもりでございますが、さらにそういう方向での指導を強めてまいりたいと考えております。  大臣賞の交付につきましては、協会と暴力団の構成員とのかかわりぐあいが明らかになった時点で適切な判断をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  182. 関根康文

    ○関根説明員 お答えいたします。  総理府としては、各府省庁官房長等のクラスをもって構成する公益法人指導監督連絡会議におきまして、各府省庁共通事項の必要な調整を行っているということになっております。この中で、公益法人制度の運用において整合性、統一性を保持するために必要な基準を作成しているというふうな状況でございます。  先ほど先生御指摘のような点ございましたが、こういうような公益法人指導監督連絡会議の場において、先ほど申しましたような暴力団関係の問題を取り上げるのかどうか、今後検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  183. 石附弘

    ○石附説明員 お答えいたします。  警察としては、暴力団に対しては、その存在そのものが社会に害悪を及ぼすものであるという基本認識のもとで、警察の総合力を結集してこの暴力団に対する取り締まりと暴力団排除のための諸活動を徹底し、暴力団の壊滅と暴力的不法行為の根絶を図っているところでございます。したがって、公益を担うべく主務官庁の許可を得て設立されている公益法人に暴力団が関与し、また影響力を行使する、その結果として公益法人の本来の趣旨が果たされなくなるような事態があるとすれば、警察としては、暴力団対策上好ましくないと考えることは当然のことでございます。  いずれにいたしましても、警察庁としては、暴力団対策の観点から、主務官庁と連携を緊密にし、今後とも積極的にこの暴力団排除活動を進めてまいりたい、こう考えているところでございます。
  184. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう時間が参りましたので、これ以上質問はいたしませんけれども、同じ主務官庁下にあるJKC、畜犬協会ですか、これは大臣、過去いろいろなトラブルがあった中でみずから、「まちがっても暴力団員やその関係者が入会することのないよう、ご配慮ください。」ということで、もう非常に厳しい、宣言文にも似た言葉を、八九年の六月、七月、八月、九月号のところで掲載をして、みずから襟を正しているのですね。私は、そこへ導いたのはやはり指導の舞台であった農水省だなというふうに、これはひいきの引き倒しになるかしれませんが、思っているわけです。だから、鳩協会でもこういう問題が起こっているときにわざわざ大臣杯、大臣の名も汚すじゃないか、私はそう思うのですよ。本当にこういう問題が起こっているときにはやはりみずから毅然として、そこのところはもう農水省の方に、まずおまえたち襟を正したら出そうというくらいの勢いがなかったら、どうも私はこの間の経緯を見ていて農水省対応というのは過去の対応とはちょっと変わってきたのかな、こう思うぐらいなんです。ひとつそこのところは、大臣の名を汚さないように、大臣の強力な指導を求めて私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  185. 高村正彦

    高村委員長 小平忠正君。
  186. 小平忠正

    ○小平委員 私からは、外国産馬の出走制限緩和五カ年計画なるものが日本中央競馬会から出ておりますが、これについて何点か質問いたします。この問題につきましては、去る二月二十六日の本委員会でも、日本中央競馬会の渡邊理事長を参考人としてお招きをして、質問をしたところであります。  その際に渡邊参考人からは、競馬の国際化への対応については「中央競馬におきましては、国内産馬を主体としたレースを確保していくというスタンスで臨むべきであるこまた、「段階的に、漸進的に対応して、生産者の方々に大きな打撃を生ずることのないよう配慮していかなければならない、こういう立場に立っております。」との答弁がありました。また、五カ年計画の白紙撤回要求にも触れられて、「何らかの接点を求めまして、私どもとしてもこれに対しては十分な施策をとりまして、生産者の方々に御心配をかけることのないように私ども努めてまいりたい」こういうことも答弁の中に触れられておったわけであります。  しかしながら、その後の推移を見てみる中におきまして、私も実は過般の連休中に、日高の生産者の軽種馬農協を含めて生産者の方々の要請を受けて現地に行ってまいりました。そして、この問題についていろいろと話し合いを行う機会を持ったわけであります。渡邊理事長や畜産局長の答弁にもかかわらず、生産現場の理解は全く得られてない、私はこう伺いました。かえってそれどころかJRAに対する不信感が増幅され、五カ年計画の白紙撤回を求める声がますます高まっている、そういう印象を受けてきたわけであります。  一例なのですが、「日本軽種馬生産情報」こういう情報紙がございます。これの三月十日号に、米国の「サラブレッド・オヴ・カリフォルニア」という月刊誌の記事が、その一部が載っておりまして、これに渡邊理事長の発言として、「生産者が猛烈に反対しているので、日本の競馬の国際化は極めて厄介な問題だここう出ております。これについて生産者は、国際化をすることを前提としており、しかもそれが進まないのを生産者のせいにしていると大変な反発をしているのが実態であります。また、理事長の答弁の中に、国際化を進めるために生産対策を行うことについて述べられました。これに対しても生産者は、JRAが我々に対して施しをするような発言は極めて不愉快である、こうまで言い切る方もおられた。複数の方でございます。結構おられた。そんな発言等もありました。  現在の軽種馬生産をめぐる情勢を見ますと、景気の後退と生産過剰の傾向の中で当歳馬に買い手がつかないという状況も現在生じておるところでありまして、このような観点から、生産者は五カ年計画の白紙撤回と仕切り直しを求めているのであります。  そこで本日は、畜産局長にお伺いをしたいと思います。  前回の二月二十六日の当委員会での畜産局長の御答弁は、競馬の国際化への対処について「関係者が十分に協議をいたしまして、速やかに成案が得られることを望んでおるところでございます。」こう答弁されました。にもかかわらず、事態は一向に好転してないところか、今ほど申し上げましたようにかえってこじれているのではないかと思われます。  私は、この国際化への対応は、中央競馬会と生産者が対立をするような問題ではなくて、生産から競走に至るまでの我が国の競馬関係産業の発展のために、両者が同じ立場に立って考えるべき問題ではないか。そのためには、競馬会がもう少し現在の生産者の状況に理解を示すべきであろうし、また農水省としてもこのような考え方で本腰を入れて指導をする必要がある、こう考えます。局長はこれらのことについてどのように考えておられるのか、またJRAに対してどのように指導しておられるのか、そこのところをぜひお伺いをしたいと思います。
  187. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 外国産馬の出走制限の緩和案につきましては、中央競馬会が提示したわけですけれども、今先生がおっしゃられましたような世界的な潮流になっている競馬の国際化の進展だとか、特に最近になってアメリカ等から制限撤廃要求が強まっている、そういったことを踏まえまして、これまでは毎年毎年出走制限の緩和案を示していたわけですけれども、そういうことでなくて、長期的な緩和案を示すことによって生産者におきましても計画的な対応ができるよう提示をしたものであるというふうに聞いておりますし、もう御存じのとおりでございます。  それで、農林水産省としましては、今後とも国内産馬中心の競馬を堅持しながら、競馬の国際化のためにどう対処していくべきかということについて関係者が十分協議をして速やかに成案を得ることが必要であり、大事であると考えているわけでございます。  三月の中旬だったと思いますが、北農の中央会の会長さんが生産者の代表の方々ともども私のところにおいでになりまして、本件についていろいろ事情も話して帰られました。その際私は、競馬会が提示している計画案、これを白紙撤回しなければ話し合いのテーブルに着かない、そういうことでなくて、中央競馬会の方でもあの案には固執しないと言っている、あの案はたたき台だと言っていますという話もございました。それで、とにかく皆さん方もただテーブルに着かないということではなくて、両者で話し合うことが大切だと申し上げましたら、皆さん方も、それはそうだなと。  今先生がおっしゃったように、両者が対立をするような話ではない。そんなような経緯も踏まえまして、この件について中央競馬会あるいは生産者、馬主といった関係者による懇談会を開いて、ざっくばらんにというかいろいろ話し合いをしよう。私どもがいわば潤滑油のような形になりまして、畜産局主催でそういう関係者にお集まりをいただいて懇談会を開催しているところでございます。第一回を開きました。また近々開く予定でございますが、こういうふうな場を通じて関係者の協議が円滑に進むようにさらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  188. 小平忠正

    ○小平委員 局長の御答弁もありますように、そういう懇談会を持たれて両者なりそういう意見の集約を求めることはもちろん大事でありますが、しかしどうも今回のこの問題について特に生産者側が一番危惧していることは、今の国際情勢の中で枠を広げることについては認めざるを得ないということは承知しているようでありますが、サイクルというものを考えた場合に、それが短兵急に、短期間にということについて大変な危機感を持っている。これでは完全に崩壊してしまう、こういうおそれが強いようであります。  私が特に指摘したいことは、景気の後退、そういう状況の中ということを今ほど申し上げました。また生産過剰ということもお話ししましたけれども、こういう状況の中で、最近は産業界にあっては技術革新ということが大きく言われております。これをすることが大事であり、また合理化というものが言われておる。しかし、農業界は技術革新とか合理化というものは非常にしづらい分野である、こう言っても過言ではないと思います。その中でも特に軽種馬というものは、同じ農業の中でも馬産業というか、これについては合理化がしづらい、いわゆるハイテク技術とかバイオというものが持み込めない、そういう特殊な分野であります。  そういう中で今まで綿々と築かれた我が国の競馬界、軽種馬地帯がこういう短兵急なことでは崩壊が目に見えている、そういうところが非常に強いわけであります。また今の時流としては、労働時間の短縮というものが大きく問われている。ところが、御承知と思いますけれども、軽種馬の農家の皆さんにおいては、時短どころか実態としては大体年間三千時間から四千時間の労働に追われております。そういうことも御理解いただき、そういう実情を踏まえていかれたい、こういうふうに強く申し上げる次第であります。  それにもう一点、今直面している問題としては、いわゆる外圧というか、特にアメリカの参入という問題が大きくのしかかっているわけであります。  そこで、次にお聞きしたいことは、JRAは今回の出走制限緩和案を出した理由として、海外からの外国産馬の参入機会の増大の要請が強まってきていることを挙げております。しかし、前にも申し上げましたように、競馬会に対する生産者の不信感は非常に強く、先日も私が地元の軽種馬生産者の皆さんと意見交換した席上においても、本当に海外からの要求が強まってきているのか、それは単に一部のところからの要望ではないか、そんな中で競馬会が自分たちの五カ年計画を生産者に押しつけるための方便ではないか、こんな意見、問いかけもありました。  そこで局長、海外からのJRAの出走制限の緩和についての要求がどのようにあるのか、そこのところを具体的にお伺いしたいと思います。
  189. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 外国産馬の出走制限緩和について外国からの要求が本当に強まっているのか、そういうような御質問でございますが、この外国産馬の出走制限の撤廃等に関する問題につきましては、約十年ほど前からニュージーランドとの二国間の事務レベルの協議等におきまして、要求があったり照会がなされてきたところでございます。その後もそういうことが続いております。去る平成二年の四月にはガット・ウルグアイ・ラウンド交渉におきましてニュージーランドからのリクエストげストに挙げられたりしておりますが、特に最近におきましては、昨年の十一月にアメリカのケンタッキー州のマッコンネルという上院議員から駐米大使に対しまして、日本の大使に対しまして、善処方の要望がなされております。また、ことしの三月には在日のアメリカ大使館の公使が私のところに本件について来るというようなことで、アメリカの動きが目立つようになっているところでございます。  そういうような動きは現にあるわけですが、いずれにしても、先ほど来申し上げておりますように、この問題につきましては関係者が十分協議をして、速やかに納得の得られる成案を得ることが必要であると考えておりまして、先ほどお話を申し上げましたように、関係者の協議が円滑に進むようにJRAだとか生産者、馬主等関係者による懇談会を開催しておりまして、こういうような場を通じて関係者に対して指導をしていく、できるだけ早く溝が埋まるような、そういう場を設けて今話し合いをしているところでございます。
  190. 小平忠正

    ○小平委員 この問題は、JRAと生産者との問題、と同時に今の外圧といいますか、外国と日本との問題、その両面があるわけです。そこで、これは政府間交渉ではありませんので、政府としても非常にしづらい面があると思います。しかし、私は強く要請したいことは、今後政府としても、アメリカを初め関係諸国と何らかの接触を十二分に持っていかれて情報を入手し、的確なる状況把握に努めて我が国生産者保護、それと軽種馬産業育成のためにしっかり取り組んでいってもらいたい、このように要請をしておきたいと思います。  時間の関係もあって次の質問に移らしてもらいますが、まずガット・ウルグアイ・ラウンドの農業交渉についてでありますが、最近いろいろな動きを見ていますと、ラウンドは本来多国間の合意による解決がなされるべきであるのに、どうも最近では米国とEC間の交渉に陥っている、そんな感が非常に強いわけであります。米国とECの決着がラウンドの決着であるようでは、食糧輸入国側の立場としての例外なき関税化反対という我が国の主張が無視される危険性がある。  そこで、七月のミュンヘン・サミットが控えておりますが、ウルグアイ・ラウンドの農業交渉の現在の状況及び今後の見通し、これについて今の時点で政府としてはどのようにとらえているのか、そこのところをお伺いいたします。
  191. 川合淳二

    ○川合政府委員 今お話がございましたように、三月の国別約束表の提出以降、ウルグアイ・ラウンドの農業交渉につきましてはほとんど進展がない状況にあります。特に米・EC間の今お話しのような状況が目立っているわけでございます。私どもも米・EC間だけの交渉というふうな今の状況について懸念を持っておりますし、先日も大臣のところへ参りましたヒルズ代表に対しまして、その旨、懸念を持ち、かつ問題であるということは大臣からも申し上げていただいております。ただ、米・EC間におきましていろいろな段階でやっておりますが、これにつきましてもなかなかうまく進んでいないのではないかという感じがいたします。  こういう状況ではございますけれども、私どももこうした状況につきまして、我が国としても今までの基本方針に基づきまして、我が国としての働きかけなり、各国への理解を求めることを考えておりまして、今週も塩飽審議官をオーストラリア、ニュージーランドに派遣しております。我が国の立場を明確にいたしますとともに、ケアンズ・グループの代表であります両国の立場をよく聞いてまいりたいと思っております。また、来週にはOECDの閣僚会議がありまして、これは私どもの東国際部長が出席することにいたしておりますので、その前後に、特に我が国と立場を同じにするような国も含めまして接触を図っていきたいと思っております。  したがいまして、私どもといたしましては、今の状況は非常に見えにくい状況ではございますが、我が国の立場につきましてこうした機会におきましても理解を求めるべく、最大限の努力を図っていきたいという状況にございます。
  192. 小平忠正

    ○小平委員 それでは最後に、この新農政プランについてお伺いいたします。  昨年五月に農水省内にこの本部が設置されて、有識者による懇談会が過去十三回ですか開催されて、いろいろな問題等、検討がなされてきたわけであります。その中で、私は特に、時間の関係もあって一点だけ、せっかく大臣も出席でありますのでお尋ねいたします。  我が国農業、農村は、新規学卒就農者の急激な減少、さらに耕作放棄地の増加等に見られるように、まさしく危機的な状況に陥っております。これは言うまでもありませんが、とりわけ担い手の問題は深刻であります。このほど農水省農業総合研究所がまとめた推計結果によれば、二〇二〇年には農業担い手は現在の三割まで減少し百万人を割る、こう予測をしております。日本農業の将来を支える者がおらずしてどうして農政を進めていくことができようか、こう思います。  このような厳しい事態を打開するためにも、食料・農業・農村政策位置づけを明らかにし、その展開方向を定めるとともに、新規就農者を含め農業に従事する者が意欲を持って農業に取り組めるよう、農業の中長期的ビジョンを明確にする必要がある。幾ら声高に題目だけを唱えても、しっかりとした政策が提示されなくては、農業を背負って。生きていこうとする者の意欲をそぐばかりであります。今回、大詰めの調整が行われているこの農政の新政策については、当然このようなビジョンのもとに方向づけが行われることと思われますが、最後に、この新政策展開に際しての大臣の基本的なお考えをお伺いをしておきたいと思います。
  193. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 今進めておりますこの新政策でありますが、やがて来る二十一世紀に一体日本農業がどうなるか、お話の高齢化が進展をしていく、出生率が低下をしてくるという中で、新しい方向というものを今示して、これに向かって私たちが努力をしてあげないと、次の世代の子供たちが本当に非常に厳しい環境の中で農業政策を進めていかなければならぬということが明らかでありますから、そこに視点を置いているわけです。ややもすると、目先の現状で反対だとかなんとかという声が起きるかもしれませんが、大局的な立場から、やはりみんなで考えてあげるということは私は大事だ、こう思っております。  そこで、いろいろ考えておりますが、何といっても生産性が立ちおくれておる、あるいは担い手が不足しております稲作等の土地利用型農業、畜産は厳しいとかなんとかいいましても需要が伸びておりますが、米の方は年々減っているわけですね。そういうこともありまして、いずれにしても、農家経営意識を喚起していかなければいかぬ。やはりやる気がなければ、どんな手だてをしてもなかなかうまくいかぬということがあります。したがって、経営管理能力にすぐれて、あるいは企業的な経営のできる担い手育成して、責任を持ってやってもらおう、そして所得においても他産業に劣らない、そういう体制をつくる。全部そうなるかというと、私はそう思っておりません。平場の地域、あるいは中山間地、あるいは規模はもう拡大は結構だという人、さまざまおるでありましょうけれども、いい手本をつくって、これを目指して、やればやれるんだという、そういうものをやはりつくり上げていかなければならぬ。地域の特徴を生かした農業振興を基本として、そればかりではありません、生活関連、やはり豊かに住める、安心して住める、子供たちも都会の環境よりすばらしいところで生活をしていくという、そういうものを目指して努力をしていきたい。  現在進めている農業、農村をめぐる施策について、総合的見直しの結果を踏まえて、ただいま申し上げたような観点から、新しい農業、農村の方向を明らかにしてまいりたい、こう考えております。
  194. 小平忠正

    ○小平委員 終わります。      ――――◇―――――
  195. 高村正彦

    高村委員長 内閣提出参議院送付農業改良資金助成法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  趣旨の説明を聴取いたします。田名部農林水産大臣。     ―――――――――――――  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  196. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 農業改良資金助成法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農業改良資金制度は、昭和三十一年に発足して以来、農業及び農村事情の変化に対応して制度及び運営の改善を図りつつ、農業改良普及組織等の指導と相まって、合理的な生産方式の導入、農業経営規模拡大農家生活改善及び農業後継者育成のための無利子資金の貸し付けを通じて、農業経営の安定と農業生産力の増強に寄与してまいりました。  しかしながら、近年の農業をめぐる情勢の変化には著しいものがあり、農業就業者の高齢化が一層進行する中で、特に次代の農業を担うべき後継者が激減し、農業担い手の脆弱化が危惧されており、すぐれた技術及び経営感覚を持った担い手を幅広く育成確保することが急務となっております。  また、稲作等の土地利用型農業については、近年、賃借権を中心とした農業経営規模拡大の着実な進展が見られますが、その動きはいまだ十分とは言えず、農業経営規模拡大の一層の促進が求められております。  さらに、国際化、消費者ニーズの多様化が進展しており、これに的確に対応していくため、農産物の高付加価値化を図ることが求められております。  加えて、農村社会の変化等に対応し、農業改良資金の保証制度につきまして、借受者の利便を図る観点から見直すことが求められております。  政府といたしましては、このような状況を踏まえ、次代を担う農業者育成確保農業経営規模の一層の拡大、農産物の高付加価値化等を図る観点から本資金制度改正することとし、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、意欲ある青年農業者等の育成確保を図るため、現行の農業後継者育成資金を再編拡充して青年農業者育成確保資金を創設することであります。  青年農業者育成確保資金においては、農業外からの新規参入青年等も含め幅広い層に対応し得るよう、貸付対象者の範囲を従来の農業後継者たる農村青少年から青年農業者その他の農業を担うべき者に広げるとともに、資金内容を拡充して、農業技術経営方法の実地の習得その他近代的な農業経営の基礎の形成に必要な資金とすることとしております。  第二に、農業経営規模拡大を一層推進するため、経営規模拡大資金について、農用地の利用権の取得による農業経営規模拡大に伴い必要な資金を新たに貸し付けることとしております。  第三に、農産物の高付加価値化及び地域の特徴を生かした農業展開に資するため、生産方式改善資金について、合理的な生産方式の導入とあわせ行う加工方式の導入のための資金を新たに貸し付けることとしております。  第四に、農業改良資金の保証制度について、借受者の利便を図るため、従来の保証人による保証のほか、物的担保の提供によることもできることとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  197. 高村正彦

    高村委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会      ――――◇―――――