○阿部(昭)
委員 簡潔にお尋ねをしたいと思います。
私は、この
農協二法の
改正の意義、これはそれなりに認識をしておるのでありますが、今
農協は非常に困難な、非常に厳しい
状況に立っている。その根本は、
農協を構成しておる
組合員が、一人一人の
農家がなかなか見通しをしっかりと立てることが困難だというところに、この
農協の直面しておる一番の困難な原因があると私は認識しておるわけであります。
ちょうど今から三十年前、
農業基本法、そして
農協法の
改正が行われて、
農事組合法人というのが初めて
農協法の中で
制度として登場してきたわけであります。その当時私は、私の
地域の中にたくさんの
農業の共同化
法人、
農事組合法人というものをつくることに没頭いたしました。私の
地域はササニシキの本場であります。しかし
農業の技術革新はどんどん進む。したがって相当の大きい
農家でも、前のように十二カ月間、三百六十五日米だけをやっておるわけにはいかない。したがって複合
経営をやらなければいかぬというので、特に米プラス
畜産であるとか、米プラス園芸
農業であるとか、いろいろなことを実は進めました。あれから三十年たってみると、
農業法人はそれなりにいろいろな展開をしておるのでありますけれ
ども、しかし、我々が当時思い描いたほどバラ色に大きく展開することにはなかなかならなかった。それはやはり
農業を取り巻くいろいろな
状況がどんどん変わっていったからであります。あの当時
農業基本法は、私
どもの米どころにつきましては二ヘクタールの
農家が中核
農業として成り立つというのが
農業基本法をつくり上げたときのうたい文句だったのであります。今はとてもじゃないが二ヘクタールの
農業なんというのは全然もう問題にならぬのであります。
そこで、今のこの
農協法改正の背景にある
農業、
農村分析の中に、例えば
耕作放棄しておる
土地が非常に
増加しておるとか、確かにそのとおりであります。今年十三万ヘクタールほど減反面積を減らしましたけれ
ども、二百八十数万ヘクタールの水田のうち現在でも七十万ヘクタールは減反であります。この減反を、私の
地域で見ますと転作が定着したるもの、これは二〇%定着しておるかどうかであります。ほかのものはみんな仮のものを何とかやっておるだけであります。それじゃ、もしこの減反田というものを本格的に果樹なり蔬菜なりに転換したらどのようになるのか。恐らく豊作貧乏で果樹や蕨菜やそっちの方の市場はパンクするのだろうと思うのであります。
今まで相当長い期間、何度も何度も減反田をどのようにやっていくかということでチャレンジをして痛い目に遭っておる仲間の
農業者は私の周りにたくさんいるわけなんです。したがって、今度の
農協法の中に我々が問題にしておるのは、我々
昭和一けた世代は大体最近
農協の指導者で、そろそろもう次の世代にバトンを譲らなければならぬのじゃないかという、したがって、私
どもの同世代の長い友
人たちに
農協の指導者が大変多い。この
皆さんといろいろ議論いたしますと、
組合員の生産と所得をどのように希望あるように広げていくのかということが
農協の本来の任務ではないか。全くそうだ。ところがある
組合長は、あなたはそうおっしゃるけれ
ども、なかなか大変なものだ。例えば米プラス何をやりなさいといって
営農指導をやる。やった結果がうまくいかぬ。そうなると、何だ、
組合長がいろいろ骨折ってやれやれと言うのでやったら結果はまずいじゃないかといって総会で
たちまち不信任を食らう。そうすると結局、例えばスーパーを始めたり、あるいは
信用事業、共済
事業などに力を入れて、
組合は相当の黒字を持ちました、これを
組合員にどのように還元するかということでやっておった方が、生産面で生産と所得をどのように伸ばすかということで
組合員にぎりぎりやっていくよりかははるかに、我が方の
農協の
組合長はなかなかよくやるという評価になっちゃうというのですよ。これが恐らく相当多くの
地域の
農協リーダーの
皆さんが今直面しておる問題の姿だと私は思う。したがって、
営農指導をやろうというなら、何をやったならば生産
農家は見通しが立つのかというところまでしっかりした見通しや、その上に立った指導のマニュアルや何かを持っているのでなければなかなかうまくいかぬというのです。
私は、今度の二法の
改正に賛成なんです。しかし、この枠組みの中だけで
農協の将来、洋々たる見通しになるか、これを構成しておる
組合員は前途洋々になっていくのかということになると、私は残念ながらなかなかそうはなっていかない、こういう認識を持っているのであります。
農協大会でもいろいろ論ぜられ、議論されて、農林省の中でもいろいろ議論されて、その上で今度の
改正案を出されたという意味を私はよく理解しておるのです。しかし、この
改正の中で
農協も、それを構成する
農民も前途洋々かということになるとなかなかそうはまいらない、こういう認識なんであります。
そこで、私の
考え方を若干、これは議論になるようでありますが、申し上げたいのであります。
今、私の認識では、自給率は、カロリー換算で四七%。四八%を割ったように見ておる。人口一億二千数百万も擁しておるようなこの大きな国の中で、西ヨーロッパなどとも比較をして、カロリー換算で自給率が五割をはるかに割ってしまったなどというのは、日本くらい
規模の大きい国ではそう例がないわけです。そういう中で一体どうするのかということであります。
実は、私の周り、身内で三ヘクタールの
農家の持っておる
農業機械設備、機械装備、これみんなワンセット千数百万円するのです。三百六十五日の間はとんと、三日とか四日とかせいぜい五日ぐらいしかその
目的のために稼働させることはできないような
農業機械装備をみんなワンセットずつ、単位の
農協の
組合員である
農業者は持っておるのです。この三ヘクタールの
農家の持っておる
農業機械装備は、本来二十ヘクタールぐらいのことを十二分にやり得るものなんです。例えば、
農協がライスセンターをやる、共同利用施設をつくる。しかしながら、この利用率はどのくらいかというと、相当の努力をしてつくったのに、利用率はまだまだ非常に低い。各戸は、コストを度外視して、物すごいむだのある機械装備、設備をおのおので持ちながらやっておる。
したがって、
農業の共同化なり協業化なり
農事組合法人なりでやろうというもの、むだのない
規模で、むだのない装備でいこう、そしてコストもちゃんと合うようなことでやろうというものに対しては、
制度的にもっともっとやっていく。それから
農協の中で、特に生産物の加工とかあるいは販売とか、実は私は、
農事組合法人をいろいろつくり上げてから、当初は、農林省、食糧庁は非常に嫌な顔をしましたよ、生協との間に産直運動というものを進めてきた。あれから二十年以上もたって、相当定着率も進んでまいりました。米以外のいろいろなものも私は相当広げてまいりました。これからの
農協の
あり方は、見通しのあるものの生産をどうやらせていくか、
営農指導をどのようにやらせるか。加工や販売まで全部
農協がもっと積極的にやり得るためには、政治はもっともっとサポートしていく、そして全体の枠組みの中で見通しがちゃんと立つということをやらなければいかぬのではないか、私は、こういう認識を持っているのであります。
最後の
質問者でありますから総論を申し上げましたけれ
ども、ぜひ農林省は、
農協が今直面しておるこの厳しい現実に対して、それを構成しておる
組合員はもっと厳しい、この
状況に対して、もっと根本に触れていったところの施策をきめ細かに、大胆に展開してもらいたい、この希望を申し上げたいと思うのでありますが、農林
大臣の御所見を承りたい。