○石破
委員 この時期に農林水産
政策のエキスパートであります田名部先生が
農林水産大臣に御就任になったということは、まことに時宜を得たものであろうと思っております。どうか国家
国民の将来のために、そしてまた民族の将来のために御健闘をいただきたいと念じておりますし、私
どもも全力を挙げて御支援できるようにいたしたいと思っておるところでございます。
さて、猫の目農政という言葉がございまして、大変に政府の農政というのは評判がよろしくないと言われます。そしてまた、地元へ帰りましても毎年毎年
農業政策は変わるので大変にぐあいがよくない、十年後にこのようになるのであるというような
政策を提示してくれれば我々もそれなりにやりようがあるのであるというような
お話を承ることもあるのでありますが、しかし、だれにもいい
政策なんというのは恐らくどこにもないだろうと思っております。ある人によければある人に悪いのでありますし、ある
地域によければある
地域に悪いというようなことがございます。また、いろいろな説があるのでありまして、例えば
食糧自給を六割にするというような説が出てみたり、そしてまた米の
自由化はある程度やむを得ないというような説が出てみたり、現行の選挙区
制度のもとではいろいろな説が出るのもこれまたやむを得ぬことなのかなという気もしてはおるめでありますが、なかなか難しいことであろう。だれがやっても農林水産行政というのはそう評判がいいことには相なるまいとは思っておるところでございます。
さて、
金子議員の
質問とも重複をいたすかもしれませんが、
観点を変えて
お尋ねをいたしたいと思います。
米の
自由化はなぜいけないかということをもう一度明確にする必要があろうかというふうに思っております。最近、そうはいっても外国とのおつき合いもあるのだから、ミニマムアクセスぐらいは仕方がないんじゃないのというような
お話を聞くことがございます。そしてまた、あるいは
農家の方の中にも、特に稲作を主体としておられない方々は、別におれたちは米が
自由化になってもちっとも構わないのである、おやじ、おふくろがずっとやってきた田んぼであるからして仕方なくなくやっているが、これが
自由化になるとみんな米をやめちゃうので、そうすればビニールハウスでもつくって、もうちょっともうかるものができるのかねなんというようなことを言っている人もいる。しかし私は、米の
自由化をしてはいけないというのは、私
どもは決して
農家のためにとか、農民票のためにとかそのようなことを申し上げておるのではないのであって、国家の存立のために
自由化はいかぬのだということを
国民世論としてもう一度確認をしておく必要があるのではないか、かように思っておる一人であります。
私は、自衛権が自明の理でありますように、
食糧の自給をする、少なくとも主食は
確保する、
日本国民でいえば基本的に何とか二千キロカロリーぐらいは国内で自給できる
体制をつくっておく。それは供給力という言葉にしてもよろしいでありましょうけれ
ども、それは独立国の権利であり、同時に義務ではないかというふうに思っておる一人でございます。
羽田先生がよくおっしゃっておられたことでございますが、要するによその国に
日本の胃袋を預けていいのかねということなのでありましょう。すなわち、その
国民が何を主食として生きるかということは、決して偶然によるものでも何でもない、それは必然によるものだと私は思っておるのであります。なぜ
日本人が米を食って一億二千万が生きておるかということは、傾斜が急峻な国土であって、そして雨が降って連作が可能であるから
日本人は米を食べて生きておるというような、気候、風土、そういうものに起因するものでありましょう。だから、気候も風土も全然違うような外国にそれをお任せするということがいかに危険なことであるかということを認識する必要があると思っておるのでございます。
ヨーロッパで行われております
畜産主体の農法というのは、それ自体自給的なものであるというふうに思っておるのですね。多分三国式のような形で牧草をつくり、牛を飼い、小麦をつくりというようなことなのでありましょう。牛や豚はそれなりに自給力を持ったものでありますし、そしてまた小麦もつくっておるわけでありまして、
畜産主体の農法というのはそれ自体が自給的なものでありましょうけれ
ども、
日本のように稲作主体のというのは、下手をすれば自給そのもの自体が崩れてしまうということではなかろうかと思っております。
そしてまた、これだけ人口爆発の世の中であって、一説によれば地球の人口というのは一年間に一億ふえているという話なんですね。これは一日で三十万ふえている。私の選挙区は鳥取県という全国で一番の過疎県で、全部合わせても六十二万人しかいない県なのでありますが、要するに二日で鳥取県
一つ分の人口がふえてしまうというようなことなのでありましょう。それは、貧しいから働き手がたくさん要る、よって子供を産む、ますます貧しくなるという悪循環を繰り返しておるのであって、この人口爆発というのは容易なことではとまらない。そしてまた、
農業保護の削減ということも言われておる。だんだん
世界の
食糧が足りなくなるような
状況の中で、国家の権利であり義務であるというような
食糧自給、米の自給
体制というのをこんなところで放棄しては、これは国が滅びる、かように確信をいたしておる次第であります。
そこで
大臣に
お尋ねをしたいのは、その
方針でこれから先も貫徹をしていただけるのかということ、そしてまた、一部に言われておりますミニマムアクセスくらいはおつき合いだから仕方がないじゃないかという話がありますが、ミニマムアクセスとは一体何%かということは、
ガットの条文どこを読んでも、何%ということはどこにも書いてないはずであります。三%と言う人あり、五%と言う人あり、いろいろでありますが、一回ミニマムアクセスを認めてしまえばそれが三%になり五%になり一〇%になり、とめどなく広がっていくのではないか。やはりミニマムアクセスというのもアリの一穴になるおそれがあるのであって、やはりそれも認められない。
関税化は論外でございます。そのような論法で間違いがないかどうか、そのことについて
お尋ねをいたしたいと存じます。