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1992-04-08 第123回国会 衆議院 土地問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年四月八日(水曜日)     午前十時六分開議 出席委員   委員長 薮仲 義彦君    理事 狩野  勝君 理事 中谷  元君    理事 萩山 教嚴君 理事 星野 行男君    理事 安田  範君 理事 和田 貞夫君    理事 平田 米男君       井奥 貞雄君    大塚 雄司君       佐藤 守良君    坂本 剛二君       鈴木 恒夫君    長勢 甚遠君       西田  司君    真鍋 光広君       村田 吉隆君    柳本 卓治君       山本 有二君    小川  信君       小野 信一君    貴志 八郎君       輿石  東君    佐藤 泰介君       斉藤 一雄君    常松 裕志君       松本  龍君    近江巳記夫君       長田 武士君    佐藤 祐弘君       伊藤 英成君    菅  直人君  委員外出席者         参  考  人         (日本大学経済         学部教授)   田中 啓一君         参  考  人         (日本不動産鑑         定協会会長) 塩見  宙君         土地問題等に関         する特別委員会         調査室長    杉本 康人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  土地問題及び国土利用に関する件(土地情報  の整備及び公的土地評価の今後の在り方)      —————・—————
  2. 薮仲義彦

    薮仲委員長 これより会議を開きます。  土地問題及び国土利用に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  土地問題及び国土利用に関する件、特に土地情報整備及び公的土地評価の今後のあり方について調査のため、本日、参考人として日本大学経済学部教授田中啓一君及び日本不動産鑑定協会会長塩見宙君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 薮仲義彦

    薮仲委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 薮仲義彦

    薮仲委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  両参考人には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。両参考人には、土地情報整備及び公的土地評価の今後のあり方につきまして、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、田中参考人塩見参考人順序で御意見をお一人十五分程度お述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人委員長の許可を得て発言をしていただき、また、委員に対しては質疑できないことになっておりますので、御了承ください。  それでは、田中参考人にお願いいたします。
  5. 田中啓一

    田中参考人 ただいま御紹介賜りました田中でございます。  こういう機会を与えていただきまして、本当にありがたく思います。私の十五分間のお時間をいただいたわけでございますが、お手元に簡単なレジュメがあろうと思います。それに基づきながら概略を御説明させていただけたらと思っております。  まず、資本主義という経済体制というのは、その中でも特に発展する国あるいは都市というのは、絶えず地価は上がり続けるといったことを、もう既に百五十年前、J・S・ミルが指摘しているところでございます。こういうような現象の中で、これを裏づけるように、一八二〇年ごろあるいは一八四〇年ごろ、当時の資本主義の最も発展したイギリス、特にロンドンとかマンチェスター、リバプールで地価が高騰したわけでございまして、その後、世界覇権国といいましょうか、中心国アメリカに移りますと、一九二〇年ごろ異常な地価高騰がこのアメリカでマイアミを中心として起きたという歴史的な事実があるわけでございます。  あるいはまた、翻ってみますと、我が国におきましても、一九一〇年ごろ、余り指摘されて劣りませんが、大阪を中心とした異常な地価高騰が見られたわけでございます。そして高度成長期における列島改造論議、あるいはまた、今回といいましょうか、昭和六十年から始まったと言われる、一千兆円とも一説では言われるバブル、これは多分世界の歴史の中でも最も大きなバブルといいましょうか、水膨れであったと指摘されているところでございます。  前回の、一九二〇年代アメリカで起きました異常な地価高騰、これにはやはり都市計画不備、税制の不備背後金余りという現象があったわけでございまして、今回の古今未曾有と言われるような一千兆円、世界経済の約四割に相当するという一千兆円でございますが、これが起きたのも、やはり我が国の場合もこの三つがあろうかと思います。そしてその背後には、土地に関する国民が買わなきゃ損だという意識が、どうも一九二〇年代、そして我が国の三回にわたる狂乱地価にも見られるという現象であろうと思います。すなわち、的確な土地情報というのが国民の間に知られてなかったという、そういう不備も考えざるを得ないと思うわけでございます。今回の狂乱地価ということの後遺症に今いろいろ悩んでいるところでございますが、土地情報整備ということは、これからの狂乱地価を再び起こしてはならないという視点から、どうしても必要不可欠なことであると考えられるわけでございます。  そのために、土地情報整備をいかに進めるべきかということについて、簡単に私見を述べさせていただけたらと思っております。  まず、レジュメに書きましたように、一番初めに、土地政策の的確な実施のための土地情報整備必要性ということでございます。  土地政策の的確な実施を遂行していくためには、土地所有取引利用地価等に関する土地情報を総合的、系統的に整備することがどうしても必要不可欠であるわけでありまして、また、土地情報収集整備利活用のための体制を確立する必要があるわけでございます。この点につきましては、今回のこの狂乱地価の深い反省のもとで、事実上の与野党一致法案どお聞きしておりますが、土地基本法が制定され、その十七条に「国及び地方公共団体は、」「土地所有及び利用状況地価動向等に関し、調査実施し、資料収集する等必要な措置を講ずるものとする。」と書かれているわけでございます。また、総合土地政策推進要綱におきましても同趣旨のことが書かれているのは、先生方承知のとおりであるところでございます。  こういうように、土地政策のために土地情報整備必要性というのは言うまでもないわけでございまして、土地憲法と言われる土地基本法にもはっきりうたったということは、私は、これからの再度の地価高騰を起こしてはならないということから、非常にいいことであると考えているところでございます。  そして、そういう中で、我が国現状問題点ということが指摘できるわけでございますが、先生方承知のとおり、我が国は明治の近代化以来、統計調査の充実のために我々の先人たちが非常に努力してきたわけでございまして、統計調査がかなり整備された国だと外国からは指摘されている、評価されているわけでございます。しかし、残念ながら、事土地に関するものにつきましては、非常におくれているということが指摘されてきましたし、今回の場合、それが明らかになったということも考えられるわけでございます。  このような土地情報の根本的な不備というものが、今回起こった狂乱地価の原因でもあった土地問題の実態把握や適切な施策が直ちに実行できなかったこと、あるいはまた、施策総合性に欠け、ともすれば対症療法的な施策に追われたこと、さらに、土地政策についての国民合意形成が困難であったというような欠点が出てきたということは、反省しなければならないと考えられるわけでございます。  もっとも、考えてみますと、我が国の場合でも、先ほど申しましたように、統計は、公的統計あるいはまた民間統計も含めますと、非常に多くあるわけでございます。しかし、目的がそれぞれ違ったために、ばらばらであったり、役所の間のいわゆる守秘義務といいましょうか、そういうことにも阻まれてしまいまして、その現実的な効果、総合的な効果、体系的な効果というのが必ずしも期待できなかったということがあるわけでございます。  こういう中で、土地情報整備の代表的なものであります不動産登記簿を考えてみましても、土地所有に関する統計は作成されていないという、ある意味では根本的な欠点があるわけでございまして、さらに、地積、地目が現状と異なる場合が多々ある。よく言われますように、山林の縄延びという現象がこういうことであろうと思いますが、地籍調査成果積極的活用がこの面からも必要であると考えられているわけでございます。そして、日本コンピューターが最も進んでいる、コンピューター文化とも言われる国であるにもかかわらず、この土地情報に関する電算化が進んでいない。これも予算関係もあろうと思いますが、電算化が進んでおらず、また土地情報としての集計・検索システムの構築も現在のところ予定されていないとお聞きしているところでございます。この辺も早急に対応していただきたいという感じがいたすわけでございます。そして、最も土地情報の中でも現状ではベースとなると考えられる、基本となると考えられております固定資産課税台帳でございますが、これは市町村をまたがる名寄せは、御承知のとおり、できないという現状でございます。さらに守秘義務個人情報保護の問題があるということでありまして、この辺が大きなネックとなっているところは、御承知のとおりでございます。この壁を突破しないと、有効なその利用がなかなかできないんじゃないかという感じもいたすところでございます。  そして、ある意味ではもっと基本ともなるべき地籍簿についてでございますが、この地籍簿という我が国土地の最も基本となるものが非常におくれているということでございます。昭和二十六年からスタートしたとお聞きしておりますが、進捗率は非常に低い。現在ですら三五%しか進んでない。とりわけ調査の必要がある非常に地価の高い大都市圏でおくれが目立つわけでございます。こういう点も早急に対応していただかないと、現状のままでは、約百年、一世紀日本地籍がしっかりするために百年かかるともお聞きしておりますので、早急にお願いできたらという気がいたすわけでございます。刑法二百三十五条ノ二の不動産侵奪罪ができた背景、そしてまた、それに対する対応のおくれという問題も、この辺が原点であると法律上からは考えられるわけでございます。  さらに、地価公示の点でございますが、ポイント数は御承知のとおり非常に少ないわけでございます。ことし平成四年、やっと二万五百五十五とお聞きしております。これが韓国では、今現在時点約三十万地点地価公示をやっておるわけでございまして、土地の面積からいきますと、日本と比較してみますと、約百万地点と考えられますので、日本に比べまして五十倍も地価公示をやっている。韓国土地政策が進んでいる一つ背景原点が、こういう点にもあるように感じられるわけでございます。  さらに地価調査でございますが、これは御承知のとおり七月一日でございますが、これも含めて先ほどの地価公示とともに年二回しかないわけでございまして、多くの先進国とか、土地問題に非常に関心のあるところでは、少なくとも年四回ぐらいやっているということから考えますと、できるだけ精細な資料が必要でございますので、このためにも年四回ぐらいお願いしたいと思うわけでございます。これがないと短期的な地価動向把握としては不十分で、どうしても後手後手ということにならざるを得ないという感じがいたすわけでございます。  こういう中で、我が国土地政策については必ずしも先進国ではないということから考えます、と、他国ではどういうような土地情報制度をやっているかということを参考にすべきだと考えるわけでございますが、今回の狂乱地価を含めまして、地価高騰が非常にしやすい狭い国土、高い土地生産性を持っている韓国でございますが、御承知のとおり、資本主義の限界とも考えられる土地公概念法与野党一致法案として制定されたわけでございます。こういう中で、今回この土地公概念とともに、ここまでできた背景には、土地情報がしっかりとされていたということを、我々は認めざるを得ないと思うわけでございます。  それにはいろいろなことが指摘されているわけでありますが、土地台帳電算化所有取引に関する統計の作成というようなことがあるわけでございます。この背景には、国民背番号制あるいは住民登録番号制というもの、さらにまた一歩踏み込んで、検認契約書といいましょうか、登記をする場合には、役所や何かの検認の印がないと登記できないというような形の制度も、今回つくったわけでございます。こういう点で非常に国民コンセンサスが、地価を再び上げてはならないというようなことがあり、そしてその成果が今徐々に出てきているとお聞きするところでございます。  さらに旧西ドイツでございますが、これは先進国の中でも最も土地情報整備されていると学者の間でも指摘されているところでございます。ここでは、土地登記公信力があるため、権利のすべてが登記されているということでございまして、我が国の場合、第三者対抗要件にすぎない、公信力は持っていないということから考えますと、国の背景が違うということも認めざるを得ないわけでありますが、しかし、土地台帳と一体となった地図整備されているということでございます。そして、不動産取引内容把握がしっかりしている。特にこの場合、価格や何かは、グルントブーフといいまして、土地登記簿といいましょうか、そういう中に取引した価格を必ず入れるということでございます。日本の場合でも、登記簿の中の乙欄あたりにはいろいろなことが書かれております。特に金融機関との担保の問題の違約は何%というような、ある意味ではプライバシーによるようなものも書かれておりますが、そのかわりにこんなこともやってもいいんじゃないかという意見も、学者の間ではかなり有力になっているところでございます。  そういうような中で、物件ごと物件編成カードがございますし、また所有者による、人的な編成によって、だれがどのような土地を持っているかということがすべてわかるようなシステムが構築されているわけでございます。これは、精密な地図整備国家行政の根幹であるという認識があるという背景があると聞いているところでございます。  それにまた台湾、もう先生方承知のとおり、かなり積極的におやりになっているところでございます。  またイギリス自治の発祥の地と言われるイギリスでございますが、地方税はこれまでポールタックスが導入されるまでは、御承知のとおり、地方税はただ一つのレート、いわば日本で言う固定資産税的な税でございました。これがため、土地情報整備をしっかりしなければならないという背景もあったわけでありますが、これがフー・ペイ・フー・レシーブという感覚がしっかりできた、地方自治自分たちの財源によるのだという意識も、この辺が醸成されたものであろうと考えているところでございます。  さらに、土地情報整備に当たっての基本的な視点でございますが、これは土地情報を体系的に整備し、常時適切に管理するということが何よりも必要であると考えるわけでございます。そして先ほども申し上げましたように、我が国はかなり役所間においてもそれぞれの目的でいろいろな土地情報をしっかりされているわけでありますが、それがばらばらであるということから考えますと、行政機関相互連携意識強化及び情報相互利用というものが必要であろうと思います。  現状では法務局、例えば登記をいたしますと、それが地方自治体だけに行くわけでございまして、これも必ずしも税務署の方にすぐに行くようなシステムにはなってない、あるいはその他土地情報を必要とするところに生きた登記現状がなかなか、所有権の移転も含めまして、そのシステム化がないわけでございます。これは守秘義務関係もあると思いますが、現行の中でも、行政機関相互がもっと連携したらかなりのものができるんじゃないかという感じもいたしているわけでございます。  そしてまた、一番最もおくれているというのは、国民への適切な情報提供がなかなか構築されていないということであるわけでございます。もっとも、今回の狂乱地価によって国民関心が非常に土地に来たわけでございまして、ある意味では千載一遇のチャンスであるということも考えられるわけでございます。  そして、土地についての公共福祉優先プライバシー保護という問題がどうしても避けられない問題でございまして、先ほどの旧西ドイツあるいはまた韓国あるいは台湾という、いろいろ土地問題で悩んだ結果、特にドイツの場合は十九世紀末に、今から百年ぐらい前に狂乱地価が起きたわけでございまして、こういう深い反省のもとで、プライバシーをある程度犠牲にせざるを得ないというコンセンサスができたわけでございます。  土地個人資産の重要な構成要素であり、個々人の土地保有状況というのは本当にプライバシーに属するものであるわけでございますけれども、しかし一方は、よく言われますように、また土地基本法でも指摘されておりますように、他の一般財と違いまして、かなり公共性の高い財であるわけでございます。こういう趣旨土地基本法第二条で「公共福祉優先させる」としているところでございまして、これはある意味では土地憲法とも言われているところでございますけれども、翻ってみますと、マッカーサー憲法草案、この二十八条に土地の条項があったわけでございますが、これが消えて現行憲法第二十九条の私有財産の尊重というところに入ってきた。このマッカーサー憲法草案では、まさに公共福祉をうたっていたわけでございますけれども、これがこの土地基本法でよみがえってきたと私自身は考えているところでございます。  こういう中で、このプライバシー保護するということを念頭に置きつつ、土地についての公共福祉優先趣旨というものが、土地情報収集整備、その提供等において十分反映されることが、これからの土地政策にとっては非常に重要であるわけでございます。土地基本法では、公共福祉優先させることをうたっておりますけれども、具体的には、公共福祉のためどの程度制約が課されることができるかについては、一般論としてはいろいろな御意見があろうかと思いますが、少なくとも二つの要件を備えているかによって判断されるべきではないかと考えるわけでございます。  まず第一は、その制約目的が、公共福祉のため制約を課する合理的な必要性を有しているかどうかということ、すなわち、合理的な範囲内にあるかどうかという視点でございます。それと第二に、その制約内容が、制約を課する必要性に応じて合理的な範囲内にあるかどうかということでございます。これはいささか抽象的でございますが、こういう大前提のもとに個々のケースを判断していくべきじゃないかと考えるわけでございます。  そして、土地情報総合的整備でございますが、この土地所有利用構造を明らかにする全国的な調査が、今こそ求められているということであろうと思います。そして地価公示地点の増設ということでございまして、これによって、適正な地価形成課税評価適正化ということが期待されるわけでございます。これによって、さらに、地価に対する国民の信頼の向上ということも必要となってくるわけでございますし、また、早期に短期地価動向経済、特に地価の場合は非常に動きますので、タイムラグというのがあることは望ましくないわけでございますから、短期の生きた情報というものを早く収集し、それに早目早目に、政策先手先手とやっていくというためにも、この辺はどうしても必要不可欠な条件であると考えられるわけでございます。  そして、先ほど申しましたように、その土地情報原点でもあると考えられます地籍調査を一層促進していただけたらということでございます。さらに、不動産登記簿電算化の促進ということがどうしても不可欠であろうと思います。完了まで今のペースで考えますと十年以上かかるとお聞きしておりますが、そんな時間はないと考えるわけでございますので、どうかこの予算や何かをおつけいただけたらという感じがするわけでございます。そして、これらに基づいた情報を、正確な生きた情報をその政策に活用していただけたらと考えるわけでございます。  希望を含めまして、簡単でございますが、いただいた時間がちょうど過ぎましたので、これで一応やめさせていただけたらと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 薮仲義彦

    薮仲委員長 ありがとうございました。  次に、塩見参考人にお願いいたします。
  7. 塩見宙

    塩見参考人 日本不動産鑑定協会塩見でございます。  本日は、公的土地評価について私ども意見を述べさせていただく場を設けていただきまして、どうもありがとうございます。何分こういう場はふなれなものでございますので、十分に意を尽くすことができるかどうか自信ございませんが、このたびの意見陳述機会に、私ども不動産鑑定士が日ごろの業務を通じて感じておりますことを、委員の諸先生方に何とか御理解いただければ幸いでございます。  まず最初に、私ども不動産鑑定士及び不動産鑑定評価制度について若干御説明したいと思います。  私ども不動産鑑定士は、不動産鑑定評価に関する法律に基づきまして、土地鑑定委員会が行う資格試験であります不動産鑑定士試験に合格いたしまして、国土庁に不動産鑑定士としての登録を行いまして、初めて不動産鑑定士として活動できるということになっております。  私ども不動産鑑定士の使命は、不動産鑑定評価に関する法律に基づきまして「土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利経済価値を判定し、その結果を」貨幣額をもって表示するということによりまして、国民がそれぞれの関係する土地の適正な評価をできるだけ容易に知ることができるように、日々の業務を通じまして何らかのお手伝いをしていくことであります。  不動産鑑定士の数は、平成三年一月一日現在で四千八百六十二名、不動産鑑定士補が一千二百十二名、計六千七十四名となっております。また不動産鑑定業者は、登録業者としては二千二百四十一業者となっております。ちなみに、平成四年の地価公示に従事した不動産鑑定士は千八百三十五名であります。  私ども社団法人日本不動産鑑定協会は、不動産鑑定士及び不動産鑑定士補の品位の保持及び資質の向上並びに不動産鑑定評価に関する業務進歩改善を図り、そうすることによりまして、不動産鑑定評価制度の発展と、さらには土地等の適正な価格形成に資することを目的として、不動産鑑定評価に関する調査研究資料収集、研修、さらには、国または地方公共団体の委託によりましての地価調査実施等を行っております。平成三年八月末現在の協会の会員は、不動産鑑定士等二千五十六名、個人業者一千三十名を含めて四千五百八名となっております。  協会といたしましても、今後とも、地価公示都道府県地価調査実施を初め、適正な土地評価に幾ばくかでも貢献をしていきたいと存じているところでございます。  それでは、レジュメに書いておりますように、公的土地評価相互の均衡と適正化必要性について述べたいと存じます。  今申し上げましたように、私ども不動産鑑定士は、日常の業務としては、不動産鑑定評価を行うことが大事な仕事でありますが、それだけではなくて、地価公示法に基づく地価公示、それから国土利用計画法に基づく都道府県地価調査評価員として、公的な土地評価実施のお手伝いをしてきたところでございます。  私どもは、地価公示を初めとした公的な鑑定評価を行うに当たりまして、また日常業務として行っております不動産鑑定評価を行うに当たりましては、いろいろな方にお会いしまして取引事例等の参考資料収集したり、あるいは地域の実情についての意見収集を行って、より適正な土地評価が行えるよう日々努めているところでありますが、多くの方々と接触している中で、一般の市民の持っている疑問と申しますか、よく指摘されますのは、相続税の評価ではこうだ、固定資産税の評価ではこうだ、公示価格ではこうだ、それぞれ違うのではないかということでございます。  私どもとしましては、相続税、固定資産税及び地価公示については、それぞれの制度目的が違い、また性格も違いますので、直ちに一元化することは難しいということは理解することができるのであります。  しかしながら、この一元化自体は難しいものがあるといたしましても、やはり公的な土地評価について国民の間に不信感あるいは疑問を生じさせることなく、できるだけわかりやすく相互関係を説明できるようにしていって、国民の税金や土地評価全体についての信頼を確保していくことが必要なことではないかと思うのでございます。  また、このような土地に関連する課税評価の水準というものが、土地の資産としての有利性を助長して、土地を節税の具として利用するために取得するという不要不急の土地取得を助長し、結果として地価の上昇を誘発したということもまた否めない事実ではなかったかと懸念していたところでございます。  以上申しました事情から、相続税評価、固定資産税に係る土地評価については、公示価格との相互の均衡と適正化の実現ということがやはり必要であったと考えております。  政府におかれましても、同様な判断から、昭和六十三年六月閣議決定された総合土地対策要綱においては、これらの公的な土地評価については、相互の均衡と適正化という方向で推進されることとなったと承知しておりまして、私どもといたしましても、土地に関する課税の適正化国民の公平感の醸成、ひいては適正な地価形成に対して大変よいことであると考えております。  この相互の均衡と適正化という方向で推進という考え方は、土地基本法にも承継されたところでありまして、土地基本法第十六条では、「公的土地評価適正化等」として「国は、適正な地価形成及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。」と規定された次第であると承知しております。  また、昨年一月決定されました総合土地政策推進要綱においても、公的土地評価の均衡化、適正化として政府として取り組んでいくと宣言されたと承知しております。  以上の政府としての政策方向は、私どもが先ほど申しました懸念に対して正面からその解決のために取り組まれたものであると高く評価するとともに、同時に、その評価実施に当たっての関係当局の御努力に深く敬意を表するものであります。  次に、地価公示の適切な実施ということについて申し上げたいと存じます。  今後、相続税や固定資産税に係る土地評価地価公示価格を基準として決められるということになるわけでありますが、その基準となる地価公示価格の決定の持つ意義というものは極めて大きくなってまいりまして、単なる従前の指標であるとか、公共用地取得に当たっての基準であるとか、鑑定評価の基準であるとかいうばかりでなく、今まで以上に市民生活に密着し、大きな影響を与えるものになるところであります。  地価公示価格は、先生方既に十分御承知のこととは存じますが、一つ地点について二人以上の鑑定士が鑑定評価を行い、その鑑定評価書を国土庁に置かれた委員会でありますところの土地鑑定委員会が審査調整を行い、価格の判定を行うことによって決定されるものであります。私ども不動産鑑定士は、この鑑定評価を適切に行っていくよう日々、情報収集、現地の確認等々を行っているわけであります。  この公示価格について、よく、公示価格は実勢価格の七割であるとか八割であるとか、私どもからすればいわれのない批判を受けていると思いますが、公示価格は、地域の代表性があり、中庸な利用がなされている土地について、その自由取引での正常価格を判定するものでございまして、その限りにおいては、確かに実際の取引価格とは違っていることは当然であります。実際の取引というのは、多くの場合、売り急ぎとか買い急ぎ等、何らかの特殊な要素があるものでございまして、第三者がその事情について十分知ることができない以上、実際の取引価格だけをもって地価の実勢がどうだというような議論をするのは、土地取引をする者の適正な地価の判断を誤らせるものでありまして、適切な議論とは思えません。委員諸先生もその事情については十分御存じとは存じますが、改めて強調させていただきたいと思う点でございます。  また、最近のように土地取引が冷え込んでまいりまして、そういう冷え込んでいるような状況では、価格の判定が困難ではないかという批判もあるようであります。しかしながら、今回の地価公示について申しますと、このような状況にありましても、国土庁、建設省等の関係方面の御尽力、御協力によりまして、取引事例等の必要十分な情報提供をいただき、平成四年地価公示につきましても、市場の動向を的確に把握した価格調査を行うことができたと考えております。  いずれにしましても、私ども不動産鑑定士としては、この地価公示都道府県地価調査を適切に実施してきたと自負しているものであります。  先ほど申しましたように、土地について極めて重要な公的土地評価の均衡化、適正化実施に移されることとなったわけでございますが、その推進ということについて述べさせていただきたいと思います。  私ども鑑定士としましては、相続税の評価地価税の評価、固定資産税の評価が、先ほど申し上げました不動産鑑定士不動産鑑定評価制度の両肩にかかってきたところでありまして、その責任を十分に果たしていくことが、私どもの使命であると考えております。このうち、国税当局では、夏にかけて、平成四年一月一日の地価公示価格の八割を目途として路線価を決定されると伺っており、先月の地価公示の発表後、いよいよその作業が推進されていくこととなっているようであります。不動産鑑定士としては、できるだけこの評価が適正に行えるよう、最大限の協力をさせていただきたいと考えております。  また、固定資産税に係る土地評価については、平成四年七月一日の地価を基準にいたしまして、その七割を目標に各地方公共団体において名筆の土地評価額を決定し、平成六年の固定資産税の評価がえから適用することとなっているようであります。この固定資産税に係る土地評価につきましては、全国四十万地点近くの標準地について、不動産鑑定評価に関する法律に基づく不動産鑑定士による鑑定評価実施されると伺っております。この鑑定評価実施は、四十万地点でございますから、地点数が非常に多く、しかも各地方公共団体において別個に作業を進められるということで、その適正な実施についていささか危惧するところもあったのでございますが、幸い、関係当局の御配慮で、各都道府県単位で、土地評価協議会として、市町村を含めた連絡体制整備される、そういうことで、私ども鑑定協会の心配を十分にしんしゃくしていただける体制がとられると伺っておりまして、安心してこの鑑定評価に取り組んでいけると考えております。  いずれにいたしましても、この公的土地評価の均衡化、適正化は、私ども不動産鑑定士の行う鑑定評価に一にかかってきたところでありまして、その責任について痛感している次第であります。  以上申し上げましたように、私どもとしましては、この公的土地評価の均衡化、適正化のために十分に働いていきたいところでありますが、最後に一、二点、希望上申しますか御要望を申し上げたいと思います。  まず初めは、何といいましても、これらの公的土地評価の基準となる地価公示地点の増設であります。  地価公示地点は、平成四年公示では一万七千百十五地点平成五年公示では二万五百五十五地点に増設されると承知しております。当面は、この二万五百五十五地点について適正に地点の配置を行っていくことが必要であると考えておりまして、国土庁に対してその適正な配置を切に希望するものでありますが、できれば、この地点数については、将来的には引き続き増設していかれるよう御尽力をお願いする次第であります。  次に、相続税、地価税の路線価について御要望申し上げます。  この路線価は八月ごろ公表されることになっておりますが、これにつきましては、私どもとしても最大限の協力をさせていただく所存であり、鑑定評価制度を御活用いただくとともに、できるだけ早く公表され、納税者が十分に自分の土地価格評価を検討し、適正な納税が行えるよう時間的な余裕をつくっていただきたいと考えております。  固定資産税に係る土地評価については、何分まだ地方公共団体の取り組みが始まったばかりであります。その中では、不動産鑑定士の数が十分にない地方も多く、地方公共団体の皆様に対して御迷惑をかけることが生ずるかとも思います。私どもとしましては、この公的土地評価の均衡化、適正化に対して精いっぱいの努力をしてまいる所存ではありますが、各地でいろいろな問題が生じてくる際には、より適正に鑑定評価が行えるよう、できるだけ国土庁初め鑑定協会等と御連絡、御協議いただければ幸いであります。  いろいろ申し上げましたが、このような公的土地評価の重要性というものが今後ますます大きくなっていくことを十分認識し、引き続き、国民から信頼される評価の推進に向けて、私ども不動産鑑定士としての使命を全うすべく最善を尽くして、この公的土地評価に取り組んでいく所存であり、委員諸先生におかれましても、その点について御理解賜ることができれば幸いであります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  8. 薮仲義彦

    薮仲委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 薮仲義彦

    薮仲委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。狩野勝君。
  10. 狩野勝

    ○狩野委員 自由民主党の狩野勝でございますが、本日は大変お忙しい中を、田中啓一先生、塩見宙先生におかれましてはお越しをいただきまして、ただいま土地対策の中でも大変貴重な公的土地評価の今後のあり方あるいは土地情報整備について承りましたことを、心から感謝申し上げる次第でございます。  今土地価格も下落傾向にあるとはいっておりますけれども土地情報、また、これをいかに生かすか、あるいはまた、今ちょっとお話もありましたように、土地評価につきましても、一物四価とか、いろいろあるわけでございますけれども、こういう中で土地対策は本当にこれからの大きな、まだ大きな課題だと思いますし、今伺いましても、諸外国から見ますと、日本は大変おくれているなと感じたわけでございます。  そういう中で、特に土地情報というものの必要性、あるいはまた、今日本はいかに不備であるかということを田中先生からもお伺いしたわけでございますけれども、第一点、この土地情報日本整備から大変残念ながら、政府、国におきましても、リアルタイムな情報収集に大変欠けているということ、先ほども先生から御指摘をちょうだいしたわけでございますが、そういう観点から、また公表されるデータも、そういう意味では、日本は大変遅いということがこれも大変問題かとも思うわけでございます。  そういう意味で、民間団体、日本は現時点においては、民間団体との交流をもっと密にして、例えば私も余り詳しく知りませんけれども、財団法人日本不動産研究所とか不動産経済研究所とか、大手各社によるいろいろの情報交流の研究機関等もあるようでございますけれども、そういうところとも情報交換する中で、これらの民間の情報等をもっと生かす必要があるのではないか、そういう点では、そういう事例等も生かし切っていないのではないかということも感ずるわけでございますけれども田中先生の御所見をまずお伺いいたします。
  11. 田中啓一

    田中参考人 ただいま狩野先生の御指摘に私は基本的には全く賛成といいますか、大いなる敬意を表して賛意を表したいと考えております。  御指摘のように、我が国は民間部門のウエートの大きい政治経済体制にあるわけでございますけれども、そういう中で、今御指摘のありましたようないろいろの民間の研究所というのも、かなりの歴史を持ってきているわけでございます。確かに欧米と比べますとまだまだおくれるところも多いわけでございますが、先ほど塩見参考人の御報告のありましたようないわゆる鑑定士制度も、我が国の場合大体三十年ぐらいの歴史であろうと思いますが、欧米では、前回の大恐慌、一九二九年十月二十四日以降の、土地がいわゆる暴落いたしまして、それで、地価とは一体何ぞやというところを研究するために、いろいろな、日本でいう鑑定士、向こうではアプレーザーと申しましょうか、そういう制度ができたわけでありますから、我が国と彼我の差は約三十年以上あることは現実であろうと思います。しかし日本も、そういう鑑定士制度自体でも三十年の歴史はありますし、また、御指摘の民間の研究機関もかなりの歴史を持っておりますし、かなり公表されておりますので、公的なこれまでの固定資産の評価あるいは地価公示評価地価調査評価とともにこれらを整合性を持ってやるということになると、かなりの生きた資料が出てくるんじゃないかと考えております。  ちなみに、遅まきながら、我が国はこれだけ不動産問題が、あるいは土地問題が大きな問題となっておりながら、大学の間でも、なかなか大学でそういう研究機関を設置しなかったということは、学会としても反省しているところでございまして、大体七年ほど前、日本でもそういうような不動産を研究する学会ができ、あるいはまた、大学でも初めて不動産学部がことしからでき上がることになりました。欧米では、特にアメリカでは、約三分の一、三千ぐらいある大学のうち千二十三ぐらい、不動産教育を大学でしているわけでございまして、こういう点から、日本も遅まきながら出てきたということは、今スタートを始めたということで、どうか御評価をいただけたらと思っております。  また、建設あるいは国土の御尽力によって、土地総合研究所ということの設立機関もできたとお聞きしておりますので、これと相まって、これまでの民間あるいはまた公的なこういうような地価公示あるいはまた地価調査ではぐくまれてきたストックのノウハウを、どう活用していくかということも、これからの課題であると思っております。
  12. 狩野勝

    ○狩野委員 時間がありますと、田中参考人の、じっくりとそれぞれを分析して対処すれば、日本も本当に整備されるなということを感ずるわけでございますが、大変、聞き漏らした点が多々あるわけですけれども、一点だけ先に、プライバシー等の関係も大変重要だなとも思うわけでございます。  実際に今お話がありましたように、土地情報収集したり整備したりする段階、あるいはまた、整備された土地情報を必要に応じて国民提供することも必要になってまいりますが、これらの段階で、プライバシーとの関係でございますが、今お話しのように、土地基本法にも明らかとなっております「公共福祉優先させるもの」とされているところでございますけれども、この両者の関係、先生から大分今詳しくお話がございましたけれども、何か適切な、具体的な処方せんがございましたら、もう少し突っ込んで聞かせてください。
  13. 田中啓一

    田中参考人 御指摘のとおりであろうと思いますが、プライバシー等、土地情報の場合に限らないわけでございますが、こういうような問題に関しましては非常に相対立する問題になってくるかと思います。特に我が国の場合、土地というものが非常に重要な資産、国民個人個人に重要な資産であるのは、先生方承知のとおりでございます。これがオープン化されるということにつきましては、非常な抵抗があろうと思いますが、やはり土地という一つ公共性ということから考えますと、すぐにはなかなか踏み込めないと思いますが、少しずつコンセンサスを得ながら、公共福祉優先するんだ、その限定内でやはり個人のプライバシーの、エゴでないかどうかということを含めながら、徐々にコンセンサスを得ていくということが必要であろうと思います。一度に全部を期待することはできませんが、できることからやっていくということであろうと思います。  そういう点では、先ほど申し上げましたような、旧ドイツからやっております、ああいうような、土地については必ず登記するときに価格を書かなければならない、登記しなければならないということも、一つの、やはり先進国であるドイツが非常に地価が高騰した、その後の反省のもとででき上がったことでございますので、そうしていきますと、生きた情報というものが的確にわかるわけでございます。  こういう点も含めまして、あるいはまた韓国でやっておりますような先ほど申し上げた例、あるいは台湾の自己申告制度中心としたそういう制度とか、いろいろな形で、プライバシー公共福祉の整合性といいましょうか、その対立点をいかにして解決していくかということで、土地問題で苦しんでいる国は、すべてそれを一歩一歩解決してきたわけでございますので、我が国もそういう努力が今こそ必要じゃないかと考えております。
  14. 狩野勝

    ○狩野委員 塩見参考人にお伺いをいたしたいと思いますけれども、今お話で、固定資産税評価については全国で約四十万ぐらいの標準地で鑑定評価実施するというようなお話もあったわけでございますが、このように地価公示等に加え、今後課税評価につきましても不動産鑑定士等がかかわるようになると、現状不動産鑑定士の人数では対応できないのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。それから、今、全国の鑑定士でも大変アンバランスがあるように聞いておるわけでございますけれども、そんな点も含めてちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  15. 塩見宙

    塩見参考人 固定資産税が今度全国で四十万地点の標準地で鑑定評価実施するということになって、現在の地価公示に加えまして今後相続税の課税評価につきましても鑑定士がかかわるということで、そうなれば、公的土地評価が非常にクローズアップされてポイント数が一挙にふえてまいりますので、先生のお尋ねは、鑑定士の人数で対応できるかどうかということがあったと思うのです。  現在、地価公示では一応、地価公示に従事する各鑑定士が七十歳定年制をしいております。そうなりますと、七十歳以上でも結構お元気な方々が相当ございますので、少なくとも固定資産税評価に関しましては定年制をしかずに、七十歳以上であってもお元気な方にはできるだけ対応していただけるというように、自治省に対してもお願いしておるところでございます。  しかし、先ほども鑑定士の従事している数を申し上げたとおりでございますが、根本的に鑑定士の数が足らないということは否めない事実でございまして、かといって、では鑑定士の数をふやして、もう少し楽な試験でというわけにもまいらないと思うのです、相当難しい試験なので。ですから、現在、鑑定業に対する将来ビジョンを考える委員会、これは国土庁の肝いりで開かせていただいているわけでございますけれども、現在そこで検討しているのでございますけれども、将来展望に立って、できれば鑑定士あるいは鑑定士補の下に土地評価士あるいは価格査定士等の、試験制度をもう少し易しくしたライセンスを設けまして、私どもの傘下にこれを導入いたしまして公的土地評価に対応していけばどうかなということも、ビジョン委員会等では検討されているところでございます。
  16. 狩野勝

    ○狩野委員 もう一点、先ほど要望の中で、地価公示地点の増設をぜひとも希望したいというようなお話がございましたが、もうお話があったかどうか、地価公示地点ほどのくらい必要とお考えでしょうか。
  17. 塩見宙

    塩見参考人 先ほども申し上げましたように、平成四年で一万七千百十五地点平成五年では二万五百五十五地点を増設されると聞いておるわけでございますが、固定資産税の約四十万地点と比べても、格段にこれは少ないわけでございまして、格段というよりも圧倒的に少ない。だから、先生が言われましたように、地価公示がどのくらい必要かと言われましても、私、どのぐらいになればこれで十分カバーできるのだとはちょっと言い切れませんが、圧倒的に少ないということを申し上げておきたいと思います。
  18. 狩野勝

    ○狩野委員 大変ありがとうございました。
  19. 薮仲義彦

    薮仲委員長 次に、貴志八郎君。
  20. 貴志八郎

    ○貴志委員 両先生には大変貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。  まず、田中先生にお尋ねをいたしたいのでございますが、現在我が国における情報量がいかにも少ないということは、先生が御指摘になったとおりだと思いますし、また、先生の方からいろいろな提言をされたことも、大変貴重な御提言であり、いずれも早急に取り組まなければならないというふうに私は受け取らせていただいたわけでございますが、中で私が思いますのに、情報公開という点について、今日のいろいろな、先生がおっしゃるような情報を積み上げていく、それまで今日今ある情報を、例えば国土庁なら国土庁がそれを集約いたしまして、それを公開する、そういう情報の公開の一つの考え方が、現時点においても、いろいろな意味国民の側からいって大変役立つことになるのではないかと思うのでございますが、情報公開についてどのようなお考えをお持ちでございましょうか。
  21. 田中啓一

    田中参考人 ただいま貴志先生の御指摘のとおりでございまして、我が国の場合、情報が少ないと同時に、その少ない中でも今既存の名お役所でやっておられますデータ、こういうものを集積してやればかなりの効果が出てくると私は思っております。その点では、中心となるのが国土庁であろうと思います。  そういうところで、一応現行守秘義務とかあるいはまたプライバシーの問題もあろうと思いますが、その限界をある程度超えるところと、もう一つ超えない範囲内でどうできるのかということで、整合性のプラスといいましょうか、総合性のプラスをぜひこういう先生方の場で御検討いただけたらと思っておりますし、その場合一つずつ踏み込んでいって国民の合意を得ていくという御努力が必要であろうと思いますし、また、国民もこれだけ関心があるときでございますので、かなりの賛意が得られるのじゃないかと思っております。
  22. 貴志八郎

    ○貴志委員 そこで、今度は塩見先生にお尋ねを申し上げるわけですが、一物一価という言葉がございまして、一つの物にたくさん値札がついておれば、買う方、買うというか、見る方からいいまして、一体どこを信用したらいいのだということになるのじゃないかと思うのです。  両先生からもお話がございましたが、例えば一つ土地について、公示価格があり、不動産の相続路線価の問題が大蔵省の方であり、それから固定資産の問題では自治省の関係であり、そのほか、国土法の届け出の監視価格だとか、もうとにかく一つ土地に対して幾つも値札がついているという現象が、今日国民を随分惑わしている。例えば、路線価の場合だったら、それは八割に見たらいいのだとか、いや、固定資産なら七割で見たらいいのだ、これは合っているかどうか知りませんが、そういうふうな見方をされておる。本来一つであるべき価格が、幾つもの省庁によって監督されたり指導されたり、やっていることが、今日の地価問題に大変な混乱を生じている。かつ、先ほど申し上げたように、情報の公開が守秘義務だとかあるいはプライバシーの問題だということで抑制されると、せっかくある情報一つも生かしてない、横で生かさず、そして国民の側にも極めて不透明だというふうなことは、私は大変問題だと思うのです。  余り時間がございませんので、何もかも言いますと、公示価格をこれからは一つの基準にしていくのだというふうな意味のお話をいただきましたけれども、この地価公示そのものが、言われるようにポイント数が少なければ少ないほど、例えば固定資産税の評価額を決めていく場合に不平等になっていく、そういうふうなことがあると思うので、一物一価に対する考え方、それから今の固定資産税の評価など、何か固定資産評価員とかいうのが各市町村にあったりいたしまして、それが一体鑑定士との関係がどうなるのか、極めてそこら辺の交通整理がうまくいっていない。要するに、各省庁間の壁が土地政策に大きな問題を残しているのではないかというふうなことを考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
  23. 塩見宙

    塩見参考人 確かに、先生御指摘の点もございました。そして、国民は一物三価であるとか四価であるとかということ、国会の先生方でも、今も申されましたように、一物三価、四価ということも言われますが、従前私としましては、これは一物三価ではない、地価公示こそが正常価格でございまして、これが適正な値段である。ほかの公的土地評価、今度ようやく手法が一本化されたのですけれども地価税の、相続税の路線価であるとか固定資産税の評価は、これは鑑定評価ではございません。従前算定評価であったわけでございます。だから、同じ俎上にのせられなかった。  だから、私どもは、一物三価なんということはあり得ない、一つの値段は私どものやる正常価格であるということを言っていたのですが、今回そういうことがいろいろ一つの弊害を起こした原因でもございまして、先ほどもちょっと述べましたように、課税上の算定評価というものが余りにも低い要素がございまして、それで国民土地を購入して、不要不急の土地を購入して、そしてそれが地価高騰一つの導火線になったということは否めない事実でございまして、今回そういうような懸念を政府自体としても打破するために、均衡化、適正化、バランスをやっと、一元化ではございませんけれども、公的評価整備ということがなされたわけでございまして、したがって固定資産税もいよいよ鑑定士出動の場ということになるわけでございます。地価税についても、鑑定評価の導入を特にお願いしているところでございます。  ならば、先生がおっしゃるように、じゃ、一元化すればいいじゃないかという論もございますが、しかし先ほど私が話の中で申しましたように、やはり相続税評価は相続税評価としての目的がございますし、固定資産税評価はそれなりの目的がございますし、公示価格は公示価格という目的がございます。それぞれ根拠法令が違います。したがいまして、一挙にこれを統合一元化ということについては、私どもそういうことは、プロでありますから、これはなかなか難しいということはよくわかる。よくわかるわけでございますが、ならば、難しいけれども、何とか均衡化、適正化を図ろうということ、それぞれの目的に応じて根拠法に基づいての均衡化、適正化を図って、そして国民の皆様方の信頼を得るような評価になっていく。今後は、それが進展してまいりますと、一物三価、四価ということは言われないようになるのではなかろうかというふうに思っております。
  24. 貴志八郎

    ○貴志委員 時間も余りございませんので、先ほど田中先生の方からは、韓国並みで日本の公示価格のポイントを置き直してみると、あれは何万カ所、十万カ所ですか、百万カ所ですか……(田中参考人「三十万カ所」と呼ぶ)三十万カ所でございますか、という数字をお示しになられて、なるほどというふうに思ったのでござ、いますが、我が国の場合には、ことし若干ふやして五万カ所でございますか、二万五千か、とにかく若干ふやすということでございますけれども、とにもかくにも三十万カ所にははるかに及ばないような数字で、果たして公示価格としての十分な役割と任務を果たすことができるのかということについて、私も田中先生同様に疑問を持っておるわけでございます。  そこで、今の我が国においてそのポイント、要するにサンプルはどの程度が、韓国までいかずとも、どの程度のものをサンプルとして、それを公示価格に入れれば、妥当な、日本国内のさまざまな箇所における土地価格というものがつかめるか。私は、それが基本になって、それを参考にしながら、監視価格とか将来的には固定資産税の価格などとか、そういうようなものは全部連動していくと思うがゆえに、そのポイントをいかにふやすかというところにこれからの土地政策の大きな、やはり基本的な情報という意味では大変大事だと思いますので、その辺のところをひとつ田中先生の方から御意見を賜って、参考にさしていただきたいと思うのです。
  25. 田中啓一

    田中参考人 私、先ほど韓国の事例を申し上げました。韓国は三十万、現在でも三十万地点をやっております。日本土地所有者の数あるいは人口の数あるいは地籍の数から考えますと、日本との比率でいきますと、日本は少なくとも百万やらないと、その三十万に対して四倍近い百万ぐらいやらないとだめじゃないかと思っております。それで、百万地点をやれば、韓国があれだけやったぐらいしっかりした制度ができ上がると思います。しかし、それはいろいろ、今二万、あるいは地価調査を入れましてもせいぜい五万弱でございますので、これはなかなか一度には到底、予算関係もあろうと思いますが、難しいと思いますが、少なくともある程度統計調査、いわゆる政策基本となる、そのベースとなる最も重要な情報の的確性、正確性からいきますと、少なくとも最低限度でも十万地点と申しましょうか、今の五倍ぐらいの地点は必要ではないかと思っております。  特にまた、大都市や何かに集中問題が起きておりますから、大都市のところではそれがかなりのウエートを持ってくるというようなお考えでやるのがいいのではないかと思っております。  また、ちなみに、今固定資産税評価額を入れた対象は一億七千万筆あるとお聞きしておりますので、そういうようなことも、精査を集めていくということも、そして参考にしていくということも必要であろうと思いますが、何分にも、よく世間で言われますように一物四価の中で、現実あるかどうかさることながら、固定資産の評価がかなりばらつきがございますので、基本的には、ニューヨークの最高裁、アメリカが一九七三年に、評価額とは時価であるという考え方を打ち出して、税率自体は自治体の行財政サービスに応じて対応すべきだという最高裁判決が出ておりまして、これはアングロサクソン系の大体伝統的な考え方でございます。  こういうふうに、評価額はある程度時価に近い、すなわち公示地価に収れんするんだというのを、韓国も、日本で言われるような一物四価の問題がずっとありまして、それが公示地価に収れんしてきたわけでございますので、それが、公示地価と時価との関係をもう一回根本的に議論する必要があって、評価額は時価であるということでやれば、税率はそれぞれ路線価とかあるいは固定資産税評価額で税率を違えていくということも、一つの現実面からの対応の一考察の考え方であるというような感じがいたしております。  ありがとうございました。
  26. 貴志八郎

    ○貴志委員 ありがとうございました。終わります。
  27. 薮仲義彦

    薮仲委員長 次に、平田米男君。
  28. 平田米男

    ○平田(米)委員 両先生からは、大変参考になる御意見を賜りまして、ありがとうございます。  時間が余りありませんので、私の方から何点がまとめて御質問をさしていただきまして、それでまとめてお答えをいただければというふうに思います。  まず、塩見先生の方からお願いをしたい点、二点ございますが、先ほども地価公示地点数の話もございました。田中先生の方からは、理想は百万、だけれども、少なくとも十万というお話がございましたが、地価公示というものはこれから大変重要になるという話をいただいたわけでございますが、もう少し具体的に、今後地価公示というものをどのように機能さしていくのか、また、利用さしていくのか、そういうものと関連づけて地点数というものをある程度推測できるならば、お話をいただきたい、このように思うのです。  それからもう一つ、固定資産税の評価額が、これは公開されますと、もうほとんどの土地価格が一応の目安というものがわかるのじゃないかというふうに思うわけであります。相続税評価額というのもありますが、路線価でございますので一つ一つ土地に値段はついておりませんが、固定資産税評価額というのはすべての土地についておるわけでございまして、それで、これが公示価格の七割だというふうに考えるならば、それを〇・七で割れば一応公示価格が出てくるという計算にもなるわけでございます。そう単純にはいかないのかもしれませんが、そうしたときに、固定資産税の評価額を守秘義務という壁によって公開しない、こういう考え方が今あるわけでございますけれども、この考え方についてどのような御見識をお持ちなのか、お聞かせをいただければと思います。この点につきましては、田中先生からもお伺いをさしていただきたいと思うのです。  あと、田中先生からは四点をお伺いしたいと思うのです。  まず、今土地情報収集すべきだというお考え、私も大賛成でございまして、先生が土地情報整備専門検討委員会の座長をしていただきまして大変な御尽力していただいておるわけでございますが、この土地情報を集めるという点は大賛成でございますけれども、そこの中で、今言われておりますのは、地方分権ということが強く言われておるわけであります。情報が中央に全部集まってしまって、地方の人たちがそれをきちっと利用できないということであっては、やはり問題ではないかなというふうに思うわけでありまして、本来都市計画とかあるいは土地利用というのは、地方が先頭に立って主要な権限を握ってやるべきではないかという考え方を私は持つわけでございますが、土地情報における地方分権の視点というものをどのようにお考えなのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。  それから、今の時点で土地情報収集というのは極めて不十分だという御認識をいただいたわけでございますが、これまでほとんど土地情報収集ということに対して、国もあるいは地方公共団体も手を尽くしてこなかったということが言えるわけでございます。そのような結果をもたらしてしまった社会的理由というものがあるのかどうか、あるいは国民意識における理由、国民意識上の理由そういうものがもしあるとするならば、御見識、御見解をお伺いしたいと思います。  それから、土地が動くことによっていろいろな情報が生まれるわけでございますが、その情報収集するには、土地登記のところでしっかりとらえれば、一番簡便で確実だというふうに思うわけであります。しかし、日本土地登記は対抗要件であって効力要件ではないというふうに言われておるわけでありますが、これをドイツのように効力要件にするとしたならば、いかなる問題点があるのか。これは大変大きな問題かとは思いますが、若干でもお教えをいただければと思います。  それから最後に、土地情報を今後集めていくに当たって、あるいはまた先ほどの地方分権という観点から、あるいはプライバシーを守るという観点からも、いろいろな考えなければならない問題点が多いかと思いますが、その土地情報を集めるための根拠法、土地情報収集のための根拠法というものを今後つくる必要があるのかどうか、つくるとするならば、どういう内容が留意されるべきか。よろしくお願いいたします。
  29. 塩見宙

    塩見参考人 それでは、私に関しての先生の御質問は二つあったと思うのです。  一つは、公示地点数をどのぐらいふやせばいいのかということでございましょうけれども、先ほども私は申し上げましたように、私の口からどのぐらいということが、今しっかりと把握できません。とにかく圧倒的に少ないということでございますが、要は、その圧倒的に少ない機能をどのように生かして、そしてこれから他の公的評価との関連性を持たせながら均衡化、適正化を図っていくということに一につながるわけでございます。  私どもは幸い、公示価格のほかに、それをフォローする、補完する意味におきましてといいますか、国土利用計画法で七月一日現在の地価調査というのがございます。それを合わせても極めて少ない数字でございますけれども、現在、私ども協会の方で公的土地評価特別委員会というものを設けまして、公的評価に対応するにはどうすればいいかということに今真剣に取り組ませておるわけでございますが、現在、地価公示地価調査は分科会というものがありまして、その分科会でバランスを検討しながら徹底的に上へ上げていくという形にしておるわけでございますが、固定資産税の市町村段階あるいは都道府県段階、一応都道府県でも地価調査協議会をつくっていただいて、その下にまた市町村の分科会形式をやっていただくということにはなっておりますけれども、現段階においては、やはり課税主体がそれぞれ地方自治体でございますから、地方自治体が一応こういう鑑定士に従前からお願いしておったのでというようなことになって、なかなか私ども地価公示地価調査をやっております分科会と直ちにストレートにドッキングできないといううらみはございます。  しかし、それはまだ始まった当座でございまして、いささかぎくしゃくはしますけれども自治省と寄り寄り協議をいたしまして、将来的にはできるだけ私ども地価公示地価調査の分科会にドッキングさせて、地価公示地価調査をやっている鑑定士が、固定資産税の標準地の鑑定評価にも携わっていく、それから国税庁の路線価にも携わっていくということにしておけば、しっかりと目が行き届くわけでございまして、それこそ均衡化、適正化がしっかり図られるということになりますので、そういうことをいろいろ考えて、ポイント数が与えられており、予算措置もそれぞれの省庁で講じていただくわけでございますが、それをうまく利用しながら、国民の期待にこたえるようなバランスのある適正な評価に努めたいなというように考えておるところでございます。  したがって、公示地点数がふえれば全部カバーできるというわけにはまいりません。何度も言いますけれども、統合一元化ということは、大変それぞれの根拠法令が違いますし、また性格も違いますので、これは何とかそういう意味でのバランスをとって、全国的に分科会形式でやりたいなということを考えておるわけでございます。  それから、固定資産税の評価が七割になっている。そうすると、〇・七で割ればもう四十万ポイントもあるのだから相当のメッシュである、だからほかの鑑定評価はもう一々やらなくてもすぐわかるじゃないかというようなことでございますけれども、まず固定資産税は三年に一回でございますから……(平田(米)委員「いや、そういう話じゃなくて、守秘義務についてのお考えを伺ったのです。一般に公開をすればみんながわかるのじゃないか」と呼ぶ)はい、それはもう現在でも既に固定資産税で公表されているところがございますし、これが四十万地点標準地が公表されたとしても、守秘義務には……(平田(米)委員「そんな話じゃなくて、すべての土地がわかるのじゃないか」と呼ぶ)すべての土地ですか。  すべての土地がわかると、まあそれは四十万ポイント、先ほども田中参考人も申されましたように、全国で約一億六千から一億七千ポイントありますから、四十万ポイントといったら、それをカバーできるのは四百分の一ですね。ですから、それを見て直ちにわかってしまうというわけにはいかないのじゃございませんでしょうか。そして、年度が三年に一回でございますから、そういう意味で、仮に四十万地点が公表されたとしても、すべての土地が全部わかってしまうというわけにはいかないと思います。  よろしゅうございますか。ちょっと先生の御質問に対して的確なあれにはならないかと思いますけれども……。ありがとうございました。
  30. 田中啓一

    田中参考人 いろいろな御指摘、ありがとうございました。  まず、先生から御指摘いただきました第一点でございますが、固定資産税評価がこれから平成六年をめどに公示地価の八割ぐらいに持っていくということでございますが、確かに現状では、三千三百近い日本の各自治体がほとんど評価が、実勢等ばらばらだという批判もあるわけでございまして、これが一元化して八掛けぐらいに持っていくということは、それなりに評価できるのではないかと考えております。この際、当然、特に今まで評価額が非常に低かった、すなわち地価高騰が激しかった大都市ほど評価額が低かったわけでございますが、この点では非常に大きな問題となってくるわけでございまして、これが守秘義務との関係で大きな摩擦点といいましょうか、問題点がクローズアップされてくると思います。  この際私は、既得権といいましょうか、これまでの既存のものをすべて公開するといいますと守秘義務の問題が起きてまいりますので、新しく取引されたところは、それに限って徐々に徐々にやっていくという、そういう一つの考え方でもできるのじゃないかなというようなことで、国民の皆様方のプライバシーをある程度侵害といってはあれですけれども、踏み込みながらも、それがいわゆる受忍の義務のあるというところから徐々にやっていくということであろうと思います。ただ、取引が新しく起きたときには、それは公開の、いわゆる守秘義務を必ずしも守らなくてもいいというようなことも必要じゃないかと思っております。  二番目の土地情報の問題の地方分権の視点ほどうかということで、基本的には、私全く先生の御意見に賛成でございます。都市計画とか、御指摘のような土地利用というのは、本来地方の方が住民との関係で密接でございますので、やはり中央官庁が大きな枠を決めながら地方の自由度といいましょうか、きめ細かい政策のためにはそういうことが必要であると思いますし、都市計画と一体化された土地情報ということもどうしても地方自治体でないと考えられませんので、住民の意向とか何かを考えていく、吸収していく、こういう点では、大賛成でございます。  やはりイギリスや何かは自治体が非常にやっておりまして、大学や何かが教室を提供してこういうようなことを住民とともに、あるいは役所とともに、土地が将来どういうような方向に動くべきなのか、あるいは都市をどういうようにつくっていくのかというようなことを議論しておりますので、そういう点では私もそういう方向を見習うべきだと考えております。もっとも、この点になりますと、財源の問題、配分から全部、地方分権と中央集権との大きな視点の問題も考えざるを得ないということも考えられるわけでございます。  三番目の御指摘でございますが、プライバシー、確かに我が国の場合、土地をだれがどのように持っているかということを、私の記憶では明治三十四年に初めて日本の資産形成というのがある新聞社の調査によりまして出ました。今、納税者番付とかいろいろな形で五月に発表されるわけでございますが、明治のこのとき、今から百年ぐらい前から、既に土地持ちが日本の大金持ちだということを指摘されておりまして、当時から土地成金という言葉が出たわけでございます。そしてそういうときに、財産を調べるのは非常に難しい、難しいけれども、苦労して調べたのだというようなことが行われておりまして、こういうことからいきましても、当時から既に公信力という、欧米ではほとんどの国が、先進国では公信力を持たせよう、またそういう努力をしているわけでありますが、先生御指摘のように、我が国の場合は第三者対抗要件にすぎないということでございますから、どうしても部分的とはいえ、中間省略登記現象が起きているということもあろうと思います。  こういう点では、正確な情報を的確にやるというのが公信力を持たせるようなシステムを再構築する、いろいろな国民の抵抗もあろうと思いますが、しかし、こういう方向にぜひ一歩踏み出すようなことをしていただけたらと思っているところで、風家百年のためには必要不可欠であると考えられるわけであります。  四番目の御指摘でございますが、土地情報根拠法を一元化したらどうかというお考えには、全くの賛成でございます。どうかそういうふうに御努力をいただけたら大変ありがたいと思いますが、そういうとき、官庁間の、先ほど申し上げましたようないわゆる整合性、情報の統一化ということも含めていただけたらと思いますし、特に土地情報先進国と言われる国々はほとんど土地基本台帳的なものをつくっておりますので、将来は日本もこういうのに向けて一元化ということで御努力をいただけることが、我々の国民、将来の子孫に対する一つの義務でもあるという感じをいたしております。  ありがとうございました。
  31. 平田米男

    ○平田(米)委員 どうもありがとうございました。
  32. 薮仲義彦

    薮仲委員長 次に、佐藤祐弘君。
  33. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 先生、どうも御苦労さまでございます。  側承知のとおりで、大変な地価の狂乱ということから最近少し下がっているというような報道もありましたけれども、なおかつ、その前からいいますと二倍三倍というような状況でありまして、勤労者がマイホームをなかなか持てないとか、賃貸のアパートとかマンションも本当に大変な額ですね。そういうことから、この土地特でも、こういう状況をいかに抑制していくか、地価を下げていくか、正常に戻していくかということで議論もやってきておりますし、きょうのこの委員会も、そういう趣旨参考人先生方から御意見をお聞きするということだったというふうに私は承知をしております。  ですから、まず、その基本といいますか、そういうことでお聞きしたいのですが、地価の高騰などとの関係で、公的な地価評価あるいは情報はいかにあるべきかといいますか、そういう問題について、両先生から最初に御意見をお伺いしたいと思います。
  34. 田中啓一

    田中参考人 大変難しい御質問をいただいたわけですが、私はやはり、国民に正しい情報ということは、今申し上げましたように、実勢に近いかどうか、あるべき地価なのか、現状地価なのかということ、容認する地価なのかという御議論もあろうと思います。そういうところで考えてみますと、公的評価というのは、これまでの場合は取引事例比較法というのが重点に置かれてきたということがよく言われまして、追認だというようなことも言われてきておるわけですが、最近では、鑑定の重点も収益価格にだんだん収れんしているということをお聞きしておりますし、そういう点では、私は非常にうれしいことであると思っております。それはバブル的ないわゆる国民の実体経済と乖離した部分を一応否定するということでございますので、そういう公示価格をぜひ今後も続けていただけたらという希望がございます。  情報でございますが、これについては、一応市場経済の中で行われた取引が、高いか低いかは別問題でございまして、やはりそれが幾らで行われるか、これが高過ぎるということで国民の批判があってまた下げるというようなことが次に起こるべきであって、情報を操作するというのはちょっといかがかな、生きたものとしてはそのまま出るべきではないかと私は思っております。
  35. 塩見宙

    塩見参考人 お答えさしていただきます。  公的な土地評価地価の抑制にうまくつながっていくかということでございますが、一般の実勢価格というものは、先ほども少し申しましたように、私どものやります鑑定評価とは全然異質のものでございまして、私ども鑑定評価といいますのは、適正な地価、しかもそれが、代表性の原則、それから中庸性の原則、さらには安定性の原則、それから確定性の原則に基づいて、この地域ではこういうのが正しい値段ですよということを公表するわけでございまして、一般の実勢価格というのは、取引当時者の、場合によっては売り急ぎもあるでしょうし、買い進みもあります、それから取引のいろいろな事情があります、そんなものをすべて排除した価格でございまして、それをできるだけ——そもそも公示価格一つの目標は、取引の指標にしてくださいということをうたっているのです、指標にしてくださいと。  にもかかわらず、そういう指標にせずに、バブル経済のときは、そんなものと横向いてどんどん土地転がし等で言われておった。これはすべてにいろいろ問題はあったと思うのです。今さらなぜ地価が高騰した原因を云々ということにはならないと思いますけれども、もう先生方よくよくその原因は御承知のことと思います。  さて、これからの公示価格なりが本当の意味の指標となり得るか。これは、国土利用計画法で、非常に広かった枠が、監視区域という制度によりまして、今ほとんどの大都市では百平方メートル以上の売買は全部届け出、あるいはマンション等は勧告制度になっております。そうすると、百平米といいますと三十坪でございますから、もうそれ以上の売買をするのは全部知事さんないし政令指定都市の市長さんに届け出をせにゃいかぬ。そのときに公示価格というものを、あるいは地価調査価格というものを横目でにらみながら行政当局に、これはだめだ、この値段ではだめだということを行政の面から十分牽制していただきますから、したがって、私ども価格がこれからますますそういう意味での指標となり得ると判断しております。だから、監視区域の届け出の網の目が現在のように百平米である以上、そういう意味では。二度と高騰は起きないんじゃないかと思っているわけでございます。
  36. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 地価の狂乱にはいろいろな要因があって、その議論もありましたが、田中先生も「都市空間整備論」の中で触れておられて、「取引事例比較法を重視し、原価法や収益還元法を軽視すると、地価上昇を公示価格が追認することになりかねない」「公示価格には、実勢価格を投影するとともに、地価安定にも寄与するという二律背反的な機能が期待されている」ということも書いておられましたので、あえてそういうこともお聞きした次第ですが、この点で、もしさらに御発言があればお聞きしたいと思いますのと、それから田中先生にお聞きしたいのは——冒頭ちょっとお答えしておかないといけませんが、最初の発言で、土地基本法に事実上全会一致というような御発言があったかと思いますが、私の方は反対をいたしました。  資本主義地価高騰は不可避だというようなことがありました。資本論などで私たちも若干勉強しましたけれども、だからこそ規制が必要だというのが特に第二次大戦後の大勢だろうというふうに思っています。第二次大戦後、日本のように三度にわたるべらぼうな地価狂乱というようなことは、西欧の諸国では余り起きてないんじゃないかというふうに私は思っておりますが、そのあたりの事実関係ですね。  まあ、そういうふうになし得たのは、やはり都市計画土地利用の規制ですね、こういうものにかなり、それぞれによって違いますけれども、本腰を入れて取り組まれた。それが重要な、つまり、言うならば、計画なきところに開発なしというような原則で取り組まれたところに、日本との大きな相違点があるのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
  37. 田中啓一

    田中参考人 本当に拙著をお読みいただきまして、ありがたく思っております。感謝いたします。  先ほどまた私、与野党一致ということじゃなくて、事実上の与野党一致と言ったのでしょうか、先生にその辺の誤解を与えたことを申しわけなく思っておりますが、よく存じておりますので、お許しをいただけたらと思っております。  それで、御質問の、西欧ではどうかということでございますが、先生御指摘のように、我が国は、大きく分けますと一世紀に三回の大狂乱地価をやってしまいました。これは多分、世界先進国の中ではないことであろうと思います。先生は戦後の御指摘もいただいたわけでありますが、戦後にも三回ぐらい中ぐらいの規模、今回の場合世界一の、と私考えておりますが、狂乱地価が起きてしまいました。  これには、御指摘のとおり、私は、都市計画土地利用、法制度不備、あるいは土地税制の不完全さ、そして背後金余りがある。これは必ず世界狂乱地価の歴史の中にあるわけでございまして、日本も今の先生の御指摘の戦後の三回、あるいは私が申し上げた今世紀における異常な高騰の三回、すべてこれがあったかと思います。  そういう点から考えますと、欧米では戦後では少なくとも余りなかったということも考えられるわけですが、しかしラテン系の国では、イタリアとかフランスあるいはスペインあたりは、世界の高度成長、我が国の高度成長は一九五五年から始まったと通常言われておりますけれども、その間石油ショックまでの十八年間に異常な高度成長を我が国はしたわけでございますが、このときの前半ぐらいまで、我が国は大体二〇%ぐらい毎年地価が上昇したわけでございますけれども、実は、これ以上に上がった国が、今申し上げましたイタリアとかフランスあるいはスペインという国で、年率二二、三%上がったわけでございます。  こういう中で、これではいかぬという形で、よく言われますように、都市計画学者は、日本都市計画はいわゆる線引き制度でやって大ざっぱ過ぎる、これはフランスをまねしてこうなったんだと、ドイツのような地区詳細計画だったら、今回の狂乱地価も東京の地価がなぜ大阪へ移っていくのか、これも都市計画不備だということをよく指摘されておりますけれども、私もその点は必ずしも不賛成ではないわけでございます。  こういう点から考えますと、フランスの都市計画がドイツと比べますとやや大ざっぱであった、こういう点も上がったと思いますし、さらにイタリアの場合、フランスも、日本よりもはるかに地価高騰高度成長期の前半あったわけですけれども、これは土地税制が非常に安かったということも指摘されているわけでございます。しかし、一九六三年にイタリアのミラノの最高裁判所が判決を出しまして、例の土地増価税という未実現キャピタルゲイン課税、これが合憲であるという判決を出したわけでございます。  先生御承知のとおり、我が国と違いまして、これらのラテン系の国は大地主制でございます。大地主でございますので、地価が上がってくることを喜んでいた大地主が、地価が上がったら売らなくても重課するんだ、課税するんだということでどうもならぬ、地価がこれまで上がることをひそかに喜んでいたのが、もうどうもならぬ、下げてくれというようなことになったと聞いておりまして、一九六三年ぐらいからこれらのラテン系の国の地価は安定してきたということでございます。  日本の場合は、高度成長期の石油ショックぐらいまで、特に列島改造のときぐっと逆に上がってしまったという現実があろうかと思います。  ありがとうございました。
  38. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 あと一分になってしまったので、一元化との関連の問題ですけれども、先ほどからのお話でというよりも、実態として固定資産税、公示地価の七割とか相続税の八割とかというようなことで作業が進んでおりますが、これがやられますと、全く収益のない一般住居だけの人たちには大変な負担になるという問題があるわけですね。これは鑑定士の方の責任でももちろんありませんが、そういう問題との関連がやはり相当議論されなければならぬ。収益還元方式が基本になるべきだというふうに私たちは考えております。収益を上げる目的での土地所有からばうんと取る、ただ住んでいるだけとか、本当に零細な商業とかはうんと低くする。そういう意味では、私は住居などはゼロでいいのではないかというふうに思っておりますが、ちょっともうお答えいただく時間もないと思いますので、これからも非常に皆さんのお仕事は大変重要だと思います。ですから、いかに地価を引き下げていくか、本当に国民が安心して住める国土にしていくかという点で、お互いにと言っては大変僭越な言い方ですが、努力をする必要があるのじゃないかということを申し上げて、終わりにいたします。どうもありがとうございました。
  39. 薮仲義彦

    薮仲委員長 次に、伊藤英成君。
  40. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 民社党の伊藤英成でございますけれども、本日は、田中先生と塩見先生、お二人、それぞれ貴重なお話をありがとうございました。  まず、早速でありますけれども田中先生が本日冒頭、今回の地価暴騰につきまして、土地情報整備が非常に不十分であったからああいうことになったのだということを言われましたけれども、もしもこの土地情報整備されておれば、どのように活用されて、どのような効果をもたらしただろうと思われるでしょうか。
  41. 田中啓一

    田中参考人 大変難しい御質問でございますが、仮定の上でお答えをさせていただけたらと思いますけれども、私は少なくともこんなようないわゆる通常のバブルというものは出てこなかっなと考えております。少なくとも名目GNPとかあるいはまた我々の所得の上昇、それに見合った、少なくとも幾ら先取りしたといたしましても、その倍ぐらいの地価高騰、すなわち、名目GNPが例えば五、六%、賃金上昇がほぼそれくちいと考えますと、昭和六十年以降少なくともそれくらい前後、あるいはどう多くても年率一〇%ぐらいでおさまったのではないかということが考えられるわけでございます。既に日本でも、戦後の地価高騰の中でも五十年にはマイナス九・二%という地価の下落もありましたし、それ以後、世界の石油ショック以後は基本的には不況の中で、そういう中で日本も五十八年以前は地価は割合安定しておりましたので、そういう点からは、少なくとも六十年以降もそれに近寄った形での上昇にとどまったのではないかと思っております。
  42. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 これはまた田中先生と塩見先生お二人にお伺いしたいのですが、現在の地価状況ですね、かなり下落してきたわけでありますが、現在の地価水準は、まあまあ適正な水準に来ているというふうに思われますか、あるいはこれはさらに下がるべきものだというふうに思っていらっしゃいますか、御意見をお伺いいたしたいと思います。
  43. 塩見宙

    塩見参考人 先月地価公示の発表をいたしまして、特に近畿圏では大幅な下落がございましたが、それは異常な高騰を示しておった分だけダウンしたわけでございますけれども、私自身の考え方としましては、現在土地価格というのはちょうど踊り場の段階にあると思っております。  踊り場というのは実際の階段のあれですが、では今までどうだったのだ、これは、赤い階段は幻の階段でございます。その幻の階段がどんどん消えまして、では、この幻の階段をつくったのはだれかといいますと、これは私に、基本的にはどうも日本の国は不動産業者の数が多過ぎる。多過ぎるから、町の四つ角で、日本全国どこでもいいのですが、目隠しをして石を二つ持って投げたら、一つはコーヒー屋に当たって、一つ不動産屋に当たるというぐらい日本不動産の数が世界一多い。お互いに生きていかんがために転がしをやったわけですね。本来、不動産業者というのは、AさんとBさんの仲介に立って、その仲介手数料をもらってあれしたらいいんですが、皆が金魚のふんのようについていっていますから、お客さんから頼まれたのを抱きかかえて、それを同じ業者に転がしていく。その転がしていくのに金融機関が金を貸しておったということでございますから、これはもう本当に幻の階段は当然でき上がっていく。  国民に対して、じゃ、それは幻の階段ですから、必ず落ちますよ、危ないですよということを本当はもっともっと皆さん方が大きく、声を大にして警鐘を与えていただいたら、大分違っていたんではないかいな、それには情報不足もございましたと思うわけでございますが、さて、その幻の階段が消えまして、今実階段に入っている。  ただ、その実階段、じゃ、これで本当に底を打ったのかというと、そうとも言えないのです。まだ赤い部分の階段と両足踏まえているところがございまして、そこは今度七月一日現在の都道府県地価調査をやりますが、そういうところは恐らくきれいに赤が消えて、私は大体この辺で一段底、それを過ぎて二段底を打って、大体その辺で収束がつくんではなかろうかな、私、これは個人的な見解でございますが、そのように考えております。  以上でございます。
  44. 田中啓一

    田中参考人 これからの地価ということを考えるとき、あるべき地価水準と、こうなるだろうという現実的な地価水準と、私どもは議論を分ける必要があろうと思います。  そのときに、あるべき地価水準というのは、私は、昭和六十年時点に戻すべきだという御意見が多いし、また一方では、年収の五、六年分で買える住宅価格地価水準に持っていくべきだということが言われております。こうなりますと、こういう視点からいきますと、私はあと二、三割の下落が必要だということも理論的には考えられるんじゃないかということであります。  しかしもう一方、現実的な考え方でいきますと、ここまで下げたとき、しかも急激に下げたとき、一体日本経済あるいはまた中小企業が土地を担保にしているときのその資金繰りはどうなるのか。あるいはまた、世界日本経済の大きさ、寄与率から考えますと、一九二九年のパニックがバブルが消えたアメリカで起きた。これが日本から起きてしまうんじゃないかという懸念もかなり今のところ現実性を帯びてきておりますので、こう考えますと、あと一割から二割ぐらいのところに現実的な地価は落ちつくんじゃないかというような感じも私、これは個人の考え方でございますが、そうしているところでございます。  問題点は、地価というのは、我々今こういう議論をしておりますのですが、点で本来とらえるべきだと思っております。だから情報の、さっきの調査地点も少なくとも最低十万、できたら日本は百万ぐらい欲しいということを申し上げた根拠は、そこにあるわけですが、しかし、地価と言ったとき、我々は面で今言っておりますので、東京都が何%下がったと言っても、上がったとか言いましても、いろいろの地点によって違うわけでございますので、それで一括できない。今関西地方では六十年時点よりもむしろ下がっちゃった事例も、地点によっては出てきているわけでございますので、その辺の議論のちぐはぐというところも我々は謙虚に反省しながら、議論をしていく必要もあるような気がいたします。  いずれにしろ、私はある程度容認できる地価高騰地価高騰と言っては問題がありますが、地価上昇というのでしょうか、やはりGNPとか名目賃金とか上昇とか、それにどうトレンドしていくか、その辺である程度地価上昇というのを認める必要があるのかどうか、こういう議論も、私は適正な地価水準とともに、適正など言っていいかどうかわかりませんが、地価上昇率を認める必要があるかどうか、この辺の御議論をぜひ本音でやっていただくことが、土地政策を本当の意味で解決することであろうと考えております。  ありがとうございました。
  45. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 本日、それぞれの委員からも、この土地情報の公開の問題とプライバシーの問題について触れられたりいたしました。  この今回の土地基本法の中でも最も重要な点は、公共福祉に関する部分だろうと私は思うのですね。それで、今例えば固定資産税の評価額の問題にしても、自分の状況はわかりますけれども、他人のは、これはわかりませんですね。要するに、こういうことでは、なかなか土地情報をもとにして適切な施策が行われない、あるいは適切な形でその土地取引に反映をされていかないということにどうしてもならざるを得ませんね。  だから私は、守秘義務守秘義務と言いますけれども、ここは非常に制約をして考えなきゃならない話だろうと思うのですね。きょういろいろお伺いしていても、ちょっとこのプライバシーの部分を、何といいましょうか、尊重し過ぎていやせぬかなという感を私は抱きました。  だから、その点についてもう一度御意見をお伺いしたいということと、もう一つ、先ほど田中先生もドイツのことにちょっと触れられましたけれども、要するに土地取引の際の関係書類をすべて市町村の鑑定委員会に提出をすることを義務づけられているようですね。したがって、契約時点での地価をすべて把握できる状況になっていると思うのですが、私はこういうことは非常に重要な話だろうと思うのですね。日本でそのようなことを実現させようと思ったときに、一体何がネックになると思われるのか、先生の御意見をお伺いいたします。
  46. 田中啓一

    田中参考人 確かに、踏み込んだ場合、非常に難しい問題が起こってくるわけです。まさにプライバシーとの関係ということになりますが、私は、先ほど先生から御指摘がございましたけれども、必ずしもプライバシー重点ということでもないわけでございまして、先ほど申し上げたとおり、ドイツの今のグルントブーフ土地登記制度には少なくとも踏み込んでも、そういう前向きな検討が必要じゃないか、そういう時期にあるということを絶えず思っているところでございます。  こうなりますと、しかし、このプライバシーとの関係というのは、絶えず税との問題がいずこの国でもございまして、その資金と税の負担との関連で、特に、だれがどこの土地を持っているということよりも、だれがどうしてその資金を調達したのか、それに対する税がどうなのかという点が大きな問題と、いずこの国でもなっているようでございます。  日本もこの辺に配慮することが必要だろうと思いますが、私は少なくとも今申し上げましたような新しい取引については、ある程度プライバシーを放棄するというぐらいなことが、先ほども固定資産税の問題でも申し上げましたけれども、そういう時期にあるのじゃないかと思っております。  現行登記簿制度でも、乙欄に、銀行が融資しているとき、これを違約したとき日歩何銭の罰金を科すなんて長々と書いてございますが、あれこそまさにある意味ではプライバシーでございまして、それよりも一面ではもっと簡単な、幾らで買ったかという、厳正中立なことが保証した形で、幾らで売買されたかということをしっかりやった方がそのプライバシー、同じプライバシーならば、そっちの方が踏み込んでもいいんじゃないかと思っております。  そういうある程度の受忍の義務といいましょうか、新しく土地を売買し、たときには、権利の移動があったときには、そういう受忍の義務もある、公開する、公表する受忍の義務もあるんだということのコンセンサスを、これから育成していく必要があるのじゃないかと思っております。
  47. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 あと一、二分しか時間がちょっとありませんけれども土地基本調査について、今回国土庁も本年度予算に新規に計上もされたりしておりますし、それから土地情報課も新設されることになっているわけでありますけれども、先ほどの先生のお話のように、極めてこの土地についての基本的な所有構造すらわかっていないという状況なんですね。  一つは、諸外国と比較して何が最大の理由でこういう状況になっているのかということ。それからもう一つ、全国の土地を対象とした土地センサスについて、所有者十人に一人を念頭に置いているということでありますけれども一このくらいの水準というのは、どのように考えられるか。適切なのか、これではちょっとなかなか少な過ぎるのではないかとか、いろいろな意見があると思うのですが、お伺いをいたします。
  48. 田中啓一

    田中参考人 第一問につきましては、いろいろな御意見学者の間でも指摘があるわけでございますが、私はやはりそこまで、日本のいろいろな今までの歴史からいきましても、役所間の通常言われるような縄張りとか、あるいはまた目的というのも違っておりまして、個々ばらばらだった。これを整合性を持ってやるというのに踏み込めるところに、いろいろなそれぞれ役所間の抵抗があったということも、事実であろうと思います。  その背後には、やはり国民がそういう総合的なチェック、他人の財産、資産を余り公にするということに、非常に抵抗感があるという国民性もかなりあったかと思います。それはやはり江戸時代からの土地所有ということから考えましても、むべなるかなという点もあろうと思いますが、しかし、今、新たな時期を迎えているということも事実であろうと思います。  それが一点であろうと思いますが、二点目を先生……(伊藤(英)委員土地センサスの……」と呼ぶ)十分の一という御指摘でございますが、私もこれがどうかという、もちろん十分の一よりも全点というのがやはり最も理想でございますが、統計学上から、私必ずしも統計の専門ではございませんが、十分の一くらいのあれだったらかなりの精査が出ると一応考えられておりますので、一応今の段階では、十分の一でとりあえずは十分ではないかと思っております。  ありがとうございました。
  49. 伊藤英成

    ○伊藤(英)委員 どうもありがとうございました。
  50. 薮仲義彦

    薮仲委員長 次に、菅直人君。
  51. 菅直人

    ○菅委員 両参考人には本当にどうもありがとうございます。  まず、塩見参考人の方に幾つかお尋ねをしたいのですが、先ほど来、この地価評価の一元化の問題で、私もかなり実質的な一元化は進んできているのではないかと思っているわけです。おっしゃいましたように、路線価を公示価格の八〇%にする、固定資産税評価額は将来七〇%にする、そう考えますと、例えば固定資産税で言えば、公示価格に一・四%の固定資産税のかわりに、〇・九八%、つまり一・四に〇・七を掛けておけば、公示価格に掛けたって全く同じ計算になるはずであって、そういう点では実質的な一元化はかなり進んできているのではないかというふうに思っておるわけです。  そこで、お尋ねをしたいのですが、先ほどのお話の中では、これは政府もいつもそう答えるのですけれども、いわゆる制度目的が違うから完全な一元化は難しいので、均衡だとか適正だとかというような言葉で、土地基本法も野党案には一元化というのは入れていたのですが、最後ちょっと逃げられたところがあるのですが、私は原則は一元化にすべきだ、そして必要なことは、税率なりその制度制度における課税の足切りなり、そういう形でやるべきだというふうに思っているのですが、塩見参考人の御意見を伺いたいと思います。
  52. 塩見宙

    塩見参考人 菅先生のお話で、それは本則は、そういうふうに七割、八割ということになれば、基本は公示価格があって一元化でもいいではないかということになるかもしれませんが、私何度も繰り返しますけれども、やはりそれぞれの生まれた目的、根拠法が異なりますので、やっと体系整備ができたのではないかと私思うのですよ。だから、評価体系の整備というのは、四十八年の一月二十四日の田中内閣のときの土地対策閣僚会議で決まったこと、それが十数年間何度も言われてもできなかった。  今回やっと土地基本法の十六条があり、さらには総合土地政策推進要綱で均衡化、適正化が図られたわけでございますので、一挙に統合一元化というのは、それぞれの省庁の目的とか性格上の違いから、これに対応するということは、非常に無理ではなかろうかな。  やがては本当に、今先生おっしゃいますように、これで割り算して掛け算したら、もういいじゃないかということになれば、ならば、十分にそれに対応できる公示価格というものにみんな準拠するという以外手がないわけでございまして、そうなりますと、いろいろまた課税上の当局の御判断、御見解、いろいろ性格によっての対応も出てまいろうと思いますので、これについては私直ちに、同じじゃないかと先生は御指摘でありますけれども、私自身としては、やはり何度も繰り返しますけれども、それぞれの根拠法令、目的、性格の違いから、一挙に統合一元化ということがなかなも言えないのではなかろうかなと思っている次第でございます。
  53. 菅直人

    ○菅委員 鑑定協会の副会長でもあられるわけですから、私もこの問題、各省庁と長い間議論をしてまいりました。その結果、私の結論は、今言いましたように、確かにいろいろな経緯があります、いろいろな歴史があります。  しかし逆に言えば、そのいろいろな経緯、いろいろな歴史が、縦割り行政の中で非常に大きな弊害をもたらしてきた。田中参考人も言われましたように、あるいは塩見参考人も御存じのように、節税対策に使われたり、あるいは政策を立てようにも何を対象にして地価が上がった、下がったと議論していいのかわからないとか、そういうことがあったわけでございまして、私は、そういった制度の経緯の差とかという問題が一元化を妨げる決定的な要因にはなっていない、そう思っておりますので、今後協会などで議論されるときにも、ぜひそういった点も、そういう意見参考にしていただきたいし、実は国会の土地基本法を通すときの決議にも一元化という言葉が入ってますので、それも、場合によったらあわせて検討していただきたいと思います。  もう一点、塩見さんにお尋ねをしたいんですが、これはなかなか難しいんですけれども、いわゆる公示価格そのものが実勢の七割なんて言われているけれども、それは不当も言い方だ、自分たちはきちんとした調査でやっているんだというふうに言われたわけです。  それはそれでいいんですけれども、正常な価格という表現をされましたが、何をもって正常な価格というかというのは、これまた多分なかなか議論があるところだろう。それこそ、従来は、固定資産税評価額も、自治省に言わせれば正常な価格と言い、それぞれの役所が正常な価格を自分流の正常な価格で主張してきたわけです。そういう点で、私は目的によって正常な価格というのは考えるべきだと思いますが、基本はやはり売買実例なんだろうというふうに基本的に思っています。  先ほど他の委員の方が収益還元ということも言われましたけれども、収益還元というのは、私は担保の価格を見るときには収益還元でいくべきじゃないか。つまりは、担保をそれ以上に認めることが逆にバブルを招いてきた。いわゆる利益もないところに、売買価格だけで担保を認めるものだから、どんどんバブルが膨らんでくる。だから担保価値にこそ収益還元をきちんとすべきで、こういった公示価格とか課税対象は、基本的には売買実例じゃないか、その中でも、もちろん特殊な買い急ぎ、売り急ぎについては、若干の修正があってもいいだろう、こう思っておりますけれども、正常価格について、時間が余りありませんが、基本的な考え方はそういう理解でいいのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  54. 塩見宙

    塩見参考人 私個人の考えとしては、正常価格と正常な価格は、「な」が入っているだけ違うと思います。(菅委員「正常な価格ですか」と呼ぶ)  「な」の方は、それぞれの目的で省庁がそれぞれ正常なということを、算定評価であっても正常な価格ということを言っておるので、私ども鑑定評価でございますから、正常なでなくて、正常価格であります。  では、正常価格というのがその実勢とどう違うかといいますと、やはり不動産価格も需要と供給の均衡点に本来定まるべきと思うんです。  ところが、土地の特性というものがございまして、大きな特性が二つございまして、自然の特性というのがございます。地理的な位置が固定してしまっておるとか、土地は動かないとか、永続性があるとか、個別性が非常に強いとかいう、その自然的な特性が供給曲線に大きく作用するわけです。ですから、地価が高かったら売ろうじゃないかと思っても、本来的にもう自然の特性から供給曲線が縦のような一本化にならざるを得ない。  そこへもってきて、需要曲線は人文的特性、土地に対して人間がかかわり合いを持つときに土地が示す性質、つまり用途の多様性であるとか、何。にでも使えますよとか、あるいは併合分割の可能性であるとか、あるいはさらに、社会的、経済的位置がどんどん変わりますよというような人文的な特性が需要曲線に作用しまして、需要曲線がいろいろ出てくるわけですね。  そうすると、この縦に近い供給曲線に対して需要曲線がいろいろ出てまいりますから、その中でどうしても勢い地価が高いようなところは上の方で制約度が出てしまう、こんなものが実勢なんです。  しかし、私どもが目指す正常価格というものは、あくまでも土地が完全な自由市場ということを前提としてやった需要と供給の均衡点、そういうものを目指していくのが正常価格でございまして、そんなものには目をくれずに、その中で需要と供給がこうあれば、この辺だ、ここなんだ。  では、あなた方はそんなものがわかるのか。現実に市場ではそれはなかなか識別できない。それを識別できる作業、市場はないという空白を埋める作業をやるのが、鑑定評価でございます。ここに鑑定評価の大変難しさがあるわけでございまして、そのために非常に高度な国家試験になっているわけでございます。  さて、じゃ、どうすればいいのか、あるんだということに対して、いろいろアプローチをするわけですね。一挙にストレートにできませんから、その中で、一つは、コストの面からアプローチを」していくいわゆる原価法でございます。それから、収益の面からアプローチをしていく、これは収益還元法でございます。それから、取引の事例からアプローチをしていく市場マーケットアプローチ。  こういうアプローチの中にその弾着点は必ずあるはずだ。大砲の弾を撃ちましたらここを目指すのだけれども、向こうの方に撃つのはまた収益還元法だと思うのですよ。ストレートに前の方に落ちるのがコストアプローチだ。サイドからどんどん攻めていきますのがいわゆるマーケットデータアプローチ。となれば、やはりデータとしてはマーケットデータが一番多うございますから、先生がおっしゃいましたように、これは取引事例に非常に偏らざるを得ない。取引事例に相当左右される要素は非常にございます。  インカムというのはなかなかわかりません。それからコストも、今から造成してどれだけ造成費がかかってということもなかなかわかりませんので、できるだけ取引事例というものから対応せざるを得ない、特に重視せざるを得ないわけですが、今申し上げましたように、世の中の取引事例というのは、交点が非常にいろいろあって、高いところに収れんされたり、低いところに収れんされたり、売り急ぎ、買い進み、あるいは当事者間のそれぞれのいろいろな事情がございますから、その異常性を完全に排除していかなければならない、できるだけ排除するということをいろいろ心得ておるわけでございます。  確かに、取引事例重視という点、大変ありがたいことだとは思います。だから、国会等で収益還元法をオープンにせよとおっしゃっているのですが、収益還元法というのは、実はなかなか難しいのです。快適性というのが本来収益的要素でございますが、まして住宅地についてまで収益還元法の適用なんて言われますと、これはなかなか難しいわけでございます。しかし、いろいろと先生方の御指摘もございまして、私どもの方でも公示価格に、できるだけ収益還元法も表へ出そうかなということにはしているわけでございますけれども、今、幸い菅先生、おっしゃっていたださまして、本当は取引事例をしっかりと分析して、それを中心にやっていくというのが一番ありがたい方法ではなかろうかと思っております。  ありがとうございました。
  55. 菅直人

    ○菅委員 今申し上げたのは、大変難しくて、おっしゃったことを一遍には全部わかりませんが、私の感じでは、評価そのものは取引事例がベースで、担保を考えるときは収益還元の方がいいのじゃないだろうか。それを超えた担保を認めたことがかなりバブルの原因になってきたのじゃないか、そのことをちょっと申し上げたのです。  田中先生の方には、今土地政策委員会の専門委員会などでいろいろと頑張っておられて、先ほど法務省といいましょうか、登記の問題をいろいろおっしゃいまして、実はこれは私の方からも逆陳情したいところなんですが、私も、この委員会などで、法務省に登記簿の中に売買価格を入れられないかというようなことを何度か言ったのですが、壁が厚くて、なかなかうんと言わないわけでして、土地政策審議会などの中にぜひそれを盛り込んで、行政の側からもそのことを推し進めるように一層お願いしたいのですが、時間がないので一つだけ。  先ほどほかの委員の方との議論で、適正な地価ということについて若干お触れになったので、そのことについて見解をお伺いしたいと思うのです。  私はいろいろな機会に言っているのですが、日本地価総額というのがどのくらいが適正なんだろうか。私も経済学者じゃありませんから、よくわかりませんが、しかしGNPとの比較でいえば、アメリカの場合は七百兆ぐらいのGNPに対して、地価総額が大体四百兆ぐらいだとたしか言われていたと思うのです。日本は、今少しふえておりますが、GNPは四百五十兆ぐらいでしょうか。それに対して一時期、二千兆円というふうに言われていたわけです。私は、日本地価総額は、いいところ、GNPぐらいじゃないかな、四百兆から五百兆ぐらいだろう。そう考えると、ピーク時の四分の一から五分の一ぐらいが適正地価じゃないかな。こんなことを言うと、銀行関係者の皆さんは青い顔をして、そんなことを言われたら、自分のところはもうつぶれてしまうなんて言われるのですが、確かに経済運営上の問題はいろいろありますけれども、私は、長期的に見れば、そのあたりが適正地価ではないか。あるいは収益還元のような考え方からいっても、その程度に落ちつくのではないかというふうに見ているわけですが、先生はどういうふうにごらんになっておられますか。
  56. 田中啓一

    田中参考人 適正な地価という、先生御承知のとおり、日本列島は世界の陸地面積のわずか〇・二四%しかないのが、二千兆円とも言われております。確かにGNP、ことしは四百八十兆ぐらいであろうと思いますが、少なくとも四倍、五倍なんという国はまずないと考えてもいいと思うわけでございます。そのときに、GNPと一対一ぐらいということになりますと、ほとんどの国が一以下、土地係数と言ってもいいと思いますが、一以下の国であるというのは、先生御指摘のとおりであろうと思います。  しかし、我が国の場合、どういうわけか、明治の末から大体二・二ぐらいから二・三ぐらいの地価とGNPの比率があるようでございますので、すぐにこれを先生の理想とされる一対一ぐらいに持っていくかどうかというのは、非常に難しい点であろうかと思います。  私は、二千兆円というあのバブルのときに、今から三年ぐらい前のピーク時の二千兆円と言われたときに、二十一世紀までこれ以上にならないような政策ということが少なくとも必要だということを非常に強調したところでございます。そしてある程度GNPが上がってきて、あるいは我々の所得も上がるという形で、ゆっくりゆっくりこれを解消して、でき得れば、この土地資産が住宅資産の三倍、四倍あるなんという国もまた逆にないわけでして、立派な町づくりというのは、住宅がいかにいいか、ビルがいかにいいかということでございますので、欧米が、そういう点では、土地の三倍、四倍ぐらいが住宅資産、ビル資産になっているわけですから、こういうところに早く行くことが必要であると考えております。  だから、一対一はともかくとして、一応、少なくとも当面は、明治の末ぐらいの時期に高齢化の進む十年間ぐらいの間に持っていくという政策が、それからまた二十年ぐらいかけて、今先生の御指摘のような一対一ぐらいの欧米並みに持っていくという、土地というのはあらゆる影響を与えますので、そういう点が、大きな目標として必要じゃないかと考えております。  どうもありがとうございました。
  57. 菅直人

    ○菅委員 どうもありがとうございました。
  58. 薮仲義彦

    薮仲委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る十七日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十九分散会